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-
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○
国務大臣(
池田行彦君) ただいま
総理から御
答弁があったとおりでございますけれ
ども、
日本時間のけさも、そういったことも踏まえまして、
保証人委員会の
メンバーと
MRTAとの間でいろいろ話し合っておるようでございます。
こういった具体的な問題について詰めを行わなくちゃいけない
段階に入っております。それだけにこれからもいろんなところで困難あるいは障害にぶつかることがあろうとは思いますけれ
ども、しかし、
ペルー政府はもとよりのこと、
MRTA側も
基本的にこの
解決を図っていこうという
姿勢でいるわけでございますから、何とか
人質全員の
無事解放が早く実現するように、
日本政府としてもでき得る限りの
努力を今後とも傾注してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
-
-
-
-
-
○
高野博師君 この
人質が
人間として最も屈辱的な
状況に置かれている、
生存権という最も重要な
基本的人権が侵されている、脅かされていると、こういう厳しい
状況にあるわけであります。
そしてまた、
国家として最も重要な
機能の
一つであります
外交機能の一部、少なくとも
ペルーにおいてはその
機能が全面的に麻痺させられている、これは
国家として重大かつゆゆしき
事態であると、この冷厳な事実の
認識はどうされているのか。そして、先ほど
総理がおっしゃられましたように、
国際社会に迷惑をかけた、
我が国の
国際的信用を著しく失墜させられたという事実をどうとらえておられるのか。そしてまた、この
事件が
我が国の歴史上一大汚点であり、最大の恥辱であり、後世に残る不名誉であると思います。
再度
認識をお伺いいたします。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) どう申し上げたらいいんでしょう。私は本当に当初からこの
事件の中で苦しみ、悩み抜いてまいりました。
委員がおっしゃる中身が決してわからないと申し上げているのではございません。その上で、こうした交渉の進展中において申し上げられること、申し上げられないことがございますことも御理解をいただきたい。
-
-
-
-
○
国務大臣(
池田行彦君)
橋本内閣の
外交の
基本方針、ただいま
総理から御
答弁があったとおりでございますが、そういった
世界の
各国と、
地域的なあるいはグローバルな
機関の中でいろいろ
役割を果たしていくに当たりまして、
我が国として主体性を持ち、
自主性、
自立性を持って判断し行動していく、そして
冷戦構造が終わり新しい秩序を模索している
世界の中で創造的な
役割を果たしていく、こういうことが
我が国の
外交の
姿勢でございます。
そういったことを
基本にしながら
一つ一つの
外交案件に対処してまいるわけでございますが、ただ、今おっしゃいました
ペルーの
事件との
関係で直ちにそれがどういうふうにあらわれているのかという点でございますけれ
ども、それは御説明すればいろいろ説明のしょうはございます。しかし、そういったことを無理やり
一般原則とこの個別の問題について結びつけることじゃなくて、ともかくそういった
役割を果たさなくちゃいけない
日本という立場を十分に自覚しながら、この際は、テロリズムの主張、要求に屈することなく、そして平和的に
事件の
解決を図っていく。こういうことで、確かに今回の
事件は非常に遺憾なこと、残念なことでございますけれ
ども、こういった試練を乗り越えて、
国際社会において
我が国がきちんとした地位を占め、そして
役割を果たすということを
世界に見ていただく、このことが大切だと思っております。
-
○
高野博師君 全然答えになっておりません。
例えば、
総理や
外務大臣がドミニカ共和国あるいはキューバに飛ぶ、そういうようなことがあってもいいんではないかと私は思っております。
ところで、この
事件に関する
日本側の
最高責任者は
官房長官でしょうか、それとも
総理でしょうか。
-
-
-
-
-
-
○
国務大臣(
池田行彦君)
我が国の
外交活動を行う
施設でございますから、
接受国におきましてもそういったことを尊重していろいろ対応してくれる、こういうことが
原則になっております。これはウィーンの
議定書で決まっているわけでございます。
ただ、それを法律的に申しますと、これは
主権とかそういうことではなくて……
-
-
-
○
高野博師君 だめだよ、事実を聞いているんだから。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) このケースでございますと、
日本の
合意を得ずに
接受国である
ペルーの
官憲等がみだりに入っちゃいけない、こういうことがあるということでございます。
しかしながら、これを、一般的な
表現として
我が国の
主権、それのあらわれである
外交機能を果たす場所であるからという言われ方が、
官房長官の話でもあったかと思いますけれ
ども、またいわゆる
専門家の中でも早い
段階でいろいろ言われたところでございます。
言葉の法律的な意味と一般的な意味合いとの違いというのは若干あろうかと存じます。
-
-
-
○
高野博師君 私もテレビで見ておりまして、
主権が及ぶという
表現を明確にしておりました。それはお認めになりますか。
では、
主権とは何でしょうか。法制
局長官。
-
○
政府委員(大森
政輔君) その前に、お尋ねの件に関する、
外交関係に関するウィーン条約の二十二条に関して
官房長官は
主権という言葉を口に出されたわけでございますが、二十二条は「使節団の公館は、不可侵とする。
接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。」、この条文を指して
主権と言われたわけでございますけれ
ども、正確には
不可侵権という言葉遣いが正確であろうと思います。したがいまして、そのようにお聞き取りいただいたらいいんじゃなかろうかと思います。
そして、
主権とは何かというお尋ねに関しましては、いろいろな面からの説明があろうかと思いますけれ
ども、独立国として国に与えられる最高の
機能という程度のことであろうと思います。
-
○
高野博師君
官房長官のあの
主権という発言は、そういう意味には一般にはとっておられません。まさに
日本国が持っている
主権という、その後のマスコミ論調、
国民の理解、これはみんなまさに
主権、唯一絶対、不可侵、不可分、国内的には最終的に政治を決定する権力、あるいは対外的には独立性を意味する、こういうふうにとっておられます。したがって、いろんな議論が出ました。私は、
官房長官の発言は世論をミスリードしたと、そういうふうに理解しております。
不可侵権という理解は、皆さん、しておりません。
官房長官、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
梶山静六君) 私は、あなたのように
外交的な専門官でもありませんから、どこへ行ってどういう言葉が法律的に正しいかどうかに関してはわかりませんが、少なくとも一般の外国にあるそれぞれの民間の
機関やその他と違って
外交の特権的なもの、今でいえば
不可侵権と言うのだそうですが、少なくとも制限的な
主権がそこに付与されていることは私は常識としての範囲内だと思いますし、そこは全く完全な
主権であるかどうかということになれば、常識で考えれば小さな大使館か
公邸が完全
主権で生きられるはずがございません。極めて制限的な
主権があるというふうに理解をすることが私は常識だと思います。
-
○
高野博師君 そんなことはありません。これはマスコミ論調等を見ればわかります。
日本の領土と同じだという理解をしている人が相当数おります。これは、ミスリードした
官房長官の発言の
責任は私は重いと思います。
それでは、ウィーン条約二十二条とはどういうものでしょうか。
-
○
政府委員(林暘君) 先ほど法制
局長官もちょっと触れられましたけれ
ども、ウィーン条約の二十二条というのは、
外交使節団の公館というものを不可侵とするということで、派遣国の同意がない限り
接受国の官憲が公館に立ち入れないという考え方を規定しているのが二十二条でございます。
-
○
高野博師君 もっと具体的に二十二条の二項を説明してください。
-
○
政府委員(林暘君) 二十二条の二項は、今申し上げました公館が不可侵であるということの裏返しといたしまして、その
接受国、その公館が存在する国でございますけれ
ども、それが「侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る」ということを規定してございます。
-
○
高野博師君 このウィーン条約は、一般的に
外交使節などに対して
接受国が
主権を持っている、その国内法の適用を受ける。しかしながら、
外交的な任務を能率的に円滑に遂行するためにある程度の特権、免除が認められている。そういうことで、この二十二条は、
接受国の側で
外交使節、公館、
公邸を保護するために最大限の警備をしくという特別の責務、
責任と義務を負っているということが規定されているわけであります。
そうすれば、しからば今回の問題についてどちら側に
責任があるかというのは明確になると思います。
それで、今回の
事件について、このウィーン条約に基づけば、
ペルー側に
責任があると思いますでしょうか。
総理、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 先ほど条約
局長からお答え申し上げましたように、ウィーン条約に基づきますならば、第一義的にはその警備の
責任は
接受国にあると、こういうことでございます。
しかしながら、当然のこととして派遣国の方も、みずからの大切な
施設でございますから、その安全が損なわれないようないろいろな措置なり配慮はしなくちゃならない、こう思います。
-
○
高野博師君 私は
責任を聞いているんです。どちら側にあるんでしょうか。
-
-
○
高野博師君 それでは、在イランの米国大使館で同じような、性格はちょっと違いますが、こういう
事件がありました。この概要についてはどうでしょうか。
-
○
政府委員(川島裕君) 七九年の十一月にイスラム革命支持派の学生が在イランの米国大使館を襲撃し占拠したわけでございます。そして米国
外交官六十数名を拘束いたしました。この
事件の特異点は、イラン政府自身が右占拠を容認いたしまして、これは非常に長引きまして、結局アルジェリア政府の仲介によって
人質が解放されたのは一九八一年一月ということで、四百四十四日間拘束が続いたと、こういう
事件でございます。
-
○
高野博師君 その結果
責任についてはどういうことになっておりますか。
-
○
政府委員(川島裕君) 法的な観点から申しますと、実はこの間、米国政府が占拠の中止を求めて国際司法裁判所に提訴いたしました。
不可侵権を享有する米国大使及び
外交官を保護するためにイラン政府が適当な措置をとらなかったではないか、これは国際法違反ではないかという点がまさに問題となったわけでございます。
八〇年になりまして、五月に国際司法裁判所は、確立した一般国際法上等の義務違反によりイランは国際法上米国に対して
責任があるという判決を下した次第でございます。しかし、これは
事態の
解決には結びつかなかったと、こういうことでございます。
-
○
高野博師君
ペルーの場合も、ぺルーの一般的な治安
状況を含めて警備体制を十分にとらなかったということであれば、国際法的には
ペルー側に
責任があると言えると思うんですが、どうでしょうか、
総理。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 確かに、
ペルーにおきまして一九八〇年代に入りましてから、センデロ・ルミノソあるいはトゥパク・アマル革命運動などの活動の活発化によりましてテロ
事件が頻発していた時期がございました。また、
経済不振などにより貧困ゆえの強盗あるいは誘拐等の一般犯罪も増加をし、治安情勢が大幅に悪化をしていた時代がございます。
九〇年代に入りまして、フジモリ大統領は、テロ組織との妥協は一切行わないという
基本方針を堅持されて、
ペルーにおけるテロ破壊活動の犠牲者というものは約六分の一に減少してまいっておりました。
他方、在
ペルー大使館は、過去三回にわたりまして
テロリストによる攻撃を受けてまいりました。そうしたところから、
我が国は、この大使館を最も脅威度の高い公館と位置づけて
大使公邸と大使館の双方について厳重な措置をとっておりました。
また、
事件の発生いたしました日には、多数の招待客の来訪が見込まれますことから、
ペルー警察当局に対しまして警察官の派遣を依頼するなど、最大限の警戒措置をとっておりました。
-
○
高野博師君 重要なことは、
ペルー側が厳重な警備体制をとろうということを妨げる事由が
日本大使館側に存在すれば、これは
日本側の
責任も生ずると思います。この点、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) もとより、このような
事件が起きたわけでございますから、なぜこのような
事件が起きたかを解明し、そして再発しないようにいろいろな措置はとっていかなくちゃならないと思います。そして、もとよりそういったことを検証します過程においてあるいは
責任という問題も当然考えなくちゃいけないと思います。
しかし、
委員にお考えいただきたいのは、現在我々がどういう
状況、どういう
段階に置かれているかということでございまして、もう三カ月を超える間、
人質の状態に置かれた方々が多数おいでになる。何とか全員の
無事解放を実現しようと、今
ペルーの政府も、そして
我が国の政府も、そして
保証人委員会の
メンバーも、いや
国際社会がみんなそれを願い、そのために
努力している過程でございます。
そういったことでございますので、
責任論については私
ども決して逃げるわけじゃございませんけれ
ども、今はまずこの
事件の
解決に
努力したいと、こういうふうに考えているところを御理解賜りたいと思います。
-
○
高野博師君 それは当然であります。私もそう願っております。
しかし、一部報道によれば、これは
ペルー国家警察の内部文書によると、
日本側が厳重な警戒を断ったという事実が明らかになっております。これについてはどうでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君)
ペルーにつきましては、先ほど
総理からも御
答弁がございましたけれ
ども、いっときに比べれば大分治安情勢はよくなってまいりました。しかしながら、過去にいろいろなこともございましたし、今でも厳重な注意をしなくちゃいけない、そういうつもりで我々も対応してきたつもりでございます。しかしながら、結果としてこういうことが起こったということは、やはり根本的にまた洗い直さなくちゃいけないと思っております。
ただ、残念ながら大使を初め大部分の公館員が今なお
人質の身にある状態でございますので、そういった意味で、まず
事件の
解決を図った上でそういった問題点につきましてもいろいろ検討はしていきたいと、そういう体制は既に組んでいるところでございます。
-
○
高野博師君 全然質問に答えておりません。
この内部文書を毎日新聞が三月七日付で出しておりますが、
公邸内の警備は大使館の警備スタッフがやる、したがって地元警察は
公邸外の警備をしてもらいたい、交通整理などをやってもらいたい、こういうことを依頼したと。それから、警察側から爆発物のチェックや
公邸内の警備を申し入れたけれ
ども、大使館側は断った、逆に警備はできるだけ目立たないようにしてもらいたい、そういう要請があったと。そして、招待客は当初五百人と報告されたけれ
ども、実際には千二百人ぐらいにふえた、
公邸入り口は大混雑に陥った、入り口に設置していた金属探知器も撤去された、招待状を持っていない人でも邸内に大きな箱をチェックも受けずに運び込まれた、こういうことが明らかになっております。
この事実
関係はどうでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 大変恐縮でありますけれ
ども、そうした報道が現地の新聞に出ておりましたこと、そしてそれは
ペルーの政府の中におけるこうした分野の
関係者の話として出ておりましたことを私も承知いたしております。
しかし同時に、これに反論のできる
我が国の大使館員は残念ながら全員が今
人質の状態にある、そうした
状況にあります。
そして、逆に今我々は、こうした報道が
人質の方々に与える影響、家族に与える影響等をも留意しながら
ペルー政府に慎重な行動を求めておりますが、きちんとしたお返事をこの場で申し上げられるような
状況にないことも、また
ペルーの国内紙の報道というものが一〇〇%真実をクロスチェックをして書いておられるかどうかに対しての疑問もぜひお持ちをいただきたい。
私たちは、今
ペルー政府と協力をしながら、どうやって
人質になっている方々を全員無事に救出しようかということに意を用いているところである、その
状況も
外交に長い実績をお持ちのあなたであればおわかりがいただけることでありましょうから。
-
○
高野博師君 担当者が今
人質になっているということはわかります。しかし、何人かは出ているわけです、
人質の中から。これは事情を聴取すればすぐわかるはずです。金属探知器があったのかないのか、あるいは千二百人ぐらいいたのかいないのか、このぐらいはすぐわかると思います。そういう調査もやっていないんでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) でき得る限り、
公邸内から外に出ることのできた方々からは
日本人だけではなくお話を伺い、分析もし、それを私
どもの行動のいわば参考資料として使わせていただいておりますが、それをこの場で公開することはお許しをいただきたいと思います。
なぜなら、今
MRTAは外部からの報道を
一つの情報源にしているということが伝えられており、関連する情報をでき得る限り彼らに与えないという
一つの問題がございます用意図しない形で外部の報道
機関から彼らに情報が届けられ、その結果、交渉が混乱をしたこともございます。こうした点につきましてはぜひ御留意をお願いいたしたいと思います。
-
○
高野博師君 私も自分の友人が
人質になっております。毎日気にかげながら仕事をしております。その思いは
総理に劣らないと私は自負しております。
総理は今いろんな情報が相手方にも入るとおっしゃいましたけれ
ども、例えばトロントに行かれたときに気が重いとか夜も眠れないとか、そういう情報も全部入るんです。したがって、まさに足元を見られるような発言も出ているわけです、
総理の方から。私はこの
責任を何も
ペルーとの間ですべて明確にしろというのではありません。しかし、
認識としてきちんと明確にしながら対応することが大事ではないか、こう思います。
警備については、まさにネストル・セルパ容疑者自身が、
大使公邸の警備は恐ろしいよ、信じられないほど手薄だったと、そういうことも言っております。これはいずれ
事件が
解決した後に明確にすべきこととは思いますが、
国民の納得のいく形でこれに対応することが必要だと思います。
ところで、
ペルー政府がトンネルを掘っていた
可能性があるという報道がありました。それで一時交渉が中断して、今また再開されました。この掘っていたという事実はあったんでしょうかなかったんでしょうか。
-
-
-
○
政府委員(林暘君) 先ほど申し上げましたように、二十二条の
公邸の
不可侵権は「公館は、不可侵とする。」という規定になっておりまして、それがこの規定上どこだということは書いてございません。御質問の趣旨がどういうことかでございますけれ
ども、書いておるのはそういうことでございます。
-
○
高野博師君 全然答えておりません。どこまで及ぶかと言っているのであります。
公邸は建物と敷地に及ぶというのが常識であります。それで、その
不可侵権は地下まで及ぶんでしょうか。
-
○
政府委員(林暘君) 先ほどの御質問との
関係で、ここでそういう
答弁を申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれ
ども、法律論として申し上げれば地表だけではないというふうに思います。
-
○
高野博師君 そうであれば、当然トンネルを掘る場合には
日本国の使節団の長の同意が必要だと思います。
したがって、もし掘っていたという事実が本当であれば、これはフジモリ大統領の方に二つ問題がある。
一つは強行突入の選択肢、武力行使の選択肢を彼は持っていた、もう
一つはトンネルを掘るということに関して
日本政府に同意を得ていなかったという二つの問題があります。これはまさに国際法違反でありますが、このフジモリ大統領の対応に対して
日本政府は理解を示しているんでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 先ほどこの問題についてお答えを差し控えると
外務大臣から言われました。その上で、これはラジオ等に対するインタビューの中で大統領自身が述べていることでありますが、当然ながら
MRTAが起こしたこの問題に対し国が立てている計画や戦略がどのようなものであるか
国家は明らかにできない、私はトンネルがあるかどうかを言うつもりはない、繰り返すが私は何も認めていないし否定もしていないと。私もフジモリ大統領がこうした態度をとっていただいていることを非常に幸いに思っております。
-
○
高野博師君 フジモリ大統領は、平和的
解決の条件としては
人質の生命と健康が尊重されることを挙げている。そして、この条件が守れない場合は武力行使も辞さないという意向を表明しておりますが、この点は政府は納得しているんでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) トロントでのフジモリ大統領との論議の中にはさまざまな問題がございました。そして、あくまでも
テロリストに屈することなく、
人質となっておられる方々の全員の生命を無事に救出する、これに向けて両国が力を合わせるという意思を双方が確認いたしました。
同時に、大統領としては、しかし
テロリストが例えば内部の
人質の命に危険の及ぶような行動をすれば、
ペルー政府としては別途のことも考えるということも言われました。その場合には事前に必ず連絡をしてもらいたい、イエスと言うばかりではありませんよというのがそのやりとりです。それ以上はもう御勘弁をいただきたい。
-
-
○
国務大臣(
池田行彦君)
保証人委員会は、この
事件を
解決するために
ペルー政府と
MRTA側の話し合いが円滑に進むように
役割を果たそうという性格のものでございます。そういった
役割を果たすためにどういう人がその中に入るのがいいのか、あるいはどういう立場がいいのかということでいろいろ知恵を絞った結果、現在のような形になっているわけでございまして、これは決して法律や条約によって決めるものじゃございませんから、その性格づけをここで細かく規定したり追求するということよりも、こういった今の
メンバーの方々がよく御相談をしながら何とか期待される
役割を果たしていただく、このことが肝要かと存じます。
-
○
高野博師君 実質的にどこが違うかということを聞いているんですが、答えておりません。
この
保証人委員会の議案の作成とか、寺田大使が中心的にやっておられる。口上書も連名で出している。ほとんど正式
メンバーと変わりないことをやっておるんですが、
オブザーバーという形をとったことによって
日本側は一歩腰が引けたという印象をぬぐい得ないと私は思っております。
総理がある記者の質問に対して、
オブザーバーの寺田大使が議案の取りまとめにかかわることで
日本政府も深く関与することになりますがという質問をされたのに対して、
日本政府というより寺田さんがだと、こういうことを言われたそうですが、真意はどこにあるんでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 一々新聞記者になぜこう言われたかと言われましても、その新聞記者がどういう
状況で聞いたか、そして彼らがどのようなつもりでそれを受けとめたかにもよるでありましょう。
しかし、寺田大使、駐メキシコ大使でありますが、中南米
局長時代にフジモリ大統領との間に親交を深め、そしてフジモリ大統領からも
オブザーバーとしてのかかわりを求められ、そしてその中で恐らくさまざまな御相談があったでありましょうが、
オブザーバーとして迎えたいという要請が寺田さんという属人的な指名で
日本側に要請をされました。私は、これを喜んでお受けする、そういうふうに御返事をしてほしいと言いました。
-
-
-
○
高野博師君 それでは、危機管理についてお伺いいたします。
阪神の大震災、あるいはサリン
事件、O157、
ペルー事件、重油の流出
事件、一連の
事件は政府に危機管理能力がないということをさらけ出したと私は思います。
国民の生命と財産を守る危機管理ということは
国家としてなすべき最も
基本的な仕事であります。それができないということは、ガバナビリティー、統治能力がないということであります。政府、
国家の体をなしていないと私は思っておりますが、
総理の
認識はいかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 阪神・淡路大震災という本当に悲惨な結果を生じました大地震、またそれぞれのケースをお挙げになり、政府にガバナビリティーがないとお決めつけになるのであれば、やむを得ません。
政府の危機管理で一番最初に必要なことは現地の第一報であります。そして、この数日を考えてみましても、東海村において起こりました
事態、昨日も御
答弁を申し上げましたように、現場から科学技術庁に、動燃から科学技術庁に事故発生の連絡が来る時点で大きな時間が費やされた。この点はおわびを申し上げたところでありますが、こうした
事件が起こりましたとき、その発見者が一刻も早く政府に連絡をとってくれるように我々としては願っております。
そして、ナホトカ号の
事件が発生いたしましたとき、最初求められましたことが人命救助でありましたことは議員も御承知でありましょう。そして、一人を除いて全員を救出いたしました。と同時に、油の流出が確認をされ、海上保安庁の諸君が必死になりまして船首部分の接岸を防ぐべく
努力をいたしましたが、結果として三国町沖にこれが打ち上げられ被害を拡大いたしました。
そして、もう本院でもしばしば御論議があり、おしかりを受けましたが、
我が国の油流出事故に対する備えとして航路のふくそうするいわば平水域を中心とした体制しかつくれておらなかった。公海上における、しかも荒天下の作業に使用可能な船舶そのものを持っておらなかった。こうした点まですべておしかりを受けるとすれば甘受いたします。
-
○
高野博師君 ガバナビリティーがないと言われてもこれはやむを得ない、そういう批判は甘んじて受けるということでございますね。
第一報が重要だということは、危機管理上これはもう論をまちません。しかし、私が先ほど何度かお伺いしたのは、
責任の所在が明確でないところには危機管理能力の向上はないということであろうと思います。
日本型コンセンサス社会、特に行政の中においてはまさに集団的な無
責任体制が存在する。こういう中では、どの
事件、事故が起きても
責任をとらない、だれも
責任をとらないということがあって、しかもその上で一番大事なのはやはりトップのリーダーシップであります。
第一報を得てからトップがどういう判断をするのか、決断をするのか、まさにトップのリーダーシップが一番重要である、トップの危機意識が重要だと私は思いますが、
官房長官、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
梶山静六君) 意識は持っておりますが、能力が果たして万全であるかどうかは、私自身も神ならぬ身、抜けるところがあるかもしれません。しかし、全力をもって取り組んでいることだけは事実であります。
-
-
-
○
高野博師君 そんなことを聞いているのではありません。あの
大使公邸は、全
世界にあの中、
公邸の構図、全部出ているわけです。恐らく
解決した後は
大使公邸としては使えない、そういう
認識があるかどうかを危機管理能力があるかどうかということで伺ったわけです。
いずれにしても、この
公邸は何らかの形で別な使い方をしないと、中南米では何度も同じ手口でやられるんです。
事件が起きている、そういうことの
認識も持っていただきたいと思います。
亀井大臣に
一つお伺いいたします。
今この
人質が大変な
状況に置かれている中で踏ん反り返って寝ている。こういうことで本当に
国民のことを、
国民のために働こうという意思があるのかどうか。もしできれば
人質の皆さんにここからメッセージを送っていただきたい。
-
○
国務大臣(亀井静香君) 寝ておりません。寝ておったというなら、あなた、具体的にそれを事実として指摘ください。(「寝ている格好しているよ」と呼ぶ者あり)格好しているって、何言っているんだよ。冗談じゃない。これは名誉にかかる話だ。
あの
人質の方々は頑張っていただきたいと思います。特に大使初めあの
外交官の方々は、私は、国を代表して毅然とした態度で頑張っていただいていることに対して大変敬意を払っております。
-
-
-
○
高野博師君 それでは、北朝鮮問題についてお伺いいたします。
北朝鮮の有事をにらんでアメリカ側が日米共同行動の指針の早期整備を要請したとの報道がありますが、これは事実でしょうか。
-
○
政府委員(折田
正樹君) 指針の見直し作業は本年秋までに完了することで進めておりますが、御指摘のように、指針の見直しとは別枠で北朝鮮の話云々の要請があったという事実はございません。
-
○
高野博師君 これは二月二十三日と三月三日、ワシントン発の共同で伝えられておりますが、この報道によれば、アメリカ側が
日本の危機管理能力に不安を持っている、アメリカにとって
日本の危機管理体制の強化が緊急な
課題だということでこの要請をした、それと日米防衛協力のためのガイドライン協議の停滞にいら立ちを感じている、今回の
提案に
日本側が否定的な態度をとれば安保強化への道筋をめぐる両国の考え方が表面化するおそれがある、米国の対日失望感が一層強まるであろうと、こういう報道をしておりますが、この報道ぶりについてはどう思われますか、
総理。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 私
どもは、いわゆるガイドラインにつきましてはこの秋にまとめるということで作業をしているわけでございますし、それから、今御指摘の報道に触れておられるような米国の要請があったということは事実ではないということは
局長から
答弁したとおりでございます。
私
ども、米国との間では、いろいろ協力のありようであるとか、あるいは
我が国の安全に影響を及ぼし得る
事態が生じた場合にどういうふうに対応していくか等々についていろんな機会に話し合いをしておりますけれ
ども、少なくとも今御指摘になった報道に触れられておるような米国側が
日本の対応ぶりに不満を持っておるなんということは承知しておりません。少なくともそういったことがこちらに表明されたという事実はございません。
-
○
高野博師君 これが全くの推測記事であるとすれば大変重大なことだと私は思います。
それで、半島の情勢に対する
日本側の
認識を伺います。そして、アメリカ側がどういうふうに見ているのか、もしこれもわかればお教え願いたい。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 朝鮮半島の情勢につきましては、主として北朝鮮の情勢を指しておられるのだと思いますけれ
ども、御承知のとおり、
経済的な面では非常に困窮の度が強まっているというのは事実であると思います。しかし、それは決して一部に言われているような去年あるいはことしの天候の異常に基づくものだけではなくて、やはり
経済運営あるいはさらにその根底にある
国家運営そのもののそごと申しましょうか、誤りに基づくものじゃないかと考える次第でございます。
経済社会情勢はそういうことで非常に問題がございますけれ
