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1997-10-21 第141回国会 衆議院 財政構造改革の推進等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月二十一日(火曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 佐田玄一郎君    理事 白川 勝彦君 理事 中山 成彬君    理事 野田 聖子君 理事 北側 一雄君    理事 中井  洽君 理事 海江田万里君    理事 児玉 健次君       浅野 勝人君    稲垣 実男君       江渡 聡徳君    小野 晋也君       大石 秀政君    大島 理森君       大野 松茂君    木村 隆秀君       小林 多門君    佐藤  勉君       桜田 義孝君    実川 幸夫君       下村 博文君    新藤 義孝君       園田 修光君    田中 和徳君       竹本 直一君    谷畑  孝君       西川 公也君    能勢 和子君       穂積 良行君    目片  信君       持永 和見君   吉田左エ門君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       安倍 基雄君    一川 保夫君       太田 昭宏君    岡田 克也君       河合 正智君    久保 哲司君       鈴木 淑夫君    田端 正広君       谷口 隆義君    中野  清君       西川 知雄君    西田  猛君       原口 一博君    松浪健四郎君       山本 孝史君    池田 元久君       石毛 鍈子君    生方 幸夫君       五島 正規君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    秋葉 忠利君       濱田 健一君    粟屋 敏信君       上田 清司君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 三塚  博君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      阪田 雅裕君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛庁人事教育 坂野  興君         局長         防衛庁装備局長 鴇田 勝彦君         防衛施設庁建設         部長      熊谷 悟朗君         放映施設庁労務         部長      柳澤 協二君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房審議官   興  直孝君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君         環境庁企画調整         局長      田中 健次君         環境庁水質保全         局長      渡辺 好明君         法務省民事局長 森脇  勝君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    朝海 和夫君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      雨宮  忠君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         厚生省保険局長 高木 俊明君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         農林水産大臣官         房総務審議官  石原  葵君         農林水産省経済         局長      熊澤 英昭君         農林水産省構造         改善局長    山本  徹君         農林水産省農産         園芸局長    高木  賢君         水産庁長官   嶌田 道夫君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         運輸省鉄道局長 小幡 政人君         郵政大臣官房総         務審議官    濱田 弘二君         郵政省通信政策         局長      木村  勉君         郵政省電機通信         局長      谷  公士君         郵政省放送行政         局長      品川 萬里君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    小鷲  茂君         建設省建設経済         局長      五十嵐健之君         建設省河川局長 尾田 栄章君         建設省道路局長 佐藤 信彦君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         財政構造改革の         推進等に関する         室長      大西  勉君 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   佐藤  勉君     園田 修光君   実川 幸夫君     渡辺 博道君   津島 雄二君     大島 理森君   中野 正志君     能勢 和子君   西川 公也君     大石 秀政君   渡辺 喜美君     新藤 義孝君   安倍 基雄君     松浪健四郎君   赤松 正雄君     河合 正智君   左藤  恵君     久保 哲司君   原口 一博君     鈴木 淑夫君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     西川 公也君   大島 理森君     津島 雄二君   新藤 義孝君     渡辺 喜美君   園田 修光君     佐藤  勉君   能勢 和子君    吉田左エ門君   渡辺 博道君     実川 幸夫君   河合 正智君     赤松 正雄君   久保 哲司君     西田  猛君   鈴木 淑夫君     原口 一博君   松浪健四郎君     山本 孝史君 同日  辞任         補欠選任  吉田左エ門君     江渡 聡徳君   西田  猛君     左藤  恵君   山本 孝史君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     下村 博文君 同日  辞任         補欠選任   下村 博文君     中野 正志君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出第一号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の一部変更について承認を求めるの件  (内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 中川秀直

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法案及び漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の一部変更について承認を求めるの件の両案件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
  3. 浅野勝人

    浅野委員 総理は叙勲の内麦でここにおいでになりませんが、手を抜くことなく厳しく迫りますので、閣僚の先生方におかれましては、どなたも内閣総理大臣のお立場になって真剣にお答えをいただきますよう、お願いを申し上げておきます。  財政構造改革法案は、お役所に任せるのではなくて、政治主導のトップダウンで決めて、改革中身を立法化して実行を担保するという新しい手法に踏み込んだことは評価したいと存じます。恐らく、歳出カットを事細かく法制化して財政赤字を著しく改善したアメリカのOBRAにあやかろうとしたものと思われますが、果たして柳の下に二匹目のドジョウがいるか、問題は中身です。  申すまでもなく国の財政は、一般会計特別会計財投地方財政の四本柱で構成されておりますから、いわばオール・ジャパンで、六年後の二〇〇三までに国と地方財政赤字を、GDPとの比率で現在の五・四%からEU並みの三%以下に持っていかなければなりません。  それなのに、この法案は主として、主にですけれども、一般会計の当初予算にキャップをかけて抑えるだけという色合いが濃いのは否めません。問題の多い特別会計、国のいわば第二予算である財政投融資計画地方財政については、ぼやっと書いてはありますけれども、それらとどんな決意で取り組もうとしているのか触れていませんので、具体的なイメージがわいてこない、全体像が見えてこないんです。三%という高いハードルを跳び越えるんだというほとばしるものが伝わってこない。  大蔵大臣、いかがですか。
  4. 三塚博

    三塚国務大臣 ほとばしるものが見えてこないと言われますと、極めて残念であります。半歳余にわたる財政構造改革の連続した検討を行いまして、六月に、財政構造改革推進についてという本法の基本になりました枠組みを閣議了解をいたし、そして次期国会にこれを提出するということで臨時会提出をさせていただいております。政府の側のPRが、また推進についての意気込みが、また我々の意気込みがいまいちだつたということであれば、その批判警告として受けとめまして、今後に対応をしてまいります。  そして、一般会計当初予算についてだけでと、ほかはどうなっておるんだという指摘でございますが、基本方針の中に、官と民、国と地方役割分担を見直す、特別会計を含むすべての歳出分野を対象として改革推進する、聖域なき全体の見直し、こういうことにさせていただきました。概算要求一般会計だけではございませんで、特別会計財投の問題についても、財投については預託を廃止するという、この方向基本的に受けとめるべきだと私は思っておりますから、その財投の問題についても、入りと出の問題について真剣な分析と検討を取り進めております。  これを仕上げますためには、与党各位のさらなるサポートが必要であります。同時に、国家的な行事でございますから、各政党の御批判、御警告は喜んで承ってまいります。最終的には、この国家危機をともに乗り越えるための格段の御鞭撻をお願いを申し上げます。
  5. 浅野勝人

    浅野委員 では、経済企画庁長官に伺いますが、この三%の前提となっている経済成長率を三・五%と想定しているわけですけれども、今後六年間に平均三・五%の経済成長が本当に予測できますか。
  6. 尾身幸次

    尾身国務大臣 財政構造改革を進める中で中長期的に適切な経済成長を確保するためには、民間部門中心経済活動を活発化いたしまして、規制緩和を初めとする経済構造改革を進め、そのことによって財政再建経済発展を両立させていくことが必要であるというふうに考えている次第でございます。  本日、自民党の方でも経済対策をまとめると聞いておりますが、私どもといたしましても、総理の指示を受けまして、内閣として、民間活力中心とする経済構造改革を進めていきたいと考えている次第でございます。  自民党の方の内容も十分しっかりと受けとめて対策を進めていきたいと考えておりますが、大きく分けまして、先ほど来から申し上げておりますとおり、一つは、経済活動が国際的に展開をされてくるという状況の中で、企業が国を選ぶという時代になりました。日本という国が、日本企業や外国の企業経済活動拠点として、あるいは事業活動拠点として選ばれるような経済基盤事業基盤をつくる必要がある。そのためにも、法人課税の問題あるいは有価証券取引税の問題あるいは連結納税制度の問題等々、そういう体制整備を進めていく必要がある、これが第一点であります。  それから二つ目は、まだ何と申しましてもバブル後の不良債権処理が完全に終わっておりませんで、これが大きなしこりとなって経済発展を阻害しているというのも事実でございまして、このしこりを取るということをやらなければいけない。そのためには、土地流動化土地有効利用、そういう方向に行かなければいけないと思っている次第でございまして、本年の初めに、土地問題につきましては、いわゆる地価抑制から土地有効利用という方向政策転換をしたわけでございますが、しかし、現実の経済政策の面では、必ずしもまだそれが全部できているというふうに考えておりません。  土地関係の税制の見直しも含め、規制緩和も含めまして、土地有効利用を促進して経済活動を活性化する。それからまた同時に、不良債権処理を実質的に進めていく。今までは、銀行の帳簿のつけかえで損失として落としているというようなことでございましたが、担保不動産はそのまま残っているということで、経済生産力としてまだ活用されていないという状況でございますから、そういう点の活用を図っていくということを二つ目に考えているわけでございます。  それからもう一つは、規制緩和でございまして、自民党の方にもその点、かなり大きな緩和が盛り込まれていると聞いておりますが、私ども、それを受けまして、場合によってはさらに一層それを推し進めるということも含めまして、電気通信分野あるいは農用地、あるいは都市部における土地有効利用を図るという方向を打ち出していきたい。それからまた、社会福祉の面にも民間企業活動を入れるような方向も出していく、そういう中で民間活力を使って経済を活性化する、そういう方向を出していきたいというふうに考えている次第でございます。  このような規制緩和を初めといたします経済構造改革を強力に進めることによりまして、中長期的な経済発展基盤を構築するというふうに考えておりまして、今、経済計画期間の中で、GDP成長率を実質三%、名目三・五%というふうに見込んでいるわけでありますけれども、中長期的にはこういう成長率を実現をしていきたい、そして、財政再建経済構造改革あるいは景気対策を両立するようなことにしていきたいと考えている次第でございます。  ちなみに申し上げますが、経済企画庁試算によりますと、規制緩和などの経済構造改革を進めることによりまして、それ自体生産性の向上とか新規需要の創出がございまして、GDPを、この規制緩和等によりまして年率で〇・九%ぐらいは押し上げる効果があるというふうな試算もございますので、そういう政策をしっかりと進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  7. 浅野勝人

    浅野委員 金目でどんな規模になるか、小学生にできる単純計算をしてみますと、GDPが五百十兆円、現在の財政赤字は二十八兆円ですから、五・四%に当たります。これを三%相当の十五兆円余りにするわけですから、二十八引く十五で、十三兆円縮減する必要があるという答えになります。この種の単純計算というのは意外とばかになりません。不思議なことに、さまざまな変動する要素や数値を加味してコンピューター処理した、例えば大蔵省財政事情試算とそれほど変わらないものであります。  この規模を考えてみますと、尾身大臣、どうですか、経済見通しからも、この全体の規模からも、三%は過大ではないかという感じはお持ちになりませんか。いかがでしょう。
  8. 尾身幸次

    尾身国務大臣 財政構造改革の中で歳出縮減を図るということ自体は、経済デフレ効果をもたらすことは確かでございます。  しかし、そういう中で、私ども、先ほど申しました各種の対策をとりまして民間活力を生かしていく、そして、戦後五十年たちましていわば制度疲労した日本的経済システム改革をして、新しいベンチャーを起こし、新しい事業機会をつくり上げる、そういうことによりまして、先ほど来の成長達成していくべく全力を尽くしてまいりたいと考えている次第でございます。
  9. 浅野勝人

    浅野委員 そのときの春先、赤字国債は発行しないと明言したのに、急速に景気が悪化して、秋には三兆九千億円の特例公債を発行せざるを得なくなり、臨時国会でその手当てをした後、鈴木善幸総理公約をたがえた責任をとって退陣されました。退陣した鈴木総理に、当時のマンスフィールド駐日大使が、ヒストリー・ウイル・ビー・カインドネス・フォー・ユー、歴史はいずれあなたにほほ笑むでしょうと言ったのを聞いて、私は感動したのを覚えております。建設大臣がそのとき内閣官房長官おいでになりました。  三%は、この法案の根幹です。すべてが三%に凝縮されております。その意味では、単なる目標というだけではなくて、これを達成できなかった場合には法律に違反したという結果になる重い数字です。内閣が拘束されるのは当然のことですが、与野党を超えて、政治の力量が問われる数字でもあります。人々に潤いとゆとりを与え、生き生きとした経済活動を持続させていくためには、何としてもやり遂げなければならない、とうとい数字です。それだけに、正直のところ、私はいささかの懸念を感じます。  大蔵大臣、このまま一二でよろしいですか。
  10. 三塚博

    三塚国務大臣 御案内のとおり、法律にその目標を明示をいたしております。同時に、赤字公債依存財政体質からの脱却、具体的に、三%、六年後達成、こういうことでありますので、一般会計におきましてそれが象徴的に出てまいります。コア・バジェットと呼ばれる一般会計でありますので、平成十五年までには、前段申し上げましたように、この公約が実現されるようにしていかなければなりませんし、政党公約というよりも、法律を御認定いただくべくお願いを申し上げております。  これが国会において承認をいただきますと、まさに浅野議員指摘のように、その責任、山と海よりも深く重い、こうなりますので、このことに前進をしていかなければなりませんし、集中三年初年度平成年度予算でありますので、国民各位の深い理解を求めるべく、全力を尽くしてそのような予算達成をしていくということで、具体的に数字を最終的に上げていかなければなりません。今、その作業に入っておるところであります。
  11. 浅野勝人

    浅野委員 この法案が立法化している個別の数値目標は、各年度の当初予算に主として限られています。その後、補正手当てをすればどうにでもなるという抜け道があります。これは既に多くの同僚議員指摘をしています。その抜け道について、法案は何も書いていません。すべて承知の上で、熟慮を重ねた結果、抜け道をあえて残した判断を私は是としたいと存じます。大切なことは、高度の政治判断により、良識ある節度調和です。ゆめゆめ乱用することは許されません。  私の地元のある農協が、かんきつ、ミカンですね、ハウスミカンを選別する日本一の総合出荷場事業費ベース十九億円でつくることになりまして、建物は当初予算で予定どおり完成したのですが、機械を補正予算八億円余りを当て込んで購入することになっているものですから、入れ物はできたけれども、中身のない倉庫のような状態になっております。ウルグアイ・ラウンド対策は、補正を当て込んでやることが約束された形でこれまで運用されてきたものですから、恐らく、似たようなケースが全国あちこちで起きているのではないかと想像をされます。  そこで、ウルグアイ・ラウンド対策予算のうち、公共事業についてただしておきたいと存じます。  既に、期間を二年延長した上、公共事業と非公共事業との比率見直しによって、単年度公共事業費は従来の半分程度に縮減される結果となっています。これは、国費ベースでいいますとおよそ千五百億円に当たります。農水省は十年度の当初予算で二百ないし三百億円程度要求をするつもりと聞いていますから、もしその腹づもりであるということになりますと、早急に千二百ないし千三百億円程度補正予算を組まない限り、ウルグアイ・ラウンド縮減計画さえ実現できないということになります。  農林水産大臣決意を確かめておきます。
  12. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策は、農業の将来展望を切り開くための必要不可欠な事業として決定されたものでありまして、その着実な推進が必要であると認識しております。このため、これまでも本対策につきましては、本対策の趣旨、緊急性を踏まえまして、各年度予算補正を含む所要額を計上し、適切に対応してきたところであります。  本年度におきましても、本対策効果ある推進が図られますよう、追加補正措置検討も含め、万全を期してまいる必要がある、こう認識しております。  いずれにいたしましても、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策は、これに係る経費の取り扱いについては事業内容見直しとあわせて予算編成過程検討することとされておりますので、今後財政当局と鋭意調整を進めてまいりたい、こう考えております。
  13. 浅野勝人

    浅野委員 ここは財政当局役所にゆだねる判断ではありません。大物政治家の決断、大蔵大臣の出番です。
  14. 三塚博

    三塚国務大臣 もう議員おわかりのとおり、財政法先ほど節度調和ということがございましたが、当初予算において一年の歳出を見積もり、これに取り組んでまいる、こういうことであります。財政法二十九条の原則に照らしながら厳正に対処をしてまいりますのが私の立場であり、また本内閣財政運営の基本であろう、このように思っております。
  15. 浅野勝人

    浅野委員 いわく言いがたい御答弁ではありますけれども、その心はおおむね予測がつきまして、見当がつきまして、さすがという判断をさせていただいておきます。  個別の課題となりますと、ただしておきたいテーマぞろいですが、最大の難関が法案の中に入っておりません。超大物が続きますけれども、この超大物は国鉄債務の処理をどうするかであります。  あらかじめJRがしょった負担分を除いた債務が二十八兆円ですから、半端な数字じゃありません。このうち五兆円は跡地や株の売却で埋められるそうですが、残りの二十三兆円は、どんな形になるにせよ、結局は国民にツケが回ってくるということになります。何でも金利だけで一兆円近く要るというそうですから大変なことで、運輸省の試算だと毎年一兆五千億円くらい要るとか聞いておりますが、この問題をどう処理するか、年内に基本方針を固めないと予算編成が難航するおそれもあって、十年度の当初予算を二千億円縮減したいという、言ってみればささやかな、この数字から見たらささやかな、財政改革法案などすっ飛んでしまうおそれさえあるわけであります。  運輸大臣、どう処理するお考えですか。
  16. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  委員御承知のことと存じますけれども、この国鉄の長期債務というのは、いろいろな経緯がございましたけれども、ここでは申し上げませんが、もはやこれを先送りすることはできない状況でございます。昨年の十二月の閣議決定におきまして、今委員から御質問の中にもございましたように、この本格的な処理を十年度から実施する、ついては本年中にその具体的な処理方策を決定すべきであるという閣議決定に基づきまして、我々鋭意その努力をいたしているところであります。現在、政府・与党で構成されております財政構造改革会議の中に企画委員会というのがございまして、そこを中心として、また、与党でもこの点につきましての検討が今続けられておるわけであります。  お話ございましたように、大変な、二十八兆円という膨大な債務でありますから、簡単にこの処理方策が出るというわけにはまいりません。しかし、まず国民の皆さん方の理解を得ながら、そして今現在、企画委員会を中心といたしましてあらゆる検討をしているところでございます。また、運輸省といたしましても、この問題につきまして、やはり先ほど申し上げましたように、国民の理解を得ながら、そして国の債務という位置づけでありますから、さらにそういった中で何が具体的な処理方法としていいのかどうか、これからも最大限の努力をしていく決意でございます。
  17. 浅野勝人

    浅野委員 重点を一般会計に置くのか、それとも道路財源などの特別会計や、交通機関の利用者に新たな負担をお願いすることとか、財投からの借入金の金利を軽減してもらう、あるいは、聞くところによると、相続税の軽減を条件に無利子国債を買ってもらうことなど、さまざまな提案などの中で、それらを組み合わせてやっていく。言ってみれば、二つの方向の選択があるわけですけれども、今の大臣のお答えですと、ちょっとそのウエートがよくわかりませんが、その辺どうお考えでございますか。
  18. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  今委員の御質問は、具体的にそれぞれの項目を述べられましたけれども、ことしの六月三日、財政構造改革推進についてにおきまして、この国鉄の長期債務を処理するに当たってどうあるべきかという項目がございます。  その中で、今委員がおっしゃられた、この処理に当たっては道路特定財源の問題あるいは自主財源による手当てがどうであるかとか、それから交通機関利用者全体の負担であるとか、十項目の検討項目がございます。そういった項目を含めまして、先ほど申し上げましたように、今、企画委員会でそれぞれ作業部会もつくりまして、いろいろな観点から、金利減免の問題であるとか、そういった財投に絡む問題もございますけれども、そういった問題について鋭意検討、論議をしている途中でございます。
  19. 浅野勝人

    浅野委員 大体その背景は、三十年ないし六十年くらいの間にどうこれを処理していくかというベースのようで、大変息の長い、しかし重要な出発点でありますから、一般会計に過重に負担をかけるということは、この法案基本的な方向とまたかみ合わないわけでありますし、新たに交通機関を利用されるすべての国民にこの問題で負担をいただくということも、これはまたきつい話であります。  それらを考えますと、あれもだめ、これもだめということで、八方ふさがりという大変難しい、困難なテーマですけれども、数十年のいわばスタート台に立つわけでありますから、汗して基本計画を、基本方針を暮れまでにおまとめになるという大変な作業を運輸大臣にお願いをし、むしろ激励をさせていただきたいと存じます。  景気対策といえば、村山内閣までは一発長打型だったんですね。公共事業と公定歩合の引き下げという二人のホームランバッターが登場すると、おおむね勝負がついたという時代でありました。今やホームランバッター抜きで戦うのですから、盗塁あり、バントありで、多彩な攻撃の組み合わせしかできないわけで、それで攻めていくしかありません。もっとも、ベンチにもう一人ホームランバッターが残っていますが、この超大型所得減税というピンチヒッターは、今回は政策減税の余地を残すとしても、大量の赤字国債は発行しないということでありますから、代打に使うわけにはまいりません。  そうしますと、財政再建をやりながら、できるだけお金をかけないで景気対策を進めるということになると、行革と並んで規制緩和をエースに仕立てるしかほかに方法がありません。  自由民主党の規制緩和委員会の具体策の取りまとめで情報通信を担当させていただきましたので、郵政大臣のフォローを完璧にしていただくよう御要請をしておきますけれども、まず最初に、長距離電話や国際電話の料金を含む電気通信全般の料金を個別認可制から届け出制にすること、事実上の自由化です。  その際、料金の下支えになっている総括原価主義を廃止することが肝要だと思っております。NTTの料金を下回る料金設定ができない限り、NCCは生き延びていけないわけですから、そのいわば突っかい棒を外せば、一層競争の原理が働いて、設備投資は誘発されるし、ユーザーの利用度も高まるかと想像をいたします。あわせて、KDD法も廃止すること、そうすればかなりの経済波及効果が出てまいると存じます。  郵政大臣、何をいつまでにどうするおつもりか、次の通常国会の射程を含めて、改めて確認をさせていただきます。
  20. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 浅野委員におかれましては、党の情報通信分野の規制緩和責任者をしていただくということで、大変感謝をいたしております。  今先生が言われましたように、まさに通信料金については、本年三月の規制緩和推進計画におきまして、現在の認可制を見直し平成十一年度を目途にインセンティブ規制を導入するということをしたわけでございます。今般、特に橋本総理の強い御指示もございまして、我が国の国際経済社会の構造改善、構造改革を一層推進するために、この規制緩和計画を一年間、御存じのように前倒しをしたところでございます。  今先生が言われましたように、こういった通信の料金規制緩和基本的な方向といたしまして、今までは先生御存じのように、個別認可制という原則でずっと戦前も戦後もやってきたわけでございますが、今回これを、個別認可制の原則を廃止をするということでございまして、届け出制とするということでございます。  届け出制ということは、今先生言われましたように、事業者が自由に料金を設定できる制度でございますから、総括原価方式でなくて、そういった部分も一部ございますが、利潤を上げるためには経営効率の努力をしなければならない、あるいは経営効率を上げれば利潤が上がる仕組み、こういった仕組みもあるわけでございますが、そういった意味を含めて届け出制とするとともに、今申し上げましたように、加入電話など基本的なサービスで競争が十分進展していないものに対しましても、事業者の自主的な経営効率化を促進させるインセンティブ規制、これは要するに今さっき先生が言われたとおりでございます。経営努力をすれば利益が上がる、あるいは利潤を上げるためには経営効率を上げねばならない、こういった制度を導入することとしております。  次期通常国会に向けて法律改正を準備しているところでございますが、いつまでにやるのか、これは大変大事なところでございますから、やります、やりますでは、これはもう今の景気の回復にもなりませんから、これははっきり次期通常国会、来年夏以降これを実施するということを言わせていただきたいというふうに思っています。  それから、今先生のお話にあったと思いますが、KDD法につきましては、これは衆参逓信委員会でも実は御存じのように附帯決議をいただいておりまして、できるだけ早い時期に、これはそういった国際的な流れもございまして、国内の事情も、先生よく御存じでございますが、ございますから、そういったことを含めてできる限り早く、可及的に、やらせていただきたいというふうに思っております。
  21. 浅野勝人

    浅野委員 大変歯切れのいい御答弁で、心強く思っております。  総括原価主義、一部ではそういったところがありますがという御答弁の趣旨は恐らくNTTの域内通信のことをおっしゃっているんだろうと推測をいたしますので、そこはキャップシステムを導入するなどの工夫をして、事実上の総括原価主義から脱却するという基本が大切かと存じます。  最後の、KDD法については、できるだけ早くというのは次の通常国会を頭の中でお考えになっておいでだなと推測をさせていただきました。  多チャンネルデジタル時代のCS通信ですけれども、これは三百チャンネル開放するとなると、さまざまな関連分野で相当の需要が喚起されるのは確かだと思います。情報通信産業は二〇一〇年には四十七兆円市場になるなどというもっともらしい試算などもあるものですから、どうしても行政も事業者も周囲からあおられて行け行けどんどんになりがちです。  ところが、二百チャンネル、三百チャンネルとなりますと、番組制作会社も星の数ほどあらわれて、質より量どころかむちゃくちゃな低コストで、まあ言ってみれば穴埋め番組を粗製乱造せざるを得なくなるのではないかと懸念されます。NHKでさえ、地上波二つ、BS二つ、四チャンネル抱えて一万何千人かで質を維持していくことにきゅうきゅうとしているのが実情のようでありますから、これは大変な時代に突入するという幅の広い受けとめ方が大事だと思われます。  そこで、やはり一番我々が気をつけなければならないことは、一定の良識を伴う公共性と放送文化としての質をどうやって担保させていくかということだと思います。  ちょっとフライングをさせていただきますと、幸い地上波各社がしっかり利益を出しておいでの状態でもありますから、例えば電波使用料を大幅に引き上げて、その果実で中小零細の番組制作会社の指導と人材の育成に向けていくなどなどの、今からそんな考えをしておく必要があるのではないか、そんな気がいたしてなりません。極めて重要な課題として問題提起をしておきたいと存じます。  郵政大臣の御見解を承っておきます。
  22. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 浅野委員はまさに報道機関の御出身でもございまして、大変見識のある御意見をいただいたというふうに思っております。  先生御存じのように、来年の春には三百チャンネルになる、そういった中でいわゆる放送の質が低下するのじゃないかという御質問だった、こう思っております。  言うまでもなく、国民が情報にひとしく接する機会を確保することは、申すまでもなく民主主義政治基本でございまして、そして健全な民主主義の発展に放送が寄与すべきところは放送法にも明確に規定されたところでございまして、憲法に保障された表現の自由、そして言論の自由、また同時に、自由というのは公共の福祉の範囲で行使するべきだという憲法の条項もございますが、そこら辺のバランスの上に御存じのように放送法というのは成り立っているわけでございます。  同時に、法律の中で、もう先生御存じのように、放送番組基準あるいは放送番組審議会等、良質な番組が提供される仕組みが既に我が国にも定着しているところでございまして、こういった基本的な原理は、今後の多チャンネル時代、言いましたようにCS放送が三百チャンネルになる、そういった時代においても守らねばならない原則だというふうに私は思っております。  それから、平成八年十二月の多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会の報告を踏まえまして、さきの第百四十回通常国会におきまして、番組審議機関の機能強化等を内容とする放送法の改正を認めていただいたところでございます。三百チャンネルになりますけれども、先と言われたように、やはりきちっと質を担保する、あるいはそういった中でこれは自主的にやっていただくことでございますが、そういったところが番組審議機関の機能強化をさせていただいたところでございます。  もう一点、特に私が強調したいところでございますが、同懇談会の報告に基づいて、これは戦後初めてだと思いますが、放送事業者が、自主的にNHKと民放連が共同して第三者機関をつくっていただきまして、その中で放送と人権等に関する委員会の設置をしていただいたということでございまして、これはたしか八人委員がおられますが、最高裁判所の判事だとか、そういった放送事業者以外の方々、有識者の方々あるいは国際的な経験を持つ方々、そういった方が委員になって、これは実は今機能いたしております。  それから、もう一点でございますが、今、放送の質の低下ということでございましたが、デジタル時代になりまして、Vチップとペアレンタルロックの問題でございますね。これは俗悪な番組を排除するという仕組みでございますが、アメリカではVチップ導入に向けて検討中でございますが、ペアレンタルロックはもうCSデジタルで導入いたしております。  こういったことも、放送の自由ということがございますし、表現の自由がございますし、報道の自由というのは最大限に尊重されねばなりませんけれども、同時に、国際的な状況、世論の動向、放送事業者の取り組み等を見定めながら対処してまいりたいというふうに思っております。  それから、先生の最後の、放送番組制作者のことを、いい番組をつくるためには放送番組制作者がやはり財政的にもきちっとしておく必要があるわけでございます。とかく放送番組制作者は非常に中小零細企業が多いというような問題は、もう先生よく御存じでございますが、そこら辺も、放送の自由、報道の自由、そういう原則を守りつつ、私は率直に言いまして、今先生一つのアイデアを出されましたが、そういったことを含めて、いろいろな関係者とも話をしつつ、理解を得つつ、何か一つ、ソフトの充実のためにも必要ではないかというふうに私は認識を持っております。  以上でございます。
  23. 浅野勝人

    浅野委員 この議論を郵政大臣と、ここにはまってしまうと二、三時間すぐいっちゃいそうなものですからやめますけれども、規制緩和というのは、がんじがらめのものを解きほぐして民間活力を引き出していくというのがそのねらいと思いますけれども、郵政大臣の分野はいわば広野を行くごとく白地の分野でありますから、これは規制緩和イコール時代に合ったルールづくりということにもつながるということではないかと思います。  何かこのテーマが長くなりますが、一つだけ。これは、文部大臣もおいでなものですから、学校教育法を改めることにもつながると思うのですが、遠隔教育システムでCSを使って、重い病気でどうしても学校に行くことができない、その他の事情で通学できない児童生徒を、義務教育の中に、CSを使えばごく簡単なことでありますから、通信制課程を規定して、家庭で義務教育を受けた子供もそのまま進級していただくというような、時代に合ったこと。  あるいは、今企業というのは、商法上、法人税法上、紙の帳簿を備えていないといけないというふうに義務づけられているんですけれども、このあたりも改正して、法定帳簿を、フロッピーなどの電子化したものを今の紙の帳簿と同等の扱いを認める。これは各省庁にまたがることですけれども、郵政大臣が中心となってこれらのことに気配りをいただくと、相当の分野で相当のことができるというように思います。  社会保障は主として医療と年金ですが、当然増八千億円を五千億円カットして三千億円以内に抑える量的縮減目標が掲げられている。具体的にそういう数字だけは掲げてありますけれども、医療、年金、雇用の制度改革とどう取り組むか、これから暮れまでに、厚生大臣、きのうのお言葉をかりれば、やぐるってまとめていくという時期をお迎えになるわけであります。  いずれも難関であります。郵政三事業改革につきましては見え過ぎるほど見えるんですが、これらの医療、年金の制度改革に対する厚生大臣の基本理念を伺っておきたいと思います。いま一つはっきりしませんので、ずばりとお願いいたします。
  24. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 極めてはっきりしているんです。五千五百億円削減しなきゃならない、そのうちの約四千二百億円、医療関係費で削減する、その項目については年末までにあらゆる項目を見直して削減する。極めて明快であります。御理解いただきます。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  25. 浅野勝人

    浅野委員 お手並み拝見。今おっしゃったことを具体的に暮れの予算編成の各項目の中できちんとしていただいて、来年の通常国会でまた事細かく論議の対象にさせていただきますので、武士に二言はないと承っておきます。  それから、公共投資関係は、後で佐田先生が事細かくお詰めになる予定でありますので、殊さら触れませんが、ちょっと一つだけ教えておいていただきたいことがあります。  十年度は七%を切るということは明示されているのですけれども、十一年度、十二年度は前年度を下回ることとしか書いてないのです。ところが、我々の耳には、十一年度は五%、十二年度は三%、七、五、三でいくんだという数字が盛んに聞こえてくるわけですね。一体これは何か根拠があるものなのか。ひとり歩きしておるわけですけれども、何かの審議会とか内部の協議とかで議論をされたある種の根拠のあるものなのか、何か目標として内々決めていらっしゃるものなのか、教えていただきたいと存じます。
  26. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  十年度の公共投資予算については、先生御承知のとおり、マイナス七%の額を上回らないということになっております。十一年度、十二年度の公共投資予算につきましては、当該各年度の前年度の当初予算における公共投資関係費の額を下回るようにするものとされておりまして、まさに各年度におきまして財政構造改革の趣旨を踏まえまして検討が行われるということでございます。
  27. 浅野勝人

    浅野委員 そうすると、七、五、三というのは、だれかがどこかで見当つけて言っている余り根拠のない数字だと今のところは理解をさせていただいておきます。  環境庁長官の存在というのは年とともに、環境庁というのは年とともにその役割が重くなってきております。とりわけこの内閣では、京都会議を仕切る長官は、この暮れにかけて、いわば内閣の顔になるわけであります。我が県連会長に、その決意のほどを承っておきます。
  28. 大木浩

    ○大木国務大臣 京都会議に対しましては、既に政府に対しまして、与野党を初め、いわゆるNGOを含む国民各層からも大変に熱烈なる叱咤激励のお言葉をいただいております。そして、ただいまお話がございましたとおりに、日本といたしましては議長国としての大変な責任も持っておるわけでございます。  そういった会議の重要性、また日本立場というものを十分に理解して、環境庁といたしましても、また私個人といたしましても、何とかしてこの京都会議というものを立派に運営いたしまして、これからの二十一世紀に向かってのクリーンな地球というものを何とかしてつくり上げていきたい、保持していきたいという覚悟で全力を尽くしてやらせていただくつもりでございますので、どうぞひとつ、よろしく皆様方の御支援を心からお願い申し上げます。ありがとうございます。
  29. 浅野勝人

    浅野委員 科学技術庁というのは、ほかの各省と違う、自然科学の専門家を集めた独特の役所で、三十年、四十年と積み上げてきたそのノウハウは、他の役所にないまことに貴重な存在だと私は思っております。今回の省庁再編の中でどういう形になるにせよ、その存在は原子力行政を抱えるだけに極めて重要であります。何となれば、人類がこの地球の上で無限に生存していくためには欠かすことのできないエネルギーだからであります。  とりわけ、原発及び核燃料の製造についての扱いの中でどう推進をしていくか、同時にそれをどう規制をするか。言ってみれば、言葉は適当でないかもしれませんが、あめとむちをどのように組み合わせていくかというのは、これは貴重だけれども、重要だけれども、大変難しいテーマであります。  省庁再編を迎えて、そこのところが、それを重視した再編にならなければならないとかねがね思っておりまして、科学技術庁長官基本認識を承らせていただきます。
  30. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 科学技術行政の重要性につきまして御指摘をいただきまして、まことにありがとう存じます。  今、原子力エネルギーの重要性について御指摘がございましたけれども、我が国は、エネルギーの八割以上を海外から輸入しているという国でございます。ですから、二十一世紀に向かって日本が安定して繁栄を続けていくためには、エネルギーの安定確保ということがどうしても必要でございます。  電気エネルギーのうち既に三割が原子力エネルギーを使っている、原子力エネルギーというのは大変重い位置づけを持っておりますが、その特色は申し上げるまでもなくて、供給の安定性がございますし、それから、電力を生産していく過程においてCO2を出さないという大きな特色がございます。大木長官が議長候補としてCOP3の準備を一生懸命進めていただいておりますが、そのCOP3への努力も、この原子力エネルギーの位置づけがなければ絵にかいたもちになってしまうのではないか、私はそんなふうに思っております。  しかし、他方、この原子力エネルギーの推進について着実に進めていかなければならないと私は思っておりますけれども、その前提は原子力の安全性ということがなければならないわけでございます。それで、今、残念ながらいろいろな事故等がございまして、原子力の安全性に対する信頼が揺らいできているということを私は大変残念に思いますし、また責任も感じているわけでございます。  今御指摘のように、これを進めてまいりますには、厳格な安全チェックというものが必要でございますけれども、しかし同時に、推進と安全規制というのはこれは車の両輪でございますから、一方だけが回っていくとうまくいかない。やはりバランスのとれた姿勢、こういうものが必要ではないかと思っております。  そこで、推進と安全、両方についての的確な行政対応が必要だと思いますが、推進面につきましては、これは、動燃等のいろいろなことがございました、うみを出し切って、抜本的な改革を、改組をしていく必要があるということで、今作業を進めております。  それから、安全規制につきましては、やはりこれはいろいろな議論がこの分野でもございますけれども、今浅野委員が御指摘になりました開発と規制のバランスをとりながら、客観性、中立性というものを重視していく必要があるのではないか、こういうふうに思っております。こういう努力を通じまして、国民の原子力エネルギーに対する信頼をもう一回再構築していくことが必要ではないか、このように考えております。  そして、今、省庁再編の中での科学技術行政についてもいろいろ御指摘がございましたけれども、科学技術行政を後退させないという観点からやはり私たちは議論をさせていただきたい、このように思っております。
  31. 浅野勝人

