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1997-04-22 第140回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十二日(火曜日)    午前九時三十分開会     —————————————    委員の異動  四月十一日     辞任         補欠選任      大森 礼子君     荒木 清寛君      小林  元君     牛嶋  正君      山崎  力君     菅川 健二君      一井 淳治君     小島 慶三君      橋本  敦君     上田耕一郎君  四月十四日     辞任         補欠選任      保坂 三蔵君     金田 勝年君      三浦 一水君     阿部 正俊君  四月十七日     辞任         補欠選任      加藤 紀文君     亀谷 博昭君      沓掛 哲男君     平田 耕一君  四月二十一日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     阿部 幸代君      山田 俊昭君     佐藤 道夫君  四月二十二日     辞任         補欠選任      石渡 清元君     松村 龍二君      亀谷 博昭君     加藤 紀文君      川橋 幸子君     竹村 泰子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理 事                 片山虎之助君                 佐藤 静雄君                 斎藤 文夫君                 田沢 智治君                 木庭健太郎君                 都築  譲君                 横尾 和伸君                 山本 正和君                 有働 正治君     委 員                 阿部 正俊君                 石渡 清元君                 板垣  正君                 加藤 紀文君                 金田 勝年君                 亀谷 博昭君                 久世 公堯君                 関根 則之君                 竹山  裕君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 成瀬 守重君                 野間  赳君                 平田 耕一君                 真鍋 賢二君                 松村 龍二君                 依田 智治君                 荒木 清寛君                 石田 美栄君                 市川 一朗君                 牛嶋  正君                 菅川 健二君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 高橋 令則君                 浜四津敏子君                 大渕 絹子君                日下部禧代子君                 清水 澄子君                 照屋 寛徳君                 川橋 幸子君                 竹村 泰子君                 藁科 滿治君                 阿部 幸代君                 笠井  亮君                 佐藤 道夫君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君    参考人        野村讃券株式会        社前代表取締役        社長       酒巻 英雄君        日本証券業協会        副会長      関   要君        東京大学教授   神田 秀樹君        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        近藤 俊幸君        動力炉核燃料        開発事業団副理        事長       植松 邦彦君        動力炉核燃料        開発事業団理事  中野 啓昌君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査  (証券問題等について)  (動力炉・核燃料開発事業団の事故問題につい  て)     —————————————
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のうち、証券問題等について、本日午前に、野村証券株式会社代表取締役社長酒巻英雄君、日本証券業協会会長関要君、東京大学教授神田秀樹君を、また動力炉・核燃料開発事業団の事故問題について、本日午後に、動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸君、同副理事長植松邦彦君、同理事中野啓昌君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  4. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 予算執行状況に関する調査のうち、証券問題等に関する件を議題といたします。  本日は、本件について参考人方々から御意見を求めることといたします。  この際、参考人の皆さんに対して一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。  当委員会におきましては、予算執行状況に関する調査を取り進めておりますが、本日は特に参考人方々から証券問題等についての御意見を伺うことになっております。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、お一人七分程度で御意見を述べていただき、その後で委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず酒巻参考人からお願いいたします。酒巻参考人
  5. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 野村証券相談役酒巻でございます。  まず初めに、一言、今回東京地検及び証券取引等監視委員会強制捜査を受けました件に関しまして、国民皆様投資家皆様、そして内外の関係者皆様に多大なる御迷惑をおかけいたしましたこと、謹んでおわび申し上げる次第でございます。  証券市場仕事をする者として、神聖かつ公正なマーケットを汚す形で今回の件が行われましたこと、おわびのしようもなく、まことに申しわけなく思っております。  また、立法府皆様には、いろいろとお手数をおかけいたしまして、本当に申しわけございません。  平成五年三月に、当社本店第一企業部に開設されたある法人口座での取引に関しまして、証券取引法違反疑いが持たれ、昨年夏より御当局調査を進めておられたというものでございます。  具体的には、この口座を通じた取引のうち、都銀株売買に関して損失補てんが行われたのではないかとの疑いで御調査されたものと理解しております。これにつきましては、当社も御当局調査に協力しつつ概要の把握に努めてまいりましたが、調査が長きにわたりましたこと及び新聞報道がいろいろと続きましたことから、ことしに入りまして特別チームによる社内調査を開始いたしました。  その結果につきまして、私が報告を受けましたのが二月中旬でございます。その結果は私にとりまして大変衝撃的なものでございました。これは御当局報告申し上げなければならないということで、証券取引等監視委員会に御報告申し上げましたのが二月下旬でございます。  また、去る三月六日に社内調査結果の概要を公表させていただきました。ディスクローズいたしました。社内調査の結果のポイントは、記者会見でも当社斉藤社長が申し上げましたが、第一に、一任的と見られても仕方がない取引幾つか発見されたこと、第二に、自己勘定の利益を顧客へつけかえたのではないかとの疑義が持たれたこと、そして第三に、この取引当社の二人の常務が関与していたということでございます。もちろん、経営の全責任は我にあり、そう思っております。  なお、当社は、この件に関し、三月二十五日に東京地検証券取引等監視委員会合同捜査を受けておりまして、その後も御当局捜査に協力申し上げております。現在、御当局の判断をお待ちしているという状況でございます。今回このような問題を引き起こしましたこと、まことに申しわけなく思っております。  平成三年の不祥事の反省をもとに、「新生・野村」のもと、私どものよって立つ座標軸を「私たちの決意」と題する文書で同年の十月一日に公表させていただきました。新聞にも出しました。すなわち、社会に対する責任、とりわけマーケットに対する責任を果たせる企業になろうという決意でございます。  具体的な面でも、支店自主経営などの営業あり方見直し業務管理本部の設置などの管理体制、組織の見直し等に加え、社内での法務やコンプライアンスの研修等努力してきたつもりでございました。しかし、これが徹底していなかった、役員においてその意識に欠けていた者がいたということは無念でなりません。また、大変申しわけなく思っております。  社内調査結果の報告を受けましてから、私も、どうしたらこのようなことの発生が防げるのだろうか、どうしたら再発防止ができるのだろうかという点につきまして、今回改めていろいろと思いをめぐらせました。  そして、頭の中で整理いたしましたことは、重要なことは、このような問題をいかに早く発見し、二度と起こらないようにするためにどうするかということでございます。そして、そのためには、不正行為が最も早い時点で把握できるような強い仕組みを持つ必要があるということでございます。すなわち、証券会社内部監督検査官が通常のチェック事件の検診を的確に行い、将来発生する可能性のある問題に適切に対応できるよう諸体制をつくり上げるということでございます。この点につきましては、幾ら強化してもし過ぎることはないということでございます。  現在、社内におきましても、今回のような不正な取引を再発させないためにどのようにしていったらよいのか、その具体策全力を挙げて策定している最中と聞いております。  先ほども申し上げましたとおり、平成三年の不祥事の際にも、私は、社会に対する責任、とりわけマーケットに対する責任を果たす企業とならんと決意し、そう発表させていただいたわけですが、それができなかったということでございます。本当に申しわけございませんでした。私どもといたしましては、今回の件を真摯に受けとめ、真に社会マーケットに対する責任を果たす企業として一からやり直したいと思っております。皆様にはどうか御理解賜りますようお願い申し上げます。  なお、現在、大蔵省を中心といたしまして日本版ビッグバンの作業を順次お進めいただいている最中でございますが、我が国証券市場の将来にとって大切なこのような時期に当社マーケットを汚すような事件を引き起こしましたこと、本当に申しわけなく思っております。今回の件は全く当社独自の問題でございます。立法府皆様、そして行政府の皆様におかれましては、我が国証券市場改革に引き続き御理解賜りますよう、この場をおかりいたしまして、どうかよろしくお願い申し上げます。  終わります。
  6. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  次に、関参考人にお願いいたします。関参考人
  7. 関要

    参考人関要君) 日本証券業協会の副会長を務めております関でございます。  本日は、本委員会にお招きを受け、意見を申し述べる機会をいただき、まことにありがとうございます。  私ども日本証券業協会は、証券取引法上、自主規制を担当する団体として位置づけられ、公正取引ルール確立店頭市場管理等の役割を果たしております。また、すべての証券会社が参加する団体として、証券市場が健全で効率的に機能するように、また証券取引証券会社に対する信頼を向上させるように、株式市場活性化個人投資家証券投資の促進、証券税制改善等目的として種々の活動を行っております。  先生方も御承知のように、自主規制機関は、日々証券市場において仲介役を果たしている証券会社がその知識と経験を生かしてみずからルールを制定し、みずからルール遵守状況チェックし、万一ルール違反の事実があればみずからの手で制裁を行うという方式によって、公正取引確保投資家保護という証券規制目的を達成しようとするものであります。  私ども協会では、このような自主規制の考え方にのっとり、従来から証券会社営業姿勢適正化等に重点を置いて自主規制機能充実に努めてまいりました。  特に、平成三年夏に証券不祥事が表面化した際には、倫理綱領の制定、内部管理責任者制度の導入、監査機能充実強化等を行い、その後、協会員とともに全力業界改革に取り組んでまいりました。業界全体として見ますと、自主規制枠組みが次第に整備されるとともに、証券会社営業姿勢改善という面においても相当の成果が得られたのではないかと思っております。  しかし、自主規制枠組みが形式的に整備されたとしても、法令等取引ルールを厳格に遵守するという基本業界内に完全に徹底し、法令遵守内部管理体制が十分に実を上げていると言えるまでには引き続き努力を要する状況にあると判断しております。年初に取りまとめた本協会の今年の主要課題においても、適正な自主規制機能の発揮を最も重要な課題として位置づけているところであります。  既に申し上げましたように、協会では平成三年十月に自主規制の重要な柱として内部管理責任者制度を導入する基本方針を決定、その後、協会員内部管理責任者等に関する規則を制定し、会社全体に法令遵守内部管理責任を持つ内部管理統括責任者を、また支店ごと責任を持つ内部管理責任者営業責任者制度を設け、さらにこれに資格制度を導入し内部管理体制の整備を図ってきたところであります。この内部管理責任者制度あり方についても、今回の野村証券の問題の事実解明を待って、必要に応じ各証券会社に対し、実効ある法令遵守内部管理体制確立を改めて要請する、協会監査においてその改善状況等を把握すること等を検討したいと考えております。  今回の野村証券の問題については、去る三月十一日付で同社から協会報告がありましたが、現在、司法当局監視委員会の手で事実解明が進んでいる状況でありますので、法令違反等の事実が判明した場合には自主規制機関として厳正に対処する所存であります。  フリー、フェアグローバルの三原則を掲げて金融証券市場改革が急ピッチで進められていることは先生方も御承知のとおりであります。証券界はかねてより、証券市場機能を向上し、二十一世紀において国際的に評価される市場確立するために、自由、公正、国際性という観点から市場改革を行うべきであると考え、証券取引審議会総合部会等審議に積極的に参加して、株式売買委託手数料の自由化問題を含め市場改革規制緩和の諸項目に真剣に取り組んでおります。  一連の金融証券市場改革、いわゆる日本版ピックバンは、我が国経済全体がグローバル化の中で直面している最重要問題であり、今回の個別問題によってその取り組みがおくれるようなことは決してあってはならないことであります。証券界においても、本協会といたしましても、改革の三原則一つであるフェアの面にも十分留意しつつ、今後とも市場改革に積極的に取り組みたいと考えておりますので、よろしく御支援をお願い申し上げます。  証券界といたしましては、証券市場証券会社に対する信頼感確保が何よりも大切であることを再確認し、信頼回復に向けて最大限の努力を行ってまいりたいと考えております。  先生方におかれましても、より一層の御理解を賜りますようお願い申し上げます。
  8. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  次に、神田参考人にお願いいたします。神田参考人
  9. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) 東京大学法学部神田と申します。  本日は、本委員会で私の意見を述べさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。私は、法律、その中でも特に商法、金融法及び証券法専門とさせていただいておりますので、そのような立場から幾つかの意見を申し述べさせていただきます。  具体的には三点申し上げたいと思います。  第一点は、今回の野村証券事件のような事件につきましては、その原因を十分に調査し、今後このようなことが起きることのないよう国として全力を挙げて対応していただきたいということであります。  第二点は、日本金融及び証券分野は、バブル経済崩壊の後の不良債権問題の処理のために世界の水準から大きなおくれをとってしまいました。このおくれを回復し、日本金融及び証券市場を魅力ある市場として復活させるために、いわゆる日本版ビッグバンを国を挙げてできる限り早く実行していただきたいということであります。  第三点は、今回の野村証券事件は、数年前の損失補てん事件と同様、国民証券界に対する不信感を再び呼び起こしたわけでありますが、このことが日本版ビッグバン実行そのもの妨げになったり、実行スピードをおくらせるようなことがあってはならないということであります。そういうことになりますと、日本金融証券市場はますます世界から取り残され、国の経済全体にとって大きなマイナスをもたらす結果となるおそれがあると考えられることであります。  以下、若干敷衍して申し上げます。  まず第一点でありますが、今回の野村証券事件のようなことがなぜ起きたのか、とにかくその原因調査に努めていただきたいと思います。一言で申し上げますと、証券取引法などの法律ルール違反ということに対する事前チェック体制が十分でなかったと言わざるを得ないと思います。したがいまして、今後の対策といたしましては、証券取引法はもちろんのこと、各種の金融証券分野におけるルール遵守ということについて、事前及び事後の両面においてその監視体制強化することがぜひとも必要であると考えます。  このような監視体制強化は、個々会社、例えば個々証券会社がまず自発的に行うべきであることは言うまでもありませんが、国としてはそれでは十分ではなく、法律行政そして自主規制機関を挙げてルール遵守事前及び事後監視体制強化ということについて具体的な改善策を議論し、適切な対策をできる限り早く実現に移すことが必要であると考えます。  次に第二点ですが、日本金融証券分野は、バブル経済崩壊の後の不良債権問題の処理のために先進外国のレベルと比較いたしますと大きなおくれをとってしまいました。このおくれを回復し、日本証券金融市場を魅力ある市場として復活させるために、いわゆる日本版ビッグバンと呼ばれる制度改革、これは具体的には法律改革それから行政あり方についての改革等を含むものでありますが、そういうものを国を挙げてできるだけ早く実行する必要があると思います。  この場合、日本市場ニューヨークロンドン並みにということがよく言われます。しかし、日本金融証券市場は、日本人が長年の歴史と経験に基づいて築き上げてきました雇用慣行その他、日本的なものをベースとして仕事を行う市場である面もございます。したがいまして、例えば法律英米流に変えさえずれば日本市場ニューヨークロンドン並み市場になると考えるのは正しくないと思います。ニューヨークロンドン目標ではありませんで、競争相手であると考えるべきと思います。日本市場ニューヨークロンドン市場と立派に競争できるような魅力ある市場に変身させることを日本版ビッグバン目標であると考えるべきと思います。  そのためには具体的に何をすべきかでありますが、基本は二つでありまして、第一は自由な商品開発を認めること、第二はそのような商品投資家に販売する際のルールを公正かつ明確なものとして整備することであります。  これまでの日本やり方は、縦割りの業態の間の業務の調整ということを重視してまいりましたために、事前禁止といった形のルールあるいはそういった取り扱いが少なくありませんでした。これは、そもそも一定の新しい商品事前禁止ということですので、投資家の被害を事前に防止するというメリットもあるわけであります。  しかし、比喩的に申しますと、戒厳令をしいておいて余り問題は生じていませんと自慢するようなものでして、今日の先進外国に対しては少しも自慢になりません。戒厳令をしくというような事前禁止というやり方はやめにして、自由を原則とし、ただ、どのような条件のもと創意工夫に基づく自由な商品開発や販売を認めるかということを具体的なルールとして書くということをすべきであります。  そして第二に、そのようなルールは守られなければ意味がありません。したがいまして、ルール遵守ということについて法律行政全力を挙げて対処すべきであります。  最後に第三点でありますが、今回の野村証券事件は、数年前の損失補てん事件と同様、国民証券界に対する不信感を再び呼び起こしたように思います。  しかしながら、このことが日本版ビッグバン実行そのもの妨げになったり、実行スピードをおくらせるようなことがあってはならないと考えます。そういうことになりますと、日本金融証券市場はますます世界から取り残され、国の経済全体にとっても大きなマイナスをもたらす結果となるおそれがあると思います。したがいまして、日本版ビッグバンはできるだけ速やかにこれを実行するとともに、ルール遵守ということについて事前事後の両方における監視体制強化ということを新たな法律的な手当てを含めて速やかに実行すべきものと考えます。  以上で私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。
  10. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 片山虎之助

    片山虎之助君 自由民主党の片山虎之助でございます。  三人の参考人皆様、大変きょうは御苦労さまでございます。時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。  先ほどの酒巻社長決意は私は大変了としたい、こういうふうに思いますが、実は野村証券が三月六日に、斉藤社長東証事務所記者会見をして今回の事柄を発表されたわけですね。私が奇異に思いましたのは、これだけ大事な発表をなぜ副社長がやるんだろうか、社長でなくてということが一つ。後で聞きますと、社長はそのとき御出張中で、電話で六日に斉藤社長が発表することに同意されたとかという話が流れておりますが、どういうことなんでしょうか。
  12. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  ちょうど当時は鈴木協会長、私ども会長でございますが、ヨーロッパへ出張しておりました。私は三重県の四日市、津、あちらの方へ出張しておりまして、そして新幹線の中へ電話がありました。記者会見を行いたいということで斉藤から電話をもらいまして、秘書室長からもらいまして、それはすぐやってくださいということで話をいたしました。  もともと監視委員会へお届けをして旬日たっておりましたので、株主に対して責任を持つ、マーケットに対して責任を持つ、市場関係者に対して責任を持つというところは一日も早いディスクロージャーと、日ごろ事業会社さんや金融機関さんにディスクロージャー、ディスクロージャーと言っております会社でございますので、いい話も悪い話もやはりマーケットに公表するということが大事だと思いまして、そういうふうに指示したという経緯がございます。御報告申し上げます。
  13. 片山虎之助

    片山虎之助君 それなら、出張を少しおくらせるとか日を変えるとか、もっと繰り上げておやりになるとか、私はそれが筋だと思います。最高責任者がこれだけ重要なことはみずから発表されるということが必要だと思うんです。  それはまた時間がかかりますから置いておきまして、昨年の七月から証券取引等監視委員会調査に入られた。昨年中は、酒巻社長は、こういうことはあり得ないことなんだ、経営陣を信頼してほしいと常に言われてきたというわけですね。ところが、だんだん調査が進んでぐあいが悪くなったのかどうか知りませんよ、ことしの初めにチームをつくられて社内調査をおやりになった。その結果は先ほど発表されましたですね。  そこで、これいかにも対応が私はちぐはぐだと思うんですね。もっと早く社内調査にかかる必要があるんじゃないですか。何か、大和銀行ニューヨーク支店の例があるから、とにかくここでちゃちゃっとやって、さっと発表しておかないと大変イメージが悪くなるということをお考えになったんじゃないかという気がいたしますが、いかがでございましょうか。簡潔にお願いします、時間がありませんので。
  14. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  昨年の夏でございましたか、証券監視委員会調査が入ったと、これは株式のところで疑義がある、したがってそこのところを調査するということで特別調査が入りました。  私どもの方でも業務管理本部というのがございまして、そこの担当役員が当然調べる。エクイティー関係の役員も当然、自分のところはいろいろ疑義があると言われているわけでございますから、もちろん全面的に協力するわけですけれども、しかし、そういうことはない、疑義を晴らしたいというようなことを言っておりまして、両役員でいろいろ話をして、私ども業務管理担当役員から経営会議等でもエクイティー関係役員は問題なしと言っているというような報告を受けましたのが八月の初めごろでございます。特別調査というのは一言も外へ手前どもから意見を表明するということは全くできない、中で粛々と調査が進められるというものでございますから、私も経営会議でとにかく徹底的に調べていただこうと、それで、非は非、悪いところがあればそれは直していけばいいという発言をした記憶がございます。  しかし、年末になりましていろいろ新聞に出る、また、年末年始、一流紙に、全国紙に出ましたので、これはおかしいぞ、何かあるぞと、一遍ラインを違えて、人を違えて調査してもらいたいという話をして、ことしに入りましてからの特別調査になったというような状況でございます。  わかりましてからは、これはもうすぐ証券取引等監視委員会報告をしてくれと、証券取引等監視委員会東京地検に告発できるという国家機関でございますからそういうところへきちっと報告せねばならないと、これは大事だなと思って行った次第でございます。
  15. 片山虎之助

    片山虎之助君 そこで、先ほども社長が言われましたが、問題はとにかく二人の常務さんだけが独断でやったんで、この一連の取引会社ぐるみではないんだと、こう言われますけれども、いろんな状況を総合的に判断すると本当かなと、こういうことになるわけですね。  私は、一つは、これは長い経緯があると思うんですよ。小池何がしという人との、あなたの会社の長いつき合い。今回の件だけ見ましても、平成元年に本店営業部に小池さんの兄弟の社長名義の口座をつくられて、そこで、もう既に法人名義で三十万株野村証券の株を持っているわけですね。それから、平成三年にはそれを本店貯蓄相談部に口座を移して、さらに平成五年に、今度は本店第一企業部にさらに口座を移しているんですね。それで、恐らくここで十億円か何か知りませんが、取引一任勘定の約束をされたのではないか。これはもうきのうやきょうの関係ではないというのが一つ。  それから、三人の常務さんがどうも連係プレーをやっているような気がしてしようがない。例えば秘書担当常務の方は、名前は言いませんけれども、第一企業部口座を開設するために異例の口座開設を指示しているんですね。それから総務担当常務さんは、これは藤倉さんと名前が出ておりますが、株式担当常務の松木さんに、もうけさせてやれ、ちゃんと対応してやれということを頼まれて、松木さんという人は株式のプロですから、この株式担当常務は取引一任勘定的なことをやってつけかえをやるわけですね、損が出たから。  私はこの三人の常務がそれぞれ独自にやったとは思わない、三人の連係プレーだと。ということは、上層部トップが少なくとも暗黙の了解をしているか、具体的な指示をしたとは思いませんよ、大体それはよかろうと、こういうことの上でできたんではなかろうかという疑いがぬぐい切れない。しかも、酒巻さん自身は、平成三年に社長になるまでは総務・企画担当の副社長さんでしょう、総会屋の担当なんですよ、簡単に言うと。それから、平成三年から社長になられた。  この一連の口座の動きや三人の常務の絡み方、私はその点全く知らなかったと言うと、酒巻さんに大変失礼なんですけれども経営者として大変怠慢でかつ無責任だと思います。しかも、そのことが平成三年の教訓を一つも生かしてないわけですよ。管理体制強化されたとあなた今言われたでしょう。担当常務がばらばらにやって、しかもそれがチェックできないような管理体制強化、どういう意味があるんですか。しかも、総務部門を強化されたという総務部門は今回ぐるなんですよ。  これについてあなたはどういう責任をとられるのか。私は、今回のことは情況証拠から、警察風に言えばもうクロだと言わざるを得ない。会社ぐるみだと。ぐるみのぐるみ方が違いますよ。ぐるみ方が違うけれども、少なくとも二人の常務が単独プレーで、個人プレーでやったとは思えませんが、いかがでございましょうか。
  16. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  私ども会社で、私は社長になる前は前会長、前社長の補佐役のような仕事をしておりまして、管理部門、人事、財務、システム、秘書、広報等々、かなり広い分野を持っておりましたけれども、ちょうど金融制度調査会と証券取引審議会で銀行と証券の乗り入れ問題をやっておりましたので、野村証券、銀行で言えば一般委員長という仕事に携わっておりました。そして、私は百四十の野村営業店を、とにかく社長が来たことがないというような店が結構あるものですから、みんな苦労していたものですから、とにかく一回行って励ましてこようと、この間の三重県の津とかに行ったのもそうなんですけれども、そういうことで、専ら世界じゅう、日本じゅう飛び回っていたような状況でございます。  今、先生からの御質問で、個々取引においても、こういう取引酒巻承知していたはずだ、そこのところどうなんだという御質問でございましたけれども、私ども、大体常務に権限委譲をして、ほぼ商品商品、法人は法人、営業営業、管理は管理、調査調査、事業部制でやっているような会社でございますので、今回の件が起きまして社内調査をしたわけですけれども、今回問題とされている口座にだれがかかわったのかというところは、先ほど御報告いたしましたように元常務の二人がかかわっておったと、それ以外の者はないのかと、それ以外の者は中の調べでは見つかりません、ありませんでしたという報告を受けたわけでございます。  私は、会社ぐるみというお話がございましたけれども、そこのところは断じてないんだという報告を受けておりますし、また私自身も会社ぐるみではないと確信しております。ただ現在、東京地検並びに証券監視委員会合同捜査が進行中でございますので、こういう点につきましても当局の判断を仰ぎたい、そういうふうに思っている次第でございます。  以上でございます。
  17. 片山虎之助

