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1997-11-05 第141回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月五日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員   委員長 笹川  堯君    理事 太田 誠一君 理事 橘 康太郎君    理事 与謝野 馨君 理事 赤松 正雄君    理事 上田  勇君 理事 北村 哲男君    理事 木島日出夫君       粕谷  茂君    河村 建夫君       古賀  誠君    下村 博文君       田中 和徳君    谷川 和穗君       西川 公也君    横内 正明君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       安倍 基雄君    漆原 良夫君       加藤 六月君    西村 眞悟君       福岡 宗也君    枝野 幸男君       佐々木秀典君    保坂 展人君       鴨下 一郎君    園田 博之君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         法務政務次官  横内 正明君         法務大臣官房長 頃安 健司君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君  委員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官      田中 法昌君         警察庁刑事局暴         力団対策部長  玉造 敏夫君         法務大臣官房審         議官      吉戒 修一君         大蔵大臣官房秘         書課長     渡辺 博史君         大蔵省銀行局銀         行課長     内藤 純一君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      久郷 達也君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         法務委員会調査         室長      海老原良宗君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月五日  辞任         補欠選任   西川 公也君     田中 和徳君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     西川 公也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  商法及び株式会社監査等に関する商法特例  に関する法律の一部を改正する法律案内閣提  出第一三号)      ――――◇―――――
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 笹川堯

    笹川委員長 内閣提出商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る七日午前十時から参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  6. 笹川堯

    笹川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松正雄君。
  7. 赤松正雄

    赤松(正)委員 おはようございます。新進党の赤松正雄でございます。  きょうから商法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案審議が始まるわけでございますけれども、この法案が出されなければならないというこの現代日本社会的背景というものは実に深刻かつ重大な問題をはらんでいる、こういうふうに私は思います。日本を代表するような企業、味の素でありますとか野村証券、第一勧銀、山一証券、大和証券といったふうな企業総会屋への利益供与事件がまさに毎日のように摘発される現状というのは極めて異常な事態だと思います。  しかも、大変重要なことは、こうした現状に対して、多くの人々が、企業社会に寄生するやみ社会の一端が明らかになっているのであって、文字どおり氷山の一角にすぎないのじゃないかというふうな共通認識を持っているのではないかということであります。  日本安全神話というものが阪神・淡路のあの大震災あるいはオウム真理教事件などを通じて大きく揺らいでいるといったふうな指摘がなされておりますけれども、もう一方で、この数年、一段と激しさを増す、企業人をねらったテロ事件発生というのは、まさにやみ社会の表社会への公然たる挑戦ともいうべきものであって、実に重要な問題だろうと思います。こうした一連テロ事件とまた総会屋をめぐる問題の土壌というのは決して無関係ではない、こんなふうに思います。  きょう五日は、財政構造改革に関する法案衆議院での委員会審議最終局面を迎えようとしておりますけれども、ある意味では、こちらの法案の方がより日本社会にとって、先ほど来述べてきたような理由によりまして、数段重要な意味を持つのではないかとさえ言っても過言じゃないかと思います。残念ながら、メディアの方の注目度はいま一歩のようでありますけれども日本の行政の中で最もおくれたものの一つと言われる組織犯罪対策への本格的な取り組みのいわばプレリュードといいますか前奏曲として、私たちはこの法案を重要なものと考えている次第でございます。  我が党の方から、私の後、弁護士出身ですとかあるいは公認会計士出身といった、専門的知識を持った方々から順次細かく質問がある予定になっておりますけれども、私の方からは、総括的といいますかマクロ的観点から幾つか質問をさせていただきたい、こんなふうに思います。  前置きは以上にさせていただきまして、本案に入りますが、今回の法案は、最近の社会情勢及び株式会社運営の実態にかんがみて、いわゆる総会屋根絶を図るとともに、株式会社運営健全性を確保するために、総会屋及び取締役等不正行為に対する罰則を整備するということが目的に掲げられております。  いわゆる総会屋根絶を図るための法整備というのは、昭和五十六年、一九八一年の商法改正で行われたわけですけれども、以来十六年たっているわけです。昭和五十六年時の商法改正は非常に大変な審議だったようでありますけれども、以来十六年間でこの法整備の実際的な効力、実効があったのかどうか。少なくとも、最近の、ことしに入ってから摘発されているような一連事件発生を見る限り、極めて効果は疑わしいのではないかと思われますけれども、この十六年間におきますところの総会屋動向とその犯罪における特徴といったようなものを、まず冒頭、警察庁の方からお述べいただきたいと思います。
  8. 玉造敏夫

    玉造説明員 お答えいたします。  警察では、株主権利行使に関しまして企業から不正に利益を得るなどの活動を行う者、これを総会屋というふうに一応考えております。必ずしも暴力団そのものではないけれども、これに準じる脅威を与える者、こういうことで取り締まりの対象としているところでございます。  総会屋勢力でございますが、改正商法が施行されました直後の昭和五十八年、約千七百人を把握しておりました。以後、一貫した減少傾向にございまして、平成八年末で約千人を把握しているところでございます。このうちで、いわゆる暴力団勢力、これは暴力団員そのもの、そして、暴力団構成員ではございませんが、その周辺におりますところの準構成員、これを合わせまして約九十人、構成員が五十人、いわゆる準構成員が四十人ということでございますが、このほかにもかなりのいわゆる総会屋暴力団と何らかのつながりを有するものというふうに見ております。  一方で、暴力団の方でございますが、これも、近時、企業経済活動に絡みまして、企業恐喝であるとかあるいは総会屋活動といった不正な資金獲得活動を行っているところでございます。  最近の総会屋の手口あるいはその動向でございますが、総会屋による企業訪問、これは依然として続いておりまして、過去の検挙事例から見ますと、つき合いと称しまして情報誌購読料名下全員を喝取しようとした事案、あるいは、情報誌購読を打ち切られたことにつきまして因縁をつけまして、その購読再開要求して全員を喝取しようとして未遂に終わった事案、あるいは自己が出版する機関誌への広告の掲載を要求した事案、さらには、下請参入名下全員を喝取しようとした事案スキャンダルにつけ込んで融資申し込みを企てた事案等々がございまして、いろいろな名目で経済取引を装いながら不当要求を執拗に行っているという現状にございます。総会屋がその生き残りを図りまして、企業に巧妙に食い込もうとしているということがうかがえるところでございます。  ちなみに、平成八年におきます総会屋検挙でございますが、検挙件数は二十二件、検挙人員三十名でございます。罪種別に見ますと、件数人員とも恐喝及び恐喝未遂、これが合わせまして六件、九人ということで最多でございます。平成九年九月までで見ますと、総会屋検挙は、検挙件数十一件、検挙人員二十六人でございます。罪種別で見ますと、件数では恐喝及び恐喝未遂が三件、人員では商法違反が十二人ということで最多でございます。
  9. 赤松正雄

    赤松(正)委員 量的な動向というのはこの十六年間の間に若干減る傾向にあるけれども、この中身、質というのはかなり悪質なものになってきているという傾向が読み取れる、こう思うわけです。その間にはバブル経済の崩壊という問題もあったりして、そういう日本経済における大変な変革期のさなかにおける影響というものも大きかったのだろうと思いますけれども、特に最近のこの一年、ことしになってからの我々の前に展開されているいわゆる小池何がしの被告による一連事件は、極めて巨額のお金が動いている。従来の、ここに資料としていただいております利益供与事件の一覧のどの事件よりも圧倒的に大きなお金が動いているわけですけれども、この人物による事件というのは特殊なケースなのか、それとも、従来の傾向と一線を画する流れがこの世界に起こっていて、その新たな動きにおける一般的な特徴傾向というものを反映しているのかという問題について、法務省大臣の方からお願いいたします。
  10. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  最近摘発されまして現在公判係属中の、いわゆる総会屋であります小池被告に係る利益供与受供与事件を見ますと、その第一の特徴といたしまして、日本を代表するというべき大手証券会社銀行最高幹部までがこれに関与して、会社ぐるみ利益供与に及んでいるということでございます。従来は、どちらかといいますと、株主総会対策ということで会社総務部人たちが中心になってやっていて、そこで総会屋との癒着ができるというふうな傾向であったのですが、今回の特徴としては、やはり企業トップ会社ぐるみでやっているというのが一つ特徴ではなかろうかと思います。  二番目の特徴といたしましては、その金額が従来の事例と比べまして格段に高額であるということでございます。総会屋活動が後を絶っていないばかりでなく、いわば我が国の経済社会に深く浸透して内部からむしばみつつある状況が明らかになった、そのように考えております。
  11. 赤松正雄

    赤松(正)委員 先ほど申し上げましたように、五十六年の改正で、四百九十七条、利益供与の禁止という項目新設されたわけですが、その当時のこの委員会におきますところのやりとりを見てもわかりますように、その中で政府の側、法務省の側は、この四百九十七条を新設することによって、従来困難であった不正の請託の立証という部分を乗り越えて一定効果が大いに期待されるといった趣旨の答弁を繰り返されておりました。  ところが、今大臣がお述べになられたような、企業トップ利益供与に積極的に参画をするといったふうな一連事件が起こって、現実にはさっぱり効果があらわれていない、こういう現状についてどのように考えておられるか。
  12. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  いわゆる総会屋をめぐる事案につきましては、お話がございましたように、昭和五十六年の商法改正以降、これらの罪によりまして、現在まで二百名をもう超えましたけれども、起訴されているという現状でございまして、また、ただいま警察庁からもお話がございましたように、総会屋そのものの実数というふうなものも減少しているということでございまして、現行法のもとにおける捜査当局摘発活動というのは一定効果は上げていたというふうなことは考えられると思います。  しかしながら、今なお総会屋活動根絶されていないということは事実でございまして、罰則による犯罪抑止力に問題があったということも否定できないところでございます。そういうふうなことで、今回の法改正によりまして罰則強化を図りたいということでお願いいたしている次第でございます。  他面、議員からもお話がございましたように、抑止力に問題があったとはいえ、罰則があるにもかかわらずこの種の事案が後を絶たなかったことにかんがみまして、その違法性を十分に知りながら総会屋癒着利益供与を行う会社の側、特にその幹部意識に大きな問題があったこともまた事実でございまして、会社幹部意識の改善が図られる必要が非常に強い、このように認識いたしております。
  13. 赤松正雄

    赤松(正)委員 今大臣の方から、罰則の軽さということから総会屋抑止になっていないという点、それから企業側姿勢、特に幹部姿勢に問題あり、こういうふうなお話がございましたけれども昭和五十六年のときの衆議院法務委員会で、十三項目にわたる附帯決議がなされたり、あるいは参議院でも十項目附帯決議がなされたりしました。いわゆる総会屋に対する狭い意味ではなく、もっと広い問題についての附帯決議でありますけれども、そういう決議がなされているにもかかわらず、今の現状がある。私は、そういう観点からしますと、企業側意識改革はもちろん必要でありますけれども法務省検察当局警察庁の断固たる取り締まり姿勢が弱かったという面も強く指摘せざるを得ないというふうに感じます。  今回の法改正によりまして罰則規定を重くすることで、この種の犯罪を撲滅するためにどの程度効果を発揮すると見ておられるのか。従来の罰則規定をこれぐらいの程度重くしてそんなに効果があると思えないという指摘もあるわけですけれども、その辺の見方、また、利益供与要求罪新設、それから威迫を伴う利益受供与罪要求罪新設、こういう二つの新設が行われているわけですけれども、こういった形でどのように効果が上がるというふうに考えておられるのか、その点についてお答え願いたい。
  14. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 今お話がございましたように、新しく、利益供与要求する罪を今回お願いいたしているわけでございます。  これは、今までは利益供与受供与ということを犯罪としてとらえて処罰していたわけでございますが、今申し上げました点は新設になるわけでございます。新しく設けることによりまして、会社側がいわゆる総会屋から不当な要求を受けた段階で、これを捜査当局に届け出てその処罰を求めるということができるようになったわけでございまして、これによって、会社関係者がその気になれば総会屋に対して毅然たる処置をとることも容易になるというふうに考えられます。  また、威迫を伴って利益供与要求したり、受けたりする罪を新設いたしまして、その懲役刑の上限を五年とすることにいたしました。こうしたことによりまして、悪質な態様の行為に一層厳正に対処することが可能となります。  加えて、公訴の時効期間も五年ということになるわけでございますから、従来の三年より長い五年というふうな形になるわけでございます。
  15. 赤松正雄

    赤松(正)委員 会社側が早期に総会屋の不当な要求行為捜査当局に届けて処罰を求めるというふうな形に果たしてなるのかどうか、いささか疑問だなという感じがいたします。  また、今度は警察庁に聞きたいのですが、しばしば金融証券など、先ほど来話が出ていますような、巨大企業がこういった事件を起こす場合、私たち普通の市民感覚からしますと、自分会社の持つウイークポイントを追及されることを恐れて穏便に事を図る。つまり、同業種の横並びで、自分のところだけやられるとまずいという感じ利益供与をするというのが、普通の、こういう犯罪が起こる場合の感覚かな、こう思っていたのですが、実際には、現実に展開されている総会屋をめぐる事件を見ると、そうでもないという感じがします。  例えば、平成三年に四大証券が、今回より以前に、非常に金額は少ないわけですけれども、四大証券幹部がそろって利益供与事件にかかわっているわけですね。これはボクシング興行のチケットとして賛助金を集められたということのようですけれども。つまり、自分のところだけというのではなくて、四大証券という証券世界の中において競い合っているグループが一括してねらわれている。  ということは、企業の側としても、本来、総会屋との関係というのは、企業経営にもともと所与のものというか、ビルトインされた、企業経営コストの中にもう最初から組み入れられているようなものだということが、今回の事件をまたないでもう随分前からそういうことが十分認識される事態がずっと続いていた、こんなふうに見えるわけですけれども警察庁当局としてはそういった事態を僕は認識されていたと思いますけれども、そういうのをしてきちっとチェックをすれば今回の事件も防げたのではないか、こういう観点からして、今日まで今私が申し上げたような観点からどういう対策を講じてこられたのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  16. 玉造敏夫

    玉造説明員 お答えいたします。  御指摘のように、企業総会屋に対する利益供与事件が後を絶たない状況にあるわけでございます。総会屋の不当な要求に対しまして毅然として対処している企業が現に存在する反面で、一部の企業におきまして、改正商法が施行された昭和五十七年当時におきまして暴力団あるいは総会屋との関係遮断できずに、その後も、総会屋との対決を避けて、あるいは総会屋等を利用することによって株主総会を無難に乗り切ろうというふうに試みる、あるいは企業にかかわりますスキャンダル等表面化を忌避する、さらには総会屋等情報源として利用するというようなことで、暴力団総会屋等に対します毅然たる対応徹底できなかった企業が存在するということはそのとおりであろうかと思います。  警察といたしましては、改正商法が成立いたしました直後の昭和五十七年に、当時の警察庁長官経団連におきまして、企業からの総会屋排除について要請したのを初めとしまして、これまで繰り返し繰り返し、各種の経済団体の会合、あるいは各都道府県に設置されております企業防衛協議会等の場などを通じまして、あらゆる機会を通じて、企業暴力団総会屋との関係遮断について働きかけをしてきたところでございます。また、個別企業からの暴力団総会屋排除につきまして相談を受けた場合におきましては、積極的に対応してきたところでございます。さらに、改正商法施行後、これまでに二十八件の利益供与事件検挙してきたところでもございます。  警察といたしましては、企業暴力団総会屋との関係遮断に向けた社会的な機運が大きく盛り上がっているときでございますし、また、さきの、いわゆる総会屋対策のための関係閣僚会議における申し合わせ事項もあるわけでございます。この申し合わせ事項にのっとりまして、今後さらに暴力団総会屋に対します取り締まり強化徹底、また、企業暴力団総会屋等排除対策への支援の強化を行ってまいりたいと考えております。
  17. 赤松正雄

    赤松(正)委員 対策部長お話を聞いておりますと、繰り返し繰り返し企業に要請をしてきたし、いろいろなことをやってきたのだけれども企業側がなかなかこちらの対応に応じてくれない、そういう感じで聞こえましたけれども新聞報道を見ますと、ようやく今回千二百社の企業総会屋絶縁宣言をする、また、このうち百社が情報誌講読打ち切りに踏み切った、また、経団連も明後七日には緊急合同会議を開いて、企業トップの九百人ですか、のメンバーに企業倫理徹底を改めて要請するというふうなことが言われております。  先ほど来玉造部長がおっしゃっているような感じで、従来もこれに類することは行われてきたのだろうと思いますけれども、正直言って効果がなかった、今大きな世論というものの勃興もあるわけですけれども、今回までおくれてきた、効果が発揮されなかった理由と、それから、今まで警察庁暴力団対策関係担当者を集めての説明会などを開いてきたというわけですけれども、この効果がなかったことに対する責任というものについて改めてお聞きしたいと思います。
  18. 玉造敏夫

    玉造説明員 これまでに企業等に対しまして繰り返し関係遮断を促してきたところでございますし、その結果として、現実暴力団あるいは総会屋等との関係を大変厳しい状況の中で遮断をした企業も存在するということは承知しているところでございます。また、総会屋勢力の数的な減少ということも考え合わせますと、決して今まで行ってきた努力というものがむだであったとは考えておりません。  ただ、遺憾ながら、御指摘のように、いまだに利益供与事件が後を絶っていないというのもこれは事実でございます。今後さらに一層そういう関係遮断社会的機運の盛り上がりというものを追い風としながら強めていきますとともに、一方で、なおかつ遮断をしない企業に対しましては、これはしかるべく処置をさせていただくということにいたしたいと考えております。
  19. 赤松正雄

    赤松(正)委員 先ほど部長の方から、いわゆる総会屋に対する関係遮断という意味効果が上がつたケースもあると。つまり、本気で総会屋絶縁宣言をして総会屋企業経営から排除したケースがあると思うのですけれども、例えば「ジス・イズ読売」のことしの十月号に、元内閣広報官宮脇磊介氏が書いている中を見ますと、「総会屋暴力団などの闇社会企業癒着一般論で語ると本質を見誤る。癒着核心部分銀行業界証券業界」だ、こういう言い方をされています。効果が上がったケースの中で、今彼が述べているような、銀行証券とほかの業界とははっきり分けた方がいいのだという言い方をしていますけれども、従来のケースの中でそういった傾向指摘されるでしょうか。
  20. 玉造敏夫

    玉造説明員 過去に私ども事件として取り扱ったケースを見た場合に、そういうきれいな線の引き方というものはできるかどうかとなりますと、若干自信がございません。各業種にわたっておるということだろうと思います。  ただ、これは私どもの取り扱ったケースではございませんので詳細については不明でございますけれども、本年、事件となりました金融あるいは証券業界ケースを仄聞したところによりますれば、他の業態では考えにくいようなスケールであろうということは言えるかと思います。
  21. 赤松正雄

    赤松(正)委員 大臣、この問題に関して政府関係閣僚会議を開かれて、対策をしばしば練っておられるということでございますけれども、当事者の企業経営者あるいは総会屋、これを除きますと、商法という法定刑そのものを扱う法務省、あるいは総会屋を取り締まる警察庁、また、その企業を指導する観点からすれば大蔵省や通産省といったふうにさまざまな官庁が、関係閣僚会議といった場合に、法務大臣あるいはもちろん総理大臣を筆頭にさまざまなそういう部署からこの会議に出ておられると思うのですけれども、我々から見ますと、一体この総会屋をめぐる問題についての最終的責任者はだれなんだ、この問題を本当に真剣に考えて取り組んでいる人はだれなんだということで非常にあいまいになっているような嫌いを感じるわけですけれども政府の一体どこの部分にその責任の中核があるのだということについてぜひ法務大臣の考え方を聞かせていただきたいと思います。
  22. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  いわゆる総会屋対策のための関係閣僚会議におきましては、ことしの九月五日に、いわゆる総会屋対策要綱というものを設けまして、「いわゆる総会屋等排除するため、経済界の協力を得ながら、政府を挙げて」「対策を実施していく」という申し合わせをいたしたわけでございます。  これはもう本当に、総会屋にかかわり合いのある政府のそれぞれのつかさつかさ、それから企業、これが一体となって総力を挙げてやらなければ目的をなかなか達成することは難しい、これは総力戦である、それぞれのつかさつかさが本当に必死になって取り組むか取り組まぬか、そこにかかっておるのじゃなかろうか、こういうふうに私は思います。  そういうふうなことで、去る十月二十八日には、関係閣僚会議の申し合わせによりまして、業界団体に対する企業経営者意識改革を支援するなどの諸対策を一層推進していくこと等をする旨の合意がなされました。明日は経団連幹部の方にも来ていただいて、政府から御相談しながら申し入れをするというふうなことに、明日の朝でございますか、なろうかと思います。  そういうふうなことで、どこが中核というよりも、これはもう関係のあるところが政府としても多うございます。それから企業としても、今警察庁の暴対部長がああいうふうな御答弁なさいましたけれども、いわゆる金融界が今度大きな問題になっているわけでございますが、宮脇さんの言葉を引用されましたけれども金額が多いというのが金融界の特徴一つだろう、このように私は思います。しかし、それはもうあらゆる業界にわたっていることでもございます。  私自身もある企業の責任者から総会屋の問題についていろいろ伺ったこともございますが、総会屋を断ち切ろうということで最初のうちは大変苦労するそうです。しかし、一たん軌道に乗りますともう総会屋は寄りつかなくなるというふうなことでございまして、やはりその辺の苦労も大変なものだと思いますが、そこまで企業の経営者というのはもう腹を決めて取りかかってもらわなくちゃならない、そうでなければ、それは安易につこうとすれば癒着が生まれてくる、こういうふうに思います。  法務省といたしましても、今お願いいたしておりますような商法罰則強化でございますとか、あるいは、組織的犯罪に対処するための刑事法の整備というような法制面の問題、あるいは、検察当局における総会屋等の各種犯罪に対する厳正な対処ということ、いわゆる法の執行面、さらには、日本弁護士連合会に対しまして総会屋問題について一層積極的な対応の要請等、法務省としてはもう法務省の範囲内でできるだけの努力をいたしているつもりでございまして、そういうふうなことの総合力が必要である、このように思います。
  23. 赤松正雄

    赤松(正)委員 大臣、総力戦とおっしゃいましたが、法務大臣のこの問題への果敢な取り組みを熱望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  24. 笹川堯

    笹川委員長 漆原良夫君。
  25. 漆原良夫

    ○漆原委員 新進党の漆原でございます。  今お話がありましたように、昭和五十六年に総会屋対策としての商法改正がなされまして、二百九十四条ノ二、四百九十七条が新設されたわけでございます。  この改正以前の実態をちょっと調べてみますと、大変な実態でございまして、総会屋の数が五十五年現在で五千八百人、暴力団構成員が千百名。それから、一社当たりつき合っている総会屋の数というのが、これは五十四年現在の東証一部、二部上場会社三百三十社に対する調査でございますけれども、五十人以下というのが二十八社、百人以下が五十四社、三百人以下というのが百六十四社、五百人以下というのが五十四社、七百人以下が二十一社、千人以下が十四社、千五百人以下が九社、二千人以下が二社、三千人以下が二社という大変な数でございまして、一社当たり総会屋に年額払っている金額が平均して大体百万円ぐらいかなと。多いところでは一億円以上も払っていたというところが二社もあったという本当に目を覆うような状態であったわけでありますが、五十六年の法改正後、これらの事項について調査をされているかどうか、現在どんなふうになっているかどうかをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 玉造敏夫

    玉造説明員 お答えいたします。  お尋ねの調査につきましては、商法改正前に警視庁が、警視庁管内特殊暴力防止対策連合協議会、現在の警視庁管内特殊暴力防止対策連合会でございますが、ここの加盟四百四十社に対しましてアンケート調査を行ったものでございまして、回答は三百三十五社だったと思います。ここに対しまして総会屋現状等に対するアンケート調査を実施したものでございます。  当時は、総会屋に言うなれば利益供与をすることはそれ自体犯罪でなかったわけでございますが、その後でございますが、同種のアンケートはその後行っておりませんが、最近行ったものとしましては、平成八年に、同じくこの警視庁管内特殊暴力防止対策連合会加盟の二千二十二社に対しまして、総会屋企業訪問状況及びこれへの企業対応であるとか、あるいは、総会屋の不当な要求状況及びこれに対します企業対応、このようなものについてアンケート調査を行いまして、千二百二十八社から回答を得ておるところでございます。  それぞれの項目と申しましょうか、先生御指摘項目とうまくマッチしないのでございますけれども総会屋が相変わらずいろいろな形で企業に接近し利益要求をしておるという実態、そして、このアンケートによりますれば、八四%の企業要求を拒否している反面で、一部でも要求に応じておる企業が一三%あるという結果が出ております。
  27. 漆原良夫

    ○漆原委員 法改正後、五十六年から平成八年までの検挙実績等を教えていただければと思いますが。
  28. 玉造敏夫

    玉造説明員 商法利益供与に関する罪につきまして警察検挙した数は、これまでに二十八件でございます。
  29. 漆原良夫

    ○漆原委員 検挙の総人数等はどのくらいになつておりますでしょうか。特に総会屋に対してどのくらいの人数を検挙したのか。いかがでしょうか。
  30. 玉造敏夫

    玉造説明員 商法改正以降、警察検挙した総会屋の人数でございますが、一番最近のケースまで合わせまして百四十人でございます。
  31. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、先ほど同僚議員の方からも質問がありましたが、総会屋による情報誌の購読料名義で企業から総会屋などに金が流れていると。新聞によりますと、年間百億円を超えるのではないかというふうにも言われておりますが、この情報誌の購読料名義のお金の流れについて警視庁で調査を最近されているやに聞いておりますが、その調査結果を教えていただきたいと思います。
  32. 玉造敏夫

    玉造説明員 情報誌の購読というのが、言うなれば総会屋企業に対するアプローチの第一歩と申しましょうか、となっておるわけでございます。これに関しましては関心を持っておるところでございます。  今おっしゃられましたのは、恐らく、警視庁の方で数字としてまとめました、本年十月末ぐらいでしょうか、における企業のこの総会屋等情報誌遮断状況の数ではなかろうかと思います。これは、全国的に見ますと、約九十社におきまして延べ一万一千部の打ち切りを行ったということでございます。  なお、この情報誌関係に対します警察としての検挙もあるわけでございまして、御説明させていただきますと、ことしに入ってからのものでも、大阪におきまして、総会屋でありなおかつ右翼団体の代表でもある者が、大阪市内のホテルから情報誌の購読を打ち切られたということにつきまして因縁をつけまして、購読復活名下に金品を要求したけれども未遂に終わった事案であるとか、あるいは、これは警視庁で扱った事案でございますけれども、同じくこれは右翼代表でございますが、打ち切りを通告され、これに因縁をつけまして、さらに購読を継続しろという要求をして未遂に終わったというような事案がございまして、未遂に終わったということは、企業から御相談があってその結果として未遂に終わったということでございまして、進歩は見られるのかなというふうには思っております。
  33. 漆原良夫

    ○漆原委員 その新聞によりますと、大体一冊一万円程度、年間九十億円ぐらいあるいは百億円ぐらいのお金が流れている、こういうふうに報道されているのですけれども警察庁としてはこの情報誌の現物そのものを現認されておるでしょうか。  それから、果たして一万円に相当する内容のあるものなのかどうか。私の知り合いの弁護士に聞いたところ、もう本当に二、三枚のぺらぺらした紙で、とてもそれが一万円の価値のあるものではない、もうあれは本当にゆすりたかりそめものだというふうに言っておったのですが、その辺の、購読料という名前を使っての金のやりとり、実態として一万円の価値があるのかないのか、この辺はどのようにお考えでしょうか。
  34. 玉造敏夫

    玉造説明員 情報誌につきましては、とりわけ現場であります警視庁等におきまして克明に関心を持って見ておるところでございます。  なお、その内容は情報誌によりましてある意味で千差万別でございますし、総会屋等の発行する情報誌であるのかそうでないのかという線引きは非常に難しいところでございまして、それはまさに、企業においてその情報誌の情報内容がその購読料にふさわしいと客観的に判断しているのか、それとも別の要素をもって判断しているのかということによろうと思います。したがいまして、一概にその内容が購読料に見合うかどうかということは直ちには申せませんが、ただ、明らかに見合わないのではないかというものが多数存在することは事実でございます。
  35. 漆原良夫

    ○漆原委員 九十億とか百億とかという金額は、総会屋にとってみれば大変な資金源になる。この資金源を絶たないと総会屋根絶できないだろうと私は思っております。  そういう意味で、情報誌の購読そのものを、先ほど御報告された例は恐喝みたいな事例でございますね、情報誌のストップ理由にして恐喝されたという事例でございますけれども情報誌の購読そのものが、ある意味では商法の四百九十七条で言うところの「財産上ノ利益」にならないのだろうか、なるのではないか、そう考えられますし、あるいはまた、客観的に見て価値のないものであればそう考えて検挙、摘発してもいいのじゃないか。今までそういう事例があるのかないのか、また、なければなぜ摘発できなかったのか、その辺の事情はいかがでしょうか。
  36. 玉造敏夫

    玉造説明員 お答えいたします。  情報誌というものの線引きがまず非常に難しゅうございます。要するに、総会屋による、あるいは総会屋等いろいろな、会社ゴロなどという存在もございますから、情報誌であるのか、それとも一般の情報誌であるのかという線引きは、一概にはできないと考えております。  次に、情報誌の購読をいたしたということが直ちに利益供与になるかどうか。これは企業側がその情報に対していかなる価値判断をしたかという部分がございますので、そうしたことではないかと思いますが、これ自体を検挙したということはたしかなかったと思います。それとは別に、恐喝等々ということで検挙ということでございます。
  37. 漆原良夫

    ○漆原委員 検挙は大変難しそうなことだと思いますが、二百九十四条ノ二の二項というのが、この推定規定が四百九十七条違反に適用されないということと相まって、どうもこの辺が脱法行為の温床になるのじゃないかというふうな気がしてしようがないのです。そういう意味では、何とか、通常取引を装った情報紙誌の購読そのものを禁止するような法的措置はとれないものかどうか、いかがでございましょうか。
  38. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  大変微妙なと申しますか、いわゆる総会屋をめぐるさまざまな事象、企業との関係の恐らく根幹に触れてくる部分であろうかと思います。  一般的に法的な答えといたしましては、利益供与受供与罪は、株主の権利の行使に関して利益の供与がなされることにより成立するものでございます。すなわち、株主の権利の行使、不行使に対する対価と申しますか、その趣旨、例えば株主総会会社に有利な発言をしたり不利な発言をしないようにすることの見返りの趣旨が必要とされているわけでございます。  したがいまして、仮にそのような趣旨で、いわゆる総会屋が発行している情報誌の購入をいわば名目といたしまして利益の供与がなされた場合には、この利益供与罪、受供与罪は成立するというふうに考えられるわけでございます。  これに対しまして、通常の形態の雑誌の購入等はこのような趣旨のものではないという点で、両者は区別される面があろうかと思います。  そういう株主権の行使に関してということが言われる以外に、先ほども御答弁がございましたように、一般的に、委員指摘のような市場価値のないものを無理やり買わせるということになりますと、先ほども指摘ございますように、恐喝罪というような犯罪が成立する余地は当然あるわけでございます。企業情報誌の代金を支払ったか否かという点、それが幾らであったという点は、情報誌の内容とか企業における購読の必要性と相まちまして、株主の権利の行使、不行使の対価という趣旨があるのかどうかということが判断されるということになろうかと思います。  ただ、先ほど来委員の御指摘にございますように、企業の方で、いわゆる総会屋と申しますか不明朗な組織との癒着を断ち切るという意味で、かなり広範に、いわゆる業界誌と申しますか情報誌と申しますか、そういうものとのおつき合いといった購読をやめるという動きが出てきております。これは、そもそもそういうところからつき合いが始まって、そして会社の中身に踏み込んでくるということに対する反省と申しますか、そこで線を引くことが一面で難しい反面、一律にということならばやりやすいという面もあると思います。  そういった点で、さまざまな御論議の中でまた指摘を受けて、業界といたしまして、そのような実態に合わせて、いかにしてそういうやみの部分といいますか不明朗な部分との関係を断ち切っていくかということを考慮して対策がとられていくだろうというふうに考えているわけでございます。  ですから、法理論面と実務の面、確かに難しい面がございますが、そうした点に、先ほど警察庁からも御答弁ございましたように、今後とも、企業の方々とも十分そこは相談しながら、そして、企業が敢然としてそれを断ろうとした場合に、まさに暴力を背景にあるいは恐喝をしていくと、今度の法律を成立させていただきますと威迫ということについても取り上げられるという可能性が出てまいるわけでございますので、いわば対策の幅は広がってくるので、そういうことを背景に幅広い対応ができるのではないかということが期待されるわけでございます。
  39. 漆原良夫

