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1997-06-03 第140回国会 参議院 労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月三日(火曜日)    午後一時三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 坪井 一宇君                 長谷川 清君                 川橋 幸子君     委 員                 上野 公成君                大河原太一郎君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 野村 五男君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 星野 朋市君                 大脇 雅子君                 笹野 貞子君                 吉川 春子君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    参考人        日本経営者団体        連盟労務法制部        長        婦人少年問題審        議会委員     荒川  春君        明治大学法学部        講師       松岡 二郎君        東京都立大学法        学部教授     浅倉むつ子君        日本労働組合総        連合会女性局長  高島 順子君        弁  護  士  坂本 福子君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○雇用分野における男女均等機会及び待遇  の確保等のための労働省関係法律整備に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として日本経営者団体連盟労務法制部長婦人少年問題審議会委員荒川春君、明治大学法学部講師松岡二郎君、東京都立大学法学部教授浅倉むつ子君、日本労働組合総連合会女性局長高島順子君、弁護士の坂本福子君、以上五名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、議事の進行上、参考人方々にはそれぞれ十分程度で御意見を順次お述べ願い、陳述がすべて終わりました後に、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、何とぞよろしく御承知おきいただきたいと思います。  それでは、まず荒川参考人からお願いいたします。荒川参考人
  3. 荒川春

    参考人荒川春君) 私は、日本経営者団体連盟労務法制部長荒川春と申します。  本日、参議院労働委員会におきまして、雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案、以下整備法案と略しますが、これに関し意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがたく存じております。  平成七年十月以来、婦人少年問題審議会におきまして男女雇用における機会均等推進するための方策につきまして検討が行われてきましたが、私は同審議会使用者側委員の一員として審議に参加いたしました。そこで、今回の意見発表使用者側委員として臨んできた態度を御紹介することを中心にしていきたいと思っております。  使用者側は、今日の企業経営にとって、雇用における男女機会均等は重要な課題であり、その推進にはたゆまぬ取り組み努力が必要であるという認識前提に一連の審議に臨んだつもりであります。そして、この考えのもとで、経済、経営実態あるいは一般社会における同問題の認識女性労働者の置かれている状況等、問題にかかわる環境を幅広く勘案し、推進するためのあり方を真剣に模索してきました。  そこで、使用者側がまず第一に主張しました点でございますが、一層の雇用機会均等推進し、女性の職域を拡大し、活躍の場を広げるための条件整備として、労働基準法上の労働時間、これは時間外・休日労働、深夜労働部分でありますが、これに関する女子保護規定解消することであります。  この女子保護規定解消は、仮にこれを男女均等家づくりに例えますと、いわばその土台となるものではないかと考えます。そして、その土台をしっかりとした上で均等の家を立派に構築するということが行われるべきではないかということであります。  女子保護規定解消する上で数々問題とされております、御指摘もあります仕事家庭の調和につきましては、近年、この国会審議を経て、育児休業法介護休業法等が相次いで法制化されてきていること。さらに今回、整備法案の中にもありますように、深夜労働にかかわり育児介護を有する労働者に対しては新たに配慮する措置を講じることとすること。労働時間をとりましても、この四月から週四十時間が中小企業を含めまして多く適用されるようになり、かつ関係労使努力によりまして実労働時間の短縮が進んできていることなどにより、十分環境整備されていくとなったことが判断の材料になったところであります。  この女子保護規定解消されますと、労働基準法上の規定により、使用者が時間外・休日労働を命ずる場合には、労働組合あるいは従業員過半数代表といわゆる三六協定を締結することになります。今後は、この三六協定によって、労使が合意して、男女に適正な時間外労働等の実現が図られていくものと思われます。また現在、労働大臣諮問機関であります中央労働基準審議会では、これからの労働時間法制として時間外・休日労働あり方検討項目に挙げられ、関係労使が真剣に議論をしているところであります。  この女子保護規定解消方向とその関連整備については、その原則的な部分について審議会を構成する各側間で一致を見たところでございまして、今国会に政府の整備法案として提出させていただくことができました。このことをぜひ委員の皆さんに御理解をいただき、本法案成立をお願いする次第であります。  参考までですが、日経連では女子保護規定あり方につきまして会員から多く意見を聞いております。その中には、女性従業員みずから女子保護規定解消を望む声が寄せられております。そこで、その一部を生の声で御参考までにお伝えしたいと思います。  この方はある会社、製造業でございます。総務本部にお勤めでございまして、読み上げてみますと、  私は千九百何年に入社し、千九百何年に総合職事務系)に職種転換しました。入社以来一貫して主に社内教育を担当しておりますが、現在は育児休業中です。  まず非工業的業種規制について実状を申し上げます。私の担当しております社内教育業務は一年サイクルのものが多く、月によって繁閑の差が激しいものです。従って、四週三十六時間という時間外規制繁忙期には非常に困ることになります。当社ではフレックスタイムを実施しておりますが、繰り越しも一か月が限度で、これではカバーしきれません。  また、時間外労働は年間百五十時間以下、休日労働は四週一日のみという規制もナンセンスだと思います。これは総合職転換後のことではなく、それ以前も同じことでした。総合職専門業務従事者指揮命令者として扱うという考え方もありましょうが、私個人としては女子全体の規制緩和が必要だと考えております。  また、工業的業種規制は、私の感じるかぎりでは、女子従業員生産現場責任ある立場につきにくい原因のひとつとなっているようです。深夜業禁止についても、一定の職種には認められても他には認められないというのは、そもそも女子は保護すべきものであるがやむを得ないので許可する、という考え方の現れでありましょう。保護規定全体が女子本来の居場所は家庭であるという考えに基づいているものと思われますが、家庭仕事かという選択は個人個人の問題であって、女子全体の問題としてはとらえられない時代になっているのです。この際、全面的に規制を緩和し、労使裁量に委ねて頂けますよう要望致します。  ただ、急激な規制緩和あるいは撤廃により現在の家庭生活との両立が阻害されたり、若年層就業意識が低くなったりすることが懸念されます。社会全般男女平等意識向上と共に進めていくのが望ましいと思います。  なお、私は現在育児休業中ですが、身をもって妊娠出産育児を体験した結果、母性保護については更なる充実の必要性をひしひしと感じております。両性の責任であるこれらの事態に、女性だけがすべてを背負うことはもはやできません。これからますます社会システム全体の理解支援が、真実に平等な社会のために必要とされているのです。  以上であります。  もう一点御紹介をと思ったんですが、時間の関係で省略させていただきまして、このように最近では男性と同様の働き方を求める女性、時間外労働等を含めて男性と同様に働く意欲を持つ女性がふえております。問題は、そうした意欲のある女性に対して法がそれを不可能としてはいけないということであろうかと思います。  男女雇用機会均等法改正につきましては、使用者側は、現行法趣旨を一層徹底させることを出発点としながら、さらに女性労働者の置かれている現状を今一層改善していくには、現行法枠組みの中で最も重点を置くべき点として募集採用配置昇進について新たな取り組みを模索しようとしました。そしてさらに、それ以外の推進策につきましても、社会一般男女均等に対する受けとめ方、経営側人事労務管理責任を持って完遂できるかどうかという点を考え方の基軸にいたしまして、企業の自主的な取り組み方提案も含めて積極的に議論に参画したところであります。  その結果、募集採用配置昇進教育訓練機会均等差別的取り扱い禁止ポジティブアクション調停制度セクシュアルハラスメント妊娠中及び出産後の健康管理における措置公表制度等、幾多の新規及び改正が盛り込まれたところでございます。  これは、結局婦人少年問題審議会公労使委員がぎりぎりの接点として意見一致を見たものであります。その点は、経営側としても非常に重いものを感じるとともに、これまでに至った経緯を大切にしていきたいと判断したところでございます。立法府におかれましてもこの点を十分しんしゃくいただきまして、ぜひともこの整備法案可決成立を賜りたいと思うところでございます。  この上で、あえて均等法部分について申し上げたいと思うんですが、中小企業零細企業では、現在週四十時間労働制への移行を初めといたしまして、最近の新たな労働関係法、例えば育児介護休業法へ懸命な対応をしているところでございます。こうした中で、今回の改正は、企業として雇用における男女均等推進で一層の取り組みをすることになりますので、行政として十分な御支援と御配慮をお願いできればと考える次第でございます。  どうも意見発表させていただきまして、ありがとうございました。
  4. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、松岡参考人にお願いいたします。松岡参考人
  5. 松岡二郎

    参考人松岡二郎君) 私は、明治大学松岡と申します。  今回の均等法改正労基法改正の点について意見を述べさせていただきます。  まず、均等法の点なんですけれども、これは十年前に採用募集について努力義務ということで大騒ぎになった点を、今度は禁止義務ということで改正になった点については私は高く評価したいと思っております。と同時に、セクシュアルハラスメントとかあるいはポジティブアクションというような、枠をつくって推進しようということについても私は高く評価したいと思います。  ただ、十年前の均等法を見ますと、十年たった今、一体どの程度均等法が各企業で実現されているんだろうかという疑問が随分と残っております。  例えば、私は講演に呼ばれて、いろんなところに行きまして、その折に工場などを見学させていただく機会が多いんですけれども、中堅以下の工場へ行きますと、大体一つライン、二つのライン、三つのラインということで、一つライン女性ばっかり、一つライン男性ばっかり、一つライン外国人ばっかり。何でこんなに違うんですかと経営者に聞きますと、これは単純作業だから女性ですよ、男にはだめですと。こっちはちょっと複雑だから男性なんですと。じゃ向こうはと、あれは日本人が来ないから外人なんですというように、実は企業内で性とか国籍による業務のすみ分けが行き届いているような感じがするんです。  そういう中で、果たして十年前に施行された均等法というものがどの程度実効性があったのか。私はこの点で、今回の均等法というのはさらにステップが上がったということで最終じゃないだろう、きっとさらに改正改正と行われていくだろう。そうすると、ここらあたりで実効性を担保するものをもう一度考えてみなきゃいけないんじゃないだろうか。  当然、労使主役なんですけれども、行政の点でいけば婦人少年室というのが主役になるわけですね。ところが、婦人少年室はかなり動いているんですけれども、残念ながら県庁所在地しかない。なおかつ、機敏に動かなきゃいけないのに公用車が一台もないという状況タクシー券あとは職員のマイカーで動いている。そうすると、今度の改正でいろいろ女性救済を求めたときに、少なくとも婦人少年室は口を出す権利は与えられているわけですが、現場に話しに行くということすらなかなかおぼつかない。特に、地方の場合は電車しかありません。ですから、一たん戻ってまた行くというかなり不合理というんですか、能率が悪い活動をしている。ですから、私としては婦人少年室をいかに、使いまくると言ったら言葉が悪いんですけれども、機能させて、法の実効性を実現させるか。  あるいは、都道府県には労政事務所があるわけですから、それらと連携して、タイアップして使うというようなことなどを考えて、このときは実効性というんでしょうか、均等法実効性、幾ら立派な法律ができてもだれも適用しなければただの絵にかいたもちになりかねない。そういう点で議員の方々にはその予算等を含めてぜひお考えいただきたい。  もう一つは、労基法改正の点なんですけれども、この点で随分私は、この法の趣旨というんですか、それは本当に近来の男女平等を目指したという点では評価するんですけれども、いかんせん日本労働条件が諸外国、特に先進国と比べると労働時間関係ではかなり悪い、そしてもうちょっとこの法案をすっきりさせる。要は、深夜あるいは時間外、あるいは休日に働きたいという女性のための法かなと。そうすると、働きたくないという女性は、特に労働組合のないような零細女性たち意思をどう実現させるんだろうかという点、ここに大きな問題点があるだろう。  当然のことながら、この法が目指していると思われる男女共通労働時間制ができることであれば、それで多くカバーできるんですけれども、ただ、あと二年後にこれができるかどうかという保証がないですから、私は当委員会などでとりあえず二年間、憲法十三条の個人の尊厳というようなことを具現化するためにも、個別の同意の尊重でもいい、できれば尊重という法思想法理論を導入して二年後の時点で解消を図る。当然、最高裁判所就業規則で一律にできるということなんですけれども、だからこそ法律で定めないと、一部の女子、多くの女子かもしれません、その意思が無視されるという点をぜひお考えいただいて、委員会の結論を出していただきたいと思います。  以上でございます。
  6. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、浅倉参考人にお願いいたします。浅倉参考人
  7. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 東京都立大学浅倉と申します。  本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  私は、労働法を専攻する者として、特に男女雇用平等をめぐる日本及び欧米の法律問題に関心を持って研究を続けてきた者としての立場から、本日、意見を述べさせていただきたいと思います。  均等法は、一九八五年に制定されて以来、社会的に与えた影響ははかり知れないものがあるとは言えますが、しかし、強固かつ頑迷な男女差別に対処するには余りにも脆弱な仕組みしか持たない法律であります。そのために、制定当時期待されました行政的な男女差別救済法としての意味は極めて縮減されてしまったと私は思っております。  その基本的な要因は、取りまとめてみますと、この法が勤労婦人福祉法改正としての性格を有しているために片面的な効力しか持たないと解釈されてきましたことです。それから、募集採用配置昇進という雇用ステージにおける最も肝心な行為に対する規制努力義務であったことであります。そして第三に、紛争解決機能としての調停委員会がほとんど機能しない仕組みであったことの三点に絞られると思います。  このような均等法を諸外国法律に比較して遜色のない実効性のある立法改正したいという希望を託しまして、私もこれまでに何回か論文を書くことによって提言し続けてまいりました。それに比較しますと、本日の均等法改正案はいまだ不十分と言わざるを得ないものであります。しかしながら、さきに述べました基本的な不備を是正する幾つかの改正点は今回の法案にも盛り込まれておりまして、私としてはこれらを積極的に評価することにはやぶさかではございません。  この段階改正案枠組みを大きく変更することは望むべくもないと思うのですけれども、本日は、現段階でもなお改善可能な幾つかの提案を申し上げたいと思います。  まず第一に、雇用の全ステージにおいて女性差別禁止され、本法が福祉法としての性格を払拭した暁には、何が差別かについての従来の指針解釈通達を全面的に改定されるように要望いたします。  女子のみ募集採用が許されなくなるということは既に明確にされておりますけれども、加えて、妊娠出産を理由とする差別均等法違反であるということ、募集採用区分ごと男女比較前提とした男女差別概念にとらわれるべきでないということ、それから対価型のセクシュアルハラスメントを通じて女性のみが不利益をこうむる場合には五条から八条違反可能性もあるということを指針によって明確にすべきだと考えます。  第二に、調停委員会開始要件が緩和されたこと、労働省婦人少年室長調停開始に関する裁量権を限定する方向を示されているということは評価したいと思います。  しかしながら、現在の解釈通達が、調停とは法律に抵触するか否か等を判定するものではなく現実的な解決を図るのだと述べて、現に調停委員会が何が差別かについて判断を回避している実情には私は不満を持っております。調停委員会は、調停打ち切りの場合でも専門的な委員会として何が差別であるかの見解を公表すべきであります。東京都の苦情処理委員会見解を公表しておりまして、たとえ調停が不調であっても委員会の価値を有意義なものとしていると私は考えます。  第三に、二十六条による労働大臣公表制度の創設は意味があるものと評価いたしますが、二十五条の勧告に従わない場合に限定されているということは、これが活用されないのではないかという懸念が残ります。  第四に、ポジティブアクションに関する二十条の規定は、男女差別禁止してもなお残っていく事実上の男女格差解消するための措置として高く評価したいと思います。  私としては、少なくとも百人以上程度の規模の企業に対しては、企業内部雇用状況分析を公的な機関に提出するように義務づける措置が設けられるように希望いたします。自発的な企業活動枠組みは、既に本年三月の労働省研究会のガイドラインによって示されておりますので、行政がこれを社会に広く周知徹底しまして、企業ポジティブアクションを導入するように積極的に指導されることを強く要望したいと考えます。  さて、労働基準法における女子保護規定撤廃部分は、多くの働く女性にとって最大の関心事となっております。私自身は、理論的な筋道として、雇用平等原則に照らして母性保護規定以外の労働条件男女平等のものであるべきだと考えております。なぜならば、女性は決して身体的、精神的に弱い性ではなく、また家庭責任男女平等に担うべきだと考えるからです。  しかし、理論上はそうであっても、現段階女子保護規定撤廃に無条件に賛成することはできません。なぜならば、日本労働条件基準実態としていまだ相当の低水準にあり、しかも同じ共働き夫婦であっても男女家事労働時間が一対六もの差があるというジェンダー格差現実を無視することはできないからであります。現実男性働き方女性を合わせることは到底不可能であり、もし女子保護規定撤廃するならば、それにかわる男女共通のより質の高い労働条件基準が確保されることが不可欠であると考えます。  必要な男女共通労働条件基準としましては、深夜業従事者に対する法的な基準設定、そして時間外労働に関する法的な基準設定であります。  まず、深夜業についてですが、本来、生体リズムに反する働き方であることから、深夜の業務そのもの制限が必要であり、加えて深夜業従事者に対する夜勤の頻度の制限夜勤時間の上限制限等々の設定が必要と考えます。  なお、一九八五年の労基法研究会労働時間部会最終報告は、深夜業は画一的な規制にそぐわないと述べまして、国際的に見ても男女労働者夜業に関するILO基準は存在しないとしておりましたが、この状況は変化しております。一九九〇年に男女労働者に対する夜業条約であるILO百七十一号条約成立したからですし、諸外国でも、例えばドイツでは男女共通の深夜労働に対する基準成立しております。  第二に、時間外労働に関する法的な基準につきましては、本来、時間外・休日労働が臨時的なものであるということを前提とすべきであり、三六協定のみによる規制では不十分だと考えます。  新たな立法上の基準設定方法幾つ考えられます。端的に残業拒否権法制化するという方法立法の中に時間外労働上限規制を導入するというやり方、三六協定に対する目安時間の根拠規定を設けるやり方割り増し賃金の引き上げと算定基礎の見直しなどの方法考えられます。  私としては、時間外労働上限規制か、もしくは三六協定に対する目安時間の根拠規定を設けるかという方法現実的で効果的ではないかと思っております。  さらに、一般男女労働者に対する共通労働条件基準とは別に、家族的責任を持つ労働者に対する時間外労働と深夜労働を免除する規定を導入するということは極めて重要であると考えます。  法案では、深夜業に関する免除規定が新設されることになっておりますが、この中に、時間外労働、休日労働免除規定をも含むこと、適用から除外される労働者の範囲をもっと狭めること、昼間の労働への転換請求権として規定するということを要望いたします。  最後に、例えば時間外労働、深夜労働について男女共通保護規定ができたとしても、それが現行女子保護規定のレベルを何がしか割り込むということは十分に予測されるところであります。それだけに、最も法改正影響を受けやすい家族的責任を持つ女性労働者に対して段階的に保護規定の組みかえをしていくということも緊急避難的な移行措置としてはあり得るのではないかと思います。  いずれにしましても、今回の法改正はあくまでも男女雇用平等を実現するという目的に立った法改正であります。したがいまして、この法改正によって女性労働者自身が、どのような形であるにせよ不利益をこうむるということは決して許されないことであります。法改正においても不利益を回避するための手だてを組み込み、さらに法解釈や行政解釈を駆使しつつ、二重、三重にも女性がこの法改正によっていわれなき不利益をこうむることがないよう最善を尽くされますように、最後に強く要望させていただきまして、私の意見としたいと思います。
  8. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、高島参考人にお願いいたします。高島参考人
  9. 高島順子