ども、政治の方はどうかと申しますと、先般の黄書記の亡命に見られるように確かに政治体制にもいろんな無理が出てきている、問題含みであるということは言えると思います。しかし、一般的に申しますと、なお金正日書記が全般的な指導権を持っておる、このように考えている次第でございます。そして、その指導体制の中で、巷間いわゆる硬直した考えをする者と柔軟に対応しようとする者との勢力争いがあるとか、あるいは世代間のせめぎ合いがあるとか、いろんなことが言われておりますけれ
ども、これだけ厳しい
状況にあるだけに、どういうふうにこの体制を維持していこうかということでいろいろな試行が行われているということは十分あり得るんだと思います。
しかし、いずれにいたしましても、朝鮮半島全体の安定、そうしてまた北東アジア
地域全体の安定にとって北朝鮮がこれからどういう姿になっていくかは大きな影響を持つところでございますから私
どもも注視はしていかなくちゃいけないと、こう思っておる次第でございます。
米国はどう見ているかという点でございますが、これも
基本的には私
どもと同じような
認識でございます。
ただ、
経済的な困窮度合いの程度をどう見るかとか、あるいは政治的な体制の中のきしみをどの程度に見るかという点でニュアンスの違いはあると思いますが、それは米国と
日本との間に違いがあるというよりも、米国でもいろんな見方がある、
日本でもということでございまして、いずれにいたしても、こういった問題については米国と
日本あるいは韓国との間でいろんなレベルで緊密に情報なり意見の交換をしてきているところでございまして、今後とも注視をしてまいりたいと思います。
-
○
高野博師君 北朝鮮の問題については
国民の七五%が不安を持っているという世論調査が出ております。
国民の関心が非常に高いと私は思いますが、朝鮮半島情勢の
認識について日米間に
認識の差が
基本的にないということであれば、それは日米安保体制のことも含めて円滑な運用上非常に重要なことだと思います。
それで、半島有事の際にはどういう
事態が想定されるんでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) そもそも有事という言葉に国際法上きちんとした定義があるわけじゃございません。そういった意味で、朝鮮半島有事とは一体何を指されるのかなのでございますけれ
ども、一般論といたしまして、私
どもは当然
我が国周辺の
地域の安定には深い関心を持っておりますし、そういった安定を維持するためにどういうふうに対応していくべきか、日米安保体制のもと、米国とは緊密に連携をしながら考えてまいります。また同時に、
外交努力を通じましてこの
地域全体の安定が高まるように、維持されるように心がけているところでございます。
-
○
高野博師君 半島有事の際には難民が出るというのは共通の
認識になっておりますが、一般難民に加えて武装難民あるいは工作員の潜入等も予想されるというようなことも言われております。
アメリカの報道によれば、中国は北朝鮮との国境に約十万人ぐらい収容できる難民の収容
施設を建設中というようなことが言われておりますが、この事実は御存じでしょうか。
-
-
○
高野博師君 確認できないということでありますが、中国側は難民という問題を相当深刻にとらえていると私は思います。
日本の場合もやはりこの問題に対しては相当前向きの対応をしておかないと大変なことになるなと。
それで、先般黄書記が亡命を求めました。黄書記は、北朝鮮では毎年数万の餓死者が出ている、食糧援助だけが戦争を防ぐ道だ、それで北が富強になることはない、賠償金の場合は金正日体制の強化につながる、そしてまた北は核爆弾五発あるいはミサイル等を保有していると、こういう発言内容でありますが、これについてはどう思われますか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 黄書記の言葉としてそのようなことが報道されておることは承知しておりますけれ
ども、それについて私の立場からいろいろコメントを申し上げるのは避けた方がいいと思います。
いずれにいたしましても、朝鮮半島の情勢には引き続き注目してまいりたいと思います。
-
○
高野博師君 それでは、きのうの産経新聞のトップに、新潟の少女が拉致されたという報道の中で、北朝鮮の亡命工作員が本人に会ったというようなインタビューの記事が載っておりますが、この拉致
事件について捜査は今どういうことになっておるでしょうか。
-
○
政府委員(杉田
和博君) 御指摘の事案につきましては、拉致された
可能性があるということで現在所要の捜査を進めております。特に、関連情報の裏づけ、さらにまた同種事案との関連、こういった点に重点を置いて捜査を進めておるところでございます。
-
○
高野博師君
日本は、食糧援助、一昨年は五十万トン、昨年もWFPを通じて六百万ドルですか、こういう援助をやっております。そういう援助でありますが、まさに人道的な援助ということでありますが、
日本人の人道、人権が侵されているというこの事実に対して、これは先方に対してどういう対応、措置をとっているんでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 拉致
事件については、先ほど捜査当局としても所要の捜査をしているというお話がございましたけれ
ども、外務当局といたしましても情報の収集等については当然のこととして
努力しているところでございます。
それからまた、御承知のとおり、この種の
事件としまして李恩恵の
事件がございました。あの際には、捜査当局の調査の結果、そのことはかなり確度が高いという判断をいたしましたので、日朝の正常化交渉の中でこれを提起して北朝鮮側に調査を求めたわけでございますが、むしろこのことが原因になりまして正常化交渉が途切れた、こういうことになっている次第でございます。
いずれにいたしましても、私
どもといたしましても、この種
事件につきましては重大な関心を持ち、適切に対処してまいりたいと思います。
-
○
高野博師君 一昨年の五十万トンの米の援助については、WFPの発表によれば、米の大半は軍に優先的に配給された、残りは中国国境で一対八の比率でヒエに交換されていたということが発表された旨の報道があります。このWFPの発表は確認できたんでしょうか。
-
○
政府委員(
加藤良三君) 御指摘のような確認はなされておりません。
-
-
○
政府委員(
加藤良三君) 北朝鮮についてはいろいろ不透明性がございます。その中でWFPによるモニタリングというのが現在でき得る限り現実的に透明性を確保する最善の手段であるという
認識がございまして、そのようなWFPの計画に我々として参加していると、こういうことでございます。
-
○
高野博師君 この問題については確認するようにお願いしてあると思いますが、何もやっていないんでしょうか。
-
○
政府委員(
加藤良三君) WFPは今現実に確保できる最大限の透明性を求めていろいろの作業を行っております。我々もそれに参加をしております。そういうことによってWFPがまさに食糧援助を北朝鮮に対して行うという目的を一番よく達成できるように協力するという体制を一貫してとっております。
-
-
○
委員長(
大河原太一郎君)
局長の
答弁で直接確認しているいないという言葉は使っておりませんけれ
ども、一番信頼し、直接
関係するWFPにおいても確認をしておらないということを現に言っておる
答弁があると思いますので、それで十分だと思います。
-
○
高野博師君 私が聞いているのは、WFPの発表について、これが真実かどうか確認をしたかということを聞いているのであります。
-
○
政府委員(
加藤良三君) 御指摘になりましたWFPの調査の際には我が方からも人員一名を現地に派遣してモニタリングの作業に従事させたということがございます。したがいまして、私たちは、今現在望み得る最大限の限度のところで透明性が確保されるようなWFPの食糧支援作業というものが行われているという前提のもとに協力を行っておる、こういうことでございます。
-
○
高野博師君 そうすると、この米は、大半は軍に行った、それからヒエにかわっているという事実を認めますか。
-
○
政府委員(
加藤良三君) WFPがそのようなことを公に外に出していることはないわけでございまして、その意味においては確認はできません。
-
○
高野博師君 これは昨年の八月三十日に産経新聞に出ております。重大な報道でありますが、これについて何の確認も今までしていないということは問題があると私は思います。政府は一貫して米は北朝鮮の
国民に配給されたと主張しております。北朝鮮側の報告をうのみにしていた。政府は、もしこのWFPの発表が真実であれば、
国民にうそをついていたということになります。
この件については必ず確認をしていただきたいと思います。
外務大臣、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(
加藤良三君) WFPとはいろいろな接触の機会が今後もあろうと思いますので、その過程において適切な対処はいたします。
-
○
高野博師君 それでは、確認するという理解でよろしいですか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 今後とも、WFPを通ずるいろいろな透明性の確保の作業をよく見ながら、また
日本としてもそういう機会があればそれに参画をしていくと、こういうことでございます。
-
○
高野博師君 なぜ直接問い合わせをやらないんでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 問い合わせとおっしゃいますが、御承知のとおり、今北朝鮮とは国交
関係がないわけでございます。WFPとの
関係でございますならば、先ほど来
局長から
答弁しておりますように、WFP自体の透明性確保のための作業に
我が国も人を派遣していろいろやっているわけでございます。それで、先ほど
委員のおっしゃいました報道されたようなWFPとしての発表というものは、それはないということを
局長が
答弁したわけでございます。そういった意味ではそれがないということは確認申し上げたのだと思います。
-
○
高野博師君 ないということではなくて、この報道に対して、もう一回直接WFPに、あるかないか、こういう発表をしたかしないか、その事実を確認してもらいたいと思います。
-
○
政府委員(
加藤良三君) WFPはそういう公式の発表を行っていないという前提のもとで我々は今後ともWFPの作業に適切に対応してまいります。
-
○
高野博師君 全然
答弁になっておりません。この事実
関係を確認していただきたいということであります。
-
○
政府委員(
加藤良三君) たまたま一紙に報道された新聞記事に基づいて、WFPが公式に発表していないことについてまた改めて確認を求めるということをこの場で私がお答えするのは必ずしも適当ではございませんが、WFPとは常に我々は接触を密にしておりますので、その過程において我々の意見、見方というものを適切に伝えてまいりたいと思います。
-
○
高野博師君
答弁になっておりません。確認をしていただきたいとお願いしているわけです。
-
○
政府委員(
加藤良三君) 発表していないものをあなたは発表しましたかと言って確認するというようなことを必ずしも考えておりません。
-
○
高野博師君 これは重大な報道なのであります。ぜひお願いしたいと思います。
それと、外務省は
外交的な措置として、北朝鮮に対して、おたくの国は
我が国民を拉致したのかと問い合わせているということでありますが、これは正面から先方が是認するわけがない。この少女の拉致
事件その他の
事件も含めてこの対応をもっとやっていた、だきたい。
いろんな形が考えられると思います。例えば、米の五十万トンの援助に関しては自民党の
加藤幹事長が大きな
役割を果たしております。吉田猛等、この
関係を持っている方もいるわけです。こういう方を通じて、幹事長等を通じてこの拉致
事件の
解決に協力を求めたらいいんではないかと私は思いますが、
総理、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 私
ども、やはり人権にかかわる大切な
事件でございますので、いろいろな手法を考え、情報の収集、そしてできることならば
事件の
解決につながるようにあらゆる
努力を傾注してまいりたいと思います。
-
-
-
-
○本岡昭次君 まず最初に、国際人権B規約選択
議定書の早期批准について政府に伺います。
一九九一年四月の参議院
予算委員会において当時の中山
外務大臣に私は質問をいたしました。私の質問に対して大臣が可及的速やかに批准の結論を出すと
答弁されてから、その後何の音さたもなく、もう六年が
経過しています。この人権B規約選択
議定書の批准については、一九八五年十一月、この
予算委員会で私は当時の安倍
外務大臣にも質問いたしております。そのとき大臣は、「本制度の運用
状況はおおむね問題はない」「国会でも附帯決議がございます。」「今後締結に向けまして積極的に検討してまいりたい」と政府としての
答弁をなされてからもう十二年が
経過しています。
ここまでくると、国会議員としての私に対する侮辱であると思うんです。そして、政府の甚だしい国会軽視、参議院
予算委員会軽視であると私は思います。こんなふまじめなことが許されるだろうかと私は腹を立てております。
今日のこの
予算委員会でことしじゅうに批准の手続をする約束をしていただきたいのであります。
外務大臣、お願いします。
-
○
政府委員(朝海
和夫君)
委員長の御指名でございますのでお答えいたします。
国際人権B規約選択
議定書の御質問でございますが、この個人通報制度は制度として注目すべきものであると考えていることは
委員も御承知のとおりだと思います。そこで、いろいろ検討を重ねておるわけでございますが、この制度につきましては、B規約人権
委員会での個人通報の実際の事例の分析などをして検討しました結果、若干どうかと思う例もございまして、特に憲法の保障する司法権の独立など、司法制度などとの関連で問題点があるという指摘もあると承知しているところでございます。
そこで、こうした点を踏まえて、
委員の御質問の趣旨も踏まえて、従来より政府部内で検討してきているわけでございますが、今後ともこのB規約
委員会による制度の運用などをさらに踏まえまして検討を継続する必要があると考えているわけでございます。
-
-
○
国務大臣(
池田行彦君) ただいま
政府委員から
答弁したような次第でございまして、本岡
委員の累次の御質問、御指摘も踏まえまして、その後もさらに検討を進めたわけでございますが、その検討の結果として、今御
答弁申し上げましたように、司法権の独立の
関係でどうであろうかとか、若干どうかと思われるケースと言いましたけれ
ども、例えば国内救済措置を尽くしていないのに個人通報に関するあれが受理されたというようなケースもあった。そういうことで、いわゆる当時の中山
外務大臣と
委員とのやりとりの後の検討の結果として、さらにこれはいろいろな角度から慎重に検討しなくちゃいけないという事例も出てきたということで、今日もさらに政府部内でいろいろ相談しているんだというふうに御理解賜りたいと思います。
-
○本岡昭次君
総理、私が先ほど言ったように、可及的速やかに批准の結論を出すとか、問題がないから積極的に締結に向けて検討するというようなことを
外務大臣が
答弁する、その
答弁の
責任の重さというのはどうなるんですか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) それは中山大臣とのやりとりのことをおっしゃっているんだと思いますが、それを見ますと、当時、本岡
委員の方から「可及的速やかに結論を得るために全力を挙げるという
答弁だと理解していいですか。」と、こうおつしゃいまして、それに対して、当時の中山大臣が「おっしゃるとおりでございます。」と
答弁されたくだりが一番結論部分だと思います。
そういうことがあったことを踏まえまして、先ほど御
答弁しましたように、政府としてはさらに検討を進めたわけでございます。その検討をいたしました結果、先ほど申しましたように、例えば国内の救済措置を尽くしていないケースについて、このB規約に基づく個人通報として受理されたということもある。そういうことになると、やはりそれまでは、
委員と中山大臣のやりとりの前には明らかになっていなかったケースがその後さらに慎重に検討を要するものとしてあらわれてきた、こういうことがあるということを御理解賜りたいと思います。
-
○本岡昭次君 それでは、批准しないという結論を出されたらどうですか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) まだ批准しないともするとも、いずれにも結論を出すに至っていないわけでございます。しかし、いつまでも放置していいとは思いませんから、それは政府部内で当然のこと精力的にこの検討は進めてまいりたいと思います。
-
○本岡昭次君 そうすると、十二年前に、今後締結に向けて積極的に検討するとか、国会で附帯決議がなされているからやりますとかいうこととはどうなるんですか、今おっしゃっていることの
関係は。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) 附帯決議におきまして、この選択
議定書の締結につきまして、「その運用
状況を見守り、」「検討する」という決議であったと理解しております。
そこで、先ほど来申し上げているとおり、実際の運用
状況も見ながら検討している、そういうことでございます。
-
○本岡昭次君 それでは、司法権の独立云々と言っている法務省はどういう考えなんですか。
-
○
政府委員(原田
明夫君) ただいま御指摘の
議定書の批准問題につきましては、法務省といたしましても、担当部局におきましてB規約人権
委員会の個人通報に関する事例等を分析するなどして鋭意検討に当たっているところでございますが、現時点までの検討結果では、国内救済措置を尽くしていないのに受理された事例があり、司法権の独立等司法制度などとの関連で問題点があると承知しており、今後ともB規約人権
委員会の運用の実情を慎重に見守りながら検討を継続する必要があるものと考えております。
-
○本岡昭次君 慎重というのはどのぐらいの時日を要するんですか。私は十二年も待っているんだよ。
-
○
政府委員(原田
明夫君) 現
段階では個人通報制度は、司法権の独立等司法制度との関連で問題があると考えておるのでございますが、懸念している問題点が解消されるか否かにつきまして、人権
委員会における運用の実情を引き続き慎重に厳に検討した上で見きわめる必要があるものと
認識しております。したがいまして、現
段階で私
どもの検討がいつまでかかるかという点については明確に御
答弁申し上げるに至っていないということで御理解賜りたいと存じます。
-
○本岡昭次君 何が司法権の独立を侵害するのか、もう少し具体的に言ってください。
-
○
政府委員(原田
明夫君)
我が国におきましては、係争している司法
案件につきまして、三審制度を尽くすということで極めて慎重な手続が行われております。また、再審制度に関する手続もあるところでございまして、それらの手段が尽くされない
段階におきまして、大変権威のある国連の
委員会でそのことについて取り上げるというような
事態がございますと、裁判官の独立、ひいては司法権独立にも多大の問題が生ずるおそれがあるということで、慎重に検討しなければならないものと考えているわけでございます。
-
-
○
政府委員(原田
明夫君) 何件ということで申し上げる材料はございませんけれ
ども、現実問題として、少なくとも裁判係属中の事案につきまして受理許容性がありと判断された事案があることを承知しております。
-
○本岡昭次君 司法権の独立を侵す中身があると言いながら、具体的に言えないと。そして、批准するする、検討するすると言いながら引き延ばしているという今の
状況を納得できないんですよ。だめですよ、そんなことじゃ。
-
-
○本岡昭次君 今の
答弁に納得できませんから、もっと詳しく言ってください。
-
○
政府委員(原田
明夫君) 例えば、某国の公安警察により逮捕されまして、その後八カ月にわたり外部との連絡を絶たれたまま拘禁され、その間恣意的な措置がとられたとの主張がなされた事案がございまして、当該国の政府は、軍刑法違反の罪による裁判が係属中であり、国内的救済手段が尽くされたとは言えないということで受理許容性がない旨主張したのでございますが、人権
委員会は、裁判は係属中であるものの、効果的な国内の救済手段を明らかにしていないということで受理許容性を認める判断をした事例がございます。
-
○本岡昭次君 そんなのは、もう批准したくないというための口実のようなものなんですよ。
ところで外務省、各省庁からそれぞれ担当者を集めてこの検討会をやったでしょう。その検討会に参加したところの各省庁、このことに賛成か反対か、批准すべきかすべきでないかという現在時点の考え方を述べてください。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) 御指摘のとおり、鋭意
関係省庁の間で検討を進めているところでございまして、その
一つ一つについてこの場で申し述べることは差し控えたいと思いますけれ
ども、いろいろ問題があるという意見もあれば、できるだけ積極的に考えようではないかという意見もあったというふうに御理解いただきたいと思います。
-
○本岡昭次君 前回の
予算委員会では各大臣に全部答えてもらって、そして最後の詰めに入っているんですよ。
総理大臣、国際人権B規約の選択
議定書、個人通報権なんですよ。これを選択するかしないかという問題を十二年間にわたって私は議論して、もうこれだけの会議録が私の方にあるんです。次々と何か理由をつけては先延ばししてきているんですよ。こういうことは私は許せないと思う。そのときそのときの大臣
答弁が、先ほど言っているように、何かまるで、とにかくその易しのぎ、しのげばいいというふうな中身になってしまっているので、これでは国会の権威にもかかわる問題だと、私はこう思えて仕方がないんですよ。もうこの辺で決着をつけてください。
だから、私は、きょう
外務大臣が、ことし精いっぱい検討して来年の国会では批准できるように
努力します、こう言わざるを得ぬような状態になっておるんじゃないかと思うんだけれ
ども、依然として同じところをぐるぐる。
日本の
外交はこんなものだといったら、
日本の
外交とは何なのか、国連と
日本の
関係は何なのかということになるんですが、それこそ
総理のリーダーシップをこの問題について発揮していただけませんか。もういいかげんにこの問題に対するピリオドを打ってくださいよ。 もうあなたの考えはわかっている。
総理、答えてください。私は次の質問をしたいですから。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) この制度につきまして、大臣並びに
政府委員からも今御
答弁を申し上げておりますように、政府部内でB規約人権
委員会の個人通報に関する事例などを分析し検討した結果、特に憲法の保障する司法権の独立等司法制度などとの関連で問題点があるという指摘もあると承っております。これは、今まで各
外務大臣が議員から御指摘を受け、その検討を深めてきた結果のものだと私は思います。
ですから私は、当然のことながら、本岡議員の発言を外務省が軽んじているとは思いません。その御趣旨を踏まえて鋭意検討してまいりましたものの、今後とも人権
委員会によるこの制度の運用などを踏まえて検討を継続する必要があると考えているというのが現時点における政府の判断であると私は思います。
-
○本岡昭次君 全然納得いきませんけれ
ども、これだけで私の質問を全部つぶすわけにいきません。政府に対する不信そのものであります。もう許せない。
その次に、予算の問題に入ります。
平成九年度予算案が無修正で衆議院を通過しまして、この予算についてはさまざまな批判があります。特に、財政構造改革元年を標傍しながら、公共事業を初め歳出構造に何らメスを入れないで、消費税率の引き上げ、特別減税の廃止、医療費の負担増などで九兆円にも及ぶ負担増が
国民に強いられたということに対する批判なんですよ。
総理は、この
国民の批判に対してどういうふうに受けとめられますか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 今回の消費税率の引き上げに伴います負担増というものは、
平成六年秋の税制改革全体の中で個人所得税などの恒久減税の負担減を行いましたものと一体としてとらえるべきものでありまして、九年度のみの税負担増加とおっしゃるのは、私は多少適切を欠く部分があるように思います。
また、特別減税は単年度の景気対策として実施してきたものでありますが、特別減税を実施しない、その結果として税制改革によって目指した税制に戻る、こういう問題であるということ、議員はよく御承知でありますけれ
ども、改めて申し上げておきます。
そして、
平成九年度予算、これはもうしばしば申し上げておりますけれ
ども、医療保険制度改革を初めとする各般の制度の改革の実現に努めながら一般歳出の伸び率を一・五%とし、同時に財政再建に向けての目標の
一つでありました国債費を除く歳出を租税等で賄える範囲内にとどめる、この目標を達成いたし、同時に四兆三千億円の公債減額を実現してまいりました。
しかし、その意味では私
どもは財政構造改革の第一歩は踏み出したわけですけれ
ども、なおかつ巨額の公債発行を余儀なくされておるわけでありまして、今後さらに徹底した歳出削減の
努力を払っていかなければならないと考えております。
-
○本岡昭次君 その九兆円の負担増の問題はいろいろ議論する場があると思いますから、そのときに譲りますが、今労働組合の連合が一万三千円を要求して、そしてこの春闘を闘っておりますが、さまざまな賃金の答えが出てくるでしょう。その場合の労働者の可処分所得がこの九兆円の負担増の
関係で減少する心配があるというのがあります。
経企庁
長官、政府は四月以降の勤労者の世帯の可処分所得の動向をどのように見ておりますか。
-
○
国務大臣(麻生太郎君) ただいま御質問になっておりました九兆円というところのまず定義が難しいところだと思っております。九兆円の中身が、いわゆる民間のシンクタンクで言われておりますものの内容をそのまま使っておられるんですが、正確には八・八兆になっていると思いますが、直して約九兆、あの数字を使っておられるという前提でお話を申し上げさせていただきます。
今回の税制改革の家計に与えます影響というところで、具体例がいいと思いますが、年収約七百万、夫婦、子供二人、合計四人というのを、いろんな家計によって違いますので、総務庁の家計調査に基づいて試算をいたしますと、消費税の引き上げによりまして六万七千円平年ベースで負担増になると見込まれております。
ただ、
総理大臣の方からも今御
答弁があっておりましたように、先行して既に所得税のいわゆる恒久減税というのをさせていただいております分がございますので、その分も勘案していただきませんと全体としては偏ったことになります。
今申し上げましたのは、消費税の負担分を引いて、今平均的な約七百万円の勤労者の場合は、今まで特別減税の分がさらに約六万円、恒久減税の分で六万七千円、合計十二万六千円という分のうち、今回の消費税の引き上げによりまして約六万七千円上がることになりますので、恒久減税の分とその分で約見合った形になろうと思っております。
特別減税の六万円につきまして、今新たな負担増が起きるという形になるんだと思いますけれ
ども、その点につきましては、今回の消費税の引き上げに際しまして、影響を受けやすい、いわゆる真に手を差し伸べるべき方々に対して臨時特別給付金の支給など、きめ細かい配慮をしていかねばならぬというところだと思っております。
その分六万円だけ影響を受けるではないかという点につきましては、昨日のQE、速報値の数字を見ていただきましても、あのとき特別減税をいたしたのは、消費が非常に冷え込んでおるという前提で特別減税をさせていただいておりますが、今年度のQE、速報値の数字を見ましても、その分はある程度上がってきておるという分も御勘案をいただいて御理解をいただければと思っております。
-
○本岡昭次君 三兆五千億の制度減税とこの消費税二%アップが見合うという話もありましたが、本当に見合うのかどうかという点の議論があります。
これもある民間の調査、大学の教授の試算では、それは見合うんじゃなくてネット増税になるという議論もあるわけで、ネット増税になるというときのしわ寄せば中低の所得層のところに来るだろうという心配があるわけで、大蔵省はそのあたりはどう見ていますか。
-
○
政府委員(薄井信明君) 御指摘の消費税率五%への引き上げによりまして一年間の増収額が大体五兆円ということでございます。それに対しまして、
平成六年秋に決定いたしました税制改革におきまして、所得税、個人住民税の恒久的な減税を三・五兆円規模で行っております。その差額のことかと思いますが、実は
平成六年の改革の際に申し上げていることですが、消費税五兆円のうち、国、地方が負担する部分が大体七千億円ぐらいありまして、これは
国民自身の負担にはならない。それから、福祉予算の充実に五千億円を用いる等々の、細目は省略いたしますが、そういった点を勘案いたしますと、おおむね見合うものになるという御説明をさせていただいております。
したがって、
委員御指摘のように、特別減税と消費税率だけを比較するとおっしゃるようなことになろうかと思いますが、全体としては国、地方の負担増あるいは福祉予算の充実というものも含めて見合うものと言っていることでございます。
なお、二兆円の特別減税の前に、
平成六年には五・五兆円の特別減税をやっております。それから
平成七年にも二兆円の減税をやっております。こういう先行減税が
経済の
基本の流れを浮揚させてきているというふうに私
どもは思っておりまして、この点を、つまり来年だけを考えずに、ここ数年一緒に考えていただければプラスの要因になっているというふうに考えております。
-
○本岡昭次君 そこのところは勤労者のために大いに論争をしていかなければならぬところだと私は思っております。
そこで、きのうの
梶山官房長官の
記者会見の様子あるいは新聞記事を見たんですが、公務員の人事院勧告も聖域にあらずということでしょうか、勧告の実施問題についても検討せにゃいかぬ、人事院勧告しないということですね。私は現場におるときにその
状況に遭遇したことがあるんですが、この
官房長官の意図はどういうことなんですか。質問通告していないで申しわけありませんが。
-
○
国務大臣(
梶山静六君) これは
記者会見で、ある新聞社がそういうことをあたかも政府の意見のように書いて出されたのがありまして、それを受けて質問を受けました。
ですから私は、今までも財政の極めて厳しい時代には、万やむを得ずいわゆる人事院勧告の延伸やあるいは部分的なカットやいろんなことがあった、しかしこういうことが議論に出ることを私は抑えることはできないだろうと、こう申し上げました。
-
○本岡昭次君 わかりました。そういう議論は抑えることはできないだろうと、こうおつしゃったということですね。
それで次に、景気の影響の問題と関連をして、完全失業率が九六年度、年間平均三・四%、統計史上最悪の水準が続いているのでありますが、景気の動向と雇用の影響、これは非常に重要な問題と思うんです。
今後、雇用の問題について、経企庁
長官、労働大臣、どのように見ていますか。
-
○
国務大臣(麻生太郎君) 完全失業率の点につきまして
我が国の雇用情勢というのを見ますと、他の先進
諸国の中においては低い水準にあるものの、
日本の過去の例から見ますと三・四%というのは高い水準というように理解をいたしております。
ただ、昨年の十一月以降、今まで三・四%でありました数字が、〇・一とはいえ三・三、十二月も同じく三・三、一月に入りましても三・三と確実に下がった
状況にあり、その内容につきましてもいわゆる首というような非自発的な解雇の数は非常に大幅に減っております。一方、いわゆる転職と言われる自発的な離職という数字が上がってきておりまして、離職者の内容、完全失業の内容が過去とは随分違ってきた形になっておるというのは明るい方向だと理解をいたしております。
