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1997-10-07 第141回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月七日(火曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 松永  光君    理事 伊藤 公介君 理事 石川 要三君    理事 西田  司君 理事 深谷 隆司君    理事 山本 有二君 理事 木島日出夫君       相沢 英之君    逢沢 一郎君       飯島 忠義君    石崎  岳君       臼井日出男君    江渡 聡徳君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 通雄君    大原 一三君       川崎 二郎君    河井 克行君       菊池福治郎君    栗原 博久君       小林 多門君    河本 三郎君       阪上 善秀君    桜井  新君       関谷 勝嗣君    高市 早苗君       竹本 直一君    武部  勤君       戸井田 徹君    中山 正暉君       能勢 和子君    野中 広務君       葉梨 信行君    村山 達雄君       望月 義夫君   吉田左エ門君       綿貫 民輔君    志位 和夫君       松本 善明君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 彰生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房人事課長  洞   駿君         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣審議官   五味 廣文君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       江間 清二君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣総理大臣官         房審議官    安藤 昌弘君         行政改革会議事         務局次長    八木 俊道君         国際平和協力本         部事務局長   茂田  宏君         阪神・淡路復興         対策本部事務局         次長      田中 正章君         総務庁長官官房         長       菊池 光興君         総務庁長官官房         審議官     瀧上 信光君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政管理         局長      河野  昭君         総務庁行政監察         局長      土屋  勲君         北海道開発庁総         務監理官    小野  薫君         防衛庁長官官房         長       大越 康弘君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛庁経理局長 藤島 正之君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         防衛施設庁総務         部長      西村 市郎君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君         環境庁長官官房         長       岡田 康彦君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         沖縄開発庁総務         局長      玉城 一美君         国土庁土地局長 窪田  武君         国土庁防災局長 山本 正堯君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         外務大臣官房長 浦部 和好君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         国税庁次長   船橋 晴雄君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生大臣官房審         議官      江利川 毅君         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省老人保健         福祉局長    羽毛田信吾君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         食糧庁長官   高木 勇樹君         林野庁長官   高橋  勲君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       岩田 満泰君         通商産業大臣官         房審議官    岡本  巖君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         資源エネルギー         庁長官     林  良造君         中小企業庁長官 林  康夫君         中小企業庁次長 中村 利雄君         中小企業庁小規         模企業部長   寺田 範雄君         郵政大臣官房総         務審議官    濱田 弘二君         郵政省貯金局長 安岡 裕幸君         郵政省簡易保険         局長      金澤  薫君         郵政省電気通信         局長      谷  公士君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業能力         開発局長    山中 秀樹君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      五十嵐健之君         建設省河川局長 尾田 栄章君         自治大臣官房総         務審議官    嶋津  昭君         自治省行政局長 松本 英昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 湊  和夫君         消防庁長官   佐野 徹治君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         予算委員会調査         室長      大西  勉君     ————————————— 委員の異動 十月二日  辞任         補欠選任   新井 将敬君     河村 建夫君   中川 秀直君     栗原 博久君 同月七日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     竹本 直一君   臼井日出男君     河本 三郎君   越智 通雄君     飯島 忠義君   大原 一三君     河井 克行君   川崎 二郎君     逢沢 一郎君   河村 建夫君     能勢 和子君   中川 昭一君     阪上 善秀君   志位 和夫君     松本 善明君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     川崎 二郎君   飯島 忠義君     越智 通雄君   河井 克行君     戸井田 徹君   河本 三郎君     江渡 聡徳君   阪上 善秀君    吉田左エ門君   竹本 直一君     小林 多門君   能勢 和子君     河村 建夫君   松本 善明君     志位 和夫君   矢島 恒夫君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     臼井日出男君   小林 多門君     望月 義夫君   戸井田 徹君     大原 一三君  吉田左エ門君     高市 早苗君 同日  辞任         補欠選任   高市 早苗君     石崎  岳君   望月 義夫君     相沢 英之君 同日  辞任         補欠選任   石崎  岳君     中川 昭一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 松永光

    松永委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ちまして、新進党民主党及び太陽党所属委員に対し、事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。  再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。  速記をとめてください。     〔速記中止
  3. 松永光

    松永委員長 速記を起こしてください。  理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、新進党民主党及び太陽党所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松永光

    松永委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  しばらくお待ちください。      ————◇—————
  5. 松永光

    松永委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松永光

    松永委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 松永光

    松永委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。深谷隆司君。
  8. 深谷隆司

    深谷委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、質問させていただきたいと存じます。  このたびの内閣改造に当たり、新たに大臣におなりになった皆様、まことに御苦労さまでございます。心からお祝いを申し上げますが、御苦労も大変多いのではないかと思います。  私も、ついこの間まで予算委員長の席に座っていたのでありますが、再び筆頭理事に戻ってまいりまして、振り返ってみますと、もう四年四カ月このような立場にいるわけでございまして、かなり長くなりました。しかし、初心を忘れず、新鮮な気持ちでお尋ねをしたいと思いますので、どうぞ大臣各位にはひとつ明確な御答弁をお願い申し上げたいと存じます。  御質問する前に、私は、今日のようなこういう状態委員会が開催されることをまことに残念に思っています。国会は、国民皆さんの御負託にこたえて、さまざまな御注文に応じ、あるいは御懸念に対して明快な答えを出していく場所でございます。その最も重要な、最前線ともいうべき予算委員会が開催されたにもかかわりませず、ごらんのように野党三党の出席がないということは、国民皆さんにどのような説明を申し上げても、 なかなか御理解の得られるところではないと思うのであります。  きょうまで私たちは、予算委員会開催野党に対して強く要望してまいりました。第百四十一臨時国会は極めて重要な国会であると考えるからであります。バブルがはじけてから今日まで、残念ながら、なかなか景気回復は思うように進んでおりません。いろんな場所に参りますと、一体今日の景気回復はいつごろ期待できるのか、それこそ中小企業中心として深刻な状態になっています。  あるいは、行政改革について、橋本総理を先頭にして全力を挙げているけれども、一体この中身についての論議はどうなっているのか、早く国会で二十一世紀にふさわしい行政改革のありようを示してもらいたいという声も大きいのであります。あるいはガイドラインの問題について、日米安保条約、極めて重要でございますが、これについても国民の前にもっと明らかにしてほしい、こういう声があふれているのであります。  ですから、私たちは、一日も早く審議に入りたい、このように主張してまいったのでありますが、どうしても、新進党中心とする野党の壁に妨げられて、今日まで委員会を開くことができなかったのであります。その野党の言う壁というのは、泉井純二証人喚問問題でございます。  私は、証人喚問がだめだという考え方を持っているわけではありません。今までも、さまざまな証人喚問を我々も要求してまいりました。しかし、少なくとも、委員会の場でさまざまな議論を行い、その議論を通じて、証人喚問が必要であるという、そういう状態になって初めて喚問を要求するというのが常識であったわけでございます。  ところが、このたびの場合はそうではございませんで、証人喚問が何よりも先だ、それを約束しなければ委員会には出ないという一方的な言い方で、あらゆる委員会審議を拒否するという構えで、今日まで野党中心になって抵抗いたしてまいったのでございます。私は今まで、長年議会でさまざまな立場から議論もしてまいりましたけれども、このような異常な事態というのはありません。まず証人喚問がなければ国会のスタートさえできない、それが唯一最大の条件であるなどというようなことは聞いたことがない。  今、早く質問しろ、こういうお話でありましたから、官房長官、通告していないのに申しわけないのですが、あなたは長年の国対委員長でございました。過去にこんな例はあったでしょうか。あなたの所見を伺いたいと思います。
  9. 村岡兼造

    村岡国務大臣 こういう状況はなかったと思っております。
  10. 深谷隆司

    深谷委員 昨日、予算委員長は、理事会委員会開会を決定したのでありますが、野党三党にもしばしば呼びかけをいたしました。そして最後に、全党に対して委員長考え方を明らかにして発表したのであります。「泉井氏等の証人喚問要求については、予算委員会審議を通じてその必要性を論議した後、各党は誠意を持って今国会中にできる限り早期に結論を得られるよう努力すること。」ここまで異例の委員長見解を発表して、ともかく出席して審議してくれと要請したにもかかわらず、今日、このような欠席の状態のままであります。私どもに言わせれば、ていのいい審議拒否以外の何物でもないと言わざるを得ないと思うのであります。  きのう民主党は、夜中まで、出席するかしないかについて大いにもめたそうであります。そういう声もあるわけでございます。私たちも、証人喚問だめだと言っているわけではありません。審議を通じて、これは必要であると思いましたら、証人喚問にも協力するつもりであることはいささかも変わりはないのであります。どうぞ、今欠席している野党の諸君が、審議に応ずる、議会政治を大事にするという前提に立って出席をされることを強く望みたいと思うのでございます。  ところで、私はこの際、証人喚問自体についても改めて議会で論議する必要があるのではないかということを御提言申し上げたいと思うのです。特に刑事被告人の場合、一体、証人喚問として呼ぶことが、さまざまな角度から大きな影響を他に与えないかということを考える必要があるのではないかと思うからでございます。  このたびの泉井純一被告は、三億三千万円を超える所得税法違反逮捕、起訴され、さらに三井鉱山株式会社から、合計実に二十四億円に上る詐欺事件逮捕、起訴されているのでございます。さらに関西国際空港問題では、会社法違反、贈賄の疑いで逮捕され、起訴されている、そういう人物であります。まさに、これから裁判が行われようとしている最中でございます。こういうときに、証人喚問とはいいながら、国会に呼び出して発言をさせるということ自体、多くの悪影響を及ぼしはしないか、私はそれを懸念するのであります。  このようなケースの場合、一般的に言って、公判等悪影響を及ぼさないかどうか、法務当局見解をお伺いいたしたいと思います。
  11. 原田明夫

    原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  法務当局といたしましては、かねてから国政調査権に基づきます、国会におきまして公判中の被告人証人喚問が行われる、そのことが問題になる際におきましては、裁判の公正さを、また実質的な公正を確保するという観点、また被告人をめぐりますさまざまな権利等にしかるべく御配慮を願いたいというふうにお願い申し上げてきたところでございます。  個々の具体的な証人喚問是非等につきましては、従来から、こうした種々の問題を踏まえた上で国会においてお決めになってこられたものと承知いたしております。今後とも、そのようなお取り計らいがなされるものと考えております。
  12. 深谷隆司

    深谷委員 何が言いたいんだか余りよくわかりませんが、まあ率直に言って、お立場上言えないでありましょうが、余り好ましいことではないということであろうと私は思います。  何回も言いますように、審議を通じて、必要に迫られたら証人喚問は実現させなければならぬと思うのでありますが、私が本当に懸念に思っておりますのは、この泉井純一被告の場合、去る七月三日、一億二千万円の保釈金を積んで保釈された人物だという点です。以来彼は、テレビ、新聞、雑誌、その他もろもろのメディアを通じて大変な数の発言をいたしてまいったのでございます。しかも、そのことで金品を得ている、そういう話さえ流れているのです。  ここに持ってまいりましたが、このおびただしい記事のコピーは、ことごとく彼の発言メディアを通じて流れたものでございます。さまざまなことを言われた。それをそのまま、また、証人喚問をすれば、この予算委員会で語るのでありましょう。そんなことをこの神聖な予算委員会の場で語らせて、いわば刑事被告人に舞台を与えるようなことはなすべきではない、私はこう考えているわけでございまして、こういう点を真摯に、国会でこれから十分検討を加えていくということの必要性を強く申し上げさせていただきたいと思う次第であります。  それでは、国民皆さんが今一番御関心があり、また御苦労なさっている諸問題について御質問をいたしたいと思います。  その第一は、申し上げるまでもなく景気の問題でございます。  バブルがはじけてもう五、六年でございますが、不況がずっと続いている。国民皆様に多大の御迷惑をおかけしていると思うのでございます。先ほども申し上げたように、どなたにお会いしても、景気回復はいつなんだ、その当てがあるなら頑張るけれども、どうもその将来性についても心配でたまらないという声が頻繁に私どもに寄せられるのでございます。  きょうは日銀総裁においでいただいておりますが、相変わらず、景気は緩やかな回復基調にあると言われています。本当にそうなんでしょうか。従来からのこの考え方を一向に改めていないのでございますが、例えば、去る十月一日、日銀は、九月の企業短期経済観測調査日銀短観でござい ますが、これを発表なさいましたね。これを見ますと、消費税率引き上げなどに伴う個人消費の低迷が企業の規模や業種を問わず大きく広がっているということを物語っていることは事実なんです。  日銀総裁として、あなたは、今もちゅうちょなく、緩やかな回復基調にあると本当に思っておられるのか、あなたの御見解を伺いたいと思います。
  13. 松下康雄

    松下参考人 私どもにおきましては、我が国経済の現状につきまして、消費税率引き上げなどの影響家計支出面などに引き続き見られておりますけれども、全体といたしましては景気の緩やかな回復基調が崩れてはいないものと判断をいたしております。  この点、やや詳しく申し上げますと、公共投資は昨年秋以降減少傾向を続けておりますほか、住宅投資もこのところ大幅に減少をしております。また個人消費は、消費税率引き上げなどの影響が尾を引きまして、総じて低調に推移をいたしております。この間、ネット輸出は、振れを伴いながらも、前年対比で見ますというと、増加をしております。  一方、企業部門の方を見ますと、御指摘のように、中小企業、とりわけ非製造業の業況の改善はこのところ緩やかなものにとどまっておりまして、御指摘の九月短観におきましても、これらの企業の今年度収益は減益が予想されている実態でございます。しかし、その一方で、大企業では製造業、非製造業ともに、また中小企業でも製造業は、輸出の増加もありまして、増収増益の傾向を維持するという見通してございまして、今年度の設備投資も、全体としては増加基調を続ける計画になっております。  こういった企業の増益傾向を背景にしまして、雇用面でも、緩やかながら改善傾向を続けております。  こういう状態で、我が国経済は、消費税率引き上げなどの影響が消費や住宅投資に及んでおりますけれども企業の収益、投資面を基点とします経済の好ましい循環は途切れることなく働いておりまして、景気の緩やかな回復基調は崩れてはいないと見ているわけでございます。  ただ、企業マインドがこのところ後退しているということなども踏まえますと、私どもといたしましても、今後の景気動向につきましては、個人消費回復度合いや中小企業の動向といった点を含めまして、引き続き注意深く点検をしてまいりたいというふうに考えております。
  14. 深谷隆司

    深谷委員 消費税を上げたということが大きな、重要な問題であることは申し上げるまでもありません。  消費税を上げる前には、いわゆる駆け込み消費というのが上がってまいります。その反動で、消費税が上がった後には消費が落ち込んでまいります。前回の場合は、比較的その谷が浅かったように思うのですね。今度の場合には、駆け込み消費もうんとあったのですけれども、その影響が特に多い。だから、山が高くて谷が深いという感じなんです。  ですから、この影響が消えるとき、つまりこの反動のショックから立ち直れるとき、一体どの時期を考えているのか、この点もあわせて日銀総裁に聞きたいと思います。
  15. 松下康雄

    松下参考人 御指摘のように、消費税の税率引き上げの前に駆け込みの需要が高まりまして、その反動がその後参ったわけでございますけれども、その駆け込みの需要の大きさにつきましては、実のところ、この三月末の引き上げの期日の直前にかけまして相当大幅に増加をいたしまして、また一方で、住宅建設のようなものにつきましては、消費税率引き上げよりも随分早い時期から需要が増加をいたしておりました。これらの点で、私どもが想定をいたしておりました以上に、需要の消費税率にかかわる高まりがあったのではないか。  その点につきまして、これが経済の実勢のよさを反映したものか、あるいは税の引き上げの関係のものかという点が必ずしも明らかではございませんでしたけれども、私どもが当初考えておりましたよりは、税率の引き上げ影響が大きかったのではないかと考える次第でございます。その結果といたしまして、その反応につきましても、私どもが予想していたよりも長い期間にわたって実際の消費の減退が生じております。  ただ、この点につきましては、最近時点では、ぼつぼつとではありますけれども、消費の回復を示すような指標もあらわれてまいりましたし、いずれにいたしましても、この一回限りの税率改定に伴う消費の落ち込みでございますので、これは、達観して申し上げれば、一時的なものと見てよろしいのではないか、さように考えております。
  16. 深谷隆司

    深谷委員 日銀総裁は、景気は穏やかな回復基調にあるということを繰り返しおっしゃっているわけでありますが、私どものように、東京の下町、中小企業の多い町に住んでおりますと、そういう実感が余りないんですね。いろんな方々から手紙も参りますし、御注文もありますけれども、もっと深刻なとらえ方をしていかなければならないのではないかということは大いに傾聴に値することだと私は思いますね。  私は、不況マインドが広がるということはマイナスだと思っていますから、悲観的に物事を論じることに賛成ではありません。やはり常に前進を考えて経済というものを動かしていかなければなりませんから、日銀総裁の言わんとすることはわからないわけではないんですが、じゃ、今の現状のままで、例えば政府見通しの一・九%を堅持できるのかというと、やはり疑問ですね。そこは率直に、エコノミストによっては大幅に下がるのではないかというふうなことを言っているわけでありますが、もう少し正確にお答えなさることが大事だと思うんです。  この経済成長率の動きについては、あなたはどのようにお考えでしょうか。
  17. 松下康雄

    松下参考人 政府の経済成長率の見通しにつきまして、その具体的な内容を私の立場からいろいろと申し上げることは適当ではないのではないかと考えておりますけれども、ただ、現状におきまして、これまでの経済の成長の実績から見ますというと、本年度におきます計画自体の達成については、なかなか困難なものになってきているというふうに感じております。
  18. 深谷隆司

    深谷委員 史上最低と言われる金利問題も大きくのしかかっています。一体、金利の状態が今のままでいいんだろうか。年金で暮らす方々や退職金で暮らす方々、そういう方々の御苦労を思いますと、私は大変に心配をいたしております。ここではこれ以上日銀総裁にはお尋ねいたしませんが、どうか、経済の流れをしっかりごらんになって、正しい方向性を国民に示し、みんなでこの時代を乗り切っていけるような御示唆のほどを心からお願いして、あなたへの質問は終わりたいと思います。どうぞ御退席ください。  次に、総理にお尋ねしたいと思います。  私は、この際景気回復のために政府はさまざまな積極的なてこ入れ政策を行うべきではないか、このように考えているのでございます。今政府は財政構造改革というのを進めている最中でございますから、例えば財政出動と一口に言っても、なかなか容易なことではないということは承知しています。公共投資にいたしましても、大幅にふやせということは私たちも言いづらいことではございます。  しかし、例えば九七年度の国民負担規模というのはGDPの二%に上っておりまして、これはヨーロッパの進める二年分を一年でやったということになると私は思うんですね。そういう意味では、次の一年ぐらいは少し休んで、呼吸を整えて、景気のてこ入れを考えていくということも大切なことではないだろうかと思うのですが、総理はどのようにお考えでしょうか。
  19. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、日銀総裁日銀としての立場から考え方を述べられたわけですが、短観等に出てまいります状況、非常に厳しいものがあ ることは議員御指摘のとおりであります。そして、まさに、個々の数字を見ますとき、あるいは設備投資にいたしましても、在庫が減少しております状況を見ましても、決して悲観すべき数字ばかりではないにかかわらず、なぜ景気に力強さが出てこないのか。私は率直に、繰り返し申し上げてまいりましたけれども、やはり構造的な問題というものがここにもあらわれているように思います。  今ちょっと手元に数字を持ちませんので恐縮でありますけれども、例えば、労働省が従来の人材派遣に対するリストの考え方を変えましただけで、しかも業種として追加されたものはそれほど多いものではありません、しかし人材派遣業の伸びはたしか三〇%近いものがあったと記憶をいたします。  そうしますと、まさに私は、その規制の緩和、撤廃というものが、言葉にとどまらない、現実にさまざまな仕事をしておられる方々から生のものを聞くことによって、そのネックになっている部分を本当に変えていく、そうした努力が一番必要なときではないかと思います。  現在、経企庁長官にも、また建設大臣、自治大臣にも検討願っておる具体的なものもございますけれども、こうしたことを含めまして、経済構造改革に関して政府が行動計画を定めております。これを可能な限り前倒ししていくこと、フォローアップを新たなものも追加しながら行っていくこと、こうしたことが、私は、経済構造改革を進めることによって業況感を変えていく、そうした方向にも向かうものと思っております。  そうした中では、やはり何といいましても、今非常に大きなかせになっておりますのは土地です。土地が動かない。バブルの遺産をいつまでも引きずっている状況が一方にある。こうしたことを考えますと、政府としては、既に方向を切りかえて、従来の地価抑制型の方向から、いかにして土地の有効利用を図るか、土地取引を活性化するかといったことを考えておるわけでありますけれども、こうした方向は一層加速をしていく、我々としてはこのような努力を積み重ねてまいりたい、そのように考えております。
  20. 深谷隆司

