○矢島
参考人 このような貴重な場に
日本レコード商業組合も
参考人としてお招きにあずかりまして、深く感謝しております。
私は、
乙骨さんの後でございますから、同じ
業界の者として一部話が重なるところがあるかもわかりませんが、できるだけお店の立場に立ちましてお話を申し上げたいと思います。
申すまでもないことですが、今まで、この
著作物の
再販制度をどの舞台で御論議いただいてきたかということでございますが、いわゆる
行政改革委員会規制緩和小委員会、また
公正取引委員会の私的
研究機関としての
政府規制等と
競争政策に関する
研究会、略して規制研と言われております。この二つの舞台が、恐らく事務当局の相互の連携を持ちながらの運営だろうと思うのでございますが、
検討してまいったわけであります。
私
どもといたしましては、平成三年度におきまして、先ほど
乙骨参考人も触れたかもわかりませんが、規制研のもとにある金子小
委員会あるいは金子小
委員会の報告を受けての
公正取引委員会のレコード
業界に対する
実態報告書、こういうものをめぐりまして、レコード産業にとりましては
再販問題に洗われてきた経過がございます。
スケジュールどおりに、
行革委の方も総理大臣に報告書をまとめる段階、また、規制研も公取の事務局に報告書を出す段階、こうなったわけでございますが、その段階になってのそれぞれの御議論あるいは仄聞するところの報告書の原案というものについて、いろいろ目を通してみたり話を聞いてみますと、とにかく平成三年以来の
原則廃止という立場に立って一切の作業が流れてきておる。
途中において、私
ども、声を大にいたしまして、それぞれの
委員構成といいますか、あるいは参与構成といいますか、どういう基準で選ばれておるのか。もちろん、
競争政策を得意とする先生方も入るのは当然でありましょう。ですが、
文化という領域を取り扱う
研究会において、我々サイドにとってみますと、音楽について明るい知識、見識を持った有識者、少なくともそういう方々の代表が何人かは入って議論が展開されることが公平ではないか。
競争政策のみに偏って論ずる問題ではないはずだ。言葉をかえますと、文部省、
文化庁の
文化政策の領域に入るテーマが多過ぎる。そうでありながら、そうではない
競争政策にかかわる役所が作業を全面的に進める。アンバランス過ぎるではないか。
私
どもは、こういうことについて、ずっと不満といいますか、要望を述べてまいったのでございますが、とうとうしまいまで、私
どもの
業界の代表は、有識者としての代表といたしましても規制研にも一人も取り入れられることができませんでした。
そういう
状況で流れを追ってみますと、とにかく当初から、外国にはレコードの
再販制度は一つもない。それからもう一つ、経済規制は全部外すべきなのだ。最近は、社会的規制については、一部存在証明ができれば残してもいい、こういうようなことを
行革委小
委員会の参与の皆さんはおっしゃっている方がおられるようでございますが、我々にとっては遺憾ながら、おまえたちレコード産業は
再販制度で残るべき社会的規制としての価値を持っていないというような
結論づけがなされようとしております。
しかも、この間のこの論理に関しまして、私
どもは、後ほどお述べ申し上げますけれ
ども、いろいろな具体的な見解で、
再販制度のもとにおけるレコード産業の
消費者サービスのすばらしさ、このことを強調しておるのでございますが、一切聞きおくだけでございまして、それに対する反論といいますか、御教示といいますか、君たちはこう言うけれ
どもこうではないかという、その我々の提起した
実態報告に対して何ら具体的な論議がなされない、こういう
状況であります。
行政改革委員会の方は、一度の公開討論がありました。これも、私
どもが強く要望した結果、おまえたちも呼んでやろう、こういう流れで持たれたものであります。
公正取引委員会にも同じように強くお願いいたしました。私
ども、これは他の
著作物産業と同じ扱いを受けることで大変感謝しておりますが、二度ほどヒアリングにお招きにあずかりました。そして、規制研の方は、先生方御存じのとおりに、できるだけ公平な
研究をしてほしいという願いが多少通じまして、ことしの二月に新しく若干名の
研究会員が加わられました。その結果、以前の規制研の論議よりは
相当程度多面的な御議論がいただけているような形で、私
どもは
公正取引委員会御当局には希望をつなぐところがあるわけでございます。
そして、とにかく一刀両断のもとに、外国に例がない、そして残るべき価値のない社会的規制である、そしてどうこうという論議の根本は、とにかく
文化政策というものについての意義を、
著作物の
再販制度は私
どもは
文化政策の領域だと思っておるのでございますが、この辺に関しての認識を一切切り捨てておるわけでございます。
競争政策の領域のみですべてが決められるというふうにお考えの方が
中心であるということだろうと思います。
その背景には、
著作物と一般消費財との相違に関しまして素直な御認識がいただけていない。私
どもはいろいろな観点から述べておるのでございますが、ノー回答であります。つまり、我々の説明では
