運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-11-04 第141回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月四日(火曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 松永  光君    理事 伊藤 公介君 理事 石川 要三君    理事 西田  司君 理事 深谷 隆司君    理事 山本 有二君 理事 田中 慶秋君    理事 藤井 裕久君 理事 五島 正規君    理事 木島日出夫君       相沢 英之君    臼井日出男君       江藤 隆美君    遠藤 利明君       小澤  潔君    越智 通雄君       大原 一三君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    熊谷 市雄君       栗原 博久君    阪上 善秀君       桜井 郁三君    桜井  新君       関谷 勝嗣君    高市 早苗君       武部  勤君    中山 正暉君       野中 広務君    葉梨 信行君       松本  純君    宮路 和明君       村山 達雄君   吉田左エ門君       綿貫 民輔君    池坊 保子君       江崎 鐵磨君    鍵田 節哉君       北脇 保之君    佐藤 茂樹君       島津 尚純君    鈴木 淑夫君       中井  洽君    中村 鋭一君       西川太一郎君    西川 知雄君       西田  猛君    西野  陽君       西村 眞悟君    平田 米男君       松崎 公昭君    松浪健四郎君       丸谷 佳織君    三沢  淳君       山本 孝史君    岩田 順介君       海江田万里君    北村 哲男君       末松 義規君    仙谷 由人君       中桐 伸五君    松本 惟子君       山花 貞夫君    松本 善明君       矢島 恒夫君    上原 康助君       北沢 清功君    岩國 哲人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         通商産業大臣  堀内 光雄君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         自 治 大 臣 上杉 光弘君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  尾見 博武君         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         行政改革会議事         務局次長    八木 俊道君         行政改革会議事         務局参事官   板野 泰治君         警察庁生活安全         局長      泉  幸伸君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁長官官房         審議官     瀧上 信光君         総務庁行政監察         局長      土屋  勲君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁総合         計画課長    中名生 隆君         経済企画庁調整         局長      新保 生二君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         沖縄開発庁総務         局長      玉城 一夫君         沖縄開発庁振興         局長      若林 勝三君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省入国管理         局長      伊集院明夫君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         林野庁長官   高橋  勲君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省環境         立地局長    並木  徹君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         郵政大臣官房総         務審議官    濱田 弘二君         郵政省通信政策         局長      木村  強君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    小鷲  茂君         建設省建設経済         局長      五十嵐健之君         建設省都市局長 木下 博夫君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         自治政務次官  佐藤 静雄君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君  委員外出席者         会計検査院長  疋田 周朗君         会計検査院事務         総局次長    森下 伸昭君         会計検査院事務         総局第一局長  深田 烝治君         参  考  人        (日本銀行総裁) 松下 康雄君         予算委員会調査         室長      大西  勉君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月四日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     松本  純君   遠藤 利明君     奥山 茂彦君   大原 一三君     大村 秀章君   河村 建夫君     宮路 和明君   栗原 博久君    吉田左エ門君   中川 昭一君     阪上 善秀君   根本  匠君     桜井 郁三君   北側 一雄君     鈴木 淑夫君   中井  洽君     西川太一郎君   西川 知雄君     江崎 鐵磨君   小林  守君     北村 哲男君   藤田 幸久君     松本 惟子君   志位 和夫君     矢島 恒夫君   不破 哲三君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   大村 秀章君     大原 一三君   奥山 茂彦君     遠藤 利明君   阪上 善秀君     高市 早苗君   桜井 郁三君     根本  匠君   松本  純君     相沢 英之君   宮路 和明君     河村 建夫君  吉田左エ門君     栗原 博久君   江崎 鐵磨君     鍵田 節哉君   鈴木 淑夫君     三沢  淳君   西川太一郎君     松崎 公昭君   北村 哲男君     仙谷 由人君   松本 惟子君     中桐 伸五君   松本 善明君     不破 哲三君   矢島 恒夫君     志位 和夫君 同日  辞任         補欠選任   高市 早苗君     熊谷 市雄君   鍵田 節哉君     丸谷 佳織君   松崎 公昭君     島津 尚純君   三沢  淳君     北脇 保之君   仙谷 由人君     小林  守君   中桐 伸五君     末松 義規君 同日  辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     中川 昭一君   北脇 保之君     北側 一雄君   島津 尚純君     中井  洽君   丸谷 佳織君     西川 知雄君   末松 義規君     岩田 順介君 同日  辞任         補欠選任   岩田 順介君     藤田 幸久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件(景気倫理行革  及び外交等)      ――――◇―――――
  2. 松永光

    松永委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  本日も引き続き、景気倫理行革及び外交等について集中審議を行います。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松永光

    松永委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 松永光

    松永委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。
  5. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 おはようございます。  まず、クラスノヤルスクにおきます日ロ首脳会談についてお伺いをさせていただきたいと思います。  大変忙しいスケジュールの中、橋本総理大変御苦労さまでございました。報道によりますと、エリツィン大統領川下りをされたり、あるいは釣りを一緒にされたり、当初計画をされておられましたサウナは取りやめになったようでありますけれども、夕食会やあるいは朝食会、森の散策など、盛りだくさんスケジュールをこなされてきたようであります。テレビを通じまして、橋本総理の久方ぶりに明るいさわやかな笑顔が大変印象的でございました。ぜひこの笑顔でさまざまな国内問題も乗り切っていただきたいというふうに思います。  もともと、今度のこの日ロ会談エリツィン大統領親近感を築き上げる、真の友人としての友情関係をつくるということが大きな目的であったと思います。しかし、先ほど申し上げたようなさまざまな盛りだくさんの行事をこなす一方で、我が国にとっては極めて重要な、歴史的な一ページを開かれたと私は思います。まずそのことについて、私は心から総理に敬意を表したいと思います。  そして、総理自身はこの成果をどう見ておられるのか。信頼構築ということでありますが、エリツィン大統領とはどのような人間的な関係をつくり上げてこられたのか。また、大統領健康状態もかねてからいろいろ取りざたされたところでありますけれども、直接総理がお会いになられてどんな印象を持たれたのかも伺いたいと存じます。  一連のこれらのことを含めまして、総じて今回の訪問の成果について、特に政治的な成果について、まず総理の御所見を伺いたいと存じます。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 お許しをいただきまして、多少の時間をちょうだいし、委員の御質問にお答えをする形で予算委員会に御報告をさせていただきたいと存じます。  私自身、本年のデンバーサミットあるいは昨年のモスクワ原子力安全サミットにおける首脳会談エリツィン大統領との間に持ちながら、もう一つ突っ込んだ議論のできる関係、言いかえればまさに個人的な友情関係というものを深める必要性を痛感いたしておりました。  そうした中で、デンバーサミット機会をとらえまして、双方が、モスクワあるいは東京といういわば首都での公式の会談の形ではなく、例えば大統領自身ロシアの東部を訪問されるような機会、そうした機会をとらえて、本当にネクタイなしでじっくり話をすることはできないだろうか。そのような願いを込めて、週末、友人同士会談はできないだろうかということを提案いたしておりました。こうした提案にエリツィン大統領も賛成をされました結果が、今回のクラスノヤルスクにおける会談になった、いわゆるノーネクタイ会談というものになったと思っております。  そして、個人的な私自身思いとしては、全体として大変充実した時間を持つことができ、大統領と非常に率直な話し合いをすることができた。その意味では、今回一番大きな私自身目的でありました個人的な信頼関係友情というものを深めることはできた、そのように考えております。  同時に、大統領の計算では我々は四十三項目議論をしたと言われましたが、実は私は何項目か数を勘定いたしておりません。大小取りまぜて、双方関心のある課題を率直にぶつけ合っていきます中で、随分幅の広い、しかも建設的な議論が行えたと思っております。  まず、経済関係につきましては、今後の両国の経済関係の発展の基礎ともなる一連協力措置、これを橋本エリツィンプラン、あるいはエリツイン橋本プラン、どちらでも結構ですが、そうした形で実施をしていくことにいたしました。そして、その目的のために、貿易経済政府間委員会などにおける対話強化していくということで一致いたしました。  この中には、ロシアの例えば若手経営者養成プログラムというものに協力をし、そのうち千人ぐらいの方々日本が責任を持って教育していく。そのうちで優秀な方々を五百人ぐらい日本に招いて、日本産業界、あるいは向こう側の要望がありますならば官庁、大学等、いろいろな場所でトレーニングをする。そうした将来の、日本に対する理解を深めてもらうような措置も含んでおりますし、そのために必要な、モスクワにおける日本センターに運び込む機材について税制上の優遇措置を行ってもらう、そんな種類の課題も入っております。  同時に私は、アジア太平洋地域ロシアが積極的に参加をしてほしい、ややもするとヨーロッパロシアという顔が強調され、アジア太平洋におけるロシアの姿が見えないということに対しては、必ずしもいいことではない。それだけに、もしロシアAPEC参加するお気持ちがあるのなら、私はその参加を支持したいし、アメリカとも連携をとりながらその実現に努力したい、そのようなことも申し上げてきました。  また、アジア太平洋地域における安全保障のあり方についての対話も行ってきましたが、その中で、当然ながら、防衛交流というものを一層進展させていく、このようなことでも意見一致を見ております。  それから、北方領土の問題との関係におきましては、東京宣言に基づいて、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことでお互いの意見一致を見ました。  東京宣言の中には、これは細川総理の時代につくられた御努力の産物でありますけれども、北方四島の名前が明記されていることは御承知のとおりであり、これを、歴史を踏まえ、法と正義の関係で解決していくということになっておるわけでありますが、二〇〇〇年までという一つのタイムリミットを設けてこれを加速する、そういう方向に向けられたことは、この国にとっても、またロシアにとっても私はよかったと思っております。  この合意に基づきまして、今後、一連のハイレベルの交流というものが予定をされております。その中で平和条約の締結というものに向けて努力をしていきたいと考えておりますし、また、この関連で、北方四島周辺水域操業枠組み交渉につきましては、できるだけ年内を目途に妥結をするよう双方努力することで、交渉当事者に指示をすることで一致いたしました。  こうしたネクタイなしの会談というものは、私はやはり、実際にやってみまして非常に有益だったという気持ちを持っております。そこで、今度は日本側で、明年の春にもどうぞ御家族御一緒に訪問していただきたい、そしてこうした関係での議論を続けたいということを提案いたしまして、大統領日本にお招きいたしました。大統領はこれを非常に喜んで受け入れていただきまして、時期の御相談にも入りました。日付まで確定しているわけではありませんけれども、結果として、四月の中旬を目途に行おうということで一致をいたしました。  こうしたことを総括してみますと、今回の会談、非公式なノーネクタイ会談ということでありましたけれども、ロシア流に数えれば四十三テーマと言われるほど大小さまざまな問題を首脳同士議論し、その方向性を定めた。その意味では、二十一世紀に向けての日ロ関係というものを強化拡大、改善していくという意味での大きな機会となったと考えております。  エリツィン大統領は非常に元気でおられました。そして、延べにいたしますと八時間から恐らく九時間ぐらい御一緒していたと思いますけれども、積極的に議論され、意見を述べられ、いわゆる共同の記者さんたち質問に答えるときにも非常に元気な姿を報道陣の前にも見せておられた。私は、非常にしっかりとした元気な姿を皆さんにも見ていただけたのではないだろうか。エリツィンさんに対していろいろな健康上のお話をされる方もありますけれども、少なくとも八時間、九時間という論議を続けるだけのエネルギーを持っておられる、これは申し上げて全く問題がないと思います。
  7. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ありがとうございました。今総理からお話をいただきましたように、政治的な成果というものは、これからの日ロ関係あるいはアジア、また国際政治にも新しい一ページを開く、私はそういう歴史的な日ロ会談になったというふうに認識をいたします。  ところで、今お話の中にもございましたが、もう少し経済関係についてお伺いをさせていただきたいと思います。  ロシアは今、民主主義的な体制に移りつつあるわけであります。市場経済を取り入れて、いろいろな試行錯誤が続けられています。七十年間も共産主義社会にあったわけですから、新しい体制に移るさまざまな混乱やあるいは紆余曲折があることは当然だろうというふうに思うわけでありますが、しかし同時に、ロシアは、すぐれた資質を持つ国民でありますし、強大なエネルギー資源を有する国であります。この国の将来は、私は、大変大きな可能性があるということだけは間違いがないと思います。そういう観点に立てば、日本は、早急にロシアとの友好と協力関係を築いて、相互利益の原則で交流を進めていくべきだと思います。  そうした考えの中で、私は、ロシアとの経済交流は今後も拡大をしていくべきだという立場に立つわけでありますけれども、今回のクラスノヤルスク合意をされたいわゆる橋本エリツィンプランの内容なども先ほども少し触れていただきましたけれども、その成果を改めて国民に御説明いただきたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私たち二人も、日ロ間の経済関係、これを着実に進展させていくことの重要性というものについては、当然のことながら一致をいたしました。  そして、そのいわば促進のよりどころとして、均衡のとれた開放経済化市場経済化及びエネルギーの分野での協力を進めるという基本的な考え方のもとに、投資協力イニシアチブ、同時に、ロシア国際経済体制への統合をいかに進めていくか、あるいは改革支援の拡充、先ほどちょっと触れました企業経営者養成計画、あるいはエネルギー対話強化、さらに原子力平和利用のための協力、柱としてはそのような柱立てを立てております。  もちろんそのためには、ロシア側にも税制でありますとかさまざまな点で努力をしてもらわなければならない部分があることも当然でありまして、例えばWTOの加盟について、我々はこれができるだけ早く進むことを希望いたしますけれども、同時にロシア側にも、WTO体制の中に入れるだけの開放努力もしてもらわなければなりません。まだ二国間交渉も始まっていない状況でありまして、こうした具体的な積み上げはこれから非常に膨大な作業を必要とすると思います。  同時に、これはこの国会の場を通じて民間方々にもお願いをするわけでありますけれども、その千人という方々、これはモスクワにおける日本センター等で教育を進めるわけですが、その中から優秀な人たち日本に招く、日本民間企業の中で研修を続けていただく、そのためには、協力をしていただく企業のグループも存在しなければなりません。あるいは、各省庁の研究機関等にも協力を求めるさまざまな場面がありましょう。  こうしたことを一つずつ実現してまいりますためには双方が非常に大きな努力を必要とする、しかし方向性は定まった、私はそのように理解をいたしております。
  9. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もう一言アジア太平洋での日ロ協力についても、APECへのロシア参加などを提案されたわけでありますが、その考え方についても一言だけ触れていただけませんでしょうか。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 従来、例えばヨーロッパ方々議論を、旧ソ連のころから現在のロシアに至るまでの議論をしておりまして、往々にして、どこかかみ合わないという思いを抱く場面がしばしばありました。  往々にするとヨーロッパ首脳関心というのは、私は非常に乱暴な言い方でよくウラルの西側にとどまるという言葉を使ったことがありますけれども、西欧化された部分の旧ソ連ロシアというものにとどまる嫌いがあったように思います。我々からいたしますと、首都モスクワは別といたしまして、どうしてもやはり極東方面にある旧ソ連であり、現在のロシアというものに目が向きます。そうすると、なかなか実は意見がかみ合わないところが生ずる。  そして、ロシア自身アジア太平洋地域におけるみずからの存在に気づき、それだけの役割を果たしてもらうことはできないか、より多くの関心アジアに注いでもらえないか、私は正直そういう気持ちを持ち続けておりました。  幸い、今回、ロシア側も、大統領以下、アジアにおける、ユーラシア大陸におけるロシアという考え方により大きなウエートを置き始めておられるように思います。そして、そういう流れの中で、もしロシアがそのような立場を希望されるなら、APECへの参加、こういう形をつくっていく、それによってアジア太平洋地域にも関心を持つロシアというものを示していく、これも一つの手法ではないか、私はそのような気持ちがありました。  ですから、エリツィンさんに対し、希望されるなら私はAPECへの参加を支持したいし、アメリカ協力してその努力をしたいということを申し上げた次第です。
  11. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 次に、何といっても私たち日本の国が関心を持っているのは北方領土問題であります。  今回、御報告をいただきましたように、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう努力をすることで両首脳で約束をされたということは、大変画期的なことだと私は思います。我が国はこれまで、我が国の固有の領土であります四島の返還を求めて、長年にわたってそれなりの努力を続けてまいりました。一九九三年の東京宣言は、その努力の過程でまさに重要な一里塚ではあったわけでありますけれども、そこには残念なことに今回のような時期が明示されなかったのであります。  今回、総理エリツィン大統領交渉で、いわゆる二〇〇〇年までにとされたという点は、私は大変評価もし、画期的なことだというふうに思うわけであります。エリツィン大統領の英断にも私は敬意を表したいと思いますし、また、説得をされた総理の御努力に対しましても敬意を表したいと思います。  そこで、問題は今後のことが大変大事になるわけでありますけれども、しっかりした交渉を続けていかなければなりません。この今後の交渉をどんなふうに進めていかれるお考えなのかも伺いたいと思います。  私たちは、この歴史的な歯車を後退させない、そして、日ロ総理エリツィン大統領との間に築いていただいた人間的な温かな関係というものを、両国の友好関係にしっかりとそのきずなを強めていかなければならないというふうに考えておりますけれども、総理のお考えを伺いたいと思います。
  12. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 お許しをいただきまして、ここで東京宣言の関連部分を、議事録の中にとどめるために、この部分の読み上げをお許しいただきたいと思います。  東京宣言の第二項に、  日本総理大臣及びロシア連邦大統領は、両国関係における困難な過去の遺産は克服されなければならないとの認識を共有し、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞諸島の帰属に関する問題について真剣な交渉を行った。双方は、この問題を歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の工作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する。 この中にはそのように記されております。  私は、我々が当時野党の立場にあったときでありますが、この宣言をまとめ上げられた細川総理初め関係者に、この国の将来を考えるとき、改めて敬意を表したいと思います。  そしてその上で、これをもとにしながら、二〇〇〇年までに解決を図ろうということになったわけでありまして、二人の間の細かい話については外交上のことでありますのでお許しをいただきたいと存じますけれども、今後、例えば近くプリマコフ外相が訪問をされる、またチェルノムイルジン首相の訪日も決まっている。多分、小渕外務大臣も機会をとらえて向こう側と接触される、あるいは訪問されるという機会もありましょう。そして、エリツィンさんとの間に、四月の中旬に二度目のネクタイなし会談を今度は日本で開こうというようなことが、手順という意味では存在をいたします。  それだけで簡単に済むような問題ではございませんけれども、あらゆるチャンス、あらゆるチャネルを通じながら、双方が答えを見出すために努力をしていく。そうした努力の積み重ねの中から、目標の達成に全力を挙げてまいりたい。そのような思いでおることを御報告申し上げます。
  13. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 報道を通じて私も見させていただいたわけでありますが、総理大統領の間でお孫さんの話が出たり、トップレベルの会談の中でそうした親しい家族の話まで出て、大変友好的な関係ができたということは、私たちにとっても大変ありがたいことだというふうに思います。  そうした信頼関係をつくっているということが、国と国との関係を進めていく上でも私は大変大事なことだというふうに思うわけでありますし、また、先ほどから総理の御報告の中にございましたように、エリツィン大統領が来日をされるということでありますけれども、我々も大統領の訪日を歓迎させていただきたいというふうに思います。そして、またさらに日ロの新しい関係が前進をすることを望んでいるものであります。  先ほども訪日をされるというお話伺いましたが、もし若干でも、現在の状況の中で、どのような形で招待をされ、訪日をされるのか。今はまだ少し先のことでございますから、正確なスケジュールが決まっているわけではもちろんないと思いますけれども、今わかっている範囲内で、どのような形での招待を考えていられるのかを伺いたいと思います。
  14. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 時期的には四月の中旬をめどということは先ほど申し上げました。その上で、形式は、いわゆるノーネクタイ、完全なプライベートなお互いの交流という形で行おうということは決まっております。  その場所等々につきましては、御家族ぐるみで私はお招きをいたしましたので、むしろこれから、エリツィンさん初めエリツィンさんの一緒に来られる御家族の皆さんがどういう日本を見たいと考えておられるか。私自身も非常に心のこもったクラスノヤルスクにおける歓迎を受けましただけに、エリツィンさん御一家の希望も伺った上で、その御希望にできるだけ沿うような心のこもった歓迎をしたい、迎え方をしたい、今はそう思っておるところでありまして、エリツィンさん初めエリツィン家の皆さんの希望を伺った上で、その希望に一番適した場所はどこかを考えよう、そのように思っております。
  15. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私たち日本にとっては、当然、韓半島や中国は隣国であります。しかし、もう一つの隣国でありますロシアという国に対して、私たちは戦後五十年間、これほど身近に、また親しい関係ロシアというものを確認したのほかってなかったことではないかと思います。  先週は米中の会談が行われました。そして、軌を一にして日ロ会談が行われたわけであります。私は、これからのアジアあるいは国際情勢に、この二つの国際的なイベントは、新しい国際情勢のスタートになる歴史的な二つの会談ではなかったかと思うわけでございます。  今後、日ロ関係が与える影響は、アジアに対しても、国際情勢に対しても、そういう意味で大変大きなインパクトがあると思うわけでありまして、日ロ首脳会談の中で培われた友情というものをぜひ今後さらに発展させていただく、またそれに対して、私たちも精いっぱいの努力をしてまいらなければならないと思います。そうした決意を改めてお誓い申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。  次に、新ガイドラインと当面の外交案件について、一、二点お伺いをさせていただきたいと思います。  九月二十三日、新たな日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインが発表をされました。昨年の四月に東京で行われた日米首脳会談におきまして、冷戦終結後の国際環境に見合った日米安保体制を再構築するということを目的といたしました日米安保共同宣言が発表され、その中に盛り込まれたのがこのガイドラインの見直しであります。それから約一年半、日米両国による検討あるいは努力の末、ようやく新ガイドラインが完成したのであります。  この一連のプロセスが私は大変大事だというふうに考えるわけでありまして、六月にガイドライン中間取りまとめが発表されまして以降、今日まで行われてまいりました質疑を私は伺ってまいりましたが、このプロセスをある意味ではほとんど無視して、ガイドラインの極めて一部であります有事対処だけを取り上げて議論されている感がございますけれども、私は、いささか残念なことだというふうに考えているわけであります。  ポスト冷戦後におきます国際環境は、日一日と、先ほど来も質疑をさせていただきましたように、世界各国の相互依存関係が深まり、あるいは世界の平和と安全が日本自身の平和と安全へ何らかの影響を及ぼし得るようになっています。日米安保体制を基盤といたしまして、憲法の制約はありますけれども、地域安全も含めて、世界平和へのより一層の貢献と責任を世界に約束したものであると私は認識をいたしております。そして同時に、評価もしているところであります。  まず、橋本総理の御認識を伺っておきたいと思います。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日米安全保障条約を基軸としている日米安保体制、これは、しばしば申し上げてまいりましたように、我が国の安全の確保にとりまして必要不可欠というだけではありませんで、アジア太平洋地域における平和と安定を維持するためにも引き続き非常に重要な役割を果たしております。  この新しい指針、これは、冷戦後のアジア太平洋地域における安全保障環境に対応できますように、日米間の緊密な協力関係を増進するためにつくられたものでありまして、この新たな指針によって、日米間の防衛協力関係、これが一層効果的なものとなり、それは、さらには日米安保体制の信頼性を一層向上するものになると考えております。  この新しい指針と日米安保条約との関係、これは、新指針の「基本的な前提及び考え方」において明確にされておりますように、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは変更しておりません。  そしてまた、新たなガイドラインのもとにおきましてのさまざまな日米協力、日米間の協力関係というものは、日米安保条約の目的である日本と極東の平和及び安全の維持に資するもの、そして、この条約またはその関連取り決めの具体的な規定に直接の根拠を置くもののほかに、平素から行う協力のように、より安定した国際安全保障環境を構築するための努力、こうした点、広範な日米間の協力も含まれておるわけであります。  いずれにいたしましても、これらの協力は、日本と極東の平和及び安全の維持という安保条約の目的に合致するものでありますし、同時に、我が国がみずからの主体的な判断によって、我が国の憲法の範囲内及びその時々に適用のある法令に従って行い得る、これは当然のことでございます。
  17. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 我が国安全保障を考える上で、朝鮮半島の情勢は極めて私たちの国と密接な関係にあることは言うまでもありません。しかし、それとともに、対米関係あるいは対中関係をいかにバランスをとっていくかということは、大変大きな課題であると思います。  先ごろ、中国の江沢民国家主席が訪米をされたところでもあります。今後の対米、対中関係についても、総理の基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  18. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員が御指摘になられたように、日米中、この三カ国が良好で安定的な環境をつくり出す、これはアジア太平洋地域における安定と繁栄のために極めて重要な要素であります。  そしてその中で、日米関係というものにつきましては、今後とも引き続いて日本外交の基軸として、日米安保体制というものを堅持し、その円滑かつ効果的な運用に努めると同時に、既に非常に幅広い分野における両国間の緊密な協力関係というものが存在しているわけでありますから、これを一層進展させていきたいと考えております。  また、日中関係につきましても、当然のことながら、我々はこれを拡大、深化させていかなければなりません。  九月に私自身中国を訪問させていただいたわけでありますが、来週李鵬総理が来日をされます。こうした機会などをとらえまして、首脳間の対話安全保障分野を初めとした、日中間でもさまざまなレベルにおける対話を深めていく。そしてその中で、信頼関係強化し、日中友好関係というものがさらに発展していくように努めていくつもりでありますし、これはただ単に政府のみならず、院におかれましても御協力を、また国民全体においてもさまざまなレベルにおける交流というものに心をいたしていただくよう、心から願う次第であります。
  19. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私、実はガイドラインについてあと一、二点質問通告をしているわけでありますが、ちょっと時間が経過しまして、経済的な問題、景気対策も少し伺いたいと思いますので、恐縮ですが二、三点はまたいずれ、本会議等のこともございますので、いずれの機会に、ガイドラインの詳細についての質疑は他日にさせていただきたいと思います。  我が国にとってもう一つの重要な案件であります国連安保理拡大問題について、お伺いをさせていただきたいと思います。  我が国などが拡大の枠組みを年内に国連総会で採択するように提唱していますけれども、九月二十五日に開催をされましたいわゆる非同盟諸国会議外相会議では、安保理拡大問題について、時間的な枠組みに縛られるべきではなく、加盟国百八十五カ国の総意が得られない限り拡大は非常任理事国のみにとどめるべきだというコミュニケが採択をされました。  さらに、十月二十二日に、イタリア、カナダ、エジプト、パキスタンなど十カ国によります、安保理拡大の年内決定を阻止するための決議案が国連事務局に提出をされ、我が国政府はこの決議案への同調国がふえないような対策をとっていると承知をしておりますけれども、安保理拡大の枠組みが年内に合意をされなかったり、あるいは非常任理事国のみが合意されるような事態となれば、常任理事国の拡大、ひいては我が国の常任理事国入りに向けてのモメンタムは確実に失われることになるものと思います。  この問題について、国連内部での動きと我が国政府の見通しについて、これは小渕外務大臣からお伺いをしたいと思います。
  20. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 今御指摘の安保理拡大の問題につきましては、我が国といたしましては常任、非常任双方の議席の拡大が必要であり、我が国を含む多くの国がこのような主張を行っておりますが、改革の具体的なあり方につきましては、残念ながら現在、意見が十分収れんいたしておりません。  国連総会におきましても、私、総会で演説をさせていただきまして、いわゆるラザリ提案、これに対して全面的に御支持を申し上げて、その達成について努力を傾注いたしておるところでございますが、御指摘にありましたように非同盟国並びにイタリアを中心にいたしました決議案等が提案されつつありまして、我が国といたしましては、いわゆるラザリ提案、すなわち、常任、非常任理事国を十五カ国から二十四カ国にふやしていくという件につきまして、これを延ばしていこうという動きがあることを危惧いたしております。  そういった点で、現地の小和田大使を初めといたしまして、そうした日延べ案に近いものについてはこれを阻止すべく全力で努力をし、願わくば本年末にこの目的が達成できるように、必要性を現在強く訴えておる段階でございます。
  21. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ガイドラインについて、総理一言だけ、ちょっと基本的なことでございますので伺っておきたいと思います。  前の国会の外務委員会、これは六月十一日の質疑でありますが、この議事録を私ちょっと読ませていただきました。周辺有事において、米軍が活動している場合に、我が国が何らかの協力をすることは集団的自衛権の行使である、戦争に巻き込まれる可能性があるとの質問に対して、久間防衛庁長官は、集団的自衛権の行使の点では否定をいたしました。しかし、米軍を我が国に駐留させていることを含めて、戦争に巻き込まれること自体は否定をしなかったわけであります。私は、非常に大切なポイントだと思うのです。私自身はそのとおりだと思っているのです。  国際法を遵守しない者にとって、世界の警察官と自他ともに認めるアメリカ協力をすることは、いかなる協力でありましても攻撃の対象となり得ると私は考えます。日米同盟関係によって、我が国はみずからの安全が保障をされている一方で、そのゆえのリスクも同時に背負っていることを私たちは認識をすべきでありますし、政府もまた国民にはっきりと理解を求めるべきだと私は思います。  今、新たなガイドラインが策定をされて、今後それを実行に移すべく法整備が行われようとしております。世界の平和と安全により一層の貢献をし、あるいは責任を負っていこうとする政府は、今までよりも大きなリスクを国として背負っていく覚悟をしたものと言えます。そうであれば、その覚悟を国民も容認するか否かという重大な国民意思の決定が、今、国会における国内法の整備にかかっていると私は思います。  次期通常国会における国内法整備は国会議員にとって重要な審議になると思いますが、日米同盟関係の充実あるいは強化に伴うリスクの増大についても、総理の認識をお伺いさせていただきたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、ガイドラインに関連する法整備の問題にも触れられながらの御質問でありましたが、私は、その検討作業というのは非常に幅の広いものになりますことから、議員は次期通常国会と限定して言われましたけれども、この検討作業というのは結構時間がかかるだろうと思います。  そして、法制の整備を必要とする部分が出てまいりまして、それを法制するといたしましても、国会にお諮りするのは早くとも次期通常国会ということになるのではないかと考えておりまして、その点は、防衛庁長官が当時どういう御答弁をされたのか正確に存じませんけれども、早くても次期通常国会と私からは申し上げさせていただきたいと存じます。  その上で、日米安保条約の五条事態、六条事態という論議というものが過去から存在しておりましたことは、よく御承知のとおりであります。そして、これに何ら変更は加わっておりません。むしろ今回、ガイドラインは、そうした意味ではその性格というものをきちんと整とんをしたという言い方もできると思います。  そして私は、この新しい指針を策定し、そのもとにおいて行われる作業を初めとした日米同盟関係の充実強化、これは日米安保体制の信頼性を一層向上させることになり、むしろ、日本の安全及びこの地域の平和と安定に影響を与えるような事態を防止し、あるいはその拡大の抑止、収拾を図ることを目的としているということを申し上げなければなりません。  今、議員が述べられましたように、万一とか、あるいは巻き込まれるリスクというようなもの、これが存在しないと私は申し上げるのではありません。その上で我々がやらなければならない必要なこと、それは、国際紛争そのものの発生する危険性を低下させるための努力でありまして、ARF等もそうでありますし、我々はそうした努力をこれから一層図っていくべきであると思います。
  23. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ガイドラインの問題、それから北朝鮮の日本人配偶者里帰り問題についても伺いたいと思いましたが、国内問題を限られた時間の中で伺いたいと思いますので、その通告した質問は改めてさせていただきます。  それでは、連休が二日間あったものですから、社会状況、いろいろ変化がございましたので、質問をちょっと、後半の質問を先にさせていただきたいと思います。  まず、行政改革についてでありますが、今進められております省庁再編、行政改革も、十一月に入りましていよいよ大詰めの段階を迎えているように思います。国民の大変な関心事でありますこの橋本行革をどのように評価をするかということは、まさにこれからにかかっていると思いますし、その中で、特に象徴的な問題になっております郵政三事業について伺わせていただきたいと思います。  現在検討されております三事業一体化で独立行政法人とした場合に、今まで中間報告で示された案と比較をいたしまして、組織上あるいは業務上、職員の身分上の大きな違いが生じるのかどうか、またそれは民営化の方向にあるのかどうか。政府が現在どのように最終的な案をまとめようとされているのかを、まず担当の郵政大臣から御意見伺いたいと思います。
  24. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 伊藤委員にお答えをさせていただきます。  もう先生御存じのように、行政改革の目的は、簡素、効率的かつ国民本位の行政を実現することである、こういうことでございます。今、先生から独立行政法人について御質問があったわけでございますが、独立行政法人については、現在、その制度の基本的な内容について行政改革会議において検討が行われているというふうに聞いております。  中間報告によれば、独立行政法人は国の行政機関ではなくしたがって原理的には公務員でないなど、現在の国営でございます郵政事業の経営形態とは異なるものというふうに考えておりますが、しかしいずれにいたしましても、私何度も答弁申し上げましたように、中間報告を受けて、今、最終取りまとめが政府・与党間で協議中でございます。  付記の中にも、行政改革のためには政党とりわけ与党の御協力が必要であるということがございますから、本当に風雪に耐えた与党でございますから、やはり英知のある日本の伝統と歴史を踏まえたすぐれた案が出てくるというふうに私は考えておりまして、その状況を見守りながら、望ましい郵政事業のあり方を考えてまいりたいというふうに考えております。
  25. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 総務庁長官からもお答えをいただきます。
  26. 小里貞利

    ○小里国務大臣 中間報告におきます中身についてはもう御承知のとおりでございますから、私は、質問の後の方から、いわゆる今先生がお話しになった独立行政法人について、しかも、その審議の今日の段階における位置づけを申し上げた方があるいはわかりやすいのではないか、さように思いますから、その独立行政法人の方からお話し申し上げます。  短くということでございますから、これは要するに簡素化するために、あるいはまた民間でできることはできるだけ民間にゆだねたい、そういう基本的な理念から発想いたしまして、要するに、垂直的減量の枠組みの一つとして独立行政法人の制度設計を検討いたしております、こういうことであると思うのです。  しかしながら、今申し上げましたそういう制度設計を相当議論してまいっておりますが、その中におきまする、では一体、仮にその制度設計ができた場合に受け皿をどこに持っていくか、このことにつきましてはまだ行政改革会議では直接議論はいたしておりません。しかしながら、雰囲気の中の一つとして申し上げられますことは、郵政三事業についても一応念頭に置きながら検討されておる、そういう状況でございます。
  27. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 今、両大臣のお話伺いまして、この問題には人一倍強い関心を持たれ、またある意味ではこの行革に対して非常に大きな影響力を持っております小泉厚生大臣から御感想を伺いたいと思います。
  28. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 行財政改革といいますと、今まで特殊法人の整理統廃合が焦点になっておりました。私は、本格的な行財政改革を進めるためには、単に特殊法人の整理統廃合でとどまってはいけない。むしろ、財政投融資制度の改革、そして入り口であります郵政三事業、年金等のこの預託制度をどう見るか、これを一体的に見るべきだという考えを示してまいりました。  そういう意味において、今回、まだ具体的な姿が見えてきませんが、独立行政法人という形で郵政三事業を切り離して一体的に考える、そして資金運用部の預託を廃止して自主運用を促す、税金を投入しないという形で独立行政法人を考えるならば、これは財政投融資制度の改革に結びつく、同時に特殊法人の整理統廃合にもつながる。わけて、この郵政三事業に対して、封書、はがき等の民間参入を規制しないで、民間参入も認めるという形になるならば、私は行財政改革に大きく前進すると見ております。
  29. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 行政改革は、これからいよいよ、一府十二省という大枠は私はこのまま確実に進んでいくであろうというふうに思います。また、我々もそれを応援していきたいと思います。  問題は、今小泉厚生大臣からもお話がありましたその中身であります。そして、国家公務員百十五万、このスリム化を、具体的に国家公務員の数をどうするのか。国民の皆さんにはどれだけ本当にスリムになったかということが大変大事なことだと思います。時間がなくなりましたので、伺おうと思いましたが、これはしかるべきときに私は数値を示して、国家公務員二割とか三割とか、公務員の数もきちっとスリム化する。  かつて国鉄は五十万人いたわけであります。私たちが国会に出させていただいたときには四十七万人でした。三塚大蔵大臣、総理等々、いろいろな御努力の中でこの民営化をして、今日我が国のJRはわずか十九万人であります。私は今、国の官僚機構がどのような形で本当にスリムで効率的な官僚機構に変わるかはまさにこれからの勝負にかかっているように思うわけでありまして、関係閣僚それぞれの皆さんの中でしっかりした調整をして、国民の前にこの行革をしっかりと成功させていただきたい。我々も及ばずながらしっかりお支えをしてまいりたいというふうに思います。  ところで、この連休中さまざまなことがございました。もう時間が最後になりましたけれども、香港で始まりました世界の株価の変動、あるいはまた昨日の三洋証券の問題、一連の問題にはかなり国民の皆さんも、これから経済の先行きどうなるであろうか、そういう心配をされているだろうというふうに思います。  経企庁のいろいろな経済見通しについては今までも私たちはその都度伺ってきたところでありますが、現在どのような見通しに立たれているのか、また大蔵大臣には、そうした景気の動向とともに、今日の三洋証券のような問題、この信用保証といいますか、そういうものを担当大臣としてどのように取り組まれていくかも、それぞれ両大臣から伺いたいと思います。
  30. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 最近の景気動向を見ますと、株価の動向など先ほど来お話しのとおりの状況はございますが、私の立場から見て、ファンダメンタルズにつきまして申し上げたいと思います。  消費税の導入に伴いますいわゆる駆け込み需要の反動減というのが四月から続いておりまして、それがまた七月-九月にもやや残っておりましたが、これが解消する動きにもございます。そしてまた、そういう中で、足元の回復テンポは緩やかになっておりまして、言うならば足踏み状態かなと思っておりますが、基調として見ますと、消費、投資あるいは輸出などの動向から見まして、景気回復の基調そのものは変わっていないというふうに考えております。  ただ、消費や設備投資、設備投資はそこそこ伸びておりますが、必ずしも順調に伸びていませんのは、将来の経済に対する信頼感というものが問題であるということでございまして、この十一月の半ばをめどに私ども二十一世紀も踏まえました経済対策をしっかりと進めてまいり、それによって国民の皆様の信頼感をしっかりと確立して、景気を正常な回復軌道に乗せていきたいと考えております。
  31. 三塚博