    深谷委員 今総理のお言葉の中で、土地の流動化という問題が示されました。私も同感です。景気回復のための一つのてこ入れ策としては重要だと思います。  かねてから、例えば農業振興地域、農用地区域の農地転用の円滑化ということを主張していたのですが、これがなかなか進んでいない。こういうこともやっていかなければなりませんし、今度通産省は、工場立地法の改正を今国会に提出しているようでございます。これは一歩前進だと私は思いますので、後でお考えを伺いたいと思うのです。  それと、例えば地価税ですね。大体、バブルの時代に土地が高騰した。だから、地価税をかけることによってそれを抑制しようとした。少なくともスタートはそうだったと私は思うのですね。ところが、今のように土地の高騰がおさまって鎮静化しているのに、相変わらず地価税を課しているこの現状というのは、私はやはりおかしいと思う。今、総理が言われた土地の流動化ということをお考えであれば、地価税を撤廃するということに踏み切っていくべきではないか、そんなふうに思います。  また、譲渡益課税につきましても、もうこれはぼちぼち廃止していかなければならないことではないでしょうか。法人税の三五%のところにプラス五%というのはよろしくない、私はこう思っています。さらに、中心市街地等における商工業施設等に関する容積率を変える。実際に容積率を変えることによってもっと有効に活用ができる。こういうようなことなどを全般的に考えて、土地の流動化というのを図っていかなければならない。  今たまたま総理が言われた言葉の中から私はこういうことを考えたのでありますが、これらについて関係大臣、もし御発言がありましたら、お聞かせいただきたい。では、工場立地法の件でも結構ですから。
  21. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、工場立地法による規制によりまして、新しく工場を建てかえようというようなときには、今までの緑地帯の二〇%の制限があるために、今までの工場を取り壊して新しくつくるということができない、あるいは工場をつくりかえて進出しようと思っても土地の制約があって建設ができない。そういうような問題がございますので、この工場立地法の規制緩和を、今度の国会にぜひ御承認をいただくように提出をいたしたいと思っておりますが、細部にわたりましては局長の方から御説明申し上げます。
  22. 深谷隆司

    深谷委員 細かい中身は結構でございますが、土地の流動化ということを考える場合に、今のように、一つ一つ具体的なものを示していかなければならないと思います。きょうは質問通告しておりませんでしたから、急のことでお答えは求めませんが、どうぞ関係大臣が土地の流動化対策について、それぞれの分野で具体的に計画をお立てになって、国会に提出されるように要望いたしたいと思います。  総理にもう一回お尋ねしたいのですけれども、財政構造改革の中ではなかなか財政出動は難しいと私は思うのでございますが、今申し上げたように、ヨーロッパで二年間かかってやったものを一年で上げたということを踏まえて考えると、私は、ここいらでてこ入れを考えるということはやはり大事なことではないか。例えば、二兆円とまでは言わないにせよ、減税について何か考慮する、そういう状況に来ているのではないかというふうに私は思うのですね。  大体、消費というのは景気回復の主要な部分です。今、どっちかというと、消費は低迷していて輸出に頼っているのですが、これは国際貿易摩擦になっていくわけでございますから、やはり内需拡大、消費を高めるということがとても大事なんです。そのためには、何らかの減税の方向性でも示すということは非常に大事なことではないかと思うのですが、これについて、総理、いかがでしょうか。
  23. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 けさも自治大臣に、国税の方の検討は、例えば法人税にいたしましてもその他の税制にいたしましても、それなりに検討は進んでおりますけれども、地方税関係の方も歩調をそろえて検討してもらいたいという要請をいたしたところであります。  その上で、率直に申し上げまして、現在幾つかの項目が検討されております状況ではありますけれども、もし議員が御指摘になっておられるその部分が個人消費に直接結びつく、今ようやく、消費税の税率引き上げあるいは特別減税の廃止、これはむしろ所得税の減税が先行していたわけでありますけれども、その先行部分は国民の意識の中では既に決着の済んだもの、新たな負担と受けとめられて、その消費の落ち込みの状況がようやく薄らいできつつある、そういうときだけに、御指摘を全く理解しないわけではありません。  しかし一方、現下の財政状況というものを考えますとき、私は非常に危機的な状況にあると考えておりますし、であればこそ、いわゆる財政構造改革法案を今国会に政府として提出し、御審議をいただきたいというお願いも申し上げている状況の中で、その実施というのはなかなか容易なことではない、率直な感じを申し上げると、私はそのように思います。
  24. 深谷隆司

    深谷委員 財政構造改革を進めている最中で、少なくとも後世に借金を残さないという構えで努力されているわけでありますから、やみくもに減税と申し上げているわけではありませんが、余りにも景気回復がおくれているものですから、いろいろな手だてを講じなければならないその一つとして頭の中に入れておかれることも大事ではないかと思うのであります。  もしそれができなければ、これは大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのですが、例えば新年度の予算を前倒しにして、そして補正予算をつくって景気回復のてこ入れをするというような手法などは考 えられないのでしょうか。大蔵大臣の御意見を伺いたい。
  25. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御案内のとおり、財政法二十九条は、補正の場合は緊急な事由をもってこれを行う、大災害その他であります。そういう中で、前倒し論ということについて率直にお答えを申し上げさせていただきますと、年度予算は一年間、一年の計は元旦にありという言葉がありますが、四月一日にありでありまして、そういうことで財政運営をいたしております。  それともう一点、総理からも言われましたとおり、今日の緩やかな基調というものを力強いものにするということで、規制緩和を中心とした六大改革が前進をいたしております。  きょうの月例報告においても、経企庁長官から報告がありましたとおり、賃金の所得ベースの関係、雇用の環境、厳しいのでありますが、増の形になっております。まだ企業収益、ばらつきはありますが、枢要な部分、また業種によって着実にこれも前進をいたしております。一点、消費が極めて足踏み状態、こういうことでありますから、本件に対して景気、経済政策をどう進めるかは、党において機関をつくり、スタートをすると聞いております。  政府税調に対しても、どうすべきかという点で審議をお願い申し上げておるところでございまして、さような状況の中でありますから、年度後半、その足取りが確かなものになっていくというベース、環境があるということで、それに力を追加していくための諸政策が財政出動以外に何があるかということで、真剣に実は取り組んでおるところであります。
  26. 深谷隆司

    深谷委員 状況に応じて補正予算でてこ入れをするというような、そういう状況が来るかもしれません。  私は、そういうことと同時に、今あなたが言われ、総理も言われましたけれども、例えば法人税の引き下げとか、中小企業対策とか、先ほどの土地対策とか、そういうのがワンパッケージになって出されて、初めて効果が上がる、こう思っているのですね。それぞれ単独で出しても、私は、なかなか容易じゃない、こう思っておりまして、そこで、法人税の軽減について具体的に伺いたいと思うのです。  我が国の法人税は、実効税率五〇%、ほかの国と比べて高いことは言うまでもありません。そこで、せめて実効税率を一〇%ぐらい下げたらどうだ、そういう意見を大方の人は持っているわけでございます。  これは、中小企業に対しても同様の措置をしないとだめなんですね。つまり、従来から中小企業には二八%の軽減税率が認められているわけでございますが、法人税を引き下げた場合には、この点についても配慮して、そして中小企業の軽減税率についても改革を加えていかないとならないと思うんですが、これは通産大臣、あなたの御意見を伺いたい。
  27. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  この法人税の引き下げという問題は、景気対策という面ももちろんございますが、基本的には、企業活動環境というものを外国と同じレベルにしていこうということであります。したがいまして、外国と比べて約一〇%ぐらいの実質の税率の高い日本の今の法人税、実質の課税を下げていこうということでありまして、そういう点から考えますと、中小企業に対する配慮ももちろん考えていかなければならないかもしれませんが、現在、そういうことについての、軽減税率をさらに下げるということについての検討はいたしておりません。
  28. 深谷隆司

    深谷委員 通産大臣に申し上げますが、中小企業の問題も考えなければならないかもしれませんがということでは困るのです。中小企業が今日本の経済をどれだけ支えているか、その認識をしっかり持つことは極めて大事です。だから、法人税率を一〇%引き下げるとすれば、中小企業の対応としても、これを下げることを考えないとだめなんですよ。もう一回御答弁ください。
  29. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 検討しなければならないと思いますがと申し上げたのは、話し合いがまだついていないということでございまして、その方向に向かって努力をいたしてまいります。
  30. 深谷隆司

    深谷委員 今の言葉で安心しました、全然違う言葉になっていますから。ぜひひとつ頑張っていただきたいと思うんですね。  一方で、大蔵省は、課税ベースを広げて、そして法人税の引き下げ分をカバーしょうというような話があるんですね。私は、なぜ通産大臣に今のように重ねて申し上げたかというと、課税ベースを広げるということは、聞こえはいいのですけれども、もし中小企業の新たな軽減税率の引き下げをしないままでありますと、中小企業の方から実質的な増税になっちゃうのですよ。そこから上がったもので大企業の法人税の引き下げを埋めてしまうなんということになりますと、これは大変なことなんです。  だから、法人税の引き下げというのは、これをリンクさせていかなければならないのですよということを申し上げたのですが、もう一回、どうぞ御答弁。
  31. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 御趣旨よく承りましたので、しっかり取り組んでまいります。
  32. 深谷隆司

    深谷委員 今申し上げましたように、中小企業というのは全法人の九割を占めているのです。だから、中小企業が元気があるかないかということが、日本の経済が元気あるかないかにかかわってくるわけですね。ところが、中小企業というのは、日本の経済を支えている割には不遇でございます。構造的な問題も含めて多くの問題を抱えているのです。  例えば、後継者の問題一つ取り上げてもそうですね。なかなか中小企業の後継者が生まれない、若い人が後を継がない、だんだんに中小企業の担い手が減っていくという深刻な状況にあるのです。どうやって後継者を守り育てていくか。これは通産省の大きな課題であると思いますが、いかがでございますか。
  33. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 先生御指摘のとおり、中小企業にとって後継者がいないというか非常に少ないということは大変な重要な課題だと認識をいたしております。  それで、その解決のためには、我が国経済の活力の源泉である中小企業自体を魅力のあるものにさせていかなきゃいかぬ、と同時に、その後継者がそこに自然に集まってくるように、そういう政策を行っていかなければならないというふうに思っております。そういう事業環境をつくることがまず第一重要だと思います。  また同時に、このために、中小企業の経営基盤の強化、それから創造的な事業展開、こういうものに対する支援、こういうことが中小企業を魅力あるものにさせる基盤になってくると思いますので、その点、しっかり総合的な施策を充実してまいりたいと思っております。  と同時に、その後継ぎあるいは中小企業の経営者を目指す人たち、そういう人たちの育成のために、中小企業大学校における経営管理あるいは研修というようなものに対して、引き続き強い支援を行ってまいりたいと思っております。
  34. 深谷隆司

    深谷委員 中小企業者で次の世代がなかなか継承しにくいという環境の一つに、やはり承継税制の問題があるのです。不幸にして親御さんが亡くなった、次の跡取りがそれを受け継ぐのですけれども、相続税がどんと取られてしまう。そうすると、二代、三代もたないのですね。だから、私は、この承継税制についての抜本的な見直しというのはとても大事だと思います。  大蔵大臣にお聞きしようかと思ったのでありますが、恐らく今期待するような色よい返事は来ないと思いますから、むしろ逆に、通産大臣に、そのことに思いをいたして、大蔵省に対して積極的な働きかけをすることのみきょうは申し添えさせていただきたいと思います。  それから、中小企業、特に製造業でいいますと、技術や技能というものがどんどん今なくなっていっているのですね。昔からの培われた職人のわざ、どんなに機械や技術が進歩しても、その職人の持っている感性とか、そういうものにかなうものというのはめったにないと言われているのですね。そういう職人の持っている技能とか技術というもの、これはいわば私たちの宝でございますから、これをどうやって大事に守り育てていくかということを考えていかなければならないのです。  この二十年余り、特に製造業離れの若者が目立っている。だから、そういう技術や技能の継承者がいない、今は技能工とか中間技術者というのは老齢化してしまっている、こういう深刻な問題なのでございます。大工さんとか左官屋さんとかいう方たちはもちろんでございますけれども、例えば金属機械やファッションに至るまで、これから技術や技能を持つ人々をしっかり支えていくということは私たちに与えられた大切な役割ではないだろうか、こう思います。  これらの人たちが胸を張ってそういう技能、技術を継承して、名前は別としても、職人という名誉を持って仕事に精出せるような環境をつくっていくということはとても大事でございます。私は、そういう意味で、名称は別として、例えば職人大学を設立する、ドイツのように、一つの技術を持った者が社会的にも立派な価値として認められる、堂々とその仕事に邁進できるような仕組みも今や考える時期ではないかと思うのですが、これは通産大臣並びに労働大臣から所見を承りたいと思います。
  35. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 御指摘のとおり、戦後我が国の製造業の成長を支えてきたのは中小企業、しかも現場で働く技術者、技能者の方々でありまして、今後ともこういう優秀な人材を確保、育成していくことが重要と存じております。  しかしながら、御指摘のように、技術者、技能者については、高齢化が進んでいる中で、若者の人たちがこれを引き継いで、受け継いでいく方が少なくなってきているということがございます。そういう意味で、これからやはりこういう問題について、我が国の製造業の発展にとってこういう後継者をしっかりつくっていくことが重要だと考えております。  このような認識のもとに、従来から中小企業庁では、中小企業大学校及び地方自治体による技術者の研修制度、並びに公設試験研究機関による中小企業への技術指導などによりまして、中小企業の技術の維持、向上に努めてきたところでございます。  さらに、経済構造の変革と創造のための行動計画におきましても、物づくりに必要な技術並びに技能が尊重される社会の形成、また教育訓練機関の施設設備、カリキュラムの整備、技術、技能が適正に評価される商慣行、能力評価並びに処遇の普及というようなものを政府として取り組むべきであると定めたところでございます。  今後、この行動計画を踏まえまして、物づくりを支える優秀な技術者、技能者の確保、育成のために、技術、技能の集積地域を中核とした広域連携等による人材の確保、育成等を、関係各省庁とも連携をしながら推進いたしてまいりたいと思います。
  36. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 ただいま深谷委員がおっしゃいましたように、国際化が進み生産拠点が海外に行くとか、あるいはまた若い方の意識の違いもございましょうし、いろいろな理由があって、おっしゃっているような大変残念な事態が生じているということは十分認識をいたしております。  科学がどのように進んでも、そして進むことは歓迎すべきことでありますけれども、それを生産に結びつけて経済の発展に結びつけていけるのは、やはり熟達をした自己責任意識のしっかりとある労働者だと私は思っております。大企業がどんなに生産システムが進んだといたしましても、日本の経済構造では、それを支えているのは、額に汗をして歯を食いしばって働いている中小企業の方々であると思います。  したがって、かねてより、深谷委員を含め諸先輩から、日本の伝統的な技術をしっかりと残していくようにという御提言をいただいております。ドイツのマイスター制度のようなものがやはりドイツの工業発展を支えていたということに思いをいたしまして、国際技能振興財団というのがございます、ここで、今御指摘のございましたような実践的訓練を取り入れた教育を行うことによって、製造業やあるいは建設業の技術労働者として理論と技術と双方を兼ね備えた人を育成し、同時に、この方々が企業のマネジメントやあるいはまた後進の方々の御指導、教授ができるような、そういう大学の設立が実は今検討をされております。  関係方面とも調整が進んでおると思いますので、御指摘のとおり、労働省としても全力を挙げてこれをバックアップしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  37. 深谷隆司

    深谷委員 通産大臣並びに労働大臣の、職人の持つ技能、技術というものに対する評価を改めて承って、安心いたしました。特に、労働大臣のお答えは職人大学設立に向けて前向きでございまして、大変結構でございます。我々も全力を挙げますが、どうぞ省を挙げて御努力賜りますようにお願いいたしたいと存じます。  先ほど総理からもお話がございました、規制緩和というのはとても大事なことでございます。しかし、規制緩和でも注意しなければならない分野というのが私はあると思うのであります。それは、例えば大型店舗法の改正などでございます。  私は、大型店舗法改正というのは過去三回行われて、規制緩和としての効果は十二分に上げてきたというふうに思っています。だから、これ以上の緩和を続けるということになると、それぞれの地域の商店街が全く立ち行かなくなってしまうとか、あるいは地域のコミュニティーまで危機にさらされるという、そういう現実的なものを肌で感じているものでありますから、これからさらに大型店舗法を改正するというのは賛成しかねるのでございます。  通産省は、この対応についてどうお考えでしょうか。
  38. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  現在、大店法の検討につきましては審議会におきまして行っておりますが、廃止からこれ以上の規制緩和反対、両方の、両極端の御意見を踏ま支まして、幅広い意見が今存在をいたしております。  ことしの五月に決定をされました経済構造の変革と創造のための行動計画におきましても、本年中に見直しの結論を得るということになっておりまして、これから年末までに約四回の審議会が行われることになっております。この中小企業政策審議会流通小委員会におきまして審議をいただいた結論を見まして、また対応をいたしてまいりたいと思っております。
  39. 深谷隆司

    深谷委員 審議会の答えを待って検討するということは、大臣としてはやむを得ないことだろうと思いますが、商店街を守っていくとか中小商店を守っていくというのがあなたのお務めでございますからね。規制緩和というのは進めなければなりませんが、一方で、すべてそうだというのではなくて、やはり配慮してあげるべきところ、既に効果を上げているところ、そういうところに対しては十分な対応をしていかなければならぬと思っておりますので、特に通産大臣の御配慮をお願いしたいというふうに思います。  その商店街の育成について、我々の提言も含めて、一つの朗報が出ております。つまり、来年度の商店街育成策ということで、中心市街地活性化対策というのが計画されているのですね。  これは、バブルの時代に買い取られてしまった店、空き地、商店街がまるで歯の抜けたような状態になっていて、全体の発展が阻害されている。しかし、その商店街でそれを買い取って活用するという力は今ない。そこで国がそういうものに思いをいたして協力しよう、助成措置を講じようということでありまして、これはまことに時宜を得たものだというふうに私は思っています。これらは、どこの地域でもそうでございますが、経済効 率からいって、やはり私は都市の商店街にこそ重点を置くべきだというふうに思っています。  そういうことも含めて、この中身について、この際御報告願います。
  40. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 先生御指摘のとおり、中心市街地はさまざまな都市機能が集積をいたしておりまして、新たな経済活動等を生み出すところとしては最高の場所であるはずなのであります。しかし、モータリゼーションの進展のために、また消費者の行動パターンの変化によりまして、お話しのように、大分空洞化をいたしてきているわけであります。  この空洞化を修正するために、今までもいろいろと活性化の活動をいたしてまいりましたけれども、さらにこれから、市街地の中核となる商業機能等を活性化するための商店街における空き地、空き店舗の活用や、空き地を活用した商業集積施設の整備、こういうものの総合的な支援策を推進することにいたしております。この際は、関係各省庁と連絡連携をとりながら、従来の商店や商店街といった点や線というものを面にとらえて取り組みをいたしたいと思っております。  さらに、つけ加えてまいりますと、今中小企業庁の方といたしましては、今までのような組合の中での活性化というのですと制約がありまして、その組合員でなければその店舗に入れないというようなことがございますが、それをさらに将来改正いたしまして、よそからもその店舗に持ってこられるようなことも考えて活性化をする対策、そういうものも考えて、今、組合活用の員外利用といいますか、そういうものの弾力化も考えて検討いたしてまいりたいというふうに思っております。
  41. 深谷隆司

    深谷委員 大いに前進していただきたいと思います。  次に、中小企業向け融資の状況についてお尋ねしたいと思うのです。  中小企業の対策というのは、どうしても融資が中心でございました。ですから、中小企業金融公庫で一兆五千億円を超え、国民金融公庫で三兆円弱の貸付規模となっているのであります。ところが、最近中小企業者から、どうもこういう政府系金融機関が貸し付けを渋るという声が寄せられている。特に新規事業に対して渋るんだ、こういう話があるのですが、実態はどうでしょうか。
  42. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま深谷先生の御指摘の、中小企業向けの融資について、特に新規事業向けには若干の滞りがあるのではないかという御指摘でございます。  中小企業を取り巻く経営環境は、お話しのように、依然として厳しい状況にございますけれども、政府といたしましては、中小企業の経営基盤の強化安定を図る観点から、そしてまた中小企業による新産業の創設という観点から、中小企業の資金調達の円滑化は従来から一生懸命やってきたつもりでございます。  特に新規産業への貸し付けにつきましては、中小公庫等政府系の中小企業金融機関におきまして、特に担保徴求等について特例措置を設けた新事業育成貸付等の特別貸付制度を設けております。これは、特に、担保が不足して借り入れができないという中小企業が非常に多いということを踏まえたものでございまして、特にこれによって、新しい技術の利用とか、あるいは新しい財・サービスの提供とか、そういった新しい分野に取り組む中小企業者に対して積極的に支援を行う、こういうことにしておるわけでございます。  今後とも、ダイナミックな中小企業の展開と実効ある中小企業の支援を図るために、引き続き中小企業の資金需要に対しては円滑に対応できるように努力していきたいと思っております。
  43. 深谷隆司

