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1997-04-24 第140回国会 参議院 労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十四日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十三日     辞任         補欠選任      橋本 聖子君     西田 吉宏君      泉  信也君     今泉  昭君   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 坪井 一宇君                 長谷川 清君                 川橋 幸子君     委 員                 上野 公成君                大河原太一郎君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 星野 朋市君                 大脇 雅子君                 笹野 貞子君                 吉川 春子君    国務大臣        労 働 大 臣  岡野  裕君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        科学技術庁科学        技術政策局計画        課長       坂田 東一君        文部省生涯学習        局社会教育課長  長谷川裕恭君        文部省初等中等        教育局職業教育        課長       池田 大祐君        文部省高等教育        局大学課長    早田 憲治君        文部省高等教育        局専門教育課長  梶野 愼一君        文部省高等教育        局学生課長    山中 伸一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十三日、橋本聖子君及び泉信也君が委員を辞任され、その補欠として西田吉宏君及び今泉昭君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 小山孝雄

    小山孝雄君 ここに三月二十七日付の私ども自由民主党行政改革推進本部の「特殊法人等整理合理化(第一次分)について」という文書がございます。議題となっております職業能力開発促進法に基づく能開事業を実際に推進しているのは雇用促進事業団でございます。その事業団につきましては、年明け早々、一月一日の読売新聞のトップ記事に、雇用促進事業団も含めて六法人でございましたでしょうか、整理統廃合対象として大きく報道されて話題を呼んだところであります。以来、私ども自由民主党行政改革推進本部の種々の会議において協議をされてきたところであります。私もその中の一員としてこの問題の成り行きには深く関心を払ってまいり、また発言もしてまいりました。  その結果、自由民主党としては、三月二十七日に、雇用促進事業団について平成十一年の通常国会、すなわち再来年の国会において法律改正を行い、廃止する。職業能力開発事業関連業務中小企業人材確保等事業主支援業務及び勤労者財産形成促進業務、これについては業務内容を精査した上新たに設立する法人に移管する、こういう内容が盛り込まれているわけでございます。そして、この方針につきましてはその後与党三党の協議に上っている、こう聞いておるわけでございます。  そこで、雇用促進事業団が現在全体としてどのような事業を行っているのか、また、それぞれの予算額も含めて概要をまず最初にお尋ねいたします。
  5. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまお話がございました雇用促進事業団関係でございますが、現在実施しております事業といたしましては四点ほどございます。第一点目は、職業能力開発施設におきます毎年二十四万人に及びます人材育成事業等いわゆる職業能力開発関連事業でございます。二点目は、中小企業人材確保失業なき労働移動等事業主支援事業でございます。三点目が、移転就職者用宿舎及び各種福祉施設設置運営等の、主として中小企業労働者福祉関連事業でございます。四点目が、雇用促進融資勤労者財産形成融資事業でございます。  平成九年度におきますこれらの事業予算額でございますが、能力開発関連事業につきましては九百十一億円、事業主支援事業といたしましては五百九十三億円、福祉関連事業といたしましては六百六十五億円、雇用促進融資勤労者財産形成融資事業関連といたしまして五十四億円で、全体といたしまして計二千二百九十八億円の予算というふうになっておるところでございます。
  6. 小山孝雄

    小山孝雄君 特殊法人整理統合という一つの命題があって、労働省関係では雇用促進事業団につきるる論議もされてきたところでございますが、これは三月六日の本院の予算委員会におきまして我が党の田沢委員から質疑質問がなされました。それに対しまして労働大臣は、みずからの方針として、今述べられた四部門事業を念頭に置いて、整理していく部門とこれからも鋭意続けて努力をしていきたいという点につき言及がありましたけれども、そのことも改めてお聞きをし、今後どのように対応をなさっていくおつもりか、大臣のお考えをまずお尋ねいたします。
  7. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 労働省傘下雇用促進事業団につきまして大きな御関心、御評価を賜っておりまして、小山先生にはありがとうございます。  御承知のとおりのお話の次第に基づきまして、雇用促進事業団一つ特殊法人である、したがって特殊法人見直しというものの中にこれが存在をするというようなことで、今職業安定局長お話しをしました営んでおりますところの各機能につきまして、国民的なサイドに立ちまして、国の一環としてやることが現下の体制におきましていいものかどうかという検討をいたしました。  その中で、言いますならば、雇用充実させるというような面、あるいは充実をさせるためにも職業能力開発というものに力こぶをこれからもより一層つぎ込んでいかなければならないということを一番重点に、私どもはこの雇用促進事業団の今後の営みを展開してまいろう、こう思っております。  先生お話しになりました移転労働者用住宅あるいは労働者の共同利用的な福祉施設、これにつきましては、かつては中小企業には固有の社宅がなかった、そういうような意味合い中小企業者群がそこに働いていただけるところの雇用者群のために住宅を提供する非常に大きな意義があったわけであります。今民間ベースであまた存在をするということになりますと、そしてまた、余暇というものがだんだん大きくなってくると、時短についてもそうでありますが、その余暇を有効に活用しよう、一日ごろ寝だというようなことではこれはふさわしくないというような意味合いで、福祉施設充実も努めてきたが、もうリゾートその他いっぱいその種の施設がある、町にも体育センター的なものが民間ベースである。そうすると、国の行政一環として国みずからがこれを営むということはいかがなものかというようなことで、私ども検討をし、その旨を自民党にもお話をし、自民党考え方というものは我々も聞かされました。  しかしながら、今この行政改革与党三党というようなことで、国民大宗の支持を得ながら進むべきであるというようなことでありますので、結論が三党で出、それが政府に伝えられ、その政府の方から私どもにいろいろ課題が投げかけられるというようなことが当然あってしかるべきだと思って、自民党のいろいろな動きというものを注視しているという段階でございます。
  8. 小山孝雄

    小山孝雄君 先ほど申し上げた予算委員会において、既に住宅部門そしてまた福祉施設の今後については、既に着手をしているもの以外は、あるいは決定を見ているもの以外は新しいものをストップする、このように述べられたわけでありますけれども、どの線で線を引くお考えでありましょうか。市町村においても大変関心を持っているところだと思います。
  9. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘の問題につきましては、基本的には大臣がただいまお答えを申し上げましたような考え方出発点として、今後どう対処するかということでございます。  この雇用促進住宅及び勤労者福祉施設新設の問題につきましては、住宅入居者に対する移転就職者等割合が減少してきていること、あるいは福祉施設については地方自治体民間施設整備が進んできているというようなことから、国としてこの新設について今後とも続けていくということはいかがなものかということで、この新設ストップというような考え方に至ったわけでございます。  この間につきましては、やはり関係労使等の御意見、こういうものもお聞きいたしまして、その上での判断ということでございますが、それじゃ具体的にこの新設ストップ等についてどう進めるかという点につきましては、ただいま御指摘のような経過的な問題もありますし、あるいは全体の改革スケジュール等の問題もございますので、今後、ただいま御指摘のような点を踏まえて具体的に検討する中で詰めてまいりたいというように考えております。
  10. 小山孝雄

    小山孝雄君 自民党改革論議の中では、市町村としては今後もやってほしいという意見が多いんだという意見もたくさんございました。そして、住宅にいたしましても福祉施設にいたしましても、やろうと言って来年できるというようなものじゃございません。土地確保から、市町村においては大変努力をして待ち望んでいるところもあるわけでございます。  そういったところ、例えば計画中というのはどのあたりを指して考えておられるのか、まだ結論は出ていないことだろうとは思いますけれども、一応の考え方をお示しいただければと、こう思います。お尋ねいたします。
  11. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘計画中というのも段階があるわけでございまして、一番きちんとして進んでいるという意味でいきますと、九年度予算において設置をするというような考え方に基づいて要望を進めてきているもの、これにつきましては土地手当て等もし、関係方面との調整もし、そういうことで準備を進めてきているものでございます。  それからあと、そこまでは至らないにしろ、今後、次の段階として対処したいということでいろいろお話が具体的になっているもの、そういうものもございます。それから、抽象的に将来つくりたいというようなことでお話があるというようなものもございますが、これは具体的な計画にはまだ至っていない、こういう段階のものもございます。  そういうことでございますが、いずれにいたしましても、新設をストップするという観点からいきますとこの具体的な線引きをどこでするか、こういうことになるわけでございまして、そういう際に、ただいま御指摘のように、具体的にいろいろ進んできているものにつきましてどう対処するかという経過的な整理、やはりこれをあわせて考えませんとなかなかこの問題がスムーズにいかない、こういう認識はいたしております。これを具体的にどうするかにつきましては、今後の検討の中で十分詰めていきたいというふうに考えております。
  12. 小山孝雄

    小山孝雄君 雇用促進事業団全体の将来のことにつきましては、今与党三党の協議に上っているというところでありますけれども住宅及び福祉部門についての新設をストップするという方針については労働省みずからの方針としてお決めになったことであります。全国の三千三百市町村全部とは言いませんが、おのおのに何らかの施設があり、そしてまたこれから希望していこうという市町村もかなり現実にあるわけでございます。市町村関係者は大変その成り行きを注目をいたしていると思いますので、どうか鋭意お詰めをいただいて、なるべく早目に各方面方針が伝わるよう望みたいところでございます。  そこで、行革論議の中でよく私ども自民党委員会で出た意見としては、雇用促進事業団は、とにかく行財政改革一環として特殊法人のあり方の見直しということが論議されてきたわけだけれども一般財源を使っているわけじゃないんだから、一体行財政改革にこの見直しがどう貢献していくのかという論議もございました。そしてまた、雇用促進事業団とともに中災防それから中央職業能力開発協会等民営化方針として出されておるわけでございます。そのあたりについて、労働省はどう受けとめてこれから臨む方針であられるのか、お尋ねをいたします。
  13. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま大臣がお答え申し上げましたように、特殊法人改革一環として雇用促進事業団について労働省としてどう考えるか、こういう特殊法人改革について御指摘のように幾つかの考え方もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、仕事の中身について幾つかの機能があるわけでございます。これを具体的に検討してそれが現時点で必要なものか、あるいは現時点においては必要性が薄れているものであるか、そういう点の判断をした上で、今後充実強化すべきものはする、あるいは必要性の薄れたものについては行政改革特殊法人改革一環としてこの際整理をする、こういう考え方で対処をしているところでございます。  したがいまして、今後必要なものについての充実強化、これはより積極的に行う必要があるということでございまして、そういう観点から今回私ども二つ法案一つはもう既に成立させていただきました地域雇用開発等促進法の一部改正、もう一つ職業能力開発促進法の一部改正、こういうことで中小企業人材支援業務等を具体的に雇用促進事業団で実施する、こういう考え方での法案をお願いいたしているところでございます。  それから、職業能力開発協会あるいは中央労働災害防止協会民間法人化の問題でございますが、これにつきまして自由民主党の中でいろいろ御議論がある中でこの方向として対処すべきである、こういう流れでございます。これにつきましては、中央職業能力開発協会等については民間法人化というのが、具体的にいえば国の補助金がどのぐらい行っているか、こういうようなところがございまして、そういうところで従来の考え方整理する、それとの比較からいってこの民間法人化をすべきであろう、こういう判断でこの二つ法人が今回検討課題自由民主党の中でなっている、こういう経過でございます。
  14. 小山孝雄

    小山孝雄君 一つだけ、今補助金の話で御答弁ありましたが、中央職業能力開発協会及び中災防現時点平成九年度の予算ではどの程度になっておりますか。質問通告をしておりませんでしたが、概算で結構です。
  15. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 額につきましては手元に資料がございませんが、予算に占める補助金割合で申しますと、中央労働災害防止協会におきましては補助金の占める割合が五割をちょっと超えておると思います。それから、中央職業能力開発協会におきましては三割を少し超えている程度であると思っております。
  16. 小山孝雄

    小山孝雄君 わかりました。  そうした法人整理、縮小あるいは廃止、そして新たな法人をつくるとか、さらにまた各種団体民営化論が盛んに今論じられている中で、本議題であります職業能力開発関係業務、あるいは中小企業人材確保等事業主支援業務、それは非常に大事なことだと思うわけであります。あるいは、事業主失業者高齢者雇用する場合にそれを支援する事業、こういったことも大変大事であろうかと思います。  どのような論議が行われるにいたしましても、これからの時代に即応した大変重要な任務ということは十分労働省認識をされていることだと思いますけれども、さらに声を大にして主張すべきところは主張して進んでいただきたい、こう願うわけでありますが、いかがでありましょうか。
  17. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘のように、経済社会構造変化が進む中で、労働力のいわゆる流動化が必至であり、こうした中で失業を抑え高度な人材育成していくこと、これは我が国経済の活力を維持、発展させていくために極めて重要な課題であるというふうに考えております。  このため雇用促進事業団は、今言いましたようないわゆる経済構造改革一環として、職業能力開発施設等におきます能力開発事業、あるいは失業なき労働移動中小企業人材確保等についての事業主支援業務を行っているところでございます。  先ほどお答えいたしましたように、この辺の対策を強化するという観点から、地域雇用開発等促進法等改正、あるいは今回御審議をお願いしております職業能力開発促進法等改正法案、こういうものをお願いいたしているところでございます。したがって、今後とも経済構造改革推進するために必要なこのような業務について、私どももその重要性について各方面の理解が十分得られるようにさらに努力し、こういう仕事の役割の重大性必要性、かつ充実強化、そういうことに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  18. 小山孝雄

    小山孝雄君 行政全般に言えることでございますけれども、例えば時短の問題にいたしましても、いろんな制度を用意して多くの国民にそしてまた事業主に使っていただきたい、こういう願いを込めて予算を獲得し、そして体制整備しておりましても、なかなか各方面にその内容がよく伝わらない、そのままになって宝の持ちぐされ的なもので終わっているケースが間々あろうかと思います。  行政の任に当たっておられる皆さんに改めて申し上げます。自分の商品を売るんだ、買ってもらうんだという意識を持って知恵を絞って、使ってもらうべき人にわかりやすくPRをして、わかりやすい言葉で語りかけて、多くの人に活用していただきたいということを念願いたしておりますので、答弁は要りませんが改めて申し上げる次第であります。  そこで、本日審議職業能力開発促進法でございますが、その改正をする目的、そして概要、さらにまた法改正を必要とするに至った社会的経済的背景といいましょうか、そういったことについて改めてお尋ねをいたします。
  19. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 私ども、今後の職業能力開発行政につきまして、平成八年の二月に第六次職業能力開発基本計画、これは対象期間は八年度から十二年度の計画でございますが、その中で五つの柱を掲げまして、例えば産業構造変化に対応した雇用の安定、拡大を目指す職業能力開発展開、あるいは個人主導による取り組み推進等労働者の個性を生かす職業能力開発展開等主要課題とした計画が策定されました。  その計画に基づきまして、今回、職業能力開発施策推進のための制度改善について必要な法的整備を行おうということで、平成八年九月に私ども中央職業能力開発審議会検討を依頼いたしました。この中で、十月からはこの審議会総括部会で五回にわたり構造変化に対応した職業能力開発行政をどうやっていったらいいかとか、あるいは個人主導による自己啓発のどういうやり方が一番適当なのかというような議論をいたしまして、今回の法改正を提案いたした次第であります。  特に中央職業能力開発審議会におきましては、今後の構造変化に対応する、あるいは技術変化に対応した中での人材、特に高度の技能労働者育成のためにどんな形で訓練をやっていったらいいのかとか、あるいは欧米の主要国における職業能力開発取り組みの調査などを踏まえまして、どんな形で自発的な個人取り組みへのインセンティブを与える環境が整備できるのか等々のことを議論いただきまして、今回の法改正に至ったということでございます。  今回の具体的な法案内容につきましては、公共職業訓練高度化ということで、私ども全国二十六カ所に職業能力開発短期大学校設置いたしておりますが、より専門的かつ応用的な職業能力開発するための訓練を行う施設を大学校化するということが第一であります。それとともに、職業訓練を教える指導員先生方の資質の向上を図るということや、あるいは高度職業訓練の実施について総合的な施設が必要であるということで職業能力開発総合学校設置するということが第一点であります。  第二点は、個人主導職業能力開発について、それを法律上明確に位置づけて、各種教育訓練休暇付与等を行う事業主を支援するということを内容とする法律案を提案させていただいたところでございます。
  20. 小山孝雄

    小山孝雄君 今、法改正に先立って審議会を五回行ったということでありますが、審議経過といいますか、その中で反対意見だとかあるいは少数意見だとか労使間の意見の食い違いだとか、そういったものはなかったでしょうか。
  21. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 審議会議論の中では、今こういう構造改革変化の中で人材をいかに高度化していくかという点については、ほとんどの先生方労使を含めてぜひやっていくべきだというふうに強い意見がありまして、特にこの点について問題だという御指摘等はございませんで、逆にもっと励まされたというような形での審議が進んでまいった次第でございます。
  22. 小山孝雄