    ○三塚国務大臣 三洋証券のお話がございました。  昨日、三洋証券より、三洋証券グループの立て直しで協議が進められてきたところでありますが、ノンバンク等の問題がこれありまして、これ以上このままの改善計画の遂行が不可能であるということの結果、関連ノンバンク等への与信の毀損等により、通常の事務の継続が困難になりましたので、法的枠組みの中で会社の再建を図ることが適当と判断し、営業の一部休止を決定するとともに、本日付で東京地裁に会社更生法の適用を申請するとした旨の報告がございました。役員が全責任を負って退陣をするということでございます。  時間が来たようでありますから、もっと簡単に申し上げます。  今回の件は、証券業全体の問題というよりも、むしろ関連ノンバンクの業態の悪化という特殊事情にあるということは御理解いただけると思います。よって、顧客資産につきましては、関係金融機関や寄託証券補償基金の協力によりまして、顧客の要求に応じ円滑に返還される、顧客資産の保護には万全を期すということとなります。  三洋証券は、今後、会社更生法という透明性のある法的枠組みのみの中で会社再建を目指すことになります。そういうことどもの中で、厳しい自力再建に向けて、法の枠組みの中で、透明性の中で行われるということでございます。  証券業界に及ぼす影響は、ノンバンクの業態悪化ということを受けての原因でありましただけに、影響はない。大蔵大臣として、リーディングカンパニーである野村さん、それに東京三菱、日債銀等の各銀行の支援も要請をする。万全の体制をとってまいるつもりであります。
  32. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 ありがとうございました。
  33. 松永光

    松永委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、田中慶秋君。
  34. 田中慶秋

    田中(慶)委員 実は、先日の予算委員会で政治倫理の問題を含めて質問させていただいたわけでありますが、そのときに、要求大臣として小泉厚生大臣を要求していたわけでありますが、委員会その他の関係出席されなかったものですから、その残りの部分質問をさせていただきたいと思います。特に、小泉厚生大臣について、泉井関連の質問の中で、御承知のように文芸春秋の中で、厚生大臣が車代として三十万もらった、政治献金として領収書を送ってきた、こういうふうに述べられております。また、さらに、車代ということで、泉井氏とは初めてお会いしてなのか、それとも数回、何回かそういう形でお会いして、それぞれ車代として、この処理の仕方は政治献金であろうと思いますけれども、そういう方法をとられていたのかどうか、この辺について、まず最初に質問をさせていただきたいと思います。
  35. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は、一切、泉井氏と会ったかどうかというのは、テレビとか新聞報道であのような報道をされるまで知らなかったのです。私と会ったのが泉井氏かどうかというのも記憶ないのです。しかしながら、実際には会ったんでしょう。それで、きちんと領収書を出しておいたということがああいう記事になったのだと思います。  私は、ですから、その会合で、どういう方が泉井氏かというのはテレビとか新聞に出るまでわからなかったのです。会ったとしても、どういう話をしたのかもいまだに覚えておりません。
  36. 田中慶秋

    田中(慶)委員 普通、常識ですと、車代三十万円もらえる、そういう仲で、全然顔見知りじゃない、あるいは会ったかどうかもわからない、そういう人に社会常識として、大臣、車代出しますか。私は出さないと思うのです。そういうことを含めて、この三十万円というものが、いまだに会ったかどうかわからない人から献金を受けられるというのは、ちょっと理解に苦しむのです。それは政権党であります自民党さんにはあるのかもわからないけれども、現実にそういうことは、常識的に判断できないと思いますよ。  そういう点で、あなたの常識と我々の常識は違うかもわかりませんし、俗に言う地域の常識と永田町の常識は違うのかもわからぬ。ですけれども、こういう形で領収書まで出されたのでしょう。それが、全然顔見知りでない、会ったことない、覚えてない、そして領収書を出される、その行為も私はまだ納得できないのですが、もう一度その辺について。
  37. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 政治家としては間々あることだと思います。親しい人から誘われた、小泉さん応援しょう。好意を受ける。しかし、いかなる金も領収書を出す。私は、間々あると思います。
  38. 田中慶秋

    田中(慶)委員 僕が質問している内容と、大臣が答弁しているのとちょっと違うと思うんですね。  私は、この泉井さんを知っているかどうかを聞いて、そして、普通だったらば、知らない、普通の常識的なこと、それもあるでしょう。しかし、現実にこの領収書まで切られて、間々ある、全然知らない人から応援してもらう。そういうことじゃなく、具体的に私はこの泉井さんのことを指摘しているんです。それで全然会ってないと言う。
  39. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 ですから、そのときまで会ったことありませんでした。だから、会った後も、その人が泉井氏かどうかというのは、テレビで報道されるまでわからなかったんです。
  40. 田中慶秋

    田中(慶)委員 会ったことがない、わからない、そういう人から、普通であれば、厚生大臣、今までのあなたの言動や発言からすると、私は、そういう献金なんてないのかなと。  あなたがずっとクリーンにいろいろなことを言ったり表現をしていますね。そういうことから考えると、会ったことのない泉井さんから三十万円の車代、そういう形でちょうだいできるのかしら。
  41. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私に献金してくれる方は、私が会ってない方もたくさんいます。全部の人を知りません。しかし政治活動を応援してくれる、あるいは秘書が知っているという形で応援してくれる人の方が、むしろ私が知っている人より多いと思います。
  42. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間の関係もありますから、これは、これから泉井氏を国会証人喚問されればより明確になるんだろうと思います。  そこで、角度を変えて厚生大臣に質問いたしますが、山崎政調会長、加藤幹事長、小泉厚生大臣のいわゆるYKKの旗上げのときに、準備資金として泉井氏が多額の資金を提供された、こういうことを述べられておりますけれども、このことは、山崎政調会長が泉井氏から、YKK、新しい政治勢力をと、こういう形で資金提供を受けておられる。メンバーの一人としてあなたはその内容を、あるいは資金の提供を御存じですか。
  43. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 全く聞いておりません。
  44. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大体、このYKKと言われる人たちは大変仲間で、お互いに意思の疎通が図られている。こういうことで、新しい政治勢力をという、こんな形であるにもかかわらず、一千万あるいはそれ以上の資金提供をされている、特にメンバーの一人として重ねて質問をさせていただきますが、その資金、運営費、YKKの資金の、あるいはまた運用のそれぞれの資金というものがこの泉井さんから出ていたということは、全然知らなかったですか。
  45. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 全く知りません。
  46. 田中慶秋

    田中(慶)委員 それではもう少し、きょうはこのYKKの問題も、三人のうちの一人があなたなので、あとは二人閣僚じゃありませんので質問できませんが、実は、泉井氏の発言、さらにもう一度、平成七年七月の十八日に、山崎政調会長に、お中元の名目で一千二百万円、そして、そのうちの百万円ずつを小泉大臣と加藤幹事長に渡してくれ、こういう話であったように報道されておりますけれども、その事実はどうですか。
  47. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 いただいたことはありません。
  48. 田中慶秋

    田中(慶)委員 片方は出して、片方はいただかない。こういうことを含めて、さらにこれからの国会の中における泉井氏の証人喚問、あるいはまた、山崎拓氏がそういう点では、まあ、猫ばばとまでは言いませんけれども、泉井氏から二人にお中元名目で出してくれというものをある面ではお渡しをしなかった、こういうことが恐らく明確になるだろうと思います。  こういう食い違いのことについて、厚生大臣は、泉井氏のこういう一連の発言あるいは山崎拓氏の証人喚問等々の問題を含めながら、このずれというものをあなた自身は、先ほどの準備資金の問題、お中元の問題等々を含めながら、ある面で述べられていることとの違い、その辺について、全く今あなたは関係ないという立場で発言をされておりますけれども、このことが国会証人や、さらには今後この違いをただす意味では山崎拓氏の証人も求められてくることになろうと思いますけれども、そのときに明確にあなたとの関係が明らかになった場合は、あなた自身はどういうふうにしますか。
  49. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は全く知らないものですから、泉井氏に聞いていただきたいと思います。
  50. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これから、今月には泉井氏の証人喚問がそれぞれ話し合いをされることになってくるわけでありますので、この辺が最後の詰めとして私は申し上げました。  次の質問を、私どもの仲間であります鈴木さんの方に譲らせていただきます。ありがとうございました。
  51. 松永光

    松永委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  52. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 新進党の鈴木淑夫でございます。  総理日ロ首脳会談大変御苦労さまでございました。三日間の連休返上で外交問題に御努力されまして、お帰りの直後でお疲れかと思いますが、一方、国内では、国民は、景気の現状、日本経済の将来、大変心配をしております。そうであればこそ、当予算委員会景気、経済問題の集中審議をしようということでございますので、ひとつ御容赦いただきまして、これから日本景気、経済問題について集中的に質疑をさせていただきます。  また、日銀総裁、お忙しい中を御出席ありがとうございました。総裁にもお伺いしたいと思います。  初めに、せっかく首脳会談からお戻りのところでございますから、総理にお伺いしたいと思うのですが、二〇〇〇年までに領土問題の解決を含む平和条約の締結をしよう、努力目標としてそういうことが確認された。あるいは、ロシア側日本からの経済協力を取りつけた、これから具体的に前進するんだということで、両者ともに大変成果が上がったということでございますが、総理にお伺いしたいのは、努力目標にしても、特にそういう経済協力の約束あるいは経済協力議論のときに、足元の日本経済がこんな状況です。  九二年から九五年、三年間ゼロ%台成長、ようやくここで、九五、九六、二%台に来たかと思ったら、本年度は民間の見通しではゼロ%前後に落ち込んでしまう。来年度以降、財政構造改革法案を実施に移すと、民間の予測では、六年間平均して一%台の成長しかできないよ、こう言っております。こういう日本経済を前提にした上で、ああいう大ぶろしきと言っては失礼ですが、大きな経済協力の話をされた。  私はその辺に大変違和感を持ちますが、総理は、首脳会談でそういう経済援助の話をしながら、実はこの先六年間、自分の足元を含めて、怪しいんだ、経済が大変なんだということについてどうお思いだったのでしょう。あるいは、ロシア側にそういう心配は全くなかったのでしょうかね。ロシアはもっと悪いから大丈夫だったのかもしれませんが、その辺、一体どういうお気持ちであったか、まずお伺いさせていただきたいと思います。
  53. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど、委員に対してお答えをする形でというお断りを申し上げた上で、私は、経済関係を着実に発展させることの重要性について一致を見た、そしてそのポイントはと申し上げましたとおりに、投資協力のイニシアチブを進めていく、ロシア国際経済体制への統合を促進していく、改革支援を既に行っておるわけでありますが、これを拡充していく、あるいは企業経営者の養成計画を進めていく。そして、エネルギー対話強化していく、原子力平和利用のための協力という大きな柱を、確かにエリツィンさんと私の名前でプランとして確認をいたしました。  同時に、現在の状況というもの、現在我が国がこれだけの赤字体質となり、財政の健全化、再建に取り組んでいる状況であり、国と地方との後世代からの借金である国債の発行残高がこういう数字にある、そして、我々はそうした努力を国内において払いつつあるということは明確に説明はいたしました。説明をした上で、私は、それをロシア側がどう受けとめ評価をしたかについては論評の限りではございません。  しかし、議員、大変失礼でありますが、大ぶろしきと言われました。今私が申し上げましたようなプランというのは、ロシアを、まさに国際経済の枠組みの中におきまして市場経済化努力しております。その状況を支援するものとして、間違ったものでありましょうか。あるいは、我が国が、一方で我が国自身の財政再建の努力を財政構造改革を進めながら払うに値しないものでありましょうか。  私は、みずからの胸の中の比較考量の問題として、こうした考え方を申し述べたことを決して隠しておりませんが、同時に、ロシア側我が国の財政状況を偽って伝えたつもりもございません。
  54. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理がおっしゃいますように、大きな日本の外交戦略としてロシア市場経済の中に取り込んでくる、このために日本も大いに貢献する、それは結構でございます。  しかし、さっきおっしゃいましたような大きな投資計画の援助をするには、余りにも日本の財政政策の運用は財政構造改革法案によって縛られようとしておりますし、それから、民間企業には今活力が欠けております。その意味で、志は結構ですが、私は率直に言って、日本経済、それだけの力がこのままでは本当にあるのかねという疑問を持っております。  まあ、ロシア側がそれをどう評価したかはわからないというのはごもっともでございますが、その辺のところは、私は、もし本当に財政構造改革法案が実施されますと、今後六年の間に、日本経済にとてもそんな力はないということが問題になってくるのではないかという私の懸念を表明いたしまして、今申し上げている、日本経済はそれほど弱いんだよということについての質疑に入りたいと思います。  総理は、十月一日、二日の本会議におきまして、所信表明でもあるいは御答弁の中でも繰り返しおっしゃっているわけですが、それは、景気回復に従来のような力強さが感じられない、これは構造的問題のあらわれだとおっしゃっております。  しかし、総理、構造的な不況要因というのは何も今始まったわけではございませんで、バブルの崩壊以来、九一、二年から始まっているわけであります。それがなぜ今、四月以降の景気の落ち込みの要因として、総理はずっと以前から続いている構造的要因をお挙げになるのか。構造的要因がどういうメカニズムで、四月以降今日までの日本経済の停滞を引き起こしたというふうに考えておられるのか、お伺いいたします。
  55. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 その点につきましては、本日も教授の授業を拝聴できることを半ば楽しみにいたしておりますし、同時に……(発言する者あり)失礼の言があったら、取り消させていただきます。  その上で、しかし、何回か同じ問題で論議をいたしてまいりました。そして、その中で申し上げてまいりましたことを今引用されました。同時に、私自身、これも何回も申し上げておることでありますけれども、今般のいわゆる景気循環の局面というものにおきまして、従来から、相当額の財政出動などを伴いますたび重なる景気対策を実施するという努力をしてきたこと、御承知のとおりであります。そして、これは私は景気回復の下支えをしてきたと思っております。  しかし、同時に、それでもなおかつ回復に従来のような力強さを感じられない。私は、それをとらえて、下支えの陰にあった、ある意味では隠れていたと申しましょうか、構造的な問題というものがより顕在化してきているというものを示しているのではないかと考えておることも事実であります。  だからこそ、我が国の経済の体質改善を実行しなければならない、企業や消費者の経済の先行きに対する不透明感を払拭しなければならない。そして、経済の回復基調というものを確実で力強いものにしていくためにも、経済構造改革を前倒ししていく、新たなものを追加していく、そういった効果的な経済対策を進めていく必要があるということを考えておりますということを繰り返し申し上げてきているわけであります。  そして、その中で、議員からあるいは御指摘があるのかもしれません、私の方から申し上げておくべきことは、確かに、消費税率の引き上げ、特別減税の廃止というものが四―六で吸収し切れるであろう、四月に入れば、その影響は多少残ったにしても消えていくという見通しが多少甘かったという、その御指摘は甘受しなければならないと思っております。
  56. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 初めに申し上げておきますが、私は、経済学博士ではありますが、現在、経済学の教授ではありません。衆議院議員であり、現在ただいま予算委員会委員でありますから、教授というのは大変……(橋本内閣総理大臣「この前、どなたか、教授の授業をちゃんと聞けと言われたから」と呼ぶ)いやいや、そんなやじに総理がとらわれちゃいけません。一国の総理は、ちゃんと正確におっしゃってください。  それはともかくとしまして、今総理自身おっしゃいましたように、構造的な不況要因というのは九二年から今日までずっとあって、確かにそれがさまざまの景気対策の効果を、逆に足を引っ張るような要因として働いてきたんだと思うのですね。そういうずっと働いていた構造的要因で、四月以降、今ずっと経済が沈滞してきているんだというのは説明にならないですね。そういうものが依然として働いているということでしょう。依然として働いているとおっしゃるならいいんですよ。だけれども、四月以降落ち込んだ理由は、実は別なんですよ。景気循環的な不況要因を本年度のデフレ予算がつくり出したからですよ。  私は、総理、御記憶かどうか知りませんが、昨年の臨時国会、十二月九日の予算委員会でも、それから通常国会、ことしの一月二十七日の予算委員会でも繰り返し申し上げたんです。そのとき、私はトリプルパンチという言葉を使ったんです。つまり、四月以降、必ずトリプルパンチの影響で景気は沈滞していきますよということを言ったわけです。それで、そのトリプルパンチは全部この予算案に入っていますと言ったんですね。  一つは、もうしばしば御指摘されるように、消費税を上げるよと言えばみんなは買い急ぎをする、その反動が出るということですが、そんなものは一時的な動きであって、もっと大事なものが二つあるよと。二つ目は、九兆円の国民負担増で所得が実質で伸びられなくなる、そうしたら、消費性向が上がるようなことが起きない限りは伸びられませんぞ。これは相当深刻なデフレ効果だ。三番目は、公共投資がずっと昨年の下期以降落ちてきている。このトリプルパンチがきいてくるんだということは、もう十カ月も前から私は御指摘申し上げている。  それがそのとおり、四月以降出てきているんですね。これこそが現在の経済沈滞の主要因であって、構造的要因というのは、総理も言っておられるように、ずっと根っこにあって足を引っ張っているんです。だけれども、四月以降今日まで沈滞していたのは、まさに循環的不況要因を政府が典型的に本年度予算という形でつくり出した、そういう政策不況だということをまず確認させていただきます。  二番目に、そういう政策不況の中で、総理は、これまた本会議で、十月一日も二日も言っておられるんですが、足元は緩やかだが、年度後半になると景気回復傾向が見られると考えておりますと言っているんですね。どういうメカニズムで、この予算がつくり出した循環的な景気後退の中から、年度後半にまた回復傾向が強まってくるというふうに考えておられるのか、きちっとその根拠を御説明いただけますでしょうか。
  57. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、最近の景気動向を見ると、民間需要を中心とする景気回復の基調は続いているものの、足元の回復テンポは緩やかになっており、企業の景況感にも慎重さが見られるという従来の答弁、私は、多少厳しさを増しているとか、そう感じる、あるいは日銀の短観を見るとというようなこともっけて何回か御答弁をしてまいりました。  その上で、私は、議員も今御議論の中で半面お認めをいただきましたように、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動減というものは収束していく、どの程度の場所で収束するかは別として収束していくということを言われました。これは、私なりに一つの判断のポイントであります。  また、雇用環境あるいは企業収益の改善の見込みというものもございます。しかし、そうしたものだけでは弱いものであることは間違いないわけでありまして、だからこそ体質改善のための経済構造改革の前倒し等の手法が必要であることも強調しているわけであります。  ただ、今委員からいろいろな角度からの問題が提起をされました。一つの問題点は、要するに、構造要因は前からあったんだ。しかし、逆に申しますと、構造要因があり、それが常に政府の、あるいは国のと言いかえても結構です、累次に及ぶ経済対策、施策というものの足を引っ張っていたということも事実であるわけでありまして、この体質自体を直さなければ、やはり本格的な回復にはいかないんじゃないでしょうか。そのポイントをどこでとらえるかという点にりいて、私は多少議員と意見を異にする部分があるのかな、そのように今感じております。
  58. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 経済構造対策の必要性については、総理と私の間に意見の相違などはないのでありまして、私はむしろ総理以上に、構造対策の必要性があるとある意味では思っておるのです、後でつまびらかにいたしますが。  ですから、私が今の景気は政策不況だと言う場合は二つの側面がありまして、一つは、政策的に景気循環的な不況要因をつくってしまったじゃないか、さっき言ったトリプルパンチを政策がつくったじゃないかということですが、もう一つは、構造的な要因に対して適切な政策がとられていないと私は判断しております。特に金融面であります。後で詳しく申し上げたい。だから、構造的な対策が必要だなどという点で、別に私は、そんな、思っていないというニュアンスでおっしゃったのなら、これは全然違う。私は、自分の内心では総理以上に心配して、いろいろなことを考えているわけであります。  さて、さっきお伺いした、どういうメカニズムで年度下期から上がってくるんですかということに対しては、構造的な対策で上がってくるというニュアンスのお答えをいただいたんですかね。しかし、私は、とても下期から上がってこない、少なくとも十-十二月期はだめだ、ますますおかしくなっているぞというふうに思います。  じゃ、企画庁長官、どういうメカニズムで年度下期からまた回復してくると政府は言い続けておられるのか、御説明ください。
  59. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 一つは、経済の現状に対する認識が、委員と私ども多少違っていると思っております。その違い方の内容は、私どもは、いろいろな問題があります。長く説明をいたしませんが、先ほど総理が申し上げました消費税の駆け込み需要に対する反動というのは、駆け込み需要も実は、政府もそれから一般のエコノミストも予想を上回る大幅なものでございました。したがいまして、九六年度の成長も、一般の予想を上回る大きなものになっていたと考えております。そしてその反動も、四月以降、消費それから住宅建築を中心として非常に大幅なものでございました。  しかし、よく見てみますと、消費者の懐は、例えば個人所得、賃金所得それから雇用等の数字は改善をしておりまして、そこそこ豊かになっている。それから企業収益も改善をしておりまして、いわゆる設備の過剰感も低くなっているという中から、設備投資はそこそこの伸びを示しているわけでございます。輸出も順調に伸びている。そういうことを総合的に見まして、経済の回復基調は変わっていない、しかし足元は回復のテンポがおくれている、やや足踏み状態かなというふうに認識はしております。  それで、懐がいわば豊かであるにもかかわらず、設備投資、むしろ消費と言ってもいいかもしれません、消費が思ったほど伸びないのは、経済の将来に対するいわゆる信頼感というものが多少損なわれている、それが原因である……(発言する者あり)ちょっとゆっくり聞いてください。今、説明をしろというお話で説明をさせていただいている。そういうことでございますから、そこの点について、しっかりとした、二十一世紀を踏まえた展望を示して経済構造改革を進めていくことが大事であるというふうに考えております。  構造的な要因があるということについては、私は三つあると考えておりまして、いろいろな分け方があると思いますが、一つは、いわゆる経済の空洞化という現象が製造業を中心としてここしばらくの間続いてきた。したがいまして、景気の下支えをするための減税とかあるいは公共事業の拡大とか、そういう対策をとってまいりまして、それがまた大きな財政赤字集積の原因でもございましたが、これは景気の下支えという意味では有効であったと思います。しかし、思ったほど景気回復に効果がなかった。その原因は、いわゆる製造業の空洞化にあるというふうに考えているわけでございまして、その空洞化対策というものを構造対策の一つとしてやらなければいけない。  そのためには、従前から申し上げておりますとおり、企業の経済活動の事業環境を国際的に匹敵するような水準にまで持ってこなければならない。その一つが、法人課税のあり方あるいは有価証券取引税のあり方等であるというふうに考えております。  それからもう一つは、何といっても、不良債権の処理というのが思ったほど進んでいなかった。もちろん、銀行が銀行の帳簿のつけかえによって損失として落とすという操作はかなり進んでおりますけれども、しかし、落とされた不良債権というもののいわゆる担保不動産が、実はほとんど処理されていない。土地の有効利用、土地の流動化という点でまだおくれているということでございまして、この点についても私ども、経済構造改革の一環として、土地の流動化を図り、土地の有効利用を図って、本当にしこっているこの不良資産の処理あるいは担保不動産の処理を進め、それを経済活動の中に組み込んでいくという操作をするということが、一つ、この構造的な要因の改善の必要な要件であるというふうに考えております。  それからもう一つは、長年続いてまいりましたいわゆる日本的な経済慣行というものが、経済の国際化に対応して合わなくなってきているところがある。結局は、民間活動中心の経済活動を活発化するために、規制を緩和していろいろな意味での民間の経済活動を活発化することが大事である、そういうことをやる必要があるというふうに考えているわけでございます。  そういう民間活動を中心とする経済活動を活発化させるということによりまして、先ほど総理が申しました、構造的な要因を根本から取り除くという作業、そういう施策を進めることが一番大事であるというふうに考えておりまして、そういうことをしっかりと進めることによって、将来に対する国民のあるいは企業家の展望をしっかりと持っていただいて、日本経済を順調な回復軌道に乗せていきたいというふうに考えている次第でございます。
  60. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 経済構造対策が大事だなんということについては、私どもも十分認識しておるということはさっきから繰り返しています。えらいうんちくを傾けて御講義をいただきましたけれども、この三点は、もちろん正さなければいけない問題ですけれども、中期、長期の課題ですよ。こんなもので、年度下期、景気回復がしっかりしてくるわけがない。  そうすると、今の御答弁の中で、私が質問した、どういうメカニズムで年度後半から景気回復がしっかりしてくるのかということに対するお答えらしきところを私なりに探すと、賃金や雇用が伸びている、企業収益が伸びているというあたりですね。  しかし、この後、私数字を挙げてしっかり申し上げますが、所得も賃金も雇用も、伸び率は鈍化をしてきている。収益の増益率も鈍化をしてきている。しかも賃金所得に至っては、今消費者物価は前年比二%ぐらいで上がっています、それを引くと実質ではもうマイナスになってしまっているんですよ。実質でマイナスになっている中で、どうやって消費を伸ばせるか。それは、消費性向を上げる以外伸ばしようがないですね。だけれども、御自身おっしゃっているように、先行き不安です、こんな状態じゃ。ですから、消費性向を上げないとすれば、これはもう理の当然、実質所得が伸びていないんだから消費が伸びないのは当たり前という状況ですよ。ですから、尾身長官のお答えになったことは、全然私の質問に対する回答になっていない。年度下期に景気がしっかりしてくる理由なんか全然説明していないと思うのですね。  一つ数字を申し上げて、もう年度下期は半分勝負あったということを申しますよ。  鉱工業生産。鉱工業生産ですから皆さんよく御存じだと思いますが、ことしの一-三月はプラスでしたね。駆け込み需要があって、プラス二・四%、前期比季調済みですね。四-六月に〇%、横ばいになってしまった。七-九月はマイナス〇・六%と下がりました。そして、十月と十一月の予測指数が出ております。十二月は出ていないから、仮に十一月比横ばいだとしますと、十-十二月はマイナス二・〇%。そして、ついに前年比マイナスになってしまうんですよ、マイナス〇・二%。  もう年度下期の半分は勝負あったですよ。ますます生産の下降カーブが強まってくるわけですね。  政府の前で日銀総裁が違うことはなかなか言いにくいでしょうが、年度下期に回復はしっかりしてくるということは、日銀は言っておられませんが、もう十-十二月の生産、出荷、在庫等の情勢から判断すれば、ちょっと年度下期も、まだ回復がしっかりしてくる可能性はほとんどないように思いますが、日銀総裁はどのように年度下期を見ておられますか。
  61. 松下康雄

    松下参考人 ただいまの経済の現状の判断につきましては、これまでの御答弁と重複する点もございますが、かいつまんで申し上げたいと存じます。  私どもとしましては、現在、最終需要面で、消費税率引き上げなどの影響から個人消費、住宅投資が総じて低調な動きを示しておりますし、また生産につきましては、一部の業種での在庫調整の動きもございまして、足元横ばい圏内の動きでございます。こういったことを背景にいたしまして、企業の景況感もこのところやや慎重化をいたしているように見受けております。  ただ、その一方で、現在も純輸出やまた設備投資は増加傾向を続けておりまして、これが経済活動を下支えしている状態でございます。こういった設備投資の増加の背景としましては、やはり企業の売り上げや収益が、全体としましてはなお増収増益傾向を維持しているということが挙げられるわけでございます。また、雇用や家計所得の面につきましては、景気減速の影響が徐々に見られ、増加テンポが鈍化してきてはおりますけれども、全体として見ますというと、引き続き緩やかな改善基調でございます。  こういった状況から判断をいたしまして、私どもは、景気回復の基盤そのものは損なわれていないというふうに判断をいたしているところでございます。  以上のようなことから見まして、私どもは、今後、個人消費が消費税率引き上げの影響等から脱却することを通じて回復に向かい、また、これと同時に、現在進んでまいってきております産業の在庫調整の進行に応じて、一方で在庫調整圧力が低下をする。それらの事態に伴いまして、景気はいずれ再び緩やかな回復テンポを取り戻すと見ておいてよいというふうに考えている次第でございます。  この点につきましては、消費の回復テンポとか在庫調整の進捗度合い、さらには企業やあるいは家計のマインド面の動きもよく見ている必要がございますので、私どもとしては、引き続き注意深くこれらの状況を注目、点検してまいりたいと思っております。
  62. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今の日銀総裁のお答えを私流に要約いたしますと、純輸出と設備投資という二本柱が辛うじて景気を支えている、だから在庫調整が終われば上がってくるだろう、こういうお答えであります。  私は、純輸出も設備投資も、先を展望すると極めて心もとないものがあるということを後で申し上げますが、在庫調整の話が日銀総裁の口から出ましたので、企画庁長官に聞きたいのですが、日本銀行がはっきり言っていて、企画庁がどういうわけか余りはっきり言わないのが在庫調整なんですね。  さっき言いましたように、生産が四-六横ばい、七-九マイナス、十-十二は恐らく七-九以上に大きく下がる理由は、言うまでもなく在庫減らしの生産調整ですよ。これも実は、やや政府が罪つくりだったように思いますが、四-六月に、これは一-三の反動で大したことないよ、そのうち、もう夏から需要が上がってくるよと言ったものですから、四-六月に油断して、自動車とかパソコンとか家電の一部でかなりの増産をしてしまった。ところが、政府が言うほど早くは需要は回復してこない。しまったというので、六月、七月あたりから、こういった加工組み立て型で在庫減らしの生産調整が始まったのですね。だから、七-九から生産はおっこちてきた。  加工組み立てというのはすそ野が広いですから、こういう日本を代表する加工組み立てで生産調整すれば、原料や材料を買いませんから、この影響は今度は素材の方に来てしまって、今、素材の在庫がぐんぐん上がってきた。素材の方の在庫調整が加工組み立ての在庫調整とオーバーラップして進んでくるのが、この十-十二ですよ。恐らく、素材は来年一-三まで続くでしょう。  ですから、在庫調整という観点から見たら、年度下期に回復がしっかりしてくるなどということは全くあり得ないですね。もう恐らく、年度下期いっぱい在庫調整は続くだろうというふうに思いますが、企画庁はどういうわけかこの在庫調整のところをはっきりおっしゃらない。恐らく、そういうことに乗っかって御答弁されるから、総理もどうしても、年度下期に回復の足取りはしっかりしてくるなどという、すぐに間違いがわかるような御答弁をしてしまったのではないかというふうに思っております。  在庫調整一つ考えて、あり得ないことですよ、年度下期に回復の足取りがしっかりしてくることは。むしろ、年度下期は生産の下落がやや加速いたします。これは私の見方です、在庫調整を考えたら。企画庁は、在庫調整ということは余りおっしゃらないが、どういうふうに見ていらっしゃいますか。
  63. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 先ほどのお話の中で、私が経済構造改革を進めるというお話を申し上げましたが、年度後半はそれでも回復しない、それは長期の問題だというお話がございました。  私は、先ほど少し説明不足だったかと思いますが、消費者あるいは企業家の、将来に対する、景気に対する信頼感、コンフィデンスにやや問題がある、したがって、二十一世紀にも及ぶ中長期にわたる将来的な構造改革を進め、民間需要を活性化する体制をしっかりつくることによってそのコンフィデンスを回復させて、そしてそれによって消費も設備投資も活性化してくる、こういうことを先ほど申し上げたつもりでございまして、その点について補足をさせていただきます。  在庫調整についての現状認識は、今、日銀総裁と私は同じ考えを持っております。
  64. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 在庫調整については同じ御見解だという尾身長官のお答えでございますが、そうだとすれば、もう十-十二月は大変な勢いで在庫調整が進んでおります。それがあっという間に終わるはずないのですから、一-三月まで続くだろうと私は思うのですね。  ですから、総理、失礼ながら私は、総理が本会議場で、あるいは委員会の席上で繰り返しおっしゃった二つのことを今否定したつもりです。  一つは、今の景気の沈滞というのは構造的要因だと。それは、構造的要因はずっと以前から現在ただいままできいているが、四月以降のこの落ち込みは政策がもたらした循環的な不況要因であるということ。それから二番目に、年度下期にはしっかりしてくるというのは全く希望的観測で、もう間もなく数字が出てきて裏切られるに違いないという、この二つの点をここで確認して、先に進みます。  日銀総裁も企画庁長官も、基本的には日本経済、所得、雇用、収益がしっかりしているから回復の基調が崩れていない、やがてまた上がってくるよと言い続けていますが、私は、この今言っている、何とか回復を支えているところがどんどん怪しくなっているということも同時に認めないといけないと思いますよ。  収益については、ついこの間の九月調査の短観にはっきり出ておりますから、時間をとらせてもいけませんから私の方で言ってしまいますけれども、短観の、主要企業の製造業、前年度は二〇%の増益だったのが本年度六・七だ。非製造業は、九・八だったのがたったの一・二、ほぼとんとんですね。それから中小企業に至っては、製造業、去年は三割の増益だったのがことしは三・八%だ、これももう横ばいに近い。そして、何よりも中小企業非製造業、去年もたったの五・四%の増益ですが、ことしは七・〇の減益だというふうに答えている。  あらゆる、製造業、非製造業あるいは大小見ても、全部急激に増益率は落ちてきております。本年度〇%前後の成長であれば、仕上がりで本年度の増益率はもっと下がるだろうというふうに思いますから、収益が支えているというのは大変認識ラグを持った言い方ですね。認識がおくれている。この収益が危なくなっているということを忘れないでいただきたい。  それから、雇用と賃金のところは大丈夫だというのですが、労働省も総理府も大臣がいらっしゃらないのですが、恐らく企画庁の事務方のお手元にはあるでしょう。先週金曜日に発表になったのですね。九月の毎月勤労統計、それから総理府の方では労働力統計が発表になりました。これはさっと答えられますか。答えられれば、九月の実質賃金、所定外労働、就業者数、この三つだけでいいけれども、前年同月比を答えてください。用意がなければいいです。ちょっと無理かな。  それでは、私、実はもう金曜日の夕方だったもので……
  65. 松永光

    松永委員長 いや、答えると言っております。
  66. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 そうですが。それではお願いします。三つだけでいいですよ、今聞いた。
  67. 新保生二

    ○新保政府委員 お答えいたします。  ちょっとお待ちください。賃金でしょうか。
  68. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 実質賃金。まあ名目賃金でもいいですよ、二%引けばいいのだから。いや、ちょっとお気の毒だから、委員長、結構です。
  69. 新保生二

