○福島
委員 本日は、化学物質過敏症のことについてお尋ねをさせていただこうと思っております。
その前置きといいましてはあれですけれ
ども、最近、この「奪われし未来」という本が日本でも翻訳、刊行されまして、大変注目を浴びております。現代社会というのはさまざまな化学物質に汚染された社会であると言っても私は過言ではないと思いますが、その化学物質と健康問題ということについて新たな警鐘を打ち鳴らす、そのような書物であろうかというふうに思います。
化学物質過敏症とは直接に
関係しませんが、この書の序文に、ゴア副大統領が序文を寄せておりまして、その一説を御
紹介したいと思います。
この本は、多様な合成化学物質がホルモン分泌系の繊細な作用をどのように撹乱しているのかを鮮やかに描いたわかりやすい
研究報告である。初期の
研究から既に合成化学物質とさまざまな現象との関連性が
指摘されていた。精子数の減少、不妊症、生殖器異常、乳がんや前立腺がんなどのホルモンに誘発されたがん、多動症や注意散漫といった
子供に見られる神経障害、そして野生生物の発達及び生殖異常、こんな現象が問題視されていた。
科学の審判は、今ようやく始まったばかりである。人類が直面している脅威の性質と規模は、科学
研究が進むにつれて正しくとらえられるようになるだろう。また、合成化学物質が世界経済のかなめとなっている以上、深刻な環境問題や健康問題が実は化学物質の働きと密接な
関係にあることを裏づける証拠は、物議を醸すことになるだろう。
ふえ続ける証拠に対処すべく、米国科学アカデミーは、危機評価のための専門家グループを組織した。これは重要な一歩だが、今後は、さらに
研究を続けて、合成化学物質が障害を誘発する仕組みを初め、同じような特性を持つ合成化学物質の数を確認したり、化学物質への暴露が今後もどのような形で生じ得るのかを見きわめる必要があろうというような序文を寄せております。
この問題につきましては、さきの国会におきまして鴨下
委員も取り上げたところでありますが、今まで、化学物質による健康障害といいますと、ともすれば発がん性ということが注目されるところでありまして、それ以外の分野におきましては十分な
研究がなされていなかったのではないか。この書が啓発するところは、発がんということだけでなくて、内分泌系に対しても、ホルモン類似の作用を及ぼすことによって非常に多面的な健康障害を引き起こすことがある、しかも、これは極めて微量の化学物質によっても引き起こし得るということでありまして、生殖異常というようなことはヒトという種の未来そのものにも大きな影響を及ぼすのだという
意味では、これは大変貴重な報告なのだろうというふうに思っております。
その化学物質は何十万という種類がありまして、それに取り囲まれて我々は生活しているわけですが、その化学物質が健康に及ぼす影響ということで、
一つは、この内分泌に対しての撹乱作用、また生殖といった人にとって極めて重要な生理機能に対して及ぼす作用、こういうことも非常に今大切だ。
また、最近こういう本も出ました。「環境問題としてのアレルギー」という本でございまして、これは東京大学の伊藤教授が編者になられて組まれた本でございますけれ
ども、アレルギーというのも実は環境問題である。これはさまざまな観点がございますけれ
ども、化学物質という観点からいえば、例えばシックハウス症候群のように家屋内の化学物質がアレルギーを誘発するということがある。これは私自身が経験したことでございますが、そういう
意味では、化学物質がアレルギーに対してどのような影響を与えているのか、こういう側面も極めて大切な問題だと思います。
この極めて多くの化学物質に囲まれた現代生活において、その化学物質が我々の健康に与える影響、今までの知見だけでは十分ではないと私は思っておりまして、幅を広げた多面的な
研究というものを本当に
推進していかなければ我々の健康、そしてまた我々の子孫の未来も守ることはできないのではないか、そのように思っております。
厚生省におきましては、来年の
予算の中におきましてこういった
研究を進めるというようなお話もお聞きはいたしておりますが、本日は、その関連としまして、化学物質過敏症というものがある、今までさまざまな