    片山虎之助君 酒巻社長、権限委譲と管理体制というのは別なんですね。権限は大いに委譲して思う存分仕事をやってもらえればいいんです。  しかし、これは恐らく担当ごとに分野ごとにおやりになると思うんですよ。それを神田先生のお話じゃないけれども、横断的にチェックする仕組みというものがなきゃ私はおかしいと思うんです。平成元年、二年、三年にいろんな問題を起こして、あなたはあらしの中の船出のような決意だと言って大変な、今も言われました、社会マーケットに対して責任を明らかにするんだ、ニュー野村証券だと、こう言われたことが一つも生かされていないですよ。反省しなかったわけですね。私はそれが不思議でしょうがない。この間ですよ、何十年も前じゃない。ついこの間と同じことを繰り返したということに私はなっていると思うんですね。  それから、よくわかりませんけれども、二人の常務さんだけが勝手にやったといって、トカゲのしっぽ切りと言っては語弊があるかもしらぬけれども、何らの報告も受けなかったんですかね。もう勝手にやるんですな、おたくの会社は、どどっと。いかがですか。
  18. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  先生のお話、二点あったかと思うんですけれども、最初の内部管理体制はどうなっていたのか。これは先ほどの関副会長のお話にもございましたように、以前の六年弱前の不祥事のときに、内部管理のシステムをきちっとしよう、そして全国の営業店に内部管理責任者というのを置こう、それもきちっとテストを受けてそこまでやろうと。同じく営業マンの方も営業責任者というのを置いてテストを受けさせてきちっとやろうと。  これは日本証券業協会等でもそういう方向で御指導がありまして、私どもも全国にそういうものを置いた。その最高責任者として内部管理統括責任者という者は、本社の代表権を持っている者が担当してチェックしていこうと。上意下達、下意上達、何でも言えるカルチャーの会社にしようと、そういうふうにやってきたわけでございますけれども、そこのところは先生御指摘のとおり本当にきちっとワークをしていなかったということで一言の言葉もございません。本当に申しわけございませんでした。  それから二つ目の、おたくの会社は何でも担当役員や担当部長のところでたったっといろんな個別の商いをやっていて、そういうことを上に報告したりしないのか、そこはどうなんだということでございますけれども、第一点の問題と兼ね合わせまして、今回はそこのプラットホームといいますか、そういうものがうまく作動しなかった、少し縦社会主義という、横社会というか、横糸がうまく通っていなかったなというのは私の猛反省でございます。本当に申しわけございません。
  19. 片山虎之助

    片山虎之助君 押し問答もあれですけれども、今回の事件を個人プレーだけの個人の責任にして済ませたら野村の体質は変わりませんよ。野村の汚染は構造的だと悪口を言われている。会社ぐるみの責任にして、会社ぐるみで人事も体制も刷新するという決意がないと、また個人であれとあれが悪かったんだ、会社の上層部は知らなかったんだと、こういうことじゃ事が済みませんよ。いかがですか、再度。
  20. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  調査の結果で関与していたのはこの二人ということでございましたけれども、私も冒頭、こういう経営で起きた、野村で起きたあらゆる問題の全部の責任は私にあると、全責任我にありということはきっちり承知しているつもりでございます。
  21. 片山虎之助

    片山虎之助君 何かけさの新聞によると、代表権のある取締役さん以上は全部総退陣になるんではなかろうかという予測記事が出ておりますけれども、それは二人の責任じゃないんですよ。私はやっぱり会社責任だと、そこははっきり、もつと調査をしていただかなきやいけませんけれども、その上で責任を明らかにされて体制を刷新することが本当に国民社会マーケット信頼を得る近道だと思いますよ。  そこで、ちょっと話が前後しますが、このつけかえですね、七千万円、九十五万株ですか、五銘柄、六回、このつけかえはどうも取引一任勘定で、平成七年の年明けに株がどっと下がりましたね、そこで相手様に損を出したんで、自己勘定からつけかえをおやりになった疑いが濃厚なんですよ。やっているのは大体半年ぐらいなんです、一月から七月まで。いかがですか。これはある意味では大変な法律違反になることなんですけれども、どういうふうに調査の結果を御認識でございますか。
  22. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  三月六日の記者会見で、株主に対しても投資家に対してもこういう話はすぐディスクローズしなきゃいかぬ、御報告する義務があるということでやらせていただいたわけですけれども、その際に都銀株を含む取引の中で幾つか納得性の薄い取引が発見されましたので、これはすぐ御報告をしようということで手前ども斉藤社長記者会見に臨んだということでございます。これは一任的取引と受け取られても仕方がないというふうに私どもは判断いたしましてお届けした。  もう一つは、今、先生御指摘の自己勘定と委託勘定、ディーリング勘定とブローキング勘定と言ってもいいんですけれども、この二つの取引がまざっているような状況があるなと。普通はそういうものはもう絶対まざるわけはないんですけれども、まざっているような状況があるなと。ここのところはだれか意図的なことをやらなければそういうことになるわけないなということで調べたわけでございます。その結果、そこのところでイレギュラーな取引がわかりましたのでお届けをしたというところでございます。私どもはそう思っているんですけれども、今御当局がここのところも捜査しておりますので、ここのお答えはこれくらいで御容赦していただきたいというふうに思っております。
  23. 片山虎之助

    片山虎之助君 野村業界のガリバーと言われているんですからね、リーディングカンパニーなんですよ。この野村国民の不信にさらされるようなことになると証券業界はもう全部沈没します。それだけ私は、一野村証券だけじゃなくて証券業界全部の浮沈がかかっていると思うんですよ。そういう意味ではぜひきちっとしたチェック体制を、相談役におなりになったようですけれども、おとりくださることを希望して、時間がありませんから残りの二人の参考人に質問させていただきたいと思います。  関副会長協会自主規制ということを言われたけれども野村証券の例を見ると一つもうまくいっていないんじゃないですか。今まで何をやっておったんですか。今後、今までと違うやり方をおやりになるのかどうか、その点を。
  24. 関要

    参考人関要君) 冒頭の意見を申し上げたときにも申し上げましたけれども協会は、平成三年夏以降、特にでありますけれども業界改革ということで自主規制機関としての協会、それからまた証券界と十分意見交換をしながら信頼回復のためにいろいろな努力をしてきたわけであります。特に、その柱の一つといたしまして、先ほどから話題になっております内部管理体制というものをきちんと確立しなければいけないということでいろいろな努力をしてきたわけであります。  既に、酒巻参考人もお答えになりましたように、また私が冒頭申し上げましたように、内部管理体制の形式的な整備ということは業界全体としても個別の会社としても相当進んだというふうに思っております。ただ、この法令遵守、自主内部管理体制の実がどこまで上がっているかということにつきましては、なおまだ全く問題がないとは言い切れないということで、いろいろな努力を引き続きやろうということを今大きな目標として掲げているということであります。  今回の野村証券の問題につきましては、整備をしてある内部管理体制にやはりどこか盲点があったのではないかということは一つ感じるわけでありますが、ただ、今回特殊なのは、内部管理体制の一翼を担う役員クラスのところにルール違反があったということでありますと、これは制度というよりも具体的な事件、個別の問題でありまして、極めて異例なものではないかというふうに考えているわけです。  しかし、これを一つの教訓といたしまして、先ほど申し上げましたように、今後の事実解明を踏まえて、引き続き内部管理体制充実強化について具体策を検討していきたい、こういうふうに思っております。
  25. 片山虎之助

    片山虎之助君 いみじくも言われたように、仕組みだけつくってもだめなんですよ、本当に。仏つくって魂入れずというのがありますけれども、認識を変えるとか、もっと総合的な何かの自主規制団体としてのチェックの仕組みをぜひお考えいただきたいと思います。  神田先生は証券取引審議会総合部会の座長代理をされているようですが、私はどうも我が国の関係の罰則がアメリカに比べて、アメリカもいろいろありますけれども、大変甘いと思うんですよ。とにかく、ビッグバンというのはある意味では自由化でしょう。自由化ということは同時に公正でなきゃいかぬ。ルールはきちっと守る、その上で自由に競争していく。こういうことなので、こっちの方がおろそかになると私はわけがわからぬことになると思う。  そういう意味で罰則の強化が焦眉の急だと思いますが、先生のお考えはいかがでございましょうか。
  26. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) まことにおっしゃるとおりでございまして、私自身も罰則の強化ということをぜひ行うべきだと考えております。例えば、証券取引等監視委員会でございますが、人員の増加、権限の強化ということもあわせて行うべきだというふうに考えております。
  27. 片山虎之助

    片山虎之助君 先に先生に言われましたけれども、私はその次に証券取引等監視委員会体制強化ということを言おうと思ったんですよ。  去年の七月からやっているんです。もう十カ月でしょう。まだ結論が出ない。結論が出ないから野村証券さんの方がばっぱっと社内調査をやって先に発表しちゃう。それで、調査の結果から影響を受けるようなことはないと私は思いますけれども、何か三十人で朝から晩までやっているんだそうですが、さっぱり目鼻がつかない。証券取引等監視委員会強化というのは人をふやすだけでいいですか。そのほかお考えがありますか。先生のお考えがあれば聞かせていただきたい。
  28. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) 人をふやすということは大変大事なことだと思っております。例えば、アメリカと比較いたしましても非常にギャップがあるというのが事実であります。ただ、人をふやすだけでは十分ではありませんで、権限についてもさらに具体的に強化すべき点があるのではないかということを検討すべきだと思います。  なお、先ほどおっしゃいましたように、これは仕組みですので、まさに仕組みが動くか動かないかというのは具体的な運用にかかっているわけでして、そういう意味では日本的なこういうルール違反を発見し、摘発し、調査をするということについての風土というんでしょうか、そういうものを改める必要も同時にあろうかと思います。
  29. 片山虎之助

    片山虎之助君 一言だけ。  今度、委員会金融監督庁に行くんですね。行っても実態は変わらないですよ。私はこの際何かきちっとしたことを考えなきゃいかぬのじゃないかと思っておりますので、ひとつ先生の審議会の方でよろしく御審議を賜りますように。  どうもありがとうございました。
  30. 平田耕一

    平田耕一君 自民党の平田です。よろしくお願いいたします。  早速お尋ねいたします。  前回の暴力団絡みの事件で田淵節也前会長、義久前社長が退任をされました。それを酒巻社長は何年だったか取締役として再任をされたわけでありますけれども、その理由をお尋ねいたします。
  31. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  一九九一年でございますか、損失補てん問題が証券界を吹き荒れまして、手前どもの前会長、前社長が退任いたしまして、そのときの株主総会で取締役に選任され、先日まで仕事をしておりました。
  32. 平田耕一

    平田耕一君 再任の理由を。なぜ再任されたか。
  33. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 田淵会長、田淵社長が再任された、カムバックされた理由です。
  34. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 失礼いたしました。  右肩上がりにダウ平均が上昇し、時価総額が百兆、二百兆、三百兆、四百兆、五百兆、六百兆と上がっていきまして、私はその後バトンタッチを受けました。六百兆が五百兆、四百兆、三百兆、二百兆と下がっていくところでバトンタッチを受けたわけですけれども、私ども海外にかなり三十か四十か店を出したりしておりますので、どうしても私一人ではどうにもならない。ここはディプロマティックスキルというか、外交手腕を持っている両先輩に応援していただかないとこちらも体が持たない、何とか応援をしてもらいたいものだなということでお二人にも話し、株主総会にかけて再任をお願いして、そうなった次第でございます。
  35. 平田耕一

    平田耕一君 今回、酒巻社長が退任なさると同時に御両人が退任された理由をお尋ねしたいと思います。
  36. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  私が社長になりますときに七つぐらい会社の中に業務委員会をつくりまして、なぜこういうことが起きたんだ、全部洗い出せということで七つ委員会をつくって、常務を一人ずつ張りつけて、何でもいいから言えと。野村証券に悪いところがあればそれを全部摘出して一つ一つつぶせば、それはいい野村証券になるはずだというようなことでやってまいりまして、九一年の十月一日、忘れもいたしませんけれども、大体そういうものが固まってまいりましたので、社会に対する責任、とりわけマーケットに対する責任を果たす企業にしようと。  もう一つ証券界はとにかくリスクというものをお客様に話さない、もうかりますもうかりますと。これだけではだめだと。お客様の投資経験とか、それから投資資金とか、いろいろなものを総合して、証券界では適合性の原則と言うのですけれども、こういうことをきちっと投資家の方に話をして、それでやっていこうと。  もう一つは、リサーチというものを重視しよう。上がります上がりますということじゃなくて、セルリコメンデーション、つまり下がることもあるというような話もしよう。プロフィットの隣にはリスクが隣り合わせになっているんだと。余りにももうかりますもうかりますとリスクを話さないで営業していたなという反省に立ちまして、新聞広告をして、ということはもう退路を断ってやってきました。  それで、今、先生の御質問に対するお答えなんですけれども、そこまでやりましたので、今回のマーケットを汚したということはもう私にとって一番重いことでございますので、私はその理由で退任をさせていただきました。  両先輩につきましては、以前、今期が終わったら取締役を引きたいという話は聞いておりました。
  37. 平田耕一

    平田耕一君 結構です。  あなたの退任理由は聞いておりません。多分、暴力団絡みを懸念してやめたということではないんだということを言われるんだろうと思って、途中で御遠慮いただきました。  平成七年三月十五日の富士銀行株の取引については、会社みずから証券監視委員会報告されたわけであります。そのことをちょっとお尋ねいたします。  買いは自己買いが中心であったということでありますね。そして、売り手口が数社の、多分益出しだろうと思います、時期から見て。数社の依頼による野村が受け手となった媒介であったと。そして、その間一たん受けたものを個人ビルという名義につけかえた疑いがあると、こういう報告であるということで間違いございませんね。
  38. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。まさに先生おっしゃる都銀株の商いのところで……
  39. 平田耕一

    平田耕一君 あるかないかだけで結構です。
  40. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 自己売買と委託売買が混在した、そう認識しております。
  41. 平田耕一

    平田耕一君 今までの議論でちょっと抜けているというか、その部分だけ補足してお尋ねしたいと思うんです。  数社の売り手口を全部野村が一括受注したということでありますね。多分、これだけの株を保有しておる会社というのは、主幹事証券野村一社ではないんだろうというふうに思うんです。共同幹事あるいは副幹事の存在であろうというふうに思います。それを、七百数十万株というものを一手に野村が受注した。そして、もちろんその裏方  に自己買いがあるということでありますけれども、その営業実績というのは大変大きいんです。それで言う営業の粗利益というのは瞬時にして一億以上、数億になるかもしれませんけれども、上がるわけであります。  その営業実績というのを実は見逃しているんじゃないかなというふうに思うんです。大変難しい状況の中で一手受注をした刀そしてその営業実績が上がった。その営業実績は本店営業部の実績になるわけですか。どうですか、その点だけお答え  いただきたいと思います。
  42. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  都市銀行の株といいますのは、ほかの産業株のメーカーさんの株等と違いまして……
  43. 平田耕一

    平田耕一君 済みません、本店営業部の実績であるかどうかだけ。
  44. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) これは企業部というところで売買をしておりましたので、企業部の実績になります。
  45. 平田耕一

    平田耕一君 酒巻社長は、冒頭のお話の中で、証取法違反はおおむねお認めになっておられるような御発言をなさいました。それで、商法違反はお認めになってみえないような、入っていなかったんですね、お話の中に。それは、野村証券の総会を取りまとめたお礼とかそういうことじゃなくて、要するに高島屋とか味の素の総会屋に対する謝礼のパターンと違うんだよということをおっしゃつてみえるのかなというふうにも受けとめるんですが、そうしますと、じゃなぜこの利益供与が行われたかということであります。  先ほど申し上げたように、相当の瞬間的な営業実績が上がるわけです、粗利が上がるわけであります。本店の第一企業部といいますと、その本店長は武士二郎常務であろうかというふうに思います。この武士二郎常務は、要するに今うわさとなっておる小池氏と同じマンションに住んでおられる。小池氏が四億数千万のマンションの十階に住んでおれば、その六階にお住まいである。その所有物としては、これは公のことで調べられるわけですけれども、全く担保も何もなしにそれを所有なさってみえる、こういう状況であります。  社内調査をしたということについてるる御説明がありましたけれども、多分何期、何年か、そして株主総会においては議長もお務めだったろうというふうに思います。そういう御経験を踏まえて社内調査を受けられて、その辺のところまで御究明をなさったのかなさっていないのか、これからなさるおつもりがあるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  46. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  いろいろ都銀株の商い等につきましても、私どもではこう思いますというのがあるんですけれども東京地検並びに証券監視委員会合同捜査の方ではどういう御判断を持つか、どういう結論が出るか、この辺のところは全く私はわかっているわけではございません。そういうものを待って私ども対処していきたいというふうに考えているわけでございます。  同じマンションに住んでいるというのは、マスコミ等に出ましたので私も本人に聞いてみましたけれども、前の家を売ってローンを組んで、サラリーマンとして一生に一回、ついの住みかをようやく探し当てたというようなことで、言われておりますような方と一緒に買ったとかそういうことでは全くない、そう申しておりました。  大変恐縮ですけれども、御返事になるかどうか。
  47. 平田耕一

    平田耕一君 その点は、それ以上は多分にプライベートになりますのでお尋ねいたしません。  その取引で、実は益出しなりなんなりで売った会社がある、その売りの手口は野村に依頼をした。そして片や、主力を自己買いでいったという取引の中で、小池小甚ビルディングに利益供与があったわけですね。そうしますと、その売り手口を依頼した複数の会社というのは、これは搾取になるのか言葉はわかりませんけれども、中間で野村証券がシステムとしてそういうことを許しているわけなんですけれども、そういった巨額の利益供与というものを売りを依頼した会社というのは了解しているのかしていないのか、お答えください。
  48. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  実は、都銀さんではなくて都市銀行の株券、この流通であるわけですけれども、売り手がいる、普通、売りたいと言いましても……
  49. 平田耕一

    平田耕一君 状況説明は要りませんので。
  50. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) その売り気配がつくだけでございますから、こういう売買は、証券会社がディーリングという免許をいただいているものですからマーケットに流動性をつけなきゃいかぬ、特に大口の売り手口の場合は自分でもって介在しなきゃいかぬということで、ディーリングでもつてさばいたというのが起きた取引でございまして、そのときに、自己売買と顧客勘定の混在と言いましたけれども、二つの伝票が全く同じ時間に出ている、これはおかしいのではないかというのが私ども調査の発端でございました。
  51. 平田耕一

    平田耕一君 売り手は知らない、売ってくれと依頼をした会社はそのことは知らないということだと思います。そういう御返事だったと思います。  しかし、知らないということで七百数十万株を野村証券に売りを依頼した、そしてその売り抜ける途中で数千万円の利益供与があったということになりますと、いかに社長が個人ぐるみである何であると言おうとこれは大変な問題であって、野村証券営業体自体がもう大蔵省認可の証券取引業免許にも値しないぐらいのぼろぼろのシステムになっている。その辺から一遍解き明かして監査をしていただかなきゃいかぬという状況になりますので、この辺は今後の調査を厳密にやって、また御報告もいただければありがたいというふうに思います。  関専務はどこかの会社の株主総会をごらんになったことはございますか。
  52. 関要

    参考人関要君) 直接、株主総会という席上に参加したことはございません。ただ、株主総会のことについてはいろいろ書いたものについてある程度は存じております。
  53. 平田耕一

    平田耕一君 御存じないことは御存じないとおっしゃっていただいて結構でございます。  私が思いますのに、日本に公開会社が数あるわけです。この公開会社というのは多分社長か代表取締役の会長が議長を務めるわけですけれども、議長を務める責任を果たすべく、常に株主異動については留意しておるんですね。異常な株主異動については必ずトップに上がってくるようになっているはずなのであります、それでなければ責任が果たせませんので。社長の職務というのはそういうことだろうというふうに思うんです。そして、その株主異動の中で名義書きかえの報告が来ますね。各社、これは不良株主だな、特定株主だなというのが自社でわからない部分については、恐らくその幹事証券と常に情報交換しながらやっていくわけなんですね。  したがって、いわゆる四大証券と言われる大きな会社というのはそういった情報というのはもう一番蓄積されておるし、公開会社も全部それを頼りにいろんな情報交換し、やっているという事実について、どうぞお話をいただきたいというふうに思います。
  54. 関要

    参考人関要君) 証券会社は特に法人営業の一環といたしまして株式等の取引をやるわけでありますが、その活動の中にいわゆるブローカーという形で株式を売買するという業務もありますが、もう一つ、それぞれの発行会社のために先生御指摘のようにいろいろアドバイスをしていく、こういった事業法人活動というのがあるわけであります。その過程において、発行会社のサイドから自分の株式の状況がどうなっているかとか、そういうことについていろいろ照会があって、それに対して専門的なお答えをしたりアドバイスをするということは大いにあり得ることだと思っております。
  55. 平田耕一

    平田耕一君 酒巻社長にお尋ねをいたしますけれども野村証券ではあなたの会社が幹事をなされたところからのそういった総会屋に対する情報の問い合わせというのはどの部署で御担当して御返答なさってみえますか。
  56. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  株式の移動等については、個別のことで、私のところにはほとんど入ってまいらないという状況になっておりました。外国人株主であるとか、最近は余りございませんけれども、何か相当買い占められて事業会社がお困りになっているようなときは私ども企業情報なんという話を会社が聞いたりいたしますけれども、上場会社を担当しておりますこの事業法人部の担当者が話を聞いて、大事な話があれば上へ上げていくというシステムで運営されております。
  57. 平田耕一

