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鈴木(淑)
委員 今、蔵相は思わず大変おもしろいことをおっしゃったのですね。隠れ借金と言いながら、同時に隠れ財産、隠れ資産とおっしゃった。それは非常に正しい表現なんですね。国鉄の隠れ借金といえども、それを賄っている公債を持っている国民には金融資産なんですね。だけれども、問題は、それが大きくなり過ぎて、さあ元利金を払おうというときは税金で取ってくるしかないから、これはえらいことですよと。それはそのとおりで、さっき私もそういうふうに申し上げた。国鉄の例を引かれたのは、蔵相は大変適切なことをおっしゃったと思うのです。
問題は、借金が悪いんじゃないのですよ。借金した使い道が悪いのですね。使い道が悪い。あの国鉄の赤字を埋めるようなそういう借金でありますならば、これはもう後になって、本当に、元利金の支払いのための増税で苦しんでしまうわけであります。ですから、借金が何でも悪いと言わんばかりの言い方は、これはいけませんね。借金が悪かったら金融業は成立しません。借金が悪かったら国民の貯蓄は行き先がありません。だれかが貯蓄を借りてくれなきゃ、貯蓄・投資はバランスしません。だから、借金が悪いという言い方は悪い。借金は、問題は何に使っているかなのですね。
かつて高度
成長時代、
日本の
企業は借金しまくりました。オーバーボローイングといって、あんなに借金していいのといってさんざん
批判された。しかし、あの借金で
日本の
企業は近代化投資をして、とうとう欧米の水準に追いつき、追い越した。それができた後、あの借金は返済してしまったから、今の
日本の
企業、特に大
企業、今またちょっとバブルの崩壊で変なことになっていますが、その直前までの
日本の
企業の財務
状況は極めて健全だったのですね。だから、借金が悪いんじゃないのですよ。使い道がいいか悪いか。
これは、国についても全く同じであります。ですから、今むだなところへ使っているじゃないかという意味で、
歳出構造
改革、これもこの
法案に入っております。もっともこれ、
歳出の単なる繰り延べにすぎないと私は思いますが。私ども新進党は、構造
改革をして
歳出を削減していこう、これはいいんですね。そのことによって借金を絞るのはいいんですが、借金そのものが悪いわけではありません。
さて、今蔵相は大変長々と私の質問と違うこともお話しになりまして、大分時間をとられましたが、最後のところで、こんなに国の借金が多くなってしまったら、これは片っ方で国民の資産かもしらぬが、元利償還のための所得移転、これは大変なことだから削減したいと。それは私は中期的に削減していかなきゃいかぬという点は賛成です。だから、例えば二〇〇三年に赤字を
GDP比三%以下にしましょうという、中期の
目標としてそういうことを掲げることについては、私は必ずしも反対じゃないのですよ。
ただ、そういうことがあるからといって、やみくもに、今
日本経済の
状況がひどく悪くなっているときに、何が何でも毎年毎年赤字を減らしていくんだ。私最初に確認させていただきましたね。何が何でも毎年毎年赤字を削減していくんだ、こういう単
年度主義的な直線的なやり方で、一潟千里に二〇〇三年の三%に向かって走らなきゃいけないのか。
実は私、先週金曜日に、東京大学の
財政学の正教授井堀先生と議論をいたしました、個人的に。これは一瀉千里にいこうとしておるが、学問的に考えて、
経済学的に考えたら赤字を減らすスピードとかその経路というのは何に依存しておるか。井堀教授の答えは、これは三つのことに依存をしておるというわけであります。
一つは、将来世代というのが、税金で元利金を払う、そういう所得移転をする能力といいますか体力といいますか、そういうものを今の世代よりも
余り持っていないとすれば、これは急がなきゃなと。恐らく
総理も蔵相もそういう感じをお持ちでしょう。高齢化、少子化が進んでいくのだから、それに社会保障関係の支出もふえるのだから、何とか今のうちにこれを減らしておかなきゃいけないなと。これは私もそう思います。しかし、井堀教授は、これは三つの主要な条件のうちの