    ○新保政府委員 ちょっと、すぐ出てきませんので、お待ちください。
  70. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 あれは労働省と総理府の統計なのですよね。こちらにとって二次統計だからちょっとお気の毒だったのですが、実質賃金の前年比というのはもう四-六月でマイナス〇・三%になっているのですね。それで、七-九もこれはマイナスなのです。マイナス幅拡大です。ですから、尾身長官、賃金、所得がしっかりしているというのはとんでもない認識間違いであって、消費者物価上昇を引いた実質では、四月以降ずっとマイナスになってしまっているんだ。これを頼りにして大丈夫だというのは、とんでもない話であります。  それから、雇用の関係でいえば、所定外労働時間というのは非常にマージナルに動くのでわかりやすいのですが、この所定外労働時間の前年比というのは、四月の七・二をピークにしてどんどん下がってきてしまって、前年比九月はほぼとんとんの数字が出ているはずです。季節調整済みではもう前月比マイナス、マイナスで来ています。所定外労働、時間外労働はどんどん減っているのですね。  それから、総理府の労働力統計に出てくる就業者数の前年比、これは、五月の一・六%をピークにしてどんどん下がってきて、九月は〇・四%のはずであります。前年比がどんどん下がっているということは、御承知のように、季節調整済み前月比ではまずマイナスになっているということですね。  ですから、雇用、賃金、所得の面はしっかりしていると繰り返し言っているけれども、とんでもない認識違い。消費者物価の上昇を引くことを忘れていたり、あるいは実質の賃金と雇用を掛け合わせたものが所得のもとだということを忘れていたりする暴論だなと思って聞いております。そういうわけで、景気回復の基調が崩れていないとおっしゃる根拠にしばしば政府が引用されます企業収益も、あるいは賃金、雇用も、実は急激に伸びが落ちているのであります。  さらに、日銀総裁は先ほど、ネットエキスポート、純輸出と設備投資が日本を辛うじて支えていると言っておられました。私もそれは認めますが、私は、これは先行き、急激に伸びが落ちるのじゃないかと思うのです。設備投資の見通しについては経済企画庁長官に、それから純輸出については大蔵大臣にお伺いしたいのですが、現在景気を支えていることはわかるが、下期から来年度を展望したら、これは明らかに伸び率が落ちて、頭を打ってくるのじゃないですか。どういうお見通しでしょうか、設備投資について、尾身長官。
  71. 新保生二

    ○新保政府委員 設備投資につきましては、御承知のように、幾つもこのところ設備投資関係調査が出ております。  一つ二つ御紹介いたしますと、興銀がこのところ一番新しい調査として出しました。これを見ますと、九七年度の計画はプラス七・一であります。製造業で九・三ということで、前年より高い伸びを見込んでおります。非製造業は六・三ということで、これは前年より若干低いという形であります。製造業が前年より高く、非製造業が前年より低いというパターンはほかの調査でも大体一致しておりますので、製造業については前年度より高い伸びが期待できるということだと思います。  それから、先ほど実質賃金の件がちょっと答えがなりませんでしたので、つけ加えておきますと、委員が御指摘のように、実質賃金が若干マイナスになってきているというのは事実であります。ただし、家計調査で実質可処分所得の伸びを見ますと、四-六は前年比でマイナスになっていますが、七、八とぎくしゃくした動きになっておりまして、とれをならしてみると、七、八は実質で可処分所得がプラスになります。この動きは九月も恐らく続きますので、七-九の実質可処分所得は、四-六はマイナスだったのに対して、プラスになるというふうに我々は見込んでおります。
  72. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 設備投資について、数字は今局長が申し上げたとおりでありますが、先ほど来私が何回も申し上げておりますのは、中長期にわたる経済構造改革をしっかりやりまして、日本経済の将来に対する展望がしっかりすれば、私は必ず設備投資も、今でも相当伸びていますけれども、順調な回復につながってくると思っている次第でございます。
  73. 三塚博

    ○三塚国務大臣 貿易・サービス収支は、米国の好調な景気等を背景といたしまして、このところ前年比で増加しております。これは、民間シンクタンクの九年度経済見通しにおきましても、外需寄与度は〇・九から一・五となっており、この状況が今後も続くもの、こう見ております。
  74. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 まず、設備投資の伸びでございますが、新保局長の説明が本当に政府の見解であるとすれば、まことに楽観的だと言わざるを得ません。  もちろん、大企業製造業は輸出で潤いましたから、設備投資の伸びは高いです。しかし、総理も蔵相も尾身長官も御存じだと思いますが、GDPベースの設備投資の中で、大企業製造業というのはどのくらいのウエートを占めているとお思いですか。これは恐らく二五%かそこらですよ。二五から三〇ぐらいですよ。製造業が四割、非製造業が六割ですから、その四割の中の大企業のウエートなんといったら、四割の半分以上でしょうが、しかし二五%ぐらいですよ。  そして、興銀調査だけ引用されたけれども、興銀は、まさに今輸出で潤っている大企業相手の調査ですから、強い数字が出るのは当たり前。日銀短観を見ますと、製造業の主要企業の設備投資だけが伸びてきていますが、あと大企業の非製造業、それから中小企業の製造業、非製造業は全部落ちてきて、特に深刻なのが、中小企業非製造業の本年度設備投資の伸びは既にマイナスになっていて、これを上方修正すると考えても、最終的にはマイナスだろうということです。  中小企業非製造業というのは、GDPベースの設備投資の四割ぐらいですよ。非製造業が全体の六割ですが、非製造業については中小企業のウエートが圧倒的に高い。六割のうち四割が中小企業です。これが本年度、もうマイナスになるのですね。このことを棚に上げてしまって言わないで、大企業製造業がいいとばかり言っているのは、非常に偏った情報を国民に与えるものだし、知っている人が聞いたら、ああ政府は甘いというふうに思います。  設備投資計画で今議論していますが、設備投資の先行指標は、御承知のように機械受注ですね。機械受注の民需、除く船舶、電力というのをよく見るわけですが、この前年比がどうなっているか御存じでしょうか。前年比が非常に高くなったのは去年の十―十二の一七・三%。それからちょっと飛んで、ことしの四―六はもう六・二に下がっている。今、七月と八月はわかっていますが、〇・三とか二・七なんですね。先行指標は前年とほとんど同じ水準になってきているんですよ。  こういうことから考えて、これは大体六カ月から九カ月の先行指標ですから、私は、こんな状況では来年度の設備投資は頭を打ってしまうなと思いますよ。景気を下支えている二本の柱の一本は、もう折れるなというふうに思いますよ。  それから、三塚蔵相にお答えいただきまして、今の黒字は続くだろう。いい意味でお答えになったか悪い意味でお答えになったか、これはジレンマがあるんですよね。景気のことを考えたら黒字は拡大してもらいたい、しかし、対米摩擦を考えたらこれ以上大きくなったら大変だと。  ですから、ちょっと三塚蔵相はどっちにウエートをかけてお答えになったかわからぬような上手なお答えのされ方をしましたけれども、私は、この黒字の伸びは鈍化せざるを得ないというふうに見ています。ぐんぐんこの調子で伸ばしたら本当に対米摩擦は大変なことになるし、また伸びられないだろうというふうに思うのですね。  二つ大きな根拠がありまして、一つは、やはり来年の米国の経済成長率はことしの三%台に比べて下がりますよ。二%台に下がる。そうじゃないとインフレが起きてしまう。それから、もう一つ日本の大事な輸出市場である東南アジア、これはもう御承知のように、タイ・バーツに始まるあの通貨危機の影響でもう既に成長は鈍化しています。ずっと七、八%で奇跡的な高度成長を続けてきた東南アジアも、とりあえず来年は四%ぐらいに下がっていくでしょう、全体の平均で見て。だから、輸出市場が悪化をしてくる。  そこへもってきてどんどん黒字を拡大させたら、必ずアメリカとの摩擦が起きて、米国政府も円高志向のような発言をしかねない。日本政府も抵抗しにくい。日米両国政府が今の円安は行き過ぎだと見ているなんという情報が流れようものなら、たちまち円買い投機が起こりまして、あっという間の円高だって起こり得るのですね。  ですから、そういうことを考えますと、この純輸出も、来年度に向かって引き続き景気を支えていくなどとのんきなことを言ってはいられない。二本の柱は両方とも、景気を引き続き支えていくというようなのんきなことは言っていられないのであります。  先ほど日銀総裁も、この二本の柱が支えているから緩やかな回復が始まるだろうというニュアンスでお答えになりました。まあお立場上、日銀総裁はなかなか、民間への心理的影響もありますから、はっきりは言いにくいかと思うのですが、日銀も恐らく認めておられると思うのは、さっき私が言った、GDPベースの設備投資の四割ぐらいを占めている中小企業非製造業は、本年度からもう既に設備投資マイナスになるんじゃないのということであります。あるいは、短観の結果大きなマイナスが出ていまして、この後上方修正されると見ても、ちょっともうプラスにはなれないなというわけです。  それで、総裁、その背後にクレジットクランチがあるんじゃないかということが、民間エコノミストの間で、あるいは金融専門家の間で広く言われているのですね。これは、来年四月からの早期是正措置に備えて、自己資本比率を上げるために分母を小さくする、つまり貸し出しを抑制している預金取扱金融機関が非常に多い。そのことと、地価が一向に上がってこないことに伴うバランスシートリセッションの圧力と、両方から、中小企業非製造業の設備投資が早くも本年度からマイナスになりそうだという状況だと思うのですが、日銀総裁は、クレジットクランチ、そして中小企業非製造業の設備投資は本年度からマイナスだというこの状況について、どのようにお考えでしょうか。
  75. 松永光

    松永委員長 ちょっと待ってください。経済企画庁が中小企業非製造業の設備投資について説明をしたい。(鈴木(淑)委員「どうぞ。それじゃ、それを先に伺って、それから日銀」と呼ぶ)はい、それではこっちに行きます。  経済企画庁新保調査局長。はっきり答えてください。わかりやすく。
  76. 新保生二

    ○新保政府委員 先生が御指摘のように、中小企業の非製造業の設備投資が非常に低い計画になっているというのはそのとおりであります。これは景況の問題に加えて、さまざまな構造要因が非製造業の場合には大きくマイナスにきいている状況があるというのは、そのとおりでございます。  ただし、中小企業の製造業につきましては若干状況が違っておりまして、御指摘の短観の九七年度の計画は、九月調査で〇・一%のプラスになっております。例年、過去五年間はこの九月調査の段階では常にマイナスになっておりますから、八月ないし九月調査の段階でプラスになるのは六年ぶりであります。したがって、中小企業でも製造業は、非製造業ほど悪い状況ではないということも指摘しておきたいというふうに思います。
  77. 松下康雄

    松下参考人 設備投資でございますけれども、先ほどの御指摘の中小企業関係の設備投資計画につきまして、一点だけ申し上げさせていただきたいと思います。  私どもが短観で見ております設備投資計画は、その統計作成の特殊性上か、あるいは中小企業計画づくりのやり方からくるものか、ちょっと別でございますけれども、御承知のとおり、早い段階におきましては比較的小さな堅実な計画を組みまして、それが年度の進行に伴いながら計画自体が拡大をしていくというのがこれまでの推移でございます。今年これがどのような形で今後出現をしてくるか、これから見きわめなければなりませんけれども、私どもは、やはり中小企業の設備投資計画は、まだこれからも計画自体が大きくなる要因はあるということも判断の一つには入れているわけでございます。  なお、これと今の金融機関の貸し出しの抑制がどういう関係があるかという、いわゆるクレジットクランチの問題でございます。  金融機関の貸出動向を見ますというと、都長銀、信託等の五業態の貸出残高の前年比は、小幅ながちもマイナスが続いているところでございます。これには、一つは、金融機関が自己の不良債権の償却を積極的に行ってきておりますために、貸し出しの総額の中で減少する部分が大きいという影響もございますが、やはり基本的には、企業の側の資金需要自体が盛り上がりを欠いている点があるということが原因であろうかと考えております。  例えば私どもの支店長会議におきます報告を聞きましても、金融機関の間では、確かにこのところ、経営の健全性あるいは効率性を高める観点から、貸し出しに関するリスク管理やあるいは収益性の重視を打ち出す先がふえておりますので、こういったことが背景になりまして、企業としましては、金融機関の融資態度がこのごろ変わったと受けとめる向きも出てきているのかもしれません。  ただ、総じて申しまして、やはり金融機関自体がバブルの時代の放漫な融資姿勢を、このところ、相当の期間を経ながら是正をしてまいったという点は、全体として見ればプラスの評価をすべきことであると思いますし、また、金融機関は現状におきましても、健全な先については非常に積極的に融資をする姿勢を示しておりますし、また、短観におきます金融機関の貸出態度判断を見ましても、一部の業種では厳しいと見る先がふえているのでありますけれども、全体として見ますと、依然、緩いと見る企業の数の方が厳しいと見る企業の数を相当上回っているのが現状でございます。  また、もう一つつけ加えますと、全金融機関の平均的な貸出金利は引き続き市場金利に沿いました動きでありまして、史上最低圏内の水準でございまして、この中では特段の上昇傾向、引き締め傾向といったものはうかがわれないところでございます。  私どもは、こういう点をよく今後とも融資状況は丹念にウォッチしながら、なお、金融機関の姿勢が行き過ぎまして、健全経営を行っている企業さえ借り入れが難しくなるとか、あるいは貸し出しが絞られて金利が上昇するというようなことがないかどうか、十分に見てまいりたいと思っております。
  78. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 日銀総裁には十分見ていただきたいと思いますが、私、率直に言って、尊敬する大先輩の一人でございます松下総裁に対して、こいう席で言いにくいのでございますが、やはりちょっと楽観的に過ぎるように思います。  例えば設備投資。中小企業非製造業は、九月調査でマイナス一二・三%なんですね。過去の傾向から判断すると、このマイナス一二・三がプラスになるということはまず考えられないですね。これは必ずマイナス。  それから、中小企業に対する貸出態度判断DI。まだ緩い方が相当上回っているとおっしゃったけれども、相当はやめておいていただきたいと思います。たったの二%ポイントしか上回っていない。予測ですよ、十二月に向かって。しかもこれは、九一年から九二年の引き締めの直後の、あの貸出態度判断DIが一番厳しい方へ振れたときとほとんど差がないところまでもう落ちてきています。  これはもう、私ども同僚の選挙区での悲鳴にも近い声を聞きますと、この貸出態度判断DIの裏にある実情を日本銀行としてももう少しよくごらんになって、その帰結ですね、中小企業の非製造業の設備投資の落ち込みなど。しかもそれが、さっきから言っているように、GDPベースの設備投資の四割ぐらいなんですよね。製造業全体で四割ぐらいです。ところが、中小企業非製造業だけでも同じ四割ぐらいなんです。そこが落ちてきているということについて、もっと深刻に考えていただかないと困るなというふうに思います。  民間はそういうことを全部取り入れて、今どんどん本年度と来年度の経済見通しを下方修正してきているものですから、私の手元に、比較的信頼されている五つの調査機関、日本総研、大和総研、野村総研、日経センター、日興リサーチセンター、この五社の最新の数字があるんですけれども、これは平均しますと、本年度は〇・一二%成長ですよ。ほとんどゼロ成長。そして来年度は一・三%成長であります。こういう状況になったときに、一体日本経済に何が起きてくるんでしょうか。  尾身長官、まだ十一月でございますから、政府の本年度の改定経済見通し、あるいは来年度の予算編成の基礎になる見通しはこれからおつくりになるんだと思いますが、今言った、本年度〇・一二%成長、来年度一・三%成長、これはえらいことだという私のこの発言について、尾身長官はどういう感じでお聞きになりますか。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  79. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 本年度につきましては一・九%という成長を見込んでいたわけでございますが、御存じのとおり、予想外に三月までの住宅関係あるいは消費関係の駆け込み需要が高くございまして、昨年度の、九六年度の実質成長率が、これは政府も民間もそういう意味では多少違ったかと思うのでありますが、高かったわけであります。その反動として、四月以降の谷も予想外に深かったということでございまして、現状において、一・九%の成長率の達成は難しいかなというふうに感じております。ただ、私どもは、先ほど来申し上げました政策をしっかりと進めまして、そしてこの一・九%に近づけるべく全力を尽くしてまいりたいと考えております。  それから、来年度につきましては、まだいろいろな事情を勘案しながら見通しをつくるという状況でございまして、現在申し上げられる段階ではございません。
  80. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 本年度の政府見通しの一・九%は、難しいかななんていうような状態じゃないですね。御承知かと思いますが、残る三、四半期、年率八・八%の猛スピードでいってようやく一・九なんですから、こんなものは、難しいかなという日本語で言うものじゃないんで、これはもう架空の数字になってしまいましたということだと思いますね。  私は、やはり本年度はゼロ%台成長。この五社を見てもほとんどゼロに近い。ちなみに、マイナスになるよ、本年度マイナス成長だよと言っているのは日興リサーチセンターと大和総研でありまして、そういうところも出てきているんですね。そして、来年度が一%そこそこ。  さあ、そういうときに、GDPベースのデフレギャップは一体どのくらいになるのでしょうか。これは人によって現在の潜在成長力の言い方が違います。設備投資がずっと大きく落ちた後プラスに転じても、小幅ですから、設備投資の制約からくる潜在成長率なんというのは、もう今や二%ぐらいまで落ちちゃったかもしれません。しかし、そういう二%成長ではどんどん失業率は上がってくるという意味で、雇用面からくる潜在成長能力はまだ三%ぐらいあるかもしれないと多くのエコノミストが言っております。  雇用は大事ですからね。それで、設備投資なんていうのがふえてくれば設備面からの潜在成長能力は上がるのですから、基本は雇用ですから、雇用から考えて三%だといたしますと、九二年度から九四年度までゼロ%台成長、そして九五、九六は二%台、本年再びゼロ%近傍、そういたしますと、これで平均しますと一・二%ぐらいなんですね。三%の力を持った経済が、六年間一・二で引いたら、年々一・八力を余しますから、それを六倍して、一一%ぐらいデフレギャップが悪化している、需給ギャップが悪化している。最初のうちは、九一年度はバブルの余波でややインフレ的だったといって差し引いても、現在のデフレギャップは八%とかいうような数字が専門家の間でのコンセンサスだろうというふうに思います。  この影響は大きいですよ。これだけのデフレギャップを持ち続けて来年度に入っていったら、さっき言いましたように企業の増益はストップしてきますね。本年下期にも相当悪くなりますが、ストップしてくる。そうすれば、倒産が当然もっとふえてきます。それから、現在辛うじて三・四%にとまっている失業率は、もう就業者数は前年比で見てほとんど伸びなくなってきていますから、やがてどんどん上がってくるに違いありません。失業問題が深刻化します。  そういう中で、地価ももう一回下がり始めるかもしれない。株価に至っては半年ぐらい先を見て動いていますから、御承知のように、もう相当に弱くなってきております。取引先の企業の業況は悪化し、株価が下がって含み損が出てくれば、当然金融機関がこれに耐えられなくなって、倒れる金融機関がふえてきて、金融危機が起きてくるでしょう。  一方、国民は、この長期に及ぶ超低金利政策で金利生活者が困るとか、あるいは年金基金が破綻してしまうといったことで、いわば超低金利の是正を望んでおりますが、今申し上げましたようなデフレギャップ八%、ことしはゼロ%近傍の成長率、来年もせいぜい一%だという状況でいったら、とても超低金利の是正はできません。  今言ったように、このデフレギャップの意味するところは極めて重大であります。特に金融機関にとってえらいことになるというのは、先ほどもちょっと質問に出ておりましたが、昨日手を上げてしまった三洋証券の例を見てもおわかりいただけると思います。これまでは、どちらかといえば預金取扱金融機関中心の破綻でございました。これからは、証券会社及び生保の第二弾以降の破綻が起こっても不思議はない状況であります。  三洋証券の破綻が顕在化いたしますと、預かり証券は分別管理をせよということをきちっと指導しておりますから大丈夫だとはいうものの、やはり国民は心配になって預かり証券の引き揚げを図るとか、さまざまの預託金の引き揚げを図るということが起きるかもしれない。そういう意味で証券会社の場合も、この三洋証券の破綻がきっかけになって、一種の流動性危機みたいなものが、証券界でうわさの立っている証券会社中心に起こらないとは限らないですね。生保についても心配。  ですから、こういう一連の経済危機ということを考えますと、ことしのゼロ近傍の成長率、来年も財革法どおりやったらせいぜい一%でしょうねという、この経済見通しの意味するところは大変深刻であります。総理は、その点どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  81. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 先ほどから委員のいろいろなお話を聞いておりまして、実は、私どもが考えておりますことに対して、一つ評価をしていただけないところがあるかなというふうに感じております。  それは、私どもは、例えば法人課税のあり方についての見直しをする、あるいは有価証券取引税のあり方についての見直しをするという中で、経済を活性化する、東京証券市場を活性化するということを考えております。それから、土地資産の流動化を図るというところの中で、バブルの後遺症としての、経済が拡大するためのしこりとなっている、障害となっている不良債権の処理を実質的に進めるということを考えております。それから、規制緩和をさらに進めまして、民間の活動あるいはベンチャーの発展というものを育てていこう。そういう構造改革をしっかりやって、今までにない、発想の転換によります政策を行いまして、そして日本経済の構造を民間需要中心に変えていくという仕事をするわけでございます。  そういうことの中、そういう方向性を経済の実態に反映させていきたい、それがまたできるというふうに考えているわけでございまして、その点も、単なる需給バランス的発想ではなしに、日本経済の構造改革を進めるという、我々が日本経済の歴史の新しい試みをやるということを、ぜひ御評価をいただきたいと思います。
  82. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど来、さまざまな角度から、日本がいかに破滅するかというに近い予言をされたわけであります。そして、それについてどう思うとおっしゃいますけれども、私は、率直に申し上げて、だからこそ各般の改革が必要なんだということを言い続けてきています。  そして、どうも基本的に議員と、さっきから考え込んでいたのですけれども、構造問題があったことをお互いに認めている、そして、従来からとられてきた施策というものが下支えをしたという意味では、これもそれなりの役割を果たしたということはお互いに共通して評価をしている。私は逆に、どうもそこからが食い違うみたいな気がするのですけれども、当時、税制調査会においてもいろいろな御議論がございました。その点で、下支えをした効果はあったものの、逆に累次の施策が構造問題を隠してしまっていたのじゃないだろうか、むしろそのために構造改革がおくれたのじゃないだろうかと私は思います。議員は、あったのだからと、そこまでは同じなんですけれども、要するに、顕在化させずにほかの施策を選ぶべきだという御主張をしておられる。私は、そこがどうも違ってしまったなと。尊敬する議員でありますけれども、私は、こういう対策をとることによって、その構造問題が裏に隠れてしまっている状態自体を終わらないといかぬという思いがございました。  ですから、例えば雇用情勢等につきましても、確かに厳しいものがあります。だからこそ逆に、アメリカの体験などを生かしてみても、実はよく御承知のように、人材派遣というものが一つのセーフティーネットを、労働力の水平移動という意味での役割を果たしたアメリカの記録等を考えましたときに、人材派遣、職業紹介というもののあり方を変えなければいかぬということを私が申し上げてきたのもそういう意味であります。  いろいろな角度で、確かに私は、議員の御指摘になりました懸念材料すべてを否定するものではありません。まだ我々は、もし私の方からつけ加えますなら、原油価格の動きも気になりますし、海外経済の動向そのものに非常に微妙な動きがありますから、こうしたものも考慮の対象に入れていかなければならない。だから、それだけ経済運営に対して慎重であれという御注意は、私はありがたくちょうだいをいたします。しかし同時に、今までの対策の結果、下支えをした、そのかわりに構造問題が陰に隠れてしまっていたのではないか、それはどこかで切らなければいかぬという思いを私が持っていることも、これは事実であります。
  83. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理は今、大変うまく整理をしてくださいましたので、それに乗って私の質疑を続けてまいりますが、総理おっしゃるとおり、構造問題が九一年ぐらいから現在までずっとあったということは共通認識しています。したがって、構造問題に対して適切な手を打たなければいけないんだというのも共通しているわけですね。他方、循環的な要因に対して景気対策を打った、それは一定の下支え効果があったという点でも一致しているわけです。  ここから食い違うのですね。総理は、そういう循環的な対策を打ったためにみんな構造のことを忘れてしまった、だから今度は、循環的対策はストップしちゃって構造的対策に集中する、そういうニュアンスですね。(橋本内閣総理大臣「そこまでは言ってませんよ」と呼ぶ)だって、循環的対策はストップしちゃったじゃないですか。ストップどころか、循環的にはマイナスになる不況要因を政策的につくり出したじゃないですか。  だから、総理と私の食い違いはここから先なんですよ。総理は、下支えしたかもしれないけれども、景気対策を打ったために構造対策を忘れちゃったから、景気対策はストップだ、これから構造対策に集中すると言っておられるけれども、私はそこはおかしいのじゃないですかと。構造対策に目が行かなかったと気がついたら、循環的な対策を忘れずに引き続き頭に置いて実施しながら、何で構造対策を並行してやらないのですか。  こっちをとめちゃった。とめちゃったどころか、九兆円の国民負担増と公共投資の落ち込みを含むこのデフレ予算は、しばしば民間のエコノミストや学者に言われているように、負のケインズ政策だと言われているのです。負の、マイナスのケインズ政策です。だから、とめちゃったどころじゃない。一定の下支え効果を持ったケインズ政策的なやり方をやめただけじゃない、同じケインズ政策をマイナスの格好でやったのですよ。だから、こんな状態に経済は落ち込んでおる。そこの認識が総理と私と全然違うのですね。  だから、私が一生懸命主張していることは、構造的な対策のところに全然対立はないのです。さっきから尾身長官、しきりと言っているけれども、そんなことは、私どもは、例えば有取税の廃止なんというのは、もう一年以上も前から主張してきたことですよ。ようやく政府・自民党が動き出したかなと思っていますよ。法人課税の減税だってそうです。私どもは、もうずっと前、選挙の前から言っているのですから、ようやく動き出したなと。だから、構造対策を忘れちゃったのは実は政府・自民党であって、私ども新進党は忘れていない。構造対策と、それから循環的な景気対策の両方をやらなければだめでしょうと言っているのです。  逆に言いますと、現在の政策不況というのは、さっきも申し上げたけれども、循環的に政策が不況要因をつくり出したという要素と、構造的な不況要因に対する対策がずっとおくれてきちゃった政策の無策、この二つの意味で、私どもは現状が政策不況だというふうに言っているわけであります。  総理、今の私の整理で、二人の共通点と相違点、それは同時に政府・自民党と新進党の相違点だと思うのです。私どもは両方やろうと言っている。それは一年以上も前から言っている。忘れちゃったのはそちら、気がついたのはそちら、それで構造要因のところは今や一致してきているという話じゃないですか。どうぞ。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 御党の議員の皆様から、さまざまな御質問をいただいてまいりました。必ずしも、今議員が整とんされましたのが御党の政策すべてだと私は受けとめ切れない御質問も、今までちょうだいをしたように思います。事実、そういう御質問もいただきました。  その上で、しかしそういう不毛の論争を私はしょうと思うのではありません。これも議員と論議のかみ合わないもう一つの問題点、これも何回も議論をしてきたところでありますけれども、では、これ以上我々は将来にツケを残せるかというみずからに対する問いかけの中で、これ以上将来に対するツケを残すことによっての施策はもうとってはいけないのだ、むしろ少しでも、次の世代に引き継がなければならない国、地方を合わせての赤字を減らす努力を始めるべきだという決意をいたしました。これについても、その最終の考え方については一致しながら、今からこれをとることはいかがかという意味で問題が提起されております。この点につきましても、私は議員と議論をさせていただきました。  そして、中長期でこれが必要だということは議員はお認めをいただき、その上で、短期の痛みというものに対する部分で、残念ながら、今日まで何回か有益な議論をさせていただきながら、その部分ではなかなか意見が合ってこないというのが今の状況ではございませんでしょうか。
  85. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 もう一つの共通点と相違点を整理していただきまして、今総理がおっしゃったとおりなのですね。中長期的にこの財政赤字を削減していかなければいけないという点では、総理と私の間でも、自民党さんと新進党の間でも、これは認識に相違はないのですね。  ところが、短期の話になった途端に、そちらはびた一文、もう赤字をふやしたらいけないのだとおっしゃるから、そういう単年度主義的、硬直的な財政運営をやったら経済はめちゃめちゃになりすぞと。特に、そう言われたら国民は将来への展望が立たないから非常に不安になってしまって、消費性向は尾身長官が期待しているように上がってこない。むしろ、もう堅実、堅実で財布のひもを締めてしまう。企業は、怖いから設備投資で無理をしない。みんな殻に閉じこもってしまうのですよ。  そうではなくて、二〇〇三年なら二〇〇三年、赤字の対GDP比率を三%にするが、そこへ持つていくためには、まず経済を活性化して皆さん方に元気を出してもらう、そうすれば増税なき財政再建は二〇〇三年までにやれますよ。それをみんなが、国民が信用すれば、それこそ元気が出てきて、本当に潜在成長率並みの成長経路に向かって日本経済は活性化してくるでしょう。  びた一文、毎年毎年赤字をふやさないでいくのだというところのこの相違点というのは、私、思いますに、総理の六つの改革について私が感じている一つの問題点にもつながってくるように思います。  私は前にも総理に申し上げました。六つの改革は結構だ、しかしこれは中期の目標ですぞということを一つ申し上げました。それからもう一つは、構造改革は、総理もおっしゃるように常に痛みを伴う、痛みを吸収するマクロ経済の受け皿を用意しないでやったら失敗しますぞ、それをもう繰り返し申し上げている。  そして、できることならマクロ経済と六つの改革が整合性を保つ、それから改革同士も整合性を保つことが大事だと思うのです。  しかし、残念ながら、今総理が始められた改革を見ると、やはり縦割り行政の枠にとらわれているからでしょうか、言うなれば、自分の庭先をきれいにする、ごみを自分の庭先から掃き出して、そのごみを外へやった結果、日本経済全体という大きな枠組みがどうなるかということは構ってはいないという改革ばかりなのですね。  それでは、首をかしげていらっしゃいますから、三つ、例を挙げます。  財政構造改革は、私はその最たるものだと思います。経済がだめになってしまったら財政赤字削減もできなくなってしまうのですから、財政構造改革をやったときに、経済へどういうインパクトが行くかということは十分に考え、分析してやっていかなければいけない。先週金曜日の財革特別委員会で私は申し上げました。そういうシミュレーションはあるのかと申し上げたら、ないとおっしゃるから、それは無責任だと。それはもう財政という自分の庭先をきれいにすることだけ考えていて、ごみを掃き出したら周りの日本経済に何が起きるかということを全然考えていないじゃないかというふうに私は思います。  二番目に、社会保障の関係でもそういうことが言えます。  健康保険、これは改革しなければいけない。これは新進党ももう一年以上も前から言っています。しかし、その改革の一環として本年度二兆円の国民負担をふやした。それがマクロ経済にどういうインパクトが行くか。二兆円だけならいいかもしらぬけれども、消費税で五%上げ、特別減税を打ち切る……(橋本内閣総理大臣「五%は上げていません」と呼ぶ)ごめんなさい。五%に上げ、五兆円の増税をし、そして特別減税で二兆円、平年度化したときに七兆円の負担増加があるときに、やはり健保は大事だ。それは大事だけれども、社会保障の改革は大事だ、二兆円負担してもらいましょう。やはり庭先を掃いているのですよ。そのごみが日本経済へ行って何が起きるかは考えていない。これはやはり縦割り行政的発想だと思うのですね。  そして最後に、金融改革、ビッグバンの関係一つ同じ例を指摘しておきましょう。  それは、さっき日銀総裁への質問としてちょっと申し上げました早期是正措置であります。早期是正措置を来年四月からやるという。その結果、分母を小さくするために貸し出しを抑えている。それが中小企業に対してクレジットクランチのようなことを起こして、ただでさえ弱い中小企業の、特に非製造業を圧迫しておる。それが設備投資の落ち込みの大きな原因になるだろうということを私は予測をしているわけであります。  これまた金融改革というところだけ、もう馬車馬的にそこだけ見て掃き清めて、ごみが日本経済にばっとまき散らされて何が起きるかを考えない。全部縦割りの改革ですよ。私どもは、日本再構築宣言の中で相互の関係を全部考えたのです。マクロ経済に改革がどういう影響を与えるか全部考えて、あれは体系として提示しています。  ところが、総理の六つの改革はばらばらで、その日本経済に対するインプリケーションをチェックしておられないのです。六つの改革、その方向は私は大賛成でありますが、残念ながら、いずれも庭先をきれいにして日本経済へちりをばらまいて、何が起きるかは知らぬよという縦割り行政的な発想じゃないかと思うのですね。それが今の景気の問題の大きな背景にあると思いますが、総理、いかがでございましょう。
  86. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、財政構造改革については随分議論をしてきましたので、むしろ相違点をある意味では議員にも整理をしていただき、その上で社会保障等、他の問題に論議を転じられた。その中で確かに、まず第一に、今度保険料率あるいは一部負担等について国会で御論議をいただき、この九月から実施した仕組みについて、私は縦割りという言葉が適切なのか医療保険制度という言い方が適切なのかはわかりませんが、現在の医療保険制度の仕組みに乗った上での財政対策であったことを私は否定をいたしません。  その上で、今私どもが国民にこれから御論議をいただかなければならないことは、今の医療保険の仕組み、これは年金も当然同じ問題を抱えておりますし、公的福祉サービス全体に共通する社会保障の仕組みというものを、国民の暮らしのセーフティーネットワークとして、次の世代においても安定的に維持のできる仕組みをいかにして考えるかという課題であります。これは全く縦割りとか横割りとかいうことではありません。国民の暮らしのセーフティーネットワークをどう組み立てるのか、そしてその中で、負担と給付とのバランス、さらに世代間の負担と給付のバランス、こうしたことを含めて考えていかなければならないという問いかけをいたしております。  そして、よく厚生大臣のする言い方を使わせていただきますならば、Aという仕事を実現するために、その水準を高くすれば、それは保険料でいただくか、税でいただくか、自己負担という形でいただくか、その三つの組み合わせの中で水準を決めなければならないという言い方を厚生大臣がいたしますが、これは実は医療保険とか年金とか、特定の制度に固定したものではありません。まさに、その水準をどこに設定し、そのための費用は国民負担率という形で、税であるのか、保険料であるのか。給付水準にリンクして動くわけでありますし、一部負担も入ってくる。その意味では、セーフティーネットワークとして将来まで存続できる仕組みを考えようというのは、私は縦割りの議論ではないと存じます。  しかも、そこに国民負担率という、保険の世界だけではない考え方でこれを複数の選択肢の中から選んでいこうという、それは、縦割りというものに考えを固定していたら私はこういう仕組みを全面的に見直すことはできないと思っておりますし、一部は、先ほど来問題を一方で提起をしていただきました雇用というものに対して雇用保険の仕組みがあります、恐らくこの仕組みの中にも連動してくる部分も持つ、全体の構図をいかに描くかであると思います。  また、金融システムの早期是正措置を導入した結果という御指摘がありました。これは確かに、私は議員の御指摘を否定いたしません。私どもの身の回りにも、金融機関がみずからの体質を強化するために、貸し渋りだけではなく返還を非常に従来より強く求める、あるいは担保価値の再評価等によって新規の融資が受けづらくなっているという声は耳に入っております。  そして、それに対して、たしか、とっさの御質問ですのでちょっと日にちを思い出せないのですが、たしか先週だったと思いますが、大蔵大臣、通産大臣等を通じて私は、政府系金融機関がこれに対して積極的に資金供給の役割を果たすように、その際、当然ながら信用保証等の問題も含めて対応するようにという指示をいたしております。  議員の指摘された問題を私は否定をいたしません。いたさない上で、だからこそ、そういうときにこそ政府系金融機関の果たすべき役割というものがある、私はそのように考え、そのような指示をいたしております。
  87. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理お答えのように、健保の構造改革が必要だ、あるいは政府系金融機関を通じて対策が必要だ、そういう改革あるいは構造対策そのものを私は今批判しているのではないのですね。そういうことをやるときは、常にマクロ経済にどういうインパクトが行くのかということを考えなきゃいけない、そこが欠けているじゃないかということを申し上げているんです。  それをわかりやすく、縦割り行政だから自分のところしか見ていないとか、あるいは自分の庭先だけきれいにしようという改革案を各省がばらばらに持ってきて、それを全部やったら日本経済がどうなるかというチェックが欠けているというふうに申し上げているわけですが、一番私が心配なのはセーフティーネット。国民生活のセーフティーネット、特にナショナルミニマムの保障、非常に大事ですが、同時に、同じセーフティーネットという言葉を使いますが、金融システムのセーフティーネットであります。ここのところが私は一番心配なんですね。  現在、御承知のように住専処理のときに、もうこれ以上公的資金を入れません、入れるのは信用組合だけですという約束をいわばしてしまった。同時に、あの金融三法の中で、来年の四月からの早期是正措置も入れちゃったわけですね。今のこの現行セーフティーネット、あの住専処理のときに決めた現行セーフティーネットで、これから、私がさっき申し上げたような経済危機が起きてきたときに、特に金融危機が起きてきたときに、本当に乗り切れるのでしょうか。  私はこれは、住専処理があんまり大騒ぎになったために、もうこれ以上公的資金は入れませんという方の約束ばかりしてしまって、きちっと考えたシステム的な金融システム対策、システミックな対策をどうしたのかな、考えなかったのかなと思うのですが、私、当時野村総研の理事長をしていて、いろいろ調べてみました。考えなかったんじゃないですよ。我が新進党は、日本版RTCの設立ということを言っていたのですね。それを政府・与党が抑え込んで、今申し上げたようなセーフティーネットで大丈夫だというので今日まで来た。私は、もうとてもこれは大丈夫ではないというふうに思います。  これはさっきも申し上げましたように、もちろん証券も心配だ、生保も心配だということですが、預金取扱金融機関についても今あちらこちらで問題になっていることは御承知のとおり。北も心配なら関西も心配であります。ほかにもあるでしょう。  アメリカのやり方を見ますと、総理御承知のとおりですが、やはり八九年末にRTC、整理信託公社をつくって、公的資金をあえて投入してでも不良債権整理を歯を食いしばってやったのですよ。その後、九一年末、実際に動き出したのは九二年から早期是正措置が入ってくるわけですよ。そういう順番でやらなきゃだめなんですね。まず不良債権の整理、歯を食いしばって公的資金を使ってでも整理するのが先。それから早期是正措置を入れなきゃいけないのに、おやりになったことがあべこべなんですね。  整理信託公社日本版をつくる新進党案をつぶしておいて、もう公的資金は入れませんと言っちゃった。それでいて他方は、二〇〇一年三月までペイオフはしませんと言っているのですね。対外的には、何となく大銀行はツービッグ・ツーフェールだという方針を日本政府は持っているということになっちゃっている。そういう責任をたくさん負っておきながら、信用組合以外に公的資金は入れませんなんてのんきなことを言っているセーフティーネットで、これから起きてくる金融危機に対応できるのでしょうか。私はここが一番心配であります。  さっき私申し上げました、繰り返して整理して言いますが、私ども新進党は現状は政策不況だと言っていますが、二つの意味があって、一つは政策的に不況要因をつくり出した、この意味で政策不況。もう一つは、今までやっていなかったけれども、気がついてこれからやるんだとおっしゃっている構造対策についても、一番大事な、緊急を要する金融のセーフティーネットのところが抜けている。これは危ないですよ。こういう状況では極めて危ないというふうに思います。  三塚大蔵大臣、金融シズテムのセーフティーネット、今申し上げた整理信託公社の設立と、それから早期是正措置の順番を間違えている、そこからくる今のクレジットクランチであり、景気の沈滞なんですね。これは順番を間違えなければ、不良債権を整理した後、景気が回復してくる。そういう回復の中で早期是正措置をやっていったからアメリカはうまくいったのですよ。今、景気が沈滞している中で早期是正措置をやったら、沈滞をもっと激しくする。これはとんでもない間違いじゃないかと僕は思いますが、いかがでしょう。
  88. 三塚博

