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鈴木(淑)
委員 まず、設備投資の伸びでございますが、新保
局長の説明が本当に政府の見解であるとすれば、まことに楽観的だと言わざるを得ません。
もちろん、大
企業製造業は輸出で潤いましたから、設備投資の伸びは高いです。しかし、
総理も蔵相も尾身長官も御存じだと
思いますが、GDPベースの設備投資の中で、大
企業製造業というのはどのくらいのウエートを占めているとお
思いですか。これは恐らく二五%かそこらですよ。二五から三〇ぐらいですよ。製造業が四割、非製造業が六割ですから、その四割の中の大
企業のウエートなんといったら、四割の半分以上でしょうが、しかし二五%ぐらいですよ。
そして、興銀
調査だけ引用されたけれども、興銀は、まさに今輸出で潤っている大
企業相手の
調査ですから、強い数字が出るのは当たり前。日銀短観を見ますと、製造業の主要
企業の設備投資だけが伸びてきていますが、あと大
企業の非製造業、それから中小
企業の製造業、非製造業は全部落ちてきて、特に深刻なのが、中小
企業非製造業の本年度設備投資の伸びは既にマイナスになっていて、これを上方修正すると考えても、最終的にはマイナスだろうということです。
中小
企業非製造業というのは、GDPベースの設備投資の四割ぐらいですよ。非製造業が全体の六割ですが、非製造業については中小
企業のウエートが圧倒的に高い。六割のうち四割が中小
企業です。これが本年度、もうマイナスになるのですね。このことを棚に上げてしまって言わないで、大
企業製造業がいいとばかり言っているのは、非常に偏った情報を
国民に与えるものだし、知っている人が聞いたら、ああ政府は甘いというふうに
思います。
設備投資
計画で今
議論していますが、設備投資の先行指標は、御承知のように機械受注ですね。機械受注の民需、除く船舶、電力というのをよく見るわけですが、この前年比がどうなっているか御存じでしょうか。前年比が非常に高くなったのは去年の十―十二の一七・三%。それからちょっと飛んで、ことしの四―六はもう六・二に下がっている。今、七月と八月はわかっていますが、〇・三とか二・七なんですね。先行指標は前年とほとんど同じ水準になってきているんですよ。
こういうことから考えて、これは大体六カ月から九カ月の先行指標ですから、私は、こんな
状況では来年度の設備投資は頭を打ってしまうなと
思いますよ。
景気を下支えている二本の柱の一本は、もう折れるなというふうに
思いますよ。
それから、三塚蔵相にお答えいただきまして、今の黒字は続くだろう。いい
意味でお答えになったか悪い
意味でお答えになったか、これはジレンマがあるんですよね。
景気のことを考えたら黒字は
拡大してもらいたい、しかし、対米摩擦を考えたらこれ以上大きくなったら大変だと。
ですから、ちょっと三塚蔵相はどっちにウエートをかけてお答えになったかわからぬような上手なお答えのされ方をしましたけれども、私は、この黒字の伸びは鈍化せざるを得ないというふうに見ています。ぐんぐんこの調子で伸ばしたら本当に対米摩擦は大変なことになるし、また伸びられないだろうというふうに思うのですね。
二つ大きな根拠がありまして、
一つは、やはり来年の米国の経済成長率はことしの三%台に比べて下がりますよ。二%台に下がる。そうじゃないとインフレが起きてしまう。それから、もう
一つ日本の大事な輸出市場である東南
アジア、これはもう御承知のように、タイ・バーツに始まるあの通貨危機の影響でもう既に成長は鈍化しています。ずっと七、八%で奇跡的な高度成長を続けてきた東南
アジアも、とりあえず来年は四%ぐらいに下がっていくでしょう、全体の平均で見て。だから、輸出市場が悪化をしてくる。
そこへもってきてどんどん黒字を
拡大させたら、必ず
アメリカとの摩擦が起きて、米国政府も円高志向のような発言をしかねない。
日本政府も抵抗しにくい。日米両国政府が今の円安は行き過ぎだと見ているなんという情報が流れようものなら、
たちまち円買い投機が起こりまして、あっという間の円高だって起こり得るのですね。
ですから、そういうことを考えますと、この純輸出も、来年度に向かって引き続き
景気を支えていくなどとのんきなことを言ってはいられない。二本の柱は両方とも、
景気を引き続き支えていくというようなのんきなことは言っていられないのであります。
先ほど日銀総裁も、この二本の柱が支えているから緩やかな回復が始まるだろうというニュアンスでお答えになりました。まあお
立場上、日銀総裁はなかなか、
民間への心理的影響もありますから、はっきりは言いにくいかと思うのですが、日銀も恐らく認めておられると思うのは、さっき私が言った、GDPベースの設備投資の四割ぐらいを占めている中小
企業非製造業は、本年度からもう既に設備投資マイナスになるんじゃないのということであります。あるいは、短観の結果大きなマイナスが出ていまして、この後上方修正されると見ても、ちょっともうプラスにはなれないなというわけです。
それで、総裁、その背後にクレジットクランチがあるんじゃないかということが、
民間エコノミストの間で、あるいは金融専門家の間で広く言われているのですね。これは、来年四月からの早期是正
措置に備えて、自己資本比率を上げるために分母を小さくする、つまり貸し出しを抑制している預金取扱金融機関が非常に多い。そのことと、地価が一向に上がってこないことに伴うバランスシートリセッションの圧力と、両方から、中小
企業非製造業の設備投資が早くも本年度からマイナスになりそうだという
状況だと思うのですが、日銀総裁は、クレジットクランチ、そして中小
企業非製造業の設備投資は本年度からマイナスだというこの
状況について、どのようにお考えでしょうか。