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1997-02-25 第140回国会 参議院 労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年二月二十五日(火曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  二月二十日     辞任         補欠選任      畑   恵君     石井 道子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 坪井 一宇君                 長谷川 清君                 川橋 幸子君     委 員                 上野 公成君                大河原太一郎君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 野村 五男君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 星野 朋市君                 大脇 雅子君                 笹野 貞子君                 吉川 春子君    国務大臣        労働大臣     岡野  裕君    政府委員        労働政務次官   小林 興起君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  松原 亘子君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本施策に関する件)     —————————————
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二月二十日、畑恵君が委員を辞任され、その補欠として石井道子君が選任されました。     —————————————
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 坪井一宇

    坪井一宇君 岡野労働大臣におかれましては、橋本第二次内閣の閣僚として連日大変元気に頑張っておられるところを見て、参議院代表として心から感謝を申し上げる次第でございます。  同時に、橋本第二次内閣において行政改革最大の目的であり、実行できるか否かが内閣の命運にかかっていることは岡野大臣も十分に認識しておられることというふうに理解しております。  岡野大臣は、郵政省にあって重要な地位にあり、また参議院の御存じのように筆頭副幹事長として歴任され、その手腕は高く評価を受けております。まさに適材を得ているというふうに思っております。  この時代におきまして、行政改革の中で省庁の統廃合などが今問われている最中でございますが、岡野労働大臣としては、行政改革の中における労働省あり方について、肉声でひとつお話をしていただければありがたいと思います。
  5. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 坪井先生には冒頭から分に過ぐる私に対するお言葉をちょうだいしまして、まことに恐縮をいたしている次第であります。  先生の御質問は、労働大臣として今日橋本内閣最大命題なる行政改革についていかが考えるか、こういう御質問だと心得ます。  私といたしましては、就任の際、総理から、一省一庁の利害を超えて、国務大臣として当該預かった省庁を抜本的に見直して行政改革の成果を上げるようにというお話がございました。したがいまして、労働大臣といたしましては、労働本省の組織、機構、定員を初め、その外郭団体等々につきましても、今日の置かれた環境の中でどうしたならば行政改革によって国民皆さん負託にこたえていけるかというようなことで、各局長等に命じまして目下基本からの見直し、これの作業に取り組んでいる最中でございます。
  6. 坪井一宇

    坪井一宇君 大変頑張っておられることをお聞きしておりますけれども労働省ができた背景、あるいは労働省日本国における省庁役割ということも十二分に考慮されて、さらに一層、国民のために労働省はどうあるべきかということも、これからも頑張っていただきますよう御要望申し上げたいというふうに思います。  続きまして、この労働委員会友部議員が所属をし、私ども理事としても会派の時間をとったりあるいは外したりして大変苦慮いたしております。そして同時に、労働委員会という大変いわゆる国民の中枢の委員会の中にその委員がおられたということは甚だ遺憾に思うわけでございますが、この件につきまして大臣の所感がございましたらお話し願いたいと思います。
  7. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) およそ国会議員である者、これは私もその一人だと自覚をしているわけでありますけれども、やはり選挙によって選任をされた国民代表ということで、国のありさま、今後、将来を展望していかが方向に進んでいくべきであるかというような点についての一番の使命が国会議員そのものである、こう思っております。  その中において、巷間伝えられるような、新聞に報道されるような友部議員の行動といいますものは決して国民負託に沿うものではない、一身の利害、これをのみ追求したというようなものではないかと思って、まことに残念至極に存じているものであります。
  8. 坪井一宇

    坪井一宇君 同じ国会議員として、また同じ労働委員会委員として私も岡野大臣と全く同じ考えでございますが、今後こういうことのないように我々も身を引き締めなければならないというように考えております。  それから、我が国において特徴的な雇用慣行であります終身雇用あるいは年功序列型賃金体系は、とかく時代おくれといった評価を受けがちでありますが、私は大変評価ができる仕組みであるというふうに思っております。すなわち、働く勤労者、特に生計の主体となる世帯主雇用の安定や収入の安定を確保すること、また、このことによる勤労者の高い勤労意欲を通じて我が国社会経済の安定、ひいては経済発展を支えてきたものであります。  私は、労働省によって展開される労働政策社会の現状に見合ったものであると考えております。逆に、それが現実に反映しない、いわゆる進み過ぎたものになることは極めて危険であり、その内容いかんによってはこのような我が国のすばらしい慣行を崩壊させる危険すらあるものと思われます。  例えば、最近は言われなくなりましたが、能力給というふうに言われておりますが、仕組みが徹底されれば、入社したての新人が扶養すべき家族を三人抱えた勤続十年の勤労者よりも高給を取るという逆転現象考えられますが、その場合、我が国社会における長幼の序といった美徳が失われ、多くの勤労者勤労意欲がそがれて、その結果として我が国経済社会全体として見ればその活力が失われるというふうに考えられます。特に、家庭における大黒柱というのはやはり必要でございまして、その方よりも若い者が給料をようけ取るということになりますと、家の秩序全体というものが大変な事態に立ち至るんじゃないかなという心配をするわけです。  また、私は、労働省所管男女雇用機会均等法といった法律は、雇用分野における男女の平等、機会均等を確保するための法律だと考えておりますが、その社会的意義は極めて大きく、運用のされ方によっては家庭内における男女役割まで法律で強制するような誤解を与えかねません。このような法律が徹底されれば、差別が生じないように労働者能力評価が厳格に行われ、先ほど述べている我が国雇用慣行に悪影響を及ばすことも考えられます。私は、このような日本的なよき慣行は、そのよい面を十分に評価し、いたずらに変革変革と浮かれて現実を根底から覆すような対処をとるべきではないと考えております。  そこで、労働大臣にお聞きしたいのでありますが、このような、私から見れば非常にすばらしい日本的慣行についてどのように評価されているのか、また今後このような慣行はどのようになっていくものとお考えか、基本的な認識をお聞きしたいと思います。
  9. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 戦後、日本経済産業はあの終戦後の灰じんの中から立ち上がり、おかげさまで五十年を経て世界有数経済大国発展をした。発展をしたその基本は、先生いみじくもおっしゃいました、我々企業の中におきますところの終身雇用制度あるいは年功序列型賃金体系というものが大きな力になったこと、これは国際的視野の中からも認められており、この制度をひとつそれぞれの国においても導入する手があるまいかというようなことまで称賛をされたこと、ついこの間まで有名でございました。ただ、構造改革その他、新しい国際的な、グローバルな市場化というようなものの中で、今日この制度がもう一度新たな眼のもとで検討を進められている、こういうように私は拝見をしているところであります。  特に終身雇用制度につきましては、やはり終身雇用されているというようなことで当該雇用者の方についても、また将来設計を企業当局において考える場合にも大きな意味があるというようなことで、その企業の、言いますならば働くモラールというものの基本がこの終身雇用にあると思っております。  しかしながら、少子・高齢化の中でこういう制度がどこまで維持していけるかというようなこともまた考えなければならないが、少なくも今後、企業において中核に位する雇用者の諸君についてはこの終身雇用制度が維持されていくのではないかなと、こう存じているところであります。  いま一つ年功序列型賃金体系でありますが、技能といいますか技術といいますか、これが日進月歩の発展の中において他企業に、あるいは国際市場における競争に負けないようにしていかなければならないといいます場合に、これは本来、賃金でありますので労使間の話し合いにゆだねる分野だと、こうは思うのでありますが、この部分については多少の変革もあるが、やはり労働者モラールというような意味合いでは重要な評価がなされていくのではないかなと、こう存じているところであります。
  10. 坪井一宇

    坪井一宇君 大臣の答弁はまことに結構ですが、一つ法律背景の中には、労働だけの問題じゃなくて、それか社会全般に通ずるもの、家庭内における問題も多数含まれている。ですから、そういう法律が先走って、外国がこうたがら、ここがこうだからといってやることが果たしてすべて正しいものか。あるいは外の影響力を受けていわゆる能力給というのが最近非常に問題になっております。これが果たして日本の今の秩序を維持する上で私はどうなんだろうかということをもう一度お聞きしたいと思います。
  11. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 働く皆さんからしますと、自分能力を存分に発揮でき、生きがいを感じ労働提供をする、それがまた一般外部からも正当に評価をされる、これが一番ふさわしい経営のあり方だ、あるいは労働提供あり方だと、こう思っております。  しかしながら、能力のあります者も、あるいは能力のいささか劣ります者も全く同様に処遇をされるということでありますならば、能力のある者からしますと、正当に評価をされておらないのではないかな、こう思うでありましょうし、能力のいささか足らざると、こう思っている者も、ああこれでよいのかというようなことに相なりますので、その辺、長短をそれぞれ加味して全体が自分の力を大きく発揮し、その当該企業が伸びる、産業が伸びる、そうして日本経済的に発展をするというような長い目の中からそれぞれしかるべき給与体系というものが労使間において結論が出されていくものと、こう信じているところであります。
  12. 坪井一宇

    坪井一宇君 大臣のおっしゃるように、労使間の問題は問題ですけれども労働省としての基本的な考え方は、今後そういうことに関しましては、いわゆる年功序列型賃金という日本企業の持っている特徴、よさというものをいかにお考えがお聞きしたいと思います。
  13. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 再三申し上げておりますように、戦後日本の興隆はこれによって実現をされたものである、新しい世界的なカレントの中でこの長所というものをいかに生かしていくかと。賃金体系労使間の話し合いでありますが、その下支えをする仕事労働省仕事でありますし、またそれらの考え方の周知・啓蒙活動、これもまた労働省にゆだねられているものだ、こう存じております。差配よろしきを得て頑張ってまいりたい、こう思っております。
  14. 坪井一宇

    坪井一宇君 大臣、要望しておきたいのですが、一般的社会から見ると改革や改善の方が声が大きいんですね。ですから、今までのやり方のようにこうやるということを、何となく労働省の動きを見ますと、日本の従来の賃金体系を変えていかなきゃならない、あるいはやらなきゃいけないということが前面に出過ぎているのじゃないかな。それが一つ社会秩序をつくってきた。何年も働いて、そしてその技術を習得された。しかし、その新しい技術を習得した新しい方は、もっとすっとその技術はこのごろ簡単に伝授できる。そうなりますと、その辺のバランスが非常に難しくなってくるんじゃないかな、こういう感じがするわけなんです。  ですから、社会との適合性というのは労働省にとって非常に大事な問題じゃないかなというふうに私は考えております。非常に重要な省の役割というのはそこにあるんじゃないか。労働問題だけを考えるんじゃなくて、社会におけるいろんな長幼の序というものが失われてまいります。あるいは家庭内において、後に問題にしたいのですが、かぎつ子であるとかいじめっ子とか、これはやはり家庭内の教育ということが大変言われてまいりました。  最近、経済的要因でそういう話も出なくなった。一体だれが子供を育てているんだ。だれが子供の面倒を見ているのか。それすらもわからないような、しかも男女雇用均等法でほとんど女性の方が深夜残業をして、あるいは出張中だといったらだれが子供を見ているのか、その点どうお考えですか。
  15. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) たまたま男女雇用機会均等法に触れられました。これは先生がおっしゃる、家庭は極めて生活の核になる重要なものだという点に十分に思いをいたしまして、やはり家庭生活と職場における生活というものが共存をできるような、そういう環境づくりを頭に描きながら、今度御審議をいただこうと思って法律案を準備いたしているところであります。  したがいまして、安心して子供さんなら子供さんが生まれるような環境づくりであり、生まれた以上はこれを育てるというようなこともできるようなことにしてまいりたいというような意味合いで多くの条項を備えておりますので、ひとつ御審議を賜りたい、こう思っております。
  16. 坪井一宇

    坪井一宇君 これは私どもの方でも提案したやつですのでそれなりに納得しますけれども、例えば女性が深夜残業可、あるいは出張可といったときに、子供は一体だれが見ているんですか。男が子供を全部見ること、これもなかなかこの社会の中で恥じる。そういったことがこういう法律ができてくるとだんだんそういう時代になってしまう。私は、そういう日本一つのモラル、一つ考え方というものがこういう法律で非常に変わってくるんじゃないかなと。ですから、やはりそれで行くならそれぐらいのちゃんとした準備が要るんじゃないか、それがなくて法律だけを先行させてしまうというところに私は疑問があるので、いかがですか。
  17. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) お答えいたします。  坪井先生のお考えはお考えとして尊重させていただきたいと思いますが、家庭における子育でのあり方、夫婦のあり方というのはそれぞれの御家庭で御判断されればよい問題であるというふうに私自身は考えるわけでございます。  そして、今回の雇用機会均等法改正は、女性たちが性によらないでいろいろと社会の中で活躍できるような状況をつくっていくということでありまして、決して全員をそういうふうにしろと言っていることでは全くございません。豊かな社会、多様な社会というのはそれぞれの選択肢がふえる社会であるというふうに思いますので、子供自分の手で育てたい、たくさん産みたいという女性はそういうふうにしていただくこと、大変結構だと思いますし、奥様をおうちに置いておきたいというだんな様はそれはそれで、私どもは決してそういうだんな様を説得しようということは全くございません。  ただ、女性が女であるというだけで働けないというような状況を変えていきたいということでありますことを御理解いただきたいというふうに思います。
  18. 坪井一宇

    坪井一宇君 女性が働けないということを聞いているわけじゃございませんので。  ただ、今おっしゃったように、一つ社会的役割というのは、労働の問題も大事ですけれども家庭における役割も大事、社会における役割も大事なんですね。それが、そういう法律を出して、そして同時に、家におばあちゃんもいない、おじいちゃんもいない、家の子供の面倒も見ない、出張行け、あるいは深夜。これは僕は逆に言うと女性を保護してきたんじゃないかな、ある面で。そういった点は、それを男と同じようにやれということが果たして理論として正しいかどうかという非常に疑問を持っているんですよ、実際に。  ですから、すばらしい女性もおられます、しかし、力というんですか、体力というのは違うところあります。そのかわり女性の繊細なところも必要だと。それを一律に法律一緒なんだというのはいかがなものかということを聞いておるんですが。
  19. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性の中にも力の強い方もおられますし、弱い方もおられるわけでございます。均等法女性たちがその能力を十分発揮できるようにするために改正をしたいという法律でございますし、また今回の法律改正の中にも、男女がともに健康でバランスのとれた職業生活家庭生活を送ることができるような環境整備ということにつきましても十分配慮をさせていただいておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
  20. 坪井一宇

    坪井一宇君 確かに男にまさるような方もおられますけれども、相対的に見てそういう形で私は人間というのは生まれてきていると思うんですよ、実際には。それはやはり、そういうものを踏まえてきているから女性をその面で保護しなければいけない、男性はそういうふうに働かないけないということがあると思うんですよね。それを全部何もかも一律にしていって、それで社会でその受け入れ体制があるのかどうか、実際には。実際は大変苦しんでおられる方も多いんですよ。私の娘も今ある会社に勤めていますが、総合職で入って、一般職の間で大変厳しいんですね。それで女性同士の葛藤も大変なんですよ、社員同士の。ですから、法律が進むことによって逆にその中でかえって厳しさを増しているんじゃないかというふうに思うんですよね。そういった点は、法律をつくる背景の中ではそういうことを常に考えながらしなければ、法律が先へ走ってしまう、私はそういう点を今お聞きしておるんですが、いかがですか。
  21. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 法律だけが決して先行しているというわけではございませんで、どちらかというと、法律というよりも今先生の御指摘の女女間の問題ということがないようにするように、それぞれ女性たち意欲能力に応じてきちっと処遇され評価されればそういう社会ではなくなっていくというふうに思うわけでございます。  そういう点、女性であるがゆえに女性女性の足を引っ張るというような不幸なことがないような社会をつくっていきたいというようなことで努力は重ねていきたいというふうに思っております。
  22. 坪井一宇

    坪井一宇君 異議ないですけれども一般職総合職はいつごろどうして分けられたんですか、それをちょっと教えてください。
  23. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) これは会社によっていろいろでございますが、普通は入社のときに一般職総合職というコース別雇用管理制度によって分けておられる会社が多うございます。ただ、中には一般職総合職の間にブリッジをかけるというんでしょうか、相互に行き来ができる、相互というか特に一般職から総合職に転向ができるというような制度を設けておられる企業さんもたくさんあります。
  24. 坪井一宇

    坪井一宇君 そこで、一般職総合職の間に、その格差とかいろいろな大変ぎくしゃくした問題が会社の中にあることは事実なんです、実際には。それから、我々はそうだと思わないことが世の中、違う世界では大変なことになっているということも事実だろうと思うんですね。あるいは女性で、自分が受けるときに別に格差はなかったんだけれども一般職総合職、難しいから一般職を受けた、それで受かったと。そやけど、あの人とそんな差がないのに随分何年がおる間に差がついてしまう。初めから随分差つけられておるんですね、いろいろな面で。そういった点を労働省はどう考えているのかということ。
  25. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) まずは労働契約の時点で、コース別雇用管理といいますのは、総合職というのはこういうような仕事をして、こういうふうに回して、将来こういうふうになりますと、また一般職はこうですというような形での雇用管理がなされているわけでございますから、ある程度の差があるというのは最初からおわかりになった上で受験をされ、採用されているというふうに考えるものでございます。  ただ、コース別雇用管理制度につきましては、既に平成三年に「コース別雇用管理の望ましいあり方」というものを労働省として発表いたしまして、できるだけコース別運用方法、それからコースの定義をはっきりしていただきたい、そしてまた、その運用においても公平にしていただきたいというようなことで指導をさせていただいているところでございます。
  26. 坪井一宇

    坪井一宇君 今コース別お話があったんですが、これは本当に差別を生むんですよ。これはやはりもっと徹底して労働省としても指導しなければ、そういう風潮は随分あるんです、各社の中で。その背景になっているのはやっぱりそこにあるんですね、最初試験を受けたときからそうなんだと。  これは我々の時代はそうじゃなかったんですね。自然に入ってこられ、その後に自然に係長、課長になる、当然あの人なら仕方がないな、いけはるやろなということもあった。今はその試験を受けるときから、入り口から人生は決まってしまっておる、会社におる限り。その辺の変化を、もう少し働く人のためのことを考えなきゃね。入り口からもう人生が決まってしまったような感じコース別、こういうことがいつの時代に定着したのか。実際には、男女雇用均等法一緒に並んでこういう問題を含んでいるんじゃないか、そういう点も再検討しなきゃいけない時期に来ているんじゃないかなというふうに思うわけです。
  27. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生おっしゃるように、コース別雇用管理制度というのは均等法以前にも、現在コース別雇用管理制度を導入している企業の約三分の一程度には存在したというふうに記憶しておりますが、また、男女雇用機会均等法ができたことによってコース別雇用管理制度を導入された企業もかなりございます。  ですけれども、先ほど申し上げましたように、その「望ましいあり方」の中で、私どももこのコース間の転換を認める制度をできるだけ柔軟に設定してほしいというようなことを言っております。先生おっしゃるとおり、伸び伸びと働いていただくためにはやはりコース間の転換が柔軟に行われ、やる気がある人には幾らでも総合職になっていける制度ということが望ましいというふうには考えております。
  28. 坪井一宇

    坪井一宇君 ですから、その点をこれからもしっかりひとつ労働省としても御指導賜りたい。やはりそれが人々の働く意欲に私はかかわってくる問題じゃないかなというふうに思っております。特に、こういう男女雇用均等法案などと聞きますと、今までの持っておられた権利というのですか、保護されているものを外されて、対等じゃないかと、こうせいということが非常に多いんですね。そういう法律のつくり方というのがやはり疑問じゃないかなと。  長年の慣行女性はこうなんだという日本的な慣行があっていいんじゃないかな、そういうふうに保護されるのがあっていいんじゃないかなと。その上でそういう法律を決めていく、その姿勢が私は必要じゃないかな、そういう思いやりがあっていいんじゃないかなと。ですから、男と同じように働け、出張も行け、残業も深夜までやれと。今までしなかったものを、それをとってやれということは私は家庭生活に大変影響があると思うんですよ。あるいは社会生活に影響がある。  今言ったように、子供はだれが育てるんだということになってきます。男女一緒に育てなさい、そんなことは余りできないでしょう、実際には。物で書いたりこういう文章で読むのは簡単なことかもしれませんけれども、実際にそれが、家の中でそういうことが行われているのかどうか、それはごく少数じゃないかなというように思うんですね。  ですから、最初から一貫して言っているのは、日本一つ考え方、こういうものはしっかりと守るんだと、その上にどういう法律をつくるんだという姿勢をひとつお願いしたいと思います。大臣、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  29. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 今のお話の、例えば男女雇用機会均等法に伴う労働基準法で女子保護規定を撤廃するといいますのは、先生お話になった言葉では、深夜労働をしなければならない、休日労働をしなければならないということに趣旨があるわけではありませんで、今までは深夜勤も休日労働も禁止をされていた、やってはならぬということになっていた。しかし、やろうと思えばやれるようにしたよというのが今度の規定の改正の趣旨であります。  また、前段でお話しになりました、一つコースが決まったならば、それをずっと踏襲をしていくということでは全企業必ずしもないのではないか。私はある企業体の中で人事、労務を長いこと所管をいたしておりました。A級コース、B級コース、C級コースありますが、そこでその企業体に入ったといたしましても、その後の本人の勤務態様のいかん、あるいは選抜試験制度がいっぱいありまして、したがって、Aコースで入った者も能力が劣るということでありますならばBコース、Cコースコースを事実上たどるということもありますし、B、Cコースで入りました者もその選抜試験によりましてBコース並み、あるいはAコース並みのキャリアに乗るということもある。人事といいますものは、その企業体の発展と、それから働く皆さん意欲というようなものをうまく絡み合わせて全体が発展をするようにという妙を得た人事をとるべきものだと、こう思っております。  労働省としましても、いろいろな機会にその面の周知は努力をしてまいろうと、こう思っておるところであります。坪井先生お話、御意図、十分心得たつもりでありますので、御教導ありがとうございました。
  30. 坪井一宇

