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1997-03-10 第140回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十日(月曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動 三月七日     辞任         補欠選任      田村 秀昭君     木暮 山人君      上田耕一郎君     笠井  亮君      聴濤  弘君     西山登紀子君 三月十日     辞任         補欠選任      石川  弘君     竹山  裕君      木暮 山人君     田村 秀昭君      久保  亘君     本岡 昭次君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理 事                 片山虎之助君                 佐藤 静雄君                 斎藤 文夫君                 田沢 智治君                 木庭健太郎君                 都築  譲君                 横尾 和伸君                 山本 正和君                 有働 正治君    委 員                 阿部 正俊君                 石渡 清元君                 板垣  正君                 加藤 紀文君                 金田 勝年君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 関根 則之君                 竹山  裕君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 成瀬 守重君                 野間  赳君                 真鍋 賢二君                 依田 智治君                 石田 美栄君                 市川 一朗君                 牛嶋  正君                 菅川 健二君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 高橋 令則君                 長谷川道郎君                 浜四津敏子君                 及川 一夫君                 大渕 絹子君                 清水 澄子君                 照屋 寛徳君                 川橋 幸子君                 小島 慶三君                 本岡 昭次君                 藁科 滿治君                 笠井  亮君                 西山登紀子君                 山田 俊昭君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        法 務 大 臣  松浦  功君        外 務 大 臣  池田 行彦君        大 蔵 大 臣  三塚  博君        文 部 大 臣  小杉  隆君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        農林水産大臣   藤本 孝雄君        通商産業大臣   佐藤 信二君        運 輸 大 臣  古賀  誠君        郵 政 大 臣  堀之内久男君        労 働 大 臣  岡野  裕君        建 設 大 臣  亀井 静香君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    白川 勝彦君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  武藤 嘉文君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       稲垣 実男君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       麻生 太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       近岡理一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石井 道子君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  伊藤 公介君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        田波 耕治君        内閣審議官    畠中誠二郎君        内閣審議官    白須 光美君        内閣官房内閣外        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房外政審議室        長        平林  博君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        内閣総理大臣官        房審議官        兼内閣審議官   安藤 昌弘君        総理府賞勲局長  平野 治生君        地方分権推進委        員会事務局長   東田 親司君        警察庁長官官房        総務審議官    山本 博一君        総務庁長官官房        長        河野  昭君        総務庁人事局長  菊池 光興君        総務庁行政管理        局長       陶山  晧君        総務庁行政監察        局長       土屋  勲君        防衛庁参事官   藤島 正之君        防衛庁装備局長  鴇田 勝彦君        防衛施設庁建設        部長       竹永 三英君        防衛施設庁労務        部長       早矢仕哲夫君        経済企画庁総合        計画局長     坂本 導聰君        経済企画庁調査        局長       中名生 隆君        科学技術庁長官        官房長      沖村 憲樹君        科学技術庁長官        官房審議官    興  直孝君        科学技術庁科学        技術政策局長   近藤 隆彦君        科学技術庁研究        開発局長     落合 俊雄君        科学技術庁原子        力局長      加藤 康宏君        環境庁長官官房        長        岡田 康彦君        環境庁企画調整        局長       田中 健次君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁水質保全        局長       渡辺 好明君        国土庁計画・調        整局長      塩谷 隆英君        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  五十嵐健之君        国土庁地方振興        局長       鈴木 正明君        法務大臣官房司        法法制調査部長  山崎  潮君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  河村 武和君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省条約局長  林   暘君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  小村  武君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省銀行局保        険部長      福田  誠君        証券取引等監視        委員会事務局長  若林 勝三君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部大臣官房総        務審議官     富岡 賢治君        文部省生涯学習        局長       草原 克豪君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君        厚生大臣官房長  近藤純五郎君        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生大臣官房審        議官       江利川 毅君        厚生省薬務局長  丸山 晴男君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        農林水産大臣官        房総務審議官   石原  葵君        農林水産省農産        園芸局長     高木  賢君        水産庁長官    嶌田 道夫君        通商産業省産業        政策局長     渡辺  修君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        運輸省運輸政策        局長       相原  力君        海上保安庁長官  土坂 泰敏君        郵政大臣官房総        務審議官     高田 昭義君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設大臣官房総        務審議官     村瀬 興一君        建設省河川局長  尾田 栄章君        建設省住宅局長  小川 忠男君        自治大臣官房長  谷合 靖夫君        自治大臣官房総        務審議官     嶋津  昭君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省行政局公        務員部長     芳山 達郎君        自治省行政局選        挙部長      牧之内隆久君        自治省財政局長  二橋 正弘君        自治省税務局長  湊  和夫君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成九年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成九年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成九年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成九年度総予算三案の審査のため、本日の委員会日本銀行総裁松下康雄君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、総括質疑を行います。久世公堯君
  5. 久世公堯

    久世公堯君 行政改革現下最大課題でございます。行政改革を行うにはその基本理念が重要でございますが、総理は二十一世紀の日本のための構造改革として六大改革を示し、その中核に行革を位置づけておられます。  行革にはいろんな視点があると思いますが、私は行革について二つ視点が重要だろうと思います。その一つは、仕事減らしによる小さな政府を実現するということ、そのためには行政の行うべき分野を限定して、官から民へ、国から地方へということが原則だろうと思います。もう一つ視点は、行政総合調整でございまして、特に議院内閣制におけるところの政と官のあり方、官邸機能の強化というようなことを視点といたしたいと思います。  私は、以下、行革問題に限って御質問を申し上げたいと思います。  まず、総理は第二次内閣の発足に当たりまして、各大臣行革視点からいろいろ指示を行われました。また、施政方針演説や今国会演説あるいは衆議院の予算委員会におきまして行革について毅然たる姿勢を示しておられます。現在総理閣議やあるいは各大臣に対してどのように行革について御指示しておられるか、まず承りたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 指示ということになりますと、まず昨年十一月七日の組閣の時点にさかのぼるかと存じます。そして、その組閣に際しまして各大臣に対し、行政改革規制緩和などについてはいやしくもその省庁の利益を代弁することなく、広く国民国家という立場に立って事務方を強力に督励し取り組んでほしいと申し上げました。  同時に、例えば総務庁長官に対しまして行政改革大蔵大臣に対しましては財政構造改革金融システム改革通産大臣には経済構造改革厚生大臣には社会保障構造改革文部大臣には教育改革指示をあわせて行いましたけれども、これは個別の指示でございます。その上で、同日の初閣議での説示におきましても同様の趣旨をお願いいたしますとともに、後日閣議の場あるいは担当閣僚に対して個別により具体的な指示をさせていただきました。  行政改革に絞っての今お尋ねでありますのでその点を多少申し上げますと、まず昨年十一月の初閣議におきまして私が申しましたこと、それは国家行政に求められる機能役割というものを根本から問い直した上で、時代変化に柔軟に対応できる、複雑多岐にわたる行政課題に的確に対応できる組織体制を整備するために、所管分野における規制の撤廃と緩和、官から民、中央から地方への業務と権限の移譲、中央省庁の再編など、その推進最大限努力を説示いたしております。  また、昨年十二月十七日の閣議におきまして、情報公開規制緩和官民役割分担についての行政改革委員会から出されました意見というものを受けまして、これによって必要となる全省庁作業を進めていくに際しまして、事務当局を督励しながら最大限努力指示いたしました。また、同月二十五日の臨時閣議におきまして、行政改革プログラムに沿った行政改革を計画的かつ着実に推進していくべく各閣僚指導力を発揮してもらいたいという指示をいたしております。  さらに、本年一月三十一日の閣議におきまして、当面の最重要課題であります規制緩和推進計画の再改定について、内閣行政改革に対する取り組みの姿勢というものが問われる、そうした内外から注視を受ける作業でありますだけに、再改定に向けて強力なリーダーシップを発揮しながら積極的に取り組んでいただくよう指示いたしてまいりました。  このような流れの中で今作業は進んでおります。
  7. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  総理を初めとして、私どもはそれぞれの立場において行革をやってまいらなければいけません。私は、現在自民党政調会の副会長をいたしております。自民党におきましては部会、政調会、そして総務会政策を決めていっているわけでございますが、政調会において私はここ一、ニカ月行革見地から感ずることが非常に多いわけでございます。一、二の例について申し上げ、お尋ねしたいと思います。  その一つは、まだまだ時代に合わない法令が存在しているということでございます。先般提案にもなりましたが、今回、蚕糸業法製糸業法廃止になるわけでございます。ひとつ養蚕業現状とそれからこの廃止の背景をお尋ねしたいと思います。
  8. 高木賢