    参考人高島順子君) 連合の高島でございます。  本日は、均等法並びに労働基準法育児介護休業法改正審議に当たりまして、参考人として意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。  今回の均等法改正婦人少年問題審議会審議されるということで、連合は昨年の六月にそれに臨むに当たっての方針を作成いたしました。  その内容といいますと、一つは、男女にかかわらず性を理由にした雇用における差別禁止する男女雇用平等法にしていく、そして実効ある救済機関を確立する。さらに、この十年間に先進各国で新たに制度化されている間接差別だとかセクシュアルハラスメントだとかポジティブアクション法律の中に義務づけするという点であります。二点目は、妊娠出産にかかわる母性保護については、妊娠出産差別とされたら女子に対する差別だというふうに解釈して、これは禁止する。さらに母性保護措置は強化をしていく。三点目として、時間外・休日労働及び深夜労働にかかわる男女異なる取り扱いは解消する。そして、新たに男女共通の法規制をつくる。また、賃金格差の改善を図っていく措置を講ずる。四点目として、伝統的性別役割分業を前提とした雇用社会あり方を改革し、家族的責任男女がともに担い、仕事家庭の両立を図ることができる支援体制を充実するため、育児介護休業法改正するという四点であります。こうした方針で審議会に対応してまいりました。  審議会は、昨年十二月に建議、そして一月には諮問に対して答申ということでありましたが、建議でまとめられた内容並びにその答申に際して、連合としては、私たちが要求した中身を完全に満たしているものではありませんけれども、おおむね妥当との態度をとってまいりました。均等法改正については、大筋で評価ができるというふうに考えています。  しかし、先ほど申し上げました四点の柱から言いまして、その均等法につきましては妊娠出産を理由とする差別あるいは家族責任を理由とする差別というのは差別なんだということを明確にすることができていません。さらには、間接差別禁止することができませんでした。そして、一番の柱でありました、現在の女性を援助するという福祉法的な均等法男女雇用差別禁止法にしたいというのが私どもの考え方でしたけれども、女性差別禁止法というところまでしかできませんでした。特に、救済機関の強化がなお不十分であると考えています。これらについてはさらに今後の重要な課題であると考えています。  一方、労働基準法関係でありますけれども、こちらにつきましては、労働時間の女子保護規定解消とその後の扱いが大きな問題です。  連合は、最初の要求として、女子にだけある、女子と男子違う二重基準というのはやめよう、そして男女一緒の基準にしようということを言ってきたわけですけれども、それは、男子の方の法規制の水準のレベルを上げていくということが必要だということであります。新たな男女共通規制を主張したわけであります。この点について、昨年十二月の建議では、「女性が能力を十分に発揮できるためにも、男女がともに健康でバランスのとれた職業生活と家庭生活を送ることができるような環境整備が必要であり、こうした観点からも、労働時間短縮のための取組や対策が引き続き積極的に推進されることが重要である。」、「時間外・休日労働の在り方について関係審議会において速やかに検討が行われることが望まれる。」ということにとどまりました。  婦人少年問題審議会としては、関係審議会に要望するということを三者で一致して要望したわけですけれども、この点については、中央労働基準審議会の課題であるということで、同時にその議論ができなかったことは大変残念でありますけれども、それが行政仕組みであるということですから、中央労働基準審議会で速やかな検討と取りまとめがなされるよう期待をしているところです。  男女にかかわる労働時間の問題については、既に中基審で審議がされていますけれども、本来であれば、九二年に、時間外・休日労働上限規制法制化の検討については九五年一月以降適正化指針の次回見直しとあわせて行うということを確認しているわけです。このことが、四十時間法制をめぐる使用者側の動きによって、スケジュールどおりに行われなくて延び延びになってきているということは極めて残念であります。しかし、今年に入り具体的審議が進んできていますので、年内の取りまとめを期待していますし、それは何としてでも実現させなければならない課題であると思っています。  労働時間問題というのは、単に労使間の問題だけではなくて、国民の毎日の生活そのものにかかわる事柄であります。労働省審議会枠組みを超えて、国会審議の中で労働時間規制あり方について十分な審議をしていただき、私どもの期待にこたえていただきますようお願いする次第です。  既に、労働時間問題についての連合の要求については、衆議院における審議の際に鷲尾事務局長が出席し連合の考え方を申し上げていますけれども、改めて、私どもの要請というのは、女子保護規定解消に伴う新たな男女共通規制の実施と、その実施時期を一九九九年四月からできるようにするということであります。  このため、私は特に次の四点について、これまでも国会で御議論いただいておりますけれども、改めて申し上げて、与野党でぜひ補強してくださるようお願いをしたいと思います。  その第一点は、政府の目標である年間総労働時間千八百時間の達成、これは二〇〇〇年を目標年次とする第八次雇用対策基本計画でも改めて確認されていることですけれども、中央労働基準審議会で時間外・休日労働あり方について、衆議院の審議及び附帯決議の中で、中基審の検討に際し、適正化指針実効性を高めるための方策について検討していただくようにするというふうに労働省はおっしゃっています。この適正化指針実効性を高めるということは、法制化をするということであることをぜひ国会の論議の中で明らかにしていただきたいと思います。  それから二つ目として、実効性を高める措置の実施というのは、先ほども申し上げましたけれども、改正均等法の施行と同時であるという点であります。  三点目としては、衆議院の審議並びに附帯決議で、家庭責任を有する女性労働者がこうむることになる職業生活や家庭労働条件の急激な変化を緩和するための措置については、激変緩和だけが経過措置として先行されるべきではないということであります。  それから第四点としては、深夜労働の問題でありますが、時間外・休日労働あり方との関連事項として中央労働基準審議会検討していると労働省はおっしゃっていますけれども、深夜労働というのは本来男女とも健康及び家庭生活社会生活上から望ましいものではないということは論をまたないところであります。できる限り抑制されるべきであります。深夜労働の新たな広がりの中で、かつ女子保護規定解消による影響を考慮し、新たな規制が必要であると思います。このため、深夜の労働時間数、深夜労働の回数、勤務と勤務との間隔時間の確保等について制限を設けるべきであることをぜひ明らかにしていただきたいということであります。  以上提案いたしまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
  10. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  次に、坂本参考人にお願いいたします。坂本参考人
  11. 坂本福子

    参考人坂本福子君) 弁護士の坂本でございます。  本日は、本法案に対して意見を申し述べる機会参考人としてありまして、そのことについて感謝いたします。  私は、弁護士になって三十六年間、女性差別是正の裁判に一貫してかかわってまいりました。その一人の弁護士として、本法案に対し現場からの意見を述べたいと存じます。  本法案の最大の問題点は、労働基準法女子保護規定の削除にあると思います。現在、男性については協定を結べば何時間でも残業させることができ、深夜働くことも余儀なくされております。こうした中で長時間労働が野放しに広がり、そして過労死が多発しております。本法案が通れば同じような働きが女性にも強いられることになります。  労働時間は命と健康の問題です。このことは、本日お手元に配付させていただきました政府関係の資料によっても明らかです。この資料は、七八年の十一月、労働大臣の私的諮問機関である労働基準法研究会第二小委員会が婦人労働法制の課題と展望という報告を発表しました。その委員会が委嘱した医学、生理学、労働衛生学、心理学等の専門委員報告です。本報告では、多くの資料を引きながら、労働時間については残業を含む長時間労働の持つ問題点ということを指摘しております。そしてまた、深夜労働についても、深夜は女性のみならず男性にとっても社会生活上の不便を来すものだ、労働者の健康を害するということが述べられております。詳しくは資料をお読みいただければと存じます。  本資料はある意味では古いと言われるかもしれません。しかし、基本的には人間の身体構造は変わるものではありません。しかも、労働密度は、人減らし、合理化の中で当時より現在の方がより厳しくなっていると思います。本委員会審議、これは二月二十五日でございますが、太田労働省婦人局長は、要するに母性保護に係る専門家会議報告書、これをお引きになりまして、女子保護規定解消について「妊産婦以外の女性妊娠出産機能に影響があるという医学的知見は見当たらない」とされているというふうに答弁しております。  しかし、この知見の根拠は具体的に何一つ明らかにされておりません。配付した資料の専門委員報告によるような多くの資料に基づく科学的データは一切ありません。つまり、政府は具体的に長時間労働や深夜労働労働者の健康にいかに害を及ぼすかということを調査していないのです。しかも、太田婦人局長の引用された報告書の中でも、はっきりとそのまま読ませていただきますと、時間外労働や休日労働が長時間に及ぶ場合、及び深夜労働は、労働者の疲労蓄積を媒介として、疾病、災害、能力低下と関連するだけでなく、健全な労働者生活の維持を図る上でも問題が多く、労働者に対して何らかの生理的影響があるとされているというふうに書かれております。長時間労働や深夜労働労働者の健康にとって有害であることは医学的にも証明されているのです。  その上、女性には家庭責任の負担がかかっているのが現状です。総務庁の統計によっても、就業が三十五時間以上の妻と夫、この場合に平日の家事労働時間の一日に費やす時間について、妻は三時間十一分、ところが夫はわずか十三分にすぎません。このことは男性の意識のおくれと言われるかもしれません。しかし、それはむしろ男性が深夜、長時間労働に追いまくられていること、これも大きな原因になっていると思います。  我が国も批准したILO家族的責任を持つ男女労働者の平等に関する条約百五十六号、そして同時に採択された勧告百六十五号では、男女ともに家庭責任を全うするには一日の労働時間及び残業時間の短縮という規定を具体的に定めています。男女ともに平等に働き、子供とともに人間らしい家庭生活を実現するために、今必要なのは男女平等の労働時間の規制をすること。具体的には、例えば残業については男女ともに年間百五十時間、あるいは公共上、公益上必要な事業を除いては深夜労働については原則禁止というようなことです。  第三に、こうした男女共通規制をしないで女子保護規定撤廃するということは世界の流れにも反することです。政府は、諸外国では女子保護規定解消されていると言っております。しかし、これはむしろ事実を偽っています。世界の多くの国では男女共通規制がなされています。例えば、ドイツでは六カ月を通じて平均一日八時間労働である限り一日十時間までという規制になっております。  本日お配りした資料で示されているように、ILOが昨年発表した世界各国の資料、これによりますと、百五十一カ国中実に九十六カ国で一日についての最長の労働時間が規制されております。その九十六カ国のうち、残業時間二時間という国が四十カ国と最も多くなっております。  男女共通規制がなくして女子保護規定撤廃されたら、多くの女性はそういう中で正規労働者として働き続けられなくなると思います。  私は、世界の日立と言われるあの大企業日立での女性に対する差別是正の裁判に取りかかっております。日立ては、四直二交代といって一日二交代の仕事男性は組み込まれております。このシフトは、昼勤が朝八時半から夜の二十時四十分まで、夜勤が二十時三十分から朝八時四十分までです。このほかに日立ては三交代勤務や変則勤務もあります。もし女子保護規定がなくなったら、女性も当然このシフトに組み込まれることになります。原告たちは全員子持ちです。差別是正の前に働き続けることができない危機に直面することになります。  もちろん、同じように多くの女性は正規労働者として働き続けることはできず、結局は退職して賃金の安いパートなどの不安定雇用とならざるを得ないのです。また、新たに就職しようという女性が深夜労働や長時間残業を望まなければ、不採用ということになってその入り口を閉ざされます。女性の職域拡大には決してつながりません。女子保護規定撤廃は余りにも無謀だと思います。  ここで、この女子保護規定撤廃とともに、同一法案として提出されている均等法について一言述べさせていただきます。  この女子保護規定撤廃については均等法改正が重要であり、それとの関係撤廃やむなしとの意見もあります。しかし、均等法改正の内容は余りにも不備なものです。確かに配置昇進等については禁止規定になりました。しかし、例えば転勤を理由に男性を基幹職、女性を補助職というように振り分ける、表面上男女が平等に見えても結果的には女性差別するようないわゆる間接差別、この禁止については何ら触れられておりません。今職場ではこのような隠れみのを着た差別が多くなっております。そして差別是正を求めるには裁判以外にないのです。なぜならば、救済機関の不備です。  本法案救済措置は、女性少年室長の助言、指導、勧告にとどまっており、強制力ある救済規定は皆無です。また、勧告に違反しても単に企業名を公表することができるということだけであって、違反した使用者には罰則等を含む何らの制裁措置もついておりません。これでは差別是正には役立ちません。  私は、弁護団の一人として、昨年十一月、女性に対する昇進昇格差別是正を争った芝信用金庫の事件で、女性たち男性並みの資格まで引き上げ、男性と同じ賃金を支払えとの判決をかち取りました。でも、この裁判は一審まで実に九年半です。この裁判中に、判決を前にして原告の一人は定年で退職せざるを得ませんでした。そして、今高裁で争われ、最終確定まであと何年かかるんでしょうか。  差別に苦しむ労働者とともに、こんな差別是正を一刻でも早く是正できる機関があったら、それを定めた法律があったらと長い間私は弁護士として思い続けてまいりました。しかし、そのささやかな願いすら満たしていない法律案なんです。こんな法律と引きかえに女子保護規定撤廃するということは、余りにも道理に反すると思うんです。  本国会でも、男女共通規制がない限り女子保護規定撤廃することについて憂慮されている議員の方々意見も聞いております。しかし、現在、政府も財界も男女共通規制立法をしようとしておりません。そうである以上、女子保護規定撤廃をすべきではないと存じます。少なくとも、本法案の労基法改定にかかわる女子保護規定の削除部分は、男女共通規制がない限り削除されるべきです。良識の府と言われております本院において、多くの国民の声に耳を傾け、そして男女共通規制ができるまでは決して女子保護規定撤廃はしないよう、慎重な審議を望みます。
  12. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ありがとうございました。  以上で参考人意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 本日は、委員会参考人として各先生方にお越し願いまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  今、先生方の御意見を拝聴いたしまして、またこの委員会で今日まで一番時間がかかって問題になりましたのは、やはり女子保護規定解消に伴う問題だろうと思っております。  そこで、荒川参考人にお聞きしたいのでございますが、荒川参考人は今意見陳述の中で、介護育児あるいは労働時間短縮等、十年前より相当の変化をしてきたと。そういう中で、女子保護規定解消は行うべきであるという考え方を吐露されました。  私も、女性男性も同じ条件のもとでその能力を十分に発揮できるようにするためには、そういう観点から解消すべきものとは考えておりますけれども、しかしそういう法律だけではなくて、現実としてその場に働いている方々にこういうものがどういうふうな影響を及ぼすか、これはそういう設備をどうしていくか、企業責任というものは大変重要なものがあるんじゃないかなというふうに思っております。ですから、法律でどんどん決められても、実際に女子労働者がそこで働かれて、その恩恵をどう受けるのかということも大変大きな問題になってくるんじゃないかなというふうに私は思っております。  私は、かつて大阪府議会の議長をしておりましたときに、五十ccの小さな単車がそれまで無免許で乗れたが、しかし、免許を取れといういわゆる交通法の修正等がありまして、直ちに女の方が大量に五十ccの免許を取るということで、門真にあります自動車の教習所へ、試験場へ押しかけられた。これは大変なことになりましてパニック状態になった。  大体、女の人が余りそのころ教習所にお越しにならないという判断で、設備、設計あるいは水道の配置女子トイレの配置などはほとんどしてなかった。大変な状態になって、それからは突貫工事をして、それに間に合わさなきゃいけないという事態があったんですね。  そういうことを考えますと、女性が深夜勤務に従事されるに当たってはそういうトイレの問題、休憩室の問題、あるいは福利厚生施設の設備、その受け入れ体制が本当に十分にできているのかどうか、やはりそういうことが大変大きなポイントになるんじゃないかなと。十年間でそういう受け入れ体制を企業がしてきているのかどうか、その辺をひとつお聞かせ願いたい。  さらに、水回りというんですか、家でも台所とかふろとか水回りは非常に金がかかるんですよ、設備投資に非常に金がかかる。そういう準備をする場合、かなりの設備投資が要るんじゃないか。そのことに関して中小企業の負担というのは大変大きいものがあるんじゃないか。そういったことをしなきゃならない、またそれを準備しなきゃいけないというふうになりますと、国あるいは地方自治体からの資金面の援助でもなければ対応できないんじゃないか。単に三六協定だけで採用と決めても、そういう設備をしていくことも非常に重要な課題になってくるんじゃないかなというふうに思っております。  そういう面につきまして、法律が施行される平成十一年四月までに企業としてどう対応できるのか、またそういったことについてのガイドラインをどうするのか。また、これだけの女子労働者を雇い入れる、深夜あるいは時間外・休日労働していただくなら、これだけの設備はすべきであるというガイドラインを決める必要があるんじゃないかなというふうに思うんですが、その点はいかがお考えですか。
  14. 荒川春