    ○三塚国務大臣 住専の折に段々の議論がございました。そういう中で、この道しかないということで金融三法を成立いたしたところであります。預金者保護、金融システムの安定維持という、この基本論でスタートを切らせていただいております。  特に、不良債権の問題が順序が逆だということの御説もございますけれども、ただいま不良債権は、それぞれの金融機関が全力を尽くしてその解消のために努力をいたしております。徐々にその成果が上がりつつあることは、鈴木委員もお認めをいただけるものと私は考えます。私どもは、今後ともその不良債権解消についての努力をサポートしながら、全力を尽くしていかなければなりません。  特に、公的資金導入の問題、鈴木議員のかねがねの議論でございます。本件は、国民の税金をつぎ込んで、そしてそれぞれの金融機関の安定経営の下支えにするということになるわけであります。世界は自由市場、自己責任の世界であります。本国会におきましても、前国会の論議におきましても、自由市場というものを根本的に認めて、自己責任の中でぞれはいくべきだというのが多くの議員各位の議論であったように思います。そういう中で、なおかつ、預金者保護というこの制度、ペイオフの言及もございました。そして、システムの安定を期していきますことが、我が国経済の基盤をきっちりとすることによりまして、確実な安定経済成長が取り進められるであろう、こう考えたところでございます。  全力を尽くしていかなければなりませんし、公的資金導入という点は、国民論議の中で、国会の論議の中でかくあれというときに検討すべきものでございまして、ただいまの段階で、自由市場という、自己責任という、この必ず超えなければならない、我が国経済、金融システム、金融機関の今日までの構造的なものを引きずってきたことに対する遮断から、これからのスタート、こういうことでありますので、公的資金についてはただいまの段階では全く視野にございません。
  89. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 時間でございますので、構造対策の無策が政策不況のいま一つの側面である、その最たるものとして私が一番心配しているのは金融システム対策である、この金融システム対策の無策のよって来るところは住専処理の失敗から来ているということを御指摘申し上げまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  90. 松永光

    松永委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、西川太一郎君。
  91. 西川太一郎

    西川(太)委員 新進党の西川でございます。西川といっても何人かいますが、太一郎の方でございます。  きょうは、伊藤公介元大臣が外交問題、そして我が鈴木議員が堂々の政策論議、大変格調の高い委員会に三番手で出てまいりまして、若干趣の異なる雰囲気の中で質問をさせていただきますが、私は、国会議員の一員として、長く地方議員もやっておりましたが、職としての内閣総理大臣初め国務大臣のお立場には敬意を表しているものでございますから、できるだけ穏当に質問したいと思いますが、事の性格上失礼にわたることがございましたら諸先輩にまことに失礼でございますので、最初にお断りをしておきたいと存じます。  実は、先ほど外交問題の御質問を拝聴しておりまして、総理ロシアに行かれて、そしてお帰りになって文化勲章の伝達に従事をされて、大変御苦労さまでございますが、その総理が大事な外交案件でお出かけの最中に発刊されました新聞社系の週刊誌、どれをとっても、電車のつり広告、こういう言葉です。「日本は戦後最悪の大不況に突入か」または「恐慌前夜の生活防衛」、どうするか、「大倒産の足音」、そして失礼ながら一番ひどいのは「橋本総理よ、あなたが大不況の元凶だ!」、こういうことが出ているわけです。  そこで、私は総理に、通産大臣当時に、暇地獄という言葉を大臣は御存じですかということをお尋ねしました。そのときに、通産大臣であらせられた総理は、君の選挙区もよく知っている、そういうところで零細小規模の工場や事業が大変今苦労していることはよくわかると。  私は、そういう気持ちをお持ちの総理内閣総理大臣になられた、きっとすばらしい経済改革をやってくださる、そう信じて今日まで期待をいたしておりましたけれども、残念ながら、週刊誌の見出したというお声がありますけれども、週刊誌をばかにしちやいけない、週刊誌でつぶれた内閣もあるんですから、そういうことを、私としては、なぜこんなふうに国民にこういう橋本内閣に対する批判、怨嗟の声が上がっているのか、総理の御見解をまず伺いたいと存じます。
  92. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今確かに、暇地獄という言葉を知っているかという言い方でしたか、現実にそういう声で、苦しんでおられる方々の存在を知っておるかという問いかけであったか、その議論をいたしたことを思い起こしております。  そして、その中で私が申し上げましたことは、今、要するに大きな生産事業が海外に生産拠点を移していく、それ自体は国際社会の中で悪いことではないけれども、結果として、残される中小あるいは零細、引き続いてついていけるところはまだいいけれども、ついていけないところがある、中小製造業あるいは零細製造業の職をどう守るか、そのためには新しい業を起こさなきゃいけないというような議論をさせていただいたときではなかったかと思います。  そして、だからこそ今も、新たな産業をつくり出したい、財政構造改革という中でも研究開発に対する投資というものはふやしていきたい、そして民間の、あるいは大学の、あるいは政府系の研究機関の中に種があれば、それを何とか中小企業者と結びつけていきたい、そうした思いで苦労をいたしております。実っていると申し上げるつもりもありません。  そして、週刊誌に、見出しという形で御紹介をいただきましたけれども、そうした厳しい御批判は私にどう浴びせていただいても結構でありますけれども、同時に、我々は新たな産業、リーディングカンパニーを立ち上げなきゃならないときにある、そしてそれを見出す努力にどうぞ力をかしていただきたい、率直に私は今、議員の御指摘を受けながら、そのような思いでおります。
  93. 西川太一郎

    西川(太)委員 今の、産業政策に重点が移った質問ととられたのは私の表現能力の欠如でございますが、私がお聞きしたがったのは、庶民が、例えば年金で暮らしている人は、〇・三%とか〇・五%の金利で、一千万円預けたって三万円にしかならない。四年前には、一千万円預ければ四十一万円になった。そういうようなことや、消費税で五兆円、特別減税をやめたことで二兆円、そしてさらに各種掛金のアップで二兆円、九兆円も国に取られている。  さらに加えて、いわゆる金利八%時代から今日のものを比較検討すると、最低でも四兆円は、得べかりし利益というか、国民の側に戻ってきてよいものも、実は今は吸収されている。だから、財界のトップが、七公三民だ、江戸時代の悪代官より橋本内閣はひどい、七つを国が持っていっちゃう、企業利益の三割しかもらえない。こういう経済政策と、ただいま申しましたような金利の関係と、庶民は本当に塗炭の苦しみの予想を持っているからこういうようなテーマが出てくるんだと。  その辺について、総理の御所信を承りたいと思います。
  94. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 公定歩合についてだけは、これは私は言及するわけにまいりません。これはもう、日銀の専管事項であることを議員はよく御承知の上で、その中に加えてお述べになったと思います。  その上で、たまたま先ほど鈴木議員との議論でも、短期の痛みというそこの理解部分が、中長期の目標と方向性には一致しながら、その短期の痛みというところでどうしても鈴木議員との一致点がない。お互いに確認をさせていただいたという言い方は不謹慎かもしれませんが、まさにそういう感じの論議をさせていただきました。  ですから、今議員がそのような言葉をもって私にお話しになるのでありましたなら、それは甘受をいたしますけれども、私からすれば、こうしたお言葉をちょうだいするにつけても、何としても新しい業が立ち上がる仕組みを、また、新しい業を立ち上げようとする方に対して立ち上げの資金が供給できる仕組みを、そして何よりも、職人国家であった日本がその職人の技量というものを維持し続けることのできる仕組みを、そのように思います。  この公定歩合、金利政策の中で年金で暮らされている方々に対する影響等があることは、私自身否定をしたこともありません。本委員会におきましても、そうした御答弁も申し上げてまいりました。
  95. 西川太一郎

    西川(太)委員 従前、景気にブレーキをかける場合には金利を上げる、アクセルを踏む場合には下げる。しかし、今回は、購買力が全く伸びていないわけですから、金利を上げることによって老人や主婦の購買力をふやすということは、景気対策として非常に重要だと考えていることを申し上げておきたいと思います。  次に、きょうの質問の主題であります、住専処理にかかわる農業団体からの政治献金等について、お話伺いたいというふうに思います。  まず、住専の処理につきましては、平成七年の八月の時点でレビューをしてみますと、六兆四千百億円の損失を大蔵省は見積もったわけでございます。もうこんなことは重々、御苦労された両大臣ですから今さら申し上げることでもないかもしれませんが、そこはひとつ我慢して聞いていただきたいと思います。その中で、いわゆる設立にかかわった母体行には、三兆五千億円放棄をしなさい、債権全部を放棄しなさい。それから一般銀行、特に地銀などには、その一部でもいいから放棄しろ、その結果、一兆七千億円。  問題は農林系金融機関でありますが、当初大蔵省は、一兆二千百億円をぜひ負担してほしい、こういう案がありましたところ、例の覚書等々があって、そして自民党農林水産部会の方々が非常に強烈な圧力をかけて、これは客観的事実としてもうみんな知っているわけでありますけれども、五千三百億円の贈与にとどめた。  この五千三百億円の贈与の根拠は何なのか。それは、得べかりし利息を四・五に下げて、掛ける七年分。この時点でもう既に十カ年計画の再建計画の三年がたっておりましたから、それを掛け合わせて一兆数千億から引きますと、例の六千八百億。五十億は処理機関への出資金でありますから、そういう数字が出る。つまり、利息減免分としてそういうお金が出たんだ、こう言っておりましたけれども、最近は、そうじゃなくて、根拠のある積み上げでこういう五千三百億という数字が出たんだ、こういうようなことを言っております。これが一点。  それから、総理は、古い話で恐縮でございますけれども、大蔵大臣当時に総量規制ということをおやりになりました。これは銀行局長の通達で、金融機関にそれが出回りました。それは、当時の総理のお考えとしては、いわゆる地価の高騰を防ぐための政策的な一つの切り札であると。いわゆる総量規制というのは、日本の憲政史上二回しか行われていない。伝家の宝刀をついに総理は抜かれたわけです。  しかし、その中で、いわゆる住専を外した。そして、三業種規制ということでそれを少しカバーしたけれども、結果的には、信連については全く、大蔵省に報告を義務づけることもなさらなかった。だから、信連は五兆五千億円もの金を結果的には住専につき込んだ。これは総量規制のしからしむる結果ではなかったか、私はそう思います。  まずこの辺について、往時を振り返っていただいて、ぜひその御見解を総理から賜りたいと存じます。
  96. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今突然の御質問でありますので、細かい日付等については、どうぞお許しをいただきたいと存じます。  まず、その前段階にありましたものは、土地基本法の制定という立法行為でありました。そして、それに対して、土地に対する税をどういう方向で動かすか、これは土地基本法を受けて地価税という形に結実をいたしました。そしてもう一つ、土地に対する資金供給の流れをとめなければならないというところで採用いたしましたものが総量規制でありましたことは、議員が御指摘のとおりであります。  その上で、当時、農協系の金融機関に大蔵大臣の権限が直接に及んでおらなかったことは、議員十分御承知での御質問だと思います。その上で、大蔵省の通達と同時期に、同趣旨の農林省の関係局長の通達も出されておったことも御承知でございます。  ただ、報告徴求というものが、大蔵省の通達の中にはございましたが、たしか農水省の通達の方にはなかったと思います。それは、農水省の考え方としては、常時報告を受けている事項というのがその理由であったように記憶をいたしておりますが、結果として、農協系の金融機関の資金が、総量規制により大蔵省の監督権限の及ぶ範囲の金融機関の資金が抑えられた部分、農協系の金融機関が融資を拡大する結果を生んだ、その点については、何回も国会でもおしかりを受けてまいりました。  その上で、当時の大蔵大臣の体制からして、農協系に直接に権限を行使し得る状況にはなかったことは、事実として御承知おきをいただきたいと存じます。
  97. 西川太一郎

    西川(太)委員 一九九六年二月二十三日にこの予算委員会で、我が党推薦の慶応大学教授の池尾さんが、今回の政府の住専処理案も、新たな先送り策である、びほう策ではないか、大蔵省から発表されている不良債権の総額は四十兆円程度という、しかしアメリカ調査機関によると百四十兆円とも言われている、日本の不良債権問題全体の解決につながるような案でなければ真の意味で政治的決断とか抜本的対策とは言えない、特に住専には預金者がないのだから一般の事業会社の場合と同様に法的に処理をするのが当然だ、また今回の処理案で救済される農林系金融機関を今後どうするかということが不明確のままだ、展望抜きに財政資金を投ずることはむだ金になりかねないと。  これは、まあ、新進党推薦の公述人ですから、このぐらいのことを言ってもらわなきゃ困るわけですが、御党推薦の植田和男東大教授は、多少でも農林系の損失負担を多目にする形に変え、農林系金融機関を大幅にリストラするという条件つきで賛成できなくもない、しかし非常に消極的な賛成だと公述をしておられる。  住専処理に六千八百五十億円の、いわゆる一民間の経営体である住専に対して、国民の税金を六千八百五十億円も投入した。  このことは、私は、例えば卑近な例で言えば、ある会社が倒産をした、その会社は、法的に厳しい措置を受けて、差し押さえられたり、債権者会議で苦しめられたりして、また元気を出してやろう、こうなるわけでしょう。例えば、総理ロシアに行っている間に起こった準大手の三洋証券の倒産なんて、こんなすごいことは、どうやって救うのか。会社更生法以外にないじゃないですか。  ところが、農協系統のいわゆる五兆五千億に対しては、一兆数千億という大蔵省の案だって少ないのに、それを族議員と言われる方々が、言葉は悪いけれども、跳梁ばっこしたと新聞には書いてあるけれども、それで、結果的に五千三百億に縮めた。これはもう法治国家としての法秩序の崩壊じゃないですか。  ついでに言えば、この間、山一事件の弁護士の奥さんが白昼堂々殺害されたり、また、ここのところで、証券四社初め日本を代表する企業のトップやその周辺の人が陸続として逮捕されている。なぜですか。警察庁長官によれば、きちっと、総会屋とのつき合いをやめなさいとちゃんと宣言している、サインも出している。ところが、それを無視した連中が甘く見たからこういうことになるのだということが言えると私は思うのです。  つまり、法治国家の最高責任者である橋本大臣に、このことについて伺うわけでありますが、特に最初に総理伺いたいことは、いわゆる政治資金、特に献金とモラルの問題について、総理の御見解を御披瀝いただきたいと思うわけです。  いわゆる与党三党の中で、企業・団体献金は、それを申し合わせたときには、五年後にはこれを見直す、廃止の方向で見直すというニュアンスで取り決めがありました。つい先般の与党三党の会議では、社民党さんから、もう直ちに団体・企業献金はやめようじゃないか、こういう提案があったにもかかわらず、自由民主党は、それは極めて困難だといって、これを拒否した。そういう中で、総理の御見解を承りたいと思うのでございます。
  98. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 三党の今行っております作業を改めて申し上げることはないと思います。  その上で、お尋ねがありましたから申し上げますが、確かに、三党首の会談の際、社民党の土井党首から、期間を繰り上げて、今からでも企業・団体献金を一切禁止するという改正をすべきだというお話がございました。  私自身、できるだけ個人献金をふやす努力を事務所の諸君に頼んでおりますけれども、その前の日に改めて調べてみますと、一時期より確かに個人献金をしてくださる方がふえていますけれども、それでも現実に八対二ぐらいの状況だ。ここで今企業・団体献金一切禁止と言う勇気は、正直に言うけれども、私はない、自分の政治資金の状況を説明した上で、そういうことを申し上げたことも事実です。そして、法的なその定められた期間内に、どういうふうにしていくかを今三党で論議いたしております。
  99. 西川太一郎

    西川(太)委員 個人献金に重点を移すという趣旨でございますけれども、実は、そういう角度からお尋ねをしたのじゃないのです。先ほどから、突然の質問だ、こうおっしゃるのですが、私はちゃんと通告をしてあるのに、ついでに言いますけれども、大臣官房からは電話一本ですよ。ばかにしているんだ。野党だから、どうせ大したことないぐらいに思っているんだ。厳しくやりますから。  まず、一九九六年の二月十七日に、京都市長選の最中に、遊説先の京都市内で総理は記者会見をされまして、自民党は住専に金を貸した主要母体行からの寄附の受け取りを自粛しようと思っている、主要母体行から金をもらっていたら、問題に手かげんしているように国民から見られてしまうと。  その当時の自粛額は約七億円であって、四十一億円を国民協会に依存している党としては、その約二割に近いものをお断りする。かなり経理局初め皆さんの反対があったそうですが、総裁のきつい意思でこれをなされた。このこと自体は、意地悪な言い方をすれば、住専に六千八百五十億円つぎ込む、その批判が高まっていたころですから、それを、みずからの身を切って、七億程度を切って、そして、まあ、ほとぼりの冷めるまで、こういうふうに言うこともできます。  だけれども、私は、総理はそんなこそくなことじゃなかった、総理の哲学として、汚い金、いわくのある金、そういうものには手を出すな、こういう御趣旨だと受けとめておりますが、今もそのお気持ちは変わりませんでしょうか。
  100. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日付まで覚えておりませんけれども、当時そういう措置をしようとしたこと、その方向で進めてきていること、これは事実です。
  101. 西川太一郎

    西川(太)委員 十月二十日の朝日新聞夕刊は、東京都選挙管理委員会が発表いたしました、農業団体の政治団体であります、正確に申しますと、農業と緑の代表を国会に送る会、この団体が、率直に言いますが、新進党にも民主党にも数名いるという事実、返り血を浴びる覚悟で私は質問に立ったわけでありますが、しかし、圧倒的に、金額においても九一%。そして、特に百万円以上の献金を受けた方は、五千七百七十八万円の四二%弱に当たる方々が自民党の農水大臣の経験者であり、政務次官の経験者であり、農水の部会長である、こういう方々に対して、最高百八十万円。そして、きょう御出席を賜りました総理、大蔵大臣に対しましては、総理には二回に分けて百万円と五十万円、大蔵大臣は一回で百五十万円という献金を受けておられます。  自治省に行って調べてまいりましたら、新政治問題研究会という総理の会は、平成七年も八年もいわゆる農協の政治連盟、名前はいろいろですけれども、農業政治連盟とか農工政治連盟といったぐいのもの全部調査をしましたけれども、一銭も献金がないのです。この農業と緑の代表を国会へ送る会というところが初めて献金をしているわけです。博友会、三塚先生の分も同じくでございまして、全くそれはありません。  そのほかにいろいろと調べましたけれども、実際に今までそうした団体からの献金を受けておられる方も党三役の中にいらっしゃいます。加藤幹事長は、このたびの献金のほかに、山形県の農協から二百万円ずつ過去にもらっているという事実があります。小泉郵政大臣も、ああ厚生大臣も、このごろ郵政省のことばかりおっしゃるからポストを間違えた、小泉厚生大臣も多額の献金をこの会から受けています。  この献金を受けるにつきまして、総理は、ただいま京都で発言をされた、住専に関連しているところからは献金を受けないようにしようといった姿勢とちょっと違ってきたのじゃないでしょうか。つまり、総理にお尋ねをしたいのは、たとえ百五十万円の全員であっても、どういう性格の団体から、どういう趣旨の献金であるかということは御精査なさったでしょうか。
  102. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、平成八年十月十四日に百万円、それから十六日に五十万円を、農業と緑の代表を国会に送る会という政治団体から、政治資金として御指摘のとおりいただいております。  ただ、大変申しわけありませんが、私はそういう団体自身よく存じておったわけではございませんし、私の政治活動はまさに皆さんが寄附してくださる浄財で支えられておりますけれども、その一人一人を存じ上げておるわけではございません。まさに、私自身の政治活動を支えていただくための浄財としてちょうだいをしております。
  103. 西川太一郎

    西川(太)委員 三塚大蔵大臣、いかがでございますか。同様の質問です。
  104. 三塚博

    ○三塚国務大臣 平成八年十月に、農業と緑の代表を国会へ送る会から、政治活動に対する献金として百五十万円の献金を受け、適正に処理したとの財務担当者からの報告を受けました。
  105. 西川太一郎

    西川(太)委員 判例によれば、適正に処理したとかそういうことは関係なくて、その全員の授受された性格が問題になる、こういうことであります。  私は、実際にいろいろな人に当たってまいりました。それで、いろいろな感触を得ております。もう時間があと六分ですから、これはいずれ同僚議員や参議院でさらに追及をすることになるだろうと思いますが、まず、高野博さんという方を、総理大臣または三塚先生、御存じでしょうか。
  106. 三塚博

    ○三塚国務大臣 記憶にありません。
  107. 西川太一郎

    西川(太)委員 このお金をくれた張本人ですよ。という表現が下品ならば、農業と緑ですか、その代表者ですよ。しかも、全中の常務理事ですよ。この人を知らないというのは、随分、私どもとしては、農林族として、またはいろいろと御活躍であった三塚先生には、まあ先生は運輸族なのかどうかあれですが、今のことはちょっとよくわかりません。  さあそこで、JAの四階にある役員室にこの会は所在しているのです。そして常務理事が代表で、しかも、この間まで総務部長で今他に出向している人が会計責任者だ。同じうちの中で、洋服着がえて、献金するときはこっちだ、物を頼むときはこっちだ、こういうことが通用するかどうか。  つまり、そこでこの人たちは不用意にこういうことを漏らしているのです。お礼の意味があるのだ。住専で非常によくやってくれたお礼の意味があるし、これからも、例えば農林中金と信連の合併問題やウルグアイ・ラウンドのいわゆるミニマムアクセスによる米価の下落による信連の大変なことや、また、その二千億円を信連がしょうことによって、四十七信連のうち三十ぐらいが経営が危なくなる、経常的に赤字になる、そういうことを踏まえて、これはもう自民党に、橋本内閣にしっかり支えてもらわなきゃいかぬ、もう新進党なんか当てにならぬ、あんなものはもう頼まない、そういうことでもう一瀉千里に総理のところに来ている。  その献金が、十月の総選挙の五日前にこの会がつくられて、そして選挙中に、幹部が自民党の八十数人のところに、また一支部に持っていっている。これを、私としては、政治モラル、刑法がどうとかなんとかという、そんなレベルを政治家が言っている場合じゃない。いわゆるモラル。怪しげな金、金によって国家の基本的な農業政策が左右される。  しかも、一兆円を超す補助金を、我々都市の一生懸命働いた者の税金から取り上げて、ウルグアイ・ラウンドのこともそうだけれども、みんな農村に持っていっているという印象を都会の有権者は持っております。  そこで総理にお尋ねしますのは、みなし規定というのがあって、農協法では、政治献金はしちやならないことになっている。同じところに所在していて、しかも同じ組織の大幹部が兼ねて、まことに横着なことですよ。それで五千七百七十八万円も献金をする。この時期にどうしてこんなことをするのか。  感心な方もいるのですよ、たった一人ですが、お名前は申しませんけれども。八十万円振り込まれた、だけれども、どんな金かわからないから使わないで凍結をしている。返したのならまだいいんだけれども、凍結している。  私は、今国民が政治に対して非常に不信感を持っている一つは、おれたちはどんな苦労をしても助けてもらえない、しかし、政治家は懐にそういうものをすぐ入れる、こういう下世話の言葉が、我々は毎日毎日下町を歩いていると聞かされるのであります。  総理、どうぞひとつそういうことで、ただいまの政治献金の性質について、総理がおっしゃっていた、京都でおっしゃった、住専関連からはもらわないようにするという趣旨に反しませんでしょうか。総理の御見解をお尋ねするし、また三塚大臣にもお尋ねをし、最後に下稲葉法務大臣、このたび法務大臣御就任おめでとうございます、かつて都議会で警視総監と議員という間柄でございましたから率直に伺いますが、これに対して、いわゆる違法性といいますか、こういうものを命じられて調査をされる御用意があるかないかを伺いたいと思います。
  108. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど何さんと言われましたか。(西川(太)委員「高野博さん」と呼ぶ)高野さん、そのお名前すらむしろきょとんとしておりましたような状況ですので、調べてみます。
  109. 三塚博

    ○三塚国務大臣 政治活動を支援するという趣旨で献金されたと受けとめておりました。
  110. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 るるお話がございましたが、どのような事項につきまして具体的に捜査をするかしないかという問題につきましては、これは検察当局で判断すべき性格のものでございますので、法務大臣としての答弁は差し控えさせていただきます。
  111. 西川太一郎

    西川(太)委員 いや、通常の贈収賄事件、刑法の百九十七の三の二、それに該当するかどうかという関心を法務大臣はお持ちかどうか、そういうお尋ねをしましょう。
  112. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 一般論として申し上げますと、検察当局は、刑事事件として処理するべきものがあるとすれば、これはもう当然厳正に処理するものと思います。
  113. 西川太一郎

    西川(太)委員 どうもありがとうございました。
  114. 松永光

    松永委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  115. 松永光

    松永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。五島正規君。
  116. 五島正規

    ○五島委員 民主党の五島でございます。橋本総理には、シベリアまでおいでになりまして、大変御苦労でございました。我が国にとりましても非常に長い間かかりました日ロ平和条約、二〇〇〇年までに締結ということをお取り決めいただいたことについては高く評価したいと思います。  本日も、朝から現在の経済状況について質疑が続いております。そして、午前中、私には大変難しい専門的な御議論をなさっておいでになりましたので、ただただ拝聴していたわけでございますが、私は、そうした専門的な議論とは別に、今日の国民生活の実感として、政府の言っていることに対して、国民が経済の先行きに対して大変心配をし、不信感を持っているんじゃないか、このことを率直に申し上げたいと思います。  私は、高知の中におきまして、タクシーの運転手さんやあるいは私どもの病院に出入りしておられます漬物屋さんやお豆腐屋さん、そういう方々からまで、昨年に比べて今年は非常に景気が悪いという話を聞かされております。これは、高知という土地柄から、そういうところまで非常に景気が悪いのかなというふうに思っておりました。しかし、先日来、東京に参りまして、タクシーの運転手さんに聞きましても、昨年に比べて水揚げが一割以上落ちているということを盛んにおっしゃいます。  また、高知以外の方々に聞きましても、大手の量販店までが、大変景気が後退しているということを非常に強調されています。そして、景気が後退していることをどうも政府がきちっとつかまえてもちえていないのではないか、そのことに対して恐怖心を感じるというような声も聞こえてまいります。そうした状況の中で、個人の、特に高齢者がますます消費を縮小させているという声も、大変聞こえてくるところでございます。  現在、財政改革特別委員会におきまして審議中でございますが、先日、政府は二〇〇三年までの財政状況について、名目成長率一・七五%から三・五%を前提にした試算を、今後の財政状況として提出されました。また、午前中の御議論の中におきましても、今年度当初予想した一・九%の経済成長は困難かもしれない、それに対して鈴木議員の方からは、〇・一、二%という民間のシンクタンクの声があるという御指摘がございました。非常に大きな差があると思います。  率直に申し上げまして、政府は今年度の経済成長、もう上半期終わったわけでございますが、どの程度になると考えているのか、国民にわかるように、明確にその根拠を挙げて、お答えいただきたいと思います。
  117. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 本年度の経済の見通しでございますが、本年三月までの間に消費税の引き上げを見込みました駆け込み需要が、実は政府も民間もやや見通しを誤る程度に、大きな数字になりまして、その結果として、実質二・五%の成長と見込んでおりました昨年度の成長率が、二・九%に上がるということになりました。この四月以降、その反動が予想以上に大きかったために、実質で二・九%というマイナスを記録したわけでございますが、そういう中で消費が停滞し、そして住宅建築が特に大きな反動減になりました。  しかし、消費のベースになっております所得はそこそこの状況でございますし、また設備投資も相当程度伸びているわけでございますし、また輸出も順調に伸びているということで、全体として見ますと、回復基調にあるというふうに認識をしております。ただしかし、言うならば、やや足踏み状態になっているかなという感じを持っているわけでございます。  今年度の見通しでございますが、一・九%という見通しは、先ほど申し上げましたような駆け込み需要及びその反動という影響もございまして、達成は難しいというのが正直な状況でございます。私どもは、これから経済構造改革を中心とする経済対策を打ち出しまして、そしてそのことによってしっかりとした民間需要中心の経済活動を活性化させて、そして経済を順調な回復軌道に乗せていきたいと考えている次第でございます。  なお、本年度そういうことでございますが、今後、来年度どうなるかということにつきましては、まだ見通しをつくる段階に至っておりません。
  118. 五島正規

    ○五島委員 経企庁の長官おっしゃるように、先ほどの質問にもございましたが、純輸出であるとか、あるいは一部の製造大手の設備投資については伸びがあるということについては、午前中もお聞きいたしました。しかし、そうした問題は、経済の問題に直接影響する、いわゆるフローの部分の一部だと思います。  そういうことも含めて、今年度、名目でどれぐらい、実質でどれぐらいの経済成長を達成できると考えているのか。具体的な何%という数字をおっしゃることが無理であれば、一定の幅でもってどれぐらいになるというふうに現実的にお考えなのか、明確におっしゃっていただけませんか。今年度で結構です。
  119. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 確固たる数字を申し上げられる状況にはございませんが、一・九%というのは達成が難しい、ただしかし、〇・一%になるほどに悲観的には考えておりません。
  120. 五島正規

    ○五島委員 〇・一と一・九、これじゃ答弁になっていると思わないわけですが、実質経済成長として一%の確保というのはほとんど不可能だろうというふうに一般に言われているわけですが、その点についていかがでしょうか。
  121. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 真剣に答弁しているつもりでございますが、その点につきましては、私どもは経済構造改革を真剣に進める中で、国民の皆様、それから事業活動をやっておられる方々の経済の将来に対する信頼感といいますか、そういうものが回復すれば、相当程度の順調な回復過程に乗り得るというふうに考えている次第でございます。
  122. 五島正規

    ○五島委員 今長官もおっしゃいましたように、国民が安心できるという状況ができれば、経済成長を一定回復できるだろう。言いかえれば、国民が今の経済状況あるいは経済政策に対して非常に不安を持っている。したがって、先ほども申しましたように、国民が消費を大変縮小させているということなんだろうというふうに思います。  これ以上押し問答しても仕方ございませんので、大蔵大臣にお伺いしたいと思うのですが、大蔵大臣はこれまでもしきりと、日本の経済のファンダメンタルは非常によいんだ、だから一時的に成長のスピードがダウンしたとしても心配はないという意味のことを盛んに繰り返しておいでになりました。  大蔵大臣の判断の基礎であるファンダメンタルというのは、一体何を指しておられるのか。非常に幅の広い範囲であるだろうと思いますが、私は経済の素人でございます、素人にわかるように、一体どういう部分をもって、日本のファンダメンタルはよい、だから日本の経済は先行き心配ないとおっしゃっておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  123. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ファンダメンタルズは一義的な定義でございまして、その国の経済の状況を指しております。そういう意味で、先進国のみならず一般的に言われておりますことは、財政収支であり、また対外収支であります。それと、雇用、成長率ということなどがそこに含まれておるところでございます。  我が国の経済、経企庁長官言われますとおり、足元は回復テンポが緩やかでございますけれども、民間需要を中心とする景気回復の基調は、前段、鈴木委員が言われる見方も、そういう見方も決して否定をいたしませんけれども、それぞれの基調がしっかりしてきておるという意味で、ファンダメンタルズが決して悪くないと思っておると申し上げたところであります。  まず、具体的な指標について二、三申し上げます。  消費については、百貨店、スーパー、全店舗のペースの販売額は、おおむね前年を上回る水準に達しております。コンビニは、特に売り上げは好調でありますことは、御案内のとおりであります。また、旅行を初めとするサービスの消費も堅調であると考えられること、三点として雇用者所得が増加しておることなどを見て、回復を続けておると申し上げておるところであります。  特に設備投資でありますが、本件は、各種機関のアンケートの結果によれば、九年度は堅調な伸びになっておる。先ほど、鈴木・尾身論争、また総理も申し上げたところは、まさにここのところであります。  また、景気を占う先行指数でございますが、機械受注は緩やかな回復傾向を示しております。さらに、企業収益はそれにつられまして改善が見込まれるということであります。  さらに、物価につきましては、国内卸売物価、消費者物価とも安定しておりますことは、御理解いただけるポイントであろうかと思います。
  124. 五島正規