    政府委員高木賢君) 我が国の養蚕業につきましては、中山間地域におきます重要な作目でございます。また、製糸業は伝統的な地場産業といたしまして、地域経済において重要な地位を占めております。しかしながら、近年、従事者が高齢化し輸入製品との競争が激化するという中で、例えば繭の生産は十年前の一割に減るなど、繭と生糸生産は大幅に生産が減少しております。  御質問製糸業法につきましては、製糸業免許制あるいは製糸業者に対する統制命令などの規制を定めております。また、蚕糸業法は、繭検定とか生糸検査の義務づけあるいは蚕種製造業許可制などの規制を定めております。最近におきますこのような養蚕製糸をめぐる情勢の変化あるいは国民的課題となっております規制緩和など、行政改革の要請を考慮いたしましてこれら二つ法律廃止することにいたしまして、先月末、製糸業法及び蚕糸業法廃止する法律案というものを閣議決定し、国会に提出したところでございます。
  9. 久世公堯

    久世公堯君 ただいま御説明にありましたように、十年前に比べれば一割にも満たないわけでございまして、養蚕農家もまた繭の生産額もそのようになっております。そして、この法律というのは片仮名であって、そして免許制で、統制命令という戦前の制度まで残っているわけでございます。かつ、現状は四百三十一名の繭検定員というのが二十四県にまだおりまして、これはかつては機関委任事務だったんですが、それはもうとにかくやめるということで、あとはこのツケは地方にまで今回っている状態でございます。そういう法律もまだ残っております。  もう一つの例として、どこまで公の分野でやるか、民でやるのかということは行革一つの大きな問題でございます。その例といたしまして、今国会に提案されたかもしれませんが、職業能力開発促進法職業能力短大民間がやっておりますところの専修学校専門学校、そういう調整について御答弁を願いたいと思います。
  10. 山中秀樹

    政府委員山中秀樹君) 今回の職業能力開発促進法等改正案は、産業構造変化の中で高付加価値化あるいは新分野展開を担う人材育成を行うための職業能力開発短期大学校の計画的な大学校化等公共職業訓練高度化あるいは自己啓発促進を図るということを主な内容といたしております。  そして、専修学校等民間教育訓練機関との役割分担につきましては、国は失業者に対する無料の訓練、あるいは高度な高額な設備投資を要する生産関係等訓練、あるいは中小企業人材供給のための低料金の在職者訓練等で、民間では十分対応できないようなものについて実施することといたしております。  今回、先生の御指摘をいただきまして、文部省との間で専修学校を含めた関係者との協議の場を設けることといたしております。その意見を十分尊重しつつ、民間を圧迫することのないよう進めてまいりたいと思っております。今後とも先生の御趣旨を十分踏まえながら対処してまいりたいと考えております。
  11. 久世公堯

    久世公堯君 官民分担というのは非常に大事なことでございますし、見直しもまた必要だと思います。今挙げましたのは一、二の例でございますが、私がここ一、二カ月感じただけでもまだまだあるわけでございます。  そこで、政調会に上がってくるものはどっちかといいますと調整が終わったものでございます。その前にいろんな段階がございますし、各省庁総合調整的に見る部局、これについてどのようにやっておられるのか、行革見地からどのようにチェックをしているかについて承りたいと思います。  まず総務庁長官、お願いいたします。総務庁行政管理局監察局にわたってお願いしたいと思います。
  12. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 行政管理局におきましては、現在は規制緩和の問題を中心として、それから今お話しのもう一つは、官と民との仕事分担の割合、分担比といいますか、どう分担をし合ったらいいかというようなことを中心としてやっておるわけでございます。行政監察の方は、まだこれは来年度からでございますが、今問題になっております特殊法人の問題につきまして、それぞれの特殊法人が果たして今後とも必要であるのかどうか、その目的は達しているかどうかということも含めて特殊法人行政監察平成九年度でやっていくと。  今のお話の行政改革に関連いたしましては、大体その辺を中心として今やらせております。
  13. 久世公堯

    久世公堯君 この間、行政監察につきまして各省庁の同意を得るということで多少問題化しましたが、管理局監察局を通じてやはりある程度は話をしなければいけませんが、その間非常に難しいと思いますが、どうやっておられますか。
  14. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) たまたま今規制緩和の問題を中心として行政管理局が相当各省庁と毎日やり合っております。  先ほど二つの例がたまたま出ました。二つの例というのは、労働省の問題それから農水省の問題ですね。私も、この予算委員会で拘束されているものですから、なるべく休日を利用して今事務当局間でいろいろ議論し合っていることを実はヒアリングをしているわけでございますけれども、私から見ると、果たしてこの仕事は今後とも残していかなきゃならない仕事なのかという点について疑問のあるものもあります。  規制緩和については、私が言っているのは、あくまでこれからはそれぞれの自己の責任において何事もやっていく、それからもう一つ市場原理を導入していく、そして自由にして公正な社会を二十一世紀にはしっかりつくり上げていく、そういう面からいって必要でない規制というものは極力やめていくべきだ。どうしても考えなきゃいけないのは、国の安全、それからもう一つ環境保全といいますか生活環境を破壊されるようなことはいけない。それからもう一つは、社会の中でどうしても弱者という方、ハンディキャップを背負った方がいらっしゃいますから、そういう方を守るという三つの原則、それ以外はもう規制というものは極力やめていく。  こういう方向でやるべきだということで、例えばその役所は審議会にかけてからやらなきゃいけませんから、平成九年度中、まだ時間がかかりますとかいうような話もあるんです。私はそういうときにも、その審議会にかけるということは法律上義務づけられているのか、法律上義務づけられていなければ何もそんな審議会にかけなくてもいいじゃないか、あるいは場合によれば平成九年度中なんということを言わなくたって、平成九年度のできるだけ早い機会に結論を出してもいいじゃないかというような指導をしながら、今極力強くそれぞれの関係の各省庁事務当局に当たるように指示をいたしておるわけでございます。
  15. 久世公堯

    久世公堯君 内閣法制局総合調整部局でいらっしゃいますが、お願いします。
  16. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 現下の急務であります行政改革に絞ってのお尋ねでございますので、それに絞ってお答えいたします。  行政改革というものは、まずそのあり方は政策そのものでございます。したがいまして、最高行政機関である内閣においてまず決定され、その決定された政策に即しましてそれに最も適合する法制を追求していくというのが内閣法制局の基本的な任務であろうと心得ているわけでございます。  なお、若干付言いたしますと、今まで問題とされてきました規制の新設を行うものについてどのような態度をとってきたかということを申し上げますと、平成八年三月二十九日の閣議決定、「規制緩和推進計画改定について」等により、「その趣旨・目的等に照らして適当としないものを除き、当該法律に一定期間経過後、当該規制の見直しを行う旨の条項を盛り込むもの」とされておりまして、法制局における審査に当たりましても、各省庁が立案し総務庁が一応の審査を経ました法案につきまして、なおその妥当性につき法制面から厳格に審査をしてきた次第でございます。
  17. 久世公堯

    久世公堯君 今の御答弁でございますが、私は法律的な合理性とそれから政策的な合理性というのは紙一重だろうと思います。法律的な合理性を求める法制局とされましても、政策的な合理性を追求すると申しますか入り込まなければ法制的な合理性は求められない、こう思うわけでございます。今お挙げになりました昨年三月二十九日の閣議決定で「内閣法制局」と特記されたのも、どうも法制局が従来そういうところが弱いから書かれたのじゃないかと私は解釈をしましたが、いかがでございましょうか。
  18. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 政策的観点から審査をすべきでないかというお尋ねでございますが、内閣法制局の法案審査に当たりましては、政策そのものの合理性、妥当性を審査の対象とする任務は直接には与えられていないということが言えようかと思いますが、政策遂行のための法制度としての合理性、妥当性を確保することを目的としながらも、御指摘のとおり、政策の合理性あるいは妥当性と法制度の合理性、妥当性というものは実際上は切り離せないものでございます。  したがいまして、法案の審査に当たりましては、政策の合理性、妥当性につきましても十分に議論を重ねた上、審査を了しているということでございます。
  19. 久世公堯

    久世公堯君 政策の妥当性も十分やっておられるかどうかは知りませんが、そう御答弁なので結構でございます。  大蔵省主計局、特に補助金の見地からいかがでございますか。お願いします。
  20. 小村武

