○金子満広君 私は、
日本共産党を代表して、
橋本総理に
質問をいたします。
まず初めに、
総理の
政治姿勢の
基本についてであります。
総務庁長官に任命された佐藤孝行氏は、
国民世論の厳しい批判の中で辞任をいたしました。しかし、問題の核心は、受託収賄という権力犯罪で有罪が確定し、今日に至っても全く反省していない
政治家を
橋本総理が閣僚に任命したことであります。これこそ絶対に許せない、
政治倫理の最低のルールを破ったということであります。
ところが
総理、あなたは、一度誤りを犯した者は二度とチャンスは与えられてはいけないのか、もう有名な
言葉になっています、と言い、そして、熟慮の結果、確信を持って任命したというのでありますから、あなたの
政治倫理観が間違っていたということであります。
総理は、所信表明でも反省とかおわびとかいう
言葉を繰り返しましたが、自分の
政治倫理観が誤っていたということは認めていません。改めて、何を反省しているか、明確な答弁を求めるものであります。
また、本当に反省するというなら、今閣僚や
自民党首脳まで広がっている泉井献金問題で、どのような責任をとり、どのように解明されるかを明らかにしていただきたいと思います。
さらに、昨日、東京地裁で、中村喜四郎元建設大臣に対してあっせん収賄罪で実刑判決が下されました。中村議員は、直ちに議員を辞職すべきであります。
今問われているのは、族議員による利権
政治そのものであり、ゼネコン疑惑の底の深さを示すものであります。この際、金権腐敗
政治の根源である
企業・団体からの献金を全面的に禁止すべきでありますが、明確な
総理の答弁を求めます。(
拍手)
なお、その法的
措置がとられる前でも、
総理自身、みずからが一切の
企業・団体献金を受け取らないことを決断することはできます。これができるかどうか、できないというなら、その理由を明らかにしていただきたい。責任ある答弁を求めます。
ここで、今
我が国の平和と安全にかかわる重大問題となっている
日米防衛協力の
指針、つまり新
ガイドラインの問題について
質問をいたします。
この
ガイドラインの
最大の問題は、
日本が何ら武力攻撃を受けていない場合でも、アメリカが
日本周辺事態という名目でアジア太平洋
地域で軍事行動を起こした場合、
日本が自動的に参戦していく体制づくりにあります。このことについて、今、国内はもとより、アジア諸国からも痛烈な批判の声が相次いで上がっています。
そこで
伺います。
第一は、
見直しされた新
ガイドラインでは、
周辺事態での日米共同の軍事行動を行うことになっていますが、これは現行日米安保
条約のどの規定に
根拠を持っているのかという問題であります。
安保
条約では、武力攻撃に対して日米が共同で対処するのは、第五条の
日本への武力攻撃があった場合のみであります。極東
有事での米軍の軍事行動には、第六条で
日本の基地の使用が許されているだけであります。
日本への武力攻撃がないのに、
周辺事態の
対応で自衛隊が海外に出動して米軍の行動に
協力するなどの規定はどこにありますか、
伺います。まさに安保
条約の大きな変質、重大な改悪ではありませんか。
新
ガイドラインが安保
条約を事実上改定するものであるなら、当然
国会にかけ、審議を尽くし、その是非を求めるべきであります。これは当然のことでありますが、
総理の明確な答弁を求めます。(
拍手)
第二は、アメリカが武力介入した場合に、
日本が自動的に参戦する仕組みになっているという問題であります。
周辺事態対応ということで米軍が武力介入する場合に、この新
ガイドラインに基づいて「日米両国
政府は、適切な取決めに従って、必要に応じて相互
支援を行う。」このようになっております。自動的に
協力する仕組みがつくられているのであります。しかも、米軍と自衛隊の統合司令部ともいうべき日米共同調整所まで常設することになっているではありませんか。そして、その
協力の
内容は一体何なんだと。機雷の除去であります、情報の交換であります、米軍への物資の補給、輸送などではありませんか。いずれも戦争行為であります。これをやることは、国際法上
日本が参戦国の立場に立つということではありませんか。
しかも、
周辺事態について日米間で協議しても、武力介入の決定権はアメリカが持っているのであります。これでは、
周辺事態で米軍が武力介入した場合、国権の最高機関である
国会も何ら介入の余地ない、文字どおりの自動参戦体制づくりではありませんか。
