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長谷川清君 科技庁はもう結構でございます。今もう動燃で忙しい時期に本当にありがとうございました。
今、
大臣からの何か煙に巻かれたような、結局
結論的には、
国務大臣としてどうかと、こう言ったからああいう答えになったのかもしれませんが、物づくりの大事さということはだれよりもよく私は知っているつもりでおります。物づくりができるようになるまで十五年ぐらいかけておりますね。その後、キャッチアップ型になっている。戦後最初は食わんかなで、やっと食えるようになるのに十五年かけています。
戦後の五十年を大ざっぱに見ると、多くの物ができるかできないかというころにニクソン・ショックもあったり、あるいは第一次オイルショックがありました。その次には第二次オイルショックが来ました。繊維の構造不況も訪れましたし、その後に参りましたのが重化学工業
部門ですね、造船だとか鉄だとか自動車。その次に来たのが第一次の円高。自由主義経済の大きな波を日本がかぶるたびに、当時はそれぞれの日本の産業、企業はおしめをしていましたよ、倒れないように規制をして、早く物づくりができるようにと産業、企業
育成型で前半走り、今現在規制緩和と言われるのは、四十、五十の力持ちになっているのにおしめをしているのは似合わぬよと、これが僕は規制緩和と思うんだが、そういう大きな波をかぶるたびに物づくりという世界でどう乗り切ってきたか。
例えば私が子供のころは、時計は本当に貴重品で、宝物で、親からもらう
一つの財産でもあった。今はもうだんだんこれは消耗品・何千円。そうすると、時計の第二精工、一〇〇%時計を売っていた第二精工は生き延びていけない。社長が訓令して方向転換したんじゃなくて、環境をまずつくる。提案
制度、会社の中に非常に豊かな応接室をつくって、お茶もコーヒーも、時間中にそこに入ってもいい。入ってもいいというよりも、そこでいろいろと知恵を絞る。結局はいろんなものの
開発、時計をつくる
技術というもの、そのノウハウを引き出してコンピューターつきのおもちゃをつくったりする。二、三歳だけのおもちゃじゃない、大人まで楽しめるコンピューターがつく一個十万もするぐらいのものもある。要はそうやって乗り切っていくんです。
西川布団もそうですね。布団だけつくっているんじゃないです。最初は布団。テレビのコマーシャルでも小錦だったか、あれ、ばあっとやって。ところがそれだけじゃ成り立たぬ。それがやがて寝具全般の産業となる。人間の寝るところにはベッドがあり、ベッドだけじゃなくてカーテンがあり、テレビがあり、冷蔵庫もある。つまり多角経営もそうやって始まっていくんです。
あるいはまた鉄。昔の鉄というのは非常に厚い、厚い割には強度は弱い、それを薄板にするという
技術。日本がそれを
開発してやっと薄い鉄をつくる、鉄板を。あらゆるところにこれが活用される。ところが韓国がそれに追いついてくる。薄いだけの
技術じゃこれもまた売れなくなる。そして、その薄いものにいろんな模様を、インテリアに使えるような新しい
技術の
開発をする。
こういう知恵で、これまでの物づくりの中でみんなが乗り切ってきた。だんだん今もうそういう知恵だけではどうにもならなくなって、そうこうしているうちに、日本はさっき言うように工場を海外に移すという空洞化が進んできているんです。
私は生産性の関東の会長をやっているころも、あのころは上景気ですから世界じゅうから、日本の経済成長の秘密はどこにあるんだと、来る日も来る日もそのノウハウを教える。
労使の
関係の細かい
制度、やり方、工場におけるシステム、ありとあらゆるものを勉強にアメリカからもヨーロッパからも来て、私の
仕事はそれに応対するのが朝から晩まで。その後はもう閑古鳥が鳴いて、日本を振り向く者はいません。
こういった流れで、次の日本の国をどうするのか、創造的科学
技術立国が今まで据え置いた基礎研究を本気でやらなきゃいかぬ。アメリカのようなところは軍事、国防がありますから、いろんな兵器の
開発のための基礎研究はそこからノウハウが出る、それにプラス、もう赤字を覚悟で、借金覚悟で新たに十年前から基礎研究に投入した。
ここに新聞がありますが、四月十九日付の朝日新聞。これはコピーを差し上げていると思いますが、基礎研究重視の
予算、天野さんという評論家が、日本もおくればせながらやっと基礎研究に目が向いてきた、このことを評価するものです。アメリカの例を挙げながら、日本においてもやっとその日が来ているというけれ
ども、富士山のすそ野に立っているだけであって、まだまだ各省庁の現場にまでそれはおりていないと。
これからの
人材の
能力開発、つまりどういう人を
育成していこうとするのか。私はこの要素はどうしても欠くことができないと思いますけれ
ども、
労働省という省庁なり範囲にそれはちょっとなじまない、あるいはそういう分野はないとおっしゃるのかあると
判断していいのか、その辺のところをお聞かせいただきたい。