    政府委員(小村武君) 先生御指摘のように、財政当局といたしましても、国から地方へ、地方から民へという基本的な発想のもとに今予算編成に取り組んでおります。  昭和五十六年に財政審報告というのがございまして、この中に、これまでは財政支出が正当化されていた施策についても、個人、家庭の自助努力に期待し、あるいは民間の活力にゆだねることができるものはないかということを真剣に検討すべきであると。その上で財政の関与すべき範囲を縮減し、歳出の縮減合理化を図るということで一定の基準を示し、補助金の整理合理化についても基本的にその方向で査定をし、検討しているところでございます。
  21. 久世公堯

    久世公堯君 次に、行革視点から法令の一斉見直しというものが必要だろうと思いますが、法制局長官、いかがですか。
  22. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) お尋ねのとおり、既存の法令につきまして、社会経済的観点から当該法令を取り巻く状況の変化を踏まえまして、その必要性、実効性が失われていないかどうかの検討をしていくことは重要な課題であろうと考えております。  ただ、この見直しというものは政策的な判断を含むものでございまして、行政制度一般に関する基本的事項の企画をその所掌事務の一つといたします総務庁におきましてまず調整をされ、引き続いて各法律の所管である各省庁において行われるべきものであろうと思います。  また、実際上も、このような見直しと申しますのは、現実に法令を適用し、そしてその法令を取り巻く状況の変化等に精通している各省庁において最も妥当に行えるものであろうとは考えますが、このような作業の過程におきまして、総務庁や所管省庁から法制的見地からの相談にあずかりました場合には法制局としても積極的に対応し、またそれの総括である法案審査段階におきましては的確迅速に審査を行っていきたいというふうに考えております。  なお、付言いたしますと、法令の整理の過去の実績でございますが、二度――よろしいですか。
  23. 久世公堯

    久世公堯君 私は法制局設置法三条の三号及び五号でこういうことも法制局は十分できると思うのですが、いかがでございますか。
  24. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 御指摘の法制局設置法の該当条文に基づきまして、法制局にその任務が全然与えられておらない、権限が与えられておらないということを申し上げるものではございませんが、一般的に考えますと、やはり各省庁が所管しておられる法律の総括的な検討を伴わなければならないものですから、先ほど私が申したような手順を経て行うのが最も妥当かつ円滑に行えるものではなかろうかと、このような観点から申し上げたにすぎません。
  25. 久世公堯

    久世公堯君 各省それぞれがやるのは当然でございますが、こういう行革というのはやっぱり横並びで総合調整的に見なければいけないわけでございます。  私は実はこの質問をするに当たりましてお願いをしましたところ、法制局も自分のところじゃない、法務省も自分のところは最後の法令集をつくっているだけだ、総務庁も自分のところではないと、みんな消極的な権限争議をされるわけでございます。私は、総理行革を火だるまになってやると言っておられるわけでございますから、とにかく消極的な権限争議だけはやめていただきたい、このように思います。  武藤長官も今一生懸命やっておられますが、過去におきましてはどうも行政管理局内閣法制局は各省からそれほど怖がられていない存在でございました。この際でございますから、鬼だ蛇だと言われても、あるいは血も涙もないと言われてもひとつ頑張っていただきたいと思います。  そこで次に、行革にとりまして私は数合わせというのは避けなければいけないことだと思います。それから、行革につきまして過去の審議会、調査会、臨調や行革審あるいは財政審、こういうようなところでは、スクラップ・アンド・ビルドとかあるいはゼロベースであるとか、サンセットとかあるいはPPBSとか、いろいろなことが言われてきたわけでございますが、大蔵省、そのあたりのところの経緯を少しお話しいただきたいと思います。
  26. 小村武

    政府委員(小村武君) 補助金を中心にいたしまして行政改革の観点から歳出削減に取り組む場合には、基本的な考え方は先ほど申し上げましたが、その方策としてかつてスクラップ・アンド・ビルドあるいはサンセット方式、一般財源化、統合・メニュー化等々の手段をもってやってまいりました。  これは、一つはこういう方式がある政策を方向転換する場合には大変有効であるという場合がございますが、先生御指摘のように、ただスクラップ・アンド・ビルドでいいのかという基本的な問題等々もございます。私どもは、スクラップ・アンド・スクラップという精神で今作業をさせていただいておりますが、緊要な政策についてはその財源を見つけるという意味においてスクラップ・アンド・ビルドという方式もまた重要であろう、それから既得権益を見直すためにはサンセット方式というものもそれなりに効果は発揮しているのではないかというふうに考えております。
  27. 久世公堯

    久世公堯君 このスクラップ・アンド・ビルドについて申し上げたいんですが、今まで審議会の答申だけではなくて、大蔵省もこの言葉をしばしば使っておられるわけでございます。ただ私は、現状を見ますと、どうもスクラップ・アンド・ビルドではなくてビルド・アンド・スクラップではなかろうか、あるいはスクラップ・フォー・ビルドではなかろうかという気がしてならないわけでございます。  大蔵省、ここ五年間の補助金についてのスクラップ・アンド・ビルドの金額について承りたいと思います。
  28. 小村武

    政府委員(小村武君) 補助金についてのスクラップ・アンド・ビルドの実績でございますが、平成五年度は新規が五十五件千六百九十億円、廃止が五十五件で千五百八十二億円。六年度は新規が四十六件、金額にしまして三百四十七億円、廃止が五十九件で三百三十二億円。七年度は新規が九十四件で千九百三十億円、廃止が百一件で八百三十七億円。八年度は新規が七十七件で千七百七十六億円でございます。廃止が八十五件で千二百六十三億円。九年度、本年度でございますが、新規が九十八件七百四十二億円でございますが、廃止が百十四件で千二十六億円でございます。
  29. 久世公堯

    久世公堯君 今、主計局長が言われましたように、確かに件数は減っておりますけれども、ことしを除く今まで過去四年においてはスクラップの額が小さくてビルドの額の方が大きいわけでございます。これでは非常に困ります。ことしはさすが総理指示が行き渡ってこの金額もかなり減っているわけでございますが、そこで私は、この現状は、先ほど申しましたスクラップ・フォー・ビルドあるいはビルド・アンド・スクラップになっていると。  そこで、さっき主計局長がおっしゃったスクラップ・アンド・スクラップが一番いいんだけれども、それはやっぱり新しい政策もいろいろあるわけでございますので、私は、ビルドをするときにはそれをはるかに上回るスクラップをしろ、あるいは一たんやめた上で出直せ、こんな原則にしたいんですが、これは何の原則と言ったらいいんでしょうか。  閣僚の中で英語に強い方はいかがでしょうか。英語にも強く、財政にも行革にも明るい池田外務大臣、御感想をいただきたいと思います。感じで結構でございます。
  30. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) それはやはり日本の財政でございますから、これは財政再建のために補助金についても徹底的に見直しを図る、こういうことではなかろうかと存じます。
  31. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  小泉大臣は最初に厚生大臣になったときに、日本ではやたらに英語の造語が多過ぎるということでおしかりになったと承っておりますが、ひとつ日本語で今、私の感じを申したらどんな原則がありましょうか。感じで結構でございます。
  32. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) むだなところは廃止せよ、新しいものをつくれということではないでしょうか。
  33. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  ひとつスクラップ・アンド・スクラップというような気持ちで、これからは一たんやめて出直すか、あるいはビルドをするときにはそれをはるかに上回るスクラップというふうにやっていただきたいと思います。  それからもう一つ、特に今度の概算要求なりあるいは予算編成において聖域なしという言葉がよく使われております。また、総理施政方針演説でもそれを述べておられますが、大蔵省、この聖域なしについてお感じをお願いします。
  34. 小村武

    政府委員(小村武君) 財政需要というのは各般にございます。それもそれぞれ正当性を持ち、かつ大変強うございます。  そういった中で、どれを優先順位で選ぶかというときに、決して各分野の主張は間違っているわけではございませんが、その優先順位を決定する際にどういうふうにしてそれができるかという一つの施策として、ある特定の分野、自分だけの分野が別だ、財政の膨張はほかの要因にあると、こういう主張をすることになりますと、財政改革というのはなかなか進みません。  そういう意味で総理がおっしゃっている聖域なしというのを私どもは理解をしているわけでございます。
  35. 久世公堯