一つだと言っているのです。
あと二つは何かといいますと、
二つ目は、金利コストだと言っています。金利が低いときに急ぐ必要はないと言うのですね。金利が低いときというのは、さっき言ったように、クラウディングアウトどころか
民間で資金が余ってしまう、資源が余ってしまっている、
民間経済が沈滞してしまっているときなんだ。そんなときに急ぐ必要はないですよ。
財政の金利負担というのは極めて小さくなってしまっているんだから、そんなときに急ぐ必要はないですよ。
三番目に井堀先生が言ったことは、そういう所得移転は
予算の中では国債費という格好をとる、国債費によって圧迫されている一般
歳出の便益性といいますか公共性といいますか、その必要性といいますか、これによるというわけですよ。ところが、先生いわく、今の
歳出はむだを相当含んでおる、こんなむだを含んだままの
歳出の余地を広げるために、
日本経済が沈滞しているときに慌てて赤字を切る必要はないというわけです。
だから、井堀先生の三つの条件のうち、最初だけは、これはちょっと赤字削減を急がなきゃいけないかなということであり、時々御答弁の中でおっしゃっていることですが、あとの二つ、金利がこんなに低いときに慌てるやつがあるかということと、もう
一つ、
歳出のむだを省くことが先だと。国債費を慌てて削ろうとするよりも、まず、それによって余地をつくってやろうと思っている一般の
歳出の方を問題にしなさいよ、国債費削減より一般
歳出の方が先ですよ、特に今みたいに低金利のときに。これが井堀先生の結論であり、私は、議論しながら、ああそうだなというふうに思いました。
だから、長い目で見て、蔵相あるいは
総理も非常に懸念をされている、この租税負担で膨大な元利金払うのは大変だ、将来世代がそれやるのは大変だというのは、いいですよ、中期的には。だけれども、
経済学は、同時にそこへいく経路についての議論をしているんですよ。
今みたいに
民間経済が沈滞し切っちゃって今世紀最低の金利になっているようなときに、慌てふためいて来
年度財政赤字を大きく切るようなことをすると、かえって、最初に議論したことですが、
民間市場
経済の活性が失われてしまう。そうしたら、何のために
財政赤字削減しているのか。二つの理由のうちの
一つですね。
民間市場
経済活性化するために赤字削減しているんだと言っているのに、それが逆に出るわけですから。最初に私、だから申し上げた。中長期的に
民間経済を活性化するためであるとおっしゃるのはわかるが、それは裏を返せば、短期的にはうっかりすると
民間市場
経済を非活性化する、沈滞させちゃうんですよね。そこのところを十分お考えいただきたい。
したがって、私は最初に確認したこととの関連で申しますが、この
法案で二〇〇三年の赤字
GDP比三%以下という
目標を掲げるのは私は必ずしも反対ではないが、途中を縛っている、年々赤字を削減しろという形で途中の
財政運営を縛っている、これは危険千万であります。こんなことをして、もしこの先
景気がもっと落ち込んでいって、来
年度、この
法案に書いてあるように公共投資七%カット、これは
一般会計だけですよ、もし全体七%カットということをされたら三兆円落ちるわけですからね。そういう調子で、来
年度、この
法案どおりのデフレ
予算を強行してごらんなさい、えらいことになります。これはえらいことになったと思っても、この
法案が成立していたら、
政府は手足縛られているんですよ、
財政運営という面で。何でこんな危険なことを冒すんですか。
繰り返して言うが、
目標はいい。しかし、その途中を縛るような、こんな無
責任な
法案ないですよ。危険千万。
総理、どう思いますか。こんな危険なことをして、後の
政府の
財政政策の運営まで縛っていいんですか。これはえらいことですよ。代々
自民党内閣でおやりになると仮に仮定したって、この後の
内閣はえらいことになりますよ、これで縛られたら。
こんな危険な縛りをかける
法案は、私は断固として反対してここでつぶしたい。そう思われるなら、
自民党の
先生方も一緒につぶしてもらいたい。これは危険千万です。いかがですか、
総理。