    ○五島委員 今大蔵大臣が言われましたファンダメンタルズの基礎的な数字の中で、対外収支の問題については日本はいいと。しかし、そのほかの部分について、雇用についても必ずしもこれから先完全に安心できるということではないだろう。まして高齢社会になってきて、高齢者の問題、一体何歳まで就労していただくかという問題を含めて考えた場合、我が国は、潜在的には雇用問題という非常に大きな問題を抱えているというふうに思います。  そういう点から考えますと、果たして大蔵大臣が胸を張って言われるほど、我が国のファンダメンタルがいいと言えるのかどうか。財政収支については御案内のような状態でございますし、また、雇用その他に直接影響してまいりますフローの数字につきましても、今大蔵大臣御指摘になりました。  例えば、本当に日本の個人消費が、実質で対前年に比べて上がっているのかどうか。今大臣がおっしゃいました、百貨店やスーパーの販売額にいたしましても、対前年比で見ていった場合には、下がっているはずでございます。さらには、住宅建設だけでなくて、自動車やなんかの販売台数についても非常に落ち込みが大きいということは、もう御承知のとおりでございます。  そういう状況の中において、そうした非常に幅の広いそういうことから影響を受けるすそ野の段階において、国民は、経済のそういう停滞感あるいは不況感と言ってもいいような状況に、心理的に非常に強く感じていっている。そのことは、ある意味において、先ほどから、他党の議員でございますが、そうした国民の感じている経済の現状、それに対する不安と、そして同時に、社会保障問題についても先行き不安だけがアナウンス効果として出てくる。  それに対して、安心してこれから先理解してやっていける、医療保険にしてもそれから年金制度にしても、そうしたものの具体的な姿がなかなか見えてこない。そのことから、結果的には、いわゆる消費の手控えというものがますます強まっているというのが現状ではないかというふうに思うわけでございます。  そういう点から考えた場合に、大蔵大臣がおっしゃっている、ファンダメンタルがこれまで非常にいいいいとおっしゃってきたわけですけれども、どうも、おっしゃっておられる内容から見ると、貿易収支だけ、対外収支だけが日本はいいよ、だから大丈夫だというふうに聞こえるわけでございますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  125. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 やや細かい数字を申し上げさせていただきますが、七月-九月で見まして、四月-六月に対比してプラスになっている指標というのがございまして、小売販売〇・二%プラス、百貨店販売、店舗調整前でございますが、四・二%プラス、チェーンストア販売、店舗調整前、一・三%プラス、国内乗用車販売七・六%プラス、家庭電器販売五・六%プラスということで、七月-九月は四月-六月に比べましてかなり多くの項目がプラスになっております。  それから、同じく、マイナスになっておるものは、住宅着工がマイナス一〇%と、四月-六月に比べまして減少しておりますが、そういう状況になっている次第でございます。  それから、雇用者の問題でございますが、雇用者数は九月現在で対前年比で〇・七%プラスになっておりまして、一人当たり雇用者所得も一・一%プラスでございまして、雇用者所得全体としては、九月で、昨年に比べまして、これは名目でございますが、一・八%の増になっているということでございます。  もちろん、経済指標、いろいろな指標がございまして、それを全体として判断しなければいけないというふうに考えておりますし、今委員おっしゃいましたような意味で、私は、経済企画庁が決して安易に経済の実態について楽観的な議論を述べているとは思っていないところでございまして、いろいろな指標が区々でございますが、全体として見ると、回復の基調は変わっていないけれども、足踏み状態にあるというふうに理解をしております。
  126. 五島正規

    ○五島委員 この点については、後ほど同僚の仙谷議員の方から、もう少し具体的に質問する予定でございます。  あわせて、こうした日本の経済状況あるいは財政構造のそういう非常に危機的な状況というもの、これがあわせて起こってきているという状況の中で、今、政府は財政改革法案をお出しになつて、特別委員会で審議中でございます。と同時に、これまでこうした日本の財政的な構造の問題というのは、大きく指摘されてきだからこそ、これまでも行政改革や規制緩和、そうしたものを含めて議論されてきたと思うわけでございます。  ところで、では、規制緩和や行政改革、もう既に随分と時間がたってきているわけでございますが、具体的に国民生活に見える形でどこまで改善されたのかということになってくると、まだほとんど実効は上がっていないんじゃないか。  例えば公取委の調査を見ましても、いわゆる規制的な措置というものは逆にふえている。現実問題として、規制緩和というものを国会において議論はしてきているけれども、しかし、その規制緩和が実際にどういう形で広がってきているのかということについては、まだ全然、国民生活あるいは国民経済の中で評価ができるような形で見えてきていない。  また、行政改革につきましても、午前中、今おいでになりませんが、小泉厚生大臣がおっしゃっておられました。理念として、私は、小泉大臣のおっしゃるとおりだろうと思います。  ただ、問題は、その行政改革、国のレベルでどうするかという問題に議論だけは先行して進んできておりますが、その前に、例えば、小泉大臣も指摘しておりましたけれども、当然の合意であったところの数々の政府関係の団体、特殊法人、そういうふうなものをどのように変えていくのか、あるいは民営化していくのか、そういうものがほとんど見えてこない。  先日来、この委員会の中においても日本道路公団の問題についての御指摘等もございましたし、きょうの新聞にもそうした関連の記事が大きく載っております。そうした特殊法人に対する対応という問題も、実際には何の実効も上がらないままに、そこは置かれたままで、十三省庁というふうな議論だけが先行している。  あるいは入札の問題もそうだと思います。財政が非常に厳しい。厳しいときに、やはり入札制度を見直して、公共事業というのはどうも単価が高過ぎるんじゃないか、特に土木は高いんじゃないか、そういうふうな指摘が非常に多くのところからあるし、業者の中からも、建設省の土木をやるよりも農水の土木をやった方がもうかるんだという声を聞いたこともあります。  そういうふうなさまざまな声がありながらも、どのように入札制度を合理化し、そして、単価を引き下げることによって事業量をふやすかというようなことが具体的にどうも進んでいないように思われるわけです。  その点について、総理、どうお考えですか。
  127. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今たまたま公共事業を例示に挙げられましたけれども、何月でありましたか、たしか春先、公共事業のコストの分析を内閣としていたしました。そして、公共事業の発生の瞬間から引き渡しまでを全工程ごとに分析をいたしまして、そのポジションポジションにおける価格形成要因あるいは制約要因というものを列記いたしました。たしか七省庁ぐらいにわたっておったと存じます。それぞれが実はそれぞれに理由があるものではございましたけれども、それが公共事業全体を価格として押し上げる要因になっておりましたことは否定できませんでした。  これは三年ぐらいかかりますけれども、一〇%はどんなことがあっても下げよう、既にそうした方向に入っております。
  128. 五島正規

    ○五島委員 公共事業の単価というものが現実に引き下がらない限りは、そういう制度としてのさまざまな努力をされたとしても、これが実経済の中において反映してくるということにならないわけでございまして、そのことをどのように具体的に、特に今のように景気の冷え込みが目立ってきているときにおいては、進めていくかということが大事なんだろう。とりわけ、公共投資をふやすということについて、今の財政状況の中で、また政府としても財政改革法案を出しておられるときに、できないだろう。  そうだとすれば、そういうふうな単価の引き下げ等々によって、事業量をどのようにふやしていくかというふうなやり方、あるいは、そうした公共事業がいかに効率よく、そして必要なところに集中して行われるようにするか、そういうことを考えることによって、より効果のある事業になっていくのではないかというふうに思います。  同時に、そうした事業の中で、今回一定改善されたところもあるわけでございますが、公共事業に参画する業者は、公共事業指名願というものを手続として出さなければいけません。高知におきましても、多くの中小企業の業者さんたちが、ほとんど指名されることはないだろうというあきらめを持ちながらも、やはりその手続をしておかないと参加ができないからということで出しておられるようでございます。  それで、問題は、こうした国や地方自治体あるいはそれぞれに関連する事業体の事業に参加を希望する者に対して、指名入札願をそれぞれ指定された場所まで本人が持参して行かなければいけない。あるいは、今回かなり統一されたとはいえ、まだ幾つかの官庁の中で、基本的に用紙がばらばらであって、統一した用紙が使われていないということで、非常に事務的に煩多であり、そして非常に多くのコストがこの指名願手続にかかっているという実態がございます。  そこでお伺いしたいわけですが、今日の状況の中で、郵便ではだめだ、あるいは、言いかえれば、電子マネーまでが今使われている時代の中において、それがそういうふうな手段をとることではなくて、一々業者が、官庁が指定した、あるいは事業体が指定したところにその指名願を持って出ていかなければいけないという、その根拠はどこなのか、何なのか。また、そういうふうなことを義務づけている政府関係の機関というのは、これは自治体は結構でございますが、幾つぐらいあるのか、お答えいただきたいと思います。
  129. 小野邦久

    ○小野(邦)政府委員 お答えを申し上げます。  私ども建設省で、二年に一度、有資格業者の登録をするわけでございます。先生御案内のとおり、建設省の場合でございますと、大体四万ぐらいの業者の方々が登録をされる。これを郵送の方式でやらないかということでございますけれども、全国八つ地方建設局というところがございます。また、都道府県の県庁所在地、合わせて四十七でございますが、四十七で分散をいたしまして受け付けをするわけでございますが、全国一本で郵送でできないのは、どちらかというと、やはり指名審査願の中でいろいろ記述の間違い等もございます。具体的に書いた方、あるいはわかっていただいている方に来ていただいて、そこで具体的なやりとりをしながら資格審査の登録をするということが大変大事だというふうに思っているわけでございます。  もちろん、今後電子マネーあるいはインターネット等を使ってやれるような方法はないかということでございますけれども、そういったような方法につきましても今後十分考えていきたいと思っておりますが、現状で、直轄につきまして、私どもで発注をいたします工事につきましては指名審査願を郵送で受け付けているということはございませんで、幾つかの公団で、例えば首都高速道路公団でございますとか阪神高速道路公団といった単一の、地方に出先がないところは全国一本で、郵送で受け付けているところもある、こういう事情でございます。建設省の事情は以上でございます。
  130. 五島正規

    ○五島委員 私は建設省だけに聞いているわけではなくて、建設省、農水省、あるいは厚生省、環境庁、通産省、文部省、いろいろなところが、そういうふうなことについての指名願の手続が必要でございますね。そうしたところの中に、一々東京まで持ってこさす、もちろん事業団のあるところによっては大阪とか、いろいろなところがあるわけでございますが、そこまで持参を義務づけている。その多くは県の段階においてあらかじめ審査を受けているわけでございますし、御案内のように、経営事項審査の中においてその多くは審査済みでございます。  今おっしゃったように、日付の間違いがあるかもしれないとかなんとかいうことが理由で、一々東京に持ってこい、あるいはどこどこに持ってこいということではないだろう。例えば建設省であれば、それぞれの地建のところで処理するということもあるわけでございますが、中には本庁まで持ってこいというふうなものもございます。  総務庁長官、お伺いしますが、各省庁合わせて、本人持参を義務づけている省庁というのは、一体どれぐらいあるのですか。
  131. 土屋勲

    ○土屋政府委員 先生御指摘の問題につきましては、平成五年十月、競争契約の参加手続に関する調査というものを私たち実施をいたしまして、資格申請書類の様式の統一化、あるいは今お話しの、資格審査申請書類の郵送受け付けの推進等を勧告いたしたところでございまして、この勧告に沿って各省庁において改善が行われているものというふうに承知をいたしております。  具体的に郵送を認めていない省は幾つか、ちょっと手元に資料がございません。
  132. 五島正規

    ○五島委員 もう時間がありませんので、認めていない省庁なり事業団を一々私の方から挙げることはやめますけれども、今お話があったように、勧告が出されているわけです。しかし、それが、日付に間違いがあるかもわからないなんというようなばかげた理由でもって、実際は実施されていない。  例えば高知から東京のある省庁に手続をするためには、下手すると一泊してやらないといけない。それを何カ所のところへも来てやらないといけない。そういうむだなことが、せっかくそういう勧告が出されても、実施されていないことによって非常に停滞しているわけです。だれが考えても、今の時代に日付が間違うているかもわからないなんていうようなことが理由でそういうふうになっているとだれも思っていない。  では、高知の中小企業の業者はどう考えているか。どうも中央官庁は、おれたちが偉いんだ、そのことを地方の業者に思い知らせるために呼びつけているのだろう。そういう官尊民卑というものが、行政改革が叫ばれているから、ますますそれを思い知らせるためにこれを残しているのじゃないか。  これは、非常にひがんだ見方かもしれません。しかし、あながちそうではない。まさにそこのところをどう変えるかということ、そういうことを国民の前にしていただいて、初めて、行政改革というものが前に一歩出ているということが、国民に納得できるのではないかというふうに思います。  総務庁は、各省庁や政府関係機関を調整して、こうした問題について、国民に見え、同意されるような行政改革の一つとして取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  133. 小里貞利

    ○小里国務大臣 まさに五島議員御指摘のとおりである、さように傾聴させていただいておるところでございます。  今までの間におきましても、先ほど若干事務当局から御説明申し上げましたように、平成五年を期しまして、その辺の、いわば指名願手続等を中心にいたしました官公庁と民間業者あるいは利便者との関係をできるだけ利便性を最高度に考えるべきである、そういう措置を要するというもとに相当切り込んだ一つ措置を講じておることは、私自身率直に申し上げられると思うのでございます。  ただ、議員も先ほど具体的事例等でお話がございましたように、まだまだ微に入り細をうがって具体的に切り込んで、きちんと督励していかなければならないな、そういう感じを持っておるところでございまして、御指摘、今日の行政を簡素化する、効率化する、その趣旨におきましてさらに一段と努力をしなければならぬ、さように思っております。
  134. 五島正規

    ○五島委員 ありがとうございます。  総理に、最後にお願いを込めて御要請したいと思うわけですが、確かに行政改革も財政改革も議論としては非常に難しいところへ来ています。しかし、同時に、議会の中においてあるいは政府の中において合意されたものがなかなか実施に移っていかない。これは、行政改革においても、あるいは規制緩和においても、あるいは入札等々の問題についても、そういうものが随分あると思います。  今まさに景気が非常に厳しい状況にあるがゆえに、中でもそうしたものが国民経済と直結する部分について、既に方向性が決まっておるものの実施について、政府としてもう一度念を入れて、急いで取り組ますという努力をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  135. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、政府自身、既に取り決めております規制緩和推進方策につき、そのフォローアップの作業をいたしております。その上で、私は、今議員から提起をされました具体的なケースを非常に真剣に拝聴させていただきました。  同時に、私は、先ほどの事務方の答弁には、私自身が納得のできないものを感じます。  私自身が幾つかのケースに遭遇した事例でありますが、例えば今まで半年かかっていた手続が三カ月になった。官庁のルートでこの改善の状況を聞きましたときには、確かに半年かかっていたものが三カ月になって改善をされた。ですから、改善をされましたという答えが返ってきます。しかし、それを民間立場で、そもそもあれは要るのかと尋ねると、いや、なくていいという答えが返ってまいります。  ややもすると、官庁の中でのフォローアップの中には、今申し上げましたように、例えば今まで五枚必要だった書類を三枚にした、半年かかるものを二月、三月にした、改善されましたというところで終わりがちであります。  ここしばらく前からそうした問題意識を持っておりましただけに、具体的に例を挙げて御議論をいただきましたことに私は敬意を表すると同時に、そうした思いを共有しながら作業に当たってまいりますので、気づかれた点がありましたら、どうぞ我々に示していただきたい、力を合わせていきたいという思いでこれを拝聴したと率直に申し上げます。
  136. 五島正規

    ○五島委員 私の質問時間が参りましたので、後は仙谷議員に譲ります。
  137. 松永光

    松永委員長 これにて五島君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  138. 仙谷由人

    仙谷委員 民主党の仙谷でございます。  質問通告していないのでございますが、総理日ロ首脳会談大変御苦労さんでございました。極寒の地で大変だっただろうと思いますが、平和条約の締結のめどをつけられたことを私も敬意を表したいと思います。  ただ、ということもないのですが、問題は、日ロ間の関係改善といいましょうか、平和条約というものが結ばれ、北方領土が返ってくるということになれば大変すばらしいことではございますが、しかし、主たる問題は、やはり東アジアの平和と安定の秩序を、中国、アメリカあるいは朝鮮半島の両国、そして台湾までをも含んでつくる、まさにそのための戦略的な布石であるというふうに私は考えるわけでございます。  経済協力も二十一世紀の日本にとって大変肝要だと思いますし、そして北方領土問題、領土問題、主権問題が片がつくということも我々にとっては望ましいことでございますけれども、二十一世紀にこの東アジアが、平和で安定した秩序の中でお互いに共生をし、そして発展ができる、そのことが何よりも重要なことだと私は考えているところでございますので、今後とも、そういう観点から御努力をいただくようにお願いをいたしたいと存じます。  さてそこで、先ほどからも、お伺いしておりますと、景気がいいのか悪いのか、それほど悪くないのか、回復基調なのか、足踏みなのかという議論が出ております。はっきり申し上げて、私は、そろそろ大本営発表は政府もおやめになるべきだろう、率直に悪いところは悪いというふうに語らなければならない時期がついにやってきたというふうに考えているところでございます。  そこで、総理それから大蔵大臣、十月三十一日の日経平均が一万六千四百五十八円九十四銭というのをつけた。このことが持つ意味ですね。マーケットがどういうシグナルを送っているというふうにお考えなのか、御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  139. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変申しわけありません。十月三十一日ととっさに言われまして、各国の証券市場の崩れた日でございますか。(仙谷委員「いや、先週の週末の一万六千四百五十八円です」と呼ぶ)このところ、御承知のように、アジア発の不安という言葉がよく使われております。そして、これは、IMFとの構造調整プログラムを結び、我が国もまた支援の姿勢を明らかにすることによりまして、まず、タイのバーツが襲われました非常に厳しい状況というものは切り抜けをいたしました。また、インドネシアの状況も一応歯どめのかかった状況にあります。  そうした中で、香港の証券市場に変動が生じ、それが我が国も含め各国に大きな乱高下をもたらしたという状況は、御承知のとおりでございます。そしてその影響は、いわば余震のような形で、現在も消えてはおりません。  この原因にはいろいろなことが言われております。しかし、我が国もその影響を受けました。これには当然ながら、国際的な要因もありますし、このところの証券を取り巻きますさまざまな国内に起きております問題により、一時離れた個人投資家が戻りがけてきた市場に、また冷や水を浴びせているような状況のあることもありましょう。さまざまな要因が重なって、こうした不安定な状況をもたらしておると思います。  それ以上、余り思うことに言及することは、この際避けさせていただきたいと存じます。
  140. 仙谷由人

    仙谷委員 相場つまり株価はある種の先行指標でございますので、こういう理由でこうなったのだろうという分析も必要なのでございましょうが、つまり、先行きに何を見ているのか。九月の中旬からの株価の動きを見ておりますと、これは、ある種のシグナルが送られているというふうに見なければならないと思うのです。  つまり、私のような素人でも、九月の中旬に、どうすればこの局面で小遣い稼ぎができるか。つまり、空売りをすれば、必ず一万八千円を切って一万七千円にはいくだろうということは、だれが見ても、はっきりしておったわけですね。案の定、九月中に一万七千円に飛び込んで、ついに一万六千円の真ん中、あるいは最安値では一万六千円ぎりぎりまでいってしまったということでございます。  これは、あくまでも日経平均二二五という、いわばある種優良な株式が相当入った平均の株価でございまして、詳細に見ますと、大変日本企業が傷んでいる。もっと言いますと、来年の三月期の決算では、ほとんど企業収益が上がらないのではないかということが、まさにこの株価の中に秘められておるのではないだろうかと思うわけでございます。  ちなみに、時価総額というのがございます。時価総額を八九年十二月二十九日、最高値をつけたときから見ますと、東証一部では半分の三百兆になっています。東証二部では四〇%の八兆円に既になっておるわけでございます。平均しますと、四二%ぐらいに信用が収縮しているというのが、今の株式相場といいましょうか、株価のレベルでございます。  金融関係だけ用意をして配らせていただきましたけれども、九二年の八月十八日というのがバブル崩壊後の最安値をつけたときでございます。一万四千三百九円四十一銭という株価をつけたのが九二年八月十八日でございます。このときと現在の個別の銘柄の株価を比べてみますと、六〇%の銘柄が一万四千三百九円時代よりも下になっているということでございます。  ここに持ってまいりましたのは、金融関係の九二年八月十八日の株価と九七年十月三十一日の株価、これを比較対照したものでございます。ごらんいただきますとわかりますように、大変なマイナスが、つまり九二年の八月に比べても、それよりも低い株価がここで見てとることができると思うわけでございます。何と銀行関係では、六四%が九二年の八月よりも低い。証券会社に至っては、八四%がこの水準を割り込んでいるということでございます。  現に、この表の三枚目になりましょうか二枚目になりましょうか、三洋証券は、これは先ほど申し上げました伝でいきますと、八九年十二月二九日には、ここに記載してございませんけれども、二千百五十円だった。一万四千三百九円をつけた九二年八月十八日は三百十六円であった。十月三十一日には八十四円になってしまって、昨日、会社更生申請ということでございます。  したがいまして、株価というのは、幾ら日本企業のディスクローズがそれほど正確じゃないとしても、企業収益、特に将来の企業収益については相当程度織り込んでマーケットで価格が決まってくるのだろうなということを思うわけでございます。  したがいまして、ある種のシグナルというのは、相当の危険信号がともっているというふうに株式市場からは見ることができるわけでございますが、経済企画庁長官、それでもまだ、足踏み状態だとおっしゃるわけでございましょうか。    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  141. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 株価の動向、最近、全体として軟調に推移しているわけでございますが、この動向がどういうことを反映しているのかということにつきましては、さまざまな要因があるというふうに思っておりまして、どういうことであるという特定をすることはなかなか難しいかなというふうに思っております。  私どもは、基本的には、経済のファンダメンタルズをよくすることが一番基本的に大切だというふうに考えておりまして、現在の景気状況、基調としては回復過程にありますものの、足踏み状態にあるという認識でございます。経済企画庁が大本営発表ではないかというような御意見もございましたが、いろんな経済指標を私自身が注意深く見ておりまして、やはり足踏みだなという感じを持っております。  これは、予想どおりといいますか、思ったほど回復基調が明確に出てこないのは、やはり経済の先行きに対する信頼感というものが低くなっているというふうに考えておりまして、消費者の懐あるいは企業収益等々のバックグラウンド的な状況を見ますと、そんなに悪くないわけでございまして、やはり先行きにしっかりとした展望が持てるような経済構造改革を進めていくことが非常に大事である。規制緩和とか、あるいは不良債権のしこりを解くための土地の流動化の問題とか、そういう政策をしっかり進めていくことが大事であるというふうに考えている次第でございます。
  142. 仙谷由人

    仙谷委員 しつこいようでございますが、もう一つ別の資料を提示いたします。  店頭登録の株式というのがございます。この株価指数というのがございまして、九〇年の六月を一〇〇といたしまして、九七年の九月平均で見ましても、二三・一になっております。九〇年の六月というのは相当高いという前提で見ましても、二三・一でございます。現に、店頭株の平均を調べてみますと、九二年の八月十八日、先ほど申し上げましたバブル崩壊後の日経平均最安値一万四千三百九円、このときの店頭登録の株価は千百三十一円七十二銭です。ところが、十月三十一日は八百七十三円九十六銭でございます。  何を意味するかといいますと、つまり、店頭に登録をするような中企業といいますか、スーパー企業でない企業の株価は一万四千円のときよりも非常に低い評価を受けているという事実でございます。  先ほど申し上げましたように、全銘柄のうちの六〇%の銘柄が既に一万四千三百九円を下っている、そして店頭も悪いということになりますと、よく言われますように、国際優良銘柄というもの、この一〇%ぐらいの国際優良銘柄だけで日経平均は持ち上がっておって、それでも一万六千四百五十八円というふうな価格しかつかない。そして多くの、先ほどお示ししましたように、金融機関ですらも、こういう二けたのものが、あるいは百円内外というふうなものまでも出てきておるという実態でございます。  つまり、企業間の格差がついているというふうに言ってしまえばおしまいなわけですが、いい企業は非常に少なくて、企業収益の面から見ると、のたうち回っている企業の方が圧倒的に多いというのが今の実態ではないでしょうか。  そういたしますと、長官のおっしゃったファンダメンタルズがいいという話は、何のことを言っているのか。つまり、よくわからないわけでございます。企業収益以外にファンダメンタルズを評価する基準というのがあるのかどうなのか、その点をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  143. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 大企業と比べまして、中小企業の景況感が非常に悪くなっているということを私ども非常にきちっと受けとめているつもりでございます。それから、先ほどの株価の動向でございますが、各の要因がございますけれども、あえて申し上げるならば、例えば銀行とか建設とか、バブルの後遺症をまだ引きずっているようなところが非常に低迷しているという実態にあるのではないかというふうに考えております。  そういう点から考えますと、私どもが経済構造改革を進める中で、土地流動化、土地の有効利用を図っていくことが極めて大事であるというふうに考えておりまして、これは税制の問題とか規制緩和の問題とかいろいろございますけれども、やはり不良債権としてしこっている部分についての対応をしっかりとしていくことも必要なのではないかというふうに考えている次第でございます。
  144. 仙谷由人

    仙谷委員 どうしてもお認めになりませんので、もう一つ資料を提示いたしましょう。  大蔵省の方からも、東証統計月報、株式売買動向というのを資料として提示いただいております。投資部門別株式売買高、東証一部、二部とあるわけでございますが、時間の関係ではしょってお示しするわけでございますが、投資主体別に見ますと、九六年の九月から九七年の十月というレベルで見てみますと、自己売買部門は完全な売り越し、個人売り越し、それから生損保売り越し、それから金融法人のうち信託銀行を除いては売り越し、そして、その他金融というのも売り越し、投資信託も売り越し、事業法人も売り越しということになっているわけでございます。買い越しているのは、辛うじて外国人投資家と信託銀行とその他法人というところだけでございます。  新聞の金融欄、株式欄を見ておりますと、よく、公的資金が入ったという言葉が出てきます。公的資金が買い支えたという言葉が出てまいります。これはどうも、私の推測するところ、信託銀行の買い越し分が、いわゆる世上PKOと言われておりますけれども、ここに入ってきて信託銀行だけは買い越している、あとは外国人投資家がまだ買い越しになっている、こういう事態だと思うんですね。  もし売買の動向がこうだとしますと、金融機関から、事業法人から、個人から、あるいは証券会社の自己売買部門から、全部売り越しているわけですから、売るということは、もう少し下がって、そのときに、下がったところで拾えば利ざやが取れるということにもなるわけでございまして、先行きの見通しについて、企業収益の見通しについて必ずしも楽観的じゃない、いや、むしろ悲観的な判断がここにあらわれてきていると思うのでありますけれども、いかがでございますか。
  145. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 株価の動向につきまして、今委員がおっしゃいましたようなことをどう考えるかということは、かなり難しい問題だと考えておりますが、私どもは、総理から御指示を受けました経済構造改革を中心とする対策を、これは税制の問題はちょっとタイミングがずれるかと思いますけれども、今月の半ばに出させていただくということで、これは、中長期にわたって日本経済の将来に明るい展望が持てるような、そういう意味で、先ほどのマインドに影響を与えることができるような、実質的に中長期的に明るい見通しが持てるような内容を出していきたいと考えている次第でございまして、それによりまして、企業家心理といいますか、投資家も含めましたそういう心理が好転することを期待している次第でございます。
  146. 仙谷由人

    仙谷委員 まだ非常に楽天的なことをおっしゃるので、大丈夫なのかなと思っておるのですが。  といいますのは、経済構造改革をお進めになるのは大賛成です。そのことは、多分デフレ的な効果になって、相当厳しい局面になってくるということなんだろうなと私は思います。そこで慌てふためいて、財政出動をするとかなんとかということを直ちに言いたいわけではありません。  だから、財政出動をしなければならないような心理状態になることを避けるために、今のファンダメンタルズがいいとか回復基調であるというふうな、ある種の実態にそぐわないことをおっしゃると、ますます市場のマインドが冷え込んでいくのじゃないか。いや、政府は何にもわかっていないな、いまだにまだあんな白々しいことを言っている、こういう反応になるのではないだろうか、こう思うから申し上げておるわけでございます。  したがいまして、経済構造改革をやっておるから非常に厳しい局面だけれども辛抱してくれと言うか、やむを得ないんだと言うか、何かそういう言い方をなさらなければならないのではないだろうか、こう思うわけでございます。  ちょっと議論を変えます。  先ほど土地の問題が出ました。ところが、この問題、土地の流動化と簡単におっしゃいます。そして、いろいろな土地税制をいじる、変えるということによって土地の流動化を果たそうという御意見が多いようにも思います。我が党も、取得税や登録免許税はもう少し軽減をすれば動く方向に行くのではないかということを緊急経済対策として提案をしておるところでございます。  しかし、何よりも、私、この土地の問題について大変なパラドックスを最近感じておるわけでございます。といいますのは、むしろ、土地は会社が倒産をしなければ動かないという妙なところに入っていってしまっておるのではないか、こう思うわけでございます。  大蔵省の企業財務課ですか、ここに、最近倒産した会社の修正バランスシートというのがあるはずだから出してくれというお願いをいたしました。ところが、企業財務課にはそんなものは来てないという御返事でございました。  私が独自に調べた三つのケースを拝見いたしますと、例えばゼネコンと言われているところの倒産、大都工業の場合には、資産が公表資産額一千三百八十三億から、修正されました段階では六百三十九億円になっておるわけでございます。とりわけ販売用不動産は、九十六億四千四百万が四十六億円になっておるわけでございます。  同様に、東海興業の場合には、不動産事業支出金等というところに不動産が入っているのだろうと思いますけれども、これも七百四十億の帳簿価格から、修正後には百九十八億になっている。あるいは多田建設は、同様に不動産のところが、二百十八億が九十五億になっておる。つまり、大きく、実質の評価をし直した資産は半分あるいは半分以下になっておるという実態があるのですね。  会計法上形式的には合法であっても、これは、我々の目から見ると、大変なそごがある、粉飾決算ではないか。つまり、土地以外でこんなことをやれば、完全に商法上の粉飾決算の罪に問われかねないようなことが、今起こっているわけでございます。  いろいろなところへ行って聞きますと、いや実は、銀行が貸し込んで土地を買わせた、金利を追い貸しして、金利分もどんどん簿価の上へ乗っているんだ、だから損切りができないから、つまり金利を追い貸ししている以上は不良債権にしていませんから、したがってこの不動産を実勢価格で処分するというふうなことはできないんだ、こんなことがわかってまいりました。これは、先ほどおっしゃった不良資産問題といいましょうか不良債権問題といいましょうか、ここがネックになって土地が動かない。  時々私も、支持者といいましょうか、もとの仕事の関係でいろいろな人から相談を受けるんですが、二割ぐらいになっている不動産を五割で売らせてくれと言っても、銀行が、つまり担保債権の五割ぐらいで売らせてくれと言っても、売らせてくれないんだ、そんなことをしたら償却しなきゃいけなくなるからだめだと言って、売らせてくれないんだ、こういうことも時々聞くわけでございます。  そうだといたしますと、土地の流動化の問題というのは、もちろん税の面からインセンティブを与えることも意味のないわけではないと思いますけれども、根本はどうも、土地が下がった、担保債権がそれよりもはるかに上にあって、償却をすると、自己資本比率も下がるし、大変な状況になる、償却をする体力がないというところに最大の原因があると思うのですが、いかがでございますか。
  147. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 建設関係企業が土地を担保にしておりましたり、あるいは昔買った高い土地を持っていて、それを売却という処分で処理をいたしますと、相当低い値段になることによりまして損失が大きくなるという実態がございまして、そのために処分しにくいというふうに、今委員がおっしゃったような問題があると聞いております。  つい最近でございますが、その一つの原因は、赤字企業が入札に参加できないという慣例があって、そのために建設関係企業が不良資産を処分できないという実態があるという話がございまして、国の、建設省の関係の工事につきましてはそういうことがないように前から手配ができていたのでありますが、地方公共団体はまだ赤字企業に入札参加を許さないという運用をしているというのがございまして、実はつい最近、建設省と自治省の方から各地方公共団体に対しまして、そういうことのないようにしてほしいという文書を出して、是正をしていただきました。  そういう点も含めまして、つまり隠れている不良債権がきちっと、これは痛みも伴うこともあると思いますけれども、表に出るようなことにして、そういう問題を全部処理して、経済を正常化していきたいという委員の御指摘の問題点は、私どもも同じような認識を持っているところでございまして、できるだけ必要な措置をとってまいりたいと考えております。
  148. 仙谷由人

    仙谷委員 時間があれば、預金保険法の改正問題に絡んで、今度の京都共栄銀行の事業譲渡の話も大蔵大臣にお伺いしたがったわけでございますが、大蔵大臣、京都共栄銀行というのも公表不良債権が二百五十八億だったんですね。ところが、倒産しますと千二百九十億に修正されたわけですね。  お伺いしたいのは、今の株価も、どうも有価証券報告書によっても正確に資産内容が表示されていない、評価されていないということの疑心暗鬼が、マーケットから見た疑心暗鬼が、どうもこういう低落傾向になっておるのではないか。  私は、もうかねがねこのことは法務委員会でも大蔵委員会でも九一年ごろから申し上げてきておるわけでございますが、税務会計とは別に、やはり企業会計というのは不動産も時価主義で、時価会計による資産というものを企業がちゃんと評価をして、ディスクローズするということが行われませんと、つまり日本のようなマーケットに対する、つまり証券会社に対してもそうですし、銀行に対してもそうですけれども、マーケットそのものに対するいわゆる個々人の不信というのは取れないんじゃないか、あるいは、危なくて投資できないということが続くのではないかと思うわけでございます。  国際会計基準の導入もそろそろ決断をしなければならないときでございます。この企業会計、資産評価について、大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと存じます。
  149. 三塚博

    ○三塚国務大臣 取得原価主義でありますが、債権者保護の理念に基づく商法の基本原則であります。御指摘のように、企業会計の分野も同様の考え方をとっておることから、両者に整合性が保たれておると思います。したがいまして、取得原価主義原則についての見直しは、法務省の見解も伺いながら、協調の上、法制審議会と企業会計審議会において整合した検討が必要なものと認識いたしております。  また、金融商品の時価評価でありますが、最近の経済社会環境の変化、金融・証券市場のグローバル化に対応いたしまして、企業のディスクロージャーの透明性を維持していく観点から、会計処理基準において、国際的な動向等から、喫緊の課題と考えられる金融商品の時価評価のあり方について企業会計審議会において検討が進められており、まとまったものから順次意見を公表してまいりたいと考えております。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 仙谷由人

    仙谷委員 時間の関係で、では、次の問題に行きます。  株価のほかの他の指標について、住宅着工、新車販売台数等々のお話がございましたが、どうもこの二つの指標については、八〇年代の前半の水準にまで落ちつつあるのではないかという心配をしておるところでございます。  それから、小売店の話でございますが、大型小売店の販売というものを、例えば従業員一人当たりで見る、あるいは一平米当たりの販売額で見ますと、これは相当悪い状況になっておるのではないだろうかと思います。  それから、設備投資の先行指標と言われます機械受注、これも昨年の第四・四半期以降下降のトレンドを、下りのトレンドを示しておるのではないだろうかということも考えております。設備投資自身も、いいいいとおっしゃいますけれども、どうも非製造業の大企業で九六年の第四・四半期から、九七年の第一・四半期からは製造業大企業も下降トレンドに入っているというふうに考えるわけでございます。  先ほど、失業率といいましょうか、就業者数のお話がございました。私がいただいた資料を見ましても、前月比では就業者数はどうも減り続けているなということでございます。ただ、細かく見ますと、サービス業だけは三%台で伸びているということであります。  そして、先ほどから消費マインドの話が出ております。つまり将来に対する不安、つまり将来の所得と支出が消費行動の大きな動因になっている。つまり、現在の所得とストックによって消費するかどうかを消費者が決めるのではなくて、将来の所得と支出、その点がどうも消費行動の原因になっているということが言われます。  そこで、先ほど私が申し上げました指標で一つだけはっきりしておりますことは、どうも日本も、いよいよサービス産業化、サービス化の本格的局面に来たなということでございます。産業構造が、あるいは就業構造が大きく変わろうとしている、まさに加速度的に変わろうとしているのではないだろうかな、それを感じるわけでございます。  そこで、私は、こういう時代に最も重要なことは、我が国にも本格的な労働市場政策というふうなものが必要なのではないか。今まで右肩上がりの経済でございましたから、一人一人の労働者が水平に動くというふうなことは余り考えないでもよかった、あるいは産業間の移動をしなくてもよかったということだろうと思いますけれども、これからはどうもそうはいかない。つまり、農業社会から工業社会に変わるというときの労働力の移動とははっきりと様相の異なった移動のスタイルが出てくる。つまり、工業社会からサービス産業社会に変わるというところでは、相当のある種の政策がなければならない、こう思うわけでございます。  そこは日本型の労働市場政策というものがこれから考案されなければならないと思っているわけでございますが、先般、労働省を呼んでお話を聞こうとしましたら、いや、日本の労働省にはそんなものはないと言われたわけでございます。そして、通産省の方を呼んで聞こうとしましたら、ことしの五月十六日閣議決定の経済構造の変革と創造のための行動計画をいただきました。  しかし、これを拝見しましても、いわゆる労働市場政策というふうに評価できるようなものは余りございません。人材移動の円滑化あるいは人材育成というふうなものが書かれておるわけですが、やはり職業能力の開発とか人材育成、職業能力の開発という点に関してはあくまでも官立てやる、官がやるんだというトレンドが非常に強うございますね。そういう傾向が非常に強いと思います。  こここそ、やはり民間の知恵といいますか、活力といいますか、つまり時代とミスマッチしない、産業構造とミスマッチしないためには、我が国の雇用保険、雇用調整給付金、こういうものを有効に組み合わせながら、個人個人がみずからの能力を開発できる、必ずしも公立の職業訓練校とか職業何とか大学とか官立公立に行かなくてもできる仕組みというのが大胆にこれから設定されなければ、この産業構造の変化に対応できない。つまり、それこそ雇用の方から見た構造改革であると考えておるわけでございますが、その点について総理の御見解と決意をいただいて、質問を終わります。
  151. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今の問題意識については、ほとんど違いがないのではなかろうかと思います。  私は、八〇年代のアメリカが非常に立ち直りが早かった一つに、労働力の水平移動というものが人材派遣業によって非常に円滑に行われたということを承知しているつもりであります。それだけに、労働省の諸君にも通産大臣のときから、人材派遣のリストを、ポジリスト、ネガリストという議論を延々としているのではなくて、どんどん実行ができるような工夫をしろということを言いますとともに、労働組合の皆さんにも、いかにすれば水平移動が可能になる仕組みができるのかを労働慣行の中でも考えてもらいたいということを要請してまいりました。  確かに、従来転職が必ずしも一般的ではない終身雇用制の日本において、人材の水平移動は従来の発想からいくとなかなか困難な点があります。そして、そこにいわゆる職業紹介という官の論理が整然と残っておることも、私は、現状として否定をいたしません。  その上で、終身雇用制が変革していく中において、私は、労働力の水平移動が可能になるためには、現行の雇用保険制度を活用しつつも、いかにして、人材派遣等に代表される民間の手による能力の再開発、移動というものが円滑に進むように考えていくべきか、この御指摘はありがたくちょうだいをしたいと思います。
  152. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。ありがとうございました。
  153. 松永光