    参考人荒川春君) お答えいたします。  新たに女性労働者を深夜労働を中心にしまして従事させるということに際しましてその就業環境整備するということは、これは今坪井先生がおっしゃられたとおり絶対必要だというぐらいなものであろうかと思います。そうでありませんと、現実に気持ちよく働いていただくということができないわけでございまして、募集採用を幾らかけても、あるいは今働いている方に改めて深夜労働まで御協力いただくにも、なかなかそれに御本人の方から応じ切れないということが実態として出てくるのではないかなと思います。  そこで、先ほど先生は水回りのコスト高の事例を出されましたが、全くそのとおりでございます。当然これから企業としては、そのコストを回避するといったようなことではもうほとんど立ち行かなくなるのではないかなと思います。むしろ積極的に設備投資をする、その負担については企業がしっかりと経営計画の中で組み込んでいくと。かなわないところにつきましては、さまざまな設備投資のための融資制度を利用したりしまして、就業整備環境というものに積極的に取り組んでいくというのが今回の女子保護規定撤廃に伴う措置として企業が求められていくものということになるのではないかなと思います。  私どももそこら辺の諸点につきまして、先生の御指摘の懸念、今回の法改正に伴いまして企業が積極的に取り組むようにさまざまに会員の皆さんに呼びかけをして対応していただくようにしていきたい、こう思っております。
  15. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 企業が積極的に取り組むようにするという言葉だけでは、私も企業家の一人だったんですが、まず仕入れにかかるコストをできる限り安くして売る、利益を生むということが企業前提なんです。そうすると、いわゆる賃金はできるだけ安い方がいい、原料はできるだけ安い方がいい、そして設備投資あるいは関連設備もできる限り安い方がいい、これがやっぱり前提なんですね。それができる、そうやって余裕のある企業はいいですけれども、実際に女子労働者を必要とする企業というのは中小企業でもっと劣悪な条件にあるんじゃないか。それだけの余裕的な資金が果たしてあるんだろうかという点を私は非常に心配します。  それは、法律ができることはいいんですが、同時にそういったことについて経営者側もはっきりと国に対して、それならそれの資金をどうするんだ、あるいはこれだけの金がなかったら女子労働者を夜雇えないだろうと、そうしたらそれを我慢してやるのか。その辺ももう少しはっきりした上で事をしなければ、保護規定解消だけですと、そういう企業側の論理からいくと非常に難しい論理になる。余裕のある企業はいい。しかし、もっと悪い企業中小企業の方はもっと悪い。そこで女の人に夜働いてもらいたいという企業もある。こういった問題に対して、経営者側としてどうお考えなのか。
  16. 荒川春

    参考人荒川春君) 大企業であろうと中小企業であろうと人を雇うあるいはそれに雇われたいと思われる方がいらっしゃる。その出会いというものにつきましては、これはその需給関係もさることながら、特に深夜あるいは時間外・休日労働が結構なものに及ぶようなところであればあるほど需給関係は非常に厳しいものであるような気がいたします。現実にそうなるんではないかなと思います。  会社側がどうしてもそういうふうに働いてほしいというならば、それなりの投資をするというのはやはりそのほかの労働条件等の設定と同じようにこれは重要な点であろうかと思います。企業行動がこれからどのように動くかわかりませんが、その人に働いてほしいというならばそれなりの環境整備についての投資というのは惜しんではならないし、そのために必要な資金につきましては、当然今先生のおっしゃられたように、自前でできなければ、なかなか難しいとなれば職場改善資金というようなものを政府に、中小企業のためのいろいろな改善資金の中にしっかりと入れていただくということも 先生の今御指摘のとおりのことは我々としても十分運動していかなきゃいけないなと思っております。  今の先生の御質問につきましては、逆に私ども経営者はしっかりやれ、そういう運動をせいという御指摘であろうかと思いますので、そこは真摯に受けとめまして対応していきたいと思います。ありがとうございます。
  17. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 ぜひとも荒川参考人の今のお話のように、そういったいろんな方策を通じて、できる限り就労環境のいいところでやってもらう。そのためには、その準備を十二分にひとつ、今後残された期間内にやっていただく。そして、それに伴う法の改正を、我々も協力して推し進めてまいりたいというふうに思っている。  ただ、こういう法律を決めることと同時に、そういった面も、やはり現実社会でどう生かされるかということは非常に女子労働者にとって大事なことだと思いますので、お願いを申し上げたい。ただ企業家の良識にまつというだけですとなかなか納得できないんじゃないかなと思いますので、その辺のガイドラインもきっちりこれから労働省等とも話し合って決めていただき、また、企業の良心としてそういう形にするために、そして実際できないならばそういう資金の方法をとるということも視野の中に入れて進めていくべきじゃないかなというふうに私は思っております。  次の話に行きますけれども、我が国は世界で女子がひとり歩きできる数少ない国の一つだというふうに言われておりまして、深夜に歩かれても比較的安心だと、こういうふうに言われておったんですが、最近は決して治安の世界一の国と思えないような事件が多発いたしております。ですから、十時以後ずっと深夜労働なさってお帰りになる時間等を含めますと、大変心配な面が数多くある。しかも、企業が十分それに配慮できるのかどうか。送迎あるいは帰られるときのタクシー、いろんな点を踏まえて企業としてどうお考えなのか、荒川参考人にお聞きしたいと思います。
  18. 荒川春

    参考人荒川春君) 今でも深夜労働をされる女性の方というのはたくさんいらっしゃいまして、そこら辺の企業側の配慮というのをいろいろ見てまいりますと、先生御指摘の送迎バスあるいは寮の整備も含めまして、安全ということには殊のほか気を使っているところが多いのではないかなと思います。  まずもって安全確保ということが、その深夜労働をしていただくということのもう絶対条件というふうにもなっておるところでございます。今度の規制解消に伴いまして、新たに女性を深夜労働等に従事させるに当たりましても、当然このような配慮というのは必要でありまして、これは法律で云々される以前の、その人をどのように従業員として扱うかという、もうぎりぎりの企業側の考え方にもよってくる場面でございます。社会的にもいろいろな配慮をしないということは、逆に、その企業経営につきまして、指弾までされるかどうかわかりませんけれども、相当厳しい目で見られるということははっきりしてくるのではないかなと思います。  企業経営者、今の先生の御指摘、さらに肝に銘じまして、安全配慮ということにつきましていろいろ手当てを組む。そこら辺は情報交換あるいは好事例などを我々としましてもいろいろ皆さんにお知らせするなどして対応していきたいと思います。この二年間、そこら辺の宣伝あるいは啓蒙といったようなものにこれ努めてまいりたいと思います。
  19. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 今、荒川参考人がおっしゃったように、法以前の問題、あるいは、そういったことはごく当たり前のことだということがなかなか守れない。むしろ、法以前の問題の方が問題を含んでいるんじゃないかなということが非常に多うございます。  ですから、そういったことについて、こういう法律が出た場合はそれの細かいガイドラインを必ずきちっと設けて、これとこれとこういうことをしなければ女子労働者に深夜働いていただけませんよということをもっと詰めて話をしないと、これを外されても安心なんだということがなかなか出てこない。むしろ、この保護規定を外すことの方が先に来ているような感じなので、社会法律の体系はできたけれども実際はそういう体制ができているのかどうか、私はこの辺を危惧する一人でございまして、ぜひともこれからこういう機会を通じてそういった意見を、あるいは皆さんの声を反映していかなきゃならないと。  法律がすぐできるだけじゃなくて、その現場に行くときにいろいろな問題を含んでいるんじゃないかなというように思うわけでございまして、その面をひとつ荒川参考人に再度お聞きしたい。そういう概念をつくる必要があるのかどうか。
  20. 荒川春

    参考人荒川春君) 今、坪井先生から御指摘のあった点は、私個人としてあるいは会員を多く抱えますこういう経営者団体としての、会員へのいろいろな啓発のためにはどうしても必要なものであろうというふうにまで考え、先生の御指摘からして考えられることだと思っております。  私どももこの法律が通りましたら、施行は平成十一年四月でございますが、それまでの間に、企業が体制がとれるように、その啓蒙活動をいろいろな形で進めさせていただきたいと思っています。
  21. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 そういったことで、ぜひとも安心して、そういう保護規定がもし外されてもこれだけのことをやっているんだということをやはり現場で示すべきじゃないかなと、法律で、机上でぐずぐず言っているよりもその現場で働いている人たちがどう受けとめるかということが私は非常に大事な問題じゃないかなというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それから労働時間の短縮、これはもう長年の問題ですが、本年四月から週四十時間労働が実施に移されたところでありますが、各企業で大変努力されていると思います。経営者側として、労働時間短縮をどのように取り組んでおられるのか、特に中小企業あるいは未組織労働者労働時間の短縮というのは大変大きな問題、これも同時に雇用促進と関連する大きな問題ですので、その点お聞きしたいと思います。
  22. 荒川春

    参考人荒川春君) まず、本年四月から施行されました週四十時間労働制の完全実施に向けまして、私ども経営者団体、私どもだけではございませんで、例えば商工会議所であるとか全国中小企業団体中央会であるとか、あるいは地場のいろいろな業種団体を通じまして、ありとあらゆる場面におきまして今四十時間移行くのさまざまな取り組みをしているところでございます。  二年間の懇切丁寧な御指導をいただきながらも、経営側の非常に今日的な経営課題の最重点としてこの四十時間に取り組まざるを得ないわけでございまして、その認識は、我々団体がさまざまにキャンペーンするまでもなく相当認識されますが、そこをいま一層徹底すべく、今回のこの通常国会におきまして成立いただきました改正時短促進法に基づきまして、さまざまな給付助成措置というものが組まれました。  そこには団体助成というものが組まれておりまして、早速、私どもの日経連傘下の地方の経営者協会、これは中小企業の会員さんが非常に多いわけですが、そのほか商工会議所中央会あるいは地場産業の皆さんがその団体指定を受けまして、会員にその四十時間の普及を徹底しようと、さまざまな計画を組む運動をただいまちょうどやっている最中でございます。ここら辺の成果を見ていただくということが一つあろうかと思います。  日経連自身につきましては、この四十時間問題が起こりました今から三年前に、簡単なパンフレットをつくりまして、私も含めまして全国行脚をしたものでございます。これからもそれはずっと続けなきゃいけないなと思っているところでございまして、全力を挙げて四十時間定着に取り組みたいと思うし、これからの労働時間短縮につきましては、引き続き関係労使、生産性向上の成果配分というものを労働時間短縮に向けるんだという、その労使の合意のもとに進めること、これはこれからの人事労務管理あり方の中で非常に重要なものと位置づけていきたいと思っております。
  23. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 今話しましたように、この法案改正とそういう問題、非常に密接に結びつくものがありますので、なお一層の経営者側の努力というものを期待するものであります。同時に、これからは職場において女性男性が対等のパートナーとして活躍する部分が大変ふえてくるんじゃなかろうかというふうに思っております。  また、今まで製造型、つくっていくのを基準に売ってきたという時代から、各生活者がその嗜好に基づいたものでいろいろ物を買うという時代に入ってきた。ということは、そういうものを非常にキャッチしやすいのはやはり女性じゃないかなと。これから消費社会というのは女性の地位、女性考え方が非常に私は企業の中で大きなウエートを占めてくるんじゃないかなというふうに思うわけです。製造で、今までこれとこれとこれをつくっておればある程度売れるというんじゃなくて、現場女性意見というのは非常にこれからの企業の中における大きな役割を占めるんじゃないかなと。  特に、このごろはもう全部お金が振り込みでございます。女性が全部お金を握っているわけですから、男性が自分で物を買うのも大変な時代に差しかかっているわけでございまして、ですから、先に女の人がみんな買われて、大概私らのネクタイも一番最後に特売で買うというような状況が続くわけです。それだけ女性意見というのは非常に私は企業にとっても大事な要素があるんじゃないかと思う。  そういった消費者のニーズを的確につかむのは女性じゃないかという中で、女性の地位を地位をと言うんですが、今実際日経連に加盟しておられる女性の社長はどのぐらいおられるんですか。それで、大企業の中に女性の取締役とか社長というのはどの程度の比重を占めておられるんですか、お聞きしたいと思います。
  24. 荒川春

