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1997-12-05 第141回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月五日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 玉置 一弥君    理事 荒井 広幸君 理事 小林 興起君    理事 佐藤 剛男君 理事 森  英介君    理事 河上 覃雄君 理事 桝屋 敬悟君    理事 中桐 伸五君 理事 金子 満広君       飯島 忠義君    大石 秀政君       大村 秀章君    竹本 直一君       棚橋 泰文君    長勢 甚遠君       能勢 和子君    藤波 孝生君       柳本 卓治君    鍵田 節哉君       川端 達夫君    塩田  晋君       福岡 宗也君    吉田  治君       池端 清一君    近藤 昭一君       松本 惟子君    大森  猛君       濱田 健一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 伊吹 文明君  出席政府委員         労働政務次官  柳本 卓治君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         労働省女性局長 太田 芳枝君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    中野 秀世君         労働省職業能力         開発局長    山中 秀樹君  委員外出席者         厚生省保健医療         局国立病院部政         策医療課長   上田  茂君         郵政大臣官房人         事部管理課長  平  勝典君         労働委員会調査         室長      中島  勝君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月五日  辞任         補欠選任   村山 富市君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   濱田 健一君     村山 富市君     ――――――――――――― 十二月三日  労働法制改悪中止労働者の権利を守るため  の法的規制強化に関する請願大森猛紹介)  (第一一一五号) 同月四日  障害者雇用率引き上げ職域拡大等に関する  請願畑英次郎紹介)(第一四六三号)  同(岩田順介紹介)(第一五九九号)  労災ケアプラザ増設入所条件緩和等に関  する請願畑英次郎紹介)(第一四六四号)  同(岩田順介紹介)(第一六〇〇号)  労災遺族年金裁定是正に関する請願畑英次  郎君紹介)(第一四六五号)  同(岩田順介紹介)(第一六〇一号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(畑  英次郎紹介)(第一四六六号)  同(岩田順介紹介)(第一六〇二号)  労働者保護及び雇用の安定のための労働行政体  制の整備に関する請願畑英次郎紹介)(第  一四六七号)  同(松本惟子君紹介)(第一七〇四号)  同(中桐伸五君紹介)(第一八一五号)  同(村山富市紹介)(第一八一六号) 同月五日  障害者雇用率引き上げ職域拡大等に関する  請願岩田順介紹介)(第二〇二〇号)  同(坂本剛二君紹介)(第二〇二一号)  同(永井英慈君紹介)(第二〇二二号)  同(畠山健治郎紹介)(第二〇二三号)  同(船田元紹介)(第二一八五号)  同(栗原博久紹介)(第二三二八号)  同(野田実紹介)(第二三二九号)  同(桝屋敬悟紹介)(第二三三〇号)  同(宮下創平紹介)(第二三三一号)  同(山口俊一紹介)(第二三三二号)  同(亀井静香紹介)(第二四二六号)  労災ケアプラザ増設入所条件緩和等に関  する請願岩田順介紹介)(第二〇二四号)  同(坂本剛二君紹介)(第二〇二五号)  同(永井英慈君紹介)(第二〇二六号)  同(畠山健治郎紹介)(第二〇二七号)  同(船田元紹介)(第二一八六号)  同(栗原博久紹介)(第二三三三号)  同(野田実紹介)(第二三三四号)  同(桝屋敬悟紹介)(第二三三五号)  同(宮下創平紹介)(第二三三六号)  同(山口俊一紹介)(第二三三七号)  同(亀井静香紹介)(第二四二七号)  労災遺族年金裁定是正に関する請願岩田順  介君紹介)(第二〇二八号)  同(坂本剛二君紹介)(第二〇二九号)  同(永井英慈君紹介)(第二〇三〇号)  同(畠山健治郎紹介)(第二〇三一号)  同(船田元紹介)(第二一八七号)  同(栗原博久紹介)(第二三三八号)  同(野田実紹介)(第二三三九号)  同(桝屋敬悟紹介)(第二三四〇号)  同(宮下創平紹介)(第二三四一号)  同(山口俊一紹介)(第二三四二号)  同(亀井静香紹介)(第二四二八号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(岩  田順介紹介)(第二〇三二号)  同(坂本剛二君紹介)(第二〇三三号)  同(永井英慈君紹介)(第二〇三四号)  同(畠山健治郎紹介)(第二〇三五号)  同(船田元紹介)(第二一八八号)  同(栗原博久紹介)(第二三四三号)  同(野田実紹介)(第二三四四号)  同(桝屋敬悟紹介)(第二三四五号)  同(宮下創平紹介)(第二三四六号)  同(山口俊一紹介)(第二三四七号)  同(亀井静香紹介)(第二四二九号)  労働法制改悪反対、人間らしく働くルールの  確立に関する請願石井郁子紹介)(第二一  八三号)  同(東中光雄紹介)(第二一八四号)  労働者保護及び雇用の安定のための労働行政体  制の整備に関する請願大森猛紹介)(第二  一八九号)  同(金子満広紹介)(第二一九〇号)  同(桝屋敬悟紹介)(第二三四八号)  高齢者雇用機会の創出に関する請願肥田美  代子君紹介)(第二四二五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十六日  労働雇用規制緩和反対労働法制改悪反対  に関する陳情書  (第一三五号)  実効ある男女雇用機会均等法に関する陳情書外  一件  (第一三六号  )  時間外・休日・深夜労働に係る男女共通規制  立法化に関する陳情書  (第一三七号)  雇用失業対策に関する陳情書  (第一三八号)  じん肺被害者救済に関する陳情書  (第一三九  号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法有効期限延長  に関する陳情書外一件  (第  一七四号) 十二月二日  労働基準法改正に関する陳情書  (第  二一七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  労使関係労働基準及び雇用失業対策に関す  る件      ――――◇―――――
  2. 玉置一弥

    玉置委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件、労使関係労働基準及び雇用失業対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大石秀政君。
  3. 大石秀政

    大石委員 自由民主党の大石秀政でございます。  伊吹労働大臣、大変御苦労さまでございます。  大型金融機関破綻等の問題もございますし、また、けさの新聞などにはいわゆる中基審最終報告なども出ておりましたけれども、二、三日前等ではございますけれども、雇用サミット、こういうものが実は行われているわけでございます。どうしても、今環境の問題で京都で会議をやっておりまして、その前はAPECなども開かれていたわけでありますけれども、もう少しこの問題について報道等がされなくてはいけないのではないかと今でも思っているわけでございます。  雇用サミットというのは、サミット参加八カ国、ロシアも入れて、雇用そして産業担当大臣を初めとする各国の代表が集いまして、オブザーバーとしてILO、OECD、またIOE及びICFTU、これは国際自由労連ですけれども、そういった重要な方々が集まりまして、これからの雇用というものがどうあるべきか、また、各国先進国でございますので、今の日本だけでなくて、構造改善というものをやっているわけでございます。そういったものに対応をすべく、労働行政というものをどうやっていったらいいかというようなことを話し合う大変重要な会議でございます。  第一回はデトロイトで行われまして、そのときには坂口労働大臣出席をされました。また二回目は、一九九六年に永井労働大臣出席をされまして、そのときに、次回はぜひとも日本で行いたいということで、今回神戸市で、先月、十一月の二十八日と二十九日の二日間にわたりまして行われたわけでございます。堀内通産大臣も御出席をされたわけでございますけれども、議長ということで、いろいろ議論をされて、最終的に大臣総括をされました。  全体の会議状況なども含めまして、総括のポイントというものを、正式なものは文書で出ておりますので、感想的なことで結構でございますので、少しお聞かせいただいたら大変ありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  4. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今、大石委員が的確におっしゃいましたような構成メンバーお話をさせていただきまして、特に、ロシアが初めてこの会議参加をして、サミット八カ国ということで協議をいたしました。  日本でも雇用問題は今大変深刻だと言われておりますが、諸外国では大体失業率が二けた近くになるというのが普通でございまして、そういう中で、特に学卒の若い方々と、それから六十歳、六十五歳後の御年配方々雇用問題が深刻であるというのは、実は世界共通の問題であったわけであります。  そこで、委員承知のとおり、雇用というのは基本的にはやはり、マクロ経済がうまくいって有効需要を創出することによって雇用の場を与えていくということと、それから、できるだけ金融市場にナーバスな心理状況による不必要な混乱を生じないようにして、安定的に経済が運用されることによって雇用が出てくるというのは当然のことでありますが、同時に、そういう状況の中でどうすれば、今申し上げたような若い方々、御年配方々失業率をできるだけ低く抑えられるか、また新しい雇用機会をつくれるかということについて、御指摘がございましたように、いわゆる通産大臣労働大臣もしくはその代理の者が集まって議論をしたというのが全体の流れでございます。  したがって、まなじりを決して国益を守らねばならないというような会議では実はなくて、お互い情報交換をし、今後の施策にプラスになるようにやっていこう、こういうことでございまして、大きく申して、テーマは二つございました。  一つは、新規産業を助成することによって新たな雇用機会をつくっていく。イノベーションを促進し、そしてベンチャービジネスをいかに助成しながら新規産業をつくっていくか。これは通産大臣のカバーをされた範囲であります。  私がやりましたところは、今申し上げたような、活力ある雇用社会の実現というテーマ議論をいたしましたが、若い人たち学校から職場への円滑な移行のためには、早い段階から、技術論はもちろんでございますが、生きていく知恵のようなものをやはりきちっと学校の中で教えていただくというような点について意見が一致しました。  それから、現に働いていらっしゃる方々もこれからは、働く方々の選択の自由という意味からも、あるいはまた経営をされるサイドの市場経済の原理からも、労働移動が従来よりはかなり活発になると予想されますので、あらゆる事態に対応できるように、専門的知識とか技能を持った人材の育成とか生涯にわたる教育、生涯教育というんでしょうか、こういうものについてお互いに協力をし、情報を交換し、またプロジェクト的なものも組みながらやっていこうと。  それから、御年配方々については、これからやはり今まで考えていないようないろいろな働き方、例えば介護というものが日本に出てくれば、介護はやはり御年配の方がむしろ要介護者介護して、自分もまたいずれ介護してもらっていく。その中で、従来ほどは給料はもらわないけれどもある程度の収入を得て、同時に社会参加をしているという人間的な尊厳を持ちながらやっていく。こういうようなことが結果的に年金あるいは老人医療面財政負担を減らしていくんじゃないかというような話もございました。  そして結論は、先生指摘のように、議長総括ということでまとめさせていただきまして、同時に、最初に私が申し上げましたマクロ経済議論が、来年の二月英国で行われます。それと今回の神戸会議の成果をあわせましてバーミンガム・サミットに御報告をして、大きく言えば人類の未来のために、サミット、頂上にいる人たち議論をしてもらおう、こういう流れであったかと思います。
  5. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  今の大臣の御答弁の中にもありましたけれども、来年のサミットにも今回の総括というものはくみされるということで、大変重要なものでございます。地球温暖化ということで報道もちょっと環境の方に集中しているわけですけれども、先ほど私は最初に申し上げましたけれども、本当に大変貴重な会議でありましたので、これからいろいろなこういう総括のものを一般の方々文書などでもできるだけ読んでいただけるようなこともしていただければ大変いいと私は思います。  今の中にもございましたけれども、要は、日本は今特に金融面のいろいろな雇用不安というようなことがありまして、それにつきましては、先般、大臣は、予算委員会の方の集中審議などで御答弁をされていたわけでございます。このサミットで話し合われたこと、今の大臣の御答弁の中にもございましたけれども、結局日本だけが経済構造改革ということを進めているわけではなくて、やはり先進国皆そういうことをやっているわけでございます。そして、経済構造改革をやれば雇用移動というものが起きるということは、これは間違いないことでございますし、また雇用移動というものができなければ経済構造改革ではないのではないかと思うわけでございます。  そんな中で、どうしてもやはり移動を余儀なくされるような方々を吸収をするような新規事業というものを起こし、そういった環境を整える間には、どうしてもタイムラグといいますか、そういったものがあるのは、これは幾ら努力をしてもいたし方ないわけでございまして、要は、そういったタイムラグの間に発生をする一時的な雇用調整、あるいは途中の就業ができない期間がある方々に対します対策というものが一番重要ではないかと思っているわけでございます。  ですから、今回のいろいろな金融機関破綻によっていろいろな問題が発生しているわけでございますけれども、もう経済構造改革あるいは行革でも、国民の皆さんの期待の中にはスリム化というものが入っておりまして、国家公務員を初めとして公務員皆様方の中にも、やはり今の職場から移動を余儀なくされる方もあると思います。ですから、こういった改革を進めるということも周知をしておりますし、ある程度といいますか、かなりの御理解というものが国民皆様にも得られている、こういう状況の中でありますので、そういった中で、労働省が、タイムラグの間に雇用不安に対する不安というものを余り過剰に発生させないような対策というものは十分に整えられていると思いますけれども、その対策というものを少し具体的にお伺いをしたいと思います。
  6. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、基本的には私たちは、いわゆる国際的じゃなくて、国際的というのは英語で言うとインターナショナルだと思いますが、インターナショナルではなくてグローバルな地球社会という形に今なっておると思います。その中で、お互いにやはり経済面での競争があって、その競争に打ちかつことによって、今日の我が国の世界に類を見ないような福祉のあらゆる制度を賄うだけの実は経済力が生み出されている。そういたしますと、この経済競争には勝たねばならないわけでございまして、それが実は働く人たちにも弱い立場の人たちにも一番必要な原点でございます。  そういう中で、日本の歴史を振り返っても、かつて日本が非常に得意にしていた産業分野は今や諸外国から追い上げられる産業分野になっておりますし、かつてアメリカにとても及ばないと思っていた産業分野で今はアメリカに勝っているという状況です。したがって、産業構造の転換というのは、いろいろな条件に応じて、やはり苦しいけれどもやっていかねばならない。  先ほど委員がおっしゃいましたように、摩擦的な副作用というのは必ずございます。しかし、副作用があるからといって薬を飲まさずに健康体を損なってしまうということがあれば、医者としては一番の失敗になるわけでございますから、副作用最大限に抑えるということがやはり構造改革をやっていく上で必要だ。これは、共産主義から我々市場経済に至るまでどのようなシステムをとっていても、産業活動基本というのは資本と技術とそれをしっかりと使っていく良質な労働力の結合によってなされます。そこで、労働力は適宜適切に新しい産業構造に移っていかねばならない。  具体的に申しますと、福祉介護分野、これは一番これから雇用の受け皿として大きくなってくると思います。次にやはり文化活動社会というような分野。三番目に私は通信が来るのではないかと思うのですが、そこへ移っていく過程で、おっしゃったように、確かに摩擦的ないろいろな問題が出てまいります。  そこで、先ほど来のサミットの際に議論いたしましたような人的な能力を高めていくということを一方でやりながら、雇用を希望しておられる方々と求人をしている企業、業種との間の需給のマッチングと申しますか、つけ合わせ最大限努力をするというのは、これは我々の仕事だろうと思います。  それからもう一つは、今起こっているように、非常に不幸にして、経営判断を間違った結果、会社更生法の適用を余儀なくされるというようなことが起こった場合に、本来無関係である取引の周辺企業、このようなところの雇用をきちっと守っていくために、御承知のような雇用調整助成金というのがあるわけです。  ちょうど今先生が御質問になったので、私はここで初めてお答えをするのですが、従来、産業だけにしか適用できない、というよりも中小企業しか念頭に置かなかった、つまり証券会社だとか銀行だとか保険会社なんてつぶれるなんて夢にも思わなかった状態のときにつくられた雇用調整助成金を、金融分野サービス分野にも及ぼせるように通達を変えまして、本日から実は適用しようと思っておりましたので、ちょうど御質問がございましたので、この機会お答えをしておきたい。  そういうことをやって、我々も政策面での構造改革をしながら、労働力の円滑な移動に対応してまいりたい、こう思っております。
  7. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  今の御答弁にもありましたけれども、先ほども申し上げましたサミットには通産大臣出席をされていたわけでございまして、労働省と通産省、そういった連携を保ちつつ、できるだけ円滑な経済構造改革の中で、純粋な労働者方々が犠牲にならないような政策を振興していただきたいと思います。  先ほどの御答弁の中にもありました今回のサミットの議題の一つに、若年者雇用についての議論というものがございます。実際、数字などを見ておりますと、失業率がほかの年代と比べて、これは高齢者、六十歳以上の方と同じように高い。六・五%、これは平成九年の十月の数値でございますけれども。これはもしかしたら日本よりもほかの諸国の方が実際の状態としては深刻かもしれません。  しかしながら、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、若い方というのはこれからの将来もあるわけでございます。例の山一につきましても、例えば若い方から再雇用というものも推進の余地があるわけでございまして、中堅以降の方々はやはりいろいろな職業訓練等政策もとっていかなければならないという御答弁がございました。若い方々失業率が高いというこの数値ですけれども、日本は事情がもしかしたらちょっと違うのかもしれません。どちらかというと、固定の職につくのを心理的に拒否するという傾向もあるやもしれません。  しかし、やはりこれから学校の中からいわゆる社会に飛び出す方々というものは、あらかじめこういった経済構造改革というものがあるということを認識して就職をされるわけでございまして、かえってこれはそういったものも含めて教育の内容を変えていけば——一番大切なのは、もちろん勉強そのものも大切ですけれども、そういった学生の時代は、だれしも私は何らかの才能を持っているというふうに思います、ですから、その学生期間は、自分の一番の才能とは何か、また、それに合う職業というものは何かということを発見する期間であるというふうにとらえるのが私はいいのではないかと思っております。  終身雇用制社会であれば、先ほど申し上げました、一回試験を通ってしまえばというようなあれがありましたけれども、これからは、やはり自分は何をやりたいんだということを確信して社会に飛び立っていくということが大切ではないかと思います。教育機関との連携も大切ですけれども、その点で職業能力開発というような問題もございますので、若い方々がそういった適性に応じた仕事につくような政策というものを、例えばインターンシップというようなものもありますけれども、少し具体的にお教えいただければありがたいと思います。
  8. 山中秀樹

    山中政府委員 御指摘神戸雇用サミットでも、若年者失業率が高いということが重要な問題だということで議論がなされました。そういう意味で、若年者学校生活から職業生活へ円滑に移行できるよう、先生先ほどおっしゃったように、インターンシップ制度等の導入について、今後それを積極的に進めていきたいというふうに考えておりますし、また、今おっしゃったように若者の職業意識、どんな職業についたらいいかということについて私ども各種政策をとっておりまして、例えば大学との連携を図った、学生センター等々でいろいろな講座を開いたりディスカッションしたり、そのような事業を行っております。  能力開発については、特に私ども職業能力開発短期大学校をつくりまして、特に物づくりを中心とした高度な人材が養成できるようにいろいろ頑張っておるところでございます。特に若年者が失業した場合にどんな形で再就職をうまくさせるかという点についても、特別の事業として、主要都道府県雇用促進事業団の施設がありますが、そこに職業相談コーナーを設けて、具体的にどんな形で能力開発をやっていったらいいかとか、そのような相談も行いながら、早期に再就職できるように政策を展開いたしておるところでございます。
  9. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  大臣はかつて厚生政務次官もやられましたし、党の方で社会部会長もやられました。先ほどの御答弁の中にも、若年者と並んで高齢者雇用問題ということで、介護保険介護の問題についてのお話もありましたけれども、こういう厳しい世の中でございますので、そういった高齢者方々だけでなくて、障害者方々についても、大変お優しいお気持ちを持っておられます大臣の御活躍というものを切に希望するわけでございます。  経済構造改革ということで、今までの日本社会一つの核であった終身雇用あるいは系列というものがこれから変わりつつある中で、アメリカでは例えば契約社会というような一つの歯どめがありますし、またヨーロッパの方では階級社会という、国の中での一つの慣習といいますか、そういった筋があるわけでございます、柱とも言えるかもしれませんけれども。そういった中で、それでは将来の日本というものの核といいますか、いわゆる規制緩和を初めとするこういった構造改革をやる上で、やはりどういう日本の国の理念といいますか、新しい理念をつくり出していったらいいのかということも、これまた大変重要な私は一つのポイントではないかと思います。  そういった意味も含めまして、これからの労働行政というものは私は一番大切な分野であると思いますので、先ほども申し上げましたとおり、大臣のその点での御活躍を心から御期待を申し上げまして、私の質問を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。
  10. 玉置一弥

    玉置委員長 次に、飯島忠義君。
  11. 飯島忠義

    ○飯島委員 自由民主党の飯島忠義でございます。  きょうは、今、大石委員の方からも質問がなされましたけれども、労働行政の役割、まさに大切な時期を迎えたという感じを強く持っております。  先日、米国の大手紙でございますクリスチャン・サイエンス・モニターが、維新を迎える日本株式会社という記事を掲載しておりまして、この中身でございますけれども、  「画一性の社会でもビジネスは創造的な思考を緊急に必要とするようになった」という副見出しで、日本の最近の経済不況がこれまでのような国家運営では対処ができなくなったというコンセンサスが生まれつつある現状を伝えている。   とくに山一証券の廃業に象徴される金融システムの崩壊や「ビッグバン」での同システムの抜本改革により、一九七〇−八〇年代に貴重だとされた終身雇用や年功序列が二十一世紀の国際競争に不可欠な個人の創造性の伸長への阻害になるという意識が日本産業界に定着しつつある、と報じている。 結びとしては、   こうした大改革を進めない限り、日本全体が国際的な経済競争に敗れ、不況、倒産、債務などがさらに深刻化するという認知 これについても、日本国民自身が既にそうした認識を深めており、  日本国民は新環境に合わせて画期的な改革を断行する柔軟性を歴史的に持ちあわせているとして、現在の変化を明治維新にも匹敵する「第二の明治維新」だと評している。  そこで私は、時間の都合もございますから、五点について質問をさせていただき、さらに、時間がございますれば雇用保険制度の見直しについてということ。  まず、全体の流れでございますけれども、金融機関破綻が相次いでおりますけれども、現在の雇用失業情勢に関する認識についてどうかということです。  それから二番目に、これは大臣にお尋ねをしたいと思いますけれども、金融システム改革経済構造改革が進行していく中で、円滑な労働移動が行われるようにすべきであると考えておりますけれどもということで大臣にはお願いしたいと思います。  三点目に、先ほど大石委員質問の中にございました、若年層の就労また労働移動については、若年層というか若い世代については非常に労働移動が柔軟に対応できる。しかし、率直に申し上げて、高齢者雇用問題について大きな課題があろうと思います。これについての考え方もお尋ねしたい。  四点目に、それらの高齢者雇用促進についての働きかけ、これについての考えについてただしていきたい。  そして五点目に、労働者の主体的な能力開発、この問題を特にきょうは論議させていただきたいと思っております。  まず最初の問題でございますけれども、大変日本経済が悪い悪いと言われていますけれども、私自身、実は、上で今会議をやっておりますけれども、大蔵委員会委員でございます。どうも今回の国会を通じて、お互いの認識というものがどこにあるか、これは大蔵大臣あるいは日銀総裁あるいは橋本総理におかれてもいろいろな答弁がなされております。  世界雇用情勢についての比較でいえば、まだまだ日本の場合は、さほどではない、そういう見方はできませんけれども、しかし、世界の数字に比べれば、最高水準に達したと言われる失業率三・五%という数字もまだまだ比較的堅調な中にある、そういう見方をしてもいいと思うのです。  例えば、最近の雇用情勢の報告でございますけれども、アメリカにおいては四・七%、カナダは九・一%、イギリスは五・二%、ドイツは一一・八%、フランスに及んでは一二・五%、これらの失業率と比較しますと、落ちついていると言ってもいいのではないか。  しかしながら、日本の今までの失業率、そうしたものと比較すれば、例えば十一月二十八日発表の労働力調査(速報)、これは十月分でございますけれども、それによりますと、先ほど申し上げました三・五%と、史上最高の水準を記録したわけでございます。  加えて、これは日本じゅうがというか、世界が大変注目をしたという、事件と言っていいと思うのですけれども、三洋証券あるいは拓銀、山一証券等々の金融機関破綻が相次いだ。  こうした環境の中、現在の雇用失業情勢に関する認識について、伊吹大臣からお願いします。
  12. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 ただいま御指摘になったと同じことが実は神戸労働サミット各国大臣からお話がございまして、そのときに私はこのように申し上げました。日本の実体経済は、率直に言って、諸外国と数字の上で比べて非常に健全であると。国際競争力もまだまだあるし、そして失業率も、今先生がおっしゃいましたように、諸外国であれば、三・五なんというのは、こんないい数字にやっと近づいてきたというところで実は日本は落ち込んでいるわけです。  ただ、日本は、やはり日本という国にずっと我々は住んでいたわけですから、いずれ労働移動雇用関係も変わってくるとは思いますけれども、ちょうど淡水に生まれたサケの子供が徐々に大海原に出ていって、大きくなってまた戻ってくるわけですが、淡水から海水に入っていくときはやはりなれの期間が必要だと思うのです。  したがって、日本の場合は三・五は、日本の真水で生きてきた感覚からいうと、やはり非常に厳しい数字だろうと私は思いますので、なれていくための、摩擦解消のための施策は全力を投じて行いながら、いろいろな法改正等によって、目指すべき社会は、やはり公正で、個人の選択が自由に行われて、そしてその選択の結果が正当に評価をされて、そのかわり自己責任もしっかりと選択をした人が持っていく、こういう社会の中で、なおかつ、自由競争の中で勝った者は常に謙虚な気持ちを持ちながらその社会の一員であり続ける、こういう社会が理想だろうと私は思っております。  そこへ行くまでの摩擦的な状況については、やはり全力を挙げて労働省は対応していくべきで、三・五というのは、日本にとってはやはり厳しいという認識でおります。
  13. 飯島忠義