    坪井一宇君 最後の質問になりますが、ほかに時短やいろんな問題用意しておりましたけれども、もう時間がございませんのでこれで終わらせていただきますが、いずれにしても、深夜業あるいは出張、今までできなかったができるようにしたということは、そちらが思っている以上に企業はそれを利用するときが非常に多うございます。ですから、それを拒否するというのは非常に難しいんですよ、やることになったら。その辺は非常にそれはそういうものだということを、企業企業の論理からいって自分の都合のいいのを押しつけるところがありますけれども、しかしそれだけじゃやっぱりよくならない。ですから、基本的にそういう姿勢というものを労働大臣にこれからもお願いしておいて、私の質問を終わらせていただきます。
  31. 星野朋市

    ○星野朋市君 きょうは、この前の大臣の所信に関しまして全般的な質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、大臣の所信の中に豊かさを実感するとか豊かさを実感しないという言葉がしばしば出てまいります。たしか五カ所ぐらい出てくると思うんです。非常に基本的な問題なんですが、豊かさというのは大臣はどう考えておられるのか。これは後で御質問を申し上げますけれども、しばしばここのところ政府のいろいろな計画書その他に豊かさという言葉が非常に安易に使われているように思うんです。豊かさというのは今どういう御認識なのかお答えを願いたいと思います。
  32. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 私の所信の中に、先生おっしゃるとおり、豊かさということが何度か出てまいります。私も所信をお話ししながら、これは余りたくさん出過ぎているな、決していい文章ではないなと、こう思いつつ読んでいたところでありますが、しかし、事ほどさように今の日本に欠けているものは真の心の豊かさの実感に欠けるということだと思っております。  企業経営家でもいらっしゃる先生でありますので、少し冗長かとも思いますけれども、先ほど坪井先生の御質問に対する答弁の中でも言いましたが、日本のこの経済発展の五十年、これは追いつき追い越せ型の経済発展一辺倒というようなことで、しゃにむに努力をしてまいった半世紀だと、こう思っております。そうしてある程度の成果というものが出た。世界有数のGNP、大きな国だと、こういうふうに評価はされるようになりましたが、その後の段階に至って、私どもはしゃにむに働いてきたけれども生活のゆとりというものがあったであろうか。  そこで、同じ言葉でありますが、心のゆとりというものが現実に心の中に実感できるであろうかというような反省の考え方というものが出てきまして、これからは日本の方向づけとしては、生活のゆとり、心の豊かさ、そういうようなものが体感できるような、そういう方向転換をやるべきだと。生活大国というような言葉が宮澤内閣当時出てまいったわけでありますが、そういう意味合いでの心の豊かさ。  これでよろしゅうございましょうか。なお御質問がありますれば、補足をすることにいたします。
  33. 星野朋市

    ○星野朋市君 答えにはなっておりません。  今大臣がおっしゃったことは心のゆとりがないということなんですね。私が聞いておるのは、今まで大臣または政府が使っておった豊かさという内容は何なのかと聞いておるのでございますから、それをまずはっきり把握した上でないとこの後の議論がなかなか進まないと思うんです。  私が聞いておるのは、今まで使っておった言葉の豊かさというのは何を意味しているんだと、そういう聞き方をしておるんです。
  34. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 私と同世代の星野先生であります。したがいまして、昭和十九年、二十年、二十年代、当時の私ども生活実感といいますものと、以来五十年を経ました今日の生活の実感というものとはどのくらい差が実感されているかなということを前提に置いてお話をいたしました。  私どもよりも二十年、三十年ぐらい後からお生まれになられた皆さんでは私の言葉が通じないと、こう思いましたが、同世代に生をうけ、同年代にあの苦難を踏み越えてまいった先生と私という意味合いで心の豊かさというものをお話をした次第であります。
  35. 星野朋市

    ○星野朋市君 心の豊かさというのは、実はこれから起こる問題なんですね。後で別な形で御質問をいたしますけれども、村山内閣のときに構造改革のための経済社会計画というのが出されました。その中に「「豊かで安心できるくらし」の課題」というのがありまして、これは本題とはちょっと違って、これに付随した二十一世紀ビジョンの中に出てくるんですけれども、「「豊かさ」には、経済活動の成果に加えて、文化の創造・享受、充実した日常生活の営み、旬の食べものやおいしい水に恵まれたくらし、環境への負荷が少なく循環を基調とし自然・生物と共に生きる生活、美しい風土、静謐な生活環境、慈愛や奉仕といった社会活動の成果が含まれる。」と、わざわざ、こういう断り書きをしてあるんですけれども基本になる豊かさというものについては全然触れられていないんですよ。  それで、いわゆる勤労者が豊かさを実感できないという実態的な内容について何かということを私なりに申し上げますと、日本勤労者にとって豊かさを感じないということは、一つは家の問題があり、一つは通勤の問題があり、一つは勤労の時間の問題がある。この三つが主として豊かさを感じさせないという意味合いに使われていると思うんです。物質的にはもう十分これは世界で一番ぐらい日本というのは恵まれている国ですから。私はそう思うんです。  ところが、これは京都大学の会田教授の理論なんですけれども日本人というのはもともと仏教思想だと。仏教思想というのはお彼岸の思想だから、要するに現世においては切りがないんだと。外国人におまえたち給料はあと幾ら欲しいかと言うと、とんでもない高い給料を言う人間と現状で満足していると言う人間とに分かれるんです。ところが、日本人の勤労者に給料をあと幾ら欲しいかと言うと、必ず今より一割ぐらい高い金額、しかし、幾らもらっていても切りがないと言うんです。ここがいわゆる仏教の彼岸の思想だと。だから、一番いい例でいうと、この思想をうまく生かしたというやつは、例えば電卓というのがあります。外国だったら、およそ七ミリぐらいのものができたときに、もうこれで十分だと思うんですけれども、ところが日本人は切りがありませんから、ついにペーパーの電卓までできてしまった。  こういうように、日本人というのは、現状に決して満足しない、少し上のものをいつまでも追っかけていく、こういうところにあると思うんです。  そうすると、今私が言った豊かさという問題について何が問題なのか。家の問題なのか、通勤の問題なのか。労働省に関係あるとすれば、さらに最後の勤労時間の問題、まさしく千八百時間の問題にかかわると思うんですが、そういう意味で大臣はどうお考えなのか。
  36. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 大体、星野先生はおわかりになられた上で私に質問をなさっているように思います。  私どもは、下部構造、上部構造という言葉を若いころ長い間使ってまいりました。例えば、衣食足りて礼節を知るという言葉があります。そういう意味合いでは、下部構造がしっかりしておりますと、その上に立った、例えば自分生活が安定をしておれば心にゆとりというものが生まれて、新たな文化、教養、最近ではグルメに至るまでの上部構造に反映をするということだと思っております。その下部構造について例えて言いますならば、先生のおっしゃる家が狭い、あるいは通勤に時間がかかる、これは主として日本のインフラの整備がまだおくれている面が多いのではないか。  実際にヨーロッパあるいはアメリカの一部等に行きますならば、非常に広い公園があって、そこにゆったりと老夫婦が日光浴をしている。ところが、我々はそれを一日の間に五カ所六カ所をあちこち見て回ろうというので、その老夫婦とともに日光にさらされていろいろ人生を語るというようなことがないのですね。そういう意味からすると、あちらの皆さんは非常にゆとりがあるが、我々はどうも豊かさがないなというようなもので、やはり社会資本というようなものをよりまだ充実させていかなければならないという問題があろうかと思っております。  もう一つ先生に甘えてお話をするならば、貧すれば鈍するという言葉があります。と同時に、足らざるを憂えず等しからざるを憂うという言葉があります。先生がもうちょっとでも豊かさを求めるというのはそういうことにあろうと思っております。  客観的に見れば、日本世界のいろいろな国々から比べてある程度経済的には富んでいる。だけれども、やはり富んでいる皆さんの中でお互いさま比べ合って、どうも彼の方が一歩上のような気がして、私どもの方の経済生活がもうちょっと劣るというような意味合いで、同じような種類の、ある程度価値の同等なそういう労働提供をしているにもかかわらず、そこに差異があるというような現象がこれあるとするならば、そういう意味合いで、やはり心の豊かさといいますか生活のゆとりの実感が欠けるというようないろいろな問題がこの中にあろうと思いますが、やはり労働省だけではなくて橋本内閣全体として、心の豊かさというようなものをこれから経済の豊かさにかえて追い求めてまいろうではないか、こういう共通認識があろうかと思っております。岡野裕としてもそのつもりで頑張りたい、かように存じているところであります。
  37. 星野朋市

    ○星野朋市君 この問題を論議していますといつまでたっても切りがありませんし、所信の中にうたわれている割には、労働省としてどう対処すべきかという問題は、私はその中では限られてくると思うんですね、労働時間の問題だと思うんですが。これはちょっと長くなりますので、一応後でまた触れることといたします。  さてもう一つ、そういうこととは裏腹に、二十一世紀というものを労働省としてはどういうふうにとらえられているか、それをお聞きしたいと思うんです。  というのは、今いろんな問題はありますけれども、一九九〇年代の初めには、日本の人口は二〇一三年もしくは一四年にピークを迎える、こういうふうに言われておりました。もっと前、昭和四十年、いよいよ日本が高度成長期にかかるかというときに、厚生省の人口問題研究所は、これから日本経済は高度成長に向かっていわゆる勤労者の世帯も豊かになるから、そういうもとに推計すると日本の総人口は一億四千万、ここまでふえるという予測をしていたわけですね。  ところが、一九九〇年代の初めに、とてもそれは無理だと、ピークは二〇一三年か一四年。ところがついせんだってまでは、いやもっと早くなって二〇一〇年がピークだろうと。ところが、先日発表された人口問題研究所の日本の人口のピークは驚くなかれ二〇〇七年、これがピークであると。今この調子でいきますと、一年間に一年ずつ前倒しになっているわけですよ。そして、二〇五〇年には日本の人口は一億人を切るだろうという予測まで出されている。  ここから想像されるいろんな問題というのは、二十一世紀は日本にとってどうなんだということに関しては根本的にやや暗い感じがするんですが、労働省はどう考えられておるか、御見解を伺いたい。
  38. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 人口の推計につきましては、ただいま先生御指摘のとおりだろうと思います。  そういうことを踏まえてどう見るかということでございますが、私ども雇用政策という面から労働市場のあり方論、そういう面から見ますと、二十一世紀に向けて労働力需給の面で見ますと、一方で、ただいまお話しございましたように、国際的にいわゆる大競争時代というようなことで非常に産業構造が大きく変わっていく、いかざるを得ない。それが予想される中で、一方、労働力の供給面から見ますと、急速な高齢化、すなわち少子化が進展する。そういうことによって、ピーク時がただいま二〇〇七年というお話もございましたが、労働力人口が減少し、超高齢社会が到来するということは、これはもう避けられないというふうに予想されるところでございます。こうした変化に適切に対応できなければ、我が国において経済活力も失われ失業が増大する、そういう心配も出てくるだろうというふうに考えております。  このような中におきましては、国際社会の中で我が国経済活力が維持されるよう、そのための必要となる人材の育成あるいは確保が行われる社会、あるいは年齢、性等にかかわらず意欲能力を有する者が安心して働ける社会、これをどうやってつくっていくか、それが非常に重要な課題になるというふうに考えております。
  39. 星野朋市

    ○星野朋市君 今、征矢局長はそういう形でお答えになりましたけれども、これは労働省だけの問題じゃないんですが、データ的にここから推計される問題というのを拾ってみますと、まず、そのときにはどうなるかというと、いわゆる産業労働人口二人で老人一人を支えるというような状態になる。それから、恐らく今のままでいくと、為替はもっと円安に振れて二〇〇〇年代のかなり初めに経常収支が赤字に転落する可能性がある。そうすると、日本は資源小国で今や輸入大国になっていますからどうなるかということは、かつてのアメリカが経験したように債権国家から債務国家に一転するおそれがある。そうなると、日本の失業というのは恐らく一〇%以上になるであろう、こういう悪い面というのがかなり具体的に予想されるわけであります。  かねてから私は、労働省の政策というのは、福祉にスタンスを置いた面から今や雇用というものを重点的に考えるべきであるということをずっと主張してまいりました。その一環として、まさしく労働省の政策にもありますけれども、今の職業訓練というものが在職中に行われる形、今いろんな補助が出ておりましてそういう方向に向かわれていますけれども、そういうことにかなり力を置くべきだということが労働省の政策の中に入ってまいりましたので喜ばしいことなんですが、さらに今言ったような事態を踏まえると、労働省はこれから政策のあり方をどういうふうに今までと違って向けていかなくちゃならないのか。今度の予算というものを見てもそこら辺では余り大きな変化がないんですね。  これは、二十一世紀というのはもう目前ですからかなり方向転換を進めないと、この二十一世紀の日本における特殊事情からする問題、ああ今が、一九九七年ごろが一番よかったんだなというようなことを我々の次世代の者に回顧させないような、そういう方策というものは今からどうあるべきか。労働省はどうお考えになっているか、お答え願いたいと思います。
  40. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 先生御指摘のように、これから二十一世紀に向けて雇用というものが非常に重要であるというふうに考えております。  そういう観点に立った場合にどう対処するか、これはなかなか難しい課題でございますが、一つには、足元の短期的な状況を見ますと、現在失業率が三・三%、若干下がっておりますが水準が高い、これが今後さらにどうなっていくかという心配がございます。  それから、有効求人倍率につきましては、不況期最悪の〇・六一倍から現在〇・七六倍ということで、これは緩やかではありますが景気の回復基調とあわせて着実に現時点では回復しております。  雇用者増につきましては、昨年十二月時点で前年同月比六十八万人と大幅な伸びをいたしておりまして、これは一般的に景気回復期に五十万前後であれば非常にかたいというのに比べましてかなり増が大きいということで、したがって現状で見た場合に、いわゆるヨーロッパのような、先生御指摘のようなジョブレス・リカバリー、雇用なき成長という事態では現在はないというふうに考えております。  ただし、経済成長の先行きがどうなるかという点につきましては、本年度は政府見通しどおり大体二・五%として、来年度については一・九%というふうな水準で見ている。そうしますと、今回の経済計画で二十一世紀に向けて平均実質三%程度の成長で雇用バランスするという見方をしておりますが、その見方からしますと足元の状況はかなり厳しい。したがって、構造改革等が行われなかった場合の厳しい成長率が一カ四分の三%程度であれば雇用の方は失業率が三カ四分の三%程度に上昇するというところのちょうど今中間ぐらいの数字ではないか。これが今後の経済いかんによってどうなっていくか、こういう心配があるわけでございます。  その点については、先生御指摘のように、いずれにしましても日本におきまして基本的な物づくり、これが最重要でございまして、そういう物づくりを出発点とした全体の経済がどうなっていくか。この辺についてはいろんなビジョンはありまして、昨年末の政府の経済構造改革プログラムにおいても十五分野について、情報関連あるいは住宅関連、医療関連その他で雇用がこれから十五年ぐらいの間で七百四十万人程度は対策をとっていけばふえるんではないかというような見通しはしておりますけれども、その辺も定かでない、こういうところでございます。  あわせて、労働力人口につきましては、御指摘のように少子・高齢化の中で高齢化が進んでいく、あるいは労働力人口が減少していく、こういうことでございまして、その辺のバランスがどうとれるか、どうとっていくかというのが非常に重要でありまして、雇用失業の立場から見ますと、そういう構造改革が進んでいって新しい分野ができてそこに雇用が吸収されるテンポと、それから失業者がどんどん出てくるそのテンポのギヤツプが大きくなればなるほど失業増になる、そういう心配があるわけでございまして、そこが基本的にできるだけそうならないような対策が全体としてとられねばならないということでございます。  私どもの対策としては、そういう観点からは、ただいま御指摘のように一つは職業訓練、これが非常に重要でございまして、そういう意味では在職中の労働者についても常に職業訓練、自分でどういう方向の訓練をするかも含めての訓練というものが重点的に行われなければならない。  それから、あとは労働移動という面からいきますと、そういう構造変化の中で労働者が移らざるを得ない場合に、それができるだけ失業しない形で移れるような対策、あるいは中小企業等が新分野展開する、ベンチャー企業が起こる、そういうものについての支援の問題であるとか、それから今回考えておりますのは、特に技能が集積している地域におきまして、これが空洞化等によってその技能がばらばらになってしまうというのが日本の物づくりの将来にとって非常に心配であるという観点から、産業政策とあわせてそういう技能の集積している地域についての雇用面の支援を何とかとりたいということで、地域雇用開発等促進法等の改正もお願いしている。  こういうことでございますが、御指摘の長期的な視点からの問題点はおっしゃるとおりあるんですけれども、今時点でそれじゃこういう形で具体的な対策をとれば いという明確な処方せんもなかなかないところが率直な悩みでございます。
  41. 星野朋市

    ○星野朋市君 そうしますと、これは前にも一回触れましたんですが、構造改革のための経済社会計画というのがまだ政府としては現存して生きているわけですね。この中に、いわゆる構造改革が進まなければ日本経済成長率は一・七五%程度、それから構造改革が進めば名目経済成長率は三・五%くらいになるだろうと。その中に同じく数字的に示されたのでは、構造改革が進まなければ失業率は三・七五%、構造改革が進めば二・七五%程度におさまるであろうという具体的な数字が出ているんですね。  ただし、この計画というのは非常に矛盾がありまして、これは本来予算委員会あたりで質問をすべきことなんですけれども、一言触れておきますと、この計画の中にエネルギーに関する計画がほとんどないんです、ほとんど触れてないんです、一言だけ書いてあるんですけれども。ところが、仮に実質三・五%以上の成長というものを遂げるとすると、日本は一九九〇年代の初めに現在資源エネルギー庁が計画している日本のエネルギー計画というのは完全にパンクしちゃうんですよ。  どうしてかといいますと、資源エネルギー庁は前に弾性値という言葉を使って失敗して懲りましたので、今や年に一%のエネルギーの増加ということで、そういう計画を立てて、そして二〇一〇年には石油の依存率を五〇%以下にして、そしてCO2の発生を一九九〇年代にとどめるというもとでつくった計画が現存して今あるんです。  ところが、CO2の発生が一九九〇年代でおさまるなんということは、これはもう完全に放棄せざるを得ない。それから、エネルギーの弾性値は今やGDPに対して一・一以上なんですね。そうすると、この〇・三という形でつくった計画そのものが矛盾して、どこに破綻が起きるかというと原子力の問題でパアになっちゃうんです。そういう矛盾した計画のもとにこれができている。しかも、高コスト構造の問題に関しては、住専の問題が目前に控えておったためにこの問題に全く触れないでこの計画ができている。そうすると、今私が申し上げましたような具体的な数字というのは果たして達成できるのかどうか、この数字そのものがかなり作文じゃないかと。  労働省は、この中で失業率の問題に絡んでかなり深くこれにかかわっておりますから、これは一言あってしかるべきだと私は思うんですが、いかがお考えですか。
  42. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま先生、エネルギーの問題についてお話がございましたが、率直に申し上げまして、私それにお答えできるだけの知識を持ち合わせておりません。  ただ、雇用面での予測として、昨年十二月に策定しました経済構造改革プログラムの中でのデータで見ますと、新エネルギー関係等について直接的な雇用がそんなにふえるという見方はいたしておりません。ただ、間接的には恐らく先生おっしゃるようにいろんな面での影響が大きいかと思いますが。  それでは現時点の計画についてどうだというお話になりますと、現状については先ほど申し上げましたように、一昨年十二月に策定されました経済計画については、平均的に実質三%程度の成長で、計画の終了時点で完全失業率が二カ四分の三%程度、こういう見通してございます。それとの比較で現状を見ると、今年度の経済成長二・五%、来年度の見通しが一・九%ですから平均三%いくのはかなり厳しい数字である。  その計画当時もやはり議論がありまして、先行きの見通し、非常にそう簡単ではないということから、今回の計画では、初めてでございますがこの悪いケース、構造改革等を進めなかった場合には成長率も一カ四分の三%にダウンします、それに応じて完全失業率も三カ四分の三%程度に上昇する、こういう見通してございまして、現時点の状況でどうかということになりますと、今時点ですと、今言った悪い見通しとそれから平均三%前提とした見通しのいわば中間的なところにあるんではないかということでございます。  これが先行きどうなるかにつきましては、構造改革がどんな形で進んでいくのか、その他の問題の影響がどうあるかということがあって、現時点では直ちにこの計画がどうこうというふうにはなかなか申し上げられませんが、問題点がいろいろあるという点については御指摘のとおりだと思います。
  43. 星野朋市