    ○漆原委員 その辺は、確かに一律に線を引くというのは法的に難しかろうと私も思います。ただ、現実的にこれが総会屋の資金になっているということは事実でございますから、ある意味では捜査当局の機敏な活動と、それから、こういう資金源を絶つのだという強い決意をひとつお願いしておきたいと思います。  次に進みますが、先ほど話がありましたように、本年になってからの利益供与事件の摘発の事例は、味の素とか野村だとか第一勧銀、大和証券、松坂屋、日興証券、山一証券、三菱とか、本当に連日新聞をにぎわしておりまして、今後も拡大されることが予想されますが、日本を代表する会社の社長、前社長だとか、企業の上層部の方の人が逮捕、起訴されている、こういう現状法務大臣はいかが御認識されていらっしゃいますか。
  40. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お尋ねの問題につきましては、会社運営健全性を著しく害するいわゆる総会屋活動が依然として後を絶っていないばかりでなく、我が国の経済の中枢まで浸透しつつあるという極めて遺憾な事態が明らかになっておるわけでございます。また、国際的に見ましても、外国にこのような総会屋が存在するということを私は承知いたしておりません。それだけに、国際化、規制緩和、いろいろ進んでいる中でこういうふうな事案が外国にるる報道されているわけでございまして、やはり日本の国際的なそういうふうな地位の低下、極めて憂慮すべき問題ではなかろうか、このように認識いたしております。
  41. 漆原良夫

    ○漆原委員 このような大企業が本当にやすやすとなぜ利益供与をするのか、本当に私は理解できません。例えば、四大証券会社と言われておる会社がたった一人の総会屋に振り回されて、新聞によれば、たった一通の質問状をきっかけにして、野村は三億七千万とか山一は七千九百万とか大和は二十三億融資したとか日興は千四百万の利益供与をしたとか、国民からとって見ればどうしてなんだという疑問が本当にあるのですね。  お答えできるかどうかわかりませんが、なぜそういうことになったのかなという疑問が根本的にありますが、一体どんな事情なんだという、事情がわかればお答えいただきたいと思います。
  42. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘小池被告に係ります一連事件の背景にどういうことがあったのかということでございますが、そのことがまさに本件のいわば起訴されました犯罪の背景になっているわけでございまして、そのことはいずれ公判廷において検察官から証拠により証明すべき事項ということで提示させていただき、そして、それを証拠によって証明していくということがこれから求められているわけでございますので、ただいま法務当局の立場からそのことについて云々することは差し控えさせていただきたいと存じます。
  43. 漆原良夫

    ○漆原委員 多分そういうお答えかなと思いながらお聞きしたのですが。  一般論としてで結構でございますが、昭和十三年、五十六年の二回にわたって商法は法規制をしたわけですね。しかし、それにもかかわらず、日本の顔というべき大企業が法の目をくぐってこういう犯罪を犯している。その原因は一体どこにあるのだろうか。一般論で結構でございますが、どのようにお考えでしょうか。
  44. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 いわゆる総会屋をめぐる事犯につきまして、先ほど来御質問があり、またお答えがございましたように、これらの罪により約二百名近い人が起訴され、また、総会屋として把握されている者の数も数自体は減少していると聞いており、一定の法執行の効果はあったというふうに考えられるわけでございますが、まさに御指摘のとおり、従来では考えられなかったようなスケールと、そして関係者を巻き込んだ形で現在の事件が摘発され、これから公判が行われようとしているわけでございます。  委員指摘のとおり、罰則があり、なおかつ一定の法執行があったにもかかわらず、どうしてそういうことがあるのだろうかということが、まさしく本件一連事件の背景となるべき事項だと思います。どの程度明らかになるかということにつきましても、これは公判廷において明らかにされるということを私どもとしては期待すると申しますか、そのような立場で検察官は努力するものと考えているわけでございます。  ただ、一般的に、さまざまな御議論の中で、企業の、しかも信用を重んすべき大企業金融機関はまさにそういうものに当たるのだと思いますが、そういう企業が巻き込まれて、一般の方々が考えても予想を超えたこのような関係があるということの背景の中に、やはり社会全体の動きというものの中で、いわば利用しあるいは利用し合う関係というのがあったのではないかということはさまざまな形で論議されているところでございます。  そのあたりの具体的な事情について、現在、法務当局から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、そういう中での御議論の一つに、仮にそういう動きの背景に暴力的なものがあったとして、そういうものに対して十分対応できないおそれといいますか、むしろ正規の法執行に頼らないでそういう癒着した形の中で物事を図っていくというようなことがあるいはあったのかもしれませんし、また逆に、そういうものから供与を受けた場合に、それを表に出して訴えていくということについてさまざまな障害があったのかもしれないというようなことも考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、これはもう一般論ということでお答えにはならないと存じますが、私どもとしては、検察当局は、関係当局と一緒に努力をさせていただきまして、その根源となるべき事実がどういうことだったのかということをぜひ明らかにされるように期待いたしまして、そして、そのことがまた一般的な予防につながっていくものだというふうに考えているわけでございます。
  45. 漆原良夫

    ○漆原委員 本法案は、その理由説明によりますと、いわゆる総会屋根絶を図るとともに株式会社運営健全性を確保するために、法定刑を引き上げたり、あるいは刑罰法規を新設することをその内容としているわけでございます。  しかし、私は、過去二回の法規制にもかかわらず、企業総会屋癒着というのは現在も継続して、今やもう日本全部の大企業日本を代表する顔というべき企業総会屋とのやみの取引に汚染されているという感があるわけでございます。この事実は、ある意味では法改正の、法律でもって規制するということの限界を示しているのではないかなというふうに思います。  それは、法改正によって刑罰規定を強化することも一つの予防の方法でございますが、これは必ずしも抜本的なものではないと思います。企業の方も決してある意味では喜んで利益供与に応じているわけではなく、企業利益供与には、今回のような逮捕、起訴、有罪判決ということで、エリート社員として築き上げた人生がだめになってしまうというリスクをしょっている、それにもかかわらず利益供与に応じているというこの現実があるわけでございますが、このリスクを負ってもなお利益供与に応じているというその原因をもっと明確にした上で、その原因を解消する努力をすることが抜本的な総会屋対策ではないのかなというふうに考えております。  比喩的な言い方をしますと、私は、総会屋企業関係はアリと砂糖であろう、こう思うのですね。砂糖がある限り、どんな法律でもって障壁をつくったとしても、必ずアリが砂糖に群がって入り込んでくるということでありまして、この刑罰法規を強くするというだけではやはり不十分であって、この元凶である砂糖をどうなくしていくかというところが総会屋対策の抜本的な解決方法ではなかろうかと考えておるのですが、この点、法務大臣、いかがでしょうか。
  46. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お話を承りまして、私も大変共感するところが多いわけでございます。  今回、商法改正によりまして罰則強化をお願いいたしております。これは、先ほど来御説明いたしましたように、五十七年に初めて適用いたしましたときには、本当に大変、企業総会屋にも関心を与え、緊張させたことは事実でございます。そして今日まで来ているわけでございますが、なおかつ今議員お話しのような事案が後を絶たない。これは罰則としての抑止力が足りないという側面もあっただろうと思いますし、そういうふうな面で今度強化をお願いしているわけです。しかし、それじゃこれで総会屋根絶するかどうか、罰則強化だけでいいかどうかと言われますと、これはやはり企業自身の基本的な姿勢の問題にも返ってくると思うわけでございます。  私、こういうふうな席で個人的な見解を申し上げて恐縮でございますけれども、どだい、総会屋という言葉が存在すること自身がおかしいと思うのです。これは、先ほどちょっと申し上げましたが、外国はいろいろ調べてみましても日本みたいな総会屋という存在はないのですね。ところが、日本でそういうふうな総会屋の存在を許容している体質とは何だろうか。  これはやはり、企業にとりましては、株式会社にとりましては総会というのは最高の決議機関でございます。それによって企業幹部以下の人事等々が決まるわけでございますし、したがいまして、企業の経営者といたしましては、株主総会というものを大変重視する。何とかスムーズにいくような、総会が円満に終了するような方策を講じたいというふうなことから、そこに総会屋との癒着の根源があるのじゃないだろうか。  総会屋というものをなくして、株主総会におきまして、株主企業の経営者が十分に円満な雰囲気の中で対話を繰り返し、そして会社の将来を論じ、会社の経営について議論し、そして、総会を円満に進めていくという形が望ましいわけでございますね。私は、だから、株主総会は一分でも一秒でも早く終わらせた方がいい、そういうふうな基本的な考え方というのは大変疑問を持っておるのです。やはり総会というのを今言いましたような形で進めていく、そこまで企業の方々が踏み込まなければ、私はいい企業の経営なり株主総会というものはできないと思います。  そのような形で、いろいろな問題がございます。いろいろの問題がございますが、例えば会社総務部人たちは、これは会社の社員でございます。やはり偉くなりたいと思いますね。そうすると、企業トップがもう一分でも一秒でも早く総会が終わることを願っておるというふうなことが以心伝心でわかれば、やはりそういうような努力をするだろうと思うのです。そういうふうな過程の中でやはり総会屋との癒着というものが生まれてくる。一たん癒着というものが生まれてきますと、ずるずる引き込まれていく。そしてそれが、その総務部人たちがかわればかわるなりにまた癒着が引き継がれて、今度の場合はそれがトップまで及んでいる。そして、トップもまた引き継いでいる。そういうふうな実態なんですね。  やはり、そういうような根幹にメスを入れなければ、私は総会屋根絶というのは難しいと思うのです。そういうふうな意味で、今度の商法改正も、私は、一つの力にはなると。それは、要求罪新設したり何だかんだということで、側面で力にはなる。しかし、今申し上げましたように、企業が認識してもらうということが大事だと思いますので、政府としても総力を挙げて、それぞれのつかさつかさでひとつ支援もし、できるだけの対策をとろうと。要は、企業の方々がそういうふうな気持ちになるかならぬかということですから、そういうふうなことになっていただくように努力しようというふうな形で一生懸命頑張ってまいりたい、このように思います。
  47. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の大臣株主総会に対するお言葉、私も大変そのとおりだと思っております。  そういう意味で、平成九年九月五日、閣僚懇談会の申し合わせ事項の中で、「企業経営者意識改革」という項目がございます。「いわゆる総会屋等会社との完全な絶縁を企業経営の基本とするよう企業経営者意識改革を促すこと。」これはもう大変そのとおりだと思っておりますが、私はこの前提に、企業株主のものであるという認識、したがって、企業経営者株主に対してできるだけ情報を公開して実質的な株主総会を開く、運営する責務があるのだというところまで意識改革をしていただかないといけないのではないかと思うのですね。  今まで企業経営者にそういう認識がなかったために、何とか株主に発言させない、短い時間で終わらせる、こういう株主総会のやり方をしていたところに実は総会屋との癒着があるわけでありまして、そういう意味では、会社自分たちのものではないのだ、株主のものなんだということを、根本的な意識を変えていくところにまず出発点があるのではないかなと思いますが、法務大臣、いかがでしょうか。
  48. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 全く御説のとおりだと思います。そこが基本であろうと思います。  幾ら総会屋との絶縁を形式的に宣言したって、実質が伴わなければ全然意味ないわけでございまして、それはやらぬよりやった方がいいと思いますけれども、問題は、一つ一つ企業が真剣になって今先生御指摘のようなことで取り組むか取り組まないか、そこにかかっているというふうに私どもも思いますし、企業がそういうふうな形で進むように、政府としても、また私どもの立場といたしましても最大限の努力をしてまいりたい、このように思います。
  49. 漆原良夫

    ○漆原委員 わかりました。企業経営者株主総会に対する意識改革と、それから、総会屋とは決別するのだという毅然たる決意が総会屋対策のまず第一歩である、後は、これをどのように具体化し環境を整えていくことができるかということが、企業意識をサポートする環境をどう整えるかということが重要だと思います。  そういう意味で、意識を促す一つの方法として、総会屋等から利益供与要求があった場合に、企業経営者に対して、そういう事実があったのだということを捜査機関に告発ないし通報する義務を課してもいいのじゃないかという議論があると思いますが、これについては、今回の法案にはないのですが、議論があったのかなかったのか、あったのであればなぜこの法案にならなかったのか、その辺のいきさつを御説明いただきたいと思います。
  50. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のような、つまり、いわゆる総会屋等から利益の提供を要求されたということにつきまして、企業側が通報すると申しますか、そのことを捜査機関に申し出るという義務を課したらどうかという点につきましては、確かに議論はございましたし、また、そうした方がいいのではないかという御議論もあったと承知をしております。  ただ、現在の我が国の法律上、一般私人に犯罪の告発義務を課した規定はなく、また、通報義務を課しているものといたしましても、例えば爆発物取締罰則で、爆発物を発見した人の告知義務でございますとか、爆発物使用等の犯罪を認知したときの告知義務でございますとか、また、新しくはサリン等による人身被害の防止に関する法律によりまして、サリン等の極めて危険な物質を発見した人の通報義務というような形で、各種法令によりまして災害等の発見者の通報義務などもあるわけでございますが、いずれも不特定多数の人命、身体を害するおそれのある極めて危険なもの、毒物、災害等についての公共の危険に関するものでございまして、いわゆる総会屋根絶が現下の重要課題であることを考慮いたしましても、私人の義務としてこれを一律に論ずることはできないのではなかろうかということで見送られたというふうに考えている次第でございます。  また、現在、いわゆる総会屋対策における、先ほど来御議論がございますように、関係閣僚会議が設置されるなどして、官民が一体となりましていわゆる総会屋排除運動が展開されているということで、要求罪新設に加えまして、そのような動きの中で、あえて通報等の義務を法定しなくとも、いわゆる総会屋による犯罪を有効に摘発していくことはできるのではないだろうかというふうに考えられた結果であろうというふうに考えております。
  51. 漆原良夫

    ○漆原委員 もう一つ、この種の犯罪は、たまたま一般人が過って起こすという事件ではなくて、会社全体の雰囲気の中で利益供与ということがなされてくるという観点を考えますと、場合によっては、総会担当者事件ではあっても会社罰則を設ける両罰規定を設けてはどうかとか、あるいは連座制を適用してはどうかというふうな意見もありますが、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  52. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 商法第二編第七章が所定しております会社をめぐる一連の罪につきましては、一般に、会社の構成、運営をめぐる会社に対する何らかの不当な行為処罰して、主として会社財産の保全を直接間接に保護することをその趣旨としているものでございまして、原則として、両罰規定を設け会社に罰金刑を科することにはなじまないものと考えられているのでございます。  具体的に申し上げますと、例えば会社の計算によって利益供与がなされた場合、会社は何らかの社会的非難をもちろん甘受すべき立場にはあるのでございますけれども、他方、利益供与罪の立法趣旨は、もともと会社財産の不当な支出によりまして会社運営健全性が害されることを防止することでございまして、株主の財産である会社資産の充実維持を保護法益の一つとしている側面も否定することができないことを考えますと、会社に対して罰金を科すことはその立法趣旨に反するおそれがあると考えられた面が一つございます。  また、御指摘の公職選挙法上の連座制のような規定を設けたらどうかという点につきましては、民主主義の根幹をなす公職選挙の公明適正を厳粛に保持するため、総括主宰者等が選挙犯罪を犯して刑に処せられたことを理由といたしまして、公職の候補者等であった者の当選を無効とするとともに、その立候補の自由を所定の選挙及び期間に限って制限するものでございまして、その制度の趣旨と効果の両面から考えてみまして、商法所定の罰則には直ちにはなじまないのではないだろうかと考えられたのがその理由でございます。
  53. 漆原良夫

    ○漆原委員 昭和五十六年から平成八年までの利益供与事件の二十五件の一覧表を見ますと、ほとんどが総務部長が処罰されている、二十五件中二件が前社長と会長ということでございまして、ある意味では本当にトカゲのしっぽ切りがなされているのではないかなという危惧もあります。もう  一つは、仮にそうでなかったとしても、会社トップとしては、こういう利益供与がなされていることをわからなかったという大きな管理ミスがあるわけですね。  そういう点を考えますと、私は、商法の二百五十四条ノ二という条文では「取締役の欠格事由」というのが規定してございます。両罰規定で刑罰を科することは酷としても、部下がこういう犯罪を行った場合には、企業トップは一種の連座制の適用によって取締役の欠格事由に当たらせるというふうな厳しい条文を置いた方が、トップは一体と下に向かって、利益供与しちゃいけないよ、総会屋とつき合っちゃいけないよという意識が明確に働くと思うのですね。  そういう意味で、刑罰規定を科するのほかわいそうだとしても、取締役の欠格事由に当たるというふうなことも一つの案かなというふうに私の頭をかすめているのですが、いかがでございましょうか。
  54. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今、こうした事案が起きた場合には取締役等の欠格事由として、以後取締役に就任させないというぐらいの厳しい態度で臨んではどうかという御提言でございます。  非常に傾聴すべき部分があるというふうに考えておりますが、何分にも、それでは部下の不祥事が起きた場合に、どういう要件のもとにだれが責任を負うのかといったいろいろ難しい問題が出てくるように感じております。  ただ、今までお聞きしていなかったような御提言でございますので、今後、研究の対象にもさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  55. 漆原良夫

    ○漆原委員 最後に、一点だけお聞きしたいと思います。  株式総会の議事運営の方法を、きちっと株主の権利を守り、さらに合理的な運営方法というのは僕はあると思うのですね。それをやはりきちっと研究すべきだと思うのです。あさって参考人としていらっしゃる久保利さんがお書きになった「株主総会のすべて」という本でございますが、ここには総会のやり方まで、議事の進め方まで書いてあるのですね。こういう本がいっぱい出ております。  そういう意味では、議事の主導権を総会屋じゃなくて会社が握っていくのだというやり方、あるいは、総会屋の次から次の質問に対してはきちっと打ち切っていくこともできるのだというふうな方法、あるいは、取締役、監査役の説明義務はあるけれども、例外規定があります、どんな場合には説明しなくてもいいのかということをきちっと明確に打ち合わせをしていく、そういうマニュアルみたいなものがあれば、私は、株主総会は何も怖くないのじゃないか、総会屋は怖くないのじゃないかというふうに思うのですね。この久保利先生も、自分が総会を担当して、総会屋がいても二時間あれば十分に処理できるのだというふうにこの本に書いていらっしゃいます。  そういうマニュアルの作成、それから総会に対する弁護士の応援体制、この辺を法務省としては日弁連に強力に働きかけていくべきだ、場合によっては法務省と日弁連一緒になってマニュアルをつくってもいいし、あるいはいろいろな体制を検討してもいいのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  56. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 まさに先ほど来の御議論にございますように、株主総会を含めた会社運営にかかわる問題ということで、さまざまな工夫がなされていくべきであり、また法務省といたしましても、あらゆる観点から御協力していかなければならないだろうと思います。  そして、特にただいまお触れになりました日弁連、日本弁護士連合会との関係では、政府全体の中で、日弁連にも弁護士の立場としての御協力をお願いしようということで、法務省を通じまして日弁連に協力方をお願いいたしました。その結果、各単位弁護士会に企業等から相談があった場合のきちんとした対応、また引き続き関係委員会でそのような研究を進めていくということで、極めて前向きな回答を得ているところでございまして、また、そのことをまた企業等にフィードバックして、そして官民あわせてこの問題に対応していくという体制がつくられつつあるというふうに考えております。
  57. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  58. 笹川堯

    笹川委員長 西村眞悟君。
  59. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 西村眞悟です。  今検討している法案を通じて、二点について法務省の御見解を承りたいと思います。  まず、我々が今、この法案も含めてですが、直面しているのは、やみの世界と申しますか、まだ実態が明らかにない状態なんですけれども、そこから市民社会のルール、モラルを守る、そのために、市民社会に脅威を与えるそういう組織、犯罪組織といいますか、やみの組織の実態を究明しなければならない。この法案において、二つだけ、私が立法の今後の検討課題としてはこれがあるのではないかなと思うことをちょっと申し上げます。  つまり、罰金刑のことでございまして、こういう事犯における罰金刑は、利益を目的としております犯罪ですから、有効なことは非常に有効なんですけれども、罰金の額を損益計算に入れてくる犯罪者に対しては、ある意味では無益なわけですね。罰金の上限以上の利益を得るというならばやる、また、実行犯をやらせるについても、現在日本では、二、三年間入ってきたら、出てくれば故郷へ帰って家を建てて一生安楽に暮らせる額を保証すればやる人はおるのだろう、こういうふうに思いますから。  罰金刑についてですけれども、上限五百万という決め方が今の法律としてはあるのですが、自由刑には不定期刑というものがありまして、少年法には不定期刑の思想が残っていると思うのです。まさにこのいわゆる経済事犯における罰金刑、不定額罰金というふうな発想の転換をして、得た利益を懲罰的にすべて取り上げるというふうな発想でこれからの立法の工夫というのがなされていけば、ある意味では防圧できるのではないかなというふうな思いをしておるのですが、これは私の考えなんですが、法務省の御見解はいかがでしょうか。
  60. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 ただいま御指摘の罰金刑の持つ犯罪抑止効果といいますか、その犯罪に対する制裁としての意味という観点からの御指摘の趣旨は、いわば犯罪によって得た利益を剥奪するためには、それに応じた罰金刑を科し得るようにすべきではないのか、また、罰金刑でなくてもその利益を剥奪する手段を考えていくべきではないだろうかという御指摘だろうと思いまして、その点につきましては、私どもも重大な関心を持って現在検討させていただいているところでございます。  ただ、総会屋が供与を受けた利益という本件の商法上の罰則に関していいますと、商法の規定によりまして、会社にそのものは返還すべき義務が課せられている上に、刑法の一般規定に従った没収、追徴も可能であり、また、それらの規定によって実際上の効果は達し得るのではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、本改正案に関する罰金刑の抑止効果等につきましても、今後ともその運用を見守ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  61. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今話題になっている総会屋の方の背景も、私は非常に深いと思うのですね。  我々はまだ実態を解明する手段を持っていない。銀行の副頭取また支店長が射殺されて、その背景がわからない。それ以上に私が重大な関心を持っているのは、その前の、朝日新聞の記者が射殺されて、その背景もわからない。銀行の支店長また副頭取が射殺された背景はおおよそ推定がつきますけれども、朝日新聞の記者が射殺された背景は何があるのだろうか。この背景がわからないまま、マスコミが真実を何のいわゆる拘束もなく我々国民に流しているというふうに安易に妄信することはできないな。やはりマスコミの抑制というのがそこで厳然として、背景がわからない以上あるのだろう。  また、銀行の副頭取また支店長が射殺された背景がわからないまま、つまり、銀行の債権の取り立てにいかに抑制的にそれが働いているか、そして、現実に不良債権としていかに経済界の不安定要因になっているか。この背景をわからないまま、我々は住専処理とかいろいろなことをやらざるを得なかった。この背景をわかる手段としては、今具体的に法務省が考えられている通信傍受、私はこれが、通信傍受が今とり得る当面の手段であろう、このように思っているわけです。  これについては、今とり得る手段としてほかにもあるのだ、検証令状によって従来からやってきたから、それは今この手段が必要で、この手段があれば組織犯罪の、いわゆるやみの組織の実態の究明ができるのだというどちらでしょうか。今まで検証令状で五件ぐらい判例があるのですかね、通信傍受。今どうしても、私が今申し上げた、やみの組織の解明が必要だという観点からは、通信傍受というのはその手段としていかに位置づけられるのでしょうか、実際に捜査に当たられている御経験からお教えいただきたいと思います。
  62. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  近年、我が国におきまして、委員がまさに御指摘のように、各種の事件の背景に、組織的な動き、組織的な暴力の動きということが疑われるような事情は、十分私どもとしても認識いたしているところでございます。そのことがさまざまな犯罪の背景になり得るということも理解しているところでございます。  そういう観点から、法務当局といたしましては、一般的に組織的な犯罪に対処するための刑事法の整備を早急に行ってまいる必要があるということで、去る九月十日に法制審議会の答申を得たところでございます。  その中には、刑事の実体法及び手続法の双方にわたる多岐の内容が含まれているのでございますけれども、まさに議員御指摘のとおり、一定の組織犯罪について、組織犯罪が行われる可能性のある事件につきまして通信傍受の制度を導入するという内容も含んでいるわけでございまして、その背景としては、従来、個人的な犯罪を摘発して、そしてそれに対して刑罰を科していくということでは賄えない犯罪の実態ということが背景にあることを御理解いただきたいと思います。  そして、よく申されるのでございますけれども、客観的な証拠によって犯人を検挙処罰すればいいではないかという議論が一方であるわけでございますが、その痕跡を残さないように、しかも罪証隠滅を図りながら行われるということがいわば常識となっております組織的な犯罪に対処していくためには、まさにその犯罪の背景と申しますか、その実態を明らかにするためにもさまざまな配慮が、手だてが必要だと思いますが、その中で、各国ともやはり通信傍受の手続が近代国家における通信の実情から考えまして極めて有効に働いているということを私どもとしては意識しているわけで、世界的なこの種の傾向の中で、我が国におきましても組織的な犯罪に手を携えて対処していかなければならないという事態から、私どもとしても、我が国にそのような制度を、さまざまな観点から御議論をしていただきまして、ぜひ導入させていただきたいということで現在検討させていただいているところでございますので、よろしく御理解いただきたいと存じます。
  63. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 やはり犯罪の組織というか、こういうものがあって、これがある意味では一定量我が国の社会を支配していると思うのです。その実態を解明する手段として、今お答えになったもの、いろいろあるわけですが、捜査機関の努力によってその実態が解明された後のことです。  我々の刑法の体系が個人責任主義のもとで体系立てられておって、実行正犯というのは現実にそれを実行した者、共謀があれば共謀共同正犯まで広げられる。果たして、組織の実態を解明して、何の痕跡も残さないけれども、末端であらゆる犯罪を行いながら組織として陰の隠然たる支配を持っている、こういう実態がわかったときに、これを受けとめて網をかける構成要件が我々のいわゆる刑法典に用意されておるのかどうか。私はなかなか、つついて、やぶから蛇どころか妙なものが出てきて、それを受けとめて処理できる箱を持たないという事態になりかねないのです。  私も、従来の日本の法の、責任をとる、個人に追及する法の体系と発想を転換した、新たな、組織を一網打尽に網をかける構成要件、どういうイメージになるかどうもわからないのですけれども、いやしくも立法の対象としてはここまで至っているわけですから検討を始めねばならぬな、このように思うわけでございますけれども、この点については、いかが御見解をお持ちですか。
  64. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のとおり、現行の実体法、刑法を中心とする実体法も、いわば個人犯罪を主としてとらえる形になっておりまして、組織的に犯罪が行われている場合、実際には非常に悪質に見える実行行為者がいわば手先にすぎない、そして、背後に本当の責任を負うべき人物が隠れているという場合もあろうかと思います。そういうことを考慮いたしまして、現在検討中の法律案の中では、一定の場合に、組織的に行われた犯罪につきましては、刑法の加重類型を設けましてその処罰強化していくという面が一つ検討させていただいている点でございます。  もう一つは、いわば犯罪をペイさせないといいますか、先ほどの冒頭の御質問にございましたように、犯罪によって得られた利益をそのままにしてはおけないという角度から、世界的にも現在マネーロンダリングということが行われておりますけれども犯罪で得た利益を新たに投資いたしまして、いわば表のお金にしていって、そして企業等経済活動を支配していくということが考えられるわけですが、そういうものに対しては世界各国とも協調的に対処していくということで、そのための法律を、法案を考えていきたいという点が一つございます。  それ以外に、やはりそのような犯罪によって得られた利益をより強力に没収するなり、あるいは追徴していくということが考えられるだろうと思います。  そういうことで、いずれにいたしましても、組織的に行われる、つまり犯罪がいわば利益を得るための手段として組織のために行われる犯罪ということになりますと、そこで得られた利益はそのままに放置できないというのが現在の考え方になりつつあるように思います。そのための諸手続をできるだけ充実させていただきたいという観点から、さまざまな角度でもって検討させていただいているところでございます。
  65. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。  これから御質問申し上げることで委員の皆さんにも御反発があるかもわかりませんが、推論を申し上げるのではなくて、一つの、だれそれが言った内容という形で申し上げます。  今、経済事犯が主にあって、我々は、泉井さんのことでも、金のやりとりがあった、その部分で、倫理といえばにしきの御旗、そこばかりで騒ぐ、しかし、その背景に何があるかわからぬまま騒いでおるというふうな状態。これは、犯罪の組織、また我々の市民社会の背後に何があるのかという部分については、この政界、経済界問わず、私はあるんだろうと。  例えば、二十年前に、レフチェンコというKGBのスパイがアメリカに亡命して、社会党を初め、社会党の政策はソビエトのいわゆるコピーであった、マスコミと社会党の議員二百名をエージェントとして操作したんだということを言っておる。これを言っておるわけです。また、クレムリン秘密文書がソビエトが崩壊してあらわれたら、やはり共産党と社会党にクレムリンから、あそこの文書がですよ、文書の内容が、金が、選挙資金が行っていたんだ、こういうことが「クレムリン秘密文書は語る」という中公新書に書いてある。  また、翻って、公平のために申し上げますが、CIAの文書は、昭和四十年代に自民党の選挙資金としてCIAよりの資金が自民党に渡されたというふうに向こうの公文書が書いてあると。また、一昨年の米支援、考えてみますと、吉田猛なる、日本のマスコミで北のエージェントだと言われている人物がそこに介在しておる。また、日本人が拉致されたという事実一つとっても、あれは国外から来た人間が拉致したんじゃなくて、日本国内に拉致を支援する組織があって初めて可能なんだ、その拉致を支援する組織に関与した人物が、文芸春秋に、私はその組織によって日本人を拉致したんだと言っておるわけです。  こういうふうなもの、実態が何もわからない。普通の民主主義国家なら、こういう報道が真実であるか否かというよりも、こういう報道が出て弁明しなければ、社会党なり共産党なり自民党なりが弁明しなければ、党本部が焼き討ちを受けても不思議じゃない。こういう前提をちょっと置いておきますので。前提です。  橋本総理の報道が今あれば、普通の民主主義国家ならば弁明しなければならない。例えば、橋本総理が中国の情報部員とプライベートにつき合っているという疑惑の報道が流れるならば、それを放置しておれば、ロシアのエリツィンさんも果たして橋本総理に本音を言われるのか、国益上にかかわることだと。これで私は質問を橋本総理に申し上げた。申し上げたら、情報部員であるかどうかわからないと。それで、質問が終わった後で新聞記者さんに、情報部員であるかどうか、そんなの調べられるか、調べてわかるのなら情報部員とは言えないだろう、こういうふうに語っておる。  私は、こういうことを語られなかったら、この場で法務大臣質問する必要を感じなかった。しかし、果たして我が国の公人、昭和四十年以来一貫してスパイ天国だと言われている我が国の政界、そして総理大臣自身が、調べて情報部員だとわかるのなら情報部員とは言えない、調べてわかるか、こういうふうに言っている。私の質問に対して、情けない質問を受けるものだ、こういうふうに言っておる。私に対して委員会で答えられるのならともかく、私が知らないところで言っておるから、日本の治安の責任者である法務大臣にお伺いしなければなりません。  我が国において、先ほどから御紹介したいろいろな情報が昭和四十年代以後ある。占領されていた当時はともかく、独立してからもある。我が国においては、治安の責任者である法務大臣、本当に公人に接近してくる外国の人物がいわゆるスパイ、情報部員であるかどうか調べようがないのですか。法務大臣、お答えいただきたいと思います。
  66. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 法務大臣の仕事は、一言で申し上げますと、法秩序の維持と国民の権利の保全ということになるのじゃないかと思いますし、そこからすべてのことが出発しなければならない、このように認識いたしております。  今御質問の件につきましては、これは具体的なお話でもございますので、調べておるとか調べておらぬとかというふうなことは答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げますれば、今御質問のことも踏まえまして、それは法令に違反するようなことがあれば厳然として検察では処置するものだ、こういうふうに認識いたしております。
  67. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今、調べられるかというふうな総理の意見ではあるけれども、調べられるという御答弁でよろしいのですか。
  68. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 調べる調べぬという問題の前に、まず具体的な事件についての答弁は差し控えさせていただきます。  ただ、法令に違反するようなことがあれば、これはもう検察において当然処置するものだ、このように認識いたしております。
  69. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 外務省秘密漏えい事件というのがあって、蓮見さんという女性が罰せられた。しかし、末端のアルバイトの外務省職員の得る情報と総理大臣もしくは閣僚の持っている情報が違うということは、もう既におわかりのとおりなんですがね。  一般的にお聞きしておるのです、具体的なことではなくて。我が国のいわゆる外務省の秘密漏えい事件、それ以上の情報を持っている公人、この公人と接触する外国の人物は法に違反すれば出るのは当たり前です。しかし、このスパイというものが、先ほどの組織犯罪ではないのですけれども、何の痕跡も残さず接近している、これをずっと追跡していってしっぽをつかんだ途端にやらねばならない種類のものだ。しっぽが出てから二回目にしっぽを出すのはいつかと思っていたら、なかなか捜査も、レフチェンコ証言のとおり日本はスパイ天国になるのですね。  一般的にお聞きしますけれども法務大臣は御経験が長いわけですから、やはり日本にはスパイがいるのだろう、だから日本のいわゆる警察というものは、彼らの勘、鼻といいますか、そういうことで、それがちょっと怪しいぞと思うような、例えば、ちょっと具体的になって申しわけないのですけれども、単なる通訳とのつき合いではなくて、それを度を越したつき合い方をしている、端緒は例えばこういうことです。こういうことでも何でも、しっぽが出る前にずっと追跡しているものではないのでしょうか。人を殴ったとか物をとったとか、そういうことがあれば発動するというよりも、捜査自体はその前の状況からずっと追跡していってしっぽが出たとき捕まえる、こういうふうなプロセスになっているのじゃないのでしょうか。法務大臣、そうですわな。ちょっと御答弁を。
  70. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 一般的とおっしゃりながらなかなか具体的な話になるようでございますけれども、これはあくまでも一般論として御答弁いたしますが、犯罪の捜査というのは地道な捜査を重ねて初めて成果が出てくるものでございます。ただ、何のたろべえがどういうふうな犯罪をやっているか、あるいはこのことが予想されて捜査をやっているのかやっていないのか、そういうようなことは御答弁の限りではございません。それはもう差し控えさせていただきます。
  71. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 僕はちょっと不勉強でわからぬのです。国務大臣が国家秘密を漏らした場合は、蓮見事務官は罰せられるのですが、今どういう罰則があるのですかね。それから、罰則規定というか、それを取り締まる規定がないとすれば、これは必要ないわゆる法的な整備ではないのだろうか、こう思うのですが、このことについてはいかが御見解をお持ちでしょうか。
  72. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 まず、国務大臣に関しましては、国家公務員法上、委員御承知のとおり特別職とされておりまして、同法第二条五項によりますと、改正法律によって別段の定めがなされない限り、同法の秘密漏せつ罪の適用はないものと承知しております。  なお、新規立法といいますか、国政の重要な地位にある国務大臣につきまして国家公務員法上も特別の取り扱いがなされているということに照らしますと、御指摘の点については極めて慎重に検討されるべき問題と考えます。
  73. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 再度法務大臣に、我が国のいわゆる捜査当局の能力というものは、総理大臣が言うように調べてわかるものじゃないというものじゃなくて、調べればわかる、そういう能力を持っておるというふうにお聞きしてよろしいですね、先ほどの御答弁は。
  74. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 一般論として申し上げますならば、犯罪があれば検察が事件として適切に処理するという答弁以上に出ないわけでございます。
  75. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  76. 笹川堯