    深谷委員 実際問題として、そういう例が幾つもあるんですよ。私のところへ寄せられているものだけでも何件もあるんですね。だから、公式な見解としてはそれしかないと思いますけれども、出し渋っておりますなんて答えられるはずがないんだから。だけれども、あなたのところへ伝わってこない、現場において、そういうケースが随分あるんだということをこの機会に頭に入れておいてもらいたいのですよ。  そして、中小企業が何とか頑張って努力しているわけですから、それに対して融資の支援を行って支えてあげる、そういうことに積極的に努力をなさる、特に新規事業に対しての融資については全力を挙げるということを、それぞれあなたの方から指令を発して、万遺憾なきように努めていただきたいということを要請しておきます。  政府系中小企業金融機関の金利が、バブルの時代に、例えば七%、八%と高かった時代があった。これは長期固定金利制度ですからやむを得ないのですけれども、今のように金利が下がった場合は何らかの軽減措置をすべきだということで、我々も提案いたしまして、一昨年から五%以上の軽減措置になった。去年も引き続いて行われた。ことしもまた行われることに決定したということでございますが、これは、私は善政だと思いますね。  こういうような配慮というものをぜひこれからも一層やっていただきたいと通産大臣にお願いしたいのですが、所感を一言。
  44. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生のお話しのように、五%以上の金利の軽減負担、これは十月の十八日から行うことにいたしまして、引き続き一年間延長をいたすことにいたしております。それを含めて、先ほどからのいろいろの御指摘をいただいた問題について、真剣に、前向きに取り組んでまいります。
  45. 深谷隆司

    深谷委員 人によっては、中小企業のあすはないと言う人がいるのです。とんでもない話。私は決してそうは思っていないということを、この機会に総理初め全閣僚の皆さんにお訴え申し上げたいと思うのです。  今、最も躍進して世界から注目を受けているのは、アメリカのシリコンバレーでございます。ここはいわゆるデバイス、つまりハイテクを駆使して自分のところで超小型部品をつくり、その装置もつくっていく。そして世界各国からその他必要なものを調達して、製品に仕上げていく。いわゆるグローバルメリットを生かした、そういう点がシリコンバレーの特徴でございます。  しかし、それはみんな中小企業です。世界から今注目を集めているシリコンバレーの躍進の原動力は中小企業であるということを考えると、私は、中小企業をどう守るかということによって中小企業の将来性は一層明るくなるだろうと思っている。ヨーロッパにおける、大勢の皆さんが買いあさるというか、買いたくて仕方ないグッチだとかいろいろな製品がありますけれども、その多くは、職人の腕による中小製造業でございますからね。  そういう意味において、しっかりこの大事な経済を支えている中小企業を一層発展させるように、通産省はもちろんでありますが、全力を挙げて御努力をいただくように心からお願い申し上げたいと思います。  次の質問に移りたいと思います。  二十一世紀を目前にして、新しい時代にふさわしい行政組織をつくっていくということはまことに正しい判断であると思います。戦後ずっと続いてきた今の行政組織が、例えば硬直化しているとか非効率であるとかあるいは不透明であるとか、多くの問題を抱えています。だから、これから二十一世紀にふさわしい行政システムをつくり上げていくという橋本総理のお考えというのは正しいし、その積極的な姿勢については評価させていただきたいと思うのでございます。  ただ、さきに示されました行政改革会議の中間報告、私は、まだ余りに多くの問題点を残しているように思えてならないのであります。  国民皆さんの考えでいることと若干差がある。その差を埋めるのは国会ですからそれでいいんですけれども、私は、もう一つ踏み込んで、例えば、現在ある二十二省庁を一府十二省庁に再編するということは数の上でいいんですけれども、その結果、具体的にどれだけ業務がスリム化するのかとか、例えば役人の数はこのぐらい減って、 財政的にこのぐらいの軽減ができるのだといったような、そういう具体的なものが示されていく必要があるのではないかと思うのです。  私は、今直ちにと言っているわけではありませんが、そのような具体的な姿が国民の前にいつどのような段取りで示されるのか、その見通しについて、橋本総理のお考えを伺いたいと思います。
  46. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 行革会議の中間報告につきまして、さまざまな御議論をいただいておることを十分承知した上で、改めて一部の部分について繰り返すことをお許しいただきたいと思うのであります。  当然ながら、行政改革の前に進んでいる問題があります。それは、一つは、先ほど来御議論をいただいております、我が国の行政が持っております規制、この緩和、撤廃ということによっての業務のスリム化であります。  しかし、もう一つ大事なこと、それは地方分権であります。規制の緩和、撤廃というのは官から民への仕事の移しかえでありますけれども、地方分権というのはまさに、行政が担う業務でありましても、地方にお渡しし地方が実施をされる。言いかえれば、住民に身近な仕事をどこまで住民に身近な自治体にお預けできるかということであります。  そして、地方分権推進委員会は間もなく第四次の勧告を出されるわけでありますが、当然のことながら、これを受けて、政府としては、地方に権限を移譲していくための分権の推進計画を本格的に策定し、この移しかえを進めてまいります。ここにおいても業務のスリム化が行われるわけであります。  しかも、分権推進委員会の勧告は俗に第四次で終了するかのごとくに言われておりますけれども、これは、今まで主として地方自治体の方から問題提起をされておりました部分を中心議論されてきたわけでありますから、それ以外の業務において、当然ながら地方に移しかえられていくべき業務というものも存在するでありましょう。ここでも業務のスリム化は行われるわけであります。  こうしたものを大前提にして、それこそ二十一世紀の世界を完全に見通すということは不可能かもしれませんけれども、少なくとも国が担っていくその業務というものを大ぐくりにくくりながら、それに合わせた形での業務の再編成を進めていかなければなりません。  先ほど来議員が御提起をいただいております中小企業の問題一つをとりましても、一つは、中小企業の、現在私なりに考えてみますと、親企業が海外に移転したり、あるいは主たる業態を変化させたために新たな親企業を探さなければならないというグループが存在をする。先ほど来御論議がありましたように、後継者を育成し、そのわざを伝えていかなければならないグループが存在をする。  同時に、もう一つ、通産大臣時代に私自身が深刻に受けとめましたのは、例えば大田区等の技術集積の度合いの非常に高い地域におきまして、現在の自分たちの業がしっかりしている間に新たな分野に展開をしたい、しかしその人材を自分たちが今持っておらず、その人材をどこから求めればいいか困難を感じている、そうしたケースもございました。  これが、例えば人材の育成の部分は労働省にゆだねられる、経営の指導とかそうした部分は通産省にゆだねられる、しかし、その根っこの部分は我が国の義務教育制度の中における部分にゆだねられるといったような形がこれから先も存在していって、果たしてうまくこの国は動くんだろうか。私は、率直に申して、そのような思いから、創造性、チャレンジ精神を持った日本というものをつくろうとすればどのような考え方でいくべきなんだろうか、そんな思いでこの行政改革を初めとした課題に取り組んでまいりました。  こうした点から申しますと、まず一つ、規制緩和、撤廃という業務、分権の推進という業務、そして、それが当然ながら国の規模、人員というものを削減する方向に向かうことは間違いありません。現在、中間報告を取りまとめた段階では、まだ論議をすべてを尽くしておりませんので、数字的なものを申し上げる状況には至っておりませんけれども、議員から御指摘をいただきましたような問題意識をも含めながら、今後の論議を深めてまいりたい、そのように考えているところであります。
  47. 深谷隆司

    深谷委員 橋本総理のお考えには、基本的には全く賛成をしております。ただ、さまざまなこれからの省庁再編の過程に当たって、整合性をきちっと保っていくという意味において相当な議論がなされていかなければならぬと思っております。  それから、地方分権の問題でございますが、私も自治大臣をさせていただきまして、地方分権の推進には当たってまいったわけでありますが、そのとき、しばしば地方から集まる例えば知事の皆さん等を前にして申し上げたことは、これから分権が具体化していくというときに、やはり地方自治体もその受け皿をしっかりやってもらわなきゃだめですよ、国の仕事が地方自治体に移ってきた、しかしそれを受け入れるだけの体制がないとかえってマイナスになってしまいますよ、また、行政改革も、国が行いますけれども、あわせて地方自治体も行政改革を行って、職員の数はこれが適切なのか、あるいは財政上むだがないか、思い切った、痛みを伴う努力をしなきゃだめですよ、こういうことを言ってきたわけでございますが、ただいまの総理のお考えの中にはそういうことも含まれているというふうに理解をいたします。  東京でいうと、都区制度の改革なんというまた一方の地方分権もあるわけでございまして、これらを含めて、総体的に国も地方の機関もスリム化して、二十一世紀に備えられるような状態をつくっていくことがとても大事なことだというふうに私どもは思っております。  これから行政改革会議から中間報告として出されたものについてまさに国会で論議をしていくわけでございますが、私は一つ心配していることがあるんです、率直に言って。それは、行革会議議論とか中間報告がひとり歩きしてしまいまして、マスコミを通して大きく出されたものですから、何かこれに対して反論を唱えたり問題意識を持ったりすると、直ちに批判をされるような雰囲気が今あるんですね。これはおかしいじゃないかと言うと、族議員の横行なんて新聞に書かれてしまう。  これは、かつて政治改革のときに、小選挙区制是か非かというときに、小選挙区制に移っていけと言った人たちを改革派と名づけられて、問題があるぞと言ったときに守旧派と言われたんですよ。島村農林大臣や私たちもみんな守旧派でございました。  こんなふうにレッテルを張られると同じように、行革会議の中間報告に異を唱えたり別の提言をすると何か族議員といったようなレッテルを張られるということは甚だしく誤りである、こう思っているわけでございまして、私は、行革会議のとおりに答えを国会で出すなら国会が要らなくなってしまうということを考えますと、そういうことなしに闊達な意見が展開されて、国家国民のために何が大事か、それが結論になったというふうに導き出していくことが必要だと思うのでありますが、小里大臣、あなたの御見解を伺いたい。
  48. 小里貞利

    ○小里国務大臣 去る九月の三日、行革会議の中間報告が出されまして、以来、ただいま議員も御指摘のとおり、大変自由濶達な議論が展開されておりますこと、私は、原則として好ましいことである、こう思っております。  殊に、政党、とりわけ与党におきましても積極的にこれにお取り組みをいただいておる。また、国会のみならず、内外におきましてもいろいろ広野の声が広く反映されてまいっておりまして、私どもは、率直に申し上げまして、耳をそばだてて、そして嗅覚鋭く、世論はどういう意見を求めておいでになるのか、極めてオープンに、謙虚に構えてお聞きを申し上げておるところでありま す。  そこで、今議員がお話がございましたように、行革会議の中間報告の位置づけ的なものも若干触れられたと思うのでございますが、これは、まあ議員も御承知のとおり、言うなれば世上まれに見る、先ほども総理がお話しになりましたように、大改革でありますから、私どもは、これを進めるに当たりまして、出発点として基本的な一つの枠組みを中間段階においてお示しいただいた、こういうふうに解釈をいたしておりまして、むしろ、これからはこれを骨格として内外の意見もあるいは議論も集めていかなければならぬな、そう思っておるところでございます。  殊に、先生がお話しになりましたように、政党内あるいは政党間におきまして闊達に議論されますことは歓迎いたしますし、さらにまた、中間報告の末尾の項で書いてありまするように、いわゆるこの行政改革を仕上げるためには政党の意見を聞くことがもう絶対に不可欠でありますと、ですから、中間段階におきましてもこれからどんどん意見を聞かせてくださいと、そして最終的には全般的に党の了解を得られなければなりませんよということすら書いてあるわけでございまして、以上、御理解をいただきたいと思います。
  49. 深谷隆司

    深谷委員 かつて災害担当大臣としてユニークな小里節をさんざん聞かされた私にとって大変懐かしく、思わず顔がほころんだ次第でございますが、たった一つの欠点は長過ぎることでしょうか。  問題点の一つに郵政三事業の問題があります。私はここで深くこの問題を追及しようと思っているのではありません。ただ素朴に、百二十六年の長い歴史の中で国家に貢献してきた、そして近代化あるいは発展につながってきた、こういう三事業の一部をなぜあえて民営化しなければならないかという点については素朴に疑問を持つのであります。これらの議論の経過等については、小里大臣はどのようにお聞きになっておりますか。
  50. 小里貞利

    ○小里国務大臣 短く簡潔に申し上げます。  三つある事業の中で、とにかく郵便事業というのは、郵便局のネットワーク機能というものを国民生活的視点から高く評価しているということは御承知のとおりであります。簡保の事業につきましてはこれは一応民営化、同時にまた郵便貯金につきましては、若干準備期間を置きまして、その方向にという、一応の方向が整理してあることも事実でございます。  そしてまた、殊に先ほどの前段の質問で先生御指摘がありましたように、各般にわたりまして中間報告がなされましたが、その中で極めて国民の関心の高い、そして意見が具体的に自来述べられてまいっておる象徴的な問題がこの点であろうかと思っておりまして、したがいまして、先ほども申し上げましたように、劣らずこの郵政三事業につきましては広く党内外の意見を傾聴申し上げなければならぬ、さように思っております。  時間があればもっと具体的に申し上げたいのでございますが、以上でございます。
  51. 深谷隆司

    深谷委員 郵便貯金の問題で、財投機関に郵便貯金のかなりの部分が行くわけですね。ところが、財投の使い方に問題があるというような議論から郵貯のありようまで批判されるような、まことに不思議な結果が生まれてきたりなどなど、私は、もっと正確に郵政三事業を見詰めていくことはとても大事なことだなというふうに思っています。党内からいろんな意見が出ていまして、小里大臣も大いに耳をかしてくれるということでございますが、郵政大臣、何か一言ございましたら、どうぞ。
  52. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 一言ということでございますので、簡潔に申し上げます。  九月三日の日に、今深谷先生御指摘のように、行政改革、これはもう本当に今日本国はやらなければ、いずれこの国は二流三流の国家になっていくわけでございますから、やらなければなりません、その中で、中間報告として郵政省の再編ということが出たわけでございます。  今先生あるいは小里大臣のお話しのとおり、今与党の方にボールが投げかけられておりまして、やはり与党でございます、風雪に耐えた与党でございますから、さらにこの郵政事業についても、本当に日本人の伝統と歴史を踏まえた英知のある案が出てくる、こういったことで私は今ひそかに見守らせていただいておるところでございます。  今回時に、全国に二万四千六百ございます、三千三百の市町村すべてに、今先生御指摘のように、明治四年以来百二十六年かかってこのネットワークをつくってきたわけでございますから、そういったことを大事にしつつ、また国民世論の動向、あるいは地方議会もいろいろとこの経営形態について決議を行っておりますから、そういったことを踏まえて、本当に望ましい郵政事業のあり方について考えてまいりたいというふうに思っております。
  53. 深谷隆司

    深谷委員 郵政大臣としてはひそかに見守るというお話でございまして、恐らくそれ以上はなかなかおっしゃりにくいのではないかと思います。  ただ、はっきり言えることは、行政改革は二十一世紀に向けて必要なことである、しかし、その行政改革のあり方についてはそれぞれの立場がございまして、どれが正しいかという点については正々堂々の議論をする、そして将来の国家国民に禍根を残さないようにしていくということが大事でございまして、そういう意味では、どうぞ郵政大臣、橋本内閣の一員でありますけれども、ひそかに見守るなんておっしゃらずに、言うべきこと、発言すべきこと、提言すべきことはしっかりおっしゃっていただくようにお願いしたいと思うのです。  もう一つ例に挙げますと、例えば自治省でいうと消防庁の行方がわからないのですね、今のところは。どこへ行くかまだ定まっていない。阪神・淡路の大災害を思いますと、全国の消防の大活躍、とりわけ消防団員の活躍というのが目立ったわけでございますね。そういう大事な防災の任に当たる消防庁が一体どこに行くのであろうかということが定かでないということは、防災の面から申し上げてやはり非常に心配でございます。  一体どのような方向になっていくのか、もし自治大臣御存じでございましたら、御発言をお願いいたします。
  54. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 去る九月三日に公表されました行政改革会議の中間報告においては、消防庁の位置づけが明らかにされていないことは十分承知いたしております。私も、大臣就任以来、このことは申し上げておるところでございます。  我が国の消防は、市町村消防の原則のもと、委員指摘のとおり、地域に密着した消防活動が重要であり、そのような基本に沿って役割を果たしておるところでございます。  御指摘の、北淡町の実績でございますが、平成七年一月に六千人以上の犠牲者を出した阪神・淡路大震災におきまして、淡路島の北淡町では、千五十六戸の家が全壊しました。また、半壊、一部損壊を含めると三千三百三戸でございますが、この場合……(深谷委員大臣、それ聞いてませんから、結構でございます」と呼ぶ)いや、消防団のことをちょっと申し上げようと思いまして。  そこで一人の犠牲も出さなかった。それは、地域住民に密着して、地域住民の生活状況をよく消防団が把握していた、そのため一人の犠牲者も出すことがなかったということでございまして、地方自治行政と全く密接な関係を持っておることが大切であるということが証明されたわけです。  そこで、私は、地方行財政を所管する省があわせて消防を所管するということが好ましい、こういうふうに考えております。今後、十分与党の議論等も見守りながら方向づけをさせていただきたいと考えております。
  55. 深谷隆司

    深谷委員 私がお尋ねしたのは、全国の消防団員が滅私奉公で本当に御努力なさっている、その人たちを所管するところの消防庁の行方が行政改革の中間報告にありません、これは心配ですから、自治大臣しっかりやってくださいよということを申し上げたのであって、消防団員の活躍の認識についてはあなたが思っておられることは当然 のことでございますから、どうぞこういう防災の任に当たる人たちが安んじて仕事に取り組めるように、早くこの結果を出すように御努力をいただきたい、そのように思う次第です。  最後に、外交問題についてお尋ねしたいと思います。  来月の一日と二日に、橋本総理は、ロシアのクラスノヤルスクを訪問して、エリツィン大統領と首脳会談を行うということになっております。我が党は、結党以来終始一貫して、北方領土は日本の領土であると主張し続けてまいりました。一方、今月二日、エリツィン大統領は、ロシアの国内のニジニノブゴロドで、日本との首脳会談では領土問題も協議することになろう、こう述べているのであります。  私は、絶好の機会だ、日ソ関係、日ロ関係でのど元に刺さっていた骨みたいなものですから、この機会に、率直大胆にお話し合いをしながら、北方領土返還に向けて効果を上げるような話し合いをぜひしていただきたいと思うのですが、総理の御決意を伺いたいと思います。
  56. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私自身、エリツィン大統領と個別の会談を持ちましたのは、昨年のモスクワにおける原子力サミットの折、そして本年のデンバーのサミットの折でございました。そして、そのデンバーのサミットの際、こうしてかた苦しく会談を持つばかりがお互いの話し合いではないんじゃないだろうか、もっと率直に話し合える状況をお互いに考えてみょうではないですか、そういうことを私の方から提起しましたところ、エリツィン大統領の方も、そういういわばノーネクタイの関係で議論のできるような、そうした場所をつくることに異論はないということでありました。  当然のことながら、日ソと言われました時代から日ロの現在に至りましても、北方領土問題というものが両国の間に厳然と存在をしております。そして、我々はこれを解決していかなければなりません。そのためにも、本当に友人関係で話し合えるような、そうした政治対話というものをつくることができればと、私はその一点に今回は絞り込みながら、むしろ北方領土問題というものを本当にひざを交えて解決に向けて努力をしていける、その上で、両国間に平和条約を締結し正常な国交関係を持てる状況をつくるために少しでも働いてまいりたい、そのように思っております。
  57. 深谷隆司

    深谷委員 この領土問題というのは、長年にわたる国家の名誉をかけての議論でございますから、一朝一夕に答えが出るとは思っておりません。しかし、ただいまの橋本総理の決意というのは大変大事でございますので、どうぞしっかり頑張ってくださるように心からお願いを申し上げる次第でございます。  次に、ガイドラインの問題について伺いたいと思います。  外務大臣は、就任早々に、先般の防衛庁長官と一緒の日米安保協議委員会、いわゆる2プラス2の会談に臨みました。昭和五十三年の日米防衛協力のための指針にかわる新たなガイドラインを了承されたのでございます。  新たなガイドラインというのは、地域の安定、平和にとってとても大事なことだと思います。しかし、歴史的な経緯から見て、例えば中国とか韓国に対して正しい理解を求めるということは、非常に大事なことではないかと思うのですね。こういう点についての配慮、これからの対応、外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  58. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 改めまして、外務大臣として日本外交の衝に当たることになりました。委員初め皆様方の御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと思います。  さて、ただいまのお尋ねでございますが、日米の新指針につきまして、先般ニューヨークで最終的な了承を得られたわけでございます。  本問題につきましては、あくまでも日本の平和と安全のために安保条約に基づいて日米防衛協力をいたしていくという立場でございまして、あくまでも防御的なものであります。しかし、御指摘のように、隣国その他、御懸念があってはいけませんので、この問題についてはできる限り御理解を深めていかなければならぬ、こう思っております。  橋本総理も、訪中をされましたときに、中国首脳とも十分この問題について、取りまとめの過程ではありましたけれども、お話をされたわけでございます。たまたま、私も、国連総会に出席をした折でございましたので、中国外相あるいは韓国の外務部長官等に、取り決めがまとまりました直後でございましたので、我が国の立場を御説明申し上げたわけでございます。  なお、さらに、御懸念を抱くことは払拭しなければならぬと思っておりますので、外務省といたしましても、韓国には総政局長、あるいは中国に関しては丹波外審をそれぞれ派遣いたしまして、詳細にわたりましての説明をさせておるところでございまして、御指摘のように、我が国として諸外国の懸念を払拭するために最善の努力を尽くしてまいりたいと思っております。
  59. 深谷隆司