    ○星野朋市君 この計画は毎年総括して見直すことになっているんですね。ですから、これはまたいつか委員会の中で、昨年の結果その他を踏まえましてもう少し詳しく論じていきたいと思います。  というのは、この計画自身というのが根幹にあって、それで日本のいろいろなものがこれに従って動くということになっているわけですから、この根幹のものを忘れるわけにはいかないというところがあります。  時間が迫ってまいりましたので、最後にちょっと申し上げて御見解をお聞きしたいんですが、私どもの新進党が二月二十六日に党大会を開くはずであったのが多少延びました。その中で、雇用問題に関する政策を提言しておるんですけれども、これは党大会の前ですからまだ全文を申し上げるわけにはいかないんですが、そのうちの一部をちょっとここで申し上げて労働省の御見解をお聞きしようと思っております。  提言は四つあるんですが、その中の二つばかりを申し上げますと、労働能力の開発とミスマッチの解消ということで、産業構造の変化に対応する能力を開発できるよう、多様な教育機関と連携しつつ生涯にわたり幅広い能力開発の機会を整備する。また、労働力の需要と供給のミスマッチを解消するため、職業紹介、労働者派遣等の制度を弾力化することにより多様な労働形態を可能とするとともに、職業紹介システムの改革を進め、新卒者を含めた求人・求職が出会う多様な場を整備するというのが一つございます。  それからもう一つ、共生を可能にする労働環境の整備。あらゆる労働者が共生を可能にする環境を整備するため、採用における年齢制限や各種の差別の撤廃を目指しつつ、女性が対等に能力を発揮できる体制を整備するとともに、高齢者、障害者がその労働能力を十分に発揮できる体制の整備を進める。また、育児・介護休業の充実を進め、看護休暇の制度化を図る。  ほかにもありますけれども、とりあえずこの二つについての御見解を伺いたい。  というのは、二年前に介護休業法案をめぐって私たちは対案を出しました。政府の法案ではまだこれは制度化されておらないんですけれども現実には介護保険が適用になるかどうかの直前で、介護休業が必要なのはまさに今の時期であるという認識があります。このために約十万人の方がまだ職を離れている、特に女性にその被害が大きいというような現状がございます。  労働省としても、これの繰り上げということに一層の努力を願いたいと思いまして、あえて申し上げるわけですけれども労働省の御見解を伺って質問を終わらせていただきます。
  44. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 能力開発の関係について御説明させていただきます。  生涯にわたり幅広い能力開発の機会を整備するというのは非常に私ども重要な政策だと思っております。現在、公共職業安定所のみならず関係省庁とも連携をいたしまして、大学なり大学院なり各種学校等々の教育訓練機関や、あるいは事業主団体自身がやっております多様な訓練機会の拡充整備を図る必要があるというふうに考えております。  具体的には、労働者職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的な能力開発が行われるように事業主に対する各種の助成金の活用をするなり、あるいはどんな能力開発をやったらいいか非常に迷う人も多うございますので、そういう関係で相談、援助あるいは情報提供等を行っております。  そんな形で、労働者が生涯にわたり幅広い能力開発機会が確保されるよう今後とも努力をいたしたいというふうに考えております。
  45. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 女性の問題でございますが、働く女性が性別により差別されることなく、その能力を十分発揮できる雇用環境を整備するということは重要な課題であるというふうに考えております。  特に、先生御指摘の育児・介護休業の問題でございますが、育児・介護休業法に基づく育児休業制度の定着、それから介護休業制度の早期導入の促進ということにつきましては、一生懸命令努力を進めているところでございます。  特に育児休業制度につきましては、平成七年四月よりすべての事業主に対して義務づけられておるところでございまして、現在三十人以下の中小零細企業を中心に、就業規則の整備について指導を行う等々の法の周知を図ってきておるところでありまして、今後とも引き続き現行制度の確実な定着を図ってまいりたいと思っております。  また、介護休業制度につきましては、平成十一年の義務化の前にもできるだけ早期に介護休業制度が導入されますよう、特に中小企業に配慮しつつ、奨励金等も活用いたしまして、啓発指導及び援助に鋭意努めているところでございます。  このほか、育児休業、介護休業を取得しやすく、また職場復帰しやすい環境の整備を初めといたしまして、今後とも労働者職業生活家庭生活とを両立できる環境整備に向けて努力を続けてまいりたいと思っております。
  46. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 労働力の需要と供給のミスマッチの解消の問題でございますが、そのためには、公共職業安定機関と民間の労働力需給調整システムの機能、この双方を強化しまして、双方相まって効率的、効果的な労働力需給調整が行われることが重要であるというふうに考えております。このため、有料職業紹介事業制度あり方につきましては、一昨年来、中央職業安定審議会で十分御議論をいただきまして、その結果を踏まえて、不適切な職業以外を取り扱えることとする取り扱い職業のネガティブリスト化等につきまして具体案を作成し、本年四月一日から実施することといたしております。  また、労働者派遣事業につきましては、これも関係審議会の議を経て、さきの通常国会で一定の法案について御審議をいただき、これにつきましては昨年十二月に実施いたしたところでございますが、より抜本的な制度全体を対象とする検討につきましては、本年一月から中央職業安定審議会で議論を始めていただいているところでございます。これにつきましては、制度基本的なあり方論で、対象業務の範囲の問題と、それから労働者保護のあり方の問題等々いろんな問題がございまして、これは関係労使を含めた三者構成の審議会で十分議論をしていただいた上で検討を進めなければならないというふうに考えているところでございます。  また、公共職業安定機関につきましては、これは無料で職業相談、職業紹介等を行う公共インフラとしてその役割が一層重要になる、こういうふうに考えておりまして、したがって、今後さまざまな情報機器を活用した雇用情報の提供機能の強化、あるいは専門的かつきめ細かな職業相談、援助機能の強化、こういうことを図る必要があると考えているところでございます。
  47. 長谷川清

    ○長谷川清君 大臣にお伺いをいたしますが、ただいままでのいろいろの質疑を聞いておりまして、今現在の雇用や失業の状態、情勢を大臣はどのように認識をしているのか、その辺について簡単にお願いします。
  48. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 完全失業率三・三%、極めて厳しい数字が出ております。昨年の五、六月ごろ三・五、その後三・四というような最低の数字が出ましたが、三・三。いまだに油断のできない厳しい情勢の中で、有効求人倍率、これも〇・六一ぐらいから〇・七六ぐらいにやや明るい兆しが出てまいりましたが、ちょうど大学卒業生の諸君の就職協定、これが廃止をされた中で、これらの皆さんが立派な就職先を得るか得られないかというような問題も含め、構造改革の中でどうやって雇用を確保していくか、労働省についての最高命題だと、こう思って努力をするつもりであります。
  49. 長谷川清

    ○長谷川清君 今大臣もおっしゃったように、依然としてこれは厳しい状況が続いている。今から二十年ぐらい前のほぼ完全雇用の状態というときのあの失業率は二・〇。いつもやはりこういう理想的なあるべき姿というものをきちっと持って、そこから見た場合の今日の数字が三・四とか、三・三とか、三・五、一時瞬間風速があった。私は、そういう数字以上の深刻な厳しい実態があるという、このことを労働大臣として常に雇用考える場合にはまず念頭に置いておいていただきたい、こう思います。これは要望でございます。  最近は労働という問題もいろいろとその質を変えてきております。例えば今回、今国会でも郵政の関係ではストックオプションの導入という問題が出てまいっております。雇用する場合に、使用者と雇用者の間ではある契約をするということ。株なら株をそこに付与いたしまして、これが市場に出回る場合にはそれを売買することができるし、百円の株が千八百円だとか二千円、そこで売買することができる。自分の努力によって株を上げていく、つまり報酬制度、こういうようなものがどんどんこれからは出てくると思います。  既にアメリカではもう各業種にわたって平均七五%がこのシステムが実行されている。日本においても、これはまずきっかけは通信と放送関係からスタートを切ると思いますけれども、それぞれの省庁において既にこれを待っているのがもう十社、既に十社はこれを待ち受けている、こういう状態があります。  言うならば、今までの日本社会における仕事の仕方からいきますと、自分が昇進していく場合にも、五年、十年かけていくんですけれども、直属上司にはやっぱりよく思われたい。いろいろつけ届けもあったりする。そういうファクターというものがいろいろ介在して昇進していったり昇給したりするという実態。これはある意味における、大臣も先ほど申し上げていたように、雇用制度あり方が、一応もう終身雇用でずっと定期的に、大体十年たてばこうなるという仕組みの中で動いておりまして、ある意味でいうと浪花節社会的。  こういうならわしというものが介在しない状況になるわけです。その人物がどうとか、つけ届けがどうとか、おべっかがどうとか、こういう要素は介在をしない。純粋に自分が数字で能力を発揮し、答えを出す、それによる報酬というこういう労働へと変わってくるわけであります。言うならば、アメリカの契約社会的概念が非常に現実に、労働の中にどっとそのファクターが、在宅の勤務というものもふえてきております。  今現在ある雇用関係の中のそういう労働の変化という問題について、それらに対応する労働省としてのお考え、対抗上の策。私はこのようなストックオプションが悪いと言っているのではありません、転換するには転換するなりのきめ細かい行政がそこに同時並行的にいかなければいけない、そういう視点に立ってお伺いをしたいんです。
  50. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) ただいま先生から、ストックオプションの例を出しながら、労働者一人一人がその能力を十分に発揮して、そして評価されていく、そういうことがこれからの我が国社会のある意味では活力にもつながってくるんではないかという観点からの御指摘ございました。  私どもも、労働法制全般についてそういったことを念頭に置きながらいろいろ考えておるわけでございますが、一つ申し上げれば、労働基準法等につきましても、労働者の方がより柔軟で自律的な働き方を通じてその能力を存分に発揮していける、そういう環境につながるような枠組みというものを考えていかなくてはいけないのではないか。同時に、そういった枠組みの中でしっかりと答えを出された勤労者の方については評価につながっていく。そういうことを考えますと、やはり現在の労働時間管理あるいは労働契約のルールについていろいろ御議論を願わなくてはいかぬだろうというふうに考えているところでございます。  このため、労働時間管理について申し上げれば、例えば裁量労働制のあり方等の問題。それから労働契約のルールについて申し上げれば、例えば一年というふうに契約期間の上限を限っております問題につきまして、これからの専門的な能力等を生かしたいという方に実情に合うかどうかというような問題。同時に、そういった労働条件、労働契約の内容の明示や解雇の際の理由の明示、あるいは個々に生じます個別の紛争、労働条件をめぐる紛争につきまして迅速に、あるいは的確に処理できるシステムのあり方等、私ども、中央労働基準審議会にそういったテーマを提示いたしまして御議論を願っておるわけでございます。  私ども、こういったテーマにつきまして、先ほど先生から御指摘のあったようなことも頭に置き、同時に労働者の立場に立った観点も忘れることなく、ひとつ精力的に法令上の整備も含めて検討していこうというふうに思っているわけでございます。一つの例でございますが、これからの二十一世紀をにらんで、労働法制いろんなところにつきまして、私ども常に問題点はないかというような意識を持って必要な対応をしていきたいと考えておるところでございます。
  51. 長谷川清

    ○長谷川清君 これはことしを契機に通信・放送関係が入ってくると思いますが、法務省は九年度中にはめどをつけるための勉強を今やっている。そうなってまいりますと、金融サービスからエネルギーから証券から流通、製造業、保険、あるいは銀行や公益関係や、あらゆる分野にこれはかなりスピードを上げて進行していくということが想定されます。これは一つの例を言っているのであります。  あらゆる意味において労働の質がどんどん変化をしているという事実、このことについて、従来型の施策をそのまま運用していくというのではなくて、新たにこういう変化の問題、この大きな変化が量的な中であると同時に、同時並行的に新規分野におけるいわゆる雇用の創出という課題、この二つが同時に今起こっているんだという基本的な認識について、大臣、ひとつお願いをしたいし、それについての労働省としての対応、各省庁との連携、連絡、こういう部分についてお伺いしておきたいと思います。
  52. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) けさ冒頭に坪井先生からお話があった角度とちょうど反対側の角度からのお話が長谷川先生の御質問だと、こう思っております。  やはり時代はどんどん変化をしていきます。したがいまして、在来の経営のありさま、あるいは雇用のありざまのよきを生かし、そしてかつ、新しい手法というものを導入するにやぶさかでないというようなことで日本全体の経済発展もあり労働者の幸せもある。その間にありましてよろしきを図ってまいりたい、こう存じております。
  53. 長谷川清

    ○長谷川清君 今の状況から二十一世紀に向けてよりよい労働市場というものを確保し、さらに構築し発展をさせていこうとする場合、これは労働省の直接的な所管ではないかもしれないけれども、具体的には、いろんな意味における例えば住宅の問題。亀井大臣はおとといかのテレビでも言っておりましたね、容積率を倍にするといとも簡単に言いのけました。いいことですよ。容積率をどんどん、倍はどうかといたしましても、一〇ポイントでも上げていく、そういうことは非常に重要だし、建築基準法を変えていく。あるいはいろんな意味における中古の問題があります。リフォームの問題もあります。  住宅という分野においてそういうことをやってまいりますと、適正な審査や監査をする、そういう機関も出てまいります。そういう住宅なら住宅という部分について、労働省が音頭を取るわけではありませんけれども、そういう中から新たなる雇用の創出というものが期待されていくのであります。  先ほど答弁がありまして、今のところプログラムがなかなかないと、こういうお話のようでございましたが、そういう部分についていかがなっておるのか、この点をお伺いしたいと思うんです。
  54. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の新規雇用創出の観点のお話でございますが、これは御指摘のように、新しい産業、そういうものが発展する中でできてくるわけでございまして、そういうビジョンがあって、かつそれが具体化されなければそれにつながる新規雇用は出てこない、これは当然のことでございます。  そういうものについての具体的な考え方、プログラムがどうか、こういう点でございますが、この点につきましては、政府といたしましては、昨年十二月に閣議決定いたしました「経済構造の変革と創造のためのプログラム」、こういうものがございます。その中におきまして、ただいま先生御指摘のような新しい分野について雇用がどうなるかというようなことも一定の予測をいたしているところでございまして、これは十五分野について一九九五年から二〇一〇年までの十五年間でどれだけふえるか、こういうことでございます。  トータルといたしまして、雇用規模が一九九五年の千六十万人に対して、二〇一〇年の予測として約千八百万人ということで、七百四十万人程度ふえると、こういうふうに見ておりますが、その中身につきましては、十五分野ということで主たるもので見ますと、医療・福祉が百三十二万人ふえる、それから生活文化関係で百三十五万人、情報通信で百二十万人、新製造技術で八十二万人、流通・物流で九十六万人、環境関係で七十六万人というようなのが主たるものでございますが、そういうプログラムというものは作成されております。
  55. 長谷川清

    ○長谷川清君 そんなに二〇一〇年とか先の方に計画プログラムを持っていく必要もないんです。二〇〇〇年なら二〇〇〇年までの目標で、実効性のあるものを現実の中から具体的に積算をしていく、そういう態度がやっぱり必要じゃないですか。  私は、きょうは本当は建設省も、それから厚生省も環境庁もみんな呼びたかったんですが、これはどちらかというとそちらに向かって言わなきゃいけないことだと思いますけれども、例えば亀井建設大臣はどういう根拠でああいう容積率を倍にするという話をしたんでしょうか、大臣
  56. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 今のお話先生から初めて伺いました。したがいまして、亀井大臣には、私、その問題について話をする機会がございませんでした。回答ができません。  以上であります。
  57. 長谷川清

    ○長谷川清君 おとといか、テレビで確かに私も見たんです。これはいいことを言っているなと、本気でやるんだなと、こう思いました。そういうこともありますから、これは意味によって労働省とも関係が深いんです。建設大臣がそれだけのことをテレビに向かって言うというときに、なぜ労働大臣はそれを承知してないか、これも私は解せないと思うんです。そういう連携がとられていくべきではないのか。  先ほども言うように、具体的にはいろんなものが変化しているし、新しいものもつくられなきゃいけない。今までやったことのない発想も必要になる。それが各ばらばらの省庁でやられていくんじゃなくて、労働省はただ雇用が生まれたときにそれをお守りする、あるいは能力開発するというだけのことじゃないはずだと思うんです。全体の社会の中の重要な労働力の提供をどうするかという視点に立って、その質と量をやはり基本的にどこかできちんと見ておく必要がある。そういう意味においては意欲的にそういうところにどんどん提案していってもいいと思うぐらいでございます。  住宅問題に関しまして具体的に言えば、何もそういう倍にする必要まであるかどうかは別として、それよりも小さいポイントで改善するだけでも百二十九万人ぐらいの試算が出ているわけであります。  例えば、情報通信の関係についてもしかりであります。情報の通信や関連するところの参入や接続、こういうものの規制を撤廃するということがある。周波数の割り当て方式を見直すということ。無線局の認可について外資系今規制しておりますが、これを撤廃するということ。あるいは通信衛星の利用を拡充していくということや光ファイバー網を整備する、これらに特例措置を設けていく。こういうことをやっていけば通信の部門だけで二〇〇〇年までに八十九万人の雇用が期待できる。  あるいは環境の問題においてもしかりであります。廃棄物の循環型社会をつくっていくということをベースに、そこに政策を転換する。同じ廃棄物でも、今までのごみならごみを、余ったごみを燃焼させるだけを利用してエネルギーにするというものから、もうごみそのものを燃料とし、そのためには粉砕する。粉砕してそこに風を送ればざあっとそれが散る、したがって水分がなくなる、熱効率が上がる。例えて言えばそういったような廃棄物関連に関する公共投資の計画的な推進ということを方針でうたってそれを実行する。環境技術の開発も進める、環境保全設備や税制上の優遇措置も考慮していったりということの施策を講ずることによって、環境関係だけでも五十六万人が二〇〇〇年までに期待が持てるようになる。  福祉や医療の厚生関係についても同じく、これはもう今現在は新ゴールドプランを進めておりますけれども、それだけでは足りない、スーパーゴールドプランを達成していくことによって二〇〇五年までには五十三万人。この中にも具体的な、福祉・医療分野における基礎的な技術的な研究開発を促進していく、緊急情報システムや何かを整備していく、遠距離画像の診断なんかができるようにシステム化する、在宅診断ができるようなシステムをつくる、個人医療情報システムをつくる、在宅介護の機器や用具やそういうものの開発研究を進める、医療福祉機器や用具のこういうものも進めるということなどをやっていけば、新たなそこに需要が起こってくるし、そして雇用が創出をしてくる。その数字だけでも三十五万人。  そのほかにもありますね。介護なら介護に要する人々、そういう部分の方針を出してやる。今現在二十七万人ぐらいのいわゆる医療従事者、それがあと約三十万人ぐらいどうしても必要になってくるといったようなこと等々、具体的にそれ以外の各省庁と、全部そういうことを労働省あたりが少し音頭を取ったり、もっと大臣あたりはいろんなことを他の省庁に先駆けて、大臣の個性からいきますとテレビに出でどんどんPRをしてもいいぐらいではないかと、それぐらいに思うんですけれども、その辺のところのお考えというか感じ、いかがなんでしょう。
  58. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 冒頭に先生がおっしゃいました亀井建設大臣の容積率を倍にするという話につきましては、私、寡聞にして知りませんでしたので、建設大臣先生の御質疑の意図を伝え、申し入れをすることにいたします。  ただ、よその省庁でどういう仕事をするか、これは労働省としては雇用の確保及びその増強の面において当然意思の疎通を十分図っていくことだと、こう思っておりますが、やはりその省庁の努力について、労働大臣の方が雇用の面について、いかがなものでありましょうか、その省庁の先取りをするというのは私としてはいたさぬところであります。  閣僚の中には一部他省庁の行革についてとうとうと演説をぶたれるというような場合がないわけではないように感じておりますが、私は、やはり自分の所掌範囲において努力をし、それが内閣全体として大きな評価を得るということを期すべきだと、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  59. 長谷川清