    参考人荒川春君) 私ども日経連傘下の各団体の加盟会社におきます女性の社長あるいは取締役さんの比率というのは調査をしておりませんで、大変申しわけございません。  一つ参考までに、別途の資料で見てみますと、帝国データバンクが、これは会社の信用調査のために約百万事業所のクライアントを持っていらっしゃるそうでございますして、そこで、女性社長というのは五万二千と言っております。二十社に一社が女性社長である、こういうような時代になっておりまして、これも率がずっとこの方上がってきているということでございます。  あるいは、取締役の数はどうかといいますと、これは残念ながらすべて数字をつかめませんでしたが、管理職などはどうだろうかということで参考までに申し上げますと、これは労働省調査におきましては、全管理職の中に占める女性の割合というのは、部長相当職で残念ながら一・五%程度、それから課長相当職で二・〇%、係長で七・三%ぐらいです。やはり余りまだ今回ふえていますというふうに皆さんに胸を張って言えるような感じではございませんが、それにしてもやっぱり相当多くなっておりまして、今度の均等法改正を機にまたまたこの割合というのはふえてくるということが期待されるわけでございます。
  25. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 今お話にありましたように、私の調査によりますと、相当の企業で二代目の社長というのは御主人が亡くなられた後女性の方が引き続きなさっているのが多くて、そのラインの中から乗ってくる人はなかなか少ないんですよね、実際には。現実にはやっぱりそういう姿が多いわけです。  ですから、そういった点につきましても、これから女性の活用について経営者の方も一つのしっかり根づいた形というものをつくっていかなければまさに絵にかいたもちになるんじゃないかな。しっかりした人がしっかりした企業をやっていただく。そして、それについては差別なく同じように上がっていくという時代が私は必要じゃないかなと。これはやはりそういう差が非常に出てきている、大企業の中でも非常に出てきている、あるいは中小企業の中でも出てきているということが言えるんじゃないかなと。そういった点について、荒川参考人は今後女性の活用についてどうお考えになるかお聞きしたいと思います。
  26. 荒川春

    参考人荒川春君) 先ほどの数字ちょっと訂正させていただきます。帝国データバンクで五万二千と言いましたが、五万六千の誤りでございました。訂正させていただきます。  引き続き坪井先生の御質問に対しましてですが、今回の均等法現行法におきましても同じことでございますが、これからの企業としては、性にかかわらず能力のある者が適正に評価される人事労務管理の確立というのが必要なことは言うまでもないわけでございまして、それをどのように具現化するかということが今企業経営にとって大変なテーマになっていることをまずもって御理解をいただきたいと思います。  と申しますのは、ここまで言っていいかどうかわかりませんが、実際にある一定年齢以前までは、あるいは時代までは、私も含めましてだれがどういうふうに見ようともやっぱり企業社会というのは男社会であったということは、これはもうだれも否定することはできませんが、その結果が今日の経済情勢あるいは社会環境の中で本当にフィットしているのかどうかということにつきましては個別企業としても非常に問われるものになってきたわけでございます。  それはなぜかと申しますと、男中心、それも年功序列や終身雇用などいい悪いはまた別にいたしまして、その男中心の集団一括人事労務管理方式というのがやはりネックになりましていろんな問題を引き起こしたということです。  そこで、これからの人事労務管理あり方としましては、やはり個人、個性にいかに着目して、そこには性であるとか年齢であるとか、あるいはそのほかいろいろなこれまで人の条件とされてきたものを払拭してやっぱり意欲と能力ある者が適正に評価される、評価していくというものを進めなければならない。企業はそういう状況にもう追い込まれておりまして、この追い込まれている状況を先生にも十分見ていただきまして、きっとこの変化が相当大きく起こるということをしばらくいたしましたら御評価いただけると思うところでございます。
  27. 坪井一宇

    ○坪井一宇君 今お話をされた荒川参考人にばっかり集中しましたけれども、いずれにいたしましてこれから均等法に基づく企業責任というものは大変重要なものがありますので、るるお話ししましたことも、働きかけるものは働きかける、守るものは守る、そして均等法を着実に実行していくということもぜひお願いをしたいと思います。  それから、浅倉参考人にお伺いしたいんですが、今回の均等法改正案においては、企業に対してセクシュアルハラスメントの防止について配慮することが求められているわけでございますけれども、企業活動のグローバル化が進む中で我が国が国際的に恥をかかないようにするためにもこの問題の防止を法律に盛り込むことは現在では非常に大事なものだなというふうに私は思っております。  ただ、一口にセクシュアルハラスメントといいましても極めて主観的なものでありまして、何が許されて何が許されないのか非常に定義が難しいんじゃないかなというふうに思っております。労働省ではその定義も含めて企業が配慮すべき事項について指針を定めることとしておりますが、果たしてこれが定義できるのかどうか。これしてはいけない、あれしてはいけないというのはどういうふうになっているのか、諸外国ではどのようになっているのか、浅倉参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
  28. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 御指摘のとおり、今回の法案にはセクシュアルハラスメントについて二十一条が規定しております。二十一条は、読みますと、二種類のタイプのセクシュアルハラスメントといいますか、性的な言動に対する女性の対応による取り扱いについて定めておりまして、一つ労働条件について不利益を受けないということと、もう一つは就業環境が害されることがないようにすべきであると、その二種類が定められております。  これは、いわゆる対価型が前者であります。それから、環境型というのが後者でありまして、対価型というのは、何か性的な言動に対する対応に対して、特に労働条件に関する不利益を受けるというのが対価型でございます。それから、環境型というのはその人の働く環境を悪化させるというものでありまして、いわば法的な概念としてはその二種類のものがあるわけで、世界的な動向としてもこの二種類があるということが言われております。  ただ、その二つのタイプもすべて何が何でもセクハラになるかというとそうではありませんで、私としましては、法的な概念として重要なのは、このセクシュアルハラスメントというものが被害者の意に反するものであるというところが重要であるかと思います。つまり、アメリカでは歓迎されない行為というふうに申しますし、カナダでは不快にさせたり屈辱感を与える行為というふうに言っておりますし、ドイツではもう少し幅広く、尊厳を傷つける故意による行為といいますか、そういうことを言っております。  いずれにしましても、女性自身がこれが不快であって歓迎しないんだという、そういう意思を持っているのになおかつ繰り返し行う行為であるとか、あるいは一回限りであっても非常にそれが敵対的で侮べつ的な環境をつくり出す行為であったりと、そういうものが行われた場合には、それは法的な意味でのセクシュアルハラスメントとして禁止され、企業としては防止する配慮を義務づけられるというふうに考えております。  もちろん、非常に漠としたものの中からその法的な概念を抽出してくるわけでありますけれども、これは決して定義ができないものではありませんので、今回定義するに当たっては諸外国の事例などを参考にされて恐らく指針に取りまとめられるであろうと思っております。
  29. 武田節子

    ○武田節子君 私は、平成会を代表しました武田でございます。  きょうは、お忙しい中を当委員会参考人として御出席賜りました諸先生方に心から御礼申し上げます。  私は、初めに松岡参考人にお尋ねしたいと思います。  松岡参考人は諸外国法制にも詳しいと伺っておりますのでお尋ねいたしますが、先進諸国では我が国のような片面的な雇用機会均等法ではなく、男女共通差別禁止法の仕組みをとっていると聞いております。先進諸外国法制についてお尋ねいたしたいことと、またそのような法体系の違いが具体的に労働者保護の観点から見てどのような違いが出てくるのかについてもあわせてお尋ねいたします。
  30. 松岡二郎

    参考人松岡二郎君) 諸外国といっても、同じレベルの資本主義国ということですと欧米ということになるんだろうと思います。特にその場合に、英米と大陸では大分違うような、似ているんですけれども、違うような気がします。特にヨーロッパの場合には、EU指令というのができましてから、かなり変革というんですか、やっているような感じがします。  一つは、ドイツなどは、実は特に女性のみの保護ということで、例えば家事休暇について特別に認めるとかあるいは休日、休憩時間が違うとかいう形で、または深夜禁止とかいうことで規制をしていたんですけれども、実は連邦裁判所でこれは実質的な男女平等に違反するということで撤回しなさいということになった。その結果、ドイツはどういうことをやったかというと、この点については、実は日本のように、今現在の話ですけれども、全面的に一方的に廃止するというのではなくて、それにかわる男女共通労働時間制、浅倉参考人とかお話しになったと思いますけれども、そういうような形で規制しているということです。  それから、スウェーデンなどは、これは実は男女ともに深夜労働禁止ということになっていたんですけれども、これは一定のEU指令に基づく方式で規制を外すというようになった。フランスにおいても、これはやはり女性の深夜業については禁止していたんですけれども、裁判所によって男女平等に反すると、EUですね。今は事実上停止しているんじゃないでしょうか。イギリスにおいても、やはり女性の深夜業禁止していたんですけれども、男女平等法という形でこれについても規制が外れた。ただ、いずれも野放しでオーケーというのではなくて、男女共通の、それも日本の今の常識では考えられない、多分経営側だとびっくりするような規制がなされているということですよね。  ですから、そういうことを考えますと、この改正について、やはり日本の場合、二年間の間に男女共通のそういうような規制ができればよろしいんですけれども、できなかった場合にはかなり日本国内は混乱するだろうし、また高齢化に向かった日本労働力の源泉というものが大きく損なわれる可能性もあるんじゃないだろうかというふうに考えております。
  31. 武田節子

    ○武田節子君 もう一点ですけれども、松岡参考人割り増し賃金の問題を研究されておられますのでお尋ねいたします。  本改正で時間外勤務が法律上は青天井になるわけであります。規制緩和に乗じて女子保護規定撤廃すれば、残業、深夜に対しては上限なしで働くことになりまして、女子労働者は男子並みに働く方向に持っていかれると思います。  私どもは、男女共通の法規制を主張しております。時間外勤務を抑制するためには、それ以外にも割り増し賃金率の引き上げが非常に有効と思いますけれども、諸外国等の状況及び我が国の割り増し賃金率の現状をどのように評価されておりますか、お尋ねしたいと思います。
  32. 松岡二郎

    参考人松岡二郎君) この割り増し率も、簡単に言ってしまえば、多分英米では五割という常識で動いている。そして、もちろん英米ですから、法を度外視して、労使協定でそれを上回るという形で、四分の一ぐらいは一〇〇から二〇〇という話ではないでしょうか。それから大陸法、いわゆるヨーロッパについては、これはやはり大体五〇以上、深夜については二〇から五五、あるいはドイツの州によっては一〇五というようなものも出てきているということです。  いずれにせよ大事なことは、これも多分日本経営者はびっくりするかもしれませんけれども、何について二割五分か。実は日本の場合ですと、今二割五分、三割五分ですね、休日ということについて。これは諸外国方法をやりますと、例えばヨーロッパの多くの国々が千六百時間、実労働時間ということになるわけですよね。その賃金に対して何割かということを日本の方で考えますと、逆に言うと三倍、四倍の賃金という形になるんだろうということが考えられる。  それからもう一つ大きな点は、日曜日、休日ということに対しての考えが大分違うんじゃないか。宗教的な面もあるんでしょうけれども、日曜日は休むものなんだと、土曜日も働いたら五割払うものだというようなもとでの実は男女の同一ということなんですよね。日本の場合には休日といったら、それは週一回だというような、それも必ずEUのように労働時間を含めて十一時間、つまり二十四プラス十一の休みというのではなくて、二十四時間休ませればいいですよという形になっておりますので、質という点では比べ物に今のところならないだろうと、もちろん賃金格差の問題はありますけれども、そういう問題はあるだろうと思います。
  33. 武田節子

    ○武田節子君 かなり日本人との生き方の価値観の違いがはっきりうかがえると思います。  もう一点、今回の改正では間接差別禁止については定義が難しいとのことで見送られておりますけれども、諸外国では立法例も多いと聞いておりますが、御存じの点をお教えいただければと思います。
  34. 松岡二郎

    参考人松岡二郎君) 間接差別については、実は私もぜひ入れてほしいと思っていた点なんです。  それはなぜかといいますと、実は今度の均等法にしろ、女性労働の問題というのは、昔の男女差別観とこれからの男女差別観というのは大分違う。何が違うかというと、高齢化社会における女性労働の位置づけという点、これは実は企業の方でよく考えなきゃいけないのは、十年後、二十年後にだれが従業員になるかなんです。これを考えたときに、若い労働力、男性労働力はもうほとんど望めない。そうすると、女性が戦力、あるいは女性を職場で活躍させない企業というものはほとんど成り立っていかないだろう。だから、必然的な問題としてとらえていくだろう。  そうしたときに、今度の均等法は、若い女性と言ったら問題もあるかもしれませんけれども、若い女性に何やらターゲットがあるような気もします。中高年の女性が職場で働きやすい労働環境づくりの中の均等法という点で考えていかなければいけないだろう。それのときには、世帯主についてとか、そういうような間接的に差別するということ自体を全面撤廃していかなければ、実は均等法というものが半減していくんじゃないだろうかというふうに考えておるんです。  そういうような点で、この委員会でももう一度間接差別について具体化し、制度化し、中高年女性が働きやすい労働環境を維持してもらいたいというふうに思っております。
  35. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございました。  次に、高島参考人にお尋ねいたします。  私どもは男女共通の法的規制が必要と考えておりますが、目安時間をより実効性あるものにする方途も検討されようとしております。法的規制ではなく、こうした指針の強化で効果は期待されると思われるでしょうか。また、指針実効性あるものにするためにはどのような具体的な考え方がありますか、御意見があれば教えてください。
  36. 高島順子

    参考人高島順子君) 現在の労働時間について、八時間を超える場合は三六協定ということになっていますけれども、その中身については、何時間までだというのは目安ということですから法律規制になっておりません。したがって、私どもは時間外労働については年間百五十時間を目標として、当面は三百六十時間を上限とする法規制にするべきだということを主張しているわけです。  したがって、このことについて法律本体にするのか施行規則にするのか、とにかく労働時間の上限についても法律規制がされる必要があるということを主張してきております。
  37. 武田節子

    ○武田節子君 高島参考人に続けてお願いします。  深夜業女性が従事する場合には当然ながら安全面などからの配慮が必要となりますが、どのような環境整備が必要なのか、具体的に御提示いただければと思います。
  38. 高島順子

    参考人高島順子君) 先ほども質問で出されていましたけれども、安全作業及び健康維持の観点から検討すべき事項として私どもがこれまで挙げてきておりますのが、一人で仕事をするということを回避すべきではないか、睡眠及び仮眠施設の整備等、そういう施設設置の支援制度をつくったらどうか、住宅及び通勤手段の提供と防犯対策、それから健康診断、緊急医療体制、さらに健康上の理由により深夜業に不適当と認められる人については昼間の勤務への配置がえ、それから勤務表作成に当たっての本人の希望の尊重、さらには風呂だとかシャワーだとか、給食設備の整備が必要ではないかという点を挙げております。
  39. 武田節子

    ○武田節子君 高島参考人にお願いします。  企業名の公表にとどまり、罰則を制度化するに至らなかったことや、セクハラについて企業に防止義務を課せられなかったなど、実効性について疑念を持っておられると思いますけれども、実効性確保の観点から、本来のあるべき姿について御意見を伺うとともに、改正案前提として少しでも実効性を高めるためには運用上どうすべきか、両方の観点からお述べいただきたいと思います。
  40. 高島順子

    参考人高島順子君) 私どもが均等法改正、これは十年前に現行均等法ができるときから労働組合の主張であったわけですけれども、均等法法律差別禁止すると。そして、差別されたことについて、私は差別されているんだと労働者が訴えた場合に、行政というのは法律に基づいて行政を施行するところですから、その施行している中身について適切かどうかというのは別の機関がやるべきではないか。そこが、その訴えられた事案について差別かどうかを判定し、必要ならば是正勧告をする、是正勧告に従わない事業主については罰則で担保すると。企業差別をしていないと言うのであれば、企業の側が差別をしていないんだということを説明する責任を持たせる。そういうものであるべきではないかというのが、これは十年前からの主張でありまして、そういうふうにしていくべきではないかと思います。  現在の法律では調停とあるわけですね。事業主と労働者というのは対等の関係ではないわけでして、そういうところで調停ということですからなかなか難しいということがあると思うんです。ですから、これは今回実現していませんけれども、今各種の制度の中で、監督するところと行政をやるところを一緒にしていいのかというのはいろんな行政の部門で議論になっているところですから、やはりこういう種類の問題というのは、どうあるべきかは次の大きな課題ではないかと思います。  それから、企業名の公表がされました。行政監察結果が二回出ていますけれども、そこの中に、例えば最高裁判決ではっきり定年について男女差があるのは違法だというふうな判決が定着をしている、均等法でも禁止をされています。そういう事案があるにもかかわらず、婦人少年室が十年かかっても改善できないということを行政監察庁が労働省に勧告をしている実態がある。  ですから、じゃ今度こういう禁止規定になって、そうなったらどうするんだというのは、それは企業名公表で社会的制裁を加えますと。私はそういう社会的制裁が有効に機能することを願っているわけですけれども、いずれにしても、婦人少年室長さんあるいは労働大臣が適切に改善を迫るようなある程度の期間を設けて、それが進まなければ次の段階にレベルを上げていくというふうなことで、例えば障害者の法律について、企業名公表措置があっても、法律ができてから三十年ぐらいの間に一回しか企業名が公表されなかったなんということがないように。今、銀行とかいろいろなところの不祥事が起きておりますけれども、私はやはり法律を守らない企業ははっきり社会的制裁を受けて、その企業の中も外も公平なルールがきっちり確立されるようにしていくべきではないかと思います。  ですから、今後の課題としては、さらに強化していく必要がありますけれども、とりあえず企業名公表ですから、これが最大限に生かされるようなちゃんとしたルールが必要であると思います。
  41. 武田節子

