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鈴木(淑)
委員 ペイオフはしないといったって、この
銀行は破綻しそうだと思ったら、預金を引き出しに行きますよ。だって、あれは元本しか保証しないんですから。利息は入らない。それから、最終的には元本だけ払い戻してもらうにしても、ひとまずシャッターが閉まつちゃったり行列になったりするかもしれないと思って、そういうのは嫌ですから、だからどうしたって、うわさが立ったらじりじりと預金の流出は起きるわけですね。
けれ
ども、もし債務超過でなくてそういうことが起きているのであれば、これは
日本銀行のレンダー・オブ・ラスト・リゾートの機能で流動性危機は乗り切れるわけですよ。そしてインソルベンシーだったときに限り、その後で厄介なことは起きるわけですね。
山口局長、それから
大蔵大臣にもお聞きいただきたいのですが、この前、私は問題を整理して、こういう言い方をしました。
銀行が破綻したとき、二段階の選択肢があります。第一段階の選択肢というのは、これを救済するのか、整理するのかという選択肢があります。二段階目は、整理するとなったときに、解散しちゃうのか、それとも不良債権を引き取って健全な部分を受け皿
銀行に継承させるのか、いわゆるPアンドAですね。そういう二段階の選択肢があるんですよということを言いました。
そして、最初の選択肢、救済するのか整理するのかということの基準について、アメリカではこういう変遷があったということを申し上げましたね。
最初は一九三三年の、大恐慌の後ですよ。このときは、やはり救済しないと大変だということで、RFCが積極的に劣後債や優先株なんかを買って、どんどん資金援助をして救う形が多いんですね。けれ
ども、これはちょっとモラルハザードを呼ぶし、他の産業との間で不公平過ぎるじゃないかという話になってきて、戦後は、そんな救済をどんどんやつちゃいけないよ、原則はやはり整理だねということになってくる。
けれ
ども、自己責任原則でやっているんだから原則は整理だ、他産業だってそうやって整理されているんだから整理なんだが、しかしツー・ビッグ・ツー・フェールというのがあるじゃないかといって出てきたのが、コンチネンタル・イリノイのときですね。それで大きな
銀行はやはり地域あるいは分野、今まさにおっしゃった言葉ですよ。地域あるいは分野で支障を来すから、大きな
銀行はこれは自己責任と言っていられないから救済するのかなというのが、コンチネンタル・イリノイのとき出てきた。
しかし、それもやはり大
銀行の間のモラルハザードを生むじゃないか、また他の産業との間で不公平じゃないかということで、最終的に一九九一年にできたFDICIA、連邦預金保険公社改善法では、これはツー・ビッグ・ツー・フェール原理も原則的にだめだ、これはモラルハザードが出過ぎる、大
銀行だけ優遇して不公平だ、最終的にたどり着いたのがシステミックリスク原理ですよ。システミックリスクがある場合に限り、システミックリスクを救う手段としてやむを得ないから経営を救済することも許されるというふうになってきた。
それからもう
一つこのときに出てきたのが、さっき局長が言われた継承
銀行を見つけてPアンドAでいくかという話ですね。それで、さっき僕は、山口局長、大変正直におっしゃったなと思って聞いていたのは、阪和
銀行で懲りたんですね。あれは本当に大変だったと思います。御苦労されたことは私もよく知っている。阪和
銀行はPアンドAができなかった。受け皿
銀行が出てこない。僕は、
大蔵当局は大変苦労されたと思います。お取引先が押しかけてきたりなんかしたんでしょう。これは大変だったというのはよくわかります。
しかし、アメリカの場合にこれをどういうふうに処理しているかというと、整理することに決まった場合に、解散しちゃうのと、何とか受け皿
銀行へくっつけるのと、ここの選択は御
承知のようにコストテストでいくわけですね。どっちが社会的コストが低いだろうということでやるわけです。コストテストをやると、多くの場合、PアンドAの方が社会的コストが低いのですね。それは山口さんが言われたとおりですよ。受け皿
銀行があると社会的コストが低い。それはなぜかというと、
最大の理由として
指摘されているのは、単なる優良な資産・負債だけじゃなくて営業権を伴うので、その分高く売れる。ということは、その分、社会的コストが低くなる、処理コストが低くなってくるのですね。そんなこともあって、本当はそれはPアンドAの方がいいに決まっているのです。
しかし、山口局長、阪和で、なぜ受け皿
銀行が出てこなかったか、なぜ資産・負債を引き取るところが出てこなかったか。これは理由があるわけですよ。あの資産・負債、一見健全だけれ
ども、どの
銀行もあれを引き取ったがらなかったのは、あの背後にいる顧客関係を全部知っているから。あの顧客までしょい込んでしまったら大変だと思っているから。そういうときは、コストテストをしたら、あれはやはりPアンドAの方がコストが高いねということになってしまうのだと思いますよ。
ほかのケース、それはもう拓銀の場合なんというのは、あれは相当営業権がついていますから、北洋
銀行にしてみれば、三番目の昔の相互
銀行ですから、あの店舗も一緒にもらえるのかということで、当然苦しいこともあることはわかっているが、受け皿
銀行として受けて立ったというふうに思いますね。
だから、行政当局として、受け皿方式、PアンドAがいいというのは、お気持ちはよくわかるし、それは出てくればそうだと思うのですよ。だけれ
ども、出てこないときは
それなりの理由があるのです。だれも欲しくないと言っているのです。今、この激しい時代、特に大阪なんていうのはたくさん
金融機関があるのですよ。たくさん
金融機関があるのに受け皿
銀行が出てこないというのは、
経済の中にその理由がある、あるいはそのバックのお客さんの中にその理由があるのだと思いますよ。だから、それに逆らってまで行政介入で、破綻
銀行二つ、それも資金援助で悪いところを引き取って、自己資本比率が上がり、不良債権比率が下がり、
株価が上がるという非常にいい格好をつくってまで、それも行政裁量でですよ、選んでやるという必要はないのだと思います。
何度も言いますけれ
ども、それは行政当局としてはつらいですよ、その受け皿
銀行がないケースは。だけれ
ども、それが
経済の論理だとすれば、これは受けとめなければいけないと思いますよ。そこのところがちょっと違うんじゃないのということを申し上げておきます。どうぞ。