    平田耕一君 慎重にお答えをいただきませんと、全国が注目をいたしております。酒巻参考人のお話が野村証券の実態であるというふうになった場合に、証券市場を預けるにふさわしくないという判断になった場合にはそれが大変大きなことになると思いますので、どうぞ慎重に御返事をいただきたいというふうに思います。  そんな中で、衆議院の質疑を聞いておりましても、小池あるいは小甚ビルディングが三十数万株の名義書きかえを行ってきたということについて実態が把握できていなかったということを、今ここで再度いかがですか、言われますかどうですか。再度お尋ねをいたします。
  58. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  私は、今回の社内調査の結果、発表後、いろいろなことを部下に命じ、調べさせ、確認したいと思いまして調べまして、そこでもって三十万株というのを知ったというのが実情でございます。これは誓って先生に御報告申し上げる次第でございます。
  59. 平田耕一

    平田耕一君 それでは、例えばその期間、その前後の期間、そしてまた昨今に至るまで、当然ながら再発防止とか過去はどうだったんだという調査でもっていろいろお調べになったと思いますが、それらの期間に他の総会屋なりその関連企業が御社の株を持っておる形跡があったかどうか、あるいは株を持っていなくても取引口座の中にあるかどうか御調査なさいましたでしょうか。
  60. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  平成七年、一九九五年のこの都銀株を含むところの商い等について疑義があるということで特別調査が入りましたので、特別調査が入った段階で私どももいろいろ調べました。そして、この会社社長さんのお名前で平成元年から当社にお取引があったということがわかりましたので、先週もそのように御報告を申し上げたつもりでございます。  それから、先生お尋ねのいろんな口座があるのかというようなことにつきましては、手前ども調査では、これ以外のところでこのような問題と同じようなことを起こしている口座はないというふうに報告を受けているところでございます。
  61. 平田耕一

    平田耕一君 口座がないと断言できるだけの情報はあるわけですね。もう一度お尋ねいたします。
  62. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) このような問題を起こした口座があって、それと同じようなことが起きていないだろうな、大丈夫かということについては、それはないと思いますという報告を受けているというところでございます。
  63. 平田耕一

    平田耕一君 話が矛盾しておりまして、この大問題に至って今日ここに参考人としてお出ましいただくような状況であって、そこでないと断定できるだけのことをおっしゃって、それだけの情報もお持ちであって、小池は三十万株、小甚ビルディングは把握していなかったとか、大変矛盾したお話を随分となさっておられるわけでありますね。その辺いかがですか。
  64. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  新聞にいろいろ証券各社の株式を持っているとか書かれているんですけれども野村証券の株式というのをどこでお買いになられたのか。野村証券でありますと案外耳に入っていたのかもしれないんですけれども、その辺のところが全く定かにわかりませんので、平成元年に株主として登録なさったときにはお手元にあったんだと思うんですけれども、その時点でこういう株主さんが登録されたというふうに報告は上がってきておりませんでしたので、そのようにお答えさせていただいた次第でございます。よろしくお願いいたします。
  65. 平田耕一

    平田耕一君 調査機関が調べておるわけでありまして、報告を待たれるんだろうというふうに思いますが、私自身はリーディングカンパニーとして再度その期間を自主的にもう一度調査される必要があるんじゃないかなというふうに思います。  それはなぜかといいますと、特に社長がこの件は個人ぐるみであるというふうにおっしゃっているわけであります。会社として調査を受けている、個人ぐるみ、いずれかの判断は調査側からはわからないとしましても、野村証券としてはこれは個人ぐるみであるとはっきり言っているわけですから、会社としてもっと毅然として調査結果を報告する必要があるというふうに私は思うんです。その辺についてもっと精査したことで、もし仮にほかの口座があるのであれば事前に進んでオープンになされるというような御用意があるのかどうか、再調査の御意思はいかがでしょうか、お尋ねいたします。
  66. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  今、先生から個人ぐるみというお言葉が出て、私も先週そういうことを申し上げたんですけれども、少し言葉足らずで、この二人の常務が関与をした取引以外にそういうものがないという報告を受けておったものですから、これはこの二人がかかわった問題でございますと言うところを、何せ初めて国政の場に呼ばれましたのでああいう話をしたわけでございます。  二人に責任を押しつけてというようなことじゃなくて、野村で起きたことは全責任は私にございます。これはそう心得ておるわけですけれども、いろいろ国民皆様にも大変不快感、酒巻はけしからぬというふうに言われれば、そこは私は反省しなければならないというふうに思っております。  今後でございますけれども、いろいろ問題が起きたような取引が出てきたりすれば、先生おっしゃいますように、もちろん即刻それは自主報告をしていく。これはやっぱり欧米流のルールに近寄せていかなければならない。問題が起きればSECにファイルして、ウォール・ストリート・ジャーナルにぺーパーが出る、こういうのが正しい道筋かなと思っておりますので、何かあればそうしていきたいというふうに思っております。
  67. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございました。
  68. 荒木清寛

    荒木清寛君 平成会の荒木清寛でございます。  まず、私は酒巻参考人にお尋ねをいたします。  国内の株式市場は、平成三年の損失補てん不祥事以来、顧客の不信感が高まり、個人投資家市場離れを招きました。野村証券証券業界トップとして、以後市場浄化の必要性を訴えてきたわけでありますが、またしても不祥事でありまして、この投資家を裏切った責任というのはまことに重いと考えます。  参考人は、衆議院の意見陳述でも申しわけありませんと二十回以上繰り返しになったというお話でありますし、きょうも冒頭そのお言葉があったわけです。しかし私は、そのこと以上に、この案件の真相を明らかにしてうみを出し切ることこそが野村証券及び最高責任者であった参考人に課せられた社会的な責任であると考えておりますが、いかがでしょうか。
  69. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  今、荒木先生がおっしゃったことは、まことにそのとおりでございます。私が何回もお謝り申し上げているのは、幾ら謝ってもそれで済むものではない、謝り済むものではないという気持ちで臨んでいるものですからそういう言葉が多いわけでございます。  問題は、冒頭にも申し上げましたけれども、今回大変残念なことになって取り返しがつかない、断腸の思いだという気持ちでございます。さりとて、やはり再発防止のプラットホームというか、そういうものをどう構築するか。これはもっと早くやっていればいいじゃないかとおっしゃられそうなんですけれども、皆さんにおしかりを受けそうなんですけれども、とにかくマーケットの中での売りとか買いとかという売買の中で問題が起きるというのは、ある程度意図的、心の中で意図的なものがあるのかないのかとか、その世界に入っていかないと大変難しい点がございまして、そういう点も今回いろんな御報告がおくれたことでございます。  先生おっしゃいますように、とにかくきっちりと再発防止体制をつくりまして、またコンプライアンスとかリーガルとか、こういう面の研修とか教育とか、もう今まで何でこんなに研修ばっかりやるんだというぐらいやってきておりましたけれども、穴が抜けていた。新任取締役等はリーガルの面だけでの研修というものを法律家にもお願いしてやったりしていたんですけれども、その先輩のところで一つ問題が起きた。本当に申しわけなく思っている次第でございます。
  70. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、再発防止の前に、まず真相究明こそ必要ではないかと申し上げたわけです。  そこで、具体的にお尋ねしますが、総会屋との関係で疑いのある取引は五本であるとお認めになっておりますが、その五本の取引による利益のつけかえといいますか、利益の供与額は七千数百万円であると言われておりますが、これはそのとおりでよろしいですか。
  71. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  私ども調査でもそれくらいではないかなという報告を受けておりますので、先生のおっしゃられるとおりではないかなと思っております。ただ、それは私どもが思っているということで、今いろいろ御当局捜査されておりますので、それの御判断を見てということにまたなろうかと思っております。
  72. 荒木清寛

    荒木清寛君 報道によれば、これに限らず数億円の利益供与があったんではないかという話もあるわけです。  そこで、若干具体的にお尋ねしますが、利益供与というのは株取引だけじゃなく、新規発行の転換社債、ワラント債あるいは新規公開株というプレミアム商品を優先配分するという形でくだんの総会屋あるいはその親族に利益供与がされたことはありませんか。あるんではないですか。
  73. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  今、御捜査を受けているその口座につきましては、まさに東京地検証券監視委員会合同捜査が進んでおりまして、私どもも家宅捜索まで受けまして御捜査が進んでおりますので、その中の個々の商いに関するお話につきましてはここで御容赦をさせていただけないかなというふうに思っております。  新聞にとにかく取引した商いは全戦全勝で何億にも及ぶというようなことがよく出ておりますけれども、個別の商いですから守秘義務のこともあって申し上げられないんですけれども、そのようなことにはなっていないのではないかなと私自身は思っております。
  74. 荒木清寛

    荒木清寛君 守秘義務ももちろんございますでしょうけれども、しかし社会責任ということからすれば、やはり恥部といいますか、うみを出すべきであると思うわけです。  確認しますけれども、要するにこの五件以外はなかったという御認識だということなんですか。
  75. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 私ども調査におきましては、三件とか五件とか言われている商いのところでこういうような問題のある口座はなかったという報告をきっちり受けております。
  76. 荒木清寛

    荒木清寛君 そうしますと、この総会屋親族企業あるいはその関係者口座につきまして、すべての取引調査したということではないわけですね。その上でのお答えではないわけですね。
  77. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) こちらの今捜査を受けているお客様の口座につきましてはきっちり調べました。
  78. 荒木清寛

    荒木清寛君 はっきりしませんのは、なぜ総会屋親族企業に対して利益供与したのかという話なんです。何らかの貸借関係がある、あるいは弱みを握られている等の事実がなければそんな利益の移しかえをするはずはないわけなんですが、この点は当然お調べになっていると思いますので、なぜこのような利益供与が行われたのか、お答え願います。
  79. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  社内調査を行いまして、どうしてこういうイレギュラーな取引が起きたのかということにつきましては、正直言いまして、なかなか要領のいいすぱっとした答えが返ってきていない。もちろん両常務から話も聞いているんですけれども、ディーリングとブローキング、自己勘定と委託勘定、会社取引とお客様の取引、この辺がまざって、それで私どもの方はおかしいと判断をして、そこのところをきっちり解明したいなということでやってまいったのですけれども、ここのところはきちっと整理ができておりません。  そういうことも含めまして、一つども監視委員会に御報告したということは、監視委員会東京地検に告発のできる国家機関でございますので、その国家機関に届け出たということは告発したというのと同じ意味を持つ、同義語だと私自身は認識いたしましたので、すぐその報告をしろと。そしてもう一つ、大きい立場からきちっとお調べをいただこう、そういうふうに考えたわけでございます。
  80. 荒木清寛

    荒木清寛君 両常務は、この利益供与の動機、理由についてどうおっしゃっているんですか。
  81. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  総務担当役員からはいい情報があったら教えてやってくれないかと言われ、そしてそれを受けた方は、都銀株がいい情報と思ったのかどうかは知りませんけれども、その株式のディールのところでイレギュラーなことがわかったということでございます。
  82. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、そのいい情報があったら教えてくれと言われて、なぜそれに応じたのかということをお聞きしているんです。  八九年、平成元年ですね、八九年からこの総会屋親族企業社長名で本店営業部に口座が開設をされたというお話をいただきました。ということは、もうけさせてもらいたいというお話があったのはその当時からであって、その当時から一任勘定的な取引あるいは利益供与的なそういう取引が始まったということでございますか。
  83. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  いろいろ言っておりましたけれども、私も今先生がおっしゃったようなことではないかなと、そういうふうに認識しています。
  84. 荒木清寛

    荒木清寛君 次に、VIP口座のことについてお尋ねをいたします。  何回も議論されておりますが、これは二月の衆議院予算委員会でも取り上げられた問題で、御案内であろうかと思います。  昭和六十一年から平成元年の四年間にかけまして、転換社債十五銘柄が野村証券から外務官僚に割り当てられたという、この問題ですね。VIP口座との関連で論議をされているわけですけれども、この外務官僚の購入金額は五千四百万円であったということも明らかになっております。当時はバブルの最中でありまして、この新発の転換社債というのは値上がりが確実だというそういう評判でありまして、一般の個人投資家がそれを入手するなんということは到底できない高ねの花でありました。ですから、私は、この外務官僚の取引に関して言えば、これが優遇取引でなくして何と言うべきかというふうに思うわけなんです。  ところが、参考人は、衆議院の方ではこの件に関しまして、私どもの判断、報告は通常取引をさせていただいたということだというふうにお述べになっているわけなんですね。しかし、これほど優遇されて、どこがこれは通常の取引なんでしょうか。もう一度御説明願います。
  85. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えを申し上げます。  このVIPといいますのは、本当にいつも私、知らなかったと言って大変申しわけないんですけれども営業マンをずっとやってきておりますから大概のことはわかっているつもりなんですけれども営業ではなくて事務の方がつけている符号でございます。支店長が転勤する、営業マンが転勤する、そうすると、その間に辞令が出ますと、一週間たつとほかの任地へ行ってしまいますから、何百人かのお客様と手紙や電話や訪問でもちろんごあいさつしていくんですけれども、そういう引き継ぎ時並びに昼休みの休み時間等にいろいろお客様から折衝がある。今は、お客様から電話がありますと、全部パソコンですからぼんぼんとたたけばヤマダ様と口座がぱっと出る。そのときにVIPという符号が出てまいりますと、これは接遇に十分留意して対応してくれよと。厳しいお言葉で、教育がなっていない、対応がなっていない、リサーチがなっていないとおしかりを受けるようなお客様もそういう中に入っておるわけなんです。  少しお恥ずかしいんですけれども、VIPという響きが何か特別に利益を与えるための口座であるような報道等がなされて、そこのところは本当に申しわけなく思っているわけですけれども、優遇口座では全くないと、こう思っております。  それで現在、CBとかそういうものについては変動商品でございますから、転換社債等も百円のものが百二十円になることもあれば八十円になることもある、株が動けば動くという商品でございますけれども、はっきり値上がりが期待されるという商品はございません。ハイリスク‘ハイリターン、ミドルリスク・ミドルリターン、ローリスク・ローリターンといろいろございますけれども、ローリスク・ハイリターンというような商品は実は証券会社にはございませんで、あしたマーケットでダウが千円安するとしたら、もうそれだけでがらっと変わってしまう。  そうしますと、当然お客様の投資資金とか投資経験とか、そういうものをベースにして、当然のことながら、関副会長がいらしていますけれども日本証券業協会の配分ルールというのがございまして、個人ですと、一人原則として株式は一万株とか転換社債は二千万とか、そういうルールがございまして、そのルールを守って配分をしているというような状況でございます。ここのところは本当に御理解を賜りたい。よろしくどうぞ。
  86. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、一般論や商品の説明をお伺いしているのではなくて、バブルの当時はまさに皆さん転換社債を欲しがったわけです。店頭に行って買えるなんて話ではなかったわけなんです。そういうときに、四年間にわたり十五銘柄五千四百万円という割り当てを受けるということがどうして通常取引なんですかということをお聞きしているわけなんです。
  87. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 言われているこのお客様についての判断でございますが、私どもは、他のお客様と変わることのない通常取引の範囲で行われている、そういうふうに認識しておるというふうに報告を受けております。
  88. 荒木清寛

    荒木清寛君 そういう報告があったかもしれませんけれども専門家、最高責任者としてそれで本当に納得をされましたでしょうか。  それでは、当時、この外務官僚と同じように、数年間で何千万円という新発の転換社債の割り当てを受ける、あるいはこの方は八八年の十月に限って言いますと、一カ月で五銘柄二千七百万円の新発社債の割り当てを受けているわけなんですね。こういうお客さん、個人のお客さんに限ってでいいですけれども、そんなお客さんは、当時、各支店にいっぱいいらっしゃったんですか。それが普通だったんですか。買おうと思えば数年間で何千万円という転換社債はだれでも割り当ててもらえるという話であったんですか。違うんではないですか。
  89. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  世界じゅうの店並びに国内の店、また東京を中心とする法人さん等、いろいろなお客様、全部で五百万人のお客様がいるんですけれども、その中で今、残高がないお客様もいらっしゃいますけれども、手前ども、五十年代の半ばに国債の大量発行というのがございまして、何としてでも日本国国債を国民のあらゆる全階層の皆さんにお買いいただこうと。これは、もう政治家でも役所の皆さんでも地方の皆さんでも国債のボンドホルダーになっていただこうということで大汗をかきまして、恐らく証券界全体では一千万人ぐらいの有価証券投資家の方ができたのではないかと思うんです。  そういう延長線上で、今度、その転換社債という商品、これは株式が活況になりますと発行がふえてまいりますので、そのときそのときによって売れ行きのいいとき、それから本当に悪いとき、いろいろございますけれども、そのときそのときに応じて全国公平公正に分配をしてもらいたいということでやってきておるつもりでございます。ここのところは何とぞ御理解賜りますように。
  90. 荒木清寛

    荒木清寛君 それは理解できないんですね。  ちなみに、八八年六月十九日の新聞で、新発の転換社債が買えないと。新聞記者が信託銀行の転換社債をいろんな支店に買いに行ったそうなんです。野村証券札幌支店に行って欲しいと言いましたら、長くお取引いただいている方に何とか回せるかどうか、新規ではまず無理ですねと。あるいは別の証券会社の福岡支店では、どうしても欲しいというお客様には抱き合わせで投資信託などを一千万単位で買っていただければ転換社債を百万円ぐらいはと言って断られたと。  明らかにそういう状況から照らせば、この官僚に関して言えば特別扱いと言うべきじゃないんですか、違いますでしょうか。
  91. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  個人取引、今札幌支店の例が出ましたけれども、個人の個々のお取引に関しましては具体的に私わかっておらないんですけれども、お客様の投資経験であるとか資金量であるとか、それからやっぱり長いお取引をちょうだいしておるとか、いろんなことを考えた上で配分を行っておるということだと思います。リターンもあるかわりにリスクもあるという商品でございますので、そういうことは現場現場で総合的に考えているというのが実情でございます。
  92. 荒木清寛

    荒木清寛君 そうしますと、新発の転換社債について、野村証券に割り当てがあった場合、それを社内の各部門へどのように割り振るかということは、どういう合議体といいますか、どういう形で決定をするんですか。社長も当然その配分、社内の配分なんかには関与されるんではありませんか。
  93. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 私どもの、証券市場ございまして、これはもう先生方よく御存じの産業資金の調達の場、お金をここで調達しようと。今、ジャパニーズ・マネーを目指して世界じゅうからお客さんも来ていますけれども、外債なんかで外へ出ていっていますけれども、資金を調達する場、それから片方で国民投資家の皆さんや機関投資家の皆さんがお金を運用する場、これがマーケットでございまして、この中で仲介業者として、引き受け業者として仕事をさせていただいているわけですけれども、実際のところは、ラッシュになってきますと毎日何本もあるというような状況で、社長が一々個別のファイナンス並びにその配分とかいうことにかんでいるとかいうことは、もうほとんどの証券会社では全くない。社長は、新規開拓のために専ら外へ飛び出していっているというのが実情だと思います。  それで、こういうものに関しては大概、有価証券を仕入れる部隊と販売をする部隊と、そういうところでいろんな会合を持って、そして大体、売れないというものを仕入れても売れるわけございませんので、そうすると自己ポジションでもって大幅に損が出ますので、その辺はマーケットを見たり、金利を見たり、世界の情勢を見たり、トレンドを見たりしながら、日々ラインの者たちがやっているというのが実情でございます。  御質問の、私が一つ一つかんでとかということは本当に一件もないというのが実情でございます。
  94. 荒木清寛

    荒木清寛君 どの業界会社でも大切なお客さんという方はいらっしゃるわけでありまして、御社に関して言えば大切なお客様、あるいはもっと言えば損をさせられないお客様に対して、こういう新発のCBを優先的に割り当てるというようなことはしてきませんでしたか。
  95. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  公平公正に分配せよと専ら研修等も通じてそういう指導を行ってきたつもりでございます。
  96. 荒木清寛

    荒木清寛君 関副会長にお尋ねをいたします。  冒頭、日本証券業協会自主規制機関として法律で位置づけられたというお話でありましたが、残念ながらこの野村不祥事については機能しなかったと言われても仕方がないんではないかと思います。昨年の七月以降、証券取引等監視委員会調査が始まり、また九月以降は一般紙でも報道があったわけでありますが、その後協会として野村証券に対して監査をされましたでしょうか。されていないとすれば、なぜされなかったのでしょうか。
  97. 関要

    参考人関要君) 先ほど申し上げましたとおり、証券協会自主規制一つの柱といたしまして監査という機能を持っておるのは先生御承知のとおりでございます。  この監査のやり方でございますけれども、現在、法令遵守状況チェックする、それからもう一つ先ほどから申し上げているように、内部管理体制が十分作動しておるかどうかというところを中心に監査をしておりますが、すべての証券会社を今の計画では三年に一回一巡するというやり方でやっております。  野村証券は昨年の夏にちょうど定時監査をやったところであります。そのときもそういう観点から監査をいたしましたけれども、そのときにはこういった実態は発見されていないということであります。  ただ、監査といいましても人員と期間が限られておりますので、野村証券のように非常に大きな業務をやっている会社の全部をチェックするということは無理でありまして、ある程度重点的にやらざるを得ない。また既に、経緯がきょうも何度も議論になっておりますが、監視委員会が相当の時間をかけて調査され、それから野村証券もわざわざ特別なチームをつくって念には念を入れて調査してやっとこういった問題が浮上してきたと、こういう性格のものでありますから、残念ながら私どもの監査ではチェックできなかった、こういうことだと思います。  その点についてはぜひ御理解をいただきたいわけでありますが、私どもはこういった事態につきましては、一つの教訓といたしまして今後の監査体制見直しということにも取り組んでみたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  98. 荒木清寛

    荒木清寛君 この総会屋は他の三大証券にも口座を持っていると報道されているわけですから、この際もう徹底的にうみを出す意味でそちらの方面の監査もすべきではないんでしょうか。
  99. 関要

    参考人関要君) この点につきましても、今他の三社は、監視委員会でございますけれども監視委員会調査というのも行われているというふうに承知しております。そういった事実解明状況も見守りながら必要に応じ適切に対処していきたいと考えております。
  100. 荒木清寛

    荒木清寛君 最後に神田先生に、今回の一任勘定取引が問題にされているわけですが、一方で規制緩和の一環としてラップ口座の導入を認めるべきではないかという話もあるわけですが、この点につきまして先生はどういう御意見を持っていらっしゃいますか、簡単にお願いします。
  101. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) 私は、ラップ口座の導入というのは新しい商品国民に提供することを可能にするということで、そういう方向で検討すべきであるというふうに考えております。
  102. 荒木清寛