周辺事態対応ということで米軍が武力介入したら、
日本はどんな場合でも
協力するのか。
日本が
協力しない場合があるというならどんな場合なのか、はっきり
お答えいただきたいと思います。
そこで、これまでアメリカは、何を
有事として武力介入をしてきたかであります。過去を見れば明白です。一九六〇年代から七〇年代にかけては、あのベトナム侵略戦争であります。八〇年代には、グレナダ侵略であり、パナマの侵略であります。そして、昨年の九月には、一方的なイラク攻撃を強行したではありませんか。
当然のことながら、このような無法な干渉、侵略行為は、国際的にも厳しく糾弾をされました。この中で、グレナダ、パナマ侵略は、
国連で非難決議が採択をされました。この採択に
日本政府はどのような態度をとったのか。また、これまで
日本がアメリカの武力介入にノーという態度を一度でもとったことがありますか、どうですか。あわせてお聞きいたします。
そもそも
国連憲章で各国の
武力行使が許されているのは、外からの侵略に対抗するときだけであります。それを、
周辺事態だと勝手に解釈して対外的な軍事行動に出るということは、それ自体、
国連憲章にも反する国際的な無法行為ではありませんか。
総理のはっきりとした
お答えを求めます。
第三は、いわゆる周辺とは何かという問題であります。
新
ガイドラインでは、「
周辺事態の
概念は、地理的なものではなく、
事態の性質に着目したものである。」こういう
表現をわざわざ加えました。地理的なものでないというのであれば、
周辺事態と認定すれば、どの
地域であろうと日米共同作戦が発動されるということじゃありませんか。
そこで、
総理、新しい
ガイドラインでの周辺には、はっきり
伺いますが、台湾及び台湾海峡も含まれているのかどうかという問題であります。
総理は、個々の
地域については論じないなどと言ってあいまいにしようとしています。しかし、アメリカは、台湾防衛に責任を負うという台湾
関係法を持っており、現に昨年の台湾危機の際、アメリカは空母インディペンデンスを台湾海峡に派遣したではありませんか。
日本も、航空自衛隊と海上自衛隊が厳戒態勢をとったではありませんか。
日本が中国は
一つの立場をとる以上、台湾問題は中国の内政問題であり、そこに武力介入する権利は、アメリカを含めいかなる国にも認められていないのであります。
総理がこの立場を貫くなら、それをあいまいにするのではなく、アメリカがどんな武力行動をとっても
日本は
協力しないということをはっきりさせるべきであります。
以上の点について、
総理の明確な答弁を求めます。
次に、第四は、日米両国
政府が今度の
ガイドラインの
見直しを第一歩として位置づけ、これを突破口にして
日本の軍事
協力の
内容をさらに強化させようとしている問題であります。この
ガイドラインにも「適時かつ適切な
見直し」ということが明記されています。
しかも、
事態は
ガイドラインの
見直しを先取りして、具体的なことが現実に次々と進められているではありませんか。自衛隊機のカンボジア派遣であります。アメリカの空母インディペンデンスの小樽寄港であります。アメリカの艦船の東京や鹿児島など民間の港湾への相次ぐ寄港ではありませんか。さらに、民間空港利用の日常化です。自衛隊機による米軍の輸送、そして日米共同演習の
拡大などがまさにそれであります。
しかも、米軍は既に全国の民間の空港や港湾の詳細な調査を重ねていることは周知の事実ではありませんか。このような実践的具体化は、自衛隊だけでなく民間を含めた総動員体制づくりが大規模に進められているということではありませんか。
総理、あなたは、
ガイドラインの
見直しの日米
合意のときに、これは終わりではなく始まりだと述べました。そしてさらに、これに関連した
法案の整備を進める意向をも表明していますが、それは民間動員を強制的かつ
優先的にやろうとするものではありませんか。
さらに久間防衛庁長官も、
有事立法について通常
国会への提出を予定しているとまで
国会で答弁していますが、
憲法の平和
原則、
基本的人権を正面から踏みにじる
有事法制は断じて容認できません。
総理の明快な答弁を求めます。(
拍手)
今、
我が国の平和と安全にとって最も
基本的なことは、日米安保
条約をなくし、独立・主権、非同盟・中立の
日本の建設であります。そして、アメリカに対しても、敵視ではなく、また従属でもない、真に対等、平等、平和の
関係を打ち立てることであります。このことを強く表明して、次の
質問に移ります。