    久世公堯君 どうかこの聖域なしという原則がビルド・アンド・スクラップやスクラップ・フォー・ビルドにならないようにお願いをいたしたいと思います。  それでは次に、地方分権と市町村合併の問題に移ってまいりたいと思います。  昨年の三月に分権委員会は中間報告をお出しになりました。私は非常にすばらしい答申だと思いました。私は八十点をおつけしたわけでございます。ところが、昨年の暮れの第一次勧告、私はどう見ても合格点を差し上げることができないのでございますが、自治大臣、この第一次勧告をどのように評価されますでしょうか。
  36. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 自治の専門家に私が答えるとあれですが、何十点をくれるかというのは、これは事務当局が答えられないと思いますので私が答えます。  百点満点というのは世の中にないものでありますが、精いっぱい頑張ったのかもしれませんが、私は最大の問題点は、基礎的地方公共団体である市町村に権限をできるだけ移譲する、そして地域のことは地域で決められるようにするという理想を掲げたはずなんだけれども、よく見るとどうもそこのところがない。これらは今後詰めていただきたい。それによって九十五点ぐらいになるか七十五点になるかの境目が出てくると思っております。
  37. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  確かに、御指摘のように、今回は府県に対する機関委任事務が非常に多いわけでございます。ただ、私が非常に問題だと思いますのは、実は今度の第一次勧告によりますと、今まで許認可制になっていたのを国の合意を要するところの事前協議制と、こうなっておるわけでございます。合意を必要とする事前協議と認可と一体どこが違うんだと。これは地方自治体の事務当局から見れば、多くの書類を持っていって足を運ばなきゃいけない。実際の手続というのは何にも変わらないと思うわけでございます。したがいまして、こういう合意を要するところの事前協議制というのは実際上は全く許認可と同じだと、こう考えております。したがって、私はこれは上下主従の関係にほかならないんじゃないか、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。  やがて第二次勧告が出るわけでございますけれども、第二次勧告は補助金も含む改革だと承っております。そうなりますと、例えば都市計画を例にとるならば、都市計画決定は県なり市町村におりたかもしれない。しかし、都市計画事業であるところの例えば街路事業とか下水道事業とか公園事業とか、そういう補助金は相変わらず建設省まで行って査定を受けなければいけないというのでは分権には全然ならないわけでございます。その点、自治大臣、どのようにお感じでございますか。
  38. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) この地方分権に絡みまして、書類を読みますと、地方の税財源の充実強化、権限強化、言葉は大変躍っておりますけれども、ことしの夏までに最終答申が出るわけだけれども、さて本当にそうなるのかなということについては大変私自身が心配をいたしており、関係者にそうならないようにしてほしいと、こう言っております。  ただ一方、地方税財源の充実強化と、こう言うわけですけれども、これもまた、皆さん、口で言うのは簡単ですが実行するのは大変ですよということも言っているのでございます。例えば三%の消費税を導入するということで、例えば二十六の一人区で普通は二十二、三とっていたのが逆転するということもあるわけでございます。そのぐらい一つの税を起こすというのは国会をもってしても大変なんですから、地方に新しい税を起こすということにしたとしても、本当にそれぞれの自治体で税を起こすというようなことがそんなに簡単にできるんですかというようなことも一緒に考えていただきたいと言っております。
  39. 久世公堯

    久世公堯君 今回の第一次勧告の後に総理から、二十二項目にわたって、地方分権推進計画をまつまでもなく前倒しをしろという御指示があったそうでございますが、この点について自治大臣
  40. 松本英昭

    政府委員(松本英昭君) 御説明申し上げます。  昨年十二月二十日に地方分権推進委員会から第一次の指針勧告をいただきまして、政府といたしましては直ちに地方分権推進計画の作成に取りかかったわけでございます。この地方分権推進計画は、来年の通常国会終了までに作成するということになっておりますけれども、第一次指針勧告を受けまして、できるだけ早く前倒しできるものにつきましては前倒しをするという方向で対処することといたしたわけでございます。  各省庁に大変御協力いただきながら私ども詰めてまいりましたところ、例えば、給水人口五万人超の水道事業で水利調整を要しないものの認可の都道府県への移譲とか、あるいは義務教育国庫負担金の申請が非常に従来いろいろとややこしいというような話もございましたので、その簡素合理化とか、あるいは通達等に基づいて行われております二級河川や港湾計画の作成方法に係る国の関与について廃止するなど、この二十二件につきまして遅くとも平成九年度中に前倒しして措置することとしたわけでございます。  なお、私ども自治省所管のものにつきまして積極的に早期の対応を図ることといたしておりまして、機関委任事務制度の廃止に関して関係省庁における所管法令の改正実務作業の円滑な実施に資するために、機関委任事務制度の廃止後における地方公共団体の事務のあり方及び一連の関連する制度のあり方につきまして、平成九年中に大綱を取りまとめることといたしております。  また、この外部監査制度の導入を含む監査機能の充実とかあるいは都道府県の局、部の設置に対します自治大臣への事前協議制の見直しのため、今通常国会地方自治法の改正案を御提案する予定といたしておるところでございます。
  41. 久世公堯

    久世公堯君 今、局長が言われました特に後段、それに伴うところの地方制度の改革、これはぜひことしじゅうに地方自治法の改正によってやっていただきたいと思います。今も大きい改正を出しておられますが、再び出していただいて、しっかりと法律で枠組みを決めていただきたいと思っております。  次に、市町村合併について、もうたびたび御質疑がございましたけれども、重ねて申し上げたいと思います。  昨年あたり、分権論が言われたときに、市町村合併という受け皿がなければ地方分権はできないという論がありました。私はこれは逃げ口上であって地方分権否定論だ、こう思ったわけでございますが、やはり分権が進んでまいりますと受け皿でございますところの市町村は合併が必要だろうと思います。  自治大臣、新しい見地からの市町村合併、どういう観点から必要だと。自治大臣おっしゃるとおり、市町村が基礎的な自治団体でございますから、それをどういう見地からやろうとしておられるのか、お考えを承りたいと思います。
  42. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 市町村合併につきましてこうして国会でいろんな方から意見が出され、質問が出されること自体、私は、私が就任した昨年の十一月からだけとらえても、事務当局に言わせて、こんなに国会で市町村合併の必要性が説かれたことはない、本当にまれなことであります、こう言っております。  二年前に合併に関する特例法をしたにもかかわらず、そのときよりもはるかに今の方が熱心でありますということで、大きな目的をまず一つは達したと思っておりますが、しかしこれはまだ機運の醸成という段階でしかありません。これだけ皆様方の問題意識が指摘されている以上、自治省としましては次のステップに移らなければならない、こう思っております。  どういうステップがあるのか、直ちに法改正とまではいきませんが、やはり物の考え方を整理する必要があろうと思っております。第二十五次地方制度調査会では、この前外部監査の導入というのを決めていただきましたが、直ちに今度の課題として市町村合併について議題にして真剣に議論する、こう書っております。同時に、地方分権推進委員会でもぜひこのことを考えていただきたいと思っています。  ただ、そのときに私が言うのは、合併しろ合併しろと言ったって、三千三百の地方自治体は独立の人格を持っているわけでございますから、幾ら自治大臣が旗を振ったって、命令して合併させることはできません。そうなりますと、合併をした方がメリットがある、市民のためになるという仕組みをどれだけ我々の方で、すなわち国会を含めてつくれるかということなんじゃないかと思います。
  43. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  私は、行政改革の中で、戦後いろんな行政改革が行われましたけれども、その最大のものは昭和三十年前後の市町村合併だと確信をいたしております。三年間で、先週も御答弁がありましたように、約一万あった市町村が三千何百になったわけでございます、約三分の一。  私は、戦後の行革の最大の問題は市町村合併だと申しますのは、そのときはどのくらい人が減ったか、三役は当然のことながら一万八千入減りました。それから地方議員でございますが、十八万おられましたのが九万五千人になって二分の一になりました。これだけでも非常に大きなことです。職員も減りましたし、経費も相当減ったはずでございます。  このような戦後の市町村合併、実はこれも昭和二十八年に町村合併促進法というのを三カ年の時限法でつくりました。それだけではなくて、それまでは市になるのは三万でよかったのでございますが、昭和二十九年から五万にこれを引き上げました。ところが、二十九年の九月までに合併計画にのっていて合併を申請したものは三万でも市になれると、いわば駆け込み三万市の特例を設けたわけでございます。これで市になりましたのが昭和二十九年だけでも百七十六市あったわけでございます。この市の特例によるインセンティブというのが非常に大きくこの合併に寄与したことは私は大きな成果だったと思うわけでございます。  その当時は、昭和二十九年に新市町村紹介展覧会というのを日本橋の三越と三越劇場で開きました。天皇、皇后両陛下が行幸啓されました。デパートに天皇陛下がおいでになるのは初めてだということで大問題になったわけでございます。また、ミス・ニューシティー、ミス新市のコンテストもあったわけでございます。  総理、ミス・ニューシティーはどこから選ばれたか御存じでございますか。
  44. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょっと残念ですが、そのころ余りそういう問題に関心を持っておりませんでした。
  45. 久世公堯