    小山孝雄君 今、高度化について審議会では全く意見が一致した形でこの改正になったということは大変望ましいことであります。  そこで、法律改正の目玉が職業能力開発学校、二十六校の短大のうち十校を大学校としていこうということであります。高度の職業訓練、こういう文言がございますけれども、どういう内容なのか、定義、内容を具体的に御説明をいただきます。
  23. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 私どもの現在の公共訓練施設におきましての訓練体系を若干御説明させていただきたいと思います。  まず、習得させようとする技能及び知識程度に応じまして体系的に普適職業訓練高度職業訓練、そういう区分をいたしておりまして、さらに、それぞれを期間に応じまして普通課程短期課程専門課程専門短期課程に分けて実施いたしておるところでございます。全国で都道府県も合わせまして三百四十四の公共職業訓練施設で、約四十一万八千人の規模で新規学卒者あるいは在職者離職者等々の能力開発を行っているところでございます。  職業能力開発短期大学校で現在二年の高度職業訓練を実施いたしておるところでございますが、産業構造変化、特に構造改革変化の中で、従来以上に知識やあるいは高度な応用力開発能力を備えた人材が必要であるということが産業界等々からも御意見がございまして、今回、そこをもう二年プラスしてもっと高度な人材を育てていこう、こういうことでございます。
  24. 小山孝雄

    小山孝雄君 地方自治体が主体となって行っている普適職業訓練、そしてまた現在の短大で行っているのも高度職業訓練、こういうわけでありますが、今度の高度というのと今までの高度職業訓練と具体的にどういうふうに違うんでしょうか。これちょっとイメージが私どもにはわからないのでありますが。
  25. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 具体的な内容について御説明申し上げたいと思います。  今までの短期大学校は、現場の生産活動に従事する労働者と、生産管理を行う技術者を取り持つというんですか、それらを結びつけるいわゆるテクニシャンという人材育成してまいりました。  非常に技術革新が進展してきますと、この真ん中の層のレベルアップと申しますか、例えば、技術者が新しい製品開発をやる場合に試作品をどうつくっていったらいいかとか、その製品をつくる場合どういう生産工程をつくったらいいか、こういうようなことまでみずから考えてできる人材。今まではむしろそれよりもちょっと下の段階と申しますか、二年の課程ではそこまでできなくて、これからはそれ以上の、新製品とかを開発生産する上において、技術者と現場労働者なりとを結びつけるより高度な役割を担う人材をつくろう、こういう趣旨でございます。
  26. 小山孝雄

    小山孝雄君 しつこいようではありますが、例えば職業能力開発短期大学校、「ポリテクカレッジ」、こう銘打ったパンフレットをちょうだいしておりますが、この中に居住システム系の学科がありまして、建築科というと大体私どもは何をするかというのはわかるわけであります。その建築科があるのが、北の方からいきますと宮城短大から始まって七校ばかりございますが、その建築科において、例えばここが大学校になった場合、今までやっていた内容はこういうこと、さらに二年延長して勉強していこうとなったらこういう中身というのをちょっと具体的に示してください。
  27. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 例えば、生産システム技術関係でまず御説明いたしますと、今までは例えば商品、製品の開発をやる場合についてはそれは技術者群がやって、それを具体的に実行する場合に主としてそれを現実にできるという人たち、物をつくり出す技能者を養成してきたわけです。今回二年の課程におきましては、むしろ製品の企画開発にも技術者とともに参画して、その商品なり製品を生産することができる生産工程をある程度構築できるなり合理化することができるような人材を育てよう、こういうことであります。  例えば、もう一つ例を挙げて申しますと、今例でお出しになりましたように、建築システムの関係でございますが、今までは二年の課程では工事現場で実際建設工事に携わる技能者を養成してきたわけですが、それ以上に今回はどういう形で施工していくかという施工計画にも参画しまして、建築の現場での施工管理を行うことができるような実践技能者と申しますか、そういう人材を育てよう、こういう趣旨でございます。
  28. 小山孝雄

    小山孝雄君 何だか私の頭には具体的なイメージとして入ってこないのでございますけれども、時間もたってまいりましたので次に進みます。  二十六校のうち十校ということでありますが、十校の選出はどのような過程を経て、どういう考えでやられるわけでしょうか。
  29. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今回の大学校化に係る整備計画につきましては、まず平成十一年度に、神奈川県にあります職業能力開発学校と東京都の小平にあります東京職業能力開発短期大学校を統合いたしまして、職業能力開発総合学校に再編したいというふうに思っております。  それ以外、全国二十五あります職業能力開発短期大学校につきましては、平成十一年度以降数年度を目途にいたしまして、ブロックごとに現在の短期大学校の半数程度を拠点校として大学校化を図っていきたい、そしてブロック内の職業能力開発短期大学校職業能力開発学校の分校として再編をいたしたいというふうに思っております。  なお、沖縄にも職業能力開発短期大学校がございますが、これは沖縄県からの強い要望もございまして、沖縄県の振興を図るという点からもぜひ大学校化を図っていただきたいということでございますので、これはブロックとは別に大学校化を図っていくことについて検討したいということです。  もう一つ、港湾職業能力開発短期大学校がございます。これにつきましては、港湾物流に特化した高度職業訓練を実施しているということで、他の短期大学校と性格が違いますので、これは当面短期大学校として存続させていくというふうに考えております。
  30. 小山孝雄

    小山孝雄君 現在のこの施設における入校率、資料を取り寄せてみましたら少し下がってきておるようであります。  現在、私学の経営者なんかに会いますと、とにかく少子化社会を迎え子供がどんどん減っていく、その中にあっていかに自分の学校の学生を確保するかということに本当に腐心をして、例えば校長さんにだれが聞いてもわかるような人を持ってきて、あっあの人がいる学校だと、あるいは生徒にも有名若手の歌手みたいな者も入れて、ほとんど学校には来ないらしいですけれども在籍しているんだと、そういう形をとってでも学生募集を本当に一生懸命やっているという現実も聞いておるわけでございます。  こうして、全国短大を四年制大学校にしていったときに果たしてどの程度の学生が集まるのか、閑古鳥が鳴いているようなことでは困るわけだし、そしてまた世の中の風潮としても、こういう手に技術技能を身につけた人を大事にするという風潮からもちょっとかけ離れている世相が今あるかなということも私は心配するものでございます。  いつももう満杯の学生を擁して、これからこの施設が大いに国民に活用されるということを願う気持ちから、どんな考えでおられるかちょっと聞かせてください。
  31. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 現在の職業能力開発短期大学校におきます入学試験の応募倍率、全国で平均いたしますと約二・六倍の応募倍率がございます。  それと、私どもの調査によりますと、この職業能力開発短期大学校の在学生に対してアンケート調査を実施いたしておりますが、やはりこの中の半数以上の方々がもし新たな課程ができたら進学することを希望している、技能技術、物づくりをもっと高度化したいということで、私どもかなり学生が集まるというふうに考えております。
  32. 小山孝雄

    小山孝雄君 ぜひ、さらなる御努力を期待したいところであります。  大学校をつくって高度な職業訓練というものを行うわけでありますが、そこを修了した人はそれなりの資格や社会的な評価が得られる、これがやっぱり生徒さんにとって大変大事なことだと考えるわけであります。  そこで、現在の短期大学校を卒業した場合に取れる資格の内容及び今回設置される大学校を卒業した場合にどのような資格が取れることになるのか。あるいはまた、私は四年制の大学と同じように学士の取得についても考えていったらどうか、こう思うわけであります。現段階で、労働省としてはこの辺についてどうお考えお尋ねをいたします。
  33. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) この大学校を修了した方々が社会的に適切に評価されるということは非常に大切なことであると思います。先生の御指摘のとおりだと思います。  現在の短期大学校卒業でどのような資格が取得できるかということでございますが、例えば国家公務員採用Ⅱ種試験や建築士試験の受験資格、あるいは各種の資格を取れることになっております。これは文部省所管の短期大学と同等なものであります。  また現在、職業能力開発学校で行う指導員訓練の四年間、先生を養成する訓練でありますが、それの修了生に対しても学士あるいはそれ以上、修士課程と申しますか、二年の研修課程を修了した人に対しては修士の学位が学位授与機構から授与されることになっております。  現在、そんな形になっておりますが、今改正案によりまして設けられます職業能力開発学校につきましては、現行の短期大学校で行う訓練に加えてより高度化した訓練を実施する施設であるということから、修了生についても大学並みの評価や資格が付与されることが必要ではないかというふうに私は考えておりまして、今後公務員試験を所管する人事院なりあるいは建設省等々との省庁とよく相談して検討していきたいというふうに考えております。  最後に、学位の点につきましてでございますが、学位授与機構を所管する文部省にも前広に相談して検討してまいりたいというふうに考えております。
  34. 小山孝雄

    小山孝雄君 大変結構なことだと思います。  きょうは文部省にもお越しをいただいております。今労働省から答弁があったところでございますが、今回設置されます大学校で卒業生が学士の称号を取れるようにするためにはどうしたらよいのか、この点についてぜひ文部省におかれましても労働省とよく打ち合わせ相談をしていただいて進めていただきたいなと、こう思うわけでありますが、いかがでありましょうか。
  35. 早田憲治

    説明員(早田憲治君) 各省が設置しております大学校につきましては、各省庁の設置法などの法律の規定に基づきまして、特定の行政目的のための教育訓練を行う機関ということで設置されておるものでございまして、これらの施設は大学とは趣旨、目的、使命等を異にするものでございます。  しかしながら、各省の大学校におきます履修の成果が社会的に適切に評価されるようにするという観点から、学校教育法を改正いたしまして、平成三年度から各省の設置しております大学校十七校のうち、大学あるいは大学院と同等の水準の教育を組織的、体系的に行っていると認められる六校を修了した方々に対しましては学位授与機構が学位を授与することができるようになったところでございます。  この制度によります学位授与の手続でございますが、まず学位授与機構が、各省の大学校の申し出に基づきまして、当該課程の教育課程でございますとか修了要件あるいは教育組織等を審査いたしました上で、それらが大学または大学院に相当する教育を行うものと認めるものにふさわしいものかどうかということにつきまして、大学設置基準などに準拠いたしまして、専門的な判断に基づいて認定を行うわけでございます。現在、学部レベルにつきましては防衛大学校や、先ほどお話がありましたように職業能力開発学校など六つの大学校の六つの課程が認定を受けているところでございます。  その上で、学位授与機構は、認定課程を修了した者からの申請を受けまして、学位授与機構の専任教員でございますとか国公立大学の教員から成ります審査委員会で専門的な審査を行いまして学位を授与するということになるわけでございます。  それで、現在、今回の法律によります改正前の職業能力開発学校の四年の修業年限を持っております長期課程につきましては、平成三年十二月に大学の学部に相当する教育を行う課程と認定されまして、これまでに累計千三百四十一名の方が学士の学位を授与されているわけでございます。それから、同校の修業年限二年の研究課程につきましても、同じ時期にこちらは大学院の修士課程に相当する教育を行う課程ということで認定をされまして、これまで累計で九十四名の方が修士の学位を得ておるというような現状でございます。  一方、改正後の職業能力開発学校についてでございますが、改正前の職業能力開発短期大学校の一部が平成十一年度以降に改組されて設置されるというふうにお聞きしているわけでございます。  この改正後の職業能力開発学校と学位授与機構との関係についてでございますが、これまで労働省から受けております御説明によりますと、改正後の職業能力開発学校の教育課程等が大学と同等の水準の教育を組織的、体系的に行っているというように直ちに判断するのはちょっと難しいかなというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、今後労働省とよく御相談しながら適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  36. 小山孝雄

    小山孝雄君 ちなみにちょっとその六校を教えていただけますか。
  37. 早田憲治

    説明員(早田憲治君) 防衛庁の防衛大学校、それから防衛医科大学校、それから農林水産省、水産庁でございますが水産大学校、それから運輸省海上保安庁の海上保安大学校、それから運輸省気象庁の気象大学校、それから労働省職業能力開発学校、以上の六校でございます。
  38. 小山孝雄

    小山孝雄君 ありがとうございました。  ぜひ前向きに御検討いただいて鋭意よく煮詰めていただいて、新たにできる四年制の職業能力開発学校を卒業した学生さんたちが胸を張って社会に出ていけるようにお願いしたいなと、こう望むわけでございます。よろしくお願いを申し上げておきます。文部省さんはあとはよろしゅうございます。  それから関連で、公共機関が行ってまいりました職業訓練とともに民間事業主が行うものへの支援、認定職業訓練制度というのがございますけれども、その概要と実施状況はおわかりでしょうか、お尋ねします。
  39. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生御指摘の認定職業訓練制度について、これは主として中小企業事業主等が行う職業訓練内容を高めることにより必要な技能労働者育成確保することを目的として、労働省の一定の訓練基準に適合するものを都道府県知事が認定するということで、事業内への合理的な訓練方法の導入等の促進を図るということで認定職業訓練制度を設けております。  この実施状況でございますが、これまで建設業、製造業を中心とした技能労働者育成確保に重要な役割を果たしておりまして、現在約千四百の認定職業訓練施設におきまして約二十万人の在職労働者などが訓練を受けているところでございます。  また、長期間訓練課程として木造建築科が約二百六十施設と最も多く行われておりますし、塑性加工科あるいは左官・タイル施工科等が約百施設ございます。  こうした認定職業訓練の振興につきましては、今後とも私ども民間の力を活用した形での職業訓練の振興ということで積極的にこれを進めていくべきものというふうに考えております。
  40. 小山孝雄

    小山孝雄君 先ほどの資格の話に戻りますが、その認定職業訓練制度のもとで勉強した生徒さんたちはどんな資格が与えられるんでしょうか。
  41. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) この認定職業訓練労働省令で定める訓練基準に適合するものということで認定いたしますので、公共職業訓練で取得する資格と同じ資格が付与されるというふうに御理解いただければというふうに思います。
  42. 小山孝雄

    小山孝雄君 たまたま私の生まれたところが山形県でございますが、そこの地域の民間事業主の皆さんが金を出し合って、そして認定職業訓練校として運営されているところの校長さんが先週末やってまいりました。その人は地場では大きい方の土木会社の会長さんであります。  その会長さんが校長を兼ね、その会社の技能技術を持った人たちが講師となって、その認定職業訓練制度のもとで勉強をしている生徒さんがたくさんいるわけでございますが、土木のあれを昨年から設けたのはいいんだけれども、公に認められた資格をどうも与えられない。自分は土木屋の会長だと、それが幾ら校長という名前がついても校長の卒業証書だけではちょっと寂し過ぎると、公の証書というか認定した資格をぜひ与えてもらいたいということで上ってこられたのでありますが、こんなのはどういうふうにこれから対応していかれますか。
  43. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 認定職業訓練は一定の基準がございます。それで、都道府県の職業能力開発課がございますので、山形県ですとどういう形だったら認定できるかということを御相談していただいて、そういう認定職業訓練ができるようなことで対応できるように私どもの方からもいろいろな情報を山形県の方にお知らせして対応したいというふうに思います。
  44. 小山孝雄

    小山孝雄君 いずれにいたしましても、その卒業生の皆さんが本当に胸を張って世の中へ出て仕事ができるようにいろいろな角度からの支援を進めていかなければならない、こう思うわけであります。  最後に、この法律の第三条の「職業能力開発促進の基本理念」の中に自己啓発ということがうたわれております。働く人たちの自己啓発を支援していくということも大学校新設とともに大事なこの法律改正の目的だと思うわけでありますが、働く人たちの自己啓発を支援する措置としてはどのようなものを具体的に考えておられるのか、お示しをいただきます。
  45. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生おっしゃいますように、これから特に仕事高度化、複雑化してまいります。そういう意味で、労働者が創造性を発揮するという点ではこの自己啓発、自己主導型の能力開発というのが非常に重要性を帯びてまいっております。今、自己啓発をしたいという場合に阻害要因が三つございます。一つが時間がないということ、二つ目がそれに相当する費用がない、あるいはどこでどう自己啓発したらいいのかという情報というのが非常に欠けているということが指摘されております。  そういう意味で、私ども、この自己啓発を促進するということで、今回、自主的能力開発環境整備助成金を創設しようと考えておりまして、これは特に長期にわたって、一カ月以上の教育訓練休暇を導入するなり、あるいは受講ができるような環境整備を行う事業主に対して一定の助成金を支給して、その自己啓発が受けやすい環境整備のための助成金を創設して自己啓発の促進を進めてまいりたい、かように考えております。
  46. 小山孝雄

    小山孝雄君 そうしたことも、先ほども申し上げましたけれども、ぜひ多くの事業主の皆さんによくPRをして、どういうPR方法があるのか、本当に有効な方法で多くの人たちに使っていただくようさらなる努力を要請して、ちょうど時間になりましたので終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  47. 長谷川清

    長谷川清君 今回の職能促進法の改正について、その目的と概要につきましてはただいま同僚の小山委員の方からの質問に対して答弁がございました。  したがいまして、私は、今この解釈としましては、答弁を聞いておりますと、五つの柱、例えば人材高度化の問題や個性化の問題、そういう五つの柱と、いま一つは、労働省がまとめました第六次の能開基本計画、このことに依拠してこの改正がされておりますと、こういう解釈を持つのでございますが、そこだけ確認をしておきたいと思います。  そういうことで、この第六次の基本計画、私もずっと読ませてもらいましたが、一言で言うとその内容は、日本の経済活動の基盤を強化するところがねらいであって、そのためにはここで言う人材高度化一つある。そして、また一つには、従来からずっと培ってきた技能労働、熟練技能というものをさらに保持、発展させていく、そういう解釈で人材育成をしていくんだというところに骨があると、こういう解釈を私は持つのでございます。  そこら辺について、大体そういうことでよろしいかという点についてお伺いしておきます。
  48. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今回の改正案の目的、先ほど御説明申し上げましたように、非常に産業構造変化で、企業が新製品を開発する場合あるいは新分野への展開を図る上でこれを担う人材が必要であるということで、これは経済構造改革に資するという点からいっても非常に必要なことであります。  そういう意味で、現在二十六あります短期大学校を二年足して能力開発学校にするということと、もう一つは、労働者の自発的職業能力開発自己啓発を明確に位置づけて、それに対して支援をする、こういうことを内容とするものであります。第六次基本計画ではそういう点も指摘がありますし、また、先生今御指摘技能労働者育成確保という点については、私どもの調査によりますと、現在技能労働者が約百万人以上不足しているということで物づくりを担う人材というのを育てていく必要があると、その辺は非常に私ども重要な柱として考えております。
  49. 長谷川清