    ○武田節子君 もう一点、高島参考人にお願いいたします。  このたびの法改正による女子保護規定撤廃で、女子労働者がパートあるいは派遣社員に追いやられることを心配するところでございます。それは経済の活性化を沈滞させることにもなりますし、今後、組合のない小零細企業で働く労働者及びパート労働者、派遣労働者をどう組織化して守っていくかが重要な課題であると思っております。  連合として、この問題に今後どのように取り組まれるのか、お聞かせください。
  42. 高島順子

    参考人高島順子君) 女子保護規定解消女性が働き続けられなくなるのではないかという議論がとてもたくさんあります。  これは、私は労働組合仕事をしてきて、例えばアメリカでもヨーロッパの例でも、こういう女子に対する労働時間規制がどこの国でもありました。多くの場合、均等法制が先にできて、その後何年かして時間外とか深夜とかというふうな規制がなくなってきています。例えばアメリカでしたら昭和四十年代の話ですし、イギリスなんかでしたら八〇年代の話ですけれども、労働組合はそのときどういう態度をとったのか。確かに最初は労働組合は反対しています。私はそういう歴史も知っています。  しかし、先日、イギリスの労働組合の人たちと話をしたときに、あなたたちは、イギリスで夜八時以降は女子禁止されていたわけですけれども、反対しましたねと。そして、現在こういうふうになってどう思いますかと。いや、反対はしたけれども今の状態でよかったと思っているというふうな話もありました。  どちらにしても、私は、時間外労働は本来例外労働なんであって、いっぱいあるんだということを前提にして話をするのではなくて、時間外労働は例外労働なんだということをきっちり労使とも、そういうものを少なくする努力をしなきゃいけないんだと思います。いっぱいあると、できないからやめるんだというふうな後ろ向きの議論であってはならないんだということを思います。  それから、パート労働者については、現在、労働省でパート労働法について研究会が行われていますけれども、さらにパート労働にかかわる法律を強化すると。派遣労働者についても、これは個別紛争の問題ですけれども、こういう人たちの問題についても、個別紛争にかかわる紛争を速やかに解決するというふうに、こういう種類の労働あり方についての法律を強化していくということが、今どんな分野でもそうですけれども、自由度を拡大すれば個別で救済しなきゃならない問題が必ず出てくる。それにどういうふうに対応していくのかということが今問われているんではないかと思います。  それから、組織化の観点ですけれども、例えば連合で、組合の中でパートの人たちを組織化しているのは確かに低いですが、ここ数年、パートを組織化した場合は連合会費を割り引きます、還元金もおろしますというふうな形で、パート労働者の組織化にどんどん努力をしてくださいというふうに構成組織・地方連合会にお願いして、取り組むところについては取り組みが進みつつあります。だから、もっと一生懸命やっていかなければならない課題であると思います。
  43. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。  それでは、浅倉参考人にお伺いいたします。  今回の法改正に伴いまして家族的責任を負う一定範囲の労働者の深夜業の免除の規定が設けられましたけれども、私は職業生活と家庭生活の調和という視点から時間外・休日労働も加えるべきと思っております。  また、育児を行う労働者の範囲については、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者ではなく、学校生活のリズムになれる小学校二年生までとすべきと思っておりますけれども、参考人の御意見を伺わせていただきます。
  44. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私は、その点につきましては、家族的責任を負う労働者が深夜労働を免除できる請求権を規定するという今回の改正は非常に大きなことであるというふうに思っております。とりわけ、これは家族的責任を負う男女労働者ですから、今まで全くなかった、存在しなかった男性労働者もこの免除請求権が保障されるということですから、そういう意義は非常に大きいというふうに思っております。  おっしゃるように、対象労働者は小学校就学前の子を養育する労働者、ですから、これはやはり狭過ぎるのではないかと思っております。小学生の間というのは、ドイツの法律ではそうなっておりますし、それからせめて小学校の二年か三年ぐらいまでというように多少は拡大すべきではないかというふうに思っております。  また、適用が除外される労働者というのがいますが、その労働者は、恐らく同居の家族がいるときには除外されることになりますけれども、その同居の家族というものの中に高校生以上の子供が含まれたり、あるいは昼間働いている配偶者が含まれるわけですから、どうもこれは狭過ぎるのでもう少し拡大できないかなというふうに考えております。  それからまた、事業主が事業の正常な運営を妨げる場合に当たるとして、権利行使できないというような規定がありますけれども、この事業の正常な運営を妨げない場合というのは、確かに年次有給休暇のときに出てくる規定でありまして、かなり狭く解釈されるべき法上の規定でありますけれども、ここのあたりももう少し限定的に解釈できるようにしてほしいなというふうに思っております。
  45. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。  それでは、荒川参考人にお尋ねいたします。  今回の法律改正女性労働者が大変心配していることは、これまでの年間百五十時間までとされていた時間外労働が、少なくとも三六協定目安とされている年間三百六十時間までさせられるようになるのではないか、また一週当たり残業時間もこれまでの六時間が十五時間へと倍以上になり長時間残業が強いられるようになるのではないか、そしてさらに深夜業をせざるを得なくなるのではないかというような心配がございます。  この時間外労働や深夜業とともに、女性仕事家庭責任の両立を困難にしているものとして、男女の役割分担がございます。男女の役割分担は、残念ながらいろいろなところで社会的慣習のようなものとしてまだまだ根強く残っております。その中で、女性はいろいろと工夫をしてやりくりして、ようやく家庭責任との両立を図りながら働いているのが偽らざる現状であります。ですから、ちょっとしたことでこの両立は崩れてしまうようなぎりぎりのバランスの上に成り立っているものと言えるのではないかと認識しております。  女子保護規定撤廃されたとして、このたびの法改正趣旨から見て、企業女性に残業や深夜業を命ずるに当たって、どのようなことに留意すべきであるとお考えですか、お伺いいたします。
  46. 荒川春

    参考人荒川春君) 今回の女子保護撤廃に伴いまして、一般的にこういう議論の際には、すべての方が時間外・休日労働、深夜労働に追い込まれるといったような感じの御議論が非常に多いことにつきましては、経営側としてはそんなような認識をまず持っていないということでございます。女子保護規定解消によって、すべての女性が長時間労働になるということがあたかも一般化した議論になることについては大変残念に思うところでございます。  それから、家庭責任段階でございますが、女性には男性以上に家庭責任があるというのは、企業社会だけではなくて、そこを超えまして家庭責任があることは事実でございます。私自身もその中の例でもあると思いますが、ただ、それはこれからのいろいろな意識の改革、あるいは今回の均等法のさらなる発展の中で、社会全体における役割分担意識というのは解消されていくものであるというふうにまず見た方がいいんではないかなと思います。  企業といたしまして、家庭責任の問題につきましてさまざまな配慮をするということは、これからも出てくる場面が非常に多いんではないかと思います。関係労使におきましていろいろな工夫、あるいは現在におきましても、例えば育児休業であるとか介護休業のような措置、そのほか個別の企業でさまざまに労使間で決めた措置というものが発展するということはこれからもあるわけでございまして、そういうのを労使でもって育てていくということが大切ではないかなと思います。  企業としても、女性に多く活躍していただきたいということで、その条件整備には不断の努力をしていくものと考えられます。
  47. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございました。終わります。
  48. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 社会民主党・護憲連合の大脇でございます。  ただいまは、参考人方々から大変貴重な御意見や御提言をいただきましてありがとうございます。重ねて御意見を伺わせていただきます。  最初に浅倉参考人にお伺いいたします。  先ほど、均等法十年の総括を鋭く御指摘の上、なお改善可能な重要点を幾つか御提案くださいました。とりわけ、今回あらゆる雇用ステージにおいて女性差別禁止されたわけでございますが、指針解釈通達の全面的改定を要望されました。その三点につきまして、それぞれの項目ごとにもう少し具体的に御意見をお寄せいただきたいと思います。
  49. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 指針解釈通達というものが均等法以降出されまして、私はこれが相当程度この法律の効力を縮減しているというふうに考えておりますので、均等法改正された後に出されます指針解釈通達が、今回もできる限りこの法律を生かす形で設定されるべきであると。それを強く望む立場から、少なくともこの点は現行指針もしくは解釈通達を是正していただきたいという点で発言したいと思うんです。  その第一番目は、資料としてお配りしております一ページ目の下の枠でございますが、「差別に関する指針解釈通達の改訂について」と書いてあります昭和六十一年三月二十日の婦発第六十八号のこの部分でございます。つまり、現在の解釈通達におきましては、九条から十一条までにおける「女子であることを理由として、」というものの中には、「女子妊娠出産したこと、労働基準法女子保護規定の適用を受けたことを理由とする場合は含まれないものであるが、それらを理由として女子を著しく不利益に扱うことは好ましくない」という、そういう解釈通達が出ております。私は、これは大きな問題点だと常々思っております。  といいますのは、例えば東洋鋼鉄という女性配置差別の事件があります。出産を理由として出産休暇明けに意に沿わない業務への報復的な配転があったという事例なんですけれども、こういう事例が果たしてこの均等法指針に反しないと言えるのかどうか。妊娠出産を除外してしまうと、これが均等法違反でないということになりますので、ここが大きな問題点ではないかと一つは思っております。  それから第二番目に指摘したことなんですけれども、指針において募集採用区分ごと男女を比較して、それを前提として男女差別の概念を形成しているということがございまして、それは資料でお配りしました二枚目の上の四角囲みの中に端的にあらわれていると思います。  これは、例えば「募集又は採用に当たって、募集採用区分ごとに、女子であることを理由として募集又は採用の対象から女子を排除しない」ということが、現在の指針の中では差別として書かれております。例えば、ここに御紹介している住友生命のケースでは、一般職には女性しかいないという場合に、その一般職の既婚者に対して昇格、昇進差別があったという場合、これと比較すべき一般職の男性がいないから調停の対象外であるというふうに理解される可能性がありまして、現にそのように解釈されました。この部分は非常に問題だと思っております。  つまり、ある採用区分に女性しかいない場合であっても、他の区分の男性に行わないような差別がなされた場合には、それでもやはり男女差別になるのだという部分はぜひとも今回明確にしていただきたいというふうに思っております。  それからもう一点申し上げましたのは、セクシュアルハラスメントに関してなんですけれども、確かにセクシュアルハラスメントの配慮については新たな条文が設けられました。しかしながら、セクシュアルハラスメントの中には、先ほど私が坪井先生にお答えしましたように、対価型のセクシュアルハラスメントというものがございまして、それは例えば、男性なら受けないような意に反する性的言動を拒否した場合に女性が不利益を受けるというケースですから、すべてとは言わないまでも男性には行われないような言動を受けた女性のみに対して不利益な取り扱いが労働条件等についてなされた場合には、それが対価型セクシュアルハラスメントとして性差別であるというふうに理解しますと、それがまさに五条から八条の中に組み込まれた違反になる可能性があるのではないかというふうに私自身は思っておりまして、そこら辺もぜひ指針等で明らかにしていただきたいというふうに考えております。
  50. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ありがとうございました。  次に、調停委員会の位置づけに関しまして、たとえ調停打ち切りの場合であっても、専門的な委員会として何が差別であるかという見解を公表すべきであるという御提言は非常に重要な御提言だと思います。東京都の苦情処理委員会の例を挙げておられますが、具体例をお示しいただけるでしょうか。
  51. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 現在の調停委員会に関する労働省の通達は、先ほども少し触れましたけれども、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、その行為が「法律に抵触するか否か等を判定するものではなく」というふうに明確に述べられておりまして、すなわち調停委員会差別に対する判断はせずに、法律に抵触するか否かの判定をしないで調停をするということが明確になっております。  私はそれについて非常に不備ではないかというふうに考えております。すなわち、調停というものも確かに当事者の互譲の精神ではあるんですが、しかし予測される法的基準を遠望しつつ妥当な紛争処理を図るべき制度として仕組むべきであるというふうに考えております。  そのための一つの例ですけれども、東京都の苦情処理委員会というものがございまして、その委員会が、資料の二ページ目の真ん中の囲みの中にお示ししましたが、兼松という会社に対して一九九五年の四月五日に、調整自体は打ち切らざるを得なかったんですけれども、調整を打ち切るに当たって示した見解というのを御参考までに示してございます。  つまり、この見解というのは、コース別制度の中で、なかなか明確に男女差別だというふうに行政としては言ってこなかったケースですけれども、しかし、この兼松に関する苦情処理委員会見解は、「新人事制度導入時に男子社員は一般職、女子社員は事務職という形で一律に編入し、一般職・事務職本俸テーブルを適用した点については……男女平等の視点への配慮が十分ではなかった」というふうに、かなり遠回しな言い方ではありますけれども、企業側の雇用管理について苦言を呈しておりまして、こういう見解を公表するということは何がしか社会的なルールづくりに資するところが大きいのではないかと思っております。  したがって、東京都の苦情処理委員会ができることがこの調停委員会でできないはずはないというふうに考えておりまして、まして、東京都の苦情処理委員会というのは三者構成なのですけれども、調停委員会は専門家が配属されているわけですから、このような見解を示し、社会的にルールづくりに貢献するということが極めて重要かというふうに思っております
  52. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 これまで調停委員会が、十年間にただ一件だけということは、長い間女性にとっては無念の思いをする制度であったわけですから、より活性化することを心から期待するものであります。  浅倉参考人は、もう一つ公表制度についても一定の疑念を提起されておりましたが、それはどういう懸念が残りますか。
  53. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 公表制度につきましては、さきに高島参考人もちょっと触れられましたけれども、総務庁の行政監察局の女性労働に関する行政監察の結果報告書というのが出されておりまして、その中で指摘されていることを御紹介したいと思います。  資料の二ページ目の下の囲みなのですけれども、ここではこういうことが言われております。  平成四年度以降の現行三十三条に基づく行政指導のうち、文書による勧告は平成七年度の一件のみであり、文書による指導で当該年度内に改善された事案は四カ年で五十九件である。この後、引用でございますが、「悪質な事業主に対しても、口頭による助言を繰り返し、既に着手後十年を経過しているにもかかわらず、文書による指導又は勧告を行っていないものがみられる」。助言、指導をどのような場合に行うのかという明確な基準がなく、各婦人少年室により種々となっている。このようなこともあり、「婦人少年室では、文書による指導又は勧告の実施について積極的でない状況がみられる。」というふうに指摘されておりまして、私はこのような実情を見ますと、文書によるとは書いてなかったかもしれませんが、勧告を受けた者が従わないときに企業名を公表するとなっておりますが、そもそも、その勧告自体が出されない状況の中で、企業名の公表がどこまで有効であるかということに懸念を持っております。  したがいまして、助言、指導、勧告がいかなる場合に出されるのかということの客観的なルールづくりというものをぜひともしていただきたい。その上での公表であろうかというふうに考えております。
  54. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 さて、労基法における女子保護規定の改定部分は、参考人も御指摘のように多くの女性にとって最大の関心事となっております。  その理論的な筋道として、男女雇用平等に照らして、母性保護規定以外の労働条件男女平等のものであるべきだという理論的な筋道を明確に示されたわけですが、女子のみ保護規定解消に伴う男女共通のより質の高い労働条件設定は不可欠だという御指摘は、私ども国会の者としてはしっかり受けとめなければならない点だと思います。  その点、労働条件基準として、とりわけ深夜業の従事者に対する法的な基準設定に対して、その内容を細かくお述べいただきました。ILO百七十一号条約とかドイツにおける男女共通の深夜労働に対する基準について、さらに詳しくお教えいただきたいと思います。
  55. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) ILOの百七十一号条約と百七十八号勧告につきましては、先ほど松岡参考人も述べられたと思います。私も、このILO夜業条約の経緯というのは非常に重要だと思っております。  つまり、ILOは一九四八年に八十九号条約というものをつくっておりまして、これは、工業的業種女性のみに夜業禁止する条約でございます。それが、一九九〇年になりまして、新たに百七十一号条約と百七十八号勧告として男女労働者夜業規制する条約として生まれ変わったといいますか、いまだに八十九号条約自体は残ってはいるんですけれども、新たに男女労働者に適用される夜業条約ができまして、各国は、これのいずれを採択するかは自由にゆだねられているという状況にございます。百七十一号条約と百七十八号勧告というものが、恐らく今後我が国で深夜業議論していく際に極めて重要な基準を提起するのではないかというふうに考えております。  この条約、勧告の中では、午前零時から午前五時までの時間を含む継続する七時間というのを夜業労働というふうに位置づけておりまして、それに従事する労働者については、無料の健康診断、適正な業務への転換の権利、これは恐らく健康を害した労働者からの業務転換権であるというふうに考えます。それから妊娠出産後の女性夜業禁止労働時間は八時間まで、超勤は不可、二回の連続的な勤務は禁止する、勤務の間には十一時間の休息時間を設ける、金銭的な補償をしっかりとやる、それから社会的サービスを付与する、一定の年数を経過した者は昼間に転換する権利を保障する、自発的な早期退職も可能とするというような各種の規制が盛り込まれておりまして、今後、我が国が深夜業についての何らかの法的な基準男女共通に設ける場合には、これが極めて参考になるであろうというふうに考えます。  また、御指摘がありましたドイツの女子のみの深夜業禁止規定から男女共通規定への組みかえというのも、先ほど松岡参考人が御指摘になったとおりでございますが、資料としましては三ページ目の四角の囲みの下の方に書いてございます。  つまり、一九三八年のドイツの労働時間法では、女性の現業労働者のみ深夜業を全面禁止するという規定がございました。それに対して、一九九二年一月二十八日に連邦労働裁判所の判決が出まして、女子のみの深夜業禁止男女平等原則違反であるというふうにしました。それでは、その法律撤廃すればよいかというとそうはなりませんで、判決は、同時に、深夜業の全面的な開放は身体を侵害されない権利というボン基本法における第二条、それに違反するというふうに述べました。そこで、単に全面的に開放するということではなくて、一九九四年の労働時間法において、男女ともに深夜業規制されるということになったわけです。つまり、全面禁止から、規制はされるけれども解禁ということになりました。  労働時間ですが、深夜の時間帯というのは夜の十一時から朝の六時、深夜勤務は一日八時間を超えないこと、定期的な健康診断、深夜労働を補償する休暇と割り増し賃金、十二歳以下の子の育児介護に携わる労働者の昼間労働への転換の権利保障などが定められております。これも十分に我が国の今後の議論に資するのではないか、参考になるのではないかというふうに考えます。
  56. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先ほど武田委員の方から、育児介護休業法に就学期間前の男女労働者に対する深夜業を拒否するといいますか免除される請求権が新たに創設されたわけですが、昼間労働への転換という規定がない場合にこの深夜労働免除請求権の法的な性格をどのように理解すべきか、先生の御意見を伺いたいと思います。
  57. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私としましては、昼間の労働への転換というふうな規定をぜひとも盛り込むべきだというふうに考えております。先ほどちょっと申し忘れましたけれども、これが単に拒否権という意味合いだけでなくて、むしろ就労しやすい条件の労働に転換する権利として保障されるということが必要であろうかと思います。  ただし、問題は転換すべき昼間の労働が全くない場合はどのようにすべきかということだと思うのですけれども、そういう場合にはやはり休業せざるを得ないのではないかと思います。その休業のときに、全く無給の休業ではこれが休業として生きてこないと思いますので、何がしかの有給保障がなされるべきではないか。今のところそのぐらいしかお答えできませんけれども、そのように考えております。
  58. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 さらに、時間外労働につきましては、時間外労働の適正化指針、いわゆる目安時間の実効性を高める措置を一九九九年四月一日までに実施するという確約が、先回の労働委員会中央労働基準審議会審議の中でそういう枠組みが確認されたと思うわけですが、参考人はそうした目安時間の指針実効性を高める措置について何らかの法的根拠を設定すべきだということを言われました。大変貴重な御提言だと思います。  もう一つ、具体的な個々の現場において労働者が時間外労働を命じられた際に、正当でかつ合理的な理由ないしはやむを得ない事情がある場合にはそうした業務命令を拒否できるか否かということについて、これまでの審議でも触れられている論点ですが、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  59. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 目安時間の実効性を高めるという表現を何度かこの委員会でもお使いになられているかと思います。私としては、その目安時間の法的根拠を立法化するというのは極めて重要なことであるかと思います。  その場合、具体的な時間をどこに設定するかという議論ももちろんあるところでありまして、一番厳格な制限というのは現在の女性保護規定の上限であります百五十時間、それから最も緩やかな制限というのは現行目安時間の三百六十時間という、その百五十から三百六十の間の幅の中でどこに設定するかという議論をこれから詰めるべきではあると思います。  三百六十時間というふうに設定した場合、時間短縮の効果は期待できないではないかという意見があると思いますけれども、しかし一部の異常な長時間労働を抑制するための絶対的な上限規制としては十分に意味があると私はこの際申し上げておきたいと思います。  その上で先生の御質問ですけれども、時間外労働を命ぜられた労働者としてはそれを拒否できるのかという議論であると思います。これについては三六協定規定しただけでは時間外労働義務はないということは学説、判例とも一致しておりまして、専ら三六協定というのは免罰的な効果しかないのであるということは確立しております。  しかしながら、じゃ労働者が契約上の義務として時間外労働命令に拘束されるというのはどういう場合かということにつきましては、かなりこれは議論があるところだと思います。ただし、個別的な合意説といいますか、本人がイエスと言わない限り拘束されないんだというところは余り現在学説、判例ともに支持されておりませんで、むしろ包括的合意説というのが主流でございます。つまり、労働契約や就業規則労働協約に業務上の必要によって時間外・休日労働を命ずることがあるという規定がありますと、ここからは義務が発生するんだという考え方でございます。  しかしながら、私は、この包括的合意説を説く学説であってもというところで、最高裁もこれを言っているわけですけれども、しかし時間外・休日労働を命ずるには業務上の必要性が認められるということが必要である。そして、労働者側にはそれに応じられないやむを得ない事由があるときには拒否できるという考え方が非常に有力な学説として存在するということを強調したいと思います。  つまり、業務上の必要性があるという場合、本来やはり時間外労働というのは臨時的なものであって、業務上の命令というのはそう簡単には認められないということが一点。それから、やむを得ない事由があるときには労働者側も拒否できるのであるということが、これから先、それではやむを得ない事由がどういう場合かと、家族的責任というのはどういう場合にそれに当たるのかということがやはり詰められるべきだと思っておりますけれども、しかし、こういう学説が非常に有力であるということもぜひとも御参考にしていただきたいと思っております。
  60. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは荒川参考人にお尋ねしたいと思いますが、今、時間外労働業務命令を合理的正当な理由があれば拒否できるということで、業務上の必要性のみならず、そうしたやむを得ない労働者側の事由もしんしゃくすべきだという有力説が近時力を得ておりますが、その点について現場使用者としてどのような配慮をなされるのかお尋ねをいたしたいと思います。
  61. 荒川春