    久世公堯君 玉島市から選ばれたわけでございます。今は倉敷市に合併になりましたが、玉島市から選ばれたわけでございまして、もう四十三年前でございますから六十何歳かになっておられると思いますが、総理の選挙区でございます。  そこで、今市町村合併を考えるに当たりまして新しいインセンティブは何か。また、合併の勧告に対して合併しない市町村、これに何かをするというのは問題でございますが、何かお考えがあったら自治大臣、お聞かせいただきたいと思います。
  46. 松本英昭

    政府委員(松本英昭君) 先ほども大臣から御答弁がございましたように、現在、機運の醸成という面だけでなくて、地方制度調査会におきましても制度的な対応について検討を始めていただくことにいたしたところでございます。  具体的にはただいま委員御指摘のような市の特例などもいろいろと議論の対象にはなろうかと思いますが、何分制度的な問題につきましては現在の特例法等の運用等も見ながら真剣に検討していくべき課題ではないかと考えているところでございます。
  47. 久世公堯

    久世公堯君 次に、行政総合調整の問題に入りたいと思いますが、私が行革に初めて携わりましたのは昭和三十七年から三十九年までの第一次臨調でございました。この第一次臨調で、一番最初に第一専門部会というところで総合調整を扱ったわけでございますが、そのときの主査は小倉武一さんでいらっしゃいました。一つのやり方として、各省庁官房長に来ていただきまして、行政総合調整とは何かというヒアリングをやったわけでございますが、警察庁からは後藤田官房長、自治省からは大村襄治官房長、大蔵省からは佐藤一郎さんか、あるいは谷村裕さんだったかもしれませんが、こういう方がおいでになってそれぞれお話しになりました。  そのときに、私がまだ覚えておりますのは、後藤田官房長が、行政総合調整というのは政と官との関係である、政策の立案実施において政との関係、特に与党との関係をいかに調整するかということが総合調整の最も大事なことだと、こう言われたことでございます。  議院内閣制における政と官との役割分担とあり方は極めて重要でございます。特に総理大臣の権限を強化するということは、危機管理体制の上からも重要ですが、総合調整見地からも極めて大事でございます。  今度の行政改革はよく永田町・霞が関改革と言われております。議院内閣制のもとにおける政と官とのあり方、政の優位を保たなければいけない、政の出番は一体何なのか。予算編成、長期計画、公共投資基本計画、公共事業の配分、こういうようなものについての政の役割について、大蔵大臣及び総務庁長官から御答弁賜りたいと思います。
  48. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 議院内閣制であります。そして議会制民主主義でございます。そういう意味で地域の要望、国家的な要望が予算の中に明確に張りつけられるということは大事なポイントでございます。しかし、世の中は日進月歩でございまして、思わぬ障害にぶつかることたびたびでありましたが、我々の先輩は戦後の社会の中におきまして見事にそこを切り抜けてきたわけであります。  第三の開国と言われる行財政改革、財政を確かなものに再構築することによって未来へ道を開こう、こういう大目的がございます。政治のリーダーシップが強く要望される原因もそこにあります。国家の浮沈は政治がしっかりしなければなりません。国会議員は国の将来に責任を負うものであります。同時に、現代に責任を負いませんと将来展望が開けないという意味で国会及び政治家に課せられました役目は極めて重大と心得ております。
  49. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 大体大蔵大臣から御説明がありましたが、私は、国家国民のために何を現在なすべきか、あるいは将来どういう政策をとっていくべきか、これはやっぱり役人の皆さんにお願いをしても無理だと思います。しっかりした見識のもとに政治家がその方向をしっかり示して政策をつくっていく、それに基づいて官が一生懸命仕事をやっていく、そういう分担が私は必要ではないかと。  とりわけ、今の日本の内閣制を見ておりますと、憲法上の問題もございますけれども、もう少し官邸の機能の強化という点は、特に私はそういう点からいって政が官をリードするという意味において大変必要ではないかというふうに考えております。
  50. 久世公堯

    久世公堯君 今の裏でございますが、今度は官の役割でございますが、最近は官に不祥事等がございましたのでやたらにマスコミは官をたたいておりますけれども、私はやはり官の方も政策の立案形成あるいは政策決定の過程における役割があろうかと思います。また、行政執行の段階から新しい政策が生まれることは幾らでもあります。ひとつ官の役割、特に誇り高い我が国の官僚制でございますので、官の役割について、大蔵大臣総務庁長官から御答弁賜りたいと思います。
  51. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 国家公務員法に明示をされております。明治新政府、維新政府が生まれましてから陛下の官僚ということでございました。民主主義でございますから公僕として奉仕をすると国家公務員法に明示をされるところでございます。  よく官の役割ということでいろいろなことが言われますが、一点言えることは、憲法と法令に基づいて忠実に国家国民のために奉仕をするという基本命題がそこに課せられております。政党政治でございますから、内閣政府がかわってまいるここ数年の傾向、まさにそうであります。権力の移動に左右されず、公務員として何が正しいのか、また法律を拡大解釈して事柄を進めるのではなく、必要であれば政府法律改正を出すべきであるし、議員立法として出すべきであるし、官にそれを任せきりでやられるということはいかがなものかというのは私の政治経験の中で痛感をいたしたところであります。  国会、司法、政府政府は政党制でありますから政党内閣、そのもとに奉仕をする国家公務員の役目は公務員法に明示をされておるとおりであろうと思います。誠心誠意、官に職を奉じました以上、志があって奉じておるわけでありますから、全力投球を祈念するものであり、また期待をすることは当然であります。
  52. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 先ほどの答弁と大体重複するかと思いますけれども、国家国民にとって必要な、現在においてあるいは将来において必要な政策立案というものはやはり政治の世界がリーダーシップをとってやっていくべきであると。  しかし、それに基づいて政策が決定し、あるいはそれによって法律が施行されるということになれば、特にこれはもう今お話にあったとおり、国家公務員法にも明示されておるとおり、国民全体に対する奉仕者というのが公務員なのでございますから、公務員の皆様方は、そういう一つの責任感というかあるいは倫理観というか、そういうものに基づいて忠実にやっていただく。と同時に、それぞれエキスパートの方が多いわけでございますから、場合によれば、自分たちがそれをやっているときに、政治家に対してもこういう点はこうではないでしょうかとアドバイスをしても決して私はいけないことではないのではないか、官と民が全く分離するのではなくて、融合的な関係で、有機的な関係でやってこそ日本の国の行政が円滑にいくのではないか、私はこう考えております。
  53. 久世公堯

    久世公堯君 私は、今お二方の御意見を聞いておりまして、自戒の念も込めて、官がなるほどと言うような識見と力量を我々は持たなければいけないということを痛切に感じた次第でございます。  次に、官邸機能の強化の問題を御質疑いたしたいと思いますが、最近の国際化なり情報化あるいは行政複雑多岐化に伴いまして総合調整の必要性が非常に大きくなっております。総理の直接指揮監督によるリーダーシップの発揮が求められておるわけであります。  そこで、武藤大臣からもお話がありましたが、内閣法六条の閣議による方針の決定というものは、危機管理等についてはかなり幅広く解釈をしておられることが昨年の衆議院の国会答弁でわかりましたが、一体これは個別案件か、むしろ包括案件、一般方針をなし得るものか、総合調整についてお答えをいただきたいと思います。  特に、総合調整を必要とする重要案件についてあらかじめ閣議で決定し、これに基づいて総理行政各部を指揮監督することが非常に必要だと思いますが、法制局長官、お願いいたします。
  54. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) ただいま御指摘のとおり、内閣法第六条は「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」と規定しております。この規定の意味でございますが、これは必ずしも個々の具体的な事例ごとに閣議で方針を定めた上でなければ行政各部を指揮監督することはできないというわけではございませんで、あらかじめある分野における政策の基本的な方針について閣議決定がなされている場合には、それに基づいて、それに関係する事柄については以後内閣総理大臣は指揮監督することができるというふうに解しております。  そこで、お尋ねの総合調整を必要とする重要案件について、あらかじめ閣議で決定し、これに基づいて総理行政各部を指揮監督することの可否でございますが、お尋ねの意味が内閣として自主的に具体的な方針を示さずあらかじめ包括的に内閣総理大臣の意思決定にゆだねるという趣旨のものであるとすれば、やはり憲法上も問題があるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  55. 久世公堯

