○瀬古
委員 例えば、医療の現場から福祉の場に移っていきたいという希望、また医療の現場にいながら福祉そのものも学びたい、こういういろいろな
方々がこれから生まれてくるというように思います。そういう希望、願いにぜひこたえていただきたいというように思います。
では、今日の
精神障害者の施策の問題に関連してお伺いいたします。
日本の
精神障害者の施策というのは、
先ほどお話もございましたように、諸外国と比較しても非常におくれております。平均在院日数でいいますと、これは
厚生省からいただいたOECDの
資料なんですけれども、一九八九年、カナダでは三十一・三日、イタリアでは十九・三日、アメリカでは十二・七日であるとき、日本は何と三百二十五・五日、こういうふうになっているわけですね。
先ほど五年以上入院の患者さんが五〇%と言われておりましたが、十年以上の入院患者さんも三〇・五%を占めている。比較的新しい方はどんどん退院しているという、それは私もよく存じております。しかし、長期の入院になればなるほど退院も大変難しいということも私自身も体験してきています。考えてみましたら、病院に十年も十五年も二十年も、それ以上の人もありましたね、私の経験では。そういう方が、それは
社会復帰しなさいといったって実際には無理な話なんですね。
しかし、なぜこんな長期の入院滞在になっているのかということなんですけれども、実際には、これは
先ほど言いました在院日数の
厚生省が出した
資料なんですけれども、日本の場合はずっとこれは長期入院が多いわけです。この
資料だけ見ましても、一九七〇年からしかないですが、大体外国はもう七〇年代からも在院の日数が大変少ないわけですね。一つは、日本の場合には偏見の問題もあるでしょう。それは、長い間一定の収容というか隔離政策をとってきた
厚生省の責任というのは大変大きいと私は思っています。
同時に、では現場の医療
関係者でいいますと、病院から出て
社会復帰したいのだけれども中間的な
社会復帰の
施設がないとか、そういう基盤
整備が整ってないという問題がありますよね。さらに、そのために
精神障害者の場合は、就職の問題やら家族との
関係やら近所から、あらゆる働きかけをしなければいかぬという問題もありますから、医療スタッフですね、それこそ
精神科ソーシャルワーカーだけじゃなくて、看護婦さんやあらゆるスタッフの
充実というのが日本の場合にはおくれてきた、ある
意味では
厚生省がサボってきたと、私から言わせれば言えるわけです、
では、今いる人たちが、こういう条件のもとでもどれだけの人が退院の可能性があるのかということを調べてみますと、これは総務庁が調べました
精神保健対策に関する調査結果に基づく勧告の中に出てきておりますが、この中に、
厚生省が昭和五十八年に実施した精神衛生実態調査について指摘しているわけです。この中で、主治医から直接事情を聞いたら、いろいろな条件があれば約三割の人が退院は可能だ、こういうふうに言っているわけです。今入院患者さんは三十四万人ですから、三割可能だといえば十万人ぐらい退院できるということになるわけですね。
ところが、
厚生省は今回どれぐらいの人たちを退院、
社会復帰できるというふうに想定しているのかというと、二万人から三万人程度が
社会復帰できるようにする、それでその対応をするためには、
精神科ソーシャルワーカーは一万人ぐらい要るだろう、こういう想定なんですね。昭和五十八年ですから、あれから随分たっています。実際には私はもっと退院の可能性が出ている
状況があると思うのです。それでも、十万人ぐらい可能じゃないかといっているのにあえて二万人から三万人と、全く消極的なこの姿勢はどういう
数字で出てきているのでしょうか。