    深谷委員 戦後五十年、我が国は平和と安全が維持できたわけでございます。これは、何もしないでそうなったわけでは決してありません。今の平和と安全は、日米双方の努力の結果でございます。そういう意味では、日米安保条約というものが極めて有効に働いたというふうに私は思っています。冷戦が緩和された、もう危険な状態はなくなったから日米安保条約は必要ないという声もあります。しかし、一体そうだろうか。私たちを取り巻く環境というのは、決してそんな安心できるような状態ではないと私は思うのです。  北朝鮮の今日の食糧危機とか、あるいは新しい指導者のありようがさまざまに憶測されています。ノドン一号、二号と言われるようなミサイルが日本を射程距離に置いてセットされているという話もあるわけでございまして、そういうことを考えますと、私たちは、日米安保条約、とりわけこのたびのガイドラインの設定によってより国民の平和と安全が守られる、その意味でまことに意義深いものだというふうに思っているわけであります。  ただ、長い年月平和がずっと続いたものでありますから、その平和を確保することの難しさというものを、なかなか国民皆様の御理解が得られにくい、得にくい状態にある。ですから、今度のガイドラインの問題、とりわけ、例えば周辺事態とか難しい言葉が出てまいりますから、こういうようなことが国民皆さんにわかりやすく、どうしてこうなったかということについての啓蒙活動を、やはり外務省は挙げておやりになることがとても大事ではないだろうかというふうに思っております。  いずれにしても、日本が存立していくためには外交関係が極めて重要であります。総理大臣並びに外務大臣の一層の御努力をお願い申し上げたいと存じます。  最後に、橋本総理に申し上げたいと思います。  あなたは、大変高い支持率を誇って今日まで鋭意努力をなさってこられました。さきの内閣改造において幾つかの批判がありました。その後少し元気がなくなったという声も聞くのであります。元気のない橋本総理は似合いません。しかも、国家国民のためにはならないわけであります。どうぞ、あなたは自信を持ってぜひ頑張っていただきたい。  総理大臣になるということは、恐らくすべての政治家が一度は夢見たことではないでしょうか。その総理大臣におなりになって、天下人になったのですから、このたった一度しかない機会を十分に生かされて、歴史の中に橋本総理大臣という名前がしっかりと刻み込まれるように、ぜひ元気いっぱい頑張っていただきたいし、そのために我々も十分な御協力をいたすことをお誓い申し上げて、本日の質問を閉じたいと思います。  ありがとうございました。
  60. 松永光

    松永委員長 この際、逢沢一郎君から関連質疑の申し出があります。深谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。逢沢一郎君。
  61. 逢沢一郎

    逢沢委員 自由民主党逢沢一郎でございます。  与えられた時間の中で橋本総理大臣並びに関係閣僚に質問をさせていただきたいと思いますが、まずその前に、冒頭、同僚の深谷議員からも指摘がありましたが、きょうは残念ながら野党三党が欠席のまま予算委員会開会する、こういうことになりました。深谷議員が一時間半にわたり真蟄な質疑をなさったわけでありますが、いまだに欠席の状況が続いております。  そもそもこの予算委員会は、野党側が、臨時国会の冒頭にぜひ開こうではないか、そう強く要求をしてきた、そういう経緯、改めて思いをいたさなくてはなりません。  そして、言うまでもないことでありますけれども橋本総理が掲げられた六大改革の前進、あるいは今日の景気や経済や外交問題、一刻たりとものんびりできない、また、悠長なことを言っていられない、そういう内外の環境をしっかり踏まえて、国会国民の期待にこたえていかなきゃいけない、大事な国会であるということを考えれば考えるほど、きょうのこの欠席は大変残念な思いでいっぱいであります。しかし、我が党といたしましては、正々堂々、粛々と予算委員会での質疑を続けさせていただきたい、そう考えるところであります。  さて、まず冒頭、橋本総理が掲げられる六大改革についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  総理がまさに命がけで取り組んでおられるこの六つの改革、私も、確かに日本の浮沈をかけた大きな改革である、そう認識をするものであります。どうしても日本の未来のためにやり抜いていかなきゃならない、私たちもそういう強い思いを持つわけであります。  恐らく、そうですね、二〇〇五年あるいは二〇一〇年ぐらい、我々はこういう会話を交わすことになるのではないでしょうか。それは、あのとき橋本総理中心に、本当に大変であったけれども、大胆な改革を実現させておいて本当によかった、だから今の元気な日本、活力のある日本があるじゃないか、そう話し合っているに違いないんですね。もしあのとき、手をこまねいて、改革を先送りしたり、あるいは改革を断念したということが仮にあったとすれば、恐らく今ごろ日本は、極東のみすばらしい、ちっぽけな、あるいはだれも関心を払わない、そういう国になっていたかもしれない、恐らく我々は将来そういう会話を交わすに違いない、私にはそう思えてならないわけであります。  私は、今回の六つの改革に対応するに当たって、一つの大きな夢を持っております。  それはどういう夢かと申しますと、二十一世紀には日本が一つの国家経営のモデルを世界の国々に示す、示せる、そういう国になるという大きな夢なんですね。簡素で効率がいい、そして、よく働く政府、また、国民の側から政府の仕事がよく見える、透明度が高い、したがって評価のシステムが確立をしている。そういう意味合いで、世界の人々や国々から評価をされる、注目をされる、そういう国になりたい、あるいはそういう国に必ずなれる、私はそう申し上げておきたいというふうに思います。  ここまで、六つの改革というのは、私なりに評価をさせていただければ、かなりいいペースで、またいいリズムでやってくることができたんじゃないか、そう思います。金融システムの改革でありますとか、あるいは規制緩和を通じた経済の構造改革、かなり成果を上げてきたというのも事実でありますが、しかし、やはり改革全体をにらむとすれば、これからが正念場ということは改めてお互いが認識を持ちたい、そんなふうに思います。  改革を通じて新しい日本、元気な日本をつくってほしい、そういう強い思いを国民の方々は持っておられる。その国民の方々の強い思いが、橋本総理への強い期待、あるいは高い期待、そのことに結びついているわけであります。  先ほど、最後に深谷議員がおっしゃられた、どうぞひとつ、橋本総理におかれましては、引き続き力強いリーダーシップを発揮をしていただくように、心からお願いを申し上げておきたいというふうに思います。  さてしかし、いろいろこの改革の議論が進んでまいりますと、国民の間にいささかの不安やある種の不満があるというのもまた事実だろうと思うんですね。それは、その改革後の世界がどうなるかという不安、あるいは、改革というのはもちろん現状の変更を伴うわけでありますから、ある種の不満というものも出てこざるを得ない、もともとそういうものなんだろうと思うんですね。そういう不安だとか不満をより大きな希望や期待や夢に変えていく、また、変えていけるかどうかが実はこの改革の成否を占う、成功するかどうかの私は一つの大きなポイントなんだろう、そんなふうに思うんです。  今回の改革は、非常に大きい、広範なだけに、国民の一部には、まだまだ改革の後の世界がどんな姿になっているのか、必ずしも十分みずからの頭の中にイメージが描き切れない、そういう感じが、いろいろな立場の方とお話をしていて私も感じることがあります。そこで、この改革後の世界はこういう日本の社会、日本の国になるんだよということを十二分に語っていくということがさらに求められているのではないかな、そう思うのですね。  例えば、先ほど深谷先輩も議論をされたわけでありますが、規制緩和という問題があります。規制緩和というのは必ずしもプラスのイメージだけで国民は受け取っていない部分がある、それは私もよく承知をいたしておりますが、例えば移動体通信があれだけ伸びたという事実がありますね。あるいは、電話料金だって随分下がってまいりましたし、総理はお忙しいから御存じないかもしれませんが、総理の地元の倉敷にもついに地ビールが、実は規制緩和の成果の一つですね、誕生をいたしました。そういう新しいビジネスがどんどんふえて、雇用もふえているではないか、そういうプラスイメージをやはりもっと自信を持って国民に伝えていく、そういう努力を私たちはやっていきたいな、そんなふうに思います。  また、あれはことしの五月であったというふうに思いますが、政府は経済構造の変革と創造のための行動計画というものをまとめられたわけでありますが、そこでいただいた資料を拝見いたしますと、例の新規に成長が期待ができる十五の分野、この一覧がございます。これが失敗に終わるということがないように、所要の措置をとっていかなくてはならないわけでありますが、例えば、その十五の期待ができる成長分野の雇用でありますとか市場規模を合計いたしますと、今日では例えば雇用の総計が千六十万人なのが、二〇一〇年には千八百万人程度が見込める、あるいはトータルの市場規模も、今二百兆円ばかりであるけれども、それが五百五十兆を超えるだろう、そういう一つの推計、予測もあるわけであります。こういうものも、改革というものがどういう未来をもたらすかということを国民に正しく認識をしていただく、いいイメージを持っていただく、そういうことに大変プラスではないかな、そんなふうに私は思います。  もちろん、改革には痛みが伴うわけでありますけれども、その痛みを乗り越えてとにかく頑張っていこうではないか、そういうふうに国民皆様と我々が心を一つにして前進ができるかどうかは、繰り返しになって恐縮でありますけれども、改革をやり遂げた後にはこのようなすばらしい日本が広がる、あるいは元気な経済社会ができるんだということをしっかりと認識をしてもらうことだろう、そんなふうに思います。  そういう意味で、橋本総理にお伺いするわけでありますが、六大改革の成功が、あるいはその後がどんな日本になるのか、率直に語っていただきたいというふうに思います。
  62. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 よく私自身が前から申し上げておりましたこと、それは、人口構造の変化に 伴って、いや応なしに世の中が変わるし、その中でその変化はいい方向に変えなければならないということでありました。  人口構造の変化というものに着目した議論を政治家としてし始めたのは随分前のことです。しかし、そのころ高齢化のピッチというものはある程度予測をいたしておりましたが、これほどの出生率の低下を読み込んで考えをまとめていたわけではありませんでした。それだけに、私自身が十分な洞察力を持っておらなかった、自分で反省する部分であります。  しかし、それと同時に、経済のグローバル化というものが非常な勢いで加速をし、その中で産業構造というものはいや応なしに、企業が立地する国を選ぶという時代になりまして、大きな変化を生ずる時代になりました。  私自身は、社会人になりましたとき、紡績産業を選んで社会人になった一人でありますけれども、その当時の紡績は、豊かで優秀で、豊かというのは豊富な、優秀な若年労働力に依存して成立していた、国際競争力を持っていた産業だったわけです。今、人口構造の変化の中でそういう産業が立地できるかといえば、残念ながら我が国では、より付加価値の高い商品をつくることによって競争力を維持するという状況に変わっております。  そうした変化の中から、ちょうど我々はこれを裏返しにした社会を考えていかなければなりません。言いかえれば、等質性を求めてきた教育一つをとりましても、むしろ質が同じということよりも、より創造力を持つ、よりチャレンジ精神を持つ、個性を伸ばす、そうした方向に変えていかなければ、これからの国際競争の社会を我々は勝ち抜いていくことができません。同時に、個人の社会に対する考え方も、いわば等質の社会ではなく、言いかえれば、いかにチャレンジのチャンスをつくり得るか、そしてまた、そのチャレンジのチャンスをつかむ可能性があるかという、こうした社会を我々は考えていかなければなりません。  先ほど深谷議員の御質問の中でも、職人国家、職人の社会という言葉が使われました。そして、海外における中小企業の、まさにその職人としてのわざによって国際場裏に羽ばたいている姿というものも提示をされました。同時に、中小企業に対する融資、貸し渋りというものが、いわば担保物件の不足により現実に起きておる状況の御説明もありました。  まさに、私は、一時期非常に経済的に厳しい状況に追い込まれておりましたアメリカが現在の経済優位を取り戻してきた、その中にいろいろな要素があると思いますけれども、そのチャレンジということに対して、そのチャレンジを許す社会をつくっていたこと、そして、いわばハイリスク・ハイリターンという投資が行われ、それが業の立ち上げを支えたこと、同時に、そうした分野に挑戦し得る人材を養成してきたこと、こうした一切のことがあったろうと思います。さらに、労働力の水平移動という意味では、人材派遣が果たした役割というものも見逃すことができません。  こうしたことを考えてまいりますと、私なりに、夢あるいは希望、目標、どういう言葉を使ってもいいわけですけれども、そういうものを持ち、それに挑戦し成功し得る社会をつくろうとすれば、現在の、規制によって新たな芽を摘んでしまう、あるいは業の方向を官が定めようとするために新たな業への進出を阻む、こういう状況は変えなければなりませんし、国がすべてを抱えようとする行政から、これは実は民間同士の規制というものもありますけれども、官から民への権限の移譲、同時に、権限を持つにしても、それはできるだけ住民に身近な、チェックの働きやすい場所に機能を移していく、地方分権を進める。そしてそうした流れの中で、より自由で個性を持ち、そしてそうした上に立った自律的な個人というものを基礎にして、透明度の高い、公正な社会をつくっていく、そうした方向に向けていかなければならない。そのためにはそれぞれの分野を変えていかなければならない、そのようなせっぱ詰まった思いでこの問題を提起をいたしております。
  63. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  それでは少し各論に入らせていただきたいと思いますが、内閣機能の強化ということでありますけれども、総理は行革会議でも、この内閣機能の強化というテーマについては非常に熱心に取り組んでこられた、そう承っております。  先般の所信表明の中でもそのことについては触れられたわけでありますが、総理は今日まで、運輸大臣、通産大臣あるいは厚生大臣、さまざまな閣僚歴を持っておられる。自由民主党の幹事長や政調会長も歴任をされました。いわばその長い政治経験の中で、日本の政治や行政を変えていくためには、この内閣機能の強化がどうしても必要だ、不可欠だ、そういう思いに至ったのだろうというふうに想像をいたしております。  湾岸戦争も経験をされた、あるいは阪神・淡路大震災にも通産大臣として対応をしてこられた。あるいは、若いころには自民党の行財政調査会長を非常に長くやっておられた。非常に静かに、真剣に、行政のあり方、あるいは内閣のあり方を考えてこられたに違いない、そう思わせていただいているわけでありますが、総理御自身がここまで熱心に、内閣の機能を強化をしていこうではないか、その先頭に立っておられる、それはどんな問題意識からその強い思いが出てきているのか、率直に語っていただきたいというふうに思います。
  64. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これは、なかなか一つにくくって御説明をするのが難しい部分がございますけれども、お許しをいただいて私なりに率直に申し上げたいと思います。  一つは、かつて体験をいたしました湾岸危機から湾岸戦争、そのときにおける内閣の意思の形成というものを振り返りましても、問題意識はございました。また、阪神・淡路大震災を初めとする、あるいは本年初のナホトカ号の油流出事故等、こうしたことを体験いたしますたびに、危機管理という視点から内閣機能というものは強化しなければならないという思いが当然のことながらございます。  同時に、昨年、科学技術基本法を成立させていただきましてから、科学技術という一つの切り口から予算編成に一定の枠をとり、それを官邸で、科学技術振興の分野にどのように有効に投資すべきか、官邸に各省の要求を集めて、突き合わせて作業をいたした時期がございました。このときに改めて痛感いたしましたのは、縦割り行政の弊害というものが、科学技術研究という一つのテーマをとりましても、各省に権限が分散しておりますために、相似たテーマがあちこちにいっぱい出てくる。これを束ねるという機能が今まで必ずしも十分ではなかった。これをどうにかしなければならない、そうした意識もございました。  しかし、これは今の制度ですと、その要求というものを否定することはできません。その上で、官邸である程度主導権を発揮しながら、これを共通のものとして体制を整備しというような作業をいたしてまいりました。本年も同じような作業を現在いたしておる部分がございます。  しかし、それはメカニズムとして確定したものではございません。そうすると、行政改革を一方では進めてまいります中で、やはり総合調整機能ということが言葉の上だけでなく、総合調整の前に総合的な企画立案にまである程度権限が及ばなければ対応し切れないのではなかろうか、そのような思いも出てまいりました。言いかえるなら、さまざまな課題に対して戦略的な判断を下し得るような体制というものをつくっておく必要があるのではなかろうか、こうした思いから今論議をお願いをしておるところであります。
  65. 逢沢一郎