    浅野委員 動燃や「もんじゅ」は、どちらかといえば職員のモラールの問題で、技術そのものの問題ではないと私は見ております。そういう意味では、その原発及び核燃料の製造をめぐる技術に対しては、憶することなく基礎研究、開発を進めていただきたいと御期待を申し上げます。  きょうの論議で国際的な視野が欠けていたことは承知しておりますけれども、一時間という制限でありますので、次回に譲ります。  最後にちょっと、防衛庁を国防省に移行する省庁の再編に触れておきます。  防衛庁を省に移行しても憲法とのかかわりは何の変化もありません。何の変化も伴いません。シビリアンコントロールは強化こそされ、ないがしろにされる懸念は皆無であります。既に削減を決めた九千二百億円の防衛費を復活することにもつながりません。国家行政組織の上では位置づけがまともになりますが、実質的な中身は何も変わりません。  私は、先ごろまで、ア・パーラメンタリー・バイスミニスター・オブ・ザ・ディフェンス・エージェンシーと言いますと、おやつという表情をする外国の要人に大勢出会ってまいりました。日本はエージェンシーで国防をするのかというほどのちょっとした驚きだったのではないかなと想像をいたします。省庁再編の機会に、世界の常識に沿った手直しをして、防衛庁、自衛隊により高い誇りと重い責任を自覚してもらうための行革は行うべきだと指摘をして、同僚の佐田委員にバトンタッチをいたします。ありがとうございました。
  32. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 この際、佐田玄一郎君から関連質疑の申し出があります。浅野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐田君。
  33. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 それでは、質問をさせていただきます。  今回の財革法、大変国民も注目しておるわけでございます。いろいろとうわさも流布しておるわけでありますけれども、私は、今回の財革法の一番の重要な部分というのは、これは何といっても、必要な部分、予算を削るのではなくて、今までむだであろう、こういうふうに思っていた部分を、国家国民のため、将来のために割愛していく、こういうふうな基本理念があるのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。  と同時に、各委員からいろいろな危機深まるようなお話がありました。総理からも、答弁の中で、政府の借金残高が二〇二五年には国内総生産の一五二%にもなる、そしてまた、同じ年には社会保障の負担率が七三・四%と、大変な時代を迎えるわけであります。若い方々がほとんどの給料を国に献上しなくちゃいけない、そういう厳しい時代が目の当たりに見えておるわけであります。であるからこそ、まさに将来の国家国民、そして我々の子供、孫のためにも、今が最大の最後のチャンスである、こういうふうにも私は思っておるわけでございます。  であるからこそ、いろいろな各省庁の予算のキャップであるとか、ただ抑えていく、そういう部分だけではなくて、あくまでも国民に理解の得られるような財革法をつくっていかなくてはいけないし、そして、先ほどのお話にもありましたように、通常国会においては中身をしっかりと精査していかなくてはいけないんじゃないか、こういうふうにも思っておるわけであります。  今も申し上げましたとおり、まず二〇〇三年に三%という、要するにたががはまっておるわけでありますけれども、この三%、確かにヨーロッパであるとか諸外国では、とにかく財政赤字をなくして大体そのぐらいの数字に持っていこうというふうな意見があるわけでありますけれども、この数字の根拠をぜひお示し願いたい。大蔵大臣、よろしくお願いします。
  34. 三塚博

    三塚国務大臣 この根拠は、国連の決めた積算基準に基づいて行われたものでございます。  基本的には、マーストリヒト条約、EU統一通貨に向けて中央銀行を一つにし、取り組む、政治的な意味は欧州連合を合衆国のような形へという目標もあるわけですが、その第一ラウンドを経済における統一ということで掲げましたのが、国連規定の、財政赤字のあり方、一般歳出、歳入から歳出、その差をどう決めるかということは、健全性と言われるとすれば最低三%であろう、総体の規模の三%であろう、こういうことであります。  統一通貨への参加条件として三%を決めました。そして最後の、トータルのストック分としてGDPの六〇%以下であることが重要である。中央銀行をつくり、統一通貨をつくり、レートを安定させ、地域加盟国の持続的な経済成長達成して、それぞれの国家の国民の安定に資するということであればそういうことである。  財政規模のあり方の国際的な基準をベースに、我が国も、国際国家でありますからそこを目指した、こういうことであります。
  35. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 国際的な、また安定的な経済成長のためにやる、そういうふうな御答弁でありますけれども、先ほど来からいろいろな御意見を聞いておりまして、やはり各省庁で、かなりこれ厳しいよ、そして国民生活に対する影響もかなり大きいよ、こういう声もあるわけでありますから、ぜひともそういうところの御配慮、いろいろの規制緩和の問題、政策減税の問題、そしてまた予算の配分の問題等につきましても御質問させていただきますけれども、そういう中でこれからぜひとも御配慮もいただきたい、かように思っているわけでございます。  そしてまた、これに引き続きまして、ちょっと中に入り込む話でありますけれども、この三%というのは、基本的に国と地方の借金を合わせて、要するにその統合で三%にしていくということでありますけれども、これは、国だけじゃなくて地方も相当に頑張っていかなくてはいけないという数字になってこようかと思うんですけれども、これは地方もどういうふうな形でこれから赤字削減に向けて頑張るのか、ぜひその辺の御答弁をいただきたいと思います。自治大臣に。
  36. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 昨日の甘利委員の質問にもお答えしましたように、財政構造改革は私たちの世代でぜひともやり遂げなければならない、後世代に残してはならない重要な課題であると思っております。  国及び地方財政赤字、対GDP比三%以下という目標に向けて、交付税特会借入金や財源対策債の圧縮に努めてまいりたい。また、財源不足を補てんするための特例的な借入金に依存する財政構造の改革を進めていく必要があると思っております。  こうしたことから、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直し地方単独施策の抑制等により、平成年度地方財政計画の地方一般歳出を対前年度比マイナスを目指すなど、その健全化に取り組んでまいりたいといたしております。  地方公共団体に対しましては、国、地方を通ずる厳しい財政事情を十分認識し、それを踏まえまして、徹底した行財政改革に取り組むとともに、厳しく歳出の抑制を図り、財政体質の健全化に努めるよう要請するなど、地方財政の構造改革推進に積極的に取り組んでまいりたいと思います。  なお、地方財政につきましては、地方自治の視点から、個々の地方公共団体の財政運営を直接拘束する手法はとり得ないものと思っております。
  37. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今大臣のお話がありましたように、確かに、これはもう国と地方が本当に一体となってこの財政赤字を減らしていく、こういうふうな気構えでいかなくてはいけない、かように思っております。  そしてまた、今回の財革法の中に個別のいろいろな問題があるわけでありますけれども、先ほど浅野委員の方からありましたように、公共投資の占める割合というのは非常に大きいわけであります。これは国でも地方でも同じことであろう、こういうふうに思っているわけでありますけれども、最近、各省庁において公共投資のコストの問題についていろいろな議論がありまして、そしてまた、これを各年度で報告していこうじゃないかというふうな機運があるようでありますけれども、この点について、建設大臣、ちょっとお答え願えますか。
  38. 瓦力

    ○瓦国務大臣 佐田委員にお答えいたします。  公共事業の本来的役割といいますか、これは、現在及び将来の国民にとりまして安全で快適な暮らしを基盤的に整備していくものでもありますし、また、我が国経済社会の発展を支えるための社会基盤を整備していく、かような観点に立って見ますと、いわゆるストック効果の増大、これを目指していくわけでありますので、今それぞれ閣僚から御返答がございましたが、極めて厳しい財政事情の中でありますけれども、このストックの効果あるいはまたフローの効果をあわせてこの際考えておかなきゃならぬと心得ておるわけであります。  公共投資の効果は、ただいま申し上げましたように、ストックの効果一つはございますが、GDPを押し上げる乗数効果、いわゆるフロー効果とをあわせ持っておるわけでありますし、公共投資の乗数効果につきましては、政府の有する経済政策手段の中で、いわゆる即効性、あるいは効果の大きさや他部門への生産波及効果の大きさなどの観点ですぐれた効果を有しておることは申すまでもないわけであります。  佐田委員は大変実務にも精通しておられる方で、よく御案内のとおりでありますが、公共事業の波及効果につきましては、経企庁の世界経済モデルの乗数効果の推移を見ましても、所得税減税を一年目に〇・四六といたしますと、一方の公共投資が一・三二。これが三年目になりますと、公共投資が二・一二で、減税の効果というのは一・二六である。こういうような点に着目いたしましても、公共投資の乗数効果が高いわけでございます。  そういうような観点を考えてまいりますと、一層、効率的、効果的な公共事業経済に果たす役割を踏まえまして実施に努めていくことが、今日の時点におきましては非常に重要か、こういう認識をいたしておるわけであります。
  39. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今、大臣の方から公共投資の即効性というか、そういうお話が出たわけでございます。  しかしながら、今回の財革法で、初年度七%のキャップをはめて、平成十一、十二年度はもうそれは減らしていくという話になっておるわけでありますけれども、これについて大変、日本全国の建設関係の人たちは悲鳴を上げているというのが現状であります。そしてまた、なおかつ、これはバブルの影響かもしれませんけれども、名前は挙げませんけれども、中堅の何社かが急に、百年近くの歴史のある会社が本当に倒産の憂き目を見ておる。そしてまた、引き続きまして、関連の下請であるとか二次の下請の会社であるとか、連鎖倒産を起こしている。これはかなりの波及効果があって、経済にも余りいい影響を与えない、こういうふうに思っているわけであります。  と申し上げるのも、建設業というのは一口に言ってもあらゆる工種がありまして、建設関連企業というのは日本全国で五十三万社あります。間違っていると申しわけないのですけれども、たばこ屋さんが三十三万店だそうでありますから、そういうことを考えますと、いかに経済波及効果が大きい業界であるかということを、ぜひとも皆様方にも御認識を願いたい。  そしてまた、その上、最近これだけの、数年前では十四兆を超えるような補正予算もした。そして最近も、そういう意味においては大変な財政出動をしてきたわけでありますけれども、市井の声を聞きますと、景気がよくないとか、なかなか仕事が回ってこないとか、そういうふうな声を聞くわけであります。  昔でしたらば、先ほど浅野委員の方からもお話がありましたように、公共投資と公定歩合の二刀流で、即効性があって景気を回復していたという時期がありました。ところが、幾らやっても、要するになかなか公共投資が景気のチャンネルにならない、こういう現状が今現出しておるわけでありますけれども、この点について、建設省もしくは大臣、どういうふうな原因があろうかとお思いでしょうか。
  40. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、公共投資は地域経済等にとっては大変有意義なものだというふうに考えておりますけれども、過去何回かの景気対策をやっていただいて、それなりに景気は浮揚してきているというふうに認識をいたしておりますけれども、なかなか現在の内需振興に火がつかないと申しますか、そういったような面も一部で指摘をされてきております。  御案内のとおり、中小の建設業者の方々の今非常な苦境と申しますか、そういうものは御指摘のとおりでございます。全国の建設業者の九五%以上は中小の方々ということで、大変すそ野の広い建設業というものの中で、いろいろな下請あるいは末端等で御苦労をいただいているわけでございます。やはり全体のこういう景気動向の中で、特に建設業につきましては、非製造業ということで今大変苦しい局面にあるということは、御指摘のとおりでございます。やはりそういう経済動向を踏まえながら、それぞれの企業がきちっと自助努力で何とかこの苦境を乗り切っていただく、そういうことも必要だというふうに思っております。  私どもも側面から、例えば建設省直轄工事におきましては、分離分割発注の推進とか、あるいは上位ランク工事へ何とか中小の方々も参加できるようにとか、あるいは発注標準を引き上げて、より中小の方々が上位の工事に参加できるようにといったようなことをいろいろやっておるわけでございます。  平成年度におきましても、一般競争入札の点数条件を引き下げまして、中小の方々が参入できるようなこと、あるいは経常JV、企業の方々の数も多いものでございますから、共同で請負をするような経常JV制度というものを積極的に活用して効率的な事業の実施ができないか、そういうことによって経営状況をきちっと、中小の方々も経営努力をしていただいた上で対応していくようなことができないかといったようなことも考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、大変すそ野の広い産業でございますので、影響も大きいということも踏まえまして、十分経営努力等も支援をしていきたい、こういうふうに思っております。
  41. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 何かちょっと抽象的で苦しい答弁だったな、そういうふうな印象です。もっと抜本的に突っ込んで、こういうところこういうところをと、幾ら予算措置しても、これが景気を刺激しないんだったら何の意味もないわけですから、そういう意味においてはしっかりとやっていただきたいと思っております。  今お話の中に入札制度がありましたけれども、例えばバブルの時代、土地が高騰したときに、例えば地価税の問題やら、これからちょっとお話ししょうと思っていたんですけれども、譲渡益課税を締めてみたり、いろいろな方法、方策でやったわけであります。  それは、あくまでも目的があって、そういうふうな形で地価の高騰を抑えなくてはいかぬ、そういう目的があってやったことでありますけれども、この入札制度というのは、はっきり言って余り意味がないのですね。私は、これはまずいと思ったら変えるべきところは変えていかなければ、幾ら財革法でこういうふうな法案をつくっても何の意味もないんじゃないか、こういうふうに感じておるわけであります。  具体的に申し上げますと、私も地元なんかに帰ったり、また地方に出たりすると、一般競争入札、果たしてこれがいいのか悪いのかという議論になってくるのでありますけれども、当然これは平等だというふうな御意見がたくさんあります。しかしながら、これは平等における不平等なのですよ、はっきり言って。  どういうことかと申し上げますと、ある程度の方々は全部どうぞお入りください、入札してください。そうすると、その中に必ずダンピングが起きてくるのです。ですから、あらゆるところで仕事を出しても、なかなか景気の回復につながってこない、そういうふうな局面があるのです。皆さん方もゴルフをやる方がいらっしゃると思いますけれども、強い人間、うまい人間と、私なんか下手ですけれども、一緒にやって勝てっこないのです、ハンディがないと。そのハンディをなくしていこうというのがこの一般競争入札なのです。  私は、そういう観点からして、抜本的にそういう意味に直していかなければいけない。こういう制度もしっかりと直すべきところは直していかなければ、せっかくこんなに皆さん方がお集まりいただいて財革法を決議いただいても、これはなかなか難しい、景気のチャンネルに公共投資がなっていかないのじゃないか、こういうふうな不安を抱いておるわけであります。と同時に、旧態依然とした体質も改善していかなければいけない、私はそういうふうに思っているのです。  例えば、私はこの間、うちの選挙区の村の小さなところに行きました。そして、そういうところは毎日のように入札やらやっております。そこで私が一番感じたのは、これは地方公共団体発注になるような仕事が多いのでありますけれども、いわゆる歩切りというのがあるのですね。全部計算をして、要するに物価版を見て、どんどん積み上げ方式で、例えば河川だとか公共施設であるとかこれを全部計算をしていって、なおかつ厳しくやって、その上、いわゆる業界用語で言うと頭をはねる、こういうことをするのですね。それは役所の方でやるのですよ。しかも一般競争入札。  そういうことをしていくと、公共投資が幾らこれを財政出動しても意味がなくなってきた原因の大きな原因が、そういうところにあるのじゃないかと私は思うのでありますけれども、建設省並びに建設大臣、どうお思いになりますでしょうか。
  42. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 お答えをいたします。  歩切りの問題でございますけれども、これは良質な公共施設の整備あるいは工事の安全の確保といった点につきまして大変支障があるということは、御指摘のとおりでございます。ひいては建設業の健全な発展を大変阻害する行為というふうに思っております。このような点にかんがみまして、私どもでは従来から、例えば各都道府県知事さん初め公共の発注者の方々、こういう方々に対して、いわゆる歩切りの厳禁ということを各種の通達で指導してきたところでございます。  御案内のとおり、なかなかこれは、発注者の方々にとりましてはある意味では慣行的な面も従来はあったわけでございますけれども、いろいろな各般の施策ということで、あるいは周知徹底することによって徐々にやはり私はなくなってきているというふうに思っております。  なお一層、今後こういうことのないように、公共団体等、特に自治省との御相談もいただきながら、実効の上がるような指導に努めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  43. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 こういう話ばかりしていると時間がたってしまいますけれども、これは五十五年に通達で、歩切りをやめてくれ、こういう内容のことが書いてあるのですけれども、五十五年当時から状況がほとんど変わっていない。ぜひとも、徐々にではなくて、やはりきちっとそういうことも含めて改革を進めていただきたい。ぜひ建設省、そしてまた大臣にもお願いを申し上げる次第であります。  それと、もう一つ大事なことというのは、これは七%今度はカットになります。大変業界の方々は危機感を感じております。しかしながら、私は地元で言っておるのでありますけれども、七%カットでもいいじゃないですか、今、国がこれだけ大変な時期を迎えておる、今やらなければこれは将来が大変なことになるということで私も説明をさせていただいております。  そういう中で、じゃ七%どこからこれを節約していくか、そういう話になっていくわけでありますけれども、これは自民党の話で大変恐縮でありますけれども、自民党の大きな施策があるわけであります。それはどういうことかといえば、多極分散、ふるさと創生であります。地域を中心に活性化することによって日本全体を活性化していこうという大事な役目があるわけであります。  そういう中において、私は正直言って、この事業量の書類を見ましたら、いまだに、例えば三大都市圏で市街地整備が大体五九・五%、住宅対策が五一・七%、下水道関係が四〇・九%、まさに一極集中的な予算が組まれておるわけであります。地方の、先生方も御存じのとおり、私の前橋市では、県庁所在地であるにもかかわらず、普及率が大体三〇%です。そして、例えば田舎の方に行けばゼロなんていうところもあるのです。そういうことを考えますと、果たしてかけ声ばかりで多極分散ということがなされているのかどうか、非常にこれも危惧するところであります。  そういうことを考えますと、逆にまた私は、今回がチャンスじゃないか、こういうふうにも思っているのです。例えば、私も東京に来てみると、ほとんど土がない、道路をどこにつくるんだ、そしてまた、地下鉄をつくると渋滞があって、また騒音だと言って都民は非常に非難をしておる、道路をつくっても苦情がたくさん集まる、そういう話を聞きます。やはりこういうときにこそ多極分散であります。  我々の田舎に来れば、今度、北関東横断道というのがありますけれども、もう大喜びです。そういう意味においては、例えば農家の方も、農産物が早く消費地に運べますから付加価値も高まって価格も上がりますから、大変喜んでいます。嫌だ嫌だと言うところにやるのじゃなくて、やはり地方中心にやっていく、これは当然のことじゃないか、こういうふうにも思っているわけであります。  これはダブルにいいのです。なぜダブルに財政構造に適合するかというと、用地比率が低いのです。こんな高いところで無理やり工事をするよりも、地下鉄というのは非常に単価が高いわけですから、私ははっきり言って、東京で地下鉄がこれ以上必要なのか、こういうふうにも感じているのです。そういうことを考えますと、これから、そういう意味におきましてぜひとも地方中心の考え方でやっていきたい。それと同時に、じゃ、東京を切り捨てるのか、とんでもないです、これは。東京であるとか大阪であるとか名古屋、そういう地域につきまして規制緩和を進めていかなくてはいけない、私はそう思っているのです。これだけ密集してきた以上は、例えば世田谷であるとか杉並だとか、一戸建てで、いわゆる一種住専というところは高さ制限があるのですね、そこに庭つきで住んでいる、それはまあ随分資産家の方だとは思いますけれども。  私は、これから総合的に国土の利用を考えたときに、やはりそういうところに規制緩和をして、ある程度の建ぺい率、容積率、この辺の緩和を建設省でやっていただきましたけれども、これを日本全体に広めていく。そういう中においてやはり、ある程度の住環境、東京に住んでいる方でも住環境をよくしていき、そして庭つきに住みたい方は申しわけないけれどもある程度郊外に出てもらうとか、こういうことを考えていかなくてはいけない時期に来ているのじゃないかと思っているのです。  先日、パリに行きましたら、パリはべったりくっついているのですね。斜線制限も日照もありません。どういうことかと聞きましたら、空から光を入れるんですって。天空権というのがあるらしいですね。もうそういうふうな時期に来ているのじゃないか。  その辺の規制緩和の問題を建設省の方にお伺いしたいのです。これからどういうふうな方向でやられるのか、お聞きしたいと思います。
  44. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 今、財政構造改革推進ということでいろいろ努力をいたしておるわけでございますが、財政構造改革推進についての閣議決定におきましても、地域経済への配慮を行う、同時に、国土の均衡ある発展と整備水準についての地域間の格差の是正、特に、おくれている地方あるいは地域について重点的にやっていくということも、規制緩和と申しますか、財政構造改革推進についてに明確にうたわれているわけでございます。  こういう点を受けまして、私どもも、平成年度の建設省関係の概算要求でも、特に生活関連につきましては、先生今、下水道の例をお出しになりましたけれども、真に整備がおくれている分野、地域への重点化とか、あるいはこれも御指摘のございました、特に用地補償比率が低いものなど短期間事業効果が上がるものについて重点的に予算お願いをしている、こういうことでございまして、そういう点から、特に地方への予算の重点配分の御指摘につきましてはこたえていこうということを考えているわけでございます。  ただ一方、やはり都市部でもそれなりに大変必要な事業もたくさんあるわけでございますが、都市部では特に規制緩和が大事だということはお話のとおりでございます。私どもでも、良好な環境の確保あるいは公共施設の整備などを伴うような優良なプロジェクトにつきましては、例えば容積率をボーナスで与える、割り増しを与えるといったような制度を逐次整備をしてまいりました。  また、前国会でも、高層住居誘導地区の制度というようなものにつきましても、基準法の改正をして認めていただきました。これが九月から施行になっておりますので、おいおいにまた効果は出てくると思いますけれども、そういったようなこと等を中心とした規制緩和を特に都市部では積極的にやはり進めていかなければいけない、こう思っているところでございます。  そういうことの両方相まちまして、何とか日本経済全体、均衡ある発展ができないか、こう思っているところでございます。
  45. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今の答弁にもありましたように、ぜひとも効率よく予算配分をしていただきたい、こういうふうに思っているわけであります。そしてまた、都市部の方々も住環境をできるだけこれから規制緩和によってよくしていかなくてはいけませんし、今答弁にもありましたように、総合設計制度というふうに言われるそういう制度だと思うのですけれども、基本的に公共に供する部分が多い場合に優良な建物については容積率を緩和していく、こういうことはぜひともいろいろな場面でやっていっていただきたい、かように思っているわけであります。  それと、ちょっとこれは御指摘申し上げたいのですけれども、やはりあまねく五十三万社ある建設関連企業が潤っていくということはそれなりの経済効果が出てくる、こういうふうに思っているわけでありますけれども、その中の、制度改革にも入るわけでありますけれども、最近、VE案というのが出ているのですね。要するに、仕事をする方の会社の方々から、こうやった方がいいんじゃないか、ああやった方がいいんじゃないか、こういうことによって工事の単価を下げていく、こういうふうなことが提案をされております。  これは、一見すると随分単価が下がっていいんじゃないですかとお思いになるかもしれませんけれども、私も地元に帰っていろいろな意見を聞いてみますと、そうではないのですね、はっきり言って。例えば地域の工事事務所だとかそういうところから仕事が出るとしても、VE案というのは、要するに、例えば構造的に柱は、この間神戸の方で橋脚が倒れましたけれども、いや、そうじゃなくてこういうふうな太さにした方が構造的にいいんじゃないかとか、こういう計算は中小零細の企業なんかにできっこないのです、はっきり言って。そうすると、必然的に、ある程度企業にばかり仕事が行ってしまうという現状ができてしまう。  私は、そういうところをきちっといろいろな先生方の議論の中で精査していかなくてはいけないんじゃないか、こういうふうにも思っているわけであります。  ちなみに、今度の公共投資がなかなか浸透しないというのは、調べましたら、やはり全体の予算、発注、事業費の半分近くを最大手と言われるような会社がとっているという現状があるわけですから、その辺のある程度の是正、制度改革、そして中小零細の企業の、下請の人たちもきちっと仕事ができるように適正価格でいくような、そういうふうなことの御配慮、制度改革やら今の規制緩和やら全部含めた意味で、ぜひとも建設省の皆さん方にはお願いをする次第でございます。  それと、先ほど単価の問題が出たのですけれども、単価というのは非常に難しい問題であって、製造業の方々、いろいろありますけれども、普通の一つの製造業と建設業というのはちょっと違いまして、これはあくまでも受注生産でありまして、受注生産ということになると、例えば道路をつくるときには、生コン、鉄筋だとか土工事だとかありますけれども、建築になると、何百、下手すると何千という工種があるわけですね。ですから、一概にその構造物が高い安いということは、一つ一つのそういう資材ですね、例えば今言ったものだとか窓の型枠だとか、そういうふうなものを全部含めたようなことが全部あわせて高い低いということをやはり精査していかないと、また矛盾も生まれてくるのじゃないか、こういうふうに思っております。  我々としては、できるだけコストダウンのために議論をしていかなくてはいけない、その方向で頑張っていかなくてはいけない、かように思っております。  ただ、私、文部省にいた時期がありましたけれども、そのときに一番感じたのは、去年、鹿児島で小学校が倒壊しました。偶然生徒さんがいなかったから、これはよかったです。すべてコストダウン、七%カットして、そしてコストダウンを何%しなさいと言うのではなくて、物、物によってその仕様が違うわけであります。例えば文部省なんかのものは、学校の子供ですから、右往左往してしまう、適宜適切に避難するなんということはできないわけです。そしてまた、なおかつ、大学の病院、患者さんたちは動けない方もいらっしゃる。そういう建物も同じような仕様で、適用でやっていいのかどうか、私は非常にこれは疑問に感じました。文部大臣、いかがですか、この辺については。
  46. 町村信孝

    ○町村国務大臣 突然のお問い合わせでございますが、先生御指摘のとおり、老朽化した校舎あるいは病院等が相当あることは事実であります。何とかこれを耐震設計がきっちりいったようなものにしていきたいということで、相当手入れをし始めたところであります。  例えば、先生、文部政務次官御在職中に私立学校への利子補給制度というのを実は始められました。これなどは、わずか十数億の予算で年間八百億の工事ができるという大変すばらしい制度を政務次官御在職中につくっていただいたということで、大変感謝をしているわけでございますが、例えばそういうようないろいろな政策的な努力をして、今御指摘のような、とにかく安ければいいというわけではない、やはり安全性ということも相当公共工事の場合は重要だ、そういう認識でもって取り組んでまいりたいと思っております。
  47. 瓦力

    ○瓦国務大臣 先ほど以来の御質問の中で、委員よく御案内のとおり、財政が厳しい環境にありますから、費用対効果といいますか、いかに効果を生むかということもよく勘案しながら取り組んでいかなければならぬ課題もございます。  また、公共事業が地域に大きく貢献をしておる、地域経済に対しての貢献度も高いわけでありますが、また中央、地方を問わず、これから快適な生活基盤を構築していくという観点に立てば、いろいろ工夫をしていかなければならない問題もございますし、また、委員が多方面の問題を今提示されておるわけでございますが、建築資材につきましても相当昨今進歩いたしておる面もございます。  また、民間が持つ能力も相当大きなものになってきておるわけでありまして、今VEのお話もございました、やはりこれから工夫をしていかなければならぬ時代でありますので、よくよく研究をしながら、検討しながら、今それぞれの分野でいたしておるわけであります。  今度の景気対策につきましても、いかなるものが即効性があり効果があるか、また、社会資本の整備をこれから続けていくためにいかなる方策をとればいいかというようなことを今検討いたしておるわけでありますが、これは相当幅広に研究しなければならない問題が多々ございまして、財政縮減の折でありますが、社会資本の整備につきましては、その機能が十分に発揮できるような、そしてまた安全が確保できるような効果も期待して、この財政事情の中でありますが、景気対策にも貢献していく道はないか、このことを今検討を続けておるところであります。  党の方でも、いろいろ土地問題を含めて検討いただいておりますが、やがて政府の方でも経済企画庁長官中心になって取りまとめを行うわけでありますので、景気対策をにらみながら、今御指摘の社会資本整備につきましても心得て取り組んでいかなければならぬと思っております。
  48. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 私は、今の時代というのはどういう時代かなというふうに考えたときに、例えば社会資本の充実を図るのが先行するのか、そして、それによって波及効果を及ぼして景気の回復を図っていくのが先か、私は非常にこれを疑問に感じているのです。  どっちが先かなというふうに考えたときに、今の時代は、明治時代、そしてまた戦後の大改革を今やろうとしておるわけであります。そういう時代を考えたときに、財革法のこの議論の中で、私は、今の時代においては景気回復ということをまず優先していかなければいけないんじゃないか、このぐらいにも感じておるわけでございます。  それと同時に、今回いろいろな議論があったわけでありますけれども、土地税制、やはりこれだけ地価が、あのバブルの時代はどんどんどんどんと土地が高騰しまして、それに対して土地税制をかなり絞って、結局薬であろうと思ったものがこれは事業になってしまった、そういうふうな事情もあるわけであります。  ここに来まして、もう時期も熟しまして、きのうの大蔵大臣の御答弁にもありましたように時期が熟した。この時期に来まして、私はまさに、わけても譲渡益課税の問題、これをぜひ昔のような二六%ぐらいに下げないと、例えばこれを時限立法にしてもいいわけでありますから、しっかりとその辺を踏まえて、断固として断行していかなくてはいけないのじゃないか、こういうふうに思っているわけであります。  もちろん、この施行に当たりましては、もう決めた以上はすぐやる、こういうふうな形にしていかないと、また売り控えだとか買い控えなんかが生まれまして、また景気を冷え込ませる、こういうこともあるわけでありますけれども、この土地税制について大蔵大臣はどういうふうに御見解をお持ちでしょうか。
  49. 三塚博

    三塚国務大臣 税制の基本基本として、検討の場合の中心になければなりません。租税あって財政あり、租税あって政治あり、議会制民主主義ということであり、そういう中で土地税制をどうするか。これは土地流動化、不動産担保証券化及びさらなる需要喚起のための施策、税制に絡むこと、多々多かろうと思います。  そういう点で、政府としても経企庁長官中心に、土地流動化対策、三本の柱の一つとしてしっかりやってほしい、こういうことであります。  今後、その取りまとめに努力をされておるわけでありますが、同時に、与党における税制調査会における審議が始まっております。それと政府税調、これまた重要な課題に取り組んで審議を始めております。この審議が収れんをされていきますことを最大の関心、また時にお話もお聞きさせていただくということで取りまとめてまいりたい。  その結果として最終的に、全体の展望の中で、基本財政構造改革基本的理念が満たされるということの中で取り決めていかなければならない、こう思っております。
  50. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今回の財革法案、いろいろな各省庁の予算にキャップをはめて、非常に厳しい状況があるわけでありますけれども、今申し上げてきましたように、土地税制であるとか規制緩和であるとか予算の配分であるとか、あらゆる方策を練って、この法案がもちろん景気の足を引っ張るなんてことはまずないように、我々はこれからの通常国会においても努力をしていかなければいけないのじゃないか、こういうふうにも思っておるわけでございます。  話は変わりますけれども、実は私の県からは小渕外務大臣、そして尾身経企庁長官と、二人も大臣が出て、大変誇りに思っておるところでありますけれども、尾身大臣におかれましては、先ほど経済対策、これからもよろしくお願いを申し上げる次第でございます。  それと、もう一つ。これはちょっとこの法案に直接は関係ないのですけれども、私、この間テレビを見ておりましたら、カンボジアの方で足をなくした方だとか、いわゆる対人地雷ですね、これが、聞いてみましたら、世界じゅうに一億個ぐらい埋めてある。こんなに危険で非人道的な武器があるのかなと、見ておってつくづくと感じたわけであります。この対人地雷条約に関する政府検討状況というのは今どういうふうになっているのか、ちょっとお聞きしたいのですけれども、外務大臣と防衛庁長官、ぜひお願いいたしたいと思います。
  51. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 今朝、橋本総理から、防衛庁長官、外務大臣、官房長官をお呼びになられまして、この条約署名に向けて政府内の調整を図っていくべきだという御指示をちょうだいいたしましたので、早速、防衛庁長官と話を始めました。  いずれにいたしましても、世界の世論というものもございますし、また同時に、我が国にとりましての基本的防衛の問題にもかかわることでありますし、また日米間の信頼の問題もありますので、諸般の問題を調整いたしまして、できる限り早い機会にこの問題についての態度を明らかにいたしていきたい、このように考えております。
  52. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のとおり、我が国は起伏があるというのと、それから縦深性が乏しいということがございますために、敵が着上陸しましたときに、それをできるだけおくらせるという意味から、従来から地雷を利用した防衛政策が考えられておるわけでございます。  しかしながら、今外務大臣がおっしゃられましたように、最近の国際世論等もございますし、そしてまた、先般の、条約に対するいろいろな国内での世論の高まり等もございますために、これに対して、外務大臣等と協力しながら、前向きに進んでいきたいと思っているところでございます。  ただ、いわゆる代替措置をどうしていくか、我が国が万一攻められましたときに、やはり防衛政策上大事な点もあるわけでございますから、これにかわるべき措置をどういうふうにするか、その問題が一つございます。それともう一つは、日米安保条約を結んで、我が国が万一の場合、日米が共同作戦をとるわけでございますけれども、例えば、日本はこれに調印するということになりまして米国は調印しないということになりましたときに、その辺の、いわゆる両方のそごのないようにどういう調整をしていくか、これも大事なことでございますから、調整をせろという御指示でございますので、そういう中で、調印に向けた方向調整について努力していきたい、そういうふうに思っているところでございます。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 各省庁いろいろ御意見あろうかと思いますけれども、この対人地雷、この間、私もいろいろな書物なんかで見させていただきまして、いろいろな種類があったり、そして非人道的であり、そしてまた、なおかつ、最もひきょうな武器だとも言われているそうであります。いずれにいたしましても、将来に向けては、とにかくこれを全廃に向けて何とか努力をしていただきたい。これは私の希望でありますけれども、ぜひお願いをしたい、かように思っております。  また本題に戻らせていただきたいのでありますけれども、今度は文教関係、文部大臣の方なんですけれども、実は、今回の法案において、各省庁キャップがはめられておるわけでありますけれども、一つだけ、いわゆる科学技術振興費、これは五%の伸び率を超えないように、また平成十一、十二年には伸び率をふやさないように、要するに、ふえてもいいというふうな条項が入っているわけであります。  これはあくまでもこの科学技術振興費のみなんでありますけれども、この科学技術振興費、大変な額でありますけれども、いろいろなところで、例えば科学技術庁であるとか文部省であるとか、そしてまた、もちろん通産省、農林省、あらゆる省庁で科学技術費というのは使われておるわけであります。私は決して、どこの省庁がいいとか悪いとか、そういう問題ではなくて、この間の「もんじゅ」の事故を見ておりまして、果たしてこのままでいいのかなというふうな疑問を感じたわけであります。  例えば、この間の「もんじゅ」の問題で、予算の中で、廃棄物に使われる予算が全く違うところで使われておったとか、こんなにたくさんあるわけですね、資料が。資料というか、新聞に出たわけであります。科学技術庁も、はっきり申し上げまして、原子力政策というのは非常に重要なことでありまして、例えば、二〇一〇年には発電の四二%を賄わなくてはいけない、そういう重要な政策でもあるわけであります。それを考えたときに、もっともっと真剣にやってもらわないとまずいのではないのかなとつくづくと感じたわけであります。  もちろん科学技術庁はほかにも、要するに宇宙もありますし、海洋もある、あらゆることに手を伸ばされておるわけでありますけれども、これは仕切り直しで、しっかりと原子力について立ち向かっていただきたい。そして、将来の国家国民のエネルギー政策のために、何としてでも襟を正して頑張っていただきたいと思いますけれども、科学技術庁長官意気込みをひとつよろしくお願いします。
  54. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 ただいま佐田委員から当庁の原子力政策の進め方につきまして大変厳しいおしかりを受けまして、大変恐縮いたしております。  私、先ほど浅野委員の御質問にもお答えをいたしましたけれども、原子力エネルギーというのは大変我が国の将来にとって重要でありますから、やはりこれは何としても国民の理解をいただいて、私は退いてはいけないと思うのです。そのためには、安全に対する国民の信頼をやはりもう一回再確立する必要があると思っております。  そのためには、安全と推進の両輪、車の両輪が必要でございますけれども、当庁の事業として、推進中心になっているのはいわゆる動燃、核燃料サイクルの確立に向けて中核的な組織になっているのはいわゆる動燃でございます。ここにいろいろ不祥事がございました。私は、八月一日に識者によりましてこの改革のレポートもいただいたところでありますけれども、うみを出し切って、そして新しい組織につくりかえていく、今その準備を進めております。  私は、おしかりを正面から受け取りまして、全力を挙げてやらせていただきたいと思っております。
  55. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 大変そういう意味では意気込みがあって、これからもぜひ綱紀粛正というか全力で取り組んでいただきたい、かように思っております。  私が何を言いたいのかというと、経費節減ということがやはり財革の主眼でもありますから、その中におきまして、例えば基礎研究的なもの、そしてまた応用研究、開発研究、こういうものがあるわけでありまして、原子力であるとか海洋であるとか、そういうものについては、やはりこれは応用研究であるわけであります。  私は、実は委員長の出身地にあります広島大学に行ってまいりました。ここは最先端の放射光というのがあるのです。  これは、難しいことは私にもわかりませんけれども、いわゆるエネルギーを利用して、昔は、例えば鉄を切削するとかそういうことによって機械をつくったりしていた。今は違うのです。原子を切削していくのです。例えばエネルギーを当てると構造の中から原子が離れるとか。これは、それをどういうところに応用するかというのは応用研究ですけれども、なぜそれが切れるのか、これを研究するのは基礎研究であります。こういう基礎研究を、やはり各省庁でやるのではなくて、これはもうぼつぼつまとめていった方がいいのではないか、こういうふうに思っているのです。  私は、応用研究はどんどんやるべきであろうかと思います。というふうに申し上げるのも、私は、発想的に一番大事なことというのは、例えば日本でもノーベル賞を出しております、江崎玲於奈先生やら福井謙一先生やら、そういう先生方のことを考えたときに、やはり若いうちから、新しい発想のできる二十代から基礎研究をしっかりとやっていかなくてはいけないのではないか。逆の言い方をするならば、基礎研究というのは若い頭でやってもらわなくてはまずいのではないか、こういうふうに感じておるわけであります。  そういうことを考えますと、おのずと仕切りというものは、文部省と例えば科学技術庁、通産省、農林省、あらゆるところがありますけれども、そういう中でしっかりと大臣の皆さん方にも仕切っていただきたい、そしてむだをなくしていっていただきたい。これは答弁は要りません。  もう時間が近づいてまいりました。  それともう一つですけれども、最後の質問になろうかと思いますけれども、私は実は、文部政務次官のときに神戸に行ってまいりまして、あの例の不幸な事件がありました。  私は、その中で一番感じたことは、やはりこの間のいろいろな議論の中で、例えば少年を保護するから少年法の問題があるのだということで、少年法の問題があったり、そしてまた、悪質なビデオであるとか、そしてまた図書の問題については表現の自由がある、そういう議論をしていっても百年たっても何の結論も生まれないわけであります。ここはやはり政治がしっかりとした決断を出していかなくてはいけないのじゃないか、私はこういうふうにも思っているわけであります。  きょうは財革法の議論でありますけれども、私はこの中でこの教育改革、文部大臣は、今回中教審の諮問の中で、教育委員会制度というのは物すごく数が出てきているのです、はっきり言って。私はいろいろな議論の中で、いろいろな問題点の中で、例えば教科書問題もそうであります、これを言ったらもう切りがありませんけれども、あらゆることについて根っこは教育委員会制度にあるのじゃないか、こういうふうに思っているのです。  そして、私はその中で一番感じたのは、やはり本来各地域の教育委員長、教育長、学校、こういうふうな連携を、決してこの制度を変える必要はないのです、地方分権を進めて結構です、ただ、この制度をしっかりと確立していかなくてはいけないのじゃないか、こういうふうに思っているのです。  今皆さん方に思い出していただきたいのは、では、教育長と教育委員長はどういう立場か、教育委員長は選挙の論功か何かでなっている人なんかもいるわけであります、はっきり言って。それでは困るのであります。私は地域の文部大臣だと思っております。そういうことを確立していかなくては、やはり本当の教育の向上というものは望めないのじゃないかと私は思っているのです。  もう時間がありませんけれども、この間神戸に行った一番の感想は、例えば学校の中で、いじめであるとか登校拒否であるとか、子供はもうまさに救いを求めています。二十一世紀を担う子供たちは救いを求めているのであります。  そういう中において、学校の中でいろいろな対策を練る、結構です。そして、学校に権限を与える、結構です。それ以上の事件が起きそうになったときにどうしたらいいのか。これはやはり教育委員会であります。教育委員会が中心になって決断を下せる。そしてまた横の連携、例えば警察であるとか総務庁であるとか厚生省であるとか、あらゆるところの横の連携もしっかりととって対処していく。そして、学校とも連携をとっていく。そのトップは教育委員長であります。決して制度を直す必要はないのです。今ある制度をしっかりとしていく、こういうことが私は大事じゃないかと思っております。もう時間はありませんけれども、文部大臣、いかがでしょうか。     〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  56. 町村信孝