著作物と一般消費財との差は認めないということだろう、こんなふうに判断せざるを得ません。
次に、
再販が存続するために重要なチェックポイントが幾つかあると思います。私
どもは、そのポイントについて御見解を述べさせていただきます。
まず、我々の
著作物というのは、お客様の好みが多様でございます。そうしますと、その多様な趣味にどれだけ
商品を通じて対応ができているかということがまず一番最初に必要なことだろうと思います。言いかえますと、多種多様な
商品が
再販制度のない国と比べて提供されているかどうかということであります。
いろいろな
機会に申し上げているとおりに、人口が
日本は
アメリカの半分であります。
アメリカは多民族国家であります。本来、いろいろな
文化があるわけであります。その
アメリカと比べまして、
日本は毎年三倍の新しい音楽を
商品として提供ができておるのでございます。これが我々が
再販によって期待されることにこたえておるということの一つの証明だろうと思います。
それから、これは言い方をかえますと、多種多様な才能が、レコードを通じて自分の才能を世に問えることを保障しているというふうに御理解がいただけるのではないか。多種多様な才能という場合には、レコードをつくるには作詞家が要ります、作曲家が必要です、それから実演家が必要であります。その方々の活動の舞台というものを
世界に例がないくらい
日本の
再販制度は保障している、こういう解釈は解釈のし過ぎではないと信ずるところであります。
なお、この見解は、本日お見えではありませんが、
日本音楽著作権協会及び芸能実演家団体の集まりでありますいわゆる芸団協、そちらの組織の公式見解でもございます。
次に、こうは申しましても、
価格がどうかという問題がございます。私
どもは、いろいろな
データで証明されておりますとおりに、
価格問題についても国内において
優等生である。外国における
価格の比較においても、その国の
購買力平価であるとか為替相場であるとか、そういうものを考慮すればするほど、
日本のレコード
価格についてとかく御批判をいただくような
現状はない、かように考えております。
なお、
競争が
業界で活発に行われておるかということでございますが、私
どもは、メーカーにおいても
販売業界においても極めて熾烈な
競争が展開されております。
再販制度の上にあぐらをかいた、ぬるま湯の中で
消費者に御負担をかげながらのうのうと過ごすような
業界ではございません。これについては、時間の関係もありますので、御質問等がありましたら、
参考人として具体的に触れさせていただきたいと思います。
それから、私
どもの
業界は現在一万八千軒のCDを扱うスポットがございます。そのうち八千軒が専門店と言われるものでございます。もしも
再販が外れたらどうなるか。一物一価で
全国民がどこに住もうとも音楽
文化財
商品を楽しむということがまず困難になることが一つであります。これは
文化国家として重大な問題だと思います。
それから、御存じのとおり、
日本は年々オーバーストア、オーバーフロアの傾向であります。大店舗法の運用があのように変わってまいりました。消費の全体需要が伸びないのに、それにもかかわらず、どんどん大規模資本によって開発されて小売サービス業の面積がふえております。そういう
状況の中で、若者をどう取り込むかということが大型商業施設の基本的な
競争のポイントでございます。
再販制度が外れますと、若い方々を取り込むために、CD売り場については
利益なしでもいい、そのかわり若者を取り込めということが大型
流通資本において展開されますことは、火を見るより明らかであります。そうなりますと、専門店は規模の大小を問わずに、専門
商品を売って
企業を
維持しなくてはなりません、到底
競争が成り立ちません。その結果、専門店のサービスを
地域のいかんを問わず徐々に失うようなことになって、
消費者は不便を受けるだろうと思います。また、専門店がだんだん力を失うということはどういうことになるかというと、アーティスト等についてもいろいろな作品が世に問えなくなることだろう、こういうふうに思います。
一つ、
再販制度というのは、
流通業界から見ますと、仕入れた元本がメーカーによって保証される。そして、売りにくくても、これを
地域の人に聞いてもらおうという勇気を持って仕入れができる。それが多種
多様性を支えておるわけでございますが、
再販がなくなれば、その構造が全く否定されて、売れ筋に偏った、大衆が一時的に夢中になるものでレコード店が構成されるような、またメーカーもそういうものしかつくれなくなるような
時代になってしまうのではないかと懸念しております。
なお、
アメリカにおいて私が懸念するような
現状があるかどうかでございますが、
アメリカはもうまさにそういう
状況になってしまいまして、一般の専門店は、全米を代表するようなチェーンストアにおきましても、大型家電あるいは本屋さん、大型の家具屋さん、そういう方々が、
アメリカは不動産
コストが安いですから安く売り場がつくれる、そういうことで客寄せのためにCDを異業種の方が扱って、めちゃくちゃな