    ○長谷川清君 大臣分野からほかの省庁に口出しをすることはいかがかと思いますが、少なくもそういう計画や各省庁労働雇用に関係する部分においていろいろの施策が出てくる場合においては、強いアンテナでそれを受けとめるという主体性をひとつ持っておいていただきたいということをこの機会にお願いをしておきたいのでございます。そのことがやはり雇用あるいは失業という問題に対する今日の認識、深刻な状況というものと相まって、どんどん変わっているな、そしてまたどんどん新しいものが生まれてくるなというようなことなどの情報キャッチが速やかにできますように体制を組んでおいていただきたいとお願いしておきたいと思います。  それでは次に、雇用促進事業団の件についてお伺いをしますが、そもそも行政改革というもの、これもやはり行政改革の名においてこの問題が新聞にもかなり出てまいりました。私は、行政改革というのは何でもかんでも全部さあっとやめちまえという、これが行政改革ではないと思います。不必要なところはどんどん切って、必要なところにはどんどんふやしていく、そういうことが行政の改革、全体の構造の質を変えていくことにつながる、こう思いますが、大臣の御認識はいかがでしょう。
  60. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先ほどもお話をいたしましたが、やはりそれぞれの省庁がその機構において、あるいは組織のありざまにおいて、その要員において、あるいは実際にその機構を運営するありざまにおいて、基本的に見直しをして新たな改革の方向でさお差していく、これが橋本内閣の姿勢であり、それを受けまして労働大臣としても努力をいたしているところであります。  細論に入りましょうか。よろしゅうございますか。
  61. 長谷川清

    ○長谷川清君 ちょっとよくわからなかったんですがね。  橋本総理はいろいろ言っておりますが、大臣として行政の改革ということを、私が言ったように、不必要なものは切って、これからますます必要なところには人も金もふやしていく、そういうことが行政改革だという端的な言い方をしたんですが、そう考えてよろしいでしょうか。
  62. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 不必要なところを切り、必要なところを大きく強化をしていく、先生の御意見どおりであります。
  63. 長谷川清

    ○長谷川清君 そうすると、この雇用促進事業団というものは、まずこれは特殊法人なんですか、そうじゃないんですか。
  64. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 特殊法人であります。
  65. 長谷川清

    ○長谷川清君 これはどのくらいの資金が流れておるんですか、一般会計から。
  66. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 雇用促進事業団につきましては、ただいまお話ございましたように特殊法人でございますが、これの流れている資金につきましては、これは労働保険の雇用勘定でございまして、一般会計の資金はほとんど流れておりません。
  67. 長谷川清

    ○長谷川清君 そうすると、これは今いわゆる赤字を出しているんですか。
  68. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 雇用促進事業団につきましては、いわゆる経常的な経費等についての赤字はございません。
  69. 長谷川清

    ○長谷川清君 そうすると、いわゆるお金の上におけるこれを廃止しようとかいう議論ではなく、大臣としては雇用促進事業団のどこの部分を残し、どこの部分を改革してもいいというふうにお考えになっているのか。
  70. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 長谷川先生御存じのとおり、雇用促進事業団は昭和三十六年に発足をいたしました。現在においての雇用促進事業団の主たる業務でありますが、私はおおよそ三つに分かれる、こう思っております。一つは職業能力の開発という面であります。もう一つは、現下置かれた産業構造の改革の中で、中小企業等々の雇用の空洞化に伴うところの雇用の円滑化というような面であります。中小企業等の共同部な宿舎的なもの、あるいは中小企業等の共同部な福祉施設的なもの、これが三つ目であります。  その意味合いで、現下の情勢の中でこの三つの機能が十分機能をいたしているかどうか、国民の期待に沿うような運営がなされているかどうかという面で、切るべきものは切り、発展させるべきものは発展をさせようという検討の最中にあります。
  71. 長谷川清

    ○長谷川清君 今の答えから推測すると、能開なり中小企業なり労働省が今直接に関与しているところ、これはますます重要であるから残す、市町村の方に回っている部分は大体もう計画的に変えていってもいい、なくしてもいい、このように大ざっぱに解釈しておいてよろしいんでしょうか。
  72. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生のお言葉の大ざっぱという言葉をそのまま使いますと、私が三つの主たる機能があると。そのうちで一つ目の職業能力の開発といいますのは、構造改革の中で大きな、働く皆さんの職場の移動というものを円滑にするには一番重要な要素だと思っております。構造改革で日が陰ってくる産業、したがってそこには雇用問題が出るだろうな、こう思っております。しかし反面、幸せなことに日の当たる産業というものが構造改革の中でまた出てまいります。したがいまして、そちらの方に労働の移動というものを失業なく展開してまいりたい。  ただ、その間にやはり新しい技能を身につけませんと、新たに日が当たるようになったその職場に就労がなかなか難しいということがあります。したがいまして、言いますならば技能のドレスアップというものが必要だ、それが職業能力の開発機能だ、こう思っておりますので、ますます重要度が高まるのではないか、こう存じております。  もう一つ、中小企業にそういった技能ある皆さんを一般の労働提供する皆さん一緒雇用をするということを大いに進めていかなければなりません。新しいジャンルの中小企業発展させようというような意味での言いますならば助成金になろうか、こう思っております。  同時にまた、今、人の面で言いましたが施設の面で、新たな雇用を増大するというような施設を中小企業者等で設けるといいます場合の助成金というものも、雇用の空洞化を補う意味合いでは非常に大きな力をこれからも発揮していく面だ、こう思っております。  三つ目の中で、例えば移勤労働者の住宅というようなものを三十年前からずっと実施をしてまいりましたが、行監当局においてこれの本来目的による入居状況というようなものをいろいろ点検をなされて、どうも全体で本来目的どおりの居住者というものが二一%ぐらいである、他目的利用が非常にふえているというような数値も私、提示をいただき、かつみずから調べて掌握をいたしております。  そういうような意味合いで、三番目に私が挙げました分野について、もう一度機能の実態を改めました上で検討をしてまいる余地があるかな、これが大ざっぱに申しましての雇用促進事業団についての私が措置を考えているところであります。
  73. 長谷川清

    ○長谷川清君 この件につきましては、私は冒頭にも申し上げたように、労働の問題というのは非常に重要な時期に今入っているし、これは永遠にとは言いませんけれども、非常に大きな転換期の中における重要な分野である、このように思います。  そういう視点に立てば、何でもかんでも行政改革という名のもとにみそもくそも一緒にして全部ぱっとやってしまうような、そういう乱暴なことはしないように御注意をいただき、さはさりながら行政の改革は必要なんですから、もう既に炭鉱離職者用につくっておりましたような、職を変わるためにつくったような宿舎、そういった不要なもの、そうはいいましても、これは十四万戸ぐらいあるんでしょう。そういうものをうまく転換をしながら廃止に持っていくとか、あるいは保養施設であるとか健康増進の施設であるとか、そういったような部分も全国では七十カ所とか千三百十六カ所、研修・文化施設は六百五カ所というくらいのかなり大きな分量のものがありますので、そこにはまた三十人ぐらいの人もついていたはずでございますから、そういったようなことを廃止の方向に向かいながら有効な必要なところにそれを向けていくということを結論としてはぜひお考えをいただきたいと要望しておきたいと思います。  次に、高齢化がどんどん進んでおりまして、しかも同時に少子化であると。先ほども質疑にありましたように、二〇五〇年になりますと六十五歳以上は二人に一人、こういう状況になってきております。したがって、いわゆる人口の問題も出ました。そういうものを総合判断しますると、一つは今、雇用という問題を、質が変わりながら、しかも新しい雇用というものをそこに生み出しながらやる。もう二十年前ぐらいの雇用に対する、学校は出たけれども就職する場所がないんだという、まずこの状況をひとつぜひ解決する、具体的にはやはりそういう問題。  そうはいいながらも、高齢者がどんどんふえるんですから、つまりシルバー人材センター。けさでしたか、NHKの八時ごろに、何かシルバー人材センターの方々の死亡率が高いような、一時間当たり八百円ぐらいの非常に安い工賃で非常に過酷な労働があるのではないか式のものがあったと私は伝え聞きました。もしそういうことがあるとすれば非常に残念なことだと思います。このシルバー人材センターというものが今日果たしている役割評価、そういうものについて大臣はどのようにお考えか聞いておきたいと思います。
  74. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) シルバー人材センター事業の問題でございますが、これにつきましては、先生御指摘のように、今後の高齢化社会の中で、就業という形で高齢者の方が社会参加をする、一定の収入を得る、こういう形の仕組みでございまして、この仕組み自体は非常に高い評価を受けているというふうに私ども考えております。  これにつきまして現在の状況等を見ますと、平成七年度末の国庫補助対象シルバー人材センターは七百団体でございます。会員数も年々ふえてまいりまして、約三十六万人というような形になっておりまして、年間の契約金額、これが千三百四十億円というふうな実績になっております。  これにつきましては、御審議いただきました昨年の高齢者雇用安定法の改正によりまして、全国どこでも高年齢者がシルバー人材センター事業によって仕事提供を受けることができるような、そういう枠組みをつくるということでシルバー人材センター連合の設立を進めているところでございますが、平成八年度におきましてはこれが十五団体、十五県において発足いたしたところでございます。このセンター事業に係ります平成九年度の予算につきましては全体で百五十五億円でございまして、前年度に比べて七億円の増となっております。  特に、今後増大する介護サービス需要の拡大等に対応するために、高齢者の就業あるいは介護支援推進事業等を創設することといたしているところでございます。
  75. 長谷川清

    ○長谷川清君 今、設置箇所が七百カ所ぐらいだ、八年度で十五カ所ふえた、登録人員が三十六万人で、契約が千三百四十億と聞きました。この契約額は官民で大体どのくらいの比率なんですか。
  76. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 恐縮でございますが、手元にあります資料で見ますと、この契約金額について官民という形での内訳がついておりませんので、ちょっと御返事できかねます。
  77. 長谷川清

    ○長谷川清君 当初スタートを切ったころはもう官だけでやっていたんですよね。それがだんだん民への拡大をして相当定着をして、まだ恐らくは五〇、五〇にはなっていないはずであります。  この箇所数において、四十七都道府県の三千三百市町村全体の中で今必要とする構想ですね、今七百、これは八年度の十五カ所を入れて七百という数字でしょうか。およそそのぐらい。そうすると、最終的には大体どのぐらいのめど。  もうこれは約二十年ぐらいかかってますか、そもそも大河内一男東大総長がこれを考え始めて、私もそこで八年ぐらい専務をやっておりましたから、もう生み落とす前のプラン・ドゥ・シーのプランニング段階から、そしてこれをまず東京で始めて、各ブロック別のものをつくって、そこからどんどん落としていってと、今日いわゆる高齢化社会を迎えていく、まだ二十年前は迎えようとする準備段階ですよ。  でありますだけに、私はやはり愛着を感じておりますし、このシルバー人材センターというものが健全にすくすくと伸びることによって、いろんな意味の社会の中における労働という分野での、これはもう今まで旋盤工なら旋盤工にあずかっていた人やあらゆる人々、特に中小零細の、天下りなんかできないようなところの人々を対象にしながら、カルテルを組んで、それでこの世にございますあらゆる作業、仕事、官からも民からも、ごく普通の家庭からも、そういうところから仕事のオーダーをとって、そこについて一定の賃金ももらいと、こういう事業でございます。  ただ、雇用労働者、未組織労働者、いろんなものがあり、そしてこの社会で功成り名を遂げた人が、リタイアした人々が対象となってこういうところをまた分野として埋めていく、こういうことの比重はますます高まってくるというふうに私は感じておるわけでありますが、今後の計画、年度別展開のようなものがございましたら教えていただきたい。
  78. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 長谷川先生が具体的にシルバー人材センター事業にかかわっておられたということを承知しておりませんで、大変失礼いたしました。  ただいまの点で、まず最近の契約の中身でございますが、当初確かに公共が多かったのでございますが、最近は非常に民間がふえてまいりまして、全体の契約の中の九割は民間ということで健全な発展をしているところでございます。  それから、このシルバー人材センターの今後の計画でございますが、御指摘のように、三千三百ある市町村の中で、基本的に市町村単位でやってきたものが現在七百団体ということで、これは幾ら計画的にやりましてもなかなかこの一般会計の厳しい財政事情の中で今のシステムでやっていくのは非常に難しいというようなことから、昨年の高齢法の改正をお願いいたしまして、その核となるシルバー人材センター、これは従来どおりの活動をしていただくわけですが、県単位のシルバー人材センター連合というのをつくりまして、これは基本的には県単位でそういう連合をつくる、これを計画的に進めていこうということでございまして、これは地域の発意によってやるわけですから、そういう意味での地元の事情に応じてということになりますが、そういう県単位の連合が平成八年度において十五団体発足した。九年度につきましてはこれが十二団体の予定でございます。  いずれにしましても、ここ近い将来、全県にこの連合組織ができるようにしたい。この連合組織ができますと、地域全体についてのシルバー人材センターについての対応が可能となるような、そういう枠組みを設けたところでございます。  したがいまして、今後は、そういう意味でのシルバー人材センター連合、これを県単位に進めることによりまして全体の対応ができるようにしたいというふうに考えておるところでございます。
  79. 長谷川清

    ○長谷川清君 よくわかりました。  現在は定年が六十歳ということで、六十歳定年の中で、今言うシルバー人材センターのような人たちがそれから先を担ってくれる。しかし、社会全体の今の状況推移を見ますると、高齢者の労働力、高齢者の労働に対する意識調査、これは総理府がとったところによりましても、六十五歳までは働きたいというのが非常に高うございますね。さらに全体の四割はそれから先も続けて働いていきたいと希望している、こういう現状が出ております。  健康なお年寄り、社会の一員として十分その能力を持っているにもかかわらず六十歳だからOBになる、そしてもう年金をもらうという感じ、こういうようなところの部分を、大臣どうでしょうね、六十歳定年というものを六十五歳、また七十歳ぐらいに思い切ってこういう方針を出せるぐらいのリードをしていただけないかという点についていかがでしょう。
  80. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、健康な高齢の方という表現がございました。叙勲のときなど、七十歳の皆さん多いわけですけれども、かつて私が叙勲の仕事をしておりましたころ、相当数の皆さんが車いすを御利用でございました。しかし、このごろの皆さんはほとんどそういう方はいません。極めて健康で極めて若々しいです。  したがいまして、働く意欲というものもおのずと大きく膨らんでおられる。そういう皆さんにはどしどし六十五歳まででも七十まででも自分の生きがいを感じて働けるというような雰囲気づくりをしますのが私どもの役目ではないかなと、そのためには六十五歳まで現役だと、実際に今までと同じ仕事をしておらなくても、一たん会社をやめられた形をとっても嘱託というようなこともありましょうし、その対応はいろいろだと思っておりますが、先生がおっしゃいますような社会意識づくりに努力をしてまいりたい、こう思っております。  シルバーセンターというのはそのためにも非常に大きな機能を果たしているもので、これもはぐくみ育ててまいりたい、こう思っております。
  81. 長谷川清

    ○長谷川清君 今の六十歳を基準にして六十五歳ぐらいまで継続意思のある者とかという選択制、これを六十五対七十というような具体的なものをぜひひとつ省庁で、大臣がそのぐらいのことをテレビで言えるぐらいの状況になればなと思う次第です。非常に大臣が言うと似合うと思うんですね。だから、ぜひひとつそういう方向でリードしていただくということがいいと思います。  それから、先ほども出ておりましたけれども坪井先生質疑の中にもありましたか、職場と家庭というものの両立、こういう両立性については労働省相当力を入れておやりになっているんじゃないかと思いますけれども、そういうことを促進していくようなPR部分の方についてお聞きをしておきたいんですが、そこら辺は具体的にはどんなことを労働省としてはPRしているのか。
  82. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生御指摘のように、男女労働者がともに仕事と育児を両立させていくということ、そのための環境整備をするということが極めて重要であると考えておりまして、労働省におきましては、育児・介護休業法に基づきます育児休業制度が定着し、円滑に運用されるよう事業主や労働者に対するきめ細かな相談、指導をまずは実施しております。  またさらに、育児休業給付それから奨励金などの支給を行いまして、育児休業を取得しやすく、また職場復帰しやすい環境を整備するというようなこと。さらには、従業員に育児費用を補助する事業主に対しまして助成金を支給すること等をいたしまして、育児を行う労働者が働き続けやすい環境も整備をしたいということ。また、育児等のために一たん退職した者に対しまして、その方々が再就職をするというときにも支援をするというようなメニューを実行いたしまして、男女労働者職業生活家庭生活との両立を支援するための対策を体系的に推進をさせていただいているところでございます。
  83. 長谷川清

    ○長谷川清君 職場と家庭というものを両立させていくという方向や今やられておりますようなことについては、私はいいことだし、大いに推進をしていただきたいと思います。  先ほども議論の中に男と女の機能の問題とかございましたけれども、私はやはり、答弁側の答弁は、大臣の答弁も正しい答弁をしているなというふうに聞きました。したがって、均等法や法案審議にいろいろとまつわる部分というものはここの場では避けたいと思います。  時間の関係もございますから、次に持ち株会社の解禁に伴う事柄につきまして。  これは日経連と連合の方ともいろいろと努力を今しているようでございますが、きょう現在、今のところまだ合意に至っていないやに聞いております。労働省としましてこの問題については今どういう考え方を持って対処しているのかという点をまずお聞きしておきたいと思います。
  84. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 持ち株会社解禁に伴います労使関係上の問題につきましては昨年来さまざまに議論をされてきたわけでございますが、労働省では、法律的な面からこの問題について検討するため、昨年四月に法律学者の先生方にお集まりいただきました専門家会議というのを開催いたしました。  この専門家会議の報告、昨年の十二月に出たわけでございますけれども、この報告書のポイントでございますが、持ち株会社と現在でもある親会社——持ち株会社の解禁といいましても今回検討されておりますのはいわゆる純粋持ち株会社の解禁でございまして、既に我が国には事業持ち株会社というのは多数存在しておりますが、そういったものも含めまして現在でもある親会社とでは、子会社労働問題に関しては同じであって、新たな問題は生じないというふうに報告は取りまとめられました。  ただ、純粋持ち株会社が解禁されることによりまして、親子会社が非常に量的にふえてくるということは考えられるわけでございます。また、現在でも親会社と子会社の間で労使関係上の問題について全く問題がないかといいますと、地労委に持ち込まれたりする案件もあるということもあるわけでございます。  また、この親子会社関係のいわば親会社の使用者性の問題につきましては、既に最高裁の判決が幾つか出ておりまして、そこでは一般に使用者というのは雇用契約上の雇用主を言うというふうに言った上で、しかしながら、雇用主以外の事業主であっても、基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には雇用者に当たるという考え方が最高裁から出され、ほぼ定着しているわけでございます。そういうことから、この専門家会議の報告では、この考え方を広く労使に周知する必要があるのではないかといったようなことなどを提言されたわけでございます。  労働省では、この専門家会議の報告を受けまして、昨年末、労使団体のそれぞれ関係者に説明をいたしまして、これに沿ったような形で労使の間でこの問題についての合意が図れないかということで働きかけを行ったわけでございますけれども、その時点では、連合の方からやはり労組法の改正が必要であるということ、一方、使用者側の方からはそれは必要ないということで、若干その時点では、私どもが働きかけた段階ではなかなか話し合いがまとまる状況にはなかったわけでございます。  ただ、今先生がおっしゃいましたように、その後、与党の方で独占禁止法の問題を検討する協議会が設置をされまして、その与党の協議会からも、労使団体に対して、自主的な話し合いを進めて何とかこの労使関係問題についての合意なり解決の糸口を探ってほしいという要請がなされたと聞いておりまして、その後、労使団体間で真摯な議論が行われてきているというふうに聞いております。私ども労使の合意の最終的な段階に来ておるというふうに聞いておりまして、そう遠くない時期に合意がなされるというように、はっきりした情報ではございませんけれども、そういう情報も得ているところでございます。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、労使での話し合いがまとまり、また与党の協議会の中でも話がまとめられるということになりましたら、私どもとしてはその結果を真摯に受けとめ、適切に対応したいというふうに考えているところでございます。
  85. 長谷川清