    参考人荒川春君) 時間外労働につきましては業務上必要な場合に限って命令をするということでありまして、それ以外の時間外労働というのは本来は考えられないところであります。必要のない時間外労働をさせてその企業コストを負担するという経営行為というのは本来はあり得ない話でございますが、そこは現場現場におきまして一定の時間外労働を必要の限度につきましてぎりぎりの解釈、非常にボーダーな解釈をせざるを得ないような場面もなきにしもあらずだと、これを私は否定はいたしませんが、いずれにしましても必要性のない時間外労働というのは、これは考えられないことであると思います。  これに対しまして、包括的な契約をもってして残業命令を受けていただくということは契約の本旨でございますので、そこの中で個別の拒否できる範囲内の問題につきましては、これは裁判を超えまして、例えばその個別の事情を現場の中でいろいろ配慮するといったことはこれまでも随分してきておりまして、それがいわゆる労使慣行という形ででき上がっている場面が随分あるわけでございまして、これはそういう点は関係労使の中で育てていくものは育てていくという形で見ていくものではないかなと思います。
  62. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ILO百五十六号条約が批准されまして、男女とも家族的責任を持って生きて、仕事家庭を両立していくということが二十一世紀の日本を支える労働者にとって非常に大きなことでございますので、きめの細かい配慮を現場で御指示いただきたいと思います。  他の参考人方々にもぜひ伺いたいと存じておりましたが、私の持ち時間がなくなりました。最後に、高島参考人にお伺いをしたいと思います。  改正法案の施策を含めて、労働基準法で定められる人間らしい労働や生き方を保障するためのものというものを、さらに今度は、時間外労働とか深夜労働労使協定の中で女性がまさにイニシアチブをとってぜひ取り組んでいかなければならない時代になったというふうに考えるわけですが、その点どのような運動を展開されるのかお尋ねをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  63. 高島順子

    参考人高島順子君) 私どもの要求というんですか、主張については先ほど来申し上げておりますから、これの実現のために今後は中基審が舞台になりますのでそこの審議をしっかりやっていただくよう運動したいと思います。  いま一つは、時間外労働労使協定労働組合のないところであっても労働者代表との協議になるわけですから、労働組合の役員にもっと女性が出ると、そして時間外労働労使議論に加わっていくということが欠かせないことではないかと思いますし、深夜労働あり方についても女性が入っていくと、そうすれば労使の間の詰めた議論がきっちりなされる、その場に女性が立ち会っているということがぜひとも必要だと思います。賃金と労働時間というのは労働条件の二大条件ですから、これまで以上にこの問題について女性が積極的に発言していく、そういう運動が労働組合として必要だと思います。  さらにもう一つ申し上げれば、ある意味でいえば女性が職場に出れば、サービス業の人たちが夜また働く職場を必要としていってしまう部分があります。したがって、生産者であると同時に消費者であるという問題についても積極的に私たちは議論しなければいけないんではないか。サービスばかりは求める、しかし自分たちの労働条件はとなったときに、そういうふうな社会あり方について積極的に私どもが発言をし関与していく、本当に落ちついたというんですか、豊かな社会とは何なのかという議論が必要ではないか、こういうことについても論議を深めてまいりたいと思います。
  64. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 どうもありがとうございました。
  65. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本日は、参考人の皆さん方、大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてまことにありがとうございました。立場が違う視点からの御発言というのは、私にとっては非常に参考になったと同時に、ああこういうふうにいろんな側面があるんだなという思いを新たにいたしました。  男女同権というこの考え方は、今から五十年前に日本の憲法に導入され、そして個人の尊厳という問題、そしてまた夫婦の平等という物の考え方、この憲法の条文をどうやって具体的に一般社会の中、生活の中で実現していこうかという人間の英知というんでしょうか、それが今回の改正という問題だというふうに思います。  私は、好きな言葉が幾つかありますが、歴史の発展性という言葉が大好きで、人類の歴史というのは常にいい方にいい方に発展するのであって逆行させてはいけないという思いです。しかし、人間の歴史を見るとたまには逆行することがありまして、これはよくなかったというその反省をまた歴史の発展性に生かしていかなければいけないというふうに思います。今回の私の思いは、この改正が発展性がなければいけないという思いでいっぱいです。  あるイギリスの有名な法律学者は、法は何のためにつくるかというこの大命題に対して、最大多数の最大幸福がもたらされるようなそういう社会の実現のために法はあると言っております。ですから、今回のこの改正法は最大多数の最大幸福というそういう命題をきちっと担えるような法でなければならないというふうに思います。  そこで、参考人はこの均等法改正、それに伴うもろもろの改正基準法の改正を含めまして、その歴史の発展性という言葉を私が投げかけまして、この法の改正を十点満点とすれば何点をつけられるのかな、こういうふうに思います。  こういう単純な短絡な質問をすることは本当に申しわけないというふうに思います。大変御造詣の深い参考人の皆様方にゼロから十点の間で何点つけるかなんというのは本当に申しわけないんですが、しかし物事をやっぱりわかりやすく簡単にするのが国会というところで、ともすると簡単なことも難しくしちゃう人がいるのでこれはいけないというふうに思いますので、今度の法の改正につきまして各参考人に、もう単純に何点いただけるか、そしてもし十点じゃなくて二点はちょっと  マイナスだというなら、どこが十点上げられなかった原因かを一言皆さん方にまずお聞きいたしたいというふうに思います。
  66. 荒川春

    参考人荒川春君) 思ってもいない御質問だったものですから心の準備ができておりませんが、私は今回の法に臨むに当たりまして、ずばり申し上げまして女子保護規定部分につきましてこれが解消されたということにつきましては一応十点満点を差し上げていこうと思っています。  均等法につきましては、本来十点と言うべきところではありますが、企業側が格差解消あるいは機会均等推進ということを標擁しながら取り組みをする過程にすべて到達できるかどうかというような不安な部分が今回の項目にまだたくさんございまして、少し内容的には先を走ったんではないかなというふうな気がいたしまして、その意味では使用者側から見て八点といったようなところかなと思います。
  67. 松岡二郎

    参考人松岡二郎君) 私は、均等法部分でいきますと、十点という意味じゃなく加算点でいきますと、禁止規定にした、つまり努力義務がないということで一点、それからポジティブアクションを起こしたということで一点、それからセクシュアルハラスメントらしきものが出たということで一点、合計三点。別に十点満点という意味じゃなくて三点。  基準法改正については、私は先ほども申し上げたようにできればここの委員会、参議院で男女共通規定ができるまでは個別の同意というような立法的なものをお考えいただくということであればそれなりの評価をするんですけれども、それがないとなると非常に保護から外れた女性労働者たちの点を考えますと、やはりマイナス点、はかり知れないマイナス点ということで評価したいと思います。
  68. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 大変申しわけないんですけれども、私、点数をつけるとそれが何かひとり歩きしてしまって自分の意思が反映されないような気がいたしますので、ごく簡単に、私が均等法部分で非常に高く評価している部分は、やはりポジティブアクションセクシュアルハラスメントが組み込まれた部分、それから公表制度、それから禁止規定になった部分ですね、その他の部分でかなりの点数で評価しているということでお答えにさせていただきたいと思います。  それから、女子保護規定なんですけれども、私は、これは何点というよりは将来のあり方を示すまさに第一歩であるというふうに思います。といいますのは、私は、やはり女子保護規定の中で、母性保護を除いては一般的な労働条件男女共通にということは、もうこれは国際的な潮流でありますし、それから、女性が共同で男女共同参画社会を担う自己責任を持つ労働者であり、自己決定をすべき自立した労働者であるという観点から、女性だけが保護されているという社会ではなく、男女ともに労働基準設定される社会へというふうに悲願を持っておりましたので、これもやはり一歩前進であるというふうに評価したいと思います。  ただし、先ほどから申しておりますように、じゃ、女性保護規定撤廃されるということが先行されてはマイナスだということは皆さんと同じでありまして、これを契機にいかにして男女共通労働条件、より高い労働条件を獲得していくかということが今後国民の一人一人に課されている課題であるし、それから私たち労働法研究者として非常に責任のある問題だというふうに受けとめております。  何か点数をつけられなくて申しわけありませんが、そういうところです。
  69. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 高島参考人は後で聞きますので、抜かして。
  70. 坂本福子

    参考人坂本福子君) 私の方は、今までの参考人の方は労基法、均等法とお分けになりましたけれども、この法案自体が切り離せないものと、労基法と均等法ということであれば、マイナスだと思います。  それは、やっぱり女子保護規定を取り払うということは非常に、私も先ほどの意見の中で申し上げましたけれども、今の多くの労働者にとって大変な影響を及ぼすと思います。やっぱり働き続けられなくなる。恐らくパートとか不安定雇用の人たちが激増してくると思います。そういう意味で、これはやっぱり反対と言う以外にありません。  均等法を、もし少なくとも男女共通の年間百五十時間を超えない線ができるということであるのであれば、それは均等法についてはそれなりの前進部分があるというふうに思います。
  71. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大変答えづらい質問をいたしました。学校の先生を長くやっていますとすぐ点数でつけたがるという悪い癖がありますけれども、しかし、今の御回答を聞きますと、とてもわかりやすかったというふうに思います。というのは、零点から十点の開きがあったということですね。そして、十点は、これはもう十点で満点なんだから改正しなくてもいいのかなと、もう改正する点はないのかなという、そういう私は今疑問を持ちながら、その中間点をつけた参考人は、ここをよくすると十点になるんだ、あとここのところが懸念だというところにちょっと懸念のマイナス点というんですか、懸念の減点をしたということなんで、ここが私は非常に重大じゃないかなというふうに思ったりもいたします。  そこで、私はやっぱり連合議員といたしまして高島参考人意見を非常にお聞きいたしたいというふうに思いますので、これは決して差別したんではなくて、じっくり意見を聞こうと思って抜かしたわけですから、これから質問をさせていただきたいというふうに思います。  今それぞれの参考人が点数をつけたり減点をしたりいろいろしたんですが、それでは、この女性の私たちの働く条件、そして働く環境、いろいろのことに長年努力し、そして現実の運動体として今まで活躍していただきました高島参考人に、この改正をどのように評価するかということを総合的に御意見をいただきたいと思います。
  72. 高島順子