    長谷川清君 これも、先ほどの質問の中で小山委員人材高度化という点のお答えについて御本人は首をかしげてどうもイメージがわかないということをおっしゃっておりましたが、これは私流に解釈すると、この高度化というのは、説明の中では、単なる技能だけではなくいろいろと生産工程の問題、企画する能力あるいはそれをマネジメントする能力といった管理の部分、そういうイメージが一つある。  私は電力出身でございますけれども、例を挙げますと、電力をただ供給するだけではなくて温水器のようなものを買っていただく。そうなりますと、一つの温水器という機器に対する、物に対する技術的な知識だけではなかなかこれは物を買ってもらえない。したがいまして、技術屋さんも営業マン的センスというものを兼ね備えて、二人で売りに行くんじゃこれは効率が悪い、コストがかかる、だから技術屋であっても家庭を訪れていろいろと営業的能力がなければ困るし、営業マンが行っても、一体その機械は直径何メートルぐらいでどこに設置すればいいのとか、こういうふうになったときにはどうすればいいのとか、技術的なことを聞かれると返答に困っちゃうというのでは商売にならないというところから、いわゆる従来型の単能技術、単能を多能にする。  これは、専門的ではないけれどもそういう営業的センスも必要、ホワイトカラーの事務屋さんでも多少の常識的技術の何たるかという、この品物の技術的なところの知識を身につけてもらうよと、こういったような言うならば単能型から多能型へ。技術技術だけではなかなか役に立たない、商売の価値を持たない、そういったようなもう既にこれは何年もやってきておる現象だと思うんです。そういうふうな解釈を、つまり高度化イコール技術プラス営業であったり技術プラス企画であったりあるいは管理であったり、そういうのをいわゆる人材高度化。  したがいまして、質問にもありましたが、一体どういう人材育成することを求めているのか。人材の教育をしますけれども、その出口でその人にどういうことを身につけてもらおうと期待しているのかということになった場合、私の言う解釈で、今の提案で言ういわゆる人材育成ということにかなっているのかどうか、その辺をお答えいただきたい。
  50. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生がおっしゃるように、私ども、この審議会の場でもそういう議論がかなり行われまして、やはりこれからの人材というのは一専多能型と申しますか、一つの専門分野はしっかり持っておって、それに関連する周辺部分をちゃんとある程度理解できるような力がないと、これからの技術革新の中で、企業としてもしっかりとした人材として有効でないのではないかという御議論がございます。やはり一つの専門分野はちゃんと見きわめなきゃいかぬですけれども、それの派生する周辺の部分について、専門的な知識までは完全にはいかないんですが、そういう点も理解できるということがぜひ必要であるという御議論が相当強うございまして、そういう意味合いも含めて、今回の高度化考えております。
  51. 長谷川清

    長谷川清君 大体私は自分のイメージとマッチングしているなという感じを持っておるわけでございます。  それで、今行っている短期大学校で、これは高校卒業生を二年間教育するということですが、高校は、普通高校の人と工業高校の人の割合はどのぐらいのものですか。
  52. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 現在の短期大学校への入学生の工業高校卒業生の割合でございますが、東京にあります東京職業能力開発短期大学校の入学生の内訳を見ますと、平成九年度は二百十人入学いたしましたが、その中で工業高校の卒業者の数は二十七人ということで一二・七%、こんな状況になっております。あとは普通高校だということでございます。
  53. 長谷川清

    長谷川清君 技術を身につけるという点においては、中学、高校で工業的技術知識を持たない普通高校の人数の方が意外と多いという状況ですね。
  54. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) はい、そうです。
  55. 長谷川清

    長谷川清君 これは、普通高校から二年ぐらいで本当に習得できるのか。  工業高校系というのは、どちらかというと一般高校よりも、まあそう言っては悪いが二流というか、集まる教授も二流だし、(「昔はよかった」と呼ぶ者あり)昔はよかったかもしれないんだが、いやそれは大臣手を振っていますが、大体現在の物づくり時代、この経済成長を果たしてきた今日、どこの家庭でも子供が生まれたらすぐに、将来は東大へ行かせようと、そしてもう小さいころから塾に通わせる。大概の人が大体脱落しますがね。小学校一年であきらめたり、中学であきらめたり、直前であきらめたりするでしょうけれども。大体、つまり右肩上がりで経済が伸びてくる時代の教育のみんなの価値観というのは、金と物を最後に手にする、そのためには東大じゃなきゃだめ、こういう価値観の中で工業高校へ行こうというのは、そこでもうあきらめたよという人たちが割と多いんです。  工業高校の実験設備やなんかも非常に老朽化している。二百何十人の中の約三十名。普通高校から入ってくる普通のそういう恐らく知識のない人をここで二年間、これは高度の職業訓練が身につくかどうか。今やっております短大における現場で、そういう点について何か大変苦労しているよというようなことはあるのかないのか、お聞きします。
  56. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 現在、この短期大学校に入学する人たちで工業高校が非常に割合として少ない状況は今御説明したとおりであります。  これはある意味で、入学試験をやりますので、今後私ども短期大学校で耐え得るかどうかということをある程度テストした結果でございますが、この短期大学校ではかなりハードな授業をやります。年間千四百時間という物すごく長い、普通の高校なり短大と比べて相当長期の実技に即した実習を伴った職業訓練をやっておりまして、結果で見てみますと、就職したい人はほとんど就職できる、就職率一〇〇%という状況にあります。各企業からの評判を聞いてみましても、非常に役に立つということで、かなりの高い評価を受けているのではないかと私ども自負いたしておりまして、この短期大学校はかなりしっかりとした教育をやっているということで御理解いただければと思います。
  57. 長谷川清

    長谷川清君 しっかりやられているし、そしてまた就職率などを見ましてもかなり喜ばれておるという状況。第六次能開基本計画というものが去年の二月にできております。この審議会も、先ほどの質疑の中でむしろ励ましを受けて頑張れよと、内容はそう支持をされている。私はこの限りにおいて、これまでの物づくり時代の日本が経済成長を遂げていたこの期間、これで十分やっていけるし、この第六次における能開のエキス、この中に秘められておりますことは支持をできますし、評価をしているのであります。  ただ、本当にそれだけでいいのかなという一つの疑問、欠落、これからの時代に向かいましてどうあるべきかという視点というものについて、私はどうもまだこれは十分じゃないという一抹の問題意識がございます。  去年の二月にこの計画ができた、審議会がその前に何回かやって積み上げて、二月時点ででき上がった。それから五カ月後に科学技術計画ができています。一年前の平成七年に創造的科学技術立国というのができております。この科学技術立国、平成七年の十月三十一日に衆議院で全会一致で可決決定されて、十一月八日に参議院本会議でこれまた全会一致で決定されて、平成七年の十一月十五日に法律第百三十号として公布、施行され、閣議決定もあるというものです。  そこで、科技庁の方にお伺いをしますが、この創造的科学技術立国の理念を受けて去年七月につくりました基本計画とその運用基準、こういうものの概要について、ポイントの部分をひとつ御説明いただきたいと思います。
  58. 坂田東一

    説明員(坂田東一君) 先生お尋ねの科学技術基本計画でございますけれども、これは今先生が科学技術基本法の制定に至る経緯をおっしゃいましたけれども、その基本法の根幹をなす部分でございまして、法律政府にその作成が義務づけられたものでございます。おっしゃいましたとおり、昨年の七月にこの科学技術基本計画は閣議決定をされておりまして、これからの科学技術政策を具体的に運用するに当たって最も大事な計画でございます。  この計画内容でございますけれども、まず、研究開発を進める基本的な方向といたしまして、第一には社会的経済的なニーズに対応した研究開発を強力に推進する。このことに関連いたしましては、いわゆる日本の二十一世紀、将来を考えまして、例えば新産業の創出等を図るための独創的、革新的な科学技術を進めていくというふうなこともこの中に含まれるわけでございます。  また、このような社会的経済的なニーズ、これを強く意識しました、科学技術の研究開発だけではなくて、いわゆる人類の知的資産になります基礎研究を積極的に振興する、これももう一つの柱であるわけでございます。  このような研究開発を進めていくに当たりましては、幾つか重要な施策をあわせて推進することが必要でございまして、その一つの重要な柱が、柔軟かつ競争的で開かれた研究環境を日本の中につくり出していく、そのために新しい研究開発システムを構築するということが定められているわけでございます。  この中には、例えば国の試験研究機関の研究員には任期つきの任用制を導入するということでございますとか、あるいは若手の研究者の皆さんに研究の機会を与えるということで、いわゆるドクター号を取られた方のための施策としましてポストドクトラル等一万人支援計画、これをこの科学技術基本計画期間中に達成する。  なお、申しおくれましたけれども、この科学技術基本計画平成八年度から十二年度までの五カ年計画ということになっておりますので、この期間に今申し上げたポスドク一万人計画を達成しようということが二つ目の柱でございます。  また三つ目には、いわゆる研究支援者でございます。この研究支援者の方々につきましては、研究者に比べまして相対的にその割合が過去一貫してずっと下がってきておりまして、このままですと日本の研究に大きな支障が出てくるということで研究支援者もしっかり確保しよう、こういうことも基本計画に書かれているところでございます。  それから、もう一つ非常に大事なことは、政府の研究開発の投資額の問題でございますけれども、日本の場合は、この政府研究開発投資額が欧米の主要国、米国それからイギリス、フランス、ドイツ、このあたりと比べますとGNPに対しましてかなり割合が低いということで、これをこれら欧米先進国並みに引き上げていこうという考え方のもとにこの政府研究開発投資額を拡充していこうということが基本計画の中に書かれております。ある一定の条件のもとで、これは平成八年度から十二年度までの間に累積で十七兆円ぐらい必要であるという旨も基本計画の中に書かれているところでございます。  以上のようなことが基本計画内容になっておりますので、私ども科学技術庁といたしましては、関係省庁とも十分に連携協力をとりまして基本計画に沿った施策が着実に推進され、先生がおっしゃいました科学技術創造立国、これの実現に向けて努力を重ねてまいりたいというぐあいに考えております。
  59. 長谷川清

    長谷川清君 私は、そういうことだろうと思います。  要約をすると、立国の精神の基本は応用化学と基礎研究、二つのうちの応用化学で日本は今日のいわゆる物づくり社会、経済大国を築いてきた。ところが、基礎科学研究の方はもう〇・一%に据え置いた。その結果が今、物づくりの方も一時メード・イン・ジャパンだったものが、世界じゅうどこに行っても、今やもうメード・イン・香港、あるいはメード・イン・コリア、そして今や経済競争力は十六位におっこちた。  私は、やっぱりそういう意味において、去年の二月という段階までいろいろ審議会でも審議をし、ようやく六次計画労働省が立てて、その五カ月後に、今言われる五年間に十七兆からの投資も行って次なる日本の再生を期そう、こういう一つの大きな苗が植えられて、そして現に今科学技術経費として各省庁にその金が本年度予算の中で配分されている、労働省にもおりてきている。  こういう流れを見まするというと、一年前には創造的科学技術立国の基本法は既に閣議決定されて、法案があって、それを受けたのが去年の七月、五カ月おくれであります。私はそれを責めているのではなくして、そういう部分について、これは岡野大臣にお伺いをしたいんですけれども、今の第六次計画というものが大事であり、私はそれを尊重し、評価しておりますが、その後の国策とも言うべき科学技術計画が七月にできた、そしてその後に予算がついてきた、こういう経緯に照らしまして、むしろ労働大臣というよりも国務大臣として大臣のこれに対するお考え、これを聞いておきたいと思います。
  60. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) もう先生御存じのとおり、日本は戦後五十年、一生懸命に国力を総合して追いつけ追い越すというようなことで、産業のみならずあらゆる分野で努力をしてまいり、その成果が立派に上がって、今や世界の先端を切る国であるというような位置づけとなりました。実際の特許の数等々からしますと、特許そのものの申請をするという気風がまだ定着をいたしておりませんものですからそういった具体的な面にまでは行っておりませんが、実力はそこにある。  そうすると、今まではアメリカならアメリカ、ヨーロッパならヨーロッパの技術というようなもの、そういった先端的なものを我が国に取り入れてこれを応用するということで発展はできた。しかしながら、これからは日本が先端を切って、霧の中を分け入っていかなければならない。そういうような意味合いで先端技術とそれを開発していくということに重点が置かれるということに相なってきた。しからば、その面において日本は十分な努力をしているか。  私は、かつて政調副会長のみぎりに東京大学を初め幾つかの大学の理工学部の研究の実態というものを見てまいりました。例えばすぐそこにあります東京大学あたりは、天井の高い建物で建てられたのが幸せといいますか不幸といいますか、中二階を二層ぐらいに、木造の床をつくりまして二階建て、三階建てにして、そこで非常に狭いスペースにその分野では世界に有名な学者が研究をしている。そして、東南アジアその他はもとよりのこと、多くの国々からその大学に研究に来ている。そういう諸君が、日本の先端技術を研究する大学がこういうような状態であるのかというようなことで日本の評価も変わるんじゃないか。  言いますならば、公共事業費といいますものを配算する分野は旧態依然の箱物を中心としている。これは間違いだ、先端技術開発分野にもっと金をつぎ込めというようなことで、四年ぐらい前から多少そういった予算がつくように相なった。これではまだだらしがないと、こう思っております。  公共事業費の見直しということは全面的に今政府もやっているところでありますので、先生がおっしゃるような先端技術開発で世界をリードして初めて日本の存在意義があり、そこで働く皆さんのプライドも出てくる、ぜひこういうようにいたしてまいりたいと、こう思っているところであります。
  61. 長谷川清

    長谷川清君 科技庁はもう結構でございます。今もう動燃で忙しい時期に本当にありがとうございました。  今、大臣からの何か煙に巻かれたような、結局結論的には、国務大臣としてどうかと、こう言ったからああいう答えになったのかもしれませんが、物づくりの大事さということはだれよりもよく私は知っているつもりでおります。物づくりができるようになるまで十五年ぐらいかけておりますね。その後、キャッチアップ型になっている。戦後最初は食わんかなで、やっと食えるようになるのに十五年かけています。  戦後の五十年を大ざっぱに見ると、多くの物ができるかできないかというころにニクソン・ショックもあったり、あるいは第一次オイルショックがありました。その次には第二次オイルショックが来ました。繊維の構造不況も訪れましたし、その後に参りましたのが重化学工業部門ですね、造船だとか鉄だとか自動車。その次に来たのが第一次の円高。自由主義経済の大きな波を日本がかぶるたびに、当時はそれぞれの日本の産業、企業はおしめをしていましたよ、倒れないように規制をして、早く物づくりができるようにと産業、企業育成型で前半走り、今現在規制緩和と言われるのは、四十、五十の力持ちになっているのにおしめをしているのは似合わぬよと、これが僕は規制緩和と思うんだが、そういう大きな波をかぶるたびに物づくりという世界でどう乗り切ってきたか。  例えば私が子供のころは、時計は本当に貴重品で、宝物で、親からもらう一つの財産でもあった。今はもうだんだんこれは消耗品・何千円。そうすると、時計の第二精工、一〇〇%時計を売っていた第二精工は生き延びていけない。社長が訓令して方向転換したんじゃなくて、環境をまずつくる。提案制度、会社の中に非常に豊かな応接室をつくって、お茶もコーヒーも、時間中にそこに入ってもいい。入ってもいいというよりも、そこでいろいろと知恵を絞る。結局はいろんなものの開発、時計をつくる技術というもの、そのノウハウを引き出してコンピューターつきのおもちゃをつくったりする。二、三歳だけのおもちゃじゃない、大人まで楽しめるコンピューターがつく一個十万もするぐらいのものもある。要はそうやって乗り切っていくんです。  西川布団もそうですね。布団だけつくっているんじゃないです。最初は布団。テレビのコマーシャルでも小錦だったか、あれ、ばあっとやって。ところがそれだけじゃ成り立たぬ。それがやがて寝具全般の産業となる。人間の寝るところにはベッドがあり、ベッドだけじゃなくてカーテンがあり、テレビがあり、冷蔵庫もある。つまり多角経営もそうやって始まっていくんです。  あるいはまた鉄。昔の鉄というのは非常に厚い、厚い割には強度は弱い、それを薄板にするという技術。日本がそれを開発してやっと薄い鉄をつくる、鉄板を。あらゆるところにこれが活用される。ところが韓国がそれに追いついてくる。薄いだけの技術じゃこれもまた売れなくなる。そして、その薄いものにいろんな模様を、インテリアに使えるような新しい技術開発をする。  こういう知恵で、これまでの物づくりの中でみんなが乗り切ってきた。だんだん今もうそういう知恵だけではどうにもならなくなって、そうこうしているうちに、日本はさっき言うように工場を海外に移すという空洞化が進んできているんです。  私は生産性の関東の会長をやっているころも、あのころは上景気ですから世界じゅうから、日本の経済成長の秘密はどこにあるんだと、来る日も来る日もそのノウハウを教える。労使関係の細かい制度、やり方、工場におけるシステム、ありとあらゆるものを勉強にアメリカからもヨーロッパからも来て、私の仕事はそれに応対するのが朝から晩まで。その後はもう閑古鳥が鳴いて、日本を振り向く者はいません。  こういった流れで、次の日本の国をどうするのか、創造的科学技術立国が今まで据え置いた基礎研究を本気でやらなきゃいかぬ。アメリカのようなところは軍事、国防がありますから、いろんな兵器の開発のための基礎研究はそこからノウハウが出る、それにプラス、もう赤字を覚悟で、借金覚悟で新たに十年前から基礎研究に投入した。  ここに新聞がありますが、四月十九日付の朝日新聞。これはコピーを差し上げていると思いますが、基礎研究重視の予算、天野さんという評論家が、日本もおくればせながらやっと基礎研究に目が向いてきた、このことを評価するものです。アメリカの例を挙げながら、日本においてもやっとその日が来ているというけれども、富士山のすそ野に立っているだけであって、まだまだ各省庁の現場にまでそれはおりていないと。  これからの人材能力開発、つまりどういう人を育成していこうとするのか。私はこの要素はどうしても欠くことができないと思いますけれども労働省という省庁なり範囲にそれはちょっとなじまない、あるいはそういう分野はないとおっしゃるのかあると判断していいのか、その辺のところをお聞かせいただきたい。
  62. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生のおっしゃること、基礎研究をしっかりやって今後の科学技術立国を図っていくということは非常に大切な施策であります。そういう意味で、私ども能力開発、物づくりを担う人材を育てるという面から考えておるわけです。  先生が御指摘の科学技術基本計画では具体的に直接この能力開発については位置づけられておりませんが、ただ、この計画の中でもやはり職業教育の充実を図るために、教育内容充実あるいは大学等において社会人を積極的に受け入れろと、こういうような指摘もございます。そういう意味で、私ども公共職業訓練高度化を図るなり、あるいは社会人を公共訓練施設に積極的に受け入れるなどして、この計画の趣旨を踏まえながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  63. 長谷川清