  77. 福岡宗也

    ○福岡委員 新進党の福岡宗也でございます。  ちょっと腰を痛めておりますので、着席のままで御質問することをお許し願いたいと思います。
  78. 笹川堯

    笹川委員長 許可いたします。
  79. 福岡宗也

    ○福岡委員 私は、商法の一部改正のうち、利益供与罪、受供与罪、すなわち、第四百九十七条の法定刑の加重に関する法律案の問題を中心に御質問を申し上げたいと存じます。  既に同僚の委員の方からいろいろな方面にわたりまして質問をいたしておりますので、なるべくこれと重複しないような観点から質問をいたしますけれども、若干の重複はお許しを願いたいと存じます。  そこで、まず、商法改正案の具体的な質問に入ります前に、最近の政府の、社会的に問題となっておる事件多発に対応するための立法政策といいますか、その姿勢について御質問をいたしたいと思います。  最近、政府は、凶悪なる事件発生する、それから社会的に問題のある同種事件が多発する、これに対応するために、その犯罪抑止するということで、直ちに新しい犯罪構成要件を創設したり、さらに既存の犯罪行為の法定刑を加重する、こういう法律案を提出してきております。  ここ数カ月で限定してみましても、中国からの密入国者を入国させる組織としての蛇頭の暗躍を阻止するということで、出入国管理法の改正を行う。さらには、総会屋のばっこという現状を踏まえて、これを抑止するということで、今回の商法改正案、罰則規定強化という法案提出。さらには、組織的犯罪抑止する必要があるということで、刑法のいろいろな刑罰の規定がありますけれども、これを一律に、相当大幅に刑罰加重を加えるという改正案が提出されようとしておるわけであります。それから、少年の凶悪事件発生ということによって、これはまだ法案化されておりませんけれども、論議として、少年法の改正をして、少年保護という観点以外に被害者等のことも考えて、やはり処罰というか応報的な刑というものを盛り込む必要があるのじゃないかということの論議さえされているというのが現状であります。  もちろん、場合によっては非常に重い刑罰を科す必要のある場合もありますし、それからまた、刑罰を科すというのも抑止一つの方法ではあります。しかしながら、犯罪社会悪の蔓延、ばっこというのは、その原因となる社会的なまた経済的な要因があるわけであります。そして、社会のモラルそれから倫理の欠缺、こういうことも大きな要因になっているわけであります。  したがって、その原因をまず究明して、徹底的に要因を突きとめた上でこれを除去する適切な方策というものをきちっとして、その上で、社会全体に定着するようなモラルの確立をするということが最も重要なことだろうというふうに思います。  いたずらに、これに対する原因究明とか何もせずに、直ちに刑罰の加重ということだけ単独で犯罪抑止ということにはならないというふうに思うわけであります。いたずらな加重というのは、ともすれば、歴史の示すところで、警察国家、恐怖政治というものを思い起こさせるわけでありますし、さような観点から見ても、民主国家の刑事政策としては好ましいということではないわけであります。本来必要最小限度であるべきだという観点を忘れてはならない、こう思うわけであります。  さような意味で、法務大臣の刑罰法規、立法に関する、私の基本的な考え方は申し上げましたけれども法務大臣としてどのような基本的な考え方を持っておられるのか、まず承りたいわけであります。
  80. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  今委員の御指摘お話につきましては、私も基本的に賛成でございます。もともと、罰則で縛るということは本来じゃないと思うのですね。罰則がなくても、国民が自由濶達に秩序を維持しながら生活するような社会というのが望ましい、これが基本であろうと思います。  そういうようなことで、今お話がございましたが、犯罪を防止するために犯罪の原因である社会的要因を除去することが重要である、これはもうそのとおりでございまして、そういうふうな意味で今回の商法改正をお願いいたしておるわけでございますが、その罰則強化と相まって、総会屋のあり方、企業の倫理の問題、その辺のところが基本にあるのじゃないだろうかということを先ほど来お話しいたしておるわけでございまして、そういうふうなことと相まって、やはり今まで抑止力として十分ではなかったというふうなことで、罰則強化、整備するというふうな考え方でいるわけでございます。
  81. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。率直な御答弁で、ありがとうございました。  ということになりますと、抜本的には法務大臣社会的要因の除去というのが最も重要だという御認識のようでありますので安心したのですけれども、この法案並びに蛇頭の問題についての出入国それから組織犯罪の問題も出てまいります。  そうすると、やはり社会的な要因というものの除去ということが重要だとすれば、加重法案は加重法案で通るにしても、すぐに政府の方としては、その要因をどういうふうに除去したらいいか、それから立法的に除去できる法案を整備するかとか、それからまた、通産、大蔵等、関連のところの省とも連携をとって、新しい株式会社の倫理確立のためについての具体的法案を立案したり指導するというようなことをしなきゃならぬと思うのですね。  そういうような具体的なスケジュールというのが、今、政府の方で閣議の決定とかなんとかでなされているか、また、検討されているのかどうか、それをまずお伺いしたいのです。法務大臣にお願いします。
  82. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 既に御説明申し上げましたように、政府といたしましては、総会屋対策関係閣僚会議というものをつくりまして、数回、率直な意見交換をし、申し合わせ、決定等をいたしておるわけでございます。  そして、お話のとおりに、大蔵あるいは通産等々はそれぞれの企業、団体を抱えているわけでございますので、そういうふうな関係の団体に対しまして、総会屋対策についての厳しい対応、そういうようなことで御支援をお願いいたしておるわけでございます。  さらに、私どもといたしましては、弁護士会にもお願いいたしまして、先ほど刑事局長の答弁にもございましたが、日弁連では傘下の各弁護士会にその趣旨を徹底していただきました。そしてまた、それぞれの委員会でも積極的に取り上げていただくというふうなことまでやっていただいておるわけでございます。  さらに、そういうふうなものを、それぞれの各省でやっているわけでございますが、政府としてひとつこの問題についてお願いしようというふうなことで、明日午前中、早い時間でございますけれども経団連幹部の方々においでいただきまして、政府の意のあるところを伝え、総力を挙げてこの問題に取り組もうというふうなことで今やっている最中でございます。
  83. 福岡宗也

    ○福岡委員 ぜひとも早急に、どういうところに原因があるかということを抜本的に検討し、その要因を探った上で、これに対する立法作業なりいろいろな行政のいわゆる指導というものを徹底するということを至急に講じていただきたいというふうに思うわけであります。  次の質問ですけれども、今回の商法改正の経緯とその目的については既に大臣の方から詳細に御答弁になっておるところでありますけれども、これを要約いたしますと、今お話にもありました閣議決定におきまして、日本を代表する企業による総会屋に対する利益供与が後を絶たない、そこで、その大きな対策として、まず、総会屋に対して利益を供与しないように所轄庁から各企業に対して要請をする、総会屋に対する絶縁宣言をする、さらには、警察当局の取り締まり強化をする、万全を期す、そして第三が、本日提案されておる、利益供与罪並びに会社荒らしに対する贈収賄、これの法定刑を加重するというのが大きな三本柱のように思うわけであります。  そこで、従来から議論されていますので簡単に申し上げますけれども、この三つの柱、それぞれ効果はあるかとは思いますけれども、これだけでは総会屋撲滅にはならない。やはり、先ほどから私が言っておりますように、その社会的な要因を完全に除去するという施策なくしてはとてもこれを根絶するというところまではいかないと思うわけであります。  そして、その一番の要因というのは、先ほどの、大臣もお認めになっておられますように、株式会社においては株主が所有者である。そして、株主は、その経営を専門的知識を有する取締役にゆだねて経営に当たらせておる。その反面に、一般大衆投資家保護のために、株主総会、すなわち株主全員で構成するこれを最高の意思決定機関とし、重要な案件を決議する、業務、会計についても報告する、さらには、いろいろな意見を拝聴するということによって経営に対するチェックをしていく。さらには、少数株主権として商業帳簿の閲覧請求権を設ける。また、代表訴訟の権利も認める。さらには、取締役の業務執行の適正を図るための監査制度、監査役による内部監査というものを設けて、さらに、それだけじゃ足らないということでもって、公認会計士の監査人によるところの監査請求というものを設けておるわけです。すなわち、そういう一般大衆投資家保護のために、きちっとしたチェック機能を持たせるような法的構造にしているわけです。  しかしながら、現在は、残念ながら、これらの機関は一つとして機能しているものはないと言って過言じゃない。すべて形骸化しておる。ということは、信頼をして企業を任せておる株主の信頼を裏切って、これを保護するという機能というものが会社に全くない。しかも、それは一社か二社が例外だというのじゃなくて、すべての会社についてそのような体質が蔓延化してしまったというところに原因があるわけであります。  したがって、総会屋を追放すればいいというものじゃないのですね。総会屋だけは追放できたけれども株主が発言しようと思ったら発言を封じられる、五分か六分でしゃんしゃん総会で終わるというような現状やら、この監視機能が現状のままでは、これはもう健全な株式会社制度とは言えないということになってしまい、将来的に株式会社制度自体が危殆に瀕するということは目に見えるわけであります。  そういう意味で、若干具体的に申し上げますけれども株主総会において問題なのは、したがって、その義務である説明義務というものが十分に果たされていないということ、資料の提供が十分ではない、発言が封じられている、こういうことだろうと思うのですね。  それから、少数株主権については、要件が厳し過ぎるせいもあってほとんど行使されたということがないわけで、最近は、代表訴訟の場合は単独でできるので、これが費用が安くなったことによって若干ふえているという傾向にはあります。  それから、公認会計士の問題についても、資格のある立派な人であるからということで、前の五十六年の改正のときに、我々も頑張っていますというようなお話がありましたけれども、そこでもやはり指摘されておりますことは、監査の公認会計士の選任方法、これが会社との契約だけだ。  したがって、公の機関の推薦、例えば公認会計士協会であるとか裁判所とか何かの推薦、チェックがあってなされていないということですから、実際に契約するのは現取締役ですから、取締役の気に入った人がなる、しかも、十年も二十年も、一生近くやってしまうという人もいる、こういうようなことでは、これは公認会計士の人柄がいい悪いじゃなくて、制度的にこれはチェック機能を果たすことはできないだろう。  ましてや監査役においては、従業員の中で取締役になれそうもないような人を回すとか、取締役を終わったOBを充てるということであります。このような人が、その上司筋に当たる権限を持っておる社長や専務等のなしておる経営に対してチェックをしろというのが無理で、チェックを入れたために首になった人の例も聞いておるわけであります。  したがって、これも機構的に完全に外部、そういった経歴のないような人たちを入れる、そして、内部の社員であった人、いわゆる従業員であった人とか取締役は用いない、そのような抜本的な改定をしなければならないわけであります。しかし、これは非常に経済界の反発もありますし、難しいと思いますよ。なぜかというと、それはそういうふうに今までやってきたからです。  したがって、これを改定するということ、取締役はあくまでも、先ほど同僚議員も言いましたように、経営を預かっているだけだという認識に立つ、株主本位の会社運営になるということは、非常に厳しい経営を迫られる部分があります。いわゆるガラス張りの経営ですから、素っ裸にされるようなところもあると思いますよ。したがって、今まででもそれは論議されているのですけれども、実際には、総会屋憎いといいながら、自分の方だけの改革はおろそかということで見送られたというのが現状だというふうに思うわけであります。  これらの痛みを伴う会社経営の抜本的改革なくして、総会屋根絶はあり得ないというふうに思うわけであります。そして、この私の言ったことは、私、前々からそう思っていますけれども、私だけが言っているのじゃなくて、もう昭和五十六年の、供与罪を新設しなければいかぬということに法案にかかったときに、もう既に国会の審議において十分にこれは論議されているのです、言い方は違いますけれども。したがって、この点について、この五十六年の、供与罪を設けてもいいけれども、ここのところも対策をしなさいと言われているのですよ。それは国会の実際の法務委員会の論議もそうですし、法制審議会の論議もそうです。  それにつけ加えて、その論議の末に附帯決議がなされております。先ほど同僚議員も言いましたけれども衆議院と参議院と両方で附帯決議がなされておりますけれども、参議院の方がわかりやすいので、ちょっと参議院の方を朗読させていただきたいと思います。  「今次の法改正が国民一般に与える影響、とりわけ単位株制度の導入が株主等に与える影響の大きいことにかんがみ、その趣旨及び内容の周知徹底を図ること。」ということにしまして、その内容としまして、関連のあるところだけ申し上げますと、まず第一に、株主、債権者等の保護を図ること、企業社会的責任の観点から、株式会社の業務、財務に関して公示・公開制度、これは株式会社の情報公開ですよ、まずこれを徹底しろと。  さらに、その関連で、営業報告書、附属明細書記載に関する省令の制定に当たって、国会における審議の内容を尊重し、大会社社会的責任を明らかに示すような内容のものとしろということで、形式的な営業報告や附属明細じゃなくて、きちっとしたものにしろと。  それから三番目に、株主総会の形骸化を防止し、その適正な運営を図るため、いわゆる総会屋の撲滅に一層努力をするということで、まずその形骸化の問題を強く指摘しております。  それから、監査役制度については、監査役の権限を強化する、それだけじゃなくて、独立性を確保しろということを言っているわけですね。いわゆる経営者からもう独立させてしまえと。  それから、監査業務の公認会計士の外部監査、これについても、独立性と監査内容の充実ということと両方を図れ、こういうことを言っているわけです。したがって、現在の会社の取締役が勝手に選任できるような形のものではだめだよということを明確に言って、すぐにこれをやれと言っているのですよ。  それから今日まで、十六年たっているのですね。それで、今度は加重するという法案はできたけれども附帯決議の一番抜本的要因、これだけ具体的に示されておるにもかかわらず、法案化されたものとか、具体的に何もさいていないというのが現状であるわけです。  そこで、今私が指摘しました附帯決議、大体全部で五項目ですけれども、この点について、今日まで政府の方でこの附帯決議の内容を取り上げて実現するために討議をし、法制審議会その他の関係の機関において諮問をしたとかそういう取り組みをしたことがあるのかないのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  84. 森脇勝

    ○森脇政府委員 お答えいたします。  ただいま多数の点について御指摘がございました。当然のことながら、株式会社株主のものである、それをどう実現していくかという問題は、法制面の問題と商法の運用の問題、この二点があろうかというふうに考えております。附帯決議につきましては、どう商法で築かれた法体制をきちんと運用できるものにしていくか、その両面から指摘されているものというふうに把握いたしております。  そのうち、代表訴訟あるいは監査役の充実強化といった面、これは法制面でございまして、これはいずれも平成五年の商法改正において、株主代表訴訟についてはより利用しやすいものとするための改正を、また、監査役制度につきましては、これを一層充実強化したものにするための法改正を実現していただいたところでございます。  さらに、会計監査人について、例えば実情はどういう形で会計監査人が選任されていくかといった面につきましては、私ども、必ずしもしっかりと把握しているわけではございませんが、一応資格を有する会計監査人の選任、それが株主のための株式会社を実現するという観点からどうあるべきかといった問題は、どちらかというと法制面で規制するといったような問題ではなくて、今申しましたような株式会社の原点に取締役あるいは監査役がその立場に立って、みずからの責任において会計監査人の選出に向けて努力していく、こういうことが必要なのではないかというふうに思っております。  現在、この運用面における努力というのが著しく欠けている部分があるのではないかという感じがいたしておりまして、私どもとしては、こうした整備された制度を利用する側の方の意識の問題というのを今後とも一層喚起していかなければならないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  85. 福岡宗也

    ○福岡委員 ありがとうございました。今の御答弁ですと、一応の対策はいろいろ考えておられるということのようであります。  しかし、私が言いたいのは、そのような改革では改革とは言えないのですね。いわゆるそれを運用する側の人たち意識の問題だと言ってしまえばそれだけでありますけれども、問題は、制度的に取締役という業務執行権を有しておる人と、その業務執行内容やら会計内容などを、間違いはないか不正がないかということを厳しくチェックする機能というのは相対立する立場なんですね。  だれでも人間というものは自分のやった行為に対して批判を受けたりチェックは受けたくないというのは人情ですけれども、それをあえて職責的にやるという場合には、任意に、モラルに任せるといったのではだめなので、やはりある程度の、会社の従業員や取締役であった人の構成比率を変えるとか、それからさらには具体的な監査人の選任の場合においても、公認会計士協会の推薦が必要であるとか、場合によってはもっと公的な、裁判所とは言いませんけれども、その他の機関でもいいのですけれども、そういうところからの推薦というのが要件にするとか、そういう具体的な方策というものを講じなければいけないし、株主総会にしてもそうだと思うのですね。そういう具体的な法改正やら指導というものがないと、これは改正にならないのであって、これをすぐに着手をしてもらうということだけ希望しておきます。  それからさらに、株主総会の形骸化の問題に絡んで、最近五カ年ぐらいでいいのですけれども、上場会社株主総会の所要時間は大体どれぐらいになっているか、もし資料があればお答え願いたいと思います。
  86. 森脇勝

    ○森脇政府委員 六月に株主総会が開催された上場会社でございますが、これについて最近五カ年の株主総会の平均所要時間、これは次のとおりでございます。  平成五年が二十八分、平成六年が二十五分、平成七年が二十七分、平成八年が二十六分、平成九年が二十九分ということでございまして、これは資料版の「商事法務」に登載された数字でございます。
  87. 福岡宗也

    ○福岡委員 ありがとうございました。  今の数字からすると、三十分以内がほとんどということですね。ましてや一時間を超えるものは平均ではなかったと。二十数分で、私がちょっと質問したってそれは三十分たつのですよ、一人で。これは株主総会、しかも大会社で、何十億、何百億という会社の営業と経営と、それからさらにいわゆる会計チェックについての報告から全部合わせて、これで株主のためのディスクローズができていると考える方がむしろおかしいのですね。したがって、これはもう恥と考えなければいけないのですよ、日本経済界全体が。やはりこれを抜本的に変えるという姿勢が本当に必要だろうというふうに今また改めて思うわけであります。よろしくまたそういった観点から施策を推進していただきたいというふうに思います。  それから次に、時間が大分来ましたので、ちょっと飛ばしまして、今回の刑の加重の内容、いわゆる利益供与罪とそれから利益受供与罪というのが大幅に加重されたのですけれども、これが妥当かどうかということについて御質問をいたしたいわけであります。  法務省の方に言うのは釈迦に説法かもしれませんけれども、本来、人は自由に行動するものであります。できるものであります。ただ、その行為により、他人の生命、身体、財産を侵害する、国家の治安を危殆たらしめるようなとき、これはどうしても抑止しなければならぬわけであります。  ただ、その抑止力には、モラル、倫理、それからさらには宗教的戒律もありましょう。これだけでもう十分だという場合もありますけれども、その侵害の程度の著しい行為については、国家がその行為に対して犯罪として構成要件を定めて、あらかじめ定めた法定刑の範囲内で刑罰を科する、こういうことが必要になってくるわけであります。これが近代民主国家の刑罰法規の行使の基本的考え方であると思うのです。  したがって、ある行為に対して刑罰を科するか否か、道徳に任せるかどうかということですね、また、その行為にどの程度の罪を科する法定刑を定めるのが妥当か、これは、その行為を禁止することによって保護される保護法益の重要性、それからその行為の違法の程度、さらに責任もありましょう。こういうものに見合った適正な妥当なものでなければならぬわけです。法益侵害を抑止するためとはいえ、いたずらに不適正な厳罰主義、とんでもない罪に死刑をやるとか、そんなことは許されないのですね。刑罰は、やはり国家に対する重大な、人に対する人権侵害行為だけれども、それはそういう全体のために許されるということで、許される範囲は民主国家では適正な範囲なんだ、こういうことになっているわけであります。  だから、歴史的にも、また今日でも、全体主義でどちらかといえば人権後進国ほど刑が重いというのは公知の事実でありますし、それによって犯罪が減っているなんということはないのです。したがって、今回の法定刑も、増額するのはいいとして、適正かということをやはり吟味しておく必要があるわけであります。  そして、重要なことは、四百九十七条の利益供与受供与罪というものは昭和五十六年に新設されたのですね。それまでは、不正の請託、具体的にこういう質問はやめてくれと請託するとか、こういうことはやめてくれ、少数株主権の行使はやめてくれとか、そういう請託、いわゆる頼むのですね、そういうものがない限りは、こういう利益をもらったって、それは単なるモラルの問題として何十年も放置されてきたのですよ。  ところが、今回になって――五十六年になってから、やはり処罰をしないことには総会屋のばっこということがおさまらないということで、しかも暴力団の関与もあるだろうというようなことで、これが刑罰として六月以下の懲役または三十万円以下の罰金というものが制定されたという経緯があるのです。したがって、初めて犯罪を創設するときには、六月とか三十万円以下の罰金という、これについてかなりの論議がされているのですね。その上で、十六年たって、今日になって、これが一向に犯罪がおさまらない、だからこれは値上げする、こういう形が加重の問題として法案になったわけであります。  それで、果たしてそれが適正かどうかということなんですけれども、先ほどから論議されていますように、これを根絶するというためには、まず会社経営者の方で完全に株主の権利を守るような形の総会に徹するということ、ディスクローズを徹底するということがなければならぬということは法務省当局もお認めになっているわけであります。  したがって、そちらをおろそかにしておいて、今度は罰則の方だけを六倍にするわけです。六倍ですよ、法定刑、大変なことですよ。さらに、罰金刑は十倍に一遍にしてしまうのですね。これが本当にいいことかということであります。  いわゆる犯罪多発と言いますけれども、この十四年の間で検挙された総数は、供与罪で六十四名だそうです、先ほどの資料によると。そうすると、これは大体年に四・五人。さらに、総会屋側の受供与の方については百十七名ということで資料に出ております。年間八名。これが多いかどうかというものは別としても、必ずしも刑罰にすれば犯罪根絶できるはずのものもないのですから、ある程度の数は犯罪はあるに決まっているわけですから、五十六年に設けたからといって、これだけの数が多いか少ないかということも、まだはっきりとした断定するところまでいっていないのですよ。抜本的原因の対策も完全にしていない、それから、必ずしも絶対にこれは軽過ぎるとまでは断定できないというようなときにおいて、現在総会屋が絶えないということだけで六倍、十倍というのはいいのか、ここであります。  したがって、まず最初に六月と三十万円以下と五十六年になったときのこの審議、どういうことでそうなったのかということと、今回これを六倍と十倍にしなければならないというこの根拠を御説明いただきたいわけであります。  ちなみに、私は、私の意見を申し上げておきますと、どうしても必要だとしても、これは一年が限度ですよ、本当を言えば。倍ですね。そして、もしそれでもなおいかぬとしても、百歩譲ったにしても、二年までだと思うのですね。それからさらに、罰金に至っては、貨幣価値の変動がありますけれども、やはり二百万円ぐらいでないとこれもちょっとバランスがとれないのじゃないかなというふうに思うのですけれども、この点、どういう根拠でこういう数字が出てきたのか、お尋ねいたしたいと思います。
  88. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お尋ねの法定刑の点につきまして、まず、商法四百九十七条の利益供与罪が御指摘のとおり昭和五十六年の商法改正新設されたものでございますが、この点は、御質問の際に御指摘いただきましたように、同じくいわゆる総会屋排除を目的として昭和十三年に設けられました商法四百九十四条の会社荒らし等に関する贈収賄罪の法定刑が一年以下の懲役または五十万円以下の罰金とされておりましたところ、四百九十七条の罪につきましては、この点も御指摘いただきましたように、不正の請託が要件とされていないということから、実質的には四百九十四条の罪より一段軽いものと見ざるを得ないということで、現行の六月以下の懲役または三十万円以下の罰金ということが定められたものと承知しているわけでございます。  この株主の権利の行使に関する利益供与及び受供与に関する罰則の規定は、これも御指摘のとおり、総会屋排除を期しまして昭和五十六年の商法改正により新設されたものでございますけれども、その後もいわゆる総会屋をめぐる事跡は後を絶っていない。特に最近の事件では、金融機関等の最高幹部が関与して、いわば会社ぐるみで高額の利益を供与していたことが認められ、総会屋活動が我が国の経済社会に深く浸透して、これを内部からむしばみつつあるという、まことに憂慮すべき事態が明らかとなっているのでございます。  このような状況にかんがみますと、いわゆる総会屋根絶を図るとともに、会社運営健全性を確保するために、この際、大幅な罰則強化を図ることが必要であり、本改正における法定刑の引き上げが妥当なものと考えられたわけでございます。  もちろん、この法定刑につきましても、軽過ぎるのではないだろうかという意見もさまざまございました。しかし、これに関しましては、やはり罰則の均衡、商法における基本的な物の考え方というようなところをあわせ考慮いたしまして、妥当な形に整えさせていただいたというのが実情でございます。
  89. 福岡宗也

    ○福岡委員 ちょっと実際に説得力が余りない御説明だったと思いますけれども。  法務省の方から提出されています、この十四年間の科刑の一覧表というのがありますね、皆さん方に資料は行っていますけれども。これを見ても、百八十一件の事件のうち、罰金が六十七件なんですね。四月末満が十四件、合計で八十一件で、約五〇%弱が罰金と四月末満の量刑で、まだ懲役五月、六月というのが三十六名である。そのうち、最高刑の六月は二分の一の十八名と推定でき、それほど多くないと考えられる。もちろん、最高刑が適用されているのは、併合罪を合わせてたくさんありますけれども、実際には半数以上はこういう状況だ。ということですと、それほど上げなくても、現実の刑罰を裁判において科刑するときには現行法より若干でも上げればそれで十分、先ほど私が申し上げた一年で十分だろうというふうに私は思います。  そういう意味で、刑の均衡とおっしゃるけれども、ちょっとこれは問題があるなということで、やはり刑罰法規全体のバランスということを考えればもうちょっと慎重にお願いをしたいし、少なくともこれについては法制審議会、学者、刑法学者等々の、そういうものに諮問をして答申を求めるぐらいの姿勢が欲しいと思うのですね。答申なされていますか、何かそういう専門家の。法務大臣、お願いします。一言でいいです、あるかないかだけで。理由は結構です、時間がないから。
  90. 森脇勝

    ○森脇政府委員 この点につきましては、法制審議会の審議はなされておりません。ただ、商法部会におきまして、国会の方からこういう形での立法が緊急に迫られておるということを事務局から報告いたしまして、いわゆる総会屋犯罪について、刑罰を加重するということの御了解を得たという手続はいたしております。
  91. 福岡宗也

    ○福岡委員 非常に問題だというふうに私は思います。  そこで、最後の質問ですが、もう一つ問題なのは、今回の商法改正によるところの刑罰と、それから公務員の贈収賄事件との法定刑の均衡が非常に問題だと思うのであります。  公務員の贈収賄は、その職務に関してわいろを収受、要求、約束をしたときは五年以下、請託、すなわち頼まれたときは七年以下の懲役に処するというふうになっておるわけです。これは収賄罪です。それから、贈賄罪の方は、三年以下の懲役、二百五十万円以下の罰金ということであります。  御承知のように、公務員の贈収賄の保護法益は何か。これは、公務員の職務の公正、清廉を守ることにあることはもう公知の事実であります。公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者であってはならない、公正が強く要求されております。そのための違法は、非常に違法性が高いと言われて、どの国家もこれを重く処罰しておるわけです。  これに対して、商法株主権行使に対する利益供与罪の法益は、株主権行使の適正な行使ということであります。もちろん、大衆投資家の利益を守らなければならぬということは社会的に重要でありますけれども、それはあくまでも、大衆投資家が利益追求をする、そういう人たち利益を守ろうという部分で、ある意味では限定的なところがあるわけです。したがって、国民全体の奉仕者である公務員の職務の清廉さというものとは決定的に重大性が違うのですね。これはもう常識だと思うのですよ。  しかるに、今度の改正では、懲役三年というのは、先ほどの収賄罪は五年ですからもう二年に迫ってしまった。前は、本当に四年半ぐらい差があったということになるわけです。罰金に至っては三百万円という、十倍ということになっている。さらに問題なのは、贈賄側の場合には同じ三年になってしまったのですね。しかも、罰金刑の方は、公務員の贈賄の方が二百五十万なのに、それを上回った三百万になったのですよ。  これはいろいろ理由があるでしょうけれども、このような一見どうしても、その公正さといいますか、いいかげんな、刑罰科刑、法定刑の制定という問題について、慎重さが僕はないというふうに言えると。ある意味では、科刑の適正さというのはその国の文化、人権度、民主度というものをはかるバロメーターだと言われているのですね。そういう意味では非常に問題があろうというふうに私は思うのですけれども、この点についてのバランス、これをひとつ大臣の方でお答え願いたいのです。
  92. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 一般に、犯罪に対する法定刑は、当該犯罪の重大さ等に応じ、これを抑止して法益を保護し、社会秩序を維持するためにはいかなる刑罰が相当かという観点から定められるべきであると思います。  具体的には、その犯罪社会や国民にもたらす害悪、または危険の内容や程度、その犯罪の動機として類型的に考えられる事由、その犯罪から得らるべき利益の有無とその大きさ、他の犯罪の法定刑との均衡等を総合的に考慮して定められるべきものと考えております。  御指摘の贈賄罪の保護法益は、お話しございましたように、公務員の職務の公正とこれに対する社会の信頼であろうかと思います。利益供与罪の保護法益は、会社運営健全性と資本の充実維持でありまして、これらをそのまま比較することは困難でございますが、今申し上げましたようなさまざまな要素を総合的に考えました場合、法定刑の均衡を失するものとは考えておりません。
  93. 福岡宗也