    松永委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君。
  154. 松本善明

    松本(善)委員 総理に、きょうは新ガイドラインの周辺事態での機雷掃海の問題を主としてお聞きしょうと思います。  新しい日米防衛協力指針は、日本が攻撃されるおそれにもならない状態、言いかえますと、今までの政府見解でも、自衛権の発動ができないといういわゆる周辺事態にアメリカ軍との防衛協力をやる、すなわち軍事協力をするということでありますので、このこと自体が自衛以外での武力行使でありますので、憲法に違反するものであります。周辺事態での機雷除去についても、米軍の武力行使が行われているときに、日米で協力しながら自衛隊が機雷の除去をすることになっております。  そういう点で、きょうは指針の、周辺事態での「運用面における日米協力」の部分、これはもう総理もすっかり頭に入っていらっしゃると思いますので全文は読みませんけれども、情報収集、警戒監視、機雷の除去等の活動を行うことになっております。先ほど述べましたような理由で、この部分も政府見解を聞かなければならないことばかりだと思います。  自衛隊の最高指揮官でもある総理に、一つ一つ国民にわかるようにお聞きをするつもりでありますので、今までも機雷に関する質問はありましたけれども、指針の最終報告が出てからは初めてなので、総理国民に答えるつもりで、質問に素直に自然体でお答えいただくよう、最初にお願いを申し上げておきます。  それでお聞きしたいのでありますが、総理は、朝鮮戦争の際に、日本の掃海部隊が実際に実施した掃海で、北朝鮮元山沖で日本掃海隊のMS14号艇が機雷に触れて爆発、沈没し、死者一名、負傷者十八名という事故があったことは御存じでしょうか。
  155. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 当時私は小学生でございましたから、その当時具体的に知っておったかということでありましたなら、私は、そのころ日本の旧海軍の掃海関係者が現地に赴いていることすら存じませんでした。これは、私は当時の社会情勢の中で無理からぬことだったと思います。  その後、国会に議席を得るようになりましてから、海上保安庁創設に苦労された先輩方の思い出話等の中で、そうした事態がかつて存在したこと、その中に犠牲者を伴う状況もあったこと、さらに、その命令に対し、それに従わないという行動を選択した結果、相当厳しい経験をされた方があったということ、そうしたことを知識として知っております。具体的な船名等までは記憶をいたしておりません。
  156. 松本善明

    松本(善)委員 その事態については、海上保安庁の初代長官で元衆議院議員の大久保武雄氏が、この著書「海鳴りの日々」で日本側から詳細に書いている、これはもう御存じと思いますけれども。  それをアメリカ側から書いたものがございます。「ユナイテッド・ステート・ネーバル・オペレーションズ・コリア」、朝鮮米海軍作戦史とでもいいましょうか、これは朝鮮戦争当時の米軍の活動をアメリカの政府の公式資料を駆使して書かれたものであります。これは、当時の事の当否を一々聞こうというつもりではなくて、リアルに、機雷掃海というものがどういうふうに行われるかということについての共通の認識を総理との間で持ちながら質問をしたいと思うので、これを持ち出したのです。  この中に、元山沖での機雷掃海についての図がございました。資料としてお配りをし、ここにお持ちをしましたのは、この書物にある図面を日本語に翻訳をいたしまして、そしてこの書物の中での触雷をした日と時間を私の方で書き入れたものでありますが、そういう図面でございます。  その図面でおわかりいただけますように、十月十日にこの下の方の掃海部分をやって、それから、ここでは行けなくて、十月十一日にこの掃海をするわけであります。これは葛麻半島というところでありますが、そこまで掃海をして米軍は上陸をする。その間に、日本のMS14号艇も触雷をするし、それからアメリカの駆逐艦パイレーツとプレッジが触雷して沈没をする、それから韓国のYMS516も触雷をして沈没する、こういう事故があったわけでございます。  私は、総理にお聞きしたいのは、こういう朝鮮戦争のときのような機雷の掃海作戦を今回のガイドラインで自衛隊がやれるのかどうか、まずこのことから伺いたいと思います。
  157. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、朝鮮戦争のときの例というもので論議をすることは必ずしも適切ではないと存じます。当時、我が国は占領下でありました。そして、講和条約が一日も早く作成され、列国の同意を得て日本が独立する日を待ち焦がれていた時代であります。その時代における、占領下の日本政府と米軍の関係を現在の状況に当てはめて御論議をいただくことは、少々実態に合わないのではないかと存じます。
  158. 松本善明

    松本(善)委員 もちろんそのとおりでありまして、これは法制局長官も、日本国憲法が一〇〇%実効性を持って機能していたわけではないので、現在と当時では結論が違っているというような答弁もされております。そのことは承知の上なのです。  承知の上なのですが、当時は、占領軍として、日本に掃海任務がいわば強制されたような関係になっております。そのときも、日本が武力攻撃をされたわけでもありません。今日、日本が武力攻撃されていないときに、このパネルで示しましたような相手国、アメリカの相手国の領域に入ってまで掃海をするようなことができるのか、今度のガイドラインではそういうこともできるということになっているのかどうか、どっちなんだ、こういうことをお聞きしているわけです。
  159. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 細かくは防衛庁長官から御答弁を申し上げますけれども、そもそもこの新しいガイドラインの協力項目に掲げられております行為は、繰り返し申し上げてまいりましたように、我が国が行うことを想定しております具体的な内容及び態様に関する限り、それ自体が武力の行使に該当しない、また、米軍の武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されないものでございます。したがって、憲法との関係で問題が生ずるとは考えておりませんし、国際法の基本原則のもとで合致するように行動するのは当たり前のことであります。  先ほど私は、朝鮮戦争のときの状況をそのままに当てはめて御論議をいただくことはいささかふさわしくないと申し上げておりますのは、そうした点もあることを御理解いただきたい。その上で、防衛庁長官から補足をいたさせます。
  160. 久間章生

    ○久間国務大臣 今回、機雷の掃海をする場合は、今度のガイドラインにも書いておりますように、我が国の領域及び我が国周辺の公海ということを書いておりまして、だから、他国の領域に入ってやるということはもちろん考えておりませんし、公海であっても、これは我が国の周辺ということで、あくまで我が国の周辺で我が国の船舶の公海上の航行その他に影響があるという、そういう考え方で自主的に出るわけでございますから、ぜひその点については、朝鮮動乱のときのあのような事態とは全く違うことを想定しているということを御理解賜りたいと思います。
  161. 松本善明

    松本(善)委員 もちろん、朝鮮戦争のときとは違うことはもう承知の上なんですよ。上なんですが、なぜこれを出すかといいますと、わかりやすく、機雷掃海作戦というのがどういうふうにやられるのかということを共通の認識にしたいから言っているだけなんです。  これは、今、領海の中に入るようなことはない、ガイドラインの中にも公海上と書いてございますから、これは当然のことだと思いますが、確認をしておきます。  ところが、この問題は、この朝鮮米海軍作戦史によりますと、水深百八十メートルの曲線、これはこの曲線なんです。水深百八十メートルの曲線から掃海をすることが命令される。葛麻半島に近づくために、三十マイルの航路、五十平方マイルの広さの掃海が要求をされた、こういうことですね。この航路が大体それに当たる。ここからここまでが三十マイルで、五十平方マイルだと思います。  この辺ですね、この曲線の辺は、当然公海なんですよ。公海といっても広いわけで、やはり掃海作戦というのは一つの艦船が進行していくためにやるわけなんで、そうすると、こういうところの公海は入る。公海とだけガイドラインには書いてありますので、この公海というのは随分広いわけなんですね。日本周辺といっても、どこまでが日本周辺なのかということになりますと、これは相当広いことになります。それで、その点はどうなんだろうか。こういうようなところの公海もやらないということでしょうか。
  162. 久間章生

    ○久間国務大臣 基本的に考えていただきたいのですけれども、我が国の漁船あるいは我が国の船舶、そういったものが往来して危険があるという場合に、我が国としてはその機雷を除去しなければならないという、そういう建前でやるわけでございまして、それが結果として米軍に寄与することはあるかもしれませんけれども、機雷の除去はあくまで我が国の船舶あるいは我が国の漁船、そういった我が国の船が機雷に触れたら危ないということでやる、そういうことでございます。戦闘状態が行われているようなところまで行って果たして船舶や漁船が往来するかというと、それはないわけでございますから、今言ったような公海であっても、我が国の船舶がそこを絶えず往来するような場合に、機雷が浮いていて危ないというときにはそれは出ていくことがあり得るということでございます。  一応そういうことで、その当時の状況とは全く違いますので、その当時のことを想定しながら、なかなか比較してお答えするのは難しいかもしれませんが、今言ったように、基本のそのメルクマールは、我が国の漁船、我が国の船舶が往来するのに非常に危ないというときには機雷の除去に従事しますということでございます。
  163. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、もう少し細かく聞かなきゃならぬのですが、この「運用面における日米協力」という部分で、機雷の除去の活動を行うとありますね。このときに、「米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。」とあります。米軍は武力の行使をしているという事態だというふうに思いますが、そうじやありませんか、この想定は。
  164. 久間章生

    ○久間国務大臣 周辺事態がすべて武力行使が行われているということではございませんで、要するに、周辺事態というのは、御承知のとおり我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が発生している、その事態において、我が国が米軍と協力しながらどんなことがやれるか。そのときに、我が国が自主的にやっていることが結果として米軍に協力することになる、そういうようなのがそこで挙げている項目でございます。  だから、我が国は、米軍が戦闘状態に入っている入っていないではなくて、あくまで自主的な運用の立場で行動している、それが結果としてどうなっているかということでございますから、向こうが戦闘状態に入っているという前提で掃海をするわけではございません。
  165. 松本善明

    松本(善)委員 別に、その前提で聞いているわけではないんです。もちろん、周辺事態でいつでも米軍が武力行使をしているということを考えているとは思っていません。しかし、米軍ですからね、軍隊ですから、「周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動」と言えば、武力行使が入っていることは当然だと思いますが、これはもう絶対入っていませんか。入っているでしょう。
  166. 久間章生

    ○久間国務大臣 我が国は憲法九条でいろいろな制約があるわけでございますから、戦闘状態が行われて、まさにその戦闘の一環としてそこで、海も空もそういう状況の中で機雷掃海ができるかどうか。この場合も、先ほどの例を挙げられましたけれども、その場合どういう状況だったか、私も正直言ってわかりません。一九五〇年当時のことはわかりませんけれども、私どもが考えておりますのは、そういう戦闘状態が行われているさなかに出かけていって掃海するという、そういう状態を想定しているわけじゃないわけでございます。
  167. 松本善明

    松本(善)委員 この運用面、日米協力の文章に基づいて聞いているんですよ。「周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。」というのは、武力行使を含むだろうと言っているんですよ。含みませんか。
  168. 久間章生

    ○久間国務大臣 米軍が周辺事態が起きたときにどういうような行動をするか、そのときに武力行使みたいなことが行われるかどうか、それは、あり得ることだってあると思います。しかしながら、そういう状況の中で、我が国がそれを応援するために出かけていってやるということは想定していないということでございます。  我が国はあくまで、我が国の船舶、漁船の安全のために機雷の掃海をする、しかも、する場合には、そういう戦闘状態に巻き込まれないような状況の中で、空の優位が保たれているとかあるいはまた平穏な状況とか、そういう中でやるということでございますから、戦闘状態とその掃海とを一緒になってということは、そもそも想定していないわけでございます。
  169. 松本善明

    松本(善)委員 書いてあることを聞いているんですよ。あなたがどう答弁しようと、書いてあるんです。  この中の「米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。」というのは、武力行使があり得るとお答えになりましたね。そのときに、自衛隊はそういう場合も、情報収集、警戒監視、機雷の除去を行うと書いてある。しかも、「自衛隊及び米軍の双方の活動の実効性は、関係機関の関与を得た協力及び調整により、大きく高められる。」と書いてある。  ここには、米軍が武力行使をしているときには機雷の除去などはやらないというふうには書いてないですよ。これはそういうふうには読めないですよ。ここに書いてあることは、武力行使をする場合も機雷除去をやるということですよ。それ以外にないですよ。あなたは勝手に、そんなことは想定していませんと言うけれども、書いてあることはそういうことなんだ。(橋本内閣総理大臣「そうも書いてない」と呼ぶ)書いてあるんだよ。  じゃ、それはそういうふうに読めないということが言えるなら、はっきりと。
  170. 久間章生

    ○久間国務大臣 その文章の書き方でございますけれども、平和と安定を確保するために米軍が実力行使をする場合は、それはあるわけですから、それはあると思います。  しかし、そのやっているそこに出かけていって機雷掃海をするということは書いていないわけでございまして、私どもが言っていますのは、運用面の、自衛隊がみずからの運用としてやる。そのみずから運用としてやるのは、我が国の船舶、漁船の安全のためにやるということでして、戦闘状態のところまで出かけていってやるというような、そういう書き方はしていないですし、私どもは憲法九条の制約がございますから、一体となるようなことはしないということをたびたび言ってきておりますので、そういうような状況でやらないということでございます。
  171. 松本善明

    松本(善)委員 米軍が武力行使をしているようなところに、漁船や日本の船舶が行くわけないでしょう。(久間国務大臣「だからそのときはやらない」と呼ぶ)そうすると、ここの読み方は、米軍が武力行使をしているときはやらないということですか。
  172. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどの例は一応のけておきませんと、どこかの場所を想定してとなったらいけませんから。米軍がどこかで武力行使をやっている場合だってあると思います。しかし、機雷の問題は、そこじゃなくて、ほかのところで、戦闘状態が行われていないところで我が国の船舶にとって危険な場合だってあるわけですから、そういうようなところについてはやるわけでございまして、そこに出かけていってやるということじゃないわけでございます。  だからそれは切り離して考えていただかないと、武力行使や戦闘状態が行われている、そこにどんどん突っ込んでいって、そこで機雷掃海をするという、そういうようなイメージを描かれますと、何かしらん我が国が戦闘状態に巻き込まれて一緒になって戦闘をやっているような、そういうことになる。これは憲法違反じゃないかという話になってくるわけでございますから、そういうことは考えられないわけでございますので、あくまで武力行使をやっている場所と機雷掃海をやる場所とをやはり一線を画して理解していただかないと、我々はやはり憲法九条という制約がございますので、やれることは限度があるわけでございますから、その限度内で私たちはやるということでございます。
  173. 松本善明

    松本(善)委員 日本の漁船や日本の船舶のための掃海というと、自衛隊法九十九条のような場合を言うわけですか。ちゃんと答弁してください。
  174. 久間章生

    ○久間国務大臣 我が国に対する武力攻撃でない場合で機雷掃海をやる場合は、あくまで警察行動の一種として九十九条でやるということでございます。
  175. 松本善明

    松本(善)委員 それならこんな文章にはならないですよ。絶対なりません、この数行ですけれども。それは、何も浮遊している機雷をやるときに、何で米軍が武力行使をしているときに機雷の除去を書くということを、同じ文章の中で書くわけがないじゃないですか。  じゃ、聞きますが、機雷掃海というのは、やはり艦船の進行を保障するためにやるのですよ。これは同じ例だ。これは朝鮮戦争のことを言うんじゃないですよ。アメリカの艦船は、ここへ上陸をするのに機雷がある。アメリカの相手方は、機雷を敷設するというのは、アメリカ軍が上陸をしないようにするわけですよ。それを除去しなければ上陸できないわけですよ。機雷掃海というのはそういうものなんですよ。じゃ、そのアメリカ軍が進行する航路の掃海は絶対やらないですか。
  176. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどから何回も言っていますように、その航路で絶対やらないか、そういうふうに言われますと、私どもは、我が国の船舶あるいは漁船、そういったものが行き来するためにこれは危ないからということで除去をする。その結果として、そこを米艦船が通ることだってあるわけでございますから、その航路ではやらないということを言うわけじゃございませんで、あくまで私どもは、日本の漁船あるいは日本に出入りする船舶、そういった日本の船のために、危ないということでやるわけでございますから、結果として、そういうところにアメリカの船が結果として行って、ああ、日本が掃海しておってくれたんで助かったということ、それはないとは言えないわけでございます。  しかし、それはそれを目的としてやるのではなくて、あくまで私どもは我が国の船舶、漁船のために掃海をやるという、そこの基本をやはり理解していただきたいと思うのです。
  177. 松本善明

    松本(善)委員 これは到底理解できないですよ。だってあなた、そんなところへ日本の船舶や漁船が行くわけがないんだよ。行くわけないでしょう。アメリカ軍が進行しようとしているところ、そういう戦闘地域へ行くわけないでしょう。そのアメリカ軍の航路を結果的に掃海することもあるという答弁、そのこと自体が危ないのですよ。  だって、結果的にと言うけれども、結果的にって、どういう場合が考えられますか。そんな、アメリカ軍が進行しょうとしている非常に危険な戦闘地域に、何で日本の漁船や日本の船舶が行くんですか。日本の船舶の航路のためにあなたは掃海するんだと言うけれども、結果としてはアメリカ軍が行くことになるかもしれぬ、ここがあなたの答弁の逃げ道なんですよ。はっきり答えてください。
  178. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどから何回も言っていますように、我が国の漁船あるいは船舶のためにやるわけでございますから、我が国の漁船とか船舶が行きもしないところで、出かけていって掃海するということは、それはないわけでございます。  そういう意味で、私どもは、我が国の周辺の公海でというふうに書いておりますのは、それはあくまでも我が国の漁船あるいは船舶のためにやるわけでございますから、戦闘が行われておって我が国の漁船あるいは船舶が寄りつかないようなところで掃海をやるつもりはございません。
  179. 松本善明

    松本(善)委員 我が国の船舶の航路のための機雷の除去ということになりますと、それは今申された自衛隊法九十九条だけですか。
  180. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほど言いましたように、我が国に対する武力攻撃の一環としてなされておる場合は別として、それ以外の場合は九十九条でやるつもりでございます。
  181. 松本善明

    松本(善)委員 我が国の船舶の航路に敷設をされている機雷は、我が国に向けた機雷ということにはならないんですね。
  182. 久間章生

    ○久間国務大臣 我が国に対する攻撃として、我が国の船舶をねらって武力攻撃として敷設されました場合は、これは自衛権の発動としてやれるわけでございまして、この議論はもちろんもう先生御承知のはずだから外したわけでございまして、それ以外の場合は、我が国の船舶の航行でやる場合は九十九条で、警察権の行動としてやるということでございます。
  183. 松本善明

    松本(善)委員 だんだん近づいてきましたね。  じゃ、アメリカ軍に補給のために輸送に行く我が国の艦船、これは機雷が敷設をされている海域に行けば、それは当然に触雷します。その機雷は、今のお話では、我が国に向けられた武力行使、こういうことになりませんか。
  184. 久間章生

    ○久間国務大臣 補給のために我が国の艦船が行く場合は、これはそれよりももっと明らかに、戦闘区域とはっきり一線を画して補給するということになっておりますから、そういうところには行かない。また、それが行ったからといって、そのために機雷があるから、それは我が国に向けられた機雷だというふうに、そういう手前勝手なことを言うつもりはございません。  あくまで、事実がどうであるか、そして我が国へ向けられていると判断できるかどうか、総合的に判断せざるを得ないわけでございまして、我が国の周辺をぐるつと取り巻かれたときにどうするかとなれば、これはもう我が国に対する武力攻撃の一環として敷設されたと思いますけれども、そうでない場合には、今言う、普通は警察行動としての機雷の掃海になるんじゃないでしょうか。  だから、そういうふうに余りこの問題については、私どもも非常に神経を使いながらやっているわけでございますので、決して、何か読み方で何でもかんでもやれるみたいなことにしようと思っているつもりはさらさらないわけでございますから、どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  185. 松本善明

    松本(善)委員 よろしくお願いできないんですよ。これは我が国の安全や憲法上の問題として重大なんで、書かれていること自体がやはりそういう中身なんですよ。  今おっしゃった、じゃ、我が国に向けた、例えば我が国を封鎖するような形の機雷ですね。これは、これを除去するのは自衛隊法の七十六条で、そのまま、いわゆる周辺事態でない事態でしょう。我が国に対する攻撃でしょう。周辺事態では、そういう我が国に対する封鎖をするための機雷というようなものは関係ないでしょう。それははっきり答えてください。
  186. 久間章生

    ○久間国務大臣 周辺事態における場合は、まさに我が国に対する武力攻撃が行われていない場合でございますから、これは警察行動として行うということでございます。
  187. 松本善明

    松本(善)委員 だから、我が国本土を向けた機雷封鎖作戦が行われれば、あなた方の立場でいけばこれはもう自衛権の発動で、これは周辺事態ではないんですよ。これは除外しましょう。  あなた方が、周辺事態でも九十九条、七十六条ということを言われる。すると、その日本の船に向けた、日本の船舶が航行するところの機雷の除去を七十六条でやる場合もあるということですね。
  188. 久間章生

    ○久間国務大臣 機雷というのは、御承知のとおり、待ち伏せしたりあるいはコントロールがきかないとか、そういうことがございますから、その機雷が我が国に向けたものであるということを認定するのもなかなか難しい面がございます。しかしながら、一般的に言えますことは、むしろ我が国の船舶がそこを通る場合でしたら、我が国の船舶にとっては非常に危ないということだけははっきり言えると思うのです。  そういうときにどうするかです。先生がもしそういうような立場におられたならば、我が国に向けられた機雷であると認定してそれを七十六条でやるか、警察行動で除去するか。多分、警察行動で除去されるのじゃないでしょうか。  だから、我が国に対する武力が、いろいろと攻撃がしかけられたその一環としてなされている場合は武力攻撃でございますけれども、そうでない場合に、漁船あるいは船舶が危ないということで除去する場合には、通常の場合はやはり九十九条で除去するということになるのじゃないでしょうか。  しかしながら、その機雷そのものがそれに向けられたものであるのか、あるいは一般的にいわゆる危険物としてそこにあるのか、その両者でどちらをとるかとなった場合は、九十九条で除去する方が一般的なんじゃないでしょうか。だから、私が先ほどから言っているのは、そういうことで九十九条で大抵の場合は除去することになろうと思いますということを言っているわけでございます。
  189. 松本善明

    松本(善)委員 あなたはさっき、やはり我が国の船舶の航路に危険があれば自衛権の発動になるという場合もあると言ったじゃないですか。そのことが問題なんです。  それは、例えば補給について、後方支援で一線を画するというふうにあなたは言ったけれども、海自の幕僚長の山本さん自身が、戦闘地域と一線を画される地域については、海上を舞台とした区分けはかなり難しいと。当然ですよ。そんなものは、海上でそんな一線を画することはできないですよ。輸送に行くということになったら、日本の本土の近くだって機雷にぶつかることがあります、触雷するということがあります。  輸送に行く、後方支援ということとの関係でいうならば、日本の自衛権の発動という、日本全体が封鎖をされるというような機雷敷設でない場合に、あなたがこの七十六条の発動があり得るということを言ったということは極めて重大なんですよ。それはあなた自身が言ったんだから、どういう場合か、はっきり言ってください。
  190. 久間章生

    ○久間国務大臣 なぜ御理解できないのか非常に残念ですけれども、我が国全部が封鎖されなくても、我が国の例えばあるどこかの港から出ていく場合に、その出ていく船を通させないために機雷を敷設する、明らかにその目的我が国に対して武力攻撃の一環としてされている場合は、これは七十六条に該当する場合だってあり得るわけでございますから、そういうようなことになった場合は、もう七十六条で当然これはやれるわけでございます。  しかし、そういうことがわからないでたくさんの機雷が浮遊してみたり、あるいはまた我が国が普通通るようなところに、あるいは漁船が行くようなところに機雷がどんどんある場合に、これをどうやって除去するか。除去しないでほっておいていいかとなると、それは危ないからということで除去しようとすると、それは警察権の行動としての九十九条でやるということを言っているわけでございますから、どうかひとつその辺については、本当にそのまま素直におとりいただきたいと思うのです。
  191. 松本善明

    松本(善)委員 なかなかこれは我が国の将来にとっても非常に重大なことなんで、私はしっかり、ここに書かれてあること自体がそれを内包しているのですよ。  それで、あなたが言われるように、周辺事態というのは自衛権の発動をしない場合です。にもかかわらず、周辺事態で七十六条ということを言われるから、そしてそれは、アメリカ軍がほかの国と戦闘状態に入っているとしますね。そのアメリカ軍に後方支援ということで輸送していくということになれば、相手の国がその輸送を妨げるための機雷の敷設をするかもしれません。それはアメリカ軍の進行航路と一緒かもしれません、近くまで行くとすれば。  それはどういう根拠でやるのですか。周辺事態で、一般的に言えば七十六条の発動の条件ではないわけです。その事態でアメリカ軍は戦闘をしている、漁船やなんかが普通に危険地帯に行くのではない。そういうところで掃海をするのは、どういう根拠になるのですか。
  192. 久間章生

    ○久間国務大臣 どうも議論がかみ合わずに恐縮なんですけれども、機雷の掃海をする前に、まず機雷の敷設をするというとき、戦闘状態が何もないようなところで敷設をしていく、そういうようなところがあって、そこに我が国の輸送艦でも結構です、あるいは普通の船舶でもいいです、そういうのが出ていくようなことがあるだろうか。  うちが補給をやる場合には、戦闘と一線を画する地域でしか補給をしないということを言っているわけでございますから、まず戦闘をしない地域に出かけていってやるわけでございますね。だから、もう敷設をするというのは戦闘行為でございますから、少なくとも米軍とどこかとの。そういう状況のところには補給をしに行かないわけでございますから、一線を画した地域で補給するということで、それも限定しておるわけでございますから、そういうようなケースにはならない、そういうふうに理解していただいていいと思うのですけれども。
  193. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは、それじゃ海幕長が線を画することは難しいんだと言っているのはどう思います。
  194. 久間章生

    ○久間国務大臣 私は、一線を画するのは難しいというのは、非常に平穏だったところがいろいろな状態でぐっと戦況が変わってきて、平穏と思っておったのが平穏でなくなったというケースがないかというと、そういう場合が出てくるのじゃないか。そういうときに、これは一線を画する地域でないということで、すぐ終わるのと、どうかという、そこを、ぎりぎりになってきたときには難しいということは前から言っているわけでございます。  通常、こういう場合は一線を画するということで、画するところで補給はやりますよということをやっておれば、そこは線引きはできるのじゃないか。ただ、そう線引きしておっても、戦闘状態というのは刻々変わるものだから、今のかなりの射程の長いいろいろなことを使った場合には、それは非常にあいまいなケースが絶対ないかというと、ないわけじゃない。そういうときに、制服の一人としては、やはり絶対そういうことはきちっと切ったようにして分けられるとは言い切れない、そういうようなことであのような発言があったのだろうと思うのです。  だから、通常の場合は一線を画すということを言っているわけでございますから、一線を画したところで補給はすると言っているわけでございますから、それは線引きはできる。ただ、その状況が変わった場合に、通常はもう何もないと思っていたところに矢弾が遠くから飛んできたというようなことがないかと言われますと、そういうことはないようにするけれども、絶対ないとは言えないのじゃないか。  そういうときには、もう補給をしないということで整理をすればいいわけでございますから、そういう意味でそう難しく考えずに、今の機雷の問題と補給の問題とを無理して絡ませる必要もないし、補給はあくまで別のところでやるし、あるいはまた機雷の掃海は我が国の船舶あるいはまた普通の漁船等がよく出入りするところで、それを危険として九十九条でやるということでございますから、そのように理解していただきたいと思います。
  195. 松本善明

    松本(善)委員 それじゃ一応確認しておきましょう。  米艦に補給をしに日本の船が行きますね。それが来ないように補給を妨げるための機雷というのは、我が国に向けられた機電こういうことになりますか。
  196. 久間章生

    ○久間国務大臣 補給を妨げるためにそこに機雷を敷設するような、そういう状況では補給をしないということでございます。そういう状況で出ていくことは、補給そのものすら問題が出てくる、憲法上との関係で。だから、あくまで私どもが考えております補給というのは、そういう戦闘行為と一体とならないような形での補給だということで理解してもらいたいと思うのです。
  197. 松本善明

    松本(善)委員 そうしたら、もう一つ確認しましょう。  周辺事態でやるというのは九十九条だけですか。さっき、そうでない、七十六条もあり得るということを言いましたね。確認をします。九十九条だけですか。
  198. 久間章生

    ○久間国務大臣 周辺事態でやる場合はほとんど九十九条だと思います。  絶対ないかと言われますと、ないことの証明というのが非常に難しいわけでして、私の今の頭の中では多分ないのじゃないかなと思いますけれども、これはシラミつぶしにやってみませんと、まあこれは頭のゲームじゃございませんけれども、こういう場合は我が国に向けられた機雷とみなして除去することがあるのじゃないかと、万のうち一つでもありましたら、ほれ見ろ、あったじゃないかとなりますので断言できませんけれども、ほとんどの場合は九十九条、周辺事態においてやる場合は九十九条で対処できるんじゃないかと思います。
  199. 松本善明

    松本(善)委員 それは一つ確認しておきましょう。九十九条だけとは断言できないというのは、確認しておきましょう。  同時に、九十九条だけなら、周辺事態でこんなことを書く必要ないんですよ。何にもそんなことを書く必要はない。私たち、遠くまで自衛隊を派遣して掃海する、そのこと自体は問題だと思いますよ、自衛の任務から外れると思いますけれども、九十九条だけのことを考えているのならば、周辺事態でアメリカ軍が武力を行使をしているときに機雷の除去をするなんということを書く必要ないじゃないですか。しかも、米軍と協力をしてやっていくなんということを何で書く必要がある。この記載自体が、あなたの答弁は違うということを証明しているんですよ。
  200. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどから何度も言っていますけれども、米軍がどこかで、例えば周辺事態のときに軍事行動があっているとします。そして、それと全く違う形で、我が国の船舶が、我が国の周辺でいろんな問題が、機雷があって出入りができない、あるいは漁船が危ない。そういうときに我が国としては黙って見ておくかといいますと、交戦はあっているわけですね、あっている状態でありますけれども、それと関係ないこちらの方で機雷が危ないとなったときには、それは我が国立場として、とにかく自国の漁船あるいは船舶を通航させるために九十九条で機雷の除去をせざるを得ない、そういうケースはあるわけでございましょう。  だから、それを私どもは言っているわけでございまして、それが結果として米軍にプラスすることになることは、それはないとは言えない。あり得るということ、それも認めているわけでございますから、それを戦闘状態が行われているところで、そしてその場所に出かけていってやるということじゃないということを、ぜひ御理解賜りたいと思うのです。
  201. 松本善明

    松本(善)委員 あなたの答弁は幾ら聞いても、この「運用面における日米協力」の中身があなたのようなことにはならないです。  私は確認だけしておきますが、こういうような米軍の進行航路の掃海は絶対やりませんね。
  202. 久間章生

    ○久間国務大臣 そのような、進行航路のために我が国の自衛隊が掃海をやるということはございません。
  203. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、別のことでちょっと聞いておきましょう、同じようなことを。  湾岸戦争では、アメリカ国防省が九〇年八月十三日の段階で、ペルシャ湾の奥からバーレーンの二百二十キロ東までの海域が機雷危険区域であると宣言をいたしました。一九八二年のフォークランド紛争の際には、イギリス政府は全面封鎖水域を設定して封鎖を徹底しました。こうした危険地帯には、もちろん日本の船舶は航行をしないと思いますし、できないと思います。  こういう危険区域では機雷の掃海はしない、やってはならないということを明言できるか。これは総理に聞きましょうか。
  204. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどからお話伺いながら、私は、どうもこの朝鮮戦争のときの図面をベースにして始められた御論議ということ自体に、大変違和感を感じております。我々が独立を回復する以前の状態というものを前提の御論議というものには、ついていけません。  同時に、当時を辛うじて記憶いたしております我々の世代は、第二次世界大戦中に日本近海に落とされました機雷が、その後、どれほど一般の漁船あるいはその他の船に影響を与え、人命を損傷したかを覚えております。我々は瀬戸内海をふるさとにする人間であります。瀬戸内海でも機雷というものは大変怖いものでした。我が国の船舶の安全のために、その航路あるいは湾口等に機雷が張られていれば、それを除去したいというのはごく自然のことなんだけれども、何でそんなに難しく、角を立てなきゃいけないのだろう。  同時に、この図面が、私流に言いますと大変問題だと思いますのは、この指針の「運用面における日米協力」、ここに書かれておりますことは、  周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保を目的として、情報収集、警戒監視、機雷の除去等の活動を行う。 ここで切れておりまして、米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。  自衛隊及び米軍の双方の活動の実効性は、関係機関の関与を得た協力及び調整により、大きく高められる。 ということでありますけれども、この文章から、これは米海軍と韓国海軍と独立回復前の我が国の機雷掃海の経験を有する者との共同作戦であります、この共同作戦はとらないということを、そういうケースはないということを久間長官は繰り返し御説明を申し上げております。  同時に、私は法制的な細かいことを説明するほど詳しくはありませんけれども、例えばイラン・イラク戦争のときに、我が国の船舶がホルムズ海峡を越えて、被弾し、死者を出しました。そして現実に我が国の船員の中に動揺が起こり、ホルムズ海峡に入ることについて、非常に私どもは厳しい状況の中で関係国の協力を得て航路を確保いたし、我が国に必要な石油の供給が途切れないように努力をいたしました。私は当時の運輸大臣であります。  そして、その時代、各国が海軍の艦艇をホルムズ海峡の内側に入れ、それぞれ自国船の安全を確保していたこともよく御記憶のとおりであります。我が国はそういう行動はとりませんでしたし、またとれませんでした。ただし、悲痛な叫びが日本の船員から上がったことも、議員も御記憶でありましょう。  しかし、ホルムズ海峡の内が周辺水域、周辺か、そういうお尋ねでありますなら、私は、ホルムズ海峡の内側まで日本の周辺であるというようなことを申し上げるつもりはありません。しかし、その上で、自国船の安全を保護するということについては、当時私は悩みましたが、同じようにお考えはいただきたいものだと思います。
  205. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど来断っていますように、このパネルを示しましたのは、何もその当時のことをそのまま当否を聞こうということではもちろんないのです。ただしかし、我々の、国民の前に示されているものはたったこれだけの文章です、五行の。これが何を意味するかということが、あなたは読まれたけれども、しかし、米軍が武力を行使しているときにも機雷の除去ということをやると言うから、それは国民立場からすれば細かく聞いておかなければならぬことなんです。  それで、私は大まかに、まだまだ詰めなければならぬことがありますけれども、やはり非常に危険なものだということが今までの議論の中でもほぼ明らかになってきていると思いますけれども、ちょっと別のことを伺いたいと思うのであります。  周辺事態というのは、米軍が日本の周辺のどこかの国と武力紛争になっていて、武力の行使が行われているような事態も周辺事態と判断されることがあるわけでしょう。米軍がどこかの国と戦闘状態になっているという状態で、これは、周辺事態は地域的な概念じゃないということを再々あなた方は答弁していらっしゃいますが、米軍が戦闘行動に入るということによって周辺事態になるということがあり得るんでしょう。どうですか、総理、あなたが判断されるんですよ。
  206. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 周辺事態というものが、地域を定めて判断をされるべきものではなく、事態の状況によって判断すべきものであるということ、同時に、それは日本自身が判断をするものであるということは繰り返し申し上げてまいりました。  なお、これに関連し、他の部分につきまして法制局長官から発言をお許しいただきたいと存じます。
  207. 大森政輔