    ○町村国務大臣 神戸の御体験に基づく貴重な御指摘をいただきまして感謝をいたします。  御指摘のように、来年が教育委員会制度ができて五十年目という一つの節目を迎えるわけでございまして、そんなこともありまして、生き生きとした学校づくり、その基礎をなす教育委員会制度、これをこの時点に立って改めて見直していきたい、こういうことで、先般、中央教育審議会に諮問を出したところでありまして、早いものであれば来年の春ぐらいにはもう答えをいただこうかな、こう期待をしているところであります。  その中の一つの大きなポイントが、今まさしく佐田委員指摘のとおり、いい教育長さん、いい教育委員の方々、そしてその中から立派な教育委員長さんが選ばれるということは非常に重要なことでありまして、余り文部大臣の口から言い過ぎてもいけないかもしれませんが、ややもすると、どうしてあの人がというような方が、現実に教育委員長、教育長などに選ばれているケースも率直に言ってなしとはしない、私の地元を見ていても、そんな気がいたすわけであります。  その辺を考えましたときに、いかに立派な人材を確保するかということを私どもとしては大いに考えていきたいし、そして文部省も余り細かいことに口出しをしない。そして、都道府県の教育委員会も余り市町村教育委員会に口出しをしない。できるだけ市町村教育委員会と学校の校長さん、教頭さんを中心にした、教育現場がよりよいものになるように、そういう形での大きな地方分権の流れに沿った教育改革を進めていきたい。これが私どもの教育改革一つの大きな柱である。こんなふうに考えておりますので、ひとつ御指導賜りますようにお願いいたします。
  57. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 終わります。
  58. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 これにて浅野君、佐田君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  59. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 新進党の鈴木淑夫でございます。  私は、昨年十二月の臨時国会予算委員会において、あるいは本年一―三月、通常国会予算委員会、あるいは税制特別委員会等におきまして、九兆円の国民負担増及び公共投資の落ち込みを含む本年度予算案を成立させ実施に移すならば、間違いなく日本経済は本年四月以降停滞局面に入り、深刻な事態に直面するであろうということをるる申し上げました。  私の判断するところ、日本経済は私の予測どおり四月以来停滞の局面にあり、この先の予測についても民間の調査機関は深刻な予測を出しております。  しかし、この委員会は、財革法と略称させていただきますが、財革法の審議の委員会でございますし、別途景気の集中審議の機会もあろうかと存じますので、本日は、景気ではなくて、ここに出ております財革法案を成立、実施させた場合に、日本経済に中期的に何が起きるかという点を中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。  さて、最初に確認をさせていただきたいことがございます。  それは、財革法第四条二号によりますと、来年度、九八年度から最終年度の一年前の二〇〇二年度までの各年度特例公債赤字国債を発行する場合にはその額を縮減していく、つまり赤字国債は年々削減していけということが書いてあります。  これに関連して質問いたしますが、年々削減していかなければいけないのは赤字国債だけでしょうか。それとも、この法の精神は、財政赤字、この法律ではSNA上の一般政府の投資貯蓄差額として定義されておりますが、この財政赤字をも年々削減していくというのがこの法の精神でしょうか。その点を、確認のためにまず総理にお伺いしたいと思います。
  60. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 財政構造改革推進に関する特例措置法案、これにおきましては、当面の目標として、平成十五年度までに国及び地方財政赤字GDP比を三%以下とする、平成年度から平成十四年度までの各年度において特例公債発行額の縮減を図りながら、平成十五年度までに特例公債依存から脱却するなどを規定をいたしております。ですから、この法律案そのものにおきましては、国及び地方財政赤字GDP比三%以下という目標に関しまして、その道筋を明示的に示しているものではありません。  しかし、同時に、これはもうプロ中のプロである議員よく御承知のように、財政赤字の対GDP比三%以下という目標達成することが一朝一夕にできることではない、当然のことながら毎年の縮減に努めていく必要がある、これは私は議員の提起されたとおりだと思います。
  61. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 確認させていただきました。ありがとうございました。  この法の精神は財政赤字そのものを年々削減するということであって、赤字国債は削減するが場合によっては建設国債を発行して後で統計が出てみたら財政赤字が拡大していたということがあってはならない、そういう姿勢で今後中期的に財政政策の運営をやるということだということを今確認させていただいたわけであります。  さて、そこで、財政赤字を中期的に削減していくことがなぜ必要なのかという点についても確認をしたいのでありますが、本会議における趣旨説明あるいは御答弁の中で、あるいは昨日のこの委員会審議の中で、総理並びに蔵相がおっしゃっていた理由の中で最も基本的な理由というのは、中長期的に民間経済の活性化を図るためだということと、後世にツケを回さないためだ、この二つが一番大きな理由であったというふうに思います。  そこで、この二つについてもう少し突っ込んで質問したいと思います。  中長期的に民間経済を活性化するためだというのは、別の言葉で言えば、短期的には財政赤字を削減しても民間経済は活性化しない、逆に、ひょっとしたら民間経済をさらに落ち込ませてしまうかもしれないということを含んでおりますか。必ずそういう意味で中長期的、中長期的とおっしゃっておるのでしょうか。総理、いかがでしょうか。
  62. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、これは申し上げるまでもないことでありますけれども、我が国の財政の現況というものをぜひお考えをいただきたいと思うのであります。主要先進国中最悪の危機的状況にある、これは議員も御異論のないところでありましょう。その上で、現在の財政構造というものをこのまま放置したときを考えていただきたい。これは、経済活力を必ず低下させます。そして、将来に背負い切れない負担を残していくということも間違いないでありましょう。  昨日も御議論がありましたところでありまして、今、我が国の金利水準は、御承知のとおり最低の状況でありますけれども、この状況を続けていくときに、我々はクラウディングアウトを心配しないでいいか。私は心配をいたします。いたします。そして、短期的に確かに厳しい部分があることを私は否定をいたしておりません。これはたしか本年の予算委員会でありましたか、あるいは昨年御議論をしたときでありましたか、消費税の税率の引き上げというもの、特別減税を廃止した場合にそれは影響は出ないか。私は四―六を特にあのときは心配しておりましたけれども、影響はあり得ることを否定していなかったと思います。  そういう厳しい状況の中でも、私は、将来を考えましたとき、これだけの厳しさを持った財政構造改革法案というものを御審議をいただき、成立をさせていただき、それに基づいて今後の予算編成等に臨んでいく、その厳しさは必要だと考えております。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理の今のお話の大前提に、このまま放置しておけばというお言葉があるんですね。今、だれもこのまま赤字を放置しておこうなんと言っている党はないと思うのですね。この赤字を抑えるために歳出の構造改革を実施して、むだを排除して、歳出を抑えていこう、あるいは、一番金を食う社会保障関係の制度をいじってまでも歳出の伸びを抑えよう、みんなそういうことを考えているわけで、このまま放置しておこうなどとはだれも思っていない。  しかし、総理が、このまま放置しておけばクラウディングアウトが起きる、つまり、財政赤字民間の資金を吸い上げてしまう、あるいは民間の貯蓄を全部とってしまって民間の投資に回るべき資金、貯蓄が足りなくなる、これがクラウディングアウトですから、そういう事態になるかもしらぬということを言っておられます。  そういう事態というのはどういうときに出てくるかといいますと、民間の投資が今のような沈滞した状態ではなくて、活況を呈して、民間主導型で経済発展し始めたとき初めてそういう状況が起きるわけであります。  現状は、民間に回る資金を赤字がとってしまうどころの話じゃない。こんな大幅な赤字を出して貯蓄を吸収し、民間の資金をとってきても、なおかつ資金は余ってじゃぶじゃぶし、貯蓄は余ってじゃぶじゃぶして、それが大幅な経常収支の黒字という形で海外へ出ていっているわけであります。民間では設備も労働力も余ってしまっている。  今、GDPベースのいわゆるデフレギャップは、エコノミストによっていろいろなことを言いますが、七、八%は間違いなくある。まあ七、八%は能力を余している状況です。こんなときにクラウディングアウトは絶対起きないし、この七、八%のギャップを埋め切ったときに初めてクラウディングアウトの議論が出てくるのですね。総理は、今のやり方で、この七、八%のデフレギャップを埋め切るほどの民間支出主導型の経済成長が二〇〇三年に向かって起こると思っているのですか。  今、日本の潜在成長率というのは、エコノミストの間で意見が分かれますが、九一年ごろまでの高度成長が終わった後の平均成長率四%は無理だろう。高齢化が進んでおります、少子化が進んでおります、時短も進んでおります、これは無理だろう、だけれども三%ぐらいの力はあるでしょうね、二十一世紀に入ったらもう少し下がってくる、この辺が平均的な意見なんですね。  ところが、どうですか。九二年度から昨年度までの平均成長率はたったの一・四ですよ。本年度については今や、私の手元に民間の十三機関の平均値があるけれども、わずか〇・六%成長だろうと言っている。もしこれを入れますと、この六年間の成長率の平均というのはわずか丁二%になってしまう。  三%の力を持った経済が六年間一・二で来たら、毎年一・八の力を余しているのですから、累計一〇%以上の力を余している、一一%ぐらい力を余していることになるのですね。この一一%のうち、まあ最初のうちはインフレギャップがあったとして、引いていっても、もう七、八%とにかく力が余っている、こういう状態から今スタートするのですよ。これを埋めていったら、三%プラス毎年一%デフレギャップを埋めて四%成長したって、二〇〇三年までいってクラウディングアウトが起きるような逼迫状況というものは出てきません。  ですから、私は、民間経済の活性を呼び起こすため、よみがえらせるために、あるいは、逆に言って、クラウディングアウトが起きるに違いないから、今総理がおっしゃった御見解は、クラウディングアウトが起きると総理は信じておるとおっしゃいましたが……(橋本内閣総理大臣「心配がありますと」と呼ぶ)では、可能性があるという意味でしょうか、私、今申し上げた数字からいって、二〇〇三年まで、クラウディングアウトを起こそうと思ったら、四%以上の平均スピードでこの先六年間成長しなければ起きませんよ。ですから、そういうときに、この、民間市場経済を活性化するために今急いで赤字を削減するんだというのは、論理として成立しない。  念のために申し上げておきますと、先週十五日、日経新聞の「経済教室」に、これは理論経済学の先生ですね、東京工業大学、大阪大学教授小野先生が、全く同じことを言っておられます。GDPギャップがあって労働力や資本が遊んでいるときに、民間の市場経済を圧迫することを恐れて財政赤字を削減するというのはとんでもないことだ、むしろ逆に、財政赤字の若干の拡大があっても民間市場経済を活性化するための財政施策を講ずるのが正解である、これは何ら後の世代に迷惑をかけるものではない、むしろ、今の世代に元気をつけることによって、この先の日本経済、ひいては後の世代のためにもプラスになるよということを書いております。  ですから、私は、中長期的に民間市場経済に活性を取り戻すために今から財政赤字を削減するという論理は、これは経済学的には成立しないと思っていますよ。特に今のようにデフレギャップが七、八%もある経済を前にして、二〇〇三年を目指してやろうというときにクラウディングアウトの心配をするなんというのは、全く見当違いだと思います。  次に、もう一つの理由ですね。ツケを回すというお言葉を総理も蔵相もしばしばお使いになります。  ここで、ツケというのは、日本語では普通借金証文のような話ですね。ですから、ひょいと聞くと素人は、ああそうか、借金証文を後世の人に回すのかと。今の世代の我々が後世の人に借金証文を回して、それで、借金でもらった資金で何か僕たちはいいことをして、おまえたち、この借金を返せよと言っているのかというふうに思ってしまうのですね。  そういうニュアンスの言葉をしばしばお使いになりますが、私はこの際、総理、ツケを後世代に回すというのは具体的に何を指して言っておられるのですか、お答えいただけますでしょうか。
  64. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 みずからプロと任じておられる委員に対して、完全な素人の私がお答えをすることが、逆に非礼に当たるのかもしれません。  しかし私は、逆に、公債残高の累増による長期金利の上昇ということも考える必要はあるんだと思います。そして、いろいろな議論は学問的に成立するでありましょう。しかし、クラウディングアウトを例に引いたのがけしからぬ、そんな状況ではないと言い切られれば、さようでございますかと学問の世界のこととして授業を受ける、そういう思いで伺わなければならないと思いますけれども、私は、実体経済としてこれ以上、国の債務、地方の債務も含めて、公債に依存する度合いというものは減らさなければならない時期が既に来ておると思っております。これが間違いであって、まだ公債はしばらくふえてもいいんだとおっしゃるのでありますなら、これはまた別な議論でありましょう。  そして、昨日も答弁の中で引用させていただいたわけでありますけれども、私は、ツケという言葉については、公債残高の累増による将来世代の租税、社会保険料の負担が背負い切れなくなるほど増加してしまう状態というものを心配している。そして同時に、現実の問題といたしましても、既に利払い費の増によりまして政策的な経費が圧迫されております。これが一層利払い費が増大することによって、政策経費が一層圧縮される、制約される、本当に必要な分野に十分な投資を、あるいは十二分な措置を行うことが困難になるような事態、これは避けなければならないと考えております。  このようなことすべてを含めて、ツケという言葉で私は表現してまいりました。
  65. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今総理は、まあ一種のツケの圧力で長期金利が上がることを心配しているとおっしゃいましたが、長期金利の上昇というのは、クラウディングアウトが起きたときに起きるんですよ。貯蓄・投資のバランスから考えて、GDPのデフレギャップから考えて、当分、公債残高あるいは公債発行額の圧力で、つまり政府が資金を余りとっちゃうために、民間に資金が回らなくて資金需給が逼迫して長期金利が上昇するなんていう状態は起きないのであります。  今はそれどころか、きのうも同僚の野田委員が御指摘申し上げましたが、大恐慌のアメリカのときも瞬間風速でしか出なかった一・八%という長期金利の水準をさらに下回って、日本では今一・七%台です。これは今世紀の最低の長期金利であります。それぐらい資金が余っちゃっているのです。それはそうです。七、八%のデフレギャップがある状態、そして余っちゃった資金が海外へどんどんどんどん出ていって、経常収支の黒字拡大、円安が進んでいる状態では、長期金利なんて上がりようがない。  また、長期金利というのは将来を見て動きますからね。今の需給だけじゃない、将来資金需給はどうなるかなということも見て動いています。それが今世紀世界じゅう例のない最低水準に下がったということは、今世紀世界じゅう例がないほど、今の日本人は将来に対して悲観的だということですよ。つまり、将来ずっと見たって、そんな長期金利が反発するような資金需給の逼迫は起きない、そんなに経済に元気はないと見ているからなんですね。  これは一つ指摘申し上げた上で、ツケの話に戻ります。  ツケという言葉は、今総理は大変賢明なお答えをされました。借金証文だとは一言もおっしゃらない。いろいろな厄介なことを将来に持ち越す、それ全部ひっくるめてツケだとおっしゃったですね。そういう意味のツケであるなら、これはある意味で正しい説明だと思います。  御承知のように国債というのは国の借金証文ですが、申すまでもなく、その国債を持っている国民にとっては金融資産です。金融資産と国の借金証文、資産と負債が同額で後世に伝わっていくのですよ。別に現在の世代が後世から金を借りているわけではありません。だから、ツケという言葉は非常に誤解を招く。この言い方はちょっと問題の焦点をそらす言い方だと私は思います、はっきり言って。  そして、この資産と負債が両方後世に……(発言する者あり)大蔵大臣にはこの後お伺いいたします。資産と負債が両方後世に行ったときにどういう厄介なことが起きるか。どういう厄介なことが起きるか。これは確かに厄介なことは起きますね。資産と負債、同額でいきましても、この元利金払いのためにはやはり税金で取ってこなきゃいけないですから。そうすると、税金で取ってきて元利金払いをすることによって、大量の所得移転が起こります。その所得移転は、予算上は国債費という格好をとってきます。だから、国債費がふえてくると他の歳出を圧迫をしてくる。この手のことが起きるのですよね。これがツケとおっしゃっていることの正体なんです。  ですから、同じこの日経の「経済教室」にも書いてありますように、これは要するに手間暇の問題だと言っているのですよ、手間暇の問題。あるいは一種の政治的なコストなんですね、将来の世代の。将来の世代が、税金をたくさん取ってきて所得移転をしなきゃいけない。これは政治的には厄介なことですよ、税金を取るんですからね。  ところが、実際は、税金を取られた方は文句を言います。しかし、それで元利金を払ってもらった、国債を受け取ってその元利金を払ってもらっている国民の方は当然だと思っていて、別に大して喜ばないのですよ。そうすると、税金を取られた方だけが文句を言って、お金をもらった方は黙っているものだから、政治的には厄介なんですよ。そのことを指しているのですね。そういう政治的に厄介なことを後世に回しちゃいけないよ、できればここで解決した方がいいよという意味で言っているわけですね。  蔵相、私のこの解釈でよろしゅうございますか。ツケという言葉は借金みたいに、今の世代と将来の世代の間の貸借関係みたいに聞こえて非常に誤解を招きます。今の私の言った意味で、手間がかかる、政治的に厄介なことを後の世代に押しつける、そういう意味ですね。本来、お金のツケの話じゃないですな。それでよろしゅうございますか。
  66. 三塚博

    三塚国務大臣 鈴木委員経済学博士、まあ鈴木イズムでツケの分析をされておるのかなと。(鈴木(淑)委員「大学の先生の理論です」と呼ぶ)ですから大学の先生の理論も、そういうことでツケも借金も同じであるが、いずれにしても財産である、こういうことであります。財産も、許容される財産のうちは暴れません。それは効果を出します。  私は、わかりいい形で申し上げますと、国鉄再建がなぜ必要であったか。あの当時、国鉄再建に民営・分割の手法を取り入れることに、我が党も全体も、一部を除いてネガティブでございました。国民各位も、公共交通である国鉄が赤字を背負うことは当たり前、各国はその分はタックスから援助をしておる、公共交通というのはそういうものだ、こういうことで、再建案は数次に及びましたが、すべて失敗をいたしました。  そういう中で、本件を総理も担当、行財政調査会長、私は再建小委員長で担当したわけでありますが、究極の判断をいたしましたのは、収入で利払いができなくなったときであります。収入というのは、人件費を払い、維持管理をし、安全運転ができますように保全をすることであります。ところが、旅客収入はそっくり利払いにしても足ちなくなりました。利払いのために借金をすることになりました。まさに破産であります。  ところが、前段申し上げました、国鉄は国家である、公共交通である、国民のために動いておるのであるから不足分は税金で払えということだと。そこで、行政改革のきわめつけの、これはフロントランナーになったと私は今認識をいたしておりますが、民営・分割という手法をここに、土光臨調、亀井委員長、加藤寛先生との連携の中で取り入れさせたところであります。最終的には大議論が国会でも行われました。  そして、一部の、それでもだめだと言い続けたところもありましたが、これが成功いたしまして、今、年間、国税、地方税を含めて、六社、二千五百億円を貢献できるところまで来ました。昔日の国鉄の面影は全くございません。ありがとうございます、またお乗りください、何か不都合がありましたかと、こういうよみがえった鉄道事業であります。  まさに、今回の我が国の現状は待ったなしと私どもが申し上げておりますのは、全部合わせますと、国会論議において隠れ財産、隠れ借金――財産と言うんです。今の経済理論からいけば財産とも言うんです。(発言する者あり)資産。だけれども、それは違うんです。隠れ借金。皆さんが答弁。それを入れますと、今日ただいま五百二十一兆、こういうことになります。  これは、利払いをしていかなければなりません。五百二十一兆の利払いは、クーポンで一番高いのは七・八もあります。今日二・五であります。平均をいたして計算をいたしますと五・二であります。五百二十兆であれば二十六兆円の利払いが行われなければなりません。我が国一般会計における分は二百五十四兆であります。普通国債、いわゆる建国、特例公債を入れての二百五十四兆ということになります。それに地方を入れまして四百七十六兆になり、それで、隠れ借金と言われる四十五兆、処理を要する措置、これを入れて五百二十一兆ということになりまして、この利払いが重くのしかかってきましたこの状態は、国鉄のあの状態よりも数十倍の圧力で私どもにそのメッセージを送ってきているわけであります。危機警報を送ってきておるわけであります。  こういう点で、この点をやり抜くということにさせていただいたわけでありまして、国家再建ということになるわけで、自律経済に向けて行財政改革、六改革を六頭立てでやらざるを得ないという決意も、まさにこの危機的状況に到着をしたからにほかなりません。どうぞ、それをやり抜くことによって自律経済が確立をされていくわけでございますから、先生の学理理論は学理理論として、学説は、顔が違いますようにたくさんあるものであります。私どもは、実物経済政治、行政の責任という意味で、総理のもとで今日まで半歳にわたる大議論の結論として財政再建方向をつくらさせていただきました。
  67. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今、蔵相は思わず大変おもしろいことをおっしゃったのですね。隠れ借金と言いながら、同時に隠れ財産、隠れ資産とおっしゃった。それは非常に正しい表現なんですね。国鉄の隠れ借金といえども、それを賄っている公債を持っている国民には金融資産なんですね。だけれども、問題は、それが大きくなり過ぎて、さあ元利金を払おうというときは税金で取ってくるしかないから、これはえらいことですよと。それはそのとおりで、さっき私もそういうふうに申し上げた。国鉄の例を引かれたのは、蔵相は大変適切なことをおっしゃったと思うのです。  問題は、借金が悪いんじゃないのですよ。借金した使い道が悪いのですね。使い道が悪い。あの国鉄の赤字を埋めるようなそういう借金でありますならば、これはもう後になって、本当に、元利金の支払いのための増税で苦しんでしまうわけであります。ですから、借金が何でも悪いと言わんばかりの言い方は、これはいけませんね。借金が悪かったら金融業は成立しません。借金が悪かったら国民の貯蓄は行き先がありません。だれかが貯蓄を借りてくれなきゃ、貯蓄・投資はバランスしません。だから、借金が悪いという言い方は悪い。借金は、問題は何に使っているかなのですね。  かつて高度成長時代、日本企業は借金しまくりました。オーバーボローイングといって、あんなに借金していいのといってさんざん批判された。しかし、あの借金で日本企業は近代化投資をして、とうとう欧米の水準に追いつき、追い越した。それができた後、あの借金は返済してしまったから、今の日本企業、特に大企業、今またちょっとバブルの崩壊で変なことになっていますが、その直前までの日本企業の財務状況は極めて健全だったのですね。だから、借金が悪いんじゃないのですよ。使い道がいいか悪いか。  これは、国についても全く同じであります。ですから、今むだなところへ使っているじゃないかという意味で、歳出構造改革、これもこの法案に入っております。もっともこれ、歳出の単なる繰り延べにすぎないと私は思いますが。私ども新進党は、構造改革をして歳出を削減していこう、これはいいんですね。そのことによって借金を絞るのはいいんですが、借金そのものが悪いわけではありません。  さて、今蔵相は大変長々と私の質問と違うこともお話しになりまして、大分時間をとられましたが、最後のところで、こんなに国の借金が多くなってしまったら、これは片っ方で国民の資産かもしらぬが、元利償還のための所得移転、これは大変なことだから削減したいと。それは私は中期的に削減していかなきゃいかぬという点は賛成です。だから、例えば二〇〇三年に赤字をGDP比三%以下にしましょうという、中期の目標としてそういうことを掲げることについては、私は必ずしも反対じゃないのですよ。  ただ、そういうことがあるからといって、やみくもに、今日本経済状況がひどく悪くなっているときに、何が何でも毎年毎年赤字を減らしていくんだ。私最初に確認させていただきましたね。何が何でも毎年毎年赤字を削減していくんだ、こういう単年度主義的な直線的なやり方で、一潟千里に二〇〇三年の三%に向かって走らなきゃいけないのか。  実は私、先週金曜日に、東京大学の財政学の正教授井堀先生と議論をいたしました、個人的に。これは一瀉千里にいこうとしておるが、学問的に考えて、経済学的に考えたら赤字を減らすスピードとかその経路というのは何に依存しておるか。井堀教授の答えは、これは三つのことに依存をしておるというわけであります。  一つは、将来世代というのが、税金で元利金を払う、そういう所得移転をする能力といいますか体力といいますか、そういうものを今の世代よりも余り持っていないとすれば、これは急がなきゃなと。恐らく総理も蔵相もそういう感じをお持ちでしょう。高齢化、少子化が進んでいくのだから、それに社会保障関係の支出もふえるのだから、何とか今のうちにこれを減らしておかなきゃいけないなと。これは私もそう思います。しかし、井堀教授は、これは三つの主要な条件のうちの一つだと言っているのです。  あと二つは何かといいますと、二つ目は、金利コストだと言っています。金利が低いときに急ぐ必要はないと言うのですね。金利が低いときというのは、さっき言ったように、クラウディングアウトどころか民間で資金が余ってしまう、資源が余ってしまっている、民間経済が沈滞してしまっているときなんだ。そんなときに急ぐ必要はないですよ。財政の金利負担というのは極めて小さくなってしまっているんだから、そんなときに急ぐ必要はないですよ。  三番目に井堀先生が言ったことは、そういう所得移転は予算の中では国債費という格好をとる、国債費によって圧迫されている一般歳出の便益性といいますか公共性といいますか、その必要性といいますか、これによるというわけですよ。ところが、先生いわく、今の歳出はむだを相当含んでおる、こんなむだを含んだままの歳出の余地を広げるために、日本経済が沈滞しているときに慌てて赤字を切る必要はないというわけです。  だから、井堀先生の三つの条件のうち、最初だけは、これはちょっと赤字削減を急がなきゃいけないかなということであり、時々御答弁の中でおっしゃっていることですが、あとの二つ、金利がこんなに低いときに慌てるやつがあるかということと、もう一つ歳出のむだを省くことが先だと。国債費を慌てて削ろうとするよりも、まず、それによって余地をつくってやろうと思っている一般の歳出の方を問題にしなさいよ、国債費削減より一般歳出の方が先ですよ、特に今みたいに低金利のときに。これが井堀先生の結論であり、私は、議論しながら、ああそうだなというふうに思いました。  だから、長い目で見て、蔵相あるいは総理も非常に懸念をされている、この租税負担で膨大な元利金払うのは大変だ、将来世代がそれやるのは大変だというのは、いいですよ、中期的には。だけれども、経済学は、同時にそこへいく経路についての議論をしているんですよ。  今みたいに民間経済が沈滞し切っちゃって今世紀最低の金利になっているようなときに、慌てふためいて来年度財政赤字を大きく切るようなことをすると、かえって、最初に議論したことですが、民間市場経済の活性が失われてしまう。そうしたら、何のために財政赤字削減しているのか。二つの理由のうちの一つですね。民間市場経済活性化するために赤字削減しているんだと言っているのに、それが逆に出るわけですから。最初に私、だから申し上げた。中長期的に民間経済を活性化するためであるとおっしゃるのはわかるが、それは裏を返せば、短期的にはうっかりすると民間市場経済を非活性化する、沈滞させちゃうんですよね。そこのところを十分お考えいただきたい。  したがって、私は最初に確認したこととの関連で申しますが、この法案で二〇〇三年の赤字GDP比三%以下という目標を掲げるのは私は必ずしも反対ではないが、途中を縛っている、年々赤字を削減しろという形で途中の財政運営を縛っている、これは危険千万であります。こんなことをして、もしこの先景気がもっと落ち込んでいって、来年度、この法案に書いてあるように公共投資七%カット、これは一般会計だけですよ、もし全体七%カットということをされたら三兆円落ちるわけですからね。そういう調子で、来年度、この法案どおりのデフレ予算を強行してごらんなさい、えらいことになります。これはえらいことになったと思っても、この法案が成立していたら、政府は手足縛られているんですよ、財政運営という面で。何でこんな危険なことを冒すんですか。  繰り返して言うが、目標はいい。しかし、その途中を縛るような、こんな無責任法案ないですよ。危険千万。総理、どう思いますか。こんな危険なことをして、後の政府財政政策の運営まで縛っていいんですか。これはえらいことですよ。代々自民党内閣でおやりになると仮に仮定したって、この後の内閣はえらいことになりますよ、これで縛られたら。  こんな危険な縛りをかける法案は、私は断固として反対してここでつぶしたい。そう思われるなら、自民党先生方も一緒につぶしてもらいたい。これは危険千万です。いかがですか、総理
  68. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 恐らく私はひどく頭が悪いんだろうと思うんですが、先ほど議員が展開されました、公債が一方で国民の資産だ、だから将来世代の負担としてとらえるのはおかしいという御議論については、実は私はどうしてもそこのところが納得がいきません。それは、将来世代における個人間の不公平、これが助長されるということは言えるんじゃないかと思います。  同時に、確かに、現役世代が、赤字公債ではありません、建設公債で資産を残しました場合、その資産を後の世代の人も共有するという意味で資産の形で残っている、ここは私は先生の議論を否定するものではございませんが、同時に、そのために発行した公債の重圧、それを、税の形になりますか何の形になりますか、その時点で固定することはできないかもしれませんが、いずれにしても返済の責任を負うという意味では後世代の負担でありましょう。しかも、それはその世代が選択した結果支払っていくべき負債ではなく、好むと好まざるとにかかわらず、さきの世代が資産として残したものに対する返済でありますから、この点にも私は問題があるように思います。  ですから、もし議論を変えた角度で、そうした状況をつくらないためにも、そして公的債務を拡大しないでも民間経済が立ち上がれるようなより積極的な、例えば新たな業の創造に向けた施策を講じろという御指摘でありますなら、私はこれは素直に拝聴をいたします。  そして、現在政府が、今この財革法は財革法として御議論をいただいているわけでありますけれども、規制緩和等を進める中においてまた新たな業が立ち上がるための研究開発に対する投資は、この財革法の中においても、議員既に御承知のとおり、抑え込んではおりません。それだけのものが伸びていき得る素地はつくっておるわけであります。ですから、そうした努力をしろという御指摘でありますなら、私はこれは喜んで議員の御指摘をちょうだいをいたしたいと思います。  同時に、その道筋を必ずしも縛っているものではない、しかし、一朝一夕にいきなりどおんと縮減ができるわけではありませんから、その意味では毎年の縮減に努めていく必要があるということ、私は確かに先ほど御答弁を申し上げました。そして、その手法として、総量の部分でキャップをかぶせ、それぞれの施策が量的な縮減を達成するためには、それなりに今の施策を見直さなければならない素地もつくってまいりました。  これは今さら私が申し上げることではないと思うのですけれども、バブル経済の崩壊の後、我が国は景気対策として何回か大型の補正予算を編成してまいりました。そして、その大型予算を編成するために、そのときの資金を公債という手法によって賄ってまいりました。その結果として、私は景気を下支えた効果はあると思いますけれども、公債残高は累増している、急増している。これはもう議員もよく御承知のことでありまして、現在の財政状況を危機的なものとしてとらえるそのポイントも、まさにここにあるわけであります。  そして、私は、少子・高齢化というものあるいは高齢社会というものを、必ずしも悲観的にとらえるばかりがいい方向だとは決して思っていません。むしろ、高齢者が増大をしても、その方々が御自分の体力が許し、気力が許す限りにおいて働き得る、生産活動に参加し得るような状態をつくり出すことが大事だと思っていますけれども、そのためにも、実は、我々は仕組みを変えていかなきゃならない問題を多数抱えているわけであります。そして一少なくとも少子社会というものは、若年労働力の低下だけは、これはだれが否定することもできません。  そういう状況の中で、現在のシステムを残します限りにおいては、歳出の自然増というものをどうしても計算の中に加えざるを得ません。そのためには、当然ながら、後世代においても背負える仕組みというものを、安定的に確保できるような仕組みをつくる必要性があることも、これはもう議員、今の御意見の中にも触れられたとおりであります。  しかし、このままの財政構造というものを放置したらどういう状態になるんでしょう。我々は、経済活力を取り戻すために、経済構造改革の視点からさまざまな努力は一方で当然ながらいたします。昨日来の御審議の中で、御党の質問者の方からも提起をされている問題もあります。我々は、財政構造改革というものが先延ばしのできるものだと思ってはおりません。いろいろな努力の手法というものは、なおお知恵を拝借する部分もありましょう。そして、お互いに協力しながら努力をしていかなければならない問題点もありましょう。私は、議員の御意見は議員の御見識として拝聴いたしましたが、我々が厳しい状況の中でどうすれば財政に頼らず民間主導の経済活性をかち得ることができるのかを、必死で模索していきたいと考えております。
  69. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理から大変御丁重な答弁をいただいたのでありますが、しかし、総理は巧みに私の質問のポイントをそらしました。委員長、私の質問に答えておられません。  私が言ったポイントは、年々赤字を縮減していくということを二〇〇三年までの政府に義務づけちゃっていいのかと。もし経済が沈滞してきて、もちろん民間を活性化するためのいろいろな規制緩和やなんかの手を打つ、これはもう総理がおっしゃったとおり、私どももそういう手を打つべきだと思っております。そういうことをやるのは当たり前、そういう大前提を置いた上で、なおかつ今みたいに民間経済が沈滞していったというときに手足を縛っちゃっていいのか、そういう権限あるのですか、二〇〇三年まで。それが危険だ。この危険を冒すことについて、総理はどう思われますか。日本経済がおかしくなっちゃってもいいのですか、中期的に。そこをお聞きしたのでありますが、ポイントをそらされております。
  70. 中川秀直