    ○飯島委員 ちょっと細かくなりますので、これは担当の方からお願いしたいのですけれども、この三・五%の中身。私も手元に、資料としては、最近の雇用情勢についてということで安定局の資料をいただいています。目を通したところ、大まかなところについては理解をさせていただいていますけれども、顕著な部分、例えば地区的な問題あるいは層的な問題また業種、これらについての今の情勢についてどういう理解をされているか、お願いしたいと思います。
  14. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 三・五%の中身についてのお話でございますが、年齢別に申し上げますと、ただいま先生も御指摘がございましたけれども、やはり相当違いがありまして、若年層、二十歳代、その層の失業率が高くなっています。これは五%の後半ぐらいでございます。それから高年齢者層、これもやはり高くなっておりまして、五%台。倍まではいきませんが、それに近い数字だろうというふうに思います。それから、地区別はなかなか難しいのですが、地区別で非常に高いのはやはり沖縄、これは失業率が三・五に比べまして高い数字になっております。業種別の失業率は出しておりませんので、統計的な把握はできておりません。  そういう意味で、いずれにいたしましても、この中身を具体的に見ますと、地域あるいは年齢等で状況が違っている。男女別には、多少の違いはありますが、そんなに大きな違いはございません。そんな状況でございます。
  15. 飯島忠義

    ○飯島委員 私の理解するところで、総じて危険信号の水域である。これからがまさに、日本経済の力が発揮できるかどうか、それが問われる大切な時期だというお互いの時代認識の中で、この日本雇用拡大施策を拡充していく、これが肝要だと思います。  そこで、先ほどの論議の中でもございましたけれども、人材の流動の問題、これについて若干伺っていきたいと思うのです。  私も、現在橋本内閣が金融システム改革経済構造改革、これらを含めて六つの改革を進めていく上で、円滑な労働移動というものが行われるようにすべきという理解をしています。また、その労働移動がなかりせば、当然スリム化された方々がどこかに再就職をするという形で健全な経済の営みができないわけでございますから、そういう面での労働移動が行われるようにすべきだと考えておりますけれども、大臣、まず基本的な労働移動、それについての認識を伺っておきたいと思います。
  16. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先ほども申し上げましたように、どのような経済システムをとっていても、生産活動というのは、資本と立派な技術と、その技術、資本を有効に利用できる良質な労働力の結合によってなされます。したがって、経済構造の変化に従って労働力というか雇用というものは必ず移動しなければ、その国は成り立ちません。  しかし、移動するに当たって、個々の、お一人お一人の立場からいうと、労働条件が悪くなる可能性は否定できませんし、あるいはまた個人的にいろいろつらい思いをされることがあろうかと思います。したがって、その副作用は最小限に抑えながら、体を治していくという手術はやはりやらねばならない。その最小限に抑えていくためのいろいろな施策については、先ほど申し上げましたように、職業訓練、職業紹介、あるいは連鎖的な倒産の防止、全力を挙げて対応させていただきたいと思っております。
  17. 飯島忠義

    ○飯島委員 その労働移動で、これは金融事件というのですか、そういったことで、山一さんとかあるいは三洋証券、拓銀あるいは徳陽シティ、うれしいことにとそういう表現をしたら大変失礼な話かもしれませんけれども、けさの新聞によれば、例えば山一に千社から九千人の求人があった、若年層、専門職中心だと。この記事を見ていますと、非常に山一に対する求人の多さというのですか、それも日本を代表するそれぞれの企業がその人材に注目を寄せている、こういうことだと思うのですね。  社名はともかく、代表的なところでいいますと、例えばある会社は情報システムの全従業員を得たいと。あるいはまた、これは社名を挙げた方がいいかな、私自身がもと勤めておりました会社でございますから。外資系の保険会社で、アメリカンファミリー生命保険会社というがん保険の会社でございますけれども、女性外務員、これを五百程度欲しいと。また、証券各社はそれぞれ専門職で三百だ、二百五十だ、二百三十だ、二百二十だと。九千ですから、それこそ山一の全社員が入れるぐらいの求人が殺到している、こういう見方でいいと思うのですね。  問題は、ここでやはり大きな見出しになっております「若年層・専門職中心に」というところなんですね。それ以外の方々もたくさんいらっしゃるわけですよ。私は、やはりこれからの労働移動の中で一番問題になるところは、まさにその層そのものではないかなと思うのです。  私どもも、こういう仕事についておりますので再就職相談をいろいろ受けるわけです。ハローワークとかいろいろ行って就職できる人は、政治家のところには来ないのです。来る方々の中身を見ますと、すべてがと言っていいぐらい高齢者です。それぐらいに高齢者労働移動が難しい現下の状況があるわけです。  そこで、私自身、この高齢者雇用問題、これを労働省の方でも真剣に考えてはおりますけれども、さらなる動きというか対策というものを講じなければいけないと考えておるわけでございますけれども、この辺のまず基本的な考え方、今取り組んでいる部分、施策、また将来的な展開、それについての基本的な考えだけ伺っていきたいと思います。
  18. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘のように、今後二十一世紀に向けまして非常に速いテンポで高齢化が進んでいく、そういう中で高齢者雇用対策、これは私どもの政策の中で最重要課題であるというふうに考えております。  基本的な考え方といたしましては、急速な高齢化が進む中で、高齢者の方がふえていくわけですが、一方では元気な高齢者の方もふえていく、それから、高齢化ということだけでほっておきますと我が国の経済社会の活力を維持していくことができない、そういう二面があるわけでございます。  そういうことから、高齢者の方に、長年培った知識経験を生かして社会を支える側でさまざまな形で働いていただく、こういうことが非常に重要になってきているであろう、これは先進国共通の認識でございまして、六月のデンバー・サミットでアクティブエージングというような言い方でコミュニケがまとめられましたが、そういう考え方が背景にございます。  そういう観点から、当面、年金が近い将来六十五歳支給になるというようなこともあわせまして、六十歳定年が来年四月から義務化されるわけでございますが、これはもう大体定着いたしておりますので、そういうものを踏まえて六十五歳までの継続雇用の推進、これが非常に重要であろうというふうに考えております。  この点につきましては、再雇用あるいは勤務延長という形で、賃金を下げてでも継続雇用をしていただく、そういう希望をする人については継続雇用をしていただく。こういう観点から、雇用保険制度の中で、賃金が従来の賃金の八割までいかない場合については、それについて二五%程度相当額の給付をその対象労働者に六十五歳になるまでの間支給する、こういう制度も発足させているところでございます。  それからもう一点は、雇用という形でなくて任意的な就業ということで、社会参加を一定の、若干の収入を得て、したい、こういう方につきましては、シルバー人材センター制度というのを全国的に展開をしておりまして、これによって就業機会を確保する、こんなことに重点を置いた対策を実施しているところであります。  それから、御指摘のようにまだまだ不十分でございますし、六十五歳支給の問題が二〇一三年に向けて具体化していく、あるいは年金のあるべき姿はどうすべきかという議論もまたある、こういうことでございます。  そういうことを踏まえながら当面六十五歳現役社会を実現していくためにどうしたらいいか。これについては国民的なコンセンサスを得ていくことが非常に重要であろうというふうに考えておりまして、そういう意味では、国民各層の代表者の方々に集まっていただきまして、六十五歳現役社会推進会議、こんなものを開催することによって、六十五歳定年制も含めて六十五歳現役社会、そういうものを実現していくためにどうしたらいいか、そういう政策ビジョンをまずつくっていこうというふうに考えているところでございます。  現状の対策は、大体今のような考え方でございます。
  19. 飯島忠義

    ○飯島委員 資料も拝見しました。非常に多岐にわたって、そうした六十五歳現役社会の実現に向けた施策の展開とか、あるいは多様な形態による雇用・就業の促進、在職者を中心とした高齢期に備えた雇用・就業の支援、高年齢者等の職業能力開発の推進等々を大きな枠組み、柱にした施策が体系づけられております。私自身は、大いにこの部分を広げて大臣にも取り組んでいただきたいという希望を持っております。  ところが、どうも日本社会労働力の偏在というのですか、私も地方議員が長かったもので、十六年ばかりやっておりましたので、いろいろ折に触れて海外に行く機会がございました。これは国々にいろいろ特色があるわけでございますけれども、例えば日本で言うところのファストフード産業、こういうところに行きますと、いい中年の方がちょうネクタイでサービスをしてくれる。あるいは、とあるバーに行きますと、本当に妙齢のお嬢様がきちっとしたサービスをしてくれる。どうも日本では、本来若い人がもっと違ったところに勤めてもいいのではないかと思われるところが占領されちゃっている。つまり、その世界は大体中高年でもいいのではないかなという職場、それを若い人が占領している。  そんな情景を海外との比較で見るわけなのですけれども、これは大臣率直に、別にデータとかそういうことじゃないですから、大臣自身も、御自身の今までの人生の中で、海外と日本の比較の中でそういうちょっと奇異な現象が日本ではあるなというようなところをお気づきだと思うので、若干でいいですから。
  20. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私は、アメリカには訪問した程度で余り経験がございませんが、英国には四年ほど住んでおりましたので、やはり雇用の形態というのは各国おのおの、その国の伝統とか成り立ちによってかなり私は違うと思います。  日本の場合は、やはり終身雇用制度というものを原則として、そこにパートが絡まってくるという雇用形態でございます。アメリカ的な雇用形態も、確かに一つのモデルとして、先生がおっしゃったようにある。どのような制度にも長所と欠点というのは必ずあるわけでありまして、私は、終身雇用制には終身雇用制として非常にいい点がたくさんあるのじゃないかと実は思っているわけですが、確かに、諸外国等を見ると、コスト面でいえばややむだな労働力の偏在や使い方があるのじゃないかというのは、私も全く同感でございます。  そしてそれは、日本労働基準法を中心とした終身雇用を前提としている現在の法律のもとでは、ある程度そういうことかなということがうなずかれる部分もありますけれども、同時に、これからは少子・長寿社会になりますから、これはもう必然的にかなりの年の人が、ちょうネクタイを締めてハンバーガーのサービスをしなければならない労働需要になってくるということは、これはもう否定できないと私は思っております。
  21. 飯島忠義

    ○飯島委員 ありがとうございます。  なかなかこれはいきなもので、例えば、お年は申しわけありませんけれども六十歳の方が、紅白のちょうネクタイか何かをして、上は赤いブレザー、下は白いスラックス、そんな形でサービスをしている、そんな情景を見ますと、ほのぼのとした豊かさというか温かさも感ずる。これは海外だからという、あるいは外人だからという、そういう見方をしちやいけないのかもしれませんけれども、非常に合うのですね。ですから、日本社会でもそんな労働環境ができれば幸いだなと思うわけで、きょう多くの委員の皆さんいらっしゃいますので、皆さんのお近くの方にも、つまりいろいろな地域における経営をなさっている経営者の方々に、そういう物の考え方もひとつ御教示、また宣伝をしていただければありがたいなと思っております。  残り時間が五分ほどになってしまいましたので、もう一問と、それから雇用保険制度、これについて。  再確認で、先ほどもちょっと御答弁いただいたのですけれども、主体的な能力開発、これは労働移動の円滑化の観点からも大変大事なわけでございます。この主体的な能力開発についての今後の支援、これについての大臣基本的なまず考え方、お願いしておきたいと思います。
  22. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先ほど来御議論になっておりますように、日本の伝統的な終身雇用制のもとでは、ある意味では、会社は安心をして学卒の人に能力を高めるための投資をすることができるというメリットがあります。しかし、これから労働力移動がかなり御指摘のように流動化していくという面では、会社もなかなかそういう投資は難しくなると思いますし、今先生が御指摘になりましたような自発的な能力開発というものは、これはやはり日本にとってまことに私は大切な要素になってくると思いますので、現在でも、中高年齢労働者等受講奨励金というのを雇用保険から出しておりますが、さらに一層日本労働力の質全体を高めて、同時にいいマッチングができるように、御指摘の趣旨に沿って考えてみたいと思っております。
  23. 飯島忠義

    ○飯島委員 けさほどの新聞に、中央労働基準審議会、中基審が四日まとめた労働基準法の抜本的改定云々という中身が出ていました。大臣の方には十一日に報告の予定だそうでございますけれども、改定案で示した裁量労働制のホワイトカラーへの適用拡大、短期労働契約期限の上限の延長は、年功序列型賃金、終身雇用制を軸にしてきた日本雇用システムを雇用の一形態にすぎなくするからだ、いろいろ書いてありますけれども、まさに時代の変化に対応した中身が、これは大臣の 私的諮問機関ですか……(伊吹国務大臣「いやいや、これは正式の」と呼ぶ)公的。報告があるようでございますけれども、これの中身も見ながらですけれども、雇用保険制度も、そういう変化に対応した見直しを図る必要があると思うわけでございますけれども、現在の認識、例えばこんな項目を見直してみたいんだというようなところがあれば、ひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  24. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 きょう、実は今先生が御指摘になりました答申というのは、正式に私はまだちょうだいいたしておりません。これをよく拝見をいたしまして、いずれ法制化をいたしまして、当委員会の御審議に供して、言うならば、当委員会の御審議に供するということは国民の理解を得るということでございますから、その上で初めて正式な日本の仕組みとして動いていくわけでして、それをちょっと先取りして私がお答えするのは、やや立法府に対して僭越なことだと思いますが、従来は、終身雇用制を前提としておりましたから企業が必ず雇用保険というのは掛けておったわけですね。その中で、失業保険だとか労災だとか、あるいは先生が今おっしゃった能力開発のお金もそこから出ていた。ところが今度は、派遣職員とか裁量労働制だとか契約職員だとかいろいろなことになりますと、受け入れ企業の方でそれをやるというのはなかなかやはり雇用保険の形態としては私は難しいのじゃないかと思うのです。  したがって、派遣会社が必ず社会保険関係について責任を持つような仕組みを将来は検討していかなければならないのかなとか、規制緩和というのはメリットとデメリットがありますから、デメリットの面で、働く人たちが不利にならないような雇用保険のあり方を、今私が申し上げたようなことは一つの代表例なのですが、ぜひ考えてみたいと思っております。
  25. 飯島忠義

    ○飯島委員 もう少し細かくその部分の掘り下げをしてまいりたいと思ったのですけれども、時間が参りましたので、以上で質問を終わります。  最後になりますけれども、労働行政は大変に重大な局面にあります。労働委員の皆さんとともに、この労働行政がさらに邁進するよう私も頑張ってまいりたいということを胸に刻んで、質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。
  26. 玉置一弥

    玉置委員長 次に、川端達夫君。
  27. 川端達夫

    ○川端委員 伊吹大臣、川端でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  選挙区もお隣ですし、委員長もお隣で、大学も大先輩でございます。何か委員会質問しているような雰囲気がしない、気持ちがしないのですけれども。  非常に大きな時代の転換期に来ているということは、もうそれぞれの皆さん、別に我々だけではなくて、みんながひしひしと思っていることだと思うのです。そういう中で、政治が大変大きな責任を持っている。これももう言われ続けております。期待に十分にこたえていないというじくじたる部分も、我々は実はあります。  そういう中で、大臣は今行政の要におられるわけですけれども、やはり国会の責任というのも大変重い。そういう中で、政治家一人一人の資質が問われ、行動が問われているという部分で、この委員会でも私は私の思っている部分もいろいろ申し上げさせていただきますし、それについて、労働行政の責任ある立場だけではなくて、この大事なときに内閣の一員として責任を持って国政を動かしておられるお立場でございます、その部分での大臣のお考えを率直にお述べをいただきたい。揚げ足をとるような議論をするつもりもございませんし、そんなに陳情を申し上げるつもりもございません。理念やビジョンをお聞かせいただいて、私たちもそういうものへの考え方を申し上げる中で、政治家同士の議論にさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。  初めに、今大変景気が悪いということと同時に、経済構造がもたなくなってきたという議論が山盛りでございます。そういう中で、これからの経済をどうしていくのだろうということをそれぞれの立場でみんな必死に考え、やろうとし、やれなかったり、やって大丈夫なのかということはだれも確信を持てないという部分は正直なところだというふうに思います。  そういう中で、一番かたい商売、一番信用が置けるというのは銀行だというのが銀行がつぶれるということで、正直申し上げて、地域に帰りますと、川端さん、お金はどこに預けたらいいんだろう、何とか銀行は本当に大丈夫なのということが本当に、まじめに聞かれるというような不安な状態になってきた。  それで考えてみますと、この前ある先生に教えていただいたのですが、明治の女の一生というのがございます。大体女の人は今九十歳から百ですね。明治の女の人は、大体十三、四で学校を出て社会に出て、二十三で結婚した。そして二十五で一番上の子供を産んで、一番下の子供を産み終わったのが三十八だ。子育て、子育て。それより後で生まれたら、トメとかスエオとか簡単になってくる。そして子育てをしている間に、五十七か五十八で配偶者が亡くなる。平均六十ですから。そして六十三・二歳で一番下の子供が結婚して、これで子育てが終わった。お墓参りして、お父ちゃん、安心しなさいよと言って、六十三・五歳で死んだというのが平均寿命だったようです。  今の大体三十代の女の人を見ますと、十九ぐらいで学校を卒業するのが平均年齢。そして二十六で結婚をしまして、二十七が長子誕生、二十九歳が末子、一番下の子供の産み終わり。一・四人。そして五十七ぐらいで一番下の子供が結婚する。それから七十五まで夫婦二人で暮らして、八十三で本人が死ぬというようです。  だから、もう五十年ぐらいの間に人口の構造がこんなに変わってしまったのかという部分で、今までの既存の、それなりに若い人は頑張り、その分で先輩はまた生きていくという、年金にしろ医療にしろ、全部のその仕組み自体が破綻しつつある。雇用においても、その支える経済においても、本当にもつのだろうかという深刻な事態を迎えているのだと思うのですね、評論家的に言えば。  そういう今の社会状況の中で、特に、不況というのが一過性のものでなくて、構造的な部分で本質的に大転換をしなければならないのではないかという部分が言われている中で起こってきた現象は、その支える金融がつぶれる、証券がつぶれるというふうな不安が非常に増長してきたという中で、今経済の行く先をどうしていくのかということが一般的には見えない。景気対策といろいろ言われるけれども、もう一つぴんとこないという部分で、これからの社会が非常に不安定な状況に入ってくる。  それで、私もそんなに詳しくないのですが、いろいろ政治の世界経済世界という部分で、このごろ平成の大恐慌とか、よくマスコミ的にちょろっと言われることがあるということで、いわゆる一九二〇年代、一九二九年の十月二十四日ですか、ウォール街の株の大暴落というのはどういうことだったんだろうということを、ちょっと物の本で読んでみたのです。  そういう中で、もうアメリカが大繁栄をして、バブリーだったのかもしれません、結局はどかんといった。それで、非常に不況になったという部分は、それから後で、結局その国が、持てる国がとった政策が保護主義であったという部分で、持たない国から、持てない国、植民地も持っていない、お金も余りないという部分はどんどん引き揚げられてぼろぼろになっていったという例がドイツであり、イタリアであり、日本であるのではないか。  そういう部分で、そこの部分に経済破綻して雇用不安が起こり、いわゆる非常にお金持ちであるとか非常に貧しい人ではなくて、大多数の社会を支えている中間層が大変な目に遭って、絶望の中で、政治に期待しても政治は何もしてくれないという不安の中から、そこのすきをねらって出てきたのが全体主義ではないのかということをよく言われる。いろいろ読んだら大体そういうふうに教科書的には書いていました。  そうすると、今の状況を見たときに、日本経済が本当にこれからどうなるのだろう、根幹もつぶれてきたという部分に関して、政治がかじ取りをきちっとしなければ明かりが見えない。そして現実にはどんどん失業がふえてくる。自分たちの老後も真っ暗。そして若者にとっては先、年金なんて払いたくないよということも含めて、何か非常に不安定な社会というものは、そして政治への不信というものは、兆しとしては低投票率。政治に関心はあるけれども、何もしてくれていないじゃないかというので物すごい低投票率。僕は、投票時間を延ばしたから何とかといって投票率が上がるとは、とてもじゃないが思えない。我々の責任なんだろうというふうに思っています。  そういう部分でいうと、悪い夢を見れば、本当に国が、経済破綻してこういう不況になってきたから貧しくなるということを憂えるのではなくて、国が本当に変な国——いつか聞いた足音みたいな、ナチスは暴力革命で政権をとったのではないのですね、合法的にとったという部分で、大変今は本当に深刻な事態ではないか。  そして、そのときに経済政策が一番メーンになっている。当然、雇用という大臣所管の部分というのはもう表裏一体といいますか、まさに光で、新しい時代だから経済を変えていこうという部分に必ずついてくるのが、全部、雇用問題だ。新しい経済の創出という部分での規制緩和というのは当然必要だ。もっともだ、しかし、そのときには必ず雇用という痛みを伴う。そして、大転換するというはざまで、不況だ不況だということでいっぱいつぶれてくるという部分にも、当然ながら雇用の問題がある。ですから、経済を立て直すということをちゃんとやることが最大の労働政策ではないのかな。  そういう部分で、私は、労働大臣のお立場というのが大変大事と。今の日本にとって、部分的な制度論の部分以上に、経済をどうするんだという部分での大臣のお立場。お聞きしますと、お商売人のおうちでお育ちになったと伺いましたし、大蔵省での行政経験もされて、きっての経済通と言われる大臣でございます。そういう部分の中でこの今の経済というものが実は労働雇用に対して一番大事であるということと、その政策というか、そのことが今まさに問われているということを私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  28. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 もう大変広範な、大変難しい御質問でございますので的確にお答えできるかどうかわかりませんが、最初に川端委員がおっしゃいましたように、本来国会の議論というのは、大きな物事の流れとか判断とか理念というものをお互いに政治家同士が議論をする、そういう場であるというのが私は一番いいと思いますし、新進党が御提案になっておられる、政府委員を交えずに議論をするというのも、まさに質問も、そこまで磨かれたいい質問に対して答えを議論をしながらつくっていくという意味では、私は非常にいい御提案だと思います。  そこで、そういう御立派な御質問に対して私がうまく答えられるかどうかがわからぬのですが、まず、戦後の日本は、私は結果論からいえば非常にうまくやったと思います。しかし、そのシステムの基本は、生産活動においては市場経済を認めておりましたけれども、分配面ではどちらかというとやや社会主義的、あるいはリベラリズムに近い、政府が積極的に介入をして、世界で類を見ないような所得税、法人税あるいは相続税という、市場経済の結果に対して非常に厳しい税を取ってきました。それを政府の手を通じて配分することによって今日の世界に冠たる経済をつくり上げ、どの国も及びもつかないような老人医療制度だとか年金制度だとか皆保険制度をつくり上げたと私は思います。  しかし、その中で残念なことに、人間の歴史を振り返れば、どのような国、どのような文化においてもそうでありますが、繁栄を続けた国はございますけれども、繁栄し続けた国というのはありません。これはもう歴史の真理であります。それは、主人公が人間であるからだと私は思います。つまり、人間というのは結果を求めて懸命に頑張りますけれども、ある程度の結果が出ると、その結果をもたらした努力だとか汗だとか自己責任ということをだんだん忘れます。そして、そういう経験を実は積んでいないときに生まれた方がたくさん出てくるわけでありまして、与えられたものが当たり前だということになってくるわけです。  したがって、先ほど来御指摘がございました金融機関破綻の問題についても、従来であれば、バブルの時期にオーバーレンディングをして、その結果経営判断を失敗じた金融機関というのは、政府が国民から集めた税でもって救済をしながらやってこれたわけです。しかし今や、先ほど来御指摘のように、今日の日本をつくってくださった高齢化された方の高齢化に伴う経費が大変な勢いでふえてきておりますし、それだけの実力も日本経済にはなくなったということだと思います。  そこで、今、橋本さんのやっている六つの構造改革というのは、基本的にもう一度自助と自立の心で私たち社会システムをつくり直そうじゃないかという冒険に私は橋本さんは乗り出したんだと思います。そして、そのことから生ずるメリット、デメリットというのは必ずございまして、どのような政策も薬と一緒で効果と副作用がありますから、副作用について大変な御批判を受けていることは確かでありますが、これを実行していくことによってもう一度本来の市場経済のバイタリティーを取り戻していくという方向にやはり日本を私は持っていかねばならないではないかと。  その際に出てくる一番大きな問題は、まず私は国民の意識改革だと思いますね。これは当然情報公開というものがそれに伴ってくると思いますが、川端さん、どこにお金預けたらよろしいんやろかというんではなくて、お金を預けたら返ってこないという自己責任をやはり国民一人一人が公開された情報のもとに持っていくという社会でなければならないかもわからない。しかし、そこまでやるのが大変であれば、もう少し税金を負担しながら親方日の丸的にかつてのシステムを動かしていくか、今どちらの選択をとるのかということを歴史的には迫られているんではないかと私は思います。  これはやはりおのおのの政治家の歴史観とか理念によって違うと思いますが、私は、マーケットの機能というものをもう少し大切にしながら、アメリカほどはその結果に対して弱者を切り捨てていかなくても日本はまだ済むだけの実体経済の強さがあると。だからそこのところは、ヨーロッパのようにそれをすべて税金で穴埋めしていくということも私は余りいい仕組みじゃないと思いますが、ヨーロッパ大陸のとっている政策アメリカのとっている政策のちょうど真ん中あたりぐらいがまあ軟着陸のポイントかな、こんなふうに思いながら、規制緩和を進めて新たな雇用機会を創出する、しかし、その過程で生ずる痛みについていろいろな手を打っていかねばならないのかなということを実は考えております。  雇用だけ、景気だけのことを考えれば赤字国債を増発して自由にやれば結構でございますが、行政というのは幾つもの連立方程式を解かねばならないんで、一つの連立方程式にいい答えが出たけれどもあとの連立方程式の解にならないという提案は、やはり国を預かる者としてはとれないんじゃないかなというふうに思っております。
  29. 川端達夫