    ○福岡委員 これが均衡していないと……
  94. 笹川堯

    笹川委員長 ちょっと福岡さんに注意しますが、委員長と言ってからお願いします。
  95. 福岡宗也

    ○福岡委員 失礼しました。  この贈賄罪、収賄罪の規定と利益供与罪が均衡を失していないとすれば、均衡を失したようなものはないと私は断言できるわけでありますけれども、やはりその基本的な姿勢として、その辺のところの法定刑をどう決めるかということについての責任ある検討がなされていないことの証拠だと思うのですね。そうですね。今も後から声がありましたけれども、専門家の声を聞いてもう一度見直すぐらいの慎重さが、国民の人権を奪う、そういう刑罰権の法規については必要だろうというふうに思います。  そして、私の方としましては、最後に、今回の改正については、やはり社会的な抜本的な総会対策その他、株主保護のための株式制度というものが確立されていないという現状、これをいかに打破するかという問題について早急に着手をしていただくことと、それから、あくまでも、刑罰権の行使という問題については、民主国家においては特に国民の人権にかかわる重大な問題だという認識のもとに、慎重な立法手続をしていただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  96. 笹川堯

    笹川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  97. 笹川堯

    笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐々木秀典君。
  98. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木でございます。  商法改正に絡んでお尋ねをしたり、私の意見も述べさせていただきたいと存じます。  今回の改正昭和五十六年のいわゆる大改正以来の改正になるわけでございますけれども、先ほど同僚の委員からも、この改正が少し拙速ではないか、あるいは、処罰を重くするあるいは犯罪構成要件を新設するなどについて法制審議会の議を経てないではないかという御指摘もございました。  また、昭和五十六年の改正のときには、先ほども御紹介がありましたように、衆議院の当法務委員会での熱心な議論があって、そしてその採決の際には、十三項目にわたる附帯決議もつけられて、総会屋根絶を図るとともに、株式会社健全性、そしてそれを支えるものとしての株主総会の充実などについても提言がなされ、政府としても関係省庁としてもそれぞれの対策を講じ、あるいは企業についても、責任を自覚してその目的に資するようにという提言がなされているわけでございます。  にもかかわらず、先ほどの質疑の中で交わされましたけれども、確かに数としては、総会屋の数などは減ってはきている。しかし、なお残ってうごめいている総会屋というのは相当な数に上り、その活動の実態というのもむしろ質的には大変大きな問題になり、大臣の御答弁によりますと、企業の中核部分にまで入り込んで、しかも、そのトップまでをも巻き込むような形で不正行為が行われている、企業総会屋との癒着の中でこうした不正行為が行われているという御指摘があったわけです。  しかし、それにしても、ここでこの法律改正をし、新たな構成要件を設ける緊急の必要性についての事情、しかも今度の場合には、本来ならやはり法制審議会の議を経てやるべきだったろうと私は思うのですけれども、それができなかったという緊急性といいますか、その動機及び経緯。先ほどのお話の中でも、本年の七月に政府総会屋対策関係閣僚会議を設置して、総会屋対策強化していくことを確認したのだと。その結果によるものだとも思われるわけですけれども、それとまた、最近の一連のこの犯罪の摘発に触発をされているのだろうと思いますけれども、今回の法改正が法制審議会を経ずして政府の提案になった緊急性の背景といいますか、それをもう一度お話しいただきたいと思います。
  99. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  けさほどから申し上げておりますように、昭和五十六年の商法改正、これは具体的には五十七年十月一日から先生御承知のとおり施行されたわけでございますが、それ以来今日まで、総会屋対策をそれぞれの分野でやってきたわけでございます。それで、検挙件数等々あるいは起訴件数等々に見られるように、ある程度効果はあったと私は思うのです。昭和五十六年以前は、総会屋のいわゆる株主権の、株主権利行使に関連いたします利益供与及び受供与犯罪はなかった、それを新設して、そして今日まで来て、ある程度効果はあったと思います。  その当時の罰則は御承知のとおり非常に軽うございました。それは、いわゆる総会荒らしとの、不正の請託を受けてということとの兼ね合いでああいうふうな罰則になったというのはもう御承知のとおりでございます。  それで、やってまいったのでございますが、特に最近になりまして、日本の一流の金融機関、証券会社銀行等々におきまして御承知のような事案が起きております。これは朝から申し上げておりますように、従来の、主として企業総会屋会社のためにやったというふうなことからさらに進みまして、今度は企業トップが直接総会屋とのかかわり合いにおいて株主の権利の行使に関する利益供与受供与をやってきているというふうな状態にまでなっている。おまけに金額も非常にかさんできている。企業の中枢にまでそういうふうなことでむしばまれている。これは大変よくないことではないか。このまま放置できない。加えて、諸外国との関係を見てみましても、このような行為日本経済界の中で、企業の中で行われているということは恥ずべき残念なことでございます。  政府といたしましても、それを受けまして、何とか総会屋に関する対策というものを強化しなければいけないということで関係閣僚会議が設けられまして、そして、やはり一つの側面として、抑止力が弱くなってきているではないか、だから、そういうふうな意味から罰則強化をやったらどうかというふうな意見が関係閣僚会議の中で出ているわけでございます。そこで、法務省といたしまして、具体的に改正案の作成作業に入ったわけでございます。  御指摘のように、法制審議会にかけてその答申を得るということが本来の筋だろうと思います。しかし、これもまた先生御承知のとおりに、法制審にかけますと、普通の場合数年、短くても一年ぐらいでいけるかどうか、それぐらいの期間がかかるわけでございます。片や、世の中の、日本を取り巻く国際情勢あるいは日本の中の金融情勢というふうなものは刻々と進んでおります。そういうようなことで、私どもとしては法制審に正式に諮問するということをとり得る余裕もございませんでした。しかし、さりとて御意見も承らなければいけないというふうなことで、法制審の中の担当の商法部会の先生たちの御意見を承ろうというふうなことで、そしてお話を承りまして、罰則強化するというふうなことについては全員一致した、御了解をいただいているわけでございます。  そういうふうな形で進めてまいっているわけでございまして、非常に緊急性を帯びているし、そういうふうな中で、私どもとしては、できるだけの手続を踏んでやろうというふうな形でやっているわけでございます。
  100. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 緊急を要するという事情については理解できないでもないわけですけれども、しかし本来、こうした商法、これはいわゆる基本法でありますから、基本法の改正などについては、やはり所定の手続、そして法制審議会の議を経るべきものだと思う。  ただ、大臣お話しのように、法制審議会は時間がかかるというようなこともあるとすれば、法制審議会の運営の問題も含めて、やはりこうした緊急事態にも即応できるような法制審議会のあり方もまた考えていく必要があるのではなかろうかと思うわけですね。  話は変わりますけれども、きょうも新聞を見ますと、今度は少年法の改正の問題が、法曹三者の間で協議の結果取り組もうということにもなっているようですけれども、こんなこともあります。それからまた、これも話がちょっと離れるかもしれませんけれども、ことしの春、五月には商法改正、いわゆるストックオプションの導入の問題が、これは議員立法で提案をされてこの委員会で成立をいたしましたが、実はこのときにも、私はいささか、我が民主党も提案者にはなっておりましたけれども、この審議のやり方と採決の仕方については問題ありということで、質問をさせていただきました。  やはり法律改正は、私は拙速であってはいけないと思うのですね。議論を尽くす必要がある。そしてまた、手続も尽くす必要がある。そして、その中で緊急の場合には、緊急に対する即応体制は整える必要はあると思いますけれども、その論議の中で、国民の皆さんもこの論議にむしろ参加できるような機会も提供して、国民の大方の納得が得られないと、せっかくつくった法律もその実効性を期しがたいということがあるのではなかろうかと心配しますので、このことも一つ申し添えておきます。  それと、先ほどこれも同僚委員から、罰則強化するだけで、本当に取り締まりあるいは総会屋根絶ができるのかというお話がございました。確かに、これも私は考えるべきところがあると思うのですね。  つまり、罰則強化する、あるいは新しい構成要件をつくって、なかなかに今までの法体系の中では犯罪として規制できない、あるいは検挙することができないという事案もないではなかった。それを犯罪とすることによって検挙がしやすくなるということはあると思うのですね。あるとは思うけれども、先ほど来お話しのように、これは後でまた私は議論したいと思いますけれども、それで抜本的な解決が図られるかというと、なかなかそうではなかろうと思うのですね。  一つには、これも本問題からちょっと離れて恐縮ですけれども、例えば、大臣も御承知のように、死刑の存廃論議というものが巷間あります。我が国としては、死刑は存置するという方針を政府としては変えていないわけですけれども、しかし、死刑という刑罰があることによって殺人罪が少なくなるだろうかというと、どうもそうでないのではないか。特に、最近の社会風潮を見ていますと、あの春の神戸の少年が少年を殺すという痛ましい悲惨な事件もありましたけれども、大人社会においても、結構陰惨な殺人事件がこのごろ頻発していることが報道されています。また、オウムの一連事件どもそうです。  ですから、なかなか刑罰規定だけをもって犯罪を抑制するということがどれだけの効果が上がるということについては、これは刑事政策的にもやはり考えていかなければならない面があるのではなかろうかと思うのですね。しかし、警察としては、このつくられた刑罰規定を実際に運用して、摘発もされていくということになるわけで、五十六年の改正によってその効果はかなり上がったと言われているわけですけれども、しかし、実際にはなかなか根絶やしにできない。  先ほどもちょっとお話がありましたけれども、これを運用する立場の警察としては、今度の処罰規定の改正と、それから、新たに設けられる犯罪行為ですね、構成要件、これによってどの程度摘発の効果というものが期待できるのかどうか、あるいは意欲、それをあわせてお話しいただけますか。
  101. 玉造敏夫

    玉造説明員 今回御検討をいただいております商法改正でございますが、いずれの点につきましても、今後の取り締まりにおきまして有力な武器になるものと考えております。与えていただきましたならば、この武器を有効に使いまして、本来の意味での企業社会からの総会屋等遮断、これに努めてまいりたいと思っております。
  102. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そのことは期待するわけですけれども、ただ、総会屋行為も、これは先ほどもお話がありましたけれども昭和士二年の商法改正で、いわゆる会社荒らしに対する規制ということがあったわけですね。これは、戦争が終わって、憲法が新しくなって、そして世の中の価値観などというものも大幅に変わる。しかし、その中で、企業あるいはそれに関する商法の理念というのはそう大幅に変わることはなかったと思うのですね。  しかし、それにしても、憲法のもとで民主主義を標榜する日本にとって、会社のあり方、企業のあり方というものも、やはりそれを契機にして考え直すところはあったろうと思うし、そういう中で、企業の民主的な運営あるいは経営のあり方というものも強調されたのだろうと思うのです。だとすると、その中で、やはり企業、特に株式会社というものは、所有者が株主なんだ、株主会社の所有者なんだというこの基本原則が立てられたわけだけれども、なかなか実態がそうでないところに問題があるわけですね。これは後ほどまた外国との比較などもお尋ねをすることになると思いますけれども。  そんな中から、言ってみれば、日本における企業を取り巻く風土というものが外国とは一味違っている。そんな中で、戦前からはびこっている会社荒らしたとかあるいは総会屋だとか、要は、そういうことをネタにしながら、自分経済的な利得を図ろうとうごめくやからが絶えない、あるいは戦後も、新しい形態を伴って発生し、それが活動してきた、それが今日に至っている、こう思うわけです。殊に、また最近では、この総会屋なるものが暴力団と結びついたり、あるいは右翼と結びついたり、あるいは右翼や暴力団そのもの総会屋的な業務を形を変えてやるとか、いろいろな手口、やり方というのは複雑になってくる、また巧妙になってくるということですね。  最近のある情報によると、インターネットを使って情報を流したり、それを集めたり、そして企業の内部告発などをやりとりしたり、あるいはそれを電子メールで暴露するなどというやり方をとっているところもあるというようなことで、取り締まる側としても、先様の方が頭をよく使っていろいろな手口を次々にやるものだから、なかなかに対応できないというところがあるのではなかろうかと思うので、そういうような最近の警察で把握されておられる総会屋活動実態、組織がどのぐらいかということは先ほどお話があって、数字も挙げられましたからこれは結構ですけれども、その活動の実態あるいは活動の形態といいますか、あるいは今度の法改正でそういうことにちゃんと対処していけるのかどうか、その辺を含めて警察にちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  103. 玉造敏夫

    玉造説明員 最近の総会屋の動きを検挙という立場から見てまいりますと、株主総会の会場での表見的違法事案検挙、これは平成六年の二月以降ございません。  ただ一方で、総会屋が間口を広げまして、情報誌の購読要求であるとか、あるいは広告の掲載要求、下請あるいは元請の参入要求、さらには融資の要求等々、いろいろな名目で経済取引の形を装いながら不当な利益要求をしておるわけでございますが、手口も非常に込み入ってまいりまして、例えば、情報誌の購読要求の場合にも、被害会社に対しまして、同社の製品に欠陥があるということに因縁をつけてそこから入っていく、それで、つき合いと称して情報誌の購読を求めるとか、あるいは下請の参入要求の場合にも、会社側担当者に対しまして、質問状を準備しましてこれをちらちらさせながら、下請参入させない場合には総会が荒れますよというような小道具まで用いるということで、いろいろと手の込んだことをやるようになってきているという実態がございます。  また、活動の形態といたしまして、先ほど御指摘のとおり、インターネットにホームページを開設する。そのホームページには、いわゆる会社側からの内部告発といいましょうか、それを書き込めるような、そういうホームページの開設の仕方をしておるというような動きがございます。  その辺の具体的な手口につきまして十分に目配りをして、取り締まりに遺漏のないようにいたしたいと思っております。
  104. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 私ども間違ってはならないと思うのは、これもまた後で論議をすることになるかと思いますけれども株主企業の情報を知りたいという要求企業がこたえるべきものだということは、私はこれは大事にしなければならないことだろうと思うのですね。  ただ問題は、ですから、その企業情報というものが企業にとって都合が悪いと企業が思うものを隠そうとするということは、これはどこだってあり得ることだと思うのだけれども、しかし、その中で、情報を知ろうとする者を抑え込むようなことがあってはならないし、先ほどもお話がありましたけれども、情報公開というものが、これは官ならず民の場合でもやはりこれからは拡大の方向に行くだろうと思うし、それが必要だろうと思うのです。  そもそも総会屋取り締まりというのは、何もある特定の企業だけを守ろうとするものではない。企業あるいは会社というものが社会的な存在として非常に大事なものであるから、そしてその所有者は、建前かもしれないけれども、それこそ株主なんだからということなんですね。  ただ、実際には大きな会社株主なんというのは銀行だとかそれから他の大きな会社が持ち合いになっているというような現実はあるにしても、建前としてはやはり一般の国民もその所有者になれるのだということがあるから、そして、その企業が、従業員、家族とともにその生活のよりどころとしての場になっている、あるいは、そのそれぞれの企業のつくるものだとかあるいは商取引というものが社会、世の中に対して大きな貢献を果たしている、そういう意義を持っているからこそ、私は、法律がその企業のあり方を守ろうとするのが商法の建前だろうと思うし、だから、それを不正に犯そうとするものを処罰するというのがこの総会屋取り締まりでもあろうと思う。  だから問題は、総会屋だからといって、情報を集める、あるいは交換する、流すなどということ自体はいわゆる表現の自由の範囲内になりますから、これは処罰するわけにはいかないけれども、それを手段として不正の利益を得ようとする、あるいは相手に対して危害を加えようとするところに問題があるわけですから、ここのところは私どもとしてもきっちりと認識をしながら対処していかなければならないのだろう、こんなふうに思っているわけでありまして、その辺も、この法律運用に当たる警察としても十分御認識の上でなさると思いますので、そのことをまた要望しておきたいと思います。  そこで、先ほどお話しのように、大臣からも、最近の状況についてこの商法改正を必要とする事情の御説明もあったわけですけれども、確かに最近の一連事件を見ますと、本当に目に余る、私どもとしては情けない思いがいたします。  昨年は、この国会でもいわゆる住専問題が大変な議論になりまして、私も予算委員会質問させていただきながら、金融を取り巻く情勢、そして、借り手、貸し手、何というモラルの欠如のひどさということで慨嘆をいたしました。  そして、今度は、それがさらに、四大証券からついには三菱グループというような大企業にまで発展をして、そしてまた、その間には第一勧銀を初めとする大きな銀行金融機関、これが、大臣お話しのように、そのトップまでが関与をして、そして総会屋癒着をしてこれに不正の便宜を提供するなどということになってきているということは、一体、この国の経済を取り巻く状況の中でのモラルというものがどうなってしまったのだろうか。  確かに、企業というのは営利を目的にする団体である。商法でも商行為を業とするもの、そして営利を目的とする団体という規定が会社法ではあるわけですけれども、しかし、もうけようとするために何をやってもいいというものではなかろう。そしてまた、見ておりますと、必ずしもそれがもうけにつながっていないではないかということもあるわけですね。  そういうことを考えますと、本当に、先ほど来御指摘がありますように、抜本的な総会屋退治のためには、総会屋を取り締まるだけでなくて、それに乗ぜられる企業の体質、あるいは経済界、金融界、証券界全体の体質というものが改まらなければ、なかなかにそうはならないぞと思うわけですね。  さっきも御指摘がありましたけれども、今まで捜査陣によって、検察、警察によって摘発をされ、そして起訴されて裁判にかけられた場合でも、その多くはその企業部長クラスであって、しかも、それらの人々に対する処罰としてはそう重いものでない、多くが執行猶予になっているではないかというような御指摘もあるわけですね。  そんな中で、今度はついにトップが逮捕されるということが、証券の場合にも銀行の場合にも、そして大企業の場合にも出てきているということで、本当に今ここでしっかりしなければ二十一世紀を迎える我が日本の方向というのはどうなるのか。戦後五十年を経て、私は、もう社会のあらゆるところで総点検を必要とする時期だとは思っているのですけれども。  こんな中で、一体、経済界は、あるいは金融界は、総会屋対策ということだけでなしに、自分企業あるいは業界をどうしようかということを考えているのか、それに対して、かかわりのある省庁はどんな指導をしてきたのか、その辺をお尋ねしたいと思いますが、まず通産省、経済界の総会屋対策あるいは企業としてのあり方、この辺についてはどんな関与をしてこられ、あるいはどんな指導をしてこられたのか、それをお示しいただきたいと思います。
  105. 久郷達也

    ○久郷説明員 経済界の対応についてお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、こういう総会屋問題、一部の企業とはいえ、企業活動に対する国民の信頼を揺るがすという意味で大変重く受けとめております。  それで、この問題につきましては、やはり、トップも含めまして、企業がまずみずから毅然とした対応をとっていただくというのが基本だろうと思います。それに対しまして、政府として、いろいろな意味で支援をしていくという格好で私ども取り組んでいるところでございます。  これまで、夏以降、政府として、いわゆる総会屋対策の取りまとめ作業を関係省庁でやってまいりましたけれども、それと並行いたしまして、私どもの方から、経団連及び通産省所管の七十二の業界団体に対しまして、業界団体ごとの協議会の開催でございますとか、あるいはそういう場を活用しました警察との連携等々、業界の自主的な取り組みというのを強く促してきております。  その結果、例えば一例を申し上げますと、経団連におきましては、九月十六日に企業行動憲章の運用の一層の強化を初めとした対策を決定いたしました。それから、幾つかの団体、例えば私どもの所管で申し上げますと、百貨店協会でございますとかあるいは自動車工業会、こういったところで総会屋との絶縁宣言、あるいは電気事業連合会におきましては業界独自の企業行動指針、こういったものを決定するという格好でいろいろな取り組みが進んできております。  進んできておりますが、今般、十月二十八日に総会屋対策関係閣僚会議で最終的な対策が取りまとめられました。私ども、その三日後から、大臣名の文書によりまして業界団体に改めて周知徹底を行ったというのが第一点。それから第二点は、あらゆる機会をとらえまして、通産大臣あるいは各担当の局長から、直接業界に対してさらなる自主的な取り組みを要請しております。  さらに、最近の状況にかんがみまして、これまで総会屋対策で定められた業界ごとの対策、これにつきまして、さらに強化をしていただくように、年内、十二月中旬を目途に所管団体の対策のフォローアップをいたすということにしておりまして、こういうことで企業の自主的な取り組みがさらに強化されるということを期待しております。
  106. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 大蔵省金融関係に対してはどうですか。銀行関係ね。銀行だけではないかもしれない、いろんな金融機関がありますからね。
  107. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答え申し上げます。  先ほど通産省の方から産業界の問題について御説明がございましたけれども、私ども大蔵省といたしましても、今回の一連金融関係の不祥事件につきましては大変重く受けとめております。  いわゆる総会屋をめぐる一連の不祥事の再発防止につきましては、まず、経営の自己責任に基づきまして金融機関がみずから課せられた社会的責任を自覚するとともに、企業として倫理を徹底をし、従来の経営姿勢や経営管理を見直すということによりまして投資家や預金者等の信頼にこたえていくということがまず基本的に重要であるというふうに考えております。  さらに、個々の証券会社金融機関だけでなく、自主規制団体、例えば日本証券業協会でございますとか、業界団体における適切な対応も不可欠であるということでございまして、こうした観点から、先般、日本証券業協会及び全国銀行協会連合会等におきまして、倫理憲章の制定でございますとか、法令遵守及びチェック体制の一層の強化でございますとか、そしてまた反社会勢力との決別の明確化、こういったことを図りますとともに、その実施のための対策を既にスタートさせているというところでございます。  一方、大蔵省といたしましても、この九月五日に取りまとめられましたいわゆる総会屋対策要綱に盛り込まれた対策を着実に実施しているところでございます。  具体的に申し上げますと、金融検査におきましては、これまでいわばローテーションによってやや検査の時期がある程度予想できたのではないだろうか、こういうことで、例の一勧問題につきまして検査の忌避というものがあったのではないか、こういうふうな問題が生じたわけでございますが、法令遵守体制等のチェックというものも、十分これに着目していくとともに、抜き打ち検査の効果といったものを一層確保していくということで、より実効性のある厳正な検査の実現を図っているところでございます。  また、この商法罰則強化法案とあわせまして、私ども金融関係におきましても、金融の検査監督の実効性を確保していくという観点から、金融関係法律につきましての虚偽報告、検査忌避等に対する罰則強化、そしてまた、今後の金融システム改革をにらみまして、公正取引を確保していくという観点から、インサイダー取引とかあるいは損失補てん等の罰則強化するといったこともあわせて盛り込んだ法案を今国会に提出させていただいているところでございます。  今後とも、大蔵省といたしましては、自主規制機関及び業界団体等とも連携しつつ、総会屋対策については積極的に取り組んでまいる所存でございまして、先般の不祥事案における処分等にもかんがみまして、金融機関等の不適正な取引あるいは違法な行為というのがございましたら、これについては法令に従い厳正に対応していくというふうな考えでいるところでございます。
  108. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 大体私は、業界、情けないと思うのですね、本当に。行政官庁から今のお話のような指導だとか指摘だとかを受けなければどうにもならないなんというのは、子供の集まりじゃないんだからね。みんな、それこそ業界トップ人たちなんというのは優秀なインテリで、それなりの経験を経て、社会的な責任や自覚を持っている人たちだと思うのにもかかわらず、それこそ総会屋なんかにちょろちょろやられて、それで自分も不正なことをやるなんということは全く情けないことで、結局それにつけ込まれるということは、何かやはり後ろ暗いことがあるから、あるいは皆さんに情報公開されたら困るということがあるからだろうと思うので、やはり業界自体がしっかりしてもらわないとどうしようもないと思うのですね。  そういう意味では、九月十六日に経団連対応策というものを出している。やはりここに書かれてあるようなことをそれぞれの企業の経営者あるいは経営に当たる人たちが、従業員を含めて自覚をしてもらって、そして対処してもらわないと、これは本当に抜本的な対策にはならぬと思うのですね。  そういう点で、規制をするというよりも、関係する省庁は適切なやはり指導をしていただく、アドバイスをしていただく。そしてまた、確かに総会屋だとか暴力団だとか右翼だとかというのは、とにかくむちゃくちゃなことをやるわけですから、法があろうとなかろうとそんなことお構いなしのことをやるわけですから、怖いこともあるだろうとは思うんだ。それは、生命を脅かされたり、あるいは生活の安全を脅かされるということもあるんだろうと思うので、そういうようなことには、やはり頼りになるところというものをつくっておいてあげないといかぬと思うのですね。そういう上で、それぞれの企業の経営に当たる人が毅然とした態度をとることを求めていくという指導をぜひ各省庁はやっていただきたいと思うわけですね。  そこで、会社あるいは企業ということになると、例えば欧米諸国などは、日本よりはずっとはるかに先進国というか先輩国であるわけです。先ほどお話があって、企業総会屋関係は砂糖とアリのような関係だ、砂糖が企業だとすれば、それにたかるアリというのはあるものだというお話があったのだけれども、その日本よりはずっとそういう点では先進国である諸外国では、余りこのような総会屋事例はないというお話もさっきあったのですけれども、実際にそうなのか、あるいはそれに対する法的な対応というものも全く準備されておらないというか用意されておらないのかどうか、あるいはあるのか、それとまた、どうして我が国にこれだけあって他の国にないのか、その辺のことについてお聞かせいただけますか。
  109. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  いわゆる総会屋の有無でございますが、主要国でございますアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにつきまして調査しましたところ、そのような者及びこれに類似する行動を行う者は存在しないということでございました。したがいまして、総会屋に対する法制度は存在しないということでございます。  ただ、若干つけ加えますと、ドイツ及びフランスでは、いわゆる総会屋活動しているという実態はありませんけれども、議決権買収行為等に対する制裁規定は存在いたします。  以上です。
  110. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 どうもその辺が不思議でならないのですね。諸外国にもマフィアがあり、暴力団もありなんでしょうから、この企業犯罪企業にかかわってというようなことがどうもあってもいいようにも思うのだけれども、それがないとなると、これは日本に極めて特殊な、日本的な風土の中から生まれてきたのが総会屋というものなのかなとも思うのですけれども、この辺についてはもう少し私どもとしても研究をしてみたいと思っております。  そして、風土の違いというか、外国と日本との違いというのは、一つには、さっきも警察の方からお話があったけれども総会屋のもともとの原型というのはやはり株主総会でしょうね。株主総会で、片やその企業を守る側とあるいは攻める側、そういうようなのがいて、それで、余り発言をしない一般株主にかわってというか、それを守ろうとしたり攻撃しようとするためにわあわあやる。そういうことでいろいろなことが暴かれたり、総会が長引いたりするのを恐れる余り、会社としては、金銭を提供して、あるいは経済的な便益を供与することによってそれを抑えていくというようなことが原点だったろうと思うのです。しかし、さっきもお話しのように、そこから今度は自分のところの情報誌を売り込むとか、さまざまな形でのやり口に発展をしてきたということなんでしょうね。だから、そう考えると、やはり原点は株主総会だと私は思うのですね。  ところが、さっきの御質問でもありましたように、どうも日本のどこの会社でも、大企業株主総会でも二十分くらいだと。私ども質問の持ち時間よりも短い、こういうことなんですからね。外国の場合には、これはやはり徹底してやっているようですね。  例えば、ある方の紹介によると、特にドイツの株主総会は非常に活発なことで知られる、ダイムラー・ベンツなどの場合には朝の十時から深夜にまで及んで株主総会をやることもあるのだと。そしてまた、総会の活性化に大きな役割を果たしているのが株主団体だ、株主が団体をつくっているというのですね。その中には弁護士、会計士、退職後の官僚などのスタッフがいて、専門知識を背景にして株主の代表としてさまざまな質問をし、議決権などを代理で行使している、こういうことですね。  日本の場合でも、議決権の代理行使は商法上認められているのですね。ですから、こういうことも、やはり我が日本企業としては、株主総会の充実ということを本当に考えないと、どうもいろいろなところで実際にあった株主総会を見ても非常におざなりです。とにかく早く終わらせようとして、早く終わらせるために事前に総会屋などを使っていろいろ対策を立ててきたというのが実情だったわけですね。  だから、そんなことでなく、もう徹底して、株主総会なんというのは年に一回のことなんだから、もう腹くくって、どれぐらい時間がかかってもいい、場合によったら二日がかりでもいいじゃないかというようなつもりで私はやるべきものだと思うので、まず、その点を徹底するところから始めるのじゃないでしょうか。その中で、いいじゃないですか、総会屋みたいな者がむちゃくちゃな発言をするなら発言をさせたって、対応していけばいいのですから。  幸い、最近の情報によりますと、大変問題になった第一勧銀も、それから高島屋なんかも、株主総会のあり方をまず改めますということで、モニターを入れたり公開したりするようにしている。これはいいことだと思うのですね。だれにでも見られるようにすれば、そんな株主総会の中でやんちゃな発言をしたり、不法な発言をしたり、むちゃくちゃな行為をやるというのはみんなわかるわけだから、見ている人はどっちが悪いかわかりますよ。それはいろいろな厳しい質問もあるかもしれないけれども、誠実に対応するという姿を見せていけばいいと思うのですね。  そういう点では、我が国会では、予算委員会で、橋本総理なんかはあんな非常に御苦労の中で何時間にも質問に耐えておられる。あの西村さんの非常に厳しい、肺腑をえぐるような質問にもぐっとこらえて、個人的な問題、お金の問題だとか女性の問題まで聞かれながら、ちゃんとお答えになっているわけですから、私は、やはり経済界、各企業トップは、経営者は橋本さんの態度を見習って、そして我慢して、ちゃんとお答えするものは答えていけば、何も国会のように、予算委員会のように、何日間も何日間もやるわけじゃないのだから、一日で時間をかければ終わることなんだから、それをしっかり対応していく、誠実にやっていくということに徹する必要があるだろうと私は思うのですね。  そういう意味では、一定の時期に、大きな会社が一斉に同じ日に株主総会を開くなんというのもやはりいかがなものかと思いますね。これもやはり経済団体やあるいは金融業界の中で考えてもらわなければならないことだろうと思うのですね。やはり一つ一つ誠実に対応していく、その中から真っ当な解決の方法というのが出てくるのではなかろうかと私は思うのですね。  きょうはそういう業界の方々が来ていないから、まことに残念で、これからまた、あさっては参考人で来られるかどうかわかりませんけれども、私どもはそういう議論もそういう方々とやる必要もあると思うし、ぜひ各省庁の皆さんからも、特にあしたは、大臣経団連の方々がおいでになるということですから、強くそのことは言っていただきたいと思いますね。  まずそこから始めないと私は改まらないと思うし、そこがきちんとなれば、総会屋なんというのは次第次第に、どうせやったってもうけにならないよということになるわけですから、やはりそういう気持ちにさせないといかぬと思うのですね。何かすればもうかると思うからやるので、そのもうけを切り離していくようにすればいいわけですから、そこのところをあわせて考えていかないと、やはり刑罰的な規制だけではなかなか解決できないだろうと私は思うのですね。そんな思いを強く持っております。  それから、今度新設される利益供与要求罪、これがあるわけですね。それから威迫を伴う行為についての処罰規定がございます。これについては、実は、その規定の仕方が、犯罪の主体として総会屋と書いてあるわけではない。もちろんそうはなかなか書けないですね。構成要件の中には総会屋がなんということは書けないわけですけれども株主の権利を行使する者ということになって、非常に一般的、概括的になっているわけですね。そんなことから、利益供与要求ということですから、実際にその利益を受けなくても、要求したというだけで、さっきもお話がありましたけれども要求を受けたという段階で、それを受けましたよと通告があればそれで犯罪としては成立するのだというお話があったということと絡んで、実は、真っ当なというか正当な要求をするような株主だとか、あるいは関係者というのもないわけではなかろうと思うのですね。  特に、企業をめぐって、今、公害の問題だとかあるいは欠陥商品の問題だとかいろいろな問題がある中で、なかなかそこでその行為の正当性について仕分けをするのが難しい。というようなことから、この新たな犯罪構成要件ができることによって、株主の、しかも少数株主などの正当な権利や要求など、これは消費者だとか、あるいは、住民の要求というふうに言ってもいいと思いますし、あるいは、そこに働く従業員がつくる労働組合の企業との関係での要求などの運動を規制したり、あるいは抑え込んだりということに使われないだろうか、そういう心配が一部にあるのですね。これについてはどういうように対処していくのか、どういう仕分けをするのか、これをひとつはっきりさせていただきたいと思うのです。
  111. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員お尋ねの利益供与要求罪は、構成要件といたしまして、まず株主の権利の行使に関しての行為であるということがございます。そして、それにつきまして、会社の計算において財産上の利益を自己または第三者に供与することを会社の役職員に要求するということによりまして成立するものでございます。  ここに言います「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」とは、株主の権利の行使またはそれを行使しないことに対する見返りと申しますか、対価関係に立つものだという趣旨を意味しているわけでございます。例えば、株主総会会社に有利な発言をしたり、あるいは不利な発言をしないようにすることの見返り、対価の趣旨で財産上の利益の供与を要求する場合がこれに該当するものでございます。  これに対して、ただいま委員指摘株主の正当な権利行使でございますとか、市民また少数株主を含みます株主の問題、あるいは消費者、住民の方々、さらには労働組合の会社に対する正当な要求というものはそのような趣旨のものではないという点で、これは明確に区別できるものと考えているわけでございます。  現に、昭和五十六年の商法改正新設されました利益供与受供与罪につきましても「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」との要件が定められておりまして、基本的には今回新設される要求罪と構成要件を共通にしている面がございまして、正当な株主権等の行使を規制あるいは抑圧するようなことはなく、適切に解釈、適用されて現在に至っているというふうに考えておりまして、本改正によりまして御指摘のような正当な権利行使が規制、抑圧されるような懸念は全くないと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  112. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今、刑事局長から全くないというお話なんですけれども、全くないかどうかというのはこれからの問題なので、これができた後でどういうように運用されていくかというその運用の問題と絡んでいくわけで、私どもとしても注意深くまた見ていきたいと思うのですけれども、くれぐれもこの構成要件をつくる目的から逸脱しないようにぜひひとつお願いをしたいと思うわけです。  それと同時に、不正な利益を求めてうごめくやからと、そうではなくて、本当にその企業の健全な発展を願い、あるいは株主利益の保護を考え、あるいはその企業社会的責任を果たしてもらうために建設的な、しかしあるいは耳ざわりは悪いかもしれないけれども、そういう提言をしたり要求をしたりするという人たちもいること、その区別をやはりしていただかないといけないだろうと私は思うので、これは言ってみればその株式会社の自覚の問題でもあろうかと思いますけれども、これを運用する側としても十分にひとつこの点はお気をつけになって、くれぐれも濫用にわたることがないようにということをお願いしておきたいと思います。  きょうは、裁判所、お見えになっていると思います。時間も大分迫ってまいりましたが、先ほど各省庁の対応についてお尋ねをいたしましたが、裁判所にもお尋ねしたいと思いますのは、一つは、総会屋問題がなかなか解決を見ないで、総会屋をはびこらせているという日本社会的な風潮の一要因として、司法が十分に機能していないのではないだろうか、こういう指摘があるわけです。私も、ある程度もっともだと思うようなことがございます。かつての日弁連の会長で、今、例の住宅金融債権管理機構の社長をなすっている中坊公平さん、弁護士ですけれども、中坊さんも、我が国の司法は本来司法が果たすべき機能の二割しか果たしていないということをおっしゃっている。  住専のときもそうでしたけれども、この種企業総会屋をめぐる問題にしても、もう少し裁判所あるいは司法が使いやすくなっていたなら事情がまた大分違っているのじゃないだろうか。さっき、法制審議会が時間が長くかかるという話もあったけれども、何分にも、裁判所にこれを持ち出して救済あるいは真っ当な処置を求めるということを考えようにも、余りにも時間がかかるとか、持ち出しにくい。  その原因としては、一つは法曹人口が少ないのだ、特に裁判官、これに対応していくだけの裁判官の人口が非常に少ないという指摘があるわけですけれども、これをどう受けとめて、これに対して裁判所としてはどういうように対応されるおつもりなのか、これをひとつお聞かせください。
  113. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 法的な紛争が起こりましたときの解決手続として、やはり裁判という手続の持っている特徴は、何よりも公平でありますし、また、透明な手続で紛争解決がされることだろうと思います。そういう意味で、この紛争解決手段としての裁判に対する社会の期待というものは、昨今の社会情勢からしますとますます強くなってきておるというふうに我々は考えております。委員指摘のように、やはりもっともっと裁判手続というものを国民が利用しやすい、また、わかりやすいものにしていくというところが一番の眼目になるだろうと思っております。  一つそのために必要なのは、やはり指摘のございました、事件を処理する場合の裁判官を中心とします人的な体制をどういうふうに充実強化していくかというところでございます。このところ、毎年のように裁判官を初めとする裁判所職員の増員をお願いしてきておりますが、今後とも十分、事件動向等を見ながら人的体制の充実強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  114. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 法曹人口の増員問題というのはかねてから言われておりまして、最近ですけれども、法曹三者間で、司法試験の合格者の数を、現在七百名のところを千人にするという合意に達したわけですね。  これについては、実は日本弁護士連合会の中でもさまざまな議論があって、この間も臨時総会で非常に熱心な議論が闘わされた結果、多数決で法務省提案の千人案というのに弁護士会としても同意をすることになって、これから具体化していくわけですが、さらにこれを千五百人にすべきだということも検討事項の中に入っております。  ただ私は、確かに他の先進諸国から見た場合に法曹人口は少ない、弁護士も少ないと言われ、弁護士をふやすことは言われているのだけれども、弁護士だけではどうにもならないのですね。やはり裁判官、検察官がふえなかったら、こうした問題にどうにも対応していけないのですよ。特に裁判官の増加問題というのが、弁護士の増加問題以上に緊要だと実は私は思っているのです。これからはまた機会があると思いますので、この種の議論はしたいと思います。  しかし、指摘がありますように、やはりこの種の問題について司法が主要な役割を担う社会に改革する必要があるだろうという指摘は、私どもとしてはきちんと受けとめなければいけない。結局、司法が機能できないところにそういう不法な行動をする者を許すという温床ができてくるのだろうと思うのですね。ですから、御案内のように、地域では弁護士が少ないのに乗じていわゆる事件屋というものがまだはびこっている。あるいは、その問題の早期の解決を求めるために、場合によったら暴力団を使うなどということが、残念ながらまだ我が日本社会の中では、大臣、あるわけですね。  やはりこういうことをなくしていく努力を私どもとしてはみんなでしていかなければならないのじゃないかなと思いますし、裁判所としても、どうかその辺をお考えいただいて、体制を立てるために、私どももそのことについては十分に御協力も申し上げたいと思っておりますので、ひとつお願いしたいと思うのですね。  時間がなくなりましたので最後になりますけれども、ある週刊誌で、総会屋の意見を求めるという試みをやっている週刊誌がございました。その中で、ある総会屋が、今度の商法改正で厳しくなることによって自分たちはますます生きにくくなるということを率直に言っている。しかし、もしも総会屋がいなくなったら、企業は不正も何もやりたい放題になる、企業の恥部について文句を言うやつがいなくなる、それでもいいのかと居直っている向きがあるのですね。こういうような居直らせ方をするということは全く恥ずかしいこと、企業としても恥ずかしいし、規制する側としても恥ずかしいし、私どもも本当に恥ずかしい。  だけれども、何も彼らがいなくたって、そう言わなくたって、株主がいるわけですよ。株主が、それこそ少数株主であろうとなかろうと、きちんと株主として発言をし、あるいは不正があったら不正を摘発していくということができるわけだ。そのためには、例えば少数株主の代表訴訟などということもあるわけですね。さっきお話もありましたけれども、帳簿閲覧請求権、少数株主権というのもあるのですね。何も総会屋が、おれたち企業を真っ当にするために働いているのだなんという、そんなふうに思ってもらう必要はちっともないので、そのかわり株主の権利保護というものは、私は、真っ当な株主の権利である以上、保護するということを大事にしていかなければならない。  どうも、仄聞するところによりますと、今、与党の中で、自民党さんの法務部会などがこの株主の代表訴訟、これについて若干手直しをしようかということで検討されているやにも聞いているのですけれども、この辺もひとつ慎重にぜひやっていただきたいと思いますし、また、これが問題になりました場合には、私ども、しっかり議論をさせていただきたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、総会屋にこんな威張り方をされないように、それぞれが企業として頑張っていただきたいと思います。どうか大臣も、ひとつそういう点で規制の方をしっかりお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  115. 笹川堯