加えて、今後の雇用情勢というところも雇用者側からの意見を聴取した範囲では、今までのように雇用は過剰であるというあれは薄らいできておりまして、いわゆる人手が少し足りなくなりつつある、また残業がふえてきたりするような傾向が出てきておりまして、景気の裏づけをある程度その面からも実証しているような感じがいたしております。
-
○
国務大臣(岡野裕君)
委員お話しの完全失業率につきましては、経企庁
長官から詳細にわたってお話がありました。私も非常に厳しい数字だと、こういうふうに受けとめておりますが、有効求人倍率の方は、一昨年の夏、
委員御承知のとおり〇・六一というのを底といたしまして、現在〇・七六というところまで上昇はしてまいりました。
現在の雇用
状況は、先生おっしゃる景気の問題と、加えて
経済構造改革、産業構造改革というような産業の空洞化あるいは雇用の空洞化あるいは規制の緩和というようなものが重なり合っていると思います。
したがいまして、景気
関係につきましては、雇用調整助成金でありますとか、あるいは後段の構造改革関連のものにつきましては中小企業の活力育成というようなことでありますとか、あるいは先生御存じの失業なき労働移転等々の施策をいろいろ組み合わせて雇用の確保に今後も努めてまいりたい、こう思っているところであります。
-
○本岡昭次君 予算案の衆議院通過に当たっての与党三党
合意の問題をめぐっていろいろな議論がもう既になされております。私も、改めてこれが二兆円減税問題を継続せよということとの絡みで議論されたんではないかというふうなことを思ったりしております。
政府としてこれをどう受けとめているのか、
総理に改めてお聞きしたいと思います。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 与党間で行われました協議の内容、これにつきましては文字どおりに受けとめて、政府としてもその趣旨を踏まえて適切に対処すべく今後とも検討していきたいと思います。
なお、その財源を特例公債によらざるを得ない特別減税を、回復の動きの続いております
経済状況や危機的な財政
状況を踏まえ実施しないとしたことは、先ほ
どもお答えを申したところであります。
-
○本岡昭次君 私
どもは、この受けとめ方は、二兆円減税を継続しろということに対して、いや、もう予算が現に組んであって、審査をしてやっているんだからそれは変えることはできない、現国会中にいろいろと予算の削減等について検討して要望についてこたえていけるかどうか、それも含めて検討していこう、こういうことになってこの
合意ができたんだというふうに聞いておるんですが、そうじゃないんですか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 政府として今申し上げましたとおり、与党間で行われました協議の内容、そしてこれに至りますまで、与党ばかりではなく、衆議院
段階におきましては与野党の話し合い、あるいは野党の皆様方同士の話し合い、いろいろなものがありましたことは
委員も御承知だと思います。そして、与党間で行われました協議の内容については文字どおりに受けとめる、政府としてもその御趣旨を踏まえて適切に対処し今後とも検討してまいりたい。先ほど申し上げたとおりであります。
-
○本岡昭次君 与党の三党
合意の趣旨を受けとめて、それを誠意を持って実施していこうというお考えだというふうに私は受けとめさせていただきます。また、そういう時期が来たときの議論になると思います。
そこで
総理に、増税なき財政再建という問題についてお聞きしておきます。
総理は、私は増税なき財政再建という言葉は使っていないとおっしゃっているわけで、本
委員会でも、歳出削減だけを考えていけば縮小均衡の
経済になりかねず、むしろ拡大均衡を考えることはできないかという意見に対して、社会保険料の引き上げもお願いしなければならない中で増税を訴えられる
状況ではないという言い方をしたとおっしゃっております。
そこで、端的に、増税なしで財政再建をするとおっしゃっているのか、それとも増税は場合によってはやむを得ない、増税ありだというふうにおっしゃっている言葉なのか、どちらかちょっとはっきりおっしゃっていただけませんか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 経緯は先ほど議員御自身がお引きになりましたように、マスコミに言葉が躍ったところでありますが、その前
段階で、財政構造改革会議における議論、そして拡大均衡を求める立場からの御論議に対し、社会保険料も引き上げなければならず、今増税をお願いできる環境ではない、そういうやりとりをした、それは文字どおりそうした話でございました。
そして、今後財政構造改革会議において我々は議論をしていくわけでありますが、少なくとも私は当面まず歳出の改革と縮減に取り組んでいくのが我々が今なすべきことであると思っております。
-
○本岡昭次君 いや、私の質問にお答えになっていないんですね。私は、増税なしでやるのか、増税ありというふうな考え方を持っておられるのかということをお聞きしたんですが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) ですから、今私は、今後財政構造改革会議で議論を深めていくことになりますがということを申し上げております。
-
○本岡昭次君 そうすると、
総理はまだどちらとも決めておられない、こういうことなんですね。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 今財政構造改革会議で議論をいたしております。私は自分の意見を申し述べるべき
状況にはないと思います。
-
○本岡昭次君 それで、財政構造改革の問題なんですが、いろいろな議論の柱があると思いますけれ
ども、私は地方分権の問題と
市場経済という二つが非常に重要な柱ではないかと思っているんですが、
総理と大蔵大臣のお考えを聞いて、午前中の質問を終わりたいと思います。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 今、議員から財政構造改革というものについて、地方分権そして
市場経済原理の重視ということを言われました。
私は、地方分権というのは、間違いなく国と地方の
役割分担を積極的に行いながら、国から地方への権限移譲をしようと一方で
努力をしている。その中には補助金の整理合理化といったものもあるわけでありますから、地方分権という言い方が正確であるかどうか。しかし、いずれにしても国と地方の
関係を見直していく中において出てくる影響は考えなければならないと思います。
同時に、官民の
役割分担というものもあるわけでありますが、私
どもは積極的に
市場経済というものが拡大していく状態をつくり出さなければなりませんし、そのためにも国の規制のあり方を緩和する、廃止する規制緩和計画というものを推し進めているわけでありまして、これは当然ながら
市場経済原理というものを重視するという方向にほかなりません。
そうした考え方を持ちながら財政構造改革を進めるべきであるという御指摘は私もそのとおりだと思います。
-
○
国務大臣(三塚博君)
基本的な点は
総理から言われました。私からは、財政構造改革の視点としてとらえておりますのは、国と地方の長期債務の合算額が五百兆を超えておりますことは御案内のとおりであります。
地方と国の分担、協調、共助と言っていいんでしょうか、この辺のところを十二分に踏まえながら今後に対応してまいりませんと、五百兆の利子は平均して五%、長期のものもありますから簡単に利子が出てきます。二十五兆という利子が出てくるわけでありますから、この辺のところをどのように軽減し健全財政に持ち込むかは、御指摘のように分権であり、民と官の協力であり、市場原理の徹底の中で物事を行うと、こういうことであろうと思っております。
-
○
委員長(
大河原太一郎君) 本岡昭次君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。
午後一時二十分に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時五十五分休憩
—
————・—
————
午後一時二十一分開会
-
-
○本岡昭次君 ちょっと質問を飛ばしまして、公共事業の問題で質問をいたします。
公共事業費の削減ということが非常に重要な問題として議論されております。本
委員会でも多くの議論がなされましたが、
総理と大蔵大臣、この公共事業費の削減ということについて
基本的にどういうお考えを持っておられるか、初めにお伺いいたします。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君)
平成九年度の公共事業予算につきましては、現在の
我が国の財政事情あるいは社会
経済情勢等々を総合的に勘案しながら、七年ぶりに前年度と実質的に同水準にとどめておりまして、今後とも真に必要な事業に重点的、効率的な配分をしていきたいと考えております。
また、大規模な公共事業につきましては、所管省庁自身の行政
責任として、社会
経済情勢の変化に沿って不断の見直しをさせているところでありますが、今後ともこうした
姿勢で適切に対応したいと思います。
同時に、公共工事の建設コストの削減の問題につきまして本年一月に
関係閣僚会議を発足させまして、今月中を目途に政府全体の行動指針を策定するよう広範な検討を私自身から指示をいたしております。さらに、具体的数値目標を設定すると同時に、各省庁において行動計画を策定させるようにいたしております。
-
○
国務大臣(三塚博君) 以上の
総理の
基本方針で御理解をいただけると思うのでありますが、厳しい財政
状況の中で有効かつ適切な編成をどのように進めるかと、こういうことでございます。聖域なき編成でございますから、公共事業もそのらち外ではございません。当然、洗い直し、また
国民の論議の中で、踏まえて対応していくということになります。
今後は、財政構造改革会議が三回行われておりますけれ
ども、来週、第四回、
官房長官がセッティングをしてくれることに相なっております。この場はまさに
国民論議を起こす場でございまして、
基本的な方針は、首相の理念と哲学をそこに据えまして思い切った編成が
平成十年度概算要求時からスタートをして行われますように全力を尽くすということになります。
-
○本岡昭次君 今、洗い直しとかあるいは数値目標設定、また建設コストの削減、こういうお話がございました。それに関連して質問してまいります。
建設大臣、公共事業である連続立体交差事業の現状とその事業予算額について明らかにしていただきたい。
-
○
政府委員(木下博夫君) お答えいたします。
先生御案内のとおり、連続立体につきましては、都市内におきまして道路と鉄道が平面で交差しておりまして、大変な交通渋滞を起こしているところを積極的に解消していこうということでございまして、それによって市街地の一体化を図ってまいりたいと。現在は全国で六十六カ所やっておりまして、事業費で約一千億になります。大変御要望が多くてなかなかその採択が間に合っておりませんが、年間で大体五カ所ぐらいを完了させているのが実情でございます。
-
○本岡昭次君 連続立体交差の
一つの手法になる
んですが、地下シールド工法というのがあります。最近その技術に著しい進歩が見られると聞いておりますが、建設省、運輸省、この地下シールド工法の評価についてお聞かせください。
-
○
政府委員(木下博夫君) 先生お話しございましたように、最近シールド工法は大変技術的にも革新されております。特に、地表面を開削せずに地下トンネルを建設するという技術でございまして、我々も技術的に大変注目しておりますし、積極的に進めたいと思っております。
大体申し上げますと、口径が約十メートルぐらい、あるいはそれ以上でございますが、大きな断面で地下道路トンネルとか、あるいは今都内で地下河川の工事なんかをやっております。特色といたしましては、工事による交通障害が、立て坑を掘る周囲は別といたしまして、その他につきましては道路の位置などが大変深くなりましても技術的にはさほど問題がなくなってきておりますので、そういう意味では我々これからもこの工法は限りなく使っていくと考えております。
-
○
政府委員(梅崎壽君) ただいま建設省の方から
答弁ございましたが、このシールド工法につきましては、地表から比較的深い場所に地下鉄を整備する場合に一般的にとられている工法でございますけれ
ども、開削工法に比べまして掘削量が少ないということから、地下の深いところに鉄道をつくる場合はより
経済的でありますし、それから地表面の土地利用の制約を受けにくいという利点があると考えております。
都市鉄道の現状を見ますと、これから従来に比べましてより深いところに鉄道を整備していくということがふえてきておりますので、今後ともこのシールド工法というのは地下鉄の建設におきまして一層活用されていくものと考えております。
-
○本岡昭次君 今東京都は都市高速鉄道第九号線の複々線化と連続立体交差計画として小田急小田原線喜多見駅付近より梅ケ丘駅付近までの約六・四キロメートルの区間を高架方式で進めています。この工事については高架か地下かの議論が東京都と地元民との間でありまして、その当時、五十嵐広三、野坂浩賢両建設大臣、あるいは
伊藤茂、亀井静香両運輸大臣が東京都と
地域住民との間に立って、協議によって円満に
解決への話し合いをしなさいという指導をずっと行ってきて今日に至っていると聞いているんですが、建設省、その経緯の概略をここで言ってください。
-
○
政府委員(木下博夫君) お話しございましたように、この事業は大変長い歴史を持っておりまして、もともと昭和三十九年ごろから始まっております。
ごく最近の出来事としてお話しございましたように、
平成五年の十一月に当時の五十嵐建設大臣からお話がございましたのは、高架化とかあるいは地下化の違いについて確かに地元から御意見がございましたが、東京都の方もできるだけ出せる資料は出してしっかり話し合いなさい、そういうことによって理解を得なさいという示唆を当時いただいたわけであります。それ以降、
平成五年十二月から
平成六年四月にわたりまして約五回、それぞれ当事者同士でお話しされております。私も、お話がございまして、当時の議事録等もしっかり読ませていただきました。大変真摯な打ち合わせといいますか討議をしていただいておるわけでございます。それで、
平成六年四月に話し合いが一応終わりまして、当時の建設大臣に東京都から報告がございました。
以上が経緯でございます。
-
○本岡昭次君 いや、その後まだあるでしょう、その後。お願いします。
-
○
政府委員(木下博夫君) 御質問は恐らく、その協議の後、都市計画決定の認可をしたんではないかという御質問かと思いますが、これは
平成六年四月十九日に今申し上げましたように建設大臣あてに事業の認可申請が出てまいりました。
都市計画法の
世界では、こうした都市の鉄軌道につきましては都市計画の決定をいたします知事等から大臣に申請をするということが法律的に決められておりますので、当然そういう手続をとったわけでございますが、それから約一カ月後に、建設省の中で、今申し上げましたような地元でのお話、あるいは都市計画に関しての書類等が提出されましたので、それを慎重に審査いたしまして、事業認可を当年、
平成六年五月十九日にいたしております。
-
○本岡昭次君 そのことについて事業認可取り消し訴訟が行われ、それから私の持っている資料では、提訴した人たちが十月十九日に亀井静香運輸大臣に面会して、そしていろいろ話し合った。野坂浩賢建設大臣も、東京都は住民と協議して再開すべきだと。
亀井静香運輸大臣がそのときおっしゃったのは、事業認可はおりているが住民の納得なしで強行すべきではない、これは建設大臣と協議したいとおっしゃったようでありますが、そのように認可をしたけれ
ども、国がかかわったレベルにおいては不十分であるという
認識をずっと持ってこられたんではないかと。
そこの経緯について、私の言ったことが正しいのかどうか確認してください。
-
○
国務大臣(亀井静香君)
委員御指摘のように、運輸大臣当時、住民の方々あるいは他の
関係者からそうしたお話を受けたことは事実でございます。
私は、事業認可をいたしました後も、事業をスムーズに推進する上においては、やはり
関係者、住民の方々と事業者、自治体等がきっちりと協議をして円満に推進をしていくことが必要だという観点から、話し合いをさらに続行しなさいということを
関係者に申し上げたことは事実であります。
-
○本岡昭次君 その結果、それ以後どういうふうに進行しているんですか。
-
○
政府委員(木下博夫君) 重ねて申し上げますが、この事業は東京都と小田急でやっております事業ですし、都市計画決定そのものは東京都にあるわけでございます。建設省あるいは
関係する意味では運輸省等、先ほどお話しございましたようなことで、その都度お話を承っておるわけでありますが、
基本的には地方公共団体の立場で地元と円満にお話をして、かつ現在もう相当の事業が進んでおりますので、この事業に際していろいろ伴う問題点があればそれは現場でのお話をすべきだと思います。
そういう意味で、先ほど大臣からもお答えしましたように、我々は都市計画決定が終わればそれで事終われりということではございませんが、むしろ今地元でこの事業を早くやれという声も大変あるわけでございますから、そういう声に対して、予算をしっかりとらせていただいて事業の促進を図ることも
一つの
課題ではなかろうか、こう考えております。
-
○本岡昭次君 私も現地を見てきましたけれ
ども、工事がそんな物すごく進行しておるという
状況ではありません。
そこで、地元の小田急線の地下化を実現する会が東京都の公表したデータに基づいて費用の積算をしたんです。コストの問題なんですね、これ。高架でいけば二千三十八億円かかる、シールド工法であれば六百五億円という数字を出しているんです。三分の一の費用でシールド工法による地下ならできる。この地下方式の優位性は二月二十五日の東京地裁の判決でも認めております。東京都はこれに対する有効な反論をしておりません。
だから、私は建設コストを下げるという意味であればなぜこのような高いものをやらなきゃならないかということなんですが、この工事費の比較の問題について建設省の見解をお聞きしたい。
-
○
政府委員(木下博夫君) 最初にちょっとお断りしておきますが、お話に御紹介ございましたことしの二月二十五日に判決がございました東京地裁の件につきましては、先生御承知のことだと思いますが、東京都が設立いたしました第三セクターに出資していいかどうかという判決でございまして、その判決を私が読ませていただきましたら、その中には今お話のございましたあえてどちらの方法がより優位であるかということは一切書いてございません。それを前提にいたしまして議論したわけではなく、当該第三セクターに東京都が出資することについて地元の方が異議を唱えられたことに対して東京地裁は却下しております。そういう事実でございます。
それから、今の高架化に関してあるいは地下化に関して、私は、
基本的、一般的にまずお答えすべきだと思いますが、そういう手法については全国いろいろ、先ほど申し上げましたシールド工法等もこれからはどんどん開発されますから、当然いろんな手法があろうかと思います。いろいろ私の手元にあります資料なんかを拝見いたしまして、ただ、これはお断りしておきますが、他でも今訴訟
案件になっておりますので余り軽々に申し上げるのはどうかと思いますが、少なくとも、東京都等が公表発表した資料あるいは当時いろいろ地元で出た資料、それらを比較いたしまして、若干その前提条件が違います。
詳しくなりますので余り長々と申し上げるのはいかがかと思いますが、例えば東京都は鉄道の南側に十三メートルの側道を設けるということを考えておりませんでしたが、先生の
提案については、その側道を設けるということで過大に積算されている、あるいは駅にエスカレーター等をつける
関係で駅舎を大変大きくつくろうということで東京都が考えた絵に対して、実際にはそういうことを捨ましたとか、あるいは地下にすれば地上部が完全に、小田急の現在の線路敷が売れるんじゃなかろうかということで、その土地代をカウントすると。
いろいろそういうことで、双方の意向はもちろんあっていいわけでございますが、それらの
関係で、先ほどおっしゃったような数字も、とり方によって大変現実的でない数字まですべて含めて議論されておりましたので、若干そこのところは整理すべきだと思いますが、いずれにせよ、多くの
提案をいろいろいただきながら、今東京都は現実に事業を粛々とやらせていただいているわけでございます。
-
○本岡昭次君 私はここにその判決文を持っているんですが、何も書いてないとあなたはおっしゃいましたけれ
ども、読みましょうか。「シールド方式に関する最近の技術進歩により、鉄道の地下化に要する費用が従前より低額となってきたことが認められるが、」とか「仮に総合的に検討した場合には地下式に優位性があるとしても、」というふうに、こういう問題に対する言及はありますよ、あなたはないと言われたけれ
ども。それを言っておきます。この論争をするために私はやっているんじゃないですから。
それで、あとは建設大臣あるいは運輸大臣にお願いしたいんですが、認可したから進めると。だけれ
ども、先ほどおっしゃったように、洗い直すとか建設コストがどうかという問題をやっぱり徹底的に考えるんだということのいい事例だと思うんですよ。そして、考え方としては、このシールド工法による地下の方がいいんだということが先ほ
ども出てきているわけで、なぜあえて高架を推し進めるのかということなんです。
だから、そういう意味で私は、ここで両案を、東京都が出してくる案、地元住民が出している案、それを総合比較して意思決定をする場を再度つくって、一たん決めたから断固やるんだということになったら、これは見直しも何もないわけですよ。新しい技術が出てきたときに、その技術を使えば、よりコストの意味でもあるいは環境とか都市景観の面でもすぐれているというなら、それをやり直すということがなければ、これは抜本的な見直しも改革もないわけで、そういう意味で私はここでどちらがいいということは言いません。
だから、政府としてもう一度冷静に、そして阪神・淡路大震災を経験して、その高架そのものが果たして前のままでいいのかという議論になって、その耐震性というものを補強するために二年かかるとかいう議論があるんですよ。だから、そういうことも踏まえて、今できている部分を取り壊したらどれだけの費用がかかるとか、もっときちっとした合理的な話し合いを進めるように建設省なり運輸省が地元に指導してください。いかがでしょうか、これは。
-
○
国務大臣(亀井静香君)
委員が属しておられました会派御出身の建設大臣が認可されたことではありますけれ
ども、私はこの問題について、
委員御指摘のように、一度決定をしたら一切いろんなことに耳をかさないということでまっしぐらにということはやるべきでないと、このように思います。
どちらがいいのかというようなこと等につきまして、東京都あるいは事業主体、あるいは住民の方々、いろいろな御意見があると思います。それが今まとまっておらぬわけでありますが、どう考えましても住民の方々が、比率が幾らになるかは別にいたしましても、強力に反対をしておられる中でその事業を推進していくということは、実際上大変な困難も予想されていくわけでありますから、住民の方々も反対のための反対をされておるとは私は思いません。
委員おっしゃるように、冷静に何が効率的であり、何が地元のためであり、また環境あるいは都市美観、また高速性、いろんな面を含めてこれは常時検討はしていくべきだと思いますので、認可した後、建設大臣としてやれる方法がどういう方法があるかわかりませんけれ
ども、これは私自身が
一つの問題として検討いたしたいと、このように考えております。
-
○本岡昭次君 ありがとうございました。ぜひそういうふうにして、これも何も反対のための反対、従来こういうものは環境という面だけの反対が多かったんですが、これは現にコストを示して、どちらの方が安くできるか、それは要するに
国民の税金を使う使い方の問題にかかわっての議論になっているんですから、これはきちっと私は受けとめるべきだと、こう思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、次に証券問題について御質問を申し上げます。
けさの毎日新聞によりますと、
証券取引等監視委員会は、今問題になっております野村証券の問題について、証券取引法五十条の三で禁止されている利益提供の疑いが強いとの見方を固めた、さらに証券取引
委員会は東京地検に告発することも視野に入れて本格的調査を進める方針という記述もされておりますが、
委員会の方ではこの記事のことを確認していただけますか。
-
○
政府委員(若林勝三君) 野村証券の問題につきましては、
委員会において現在鋭意調査を進めておるところでございます。その調査の結果を踏まえまして、法の手続に従いまして厳正に対処したいと考えております。
-
○本岡昭次君 今私の質問したことに答えてください。
-
○
政府委員(若林勝三君) いろいろな報道がなされておることは事実でございますけれ
ども、我々といたしましては、今申し上げたとおり、野村証券に対して現在調査をしておるその最中でございまして、いろんな報道について一々私の方でコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
-
○本岡昭次君 それでは、五十条の三で禁止されているというこの内容は何ですか。
-
○
政府委員(若林勝三君) 五十条の三におきましては、いわゆる損失補てんとか利益の追加といったことを証券会社が行うということを禁止した条文でございます。
-
○本岡昭次君 それには罰則の適用がありますか、違反した場合に。
-
○
政府委員(若林勝三君) お答えいたします。
この条文に違反いたしますと、まず罰則の規定がございまして、百万円以下ないし一年以下の懲役ということになっております。
-
○本岡昭次君 今までは一任勘定取引というところで議論があったようですが、今言った五十条の
三の損失補てん禁止というそこの項での調査になったんじゃないかと、こう新聞は報じておりますが、ここのところも触れられませんか。
-
○
政府委員(若林勝三君) 野村証券の問題につきましては、昨年の夏以来、取引に不審な点があるということで、
委員会において鋭意調査を進めてまいりました。
そういう場合に、まずどういう法律に違反するかということではなくて、いろんな取引が行われている中にどうも証取法に違反する取引があるんではないかというところで調査を進めるわけでございます。そういう中で、いろんなルール違反といいますか法律に触れる
可能性のある取引が十分あり得るわけでございまして、そういうものを総合的にきちっと詰めた上で対処をすると、こういうことでございます。
-
○本岡昭次君 私は、六年前の証券国会のときに
委員会で、
総理が大蔵大臣であったと思うんですが、私も社会党の
メンバーとしてこの野村証券の問題を中心に証券問題のあり方について不正を摘発し、随分と議論をいたしました。
それで、当時の論点を一言で述べると、野村証券は自己利益のためならば暴力団まで利用し、大口、小口の投資家はもちろん、上場会社を食ってしまうというような実態じゃないかというような議論を私たちはしましたが、一向にこの反省はしていないわけですね。
総理大臣は、その後
証券取引等監視委員会ができたから
事態は変わっているはずだとおっしゃった。私も変わってもらいたいと思うけれ
ども、しかし起こっていることは全く同じことが起こっていると思うんです。
それで、野村証券と交際のあった総会屋というような言葉でずっと出ておりますけれ
ども、これは私たちが六年前にここで野村証券問題等を中心にして議論した人と同じ人ではないかと私は思うんですがね。どうですか、証券取引
委員会の方は。
-
○
政府委員(若林勝三君)
委員御承知のとおり、
平成三年に野村証券においても損失補てん等の問題があるというようなことで、いろいろ国会等で御議論があって、そういうことで損失補てんにつきましては、それを法律で禁止をし、かつ罰則も付すというような改正が行われ、また
証券取引等監視委員会が設けられたわけでございます。
委員会といたしましては、その証券取引における公正性確保、透明性確保、よって
我が国の証券市場の発展に、証券市場の健全なる育成に寄与するという、この
委員会設立の趣旨を十分踏まえて今まで鋭意活動してきたつもりでございまして、今後ともそういうことで対応してまいりたいと思っております。
-
○本岡昭次君 ずっと僕は同じことが、上の方は、上澄みはきれいになったかもしらぬけれ
ども、下の方は、悪い部分はずっと継続しておるんじゃないかと、こういうことを言っておる。どうですか、新しく起こったことですか。六年前に議論したことと同じことが起こっておるんじゃないかと私は言っているんですよ。
-
○
政府委員(若林勝三君) 今回の問題につきまして、
委員会で今いろいろ調査を進めております。
報道については、いろいろなことが言われて、これはかなり前からずっと引き続いているものではないかとか、いろんな情報がございます。そういう面も我々は十分念頭に置いて現在調査を進めておるところでございます。
-
○本岡昭次君 それで、すべてを承知してやらなければこういう大がかりなことはできないと思うんですよ。だから、酒巻英雄社長そのものがこれは陣頭指揮でやったことじゃないかと私は見ておるんですが、どうですか。
-
○
政府委員(若林勝三君) たびたび同じ答えで恐縮でございますが、現在鋭意調査をしておるところでございますので。
-
○本岡昭次君 警察はどのようにかかわっておりますか。
-
○
政府委員(
佐藤英彦君) 現在、お尋ねの事案につきましては、既に
証券取引等監視委員会において調査等の対処をされているというぐあいに存じておりまして、警察といたしましては、
関係機関と連携をとりながら対処してまいりたいというぐあいに思っております。
-
○本岡昭次君 証券監視
委員会の告発を待ってやるというスタンスですか、それとも警察庁独自にやるべきだと
認識しておられますか。
-
○
政府委員(
佐藤英彦君) もちろん、警察としても情報の収集を以前から進めておりますし、現在においても実施いたしておりますけれ
ども、既に監視
委員会が調査をしているという現実がございますので、そことの連携を図っていきながら進めていくべきというぐあいに考えております。
-
○本岡昭次君 それで、そうした結果、この五十条の三で禁止されている損失補てん等の利益提供ということに該当するというふうに野村がなった場合は、前回のように四十五日間の営業停止とかいったことじゃなくて、大蔵大臣、これは免許取り消しというふうなところまで考える厳正な処分をしないと
日本の証券市場の信用は回復できないと思うんですが、どうですか。
-
○
国務大臣(三塚博君) 証券監視
委員会がただいま調査を進めておるということであり、勧告が出ますれば厳正に対処をします。
-
○本岡昭次君 いや、だから、厳正ということで免許取り消しということも念頭に置いて考えるべきではないかと言っておるんです。
-
○
政府委員(長野厖士君)
証券取引等監視委員会から、御調査の結果、法令等に違反する事実がございましたらいずれ勧告が提出されることになると思いますし、その勧告におきまして、いかなる事案が問題であったか、どのような行為が行われておったかというすべての姿が示されると存じますので、それを見ました上で厳正に対処するということであろうかと思います。
-
○本岡昭次君 一般論としてということがよく使われますが、私も一般論として、五十条の三で禁止されている利益提供というところでくればこれは罰金あるいは懲役があるんですよね。それが来た場合はどうなるんですか。
-
○
政府委員(長野厖士君) 繰り返しになりますが、いかなる法律に触れるどのような出来事があったかという事実の認定を
証券取引等監視委員会がなさることと存じますので、その認定を待った上で法に従って処理するということであろうかと思います。
-
○本岡昭次君 だから、一般論として、五十条の三違反となった、それで懲役あるいはまた罰金ということが確定したらどうしますかと聞いておるんです。
-
○
政府委員(長野厖士君) 一般論としてお答え申し上げますと、法令上、お取り上げになりました条文は行政処分の対象となります。
-
○本岡昭次君 そのときの行政処分は、一般論としてどういうものが想定されますか。
-
○
政府委員(長野厖士君) 御指摘の条文に違反した事例として、