    ○長谷川清君 私は、この場におきまして、この件について一つ要望しておきたいのであります。  そもそも労組法上にこの使用者の定義が明記されておらないから、今は例えば朝日放送事件のように最高裁における判例等々で辛うじて判断しているという状況ですね。この状況認識は同じだと思うんです。変わりませんね。そうであるなら、ちょうど今NTTの分割問題等々でこの解禁問題が浮上しておりますから、こういうときにこそ具体的なケースが出てくるわけでありますから、ここで労組法上まず明確に使用者定義の規定を明らかにしておくということが一つ求められると思います。  それからまた、これはもう常套手段のように使われておりますように、そういう労使の問題がいろいろこうやって解釈をめぐって、また新しいそういうケースが出てくるわけでありますから、公的な機関としまして公労使の三者協議の場を、本当にこれは使用者性があるのかないのかということなど、それに付随するいろいろな問題が新たに出てくる可能性がありますから、そこの部分で三者の協議ができ得る、そして公的な責任としてそこではっきりと白黒がつけられるというような場の設置ということがさらに必要ではないか。  その他、いろいろとこれに関係します現行法の改正というような地ならしといいますか、そういう整備を一つずつなろうことならばやっていくべきであるというふうに考えますので、これは私の要望として、きょうはお答えがなくても結構でございますが、そのようにひとつぜひ努力していただければと、こう思います。もしコメントがあれば伺っておきたい。
  86. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) 先ほどお答えいたしましたように、今、与党の中でもまた労使の間でも非常に熱心な検討、協議が行われているというふうに聞いておりまして、その結果を踏まえて対処いたしたいと思いますけれども、今先生が御指摘されました二点につきましても、十分テークノートさせていただきたいと思うところでございます。
  87. 長谷川清

    ○長谷川清君 ちょうど時間になりましたので、私の質問を終わります。
  88. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣の所信に対して質問をさせていただきたいと思います。  二十一世紀はまさに女性と高齢者の問題が一番重要な問題だと言われますように、今国会でも女性に対する非常に重要な法案が出されることになりました。労働省はそういう意味ではいろいろの政策の中で高齢者や女性に対して一生懸命やっていることはよくわかりますが、真理は単純なところにあるということわざのように、最も大切なものはともすれば粗末にされがちなところがあります。例えば家庭とか家族などという問題は、みんなが一生懸命に議論をしたりあるいは考えたりする割には、私はいい方向に行っているんだろうかというような疑問を感ぜざるを得ません。  そこで、正村公宏専修大学教授が書いている論文を見ますと、教授はこう書いているんです。「結婚して家庭をもち、子どもを生んで育てることは、もちろん、個人の選択の問題である。しかし、家庭をもち、子どもを生んで育てたいという多くの人々の自然な希望の実現を阻害する構造的要因があるとすれば、それを取り除く共同事業を組織することは、社会の課題である。」、こういうふうに言っております。  そこで大臣に、会社にいる時間のいろんな国の比較調査がありますのでちょっとそれを言ってみますと、これは日本労働研究機構というところが調査した結果ですが、土日の休み時間を除いて男性の平均の場合、ドイツ八時間五十九分、フランス八時間五十四分、日本は十時間四十六分、つまり男性が会社にいる時間だ、こういうふうにしております。そして、今度この調査と逆に、自由時間プラス家事の時間プラス自宅での食事時間プラス家族や私的な友人などと過ごす時間を比較すると、ドイツでは五時間三十分、フランスでは五時間四十二分、日本は三時間二十分。もちろん会社にいる時間が長いのですからそれ以外は短くなるのは当然のことなんですね。  次に、家事をする時間というのがあるんですが、これはちょっとここに伏せておいて、さて大臣、この非常に単純にして重大な課題のフランス、ドイツとの比較について、まず大臣はどのようにお考えになりますか。
  89. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生の御質問、御意図に合うかどうかは存じません。職場にいる時間、これは拘束労働時間なのかな、それとも御自分の御意思でおいでになるのかなと。よく仕事が終わっても課長が帰らないと帰らないなんという日本的な慣行がありますので、先生のその数字の根拠はよくわかりません。  ただ、日本は年間二千時間になんなんとする総労働時間だ、こういうふうに言われております。アメリカより多少よくなった。しかしながら、イギリスあたりの千八百時間に比べると、やはり総労働時間が長いな、いやいやイギリスどころではない、もっと短いのにフランスやドイツの千五百何十時間というようなものもあるというような全体の流れの中で、経済先進国ということに相なった日本としては、先ほど来お話が出ました豊かさ、心のゆとり、家庭生活との両立というようなものをもう少し考えて、今般御審議を賜りたいと思っておりますところの時短促進法、これを御提示申し上げよう、こう思っている、そんな次第であります。よろしいですか。
  90. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 いえ、どう思いますかという感想です。
  91. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 今お話をしたとおりであります。  もっと言いますならば、世界的な労働時間というものはこういうふうにこういうふうになっている、したがって私どもとしても、経済先進国として労働時間の短縮に努め、加えて家庭生活との両立ができるようにしよう、これが私の見解というか感想であります。
  92. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大臣は理想を述べられているんです。現実はどうかということの感想を私は聞いているわけです。  理想とは裏腹に、あるいは週四十時間に持っていくというそういうこととは裏腹に、現実はやっぱり日本の男性は本当に働き過ぎ、拘束時間がとられている。そういうことは何を言いたいかというと、家庭にいる時間が少なくなるということなんです。これは、私は別にいいとか悪いとかというより、現実はそうだということをまず認識しなければ、いろんな物事の判断が間違うんじゃないかという私の設定なんです。  きょうは全く一般論ですので、男女雇用機会均等法という法案についてのことではありませんが、どちらにしましても、今この状況でこれから来るであろうところのもろもろの法案を考えるならば、先ほど坪井委員が本当に女性にも増して温かい質問を次々としていただいたので、人は見かけによるものだというふうに思いましたけれども、結果的にどうなるかというと、これは火を見るより明らかになるわけです。この結果どうなるかというと、少子化問題につながっていくというふうに思います。  私は、まず大臣に、今なぜ日本がこんなふうに少子化問題が起きるのか、少子化はどうして起きるのか、その原因を大臣の所見をお聞きしたいと思います。
  93. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 脱線をしておしかりをいただくかと存じますが、私は結婚して四十年、子供は一人もおりません。私のような者がおるからだと、こう思っております。脱線で申しわけありません。
  94. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 大変具体的なお話をいただいてよくわかりやすかったんですけれども、この問題は必ず少子化につながっていきます。  日本の今のこのままの現状で行って、少子化問題を大臣は防げるというふうにお考えですか。
  95. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 日本の民族の発展のために、そうしてそれの裏づけをする経済産業の適切な規模の発展のために、やはり少子化ということは決して望ましいものではない、しかるべき数の我々の世代の後を継ぐそういう子供が生まれていくのが望ましいことだと、こう思っております。
  96. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 しかるべき子供というのはどういう意味なのかなと今思いましたけれども、私はこれは大変重大な問題だというふうに思います。非常に単純な問題がこれから非常に大きな問題を醸し出していく。先ほどの正村教授のように、そういう要素があればそれを共同して改正していくのが社会の責任だ、こう言っているわけですから、私はやっぱりここで、非常に単純なことであるけれども、何年か後には重大なことになるという認識を持ってこれから女性の政策をやっていっていただかなければいけないというふうに思っております。  そのいい例といたしまして、スウェーデンが少子化問題に悩んでいろいろな手を打った事例がありますが、大臣、その事例をちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  97. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) スウェーデンは何年か前に先生御指摘のように子供の数が非常に減ってまいりました。そのために、まずは教育の面で男も女も家庭を支えるというような教育を一生懸命したというふうにも聞いておりますし、またもろもろの社会上の制度におきまして、育児休業の充実、また育児休業給付の充実、これは男性もとれるようなものでございますが、そういう社会的な面での充実の施策をたくさん打っていったというふうに聞いております。
  98. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 もっと具体的にお答えいただけませんでしょうか。教育だけじゃないと思いますけれども
  99. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 済みません。幾つかつけ加えさせていただきますが、公的な保育サービスについても充実をしておるようでございますし、また、先ほどちょっと申しましたけれども、育児休業中の所得保障につきましても非常に長い期間、例えば期間四百五十日、所得保障七五%というようなことをやっております。さらには男女平等化政策ということで意識の改革、これも先ほどと重なるかもしれませんけれども、そういうものも充実をしているというふうに聞いております。
  100. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私はこのスウェーデンの政策を見て本当にびっくりしましたのは、育児休業中に最初九〇%の保障をいたしました。それから今局長が言ったように七五%に下がりましたけれども、非常に思い切った政策をしているんです。やっぱりこういう問題というのは、きょうやったことがあす出るという結果ではありませんので、長い時間の結果を出すためには、今それはちょっとひど過ぎるんじゃないかと思うぐらいの抜本的というか急進的なことをやらなければ遣いつかないというふうにこの事例を見ても思います。  そういう点では、大臣女性そして少子化問題、高齢化問題というのは、これはやっぱり一つの円の中にあるというふうに思いますので、そういう点では思い切った政策を打っていただかなければ手おくれになるということをどうぞ御認識いただきたいというふうに思います。  さて、家事労働に従事している時間がやはり出ております。これを見ますと、ドイツでは家事に従事する男性の時間二十四分、フランスでは一時間、日本は八分なんです。ですから、今、日本は八分という家事に従事している時間。先ほど坪井委員が、女の人が夜勤したりすると子供の育児は結局男性にかかってくるじゃないか、でも日本の男はそんなことはできないよ、こういうふうに言いましたけれども、結果的には今の現状だったら男性にかかってきますけれども大臣は男性が家事に従事するということはどのようにお考えですか。
  101. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) それぞれの御家庭の中で、一つのゲマインシャフトでありますので、その中でひとつ自主的にお決めになる問題だと。  ただ、労働省としましては、先ほどお話をしましたように、職場の生活と加えて家庭生活、これの両立が可能なような環境づくりをしなければいけない。したがって、男女雇用機会均等法でありますとか時短でありますとか、もっと細かく言いますならば、子供さんができても、あるいは育児休業だとか、あるいは介護休業だとか、あるいは多胎児の場合には産前休暇を延ばすとかいうような意味合いで、支えの意味での施策は講じていこう、あとは御家庭の中でのお話の問題だ、こう思っております。
  102. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そうやって御家庭の問題だと放置することが、何年か後には大変な問題になるのではないかというふうに私は思います。  というのは、歴史上の言葉の中で女工哀史という言葉がありまして、私などはこの女工哀史という言葉を聞くと背筋がぞっと寒くなるんですけれども、反面教師として、そういう女工哀史というような世の中が来ないように我々女性は、特に議員としては頑張らなければいけない。  まず大臣にお聞きしますけれども、女工哀史と言われた、この哀史と言われた原因、どういう原因が哀史という歴史を引き起こしたのか、ちょっとお聞きいたしたいと思います。
  103. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 私は、女工哀史の時代に少年時代を送っておりますので、先生のおっしゃる哀史といいますのは二つの面があると思っております。  一つは、言いますならば、雇用を強制的に行った、その間に金銭の動きがあろうかと、こう思っております。それから、その家庭の両親といいますか、というようなものの判断が介在をしたと、こう思っております。  それから今度は、雇用された後におけるところの言いますならば拘束労働時間、あるいは一日、一時間当たりの労働提供の密度等々、そういった面がすべて絡み合って女工哀史の哀が表現されたんだと、こう思っております。
  104. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 この哀史と言われた最も哀の部分は、深夜長時間労働というのが原因だったと私は思います。これが女性の体をむしばんでいって結核とかいろんな病気を引き起こしたというふうに思います。  だから、先ほどのそれは御家庭の問題だという言葉は、結果的には女性が体を壊していくということになります。女性が男性と一緒に肩を並べて一生懸命やる、女性仕事をするということは、体を壊してまでも一生懸命やるということが何年か後に一体どういう結果になるのかということは、今からやっぱり計算しておかなければいけないと思うんです。  そのために、今は女工哀史の時代と違いますが、女性が体を壊さないで、しかも豊かに、しかも均等に仕事ができるという、大臣はそういう理想の社会をどのように描いておりますか。
  105. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、あらかじめお断りでありますが、私は女工哀史というのは雇用関係にあるところの女子労働者について申し上げましたので、家庭の中において家庭労働が非常に厳しいといいますものを含んで女工哀史の哀と言ったつもりはさらさらありません。家庭の中においては、家庭の中でお話し合いによって仕事の分担を自由にお決めになられるようにと。  いずれともあれ、私は、雇用関係にある労働者としても、それから家庭の中におけるところの女性あるいは主婦とされても、健康を害することなく、職場生活で十分生きがいを感じられるように、同じく家庭生活の中でも主婦としての矜持が持てて、うれしさ、楽しさというものが味わえるような、そういう家庭でありますことをこいねがっております。
  106. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 つまり、私は今の現状を見ますと、結果的に女性雇用の問題で仕事につき、そして家庭に帰るとやっぱり自分でも家事労働をしなければいけない。男性の八分という数字はいろいろ問題があると思いますが、男性も今一生懸命働いていますので、なかなか家事労働までする時間がないというのが現状。そうするとどっちにしわ寄せが来るかというと、女性にしわ寄せが来て、そして体を壊していく。やっぱり、産む性という母体を常に病気にさせないような社会づくりをするのが私は国家の仕事だというふうに思います。  そういう点では、いろいろとこれから具体的問題が起きてきますけれども、真理は単純なところにあるんです、結局、女性か働いて生きがいを持つと同時に家事労働に追われて、社会がそれをフォローする体制がなければ、やっぱり女工哀史のように体を壊していくという現実が来ます。  私はよく言うんですけれども、あの大きな恐竜が死滅した地球上、今のようなやり方をして、女性仕事に生きがいだ、男性は家事労働はしないよ、おれも仕事が生きがいだと、こういうようなやり方をして、それで社会がそれをフォローしていかなければ人類の滅亡もあり得るんではないかなという、そんなオーバーな感想を持つぐらいです。  そういう点では、まさにきょうは大臣に対する一般論、大臣女性についてどういう私見をお持ちかどうか。お顔を見ると優しそうで、なかなか博学で雄弁家でいらっしゃいますから、これから女性の政策について真剣にお取り組みいただけるとは思うんですけれども、やっぱり労働行政というのは非常に重大だというふうに思います。これから行革があっていろんな省庁がなくなっても労働省だけは営々と政策を続けていっていただきたい、私はそういう期待を持っている一人としまして、女性の政策が間違いなく二十一世紀を見据えた政策であっていただきたいというふうに思います。  さて続きまして、職業能力の開発の件についてお話を伺いたいと思います。  先ほどの正村教授がこのように言っております。日本の若者は今非常に大学に入る率が多くなって四〇%にも達する男女が大学で勉強している、しかし、この大学生は大部分は遊民化、つまり遊んでいる民の化、遊民化している、こういうふうに指摘しているんですね。そして、この学生は自分たちが何をこれからやっていいのかわからず、社会を維持するために必要な人間の量を確保できくなりつつあるのが今の日本だ、人間の量も確保できなければ、人間の質も確保できなくなる、こういう社会の実現は非常に恐ろしい社会だ、このように言っております。  私も大学で教えている一人として、この非常に驚異的な言い回しはわからないでもないなというふうに思います。これから私はこういう遊民化している学生に対してということでお話を聞きたいのですが、正村教授が言うように、今、日本の学生は遊民化して量も質も日本を支えるだけの力がなくなったというこの指摘に対して大臣はどのようにお考えになりますか。
  107. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) たびたび脱線で申しわけありません。  私は旧制高等学校六年を経験いたしております。大学は三年でございますが、しかしながら、ほとんど大学には、あるいは高等学校の時代も、教室に出て教授の講義を細かくノートにとるというような意味合いでは落第坊主中の落第坊主であります。  ただ、先生がおっしゃる、しからば岡野のあの学生時代は遊んでいたのか、こういうふうにもし御理解をなさるとすれば、私は遊んでいたつもりはございません。学校の成績は落第坊主でありますけれども、その間に、当時はカント、ヘーゲル、フィヒテ、シェリング、これらあたりが中心で、現象学のフッサール、ハイデッガー、ベルグソンまで、あるいは日本で言うならば田辺元、あるいは西田幾多郎、高山岩男、高坂正顕等々、いろいろな楽しい本を読んでおりました。したがって、戦中から戦後にかけてでありますので非常にかつえてはおりましたけれども、精神は非常に楽しゆうございました。脱線して申しわけありません。佐々木満先生、そこにおいでになります。全く同じような経験、雰囲気の中で相育ちて今日にあります。  先生のおっしゃる遊民というのは私の概念ではちょっとわかりませんのですが、どういうことでありましょうか。
  108. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これは専修大学の正村教授が発明したというかつくったというか、なかなかおもしろい言葉だなと思います。大臣は多分優秀ですから現在のように優秀な人になったんだと思いますけれども、しかし正村教授の言われることも私はさもありなんというふうに思います。  そこで、自分人生をどうしていいかわからないようなそういう若者に対して、これから勤労ということがいかに重大かということをしっかりと私は認識してもらう必要があると思いますので、そういう点では今どのような政策が行われておりますか。
  109. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 基本的に若年者の雇用の問題は、雇用の前にやはり職業教育なり、自分が今からつこうとする職業が今後どういうことになるとか、そんなようなことがまず基本的にあるべきだというふうに思っております。  そういう意味で、労働省、若者、学校教育の間に職業教育、今後の職業のあり方はどんなものかということについて情報を提供するなり実際に体験させるなりというようなことに力点を置いて政策を進めていきたいと思っております。
  110. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、大臣のような優秀な人ばかりでしたら本当に何の憂えることもないんですけれども、遊んでもいいんですけれども、勤労の義務というのは憲法二十七条にありますから、やっぱり日本社会を将来支えるという意識をどこかできちっと持たなければいけないというふうに思いますので、その点は力を入れていただきたいと思います。  しかし、今の若者を見ると、三年でもって職種を変える、転職が非常に多いんですね。こういう三年でなぜ転職してしまうかということも、これも非常に重大問題なんです。そこで、こういう転職者に対する対策は何かしておりますか。
  111. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 若者が転職するのは確かにふえておりまして、再就職をいかに円滑にやるかということが大切だと思います。そういう意味で、手に職をつけると申しますか、若年で離職した人について特に職業訓練に力を入れて今やっているところであります。  具体的には、高いレベルの職業訓練。近年、高学歴の若年離職者がかなり多くなっております。そういう意味で、私どもの職業能力開発促進センターに情報システムサービス科とかあるいは工場の自動化をやる科目を設けて、できるだけ早期に再就職できるようにいろんな形でやっております。  特に私ども大切だと思っておりますのは、カウンセラーですか、これからどういう能力開発をやってどういう職業についていくかということの相談というのが非常に大切だと思っております。  そういう観点から、都道府県に雇用促進センターがございますが、そこに相談員を配置しまして能力開発相談コーナーというのをつくりまして、そこでこれからどんな能力開発をやってどういうところに就職していったらいいかということを相談し、かつその結果を見て、必要であれば職業能力開発短期大学校なりあるいは職業能力開発促進センターに紹介するなりして、そこで新しい技能と申しますか技術をつけてよりよい職場につけるようにいろんな政策を組んでいる、こんな形で政策を遂行いたしておるところでございます。
  112. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は職業の技術あるいは勤労意欲を養うということはこれから非常に重大なことだというように思います。そういう点では、雇用促進事業団という職業意識を養う組織というのが今どうやら何か行革のやり玉に上がっているような感じがいたします。  そこで大臣にお伺いしますが、行革の構えとして、何か魔女狩りのような感じにならないのが一つ。  それから、やっぱり縦割り行政というものの弊害というのは能力開発にもある。なぜかというと、自然に帰りたいというサラリーマンが出てくる、ところが、農業に従事するときに、労働省は農業従事者の訓練校を持っていないという弊害が起きてきているというふうに思います。農業従事者も勤労者であることは間違いない。雇用関係にあるものだけしかターゲットに入れないという労働省の縦割り行政というのを、働くというのはどんな仕事でも働く、派遣業もこれからどんどん出てきますし、あるいはシルバー人材センターのような形のものも出てくる。そういう意味では私は、労働省というのは働く人というのを全部ターゲットにして、そしてそれの対策をとらなければいけない時期に来ているのでないかというふうに思いますが、大臣の所見をお伺いします。
  113. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 現行の労働省の設置法等々からしますと、やはり雇用関係にあるところの労働者、あるいは雇用関係に導き入れるという意味ではもう一回り概念が広い、こうは思っておりますが、憲法に言う勤労者全般、これを労働省が全部所管をするということではない、こう思っております。  それから、先生お話の、農業技術についての職業能力の開発が労働省に欠けているではないかというお話でありますが、農業がこれから多角化し、それから大規模化してまいると農業生産工場的な営みに変わっていくことがあろうかと思っております。その場合には、農業技術について当然職開の中で強化科目というようなことで重点を入れてまいらなければならない。したがいまして、現状に即した訓練を私どもも展開してまいりたい、こう思っております。
  114. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 終わります。
  115. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後二時開会
  116. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  117. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 まず、私は、昨年の十二月二十四日、労働省の中央職業安定審議会が「有料職業紹介事業制度改正について」という建議をまとめて、発表されました。  これまで、調理師や看護婦、美容師など二十九の職種だけに限定して認められていた民間の有料職業紹介事業の対象職種が、建設や製造業を除くほかは原則ネガティブリスト化で自由化されるということであります。  それから、その手数料に関しましては、いわゆる第一種の紹介手数料に関しましては従来どおりの規制ということになりますが、そのほかコンサルタント等のいわゆる管理等に係る手数料というものに関しては原則自由化されるというふうに言われておりますが、その点について、有料職業紹介事業がどの程度まで規制緩和されるのかということについてお尋ねしたいと思います。
  118. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 有料職業紹介事業につきましては、先生御指摘のように、中央職業安定審議会において一昨年来御議論いただいてきたわけでございますが、昨年十二月にそれを建議という形でまとめていただいたところでございます。  この中身につきましては主なものが三点ございまして、第一点目は、不当・違法な職業紹介、あるいは差別的な職業紹介や不適当な職業紹介が生ずるおそれがあることにより取扱職業とすることが不適切なもの以外を取扱職業とすること、いわゆるネガティブリスト化の考え方でございます。  第二点目は、コンサルティングあるいはカウンセリング等の利用者の個別の依頼により提供されるサービスに係る紹介手数料については、提供されるサービスの種類及び内容並びにこれらと手数料の額との関係が明示されていることについて、労働大臣が承認したものを徴収することができるようにすること。これがただいま先生御指摘の、第二点目の手数料の関係でございます。  それから第三点目は、公正な職業紹介を確保するための措置として、労働省がガイドラインを策定し、周知、指導することというような内容の建議でございます。  この建議を踏まえまして、私どもといたしましては、年が明けてから、必要な省令改正をする必要があるということでこの案をつくりまして、これまた中央職業安定審議会に諮問しその答申をいただいたところでございまして、それに基づきまして、この四月一日から、建議の趣旨を十分に踏まえて、有料職業紹介所の適正な事業運営が確保されるような形での実施を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。  なお、コンサルティング等に係る紹介手数料につきましては、基本的なサービスに係る紹介手数料については御指摘のとおり従来どおりで、コンサルティング等に係る紹介手数料につきましては、ただいま申し上げましたように労働大臣に届け出をし、その承認を受けた額、これを徴収できることとするというふうに改めようとするものでございまして、これはILO九十六号条約におきまして、その承認を受けると、こういうことが定められておりますので、そういう観点からの規制をいたすものでございます。
  119. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、手数料を二種類に分けるわけですが、原則自由化して承認を受ける額にするということですが、原則自由化される手数料の中身、どういう項目であれば手数料として取っていいのかというその項目についてと、それから今承認を受ける額というのでILO条約に基づいて承認をすると言われたんですが、大体どの程度の基準を具体的に考えておられるのかについてお聞きいたします。
  120. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 手数料につきましては、基本的には従来どおりの考え方でございます。基本的サービスに係る紹介手数料といたしまして、マッチング等基本的サービス事務については現行の上限規制の方式、これは賃金の一〇・一%、六カ月分を限度ということでございますが、それによることとするということでございます。  それに加えまして、従来いわゆるヘッドハンティングと言われているようなケースが実態としてあったわけでございまして、その間の手数料についてはなかなか基本的な手数料、紹介手数料だけでは処理できないというようなことで実態的にいろんな問題もあったわけでございますが、その点を今回は整理いたしまして、求人の申し込みまたは求職の申し込みの受理が行われた時点以降に行われる個別依頼に基づくコンサルティング、カウンセリング、求職者または求人の開拓等については、この基本的サービスに係る紹介手数料に加えまして、有料職業紹介所が労働大臣に届け出をし承認を受けた額を徴収できることとするというような形に改めようとするものでございます。
  121. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 この後者の質問の、その承認を受けた額は大体どの程度の基準をめどとしておられるのかについてはいかがでしょうか。
  122. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) その点につきましては、個々のいろんなケースがございますので具体的な基準は定めておりません。届け出をして承認を受ければいい、こういう形でございます。
  123. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働基準法の基本原則としては、いわゆる中間搾取を禁止するということで、それが最も重い罰則を適用されるという労働基準法上の原則になっているわけですが、これまでさまざまな外国人労働者などの仲介などを見ましても、基本的なところではなくて、まさに今自由化される求人受理後のそうしたコンサルタント料でもって搾取をするという形態が決してなかったわけではないわけであります。  ケース・バイ・ケースだと言われましても、大体基本が一〇・一%であれば、上限規制などについては考えておられますか。
  124. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 今回の改正によりまして対象職業の範囲が変わるわけでございますが、その範囲につきましては、御承知のように従来経営管理者あるいは科学的技術者ということで、この科学的を取った技術者、それから事務の職業あるいは販売の職業、これは一定の範囲を除きますが、その辺のところが今回取扱職業の範囲に入るわけでございます。  そういう職業の中で、このコンサルティング等に係る紹介手数料、これの対象になると考えますのは、主として経営管理者あるいは技術者、そういうところの部分でございまして、その間の職業紹介にかかわる分についてのコンサルティング等をいろいろやった場合のその紹介手数料につきまして、繰り返しになりますが、これについての上限というものは特に設定せずに、労働大臣に届け出をし承認を受ければその額を徴収できると、こういう仕組みにするということでございます。この考え方自体はILOの九十六号条約の考え方に沿っているということでございます。
  125. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 第二種の紹介手数料の項目を特定しないで料金徴収を行った場合に、とりわけ制裁措置みたいなものは考えておられますか。
  126. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 手数料につきましては、所定の手続をとっていただく、手続をとっていただかねばそれは効果を発しない、こういうことでございます。
  127. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 自由化される手数料で、いわゆる第二種の紹介手数料名目で脱法行為が行われないよう、とりわけ通達の規定については注意を払っていただきたいと思います。  また、対象範囲のネガティブリスト化によって、我が国では専門性が確立されていない職業分野で紹企業者が職業安定法規定の内容を遵守するためには、やはり格段の配慮、枠組みが必要だろうと思います。例えば職業安定法によりますれば、職安法の三条では均等待遇の原則がございますし、職安法の五十一条ではプライバシーの保護などがあります。そういったいわゆる労働者の保護に関してガイドラインで対処するということになるわけですが、ガイドラインの項目というのはどういった項目を考えておられるんでしょうか。
  128. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 今回の有料職業紹介事業制度あり方について中央職業安定審議会で御議論をいただく際に、やはり一つの大きな論点として、先生御指摘のように、公正な職業紹介を確保するための措置、これをきちんとすべきであるという御意見がございました。もう一点は、先ほど申し上げましたように、取扱職業の範囲について、これをどこまで広げるかという点についての御議論もございました。その二点がございました。  先ほど申し上げましたガイドラインを策定して具体的に周知するという点については、これは御指摘のとおりでございまして、中央職業安定審議会の建議におきましても、公正な職業紹介を確保するための措置として労働省がガイドラインを策定し、周知・指導を行うべきであるというふうにされております。  この具体的な内容につきましては、現在、中央職業安定審議会での御意見を伺いながら検討を行っているところでございますが、項目といたしましては、不当・違法な職業紹介の防止に関する事項、差別的な職業紹介の防止に関する事項、不適当な職業紹介の防止に関する事項、適切な苦情処理に関する事項を内容といたしまして、労働者保護等を踏まえた公正な職業紹介を確保する観点から、有料職業紹介事業所が守るべき事項等にこれをわかりやすく具体化し、指針を公表する予定でございます。  労働省といたしましては、このガイドラインの周知徹底を図るとともに、このガイドラインの内容に基づく指導を行いつつ、有料職業紹介所の適正な事業運営が確保されるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  129. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 適職に対するアクセスを労働者の立場から可能にするためには、求人、求職についてのいわゆる情報提供というものがしっかりできなければいけないと思うのですが、その点についてはガイドラインとの関係では議論がされているんでしょうか。  それからまた、情報提供されて労働契約が成立した後、その内容が虚偽であったりあるいは非常にミスマッチがあった場合、先ほど苦情処理についてはおっしゃったんですが、求人側ないしは紹介者側の責任についてはガイドラインではどのように決められようとしているんでしょうか。
  130. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま申し上げましたように、現在、今言った四点の項目について検討中でございまして、その中身には先生御指摘のようなことも含めて御議論をいただいているものというふうに考えております。
  131. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 では、その点も十分議論をされまして、ガイドラインには十分労働者の権利の保護に遺漏のないようにお願いをしたいと思います。とりわけ、解雇をほのめかしながら労働条件が切り下げられるようなことがないように。というのは、これから人材派遣についてもこれができるということになりますとそういう危惧があろうかというふうに思いますので、その点ぜひこれから検討をされたいというふうに申し上げたいと思います。  それから第二点は、ことしの二月二十一日の日経新聞に、「時短分の基本給」の「引き下げを容認」という情報で、「週四十時間労働制の完全実施を前に、労働省は時間短縮分の基本給を引き下げることを認める通達を出す方針を決めた。」というような記事がございます。  これは、業者側の資料を見ますと、労働省質問をしたところ、昭和五十六年当時の通達による同種の回答を得たというふうに言われておりますが、どの団体からどういう問い合わせがあって、労働省としてはどういう返事をどういう形で出されたのか、お尋ねをいたします。
  132. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御質問のありました点につきましては、日本商工会議所など中小企業四団体から週四十時間労働制への移行に伴います月給者に対する賃金の取り扱いについて問い合わせがございまして、これに対しまして、労働省といたしましては、過去、昭和五十六年でございますが、商業などのいわば特例措置対象事業所の法定の所定労働時間を週五十四時間から週四十八時間に短縮いたしました際に示されている考え方と同様の考え方を示したわけでございます。  その内容は、週四十時間労働制への移行に伴う月給者に対する賃金の取り扱いにつきましては、基本的には労使話し合いで解決すべきものであると。ただ、週四十時間労働制への移行に伴う賃金の改定に当たりましては、時間当たりの賃金が減少しないなど労働時間の変更との関係から見て合理性があれば、これは労働基準法の適用上問題にならないという趣旨でございます。  これを踏まえまして、傘下の会員企業に対しまして各団体から、週四十時間労働制への移行が必要不可欠である、こういうふうにいたした上で、これに伴う賃金の取り扱いについての指示がなされたというふうに承知いたしております。
  133. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、労働省としては新しく文書で出されたわけですか、口頭で返事をされたということですか。
  134. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今回は特に文書で示したというのではなくて、そういった回答を示しておるわけでございます。
  135. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 その点について国際的に見ますと、労働時間の短縮に関する勧告第百十六号というのがございまして、国際的には労働時間の短縮が行われたときにおける労働者賃金を減少させることなく短縮が行われるべきだという原則が示されていると同時に、やはり労働時間の短縮というのは、労働者生活の向上や労働条件の向上、ゆとりのある生活を確保するという目的のために原則としては賃下げのない時間短縮というのが行われるべきだと思うわけです。  しかし、仮に一歩譲って、労働省の言われるように原則労使自治ということであるとすれば、時間当たりの賃金率に変更がなければいいんだというような通達はそうした国際基準にも反しないのかどうか。それから、最低労働基準であるという労働基準法の趣旨にも反しないのかどうかということが考えられますが、この点、労働省としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  136. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 私ども労働時間の短縮を円滑に進めるためには、生産あるいは所得の低下を来さないように、生産性の向上を図って労働時間短縮のコストを吸収していくということが一番望ましいというふうに基本的に考えております。  ただ、賃金の取り扱いにつきましてはあくまて労使話し合いの中で決められるべきものでございますので、労使がきちんと話し合いを行った上で、先ほど申し上げました回答のように、労働時間の変更との関係から見て合理性がある賃金の見直しであれば労働基準法の適用上は問題がない、こういうことでございます。したがいまして、私ども基本的には、今回の週四十時間労働制への移行、そういった労働時間の短縮に当たっては、労働時間の短縮を円滑に進めるためのノウハウあるいは生産性の向上等について十分指導、援助を申し上げたい。そのための助成制度等も活用しながら進めていくというのを基本にいたしたいと思っております。  いずれにしましても、賃金の問題については労使で十分話し合っていただくことが基本だろうと思っております。  国際的な関係でございますが、これは各国々の実情の中でさまざまな取り扱いがなされてきていると承知しておりますが、特にヨーロッパ等時短がかなり進んでいるところにおきましては、生産性の向上を労働時間に回すか賃金に回すかというような際に、やはり一定の選択が行われつつ進んできたような経緯もあるようでございますが、今回の場合は、ただいま申し上げましたような基本姿勢で、まずは何とかコストを吸収できる方法はないか、そのための援助等も行いながらこういった円滑な移行を図っていくように我々としては努力をいたしたいと思っております。
  137. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それで、五十六年の通達はわかりますが、また今度も通達は出されるわけですか、三月末めどに。
  138. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 現在、今国会に私ども労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法を提出させていただいております。その中で、今回の週四十時間制への移行に当たりまして、中小企業等につきましては懇切丁寧な指導を行いながらその定着を図っていくこと、またそれに基づきまして時短促進法の期限を延長いたしまして、それに基づく労働時間管理の改善とか省力化投資への助成措置等も行っていく考えでございます。  したがいまして、この法案を御審議いただきまして成立させていただければ、その段階でこの労働時間短縮のこれからの進め方について基本的な私ども考え方、通達を地方にも示す予定でおります。
  139. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 だから、それはやっぱり通達までいくとおかしいのではないか。本来、労使自治の原則というのなら労使自治の原則にとどめるべきであって、そのような通達というのは将来的には労働者勤労意欲をダウンさせて、生産性の向上にかえって私はマイナスだと思うんです。  今まで十年もかかって段階的に時間短縮を進めてきて、助成措置をしてさらに二年間きめの細かい配慮をしていくわけですから、それにもかかわらず賃金についてそういう通達を出すというのは、前に出した状況と違ってやはり余りにも使用者側に過保護で、コスト意識に寄り過ぎているんじゃないかというふうに考えますが、もうそういう通達は出さないということの方が、私はまさに今の時代における労使自治に任せるという原則を労働省は堅持すべきだと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  140. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先ほどの答弁、先生にちょっと誤解を招いたようで大変恐縮でございますが、先ほど通達を出すと申し上げましたのは、今提案させていただいております時短促進法の改正が通りましたら、それを受けまして、この労働時間短縮の進め方全体についての私どもの指導方針、それから新たに設けられます助成金制度等によりまして、それを省力化投資あるいは労働時間管理の改善に結びつけて生産性の向上に結びつけていく、そういうノウハウの提供等について全体的な通達を出すというつもりで申し上げたところでございます。  御指摘の労働時間短縮と賃金の取り扱いの関係については、あくまで労使自治の問題でございまして、労使できちっと話し合っていただくべきものでございますので、関係団体がそういった通達を出していることは、これは触れざるを得ないと思いますが、あくまでその基本労使できちっと話し合っていただくことが前提ですよということをむしろはっきりと申し上げることに相なろうかと思います。
  141. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、「基本給を引き下げることを認める通達を出す方針を決めた。」というのは、別にまだ決まっていないというふうに伺ってよろしいですか。
  142. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 繰り返しになりますが、労働時間短縮の実施に当たりまして、賃金等の切り下げ、私どもそれを容認するとかそういった姿勢は全く持っておりません。先ほど申し上げましたように、労働時間短縮に伴う、そこから生じますコスト等を私どもの助成や労働時間管理の改善等で吸収していただいていく、これが一番基本だろうと思っております。そういった気持ちで運用してまいる所存でございますので、過去の五十六年の通達等を今回関係団体にも、これは既に出ている通達でございますので、それと同様の考え方を示しておりますけれども、それはあくまで労使できちっと話し合っていただくことを前提としたものでございますので、その趣旨は地方にも十分伝えていきたいというふうに考えているところでございます。
  143. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働大臣がおられませんので、政務次官、その点について御見解と御決意をお願いしたいと思います。
  144. 小林興起