    笹川委員長 北村哲男君。
  116. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  佐々木議員に引き続いて質問させていただきます。  総会屋対策が今回の商法改正の目的でありますけれども、ところで、午前中から大臣は、総会屋日本特有の現象であるというふうに言っておられ、先ほども諸外国の例を出されて、同じような例はないというふうに言われました。なぜ日本総会屋がはびこるのかというのは、一つには、明治以来、まさに日本の、株式会社ができて以来、かつての博徒とか相場師あるいは右翼の人たちが伝統的なものとして日本にいたとも言われております。しかも、少なくとも昭和五十六年の改正前まではある意味では合法的な存在で、非常に多くの企業がこれにかかわっておったということも午前中の警察庁の説明でもあったとおりであります。  しかし、五十六年改正によって違法とされてから、一時は身を潜めたものの、再度二年ぐらいたってからばっこし始め、最近では非常に手段は巧妙となった。あるいは、質量ともに巨大化したものが現象としてあらわれておる。これは数年前のバブル経済のときに加速されたとは言われるものの、決して最近になって生じたものではなくて、五十六年改正によって、実は総会屋根絶させるという目的でつくられたのだけれども、何にもなくなっていなかったのだということが今の現象であらわれてきておる。ずっと続いておる。トップ人たちが今摘発されているのも、彼らがかつて、総務部ではなくても、その下に、幹部でないころからずっとつき合っていてここに来たということは、決して最近の現象ではないと思うのです。  午前中大臣は、最近の現象として企業トップとか会社ぐるみがあると言われたのですけれども、これは何も今に始まったことではないし、ずっと根はそれこそ五十六年、あるいはさらに前から続いているというふうに言える。そうすると、悪く言うと、五十六年改正なんか何の効果もなかったのではないかというふうにも言えなくはないのではないかと思うのです。  その原因は一体何だろうか。それは、午前中でも議論されましたけれども日本会社法のあり方と組織運営、それが決して法にのっとっていないということもその根本原因であるというふうに指摘された。私もある意味では同感であります。そして、最高決議機関である株主総会が形骸化されているということ。株主総会の所要時間が実際わずか平均二十数分であることも、午前中そういう事実を明らかにされております。そういう意味では、すべての法的なチェックが会社法あるいは会社集団について機能していないということも言えると思うのです。  また、大会社の株式の持ち合い制度というのもこれまた日本特徴であるというふうに言われております。これは旧財閥系の企業集団、あるいは銀行企業集団の六大企業集団の平均の株式の持ち合いが二二%から二三%と言われていることを見ても、そして、このいわゆる持ち合い制度というのが日本型の企業システムの重要な基盤を形成したというふうに評価はされているという反面、会社会社を支配する、あるいは株主不在の会社支配とか、そして議決権行使の歪曲化、あるいは株主総会の形骸化ということをその持ち合い制度があらわしている。まさに日本企業そのものが持つ病理的現象が総会屋にあらわれているというふうに言えるのではないかと思うのです。  この日本的な体質、あるいは構造的な病理現象の中に巣くう寄生虫のような総会屋は、まさに日本的な現象と言わざるを得ない。よその国にはないのではないかと思われます。  そこで大臣に、私が今まで述べてきましたけれども、その原因、単に企業トップがしっかりすればいいのだとかモラルの問題だとかいうふうな問題なのか。あるいは日本企業の構造的な病理現象というふうに言えるのではないか。そしてそれは、そういうことが原因であるならば、どういうことをもってそれを克服すべきであろうと考えるのか。その点について大臣の御意見を聞きたいと思います。
  117. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  最近、企業トップにまで総会屋との癒着が進んでいるのではないかというふうなことにつきましていろいろお話がございましたが、私が申し上げましたのは、表にあらわれております検挙事例から見ますと、総務部人たち検挙されている事例が多かったことを取り上げましてそのように申し上げましたわけでございまして、今北村委員おっしゃるように、まだ底辺にそのような本質的なものが、企業トップの問題があるのではないかというふうなことにつきましては、私も基本的には同感でございます。  そこで、先ほど来、砂糖に群がるアリだというようなお話も出ておりましたけれども、砂糖をなくすればアリは来ないのですね。だから、砂糖をなくするようなことをこの際何とかやろうじゃないかというふうなことを私ども努力しよう、これはもう総力戦でやらぬといかぬという気持ちでございまして、事実、砂糖をなくした企業もたくさんあるわけでございますから、そういうふうなところまで及ばなくてはいけないのではないかな、このように思います。  と申しますことはどういうことかと申しますと、会社が体面を保つためにいわゆる総会屋に安易に妥協する、株主総会でも、お話がございましたように、できるだけ時間を短くして議論をせずに平穏に運営をしよう、そういうふうな企業経営に対する経営者の意識の問題が私は基本にあるのではなかろうかと思います。株主総会における総会屋排除というものが完全に行われますと、それは、お話がございましたように、株主企業とが真剣になって企業運営なりなんなり議論ができる。そのためには時間幾らかかったつで構わないわけでございますし、むしろそういうふうな実態こそ我々は望んでいるわけでございまして、そういうふうなことが私は原因だと思いますし、おっしゃいましたように、株式の持ち合いの問題だとかなんだかんだということもそれはないわけじゃございません。ないわけじゃございませんが、基本的な問題からすれば、今私が申し上げましたようなことに帰着するのじゃないだろうかと。そういうふうなことを目指しまして、もうここまで来ているのですから、それぞれのつかさつかさで努力をしていくということじゃなかろうか、このように思います。
  118. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 確かに大臣のおっしゃることもごもっともでございますが、私が言いたかったのは、砂糖とアリであれば、日本企業の体質そのものが砂糖そのものに近いのではないかと。だけれども、それじゃ、なくしてしまえばいいかといえば、会社をなくしてしまえば日本企業が全部なくなってしまうのですから、そうはいかない。ですから、先ほどから企業経営者の毅然たる態度が最も大事だというふうなお話を何回も言われました。私はそういう倫理的な問題で解決するのだろうかというふうに一面思うのです。  毎日新聞のアンケートが出されておりまして資料にあるのですけれども、「総会屋などとの癒着利益供与をなくすために重要な点」で一番大事なのは「経営トップの決意」で八六%、次に「総務部など担当者意識改革、メンバー刷新」というのが三二%、その後に「警察取り締まり」と「商法改正」が二三%。下の方なんですね。  私は、果たしてこれでいいのだろうかという気がするのです。というのは、もっと構造的な病理現象を単にモラルの問題とか決意の問題でできるのだろうかという疑問があるので、そういう意味では、その病理現象を切除する外科的手術というものが必要であろうと。というのは、抜本的に体を治すことは必要だけれども、そういったら日本社会社会構造が全部なくなってしまう面もあるわけですから、ある意味でその病理現象を抱えたまま、しかし、それをなくすというからには相当外科的なものが必要であろうと。  そのあたりで、このトップの決意とかなんとかというあたりではなくて、もうちょっと考えてみるべきではないかと思うのですけれども大臣、その辺はいかがでしょうか。
  119. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 先生のおっしゃる趣旨をそんたくしますと、もう少し根源に、日本企業全体のあり方だとか、あるいはまたそういうふうな中における司法のあり方、こういうふうな国際的に進んでいるいろいろな社会現象の中でそのようなところを御指摘なさっているのではないかなというふうに思います。  その点につきましては同感でございますし、それは一つ一つ具体的に解決していかなければならぬな、このように思います。
  120. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 どうも、難しい質問をしまして失礼しました。ありがとうございました。  ところで、次に移りますが、内政審議室からお見えになっていると思うのですけれども、これもしばしば質問に出ておるのですけれども、ことしの九月五日にいわゆる総会屋対策のための関係閣僚会議の申し合わせというのがされました。  その中で、まず一番目に「所管官庁による経済界への要請」という項目がありまして、「各省庁から業界団体トップに対し、面会等により直接要請する。」と。これも私の質問を出しておりましたけれども、先ほど通産省、大蔵省からかなり詳しい答弁がされました。  ということで、「直接要請する。」という中に六項目ほど記載してあります。「企業経営者意識改革」「業界団体による協議会の開催」「行動規準の策定」「総会屋等との絶縁宣言」「警察との連携強化」「絶縁のための専門組織の設置」。これがどのように具体的に進んでいるか。先ほどかなり詳しく言われたのですけれども、概括的に、具体的にどの程度まで進んでいるのかということを御説明ください。
  121. 田中法昌

    田中説明員 本年九月五日の関係閣僚会議で、いわゆる総会屋対策要綱が申し合わされたわけでございますが、九月末までに各省庁から百九十四の業界団体に対しまして、要綱に係る先生御指摘の要請を完了したところでございます。  現在、これを受けまして各業界対応をとっておるところでございますけれども、例えば経済団体連合会では、企業行動憲章の改定、会員業界団体の長によるトップレベルの協議の場の設置、あるいは、警察庁と協力して運営しております暴力団対策連絡協議会の活動強化などを盛り込んだ「当面の総会屋等への対応策について」を決定するなどしておりまして、これを受けまして、これらその他の各業界団体においても現在鋭意対策の推進を図っているところでございます。  政府としても、今後とも諸対策徹底に努めてまいる所存でございます。
  122. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今もうちょっと聞きたいのですが、例えばこの六番目に「絶縁のための専門組織の設置」というふうにありますが、「いわゆる総会屋等と絶縁するための専門組織を各企業に設置すること。」これは、もちろん言葉はそのとおりなんですけれども、どういうことを想定し、あるいは、企業はこれをどう受けとめて具体化するんでしょうか。
  123. 田中法昌

    田中説明員 絶縁のための組織と申しますのは、あくまでこれは政府側から各業界団体へ要請しておるものでございまして、それぞれの業界あるいは企業で判断されることになると思いますけれども、一応想定しておりましたのは、総会屋対策専門の弁護士等を雇いまして、あるいは総会屋対策に対するこれまでの経験等があるような人間を雇いまして、総会屋を使わない、絶縁するための組織というものをつくっていただきたいということを予定しております。
  124. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  次に、この関係閣僚会議の申し合わせの「警察による支援」という項目があります。警察による支援についても午前中からしばしばかなり詳しく御説明がありましたけれども、再度お聞きします。  これは今回に限ったことではなくて、前からずっと続けておられるということなんですけれども、今回、この関係閣僚会議の申し合わせによって新たに強化され、あるいは具体化されたことについてはどういうことがあるのでしょうか。
  125. 玉造敏夫

    玉造説明員 御指摘のように、警察におきましては、従来より企業社会からの総会屋等排除に努めてきたところでございますけれども、このたびの関係閣僚会議の申し合わせを受けまして、すべての都道府県警察企業対象暴力特別対策本部等を設置したところでございます。この問題に絞った対策本部を設置しております。  また、具体的には、取り締まり強化に加えまして、企業あるいは業界団体に対する指導、そして、個別企業に対する支援の強化策の一環といたしまして、保護対策官というものをそれぞれの都道府県の警察本部に置きまして、この者が企業に対する保護対策を統括するというシステムは、これは新たにつくったものでございます。  現在、こういうシステムの中で各企業あるいは業界団体と連携を図りながら、また業界団体、企業に対しまして指導に努めておるところでございますが、現実の成果といたしまして、これまでに、約四千社と言ってよろしいのだろうと思いますが、これが総会屋等との関係遮断を表明しております。そのうちで、具体的に、例えばリトマス試験紙になるでありましょう情報誌の購読の遮断を相手方に通告し、警察側にこういう者を遮断しましたという御連絡のあったところは約九十社でございまして、これが合計いたしまして延べで約一万一千誌ということでございます。  警察といたしましては、こういう動きに伴いまして、必要ないわゆる保護措置、これも企業関係者あるいは施設に対してとっておるところでございます。こういう動きがさらに加速された場合には、もちろんこの保護措置もさらに努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  126. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 実際に、この申し合わせの中の支援の中の例えば(1)の①に「指導を行うための支援窓口の設置等体制の強化」云々とありますが、具体的に、企業からそういう窓口を通じての相談というのは、これを強化することによってふえているとか、実効は上がっているのでしょうか。
  127. 玉造敏夫

    玉造説明員 ただいま申し上げましたように、いわゆる窓口をつくり、また企業対象暴力二〇一番といったものを設置しておるわけでございまして、現在まで、この一一〇番の設置以降の相談件数等の集計はしておりませんけれども、先ほど申し上げましたように、関係遮断を明言し、また、情報誌等につきまして遮断したということを相手方に通告し私どもの方にも通告した、そういう企業から極めて具体的な御相談をいただき、この関係遮断についてもいろいろと私どももアドバイスを差し上げるというふうなことは出ております。
  128. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 それに関連することだと思いますけれども、エコノミストの七月二十九日号に須田慎一郎さんがある記事を書いているのですが、ことしの五月二十六日、吉村刑事部長は、特暴協、都市銀行等特殊暴力防止対策協議会に加盟する十三の銀行総務部長を前に、こう最後通牒を突きつけたと。「即刻、総会屋系情報紙の購読を断ち切れ。今回、この時期に切らないで、もし後になって発覚したら、そのときは最後だ……」というふうに、これはかなり強いですね。本当かどうか知りませんよ、そういうふうに出ていました。この最後通牒を受けた形で、不測の事態になったらどうしてくれるのかというふうに、逆に総務部長さんが吉村刑事部長に何か上申書のようなものを出したというふうなことが書いてありました、御存じと思うのですけれども。  この記事の強さ弱さは別にしても、この後でこの大手銀行総務部長は、こういうふうにやられても、三年ぐらいは一生懸命やるけれども、三年たったらまたもとに戻っちゃうのですよ、復活してしまう、そういうふうなことをまた告白しておられる。それで、さらに「実は、」というふうにして、私のところに写真が送られてきたのです、それは娘が学校に行っている写真なんですよ、何にも書かないで送られてきたのですと。本当かどうかわかりませんよ。いかにも不気味ですね。それに対して、自分たちというのはどうしようもないのだというふうにも言われます。  一枚の写真が送られたというのは、今のような状態でいえば、これはもう最高の脅迫ですけれども、ただ普通の人がたった一枚の写真を送られた、怪文書が来たと言っても恐らく警察は受け付けてくれない。今まではそうです。ほとんど問題にしてくれないのですね。そういうふうなちまたの、それは警察は幾ら言ってもやってくれないんだと。私たちがまたそういうことに関して例えば告訴に行っても、やれ民事絡みだとか、はっきり言ってうまくいかないとか言ってなかなか受け付けないで、実際告訴が難しいような状態もあるのですけれども、この文書による積極的な警察の支援、今もお話いっぱいありましたけれども、具体的にこれから、今までと態度を変えて、この問題についてすぐに応じてくれるというような体制をとっていただけるのでしょうか。
  129. 玉造敏夫

    玉造説明員 企業側にもろもろの、恐らくこの遮断に伴う不安というものは多かれ少なかれあるだろうと思います。それについては、極めて深い理由があるものもあれば、漠然とした不安といったものもあろうかと思います。そういうものも含めまして、先ほど申し上げました保護対策官のところに御相談いただく、その実情にふさわしい対応をさせていただきたいというふうに思っておるところでございます。  なお、保護対策の実施に当たりましては、やはり万全を期する意味でも、暴力団総会屋等との本当の関係はどうなんだという、本当のところをやはり全部打ち明けていただきませんと、私どももいわゆる脅威の見積もりと申しましょうか、どのくらい実際に危険なんだろうかというところもある意味でわかりかねるところもございますので、そこだけはやはり企業にとっても積極的にこちらに教えていただくということが保護対策上も肝要かというふうに考えております。
  130. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ちょっと話はずれますけれども、過去の例についての実績を聞くのですけれども、その前に、総会屋暴力団との関係なんですが、大体、事件暴力団絡みできたり、いろいろなことで発覚するときは暴力事件が多いのです。先ほどの統計で、今、千人ぐらいの総会屋に組織暴力団絡みが六十人とかというふうな数字を言われたのですけれども、実際出てくる場合はすべて通じているわけですね。  だから、一つ質問は、現実にはほとんどがもう重複しているのじゃないかというふうな疑問があるのですけれども、それはどうなんだろうかということが一つ。まずそれを聞きましょうか、今の件。
  131. 玉造敏夫

    玉造説明員 数字的に見ますと、私ども、申し上げましたように約一千人の総会屋のうちの約九十人、これが暴力団勢力に属する者として把握しておるものでございます。  それ以外の者はどうかということでございますが、暴力団と何らかの関係を有し、暴力団に言うなれば上納しているような関係、あるいは特定の暴力団と結びつかずにある意味で保険を掛けておる、そういうものも数多く見られるというふうに考えております。ただ、それはすべてその暴力団の威力を直接背景として活動するかといいますと、それは千差万別であろうというふうに思います。
  132. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 よくわからないというか、私は、もうほとんどつながっている、あるいはお金の流れ先なんか、今保険を掛けると言われたのですけれども総会屋自身が自分で保険を掛けるために暴力団にそれこそお金をばらまいて関係をつけておくというふうに見ると、もう暴力団総会屋とを一緒にしてしまって、一つは、暴力団という一つの組織、いわゆる暴力団対策法とかいろいろありまして一つの集団として見るのですけれども、それに含めてしまうか、あるいは総会屋という一つ犯罪集団というふうなものを規定してもいいのではないかという気もする。重複させるか別々に分けるかは別にしまして、そういう感じも少ししています、まだ整理がついていませんけれども。  ちょっと別の質問で、最後になりますけれども、かつて、住友銀行がいわゆる暴力団からの攻撃を数多く受けたという一連事件がありました。八七年一月に、丸の内の東京営業部に銃弾が十発撃ち込まれた。八七年四月には、住友銀行丸の内営業所及び都内の二支店にバキュームカーでふん尿を噴射された。九三年二月に、巽頭取宅に火炎瓶が投げ込まれた。九三年五月に、森川敏雄副頭取のうちに火炎瓶が投げ込まれた。九四年九月、畑中名古屋支店長が射殺された。そのほか、幾つかの支店に火炎瓶が投げ込まれたり、電話線が切られたり、右翼の宣伝カーが押しかけたり、嫌がらせをしてきた。  そういう一連事件があったのですけれども、例えば、この一連事件というのはすべて解決して、原因は何だったかということはわかっているのでしょうか、その辺だけちょっと説明を。一連事件の場合、どういうふうに対応されているのでしょうか。
  133. 玉造敏夫

    玉造説明員 お尋ねの件でございますが、八七年一月の丸の内東京営業部に対する銃撃事件につきましては、政治団体幹部ら三名を検挙しております。八七年四月の都内三カ所のふん尿放射事件につきましては、政治団体代表ら五名を検挙、うち実行犯の三名は暴力団構成員の肩書もあわせて持っておった者でございます。九三年二月の巽頭取方への火炎瓶投てき事件、そして九三年五月の森川副頭取方への火炎瓶投てき事件及び九四年九月の名古屋支店長射殺事件につきましては、いずれも未検挙でございます。  検挙された二件につきましては、いずれも政治団体を名乗る者が絡んでおりまして、犯行の動機といたしましては、住友銀行を含む国会業グループに反省を促す、住友グループに反省を促すというようなことを供述しておるという状況でございます。未検挙事件につきましては、被疑者含めまして原因、背景等まだ判明しておりませんけれども暴力団等の関与を視野に入れて、あらゆる角度から検挙に相努めておるところでございます。
  134. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 とても一連関係が完結していると思えませんけれども、これはこれとしてお伺いしておきます。  それで、残余の質問はまた次の機会がありますので、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  135. 笹川堯

  136. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  本法案は、いわゆる総会屋根絶を図るのが目的であります。  午前中の審議を通じまして、法務大臣から最近の一連企業をめぐる不祥事、いわゆる総会屋に対する利益提供事件特徴について二つの点で御指摘があったと思います。  一つは、これらの事件日本を代表する証券銀行など大企業の中枢、トップ会社ぐるみで行っている事件だということ、そして二つが、金額が格段に高額になっている、そして日本経済社会に浸透し、これを内部からむしばんでいるという指摘がありまして、まことに重大な問題になっているという認識が示されました。  そして同時に、法務大臣からは現行法罰則による犯罪抑止力が弱くなってきているという表明もありました。  私も全くこの点については、三点について同感であります。そのとおりだと思うのです。三つの側面からメスが入らなければならぬと私は思います。  一つは、何といっても企業経営者の倫理問題。これは、企業経営者の自覚にまつところであります。二つは、現在の警察、検察の取り締まり、捜査の状況がどうか、不十分ではないか、行政にまつところだと思うのです。もう一つは、日本会社法、商法商法特例法、この制度上の欠陥はないのか。これは国会の仕事、当委員会の仕事だと思うのです。  あれかこれかではなくて、この三つの側面から徹底的に問題をえぐるということなしに、このゆゆしい総会屋暴力団根絶はできないのじゃないかと思わざるを得ないわけであります。そういう意味で、私どもはこの罰則強化は賛成であります。  しかし、それだけで今日の重大な総会屋根絶されると到底考えられないわけでありまして、この委員会は幅広くいろいろな分野から問題をえぐることが求められているのではないかというふうに思います。  そこで、私は、問題の根幹は何か、問題の核心の一つは、なぜ日本企業が、特に大企業総会屋暴力団などとの関係を断ち切れないでいるのかというところだと思うのです。砂糖とアリの話がありましたが、本当に砂糖とアリなのか。この断ち切れないのはなぜなのかというところだと思うのです。ここにメスが入らないと、重罰化だけではイタチごっこになって、ますますこうした犯罪が地下に潜っていくということにならざるを得ないと考えるからであります。  この点で、重要な指摘がマスコミからもたくさん出されております。  一つだけ、私が非常に重要な指摘をしておると考えました本年六月二十二日の日本経済新聞の社説を取り上げたいと思うのです。非常に重要だと思うので、ちょっと読まさせていただきます。  なぜ企業は、総会屋暴力団などとの関係を断ち切れないのか。  第一勧銀の近藤克彦頭取は「過去の呪縛(じゅばく)」と表現した。合併・人事を巡る社内抗争や仕手戦の解け合い、会社乗っ取りへの防戦、役員の不祥事処理に、企業はかれらの力を借りてきた。  これまでの日本の政治や経済に、反社会的な勢力の暗躍を許す素地があったことも否定できない。二十一年前摘発されたロッキード事件・児玉ルートの冒頭陳述は、右翼の児玉誉士夫元被告経済界のトラブルに介入し、巨額の謝礼を受け取っていた事実を指摘した。第一勧銀の利益供与事件も児玉側近とされる元出版社社長との関係が発端という。  バブル経済の下で、関係は一層緊密になった。地上げや債権回収、風俗営業との取引などを通じ、企業が「裏社会」と接触・利用する機会が増えた。いったん関係ができると、骨の髄までしゃぶり尽くすのがかれらの手口である。関係を断とうとする者には、暴力を振るうことも辞さない。バブル崩壊後の九二年から三年間に二十六件の企業テロが起き、三人の企業幹部が殺害された。  「裏社会」との関係清算は、「過去の呪縛」との闘いである。いま手を切らないと、反社会的な勢力が経営に介入し、会社財産を蚕食する不健全な企業社会ができあがる。これが日本経済新聞の社説であります。  私は、やはり根本問題をついているとこの社説を読みました。大企業総会屋暴力団癒着、そして、この裏で莫大な資金がこうした無法な勢力に流れている。その結果、善良な市民が犠牲になっている。ここにメスを入れて癒着を断ち切るためのあらゆる手だてを打つべきだと考えるわけでありますが、私のこうした問題についての見方をるる述べましたが、こうした問題の法務大臣としての基本的な見解、改めて整理してお述べいただきたいと思うのです。
  137. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 一言で申し上げますと、総会屋企業との癒着、それが非常に長年にわたりまして続いてきている。人がかわっても会社は変わりませんので、癒着がそのまま続いている。一たん引きずり込まれますと、なかなかそれから脱することができない。脱しようとすると、そこにいろいろ問題が起こる。だから、問題を起こすより起こさない方がいいからそのまま続けていこう、そういうふうな事案が今度あからさまになったと思うのです。したがいまして、そのような状態を続けている限り、先ほど話が出ましたが、三年たてばまたもとに戻るというようなことでは、これは絶対断ち切ることはできないのですね。  だから、やはり企業が、私は、総会屋総会屋といいますけれども、一番問題なのは企業の倫理観だと思います。企業がそこまであらゆる困難を克服して、あらゆる困難を克服してと言うのは言葉ではなかなか簡単ですけれども、実際は大変難しい問題があるだろうと思います。しかし、それにもかかわらず、それを乗り越えていかなければ日本経済のあすはない、社会のあすはない、その辺のところまでの認識が必要ではなかろうかな、このように思います。
  138. 木島日出夫