    長谷川清君 大臣いかがでしょう。大臣にお聞きをしたいのは、いわゆる日本の国策として、国という単位で何が今大事になってきているか、そういう視点に立った大臣のお考えをお聞きをしたいんです。  理念や考え方というものとお金が同一路線で流れてこないとこれは実効性が上がりません。たとえわずかであっても、労働省という仕事の範囲の中に能力の開発学校も構えている、そういう分野の中で今言う一番不足をしていた部分を少しでも高めていこうという考え方については、労働大臣としてはどのようにお考えかお聞きします。
  64. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 長谷川先生が冒頭のころお話しになりました工業学校、商業学校にはレベルが云々というようなお話がございました。  あのころは、家貧しゅうして孝子出るという時代で、高等専門学校に行くだけの資力がない、しかし能力があると。すぐにも家のために資金を工面しなければいけないという意味合いで優秀な生徒が商業学校にも工業学校にも行ったと思います。  今、私ども雇用促進事業団をしてやらしめている技能の伝授は、やはり初期の段階におきましてはすぐに役立たせるというような意味合いで、旋盤工としての技術あるいはプレス工としての技術というようなものを身につけて世に出るということでございました。  しかしながら、この数十年の間に世の中は変わってまいりまして、東南アジア等々におきましてその種の製品はさっきメード・イン・云々とおっしゃいましたがいっぱいできるようになりました。そうすると、日本としての立国はより付加価値の大きな品物をつくって、そして水平分業でアジアの皆さんとともに栄えていかなければならないと、こうなりました。  そうすると、より付加価値の大きい商品、生産品をどうやってつくるかという、言いますならば先端技術そのものの研究じゃなくて、それを受け入れて実際に役に立てるような品物をつくらなければならない。あるいは社員の皆さんを大勢抱えて一つの品物をつくるんではなくて、全体的な生産工程をどういうふうにしたらいいかと、ある程度指導性を発揮するような面の能力、したがいまして幅の広い力、知識というようなものを身につけなければならないというような意味合いで、現下の置かれた需要に見合うような人材を養成してまいりたいということで、この法律をひとつ御審議、可決をいただきまして、現時点における日本で要求される人材をつくってまいりたい、こういう考え方でございます。  答え、今度は合っておりましょうか、いかがでございましょうか。
  65. 長谷川清

    長谷川清君 私は、先ほど申し上げた基本的に二つの柱がある、一つの物づくり世界の中において、私はそれは納得をしているつもりなんです。  現状を見ますると、中小零細企業によって日本の経済はこれまでも、これからも支えられていかなきゃなりません。ところが、今中小企業が一番困るのは、確かに基本、基盤的な熟練技能などを継承、発展させていくという努力は一生懸命やらなきゃいけないということは認めているんです。しかし、これだけではだめなんですと。今やもう金融不安が起こっていまして、無担保で金が出るような銀行は中小企業に向かっても教育という分野においてもないんです。  国の役割をどう見るのかという視点も一つ入ってまいります。  先ほど、大臣は特許の話をしましたが、特許は日本においては年間で百八十九、アメリカでは千九百、アメリカは十倍です。そういうものも、あるいはノーベル賞の数もけたになりません。つまりは基礎研究、基礎研究はしかし投資が必要なんだが、一方、二万の基礎研究をやったからといって、応用化学ですぐに役立つ、利益をもたらす、そういうものが出るわけじゃないんです。市場経済では、この基礎研究はどうしても国が乗り出して環境をつくる以外にないというものなんだ。  雇用促進事業団は公益事業体だからやめろみたいな一般論があるけれども、これから大学校化していく場合でも運営するのは促進事業団でしょう、その促進事業団存在価値を高めていくためにも、こういう部分にそれが国益につながっていくという背骨を一本きちんと入れられないか。  本年は初年度ではございますけれども、例えば科学技術関係経費とお金には印がないはずだが、科学技術のことについては先ほども出たようにこの五年間で十七兆使っていこう、日本の国の将来の経済を支えていくための資金として、それを省庁に配っている。本年度、労働省に一六%プラスの経費がおりている。これはちょっと説明いただきたいんだけれども労働省におりている一五・九%プラス、名目は科学技術経費、これは一体人材育成のどこにどういうふうに使われていくものなのかどうか、これをお聞きします。
  66. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 労働省におきます科学技術基本計画に係る経費としてカウントをしております額は、平成九年度の予算で約四十三億円でございまして、これは今先生がおっしゃいました八年度の当初予算と比べますと一五・九%の伸びとなっております。この四十三億円の大部分は安全衛生関係の研究費等でございまして、労働省設置をしております研究機関でございます産業安全研究所における災害防止の研究、あるいは産業医学総合研究所で行っている労働者の健康確保、職業性疾病の調査研究、こういったものに計上しているという実情でございます。
  67. 長谷川清

    長谷川清君 これは、初年度の科学技術の八千五百億を各省庁に、今答弁があったように四十三億は労働省に来ております、一般会計と特別会計。その大半を安全関係、衛生関係、産業安全研究所、これは昨年との比較においても従来型の道なりの、つまりは第六次の計画を立てた精神と理念と価値観で、これはこの一億ぐらいの伸びというのは当然。特別会計で安全研究所が八年度の補正したのと比較をして約二億、雇用促進事業団職業訓練学校経費としては昨年と同額。  しかも、私が言うこれからの日本の大事な基盤づくりには投資が必要だと、これも新聞に出ておりました。この天野という経済評論家は、アメリカ政府は八〇年代に巨額の財政赤字を覚悟の上で軍事費やプラス基礎研究費に予算を配分して、その投資は長期的に見て経済学で言う乗数効果の大きい投資であったということを実証したと。そして、我が国においても中小企業を活性化する方策こそが日本経済そして株式市場の復興につながる、その中小企業を活力あるものにしていくために、規制緩和で政府の干渉を削減する一方で、遅まきながら基礎技術研究への政府予算は拡充したと。  だれが予算書を見ても、国家予算が拡充されていることは事実です。その額は初年度が八千五百億です。これからずっと投資していって、五年で十七兆を投資して、これからは次世代の、単なる物づくりだけではない、金物だけではない、文化も必要であり芸能も必要でしょう、あるいはスポーツという分野にも基礎研究をやることによって知的財産も上げていこう。そのためには、海外に散ってしまった優秀な科学者をもう日本に呼び戻さなきゃいけないし、外国の科学者も呼び戻さなきゃいけない。  研究者、科学者だけがいてもだめです。その補助者、支援者、いろいろの環境を整えていくために、労働省がそういう環境をつくるためのまず調査から開始しましょうとか、いろんな材料を集めましょうとか、せっかくお金がおりているんだから、それはその趣旨にのっとって、お金には印があると思うんです、ねらいがあるはずでございます。せめてそういうねらいにぴちっとはまれば私は納得ができるんです。そういう考え方について、大臣はどのようにお考えかをお聞きしたいんです。
  68. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生の前の前の御質問にお答えをしましたような次第で、やはりキャッチアップ体制ではだめだというようなことで、日本は遅まきながらではありますが、先端科学技術開発というようなところに重点を置くようになりました。  したがいまして、その一般の重点化枠というような特別の枠を設けまして、今までの公共事業あたりの配分の仕方、在来、建設省あるいは農水省あるいは運輸省、これらのところに大きく配分をされておりましたものを、先生おっしゃる先端科学技術の研究開発というところに突っ込んだわけであります。その突っ込み方がどこの省に行ったかというふうに考えますと、中小企業の振興といいます概念からいたしますと、これは通産省、中小企業庁ということになります。中心はやっぱり科学技術庁だと思います。郵政省あたりも電気通信、放送電波というような関係の先端技術を担うというような意味で非常に大幅にふえております。  そういう分野からいきますと、私どもは、先生がおっしゃいました中では安全衛生といいますか、私どもで具体的な研究所でいうと、産業安全研究所、産業医学総合研究所。労働を提供する諸君のどういうような労働の提供の仕方がいいか、それに伴うところで派生する疾病等々はどういうものがあるか、これは労働省の専管事項といいますか、中心官庁であります。  したがいまして、先端技術の研究開発の面も、その面にはつきますけれども、産業全般の中心ということになりますと科学技術庁、通産省というようなところへ参りまして、縦割りのマイナスというものはあろうかと思いますが、労働省といたしましては、一般的な労働の提供の対応の中から、こういう研究開発をせい、こういうところでもってもっと勉強せいということは十二分に大蔵省なりに申しますが、配分していく先は、私どもの場合にはどちらかといいますと安全衛生面に相なる。  アメリカの研究開発の資金は非常に膨大でありますが、あれは相当部分がペンタゴンに行っているわけで、したがいまして、ベル研等の有名な民間ベースにおきますところの研究開発というところにおんぶするところが大きゅうございます。我が国でも、一般的にいいまして国の投資はこの面では非常に少ないです。まことにだらしがないというようなことを終始言ってまいりました。しかしながら、ベル研に対峙するものとして民間の研究開発機構におきましてはNTTの四つの研究機関あたりは天下に冠たるものだ、こういうふうに言われているところであります。  しかし、全般としては先生のおしかりは、御指摘はまことに私、正鵠を射たものと思って、全く同感であります。今後も一生懸命頑張りたいと思っております。
  69. 長谷川清

    長谷川清君 大臣の見解が一致したということは私にとっては非常に救いでございます。  評価すべき点は多々あるんです。例えば労働省が対応しました法律施行令、これを改正して、新たに派遣業務の業種に研究者や研究支援者の研究開発業務というものの道を開いたということは、文部省との連携とは言いながらも、これはどんどん今後進めていかなければならない分野だと。  場合によれば金のかかる部分もあるでしょう、そういう部分に、この大学校に研究設備なり基礎研究のカリキュラムなりを今すぐ入れろという乱暴なことを私は言っているのではございません。なろうものなら入れてもらいたい。この大学校制度が発足するのは二年後でしょう。しかも六次で言っているのは五年後まで読んだ計画であるだけに、ああ法案が通ったからそれでいいやというのではなくて、まだ猶予期間がありますから、そういう理念というものをぜひひとつ労働省内で。  各省庁みんな天井まで壁があるから、屋根の裏に国策というのがあるんだけれどもなかなか見えづらい。省庁の皆さんは全部まじめに一生懸命業務計画やお仕事をされているんだが、天井まであるがために方向を失う場合もある。私はそういう意味においては、これからの時代というものの大筋の中から出てくる各省庁ごとの仕事、それがあって初めてやりがいも出るだろうと思うんです。  ゴルフの世界ではウッズみたいな二十一歳の人が優勝、あの経済効果は百六十一億だというんです。これからは多種多様で、スポーツという分野にも、それから文化という分野や芸能、芸術という分野、だから橋本さんも、僕はそこまで考えて言っているかどうかは知りませんが、六つの改革の最後に教育改革も入れました。その案がまだ具体的に定まっていないけれども、それやこれやで全部集まっていけば本当に将来日本の国はよくなると思うんです。  労働省はある意味においてはそういう人を扱い、教育も扱っているんですから、それはうちは知らぬよ、お金だけはいただくよという態度では、もう六月になってまいりますと行財政改革、すぐにまた来年における予算にとりかかっていくんですから、そういうことをひとつぜひお考えをいただきたい。  そういうことについて何か意見があればお聞かせをいただきたいと思います。
  70. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) やはりこういう科学技術を振興していく上で、私どもこの技能労働者育成ということ、物づくりを中心とした人材育成を行っているわけですが、やはりこれから先生がおっしゃるような視点、基礎研究等の視点も含めて、大学校化された場合、カリキュラムなりどういうことを勉強させるのかということを具体的に決めていかなきゃならない段階になったときにはよく頭に入れて、物づくりを担うよりいい人材が育つように頑張りたいというふうに考えます。
  71. 長谷川清