    久世公堯君 今の最後のところが問題でございますが、かなり幅広く解することができるならば、内閣法を改正して、例えば総理閣議での基本方針の発議権、これは事務次官会議なんかを経なくても総理が発議権を持つ、そして基本方針を定めると、こういうように行政各部を指揮監督するということを内閣法で定めることについてはいかがでございますか。
  56. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 先ほどお尋ねに対してお答えいたしましたように、憲法上の制約というものはあるわけでございますが、現行内閣法の第四条によりますると、内閣総理大臣は、内閣を構成する各大臣の一人といたしまして案件のいかんを問わずこれをみずから主宰する閣議に付議することができるというふうに規定しております。  したがいまして、現行法のもとにおきましても、内閣総理大臣が施政の基本方針を閣議に付議し、閣議決定された当該基本方針に基づき行政各部を指揮監督するという運用は可能であろうと思います。現に、各国会ごとに施政方針演説に盛られる事項あるいは所信表明演説に盛られる事項につきましてはあらかじめ閣議決定を経ておりますので、それに盛られた事項に関する限りは個別の閣議決定を要することなく指揮監督することが可能でございます。
  57. 久世公堯

    久世公堯君 私は、憲法の六十五条なり七十二条の解釈というのは基本的人権なんかとは違いますから、こういう行政組織等に関するものはもっと弾力的、幅広く緩やかに解釈することが可能だと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  58. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) 憲法のとっている建前でございますが、憲法は内閣という合議体を行政の最高機関として位置づけております。そして、憲法七十二条に定める行政各部に対する指揮監督は、本来、行政の最高機関たる内閣の権限として行われるべきものと予定しております。  したがいまして、同条七十二条が「内閣を代表して」と定めておりますのも、内閣としての国政に関する判断、意思に基づいて指揮監督すべきものと憲法は予定しているものである、こういう考え方を従前から説明してきているわけでございます。
  59. 久世公堯

    久世公堯君 仮に百歩譲ったといたしましても、閣議にかけて何か異議のある場合においてはこの限りではないという穴をあけることによってこれを可能にすることはできませんでしょうか。
  60. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) まず指揮監督をし、その後遅滞なく閣議に付議して合議体たる内閣の意思を後から追認する、意思によって追認する……
  61. 久世公堯

    久世公堯君 そうではなく、事前。
  62. 大森政輔

    政府委員大森政輔君) ということは、そういうことが一つの案として提案されていることは私どもも承知しないわけではございませんが、内閣総理大臣内閣の指揮監督の時点におきまして、内閣の意思にかかわりなく内閣総理大臣の単独の意思決定によりそれを行うということは憲法の予定しないところではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  63. 久世公堯

    久世公堯君 この憲法論はまたの日にいたします。  財政構造改革には官邸機能の強化が重要でございます。公共事業に係る計画として、経済計画あるいは全総計画、公共投資基本計画、各省の五カ年計画、こういうような計画を総合化して一本の計画として、さらにその策定を官邸がみずから行うということについて、総理はいかがお考えでございますか。
  64. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今一連の御論議を踏まえた上で、議員は公共事業に絞り込んだ問題として提起をされました。私は必ずしもこれは公共事業だけの問題ではないと思います。そして、官邸機能の強化という場合に、類型別にこれをとらえようとしたときには相当無理があるということをこの一年余りの間に私は痛感させられてまいりました。  ある意味では、私自身が指揮をある程度前面に出て行わなければならなくなりました私にとりましての最初の出来事というのは豊浜トンネルの事故であります。しかし、あのとき並行して起きておりましたことは長崎県五島列島沖における貨物船の火災とその火災からの人命の救出、そしてその船がどこへ流れ着きどのような被害を起こすかという問題でございました。  その後さまざまな事件がございました。全く違う教訓を残したものは、O157による学童を中心とした、しかも多数の犠牲を伴う伝染病でございました。あるいはペルーの現に継続をいたしております事件、ナホトカ号、さまざまな態様のものがございます。そして、例えば公共投資あるいは社会保障、場合によりましては教育等も入るかもしれません、あるいは科学技術。  長期計画をもって定性的に問題をとらえていくことは、私は、官邸としてできる、また従来もそれなりに官邸機能の中で対応してきたテーマではないかと思います。その上で、そうした基本的に定性的に定められました方向の中から個別具体的な計画を定量的に作成していく、これは官邸ではそこまで持ってはいけないんじゃないか。それは動きがかえってとれなくなってしまう。むしろ、その上で各省の能力を信頼し、定性的な流れと対比してもし問題ありという場合に、その問題を提起し解決を求める、そういった権限が官邸にあれば、私は公共投資から始められました部分については答えが書けるのではなかろうかと思います。
  65. 久世公堯

    久世公堯君 次に、中央省庁の再編につきましてはなかなか難しい問題でございますが、本年の十一月までに成案を得て来年は国会に提案をすると総理は言っておられます。  また、大くくりで四つの機能を示しておられるわけでございますが、私は分権推進委員会をおつくりになった経緯を見ますと、国会決議があり、大綱方針が決定され、分権推進法ができ、分権推進委員会で中間報告、第一次勧告と、こう来たわけでございますが、この経過を顧みて、この中央省庁の再編というのはいろんな論議があるほかに、分権の問題、規制緩和の問題、そういうものと集大成をしていかなきゃいけない問題でございます。  そこで、何か中央省庁再編成推進法というようなものをおつくりになって、そしてここで省庁の大くくりの機能別の再編を示して、場合によっては数を幾つにするというところまで書いてもいいと思います。そして、二〇〇一年までの時限を画してこれを推進するための推進機構、これは行革会議をそのまま法律上のものに上げればいいわけでございますので、そういう考え方を持っておりますが、総理、いかがでございますか。
  66. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私自身、御承知のようにこれを大きく四つの機能に、すなわち国家存続、国家の富をふやす、国民の暮らしの安全を守る、そして教育文化といった機能、そのような発想で皆さんにも訴えてまいりました。そして、行政改革会議におきまして今真剣な論議が進められております。  私どもは、これを本年の十一月末には成案を得るべく作業を進めていただいておるわけでありますが、この成案が得られましたら所要の法律案を作成し、国会で御審議をいただくというプロセスを考えております。  今、議員がお述べになりましたような考え方も一つの考え方としてこれは我々として検討に値するものであると思いますけれども、そうした考え方でありましても、私はいずれにしても二〇〇一年の一月一日には新しい世紀の初めとして移行を開始したいということを目標として申し上げてまいりました。  いろいろなことがこれからも考えられてまいると思います。今内容としてどういうものになるかということを申し上げられる段階にはございませんけれども、私どもとしてはそのようなことを考え、論議を進めているところでございます。
  67. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  私は、総理が非常に大きな視点から行革を、しかも全部を引き連れて集大成をされようとするお気持ちがわかるだけに、それを法律の形において、この再編成の基本方針と基本のスケジュールを書いた法律をぜひことしじゅうにつくっていただきたいなと思っております。日本人というのはやはり法律になるのとならないのとは相当違います。そういう意味からぜひお願いしたいと思います。  最後に、昨年の予算委員会におきまして、私は総理に、行革地方分権とを一緒に首都機能移転の平成十年に合わせてはどうかという御質疑を申し上げたことがございます。それによって一石三鳥だと申し上げたわけでございます。その後の昨年六月の橋本ビジョンも拝見いたしたわけでございますが、二〇〇一年までの完成は結構でございますが、いろいろと問題が残ると思いますので、最終の完成は二〇一〇年、首都機能移転、それをどうお考えでございますか、ひとつ最後にお尋ねをいたしたいと思います。
  68. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 国会等移転調査会から御答申をいただき、具体的な作業法律によって指示され、現在私どもは一方でその論議を審議会にお願いをし進めております。しかし、私は理想的な姿を言うなら、本当は首都機能の問題まで含めて全部が整っていくことは、二〇一〇年でありましてもそれはすばらしいことだと思います。しかし、果たしてそれだけ、例えば首都機能というものについての論議が終息し、適地が見出され、そこに新たな首都機能のうち例えば国会中心にどこまでが移転するのか。  私は、本当に国会が移転するときには現在のままの中央省庁が同行することはあり得ないという言い方でこの問題を申し上げてまいりました。それと中央省庁の改革というもの、まさに議員が先ほど来指摘をされました規制緩和による行政のスリム化、地方分権の推進による行政のスリム化、さらに官から民への移しかえの結果として生ずる行政のスリム化、こうしたものをあわせながらできるだけ早く青写真をお示しし、国民的な議論に向けていくことが必要ではなかろうか、そのように思っております。
  69. 久世公堯