    中川委員長 鈴木君に申し上げます。  私は、今聞いておりまして、鈴木君のお尋ねに総理は答えておると思います。議事録でよく後で御確認をいただいたらいいのではないかと思います。――それでは、もう一度総理からお答えいただきます。  橋本総理大臣。
  71. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先ほど来申し上げてきたことを繰り返す愚は避けたいと存じます。  議員の御意見というものを要約いたしました場合に、二〇〇三年の目標自体には基本的に同意する点もある、そこに至るプロセスにおいて政府とは見解が異なる、そして現時点においては財政赤字の削減を急がなくてもよいという御意見と伺いました。  私がそれにお答えをいたしましたのは、現に、既に財政状況は先進国中最悪の状況の中にありますと。そしてやはり、これは後世代にツケと言うとまたおしかり受けるのかもしれないのですが、私は、公債も資産と考えればいいんだという御意見に納得のできない部分を、率直に申して持っております。そして、政府として考えましたことは、財政構造改革は一刻の猶予も許されないと考えておりますし、そのためには上限設定をそれぞれの項目についてしておるわけでありますから、政策の優先度あるいはそれぞれの考え方をどうその中において織り込むかは、今後の予算編成の問題として政府は留保しておるわけでありますし、論議の場面を残しておりますけれども、総体としては、私は、二〇〇三年GDP比三%以下という目標設定が政府の誤りであるとは考えておりません。
  72. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今の総理の御答弁、私が一番聞きたいポイントを私流に言いますと、とにかく今の財政赤字は物すごく大きくなっちゃった、だから、ちょっと赤字を膨らませてそれから縮めるようないろいろな経路があると言われたってそんなことはやれない、もう一瀉千里に赤字を縮めなきゃえらいことになつちゃう、こういうことなんですね。  そうしますと、これは井堀教授や私の見解とは違います。そんな待ったなしじゃないですよ。そんな待ったなしじゃない。待ったなしは、日本経済はいよいよ待ったなしになってきていますよ。財政赤字びた一文拡大できないなんて、そういうのは言い過ぎですね。これは言い過ぎであります。そういうふうな縛りをかけるから……(橋本内閣総理大臣「答えろと言うから私は答えたんですよ。それを言い過ぎだと言われても」と呼ぶ)はい、いいですよ。見解の違いですよ、見解の相違。つまり、今びた一文ふやせないとおっしゃるのは、私には、また井堀教授も納得しないでありましょう。  そういう縛りをかけているために、もう目先の景気対策でも、私きのう蔵相と総理の野田委員に対する御答弁を伺っていて、ああそうかと思ったんですが、法人税減税ですね。法人税の減税は、当初はタックスベース拡大、課税ベース拡大に伴う増税の範囲内で法人税率を下げるレベニュー・ニュートラルということを言っておられたのかなと思ったら、昨日、総理は非常に御親切にお答えいただきまして、蔵相は「等」と言ったぞと。  私はあれを伺っていて、さては歳出削減で出てきた財源をも使って、レベニュー・ニュートラルではなくて若干のネット減税をするおつもりかなというふうに思いましたが、そういう意味ではないのですか。あくまでも法人税減税は、課税ベース拡大で増収になった範囲内のレベニュー・ニュートラルの法人税減税しかおやりにならないんですか。三塚蔵相、いかがでしょう。
  73. 三塚博

    三塚国務大臣 これは、法人税については基本はレベニュー・ニュートラル、こう申し上げたわけです。  同時に、党において、三党において税制の審議、それも含めて行っておりますね、政府税調またしかりですねと。政府といえども与党と政府税調の取りまとめ、意見というものはお聞きしなくちゃいけませんし、それを収れんするのが担当大臣であり、また政府であろう、こういう意味で申し上げました。
  74. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 レベニュー・ニュートラルの範囲内でしか減税ができないということでありますと、けさの読売新聞のトップの報道は間違い、実質減税というのは、レベニュー・ニュートラルじゃなくでネット減税という意味の日本語でしょうから、あれは間違いだということですね。  こういう縛りがかかっているから、結局、レベニュー・ニュートラルの税制の改革はできてもネット減税はできないんですね。こういう形で二〇〇三年までの政府の手を縛っているということのいい例だと思います。  さらに、今蔵相はそういうことはおやりにならないと言っていたけれども、歳出を削減して、それで、その範囲内でネット減税をいたしますと確かに財政赤字拡大しないで済みますから、私はその手の話がそのうち出てくるんじゃないかと思っておりますが、尾身長官にちょっとお伺いしたいと思います。  かねての政府の御見解というのは、歳出増加でも減少でもいいんだけれども、歳出増加の乗数効果は減税の乗数効果より大きい、これがかねてからの政府の御見解であり、先週、何か大蔵省試算したとかいう出どころのよくわからないのがちょろっと出て、減税なんてしたって乗数効果は小さいからそれに伴う自然増収は小さいものだ、それなら歳出増加の方がまだましだみたいな試算が出ていましたが、尾身長官、今でも政府は、歳出の乗数効果の方が減税の乗数効果より大きいんだという前提でさまざまの政策を考えておられますか。
  75. 尾身幸次

    尾身国務大臣 乗数効果という言葉の定義の問題でございますが、ある一定額のお金を経済に出すという中で、歳出を増大をいたしましてその経済に対する影響、それから減税をいたしましてその経済に対する影響、その両者を比較いたしますと、歳出を拡大してその経済に対する影響の方が大きいと思っております。  なぜかと申しますと、歳出を拡大することによりまして、一回は物の購買に反映をするわけでございます。そして、その反映をして物を売った方々が今度は所得を得まして、その所得がさらに循環的に拡大をしていくということになるわけでございまして、その最初の一回に物を買うという点を含めて考えますれば、歳出の拡大によります経済に対するプラスの効果の方が減税によります効果よりも大きいというのは、経済の常識であると考えております。
  76. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 今、経済の常識とおっしゃいましたが、これは経済学ではケインズ・モデルの常識でございます。ケインズ・モデルで乗数の議論をすると今の長官のお答えのようになります。  ところが、今の経済学というのは、もっと中長期の議論をするときは新古典派のモデルで議論をいたします。新古典派のモデルで議論をいたしますと、結論がひっくり返ることがあります。どういう点でひっくり返るかといいますと、新古典派モデルには予想が入ってくるんですよ。人々は将来の政府政策や何かを予想しながら動くんですね。そうすると、今のようにもうお先真っ暗で、この財政構造改革法案が成立したら二〇〇三年まで手足を縛られちゃって財政的な景気刺激はできないんだ、これはもう大変だと思ったら、人々は消費を抑え貯蓄をふやす。今まさにそういう行動をとっている。ところが、逆にですよ、逆に歳出の削減でどんどん赤字を減らしていくんだ、この歳出削減も構造改革でやるんだということで、将来増税が怖いなというふうになると、今度は逆に消費性向が上がってくる。  つまり、消費性向不変というのがケインズ・モデル、消費性向は将来の予想に従って上がったり下がったりするというのは新古典派モデル。しかも、新古典派モデルには資産効果というのが入っておりますから、法人税減税の結果資本収益率が上がって株価が上がりますと、資産効果を通じて投資がふえるというルートもあるのですね。だから、経済学の常識なんておっしゃったが、それはケインズ・モデルで議論をしている古い時代の話なんですね。今は新古典派モデルで議論いたしますから、そうとは限らない。いろいろなケースがあるのです。  ただ、私がなぜこんなことを言い出したかといいますと、この財政構造改革法案で縛りがかかりますと、ネット減税をおやりになりたいときは歳出削減の範囲内でしかできないでしょう。そうですね。恐らくそういうことをお考えになっていると思うけれども、歳出削減の範囲内でしかネット減税しないということになると、歳出削減のマイナスの乗数効果が減税のプラスの乗数効果を常に上回るということです、今の尾身長官の答えは。したがって、全体としては乗数効果はマイナスになっちゃう。つまり、この法案が成立すると乗数効果がマイナスになるようなことしかできない。つまり、財政面から景気刺激できないということですよ。尾身長官はそういう答えをされたということです。大丈夫ですか。そういう縛りをかけるということですから。(発言する者あり)経済効果があるから減税をする。  ちょっと尾身長官、今の、縛りがかかっちゃっているとそういうことになるということ、縛りがかかっていなきゃネット減税やれますから景気が拡大しますわ。
  77. 中川秀直

    中川委員長 答弁をお求めなら着席してください。
  78. 尾身幸次

    尾身国務大臣 現在の景気状況についてお話を申し上げますと、消費者も、一人当たり賃金所得が上昇している、雇用もふえているという中で、所得もそこそこの水準に達しております。企業も、企業収益が上がっているという中で、先ほど委員のお話にありました、資金がじゃぶじゃぶというような状況であります。  問題は、経済の先行き、日本の将来に対するコンフィデンス、いわば信頼感の問題でございまして、その点につきましては私ども、民間需要中心経済拡大をしっかりしていく、規制緩和する、あるいは土地有効利用を図る、あるいは法人課税問題についてはかの国と同じような、イコールフッティングのような体制に持ち込む、そういう政策をしっかりやることによりまして経済の将来に対するコンフィデンスが上がるならば、消費に対する支出も順調にふえてきて、経済の回復が順調軌道に乗るというふうに考えている次第でございます。
  79. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 時間が参りましたので、結論としてもう一度申し上げます。  この財政構造改革法案が成立して実施に移されますと、今るる申し上げました形で将来の財政運営、なかんずく景気刺激対策が束縛されますので、今尾身長官がおっしゃったようなコンフィデンスは決して回復しない。ますます将来に対して自信を失い、不安になって、大変重大な局面に遠からず直面すると私は申し上げたいと思います。  この法案ばどうしてもつぶさなきゃいけない。こんなものを成立させたら、将来、二〇〇三年までの政府が非常に苦しみますし、国民も苦しみます。そのことを申し上げて、本日の私の質問を終わりたいと思います。
  80. 中川秀直

    中川委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  81. 中川秀直

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。  質疑に当たりましては、質疑者も答弁者も、国民にわかりやすく、簡明に行うようにお願いをいたします。  谷口隆義君。
  82. 谷口隆義

    ○谷口委員 新進党の谷口でございます。  まず初めに、先ほど午前中の我が党の鈴木議員のお話でございますが、昨日、野田先生の質問に対しまして、レベニュー・ニュートラルですか、財政中立の立場から実質減税はやらないというような方向であるというように今まで私は理解しておりましたが、大蔵大臣先ほど鈴木先生が御質問になりました。昨日の御答弁は総理が補足してお話しになられたわけでございますので、もう一度御確認をさせていただきたいというように思いますので、総理、よろしくお願いいたします。
  83. 三塚博

    三塚国務大臣 レベニュー・ニュートラルと申し上げました。その基本は変わりません。  同時に、党には党税調がございます。与党三党税調がございます。特に、私ども内閣政府税調の御見識、御論議というものを敬聴する立場にあります。答申を得れば尊重を行う、こういうことになります。収れんした形の中で対応をいたします、こう申し上げたところであります。
  84. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 こうした御答弁を、その例としてレベニュー・ニュートラルという原則の中におきまして引当金等に触れて大蔵大臣は昨日答弁を申し上げたと私は記憶をいたしております。  それに対して議員が再確認をされましたので、「等」という言葉があったことを御留意いただきたいというふうに私は御答弁を申し上げました。
  85. 谷口隆義

    ○谷口委員 今おっしゃったことは極めて重要でございまして、今度のこの景気対策、まあ、きょうの午前中の株式市場を見ておりますと若干持ち直しておるようでございますが、発言の御真意いかんで大きく株式市場も振れるというようなことでございますので、確認をさせていただいたわけであります。  昨日、また本日のこの議論を聞いておりますと、どうも政府と我々の方と比較しまして景気認識に違いがあるのではないか、このように思っておるわけでございます。我々は、大変厳しい景気状況の中で、今回の財政構造改革法案という歳出削減をするようなこの法案、ここへ来て極めて景気状況が厳しいときに、これはもう大変大きく景気を悪化させるのではないか、こういうように危惧しておるところでございます。  最近の状況を見ておりますと、昨日の日銀支店長会議におきましても、各地域から、どうも足踏み状態であるというような報告があったようであります。また、百貨店におきましても、過去六カ月間前年対比で下回っておる。極めて悪化しておる。また、住宅需要も減退しておる。また、国内自動車販売も下落しておる、こういうような状況でございます。このような状況の中で、今行われているような財革法が行われますと極めて大きな影響が出るのではないかというようなことを考えております。  我々は、今回の政策というのは結局、不況を政策によって起こしておる政策不況、このように申しておるわけでございますが、それでは、バブルが崩壊してから以降、我が国が今立っておる現状までの政策がどういうように変わっていったのか、ちょっと状況を御報告させていただいて、今回の政策そのものが、極めて政策による不況であるということを申し上げたいと思うわけでございます。  まず初めに、一九九一年に、四月でございましたが、バブルの崩壊で不況の局面に入った。しかし政府は、イザナギ景気を超すのは確実であるとか、景気減速は望ましいソフトランディングの方向である、こういうように楽観論を唱え続けていったのであります。政府が不況入りを認めたのは九二年の二月、日本経済の病気が発見されて十カ月おくれたわけでございます。これは判断ミスでありました。翌年一九九二年、不況が判明した九二年の二月に速やかに景気対策を発動しておれば本格不況は回避できたと言われておるわけでございますが、しかし、当局はこの景気対策を発動せずに事態の急激な悪化を招いたわけであります。  このとき、株価が一九九二年の八月十八日に一万四千円台になりました。一万四千三百九円に下落したわけであります。日本経済は大不況に入っていくのではないかと大変危惧されたわけでございます。このような、いわば人間の体に例えますと病気が判明したわけでありますが、治療が拒絶されて普通の症状は重体の症状へと移行していった、このような治療拒否は財政赤字を拡大させていったというように言われておるところでございます。これは、景気対策のおくれ、いわゆるブレーキを踏んだ。  今度、一九九二年八月になりまして、そのような状況の中で十兆七千億の景気対策が発動され、第一回目の金融危機から抜け出すことができた。景気対策はこの日本経済の命を救った、このように言われております。九三年に入って景気対策効果を発現してき、日本経済は一たん回復軌道に入ったわけでございまして、株価は二万一千円台まで上がった。そのようにアクセルをかけたわけでございますが、これが翌年、九三年の半ばになりまして、円高、冷夏、政局の変動であるとかゼネコン疑惑等々特殊事情もあって、景気は減退していくというような状況になってくるわけであります。  また、この翌年、九四年の二月には、このような景気失速に伴い株価も一万六千円台に急落いたします。人間の体で例えますと、昏睡状態に入っていった。こういう状況の中で、九四年二月八日でございましたか、五・五兆円の所得減税を含む十五兆二千五百億の景気対策が決定された。景気は見る見るうちに回復し、株価も二万一千円台になっていったというような状況でございます。  そのような状況の中で、今度は九四年の後半でございますが、円高懸念も強く、追加的な金利引き下げが求められる局面であったわけでありますが、日銀は利上げの準備作業に入った。インフレが低下しており、実質金利は一・五%程度上昇し、実質的な金融引き締めが進行した。これが九五年に入って景気再悪化、円高進行の主因になった、このように言われております。景気に対してブレーキを踏んだ。  この翌年、九五年になりまして、日本経済は金融危機の局面を迎えるわけでありますが、この危機に直面し、日銀は二・五%の金利を〇・五%に引き下げた。また、九月二十日には十四兆二千二百億の景気対策が決定され、このような積極策が効果をあらわして、景気は回復、株価も二万二千円台に九六年六月に回復した。いわゆるアクセルを踏んだ。  翌年、九六年の六月二十五日でございますが、九七年四月から消費税を五%に引き上げる方針を閣議決定したところから株価下落が始まって、十月二十日の総選挙を挟んで、超緊縮の財政政策が決定され、徐々に景気再悪化予想が高まり、金融問題の認識が広がって、金融不安が懸念されるような状況になった。  本年の四月になりまして、御存じのとおり、日債銀の対策、円安による景気支持、ニューヨークの株高等で景気のアクセルを踏んだわけでございまして、株価は二万円台に回復。また、そのような状況の中で、今度は緊縮財政が維持されて、景気の悪化傾向が続いて、九七年六月以降日本経済調整局面に入った。  今私申し上げたのは、要するにこのように景気を、アクセルを踏む、ブレーキを踏む、アクセルを踏む、ブレーキを踏む、ストップ・アンド・ゴーをずっと続けてきたわけであります。そういうような状況の中で、過去、今申し上げた状況を振り返りますと、九二年、九四年、九五年の大規模対策がいずれも効果は発しておるわけでございますが、問題は、状況が改善した局面でブレーキを踏んでおる、政策運営の誤りによって不況が長期化しておる。  結局、多額の金をつぎ込んだ結果、それがむだ金に終わっているといいますか、巨額の財政赤字としてツケになって戻ってきておる、こういうように言われておるわけでございまして、このようにストップ・アンド・ゴーを繰り返している限り、いつまでたっても景気の本格的な回復は望めない、財政赤字だけが拡大し続ける、このように言われております。  このような状況を克服するためには、また国民のために国民の負担が軽く、景気回復を実現する方策というのは、景気が安定軌道に乗るまで景気安定化優先の政策スタンスをとっていくべきである、このバブル崩壊以後の経済政策を振り返ってみますと、このように言われておるわけでございますが、今申し上げましたこの経緯につきまして、総理の御所見をお聞きいたしたいと思います。
  86. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、今日までも、その時期その時期におきまして、政策担当者として、その時点における最善の方途を模索し、それを実行に移し、今日まで参ったと考えております。そして、議員も時系列的にこれを追ってこられましたように、そのときそのとき、例えば公共事業の追加等によりまして行いました一連の補正予算を含む財政運営、それは、その時点における景気の下支えを果たしてきたことはお認めをいただけることであろうと存じます。  ただ、その結果として今出ておるもの、それは何かといいますなら、非常に大きな過去の公債発行の結果として財政赤字が拡大をした、累積赤字が拡大をしたという状況でありまして、今その利払いを行うためにすら非常に厳しい財政運営を強いられる、しかも新規施策に向ける余地が非常に乏しいという状況、これは私は本当に、先進国中最悪という状況は、どなたもがお認めをいただける状況だと存じます。  そうして考えますときに、果たして従来と同じような手法による施策というものが採用し得るのかと申しました場合に、私は、おのずからまた従来とは違った論議があろうと思います。そして、まさに私は、その問題を構造的な課題としてとらえており、今後における景気対策というもの、これは従来と同じような手法ではなく、むしろ、いかにすれば内需中心の自律的な経済成長に向かい得るか、それは規制緩和あるいは撤廃というものを初めとして、政府の行動計画の可能な限りの前倒し、新たな政策の追加といった措置で対応していくべきものではなかろうか、そのように考えている次第であります。
  87. 谷口隆義

    ○谷口委員 冒頭お話をさせていただきましたように、どうも景気認識に違いがあるのではないか。  御存じのとおり、金融政策は超低金利、〇・五%の公定歩合でございますので、もうそれからほとんど引き下げることはできないわけでございますので、限度がある。まさに金融政策を発動できないような状況、また、財政政策におきましても財政出動をしないというような状況の中で、もう金縛りの状況にあっておるわけでございます。このような状況の中で、我々が危惧しておりました、本年に入って消費税の引き上げ、また社会保障経費等の引き上げ、また特別減税の廃止等々九兆円近い国民負担があって、その結果、冒頭お話をさせていただきましたような景気の悪化が見られる、大変厳しい状況に今なりつつあるというように我々は認識しておるわけでございます。  そういう状況の中で、総理のお話をずっと聞いておりました、また大蔵大臣のお話も聞いておりました。どうも、今この財革法を、法律財政出動を縛ると申しますか制約することによってこれをやろうというようなことになってまいりますと、極めて厳しい景気状況になるのではないかというように今考えておるところでございますので、そのような観点から本日の質問をさせていただきたいというように思うわけでございます。  まず、この財政構造改革法案についてお話をお聞きしたいんですが、この財政構造改革の目的というのはどういうものなのか、これをちょっと大蔵大臣にお聞きいたしたいと思います。
  88. 三塚博

    三塚国務大臣 その名のごとく構造改革です。財政再建というキーワードもございますが、財政構造改革ということは、聖域なくあらゆるものを点検、分析、検討をし、費用対効果、国民の期待にこたえられる予算編成を行い、その中で財政が健全化を回復することを目指す。当然、特別会計財投機関、すべて総点検をしてまいります。機能を果たしておるものは、政策的目的によって行われておるわけでございますから、その費用対効果、今後引き続きやることに値するかどうか、そこまで点検をして取り組んでいかなければなりません。  よく言われる、大きな政府より、小さくスリムでさらに効率的な政府機構というものを国民各位が望んでおる、こう言われております。国だけではなく、自治体との一体の中で戦後五十二年運営をして今日に至ってきておるわけでございますから、三千三百を超す地方自治体も一体となりまして取り組んでまいらなければならない。理念はそこにあります。  目標はと、こういうことで、総理からも私からも、各閣僚からも答弁されておりますように、財政構造を総点検、変えることによりまして、赤字依存型の財政運営はしない。しからば、依存をしないということであれば、リストラをやる以外にございません。企業体と同じであります。そういう効果的な運営をすることによって、世界の信認を得るようにしていかなければなりません。  第一義的には、国民各位の信頼、そして国民各位が納めていただく税金を有効、適切、大事に使って行政サービスの徹底を期していかなければならない、こういうことであります。
  89. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、大蔵大臣のお話を聞いておりますと、一番最大の目的は財政赤字の削減というようにお話してございましたが、実は、この財政構造改革を考える場合にもっと深く念頭に置かなければいけない問題があるんだろうと思うのですね。  これは、今までの我が国の金融市場と申しますのは、極めて閉鎖的な中でその財政運営を行われておったわけでございますが、御存じのとおり、総理のおっしゃっておられるビッグバンを通じて市場そのものが大きく開かれるわけであります。そういう状況の中で、これからは、自由であるとか透明であるとか国際化された、こういう市場を前提とする財政運営が行われなければいけないというように考えるわけでございまして、財政構造改革という観点でお話をさせていただきますと、むしろそこに力点があるのではないか、ポイントがあるのではないか。今大蔵大臣のおっしゃったことは、むしろ、財政構造改革ではなくて歳出の削減、また均衡財政、こういう観点からのお話をされたわけでございますが、財政構造改革という場合にはそのような視点が必要なのではないか。  今、グローバルスタンダード、よくこのように言われるわけでございますが、経済が大きく外に開かれた状況の中での金融市場、今まで我が国が、国債を発行する、また地方債を発行する、また財投によってお金を集める、そのような集金システムというものがありましたが、これは千二百兆という我が国の個人資産の中から集めたわけでありますが、今申し上げております、国際化と申しますか開かれた市場の中においては、財政運営そのものが大きく変わってくるのだろうというように考えるわけでございます。このことについてどのようにお考えでございましょうか、大蔵大臣
  90. 三塚博

    三塚国務大臣 財政構造改革は、まさに当面の目標を明示いたしました。赤字体質からの脱却、自分の足で立って、租税の範囲内において国民サービス、奉仕をしていく、こういう究極の目標に向かうわけでございます。  しかしながら、六改革と言っております。行政改革経済構造改革、以下省略させていただきます。そういう中で、これが混然一体となりまして、緊張感を保ちながら究極の目標達成を図ってまいるということでございますから、財政にかかわるすべての分野について聖域なき見直しを断行してまいります、こういうことでございます。  そんな観点から、今、金融構造改革の問題にも言及をいただいたわけでございますが、この問題も、御指摘のように三原則を忠実に実行することによりまして、千二百兆に及ぶ個人金融資産が評価されますように有利に運営をされることが大事でございますし、次世代を担う成長産業、これに円滑な資金供給ができるような金融市場でなければならない、こういうことであります。
  91. 谷口隆義

    ○谷口委員 私が申し上げたのは、このいわゆる財革法の目的と財政構造改革とはこれは違うんだろうと思うのです。  財政構造改革総理はやろうというようにおっしゃっておるわけでございまして、財政構造改革法案は、今おっしゃっているように、我が国にたまった五百兆を超える財政赤字を削減していこう、こういうようなことのようでございますが、本来、財政構造改革というのは、私が申し上げておるように、金融市場そのものが大きく変わってくるわけであります。これがどんどん開いできます。グローバルスタンダードに合わせていかなきゃいけません。事によりますと、暴風雨の中に窓を開ける、こういうようなことも考えられるわけであります。  そのときに、我が国の弾力的な財政構造システムと申しますか、そういうような観点で考えた場合に、法律でその財政構造を縛る、いわゆる自縄自縛になるようなこのやり方について、果たしてこれでいいのかどうかということを今お尋ねいたしたわけでございますが、総理の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  92. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先ほど、午前中の御党の御論議の中にもありましたように、この法律案そのものは、GDP比三%以内に抑え込みを目指し、それぞれの歳出にいわばキャップをかけた形になっております。当然ながら、その量的縮減目標達成するためには、それぞれの施策の内容にまで入らなければその目的は達成できません。一方で、単年度予算編成を拘束しているものでもございません。当然ながら、政策選択のめり張りその他は、これは今後も維持されるわけであります。  その上で、金融システム改革と連動をされて御論議をいただきましたけれども、午前中、金融システム改革とではなく、私は逆に、金融システム改革をも含みますけれども、いわば規制の世界、これを変えていく、産業構造そのものを変えていく、そういった方向による自律的な経済の拡大というものを我々は目指さなきゃならないんだということを申し上げてまいりました。  我が国の金融システムを御論議いただきます際にしばしば問題になりますものは、実は不良債権処理の問題であります。これはもし御質問があれば大蔵当局からお答え願いますけれども、それなりに全体としては状況は改善しつつあるものと考えておりますが、いずれにいたしましても、基本的な改革を進めていく上で、その金融機関の不良債権処理の問題というものを我々は忘れることはできません。  その意味では、議員が示唆されておりますように、金融システムの安定というものには細心の注意を払っていく必要があることはそのとおりでありますが、その上でなおかつ、私は、政府の今考えておりますような方法でこの赤字を縮減していくための財政構造改革は必要なもの、そのように判断をいたしております。
  93. 谷口隆義

    ○谷口委員 ちょっと私が申し上げたのとは違うんですが、要するに、我が国の戦後のこの発展過程を振り返りますと、制度そのものが行き詰まりを見せてきた。  一つは、今まで我が国は、戦後、キャッチアップシステム、追いつき追い越せ、大量生産・大量消費によって、官僚が旗を振って、政官財という鉄のトライアングルが三者一体になって、欧米で規格型製品なり商品なりを持ってきて我が国に落として、これを大量生産・大量消費によってコストを落として、それをまた輸出する、それによって高度成長を可能ならしめたわけでありますが、そういうようなやり方そのものがもう今変わらざるを得ない、構造改革をやっていかなきゃいかぬ、こういう時代に入ってきたわけであります。今はむしろ、そのような政官財の鉄のトライアングルと言われておる、別の言い方をしますと、官僚主導型啓蒙主義と申しますか、そういうようなやり方が、余りにも規制が入り組んでおって、もう一回見直していかなければいかぬだろう、こういうような時代に入ってきたのだろうというように思うわけでございます。  そのような社会構造の変化の裏側にと申しますか、高度成長を可能ならしめたこの財政システムがございました。これは財政のトライアングルと言われておるわけでございますが、これは国の財政地方財政、また財政投融資、御存じのとおり、戦後どんどんどんどん我が国が経済成長をしますとともに、予算も膨張体質になってくる、どんどんどんどん資金が必要になってくるわけでございますが、思うように増税が進まない、こういう状況の中で、歳出と歳入との間のギャップが出てまいるわけでございます。このギャップを埋めるために、一方では、国は国債を発行し、地方では地方債を発行し、財政投融資を利用してやってきた。  そういう意味において、この財政投融資というのは極めて重要な意味を持っておったわけでございますが、今、我が国が直面しておるこの財政構造の問題、確かに五百兆を超える財政赤字の問題も重要でございます。しかし、私が申し上げておるのは、もっと深い意味での財政構造の改革、これは昨日経企庁長官の方もおっしゃっておりましたが、財政構造改革経済構造改革は両輪の輪である、同時並行でやっていく必要があるんだ、このように昨日おっしゃっておられたわけでございますが、まさに今そのような状況であるのではないか。  ですから、一つは、今回行われておるこの財政構造改革法案は、財政構造改革とは名ばかりで、現実には、歳出を削減する、財政を均衡財政に持っていく、こういうような趣旨であって、本来やらなければいけない財政構造改革まで立ち入っていないということを私は申し上げたいわけであります。  これは極めて重要な問題でございまして、今我が国が直面しておる大きな問題、経済構造改革、また財政構造改革をやり遂げないと、これからの二十一世紀の日本が大変厳しい状況に置かれるというように言われておるわけでございますが、そういう観点で、総理、ちょっと御見解をおっしゃっていただきたいというように思います。
  94. 尾身幸次

    尾身国務大臣 谷口委員おっしゃっておりますところ、私ども、ある部分でいいますと大変同感のところもございまして、経済が国際化する中で、いわゆるキャッチアップ時代からフロントランナー時代へと、日本経済社会構造が転換をしてきております。そういう状況の中で、これから世界のフロントランナーとして、技術の面でも、あるいは経済の面でも発展をしていくということが極めて大事なことだというふうに考えております。  そこで、先ほど委員の御理解は、財政構造改革財政の支出縮減だけに限るというようなお話でございましたが、他方で私ども、経済構造改革を同時に進めるということを考えておりまして、こういう国際化時代におきまして、メガコンペティションと言われております世界的な企業の展開の中で、日本という国を企業が選ぶような、そういうバックグラウンドを備えるということも他方やらせていただきたい。  そのためにもまた、法人課税のあり方とか、あるいは有価証券取引税の問題とか、そういう各種の施策を行いまして、民間活力を十分に発揮をさせるような新しい経済システムをつくり上げ、そしてその中で世界的に通用するような活性化を図っていく。そして、そのことによって経済成長を正常な軌道に乗せ、二十一世紀を展望するような経済社会をつくり上げたい。そしてまた、それが相携えて財政を支えるということにしていきたいというふうに考えている次第でございまして、この財政改革法案のバックにあります私どもの考え方は、財政のみならず、経済も一体として立ち直らせていくという考え方でありますので、その点もぜひ御理解をいただきたいと思います。
  95. 谷口隆義

    ○谷口委員 本当は、小手先で対応するのではなくて、構造そのものを変えていくというのが構造改革でございますので、ぜひそういう観点に立っていただきたいというように思うわけであります。  今回、財革法、この内容を見ますと、国、地方合わせた財政赤字GDP比三%以内に、これは二〇〇三年までですね。また、特例公債の発行をゼロにしたいというようなことでございます。  ここで、この特例公債の残高をゼロにしたいということについてお聞きいたしたいわけでございますが、まず初めに、この財政赤字は、昨日、本日の議論を聞いても出ておりましたが、一般会計のみであって、それも当初予算のみであって、補正予算は入っておらない、財政投融資は入っておらない、特別会計は入っておらないというように認識されておるわけでございますが、それでよろしいのでしょうか、大蔵大臣
  96. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  GDP比三%という財政赤字の指標につきましては、これは実績ベースでございます。  それから、第二号にあります特例債の発行のゼロも、二〇〇三年度におけるゼロもこれは実績ベースでございます。
  97. 谷口隆義

    ○谷口委員 今行われておる、例えばきょうの午前中にもございましたが、いわゆる隠れ借金というのがございます。これはいわば経理操作をして実態を変えていくと申しますか、そういうところがあるわけでございまして、この赤字国債ゼロにこだわり過ぎますと、予算操作が常態化して、財政の本当の姿が見えないのではないか。一般会計から特別会計への支払いを先延ばしする等々隠れ借金が膨張をするのではないか、これは既に、九七年度末には四十五兆円でございますか、あるということでございます。  この財革法そのものが一般会計に傾斜した姿勢を持っておる、このように言われておるわけでございますが、本来、この財政構造改革の議論をする場合には、それらをすべて含めた議論をやっていかなければいけないのではないか。また、先ほどお話をいたしました赤字国債ゼロという、こういう目標に対しまして、形式的なつじつま合わせではなくて、さっきから申し上げております特別会計、また財投地方財政、隠れ借金等々全部包含した上でやっていかなければいけないというように思うわけでございまして、そういう経理操作が常態化するのではないかということについての御所見をお願いいたしたいと思います。大蔵大臣
  98. 三塚博

    三塚国務大臣 前段、谷口議員の質問にお答え申し上げましたとおり、聖域なき見直しをやってまいります、それには特別会計も含みます、政府管轄の特殊法人も含みます、すべて総点検の上で今後のあり方を決めてまいりますと。  平成十年の予算編成におきましては、役目の終わったものはやめてもらいますし、また、民間でやることが正解だというものは民間移管ということで、行政改革本部で論議を行い、また行政改革会議総理が座長でありますが、そこにおいても論議が行われておるところであります。決して一般会計だけで終わるわけではございません。  しかし、国民経済基準と申しますか、国連の基準にありますとおり、財政赤字を明確にするためには一般政府関係と歳入との関係で一つの基準をつくらさせていただき、財政赤字、こういうことになっておるわけで、隠れ借金で今後処理するということは、ふえるということは全くありません。  清算事業団のことを御指摘かと思うのですが、林野会計、御承知かと思うのでありますが、企業会計で行っておる。清算事業団は、かつての旧国鉄の基本を受け継いで、財産の処理ということで、国民負担が少なくなるように全力を尽くしてやってきて、本年をもってその使命を終わるわけであります。そういう中で、要処理額という形、「隠れ借金」とよく言われますが、本件についても、増幅してまいる、ふえるということはございません。  逆に、一つずつ整理をして処理をしていかなければならない、そのためにも財政構造改革に真剣に取り組まさせていただく、こういうことになって、日本経済全体にも、財政の持つ意味合いが両々相まちまして健全経済方向に取り進められていくものかなと思っております。
  99. 谷口隆義