    ○大森政府委員 先ほど、このガイドラインが非常に危険なものであることが判明したという御意見でございましたが、若干それに関しまして、誤解を残さないために、数点、御発言をお許しいただきたいと思います。  まず第一点は、周辺事態において、七十六条によるいわゆる防衛出動という可能性があるのかということでございますが、これは、七十六条をお読みいただきましたらわかるとおり、我が国に対する武力攻撃があった際の防衛出動でございますから、周辺事態といわば概念矛盾といいますか、周辺事態において防衛出動というものはないとお答えするのが正確かと思います。  それともう一つは、初めからの質疑を伺っておりまして、いかなる船舶のために掃海するのかということに焦点が当てられて議論が進んだわけでございますが、私どもは、機雷の掃海が憲法九条に照らして許されるかどうかということは、掃海の目的あるいは機雷の属性との関係で選別されるべきであるという考えをとってきていることは、委員も重々御承知のところではなかろうかと思います。  その点を若干申し上げますと、外国により武力攻撃の一環として敷設されている機雷を除去する行為は、一般にその外国に対する戦闘行動として武力の行使に当たるということが第一点でございます。  その反面として、遺棄された機雷など、外国による武力攻撃の一環としての意味を有しない機雷を除去することは、単に海上の危険を除去するにとどまり、その外国に対する戦闘行動には当たらないから憲法上禁止されるものではない。したがって、後者の場合に、具体的に我が国船舶の航行の安全を確保するため必要な場合には、自衛隊法九十九条に基づき掃海に赴くことが予定されておるということが次の点でございます。  それから、最後に、この新ガイドライン、これはどこにも限定的なことが書いてないじゃないかということでございますが、この点は、指針の「基本的な前提及び考え方」というところの第二におきまして、日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において行われるということが明確に記載されております。そして、憲法内であるかどうかということは、先ほど申し上げましたような基準で選別されるのである。したがって、決して危険なるガイドラインではないということを御理解いただきたいと思います。
  208. 松本善明

    松本(善)委員 あなたの言っていること自体が危険なんだよ。なぜかというと、周辺事態というのは、あなたが言うとおり七十六条の発動の条件がない事態であるにもかかわらず、七十六条の場合があり得るというふうに言っているから危険だと言った。あなたは何も聞いていないんだよ。そんなのではだめです。出てくるだけの価値はない。  私は、時間が余りないものだから、総理に、さっきはっきりお答えにならなかったんだが、アメリカの武力行使が行われている事態で周辺事態ということが起こるかどうかという問題を聞いたけれども、余りはっきりしませんでしたので、具体的な事例で申し上げたいと思います。  米韓条約があります。朝鮮については米韓条約もありますし、それから台湾については台湾関係法がアメリカにあります。これらの発動は、当然、アメリカ軍、アメリカが独自に判断をして発動をするということになろうかと思います。その結果、周辺事態ということになって、この周辺事態の発動、日本が周辺事態と判断をするということが起こり得るのではないか。この点について、総理の答弁をいただきたいと思います。
  209. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 それこそ、仮定の問題にはお答えできませんというお答えを申し上げるのが一番正確な答えだと思います。
  210. 松本善明

    松本(善)委員 仮定の問題と言われますけれども、このガイドラインは全部仮定ですよ。じゃ、このことが起こらないということを、初めからこんなことは起こらないんだということが前提ですか。これは、起こるかもしれないという仮定に立ってあなた方は、こういうふうにする、こういうふうにする、全部細かくこれをつくっているじゃないですか。仮定の問題なんという答弁は通用しないですよ。  米韓条約はあります。台湾関係法はあります。ある以上は、アメリカ軍が、アメリカが発動するということはあります。あるということがあり得るからこそ、その法律や条約があるんですよ。じゃ、その場合に、日本は周辺事態と判断するかどうか。これは仮定の問題なんてとんでもないですよ。
  211. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 冒頭、議員から提示をされた朝鮮動乱の際におけるその御説明から始まり、続く御論議であります。(松本(善)委員「それは関係ない。それは別」と呼ぶ)いや、あなたは別と言われましても、聞いている我々はその延長線上で論議が続いておるように思います。その上で、私は、お答えをすべきではないことはお答えはできません。
  212. 松本善明

    松本(善)委員 私は、きょうの御答弁では、ぐあいの悪いところは避けられるということで……(橋本内閣総理大臣「いや、それは、朝鮮動乱のときの話だったら、それはいろいろありますよ」と呼ぶ)いや、そうですよ。もう具体的にきちっと、米韓条約や台湾関係条項というのははっきりあるんだから、私は避けられたと。これは関係ないですよ。このパネルとは関係ないです。私は初めから関係なくお聞きしますよと言って、言っているんですよ。  私は、やはりきょうの御答弁で、非常に危険な事態に日本がなろうとしているということを申し上げて、質問を終わります。
  213. 松永光

    松永委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  214. 上原康助

    ○上原委員 どうも総理、大変お疲れさまです。  まず、連休を御利用なさっての日ロ会談について、少しお尋ねをさせていただきたいと存じます。  どのマスコミ報道を見ても、あるいは国内のロシア問題に詳しい有識者、あるいは国民の声も、今度の両首脳のいわゆる肩の凝らない、非公式会談というようですが、会談の内容は高く評価をしております。  一九五六年に日ソ共同宣言ができて以降、なかなか、旧ソ連との関係を含めて日ロ関係というものは、領土問題が根っこにあるだけに、国民の信頼醸成というか、政治、経済、外交レベルで、日米間はもちろんですが、日中、ASEAN諸国との友好関係のようにはいかなかった。これが今大きく転換をしようとしている。私は、まさに二十一世紀に向けての日本外交の新たな展開をスタートさせたような気がいたします。  今議論のありましたガイドラインの問題にしても、あるいは沖縄の米軍基地の問題にしても、安保体制全体に、この日ロ関係を今総理が頭に描いておられる方向で今後立派に前進させるならば、我々がかねがね期待しておった北東アジアのみならず、世界の新たな安全保障体制というものが確立てきていくのじゃないのか、そういう大きな夢というか期待さえ持っていいんじゃないかと思うのです。  そこで、具体的にお尋ねいたしますが、さりとてなかなか容易ではないと思うのですが、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす。これは大変失礼な聞き方になるかもしれませんが、その場合はお許しを願いたいですが、これは努力目標なのか、あるいは二〇〇〇年までには平和条約を締結できるような環境整備が見通せる、そういう道筋を立てるという中身なのか。もう少し、国民もここらは非常に聞きたいポイントじゃなかろうかと思いますので、もしよろしければお示しを願いたいと存じます。
  215. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もともと今回は、エリツィン大統領と私との間で個人的に本当に信頼関係が築けるかどうか、それが築ければそれだけで成功というぐらいの気持ちで提案をし、また、そのゆえにこそ、公式な会談というイメージを避けるためにもノーネクタイという提案をしたものでありました。そして、恐らく、当初エリツィン大統領が、デンバーでこれを提案したとき受け取っていただいた印象、それは同じような思いだったのではないかと思います。  しかし、せっかくの機会、それを少しでも将来につなげて有益なものにしたい、そのような思いから私なりにユーラシア外交というものを提唱し、あるいは三つの原則というものを伝えてきました。そして、その上で、先日日本を訪問されましたロシアの上院議長に対し、一九〇〇年代、今世紀中に起きた問題は今世紀中に解決したい、少なくともその解決の方向性だけは明示したい、そんな思いで私はクラスノヤルスクに行きますという伝言もいたしました。  結果から考えますと、私は、エリツィン大統領は非常に率直にその期待にこたえてくださろうとしたと思います。  会談の内容は、どうぞ外交上のことでありますから詳細はお許しをいただきたいと思いますが、東京宣言に基づいて二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことに合意した。例えば、できるだけとか、できればとか、そういう形容詞は全くついておりません。ストレートに、東京宣言に基づき二〇〇〇年までにという、これが両首脳合意、報道でともに発表した内容であります。  当然ながら、これは容易なことではありません、五十年以上かかって動かなかった問題が山ほどあるのですから。しかし、この二人の合意に基づいて、これから両国の関係者、当然ながら我々自身もそうです、全力を挙げてこれに取り組むことになります。プリマコフ外相が間もなく訪日をされるのを初め、チェルノムイルジン首相の訪日も決定をいたしております。また、今度はエリツィンさん、御家族を連れて日本ノーネクタイ会談をしましょうという誘いに、四月の半ばを目途にということで合意もしていただきました。折があれば、私自身もお訪ねをすることもあるかもしれません。  それ以外の国際会議の場を利してでも、これは外務大臣にも御苦労をいただきますし、それぞれの役割の、それぞれのレベルでこの目標を全力を挙げて追求し、少なくとも、日ロの間に正常な関係をつくり出す、その目標を二〇〇〇年とお互いに定めたということであります。
  216. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、これはお尋ねするまでもありませんが、確かに、総理が最近明らかにした三原則というか、信頼、相互利益、それから長期見通し、これがある面ではロシア側の、エリツィン大統領を初め関係者の心情を大変動かしたような感じもするわけです。  従来、領土問題は不可分だという言いようもありましたが、当然、総理が想定しておられることは、領土問題を解決して平和条約を締結する方向で、今度の会談も、非公式、ノーネクタイのものではあったけれども、進めてきておる、そういう方向でこれから向かう、向かうというか、もちろんですが積極的にお取り組みなさる、こう理解してよろしいですか。
  217. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 東京宣言に基づきという一言の重みをぜひ御理解ください。これは本当に我々にとって大切な宣言であります。これはエリツィン大統領自身が署名をされた宣言でありますから。  この中には、両国関係における困難な過去の遺産は克服されなければならないとの認識を共有し、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞諸島の帰属に関する問題について真剣な交渉を行った。双方は、この問題を歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の工作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する。 順番はきちんとこの東京宣言の中に担保されております。  そして、その東京宣言をそのまま、これも形容詞も何もつけず、東京宣言に基づきということで、今回も合意をいたしております。
  218. 上原康助

    ○上原委員 先ほど、伊藤先生のお尋ねにも東京宣言の二項目を御引用になりましたので、私はあえてそれは申し上げませんでしたが、実は、九三年の十月の、エリツィン大統領が訪日なさって赤坂の迎賓館でこの署名式を行ったときは、私も閣僚の末席におりましたのでよくわかります。  そこで、このことは、四年経過して、この東京宣言日ロ間の国交正常化に向けて、正常化というか、平和条約の締結その他経済問題を含めて大きく寄与していくということは、大変総理も評価してくださったので結構なことだと思います。重ねてその東京宣言の二項を御引用なさって、そのとおり進めていきたいということでありますので、ぜひ国民の期待によりこたえていただきたいと思います。  そこで、これに尽きるかもしれませんが、ちょっと外務大臣に一言聞いておきたいのですが、近々プリマコフ外相が訪日といいますか、来日なさる。そこで、この首脳会談を受けて、今後の日ロ間の外交的ないろいろな交渉とか作業とか、環境づくりというのはどのようにお考えですか。
  219. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 首脳同士の今回の成果を踏まえまして、これから、外交に直にあるプリマコフ外務大臣と積極的に話し合ってまいりたいと思っております。  今回のクラスノヤルスクには外務大臣は参加しておりませんけれども、聞くところによりますと、その後エリツィン大統領と中国に行をともにされるということを聞いておりますので、ロシア側首脳間のお話につきまして十分理解をできる状況だろうと思いますので、外相の訪日を心待ちにいたしております。
  220. 上原康助

    ○上原委員 そこで総理、最近、御承知のように米中会談がございました。今度、日ロ首脳会談日本が果たすべき外交的役割というものは、冒頭申し上げましたようにいよいよ大きくなるというか、やりようによっては北東アジアにおける安全保障あるいは環境問題、経済含めて、APECへのロシア参加についても積極的に御支持をなさるということを表明なされ、これについても大変好意的に反応したということですから。  私は、やはりこれまでの日米の軸ということは変える必要はないかもしれませんが、今総理も御引用なさったように、ユーラシア外交を展望してというか、そういう大きなスケール、構想でこれからのアジア太平洋というものを考えていきたいということなので、こういうことを含めて、もう少し日本外交の膨らみというのか、安全保障の面を含めて、国際的安全保障関係というものをお考えになってみたらと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  221. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これはある意味で、今回の米中首脳会談、十二年ぶりに開かれたわけでありますけれども、この米中首脳会談というものが非常に幅の広い話題を取り上げ、双方主張の異なるところはお互いに認め合いながら両国関係のより深化に努力をされた、こういうことにも一つ象徴されておるように思いますし、間もなくエリツィン大統領は、今小渕外務大臣のお話にもありましたように、訪中されるということも聞いております。私自身、九月に中国を訪問させていただき、間もなく李鵬総理日本にお迎えをいたします。  そういう意味では、一つは、日米中という三角形は従来から存在をしながら、日米というものは非常にしっかりしておりましたけれども、米中、日中というラインは必ずしも強固なものではございませんでした。米中も動き始め、恐らくこれからより強いものになっていくであろうことを期待いたしますし、同時に、日中というラインを私どもは強化していくことを、そしてより深化させていくことを考えなければなりません。  同時に、G8という、いわゆるG7サミットという姿からG8という形に変わった瞬間から、あるいは変わることが確定した瞬間から、その集合する八カ国の中に国交の正常化していない国の存在するということは望ましいことではない、これをどうすればいいかというのは、私自身の気がかりでありました。そして、それに対しいろいろな協力を得ながら、どうやら日ロ首脳同士ひざを突き合わせての議論ができ、そして、ノーネクタイでの日本に対する訪問をこちらから言い出し、向こうも気持ちよく受けていただけるところまでは参りました。しかし、これはスタート、緒についたところでありまして、これから肉をつけていき、最終の結論にまで持っていくためには大変な努力が要るだろうと思います。  ヨーロッパには、御承知のように一つのNATOという安全保障の枠組みが確固として存在しておるわけでありますけれども、北東アジアと申しますよりアジア太平洋地域、そうした全体的な仕組みが現在存在するわけではございません。将来そういうものができればいいという思いは恐らく議員と共通でありましょうが、今私どもは、現実的に一つ一つ課題に対し日本としてできる限りに誠実に対応し、この地域の平和と安定の上でいささかなりとも役に立っていく、その気持ちを常に忘れてはならないと思っております。
  222. 上原康助

    ○上原委員 なぜそういうお尋ねをするかということは、とっくにお気づきと思うのですが、どうもこれまでの日本の外交というのが、我々から見ると余りにも対米に偏り過ぎるのではないか。また、その指摘はしばしばなされてきたことであります。  私は、最近、沖縄の基地問題とか今問題になるガイドラインにしましても、安保体制というものは、やはり広い国際的視野という点、あるいは、アジアの全体の安全保障というものもどう考えるかという一環で中長期に見通していかなければ、なかなか思うように解決策が出てこないのではないかという私なりの悩みというか、あるいは、長いことこういう議論をさせていただいての思いがあるものですから、ぜひそういった大きな国際的視野、特にロシア、中国、アメリカ、そして朝鮮半島でしょう。  私は、朝鮮半島のことにしましても、これだけ世界が大きく動く、あるいは経済的にもいろいろな紆余曲折をたどりながらというか、繰り返しながら自国民の生活とか安全とか安心ということを考えなければいかないとなると、軍事的に物事を解決していこうという社会環境、国際状況ではないのではないか。それをぜひもっと日本としてはお考えになっていただきたいという強い願いがあるからなんです。  そういうこともあわせて考えてみますと、なぜ今、日米がこんな軍事同盟的なことを強めて、防衛論議みたいというか、ガイドラインとかそういうものをやらなければいかないかという疑問は、やはり国民の中にはあると思いますよ。そういう点も含めて解決していく、よりわかってもらうような努力は必要ではないかと思うのですね。  そういう立場で、ちょっと具体的なものについて。外交、防衛問題と関連しますので。  いよいよ普天間の代替海上ヘリポート基地の報道が、近日中にも沖縄県や名護市にお示しになるという報道がなされておって、せんだって私がお尋ねしたときは今月中ということでしたから、まあ十月いっぱいということだったと思うのだが、概要説明は今月に、十一月にずれております。  何か報道によりますと、あさってにも防衛庁長官かあるいは防衛庁首脳が出かけていってお示しになるということなのですが、キャンプ・シュワブ沖の海上ヘリの調査結果の内容はどうなっているかというのが一つ。それと、概要というものは一体、報道されている以外我々は全く知らないのだが、改めて、ここで明らかにできる面はぜひお示しをいただきたいと思います。
  223. 久間章生

    ○久間国務大臣 先般の委員会で私は、できれば十月中に概要を地元に早くお示しして、そしてその上に立って検討していただきたいということを述べたわけでございますけれども、確かにちょっとずれ込んでまいりました。  できるだけ地元の御理解が得られるように、そういう内容にしたいというのがございましたし、また、調査もちょっとおくれましたし、また、運用所要等の報告等もおくれましたが、大体概要等がまとまってまいりましたので、お許しをいただければ、あさってと言わずあしたにでも行きたい、そういう気持ちで今整理をしているところでございます。国会のお許しをいただいた上で、できれば一日でも早い方がいいと思いますので、あしたにでも出させていただければと思っているところでございます。  なお、内容でございますけれども、私ども、やはり一番の地元でございますキャンプ・シュワブ、あそこの名護市の皆さん方が一番関心を持っておられるものですから、やはりできますれば名護市の方々に一番早く内容等をお示ししたい。もうきょう、あすのことでございますので、それまで待っていただきたい。今そのようなことで作業をしているところでございますので、よろしく御了承のほどをお願い申し上げます。
  224. 上原康助

    ○上原委員 今のお答えは、名護市あるいは沖縄県に示さない前に、ここで公式というか、お答えすることは控えたいということですか。
  225. 久間章生

    ○久間国務大臣 国会の委員会でございますから、もちろん先生方の方にいち早くしなければならないわけでございますけれども、やはり私どもは、地元の御理解をいただけないとこの問題はどうにもならないわけでございますので、御理解を得た上でもう一歩前進したいということがございます。  そういう意味ではやはり、ここで例えばその内容等を言いまして、いち早く私どもが説明する前にでかでかと新聞等で報道されますと、これまた、どういう内容かということを待っておられる方々に対して大変ある意味では失礼なことにもなりますので、国会の皆さん方に御報告するというのは重々わかるわけでございますけれども、どうかひとつ委員の皆さん方におかれましても、きょうとあしたの問題でございますので、その辺についてひとつ御理解いただいて、ぜひやはり地元の方々にあした行って報告をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げるわけでございます。
  226. 上原康助

    ○上原委員 私も別に強いて聞こうとも思いません。それは報道されている以下でもないし、以上でもないと思うのですよね、恐らく。あなたがここでおっしゃるよりも、言わなかったという方が大きく記事になるかもしらぬよ、それは。  それで、ここだけは確認というか、もう少しお答えいただきたいわけですが、そうしますと、あしたにも、国会の了解が得られればという前提がありますけれども、今度明らかにしようとする内容というものは、米側とは調整の上の内容なのかどうか。
  227. 久間章生

    ○久間国務大臣 運用所要については詳細ではございませんで、概要でございます。そういう意味では最終的にはいろいろとまだ詰めなければならない問題もありますけれども、原則としては、もう今度お示しする内容についてはこの線で行くんだという、私どもの立場を調整の上だというふうに理解していただいて結構だと思います。
  228. 上原康助

    ○上原委員 それともう一つは、ボーリング調査、たしか八月以降なさいましたよね。それ以前から環境影響調査もやっておったはずなのです、全体的な。一部の報道によると、環境影響調査については全体的には開示しない、ディスクローズしないという話もあるのですが、これは情報公開が問題になっている手前、しかも、後でもう一点お聞きしますが、そういった内容を明らかにしないまま、あるいは何か問題を伏せたような形でもし説明をするとか、また我々国会なりあるいはマスコミとかそういうもので追及されて、後で資料をお出しになるということは、二重、三重にこの問題をより困難にする危険性なしとしないと思う、私は。  そういう面は一切隠し立てなく、沖縄県、名護市に全面公開するお約束はできますか。これは、防衛庁長官がお答えになってから後では失礼だと思うが、総理からも一言お答えください。
  229. 久間章生

    ○久間国務大臣 私どもは、何も隠し立てするつもりはございません。  今度のボーリング調査その他いろいろな調査をしますときに得ましたいろいろな、環境にも影響のないようにということで、環境との関係等もいろいろ調査しております。  しかしながら、今度示しまして、もしここでいいというような地元の御理解が得られましたならば、今度は具体的にその工法なりなんなりをもっと絞り込んでいくわけでございまして、その段階でさらに環境の調査も詳しいものをしなければなりません。そのときには環境庁との協議等もしながら、あるいはまた沖縄県と協議しながらやっていくわけでございますが、今までに私どもが調査したことで隠すようなつもりはさらさらないといいますか、隠さないで全部地元にお示ししたいと思っております。
  230. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ただいま、久間防衛庁長官が議員に対してお答えを申し上げましたとおりであります。
  231. 上原康助

    ○上原委員 そのことは、期待というか、ぜひそうあってほしいと強く要望を申し上げておきます。  そこで、この件に関してどういうタイプのものであるとかいろいろ報道されておりますが、それは時間の都合もありますから、きょうは省きましょう。  そこで、これは総理からお答えいただいた方があるいはいいかと思いますが、ちょっと質問もどうかと思ったりもするし、またお答えにくいかもしれませんが、名護市は、来年一月十八日でしたかの市民投票を十二月二十一日に前倒しに実施をするという決定をなさったようであります。また、イエスかノーかだけでなくして、四つの選択肢を付した条例制定になったのもおわかりのとおりです。  だが、今の沖縄側の状況からして、大変これは、先ほど言ったような政府の誠意を見せたにしても厳しい状況にあることは御承知のとおりです。万が一、市民投票で受け入れノーという、また仮定の質問にはというお答えになるかもしれませんが、そういう事態になったとしたら、なる可能性も私は相当強いと思うのですが、その場合は政府としてはどう対処していかれるのか。今、そういうことに対してどうやっていこうというお考えなり、あるいは内々の御相談があるのかどうか、協議があるのかどうか、できればお聞かせを願いたいと存じます。
  232. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もともと、就任直後、大田沖縄県知事に初めてお目にかかりましたときに、知事から具体的な名称として出てまいりましたものがこの普天間基地の問題でありました。そして、それは市街地の真ん中にあり、その危険というものが市民の暮らしにいかに大きな不安を与えているかということでありました。  私もその状況を、何十回となく沖縄に参りました人間として全く知らない状況ではございませんでしたから、知事のその強い御発言というものに無理からぬ思いを持ち、事務的にはさまざまな意見がありましたけれども、初めてクリントン大統領とお目にかかったサンタモニカの首脳会談の際、私はこの普天間というものを代表的な例示としてテーブルにのせました。そしてその上で、日米両国が、日米安全保障条約というものの持つ重み、その中における我が国の基地提供の責任、さらに知事としての強い御要望のあったこと、基地縮小というものに向けての強い声、そうした中から我々なりにぎりぎりに見出したのが海上移転、しかも移設可能な姿でという解決策でありました。今日まで、我々なりに全力を尽くしてきたつもりであります。  一般論として、それぞれの自治体において、その地域の皆さんが住民投票という方法を選択されることを、国の立場でとやかく申すべきではないと思います。そして、その中で示された住民の意思というものは尊重されるべきものでありますから、私は、今議員が想定されたような状況で、この問題が白紙に戻り、次の解決策が発見されるまで周辺の住民を危険な状態に長く置くような結論が出ないことを心から、心から願います。
  233. 上原康助

    ○上原委員 せんだってから総理のその御心情については何度かお聞きしましたので、きょうはその程度にとめておきましょう。  そこで、私も基地問題と絡めて沖縄振興策をやるべきとは思っておりません。基地問題は、当然国の安全保障政策という重要な、もちろん振興策も重要ですが、国民全体で分かち合うべき課題だと思うのですね。だが、一方には、オール・オア・ナッシングでいいのかという意見がないわけでもありません。イエスかノーだけじゃなくして、中間的な選択肢もあってもいいのじゃないかという声もないわけではない。私もそういうことについてはある程度知っております。  そこで、いろいろこれもマスコミで先行して報道されて、かえってこの基地問題についても複雑さを増幅させている嫌いかないわけでもありませんので、このこととは別次元で考えたいわけですが、結果として絡むこともあるかもしらない。  そういうことで、沖縄振興策についてはどういうふうにこれからやっていかれようとするのか、その重要なことだけ、総理からでもよろしゅうございますし、開発庁長官でもいいですから、もう一度ここでお聞きをしておきたいと思います。
  234. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 沖縄の振興策、これは沖縄の地域経済が自立をし、雇用が確保され、県民の生活の向上に資する、同時に、我が国の経済社会の中において沖縄県が発展する地域として寄与されるように、そんな思いから政府としても取り組んできたことであります。そして、政策協議会での検討結果を踏まえまして、平成八年度補正予算に計上いたしました五十億円の特別調整費を使いながら、県とも御相談をし、既に調査活動や事業に着手をしております。  これからもそのような努力を当然のことながら続け、その中において、沖縄の地理的特性あるいは伝統と文化というものを生かした振興策を定めていきたいということで努力をいたしております。  それと同時に、いわゆる島田懇という組織がありましたこと、御記憶のとおりでありまして、これも非常によい提言をいただきました。内閣としても、この実現のために最大限の努力を続けて払っていきたいと考えております。  一つ例示で挙げさせていただきますと、例えば全島フリートレードゾーン構想、こうしたものを初めとする沖縄県の独自でおつくりになっております振興策があります。独自と申しますのは、県内においてさまざまな御論議があることを私どもなりに存じているという意味でありますが、近く県は最終の意見を私たちに聞かせてくださることになります。正式に提起をしていただきますのは知事御自身がメンバーである沖縄政策協議会になるわけですが、ここで県としての結論を御披露いただき、政府部内においてさらにこれを検討を進めていかなければなりません。  特に本日、景気、経済も論議の対象として、雇用失業率も議論になりましたが、沖縄県において特にその失業の問題が深刻であることを我々よく承知しているつもりであります。そして、それが解決しなければ、二十一世紀を担う沖縄における青少年の夢が陰るという状況になることも承知をしております。  新生沖縄という言葉を使うことはあるいは失礼かもしれませんけれども、恐らく、県が全島フリートレードゾーンのような構想を正式にまとめられ、国とともにテーブルに着かれる、こうした場面は今まで我々は用意してこなかったのではないかと思いますし、こうした機会にこれが一歩でも二歩でも前進し、新しい沖縄がより発展を遂げられるように、振興策自身にも全力で取り組んでまいりたいと思います。
  235. 上原康助

    ○上原委員 時間が足りなくなりましたので、お尋ねしたいのですが、ぜひひとつそういう方向で、これは大蔵大臣に御答弁いただく時間がないかもしれませんので、こういうことを申し上げるのははばかるのですが、行財政改革の中での予算措置についてもぜひ内閣全体として私はやっていただかなければならないことだと思いますので、御留意を願いたいと思います。  そこで、これも私は今までお尋ねしたことはなかったのですが、沖縄開発庁の位置づけについて、どうもよくわからない。いろいろ理由はありますけれども、沖縄県あるいは沖縄県議会、それから沖縄県民会議がせんだって要請書を出していることもおわかりのことだと思うのです。いろいろ理由は申し上げませんが、行政改革会議というか、あるいは橋本内閣として、沖縄開発庁のこれからの位置づけ、あり方はどういうふうになさろうとしているのか、ここいらで一言聞いておきたいと思いますので、御答弁願いたいと思います。
  236. 小里貞利

    ○小里国務大臣 先ほども橋本総理の方からお話がございましたように、沖縄をめぐる問題は私どもの内閣にとりましても最重要課題でございます。  今先生の方からお話がございました行政改革にちなんでの話でございますが、沖縄の地理的特性あるいは伝統文化を生かした振興策をこの機会にこそ積極的に策定できるような一つの工夫を凝らすべきである、そういう認識をいたしております。  もっと具体的に申し上げますと、例えば去る十月十五日であったと思うのでございますが、行政改革会議におきまして、沖縄が歴史的に特別の負担を強いられてきた事情等に十分配慮をいたして、できるなれば、今回の省庁再編、この画期的な施策の中におきまして、沖縄の専任大臣は置けないのか、そういう総理の特別の指示等もありまして、これらを重要に踏まえながら今作業をいたしておる、そういう状況でございます。
  237. 上原康助

    ○上原委員 いろいろ差しさわりがあってもいかないと思いますので、今の、総理がそういうお考えのもとに御検討なさっておるということですから、それを重く受けとめて、県民もやはり専任大臣をぜひ置いてもらいたいと、予算の一括計上権限を引き続き、開発庁規模の機構と機能、総合事務局を含めてのね、そうせぬと、今抱えている課題というのは道半ばですよ。  それを、行革全体で横並びにやろうということは私はいささかやはり問題だと思いますので、決して地域エゴとかそういうことではなくして、今の県民の心情を体して申し上げているつもりでありますので、総理初め関係閣僚の御理解をお願いしておきたいと思います。  残り少なくなりましたが、これは相当苦言になるのですが、防衛庁長官か知らぬけれども、私はやはり基地の返還のあり方について、根本的に考え直してもらわなければいかないことがあると思う。  恩納通信所、これは九五年の十一月三十日に全面返還になった。六十三ヘクタール。だが、その後、米軍が垂れ流したというか置き去りにしたPCBとかカドミウム、六価クロムなどがあって、二年も、この十一月三十日でもう二年になるのですが、跡利用ができない。そのままほったらかしてある。  しかも、私、その話を聞いたので、ちょっと現場も行って調査もしてきたんです、ここに写真も撮ってきてありますけれども。  事もあろうにアメリカ側は、自分たちでは処理せずに、自衛隊分屯地に持っていって置くということですので、私はそれはやめた方がいいと言うんだ。その自衛隊の基地というものは、仮に置こうとするところは更地なんだが、本格的に置こうとするところは相思樹が繁茂している森林なんですよ。そこを切り倒してこのPCBを置くと。  アメリカと親しいんでしょう。あれだけ広い米軍基地の中には、PCBのドラム缶六百本でしたかね、それだって保管できる場所はあるんじゃないですか。根本的に改めて、ぜひ米側と協議をして解決してもらいたい。
  238. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは議員からおしかりを受けるかもしれませんけれども、実は私は、先日、九月に大田知事とお目にかかるときまでその問題を熟知しておりませんでした。そして、大田知事から、この旧恩納通信所の、PCBばかりではない、有害物質を含む汚染された泥の問題というのを初めて伺いました。  これは知事さんから、具体的な問題として早く解決してほしいという御依頼を受けたんです。これはもう理屈とかなんとかではなく、それは確かに私も聞いて知事のお気持ちはわかりますので、とにかくこの泥を全部取ってしまえ、そして適切な処理方法が見つかるまで、確立するまでの間、航空自衛隊の恩納の分屯基地に一時保管をする、あくまでも一時保管をするということで、これはどうぞ御理解をいただきたいと思います。  PCBの分解技術等もまだできているわけではありません。そして、役所同士の理屈の言い合いをしておりましたら、いつまでもこれはどきません。ですから、とりあえずこれは一時的に全部、お返しした土地から取り除きます、そして一時保管を航空自衛隊の分屯基地にすることで、知事の急いで片づけてほしいという声にこたえようとした、その点はどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  239. 上原康助

    ○上原委員 それは私も説明を受けました。もう時間ですが、一時保管するところのも、臨時に移してまたさらに自衛隊分屯地に持っていく。そこは森林を伐採して、環境にも相当影響するんですよ。だから、そんなことをするよりも、臨時に移すところで保管しておって適当に処理してもらいたい。  こういうことをやらないから不満が残るのであって、そういうことは本当に、もう二カ年もほったらかしてあったということに対しての県民の不満は強いですので、私は、総理の御返事ですが、そういう処理の仕方はいかがなものかと思いますので、政府部内でもっと御検討いただきたいと思います。  終わります。
  240. 松永光

    松永委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、岩國哲人君。
  241. 岩國哲人

    ○岩國委員 太陽党を代表いたしまして、質問させていただきます。  まず最初に、政治倫理に関連いたしまして、政党に対する公的助成金についてお伺いいたします。  さきの宮城県知事選挙におきましては、新進党の小沢党首を初め、各党の幹部が応援に駆けつけたことは、御承知のとおりであります。こうした経費は、政党交付金を含む党本部の経費から支払われていると思います。  そこで、お伺いいたします。  政党助成法の第四条の第一項には「国は、政党の政治活動の自由を尊重し、政党交付金の交付に当たっては、条件を付し、又はその使途について制限してはならない。」とあり、一方、同条の第二項では「政党は、政党交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意し、その責任を自覚し、その組織及び運営については民主的かつ公正なものとするとともに、国民の信頼にもとることのないように、政党交付金を適切に使用しなければならない。」とあります。  昨年十二月、木島日出夫委員質問に対して、自治省は、その使途については制限してはならないとの見解を示すとともに、二項の趣旨が守られているかについては、政党交付金を充当した支出を公表することによって国民の監視と批判にまつことにしたものと考えていると答弁しておられます。  さらにさかのぼって、平成五年の衆議院本会議では、いわゆる政治改革法案が審議された際に、神田厚議員からは、企業・団体献金の取り扱いについて質問がされております。  当時、自民党提出者として答弁に立たれた津島雄二議員は、  我が国の政治、殊に政党の運営が政党助成のみに頼っていいのでしょうか。自己努力と自発的な国民参加を一定の節度の中で担保をしていくことが、議会制民主主義のためにどんなに大切なことか、私は心からお訴えを申し上げたいわけであります。 と答弁されました。続けて、   そして、この場合に、特に御理解をいただきたいのは、地方政治におきまして無所属の立場で政治に参加をしておられる方々が、いわゆる政党に属さないということをもって十分な政治活動ができなくなる、さらには、地方政治にまで系列化の波が押し寄せてくるということが果たして適当であるか、こういうことも申し上げなければならないわけでございます。 と見解を示されました。  ここで津島議員が指摘されているのは、政党交付金以外は政治資金として認めないということになると、地方の、とりわけ無所属の政治家、政治参加者の方々が政治活動ができなくなることへの配慮とあえて理解させていただきますが、現状はこうした心配とは逆ではないでしょうか。  党首が堂々と政党交付金を使って地方政治に、介入というと言葉が過ぎるかもしれませんが、地方政治にまで、国政政党である中央の政党による地方政治の系列化を進める状況があります。地方分権推進が言われている今日、いわば国の資金を使って永田町政治の系列化を図るがごとき状況を私は危惧いたします。  総理、どのような御所見をこの点についてお持ちでしょうか。
  242. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、当時想定される中におきまして、答弁責任者でありました我が党の津島議員等も、誠心誠意御論議に参画し、その時点におけるお答えを申し上げたものと思います。  その上で、私は、政党というものを全く否定するつもりは、政党人の一人として、ありません。これは、国政選挙ばかりではなく、地方自治体におけるそれぞれの選挙におきましても、立候補をされる方が、政党の候補であることを選択なさるのか、政党に基盤を置かない立場で、あるいは既存の政党の中にみずからの意見に合う政党がないという判断の上で積極的に無所属を選んで立候補をされるか。  それは、それぞれその選挙に候補者として臨まれる方のみずからの判断でありますし、同時に、その方に対してどのような判定をつけられるかは、それぞれの地域住民の方々の選択でありましょう。それぞれの場合においての違いはあろうかと思いますが、地方選挙と一言におっしゃいましても、これは首長さん方の選挙と議員の選挙とにおいても、私は政党の存在の意義は違いがあろうと存じます。  あえて一般論でお答えをさせていただきますが、私は、みずから選挙に出馬をしようとする方自身が、政党の支持あるいは政党の推薦、公認といったものをもってみずからの主張を証明しようとなさるか、あえて全く独自の立場を強調することでみずからの主張を明らかにしようとなさるか、それぞれの選択の問題でありましょうし、また、選ばれるその地域住民の皆さんがどうした点に着目してお選びになるか、すぐれて判断の問題だと思います。
  243. 岩國哲人