    逢沢委員 政治、行政全体の効率あるいは生産性という言葉をもし使わさせていただくとすれば、内閣機能の強化というものは非常に必要なことだ、そのように私も認識をいたします。どうぞ頑張っていただきたいというふうに思います。  さて、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、金融システムの改革ですね。ビッグバンとも呼ばれておりますけれども、このビッグバンが終わった 後、あるいはある種の定着期に入った後の日本の金融システムというのは一体どういう姿になっているか、これもやはりわかりやすく国民に語っていただく必要があるのだろうというふうに思うのですね。とにかく、今までと同じような護送船団方式というわけにはいかないわけでありますから、素人の私が考えましても、やはり淘汰される銀行や証券が結果的に出てくる、こういうことはやっぱり避けられないのだろうというふうにも思います。  あるいは、今国会に法案も提案をされるようでありますけれども、金融持ち株会社の制度も整備がされる、こういうことになるわけでありますけれども、場合によってはある金融の持ち株会社に救済をされる、そういうふうな姿が出てくるとも思われます。既に一部動きも出ておるようでありますけれども、外資との合併の道を選ぶ、そういう選択も恐らくあるんでしょうね。  そして、来年の四月に改正外為法が施行されれば、これは非常に大きな関心を集めておりますけれども、一般に千二百兆円と言われている国民金融資産、これが相当程度海外にシフトするのではないか、そういうある種の予測あるいは危惧みたいなものもあるわけでありますが、そういういろいろな改革期の困難を乗り越えた後、総理がおっしゃられるように、果たしてフリーで、フェアで、グローバルな、こういう原則あるいは理念が貫かれた市場ができるんだろうか。あるいはその中にあって、日本の銀行や日本の証券会社やあるいは生保や損保や、どういう姿で活躍をしているのか。そういうことがなかなか今、非常な混乱状態にあるわけですから、どうも国民にはわかりにくい。  大蔵大臣として、ぜひ的確な御説明をお願いをいたしたいというふうに思います。
  66. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいまの御質問でありますが、二〇〇一年に入りますとビッグバンは完成をしておらなければならない、こういう大目標に向けてただいま諸準備をいたしております。  金融システム大改革、これを日本版ビッグバン、こう言っております。一九八六年、ロンドン市場閉塞化の中で、活性化をもたらすために証券の国際化を断行いたしました。その結果としてロンドン・マーケット、シティーは復活をいたし、斜陽のユニオンジャックと言われた英国は、それを契機にヨーロッパにおける金融市場としての位置づけをもう一度取り戻したということであります。僅々十年前の話でございます。  今回、橋本内閣、総選挙後スタートするに当たりまして、日本版ビッグバンをということで、御指摘のように公正、自由、そして国際的基準、フェア、フリー、グローバル、こういうことで、我が日本市場もイギリス・ロンドンの先例を見習いながら金融全部を取り込んだ形のマーケットをつくり上げていこうというのが、総理が大蔵大臣に対する指示の基本でございました。  その背景には、一千二百兆に達しております個人預貯金、低金利の中でも依然としてこのベースは変わりません。いかに日本民族が勤勉であり、頑張り屋であり、他日を期して子や孫のために財産をキープしておるかという、純風美俗のよい点がそこにあらわれておると思います。高年齢の方々の、年金のために預貯金をやられておる方々には、低金利は大変つらいことであります。本当に忍びない、もう少し御辛抱をと申し上げておるのはそういうことで、それも景気政策振興のためにやらなければならない、こういうことであります。  その一千二百兆を有利に展開できる道は何かということでありますと、垣根を取っ払った形で自由な競争の自由市場をつくり上げていかなければならない。そういたしますと、よりよいサービス、商品をそれぞれの会社が出してまいります。高リスクなものはまさにそこに出てくるかもしれません。しかし、低リスクで有利、確実な商品も出てくるはずであります。そして、外国にも門戸を開きますものですから、外国の金融機関も東京、日本に来るわけであります。外国資本との競争、金融機関との競争の中で、我が日本がその中で勝ち、立派なものを、国内だけではなく、また国内企業の資金調達に貢献をする、外国の企業に対する資金も提供できるということを目指してやっております。  逢沢議員御指摘のとおり、これが本格スタートを切りますと、まさに適者生存、競争時代を迎えます。護送船団はもう既に取りやめております。自由市場の基本、自由主義の基本は自己責任であります。市場の中におけるみずからの最大の骨身を削る努力で、よりよきものを商品として提供する流れに相なりました。そういうことで、自由市場を目指してまさに国際化への基準を明確に示すということで、スケジュールどおりただいま取り進んでおります。  四月一日は、御案内のとおり外部監査を導入をいたしまして、企業の実態がみずからの手によって公表されることになります。早期是正措置、法令にうたわれました。不良資産の解消のために血のにじむ努力をしてまいりませんと、ディスクロージャーされましたそれぞれの金融機関の内容によって、信認が天と地の違いになります。生存のための信認を得るために、これからの前進のための信認の条件を得るために最大の努力をする。  長くなりましたが、せっかくの御質問でありましたので申し上げた次第であります。
  67. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  次に、通産大臣に経済構造改革についてお伺いをいたしますが、先ほど深谷議員とのやりとりの中でも、景気に対して非常に厳しい認識を通産大臣もあるいは政府全体もお持ちであるということが改めて確認ができました。それだけに、強力に、構造改革政策を今まで以上に力強く推し進めていただく、そのことがやはり大事だな、私もそんなふうに思うんですね。規制の緩和や撤廃を初め、諸改革がもたらすメリットを改めて前面に押し立てていただく、その先頭に通産大臣にも立っていただきたい、そんなふうに思います。  確かに、いろいろ調べてみると、かつては、通話料金、電話でありますけれども、東京—大阪、一番高かったころは三分四百円もしたのが今百十円だそうでありまして、移動体通信も、近距離二百八十円でスタートしたのが今百二十円。やはり競争や民営化や改革や、そういうものがこういう具体的なメリットを多く国民にもたらしてきた。  あるいは、建築基準法の改正によって、木造の三階建ての住宅がやりやすくなったんですね。これもずっと需要が伸びてきたわけでありますし、こういうものをずっと一つ一つ拾い上げていくと、やる気のある人が思い切って事業ができる環境をつくるということが経済を伸ばす、日本を元気にする、やはりそういうことなんだなというふうに私も改めて思います。  先ほども申し上げましたけれども、成長が期待できる十五分野、これがとらぬタヌキの皮算用にならないように、これはほうっておいても大きなマーケットに、大きな雇用にというわけにはいかないわけでありますから、適切な施策の展開をぜひ通産大臣にはお願いをしておきたい、こんなふうに思いますし、また、どうしても経済のフロンティアを拡大していくためには、いわゆるベンチャー型の中小企業が元気だ、そういう状況をつくり出していかなきゃいけないんだろうというふうに私も思います。  いろんな手だては講じてまいりましたけれども、さらに、シーズを拾い上げてエンゼルの段階で資金が十二分に供給がされる、そういう税制でありますとか、あるいは店頭市場の整備でありますとか、そういうことには不断の努力をお願いをいたしておきたいというふうに思いますが、この構造政策を進めていくその責任者でもある通産大臣の改めての決意と所見を承っておきたいというふうに思います。簡潔にお願いします。
  68. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、現在の日本の経済というのは活力が見られないわけなんであります。これは、やはり経済構造に問題があるということになってまいります。この経済構造を改革すること によって、構造改革後の目標というものは、活力のある日本経済をつくるということであります。ですから、二十一世紀において豊かな国民生活が確保されるということでなければならないと思っております。  その基本はやはり、従来の生産者側に重心のかかっていた産業政策というものから消費者中心の産業政策に変わっていくようなものをひとつ考えなければいかぬ。同時に、新たな産業への参画というものがどんどんできるようにしていかなければならない。そういうことを考えますと、今度の経済構造改革の推進は規制緩和というものが一番の柱になるというふうに思っております。  規制緩和によってどういうものが出てくるかといえば、従来の産業保護の政策というものから、自由競争による経済の活性化が第一にございます。第二番目は、国際的に魅力のある事業活動のできる日本の経済状況というものの環境をつくらなければいかぬというふうに思います。三番目は、やはり自由競争によって内外価格差を縮小する、要するに高コスト状態というものを直していくというようなもの。こういうような経済の自由化の活性化によりまして、ベンチャービジネスだとか新規の産業が創出をされてきて、そして、世界的な大競争時代に生き残る強靱な日本経済を形づくっていくことをやってまいりたいと思っているわけであります。  他方、消費者は国際的に遜色のない物価、サービス等が得られるようになっていくことというのが目標であります。  同時に、先ほどからお話がありましたように、この新しい行動計画によりまして、新規産業十五分野というのは、二〇一〇年には雇用が現在より七百十万人ふえる、あるいは三百五十兆円の市場規模が拡大するというものが一つの目標になっておりますし、これについて、医療だとか福祉だとか情報通信、バイオ、住宅、航空・宇宙その他の全産業の分野にわたっての問題に取り組んでまいるわけでありますから、関係各省との連携をしっかりと持ちながら、これを強力に進めてまいりたいと思っております。  私も、総理から通産大臣を拝命いたしましたときに、関係各大臣としっかり調整をしながら、早急に行動計画をフォローアップして、そしてさらに加速をしろ、さらに深化をしろという命令をいただいております。規制緩和の前倒しを実行したり、さらに、総理のリーダーシップのもとに全力を挙げて取り組んで、御期待にこたえてまいりたいと思っておりますので、どうぞいろいろと御指導をお願い申し上げます。
  69. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  総理、この六大改革を進めていく上で、視点を変えて、どうしても我々政治家が思いをいたさなきゃいけない、配慮をしておかなきゃいけない、そういうことがあるんだろうと思うのですね。それは、いわゆる社会の中で弱い立場の方々に十分思いをいたす、そういうことではないかなというふうに思うんです。  総理が提唱しておられる六大改革、とりわけその中でも、私は、金融システムの改革でありますとか、今通産大臣からしゃべっていただいた経済の構造改革、こういうものを貫く理念というのは、総理もたしか一昨年の施政方針の中でこういう言葉を使われたと思うんですが、いわゆる保護と規制から自由と自己責任という理念といいますか哲学といいますか、そういうもので貫いていかなきゃいけない、また、そうじやなきゃ改革というものは成功しないんだろうというふうに思うのです。  しかし、市場原理をより機能させるということは、やはり能力のある人、やる気のある人にさらにばりばりやってもらおう、そういうことでありますし、ざっくばらんに申し上げれば、勝者と敗者、優勝劣敗がもうはつきりしてくる、そういうことなんだろうというふうに思うのです。  そこで、やはり我々として思いをいたすべきことは、世の中にはハンディキャップをもともと背負っておられて、いわば市場の競争に最初から参加できない、そういう立場の方もいらっしゃる。そこのところが非常に大事なポイントで、改革に当たってそういう立場の方が非常に疎外感を覚えてしまうようなことではやはりいけないのだろう、そんなふうに思いますが、政治、行政の効率や能率を最大限追求をしつつ、社会の中で弱い立場の方々に思いをいたす、このバランスを、日本のトップリーダー、最高責任者としてどう確保していこうとお考えか、率直に、簡潔にお話しをいただきたいと思います。
  70. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、今進めておりますこの改革の中で、二つの分野について触れなければならないと思います。  一つは、まさに経済構造改革の分野におきまして、従来から規制によってその業が保護されてきたという業態があるとすれば、当然ながらその規制が廃止されることによってそこに痛みは生じるわけでありますし、また競争がここに激化することで、その痛みに対する対応策を欠けば不安を呼びかねない部分というものが当然生じるだろうと思います。  こうしたことから、ことしの五月、閣議決定をいたしました経済構造の変革と創造のための行動計画というものの中でも、規制緩和を実施していくプロセスにおいて重大な影響を受ける事業者に対して、構造改善をどういうふうに進めていただくか。あるいは、新しい分野に進出していきやすい支援措置をどういうふうに講じるか、その環境づくりをする。さらに、その労働力の移動をいかに円滑に行うか、そのためには参入しやすい、また転出しやすい労働市場に変えていく。これは先ほど来例に引きました人材派遣等もその一つの例示でありますけれども、こうした仕組みをあわせて手がけていかなければならないということは既に申し上げております。その上で、やはりこれはやり上げていかなければ時代に対応していけないという性格のものであることは、ぜひ御理解をいただきたいと思うものであります。  同時に、もう一つの分野、これは御議論の中でまだ出ておりませんけれども、その改革という中では、社会保障の構造改革の問題があります。これは現在、高齢・少子化という現象が既に国民の目の前にも明らかな状況の中で、少子化ということはこれから先どんどん若い働き手が減るということでありますから、いかにして負担ができ、公平な仕組みをつくるかという視点から、我々は社会保障全体を見直していかなければなりません。  そのためには、現在も参議院に御審議をいただいております介護保険、これに代表される介護の問題、さらに医療、年金など制度改革を順次実行していかなければならないわけでありますけれども、その場合に、所得の低い方でありますとか社会的な弱者の方々に対して、その必要な給付あるいはサービスを着実に確保するための仕組みを用意する、こういった視点は、当然のことながら必要なものだと考えております。
  71. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  ある意味では非常に難しいハンドリングを求められるということではなかろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いをいたしておきたいというふうに思います。  さて、税のことについてお聞きをいたしたいわけでありますが、たまたまきのう、ある新聞を見ておりましたら、いわゆる課税ベースの拡大、あるいは総理は課税ベースの適正化という言葉を使っておられるわけでありますけれども、「寄付金課税を強化 損金算入半額に 課税ベース拡大の一環」という記事が出ておりました。総理が所信の中で、法人税の減税、そして課税ベースの適正化、そういう言葉を使っておられるわけでありますから、ある意味で大蔵省の中でそういう議論がなされるのは当然といえば当然のことなのかもしれませんが、この課税ベースの見直しについて、率直なところ、今どんな議論が行われているのでしょうか。  去年の税調のとき、大蔵省から三十八項目にわたる個別検討の一覧が出されましたね。去年も随分議論した記憶がございますが、もう少しよく考 えようということでことしになっているわけでありますが、去年との違い等々、率直に報告をください。
  72. 薄井信明

    ○薄井政府委員 法人税制につきましては、法人課税を内容といたします国税である法人税、その他地方の法人課税もございますが、税率を下げていくべきであるという議論が一方でありますので、これとの対応で課税ベースが適正かどうかということも議論させていただいております。  御指摘のように、おととしから政府税調では本格的に議論を始めておりまして、昨年の十月には小委員会の報告も出してもらいました。その中に三十八項目の課税ベースの議論がございました。ただ、これも御指摘のように時間が足りない、あるいは私どもの説明が不十分であったということで、昨年はまとめることができませんでした。幸いそれから一年間の時間がございましたので、この春以降ずっと議論を続けておりまして、そのレベルも、実務を担当されている方々を含め幅広く議論させてもらっておりまして、その項目自体は三十八項目変更しておりません。引当金等も含めて一つ一つ精査させていただいているということでございます。
  73. 逢沢一郎

    逢沢委員 この課税ベースの適正化というのは、言葉面はすっと耳に入ってくるわけでありますが、これは簡単な議論ではないなというふうに思いますね。そのことをきちんと指摘をしておきたいと思うのです。  やりようによっては、先ほど深谷先生からもお話がございましたように、例えば中小企業の経営に著しく影響を与える結果を招いてしまうとか、あるいはことしの暮れですか、京都でCOP3、大事な会議が行われますけれども、省エネを促進をする、そういうことにマイナスの効果があるとか、あるいは研究開発投資が思うに任せないとか、さまざまな影響が及んでくるのがこの課税ベースの議論の背景にあるのだろうというふうに思っておりまして、慎重な議論をお願いいたしたいと思います。私どもも、党内の税調でそのことについては真剣に、活発に議論をしてまいりたい、そう考えております。  さて総理、この税の問題でありますが、総理は、率直に申し上げて非常に慎重に、いわゆる法人課税の実質減税あるいはトータルとしての減税という言葉をまだ使っておられない、非常に慎重に避けておられる、そういうふうに私は承っているわけでありますが、結論から申し上げると、やはりそろそろ踏み込んだ、思い切った発言をしていただく、またそういう時代の要請がある、そういうふうに私は思うわけであります。  世界とのグローバルスタンダード、これは法人税率の議論のときにいつも出てくる話でありますし、日本から海外に対する投資は多いけれども、日本に入ってくる投資というのは非常に少ない、七対一とか八対一とか、そんなふうにも言われております。喫緊の景気に対する対応という側面も見逃せないのだろうと思いますね。  ドイツが日本と同じぐらいの実効税率をずっと持っておりますけれども、思い切って四〇%ぐらいに法人税の実効税率を下げよう、今ドイツの国会では多少ちょっとがたがたしているようでありますが、とにかくドイツ政府もそういう方針をきちんと固めて国会議論をお願いした、そういう段階を迎えております。  また、重ねて申し上げるとすれば、先ほど深谷議員の方から中小企業の軽減税率のことについても指摘がありました。これはアメリカですとかイギリスは、これは所得要件もありますけれども、日本の中小企業軽減税率二八%よりも相当低い一五、二五、あるいはイギリスの労働党、あの労働党政権が中小企業の軽減税率二三%をことしの四月にさかのぼってもう二ポイント下げよう、そういう政治決断もした等々考えるときに、一つの大きな構造改革に資する意味でも、総理のリーダーシップの発揮をお願いしたい、私はそう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  74. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 改めて所信表明のその部分の原稿に目を通し直しましたが、私は、税率を引さ下げる方向でということを法人課税については申し上げております。その上で、今議員御自身が論議を提起されておりますように、これにはさまざまな問題点があることも事実です。そして税制調査会、従来からの議論というものは、深谷議員から御指摘を受けましたような問題点を含みながら、課税ベースを適正化しながらの引き下げといり方向で進んでまいりましたことも御承知のとおりでございます。  その上で、私は、去年は使いませんでしたが、ことしは税率を引き下げる方向ということを所信表明の中でも申し上げてまいりました。その上で、私ども、この結論は十年度税制改正の中で得たい、そのように申し上げているところであります。
  75. 逢沢一郎

    逢沢委員 総理から改めてそのような答弁をいただくことができました。引き続き与党の中でも、あるいは我が党の中でも十二分な真剣な議論を重ねてまいりたい、そして率直に総理にお願いをする、大蔵大臣にお願いをする、恐らく近い将来そういうことになろうかというふうに思います。改めてそのように申し上げておきたいというふうに思います。  さて、時間が限られてまいりましたので、少し申し上げておりました順序を調整いたしたいと思うわけでありますが、法務大臣にお伺いをいたしたいというふうに思います。  例の少年法のことについてでございますけれども、お互い記憶に新しいわけでありますが、ことし五月に起きた神戸・須磨区の少年による恐るべき犯罪は、もちろん全国民を震憾させたわけであります。そして、このことは諸外国にも大変大きくセンセーショナルに報道されたということは、法務大臣も御案内のとおりであります。そしてこの事件を一つの契機として、国民の中に、再び少年の犯罪というものが残念ながら非常に凶悪化する傾向にあるということが認識されたわけですね。そして、改めて少年と犯罪について大きな議論が呼び起こされるに至った、私はそう承知をいたしております。  犯罪を犯した少年は少年法によって処分をされるわけでありますけれども、例えば少年院に送致された少年が退院後、少年院を出た後、二十までの間に再び罪を犯してしまう、いわゆる再犯でありますが、この再犯率が聞くところによりますと二〇%から二五%程度の間にある、そういうふうに承っております。一部にはこの数字は、いやいや諸外国に比べればそんなに高くない数字なんだというふうな評価もあるようでありますが、とにかく、四人に一人あるいは五人に一人は再犯ということでありますから、これは相当重い数字と言わなくてはならない、私はそう思うのですね。  また、念のために申し上げておきますと、この再犯率の中には二十以降の犯罪、それはカウントされないということでありますから、実態としてはもっと厳しい状況にあるということも認識ができるわけであります。  そういう状況の中で、今国民の方々の間には、少年法やあるいは少年院法がこのままでいいのかどうかという率直な、素朴な議論があるわけであります。少年犯罪の低年齢化や凶悪化という事態に直面して、大臣御自身はこの少年犯罪の現状をどう認識しておられるのか、あるいは少年法のスキームや運用のあり方が今のままでいいのだというふうにお考えなのか、あるいはもし何か新しい対応が必要とお考えならばそれはどういうポイントなのか、率直にお答えをいただきたいというふうに思います。
  76. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  少年犯罪の実情を見ますと、ただいま委員からお話があったような状態でございます。昭和三十年代それから四十年代の後半には、少年による殺人、強盗、放火、そういうふうな凶悪犯罪がたくさんあったわけでございます。それから一時的に急落しまして、最近また凶悪事件が多くなってきた。しかも、お話のような、ことしの五月の事件みたいなものが出てきている。私といたしましても、大変憂慮をいたしておるわけでございます。  お話がございました少年法でございますが、これは、昭和二十三年、まだ占領下にできた法律でございまして、その基本が今日まで伝わってきておる。したがいまして、少年法の基本的な考え方というのは、少年の健全育成というものを目的にしてきておるわけでございますので、その考え方自身は私は尊重すべきである。ただ、現在のような少年法あるいは少年院法、御指摘がございましたが、そのような内容でいいかどうかということにつきましては、これは十分検討を要する問題があるんじゃなかろうかと私自身考えます。  具体的に申し上げますと、例えば少年審判につきましては、家庭裁判所で行うわけでございます。これは家庭裁判所の裁判官がお一人でなさるわけですね。しかも検察官の立ち会いができません。法律上できないことになっている。そして少年と家裁との間で審判が行われるというふうな形でございますね。その内容はもちろん公開はされません。それから、審判の決定が出ましても、送った検察側の方からは抗告はすることはできません、少年の方からは抗告できる等々、事実解明、審判の手続等々、大変問題もあろうかと思います。  そういうふうな問題を踏まえまして、私といたしましては、真剣に検討を進めるように今いたさせているところでございます。
  77. 逢沢一郎

    逢沢委員 御答弁ありがとうございました。  私どもといたしましても、この少年法のあり方について引き続き重大な関心を持って臨んでまいりたい、対応してまいりたい、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。  さて、外務大臣、一つお伺いをするわけでありますけれども、外務大臣は、非常に若いころから日米議員交流に大変積極的に対応してこられた、あるいは、いわゆる橋本総理が掲げておられるユーラシア外交、ことしの夏ですか、ロシアやあるいは中央アジアの方を非常に丹念に回られた、そういうことも承っております。  世界の国々から、日本の積極外交を大いに期待をしている、そういう声を、私もつい先般まで外務委員長をさせていただいておりましたので、よく承っているところでありますが、一方、ODAの予算も、財政事情もこれあり、とりあえず来年度は一〇%カットせざるを得ない、そういう厳しい状況もあります。また、率直に申し上げて、国民の間には、どうも日本の外交というのは主座が保ててないんじゃないか、腰がいま一つ弱いんじゃないか、憲法の中に、国際社会の中にあって名誉ある地位を占めたいと思うと書いてあるけれども、どうもなかなかそうはなっていないな、そういう率直な、素朴な声があるのも事実だろうというふうに思うのですね。  そういう国民世論の中にあって、あるいは予算が非常に厳しいという環境、しかし世界からは期待をされている、こういう状況の中にあって、小渕外交をいかに展開していこうとされておられるのか、あるいは、ポイントはこういうところにあるぞということについてお話をいただければというふうに思います。
  78. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 御指摘のように、日本国憲法にも、国際的に名誉ある地位を築きたい、こういうことでおります。そのために、我が国の外交も一貫してその立場で努力をしてきたことだろうと思っております。そういった観点で、外交は継続しておらなければならぬということでございますので、従来の外交をさらに努力を積み重ねて、大きく展開をしていかなければならぬと思っております。  ただ、日本の外交につきましては、そう華々しい、何といいますか、プレーアップだけでなくして、やはり地道なものが必要ではないかな、こう思っております。  したがいまして、今後とも、もちろん従来のように、日米関係をさらに友好にしなければならぬ、また近隣諸国との関係を強化していかなければならぬ、あるいはアジア太平洋を中心とした地域協力を推進する、さらに、国連を初めとするグローバルな取り組みを積極的に推進していくということでやってまいりたいと思っております。  御指摘のように、私も若いころから外国を回っておりまして、ぜひそういう観点に立ちまして、私としては、キーワードとして誠実、堅実、果断、こういうようなつもりでこれから取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  79. 逢沢一郎

    逢沢委員 時間が参りましたので、質問をそろそろ終わらせていただきたいと思いますが、最後に総理、総理は先ほどの御答弁の中で、自立した人間、自立した日本人の大切さ、このことについて触れられました。非常に私、感銘深くその言葉を受けとめさせていただきました。  新しい日本、元気な日本をつくっていくためにも、やはり最終的には教育の問題であり、その最終成果は、いかにして自立心を涵養するか、自立した日本人を育てていくか、そういうことに帰着するのだろうというふうに思います。そのことに、生意気な言い方になるかもしれませんけれども、非常に深く思いをいたしていただきながら、これからもリーダーシップをお願いをいたしたいというふうに思います。  厚生大臣の時代にはスモンと格闘され、運輸大臣のときにはあの国鉄問題をなし遂げられた。そして、通産大臣のときにはあの自動車交渉。非常に難しい問題ばかり、今まで閣僚として対応してこられた。今回のこの六大改革というのは、まさに時代の要請を受けた大きな改革だろうというふうに思います。  どうぞ、ますますの果断なるリーダーシップの展開を心から期待申し上げ、私どもも与党の立場から精いっぱい全力で支援をしていく、そのことを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  80. 松永光

    松永委員長 これにて深谷君、逢沢君の質疑は終了いたしました。  これより新進党の質疑者の質疑時間に入ります。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  81. 松永光

    松永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  午前中に引き続きまして、新進党の質疑者の質疑時間に入ります。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 松永光

    松永委員長 これにて新進党の質疑者の質疑時間は終了いたしました。  これより民主党の質疑者の質疑時間に入ります。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 松永光