    長谷川清君 大体大骨において、大臣は今まで見ておりましてもほとんど原稿を読まずに御自分の意見をさっと、それで非常に私は尊敬しておりまして、すべての大臣がこうでなきゃいかぬなというふうにはかねがね思っていた。合意できたから褒めているんじゃなくて、もともとそういうふうに信頼をしております。  ぜひひとつこの基礎研究ということに対して、労働省として針の穴ほどでもいいからそれを大事にし、将来に向けて拡大していくということでこれからも背骨をつくっていただければと。  今までの日本の経済はアメリカ生まれの日本育ちという、基礎研究やあらゆるノウハウは、全部先進諸国のものを盗んできたとは言わぬが、それから仕入れて応用化学でさっき申し上げたようないろんな知恵を働かせて今日を築いてまいりました。それが結局は金と物の価値だけで、教育までがみんな東大に行かされる、こういった面一社会をつくってきたわけです。  これからはそれを改めようと。この前における大臣の答弁の中にも、これまでは生産主導だったがこれからは消費者だ、ここに軸足が向くんだよ、こうおっしゃっておりましたが、私も同感です。あらゆる側面側面においてそれぞれの分野が分担をして、それぞれどこに向かおうとしているかということを確認しながらやることによって必ずそれは達成していけるもの、そのように私は確信をしたいと思います。  きょうはどうもいろいろとありがとうございました。私の質問を終わります。
  72. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  73. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  74. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今般の職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案につきまして御質問をいたします。  質問させていただきます項目は、公共職業訓練高度化ということに関しまして職業能力開発学校及び職業能力開発総合学校というものを設置するわけでありますが、これは基本計画の第八次計画に基づいてその展望が示されております。今後のこうした公共職業訓練高度化に関する施策の、言ってみれば見込みというか展望についてお尋ねをいたします。
  75. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生御指摘のとおり、平成八年の二月に策定されました職業能力開発基本計画に基づきまして高度な職業能力を有する技能労働者を養成するということで、公共職業訓練高度化を図るために職業能力開発短期大学校全国に二十六校ございますが、二年の課程に加えてもう二年、もっと実戦的で幅広い技能技術をつけるということで今回提案させていただいたわけでございます。  私ども、この法案が成立いたしましたら、大学校化を計画的に整備いたしまして高度な職業訓練が行われるよう、この法改正の趣旨も体して訓練内容充実を図り、あるいは産業界、地域のニーズ等々も踏まえました形での公共職業訓練高度化を図れるよう努力してまいりたいというふうに考えております。
  76. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 この法案によりますと、都道府県や認定職業訓練を行う事業主等も職業能力開発学校設置できるということになっておりますが、我が国では主としてOJTと言いまして、いわゆる実地訓練、企業内訓練というものが非常に盛んであるわけです。それとの関係で、現在事業主設置しているこうした学校ないしはセンターというものはどのくらいありまして、どういう意味を持っているのでしょうか。どんなカリキュラムの内容でどのような仕事をしているのでしょうか。そして、将来それは我が国の職業能力に関してどのような位置づけを有するのでありましょうか、お尋ねをいたします。
  77. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 基本的に職業訓練体系では、事業主がその雇用する労働者について能力開発を行うというのが基本でございます。まず事業主がやっていただくという形で能力開発を進めておるわけですが、その場合、事業主が一定の職業訓練の水準というのを維持しながらしっかりと職業訓練をやっていただくという形をとるのが望ましい姿でございますので、私ども事業主あるいは事業主団体が法令に基づいた形での訓練を行いたいということであればそれを認定するということで、現在まで約千四百程度の認定職業訓練施設設置されております。  これは在職者訓練を中心に行われていまして、具体的な数字を申しますと、訓練科目で訓練生の構成比といたしましては木造建築科というのがございましてそれが二三%、塑性加工科、機械加工科、これは五、六%ということで、民間で約二十万人の職業訓練が行われている、こういうような状況にあります。  この認定訓練中小企業団体なんかの方々が集まって職業訓練を行っておりますので、そこには私ども助成措置を講じながらこれの振興に努めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  78. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今般の改正法の基本理念における労働者の自発性の尊重ということは非常に重要でございますが、中高年を中心に支援するとこれはリストラ対象になるのではないかなどと危惧が表明されておりますが、年齢にかかわらずこうした施策を推進すべきだというふうに考えますが、こ  の点いかがでしょうか。
  79. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 労働者職業能力開発、これはその年齢にかかわらず、職業生活の全期間を通じて段階的あるいは体系的に行われるべきものであるということで、職業能力開発促進法も基本理念としてそのように規定いたしております。  今回の改正は、これに加えてすべての労働者について労働者の自発的努力を助長するような職業能力開発を行うという規定を整備したわけでございますが、自発的な職業能力開発を支援するための阻害要因となっている教育訓練を受ける時間がないとか情報が不足しているとか受講料等の経費が不足しているという障害をできるだけ除いて、自己啓発を勤労者ができるような環境を整備するということが必要だということでその施策を講ずるわけでございます。  ただ、先生の御指摘の中高年齢者に対する自己啓発について、労働者個人にその受講料を援助する制度を今現在設けております。中高年齢者についてはこの助成金制度を設けているものでありますので、その制度を活用して自分の能力を高めるということにより、企業において職場の変更を余儀なくされるような場合に十分変化に対応できる能力を身につけるということで職業安定を図る、こういう趣旨で設けておるわけです。  今回、中高年齢者の範囲を今現在四十歳以上の中高年齢者ということで限定いたしておりますが、これを一定の要件に該当するものについては年齢を三十歳以上、こういうふうに引き上げ措置を講じておるところでございます。
  80. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 とりわけ中小企業を優遇するなどの積極的な支援策は具体的にどのような形で実施していかれるのか、お尋ねをしたいと思います。
  81. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今回の法改正におきまして、自発的職業能力開発を促進するための措置を講ずる事業主を支援するということでございまして、具体的には、企業内で労働者が自発的な能力開発をやりたいという場合にその環境を整備する事業主に対して助成措置を講ずるということを考えております。  具体的に申しますと、例えばフレックスタイム制などを設けて、あるいはそれに加えて、どこの学校へ行ってどういう学科を勉強したらいいかとか、そういう情報不足という面が非常にありますので、そういうものに対して事業主が一定の情報提供を行う場合に受講環境整備奨励金と私ども申しておりますが、そんな助成金を設けたり、あるいは自己能力開発をやる場合に、やはりある程度長期にわたってやらないとなかなか効果が上がらないという面もございますので、例えば一カ月以上の長期教育訓練休暇を導入する場合には、その導入に要した経費や休暇中の賃金の一部を助成するという長期教育訓練休暇制度導入奨励金を設けることといたしております。  この場合、特に中小企業に配慮する、優遇する必要がありますので、そういう意味で高率の助成率、具体的には大企業には四分の一、中小企業については三分の一ということにしたり、できるだけ受給しやすいように支給要件の緩和を行っておる、こんなことで対応したいというふうに考えております。
  82. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 終身雇用制が少しずつ崩れていって企業の枠を超えて仕事を求めていく傾向というものが一般化しつつあると思うわけです。高度な職業能力開発、向上を図るためには学校教育との連携が必要だというふうに考えますが、その点について労働省はいかがお考えなのでしょうか。  また、文部省お尋ねしたいのは、そうした観点からの学校教育の見直しということはあるのでしょうか。
  83. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 高度な職業能力開発、向上を図るという点で、やはり私ども学校教育との連携というのは極めて重要な課題であるというふうに考えております。そういう意味で、この職業能力開発促進法において、「職業訓練は、学校教育法による学校教育との重複を避け、かつ、これとの密接な関連の下に行われなければならない。」というふうに規定されておりまして、文部省とも学校教育についていろんな形での密接な連携をとって職業訓練を行っているところでございます。  例えば、具体的に申し上げますと、専修学校学校教育法上の中に位置づけられておりますが、労働者職業能力開発、向上の機会としてもこの専修学校は非常に有効でございますので、例えば中高年齢労働者等受講奨励金、先ほど申し上げましたその奨励金についても、私どもで指定した専修学校の講座を受講した場合、こういう助成金が受けられるというような形をとっております。そういう意味で、文部省と緊密な連携をとって能力開発行政を進めてまいりたいというふうに考えております。  具体的に、私ども現在、文部省との間で新政策あるいは予算等について意見交換の場を定期的に設けておりまして、そんなような場を活用しながら文部省と連携をとって、この能力開発行政が一歩でも進む方向で考えていきたいというふうに思っております。
  84. 梶野愼一

    説明員(梶野愼一君) 学校教育法で定めております専修学校につきまして申し上げますと、専修学校は実践的な職業教育を行う教育機関でありますことから、職業に必要な能力を開発、向上させるという点におきましては労働省の行っております職業能力開発と同様の目的を持つものでございます。しかしながら、労働省の行う職業能力開発労働者対象に限定しているといった相違点があることから、両者は重複を避けながら密接な連携のもとに対応することが重要と考えておるわけでございます。  また、このような認識のもとに現在のところ、専修学校職業能力開発施設との間の協力事業であります委託訓練事業あるいは専修学校で学ぶ労働者個人への支援事業が行われているところでございまして、今後とも労働省との間で、文部省におきましても適切な役割分担に留意しながら、連携して施策を進めることが重要であると認識しているところでございます。
  85. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 とりわけ、最近話題になっておりますのは、大学生が企業で研修を行うインターンシップのような職目が重要だと考えられて広がっておりますが、この企業におけるビジネスインターンシップについての労働省の御見解、それから文部省の御見解はどのようなものでしょうか。
  86. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 御指摘のインターンシップ制度でございますが、これは学生が在学中にみずからの専攻あるいは将来のキャリアに関連した就業体験を行う、これをインターンシップ制度というふうに申しておりますが、これはアメリカ等におきましては既に広く普及しているところでございます。最近、日本においてもこのような制度に対する大学や企業の関心が高まりつつあるところでございまして、私どもの把握している限りでも幾つかの大学でこれに具体的に取り組んでいるところがございます。  労働省といたしましては、このインターンシップによります在学中の就業体験、これは学生の職業意識を高めるとともに、職業選択を円滑にする上で一定の効果があるというふうに考えておりまして、そのために、このあり方につきましては早急に検討をいたしたいというふうに考えております。
  87. 山中伸一

    説明員山中伸一君) インターンシップ制度でございますけれども、先生がおっしゃられましたように、学生が在学中に自分の専攻でございますとか将来の職業に関連する実際の企業で職業に関連した就業体験を行う産学協同のプログラムというふうに言われております。  インターンシップによりまして、学生が自分で自分の職業選択あるいは人生設計について具体的に考えるという機会を与えられるということで、今後何を学ばなければならないか、あるいはそのためにどういう授業科目をとったらいいかというような勉学意欲を高めるという効果があると考えております。また、大学教育自体にも非常によいインパクトを与えるのではないかと考えているところでございます。  実際にも、例えば長岡技術科学大学でございますと必修で八単位、三カ月から六カ月の企業実習を行っているという大学もございます。理科系に多いわけですけれども、文科系でございましても、例えば中央大学の経済学部公共経済学科では市役所とかあるいは社会福祉施設で学生に実習をさせるというふうに、実際の正規のカリキュラムの中に位置づけて単位を与えているという例もあるところでございます。ただ、まだ少数にとどまっているという状況でございます。  本年一月に文部省が策定しました教育改革プログラムにおきましても、インターンシップ導入のあり方について検討を進めるということにしておりまして、今後大学関係者、企業関係者関係省庁とも連携して、この導入のための方策あるいはその際のルールづくりについて研究、協議して、積極的に取り組んでいきたいと思っております。
  88. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 産学協同のビジネスインターンシップ制度というのは、今おっしゃったようにプラスの面もあると同時に、いわゆる専門的な学問を学ぶという点においてはあるいはマイナスの点もあるということが指摘されておりますので、そのあり方については十分に検討が必要だと思うわけであります。  その点、こういう職業教育というか職業意識と自分の適正な職業を選択するというのは、実は大学というよりも、むしろ高等学校あるいは中学校において何らかの職業へのアクセスのさまざまなカリキュラムが必要ではないかというふうに考えますが、中学校、高校教育と職業教育の点ではどのように文部省はお考えでしょうか。
  89. 池田大祐

    説明員(池田大祐君) 中学校、高校段階での職業教育に関する進路指導というお尋ねでございますが、中学校、高校段階における進路指導といいますのは、基本的には生徒の能力、適性、興味、関心、進路希望等に応じたものを行うことを基本にいたしまして、みずからの生き方を生徒自身が考えて、主体的に進路を選択決定する能力、態度といったものを身につけることができるよう指導しているところでございます。  今後ともこうした観点に立ちまして、中学校、高校段階における進路指導の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
  90. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 進路指導に関しまして、働く女性に対するいわゆる職業意識の啓蒙といいますか、啓発といったものがこれからの二十一世紀にはとりわけ重要になってくると思われるわけです。働く女性に対する、いわゆる女性職を選択するとかあるいは家庭を選択するとか、そういった今までの性別役割分担を解消していくようなカリキュラムが基本的に重要だと思うわけです。  家庭科の男女共修というものは、一九八五年に女子差別撤廃条約の批准とともに改定を見ましたけれども、そうした視点からの教育というものは、文部省ではどのように今検討されたりしているのでしょうか。
  91. 池田大祐

    説明員(池田大祐君) 先生お話しのように、女性がみずからの能力を発揮して社会のいろんな分野で活躍していくためには、男女の固定的な役割分担を見直すということは非常に重要であるというふうに考えております。  学校教育におきましても、男女の平等と相互の協力につきまして小学校、中学校あるいは高等学校の各学校段階を通じまして、社会科あるいは道徳、特別活動等におきまして児童生徒の発達段階に応じまして適切に指導することにしております。  また、先生お話しのように、高等学校の家庭科につきましては平成六年度から男女必修となったところでございますが、ここにおきましても男女が協力して家庭生活を築いていく、そういったことにつきまして十分指導することになっております。
  92. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ILOの有給教育休暇に関する条約、第百四十号というのがあります。この有給教育休暇に関する条約は、世界的に見て労働者の経済的社会的な能力の開発で、教育訓練体制の実態を踏まえながら、労働者に一定の金銭的給付を伴いながらあらゆる段階での訓練、一般教育、社会教育及び市民教育、労働組合教育等を労働者に権利として付与させていくという条約であります。  この有給教育休暇に関する条約は我が国はまだ未批准でありますが、批准の予定はあるのでしょうか。今まで未批准の理由、そして、国際的に大体何カ国ぐらいがこの条約を批准しているのか、お答えをいただきたいと思います。
  93. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) ILOの有給教育休暇に関する条約ですが、これはまだ我が国は未批准でございます。  ILOの条約を批准します際には、法整備を含みます国内体制整備するということを従来から前提にしているわけでありますが、このILOの百四十号、有給教育休暇に関する条約では、有給教育休暇の種類といたしまして、今先生おっしゃいましたあらゆる段階での訓練、それから一般教育、社会教育、市民教育、さらに労働組合教育、こういったものが掲げられているわけであります。  教育訓練休暇につきましては、従来から職業能力開発促進法におきまして、有給教育訓練休暇制度を設ける、努めるということが規定をされておりましたし、先ほど来御議論されていますように、今回の改正をもちまして、長期の教育訓練休暇を設ける、こういった規定を新たに設けるというふうにいたしまして、教育訓練休暇については国内の体制もだんだんと整備をされてきているというふうに思っています。  ただ、先ほど申しましたように、市民教育とか労働組合教育、こういったものを有給で与えるということについては、これは御案内のとおりなかなか国内の法制度等の関係において難しい問題がまだまだあるのではないかというふうに思っております。  したがいまして、このILOの百四十号条約自体は大変重要な条約であるというふうに私ども思っておりますが、さらに検討し詰めていく部分が、先ほど申しましたような点において残っているのではないかというふうに現段階では思っているところでございます。
  94. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今、社会教育に関して有給教育休暇ということはいまだ少し社会のコンセンサスがないというような指摘がありました。  文部省にお聞きしたいのですが、社会教育というものは生涯教育ということでさまざまに地域隅々にわたって展開はされておるわけです。職業能力開発あるいは職業意識の啓発という点でのカリキュラムというものはほとんど見当たらないような気がするのですが、言ってみれば社会教育の基本的なあり方も、戦後の社会教育、それから経済成長期の社会教育と違って、今回もまた時代に即応した社会教育が展開されなければならないと思うわけです。この点についてどのような見直しと展望をお持ちでしょうか。
  95. 長谷川裕恭

    説明員長谷川裕恭君) ただいま先生御指摘ございましたように、社会教育は大変幅広い分野の学習内容があるわけでございます。社会の著しい変化技術の進展等に対応する観点から、実務的な能力や職業に関する知識技術、あるいは職業意識、こうしたものを高めるための学習機会を充実していくということはこれからの重要な課題であると認識しているところでございます。  現在の具体的な取り組みといたしましても、例えば公民館などの社会教育施設におきまして、大学と連携して社会人のための高度な学習プログラムを提供するといった取り組みも行われているところでございますし、また大学や専門学校の公開講座などにおきましても職業等に関する学習機会が提供されているところでございます。このような取り組みなどを通じまして、社会教育におきます高度な学習機会の一層の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  96. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 最後に大臣お尋ねしたいのですが、資源がない我が国におきましては、生涯的な形でキャリアを養成していくという自発性に富んだ職業能力開発政策というものが展開されるべきだと考えます。  その点について、今回の改正を踏まえて、より充実した政策の展開についての御見解と決意をお尋ねして質問を終わります。
  97. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 産業構造の大きな改革の中で、終身雇用制度でありますとか、年功序列賃金、これの見直しが行われつつある、先生御存じのとおりであります。  そういう意味合いでは、企業内でその技術が役立つというのみならず、新たな分野に職を求めて、そこでもその技能が役立つというような人材を養成する。これは産業を大きく発展させるためにも、当該本人の生涯の職業生活設計というようなものにも役立つというようなことで、広い眼のもとで私どもはこういう研修制度というものを生かしてまいりたいと、こういうような考えでこの法案を提出している次第であります。  先生の御意図のとおりの方向で我々も努力をいたしたい。よろしくお願いいたします。
  98. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 最後に、ぜひ有給教育休暇に関するILO条約を批准できるような環境整備をしていただきまして、我が国もそうした条約に加盟をして総合的、包括的な職業能力開発政策というものを展開していただきたいというふうに労働省文部省にお願いをいたします。
  99. 川橋幸子

    川橋幸子君 質問に入ります前に、きょうの日経新聞の「経済教室」の記事を引用させていただきまして、私の問題意識をまずお伝えさせていただきたいと思います。大変きょうの法案審議に私としてはぴったりとした問題意識を述べている記事があると思うからでございます。  書いている人は、アメリカ・カリフォルニア大学の経済学の先生でローラ・タイソン、この方は大変著名な方でございます。アメリカの元経済諮問委員会委員長さん。大統領のお名前は忘れましたけれども、いつか政権の中にもおいでになった方だと思います。  この論文は、アメリカは景気もよい、それから失業率も低下して雇用も記録的に伸びているし、インフレ率も落ちついている、アメリカ経済は大変今好調のようだと。しかしという、そのしかし以降の問題では、所得格差が労働者個人ないしは労働者世帯といいましょうか家庭の間で拡大している、これを懸念された記事でございます。  私が大変共感を覚えましたところは、ローラ・タイソンさんのこの記事の一番最後の指摘事項、まとめとして四点ばかり指摘していらっしゃるんですが、最後、第四点目は、「国民の一人ひとりが生涯を通じて自らの知識技術の向上を図れるように新たな努力をすべきである。生涯学習を単なるスローガンにしてはならない。」という、こんなまとめの記事でございます。  私は、生涯学習を単なるスローガンにしない、日本の中の施策の一環として今回の能力開発促進法がぜひ機能してほしいと思っている、そういう問題意識を持っているということを初めに申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。  さて、今回の能力開発促進法の改正の大きな柱としては、一つは実施体制整備することと、もう一つ労働者個人自己啓発を奨励といいますか促進すると、その大くくりにくくられるかと思います。  実施体制整備のところで、拝見しましたら、現在ある能力開発短大を、ブロック拠点ぐらいに大学校を置くと同時に、あと二十四校ばかりを分校として位置づけるというようなことが書いてございます。体制整備というよりも、まだなかなか数が少なくて、地域的にも都市部ではなくて農村部にあることが多いと。そのような施設の偏在の中で、ブロックに大学校を置いて各地のものを分校化して体制整備というのは一体どんな効果が上がるものなんだろうかというのがちょっと疑問でございました。  それから、県立短大は建設を促進していきたいということのようでございますけれども、県立短大との関係も含めて、全国にありますこうした能力開発短大の再編整備というものをこの体制整備の中ではどのような目的でおやりになろうとしていらっしゃるのか、説明していただきたいと思います。
  100. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生御指摘のとおり、今現在職業能力開発短期大学校全国に二十六校ございます。それを、今回法案が通りましたら、具体的なスケジュールとしては、平成十一年度以降数年度を目途にブロック単位も考えまして約十校程度、沖縄と港湾はちょっと除きますが、そういう十校程度のところを拠点として、そこに二年間足す大学校をつくるということで考えていきたいと思っておりまして、それ以外のことについては、そのブロックの単位でそこの短大については分校化すると。そこでは、原則として二年の専門課程を置いて訓練をやっていただくと、こんなような形で、今の短期大学校を大学校化を図ることによってやはり人材高度化を図りたいという趣旨でございます。  また、先生御指摘の都道府県立の短期大学校との関係でございますが、現在五校設置されておりますが、これについても、今後その地域の実情に応じて都道府県立短大設置の促進を図っていくことを検討していきたいというふうに考えております。
  101. 川橋幸子