    久世公堯君 終わります。
  70. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で久世公堯君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  71. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、沓掛哲男君の質疑を行います。沓掛哲男君。
  72. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 自由民主党の沓掛でございます。三点御質問したいと思います。  一点は北朝鮮問題について、二点目は日本海における重油流出事故について、三点目は財政改革と我が国経済の再建ということで質問いたします。  最初に、北朝鮮問題について質問いたします。  九六年四月に朝鮮半島平和増進のための四者会合を韓国及び米国が共同発表していますが、北朝鮮は依然として受け入れを拒否しているとのことです。この四者とは米国、中国、韓国、北朝鮮とのことですが、朝鮮半島は我が国にとって極めてかかわりの深い地域でもあるのに蚊帳の外というのはなぜですか。北鮮は九五年、九六年連続の水害により食糧、エネルギー問題は一層深刻化しているとのことですが、このような問題は四者会議では討議対象にはならないのでしょうか。
  73. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 朝鮮半島の安定ということは私どもにとりましても大変大きな関心事項でございますし、日本としても、いろいろな機会に関係各国とも協議をしながら、半島全体の安定に資するようにそれなりの役割を果たしてきているところでございます。  しかしながら、委員今御指摘の四者協議につきましては、これは昨年四月、済州島で行われました米韓の首脳会談におきまして米国並びに韓国の大統領から提唱されたものでございます。これは、朝鮮半島の安定を考える場合に、まず何といっても当事者は南北でございますね、この両者と、それからあとは休戦協定、朝鮮戦争のときの休戦協定というのがございますが、その当事者である米国並びに中国、これが入って協議しようというものでございますので、これはそういう性格のものとして我が国が直接メンバーになることはなかったわけでございます。  なお、米韓両大統領によりましてこれが提唱されましたときに、橋本総理からは、直ちにこれを支持して日本としても半島の安定のためにできることは協力していこうということは明らかにしたところでございます。この問題はそういうことで御理解賜りたいと思います。  なお、その後、なかなかこれは立ち上がってまいりませんが、ちょうど先般ニューヨークでこの四者会合のための米韓両国による北朝鮮に対する共同説明というのが行われまして、北朝鮮側も米韓両国のいろいろな説明というものを極めて注意深くといいましょうか真剣に聞いていったようでございます。一応持ち帰ってということでございますが、何とか早くこの四者協議が実際に開かれるということを我々も期待している次第でございます。  また、KEDOとかそういった方面の話につきましては、これは御承知のとおり、我が国は米国、韓国とともにこの理事会のメンバーとなって中心的な役割を果たしているわけでございまして、これは例の核疑惑問題の最終的な解決を図ると同時に、半島全体の安定または北東アジア全体の将来の安定のためにも大切なプロセスだと考えております。  いずれにしても、こちらの方のプロセスの方にも、今北朝鮮は調査団の受け入れ等を行っていることでございまして、このプロセスも順調に進んでいくことを期待しますし、我々としても努力してまいりたいと、こう思っております。
  74. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 本年一月十一日、台湾電力公司と北朝鮮政府は、六万バレルの放射性廃棄物を貯蔵のため台湾から北朝鮮に輸送する内容の契約を締結したと報じられています。これにより台湾電力公司は北朝鮮に八十億円支払うとも言われています。先日、在日韓国人による民団の代表が参りました。私ちょうど今自民党の国際局長をいたしておりますので私のところへ参りまして、強い反対の意思表示をし、台湾に働きかけてほしいと要請してきました。同様の趣旨が皆様方のところにもあったと思います。  そこで、台湾電力公司は自分のところで発生した低レベルの放射性廃棄物を自国で貯蔵しないで北朝鮮に運んで貯蔵してもらうのはなぜでしょうか。単に経済的に安く済むということでしょうか。高レベルの放射性廃棄物は自国で貯蔵するのでしょうか。わかりにくい商談だというふうに思います。  この輸送を強行することによりまして韓国と台湾、北鮮の関係に懸念が生じるのではないでしょうか。その我が国への影響についてもお伺いしたいと思います。
  75. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 台湾の低レベル放射性廃棄物の北朝鮮への移送問題につきましては韓国は非常に強い憂慮の念を表明しております。そして、そのことは我が国に対してもいろいろの機会に伝えられております。最も高いレベルで伝えられましたのは、一月二十五日に別府で行われました日韓首脳会談におきましてもそのような懸念が表明されております。  それで、韓国側の主張するところは、朝鮮半島の環境問題に及ぼす影響、こういったところの観点から憂慮する、そうして即刻この移送を中断すべきであるとの見解を繰り返し表明しておられるところでございます。  我が国としてこれをどう考えるかでございますけれども、基本的に申しまして、こういった低レベル放射性廃棄物の国境を越えた移動というものを禁止するとか、そういった国際的なルールがあるわけじゃございません。それはございません。しかしながら、今回のことがこの地域の環境問題とかあるいは原子力安全の問題に懸念を残すものであってはならないと、こういうふうに我が国としても考えておるところでございまして、これからも関連のいろいろな情報の収集に努めながら注目してまいりたいと思っております。  また、IAEA等にも韓国からの懸念の表明であるとかあるいは台湾電力からの事情の説明等もあるようでございます。そういったこともよく見ながら適切に対応してまいりたいと、こう考えている次第でございます。
  76. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次に、昭和五十年代に日本海沿岸から七件十一人の日本人が北朝鮮工作組織により誘拐、拉致された模様と報じられています。本人はもちろん、御家族の悲痛な思いはいかばかりかとお察し申し上げます。その救済に当たっては、本人の安全にかかわる問題であり、既にこの問題で九二年十一月の日朝国交正常化第八回本会談が決裂しておりますので、慎重な対応が必要です。  そこで、第三国、例えば中国の力をかり、第三国を経由して救済する方法はとれないものでしょうか。人道的な食糧供給等とも組み合わせられないものでしょうか。昨年来日された孫平化日中友好協会会長さんとも食事をした際に、会長さんはしばしば北鮮には行っているよというようなこともお聞きしたんですが、いかがなものでしょうか。
  77. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今、委員御指摘のようないわゆる拉致されたのではないかと疑われる案件につきましては、当然のこととして捜査当局は関心を持ち捜査をしておられることと存じますし、私ども外務省といたしましても、これまでもいろいろ関連する情報の収集には努めてきた次第でございます。  そしてまた、今具体的に御指摘ございましたが、特にいわゆる李恩恵の件につきましては、そういった捜査当局の捜査、調査等によりましてかなりこれは確度が高い案件であるということで、日朝国交正常化交渉の中でも提起いたしました、具体的には第三回のときだと思いますが。それからずっと交渉を持ちますたびに先方に対して提起し調査を求めたわけでございますが、それを北朝鮮側の受け入れるところとならず、ついに第八回の交渉の前の実務者協議においては先方が席を立っていきまして、以来正常化交渉がとまっているというような状態になっている次第でございます。  しかし、最近になりましてまた新たな情報も、情報といいましょうかそういったことが大きく話題に取り上げられたということもございますので、引き続き我々としては大きな関心を持って情報の収集に努めてまいりたいと存じます。ただそのときに、委員御指摘のように、例えば第三国の協力を求めたらどうかという点でございますが、そういった点もいろいろございましょうけれども、どういった方法が最も有効であるかということをよく工夫しながら粘り強く対応したいと考える次第でございます。  それから、この問題といわゆる米の北朝鮮への支援の問題を絡めたらどうかというお話でございましたけれども、米の方のお話は御存じのように、例えば今話題になっておりますのは国際機関WFPが人道的な見地から援助したらどうかという話で来ておる。そしてまた、やはり国連機関でございます人道問題局、DHAと言いますが、そこもまた今度調査に行こうとかいうことでございますので、直接その間にリンケージといいましょうか関連づけるというのは事柄の性質がちょっと違うかなという気もいたします。  しかし、米の支援をするかどうかという問題についても、いろいろな要素を勘案して総合判断しなくちゃいけないのは当然でございますし、また我が国の国民のお気持ちといいましょうか世論の中でも、一方においてこのような人道上のいろんな疑わしい問題がありながら、他方で、もう一方の方は全く別の人道的見地からと言われてもなかなかうんとは言いにくい、釈然としないというお気持ちがあるというのも否定できないわけでございますので、この米支援をどうするかという問題はいろいろな観点をよく勘案しながら慎重に検討すべきものかと考える次第でございます。