対応をなされておられるとは伺っておりますが、まだまだ私は十分ではないのではないかというような思いもありまして、取り上げさせていただいた次第でございます。
化学物質過敏症
患者の会というのがございまして、全国で数百名の方が会員になられまして、まだまだ一般には知られていないこの化学物質過敏症に対して、
医療の面におきましても、また行政の面におきましてもしっかりと
対応していただきたいということで活動している会でございます。
化学物質過敏症といいますと一体どんな
病気なんやという話がまず出てくるわけでございまして、私も、
医者をしておりましたときにはこういう
病気があるということは知りませんでした。
具体的に
大臣にもお聞きいただきたいと思います。「症例集」というのがございまして、この症例をお聞きいただければと思います。
これは千葉県の女性の方の症例でございます。
私の化学物質過敏症の原因は畳の下に多量に敷かれた工業用ナフタリンでした。これは古い話ですが、
昭和六十三年七月、母と二人で貸家に入居しました。外から臭って来るのか、家の中が臭うのか、何かスースーする臭いがするのです。
数日すると体中がちくちくし、目がしばしぱしてきました。
日がたつにつれ症状が強くなり皮ふや目の他に頭が痛くなり、こめかみ辺りが圧迫され、背中がつっぱり首のリンパ腺がはれている様な感じで、脳とせき髄の神経までやられている様でした。
このナフタリンを畳やさんに掃除機とほうきではいてもらいましたが、床と畳にしみ込んでしまい何の効果もありませんでした。畳を上げた床下には水がたまっていました。こんな床下でしたので、床も低い事もあって前の畳は腐ってしまったのです。そんな訳で湿気で虫がわかない様にと畳やさんが多量にナフタリンを入れてしまったのです。
ナフタリンを入れたとわかったのが入居して二ケ月過ぎていました。その間に皮ふ科にも行きましたが自律神経といわれ数日かよいました。
原因がわかってから内科に行きました。
先生に引っ越しをしなければなりませんといわれました。このナフタリンの家に百日住んでしまいました。
次の家を決め、不動産やさんにナフタリンが入って無い事を確かめました。しかし住んでみると何か臭いがするのです。隣の方に聞きましたら一年位前に白蟻の薬をまいたという事でした。お客が来ても臭いが気にならない様です。
症状はますます悪化してしまいました。
目…充血。上下左右動きにくい。目玉が硬くなった感じ。ぱさばさする。ごろごろする。痛い。つっぱる。
鼻…鼻水が出る。痛い。鼻血が出た事がある。鼻がのどに流れる。くしゃみが出る。小鼻がこわばる。ほほがはれる。
口…くちびるがヒリヒリする。くちびるがはれる。くちびるが黒ずんで赤い。舌がざらざらする。舌がヒリヒリする。上あごがざらざらする。空気がにがい。等々と続くわけでございまして、長くなりますので中途で省略いたしますが、極めて多彩な症状が、この場合でしたらナフタリンがきっかけになって、その次はシロアリの駆除剤が恐らく引き金になってこういう症状が出てきたのだろう。
ただ、この問題はなかなか、先ほ
どもありましたように、お
医者さんに行きましても、自律神経でしょう、気の病じゃないですかというような言われ方をすることがありまして、まだまだ世間の認識というのは薄い。
また、実際に、例えばその家に住んでいたとしても、この方はこういう症状が出るけれ
ども、外から来られた友人の方は何も感じないというふうに非常に個人差がある問題でもありまして、そういう
意味ではとらえにくい疾患であるというふうに私は思っております。
しかし、
現実に、「症例集」にありますように、たくさんの症状を訴える
患者さんがおられるわけでございまして、化学物質が我々に与える健康障害ということに注目し、きちっと
対応していただきたいと私は思っております。
まず、疾患としてまだまだ十分
確立されているわけではないというような意見もあるわけでございますけれ
ども、
厚生省としまして、この化学物質過敏症についての認識といいますか、どのようにとらえておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。