    政府委員(小林興起君) 今、事務当局から御説明させていただいたとおりでございます。あくまでも労使の中で話し合いで決着をつけていくという方向で労働省としては進んでまいりたいと考えております。
  145. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、均等法の見直しが進んでおりまして、とりわけ労働基準法の女子保護規定が撤廃された後の女子労働者労働条件の問題について働く女性たちの危惧が大変大きく、私どもとしても心を痛めております。  育児・介護休業法の改正でもって多少の深夜業に関する手当てはできましたけれども、働き続けられない女性たちがパートタイム労働の方に移っていくのではないか。パートタイム労働法の保護ということと、均等法、労基法の男女共通の労働条件の規制ということは、私は三位一体となって初めて女性労働条件の確保ができるというふうに思うわけでございますが、現在パート労働法の見直しが、去年の十二月末で附則によって定められております期限を超えておりますが、労働省としてはパートタイム労働法に関してどのような見直しの方向を持っておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  146. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 短時間労働者雇用管理の改善等に関する法律におきまして、その附則第二条におきまして、「法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」ことというふうに規定されておりまして、先生御指摘のとおり、昨年十二月に三年を経過したところでございます。  現在、労働省といたしましては、昨年十月より、学識経験者により構成いたしますパートタイム労働に係る調査研究会を発足させまして、法施行後の状況を中心といたしまして、パートタイム労働者総合実態調査の結果の分析などを初め、パートタイム労働に係る問題点を整理、検討しているところでございます。この研究会での検討結果につきましては本年夏ごろを目途に報告書をまとめる予定としておりまして、パートタイム労働法の見直しにつきましては、この研究会での検討結果を踏まえ、さらに婦人少年問題審議会で御議論いただくことになるというふうに考えております。
  147. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 とりわけパート労働法の改正について重要なのは均等処遇の原則だと思います。労働時間に比例して、同種の仕事をする労働者に対しては同一の賃金率を払うべきだという原則というものをぜひ御検討いただき、次の見直しの課題としていただきたいと思います。  時間が終わりましたので、終わらせていただきます。
  148. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子であります。  最初に、三井三池炭鉱の閉山問題についてお伺いさせていただきます。  三井石炭鉱業がことし三月三十日をもって閉山されるということに相なりました。黒いダイヤと言われた時期があり、また我が国産業の担い手として、支え手として大変貴重な役割を果たした時期があり、そうした時期を経まして百二十四年間の会社の、創業百二十四年というんでしょうか、その歴史に幕がおりるということで、私、労働省に長くいたこともありまして大変感無量に思うわけでございます。  石田労働大臣時代に石田労政という言葉が生まれまして、資本対労働の大変激しい闘争がありましたり、またそのときも、当時はエネルギー革命というような言葉よりもむしろ産業構造転換と言いましたでしょうか、大変ドラスチックな転換の意義というものを私自身感じたわけでございます。  ですが、今回の閉山問題につきましては労働組合の方も、時代の流れといいましょうか、あるいはエネルギー政策の大転換といいましょうか、やむを得ないことと大変冷静に受けとめているところでございます。ただ問題は、再雇用といいますか、やはり再就職の確保が万全にできるのかどうかというところに大きく焦点が絞られてきているのではないかと思います。  私どもの民主党におきましては、三井三池炭鉱閉山対策についての本部を設置いたしまして、昨日でございますが、二十四日には衆参の議員が現地に調査をしてまいりました。大牟田、荒尾という中心の地域に参りまして、自治体関係者の方々、あるいは管理者側、労働組合側双方の関係者の方々、それから地域に大変大きな影響力といいますか、地域社会の中のオピニオンリーダーとなられますような商工会議所等々、それからもちろん職業安定所にもお訪ねしましてお話を伺ってきたわけでございます。  先週の金曜日、二月二十一日でございますけれども、全炭鉱の安永委員長を初めといたします関係三組合の方が一緒になっての要請活動を行っておられまして、私ども民主党もこの方々とお目にかかったところでございます。労働省の方にも要請が行かれたと存じます。十八項目にわたります要請書を出しておられますけれども、何といいましてもやはりそのトップは雇用についてということでございました。  昨日の現地調査の結果も、量としての再就職口はある程度確保されるめどがついているようでございますけれども、今回の三井三池のこの炭鉱地域の特徴は、都市型炭鉱というんでしょうか、その地域の中に大変どっしりといいましょうか、入り込んでいる。炭鉱だけがどこか山の中にあるということではなくて、地域社会の中にしっかりとビルトインされている、そういう職場なわけでございます。  ということで、地元の再就職先というのを非常に望んでおられるようでございますが、なかなかその割合は三、四割程度にしかならないようだというようなことで、やはり組合関係者の方々、もちろん会社の方も大変心を砕いているようではございましたが、その再就職、特に地元での再就職の確保が少ないことについて、私どもも強い要請を受けてきたというふうに聞いております。  こういう状況でございますけれども労働省としてはこうした、まあ国策という言葉は大変古いかもわかりませんけれども、国の政策に相まって貢献して、そしてこのたび百二十四年の歴史を閉じるという運命をたどる、そういう産業に働いてきた方々の再就職対策についてはどのように取り組んでいただけるのか。解決の方法がめどが立つのか、お伺いしたいと思います。
  149. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 三井三池鉱業所が万が一閉山ということに相なりますれば、雇用問題が労働行政として努力をすべき最大の問題だと、こう思っております。  今、十七日の日に労使協議会の中でこの問題が提案され、閉山は三十日だというようなことでもろもろの話し合い、交渉が行われておりますので、それを我々としては注意深く見守っておるというのが現状であります。  しかし、予測される離職者の数は千五百六十六とも言い、いやいやもっと大きくなって二千台にもなるぞというようなお話を耳にしているところであります。したがいまして、そういう大規模な離職者が出るということになりますれば、それの再雇用というような意味合いで公共職業安定所を一本とした全国ネットワークの全面的な活用と、それからまた、当然離職者の皆さんは新たな職場ということになりますので、新たな職場にアクセスできるようなそういう技能を身につけていただくというようなことも雇用につながるものではないかということで、これにまた力点を置きたいと思っております。  あとは、炭鉱離職者の求職手帳というような特別の制度がございますので、その間においてなるべく当該離職者の皆さん考えにマッチした、そういう職場をまた私どもとしても探してまいりたいと、こう思っております。  先生おっしゃられますように、地元で再就職を求めるというような意向の離職者の皆さんが多いようであります。三井三池鉱業所の跡地といいますものは非常に広大な面積であります。したがいまして、そこを立地活用をいたしまして新たなジャンルの作業といいますか、企業といいますか、これらをつくっていくということも雇用のためには非常に大きなプラスになるな。  以上、あれやこれや、全力をもってこたえてまいりたい。これが今の時点の考え方であります。
  150. 川橋幸子