    ○木島委員 総会屋の実態、手口等については、午前中、警察から報告がありました。千人とのことであります。うち暴力団九十人。手口についても、情報誌の押しつけ、経済取引を装う者、大変巧妙になっているという報告がありました。  先ほども同僚委員から指摘されておりましたが、最近の特徴は、やはり総会屋暴力団、右翼との垣根がなくなってきているということではなかろうかとも思います。改めてやはり、こういう無法な勢力に莫大な金が日本企業から、特に超一流の企業から流れている、暴力団をこうやって養っている、結果的に養うことになっているということは、本当にゆゆしい問題だと思うのです。  そこで、どのくらいの金が年間、無法に企業からこの種勢力に流れているのかという点について警察にお伺いしたいのですが、よく真相はわかりません。  例えば、ことしの三月十一日の朝日新聞夕刊ではこういう記事があります。「「味の素」の利益供与疑惑で商法違反の疑いが持たれている同社総務部課長は、総務担当者として年間約一億円の予算を与えられていたことが十一日、警視庁捜査四課などの調べで分かった。」また、これは東京新聞のことしの十月二十三日付の夕刊でありますが、「大手自動車メーカー「三菱自動車工業」が株主総会対策総会屋に現金を渡していた事件で、同社総務部は年間数千万円を総会屋対策費などとして管理していたことが二十三日、警視庁捜査四課の調べで分かった。」こういう記事があります。それから、もう一つだけ挙げますと、読売新聞の九四年九月二十日付の紙上でありますが、「右翼関係団体機関誌 上場百二十社調査」によると「購読料数千万円も」、こういう見出しが躍っているわけであります。  ひっくるめて、日本警察庁は、この種の不法なお金が年間こうした暴力団、右翼あるいは総会屋、そうしたたぐいにどのくらい裏金が流れていると把握しているのか教えてください。あるいは、つかんでいますか。
  139. 玉造敏夫

    玉造説明員 どのぐらい具体的に流れているのかという御質問でございますが、どのぐらいということは、ちょっと私どもも正確に把握しているということは言いがたいわけでございます。  あとは個別の案件ごとにどうであったかということになるわけでございますが、いずれにしましても、御指摘のように総会屋暴力団、そして右翼との垣根が低くなっている、ボーダーレス化しているということはそのとおりでございます。  その中で、総会屋が、例えば上納金であるとか、あるいは義理かけといった名目で暴力団の方に金を流しておる。それは、暴力団の手先となる形での活動として流しておる場合と、そうではなくて、先ほども言いましたような保険という形で流している場合、もろもろあろうかと思います。金額的に幾らというのは、ちょっと申し上げられません。  ただ一方で、暴力団が逆に総会屋活動の方に出てきておるという案件もございまして、例えば、昨年大阪で検挙いたしました、大手百貨店にかかわります利益供与検挙いたしました暴力団組長でございますが、この場合には、企業側より合計一億六千万円がこの暴力団組長に供与されたわけでございまして、これはまさにストレートにそういう金額が行ったということでございます。
  140. 木島日出夫

    ○木島委員 やはり警察庁が大枠でもつかめないというところに、私は問題が一つあると思うのですね。味の素一社で、同社総務部課長が、この種、金として一億円の予算を与えられているというのは既に報道されているわけですね。これがもし一千社だとしたら一千億でしょう。だから、大変なことだと思うのです。やはりそういうところに私は今の行政の怠慢もあるのじゃないかなと一点だけ指摘して、次の質問をしたいと思うのです。  どうしたら企業がこうした裏社会との決別を確かなものとすることができるのか。企業倫理の問題も基本でありますが、ここまですべての企業、ほとんどの企業の名前が挙がってきてしまっておりますと、もう企業倫理だけの問題では済まされない、日本の法制度、会社法制度の根本問題からやはり見ていかなければならぬのじゃないかなというふうに感じます。  この点でも、大変大事な指摘がマスコミから最近出ております。  一つ挙げますと、本年八月七日の毎日新聞の社説でありますが、これは総会屋利益供与事件、主に野村証券、第一勧銀、山一証券等の問題についての論述でありますが、見出しとして「厳罰と情報公開が肝要だ」と書いてあります。そして、アメリカに比べて日本罰則は低過ぎるということをるる述べております。  それで、私がもう一つの問題として指摘している情報公開についても、この社説は大変大事な指摘を書いています。  腐敗との決別には、要するに、総会屋企業との癒着、腐敗。  腐敗との決別には、もう一つ行政情報の公開も欠かせない。金融証券業界はかなりの情報を大蔵省にだけは報告している。だが、大蔵省業界の庇護者であって、公表するようなことはないと聞く。こうした情報の囲い込みが官・業の癒着を生み、裏社会に付け入るスキを与えているのではないか。こういう指摘なんですね。  こういう角度からの指摘というのは、非常に最近目立って多くなっております。  ことしの五月二十七日の読売新聞の社説も、見出しは「かぎ握る経営者の意識改革」という題ではありますが、一番末尾に、  忘れてならないのは、情報を開示し、企業社会に開かれた存在にすることだ。株主総会は、経営者が経営内容や経営理念を株主に説明し、理解を得る絶好の機会だ。それなのに、先ほども同僚委員からありましたが、  今年も開催日が特定日に集中するという。総会を短時間で終わらせようとする動きも見え隠れしている。  経営トップは、総会屋などとの関係断絶を明確に打ち出すのはもちろん、長時間の総会をいとうことなく、さまざまな株主からの質問に真正面から対応すべきだ。毅然とした態度の表明は、総会屋締め出しの道につながるに違いない。このとおりだと思うのですね。  それからもう一つだけ、ことしの七月二日の毎日新聞の社説でありますが、見出しは「企業社会に何を問うたか」。「今年の株主総会は異常だった。」と書き起こして、こういう指摘があります。  元来、銀行は信用が命だ、と考えられてきた。ささいなもめごとや私的なスキャンダルさえ、外部に漏れることを恥としてきた。そこに闇の世界との接点が生まれ、彼らのつけ込むスキが生まれた。こういう指摘があります。まさにこのとおりだと思うのです。  このところコーポレートガバナンス(企業統治)をめぐる論議が再び活発となってきた。相次ぐ一流企業の不祥事がきっかけである。  問題の源は、日本の大企業の、外に向かって閉鎖的な「従業員の共同体」にあるといわれる。要するに、閉鎖的なところが問題なんだ。  つまりメーンバンク制、系列取引、終身雇用という日本的経営の特徴がそこにある。こういう、やはり情報公開がいかに大事かということが指摘されています。  最後に一つだけ、くどいようですが、ことし十月二十二日の東京新聞の社説、「総会屋事件根絶するには」。  なぜ、利益供与せねばならないのか。企業側に付け込まれるスキがあるからという。これは松坂屋事件についての論評ですが、  松坂屋の場合、このスキは三重県でのゴルフ場建設の失敗だったようだが、なぜ正面きって、ゴルフ場問題を議論できないのか。本筋の議論を避けようとすればするほど、総会屋に付け込まれるスキが大きくなる。やはりここだと思うのですね。  やみの勢力は表ざたになることを一番嫌がるわけですから、徹底して情報公開する、株主総会徹底して議論もやる、公然と議論をやる、そして、俗語で言えばおてんとうさまの光を当てれば、こういうやみの勢力は介在する余地がなくなってくるのじゃないかと思うわけであります。  そこで、一つだけ法務大臣にお聞きしたいのですが、毎日新聞のさっきの社説は、そういうことをるる言った上で、最近、行政改革委員会が情報公開についての要綱をつくったと論評しているのです。来年これを法案化すると橋本総理は本会議で答弁しましたが、その中に、企業から行政に渡った情報について、非公開特約がついた情報については公開しなくていいという、そういう行政改革委員会の要綱になっているのですね。これでは企業から行政に行った情報はほとんど公開されないことになってしまうということで、我が党の案は、こういう非公開特約はやめるべきだという立場であります。ほかの党の案も、こういう非公開特約は情報公開法から取り去るべきだというところが多いわけですが、これは来年法案化して、法務大臣のもとでの内閣で審議がされる可能性があるわけですが、どうでしょう。  この関係で、やはり情報公開を進めるという立場から、こういう非公開特約はつけるべきでないと考えるのですが、一言だけ御意見を。
  141. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 十分検討させていただきます。
  142. 木島日出夫

    ○木島委員 これは別途また論議したいと思うのです。  私、本当に残念なことは、ことしの七月十五日の閣議口頭了解、「いわゆる総会屋対策のための関係閣僚会議の開催について」と題する文書、また、九月五日のいわゆる総会屋対策要綱、関係閣僚申し合わせ、それから、さきの十月二十八日の「いわゆる総会屋対策の推進について」、非常に多面的に対策は書かれてはいるのですが、この根本として、マスコミからも厳しく指摘されている情報公開については全然ないのですね。そういう方向でやみ世界をなくしていこうという発想が全然ないのですが、ちょっと残念なんですが、法務大臣、いかがでしょう。
  143. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 それも、具体的な個々の問題について十分検討してまいりたい、このように思います。
  144. 木島日出夫

    ○木島委員 ぜひ検討を進めていただきたい。  そこで、私は、きょうは、実は日本企業はディスクロージャーの点については終始一貫非常に消極的な立場をとり続けてきた、そして、残念ながら自民党・政府も、この間、商法改正の論議を見ますと、大企業の要請に沿って企業の情報公開にはやはり非常に消極的な姿勢をとり続けてきた、そこが問題だということをこの場をおかりして指摘をしたいと思うのです。  その一つとして、私は、昭和五十六年、先ほど来問題になっております商法改正、この改正によって、総会屋に対する株主権利行使にかかわる利益供与事件罰則が設けられた、そういう法案なので、それは積極面だったのですが、実はこの法案は、一方では利益供与罪を新設しておきながら、他方で企業のディスクロージャーについては後退させているのですよ。当時の現行商法徹底的に後退させてしまっているということがあるのです。  どんな点で後退しているかというと、三つ述べます。  一つは、この法案株主総会を形骸化させているのですよ、もう法律になったのですが。まことにおかしな話です。具体的には、商法二百八十三条の営業報告書ですが、これを株主総会の承認事項から報告事項に格下げしてしまっているのですね。それから、大規模会社について、貸借対照表、損益計算書について、会計監査人や監査役が適法だという意見がついたら、もう株主総会の承認、必要ないよというふうに株主総会を形骸化してしまっているのです。これが一つ。  それから、二つ目としては、取締役会の議事録の閲覧、謄写の問題ですが、これが営業時間内は自由だったのですね、それまでは。ところが、この法によって、営業時間内に株主が取締役会の議事録を閲覧、謄写するのも裁判所の許可を必要とするようにしてしまうと。  せっかく利益供与罪を新設して、総会屋排除しようというのがこの法案の目的です。今度の法案根絶ですね、総会屋根絶、この法案のときは総会屋排除という言葉を使われているのですが。せっかくそういう法律をつくっておきながら、他方では暗やみにしてしまう。  もう一つ、私は、ここの場で詳しく質問をしたい点を触れます。それは、ディスクロージャーそのものの問題です。株式会社の計算、公開に関する問題であります。  実は、この法案の基本になったものとして、これは昭和五十六年ですが、昭和五十四年十二月二十五日に法務省民事局参事官室は、「昭和五十四年法務省試案をめぐって」という改正のための試案を正式に取りまとめて発表しているのです。法務省の試案です。この試案をもとにこの法案がつくられたわけなのですが、ディスクロージャーの面でこの試案は大変立派な試案なのですね。これは、単に思いつきで法務省がやったのではなくて、法制審議会の論議を踏まえて、当時の法務省が試案としてまとめ上げたものであります。ディスクロージャー、総会屋にかかわる一点についてのみ明らかにします。  その試案の第五には、株主総会にかけるのは、損益計算書、貸借対照表と営業報告書が現行法なんですが、営業報告書というのを言葉をかえて、業務報告書に言葉をかえます。中身も、試案「5 業務報告書には、法務省令で定めるところにより、会社の業務の状況に関する重要な事項を記載しなければならない。」こう基本で書いて、それはどういう情報を業務報告書に盛り込むべきかについて、試案は、(注)の(g)でこういう文言が入っています。大変大事な文言だったのです。「会社が無償でした金銭、物品その他の財産上の利益の供与(反対給付に比し著しく過大な給付を含む。)の総額」。要するに、まさに総会屋に裏金を渡した、そういう金の総額を業務報告書に書きなさいよ、これが法務省の試案だったのです。  さらに、法務省の試案は、附属明細書についても書いています。試案第六項「附属明細書に記載しなければならない事項は、法務省令で定める。」そして、(s)のところで、「会社が無償でした金銭、物品その他の財産上の利益の供与(反対給付に比し著しく過大な給付を含む。)」まさに海の家なんかの問題がそうでしょうね、反対給付に比較して著しく……。これの明細も書きなさい、しかしそれは附属明細書でいいですよと、経費かかりますからね。  こういう本当に立派な試案を法務省は出しているのです。なぜこういうのを出したかについて、解説も書いてあります。  本来、いわゆる総会屋に対する金品の供与を防止するための措置として検討事項とされたものをここにおいて結論を出したものである。ただ、本項にもとづいて開示されるのは、総会屋その他に対する不当な金品の供与だけでなく、福祉事業や神社に対する寄附のような、株式会社社会的存在として果たさなければならない義務の履行も含まれるのであって、本項により記載される金額は、違法、不当のもののみを示すものではない。むしろ、会社が正当な社会活動を行っている限り、その金額は、正当なもののみを示すことになる。ということまできっちり書いて、要するに、会社が一般社会に、会社外に払った無償の金あるいは相当な対価の金は、おかしな、いかがわしい連中に渡した金であろうと、まともな寄附であろうと、きっちり載せなさいよ、そしてこれを株主総会に明らかにして、そして社会の批判を受ける、これが総会屋対策の非常に大事な一つだという位置づけで実は法務省が五十四年に試案を出したのですね。  法務省、そのとおりですね。
  145. 森脇勝

    ○森脇政府委員 まず、五十六年の法改正におきましては、先ほど来問題になっております利益供与受供与の刑罰だけではなく、民事法上、会社株主権の行使に関して財産上の利益を供与することを禁止したという規定も設けております。これに違反して供与した利益というのは、会社がその供与を受けた者に対して返還請求できるという規定も設けております。さらに、会社が返還請求をしない場合には、株主会社のためにその返還請求権を代行使するという規定も設けているわけでございます。決して刑事上の罰則を設けたというだけではないという点を御指摘させていただきたいと思います。  それから次に、ディスクロージャーの関係でございますが、これは、ただいま先生が御指摘になりましたとおり、昭和五十四年十二月二十五日に公表した「株式会社の計算・公開に関する改正試案」におきまして、今御指摘のような案が示されたところでございます。そして、その後、昭和五十六年のただいまの商法改正を受けまして、その趣旨の具体的実現を図るものとして、昭和五十七年四月に、開示に関連する一連法務省令の改正が行われたわけでございます。  その結果、利益供与に関するディスクロージャーに関しましては、取締役の職務執行に関して、法令に違反する重大な事実があるときにはその事実を監査報告書に記載しなければならないという商法の規定になっておりますところ、いわゆる商法特例法上の、大会社の監査報告書には「会社が無償でした財産上の利益の供与(反対給付が著しく少ない財産上の利益の供与を含む。)」「につき取締役の義務違反があるときは、その事項に関する記載は、各別にしなければならない。」ものと改めたところでございます。  さらに、附属明細書には、会社の営業費用のうち販売費及び一般管理費の明細を記載すべきこととされましたが、この明細においては、無償の利益供与に関する取締役の義務違反の有無につき「監査役が監査をするについて参考となるように記載しなければならない。」ものとされております。この規定は、御指摘のとおり、無償供与があった場合には、それが計上される可能性が高いものとして、販売費、一般経費があったからでございます。  このように、五十六年商法改正に若干おくれておりますけれども改正後に制定された法務省令においては、前記改正試案の趣旨に沿ってディスクロージャーに関するルールが定められたというふうに承知しておるところでございます。
  146. 木島日出夫

    ○木島委員 今報告あったとおりだと思うのです。  重大なのは、この法務省昭和五十四年の試案は全然条件をつけていないということなんですね。「会社が無償でした金銭、物品その他の財産上の利益の供与の明細」。ところが、これが法案の過程ですっかり脱落させられました。結局、一年おくれで昭和五十七年につくられた制度は、今まで説明があったとおり、取締役の義務違反の場合でしょう。物すごい制約がついてしまったのですよ。取締役の義務違反に係る会社が無償でした金銭、物品その他の財産上の利益の供与の明細をつけなさいと。これでは、取締役の義務違反なんて取締役は思いませんから、自分がつくる明細に。実効性がないのは当たり前ですよ。決定的な違いでしょう。なぜ無条件にしなかったのですか、取締役の義務違反に係る無償提供の全員のみに絞ってしまったのですか。骨を何で抜いてしまったのですか、法務省
  147. 森脇勝

    ○森脇政府委員 まず、今御質問の中での、言葉の間違いだろうと思いますけれども、これは監査報告書にはということですから、取締役という点ではございません。  それで、これが寄附等が含まれるところからそれを除くという趣旨で、こういう制約がつけられたというふうに当時説明されておったところでございます。
  148. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、法務省は五十四年の試案でわざわざ書いているではないですか。確かに、この法務省案だとすべての寄附が表へ出る。総会屋に対するやましい金だけではない、福祉事業や神社に対する正当なものも出る。それでいいではないか、公然と出したらいいじゃないか、そこまでわざわざ、これは法務省の試案ですよ、書いているのですよ。  もしこの試案のとおりに法律がつくられていたならば、せっかくおっしゃるように利益供与罪ができたのですから、返還義務もできたのですかり、罰則もできたのですから、全部これがあぶり出されて、もうここで総会屋が存在する余地は私はなかったと思うのです。総会屋の名前、全部出ますよ。第一勧銀から総会屋だれだれに昭和五十七年の寄附幾ら、全部出るのですよ、この明細。そうやってディスクロージャーが行われたら、私は今日の事件は起こりようがなかったと思うのです。ましてや、会社幹部、殺害もされました。私の知人もいます。こんな痛ましい事件は起きなかった。  何でこういう、せっかく法務省が、民事局参事官室が、法制審議会のいろいろな議論も踏まえ、いろいろ書いてありますよ、いろいろなところからいろいろな意見も聞いたというのです、徹底的に国内から意見を聴取してっくられたこの試案の一番大事なところを換骨奪胎してしまったのか、そこを聞きたいのですね。寄附だから消した、隠したというのは理屈が通らないです。どうですか。
  149. 森脇勝

    ○森脇政府委員 これは立法の問題でございますので、一たんこういう案が出たから、それについて動かしてはならないという性格のものではございませんので、その当時の議論を詳しく精査してみないとわかりませんが、御指摘の経過があるということだけは間違いないということでございます。
  150. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、その経過を聞きたいのですよ。  もっとざっくばらんに言いましょうか。せっかくこういう立派な試案を法務省は出したのだが、圧力でつぶされたということじゃないのでしょうか。経団連が圧力をかけたからじゃないのでしょうか。そして、その圧力に自民党が一緒になって同調したからじゃないのでしょうか。そういう経過はありませんでしたか。
  151. 森脇勝

    ○森脇政府委員 従来の商法改正のあり方から見てまいりまして、そのようなことはないのではないかと私は思っております。
  152. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、とんでもないですよ。まさにそこがポイントだったのです。  私は、日本法務省、本当に立派な試案を出したと思うのです。これは本当に総会屋根絶根絶という言葉は使っていませんが、排除するという目的でこの「株式会社の計算・公開に関する改正試案」というのは貫かれていますよ。それは、罰則もつくったし、返還義務もつくったし、おっしゃるように。こういうディスクロージャーというのは、本当に立派なディスクロージャーの試案を出したのですね。しかし、そのやはり肝心かなめなところで、私は、経団連や自民党の圧力に法務省が屈してしまった、そして、この部分を脱落させて法案を出したと。だから、私ども日本共産党はこの法案には反対したのです。社会党さんも当時反対しました。  私どもは、利益供与新設だけなら賛成だったのですよ。それはいいことですから、刑罰をつくるのはいいことですから。しかし、そういう問題があったということを、当時、法務大臣は当然法務省には責任を負う立場ではありませんでしたから、法務大臣は責任ないと思うのですが、そういう経過をもう一つ踏まえていただいて、もう時期は遅いですけれども、十六年後たった今日ですが、今あの時代よりもはるかに総会屋暴力団の跳梁ばっこはひどくなっているわけですから、この立場に法務省は戻っていただきたいのです。  そして、罰則だけじゃなくて、罰則は私ども共産党は賛成しますよ。しかし、それだけでは不十分なんで、この一番根幹のディスクロージャーをやっていただきたい。そうすれば、警察がさっき私の質問に対して、大体年間幾らぐらいの金が、この種の金が総会屋暴力団、右翼に流れているのかつかめないというようなまことにお粗末な状況は一変するのです。全部わかるのですよ。  法務大臣、どうでしょうか。十六年前、法務省がここまでの立場に立ったのですから、もっと事態は深刻になっているのですから、せめてこの試案の立場に立って、そして法案を出してほしい。この法案と別法案でいいですよ。法務大臣、これは法務大臣の政治決断。
  153. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 今、御議論の過程をるる聞いていたわけでございますが、私どもは、総会屋根絶するために一生懸命やろうというふうな意気込みでやっておるわけでございます。五十七年の経緯をひとつ私自身もよく勉強させていただきまして、今申し上げましたような方向で検討させていただきます。
  154. 吉戒修一

    吉戒説明員 ちょっと細かいことでございますが、私の方から御説明させていただきます。  実は、附属明細書の件でございますが、これはいわゆる計算書類規則というものがございまして、これの中に規定がございます。委員指摘の規定は、計算書類規則の四十八条に規定がございまして、そこの一項の五号で「営業費用のうち販売費及び一般管理費の明細」という規定がございます。  この省令を作成する際の法務省側の見解といたしましては、この一般管理費の中に通常の寄附等が入るというふうに読めるのではないかということから、特段の規定を置かなくてこれをもって読むと。それで、その後に、四十八条の三項に「第一項第五号の明細は、大会社の監査報告書に関する規則第七条第一項第二号に掲げる事項に関し監査役が監査をするについて参考となるように記載しなければならない。」というふうな規定の手当てをいたしておるところでございます。
  155. 木島日出夫

    ○木島委員 そんな理由、全然理由にならぬですよ。  それじゃ、今説明したようなことを忠実に守って、日本の問題になった大企業は、総会屋に対して金は全部明細書を書いていますか。じゃ、聞きましょう。第一勧銀の明細書、どうですか。野村、どうですか。山一、どうですか。総会屋の名前をちゃんと書いて、いつ幾日、幾ら渡したという明細書になっていますか。
  156. 吉戒修一

    吉戒説明員 個別的企業の附属明細書の内容はちょっと承知いたしておりませんけれども、私どもの承知しておるところでは、一般管理費の中に寄附等は書かれておるというふうに承知しております。
  157. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、全然出てこないのですよ。だからやみの金なんですよ。もっと言えば、こうしたたぐいの金は使途不明金という扱いもされているのですよ。きょうは私、時間がないから国税を呼びませんが、使途不明金という扱いで変な裏金がつくられて、そして出る方もわからないようになっているのですよ。だから、私は、商法の上からも税法の上からも、徹底してこれを国民の前に明らかにする、少なくとも株主総会に明らかにする、ディスクローズする。それがあれば日本社会は一変しますよ。私、日本企業社会は変わると思いますね。なぜ日本総会屋がいてアメリカにいないのか、やはりここじゃないでしょうか。  欧米は徹底的にディスクローズされているのですね。表へ出ます。太陽の光に当たりますから、いつ、幾ら、どういう名義で金が企業からそういったたぐいの人間に流されたか見えてしまいますから、そんな総会屋は存在する余地がないのですね、批判されますから。そこを隠してしまうから、隠すからこういう連中がばっこするのじゃないでしょうかね。  警察庁、つかめないでしょう。じゃ、聞きますよ。いろいろ事件が起きましたね。第一勧銀、四大証券、日立グループ、三菱グループ、この企業の決算書を全部警察はとって捜査していると思うのですが、総会屋にいつ幾日、幾ら出したというような明細が見つかったことありますか。
  158. 玉造敏夫

    玉造説明員 今御指摘金融関係証券関係は、当方の検挙事案ではございませんので。  あと、述べられました件につきましては、まさにただいま捜査中でございます。
  159. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、それは全然出てこないのですよ。出てこないから、また、そういうのを表にされるのが嫌だから、総会屋なるものを使って大企業株主総会をほんの数分で終わりにしてしまう、そういうことじゃないでしょうかね、根本は。だから、私は、先ほど言ったように企業倫理、これが根本問題だと思うのです。それと警察の、検察の取り締まりをきっちりやる。そして同時に、仕組みの問題、ここまで行き着きますと、やはり考え直さなきゃだめだと。  残念ながら、そういう点が今度の政府の九月五日なりの要綱には全然書いてないのですよ。物すごい膨大な項目です。あらゆる省庁にわたる総会屋対策が出ていることは確かなんですが、この肝心のところ、肝心の法務省のやるべきこと、そして昔やろうとしたことが書かれていないというのが、私は大変な欠陥じゃないかなと思うわけであります。  法務大臣も検討するという答弁でございましたから、速やかに、できたら今度の通常国会ぐらいに、もう案はここにありますから。しかも、これは省令でいいのでしょう。法律じゃなくて法務省令でいいのですね。だから、法務省がやろうと思えばすぐやれる。これはどうでしょう、法務大臣、省令でいいというのですから、法律は要らないからやっていただけませんか。
  160. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 十分検討させていただきます。
  161. 木島日出夫

    ○木島委員 じゃ、十分に検討していただいて、省令改正をしていただきますことをお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきます。  やはりこれはディスクロージャーにかかわる問題でありますが、企業の閉鎖的体質を是正するための強力な手段の一つに制度化されているのがいわゆる株主代表訴訟なんですね。  そこで、法務省にお聞きいたしますが、株主代表訴訟について、裁判上の訴額が非常に改定されて、訴えやすくなったということがありますが、最近における株主代表訴訟の運用の実態、あるいはこれが企業社会の公明正大化にどんな役割を果たしているのか、御報告願いたいと思います。
  162. 森脇勝

    ○森脇政府委員 株主代表訴訟というのは、会社が取締役の会社に対する責任の追及を怠っている場合に、株主会社のために取締役の責任を追及する訴えのことでありまして、取締役の違法行為により生じた会社の損失を回復するとともに、取締役が法令に従って適正な業務執行を行うことを確保するための有効な手段であるというふうに認識しておりますし、そのように機能しているものと承知いたしております。  最近発覚しましたいわゆる総会屋に対する利益供与事件に関しましても、数件の株主代表訴訟が提起されていると承知しております。このことから考えましても、株主代表訴訟制度は、利益供与等の違法行為に関する監督是正措置としても機能しているというふうに認識しておるところでございます。
  163. 木島日出夫

    ○木島委員 非常にいい役割を果たしているということ、法務省の答弁でありました。しかし、私は、問題なのは、せっかくいい役割を果たしているこの株主代表訴訟制度についても、今日、今現在、残念ながら日本経団連と自民党は、これを改正して、私に言わせれば改悪にならざるを得ないのですが、骨を抜いてしまおうという動きが非常に出ているということを指摘しておかなければなりません。  最近、自民党の商法委員会は、株主代表訴訟制度について、改正試案なるものを出しまして、十項目についての改正項目を挙げました。全部述べる時間はありませんから、幾つかのポイントだけ言いますと、第六項に、「取締役の会社に対する責任について、」まさにこのために株主代表訴訟をやるのですが、「定款の定めまたは株主総会の特別決議による減免を認める。」せっかく法律があって、取締役の会社に対する責任が法定されておって、それを取締役がやりませんから、株主がかわって、自分の身銭を切って裁判を起こして取締役の会社に対する責任を追及する、そしてそれも、訴額も算定の方法を変えて立件しやすくなった、そこまでしたのに、それはいかぬというのですね。定款の定めや株主総会の特別決議があれば、取締役の会社に対する責任を減免、免除してしまえと。自民党さんが本当に乱暴な試案を出しているのですね。驚きます、これは。  それからもう一つ、しかし、これはただし書きがあって、「取締役に忠実義務違反、犯罪行為、故意または重過失があった場合は例外とする。」と。さすがに自民党もここまではやれないと思ったせいか、故意または重過失の場合は免責できないと書いてあるのですが、八項のところで、「前記減免のできない取締役の会社に対する責任については、五年程度の短期消滅時効を法制化する。」ひどいものじゃないですか、これは。故意または重過失が取締役にあって会社に損害を与えた場合、しかし取締役会は動こうとしないから、個人個人の株主がかわって会社のために裁判を起こそうとする、そういう場合には五年の短期消滅時効にしてしまえ。私は、本当にひどいものだと。  これは自民党だけじゃなくて、やはり経団連なんですね、出どころが。経団連がことしの九月十日、コーポレート・ガバナンス特別委員会というところからコーポレート・ガバナンスのあり方に関する緊急提言というのを出しました。  その第二項目めが、「株主代表訴訟制度の見直し」と題するところであります。「原告適格の見直し」、訴えることのできる原告を制限するというのですよ。「訴訟の原因となる行為の時点で株式を保有していた者とする。」そういう不正行為があったときに株主でなきゃだめだというのです。後から株主になった者も今はできるのです。裁判を起こせるのです。それを、原告適格を縛り上げてしまえというのですね。  それから、  取締役の損害賠償責任  取締役の会社に対する損害賠償責任につき、定款で責任額の上限を規定できるようにする。また、総会の特別決議によって個々の案件について責任を免除・軽減できるようにする(監査役全員の承認を得て、監査役会が総会に提案)。自民党の案と、うり二つなんですね。  これは、私さっき、昭和五十四年の法務省試案が握りつぶされてしまった、換骨奪胎されてしまったというその理由法務省はなかなか説明しようとしませんでしたから、実はその裏には経団連と自民党の圧力があったのじゃないかと指摘をしましたが、同じ形で、今、株主代表訴訟に関してこういうすさまじい攻撃がかけられている。法務省、御存じでしょうか。
  164. 森脇勝

    ○森脇政府委員 株主代表訴訟のあり方については、さまざまな議論があることは承知いたしておるところでございます。  ただ、株主代表訴訟制度は、先ほど申し上げましたとおり、会社の損失を回復する手段、さらには取締役の業務執行の適正を確保するための手段という機能を有しておりますので、このような機能を損なうことがないよう配慮していくことが必要だというふうに考えておるところでございます。
  165. 木島日出夫

    ○木島委員 まさに取締役会が、あるいは個々の取締役が総会屋癒着をして、また総会屋の圧力に屈して、無法に、不法に多額の金を渡す、そういう非違があったときに、残念ながら、その取締役会はみずからの非違をなかなか追及できないでしょう、自分たちの仲間内がやっていることですから。そういうときにこそ、個々の株主が取締役会にかわってその取締役を訴えて、会社に対する損害を賠償させる。まさにこの制度が機能することが総会屋根絶の非常に大きな手段になる、そういうものなんですね。  非常に大事な役割を果たしていると今法務省は答弁されましたから、まかり間違っても、今回はこの問題については法務省は自民党や経団連の圧力には屈しないで守り抜いていただけるものと確信をしますが、法務大臣の決意を述べてください。
  166. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 代表訴訟の問題について議論されているということは承知いたしておりますけれども、今委員指摘のような具体的な中身まで、私、承知いたしておりません。従来のいきさつ等々を踏まえて検討させていただきます。
  167. 木島日出夫

    ○木島委員 守るという立場で検討していただくならいいのですが、圧力に屈して今の制度を変えてしまうようなことの検討はぜひやめていただきたい。  それについて、私、念のため、これは本年九月三十日の朝日新聞の社説を引用しておきます。見出しが「代表訴訟見直しは性急すぎる」。るる書きまして、  トップまで手を染めた企業犯罪の数々。そこからは、経営の暴走を止める仕組みが欠けた日本企業の病弊が浮かび上がる。こうした事態をただすために、商法の見直しに取り組むのは、当然のことだろう。  しかし、経団連や自民党がめざしている方向には疑問がある。ようやく機能しだした株主代表訴訟の効力を弱めようという思惑があまりにも明らかなためだ。こう日本の大新聞が社説で書いておりますことを、ぜひ自民党さんには、また法務省さんにはしっかり胸に置いて、これからの検討をしていただきたいと思います。  時間も少なくなってきましたので、一点だけ、要求罪の解釈の問題でお聞きをしたいと思うのです。  実は、先ほど同僚委員からも、最近、総会屋がインターネットを使って情報を発信しているというお話がありましたが、私がここに持ってきているのはその一つなんですね。これは、私がことしの十月二十九日にインターネットでとったものであります。     御挨拶  「論談同友会」は、正木龍樹会長の一貫して変わらぬその生き方に共鳴し、心酔した人達の集まりで、いわば「正木塾」です。その薫陶を受けた創立以来の塾生四十名を中心とする親睦の会です。  論談同友会は、株主利益を守る為の努力をしたいと思っております。ずっと文章が載っている。  警察ですかね、論談同友会というのは御存じでしょうか。
  168. 玉造敏夫