次は、
医療、
社会保障、
国民生活の問題についてであります。
第一に、
さきの
国会で、消費税の増税、特別減税の中止、
医療制度の改悪で九兆円もの新たな負担を
国民に押しつけ、
国民生活に耐えがたい困難をもたらしましたが、今、さらにこれに追い打ちをかける
社会保障の連続改悪をなぜ強行するのかという問題であります。
今
国会に提出された
財政構造改革法案は、
財政危機を口実としていますが、
財政悪化の
最大の根源である浪費型の
公共事業はわずかばかりの
削減にとどめ、その一方で、
社会保障、
医療、教育、農業、中小
企業など
国民生活に直接かかわる
予算を大幅に切り捨て、しかも九八
年度、九九
年度、二〇〇〇
年度予算と三年間連続でこれを強行しようとしているではありませんか。
総理は、所信表明
演説の中で
財政構造改革法案の成立を強調いたしましたが、一体
国民の苦しみをどのように考えているのか、まず率直に
伺います。
とりわけ
社会保障については、九八
年度予算で八千億円の当然増
経費のうち五千億円もカットし、それ以降も、
高齢者の増加などによる数%にも上る当然増も二%以下しか認めないというひどいものじゃありませんか。言うまでもなく、当然増というのは、
制度上当然必要となる
予算のことであります。これまでをカットするというのは、
社会保障制度の改悪を今後も連続してやっていくということではありませんか。
医療保険制度については、既に今年九月一日から、患者本人の負担一割を二割にしました。老人
医療費負担を大幅にふやしました。薬代の二重取りも行うという大改悪を押しつけたばかりであります。その結果、病院の窓口では支払う金額が三倍、四倍となり、病気になっても医者にかかれないという悲劇まで広がっているではありませんか。
総理はこうした現実をどう認識しておられるのか、改めて
伺います。
こうした中で
与党三党は、さらに、老人
医療費を定率負担とする
医療保険制度の導入に加えて、扶養家族となっている全国三百四十万人の
高齢者からも新たに
保険料を取り立てるという改悪案を既に八月にまとめているのであります。
厚生省も、患者本人負担を三割にするという負担増の押しつけ案までまとめているではありませんか。しかも難病
対策では、来
年度から、全額公費負担
制度を改悪をして自己負担
制度を導入しようとしています。まさに弱い者いじめの改悪です。冷たい
政治と言わなければなりません。
総理、このような
医療の三年連続改悪は、戦後、
国民の粘り強い努力の中で積み上げてきた既得権を次々に奪い取ることであります。このようなことはきっぱりとやめるべきであります。異常に高い薬価にこそメスを入れるのが当然のことではありませんか。
総理の答弁を求めます。
第二に、
財政構造改革というなら、
財政支出の
構造をこそ問題にしなければなりません。
つまり、
日本では、
社会保障に対する公的支出は国、
地方で年間約二十兆円であります。一方、国、
地方の
公共事業費は、その二倍半の何と五十兆にも上っているではありませんか。しかも、
政府が
財政構造改革法案でやろうとしている
改革なるものは一体何か。
社会保障予算を大幅にカットするということではありませんか。逆に
公共事業費は、
削減するといっても、総額六百三十兆円は変えずに、三年延ばすだけであります。その結果、十年間で四百七十兆円、年平均四十七兆円であります。年五十兆円体制はそのままではありませんか。全く逆立ちした
財政構造を長期固定化させるものであります。
国民の税金をこんな逆立ちした形で使っている国は
世界のどこにもありませんよ。ありますか。
日本の
公共事業費は、国内総生産に占める比重がヨーロッパ諸国やアメリカと比べ、三倍からそれ以上になっているじゃありませんか。ところが、
社会保障の公的負担の比重は、反対に二分の一から三分の一という
状態です。つまり、諸外国は、
社会保障費に
公共事業費の数倍の
予算を使っているのであります。これが国際
政治の流れなんです。これが国際
政治の常識なんです。
日本の現状は、これと全く逆ではありませんか。ゼネコン栄えて福祉が枯れるということではありませんか。今、冷たい
医療、福祉の中から、せめてヨ一ロッパ並みの
社会保障をという声が広がっているのは当然であります。
総理、こうした逆立ちした
財政の仕組みを根本的に改めることが急務であり、
国民の願いにこたえる道ではありませんか。はっきりと答えていただきます。(
拍手)
第三は、
政府の
財政構造改革がねらう