    ○谷口委員 二〇〇三年までに特例公債をゼロにするというような目標は、先ほど私が申し上げました、一般会計から特別会計へであるとか隠れ借金であるとか、こういうようなことを常態化する傾向がございますので、そのようなことを申し上げたわけであります。  また、今この財政構造改革法案を行うという現在の状況の中でのこの取り巻く状況経済的な状況があると思うのですね。このような状況に先行して今回この財革法を行う、こういうようなことのようでございますが、まず、そのような状況を見ていく必要があるんじゃないか。  一つは、先ほど総理がおっしゃった不良債権の問題であります。  この不良債権の問題は、大蔵省の公表によりますと、今二十兆台の不良債権というようなことでございますが、どうも一般は、国民はそのように思っておらないようであります。特に、私は大阪でございますので、関西エリアの金融機関の今の状況、悪化した状況は、大変国民の不安心理をあおっておる。先日、福徳となにわ、また幸福と京都共栄というようなことがございましたが、そのような金融機関の不良債権の問題がより一層悪化しておるのではないか。これは今、株式市場が下落しておりますし、不動産市況も下落しておるというような状況の中で、システミックリスクが懸念されておるわけでございます。  その際に、昨日、これは野田先生のお話にもございましたが、アメリカでは、御存じのとおり大量の公的資金を投入して解決したのですね、時間がかかりましたが。しかし我が国は、前の住専国会のときの住専の議論の中で、結局六千八百五十億の資金を投入するがために方向がおかしくなっちゃいまして、この公的資金の話を国会の中で本当に議論をすることさえできない政治的な状況の中で、私は大蔵委員会で何回か、この公的資金の問題も議論しなきゃいかぬのだろうというようにお話をしたわけでございますが、そこまで至らない。その結果、今回また上がってきます預金保険法の改正は、悪い銀行と悪い銀行を合併させて新しい銀行をつくる、この公的資金をなし崩し的に入れていこうというようなスキームが出てこざるを得ない、こういうような状況が極めて危惧される。  この金融システムの破綻があった場合にどの程度の大きな影響が出るのだろうということが大変危惧されております。巷間、十一月危機説などと、このように言われておりまして、そういう状況の中で本当に解決するための方途さえ見出し得ないということは、大変私は危惧しておるところであります。  本当は、このような状況の中で、先ほども申し上げました、バブルが発生して、崩壊して、今までに至る中で、景気がどうも、一たんは上がるんだがまた落ちちゃう、一たん上がるんだがまた落ちちゃう。この大きな原因は、不良債権の問題が解決できないからなんであります。このようなことを十分認識しておったら、そこに公的資金の導入の話も国民の皆様方の前に堂々と出してやっていくべきじゃないか、このように考えるわけであります。まず、この金融機関の不良債権の問題、これは大変大きな問題でありますが、あるわけでございます。  今私が申し上げましたこの公的資金の問題について、総理の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  100. 三塚博

    三塚国務大臣 公的資金の導入の問題は、御党を中心に本国会におきましても時折衆参両院において出ておるところであります。本件につきましては、私からは、公的資金導入は考えておりません。  金融ビッグバン、いわゆる金融システム大改革を四月一日からスタートするわけであります。現にスタートいたしておりますのは、早期是正措置に向けての内部監査、それに外部監査を導入をいたしまして金融機関の信認を高めてほしいということで、強く金融機関には申し上げております。  四月一日、外為法がオープンになります。四月一日から、この内部監査、外部監査の導入と早期是正措置の実態が、その都度、中間決算報告、また定期総会において提出をされていくわけであります。  自由市場は、自己責任において自分の足で立ち、そして預貯金者、委託者の皆さんから信頼を得るべく、最大のリストラを断行して、健全な信用の置ける金融機関に生まれ変わらなければなりません。そういう点で、公的資金という点は逆にモラルハザードを起こすことに相なります。よって、考えておりません。
  101. 谷口隆義

    ○谷口委員 今大変重要なことをおっしゃったと思いますよ。本当に金融機関の状況を十分、まあ大蔵大臣ですから御存じだろうと思いますが、公的資金の導入の議論の余地をやはり置いておかなければ大変大きなことになりかねないような状況でございますので、これは、大蔵委員会でまた預金保険法の改正の問題が出ますので、そのときにお話をしたいと思います。  もう一つは、これはちょっと古くなりますが、総理がデンバー・サミットに行かれたときに、失言と申しますか、ちょろっとおっしゃった、米国債を売りたいという衝動に駆られたと。というような結果、米国の株式市場の反応が極めて敏感にございました。ばっと落ちたですね。  今々アメリカの経済は大変好調であると言われておるのですが、果たして本当に好調なのか。対外純資産が百兆を超える我が国と、今々百兆を超えて、一方でまた不良債権の重荷であえいでおるわけでありますが、ほぼ同額の対外純資産を抱える米国で、三年もたたないうちに株価が倍増したのですね。もしこの米国の株式市場、この株価が仮にバブルとしてみると、ニューヨーク発の株式暴落というようなことにもなりかねないわけでありますが、このようなことは大変御答弁しにくいのだろうと思いますが、総理、どのようにお考えでございましょうか。
  102. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 我々、市場の状況というものについて余りいろいろと申すことは、本来避けるべきであろうと思います。  その上で、先ほど議員多少引用されました部分を補足いたしますと、あのとき私は、そういう衝動に駆られたことはないわけではない、その上で、そういう選択はしなかったということもつけておりました。  ある意味では、それだけ気をつけて物を言いましても影響の大きい世界、その言及は避けるべきと存じます。
  103. 谷口隆義

    ○谷口委員 それにつけ加えまして、最近、アジアの通貨危機の問題が起こっております。  本年の七月二日に、タイのバーツが切り下げられて、ドルにリンクしておったのが切り下げられまして変動相場制に移行したというようなことで、昨日あたりはもう極めてタイのバーツが悪化いたしておりまして、一ドル三十八バーツというような状況のようでございますが、これがアジア各国にも波及しておる。  邦銀のアジア向け融資が九六年度末に千二百億ドル弱ある。このうちタイ向けが三百七十五億ドルのようでございます。邦銀ですね、我が国の銀行と我が国のゼネコンが、日本でバブルがはじけた後に、アジアに事業拡大ということで走ったというようなことのようでございます。今、そういうような状況の中で経営危機が危惧されておるところであります。  このアジアの諸国は、我が国を除いて、約五千億ドルの外貨準備があるようであります。この五千億ドルの外貨準備のほとんどが米国債で運用しておる。それで、現実に本年の四月から六月に、タイ、マレーシア、シンガポール、この三国で四十三億ドルの売り越しになった。米国債がですよ。  このようなアジアの景気失速が世界経済全体に与える影響はどのようになるのか、そのようなことについて、もしよければ、総理
  104. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 たまたまタイの問題に触れられましたので、もしその状況に限定されますなら、支援国会合の中で努力をいたしました大蔵当局からお答えをする方が正確かもしれません。  しかし、今、御承知のように、タイはIMFとの間に経済構造調整プログラムの実施についての合意はできており、これを受けまして、本年八月十一日、IMFの主催で開催されました金融支援国会合の結果、必要な金融支援を超える支援が約束されております。その中で日本がどのような役割を果たしているかも、議員御承知のとおりでございます。  私どもは、このIMFの調整プログラムというものが着実に実施をされますことにより、タイにおきましても金融市場の安定、経済の中長期的な発展が得られるものと期待をいたしておるわけでありますし、アジアの通貨問題ということになりますなら、今後ともアジア各国の状況を注視しながら、それぞれの国及びIMFなど国際金融機関とも密接な連携をとりながら対応していくというお答えを申し上げるにとどめたいと思います。
  105. 谷口隆義

    ○谷口委員 今はアジアの通貨危機のお話をさせていただいたのですが、またもう一つは、先ほど触れましたゼネコンの経営危機なんですね。大和総研の調査によりますと、上場会社十七社が実質的に債務超過である、このように言われております。現実に三社、上場会社がもう倒産いたしておるわけでございます。このような建設業界全体の状況。建設業界の雇用が日本の総雇用の一割に上るようでございます。十人に一人が建設業界にかかわっておるというように、かなり大きな影響がある。本日の午前中にもそういうようなお話があったようでございますが、五十六万業者ある。  こういうゼネコン業界、建設業界全体の中で、今回の財政構造改革法案、公共投資七%の削減、これがこの業界全体に与える影響は極めて大きいだろうというように思うわけでございますが、そういう極めて経営の厳しい状況に対して、政府としてどのような対応をまずおとりなのか、お聞きいたしたいと思います。
  106. 瓦力

    ○瓦国務大臣 谷口委員にお答えをいたします。  御指摘のように、建設投資は、現下の財政事情の中で厳しく受けとめておるわけでございますが、一方、建設業者数は増嵩の傾向にあります。よって、バランスが崩壊をいたしておるわけでございますが、一方におきまして、また、建設市場の国際化による競争性の高まり、こういったこともございまして、建設業界を取り巻く環境は近年極めて大きく変化をいたしておりますし、困難な問題も惹起いたしておるわけであります。  このような中で、公共投資の抑制が建設業の経営環境に厳しい状況を反映しておることを踏まえまして、公共事業への依存度の高い中小、中堅建設業者にとって、これをもろに受けておるわけでございますので、これらに対する対応というものを今鋭意検討し、進めておるところであります。  その一つは、中堅建設業者の受注機会の確保を図ってまいること、さらに経常JVの一層の活用を促進をする、さらに不良債権の償却等を促進するための赤字会社の指名排除扱いの是正、これは総理も大変御心配をいただきまして、自治大臣とも協議をし、自治体にもさようなことについての理解を求める、こういう通達等を発しておるところでございます。  かような対策を目下講じておるところでございますが、今後は、これらに加えまして、民間も含めた建設需要を期待してまいりたい。  特にまた、金融機関の融資でございますが、これは、今、建設業界にとりまして大変支えの大きな力になりますので、これらにつきましても強い関心を持つておるところでございます。  委員指摘のように、困難な問題がありますが、自助努力に加え、我々もいろいろ手だてを講じてまいりたい、かように存じておるところであります。
  107. 谷口隆義

    ○谷口委員 我々は、公共投資五カ年計画を廃止し、その予算単価を見直し、入札制度を改善し、予算規模を削減して事業量をふやしていったらどうか、このように提案しておるわけでございますが、今、私何点か申し上げました、ゼネコンの問題、金融機関の問題、またアジアの通貨危機の問題、アメリカの景気の問題、このようないわば大変危機的な状況と申しますか、そういう状況の中でこの財政構造改革法案を先行してやることが、これらに――今申し上げたことは全部それぞれがリンクしておるわけでありますね。この金融機関の問題とゼネコンはもう大きくリンクしておりますし、また、アジアの通貨危機もこれまたこっちにはね返ってくるわけであります。  そういう状況の中で、あえてこの財政構造改革法案を今先行してやる必要がどうしてあるのか、また、これを法律で手足を縛る必要がどうしてあるのかということを申し上げたいわけでございますが、これに対して、総理のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  108. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 対外的に関連する部門、大変微妙な幾つかの論点を挙げられましたけれども、これは他への影響というものも、プラスであれマイナスであれ避けなければなりませんことを、どうぞ御理解をいただきたいと存じます。  私どもは、一方、先ほど経済企画庁長官からも御答弁を申し上げましたように、我が国の経済の体質改善を行う、そのために要する努力、これは経済構造改革の中で、また議員指摘になりましたような諸問題についても、金融システム改革の中で当然のことながら対応していこうとし、同時並行で努力を進めております。こうしたことを通じて、企業あるいは消費者の方々の経済の先行きに対する不透明感をぬぐい去るための努力、これは当然のことながら我々は払っていかなければなりません。  同時に、そうした努力を払うことにより、我が国経済の回復基調を確実な力強いものとするためにも、経済構造改革そのものを前倒していく等の効果的な対応を進めていかなければならないことは、御議論のとおりであります。  同時に、我が国の抱えております現況というもの、財政というものから見ましたときに、先進国中最悪という状況にあることは既に繰り返し申し上げているところでありまして、これ以上こうした状態を放置すること自体が他の改革をも逆に阻害しかねない、私はそんな思いもいたします。  こうした意味で、財政構造改革法案というものを御審議を願い、一日も早くこれをお認めをいただくことにより、量的な縮減目標達成するためにもこれを質の変化に切りかえていく努力を払わせていただきたい、心からそのように願っております。
  109. 中川秀直

    中川委員長 谷口君、時間が過ぎました。
  110. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が終わりましたので、一言申し上げて終わりたいと思いますが、一九三〇年代のアメリカの大恐慌時に、均衡財政と通貨安定に固執して、緊縮財政を堅持して未曾有の長期不況を生み出したと言われているフーバー大統領の二の舞にはならないように、橋本総理、ぜひ景気活性に全力を注いでいっていただきたいというように申し上げまして、終わりたいと思います。
  111. 中川秀直

    中川委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君。
  112. 西川知雄

    西川(知)委員 新進党の西川知雄でございます。  まず最初に、この委員会で今まで議論されていた、また、聞いたことのほとんどの部分は、経済財政景気の問題でございました。午前中、我が党の鈴木淑夫議員が皆さんの前で、この改革案というのは経済学的にも、これは全然成立し得ないものだということを立証されました。  私は観点を変えまして、この改革法案というのは法律的にも成立し得ないものだということを皆さんの前で立証、証明をしていきたい、こういうふうに思います。  国会、各委員会というものは、経済論争でなく、これは立法機関ですから、法律問題また法律を議論するということでございますし、内閣総理大臣議員の中から選ばれた総理大臣でございますので、ぜひこの問題についてみずからの御所見をお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。  ところで、まず最初に、十月十七日の本会議で、自由民主党の小杉隆議員の質問に答えられまして、橋本総理大臣は、なぜこの法案法律的に規定されていないといけないのか、この改革法律として規定される必要があるのかということについて、次のように答えられました。「本法案は、主要な経費の量的縮減目標、制度改革など、構造改革のための具体的な方策や枠組みを規定するものであります。」まあ、ここまではいいのですが、次からですが、「こうした方策などを皆が守ること、皆が拘束されるということを法律によって明確にすることにより、財政構造改革を強力に進めていくことは可能になる、そう考えております。」こういうふうに御答弁をされております。  そこで、私は、総理大臣がこういうことを言われたので、ちょっとこの辺のところを明らかにしていただきたいということがございまして、二、三質問をさせていただきます。  総理は、この法律があることによって財政構造改革を強力に進めていくことが可能になる、こういうふうにおっしゃいました。そうすると、これを逆の意味に読みますと、法律がなければ財政構造改革を強力に進められない、こういうことでございますが、まずそういうことでこの答弁を理解してよろしいのでしょうか。
  113. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は確かに、この法律が成立をすることによりまして、予算編成に当たり政府のよるべき基準、方針というものが平成年度以降、三年ないし六年間という中長期にわたって明らかにされる、そしてその結果として、内閣がこの間、みずからの判断のみによって自由に、法定された方針などを変更して予算を作成することは許されなくなるという点に大きな意義があるということを申し上げたと思います。  正確な言葉は議事録を見ないと私も覚えておりませんけれども、恐らく今議員が御指摘になりましたものと今私が申し上げたことには、本質的な変わりはないと思います。
  114. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっと御答弁がよくわからないのですけれども。  簡単な質問でございますが、この法律がなければ財政構造改革を強力に進められないのでしょうか。この点について、そうかそうでないかをお答え願いたいのです。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 どう申し上げたらいいのでしょう。今、たまたま議員、本会議での私の答弁、我が党の議員に対する答弁を引用されました。私は、その議事録を、そういう本会議の答弁を引用しての御答弁と知らず、議事録を持っておりませんので、今あります手元の資料を見まして、議員の述べられたものと本質的に違いないと思いますと、正確な言い回しは記憶をしておりませんけれども、今引用されたようなものと変わりはないと思いますということを申し上げたのです。
  116. 西川知雄

    西川(知)委員 私を信用していただければ、衆議院本会議速記録が原稿としてございます。そこの六ページに、もう一度言いますが、こういうふうに御答弁をされています。「こうした方策などを皆が守ること、皆が拘束されるということを法律によって明確にすることにより、財政構造改革を強力に進めていくことは可能になる、そう考えております。」こういうふうにおっしゃっているわけです。いや、まだこれから質問が続きますので。  そこで、私の質問は単純なんです。法律があるから財政構造改革を強力に進められる、こういうふうに総理はおっしゃったのです。それじゃ、法律がなければ財政構造改革を強力に進められないのですか、こういうことを私が聞いているのです。
  117. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、法律によって上限を、量的縮減目標を設定することにより、それぞれの内容にまで立ち至った検討をしなければならなくなるという意味で、法律がある方がよいと思っております。
  118. 西川知雄

    西川(知)委員 それじゃ、ちょっとまた違う観点から御質問をいたします。  これは、我が党の中井議員が、やはり十月十七日に本会議総理に対して我が党を代表して質問をされたときの総理の答弁でございます。関係する場所は、国鉄長期債務及び国有林野事業の経営改善について、これに対しての具体的な記述がないということを中井議員指摘をしたわけです。これについて、総理は次のように回答をされております。「これの経営改善のあり方につきましては、本年中の対応について閣議決定が行われているところでありまして、本法律案において改めて同様の規定を置く必要性は薄いと考えられ、この法律案には盛り込んでおりません。」こういうふうに御回答をされたわけです。  私がこれを理解するところによりますと、既に閣議決定をする、またはすることにしているものについては、この法律の中に組み込む必要がない、こういうふうに私は総理の御答弁を理解するのですが、そのとおりでいいのか悪いのか、お答え願います。
  119. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 国鉄の清算事業団債務の問題及び国有林野特別会計における赤字の問題について中井議員に御答弁を申し上げましたのは、そのとおりの趣旨であったと私自身認めます。一字一句同じかと言われれば、濁点、丸が正確かどうかまで私にはわかりません。しかし、これを外しておることは事実でありますし、その上で、年内に結論を出すということで我々が努力をしておることも申し上げたと記憶をいたしております。
  120. 西川知雄

    西川(知)委員 そうしますと、閣議決定で決められたこと、またはこれから決めようというふうに決定をしたこと、これは法律の中に定める必要はない、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか、総理
  121. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私、別にへ理屈の言い合いをしようというのではありません。そこはどうぞお許しをいただきたい。  その上で、本法律案につきまして、本委員会が始まりましてからも、その目標を何にとるのか、国際ルールをとったわけでありますけれども、正確な言葉はちょっと今忘れましたが、その中におけるいわば支出と歳入、黒字と赤字の差というものに着目して、正確な法律用語としてこの法律案を組み立てた中に、企業の損益と申しますか、収支と同じような性格のものを、これは外すのだというルールがあったはずでございます。  正確な言い方はどうぞ法律の専門家からお尋ねをいただきたいと思いますが、大きくは、黒字と赤字の差というものに着目してこの法律案の用語を規定をいたしました中に、今議員がお触れになっておりますようなものはこの対象から外れております。失礼しました。これは国際的な基準に従って行った行動でございます。
  122. 西川知雄

    西川(知)委員 それでは、ちょっとそれに関連してお尋ねをいたしたいと思います。  平成九年の六月三日に政府・与党財政構造改革会議財政構造改革推進方策というものを策定をされました。そして、それに沿って同日閣議決定がなされまして、財政構造改革推進についてという命題の閣議決定がなされております。内容は全く同じでございます。  そこで私はお尋ねしたいのですけれども、こういうふうにもう皆さんで閣議決定をされている、こういうものを改めて法律にしないといけないというのはどこにあるのでしょうか。というのは、中井議員の御質問に対しては、国鉄の長期債務等々についての例でございますが、閣議決定が行われているのでそういうものは法律に定めなくていい、こういうふうに総理が発言されたことと、私は相反するんじゃないかというふうに思うのです。  そこで、内閣法制局が手を挙げておりますが、内閣法制局というものは憲法問題と法律の整合性ということについてだけ御説明をされる立場でございますし、ここは、総理がおっしゃったこと、総理が御答弁になったことと私が今言っていることとが食い違うので、私は総理から御回答を願いたいと思います。
  123. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 議員の御理解と内閣法制局の役割とは相異なる部分があると思いますので、法制局からその点の御説明をお許しいただきたいと存じます。(西川(知)委員「それは違う。総理の言ったことが違うと言っているんです」と呼ぶ)
  124. 中川秀直

    中川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  125. 中川秀直

    中川委員長 速記を起こして。  改めて、橋本総理大臣。
  126. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 繰り返し同じことを申し上げるようでありますけれども、国鉄清算事業団の問題、国有林野特別会計の問題は、中井議員にお答えを申し上げましたとおり、私もそのとおりを申し上げ、その根底の一つの理由といたしましては、国際的な赤字というものに対する定義の問題もございますということを今申し上げました。  その上で、内閣の意思として決定をいたしますこと、これは内閣の方針変更だけで変更が可能であります。法律という国会の、立法府の御承認を得て決定をされたものは、国会の意思なくしてこれを変更することはできません。私は、こうした意味で財政構造改革法案法律案として国会に御審議をいただき、その上で取り組んでいきたいと考えております。
  127. 西川知雄

    西川(知)委員 ということは、今まで法律に定められていなかったこと、こういう問題については国会では今までそういう意思を表明していなかったわけですから、これについて、法律事項でない限り閣議決定があればいい、こういうふうに理解してよろしいですね。
  128. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 その点は私、ちょっと議員の御議論に前提、あるいは意識的にあいまいにされたといいますか、ような気がいたします。  国会で御議論があったかないか、これと、閣議の決定あるいは閣議の了解、これがそろう場合、そろわない場合、あるいは国会で御議論にならないテーマで閣議が決定をすることもございましょう。あるいは、さまざまな角度で御議論が先行しており、内閣として統一した意思を確認する場面ではないと判断をすれば閣議決定をしないこともありましょう。いろいろなケースがあり得るわけでありまして、これを、特定の要約のされ方になりますと、私は多少問題を生ずる場面がありはしないかと危惧いたします。
  129. 西川知雄

    西川(知)委員 では、ちょっと違う観点から総理に御質問をいたしたいと思います。  総理、この法案の第四条の第一号でございますが、これは財政赤字の対国内総生産比の規定が書いてありますが、第五条によってその実額が公表されるというのは、平成十七年の二月ごろに公表がされるということなわけです。総理、これは先ほどからおっしゃるように法律です。私の質問は、もし万が一、この四条の第一号が平成十七年の二月の実績によって三%以下でなかった場合、この法律による法的な責任、法的な拘束力というのはどこにあるのでしょうか。どういう罰則が加わるのでしょうか。どういうような法律的な効果があるのでしょうか。お答えください。
  130. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 御指摘のとおり、平成十五年度財政赤字の対GDP比を三%以下とすると、目標法律上書いてございます。実績値を目標としていることは、これはそもそも政府として平成十五年度予算編成に当たって三%以下にすることを最大限努力をするということは申すまでもありません。  ただ、分母となるGDPというものは、そうした努力をしてもなお政府がコントロールできない要素が極めて大きいわけでございます。そういう意味では、政府責任には限界がございます。ですから、結果として三%の目標ができなかったことをもってそれが違法とは言えぬのではないかと思います。
  131. 西川知雄

    西川(知)委員 総理、では、ちょっと違う観点からいろいろと御質問します。  先ほどの、小杉議員の質問に対してこういうふうに総理はお答えになっております。こうした方策などをみんなが守ること、みんなが拘束されていることを法律によって明確にすると言っておられますが、みんなというのはだれですか。
  132. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 御答弁を申し上げました時点においては、私は国会という場において御答弁を申し上げておるわけでありまして、その国民を代表し院を構成しておられる方々を通じ、国民全体というとり方もできます。とり方もできます。ただ、皆が守り、皆が、今ちょっと引用を忘れましたが、いずれにしても、みんなが守っていただくことによってそういう結果を生み出したいということを申し上げたと思います。
  133. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、この法律というのは国家と国民との間の約束事、これを書いていることと理解してよろしいのですか。というのは、今総理がそういうふうに御答弁をされたので、そうであるかどうかを確認させていただいたわけです。
  134. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私、大変失礼でありますけれども、あなたのように細かく自分の答弁を分析いたしておりませんでしたので、あるいは非礼があるかもしれません。  しかし、財政構造改革を必要とする認識は、その手法等についてはさまざまな御議論がありましても、現在の我が国の破滅的な財政状況と言われる先進国中最悪の財政事情というものを考えれば、これは私は共通の認識のあることだと思います。そして、この財政構造をこのままで放置しておいていいということはどなたも私はお考えにはならないと思います。  もしその点に御異論があるのでありましたなら……(発言する者あり)いやいや、そうではありません。ですから、あるのでありましたなら、これは問題の所在が違うことでありますけれども、そうした共通の認識の上に立って、その手法を、私ども政府としてはこのような形で行いたいという、その内容法律案として国会に御審議を願っておる、これが今の状況であります。
  135. 西川知雄

    西川(知)委員 先ほどから申し上げておりますように、今やっているのは経済の方針、政府の方針を、それだけを話しているわけではなくて、それを法律としてこの場で審議をしているわけです。ここを間違わないでください。  そこで、一つ質問をいたします。  第三条に、「国は、」財政構造改革の趣旨、今総理がおっしゃったような「趣旨にのっとり、財政構造改革推進する責務を有する。」こういうふうに書いています。これは法律的な義務ですね。これを法律に書いてあるわけですから、これを破った場合にはどういう責任が生じますか、総理
  136. 大森政輔

    ○大森政府委員 確かに委員指摘のとおり、責務が規定してあるわけでございまして、国はそういう財政構造改革推進する責務を有しているわけでございます。したがって、仮にこの法律案に定める目標達成されず、かつそれが政府の責めに帰するという場合には、職責、責務を果たさなかったということにはなります。  しかしながら、この法律でそれに対する制裁と申しますか、効果と申しますか、そういうものを規定しているわけではございませんので、この場合に政府が負う責任と申しますのは、いわゆる政治的な責任にとどまるということが言えようかと思います。
  137. 西川知雄

    西川(知)委員 総理、その見解でよろしゅうございますか。
  138. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、法制局長官の立場から答弁をしていただいたことを当然のものと受けとめております。
  139. 西川知雄

    西川(知)委員 第三条をよく読んでいただきますと、「国は、前条の趣旨にのっとり、財政構造改革推進する責務を有する。」そういうふうに規定をしております。そのほかのところでは、「政府は、」とかいうことがほとんど予算提出について書かれております。「国は、」ということはどういうことかというと、立法府とそして行政府、これが入るわけです。我々は、少なくともこの財政構造改革中身について、これは反対でございます。そういう場合に、我々が、立法府が、この財政構造改革政治的な責任、これを我々も負わないといけないのでしょうか、総理。(発言する者あり)
  140. 中川秀直

    中川委員長 御静粛に願います。
  141. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 よろしゅうございますか。  私は、議員が御論議になっておることの一点、理解のできない部分がございます。それは、今御審議をいただいております法律案が、議員あるいはいずれかの政党の反対がありましても、最終的に多数の方々が賛成をされ、これが国会の意思として成立をいたしました場合、これは当然ながら、私は立法府をもその対象として取り込むということになるであろうと思います。  それぞれの法律案、成立をいたしますまでには、さまざまな角度からの御論議があることは当然であります。御論議があることは当然であります。それが通過、成立をいたしました段階から、これは院の御同意を得たものとして取り扱われるのは当然ではないでしょうか。
  142. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、予算のことについていろいろな規定がございます。先ほど来の総理の御答弁ですと、予算の審議権とそれから法律の審議、これは分けて考えるので、国会での予算の修正権については、これは全然影響がない、こういうふうに御答弁をされていたと思いますが、その議論と今の議論とでは矛盾はしませんでしょうか。
  143. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 大変恐縮でありますが、予算の修正権といった御質問はなかったと思います。予算の審議権というものについても、御論議は、議員の御提起とは同一のものではないと思います。修正権といったものは論議にはございませんでした。  その上で、この法律案は量的な縮減目標を設定いたしておりますけれども、その範囲内における政府そのものの予算編成権を拘束していないということを私はお答えをしたと思います。
  144. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっとその問題には後で移りますが――いやいや、ちょっとその前の話をまだ続いてやりますので。  この第三条が、国は推進する責務を有するということが、今の内閣法制局長官の話では、これは単なる訓示規定である、いわゆる訓示規定である、法的な責任というものはない、政治責任である、そういうふうに御答弁をされました。それに対して、法的責任がない、そういうことを総理も確認をされたはずです。  では、第四条で、第三条を受けて「財政構造改革の当面の目標は、次のとおりとする。」というふうに書いて、三%と赤字公債の話が出ております。  もう一度お尋ねしますが、もし第四条を達成できなかった場合、この法律上の法律違反とはなると私は思うのですが、そのときの法律効果というものは、総理、どういうことでしょうか、お答えをください。
  145. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、法制局長官の見解を確かに首肯いたしました。法制局長官は、違反になるということを申し、その上で政治責任が生ずるという答弁をいたしております。私はそれを受けて、そのとおりでありますというお答えを申し上げました。
  146. 西川知雄

    西川(知)委員 法律というのは、法律違反があると法的ないろいろな拘束力、法的な効果が生まれるから法律というのです。政治責任が生まれるのであれば、これは単に閣議決定だけでもいいはずです。法律にする必要なんて全然ないわけです。総理、いかがですか。
  147. 大森政輔

    ○大森政府委員 この法律はいかなることを規定しているかということから始めなければなりません。この法律案は、政府予算を編成するに当たって守るべき規範を規定しているものでございます。したがいまして、この法律案が成立いたしますとどういう効果が生ずるかということになります。  予算編成に当たって政府のよるべき基準、方針が、平成年度以降、三年ないし六年という中長期にわたって国会の意思として明示されることになる。その結果として内閣は、その間、みずからの判断のみによって自由に、法定された方針等を変更して予算を編成し、提出することはできないという拘束を受けることは明らかでございます。  したがいまして、この法律案の内容、これは実質的に法律たるに値するものに満ち満ちておるということが言えようかと思います。
  148. 西川知雄

    西川(知)委員 法制局長官、よろしいですか。林修三、吉国一郎、角田礼次郎という方を御存じだと思うのですけれども、いずれにしろ、内閣の法制局の長官等を御経験なさった方が「例解 立法技術」という本を書いておられます。その中でこんな話をされております。  すなわち、法律的な強要性、いわゆるこれを破ったら、破った人がどういうふうなことを強要されるのか、強制されるのか、そういうことを書いていない、そんな法律、これは法律としてよくない、こんな法律をつくるべきじゃないというふうに、法制局の歴代長官三人が書いた、監修した本の中に書いてあるのです。まずそれを一つ指摘したいと思います。読んでもいいのですけれども、今度読んでおいていただきたいと思います。  私が申し上げたいのは、要するに、今おっしゃったことは、政府予算編成権を拘束するというふうに内閣法制局長官はおっしゃいました。総理大臣は、先ほど、立法府を通じて国民を拘束する、こういうふうにおっしゃいましたが、それは全然話が矛盾しているのじゃないですか、総理
  149. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、予算編成権を拘束しないと繰り返しお答えを申し上げております。  先ほども申し上げましたように、これは上限を設定いたします、それぞれの項目における上限を設定いたします。上限を設定いたし  大変申しわけございません。一生懸命に私も答弁しているのですから聞いていてください。(西川一知)委員「聞いています」と呼ぶ)その上で、その上限設定の枠内において政策の選択性を有し、年度ごとにおける予算の計上の権限、これを政府は失っておらないわけであります。その点は繰り返し私は申し上げてきたと思うのですが。
  150. 中川秀直

    中川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  151. 中川秀直

    中川委員長 速記を起こして。  橋本総理大臣から再度御答弁いただきます。  橋本総理大臣。
  152. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 大変先ほど来御議論が精緻だったために私が一部混線し、誤った答弁をしたとすれば、これはおわびを申し上げます。  冒頭議員が述べられました部分、これは立法府の今後の予算審議あるいは予算修正権に触れての御質問でありました。ですから私は、それについての議論はしていないというところからお答えを始めたわけであります。  そうした点で申しますと、確かに政府については、予算の上限、量的縮減目標を設定するわけでありますから、政府に対して拘束力は働きます、その部分において働きます、その上で個別の予算編成については政策の選択権は働きますと、正確に申し上げればそういうことだったわけでありますが、議員の御議論が、大変申しわけありませんでしたが、国会における予算の修正権から始まりましたために、私は、それについて従来お答えをしていないというところから答弁をいたしましたために混線を生じましたことは、私がおわびを申し上げます。
  153. 西川知雄

    西川(知)委員 少し簡単な例から、それじゃちょっと例を挙げて御質問をしたいと思います。  例えば公共工事、これは十年度から前年比七%減、こういうことでございます。今の御答弁ですと、その七%を上限として、中身は、当然のことながらどことどこに重点施策を置こうか、こういうことは政府が当然決められる、こういうお話でございます。  そこで、万が一の話をしますので、そういうことはないということで、現実とはちょっと別になるかもしれませんが、国会でいろんな公共工事について議論があったとします。きょうの自民党議員でもこの公共工事に焦点を当ててお話をされていた方もいました。したがって、万が一国会で、七%減はだめだ、景気を考えてこれはことしと同じぐらいにしないといけない、そういう議論があったと仮定しましょう。そして、そういうふうに国会予算が修正されたと。こういうことは可能ですか、可能じゃないですか、総理
  154. 大森政輔

    ○大森政府委員 まず、国会におきます予算の修正の範囲いかんという問題がその前提として議論さるべきだと思いますが、この問題につきましては、日本国憲法制定後、国会、衆参両院において随分議論が重ねられてきておりまして、昭和五十二年二月二十三日におきます政府の統一見解と申しますのは、  国会予算修正については、それがどの範囲で行いうるかは、内閣予算提案権と国会の審議権の調整の問題であり、憲法の規定からみて、国会予算修正は内閣予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。 したがって、国会におきます予算修正というのは内閣の提案権を損なわない範囲において可能であると私どもは考えており、また、これがその後ほぼ受け入れられてきているところであろうと思います。  そこで、次が大切なのでございますが、政府予算原案、提出いたしました原案は、今回の財政構造改革法案の範囲内でお出しをした、ところが、それを超えまして修正されようとした場合に、その予算修正権の範囲内であるかどうかということがまず問題になるわけでございます。  そこで、万が一、そういう修正の範囲内で、かつ今回の法案の限度を超えた内容になったというときに、その修正はこの法案との関係でどうなるかというのがお尋ねの趣旨だろうと思います。  この場合は、この法律基本的には内閣予算編成権に対する制約たる性質を有します。したがいまして、万が一そういう修正が可能な場合におけるその修正というものは、この法律によって拘束されないことになるということになろうかと考えております。
  155. 西川知雄

    西川(知)委員 結論は、内閣法制局長官のおっしゃったことは、実質的には、この法律が通ることによって、国会予算の修正権の修正の範囲が極めて限定をされるということを今おっしゃったわけです。すなわち、この予算がある、予算の提案権、提出権、編成権、これは拘束をされると今おっしゃいました。そして、その政府予算の提案権が損なわれない、その範囲で国会予算を修正することができる、こういう話です。ですから、もともとの土台である編成権自体がこの法律で拘束されるのであれば、実質的には予算の修正権も拘束されるじゃないですか。そうでしょう、総理
  156. 大森政輔

    ○大森政府委員 ただいま私の申し上げましたことは、国会において修正されようとする内容いかんによって結論が異なるということを申し上げておるわけじゃございませんで、仮にこの法律の数量的上限を超えた修正がなされてしまったという場合に、この法律との関係では法律に抵触するということにはならないということを申し上げたわけでございます。  それはなぜかと申しますと、この法律は、政府予算編成権を制約することを目的とするものでございまして、端的に申し上げますと、国会まで制約されるものではないということを申し上げたわけでございます。
  157. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、あれですか。さっき、国は財政構造改革推進する責務を有するというふうに三条では書いてありまして、これには立法府も行政府も入るというふうにおっしゃいました。その前提として、政府予算提出権、編成権というものがある程度拘束をされる。そして、その予算一般会計ではどれだけ提出したらいいかというのが書いてあります。それをやって、そしていろんな構造改革等をやる。そういうふうなことが書いてあって、最終的に第三条で、国がそういう責務を有するというふうに書いてあるわけです。これは、ほとんどの具体的な予算編成のところで政府を、各省を規制しているわけです。  ところで、その責任というものを、果たして我々立法府とかその他の人がみんな、政府が間違ってやったこと、政府がやったこと、また政府がこの法律にのっとってやったことの責任を、政治的な責任を、「国は、」ということで政府以外がとらないとどうしていけないんですか。  もう一回説明しますと、今おっしゃったように、予算編成権、これについてはいろんな拘束条項があるわけです。そうですよね。それを守りましたと仮定しましょう。その場合で、その方策で、この第四条とか第三条の規定どおりにうまくいかなかった、こういうふうな結論が生まれたとします。そのときに、立法府なり国民がその責務を負わないといけないということはおかしいんじゃありませんか。これは総理に対してです。
  158. 中川秀直