証券取引等監視委員会が創立後勧告をちょうだいした事案はございます。そのようなケースに基づきまして、私
どもは営業停止等の行政処分をした例はございます。
-
○本岡昭次君 私はそれに匹敵すると思うんですが、ひとつそれはきちっとやってください。これ以上言いようがないですね、一般論でも答えが出ないん、だから。
それで、ちょっと警察の方にお聞きします。
テーデーエフ株等の大量売り逃げ鉄砲行為で宇津木氏とかいう名前の人が本によく出てくるんですね。それで、投資ジャーナル
事件のN氏とか、仲介役になった元検事の弁護士丁氏、あるいは暴力団のG組の存在がと、いろいろ出てきます。それで、この人たちの仕手株の鉄砲商いによる資金化が、例外なく暴力団の手元に渡っているということなんですね。
結局、証券を買うとかいう投資は、投資家の自己
責任というよりは、野村の利益供与問題を含めて、絶対損せえへん人がいて、それで一方、絶対損する者がおるという、こういう悪徳な
一つの
状況を許しておって、これは一般の投資家が参加するわけないのですよ。ここのところにどうメスを入れるか。株式市場は何か総会屋と暴力団のために存在しているかのような気がします。
それで、警察庁
長官あるいはまた
証券取引等監視委員長、これはどうですか、市場の公正化とか透明化とか健全化を図るとずっと言いますけれ
ども、どうしてするんですか。繰り返し繰り返しこういうものが起こって、
日本の市場というものに対する信頼性を失う。
総理は
日本版ビッグバンをやるんだとおっしゃっても、こんな市場を目の当たりにしてこれはビッグバンも何もあったもんじゃないわけなんですね。
だから、警察あるいは証券取引
委員会、こうした問題をどういうふうに考えているのか。あるいはまた、
総理はこういうものを放置したまま
日本版のビッグバンをやろうとしても私はやれないんじゃないかと。規制緩和はいいけれ
ども、司法上の規制強化とその実効というものをもっと一方に厳しいものがなければ後でも耐えられないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(
佐藤英彦君) お尋ねのような報道がなされておりますことを私
どもも承知いたしております。したがいまして、刑罰法令に触れる行為がありますれば厳正に対処していく所存でおります。
-
○
政府委員(若林勝三君)
証券取引等監視委員会におきましては、公明公正な市場の育成という観点から、常に資料、情報の収集ということに非常に力を入れております。例えば、年間におきましては数百の銘柄につきまして、これを十分注目して点検するというようなことを鋭意行いながら、そういう中に不自然な、不審な取引というようなものがあれば、それについてきちっと事実解明をしていくというようなことで、市場の公正性を確保できるためのいろいろ作業なり
努力をやっておるところでございます。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 私は金融システム改革がこれによってできなくなるとは思いません。むしろ、こういう状態を持つ業界であるなら、なおさらみずからの
責任で、みずからの中での、業界の中としてのルールというものをもっと大事にするような方向に持っていくべきだと思うんです。
議員、御記憶だと思いますけれ
ども、あの当時、大蔵省の通達行政というのが大変厳しい批判の対象になりました。そして、その通達というものを改め、業界団体に任せられるものは全面的に任せる、どうしても行政がとらなければならない手法についてはむしろ法律の中に書き込む、そういう国会の御意見を受けて当時証取法の第一期の改正を行った。御記憶のとおりであります。
まさに、これは証券監視
委員会の諸君にも今まで以上に真剣な調査をより深めてもらわなければなりません。証券業協会、取引所自体にも業界内における行動としてより強力な
努力を求めるべきものではないだろうか、むしろ私はそういう感じもいたします。いずれにしても、もっと積極的な業界ルールというものの中でも対応ができるように持っていかなきゃならないんじゃないかという気を持っております。
-
○本岡昭次君 具体的になった
段階でまた質問ができる機会もあろうかと思いますが、きょうはこの程度にとどめておきます。
次に、阪神・淡路大震災の問題に入ります。
まず初めに、被災分譲マンションの復興問題を質問します。
まず、この震災直後、被災分譲マンションの建物に赤紙や黄、緑の紙が張られたんです。赤は全壊、黄は半壊、一部損壊というふうに評価されたのですが、続いて赤は全壊で建てかえが必要だというふうになったんです。
厚生省、法が定めるこの全壊というのはどういうものを全壊というのですか。
-
○
政府委員(亀田克彦君) 厚生省は災害救助法を所管しておるわけでございますが、災害救助法
関係の住宅の被害認定につきましては、昭和四十三年六月に、
内閣官房審議室長より
関係省庁に通知がなされてございます。災害の被害認定基準という表題でございますが、この基準によりますと、住宅の滅失、全壊、全焼失、全流失が入るわけでございますが、これは住宅の損壊、焼失もしくは流失した部分の床面積がその住宅の延べ床面積の七〇%以上に達した程度のもの、あるいは住宅の主要構造部の被害額が時価の五〇%以上に達した程度のもののいずれかに該当するものと、こういう通知になっておりまして、厚生省もこれにのっとって災害救助法
関係の適用をやっておる、こういう
状況でございます。
-
○本岡昭次君 今被災した分譲マンションのところで起こっている問題というのは、五分の四という多数決による建てかえ決議の強行なんです。しかし、区分所有法の第六十二条一項で、費用の過分性の立証というものがされていない建てかえ決議は無効だと私は思います。
それで、法務大臣、このような無効の決議で建てかえを強行しようとしたときに、補修による復旧を求めていく少数者はどのように対抗していったらいいのか、その法的な手段はどうすればいいのか、教えていただきたい。
-
○
政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のようにいわゆる建てかえの決議がされました場合に、その要件は法律で定めておるところでありますが、その要件を欠く場合にはその決議は無効であるというふうに解されております。
ところで、建てかえの決議に基づきまして建てかえを実現するためには、建てかえに賛成する者が反対する者に対して、建物区分所有法の規定によって認められております売り渡し請求権を行使してその所有権を取得し、そして最終的には専有部分の明け渡しを求める、そういう手続を経て実現していくということになりますので、決議の無効ということを主張しようとする場合には、そういう場面においてその決議が無効である、したがってそういう行為をしても効力は生じないということを最終的には裁判上争うことができる、こういうふうに解されます。
-
○本岡昭次君 私の質問した費用の過分性の立証というのはどういうふうになりますか、その場合。
-
○
政府委員(濱崎恭生君) 建物の区分所有等に関する法律の六十二条一項に建てかえの決議の規定がございますが、その決議の要件として「建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至ったとき」ということが決議の要件とされております。したがって、そういう
状況に至っているかどうかということは、まず第一次的にはその決議の中において区分所有者が判断するということでございますが、最終的に争いがあれば今申しましたような場面において裁判所で判断をされる、したがって裁判によってそういう要件があったかどうかということが結論づけられる、こういうことでございます。
-
○本岡昭次君 そうすると、その決議の中に費用の過分性の立証というものがなければそもそも無効な決議をしたということになるんですか。
-
○
政府委員(濱崎恭生君) 決議は御指摘のありました区分所有者の五分の四以上という多数決で決せられるわけです。したがって、決議をする際の前提として、そういう要件があるかどうかということを集会の決議をする前提要件として集会で判断するということでございます。もちろん、その判断の材料としては、
専門家の意見等の助けを得て判断することになろうと思いますが、まず第一義的には決議で判断する。そのことが後で無効だということで争いになった場合には、最終的には裁判所においてその決議が有効であったかどうかということが判断される、こういうことでございます。
-
○本岡昭次君 繰り返して失礼ですが、そうすると、建てかえ決議を受ける集会において過分の費用について立証できるような中身がなければ、決議そのものが無効だと考えていいのですかと聞いているんです。
-
○
政府委員(濱崎恭生君) 一般的なことを申し上げて恐縮でございますが、例えば民事上の取引でございますと、一定の要件がなければそういう法律行為が無効だとされる場合がありますが、そういう場合にあくまでも第一義的には当該当事者がそういう判断をしてその法律行為をされる、そのことが後で争いになれば裁判でそういう法律行為が有効であったかなかったかということが判断される、民事
関係はこういう構造になっておりまして、今の決議要件につきましても集会の中で何かの立証をするということではございません。あくまでも集会の多数の意見によって、決議の前提条件としてそういうことを満たしているかどうか、それは区分所有者のそれぞれの判断により集会の多数決によってまず第一義的には判断をするということでございます。
-
○本岡昭次君 だから、その決議を上げる集会でそれは満たされていないということになったら、決議そのものが無効ですかと私は聞いておる。
-
○
政府委員(濱崎恭生君) そういう費用の過分性という要件があるかないかということ、これは客観的に定まっているということでございますので、そういうものが客観的になかったのにそういう決議をしたということであれば、実体的にはそれは効力を生じないと、こういうことでございます。
-
○本岡昭次君 それを早う言ってほしかったんですよ。
次に、橋本
総理にお伺いしますが、
総理の手元に、自然災害被害者に対する
国家的保障制度を検討する審議会の設置に関する要請、二千四百万人の署名を添えて届けられたと思います。この問題について、
総理、二千四百万人の署名というのはかなり重いし強い力だと思うんですが、この審議会設置の要請にこたえて審議会の設置に踏み切られるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 去る二月二十日に、その自然災害に対する
国民的保障制度を求める
国民会議の代表の方々が、署名運動の結果について、政府の代表として阪神・
淡路復興担当でもあります
内閣官房長官に面談を申し入れてこられて、お話を承ったと聞いています。
そして、二千万の署名をされた方だけではなく、私はやっぱり
国民の中に、自然災害による住宅あるいは家財の喪失というものに対して不安を持っている、何らかの対応を期待していらっしゃる方というのは、率直に申し上げればたくさんおられると思うんです。
お話のありましたその
国民的な保障制度というのは、これは災害による個人の財産的損害の回復を公に保障あるいは支援するということでありますなら、これは個人補償との
関係、
国民間の負担のあり方、あるいは
地域による実情の違い、さらには現在の危機的な財政
状況のもとでの多額の財政資金の投入の困難さ、こうした問題があることは事実であります。
同時に、私
どもが初めて国会に当選いたしました直後にちょうどあの新潟の地震が起こりまして、その後随分地震保険の議論が形を整えるまでにかかりました。そうした記憶を振り返ってみますとき、いずれにしてもこれはやはり相当慎重に考えていかなきゃならない問題ではないだろうか、私はそう感じております。
-
○本岡昭次君 慎重に考えていただかなければなりませんが、これだけ、百年に一遍か千年に一遍かと言われるような大震災に直面した私たちが次の世代に何を残すのかということですね。
政府はいろんなことをやられました。私は評価しています、やられたのは。だけれ
ども、起こったことに対してただやったというだけじゃなくて、次のそういう我々が想像し得ないような大災害が起こったときにそれではどうするかというその対応は、この阪神・淡路大震災の教訓を生かして我々が何かを次の世代に残しておくということをやっておかなければならないんじゃないかという思いが私はあるんです。
今は確かに復興基金等で個別的にかなりきめ細かいことをやられております。私は、全部それをけしからぬとか、今の政府は何もやっていないということは一切言いません。やっておられるんですよ。わかっていますよ。だけれ
ども、それでは皆の納得し得ないものがある。将来に対する不安に対して担保するものは皆欲しい。だから二千四百万もの署名が集まったんだと私は思うんですよ。いつ、どこで、何が起こるかわからないという、危機管理の
一つだと私は思います。やはりここで一歩踏み込まれるべきではないかと私は思うんです。
総理、慎重に御検討いただくのはありがたいです。だけれ
ども、慎重に検討した結果として、そういうものを私たち、これは与野党も何もないですよ、政府も国会の側も、今
責任を持つ我々が次の世代に残すべきものとしてやはり踏み込むべきではないかという私の考えに対して、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 本岡議員がこうした問題に大変熱心に議論しておられることを前から存じ上げておりますし、その御見識にも私は敬意を持っております。
私自身も、遠縁の者でありますけれ
ども、あの震災で一人亡くしました。幸いに、下敷きになりました三名の家族のうち、ほかの二名は助けられましたけれ
ども。そして、ライフラインの担当者として何回か現地を踏みました。その
状況のいかに悲惨であったかも存じております。その上で、先ほど私は、今の
状況の中で、しかも新潟大地震の後、現在の地震保険をつくるについても随分真剣な議論が長いこと行われたということを振り返ってみましたときに、慎重に考えていかなければならないテーマであると思う私の気持ちは今申し上げたとおりであります。
-
○本岡昭次君 私は個人補償をせよということを求めておるんじゃないんですよ。補償というのは、明らかに国が地震を起こしたから国が補償せいというのはわかりやすい補償ですよ。だけれ
ども、あの地震は何も国が起こしたものじゃないんだから、補償という言葉にストレートになじまないことは私もよくわかっているんです。
だけれ
ども、自分の
責任のないところで生活基盤を奪われた人たちに対して、その人たちが自力で立ち上がっていくように下支えをしっかりやってやる。そして、しっかり働いてしっかり税金を納めようというふうな、こういう自助
努力を助けていくということは国の必要な施策であり、国益とか公益にかなうことではないかと思うんです。
そこに住んでおったのが不幸やったんやとか、いや、あなた、まずいところにおったなということでなくて、自然災害の多い
日本のどこに住んでおっても、自分の
責任でないところから起こった災害に対して自助
努力、自立していくための下支え、支援をするため、それは補償であるとかないとかいう議論はもうやめたらいいと思うんです、その場合は。だから、そういうものを何かできないかという議論を我々としてすべきではないか。
あるいは、議員の間で議員立法というのが出てくるかもしれない。しかし、それを待っておったのではどうしようもない。政府は政府の行政としての
責任の立場から、やっぱりいかにあるべきかというものが当然
提案されてもしかるべきだと思うんですがね。
私はこれ以上言うと時間があとありませんからもう言いませんが、
総理、一歩をお互いに踏み込みませんか、これは
国家補償ということでなくて自立のための支援をするんだという意味で、
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 震災の直後、当時私は通産大臣でありましたけれ
ども、まさに仮設工場、仮設商店街、こうしたものを焼け跡の中から、まだ火のほとんど消えないような
状況の中から、市民の皆さん方、
関係の方々と御相談をしながら立ち上げてまいりました。まさにそれは自立の支援だったんです。そして、一日も早く神戸港の
機能を回復し、その機会に、もとの神戸港に戻るのではなく、今二十四時間港が当たり前になつてきている
各国の港湾に
我が国のハブ港湾として対抗できるだけの、ただ単なる復旧・復興ではなしに、この機会に不幸を転じて一歩前に出ようよということもやってまいりました。国は今日まで兵庫県、神戸市とそのような
姿勢でお話し合いをさせていただいてきたと思っております。
その中で、自立支援ということも随分いろいろな角度でやってまいりました。これからも当然ながら県、市とよく御相談をしながら、復旧から復興へ、さらにその復興というものをただ単に前の姿に戻すのではない一歩進んだものを、今私は港を例に引いて申し上げましたが、神戸は私は将来ともに神戸港という資産を大事にしていかれるべき場所だと思いますし、神戸港というのは
我が国にとって代表的な港湾でありますから、この災害を逆手にとって、アジアの中で既に先行しておりますハブ港湾と対等以上に競争のできるような港をつくりたい。我々はそういう思いでこれからも兵庫県、神戸市をお手伝いしてまいりたいと思います。
-
○本岡昭次君
総理は
総理の、今の話はわかるんだけど、やっぱり完全にすれ違っているんですね。
それじゃ、ちょっと厚生大臣に
——長官ですか、どうぞ。
-
○
国務大臣(
伊藤公介君) 阪神・淡路の大きな災害を私たちは経験して、やってくる災害に対してどう対応するかということは、今、
委員御指摘のように、いろんな形で御
提案もいただいたり御意見もいただいてまいりました。
実は、これは
総理の諮問
機関であります防災問題懇談会で、地方公共団体がよく検討して将来の共済とかそういう制度を考えてみたらどうかという結論が出ています。それを受けて、今全国知事会で回を重ねて御議論をいただいています。私も大変大きな関心を持っております。
今、
委員が御指摘をいただきましたように、国はさまざまな生活支援をしてまいりました。しかし、なお、国が直接やれる方法はないかとか、あるいはやってくる災害に恒久的に対応できる制度をつくるべきだという御議論がありますので、つい先日、全国知事会の土屋会長さん、また兵庫、静岡の知事さんにもおいでをいただきました。また、つい直近でありますけれ
ども、静岡の知事は特にこのことを中心にして今後知事会にいろいろ働きかけをしていきたいということで、具体的な話し合いにも来ていただきました。近く東京都の知事を初め御
関係の知事とも私は個別に面会をする、そういう計画もしております。
自治体と国が一緒になって、来るべき災害に新しい制度ができるか、よく今後も検討を続けてまいりたい。しかし、その検討をしていく時間もありますから、今阪神・淡路に対してどうするかということは、今あります制度で十分対応できると私は思っておりますし、またそのことは
委員も御承知のとおり、さまざまな形で支援をしてきたところでもございます。
-
○本岡昭次君 それじゃ、ちょっと角度を変えて厚生大臣にお伺いします、災害救助法を所管しておられる大臣でありますから。
私も震災が起こったときは与党の震災プロジェクトチームにおりまして、村岡さんを座長にした中で一生懸命やりました。かなりなことをやったつもりであります。しかし、災害救助法というのは余り勉強せなんだ、私は。今、反省しております。
この二十三条一項に災害救助として何ができるかというのがずっと並んでおるんですね。その七号に生業資金の問題について「給与」という言葉がある。それからまた、二十三条の二項に、知事が必要と認めたときは現金を支給して救助することができるというふうに、その現金を支給して救助とかあるいは給与という、これは明らかに直接給付型の給付を可能にする規定がある。
私はもしそのとき知っておったら、徹底的にこの問題で与党のプロジェクトでやったと思うんです。ところが、不勉強だったものですからここを素通りした。残念に思っておるんです。現行法の中でもここのところをもう一遍ちょっと掘り起こせば、
総理が慎重にやらなければそうはいかぬのやというのは、案外いくんではないか。
というのは、厚生省がこの通達で七項の生業資金のところに書いてあるのは、生業資金等の貸与としか書いていない。これは衆議院でも議論ありましたがね。ずっと最後には給与と書いて、わざわざ給与をカットして……(「貸与」と呼ぶ者あり)ごめんなさい、貸与です。
だから、そういう意味で、なぜあそこに貸与だけで、その通達のところでは給与というのを外したのか。この問題は、
梶山官房長官も法制
局長官に尋ねて聞いてみるとかいろいろおっしゃったんですが、ここのところは当時、この災害救助法は、そうした難しく補償であるとかなんとか言わずして、自立していくための支援をやるという理念が、精神があったのではないかと私は思っているんですが、厚生大臣、その点いかがですか。
-
○
国務大臣(
小泉純一郎君)
総理等の
答弁また
国土庁長官の
答弁にもありますように、法的には「給与又は貸与」ということで字句には書いてありますが、これまで生業資金の給与は行われていなかったんです。ただし、災害救助法に基づく生業資金の給与を行うまでもなくいろんな支援する方法があるだろうということで、給与ではないが所要の施策を各般の法律を勘案しながら実施してきて、これでやっていきたいと。
そして、将来の問題については、
総理の
答弁もありますように、自然災害というのはいろいろ難しい問題もあります。こういうことから、直接自立のための給与ということではなく、生業を支援するために貸与ほかさまざまの施策でこれからもやっていきたいというのが今政府部内で大方の意見でありますので、そういう形で厚生省としても自立支援の策を講じていきたいというふうに考え
ております。
-
○本岡昭次君 給与の問題を外してきたことは今もお認めになったわけで、もう一度今こういう議論が起こっているんですから、災害救助法そのものの中でこれを具体化する道はないかということを検討されるのが所管大臣の
責任であろうと思うんですが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
伊藤公介君) 法律の解釈では、
委員今御指摘のように、いろいろ御議論のあるところです。そして、これはかねてこの法律が成案化されるときにも非常に検討されたと伺っております。
法律をそのまま解釈すれば、私はさまざまな今御指摘いただいたようなことは可能ではあると思います。しかし、厚生大臣から御
答弁をいただきましたように、現在ありますさまざまな制度でそれに対応もできる。もし空白があるとすれば、例えば今プロジェクトチームで昨年の十二月に決定していただいた、いわゆる要援護者とかあるいは六十五歳以上の方々に対する一万五千、二万五千円、五年間毎月給付する、こういう支援策をやってきたわけです。要は、今仮設住宅にいる人たちの生活支援をどうするか。それは、今ある制度では例えば生活保護があるわけですね。もし生活保護ということが非常に精神的な問題であるということになれば、それは非常に
一つの大きなポイントに私はなるんだろうと思います。
これは既に
委員会でも御指摘をいただいたところでございますが、私自身も深く今考えているところでございまして、
関係のいろいろな方々とも御相談もしているところでもございます。
-
○本岡昭次君 また別のところで議論いたします。
総理、生活保護はあるんですよ。僕たちの考えは、生活保護のところに行かせてはならないと思うんですよ。だめな者は生活保護を受けたらいいじゃないかじゃなく、生活保護のところに行かせないために、自立させるためにはどうするかというところに支援の力が要るだろうと言っているんですよ。決して私はむちゃなことを言っていると思わないですね。
もう一言だけ、何かコメントいただけますか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) ですから、あの直後から、特に仕事を呼び戻さなかったら神戸の再建はあり得ない、私はそうとらえたと申し上げているんです。そして、散ってしまう。地場産業として、今日までの神戸を築いてきたものだけではなく、新たな産業をも呼び込むことをこの機会に工夫したい、そういう思いでこの問題に対処をしてまいりました。働く場所ができなかったら意味がない、私はそういう視点でこの問題に取り組んできたわけであります。そして、今もそうした
努力は神戸に対して必要だと思っております。
-
○本岡昭次君 それだったら、エンタープライズ構想をひとつ支援してくださいよ。もうやめます。もう次の件にいたします。
それでは、最後に慰安婦問題を質問いたします。
昨年の十二月三日、戦争犯罪容疑者の調査を担当するアメリカ司法省特別調査局OSIは、旧陸軍の慰安所の運営や人体実験などによる第二次
世界大戦中の戦争犯罪に
関係した
日本の元軍人十六人を入国禁止処分とすることを決めたと発表しました。今後さらに、一九七九年に制定されたボルツマン修正法に基づいて、戦争捕虜の餓死など非人道的行為が確認された人物は随時監視リストに追加していくということのようであります。
これは、アメリカ政府が、慰安婦問題は非人道的行為と判断し、
関係者を監視リストに載せたと理解しますが、
外務大臣、政府の見解はどうですか。
-
○
政府委員(折田
正樹君) アメリカの司法省は、昨年の十二月三日、米国への入国資格を与えない人物に関する監視リストに十六名の
日本人が掲載された旨発表しました。
米国政府がいかなる人物の入国を認めるかは、
基本的には米国の
主権に属することでございますけれ
ども、本件措置の根拠となるアメリカの国内法では、ドイツ・ナチ政府やそれと同盟
関係にある政府等にかかわる外国人であって、人種、宗教、出身国または政治的見解を理由として他の者に迫害を加えることを命令、扇動、幕助し、またはそれに加担した者に対し米国への入国を禁止することができる旨定められておるところでございます。今回の措置は、アメリカ政府が入国管理政策上、この条件に該当すると疑うに足る何らかの理由があることをもって監視リストに掲載されたものだという説明を受けております。
いずれにせよ、米国政府の入管政策上の判断についての問題でございまして、
我が国政府としてコメントする立場にはございません。
-
○本岡昭次君 いや、コメントする立場にございませんでは困るんじゃないんですか。コメントしてく、ださいよ、ちゃんと。
-
○
政府委員(折田
正樹君) いかなる人物を入国させるかということは、
基本的にはアメリカの
主権に属することであると考えているところでございます。
今回の監視リストヘの掲載は、
各国、
日本も含めてでございますが、入国管理当局が種々の理由から入国拒否者を判断するのと同様、アメリカも入国管理政策との関連で、国内法の条件に該当すると疑うに足る何らかの理由があることをもって入国禁止に関する監視リストを準備しているということでございまして、これは刑事訴追ほどの要件を求められているものではないという説明を受けております。これをもってこれらの人物が七三一部隊や従軍慰安婦キャンプに関し
責任を有する旨認定されたこととなるわけではないというふうに考えられます。
-
○本岡昭次君 ちょっと
総理大臣にお聞きしますが、アメリカ政府のことですからわしゃ知らぬと言われたらそれまでかもしらぬけれ
ども、アメリカは非人道的行為であるということでこの監視リストに名前を出したんですね。
この非人道的行為というのは人道に対する犯罪であるというふうにアメリカが認定したと私は解するんですが、
総理はどうお考えですか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 確かに、アメリカ政府がこの指定をしましたときの司法省の発表文の中に非人道的という言葉がございます。しかし、それの意味するところは、先ほどの
政府委員の説明の中にございましたけれ
ども、入国管理政策上どういう
人間の入国を認めるか認めないか、これは
各国政府が
主権に属する問題で決めるわけでございます。そういった際に、先ほど申しましたような人種、宗教、出身国または政治的見解を理由として他の者に迫害を加えることを命令、扇動、幕助し、またはそれに加担した者に対し入国を禁止することがあるということがアメリカの国内法であるわけですが、その条件に該当すると疑うに足る何らかの理由がある、そういうことで入国管理上はこういった監視リストに載せるわけでございます。
しかしながら、そのことが必ずしも刑事訴追につながるものではない、ましてやそういった人道的な観点から法的に
責任があるということを確定するものではない、こういう性格のものでございますので、必ずしもそこで人道的な面で法的な
責任があるということは確定されたわけではない、こういうふうに理解しております。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) アメリカのことだからわしゃ知らぬということを言われましたけれ
ども、実は
我が国の出入国管理及び難民認定法の中には、難民条約で認定をしております人道に対する犯罪を犯した者は難民認定を取り消すという規定があります。ある意味ではこれと対比して私は受けとめていいのではないだろうか。
それぞれの国はそれぞれのルールを持つ。
我が国は、この出入国管理及び難民認定法において、難民条約で言及をしております人道に対する犯罪を犯した者に対して難民認定を取り消す、言いかえれば入れないという規定が存在をしておるわけでありまして、ある意味では、我々もこうした法制度を持っている、そのもとに暮らしているということではないでしょうか。
-
○本岡昭次君 いや、それで結構なんです。
日本には人道に対する罪とか犯罪なんてないんだと言われた方があったものですから、
総理の見解をお聞きしたわけです。結構でございました。
それでは次に、今月五日にILO条約勧告適用
専門家委員会が年次意見報告書を出しまして、慰安婦はILO二十九号条約で禁止している強制労働に当たるという勧告を出しましたが、労働省、その内容を報告してください。
-
○
政府委員(渡邊信君) 今回のILO条約勧告適用
専門家委員会のオブザベーションでございますが、これは、昨年大阪のある団体が従軍慰安婦問題について提出をしました問題に対して
我が国がその対応を報告したことを踏まえまして、同
委員会として意見を出したものでございます。
その趣旨は、アジア女性基金を中心とする
我が国の本問題に対する取り組みに関する
我が国政府からILOに対する詳細な情報提供に留意した上で、政府が被害者の期待にこたえるために必要な措置に対して引き続き責務を果たし続け、今後とられる措置に関する情報を提供することを信頼するとしております。
今回のオブザベーションにつきましては、
専門家委員会がアジア女性基金を中心とする
我が国の本問題に対する取り組みを評価したものと
認識をしております。
-
○本岡昭次君 ちょっと待ってくださいよ。全然違うね、それ。今あなた大変な発言したよ。そうしたら、
日本が昨年の五月三十一日及び十月三十日、二回にわたって政府の見解を出しているでしょう。どんな見解を出したんですか。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) 昨年二度にわたりましてILO側に提供しました情報の内容でございますが、それは第一として、この問題については、さきの大戦にかかわる補償その他の問題につきましては
関係の条約に従って対応してきており、法的には
解決済みであるということが第一点でございます。第二点としまして、他方この問題については、女性のためのアジア女性基金などを通じて誠実に対応しているといった
状況について政府の見解を
事務局側に情報提供したということでございます。
-
○本岡昭次君 二度にわたってそういう報告を出したにもかかわらず、なぜ二回も同じ勧告が出るんですか。こんなことはILOの中で異例のことやというんですよ。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) 昨年の勧告で情報提供を窓通されましたものですから、二度にわたって情報を提供したわけでございますが、それを踏まえて、今回の報告では引き続き
日本もそういうことで対応してほしい、そういう意味で、私
どもが情報を提供したことを受けて、それを評価しながらこのような見解を出してきたと、そういうふうに受け取っております。
-