    荒木清寛君 ありがとうございました。
  103. 山本正和

    ○山本正和君 社会民主党の山本でございます。  大変御苦労さまでございますが、もうしばらくお願いしたいと思います。  初めに、神田先生にお伺いしたいのでありますが、実はこれはリクルート以来、株というのはだれか力のある人がいれば幾らでももうけさせてくれるんだ、こんなような印象が国民の間にずっとあったわけですね。その当時から予算委員会でいろいろな議論もしてまいりまして、これはもう法律の改正を抜本的にやらざるを得ない、こういうことを言いましたし、それから国際金融の関係からいってもこんな状況でいいのかと議論してきたんです。  若干直ってきましたけれども神田先生、現在の日本の仕組み、構造上の株というか証券取引の問題についての最大の欠陥はどういうふうにお考えになっているか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  104. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) 御指摘の問題は大変難しい問題だと思います。私は、仕組みだけの問題というよりも、先ほどからほかの先生方も御指摘ありましたけれども、仕組みを動かしていく上での風土にかかわるような問題もかなり大きいのではないかと思います。  そういう意味では、現在よりももっと厳しい仕組みを仕組みとして今回の事件をきっかけとして設けるべきだというふうに考えております。そういう意味で、仕組みとそれを動かしていくところとの関係の問題が日本にとっては一番大きい問題ではないか、ちょっと抽象的でございますが、と考えております。
  105. 山本正和

    ○山本正和君 例えば、証券取引監視委員会が今度できました。それについての権限を与えられたわけですけれども、アメリカと比べた場合かなり大きな違いがあると思うんですが、その違いについて先生はどういうふうにお考えですか。
  106. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) いろいろ違いがありますけれども、一番大きな違いは、先ほどもちょっと出ましたが、組織の大きさというものが圧倒的にアメリカのSECと呼ばれているところに比べて小さいわけです。したがいまして、全証券会社についてある程度定期的な、あるいはいろいろな調査をするということは人数的にもほとんど不可能と言っていい状態であります。したがいまして、これを改善する必要があると思います。  もう一点、ついででよろしゅうございますでしょうか。事前チェックということについても、やはり今回のようなことを見ていますと機能不全と言わざるを得ないと思いますので、改善すべきではないかというふうに私は思います。  例えば、その会社の中の内部監視体制の核となる地位に立つ者として、例えば法曹資格、そういうものを有する人を法律上あるいは法律でなくてもいいかもしれませんが、自主規制ルールとして義務づけるとか、あるいは経理の仕組みを変えて、今回のようなことはもうちょっと日ごろ会計的な中で自然に出てくるというようなシステムにして公認会計士監査等でもそういうことがわかるようにするとか、そういった事前努力というのも日本は仕組みの上では諸外国と比べますとまだ不十分だと思いますので、その点もぜひ改善をお考えいただければと思います。
  107. 山本正和

    ○山本正和君 次に、関参考人にお伺いしたいんですが、証券協会、これは公益法人としてでき上がって大分たったわけですけれども、また証券業界も昭和四十八年からいろんな問題に何とかやっていこうということで取り組んでこられた。ところが、日本国民金融資産、千二百兆とか言われていますけれども、それが株に行っているシェアというのはアメリカやヨーロッパと比べて今多いと思いますか、少ないと思いますか。現在何%か、ちょっとアメリカとだけ比較してもらって、言ってください。
  108. 関要

    参考人関要君) 先生御指摘のとおりでございまして、日本の個人金融資産のうちの株式に回っているのは約六%程度だと思います。この数字がアメリカでは十何%に行っているはずであります。  それからまた、アメリカは最近、先生御承知のように株式市況が非常に好調でございますので、株式投資、それから株式に投資をする投資信託、そういったものを入れるともっと大きな数字になっているのだろうと思うんです。  実は、今冒頭申し上げましたように、市場改革努力というのを政府の方でも私ども業界の方でも一生懸命やっておるわけでありますが、どうして国民金融資産が、しかもこういう低金利の時代に株式投資に回ってこないんだろうかと、これが基本的な課題でございまして、それにつきましては証券会社業務をもう少し自由にしていただくとか証券税制改善をお願いするとか、そういった面もございます。  それから、いろいろな商品開発ということについてもいろいろな努力を重ねなきゃならないと思いますが、ただ私、冒頭申し上げましたように、証券会社あるいは証券市場に対する信頼というものがないとなかなか、どんなことをやりましても、そこが基本でございますので、そこは非常に大事な課題になっている。その点についてこれからも大いに努力をしていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  109. 山本正和

    ○山本正和君 今、景気が悪いとか緩やかな回復とかいろいろ言っていますが、正直言って、もし今の個人の金融資産が仮にアメリカ並みになったら、これはもう大変な転換をするわけだと私は思うんです、企業活性化しますしね。  という意味で、これは野村証券というのは、単に日本野村というよりも世界野村と言われている大きな会社なんですね。その会社がこういうことをやったということについて、これは日本経済全体に対する問題、それからまた国際社会に与える影響、そういう観点から、トップの場にある者として、酒巻参考人、どういうふうにお考えになっているのか、ちょっとその辺のことをお伺いしたいんです。
  110. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  この五年来、日本金融資本市場は欧米の市場に対しましてずるずると後退を余儀なくされている。それは新たに発行される株式の発行、社債の発行、それから投資家の参加のぐあい、それからベンチャーキャピタルがどれくらい新しくマーケットを生み出して公開されるか、こういうものが半分になり三分の一になり、昨今では物によっては十分の一と。これではいけない。一方、内なだから外洋へ出て広い世界仕事をしていかなきゃいかぬ。先ほどいろいろな先生からも、方々からもお話ありましたけれども、そういう状況の中で、何といいましても株主様に対して、それから投資家皆様に対してあってはならないことを起こした。もうこれは幾らおわびしてもおわびのしようもないというところでございます。  マーケットというのは問題が起きるんだというようなことがよく言われますけれども、起こしてはとにかくならない、しかし起きてしまったらどうだと。これはもう、すぐ監視委員会等に報告をしなければならないということと、やはり監視委員会捜査等に妨げにならない範囲で手前どもは内外の株主様にお知らせしなきゃいかぬという気持ちでやってきた。いいニュースも悪いニュースも、株主様にもお客様にも投資家にも、そして当局にもお知らせしなきゃいかぬ、それが証券会社、大蔵大臣から免許をいただいている証券会社の務めであると、こんなふうに考えてやってまいりました。
  111. 山本正和

    ○山本正和君 先ほどからVIPの問題も出てまいりましたし、衆議院でも私どもの方から保坂君が質問をしたりいたしました。  要するに、どう扱われているとかいうことよりも、一般投資家にとって、こんなばかなことがあるかという印象を受けるわけです。それは証券会社がもうけさせてあげますよということの裁量権を持っていると。一般投資家にはそういうことはないけれども、そうじゃない人に対しては裁量権を持って、裁量を持ってもうけさせることができる仕組みになっていると。こうなれば私は一般投資家が株を買わないのは当たり前だと思う。あるいは、年金生活者も相当な金融資産があるわけです。こんなに安い金利の中で、少しでもと思えば、例えば株主にしても、株式のあれを見ながら自分の退職金を運用してというようなことも考える人もおるんです。それはまた経済活性化に私はつながると思うんです、いろんな関心がふえるわけですから。  ところが、そういうものを閉ざしたということについて、これは野村証券がまず先頭を切って、申しわけありませんと、したがってこれからこういたしますと具体的に一般投資家の前に約束をしていただかなきゃいけない問題が幾つかあろうと思うんです。例えば、こんなことを言ったらおかしいですけれども野村証券は今後一切こういうことはいたしませんと、もしあったら会社を解散いたしますというぐらいの宣言をするとか何かしてもらわぬと、そこまで腹を決めたのかというなら、またもう一遍、じゃ我々も株を買おうかと、こうなるかもしれない。そこのところの責任の問題がどうもわかりにくいわけです。  だから、野村という名前は日本経済そのものと言ってもいいような要素を持っているんですよ。経済研究の問題でも国際経済の分析でも大変な力を持っておられる。その天下の野村が、絶対いたしませんと、もしこういうことが再発したら会社を解散しますというぐらいの宣言を取締役会でまずやる。そういうことをしてもらわぬことにはこれは国民がおさまらぬ。国民だけじゃなしに国際的に私はもたぬと思うんです、正直言って、経済というものに対する信頼が。その辺のお考えはどうですか。
  112. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  先生おっしゃいますように、日本経済並びに国際金融世界に対しても、このようなことが起きて信頼を損ねまして本当に申しわけございませんでした。  私は、九三年の十月一日に全国紙に、「私たちの決意」ということで、社会に対する責任とりわけマーケットに対する責任を果たしたいというような文章を載せまして、さっき退路を絶ってということで申し上げましたけれども、本当に証券市場を大きくしたい、その一念でやってまいりました。  しかし、こういうことが起きまして、今回、合同捜査等々の判断、結論も待ちまして、野村証券としてはどういう形で国民皆様投資家皆様に応対すればいいのか、決意表明をすればいいのか、おわびをすればいいのか、今機会あるごとにおわびの行脚とかそういうものはやっておりますけれども、そういう形でない形のあるものできちつとせよと、それが道筋ではないかという先生のお言葉でございましたので、よく拳々服膺しまして、また新執行部等にも伝えるようにいたしたいと思っております。
  113. 山本正和

    ○山本正和君 終わります。
  114. 藁科滿治

    藁科滿治君 私は、民主党・新緑風会の藁科でございます。よろしくお願いいたします。  最初に、酒巻参考人にお尋ねをいたします。  野村証券といえば証券会社のまさにしにせでありまして、まさに正横綱と言っていいと思うんですね。その正横綱がルール違反の荒わざをやった。今度の事件はそういったような様相を見せていると思うんです。内外の投資家を裏切ったという点も再三論議されておりますけれども、そればかりではなく、せっかくの景気回復の動向に水をかけかねないということを非常に心配しております。したがって、ぜひ一日も早く再建の道筋を明らかにしていただきたい、このように思っているわけでございます。  私が特に問題にしたいのは、九一年にああいった事件を起こしてまだ五、六年を経たばかりですね。あの当時も業界改革をめぐって大騒ぎをいたしました。しかし、改めてこういう事件が出てきたということはまことに残念。しかも、その翌々年にこの違法の取引が始まっている。こういう点は、ただこういう繰り返し繰り返しで、改革やります、管理体制の不備ですという言葉だけではなかなか国民投資家の面からは納得できない、これで安心かなという信頼を持てない、率直にそういう感じを否定できません。  そこで、参考人は衆議院の大蔵委員会質疑の中で、おかしなことは上へ上がるカルチャーがあると思っていたとおっしゃっておられましたね。これは経営の首脳としてはいささか私は残念な発言だと思うんです、外部の方が言うならともかく。やっぱり九一年の事件の深刻さというものが本当に認識されていないんではないかということを指摘せざるを得ないと思うんです。  そこで、私は二つのことを意見として申し上げてお考えを承りたいんですが、一つは、確かに管理体制の不備、これをしっかり組み立てるためには組織の改革が必要だと思います。それからもう一つは、今度の事件質疑を聞けば聞くほど社内全体の問題意識の問題、意識改革の問題ですよ。これをもっとしっかりやらないと、この問題は管理体制だけ固めてもなかなか明るい道は開けないではないかと思います。  私は、特にこの教育の問題については、管理者教育を徹底する必要があるという意見を申し上げながら、ちょっと見解を承りたいと思っております。
  115. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  法令等につきましては、先生おっしゃいますように、これは証券会社として免許をいただいてやっている以上、当然のことながら絶対に遵守しなければならないというものであると考えております。特に証券取引法というのは、国民の財産でございますマーケットの公正性を確保する、それを主眼とする法律でございますので、マーケット仕事をする者はとにかくこの神聖かつ公正なマーケットを汚すなんということはもう絶対にあってはならない。その中で今回のような問題を引き起こしまして、本当に、本当に申しわけなく思っている次第でございます。  今、先生御指摘のこの前の不祥事の後すぐまたいろいろ起きているではないかという御指摘もそのとおりでございまして、あのときも、反省をもとにしまして営業あり方とか管理体制あり方とか組織の見直しとか、結構、野村証券の金太郎あめとかノルマ証券とかいろいろ言われておりましたものを、一遍カルチャーを逆に振ってみようというようなことまで思い切ってやりました。カルチャーを逆に振れば相当収益も下がる、それは覚悟してやろうということでやってまいりましたけれども、しかし徹底しなかった、できなかった。このことは、もう体制はつくってもだめだと、魂が入っていなかったということだろうと思います。  したがいまして、今お話の中にありました教育、研修を通じて役職員の意識改革というのを徹底的にやりまして、何とか野村をテークオフさせられれば、またそれが日本経済のお役に立っていくと。そういうことで一から出直し、一歩踏み出してやらせていただきたいというふうに念じている次第でございます。
  116. 藁科滿治

    藁科滿治君 あわせて関参考人にお尋ねをいたしますけれども、既に触れましたように九一年の不祥事件、これは業界全体としても大変大きな問題になって、それでそれなりの改革をやったというふうに我々は伺っておったわけです。しかし、今回こういう事件に遭遇すると、これはひとり野村だけの問題ではないと思うんですね。業界全体の連帯責任だと思うんです。  そういう意味で、先ほど御答弁の中で管理体制の不備ということをおっしゃっておりました。今、私、酒巻参考人にもお尋ねしましたように、やはり問題意識が業界全体として甘いのじゃないかということを痛感するんですが、その点についてのお考えと、それから、これは業界全体の問題という意味では、今挙がっているような事例が他にないと明言できますか。その二つをちょっとお尋ねいたします。
  117. 関要

    参考人関要君) 私、冒頭に申し上げましたし、また先生も今引用いただきましたように、私ども平成三年度に表面化した証券不祥事以降、業界改革ということに全力を挙げてまいりましたし、また業界全体として見ますと、業界改革努力も、少しずつではあるかと思います、また百点満点になったかと言われると必ずしもそう言い切る自信もないわけでありますけれども、相当の成果を上げてきたんではないか、こういうふうに思っているわけであります。  しかし、協会としては、法令等の取引ルールを厳格に遵守するという基本的な心構えといいますか、そういったものを完全に業界内に徹底させるためにはなお引き続き努力を続けることが必要だと、そこを協会のことしの重要な課題として位置づけたということも申し上げたわけであります。また、そういう基本を完全に徹底させるためには、先生御指摘のように内部管理体制協会の規則で基本を定めまして各社においてそれぞれその定着を図っていただいているわけでありますが、それをさらに定着させる、実を上げるように持つていくということが重要な課題だろうと思っております。  今回の事件が連帯責任というふうに先生申されましたけれども、今回の問題はあくまで野村証券に発生した個別の事案だろうと思います。各社において、協会の規則ではっきり禁止をされております損失補てんとかあるいは一任勘定とか、こういったものがあるということでは絶対にいけないんではないかというふうに思っております。しかし、そういった問題が発生した場合には、自主規制機関として野村証券について申し上げましたと同様に適正に対処していきたい、こういうふうに考えております。
  118. 藁科滿治

    藁科滿治君 最後に、時間がありませんけれども神田先生に簡潔にお答えいただければというふうに思っております。  今回の一連の不祥事に対する業界の対応、これは業界の命運を決するほどに重要な意味を持っていると同時に、日本経済の基盤に対する信頼を左右するというような重要な意味を持っているのではないかと私は思いますけれども、先生の明快な御意見を承りたいと思います。
  119. 神田秀樹

    参考人神田秀樹君) 私も先生の御指摘と同じ認識を持っております。業界からむしろ具体的にどこを変えるのかという提案が出てくることを期待しております。
  120. 藁科滿治

    藁科滿治君 先生の冒頭の三つの問題提起を伺いまして、私も拝聴しながら、我々もぜひ参考にしていかなきゃいかぬということを改めて認識いたしました。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  121. 有働正治

    ○有働正治君 日本共産党の有働でございます。  きょうはありがとうございます。限られた時間でございますので、酒巻参考人に端的にお答えいただければ助かるということで質問させていただきます。  私、ここに登記簿の控えを持っていますけれども、それによりますと、武士二郎常務と元総会屋は都内大田区内で地下一階地上十四階建てマンション、パークハウス多摩川北三番館にそれぞれ部屋を有しておられるようであります。この事実は確認されておられるかどうか、御社として。また、酒巻参考人として。  二つ目は、購入年月日はお二人とも平成三年、九一年三月十六日、ともに同じ日でございます。この事実を把握されておられるかどうか。不自然とは思いませんか。
  122. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 簡潔に。
  123. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  本人に住宅、マンションを購入したときのことは私直接聞きました。
  124. 有働正治

    ○有働正治君 私の質問に答えてください。
  125. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 聞きまして、前の家を売って足らないところはローンを組んで買ったと、こういうふうな報告を受けました。  それから、今二番目に先生がおっしゃいました同じ日というところは、そういう確認はしておりませんけれども、普通、マンションというのは大体何月何日という、お買いになった方は全部同じ日になるんではないかなと思いますけれども、ここは定かでございません。申しわけございません。
  126. 有働正治

    ○有働正治君 つまり、元総会屋と武士二郎常務が同じマンション、つまり元総会屋もそこに住んでいる、そこに部屋を持っていることも確認しておられるんですね、二人おられることを。
  127. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 結果たまたま同じマンションであったと。百軒か二百軒かは存じませんけれども、そういうことだったのではないかなと思います。
  128. 有働正治

    ○有働正治君 元総会屋と武士常務とのかかわりについて見ますと、元総会屋が野村の三十万株を本店第一企業部で親族企業名で開設するのが八九年、平成元年であります。武士氏は、取締役になるや九〇年六月から一年間本店第一企業部担当であります。三十万株の大口の件を知らないはずはないと考えるわけであります。  そして、元総会屋が今度は法人名で三十万株の口座を開設するのが九三年、平成五年三月、本店第一企業部である。このとき武士氏はまさに第一企業部の担当の真つただ中であるわけであります。九二年六月から九四年六月までこの部門の担当役であります。報告がないはずはないと考えるのが常識でありますが、こうした点も本人にきちっと確かめておられますかどうか。
  129. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 私ども社内調査、部下に命じて調べさせて確認して私が聞いたわけでございますけれども、武士常務は企業部の担当役員でございまして、法人さんがお取引をするときは自分は承知しておったというふうに言っておりました。  ただ、先生が今おっしゃいました三十万株云々いうのは私も存じませんでしたし、武士にはそのこと自体聞いておりませんけれども、ここのところはわかりませんが、恐らく知らないんじゃないかなと。まあ三千件ぐらいの新規公開企業を担当して、一日じゅう外を飛び回っているという男でございますので、そのように思います。はっきりしておりません。
  130. 有働正治

    ○有働正治君 私の質問に憶測で答えないでください。確かめていないということははっきりしました。  それから、元総会屋のマンション購入のいきさつを登記簿で見ますと普通でないことが一目瞭然であります。抵当権設定を見ますと、平成三年、九一年三月十五日、その原因はノンバンクの大和信用、これは第一勧銀と役員派遣などで深いかかわりがあるノンバンクと私は承知していますが、その大和信用から四億四千万円借りています。ところが、所有権がこの元総会屋に移ったのは、借金の後、翌日の三月十六日であります。通常は所有権が確定して、保存登記してから抵当権設定になるのが普通だと私は考えるわけでありますが、元総会屋の場合は逆であります。つまり、総会屋のマンション購入をめぐっては信用取引と考えるわけでありまして、何らかの特別のことがないと成り立たぬことが考えられるわけであります。  そこでお尋ねします。本件に、野村側は武士氏を含め、直接間接の何らかの関与はなかったと断言できるのかどうか、この点お調べになっておられるかどうか。  二つには、大和信用からの元総会屋の借入金四億四千万円もその後の野村側からの利益供与の重要な要因になっている疑惑が考えられるわけであります。つまり、それだけの借金をしているからこそ、そういう背景があって、総会屋がもうけさせてほしいと要望し、そして野村側がそれにこたえていったと、こういうかかわりがある可能性も考えられるわけであります。  したがって、マンション購入というのは金銭的にも大きいわけで、今回の事件の上でもそれなりの位置を占めるのではないかと私は考えて質問しているわけでありますが、これらについて武士氏を含めましてきっちり調査されて報告を受けられているのか。やられでなければ少なくとも調査する必要があると考えるわけでありますが、いかがでございますか。
  131. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  マンションにつきましては何も調べておりません。また、マンションについて当社の役員が関与しているとか、そういうことは聞いておりませんけれども、そのようなことは全くないだろうというふうに思っております。  マンションについてはちょっとコメントをする立場にないというのが実情でございまして、私ども証券取引に関しましてはいろいろ調べましたし、それから一回一回お取引が終わると送金が行われている、きちっとした一流銀行とのデリバリーがついておるということで、そこのところはきちっとしておるなという把握をしておりますけれども、マンションについてのお金のデリバリーとか背景とかいうのは私は全くわかりません。
  132. 有働正治

    ○有働正治君 調べていないということであります。これがその後の利益供与、つまり本人が購入したのであればそれだけ借金もしていると。そういう点でもうけさせていただきたいということから始まったということを大蔵委員会でもお答えになっているわけですから、調べて、後刻報告願いたいと思うのでありますが、私に。国民の疑問です。
  133. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) その辺のところは調べてみますけれども、恐らくマンションと証券取引のところには何か関係らしいものがあるとは思っておりませんので、一応は……
  134. 有働正治

    ○有働正治君 それは調べてみないとわからない。
  135. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 聞いてみますが、ただその辺も含めて今監視委員会等で合同捜査が進んでいるというふうに思っておりますので、そちらにおゆだねしてお調べいただいたらいいというのが今の私の気持ちでございます。
  136. 有働正治

    ○有働正治君 捜査当局等がやるのは当然でありますが、社内でしかるべき調査をするのは当然のことだと私は考えるわけであります。  VIP口座をめぐって一、二お尋ねします。  外務官僚がかつてのVIP口座の中にあったということは指摘されているわけでありますが、大蔵官僚、そのOBが含まれていると指摘されているわけですが、この点どうなのか。政治家が含まれていると指摘されているけれども、この点どうなのか。そして、野村証券の実態を十分承知している人の話では、元総会屋とのかかわりのように、相手にもうけさせる特別に扱っているVIPの中のVIPの人数は百人ほどだと指摘されていますが、この点どうなのか、まとめてお答えいただきたいと思います。
  137. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えいたします。  VIPにつきましては、先週詳しく御報告申し上げ、きょうも簡単に御報告をいたしましたけれども、これは符号でございまして、大勢のお客様の中には当然、さっき国債の話をいたしましたけれども、国債なんというのは売れないのを二年、三年、四年、六年とか割引国債とか、またさらに売れないので特別マル優という……
  138. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 簡潔に答弁してください。
  139. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 税制上の恩典までつけて買っていただきましたので、国民各階層のお客様が入っているということは先生に申し上げておきたいというふうに思います。  VIPの中のVIP口座なんというものは私は全くないというふうに確信しております。
  140. 有働正治