    松永委員長 これにて民主党の質疑者の質疑時間は終了いたしました。  次に、志位和夫君。
  84. 志位和夫

    志位委員 私は、日本共産党を代表して、質問いたします。  まず、本日の予算委員会がこのような不正常な形で開かれることになったことについて、私たち立場を述べておきたいと思います。  不正常な事態を招いた最大の責任は、国民がその疑惑解明を強く求めているにもかかわらず、泉井氏などの証人喚問に対して、誠意ある姿勢を示してこなかった自民党にあります。また、各党の合意のないまま、職権で委員会開催を決めた予算委員長の強引なやり方に対しても、厳しく抗議の意を表しておきたいと思います。  同時に、我が党は、このような場合においても欠席という方針はとりません。それは、政治倫理、社会保障、新ガイドラインなど、国民の前で徹底審議で明らかにしなければならない問題が山 積しており、論戦を通じて政治の問題点を明らかにしていくことが政党の責務であると考えるからであります。  質問に入ります。  まず、佐藤孝行氏を総務庁長官に任命した問題についてであります。総理の政治姿勢をただしたい。  この問題で問われているのは、何よりも総理自身の政治倫理であります。総理は、過ちを一度犯した人はそのレッテルを一生背負わなければならないのか、私は二度のチャンスが与えられてもいいのではないかと思う、こう言って、考えに考えた上で佐藤氏を任命した。  しかし皆さん、その過ちというのは、ロッキード事件での受託収賄罪という権力行使にかかわる犯罪であります。そして、それを犯した人というのは、その誤りを一貫して認めず、無反省を続けてきた人物であります。権力犯罪を犯しながら無反省の人を、二度のチャンスが与えられてもいいとして、再び権力の座にっける。首相のこの政治倫理観が今問われているわけであります。  あなたは、これが根本から間違った考え方であったとお認めになりますか。
  85. 松永光

    松永委員長 ちょっと待ってください。  この委員会開会について、委員長が強引に開会をしたという指摘がありましたけれども、この点は、御党の理事さんも御承知でございますけれども、数回にわたる理事会理事懇談会を開きまして、多数の意見を聴取いたしまして、その結果、決めた委員会でありまして、強引という言葉は適切でないと思います。
  86. 志位和夫

    志位委員 各党の合意による委員会運営というのは、当然の国会の運営のルールであります。各党の合意がなかった、やはり一方的で強引と言わざるを得ない、このことははっきり申し上げておきます。  どうぞ総理に……
  87. 松永光

    松永委員長 ちょっとお座りください。
  88. 志位和夫

    志位委員 総理に答弁を求めているんですから、これ以上この問題であなたとやってもしようがない。総理。(発言する者あり)
  89. 松永光

    松永委員長 それでは、橋本内閣総理大臣
  90. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、所信表明で申し上げましたように、「政治により高い倫理性を求める世論の重みに十分思いをいたさなかったことを深く反省するとともに、多大な御迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。」と率直にその気持ちを申し上げました。その上で、議員が述べられました点に、一点、私は整理をさせていただきたいと思います。  私の言葉として引用されました二度の機会という、その答えをいたすに至りました質問、それは、海外における記者懇談の席上出た言葉でありますけれども、特定の人を名指しての質問ではございませんでした。そして、一般論としてお答えをしたということであります。その点は事実関係としてぜひ、いや、ちょっとお聞きください、お尋ねなんですから。  その上で、私は世論の重みというものを確かに見誤り、その混乱の責任は私にあると存じます。ただ、それまでに私が考えました中には、院の永年勤続表彰、あるいはこの衆議院という院におきまして再度にわたる特別委員会委員長という重責を担われ、また党において行政改革の責任者を務めていただいている、その仕事というものを評価してのことでございました。  しかし、それが世論から許されなかったことは御承知のとおりであり、この点、心からおわびを申し上げます。
  91. 志位和夫

    志位委員 特定の人を指して言ったのではないというお話でしたが、中国訪問中の総理の発言が日本で報道されたときにもう、これは佐藤氏のことだと、特定の人だというふうに国民は少なくともみんな受け取った。そして、佐藤氏が任命された後の記者会見でも、二度のチャンスが与えられていいのではないか、これは特定の人に対してあなたは言っているわけです。  それで、この問題についてあなたは、世論の重みを見誤った、結果として国民から批判を浴びたからまずかったんだというお話なんですが、私が聞いているのは、二度のチャンスを与えてもいいというあなたのその倫理観ですよ。これがよかったのかどうかというのを聞いているわけです。その問題についてお答えにならなかったので、こういうふうにもう一つ角度を変えて聞きましょう。  あなたは、国民のより高い倫理性ということをおっしゃいました。それでは、あなたが思いをいたさなかったという国民のより高い倫理性に照らせば、佐藤氏の任命は誤りであったということになるんでしょうか。はっきりお答えください、誤りであったかどうか。
  92. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、先ほども正確に申し上げましたように、最初に新聞に報道されましたものが、海外における質問、これは特定人を指してのものではなかったという事実関係を申し上げました。  また同時に、院における永年勤続表彰、そして特別委員長として再度務められた際、国会は全会一致で、また委員会は全会一致で委員長に選任をされました。そうしたことに私が、ある意味で永田町の論理におぼれていたという点を反省するということは、繰り返し私はおわびを申し上げているつもりであります。
  93. 志位和夫

    志位委員 永年勤続議員だということで、あるいは党の行革本部長でやってきた、そのことをもって……(橋本内閣総理大臣「院の特別委員長と申しました」と呼ぶ)党の行革本部長も先ほどおっしゃられたので……(橋本内閣総理大臣「いや、院の特別委員長と申し上げました」と呼ぶ)まあ院のことも含めてでいいでしょう、ともかく実績があるから閣僚に認めてもいいんだと。  しかし、先ほど言ったように、収賄罪という、受託収賄罪という権力犯罪を犯して無反省の人なんですよ。それを閣僚に認めてもいいんですか。それがあなたの政治倫理なのかということを聞いているんです。それが誤りではないかというこの御質問にお答えください。
  94. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 ですから、私は正確に、院の特別委員長を再度ということを申し上げました。これは、衆議院で委員会の互選による、各党の選任によって就任するポストであります。そして、確かにそうした点に私は永田町の論理というもので流されましたと、はっきりとおわびを申し上げました。この点は、国民の厳しい世論というものを改めて今感じております。
  95. 志位和夫

    志位委員 それでは、その永田町の論理というのは間違っていたんですか。間違った論理ですか。
  96. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これはあるいはおしかりを受けるかもしれませんが、特別委員会委員長がどのように互選されるか、議員御承知のとおりであります。そして、全会一致で院の大事な役割を負われました。そうした点に私が気をとられた、あるいはそうした点を高く見過ぎた、このおしかりは甘受いたします。
  97. 志位和夫

    志位委員 責任逃れしないでいただきたい。国会で仮に特別委員長に選任されていたとしても、閣僚に任命したのはあなたなんですよ。国会でどのような判断をされようと、任命責任は免れないんですよ。
  98. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、ですから、院がどうこうと申し上げておりません。ただ、御指摘のような判決の後におきまして、幾つかの事実が積み重なってまいりました。その中で、私が世論を見誤る、その責任は私自身が甘受いたしますと繰り返し申し上げております。
  99. 志位和夫

    志位委員 これだけ聞いても、自分の政治倫理観、収賄罪を犯した人にも二度のチャンスを与えられていいというあなたの政治倫理観に対する反省のお言葉はありませんでした。この問題についての反省の言葉がなかった。そして、私が二番目に聞いた、いいですか、あなたの言う高い倫理性に照らして考えたらこの任命は間違っているのではないかということについても、誤りだとお認めにならない。  あなたがみずからの政治倫理観について全く語 らないし、反省しないので、もう一点、別の角度から聞きましょう。  国民世論があなたに求めた高い倫理性というのは、一体何か。簡単な話ですよ。収賄罪を犯した人は権力のポストにつけてはならない、閣僚のポストにつけてはならないというのが、国民の求めた、あなたの言葉で言えば高い倫理性でしょう。  それで、これは別に高い倫理性というほどのものではない。常識的な倫理ですよ。最低限の倫理と言ってもいい。これを、あなたはそれに十分思いをいたさなかったとおっしゃいましたね、そのことを反省するとおっしゃいましたね。それでしたら、私聞きたいのは、この国民が求めた高い倫理性、すなわち、収賄罪を犯した者は閣僚につけてはならぬという国民の倫理は、あなた、受け入れるんですか。今受け入れていますか。(発言する者あり)
  100. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 恐縮です、静かにお聞きをいただきたい。  繰り返し私も同じことを申し上げております。今何回も同じことを申し上げましたけれども、私自身が率直におわびを申し上げるということを繰り返し申し上げております。  その上で、与党三党は、政治倫理等に関する三党確認というものを確認し、これに基づいて、政治倫理の確立に向けて信頼回復に努力をしていこうと今いたしております。そのプロセスにおきまして、先ほど申し上げましたように、院の中で果たされたその重責というものを私が永田町の論理で評価をしたことはおわびを申し上げるということも申し上げております。  御理解はいただけないのかもしれませんが、私なりに率直にお答えを申し上げているつもりであります。
  101. 志位和夫

    志位委員 私が質問したことにことごとくお答えにならなかったのですよ、あなたは結局。  結局、二度のチャンスが与えられていいという政治倫理観の誤り、そして、高い倫理性に照らせば任命は許されないという問題、そして、あなた自身がみずから言った高い倫理性というものをみずから受け入れるのかということについても答えなかった。何も答えない。それで、すべて答えないでおいて、反省すると口先だけで言っても、これは反省になりませんよ。私は、これは本当に総理の資質にかかわる問題だ、こういう問題について本質的な反省がなければ同じことが繰り返される、こういう政治であってはならないということをはっきり言っておきたいと思います。  その問題に関連して、泉井疑惑についてもお伺いしたい。  この問題は、石油業界から六十四億円もの金が泉井氏に渡り、そのうち二十億円もの金が政界、官界にばらまかれていたという問題です。なぜそんな巨額の金が、一体何のために、だれに、どれだけ渡ったのか。それによって行政がゆがめられたことはなかったのか。このことの解明を今国民は求めております。これは司直の手に任せて済む問題ではないと思います。  この問題の解明は、個々の政治家任せではなく、政治が挙げて究明すべき課題だと考えますが、総理の基本的な考えをお聞かせください。
  102. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 現に裁判中になっております事件について、立ち入って申し上げる立場に私はないと存じます。  その上で、何回かこれもお答えを申し上げておりますけれども国民の政治不信を払拭していくために、政治家が常に自戒をしなければならない、襟を正さなければならないと考えておりますし、その意味で、明らかにしなければならないことは、適切な場において、政治家がとおっしゃるのであれば政治家みずからの判断で明らかにされるべきものだと存じます。
  103. 志位和夫

    志位委員 政治家みずからの判断で明らかにされるべきだということをおっしゃいました。この問題については、山崎政調会長も、国会で決まれば出ていくということをおっしゃっているわけですよ。それなら、真相解明のためには、泉井被告、泉井氏から二億円余りの金を受け取ったと認めている自民党山崎政調会長などの証人喚問が不可欠だと思います。  この問題は、努力するとかあるいは国会が決めることという逃げ口上じゃなくて、総理としての決断をお聞かせ願いたい。自民党総裁であるあなたが決定すれば、決断すれば、いつでも証人喚問は可能になるわけです。あなたの判断で、これは出るべきだということを言えば、そのイニシアチブを発揮すれば、本人は出ると言っているわけですから、すぐ実現するわけでしょう。いかがですか。
  104. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、明らかにしなければならないものは適切な場において政治家みずからの判断で明らかにされるべきと、私自身の意思を申し上げました。その上で、現に理事会等においても御論議をいただいていると承知をいたしております。
  105. 志位和夫

    志位委員 これだけ重大な疑惑がありながら、疑惑解明のための責任をどうも果たそうとしていない姿勢ですよ、それは。あなた自身がどういう立場をとるかを私は聞いたのですから。  私は、全体として、この佐藤問題あるいは泉井問題全体を通して、政治倫理というものに対する感覚が麻癒しているのではないか、こう思わざるを得ません。これは首相だけではなくて、あの佐藤氏の任命のときに、ここに座っている閣僚のだれ一人として異議ありと言った方はいなかった。全体が感覚麻癖になっている、こう言わざるを得ません。  私は、こういう事態に対する政治不信を解消する上でも、一刻も早い証人喚問委員長に求めます。いかがですか。
  106. 松永光

    松永委員長 それでは、私から答えます。  きのう私の考え方は文書で各党に配りましたが、要するに、予算委員会の場で事実関係を議論して、そして証人喚問必要性の論議を十分した後、各党が話し合いで決めればいいことだと。まだ……(発言する者あり)私の見解を申し上げているのです。  今、いろんな週刊誌等には出ているようでありますが、この委員会の場ではまだ出ていないんですよね。だから、論議をした上で各党が誠意を持って協議をして決めるべきもの、我々も誠心誠意そのための努力をしたいというのが私の考え方です。
  107. 志位和夫

    志位委員 一刻も早く喚問が決まるような努力を求めたいと思います。  私は、次に、社会保障の問題について伺いたい。  みずからの政治倫理に対しては大変甘い態度をとりながら、国民には改革の名で、あなた方の内閣は痛みを押しつけている。消費税の増税と特別減税の打ち切りによる七兆円の負担増に追い打ちをかけて、九月一日から総額二兆円に上る医療費負担増が実施されました。これは何をもたらしているのか。深刻な受診抑制という事態であります。  実施後一カ月の時点で、全日本民主医療機関連合会の行った全国調査があります。これを見ますと、ことし九月の受診数は、昨年九月に比べて六・二%減少しております。全国の外来患者の総数は平均で一日七百八十五万人ですから、一日約五十万人もの患者さんが病院から足が遠のいた、こういう実態があるわけです。  私が何よりも重大だと思うのは、本当に治療を必要としている患者さんが負担増によって医療を受けられなくなっていること、すなわち、必要な医療が抑制され中断されるという事態が広範に存在しているということであります。私は先日、東京の大田病院に伺い、実際をつぶさにお聞きしましたが、実態は大変深刻であります。  お医者さんが危惧していることの一つは、慢性病の患者さんであります。例えば糖尿病は、ある程度進行しますとインシュリンの自己注射が必要になります。これは病状を悪化させないためには絶対に必要な治療であります。打たなければ腎臓などが悪くなり、透析ということになる。ところが、今回の負担増で、健保本人の場合で、この治 療をやっている患者さんの自己負担額は、平均で月三千円から七千円ぐらいにはね上がる。負担が高額なケースは月一万五千円近くになる。もう注射は続けられないという患者さんが次々出ているんですよ。これは私が実際お聞きしている話であります。まさに寿命を削るという実態になっているのではないか。  私、まず伺いたいのは、政府がこの事態をどう認識しているかという問題であります。  厚生大臣は、九月十八日の参議院厚生委員会での我が党議員の質問に答えて、必要な医療が抑制されているとは思わないというお答えをしたと思います。そこで私、総理に伺いたいんですが、総理も厚生大臣と同じ認識ですか。この二兆円の医療費の負担増をやった責任者ですから、総理に伺いたい。厚生大臣の答弁はわかっているんです、総理に伺いたい。総理に聞いているんですから。
  108. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 厚生大臣より答弁をさせます。
  109. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 九月一日から実施されました医療制度の改正案につきましては、まだ実施後一月ちょっとしかたっておりません。実態がどうあるか、今後、より詳しく調査したいと思いますけれども、私は、一月千二十円の高齢者に対する医療が一回五百円になった、四回まで二千円、それ以上は支払わなくて結構だ、また、健保の保険においては一割から二割負担になったということにおきまして、必要な医療が抑制されているとは思っておりません。
  110. 志位和夫

    志位委員 実態はこれから調べるということで、実態をつかんでおられないわけでしょう。それなのに、必要な医療は抑制されていないとどうして言えるのか。私は、本当に今国民が陥っている痛みに思いを寄せて、本当にこの実態に対してきちんとした調査をやることを強く求めるものであります。  しかも、今回の負担増というのは第一歩にすぎない。今度の国会に出されている財政構造改革法では、一切の聖域を設けずのかけ声で、社会保障費を真っ先に削減の対象に挙げ、医療費の連続的な負担増を進めようとしています。高齢者の医療費負担の一割定率制への移行、サラリーマンの自己負担の三割から五割への引き上げ、難病患者にまで医療費の自己負担を導入するなどなどであります。既に九月実施の負担増でさきに挙げたような深刻な受診抑制、治療中断が起こっている上に、こんな連続的な負担増をかぶせるというのはとんでもないことだと私思います。  そこで、私、財政再建というものに関する基本的な哲学といいますか、考え方といいますか、この問題について総理と議論してみたいと思うんです。  財政再建が国政上の急務であることを否定する者はだれもいません。しかしそれは、国政上の浪費、巨額の公共事業とか高過ぎる薬価とか、これを削ることによって進めるべきであって、国民が本当に必要としている社会保障や必要な医療を削ることは財政再建ではありません。これは逆立ちした考え方だと私は思います。  ここで総理にそもそもの認識を伺いたいんですが、日本の社会保障の給付水準というのは高過ぎて真っ先に抑制の対象に挙げなければならないようなものだと認識しているのかという問題です。  これは厚生省の社会保障研究所のデータからつくった資料ですが、国民所得に占める社会保障給付費の割合であります。日本は一四・六%、アメリカ一九・四%、イギリス二六・九%、ドイツ三一・五%、フランス三五・六%、五カ国の中で群を抜いて給付水準が低いわけですね。  総理に基本的な認識をお伺いしたいのですが、日本という国は諸外国に比べて社会保障に金を使い過ぎているという認識でそもそもおられるのか。もちろん、社会保障の中の薬価のむだとか、そこにメスを入れて効率化を図ることは当然必要ですよ。しかし、そもそも金を使い過ぎているのかどうか、この認識を伺いたいのですが、いかがですか。
  111. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 国民経済計算の体系で一般政府ベースの社会保障移転のGDP比を見ました場合、平成六年度で一二・七、アメリカの一二・八、あるいはイギリスは確かに一五・四、多少高いわけですが、そういった数字と比較してみても遜色のない水準だと私は思います。  また、今、少子・高齢化というものが従来予測をされていた以上の勢いで進展している中に、歳出の自然増が非常に大きく見込まれる状況、この中で財政構造をこのままにしておく場合に、我が国の経済の活力がどうなるかということは今さら申し上げるまでもないことでありますし、将来の働き手が背負い切れない負担を残さないようにしていくためにも、我々は今努力すべきことが多々あると考えております。  その中で、公共事業費を抑えていく努力をすることも当然でありますし、社会保障全体の中で大きなウエートを占める医療の世界において、薬剤費の節減、むだを省く努力をしていくことも当然であります。同時に、将来の若い人々が背負い切れるような公平な受益と負担というものを考えていかなければならない状況にあることも、私は御理解がいただけると思います。  その意味で、財政構造改革のルールを法律の形で我々は御審議を願いたい。今国会お願いを申し上げておりますけれども、社会保障に関しては、例えば公共事業をマイナス七という数字を置きました中でも、その比率は決して大きくはありませんが、それだけの拡大の余地を残しているという状況も申し上げておきたいと思います。
  112. 志位和夫

    志位委員 総理は今、国民経済計算の一般政府ベースの社会保障移転を比べれば遜色ないとおっしゃいました。イギリスしか挙げなかったけれども、このベースで比べても……(橋本内閣総理大臣「アメリカも言いましたよ」と呼ぶ)アメリカは一二・八、イギリス一五・四、これしか言わなかったけれども、ドイツは一八・二、フランスは二三・三であります。だから、この政府ベースでの社会保障移転という概念をとっても、遜色ないとは言えないですね。  そして、なぜこの給付費とそんなに差が出てくるのかといいますと、先ほどあなたが言った社会保障移転という概念の中には、例えば公務員のお医者さんなんかの分が入ってこないわけですよ。ところが、イギリスの場合は病院のお医者さんは公務員ですから、この移転の中には入らないで政府の一般消費支出の中に入るわけですよ。しかし、給付は全部こういうふうに高く出てくるわけですね。だからILOは、社会保障給付費ということで、政府消費支出の中に含まれるお医者さんの人件費とかそういうものを全部勘案してこういう表をつくっているのですから、遜色ないなんということは到底言えない話ですよ。これが第一点。  それから、もう一点ですけれども、あなたは今、受益と負担ということを言いました。このバランスということを言いました。私、そう言われるだろうと思って、もう一枚こういうグラフをつくってまいりました。これは、税、保険料等の負担に対する社会保障給付の割合であります。  これをよく見ていただきたいのですが、これは厚生省の社会保障研究所の資料による算出でありまして、日本については、欧州諸国にない年金基金などの積立制度があることを考慮して、積立分相当額は税、保険料等の負担額から控除して算出してありますから、これはそれでも少し高目に出ているのですけれども、これで比べても、日本の場合三九・九%、アメリカ五三・四、イギリス五五・八、ドイツ五九・○、フランス五六・九。ですから、負担にふさわしい給付も返ってきていないんですよ、日本の場合。低負担だから給付が低いという理由にならないのですね。  逆に言いますと、現在の負担と同じでも、例えば、アメリカ並みの割合にすれば社会保障給付は十九兆円ふえる。イギリス並みにすれば二十三兆円ふえる。ドイツ並みにすれば二十七兆円ふえる。フランス並みにすれば二十四兆円ふえる。ですから、このお金はどこに消えちゃったかという問題があるのですよ。ここには、考えてみるべき 日本の財政の深刻なゆがみが反映していると私は言わざるを得ません。その一番の根本というのは、やはり公共事業費にあると思うのですね。  日本の場合、国と地方を合わせた公共事業費は約五十兆円。社会保障の公費負担分は、ILO基準でいいますと約二十兆円ですから、こんな国は世界にないんです。アメリカ、ドイツ、フランスでは社会保障の公費負担は公共投資の数倍にもなる。ですから、ほかの国は社会保障の公費負担の方にお金を使っているんですよ。公共投資が社会保障を食いつぶすというこの異常な財政構造があるために、負担にふさわしい給付が日本の場合返ってこないんです。ここのところを、内閣の皆さん、考えていただきたい。ここに正すべき一番の財政のゆがみがあるんじゃないでしょうか。総理、どうでしょう。総理。
  113. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 日本の社会保障給付費が低いと言われておりますが、これからの高齢化率を考えると、私は、今やヨーロッパの福祉水準に遜色ないと思っております。  現に今年度予算においても、また来年度予算においても、国民の税金がどの分野に一番使われているかというと、厚生省、社会保障関係予算であります。それはことしにおきましても十四兆五千億円国民の税金が使われている。一般政策費のうちで、七十七兆円の一般会計のうちで、国債費が十六兆円を超えて、これは異常で、もうこれ以上借金はできないという状況になっているわけですから、それを除いていくならば、政策経費として今国民の税金が一番使われている分野は、年金とか医療とか福祉の社会保障関係費である。公共事業費ではない。いかに日本が今まで社会保障に力を入れてきたか。  これから高齢者はどんどんふえていく。若い者は少なくなっていく。給付と負担の公平化を図る上においても、将来余り負担がふえないようなことを考えながら、お互い、年金にしても医療にしても介護にしても支えていく制度をつくっていきたいということで、今、改革が必要だ。  社会保障は大事であります。それは、経済成長の成果をこれまでどんどん社会保障の充実に回すことができた。これからも経済成長の成果と社会保障の充実というものをどうやって調和を図っていくかが大事でありまして、日本におきまして、今、国民の一番の税金が社会保障に使われていることを御理解いただきたい。
  114. 志位和夫