○本岡昭次君 評価するというのはILOの二十九号の強制労働の条約に違反するかしないかということなんでしょう。違反しないという勧告が出たんですか。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) 条約勧告適用
専門家委員会という
専門家なりの意見としては、二十九号条約の戦時における適用、不適用は厳格に解釈すべきものであるという
専門家なりの意見を表明したものと受けとめております。
-
○本岡昭次君 違反をしているのかしていないのかということなんですよ。抽象的ではなくて、はっきり言ってください。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) 違反があったと結論づけているわけではございません。
-
○本岡昭次君 今のは非常に重要な発言なんですよ。私の持っている資料と外務省の持っている資料は違うかもしれません。これはちょっと留保させていただきます。
違反していると私たちが持っている文書は明言している。向こうは違反しているとは書いていないと言っているんですよ。これは国際的な大問題なんです。
-
○
政府委員(朝海
和夫君) この条約勧告適用
専門家委員会は、ある団体からの書面による申し立てに基づきまして一定の見解を出したわけでございますが、みずから事実認定を行ったりしたわけではございません。もともとそういう
委員会ではございません。
そういうことも踏まえまして、二十九号条約の戦時の適用については、この
委員会の方々は一定の御意見をお持ちでございましたけれ
ども、そうでない意見もあるのもこれまた事実でございます。そうしたことも踏まえまして、ILO全体として正式に二十九号条約違反がいわゆる従軍慰安婦問題に関連してあったと断定しているものではないということを申し上げたわけであります。
-
○本岡昭次君 私は
専門家委員会での意見がどうであったかと聞いているんですよ。ILO全体がどうなんて聞いていない。ILO二十九号条約で「絶対的に禁止された行為に該当すると注目し、さらに、このような受け入れ難い虐待に対しては適切な補償がなされるべきであると考えた。」、この文書があるんですかないんですか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) ILOの中でのこの
委員会の性格なんかがございますので、非常に回りくどい
答弁になっておったと思います。
ここで出ましたのは、今回個人の資格で参加する
委員から構成される
専門家委員会としての見解がオブザベーションという形で出されたわけでございます。そして、そのオブザベーションでは二十九号条約に違反したという意見になっております。
先ほど
答弁しましたのは、しかしながらこの
専門家委員会の性格からいたしまして、そもそも違反かどうかということを認定する
機関ではないということもございまして、ILOとしての最終的な判断を示すものではないということでございます。しかし、
委員おっしゃるとおり、この
専門家委員会のオブザベーションとして違反であると言ったことは事実でございます。
-
○本岡昭次君 いや、今の、なぜああいうことを言うたんですか、ごまかすようなことを。ちょっと注意してください。だめだよ、それ。聞いていないことをやるんじゃ、何ですか、このむだな時間を。今の
外務大臣の発言ではっきりしているじゃないですか。(発言する者多し)
-
-
-
○本岡昭次君 故意に時間を……(発言する者多し)
-
-
○本岡昭次君 外務省は人をごまかし、うそをつくためにあるのかと思いたくなるんですよ。
外務大臣の方がよほどはっきりと
事態を説明していただいてよくわかりました。
そこで、
外務大臣、たとえ
専門家の小さな
委員会にしろ、そこが二度にわたって同じ勧告を出す、そしてまたここは
日本が勧告したことに対して改善をしなければ繰り返し繰り返し勧告をし続けると言っているんですよ。そうすると、ILOという舞台の中でなぜこの慰安婦の問題を繰り返し繰り返し議論し合わなきゃならぬのかということにもなる。人権
委員会で議論する、ILOで議論すると。
だから、そういうことにならないようにどうするかというのが
外交上の問題なんですよ、はっきり言えば。やれるんなら勝手にやらせておけというふうな、やらせておいておもしろがっているような人たちじゃないんですよ、私たちは。どこかできちっとこのことをまとめにゃいかぬと思っておるんですよ。国際的に恥をさらしておることですよ、これ。
だから、きちっとILOの問題に対応しなさい、こう言っているんですが、どうですか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 私
どもも、この問題は法的にはサンフランシスコ条約その他で
解決した問題だと、こう考えております。しかしながら、やはりこれは多数の女性の名誉と
尊厳を深く傷つけた問題である、こう考えておりまして、道義的な
責任は痛感してこれまでもそのようなおわびと反省の気持ちを表明してきたところでございます。そういったことを踏まえまして、いわゆるアジア女性基金、これは多くの
国民の気持ちのこもった拠金も含めて行われる事業でございますが、この事業を誠実に実行しようとしているところでございます。
ILOのこの
専門家委員会との
関係におきましても、昨年のああいったオブザベーションが出ました後に、こういった
日本としての対応ぶりを説明いたしまして、そういったことを踏まえまして今回の、ことしのオブザベーションでは、先ほど
政府委員からも労働省からも
答弁がございましたけれ
ども、こういった
日本の政府の取り組みについては一定の評価が与えられたものと承知しております。
我々としましてはこの問題に誠意を持ってこれからも取り組んでまいる所存でございます。
-
○本岡昭次君 ILOでは実際評価されていません。うそをついてはいけません。
それで、労働大臣に聞きます。
昨年七月、私は本院の決算
委員会において当時の永井労働大臣に質問しました。ILO総会でこの問題が議論されるようになるよ、そういうことにならないようにきちっと対応しなさいということを言いました。すると労働大臣は、今後それぞれの所轄するところと協議を進めながら十分対応してまいりたい、このように
答弁された。ILOはこれは労働者の問題でもあるから、労働大臣として当然この問題に関心を持ってもらわにゃいかぬわけです。どうですか、労働大臣。
-
○
国務大臣(岡野裕君) 申し上げるまでもなくLOは国際労働
機関でございます。したがいまして、ILOの動きにつきましては労働省としても非常に大きな関心を持っているところであります。
たまたま前大臣、永井先生の発言が出ておりますが、これは私も存じているところでございます。今、先生が紹介をされた永井前大臣のお話については私も存じているところでございます。ILOに報告をする点につきましては、労働省も今申し上げた外務省あるいは外政審議室と十分協議をしながら進めている、こういうことでございます。
-
○本岡昭次君
総理、質問の最後ですが、私はこの慰安婦問題はやはり早期に
解決しなければいかぬと思っているんですよ。
日本がアジアの一員としてアジアの皆さんと共生しながら、国際化時代の中でたくましく我々も生きていかにゃいかぬわけです。
しかし、それには幾つかの
解決しなけりゃいけない問題があります。終わったと言っても相手が終わっていないと言ったときにどうするかという問題だってあると思うんで、この慰安婦問題の
解決、私はひとつ
総理として一歩をこの問題は踏み込んでいただきたいという強い希望を持っておるんですが、一言コメントをいただいて、私の質問を終わります。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 私は、この慰安婦問題というものほど女性の名誉と
尊厳を傷つける問題はほかにないと思います。そして、道義的な
責任という思いは私
どもの世代にもございます。
一方、法律条文で物を言い出しますと、サンフランシスコ講和条約というものによってすべて終結という、
我が国が国際的に主張しまた国内でも御了解を得て今日まで参りましたその仕組みというものが現存していることもまた事実であります。
そうした中でアジア女性基金が誕生じ、この給付事業を開始するという時点で、基金の
責任者の方々から私のおわびの手紙もつけるようにというお話をいただきました。そして、私は自分の意思でお手紙をつけて、送達できた方々にはそれをお届けいたしております。
私は、せっかく
国民の善意が結集をし、道義的
責任を果たしていこうとしているこのアジア女性基金というものに対しまして、先ほど来議員がお述べになっておられるILOにおきましても、その
日本人の善意というものを酌み取っていただけるようなお力添えを心から願っております。
-
-
-
○大渕絹子君 私は、きょうまず最初に、昨日聴濤
委員がここの場所で御質疑をされましたけれ
ども、自衛隊の有事の場合の掃海艇を出せるのがどこの
地域までかというような議論が盛んに行われていたわけでございます。私は、根本に
日本の憲法、いわゆる九条の中で正義の戦争というのはもはやあり得ない、だから戦力そのものを持たないのだという平和主義を宣言している憲法であり、そしてどこの国にも求められている自衛権を確保するために必要最低限度のものとして自衛隊が存在をしているんだという
基本的な
原則を踏まえた場合に、周辺有事の場合に果たしてどこまで自衛隊が掃海艇を出せるだろうかという、そういう想定をすることさえおかしいといいますか憲法の枠からは既に外れている問題だというふうに思うわけでございますけれ
ども、それでは、きのうの御
答弁の中で明快にならなかったところについて、具体的に
一つ確認だけさせておいていただきたいと思います。
朝鮮有事ということで、私は北朝鮮が有事になるということを想定すること自体、北朝鮮に対しても大変無礼なことであろうというふうに思っているわけでございますけれ
ども、北朝鮮が例えば戦闘状態に入って、韓国にはまだ戦争が及んでいないという場合、韓国の領海に機雷が敷設された場合に、それに対して
日本が、周辺の有事であって
日本にも危害が及ぶかもしれないということの中で、機雷の掃海に自衛隊を出すことが可能かどうかということを明快に答えていただきたいと思います。
-
○
国務大臣(久間章生君) 仮定の御質問でございますし、また特定の国、特定の
地域を挙げての具体的な
状況を想定してそれへの対応を問われましてもなかなかお答えすることは困難であります。他方、一般論として申し上げれば、自衛権の発動に当たる場合を除き、外国による武力攻撃の一環として敷設されている機雷を除去する行為は、一般には武力の行使に該当し、憲法上許されないと考えております。
-
○大渕絹子君 今明快に答えていただきましたけれ
ども、しかし自衛隊の検討
課題の中には、グレーゾーンと明記して、検討すべき
課題としてかなりたくさんの項目がうたわれているわけですよ。グレーゾーンということは、私は今の憲法の中ではあり得ないというふうに思うわけでございます。
そういうことをきちんと踏まえた中で検討されることは構いませんよ。だけれ
ども、これはできるんだ、こっちはできないんだと、できないからこそ何をすべきかというそのもっと先のこと、自衛隊ができないのであるならば、それではどういうことで有事を起こさないための施策を
日本としてやっていくのか、そこまで踏み込んでいかなけりゃならないというふうに思うわけでございます。ぜひそういう
努力をしていただきたいと思います。
さて私は、きょうは、昨年の四月、アメリカ大統領と橋本
総理の間で交わされました日米安全保障共同宣言に絡んで質疑をさせていただきたいというふうに思っているわけでございますけれ
ども、まず冒頭に、日米安保条約を改正する場合の正式な手続、条約を変える正式な手続を教えてください。
-
○
政府委員(折田
正樹君) 日米安保条約そのものには改正に関する規定はございませんけれ
ども、一般国際法上、条約は当事国の
合意によって改正することができるということでございまして、安保条約についても国際法上は
日米両国間で協議の上
合意を行うことによって改正することができるわけでございます。そして、その条約の改正につきましては国会の承認が必要であるというのが手続でございます。
-
○大渕絹子君 それでは、法制局に、
日本国憲法の中に九条が入れられた歴史的背景、そしてその解釈もあわせてお願いをいたします。
-
○
政府委員(大森
政輔君) 第九条が設けられた背景あるいは制定の趣旨というものにつきましては、いろいろな言い方でいろいろなことが言われているわけでございますが、当時の政府の
提案に関する発言を御紹介するのが最も適当で適切であろうと思いますので、それを引用させていただきたいと思います。
すなわち、昭和二十一年六月二十五日に、いわゆる制憲議会、衆議院の本会議におきまして、当時の
内閣総理大臣吉田茂
総理がこの点について述べておられるわけでございます。すなわち、
改正案は特に一章を設け、戦争拠棄を規定致し
て居ります。即ち国の
主権の発動たる戦争と武
力に依る威嚇又は武力の行使は、他国との間の
紛争
解決の手段としては永久に之を拠棄するも
のとし、進んで陸海空軍其の他の戦力の保持及
び国の交戦権をも之を認めざることに致して居
るのであります。是は改正案に於ける大なる眼
目をなすものであります。斯かる思い切った条
項は、凡そ従来の
各国憲法中稀に類例を見るも
のでございます。斯くして
日本国は永久に平和
を念願して、其の将来の安全と生存を挙げて平
和を愛する
世界諸国民の公正と信義に委ねんと
するものであります。此の高き理想を以て、平
和愛好国の先頭に立ち、正義の大道を踏み進ん
で行こうと云う固き決意を此の国の根本法に明
示せんとするものであります。このように述べておられます。
そして、現行法の自衛権との
関係での解釈を示せということでございますが、いろいろな面からの議論がなされてきたわけでございます。要するに、この第九条のもとにおきましても独立
国家に固有の自衛権まで放棄しているものではない、したがいまして
我が国を防衛するために必要最小限度の自衛行動をする、そしてそのための実力を保有すると、こういうことをも否定しているものではないというのが九条と自衛権をめぐる議論のエッセンスであろうというふうに思われます。
-
○大渕絹子君 後から述べられた見解というのは、一九五四年に鳩山
内閣のときに政府見解として打ち出されたものと解釈してよろしいですね。
-
○
政府委員(大森
政輔君) 昭和二十二年五月三日に
日本国憲法が施行されまして、以後昭和二十九年に自衛隊の創設に至ります間におきましては、これは憲法の草創期でございまして、これをめぐり議論には若干の揺ればございました。しかしながら、二十九年に当時の大村
防衛庁長官が表明されました見解、このエッセンスを私はただいま申し上げたわけでございますが、昭和二十九年以後今日に至るまでその根本は変わっておりません。
-
○大渕絹子君 共同宣言が出されるまでの道のりの中でアメリカと
日本政府の間でかなり長年にわたって検討が行われてきたというふうに思っております。
ボトムアップ・レビューという冷戦後の
世界における
国家安全保障というアメリカの報告書があるわけです。クリントン政権によって発表されましたけれ
ども、この中身につきまして、
日本に対しても今までの安全保障の体制から大きく変えてほしいという内容が盛り込誉れているわけでございます。
こういう大きな変化があった場合には、アメリカ側から
日本政府に対して事前協議というのが当然持ちかけられていると思うのです。九三年にこのボトムアップ・レビューが発表されるわけですけれ
ども、当時
日本政府に事前協議の持ちかけというのはあったのでございましょうか。
-
○
政府委員(折田
正樹君) おっしゃっておられるボトムアップ・レビューは九三年九月にアメリカが発表したものであろうと思います。アスピン国防
長官のイニシアチブのもと、クリントン政権のもとでの発表でございますが、国防戦略及び計画をいろいろ積み上げまして見直しをしたものでございます。
この中身でございますが、アメリカの政策事項でございますのでアメリカ自身が決定することではございますけれ
ども、
日本を含める同盟国に対して、さまざまなレベルでどういう内容のものであるかというのをアメリカの方は累次説明をしてまいりましたし、当時アスピン国防
長官は見直しの進捗
状況につきまして講演等で一般にも明らかにしてきたというふうに思っております。
-
○大渕絹子君 当時宮澤
内閣のちょうど終わりのころでございまして、その後、細川
内閣、羽田
内閣とかわっていくわけでございます。そういう
日本の大きな政変の中にこういうアメリカの
国家戦略というものがつくられていくわけでございます。
この中でアメリカは、同時に二つの戦争、イラクと北朝鮮が同時に戦闘状態になったということを想定しながら、その二つの戦争に対してもきちんと対処ができるような戦力配分をしなければならないというふうにしてつくられています。そして新たな危険として四つのカテゴリーというのを挙げていますが、それを述べていただきたいと思います。
-
○
政府委員(折田
正樹君) アメリカのボトムアップ・レビューの中で言われております四つの危険というのは、核兵器等大量破壊兵器拡散の危険、それが
一つ目です。二つ目が
地域的紛争への危険。三番目が
民主主義及び改革に対する危険、これは旧ソ連、東欧
諸国の動きを考慮してのことでございます。それから四番目が
経済の衰退が安全保障に及ぼす危険、これはアメリカ自身の
経済の衰退の危険ということを危険に挙げて、四つの危険と称しております。
-
○大渕絹子君 そこで、アメリカの四つ目の危険、
経済破綻になった場合に大変危険を感じているということの中で、アメリカ自身が
経済的再建を果たすためにも
日本との
関係は大変重要であると、一九九五年二月二十七日にナイ・リポート、東アジア戦略報告という形で出されております。
その中で、
日本における強力なプレゼンスの維持ということでぺ−ジを割いて、
日本に米軍基地を置いて、そして
日本と友好
関係を保っていくために何をなさなければならないかというようなことが明快に書かれてあるわけでございますけれ
ども、私の口から申し上げるには大変時間がありませんので、恐れ入りますがそこの部分を朗読していただきたいと思います。
-
○
政府委員(折田
正樹君) ちょっと長い文章なので要約させていただきます。
アジア太平洋におきますアメリカの安全保障政策は、
日本の基地へのアクセスと米軍の運用に対する
日本の支援に依存している。在日米軍は、
日本の防衛及び近傍におけるその他の米国の利益に対してのみならず、極東
地域全般の平和と安全の維持に対してもコミットし、備えている。在日米軍基地は、この
地域の事実上いかなる問題地点へも迅速に展開できる良好な位置にあると述べております。それから、米国への
接受国支援、
我が国の防衛力整備等についても言及しております。
-
○大渕絹子君 その中で、
日本はこれまでどの同盟国よりも気前のいい受け入れ国である、そして米軍基地の人件費あるいは経費についても積極的に提供をしている国である、そしてアメリカの今後の発展のためには
日本全土が必要であるというように書かれてあると思うんですね。そういう内容からしても、アメリカにとって
日本ほど都合のよい同盟国はないということが明らかであると思います。それに対して
総理はどう思いますか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 私はそのナイ・リポート等も目を通しておりますけれ
ども、その上で一概にその比較は当たらないのではなかろうかと存じます。
確かに、いわゆる思いやり予算という形で
我が国は駐留米軍の経費を他に比べて多く負担いたしております。しかし、例えば同様のプロセスをたどって敗戦から今日を迎えておりますドイツの場合、NATOのエリアの中では彼らはともに肩を並べて戦います。そして、湾岸戦争が起ころうとしたとき、ドイツの空軍部隊はトルコまで前進をし、トルコの国境が侵された途端に多国籍軍の一国として戦う態勢をとっておりました。
我が国はそのような行動をとりません。条約締結のお互いの
関係の中でどのような対応をするか、私はそれぞれの国の
一つの選択であろうと存じます。
-
○大渕絹子君 こうしたボトムアップ・レビューとかナイ・リポートなどを通じて
日本への働きかけというのがなされてきて、そして今度の共同宣言につながっていくというふうに思っているわけでございますが、そこのところはもう少し後にさせていただいて、一九九三年から九四年にかけて北朝鮮に核疑惑が発生をし、
日本でもひそかに朝鮮半島の有事研究がなされていたことは、さっき冒頭でも申し上げました。そのときに、石原前
内閣官房副
長官の談話が新聞にも載っているわけでございますけれ
ども、有事立法もつくったというふうになっているわけです。この事実
関係を教えてください。
-
○
政府委員(三井
康有君) 御指摘の一九九三年ないし九四年当時の北朝鮮の核開発問題につきましては、
国際社会が大変憂慮をした事案でございました。当時、我が政府といたしましても、仮に国連の安全保障理事会で何らかの措置が決定される場合には、
我が国としても憲法の範囲内で
責任ある対応をとる必要があると考えていたところでございます。このため、政府におきましては
関係省庁間で情報交換等を行ったほか、各省庁においてもそれぞれの立場からそれぞれの所掌事務の範囲内においてあらかじめ必要な検討を行うこととしたところであったと承知いたしております。
しかしながら、その後、情勢の好転等もございまして、各省庁が検討結果を取りまとめて
内閣官房に報告するとか、あるいは
内閣官房みずからが何らかの取りまとめを行うといったような
状況には至らなかったものでございます。政府として具体的な立法の要否等について検討する
段階にまでは至らなかったということでございます。
-
○大渕絹子君 その後、羽田政権になったときに羽田元
総理が立法も準備をさせたというふうに言っておりますよね。超法規的措置は避けたかったので準備をさせたというふうにあるわけですけれ
ども、立法の準備もあったのではないですか。
-
○
政府委員(三井
康有君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、
関係する省庁がそれぞれの所掌の範囲内でどういうことができるのかといったようなことをあらかじめ勉強するということはあったわけでございますが、今御指摘のように、具体的に特定の法案を準備するとかそういった
段階までは全く立ち至っておりませんでした。
-
○大渕絹子君 その話し合いの場所には政治家は入っておりましたか。
-
○
政府委員(三井
康有君) 今申し上げましたように、
関係する省庁のそれぞれの事務当局が検討を行っておったということでございます。
-
○大渕絹子君 非常に問題だと思うんですね。橋本
総理も当然御存じであったろうと思いますけれ
ども、このような有事法制のあり方は
民主主義の中であってはならないことだと思うのですけれ
ども、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) まず第一に、私は当時野党でありまして、そうしたお仲間にお招きをいただく場面にはおりませんでした。
ただし、国際情勢の緊迫する中で、我々は我々としてこの
事態の中でどうすればいいかは真剣に考えておりました。
-
○大渕絹子君 もし本当に北朝鮮に有事が懸念されるならば、やはり国会の場所にもちゃんとオープンにして、そしてどうすべきかという対応をしていくのが
日本の国会に求められることではないかと思いますけれ
ども、いかがですか。
-
○
政府委員(三井
康有君) 先ほど来御
答弁申し上げておりますように、検討は事務方で行ったわけでございますけれ
ども、もとより当時の
総理、すなわち細川
総理それから羽田
総理、村山
総理、そのいずれに対してもこういった検討を行うということにつきまして、事前にあるいは事後に御報告をして御了解をいただいた上でやっておるわけでございます。
また、国会が知らないところで云々というお話がございましたけれ
ども、本件につきましては当時から随時国会に対しても御説明、御
答弁も申し上げているところでございます。本院におきましても、例えば
平成六年の七月二十一日の本会議において、当時の村山
総理からそのような検討を各省の中で必要に応じて行っているという旨の御
答弁を申し上げているところでございます。
-
○大渕絹子君 それでは、日米安全保障共同宣言のところに入らせていただきます。
九六年四月十七日にクリントン大統領がおいでになりまして宣言がされたわけですけれ
ども、日米安保条約がこの宣言によって改正されたことになるのかどうか、お答えください。
総理、お願いします。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 日米安全保障条約が改正されてはおりません。まず第一に申し上げます。
そして、よく再定義ということを言われる方がありますが、再定義といった言葉の意味はもう
一つ明確ではありませんけれ
ども、日米安全保障条約の有する極めて重要な
役割を再確認したというのが私は正確な言い方ではないかと思います。
この共同宣言は、これまでの安全保障分野におきます日米間の緊密な
対話の成果というものを踏まえて、日米安保体制というものの重要な
役割を改めて確認しながら、二十一世紀における日米同盟
関係のあり方を内外に明らかにしたという性格のものでございます。同時に、この共同宣言は日米両政府の首脳の政治的意思を確認し合うものでもあります。そして、条約ではない共同宣言が条約を改正するものではあり得ないことを再度申し添えます。
-
○大渕絹子君
日本国政府が、いわゆる
内閣が憲法の行政権の中でアメリカの政府と締結をしたということですか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 共同宣言というのは政治的意思の確認というものでございます。条約を改正するものではあり得ないものでございます。
-
○大渕絹子君 あり得ないから、じゃ、日米安保条約がこの宣言によって拡大解釈をされていくということは絶対にあり得ないのですね。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 拡大とか拡張とか言われますけれ
ども、これまでの安全保障分野における日米間の緊密な
対話の成果というものを踏まえまして、この条約の重要な
役割というものを改めて確認しながら二十一世紀に向けた日米同盟
関係のあり方を内外に明らかにした、こうしたものでございます。
この共同宣言は、
日本の安全及び
アジア太平洋地域の平和と安定の維持のために日米安全保障条約の有する極めて重要な
役割を再確認したものだと申し上げてまいりました。
-
○大渕絹子君 その再確認に当たって、国会の場所にその内容を事前に明らかにすることはできなかったのでしょうか。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) それまでも、冷戦が終わりましてから国際情勢は随分変わってまいりました。しかし、そういった情勢の変化の中にあっても、やはり日米安保体制というものが
我が国の平和を守る上において非常に大切であるというようなこと、あるいはまた日米のかたいきずなというものが広く
アジア太平洋地域全般の安定のためにも役に立っているのだという趣旨のことはいろいろな機会に申し上げてきたというふうに承知しております。
ただ、この共同宣言の文字どおり一語一語の言葉につきましては、これは両国首脳の間で会談を持ち、そういった中で
合意されたことあるいは共通の
認識になったところをまとめ上げるものでございますから、それは会談の後に共同宣言として発表されたというふうに御理解賜りたいと存じます。
-
○大渕絹子君 先ほどの有事立法のときもそうですけれ
ども、安保条約に全く及ぶものではないということであれば問題はないのだろうというふうに思うわけです。しかし、この共同宣言が行われたことを受けて、
日本周辺の有事の際の準備に入るというようなことが具体的に行われたり、危機管理ということで
総理が一朝事があったときに邦人の救出をどうするかとか、いろいろ考えて準備をなさることというのは構わないわけでございますけれ
ども、安保条約そのものは極東に限られておったということが、
アジア太平洋地域全体に及ぶんだ、あるいはまた
中東にまで及ぶこともあり得るんだ、そこのところはもう境がないというような発言も閣僚の中から出てくるということがあります。
私自身はこの共同宣言が安保条約そのものを拡大するためになされたものなのかなというふうに受けとめていたわけでございますけれ
ども、
総理自身がそこは明快に打ち消しておられますから……(「ごまかされちゃだめだよ」と呼ぶ者あり)そうなんですよね、私は本当はそこが大丈夫かなというふうに思うわけですけれ
ども、もう一度答えてく、ださい。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 日米安全保障条約をめぐる論議というものは、さまざまな角度から本院においても積み重ねられてきたと思います。その中で、よくこの条約の及ぶ範囲、法的な範囲というものが問題になり、極東の範囲ということがよく言われておりました。そして、そういう解釈を今回もこの共同宣言の中において変えておりません。
その上で、例えば、この条約が存在し日米間が安定していることによって我々も非常にそこから安心を酌み取っている、そういう意味でこの条約、を見ております国はだんだんふえてきております。これは、日米安保条約の条約上のその範囲ということとは全く異質のものとして、この条約が厳然として存在しておりますことをもって
アジア太平洋地域における
日米関係の安定ととらえ、それはすなわち自分たちにもありがたいこと、例えばこれはオーストラリアなんかもそういう言い方をいたしますし、本年の新春に当たりましてASEANを回りましたときにも、ASEANの首脳の中からもそのような発言が出てまいります。
そして、多少古い次元に戻りますと、私自身が日米自動車協議で少しカンターと派手にけんかをし過ぎたせいなんですけれ
ども、
日米両国が双方の言い分のPR合戦をやりましたときに、逆にヨーロッパの中から、これ以上
日米関係が悪くならないようにという懸念の声も随分ありました。言いかえれば、
日米関係が安定している、そのベースに日米安全保障条約があり、これが有効にワークしている結果として我々も実は平和と安全を享受しているという意味合いで評価をする国、これは
アジア太平洋地域のみに限らなくなっておるということも事実であります。
-
○大渕絹子君 アメリカは、先ほどのナイ・リポートの中でも、日米安保で中国やアジア
地域に対して
経済的な影響力を非常にこれからは持っていかなければならないということが示されているわけです。安保条約でアジアの方ににらみをきかせながら、しかし一方では、大きく成長するアジアに対して自国
経済の再生をかけていると。
日本に対しては、これ以上
経済大国にならないために、軍備を拡大させて、基地の
経済負担も増させて、安保強化によってアジア
諸国に
日本に対して大きな懸念を持たせることによって対アジア貿易をアメリカの手におさめようとしている、これがアメリカのアジア戦略ではないかと、そういうふうに思うわけでございますけれ
ども、これは少し思い過ぎでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) これは私は率直に申し上げて思い過ぎだと思います。と申しますよりも、今アジア太平洋の多くの
国々、一番気にしておりますことは、
一つは日米でありますけれ
ども、同時に米中、そして日中、この三角をなすそれぞれの
国々の間がより深く円満になること、そして中国が
国際社会におけるより建設的なパートナーとして
国際社会に入っていくこと、そしてアメリカの
アジア太平洋地域におけるプレゼンスを確保すること、私はその声の方が強いと思います。
-
○大渕絹子君 アメリカはこれからの二十一世紀を、アジアとの
経済交流といいますか、そういうものに明快にかけていると思うんですね。
そういうことからすると、
日本が今のようなアメリカ基軸のスタンスをとることによって、きのうからきょう、橋本
総理は大変中国に対して、あるいはアジアに対しての
日本のスタンスというのを述べておられますけれ
ども、今までのアメリカ基軸のスタンスであっては、中国やアジアの人たちは