    ○川端委員 ありがとうございました。  基本的な時代認識みたいなものは大体一緒かなというふうに思うんですが、その中で、変えていくときの効果と、副作用に批判があることも事実なんですが、現実に総理が思いとして六つの改革をやろうとされている現状認識とその切り口というのは、私はそうだと思うんです。  そのときに、批判と副作用はどうも与党内に強いのではないかという思いもいたします、これは正直な感想として。果たしてこれは、我が党が政権与党であれば、それは同じことを多分同じような切り口で言っているわけですから、すぽんといくのかといえば、多分同じようなことが起こるかもしれない。可能な限り起こしたくないと思いますけれども。  そういう部分では、正直申し上げて、大臣も言われるように相当な痛みがあるという部分で、これは国民に、痛みがありますよ、我慢しなさいよというのもあるんですけれども、その前に私は、政治家一人一人が、それは生身ですから選挙もありますとかいろいろあるんですね、しかし、そんなことを超えた部分をしっかり持たないと余計不信を買う。大臣言われたような部分で本当に時代を変えなければいかぬし、自主、自立、自由、これは我々が一番そういう社会をつくるべきだと言っている政党なんですね。  ですから、そういう部分でいったときに、改革をやらなければいけないということが本当にそのことであるならば、これは党派の問題ではなくて、きちっとやるべきだということに関して責任ある与党としての部分は、いまいち最近のこのいろいろ——まあマスコミの報道はちょっと一面からの部分があるのかもしれませんが、実際いろいろなここのときに本当にどうあるべきかという中での結論ではなくて、という気が非常に強くするのは残念に思います。多分、胸の内では大臣もそう思っていられるのではないかというふうに思います。  そういう中で、労働委員会でございますので雇用の問題ということなのですが、やはり行き着くところは今の経済状況はどうなのか、物事をいろいろやろうと思えば、今どうなっているのかということの的確な診断なしには間違うだけである。  我々は、今のこの経済状況は、バブルがパンクして、引きずりながらではあるけれども、去年やっと三%弱という経済回復基調に乗りそうになったというところでの見立てが、これから栄養をつけながらリハビリして、体力回復にもう少し期間がかかるなというときに、あんたもう治っておるから、家貧しいのだしろくに食うものないけれども我慢して働きに出なさいといって布団めくったというもので、それ行けといって高負担をしたという政策の見立てがやはり間違ったのではないかと我々は主張しております。その部分で、いやいやそれは間違ってないという部分と両方の議論があるのだと思うのですけれども、ここは労働委員会ですから余り経済の見立てばかり言ってもしょうがないので。  我々はあのときに、税特でも、消費税二%上げない法律、先生委員としてちょうちょうはっしの御議論をされました、それぞれの考え方があると思うのですが、我々は、その時点でやはり今病み上がりで体力をつけるまでの間は負担をしないという、だから二兆円減税廃止の問題、消費税アップの問題等々をするなと言った部分でして、それはどっちが正しかったかというのは結果論ですけれども、やはり政府としては結果責任があると思うのですよ。  そのときに、現実に今の景気はどういう状況なのかということ。生きた経済の部分でいえば、それこそ、このごろはなかなか地元にお帰りになることはできないかもしれませんが、まさにそこの現場をしょっちゅう今まで見てこられた大臣でもありますので、正直申し上げて、今の日本経済状況は、経企庁いろいろな表現をしていますけれども、どう思っておられるのか、ちょっとお聞きしたい。
  30. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 率直に申し上げて、先生の出身企業である例えば東レとかあるいは繊維関係、こういうところは、なかなか私はやはり経済構造の転換の中で大変な部分があったと思いますし、かつての東レではなくて、もう新しい、今やっておられるのはほとんど繊維ではないところへ移ってきておられる。そういううまく転換をされたところとか、あるいは事業構造改革の結果、恵まれているポジションに今おられる産業とかというところでは、私は景気は非常にいいと思います。  しかし、残念ながら、私の地元の例えば伝統産業であるとか、あるいは経済構造改革に乗りおくれたところ、それからオーバーレンディングをした、経営判断をやや間違った金融機関、不動産会社、こういうところは構造改革だとかということではなくて、やはり私は経営判断の誤りによって今苦境に入っておるところもあると思いますし、株価から見ますと、やはり完全に二極化しておりますね。外国の市場に上場しておるようなところは、株価は落ちずにずっと上がっている。しかし国内産業的には非常に厳しくなってきている。だから、全体としてどうだと言われれば、私はまあまあではないかなという感じがするのですね、外国なんかの状況と比べると。  ただ、日本は、日本という国に日本人は住んで日本という伝統の中で生きてきたという考え方からすれば、従来の状況に比べて大変厳しい、したがって、日本に合わせてやはり政策はとっていかねばならないのじゃないか。  ただ、企画庁長官が何度も申しておりますように、では貯蓄率は諸外国に比べて非常に高い。それから失業率の三・五の中の半分は、もっといい職があるのじゃないか、あるいはもっとおもしろい職があるのじゃないかといういわゆる自発的失業なのですね。こういうことを考えると、今一番大切なことは、先ほど先生がまさに御指摘になっているように、日本の将来はこういうふうになります、こうですという確信を与えるということが一番大切だと私は思うのです。それによって、こんなに貯蓄しておかなくても大丈夫じゃないかということになれば貯蓄率はもう少し下がって、私は消費が伸びてくると思います。  したがって、先ほど来御指摘のように、我慢しろということだけではなくて、やはり赤字会社を立て直していくときには、我慢はしてくれ、おれが率先して我慢する、社長はそう言わねばなりませんし、そして、我慢をしたら、苦境を乗り越えたらこういう状態になるから、そのときは一緒に楽しくやろうよということも言ってあげなければ、取引先も仕入れ先も従業員も、私は頑張ってくれと言うだけでは動かないと思います。  そこで、橋本総理は、まあ率直に言えば余りにも調子のいい十八兆円減税だとかどうだとかという話がまかり通るものだから、そんなことはやはりできないというので、将来どうなるということを、余りにもバラ色の、できない将来だけをおっしゃりたくないというお気持ちがあるのだと思いますが、総理の気持ちをそんたくすれば、本来であればふえるであろう税負担をできるだけ抑えて、必ず選択の自由と公正な社会をつくってみせる、それが自分の目指している構造改革の向こうにある姿だ。だから今度の人勧でも、特別職や国会議員にもお願いして、賃上げもうやめようと。率先垂範、自助努力とそれからみずから頑張ってやっていこうという姿を私は言っておられると思うのです。  したがって、新進党の御提案なすったあの経済政策というか、選挙のときの公約どおりやっていたのがよかったかどうかは私はここで申し上げる立場にはございませんが、先ほど来申し上げているように、我々は、経済の運営も財政も国民生活もあらゆる未知数を含んだ連立方程式というものを政府は預かっておるわけで、一つの方程式の解が立派な解であったからといって他の方程式の解になり得ないような答えは、やはり全体を預かっている者としてはとりえなかったというのが、あのときの政府の判断だったと私は思っております。
  31. 川端達夫

    ○川端委員 同感の部分と同感でない部分とありまして、貯蓄が非常に高いという部分は、おっしゃるようにまさに将来の不安を象徴していると。最近、貯蓄は、もう銀行へも預けないから、家に置いておくから金庫が売れる、こういう何か笑い話みたいな話がありましたけれども、その部分がいわゆる投資そして消費というもので景気に大きく足を引っ張っていることは事実だと思います。  それと、政策判断の部分は、我々はそういうふうにすべきだということで総選挙を戦い、残念ながら政権をとれなかったという部分で、そのときには真っ正面からそういう政策議論を残念ながら自民党さんはおやりにならなかったと私は記憶しております。その部分はややネガティブキャンペーンとお許しをいただいて使わしていただきたいのですが、利益誘導と恫喝という部分と政策という部分であったと思います、残念ながら。  しかし、結果として選挙の後から改革とおっしゃったと思うのです。改革だということをおっしゃって、私だったら別に著作権があるわけでもないですから、本当に国のためにそういう視点に立つということはそれで結構だという部分で来たときに、その根幹にある経済政策において、将来の構造改革とかいうことで改革のビジョンはそれなりにお示しになっていると思うですが、現実の経済運営においては、結果として、あのときの景況感から見て、実態から見て、今、間違いなく悪くなっていることはそうだと思うのですね。それはよろしいですね。
  32. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 これは私、非常に難しいと思います。経済はやはり生き物でありまして、トレードサイクルというものがございますから、そのどこの部分に今あるかというのは大変難しい判断だと私は思いますが、経済企画庁が政府の正式の見解として述べているのは、従来の景況感より現在は決していいものではないというのは、先生の御指摘のとおりだと思います。
  33. 川端達夫

    ○川端委員 そういう部分では、あのときああやるべきであったとかこうやるべきであったというのはそれぞれの主張ですし、それこそ解のない話ですから。ただ、政権を維持し、政府としておやりになっているという部分で言えば、今どんどん深刻な事態の方に向かっているのではないかと私は思っております。その部分に関しての、当然ながら対応するという責任がおありだというふうに思います。  それで、先ほど私が聞きたかったのは、例えば経企庁の総合判断では、「足元は回復テンポが緩やかになっており、企業の景況感にも慎重さがみられるものの、民間需要を中心とする景気回復の基調は続いている。なお、雇用情勢は厳しい状況にあるものの、改善の動きがみられる。」これが十月ですね。  そこから、十一月には、雇用の方が先に来まして、「雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。」と。前は、「厳しい状況にあるものの、改善の動きがみられる。」というのが、「改善の動きがみられる。」がなくなったのですね、十一月に。民間需要を中心とする景気回復の基調は、十月は「続いている。」で終わったのですが、「基調は失われていないものの、企業の景況感に厳しさがみられ、景気はこのところ足踏み状態にある。」というのが十一月だったのです。  きのうの報道では、この回復基調という言葉をやめるような方向だという。十月、十一月、この十日過ぎですか出る十二月ですね、回復基調が続いているから、回復基調は失われていないものの、足踏み状態ということで、回復基調という言葉はもうなしたという。相当急激に悪化しているというのが現状ではないのかと思う。僕は、このことは率直に認識されるべきだと思うし、しかも、雇用情勢が非常に深刻になってきている。  それで、企業倒産しているわけですけれども、大型倒産ということではなくて、十月までで、要するに企業倒産に伴う倒産会社の従業員の被害者数、まあ会社がつぶれたら被害者になるわけですけれども、という統計があります。「倒産月報」という、東京商工リサーチがやっております、ここの報道で、「九七年一月以降、十カ月連続で一万人を超えた。」ということで、十月で一万二千百三十八人、多分去年をもちろん上回り、過去最高であった九三年を上回るのではないかと思うのです。  政府委員の方で、こういう数字の部分でどなたかわかる方があったら。言っていなかったので、答えられなかったら数字の話なのであれですけれども、倒産した企業の従業員の総数、この推移は、現在のところ、多分去年はもちろん上回り、史上最高になるのではないかと思うのですが、ましてや山一等々入れればもう間違いないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  34. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 恐縮でございます。新聞記事等でそういう記事を見た記憶はございますが、手元に資料がございませんので、申しわけございませんが、そういうことで。
  35. 川端達夫

    ○川端委員 認識としてはどうですか。
  36. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 認識としては、かなり厳しい。そういう意味では、倒産件数等についてはかなり厳しい状況である、あるいは今後も、言われておりますようにかなり厳しく当面なっていくのかなという認識をしております。
  37. 川端達夫

    ○川端委員 割にのんきだなと思いましたけれども。  余談ですけれども、今度、院内にパソコンが入りましたね、国会議員、我々一人一人の部屋にも。それで、インターネットも要するにダイレクトにつながっているということで、これは、毎日放送と日経のニュースチャンネルというので、画面に出しておくことができる。そうすると、新幹線に乗りますとニュースが流れますね、あれが、三十分か一時間ごとに更新された部分がパソコンの画面に出てくる。その横に、秘書に言われて気がついたのですけれども、そこの横に企業の広告が、何とかパソコンとか、三十秒ごとぐらいに変わる広告があるのですけれども、ここに仕事が欲しい人向けの広告が出るのですよ。そこをクリックしますと、ジャムジョブということで、アド電通東京というのが、仕事が欲しい人はここで仕事を、要するに求人広告のホームページにつながるということになっております。  それで見ましたら、そうすると、「業種で探す」「職種で探す」「資格・技能で探す」「新卒」。そして、業種別だったら例えばソフトウエアからメーカー、商社、旅行、ファッション。職種だったらエンジニアから販売、営業、事務、企画、プログラマー、オペレーター。資格・技能は、未経験、資格をお持ちの方、資格をお持ちでない方、技術に自信がある方、学歴問いません、年齢問いません、語学を話せますというふうに、物すごいたくさんの項目に分けて求人欄がありまして、載っていた会社は五社であったということでした。こんなの、せっかく見ても何にもないんやなと。  それで、最近、このパソコンでこういう求人情報というのがどんなことかな、職安おられますけれども、そういうところじゃない民間の部分でということで、いわゆる一番大手と言われるリクルート社が、こういうホームページがありました。  そうすると、確かに、いろいろな業種にわたって、そこをクリックしていくといろいろな仕事が検索できるようにはなっていました。ただ、いわゆるシステムエンジニアとか、いわゆる情報関連のプログラマーとか、そういう部門は非常にたくさんありました。それからあと研究開発技術開発ということなのですが、例えば呉服ゼロとかファッション、アパレルが二とか、普通の事務職あるいは普通の会社というか、そういう事務職とか営業とかいうとほとんどゼロなのですね、こういうので見ましても。だから相当雇用関係も厳しいなと。ちょっと余談になりましたけれども、そういう部分。  それで、私先ほどお伺いしたときに、西陣におられて、そして大蔵省で財政にも精通され、生きた経済ということでやってこられた大臣が、今の景況を閣僚になった枠の中で御答弁になったのは、少し残念な気がいたしました。政治家たる部分、いかなる立場であろうと信念を貫いていくというのは多分先生の政治信条だというふうに思いますので、いろいろお立場というのはわからないでもないですが、残念な気がいたしたと同時に、経企庁もその一方で、景気悪いんや、悪いんや言うと、先ほども言われたように、逆に、政府が見ているのにとんでもないことになるんだという懸念があるというのは、重々承知をしているのです。  ただ、この前APECで、これはテレビだけで見たので、外務省とかいろいろ調べたのですけれどもそういうのがフォローできなかったのですが、だから雑談だったのかもしれませんが、メキシコの大統領ですかが、当然日本も、あの当時というのは山一の問題が起こった直後ですから、経済金融危機のときに政府がとる一番大事な対策国民の前にすべてを明らかにすることだとおっしゃったのをニュースで見まして、非常に印象的だったのですよ。  そういう部分で、いろいろな事態が起こっているときに、政府にある者として、あるいは政府の立場として、景気は大変なことになっておるのやという不安をあおればむちゃくちゃになるというのはよくわかるのです。ただ、全然実態を認識していないのじゃないかというふうな発信になりますと、これは、株は株屋に聞けとだれかおっしゃったけれども、世界の資金が世界の市場を見て買い物をしているというときの日本の株の評価という部分が非常に厳しいというのは、要するに、日本は体力はまだあると思われる、そのときに、体力はあるけれどもかなり疲れてきて落ちそうになってきているということを認識をして手を打とうとしているのか、いやいや、強がりを言って大丈夫なんだと言っているかということを評価しているのだと私は思います。  その部分で、この経済状況の認識というのは、私は、閣僚の一員としてぜひとも、これからの日本の発信は、ちゃんと直していくということを自覚してやるのだというこのメッセージが大事だと思う。  ですから、公的資金導入、いろいろな議論があります。公的資金を導入するやに見えて、しないのかもしれなくて、するようになったという、いろいろありました。しかし、物すごく株は敏感に反応するというのは、やはりこのたまったバブルのいろいろなうみも含めた部分を本気で、先ほどもどなたかの御質問お答えになっていましたけれども、本気で直そうとしているということになっていると思ったら買いになると思うのですね。私は専門家じゃないですけれども、株価は上がると思います。  私はなぜ経済のことを素人ながら一生懸命言うかというと、そのことが実はもう労働雇用の根幹にかかわるのです。私は、労働大臣は、労働雇用という限定された部分はもちろんだけれども、内閣の中で、これからの経済どうするのだというときに、ただ内閣の一員として発言しますではなくて、主体的な立場で、雇用の創出も新しい産業構造改革も含めてやるべきお立場におられると思うので、ぜひともそのことは、今、政権与党におられるという部分での責めを果たしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  38. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 基本的には、先ほど申し上げましたように、政府も労働状況は非常に厳しいという認識を持っているということは御理解いただいていると思います。  その上で、例えば夏までの政府の景況判断と今の景況判断が違ってきている、厳しくなってきているという御指摘はそのとおりです。ただそれは、トレードサイクルの中の上昇局面にもう乗ったという判断をしていたのが、もう少しすれば上昇局面に乗る、今はまだ乗っていないのに乗ったと言ったのが間違いだったという判断じゃないかと私は思うのです。  というのは、かつて日本と同じようなオーバーレンディングがあって金融機関が苦しみ、同時に構造改革をやったイギリスとアメリカは、今大変な繁栄をしています。私は、これは実体的にいい繁栄かどうか、アメリカの場合はやや疑問に思っておりますが、しかし、数値の上で見れば、過去何年かよりははるかにいい状態に彼らはなっています。  しかし、構造改革に着手したしばらくの間は大変苦しい状況であったということは先生承知のとおりです。その苦しさをそこで我慢して切り抜けられるのか、それともその苦しさに妥協して、そこで安易にその目指している作業をとんざさせるのかという判断ではないかと私は思います。  そして、副作用ができるだけ大きくならないように最善は尽くしたいと思いますし、私は何も閣僚の一員であるから大変だ大変だと言っていないのではなくて、メキシコ大統領の言葉を引かれましたが、かつて大不況のときにルーズベルト大統領が言った言葉は、我々は恐怖そのものを恐怖しなければならないということも言っている。だから、言葉というのは引用するときによって幾らでも使う言葉がございますから、もしそういうことを御引用になるのであれば、ルーズベルトの言葉をもって私のお答えとしたいと思います。
  39. 川端達夫