    参考人高島順子君) 先ほど笹野先生から歴史の発展を逆行させてはならないというお話がありました。私は、この言葉を聞きまして、共産主義が崩壊してアメリカの自由競争が勝利をしたんですけれども、だからといって節度なき資本主義は必ず崩壊すると思います。ですから、節度ある自由競争でなければ、結局はそれはよくないことなんだと。そういうことが今公正という議論でやっているわけですし、労働時間のあり方議論でありまして、先ほどからヨーロッパの労働時間の話が出てきていますけれども、日本の戦後は余りにも、どういうんでしょうか、狭い範囲の自由競争が結果として労働者にしわ寄せされてしまっていると。法律でルールをつくっていても、その法律のルールをみんなが守る努力をするんではなくて、その法律に触れなければいいんだというふうに逆に解釈されてしまってきている部分があるんではないのかと。  だから、社会の公正なルールとして企業の中でも外でもきっちり守っていくし、労働者の権利は権利としてみずから権利の部分を高めていくと。そういうことをすることは決して企業の発展にとってはマイナスではないんだと、社会の安定のためには必要なんだということが理解されなければ、触れなければいいんだという後ろ向きの自由競争をすれば、結局日本社会はいい発展を遂げないんじゃないでしょうか。  特に、今回のこの均等法というのは民間の労働者にかかわる差別禁止ですね。私自身も民間の職場からの出身ですから、公務員の人たちは、例えば国家公務員法で昭和二十二年から平等取り扱い、憲法に書いてありますから平等取り扱いになっています。地方公務員の人についても二十五年から地方公務員法ができてそうなっています。ですから、女性が就職するときにできるだけ平等に働きたければ公務員になるんだというのが一般的常識ですよね。それがどうして民間産業だけが五十年もかかって差別禁止できなかったのかということは非常に残念だという気がいたします。  今回の均等法で何とか女子に対する雇用上の差別禁止するというふうになってきたわけでして、これまでの均等法は、女性はおくれた存在と、女性は自覚しなさいということが法律に書いてあったわけですね。ですから、差別はしてはいけないんだと、男女同じにするんだというふうに理念を変えたという面では評価できると思います。  そして、募集採用配置昇進教育訓練、さらには福利厚生、定年退職、解雇まで差別禁止されましたから、このことがしっかり職場の中に根づいていくようにしていかなければならないと思いますし、さらに、差別禁止だけではなくて、事業主が積極的にポジティブアクション措置をとる。    〔委員長退席、理事長谷川清君着席〕  私どもはこのことについて、先ほど浅倉先生もおっしゃっていましたけれども、全部とは言わないと、ある程度の規模以上の企業についてはせめて報告の義務づけをすべきだという主張をしてきました。そこまでは入りませんでしたけれども、このことが、差別禁止しているにもかかわらず、例えば企業男女共通募集していますという数字を出している。しかし、何年たっても女性はほとんど入れていないということになれば、どうしてそういう状況がずっと続いているんですかというふうな意味ポジティブアクションが活用されていくことによって、その結果として、あらゆる職場が平等な状況になっていくということが期待できるんではないかと思います。そういうふうにしていかなければいけないと思います。  母性保護関係についてもまだこれでは不十分ですけれども、若干よくなりましたし、育児介護休業法によって深夜業についての免除措置が講じられる、これも不十分ですけれども、こういうものも入ってきたという点で今回の改正は大筋で評価できるんではないかというふうに先ほど申し上げたわけであります。
  73. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 長年活動されている思いのたけが一挙に吹き出したような、そんな御発言でした。  しかし、先ほどの御発言を聞いていますと、おおむね評価するという今の御発言とあわせて、おおむね評価するというおおむねのところがちょっと私はひっかかったんです。おおむね評価するんだけれども、連合が出している要求に対してはまだ不十分だという御発言がありました。その連合が出している要件のどういうところが不十分なのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。
  74. 高島順子

    参考人高島順子君) 先ほど申し上げましたけれども、連合が主張しましたのは男女に対する性差別禁止法でしたから、ここまでは言っていないんです。  わかりやすい事例を挙げると、審議会でも笑ってしまったんですけれども、セクハラというのは女性から男性もあるではありませんかと。しかし、今度の法律はそういうものについての配慮義務を事業主に課していないんです。女性に対するということになっているんです。ですから、ほかの事例も含めて男性女性にかかわらず差別禁止するという法律にしていかなければならないんではないか。  それから、先ほど浅倉先生が妊娠出産解釈通達のところを出されていました。これもさらに今後の指針の中で議論はすることですけれども、今のところまだこれはかなり困難であろうという感じがしていますから、妊娠出産に対する募集採用配置昇進教育訓練等についての差別、これをなくしていくということが職場で女性が安心して出産をする絶対条件ではないのかなというふうに思います。  それから、間接差別についても先ほど来述べられていますけれども、総合職の場合、転勤できますかという要件が非常に厳しく女性にだけ問われていると、そういうことで一般職に行かざるを得ない人たちがいる。そういうふうな間接差別こそ禁止しなければいけないんじゃないか。  それから、事業所内の自主的苦情処理ということがありますけれども、これはほとんどこの十年間で活用されていないということです。本来であれば、女性労働者が外に訴えるというのはなかなか大変なことでして、事業所内で差別の改善がされた方がいいに決まっています。しかし、この苦情処理の委員会について法律で義務づけたらどうですかと。これもすべての職場と言わなくてもいい、ある一定の規模以上については今度は義務づけたらどうだろうか。そうすることによって、できるだけ早く本人が納得するような解明が出されるということが必要ではないかと。それで、これもそういうところに至ることができませんでした。  先ほど、実効確保のところについては申し上げましたので飛ばしますけれども、これらまだ幾つかの課題が残っている。これらについてはできるだけ早く改善がされるように次の改正を目指して私どもは運動をしたいと思っています。
  75. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 次への改正に向かってというその御発言、先ほども参考人の何人かの方は危惧するマイナス点がこの次の課題だ、もしその課題をクリアするならばいい評価を上げられるという御発言があったところだというふうに思います。  また、連合は労働基準法改正に伴って女子保護規定解消によって男女共通規制を設けるべきだという要求をしていますが、この内容をちょっとお示しいただけますか。
  76. 高島順子

    参考人高島順子君) 時間外労働につきましては、現在女子は百五十時間で、それから目安では三百六十時間ですから、この両方の数字を考慮しながら年間百五十時間を目標としつつ当面三百六十時間を上限とする法規制をする。休日労働については四週につき一回に制限する。深夜労働については、深夜勤務時間数は三週間を通じて四十時間以内とする。深夜勤務の回数を四週間を通じて八回に制限する。深夜を含む勤務の拘束時間は十時間以内とする。勤務間隔については十二時間以上とするというふうな幾つかの労働時間に関する内容について、さらに現在、連合としては中央労働基準審議会に対して連合の労働時間に対する考え方を整理して、今審議会の中で意見表明をしておりますので、こういうことがこれまでの国会審議の中で男女共通規制が必要であるという点についての理解がどんどん広まってきていますから、これらが実現されるような形で私どもは運動もしたいと思いますし、これはまた職場の労働協約にかかわる問題ですから、労働組合としても全力を挙げて取り組みたいと思っています。
  77. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 中央労働基準審議会の中に連合の皆さん方も入って御議論をいただいているわけですから、今のこの具体的な要求が実現されますようにひとつ頑張っていただきたいというふうに思っております。    〔理事長谷川清君退席、委員長着席〕  先ほど高島参考人は非常におもしろい御発言をなされたので私はにこっと笑っていたんですが、女性の時間のこういう問題というのは組合の中に女性がたくさんいて発言するとできるんだという御発言をなさって、私は本当にそうだなと思いながら、企業一つの形と同じパターンが組合の中にもでき上がっているような気が私はしないでもないんですが、そこら辺のところ、高島参考人は非常に具体的に御存じだというふうに思いますので、女性の時間外労働のことにつきまして、先ほどのあの勇ましい御発言をもう一度じっくりお聞かせいただけますか。
  78. 高島順子

    参考人高島順子君) 時間外労働労働基準法でいえば三十六条で労使協定を結ぶ、あるいは労働組合がなければ労働者代表と使用者の間で協定をすると、それを基準監督署に届け出るというルールになっています。これについてはさらに一日だとか一カ月だとか、ある一定の期間を定めてだとかということも決められているわけです。  したがって、そういう協定あり方が既にあると、そのことが言ってみれば、八時間契約の免責なんだというふうな理解であってはならないんだと、私たち労働組合としてはそういうふうに理解してはいけないというふうに思っています。そうではなくて、どうしても必要な残業については厳格な労使協定を結ぶ。ですから、恒常的残業ということを念頭に置いて、免責にするために監督署に書類を出しておくと、あと労使で、できるだけそれは法律上の手続問題と実際の問題というふうに分けてしまっている部分があるんではないかと思います。  ですから、そういうふうに実質的に残業をなくしていくと、そういうふうな努力をしていくということにするためには、労働時間というのは生活時間そのものですし、生活時間については男性よりも女性の方が敏感です。したがって、女性がしっかりこれらの労使協定をつくる場に出るべきだと、そうすることによって本当の意味の残業削減について、労使議論を活発にしていく必要があるんではないか。それは、そういう力がないんだとか、あるいは知らないところで行われているんだということであれば、労働省は積極的に現在の残業のルールについて正確な理解が得られるように、監督署で三百六十時間を超えているものをチェックする以前に、労働基準法で決められている残業のルールについてのむしろ正しい認識を広めるための努力もすべきだと思いますし、私どももそれは課題ではないかというふうに思っています。
  79. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 先ほど自民党の坪井先生の方から、これからの社会女性社会だと、生産するにしてもいろんな企画をするにしても、女性を大切にしなければ企業だってやっていけないという、我々にしてみたら大変心強い御発言がありましたし、また荒川参考人も、ふんふんとうなずいておられました。  結局、私は今の参考人意見を聞いておりまして、労使協定あるいは労使の話し合い、この中にこういう女性が働くという喜びとか意義とか、つまり働くということは人生そのものであり、時間というのはまさに人間そのものだというふうに思います。そういう大変重大な話し合いのときには、女性労働をしている組合の方と企業とが話し合うという、そういう意見交換というのはこれから大変重大になってくるんではないかというふうに思います。  高島参考人に対してはエールを送り、荒川参考人に対しましては、自民党の先生からも女性の時代だというお話ですので、その辺をどうぞ、これからもこの法律の次なる改正の場合には大いに生かしていただきたいというふうに思います。  そこで、高島参考人には、きょうは国会に来ていただきまして御意見をいただきましたけれども、私の時間はあと二分となりました。二分の間に、高島参考人、言い残したこと、そして我々議員に言いたいことがありましたら、二分以内にひとつ最後の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  80. 高島順子

    参考人高島順子君) 雇用における男女の平等を実現するというのは、労働大臣がこの法律は革命的だというふうに御発言なさっていましたけれども、職場における女性差別禁止するということを日常的行動において確実に一つ一つ実現させていくということ、これが一つ一つ差別差別でないかというふうな法律議論ではなくて、それから意識という問題ではなくて、一つ一つの行為、行動、その事実が差別をなくしていくということにならなければいけないんではないかというふうに思います。  ですから、そういう意味からいえば、この労働基準法もそうですし、均等法もそうですし、育児介護休業法もそうですし、さらにパート労働法もそうですし、あるいは先日の話に出ていました民法の改正もそうですし、さらには税制だとか社会保険のあり方もそうですし、女子労働力の中で、今までの補助的労働から主たる労働力にかわる、そしてその人たちを正当な個人として位置づけて同じように働いていくということができるように社会のあらゆる仕組みを変えていく起点に、この法律改正によってなるんではないかと思います。  同時に、社会的な面でいえば、保育所だとか学童保育だとか介護サービスだとか、そういうふうな社会環境整備もなされなければなりませんので、何とはなしに、一人一人が自立した個人として正当な権利を主張することが当たり前なんだと、そして企業の中でだったら少々悪いことをしていてもいいんだとか、あるいは親しい仲だったらいいんだというふうな、日本社会の中にあるそういう甘えた関係も改善されなきゃいけないと。そういうところに機会均等均等待遇というのはあるんではないかというふうな面があると思います。  そうしたことについて、私どもは今後も努力をしてまいりたいと思います。
  81. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 ありがとうございました。
  82. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  参考人の皆様には大変興味深い、また意味ある御意見をお述べいただきまして本当にありがとうございました。  さらに何点か皆さんにお伺いをしていきたいと思います。  まず、坂本福子参考人にお伺いいたしますけれども、日弁連は今回の法改正につきまして、中でも労働基準法改正、括弧つきの改正なんですが、これについては大変厳しい意見を述べられているようですが、その理由を御説明いただきたいと思います。
  83. 坂本福子

    参考人坂本福子君) 日弁連はことしの三月に意見書を発表しております。この中で、御指摘のように労働基準法女子保護規定の削除については反対しております。それは、やっぱり弁護士というのは基本的人権を守るという観点から常日ごろ活動しております。これは労働現場だけではございません。公害の問題だとかあるいは労働事件を含めての過労死、このような問題と始終取り組んでおります。  そして、私たちが日常そういう中で直面しているのは男の働き過ぎ、要するに働き過ぎと言っていいのか、長時間労働、深夜労働を余儀なくされる、その状況が過労死を生み出しているんだということを認識しております。したがって、何とか人間らしい家庭生活を営むためには男女共通規制が必要だと。まず男女共通規制をつくらねば、それがなくてはならないのに、逆に女子保護規定を取っ払うということについてはどうしても理解できない。そのために私たちはその点について厳しい意見を出しております。  もう一つ労働現場だけじゃなくて家庭生活の問題があります。それは、離婚事件なんというのは私もしょっちゅう相談を受けるんですけれども、夫婦の会話というのは片っ方が遅ければできない。これはある統計で見まして非常におもしろいと思ったのは、夫婦の会話は長時間労働のときにはまだ減っていないんですが、子供に対する会話、教育、これがもう圧倒的にやっぱり残業時間の多い父親に減ってくるわけですね。  大体、父親が疲れて帰ってきたときに何をするか、テレビを見るというのが一番多いんです。テレビを見てごろっとなる。妻の方は子供のことでがたがたさせたくないという一つの気持ち。夫婦の愛情というものは、疲れてきた夫にもう一つ家事をさせるということはなかなかそれは気持ちの上で許せない。そういうことになったときに、日本の場合の家事労働の負担、それが女性にかかってきているということは事実であります。  こうした事実を総合する中で、日弁連としては一日の労働時間の規制、そして年間の労働時間の規制ということを男女共通に打ち出す、これをずっと主張しております。もちろん日弁連だけではございません。このような同じような意見あるいは会長声明というのが東京弁護士会、東京第二弁護士会、そして大阪、京都、千葉それから仙台というような形で次々と出ております。
  84. 吉川春子

    ○吉川春子君 日弁連というのはすべての弁護士が加入する組織でして、いろんな法案についていろんな積極的な活動をされているんですが、この日弁連が労働基準法改正について警鐘を乱打しているということを私は重く受けとめなくてはならないのではないかと、このように思っているところです。  もう一つ続けて坂本参考人にお伺いいたしますけれども、昨年の十一月二十七日だったと思いますが、東京地裁で芝信用金庫の女性差別について原告勝訴の判決が出された。あるいはその前に診療報酬支払基金の女子差別について、これは実は国会の衆参の女性議員十五名が連名して関係者に申し入れたこともあるんです。こういう裁判をたくさん取り扱っておられる坂本弁護士でいらっしゃるわけですけれども、そういう男女差別の裁判をたくさん手がけてきた立場から、今度の均等法改正男女差別というものを解消方向に向かわせるものなのかどうか。  あるいは、一番問題になるのは賃金差別なんですけれども、この男女の賃金格差というものが縮小の方向に、この法律が少しでもプラスになるのかどうか。その点についてお考えを伺わせていただきたいと思います。
  85. 坂本福子