日本という国を信頼できるかどうかということで大変懸念を持つというふうに思うんですね。
私たちの社会民主党の土井たか子党首が訪中をされたわけでございますけれ
ども、そのとき江沢民
国家主席にお会いになられたときに、
日本の歴史
認識や安保強化に大きな懸念を持っているというようなお話をなさったようでございます。
ほかのアジアの国の人たちも、過去の侵略戦争の歴史から、あるいはたび重なる
日本の政治家たちの懲りない発言に対して、また
日本は危険な道へ進むのではないかと、そういう懸念がすごく広がっています。そして、クリントンさんと橋本
総理の共同宣言がさらに
日本の歯どめを外して軍事大国化していくのではないかというような懸念が広がっているんですね。それは新聞等にも報道されていますし、私たちが独自に入手するニュースからも手に入れることができるわけです。
日本はアジアの一員として、もう少しアジアの人たちと共生をする道をこそ拡大していくべきだというふうに思いますけれ
ども、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 今、議員が述べられましたこと、私は前提部分を除けば皆賛成です。
私はアジアの
国々と仲よくすべきだと思います。この仕事に入りましてから圧倒的に私が訪れました国はアジアでありましたし、しかも最初の私のそうした訪問というのは第二次大戦中の戦没者の遺骨収集という作業でありましたから、一般の方々に触れ続けながらの旅でございました。どんな声がその当時残っておりましたかを私は肌身で感じて存じ上げております。むしろ、それぞれの国の指導者にお目にかかるようになりましたのは随分後になってからでありました。ですから一般民衆の声は私は随分聞いてきたと思います。そういう中で、アジアヘの思いというものはいささかも私にとりましては変わったものではありませんでした。
そして同時に、今も
日本は、中国を
国際社会により建設的なパートナーとして迎え入れるために、例えばWTOの中国の加盟について非常にこの数年間熱心に
努力をしています。そしてまた、土井党首も恐らくそういうことも御存じで、そういう点もPRをしていただけたと思いますけれ
ども、そういう
努力をいたしておる。中国側もこの点は評価をしてくれているはずでありますし、なお一層の協力をしてほしいと言われている問題でもあります。
また、ASEAN、私は本年早々に海外に出ます道をこのASEANに選びました。そして、ASEANと
日本との
関係が
経済、政治に固定した
関係にならないようにという私自身の考え方も含めて、同意を得て帰ってきたつもりであります。
残念ながら、議員のところにはそうではない評価のみが入っているというお話でありましたが、どうぞ
日本のそうした行動も相手側の理解が得られますようなお力添えを心からお願い申し上げます。
-
○大渕絹子君
総理がそういうスタンスで政治をやっておられるならば、どうして極東有事というようなことが想定をされるんですか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 例えば、現在マスコミが伝えております朝鮮半島の情勢
一つをとりましても、潜水艦の
事件がございましたり要人の亡命がございましたり、さまざまな話が伝えられております。私
ども、本当に安心、何も心配をしないで済むのであれば、これほど幸せなことはない。しかし、北朝鮮の食糧問題を初めさまざまな問題が世上懸念の種になっているのは御承知のとおりでありますし、自分の国がそうしたものに万一巻き込まれないように、どうしたらいいかということを考えておくのはお互いの
責任じゃないでしょうか。
-
○大渕絹子君 極東有事というのが非常に起こるのではないかというようなことで準備をするということは政治の
責任ということでございますけれ
ども、私自身は、中国と台湾の
関係というのはやっぱり同じ
国家であり同じ民族であった人たちの間の国内的な問題ではないか、極めてそういう問題ではないかというふうに思っているわけですね。そして、もちろん北朝鮮と韓国の問題についても、過去の長い歴史から見れば、中国、台湾の人たちもそうですけれ
ども、いかに戦争によって同じ民族が血を流すことがむごいものであるかということはもう十分に知り尽くしているお互いの国同士でございます。
そういう歴史的な
状況から見ても、最後の最後のところでは恐らく話し合いというところに落ちつくのではないかというふうに思うわけでございます。今までの
経過もそうでしたよね。大変危ない
事態になった、しかし今戦争状態あるいは有事に入っていくことは
世界の危機につながっていくということは、もう
世界じゅうの人たちの共通する
認識だというふうに思います。そういう
状況の中で
努力がされてきました。その前の朝鮮有事のときもカーター元大統領が派遣されて北朝鮮と話し合いをして、そこを
解決するというような
努力もなされたわけでございます。
人間の知恵というのはそういうものではなかろうかというふうに思うわけです。
そういう
状況でありますから、極東において、中国、台湾の問題が危ないとか、あるいは朝鮮、韓国の間で危ないのじゃないかとかというようなことをやたらと心配して、そういうことに対してこちら側の武力強化をすることがかえってアジアの人たちに大きな懸念を与えているというふうに思うんですね。
そして、そこはアジアの人たちは、アメリカが
日本に来て沖縄などにあれだけ基地を使って、アメリカがそこにおって軍事的なにらみをきかしているにもかかわらず、その非難は一手に
日本に来ているというふうに思うんですよ。アメリカの対中貿易赤字というのは、もう
日本を抜いて一位になっているわけですよ。だから、アメリカの
経済戦略に
日本の基地が使われているということをやっぱり政府としてはきちんと
認識をしておかなければ、これからアジアの人たちと共通の
認識の中でお互いに発展をすることは不可能ではないか、そういうふうに思うわけでございます。いかがですか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) ちょうど本月の五日、ニューヨークにおきまして、昨年クリントン米大統領と金泳三大韓民国大統領が提唱をされました四者
会合提案に対する説明会がようやく共同でスタートをいたしました。
この声明が出ました瞬間から
我が国が、この四者
会合というものが実現し、これによって朝鮮半島における緊張の緩和と信頼醸成が促進されて、永続的な平和が生まれることを期待するという態度を表明してきたことは議員も御承知でありましょう。私
どもはまさに、朝鮮戦争というものがかつてあり、そしてその結果としての休戦ラインがあり、現行の休戦協定が
一つの民族を二つに分けている
状況の中でこの四者
会合というものが本当にスタートすることを願って今日まで参りました。
そして、ようやくこの
提案に対する共同説明会までこぎつけた
状況でありますが、その間に幾つかの
事件がありましたことを議員も御承知と思います。殊に、潜水艦の
事件により韓国江原道におきまして一般の民衆まで殺されたような
事態がありましたことも記憶に新しいところであります。そして、エネルギー不足とか食糧不足とかいろいろなことが言われる中でありますけれ
ども、今日、つい先日まででありますが、北朝鮮においては大規模な軍事演習が行われていた、そういう報道もございました。
ただ、これはたまたま、議員がお名前を挙げられましたから私は北朝鮮という例示を触れましたけれ
ども、私
ども、どこの国がという言葉でこうした問題を国会で議論をすることは、相手に対してうっかりすると礼を失しますし、実は余りいいことだと思いません。
その上で、やはりいろいろな
事態というものを想定しながら、その中で
我が国がいかに身を処すかを考えておくこと、これは私は大事なことだと思います。
同時に、中国とアメリカの間の
経済関係が
日本を、議員は犠牲としてとはおっしゃいませんでしたけれ
ども、むしろ進展していることに懸念を示されましたが、私は実は、昨年の日米首脳会談あるいはその後モスクワで原子力安全サミットがありましたとき、二人で会ったときを使ってクリントンさんには、中国との
関係をもっと改善しなさいよ、中国とアメリカがぶつかり合っているというのはいいことじゃないよということで、米中の国交をより深めることをお勧めをいたしてまいりました。むしろ、逆に今そうした御懸念が生ずるほど米中の間が好転しつつある。これは私は
世界全体のためにいいことじゃないでしょうか。
しかし、
経済の面で競争する部分は、これは私はお互いに公平な競争をさせてもらいます。そして、その意味ではWTOの早期加盟に向けましても、日中の間においてもなお詰めるべき問題を現在煮詰めている、そういう
努力もしておりますが、私は、その上で中国をWTOに加盟させるための
努力は我々が幾ら払ってもいい
努力だと、そのように思っております。
-
○大渕絹子君
総理がおっしゃるように、中国、韓国、北朝鮮が
日本に対して本当に信頼をしておられるというならば、四者会談の中にアメリカではなく
日本が参加をしてということもあり得る話だと思うんですね。あるいは五者会談という形がとられると思うのですけれ
ども、まだ中国や北朝鮮にはそういうことに参加できるほどの信頼を得ていないというのが今のその四者会談の事実ではなかろうかと、そういうふうに思っています。また、今の時代は、もし有事が起こった場合は、
日本がどんなに一生懸命準備をしたとしてもなかなか防ぎ切れるものではないのではないか、そんなようなことも思うわけでございます。だからこそ、有事にならないような
努力を積み重ねて、平和的な
解決を図るための強力なリーダーシップをとるべき立場を鮮明にすると。
日本は特に私が冒頭申し上げましたように平和憲法を持っている。これは
世界に類を見ない平和憲法だと思っていますが、それを持っている国として、そのことを明快にしながらそのリーダーシップをとっていくことが
日本のこれからの発展に限りなくつながっていくというふうに思っています。
大江健三郎さんも、これは朝日新聞ですけれ
ども、極東有事が起これば
日本は徹底的に無力である、それは前の極東有事の研究のところにもあらわれているわけですけれ
ども、徹底的に無力なんだ、だからこそ平和を求める反軍事的な
努力をしなければならないということを明快に述べられております。
この件について、
総理、どうぞよろしくお願いします。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) まず、
一つ誤解を解かせていただきたいと思いますが、その四者
会合、もし
日本が信頼されていれば
日本がかわりに入っていたんじゃないかというお話でありますが、これは休戦協定を結びました南北二つの分断をされました韓民族の代表、そしてそれとアメリカ及び中国、こういう構成でできている話でありまして、むしろ逆に、例えばロシアからロシアと
日本も加わって六カ国という
提案がありましたときにも私は、休戦ラインを挟む両当事者ということで、将来我々が請われたら入るという
姿勢でこれには臨むべきと、そのような判断をいたしました。この点は議員と判断が違うかもしれません。
同時に、私はその有事というときに、大江健三郎さんが無力だと言われたかもしれませんが、無力でありましても影響を受ける度合いは少しでも少なくする、そうしたための準備は、またそのための研究はしておかなければならないと思っております。
そして、少なくとも当然のことながら我々は、そうした混乱が起きないで済むような安全醸成のための
努力というものは、多国間であれ二国間であれ、積み重ねていかなければならないことは間違いありません。ARF等に
努力をしてきておりますこともそうした
一つのあらわれでありますから、同時に、万一というものへの検討、これも怠ることができないのではないかと、私はそう思います。
-
○大渕絹子君 武力を強化することでなくて、今の体制下ででき得ること、難民対策であるとか情報収集能力を高めていくようなことに集中をさせていくべきだというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 今まさに
内閣におきまして、今日までの
内閣情報調査室あるいは防衛庁、外務省等、所要の情報収集や分析をしてまいりましたけれ
ども、
内閣としては昨年の五月にこれを情報集約センターとして、防衛庁におきましても本年一月に情報本部を設置する、情報の収集分析
機能の強化に努めているところであります。
私たちは、本年度の予算をごらんいただきましても、例えば陸上自衛隊定員を減らしております。そして、やりくり算段の中でどうしても古くなって消耗してしまうものを取りかえておる。その程度の
状況の防衛費でありますから、私はそれをも頭に置きながら、むしろ一生懸命二国間、多国間の信頼醸成措置のために汗をかいているのが今日の
日本ではないかと思っております。
ですから、情報の重要性というものを強調していただきましたことは私
どもは大変ありがたいと思いますし、情報が何よりも危機管理体制を強化していく上で大切なものであることは間違いありませんが、その上で、できることできないこと、準備しておくべきこと、考えておくべきこと、そうした
努力を積み重ねておくことは私は必要なことだと思います。
-
○大渕絹子君 あくまでも安保条約の枠の中で、あるいは
日本国憲法の枠の中でということをお約束していただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 当然ながら、我々は
日本国憲法のもとで行政の
責任をお預かりいたしております。憲法を超えることは我々にはできません。
また、日米安全保障条約、これは二国間の信頼
関係の上にあって初めて成り立つものでありますから、この日米安全保障条約というものを昨年再確認し、この中で
努力をしていけるだけの
努力をしていく、それが我々の
責任だと思います。
-
○大渕絹子君 私は昨年佐世保港に行ってまいりました。佐世保で米軍の女性に対する強盗傷害
事件というのが起こりました。それの調査のために佐世保に行ったわけでございますけれ
ども、その調査の中で大変なことが基地の町で起こっているんだなということを知らされました。
基地の中に住まわれている米軍の人たちは家族が同伴で来ておりますから、そこは安定した暮らしをしていらっしゃるんだろうと思いますけれ
ども、戦艦に乗っていらっしゃる方たち、いわゆる海兵隊の人たちが基地の町に上陸をします。そうしますと、プライベートタイムといいますか、フリータイムのところでは全く上官の目が届かないといいますか、目が届いても指揮監督下にないということを聞かされました。そして、そのプライベートタイムで海兵隊の若い男性たちが何を行っても、それはなかなか監督することが難しいんだというようなお答えもあったわけでございます。
そういう中で今基地の町では、
日本の女の人、子供たち、若い人たちの中で海兵隊の人たちとつき合うことは非常に格好いいというような風潮が起こっているように思いまして、その流行といいますかそういうことの中で、その海兵隊の上陸を待って女子高校生や若い女性たちが海兵隊とおつき合いをするというようなことが目に余るような
状況であるという事実も聞いてまいりました。
そして、そういう中で当然、沖縄で起こったレイプ
事件であるとか、あるいは暴力
事件であるとかということが起こるわけでございますけれ
ども、そうしたことは女性の側から告発するということはまれなことなんです。だから、沖縄の少女が訴えて出たということはごくまれなことだというふうに思わなきゃならないわけですけれ
ども、そういうことが起こっている事実というものをきちんと
認識する中で、海兵隊の削減というのはそういう観点からもやっていかなければならないというふうに思っているわけでございます。
日本の有事に対しても何の効力もないといいますか、海兵隊の任務を見れば
日本の自衛権を守るための装備ではないというふうに聞いているわけですが、そういう中で、海兵隊をこのままにしておく、あるいは今は大変戦艦の速度も上がっているわけでございますから、情報が早く伝われば早く
日本近海に到達することはできるわけで、もう海兵隊を本国に帰してもいい時期が来ているんじゃないかと思いますが、
日本の女の子のためにも女性のためにもぜひよろしくお願いをしたいと思います。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 当然のことでございますが、
我が国の平和、安全を守るために駐留する米軍ではございますが、その構成員が
我が国の法律に触れたり、ましてや忌まわしい大変不幸な
事件を起こすようなことがあってはならない、それは当然でございます。そういったことは米側もよく
認識しておりまして、とりわけ一昨年の沖縄におけるいたいけな少女が犠牲になるあのような
事件がありまして以来、教育の徹底を図っているわけでございますが、今後ともそういったことは当然のこととして求めてまいりたい、こう思っております。
しかし、一方におきまして、現在の
我が国並びにその周辺の国際情勢というものを考えました場合に、海兵隊も含めまして現在の駐日米軍の存在というものはやはり平和と安全のために必要であると、こういうふうに考えておりますので、現時点で今おっしゃるような海兵隊の撤退ということを具体化できる
状況ではないということはひとつ御理解を賜りたいと思います。
ただ、長期的には私
どもも、先ほど来
委員と
総理の間でいろいろお話がございました、
外交努力で
アジア太平洋地域の安定をもたらすために
役割を果たしてまいりたいと、こう思っております。そういった中で将来の米軍のレベルあるいは構成をどうするかということは日米間で協議していく、このことは共同宣言にも明記されているところでございます。
-
○大渕絹子君 本当に基地の町ではそういうことが起こっているんですよ、
外務大臣。そんな、教育をしているから大丈夫なんというのはとんでもないことですよ。
私は、お会いをしていただいた佐世保の基地の、ナンバーツーと言われましたけれ
ども、その方とお会いしたときにも、海兵隊の皆さんの性の処理というようなことはどういう形でやっているのかということまで突き詰めました。でも、そこのところには一切答えることができない
状況です。それはフリータイムを利用して、
日本に上陸してということなんですよね。そういうことからしても、
日本がいかに米軍に対して、アメリカから隷属的に置かれているかということもわかると思うんですね。ぜひそこのところをきちんと踏まえた中で、一日も早く
日本に米軍が駐留する
事態がなくなるような形を
日本政府としてとっていただきたいと思います。
ありがとうございました。
済みません、
総理に最後に。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 議員の御意見は承りました。ただ、議員から先ほど確認を求められましたように、我々は
日本国憲法のもとで行政をつかさどり、同時に日米安全保障条約というものを締結し、その
日本側の
責任、義務というものは果たしていかなければならないという
責任も持っております。どうか、そうしたこともお含みの上で、今後ともの御協力を心からお願いを申し上げます。
-
-
-
○都築譲君 きょうは金融
機関の不良債権の問題について少し
総理初め
関係大臣の御意見を伺いたい、このように考えております。
金融市場改革も六大改革の大きな位置つけを得ているわけでございますし、また二〇〇一年のビッグバン、こういうことも昨年十一月に
総理からおっしゃられたわけでございますが、そこに至るプロセスの問題がまず大きな問題として横たわっているんじゃないか。去年の住専の処理の例もあるわけでございまして、そういった意味で力強く、しかし着実に進めていく、そういう金融改革、こういったものについて
総理初め
関係大臣の御見解を伺いたいと思うわけでございます。
まず初めに、金融
機関の不良債権の
状況あるいは今後の見通しについてお伺いをしたいと思うわけですが、実はきのうの夜の
経済ニュースを見ておりましたら、都銀十行の年初来の株価が実は現時点で最大五九%、いいところでも二十数%下がっている、こういう
状況になっておるわけでございます。
こういった市場のメッセージがあるわけですけれ
ども、この市場のメッセージについて、何もいたずらに不安感をあおるとか不安感に駆り立たれるというわけではなくて、これも日経新聞の二月十五日に、斎藤精一郎さんという大学の先生が言っておられましたけれ
ども、こういうメッセージは逆説的に金融システムを蘇生させる、そして
日本経済を復元させる突破口を予告しているからだと、こういう
認識で取り組んでいく必要があるのではないかというふうに思うわけでございます。
まず、実態についてお伺いをしたいと思いますが、現在、金融
機関の不良債権はどのような
状況になっているかお教えをいただきたいと思います。
-
○
政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。
平成八年九月期におけます預金取扱金融
機関の不良債権の総額は二十九兆二千二百八十億円でございます。うち、担保カバー分等の処理あるいは債権償却特別勘定への積み立て等を除く要処理見込み額で七兆三千三十億円でございます。
-
○都築譲君 今おっしゃった七兆三千三十億円、こういう話が今後の要処理見込み額でございますけれ
ども、実は先ほどの二十九兆二千二百八十億円、これについてもその見込みが相当甘いんじゃないか。実態は、例えばいろんな
経済誌とかあるいは新聞の方でも公表数値の二倍から三倍と、こういうふうに言われておりますが、そういった点についてはいかがでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) これは、不良債権のディスクロージャーにつきまして金融制度調査会においていろいろ御議論いただき、破綻先債権延滞債権、金利減免等債権というジャンルでもって、比較可能な数字でもって統一的にデータを収集したものでございます。
-
○都築譲君 統一的にデータを把握していると、こういうことでございますが、この数値の計算方法というか把握方法、自己申告制によるものなのか、あるいは検査という形で客観的に把握をされておられるのか、その辺いかがでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) これは自己申告でございます。自己申告でありますゆえにきちっとしたそういったルールを設けまして、それでもって統一的な基準での報告をいただいているところでございます。
-
○都築譲君 また新聞の記事で恐縮ですが、今の言われたような不良債権の
状況について、民間銀行の経営者が不良債権とみなすものを不良債権とするという現行の定義では実態の正確な把握を妨げていると、こういう指摘もあるわけでございます。
こういったところを大体どれぐらい、私がいただいているデータでは大体半期ごとの報告というふうな形になっているようですが、そういった問題を含めて、報告の頻度とか、あるいは今申し上げたような統一的な処理基準、いわゆる破綻先債権とかあるいは延滞債権とか金利減免債権とか、あるいは経営支援先債権まで含めておられるんでしょうか。そこら辺までちょっと詳しく教えてください。
-
○
政府委員(山口公生君) お答え申し上げます。
報告は半期ごとにとっております。
それから、不良債権といいましても全部回収不能というものではありません。それは回収可能なものが相当含まれているわけです。ただし、その破綻先だとか延滞債権だとか、あるいは金利を減免している、あるいは支援しているというような特別なことをやっている、あるいは特別な区分をして管理しなきゃいけないというようなものの統計でございます。
-
○都築譲君 その問題についてはまた後で戻りたいと思います。
例えば、兵庫銀行が破綻をいたしまして、これまたいろんな
経済誌の記事では、当初言われていた不良債権の額に相当大きな差があると、実際に破綻した時点では、というような指摘があったわけですが、そういった
状況はどうお受けとめになられておりますか。
-
○
政府委員(山口公生君) 先生御指摘のように、兵庫銀行の破綻の際に、直前の決算期におけるディスクローズされた不良債権といいますと、当時は実は先ほど申し上げたジャンルでは破綻先債権だけでございました。それが六百九億あったわけですが、現時点におきまして分類しますと、同じく延滞が二千九百十一億、金利減免が二千五百六十三億で、不良債権額の合計が六千八十五億円でございました。もちろん、これが全部回収不能というわけではない見込みであったわけですが、その後、兵庫銀行の破綻公表時におきまして、実際その不良債権の中で回収不能の不良債権というのは七千九百億円ということになったわけです。あと回収可能な不良債権を七千百というふうに認定したわけです。
今御指摘のように、これは前と後では数字が少しふえているということは事実でございますが、それは主にこういう理由でございます。
兵庫銀行が破綻したことによって、これまでメーンバンクとして兵庫銀行が支えてきた企業は支援が打ち切られることによって倒産をしてしまうとかいうことで、結局、不良債権が現実にとれないもの、あるいは不良債権になる必要もなかったものが不良債権化して回収ができなくなるというような、つまりゴーイングコンサーンとして見た場合と清算した場合というのは大きくそこで違ってくるわけでございます。そういう事情が一番多いわけです。
それに加えまして、その後の決算期ごとの担保物件の評価額の下落というものももちろんございますが、一番大きいのは、さきに申し上げた銀行が破綻した結果、その取引先まで返せなくなってきた、つまりメーンバンクの不存在が原因ということが多うございます。
-
○都築譲君 大変わかりやすく説明をしていただいたんですが、じゃ、そういうことで、今最初に言われた理由、メーンバンクとしていろいろ取引先を支えてきたというふうにおっしゃられた分が結構あるというふうな話になると、破綻先債権とか延滞債権とかそういう形で言っている、そして先ほど言われた二十九兆二千二百八十億ですか、都市銀行だったら十兆九千五百十億、こういったものが、例えばそれぞれメーンバンクとしていろんな取引先を支えているところが今はこういう
状況ですと、経営支援先債権まで含めて。ところが、実際にそれが支え切れなくなったら、じゃ、どれぐらいになるのという話につながっちゃうんですか。
-
○
政府委員(山口公生君) 私が申し上げましたのは、あくまでその銀行が破綻する場合のことでありまして、それが健全に運営している限りにおいてはそういうことは顕在化しないわけでございます。
-
○都築譲君 それを聞いて安心をいたしました。
それで、先ほどおっしゃっていただいたいわゆる不良債権の処理の見通しについて、恐縮ですが都市銀行とか金融
機関の形態別に少しおっしゃっていただきましょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) 先ほど御紹介しました要処理見込み額を業務純益で単純に割り算してみますと、都市銀行が〇・五九、長期信用銀行が一・七七、信託銀行が二・〇八、地方銀行が〇・六八、第二地方銀行が一・六九、協同組織が二・二八、こういう数字でございます。ただ、これは機械計算でございます。
-
○都築譲君 信用組合はいかがでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) 信用組合だけ特別には取り出しておりませんが、協同組織ということでグルーピングしますと二・二八年ということでございます。
-
○都築譲君 実は、これまた今ここでちょっと疑問になってしまうんです。
これは、一月十九日の毎日新聞、中村秀明さんという記者が書いておられる記事、信用組合だと「純益7年半分 大蔵省推計」と、こういうふうに書いてあるんですが、これはいかがなんでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) 大蔵省からそういう数字を出したことはございません。
ただし、協同組織でまとめて申し上げましたが、中でも信用組合についてはかなり業務純益も低うございますので、そういった率が高くなるということは事実でございます。
-
○都築譲君 それで、都市銀行については〇・五九年というふうなことですから、約半年ということだろうと思うんです。それを言われたのは
平成八年九月の不良債権等の
状況で言っている。ということは、実はもう半年その時点からたっているわけですから、四月か五月あるいは六月ぐらいには都市銀行等が抱える不良債権はもう完全に整理できている、終わっている、だから全然心配はないんだと、こういうふうに言えるんですか。
-
○
政府委員(山口公生君) 確かに、今申し上げた数字の低いところはかなり進んでいるということは言えます。ただ、あと半年で済むのかといいますと、業務純益を全部それに充ててしまう、配当などを一切しないでやるという前提に立てばそれは可能でございますし、業務以外の損益もございますので、一概には言えないと思います。
-
○都築譲君 ですから、非常に調子のいい数字はよく言われるんですけれ
ども、例えば金融
機関の不良債権の
状況をもっと情報開示をやってディスクローズして、企業とかあるいは個人が預金の信託先として選ぶ、そういう範囲をもっと自分たちで
責任を持って選べるようにしなきゃいけないのに、いつも都合のいい数字ばかり出ていて、銀行の方はどうかわかりませんよ、そういった
状況に置いておきながら、業務純益を充てればと言いながら、いやいやそれはほかにも業務純益を使いますからと。じゃ、実際どれぐらいかかるんですかと、こういう話に実はなってきてしまう。
もちろん、銀行の経営実態がありますし経営方針もあるでしょうからなかなかそう簡単にいかないんでしょうけれ
ども、いや〇・五九年で終わるんですなんということを堂々と資料でつくれるような
状況じゃないんじゃないですか。
-
○
政府委員(山口公生君) 要処理額がどれくらいの業務純益で、何年分ぐらいに当たるかということを示しておりますので、それで済むということを申し上げているわけではありません。しかも、不良債権の問題というのは
経済情勢とか金融情勢等で大きく変わってまいります。したがって、一概にそれで済むということを言っているわけではありませんし、また個々の銀行でそれぞれ事情が違うということを御
認識いただきたいと思います。
-
○都築譲君 今の御
答弁はそういうことだろうと思うんです。ただ、だからこそ、我々が今何をやらなければいけないのか、大蔵省の金融
機関監督の当局ももっとしっかりと
認識をしてもらわないと。今のような
答弁で済んでいる、今のような資料をつくっておれば済んでいると、こう思ったら何を根本的にやらなきゃいけないかというところまで思いがいかないんです、そこでとまつちゃうんです。本当に実際に何が起こるのかということを真剣に考えたら、そんな数字はやっぱり軽々には出せないと僕は思うんですが、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) お尋ねは、金融
機関全体のことのお尋ねでございますので、全体の統計を統一的なもので御報告申し上げているわけでございます。個々の銀行あるいは金融
機関の経営問題というのは、それは区々でございます。そういったこともいろいろ勘案しなければならないということでございます。
-
○都築譲君 しっかりとそういう
認識を持っていただいていると思いますから、信じて、次に進みたいと思います。
そうすると、あと、金融
機関ではありませんけれ
ども、去年住専で大きく話題になりました例えばノンバンクとか、それからまた今いろいろ言われておりますゼネコンといったところがいろんな不良債権を抱えている、こういう話があるわけでございまして、こういったところもやはりまだ将来の不安定要素というふうに言われております。ここら辺の不良債権の
状況について、わかっている範囲で教えていただければと思います。
-
○
政府委員(山口公生君) 八年九月末の都銀、長信銀、信託二十行の住専を除きますノンバンク向けの貸出額は約三十兆円でございます。このうち私
どもがヒアリングをしまして、先ほどの分類でいいますと、そういったところに対する破綻先延滞債権及び金利減免債権は約五兆円程度というふうにつかんでおります。
-
○都築譲君 ゼネコンの方、お願いします。
-
○
政府委員(山口公生君) 大蔵省としては、ゼネコンの方はわかりません。
-
○