    中川委員長 何を質問しておられるんですか。
  159. 西川知雄

    西川(知)委員 いや、おかしいんじゃないですかということを総理に質問をしたわけです。
  160. 中川秀直

    中川委員長 法制局長官は負わないと言ったんじゃないですか。
  161. 西川知雄

    西川(知)委員 いや、政治責任でも負わないといけないのかということを私は尋ねたわけです。
  162. 中川秀直

  163. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は……
  164. 西川知雄

    西川(知)委員 大蔵大臣には質問していませんので……
  165. 三塚博

    三塚国務大臣 ちゃんと指名されたんだ。
  166. 中川秀直

    中川委員長 どうぞ、大蔵大臣
  167. 三塚博

    三塚国務大臣 議会制民主主義の基本政党政治です。ですから、国会には議員立法と、提案と言った方が正確でしょうか、政府提案と、二つのパターンがございます。いずれも論議の結果、審議の末に採決をし決定をされれば、両院において決定をされれば、法律としてこれを守らなければならぬ、こういうことになるのは当たり前であります。  本件は、半歳にわたる与党代表を入れた財政構造改革会議を真剣に行い、六月に閣議決定をいたして、構造改革推進についてというものを決めたわけであります。本件について政府提案として出すべきであると三党の協議の中で、政府もそれに従った、こういうことであります。  そういうことで、この論争は、いずれも議会制民主主義の基本に立って責任を負う話でありまして、そのことは、お互い政党人であり議会議員でありますから、割り切って論議をすべきではないでしょうか。
  168. 中川秀直

    中川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  169. 中川秀直

    中川委員長 速記を起こして。  再度、法律解釈について大森法制局長官から答弁します。  大森法制局長官。
  170. 大森政輔

    ○大森政府委員 先般お尋ねの、公共事業についての量的制限を超えた場合にどうかということにつきましては、具体的には第二節に規定があるわけでございますが、それは政府予算を編成するに当たっての具体的な拘束規範でございます。  それに対しまして、第三条、「国は、前条の趣旨にのっとり、財政構造改革推進する責務を有する。」この場合の「国」というのは、「政府は」と書いておりませんので、国会も含むのかと言われれば含むことになろうかとは思いますが、ここで言う「責務」と申しますのは、公共事業費がどうだとか、あるいは社会保障費がどうだとかいう具体的な規定に裏づけられた責務ではございませんで、財政構造改革に関する一般的な責務でございます。
  171. 西川知雄

    西川(知)委員 全然答えになっていないので、またこれは、国会予算の修正権と、また審議権と、そして政府の提案権、これとの関係で極めて重要で、我々が責務を負うというふうに、「国は、」の中に立法府も入っているわけです。そういう御答弁もあったと思います。そこで、その責任内容があいまいである、そんな責任を私、国会議員の一人として負うことはできません。当たり前の話です。それはまた別の機会に、ぜひ総理も交えて、これは極めて重要な問題ですのでもっと深く議論をしたいと思います。  そこで、もう一つ重要なことがあるので、それを私は質問をしたいと思います。  財政構造改革推進方策と、それからさっきの閣議決定の中でこんな文章があります。「今後、歳出改革と縮減を具体的に実施する観点から法律化すべきものを精査の上、」ここでは言葉は違っていますが、「財政再建法案を策定し、できるだけ早期に成立を期す。」というふうに書いています。  いろいろな議員から指摘がありましたが、補正予算とか財政投融資等々が入っておりません。そのほかに、もっと入っていないことがいっぱいあります。例えば公共工事の建設コストの縮減対策とか新規補助金の抑制等とか、福祉サービスについては規定をしていません。いろいろな問題が規定をしていないわけです。歳入についても同様です。道路特定財源のことについては全然言及をされておりません。  先ほどから申しましたように、この財政構造改革というのはこれからの日本を正常化していくために極めて重要である、こういうことを総理は何回も申しておられます。そうすると、私は、この財政構造改革推進方策とか閣議決定を見ました。この中で決まっていないことも若干ありますが、ほとんどの部分は決定されたことで、重要なことばかりです。この重要なことを閣議決定された。そして、こんな重要なことの全部をこの法律の中に入れないで、一部だけ精査してというのは、どういうふうにして精査して、総理、この中に法律事項とされた事項とされていない事項を区別されたのでしょうか。  これは、今言うように……(涌井政府委員「はい」と呼ぶ)こういうふうに大蔵官僚が出てくるということは、こんな重要なことを法制局長官とか官僚がやっているわけです。これは国の場で、財政構造改革、こんな極めて重要なことをどうしてそんなふうに官僚に任すのですか。私はぜひ総理にお答え願いたい。
  172. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  六月三日の財政構造改革会議決定の閣議決定に織り込まれた項目のうち、法律化すべきものを精査したものでございます。  具体的に申し上げますと、大きく分類しますと、例えば中期防の見直し等のように、法律に根拠を持たない閣議決定等の見直しは行政府限りで可能であることから、法律規定しておりません。  それから、国鉄の清算事業団債務の処理のように、政府において九年中に成案を得ることを閣議決定している事項については、これも法案化しておりません。  そのほか、例えば防衛の装備品の調達価格の抑制等、既存の法律制度の運用に係る事項につきましては、これは行政府に執行がゆだねられている事項でございますので、新たに法律という形ではしておりません。  そのほか、例えば原子力、核融合、宇宙開発等の大型プロジェクトの見直しのように、予算編成過程におきまして行政部内において検討、対処する事項についても法律化しておりません。  以上のような基準で区分けしております。
  173. 西川知雄

    西川(知)委員 では、ちょっとお尋ねしますけれども、これは小泉厚生大臣、ちょっとお聞きください。  医療保険制度改革、年金制度改革、これに関する事項はここの法律で定められているんです。ところが、福祉サービス、これは推進方策の一の(五)に書いていますが、これは規定していないんですね。理由は何ですか。
  174. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 確かに、御指摘のように、福祉につきましては推進方策におきましてこのように書いてございます。介護保険法案の成立を図るとともに、サービスの質を確保しつつ、各種規制等の緩和、サービス内容等の情報公開及び福祉サービスヘの民間事業者の導入を推進する。併せて、施設整備費、運営費補助の在り方について見直しを行う。 とされておりまして、具体的な見直し内容は、行政府に執行がゆだねられている事項あるいは予算編成過程において行政部内において検討、対処する事項ということで、法律という形式になじまないという考え方で対処しております。  他方、医療、年金の改革につきましては、これは法律改正を伴うものが多数ございます。また、これは社会保障改革の中核であり、かつ財政構造改革内容の重要な一部をなしているということでこのような規定を設けたわけでございます。
  175. 西川知雄

    西川(知)委員 私は今非常に驚いているのですが、日本がこういう財政の危機にあって、これからの日本の将来をどうしようかということをこの場で論議しようということで、午前中から経済論争のところで、もう危機的状況だ、危機的状況だということを総理がおっしゃいました。そして、それを強力に進めるために法制化をしようというふうに本会議でも答弁をされたのです。そういうときに、ではどうして、重要な部分で、方策、方針に書いてあることは全部重要だ、その部分のどの部分が法制化されるのですか、どの部分が法律化されないのですかということを聞くときに、大蔵省の役人が出てきてこれこれこうですからと言うことは、私は、この政治姿勢というものが一体何なんだろうかというふうに思わざるを得ません。  今大蔵省改革なんかが叫ばれていますが、ますます大蔵省のそういう裁量、それによって法律化すべきものとすべきでないものが分けられているということは、私は本当にこれはおかしいことじゃないかというふうに思えてなりません。  そこでもう一つ、時間が余りございませんので質問をいたしたいと思いますが、総理、まあ内閣法制局長官に振られるのかもしれませんが、お答え願いたいのですが、この法律というものに違反した場合、もう一回もとに戻りますが、これは、先ほど内閣法制局長官が言われたように政治責任だけが発生するのでしょうか。そして、もしそうだとするならば、その発生した政治責任というのはどういうことなのでしょうか。具体的にお答えください。
  176. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 仮定を置いてお答えすることをお許しをいただきたいと思います。  と申しますのは、先ほどから議員は、御自分の御論議の中で、要するにこれが成立することは絶対に認められない、自分は反対だということを言い切ってこられました。その上でさまざまな角度からの御論議がございました。  今の御質問に対し、成立することを前提にお答えをいたさなければならないわけでありますが、当然ながら、成立をいたしました法律がその目的とする条件を政府として全うできなかった場合、政治責任というのは私は大変重い言葉だと思いますけれども、と同時に、客観的にそういう状況を維持することのできないような情勢が生まれる場合、全く現時点において予想し得ない、これはちょっと例がよくないかもしれません、しかし、例えば湾岸危機から湾岸戦争といった、全く予見できない事態が発生いたしましてこれが守れないとなった場合、政府はこの法律の改正案を国会提出する責任があろうかと思います。
  177. 西川知雄

    西川(知)委員 ということは、集中改革期間中にいろいろ経済社会の情勢が変化して、その結果、この法律規定された施策とか措置が今度は逆に財政構造改革の趣旨に反する、この三条、四条を守れなくなるということになると法律改正をする、こういうふうに今おっしゃったわけです。  ということは、社会経済の変化に従ってこの法律中身を変えていくのならば、社会経済というのは刻々と変わるわけですから、こんな法律なんか要らないのじゃないですか、総理
  178. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私が極端な例を引いたのがあるいはいけないのかもしれません。しかし、こうした法律案を私どもが提案をしたいと考え、現に提案し、国会に御審議を願わなければならないと判断をいたすぐらいに、我が国の財政状況が厳しい状況にあることは既に申し上げるまでもないと存じます。そして、私どもは、この法律案が国会において通過、成立することを心から願っておりますし、その上で、この法律のもとにおいて財政を再建していきたいと本気で考えております。  同時に、私どもは、そのためにも、財政構造改革だけではなく、午前中からも御論議をいただきましたように、経済構造改革、金融システム改革、皆並行してこれを進めていく、結果として自律的な内需中心経済を確立したいと考えております。  その上で、例えば湾岸危機から湾岸戦争の時期のような事態というものは、通常の情勢で予見できるものではございません。そして、国家においてそのような、全く現時点において想定できない事態を全く否定することもできないのであります。そういう場合には、これは逆に言えば国会においても、その変化の状況というものは、その結果として採用する施策のいかんとは別として、その状況というものはお認めをいただけるでありましょうから、その場合には法律の改正をお願いいたすことがあるか、それは私はあり得ることだと存じております。湾岸危機から湾岸戦争にかけて大蔵大臣を務めました人間といたしましては、そうした事態を全く否定していくことはできません。
  179. 西川知雄

    西川(知)委員 質疑の持ち時間がもう終わりましたのでこれで終わりますが、最後に、法律に違反したら、何か抽象的な政治責任だけが生まれて法律的な責任は一切生まれない、こんな法律というのが一体法律なのかということは、私は極めて疑問に思います。  そういうことで、私の質問を終わりたいと思います。
  180. 中川秀直

    中川委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、生方幸夫君。
  181. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫です。一時間二十分質問をさせていただきます。  今の西川議員との討議でございますが、私も一部理解できない、納得できない部分がございましたが、党が違いますので、私の質問は最初からさせていただきます。  本日、自民党は緊急国民経済対策というのを決定して発表をいたしました。まず、財政構造改革法案に入る前に、景気対策という観点から、本日決定をいたしました四本柱について御質問をさせていただきたいと思います。  四本柱、当然皆様方御承知だと思いますが、規制緩和土地流動化、中小企業対策、税制改革、これらが盛り込まれた案が本日発表をされました。景気の現況については、これまでもここで御論議されておりますが、どのように見ているのか論議があるところでございますが、私は、景気はかなり鈍化している、これから景気対策を打たなければ年末にかけてかなり景気は悪化するのではないかというふうに考えております。     〔委員長退席、白川委員長代理着席〕  本日発表されました自民党の緊急経済対策を見まして、これによって景気がよくなるのかというふうに考えますと、残念ながら、きょう発表された政策を見ますと即効性のある薬というのはほとんど盛り込まれていない。これは当然、今ここで論議をしておりますように、財政危機の中で使うべき札を使えないという制約がある中で精いっぱいの論議をされたということはよく理解をしておるのですが、残念ながら、この政策を発表したとしても、景気の先行きに明るい見通しが出て株価が上昇するというようなことはないのではないかというふうに考えております。  そこで、まず第一に総理にお伺いしたいのですが、法人税を国際的な標準並みに四〇%に引き下げるということと同時に、中小企業の税的な負担軽減にも特段の配慮を払うというふうに述べられておりますが、具体的に四〇%まで税制を引き下げる具体的なプログラム、どのような過程で引き下げていくのか、また、中小企業の負担軽減、具体的にはどのような措置をお考えになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
  182. 三塚博

    三塚国務大臣 税制の問題につきましては、財政構造改革基本的な方針を踏まえながら検討をしなければならないというのが政府としての立場であります。  もちろん、党には税制調査会がございます。与党にも六者会談、十者会談というのがございます。政府税調またしかりであります。本件について真剣な論議が展開をされておりますから、その論議の動向を注意深く見守りながら、収れんされた形で提言をいただく、答申書というのでしょうか、提案書というのでしょうか、それを見て今後に対応します。
  183. 生方幸夫

    ○生方委員 景気の現況についてですが、本日の新聞報道にもありましたように、今までの景気というのは、自動車や電機を中心とした輸出産業が引っ張ってきた、円安ということもございまして引っ張ってきたという状況がございました。しかしながら、国内の消費というものが一向に盛り上がってこないという中で、自動車産業も減産を余儀なくされるというようなことが決定をされております。  これを見ますと、このまま放置をしておいて内需喚起の策をとらなければ、これまでの景気を支えてきた輸出産業にも非常に大きな影響が出てくるのではないか、かように私は心配をしておるわけです。特に住宅着工件数などについては、ずっと前年比を下回っておりまして、このままの状態が続けばさらに景気が悪化するのではないかというふうに懸念をいたすところでございます。  したがって、私は、やはりここは、これから暮れにかけて景気をより一層悪化させないためにも、消費を喚起させる策というのをとる必要があるのではないかというふうに考えております。本来、財源が豊富にあるのであれば、当然大幅な所得税減税等を実施して消費を喚起するという方法もあると思いますが、それができないのであれば、それにかわる方策というものを考えていくべきではないかというふうに考えております。  私たち民主党も、緊急経済対策というのを提言をいたしました。その中で、少ない財源の中で何かやれることがあるのではないかというようにいろいろ知恵を絞りまして、これは自民党さんの政策とも一致する部分もあるのでございますが、例えば住宅ローンとか教育ローンとかいう、そういうローンの負担が非常に重くて消費になかなか回らないという現状があるとするならば、ローン減税というようなものを実施する必要があるのではないか。すなわち、五年以内に成約した住宅あるいは耐久消費財、教育費等の新規ローンの利子分については十年間にわたって所得控除をするというようなことを行うことによって、少しでもローンの重圧というのを取り除くことによって、その部分を消費に回して、GDPの六割を占める消費を活性化させるというような方法も考えられるのではないかと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  184. 尾身幸次

    尾身国務大臣 現下の景気状況でございますが、御存じのとおり、ことしの三月まで消費税引き上げに対応する駆け込み需要がございまして、これは消費についてかなりございました。特に住宅建築につきましては、多分、かねがねマイホームを建てたいと思っていた方々が消費税が上がる前に建てようということで、九月に契約したものは引き渡しが四月以降になっても消費税は三%でいいというルールでございましたので、昨年の九月、十月ごろから駆け込んだわけでございます。  したがいまして、この住宅建築についての駆け込み需要の反動減というのは、四月以降、これは長期的な問題でございますので、少し長引くかなというふうに思っておりますが、しかし、昨今の動向を見ますと、百三十一万戸というようなことで、やや回復の兆しもあるかなというふうに考えております。  それから、消費についてでございますが、例えば家計調査によります実質消費支出、八月には対前月比〇・八%増ということになっておりますし、それから小売販売についても、八月には二・三%プラスということになっているわけでございます。家庭電器販売もプラス、乗用車販売は、八月はマイナスでございましたが、九月には対前月比プラスというようなことになっておりまして、景気の回復基調そのものは変わらないというふうに考えております。しかし、従来のような力強さが見られないことも事実でございまして、そういう点では、これから対応していかなければならないと考えているわけでございます。  それから、設備投資につきましては、企業収益が一方で上がってきておりまして、他方で設備の過剰感というものが低くなってきている。つまり、徐々に設備が、フル稼働とまでいかなくても、稼働率が高くなってきているわけでございまして、そういうバックグラウンド的に見ますと、設備投資も上昇するバックグラウンドとしては態勢が整っている。  それから、雇用者数も、八月の数字で見ますと、昨年度比四十七万人の増加でございますし、それから一人当たり雇用者所得も、わずかでございますが、一%増ということで、雇用者所得そのものは対前年比で一・九%の増ということになっております。  そういう状況でございますが、しかし、将来の景気に対する信頼感といいますか、そういうものについてもう一つのところがございまして、まだ、いわば足踏み状態とも言ってもいい、回復基調にあるけれども足踏み状態と言ってもいい状態が続いているわけでございます。私ども、きょう出されました自民党あるいは与党三党の景気対策についての提案もいただきながら、これを十分踏まえて経済構造改革をしっかりと進め、そしてその中で、景気の将来に対する信頼感というものを消費者あるいは事業家、企業家の皆様にも高めていただいて、景気を正常な回復軌道に乗せてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  185. 生方幸夫

    ○生方委員 確かに、数字を見ますと、ずっと今おっしゃったとおりな数字だというふうに思うのですが、私たち国民が考えている景気観というのですか、今の現況というのは、町に出ていろいろな人の声を聞いても、緩やかな回復とかいうふうに言われてもとても納得をできないというような返事が多いわけですね。  どうして、国民の皆様方が感じている景況感と、経企庁あるいは大蔵省が考えている景況感とこんなに違ってきてしまったのか。私自身も、景気が、確かに数字を見れば回復してきた、ことしの夏にかけては回復してきたのは事実でございますが、実感としては回復をしてきたなという感じが持てないのは一体どこから来るんだというふうに総理はお考えになりますでしょうか。
  186. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、今実態として経企庁長官が申し上げましたこと、その数字の上では委員にも御認識をいただいた、その点においての共通の土俵はできた。その上での景況感の違い、それは何かといいますと、やはり私は、先行きの見通しというものにどう目を向けるかというポイントだと思うのです。  そして、やはりその最大の分かれ目というのは、これを構造的な要因としてとらえ、構造改革を進めなければならないと私どもはとらえているわけでありますが、必ずしもそこまで、あるいは、それでという思いを持っておられる方々がある、そういう点も現実の問題としてはあるでありましょう。  ただ、ことしの五月、経済構造の変革と創造のための行動計画を政府は決めたわけでありますし、これを前倒し、また可能な限り前倒し、それにつけ加えて新たな施策の追加も行いたい。  フォローアップを今関係省庁に求めておりますけれども、この中で求めたもの、それは、富あるいは新たな雇用を生み出すような重要なかぎとなるものは何か。そういう産業は何か。これに対して、資金、人材、技術などの観点からそれぞれの事業環境というものを整備していく。そして、分野に応じて総合的な施策を展開することとともに、特に物流、エネルギー、情報通信といった分野につきまして、これらはいずれも極めて大事な分野でありますと同時に、我が国の場合に高コスト構造という指摘を受けている分野であります。この高コスト構造の是正に資するような規制緩和見直し、撤廃、また企業や雇用をめぐるさまざまな制度の改革などを通じまして、国際的に魅力のある事業環境を整備する、こうしたことを骨格としているわけでございます。  もしお許しがいただけるなら、議員先ほど来の御指摘を、財政構造改革という中で、赤字の縮小だけに目を向けず、いかにすれば事業環境が整い入りの部分をふやすことができるかということをもっと考えろ、そういう御指摘と私は感じ、その上で、今のような点について一層これから努力をしていきたいと、既にフォローアップの態勢に入っているということを申し添えたいと思います。
  187. 生方幸夫

    ○生方委員 財政構造改革、これから質問させていただきますが、ともかく、国民の感情としては、もうちょっと張り切れるような景気対策というのをぜひとも出してほしいということでございますので、私ども民主党が提唱しておりますローン減税というようなものもぜひ御検討をしていただきたいということを申し添えておきます。  それでは、本題の財政構造改革についてお話をさせていただきます。  先ほど来ずっと論議がされておりますように、この法案には数値目標が明記されている、これが非常に大きな特徴であると思います。先ほどの論議を聞いておりまして、その数値目標予算審議に優先するのかしないのかという、これは非常に重大な問題でございますので、後日、またゆっくりときっと議論がされるのでございましょうから、私はそれにはあえて触れませんが、その数値目標を明記されたことは、私、もちろん評価はいたします。  数値目標が提示されなければ、なかなかそれを達成するということにはいかないわけで、それ自体は評価いたしますが、その数値目標にどうたどり着くのかという方法がきちんとこの中に示されているのかどうかというと、これはもちろんこれから論議することだと言われてしまえばそれまでなのですが、残念ながら中身の部分についてしっかり見えてこないことは、この法案を見る限り明らかでございます。  まず、お伺いしたいのですが、財政構造改革というふうにこの法律は言っております。しかしながら、現実を見ますと、今申し上げましたように、この中身は、歳出をいかにカットするか、つまり歳出削減法案になっていて、その構造改革の部分というのが見えてこないということがございます。したがって、どこがその構造改革の構造改革の部分であるのかということを一点お伺いしたいということと、これは橋本総理が述べております六つの改革の中の一つとして位置づけられておるわけです。したがって、そのほかの改革、教育改革経済構造改革や行政改革との関連で、この財政構造改革はどのように位置づけられているのか。その二点をまずお伺いしたいと思います。
  188. 三塚博

    三塚国務大臣 構造改革は、歳出のカットだけで、見えてこないという段々の御質疑です。  これは答弁でも申し上げておりますとおり、構造改革改革というのが何かということであります。  歳出をカットするということであれば、一律にこれを切っていくわけにはまいりません。それぞれの行政目的、それぞれの国民の要請を受けて歳出をして、今日まで計上されてまいりました。そういう中で、緊急、もう一瞬の猶予も許されない財政状況にこれあり、何としてもこれをやり抜いていただかなければならないというのでこの法律を出しておるわけであります。  よって、この法律を御審議の中、可決決定をいただきますと、本件に基づいて一項目ずつ慎重に精査、また厳正に対処をする、こういう基本方針を持っております。制度に繰り込んでやるわけであります。段々の由来に基づいてこれを解明し、分析をし、カットをするわけであります。(発言する者あり)私がやります。最終的に責任をとります。  こういうことで、今言われました、特別会計財政投融資、対象しておらないではないかなどということもあります。この件につきましては、全部点検をするんです。財投予算を振りつけるに当たりまして、この機関が真に必要な機関か、真に必要でありましても有効に国民の期待にこたえておるかということを点検し、こたえないものについてはカットをしてまいります、当然のことであります。役目の終わったものは民に移管をしてまいります、当然のことであります。  官から民へ、中央から地方へ、こういうことでありまして、まさにすべてをこれに結集して、我が党、与党二党と連携の中でやり抜いてまいりますことが、国民の信頼にこたえ、後世の世代にこたえるということになるからにほかなりません。反対のための反対という議論は国会論議になじまないと、一般論として申し上げておきます。
  189. 生方幸夫

    ○生方委員 私は、反対を今とりたてて表明したわけではないのですが……。  私の質問の趣旨、総理お戻りになりましたので、総理にもう一度お伺いしたいのです。  総理が言っております六つの改革の中の一つとしてこの財政構造改革案というのが出てきたというふうに私は理解をしております。したがって、特に行政改革との関連なんですが、一府十二省に再編をするという中で、各省庁の歳出もカットをしていかなければいけない。そのような構造改革の中で、今度の財政構造改革というのはその六つの改革の中でどのように位置づけられているものであるのかという点が一点と、その構造改革という部分がなかなかこの法律案を見ただけでは見えてこないのですが、総理が言う構造改革、その部分は、エッセンスはどこであるのかということをお伺いしたいのです。
  190. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 確かに今、私は六つの改革ということを申し上げ、御協力を得たいとお願いを申し上げております。そして、この財政構造改革法案、我が国の財政構造を変えていく上で、今の状況から離脱をするために、どうしても国会において御審議を願い、成立をさせていただきたいと願っている法律案であります。その上で、今、行政改革に触れられました部分が、中央省庁から触れられましたので、私なりに多少の補足をお許しいただきたいと存じます。  行政改革が目指しているもの、それは何かと言われますなら、私はよく、簡素にしてできるだけ効率的な、そして透明性の高い行政府を目指すということを申し上げております。もともと私は簡素、効率と申し上げておりましたが、一方で情報公開の準備等も進めていることを考えれば、これに透明という文字を加える必要がありましょう。  そして、そのために必要なことは、一つは、規制緩和、撤廃等により、今まで官が抱えておりました部分をできるだけ民間に移していく、こうした考え方であります。同時に、これは経済構造改革にも当然ながら連動していくわけでありますし、そのほかにも影響を及ぼします。  もう一つは、国と地方との関係の中で、一段国が上に立ち、下を指導するという発想ではなく、まさに国と地方の事務の見直しを行う中で、国の業務の、特に住民に身近な仕事ほど住民に身近な自治体に移しかえる、そういう考え方の中に分権を進めることであります。  本日の閣議で第三次及び第四次の地方分権推進委員会の御意見というものを決定をし、これを受けましてこれから地方分権推進計画の策定に本格的に入るわけでありますが、これは、今日までどちらかといいますと地方六団体から提起をされました問題を主に作業を願ってまいりましたので、これからなお一層の御努力をいただきたいというお願いを申し上げている部分であります。  これらによって、当然、中央の持ちます役割、これは減少をいたしますし、減少をする結果としては、より小さな、また効率的な、簡素なといった目標に進むことを容易にいたします。同時に、分権が進む中で事務の執行等にも当然ながら変化が生ずるわけでありますから、これは財政という面から見ましても、当然ながらそれだけの効果を発揮する性格のものであります。  位置づけとして一つずつを拾ってまいりますなら、いろいろな申し方があろうかと存じますが、国と地方との関係の見直しの中におきまして、地方に対する税財源の配分等も含めて今後見直しを進めていくわけでありますから、これは当然のことながら中央政府における財政構造の変化にも資するものである。その上で、なおかつ国として責任を果たしていかなければならない分野におきまして、それぞれの縮減目標を設定することにより、これを今度は量の縮減、これを果たしますためにはいや応なしにその仕組みを見直し、制度を見直すということになっていく、質の変化に結びついていく、これはまた行政の改革にも資するもの、相関関係が幾重にも重なっている、私はそのように問題を受けとめております。     〔白川委員長代理退席、中山(成)委員長代理着席〕
  191. 生方幸夫

    ○生方委員 財政構造改革案でございますから、歳出のカットというのを重点に置いているのは当然のことでございます。しかしながら、きのうの論議でもありましたけれども、この法律が通ると景気は悪化するのだというようなことを皆さんが思ってしまっている。これは当然、完全に財政構造が改革をされて今の赤字体質がなくなれば景気の浮揚ということにつながるのですけれども、そこに至るまでの間、ここに歳出のカットばかりが優先されますと、どうしても景気の先行きに対しては国民の皆様方が非常に暗い見通しを持たざるを得ないというふうに私は考えるわけです。  したがって、先ほど総理もちょっと触れられましたが、やはり財政構造改革と言う以上、歳出のカットばかりではなく、歳入の増加というのを図らなければいけない。これは安直に増税に頼るということではなく、やはり私は、日本と同じように十年前に非常に大きな財政赤字を背負って苦しんでいたアメリカの例に学ぶ必要があるのではないかと。  アメリカの財政構造改革というのは、もちろん、何回にもわたりまして法律を出して、それを訂正してまた出してという過程を続けてまいりましたが、それと同時に、財政構造改革と同時に、経済構造改革というものに非常に力を入れて、その結果、アメリカの法人税の自然増というのが非常にふえてきた、したがって、目標よりも大分早く財政改革達成されたという事実がございます。  ちなみに、例を申し上げますと、例えば法人税の収入というのが……。ちょっと今見当たらないので、ではこれはあれしますが、見通しよりも十倍程度ふえているというような事実がございまして、そのような法人税の収入増というものを図るような経済構造改革というものにやはり日本も着手をしなければいけない。  そこで、経済構造改革と申しますと、規制緩和ということだけで経済構造改革がすべて終わってしまうような感じを私はどうしても受けるのです。もちろん規制緩和も重要でございますが、規制緩和と同時に経済体質というようなものを変えていく必要があると思うのですが、今の時点でお考えになっている経済構造改革の部分で、規制緩和以外にどのような方法をとれば本当に日本経済構造が改革されるというように、総理、お考えになっていますでしょうか。
  192. 尾身幸次

    尾身国務大臣 アメリカの問題でございますが、アメリカの財政赤字は、九二年度をピークにいたしまして減少を続け、九七年度にはGDP対比で〇・五%に縮小するというふうに予想されているわけでございます。我が国が今五・四%の赤字という状況でございますので、これは大変なことだというふうに考えております。これは、歳出の抑制に向けました積極的な取り組みとともに、景気拡大によります歳入の増加も大きく寄与していると言われているわけでございまして、九二年度から九六年度までの五年間で歳出が年率で三%の増加にとどまったのに対しまして、歳入の方は年率七%に増加していることからもうかがわれるわけでございます。  アメリカの方は、景気拡大七年目に入っておりまして、失業率の低下、またインフレ率が低いという理想的な状況が実現され、いわばニューエコノミー段階に入ったという議論もされているわけでございます。  そこで、アメリカ経済が長期にわたる景気拡大を続け、財政状況も非常に好転している原因といたしましては、思い切った金利の引き下げと不良債権処理を行いましたことによりまして、いわゆるバランスシート不況を脱却できた。,つまり、日本と違う状況の大きなところは、不良債権の問題が、しこり景気の足を引っ張らなかった。非常に厳しい対策をしたわけでございますが、処理が大分前に終わったというのが一つの要因でございます。  それからもう一つ先ほど委員お話がございましたが、規制緩和が特に情報通信の分野で非常に進みまして、この分野の産業が経済を引っ張ってきたということで、経済が活性化したのも大きな要因と言われているわけでございます。  それから、労働市場が非常に伸縮的、弾力的になりまして、流動的になった中で新しい職を見出すことが容易になったというようなこととか、あるいはインフレが顕然化する前に予防的な金融引き締めが行われたというような状況がございます。  我が国におきましても、そういう状況と比較をしてみますと、不良債権処理がおくれたということと、まだ、例えば電気通信分野等におきます規制緩和がアメリカほど進んでいないというような状況もございますので、先ほど来申し上げておりますとおり、経済構造改革を進めるその中で、規制緩和、あるいは不良債権処理を進めるような土地流動化土地有効利用を図って経済を活性化していく必要がある。そういう点では、大いにアメリカの実情に学ぶ必要があると考えている次第でございます。
  193. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほど数字ですが、九六年度で見ますと、当初の見通しが約三十億ドルの増加というふうに見込んでいたところ、実際には百五十億ドル増加した。五倍増加したという事実があって、これが数年間続いたおかげで財政構造赤字が縮小したという事実がございます。今尾身長官から御説明をいただきましたが、アメリカは本当に九一年の三月以来ずっと景気の堅調さが続いておって、今までのように景気が循環をするという、その循環をしないような経済になったというようなニューエコノミー論というのも出ているわけでございます。  私は、これは景気でございますから、先行きアメリカがこのままずっといい調子で景気が上昇していくというふうに考えているわけではございませんが、従来の考え方から申しますと、九一年三月からずっと上昇が続いているというのはかなり異様なことでございます。少なくとも日本ではそういうことはあり得ないということは、アメリカの経済構造自体が非常に私は大きく変化をしているのではないかと。したがって、例えば需要と供給という観点から、昔は需要、供給というのがはっきりと見通すことができないがゆえに、多くっくり過ぎたり少なくっくり過ぎたりして景気の循環というのが発生した。  しかしながら、アメリカの場合は情報化というものが非常に進展したおかげで需要をはっきりと見てとることができるようになった。その需要をしっかりと見据えて供給体制を整えるということによって需要と供給のミスマッチが起きなくなったことが、景気循環というものを起こさせなくなった原因であるというふうに私は考えておるのですが、総理あるいは尾身長官、どちらでも結構なんですけれども、アメリカのニューエコノミーというものに対してどのような評価をなさっているのか、お考えをお聞かせいただきたいのです。
  194. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、今ニューエコノミー段階に入ったという議論があることは承知をいたしておりますが、その上で、経済企画庁長官の答弁と議員の御議論に、一、二、日米の間の現実の問題としての違いをともに御議論をいただきたいと思うのであります。  それは、新たな事業を立地する場合の条件の差というものであります。  確かに、経済企画庁長官からも述べられましたように、情報通信分野というものがアメリカの経済を非常な勢いで引っ張ってきた。しかも、そこに人材派遣という仕事が入り、労働力の水平移動が行われ、これが雇用失業情勢の改善にも大きく役立ってきた、この状況はそのとおり私も評価をすべきものと思っております。その上で、ハイリスク・ハイリターンという概念により、新たな業を起こす場合の資金が供給されやすい条件がアメリカには存在をしておりました。  日本でも、大蔵省いろいろ努力をしながら市場の整備を今日まで図ってまいっておりますが、個人の資産運用の場としての安定性とは別に、資金調達の場として日本の市場を見ました場合に、ハイリスク・ハイリターンという概念は、必ずしも日本で受け入れられ、定着をした概念とはなっておりません。  今後、新たな産業として、あるいは新たな業を起こそうとする場合の資金供給、これについても我々としては工夫をしていく必要があり、どうすれば民間の市場において、特に新しい事業を立ち上げようとするときの資金供給というものが円滑に行える仕組みをつくるか、この辺にも問題意識を持っておるということを申し添えます。
  195. 生方幸夫

    ○生方委員 規制緩和も大事ですし、経済構造を変えていかなければいけないということも事実なんですけれども、今総理もおっしゃいましたように、新規事業をつくっていって新しい事業分野を開拓するということが、経済規模を大きくして無理なく成長達成できる私は唯一にして最大の方法だというふうに思っております。  翻って日本経済を見ますと、新規事業を大きく開拓したのかというふうにここ数十年来見ておりますと、もちろん新商品開発というものはたくさんございまして、例えばハンディーカムみたいな新しい商品が開発されることによって大きな売り上げを得るということがございましたが、新規事業分野が開拓されたのかというと、残念ながら大きくは開拓はされていないわけですね。  アメリカなんかを見ますと、マイクロソフトの例を引くまでもなく、全く新しいソフト分野とかシステム開発分野というところで、大きな需要と大きな雇用を生み出すことができるということがございました。  今総理がおっしゃいましたように、確かにベンチャーキャピタル等の整備というのは非常に進んできておりまして、日本でもベンチャーキャピタル、ベンチャービジネスが育ってくる土壌というのはできていると思うのですが、残念ながらその種がまだない、できていないというのが現状ではないかというふうに私は考えております。  これは、一つには日本の雇用形態というのですか、大企業に人材が集中してしまって中小企業に人材が回らないということとか、教育制度の問題もあるのではないかというふうに私は思っております。  この間、詳しくは私も記憶していないのですが、ちょっとニュースで見たのですが、大学から企業に向けて何カ月間か生徒を派遣する、それで単位を与えるというようなことを始めたというようなことがテレビで報道されておりました。それを見ますとわかりますように、企業と大学というのが密接に絡み合うことによって、その中で新しい種というのをつくっていくというようなことが必要なのではないか。  アメリカの例などを引きますと、いわゆるインキュベーターというのですか、そういうものを大学が用意をして、大学の中で生徒が何かこれを事業化したいというようなことがあれば、大学の研究室の中で、大学がある程度のお金を出してある程度育つところまでは援助をするというようなことを幅広く行っている。  もちろん、これはベンチャービジネスですから、百やって一つ成功するかどうかということでございますが、百の試みを少なくともさせている仕組みというのをアメリカがつくっているから、そのうちの一つが芽を吹いてきて、そのうちのまた百に一つでしょうが、それが大きな分野を切り開いていくということになると思うので、ぜひとも私は、企業と教育との関連も含めて、ベンチャービジネスを生み出すような、種をつくるような環境というものを政府が整えていく必要があると思うのですが、この意見に対して、尾身長官、いかがお考えでしょうか。
  196. 尾身幸次