    ○川端委員 回復する時期がもう少し後を早く言い過ぎたということは承りました。  引用しようと思ったら引用のことを言われましたのであれですが、私の本箱に「新保守革命」「渡辺美智雄 柿澤弘治 伊吹文明」という本がございます。いろいろな意味で共感するところの多い御本として前から読ませていただきました。このたび伊吹大臣に御質問をするということで、大臣は実際は共著の、一緒の仲間ということでお書きになったものだというので、どういうことを言っておられたのかなということで、もう一度読ませていただきました。  その中で、やはり渡辺先生らしいなと思ったのは、「先手が打てなければ政治ではない」という部分は、まさにそうだなというふうに思いました。結果論を云々するではなくて、今もう先手が打てないのかもしれない時期まで来てしまっているのではないかという部分では、それぞれやはり今からでも遅くないということは当然のこととして、打つべきなんだろうなというふうに思いました。  そういう中で、「景気浮揚は大胆な政策で」という項目がありまして、そういうことも御提案でしたけれども、その中で、「平成不況」だと。この御本は細川内閣のときにお書きになったので、細川内閣はとんでもないちゃらんぽらんでいい加減だということがありましたけれども、それはおいておきまして、「提言」ということで、「平成不況脱出のために、」これは一九九四年の御本ですが、このときもう「平成不況」とおっしゃっていたのですが、   平成不況脱出のために、縮小調整バランスから拡大調整バランスへの転換をはかる。そのため土地、金融関連資産を節度をもって蘇生させるため、土地取引きの活発化政策、不良債権処理政策など、考えられるすべての手を積極果敢に実行する。   企業が活力を取り戻すよう、先進主要国の中でも一番高い法人税を減税し、企業の負担を軽くする。 三番、これは所得税減税をやるという前提で、   所得税減税は、消費を喚起する効果の大きい所得税率の高い階層に重点を置く。 という提言がありました。  私は、そのとおりだなというふうに思います。そして、これらの政策はそれぞれに我々も主張し続けてきた政策でありまして、今、自民党の中でも俎上には上っている。しかし、姿は定かには見えない、時期も見えない。「先手が打てなければ政治ではない」、余り引用を変にしたらいかぬのかもしれませんが、しかしそれはそういうことだと思うのですね。  そして、この文章は、変に引用したらいけませんが、細川内閣はおかしいという中の説でありますけれども、それ以外はなるほどなと思って読みました。「頭の中はむかしのまま、おまけに不況への認識を欠いていては、平成大恐慌への道を歩むことになる。経済がうまく回転せずに国家や社会が安定したためしはない。ニューディール前の米国がそうだ。ロシアの現状がそうだ。太平洋戦争突入前の日本もそうだった。 従来の発想を変え、既存の制度や法律を乗り越える決断をし、実行しなければならない。」とおっしゃっている。私は、本当にそのとおりだなと思いました。  そういう部分で、私たちもそう思っていろいろ提言もしています。先の見通しで、結果論がどうかという議論があることも承知をしておりますが、しかし、そうでなくて、そうだという一致しているところもいっぱいあると思うのですね。今も土地の税制とかで。  今、企業の法人税を下げる、これはやはり経済構造改革一つの大きな柱だと思うのです。そのことによって企業が健全に生き残れる、発展できるということこそ最大の雇用対策じゃないですか。しかしそのときに、ここからもまたいろいろ議論があるのですけれども、企業の税率は下げるけれども、残念ながら要するに増減税セットだ、いろいろな引当金があるだろう、そこからもらうよというものを含めてやろうという部分、出足からそれをやってしまって、ネットでいえば、それは取りましたら終わりの話ですよね。恒久的な減税でも何でもない、財源的に言えば。という部分も含めて、なかなか答えが出ないということ。  土地の流動化政策もそうです。いろいろな土地譲渡益の税制、地価税の問題、そのことはもうすぐにでもやらないといけない。景気が立ち上がるというか活力を、カンフルを打つという部分、減税はおきましても、このことに関して、どうして政府はすぐに動かないのかといういら立ちと不安を覚えますけれども、いかがでしょうか。
  40. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今は亡き私の師匠でございました渡辺美智雄先生とともに書きました本を真摯に読んでいただいて、それについての御質問をいただいたことは本当にうれしいことでございます。  今先生が申されました金融システムへのてこ入れ、これは、残念でございますが細川内閣、羽田内閣のときには何らできませんでしたが、その後の農協に対する住専の問題、そして現在新たな預金保険法の改正等で自由民主党がまさにその道を歩んでいる政策でございます。  それから法人税についても、これは今政府の税調と党の税調で議論しておりますが、これもまた、今増減税同額というお話がありましたが、私は、結果的には法人税率、法人に対する課税そのものとしてはネット減税になると思いますが、これはまだ見通しでありますから、私が確固たることを申し上げてはいけないと思います。  不動産関係の譲渡益の軽減課税あるいはまた不動産購入利子の損金不算入等について、これまた残念ですが羽田内閣、細川内閣のときに何か手を打たれたということは私は思い出さないのですが、しかし、自由民主党の政策の中でかなり実現をされながら、来年度税制改正の大きな目玉になっております。  所得税減税についても、消費税を引き上げることによって実は所得税減税を行ったということは先生承知のとおりです。その後しかし、その財源になっていた消費税の引き上げすら三%に据え置いて、さらに所得減税をやり、法人減税をやれという選挙のときの御提言がございまして、合計十八兆円だったと思いますが、それだけのものを実は財政を悪くせずにできるのかどうなのか。そして、その減税をすれば必ずその分を取り戻せるだけの税収が上がるのだというようなお話も、一部かつてエコノミストであった議員の方からお話を伺いましたが、私は、そのことについてはやや率直に言っていかがかなという気がいたしているわけであります。  そこで、何度も申し上げますように、雇用と景気ということだけ考えれば、今、川端先生のおっしゃったことに対して私は何ら反対ではありません。しかし、雇用と景気だけで我々は政治をお預かりをしているのではなくて、日本社会の活性化とかあるいは財政の健全さとか後世の世代に対する現世代の責任とか、そういうことをすべてひっくるめながらトータルとしての連立方程式を解く役割を仰せつかっているのが、私は政府を預かる者の考える道だと思って先ほどお答えをしているところでございます。
  41. 川端達夫

    ○川端委員 その部分が私は違うということで、雇用のためだけに何とかしろと言っていることでないということは御理解いただいているというふうに思いますが、もう時間がありませんからあえて言いませんけれども。  それと、いろいろな政策の提言とその判断というのはいろいろな議論があることも事実でありまして、それなりに自分が正しい解だということを主張するのも政党の責めであろうというふうに思います。しかし、その部分で現実に前がやっていたらよかったというふうなことの仮定を申し上げるのではなくて、現にどんどん景気は悪くなっている、その部分は宿命的に政府は責任があるものであるということを申し上げたかったわけでございます。  それで、本当は労働委員会ですので、きょう実は前半で、経済というものがしっかりして先行きの見える、まさに新しい時代に向けた経済構造改革をきちっとしなければ雇用もくそもない、くそもないというのは変な言葉ですが、という観点でいえば、労働大臣、しっかり御認識はいただいているのですけれども、やはり閣内においてもその経済の責任を担ってやっていただきたいということを申し上げて、とはいえ、経済あっての物種ではあるけれども人間あっての社会なんですという意味では、経済を大きくすると同時に、それを支える人間が人間としてどう生きるのかということが一方で同じ重さでなければいけない。その部分はまさに労働大臣の一番重いお仕事だというふうに思います。  そのときに、どうしても戦後のキャッチアップの経済のときには、とにかく経済を大きくしよう、見渡しても経済はなくなってしまった、みんな貧乏、食う物もない、家もないというところから立ち上げるには、経済をしっかりしたらそれに伴って生活もよくなるという形の中で、やはり企業経済を大きくすることを優先したバランス、バランスというか、そちらに傾いたことをやってきた。しかし、そのことが結果として、人口の問題も、子供を産みたくないという層もありますけれども、産みたくてもいろいろ仕事の問題や所得の問題というふうなことからいうと、随分バランスを欠いた部分でおかしくなってきていることがこの日本社会というのをどうもいびつにしつつあるのではないか。  警告は随分発せられているではないかということが、今の社会問題いろいろなことに出ているのだと思うのですね。それは、やはり人間の生き方というものがこれでいいのだろうか。とにかく会社人間だったらいいのだ、それで金を稼いで豊かな生活をしたらいいのだという嫌いがあり過ぎた部分での反省というのが私はあると思うのです。  ところが一方で、経済が大転換期を迎えたら、それどころじゃないんだ。産業がつぶれるんだ、会社がつぶれるんだ、メガコンペティションなんだ。だから、より使い勝手がいいように労働者をいろいろやらないと、要するに規制をなくさないと、もうがんじがらめで、あれもいけません、これもいけません。先ほど言われたように、日本社会主義的な要素を非常に持ってきたことでうまくいったというのは、僕は両面だと思うのですね。経済もうまくいったという部分で、ある部分労働の側もカバーされた。しかし、今社会的に見たら、どうも経済、会社、会社、会社と言い過ぎたのじゃないか。それが変なことになってきている。  人間としての生きざまとして、働くということはどういうことなんだということの部分に、きちっと家庭とはどういうものだということをやっていこうという機運の中に、一方で大不況という部分で世界を見ろ。もう要るときに仕事をしてもらって、要らないときは自由で、給料も適当にしたら、適当というのは語弊がありますね、効率的にやったらええんや。そうすると、突き詰めると年功序列型終身雇用という部分と労働というのは、先ほどもありましたけれども、対価として労働に対して何ぼやという話との部分というのも考えなきゃいかぬという議論も出てきているというふうに、大変難しいことに今来ているのだろうな。  しかし、そのときに、労働省というものは今度の行革会議労働福祉省。私は反対です。新進党は明日の内閣という組織をつくっています。これは今十五です。労働雇用政策会議ということで、不肖私が労働雇用担当大臣ということになっていますけれども、これは福祉というものとは性格を異にする。  要するに、人間、遊んで暮らすということでなくて、その部分でいったら、労働というのは、人間が生きていく部分での一番根幹に大きく影響している要素の部分、そのことの労働の価値観やその成果の部分、そしてトータルの暮らしの中でどう位置づけするかということはどうあるべきか、そちらの側にウエートを置いた中心として存在をする。一方で、経済経済で頑張って、経済がつぶれたらおかしくなるんだということで頑張るという部分。そこの議論のバランスの中で、正反合か何か知りませんけれども、最終的な合意というものができてくるという姿でないと、余りにも偏在するのではないかというふうに思います。  今回、まだ今審議会の途中の労働基準法の抜本改正も、いろんな議論がまさにそこを焦点にされているんだというふうに理解をしていますが、そういう部分で、私は、労働省というものの今日的役割の重さというものを本当はもう少し議論をしたがったのですが、時間が来てしまったのでまたの機会にしたいと思いますし、今度また答申が出れば、それをおまとめになる、要綱をおつくりになる立場という責めを負われるわけですから、その部分だと思いますが、そのことに関して御所見だけお伺いして、終わりにしたいと思います。
  42. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 ありがとうございました。政治家同士として大変気持ちのいい話をさせていただいたと私は思います。若干時間をとるかもわかりませんが、先生のお尋ねにお答えをいたしたいと思います。  まず、先ほども申しましたように、雇用というのは、基本的にはやはり経済の活動、有効需要によって支えられているということは、私も全く同じであります。したがって、私も労働大臣に就任して以来、労働省の諸君には、経済官庁としての発言はやはりしっかりとしろということは指示をしまして、対策だけの官庁だという意識は払拭した方がいいということは申してあります。  そういう意味からいきますと、財政構造改革というのはこれまたもう一つの大きな役割でありまして、しかし、内閣におきまして私が申し上げたことは、例えば直轄事業をやれば、一兆円のお金のときには財政は一兆円要るよと。地方にそのことを任せば、補助率は二分の一とすれば財政負担は五千億で済むよと。もし民間資金を入れてきて公共事業をやれば、例えば今利子が三%とすれば、一兆円の有効需要を創出するに、利子補給だけ三年間続けたとして三百、三百、三百の九百じゃないかと。  財政の構造を変えるというのはまさにそういうことなのであって、財政の構造を変えながら、同時に有効需要の量を大きくして、そして雇用を守っていくという方向をぜひとるべきだ、これが私が申し上げたことであります。  そして、グローバル化の中でアメリカというああいう労働慣行の国と商品の競争をしていかねばならないわけですから、コストパフォーマンスからいえば終身雇用というのは確かに非常に不利なことになります。したがって、そういう面からこのことを見る立場も私はあると思うのですが、労働力の供給をする方も、いろいろな個人的な事情で、多様な供給の仕方をしたいというお気持ちもあるでしょう。そういう中で、アメリカのような労働状況をつくり出すということがいいとは決して私は思っておりません。まあかつての日本人のように、勤勉で、自助努力の気概を持ってやってくれる、質のいい労働力で生産性が高ければ、終身雇用を維持してもなおかつ国際市場で価格競争に勝てるのじゃないかと私は思うのですね。  しかし、残念ながら、今の日本状況が果たしてそうだろうかというところについては先生もある程度の御理解をいただくということになると、審議会の答申を受けながら何らかの法改正をして、労働委員会にお願いをしつつも、副作用というものから守るために私は最大限努力をしたい。これが労働大臣としての私の責務だと思っておりますし、また、そういう状況に守られながら人間の尊厳を持って社会参加をしていけるという形に働く人たちの立場をつくってあげるというのが私の義務だ、そんなふうに思っております。
  43. 川端達夫

    ○川端委員 長時間どうもありがとうございました。  当面の具体的な山一を中心とする失業対策とか、いろいろ確認したいこともあったのですが、時間が来てしまいました。個別にまたいろいろしたいと思いますし、またいずれ御質問させていただくこともあると思います。きょうはありがとうございました。
  44. 玉置一弥

    玉置委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  45. 玉置一弥

    玉置委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。吉田治君。
  46. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ここ数週間、非常に金融システムの問題、特に大臣は大蔵省出身でいらっしゃいまして、ひょっとしたらこういうことがある日を予感されて雇用の問題の労働大臣になられたのかなという気もしておるんですけれども、まず最初に、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券という形で、一万五千人の方々が遠からず自分の職について、失うことを含めて考えなければならないということですけれども、この辺について、大臣、また担当の職業安定局長、どういうふうにお考えなのか、一言御所見を賜りたいと思います。
  47. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 金融機関であるからといって、私は、本来は市場原理の例外であってはならないと思っています。したがって、市場経済においては、経営判断を誤った経営者あるいは企業というものは、当然自己責任の範囲内でその責任をやはり果たしていかねばならないと思っていますが、同時に、本来自己責任がないにもかかわらず、一生をその企業にささげて一生懸命働いてきた人が、企業の、あるいは関連金融機関の自己責任における再就職先が見つからないというような場合には、これは労働省として全力を挙げて支援をしていく、これが基本的な私は市場社会、市場原理の国のルールだと思っております。  それと同時に、特に金融機関の場合には、多くの融資先というものを抱えており、預金者というものを抱えているわけですから、例えば北拓であれば営業譲渡、三洋証券であれば会社更生法による今会社の再建を目指しておられますし、山一は廃業ということを前提に手続が進んでいるわけで、おのおのその法的な態様は当然違ってくると思いますが、その間に少しでも不安が起こらないように、雇用面からもやはりしっかりとした対策を講じていかねばならない、そんなふうに考えております。
  48. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 基本的に、私もただいま大臣お答え申し上げたのと同じ考え方でございます。
  49. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ここ数年の国会議論を聞いておりますと、何か突然行政の皆さん方というのは、自己責任だとか市場原理というものに目覚められたのかな。そういう中ですべて判断しろ。じゃ、今まで戦後五十年間されてきた護送船団方式だとか、そういうのはどうなのかな。こういう議論はこの場ですることじゃないのでおいておきますけれども、その中で、憲法二十七条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」というふうに規定をされております。これは、国民の勤労権を定めたものと言われております。  今大臣も言われましたように我が国は市場経済のシステムをとっておりますので、この勤労権は、社会主義圏また共産主義のように国が国民のすべてに仕事を与えるということを意味するものではない。しかしながら、国に雇用安定にかかわる責務を課したものであると理解できると思います。  すなわち、第一は、労働者が自己の能力と適性を生かした労働機会を得られるように、労働市場の体制を整える責務でありまして、第二は、そのような労働機会を得られない労働者に対し生活を保障する責務である。雇用保険法はまさにこの第二の義務を憲法の規定に基づいて具現化したもの、そういうふうに大臣、まず理解させていただいてよろしいのでしょうか。
  50. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 雇用保険の本来の役割というのは幾つかあると思いますが、これは基本的には厚生省の金であったり政府の金であるわけではありません。国民の税金とまじめに働いている人の汗とあぶらの結晶から拠出をされた保険料の塊であります。  そして、その人たちお互いに助け合いながら、もし職を失った場合に、今委員が御指摘になりましたように、次の職を市場経済の中で見つけていくまでの間の所得保障的なものを提供する、あるいは不幸にして災害に遭われた場合には、そのような災害に対して補償的な役割を果たしていく、そのような補完的な性格のものだと思います。
  51. 吉田治

    ○吉田(治)委員 今の大臣答弁によりますと、雇用保険というのは、そういう意味でいったら、労使の自己責任で運営すべきものなのか、それとも国は失業者の生活資金を給付すべき義務があると解すべきなのか、それはどちらなのでしょうか。
  52. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 そこはいろいろ議論のあるところであると思います。  例えば基礎年金については、国がこれは公的な保障として国の責任において運営をしております。かつては厚生年金にも二〇%の給付に対する助成が入っておりましたが、今はこれは入っておりません。いないけれども、これは国が運営をいたしております。したがって、どちらかというふうに一律に決めつけられる性格のものではなくて、そのような自助努力をされる市場経済の中での補完的役割として、国の責任において、国というよりも国会の議決を経て法律をつくったという国民的合意のもとにできている措置だと思っております。
  53. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ちょっと大臣議論が違いまして、私、年金の話は何も聞いてないのです。雇用保険でございまして、今回の包括については。雇用保険は労使の自己責任で運営すべきものなのか、はたまた先ほどの憲法二十七条の規定に基づいたように、国は失業者の生活資金を給付すべき義務があると解するのか。ここによって国庫負担の問題等が出てくると思うのですけれども、これは大臣もしくは行政当局として、雇用保険はどういうふうなものだというふうな理解をされているのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。
  54. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私は何も年金のことを主題として申し上げたわけではありません。厚生年金一つの例示として申し上げたわけであります。  雇用保険にも、御承知のように二〇%の給付に対する補助金が現行法律のもとでは入っているということは、補完的に自助努力の間の需要と供給の差を埋めていく措置として、国も、補助率でいえば五分の一の公的責任を負っているということでしょう。
  55. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 基本的に大臣がただいまお答え申し上げたとおりでございます。それで、自己責任という観点、これは、雇用保険制度は御承知のように労使折半保険料、それと国庫負担で賄っておりますから、この保険料部分を自己責任、こういうふうな考え方で整理をいたしていると思います。  国庫負担という観点にいきますと、これは対策給付の中身によりまして、ただいま大臣申し上げましたように、現在でいきますと、五分の一の負担のものもあれば、あるいは雇用継続給付のように、失業しないで雇用を継続するための育児休業給付、あるいは高年齢雇用継続給付、こういうものにつきましてはそのまた半分の国庫負担、あるいは就職促進手当等のようなものにつきましては国庫負担なしで行う、こういう形で制度の運営が行われているところでございます。
  56. 吉田治

    ○吉田(治)委員 いや、制度の運営じゃなくて基本的な、哲学と言ったら語弊があると思うのですけれども、雇用保険の国庫負担をすべきもの、今大臣は自助努力の補完的なものだと。ということは、大臣のお考えとしては、もともと自助努力でするものを国がたまたま助けてやっているのだから、そんなことは本来的に言えばしなくていいのだ、極論すればそこまで考えてよろしいのでしょうか。
  57. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 極論は、私はいたしておりません。今の質問者の御質問が極論であるのだと私は思います。国が、必要であるから、法律を国会の御審議を経て成立をさせて、強制的な徴収権を持っているわけですから、国が運営をしているということは当然のことで、これは社会に必要であるからやっているわけで、やってやっている性格のものでもなければ、国と全く別のところにあるものではありません。しかし、それがすべて必要であるのならば一〇〇%税金でやっているということでしょう。
  58. 吉田治

    ○吉田(治)委員 大臣は今まで、職業安定局長もそうでしょうけれども、役所に勤められていて、役所の方からすぐに議員になられて、今まで雇用保険、お掛けになられたことはございますか。
  59. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私は雇用保険というものを残念ながら掛けたことはありませんが、私のうちは二百年商売をしておりますから、雇用保険をずっと掛けたうちで育っておりました。
  60. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 私は、大学を卒業いたしまして公務員になりましたので、雇用保険を掛けたりあるいは失業したという経験はございません。私の家内は働いておりまして、失業した際に雇用保険を受給したことはございます。
  61. 吉田治

    ○吉田(治)委員 余り細かい質問をしたくはないのですけれども、雇用保険というのは、公務員であるならばこれは身分保障で、ない。ただ、たまさか横でそういうふうな状況だという中で、これは役所がいろいろ考えられている中で、雇用保険における国庫負担という問題、大臣、どうなのですかね、大蔵省にもおいでになられたということで、プライオリティーというのですか、例えば公共事業だとか、さまざまな補助金というふうな中で、今大臣は、社会に必要だからこの制度を国がしているのだというお言葉を出されましたけれども、やはり国の責務として、この制度が必要ということであるならば、今申し上げたような他の歳出に比べてプライオリティーが高いというふうに言えるのではないかと思うのですけれども、優先順位という言い方はよくないかもしれません、どっちが先、後ということではないですけれども、しかしながら、やはり掛けている人にとったら、道路や橋ができるよりも、自分が万が一のときにはやはりこの制度がしっかりしておいてもらわなければというふうなものが必要だと思うのですけれども、その辺についての大臣のお考えはいかがなのでしょうか。
  62. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 委員を含めて、民主主義のもとではすべての政治家は今のお答えにいつも直面をしながら政治活動を行っていると思います。  つまり、まずそれは、この場合で言えば税の負担、達観的に言えば、五分の一の補助金を入れる税の負担をだれがするのか、それからもう一つは、保険料の制度をうまく回していくための保険料の負担をどうするのか、給付がいかにあるべきかという中から総合的に判断されてくることでしょうし、同時にまた、今委員は公共事業などは要らないというお話がありましたが、これは人それぞれ、公共事業の方に優先順位を置く方もいればそうじゃない方もいると思います。その国民一人一人の優先順位を、民主主義というスクリーンを経て悔いのない国の優先順位にしていくのが、委員も含めて、我々一人一人の議員に課せられた職務だと考えております。
  63. 吉田治

    ○吉田(治)委員 私は、公共事業は要らないとは決して申しておりません。こういうことになるとお互い揚げ足取りになってしまいますので、細かいことはおいておきたいのですけれども、大臣として、その歳出の中でのプライオリティー、何番ぐらいというのも言いづらいでしょうけれども、 今労働大臣になられて、この雇用保険の国庫負担についてどういうふうにお考えなのか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
  64. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私の政治家としての物の考え方は、やはり国家社会あるいは日本人全体をいかにうまく動かしていくかということが政治家の一番のプライオリティーを置かねばならないところだと思います。その中で、雇用保険がどうだ、教育がどうだ、あるいは公共事業がどうだ、中小企業対策がどうだ、これは財源との関係の中でおのおの国民にはそれぞれの選択があるわけでして、それを最終的に多数決という意思決定の方法で決めていくのが、国会の役割であり、民主主義の責任だと思っております。
  65. 吉田治

    ○吉田(治)委員 なかなか大臣からすっきりした答弁が聞けなくて残念でなりません。このことについては今後さまざまなところで議論をされていく、特に今般の財政構造改革法との関係、兼ね合い上で非常に大きな議論になっていくのだと思うのです。  ただ、大臣先ほどから補完的、自助努力、税の負担ということを言われていましたけれども、現実には、当初は国とそれから労使が三分の一ずつこの雇用保険を持っていたのが、二十年前に、国が四分の一、労使が残りの四分の三を分ける、これはたしか法律によっては本則のはずなのですね。四年前、こういう大変なときだから暫定的に、今大臣言われたように、国が五分の一で、労使があと五分の四、つまり五分の二ずつを労使が持っていくというふうに変えたということは、これは確認ですけれども、間違いはございませんね。
  66. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 間違いございません。現行の率は、附則で、当分の間の措置として、御指摘のようになっております。
  67. 吉田治

    ○吉田(治)委員 失業率が、最新の統計でも三・五%ですか、過去最高の水準をずっと維持してきている。そうしますと、一番最初議論になるかもしれませんけれども、国の経済政策運営、先ほど大臣はいみじくも金融機関については市場原理、自己責任と言われていましたけれども、それだけに任せるのではなくして、国全体としての経済政策運営というものにこの失業率の高位平準化についての原因があるのじゃないか。その原因があるのに、附則で五分の一のままで、しかもなおかつ財政構造改革の中でもっと国の負担を減らそうとするというのはちょっと矛盾があるのじゃないかなというふうに思うのですけれども、その辺はいかがお考えなのでしょうか。
  68. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 御党の先輩でございます川端委員と午前中に議論をいたしましたように、今日の経済状況の判断あるいはそこに至った政策について、だれに責任があるかれに責任があるということについてはいろいろな意見があると私は思います。  しかしながら、一つ申し上げておきたいのは、国のということをおっしゃいましたが、国のお金というものは一銭もございません。これはあくまで国民がお払いになった税金でございます。だから、税金を入れるのかそれとも保険料で動かすのかという議論として御議論をいただけば結構かと思います。
  69. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ただ、その議論でいうと、公務員の皆さんは雇用保険を掛けていないわけですよ。雇用保険を掛けている人たちは民間企業の方がほとんどですよね。今大臣言われた、私らには責任ないよという議論からすると、役所としては、何をしても許される。税金で投入していくという部分でいうなら、雇用保険に国庫負担をするという部分であるならば、やはり公務員の皆さん方も、自分の納めた税金から何%かはそこへ持っていかれるという責任感が出てくるのじゃないか。  それはもう関係ないから民間でどうぞと。この構造的な政策運営についての原因はいろいろあるけれども、それはまあ国の金と国民の税金——先ほど私がなぜお二人に雇用保険掛けたことありますかと聞いたのは、そこのところなんですね。国民の税金で入れるのと雇用保険で負担してもらうのとは変わらないじゃないかという今の大臣の言い方からすると、それはちょっと議論がおかしいのじゃないか。やはり納める人たち、それから投入するお金というものの本質を見きわめていくと、だれが払ったのかということはやはり大事じゃないか。どういう負担をしていくかということから議論する必要は十分あるのじゃないかなと思います。  先ほどの先輩同僚議員の議論の中にもあったかと思いますけれども、平成八年度からこの失業等給付というのは単年度赤字になっている。確認になるかもしれませんけれども、その原因というものは何なのか、そして、それは構造的なものとして今後もずっと続いていくというふうに考えているのかどうか、担当局長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  70. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘のような雇用保険制度における単年度の赤字分、これは平成八年度以降ございます。これにつきましては、受給者の実人員が増加してきているということでございます。具体的な数字として申し上げれば、好況期には五十万人台であったものが、その後ふえて、現在では平均的に見ても八十万人台になってきている、こういう状況でございます。そういう意味で、御指摘のように単年度収支が赤字になっているという問題が出ているわけであります。
  71. 吉田治