国務大臣(亀井静香君) 建設業は極めて多数に上っておりますから、総額幾らということを確定して申し上げるわけにはまいりませんが、参考として申し上げますと、有力企業五十三社の
平成八年三月期の決算で申しますと、保証債務で約三兆円ぐらい、それから有利子債務が大体九兆円、それから未収金が一兆円。しかし、これは誤解があっては困ります、すべてが不良債権というわけ
ではございません。
-
○都築譲君 ゼネコンの
状況についてはまた後でちょっと指摘をしたいことがあります。
ノンバンクの
関係を大蔵省の方は、三十兆円のうち不良債権額が五・五兆円程度、主要二十行のノンバンクヘの貸付額、こういうことで言われたわけですが、主要二十行だけじゃないだろうと思うんですね、ノンバンクが借りているところは。そういったところについては、
状況はどのように把握をされておられますか。
-
○
政府委員(山口公生君) この点については、かなり立ち入ってヒアリングをしないとなかなかつかめない数字でございますので、今申し上げた二十行での数字を申し上げたわけでございます。
このノンバンクの処理は、それぞれの事情でそれぞれの不良債権問題をどう処理するかということを自助
努力でもってやっていただくというのを
基本にしております。それがはね返って金融
機関の負担ということになることも予想されるわけでございますが、そのときはまた金融
機関の問題としてとらえていくということだろうと思います。
-
○都築譲君 今のお答えは非常に大きな問題を含んでいると思うんです。実は、去年も私は住専の国会のときにいろいろ質問させていただきました。ノンバンク、リースとかファイナンスとか、いろんな事業会社があるわけですね。そういったところの
状況を実はいろいろお尋ねしたら、ようやく資料がありましたということで出てくるんです。
主要二十行について確認をされているということですが、主要二十行というと都銀と長信銀と信託銀行ですよね。そうすると、じゃ、地銀とか第二地銀あるいは信用金庫、こういったところも恐らく相当貸しているだろうと。それで、うわさですよ、うわさによると、結構その第二地銀とかいろんな不安がささやかれているところがあるわけでしょう。そういったところの
状況は全く把握をしておらないんですか。
-
○
政府委員(山口公生君) 先ほど地銀以下は把握していないと申し上げましたが、実は今期からちょっとヒアリングした結果が手元に今ありましたので申し上げますと、六兆六千九百二十億円ということで、五兆五千から若干ふえるわけで、全体とするとふえるわけでございます。
いずれにせよ、このノンバンクの問題というのは、それぞれ母体行があったりあるいは主力行があったり、そういったところがノンバンクの処理あるいは再建策というのを必死で考えているわけでございます。そういったことで、自助
努力を
基本にしてノンバンクの不良債権問題を片づけていくというのが
基本だと思うわけでございます。
-
○都築譲君 自助
努力、これはぜひ本当に金融
機関の皆さんは、特に製造業の方は非常に過酷な国際競争にさらされながら、みずからリストラを繰り返して体質強化を繰り返して、それで勝ち残ってきている。金融
関係については、結局大蔵省の護送船団方式というのに守られてずっと戦後五十年間来た。銀行は
一つもつぶさないんだという安心感の中で来ているから、今それが
日本の
経済の活力を回復させるのに大きな足を引っ張っているという思いがあるわけですね。だから、もっと金融
機関は本当に自助
努力で頑張ってもらわにゃいかぬ。
ただ、頑張ってもらわにゃいかぬけれ
ども、今までずっとそういう面倒を見てきた大蔵省が、今おっしゃったような言い方で本当にいいんだろうか。例えば、自助
努力で第二地銀だろうが地銀だろうがやってもらいますよと、まあそれは当然のことでしょう、自分たちが経営でお金をもうけてやってきたわけですから。ただ、これは預金者の保護の問題とかあるいは信用秩序の安定の問題にもなるわけですから、今期から初めてノンバンクの不良債権の
状況を把握し始めたということ自体、ノンバンクが倒れたら母体行に影響が行くだろう。母体行に影響が行ったときに、じゃ、預金者はどうなるんだ、信用秩序はどうなるんだということをちゃんと考えて、全国の金融
機関のことを頭に入れて、必要なデータがあったらそれはちゃんととるような仕組みをつくって、どういう作戦を立てて二〇〇一年に向けていくか考えていかなきゃいけないんじゃないですか。
-
○
政府委員(山口公生君) 今申し上げましたノンバンク向けの不良債権は、先ほど申し上げましたトータルとしての二十九兆円の中の内訳でございます。
したがって、全体として私
どもはいつもフォローしておったんですが、その中でノンバンクだけ取り出してみるとどれくらいになるだろうかということを見たわけでございます。私が先ほど自助
努力と申し上げたのは、ノンバンクがまず自助
努力をしなきゃいけないということであります。そして、もしノンバンクの処理が例えば法的処理しかないということになりますと、それは今度は金融
機関の問題になるわけです。だから、金融
機関ももちろん自助
努力してそれをこなしていかなきゃいけないということです。
さはさりながら、どうしようもない状態になったときに破綻とかいろいろ問題が出てくるわけで、それは先国会でお認めいただきました金融三法でもって預金者を保護するという形で万全を期しているという
状況でございます。
-
○都築譲君 そういう御
答弁で、問題がその情報の
関係については二つあると僕は思うんですよ。
一つは、持っているデータが都合が悪いから出てこない。ここら辺のところは我々には国政調査権もありますし議院証言法もある。ただ、気づかなかったらなかなか出てこないかもしれない。
ただ問題は、本当にこれからの金融
機関の健全な運営、預金者の保護、こういったものを図るために、大蔵省としてとらなければならないデータをきちんととっていなければこれまた大変な問題になってしまうわけですから、そういったことのないように、もう十分御承知だろうと思いますけれ
ども、お願いをしたいと思います。
そして、話を先へ進めて、先ほどのゼネコンの
関係なんですが、この
総括質疑の際に
経済企画庁の
局長さんが来られて、公共事業の効果に関連して、建設業のバランスシートが悪いというふうに言われたと思いますが、その意味をちょっと具体的に説明をしていただけますでしょうか。
-
○
政府委員(中名生隆君) お答えを申し上げます。
今御指摘をいただきました
答弁というのは、九〇年代の前半の公共投資が、景気を下支えする効果はあったけれ
ども、民間需要への波及効果というのはバブルの崩壊等の影響によりまして相殺されてあらわれにくかったと、そういう脈絡の中で触れたものでございます。
このバブル崩壊の影響の例ということで企業のバランスシート調整ということを申し上げましたが、八〇年代の後半に企業の負債が積み上がっていた。それがバブルの崩壊によりまして資産の側に立ちます土地なり株式の値段が急速に低下をする、こういうことでバランスシートが悪化をいたしまして、それが設備投資を低迷させる。その結果、公共投資の本来あるべき乗数効果というのは顕在化しなかったと、そういうことを申し上げました。
-
○都築譲君 その具体的な意味は、結局いろいろ純益が上がってきても不良債権の償却の方に追われてしまっている、こういう理解でよろしいわけですか。
-
○
政府委員(中名生隆君) 今、
委員がおっしゃいましたようなことも通じまして、結局、本来ならば設備投資あるいは個人消費という需要がふえてくるという、そういう
状況になかなかならなかったということを申し上げたわけでございます。
-
○都築譲君 それで、そういったことの背景にあるのは、特にそういう債権の担保として不動産、土地、こういったものだろうと思うわけでして、それが大幅に下落をしている
状況が続いているからだろうというふうに思うわけでございます。
公示地価の動向について、例えばピーク時と比べてどれぐらいの
状況に最近の数字はなっているのか、そこの数字について御説明いただけますか。
-
○
政府委員(窪田武君) お答えします。
委員お尋ねの東京圏、大阪圏、名古屋圏の住宅地、商業地の地価を見ますと、ピーク時はいずれも
平成三年でございまして、それ以降下落しております。そこで、
平成八年の地価公示の価格の水準をピーク時の
平成三年の地価公示の下落率で申し上げます。東京圏の住宅地につきましては三四・〇%の下落でございます。商業地の地価は五六・八%の下落。大阪圏の住宅地の地価は四四・一%の下落、商業地の地価は六四・八%の下落でございます。名古屋圏の住宅地の地価は二四・七%の下落、商業地の地価は四六・一%の下落となっております。
また、最近の地価動向につきましては、短期地価動向調査によって申し上げますと、三大都市圏の地価は住宅地では全体的に横ばいの傾向が強まっております。商業地につきましてはやや下落の傾向にあるものの、その下落幅が縮小する傾向にございます。
-
○都築譲君 そういうことで、下落幅が縮まっているあるいは横ばいということでございますけれ
ども、もう
一つのこういったことの問題は、実は実際に不良債権を処理するということで競売という手続で預かった担保不動産の競売を実行していくということになるんですが、競売の動向についてもお聞きしようかと思ったんです、資料をいただいて。
ただ、最近ではなかなかその競売がうまくいかない、そういう
状況が実は出ている。そして、件数も売り出すものがふえてきて、そして処理できるものが少なくなっている、だからどんどんどんどんたまってきている。そんな中で銀行とかあるいはほかの金融
機関もいろんな物件をたくさん抱えている、こういう
状況がある。
それから、もう
一つの問題は、じゃ実際に、債権価格と実際の落札価格と申しますか競売の実施価格、これとの格差が相当あるというふうな指摘もあるわけでございまして、また銀行
局長さんにお伺いをしたいんですが、先ほど計算方法が甘いのではないかというふうに私は申し上げました。そもそも、公表の不良債権の数値についても、例えば不動産でとっているところは三五%というふうな数字を言っていると思いますけれ
ども、ちょっとそこら辺の数字をどういう計算方式でやっておられるか、教えていただけますか。
-
○
政府委員(山口公生君) 今のお尋ねは、不良債権に対して要処理が幾らと申し上げた、そうするとその間は担保があったり引き当てしている、その担保のことをお尋ねだと思うんです。
そのときの担保の掛け目を三五%と設定しておりますのは、ヒアリングをしまして、昨年の九月時点、そのときそのときでヒアリングします。それで四〇・〇という数字があります。それから、共国債権買取機構の額面に対する買い取り価格の割合、それが三〇・七ということで、足して二で割るという感じになると三五、その程度が実勢であろうということで置いているわけでございます。
-
○都築譲君 それで、こういう計算式なのかなと思ったのですが、とても今なんか三五%じゃやっていないよというふうな話があるわけでして、これは民間の調査会社が調べたのが日経新聞の二月三日の記事で出ておるんです。
これは住専の九六年度の上期の抵当権設定額の
状況をこの調査
機関が調べたわけです。その担保物件のうち、東京地裁で競売が実施された物件の落札
状況ということでいきますと、実は落札は百二十件、これに対する住専八社の抵当権設定額は百六十九億円、落札額は四十二億円だと、こういう
状況なんですね。あと、先順位抵当権者の回収分といったものを差し引くと、実は住専の回収額というのは二十六億五千万円にすぎなかったということで一五・七%にとどまっていると、こういう
状況があるわけです。
この調査会社によると、後でまた触れようかと思いましたけれ
ども、住宅金融債権管理機構の問題があるわけです。これもちょっと触れようと思いましたが、もう時間が余りありませんのではしょってポイントだけ申し上げますと、要は住専の管理機構は回収率を抵当権設定額の一割程度と見て業績見通しを立てる必要があるという指摘も行っておるんです。ということは、この一例、住専の債権処理の実例を見てもわかるように、だから実際におっしゃっておられるような三五とか四〇なんという形で本当にやれるんだろうかというふうな気がいたします。そこら辺のところはいかがでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) 私
どもが置いております数字も根拠なく置いているというわけじゃありませんで、ヒアリングをし、なおかつほかの実績等を勘案して決めております。したがって、地価の動向によってはおっしゃるようなこともあり得ると思いますけれ
ども、
経済の
状況によっては逆の場合も出てくるということだろうと思うわけでございます。
-
○都築譲君 それでは、続けて恐縮ですが、先ほどのノンバンクの不良債権それからゼネコンの不良債権処理の見通しについて、ちょっとそれぞれお話をしていただけますでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) ノンバンクにつきましては、御承知のように、時々ニュース等で伝えられておりますけれ
ども、法的処理というものが最近かなり頻繁に出てきております。
そういったことで、例えば会社清算だとか自己破産、特別清算、会社整理といろいろな形での後始末というものが出てきております。したがって、自助
努力で何とか立ち直れるところもかなりございますけれ
ども、どうしようもないところはそういう法的な形をとりながら処理が進んでいくというふうに考えております。
-
○
国務大臣(亀井静香君)
基本的には
経済が活性化をしていくという背景がなければならないと思いますが、そういう中で今も必死な
努力を業界がやっておりますけれ
ども、金融
機関との
関係において、〇・五%というような事実上補助金とも言うべき手厚い経営環境にある金融
機関の建設業界の自助
努力に対するやはり温かいマターが必要でもある、私はこのように考えております。
-
○都築譲君 またいずれ議論する機会もあるでしょうから、きょうのところはこのぐらいにとどめたいと思います。
あと幾つか質問を出させていただいていますが、ちょっと時間があれですので、一点、預金保険制度の
関係でお伺いをしておきたいと思うんです。
一つは、二〇〇一年までペイオフしないとする方針を持っているというわけですが、この理由をちょっと教えていただけますか。それから、根拠はどういうふうなことで、どういう規定に基づいてそういうことができるのか。
-
○
政府委員(山口公生君) 御承知のように、さきの国会におきましてお認めいただきました金融三法によってこれは規定されております。
その背景は、金融
機関のディスクロージャーが充実の途上にある。したがって、預金者の皆様に自己
責任を問い得る環境がまだ十分には整備されていないんじゃないかということ、それから金融
機関が不良債権処理を進めております過程でございますので、金融システムの安定に細心の注意を払う必要があると、この二つの理由で特にこういう特例的な措置をお認めいただいたことでございます。
-
○都築譲君 それでは、ディスクロージャーですが、私
どもは完全にディスクロージャーをやっていくべきだと、こう思いますけれ
ども、どの程度までのものを、どういう段取りで、本当にどこまでやるのか。二〇〇一年まで待たなければできないのか。九八年ぐらいからやれるような仕組みをつくるべきじゃないかと思いますけれ
ども、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(山口公生君) 金融
機関のディスクロージャーにつきましては相当急ピッチで整備を図っております。
それで、破綻先延滞債権、金利減免債権というジャンルで申し上げました。それについて申し上げますと、上位
部長銀、信銀、地銀、第二地銀、これはもうすべて開示することにしております。さらに、信用金庫等につきましてはまだそこまでいっていないという金庫がかなりございます。しかし、これも来年の三月までにはやるということになっております。信用組合につきましてもまだすべての金融
機関がディスクローズをしておりませんが、これも来年の三月までには必ずやるということで、皆さん鋭意
努力をしていただいているところでございます。そうなりますと、そこでそろうという形になります。
-
○都築譲君 ということは、九八年の四月からペイオフをすることもできるわけですね。
-
○
政府委員(山口公生君) 理屈としては、それは今でも、今おっしゃった期限でも可能ではございます。
しかし、ディスクローズしたから、じゃ、すぐ預金者の方々に自己
責任を問い得る
状況かということでございます。それから、かなりの金融
機関が今自助
努力をして頑張っておりますけれ
ども、まだまだ不良債権問題の重荷を抱えておりますので、そういう時期にペイオフをどんどんやっていくというのはいかがなものかということで、国会で御承認をいただいた特別措置を続けているということでございます。
-
○都築譲君 いたずらにこういう時期を長引かせるというのもまた問題が多いと思うんです。確かに、たくさんの金融
関係のいろんな仕組みがありますから、そういったものを一挙にというふうなことでお考えになっているかもしれないけれ
ども、特に情報開示とかそういった問題はもっともっと督励をして、民間
機関の自助
努力も進めながらやっていただく必要がある、こういうふうに思います。
私
どもが本当に考えておりますのは、今申し上げた情報開示の
関係で特に会計基準、こういったものを明確化していくということとか、あるいは不良債権の早期完全開示、こういったものをやっていく。さらにまた、預金保険機構の強化の問題、これまた機会があったらやりたいと思います。
総理が言われる
日本版ビッグバン、七五年のアメリカはメーデーと言われたそうです、八六年の十月二十七日にイギリスのビッグバン、
日本は二〇〇一年、会計年度のかわる四月一日だったら
日本のエープリルフールなんて呼ばれないようにしっかりとしたものをやっていただきたいと、このように思います。
次のテーマは実は人勧のお話で、
官房長官が
記者会見をやっておられて、終わって戻ってこられるかと思ったら戻ってこられないので、各省庁には大変御迷惑をおか一けいたしましたが、一点。
この人勧の問題は非常に重要な問題だと思います。確かに、
国家公務員の労働
基本権の問題がありますから、その代償措置としての人事院勧告でございますから、これを直ちに凍結するというのはもう八〇年代に相当すったもんだやった問題でございます。
ただ、管理職についても労働
基本権というのがあるのかどうか、この辺について。これは総務庁でしょうか労働省でしょうか。
-
○
政府委員(菊池光興君) お答え申し上げます。
管理職につきましても労働
基本権はある、こういうことでございます。
-
○都築譲君 いずれにしても、去年の秋もいろいろと議論を繰り返していただいたわけでございまして、そういったものをしっかりと踏まえてこれから対応していただきたいと、このように思っております。
以上です。終わります。
-
-
-
○
山下芳生君
日本共産党の
山下です。
今
国民の多くが感じているのは、九兆円もの
国民負担増となる予算案をこのまま無傷で通してしまっていいのかということだと思います。そこで、負担増の中心である消費税の増税問題について、
総理に質問をいたします。
一九八四年十一月にアメリカの財務省は当時のレーガン大統領に対して
一つの報告書を出しました。連邦付加価値税を導入すべきかどうかを詳細に検討したものであります。この中に付加価値税の持つ逆進性に関するこんな記述があります。
逆進性に二つの面がある。すなわち、貧困レベ
ル以下の人々に対する租税の絶対的負担と、そ
れより上の層に対する逆進的な効果である。貧
困レベルより上の層で所得税の対象となる人々
にとっては、付加価値税の逆進性は所得税率を
調整することで相殺することができる。しかし
貧困レベル以下にあって所得税の対象とならな
い人々については、この方法は役には立たな
い。付加価値税の本質をついた指摘だと思います。
日本でもかつて同じ懸念を表明した人があります。竹下登元
総理大臣です。竹下さんは消費税に対する九つの懸念を述べておられます。それを見ると、「第一の懸念 逆進的な税体系となり、所得再分配
機能を弱めるのではないか。」「第三の懸念 所得税のかからない人たちに過重な負担を強いることになるのではないか。」とあります。つまり、アメリカの財務省の指摘もその中に含まれておりました。
ただ、両者が違うのは、アメリカの場合は真剣な検討の結果、付加価値税の導入を中止した。これに対して
日本は消費税が導入され、今その税率が引き上げられようとしている点であります。
私は、この際、税率が五%になったら、かつてアメリカ財務省が指摘をし、竹下
総理が懸念をしたこれらの諸問題が一体どうなるのか、改めて検討してみる必要があると思います。
まず、初めに考えてみたいのは逆進性の問題です。所得の低い人ほど負担率が高くなるというこの逆進性は私は消費税の持つ本質的な欠陥だと思います。逆進性が税率引き上げでどうなるのか、大蔵省、試算をされていますか。
-
○
政府委員(薄井信明君) 付加価値税タイプの
日本の消費税が所得に対して逆進的な傾向を持つことは、その性格上当然のことでございます。この点につきましては家計調査等を用いてその
状況を調査いたしております。
-
○
山下芳生君 その逆進性が、三%の税率が五%になったらどうなるのかという試算をしていますか。
-
○
政府委員(薄井信明君) 三%が五になるわけですから、簡単にはその分だけ大きくなるといいますか比例的になるということだと思います。
-
○
山下芳生君 私は具体的に試算をしてみました。資料にグラフと計算表をお配りしております。
税率三%の現在、年収三百万円世帯の消費税負担率は一・八六%であります。これに対して年収一千万円世帯の負担率は一・四二%。その差〇・四四が逆進性を示す数字ですが、現在でもはっきりそれがあらわれているわけです。
これが税率五%になったらどうなるか。年収三百万世帯の負担率は三・一一%になる。対して一千万円世帯の負担率は二・三六%。その差は〇・七五です。三%のときの差の一・七倍に広がります。つまり、三%から五%に税率が引き上げられることにより逆進性が一層拡大されるということであります。これ自身、
総理、お認めになりますね。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 消費税だけで税の議論をするというのは、私は大変聞いておられる方を、スリードする危険性があると思います。
先ほど主税
局長から御
答弁を申し上げましたように、それぞれの税はそれぞれの税のよさと欠点を持っております。消費税またしかりであり、議員はその消費税の欠点のみに着目して論陣を張っておられるように思います。
-
○
山下芳生君 私が聞いているのは、消費税そのものが持つ本質的欠陥について、今それをそれとして
総理に聞いているんです。三%が五%になったら逆進性が拡大されるというこの問題について、
総理、お認めになりますね。
-
○
政府委員(薄井信明君) そちらの計算が何に基づいているのかを推測いたしますと家計調査かと思いますが、そのサンプル数のでこぼこみたいなものがありますので何とも言えないのと、ただ絶対額にしてみれば当然その分ふえます。対数的には比例的な
関係にあろうかと思います。
-
○
山下芳生君 これは大事な問題ですのでぜひ
総理に御
答弁いただきたいんですが、今消費税だけを区別してみるのは正確ではないという御
答弁がありました。
私は、例えば
平成六年度の税制改革全体を見ても、大蔵省の試算はそれで相殺されるという結果を示しておりますが、その試算をよく見ますと、当時同時に行われた年金保険の掛金のアップが除外されておりますとか、あるいは給与所得の伸びを高く設定しているという問題がある。私たちのそういうことを加味した試算では、制度減税を合わせて試算いたしましても全世帯の約八割が差し引き増税になるという結果になっているわけです。これは当時の国会の論戦で決着済みの問題であります。しかし、私はそういう環境を今論議しようとしているんじゃないんです。消費税そのものが持っている本質的な特徴について、それが税率が上げられることによってどうなるのかということについてきょうは議論をしたいと思っております。
総理、逆進性が拡大するということ自身は否定はされませんね。それは否定されなかったわけですけれ
ども、どうでしょうか。
-
-
○
山下芳生君 否定をしなかったということであります。
次に、貧困レベル以下の人々に対する絶対的負担の問題、所得税のかからない人たちに対する過重な負担の問題について伺います。
アメリカ財務省の報告は、これは深刻な問題だと述べています。なぜなら、こうした人々から最低生活の維持に必要な所得を奪うからである、こう述べているわけです。絶対的負担とはそういう意味を込めた言葉なんです。そういう人たちが一体どれぐらいいるのか、これも大蔵省、試算しているでしょうか。
-
○
政府委員(薄井信明君) 先ほど来おっしゃっているアメリカの報告ですが、アメリカでは州とその下の
段階で小売売上税をやっておりまして、むしろ
日本の税率よりも高いわけでございます。それに加えて消費税を入れることについての御議論かと思います。
なお、課税最低限以下につきましては、地方税の問題もございますので、今ここに数字は持っておりませんが、それ相応の数字が出てくるかと思います。
-
○
山下芳生君 アメリカが州税を導入していることは私も承知しております。ですから、そういう問題と区別してきょう消費税の問題についてぜひ議論をしたいということなんです。
どれぐらいの人たちが絶対的負担になるのかという規模について今具体的な数字はお挙げになりませんでしたけれ
ども、そういうことがあるであろうということは、アメリカが心配しているだけじゃないんです、竹下
総理が心配しているんです、所得税のかからない人に対しても過重な負担が強いられるんじゃないかと。ですから私は、アメリカの問題を聞いているんじゃない、
日本で
総理が当時そう言われたことに対して現在の
総理がどういう御
認識なのかということを聞いているわけです。
いずれにせよ、そういう人たちに絶対的な負担がかかることになる、税率の引き上げで最低生活の維持に必要な所得がより多く奪われることになる。このことは、これも否定できないんじゃないでしょうか。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 竹下
総理が、導入当時、九つの懸念を示して説明をされたことも承知いたしております。その後、それぞれに対しての答えを主税局は用意しておるはずでありますので、お尋ねがありましたなら主税
局長から
答弁をさせます。
-
○
政府委員(薄井信明君) 九つの懸念につきましては、当時いわゆる大型間接税ということにつきまして、それは定義の問題ではなくて、その種の税金に対する
国民の懸念の問題であると。その九つの懸念につきましては、それぞれに
解決策なりあるいは
努力を続けていくべきものであるということで出てきたわけでございまして、第三番目に、所得税のかからない人たちに過重な負担を強いることになるのではないかという懸念があると。
この点につきましては、年金生活者とか心身障害者だとかあるいはその他の方々に必要な措置をとる、そういうことによって対応すべきであるといった趣旨のことを言っておりますし、そのようにやってきております。
-
○
山下芳生君 そういう配慮をされているのは私も知っております。しかし、どんな配慮をしようともそういう人たちの消費税負担そのものをなくすことはできないじゃないか、私はそのことを改めて確認し、税率が引き上げられることによってそのことが拡大されるということを今問題にすべきではないかということを提起しているわけですよ。それに対して、私は
総理にこれは真正面から受けとめていただきたい、そのことを申し上げたいと思います。
次に進みます。
消費税が中小企業にどんな影響を与えるのか考えてみたいと思います。
大企業と比べて中小企業の景気回復がおくれていることは、これは政府もお認めになっております。今回の増税は、回復の足取りの重いこうした中小企業に私はさらに二つの足かせを課すことになるというふうに思います。
第一の足かせは転嫁の問題です。中小企業にとって消費税は転嫁が命です。転嫁できなければ自分でかぶらなければならない。損税となるわけです。だから、竹下元
総理も第六の懸念で「商品価格に転嫁できるか。」とお述べになっていました。
今中小企業の消費税の転嫁
状況はどうなっていますか。
-
○
政府委員(渡辺修君) お答え申し上げます。
平成元年に導入されました時点の中小企業の転嫁の
状況でございますが、当時の調査によりますと、メーカーについてはおおむね転嫁しているというのが九八%。さらに、二年に行いました数字によりますと、九九・七%が転嫁されている。メーカーの一例でございますけれ
ども、そういう数字を把握いたしております。
-
-
○
政府委員(渡辺修君) 少し細かくなりますが、卸売業につきましても、元年、導入当初でございますが九六・六%、二年で九九・二%と、こういうことになっております。
その他、小売業につきましてはこの数字は少し減ってきておりますけれ
ども、全体で当初が七三%、それから二年で七八%と、こういう数字になっております。
-
○
山下芳生君
平成二年以降の調査の結果はどうなっていますか。
-
○
政府委員(渡辺修君) 消費税が導入されて当初と一年後で今申し上げたような数字でございまして、その後、消費税は
国民の間に定着しておりますので、特にその転嫁
状況等について格別の調査はいたしておりません。
-
○
山下芳生君 結局、長期不況に入って中小企業の営業、経営がこれからどん底に向かおうというときに、もう消費税の転嫁の調査の必要がないと判断していること自体が私は大問題だというふうに思うんです。中小企業が消費税を転嫁するのがいかに大変か、困難か、これはリアルに見る必要があると思うんです。
大阪府中小企業家同友会がその点で興味深い調査をしております。これも資料をお配りしておりますが、仕入れ価格と売上価格の推移の調査であります。
バブル期最後の九一年と比較をすると、いわゆる価格破壊の流れの中で仕入れ品の単価は毎年下がって、九四年にはマイナス七%になりました。仕入れ単価が下がるのは結構なことです。ところが、製品の販売価格の方もそれ以上の率で下がり、マイナス一二%となっている。つまり、仕入れ単価よりも販売単価の下げ幅が大きくて、その分利益が小さくなっているということであります。これは何も特殊な例ではございませんで、政府の発行している中小企業白書でも、仕入れ単価の製品価格への価格反映力の差が大企業と中小企業の企業収益の格差の要因だと、こう分析しているわけであります。
こういう力
関係のもとで果たして中小企業は消費税を転嫁できるだろうか。中小企業の経営者の皆さんの声を聞いてみますと、転嫁できずに自分でかぶっているだとか、あるいは転嫁はできてもそれ以上に単価の引き下げを要求されているというのが実態であります。税率が五%になったからといって、二%上乗せして転嫁をするのが簡単ではない、困難だということは容易に想像ができると思うんです。そうじゃない、転嫁はできる、中小企業の経営を圧迫しないと保証できるでしょうか。
-
○
政府委員(渡辺修君) 今御紹介いただきました資料を拝見いたしました。
経済が激動しておるときでございますし、輸入品もどんどんふえておるときでございます。まさにいろんな市場の
状況が変わっておる
段階でございますから、そのときそのときでいろいろ変わってくることは、
経済は動きますから当然だと思います。
そうした中で、新たな対応をしていくために個々の企業は
努力しておるわけでございまして、消費税がスムーズに転嫁されますように、先般も
内閣で税制改革実施円滑化推進本部が開催されまして、それぞれにつき、非常に細かな指導を行って、各種団体及びユーザー、その他団体等に対して指導を徹底すると、こういうことを行っておるところでございます。
-
○
山下芳生君 私もその指導文書は見ました。しかし、結局、何かあったら中小企業庁などに言ってきてねという文書ですよ。しかし、言おうと思っても、言ったら、親企業にそのことが判明したら商取引を打ち切られるというような危険もあるわけですね。それを冒してまでも一体どれだけの中小企業者が訴えることができるだろうか。これは本当に事実として、現実の問題があると思うんですね。
私は、税率引き上げでどの程度の転嫁ができるのかという調査を