    川橋幸子君 地域の実情に応じて各都道府県の中で短大整備されていくことは望ましいわけでございますから、それはぜひ労働省も奨励していただきたいと思います。  現在の短大を大学校と分校にする、きっと現在の機能がなかなか活性化しないこと等を含めまして知恵を絞ってやっていらっしゃるんだろうと思いますが、私は何点かの提言をさせていただきたいと思います。  まず第一点目。大学校に二年年限を延長して実践重視でやるということは、これは職業訓練にとって必須の課題だろうと思います。頭、理論じゃなくて、何というんでしょうか、実地で現場の技術を覚える。先ごろこの委員会でも審議されました地域雇用法なんというのは、集積された日本人の物づくりの高度の技術を日本の中でずっと承継できるようにするというようなことを言っているわけですから、それとマッチするものとして結構かと思います。  ただ、実践重視というのは言葉だけでなくて本当にやらなきゃいけないとなりますと、指導員に人を得なければうまくいかないだろうと、こんなふうに私なんかは思います。ですから、本当に日本の財産としてこれからも後継者をつくっていかなければいけないような高度熟練技能の方を、臨時の講師でもよいですから、思い切って大胆に採用されるとかという、そういう工夫をなさる必要があろうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  102. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今、先生御指摘のとおりだというふうに私ども思っておりまして、特にこれからの大学校化の中で、教える先生が現場をよく熟知し、それに従って実践的な能力を有する者を養成していくためには、やはり先生のおっしゃる高度熟練技能者、私どもこの高度熟練技能者についてどういう方でどういう技能を持っておられるかということを今これから調べていきたいと思っております。そういう人たちにぜひこういう大学校に来ていただいて教えていただくということは非常に私は重要なことだと思っておりまして、これから大学校化を図る場合にそういうことを考えて積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
  103. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ごろ、つい先日発表されました「産業の基盤を支える高度熟練技能の活用と継承に向けて」という労働省委員会の報告書をちょうだいいたしました。この中でも高度熟練技能の継承を阻害する要因として、中小企業では新殺人材確保難を挙げる、これが七割以上、それから大企業でもなかなか社内に指導者がいないというようなことがあるようでございます。  今の御答弁の中にも、あるいはこの報告の中にもそうした技能者の人材のデータベース化を図られるということのようでございますので、それとこの大学校をうまくリンクさせてやっていただくことが必要ではないかと思います。  それで、先ほど来高度化とは一体何だというお話が何回かこの委員会でございまして、私も公共職業訓練高度化というのがまず一体何だという感じがいたしますのと、それから高度職業訓練の実施体制と、高度、高度とダブルで使われる割にはその実態がなかなかぴんとメッセージが送られないといううらみを感じているところでございます。私自身は、高度というのは何も非常に高い理論を学ぶのが高度ではなくて、むしろ物づくりの人材なりあるいは職業人としての基礎知識を持って全体にレベルアップされることだって高度ではないかと思っています。  そういう意味で、今の学校教育は地域中心ということで適応が難しいということでドロップアウトされる若者も多いわけですけれども公共職業訓練をやることによって手を使うあるいは現場を見るというところで、そうした若者に対する教育の効果を上げるということが、むしろ分校なんかでは必要なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  104. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 高度化の点でちょっと私の説明不足でまことに申しわけございません。  私ども、今回法案を提出する前に関係のいろんな企業の方あるいはこういう職業訓練の専門家を集めまして、産業社会の変化に対応した職業訓練のビジョンを考える懇談会を開催して、具体的な高度化の点についていろいろな方面から検討をいただいたところであります。  その高度化の中で、特に生産関係高度化ということで、若干長くなっちゃうかもしれませんけれども、そこのところを引用させていただきたいというふうに思います。  例えば、生産システム技術関係高度化というのは、「商品・製品の企画・開発に参画して、それらの商品・製品に適した生産工程を自ら構築・改善できる」、そういう能力だということでありまして、「生産現場における情報化の進展の対応に必要なコンピュータの活用技術、先端的生産技術、効率的・機動的な生産工程を構築・改善するために必要な生産管理技術」、こんなふうに表現されております。  例えば、簡単な例を申しますと、短大では最後卒業するときにロボットの製作を義務づけております。例えば、相撲ロボットを製作する能力が二年間でつくということであります。二年たちますと工場内での搬送ロボットまで設計、製作できるというぐらいのレベルに上がる、こんなことを具体例で御説明させていただきます。  それから、公共職業訓練の中で全体のレベルアップというのは非常に私ども必要であると思っておりますので、そういう意を含んでカリキュラムの編成等々を考えていきたいというふうに思っております。
  105. 川橋幸子

    川橋幸子君 高度化については私が知らない社会の実態があるのかもわかりません。昔はそろばんだとかワープロ程度なんでしょうけれども、これからはパソコンと語学というのはある種の職業人としての基礎知識かな、そういう実践中心をやっていただけないかなというようなことを私は考えています。  特に障害者の方に対する職業訓練能力開発でございますが、せんだって自動車の免許、教習所の問題、あれが行監から廃止の勧告を受けながら、このたびは無事存続が決まったわけでございます。障害者の方に対してはノーマライゼーションということで一般の施設の中でやることは、もちろんそれが可能な方はそういう方法でよろしいかと思いますが、やはり重度の方、通所に困難な方ということを考えますと、自動車免許、語学、パソコンというのは非常に職業人としての基礎的な部分を、むしろ専用訓練所というんでしょうか、分校というんでしょうか、そういう施設をつくることも必要なのではないかと思うわけです。  いろんな箱物がありますけれども、箱物というのは総花的になりやすい。箱物が目に見えて役に立つということがアピールできるのは、ナンバーワンじゃなくてオンリーワンを目指すことということを私が自治体にいたときによく言われました。  そういう意味で、あそこに行けば必ずこれが得られる、障害者の方はあそこに行けばそれが得られるのよというような、そういうオンリーワンとしての障害者のための宿泊できる施設というのを考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  106. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 障害者の能力開発、これは障害者の雇用促進を図る上で極めて重要な役割を果たしているというふうに考えております。  先生御指摘の、障害者向けの訓練校を全国に十九校設置いたしておりまして、障害者の特性とかあるいはその程度に応じた形での職業訓練を行っているところでございます。今、先生おっしゃいましたように、十九校すべてでパソコン等そういうOA機器に関する技能講習ができるような形での訓練科を設置して具体的に行っておりますし、障害に配慮した宿舎も整備いたしております。  そんな形で障害者が宿泊してパソコン等の訓練を行っているところでございますが、例えば障害者の方々からOA機器の技術向上について短期に習得したいという要望もございます。私どもの十九校の大半の訓練校では、二日か三日程度の短期コースを設けて障害者の要望に応じた訓練ができるようにいたしております。ただ、宿舎の提供についてはすべてというわけけには今現在まいっておりませんが、六校で宿舎に入ってパソコン講習をしている、こんなような形で柔軟に対応しているところでございます。
  107. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ほどローラ・タイソンさんの記事を引用させていただきましたけれども、現在の教育改革というのは、そういう生涯学習ということをスローガンに終わらせないで効果的にやることが多分目的なのではないかと思います。  非常に大ざっぱな物の言い方をさせていただきますと、日本の場合はアメリカで言うビジネススクールとコミュニティーカレッジ、この非常に典型的な二タイプに相当するような教育訓練というのが不足している、こんなふうに言われているのではないかと思います。  ビジネススクールというのはお医者さんですとか弁護士さんですとかプロフェッショナルな層を目指す層への高度な教育ですし、コミュニティーカレッジというのは一般の人々を対象とする生涯教育、若者の転職に向けての教育訓練もございますし、家庭にいた女性が再就職するときの再就職訓練もございます。あるいは引退する定年前の方々に対して趣味と実益を兼ねて退職準備教育のようなもの、こんなところがコミュニティーカレッジでやられていると言われています。  今回の教育改革でさまざまなことが論議されると思うんですが、生涯を通じましてそういう人間の生き方、働き方の軌道修正ができるような教育訓練体系というのを推進する必要があると思うんです。  ですけれども、文部行政の場合は企業あるいは雇用市場の情報がなかなか伝わりにくいということから考えますと、むしろ労働省が積極的に教育改革について発言していくべき役割を持っていると思うんですが、いかがでしょうか。
  108. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生の今御指摘になりましたコミュニティーカレッジ、これは二年制の公立の短期大学でありますが、ここで今先生がおっしゃったように、いろんな人たちに広く門戸を開放して、地域のニーズに応じた形で訓練が実施されておりますし、ビジネススクールも、これは経営学等々を中心とした職業に直結するような実践的な訓練が行われているのは御指摘のとおりであります。こういう形で生涯にわたって教育訓練機会というのをある程度提供できるということでございます。  そういう意味で、私ども日本も生涯学習の観点に立った形での教育訓練機会というのを今後とも拡充していく必要が相当あるんではないかというふうに思っております。公共訓練施設全国いろんなところにございますが、やはり地域のニーズに応じていろんな機会に入れるように門戸を開放することを考えていく必要が非常にあるんではないかというふうに私自身強く感じております。  それから、御指摘の教育改革関係でございますが、文部省におかれましても関係省庁の協力を得ることとされております。労働省といたしましても文部省と連携を一層緊密にいたしまして、職業人の生涯にわたる能力開発推進観点から積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。
  109. 川橋幸子

    川橋幸子君 ぜひ積極的な発言をお願いしたいと思います。  さて、自己啓発の措置が今回この法改正によって重視されていくということで、それはそれで結構なんでございますけれども自己啓発促進のやり方、手法は、やはり企業、会社に対する奨励措置、これを通じて促進したいということのようでございます。ですけれども、有給教育訓練休暇にしても、あるいは労働時間をフレキシブルにするというようなことにいたしても、企業の中で能力開発についてノウハウが蓄積されていない、どういう段階でどういう制度を導入すればいいのか、それがわからないという企業、会社が多いのではないかと思う。  労働省の奨励措置というのは、その奨励措置を使ってもらうための何らかのガイドラインを示すなどのことが工夫されているようですけれども、今回このようなガイドラインの提示ということを考えるべきだったのではないでしょうか。
  110. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 私どもは、労働者なり事業主自己啓発についてどういう形でやっていったらいいのかと、そういうような点について相談援助体制というのは講じております。  今、先生御指摘のガイドラインというのですか、これは私ども平成七年十二月に自己啓発推進有識者会議というのを設置いたしまして、「個人主導職業能力開発推進に向けて」ということで報告書をいただいております。その中で、労働者、企業、労働組合、教育訓練機関、行政などの関係者取り組みに対する提言がなされております。私ども、これは一つのガイドライン的なものではないかというふうに考えて、これをもとに関係者に啓発なり宣伝なり広報なりをしてまいりたいというふうに考えております。
  111. 川橋幸子

    川橋幸子君 必要な情報が必要なところに届くというのは非常に難しいことなんですが、それがやられないと奨励措置も活用されないというんでしょうか、あるいは自己啓発についての情報そのもの、お金と時間と情報、これが自己啓発に必要な要件だとおっしゃいますけれども、情報そのものが届かなければなかなか自己努力も実を結ばないということになるわけでございます。  それで一つ、ビジネスキャリア制度というのがございますね。時間が少なくなってまいりました。済みません、一問飛ばします。同様の問題意識でございますので絡めて質問させていただきます。  今、ホワイトカラーのリストラといいますか、中高年のホワイトカラーの方々の労働移動の問題というものが大変大きくなってきております。ホワイトカラーの場合はブルーカラーと違いまして、特に職種、職務概念がはっきりしない、今までのキャリアの評価、証明がなかなか難しいというようなことを工夫なさってビジネスキャリア制度というものがつくられていますが、どうもこれが浸透していないという、そういう新聞記事も去年あったわけでございます。  必要な情報が必要なところに届くようにするためにはインターネットを使うとか、また文部省の放送大学と連携してキャリア認定の放送プログラムをつくるとか、何か新しい工夫が必要だと思いますが、この点についてどう対応していかれるおつもりか、お答えください。
  112. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今、御指摘のございましたビジネスキャリア制度、これは平成五年度から創設された制度でございますが、ホワイトカラーのこれからの能力評価の制度としては非常に有効ではないかと思っております。御指摘のように、やはりそれを受ける労働者なり企業にこういう制度を知っていただくのがまず大切だというふうに思っております。  私どもは現在、先生御指摘のありましたように、労働省のホームページに労働省トピックスというものを設けてここで宣伝をしたり、新聞あるいは広告等々で、皆さんがこれについての認識なり、どうしたら活用できるか等々についていろんな形でやっているところでございます。なお、不足の点があろうかと思いますので、この辺は十分気をつけて今後とも進めてまいりたいと思っております。  今、御指摘のありました放送大学との関係でありますが、放送大学は広く国民に対して教育機会を提供するものでありますが、能力開発関係からのカリキュラムの内容などの方法を考慮して、文部省とも、具体的にどんな連携のやり方があるか、検討課題としてやっていきたいというふうに思っております。
  113. 川橋幸子

    川橋幸子君 インターネット利用はもうとっくにやっているけれども、うまくいかないんだという御苦心のようでございます。放送大学ですと不特定多数の方に非常にたくさん出せますので、そういう方向での御努力もお願いしたいと思います。  最後に、慶応大学の島田晴雄先生が二十年近くこの自己啓発必要性を言ってこられました。会社がよくなるという時代を超えて、個人が自立して選択しながらやり直しのできる人生を送るためには、自己啓発をむしろ行政の側でサポートする方が失業が少なくなる、いい効果が上がるんじゃないかと、こういう持論で二十年ぐらい前から言っていらっしゃるわけでございます。その方法、企業にはさまざまな特別措置がありますが、個人に対する税制上の優遇措置というものを労働省は要求すべきじゃないかということを言っておられますが、いかがでしょうか。
  114. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 自己啓発に要した費用についての税制上の優遇措置を講ずべきではないかという御議論が経済審議会等々で関係方面からいろんな形で御提言がなされております。  現在では特定支出控除ということでやっておるんですが、非常に税制上職業との関連等々、制度上の技術の問題もありましてなかなか実現しにくい面もございます。そういう意味で、現在私ども自己啓発を促進するための助成金ということでやっておるところでございますが、今後この自発的な能力開発というのが非常に大切な問題であるというふうに認識しておりまして、社会全体での支援のあり方について、その手法、財源も含めて、私ども中央職業能力開発審議会検討をお願いしたいというふうに思っております。
  115. 川橋幸子

    川橋幸子君 税制上の優遇措置について、私あと二分ばかり時間がございまして、最後に大臣からも御答弁いただけるとありがたいと思います。  これはお得になるよという情報がどういうふうに個人に届くかというと、税金というのは非常にわかりやすいPR手段ではないかと思います。行政が支援する場合には、補助金とか融資あるいは奨励措置とかというオンするやり方もありますけれども、払ったものに対して戻してあげるという、こういう税制でもって普及するやり方があるわけでございます。  大臣、労働行政の目玉商品としてこれを省に指示なさるお気持ちはございませんでしょうか、持っていただけるとありがたいと思います。
  116. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 自己啓発については、先生がおっしゃるとおり極めて重要なものだと、こう思っております。  それでは、税制面でどうやったら自己啓発が鼓吹されるかと。やはり、日本の税制というものが今現に存在をしておりまして、一般のサラリーマンは御存じのとおり基礎控除の中に全部入っているということに相なっております。この壁を突破するのはなかなか難しゅうございます。そんなことを言っているようではだめだというようなことで、税制調査会では、大臣になる前の岡野裕が一番声がでっかくて、論陣を初当選のときから一番やっているわけでありますが、なかなか抜きがたいものがあります。  しかしながら、何とか自己啓発を進めればいいと、それならば経営者の側の方に、企業主の方に援助をしますとそれは損金で落ちることが可能であります。したがって、ワンクッション置いた形で自己啓発を鼓吹するようないろいろの施策を持っている企業主に対しては支援をするということになって、ちょっとかゆいところまで手が届かないけれども、靴下の上ぐらいからはこすってこすってかゆいところをかけるということであります。  先生は笑っておられまして、いささか私もこれでは不満だということは共通をいたしておると思います。いま一層勉強してまいりたい、こう思いますので、よろしくお願いいたします。
  117. 川橋幸子