    ○吉田(治)委員 それじゃ、この三%を超える失業率、これは政策立案当局として、今後も続いていくという発想の中で失業給付を含めた雇用保険というのを考えていくのかどうか、いや、それはもう単なる単年度だというふうな発想で乗り切ろうというのか、その辺いかがなんですか。、
  72. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 経済の先行きと密接にかかわるわけでございまして、この点について先行きがどうかという点について現状非常に厳しい面もあるわけでございますが、現在の政府の計画の見通しでは、御承知のような実質三%の成長、あるいは目標として完全失業率が二カ四分の三%程度、こういうことを頭に置いているわけでございます。ただし、現状の足元が非常に厳しい中でそういう形になっていくかどうかというのは、今後の非常に重要な課題であるというふうに考えております。
  73. 吉田治

    ○吉田(治)委員 きのうでしたか、経済企画庁長官が一%もいかないだろうというふうに言われるので、その見直しというのですか、こういう経済的な雇用への影響というのは、毎月されているのですか、それとも年間通しでされているわけですか。
  74. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 雇用保険制度で申し上げますと、これは御承知のように、当初予算で実人員を積算して予算を計上して運営していく、こういうことで、毎月見直しをしているということではございません。ただし、予算が不足すれば、これは義務的経費ですからそれをどう補正するか、こういう問題があるわけであります。
  75. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そういう見直しというのは、やはりこれはもっと短期的、と同時に、マクロ、ミクロとよく言いますけれども、長期、短期というのを含めて、こんなことを言うと怒られますけれども、私らもそうですけれども局長国民の税金で飯を食っているのですから、国民がちゃんと働けるように、二十七条でも保障されているようにしていただきたいなと思います。  さて、先ほどから申し上げておりますように、財政構造改革法では失業等給付にかかわる国庫負担のあり方の検討を求められています。労働省としては、失業等給付にかかわる国庫負担について、現在どのような検討を行って、今後どういうような方向性を持っていくのかということを、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  76. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘のように、財政構造改革法におきまして、十二条で雇用保険制度の財政面でのあり方についての考え方があるわけでございます。この考え方につきましては、これをどうするかにつきましては、現在中央職業安定審議会で御審議をいただいているところでございます。  その中身につきましては、もう一つの視点がありまして、一つには、平成十一年の四月から全企業に義務化されます介護休業についての経済的負担をどうするか、これは育児休業給付と横並びでどうするかという宿題が国会でございます。それからもう一つは、今後の経済構造改革に対処するために、働く方々自分能力開発を積極的に、事業主との関係でなくて自分が別のところで自由に能力開発ができるようにすべきではないか、そういうものについて雇用保険制度で支援すべきではないか、こういう考え方がございます。  これは、関係審議会において、労使それぞれ立場は違いますけれども、御賛同いただいている考え方でありますが、そういう給付の改善とあわせて、厳しい財政構造改革にこの法律に基づいてどう対処するか、現在審議会で御議論いただいておりまして、この審議会におきます結論を待って、次期通常国会に所要の法案を提出いたしたいというふうに考えております。
  77. 吉田治

    ○吉田(治)委員 この雇用保険に関して、現在暫定的に国庫負担の抑制が行われているということは先ほど確認したとおりですけれども、現行の暫定的抑制というものは、中央職業安定審議会の議論の中でも、そのままにしておくという方向性なのか、さらに抑制すべしというのが財政構造改革法自身が求めていることだというふうに理解してよいのか、その辺はどうなんですか。
  78. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 財政構造改革法に基づきますこのあり方の見直しというのは、これは当然、厳しい財政事情を踏まえて抑制する方向で見直すべきである、こういう考え方であるというふうに理解いたしております。ただし、この点について関係審議会においてさまざまな御意見がございます。そういう御意見が最終的に整理をされて、結論をいただいた上で対処するということになろうかと思います。
  79. 吉田治

    ○吉田(治)委員 官房長おいでですけれども、どうもこのごろさまざまな審議会等の建議、答申を見ておりますと、なかなかまとまらないというのですか、よく労使協調と言われていますけれども、労使対立のままの建議、報告等がたくさん出てきているような感じがするのですけれども、その辺はどうなんですか、このごろの審議会の状況として。まとめるような努力をしているのか、それとも、努力はしているが、だれかが言うことを聞かないのか、それとも、さまざまな圧力の中で、自分のところの省の生き残りもかかっていろいろしているのか、その辺は官房長いかがなんですか。
  80. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 労働問題につきましては、労使の利害がいろいろ対立をするということで、従来から労働行政において法案の立案をします際には、労使も入った審議会でいろいろと議論を闘わせながら国会に法案として提出をするということが慣例になっておりまして、すんなりとまとまるか、いろいろと議論があるか、それはテーマによるのではないかというふうに思っております。
  81. 吉田治

    ○吉田(治)委員 官房長、そのテーマがまた、自身もよくおわかりだと思うのですけれども、よく言われますけれども、戦後五十年たってシステムを変えなければいけない、やれなんだという中で、一つ言えることは、国の制度というのがさまざま整備されて、今のところ飯食うには困らない、失業者になったら大恐慌のときのように町でリンゴを売らなければいけないということはない、やはり雇用保険の果たしてきた役割というのは非常に大きい。私、多分、これが二昔前か三昔前だったら、こういう労働案件について対立があれば、もうストを打つとか、私も子供時分ございました、どことは言いませんけれども、国鉄なるところのとんでもないストがあって、学校が休みになって小学生、中学生はそれはよかったのですけれども、果たしてそういう状況が再び起こらないとは言えないと思うのですけれども、そういう中で、建設、金融など大型倒産が続いている。こうした経済状況からして、今後失業等給付が増加していく場合に、国庫負担の歳出増というのももちろん予測されていますけれども、こうした場合に、財政構造改革法、先ほど安定局長さんもお話ございましたけれども、国庫負担の抑制の考え方とどのように整合性を図っていくのか。  やはりこれは、給付を削るのか、削らないのか、削らないとすると保険料を上げるのか、保険料が上がると、公務員は払わずにまた民間企業の人間ばかりが、そういう言い方よくないかもしれませんけれども、負担をせざるを得ないのかというふうな部分、その辺についてどういうふうな整合性を持たれるのか、ちょっとお考えを賜りたいと思います。
  82. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 現在審議会で議論をされております共通認識として、ただいま御指摘の点ですが、当面のこの厳しい雇用失業情勢の中で給付の切り下げを行うべきではないという考え方は共通しております。一部、財政構造改革法で指摘されている問題がありますが、それ以外はそういう共通認識がございます。  それからもう一方で、非常に厳しい財政事情の中で国庫負担のあり方を見直しすべきである、こういうことと、それからもう一点は、保険料についてどう考えるかという点ですが、保険料についても、この厳しい状況の中で上げるべきではない、こういう考え方でございます。  それでは、その整合性をどうとるかという点につきましては、雇用保険制度については、積立金が現在四兆円余ございますから、財政構造改革期間中の非常に厳しい時期についてこの取りましを行うことによってバランスをとるべきであろう、こんなところでございます。  一部、給付についての問題は、法律で指摘されております高年齢求職者給付金という制度、これは、六十五歳以上までずっと勤めてこられた方が六十五歳を超えてやめたときに一時金として出るものについて、国庫負担が同じようについている、これは当然年金も出ますから、一般会計の国民の税金がダブって出ているではないかという意味でのカットの問題と、六十五歳以降は基本的に年金制度ということで、給付金の廃止を含めて見直すべきではないか、こういう御指摘でございます。しかし一方で、労使の保険料でずっと積み立ててきているわけですから廃止するのはひどいじゃないか、こういう問題があって、そこのところをどうするかという議論がされております。
  83. 吉田治

    ○吉田(治)委員 局長の最後のところは、私が次にとっておいた質問の答えでございますので、改めて質問をしなければなりませんので、詳しく質問をしたいと思うのですけれども。  ただ、やはりこの辺が難しいところだと思うのですけれども、私はこのごろ、議員をやっていて、日本の摩訶不思議な制度だなと思うのは、この審議会制度というのですか、みんな入っているので、そこで決まったことに議員は何か気がついたら拘束されちゃうという部分というのは、何かふと、役所の方の御説明でも、先生の支持母体のここもちゃんとオーケーだ、ちょっと待ってくれよという話なんですけれども、官房長、こういう審議会方式ということについて、行政の取りまとめとして、行政の隠れみのだというふうな意見が出たりしておるんですけれども、その辺についてどういうふうにお考えになられておられますでしょうか。
  84. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 行政の各種審議会につきましては時々そういった御意見もあろうかと思いますが、私先ほど申しましたように、労働行政につきましては大変厳しい議論というものを労使それぞれの立場において闘わせておりますので、少なくとも今までの労働行政における審議会の運営を見ておりますと、大変シビアなものがあって、隠れみのというような存在では決してないというふうに思っております。
  85. 吉田治

    ○吉田(治)委員 それがやはり、公益委員と言われている先生方がちょいとどちらの顔を見ているのかというのが気になるところでございまして、私らから見ると、私の知っている先生、教えていただいた先生もいらっしゃるのですけれども、ちょっと考えた方がいいんじゃないかとふと思ったりもしてしまうということだけは不諱をさせて いただきたいなと思っております。  今こういう失業問題の中で、これは余談かもしれませんけれども、大臣、きのう政務次官が山一の内定者、積極的に議員も雇えというふうな新聞記事が出ておりましたけれども、たしか大臣の事務所は地元にたくさん秘書さんがいられると聞いているのですけれども、人を入れられる予定はあるのでしょうか。
  86. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 私の地元の事務所は平均以下の人員しかおらないと思いますが、何分厳しい政治資金規正法のもとで、家族もいる秘書をそんなにたくさん雇える余裕のある議員はほとんどいないのじゃないかと私は思いますが、もし欠員があるとか少し余裕があればもちろん、ただし立派な人であればですよ、喜んで雇わせていただきたいと思っております。
  87. 吉田治

    ○吉田(治)委員 反対から言うと、内定取り消しになった人間からしたら、議員みたいなものは、こんなところ行ってられるかと怨嗟の声があるのかもしれませんけれども。  済みません、時間が来ましたので最後の質問。  先ほど局長も少しお答えになられましたけれども、ほとんどかもわかりませんが、そういう財政構造改革法の国庫負担の抑制という中で、政府として六十五歳までの継続雇用を推進するということにされていますけれども、その方針に照らしたときに、高年齢求職者給付の廃止という継続雇用政策目標が阻害されるということがあってはならないと考えるのです。  今でしたら百五十日間の一時金、例えばこれを七十五日にするとか、いやいやもう一切なくすということになれば、これはもらう方にしてみれば、年金雇用保険の併給がなくなるというのはこういう状況ですから仕方がないとしましても、じゃ、もう六十五歳以前に早くやめちゃって、雇用保険をもらえるものだけすかっともらおう。六十四歳でやめたらフルにもらえるんだったら、そうしちゃおう。何かそういうふうな、商売では賢い消費者という言い方がよくされるのですけれども、やはり国民もだんだんそういう制度については賢くなってきて、そういうふうな中で、もう早くやめちゃって雇用保険をもらおうというふうな形になると、やはりこれまたそっち側の財政負担の増になる。  先ほど大臣も何度も言われているように、最終的には国民の税金ということで、言うならばそれぞれの損得勘定というのはしなければならないと思うのですけれども、この辺について実は私は大臣にお聞きをしたがった。多分お答えを心待ちに待っていたんではないかと思うのですけれども、よろしくお願いしたいと思います。
  88. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 御承知のように、六十五歳までの年金制度の中には、在職老齢年金というのがあります。したがって、働きながら年金をもらっておられる方には、別途働くことによる給与があるので、減額的な給付がされる。しかし、六十五歳以降はそのような制度は実はございません。  したがって、本来、年金改正の場で同じような制度を六十五歳を超えても導入するということであれば、私は、高年齢求職者給付金はさわるべきではないと思っておるのです。  しかし、残念ながら六十五歳から上についてはそういう制度はございません。したがって、同じ年金をもらっておられるけれども、働いておられない方と働かれた方の中で、国庫負担、つまり国民の税金の取り方についてややバランスを欠くところがあるんじゃないかというのが、財政構造改革の推進に関する特別措置法の十二条に言っている意味だろうと私は思います。  先ほど局長先生質問を心待ちにし過ぎて先にお答えしてしまったように、構造改革を前提として新しい給付を考えるということとこのこととは、やはり両々相まって、国庫負担の問題をどうするかということを、審議会の議も経て、考えさせていただきたいと思っております。
  89. 吉田治

    ○吉田(治)委員 局長にお聞きしたらいいのですかね、その場合、やはり今大臣も言われたように、年金ということになってきますと厚生省、しかしながら、お金的に言ったら財布は本当は一緒のはずなんですね。でも、それぞれ役所が違うからという、こういう議論、その辺の調整というのですか、損得勘定というのは、実際調整されたり議論されたりされているんでしょうか。
  90. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 年金雇用の問題につきましては、事務的には連絡しながら対処しています。  六十歳から六十五歳につきましては、これは雇用の方の継続給付が出た場合に年金調整する、そういう考え方で実施されるわけでございます。六十五歳を超えたら今度は、今の考え方は、大臣も申し上げましたように、基本的には年金世界で、雇用の方の分についてはどう調整するかというのが今回の考え方だと。ただし、ただいま委員指摘のような問題点も審議会で議論されておりまして、その点について審議会の議論の結果を待って対処したいというふうに考えております。
  91. 吉田治

    ○吉田(治)委員 こういうのも、労働福祉省というんですか、行政改革で一緒になれば、同じ省で、同じ財布でというふうなことで問題はなくなるのかもしれませんけれども。  もう時間で終わりますけれども、ただ、やはり問題意識を持たれているように、少子・高齢化社会の中で、高齢者方々をいつまでも働かすのかという意見もあると思うのですけれども、働ける方には働いていただいた方がいいのかなという感じも強く持っている。この辺の議論については後日に譲らせていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。
  92. 玉置一弥

    玉置委員長 次に、中桐伸五君。
  93. 中桐伸五

    中桐委員 民主党の中桐でございます。  私は、きょうは非常に欲張ってたくさんの質問を多岐にわたってやらせていただきたいと思うのですが、一番最初に、つい先ほど労働大臣のところに、民主党の菅代表を初め私も、この間の金融不安に伴う中小企業及び雇用対策ということで緊急の申し入れをさせていただいたわけでありますが、早速そこから入りたいというふうに思うのです。  いろいろ最近、あの金融業界における金融恐慌ともいうべき危機的状況があるのではないかというふうに思うのですが、そういう中で、国民の中には、山一証券だとかああいう大企業、業界の大手を公的資金を導入して救うのかと。しかし、それに対して、金融恐慌的な現象の中で、中小企業経営者初め働いている皆さん方にとっても非常に厳しい状況が金融の破綻等に伴いながら起こってくる。そういう中で、では中小企業はどうなるのだというふうな批判的な声というのは、非常に至るところで私は聞くわけですね。  ですから、そういう意味では、これは金融業界の対策というものだけではやはりだめなので、それに関連して非常に広範囲にわたって、貸し渋りなどの問題を含めて、中小企業を含めた非常に幅広い多面的な対策が必要ではないかというふうに私は思うのですね。  そういう意味で、民主党としても労働大臣及び通産大臣にそういう緊急の申し入れをさせていただいたのですけれども、その中で、既にもう本日の発表で、雇用調整助成金とかあるいは特定求職者雇用助成金制度については、労働大臣の方から早急にこれについてはやるべしという指示を出されたということなので、非常に素早い対応ということで敬意を表したいというふうに思うのです。  さらに、この緊急申入書の中で、先ほども要望させていただきましたが、地域的な広がりに対して、例えば北海道の拓殖銀行などの問題については非常に私どもの党の議員の方々なども精力的に動かれているわけでありますが、そういう中で、雇用機会の増進といいますか、失業が増大しないような対策が必要であろうということで、地域開発助成金制度というふうなものの活用を検討すべきではないかというふうなことであるとか、あるいは、これは長期的には生涯にわたる能力開発というような形で、いわゆる個別的な労働者の自発的な能力開発という政策はこれから強化しようというふうにお聞きしているのですが、そういうこ とと、こういう緊急の事態でありますから、短期的な職業能力訓練の受け入れ枠を拡大する必要があるのではないかというふうな申し入れをさせていただいたのですが、この点について、まず大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  94. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先ほど先生も御一緒でございましたが、御党の菅代表がわざわざおいでいただきまして、通産大臣と私に対して、現下の中小企業方々のお立場を踏まえた申し入れをいただきました。  その中で、労働省として対応しなければならない部分について三項目ございまして、一つは、いわゆる継続雇用の助成金の支出について金融機関関連のところまでカバーできるかどうかということ。これは、実はきょう行政の判断によってそこまでできるように基準を変えるということをいたしました。これは今御指摘のとおりでございます。  あとの二点の詳細については担当局長から御答弁をさせますが、その前に、少し基本的なことを申し上げたいと思います。  それは、お言葉の中に、実は国民の税金を使って山一やその他の大企業を助けるというお話がございましたが、先生はもうよく御存じのことで、そういう感覚を国民が持っているよという御指摘だったと思うのです。  現在検討されております預金保険法、あるいはその後政府あるいは与党内において検討されております公的資金導入による金融支援の本来の考え方は、善意の預金者を守る、そして日本の金融システムを守る、そして円というものの信認を守り、世界の通貨の秩序を守っていくというために実はそういうことを考えているわけでございます。個別の、言うならば経営判断を間違いながら不良資産をたくさん抱えている銀行が従来のようなやり方で存続をしてくるということの方が実は国民にとっては非常に怖いことでございますので、今そのあたりのあくだけはむしろ抜いているプロセスだ。そのときに、何の責任もない関連中小企業方々とか、そこに勤めて一生をそこにゆだねておられた勤労者の方々の将来について無理のないようにというのがお申し出の趣旨だったと思いますので、私どもも今全く同じ意見として一生懸命やっておりますので、そこのところはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  95. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 具体的な御指摘について、ただいま大臣が御答弁申し上げた点以外につきまして、一つは特定求職者雇用開発助成金の対象業種として指定するかどうかという点でございますが、金融業、金融機関等につきましては、これは御承知のように非常に重要な産業でございまして、これに不況というレッテルを張ることをするのかどうか、こういう問題があります。それから、関係業界からはそういう申請は全くございません。したがって、そういう観点からいきますと、不況業種法の特定求職者雇用開発助成金制度の対象とすることは難しいのではないか。  むしろこれは、ただいま大臣お答え申し上げましたように、個別の大型企業の問題として、大型倒産等があった場合の雇用調整助成金の適用をする基準、これをサービス業あるいは金融機関等に適用できるように、これは当初全く想定してなかったものですから従来の基準は製造業中心でございまして、そういうところの見直しを行った、こういうことでございます。  それから、二点目の地域の指定につきましては、これは地域雇用開発等促進法に基づきます雇用機会増大促進地域の指定問題でありますが、地域の経済に当該金融機関あるいはその関連企業を中心にする情勢が非常に大きな影響を及ぼすということになれば、当然この基準に合致する。そういうものについて今後検討してまいりたいと思いますが、金融破綻ということだけで地域指定をする、こういう考え方はやはり対策の公平性という観点からは望ましくない、そういうふうに考えております。
  96. 中桐伸五

    中桐委員 金融破綻の例をとって、それをやるのは好ましくないということなんです、というふうに理解していいですか。
  97. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 いや、そういう意味じゃございません。
  98. 中桐伸五

    中桐委員 私の言いたいのは、緊急にやる必要があるのではないかということが重要なので、要するにそういういろいろな整合性の問題は、細かい点については時間もありませんのでここで議論は避けたいのですが、問題は、緊急に素早くやる必要があるのではないかということについてぜひ検討をするべきではないかという点でございます。
  99. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 地域雇用開発等促進法に基づきまして、その指定基準に照らして該当する地域があるかどうかにつきまして、これは御指摘のように、緊急に検討をして対処するという考え方で検討してまいりたいと思います。
  100. 中桐伸五

    中桐委員 はい、わかりました。速やかにお願いしたいと思います。  大臣が今お答えになられたこととの関連で申し上げますと、私は金融の問題についてはそんなに専門ではないので余り詳しく持論を展開するというふうなものではありません。しかし、私としては、今の預金保険機構というものに任せるというよりは、住専のときの中坊さんがリーダーでやっているような公的債権回収機構をやはりきちんとつくって、悪貨が良貨を駆逐するのではない、つまりいいところを残して、そしてまた不良債権を処理しながら、優良なものについてはそれを基礎にして経営者をすべてかえて新しく銀行をつくっていくとかそういう仕組みを、つまりアメリカで言うRTCというふうなものをやはりつくっていくことによって、これは新しくつくるわけですから再建もするわけです、雇用問題の解決にもなっていくのではないかというふうに思うので、そういうふうなことについてぜひ大臣の御意見を、簡単で結構でございますのでお願いします。
  101. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 例えば今北拓が考えている営業譲渡というのは、一種のそういうものだと思います。良質な部分を他の金融機関に譲って、当然雇用もそれについていく。三洋であれば会社更生法によって新しく再建の道を探っている。  ただ、中坊さん云々というお話がございましたが、あそこが今回収しているのは、御承知のように、不良債権とは言わないまでも固定化してしまってなかなか流動性のないものです。したがって、今行われている議論は、預金保険機構にやらせるかどうかは別として、少なくとも、固定性があってすぐには流動化できない資産を銀行が抱えている一方で、すぐに引き出しが来るという流動的な負債である預金にいかに対応するために公的資金を入れていくかということでございますから、再建の方法としては、先生指摘のようないろいろな方法がこれから考えられて私はよろしいと思います。
  102. 中桐伸五