競争になりまして、その結果専門店が、全米を代表するような大手に関しましても会社更生法の適用を受けるような局面に経営上なっております。
なお、
アメリカの
価格でございますが、
日本のレコード
販売業界はわずか二五、六%の粗利で頑張っております。大変なことなのです。
商品在庫は年間四回転も回転いたしません。要するに、在庫の回転率掛ける粗
利益率ということで出てくる数字が小売業のやりやすいか、やりにくいかの経営判断の基本的指標でございます。交差比率と申します。これが一〇〇にも届かないという
状況が我々の
業界であります。小売
業界はそれだけのマージンしかメーカーからいただかずに頑張っている。
アメリカはどうであるか。希望
小売価格で売りますと、三八%のマージンが得られる値づけになっております。
アメリカは何も全部値引き
販売しているわけではありません。大都市圏において、
発売後一定期間、値引き
販売は確かにあります。ですが、それを過ぎましたら希望
小売価格で売られるのが通例であります。また、新譜の段階から三八%の粗利を得ながら
定価販売、希望
小売価格販売をなすような
業者もたくさんありますし、
地域によってもまた差があります。要するに、
アメリカ人は一物一価でなくてレコードを買っておるのであります。この辺の
データは公取さんの
調査データでも証明されておるところであります。
何を言いたいかというと、我々は
再販の上にあぐらをかいていない、そのことについてはっきり御理解をちょうだいしたいと思います。
それから、行政改革小
委員会の参与の先生方は、中小レコード店がつぶれるのは、そんなものは
時代の流れだ、今はそんなものは保護する
時代ではない、つぶれたら所得の再分配で、つまり税金から社会保障政策として生活を面倒見てもらえ、こういう見解をとっております。
私
どもは、
努力をしない
業者が営業の継続が困難になるのを何とかしてくれとは言っておりません。一生懸命
努力しても、先はどのようなからくりで経営が困難になる専門店、またその専門店のサービスを失う
消費者の立場をどう考えるのかという問いかけをしておるのでございます。
中小
企業基本法ということがこのごろ余り言われなくなりました。ですが、最後には昭和五十八年に法八〇号として成立しておる中小
企業基本法がございます。この精神というものを行政改革委の小
委員会の参与の先生方はどう考えるのか。こんな法律は
廃止すべきだという考えなのか。だとするならば、ついでにそういう主張をしてもらいたい。私
どもは、中小
企業基本法の精神を生かしながら、やはり
日本人みんながハッピーにその仕事に励むことで生活ができるということを
流通業界についても御配慮いただくべきではないか、かように信じておるところでございます。
最後になりますが、規制緩和を目途として方針が決まったのは平成七年三月の閣議決定でございました。そのときの目標に、「①
消費者の多様なニーズに対応した選択の幅の拡大、内外
価格差の縮小等により、
国民生活の質の向上を目指す、②内需の拡大や輸入の促進、事業
機会の拡大等を図り、対外経済摩擦の解消等に資する、」こういうことを目標にするということで閣議決定を見たと私
どもは承知しております。
私
どもの産業は、この①、②のポイントに関しまして、十分過ぎるぐらい貢献をしておると自負しております。外国の
流通資本との間にも私
ども何のトラブルも起こしておりません。メーカーにおいても同じでございます。それから、豊かな選択肢、つまり多種多様な
商品が供給できているということは、まさにこの閣議決定の目標に沿う現実でございます。
どうかひとつ、一部の学識経験者のおっしゃるように何でもかんでも有効な社会的制度まで規制の中に入れてしまって、規制は全部外すべきだという、こういう暴論、そこつな議論で
日本の将来を決めてもらっては困る。
日本の
文化を守っていただきたい。
実は、先生方に最後にお願いがあります。例えば歌謡曲であるとか童謡であるとか、民謡も含めまして、伝統芸能の
世界、こういうものはたくさんは売れませんけれ
ども、
日本の守っていただかなくてはならぬ
文化領域だと思います。今の
再販のもとにおきましても、この
文化領域は、レコードの
世界では今マイナー化しておるのでございます。
再販が外れましたら、先ほど述べたような論理で、お店はこれを一生懸命仕入れる危険を冒さなくなります。つまり、
日本人のアイデンティティーを形成するような
文化財領域の
商品が、一番先に消えていくというおそれがあるということであります。
私
どもは
アメリカのいいところを学ぶべきだと思います。
文化も
アメリカの
文化をどんどん取り入れていいと思います。ですが、ロックミュージックだけの音楽になっていいのでありましょうか。私
どもはやはり
日本人としての誇りを持ちたい。
それから、外国に例がない制度だから、
アメリカに例がないからということで
廃止を論ずるという姿勢そのものも、先生方に是か非か御
検討いただきたい。
大変長くなりましたが、そこつな説明で恐縮です。四番バッターでございますので、原稿に基づかずに話しましたので、お許しをいただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)