    川橋幸子君 終わります。
  118. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 職業能力開発推進研究会というところの平成八年の報告書がありますが、この報告書を見ますと、「「キャリアは財産」能力開発の成果は社会全体の資産」という表題でこの報告書がまとめられております。  私は、「キャリアは財産」というこの言葉は、まさにきょう審議するこの改正案そのものに対する非常にいい表現じゃないか。この表現に似たものの中に芸は身を助くとかありますけれども、私は、働くというのは、嫌々働いたりあるいは働いた結果に非常に誇りが持てないような働き方というのは、これは褒められたものではなくて、働く意欲を持って、その結果に誇りを持てるようなそういう社会全体であるべきだという考えでおります。  そういう点では、職業人というのは、それは量もある程度必要ですが、やっぱり質への転化というのを常に勤労者は考えなければいけない。前から私はそういう持論でしたので、労働省が所管しているいろいろなところの視察に行った中で、相模原の能開大学というのを視察に参りました。非常に環境もいいですし、そして私が想像していた以上に大変立派な校舎でもありましたし、その学科の内容もすばらしかったです。そして、学長先生と会って長らくお話をしまして意気投合いたしまして、文部省がやっているだけが大学校じゃないんだ、独自のこういう学校があってもいいんじゃないかということで、学長先生と大いに気炎を上げて帰ってまいりました。  特に、能開大は福祉工学というのがありまして、私はつぶさにその福祉工学を見たんですけれども、本当にすばらしいな、これから文部省系の大学校にはないようなそういうものを大いにやるべきだということで、今回の改正について、私は今までの持論が一つ一つ具体的になっているということに対して心から拍手喝采を送りたいと思います。  そういう意味で御質問をさせていただきます。  先ほど同僚議員の川橋委員からも自己啓発のことについて大変すばらしい御質問がありましたけれども、何でも、勉強とか学習というのは人に押しつけられて嫌々するのは、これは勉強じゃなくて、自分が自分の意思によって自分を磨いていくというのが本来のあり方で、この自己啓発に私は大変興味を持ちました。  そこで、自己啓発のことをいろいろと調べたんですが、どうも私が思っているような自己啓発ではないんじゃないかなというような気がしますので、自己啓発ということを使ったその学習の内容、そして今回の改正について自己啓発を援助するという理念、そういうことがちょっとわかりづらくて、ともすると自己じゃなくて、企業が何かこれをやりなさいという企業啓発のような気がしないでもないんですが、そこら辺のところをまずお聞きいたしたいと思います。
  119. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生御指摘のように、自己啓発は自分でやる、こういう意欲を持ってやるというのがやはり基本ではないかと思います。  自己啓発、範囲は非常にある意味で広うございます。職業能力開発する、あるいは向上するということのみならず、自分の教養を高めたいとか人格形成に非常に役に立つとか、あるいはこれは私の非常に好きな分野だから趣味的にやるとかいろんな概念を含んでおるというふうに思っております。  今回、私どもこの自己啓発の範囲、どこまでをやっていくのか、国として、労働省としてどの範囲までやっていくかということを審議会の場でいろいろ検討していただきました。それで、自己啓発の範囲について、労働行政対象としては労働者の現在の仕事に役に立つ能力開発、出向や再就職あるいは円滑な労働移動のために自分で能力開発をやるんだということを主な対象にするという審議会の方からの御意見もございまして、私どもそのような形で自己啓発を進めてまいりたいというふうに思っております。  教養を高めたり人格形成を図るというのは、私は職業生活を生涯渡っていくために非常に大切なことだというふうに思っておりますが、この助成制度を講じてそこまで奨励するのか、その辺は非常に分野としてあいまいなところが、あいまいというよりむしろそこまでやる必要があるのかとかいろんな議論がございますので、そんなことで御理解をいただければというふうに思います。
  120. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私にしましては、企業のニーズに合ったものとか職業の目的に合ったものというふうに限界をつけるというのはまあある程度やむを得ないかなとは思いながら、一芸に秀でた者は万芸に通ずといって、一つ技術にすばらしい技能を磨いていく、それは必然的にやっぱり人格とか識見とかそういうものがついていくことによってより一層尊敬の対象になるわけですから、そういう点ではこの自己啓発の学習内容というものを余り狭くしないで、ある程度幅を持った自己啓発のあり方にしていただきたいというふうに思います。  続きまして、この自己啓発による自発的な職業能力開発というのは、これは先ほども言ったように社会全体の活力を増進していく、それぞれの働く人がそういう自己啓発をして高い技術技能を持っていくということはまさに社会全体の基礎的な資源や資産を私は上げていくという、そういう重大な内容を含んでいるというふうに思います。  そういう点では、先ほど質問にありましたように、こういうことをみずからやる、自己啓発をやって大いに技能を高めていく考え方については、社会全体でそういうことを奨励するためにいろんな措置をとっていかなければ、こういうことというのは勤労者にとってもあるいは企業にとっても、なかなかスムーズにいかないというふうに思うんです。  そういう意味で、こういうことがスムーズにいくような社会全体をつくり上げるために、先ほど税制の問題もありましたけれども、費用を含めまして、そういう社会の構築をするために何かお考えをお持ちでしょうか。
  121. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 確かにおっしゃるとおり、社会全体が自己啓発重要性というのを認識するということは非常に大切なことであると考えておりまして、先ほど申し上げましたように有識者会議を設けて、自己啓発をどんな形で広めていくかというガイドライン的なものをつくって私どもは宣伝をしているところでございます。  それ以上に具体的になりますと、やはり企業に、要するに自己啓発を阻害している要因というのは時間あるいは費用、あるいは何をどこでやったらいいかという情報、こういう三つの阻害要因がありますので、その三つの阻害要因を和らげるなりそれを排除していくような施策をいかに組んでいくかということに力点を置いて現在進めておるところでございます。
  122. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 その政策をあわせて一緒にやらなければ、せっかくいい制度も絵にかいたもちになるという考えが私にはあります。  さて、ちょっと意地悪質問になるかわかりませんけれども、この制度、今度の改正によって助成措置がとられることになっていますが、労働省の調査、民間教育訓練実態調査報告書というのを見ますと、自己啓発を支援するための有給教育訓練休暇を付与していると答えた企業は二三・一%、自己啓発のために休暇を取得しているという労働者は一九・四%、自己啓発のためにとった休暇の種類としては、有給教育訓練休暇で対処しているというのは一三・七%で、あとの約七割は通常の有給休暇をとっているわけです。  こういう状態を見ますと、有給教育訓練休暇制度すらまだ定着していないということですね。それが今回は、有給じゃなくて、なおかつ授業料も払わなきゃならない、こういう個人主導の自発的職業能力開発というのが果たして普及していくかどうかという心配がちょっとあるんですが、その点はいかがでしょうか。
  123. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生御指摘のとおり、有給休暇の普及率というのはまだまだ不十分なものだという形でありますが、私ども、そういうところを何とかもっとふやそうということでいろんな助成金制度をつくってやっていることは先生御承知のとおりだと思います。  今回、自己啓発をやる場合、ある程度長期の休暇をもらってやるというのが大切ではないかということで、一カ月以上の長期休暇、これは有給、無給を問わないんですが、そこをまず普及したいということで、有給の場合には助成はする。ある程度そういう長期の休暇の制度を導入して自己啓発を促進する。やはり有給でというのが理想的だとは思いますが、まだなかなかそこまでに至らない段階でございますので、一カ月以上の休暇を与えるシステムの普及にまず力点を置いてやっていきたいというふうに考えております。
  124. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 本質的には私はこの制度には賛成ですので、それがうまく機能するように、ちょっと心配の念を言ってみました。  さて、先ほどILO条約の話がありましたけれども、私は、自己啓発について日本は一体国際社会の中でどのような位置にあるのか、それを知るために外国の制度を知る必要があるというふうに思うんです。  そこで、日本とは比べ物にならないぐらいすぐれているフランスとスウェーデンの例をひとつ御説明いただきたいと思います。
  125. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) まずフランスにおきましては個人の資格取得を奨励するなど個人自己啓発問題を非常に重視しておりますし、スウェーデンにおきましても学習機会の平等を進めるという観点から個人の学習への支援を行うというのが能力開発の大きな柱となっております。  御指摘のフランスの教育訓練休暇制度についてでございますが、生涯教育の一部としての継続訓練の組織に関する法律というのがございまして、労働者に一定の勤続期間を要件として、一年を限度として教育訓練休暇を取得する権利を認めまして、休暇を付与することを事業主に義務づけております。休暇中に事業主が支払った手当については、職業訓練負担金制度というのがフランスにはございまして、これは事業主からの拠出金で運営されているものですからそこから還付されると、こういうのがまずフランスであります。  スウェーデンにつきましては、これも教育訓練休暇法によりまして、労働者に一定の勤続期間を要件として教育訓練休暇を取得する権利を認めております。休暇取得を理由とする解雇は無効という法律になっております。休暇中の所得保障でございますが、教育訓練休暇法で使用者に休暇中の賃金支払い義務を課してはおりませんが、学習手当法により使用者の支払う教育訓練税により学習に係る費用を援助する仕組みが設けられている、こんなような状況になってございます。
  126. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 先ほどの国際条約の中の御説明がこのフランスとスウェーデンの例にそのまま実現されているわけですけれども、私は、日本の今度の自己啓発制度とフランス、スウェーデンのこのあり方というのは、権利であるかどうかが大いに違っているというふうに思うんです。権利として認められているか、そうじゃなくて、そういうことをやった人は御褒美を上げるよという意味とは全く違うわけで、憲法に認められている勤労権という権利の中には、勤労する自分の力をみずからがレベルアップしていくということを国家に保障されているということは、これは本当に社会全体の一つの財産だと、先ほども言ったように、キャリアは財産ということにつながっていくというふうに私は思うんです。  そして、なおかつスウェーデンでは学習手当法という法律がありまして、学習している間はこの法律によってきちっと生活保障をされているという、これまた本当に日本とは全く違った一つの物の考え方ということで、すばらしいなというふうに思っております。これも早くILO条約を批准しなければ日本はなかなか大変です。  先ほど、自己啓発の学習といたしまして労働組合の勉強をしてもいい、そしていろんな条件の中に労働組合の勉強をするのが優先だというふうにあるわけですから、連合から出ている私としましてはこんなすばらしいことはないと思います。  何でもそうですけれども、適度の緊張ということがなければ世の中は発展いたしません。やっぱりお互いに、企業と組合とが切瑳琢磨しながら社会全体を引き上げるということは、これはその国家にとってもいいことだというふうに思います。このごろは自民党の中からも大政翼賛会にならないようにという発言があるぐらいなんですから、私はこういう物の考え方を積極的に労働省は受け入れながら、一つの大きな社会のレベルアップをしていただきたいというふうに思うんです。  そこで、このフランス型、スウェーデン型、こういう自己啓発型が、先ほどなかなかこの批准をするのは大変だという官房長からのお答えがありましたけれども、しかし、ここで私は、あ、そうですがと引き下がるわけにはいきませんので、しつこくしつこく追及いたします、いずれこういう社会も必要だと。  私も今から四十年ぐらい前、旧制女学校のときは本当に女性差別で泣かされたものでした。そのうち男女平等が来るんだ、そして育児をする者に対しては社会的にちゃんと保障するんだ、介護もあるんだと言ったのが、今育児休業法もでき、介護休業法もちゃんとできているわけですから、私はやっぱり歴史的発展性というのを信じるわけです。  そこで、私は歴史的発展性ということを大いに期待して、スウェーデン型、フランス型のこういう考え方をいつごろだったら入れられるのか、入れる努力をどうするのか、そこら辺をひとつお聞きいたしたいと思います。
  127. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) なかなかお答えしにくい面もございますが、現在私ども自己啓発が助成金制度で何とか一歩でも進むようにということで、今回総合的な支援策として検討をいたしたわけですが、今、その必要性なり重要性をまず社会に広めていくということで、自己啓発推進のためのまず第一歩だというふうに考えております。  フランス型あるいはスウェーデン型のような形での支援策についてどうなんだと、こういうことでございますが、まず、これから社会全体でどういう形の支援をやっていくのかというあり方について、引き続き審議会等で検討してまいりたいというふうに思っております。
  128. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 何か歯切れの悪い答弁でしたけれども、しかし、検討をしたいというその意欲は大いに私は買いたいというふうに思います。  今はそんなことはとてもということであっても、やっぱり人間というのは発展していくわけですから、そういう点で自分の勤労意欲、そして働く技術、能力、人格、識見というものを磨くということは、決してこれは両方にとってマイナスではないわけです。その点は、そういう社会の出現のためにひとつ頑張っていただきたいというふうに思います。  余りここに力を入れ過ぎて時間がどんどんたちましたので、きょうは私がかねてからこういうことがあってほしいということの実現ですので、すっかり喜んじゃって、どんどこ問題をつくって質問を通告いたしましたけれども、どんどん飛ばしまして、この能力開発学校の方に移りたいというふうに思います。  私は相模原に行きまして、本当に環境のいいところで学んでいることに対して、教育というのは文部省一つだけだというのはかえってよくないんで、やっぱりいろんなところがいろんな方法で教育する方が非常に幅広いわけですから、そういう点ではこれは大いに買いたいというふうに思います。  そのためにも、やっぱりそういういい学校に入って学ぶためには、今度二年制の短大にもう二年を足して、それで四年制の大学校にするということですが、仕組みといたしましては、初め短大の二年で入って、入った人の中からまた二年行きたい人は行かせるという、こういう仕組みというのはちょっと何か変だなというふうに思うんですが、最初から四年になりたい人は四年というふうな仕組みにはならないんですか。
  129. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今、先生御指摘のように、二年終わって次また二年、現在そういう方向で考えております。これは、審議会等の議論もそういうことが大勢であったということでそういう形にいたしております。  ただ、四年制一貫の教育訓練の方がいいんではないかということも考えられますので、この大学校整備状況あるいは訓練の実施状況、産業界のニーズあるいは学ぶ人のニーズも考え検討していきたいというふうに思っております。
  130. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は発想が逆で、最初四年で入っていて、それでもう二年で十分役に立つというときは二年でやめたらいいんで、このやり方は短大で入って、途中でやりたくなって四年行くというのは発想が逆のような気がしますので、もう一度そこら辺は再考慮いただきたいというふうに思います。  それから、何を言ってもやっぱり教育をしているときは生活の安定というのは必要なわけで、文部省系の学校であるならば育英資金という奨学資金があるわけですけれども、この点、先ほどもどなたかの質問にありましたけれども、今度の二年間上積みする、この学校に対しての奨学資金的な助成金の状況はどうなんでしょうか。
  131. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 私ども、この奨学金制度を設けておりまして、技能者育英資金と申しておりまして、すぐれた技能者を育成するための一助として、成績優秀でかつ経済的理由により訓練が行われることの困難な者に対して貸し付けを行うという制度を持っております。平成八年度では、例えば短大の場合ですと一人月額四万五千六百円、自宅外ですと奨学金を支給する、こういうシステムを持っております。  なお、今改正によりまして新設される大学校につきましては、当然これが適用されるような方向で検討してまいりたいというふうに思っております。
  132. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 四万何がしあると飢え死にすることはないとは思いますけれども、できるだけ額をふやしてゆっくりと勉強できるような、そういう仕組みをつくっていただきたい。  フランスでは教育クレジットというのがあって、お金を低利子で貸してくれて卒業するまで返さなくてもいいと、卒業した後に条件によって返すという制度もありますし、また、スウェーデンのように、わざわざ法律をつくって八〇%も生活を見てくれるというのがあるわけです。やっぱり教育というのはお金がかかるんですね、ですから、そういうことも十分検討していただきたいというふうに思います。  さて、教育というのは、何といってもいい先生がいないといい教育というのはあり得ないというふうに思うんです。  そこで、私が能開大に行って学長先生と話したときに、まだ日本は文部省系の大学の資格というんでしょうか、また、先ほど何か卒業資格のことを小山先生がお聞きになっておりましたけれども、学士様なら行きましょうかと昔言われたぐらい、この文部省系の大学の学士とか博士とか、そういうものにまだこだわりがあると思うんですが、私は、それはそれでいいと思います。もう社会的に大変認められている。  しかし、今度の大学校というのは文部省系の教育とは全く違う、私は非常にすばらしいと思うんですが、やっぱり社会的に認められるような労働省独自の何かそういう称号をつくるべきですし、先生もしかるべきだというふうに思うんです。文部省系の教授、助教授という、そういう資格じゃなくて、独自につくった先生の資格というのも考案してしかるべきだというふうに思います。  そこで、お聞きいたしますけれども、今の先生陣、これはどういう特色を出したいか、そして今の能開大を卒業した人が母校にどのぐらい先生として戻ってきているか、そしてまた文部省系の教授、助教授とどんなふうな違いの先生をこれからこの学校では必要としたいか、その理念と現状をちょっとお聞かせください。
  133. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 現在の職業能力開発学校の教授、助教授につきましては、やはり文部省系の大学出身者が多いのが実態でございます。  具体的に、現実は教授、助教授等の約三割がこの職業能力開発学校の卒業生であります。そういう実態になっております。  職業能力開発学校が独自性を発揮するためには、やはり実務にと申しますか、実際に物づくりができるということが非常に重要なポイントとなるということで、私ども職業訓練が実際指導できるような人、そういう観点から教授、助教授を採用していると、こういう実態にございます。  それと同時に、現在、職業能力開発学校、いわゆる研究課程、これは大学での修士課程に相当する学科を昭和六十二年から設置いたしておりますが、そこの卒業生がだんだんと増加してきておりまして、そういう方向で一歩一歩これは進めていかなきゃならない。人材育成というのはそんな観点もございますので、そういうことで努力していきたいというふうに考えております。
  134. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大変私は気を強くしておりますし、期待も大だというふうに思いますので、今後大いにこの制度が実のあるものになるように期待をいたしまして、質問を終わります。
  135. 吉川春子