    ○有働正治君 終わります。ありがとうございました。
  141. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私から二、三酒巻参考人にお尋ねしたいと思います。  今回の問題が明るみになりましてから野村証券は一貫して会社ぐるみではないという言葉を使っておられます。この言葉は法律的に大変おかしいと思います。末端の社員にはあらずして常務取締役という地位は限りなく重いと考えていいと思います。大幅な権限の委譲もされておる、この人たちが部下を使って計画を実行した、世間はこれを明らかに会社ぐるみと言うんだろうと思います。  たまたま社長さんは何か出張その他で忙しくてこういう重大なことを知らなかったとおっしゃいますが、こういう重大なことを知らないということは監督責任が問われる問題でありますよ、明らかに。それよりも何よりも、こういう大事なこと、野村証券の浮沈にもかかわるようなことを平気の平左で実行するような人たちを常務に選任したのはだれだと、こういうことになりますれば、選任、監督の責任は免れがたい。  株主代表訴訟があなたに対して起こされれば、あなたはとても対抗できませんよ。明らかに敗訴いたすことは間違いありません。こういうのは法律的に見て会社ぐるみというわけであって、あなた方が会社ぐるみではないと言っているのは法的な責任が上層部に及ばないと考えて言っておられるんだろうと思いますが、そう理解してよろしいですか。
  142. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答え申し上げます。  法律のところは疎くて、先生にきちっとお答えできるかどうか自信ないんですけれども……
  143. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 簡単でいいですよ。
  144. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) はい。  社内調査で二人の常務が関与していたということは事実でございますので、ここのところと、それから私の経営責任、監督責任というのはまさに我にあり、これははっきりしているということ。それから、こういう具体的な商いの領域というのは、ボードメンバーの中でもその衝その衝にある者が携わっておりますので、会社ぐるみとかいろんな話がありますけれども、この二人以外の者はかかわっていないという報告を受けましたので、そういう話をしておったわけでございます。  お答えになっていなくて申しわけございません。
  145. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 明確なお答えにはなっていないようで、これから野村証券とすれば会社ぐるみでないという言葉は使わないようにした方がよろしいと思いますよ。あえて助言しておきます。  それから、先ほど質問を聞いておりまして大変気になったことがあるんですけれども、二人の常務がなぜこういう大それたことをしたのか、こういうことになりましたらお答えは、一人の常務が何かうまい口ないか、うん、あるあると、こういうことで簡単に話が始まつちゃったと。これは今も言いましたが、野村証券の浮沈にもかかわる、しかもやった当人たちは後ろに手が回るような問題ですよ、これは。そういうことにいかなる悩みもなしに、普通ならばやろうかやるまいか本当に悩んで、上司にもちゃんと相談して、会社のためにやっていいんでしょうかと、こうなるのが普通ですけれども、あの二人の常務はごくごく簡単にやろうやろう、こういうことで始まったというのは、勘ぐってみますると絶対にこれはばれない、やろうやろうということで始まった。それとしか思えない。人間らしい悩みは全然この話に出てこないんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。これまた簡単で結構です。
  146. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) 頼んだ方は、法令違反まで犯してやってくれというようなことではなくて、マーケットの中でいい情報があったら、少し利益が出るといいなというようなことで言ったようでございまして、そこのところのわきの甘さというところはもう御指摘のとおりで、大変申しわけございません。
  147. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 任務に背きましてやるべきでないことをやって、不正目的のために会社の金を支出するというのは、これは単に商法違反とか証取法違反ではなくて、刑法上の背任罪を構成するわけであります。現在、東京地検捜査中と聞きましたけれども会社の姿勢をきちっと示すためにも顧問弁護士と相談して背任罪で二人の常務を当然告訴すべきだと思います。今からでも遅くはありません。  それからもう一つは、株主代表訴訟が起こされましたら、あなたを含めまして上層部あるいは二人の常務は当然対抗できませんけれども、それはおいておきまして、二人の常務に対して故意または過失によって不正行為を行って会社に損害を与えたということで損害賠償の訴訟も提起することを考えられたらどうでしょうか。その中にはあなたも当然入るわけでございますけれども、これは仕方がありません。会社としてそれぐらいの毅然たる態度を示して国民全体にわびるというぐらいのことを私は考えてよろしかろうと思います。野村証券には大変有能な顧問弁護士が何十人もおると聞いておりますから、どうか至急に相談してそういう対応を試みられたらいかがか、こういうふうに提案しておきます。
  148. 酒巻英雄

    参考人酒巻英雄君) お答えさせていただきます。  私、週刊朝日というのは四十年ぐらい読み続けている本なんですけれども、先回先生が野村のこのぎまは何だということできちっと整理していろいろお書きになっておられて、その中で重要なポイントが三つぐらいございました。きょうも大変大事なポイントの御質問があり、御指摘がございますので、証券取引等監視委員会東京地検との合同捜査というのを待っていろいろ対処をしたいというふうに考えてまいりましたけれども、今先生がおっしゃいましたような私どものリーガルな対応というのもきちっとやってまいらなきゃいかぬなというふうに思っております。  それから、余計なことのようですけれども、先生がこの間お書きになっていたうち、証券取引法第一条、投資者保護と公正の取引、これがきちっとおなかへ入っているのか、おなかへ入っていないようでは証券会社の資格がないというところは、本当に申しわけない気持ちで胸にこたえました。
  149. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私の雑文をお読みいただいて大変ありがとうございました。お礼を申し上げます。  以上でございます。
  150. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  本日は長時間にわたり御出席をいただいてありがとうございます。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  151. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査のうち、動力炉・核燃料開発事業団の事故問題に関する件を議題といたします。  午後は、本件について参考人方々から御意見を求めることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  当委員会におきましては、ただいま予算執行状況に関する調査を進めておりますけれども、特に今般の動力炉・核燃料開発事業団の事故問題について参考人の皆さんから御意見を承りたいと思ってお越し願った次第でございます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、近藤参考人から十分程度御意見をお述べいただき、その後で委員質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、近藤参考人にお願いいたします。近藤参考人
  152. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 動力炉・核燃料開発事業団事長近藤でございます。  このたびのアスファルト固化施設の火災爆発を初めとする一連の事故、事故後の対応の不手際、さらには法令報告での虚偽の記載について科学技術庁より告発を受けるといった不名誉な事態を引き起こし、先生方を初め地元並びに国民皆様に大変な御不安と御迷惑をおかけし、心から深くおわび申し上げます。  一連の不始末は、我が国の原子力政策に対する信頼をも揺るがすものであり、核燃料サイクルに係る研究開発の中核機関である動燃事業団の責任者として、この事態を極めて重く受けとめております。  まず、東海事業所のアスファルト固化施設における火災爆発事故について申し上げますと、ごく微量とはいえ、多くの従業員が体内に放射性物質を吸入し、また施設外に放射性物質が放出されたことは極めて重大な事故と受けとめております。  特に、事故後の対応につきましては、国への法令報告の中で、十時二十二分ごろに目視により消火していると判断したという記述は、管理職までが関与した虚偽の報告であったことが明らかとなり、規制当局から告発を受けるというまことに不名誉な事態となりました。事業団としては、事実関係が明らかになった時点で速やかに公表した次第でございます。今後の捜査当局調査に対しては誠心誠意対応してまいる所存でございます。  アスファルト固化施設の現在の状況でございますが、建屋の窓等の密閉作業を終了し、仮設の換気設備の設置を行い、環境への新たな放射能物質の放出がないような措置を講じております。  事故の原因究明、再発防止対策につきましては、役員を班長とする専従班を設置し、徹底した原因究明に当たっているところであり、国の事故調査委員会に対しても積極的に協力させていただいているところでございます。  次に、「ふげん」発電所の問題について申し上げます。  四月十四日、「ふげん」発電所の重水精製装置から重水が漏れ、トリチウムが微量ですが放出され警報が発報いたしましたが、幹部職員の判断ミスにより当局への通報が大幅におくれ、重ねて国民皆様の不信を増大させることとなりました。このため、四月十五日には、内閣総理大臣の命令により「ふげん」発電所の運転を停止いたしました。現在、運転停止命令とともに指示のありました情報伝達体制改善を徹底すべく鋭意努力しているところでございます。  以上申し上げました一連の不祥事につきましては、関係した管理職を懲戒処分とするとともに、役員の運営管理責任についても問うこととし、所要の処分を行ったところでございます。  次に、「もんじゅ」事故の現状について申し上げます。  事故に係る原因究明調査は終了し、現在、事故の反省と教訓を踏まえ、改善策を含む徹底した安全総点検を進めているところでございます。なお、「もんじゅ」を含めた今後の高速増殖炉開発あり方につきましては、新たに設置されました高速増殖炉懇談会の場で幅広い議論が行われていますことは御高承のとおりでございます。  「もんじゅ」事故とその後の不適切な対応について広く社会の各般各層から厳しい御指導、御批判をいただき、私どももこれを真摯に受けとめ、失われた動燃の社会信頼の回復を目指し、各事業所での安全総点検、マニュアルの見直し及び情報公開総括者等の配置、一斉ファクスの整備等、徹底した安全確保と情報公開を基軸に、安全に徹する動燃、開かれた動燃、地元重視の動燃をつくるべく努力してまいりました。しかしながら、今回の事故とその後の対応については、その反省と教訓を十分に生かすことができませんでした。これは、動燃の意識の改革がまだ十分に末端まで浸透していなかったためと深く反省しているところであります。  とりわけ、たび重なる不祥事の根源として重要と私が考えておりますところは、技術者集団である動燃と社会一般の意識のギャップの大きさであります。この乖離をなくしていかなければならないと痛感している次第でございます。  一例を挙げますと、放射能の問題に対して社会一般は、レベルの問題ではなく環境へ放出したか否かを厳しく問われているのですが、動燃技術者は、基準レベル以下ならばよいのではないかという従来からしみついた体質から脱皮できずにおります。このような体質をぜひとも打破し、意識の改革を図ってまいります。  また、経営改革の具体的な検討の方向といたしましては、軽水炉サイクル関連技術のように、所期の目的を達したもの、または達成しつつある事業については、エンドユーザーである電力会社や民間企業との密接な調整協議を進め、人も技術も含めて円滑な技術移転を図るよう努力いたします。  一方、将来的にも必要不可欠な研究開発として、高速炉とその燃料サイクルの研究開発や放射性廃棄物の処分研究があります。これらの研究開発については、安全確保を大前提に今後一層の力を傾注してまいりたいと存じます。  これらの研究開発の進め方に当たっては、内外の研究機関との共同研究や協力関係を一層深め、外の風を積極的に取り入れることなどにより、開かれた組織として技術開発意識の変革と研究開発の効率化を進めてまいります。  以上に申し上げましたとおり、動燃の意識、経営、組織の抜本的な改革を進め、地元の方々を初め国民皆様に御理解をいただけるよう全力を傾注してまいる所存でございます。  本日は、予算委員会の諸先生方に事故にかかわる一連の経緯と今後の取り組みについての動燃事業団の考え方を御説明する機会をいただき、まことにありがとうございました。よろしく御指呼のほどお願い申し上げます。
  153. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  154. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 自民党の斎藤文夫でございます。  きょうは、動燃の近藤事長を初め参考人として御関係のお三方においでをいただきました。御心労のところだと思いますけれども、本当に国民に今の動燃の実態というものを浮き彫りにして、反省のみならず、もう解体的な改革をしなければだめだということを特に指摘させていただきたいと思います。  今、近藤事長からもお話がありましたが、例えば「もんじゅ」のナトリウムが一トン、この多量の漏えいは水や空気とぶつかったら大爆発を起こす危険があった。それを現場のビデオを国民に公開せず、虚偽の内容のものを発表しておった。また、「ふげん」は、ごく最近わかったところで、何と三年間にトリチウムを十一回も漏えいさせておった。なるほど基準値ははるかに下回るけれども、地方自治体との安全協定というような立場から当然報告をしなきゃいけない、また、あなたたちの親ともいうべき科技庁へは当然こういう内容も報告されなきゃいけないにもかかわらず、全く現場の科学者、技術者は反省の色を見せなかった。ましてや、異例中の異例でしょう、長官が動燃のだらしなさに「ふげん」の停止命令を出した途端に、これが急にとまってしまった。一体どこまで動燃は技術的にもおかしいのかということをつくづく思わざるを得ないのであります。  私も、先週、東海村をお訪ねして、一人で飛び込んでいろいろお聞きをして調査してきました。三月十一日の東海村のアスファルト固化処理施設における火災爆発、これはもう率直に言って人災。もう情けない思いをして私は帰ってきたところであります。国際事故基準の尺度から見てもレベル3、今までの「もんじゅ」や「ふげん」と比べて重大な爆発事故であるという認定をされざるを得ないところであります。  こういう不手際、状況は把握されていない。事情報告はしょっちゅう間違える。誤報、虚報、遅報。こんなことをしておったら、そうでなくても特に日本国民方々は、原子力といえばいろんな意味の思いやアレルギーがある。二十一世紀の本当にクリーンなエネルギーを確保するには、さらに一層原子力発電に期待をしなきゃならない。こういう状況の中で、今回の動燃の三点セットの一連の事故は、まさに原子力利用に対する大きな不信を買った、日本のあすの原子力利用について大きな影響をもたらした。  先ほど理事長がお述べになられたけれども、昨年の五月に御就任されて、なるほど三つの御方針を打ち出された。安全に徹する動燃、開かれた動燃、地元重視の動燃、この三つの理念で運営されておられたら、少なくともこういう事故はいろんな意味で未然に防げたし、起きた場合にはそれに適切に対応がなされたと思う。  今、理事長御自身も反省の念を込めて、動燃の組織だのあるいは社員の意識改革だの、至らなかったという点は十分反省をされておられるところでありますが、私たちは、あなたのこの方針がなぜ動燃の末端まで行き渡らなかったのか、どこにそういう原因があるのか、改めてお尋ねをしたいと思います。
  155. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 先ほども申し上げましたように、どうもこの根は深いところにあると思います。長年の間、法定レベル以下ならば許されるんじゃないかというふうな意識がずっと続いておりまして、この間から、事故の大小軽重を問わずすべて外に報告しろということをかねがね指示をしてきております。  それから最近は、それを出したことによって、あるいは誤報があった場合にも責任は問わない、一切外に出せということで指示をしてきておりますけれども、なかなか長年深く身についたものというのはとれずに現場でも悩んでいるというような状況でございます。ここが一番大きいところだと思います。  それから、技術開発集団としてやはり閉鎖的な側面を持っております。自分たちだけで何とか完結したい、自己完結型を非常に強く志向するところもございまして、そうでなくても世間からいわば隔離された庭で研究をしているというふうな状況でございますので、ある意味で非常に社会的な感覚、社会性が薄いところがございます。したがいまして、ここをしっかりたたき直していくということで今後やっていきたい、こう思っております。
  156. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 時間がありませんので、ちょっと早口で申し上げます。  まず、東海村についてでありますが、十時六分、アスファルト固化施設で操作室の作業員がドラム缶から炎が上がったのを確認した。そして、まず責任上、同じ建屋の二階にある操作室へ電話をして上司の指示を仰いだ。たまたま責任者が電話で話し中であった。それでもうやむなく、インターホンですけれども、動燃の責任者、処理第一課長が常駐している建屋が道路の一つ向こうを隔ててある、そこへ電話をして指示を仰いだ。課長は出張中で留守。したがって、そのときの電話に出た人が、担当役の指示を受けて、放水をして火を消せと指示した。こういう指示を受けて、そして鉛ガラスから中をそのときのぞいてみたら、最初一本、ニメ一夕ーぐらいの炎が上がっておったけれども、自分の見た限りでは全部に、十本以上にわっとニメーター以上の炎を吹き上げておった。慌てて、手動の放水がブロック別に直されておりまして、二つ、三つ手動で弁をあけた。そして、もちろん火災に対して水をかければじゃっと白い煙が出ますから、一瞬にして鉛ガラスの窓の中の部屋はもう煙で何にも見えなくなった。ただ、炎は消えたのかなというようなことで一分で放水をとめた。こういうことですね。そこへいくまでに六分間かかった。  火事というのは、一瞬にして、すぐその場でどう対応するか、それが一番重要なんです。しかも、一分間の放水で消えたと判断をしたりなんかするということは、それはもう非常に知識のない人のやることであります。  今のこのアスファルト固化処理施設は、ベルギーの技術を輸入して動燃はおつくりになられた。ところが、そのベルギーの本体で同じ火災事故を発生した。だから、たしか昭和五十七年ですか、ベルギーから技術屋を呼んで、一体こういうときにはどういう対応ができるのか、放水を五分しても不十分だ、八分放水をしたら消えましたと確認をしたんでしょう。技術屋ですよ。科学者ですよ。そういう人たちがその現場に立ち会って、八分かけなければ消えないと言ったのを、時間も指示しないで、あ、火だよ、火事になったよ、放水しなさい、まずこの指示が科学者としての極めて不適切な指示であったと思いますが、どうですか。
  157. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えいたします。  当該セルにおきまして火災が発生いたしましたときには、マニュアルに従いまして、その発見者が班長、班長がいない場合はその上席の者に了解を求め、水を噴霧することになっております。今回はたまたま班長がおりませんでしたので、班長代理にその旨話をし、最終的には主査を通じ担当役から指示を受けてこの消火に当たったわけでございます。  先生御指摘のように、一九八三年、私どもはベルギーの火災を参考にいたしまして実験をいたしております。その中の実験の成果として幾つかをこの施設に反映させておりますけれども、今御指摘のございました、五分すれば消える、八分間十分に水をかけるということについては、マニュアルにも記載されませんでしたし、そういう意味ではマニュアルが不十分な結果となっておるわけでございます。  また、職員がすぐそこに対応しなかったのかということに関しましては、この職員がおりました部屋は当該セルから少し離れておりまして、そういう意味で、いろいろ連絡を受けつつ、その動きを判断しつつ指示をじ、そしてその指示が終わるころには実はもうその建屋の中に入れなかった、早く退避させなければいけなかったというような事情もございまして、結果的には職員がそこの確認に行かなかったということでございます。  今後改良していきたいと思います。
  158. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 構造上に欠陥があったんじゃないんですか。  簡単に申し上げますと、まず第一に、指示を仰ぐべき動燃の五人の課長以下が常駐している建物が道路の一本隔てて向こうと。そこへ一々電話で指示を仰がなきゃいけない。あの固化施設の二階、三階に動燃の社員がいてもいいんじゃないですか。三井東圧の下請に任したから、あとはおまえら、よきに計らえ、我々動燃幹部は別なんだと。この基本的な認識が、別の建物をつくらせてそこに常駐をさせたんじゃないかというのが一点。  それから、本来、操作室は簡単に煙や放射能が入ってきちゃいけないところでしょう。にもかかわらず、一分水をかけた。当然、アスファルトがもう熱くなって火を噴いたわけでありますから、表面はじゅうっと水がかかったから消えたような格好になった。そして同時に、アスファルトに水をかけたら固まるんですよ。だから、ドラム缶の上ぶたが固まったようなものですから、じゃ中の火は消えたのかといえば、たった一分じゃ消えないのは皆さんよく御承知なんだから、それがやがては後ほど十時間たったときの爆発を引き起こす結果になったんじゃないんですか。  要するに、だから人災だ。しかも、操作室に煙が入ってきたり、ダクトが壊れたとはいいながらも放射能が漏れ込んでくる。例えばそれは、避難が三十二分とか何分に全員引き揚げが出ました。その間約二十六分ある。二十六分ある間に、操作室にいる人はマスクをしてももうとてもじゃない、のどが痛い、目が痛い、たまらなくなって引き揚げた。こういう格好なんですけれども、そういう建物そのものにも構造上、安全上問題がある、私は強く指摘をしたい。  それから、時間がないからついでにもう一つ申し上げますが、近藤事長さん、動燃の科学者、技術者、職員、この人たちは本当に私は危機管理だとか何かに対して無責任だと思っているんですよ。  もしも、例えば近藤さん、あなたが御自宅にいて二階でテレビを見ていたとしましょう。そうしたら、一階の台所で奥さんが、あなた火事よ、大変よと、こう言って叫んだと。そうしたら、あなたは、いや、それは水かけて消しとけよと言ってテレビを見ていますか。とんでもない話でしょう。普通ならば、階段を駆けおりていって、てんぷらなりなんなりやっていて台所に炎が広がっていれば、奥さんと一緒に水かけたりあるいは新聞紙で消したり、場合によっては自分がやけどしてまで防ごうとするでしょう。  にもかかわらず、動燃さんはどうですか。現場に、水を放水しろ、時間的な制約をしない、おまえさんたち勝手にやってよきに計らえ。なぜ現場へ、たった三十秒の距離を飛んでいって現場で確認、指示をしないんですか。動燃の担当役が、これは大変だ、課長がいない、よし、おれの責任で現場へ行ってみようとあの操作室へ入っていって、あのセルの中へ入れとは言いませんよ、こっちでもってどうだと、こう見るくらいの誠意なり、科学者、技術者としての責任をお感じになってもいいんじゃないんですか。  私は、調べれば調べるほど、残念だけれども動燃の人は日本の原子力を担って立っていこうという資質に欠けている。そこまで指摘をしなきゃいけないのは私たちは情けないと思っているんですよ。決して胸を張って、おまえらけしからぬと責めるばかりじゃないけれども、せめて担当者が一人でも二人でも、なぜ目の前の、しかも道路一つ隔てて、駆けていったら十秒ですよ、十秒の距離がどうして行けなかったのか。危険だから防備をしなきゃ行けない。操作をしている人たちは、下請の人は作業着てやっているんですよ。それを、いや理屈でもってマニュアルで、変なところでマニュアルが働いて、実際に飛び込んで行けない。こういう技術者が何十人いようが、だからこそ動燃はあっちでもこっちでも事故を起こす。  笑い話のようですけれども、町の中のことを教えてあげますよ。「もんじゅ」がだめよ、「ふげん」がだめよ、いよいよこれでオシャカよと、こう言われているんだ。皆さん、本当にしっかりしてよ。
  159. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生、三つの御指摘があったかと存じます。  まず、すぐそばに行く認識があったかどうかということでございますけれども、実際、私自身も東海におりましてこういった事故に遭ったことがございますが、いわゆる指揮者と定められた人は、決められた電話の前にきちっと座っていて、どこから連絡が入っても直ちに連絡ができるようにということで、ある意味では自分自身駆けていきたくても、そこにいて指揮をとるということが重要な面もあろうかと思います。それが第一点でございます。  それから、施設として、中から煙が出てくるようなことがあったではないかということでございますが、いわゆる安全確保やり方として、セルの中を一番圧力を少なくして空気の流れを外側から内側に流れるという方策をとってございます。今回は予期せぬ事故で、それが逆の格好になったという結果で出てきたわけでございまして、今後の検討課題といたしたいと思っておるところでございます。  いずれにしろ、先生御指摘のように、我々はやはり事が起きたらみんなでそれに当たるという精神を今後も大事にしていきたいと思っております。ありがとうございます。
  160. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 それは、中野参考人のおっしゃるような気持ちで対応してくれれば、事故の対応なりあるいは外部への伝達なり、何でも随分違うと思うんですよ。ところが、そういっていないから、あなたたち幹部の物の考え方と社員や何かとの大きな乖離があるんです。  私は、動燃の社員と下請のそういう人たちとの何か人的な問題、交流の問題等もあるかと思っていろいろお聞きしました。人間的には全くそういうようなわだかまりだとか隔てはないんですね。でも、やっぱりエリート集団なんだ、動燃の人たちは。こういう人たちが現場に対して、また現場の人たちもお得意さんに対して、事なかれ主義というようなことを心の中でいつも思っているから本当のことをぶつけ合って言えるというわけにはいかないんですよ。そういうところのひずみがいろいろな事件で予想外な結果として出てきているとも見られるわけですね。  そこで、日ごろここで消火訓練というのか防火訓練というのをおたくはおやりになる。ところが、ついいつの日か、ことしに入っても一回東海村はおやりになった。ところが、その内容を聞いてみると、放射能漏れに対する消火訓練、防火訓練なんというのは全くやっていない。おざなりで、普通の何か火災が起きた、それに対して消火をする、こういうような対応なんですね。これはもう放射能をお扱いの部門としては非常に不十分な防火訓練である。  しかも、当日、一方で火災が起きている。隣の精製処理施設には学生が六十一人も見学に来た。その人たちには全く事故は知らされていない。普通、動燃の中の消防隊があるわけでしょう。火事、火災発生といったならば、御自分のところの消防車を早急に現場に派遣して、水をかけるかけないは別だけれども、そういう対応をして非常線を張る。何かすれば視察をしていた人たちも、これは異常だね、何かあったねということになるんですよ。  今さら、放射能を浴びた、どんなことだろうなんて後追い調査までなさらなきゃならないほどであるとすれば、東海村の御自分の中の消防組織にまで声をかけられないくらい現場は混乱し、しかもその大局の流れをきちっと指導していく者がだれもいない、ただ右往左往する、だから十時二十二分のその誤報がまことしやかに外へ出て、うその上にうそを上塗りしなきゃならない結果になる、今、司直の調べるところですからあえてその責任云々は言いませんが、基本的にはそういうところに今回の問題がある。  それが、ただ東海村一つだけではなくて、すべて「もんじゅ」にも、それから「ふげん」にも全部共通している、病める動燃なんですよ。ぜひひとつ御見解を聞かせてください。
  161. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 先生の御指摘、本当に身にいたく感じます。  消防、こういった訓練関係につきましても、基準類等非常に大変なボリュームのものがございます。それから、いろいろなマニュアル等もたくさんございまして、形の上では本当にそろっていると思います。  ただ、非常に私残念に思いますのは、今まで実践を前提にした訓練というのが行われておりません。紙の上とかあるいは形だけの訓練は行っておりますけれども、実践を前提にした訓練というのはなかなか行われていないというのが実情だと思います。  したがいまして、今後は、実践という方向から考えて、規程、基準類、マニュアルはむしろ簡素化する方向で、しかも各職場、その種類に応じてそういった訓練の義務づけも一定期間で必ずやるという、そういった義務づけもやっていきたいと思っております。  御指摘、ありがとうございます。
  162. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 とはいろいろ申しましたが、早く事故の原因を究明していただいて、それで再発防止を徹底してもらう、それから事故時の情報伝達体制をきちっと確立してもらう、そして何よりも地域住民、国民信頼を回復していただきたいと思います。  そこで、時間がありませんから、今動燃の改革検討委員会が発足しまして、七月までに結論のめどを、方向性というのでしょうか、出すと、私どもも聞かされておるところでございますけれども、動燃の抜本的改革というのは、もう民営に移すとかあるいはこれはやめさせちゃうとか、そういう論も出てきつつあると言われておるところであります。それらを踏まえて、動燃は動燃なりに、今まで日本の原子力の平和利用には大きな足跡を残してきた。もったいない。これだけの技術、科学蓄積を一遍にこの問題で葬り去るというのはやっぱり二十一世紀の日本の大損失だ、それだけに動燃に私は大きな期待を持ちたい。持ちたいためには動燃が本当に脱皮をしていただかなきゃいけない。  最後に一つ、軽水炉がいいか重水炉がいいか、要するに高速増殖炉がいいのか。世界はどうも高速増殖炉というのはいろいろ問題がある、したがってそれぞれみんな引きつつあると言われておりますけれども、その辺はいかがでございますか、それだけお聞かせください。
  163. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 御指摘のとおり、軽水炉ベースの核燃料サイクルというのは一応実用化の完結の段階に来ております。しかし、二十一世紀に入って本格的な核燃料サイクルというのは高速増殖炉を中心にした核燃料サイクル、これが求められるところだと思っております。  だから、私たちは、これには大変な時間と資金も要ります、リスクも高うございますけれども、何としてもこの完成に向かって努力していきたい、こう思っております。
  164. 斎藤文夫