    尾身国務大臣 おっしゃるとおりだというふうに思っておりまして、資金、人材、技術、そういうものが新しい事業機会に対応して、事業に乗り出すという中小零細、あるいはそれが急速に大きくなるかもしれませんが、そういうベンチャー企業に対します支援、あるいはそれを育てる要因というものをつくれるような体制をぜひつくり上げたいと考えております。  委員の御示唆を十分踏みしめて対応してまいりたいと思っております。
  197. 生方幸夫

    ○生方委員 これは企業ばかりではなくて、アメリカなんかは、行政府にも学生が入って何年間かその行政の実際を行うというようなことをやっているというふうにも聞きましたので、例えば学生が就職をする際にも、いろいろな企業を経験する、いろいろな職業を経験することによって自分の適性がどこであるのかということがわかるということも含めて、行政府でもそうした学生が何年、何カ月でもいいのですが、何カ月か何年間か学ぶようにするような、学ぶというのですか就労するというのですか、そういうような機会をつくるようにしていったらどうかというふうに考えるのですが、どなたに聞いたらいいのでしょうか。
  198. 江崎格

    ○江崎政府委員 経済構造改革につきまして、具体的に政府としてその行動の中身を決めましたものが、ことしの五月の閣議決定で経済構造の変革と創造のための行動計画ということで決められたわけでございますけれども、この中に、今委員指摘の「新規産業の創出」というものが、三つの柱のうちの非常に重要な柱として掲げられております。  それで、この新規産業の創出をするための対策としまして、一つは資金の問題、これはリスクマネーの供給をいかに円滑にするかということでございますし、それから人材の育成ということで、今先生のおっしゃいましたインターンシップ制度、これは、学生が企業で試験的に働きまして、その企業内容などをよく熟知してその将来の就職で活躍するというようなことでございますけれども、こうしたものの普及にも現在準備に取りかかっております。  それから、おっしゃいました技術の関係でございますけれども、大学の持っておりますポテンシャル、これを企業の方に移転をいたしまして新規産業の創造に生かすという仕組みにつきましても、現在これの総合的な施策を私どもと関係省庁で検討しておりまして、いずれ成案を得たいというふうに思っております。  それからさらに、非常にこれから伸びそうな分野、例えば医療ですとか福祉とか情報通信とか、あるいは環境、バイオといった分野でございますけれども、こういった個々の分野につきまして、規制緩和ですとか、あるいは、特にこうした産業の核となる技術の開発、人材の育成というようなことに現在取り組んでいるところでございます。
  199. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほどのアメリカの経済の例にちょっと戻らせていただきますが、そのニューエコノミーをもたらした原因というのは、この間もここで総理にお話をさせていただきましたが、私は、やはり経済の情報化というのが一番大きな原因ではなかったかというふうに思っております。  この財政構造改革の中で情報投資ということに関して触れている部分があるのですが、この法案には直接触れていませんが、非常に少ない部分しか触れられておりません。これは、アメリカの例を引いても、例えばNIIに対して直接米国政府が資金を出すというようなことはやってはおりませんが、この間もお話ししましたが、やはりアメリカ政府というのは、情報化に向けての条件整備というのはしっかりとやってきたというように私は感じております。  今、日本でも情報化ということに対して力を入れておるのですが、情報通信分野に関して、私は、政府が全く口を出さないということはないのではないかというふうに思っております。  私たちが官から民へ移さなければいけないというふうに主張をしておるのですけれども、それと同時に、官僚は今まで監督役をやって、こうしろ、ああしろと一挙手一投足まですべてに指示をしてきたがゆえに、いわば民が縮んでしまったということがございますので、これから官僚というのはもっとコーチに徹するべきではないか。ああせい、こうせいではなくて、横から、ちょっとここのスタンスが悪いというようなことをアドバイスするような形のコーチ役に徹するという役割は、まだ非常に大きい役割としてあるというふうに私は思っております。  それと同時に、政府がやらなければいけないのは、情報化に対する援助という形で、例えば情報化投資に対する減税措置とか、ソフト開発とかシステム開発というものは、これは物ではないですから減価償却の対象にはもちろんならないのですが、こうしたものの重要性をかんがみれば、ソフト開発やシステム開発についても、減価償却がいいのか何がいいのかわかりませんが、何らかしらの援助を与えることによって、実際に情報化が進んでいるにもかかわらずそれが十分に活用されていないという現状を変えていくことができるというふうに思うのですが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  200. 薄井信明

    ○薄井政府委員 情報化分野につきましての国の支援として、税制上いろいろあるではないかという御指摘でございます。  そういった観点から、幾つかの通信インフラ等についての促進制度を税制上設けているわけですが、今御質問のありましたソフト開発に関しましても、それが自社内で開発したものであれば即時に損金算入できますし、また、外注したものでありますれば繰り延べ資産として均等償却するといったような制度がございます。それと、先ほど、その前におっしゃっていましたが、ベンチャーとの関係もあろうかと思います。  こういった観点からは、アメリカの経験にかんがみれば、どちらかというと、租税特別措置で細かい誘導をするよりも、税率を下げ、租税特別措置等々のいわゆる課税ベースを広げていく方が適切な対応ではないかということで、この年末に向けて、法人税の税制改正に向けて努力してまいりたいと思っております。
  201. 生方幸夫

    ○生方委員 本来の財政構造改革についてまた御質問をさせていただきます。  本法律案では、財政赤字を二〇〇三年までにGDP比三%以内にするという目標を提示しておりますが、この目標と同時に、もう一つ赤字国債の発行をゼロにするという目標がございます。ここでお伺いをしたいのですが、赤字国債の発行ゼロは、これは一時バブル期に達成をされたことがあったわけですが、私は、建設国債、赤字国債という分け方自体を今やもう見直す時期に来ているのではないかと、いうふうに考えております。  すなわち、建設国債というのは戦後すぐにつくられたわけで、焼け野原の中から日本国が立ち直っていくためには何よりも道路とか上下水道などのインフラを整備するという必要があって、そのために国債を発行する、これは当然意義があったことでございます。  しかしながら、ある程度以上のインフラが整ってきたときに、赤字国債、建設国債というふうに分けていることが、バブル崩壊後の景気対策の中で、なかなか赤字国債を発行することができないで建設国債を多額に発行して景気を刺激しようとした、残念ながら景気がうまく刺激されなかったというようなことがございましたので、やはり私は、赤字国債、建設国債という呼び方をやめて、もちろん、まだ日本が欧米諸国に比べてインフラが整っているということは言いがたいわけでございますが、そのインフラ投資も含めて、国民生活、経済をよくするための投資ということに対して国債を使ってもいいんだというような観点から、新しい国債というものを財政法改革してつくるべきではないか。  そうすれば、もっと機動的な財政の運用ができて、何も赤字国債、もちろん今財政改革論議を進めている中で赤字国債を出せというふうに言うわけではございませんが、赤字国債が悪くて建設国債がいいということには必ずしもならないわけで、赤字国債、建設国債という分け方を見直す時期に来ているのではないかというふうに思いますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  202. 三塚博

    三塚国務大臣 大変万般の構造改革を視野に入れながらの御提言を交えての御質疑であります。傾聴をいたしました。  本件は、段々の経過がございます。財政法は、負担の世代間公平という考え方に立ちまして、公共事業等に限って建設国債の発行を認めてきた経過はおわかりのとおりであります。同時に、この場合は、見合いの資産が残らない特例公債とは基本的に相違がある、こういうことでは御理解がいただけると思います。  したがいまして、御指摘のように、特例公債、赤字公債の区分をやめて、広く国民の生活、経済に資する場合に弾力的に国債の発行を認めるというお考え方があると思います。仮にそのとおりいたしますと、その発行対象が際限なく広がるおそれが今日ございます。その発行の上限を設けることといたしましても、健全財政運営の見地から見まして、今日の段階では慎重であらなければならないのではないかと思っております。  なお、現状では、建設国債発行に伴う国債費を賄うため特例公債発行の増加を招くなどの問題がございます。  本法律案では、国、地方財政赤字GDP比三%以下とすること、公債依存度を引き下げることを当面の目標といたしておりますものですから、これらを踏まえまして国債発行額の抑制を図ってまいりたいと考えておるところであります。御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  203. 生方幸夫

    ○生方委員 重ねて総理にもちょっとお伺いしたいのですが、建設国債と赤字国債と分けているのは先進国の中でも珍しいというふうに聞いておりますので、これを、財政構造改革を論議する中で、一歩踏み込んで国債のあり方そのものについても少し論議をしていった方がいいのではないか。その上で、今大蔵大臣もおっしゃいましたように、国債の発行全体についての枠をはめるというようなことが必要ではないかというふうに思うのです。総理にお答えいただければありがたいのですが。
  204. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 財政法上の建前から、従来のように議論をしていきますと、どうしてもそこに壁ができることはやむを得ない向きがあります。  しかし、現実に我々は、建設公債であろうと赤字公債であろうと、国債残高そのものを何としても解決しなければならない状況に置かれております。その意味におきまして、私は、論議が行われることを何ら制約するものはないと思っておりますし、その論議の行き着きます先について今から私が予測を申し上げるのは、これはまた失礼だと思いますけれども、私は、議員が提起をされました問題意識というものは極めて時宜に適したもの、そのように思って伺っておりました。
  205. 生方幸夫

    ○生方委員 二〇〇三年までに赤字国債を発行をゼロとするという目標でございますが、これは先ほども申し上げましたように、バブル期に一度赤字国債ゼロは達成をされておるわけです。二〇〇三年以降、仮にこれが達成されたとして、二〇〇四年、二〇〇五年にはどうするのかというお考えをちょっとお伺いしたいのです。
  206. 三塚博

    三塚国務大臣 まず、六カ年の期間を切りまして、赤字公債から脱却の健全財政へと。地方、国合わせまして、財政赤字GDP比三%以下に、こういうことにさせていただきました。もともとプラス二年の計画を総理から提示をされ、また総理から、段々の財政論議の中で、構造改革論議の中で、集中三カ年プラス三年、こういうふうにさせていただきました。  既に御案内のとおり、ストック、いわゆる地方、国の債務残高はGDP比九二でございます。先進国中、イタリーを除きますと日本のみであります。これを解消していかなければならないことが同時に目標となってきておりますが、まず特例公債の発行を発行ゼロに六年後完成をするということで、総体を抑えることによりまして九〇以下にこれを下げていかなければならない、こういう努力目標を掲げ、まず赤字公債からの脱却、こういうことに重点を置いた次第であります。
  207. 生方幸夫

    ○生方委員 これと関連するのですが、累積の方ですね。ストツクの方でEUは六〇%という目標を提示しているわけですが、これは出さなかった理由というのは何なのでしょうか。
  208. 三塚博

    三塚国務大臣 これは、現下の日本経済の現況、それから今後の財政運営への影響、バブル崩壊後の公債発行が伸びまして七十兆程度これに投入をした経過がございます。この反省もこれあり、財政構造の第一点、赤字公債からの脱却、健全財政ということを最大の視点にすること、目標、目的にすることが大事だろうという全体の意見を踏まえました。  同時に、六カ年このことを誠実に実行して結果を出すことにより、ストックの部分もただいま言われておる額から抜け出ることはございません。少なくとも、それが安定ではなくマイナスの方向に行くように財政運営を考えていかなければならない、こういうことであります。でき得るものから着実に誠実に結果を出していきたいという結果であります。
  209. 生方幸夫

    ○生方委員 もう一つ、今度の財政構造改革の中で注目されるのはキャップ制を取り入れているということですが、この二〇〇〇年までの集中改革期間までについてキャップを明示をしておるわけですが、これまで政府が行ってきたシーリングとキャップ制というのはどう違うのか。シーリングのどこに問題があったからキャップ制にしたのかという点についてお伺いしたいのです。
  210. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 シーリング制につきましては、御存じのとおり、従来は、各省庁の要求の総枠につきまして、例えば経常経費か投資的経費かというような経費の性質に応じた数値要求枠といたしております。  これに対しまして、今度のキャップ制は、社会保障費だとか公共事業費だとかODAだとか、具体的な主要経費について削減目標を設けまして、めり張りのきいた形にしているということが本質的な違いでございます。
  211. 生方幸夫

    ○生方委員 シーリング方式というのは、当初予算だけにかけていて、これを補正で直されてしまってシーリングが崩れるというようなことがあったから、多分シーリング方式を取り入れないでキャップ制を取り入れたというふうに思うのですが、そのキャップに関しては、補正した後の決算の段階でキャップがきちんとかかっているかどうかを確認するようにすることにしておるんでしょうか。
  212. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 キャップ制でございますが、これは主要な経費の当初予算についてのキャップということでございます。
  213. 生方幸夫

    ○生方委員 シーリングとどう違うんですか、シーリング制と。
  214. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 従来のシーリングでは、社会保障とか主要な経費ごとではなくて、それぞれの省の要求枠を、経常的経費とか投資的経費という経費の性質に応じて分けて数値を決めていったというところが違いでございます。
  215. 生方幸夫

    ○生方委員 それでは次に、個別分野ごとにお伺いをしていきたいというふうに思います。  公共投資についてまずお伺いをしたいんですが、公共投資基本計画の、この財政構造改革案では、計画期間そのものを三年間延長することによって単年度予算を抑えようというふうにしております。  しかしながら、私たち民主党は公共事業コントロール法案というのを前回国会提出をいたしましたが、公共事業そのもの、五カ年計画そのもの一つ一つが本当に国民の生活をよくするのに役立っているのかどうかという、中身についてまでの論議をした上で財政構造改革というその構造改革をしなければいけないんですから、一つ一つの計画について、むだなものはなくしていくという姿勢を示すべきではないかというふうに考えるのですが、いかがでございましょうか。
  216. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 御案内のとおり、今回の公共事業の長期計画につきましては、計画期間を延長することにより投資規模の実質的な縮減を図ることとしております。  この三年間の集中改革期間中におきましては、経済構造改革関連の社会資本の整備につきましては、物流の効率化対策に資するものを中心とした優先的、重点的な整備、あるいは、引き続き、相対的に立ちおくれている生活関連の社会資本への重点化等を図ることを基本方針として改革に取り組んでおります。
  217. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほどの件なんですが、補正予算にもキャップがかかるのかどうか、その点もう一回確認をしたいんですが。
  218. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 この法律案におきましては、キャップは当初予算と明記しております。(発言する者あり)
  219. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  220. 中山成彬

    ○中山(成)委員長代理 速記を起こしてください。  大蔵省涌井主計局長
  221. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 再度御答弁申し上げます。  主要経費のキャップは当初予算についてのキャップでございます。ただし、財政赤字につきましては、例えばGDPの三%だとか特例公債をゼロにするとか、そういうものについては補正後を含めた実績の数字でございまして、補正を含めて全体として財政構造改革路線として厳しく対応していかなくちゃいかぬということでございます。     〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  222. 生方幸夫

    ○生方委員 行政改革との関連についてお伺いしたいんですが、政府は、一府十二省に再編するということをお約束をしておるわけです。現在の三十八本の特別会計についてですけれども、これは各省庁ごとに出されているわけですが、この一府十二省に再編されたとすると、特別会計はどうなるのかということをちょっとお伺いしたいんです。
  223. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず第一に、正確に申し上げますならば、行政改革会議の中間報告において示されている中央省庁の姿、これが一府十二省と言われるものでございます。そして、これを当然のことながら骨格といたしますけれども、既に御承知のように、あの中にはまだ触れられておらない項目もございますし、省庁として議論の進んでおらないものもございます。そして、これらを含めまして今議論は継続されておりますし、今後十一月末までにこの成案をまとめるようにということで全力投球をしている最中であります。  その上で、中央省庁のあり方の論議の中に、特別会計をどこにどうというような角度からの議論は、現在、私の承知しております限り、附属する二つの委員会ベースの御論議の中ではあるいは出ておるのかもしれません、しかし、全体会議として特別会計のすべてを議論の対象としてはおりません。たまたまエージェンシー化等の論議をいたします場合に、その土台になる特別会計の収支はどうかと個別の特別会計を議論にいたしている場合はございますが、正確に申し上げますと、特別会計自体を全部横に並べ、これをどうこうという角度での議論という姿は、行政改革会議としてとっておらないということであります。
  224. 生方幸夫

    ○生方委員 いろいろな改革がいろいろなものと絡んできて、例えば省庁改革が行われれば特別会計の方も当然何か変わってこなければいけないということですから、財政構造改革、二〇〇三年までという長期の計画でございますから、この財政構造改革の中に、一般会計だけではなく特別会計とか財投とか、それからいわゆるそれをツケ回したような隠れ借金とか、全部含めた形で財政構造改革案というのを提出をしないと、本当の意味の財政構造改革にならないと思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  225. 三塚博

    三塚国務大臣 本件は、申し上げておりますとおり、「特別会計を含むすべての歳出分野を対象とした改革推進することを当面の方針とする。」と、特別会計見直し規定の中に明記をいたしております。よって、総理が会長の行政改革会議におきまして、預託は廃止をすると明示をされております。党の論議がそれと並行して行われておりますが、そのようになるだろうと私は見ております。  そういう中で、入りの分野における問題をどうするかということがあり、当然、並行して、段々に申し上げておりますとおり、特殊法人、公社、公団等、本件これを会計の面から見ていかなければなりませんし、特別会計として存在をいたします、林野特会が広く知られておりますけれども、各種の特別会計がございます。この点につきましても、特別会計が会計として機能しておるかどうかというのも点検の対象になりますし、やむを得ず本件を進めることが政策的な理由でということも精査をしていかなければなりませんし、スリムな行政機関ということで改革が前進をしておるわけですから、最終の省庁統合の問題が十一月末にまとめられると聞いております。  その後、編成の作業に入っていくわけでありますから、もちろんこちらの法律がそれまでお通しをいただくという前提でありますけれども、期待でありますけれども、その法律が成立することによって、初めて段々の御論議で答弁を申し上げておりますような問題点が整理をされながら、全体のスリムな政府予算、こういうことで御評価のいただけるものになるだろう、こう思っております。
  226. 生方幸夫

    ○生方委員 そうすると、一般会計特別会計財投等を含めた財政構造改革である、そういうものになっていくというふうに解釈をしてよろしいわけですか。
  227. 三塚博

    三塚国務大臣 全くそのとおりです。
  228. 生方幸夫

    ○生方委員 ちょっと視点を変えて、農水大臣にお伺いしたいのですが、公共事業のうち、一割強を土地改良を含む農業農村基盤整備というものが占めているわけです。この農地整備に関しては、このほかにも各種の補助金が出ておって、日本の農水、農業というのは保護はされてきておるわけです。  このようないろいろな公共事業を行ったり補助金をつけたりした結果、日本農業が強くなるというのであれば、当然それは措置をとっていくべきだというふうに私は考えるのですけれども、残念ながら、これをずっと見ておりますと、農業が元気になっているのかというと、だんだん元気をなくしていってしまっている。それに日本の貴重な財源が多額投入されているという事態をやはり何とかしなければいけないのではないかというふうに私は考えております。  これは、ニュース等で見ますと、補助金をつけることによって農家ももちろん負担をしなければいけない部分があって、補助金をつけてもらうのはありがたいのだけれども、負担する部分が重くてなかなかそれにこたえられないという声もある。欧米では、補助金をつけるというような農業対策から変わって、所得補償をするというような形に変わってきているというような意見も聞きます。  この間、本会議におきまして太陽党の岩國先生がおっしゃうた、農業そのものを生産農家と環境農家に分けるというようなことをしてみたらどうであろうかというようなことを提案をされました。  すなわち、生産農家に関しては、日本の今の農業は非常に分断された狭いところでやっておりますので、効率も悪いから、国際競争力がないということでございますから、それをまとめて大規模な農家にする。それにはもちろん、当然公共事業なりなんなりとやっていいと思うのですが、するということによって国際競争力を一つつけるということと同時に、農業が果たしている役割は、当然、農産物をつくるということ以外に、自然環境を守るとか、治水や治山の目的もあるわけでございますから、そうしたことに従事をしてくれる環境農家に対してはそれなりの所得補償なりをしていくという方法も一つ考えられるのではないか。  それから、大臣も私も東京育ちでございますけれども、東京で生まれた人間であってもやはり農業というもの、土というものに対するまあ愛着というのですか、そういうものは当然持っているわけです。これから高齢化社会が進んでいくわけで、六十なり六十五歳になったとき農地を自分たちで耕しながら健康に過ごしていくというようなことを考えますと、高齢者対策というものを含めた形で環境農家というようなものを考えてもよろしいのではないかというふうに思うのですが、この辺について農林大臣、いかがお考えでございましょうか。
  229. 島村宜伸

    島村国務大臣 まず、御指摘のありました農家を生産農家と環境農家に区分することについてですが、環境保全は適切な農業生産を通じて維持発揮されるものでありまして、両者は密接不可分の関係にあることにかんがみ、区分して施策を講ずることは難しいと考えます。  生方議員は、あるいはEU型の直接所得補償制度、いわゆるデカップリングをイメージされているのかもしれませんが、規模拡大が進んでいるEuと異なりまして、我が国においては零細な農業構造の助長につながる懸念もありますし、他方、中山間地域の農家の置かれている厳しい状況を十分認識しておりますが、私どもは、今後国民のコンセンサスが得られるか、あるいは混住化の進展の中で農家以外の方々のいわば理解が得られるかどうか、これらに配慮しながらこれらを検討するべきだと考えております。  いずれにせよ、この問題につきましては現在、食料・農業・農村基本問題調査会において真剣に論議されておりまして、この議論の経過を十分踏まえながら検討してまいりたい、そう考えております。  また、高齢化に対する対策でございますが、まず、農村地域は自然環境に恵まれておりまして、また、農業は高齢者に対しても体力に応じた就労の場を得やすいというような意味では特性を有している、こう考えます。このため、高齢者に対して、若い担い手の役割分担を明確にしつつ地域農業において働きの場を設定するということと、経験を生かした加工流通施設や生活環境施設を整備すること、あるいは農業協同組合によるホームヘルパーを養成すること等の対策を現在進めているところでございます。  お互いさま東京に生まれ育った人間としましては、果たして、この雑踏きわめる、しかし一方で利便性を確保できる地域と地方となじめるかどうかは大変疑問ですが、逆に私たちでなきゃ理解できないものもたくさんあるはずでありますから、これから、時間をいただいたらできるだけ全国を歩いて、また先生の御意見も検討してみたい、こう思います。
  230. 生方幸夫

    ○生方委員 もちろん、高齢者の方々が必ずしも全部が全部地方へ住むということじゃないのでしょうけれども、一部でも住むということになれば、当然そこに子供が行ったりお孫さんが行ったりというような形で都市と地方の交流も進んでいけば過疎化対策にもなるというふうに思いますので、ぜひ、まあそれもただで行けというのはなかなかそれはできないわけですから、何らかしらの国の援助というものをすることによって農地も農業も活性化すると思いますので、ただお金を与えるだけでというのじゃなくて、やはり元気を出すような、同じお金を使うのなら生きたお金の使い方というのをぜひしていただきたいというふうに思います。  もう時間が少しになりましたので、最後に厚生大臣にお伺いしたいのですが、高齢化というのが非常に進んでいけば当然医療費あるいは社会保障費というのがかさんでいくというのは、もうこれは事実なわけでございます。特に今、医療費関係だけに絞ってお伺いをしたいのですが、医療費総体が進むというのは、とにかく病気にかかったら、それについて病院にかかって保険を適用するという今の制度があるわけで、私はやはりもっと予防医療に力を入れるべきではないか。  例えば私が人間ドックにかかりますと、これは今では健康保険の適用外でございますよね。予防医療という観点から、やはり重病になる前に、最初に病気を発見できれば医療費も非常に低額で治療が済むわけでございますから、ぜひ人間ドックというようなものに対しても保険をつけるような、予防医療に対して保険を掛けるような措置というのをとったらいかがと思うのですが、厚生大臣の御意見いかがでございましょうか。
  231. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私も常々、予防は治療にまさるという観点から、日ごろから健康に心がける、当然病気になったときの治療も大事でありますが、多くの国民が今後いかにお医者さんにかからないで元気になるか、あるいは薬を飲まないで元気になるかということを考えて、元気で長生きしてもらいたいという施策を推進していこうということで、厚生省内でも検討しております。  そういう観点から、今御指摘の点は、今後の検討課題として大変大切なものだと思っております。
  232. 生方幸夫

    ○生方委員 これからの高齢化社会というのは、自己負担というのですか、自己責任というようなものが非常に重要になると思うのです。その際に、お年寄りだからといって全員がお金がないわけではないし、全員が不健康なわけでもないし、七十歳になったときに、実際は六十歳にしか見えないと十歳の方もいるし、八十歳に見える七十歳の方もいるし、だんだん年齢がふえていくと同時に、個体差というのですか、大きくなっていくし、生活環境も非常に大きく変わっていくと思うのです。  そのときに、非常に難しいことではございましょうが、その個人個人の経済状態や健康状態に応じた社会保障というものをきめ細かくやっていく必要があるのではないかというふうに思うので、一律に云々と、これは行政上はそれは一律に網をかけてしまった方が簡単には違いないのでしょうが、これから社会保障を改革していく上で、その個人差、個体差による変化に応じた保障、これはもちろん自己負担とか自己責任と裏腹になるのですが、そうしたことも盛り込んだ形で社会保障改革というものに力を入れてほしいと思うのです。その点について、もう一度だけ御意見をお伺いしたいと思います。
  233. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これからの抜本改革案におきましても、当然今言われたような案も御意見として各方面から出ております。そして予防について、恐らく議員は保険適用を拡大すべきではないかという御意見だと思うのでありますが、その点、どれを保険適用するか、費用はどのぐらいになるか、いろいろな観点から検討しなければならない点が多々あります。  しかしながら、予防は治療にまさるという点から、傾聴すべき御意見だなと。今後検討させていただきたいと思います。
  234. 生方幸夫

    ○生方委員 このほかにも、自治大臣にも御質問する予定でございましたが、時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  235. 中川秀直

    中川委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  236. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  きょうは、財政構造改革会議を議長として主宰なさった橋本首相を中心にして、社会保障の分野でなるべく法案に即してお尋ねをしたい、こういうふうに思います。  最初に、厚生省に伺います。  一九八四年、昭和五十九年、中曽根内閣のときですが、健康保険の一割負担の導入、国民健康保険への国庫負担が四五%から三七・五%に削減された。皆さんは、「健保国会波高し」といえば思い出される方も多いと思いますが、そのときの国民負担増は平年度ベースで幾らだったか、これが第一点です。  二つ目は、一九九四年、平成六年、細川内閣から羽田内閣にかけて、入院給食費の負担一日六百円が導入されたときの国民負担増は同じく平年ベースで幾らであったか。  三点目、最後、本年九月実施の改定、総理が主宰された財政構造改革会議の六月三日の文書の中では、医療の抜本的構造改革の第一歩、こういうふうに位置づけられた。これの患者負担、保険料負担増、その合計は、まだこれは年度途中ですから出ていないだろうと思うけれども、平年度ベースでどのくらいになると推定しているか。この三つの金額を最初にお示しいただきたい。
  237. 高木俊明

    高木(俊)政府委員 まず、最初の昭和五十九年の改正における患者負担増でございますけれども、当時の金額で千四百億円でございます。  それから、二つ目平成六年の改正でございますけれども、これが二千百億円ということでございます。  それから、先般の平成九年の改正でございます。これは九月実施でございましたが、平成年度を満年度ベースに直しますと、患者負担増が九千八百億円でございます。それから、政府管掌健康保険の保険料率の引き上げをお願いいたしました。それに伴う負担増が、満年度で二千二百億円ということでございます。九千八百億円と政府管掌健康保険の保険料負担増とを合わせますと、一兆二千億円ということでございます。
  238. 児玉健次

    ○児玉委員 そこで、私は総理にお尋ねをしたいのですが、ずっとこの間の国会のさまざまな医療、福祉の分野を見てこられた総理であれば、例えば先ほどの中曽根内閣のときの健康保険の一割負担の導入、これが一回の国会では決まらなかったのです。国会をまたがるほどの大きな国民的議論になった。そして入院給食費。千四百億と二千百億。今厚生省は推計で一兆二千億と言われたけれども、これは明らかに過少に過ぎますね。マスコミも含めて、二兆円の負担増というのはもう国民的な常識になっている。そして、仮に厚生省の数字を使ったとしても、これまでの国民負担増に比べて明らかに一けた多い。これはもう冷厳な事実ですね。  そこで、私は総理に伺いたいんですが、この財政構造改革会議推進方策の中では、「九年度の医療保険制度改革は、抜本的構造改革の第一歩として早急に実現する。」それが九月のものですね。集中期間中は、特に以下の施策に取り組むとして、「十年度から着手する。」と述べており、それを受けて、この法案の第九条では、「平成十二年度までのできるだけ早い時期に、健康保険法、国民健康保険法」、法律の名前を具体的に挙げて、「抜本的な改革を行うための検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」こうなっています。どのような検討をなさっているのか、お答えいただきたい。
  239. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 平成九年六月三日の閣議決定の中に、社会保障の部分で、「九年度の医療保険制度改革は、抜本的構造改革の第一歩として早急に実現する。」という文章があることは、委員指摘のとおりであります。その上で、医療保険制度につきましては、二十一世紀の本格的な少子・高齢社会におきましても、すべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができるような国民皆保険制度を堅持していくために、抜本的な改革を実現させる必要がございます。  抜本改革の具体的な内容につきましては、新たに設けられる医療保険福祉審議会において、国民的な見地から御議論をいただきまして、その審議を踏まえ、来年の通常国会法案提出したいと考えております。
  240. 児玉健次

    ○児玉委員 その点ですが、まだ医療保険福祉審議会にかけられる前の段階で、総理、これは何でしょう。八月七日、厚生省の案が既に明らかになっておりますね。そして、この厚生省の案は、出だしのところで、「六月に閣議決定された「財政構造改革推進について」の基本的考え方に基づいて、」云々と述べて、そして、その中では、例えば高齢者、「全ての高齢者について保険料を徴収することとし、その全額を高齢者医療費に充てる。」「年金収入に対する保険料賦課については、年金受給額を基礎として徴収する。」今さまざまな控除制度があるけれども、この控除制度をすべて除いて年金の実額で保険料を取ると書き、そして、今一回五百円、四回二千円、そのことについては、一割または二割程度の定率負担とするというふうに明示していますね。さらに、八月二十九日には、与党三党のこれまた医療制度の大きな改悪についての案が既に発表されている。これはどういうことでしょう。
  241. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 さきの通常国会等での御議論を踏まえて、医療保険制度、総合的、抜本的な改革をしなければいかぬ、九月一日実施された改正案は、これは単なるびほう策にすぎない、もっと根本的な、構造的な改革をしなさいという声にこたえまして、去る八月七日、薬価から診療報酬、さらには医療提供体制、保険者集団、総合的、広範囲にわたりまして厚生省案をお示しいたしました。  そして、その後、与党医療制度改革協議会で議論をし、今後、医療保険福祉審議会、新たに設置されると思いますが、その審議会でも御議論をしていただきまして、年末までに、来年の通常国会で御審議していただく法案を作成したいという形で今準備を進めております。  その前提におきましては、今までと違って高齢者はどんどんふえていかれます。そして、高齢者の保険の問題も含めて、経済成長に関係なく、高齢者の医療はそうでない方の医療費に比べまして約五倍程度かかっている。若い世代に過重な負担を強いないようにこの医療保険制度を、皆保険制度を維持、安定的に運営していくためにどういう方策がいいか。  前提として、増税はしない、赤字国債を発行しない。そういう中で、医療の効率化を図りながら、国民が安心していざというときに適切な医療が受けられるような体制を整備していこうということで、今議論をしている最中でありますので、今後、年末には具体的な姿を提示できると思っております。
  242. 児玉健次

    ○児玉委員 私は、二つのことを指摘したいのですね。  一つは、この法案の持っている特別な性格というか特別な危険性が、今の総理と小泉厚生大臣の御答弁からも明らかになっている。審議会はまだ発足をしていない。ところが、この法に基づいて、既にどのように医療を変えていくかという具体的なメニューが極めて詳細につくられつつあり、そして、この法案の、先ほど紹介したところにあるとおり、その結果に基づいて「必要な措置を講ずるものとする。」既にそれが着手されている。これが第一です。  二つ目、小泉厚生大臣にお聞きするけれども、先ほどの厚生省の八月七日の案、極めて具体的ですよ。八月二十九日の与党三党の案、これまた具体的。「患者負担は、介護保険制度との整合性から定率負担とする。」「すべての高齢者から保険料を徴収し、」今、息子やお嬢さんや、そして御主人の健康保険に被扶養者として入っている三百四十万人のお年寄りからも保険料を徴収する。ある新聞は月額五千円と書いたけれども、これだけで二千億円を超します。そういうものがここに書かれている。  厚生大臣、厚生省案と与党三党案が実現されたらどれだけの国民負担増が出てきますか、お答えください。
  243. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 どれだけの国民負担増が出てくるかというのは、はっきりと数字は、まだ私はここで言う段階ではないし、今のところ提示できる段階ではありませんが、いずれにしても、国民負担といいますと、税金も国民負担であります。保険料も国民負担であります。病気になったときのいわゆる自己負担、これも国民負担であります。すべてを勘案して、国民負担が過重にならないように、そして適切な医療が受けられるような制度を構築したいということでやってあるわけでありまして、厚生省案あるいは与党案、いろいろかなり具体的に提示しておりますけれども、国民的な議論を踏まえた上で今後具体的に設定して、その段階でどの程度の姿を占めるか、また御議論をいただきたいと思っております。
  244. 児玉健次

    ○児玉委員 まだどれだけの負担増になるのか検討していないというんだったら、そのことはお聞きをしましょう。しかし、これだけ詳細な改悪のメニューを出されていて、それが国民にどれだけの痛みを負わせるかということを実際に握らずに出すというのは、これは無責任だと言わなければならない。  そして、もう一つはっきりさせなければならないのは、きのうも若干の議論がありましたが、当然増八千五百億。総理、当然増というのは、今高齢者がどんどんふえてくる、そして人件費、物価その他の要素を考えて社会保障の現在の水準を維持するだけに最低必要な経費ですね。それを大幅に削り込む。そして、それの一番多くの部分は医療費が占める。四千二百億。  私は言いたいんですけれども、厚生省では、国民の医療や福祉を真剣に考える方がもちろんいらっしゃいますよ。いろいろ私たちは議論もする。そういう事務方の方が私たちに、国の負担の減額額は、国が例えば一千億負担を減額すると、大体それは四倍の国民に対する影響となってはね返る、そういうふうに常に述べていますね。そして、あわせて、ことしは四千二百億の袋詰め、減額であるけれども、九九年、二〇〇〇年はどうか。ほぼ明年と同様かそれ以上の厳しさが出てくるだろうというふうに述べていらっしゃる。この点はどうですか。
  245. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 議員と我々の立場とは、全く見解を異にしております。我々は改正の立場提出しているのです。改悪とは思っていない。  今のままだったら保険制度は破綻してしまう。こういうことがないように、どうやってお互いが支えていけるような保険制度をつくるか。そして、今後、高齢者がピークになった時点において、引き続き皆保険制度を維持しながら発展していくという点で改革案を考えているわけであります。  だれが負担するか。どのような医療サービスを受けるか。どこかでだれかが必ず負担してきているのです。共産党は立場として、保険料も上げるな、自己負担も上げるな、税金で見ろと言うのでしょう。私どもは、それは税金ではできるだけ増税はしない、そして薬価にも切り込みなさいと言いますから、具体案にも示しているのです。今までの薬価基準を廃止します、薬価差益が出ないような抜本的な改革案をするというふうに明示しているわけです。
  246. 児玉健次

