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渡辺(喜)
委員 ぜひ法の適正な執行をお願いしたいと思います。また、立法論として、刑罰の引き上げということが必要かどうかについては、我々も積極的に検討を行ってまいりたいと考えております。
こうした
一連の不祥
事件を考えますときに、やはり
日本におけるコーポレートガバナンス、
会社はだれのものか、
会社の統治はどうあるべきかということについて考えざるを得ないわけでございます。
株式会社における株式とは、
企業がただで
お金を調達できる便利な手段であるということでは毛頭ないわけであります。アメリカの
経済学あるいは
金融関係の入門書では、株式とは
企業をシェアすることといった定義がなされております。
企業というパイを細かく分割したものであり、株を持つということは
企業の一片を保有することであるということが明快な規定として書かれているわけであります。
株式会社の目的というものは、
株主の
利益の増進に努めることであるということが明らかなわけであります。
会社経営について、例えば、従業員、債券の所有者、顧客、取引先、組合等との間で
利益相反が起こった場合、原則として
会社の所有者である
株主の法的権利が優先されるというのは、これはアメリカの考え方であります。すべてアメリカのまねをする必要は毛頭ありませんけれ
ども、今我々に求められているのは、国際的に通用するコーポレートガバナンスの
法整備を行っていくことであろうというふうに考えるのであります。
今、二十世紀の最後の十年間に起こっておりますことは、市場
経済のグローバル化ということであります。好むと好まざるとにかかわらず、
日本型システムの見直しを今我々は迫られていると言っても過言ではありません。橋本内閣の六大改革あるいは
日本の構造改革といったものは、まさにそういった視点が
一つの大きな視座になるわけであります。
昨年の十月に、日経新聞がおもしろい
意識調査をいたしました。我が国経営者の
意識調査、「
会社は誰のものか」というものであります。
株主のものであると答えた人は全体の七.三%、
会社は顧客のものであると答えた人は全体の一・七%、
会社は従業員のものであると答えた人は全体の一・一%、一番多かったのが、
株主、従業員、顧客とのバランスをよく考えるという極めて優等生的な答えでありますが、これが八六.五%でございました。
株主というのは英語ではシェアホルダーと言います。利害
関係人というのはステークホルダー、こう言うわけでありますが、
日本の経営者の場合には、
株主よりはむしろステークホルダー、利害
関係人を重視するという
姿勢が非常によくあらわれた調査結果であろうというふうに思います。
こうした
意識の背景には、株式持ち合いという慣行が我が国でとられていることが非常に大きな要因ではなかろうかと思います。
会社の取引相手というのが同時に
株主でもあるわけでありまして、間接
金融に重点を置いた
日本型のシステムでは、メーンバンクの影響というものが非常に強大になっているわけであります。そして、このメーンバンク自身もまた五%以内において
株主であるという事実があるわけであります。
しかしながら、今こうした株式持ち合い制度というものがいや応なしに崩れつつございます。こういうやり方ではまずいのだということよりは、むしろ、背に腹はかえられないという
状況に置かれた持ち合いの解消、株の売り切りといったことが今
現実に進行をいたしております。
日本では、残念ながら個人
株主の比率というのは年々低下をいたしております。これは、早い話が、直接
金融市場というか、資本市場というものを育てることに実は失敗してきたということが大きな
理由であろうというふうに私は思います。
そこで、最近、物を言う
株主として登場しつつあるのがいわゆる機関投資家であります。下手をすれば、倒産をしてしまったということになれば、これは株式自体が紙くずになってしまうわけでありますから、これはただごとではありません。ある厚生年金基金、これは
日本の話でありますが、制度上、厚生年金基金というのは、議決権行使ということについて直接指示を出すことはできません。そこで、この厚生年金基金は、使っている信託
銀行に対して、ある不祥事を起こした
企業の
株主総会でなぜ白紙委任状を出したのか、それぞれ個別に説明を求めるということを決めたそうであります。
これから、こうした機関投資家が相当ふえていくということが考えられるわけであります。
企業に直接経営改善を働きかけないと、
自分で
自分の首を絞めてしまうということになりかねないからであります。機関投資家というのは膨大な株式を保有しておりますから、もうこの
会社は嫌だといって
自分のところの株を売り出せば株価の下落を招いてしまうという事情が背景にあるからであります。
いずれにいたしましても、
株式会社というものは
株主のものであるというコーポレートガバナンスの思想というものは、市場
経済のグローバル化の中で避けて通れない問題になりつつございます。
自民党の
商法に関する小
委員会において、本年の九月八日でありますが、コーポレート・ガバナンスに関する
商法等
改正試案骨子というものを明らかにいたしました。
一つには、「監査役の独立性の確保」、これは太田試案と言ってもいいかと思います。また、「
株主代表訴訟の見直し」、これは保岡試案と言ってもよろしいかと思います。その中で、もう時間が迫っておりますので詳しくは申し上げませんけれ
ども、幾つかの原則を打ち出しております。
原則の第一は、
株式会社は
株主のものであって、
株式会社の主権者は
株主とする。
株式会社は、
株主の
利益を最大にするように統治されなければならない。原則の第二、
株主は、
株主総会を通じ、
株主の
利益を最大化するように経営の意思決定権限を取締役会に委任し、取締役会は意思決定の執行を経営の執行責任者に委任する。
原則の第三、
株主は、
株主総会を通じ、経営の意思決定とその執行が
株主の
利益を最大化するために行われているかどうかを監視し牽制する権限を監査役会に委任する。
取締役又は執行役員の忠実義務違反とは、
株主の
利益の最大化以外の目的のために、取締役
の意思決定又は執行責任者の執行が行われた事実を言う。
株主は、
株主総会を通じ、取締役及び執行責任者の「忠実義務違反」を監視し牽制する責任と権限を監査役会に委任する。原則の第四、
株主は、
株主総会を通じ、
取締役等に対する個人
株主の訴訟の妥当性に関する
一定の判断権及び提案権を監査役会に委ねる。というものでございます。
また、「
株主代表訴訟の見直し」、これは我々は
改正であるというふうに考えております。これが改悪だという御批判は全く当たらないというふうに思います。
改正に当たっての原則のみを申し上げます。
株主代表訴訟がコーポレート・ガバナンスの重要な手段であることに鑑み、その機能を減殺させないことを大前提とする。
日本経済の国際化にあたっては、経営者の積極的な挑戦や活力が不可欠であるため、
株主代表訴訟が制度の目的を越えて必要以上に経営マインドを萎縮させる要素について改善する。
法律に明文化されていないため、判例が分かれたり、一般に解釈が明確でない事項について、これを法的に明確にし、
株主代表訴訟制度の法的安定性を確保する等、制度の機能を高める。ということを原則にしておるわけでございます。
こうした我々の提案については、来年の通常国会を目途に
法律として国会を通したいというふうに考えておりますが、
法務省における検討
状況あるいは御意見等がございましたらお承りをさせていただきたいと思います。