    ○岩國委員 自治省の方からは、支出の公表等を通して国民の監視と批判にまっという見解が示されております。その法的担保について、どのようなお考えをお持ちか。  また、政党助成法の定めは定めとしても、憲法第九十条では、国の収入支出決算はすべて毎年会計検査院が検査と定めております。憲法に照らして、政党助成法、政党交付金の現状は問題はありませんか。  さらに、政党助成法では、その第十五条で政党の会計帳簿への記載、十七条で政党の報告書の提出、そして報告書の公表となっていますが、政党交付金について特別な検査制度を実行されるお考えはありますか。  以上、自治大臣にお願いいたします。
  244. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えいたします。政党交付金は国民の貴重な税負担で賄われるものでございまして、この使途については制限すべきでないかという幅広の議論があることについては理解をするところでございますが、政党交付金につきましては、使途を限定いたしますと、結果として国家が政治活動に介入するということになる恐れがあるわけでございます。したがいまして、政党助成法におきましては、その使途を制限することなく、政党の責任にゆだね、政党交付金の使途を明らかにした報告書を広く国民に公開することによりまして、国民の監視と批判を仰ぐこととされているのでございます。  それから、監査の問題でございますが、このような国民の税負担で賄われる政党交付金でございますから、この報告書の内容の正確性を担保するためには、従来から行われております内部の監査に加えまして、公的資格を有しております公認会計士または監査法人による外部監査も義務づけられておるわけでございます。  この外部監査は、例えば、会計帳簿に政党交付金に係る収支の状況が記載をされていること、報告書に会計帳簿に基づいて収支の状況が表示されていること等について行われるものでございまして、政党交付金の使途につきましては、報告書等の公表を通じまして国民の批判と監視を仰ぐこととされておるのでございます。
  245. 岩國哲人

    ○岩國委員 次に、政治倫理に関連して、もう一つお尋ねいたしたいと思います。  これは、比例制度という選挙制度に関連してでありますけれども、ここ数年の各種選挙の投票率はほとんどが低下傾向にあります。今日の日本の政治制度は、極めて深刻な状況にあると言わざるを得ないと思います。政治的無関心あるいはあきらめの念が広がり、有権者の半数が投票にすら行かない。ことし七月に行われました都議会議員選挙の投票率はわずか四〇%、都民の五人に二人しか投票所へ行かなかったということで、史上最低の投票率であったことは、まだ記憶に新しいところであります。  ことし一月の朝日新聞の世論調査によりましても、選挙で政治が変わると答えた人はわずか三六%であります。つまり有権者の大多数の人たちは、選挙に行っても政治は変わらない、そのような政治に対する不信感を持っていると考えざるを得ないと思います。  昨年五月の参議院の予算委員会でしたけれども、大渕絹子議員が「主権者である国民の政治への信頼を回復する手だてはありますでしょうか。」と尋ねられたのに対して、総理は「要は、お互い一人一人がどこまで国民に密接した問題を取り上げ、その回答を国民に示していけるか、その努力の積み重ねが我々にいつの間にか欠けていたのではなかろうか、そんな思いがしてなりません。」と答えておられます。  オレンジ共済事件の主犯者とおぼしき者が名簿に登載され、一方では、自民党は中曽根元総理を比例名簿永久第一位と決めるなど、政治の私物化、乱用、誤用、不適切な名簿登載を許すような政党の実態が、こうした国民の政治不信あるいは無関心の温床になっているのではないでしょうか。この点について、総理の御見解をお伺いします。  憲法の第四十四条では、両議院の議員及びその選挙人の資格を、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入によって差別してはならないとありますが、比例名簿に永久に一位と決めることは、有権者の選ぶ権利と同時に与えられている落選させる権利、そして、その他の候補者が一位に登載されることを期待する期待権を奪い、結果的にはそのような権利の差別につながるものであって、憲法の精神に違反するものであると私は考えますが、この点について、総理はどのようにお考えでしょうか。
  246. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これまた大変恐縮でありますけれども、各政党がそれぞれの責任においてどのようなルールで内部の候補者調整を進めるか、それは、私はそれぞれの政党の選択の問題だと思うのです。  今、議員、現行の選挙制度に対しての御批判を述べられましたけれども、我々は現行制度ができましたとき野党の立場にありまして、この制度が最善と信じて賛成票を投じた当初のメンバーではございません。  しかし、当時の衆参両院、世論というものは、この制度によってこそ政治が改革されるんだという大変強い声で満ち満ちておりまして、それに違う議論をしようとする者は守旧派というレッテルを張られるか、まだ張られた方はそれでもマスコミに登場されましたけれども、そのレッテルも張ってもらえなかった者の意見はマスコミに登場することさえありませんでした。  私は、そういう意味では、現行制度のもとで、選挙制度を管理し、必要があれば運営する責任を負う内閣の長として、与えられました機能の中で制度を維持してまいります。  その上で、名簿の作成については、それぞれの政党がみずからのルールにおいて、責任において果たしていくもの、それに対する御批判は投票という形で国民から示されるもの、そのように理解をいたしております。
  247. 岩國哲人

    ○岩國委員 総理の御見解ではありますけれども、最大多数党である自民党こそ、私は、こうした選挙のあり方、そして有権者からの批判を仰げるような体制をつくるべきではないかと思います。そうした有権者から、特に中曽根総理が云々ということではございませんけれども、永久名簿一位ということでもって聖域として、その人に対して落選させる権利さえも奪われてしまうということは、私はやはり、選挙制度の精神に照らして、おかしいと思います。  こうした点について、多数政党であり最大政党であるがゆえに、一般有権者からは、政党がやることだから、政党の責任でやることだから、それは法の精神あるいはその他のものとはほとんど無関係だ、そういうことをすれば政党自身が批判されるのだからというような考え方は、私にとっては、やや横暴な考えではないか、そのような気がいたします。  次に、財政再建と国民生活の関連について、質問させていただきます。  世界最大の投資銀行と言われておりますメリルリンチの調査レポートでは、ことしの成長率を、当初の一・六%から九月初めに下方修正いたしまして、〇%と予想しております。国内の調査機関でも軒並み下方修正し、例えば大和総研では、当初見通し一・八%からマイナス〇・五%へと、二・三%もの大きな修正幅となっております。個人消費は順調に推移といった、整合性のない見通しの甘い想定では、経済のかじ取りを誤ってしまうことは改めて申し上げるまでもないことです。  十月の月例経済報告では、消費低迷の原因として、約九兆円の国民の負担増という構造的な財政のデフレ要因が大きく影響していることを認めております。労働省が先月三十一日に発表いたしました九月の毎月勤労統計では、所定外労働時間の伸びも二十一カ月ぶりに伸びがとまり、実質賃金も二カ月連続で前年同月を下回っていることは明らかにされています。雇用、所得情勢の悪化は歴然としております。  この週末、私も地元の世田谷区の中小企業の社長さんたちといろいろ話をしました。社長さんたちは、給料を自分たちが辞退する形をとってまでも従業員に給料を払わなければならない、そのような実態を訴えておられました。  さきの香港発の世界同時株安は世界経済の将来に暗雲をもたらしましたが、その後の経過の中ではっきりしたのは、同時株安で最も深刻な影響を受けるのは日本であるということではないでしょうか。  今までの好調な対米輸出は、株価のあのような急激な下げを見て、逆資産効果、これからの景気は、今までのような好調な好景気はおよそ期待できなくなってくる。したがって、日本の輸出もこれから伸び悩む。一方、アジアヘの輸出も、アジアの通貨の切り下げということによって、これもまた難しくなる。切り下げた通貨を持っているアジアの国はアメリカへ輸出しようとする。したがって、日本にとって、アジアの輸出企業との競争もまた出てくるということから、経済の先行きはさらに深刻さを加えていると思います。  米国は実体経済が健全であるのに対して、日本は実体経済、大蔵大臣がしょっちゅうおっしゃいますファンダメンタルズに深刻な影を落とすことになっております。予算委員会や財特委員会で数々の景気関連の質疑を聞いてまいりましたけれども、およそ政府には、このような景気の先行きに対する危機感が欠けているとしか思えません。  景気は基本的には回復基調にあるものの足踏み状態にあると経企庁長官は繰り返して言われていますが、その足踏み状態というのは、どの時期のどのようなデータをもとにしておっしゃっているのか。あるいは、基本的には回復基調にあるとおっしゃるのは、具体的に何月から何月までのどのデータをとって、基本的な回復基調という結論を出しておられるのか。これは、世間の常識で理解すれば、経企庁長官のお言葉は、世間では、景気は停滞している、このように理解しておるわけです。  一方で、ファンダメンタルズという言葉の定義についてきょうこの委員会で質問があり、それに対して大蔵大臣からは、ファンダメンタルズの定義として、財政状況という言葉も定義の中に入れてお答えになりました。  そのファンダメンタルズ、財政状況が健全であるというならば、なぜ、この財政構造改革法案をこのような形でもって、当面の景気対策に出動もできないような、手かせ足かせをはめられたような財政改革をやらなければならないのか。深刻であるとするならば、ファンダメンタルズそのものは健全とは言えないから、このような法案が必要なのではないでしょうか。  この点について、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  248. 三塚博

    ○三塚国務大臣 それぞれ景気の見方については、学者先生、議員個人も、資料の収集分析等で違いますことは、民主主義のこの世でありますから、当然でございます。  先ほど、ファンダメンタルズの財政収支ということですから、そのことからお答えを申し上げますと、ヨーロッパは、マーストリヒト条約、三%を目指して血みどろの努力をいたしております。我が国も御案内のとおりの財政状況でございますから、これを健全体に戻すこと、今、体力のあるときにこれをやらずして、いつの日か財政構造改革の仕上げができるのであろうか、こういう時点のとらえ方でございます。  雇用、所得環境、企業収益の改善も、それぞれのデータによって違っておるところでございます。しかしながら、政府がみずからやるデータだけではなく、民間の資料も集めることによる分析の中で、この傾向はしっかりとあらわれてきておりますことは、強弱は別として、御案内のとおりかと思います。  スーパー、コンビニ、百貨店の問題につきましても、数字が正直に消費動向をあらわすものでございますから、その点を見る限りにおいては、緩やかでありますけれども、回復基調にあるのではないか、こう申し上げておることであります。必ずしも力強さは感じませんけれども、このことは、構造的な問題のあらわれがありますことも御理解いただけることであろうと思っております。  規制緩和前倒し、各改革の断行をやることによりまして、民需中、心の自律的成長への転換のベースづくりを今いたしておると御理解をいただきますと、先ほどメリルリンチ以下の御紹介をいただきましたことはこととして、私どももそのことは警告として受けとめ、励みとしてこれを逆ばねにいたしまして、今後の規制緩和、撤廃、前倒し、ビジネスチャンスの機会均等、創意工夫がそこで行われ、競争裏の中に日本経済が緩やかな回復から安定した方向に向いていってほしい、その努力を、ただいま橋本首相を中心に、与党三党と一体となりまして取り組んでおるところでございます。
  249. 岩國哲人

    ○岩國委員 経企庁長官の御説明もお伺いしたいと思っておりましたけれども、ちょっと時間がなくなりましたので、先を急がせていただいて、次の点をお伺いいたします。  財政構造の改革はもちろん大切なことであります。しかし、その前提として、計画六年間の平均名目成長率を三・五%と想定しておられます。この数字を閣議決定された六月は、二十三年ぶりに四-六のGDP成長率が年率換算でマイナス一一・二%となるなど、消費税引き上げによる消費の停滞が顕在化していたにもかかわらず、ことしの成長率を一・九%と言っておられたときであります。政府もこの数字が困難であることを認めざるを得なくなっている今日、三・五%という数字、さらには改革法案そのものを見直す必要があるのではないでしょうか。  また、三・五%という数字の根拠についても、いつの時点を算定基準とされたのでしょうか。二年前の平成七年十一月の構造改革のための経済社会計画の名目経済成長率は三・五%でした。二年前です。改定して三・五%となったのは、これは偶然の一致でしょうか。六月の閣議決定ということであれば、その算定基準の数字ははるかにさかのぼった時期と考えられますが、いかがですか。
  250. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 構造改革のための経済社会計画におきましては、物流、電気通信、金融サービス等の分野における高コスト構造の是正とか、あるいは規制緩和というような改革が盛り込まれた場合、改革が進展した結果として名目三・五%という数字を出しているわけでございまして、一方におきまして、本計画に盛り込まれた構造改革が進展しない場合には一・七五%になるというふうに見込んでいるわけでございまして、委員会にもその両方の数字を財政構造改革の試算として出していると考えております。  私どもといたしましては、従来から申し上げておりますような規制緩和とか、あるいは土地の有効利用、流動化、さらには国際的な条件に合ったような事業環境を整える法人税の改革、あるいは有価証券取引税の問題等々の手当てをいたしまして、経済構造改革をしっかり進めることによりまして、三・五%の成長を実現したいと考えている次第でございます。
  251. 岩國哲人

    ○岩國委員 三・五%ができないときには一・七五%というシナリオはあるということでありますけれども、一・七五%とした場合には、二〇〇三年度までの六年間は、一般歳出の伸びをゼロにしても、九八年度は二・九兆円、最終年度の二〇〇三年度には四兆八千億円の要調整額が生ずるとされております。一・七五%でも財政構造改革が可能と考えておられるのでしょうか。要調整額処理はどうされるのですか。福祉予算をカットされるのですか、農業予算をカットされるのですか、大きな項目としてはどのようなものが考えられておるのか、大蔵大臣の御所見をお願いいたします。
  252. 三塚博

    ○三塚国務大臣 三・五の仮置きと一・七五の仮置きの差は、二・一から二・九兆の要調整額ということになります。本法案、財政構造改革推進に関する特別措置法は、しかるがゆえに、財政健全化に向けて、マーストリヒト条約の基準ではございませんが、我が国我が国としての判断の中で、そうすることで後世にツケ回しをせず健全体に立ち返ることができるんだ、こういうことで、それぞれキャップ制を設け、抑制措置を講ずる等々、それぞれの項目について明示をいたしたところでございます。  この要調整額は、年末の予算編成時まで、ありとあらゆる制度等の見直しをやることによりまして、費用対効果のあるもの、義務的経費として支出をしなければならないもの、そのものについては、受益と負担の問題について御論議の中でその方向性を築いていかなければなりませんし、そういう観点の中、また、ありとあらゆる財源を捻出してまいるための最大の努力を傾けることによりまして十年度予算編成の要調整額を解消することといたしたい、こう前回も申し上げておるところでございます。
  253. 岩國哲人

    ○岩國委員 要するに、要調整額の中身あるいは方向性については議論をしておられない、あるいは、議論はできているけれども、国民にその説明ができないということでは、この法案の評価に大きくそれは影響してくると思います。  要調整額は、ありとあらゆる財源、空からお金が降ってくるわけではありませんから、どこかを削っていかなければならない。どこにその痛みが、しわ寄せが及んでいくのかという大きな項目だけでもお示しいただくべきではないかと思います。
  254. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件については、聖域なき見直しということを大前提にいたしております。聖域なき見直してございますから、すべてのものについてこのことを断行する。ODAにしろ一〇%、公共事業にしろ七%、以下省略をいたしますが、そういうことで取り組むことにより、年末編成において、国民各位の理解が得られるものをつくり上げていきます。  痛みを伴うものでございますから、それぞれのお立場の中でそれぞれの強い御批判、反対もあろうと思うのでありますが、政治は後世のために責任を果たすということも極めて重要なことであり、この困難な峠を通り抜けることによりまして、我が国経済が着実に安定持続的成長の路線に入っていくのではないだろうか、こういうことで政府・与党一体となって本問題に取り組んでおりますので、時間が限られておりますからそれ以上申し上げませんけれども、御理解を得たいと思います。
  255. 岩國哲人

    ○岩國委員 どうも御答弁ありがとうございました。
  256. 松永光

    松永委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、宮路和明君。
  257. 宮路和明

    宮路委員 最後になりましたが、私は、政治倫理の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  もう時間も大分遅くなってまいりましたので、できるだけ早く切り上げたいなというふうにも考えておりますので、どうか答弁の方も簡潔に、そしてはっきりとわかりやすくお答えをいただければ、このように思うところでございます。  政治倫理といえば、我々は、まず何といってもオレンジ共済の問題を最初に想起せざるを得ないわけであります。なぜなら、この問題につきましては、国会議員がその地位を利用して、まさに詐欺行為によって一般庶民から九十億近い巨額のお金をだまし取っているということ、そしてそれについては、既に詐欺罪でその国会議員は起訴され、現在公判中であるということであります。  そしてまた、その国会議員がその地位を得るに当たっては、その詐取したお金をいろいろと工作に用いて、そしてそのお金の威力をもって国会議員たる地位を獲得したのではないかという疑いが極めて強いということ。さらにまた、その国会議員は、御案内のように、多分憲政史上初めてではないかと思うのですが、去る四月四日、参議院において議員辞職勧告決議がなされておるわけでありますが、にもかかわりませず、その後も引き続き、そうした決議を無視して、議員としての地位にとどまり、歳費その他の特典を受けていること。さらにまた、その国会議員が支部長を務めておりました新進党の比例代表第二十八支部に対する政党交付金の交付または使用という点について見ますと、これまた不正の疑いが極めて濃厚であるということであります。  こういったこと等、政治倫理の欠如ここにきわまれり、そういう感がいたすから、このオレンジ共済問題、政治倫理といえば、まず最初に我々はこの問題を取り上げ、そして追及していかなきゃならない、こう思うわけであります。  そこで、この問題について若干総理及び関係大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、まず最初に警察庁の方にお聞きしたいのでありますけれども、実は私、このオレンジ共済問題、二月二十日の地方行政委員会における審議においてもこれを取り上げさせていただいて、これについての徹底した捜査と全容解明を強く求めたところでありますけれども、その後この捜査はどういうぐあいなことに最新時点なっているか、その点をお聞きしたいということであります。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着〕
  258. 泉幸伸

    ○泉政府委員 御指摘の事件につきましては、本年一月二十七日及び一月二十九日に関係被疑者六人を逮捕いたしまして事件の解明に努めてまいりまして、結果、被害者総数二千六百五十四人、被害総額八十四億円余の大型詐欺事件であることを解明いたしました。そのうち、被害者六十五名、被害総額七億六千八百万円余りについて送致をいたしております。
  259. 宮路和明

    宮路委員 そういった詐欺の件についての説明が今なされたわけでありますが、この集められた資金の使途はどうであったか。  実は、以前からこの資金の使途について、十数億に上る政界工作資金があったのではないかということが取りざたをされておりました。特に、具体的な名前を挙げて、細川元首相あるいは初村前衆議院議員の名前も挙がりまして、友部議員側からの極めて多額な接待が何回も繰り返され、あるいはまた相当巨額のお金の授受といったようなことも報道されておったわけでありまして、それらを念頭に置いて、先ほどの地方行政委員会における私の質問の際にも、この政界工作資金の解明についても、政治に対する不信の払拭といった見地からもぜひ徹底してこれを進めてもらいたい、そういうことを要請しておったわけでありますけれども、この点どういうふうな解明がなされたのか。  そして、そうした事実が本当にそうだとするならば、友部議員の選挙に関して、公選法第二百二十四条の三の規定、これに抵触の可能性といいましょうか、おそれもあるんではないかということも取りざたをされておったわけでありますけれども、そういった点は、その後の捜査においてどういうぐあいに解明されたのか、この点をお聞きしたいと思います。
  260. 泉幸伸

    ○泉政府委員 本事件につきましては、国会の御審議におきましてもいろいろの点が容疑として指摘されておったわけでありますが、警察におきましては、それちを念頭に置きながら、詐欺事件による八十四億円余りを含め、年金会オレンジ共済が得ていた合計約九十四億円について、その使途の解明に努めてまいりました。  結果として、七十二億円についてその使途を解明いたしましたが、ただいま御指摘の点も含めまして、立件送致いたしました事実のほか、法令に違反する新たな事実を認定するには至っていないという現状でございます。
  261. 宮路和明

    宮路委員 今のお話ですと、政界工作資金の解明ということについては、いろいろ努力をしたけれども、今まで立件されたもの以上のものが必ずしも判明されていないということのようでありますが、本件についての捜査はもう終結をしたということでしょうか。その点をちょっとお聞きしたいと思います。
  262. 泉幸伸

    ○泉政府委員 本件につきましては、先ほど御指摘がありましたように、現在公判中でございます。その公判において新たな事実が出てくる可能性もございます。また、この事案の特質上、その後また新たな事実がもたらされるということもございます。そういうことを念頭に置きまして、警視庁におきまして、所要の体制で公判対策その他必要な捜査に対応すべく臨んでいるところでございます。
  263. 宮路和明

    宮路委員 それでは、次に、法務省の方にお聞きしたいんですが、現在公判中だということでありますけれども、法務省、つまり検察による捜査の結果はどうだったのか、そしてまた公判の状況は今どういうぐあいに展開されておるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  264. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねのオレンジ共済組合をめぐる詐欺事件につきましては、東京地方検察庁検察官におきまして、警視庁から順次事件の送致を受けました上で、友部達夫参議院議員ら五名を、平成九年二月十七日から三月二十八日までの間に、それぞれ三回ずつにわたりまして、詐欺罪、被害額合計約六億六千五百万円で起訴いたしております。現在公判係属中でございます。  なお、友部達夫被告人の公判につきましては、平成九年六月二十五日及び十月八日に、これまで二回開かれていると承知しております。
  265. 宮路和明

    宮路委員 今、公判の状況、またこれまでの捜査の結果をお聞きしたわけでありますが、私は、実は、この捜査についてはどうも不審だなと思う点が一つあるわけであります。というのは、実は、二月の中旬の時点で、私が地方行政委員会で質問を行ったその時点で、この事件のオレンジ共済の詐欺罪としての立件は、最終的に七億円近くになるとの見通しが既に二月中旬の時点で新聞報道で行われておるわけであります。  そこで、今、警察庁及び法務省からの答弁を聞いておりまして、送致した被害金額総額七億七千万ぐらい、また起訴されたものが六億七千万ぐらいというふうなことであります。したがって、三月の下旬に最終送致がなされており、また起訴もされたわけでありますが、その数字と、それから二月の中旬に新聞報道された数字が一致している。どういうわけかわかりませんが、これは一体どういうことなのか、そういう不思議な気持ちがするわけであります。  それは、どうも、将来の捜査の進展あるいは起訴という刑事手続を、相当前から予断を持ってやっておられた節があるんではないかと思う。そしてそれが新聞に漏れた、そんな疑いをどうも払拭できないという気持ちがあるわけでありますが、その点どうだったか、ちょっとただしておきたいと思います。    〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  266. 泉幸伸

    ○泉政府委員 ただいま御指摘のように、二月中旬に報道機関各紙が、本事件について最終的な送致額等につきまして五億円あるいは七億円、これは各紙によって違いますが、そのような報道がなされていたということは承知しております。  これにつきましては、警察としましては、それとは関係なく、事件の規模、広域性、証拠品などの裏づけ資料の有無、被害者の実態等を勘案し、また対応する検察庁とも協議した結果、三月末において最終送致を行ったものでございます。
  267. 宮路和明

    宮路委員 私がこの点を取り上げたのは、捜査の徹底、どうも我々の期待するところからすると、ややそこに距離があるなという感じがいたすものでありますから、ですから、やや余計なことを申し上げたわけでありますが、いずれにしましても、これからの公判の状況を見ながら、さらにまた徹底した捜査の続行というものもしていただいて、先ほど来指摘させていただいた政界工作資金の使途の解明あるいはまた公選法二百二十四条の三の関連、ひとつ、ぜひとも我々のあるいは国民の納得のいくような、そういう結果を打ち出していただきたいものだ、このように思うところであります。  そこで、次に、政党交付金の関係についてお尋ねしたいと思うのです。  先日、平成八年の政党交付金の使途等報告書が公表されました。御案内のとおりであります。これによりますと、友部議員が支部長を務めていた新進党の比例代表支部の収支状況についてまた大きく報道されておりまして、その中で、比例支部の第二十八総支部の受けた交付金が、平成七年は三百万円、これがすべて一括して人件費として使用されている、そして、平成八年が五百万円交付をされて、そのうち二百四十万円がオレンジ共済組合の事務所の家賃として使用されている、こういう記事が出ておりましたけれども、この点、そうであったのか、自治省に確認をしたいと思います。
  268. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 平成七年、平成八年の政党交付金の使途報告書によりますと、ただいま御指摘がございましたように、参議院比例代表選出の新進党第二十八総支部には、平成七年三百万円、これは全額人件費に充当され、平成八年は五百万円が交付されて、そのうち二百四十万円がオレンジ共済組合に家賃として支払われております。
  269. 宮路和明

    宮路委員 そこで、それに関連して、これはある新聞の記事なのですが、「共済組合の本部事務所に名目上の政党支部を置き、共済組合の運営が破たんする過程で交付金を家賃として流用、〝食い物〟にしていた実態が浮き彫りとなった。」こういうくだりがあるわけであります。  こうした事実を見ておりますと、この政党交付金、まさに国民の税金がそのもとになるわけでありますけれども、その交付ないし使用について、大変これはずさんといいましょうか、不正があるのではないかなという思いを深くするわけであります。  そこで、政党助成法を見てみますと、先ほどもこの場で議論があったわけでありますが、第四条二項、政党は政党交付金を適切に使用しなければならない、政党交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意して政党交付金を適切に使用しなければならないということが四条の二項に明記されております。そして今度は、政党交付金の返還の規定が三十三条にあるわけであります。  先ほど指摘いたしました、友部議員といいましょうか、この比例区二十八支部による政党交付金の使用、これは第四条の二項に違反しないで使用されたというふうに認識されておるかどうか、これは自治省の見解をお聞きしたいと思います。
  270. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 御指摘がございましたように、政党助成法の第四条二項では、政党交付金が税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意して適切に使用しなければならないと規定をされておりますが、その第一項では、政党交付金の交付に当たっては、条件を付し、またはその使途について制限してはならないとされておりまして、その使途は、その公表を通じまして国民の監視と批判を待つということにされておるところでございます。
  271. 宮路和明

    宮路委員 先ほど詐欺の話があったわけでありますけれども、詐欺も、オレンジ共済なるものが最初から、その集めたお金を運用して、そしてその組合員に返済をする意思が全くなく、最初からそうした有利な運用なり、そしてそれを返済するという意思もなくお金を集めて、詐欺罪になったわけであります。  そこで、この政党交付金の交付を受けること、あるいはその使用についても、本当に最初から、政治活動に使う目的で政党交付金を受けていなかったということだとすると、これは、こちらの方も詐欺に当たるのではないか。政党交付金をだまし取ったということになる、そういう懸念すら強く抱かざるを得ないと思うのです。  もし最初から政治活動に使う意思もなく政党交付金を受けておったとするならば、それはどういうことになるのか、その点をちょっとお尋ねしたいと思います。
  272. 牧之内隆久

    ○牧之内政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、政党助成法では、政治活動の自由を保障いたしますために、その使途につきましては特別の制限を課さずに、その公表を通じまして国民の批判と監視を待つという仕組みにされているわけでございまして、その交付あるいは使途の関係におきまして、その他の犯罪等を構成する余地があるかどうか私がこの場で御答弁するわけにはまいりませんけれども、政党助成法では、そのことによって一定の犯罪等を構成するという仕組みにはなっていないところでございます。
  273. 宮路和明

    宮路委員 政党交付金の使用についていろいろと条件を付したり制約を課したりするということは、政党活動あるいは政治活動の自由を損なうという見地から、そうした規制が適さないということはよく理解できるわけでありますけれども、それにしても、このように全く野方図といいましょうか、不正な使用についても目をつぶっておかなきゃならぬものかどうか、そういう疑念を強く抱かざるを得ないわけであります。  したがって、これはまた今後の立法の問題として、我々もまた検討しなきゃならないかと思いますが、政府当局でもひとつよく検討を進めていっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  次の問題に移りますが、去る九月十六日、仙台地裁は、オレンジ共済組合の詐欺事件による宮城県内の被害者十二人、その人たちが友部議員やその妻らを相手取って総額九千万余の損害賠償を求めた訴訟で、これを全面的に認めて、その損害賠償の支払いを命ずる判決を出したところであります。  本事件による被害者は、参議院議員友部達夫を信頼し、またそのバックにある新進党を信頼して巨額の被害をこうむった、こう言っても私は過言ではない、こう思うわけであります。したがって、友部議員はもちろんのこと、政党もその責めをどう果たしていくのか。まして政党交付金ともなりますと、先ほど申し上げたように、国民の貴重な税金によって賄われるわけでありますから、それをだまし取ったり、あるいは不正使用するということは断じて許されない、こう言わざるを得ないと思うわけであります。  したがって、政党としての責任がこの際やはり厳しく問われなければならないんじゃないか、こういうふうに思います。そうでなければ、政党不信というものがますますこれからエスカレートしていく、政党の政治倫理の欠如ということが、ひいては政党政治あるいは議会政治、民主政治の崩壊へとつながっていく、そのおそれなしとしないわけであります。  したがって、こういった事態をどういうぐあいに受けとめ、そして対処すべきであるのか、私もこの問題は大変重要だと思うわけでありまして、ここでひとつ総理に、この点どういうぐあいにお考えか、ちょっとお聞かせをいただければというふうに思います。
  274. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、先ほどからの御論議を整理させていただき、政党交付金の返還に絞り込んで、お答えをさせていただきたいと思います。  これは、しかし、政党助成法の第三十三条には、例えば算定の基礎となる事実を偽って届け出をする、あるいは、それに基づいて政党交付金の交付を受けるといった、政党助成法の規定に違反して政党交付金を受けた場合及び政党交付金に残額を生じた場合とされております。議員、政治不信という言葉までこれに絡めて言われましたけれども、政党交付金の助成というその点についての法的なルールは、今申し上げたようなことであります。  同時に、政党助成法では、この政党交付金につきましてその使途を制限いたしておりません。政党の責任にゆだねた上で、政党が公的助成を充当した支出を公表し、これを国民の監視と批判にまっという姿をとっております。  私は、今の御論議いろいろな思いで聞いておりましたけれども、御論議のやはりポイントとしては、この政党交付金の返還を命ぜられるのかどうかということではなかろうか、そう思い、これに絞り込んでお答えを申し上げます。
  275. 宮路和明

    宮路委員 今の法律では、どうも政党助成法違反、その交付の決定に違反はない、こういうことのようでありますけれども、その使用について極めて不正の疑いがある、そういうことでありますから、その交付を受けた政党の政治倫理というものも厳しく問われなければなりません。また、先ほど申し上げたように、今後の立法の問題としてこれにどう対処していくか、ひとつ我々も、また政府の方も真剣に御検討をいただきたいものだ、こう思う次第であります。  次に、別な問題に移りたいと思いますが、実は、去る十月二十九日それから三十日のある新聞に、法務省の肝いりで設立された外国人芸能人招へい業者協会、もう既に解散した団体のようでありますけれども、これが、ある現職の衆議院議員側に、外務、法務両省やフィリピン政府との交渉を依頼して、外国からの芸能人招聘に関して依頼をして、そして対外交渉費といいましょうか、そういった名目で六十万円の支出を行っておったという記事が出ました。  そこで、法務大臣にお聞きしたいのですが、法務省は、この外国人芸能人招へい業者協会というものを御存じであるかどうか、お聞きしたいと思います。
  276. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お尋ねの団体は、招聘業者や出演先業者の自主規制を通じて、外国人芸能人の在留活動の適正化等を図ることを目的とし、平成六年二月二十八日に設立された任意団体であり、その後、昨年十一月十二日に解散したと承知いたしております。
  277. 宮路和明

    宮路委員 法務省の方でもしっかりとその存在を御承知のようでありますが、この団体がプロモートする外国人芸能人の招聘に関して、その在留資格証明書の期限延長ということについて、ある国会議員から、要請といいましょうか働きかけを受けたことがあるかどうか、その点、法務省にお尋ねしたいと思います。
  278. 伊集院明夫

    ○伊集院政府委員 お答えします。  平成七年一月二十四日に、衆議院議員秘書が、外国人芸能人招へい業者協会の会員数名を伴い入国管理局担当の官房審議官を訪れた上で、一つには、滞在中のフィリピン芸能人の在留期間の再延長、もう一つには、在留資格認定証明書の有効期間の延長について陳情された事実がございます。
  279. 宮路和明

    宮路委員 そうした事実があったわけですね。そしてこの報道は、冒頭申し上げたように、その議員に対して六十万円の支出が行われておった、こういうことであるわけでありまして、そのコピーのまたコピーが新聞に出ているわけであります。  そうなりますと、これはあっせん収賄罪といいましょうか、そういうものに該当するかしないか。単なる政治献金ではなくて、どうも渉外費等の名目で報酬を得ている、働きかけの見返りとして報酬を得ているということでありますので、そうした疑惑が生じてくるわけでありますけれども、その辺はどういうぐあいに考えておられるでしょうか。
  280. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねは、一定の状況を想定されまして、その事実に関しまして犯罪の成否を問われるものでございますが一犯罪の成否は具体的に証拠によりまして認定できる事実を確定いたしました上で、法に基づいて判断するということになろうかと思われますので、法務当局としてお答え申し上げることは、差し控えさせていただきたいと存じます。
  281. 宮路和明

    宮路委員 どうもわかったようでわからないような答弁でありますけれども、この委員会において、実は、公務員の地位利用の地位利用利得罪というんですか、あるいはあっせん利得罪ということも議論をされました。もちろん、この公務員の地位利用罪あるいはあっせん利得罪は今の法体系の中ではないわけでありますけれども、どうもこの事実はそういったものに該当するおそれというものもあるのではないかというふうに思うわけでありますけれども、その点、どうでございましょうか。
  282. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の事実に関しまして、ただいま委員は、現行法といいますか、そういう現行法の刑罰法規をさらに超えまして、さまざまな御議論がなされております罪の内容にわたりまして、その成否を論ぜよという御趣旨かと存じますが、いずれにいたしましても、一定の状況を想定してのお尋ねでございますので、法務当局としてお答えすることは、差し控えさせていただきたいと存じます。
  283. 宮路和明

    宮路委員 せっかく自治省の佐藤政務次官がお見えでございますので、先ほど、立法の問題として政党交付金の今後のあり方についてお尋ねし、あるいは私の方で要望申し上げたところでございますが、その点についてもし所信がございましたら、ひとつ最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  284. 佐藤静雄

    佐藤(静)政府委員 宮路先生の御質問、参議院の同僚議員にかかわる案件でございまして、大変重苦しく、粛然たる思いで聞いておりました。私自身も、警視庁に赴き、証人尋問をいたしました。そういう経過もございまして、大変重い問題だというふうに考えております。  何回も総理並びに担当官から御説明してありますように、政党交付金は国民の貴重な税負担で賄われておりますので、その使途は制限すべきではないかという幅広い議論があることは承知しておりますが、政党交付金について使途を限定するということになりますと、結果として国家が政治活動に介入するおそれがあるということから、政党助成法においては、皆様方の御論議を経て、その使途を制限することなく、政党の責任にゆだね、政党交付金の使途を明らかにした報告書を広く国民に公開することにより、厳しい国民の監視と御批判を仰ぐこと、そういうことにされておるところでございます。  したがいまして、この趣旨をひとつ御了承、御理解を賜りたいというふうに考えます。
  285. 宮路和明

    宮路委員 どうもありがとうございました。  これで、私の質問を終えさせていただきたいと思います。
  286. 松永光

    松永委員長 これにて宮路君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、景気倫理行革及び外交等についての集中審議は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会