    ○児玉委員 この点は、二月の予算委員会で橋本総理ともあなたとも議論しましたね。薬価をどのように大幅に浪費構造にメスを入れていくか、そのことで二兆ないし三兆。そして医療機器については、私の指摘に対して、厚生省は医療機器のさまざまな部分について一定の負担を減らす方向での努力をされていますよ。私たちはそういう建設的な提起をしている。それが積極的に実現されたとき、私は評価するにやぶさかでない。  問題は何かといえば、今の点なんです。どう呼ぼうか、それは小泉大臣の御自由でしょう。私もその自由を持っている。その上で言いますけれども、先ほどの、国庫負担減が大体四倍に国民負担になってはね返っていく。その点は厚生省の方が私にだけおっしゃっているのかと思っていたら、そうでないみたいですね。  九月十一日、先月の産業経済新聞です。こう言っていますね。来年度予算で「四千二百億円を圧縮するとした。」「ただし、厚生省予算の対象となるのは公費負担分だけ。医療保険の支払いや患者負担も含めると、一兆数千億円もの国民医療費の削減が求められている。」そういう形で取材に答えたんでしょう。  そして、来年、再来年、その次も、三年続けて大変厳しいという点については、やはりこれは私は出所を明らかにしたいから具体的に言いますけれども、九月二十一日の朝日新聞で、私が聞いたと全く同じこと、「九九年度も二〇〇〇年度も、引き続き四、五千億円規模歳出削減を迫られるだろう」、多分取材によって書いているんでしょうね。  そうなるとどうなります。四倍として約一兆六千億ですよ。それが九九年、二〇〇〇年、続けて私たち国民に襲いかかってくる。それを法律的に拘束してしまうというのがこの法律じゃないですか。その点、どうです。
  247. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 だから大変なんですよ。容易じゃないと前から言っているでしょう、総論賛成、各論反対が一番出てくるのはこの厚生省予算の分野だと。あの財政構造改革案が出していた、さきの通常国会でも、これは今何げなく聞いているけれども、革命的と言ってもいい案だと私は言ったんです。それをやらなきゃならない。大変なんですよ、これ。  ことしだけ五千五百億円削減すればいいというものじゃない。だからこそ、あらゆる制度にわたって構造的な改革をしなきゃならない。具体案が出た段階で、これまた大変な議論を呼ぶということは覚悟しています。それほど社会保障について構造的な改革をしなければ、お互いが支えるような安定した皆保険制度が維持できないではないかという危機感を持って今改革に踏み込んでいるわけでありますので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
  248. 児玉健次

    ○児玉委員 今の厚生大臣のお言葉の中で、一点だけ私は同意できるところがある。来年も再来年も大変だ、この点ですね。  そして、それが国民に影響するところ約四倍、そこのところを、言ってみれば法律で拘束してしまう、そこにこの法律の最も危険なところがあるということをまず指摘しておきましょう。  次に入ります。  若い世代にとって、年金の問題は非常な関心事です。労働省にお聞きをしますけれども、五千人以上の事業所、これは大企業です。五千人以上の大企業で労働省が四年ごとに実施している平成八年高齢者就業実態調査、これで定年の年まで勤めおおせられる人は何%なのか、これについて答えていただきたい。それが一点。  二点目。一番新しい資料で、六十歳から六十四歳までの間の方で、有効求人倍率はどれだけか。それから完全失業率はどれだけか、お答えいただきたい。
  249. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 お答えいたします。  平成八年に労働省が実施いたしました高年齢者就業実態調査によりますと、企業規模五千人以上の事業所におきまして退職した五十歳以上の労働者のうちで、定年制が定まっていて定年前に退職した方の割合は四二・八%となっております。  それから、第二点目の、六十歳から六十四歳までの層におきます求人倍率あるいは失業率でございますが、平成九年八月の六十歳から六十四歳の層におきます全国の有効求人倍率は〇・〇七倍でございます。同じく六十歳から六十四歳の層におきます全国の完全失業率は五・七%でございます。
  250. 児玉健次

    ○児玉委員 今の数字です、これも続けて私は総理にお聞きしますので。  日本を代表するような大きな企業で、定年の前に職場を離れなきゃいけない人は百人のうち四十三人ですね。四十三人もの人が、しかもこれは出向を含んでおりません、出向を含まずに四十三人の人が、恐らく志に反してその企業を離れていかなければいけない。しかも、最近の経済の困難のもとに、リストラ、出向、退職勧奨、これが小企業にも及んでいる。労働省の先ほど紹介のあった資料をそのまま使えば、五人から二十九人の事業所にあって、九二年の段階で定年前退職は一五・六%でしたが、九六年は三七・二%に二倍になっています。こういう厳しい高齢者の雇用状況のもとで、今、年金の問題がこの法案で国民に提起されている。  そこで聞きます。法案第十条、そこに年金をどのようにするかという事項が六つ列挙されています。その四番「年金たる給付を受ける権利を有する者となる年齢」、いつから年金を渡すかということでしょうね、見直そうというのだけれども、何歳に見直そうとしているんでしょう。総理、どうでしょう。
  251. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これは現在、年金審議会で議論をしていただいておりますが、平成十一年の財政再計算、年金改正に向けまして、給付水準をどうするか、負担をどうするか、そして支給開始年齢を幾つにするか等を含めて議論をいただいております。  この問題は、現在六十五歳支給になるのは二〇二二年ですが、この六十五歳がそのままでいいかどうか。さらに、今の給付水準ですと大体若い方の保険料が三〇%を超えますから、この点も含めて、この給付と負担の調整をどうするか等も含めまして、今御指摘の点につきましては、年末までに論点を整理して幾つかの選択肢を提示できるように、鋭意検討を進めていきたいと思っております。
  252. 児玉健次

    ○児玉委員 私たちは、この六十五歳というのが段階的に二〇一三年から、厚生年金、男性の場合はなる、女性の場合五年ずれる、よく承知しています。そのことを承知した上で議論するんだけれども、財政構造改革会議の議論の中では、特に企画委員会の議論の中では、二〇一三年までの段階的な引き延ばしを前に倒す、それから六十五歳を、例えば出ている言葉で言えば六十七歳にする、そういう議論がありますね。あるでしょう。
  253. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 そういう意見も出ておりまして、当然検討課題になっていくと思います。しかし、いろいろな選択肢、議論が出てまいりますが、決定しているということではございません。
  254. 児玉健次

    ○児玉委員 この財政構造改革会議企画委員会の座長は加藤紘一氏です。一方では自民党の幹事長でもいらっしゃる。この加藤さんが十月の五日、栃木県の壬生町で、生産年齢を五歳動かす、七十歳に、年金の考え方をそこに合わせると、集めなければならないお金は半分に減る。  このニュースを聞いた国民は冷水をぶつけられましたね。例えば、国立病院の看護婦さんたちと私はよく話をするけれども、私たちこんなに厳しいときに六十まで生きているだろうかと言うのだから、本当に。そういうとき、七十までと。しかも、雇用状況というのはさっき労働省が明らかにしたとおりですよ。一回職場を離れたら有効求人倍率は〇・〇七でしょう。そういう状況で七十歳。  自民党の総裁たる総理に私は伺うけれども、加藤氏のこの考えは自民党の考えでしょうか。
  255. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、ここに内閣総理大臣としてお呼びを受けております。党の幹事長として、あるいは財政構造改革会議の企画委員会の座長として、果たしてその会場に招待を受け、話をしたのかどうか自体を存じません。
  256. 児玉健次

    ○児玉委員 後から、加藤さんからお聞きいただきたいですね。  そこで、この問題に関連して、もう一つ聞きましょう。  今の厳しい高齢者の雇用状況のもとで、六十五歳、私たちはこれにも断固として反対しました。六十歳を崩すというのは、ヨーロッパの常識では退職と年金受給の連続性が鉄則ですよ、そこに空白をあけて、年金がもらえるまではかすみ食えというのか、これが多くの国民の声ですね。それが今、この法律の名で六十七歳とか、総理は直接聞いていないとおっしゃっているけれども七十歳といった報道もされている。  そういう中で、この法案の改悪メニューの一位です。ちょっと難しいのですね。「主として高齢者が長期にわたり療養を行う医療施設その他の施設に入所している者に対する年金たる給付の在り方」、何をしようとしているのでしょう。小泉厚生大臣にお願いします。
  257. 矢野朝水

    ○矢野(朝)政府委員 この条項でございますけれども、これは、病院とかあるいは老人保健施設に入所している方の年金をどうするか、こういう問題でございます。  現在は、一部負担という形で年金の中から支払う、こういう形で医療給付、あるいは医療と年金、福祉との給付の調整が行われているわけですけれども、議論といたしまして、こういった長期の特養ですとか病院に入院している場合には、年金の方を支給停止すべきじゃないか、こういう議論が実はあるわけでございまして、そういうことで、年金給付と医療給付、福祉給付との調整のあり方としてどうあるべきかということが検討課題になっておるということでございます。
  258. 児玉健次

    ○児玉委員 全くこれは、やはり耳を疑わせる内容ですね。今老人病院に入っている方、当然費用を負担しています。それに加えて保険外負担がどうなっているかということは、厚生省、知らないはずがない。小泉厚生大臣ともこれは何回か議論をしたことがあります。  例えば、あるケースで言えば、おむつ代四万五千円、差額ベッド二万五千円、こういうものがかぶさってきています。そして今、老齢年金受給者の五五%、千百二十七万人の人は国民年金を受給していて、平均支給月額は四万四千七百円です。そういう方がこの年金を受けて老人病院に入って、おむつ代だけで消えてなくなるじゃありませんか。それを年金を減らす。こういうことはやめたらどうですか、厚生大臣。
  259. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 誤解しないでいただきたいんです。やめると言っているんじゃないんですよ。いろんな議論がある、それを検討課題にのせて多くの方々の意見を聞きながら決めていこうというのであって、当然、いろんな政党の方、立場の方おるわけですから、賛成、反対、たくさん意見が出ます。その中で決定しようということで、一部の報道が出た、一部の記事が出たということで、決定したということではないんです。  そういう意見がある、こういうのを踏まえて、最終的に、御意見を聞きながら、どういうところが国民の合意が得られるのかということで決めていくのですから、あらゆる問題に聖域がないと同じように、いろんな方々が意見を出す。右行けと言う人がいる、左行けと言う人、真ん中行けと言う人、いろいろある。それを議論して、それぞれ賛成、反対は出てきます。そういう国民の議論を踏まえて、いいところに決めていきたいなということでありますので、今出ている意見、議論、記事に決まっているということではないということを御理解いただきたいと思います。
  260. 児玉健次

    ○児玉委員 今の答弁自体が極めて自己撞着ですね。厚生省自身が何を考えているかとちゃんと言っているんだから、報道ではないですよ、これは。  そしてもう一つ、高齢者に対する何が今準備されているかということをお聞きしたいんだけれども、法案の十二条にこうありますね。「政府は、平成年度当初予算の成立の日までのできるだけ早い時期に、雇用保険法第三十七条の二に規定する高年齢求職者給付金の在り方について廃止を含めて見直しを行うとともに、」云々と。私は、労働省に聞くけれども、平成年度のこの高齢者給付金の受給者数、支給金額、国庫負担額を答えてください。
  261. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 今先生お尋ねの数字についてまず申し上げますが、平成年度の雇用保険の高年齢求職者給付金の支給実績は、対象者が十二万六千人、支給額は九百一億円、支給総額のうちの国庫負担は百五十四億円であります。  ただ、一つ私から申し上げたいと思いますが、六十五歳以降の方は厚生年金ないし国民年金を受けておられます。そして同時に、今先生の御指摘である雇用保険というものも別途ございます。これは何も労働省や厚生省が自分たちのものとして持っておるものではありません。汗を流し、懸命に働いている労働者や中小企業の方が苦しい中から積み立てたお金を預かっているわけです。  したがって、今、長寿、そして少子社会の中で年金や雇用保険がなかなか逼迫しておるときに、まずやらねばならないことは、むだを省き、そして公平という見地から合理化をしていくということです。したがって、年金だけをもらって生活しておられる六十五歳以上の方と、年金ももらっておられるけれども同時に雇用の求職者給付金を併給されておられる方については、公平という見地からこれを考えたいというのが構造改革法案の趣旨だと思います。
  262. 児玉健次

    ○児玉委員 一言言いましょう。年金の支給開始は六十七、七十歳に延ばしていく、ところが雇用給付の方は六十五で打ち切る。この矛盾、どうなるんですか。  私は、総理がお帰りになったから、最後に、総理先ほどお述べになった、厚生大臣がお述べになったことに関連して一つだけ述べましょう。  それは、財政構造改革会議の企画委員会で年金について具体的な改革案をまとめたのは五月二十六日です。そして、閣議がこの改革会議方向を閣議決定としたのが六月三日です。企画委員会、五月二十六日の翌日、年金審議会が開かれた。大体の方向は出た後、年金審議会が初めて開かれた。ある委員が何と発言されているか。会議録があります。こう発言されています。  確認したいのですが、財政構造改革会議でいろいろ方向を出していますし、大臣が国会の答弁でもかなり踏み込んで将来性の方向づけをしたような答弁をなされています。この会議で我々が議論するのはそういうことを一切無視して白紙で議論しなければいけないのではないかと思うんですが、そういう既成の路線を引かれて、その上で議論するのでありましょうか。それとも白紙の立場で議論するのか、その辺の確認だけしたい。 審議会の議論を真剣に考える方であれば、このような感想が出てくるのは当然じゃありませんか。この声に、総理、どう答えます。
  263. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 先ほど私が発言したことに関連してと言われました。私がお尋ねを受けましたのは、六月三日に決定をいたしました財政構造改革推進についての「九年度の医療保険制度改革は、抜本的構造改革の第一歩として早急に実現する。」と書いてあるではないかというお尋ねにお答えをいたしました。
  264. 児玉健次

    ○児玉委員 そこで、再度、今の総理のお話はそのとおりで、そしてこの審議会議録では、あなたが主宰した財政構造改革会議が既にレールを敷いた上で審議をしろと言われるのだけれども、それとも白紙の立場で議論するのか、その辺の確認だけしたいと言っているのですが、会議の議長をなさったあなた、答えてください。
  265. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、その年金の審議会の議長をいたしておりません。
  266. 児玉健次

    ○児玉委員 いや、その辺はなかなかおもしろいところで。  というのは、財政構造改革会議の議長としてこの方向を決めた。私は、年金審議会の議長をあなたがやっているなんて全然思ってもいないし、さっきから言ってもいない。  そのあなたが議長をやった財政構造改革会議の決めた線で年金審議会にレールを敷いて出されているから、こういう意見が真剣な委員から出るのは当然のことだ。そこにこの法案の本質がある。その点を指摘して、私は終わります。
  267. 中川秀直

    中川委員長 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。  次に、秋葉忠利君。
  268. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 社会民主党の秋葉でございます。  大変長い一日で、お答えになる橋本総理初め皆さんも大変だと思いますが、委員の皆さんも御苦労さまですが、三十分という時間で一つ二つ問題提起をさせていただきたいと思います。  この法案、それからその背後にある考え方、財政構造改革ということですが、非常に大きなブラシで日本の将来を考えているということで、私も大きなブラシで、この財政構造改革の背後にある考え方、要約いたしますと、私たちの世代が未来の世代に対して大きなツケを残してはいけない、こういうことだと思います。それを、逆にもう一つ別の面もあって、仮に私たちが今何か投資をするのであれば、それは未来に対する投資にならなくてはいけないという面も持っていると思います。  そういった観点から、財政構造改革の中の幾つかの点について、もう少し微調整をしたらいいのじゃないか、微調整という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、もっと大きな調整が必要なのかもしれませんが、そのあたりについて問題提起をしたいと思います。  特に、私がまず取り上げたいのは、教育の面であります。財政構造改革の中の文教関係の考え方、これが、恐らくはほかの分野についても同じような考え方が適用されているんだと思いますが、ちょっと比喩として余りよくないかもしれませんが、金太郎あめは、普通に切ると金太郎さんの顔が出てくるんですが、縦長に切っちゃうと、全然違う、簡単な直線しか出てこないんですね。この財政構造改革の中の幾つかのデータの切り方というのは、縦長の、線しかあらわれてきていないものじゃないか。それで見ると実に簡単なんですが、金太郎さんという人間の顔を見るとさまざまなほかの問題が出てきて、実はそこをきちんと把握した上で構造的な問題を解決しなくちゃいけないんじゃないか、そんな気がいたします。  その点について、まず教育なんですが、まず文部大臣に伺いたいのですけれども、日本じゅうが大変な衝撃を受けました神戸の小学生殺害事件、いろいろな解釈があると思いますが、私は、その背景には、それが直接の原因だというふうに因果関係をつけるのは難しいと思いますが、背景にはやはり学校におけるさまざまな構造的な問題があるのではないか、そんな気がいたします。文部大臣としてそのあたりをどういうふうに把握されているのか、まず最初にお願いいたします。
  269. 町村信孝

    ○町村国務大臣 お答えを申し上げます。  大変に悲惨で、かつショッキングで、また痛ましい事件であった、こう受けとめております。先週の金曜日でしたか、家裁の審決、決定が出たわけでありますが、具体的に何がということが必ずしも明確にされてはいないのかなと思っております。  ただ、これをすべて、極めて特異な少年の起こした特異な、異常な事件であったとだけ言い切っていいのかどうか。私も、やはり教育を担当する大臣としてはいささか、それではやはりいけないんじゃないか、今委員おっしゃったような、今学校の中に、あるいは学校を取り巻く世の中全体についてのある種の病理現象みたいなものが集中的にこの事件にあらわれてきたという見方もできるのかなという気がいたしておりまして、その辺をよく考えながら、学校はもとよりでありますが、社会全般あるいは地域社会、家庭、すべてにわたってこの問題を真剣に考えて、それぞれの立場で何らかの取り組みというものを始める必要があるのではないか、このように思っております。
  270. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そういった思慮深い方向で、ぜひ一人一人の子供たちの立場というところから考えていただきたいと思うんですが、実は、学校に非常に大きな構造的な問題があります。これをずっと指摘してきたのが日本数学会とか日本数学教育学会とかで、私は日本数学会の会員なんですが、その視点から、実は今、病理というふうに文部大臣はおっしゃいましたけれども、構造的な問題を提起して、ぜひ皆さんに私が提起するような方向からもう一度問題を見直していただければというふうに思います。  学校嫌いになる、特に中学生になってから学校嫌いになる幾つかの理由があるんですが、私は数学が好きなんですけれども、残念ながら、数学が学校嫌いの理由の一つになってしまっている。これは数学が悪いのではなくて、あるいは数学を教えている先生が悪いのではなくて、もちろん子供たちが悪いのでもありません、何かそういう雰囲気ができている上に、構造的な問題があるということを申し上げているんですが、学校嫌いになる理由の幾つかのうちに数学が入っているという認識では、文部大臣、いかがでしょうか。
  271. 町村信孝

    ○町村国務大臣 私は、秋葉先生と違って、余り数学が得手では率直に言ってございませんでした。  ただ、平成六年、文部省の調査によりますと、学校が嫌いだという子供たちが、小学生よりは中学、そして高校と、だんだん比率がふえてまいります。残念ながら、中学生の約三分の一が学校が楽しくないとか不満があるという答えをしておりまして、その中身をちょっと見ますと、自分の成績とか授業の内容、やり方、進み方、この辺に不満があるというのがかなり多いようでございます。  もちろん、学校の規則がうるさいとか、先生が嫌だとか、生徒が嫌だとかいろいろある。そして、数学嫌いという、よくここまで調査したなと思いますが、科目別に嫌いな教科というのを見ますと、確かに先生御指摘のように、数学が一番その比率が高くなっているのも残念ながら事実であります。
  272. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 本当に残念だと思うのですが、それを改善するためにいろいろ考えなくてはいけないのですが、その原因を究明する必要があると思うのです。  そこで伺いたいのですけれども、その前に、中学校一年の数学というのは、実は世界的に非常に難しくなります。小学校のうちは、四則計算、たかだか分数ぐらいで、最近は集合とか何か少し新しいのも入っていますけれども、大体簡単に答えが出てくるような問題が多くて、ほかの社会科とか国語は嫌いでも算数は好きだという子供は結構多いのです。ところが、中学になると数学が嫌いになってしまう子供が多い。  その理由は、やはり文字式ですとか方程式なんというのが出てきますし、それから二次方程式を解かなくてはいけない、公式を覚えなくてはいけない、いろいろと難しくなってくるのですが、その中学一年生に一体どのくらいの時間をかけて数学を教えているのか。もちろん、時間数だけで問題が決定されるわけではありませんけれども、結果が保証されるわけではありませんけれども、各国の比較をした場合に、日本と、それから日本と同じような教育制度あるいは教育程度を持っている国々、大体一年間に中学一年生の数学の授業時間にどのくらいの差があるのか、文部大臣、お答えいただきたいと思います。
  273. 町村信孝

    ○町村国務大臣 お答えをいたします。  数学を含めて週当たりの授業の時間、これを見ますと、大体日本が二十五時間なのでありますが、各国とも大体二十四、五時間、ドイツがちょっと少なくて二十二時間ぐらいということのようでございます。  そして、その中で数学はといいますと、日本の場合ですと、これは三時限というのでしょうかね、というぐあいになっております。ちょっと比較をするのが難しいのですが、イギリスがこれは九十時間。週当たり九十時間ということはありませんね。ちょっと単位があれなんですが、それぞれの国によってちょっと表示が違うので違いますが、各国ともそんなに大きな違いはないのかな、そんなに大きな違いはないというふうに、資料を見ている限りは受けとめております。
  274. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 そこの認識が実はかなり違います。  文部省でつくっていただいた、調べていただいた資料によって見ますと、例えばドイツは百六十六時間、これは年間、中学一年生の授業時間です。日本ではこれによると百五時間、五〇%以上違う。六〇%もドイツの方が多いのです。  それから、私はこれは別の資料があるのですが、これは先ほど申し上げました数学教育関係の学会が調べた、国際教育到達度評価学会というのがありまして、そこで調べた結果ですが、日本の年間の授業時間、数学の授業時間、中学一年で九十九時間。ですから、さっきの文部省の統計ですと百五ですから、大体同じくらい、百時間くらいです。ところが、これで見ますと、カナダは百二十八時間、日本は百時間ですよ、フランスが百二十九時間、香港が百二十四時間、アメリカは百四十六時間です。アメリカと日本を比較すると、約五〇%授業時間に差がある。  日本の子供たちは頭がいいのかもしれないし、あるいは日本先生方は優秀なのかもしれませんが、しかし大体同じ科目です。数学というのは世界的に内容がほとんど同じですから、そのしかも中学一年になって代数が入ってきて難しくなる科目を教えるのに、アメリカの方が日本よりも約五十時間も多く教えている。  私、アメリカで教えたことがありますから申し上げますが、アメリカで百五十時間近くかけて教えていても、数学は難しいのです。それを、五十時間も少ない時間数で日本で教えれば、これは数学嫌いになって当たり前。数学の時間になると本当に苦しむ子供たちが多い、ストレスが生じて、これは当然なんです。皆さんも、いろいろなものについて、ほかの人が百五十時間かけてやっているのを百時間でやれと言われたら、やはりストレスを感じるのが非常に多いと思うのですが、それが一つ。授業時間数が非常に少ない。  それだけではありません。それじゃ、日本の先生がどのくらいの負担を負っているかということで伺いたいのですけれども、一年間にアメリカだと百四十六時間、日本だと大体百時間ぐらいで教えている算数の内容、数学の内容、先生が一体何人ぐらいの生徒を相手にして教えているのか、国際比較を、文部大臣、またお願いいたします。
  275. 町村信孝

    ○町村国務大臣 各国の比較でございますが、中学校段階で、若干年次の差はありますが、日本が三十二・九人、イギリスが二十一・八人、フランス二十五・三人、ドイツが二十四・一人、こういうぐあいで、確かに中学校は日本が高いのは事実でございます。  逆に、初等学校、要するに小学校の段階でいいますと、大体日本とイギリスはほぼ同じ、フランス、ドイツがちょっと少ない、こんなような状況かな、こう思っております。  私どもとしては、現在、第六次の改善計画で、チームで教える、チームティーチングと呼んでおりますが、こんなような形で、特に中規模以上の学校を中心に、あるいはグループ別の指導とか、あるいは習熟度別の指導、要するに、どのくらいわかっているかということに即して指導をやっていくというようなことで、できるだけ小人数の学習集団を編制できるようにということで、教職員の配置の改善をやっているところでございます。
  276. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 これは文部省からいただいた資料ですが、今の数字、三十二・九人というところで、これは単式学級の場合にすると三十四・八人、大体三十五人です。ですから、フランス、ドイツと比べると、イギリスとは十五人ぐらいですが、フランス、ドイツと比べても一クラス当たりの生徒数が十人多い。これは大体四〇%増ということです。  ですから、非常に難しくなった中学一年の数学を教えるに当たって、全体の総授業時間数で日本はアメリカの大体五〇%少ない時間数で教えて、しかも一人の先生が教えている負担というのは大体四〇%ぐらい多い負担を負って教えている。そういう状況で本当に豊かな教育ができるのか。  これは、ただ単に生徒数を全部ひっくるめて、あるいは先生の数を全部ひっくるめて、生徒数が減っているから、だから文教予算を減らしてもいいじゃないかという形の議論とは違って、一人一人の生徒がどういう教育を受けているかという観点から考えて、それで、仮に将来に対する赤字ということが問題であっても、それ以上に大事なのは、やはり将来を背負う今の子供たち一人一人の立場ですから、そこを中心にして再検討されるべき分野であるというふうに思います。  これは当然、ここのところは数学だけ申し上げましたけれども、ほかの科目についても同じような傾向が見られます。このことについて、また新たにもっとたくさんの問題提起をしたいのですけれども、先ほど文教委員会でやれという声もありましたから、そのアドバイスをいただいて、文教委員会で続けてやりたいと思いますが、ともかく、財政構造改革の中でも、数字の切り方によって見えてくる絵がまるっきり違ってくるということはやはり重要な点ではないかと思います。この点、ひとつ問題提起させていただきます。  そのかわりに、ここはもっと大げさにカットすればいいじゃないかということを申し上げないとバランスがとれませんから申し上げたいのですが、例えば、昭和二十年代に食糧増産が必要となって、東京湾を埋め立てて米をつくればたくさん米がつくれるじゃないかという議論があったころにできた干拓事業なんというのは、これはばっさり切るべきだ、お金が浮くということを申し上げたいのですが、この点はちょっと、時間がだんだん少なくなってまいりましたので、島村農林水産大臣、また詳しく別の場で議論をしたいと思うのですが、その議論を始める前に、島村大臣とそれから大木環境庁長官お二人に伺いたいのです。  これはやはり農水の立場からも、環境の立場からも、諌早の干拓の問題、非常に重要な問題だというふうに思います。議論をするに当たって、今教育の点で申し上げましたように、やはり事実をきちんと把握した上で議論をしなくちゃいけないと思いますので、そのためにとりあえず諌早に行って干拓地、現地を見ていただきたい、そういう声が諌早の人たちからも寄せられておりますし、世界の環境団体からもやはりそういう声が届いております。  それで伺いたいのですが、農水大臣それから環境庁長官、早い時期に諌早に行って、できれば渡り鳥の時期に諌早に行って、現地の状況を視察していただけるかどうか、お二人からお答えいただきたいと思います。
  277. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  きょうは敬愛する秋葉先生といろいろじっくりこの問題をお話ししたいと思っておりましたが、時間もありません。簡潔に御質問をいただきましたので、私の方からも簡潔に申し上げます。  現在、正直言いますと、この結果がどうであったかといえば、この潮受け堤防内における一市四町から、さきの七月十七日の藤本元大臣に続いて、十月六日付で私あてにも大変丁重なへいわば感謝状が届いておるところであります。そういう意味からいたしまして、今時点で、いわばあれだけの近年に見舞われたことのない台風や、あるいはその他の大雨に見舞われながら、わずかな湛水で済んで被害が最小限に済んだ、こういう御報告もいただいているところでありますから、むしろ、全国規模でいえばほかにたくさん行かなきゃならないところが実はございます。しかしながら、今は寝る間もほとんどいただけない状況でございますので、これからしばらく、先行きの課題になろうかと思いますが、現時点では諌早に出張する考えはありません。
  278. 大木浩

    ○大木国務大臣 諌早につきましては、私もお地元から、テレビだけでなくてちゃんと自分の目で見ろというお誘いをいただいております。  ただ、今、国会開会中でもございますし、例の京都会議の準備等々もございますので、今すぐにはちょっと難しいということを御返事申し上げておりますけれども、ただ、現地の事情につきましては、長崎県ないしは農林省等からも事情をよく伺っておりますし、必要に応じて逐次私の方の係官も派遣しておりますので、当分はそういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  279. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今は忙しいときだと思いますから、すぐとは申しませんが、十二月には京都でCOP3、温暖化防止のための環境会議が開かれます。全世界からやはり環境に対して関心を持っている人が来られるわけですから、その会場で、議長さんは、ところで世界的に問題になっている諌早に行かれたのですかなんというのが出てきますし、主管官庁はどこだ、え、農林水産大臣は当然見ているでしょうなんという質問が、これは出てくると思うのですね。  そのときに、いや全然見ていませんなんて言うと、一体日本というのは、これほど大きく世界的な問題になっておるときに、環境庁の長官が見ていない、それから所管官庁の大臣も見ていない。これは、日本というのは民主主義国家なのかなんていうへんてこな意見がまた出てきたりするといけませんから、私としては、何といいますか、フレンドリーアドバイスといいますか、そういう意味で、十二月の前までにはぜひ行っていただきたいということをお願いいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  それは、今申し上げた十二月の環境会議の非常に重要な、一番重要なCO2削減の問題なんですけれども、環境庁長官に伺います。  日本として、大体一九九〇年レベルに比べて何%削減できるのか。これは政府試算もありますし、それから幾つかの研究所、それから環境団体が試算をしておりますけれども、この問題について、環境庁としては、この環境団体あるいは市民団体、WWFも一四・八%というのを出していますし、CASAというところですか、この試算では二一%、それから環境研では七・六%、いろいろな数字が出ていますけれども、こういった環境団体の試算についてはどう環境庁長官はお考えになっているのか、伺いたいと思います。
  280. 大木浩

    ○大木国務大臣 いろいろな団体あるいはNGO等から調査の結果が出ておるということは十分承知しております。ただ、一言で申し上げますと、これらの団体から出ております数字というのは、どちらかといえば純粋に科学技術の手法を駆使すればこういうことができるはずだというようなこと、それを現実に環境行政の中で、あるいは強制的な力を持って実施できるかどうかということになりますと、なかなかこれは難しいということでございます。  御存じのように、政府としては先般、一応の目標として五%、それから日本につきましては差異化で二・五%というような数字を出しておりますが、これとても非常になかなか難しいということでございますので、これが現在の私どもの一つの見方であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  281. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 WWFで算出をした一四・八%ですが、これの算出の根拠というのは大体四つあるのです。つまり政府の、これは通産省の試算だと思いますけれども、それに加えること大体四つの部門があるのですが、その四つの部門を見ても、それは確かに努力は必要なところですけれども、それほど過重な負担を国民生活に与えるというような印象は持てないのです。  今おっしゃったことですと、実現をするのにかなり難しいというところでこれはとらないのだと言うのですが、例えば、待機電力を消費しないような電気機器をつくるんだ、これはやはり技術の問題だけですし、それから、電気機器の交代、買いかえをするまでの一世代ということで、十年もあれば簡単に買いかえられる問題ですから、そんなに実現するのは難しい問題ではないと思いますし、業務用の待機電力、それから自販機の電力削減ということもそんなに難しくない話だと思います。運輸部門のハイブリッド車、トヨタで売り始めましたし、それから三菱でもGDIですか、そういったものを売り出していますし、これも普及の早さということだけでしょうからそんなに難しい話ではないと思うのですけれども、再度御意見を伺いたいと思います。
  282. 大木浩

    ○大木国務大臣 今お話のありましたいろいろな施策を実施するには、これは環境庁だけでもございませんけれども、ただ、やはりそれを実施するには、社会的なコスト、実際に実施するためのお金の上のコストもありますし、いろいろと実施に伴う企業の再編成とか労働問題だとか、いろいろありますので、すぐにそれをできるということは、私どもとしてはちょっと同じような見解は持っておりません。
  283. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 この環境の問題については私は、かつて橋本総理が、大蔵大臣のときだったと思います、大蔵委員会の質問だったと思いますが、どなたかの質問に答えて、二十一世紀の世界で一番大事な問題は何かというような話になったのですが、そのときに環境の問題だということをおっしゃって、原稿も見ずに、あれは恐らくアドリブだと思うのですけれども、持論を展開された。そのことを聞いて大変感動した記憶があるのですけれども、この問題についても、やはり議長国としての日本、その総理として、ぜひ橋本総理にリーダーシップを発揮していただきたいと思っているのですが、特に重要なのが、このCO2の排出量ということだと思います。  この点について、総理としてもう既に頑張っていらっしゃると思いますけれども、世界の方向性を日本がリードをして決めていくためになお一層頑張っていくということで、一四・八%ぐらいは大丈夫だというようなことをぜひ伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  284. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、この答弁資料をそのままに読み上げていくようなつもりはありません。その上で、私は、議員、また議員が代表される多くの方々にぜひ御理解をいただきたいと思うのでありますが、技術的な積み上げたけをもしとりましたなら、我が国の場合、CO2の削減対策、一九九〇年レベルに、ゼロに持っていくのが二〇一〇年ぎりぎりでありました。  しかも、それは国民に暮らしの中で随分大きな変化をお願いをしなければならないことであります。既に御承知のように、冷暖房の温度から自動車の燃費の効率から、すべてをこの中には取り込んでまいりました。また、この点について意見が違うことを存じておりますけれども、お許しをいただきまして、供給エネルギーの部分で、原子力発電所二十基を必要とする、しかも、新エネルギーを現在の三倍にしても技術的なものでいくならゼロというのがぎりぎりの答えだったことは、これは事実なんです。  その上で、私は、まさに議員が御指摘になりましたのがその答弁ではないかと思いますけれども、ちょうど環境庁創設二十周年を記念し、二十年前を振り返って、その投資はどう生きたのかという分析をした、これは環境庁の若い諸君が中心になってまとめたものでありますけれども、結果として、非生産的なコストでありながらこれは十分に賄われたという分析をした資料がございました。  そして、それを受けて次の年に、環境庁が環境白書の中に、ではその時点で企業はどう行動したのかという企業行動を調べ、結局、実験室段階にあるものを市場に出していくためには、まず、そういうものの消費が存在をすること、そして、実験から製造に移していくためのインセンティブをどういう形で国が付与してくれるかということ、こうしたことをまとめた。私は、環境白書の中でも、あれは非常におもしろい環境白書だったという記憶がございます。  そうした技術開発に向けてのいわばリード、そうしたものを見込んでどこまで積み上げられるのだ、技術開発の可能性はどうなんだということを執拗に積み上げた結果が今出されている数字であることは、事実として御承知おきを願わなければなりません。  その上で、議長国としての日本は、これをまとめていく責任もございます。最善を尽くしてまいりますけれども、数字を無造作に出すということが必ずしも簡単でないことはぜひ御理解をいただきたい。EUの提案にいたしましても、ドイツ及びイギリスで大きくマイナスを稼ぎ、そのかわり一部の国にはプラス四〇といった数字まで躍る各国の状況の差がございます。  この中で、しかも途上国を巻き込んでこれから先の議論に参画をさせていこうとした場合、ここにどの程度数値設定をすることが全体をまとめていく上で可能性としてぎりぎりの探求になるのか、なお勉強もしていきたいと思いますし、努力もしていきたいと思いますし、同時に、御協力をもぜひお願いを申し上げます。
  285. 中川秀直

    中川委員長 秋葉君、時間が参りました。
  286. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ありがとうございました。  積み上げた数字であることは私も存じておりますけれども、その積み上げ方、一つ一つのステップが、さっき申し上げましたように金太郎あめの切り方がちょっと方向が違っているような気もいたしますので、ここも重ねて議論をぜひ続けさせていただきたいと思います。  時間が参りましたので、これで質問を終わります。ありがとうございました。
  287. 中川秀直

    中川委員長 これにて秋葉君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日水曜日午前九時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十九分散会