    参考人坂本福子君) これは、今出されている法案が、先ほどから申し上げていますように、労基法の女子保護規定の削除と一体となって出されております。  確かに、均等法関係では配置とか昇進とかが禁止規定になりました。先ほど私は参考人意見の中で日立の例を申し上げました。芝信用金庫においても、金融機関というのは結構残業があると。女性もやっぱり残って働かなくちゃならぬといったときに、それが働き続けられるだろうか。やはり彼女たちも子供を持って働き続けてきました。そういう中で、ある意味では正規として働き続けられないということで恐らくやめて、パートとか派遣とかにならざるを得ない。そうしたときに、今の派遣とかパートというのは非常に低賃金、賃金格差はまさにどんどん開いていくんじゃないかと。ですから、男女差別是正の前に、むしろそれは雇用形態が違う労働者となって働かざるを得ないんじゃないかというふうに思っております。  それから、もう一つ均等法の点で申し上げれば、先ほども触れたように、芝信用金庫の場合には、女性についての昇格、昇進、これは男性も同じですけれども試験がございます。昇格の際に試験がございます。そういう隠れみのといいますか、いろんな教育の面で女性が受かりがたいような、そういうことが実施されている中で、本当に職場の中で解決できるんだろうかという問題もございます。したがって、私はこの法案自体がこのまま行く限りでは、むしろ賃金格差は開いていくのではないかというふうに思っております。
  86. 吉川春子

    ○吉川春子君 松岡参考人にお伺いいたします。  先ほど労基法の改正については、私の場合改正というのは全部括弧つきなんですけれども、改悪と言わないで括弧つき改正なんですけれども、限りなくマイナスであるとおっしゃって、男女共通規制なしに女子保護規定が外されれば相当な混乱が起こるであろうと言われたんですけれども、その混乱を起こしてはならないので、それを避けるために国会に対してどういうことを要求されますか。この混乱を起こさないためにどうすればいいとお考えでしょうか。
  87. 松岡二郎

    参考人松岡二郎君) 均等法及び整備法の本質的な面では方向は正しいだろうと思っているんです、男女平等に行くに当たっては。ただ、諸外国労働条件と我が国の労働条件を比べたりしますと、それからいろいろ実態なんかを目の当たりに見ますと、このまま本当に保障があるんならいいんですけれども、ない可能性もあると。  そうした場合に、私は、働きたい女性のために開放するのであれば、働きたくない女性のためにもやはり目を向けるべきだろうと。特に、それは労働組合から意見を通せないような未組織な女性たちについて。そうした場合には、今度の均等法というのは、あくまでも働きたいのに働けないんだという方のためであれば、働きたくないんだという方と相殺になるだろうと、頭では。  それならやはり同意というか、先ほど最高裁判例で就業規則の変更であれば同意は要らないということになっていますので、そうなると立法的にその間だけでも、あるいはいろいろな正当な理由が必要だということをつけても、本委員会立法をおやりになっているわけですから、二年間にわたっての暫定法のような形で個別の同意というものを明示していただきたいなと。それで働ける女性は働けるし、ちょっと問題だなという女性は話し合いになりますし、そういうような形で私はお願いしたいなと思っております。
  88. 吉川春子

    ○吉川春子君 まさに国会立法府ですので、審議会がいろいろ決めるんじゃなくて国会が決めるんだということを私は思いますが、御意見承っておきたいと思います。  それでは、続いて浅倉参考人にお伺いしたいんですけれども、多くの国で男女共通規制が行われるというお話がありました。そしてさっきドイツの例なども大変参考になりましたけれども、なぜ日本では共通規制が行えないんだろうかという点と、それから共通規制を行わないうちは労基法の改正を行うべきではないという見解もあるんですけれども、その辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  89. 浅倉むつ子

    参考人浅倉むつ子君) 私は、日本共通規制が行えないということはないと思っております。  今は議論の経過途中でありますけれども、例えば三六協定の青天井に現在法的な根拠を持たせるという議論がここまで進んできておりまして、それが女性のように百五十時間ということが明記されるまでには少々時間がかかるであろうし、百五十になるかどうかというのは非常に不安なところですけれども、しかし、何らかの共通労働時間の制限確保ということに向けて議論をしていく芽が多少なりともあるというところにむしろ着目していきたいと。  かなりこれは吉川先生の評価と違うかもしれませんが、しかし現在のこの時点では均等法とそれから労働基準法女子保護についての議論しか結局行われていないんですけれども、ここでこんなに共通規制が必要だという一般的な意見が出て、それを何らかの形で中基審に反映させる必要があるというふうに皆さん御認識いただいて、ぜひとも中基審でもっと具体的な議論に進めていただきたいといいますか、私自身もそのために努力をしたいというふうに思っておりますので、共通規制のための芽を大事にして、そして男女平等なよりよい労働基準設定する努力をぜひともしていきたいというふうに思っております。  ただ、この国会での議論を伺っていても、時間外労働というのが雇用調整にとって必要であるというようなことが何度か出てきておりますが、これはかなり頑強な壁のように思われますけれども、しかしこれは特に日本特有のものではないと私は思うんです。それを根拠にして時間外労働制限できないというのは、これは当たらないだろう。そういう議論の根拠というのは、恐らく日本が終身雇用制であってそう簡単にリストラできないということに基づいているんでしょう。  しかし、諸外国だって一人を雇うより二人雇う方にコストがかかるのは当たり前の話であって、そういうコストがかかることをクリアしながら企業というのは経営をしているわけですから、ぎりぎりの人員、定員でなければ必ずしも企業がやっていけないというわけではありませんので、人員不足であるということを時間外労働の根拠にはしてはならないし、それが日本特有の正当理由ではないというふうに確信しておりますので、何とか上限規定に向けての議論を最大限努力して進めていきたいというふうに思っている次第です。
  90. 吉川春子

    ○吉川春子君 おっしゃるように、雇用調整という議論を繰り返し繰り返し労働省言うんですよね、そこにおりますけれども。それはちょっときょう時間があればそこまで議論したいなと、財界の方もいらっしゃるのでと思っています。  続いて、連合の高島参考人にお伺いしたいんですが、連合は九五年三月に「フルタイムで働く女性一万人に聞く」というのを発刊して、その中で女子保護規定をめぐって、女子保護規定を廃止すべきだと答えた女性はわずかに三・五%にしかすぎない、百六ページにそのように書いてあるんですね。それで、反対論はどういうことかといいますと、育児介護や勤務時間などに関する条件整備が先であり、規制緩和するべきではないというのが三三・四%、母性保護に関する規制は続けられるべきが二五%、男女同じ程度規制すべきが一三%などとなっているわけです。  よく知られていることですけれども、今度の女子保護規定廃止にゼンセン同盟が強く反対をしていますね。それから、最近特にふえているんですけれども、自治労の単組の中で私どものところにまで、までというと変ですが、要望を持ってこられるところがじりじりとふえているわけなんです。  こういう労働組合枠組みを超えて多くの女性たちが懸念しているし、やめてほしいと言っている。こういう願いにこたえるためには、高島さんとしてはどうすればいいというふうにお考えでしょうか。
  91. 高島順子

    参考人高島順子君) 議論の過程でいろんな意見がありましたことは事実ですけれども、連合としては異例とも思えるぐらい、この問題については中央執行委員会なり中央委員会で何回も何回も議論を重ねてきて、そしてその都度その都度見解を整理してまとめてきたものでありますから、そういう意見があったとしても、組織としては、先ほど私が申し上げましたような整理がされていると思います。  それは、労働時間については先ほどから繰り返し申し上げていますように、男女共通規制を何としてもこの二年間で実現をさせる。それが二〇〇〇年までに千八百時間にするという目標と一致しているわけですから、それを実現させることが、言ってみればそういう不安感に対する回答ではないかと思います。
  92. 吉川春子

    ○吉川春子君 意見があったというか、今もあるということなんだろうと思いますけれども、鷲尾事務局長が衆議院の参考人質問のときに御出席されまして、その中で「食い逃げをされないように」ということを何回かおっしゃっているわけなんです。つまり、女子保護規定を外すということと、男女共通の時間外規制をやるということとは同時決着だ、女子保護だけ食い逃げされては困るんだということを繰り返し、これ議事録ですがおっしゃっているんですけれども、あなたも同じようにそのことを強く求めておられるんですよね。
  93. 高島順子

    参考人高島順子君) 連合の事務局長がそう言っていますから、同じであります。
  94. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと荒川参考人にお伺いしたいんですけれども、参考人も衆議院で、日経連の調査で女性労働者自身が女子保護規定を廃止してほしいという声を紹介していますし、きょうも紹介されました。  私、埼玉に住んでいるんですけれども、埼玉のタクシーの運転手が、入社のときは日勤ということで入ったんですけれども、途中で就業規則を変えて深夜業についてくれというふうに言ったんです。そしたら彼女は、夫もあり子供もあり家族的責任があるので夜勤はできないと断って解雇されたんです。そしたらこの人は裁判に訴えて仮処分で勝ったんです。これは労働基準法規定が彼女を守ったわけですけれども、多くの女性労働者は深夜勤を望んでいない、できない実情にあるわけです。先ほどいろいろお話しされたとおりです。  それで、労働省平成七年版の男女雇用平等にかかわる女子労働者側の意見、これで不必要だと思うという六七%という数を報告していまして、それを荒川参考人がおっしゃっているわけですけれども、労働省の統計のとり方が私に言わせると、ちょっとかなり作為的だというふうに思うわけなんです。これは女子保護規定が不必要だと思うというふうにくくった中に、「仕事家庭の両立のためには、男女同じ保護が必要である」ということも含めていまして、保護は不必要だと思うということの数は、そういうのを差し引きますともっと少なくなるわけですね。  それからもっと言えば、本会議質問でも私指摘したんですけれども、婦少審が建議を出す前に女性の声を募集したときに、女子保護規定の廃止に賛成と言った人は〇・〇八%しかいなかったわけですよ。みんなやっぱり共通規制をしてもらいたい、そういう声を労働省に寄せているわけなんです。  やっぱり先進資本主義国のように、日本も、女性だけではなく男性もその労働時間や深夜業の法的規制を行う時期に来ているんだ、こういうふうには思われませんか。
  95. 荒川春

    参考人荒川春君) 私といたしましては、新たな男女共通規制というものについて、時間外・休日労働あるいは深夜労働につきまして、あくまでも労使判断にゆだねるべきで、新たな法規制は必要ないと思っておりますし、また反対しておるところではございますが、きょうの公聴会も含めましてこれまでさまざまに国会議論をされておるわけでございます。  そういう意味では、これは私ども日経連を含めまして中央労働基準審議会使用者側委員を選出しておりますので、皆さんの御意見を十分お伝えして、今でもやっておりますが、その審議会でのいろんな御判断の材料にしていただこうということを今考えているところでございます。
  96. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと今よく聞き取れなかったんですけれども、男女共通規制に向けて財界としても努力していきたい、こういうことですか。
  97. 荒川春

    参考人荒川春君) そういう形ではございません。  まず一つは、新たな男女共通規制というのは私は反対をしております。時間外・休日労働、深夜労働についてはあくまでも労使判断にゆだねるべきであり、かつ今の三六協定方式によって上限を設定する中で、その三六協定の機能を労使が十分生かしていくべきものであろうということでございます。  ただし、これまで衆議院を含めまして本参議院におきましても、この男女共通規制問題につきましてさまざまな御意見があったということにつきましては、私どもの選出しております中央労働基準審議会委員にもこの状況はよく伝えるということで、これからの中央労働基準審議会審議に臨んでいただこう、そういう認識を持って臨んでいただこうということであります。
  98. 吉川春子

    ○吉川春子君 あなたは衆議院の参考人のときに、日経連としては反対なんだ、議論することは賛成だけれども、態度はあくまで反対だ。ということになると、中基審でも結論は出ないということになりますね。
  99. 荒川春

    参考人荒川春君) 議論でございます。我々の基本的な考え方を衆議院でも申し上げまして、今回も申し上げるところでございますが、私どもの考えとしては、共通規制というものについては反対でございます。  ただし、中基審におきましてこれまで議論されたものをどのように理解して議論するかということは、これからの中基審のそのあり方にかかっている問題でございます。そこまで私予断を言える立場にございませんので、きょうまで出ました御意見を私はなるべく忠実に使用者側委員に伝えて、それを審議会に反映していただこう、それをもって反映していただこうというふうに考えております。
  100. 吉川春子

    ○吉川春子君 衆参の議論で、例えば母親が深夜働く、際限もない時間外労働に駆り立てられるということは子供の教育にも大変大きな影響を与えるんじゃないか、日本社会の少子化に拍車がかかるんじゃないか、あるいは子供を産み育てながら働きたいという女性はやっぱり大変困るんじゃないかという議論をしてまいりました。  そして、文部大臣も経済団体五団体に向かって、やはり父親がもっと家庭で役割を果たすことができるように企業は協力してほしいという要請も二年続けてやっているわけですけれども、深夜業女性を駆り立てる、あるいは時間外・休日労働男性と同じように日本女性が置かれるということは大変社会的にも深刻な問題を発生させるということを御認識ですか。
  101. 荒川春

    参考人荒川春君) 私は、今回の時間外・休日労働、深夜労働解消に伴いまして、女性の方の多くが御指摘のような形で追い込まれるといったような状況は想定をしておりません。また、そういうことはないと思います。  と申しますのは、労働というのは、企業労働者との間につきましては、働き方につきまして働く意思を含めまして契約をいたします。その契約はそれぞれの立場において尊重されるものでございまして、その一致の中でできるものでございます。その一致が不可能になった場合には、これはその労働というのは成り立たないわけでございます。それが働き方であり、雇い方であるわけでございます。  今回のお話において意に沿わない労働というのが多く出てくるということは、逆にそれは使用者側として労働条件であるとか環境であるとかあるいはその他のいろんな措置というものが直らない、意に合わないということに労働者判断するものだと思います。  そういう意味で、一方的に女子労働者だけが今回の基準解消に伴いまして追い込まれるという状況というのは、これは私は考えられないと改めて申し上げたいと思います。
  102. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本労働者の組織率は二三%、そして労使対等での契約、自由社会における契約という対等な立場に立ち得ないということは私が申し上げるまでもありませんが、参考人の御意見として伺っておきます。  それで、もう時間がなくなりましたので、最後に坂本参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、きょうも参考人の皆さんの御意見を伺って国会審議に反映させていこう、それから何とか二年間の間に男女共通規制ということで決着をつけてもらいたい、審議会に任せず国会立法府として役割を果たしてもらいたい、これは衆参とも意見が出ているわけなんですけれども、そういう中で、実は神奈川県の婦人少年室が、この均等法改正の説明を六月二十七日に行いますということで既に事業所に案内を出している、セミナーの御案内を出しているということを私知りまして、大変もう腹が立っているところです。衆議院さえ通れば法律というものは通ったと思うのかとさえ私は腹を立てているわけなんです。  やっぱり国会審議というものをないがしろにしてほしくない。国会は延長されるやも知らず、この法律が今国会通るやも知らず、そういうときに労働省がもうこういうセミナーを設けて御案内も出しているということに対して私は非常に遺憾であるというふうにも思うんですけれども、この問題について最後に坂本先生の御意見をちょっと聞かせていただいて、私は質問を終わりたいと思います。
  103. 坂本福子

    参考人坂本福子君) 私も今吉川議員から聞いてびっくりしたんですけれども、もしそういうことがあるんであれば非常に問題だと思います。  やはり法律というのは国会でつくられます。衆議院、参議院を経てつくられるものだと思います。今、国民の皆さんたちから慎重な審議をということを言われております。私も意見の中で述べさせていただきましたけれども、本当にこの法案というのは働く労働者の命と健康にかかわる問題だと思います。そういう重要な法案がもう通るということを前提にして政府がそのような企業に対する講習をするということについては大変な問題があると思います。  私どもやはり日弁連なんかとしても、もちろん弁護士の一人としても、やはり慎重な審議、それをお願いしたいということが一番でございます。ぜひこの参議院でもって慎重な審議をお願いしたいと思います。
  104. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  105. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたりまして御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。本案に対する本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会      —————・—————