    中桐委員 要するに、大臣の御見解と私の見解の一致できるところは、つまり不良な銀行などを公的資金で生かしていくというふうなことでは決してない。つまり、生きていくべきものと、これはもう清算した方がいいよというものとを分けながら、その経営責任も当然明確にしながら、そういう前提条件で公的資金ということも一つの検討材料としてあるのではないか。そして、それは預金者の保護であり、かついわゆる中小企業等への影響を最小限にする方法ではないかというふうに私も理解いたしましたので、ぜひそのような方向で、いわゆる金融政策とそれから雇用対策中小企業対策を整合性のある形で大臣として進めていっていただきたいというふうに思います。  さて、その次に移りたいのですが、同じ雇用問題でございます。  これから少子・高齢化社会ということで、二〇二五年には六十五歳が四人に一人というふうな状況になり、しかも人生八十年という時代に入ってまいりました。ここで私は、労働医学を専門にしてきた手前、やや形式的な定年延長とかそういうものについて、もう少しフレキシブルに考える必要があるのではないかという見解を持つ者でございます。つまり、どういうことが言いたいかといいますと、仕事の内容にもよりますし、それから六十歳を過ぎてまいりますと、いわゆる身体的な健康度、あるいは身体能力、あるいは精神的な能力、こういったものについて、これはもう医学的に個人差が大きくなるということが明らかになっております。つまり、いわゆる従来の労働年齢の就業の範囲内であれば、もちろんこれは個人差はありますけれども、そこが余り大きくない。しかし、高年齢になってまいりますと非常に個人差が大きくなるのです。  そういうことになりますと、業種と一人一人の働く労働者のマッチングがかなりミスマッチする場面も出てくる。しかし、例えば七十歳まで働けるというふうな職場もある、そういうふうに、これからの高齢化社会を考えたときに、個人差を配慮したシステムといいますか、これは年金でもそうですし就業の場の確保にしてもそうだと思うのです。また労働時間にしても、当然高齢になってくれば週四十時間労働制というふうなものは極めて耐えがたいものになってくる。  そういう状況もございますから、そういうことを配慮しますと、やはりこれからいわゆる年金やあるいは社会保険やそういったものとの整合性の関係で考慮するにいたしましても、六十歳以上はかなり選択的なシステム、つまり一人一人が幾つかの選択肢を持てるというふうなシステムを私は導入すべきではないかというふうに考えるわけです。それが六十歳なのか六十五歳なのか、これは研究の余地が残されております。しかし、私は六十五歳の画一的な定年延長というのは、いろいろな多様な職場がございますので、やや無理があると思うのですね。  そういうことから、そういう選択的なシステムが、私の今の直観は確固たる意見にまだ固まってはおりませんが、六十歳のところから年金にしても選択的な年金の選択ができるというふうなシステムがあってもいいのではないか。そしてまた、就業形態も労働時間を短くして、そしていわゆる一人一人の労働者職業能力開発の場を提供して、いわゆる高齢者の特性を生かした職場というものを開発していく、就業する場所を確保する、そういうことが必要になってくるのではないかと思うのですが、まず基本的なところで、そういうふうなことに対する労働大臣の御見解を例えればと思います。
  103. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生の医師としての御経験に基づいた貴重な御意見であろうかと思います。しかし、制度、法律というのは一種のある程度割り切りでできておりまして、例えば十八歳とか二十歳とかという。では、十八歳の場合に十七歳三百六十四日はどうで十八歳プラス一日はどうだという議論は、これは必ずあるわけでございます。だから六十歳がいいか六十五歳がいいかは、もちろん医学的な立場からも今後いろいろ御意見をお聞かせいただきたいと思いますが、例えば六十歳にして、あと減額年金をもらいながら働いていくという方と、いや年金だけで暮らす方は年金は減額せずにいく。そして、いや自分は退職金も六十歳でもらわずに六十五歳までやっていきたいという方がこれからは当然出てこられるし、またそれに対応するような政策をつくっていくというのは、将来の方向として私は当然そうなると思います。  ましてや、長寿社会を迎えて、しかも若年労働者が少子社会で非常に少なくなったら、申しわけないのですけれども、いや応なく六十五歳スタートにせざるを得ないのじゃないかというふうに私は思っておるのですが、六十歳と六十五歳というのは、平均的にいうと、医学の見地からごらんになって、そんなに大変な激変の時期なのでございましょうか。むしろ私の方が教えていただきたいと思っておりますが。
  104. 中桐伸五

    中桐委員 その場合には前提条件があると思うのです。つまり、現在の職場の中で、その状態を想定しながら六十五歳まで画一的に引き上げるということが非常に無理があるのではないか。まあそれはこの後の質問のところでも述べる予定なのですが、時間が余りありませんから、関連しますので、そういうところも触れながらいきたいと思います。  今まで日本社会を大きく規定してきたいわゆる開発主導型、つまり経済成長というものに追いかけられるというか、そこを、低成長になったらピンチだという形で、昨年よりはことしはこれだけ成長する、しかし、パイはどんどん大きくなっているわけですから、一九七〇年代の成長と同じパーセントであっても巨大な成長をしているわけで、そこらあたりをいわばそろそろ転換しないといけないのではないかというふうに思うのですね。  そうなった場合に、いわゆる企業社会の中に位置しているこれまでのあり方、あるいは別の言葉で言うと働き方というか、そういうふうなものをやはり二十一世紀、成熟社会への転換をするために変えなければいけないのではないかと私は思うのですね。そのときに、今のいわゆる企業社会に位置している、別の言葉で言うと社会的な機能を果たしている、その中に例えば家族の崩壊みたいなものもあるし、労働時間、これは鋭意努力をされて時短が進んではきておりますけれども、まだまだ不況になってくると時短はそっちのけでというふうな話になってくる。  そういう意味でいくと、もちろん私は経済成長をするなとか雇用はどうなってもいいとか言っているわけじゃないのです。つまりワークシェアリングをするなりいろいろなことをやって、いわゆる企業の持っている社会的な位置というのは非常に大きいからその社会的な機能を変えないと、これから少子・高齢化の中で、例えば子育ての問題にしたって高齢者のケアにしたって、そういう問題にもう十分対応できる、それを全部何か商品で買っていくとかサービスで全部買っていく、そういうものからもうちょっと社会的な、ともに支え合うというか、そういうゆとりの中でやっていかなければいけないし、それから、いろいろな国民の個性を多様に生かしながらコミュニティーというものをつくっていかなければいけない。  そういうふうに考えたときに、今の職場のあり方をそのままにしながら六十五歳というのは、やはり余りにも無理が生じてくるのではないか。だから私は、労働省は、相当強力ないわゆる就業の場を確保し、そして、いわば年金をもらったりあるいは福祉サービスを十分充実していただければもう雇用に吸収されなくてもいいというふうな状態ではなくて、つまり、年金を早くもらいたい、今まで一生懸命働いてきたのだから後はもう年金生活に移行したいというふうなところへインセンティブが働くのではなくて、むしろ、高齢者高齢者の個性を持った、高齢者が自立した社会参加をずっと続けていって、生きがいもあり、それなりの所得、プラスアルファの所得があって、そこから社会保険料も出したり堂々と社会の一員として参加していく、そういうことが日本はまだできると思うのですね、これはキリスト教文化のところでは随分シフトが難しいところがあると思いますけれども。しかし、大量消費社会にあって、今の若い人が果たしてどういう選択をするかというのはこれはまた未知数のものがありますが、少なくとも今の高齢者はそういうことを受け入れ可能な考え方というものを持っているのじゃないか。  そういう意味で、私は、今そういう新しい二十一世紀の高齢者の生き方というものをつくるに当たっては、やはり新しい雇用の場を確保しながら、年金システムに全部依存しないでいけるような、そういう活力あるというか明るいというか自立しているというか、そういうものを目指したらいいのじゃないかというふうに思っているわけなのです。そういう意味でいうと少し検討が必要だと思いますので、六十歳と六十五歳でどう違うかというふうなことについてもぜひ労働省の方でも検討をしてもらえればというふうに思います。  そこで、ちょっと関連しての話なのですが、今さっき、企業のあり方が社会の中でどのように変わらなければいけないのかということで、問題をそちらの方に移したいと思うのですが、その中で私が非常に問題にしたいのは、今、労働法体系でいきますと、いわゆる基準法というものを基本にして、職場の憲法ともいうべき基準法というのがあって、それ以外は大体労使自治で運営していくという形がシステムとしてあるわけですね。  ところが、そのシステムからカバーされない職場というのが相当出てくる。つまり、例えばパートでいえば、労働組合に入っているパーセンテージは、労働省調査によれば四%ぐらいしかない。全体の労働者でも四人に一人を切っているわけであって、そういうことからいうと、個別的な労働問題にどう対処していくか。できるだけ、ほとんどすべての労働者をカバーできる、例えば紛争処理にしてもそうだし、それからもう一つ、もっと積極的にいえば、今までの基準局、監督署を基本にする労働基準行政から、もう少し企業社会的なルールを持ち込めるシステム、つまり第三者が入った行政委員会方式の、紛争処理だとかあるいは社会的ルールを企業は守ってくださいと。  つまり、労働時間を短縮するという数値目標をルール化したらそれをちゃんと守ってくださいというときに、いわば労働基準行政を基本とするものの中に、それと関連性を持たせて、つまり、第三者、企業社会に生きている人ではない人もそこに入ってもらって、あなた、こんなことじゃ社会は成り立ちませんよと。つまり、子育てや高齢者介護やいろいろなものをコミュニティーとしてやらなければいけない、そのときに企業は、自分の利潤追求、企業存続のためのことばかり考えてもらっては困るよと。それから、例えば環境の問題にしても、コミュニティーどころか、いわば地球的な規模で問題になるような価値観を導入してもらわなければ困るよと。  そういう個別的な紛争処理にしろ、社会的ルールとして決めたそのルールを、これは社会的に必要なルールなのだから、企業社会の労使の中だけで話し合っているだけではだめですよ、それはもちろん重要なのだけれどもだめですよというふうな意味で、私は、そこに第三者的な、第三者を入れた社会的な価値観をもって企業を見る、そういう仕組みというのが要るのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  105. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生お話をずっと伺っておりまして、私は、将来の方向として大体意見を同じゅうするものでありますが、特に今御指摘のように、労働の流動性が増したり働き方が多様化していきますと、いろいろな個別問題が起こってくると私は思います。  そこで、私はまだ実はこれを正式に受け取っていないわけですが、労働基準法の見直しに関しまして、中央労働基準審議会が昨日、関係部会の報告を受けられて御審議をなすっているようです。その中で、将来的に、都道府県労働基準局に民間の、まさに今先生がおっしゃったような、適切な人材の参画を得て、紛争と言うとあれでしょうが、労使問題に対して助言を与えるようなものを創設したらどうかというようなことは含まれているようでございます。  そこで、三権分立の日本国憲法のもとにおいては、行政あるいは私人間のいろいろなトラブルには最終的に司法がこれに対する一つの判断を示すことになっておりまして、これがどのような法的性格を持つかということはちょっと慎重に検討させていただきたいのでございますが、方向としては、審議会も先生と同じような意見を共有しておられるということを、私、きょう先生お話を伺ってよくわかりました。
  106. 中桐伸五

    中桐委員 そういう方向性でさらに私も検討を加えていきたいというふうに思っております。特に社会的ルール、紛争処理はもちろんですが、社会的ルールづくりというものをした場合に、それをどういうふうにチェック、評価、コントロールをしていくかという点で、私は、労働基準行政と両輪でもいいですが相互連携をとりながら、行政委員会というふうなもの、独占禁止法の公正取引委員会みたいなものを私はイメージしているのですが、そういうふうなもので新しく二十一世紀の成熟社会のルールとコントロールをやっていくべきじゃないかというふうに思っておりますので、ぜひその辺はまた今後の議論で深めていきたいなというふうに思っております。  次に、今大臣の方からも雇用の流動化ということの中でいろいろな働き方が出てきておるわけですが、その中で、人材派遣業の問題とか、まあ労働者派遣業ですね、労働者派遣事業とかあるいはパート労働者の問題が非常に重要な要素になってきている。就労人口の、労働者の中のもう二〇%近くがパート労働者というふうになってきておるようでありますから、そういうことから見ても、また組合の組織率は四%というふうな状況でございますから、パート労働やあるいは派遣労働の内容というもの、これに対してどのような社会的ルールというものを導入し、適正な労働条件を確保していくかということは非常に重要になってくるだろう。規制緩和は大胆にやりながら、そういうものに対する有効な社会的ルールと、それをコントロールするということとを両立させなければいけないだろうと私は思っているのです。  そこで、これは読売新聞なんですが、これはまだ会計検査院から正式な報告がないのでありますが、これは十二月の十何日に最終的にオープンになるということなんですが、派遣業で、本来事業主が支払うべき社会保険料が五十四億円未納である、そして会計検査院が調査した三千九百業者の四割が未納だというふうな状態がございます。これは正式に発表されていないのですが新聞記者が調べて記事にしたようであります。これはいずれ発表されると思うのですが、正確な数字かどうかはさておきまして、相当これは問題ではないかというふうに思うのですね。  いわば雇用が流動化してくる中での社会保険の問題やらあるいは雇用保険の問題やらそういったような問題をどのように考えるかということは非常に重要だと思うのですが、こういう事態に対して労働省はどのように対処されようとしているのか、お伺いしたいと思うのです。担当で結構です。
  107. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 労働者派遣事業におきます社会保険の未適用問題でございますが、御指摘のように、派遣労働者に係る社会保険の適用につきましては、会計検査院の調査によってその社会保険料の未納付が指摘されているところでございます。この未納付の問題については、基本的に、現在の社会保険の関係法規に基づいてきちんと処理されるべきものであろうというふうに考えております。  また一方で、派遣労働者の就労実態を見ますと、二カ月間継続して就業した者は当然適用対象となるという現行の社会保険の運用に関して、短期間の就業を断続的に繰り返す登録型の派遣労働者の就業実態にそぐわないのではないか、こういう意見もあるところでございます。  労働省といたしましては、これまでも、派遣労働者の就業実態に即した社会保険の運用ができないかというような点について厚生省と協議もしてきたところでございますが、今回提出される会計検査院の検査結果を踏まえまして、さらに関係省庁とお話をしてまいりたいというふうに考えております。
  108. 中桐伸五

    中桐委員 ちょっと時間がなくなりましたので、この点などについては次回の質問の中でまた議論したいというふうに思うのですが、いずれにしましても、雇用流動化が起こってきている中で、今までのシステムを変えないとこういう事態は解決できないのではないかというふうに思うのですね。  例えばパート労働の問題にしても、税制の問題もございますし、国民生活白書、経済企画庁が出しましたものの中にも、やはり年収の百万円のところでいわば雇用が、女性の労働者社会参加が抑制されるというふうなこともあって、これまでの税や社会保障の制度を見直す必要があるだろう、再検討しなければいけないということを言われていますから、この点、今後また議論をしたいというふうに思います。  最後に、じん肺の問題について、どうしてもという要望が強かったものですからお聞きしたいのです。  まず、じん肺は、依然として非常に重要な職業病、非常に古典的であり、かつ今日もなお重要な職業病として引き続き問題になるところなんですが、これは医学的には治療法がないということですから特に深刻なわけであります。この問題に対して、もちろん予防が第一なんでありますが、しかしながら、依然として粉じん作業労働者は全産業で三十七万八千人強ございますし、非常に重要な問題になっております。  そこで、じん肺という認定を受けた者が一級、二級の障害の場合には介護補償給付制度というものが適用されるということになっておるのですが、これについてどのような実態になっており、介護補償給付を受けたじん肺患者がいるのかいないのか、もしいないとすればどういうことになるのか。これは、私のところに要望があったある団体からの意見では、まだ受けた人はいないというふうな報告があるんですが、これはどういう実態になっておるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  109. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 じん肺患者のうち介護補償給付を受けておられる方でございますが、平成八年度末で百五十八人の方がこの介護補償給付をお受けになっておられます。  それで、私ども、じん肺患者の方で介護補償給付の受給資格を持つ方につきましては、昨年の四月からスタートいたしましたこの介護補償給付につきまして、全員にパンフレット等お送りしまして、この受給について御案内を申し上げておるわけでございますが、御指摘のように、もし至らない点があれば、さらに引き続きこういった周知につきましては万全を期してまいりたいと思っております。
  110. 中桐伸五

    中桐委員 これは、固有名詞を出さないでもいいかと思いましたが、じん肺患者同盟というところから私のところへそういう要望がありまして、これは十分周知徹底ができていないんではないかという意見が実は寄せられているんですが、ゼロではなくて百五十八人という受給者があるというふうなお答えですね。はい。じゃとりあえず、まだできたばかりでございますから、やはり周知徹底をよろしくお願いしたいなというふうに思います。  それからその次に、じん肺患者が傷病補償年金へ移行する期間が、一年六カ月で移行できるわけなんですが、それが三年なり五年なりあるいはもっと長い期間を経て移行するというふうなことがあって、そこにどういう問題があるのかなということで、ぜひその実態を労働省に聞いてくれという御要望がございました。その点について、もしデータがあればお教えいただければと思います。
  111. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 ただいま、じん肺患者の方が傷病補償年金へ移行する場合、その実態等についてでございますが、先生御案内のように、この傷病補償年金は、じん肺に罹患されてから一年半経過した日以降、一定の障害の等級に該当した場合に支給されるわけでございます。したがいまして、まだそういった症状進行過程にございましてそういった障害等級に該当するに至らない場合は、一年半経過した後でも、その該当した時点から移行する、こういうことになりますので、ケースによりましては、そこまでの間、一年半を超えてある程度の期間がかかっている場合があろうかと存じます。  それで、私ども、第一線の労働基準監督署には、そういった障害等級に該当して移行できる場合には速やかにその移行手続をとるようにかねてから指示をいたしておりますが、もしそういった点で、障害等級の認定の手続等で時間等を要しているケースがあれば、私ども、さらにそういった速やかな事務処理については指導を徹底してまいりたいと思っております。
  112. 中桐伸五

    中桐委員 ぜひその点検等もいただいて、速やかにそういうケースであればやっていただきたいというふうに思います。  最後に、じん肺の管理区分というのがありまして、その管理区分が四、いわゆる最も重症の段階ですね、この段階になりますと、肺がんという合併が認められていて職業がんという形で位置づけられるというふうに通達が出されているというふうに私は認識しております。  しかし、最近の研究によりまして、管理二と管理三の段階でも、例えばイギリスの社会保障省ですか、ここの報告、勧告などを見てみましても、ただしこれはけい肺、シリカというものに関する報告でございますが、これによりますと、レントゲン所見で一の一、これはちょっと非常に専門的になるのでここでは余りその一の一が問題ではなくて、つまりじん肺所見があれば、その一の一という程度の所見が認められるじん肺については、管理四という段階ではなくても、肺がんがシリカの場合はその因果関係が認められる、そういう勧告をしているんですね。  そういうこともございますので、そこらあたりの今日までの労働省の検討の現状と今後の対処の方法をお聞きしておきたいと思います。
  113. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘のじん肺と肺がんの関連でございますが、じん肺と他の合併症の因果関係でございますが、例えば肺結核とか続発性の気管支炎とか、そういったふうに広く因果関係が医学上認められておる合併症もあるわけでございますが、御指摘のございました肺がんにつきましては、そういった因果関係について一般的に、あるという医学的知見がまだ存在しないのが実情でございます。  ただ、この管理区分四という重症の方につきましては、実際上、がんの早期診断が困難であるとか治療範囲が狭められる、あるいは予後がよくない、こういったことから医療実践上大変な不利益をお受けになるわけでございまして、そういった管理区分四の方については肺がんについても業務上の疾病として取り扱っているところでございます。  が、先生指摘ございましたように、WHOの下部機関でございます国際がん研究機関におきまして、けい肺の原因物質でございますシリカにつきまして、がんとの関係におきましての評価がえが行われたという大変重要な情報を私どもも承知いたしております。したがいまして、これは昨年の十二月でございまして、私ども、それが一体どんな研究なり医学的知見に基づいて行われているのか等々、現在資料の収集中でございまして、そういったものを、これから国内の専門家の方にいろいろ判断を、また研究をしていただくための今準備を重ねておるところでございますので、そういった点も私どもの取り扱いの過程でどう対処していくか、早期に対応を固めていきたいと思っておるところでございます。
  114. 中桐伸五

    中桐委員 時間が参りましたので終わりますが、ぜひその検討、諸外国の今言ったようなことも含めて、ぜひ早急にお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  115. 玉置一弥

  116. 松本惟子

    松本(惟)委員 民主党の松本でございます。  国内関連のさまざまな問題が質問をされておりました。私は、別の角度から一つ問題提起をさせていただきたいと思います。  それは、朝からるる言われておりました、国境を越えて人や物が動き始めて、そのことにかかわる従来システムが対応できなくなってきて、新しい仕組みをつくりかえていかなきゃいけないというような問題が私どもの現実に横たわっていると思いますが、もう一つ、視点を変えて、国内からだけではなく国外から見た場合に、国際公正基準、つまり労働者の人権を保障するという立場からの国際公正基準のあり方が改めて問われているのではないかというふうに思います。  そこでまず、我が国のILOの批准の状況について、どんなふうになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  117. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 ILOにおきましては現在までに百八十一の条約が採択されておりますが、我が国はこのうち四十二の条約について批准をしております。  最近の例で申しますと、平成七年に第百五十六号条約、これは家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇の均等に関する条約でございますが、この批准を行っているところでございます。
  118. 松本惟子

    松本(惟)委員 時間がありませんので先に進ませていただきますが、全体の中での割合は今伺ったとおりでございます。  OECDの中において日本がどういう位置を占めているのかというのを、私は事前に労働省からお伺いをいたしました。九六年の十二月末で、OECD加盟国の条約批准の平均が六十六であるのに対して、日本は、比率からいいますと下から六番目になっている。経済はこれまで大変元気よく走ってきましたけれども、国際公正基準についてのルールづくりへの参加というのはそんなに積極的ではないのではないかなというふうにこの数字から伺うことができます。  批准の少なさにつきましては、かねてからこの労働委員会でも指摘をされてまいりましたし、歴代の大臣も、改善努力の必要性をたびたび強調されております。条約批准の積極的な取り組みが必要であるとの答弁も繰り返されているところでございます。  条約の批准に際しては、国内法の整備というものが必要である。特に、我が国におきましては、厳密に、慎重にそういった作業を進めた上で対処をされてきているということを、私は十分承知をしております。それにしても批准の度合いが極めて低いということを指摘させていただきたいと思います。最近では、先ほどお答えにもございましたように、百五十六号条約、つまり男女労働者の家族的責任条約が批准されたのが平成七年でございます。以来、条約の批准の動きはとまっているかのように見えます。全く見えない。  速やかに、積極的にILOの条約について批准するように政府を挙げて取り組むべきだと思いますが、この点につきまして、労働大臣、いかがでございますか。
  119. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先生はもうすべて御存じの上で御質問になっておりますので、私がるる申し上げるまでもありませんが、やはり主権を持っている国にはその国固有の法律というものがあって、その法律との整合性を考えながら、今御指摘のように、日本はそのあたりを割に律儀に、厳しくやってきているのじゃないかという感じが私はいたします。  アメリカやカナダはまだ十五本ぐらいの条約しか批准していないと思いますが、ヨーロッパ諸国においては、御指摘のように、非常に高うございます。  今の御指摘を踏まえて、国内法的なものを見直して日本社会の運営に支障がないかどうかも考えながら対処をさせていただきたいと思います。
  120. 松本惟子