    ○斎藤文夫君 ありがとうございました。
  165. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 自由民主党の佐藤静雄でございます。  私は、福島県職員時代から原子力の平和利用の推進にかかわりを持ってまいりました。以来ほぼ三十年、原子力発電所の立地促進など、日本の将来を考えた場合に原子力こそ欠くべからざるエネルギーだという信念を持って、情熱を持って原子力平和利用の推進に当たってまいりました。  しかしながら、まことに残念でございますが、昨今の原子力を取り巻く情勢は、特に「もんじゅ」の事故以来、大変国民に厳しいものがございます。今回の東海再処理工場のアスファルト固化処理施設の火災爆発事故によりまして、世論の動燃に対する批判の厳しさはさらに強いものになっている、さらに「ふげん」の事故の通報おくれ、これでまさに動燃に対する評価は致命的なものになってきた、そのように考えております。  先ほど来申し上げているように、二十一世紀のエネルギー需給あるいは人口、食糧、環境問題、これを考えていけば、当然どんな困難があっても原子力開発は着実に安全を確かめながら推進していかなきゃいかぬ。このことは、さきに「当面の核燃料サイクルの推進について」、これを閣議で了解し、プルサーマルや使用済み核燃料処理あるいはバックエンド対策について、総理が陣頭に立って、原子力発電主要三県の知事を呼んで、そして国が責任を持って措置しますよという約束までした直後でございます。この直後に動燃が起こした問題を私はきちっと整理をしなきゃいかぬというふうに思うわけでございます。それをしなければ、国民から今後の原子力の利用が疎まれる。それでは困る。原子力利用が停滞し、原子力政策が動かなくなってしまっては、これは国家の一大事である、そういうふうに考えております。  したがって、本日は事故の発生だけでなく情報連絡の不手際、積もり積もった動燃の隠ぺい体質、このような事態を招いた動燃に対して、どこに問題があったのかすべてを明らかにしてほしいとお願いを申し上げる次第でございます。この際、動燃の業務執行についてはゼロからやり直していただかなきゃいかぬ。  そこで、東海の再処理工場アスファルト固化処理施設の火災事故に関連してお聞きをしていきたい、こう思っております。  まず第一に、午前の火災についてお伺いします。午前の火災の消火の指示は、主査を経由して担当役が行ったと報告書に記載されておりますが、これはつじつま合わせじゃないか、実際は主査の判断で行ったのではないかという報道がございます。また、消防や動燃職員による消火の確認は、室内は真っ暗でセルのガラス越しには火が消えたかどうかよく見えなかったと。  そこで、実際は消火の指示及び鎮火の確認はどのように行われたか、またその方法はマニュアルにあったのかどうか、それについてお聞きをしたいと思います。
  166. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 御質問に簡単にお答えいたします。  まず、主査が判断して指示をしたんではないかということでございますが、正確に申し上げますと、火災を発見した者から電話連絡が参りまして、これを主査以外の係員が受け取って、その電話を主査に回しております。その主査のすぐ後ろに担当役がおりまして、主査はハンドホンを持ちながら、後ろを向いて担当役にその旨報告し、担当役から直ちに水をかけよという指示をしましたので、それにこたえて水噴霧にかからせておりますので、報道にございますような主査が判断したということではございません。  それから、見えなかったのではないか、どのように消火を確認したかということでございますが、確かに煙が立ち込めて中が真っ暗になったという報告を聞いております、十三分でございますが。ただ、それまで立っておりました火柱がなくなったので、消火をしたものという認識をいたしまして外に出たわけでございます。  その後の消火の確認は、一時ごろになりましてから第一班が三人の構成で中に入りましたときに、東海村の消防の方と中を観察したというのが二回目の確認になっておるところでございます。  なお、マニュアルにつきましては、消火の確認という事項が書いてございます。
  167. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 午前の火災で屋上に逃げおくれた作業員が二人取り残されております。これは数時間後に救出されたということでございますが、また公表される被曝者の数が公表ごとに違っておる、どんどんふえている。そういうことから考えますと、退避することあるいは外部に対する公表の仕方、全くお粗末と言わざるを得ない。そのために国民不信感が増幅している。また、環境への影響は第一附属排気筒のトレンドデータを入手するまで気がつかなかった。そこで、一つは火災による作業員の退避、被曝の実態をお聞かせ願いたい。  それから、環境への影響について、データの確認を全くしないで判断したのかどうか、その判断方法についてはマニュアル等にきちっとなっておるのかどうか、その点についてお聞きをしたい。
  168. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えいたします。  放射性物質が施設内に漏えいしたと考えられましたことから、十時三十二分ごろ、現場指揮所からアスファルト固化処理施設内の作業員の退避を電話にて指示をいたしております。  これを受けまして、中で働いておりました作業員二十一名は、制御室において点呼、確認をした後、隣接いたしますZ施設と呼んでおりますが、第三低放射性廃液蒸発処理施設でございますが、ここの安全管理分室に移動いたしております。移動いたしましたのは十時三十七分、そこで汚染の検査をいたしました後、管理区域の外に十一時一分に退避いたしてございます。なお、また煙のために制御室に集合できなかった先生御指摘の分析作業員二名でございますが、これは十時二十二分ごろ現場の居室の方に、担当役の方に連絡をいたしまして屋上に退避をいたしております。したがいまして、この中で働いておりました全員は十一時一分、担当役によって全員が退避しているということは確認されております。  さて、被曝についてでございますが、現在までのところ三十七名に有意な値が検出されておりますが、最大で年間摂取量の二千分の一程度でございます。また、被曝量としましては胸のレントゲン検査時に被曝する量の二十分の一程度でございまして、現在従業員全員の行動調査、それから全身カウンターによる測定の対象者の最終的な確認作業を行っておりまして、これらの結果につきましては測定対象人数の確定が行われた後、最終的に御報告いたしたい、このように思っております。  なお、環境につきましては一部既に調査を終えまして、国の方に御報告いたしておるところでございます。
  169. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 そこで、非常にこれはまた素朴な質問をしますが、午前の火災の鎮火確認やその後の処置が十分であったら、当然夜の二十時四分の爆発は防げた。一体その火災から爆発までの十時間、動燃は何をやっていたのか。これは本当に国民の素朴な疑問でございますので、お答え願いたい。
  170. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御指摘のように、先ほど来出ておりますが、十分な消火、十分な温度を引き下げるという措置があれば爆発は避けられたのではないか、私たちもそういうようなことを考えておるところでございますけれども、火災発生後十時間の間に実施いたしましたことを申し上げますと、火災が発生した際にセルの外への煙の漏えいとか、それから建屋の換気系をまず停止させることによりまして、施設内におりました作業員の安全を最優先に考えまして一たん施設外に退避させたわけでございます。  そうしまして、再入域に当たりましては、安全確保といたしましてセルの換気系の復旧をまずやる、そして二番目に保護具などの準備をきちっとやる、そして入域するエリアの養生を、これは汚染拡大防止のためでございますが、行う必要がございました。そのために、セルの換気系の停止の要因といたしましてフィルターの目詰まりが考えられましたことから、セル換気系の復旧のためのフィルターの手配の準備を行っておりました。また、入域する作業員の安全確保とか汚染拡大防止のために保護具などの手配、それから入域エリアの養生などの準備を行っておったわけでございます。  施設への入域作業は、火災発生から爆発までの間に安全確保のために必要な装備を装着するとともに、放射線量のチェックをしつつ、慎重な上にも慎重に三班に分けまして作業員が入域いたしておるところでございます。火災後の現場確認、セル換気系の再起動等の作業も実施いたしております。そのようにもろもろの準備をしつつ、次の対応策をとっていたところでございます。
  171. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 なかなか納得しかねておりますけれども、爆発までの間に鎮火の確認やらあるいは温度の確認やら、そういうことをきちっとやっておれば変化は当然気がつくはずでございます。また、先ほどの斎藤委員の質問にもございましたように、アスファルト固化施設にはベルギーの火災という先例があるわけです。そういう先例から非常にそういう火災なり爆発が起こり得るということはわかっておるわけでございますから、それをやはり私は学習効果がなかったというふうに決めつけることになると思うのでございます。  また、この爆発があったとき幸いにも死傷者が出なかった、非常にこれは不幸中の幸いでございました。しかし、これも報道によれば、まさに爆発寸前のときに現場に入るような準備をしておった。危機一髪巻き込まれずに済んだ。  先ほど言いましたように、動燃は爆発の可能性があるということを認識しておらなかったのかどうか。あるいは、ベルギーの火災事故、さっき言いましたように、その学習効果をほとんどしていなかったのかどうか。また、入室させようというふうに考えておった、どうして入室が可能だというふうに判断したのか、その辺についてお聞かせをいただきたい。
  172. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御指摘のように、また私が先ほど申し上げましたように、フィルターを交換すべくいろいろな諸準備を進めておりまして、もう少し爆発の時間が遅ければそのフィルターの交換のために入っていたかもしれないというおそれがあったわけでございまして、そういう意味では全く不幸中の幸いであったというふうに私どもは認識いたしております。  十三時三十四分に第一回目のその後の調査班を入れまして、先ほど申しましたように、このときには東海村の消防署員も一緒に入っております。このときには火は見えませんでしたし、中は真っ暗に見えたという報告をいただいております。したがいまして、この時点では火は消えたなという認識をしておりまして、爆発の可能性につきましては想起するような状態ではございませんでした。  また、施設の安全管理上、これよりは汚染防止の観点からセルの換気系の立ち上げを優先しよう、そして入域準備に入ろうということで、現場指揮所から、応急措置に基づいて放射線防護上の措置をし、空気呼吸器等を装着いたしまして、安全確保しつつ入室させたわけでございます。  なお、ベルギー等の学習効果につきましては、先ほど申し上げましたように、その後の実験等をやりまして、八分間確実に水を流すとか、それから水の出す位置をきちっと直すとかいろいろ改良した点もございましたけれども、最終的にそれがきちっとマニュアルに反映されていなかったということについては深く反省をし、今後の改善の材料にしたいと思っておるところでございます。
  173. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 次に、虚偽報告についてお伺いいたします。簡単に答えてください。  四月十六日に科技庁は茨城県警に原子炉等規制法の虚偽報告の罪で告発をいたしました。監督官庁から政府系の機関が告発をされるというようなことはまことにこれは大変な事態であり、重く受けとめていただかなきゃいかぬというふうに思っております。  そこで、この虚偽報告を知っておったのは、更迭された管理職五人以外に何人おられたんですか。あるいは、本社、現地対策本部あるいは現地指揮所、そういうところでどのくらいの方がこれを知っておったのか。  それから、時間がございませんので続けて御質問を申し上げますが、この隠ぺい工作というのは、アスファルト施設を担当する環境施設部の内部においてだけ行われたのか。報道等によれば、現地に設置された事故対策本部あるいは本社も関連して、動燃事業団ぐるみで行ったんではないかというような疑念がありますが、この点はいかがでございますか。
  174. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) お答え申し上げます。  十時二十二分に消火を再確認したというのはうそであったというのが明らかになってまいりましたのは四月八日の夕刻でございましたが、本社では直ちに特別な調査班を東海事業所に送りまして、その件を詳細に調査をいたしました。その結果、本件に関与していた者は総務課長と環境施設部の合わせて十五名でございました。本件が虚偽だと知っておったのは環境施設部の十四名でございます。  その中には、環境施設部の人ばかりでございますので本社は関与しておりませんし、また現地対策本部も関与はしておりません。現場指揮所の十四名が虚偽を承知しておったものでございます。  ただ、総務課長はこれに関与はしましたけれども、積極的にこれが虚偽であるということを認識した上で関与したんではなかったということでございます。
  175. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 これも大変私どもにはわからぬのですが、三月二十一日の原子炉規制法に基づく報告あるいは第一報、第二報と、何度もこの修正のチャンス、修正可能なチャンスがあったんですが、まあこんなこと隠す問題でも何でもない問題ですよ。なぜこれを修正できないんですか。
  176. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生御指摘のとおり、修正のチャンスは何度もあったというふうに思っております。偽りの報告をする方向に判断をしたのは現場の管理職が中心となって行われておりまして、その後も一般職から訂正するようにという要望が出されておったにもかかわらず修正をしなかったというのは、まことに残念なことでございます。これは、正しいことに訂正するという勇気を持つべきであったというふうに反省をいたしております。
  177. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 先ほど理事長のお話にもございましたが、やはりこういう虚偽報告を生み出す土壌というのがあるんですね。動燃にそういう体質があるんです。  先ほどもお話がございましたが、火災発生時に一般見学者六十四人がおられた。この人たちにも事故の発生を全然教えていない。後になってそのときの見学者から、大変心配になりまして私は大丈夫なんでしょうかというような問い合わせもあったと聞いております。また、今度の「ふげん」の通報おくれ、これもすぐにこういうことがございましたよと、漏れたものは普通、こういうことでございますよ、安全なんですよとなぜ言わないんですか。それが問題なんです。  常日ごろからの情報の提供のあり方、これについて科学者の思い上がりとか独善とか、そういうものが動燃全体を支配しておったのではないかというふうな気がしてなりません。  ですから、「もんじゅ」であれほど世論からたたかれ国民から不信を買いながら、「もんじゅ」事故のあの学習効果、これは本当に貴重な学習効果ですよ、これが全然なかった。これは残念でならない。一般の国民は原子力のような巨大科学については漠然とした不安がつきまとっている、これは。国民の安心感をいただくためには、簡単なんですよ、透明性を確保して情報を迅速に伝達する、これが国民から信頼をかち得る最も大切なことなんであります。  この二つが、透明性の確保と情報の迅速な伝達がないというのが動燃の基本的な欠陥だと私は思っておりますが、この動燃の閉鎖的な体質について、理事長、大変でしょうがもう一回お答えをいただきたい。
  178. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 先ほど虚偽報告の件について先生から御指摘を受けましたけれども、これは結局甘いということだと思います。  こんな厳しい中で口裏合わせをやって、ばれないというようなことを考えるのがどだいおかしいんで、普通の人ならばそこのところはより慎重に取り組んでいくだろうと思いますけれども、全く無防備にやっているということで、そういった世間の風に吹かれていない、自分の庭だけで仕事をやっているような、外を非常に甘く見ているというふうな体質がどうしてもここにあるというふうに思っております。何としてもこの体質を直していかねばならぬということが第一の最大の課題でございます。  それから、先生おっしゃったとおりに、危険なウランとかプルトニウムを扱っている事業団でございますので、外から見た場合に、そういった虚偽の報告というのはもってのほかでございますが、やはりかねて積極的に情報を提供しながら、それを通じて社会の理解、信頼を得ていく、それなしには研究所としても存在し得ない、そのためには、先生御指摘のとおりに、透明性に徹していくあるいは情報公開に徹していく、これを実行してまいりたいと思います。よろしくお願いします。
  179. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 今や動燃は、まず再処理が倒れちゃった、高速増殖炉も倒れちゃった、この二本柱が倒れて、各界各層からのいろんな意見を聞きますと、探鉱とか濃縮などは既に動燃の仕事としてはもう終わったんだと、したがって探鉱、濃縮、そういうものは早く民営化してスリムになった方がいいという意見がございます。そういう民営化できるものは早く民営化しなさいと、それ以外の再処理、高速増殖炉などは動燃を解体してほかの主体にやらせた方がいいというふうな強い意見もあるのは御承知のとおりでございます。  私は、動燃が国民の大きな負担でこれまで培ってきた世界的な水準にあるノウハウやあるいは研究成果をここで無にしたり後退させたりすることは、本当に国家の巨大な損失であるというふうに考えております。したがって、理事長は動燃改革にどのような決意でこれから取り組んでいくのか、その点について理事長の見解を聞かせていただきたいんです。
  180. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 今、先生御指摘のとおり、海外ウラン探鉱の問題、それから濃縮の問題、特に濃縮の問題は現に六ケ所村で今増設を進めようとしておりますけれども、これはもう完全に実用化レベルに達しておりますので、その蓄積した技術、場合によっては人もつけて円滑な技術移転を行いたいと思っております。おっしゃるように、濃縮の問題も、これは当初出発点は軍事機微技術ということでどこも教えてくれない、そこで日本独自で動燃が一生懸命開発していった分野でございます。そういう経緯は持っておりますけれども、事ここまで達した段階では、日本原燃さんの方にすべてを渡していくという方向で、また今現在もその方向で交渉を進めているような状況でございます。  それからまた、軽水炉ベースの再処理工場も御承知のように六ケ所の方で今建設を進めているわけでございますが、これについても、私の方からも技術も人もかなり向こうに行って協力申し上げております。これもまた思い切って移転を進めていきたいと、こういうふうに思っております。  先ほど申し上げましたけれども、やはり今後ともどうしてもこれは国としてやっていかなきゃならない、そうでないとどこも受けてもらえない。それから、先を考えますと、どうしてもやらなきゃならぬというのは高速炉の開発、その高速炉の燃料サイクル、それから高レベル廃棄物の最終処分の問題がございます。  こういった問題はやはりどうしてもこれは国でやるほかはない、動燃はそれに一層力を入れて今後やっていくというふうに思っております。それにつきましても、先生から前段さんざん御指摘されたとおり、とにかく意識の改革を、早急に体質改善をやって進みたいと思っております。
  181. 佐藤静雄

    佐藤静雄君 終わります。
  182. 高橋令則

    ○高橋令則君 平成会の高橋でございます。  私は科学技術特別委員会に所属をしておりまして、この動燃の問題のうちのアスファルト固化処理施設の火災爆発事故につきましては、去る三月十七日、当該委員会で詳細に質問をさせていただきました。  その委員会では、私の理解では、ベルギーからの技術移転によるアスファルト固化処理施設の導入の是非。そしてまた、火災の危険がある施設でございますので、それに対する防災施設、スプリンクラーとかそういうものの防災施設の整備、設置。そしてまた、訓練とかいったものを含めた運用のあり方。それから大きな問題として、「もんじゅ」の事故の教訓が果たして生かされたのか、生かされていないのではないか。それから、事故が起きた後の調査対策ですね、これの取り組みが十分になされているのか。  それから、再処理工場を停止せざるを得なくなったわけでありますが、これによってどのような影響が生じてくるのか。それから、火災鎮火の確認のあり方が不徹底だったのではないか。放射能漏れのチェックのおくれ、そして大事な問題ですけれども、地元への通報のおくれ、それからもっと前提となります、最初に申し上げた技術導入の経過の施設の設計、そしてそれの安全審査のあり方。それから、このままではこの事故は核燃料サイクル路線の根幹を揺るがしかねない、そういう認識を持つものだけれども、それについてはどうか。  こういったたくさんの質問が出まして、それぞれお答えがあったわけでありますが、必ずしも十分なお答えであったというふうには私は思いません。  今、斎藤委員、そしてまた佐藤委員からも重ねて御質問がありましたけれども、なおかつ私も非常に疑問に思っている点が多々ございます。そういった点に触れてまず質問をさせていただきたいと思います。  私は地元への通報の問題をまず取り上げたいわけですが、三月十七日の委員会で、茨城との安全協定、覚書、運営要項を示して、これに違反するのではないか、そういうことを申し上げました。そうしましたら、必ずしもそうは思わないというふうなお答えがあったように私は承知をしておりますが、この認識はいかがでございますか。
  183. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 安全協定等の問題につきましては、この前もお答えしてございますように、必ずしも安全協定の違反というふうに当方からは考えておりません。当方はどちらかといいますと、県の方から、協定を結んでいる向こうの方から、おまえのところは違反だよと言われれば協議をいたしますが、私どもの方から違反でございますというふうに申し上げる立場にはないというふうに思っておりますが、我々としてはできるだけ早期に報告をしたつもりでおります。
  184. 高橋令則