    川橋幸子君 ぜひ全力を挙げて、大臣を先頭に労働省において取り組んでいただきたいと思います。  新聞等で拝見したところでございますが、離職者の方々の雇用の安定といいますか、それから地域振興といいますか、この地域そのものへの与える影響が非常に大きいわけでございます。それから、離職者の方個人にはとどまりませんで、そこで生活していらっしゃる家族の方々、ちょうど受験期であったりいたします。そうしますと、住宅の問題等々トータルな生活面での安定の施策に対する国の支援、あるいは自治体の取り組みというのが望まれているわけでございます。  十四省庁連絡体制、これは通産・資源エネルギー庁が中心かと思いますが、働く人々の生活を守るという意味ではやはり労働省も積極的に発言していただきまして、住宅、あるいは他省庁の問題もあるかもわかりませんけれども子供たちの問題等々、どこか欠落が生じることがないようにトータルに人間の生活を守るという立場から労働省には目配りをお願いしたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  151. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま基本的には大臣がお答え申し上げたとおりでございますが、大臣の命を受けまして、具体的には二月二十日に本省内に炭鉱離職者等対策本部を設置いたしまして、これは本部長は専門の担当ということで高齢・障害者対策部長でございます。先生方よりおくれて申しわけありませんが、本日福岡の方へ出かけました。それを中心といたしまして、関係省庁あるいは雇用促進事業団あるいは地元自治体、そういうところと連携を十分に図りながら、あるいは現地の県におきましても雇用対策本部等設置されておりますので、そういうところと連携を図りながら対策に最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。  具体的な問題につきましては、やはりこれは離職された方々の家庭の事情あるいはその他いろんな職業相談をしながらきめ細かく個別に対応しなければならないわけでございまして、その間の生活の安定につきましては、これは雇用保険給付及び手帳に基づく手当て、それで三年間ということでございますが、生活の安定を図っていただく。そういう間にいろんな御相談をしながら、地元の就職あるいは広域的な職業紹介の中でお考えいただくというふうなこと。  そういう関係で、特に住宅問題が非常に深刻切実であるというふうな御指摘ございますが、これにつきましては、今後極めて切実な問題であるということで労使交渉で取り扱われることとなるかと思いますので、その事態の推移も見守っていきたいと思いますが、当面、会社としては閉山後八カ月間は入居可能、あるいは事情によって四カ月は延長するというようなことも聞いておりますが、この間に今言ったような対策、どんなぐあいになるか、その辺の事態の推移も見守ってまいりたいと思います。  ただ、この住宅自体を例えば雇用促進事業団で移転就職者用の宿舎として買い上げるというような要望もあるわけですが、これは制度仕組み上なかなか困難でございまして、それは難しいんですが、ただ、この方々がそういう一環の中で移転して就職するというふうな観点に立った場合には、既設の雇用促進住宅、これについては各地にございますし、あるいはあいている状況もございますので、そういうものを見ながら最大限優先入居に努めるというようなこともあわせて検討してまいりたいというふうに考えております。
  152. 川橋幸子

    川橋幸子君 よろしくお願いしたいと思います。  できることできないこと、現行の法制度ないしは雇用促進事業団の役割から考えてあるかと存じますけれども、弾力的な運用をしていただきたい。移転した人には住宅の手当てがあり、移転しなければ住宅の手当てがないというのも、現在のような雇用情勢から考えますとちょっと機械的な割り切り論のような感じもいたします。その辺、局長の答弁の中では柔軟によく目配りしてくださるということでございますので、よろしくお願いいたします。  加えて、これは答えは要らないのですけれども、もう一点あわせて要望させていただきますと、炭鉱労働者の場合にはいわゆる黒手帳ということで手厚い措置がなされる。それから、下請の方々は単純にいいますと緑手帳ということで、程度はそこまではまいりませんけれども配慮が行われる。あと、下請でなくても、やはり企業城下町というんでしょうか、そこに三井三池があることによりましてさまざまな業種なり事業所なりがある。そういう方々に対する措置というものも、手帳は無理といたしましても、雇用促進地域に御指定いただくとか等々の措置を講じていただきたいということを申し上げまして、三井三池の問題はきょうはこれで終わらせていただきます。  次は、昨年十二月に起きました長野県小谷村の蒲原沢の復旧工事の土石流災害についてお伺いしたいと思います。  前回、十二月の当委員会でも同僚議員の方々がさまざまな角度から質問されておるわけでございますが、私ども民主党の場合は、ことしに入りまして、二月七日でございます、もう一回フォローアップの意味もありまして現地の方に調査団を結成して訪ねてまいりました。発注機関、それから元請、下請、それから労働基準監督署の関係者の方々から臨場感のあるその後の話を聞いてきたわけでございます。  今回調査の結果なんですが、目で見た結果というものも、やはり前回の当労働委員会で御議論になって指摘された点と大体同じようなものでございました。同僚議員の方々の御指摘が的を射ておられたといいますか、あるいはその御指摘をなお私どもは身にしみて感じてきたという感じがするわけでございます。  どんな印象がちょっと紹介させていただきますと、労働基準監督署の方はこの工事が非常に危険なものであることを事前に察知されておりまして、事前の指導を念入りにやっておられた。これは確かでございました。厚い資料等々を見せていただきまして、きめ細かな指導が行われておったところでございます。ですが、残念なことに、これが発注先なりあるいは事業者なりに浸透しておったかというと、その辺がどうも不十分であるという感じがするわけでございます。  前回、ここの委員会でも、この災害が天災だったのか人災だったのか、予知できたのかできなかったのかというようなことが問題になっておりますけれども、引き続き今もなお発注先の機関の方では、専門家による技術的な視点からの調査をやっているところだからその結果を待ちたいというようなお話でございました。  ただ、私ども、下請の人の声を聞いたという点では、やはりこれは災害が起きたところの復旧工事なわけでございます、安全を確保するための工事なわけでございます。そういう意味では、発注機関そのものがその責任を明確に感じているはずだろうと思っておりましたけれども、やはり何というんでしょうか、基本的には責任は請負事業者にあると、そのようなお答えが面接なさった方々の方からは出てくることが多かった。  それから、発注先から元請には指導はしたということのようでございますが、そのフォローアップが余りしっかりしていないようでございまして、工期によっては後から参入してくる下請があるわけでございますが、そういうところは、そういう話は後から入ったせいでしょうか聞きませんでしたと、元請の方がいらっしゃる前ですから、大変言葉を選びながらそのようなことを言いながら、せめてセンサーでも置いていてもらったらというようなことを言われたのが私なんかにはとても痛々しく感じられたわけでございます。責任の所在がどうも明確でないというような感じがするわけでございます。  そこで、労働省の安全衛生対策についてお伺いしたいわけですが、先ほども申し上げましたように、やはりこの手の工事は発注機関の責任が大きいのではないかと。でも現行の安全衛生法では、発注機関に対しては要請するということにとどまってしまうわけでございます。監督官の人数が多ければ何回も何回も行ってその要請が守られているかどうかフォローアップすることもできるかもわかりませんけれども、その点は人員上の制約の問題もあって、要請して発注機関の責任をひたすらに監督署の方はお願いするという感じになるわけでございます。  この辺、もう少し発注機関の責任を問えるような法体系というものが考えられないものでございましょうか、お伺いします。
  153. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のございました土石流の発生を初め、こうした労働災害を徹底的に防止していくことを私どもの行政の最大課題だと受けとめております。そのためにも、基本的には元請を初め関係請負人が労働者雇用し事業を展開していくわけでございますので、そこがきちっと労働災害防止のための措置を講じないことには労働災害の防止につながらないというふうに考えております。  ただ、事業の内容によりましては、工事の施工方法あるいは工期の設定、そういったものが労働者の安全な作業の遂行に影響を及ぼすケースもあるわけでございまして、こういった面から労働安全衛生法におきましては、第三条で、発注者に対しまして工期の設定あるいは施工方法等について作業の安全な遂行を妨げないようにという配慮義務を定めておるところでございます。また八十八条では、建設工事等について事前にその工事の計画の届け出がなされる、それを受けまして工事の差しとめ等をする場合があるわけでございますが、そういった場合、発注者に対しても必要な勧告や要請を行うことができるように定められております。私ども、こうした法律の趣旨を十分発注者に対してもかねてより徹底するように努めてきておりますが、この発注者に対します事前の計画の届け出に基づきましての勧告、要請、その制度の効果的な活用を一層図ってまいりたいと思っております。  現在、専門家から成ります調査団を結成いたしまして、現地の踏査も含めまして徹底的な災害の原因究明に努めておるところでございます。この結果が出ましたら、労働災害の防止に向けて私どもこの調査団の結果をぜひ最大限生かしてまいりたいと思っていますが、その一つといたしまして、発注者に対します勧告・要請制度のより効果的な活用というためにどういった知恵があるかも当然その中で十分検討させていただきたいと思っております。
  154. 川橋幸子

    川橋幸子君 局長の御答弁の端々に何かにじみ出るような、これから法体系の整備についても御検討いただくことが期待できるような、そういう印象を私は受けましたので、難しい問題かと思いますが、ぜひこの事故を奇貨としましてよい安全対策の確立に持っていっていただきたいと思うわけです。  少しくどいようですが、この問題もう少しお話しさせていただきますと、今回労働省は、この蒲原沢ダムの災害復旧工事の問題を重視して、似たような工事現場全国千二百二十カ所の監督をしていただきました。タイミングとしては、特に関係者の注意を喚起する、責任を喚起するという意味では効果的だったと思うわけでございます。  ですけれども、この結果を拝見しますと、法違反が認められた事業場が四一・七%、五百九現場、うち重大災害につながりかねない違反が九・三%、百十四現場。例示として、土砂崩壊による危険を防止する措置が十分でない現場百十一というものがいただいた資料の中に出てくるわけでございます。  こういう結果を見ますと、安全対策というのが四割も法違反があって、また一割も重大な事故につながりかねない危険がある違反がある。こういう現実は一体何なんだろうか。建設工事というのはもう災害はつきものなんだから、あとは労災補償すればよい、あるいは、安全対策もなかなか決め手はないんだけれども、もちろんその要綱もつくった、パトロールもやった、協議会も開いたといってはみても、ぴたっと浸透していかないような、そういうもどかしさを私は感じるわけでございますけれども、こういう監督結果をごらんになられていかがでしょうか。  それから、その後でいただいた資料なんですけれども、建設業の死亡災害というのは非常に他産業に比べますと多いわけです。ここ十年間の資料をちょうだいしました。平成七年が最新でございまして、建設業全体が千二十一件の死亡事故、そのうちの半分近い四百七十七件というのが公共事業の災害、しかもこの四百七十七件というのは過去十年間で見ましても一向に減らないといいますか、ナンバーツーの死亡数の高さになっている。こういう現実をどうお考えになられますでしょうか。もちろん一生懸命やっていらっしゃるということはわかるんでございますが、どこかでマンネリ化していないかというような、私はそういう危惧を覚えます。
  155. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のございました砂防工事等に対します一斉監督でございますが、これも土石流の災害発生後、同種の災害の発生を繰り返してはならないということで直ちに全国の労働基準監督官を動員いたしまして、全国の砂防工事事務所千二百二十件の現場で一斉監督を行ったわけでございます。内容については、御指摘のあったとおり私どもとしても憂慮すべき結果が出ているところでございます。  こういった結果を見まして、やはり現在建設業の現場でも平成七年で約十七万件を超える臨検、監督を定期的にいたしておるわけでございますが、こういった結果も受けて、そういった臨検、監督の重みを十分受けとめて臨検、監督の件数をふやすなど、そういったことで精力的に監督をしていくように改めて来年度に向けて指示をいたしたところでございます。  それから、建設業におきます災害の発生状況についても御指摘がございました。これも御指摘のとおりでございまして、労働災害の件数自体は着実に減少していますものの、死亡災害等について見ますと、ここ二年横ばい、むしろ若干増加している傾向にございまして、その中で四割を超えるウエートを建設業が占めてきている、この傾向が長年変わらない、こういった問題は御指摘のとおりでございます。私ども、建設業におきます労働災害の防止が全体の労働災害の防止のためにも大きなウエートを持ついわば重点対象事業として受けとめているところでございます。  建設業の場合、どうしても作業自体に、特に公共工事の場合、今回の蒲原沢に見られますように、危険な区域であるからこそ災害発生のために工事に入るというような場面があるわけでございますが、そういったふうに工事自体が危険な作業を伴うことと、重層した請負関係の中で、事業主の異なる労働者等が錯綜する、建設機械が錯綜するといったような場面が多くて、いわば安全管理の役割分担とか指揮系統、そういったものが混然とする、こういう問題もございまして災害の発生につながっている面があるわけでございます。  こういったことから、元請の事業主それから関係の請負人、それぞれの役割、責任というものをひとつ明確にして労働災害の防止に当たっていただこうということで、元方事業者に対しましては、建設現場全体の安全管理指針、これを周知徹底させる。それから関係請負人、これは下請の方になりますので工事を直接担当するわけでございますが、なかなか安全管理の面で実力が伴わないというケースもございますので、そういったところにつきましては安全管理計画を作成してもらうための研修等も特別に実施いたしまして、そういった自主的な安全管理活動を展開できるような事業をやっております。これも蒲原沢の事故を契機に、一層これを精力的に展開してまいりたいというふうに考えておるところでございます。  こういったことを総合的に講じまして、いわば私ども労働災害防止という観点から最大の重点対象業種であります建設業について、精力的に労働災害の防止に向けてさらに取り組んでまいりたいと思っております。
  156. 川橋幸子

    川橋幸子君 それで、これは私の個人的なアイデアなんでございますけれども、なかなかやっても浸透するのが難しい、しかも、同じことをやっているとマンネリ化するということから、本当に個人的なアイデアなんですが、大規模災害復旧の公共工事につきましては、関係省庁間の意思疎通、それから中央で持っておりますような専門的・技術的な知識と、現場をよく知っている、地域をよく知っている現場の経験なり知恵なりをドッキングさせる、こういうことが必要なんじゃないかと思います。  それから、今回行って調査した感じでは、やっぱり縦割りの弊害というのが、下に行けば融合するかというとそうではなくて、むしろ縦割りの弊害はより強くなっているところがございます。  例えば、これは新聞でございますけれども、十二月九日の新聞ですが、長野県知事は、労働基準局の指摘については聞いていない、問題があるなら労働基準局が工事を中止させればよかったではないかというような、こんな記事があります。  それから、これも去年の記事でございます。毎日でしょうか、県土木部の幹部が「今にして思うと、県、国、営林署の三者の連絡が足りなかったと思う」とか、国というのは建設省ですね。それから、新潟大学の先生、専門家の方でございます。この方は建設省の出身の方でございますけれども、これではちょっと設計上からして問題点もあるのではないかというようなことが新聞等で報じられているわけでございます。  こういう感想から拝見しますと、地方分権とは言われていますけれども、重大災害を起こす危険のあるような復旧工事については、むしろ東京レベルで関係者が一堂に会して意思疎通を図るというような、そういう会合を持つことを労働省から関係省庁に提案していただくというのはいかがかと思うんですが、どうでしょうか。
  157. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 現在、先ほど申し上げましたように、専門家の方から成ります調査団を結成いたしまして原因究明に懸命に努めているところでございます。この原因究明の一定の答えが出ましたら、災害防止にぜひ結びつけていかなければならないと思っておりますし、関係省庁もそういった観点からそれぞれ災害の発生原因の究明等も行っております。中央レベルにおきましては、そういった結果が出たところでいろいろ発注機関等とも意見交換等を図っていかなければならないというふうに思っております。  また、今までも常時継続的にこういった建設工事を発注する機関とは連絡会議を持って、最近の災害の状況、そこから出た問題点等について意見交換する場を設けてきているところでございます。今回の災害発生原因の究明等がある程度出てきましたならば、私どもいろんな意見交換の場は考えていかなければならないのかなというふうに受けとめております。  なお、建設工事のこういった事故の多さが、現場におきます重層下請のもとでの錯綜した工事関係、ここに一つの原因があるとすれば、中央レベルだけではなくて、個々の工事につきましては、現場といいますか、むしろ都道府県の労働基準局レベルで関係の発注機関と協議をしていく場が必要だろうということで、これは既に労働基準局、それから建設工事の多い、特に公共工事の多い労働基準監督署長も含めて建設省の各工事事務所長さん方と協議の連絡交換の場を持っておりまして、そこで災害の最近の発生状況、その原因、また改善に向けての考え方等の定期的な協議会の場を設けているところでございますので、そういった場も一層効果的に活用するように努めてまいりたいと思っております。
  158. 川橋幸子

    川橋幸子君 時間配分が悪くて、たくさん答弁を用意していただきました他局の方におわびして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  159. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、いわゆる女子保護規定を廃止する雇用機会均等法の問題について、法律そのものではありませんが質問したいと思います。  政府は、雇用機会均等法改正に伴って労働基準法六十四条の二「労働時間及び休日」、同三「深夜業」を削除しようとしています。この結果、企業は二千万以上の働く女性に深夜働かせてもよいということになるわけで、これは働く女性のみならず大変大きな影響を社会的に引き起こさずにはいないと思います。  現行で女子の時間外労働については、三六協定を締結してもなお工業的業種で一週六時間、年間百五十時間、非工業的業種で四週三十六時間、一年百五十時間を超えてはならないとされています。これは戦前の工場法の規定を発展させたもので、工場法は、労働者の過半数を占めていた女子の長時間労働による弊害が社会問題視されたことを背景として、当時の女子の体位及び家事責任を考慮して、特に女子を保護したものということを佐藤先生も指摘しています。  女子の深夜業は、例外をふやしていますけれども、現在は原則禁止ということですが、十年前に雇用機会均等法が制定されたときに労働基準法が改悪されまして、女性労働者の時間外、休日、深夜業の規制が一部緩和されました。  それで伺いますが、これによって深夜業に携わることになった女性労働者は何人でしょうか。
  160. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 現行の基準法における女性の深夜業の適用除外といたしましては、保健衛生業とか接客娯楽業のように業種により除外しているもの、それから指揮命令する職務上の地位にある者として除外しているもの、公認会計士、医師などの一定の資格者を除外しているもの、それから放送番組の制作の業務、郵便事業における区分、配達の業務など具体的な業務内容により除外しているものなど、業種、業務、資格などによりそれぞれに規定されているところでございます。  このため、例えば病院勤務として除外され、かつ指揮命令者としても除外されるというように、重複して適用除外に当たる方も存在するわけでございます。このようなことから、通常の統計資料からこれらの対象労働者を正確に把握することは難しいわけでございます。ただ、国勢調査とか労働調査賃金構造基本統計調査、それから業界調査などに基づき、概数でございますけれども、これを推計いたしますれば、約五百二十万の女性が深夜業可能な女性労働者ということになります。これは全女性労働者の約四分の一程度に当たるというふうに考えております。
  161. 吉川春子