    志位委員 今の厚生大臣見解は、二つの点で間違っています。  まず、高齢化率が低いからだとおっしゃいましたけれども、この一九九二年の時点で見て、六十五歳以上の日本の高齢化率一三・一%、それで一四・六%の給付です。ドイツはこのとき高齢化率は一五・〇%ですよ、それで三一・五%。倍以上もの差があるじゃないですか。だから、高齢化率が若干低いということで説明つかないような差なんですよ、これは。これが第一点。  それから第二点は、国の税金では一番社会保障に使われているというお話でしたけれども、私が言っているのは、国と地方を合わせた税金の使われ方が五十兆と二十兆になっている、これはもう紛れもない事実であります。その問題を指摘したわけで、何らあなたはその問題に答えようとしていない。  公共事業について削減するというお話がありましたけれども、公共事業、今度の六百三十兆の問題、基本計画の問題、ここでも二月の予算委員会で総理と大分議論しました。あのとき、見直しをあなたは約束されて、どうするのかなと思って見ていたら、十年間の計画を三年延ばすというだけのことで、六百三十兆の枠は確保する。そうすると、十年間四百七十兆の枠は確保する。そうなると、さっき言った五十兆、二十兆の体制はほとんど変わらないのです。  最後にもう一枚、これを見ていただきたい。これは、政府の財政構造改革法に基づく公共投資額と社会保障費の将来推計です。  現在、九七年度で、大体二十一兆対五十兆という数字が出てくるわけですが、この三年間、政府が言うように公共投資を若干減らしたとしても、全体四百七十兆という枠がかかってきますから、こういう推移をどうしてもたどります。一方、社会保障の方は、経済成長の伸び率以下に抑制するわけですから、この程度であります。だから、二〇〇三年になっても四十六・八兆と二十四・六兆、大体二倍ぐらいのこのゆがみは正されないのですよ。  だから、私は、財政再建というのだったら、ここにもつと思い切ったメスを加えなければ本当の意味での財政再建をやることはできない。今、日本じゅう回って、むだなダムとか、船の来ない港とか、飛行機のとまらない農道空港とか、もうそういうむだの遺物はごろごろ転がっているし、今なお続いているものもたくさんあるわけですから、財政再建というのだったら、このゆがんだ仕組みを正すことを強く求めたいと思います。  次に、新ガイドラインについて質問いたします。  その最大の焦点というのは、日本周辺事態における協力として、海外での日米の軍事共同を進める計画をつくることにあると思います。現行安保条約では、米軍と自衛隊の軍事的な共同対処は、第五条、すなわち日本有事の対処に限られております。ところが、新ガイドラインでは、日本に対する何らの武力行使がなくても、周辺事態にまで日米の軍事的な共同対処を広げようというわけですから、これは、私どもは、安保条約の重大な改変であり、改悪であると考えております。  幾つかの角度から総理に伺いたい。  まず第一に、周辺とは何かという問題です。  新ガイドラインでは、米軍が周辺事態への対応として武力行使に踏み切った場合に、「日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。」こう書いてありますね。  そこで、まず、安保条約第六条で言う「極東」の範囲を確認しておきたいと思います。  政府は、六〇年の安保条約改定当時の政府統一見解以来、極東とは、日米両国が平和及び安全の維持に共通の関心を有している区域であり、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾もこれに含まれている、こう一貫してこの極東については政府統一見解を維持されてきたと思います。  総理に伺いますが、この見解は、新ガイドラインが結ばれた今日でも変更はありませんね。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず、周辺事態という問題について議員からお触れになりましたけれども、周辺事態というものが地理的な概念ではないということ、事態の性質に着目している概念であるということ、そして、これを地理的に一概に規定できないということを繰り返し御答弁を申し上げてきているところであります。  そして同時に、極東という言葉の定義も変えていないかということでありますなら、これは従来から変えておりません。異なった概念として存在をいたします。
  116. 志位和夫

    志位委員 極東の概念は変えていないという御答弁を確認いたします。  そうしますと、台湾も極東に入るわけですね。そうしますと、台湾地域の平和と安全という名目で活動する米軍は、安保条約の目的の達成のため活動する米軍ということになるわけです。そして、新ガイドラインでは、先ほど言ったように、安保条約の目的達成のために活動する米軍に対して後方地域支援を行うと書いてある。ということは、新ガイドラインの仕組みでは、台湾地域の平和と安全のためという名目で米軍が活動を始めたら、日本は後方地域支援を行うということになるわけですか。総理、お答えください。
  117. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 従来からこれも繰り返して申し上げておりますことですが、日中の間におきまして宣言が、また友好条約が結ばれました際、台湾が中国の一部であるということ、そして、この概念の上に立って、我々は政治的にこれと縁のない状況を今日まで続けてきております。同時に、台湾海峡をめぐる両当事者の間においてこの 問題が平和裏に解決されることを心から我々が期待している状況も、また同じであります。  我々は、台湾の独立あるいは一国二制といった考え方、こうした考え方をとらないということを従来から申してきておりますし、台湾が中国の一部であるという中国の主張に対して理解をし、今日までその上での平和を祈念いたしております。
  118. 志位和夫

    志位委員 お聞きしたことに全然答えていないのですよ。日中共同声明でそういうことがうたわれているということは百も承知して聞いているのです。  極東の範囲に台湾が入る、そうすれば、台湾で行動する米軍は安保の目的達成のための活動ということになる、そうしたら、新ガイドラインの発動の対象に、あなた方の論理でいってもなってしまうではないか。これは、はっきりならないということを言えるのかということを聞いているのです。総理、これはちゃんと答えてくださいよ。総理。
  119. 松永光

    松永委員長 いや、ちょっと、条約上のことですので、この際専門家に答えさせます。  外務省高野北米局長
  120. 志位和夫

    志位委員 総理、答えてください。総理です。今の答弁との関係ですから、ちゃんと答えてください。だめです、だめ。
  121. 松永光

    松永委員長 一たん総理が答えた、それに基づく答弁だから。総理が答えて、その補強的なことを局長にやらせますから。総理が答えて、その細部にわたっての答えだから。
  122. 志位和夫

    志位委員 簡単にやってください。
  123. 高野紀元

    ○高野政府委員 お答え申し上げます。  新指針との関係で申し上げますと、周辺事態への対応に際しての協力でございますが、米軍の活動に対する我が国の後方地域支援等が掲げられております。  周辺事態は、地理的な概念ではございませんで、事態の性質に着目した概念でございます。特定の事態が周辺事態に該当するか否かは、その事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断することになるということで、仮定の状況について申し上げることは困難でございます。
  124. 志位和夫

    志位委員 仮定の問題だと言われたので、仮定では済まないということを私は言いたい。アメリカは、台湾関係法という法律をつくって、台湾有事への対応方針を持っているわけですよ。  キャンベル国防次官補代理は、九月十九日の記者会見で、新ガイドラインは台湾を含まないのかという台湾記者の質問に答えて、台湾に対する米国の関与の明確な指針は台湾関係法に示されている、この法律に基づいて米国は台湾が安全を確保するための手段を提供するし、台湾有事に対応するために必要な兵力をアジア太平洋に維持している。つまり、台湾有事が新ガイドラインの対象から排除されないという基本認識をアメリカ側は言っているわけですよ。  アメリカは、一九七九年の米中国交樹立の際、一つの中国の立場を確認しながら、今述べた台湾関係法という国内法をつくり、台湾への脅威とそれによる米国の利益に対して、その法律の第三条で、いかなる危険にも対処するためとるべき適切な行動を決定しなければならないとして、軍事力の行使を含めて台湾自衛に援助を与えることを、みずからの法律でみずからに義務づけているのです。  ですから総理、これは架空の問題じゃないのです。アメリカがこの法律に基づいて台湾防衛のためとして武力行使を起こしたら、そして、これは日米安保条約の目的の達成のための活動だといって日本に協力を求めてきたら、日本はそれに協力するのか。それとも、そういう協力はできない、あなたの言った一つの中国、この立場に立てば協力できません、はっきりきっぱり拒否するのか。これが問われているわけです。総理、お答えください。
  125. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、専門家からもお答えをいたしましたけれども、大変強く仮定の問題に固執して御質問でありますが、ある事態が周辺事態なのかどうか、これは日米両国それぞれの政府がそれぞれ主体的に判断することであります。  私は今、我が国の周辺に議員が想定されるような事態が起こることを望みませんし、むしろ、我々は平和裏に問題が解決するための努力をこそ継続すべきであろう、そのように思いました。
  126. 志位和夫

    志位委員 平和的解決を望んでいるのは当然であります。私どももそうであります。しかし、私は仮定の問題に固執して聞いているのじゃない。  一九九六年三月の台湾海峡の危機の際はどうだったか。台湾の総統選挙に対して中国が軍事威嚇を行った際、アメリカは空母二隻を初めとする最大級の軍事力を投入した。アメリカ下院では、その際、中国が台湾を攻撃した場合、台湾関係法に基づいて、台湾防衛のたの米軍の軍事介入を求める決議も上げられました。  このとき、アーミテージ元国防次官補は、万一、米国が台湾海峡での戦闘に巻き込まれたら、当然日本に対して医療面や物資補給面での協力を期待する、こう述べました。アワー元国防総省日本部長は、危機が去った後に、唯一残念なことは、日本が海上自衛隊の護衛艦の一、二隻を送って、米空母インディペンデンスとともに地域の安定のために米国と協力しなかったことである、こう述べました。  これはことしの七月二十七日付の東京新聞の報道ですが、「首相官邸が指示 米中衝突を想定防衛庁、極秘研究」という報道がされました。非公式の検討だということですが、  その結果、中国と米国が台湾近海で衝突した場合、米軍に不足する後方分野を自衛隊が支援する必要があるとの結論になった。   具体的には、台湾近海に派遣された米艦隊に給油艦が二隻と少なかったことから海上自衛隊の補給艦による洋上給油、米艦隊のレーダー機能を補う航空自衛隊からの情報提供、陸上自衛隊による米軍負傷兵の九州各駐屯地への収容が、必要な項目としてあがった。 これは、そういう研究までやっているじゃありませんか。実際、このときに情報提供を緊密にやった、これは防衛庁も認めていることであります。  そこで、総理にもう一回お尋ねしたい。  先ほどおっしゃいましたけれども、中国訪問の際、あなたは、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部という中華人民共和国の立場を理解し、尊重するという七二年の日中共同声明の立場を堅持するとおっしゃられました。こうした一つの中国という立場をとる以上、アメリカが仮に台湾防衛のために軍事力を発動することになれば、これは中国の内政問題への介入になる。それに日本が協力すれば、日本も中国の内政問題に介入することになる。これは、各国の主権と独立に背く無法な行為になってしまいます。ですから、この問題は仮定の問題じゃない。アメリカは指針を持っている。法律まで持っている。実際に、空母も動かすわけですよ。  ですから、総理に伺いたいのは、アメリカが台湾関係法を発動してその地域に軍事介入しても、日本は絶対に協力すべきじゃない。首相、この問題について、協力を拒否するときっぱり言えますか、拒否すると。これは、協力をするということになれば内政干渉になるわけです。いかがですか、協力を拒否すると言えますか。
  127. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先ほど、その周辺事態の判断は日米両国政府それぞれが主体的に行うものと申し上げました。その上で、議員の、仮定していないと仰せになりますけれども、仮定されているケース、それ自体が私は双方に対する内政干渉ではないかと思います。
  128. 志位和夫

    志位委員 これは私、事実を申し上げたので、まさにそういう問題をアメリカが法律を持って進めようとし、実際に日本の防衛庁でもこういう研究をやっている、この事実を申し上げたわけです。私、拒否するかどうかをあなたに聞いた。拒否するとあなたは言わなかった、言えなかった。ここに大問題があると思うんですよ。  周辺事態というけれども地理的概念じゃない、何度もおっしゃいました。そんなことはわかっている。耳にたこができるほど聞きました。地理的 概念じゃないということは、地理的に無限定ということですよ。無限定ということは、どこでも発動の対象となり得るということになります。台湾についても、アメリカが武力介入を行えば、一つの中国という、日本の国是ですよ、そして国会でも確認された方針を破り捨てて、日本が無法な軍事干渉に自動的に参加する危険がある。ここに新ガイドラインの大問題があるということを私は指摘したいんです。  私、第二に、違う角度からもう一つお聞きしたいのは、アメリカが行う武力行使というのは常に正義かという問題です。  国連憲章では、各国の武力行使を一般的に禁止し、国際紛争の平和的解決を述べた上で、武力行使が許される唯一の例として、例外として、国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、すなわち武力侵略が行われた場合の自衛反撃を挙げています。  ところが、ここに現物を、コピーを持ってまいりましたが、アメリカの一九九五年度の国防報告を見ますと、「米国が軍事力を行使することがあるケース」としてまず挙げているのは、「米国の死活的な利益がおびやかされるケース」となっています。そして、こう述べています。   死活的な利益とは、米国または主要な同盟・友好国の生存にかかわる場合、米国の緊要な経済利益にかかわる場合、もしくは米国または同盟国に対する将来の核脅威を伴う場合である。米国が死活的な利益への脅威に直面していると判断した場合には、その脅威を抑止し、あるいは終わらせるために軍事力を行使する用意がなければならない。その場合にはまた、米国の死活的な利益が将来受ける脅威に対する予防措置として行動することも必要である。 アメリカの軍事力行使の基準はこうなんですよ。経済利益にかかわる場合、将来の核脅威に対しても、また将来受ける脅威に対する予防措置としても、軍事力を行使すると宣言しているのです。  総理、これは武力侵略に対する自衛反撃じゃありませんよ。こういう武力行使、こういう性格の武力行使をアメリカがやった場合でも、日本の協力の対象になるのですか。そういう場合は、これは除外されるのですか。どっちでしょうか。総理、お答えください。
  129. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 議員も御自分の主張を述べられまして、そのまま次々へと話題を移されますので、改めてもう一度、私は正確に文章をそのまま読み上げて、お答えをまず申し上げます。  台湾をめぐる問題、先ほど来大変執拗にお問いかけがございました。これに対しての我が国の立場というものは、日中共同声明において表明をいたしておりますとおり、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというのが我が国の政府の立場であります。そして、我が国としては、中国政府が台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると信じており、現在の情勢認識といたしましても、この地域をめぐる武力紛争が現実に発生するとは考えておりません。  我々は、この基本的な立場に立った上で、台湾をめぐる問題というものが関係当事者の間において平和的に話し合いによって解決されることを望んでいるということを、私は繰り返し申し上げております。その上で、委員も繰り返し同じことを断定されてお尋ねがありましたので、改めてこの点を申し上げます。
  130. 志位和夫

    志位委員 今の質問に全然答えてなくて、さっき言った答弁の繰り返しですよ。私は、そんなことはもう百も承知で聞いているのです。アメリカの側が武力行使をやった場合に拒否するのかと言ったのに対して、あなたははっきり拒否すると言わなかったという事実をさっき確認したわけであります。総理、今の問題にちゃんと答えてください。
  131. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 国際法上違法な武力行使に対しては、日本政府は一貫してこれに反対するという基本政策を持っておりますこと、あえて改めて申し上げます。
  132. 志位和夫

    志位委員 予防措置としての武力行使なんというのは、国際法上違法なんですよ。そんなことを認めている国際法、どこにもないんです。武力侵略をやられたときの自衛のみ武力行使を認めているのですから、先ほどのアメリカの国防報告に述べられていたことは違法なことだらけなんですよ。  アメリカは実際どう行動しているのか。一九八三年にはグレナダへの武力侵略を行いました。八九年にはパナマへの武力侵略を行いました。パナマでは、二千五百人とも四千人とも言われるパナマ人を虐殺しました。この二つの行為に対しては、国連総会が、アメリカの行動を侵略干渉行為として糾弾する非難決議を上げているわけであります。  ところが、もう一冊、ことしの国防報告、これを見ますと、この二つの軍事侵略の戦争をアメリカの軍事戦略の手本だと書いてありますよ。グレナダの作戦については地域的安定をもたらすためだ、パナマの作戦については民主主義を増進させるためだ、こう言って、今後もこういったことをやるんだという宣言がこの九七年の国防報告にはっきり書いてある。  そこで、私は総理にもう一つお聞きしたい。米軍が国連総会で非難決議がされるような武力行使を行った際に、その場合でも日本は協力するんでしょうか。パナマやグレナダのように、実際に国連総会で非難決議が上がっているケースがあるのです。そういうケースでも協力するのでしょうか。それとも、そういう場合は協力の対象にならないのでしょうか。総理、総理。
  133. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、たしか本会議でも同様の御趣旨の御質問があったと存じます。グレナダについては日本は棄権をいたしました、パナマについては反対票を投じております、これが事実としてお答えを申し上げたとおりでありまして、国際法上違法な武力行使には一貫して日本は反対をしてきたと承知をいたしております。
  134. 志位和夫

    志位委員 こういう国連決議で非難決議が上がるようなケースでも、拒否する、対象にならないとはっきりお言いにならないところが大変な問題なんですよ。私がその問題を聞いたのに対して、はっきり拒否すると言わなかった。  私、その点で最後にもう一問聞きましょう。我が党代表が衆議院本会議で、これまで日本がアメリカの武力介入にノーという態度を一度でもとったことがあるかと質問したのに対して、総理は、我が国は米国による武力行使も含め国際法上違法な武力行使には一貫して反対の態度をとってきている、こう答弁されました。  そこで、改めて総理に聞きますが、戦後アメリカが世界各地で行った武力行使の中で、日本がそれに批判的立場をとったケースが一回でもありましたか。あったとすれば、それを具体的におっしゃってください。
  135. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 十月二日の衆議院本会議における私の答弁をとらえてのことだと存じます。  ただいま申し上げましたように、グレナダ、パナマの侵略について国連で非難決議が採択されたがこれにどう対応したかという御質問でございました。そして、それに対してお答えをしたのは、具体的な事例を念頭に置いたものではございません。国際法上違法な武力行使については一貫してこれに反対するという日本の基本政策を一般的に述べたものであります。  その上で、第二次世界大戦後、我が国が国連に加盟いたしまして以来、我が国が、米国による武力行使に対し、国際法上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはございません。
  136. 志位和夫

    志位委員 こんな国はほかにないのですよ。グレナダの際にでも、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダなどの同盟国でさえ批判的態度をとった。あなたは自主的判断をやると言うけれども、戦後ただの一回もアメリカの武力行使に対して自主的に反対したことのない国が、どうして新ガイドラインで自主的判断をする保証があ るのか、この問題が問われているわけですよ。  私は、この議論を通じて非常に事態は明瞭になったと思います。アメリカが周辺事態への対応として武力行使を行ったら、その地域が台湾であろうとどこであろうと、地域的に無限定で協力の道が開かれる。アメリカの行う武力行使の内容が、国際法に違反していようと、国連決議で批判、非難されようと、グレナダやパナマのような無法なものであろうと、新ガイドラインは発動される。そして、その協力の中身は、機雷掃海であり、情報提供であり、後方支援、どれも参戦行為そのものじゃありませんか。まさに自動参戦装置と呼ぶ以外にない。  本当に危険な、アメリカがアジア太平洋で戦争を始めたら、日本が無条件にこれに参戦していく、そういう仕組みをつくることには私たちは絶対に反対を貫いて頑張り抜く決意を最後に申し上げて、質問にいたします。答弁要りません、もう時間ありませんから。
  137. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 このガイドラインというものを、議員は自動参戦装置と言われました。自分の国がそれぞれに判断をする、それが自動参戦装置と呼ばれるような内容のものでないことは私は当然のことだと思いますし、議員御心配のような事態が現行の憲法のもとにおいて起こる、私はそうは考えておりません。
  138. 志位和夫