    松本(惟)委員 国内法との整合性については先ほど私も申し上げましたとおりでございますが、条約の採択のプロセスにも我が国は積極的にかかわってきているわけでございますので、慎重に速度を速めていただきたいということを申し上げたいと思います。  もうちょっと追加いたしますと、OECDの中で日本の本数が四十二本ということに対して、スペインが百二十五、フランスが百十五、イタリアが百二、ノルウェーが百というような状況であります。  よくドイツが引き合いに出されますが、七十五本やっているわけでございますので、たくさんある条約の中から接近できるものを選んで接近をさせていくということが、国際的な連携の中では私はやはり大変大切な責務の一つではなかろうかというふうに思います。ドイツと比べて、そこへ接近するためには、ドイツがとまっていると仮定いたしまして、日本が二本ずつやるとして十五年もかかってしまうというようなことでございますので、機械的にお話をするつもりはないのですが、ちょっと数字を引き合いに出させていただきました。  次に、具体的な問題提起をさせていただきたいと思うのですが、WTOの中で、随分これは議論が長いことかかって、途上国と先進国の意見がどうしても一致しなかったのでございますけれども、貿易の波が国境を越えてどんどん動いていく中で、特に、働く人の人権にかかわる基本条約、ILOの全体の中から、四つのエリア、そして七つの基本的な条約に限って批准を進めていこうではないかという議論が繰り返し行われておりました。  聞くところによりますと、WTOの閣僚会議の宣言で、そのことがようやく取り入れられまして、中核的な労働基準というふうに呼ばれて、そして、来年のILOの総会では、このための、つまり批准を促進をする方向での宣言を検討される、多分採択をされるであろうというふうに思いますけれども、そういった模様が一方ではある。  それから、同じく、その中での特に大切な問題として、児童に対する最低年齢、つまり子供を強制的に国際貿易の道具にしてはいけないという観点から、就業の最低年齢に関する条約の批准については、百三十八号というのがございます、これはまだ日本は未批准であります。  これに加えて、特に耐えがたい労働に従事をさせられている子供に対する就業の禁止、もちろん就業を禁止するだけではなくて、生活の手だてだとか通学だとか就学だとか、そういった裏づけを持って検討されるものと思われますが、これらは新しい条約の採択でございます。その新しい条約については、日本ではなくて開発途上国にターゲットを置いて検討をされるものと思われます。  したがって、日本としては、特にアジアを見た場合に、児童労働のかなり多くの部分がアジアにあるということでございます、ODAでの国際協力あたりも大変大事だと私は思いますけれども、まず、みずからの足元で、この基本となる条約七本の中の児童労働の問題に我が国が接近をし、国内法をもちろん検討をして、接近をしていかなければならない、そして批准の準備をしていかなければならないと思っています。  この百三十八号をよくひもといてみましたところ、日本の場合は、珍しく政労使が一致して賛成をして成立をした条約であるということもございます。それで、いまだに批准をしていない。採択されてからもう大分なります。二十年が経過しておりますが、それはなぜなのか、理由は何なのかということを伺わせていただきたいと思います。
  121. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 御指摘のございましたこの百三十八号条約、就業の最低年齢に関する条約でございますが、この我が国の国内法制との関連を見てみますと、やはり大きいのが具体的な年齢についての規定ぶりでございまして、一つは、就業の最低年齢は、義務教育終了年齢及び十五歳、これを下回らない、こうなっておるのが条約の方でございますが、労働基準法上においては現在、満十五歳、こうなっている。その辺の関係が、果たして国内法制の整備を要する問題であるかどうかという問題がございます。  また、健康や発育に有害とならない軽易労働に関する最低年齢の方でございますが、条約では十三歳となっておるわけでございますが、現在の労働基準法は十二歳となっております。  そのほか細部について、国内法制との整合性について研究すべき課題が幾つかございますので、そういった点について鋭意検討を詰めておるところでございます。
  122. 松本惟子

    松本(惟)委員 質問の時間がもうなくなってまいりましたけれども、ただいま、十五歳とそれから十三歳、十二歳でしたか、ということが一つの障壁になっているというお話でございました。  伺いたいと思いましたのは、それだけなのでしょうか。それだけでよろしいのですね。
  123. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 主要な相違点は、その二点かと思っております。
  124. 松本惟子

    松本(惟)委員 また続いてこの点についての議論をさせていただきたいと思いますけれども、差し迫っております来年のILOの総会に向けまして、積極的な御努力をされますようにお願いをして、質問を終わりたいと思います。どうもありが とうございました。
  125. 玉置一弥

    玉置委員長 次に、大森猛君。
  126. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  私は、まず最初に、きょう議論になっておりますけれども、長引く不況やリストラ、合理化などで失業率が過去最悪の水準になっているのに加えて、山一証券や北海道拓殖銀行など金融機関破綻雇用不安に拍車をかけている、こういう中で、経営者と関係業界、政府は、雇用者の労働と生活を守る責任を果たすべきだ、この点をまずお伺いをしたいと思います。  きのうは山一証券等雇用問題連絡協議会の初会合が開かれました。山一証券の自主廃業、破綻で、正社員七千五百人、契約社員二千数百人、関連企業の二千数百人と、一万数千人もの労働者雇用が危ぶまれております。これらの労働者は、経営側から何の説明もなく、山一廃業の報道があった朝、上司から電話で知らされたと言います。数百人に上る就職内定者も、突然の取り消し通知だけで失職した形になっております。家族を含めると三万人以上が被害を受ける大規模なもので、極めて深刻な影響があらわれていると思います。  金融機関経営破綻とそれが引き起こしている雇用不安、これは山一証券にとどまらない。三洋証券などの証券各社、さらには徳陽シティ銀行、地方銀行などにも広がっている。北海道拓殖銀行の場合も、北海道以外の譲渡先は未定、しかも、道内の支店は北洋銀行に譲渡されても、再雇用の人数は決まっていない、全員の雇用が保障されるわけではない。日産生命の破綻で職を失った労働者の問題も、これも未解決のままであります。  山一証券の経営破綻、これはバブル期の乱脈経営に加え、暴力団との取引や総会屋への利益供与、いわゆる飛ばしなどの違法行為等々、資本主義社会でも守るべき当然のルールを無視した経営が生み出したものということは明らかだと思います。しかも、こういう乱脈かつ不正な経営が、山一証券だけではない、業界最大手の野村証券を初めとする各証券会社も手を染めている。さらにはメーンバンクとなっている銀行もその責任は免れることはできない。これら証券会社や銀行の経営を監査、監督していた政府、大蔵省の責任も大変大きいものがあると思います。  こうした金融機関経営破綻が生み出した深刻な雇用問題、これは当該企業はもちろん金融業界全体と政府が全責任を持って解決すべきではないか。証券業界や大銀行などの金融業各社は、現在も膨大な内部留保を持っている、ため込んでいるわけであります。山一証券を含む四大証券だけでも約三兆円、山一証券のメーンバンクである富士銀行は一兆二千五百億円以上も内部留保をため込んでいるわけであります。したがって、一般投資家の保護や労働者雇用問題を解決する力を持っているのだ。  各企業グループや関係業界全体、政府の責任で、関係する労働者雇用と生活を守るのは当然であり、また全責任を負うべきだと主張する根拠もここにあるわけであります。その責任を放棄して、犠牲を一般投資家と労働者だけに押しつけるばかりか、国民の税金である公的資金を金融機関に投入するなどは、犠牲者を助けるのではなく加害者を助けるものと言ってもこれは過言ではないと思います。  大事なことは、こうした金融機関破綻が広がっているもとで、政府や自民党などが、日本版金融ビッグバンといって、内外の巨大金融機関の横暴を一層野放しにするような全面的な自由化を進めようとしていることであります。証券業界では、二百八十社前後の証券会社を三十から四十程度に再編し、整理、淘汰しようというものであります。現在十一万人近くいる証券労働者を五万人程度に一気に削減する、そういうものがさらに進められたら、雇用不安、これがますます拡大していくことになるのではないかと思います。  こういう中で、先ほど、私ども日本共産党も、この証券関係の労働組合でつくる全証労協から陳情を受け、懇談も行いました。その中でも伺ったのですが、最近、労働大臣あてにも要望書を出されたそうでございます。  そこで、これは緊急でもありますので、こういう全証労協、関係の労働組合からの陳情について、大臣は既に御承知かどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  127. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 山一証券を初めとした金融機関の問題でございますが、私どもといたしましては、金融機関等で業務継続が困難となった場合につきまして、これはそれぞれの企業がその従業員の雇用問題について最大限努力をすることは当然基本である、あるいは必要であると考えておりますが、政府といたしましてもこの雇用問題の発生を最小限にとどめるために適切に対処しておる、こういうふうに考えております。  このため、当該金融機関状況を十分把握するとともに、関係省庁等とも連携をとりながら、従業員が離職を余儀なくされるような場合にあってもできる限り失業しないで円滑に再就職できるよう、そういう支援を行ってまいりたいというふうに考えております。  ただ、金融機関等の状況につきましても、これは大臣お答え申し上げておりますが、態様もさまざまでございまして、山一証券のように自主廃業というような非常に厳しい形のもの、あるいは三洋証券のように会社更生法の手続中であって、これは諸般の事情をよく見きわめなければならないもの、あるいは北海道拓殖銀行等の営業譲渡という形で問題が顕在化しているもの、形もさまざまでございますので、そういう状況をよく見ながら必要な対策最大限とっていく必要があるというふうに考えております。  この前お会いしておりまして、組合からの要望、こういうものも十分踏まえて、できることは最大限努力してまいりたいというふうに考えております。
  128. 大森猛

    大森委員 この労働組合が申し入れをされたのが十一月二十六日で、ほぼ十日前になるわけなんですが、先ほど申し上げたような本当に切実な声を持っている関係労働組合の皆さんの声が大臣の耳に届いているかどうか伺ったわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  129. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今職業安定局長が申しましたような基本線に沿って、御意見を労働省にお持ちになり、担当者がお目にかかった内容については、私は伺っております。  しかし、当該責任はまず経営者にあるわけでありますから、山一証券の経営主体と話をし、情報を十分我々に提供すべきことという前提で協力すべきところは協力していくということを山一に申し上げたところであります。
  130. 大森猛

    大森委員 経営者にまず第一義的な責任があるのは当然のことでありますけれども、しかし、問題は、それがこういう乱脈経営を起こした経営者であるということであって、だからこそそういう面で労働省の積極的な指導等が必要だということを申し上げているわけであります。  労働組合の要望とも関連して、これに関してもうちょっと立ち入ってお聞きをしておきたいと思うのですが、先ほど申し上げました山一証券等雇用問題連絡協議会、これは、伺いますと、対象が山一証券及び関連企業等ということで、大変限定されたものになっております。金融機関の今の雇用不安の問題はこれにとどまらない、今後さらに拡大されることが予想されるという意味で、これは破綻した一連の金融機関全体を対象にすることが必要ではないか、この点が第一点。  それから、賃金、退職金、一時金などの労働債権確保を最優先するよう各企業を指導するということ。そして、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行など経営破綻が明らかとなった金融機関と関連企業労働者雇用確保について、各企業グループ内での雇用確保を含め、緊急に具体的な対策を明らかにさせる等、これらの点についてもうちょっと突っ込んだ御答弁をお願いできないでしょうか。
  131. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 先ほど来御答弁を申し上げておりますように、我々は国民からお預かりをしている雇用保険を使い、あるいは国民からの税金をいただいて仕事をしているわけでございますから、できるだけ仕事は効率的にしなければなりません。  そこで、今委員がお挙げになりましたいろいろな金融機関証券会社等についても、御承知のように法律の態様はすべて違います。三洋証券は、会社更生法によって会社の存立を前提に今作業が進められているんです。それから、北拓は、営業譲渡という形で今後の企業あるいは仕事のやり方を考えておるわけですから、これは営業譲渡に伴ってどれだけの人がついていくかということをまずはっきりさせねばなりません。  ところが、山一の場合は、残念なことに自主廃業ということを前提にすべての作業が進んでおるということは、いずれ清算業務が終わったら会社がなくなるということです。これはほかの企業とは全然違います。したがって、我々は、山一を助けるなどという気持ちでやっているのではなくて、会社がなくなる、しかもそこに御指摘のように一万人の人たちがおられる、またその御家族もいらっしゃるという前提で作業をしているわけでございます。その点はひとつ誤解のないように御理解をいただきたいと思います。
  132. 大森猛

    大森委員 誤解はしているわけではありません。当然、破綻に至った理由は本当にさまざまあると思います。しかし、共通していることがあると思うんですね。つまり共通しているのは、労働者には責任がないということだと思うんです。そういう意味で今雇用不安、特にさまざまな業種の中でそれが一層拡大している、またおそれがある。こういう金融機関関連の雇用問題について、先ほど申し上げましたように雇用問題連絡協議会、これを山一だけに限定しないでさらに今後は拡大もあり得るんじゃないかと思うんですが、その点さらにもう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  133. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 何度も申し上げておりますように、今先生破綻に至る理由はいろいろあるとおっしゃいました。それはいろいろあります。しかし、これから会社がどのような形になっていくかという形態について法律的にいろいろあるということを私は申し上げているわけです。したがって、もちろんその他の金融機関証券会社等についても必要な措置があれば直ちに必要と認めた時点で対策は講じます。しかし、破綻に至った理由がいろいろあるのは当然でございますが、雇用が今後維持されていくかどうかという道がいろいろあるということを申し上げているわけです。
  134. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 補足いたしますと、ただいま御指摘の点でございますが、山一証券については本店が東京にありかつ自主廃業、非常に規模が大きい、そういう状況がありまして、今回山一証券等連絡協議会、これは「等」がついておりますが、ということで発足いたしておるわけでございますが、例えば北海道拓殖銀行、これは北海道中心でございまして、現地で北海道あるいは関係団体等が参加する連絡協議会、こういうものを設置しております。それから徳陽シティ銀行につきましても、これは仙台でございますので宮城県その他で関係団体とまた連絡協議体制、こういうものをつくっております。  そういうことで、態様に応じ、かつ地域の状況に応じて、こういう雇用問題についての連絡協議体制を整えてそれぞれ対応するというふうな形で対策を進めているところであります。
  135. 大森猛

    大森委員 今の答弁にありましたように、必要に応じて、地域の状況に応じて必要な措置をとっていただきたいということを申し上げて、次の、昨日報告がありました労働基準法改定をめぐる問題についてお伺いをしたいと思います。  昨日の報告については、改善事項はごく一部あるものの、裁量労働制の対象業務の拡大、労働契約期間の上限の緩和、あるいは一年単位の変形労働時間制の限度時間と労働日、労働時間の特定、対象労働者に係る要件緩和、こういう方向が大変強く打ち出されております。  これらの中身というのは、労働者を保護すべき労働行政を私は根本から変質させていくものにつながる大変重大な後退を伴うものであると思います。例えば契約期間の問題、これはもう一言で言ったら三年たったら解雇できる。あるいは変形労働、一日の労働時間は会社次第。さらに裁量労働、幾ら残業しても八時間というような形につながっていくと思います。こういう項目については、これまでの経過を見ましても労働者の側から出された声ではない、要求ではない。日経連等初め財界から再三この間出されてきたものでございます。  今回の報告に至る過程で、行政機関と審議会の本来の関係、従来の関係をも超えて、この間これはもうさまざま報道されておりますけれども、諮問に当たってあらかじめレールを敷くかのような試案を示したり、あるいは最終段階でもさまざまな労働省からの働きかけも行われたと伺っているところであります。こういうようなこの間のいわば労働省のなりふり構わないやり方に強い批判も出ているところではないかと思います。  しかもこの間、日本弁護士連合会あるいは全労連、連合さらには各分野から強い批判の声が出されたわけでありますけれども、こういう声を審議会に十分に反映されるそういう努力もされなかったんじゃないか。こういうことを無視して、こういう方向で労働基準法改定をそのまま進めるということであれば、私は、労働省労働者の保護行政からむしろ産業保護行政に変わってしまうんじゃないかと強い懸念を持つわけであります。労働省五十年のその幕を閉じることになってしまうんじゃないか。  そういう意味で私は、労働基準法の改定に当たっては改めて労働者や関係団体等々の意見を幅広く聞いて、国民的な議論を起こす必要があるんじゃないか、そして本当にゆとりのあるそういう働きがいのある職場環境をつくっていく、あるいは労働条件をつくっていく、こういうことが必要ではないかと思います。  きょうの新聞の社説でも、例えば毎日新聞ですが、「ゆとり社会への遠い距離」「規制緩和による市場競争の激化は格差も拡大させる。働く人々への「保護」はさらに重要になる。にもかかわらず、今回の見直しは法律での「保護」という役割を薄れさせた。」こういう批判的な社説も掲載し、他のマスコミでも批判的な報道もしているところであります。  そういう点で、改めて私は、労働基準法の改定に当たっては広く国民的なそういう議論を起こす必要があるのではないか、こういう立場で、大臣基本的な所見をお伺いしたいと思います。
  136. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 まずはっきりさせておかねばならないことは、中央労働基準審議会の名誉のために申し上げたいんですが、公正な立場で御審議をいただいていると私は思いますし、また、労働省がこの審議会に対して、今お言葉のあった、私は繰り返すのはややいかがな言葉かと思いますので繰り返しませんが、そのようなことを労働省が公平な立場の審議会に申し上げたというような事実はございません。  ただ、いかなる労働組合であろうと、いかなる団体であろうと、そういうところが御意見をいろいろ御開陳になるのは結構でございますけれども、審議会というものは、そういうものを前提にされるかどうかは委員それぞれの御判断でしょうけれども、圧力とは別のところで、労働省とも別のところで公正に議論をしてもらうのは当然のことだと私は思っております。したがって、実は私自身はまだ、今先生がるるおっしゃったことについて新聞報道以上のことは存じておりません。担当局長から、昨日部会から中央審議会への報告があったということを伺っております。いずれこれは正式の建議として私がちょうだいするということでしょうから、その正式の手続を踏むまでに私がその内容あるいは審議のやり方について、今の、一方的と申し上げるとおしかりを受けるかもわかりませんが、御意見にお答えすべき立場にはないということを申し上げたいと思います。
  137. 大森猛

    大森委員 各界から出されるこの問題についてのさまざまな意見等については、今後も十分尊重していただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  こういう今回の報告の中で盛り込まれております有期契約労働の導入あるいは変形労働、裁量労働の拡大等については、これは既に現在も導入されているものもあるわけでありますけれども、その裁量労働にしろ変形労働にしろ、そういう中でさまざまな矛盾や問題点が今起こっている。このことをまず把握して、その中で労働者保護の立場から必要な是正を行うこと、これが今私は重要ではないかと思います。  この点で、その一つとして裁量労働制についてお伺いをしたいと思うわけなんですが、この裁量労働制については、八八年の労基法改正の際に導入をされたわけなんですが、当時の導入の理由として、労働時間の判定の困難性ということが挙げられたわけなんですが、そのもともとの理由があいまいにされ、今回の報告では「事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得るよう業務の遂行を労働者の裁量にゆだねていく」として、時間をはかることが可能ないわゆるホワイトカラーまでそれを広げようとしているわけであります。  労働時間は、労働法制上あらわれた最も古い労働条件だ、労働条件のいわば根幹にかかわる問題だと思うのですが、それをあいまいにするのが裁量労働制ではないか、そこから今さまざまな問題が起こされているのであります。  その二、三の例を挙げたいと思いますが、まず、三菱電機の神戸工場の裁量企画手当制度に関連して労働基準監督署が是正指導に入ったと伺っておりますが、その事実関係について若干簡潔に御報告願えないでしょうか。
  138. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 お話しの三菱の神戸工場での問題でございますが、私ども伺っていますのは、平成八年に、そういった労働基準法に違反している事実があるのではないかという情報を把握したために、その事業場について調査をした経緯がございます。時間外労働に対する割り増し賃金の支払いの問題でありましたが、その後、指導に基づいて自主的に改善されているというふうに伺っております。
  139. 大森猛

    大森委員 これは、裁量企画手当、そういう名称での制度のとおり、客観的には、事実上裁量労働にかなり近い形になっているわけですね。あらかじめ二十時間分の残業手当を支給して、ところが、それ以外の残業についてはなかなか申告しにくいという中で、今報告されたような時間外労働に対する割り増し賃金の未払い、いわゆるサービス残業が生まれたわけですが、これが裁量労働でなかったのは、当然、労働基準法上禁止されているからこれは裁量労働ではなかったわけです。  実際、これが事実上こういう裁量労働をねらったものであるということは、会社自身がそういうものを意識している、こういう説明もしたとか、あるいは日経ビジネスの九六年三月号、ここでこういう報道もされているわけです、労基法の壁があり、裁量労働制がホワイトカラーに導入できないために手当をつけたとなっていて、効果が上がっている。つまり残業代を抑えることに効果が見られると露骨に宣伝されているわけです。この工場では大規模なサービス残業の押しつけが行われていた。もともと導入した時点で、この工場の平均残業時間は五十時間から六十時間だったのに、この裁量企画手当なる残業時間枠を二十時間で抑えることができたということになるわけです。  裁量労働が労基法の関係でできなかったわけですが、労働者が申告して初めて労基署がこういう違法なサービス残業を摘発、是正指導をしたわけです。裁量労働ということであれば、これは労基法上明るみに出ないという性格になるわけですね。  これは、三菱の他の工場でも、組合のアンケートでこんな回答が出ているんですね。「二十時間を越える時間外申請の有無」、こういう設問で、「一度も申請したことがない」、これは五八・四%、大変な、六割近い人が申請していない。申請しない理由というのは、やはり申請したら査定に響くのじゃないかとか、とにかく申請しにくい、そういう状況にあるわけであります。  さらにこの三菱について、ある研究者の話を紹介しますと、今、学会での発表を前にしています、会社での研究や実験のほかに論文を書いたりと大忙しです、寝る時間を削って発表の準備をしている、土曜日はその準備のために六時間を充てた、自宅でです、日曜日もそれくらいしたというようなことをしている人でありますけれども、裁量企画手当は二十時間を超える残業は請求できることになっているけれども、実際には申請しづらい雰囲気だ、実際、私も含めてほとんどの研究者が請求していません、私も試算すると百五十時間程度になります、こんな仕事漬けの中でどうして自分の裁量で研究ができるのでしょうか、裁量労働が導入されればさらにひどくなると思いますと。  こういう高度の研究に従事している、つまり時間でははかれない労働者からもこういう深刻な意見が出されているわけで、結局、これは企業の時間管理の義務あるいは割り増し賃金の支払い義務を免除する、そういう性格のものではないかと思います。  この点で、担当の方の御答弁をお願いしたいと思います。
  140. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 ただいま御指摘がありました三菱のケースを例にとりまして、現在まだ建議前でございますが、審議会の方で議論されています方向の裁量労働制を論議することが適切かどうか、今段階で論じられないと思います。  ただ申し上げられますことは、実際、本社あるいは御指摘のような工場等においても、労働時間を本当で一日八時間、残業命令を出して残業をしてもらう、そういったきちっきちっとした形で一律に労働時間管理ができるかどうか、あるいは労働時間というもので労働者を評価していく、それだけでいいのかどうか、いろいろな形態の職場が多くなってきていることは事実でございます。  したがいまして、そういった事業場で、労働時間管理の困難さがあるがゆえにいろいろな工夫を事実上しているケースが確かにふえてきております。私ども、そういった実態をそのままにしておくことは大変問題がある。むしろ労働者保護を図るためには、労使の方に参加していただいて、労働時間を全体どう把握し、それに基づいてどういうみなし労働時間制を採用し、その方について健康や働き過ぎ防止のためのどんなルールを決めるか、それを実施要件とした裁量労働制でなければいけないのではないか。そういうことによって、御指摘のようなケースについても、事業主の方が一方的にそういったいわば労働基準法を形骸化させるような形でのルールを設定することはできない、新しい基本的なルールというものを設定して私ども重点的に監督指導していけば、そういった御指摘の懸念も払拭できるのではないか、こういう思いがあって、現在審議会の方でもいろいろそういう形で御議論がされているというふうに私ども承知いたしております。
  141. 大森猛

    大森委員 裁量労働の場合の一つの歯どめとして、労使の話し合いを最大の決め手の一つにされているようでありますが、今の裁量企画手当も労使合意のもとにやられているわけであります。ですから、本当に労働者保護という点でいえば、やはり大変危険な落とし穴がここにはあるということを申し上げておきたいと思います。  もう一つ関連して申し上げますと、時間が迫ってまいりましたので省略して言いますが、これは情報処理業を営むA社ですが、労基法三十七条違反の是正あるいは恒常的な長時間労働の解消が必要ということで指導に入った。ところがA社は、労働者代表と協定を結び、システムエンジニアを中心に裁量労働制を導入した旨を是正結果として報告してきた。裁量労働制によってみなされるA社システムエンジニアの労働時間は一日八時間、すなわち所定労働時間と同一となり、A社はたちまち年間千八百時間の年間実労働時間を達成した 時短優良企業となった。しかし実態は、極めて掌握は困難でありますけれども、それまでの一月九十時間にも及ぶ時間外労働があったような状況が変わっているようにとても見えないという報告が、これは現場からされているわけであります。  大体、一九八八年、国際公約とも言われております年間千八百時間の年間労働時間達成がもしこういう形ですべての企業で取り入れられたら、私は、これは虚構の公約達成ということになってしまうのではないかと、これは強い危惧を持つわけであります。  加えて、過労死の認定に当たっても、大変労働実態がつかみにくい、労働時間の管理掌握の法規が労働の実態の把握を極めて困難にする。そういう意味で、こういう過労死の認定についても、あるいは労働基準監督機関の権限も、それを発揮する上で極めて大きな障害になってしまうのじゃないかということを指摘して、もう一つ、変形労働時間、これとの関連で、今、公務員職場に持ち込まれております夜勤の超長時間、この問題で質問をさせていただきたいと思います。  まず、郵政省、きょうおいでを願っているのですが、郵政省で、一九九三年三月二十一日から新夜勤制度、こういう制度が導入されました。とにかく、十五時から始まって延々と十八時間五分に及ぶ、そういう新しい夜勤の制度でありますけれども、この制度が始まって今日まで、その新夜勤従事者の中で在職死亡された方はどのぐらいいらっしゃるでしょうか。
  142. 平勝典