    ○高橋令則君 あの委員会のときにも申し上げたように、要項では「直ちに」と書いてあるんですよ。現実には直ちにじゃないわけですね。それからまたもう一つ申し上げますと、福井との協定においても、見てみますと同じような表現があります。これはもっと時間的におくれました。協定というのは当事者両方が約束で決めることですよ。向こう様から言われなければ、それに対して不適切であったと言えないというのはちょっとおかしくはありませんか。
  185. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 補足させていただきます。  先生仰せのように、これらの協定の場合に「直ちに」と書いてあることは確かでございます。今回、その「直ちに」というのが十分以内であったのか三十分か、いろいろ議論のあるところだとは思いますけれども、いずれにいたしましても、この「直ちに」ということに対してきちっとやられたかどうか、県当局とも十分御相談しながら今後検討していきたい、決めていきたい、そのように思っておるところでございます。
  186. 高橋令則

    ○高橋令則君 その後の報道あるいは現地へ行ってお話をお聞きしたところでは、地元自治体は非常にこれに対して不満を持っております。参考人のお三方もお聞きになったでしょう。  私は、この安全協定、地元とのそういう協定、覚書、そしてまた運用のあり方については、地元との間にそごを来さないように日常きちんとすり合わせをしておくべきものだと思うんです。何もないときはないんですよ。平時がずっと続いて、何かあったときに問題になるものなんだ。そういうことについての打ち合わせとかすり合わせというのは私は非常に不徹底だというふうに思わざるを得ないですね、この地元自治体の反応を見ていますと。  この協定なり覚書なり運営要項、こういったものについて地元自治体と日常どのようなすり合わせ、打ち合わせをしているんですか。
  187. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御指摘のように、いわゆる報告事項に該当するというものは非常にたくさんあるわけでございまして、一つの最近の卑近な例を申し上げますと、昨日総理大臣がお話になりました、靴裏に汚染が発見された、しかもこれは管理区域内でございまして、外に出したものではございません。しかし、これは私ども今回の事故以来、ああいったものもきちっと御報告申し上げるという精神に立ちまして報告させていただいたわけでございます。  地元との間では、大ざっぱに言いまして外に影響のあるようなことについては、可能なことについてはできるだけ早く必ず御報告申し上げていくという大枠の詰めばしてまいりました。しかし、今回のようなことがございましたので、ただいま私ども動燃の中で、どういうような事故があるか全部抜き出しまして、そしてそれをチェックした上で地元と詳細な詰めをしたい、そのように思っておるところでございます。  お答えは、今までどちらかというと大枠の決め方をしていたということでございます。
  188. 高橋令則

    ○高橋令則君 大枠というお話がありました。いみじくもそれが地元に対する通報体制の認識の甘さだと私は言わざるを得ないと思うんです。ですから、これはぜひきちんとやってもらわなきゃならない。  「もんじゅ」のときだってナトリウムは屋内で、その場所だけで漏れたので、外に出たわけじゃないんです。放射能漏れがあったわけじゃない。しかしながら地元の自治体では非常に不信感を持った。ああいうことからして、外に出なければいいんだという考え方が、「もんじゅ」の事故があってなおかつそういう考え方が残っているということは非常に問題だと思うんです。  したがって、動燃はぜひとも地元自治体との間にいわゆる非常時のときのやつを事細かにきちんとすり合わせをして、そして後でそごが起きないようにしていただきたい。この程度のことは地元の村はわからないだろう、地元の県はわからないだろうなどというふうな気持ちがもしあるんであれば、これはまさに理事長が言われた技術屋特有の一種のおごりですよ。こういうことは許されないと思うんです。茨城県にしても福井県にしても、担当課は相当な経験も積み、認識を持っていると私は承知している。したがって、やはり相手方をそれなりに尊重して、尊敬をして、そしてきちんとした打ち合わせをして、こういうことがないようにしていただきたい、このように思います。  それから、「もんじゅ」の事故が起きて、そして一連の対策をとられた。にもかかわらず、こういう事件が起きた。そしてまた、それに三月十七日の時点ではわからなかった虚偽報告という問題が出てきた。さらに、「ふげん」の報告おくれと申しますか不適切な報告があった。これはまさに理事長がおっしゃるように、体質というか、救いがたいようなあれがあるというふうに見ざるを得ないんですが、これはどうしてそうなったんでしょうか。私は理事長にお聞きしません。理事長はついこの間まで東京電力の副社長をしておられて外におられたわけで、これは中野参考人植松参考人に逆にお聞きします。中野参考人、次いで植松参考人、それぞれの御見解をお尋ねしたいと思います。
  189. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先ほど来、理事長は動燃にお越しになりましてから外の目で動燃をごらんになっていろいろなサジェスチョンをしておられます。私ども、この大プロジェクトを育てしげていく中で、それなりに自分の技術に自信と確信を持ってきた、これは事実でございます。そういうことの裏返しが今日のような体質というものをつくった、そういうことも一つあるのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、一昨年の「もんじゅ」の事故で私どもはそうした体質を大いに反省しなければいけないということで、私も経営者の端くれの一人としてそれなりにいろいろな改革に立ち向かってきたところでございます。今のところまだその真ん中にして、途中にして今回のような事故を起こしてしまった、あるいは虚偽の報告をしてしまったということを極めて残念に思っておりまして、先日の新聞記者会見のときにも申し上げたんですけれども、本当に情けない気持ちでおります。しかし、彼らもまた我々と一緒に技術開発を進めてきた連中でございます。今後、もう一度我々は考え方をもとに戻しまして技術開発に邁進していきたいと思っているところでございます。
  190. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 私ももともと動燃育ちでございます。ただ、最近まで長らく動燃を離れて海外におりました。久しぶりに、八年ぶりに動燃に帰ってまいりまして私が何を感じたかと申し上げますと、組織そのものが非常に肥大化し、また非常に縦割り社会になってきておるなということを強く感じさせられたところでございます。  ただ、それだけではなくて、動燃はもう創立以来三十年がことし参ります。三十年間の積み上げ、また地元の方々とのつながりというものを大切にしてきたはずでございますけれども、かえってそれが動燃の職員の、どちらかといいますと地元の方々の寛容さに甘え、なれという形であらわれてきた結果こういうことになってきたんじゃないかというふうに反省をしております。  また、しばらく留守にしておりましたので、多少第三者的な目で見ることができると思っておりますので、動燃の改革のためには貢献をしたいというふうに思っております。
  191. 高橋令則

    ○高橋令則君 長年動燃に本当に挺身してこられた植松中野参考人、御経歴を見ても、私どもが見て技術経歴として本当に申し分のないお二人でいらっしゃいます。多分お二人が歩んでこられた道というのは、六七年に誕生した動燃ということで期待を担って、新型転換炉「ふげん」を完成させ、そしてまたウラン濃縮技術や再処理技術を実現しました。そして、本命の高速増殖炉「もんじゅ」も九四年四月に完成をさせました。そしてまた、いろんな議論がある中で、いわゆるあかつき丸輸送、こういったものも成功させた。相当アメリカから文句を言われながらちゃんとやった。まさに動燃はあらしの中でもめげずに先進的な役割を果たしてきた面は認めざるを得ないと思うんです。しかしながら、そういう中で肝心なところが腐ってきているんではないかと言わざるを得ないんですね。  私は、虚偽報告の中で一番問題なのは、勘違いでそうなったとか何かではなくて、一番肝心な中間管理者がですね、現場の実態も握り、上へ対しても報告する、いわゆる取り仕切っている人たちが申し合わせて隠ぺい工作をするなんてことになりますと、これはもう全く組織として信用も何もできないわけですよ。これはマニュアルを何ぼつくったって、服務規程を何十冊積んだって直りませんね。  私は、そういう面でこのたび処分をなさったということは承知していますが、処分しても直らないかもしれないとさえ思っているんです。これは相当突っ込んで対策をやらなければいけないと思うんです。「もんじゅ」の幹部もそうです。それから東海村もそうですね。「ふげん」もそうでしょう。全部そうじゃないですか。これにつける薬はありますか、植松参考人
  192. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) つける薬というよりは最善の改善についての努力をすること以外に方法はないというふうに思っておりますし、それなりに動燃内に改革本部をつくりまして、今までとは違った目で、違った形で動燃そのものの中身をもう一度しっかり見直してみようというのが四月十日に始まったばかりでございまして、夏までには動燃自体として独自の考え方を打ち出すことができるというふうに思っております。  また、国の方でも第三者機関をおつくりいただいて動燃を見直すということをやっていただいておりますので、両輪相まって新しい考え方が生まれてくればいいというふうに思っております。
  193. 高橋令則

    ○高橋令則君 私の一つの提言ですけれども、こういうのはやっぱり誇りもなければならないんですね。  私が思いますのには、動燃創業のころの精神というのが失われているのではないか、ある意味ではですね。我々は、日本に原子の火をともし、そしてこういう厳しい中で原子力の平和利用に向けて世界の最先端に立っていこうという、植松参考人なり中野参考人が大変御苦労なさった創業のころのものを今の中間管理者の方々はもう忘れ、そういう話は聞いているけれども実感がわかないと思うんです。したがって、本当の意味での誇りを持てない。入ったときは大会社動燃というようなことで、しかも入ったときはエリートということで、言っちゃなんだけど苦労を知らないという表現は適当ではありませんけれども、それに近いものではないかと思うんですね。  したがって、いわゆる原点に立ち返っての意識の植えかえと申しますか、そういったことと、そして苦労もしていただかなきゃなりません。同時に、やっぱり動燃の持つ使命といったことに対する認識と誇りをきちんと持っていただかないとだめだと思うんです。  それからもう一つ、これはマイナーな方向になりますが、佐藤委員もおっしゃったように、原子力はやはり漠然と怖いという意識があります。したがって、漏れたとかなんとかと言えば地元が過剰反応する、そうすると我々の仕事の邪魔になるのではないか、できるだけそういうことは隠しておこうというふうな自己保存本能が働く。これは萎縮した方ですね。しかし、これでも困るんです。  私は決して事故が起きることはいいとは申しませんし、安全第一です。だけれども、動燃は本質的に技術開発という使命を負っている。したがって、一般の営業運転をしている軽水炉なんかとは違って、開発という使命をしょっている以上研究がありますから、どうしたってある程度、起こつちゃいけないんですけれども、事故とかそういうことは避けられないのではないかと思うんです。  したがって、そういったものを隠して自分たちでやっていこうということではだめなんで、それは研究施設、開発施設のある程度の宿命だということを認識しながら、地域の人たちにもできるだけ理解をしていただいて、一緒に苦しむというのは変ですけれども、気持ちを同じにするというような積極的な気持ちがなきゃならないと思うんですね。萎縮してばかりで、守ろう、隠しておこうということではなくて、その二つの面を、この際私の考えですけれども指摘を申し上げて参考にしていただきたい、このように思います。  それから、科学技術庁との関係をちょっとお尋ねしたいんですけれども、科技庁は原子炉等規制法によって告発をしました。虚偽の報告は法令違反であります。法令違反である以上、これは原子炉等規制法をまつまでもなく、公務員は犯罪の事実を了知したときは告発しなきゃならないという刑訴法の規定もあるわけですから、私は当然だと思います。  しかしながら、本当にこれは異例の事態なんですね。聞いてみると、科学技術庁はこういうことは全く知らなかった。こういうことというか、いわゆる虚偽報告報告の遅延みたいなことは全く知らなかったと言っている。私は信じがたい思いなんですね。  なぜその点を強調するかというと、「ふげん」について言いますと、過去五年間に排気中のトリチウム濃度の測定値の上昇が十八回あったというんでしょう、平常値よりも上昇したのが十八回。うち二回は警報が発報していますね。そうしますと、これらのことは作業日誌なり現場日誌なり、動燃のその種の記録に載っているんだろうと思うんです。  しかし、この五年の間に科学技術庁の定期検査とか監督とか、そういうものがなかったとは思えない。隠したんですか、それとも科学技術庁は見落としたんですか。動燃はどう受けとめていますか。
  194. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御指摘のように、過去において十一回そのようなことがございましたが、いずれもいわゆる法律で申しますところの報告に該当しないものであるということで、私ども報告いたしておりません。ただ、記録にそういうようなことがあったということで記録いたしておりまして、必要に応じて監督官の方がごらんになっていらっしゃるというふうに思っております。
  195. 高橋令則

    ○高橋令則君 そうしますと、そういう大事な放射能漏れみたいなものの数値の原簿というんですか、いわゆる計器によってずっと出てまいりますね。そして、異常があった場合はチェックして作業日誌に転載するだろうと思うんです、普通の現場からして。私が昔おりました工場ではそうなっておりました。原子炉ではありません、化学工業ですけれどもね。そういうものは科学技術庁の検査の対象になっていないんですね。そうなんですか。
  196. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御案内のように、今回トリチウムを漏えいさせました施設は重水精製装置でございまして、いわゆる原子炉等規制法に基づくものではございません。放射線障害防止法の適用を受ける施設でございます。この場合、こうしたトリチウムの放出等に関しましては定期的に国及び地元に報告するということで処理されてきておりまして、原子炉のような故障票とか作業票といったような管理官がいつもごらんになるような票で管理されておるわけではございません。
  197. 高橋令則

    ○高橋令則君 そうしますと、そのうち二回は警報が鳴っているんですね。その域に達している。そういうものもやはりそうなんですか。
  198. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 一部の新聞にも出ておったかと思いますが、この施設にございます警報は二段階に分かれております。一番高い危険信号を出す警報の場合は自動的に装置がとまるようになっておりまして、高高レベルの警報と呼んでおります。もう一つ下に私ども警報の段を決めてございまして、これはいわゆる注意報、注意を喚起するという意味でつけたものでございます。従来鳴ってまいりまして今回もまた鳴りましたのはその注意報に属するものでございまして、もちろんこういうものが鳴りますと、夜間であれば早速中操室から現場に飛ぶ、あるいは昼間現場にいる場合は直ちに施設のそばに行って点検をするという作業はいたしますけれども、そういうレベルのものでございますので、特別な報告はいたしておりません。
  199. 高橋令則

    ○高橋令則君 科学技術庁からの報告等によりましても、中野参考人はおっしゃいましたけれども、別に放射能漏れが危険値に達しているとかあるいは健康に影響があるとか、そういうレベルじゃない、それ以下だということは私も知っている。しかし、現実にこれだけ大きな問題になるような事態があったのに、そういう事態をチェックする方法が内部で見たらどうも後でわかったというようなことを言っているようだし、それから、それを科学技術庁は全く知り得るものがないということだとすれば、それで本当にいいんですか。  そんなことであれば、何も今回問題にならないんじゃないかなと私は思うんですよ。おかしいとは思いませんか。
  200. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えの最後の方に言葉足らずのところがございました。申しわけございません。  「もんじゅ」の事故を反省いたしまして、私どもの事業団の規程の中で事故対策規程というものを大幅に改定いたしました。その中の範鷹では、当然これらのレベルのものであったとしても報告されるべきものという分類をしてございますので、今回のような場合には当然報告されるべきことに入っておるわけでございます。  なお、今までいろいろこのレベルのものとかいうようなことをいろいろ言ってまいりましたけれども、今後はそれらをすべて改善したいというふうに思っておるところでございます。
  201. 高橋令則

    ○高橋令則君 お答えがちょっと足りないんですけれども、私がお聞きしたのは、動燃の中でその種のものがきちんとチェックをされて本社まできちんと上がるようになっていないじゃないか。それはいいのか。それからもう一つは、科学技術庁の監督がきちんとできるようになっていないのじゃないか。それはいいのか。  そういうことを聞いているわけです。
  202. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 申しわけございません。その事故対策規程の中では、そういうことが起きれば本社まできちっと上げるということになっております。それからまた、その事故対策規程の中では、そういったことがあれば科学技術庁に直ちに報告するというふうに決めてございます。
  203. 高橋令則

    ○高橋令則君 もう一つ。  科学技術庁が定期検査とか何かではそれは見られない、見ていない、そのたぐいのものなんですね。
  204. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先ほど申し上げましたように、定期的に報告をいたしておりますので、そういう際に見ることができます。
  205. 高橋令則

    ○高橋令則君 今のお答えは私は重要だと思います。だとすれば、科学技術庁が見落としたんだ、そういうふうに判断していいですか。
  206. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 定期的に報告いたしておりますのは放出量について報告いたしておるわけでございまして、科技庁は放出量に対してチェックをしているというふうに承知しております。
  207. 高橋令則

    ○高橋令則君 今のお答えは意味が私はわかりません。
  208. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 繰り返しお答えをいたします。  この種の報告に関しましては、トリチウムの放出量に関しましては定期的に国並びに地元自治体に報告をしているということでございます。
  209. 高橋令則

    ○高橋令則君 時間もなくなってきたんですが、これをやりとりしてもしようがないんです。  要するに、今回問題になった、さっき十一回とおっしゃいましたが、それは三年間でしょう。私がもらっておる資料では五年間で十八回とあります。そして発報したのが二回と。こうありますよ、科学技術庁からもらっている資料では。  こういう事態が記録上わかるような、後で検査してわかるような状態になっているんですか、それは科学技術庁にきちんといっているんですかということをお聞きしている。それはいっているとすれば科学技術庁がそれを見なかったか見落とした、そういうことなんですかとお聞きしているんです。
  210. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答えいたします。  従来は異常があったということでは一々いっておりませんので確認はできないと思いますが、今後は全部出すようにしたい、確認ができるようにしたいというふうに考えております。
  211. 高橋令則

    ○高橋令則君 今後はというのは、これからという意味ですか。それとも「もんじゅ」以降はということでございますか。
  212. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 本来、「もんじゅ」以降そうであるべきであったと思っております。
  213. 高橋令則

    ○高橋令則君 非常に単純なことなのにわかりにくいんですけれども、「ふげん」でこれだけ指摘を受けて、停止命令まで受けたわけでしょう。  そういう事態を招いたような、事故と言えるかどうかわかりませんけれども、こういう不適切な事態に対して、過去五年十八回、二回も発報している。そういう事態がどうして事前に動燃本社、そしてまた科学技術庁ではわからなかったんだろう、そして今ごろになってどうしてこんなに問題にするんだろう、長官が炉をとめろと言うほどの問題になったんだろう、私はそう思うんですよ。  それだけの問題であれば、当然、動燃本社も内部的に気がつくべきだし、もう一つは、科学技術庁は放射線防止法なり、原子炉じゃないそうですからいいんですけれども、関係法によって検査しているわけですから、監督しているわけですから、気がつかない方がおかしいのじゃないかと私は思いますよ。
  214. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先ほど来申し上げておりますように、今回を含めまして発報いたしておりますのは停止レベルではございませんで、いわゆる注意レベルのものでございます。そういったレベルのものにつきましては従来科技庁には報告いたしておりません、私どもの内規の記録としてはあるといたしましても。したがいまして、科技庁の方から検査なさるということはございませんでした。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、今後はこういったものであったとしてもきちっと外に出していこうということで、「もんじゅ」以来私どもの事故対策規程を変えました。この事故対策規程を変えるに当たりまして当然科技庁の御指導もいただいておりますし、先ほど申し上げましたように、科技庁にも連絡するようになっておるわけでございます。そういう意味で、「もんじゅ」以降はそうすべきであった、今回もそうすべきであつた、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  215. 高橋令則

    ○高橋令則君 「もんじゅ」以降となればなお納得しかねる面がありますけれども、もう時間も参りましたので、あと一問で終わりたいと思います。  動燃のありようについて議論がございます。政府において改革検討委員会のようなものをつくりまして論議がスタートしました。十八日に第一回の会議があったということで、議事録概要もちょうだいをしております。そういう中では動燃解体に近い議論もあったようでございますし、また、きょうあたりの報道では、政府はという頭つきでそういう報道がなされています。  この動燃の行方について、理事長は東京電力の副社長でいらっしゃいました。そしてまた電事連の副会長でもいらっしゃいました。そういう立場から、動燃は今後どうあればいいのか、これを短時間でお述べをいただきたいと思います。
  216. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 動燃で開発している分野で既にもう達成したもの、それから目的を達成しつつあるもの、そういった分野をできるだけエンドユーザーの電力会社あるいは民間会社に移行していく、それでまずスリム化して再編する。それで残るものといいますと、高速増殖炉並びにその燃料リサイクル、それから高レベル廃棄物の最終処分の問題、この二つが残ると思います。これは今どこかに受けてくれと言ってもまず民間で受けられる見通しはございません。  したがいまして、これはやはり国としてやっていくということになろうかと思いますが、そういう意味で、私ら、この分野はしかと受けとめて開発していく必要がある、こう思っております。
  217. 高橋令則

    ○高橋令則君 一層の御努力を期待しまして、終わります。
  218. 清水澄子

    ○清水澄子君 社会民主党の清水澄子でございます。  今ありましたけれども近藤事長は東京電力の取締役をしていらっしゃった。私が友人にきょう参考人の皆さんにお話を聞くと言いましたら、あそこの役員は科学技術庁と東京電力と関西電力から大体出てきているんだということを言われたんですが、大体そういう役員構成にずっとこの近年はなっているんでしょうか。
  219. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) そういうルールがあるわけではないと思います。私も望んで来たわけじゃなくて、どうしても後を引き継げと言われまして実は参ったわけでございます。
  220. 清水澄子