    ○吉川春子君 職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法改正案について質問をいたします。  ことし一月の中央職業能力開発審議会の答申を受けて今回の法改正が行われると思いますけれども高度化、複線化している業務遂行のため、労働者職業能力を高めるための公共職業訓練が強調され、訓練校に専門かつ応用的な職業能力開発、向上の長期訓練課程の設置、このための労働者の自発的な努力の助成に主眼が置かれています。  けさの委員会の答弁でも、高度の技能を有する人材が欲しいと産業界の要求があったからだと言われましたけれども、企業の必要とする高度の職業能力を主として若い人々に施す点が今回の改正点の主眼ではなかろうかと私は思います。  昨年の職業能力開発推進研究会報告では、もっとはっきりと行政の役割について、「急速に変化する経済社会の中で生じる産業界人材ニーズをくみ上げ、自ら先導的中核的な訓練開発実施するものとして、公共職業訓練を行うとともに、その成果を事業主に提供してその行う職業能力開発を支援する役割を引き続き果たしていく」、これが行政の役割だと、このようにしています。  しかし、今日、リストラ、合理化のもと、解雇、出向が横行して、雇用は大変不安定にさらされています。こういう情勢を考えれば、雇用を維持するために中高年にとっての職業能力開発が緊急な課題ではないでしょうか。この方面充実についてはどのように対処され、また実績を上げてこられたのか伺います。
  136. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 私ども、中高年齢者あるいは失業者職業訓練については非常に重点的にやっておるところでございまして、特に高齢者になりますと、今までの知識技能、経験をもとにしてどういう形で訓練をやったらいいかということが非常に必要でありまして、高齢者個人に合わせたオーダーメード型の訓練というのが非常に大切だと思っております。  具体的には、都道府県段階雇用促進センターというのがございますが、そこに相談員を置いておりまして、高齢者なり中高年者の訓練のニーズに応じた形での訓練プログラムを作成いたしまして、それに基づきましていろんな訓練施設訓練をやっていると、こんなような状況にございます。
  137. 吉川春子

    ○吉川春子君 職業訓練は公共職業安定行政の重要な柱であると思います。それは、大企業の求める職業訓練の補完的な職業訓練、これが中心ではなくて、雇用の維持、拡大を目的として行われるという点にあると考えます。  職業紹介の民営化が促進され、派遣の業種をふやし、派遣業者に職業訓練が取ってかわられ、アルバイトの紹介は事実上民間の独壇場になるというようなことになれば、職業紹介行政は早晩幾つかの特殊法人のように合理化の憂き目に遭うのではないかという懸念を私は持っております。そうなっては国民に与えるマイナス影響ははかり知れないものがあると思います。  職業訓練についても、民間企業でも競合的に行っている点に重点を置くのではなくて、労働省ならでは、労働省にしかできない、こういう職業訓練に重点を注ぐことを強く要求したいと思います。この点のお考えはどうですか。
  138. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 私ども公共職業訓練は、全国で年間約四十一万人程度職業訓練を実施しておるわけですが、その具体的な柱としては、雇用対策の柱である失業者に対する無料の職業訓練を提供するということ。あるいは、主として中小企業ですが、中小企業での職業訓練というのはなかなか難しい面がございますので、低料金で在職労働者に対して職業訓練を実施するなりして、いろんな形で公共訓練施設を活用して、そういう失業者なり労働移動を行う人たちあるいは再就職をするような人たちに対して、できるだけオーダーと申しますか、ニーズに応じた訓練が実施できるよう十分配慮しているところでございます。
  139. 吉川春子

    ○吉川春子君 再就職のための職業訓練ということが最も急がれているのは、三井三池炭鉱の閉山によって解雇された労働者です。国内最大の炭鉱、百年以上続いてきた歴史のある炭鉱が、国のエネルギー政策の変更などの犠牲となって、採炭中止、閉山に追い込まれて、多くの失業者が出ています。  解雇された正社員の千二百人の労働者を初め下請の労働者、関連産業の労働者などの再就職は、家族にとっても地域経済にとっても非常に重要な問題です。若くない大多数の労働者の再就職は生易しくありません。多くの労働者にとって、職業訓練が再就職のかぎを握ると言ってもいいと思います。  以下、この問題について若干伺いますが、今回の離職者と三井側が示した雇用の受け皿は何人でしょうか。
  140. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 三井三池鉱山の閉山によります離職者数でございますが、四月十五日現在で千三百八十四名となっております。  その内訳につきましては、直轄が九百五十三名、下請が三百五十一名、関連企業が六十六名、その他十四名と、こういう内訳でございます。  これに対しまして会社が用意いたしました雇用の受け皿につきましては、会社からの報告によりますと、四月十五日現在で三千四百八十七名となっております。これを地域別に見ますと、大牟田、荒尾等の地元が四百三十四名、福岡県の筑後地域が二百二十三名、また熊本県の城北地域が百五十三名で、これらの近隣地区の合計につきましては八百十名となっております。
  141. 吉川春子

    ○吉川春子君 つまり、三井の示した受け皿というのは北海道から九州全域まで全国なわけですね。今の答弁ですと、通勤可能の地域は八百十名だと。全部就職したとして、ですから千四百人近い失業者にとってその半分ちょっとぐらいの地域、あとはもうほかに行かなければならないということは、中高年の失業者が多いわけですからとても不可能だと思いますけれども、年齢の分布はどのようになっているでしょうか、年齢といっても全部言っていただかなくてもいいんです。三井三池炭鉱の会社が示した受け皿の年齢別求人状況を伺いますが、これを四十五歳未満と四十五歳以上というふうにして大まかな数をお示しくださ
  142. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 会社が用意いたしました求人の年齢別の状況でございますが、大まかに言いまして、四十五歳未満の求人、これが千六百八名、全体のうち四六・一%でございます。四十五歳以上が計で千七百二十四名、これが全体の四九・四%、ほぼ半分半分。年齢問わずというのが百五十五名となっております。
  143. 吉川春子

    ○吉川春子君 その年齢別人員を、三井三池の方の示した年齢で四十五歳以下と四十六歳以上で求人の方はどうなっていますか。
  144. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 失礼しました。  会社側の用意しました求人の数字でございますが、四十五歳未満の求人、ただいま申し上げましたように千六百八名、四十五歳以上が千七百二十四名、年齢を問わない求人が百五十五名となっております。
  145. 吉川春子

    ○吉川春子君 今いろいろな数字を言っていただいたんですけれども、要するに地元でしかも会社側の示した求人で就職できる数というのは、失業者の数に比べてうんと絞り込まれてくるわけですね。四百人とかそれぐらいの数字になると思うんです。こういうふうに年齢とか地域、あるいは職種のミスマッチが数字の上から明らかなんですけれども、地元で中高年の炭鉱労働者の就職を可能にするための第一は、やっぱりこうなると会社の努力にすごくまたなくてはならない。  そういう意味で、まず第一にお伺いしたいんですけれども大臣、三井といえば最大の企業、独占企業なんです。今度の大量の失業者の再就職、これについては会社にやっぱり一義的に大きな責任があるわけで、それを国としても強く要求していただきたいと思いますが、いかがですか。
  146. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 三井三池の雇用対策につきましては、特定雇用増大地域の指定、青手帳、黒手帳、それから研修施設の臨時施設増大等々、全力投球で労働省努力をいたしております。先般、労働組合三つの皆さんからもお礼を私は受けまして、こんな経験は生まれて初めてであります。  しかしながら、三井石炭鉱業並びに三井鉱山、両会社の社長には、もう数度にわたりまして努力を促し、三井グループ全体として本件雇用対策に臨むようにという要望をいたしているところでございます。
  147. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう一つは、就職の希望者に職業訓練を施して、そして安定的な就職先を確保するように政府としても努めていただきたいという問題です。  平均年齢が四十七、八歳と聞いていますので、そうするとまだ十年あるいは二十年労働者として働ける年齢なわけです。こういう人たちの安定した就職先という点でいえば、やはり何よりも職業訓練、炭鉱夫として働いてきた長い経験を新たな職業に適用させる訓練、こういうことが非常に必要だと思いますけれども、閉山に伴う職業訓練受け入れ計画、その科目と人数をお示しいただきたいと思います。
  148. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 先生がおっしゃるとおり、やはりこの離職者が一日も早く再就職できるよう、安定所なり臨時職業相談所等と十分連携をとりながら機動的な職業訓練に努めたいというふうに思っております。  具体的には、荒尾に職業能力開発促進センターがございます。そこを中心といたしまして、地元の公共訓練施設等において既設の訓練科の定員の枠の拡大、あるいは需要が多いと見込まれる建設機械運転科等について特別のコースを新設するなり、あるいは大型自動車運転等について自動車教習所への委託訓練などを実施したいというふうに考えておりまして、現在人数としては九百三十人の訓練枠を確保しているところでございます。
  149. 吉川春子

    ○吉川春子君 訓練枠が一応数としてあるんですけれども訓練を希望する科目とそれから設置されている訓練の定数との間にミスマッチがあるわけです。具体的な求人に沿うような形で訓練科目も工夫をして、定数も工夫をしてやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  150. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) この職業訓練の実施に当たりましては、炭鉱離職者の方々の意見なりを聞くためにアンケート調査なりあるいは相談会を実施いたしまして、本人の希望が十分かなえられるようにしたいというふうに思っております。  先生御指摘訓練科目の増設なりあるいはその変更なり、そういうものについては機動的な形で柔軟に対応いたしたいというふうに思いまして、訓練を希望される方が御要望に従って訓練ができるように万全を期してまいりたいと考えております。
  151. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣、先ほど会社の社長に再三再四要望をしていると、こういう心強い答弁がありました。重ねて私お願いしたいんですけれども、要するに三井は全国展開の大企業でいろいろな職種があるわけですから、まず最大限雇用して、そして三井自身もみずから訓練をして雇用する、こういうことも含めて会社に努力を要求していただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  152. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 新たな職能を身につけて新たな就職先を見つけるということが一番重要だと思いまして、山中局長からお話をいたしましたように、その枠の拡大それから特設コースを準備いたしますほか、三井石炭鉱業のあの大牟田の構内に訓練の場を設けまして、そこにクレーンもございますし、それからブルドーザーもありますし、そういうようなものを提供してもらいまして、それに基づいて訓練をするというようなことで協力はしていただいております。  なお、雇用に結びつけるように努力をせいということで、現地に行き、あるいはこちらにおいでいただき、再三再四にわたって全力を挙げて雇用努力をするように申し向けてございまして、その経緯をこれからもじっと見守ってまいりたい、また労働省みずからやらねばならぬことがありますならばその面についても努力をしてまいりたい、こう思っている次第であります。
  153. 吉川春子

    ○吉川春子君 それから、この方たちは職を失うと同時に住宅を失う。今、炭鉱の住宅に入っているわけですけれども、これの明け渡し期限が一年半とか一年というふうに私は新聞報道で見たわけです。  この明け渡し期限について一年とか一年半とかというふうに区切るのではなくて、もっと三井に家主としての積極的な責任を果たさせるということが第一点、それからもう一つ雇用促進住宅を活用して住宅問題に困るというようなことがないように、その二点、ぜひ全力を尽くしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  154. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 住宅は一年半だということでございますが、これは労使の話し合いによりまして決定をいたしたものでありますので労働行政当局としてはこれにあれこれ申すのはいかがなものかという立場に立ち、加えて、先生お話し雇用促進事業団にありますところの移転労働者用住宅、幸か不幸か百九十二戸があいておりましたので、これを全面的に活用してもらうように労働組合並びに会社当局に申し向けているところであります。
  155. 吉川春子

    ○吉川春子君 地元の自治体からは、雇用促進住宅の建設という要望も来ているというふうに聞いております。雇用促進住宅の問題については朝からの答弁でわかっておりますのであえて聞きませんけれども、私は、そのことも含めて住宅がなくて迷うことのないように、長年炭鉱で働いてきた方々の突然の失業ということを思うと本当に黙ってはいられない気持ちです。そういう点も含めて労働省も全力でフォローしていただきたい、そのことを申し上げます。  続きまして、特殊法人改革といいますか行政改革について残された時間で私は伺いたいのですが、特殊法人の削減ということを自民党も打ち出しまして、そして六特殊法人の廃止ですか、こういうことが行われるということも報道によるとあります。行革の目的というのは、単に予算を削ればいいということではないと思います。特殊法人見直してむだを省き、国民サービスの向上に資するということが行革の目的であって、もちろん国民いじめのためにやるのではないということは言うまでもありません。  それで、大臣、この間私は報道で見たんですが、財政構造改革会議の企画委員会で、大臣の発言ですね、雇用保険と労災保険を見直し、九八年度の労働省予算の歳出規模を二千四十億円、三・四%削減すると。雇用促進事業団住宅・福祉事業の廃止などもその対象に挙げています。そして、私がきょう特に伺いたいのは、雇用保険求職者給付金の廃止を打ち出した、この報道についてなんですが、まず大臣より先に事務当局、雇用保険求職者給付金というのは一体どういう経過で設けられた制度なんでしょうか、伺います。
  156. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいま御指摘の高年齢求職者給付金の内容でございますが、この給付金は雇用保険の求職者給付の一つでございまして、六十五歳以上の労働者の方が失業した場合に基本手当の日額の五十日から百五十日分、これは資格期間の長短によりますが、これを一時金として支給するものであります。
  157. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは今お話もありましたけれども、六十五歳以上で離職した人は直ちに引退するのではない場合も就業希望はフルタイム、常用雇用だけではなくて短時間就労、任意的就労など多様化している、六十五歳を超えて何度職安に行っても職業紹介に結びつくことはほとんどない、したがって一時金を支給しつつ公共職業安定所だけでなく多様な機会をとらえて求職活動が行えるように高齢者給付金を支給することにしたというのが労働省説明です。  これは今、何人、平均幾らぐらい支給されているんでしょうか。数字だけで結構です。
  158. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 高年齢求職者給付金の受給者数でございますが、平成七年度で十二万一千百十八人でございます。その支給金額が八百二十四億円、これは受給者一人当たりの平均支給額で見ますと約六十八万円という金額になっております。
  159. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣、このようなささやかな制度、本当に六十五歳で退職される方にとってはささやかな楽しみ、これを行革の名のもとに奪うというようなことは私はふさわしくないのではないかと思いますが、この報道が間違いであったらいいと思うんですけれども大臣、これを削らないでもらいたい、これが私の要求です。
  160. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 要求としては承りました。
  161. 吉川春子

    ○吉川春子君 要求として申し上げたんです。  ついでに伺いますけれども雇用促進事業団の理事長の報酬と退職金、理事の報酬と退職金、数字をお示しください。
  162. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) 雇用促進事業団の理事長につきましては、これは当事業団の役員給与規程に基づき支給されております。理事長の年収につきましては約二千六百万円でございます。理事長の退職金につきましても雇用促進事業団の役員退職金規程に基づき支給されることとなりますが、これは俸給掛ける百分の三十六掛ける在職月数となっておりまして、今までの例でいきますと大体三千六百万円でございます。
  163. 吉川春子

    ○吉川春子君 この間、中退金のときに私はやっぱり役員報酬の金額を伺いました。そして、そのときの大臣の答弁は、これは高いとは思わないという答弁でした。それと違う答弁が出るとは考えられませんので伺いませんが、大臣、二年間勤めた退職金の額、四年間勤めた退職金の額、これがもう本当に大きいと私は思います。世間で批判にさらされているとおりです。私は、こういった方面見直しというのは行革の一環として天下りの禁止とともにぜひ必要だ、やっていただきたいと思うのです。  先ほど申し上げました本当に弱者の高齢者のささやかな楽しみ、その前はもうちょっと多かったんですよ、この制度は途中で改悪されまして額がぐっと少なくなったという経過もあるわけなんです。ですから、行革あるいは特殊法人見直しの何か大きな流れの中でこんなものまで見直してしまうというようなことは絶対なさらないように、私は重ねてこのことを要求しておきたいと思います。積極的な御発言があれば御答弁を伺いたいと思います。
  164. 征矢紀臣

    政府委員征矢紀臣君) ただいまの高年齢求職者給付金の問題でございますが、この制度のあり方につきましては、これは具体的には関係審議会において御審議をいただき、かつ国会雇用保険法の改正法案、これを提出して御審議をいただくことによってこの制度のあり方が最終的に決まる、こういうものでございます。  現在、雇用保険の制度のあり方につきましては中央職業安定審議会雇用保険部会においていろいろ御議論をいただいているところでございまして、その検討の中身としましては、この高年齢求職者給付金のあり方のほか、国会において実現について検討をすることになっております平成十一年四月からの介護休業制度の義務化を踏まえた介護休業についての給付のあり方、それから、ただいまも御指摘のございました自己啓発による能力開発、そういうものを進めるための制度のあり方、そんなところを議論いたしているところでございまして、そういう中で、この高年齢求職者給付金につきましては失業給付として支給されております。  そういうことから、五分の一の国庫負担、これが、一般会計が入っているわけでございまして、その点が、制度の仕組みとして六十五歳以上は基本的に年金による生活の保障、こういう観点からいきますと、年金と雇用保険で一般会計の負担がダブっている、こういう御指摘も他方であるわけでありまして、そういう観点からこの制度のあり方を検討すべきである、こういう問題意識があるわけであります。
  165. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は再度やっぱり削るべきではないということを強く要望して、時間ですので質問を終わります。
  166. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  168. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二分散会