    ○吉川春子君 これらの女性労働者が十年間深夜業を実際にやってきた方も多いと思うんですけれども、どんな影響が生じたんでしょうか。深夜業に新たにつくことによってどんな影響を生じたんでしょうか。つかんでおられますか。
  162. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 影響といいますと、職域の拡大ということで、これらの——
  163. 吉川春子

    ○吉川春子君 マイナスの影響です。
  164. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) マイナスの影響といいますと、私どものところに極めてマイナスの影響があったというような情報は特段来ておりません。
  165. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは「スパ」という週刊誌なんですけれども、一月二十二日号で特集をしておりまして、「今、女の身体がボロボロだ!」ということで、「雇用機会均等法から十年余り。仕事に、遊びに、消費に……、「元気だ、元気だ」ともてはやされ、女たちはそのつもりで頑張った。ところが、ここにきて、ボロが出始めている。身体に、だ。」、こういう特集記事が載っていまして、二十九歳で閉経とか、月二百時間の残業で生理不順と狭心症とか、そういう具体的な事例が載っております。そして、「「女の身体がボロボロではないか」というスパの問いかけに対する、医師たちの回答は、こぞって「イエス」なのだ。」と、こういう記事になっています。  労働省はマイナスの報告は全くつかんでいないんですか。雑誌の記事でもこれぐらいの調査をやって、そしてこういう問題点を指摘しているんですけれども労働省が何もつかんでいないというのは私は解せませんが。
  166. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 私どもの出先に婦人少年室というところがございますが、そちらにはいろいろ女性労働者からの御相談等ございますが、そういう点についての御相談はないというふうに存じております。
  167. 吉川春子

    ○吉川春子君 残業とか深夜業は女性の健康にどんな影響を及ぼすのかという点で、愛知働くものの健康センター理事長の医学博士、山田信也さんは次のように指摘しています。「女性は受胎・出産のための臓器を腹部にもつために、下半身の血液の循環を悪くしたり、冷えを強めるような長時間労働や深夜勤をできるだけ避けることが大切です。また母性機能は女性ホルモンによる微妙な調節で一カ月ごとの周期を繰り返しつつ、いつでも受胎、出産、育児に備えるように仕組まれています。それゆえ、妊娠後、出産前後の限られた時期だけでなく、つねに疲労やストレスをさけ、心身のゆとりがあることが大切です。  若い女性では、精神的なストレスや業務繁忙の持続などが排卵を止めたりすること、夜勤をしている女性では、生理の不順や苦痛の程度のひどい人の」「割合が増え、生理の苦痛の程度がひどくなるにつれ妊娠中の異常が増えていくなどの報告があります。」。  労働省としてはこういうことが当然生じるということがわかっていなきゃならないと思うんですよね。それなのになぜ女子保護規定を廃止するのか。専門家のこういう指摘については耳を傾けないんですか。
  168. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今回の女子保護規定の撤廃に関しましては、これは女性の職域の拡大を図り、男女の均等取り扱いを一層進める観点から解消をすることとしたものでございます。そういうプラスの面というものもぜひ御理解をいただきたいと思います。  また、私どもの中におきましても、昨年十月、母性保護に関する専門家会議という、これは産婦人科の先生方にお集まりいただきました会議を開催いたしまして、そこで御報告をいただいたわけでございますけれども、その報告書におきましても、こういう解消の問題につきましては、妊産婦以外の女性の妊娠・出産機能に影響があるという医学的知見は見当たらないという御報告をいただいておるところでございます。
  169. 吉川春子

    ○吉川春子君 職域の拡大があれば、産む性としての女性に非常に障害を与えてもいいのか、そういうことを行ってもいいのかということが問われているわけですよ。  それで、今、太田局長のおっしゃった昨年の専門家会議の意見なんですけれども、どういうデータに基づいてこういう結論を出したんですか。
  170. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 今申し上げました報告書におきましては、繰り返しになりますけれども、国内外を問わず、近年において、時間外労働、休日労働及び深夜業を行うことによる妊産婦以外の女子の出産機能に影響があるという医学的知見は見当たらないということでございますから、そういうことで結果を出したということでございます。
  171. 吉川春子

    ○吉川春子君 その知見が見当たらないの意味なんですけれども調査したんだけれどもそういう異常はなかったということなんですか。それとも、今まで調査していないのでそういう知見は見当たらない、データがないという意味なんですか。どっちですか。
  172. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 産婦人科の専門家の先生方が何十年もデータも調べ、いろいろやっておられる方々の結果でございますから、そういう異常があったならばそれなりの知見は出ているというふうに私は考えます。ですから、そういう知見が見当たらないということは、そういうデータがないということでありますし、見当たらないということは、そう先生の御心配するような状況ではないというふうに判断してよろしいというふうに考えます。
  173. 吉川春子

    ○吉川春子君 いろいろほかでそういう問題があるんだというデータがいっぱいあるんだから。  じゃ、問題がないんだという数字とか、大体どういう対象の人を何年間調べてこういう数字です、だから母体に影響はないんですと、こういうデータを示さないで、ただ専門家の先生が、何十年も産婦人科医をやっている先生が大丈夫だと言ったから大丈夫ですと、これじゃ労働省務まらないでしょう。  大臣、どうですか。女性の健康について大変問題があると各方面から指摘されている。それでも労働省は今度踏み切ろうとしているんです。だったらば、いろいろ研究した結果、大丈夫だというデータを国民に示す必要があるんじゃないですか。あの先生が言いましたから大丈夫ですだけじゃ国会は通用しません。大臣、どう思われますか。
  174. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 今度の女子保護規定の撤廃といいますか改正といいますのは、言うまでもなく男女雇用機会均等法との絡みであります。男女雇用機会均等法は施行されて十年になります。その過程の中で、女性皆さんの働く職域というものを、竿頭一歩をもう一つ広げようというようなことと、そのためには均等であるということになりますと、やはり深夜労働も休日労働もやっていきたいというような声もあって、どちらにいたしますかということを私どもは関係審議会に御提示を申し上げた。その中でもろもろの専門家の皆さんの御意見も伺った上で、うん、ここまでは均等でいこうではないかと、そして保護規定もこの辺までは撤廃をしてよかろうではないかというようなことになった次第であります。  したがいまして、私の経験でも、一番初め女性に警察官というような門戸を開くようになりました。それから自衛隊でも開くように相なりました。それから海上保安庁にもそういう女性の方が門戸をたたける、仕事ができるというようになりました。そういった社会的な現象の中で、専門家の皆さんの結論というものが一応今の時点においてここまでだということが出た、こういうふうに理解をいたしております。私、自分自身では数値その他は持っておりませんので、御了承をいただきたい、こう存じます。
  175. 吉川春子

    ○吉川春子君 きょうも午前中から、私以外の議員からも女子保護規定を廃止することは心配だと、非常にそういう質問が出ていましたよね。みんなそう思っているんですよ。だから、もし大丈夫だという専門家の数値があるんだったらば、数値だけに限らないですけれども、そういうものがあったら示すべきだと思うんですよ。専門家会議の報告書は、そこに書いてあるのはたった二、三行ですよ。それでもって工場法以来続いてきた女性の深夜業、時間外労働の規制、それを全部廃止するというんですから、それには相当のデータがなくてはだめじゃないですか。本当に女性の健康が大丈夫なのか、産む性としての女性の健康が守られるのか、それにはやっぱり周到な調査、これが必要ですよね。そういうデータが一切ないというんだったら、それはこういう重大な問題に踏み切るのには労働省は余りにも無責任ですよ。そのデータを隠さないでぜひ出してくれるように私は太田さんに要求します。どうですか、出してくれますか。
  176. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 別に隠しているわけでも何でもございませんで、先生方にいろいろ研究をお願いしたときに、先生方のところにも別に特段そういうデータが、そういう知見がないんだということでございますので、繰り返しになりますが、この報告書に書かれたとおりでございまして、先生、隠しているというような感じでおっしゃいましたが、決してそういうことではございません。
  177. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、本当にないんだとしたらまさに驚きじゃないですか。大丈夫だなんというデータが何もなくて、ただ先生が言っている、それだから大丈夫なんですと。これじゃ、本当に女性労働者の健康にも責任を負っている労働省の態度としてはとても納得できません。  といいますのは、以前には労働省はこのことを心配してそういう文書を何遍も出しているんですよ。私、読み上げます。  例えば、一九七四年の労働基準法研究会第二小委員会専門委員報告で「医学的・専門的立場からみた女子の特質」では、深夜勤務の有害性について、人体の機能の日周期リズムの強固さから見て、深夜業が持つ反生理的な性格は男女に共通している、こういうふうに指摘した上で、特に女性労働者について、「その母性機能への影響が憂慮されるが、そのほかにも、一般的に疾病への抵抗性を減弱せしめ、健康障害可能性を強めるため、女子労働者労働条件に特有の負担荷重を誘発せしめるおそれがある。」、このように指摘しているんです。この当時の報告書については否定するんですか。もう今は否定しますか。
  178. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 昭和四十九年十月の専門委員報告書は先生がおっしゃったとおりでございますが、その専門委員報告を踏まえまして、五十三年十一月の労働基準法研究会報告におきましては、深夜業につきまして、「基本的には男女とも深夜業は望ましくないが、国民生活上必要な深夜業には、男女とも社会を支える一員として従事せざるを得ないというべきである。女子についてのみ深夜業を禁止することは、かえって女子の雇用機会を制限することともなる。」、「女子についての深夜業の規制は解消し、男子と同一に取り扱うべきである。」というふうな報告書が出ているわけでございます。  そして先ほどの昨年十月の母性保護に関する専門家会議の報告ということになったわけでございまして、深夜業につきましては、既に労働安全衛生法におきましても、六カ月以内ごとの健康診断の実施とか仮眠施設の整備などの健康管理とか就業環境に関する措置が事業主に義務づけられておるところでございまして、これらにつきましてはやはり事業主に徹底していくことが必要であるというふうに考えておるところでございます。
  179. 吉川春子

    ○吉川春子君 今、太田局長が言われた七八年十一月の労基研報告にはこういうふうに書いてあるんですよ。  深夜業について、「長時間労働と同じく男女双方に影響が大きい。人間の生理的諸機能は、昼間の交感神経系優越と夜間の副交感神経系優越との交替に特徴づけられた日周期リズムを有しており、これを強制的に逆転させようとする深夜業には、人間の生理機能は容易には順応することができず、生体リズムの撹乱が生ずるといわれる。また、社会生活一般は昼型であるため、人間関係や各種サービスの享受等生活を維持する上での支障もある。」と書いてあるでしょう、同じ文章に。そして、男女ともやっぱり深夜勤というのは好ましくないんだと書いてあるんですよ。  しかし、このときは、だから深夜勤全部外したわけじゃないでしょう。今度全部外すでしょう。だから、このときだってこういうことを言いながら男女両方外す方向のことを示唆している。それはもうデータもなしにこういうことをしたんですけれども、指摘はこういうふうにしているんです。  今度は二千四十万人の女性すべてに深夜勤や時間外・休日労働を外すというからには、それには相当の、今までこういうふうに指摘してきたけれどもこれは大丈夫ですというデータがなければ無責任じゃないですか。今、労働大臣も数字は持っていないとおっしゃいましたけれども、入れるにしても、そういうことを十分に調査した上でやらなきゃいけないんですよ。それが全然調査もないし、そして婦少審の審議も、女子保護規定の問題についての審議もほとんど内容のある議論は行われていませんよ。にもかかわらずこれを外してしまう。  だから、女子の深夜勤を外すということ、結論が先にありきなんでしょう。こういうことで本当に労働省としての役割が果たせるのか。私は本当に怒りに思いますね、こういうことに対して。いいかげんだと、こんな重大なことをやるのに。データすらなくて、知見がないと先生が言ったと、そしたらいろいろ知見をつくったらどうですか、自分で調べたらどうですか。そういう調査もやり、データもどって、その上で踏み切るとしても、私は踏み切るべきじゃないと思いますけれども、そういう調査ぐらい独自にやったらどうなんですか。そういうこともしないでやるというのは余りにも無責任だと思いませんか。大臣、どうですか、無責任じゃないですか、日本の将来はどうなるんですか。
  180. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先ほどお話をいたしました繰り返しの部分があるわけでありますが、男女雇用機会均等法十年になりました。したがいまして、相当年限前からこのままの男女雇用機会均等法でいいだろうかと。やはり社会の意識の全般も変わりました。職場職場におきますところの服務管理のあり方、これも先生御存じのとおり変わってきたという実態があろうかと思っております。  したがいまして、婦人少年問題審議会におきましても、この問題をつかまえまして、職域拡大のために男女雇用均等にするのがいいのか、そうすると反面こういう保護規定が一部撤廃をされることもあるが、どちらがいいだろうかと比較権衡の中で、一般的な諮問に対する答申ではありませんで、建議という積極的なニュアンスを持った、言いますならばお言葉をちょうだいいたしまして、今度また御審議を賜りますこの男女雇用機会均等法、お願いをすることになるわけであります。ほかの先生に申し上げましたが、先生には申し上げたくないと思っておりました、もう御専門でありますので。これは深夜労働女性もやらねばならない、休日労働をやらねばならないということではありませんで、在来、深夜あるいは休日労働女性に関する限りやってはならないというものを、やってもよいということになりました。  そうして、個々人についてのそういう定めの上に、それぞれ職場職場におきましては、我々労働省といたしましては、個々のお一人お一人の労働提供者は非常に弱いものである。したがって、これが労組法によりまして団結をし労働組合をつくる。その労働組合が使用者と対等の立場に立って団体交渉が行われるというような意味合いで、休日労働だとかあるいは時間外労働だとかいいますものも、労働基準法三十六条の規定に基づいて協定が結ばれませんと、一切、やれるようになった休日労働もやるわけにはまいりません。そうして深夜労働も、これまた勤務条件の一つでありますので団体交渉の俎上に上せることは当然ある。それぞれの置かれた職場職場、作業の実態等々、いろいろなバラエティーがあると思っております。  そういう意味合いの中で女性の方々の職場を広げようと。そして大いに働く生きがいと、それから同時に正当な評価を受けるというような機会を提供しようと申しておりますのが男女雇用機会均等法の御提案でありますし、それに加えた労働基準法の一部女性保護規定の撤廃であります。しかし、ほかに、先生お話しになられましたいろいろな女性の母性保護というような面の規定も新たに加えたりというようなことで、慎重な御審議をお願いしょう、こう思っておりますので、その節またよろしくお願いをいたします。
  181. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは大臣伺いますけれども、強制するものじゃないと言われましたね、選べるんだと。じゃ、女性労働者が深夜業をしたくない、休日残業もしたくないと、これは許されるわけですね。そういうことでよろしいんですね。
  182. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先ほどお話をしましたように、休日労働でありますとか時間外労働でありますとか、これらは労働基準法三十六条に基づいて協定を結びませんと、いかにここで開放されたからといいましても企業主は労働提供を命ずることにはなりません。それからまた深夜労働提供というものも、これは労働条件の一つであります。そういう意味合いでは、当該職場におきますところの環境等々を勘案し、当該労働組合が使用者との団体交渉によって、この種の場合はというようなことは制限が可能である、こう思っております。  できるようになったのであって、ねばならぬということではないというところを御勘案賜ればまことに幸せであります。
  183. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと時間がないんですけれども、そうじゃないんですよ。みんな深夜業をさせられるわけですよ。労働組合なんて組織率二三%ですよ、大臣。あとの四分の三以上の人たちは労働組合にも所属してない。そして、企業は三六協定であろうが何であろうが勝手気ままなことをやるわけで、そういう中に女性も投げ込まれる、男性と同じような過労死の条件の中に女性も投げ込まれるということが非常に重要なのであって、職域の拡大とかなんとかということと引きかえにはできないわけです。  それから、いろいろと男女とも規制をしていかなきゃならないわけですよ、深夜業にしても、時間外労働にしても、休日労働にしても。これは男女とも規制していくというのが国際的な潮流なんであって、それを過労死という言葉まで生み出す日本の男性の働く水準に女性を合わせる、これが今度の女子保護規定の撤廃なので、絶対に認めることはできません。  太田局長、何にもそういうマイナス面の報告が来てない、婦少室に何にも来てないんだというふうにおっしゃいましたけれども、それはもう本当につかもうとしないからであって、私、つかんでほしいと思うんですよ。  例えば、私はここに、「泊・深夜・徹夜アンケート意見集約」という民放労連女性協議会のアンケートのあれを持っています。こんなのをあちこちでやっていますので、労働省つかもうと思えばすぐつかめると思うんですけれども、どういうことが書かれているか読んでみます。これは全部女性です。  三十歳の報道関係。泊まりはどうしても睡眠不足になる。体調維持に努めている。今後、子供が生まれたらその保育は不安である。  二十四歳の報道。泊まりは全く眠れないことが多いので、前日は早く寝ている。出勤拒否、変更はできないことはないが、難しい。食欲がなくなり、生理不順になるなど、体調の変化がある。  二十九歳、報道、子供あり。定期の泊まりが週一で二年続くとさすがに疲れ、常時時差ぼけ状態。子供ができて泊まりができなくなるのは困るというのでは、マイナス評価につながるのを恐れて、みんな嫌でも泊まりや深夜勤をやることになるだろう。  また、三十一歳の報道、子供あり。夫が深夜勤から帰宅せず、自分が早朝勤務のときは、二歳の子を一人にして置いていくわけにもいかず、やきもきします。帰宅しても子供がいるのですぐ休むわけにもいかず、疲れている。小さな子を夜中に他人に預けるわけにもいかず、これらの勤務は女性にとって困難。体調不良、生理不順、頭痛、だるい、無気力。  二十八歳の事業。事業だと、会社で十時から勤務、またさらに会場で夕方から深夜というパターンが何日も続くと、一日徹夜するよりきつい。体がだるくなったり、貧血ぎみの日が続く。  こういう感想が延々と書いてあるわけです、これ一冊だけとってみても。労働省の婦人局ともあろうものがそういうのを何にもつかんでいない、何の声も来ていないと、この十年間の深夜勤について。それは余りにも、私はあえてこれは職務怠慢じゃないかと思いますよ。そういう声を積極的につかんで、十年前に深夜勤が解禁された女性がどういう状況にあるのか、これはこれから審議が始まるわけですので、労働省、つかんで次の委員会に報告してくれませんか。どうですか。
  184. 太田芳枝

    政府委員太田芳枝君) 先生がおっしゃるほどたくさんの事例がつかめるかどうかわかりませんが、努力をさせていただきたいと思います。  ただ、一言申し上げれば、均等法十年が経過いたしましてかなり女性たちが職場に進出をしたわけでございます。そして、なおかつ、女性の中には逆に今まで時間外・休日労働を制限するということに対しまして不要だという方もおられるという事実もあることもぜひ御認識をいただきたいと思うわけでございます。  そして、私どもが今回法改正をお願いいたしましたのは、既に昭和五十九年の婦人少年問題審議会の建議に示されておりました「原則として、企業の募集、採用から定年・退職・解雇に至る雇用管理における男女差別的取扱いを撤廃し、労働基準法の女子保護規定は、母性保護規定を除き解消すること」という原則、これは既に五十九年において公労使のコンセンサスになっていたものでございます。それをさらに一歩進めたいという女性たちのための法改正であるということを信じておりますので、その辺は評価をいただければというふうに思っております。
  185. 吉川春子

    ○吉川春子君 もうこれはこれからずっとやります。  つまり、五十九年の建議のときだって、一定の条件整備をするということが書いてあるわけですよ。その条件整備を何もしないまま、少なくともしたという証拠がないまま今回女子保護規定の全面撤廃をするわけですから、これは到底許されるものではありません。  時間が来たから終わります。
  186. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 本件に対する質疑はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十四分散会