    玉造説明員 そういういわゆるグループ総会屋が存在しておるというのは承知しております。ただいまの、ホームページから引き出されましたその資料についても承知しております。
  169. 木島日出夫

    ○木島委員 総会屋なんですね、グループ総会屋なんです。  最初のページは非常に立派な文章なんです。ところが、三枚目の「論談ホームページ」というところが問題なんで、例えば、「昭和シェル石油(株)」「再販価格指示、拘束で独占禁止法違反!」「公正取引委員会提出資料の全文公開」、また「(株)ダイエー」「中内王国(借入金五兆円)に見える落日の影?」、虚か実か内部告発から浮かび上がってくるダイエーの実情、こういう二行ぐらいの企業に対する論評があるのですね。  こういうのを流しているのです。こういう情報をおれたちは持っているのだということをホームページなんかで広く示して、そして何をやるかといったら、私は、こういう人物が、グループが、例えばダイエーに行って、例えば昭和シェル株式会社に訪れて、そして陰に陽にですか、情報誌の購読を要求したり金品の要求をしたりする一つの大きな手段に、最近インターネットが利用されてきているのではないかと思います。  これは、自由と民主主義の国ですから、やること自体は結構なんでしょうけれども、こういうことをやった上で、この種のグループの仲間がこういう企業に訪れて金品要求すれば、この法案要求罪に該当いたしますか。
  170. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘利益供与要求罪は、株主の権利の行使に関して、会社の計算におきまして財産上の利益を自己または第三者に供与することを会社の役職員に要求することにより成立する罪とされております。株主の権利の行使に関しとは、株主の権利の行使またはその不行使に対する対価の趣旨を意味しております。例えば、株主総会会社に有利な発言をしたり、不利な発言をしないようにすることの見返りの趣旨で財産上の利益の供与を要求する場合がこれに該当するものと考えます。  実際にこの罪が成立するかどうかにつきましては、証拠に基づきましてその事実に当てはめていく作業があるわけでございますが、一般的に申し上げますと、仮に、ただいま申し上げましたような趣旨で、いわゆる総会屋等が雑誌の購入依頼等の商取引の名目のもとに利益の供与を受けたり、これを要求したりするならば、犯罪は成立するということになろうと思います。これに対しまして、通常の形態の雑誌の購入依頼等の商取引行為は、そのような趣旨のものではないという点において区別されようと。  そこで、ただいま御指摘の、その金品要求の前提といたしまして、インターネットを利用して会社の不祥事をあげつらうような行為が行われたかどうかは、そのこと自体は利益要求罪の成否を直接左右する事実でないと思われますが、その内容とその後の要求行為対応いかんによっては利益要求罪が、場合によっては威迫を伴うその罪が成立する可能性はあると考えられます。
  171. 木島日出夫

    ○木島委員 最近の総会屋暴力団は非常に法律的にも詳しくなってきておりまして、違法か合法かのすれすれの行為が非常に多いのですね。そこで、現場ではなかなか警察官が手が出せない。私も職務上経験したことがたくさんあります。  そこで、最後にもう一点だけ警察にお聞きしたいのですが、一番邪魔になっているのは、なかなか警察官が現場で手が出せないのが、いわゆる民事不介入の原則とやらなんですよ。そういう原則に今警察は立っておるのですか、それとも、民事事件であっても刑事事件に絡むものはきちっと処罰する、逮捕するなりきちっと処理するということなんですか。
  172. 玉造敏夫

    玉造説明員 現在の警察の立場でございますが、民事にかかわる事案といえども刑罰法令に触れる行為、さらには暴力団対策法違反行為、これを認めた場合には捜査を行い、あるいは中止命令等行政命令を発出するなど厳正に対処いたしております。  さらに、これらの違反行為に当たらないものにつきましても、例えば総会屋あるいは暴力団等の民事にかかわります要求に関連しまして、もろもろの御相談を受けることがあるわけでございます。その場合にも、その内容に応じて警察が直接応対要領等を教示するなり、あるいはこの分野にたけた弁護士会の民事介入暴力担当の弁護士さん、この辺と協調いたしまして適切な御指導をいたすということにしております。
  173. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わりますが、この種事犯は賃貸借契約書をかざしたり借用書をかざしたりして自分の権利があることを主張しますから、現場ではなかなか警察は手が出せない。そういうときにはぜひ、今答弁された立場で毅然として立ち向かうことと同時に、その現場で最寄りの弁護士などに通報して、そちらの方からもこうした連中のバックを押さえていただきたいとお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  174. 笹川堯

  175. 保坂展人

    ○保坂委員 社民党の保坂展人でございます。  時間が限られておりますので、やや早口になるかと思いますが、答弁の方も簡潔にお願いをしたいと思います。  午前午後と聞いておりまして、アリと砂糖というお話があったのですが、私に言わせれば、腐った肉、そこをどこまでも食い上げるピラニア、このピラニアはだれかが飼っているのかもしれない、こういう構造がだんだん見えてきたのではないかと思います。  そこで、端的なところから入りたいのですけれども日本株主総会が同日同時刻に集中して大半の上場企業で行われるという現実があるのですけれども、この現実は我が日本企業総会屋ありということを逆証明していることにほかならないのではないかと思います。つまり、総会屋という人たちがいろいろ影響力を行使するので、同日同時刻に上場企業株主総会が集中して開催をされることでその影響力を最小限にとどめるという措置、これがどういう経過かわかりませんけれども、この件について、法務省、見解をお願いしたいと思います。どのようにごらんになっているか。
  176. 森脇勝

    ○森脇政府委員 商法上、株主名簿の閉鎖期間及び基準日が御承知のとおり効力を有する期間は三カ月を超えることができない、こういう規定がございますために、三月末決算の会社が多いという現状におきましては、六月末ころのある程度の期間内に定時総会が集中するということは、これはやむを得ない面があるというふうに考えております。  しかしながら、定時総会の開催日が特定の日に集中する、そういうことになりますと、複数の会社の株式を有している株主にとっては、それぞれの会社株主総会出席して議決権を行使するということが事実上不可能となりますので、株主総会を特定日に集中させるのではなくて、一定の期間内、一定の範囲内で日を異にして株主総会を開催するといった運用が株主の権利の保障の観点からは望ましいのではないかというふうに思っておるところでございます。
  177. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは一言御確認しますが、やはり同じ日に同じ時刻に総並びであるという状況は好ましくない、こういうことでございますね。一言で。
  178. 森脇勝

    ○森脇政府委員 そのように思っております。
  179. 保坂展人

    ○保坂委員 警察の方にもお聞きをしたいのですけれども、いろいろなところで読んだり、あるいは話を聞いたりしますと、要するに総会屋対策の警備上の問題で警察当局のそういった指導が過去あったというようなことも聞くのですけれども、これは事実いかがでしょうか。あったのならあった、ないのならないということをお答えいただきたいと思います。
  180. 玉造敏夫

    玉造説明員 株主総会の開催が特定日に集中する傾向が強まっていることは十分承知しております。ただ、これにつきましては、各企業のまさに判断によるべきことでございまして、警察警察といたしましてこうすべきである、あるいは警備上の都合から集中すべきであるというような指導をしているということはございません。
  181. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、先ほど法務省に伺ったことと同じことを再度お尋ねしますけれども、確かに同じ日に同じ時刻に総会が各所で行われますと警備上も大変なんじゃないでしょうか。そして、先ほど申し上げた、日本株主総会総会屋がかくも絶大な影響力を持っているということを対外的に示す点においても、これは警察としても同一時刻で同じ日に開催されるということは歓迎をしていないというふうに考えてよろしいですか。
  182. 玉造敏夫

    玉造説明員 株主総会が特定の日に集中しようとあるいは分散しようと、個々の株主総会に派遣する警察官の数等々を勘案しますれば、どちらでも格別支障がある、どちらである方がより望ましいということは格別ございません。
  183. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると警察は、企業が同じ時間に、去年、おととしまでずっとあるように、そういうことで構わない、こういうことですか。それで総会屋根絶ができるのですか。これははっきりしてください。
  184. 玉造敏夫

    玉造説明員 株主総会のあるべき姿について、いかにあるべきかということについて、恐らく警察が述べる立場にはないのではないかというふうに思います。それと、総会屋にとってどちらが不都合であるか、その結果として警察にとって総会屋遮断というふうな面からより望ましいのはどちらかという問題は別問題でございます。
  185. 保坂展人

    ○保坂委員 ぜひこういった悪習慣は来年よりきれいになくなるということを望みたいわけでございます。  実は、今回続々と、私、議員になってまだちょうど一年なんですけれども、毎回事件なんですね。最近、日がわりメニューになってまいりました。もうどこの会社も皆さん捕まる捕まる。証券会社も四大証券全部でしょう。そうすると、僕は子供の問題をずっとやっているので、これはこんないたたまれない国はないのじゃないか。子供たちがお父さんの会社は立派だというふうに誇りを持っていた。それが一夜にして、総会屋というようなところにそれこそ利益供与をして、それで壊れるということが続いているわけです。  ここは、厳密にこの総会屋を一掃する、暴力をなくしていくという強い決意が必要だと思います。しかし、そこで、中央省庁の汚職も実はこの一年の中であったことを思い出すわけです。泉井スキャンダルというのがちょうど一年前の今ごろに表面化いたしました。通産省そして大蔵省のさまざまな疑惑ということがあったわけです。  そこで、刑事局長に伺いたいのですけれども、いわゆる官僚に対してたび重なる接待、宴席、しかも高級料亭、これが重なっていく、そしてその職務に関しての権限に、職務に関する事柄に接待する側が影響力を行使する、これはわいろに当たるというふうに認定できないのか。なぜできないのかなというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  186. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 公務員に係ります贈収賄罪につきまして、接待の問題にお触れになりましたけれども、これはあくまでやはり、贈収賄罪が成立するためには、公務員が職務に関して財産上の利益を受けるということが構成要件になって、そこには対価関係が認められるということが要件になってまいります。  そういう意味で、証拠上、その一つのあるいは一連の飲食行為が、ある特定のそういう職務行為の対価関係をなしていたかということは、あくまで証拠に基づいて認定してまいらなければならないことでございまして、一概にそういうものについて犯罪の成否を云々することは極めて困難であろうかと考えるわけです。
  187. 保坂展人

    ○保坂委員 いろいろ調べてみました。  「刑法概論」、大塚さんの本でございますけれども、  賄賂の目的物は、有形のものであると無形のものであるとを問わず、いやしくも人の需要または欲望をみたすに足りる一切の利益を含む。それゆえ、たとえば、菓子箱、謝礼金、金銭消費貸借契約による金融利益、債務の弁済、保証・担保の提供などはもちろん、飲食物の饗応、貸座敷における遊興などもわいろになるというふうに書かれているのです。  この点に照らしますと、少し、千円とか二千円の夕食を食べたということではないわけですね。少なくとも十万、二十万、三十万という単位の飲食をたび重ねて同一人物から受けたというのは、これは、この接待そのものをわいろと認定することはできるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  188. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 いわゆる贈収賄罪の対象と申しますか、対価として交付された中身に飲食が含まれるかということになりますと、一般的にはそういう場合もあろうと思うわけです。先ほど申し上げましたように、そのことと公務員の職務行為の対価関係が認められるということが問題になるわけでございまして、それはあくまで具体的な事件と申しますか、関係者の供述を含めた証拠に基づいて認定するということになろうかと思うわけです。
  189. 保坂展人

    ○保坂委員 文芸春秋の今月号ですね、いろいろ話題を呼んでいるわけで、これはもちろん政治家についても厳しく問われなければいけないと思いますが、私が今の文脈の中で注目をいたしましたのは、この百九十二ページに、平成四年当時、大蔵省の主計局総務課長だった田谷氏に宴席の席上、仙台の防潮堤工事がおくれているという話をすると、「ちょうど宮澤内閣が景気対策として補正予算を組むところだったため、「ああ、いい話だ。担当に話をしておく」ということで、結果的に例年の倍以上の予算がついた」のでございますというところと、めくって百九十四ページになると、これはもう「さわ」とか「三嶋」という料亭で、ここに出ているだけでも五回接待を受けている、こういう事実があるのですけれども、これはいかがですか、法務省
  190. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 犯罪の成否は、あくまで検察官、また法執行に当たる捜査官が収集した証拠に基づきまして厳密に認定される事実を前提にいたしませんと、その成否を判断することはできないと考えます。そういう意味で、法務当局におきまして、具体的な事件で、ある一定の事実あるいは一定の申し立てと申しますかを前提としてその成否を論ずるということは適切でないと考えます。
  191. 保坂展人

    ○保坂委員 大蔵省、来ていただいているのでお答え願いたいのですけれども、今私の指摘した件について、これは大蔵省の信頼がここでも大きく揺らいでいるというふうに思うわけですが、これについて、この宴席はあったのか、この文芸春秋に出ている五回なら五回、こういったことを省内で調査されて、確かにあったならあったというふうに確認をしているかどうかということについてお答え願いたいと思います。
  192. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答えを申し上げます。  泉井氏が、平成四年当時に、大蔵省の主計局の総務課長であった田谷氏に、宴会の席上、仙台の防潮堤工事の話をしたという記事があることは承知しておりますけれども、田谷につきましては、既に退官している者でありますので、省内の調査として直接田谷に確認をするということはしておりません。
  193. 保坂展人

    ○保坂委員 これは在職当時のことですよね。在職、つまり退官された方がその後、別の会社でやったことじゃないわけですから、在職当時のことでなぜ調査しないのですか、理由を明らかにしてください。
  194. 渡辺博史

    渡辺説明員 既に退職した公務員に対しまして、人事当局からそのような事情聴取をするという権限があるかどうかという点についての問題であると思っております。  ただし、一方で先生のような御指摘もございますので、当時、その防波堤等の担当をしておりました主計官、主査に対して、その記事にありますように何らかの口ききあるいは陳情といったものがあったかどうかということについての聴取は行いまして、いずれもそのような形での陳情を、直接あるいは田谷から経由して受け取ったということはないという調査は行っております。
  195. 保坂展人

    ○保坂委員 田谷、中島問題で、いろいろ大蔵省からも来ていただいて調査をしておりますけれども、それゆえ、この事件がきっかけで、省内で紀律保持委員会をつくられて、十九回開催をされたというふうに聞いております。その開催の中で、新たに明らかになった不祥事、あるいは正すべき点というのは何かありましたか、お願いします。
  196. 渡辺博史

    渡辺説明員 今先生御指摘のように、平成七年三月の段階で、規律保持の徹底に努めて、もって職員に対する信頼の確保に資するためということで、官房長を委員長といたします紀律保持委員会を設置したところでございますけれども、この紀律保持委員会自体は、どのような形で綱紀の粛正を徹底するか、あるいはその場合にどのような対応の仕方があるかということについての対応を行う組織でございまして、紀律保持委員会の場で具体的に不祥事が明らかになるといったたぐいの性質のものではございません。  個別に不祥事あるいはそれに類するものが起こったということは、さまざまな形で情報として入ってまいりますので、それについては、それをそれぞれの場において受けとめて対応をしているというところでございます。
  197. 保坂展人

    ○保坂委員 四大証券、そして第一勧銀、そしてこの国会にも来ていただいた中には、みずから亡くなった方もいらっしゃるわけですね。これだけの事態の中で、第一勧銀の大蔵検査の中で接待が行われていたということが七月の末に明らかになっていますね。こういうことをどういうふうに受けとめていらっしゃるのか。まさに諸外国ではあり得ない、金融機関の検査中に接待が行われる。そして、この二人ですか、日下部前国税審議官と宮川金融検査部金融証券検査室長、二人は処分があったというのですが、具体的にどういう処分、戒告という処分だそうですけれども、これで本当に信頼回復に足るのかどうか、この点について答弁をお願いいたします。
  198. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  今御指摘ございましたように、第一勧銀に対する検査の途中、あるいは検査後でありましても、いわゆる文書において示達をするという前の段階におきまして、第一勧銀の職員と会食をともにする、あるいはゴルフを行ったということで、それはいずれも先方の負担で行われたという事実があったということを私どもとして確認いたしましたので、先般、今おっしゃったような戒告という処分を行ったところでございます。  いずれにせよ、検査というものは、銀行に対してその実情を調査して、それに伴って金融機関の健全性を審査するというものでございますから、そういうものにおいて私どもの検査が厳正にかつ公正に行われたかどうかということについては、国民の信頼を得る必要が行政活動一般についてと同じようにあるわけでございますけれども、そういう面において国民から疑念を招くようなことがあったということで、私どもとして重く受けとめて処分を行ったということでございます。
  199. 保坂展人

    ○保坂委員 じゃ、大蔵省に最後になりますけれども、こういった一連の不祥事、企業社会そのものに巣くっているやみの力、そして中央省庁の、大蔵の中にも極めて不適切な事態発生をしていたということに対して、例えば公的な調査報告、きちっと文書でかくかくしかじかであったということを作成されて、今後繰り返さないという決意がおありになるかどうか、そして現在、綱紀粛正は果たされているかどうか、この二点について伺います。
  200. 渡辺博史

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  今御指摘を受けましたような点も含めまして、過去に不祥事があったということは、私どもとしてもその影響の重大さを重く受けとめているところでございまして、そのために信頼を回復すべく省を挙げて全力を尽くしているところでございます。先ほどから先生御指摘もありましたような紀律保持委員会などの場において、日常的に繰り返し、さまざまな面での問題の注意あるいは喚起をしているところでございます。  それから、全体についてまとめて調査をし調査報告をするかという御質問に対しては、今のところ消極的に考えているところでございます。
  201. 保坂展人

    ○保坂委員 いや、これだけ重大な疑惑に対してまず襟を正すべき、つまり、企業や、総会屋はもちろんですけれども、ルールをこれから確立していこうというときに、まことに不謹慎な発言だと抗議をしておきます。きちっと調査をして、通産省でもこの泉井事件に対しては報告をつくっております。大蔵省、全然つくっていないのはおかしいので、これは強く求めたいというふうに思います。  そして、もう時間がないので、最後に法務大臣に、この間のやりとり、私の趣旨としては、襟を正すべきものはきちっと襟を正して、そして、企業の中で本当に総会屋が根づいてしまった。そしてまた暴力やおどしが、これは鉄砲と言われるような行為で一月にも百億単位で、事件性のある株と言われるTDFでありますとか東邦金属ですか、そういった株で一瞬のうちに金が動いているわけですね。これがやみの世界に吸い取られていくということにきっちり歯どめをかけようという本法案だと思いますので、法務省法務大臣としても、やはり内側でも正すべきものは正すということの決意をお聞きしたいと思います。
  202. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 それは、まず我々から襟を正さぬといかぬ問題だと思います。その上で、ひとつ今の御趣旨を体しまして積極的に推進いたします。
  203. 保坂展人

    ○保坂委員 時間が参りましたので、終わります。
  204. 笹川堯

    笹川委員長 渡辺喜美君。
  205. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 自民党の渡辺喜美でございます。  大臣には質問いたしませんので、ゆっくりお休みをいただきたいと思います。  野村証券、第一勧業銀行の、総会屋に対する利益供与事件に端を発しました一連不正行為に対しまして、我が自由民主党は、本年五月、自民党国会対策委員会の中に金融不正問題プロジェクトチームというものを設置いたしました。それを受けまして、六月、その再発防止の具体策を検討するための金融不正再発防止対策特別調査会というものをつくったわけでございます。法務省を初め大蔵省証券取引等監視委員会日本銀行、学識経験者、マスコミ、全銀協、証券業協会、預金保険機構、日弁連等々からヒアリングを七回にわたって行ったわけでございます。そして、本年八月十一日、こうしたヒアリングの結果を踏まえまして、調査報告書というものをまとめたところでございます。  その調査報告書の中で、我が自民党は、以下のような項目についての提言をいたしております。  まず第一には、企業倫理の確立。  不正防止については、これはまずもって企業の自己責任ということが大事なことであります。経営トップみずからが、厳しい倫理観のもとに、内部管理体制の構築などにより、適切な企業運営の確保を図るということが大事なことであります。  第二には、不正行為に対する企業のチェック体制を強化するということであります。  企業統治、コーポレートガバナンスの実効性を確保する観点から、例えば、社外監査役の効率的な活用等監査役というものを強化していくこと、会計監査人、例えば公認会計士または監査法人による経営監視を強化すること、取締役会のあり方、運営等を改善すること、株主総会のあり方、運営の改善、情報開示等を徹底することなどであります。  第三には、金融機関に対するより厳正で実効性のある検査、監督というものを実現していくことであります。  例えば、金融機関の内部管理体制、リスク管理体制等が適切に機能しているかをチェックするなど、検査内容を重点化していくことであります。また、外部監査人の監査結果の活用など、機動的な検査の実施であります。そして、検査等により金融機関において違法ないし不適正な事実が判明をした場合には、監督当局において厳正な対応を行うことであります。債権回収の実効性を高めるため、例えば預金保険機構の調査機能といったものを強化するとともに、関係各省庁との連絡を密にするというようなことも大事なことであります。また、整理回収銀行が回収に当たる債権につきましても、住専管理機構の持つ債権同様、預金保険機構に罰則つきの立入調査権限というものを付与すべきであるということも提言をいたしております。  第四には、的確な行政処分の執行、これが大事なことであります。  そして第五番目、罰則強化。  商法銀行法における罰則規定が非常に不十分であったというところに抑止効果を発揮し得ない一つの原因があったのではないかということで、今、国会で審議をされておりますこの商法罰則強化の提案を行ったところであります。  法務省が実に素早い対応をしてくださって、内閣提案の法律案として国会にかけていただいたこと、心から感謝を申し上げます。法務省もやればできるんだなということがよくわかったわけであります。ぜひ今後とも、このような素早い対応をあらゆる分野においてやっていただきたいというふうに思うのでございます。  そして第六に、組織犯罪対策法の制定と総会屋取り締まり強化というものも我が自民党は提言をいたしております。  例えば、犯罪収益の隠匿、収受、いわゆるマネーロンダリングというものでありますけれども、及びこういった犯罪収益による事業経営支配等の処罰、あるいは犯罪収益の没収、追徴ということをもっと法制化しなければいけないのではないか、そういうことが総会屋等の反社会的な勢力取り締まりにも非常に役立つということを提案いたしました。  また、第七に、時効の延長といったことについても検討をしていく必要がある。  第八に、金融サービス分野における法的整備というものをやっていこうという提言でございます。  そうした中で、提案の第六番目、組織犯罪対策法の制定というところで、非常に残念なことに、まだ国会で審議が行われない状況にございますが、我々としては、ぜひこの法案を、今国会において十分な審議をし、かつ、国会を通したいというふうに考えておりますが、法務当局の決意のほどについてお聞かせいただきたいと思います。
  206. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の、組織的犯罪対策に関する一連の措置に関する立案作業については、現在鋭意検討しておりまして、できるだけ早く国会において御審議いただけるように努力いたしたいと考えております。
  207. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 自民党におけるいろいろな検討の過程の中で、住専処理機構ですか、中坊社長さんにおいでをいただいてお話を聞いたことがありました。その中で中坊先生がおっしゃったことの一つに、刑法で、九十六条の二、強制執行妨害罪、それから九十六条の三、競売等妨害罪という規定がございます。それぞれ二年以下の懲役になっておるのですね。二年以下の懲役といいますと公訴時効が三年でしょうか、ということで、比較的軽い罪に属する。こうした犯罪について、刑が軽過ぎるということもあるのでしょう、どうも警察当局がなかなか捜査の腰を上げてくれないというようなことを御指摘されておられました。  こうした刑法の方の罰則強化についてはどのような検討を法務当局としてはしておられるでしょうか。
  208. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、司法手続におきまして、権利実現の実効性を担保するという観点からいたしますと、ただいま御指摘の強制執行妨害罪及び競売等妨害罪の規定を適切に適用いたしまして、厳正な科刑を得ることは非常に重要であると考えております。  従来、確かにこれらの罪の摘発は必ずしも多くなかったものと思われるのでございますが、近年、検察庁におけるこれら事件の受理は確実に増加いたしておりまして、検察また警察当局におきましても、これらの規定の適切な運用が図られつつあるものというふうに認識しております。  例えば、平成元年、二年、三年には、五十四件、十一件、三十件となっておりましたのが、平成四年には八十件、平成五年には八十九件、平成六年には二百四十三件、平成七年には二百六件、八年には四百件を超える競売等妨害事件を受理いたしております。  強制執行妨害についても、それほどではございませんけれども、着実な件数の伸びを見ている。これは恐らく、経済の実情と申しますか、それに伴うさまざまな権利の実現に関する実際の状況が背景にあるのではないかというふうに考えている次第でございます。  刑罰の法定刑を含めた見直しにつきましても、犯罪動向、実態、犯罪の及ぼす社会的な影響、そして、犯罪に対する何よりも国民的な感情等を勘案しつつ、法定刑の水準を含めて常に検討を行っているところでございまして、今後とも、委員の御指摘を踏まえまして適切に対処してまいらなければならないものと考えております。
  209. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 ぜひ法の適正な執行をお願いしたいと思います。また、立法論として、刑罰の引き上げということが必要かどうかについては、我々も積極的に検討を行ってまいりたいと考えております。  こうした一連の不祥事件を考えますときに、やはり日本におけるコーポレートガバナンス、会社はだれのものか、会社の統治はどうあるべきかということについて考えざるを得ないわけでございます。  株式会社における株式とは、企業がただでお金を調達できる便利な手段であるということでは毛頭ないわけであります。アメリカの経済学あるいは金融関係の入門書では、株式とは企業をシェアすることといった定義がなされております。企業というパイを細かく分割したものであり、株を持つということは企業の一片を保有することであるということが明快な規定として書かれているわけであります。  株式会社の目的というものは、株主利益の増進に努めることであるということが明らかなわけであります。会社経営について、例えば、従業員、債券の所有者、顧客、取引先、組合等との間で利益相反が起こった場合、原則として会社の所有者である株主の法的権利が優先されるというのは、これはアメリカの考え方であります。すべてアメリカのまねをする必要は毛頭ありませんけれども、今我々に求められているのは、国際的に通用するコーポレートガバナンスの法整備を行っていくことであろうというふうに考えるのであります。  今、二十世紀の最後の十年間に起こっておりますことは、市場経済のグローバル化ということであります。好むと好まざるとにかかわらず、日本型システムの見直しを今我々は迫られていると言っても過言ではありません。橋本内閣の六大改革あるいは日本の構造改革といったものは、まさにそういった視点が一つの大きな視座になるわけであります。  昨年の十月に、日経新聞がおもしろい意識調査をいたしました。我が国経営者の意識調査、「会社は誰のものか」というものであります。  株主のものであると答えた人は全体の七.三%、会社は顧客のものであると答えた人は全体の一・七%、会社は従業員のものであると答えた人は全体の一・一%、一番多かったのが、株主、従業員、顧客とのバランスをよく考えるという極めて優等生的な答えでありますが、これが八六.五%でございました。  株主というのは英語ではシェアホルダーと言います。利害関係人というのはステークホルダー、こう言うわけでありますが、日本の経営者の場合には、株主よりはむしろステークホルダー、利害関係人を重視するという姿勢が非常によくあらわれた調査結果であろうというふうに思います。  こうした意識の背景には、株式持ち合いという慣行が我が国でとられていることが非常に大きな要因ではなかろうかと思います。会社の取引相手というのが同時に株主でもあるわけでありまして、間接金融に重点を置いた日本型のシステムでは、メーンバンクの影響というものが非常に強大になっているわけであります。そして、このメーンバンク自身もまた五%以内において株主であるという事実があるわけであります。  しかしながら、今こうした株式持ち合い制度というものがいや応なしに崩れつつございます。こういうやり方ではまずいのだということよりは、むしろ、背に腹はかえられないという状況に置かれた持ち合いの解消、株の売り切りといったことが今現実に進行をいたしております。日本では、残念ながら個人株主の比率というのは年々低下をいたしております。これは、早い話が、直接金融市場というか、資本市場というものを育てることに実は失敗してきたということが大きな理由であろうというふうに私は思います。  そこで、最近、物を言う株主として登場しつつあるのがいわゆる機関投資家であります。下手をすれば、倒産をしてしまったということになれば、これは株式自体が紙くずになってしまうわけでありますから、これはただごとではありません。ある厚生年金基金、これは日本の話でありますが、制度上、厚生年金基金というのは、議決権行使ということについて直接指示を出すことはできません。そこで、この厚生年金基金は、使っている信託銀行に対して、ある不祥事を起こした企業株主総会でなぜ白紙委任状を出したのか、それぞれ個別に説明を求めるということを決めたそうであります。  これから、こうした機関投資家が相当ふえていくということが考えられるわけであります。企業に直接経営改善を働きかけないと、自分自分の首を絞めてしまうということになりかねないからであります。機関投資家というのは膨大な株式を保有しておりますから、もうこの会社は嫌だといって自分のところの株を売り出せば株価の下落を招いてしまうという事情が背景にあるからであります。  いずれにいたしましても、株式会社というものは株主のものであるというコーポレートガバナンスの思想というものは、市場経済のグローバル化の中で避けて通れない問題になりつつございます。  自民党の商法に関する小委員会において、本年の九月八日でありますが、コーポレート・ガバナンスに関する商法改正試案骨子というものを明らかにいたしました。一つには、「監査役の独立性の確保」、これは太田試案と言ってもいいかと思います。また、「株主代表訴訟の見直し」、これは保岡試案と言ってもよろしいかと思います。その中で、もう時間が迫っておりますので詳しくは申し上げませんけれども、幾つかの原則を打ち出しております。  原則の第一は、  株式会社株主のものであって、株式会社の主権者は株主とする。  株式会社は、株主利益を最大にするように統治されなければならない。原則の第二、  株主は、株主総会を通じ、株主利益を最大化するように経営の意思決定権限を取締役会に委任し、取締役会は意思決定の執行を経営の執行責任者に委任する。  原則の第三、  株主は、株主総会を通じ、経営の意思決定とその執行が株主利益を最大化するために行われているかどうかを監視し牽制する権限を監査役会に委任する。  取締役又は執行役員の忠実義務違反とは、株主利益の最大化以外の目的のために、取締役  の意思決定又は執行責任者の執行が行われた事実を言う。  株主は、株主総会を通じ、取締役及び執行責任者の「忠実義務違反」を監視し牽制する責任と権限を監査役会に委任する。原則の第四、  株主は、株主総会を通じ、取締役等に対する個人株主の訴訟の妥当性に関する一定の判断権及び提案権を監査役会に委ねる。というものでございます。  また、「株主代表訴訟の見直し」、これは我々は改正であるというふうに考えております。これが改悪だという御批判は全く当たらないというふうに思います。  改正に当たっての原則のみを申し上げます。  株主代表訴訟がコーポレート・ガバナンスの重要な手段であることに鑑み、その機能を減殺させないことを大前提とする。  日本経済の国際化にあたっては、経営者の積極的な挑戦や活力が不可欠であるため、株主代表訴訟が制度の目的を越えて必要以上に経営マインドを萎縮させる要素について改善する。  法律に明文化されていないため、判例が分かれたり、一般に解釈が明確でない事項について、これを法的に明確にし、株主代表訴訟制度の法的安定性を確保する等、制度の機能を高める。ということを原則にしておるわけでございます。  こうした我々の提案については、来年の通常国会を目途に法律として国会を通したいというふうに考えておりますが、法務省における検討状況あるいは御意見等がございましたらお承りをさせていただきたいと思います。
  210. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今先生御説明いただきましたとおり、自民党の法務部会商法に関する小委員会において、九月八日に改正試案骨子というものが作成されたということは私ども承知しておりますし、私どもにその配付を受けましたので、現在その内容について検討を行っているところであります。また、学者、有識者等の意見を徴するということも行っておりますので、こうした検討中であるということから、その内容に対する法務省の意見を述べるとしうことは差し控えさせていただきたいと思っております。
  211. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 いずれにしても、今、時代のスピードというものは、我々の想像を絶する速さで流れております。手をこまねいて見ているわけにはまいりません。ぜひとも、法務省におかれましても、そういう認識を持って対応していただきたいというふうに考えるものであります。  また、市場経済のグローバル化、こういう問題は、世界的な規模でリストラが行われている。リストラというものは、首切りだけが能ではありません。例えば新規事業への進出といった前向きの意味もあるわけであります。  そうした中で、さきの通常国会におきまして、持ち株会社の解禁というものが行われました。この大競争時代の中で、旧態依然たる業界慣行に縛られたり、政府規制による保護を求めたりしていたのでは、これはだめでありまして、そのような企業行動をとっているうちに日本企業の体力というものは極めて脆弱なものとなっていってしまうというふうに思います。  日本企業の売上高経常利益率あるいはROE、株主資本利益率というものが、欧米の企業と比べて極めて劣悪であるという現実がございます。例えば、資金量だけは世界で群を抜いているにもかかわらず、格付は途上国並みあるいはそれ以下であるといった日本の一流銀行の姿は、まさにその典型例でございます。  したがって、ありとあらゆる経営資源というものを有効に活用していくための柔軟な企業行動がとれる法整備を行うために、持ち株会社の解禁というものを行ったわけでございます。  そうした中で、銀行については、銀行持ち株会社の創設のための特例法というものが今国会で審議される予定になっております。  いわゆる抜け殻方式というものは、根抵当権の譲渡については債務者の承諾が必要だというようなバリアがありまして、非常に使い勝手が悪いということで、いわゆる三角合併というものをイメージした中身になっておるわけであります。これは銀行のみの特例でありまして、一般事業会社あるいは保険業、証券業等は利用できないものでございます。また、一時的に実体のない幽霊銀行というような代物をつくる必要があり、手続が非常に迂遠であり、かつ技巧的な手法なんですね。  そこで、もっと端的に、使い勝手のいい制度にするには、株式交換制度、こういったものを導入すべきではないかと考えるのでありますが、法務省の御見解を承らせていただきたいと思います。
  212. 森脇勝

