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国務大臣(
橋本龍太郎君) 大変大きな問題の提起をされました。そして、私が申し上げる以前に、議員御
自身が専門家として長い間我が国の安全保障の中核におられた方でありますから、私が申し上げるのは少々おこがましいのかもしれません。
しかし、あえて申し上げますならば、独立を回復して以来今日までの日本は、日本国というこの独立した存在を守るために、憲法のもとで日米安全保障
体制というものを堅持し、みずからの適切な防衛力の整備と相まって今日までを築いてまいりました。そして、その間にさまざまな変化はありましたけれども、この基本線は全く変わりません。そして、日米安全保障条約というものが持つ意義はより大きなものに今日変化をいたしておると私は
思います。
なぜなら、独立直後の日本と強大な世界の覇者としてのアメリカ、その間に結ばれた日米安全保障条約というものは、我々にとってこそ極めて大きな存在でありましても、そこから生み出される
信頼関係は必ずしもアメリカにとって大きなものではなかったかもしれないと
思います。しかし、今日私は世界の中におきましての日米
関係が安定しているということ、その持つ意義というものがどれほど大きなものであるかを一昨年の自動車協議の緊張し切った状態の中で改めて各国から教えられた
思いがいたしました。
あのとき日本側の主張にぜひ協力をと呼びかけた国々から、日本側の主張を理解しそういう方向で解決されることを望む、しかしこの自動車問題をもって日米
関係の亀裂を大きくしないようにしてくれ、これが実はヨーロッパもアジアも、どこからも私が言われたことでありました。いつの間にか、日米安全保障条約というものを基盤にした日米
関係というものは、世界の中でもそれだけのウエートを持つ外交
関係に成長していると改めて痛感をした次第であります。
そして、昨年、日米首脳会談における共同宣言並びにより効果的な日米防衛協力
関係を構築するための日米防衛協力の指針、この二つについて言及をし、その姿勢というものを私どもは再確認いたしました。そして、現在、日米両国間における防衛協力というものを基礎としながら、新しい時代におけるより効果的な協力
関係というものを結ぶべく指針の見直し作業を行っているわけであります。
当然その中で、我々は従来はタブーとされていたような分野にも検討のメスを入れなければなりません。しかし、当然ながら我々は憲法のもとにおいて日本のできる限界までを模索するわけであります。同時に、むしろそうした作業が現実に生きることがないようにする。それは、このアジア太平洋地域において平和と安定を確保するための努力並びに安全保障を軍事の面だけではなく構築するための努力、すなわちARF等の努力を多国間においても二国間においても積み重ねていくことだと
思います。
今日、議員の御
指摘からは多少ずれますが、私はこのアジア太平洋地域、ひいては世界全体にとって、日米
関係というものをより深化し堅持することとともに、日中の
関係というものを同じように強固なものにしていく努力が求められていると
思います。あわせて、米中の
関係というものが今よりもより改善するように、我々としてもそうした方向に努力を傾けていく役割があると
思います。
いずれにいたしましても、今日米安全保障条約というものを基礎とした日米
関係の安定が、我が国に非常に大きな安定をもたらしているだけではなく、アジア太平洋地域の安定にもこれが資しているということ、並びに日米
関係の安定というのはアジア太平洋地域だけではなく本当にすべてのところから求められている
関係であり、これを堅持していくためには我々もまた条約上の
責任を果たしていく、それだけの決意を持たなければならない、そのように考えております。