    ○清水澄子君 最初、近藤事長から動燃のこれまでの反省とどうあるべきかという見解を述べられました。しかし、本当にそれらが実行されておればこういう問題は起きなかったと思います。日本では原発の大事故は起こらない、それが私は今まで日本の原子力開発を進めてこられた人たちの基本的な考えであったと思います。  ですから、事故をどう起こさないようにするか、また起こったときにどういう対応をするかということが、今いろいろお話を伺っていても、そういう実践的な災害時の訓練は行われていなかったとか、私どもが考えれば非常に驚くような事実が今明らかになっていると思うわけです。  今までもプルトニウムを扱うということは、まだ国際的にもプルトニウムそのものが、言葉は悪魔と言われるほど非常に問題の多い化学物質ですから、これに対するいろんな意見があります。ですから、それだけに政府の方は本来ならばこれに対して十分なる事故の対応を同時にやらなきゃいけないんだろうと思いますけれども、今度の場合も万が一何かが起きたときの場合という考えで、事故は起こらないと今までも言い切ってこられました。私は福井県ですので、もう長年そういうお話を動燃の皆さんたちから、日本の技術は非常に高度であって事故は起こらないというのを言い切ってこられたわけですね。  ですから、そういう意味では、他の国では絶えず、緊急時対策という言葉もあるんですが、日本ではそういう言葉もない。結局、防災対策というものが本当におろそかにされていたと思います。ですから、何か事故があったらすぐ住民にある程度情報を知らせて、そして避難をさせるとかそういうことの中で、その放出された放射線が微量であるという言葉だけは出ますけれども、どういう実態だったかだれもわからない。こういう中で不安が増殖しているんだと思います。  それはやっぱりプルトニウムという物質を扱っているという意味の問題意識が欠落しているんじゃないか。ですから、開発技術の方には重点が置かれますけれども、安全対策は絶えず二義的、三義的に扱われてきた。そういう中で、この動燃の安全対策あり方が今非常に大きな問題になってきたと思います。  今伺っていましたら、植松中野参考人はずっと動燃の生え抜きだというお話を聞きましたが、そこで伺います。  このアスファルト固化処理施設の安全性についてなんですが、動燃は既に一九七一年三月から七三年の三月までには、この放射性廃棄物のアスファルト固化処理技術は非常に危ない、水素が発生して爆発する危険性があるという実験をされていらっしゃいますね。そしてそれを科学技術庁に、原子力委員会報告をされています。これは一九七八年にちゃんとそういう実験をされているわけですね。  しかも、これは水素爆発の危険性ということを指摘されたリポートを出しておられるわけですけれども、そういう実験までされたのに、今回この使用済み核燃料処理工場のアスファルト固化処理施設を設計するに当たって、これらの問題について、なぜ、それらの研究をここで生かさなかったのか、その災害や爆発の危険性を想定したそういう設備と、そしてその訓練をなさらなかったのか、お伺いします。
  221. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御指摘のございましたように、このアスファルト固化施設を最終的に昭和六十年、一九八五年に運転を開始するまでの間に幾つかの実験を行っております。  一九七一年から七三年にかけましては、このアスファルト固化が今のようなエクストルーダー方式ではなくて、別の方法で可能かどうかということで独自の開発を行いましたけれども、これは余りうまくいきませんで、実は先ほど来御質問がございますように、ベルギーからの技術を輸入し現在の方法を採用したわけでございます。  先生の七八年にいろいろデータを出しているではないかという御指摘でございますが、これは一九七一年から七三年にかけまして評価試験というのを実施いたしております。その中で、先生今おっしゃいました、水素が出るという御指摘がございましたが、放射線分解による水素の放出量等の測定も行っております。  その結果を申し上げますと、当時のままでございますが、十の八乗レントゲンの、これは非常に大きな放射線量でございます。十の八乗といいますのは、三乗からそこらぐらいでもう恐らく人々がちょっと生きていられないような状態でございまして、非常に大きな放射線量にもかかわらず、アスファルトから出てまいります水素がグラム当たり一立方センチメートルという非常に少ない量であるということが当時実験でわかりました。  それから第二点といたしまして、燃焼性の問題、今先生も御指摘なさいましたけれども、二百二十度を超えますと非常にクリティカルな状態になるけれども、二百十度以下で操作をすればそれなりに安定に処理できるということ。これらのことを参考にいたしまして、加熱に当たっては直火を使わないで加熱水蒸気を使うとか、あるいは御存じのように、放射線量は極めて少のうございますというようなこと等、安全上の解析をいたした上で当時の建設のための申請をしたわけでございます。
  222. 清水澄子

    ○清水澄子君 そういう実験をされているわけですが、しかしこの報告書にも、やはりこういう事故はこの開発には起こらない、考えられないけれども、そういう考慮をして仮の事故を想定しているというふうにわざわざ報告に書いてありますね。ですから、私が冒頭に申し上げたように、事故は起きないのであると、そちらの方にウエートが入っている。いわゆる思想的にこの今日の体質というのはそういうところから出ているんじゃないかと私は思います。  そして、私どもがこれまで三月、四月で、衆議院、参議院でいろいろお伺いをしました、科学技術特別委員会とか。そこでも余りそういうお話はなくて、このアスファルト固化は非常に便利で効率的で長所があるとか、そういうふうな御報告もなさっておられますね。議事録を読みますと、そういう説明をされております。  そこで、もう時間がありませんので次にお伺いしたいんですが、先ほど、動燃の閉鎖性と非公開性については技術集団であるので一般の人たちとの社会性のギャップがあったんではないかというお話がありました。しかし、地元の人たちは非常に不安があると何でも情報を聞きたいということで動燃に電話をかけますけれども、こういう事故が起きたときでもいつでも必ず、中央に聞いてくださいと、こういう返事しか戻りませんね。ですから、東海村の人たちも、自分たちは外からの、よその県の人からしか情報は聞かれない。福井の敦賀の人たちも、地元ではほとんど情報がつかめない、こういうことを申します。  ですから、私はここで、動燃というのは情報を扱う自由というものがどこかから、いわゆる科学技術庁には出すわけですから、科学技術庁からそのような外に出さないようにという指導を受けておられるのかどうか、お伺いします。
  223. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 私の方は、今、情報公開、要するにお客様に理解し信頼していただくためには、とにかく情報を出していくということが大前提だということでやってまいっております。科技庁の方からも、こういう情報は出すなというふうな指示を私は聞いたことはございません。また、来ても、私の方は出していくつもりです。  ただし、国際的な核防護の問題とか核不拡散との関連で制約されるのは、これはやむを得ないと思います。ただし、これもよほど気をつけませんと、こういうのがあって閉鎖性がかなり強くなっているんじゃないか、そういうのを隠れみのに使ってきたんじゃないかという側面も感じられますので、そこは最小限に抑えて情報公開に努めてまいりたいと思います。
  224. 清水澄子

    ○清水澄子君 今おっしゃいましたけれども、この非公開性と閉鎖性というのは、やはりプルトニウムを扱う、核兵器技術に通ずる、核拡散に通ずる、そういう国家秘密の分類に入る、それが私は根拠となっているんだろうと思います。そうであるならば、こういう核物質を今後も扱うとなれば非公開にならざるを得ないということになっちゃうんじゃないですか。ですから、今後本当に情報を公開されるという、そういう確認ができるのでしょうか。
  225. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) もちろん、プルトニウムというのは世界じゅうの人が非常に厳しい目で見ておる物質でございますので、この情報を公開していくということは非常に大切でありますし、昔と違いまして最近は国際機関においてもプルトニウムの保有量その他詳細に公表していこうという動きがありまして、もう既にそれの準備が整っておるところだというふうに聞いております。  そういうふうに、今までは確かにプルトニウムというのはなかなか情報を外に出さないというふうな歴史があったかと思いますが、今後はそういうことがないようにできるだけ情報を公開していくという立場で対処したいというふうに考えております。
  226. 清水澄子

    ○清水澄子君 じゃ、あと一つだけちょっとここでお伺いしておきたいのは、動燃全体の職員は二千七百七十八名と聞いていますけれども、その内訳ですね、動燃生え抜きは何人か、電力会社何人か、東芝とか日立とか受注メーカーは何人かというのをひとつお答えください。  そして最後に、先ほど近藤事長は、今後高速増殖炉の完成を目指したいと発言されておられましたけれども、やっぱりこの非常にトラブルの続出している動燃「もんじゅ」は今後立派に動くとは私は考えられないと思います。ですから、「もんじゅ」を運転の再開を一度中止させるべきだ。そして「ふげん」も、「ふげん」は実証炉のあれがないわけですから、こういうリスクの高い、そして余り効果のない研究をやめられて、そして今、動燃事業団の全施設の運転、建設計画を一時中止して、徹底的に問題点を洗って国民に公開する、そういうことをぜひ私はお願いしたいと思います。
  227. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 職員のうちの出向者は三百七十二名、全体の約一三%ぐらいが出向者でございます。
  228. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 御指摘の「もんじゅ」の件でございますが、先ほど申し上げましたように、今、安全総点検に取り組んでまいっております。もちろん、その結果については公開し、地域その他の御意見は十分取り入れていくつもりでございます。ただ、今は再開をいつにするかとか、そういう段階ではございません。ひたすらに安全確保という観点から総点検をやっていく、これは設計思想までさかのぼって徹底的にこの際やるという方向で今進めている段階でございます。
  229. 清水澄子

    ○清水澄子君 どうもありがとうございました。
  230. 竹村泰子

    竹村泰子君 民主党の竹村泰子でございます。  私は、去る三月二十五日のこの参議院の予算委員会で、ちょうど東海事故の後でございますけれども、動燃の問題を取り上げて質問をしております。  もう午後からいろいろな問題が出ておりますので重なるところは省きたいと思いますけれども、六七年に動燃が発足してから今日まで、このときの質問ですね、政府は約二兆四千億円の出資金を出しております。そして、出資は国債です。主として建設国債が原資となっている。いわば国が借金をして、プルトニウムの研究開発というか、「もんじゅ」などの原子炉、そして再処理、高レベルも含めた廃棄物処理、処分の研究開発に二兆円以上のお金をつぎ込んできたわけです。  それでいて動燃は、これまでの累積欠損金が一兆五千五百億円となっている。同じ政府出資の特殊法人日本原子力研究所は累積欠損金が一兆二千億円となっています。今問題になっている年金福祉事業団などですら税金の累積欠損は一兆円にとどまっているわけですから、税金の使い方はすごいというふうな質問を私はしております。いかに動燃が金食い虫であり、そして動燃事業団が法律によって設立をされていて、これらの問題が国民の共有財産となっているのだろうかという質問をしているわけでございます。  まだまだたくさんのことを動燃にお聞きしたいと思いますけれども、きょうは時間が許されません。  動燃が実際にプルトニウムの処理ですとかそういったことに使う経費はトータルでどのくらいなのだということで、結局八十七億円プラス海上保安庁などの輸送の経費二百三十億円とか、これはフランスからプルトニウムを持ってきたときの話でありますけれども、要するに三百億円、四百億円のお金を使ってプルトニウムの輸送その他やっているわけであります。  私は、「もんじゅ」だけで言いますと、純粋に建設費だけで五千九百億円、そのうち特別会計から四千五百億円使っている。訴訟経費その他毎年の維持管理費へ例えば九五年は二百三十億円、九六年百九十億円、そして九七年度百七十三億円の予算が計上されている。こういうふうな数字を挙げまして、私は動燃のあり方について質問をしたわけです。  何を言いたいかと申しますと、今回のような動燃の情報隠しや虚偽報告、マスコミがよく言う動燃体質というふうな言い方をされているわけでありますが、なぜここまで平気で虚偽の報告、平気だったかどうかわかりませんが、虚偽の報告ができるのかというこの体質、これは先日の四月一日の衆議院の科学技術委員会で理事長がこういうふうにお答えになっていらっしゃいます。「技術集団にありがちなことでございますが、やはり動燃の技術開発集団にも閉鎖性があると思います。非常に優秀な技術屋さんがおりますが、やはり自分たちで技術を完結したいという自己完結型の欲求が非常に強い。」、「どうしても閉鎖的に見えるというところが出てまいります。」、情報の積極的な開示、その他技術交換、共同研究をこれからしていきたいというふうに答えておられるんですけれども、これは全く認識が違うんじゃないですか。  技術屋さん、技術集団はどうしても閉鎖的に見えるとか、だから技術開発分野においても技術の相互交換とか共同研究とかをしていきたいと、これはこれで結構ですけれども、そういうことではない。私は、さっきから申しておりますような国民の税金を使いながら、しかも共有財産を持つというふうな表明をしながら、こういう虚偽報告、事故隠じ、こういうことが平気でできる体質というのは一体何なのでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。簡潔にお答えください。
  231. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 先ほどおっしゃいました欠損金でございますが、おっしゃるとおり平成七年度末では一兆五千五百三十六億と、こうなっております。膨大な数字になっております。  これは、事業団は決して事業をやっているわけではございませんで、たまたま設備を動かして副収入的に得られる売電収入等若干はございます。それから、再処理を電力会社から一部請け負っているということもございまして収入はわずかにございますが、これは本来、事業をやって収益を上げるという事業ではございませんのでどうしても累積赤字は大きくなりますが、国民に有形無形の財産をつくっていっているというふうに理解していただきたいと思います。  ただし、本当にそれに相当するだけの生きたものかという問いはあるかと思いますが、そうあるべく努力していきますということでございます。  それから……
  232. 竹村泰子

    竹村泰子君 もういいです。先ほどから繰り返し努力をいたします、情報公開いたしますというお答えを聞いておりますので、結構でございます。  私は、動燃のこういった問題、これは動燃体質とマスコミがおっしゃっているけれども、そうではなくて、科技庁、電力業界などで形づくられるいわゆる原子力界そのものの特殊性に起因しているのではないかと思うわけです。  もう皆さん御承知のように、原子力の世界は国の政策と密接不可分で、常に国があらゆる意味でパックアップしてきたものです。だから、原子力界では道義性や安全性はセキュリティーの名のもとに二の次にされてきました。国家政策であるわけであります。ですから、日本の原子力政策そのものに私は起因しているのではないかと思うわけですね。  科技庁は、動燃改革検討委員会というのをおつくりになって、動燃だけ挙げて改革を進めても私は意味はないというふうな気もするんですね。動燃で犯した一連の問題は原子力界全体が問われているのであり、原子力政策は今全体を問い直す好機到来と考えられると思います。動燃という名前の金食い虫の特殊法人と私はあえて今言わせていただきますけれども、この見直しは必ず国の重要政策の見直しにつながらなければいけないと思うわけです。  さて、せっかくですからお伺いいたしますけれども、動燃の再処理工場の施設利用率はどのくらいですか。
  233. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 現在までの操業の中で、年間最大九十トンの使用済み燃料を処理いたしてございます。
  234. 竹村泰子

    竹村泰子君 稼働率と申し上げたんですが。
  235. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 一年間のうちに大体三カ月間、中の見直しその他のために操業をとめてございます。それからまた、核物質の点検等々を入れまして、全体で四カ月ぐらい、すなわち三分の一ぐらいとめておりますので、大体稼働率としては最大六〇%から七〇%ぐらいと。
  236. 竹村泰子

    竹村泰子君 その数字は違うと思います。私の調査によりますと、稼働率は、七七年九月十二日運開、今日まで二十年で施設利用率二五%、二五%ですね、施設利用率は。間違いないですね。  この二十年の間、とめていた期間の方が長いんです。民間の企業だったらとてもこれでは存続していません。そのときそのときのいろいろな原因があったと思いますが、なぜこのように施設利用率が低いんですか。
  237. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先生御指摘のように、操業を開始いたしましてからトータル並べての平均の稼働率はその程度のものかと存じます。私、先ほどお答え申し上げましたのは最大でそういう形だということを申し上げたわけでございます。  そこで、この二十年を振り返ってみますと、いわゆる新しい技術としてこれをフランスから入れ、そしてその中でいろいろ技術改良をし、いろいろな初期トラブルに遭い、その技術も新しい技術を取り入れながらやってきたという、そういう意味で、ある意味ではRアンドDの施設ということでやってまいりましたので、必ずしも商業プラントのような高い効率にはなっていないというふうに思っております。
  238. 竹村泰子

    竹村泰子君 そういうことを言っているのじゃありません。商業稼働率と言っているのではありませんが、余りにも低いのではないでしょうか。  再処理技術というのは確立した技術なのでしょうか。もう私は時間がありませんので、まだたくさん研究開発の余地があるのだと思いますけれども、こういった動燃の改革論とも関連して、再処理技術に頼ることが果たして正しいのかどうか、そういうことをぜひ議論していただきたいと思います。  同時に、委員長にお願いですが、予算委員会でぜひこういった問題について、動燃の問題についても集中審議をしていただけますように。  マスコミの報道に伝えられておりますように、「もんじゅ」の事故で自殺をした方がいらっしゃいました。犠牲者がいらっしゃいましたけれども、この方の奥様が二度とうその犠牲者はもう出さないでほしいと言っておられる。そういうことを十分に動燃は受けとめてほしい、「もんじゅ」の事故の反省を十分にしてほしい、こうお願いして、終わらせていただきます。
  239. 阿部幸代

    阿部幸代君 外から動燃に入ってまだ間もない近藤参考人に質問したいと思います。  橋本総理もうそに次ぐうそという表現をせざるを得なかったほどうその相次ぐ動燃なんですけれども近藤参考人は、率直に言って、なぜ動燃が事故隠し、うそつきを繰り返すのだとお考えになりますか。
  240. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 従来からこの程度のものは外に出す必要はない、それがまた一種の生きがいというか、そういう感じの時代がずっと前の先輩に聞きますとございます。そういう中で開発してきたと、それがまだ引き継がれていると思います。  それで、社会環境は大きく変わってきておりますが、動燃がその環境の変化に対してついていっていない、意識の変化がまだできていないということはまことに残念でございますが、原因はそこに大きくあると思います。
  241. 阿部幸代

    阿部幸代君 理事長は、今いわゆる動燃の体質の問題を述べられたと思うんですね。事故隠し、うそつきというのは長い間はぐくまれてきた動燃の体質だということだと思うんですが、ではなぜ、この体質が何によって育てられてきたのか、このことを国民は知りたいのだと思います。私も知りたいのです。  それは未成熟技術の典型と言われ、安全上重大な問題を抱える高速増殖炉や核燃料処理技術まで実証済みだ、だから安全だとしてきた安全神話、これがいわゆる動燃体質を育ててきたんではないでしょうか。実際、「もんじゅ」のナトリウム漏えい火災事故のときにも、現地の技術者は信じられないということを真っ先に言いました。今回もそうなんです。再処理工場の技術者は同じように信じられないんだと私に言いました。  科学とか技術というのは、そもそも客観的な事実とかあるいは科学的な真理にのみ依拠するわけで、信じるということとは無縁なはずなんですけれども、そういう体質が実は安全神話ではぐくまれてきた、ここが重大だと思います。ですから、起こるはずのない事故が起これば、隠すか、小さく見せるか、うそをつくか、いずれかになってしまうんですね。  具体的に聞きます。  再処理技術について、三月十七日の科学技術特別委員会での私の質問に対して科学技術庁の原子力安全局長は、「再処理技術そのものが未確立てあると考えることはない」、こういうふうに答弁していました。火災爆発という大規模事故が起こっても再処理技術は未確立とは考えないと、こう言うんです。  近藤事長も同じ意見ですか。
  242. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 再処理技術そのものが未確立かという先生の御指摘でございますが、再処理技術そのものは全体としては確立された技術だと私ども動燃事業団職員全員信じております。そう思っております。
  243. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 安全神話とか事故は絶対にないとかというのは技術屋のおごりだと思います。そういうことはありません。必ず事故は可能性があります。可能性があるということを率直に外に申し上げ、そのためにこういう対策をやっております。話の中身は場合によると相当難しくなると思いますが、決してそこを省略せずに、長い間、今後原子力を進めるに当たって、周りの理解がないことにはとてもでないけれども進みません。  したがいまして、そこのところを省略せずに、勇気を持って皆さんに理解していただくように今後努めていくことが大事だと思います。
  244. 阿部幸代

    阿部幸代君 動燃には高速増殖炉路線、核燃料リサイクル路線を進めさせるわけにはまいりません。  原子力安全局長は、今回の事故が低レベルの廃棄物を固化処理するためのアスファルト固化処理施設で起こった事故だ、だから再処理技術そのものが未確立てあるとは考えることはないんだ、こういうふうに答弁のときに言っていました。  しかし、再処理施設から出る廃棄物のことをアメリカではすべて高レベル、イギリスでは中レベル廃棄物と呼んでいます。低レベルというのは日本でただ名づけているだけであるわけです。この低レベル廃棄物と言われているものの中にやはりプルトニウムも含まれているわけで、大変危険な物質であることには変わりがないわけです。  そして、アスファルト固化処理施設というのは再処理工程の一部です。工程の一部です。ですから、そこだけ切り離して論じるというのは極めて不合理なことになるわけです。このアスファルト固化処理施設が動かなくなれば工程全体に大きな影響を及ぼし、動かなくなるわけなんです。  まして安全対策はどうだったか。アスファルト固化施設の安全対策について、設置に際する申請書では何と言っていたかといいますと、「火災事故が起こることは考えられない」、これは東海村にもそう説明していたわけです。しかし、「万一に備えて、火災報知機、消火設備などを設けて、重大な事故に至らないようにする。」と、こうあつたわけですが、今回の火災爆発事故です。  安全対策が万全でないような技術の確立というのはあるんでしょうか、理事長
  245. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) 先ほど理事長も申しましたように、全く安全であるとか、全く事故、トラブルがないという技術は私もないと思います。  すなわち、そういったことをハードとソフトと両方の面から押さえつつ、日ごろの運転の中でそういったトラブルは最低になるようにやっていくのが我々のやり方、我々技術者の務めじゃないかというふうに思っておりますが、結果として、安全な運転の実績を積み重ねたりしてまいりますと、緊張感の感覚を失ったり、事故への対応が遅くなったり、不適切なものになったりというようなことがあろうかと思います。こうしたことをみずから反省し、今後に備えていくことが大切だと思っているところでございます。
  246. 阿部幸代

    阿部幸代君 航空機事故防止のための研究などをちょっとしてみました。素人でもわかるような本も出ていたので読んでみたんですけれども、「事故調査」という本です。  この中で「「もう安全になっている」と思うことはきわめて危険で、そういうことでは安全推進を論ずることはできない」、これは全日空で安全推進を担当していた方の言葉です。また、次のようなことも言っています。「小さい事故をどう把握するか。そのためには表に出なかったような小さい事故も誠実に報告させ、それを処罰の対象にしないようなシステムを考えることが大事だ」、こういうことを言っています。現場の各本部はもとより、全社的に冷やりとしたことだとか、はっとしたことだとか、その捕捉を行うということです。  核燃料を扱う動燃が東海再処理工場で実施しているいわゆる無災害競争、これはこうした冷やりとしたこと、はっとしたことの捕捉と矛盾していくんではないでしょうか。事故や災害の防止というのは、そもそも競争でやるものではありません。こんなことをやらせていれば、結局個人の落ち度である、そういう責められ方に一人一人追い詰められて隠すことになってしまうんです。どう考えますか。
  247. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生御指摘のように、安全というのは小さなトラブル、こういったものの対応経験が大きな事故につながらないようにするために非常に必要だというふうに考えております。事業団の施設の現場でも、日ごろから安全活動の中で、先生がおっしゃったような我々の言葉でいわゆるヒヤリハツトとかキガカリシートなどと呼んでおりますが、こういったことで各現場の人たち、やはり安全を守るのは現場の人たちそのものですから、現場の人たちが冷やっとしたこと、はっとしたこと、こういったことをできるだけ集約してこれを水平展開し、ほかの人々にも共有化するという努力をしております。  安全というのは上から考えて下に流していくことも必要ですし、それと同時に、現場の人たちが考える安全とはこうあるべきだというのを上に上げていくことの両方が必要だというふうに私どもは考えて実行しております。
  248. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  本日は、参考人には長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会