国民金融公庫が一月十七日に発表されておりますので、紹介したい。全国小企業動向調査ですが、それによりますと、「消費税率引き上げ分をすべて顧客(取引先)に転嫁できる」と答えた企業は一二二%です。「一部のみ転嫁できる」二三%、「全く転嫁できない」一七%、合わせて四割の企業が自分でかぶる、損税を新たに覚悟しているわけです。まさにこれは足かせになる。竹下元
総理の懸念が現実になる、拡大される、そういうことじゃないでしょうか。これはぜひ
総理に御見解を伺いたい。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 私は、最初に申し上げましたように、税制全体で議論すべき中の消費税一点での議論というのは全体を過つ危険性があるのではないかということを申し上げました。
先ほど主税
局長も申しましたように、レーガン時代の税制改正に向けてのアメリカのリポートを引用されましたが、国、地方を通じましたときに、付加価値税を採用している国は
日本以外に多数ございますけれ
ども、
委員はアメリカの例だけを、しかも地方税を抜きにしてお話しでありますが、ヨーロッパにおける付加価値税の税率の高さはよく御承知のとおりであります。今回、二%税率を引き上げさせていただきたいと考えつつも、簡易課税等転嫁のしやすい
状況を工夫しておることも御承知のとおりであります。
-
○
山下芳生君 転嫁の問題について、そうはならないということも、これまた否定はされませんでした。転嫁できなかったら自分でかぶらぬとあかんということになるわけです。しかし、長期不況の中で、中小企業の経営が大変な中でかぶり切れずに滞納になってしまうということもあり得る。事実、消費税の滞納額は今激増をしております。
九一年以降の消費税の滞納額がどうなっているか、税目別の滞納額もあわせてお示しいただけますか。
-
○
政府委員(堀田隆夫君) お答え申し上げます。
消費税の年度末滞納額でございますけれ
ども、
平成三年度、一九九一年度でございますが九百八十九億円、四年度が千八百四億円、五年度が二千七百五十二億円、六年度は三千三百五十九億円、七年度が三千八百六十一億円ということでございます。
あと、税目別にというお話がございましたが、いろんな税がございますけれ
ども、どうしましょうか。
-
-
○
政府委員(堀田隆夫君) じゃ、例えば申告所得税で申し上げますと、やはり
平成三年度から七年度で申し上げますと、三年度が六千六十七億円、四年度が六千七百十七億円、五年度が七千三百七十二億円、六年度が七千七百二十七億円、七年度が七千九百五十六億円というような
状況でございます。
-
○
山下芳生君 はっきりもう少しわかるようにしたいので、その年度ごとの中で滞納額の増加額構成比というのがありますけれ
ども、その一番大きな税目は何ですか。
-
○
政府委員(堀田隆夫君) お答え申し上げます。
ちょっと数字が計算できておりませんが、この間の、
平成三年度以降の滞納残高の増加の中で消費税がどのぐらいのウエートを占めているかということでございますが、税目別に見ますとやはり消費税のウエートが一番大きくなっているということでございます。
-
○
山下芳生君 その消費税の滞納額が五%に税率が上がることでさらにふえるんじゃありませんか。
-
○
政府委員(堀田隆夫君) 五%に税率が上がりますと納税額はふえるわけでございますけれ
ども、滞納がふえるかどうかというのは、いろんな要素がございまして、その時々の景気の局面もございますし、一概に滞納がふえる、ふえないとは判断し切れないだろうと思っております。
-
○
山下芳生君 私は、国税庁は消費税の滞納の増加をちゃんと予想している、そして手を打っているというふうに思います。
文書を入手いたしました。昨年の十二月二十四日付で信用保証協会会長や知事、市町村長あてに大阪国税局から送付された「消費税の納税証明書に関する協力依頼について」という文書です。この中には、消費税滞納の
状況等も十分に御賢察賜り、入札資格審査、融資申し込みの際などには、従来の申告所得税、法人税のほかに、消費税の納税証明につきましてもあわせて調査資料として御活用くださるようお願い申し上げますとともに、現在の納付税額を証明する書式を、今後は未納税額がないことを証明する書式に変更していただくようお願いを申し上げますと。
これは要するに、自治体が入札や融資を行う際に消費税滞納のチェックを厳しくしなさい、そういうことです。中小業者にとってはこれは非常に強烈な消費税の圧力になるわけですよ。こんな文書を送付するということ自体が、これは増税によって四月から消費税の滞納の増加を予想しているということも私は言えるんじゃないかというふうに思うわけです。私は、こういう入札資格やあるいは融資の申し込みの際に、今消費税の滞納がないことをあえてチェックしなさいよという文書を新たに出すこと自体、これは中小企業者の営業がこの消費税の増税によって大変になるという面をお認めになっているんじゃないか。どうでしょうか。
-
○
政府委員(堀田隆夫君) 消費税につきましては、先ほど申し上げましたような滞納の
状況がございまして、片方で、この税は預かり金的な性格を持っているものでございますから、私
どもは、この消費税の滞納を未然に防止する、あるいは一たん滞納になりましたものの整理を進めるということで、そこを今重点施策として推進しているところでございます。その結果、新規発生ベースでは、ここ二年ばかり消費税の滞納額は前年より減少しているということも申し上げさせていただきたいと思います。
その納税証明書の添付について
関係団体にお願いしていることも事実でございまして、私
どもはそれは必要な施策であると思っております。
-
○
山下芳生君 私は、預かり金というお話がありましたけれ
ども、預かっていないということが問題なんですね。預かれないんです、転嫁できなかったら。預かっていないんだけれ
ども預かったとみなされて、これは納税を強いられる。しかし、今の大変な経営
状況の中で納税できない人もこれまたふえてくるんじゃないかということですから。預かっていないんですよ、転嫁できないということは。そういう場合もあるということはぜひお認めいただきたいというふうに思います。
次に進みます。
中小企業にとって、消費税の増税が第二の足かせとして事務負担あるいはリスクの増大となってあらわれできます。これも、竹下元首相が第七の懸念で、「新しい税の導入により、事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか。」と述べておりました。
消費税の納税額は、売上高にかかる消費税額から仕入れに含まれる消費税相当額を控除して決まります。したがって、仕入れ消費税額の控除が認められなければその分納税額がふえる。
今回税率引き上げとともに仕入れ税額控除の適用要件が変更されようとしております。どういう変更でしょうか。
-
○
政府委員(薄井信明君) 簡易課税制度についての御質問かと思います。
現在年額四億円のものを二億に下げます。したがって、適用対象者がその分減るということになります。
-
○
山下芳生君 そうじゃなくて、仕入れ税額控除の適用要件の変更です。
-
○
政府委員(薄井信明君) 失礼しました。
いわゆる帳簿方式に加えて証票を保存してほしいということで、現在商売されている方々はほとんど証票を行き来させているわけですから、それを同時に保存していただきたいということを法令上明定しました。
-
○
山下芳生君 これは重大な変更なんです。これまでは帳簿の記載が不十分であっても請求書が保存してあればカバーできる、仕入れ税額控除が認められるということでしたが、「帳簿及び請求書等」の保存に変更になる。しかも、帳簿の定義、請求書等の定義が大変厳しい。消費税法に基づくこの二つの定義、どうなっているでしょうか。
-
○
政府委員(薄井信明君) 帳簿とは、事業者が行った課税仕入れ等につきまして、課税仕入れの相手方の氏名、名称、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れの内容、課税仕入れの支払い対価の額等が記載されているものというふうに規定されております。
-
○
山下芳生君 今聞いたとおり、今の四つの項目を取引のたびに全部帳簿に記入しなければならなくなるわけです。これは、現在の中小事業者の実態を全く無視したやり方だと言わなければならない。もし帳簿に不備があったら仕入れ税額控除が認められなくなるんです。それが否認されたら、売上額に丸々消費税が課税されることになって、納税額が一気に四倍、五倍にはね上がることになります。これも中小企業にとっては大変な足かせになるんじゃないか。
私、こういう
事態を、ぜひ
総理、どうでしょうか、そういうことは大丈夫だとお思いになりますか。
-
○
政府委員(薄井信明君) むしろ、消費税がいわゆる益税にならないようにとかいろんな意味できちんとするべきであるというのが世の中の声だと思います。そういう意味で、帳簿はある人はインボイスにしろという方までいらっしゃいますが、
日本の実情から考えてまだそこまでは行けないと思っております。そこで、帳簿に加えて、通常証票のやりとりをしているわけですから、それを保存していただく。
ただし、御指摘のように一件一件細かく全部出さないとだめだとは申しておりません。これは国税庁において執行いたしますが、それは実情に応じてまとめて出していただいたり、品目別でなくていいというようなことで整理をしていると聞いております。
-
○
山下芳生君 結局、法律のとおり中小事業者に記載を求めると無理がある、だから今おっしゃったように執行の
段階で配慮するということですけれ
ども、それは大変な負担がかかるということをお認めになっているということであります。ですから、それはきちっと、そんなことで税額控除が否認されるようなことはないというふうにしていただきたいんですが、しかし法律どおりにやるならばこれもまた大変な事務負担になるということも否定できないというふうに思うんです。
私は結局、アメリカの財務省やあるいは竹下元
総理が懸念された逆進性の問題、貧困層に対する絶対的負担の問題、それから中小企業の転嫁と事務負担の増大の問題、これは
一つ一つ聞いても結局それ自身については否認はされなかった、否定はできなかった。これはやっぱり消費税そのものの持っている本質的欠陥だからだというふうに思います。それを増税など、私はもってのほかだと思うわけであります。
ぜひこういう悪税は廃止するのが民主的税制の確立にとって大道だ。私は、この際改めて増税中止、そして特別減税の継続の一点で今国会でも
努力することを表明して、質問を終わります。
-
○
国務大臣(
橋本龍太郎君) 冒頭から、税それぞれの性格というものの中で逆進性を私は否定いたしませんでしたところ、その後、竹下
総理の九つの懸念を引用して、しかも全部ではなく引用をされましたので、一点竹下
総理が懸念しておられた第四の懸念というものがどうであったかを思い出していただきたいと思います。
第四の懸念は、「いわゆる痛税感が少ないことから税率の引上げが容易になされるのではないか。」という懸念でありました。それがいかに難しいか、今御理解のとおりであります。
-
-
-
-
○山田俊昭君 どうも、
総理を初め閣僚の皆さん、連
日本当に御苦労さんでございます。
中国人などによる密航
事件について、
関係各大臣にお伺いをいたします。
昨今、蛇頭、スネークヘッドなどと称する中国の密航あっせん組織の手引きによる中国人密航
事件が急増し、さらに不法入国した中国人グループによる窃盗などの第二次犯罪が多発し、大きな社会問題となっております。
事態の重大性を
認識されました政府は幾つかの対策を講じられているようでありますが、現状の分析と具体的な対応策についてお尋ねをいたします。
そこでまず、出入国管理に関する主務大臣である法務大臣にお尋ねをいたします。
出入国管理及び難民認定法第三条一項は「外国人は、有効な旅券を所持しなければ本邦に入ってはならない。」と規定し、同法二十七条は「入国警備官は、」第三条「に該当すると思料する外国人があるときは、当該外国人につき違反調査をすることができる。」とし、さらに同法二十四条は「第三条の規定に違反して本邦に入った者」には「本邦からの退去を強制することができる。」と規定しております。
すなわち、法務省の出入国管理行政が適正に執行されていれば中国人の不法入国や中国人グループによる国内犯罪などが問題になる余地はないと思うのですが、主務大臣である法務大臣としてこのような
事態、すなわち密入国者数がことし二月までで昨年一年分と同じなのであります。昨年一年の密入国者総数は五百四十五人、ことし二月までに既に五百八十人の密入国者があると聞いております。そして、中国人絡みの犯罪発生率は昨年一月から十月までに四千八百件に上り、在日外国人の四割を占めるという異常現象を生じております。
これら一連の
事件を見られまして、法務大臣はどう分析し、いかなる対応をされるおつもりなのか、具体策をお示しいただければ幸いでございます。
-
○
国務大臣(松浦功君) どうして密入国者がふえているかという問題については、これはなかなか確実に自信を持ってお答えを申し上げるという
事態ではないと思います。しかし、現実の問題として
日本が島国であるために不法入国者がいろいろの事情から非常にふえつつあるということは
委員御指摘のとおりでございます。
そこで、政府といたしましては、送出国に対する不法入国者の出国防止策の強化、こういうことを強力に申し入れるとともに、あとは内政の問題として
関係省庁と十分緊密な連絡をとりながら、上陸の阻止及び潜在不法入国者の摘発等を強化していく所存でございます。
なお、これに関連いたしまして、近く入管法の改正を行いまして、いわゆる援助、密入国の援助等に対する罪を新たに設けまして取り締まりを強化していくということを考えております。近く御
提案を申し上げたいと思っております。
-
○山田俊昭君 次に、海上保安庁に伺います。
不法入国を企てる者に対しては何よりもいわゆる水際での阻止が有効だと思われます。
日本での密入国者の摘発、逮捕率はわずか一割程度だと言われております。約九割が
日本国内に密入国し、野放しの状態にあるわけであります。無法
国家と言われても言い過ぎではない状態であります。これをぜひ早急に一人の不法な密入国者もいない体制をつくり上げていただきたく思うわけであります。
密入国には、偽造パスポートをつくって入ってくるとかいろいろありますが、夜中に船でやってくるケースが多いと思われます。夜間の摘発には赤外線監視装置が必要かと思われますが、海上保安庁の装備、船舶とか航空機が必要であり、人的にも組織化が必要かと思われます。
海上保安庁とされまして、これまでどのような対策をとられ、また今後どのような対策をおとりになるおつもりなのか、お伺いをいたします。
-
○
政府委員(土坂
泰敏君) 密入国が異常な増加を示しておるわけでございます。御指摘がありましたように、水際で阻止をするということが大変大事でございまして、保安庁の仕事と心得て最善を尽くさなければならないと思っております。
具体的な方策でございますが、やはりまず密航船がどこにあるかという情報が何よりも大切でございます。それから、その情報をもとにいたしまして、船艇、航空機を配備いたしまして、今御指摘のありました赤外線監視装置な
ども備えた上で監視、警戒をするということが次に必要でございます。それから次に、不審船が見つかった場合に立入検査をいたしまして問題があるかどうかを確認いたします。問題があればそこで検挙をすると、こういう手順を踏みます。
ただ、保安庁だけでなくて、取り締まり
機関、入管であるとかあるいは警察であるとかその他の
機関と連携をとりながらやっていくことも大事だというふうに思っております。
そういう考え方でやっておるわけでございますが、昨今、御指摘がありましたように、非常に増加をいたしましたので、保安庁では十一ある管区本部というところに対策本部をこのためにつくりました。二月二十五日に対策本部を設置いたしまして、いわゆる密入国対策の強化を図っておるところでございます。
具体的には、改めまして漁業
関係団体等に情報の提供をお願いしましたし、警察等との協議もやらせていただいております。また、来週には国内の取り締まり
機関が共同で中国に参りまして、中国の取り締まり当局に、いわゆる警備の強化あるいは取り締まりの強化、こういったことについて直接お話をさせていただこうかというふうにも思っておるところでございます。
さらに、防衛庁の方では、先ほど申し上げました監視、これは航空機で監視をいたしますと非常に広域を一遍にカバーできますので、防衛庁のお力で海上自衛隊の対潜哨戒機の監視活動を強化していただきまして、その情報を取り締まり
機関にいただくことにしております。
いろんな手だてを尽くしまして、御指摘がありましたように、水際で防止するように最善の
努力を尽くすことにいたします。
-
○山田俊昭君 海上保安庁から私のところに届けていただきました資料等を検討いたしますと、本当に現場で大変な御苦労をなさっていることがよくわかりました。
しかしながら、先ほど申し上げたように、密入国者が無法状態で簡単にはいれることだけは避けてもらわぬと、難民救済とわけが違うんですから、入ってきた人がいわゆる組織犯罪と結びついて
日本で大変な犯罪を惹起する危険性を多分に持っている密入国
事件でありますので、一人の密入国者も
日本に入れないという強い
姿勢で海上保安庁のさらなる御
努力を期待するものであります。
次に、警察庁にお伺いいたしますが、警察庁としても、これら外国人登録も持たず、甚だ身元の把握しにくい中国人を初めとする不法入国の外国人の国内犯罪の予防や摘発についてどのような対策をとっておられるのか。外国人組織犯罪摘発のために全国に専従の捜査班を設置するように指示されたと聞いておりますが、その成果はどうであるか否か。そして、今後どのような対応をしていくおつもりであるか、お伺いをいたします。
-
○
国務大臣(白川勝彦君) 警察の各種の
課題の中で、来日外国人犯罪は重要な
案件でございまして、そのために
平成九年度では千五百十二名の地方警察官の定員増をお願いしているのもそういうところにございます。
同時に、集団密航
事件が大変ふえていることは事実でございまして、集団密航をするという人は、何も全部が犯罪目的ではありませんが、三百万前後の多額の密航費用を払って来るわけでございますから、最後、窮すれば鈍するで、お金をどうしても集めなければ、逆に密航費用を払っただけでは足らぬわけでございますから、集団の犯罪にもつながるおそれがあるということで、この集団密航
事件、海上保安庁その他と今鋭意協議しながら、まず
一つ一つ摘発していきたいと、そういうことでございます。
ことしになってふえているかもわかりませんが、警察当局の
努力もあってニカ月間で去年以上を挙げたというのはやはり取り締まりが功を奏していると、こう考えております。
-
○山田俊昭君 警察庁のさらなる御
努力を期待申し上げます。
次に、法務省、警察庁、海上保安庁が幾ら国内や領海において懸命に
努力されたとしても、肝心の密出国側である中国政府が何らの対応策も打ち出さないのでは意味がありません。
そこで、
外務大臣にお尋ねをいたします。
外務省としても中国政府に密出国者の徹底した取り締まり等の
外交ルートによる強い働きかけが必要だと思うのですが、これまでにいかなる対応をし、また今後どうされるおつもりなのか、お伺いをいたします。
-
○
国務大臣(
池田行彦君) 中国人の密航の問題につきましては従来からいろいろな協議の場で取り締まりの強化を中国側に要請してきておりましたが、とりわけ昨年末来の多発急増状態にかんがみまして、二月十三日に、アジア
局長が在京の公使を呼びまして、四点にわたって迅速かつ有効な措置をとるように申し入れを行いました。
さらに二十七日には、在北京の大使館さらに総領事館等、例えば広州の総領事館、これは一番密航者の発生が多い福州のあたりを管轄しているわけでございますが、そういうところからも中国側の地方の当局に対し取り締まりの徹底方を申し入れたところでございます。
中国側も、当然のことでございますが、密出国はもう許すことができないということでございまして、断固取り締まる方針でございまして、真剣に対応しております。とりわけ最近では、そういう取り締まりの強化と同時に、広報
機関等を使いまして、中国の一般の
国民に対する、こういうことはやっちゃいけないんだ、水際での取り締まりも強化しているんだということの広報も行っているようでございます。
さらに、こういったことを踏まえまして、今月の十七日から
関係各省庁、警察庁、法務省、海上保安庁そして外務省が一緒になりまして
関係者を中国に派遣したいと、こういうことで調整中でございます。その際は、北京だけではなくて、上海さらには先ほど申しました福州にも出張いたしまして、中国側といろいろ協議してまいりたいと、このようなことでございまして、この取り締まりの強化につきましては、中国、
日本との間で今後とも連係プレーをしながらしっかり対応してまいりたいと思っております。
-
○山田俊昭君
外務大臣、よろしく。とにかく、密出国、中国が完全にそういう組織を持たないと、単なる申し入れだけでなく、確実になくなるまで継続して御
努力をいただきたいと思います。
次に、法務大臣にお尋ねをいたしますが、いわゆる帝銀
事件に対する元東京高検の検事長発言についてであります。
昨年十二月七日、法務・検察官僚の主流を歩まれた元東京高検の検事長藤永氏が明治大学構内でのシンポジウムにおいて、昭和二十三年に起こった銀行員十二人殺し、いわゆる帝銀
事件の故平沢貞通氏を犯人とする死刑判決には事実認定に弱点があった、そのために故平沢貞通氏の刑の執行が四十年も放置されたと、こう話ったと新聞報道されました。かつて検察行政の中枢にあった人物の発言として、私は相当の信用性を持ってこの新聞報道を眺めたのであります。もしこれが真実とすれば、法務・検察当局は、みずからが起訴した
事件の有罪判決に強い疑義を抱きながら四十年近くの長きにわたって行刑を放置し、再審の請求もせず、また恩赦の決定をすることもなくあたら獄死に至らしめたことになり、まことに遺憾のきわみとも言うべきものですが、この藤永氏の話の信憑性について、法務大臣の率直な御意見を伺いたいと思います。
-
○
政府委員(原田
明夫君) お答え申し上げます。
ただいま
委員御指摘のとおり、昨年十二月七日に御指摘のような新聞の報道がなされまして、藤永元東京高検検事長が、帝銀
事件の平沢死刑囚の刑が執行されなかったのは判決の事実認定に問題があったからだと読み取れるような趣旨の記事が掲載されたことは承知いたしております。
事柄は大変重大でございました。私も所管の
局長といたしまして、一体どういうようなことがあったんだろうかという観点から、藤永先生にも直接私自身が真意をお確かめさせていただきました。
その結果、藤永氏は、自分はこのシンポジウムに、死刑はなおこの社会において現在も存置するのが適当であるという立場から、死刑確定者の執行に当たってはいかに慎重な配慮がなされているか、慎重な立場から検討が進められているかという見地で自分は述べたつもりだったんだ、それがあのような具体的な
事件の判決の事実認定が問題があったと発言したという形で取り上げられた部分については、そのような趣旨で発言したものではないのですということを明確に言っていただきました。
一方、この記事を掲載した新聞社の担当者も、事柄があのような形で大きく取り上げられまして、私にもどうした
状況だったんだろうかということで取材をいただきました。
私は、その
段階で、当時を含めまして刑事
局長またこの執行の衝に当たります担当を経験された方、できるだけ多くの方に私自身また手分けをいたしまして確認させていただきました。その結果、帝銀
事件の平沢死刑囚につきまして、局内で事実認定が問題になったということで局議が開かれたりあるいはそのような論議がなされたという形跡は全くございませんでした。その点について私は新聞社の担当の方にもよく申し上げたら、その新聞社の方々もその後さまざまな角度から調べたようでございまして、まさに当時の担当者、またそれ以外の方々にまで幅広く取材をなさったようでございます。結果的に、法務省内でそのようなこの
事件について事実認定に問題があるというような観点から論議のあったことはなかったということについてはぼ確信に近いものを持ったというふうに話しておりました。
この記事でございますが、
委員御指摘のとおり、この記事につきまして私
どもも含めて法務省の担当者にいわば確認の意味での取材がなされておりません。そのことにつきましても新聞社の担当者は、その点においては問題であったというふうに私に話しておりました。
そのような
事態でございまして、私といたしましても、また法務省といたしましても、ただいま
委員が御指摘いただきましたような御疑念をお持ちいただくことについて大変心配しておりました。そういう意味で、少なくともこの
事件につきましては、そのような異論があったという点については全くなかったということをどうぞ御理解賜りたいと存じます。
-
○山田俊昭君 この一連の記事は、
国民の司法に対する信頼を大きく揺るがす大問題だと私は考えるわけであります。それが今、新聞報道されたのは事実無根で全く異なったということであれば、やはり何らかの形で新聞報道の訂正なり何かされない限り、この藤永発言のもたらす意味というのは本当に刑事裁判、司法への信頼度を
国民から失ってしまうことを意味することだと思うんです。
したがって、事実無根だという本人のお話であれば、今後法務省としてどういう対応をこの件に関しておとりになるのか。このまま事実無根、新聞記者も確認もせずして報道した
責任を感じているということのようなんですが、それだけで済むかどうかということになると極めて問題だと思うんです。法務省、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(原田
明夫君) ただいま
委員御指摘の点は、私
どもといたしましても大変重く受けとめているところでございます。したがいまして、新聞社の担当の方々にいろいろお聞きするのでございますが、あるシンポジウムで語られた言葉の受け取り方のニュアンスの違いということを話される向きもございます。そういうことで、藤永氏自身に対しましていわばその発言についての訂正を申し入れるということはなかなか難しい
状況でございます。
しかし、
委員まさに御指摘のとおり、この
事件についてはこの新聞社におきましてその後相当突っ込んだ独自の取材をなさったようでございまして、私
どもといたしましてはいずれかの機会にそのことが明らかになるものと期待している次第でございます。
-
○山田俊昭君 真相をぜひ
国民に知らしめて、司法の信頼を失うことのないよう御配慮をぜひお願いいたします。
さらに、法務大臣にもう一点お尋ねをいたします。
昨年の十二月、福岡の拘置所内で、死刑判決を受けた上告中の被告が脱走しようとして未遂に終わる
事件が発生して、本年三月五日、やすりとのこぎりの歯、金切りのこぎりを差し入れて被告の脱走を助けたとして、同拘置所の看守が逮捕されました。この
事件は、
責任を感じた拘置所長が自殺するといった悲劇的な
事件を派生させただけでなく、被告人の身柄を拘束して適正な刑事裁判を確保するという重任にある刑務官が、あろうことか被告人の脱走を手助けするというまさしく言語道断の
事件であります。
これも聞くところによりますと、この福岡拘置所の不祥事は氷山の一角にすぎないとも言われておるんです。拘置所の所長以下職員が、暴力団あるいは何者かに弱みをつかまれましてこういう
事件が起きたんではないだろうかと新聞や週刊誌は報じているわけであります。
そこで、
最高責任者とも言うべき法務大臣にお尋ねをいたしますが、このような不祥事が起こるのはいろいろ理由はあるのでありましょうが、組織全体のたがが緩み綱紀が乱れているからではないでしょうか。この
事件を教訓として、大臣は組織の綱紀粛正のために何かの手だてをぜひ講じていただきたい。もし既に講じてあられるのならば、その具体的な講じ策をお示しいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(松浦功君) お答え申し上げます。
まことに申しわけのない
事件、考えもしない
事態だというふうに思っております。綱紀が緩んでおるというようなことではないと思いますけれ
ども、十分全管区に指示をいたしまして、再度こういう
事件が起こらないように注意をしたいと思います。
なお、既に矯正
局長の名前でそれぞれの
機関に対して指示をいたしております。その点については矯正
局長からお話を申し上げたいと思います。
-
○
政府委員(
東條伸一郎君) お尋ねの件につきましては、
委員御指摘のとおりの事実
関係でございます。
事件の詳細につきましては、現在福岡地方検察庁で捜査をしていただいておりますので、本人の動機その他については、さらに捜査結果を待って私
どもは対応策をとりたいと考えております。
現時点では、少なくともこの種の、死刑の言い渡しを受けた被告人をその身柄を確保すべき
責任のある職員が逃がすことを援助する、こういうような職員は私は極めて例外的なものだと、このように考えております。
ただ、先生が御指摘のようにそういう問題があってはならないということから、本件事故の重大性にかんがみまして、近々に全国の矯正管区長を本省に招集いたしまして、人事管理あるいは
施設運営の実情及びその改善策についてさらに協議を遂げて適切な施策を遂げたいと、このように考えております。
-
○山田俊昭君 とにかく、
日本では前代未聞の
事件であるわけであります。アメリカとか中南米では脱獄ということはあるようでありますけれ
ども、とにかく私
どもには、なぜ看守がのこぎりまで与えて拘置所を脱走する図面まで与えたかという理由、内容がよくわかりません。新聞とか雑誌程度でございます。ぜひぜひこの真相を徹底究明されまして、今後二度とないような配慮をぜひお願いいたします。
最後に、厚生大臣にお尋ねをいたします。准看護婦問題についてであります。
昭和二十六年に創設された准看護婦
——准看護士もありますが、以後准看護婦という形で言わせていただきます。この制度は、目下約四十万人が准看護婦として医療や福祉の職場で活躍し、
地域医療の向上に大きな
役割を果たしております。
しかしながら、病院で准看護婦見習いとして働くことを准看護婦養成所へ入学する際の条件としたり、病院が奨学金を払うかわりに卒業後は何年か病院で働くことを約束させる、いわゆるお礼奉公の強制、准看護婦が実際には看護婦と同じ仕事をしているのにかかわらず、二十歳代前半の准看護婦と看護婦の給与が約四万円の格差があるなど、無用の差別意識を生ぜしめ、准看護婦のプライドを傷つける
状況が現実に医療現場で起こっております。
これらを重く見た厚生省は、
平成七年の十月に准看護婦問題調査検討会を設置し、実態把握とそれに基づく検討を行い、同年十二月二十日に事実上准看護婦養成の停止を提言する旨の報告を取りまとめました。
そこで、お尋ねいたしますが、戦後の看護婦不足を補うために看護専門学校を設立し准看護婦を養成してきたのは全国各地の医師会であり、しかも開業医の大半が安い給料で雇用できる准看護婦制度に依存しているため、巨大な圧力団体である
日本医師会が反対するのは必至だと思うのですが、厚生省としては、今後どのように
関係団体を説得し、報告書にあるような改善を図っていくおつもりなのか、大臣の御決意のほどをお尋ねする次第であります。
-
○
国務大臣(
小泉純一郎君) この准看から正看への移行の問題については今お話しのとおりでありまして、医療
関係者と看護婦
関係者に十分話し合っていただきまして今言ったような検討会の結論が出てきたということは大変いいことだと思っております。
今後、准看護婦の中で正看護婦になりたいという希望者は多いものですから、その道を広くあけて取りやすいような環境を整備していく、できるだけ早い機会にそういう方向で進んでいきたいと思っております。
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○山田俊昭君 小さな子供を抱えて、准看護婦で看護婦を目指しながらなかなかなれないという現実も私は知っております。ぜひそういう人たちのためにも厚生大臣のさらなる御
努力をお願いするものであります。
質問を終わります。どうもありがとうございました。
-
○
委員長(
大河原太一郎君) 以上で山田俊昭君の質疑は終了いたしました。(拍手)
これにて
総括質疑は終了いたしました。
次回は来る十七日午前十時に公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十七分散会