    ○平説明員 お答えいたします。  どのような原因によるものであれ、職員が在職中に死亡する、亡くなるということは大変痛ましい、残念なことではございますけれども、事実として、先生お尋ねの、私どもはニュー夜勤と呼んでおりますが、新夜勤従事者の在職死亡の状況につきまして、これが導入されました平成五年度から数字でその状況を申し上げたいと思います。  全国でこのニュー夜勤の従事者は総数約二万四千人おります。その中で、平成五年度二十四人、平成六年度二十八人、平成七年度十七人、平成八年度二十人、平成九年度、今年度でございますが、つい先ごろ、十一月末日現在で四人となっております。  なお、これらについては一部調査中のものはございますけれども、がんで亡くなった方なども多く含まれておりまして、いずれも公務に起因した疾病によるものではないというふうに把握をしております。  なお、念のため申し上げておきますが、平成五年から導入されたそれ以前は、我々十六勤と言っておりますが、十六時間勤務ということで深夜帯の仕事をやっておったわけですが、この段階での状況も今申し上げた数字と大きく変わっておりません。したがいまして、このニュー夜勤を導入した後に在職死亡がふえているというわけではございませんので、念のために申し添えたいと思います。
  143. 大森猛

    大森委員 郵産労及び新夜勤の廃止を求める全国郵便職場連絡会の調べですと、これは全国のこのニュー夜勤をやっている職場の三分の一ぐらいらしいのですが、そこで三十四名となっております。個別にそれも書いてありますが、圧倒的に多いのが新夜勤明けの翌日もしくは翌々日、こういう実態になっております。  私も、このうちの二人、局に調査にも参りました、横浜集中局、藤沢局。特に横浜集中局の例というのは、もう大変悲惨なものです。とにかく新夜勤の四十一歳の主任が出勤しない。四日間所在が不明。出勤をしないということで事件になり、探したら自宅にもいない。よくよく探してみたら局の仮眠室のベッドで冷たくかたくなっていた。仙台でも、自宅で亡くなったのが四日目に発見されたようなケースが続いている。家族や皆さんにみとられないまま亡くなり、しかも出勤しないから不届きというような形で調査される中で初めて発見される。私は、これほど人間らしくない労働形態はないのじゃないかということを改めて今強く思っているところであります。  深夜の超長時間労働、これが生命や健康に大きな影響を与えるということ、これは現に、郵政省自身も「交替制勤務者の健康管理」、わざわざこういうニュー夜勤の労働者を中心とした労働者のためのパンフレットもつくられて、その中で、「睡眠中は、来訪者をお断りしたり、できるだけ電話の呼出音を小さくすること」、こういうようなことまで説明をされているわけであります。  もう一つ、私は、夜勤、長時間労働、これで大問題になったものとして、国立病院の看護婦の二交代問題、これを取り上げたいと思います。  この二交代制度、これは一言で言えば、従来の準夜、深夜も一緒に一人でやってしまう、そういう性格のものでありますけれども、これが今、全国で何施設で、何人従事されているか、厚生省からお答えをいただきたいと思います。
  144. 上田茂

    ○上田説明員 お答えいたします。  国立病院・療養所におきます二交代制勤務は、現在七十四施設、百二十五病棟で導入されているところでありまして、国立病院・療養所の全病棟数の約七%で実施されているところでございます。また、二交代制勤務に従事しております看護婦の数につきましては、今日現在で千八百十四人でございます。
  145. 大森猛

    大森委員 ついでに伺いますが、そのうちの、特定の地域に限ってもいいのですが、平均年齢はどのぐらいでしょうか。
  146. 上田茂

    ○上田説明員 お尋ねの平均年齢につきましては、全国的な数字は把握しておりませんが、関東信越地方医務局管内の施設におきましては三十八・一歳となっております。
  147. 大森猛

    大森委員 この問題では、私も各職場にも何度か足を運んだわけですが、四十代、五十代の方も含めて高年齢の方も少なくありません。こういう二交代、最大拘束十七時間三十分、実働十六時間、こういう労働が一体何をもたらすかという点でありますけれども、まず健康の面はどうか。  これは九州社会医学研究所の田村昭彦氏が調査をされたものでありますが、多忙感と疲労感の関係、平均すると、六五%以上の人が、夜勤明け後すぐに眠りたい。大変忙しかった人の八〇%を超える人が、今すぐにも眠りたい。これは産業衛生学会産業疲労調査研究会がつくった調査票を用いた調査で、その意味では日本の疲労調査として非常にポピュラーなとり方だそうでありますけれども、眠気とだるさ、頭が重い、足がだるいがいずれも七割以上。頭がぼんやりが六〇%。眠い、目が疲れる、動作がぎこちない、これが七〇%以上。さらに、注意集中の困難という点でありますけれども、考えがまとまらない、七〇%以上。話をするのが嫌になる、五〇%以上。ちょっとしたことが思い出せない、六〇%以上。することに間違いが多くなる、六〇%以上。根気がなくなる、七割以上。こういう形で大変な注意力の散漫等を訴えているわけなのですが、とりわけ看護婦の命とも言えるのが注意力と観察力、これがもう大変な悪影響を受けるということがここにもはっきりあらわれていると思います。  しかも、疾病率でありますけれども、これは新しい長時間夜勤が始まって一カ月半か二カ月の段階でありますけれども、二交代に入る前と入った後の比較でありますが、疾病として、腰痛、頸肩腕障害、高血圧、胃炎・胃十二指腸潰瘍、自律神経失調症、生理不順、生理痛、以上についてでありますが、二交代前は治療中が三十一人だったのが、二交代後は七十七人、二・四倍になる。症状があって未治療という人は、二交代前九十二人だったのが百六十人になる。これも二倍近く一挙に増大しているわけであります。  二交代に関しての実際に従事している看護婦へのアンケートの回答でも非常に深刻な中身が出ているわけですが、その一つ、定年まで二交代勤務を続けられるかどうか、この質問に対しては、四百十二名、八〇・三%が、これはもう圧倒的な人が続けることができないと回答されております。  重要な看護の中身についてでありますが、ゆとりもなく疲労も最高になり、優しい気持ちで聞く姿勢に欠ける。集中力が欠けてくる。朝、採血で刺し直しを二回した。こういうような回答が随分出ていますし、三人に一人の人が患者に優しくできなくなったと回答されております。種々ありますけれども、この看護の中身、これは質の高いケア、こういうことで厚生省もこの二交代制を導入したわけでありますけれども、全くそれに相反する結果が出ているということも明らかだと思います。  さらに、家族との関係ではどうか。家事に割く時間、これはもう一番多いのが減ったで四五%。減ったのが一番多い。家族と一緒にいる時間、これも七割の方が減った。家族の世話、五五%の人が減った。こういう回答をされて、唯一ふえたのが家庭内のトラブル、これがふえたということが多数の回答として出ているわけであります。  家族との関係、子供たちとの関係で、私はどうしてもちょっと紹介をしておきたいのです。きょう子供さんの絵をお持ちしたのですが、委員長にお断りして大臣にもお見せをしたいのです。
  148. 玉置一弥

    玉置委員長 はい。
  149. 大森猛

    大森委員 これは二交代に従事する方の五歳のお子さんの絵ですが、これをちょっと説明をしますと、これは、保育園で子供心を表現するのに一つの方法としてこういう絵をかかせている。ところが、子供さんがこういう絵をかいた。聞いたのですね、これは何をかいたのと担任が尋ねると、病院に爆弾を落としているところ、病院なんかなくなればいいと語ったそうです。この言葉を聞いた担任は、胸がいっぱいになり何も語れなかったと話しておられたそうであります。  こういう二交代、私はもう非人間的な労働だと思います。このお子さんも、二交代に入る前は、こういう、家族と一緒にリンゴ狩りに行った絵をかいておられたのが、二交代導入後は絵を余りかかなくなり、かいたらこういう絵をかくと。私は、家族関係にも子供たちにもこれは深刻な影響を与えているのではないかと思います。  この点で、きょう、二交代に従事している看護婦さんから、ぜひ労働大臣にもお伝えしたいということでお手紙もいただいてまいりました。  二交替勤務をしています。朝一番忙しい時間に、患者さんが大喀血しました。夢中で処置をしましたが、喀血死してしまいました。つかれ切った身体で、ほんとうにこれで良かったんだろうか……と。一時間心マッサージをしました。言葉にならない。疲れで集中力判断力が著しく低下する長時間夜勤。一日も早い解決をお願致します。もう半年間もこの様な状態で始終ボーッとすごしています。元気な明るい毎日を望んでいます。もとにもどして下さい。 というお手紙でございます。  これは、もちろん国立病院の看護婦さんは直接の所管は厚生大臣でありますけれども、私は、所管は違っても労働大臣もできることはあるのじゃないだろうか。まず、これらのことについての御感想と、なぜこういうことになっているのか、大臣なりの御見解をお聞きできたらと思います。
  150. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 直接の所管は厚生大臣でありましょうし、国立病院でございますから、国家公務員労働関係というのは、実は労働省の枠の外にあって、人事院が所管しているということは御承知のとおりだと思います。  ただ、人事院が所管しているといっても、労働基準法の枠の中でよく似た、枠の中でと言うと語弊がありますが、労働基準法を参考にしながら人事院の諸制度がつくられているわけで、法令に違反しているような事実があれば、これはもうまさに重大なことだろうと思いますが、法令の中で行われているとすれば、やはりそれだけの病院機能を維持していく上で、さらに多額の負担というものを、患者さんなら患者さんを含めて、納税者を含めてやっていくのだという我々は決意のもとに、やはりそういう事態は国民的合意があれば解消していかねばならない、そう思っております。
  151. 大森猛

    大森委員 あれこれの理屈はあるわけなんですが、私は率直な感想をお聞きしたかったと思います。  時間が参りましたので、最後、一点だけでありますが、これはもともとネーチャーという科学雑誌が最近載せたもので、南オーストラリア大学の病院の研究者による研究報告でありますが、「十七時間の不眠の作業能力の低下のレベルは、血中アルコール濃度が〇・〇五%に相当する。これは、多くの先進諸国で自動車の運転が禁止されている酒酔い状態である。二十四時間不眠では、血中アルコール濃度はおよそ〇・一%に相当した。」こういう形で、やはりこういうような十七時間に近い不眠の労働は、もはや労働基準法で言う「人たるに値する」、そういうような労働条件ではないということを申し上げたいと思います。  加えて、憲法二十七条、二十八条、これは労働条件は法律で決めなければならないとなっているわけでありますけれども、これは、単に労働条件を法律で決めるということだけではなくて、基本的人権あるいは健康で文化的な生活を営む、こういう憲法の崇高な大きな目標、それを達成していく上での、そういう労働基準法における例えば「人たるに値する生活」というような位置づけがされていると思います。  重ねて、私は、労働大臣が、この状態を異常と思わなければ、大変、それこそ異常ではないかと思いますが、こういう問題に対して、関係大臣にぜひ働きかけることなどをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  152. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 今実態については、先生なりに一つ情報というか、お話を伺いました。厚生省を含めてもう少しいろいろな角度から情報をお伺いした上で、必要なことがあれば厚生大臣お話しさせていただきます。
  153. 大森猛

    大森委員 終わります。
  154. 玉置一弥

    玉置委員長 次に、濱田健一君。
  155. 濱田健一

    濱田(健)委員 濱田健一でございます。  伊吹労働大臣には、現下の厳しい経済状況そして景気の低迷の中で、失業率、有効求人倍率など乖離が大きくなってきている現状の中で御苦労いただいておりますことに、まずは感謝申し上げ、きょうの質問は、きのう出されました中基審報告に関して、何点かの疑問点を含めて質問させていただきたいというふうに思っております。  経済社会そして社会生活の変化に伴って労働基準法の制度を見直していくということの必要性は理解はしているのですが、やはり戦後の労働法制、この見直しをやる際にも、労働者を守っていくという立場から、当然労働者保護の視点は欠かせないというふうに考えているところでございますけれども、労働省としてはこの点についていかがお考えでしょうか。
  156. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 実は、今先生指摘のものについては、部会から審議会に報告があったということを昨日担当者から伺いまして、私への正式の建議というのはまだちょうだいいたしておりませんので、私もあくまで報道によってその内容を把握しているにすぎないという前提でお答えさせていただきたいと思います。  今、規制緩和の必要性を認めてというお話でございます。我々は、グローバルな社会の中で、輸出という場で商品の競争をして、それによって日本としての富を蓄積し、国民の生活、福祉教育、そういうものを守ってきているというのが実は国の大きな仕組みであります。  その中で、アメリカという、日本の言うならば経済的な一種の競争相手がいろいろな労働の仕組みを持っているということも、これは事実として受けとめねばならないと私は思いますが、しかし、あらゆる制度に効果と副作用があるように、労働分野規制緩和をしていくということになると、先生がおっしゃったような副作用が出てくるということを率直に私は認めたいと思います。そして、その副作用から、日本のトータルな仕組みが許す範囲で最大限守っていくというのが労働省に与えられた仕事であろうと私は思いますし、まじめに勤労しておられる立場の方々が、規制緩和の中でつらいお立場になられないように、また同 時に、規制緩和というのは何も、先ほど一部の委員からお話があったように、経営者のためだけのものではないと私は思います。働く人たちも、多様な働き方を選択したいということが当然あるわけでございますから、この点もまた念頭に置きながら、今御指摘のことを十分拳々服膺して対応をさせていただきたいと思っております。
  157. 濱田健一

    濱田(健)委員 私は先ほど経済社会社会生活の変化に伴って労基法の見直しをしていくことの必要性は理解はしますと申し上げまして、規制緩和の必要性ありという、その言葉は使っておりませんので、大臣、よろしくお願いをいたします。  同じ答えになってしまうのかもわかりませんけれども、働く皆さん方から、きのうの報告書の感想というものを電話や直接お話を伺うことが、そんなに数は多くないのですけれども、あくまでも報告の書の中身について御意見を伺う機会が、ゆうべからきょう今までございました。  当然、働く者を、保護という言葉よりも守っていくという意味から戦後強化されてきた労基法、これを、法の持つ規制をどんどん緩和していく、つまり働く者にとったら働きにくくなるという表現をしたらいいのでしょうか、そういう危惧を持っているということで、やはりいろいろな批判がございます。その辺の部分について、さっきと似たような答えになるのかもわかりませんが、いわゆるめちゃくちゃな規制緩和じゃないんだよというお考えなのか、やはり相当今までのこの法の持つ形態というものが変わっていって、働きざまが変わっていくんだよということなのか、その辺の大臣の御感想といいますか、その辺をお聞かせいただければ幸いです。
  158. 伊吹文明

    伊吹国務大臣 実は、先ほど申し上げましたように、私はまだ正式に建議をいただいておりませんし、建議をいただいた上で立法化の措置が実はあるわけでありまして、立法作業を行いますとまた審議会にもう一度お話をさせていただくという手順が当然踏まれるんじゃないかと思います。  したがって、法制化の内容については、当然当委員会の御審議もいただかねばなりませんし、まだ私が言及する立場ではないと思いますが、基本的な考えとしては、働く人たちの権利というものはやはり最大限尊重していく中で、時代の趨勢に対応して、日本の国家あるいは社会というものを維持していくためには何をしなければならないのかという、そういう観点で私はこれを受けとめているわけでございます。
  159. 濱田健一

    濱田(健)委員 では、局長にお尋ねしたいのですが、今大臣からもお話ありましたとおりに、来年の通常国会ぐらいから労基法の見直しの審議に入るのではないかというふうに言われているわけですが、この見直しに当たっては、さきの第百四十回通常国会でいわゆる均等法の審議、これをやるときに附帯決議がいっぱいつけられたと思うのです。女子保護規定の解消による激変緩和措置、これらが検討されておりますし、私も読ませていただきました。この中基審の検討といいますか、報告書の中にあるその結果の中身というものについてお知らせいただきたいというふうに思います。論評をするということにはならないというふうに思うのですけれども、その結果がどういうものか、ちょっと教えていただければ幸いです。
  160. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 前回の通常国会におきまして御審議いただきました雇用機会均等法の際に私ども受けました附帯決議の中で、一つは、時間外労働について、現在の目安制度等を実効あるものにする。その関連におきまして、家庭責任を持つ女性の方が、保護規定が解消された後急激に生活上の変化が出ないような措置を講ずることにつきまして附帯決議がございましたが、その点につきましても、私ども、中央労働基準審議会に経緯、内容を御報告しまして、具体的にどうするかという審議をあわせてこの基準法見直し全体の中で行っていただきました。  昨日審議会の方に報告されました部会の中では、前半の二つ、相関連しているわけでございますが、時間外労働につきましては、これを抑制していくための措置として、労働基準法の中で時間外労働の上限基準というものを定める、そういう根拠をつくっていく。それについては、事業主は留意すべき責務、行政は指導等を行う仕事、そういった一連の法体系をつくることによって、この三六協定に基づく時間外労働の上限というものを抑制していく、そういう体系をつくること。  そういった新しくできます上限基準の中で、家庭責任を持つ女性の方々、これは育児、介護が代表的な理由になると思いますが、そういった方のために、一般の上限基準よりも低い水準の上限基準を設けること。それは経過措置として三年程度の期間実施することとしてはどうか。ただ、低く設定することとする具体的な水準、三年程度と言っていますが、具体的に何年にするかについては、平成十一年四月までに中央労働基準審議会で議論を詰めていく。  こういった内容になっております。
  161. 濱田健一

    濱田(健)委員 出されました報告を読みますと、使用者、労働者、公益三者の部分が当然一致してこういう方向性がよろしいのではないかという部分と、それぞればらばらになってしまって、それぞれの意見が付されている部分があるというふうに思うのですが、重立った違いといいますか、報告の中身としてまとまっていない部分、幾つか御紹介いただければ幸いです。
  162. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 労働基準法の見直しは、労働条件そのものを扱うだけに労使の重大な関心もございますし、一定の方向が出た場合でも、なお具体的な細部、あるいはこれからの具体化に当たっての注文等が労使双方からつくわけでございます。  御指摘のあった点につきまして、代表的なものを申し上げますと、まず、一年単位の変形労働時間制をこれからどういうものにしていくか。報告書の基本的方向は、休日日数をふやしていくということ、それから一日あるいは一週間の限度時間等について弾力化を図っていくということが相関連する一体の措置として方向が示されておるわけでございますが、この点について、労働側から、現行の枠組みでいいのではないか、こういう趣旨の意見が付されております。  それから、先ほどお答え申し上げました時間外労働のあり方に関連しまして、今回の見直しの方向として、時間外労働を抑制するために、時間外労働の上限基準というものを基準法に根拠を持って設定し、事業主の責務や行政の指導といった一連の法律上の体系をつくるという点について、なお法的規制力を持った形でやった方がいいという労働側の意見が、その部分について、ついております。  また、裁量労働制の問題につきましては、労使委員会等による新たなルールを設定した新たな裁量労働制というものが基本的方向としては示されておるわけでございますが、この制度導入についてもう少し時間をかけて審議した方がいいのではないか、こういう労働側の御意見。  それから、年次有給休暇につきまして、現在一年につき一日ずつふえる仕組みになっておりますが、この審議会の部会の報告では、これを一年に二日ずつふえる、こういうスピードではどうか、こういう方向が示されておるわけでございますが、使用者側からは、まず現在の有給休暇の取得促進を労使で話し合って進めるのが先決ではないか、あるいは、小規模企業ではこの年次有給休暇の日数の増に対応することが相当期間がかかるのではないか、そういうことに配慮した形をとってほしいとか、そういった点、あといろいろな細部につきまして意見のついている部分、労使双方からございます。  ただ、代表的なものを申し上げれば、以上のような点かと存じます。
  163. 濱田健一

    濱田(健)委員 あくまでも報告報告ですから、後で建議として大臣の方にそれがなされる。そのときにまた若干変わった中身になるかもわからないということもゼロではないと思うのですよ。多分変わらないとは思うのですが。  では、このばらばらな意見として付されたものが、法律の改正案ですね、それをつくっていくときにどのような取り扱いになっていくのだろうかという思いが、何といいますか、どっちを生かされるのだろうかという思いがやはりあるのですね。その辺の展開の予想というか、その辺はどうでしょう。
  164. 伊藤庄平

    ○伊藤(庄)政府委員 この労働条件をめぐりますいろいろな制度問題につきましては、中央労働基準審議会でも労使双方、かなり意見を出し合い、論議をしていくわけでございまして、特に労働基準法になりますと、企業によりましては直接その企業労働条件を規定してしまう、こういう場合が多いわけでございまして、かなり労使双方から注文が、注文というと語弊がございますが、御意見等がつくケースがございます。  過去にもそういったケースがございますが、基本的な方向が示されていれば、それを軸としながら、その過程で出されました労使それぞれの意見、あるいはつけられました労使それぞれの意見、それらも念頭に置きまして、具体的な形をつくる際には十分そういった意見にも留意しながら、条文あるいはその具体化に当たっての運用の細部を決める、そういった際に総合的な角度から検討させていただくことにいたしております。
  165. 濱田健一

    濱田(健)委員 読ませていただきまして、例えば労働契約の締結時の労働条件の提示だとか退職事由の明示とか、先ほど出ましたとおりに年次有給休暇の付与日数の改善、そして労働条件紛争の解決のための援助システム等々、非常にいい部分も書かれておりますね。そういう面は一歩前進だなと私も思いました。  しかしながら、例えば時間外・休日労働のあり方などを見たときに、先ほど局長が話をしてくださった部分で、「使用者がその基準に留意すべきこととする責務」というような部分が果たして法的に実効性のあるものとなり得るのかどうか、これらは不透明ですし、私たち男女共通規制を図るべきということを言ってまいりましたが、そのことはなかなかうまくいかないのじゃないかなというふうに思っておりまして、私たちはその基準的なものをぜひ今後の審議の中では論議をさせていただきたいというふうに思っているところです。  それと、労働契約期間の上限、これもやはり働き続けるという思いが、一つの会社にずっと働き続けるのがいいことかどうかは別にして、人の人生の設計という意味では期間の定めのない労働契約という部分が原則的には一番大事ではないかなというふうに考えますし、やはり合理的な場合に限って契約期間というものを定めるべきではないかなという思いがしておりまして、実質的な若年定年制や女性の差別につながるようなことがないようにしなければならないなという感想も持ったところでございます。  それと、一年単位の変形労働制ですけれども、休日日数をふやすというお話がございまして、そういうのは評価はできるわけでございますけれども、やはり生活設計や健康維持というような部分を考えたときに、一日十時間の一週間五十二時間というような部分などは幅が大き過ぎるのじゃないかなというような感想を私自身は持ったところでございます。  また、裁量労働制の法整備という部分についても、やはり出てきたものが具体性がないな、法整備をするときに具体性が多分出てくるのだろうなという思いを持ちながら、この拡大については慎重な取り扱いが必要だというふうに私自身は読ませてもらって考えたところでございます。  お聞きするところによると、中基審そのものが十一日ですか、もう一回審議会を開かれて、大臣に建議という形にされるのか報告書のままで済まされるのかちょっとよくわかりませんが、そのような論議をされるということでございましたけれども、まだまだ、来年の通常国会でいわゆる法改正の段取りが進んでいくのかどうかも私自身よくわからないのですが、中基審の皆さん方、三者が一致しなかったところはもっともっと詰めてほしいなというような思いで読ませていただいたところでございます。これからも、社会民主党はこの問題について、この委員会の中でじっくりと論議をさせていただきたいという思いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  166. 玉置一弥

    玉置委員長 本日の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十八分散会