医療制度や
年金制度の大改悪が強行されれば、二十一
世紀の
日本が
国民生活への支えを失った
社会になるという点で重大でありますが、それと同時に、
日本経済の健全な
成長にとっても深刻な
事態を招くという問題であります。
日本共産党は、消費税増税など九兆円もの負担増が、
国民生活に耐えがたい困難をもたらすとともに、
日本経済の柱である
国民の消費と中小
企業の経営に大きな打撃を与え、経済情勢に否定的な
影響を及ぼすものと指摘をしてまいりました。
結果は指摘したとおりになっているではありませんか。経済企画庁が九月に発表した統計で、四月から六月期の実質国内総生産が、
前期比二・九%のマイナス、
年率に換算すると一一・二%減です。第一次の石油ショック以来二十三年ぶりの大幅な低下ではありませんか。個人消費の落ち込みは、
年率に換算して実に二一%のマイナスであります。九兆円の
国民負担増が、いかに不況を深刻なものにし、
我が国経済のかじ取りを誤ったかは、今では明らかではありませんか。
総理、誤りを認めて、
医療改悪や、もともと公約違反の消費税の増税をやったんですから、これをもとに戻すべきではありませんか。やらないということを皆さん公約したでしょう。だから、もとに戻せばいいんです。
日本共産党は、
国民生活を圧迫する
財政構造改革法案の撤回を求めるとともに、ゼネコン奉仕の公共投資や軍事費、大
企業への特別な優遇税制という
三つの聖域にメスを入れることを強く要求して、
総理の責任ある答弁を求めます。
最後に、
行政改革に関連して、国際的にも注目されている
我が国の食糧、農業問題について
質問をいたします。
昨年十一月、ローマで開催された、そして
我が国も参加した
世界食料サミットでは、
世界の八億を数える飢餓人口の問題を正面から取り上げました。その中で、主食を含む食糧増産とともに、飢えに泣く人々に対する国際援助も、あの宣言の中で明らかにしています。
そこで、
我が国の農業、食糧事情はどうなっていますか。自給率は、カロリーベースでわずかに四二%じゃないですか。六割近くを外国に依存している
状態ではありませんか。しかも飼料、家畜のえさでありますが、飼料を含む穀物の自給率はわずかに三〇%ですよ。先進国では例がないじゃありませんか。この異常な
事態が目の前にあります。今こそ
日本農業を国の基幹産業として再建をする、そして自給率を大幅に引き上げる、さらに国際的にも課せられている責務を果たすことはますます重大になっています。
ところが、
政府は、
国民の食糧を守り、農業を発展させる専門省である農水省を解体して、国土保全省の添え物にしようとしているのではありませんか。このようなことは先進国には例がありません。事は重大であります。これでは、食糧の自給率の向上も、飢餓の人々の援助もできないではありませんか。
総理、どうされるのか、具体的な
考え方を示していただきたいと思います。(
拍手)
また、
政府は、今年三月に決めた米需給計画では、よろしいですか、
政府備蓄米として百二十万トンから百三十万トンを買い上げることを
国民に公約しているのであります。しかし、六カ月後、収穫を前にしたこの九月になって、一方的に七十万トンに減らしたのではありませんか。今、農民は生産者米価の大暴落に苦しんでいるのであります。(
発言する者あり)知らないはずはありませんよ。
政府は、当初の計画どおりに備蓄米を買い上げるべきであります。それは、最低の
政府の義務であり、公約を果たすことであります。
さらに、
政府は、外米の輸入を
拡大しながら、農民には減反を強制してまいりました。その結果、輸入米の在庫は、この十月末には、何と皆さん、四十万トンに達する見込みではありませんか。
総理、この際、輸入米を含め
政府米を海外援助に充てるべきであります。これまで
政府は、
国会答弁でも、輸入米については、備蓄した後それを援助用に活用していくと述べてきましたが、今こそこれを積極的にやるべきときではありませんか。これは、
世界食料サミット宣言で言う飢餓に泣く人々に対する国際援助の実行でもあると思いますが、
総理、答えていただきます。
今、悪政の連続多発は、
国民各層から痛烈な批判となって日々
拡大しています。悪政には未来はありません。
日本共産党は、
国民の生活と民主主義、平和を守るために、広範な
国民とともに奮闘する決意を表明して、
質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣橋本龍太郎君登壇〕