    ○森脇政府委員 持ち株会社解禁に伴います株式交換制度の導入という問題は、これは持ち株会社の設立方法に関する問題でございます。  持ち株会社につきましては、この設立の問題だけではなくて、持ち株会社及びその子会社株主、債権者等、利害関係者の保護の問題、これは、親子会社法制のあり方の問題と言ってもいいわけでございますが、こういった問題があるわけでございます。  法務省といたしましては、年内にはこの二つの問題について法制審において検討に着手していただくことといたしておるところでございます。
  213. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 年内に着手するということは、結論はいつごろ出てくるのですか。
  214. 森脇勝

    ○森脇政府委員 まだ確定しているわけではございませんが、立法を最近の社会のテンポに合わせてやっていかなければならないということを考慮いたしますと、半年程度で問題点を洗い出す、そして、中間報告的なものをした上で、さらに半年あるいは一年程度の法制審議会の審議期間というペースになろうかというふうに考えております。
  215. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 結局、二年かかるということなんですね、今のお答えは。こんなスピードで、移り変わる時代に、二年もとてもじゃないが待てないよということであろうと思います。余りにも時間がかかるのであれば、我々はまた立法府において独自の判断をしていかなければならぬというふうに考えます。  また、会社分割の規定については、いまだこれは未整備なんですね。この会社分割の規定の創設についてはいかがですか。
  216. 森脇勝

    ○森脇政府委員 この問題は、当初、会社分割法制というのと合併法制というのはいわば表裏の関係にあるわけでございますが、合併法制につきましては、平成九年の通常国会において、その簡素合理化のための法改正をしていただいたところでございます。  なお、会社の分割法制に関しましては、現行法のもとでも、営業譲渡、現物出資等の方法により行うことができるものでございまして、これに加えて新たに制度の創設をする必要があるのかどうか、実務界のニーズはどうかといった点についても、新たな合併法制の運用の実情にも配慮しながら今後とも検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  217. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 会社分割というのは、いわば会社全体の株主が、個別の事業部毎に株主に転嫁することを意味しておるわけでありますから、コーポレートガバナンスもより強く働くというふうに考えられるわけでございます。我々は、こうした問題についても、法務省がなかなか結論を出さぬというのであれば、独自に行動してまいりたいというふうに考えます。  それから、債権の流動化ということは金融ビッグバンの中で非常に大事な話でございます。  債権譲渡の対抗要件の簡素化について、これは民法四百六十七条の問題でありますが、この対抗要件の簡素化についての検討状況を説明願います。
  218. 森脇勝

    ○森脇政府委員 この問題につきましては、政府の規制緩和推進計画においても取り上げられているところでございまして、法務省といたしましては、民法の特例を定めるという形で、次期通常国会に提出すべく、現在その作業を行っておるところでございます。
  219. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 次期通常国会ですね。大変結構な話だと思います。これは国策でやろうとしているわけでありますから、ぜひ国策にのっとった検討をしていただきたいというふうに思います。  次に、法務省所管の法律であります借地借家法の改正問題でありますが、我が自民党におきまして、定期借家権等に関する特別調査会というものをつくり、今、積極的にこの制度創設について検討をしているところであります。法務省にも入っていただいて、手前みそはすべて明かしながらやっているわけでありますけれども、何か御感想あるいは御意見があればお承りをしたいと思います。
  220. 森脇勝

    ○森脇政府委員 この定期借家権を含む借地借家等に関する問題につきましては、私ども民事局内に研究会をつくりまして、本年六月に中間報告を取りまとめて意見照会をしたというところでございます。現在、その意見照会に対して寄せられた意見を取りまとめ中というところでございます。  一方、自由民主党の方の特別調査会において、これについて非常に速いペースで検討が進められておるということは十分承知しておるところでございます。
  221. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、この定期借家権の問題は、第一に戦時立法の中で行われた改正を、今の時代に合わせた法整備をやる、いわばそのイデオロギー的な変換をやるということが一つであります。  第二には、正当事由といった規制を設ける結果、良質の借地借家が供給されなくなってしまったという厳然たる事実があるわけでありまして、良質な借家の供給のためにはぜひとも法整備が必要である。第三点は、この金融ビッグバンの中で不動産の証券化といったものをやっていくときに、不動産の利回りは、いわゆるキャピタルゲインではなく、インカムゲインというものを基本に考えていひなければならないわけでありまして、どうしても、そういった観点から、この定期借家権の創設は必要であるというふうに我々は考えているところであります。  この問題につきましても、我々は、来年三月をめどに通常国会に法案を提出したいというふうに考えておりますので、法務省におかれましてもそのつもりで対応していただきたいというふうに思うわけであります。  今、我が自民党の中で、司法制度改革という問題につきまして検討を開始したところであります。政治においては政治改革というものを、選挙制度改革が主でありますが、行ったわけであります。また、行政においては、橋本六大改革の中で行政改革について積極的な推進を今行っておるところであります。唯一、司法制度のみが手つかずで残ってしまうということでは、日本の構造改革の中で非常に均衡を失することになっていくわけでございます。  この司法制度改革について、まだまるっきり答えはなかろうと思いますけれども、大まかな意気込みというか、そういったことがあれば法務当局のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  222. 山崎潮

    ○山崎(潮)政府委員 お答え申し上げます。  規制緩和を初めといたしますさまざまな改革が推進されていくのに伴いまして、社会経済活動の円滑かつ公正を確保するために、司法の場において各種の法的紛争を適正かつ迅速に解決するとともに、さまざまな形態の違法行為に適切に対処していく必要はますます高まっておるものと思われます。  司法はこのような社会の要請に十分にこたえるものでなければならず、司法の機能をより一層充実強化を図っていくために、法務当局といたしましては、今後とも、国民的見地に立ってこの問題について適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  223. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 我が自民党は、今述べましたように、積極的に立法府の機能を果たすべく具体的な提案をしているところであります。どうぞ、今私が申し上げた種々の提案につきましては、野党の皆様方におかれましても、十分な検討をされ、賛成いただくようお願いを申し上げる次第であります。  以上、質問を終わります。
  224. 笹川堯

    笹川委員長 渡辺博道君。
  225. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 自由民主党の渡辺博道でございます。最後の質疑をさせていただきます。  法務大臣におかれましては、早朝から本当に御苦労さまでございます。  実は質問を三十数項目、私は用意してあったわけでございますが、前質疑者からほとんど質問されてしまいました。したがいまして、これから質問する内容はかなりダブる面があろうかと思いますが、ひとつその辺は御了解いただきまして、懇切丁寧に答弁を願いたいというふうに思っております。  私は、この問題が起きるまでにいろいろと新聞をとらさせていただきました。そうすると、最近だけでこの程度の厚さになりますが、ことし一年間ですと持ち切れないので持ってきませんでしたが、その中に、ほとんどの紙面は、法人のいわゆる不正行為または倒産、こういったものが見出しに躍っているわけです。  ちなみに言いますと、きょうの新聞でありますが、「野村証券 特殊法人に接待攻勢」、それから、「阪和銀元頭取ら逮捕」とか「三洋証券 会社更生法申請」とか、常にそういう形で国民の目にさらされておる現状があります。  こういった中で、一体、国民の皆さんが企業に対してどのような意識を持っているのか、これを真剣に考えなければいけないというふうに思っているわけであります。特に、本年に入りましては、大手銀行証券会社を初めとします業界の本当に代表的な企業が、いわゆる総会屋との関係においていろいろな事件が明るみに出されました。これは先ほども質問の中にありましたけれども、こういった総会屋とのかかわりは外国等には例がないというお話でありました。この外国等には例がない日本の特殊事情、これをやはり解明していかなければならないというふうに思います。  会社との癒着会社とのもたれ、持ちつ持たれつの関係を形成し、会社からいわゆる総会屋に流れるお金、先ほど正確なお金は述べられておりませんでしたが、かなりの額が流れているというふうに聞いております。しかも、この資金は暴力団の資金源となっているというふうにも聞いておるわけでありますが、こうした企業総会屋の結びつき、これは一般国民の企業への不信を募らせるまさに一因ではないかというふうに思うわけであります。  さらには、国際的に見ましても、今申しましたように、株主に対する責任というものがほとんど果たされず、利益供与不正行為の隠ぺいなど、平然と法律違反を繰り返す企業社会世界から孤立するということは全く疑う余地はありません。特に証券金融業界においては、多くの一般投資家や外国人投資家、これは日本のなれ合いの体質、癒着の構造、頻発する金融スキャンダルに嫌気を差して、日本のマーケットから離れていくという話も聞いております。  私は、現在の日本経済の危機の根幹はまさにこういったところにあるのではないかというふうに思っております。総会屋との関係を絶つことは、会社の自主的な経営コントロール手段として重要な株主総会の復権化を図ること、このためにも絶対必要であると思います。それと同時に、日本株式会社に対する信頼感をつなぐためにも欠くことのできない措置であるというふうに思っております。  そこで、初めに大臣にお伺いいたします。  本法案提出に当たりまして、いわゆる総会屋企業との関係に対する基本的な認識並びに本法案成立にかける意気込みをお聞かせいただきたいと存じます。
  226. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 日本は、先進国ということで、特にアジアの中におきます役割というのは大変重要でございます。ところが、その日本企業、なかんずく今問題になっておりますような金融関係を中心とする大企業総会屋によってその中枢まで揺さぶられているといいますか、というふうなことは、国際的には、何だ先進国だと思ってもそういうふうなものかというふうな認識を持たれているのではないかと思います。甚だ遺憾なことだと思うのです。そういうふうなこと等も踏まえまして、今申し上げましたような罰則強化を中心とする商法改正をお願いいたしているわけでございます。  朝ほどからいろいろ御議論いただきました。なかなか難しい問題もたくさんございますけれども、そういうふうなことはもう今さら言っておれないわけでございます。それから、具体的にいろいろなまた御教示を各委員からもいただきました。私も十分深く受けとめたいと思います。  そういうふうなことでございまして、とにかく、日本企業経営者意識改革を中心としまして、総会屋根絶し、そして、健全な経済社会の確立というふうなことに一生懸命努力してまいりたい、このように思います。
  227. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 確かに大臣のおっしゃるように、かつては、経済は一流、政治は三流とかいうふうに言われておりましたが、まさにこの経済のあり方は、もう三流どころではなくて四流、五流になっているのじゃないかというふうに思います。こういった現状を踏まえていくならば、やはり総会屋との根絶を図る、これはもう喫緊の課題であるということは、朝からの質疑もお伺いさせていただきましたが、まさに共通の認識であるというふうに思っております。  そうした中で、細かい点になりますけれども、いま一度、この条文に関しての理解をさせていただきたいというふうに存ずるわけであります。  その前提は、やはり総会屋に対する現状認識ということでありますが、これについては、先般、質疑の中にありました。暴力団の数とか総会屋の数、そういった関係についてもお話がありましたが、その手口についてもすべてお話しになりまして、わかっておるわけでございますが、実は、検挙事例についてちょっとお伺いしたいわけであります。  総会屋との関係を有する企業というのはごく一部にすぎないというふうに思うわけでありますが、現在、法人の数というのは、この資料の中にございますけれども、現存会社数が全部で百二十二万二千ですか、そのうち上場企業は、一部で千三百二十六社、二部で四百七十三社、店頭で八百二十四社という形になっておりますが、その中の本当にごく一部であるということを信じたいわけであります。でも、代表的な企業総会屋癒着して、そして利益供与している、こういった現実がありますと、さらに小さな企業であってもそういったところにかかわっているのじゃないかというふうに推測されるわけであります。そうしますと、この総会屋に対する不法行為を把握することというのは非常に困難であるのではないかというふうに思うわけであります。  こうした企業総会屋関係をより効果的に把握するためにはどのようにしているのか、それについてお伺いしたいと思います。
  228. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、企業の数は膨大なものがございます。その中で、現在摘発が続いているような事案を考えますと、そのような事態はかなり深く進行しているのではないかという考え方が一部あるわけでございますけれども、実際にそれを把握していくということは大変難しい側面も持つわけでございます。  ただ、私ども、伝わってくる、いろいろなことで情報として入ってくるところによりますと、従来、いわゆる総務部担当者につきまして、企業側行為者として特定されまして、それについて法執行が行われたということがございましたけれども、このたび一連事件、特に銀行あるいは大証券会社につきまして、企業のいわばトップにまで刑事責任が追及されているということは、つまり、企業側を含めた幅広い一連社会の中で大変強く受けとめられているというふうに伺っております。  そういう点で、これを網羅的に把握していく、網羅的に検挙していくということは大変難しゅろございます。犯罪はすべてそういう面があるの下ございますが、また、社会のコストといたしましても、これをすべて明らかにしていくという点下は大変難しい面があります。私どもといたしましては、このような事例の摘発を通じまして、その問題点をできるだけつまびらかにして、そのことをまた参考にして、そして一般の企業の方々がこのような事態から抜け出していくということを輪く期待し、また、そのように望んでいるというのが実情でございます。
  229. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 確かに、大変多くの企業の数でございますので、全体把握というのは大変困難だと思います。そういった意味では、代表的な企業徹底的にやることによって、それより下の企業が見習ってきちんとした形になるのではないかということも考えられなくはないと思います。  次に移ります。  現在、商法改正問題というのは、罰則の引き上げとそれから要求罪新設というものがありますが、ここで改めて商法四百九十四条の意義を問うてみたいと思うわけであります。  これは昭和十三年という戦前の設置でありますけれども、その後、戦後、五十六年まで改正されなかった事案であります。したがいまして、企業としては、まさに企業の中の根底として、不正の請託、この意味合いに対する考え方が、本来であれば不正の請託がなければ問題ないのだという意識が根底にあるのではないかというふうに思うわけであります。  そこで、この四百九十四条の不正の請託が要件となっているがために適用しにくい規定となっているという現状があるようでございますけれども、この不正の請託が構成要件とされたその経緯、これについてお伺いしたいと思います。
  230. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  昭和十三年の商法改正のときに、御指摘の四百九十四条が新設されたものでございます。政府の原案におきましては、四百九十四条につきまして、株主権等の行使に関して「賄賂ヲ収受シ、」ということになっていたのでございますが、貴族院の審議の過程におきまして、「賄賂ヲ収受シ、」という部分が「不正ノ請託ヲ受ケ財産上ノ利益ヲ収受シ、」という表現に修正されたものというふうに承知いたしております。  当初の政府原案で、公務員の収賄罪は不正の請託の有無にかかわらずわいろを受ければ成立するのでございますが、会社の役員の職務の適正を確保し、会社荒らしを十分取り締まる等のためには、会社の重役等についても同じように考えてもよいのではないかと考えられたようでございます。  これに対しまして、貴族院の審議におきましては、公務員の場合とは異なりまして、民間の会社関係者の場合には、財産上の利益を得ましても、正しい職務行為権利行使をしている限りはこれを罰するのはおかしいのではないか、また、条文の新設に当たっていきなり会社の重役等を公務員並みに扱うことは急激な変化ではないか等の議論がなされた由でございまして、結局、不正行為をするという前提要件がある場合にだけ処罰すれば足りることとされ、本条に不正の請託の要件が取り入れられたものと承知しております。
  231. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 不正の請託については、最高裁の判例がありますね。昭和四十四年十月二十二日の決定であります。この最高裁の判例があることによって、この判例では、いわゆる協力型総会屋であっても、会社役員らがこれを利用することは場合によっては犯罪になることが明らかになったというふうに言っています。だから、要するに、不正の請託、いわゆる不正をやらせなくても、これはこの該当要件にするという意味だと思うのですが、ちょっと理解が間違っていますか。
  232. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 御指摘のように解されると存じます。
  233. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 そうしますと、一審では、総会屋と総会荒らしを区別し、会社役員が議事進行の円滑を図るため、いわゆる協力型総会屋に金を贈っても不正の請託とは言えないという解釈を示して、商法違反については被告人らを無罪としたという下級審があるわけですね。  そうしますと、最高裁の中で、こういった不正の請託に対する解釈が本来だったら浸透するはずであります。でも、これが浸透すれば今日のような利益供与の罪というのは起こらないのじゃないかなというふうに思うのですが、その根底には、私はやはり、一審における、あくまでも総会荒らしというふうに区別した考え方が昭和五十六年までずっと生きていたのじゃないかなというふうにちょっと解釈しているわけです。  その後、昭和五十六年に改正されたとしても、その改正した結果がどれだけ企業者または国民に周知して徹底したか、この部分一つの問題点ではないかというふうに思うわけです。先ほど来の議論の中にもありますが、附帯決議で周知徹底を図るというような話があったわけですが、本来、周知徹底がされればこういったことも変わっていくというふうに思うわけでありますけれども、その辺がやはり国として不十分だったのじゃないかなという感じがしてなりません。  この点について、新たに五十六年に商法改正しました利益供与罪、これの背景、それについても若干教えていただきたいと思うわけであります。
  234. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 確かに、四百九十四条の不正の請託につきましては、会社の側から、つまり会社の役職員の方から、いわゆる総会屋と申しますか、そういう立場の人物に不正の請託をする、そして株主権の行使の適正を害するようなことになるということを構成要件といたしておりますので、実際問題として、そのような立証というのは極めて難しいという点があろうかと思います。刑事事件でございますので、証拠に基づいてそこを立証し切るということが、関係者の供述をあわせましてもなかなか難しいという面がある。一方では、いわゆる総会屋というような人物が相当いて、そのことによって会社の財産から相当な支出がなされているという実情があったために先般の改正が行われて、そのような状況が認められなくても、利益の供与をする、株主権の行使に関して利益が収受されましたら、それについて新しく罰則をもって制裁するということになったものと考えています。
  235. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 そうしますと、私は、逆に言うと、商法四百九十七条を新設することによって利益供与受供与罪等が整備されている現在ですけれども、この四百九十四条の存在意義というものをもう一度確認させていただきたいと思うのです。
  236. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 先ほども申し上げましたように、四百九十四条の方は、会社の役職員の方から総会屋に不正の請託をいたしまして株主権等の行使の適正を害するということを構成要件として考えておりますので、そのような事態も実際は予想されるわけでございまして、そういう場合には四百九十四条を適用する。そして四百九十七条の利益供与よりも重く処罰して、株主権等の適正な行使を確保するという必要性は依然として認められるというのが根拠であろうと思われます。
  237. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 時間が迫りますので、次に移ります。新たに設定します利益供与要求罪についてお伺いしたいと思います。  この利益供与要求罪、まさに要求した段階で罪になるということだと思うのですが、いろいろと今お伺いして、その趣旨や背景についてもわかったわけでございますけれども、「株主ノ権利ノ行使ニ関シ」ということを要件としていますけれども、供与を受ける側、これは株主であることが要件でしょうか。
  238. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 現行の四百九十七条二項の利益受供与罪は、その規定上、供与を受ける者を株主には限定しておりません。したがいまして、株主の権利の行使に関して、会社の計算において供与される利益であることを認識いたしまして、その利益を受けた以上、その者が株主ではなくて他人の株主権の行使に関して利益の供与を受けた場合でございましても受供与罪は成立するものというふうに解されているのでございます。  これと同様に、本改正新設する四百九十七条三項の利益供与要求罪につきましても、その主体を限定しておりません。株主でない者でございましても、他の株主の権利の行使に関して、会社の計算において利益を供与することを要求した場合は利益供与要求罪は成立するというふうに考えられます。  具体的には、例えば、株主でない、いわゆる総会屋が、株主である他の総会屋株主総会において会社経営陣の経営上の事情等を暴露しようとしていることを告げまして、これをやめさせる見返りとして財産上の利益要求するような場合が想定されるわけでございます。
  239. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 株主である必要はないということはわかりましたけれども、この要求の意義については、もう少し詳しく教えていただきたいのですが。
  240. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  ここで使われております要求とは、刑法上のわいろの要求罪と同様でございまして、相手方に対して、趣旨を認識し得る状態において財産上の利益の供与を求める意思表示をすることを意味いたします。若干ごたごたして申しわけございませんが、その趣旨が客観的に明らかでございましたら、それが直接的であろうと間接的であろうと、また、明示ないし黙示の異同を問わないということでございます。
  241. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 商法の四百九十三条の第二項には、「前項ノ利益ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者」というふうに書いてあります。同じように、この要求罪についても申し込み罪や約束罪を設けなかった、その理由は何かあるのでしょうか。
  242. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 要求罪を新しく設けさせていただく趣旨は、いわゆる総会屋利益供与要求する行為を、それ自体として独立して処罰することといたしまして、総会屋に対する制裁を強化するとともに、これによりまして、会社関係者利益供与要求を受けたその段階におきまして捜査当局に対して犯罪の届け出をすることを可能にする、そして、その早期かつ効果的な摘発を図ることにあるわけでございます。  一方で、会社側の申し込み行為や、双方で約束行為処罰の対象にしたといたしましても、要求段階で総会屋の摘発を可能とすること以上に、事犯の早期摘発や、会社総会屋癒着関係排除に資するところは少ないと考えられます。また、約束罪を設けますと、約束をした会社側が通報するということへのインセンティブは失われるおそれがあると考えられたわけでございます。  したがいまして、要求罪以外に、あえて申し込みでありますとか約束という構成要件を設ける必要はなく、また、相当ではないと考えられたわけでございます。
  243. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 やはり総会屋根絶するためには、要求だけでは私は不十分であるというふうに思っているのですね。それは、当然、要求を受けた取締役は、その事実を捜査機関に通報しなければ、これは事実として犯罪が成立しないわけですね。したがって、私は、基本的には通報義務ないし告発義務を設けた方がいいのじゃないかというふうに感じているわけですが、この点についてお伺いします。
  244. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 この点も若干繰り返しのようになるかと存じますが、お尋ねでございますので、お答えさせていただきたいと思います。  我が国の現行法上では、私人、プライベートの人物に犯罪の告発義務を課した規定はなく、ただ、実際に通報義務等を課したものといたしましては、爆発物取締罰則でございますとか、サリン等による人身被害の防止に関する法律等によります告知あるいは通報義務があるのでございますが、これらはいずれも、不特定多数人の生命、身体を害するおそれがある危険なもの、毒物、また災害等に係る公共の危険に関連するものでございまして、いわゆる総会屋根絶が現下の重要課題であることを考慮いたしましても、直ちに私人にそういう要求があったことを通報することを義務づけるということは相当ではないと考えられたものでございます。  実際には、総会屋対策に関する政府全体の働きかけと、官民あわせた総会屋排除運動が展開されているところでございまして、要求罪新設に加えてこのような動きがあることによって、あえて通報等義務を法定しなくても、いわゆる総会屋による犯罪を有効に摘発し得ると考えられております。  一般的に、そのような多数の犯罪類型の中で、ある種の行為要求を受けた、そのことが犯罪になる場合に、そのことをもって直ちに通報する義務を定めるということにつきましては、いろいろな角度から検討しなければならない面もあろうかと思われまして、直ちにそのような義務を課することは相当ではないであろうというふうに考えられたわけでございます。
  245. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 基本的には、生命や財産、生命や身体、こういったものに直接かかわるものについては、サリンの問題や爆発物、それに限定されているというお話でありますけれども、一私人という感覚ではなく、日本が、まさに独自の総会屋という存在があるわけでして、国際的に見て極めて異例な存在である。これは金融政策上も国際的な信用を失墜するための大きな要因になるのじゃないかというふうに思うわけですね。  そうすると、やはり今こういう形で根絶しない限り、今回の法改正根絶しない限り、次の法改正ではなかなかできないというふうに思うわけですよ。であれば、より実効あらしめる方法として、一つ要求に対して通報する義務化をすることの方が、私は逆に言うと適切に執行できるのじゃないかなというふうに思うわけです。これは見解の相違ですので、改めて御意見はお伺いしません。  そこで、ちょっと観点を変えまして、この商法改正というのは、商法上、会社といいますと、株式会社だけではなく、有限会社、合資会社、合名会社、あるいは銀行なんかにおいても株式会社や相互会社というのがあるわけですね。これらについてこの法文の適用はありやなしや、また、罰則強化、ほかの部分で、特に銀行関係について、相互会社、こういったものについての罰則強化というのは考えているのかどうか、それについてお伺いします。
  246. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今回、改正法が適用されるのは株式会社に限られるわけでございます。それ下は、同じ商法上の会社でありながら、合名会社、合資会社あるいは商法の特別法であります有限会社、これらについてはどうなるのかという問題でございます。  これらの会社はいずれも、ある意味で閉鎖的な会社でございまして、その会社の持ち分を譲渡するには、他の社員あるいは社員総会の承認といったような条件が入っております。そういたしますと、自由に譲渡することができない。その結果、部外者が入り込んできて、いわゆる総会屋的な行動をするという場面は非常に限られて、偶然のような場合だろうというふうに考えられます。  また、そういう会社については、現に総会屋のいわば被害といいますか、そういうものがあるということも聞いておらないところでございまして、今回の改正からはこれは必要ないのではないかということで、株式会社以外の会社には適用されないこととしたということでございます。  それから、保険会社の相互会社、これについては商法の適用がありません。したがいまして、この部分につきましては、今回の商法改正案に合わせて保険業法を改正して、相互会社についても商法と同様の罰則強化を図る、そういう内容の法律案、これは大蔵省の所管でございますが、本国会に提出されているというふうに承知しているところでございます。
  247. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 次に、具体的な提供で若干疑問点がありますので、その辺のことについてお伺いしたいと思います。企業においては、各株主に対して、株主優待制度ということで、無料。ハスやそのほか割引のチケットとか、こういったものが配付されております。そしてまた、総会出席をしたときに、お土産ということで株主にお土産なんかを出します。また、大株主については、中元、歳暮に何らかのものを贈与するというような事例があると思いますが、こういった場合、利益供与罪の適用についてはどうなるのか、お伺いします。
  248. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる株主優待制度と申しますのは、一般には、会社がサービス、興行、観光、販売業等を営むような場合に、一定数以上の自社株を所有している方に、通常の顧客に対する価格より一定割合での値引き等の優遇をするような制度をいうものとされております。これらは、本来、一定数以上の株主でございますれば、だれでも利用できるという制度でございまして、株主たる地位そのものに対して与えられる利益でございます。  また、会社といたしましても、会社の売り上げ、利益を向上させる一手段としての団体割引や社員割引等の他の割引制度と同様に、一面において、販売促進のための営業活動として実施しているものも認められるようでございます。  四百九十七条に言う「株主ノ権利ノ行使二関シ」とは、株主の権利の行使あるいは不行使に対する対価の趣旨をいうものと解されておりますので、ただいま申し上げたような株主優待制度については、株主を公平に扱うものでございますれば、株主の権利の行使に関して利益を供与あるいはその供与を受けたとは認められず、この利益供与受供与罪、また要求罪の問題は生じないものと考えられます。  ただし、優待株主数を著しく大きくいたしまして、ごく少数の大株主が優待を受けられるようにいたしましたり、特定の総会屋のみが優待を受けられるような特殊な優待条件を設けまして、株式数と無関係に恣意的な優待をするなどいたしまして、特定または少数の株主の権利の行使に関して利益供与をすることのいわば潜脱手段として株主優待制度が利用される場合も考えられるのでございますが、そのような場合には四百九十七条の罪が成立する余地はあると考えます。
  249. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 いろいろな適用でこれから具体的な事例が積み重なっていくと思いますけれども。  実は、先ほども申しました、昭和五十六年の商法改正を行ったにもかかわらず、総会屋利益供与を行う企業が後を絶たない、こういった一連事件検挙されていることに対して先ほどから御答弁をいただいたわけでございますけれども、私は、こうした事案を繰り返さないために法の周知徹底というものが一番大事だと思うのですが、今回、商法改正が成立して、その後、どういう形で周知徹底を図るのか、特に警察においても各企業にどのように指導していくのか、これを具体的にお話しいただきたいと思います。
  250. 玉造敏夫

    玉造説明員 利益供与要求罪新設を初めとします今回の商法改正につきましては、企業から不正に利益を求めます総会屋等活動抑止という面におきまして相当な効果が見込まれるというふうに考えております。とりわけ利益供与要求罪の規定につきましては、企業側総会屋等への毅然たる姿勢と相まてば大きな効果を発揮するものだというふうに考えております。  その意味でも、警察といたしましては、今回の改正案が成立いたしました際には、各種の機会をとらえまして、企業に対して改正法の内容につきまして周知徹底を図るとともに、総会屋等への毅然たる姿勢の堅持、そして、総会屋等から利益供与要求等の働きかけがあった場合の警察への通報、さらに捜査への協力といったものについて強力に訴えてまいりたいと思っております。
  251. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 法務省といたしましても、ただいま警察当局から御答弁申し上げましたとおり、政府全体の中の役割を分担する、そして官民一体となってこういう事態に対処するということで、独自にもまた広報活動を行うほか、各業界を所管しております省庁や取り締まりの第一線に当たる警察当局の協力も得ながら、罰則強化の趣旨、また内容の周知徹底に努めてまいりたいと思います。
  252. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 まさに法律というのは施行されただけでは意味がないわけでありまして、それを国民にいかに周知させるか、これが大事な問題だというふうに思います。  最後になりますが、大臣にお伺いします。  こういった法の罰則強化並びに要求罪新設、こういった法律が制定されることによって本当に総会屋根絶できるかどうか、または、もっとほかの法整備が必要なのかどうか、この辺を踏まえて、お話を最後にお願いしたいと思います。
  253. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 答弁がダブるかもしれませんが、総括的に御答弁いたしたいと思います。  今回の罰則強化はいわゆる総会屋根絶のために相当の効果を発揮するものと考えておりますが、他方、これまでも罰則があったにもかかわらずこの種の事案が後を絶たなかったことにかんがみますと、その違法性を十分に知りながら総会屋癒着し、利益供与を行う会社の側、そこに、その幹部意識に大きな問題があったこともまた事実であり、会社幹部意識改革が図られる必要があると考えております。  会社側総会屋との間で利益の授受が行われ、双方がこの事実を隠ぺいしようとする場合、捜査当局としては犯罪捜査の端緒を得て摘発することが極めて困難でありますので、今回の法案では、こうした観点から利益供与要求する罪を新しく設けて、会社側がいわゆる総会屋から不当な要求を受けた段階でこれを捜査当局に届け出て、その処罰を求めることができるようにしておりますが、これによって、会社側総会屋に対して毅然たる対応をとることも容易になると考えられます。  もちろん罰則強化だけではなお十分ではございませんが、このような罰則強化会社幹部意識改革とが両々相まって、総会屋活動根絶し得るものと考えております。
  254. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 終わります。ありがとうございました。
  255. 笹川堯

    笹川委員長 次回は、来る七日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十四分散会