    志位委員 戦後、一度もアメリカの武力行使に反対したことがなかった、そういう国がこの仕組みに加わることは本当に危険だということを申し上げて、質問を終わります。
  139. 松永光

    松永委員長 これにて志位君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  140. 上原康助

    ○上原委員 私は、社会民主党を代表して、主として総理にお尋ねをさせていただきたいと存じます。  今、大変火花の散るような論戦の後に、やりづらい点もあるのですが、私なりにお尋ねをしますので、ぜひ、おわかりの時間ですから、できるだけ簡潔に、内容のある御答弁を願いたいと存じます。  まず最初に、私は、先ほど来、きょうの御質問をなさった各党から御指摘がありましたが、政治倫理について総理の御見解をお尋ねさせていただきたいと存じます。  立場もありますが、多少耳ざわりなところもあるかと思うのですが、この予算委員会、スタートの雰囲気を見ても、まさに異常なスタートであります。時間があれば総理初め各閣僚の御心境も聞きたいくらい、今、国会国会議員に問われている政治倫理というか、日本の政治の根底に潜む、俗っぽく言うと、いわゆる政財官の癒着というものをどう断ち切るかということが、まさに国会はもとより橋本内閣に問われている重大な私は政治課題だと思うのです。  そこで、佐藤氏の総務庁長官起用の問題については、もう多くは申し上げません。だが、就任は避けるべきだったとの反対の意思表示は、何と内閣改造直後の共同通信の世論調査では七割以上を占めました。同じく、石油卸商泉井被告から政治資金の提供を受けたとされる政治家等への疑惑について、事実関係を明らかにすべきであるとの意見が、これまた八割を超えております。この世論の動向を見ても、いかに佐藤前総務庁長官の問題、泉井問題が深刻に国民の目から厳しく問われているかということがわかると思うのです。  このことについての、総理のまず御所見を承りたいと存じます。
  141. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私自身、たびたびおわびの言葉を申し上げておりますことを改めてここで長々と繰り返すのも、むしろ上原議員に礼を失すると存じます。  しかし、私どもとして、これに対して厳しい国民からの批判があること、それを受け、御党からも御指摘を受けながら、先般、与党三党の党首の間におきまして会談の後、幹事長等のところで議論を整理してもらいました。そして、政治倫理等に対する三党確認というものをなしたわけでありますが、こうしたものを誠実に進めていく、こうしたことで少しでも私は信頼を晴らしていきたい、率直にそのように思っておりますことを申し上げます。
  142. 上原康助

    ○上原委員 そのことにつきましては後ほどちょっと触れますが、もう一つ、これは自民党の方々にもぜひお聞き取りを願いたいわけです。  九月十九日、二十日の朝日新聞が行った電話による聞き取り調査だと報道されておったかと思うのですが、佐藤長官辞任については、当然と答えたのが何と八四%、首相の責任も重大だという回答が七六%、そして、首相が火の玉となって行革をやっていくとおっしゃっておられる、この行革に影響を及ぼすであろうという反応が何と六〇%ありますね。既に私はその影響は出ているのではないかという懸念を持っております。  九月七日、八日時点の橋本内閣の支持率は五三%。本当にここは、無競争で総裁になり、内閣改造もやって、これからと意気込んでおられたやさき。不支持は二八%です。だが、九月十九日、二十日の時点では、大変残念なことに支持率が三五%に大きく低下をしております。不支持が四八%。  これは恐らく総理もいろいろ御心境穏やかならぬ面があるかと思うのですが、私は、最近のいろいろな動きを見てみますと、やはり政治腐敗とか政治倫理ということについて、与野党問わず、特に政権を担当する政権党あるいは内閣がもっと誠心誠意こたえていくという姿勢を言行一致で示さない限り、こういう国民の指弾というもの、批判というものは免れないと思うのですね。  さらに、特定のお名前を挙げて大変恐縮かと思うのですが、私は、総理が今度の内閣改造でいろいろ御腐心をなさったことはわかります。これは建前と本音、いろいろあるでしょう。だが、中曽根元首相によるごり押し人事だという、これも非常に強い面がありますね。  ですから、終身比例代表一位に、他党のことを申し上げたくないのですが、こういうことをやっているところに政治倫理の問題とか、あるいは政治に対する国民の不信とかが積もり積もって、いろいろと国民の政治不信というものが拡大、拡散をしているという事実はぜひ御認識をいただいて、内閣として新たな決意でリーダーシップを発揮してもらいたい。総理の改めての御決意を伺わせていただきたいと存じます。
  143. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、議員から大変厳しい御指摘をいただきました。  私ども野党に転落をいたしましたとき、国民の信頼を得るべく、私どもは必死で党改革に取り組み、これを実行しようとして努力をしてまいりました。私は、その当時の意識というものを我々の脳裏にきちんと受け継いでまいっておるつもりでありますし、党として省みるべきは省み、改めるべきは改める、そのような気持ちを自由民主党として失っておると考えてはおりません。その上で、議員からの御叱正、私に対するものは甘受いたしますし、友党としてのお言葉、素直にそのお言葉をちょうだいいたします。  ただ、我々として、先ほども触れましたように、与党三党における政治倫理の確認というものを三党で行わせていただきました。これに基づいて、我々が今後鋭意検討していく方向が示されている、私はそのように考えております。
  144. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ、新たなお気持ちでリーダーシップを発揮する中で、当面する重要課題に一層の御尽力を、御努力をお願いしたい。  そこで、今総理からもお答えがあったのですが、九月三十日の三党合意、これは政党間の取り決めで、しかも今、社民党はもう御承知のように小会派ですから、大自民党と渡り合って党の主張がそう十分というか、思うように通るとは思っておりません。しかし、信頼関係の上で物事がなされるという前提に立ちますと、自民党総裁というお立場で、この九月三十日の三党合意についてはぜひ着実に、しかも早目早目に実行をしていただきたいというのが一つです。  その中で、詳しくは申し上げませんが、企業・ 団体献金の規制について、特に国民の関心が高いのは、政治資金規正法附則第九条、平成十二年一月一日以降、政治家個人に対する企業・団体献金の禁止の条項ですね。同じく第十条、同日以降、政党など政治団体に対する企業・団体献金の見直しについてでございます。  社民党は、この第十条について全面禁止に向けた見直しと、できるだけ、党首もおっしゃっておりますように、前倒しをしてもらいたいという強い提言をいたしましたが、なかなか、いろいろ各党に御事情もあるでしょう。だが、これを当面の泉井問題であるとか、あるいはさっき申し上げたような課題があるからということで先送りするようなことがあってはいかないと思うのです。  そういう意味で、閣僚就任の基準要件といいますか、そういうものを含めて、総理のこの三党合意のことについて、これからぜひ、今臨時国会中に法制化すべきものは法制化をする準備を含めておやりになっていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  145. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 御党土井党首から、政治資金規正法附則第九条及び第十条について、これの前倒しを決めろという強い御主張がありましたこと、現実の問題としてそれは難しいと私が申し上げたこと、これはもう既に報道等でもよく知られているところであります。  その上で、三党確認におきましては、「政治資金規正法附則九条及び十条については、その趣旨を確認し、平成七年一月施行後の実施状況を十分見極め、入念な検討を加え、今国会中の合意に努力する。その際、わが国民主政治における政党及び政治家の政治活動のあり方を検討しつつ、国民の浄財である個人寄附の拡大など政治資金について、諸外国の政治資金制度などを参考に、具体的な方途を講ずる。」と明記をされております。  この明記をされておりますことに基づいて鋭意検討していく、自由民主党はそういう姿勢にございます。
  146. 上原康助

    ○上原委員 これは、私たちも重大な関心を持ってこれから党内外で努力をしてまいりたいと思いますので、今の総理の御答弁を承って、誠意を持っておやりになるというふうに理解をさせていただきたいと存じます。  そこで、今政治倫理の問題についていろいろ、もっとあるんですが、時間が限られておりますので、私は委員長に御要望を申し上げたいのです。  先ほど、委員長が一方的に本委員会を職権で開催しているとか、極めて不公平な理事会とか委員会運営をしておるという御指摘もあったんですが、それは各党の見解ですからとやかく申し上げませんが、私も委員長をして相当激励をされた経験を持っておりますので、お立場はよくわかります。だが、百点はつけられませんので、ぜひひとつ委員長ももっと御尽力を願いたいと思います。  そこで、泉井石油商会代表泉井純一被告証人喚問を、委員長見解が示されたわけですが、いまいち理解しにくい、あるいはやはり国民の側から見ると、なぜ証人喚問を積極的にやろうとしないのか、あるいは実現するという約束を、入り口でやれということは私は申し上げませんが、もっと国民にわかるようにこの問題については対処していってもらいたいという強い関心があると私は思うんですね。  そういう意味で、泉井純一被告証人喚問を今国会中の早い時期に実現するよう環境を整えてもらいたい、こう強く御要望申し上げて、こういう状態というのは一日も早く正常に戻すべきだと私は思うんです。やはり各党が参加をして、諸課題について、いろいろ各党の主張なり見解なり、政策提言をやっていくというのが国会の、民主主義の基本だと私は思いますので、特段の、もうこの筋の御専門ですから、もう少し国民に、委員長のお立場で積極的に努力をするという御見解を表示すれば、あるいはあしたからまた変わった展開もあろうかと思いますので、委員長の御見解を承っておきたいと存じます。
  147. 松永光

    松永委員長 上原委員のただいまの御意見は、これを大切に受けとめさせていただきまして、誠意を持って最大限の努力をしてまいりたい、こう考えます。
  148. 上原康助

    ○上原委員 私もそれで納得ということではありませんが、委員長のせっかくの御発言でありますし、意のあるところを体して、協力しながら努力をしていきたいと思いますので、ぜひ、私が申し上げたことを実現するようにお運びを願いたいと存じます。  そこで次に、ガイドラインの件についてお尋ねしたいわけですが、これはいろいろ問題を指摘しようと思えばたくさんございます。与党協議会の中でも、相当議論を重ねてまいりました。  私は、これは総理、外務大臣あるいは防衛庁長官にも本当は御見解を聞きたいんですが、極東の範囲の問題にしましても、周辺事態にしても、台湾条項にしても、あるいは調整メカニズムとか包括メカニズムとか、いろんな新しいことが出てきたわけね。日本有事だけじゃなくして、日本周辺事態、周辺有事が今度はメーンになっている、主になっているんですよね。これは、ある意味では安保条約の改定、改正に匹敵するものと見てよいでしょう、実体的には。  そこで、そういう議論を私たちはもっと深めたいと思うのです。私たちもまだまだ疑問点をただしてみたいところがたくさんあります。後方支援のあり方とか、あるいは集団自衛権の行使、その一線を画すといっても本当にできるのかできないのか、臨検等の問題等を含めて。これをやっていくには、短時間でやるといっても無理ですよ、これは。  そこで、これは提案ですが、まずは政府として、これだけ日米間、アジア太平洋というかアジアの重要な政策課題、安全保障問題ですから基本政策ですから、総理みずからが国会に報告をして、まず本会議で堂々と各党の質問と論戦をやる。それを受けて、予算委員会で集中審議をするとか外務委員会でやるとか安全保障委員会でやるとか、国民にも政府の立場とか見解というものをもっとオープンにして、これは、何といいますか、情報開示をするということがガイドラインでも決められているわけですからね。  そういう立場で、私は、この問題は議論をして、疑問点をただしながら、これからの日米関係あるいは我が国の安全保障政策というものを各党で議論し合う方がいいと思うのですが、これについての総理の御見解をきょうは聞かせておいていただきたいと思います。
  149. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、議員から、国会報告という御要望がございました。具体的なことは別として、政府として、国会での御議論が十分に行われるよう協力したいと思います。
  150. 上原康助

    ○上原委員 ですから、その一つの考え方といいますか選択肢として、本会議にまず、国会にガイドラインについて御報告をしていただく。それを受けて、これは予算委員会マターでない、議運やら国対のお仕事のものもあると思うのですが、私もいろいろ考えてみて、ここで一つ一つ個別の問題をやろうとしても、十分、二十分でできませんよ、これは。そこから、まず本格論戦をやってみようじゃないかということですね。そういうお立場でやるお考えがありますね。
  151. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 ガイドラインについて、他の国々に対しても透明性を持とうとして説明をしているのは、よく議員御承知のとおりであります。  ですから、今私自身、政府として、国会がどういうふうにお決めになるか、これは我々が介入することではございませんけれども国会での議論が十分に行えるように協力を申し上げたいということを申し上げた次第でございます。
  152. 上原康助

    ○上原委員 それは、順序といいますか手順はそうでしょう。だが、国会のことは国会でお決めというのも、これももう決まり文句で、いつもそれで逃げられても困りますから、そういうふうにひとつお取り計らいを願いたいと思いますし、私たちは、国会立場で今申し上げたようなことを進める努力をさせていただきたいと存じます。  あと、行政改革にもぜひ触れたいのですが、ど うしても私が立っている以上、沖縄の問題を、これは触れざるを得ません。だんだん国会から沖縄の声がなくなっていきつつありますね。残念です。  そこで、普天間の、SACOの最終報告で決められた諸課題なんですが、御承知のように今キャンプ・シュワブ沖合の基本調査を政府は進めているわけですが、これには賛否両論があるのは御承知のとおりですね。名護市は、非常な困難と言ったら語弊があるかもしれませんが、市民間の対立を激化させている。大変残念です。しかも、名護市の市議会は住民投票条例を修正可決をし、四者択一の方式で来年一月十八日に実施をするという方向にあるやに聞いております。  一体、このSACO関連取り決め、普天間飛行場の返還その他の案件が、政府もいろいろ御努力はなさっているけれども、やはり沖縄県内での条件つき移設、基地返還のあり方ということにはもう限界があるんですよね。この状況を政府はどう打開をしていこうとするお考えがあるのか。SACOの取り決めがあって五千ヘクタール返ると言ってみたって、これ十年先、二十年になるかもしらない。県民の期待感と政府がSACOで打ち出したものの乖離というものは、ギャップというものは余りにも大き過ぎる。それが今日の沖縄県民の大きな不満になっているわけで、総理の御努力はこれまでのことは多と評価しながらも、いや、きょうは総理に主にお答えいただきますので、ひとつ、どうなさろうとするのか、お気持ちを含めて打開策があればお聞かせを願いたいと思います。
  153. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私自身、何回も議員との間にこの問題を論議をさせていただいてまいりました。そしてその上で、議員は、大田知事が私との最初の会談のときに市街地の中にある普天間の危険性を言われ、それを私が最初の日米首脳会談で提起をしたこともよく御承知であります。そしてその中で、現実にぎりぎり考えられる選択肢として海上移設というものを御提起をいたしましたのも、私は、日本側だけではない、アメリカ側も一生懸命に努力をしてくれて、その中でようやく見つけたぎりぎりの選択肢だという思いでこれを進めてまいりました。  今議員からお話がありましたように、名護市の現地におきましていろいろな御意見があることも拝聴いたしております。そして、先般申し上げましたように、知事さんからの声に耳を傾ける、何とかこれをしたい、そんな思いで今日まで参りました。  私は、今後ともに沖縄県を初めとする関係自治体の御協力を得ることにより、少しでも早く、知事自身が訴えられたこの普天間の町の中から基地を動かせる、そういう状態をつくりたい。しかし、現実にできる手段には限界があるということも事実であります。その中で何とか御協力をいただきたい、心の底からお願いを申し上げます。
  154. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、総理、仮定の話にお答えできないということになるかもしれませんが、名護市は、条例は修正可決をしてやったわけですね。名護市民が拒否する可能性も大だと思うのですね。  そうすると、移転は押しつけはしないという約束が県民との間に、総理初め防衛庁長官等あるわけで、普天間の返還は受け入れ先が合意形成ができない場合は難しい、こういうこともあり得る、理論的にはあり得ると思うのですが、その点はいかがなんですか。
  155. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 こうした問題、今議員がおっしゃいましたような仮定を置いてお話をいたしましても、ひとり歩きをし、問題の解決を一層困難にする可能性のあるテーマだと私は思います。  その上で、今県内移設ということを、陸上部では適地が見出せない状況の中で、撤去可能な海上施設というものに私どもとしてはようやく打開の道を見出してまいりました。これが決定がおくれればおくれるほど、知事の指摘をされた危険な状態というのは続くわけでありますし、一日も早くそういう状態を解決いたしますためには、私は、まげて県初め地元の皆様方の御協力をいただきたいと心から願います。
  156. 上原康助

    ○上原委員 そういうことかなと思ったりするんですが、なかなか難しいですね。  しかし、既に施設庁長官とか防衛庁長官なんかは言いたくてむずむずしておられるようだが、きょうは御遠慮ください。あなたが言っているのは余りいいことを言っていない、失礼だが。ハワイでお述べになったこととかね。そういうことには県民が非常に敏感であるということだけ申し上げておきます。  もう一つ、総理、ぜひ御理解願いたいのは、僕は、今度の閣僚の中には、小渕外務大臣それから小里総務庁長官、新鋭の鈴木沖縄・北海道開発庁長官、沖縄通がたくさんいらっしゃる、ほかの皆さんも含めてね。官房長官もそうかもしらぬ。沖縄の基地問題がなかなか解決しないというのは、やはり根本をもう一度認識を改めなさいということを私は申し上げたいんですよね。  だから、日米共同宣言の中でも、その兵力削減の問題を含めて随時協議をすると言いながら、ちっともやっていない。その中で、ガイドラインはどんどんコンパクトにされていくのだが基地は一向に減らないとなると、県民や基地関係の、もう私だってやがて頭に血が上るよ、それは。この事実関係を、この実態というものをどう解決するかということに、もう少し積極的にやっていただきたい。  これも、九七年四月十七日の三党合意でも、沖縄問題に関する与党三党合意事項で、米軍の兵力配置のあり方を含む軍事態勢について、SCCあるいはSSCで日米間の協議を進めるよう政府に要請する、これを約束したんですよね。これがなされていない。  こういうことについても私はおやりになる必要があると思うんですが、総理、こういうのも複合的に、多角的にやらないと、僕は沖縄の基地問題は解決しないと思うんですが、この点について、お考え何かありますか。
  157. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私ども、本当に、日本における米軍の基地の撤去あるいは縮小というものがどんどん進みましても、我が国の安全に何ら心配のない、そんな時代を早くつくりたいという思いは、私は議員と変わらないだろうと存じます。  その上で、今回の2プラス2、御承知のように、まさに従来不明確でありましたガイドライン、新たな形で整理をいたしました。これ自体がいろいろな御議論を呼んでおります。  しかし、今このアジア太平洋地域における基地の整理、統合、縮小あるいは兵員の削減という議論、本年の春、私自身がアメリカに参りまして、国防長官あるいは統参議長等と、大統領はもちろんでありますが、議論をいたしましたときから、状況の変化のある状態ではございません。そうした中において、私は、このSACOの合意というものを着実に実行していきますことが、沖縄県における負担を軽減していく一番の早道だと考えております。  そして、これは先日知事にも申し上げたことでありますけれども、先日行われました全国知事会議の席上、私はこの沖縄県の問題に触れましたが、残念ながら、沖縄県からは知事の御出席はいただけませんでしたし、他の知事さん方からも積極的な反応というものはありませんでした。しかし、そうした努力も政府はこれから続けていくつもりでおることは、ぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  158. 上原康助

    ○上原委員 時間が過ぎてちょっと恐縮ですが、行革について一言触れさせていただきたいと思う。  中間報告で、これは御見解を聞くところまでいかないと思うのですが、日本の顔づくりということを指摘しているわけですよね。それと、我々が目指す行政改革は、断じて行政改革のための行政改革、スリム化のためのスリム化、中央省庁の看板のかけかえや霞が関のみを視野に置いた改革であってはならないと言っている。言っているこ と、実に明快。  だが、先ほど来ありますように、中間報告に対する国民の目は厳しいですね。郵政三事業の問題を含め、大蔵の改革にしても中途半端。しかも、現業部門は全部淘汰していく、あるいは民営化していくというような方針を打ち出して、そこで働いている人々の意向というのはほとんど聞いていない。総理と総務長官が、政治家が入って、あとの十三名はみんな学者先生方、これではここで指摘をしているような行革にはならないと思いますので、先ほど来ありましたので、与党や民間や関係団体等の意向も聞いて、不安のないような行革を進めていただきたいという要望を申し上げ、一言総理からお答えいただいて終わりたいと思います。
  159. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 行政改革会議のメンバー、委員の中には連合の会長がおられる、そして労働界を代表しておられること、議員御承知のとおりであります。また、関係の労働組合との間におきましても何回かの対話が持たれておることを承知いたしておりますが、これはもちろん労働組合だけでありません。国民全体の将来に向かっての問題として、まだまだ今我々自身、議論を続けているさなかであります。  最終報告までの間、一層の努力をし、より国民に評価していただけるような行政改革にしていきたい。そのためには、省庁のエゴもなくしていただかなければなりませんし、労働組合の皆さんにも受けとめるべきは受けとめていただく、政治ももちろんその一人でありますが、私ども全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  160. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  161. 松永光

    松永委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  これより太陽党の質疑者の質疑時間に入ります。  これにて太陽党の質疑者の質疑時間は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時七分散会