  78. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 黄長燁朝鮮労働党書記には、二月十二日、日本訪問の帰途、北京に滞在中、在中国韓国大使館を訪れ、韓国への亡命を要請したとのことであります。その後も北朝鮮の幹部の死亡や失脚が伝えられています。日本人の七五%が北朝鮮に不安を感じているとのアンケート調査もきのう出ておりました。黄書記の亡命に始まるこれら一連の事件は、北朝鮮の内政、外交とどのようなかかわりが予測されるのでしょうか、また、その北東アジアヘの影響についてはいかがなものなのでしょうか。  また、昨年九月には北朝鮮潜水艦が韓国に侵入するなど、北朝鮮は北東アジアの大きな不安要因となっています。この地域の安全保障のためにも、今ほど、さっきの四者会談のお話はいただきましたけれども、例えばさきの四者会談に日本とロシア等も入って、そして強力な体制づくりをしながら諸問題を片づけていくのもよいのではないかなと思いますが、これについても御所見をお聞きしたいと思います。
  79. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 北朝鮮、このところいろいろな事件といいましょうかそういったものが相次いでおります。そういったことで我々としても、あそこの国内がどうなっているんだろうか、またそれが我が国を含む周辺あるいは国際社会にどういう影響を与え得るのか、これは本当に注視しなくちゃいけないといいましょうか目の離せない状態である、こういうふうに考えております。  ただ、委員御指摘の事柄の中で、黄書記の亡命事件というものは、これは明らかに内部の体制の動揺というかそういったもののあらわれでございますが、その後の軍の幹部が相次いで亡くなったという件につきましては、それは自然なものではない、不自然なものであるという証拠といいましょうか、そういったものをうかがわせるような確たる情報に接しているわけではございません。  しかし、いずれにいたしましても、北朝鮮、経済的には大変困っておると思います。食糧の事情がどうだということ、あるいはエネルギーがどうだということだけじゃなくて、これは構造的な問題であろう、やはりあそこの経済運営が基本的に失敗したんだと、こう見ざるを得ないと思います。それのよってもって来るところはいろいろございますが、冷戦が終えんした中で、これまで北朝鮮と緊密なつながりがあり、政治面はもとよりのこと、経済面、社会面でもいろいろな協力等をしておった国が次々と体制を変えていった中で、一ついわば昔のままの名前だけじゃなくて姿で残っている国の運営の難しさかな、こんな感じはするわけでございます。  しかし、政治の方はどうかと申しますと、いろいろ最近ひずみというか、あるいは不満、動揺もしているんじゃないかという、そういったあらわれが例えば黄書記の亡命なんかで示されておるわけでございます。しかし、それでは現在の体制にかわるような新しい勢力が出てくるかといったら、そういうものもうかがわれないわけでございます。全体としては金正日書記が政治指導をしておる。  しかし、その中ではいろいろな、強硬派あるいは柔軟派と言うのがいいのか、あるいは世代間と言うのがいいのか、今のようないわば閉塞状態になったあの国をどちらへ持っていくかということについて、当然のこととしていろいろなせめぎ合いというのか、あるいはいろんな意見の相違というものもあらわれてきておっても不思議じゃないな、こんな感じはいたします。そういった意味で、いずれにしてもこれは注意していかなくちゃいけないと思うわけでございます。  そういった中で、四者の協議もいいけれども、それにロシアそして我が国を加えた六カ国ぐらいでこの朝鮮半島の問題をいろいろと真剣に考えてみたらどうかと、これは大変有意義な御提言だとは思います。  そして、現に、民間のものではございますけれども、カリフォルニア大学の研究所がその中心になりまして、今ございました六カ国の間で朝鮮半島問題あるいは北東アジア情勢を話そうというフォーラムがございます。そして、そこに外交当局あるいは安全保障問題を扱う当局のそれぞれの政府関係者が個人の資格で入っていろいろ話をしておるというフォーラムはあるわけでございます。ただ、これも今は六カ国のうち北朝鮮は招請を何度も受けながら今までは出てきておりませんけれども、こういったものも大切にしていきたい。  それから、いずれ将来的には政府間ベースでもそういうものもあってもよろしゅうございますし、それから今そういったいわばサブリージョナルの北東アジアにおける話し合いの場だけではなくて、もうちょっと大きいところで、例えばARFだとか国連の場等でもいろいろ関心を持って話をしていく。それから、もちろん二国間で、日中あるいは日ロでもいろいろ話をしますし、また日米韓の間ではつい先週末も局長レベルで話し合いをしてまいりました。そういったことはこれからも努力をしてまいりたい、こう思っております。
  80. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 では次に、重油流出事故について質問したいと思います。  お手元にお配りしてある写真集で大体の概況はおわかりいただけたかと思います。さて、ナホトカ号海難・流出油による災害についてこれからお尋ねします。  平成九年一月二日、ロシアのナホトカ号が島根県沖で船首部が折損し、後部側が沈没し、船首部が福井県三国町海岸に漂着いたしました。C重油を約一万九千キロリットル積載していましたが、その約六千キロリットルが流出し、日本海側の島根県から山形県に至る一府八県に大きな被害を発生させております。  政府は一月十日午前、運輸大臣を本部長とするナホトカ号海難・流出油災害対策本部を設置され、直ちに運輸大臣には三国町を中心に空と陸から被災地の視察をなされました。自民党も一月十日午前、加藤幹事長を本部長とする日本海重油流出事故緊急対策本部を設置し、現地におりました私に事務局長代理として運輸大臣に同行するよう指示がございました。直ちに小松空港で古賀運輸大臣を迎え、ヘリコプターに同乗し空から、また陸路で被害状況を視察いたしました。三国町海岸に漂着した赤さびた船首部は海底から出現した悪魔のようでもありました。  あれからきようでちょうどニカ月たちます。船首部から流出した約六千キロリットルの重油は多くの方々の献身的努力によっておおむね除去することができました。この間に五名のとうとい命が奪われましたことはざんきにたえません。心からなる御冥福を祈ります。  このたびの被害の中心となりました福井県の三国町から石川県の加賀及び能登の海岸は白砂青松の風光明媚な地域でありましたが、どす黒い重油でその面影がすっかり失われました。皆様のお力で一日も早く回復させていただきたいという思いを込めて質問いたします。  まず第一に、発生被害の補償についてであります。県や市町村が流出油の回収に要した七十億円のうち、直接費分の四十億円と間接費分の三十億円についてどのように対応していただけるのか。先の方を運輸省、後の方を自治省にお願いいたします。
  81. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) お答えする前に、今改めてこの写真集を見させていただきまして、政府関係者はもとよりでございますが、民間ボランティアまた地域地元の方々、大変多くの方々に今もなお御苦労いただいているこの事故の重大性にかんがみまして、改めて問題点の反省と検証の上に立って今後の対策に万全を期していく必要があることを認識いたしたところでございます。  また、先生には党の対策本部の事務局長代理をお引き受けいただきまして、当初から大変御苦労いただくと同時に、御指導と御支援を賜ってまいりましたことにも心からお礼を申し上げたいと思っております。  最初のお尋ねの件でございますけれども、御承知のとおり、流出油の防除につきましては国も地方公共団体もお互いに連絡を密にしながら協力し合ってやってきたところでございます。特に、今回の災害が、油の流出が非常に大量であること、また日本海独特の荒天の中で事故が起きたわけでございます。そういう悪条件が重なったという特殊性を考えまして、地方公共団体が応急対策として油の防除体制に直接かかった費用を国と折半するということで、国の交付金ということで交付をさせていただくということを決めさせていただいております。  この件については地方公共団体が特に御要請の大変強かった点でございます。その期待にこたえた措置だというふうに思っておりますが、具体的には交付の方法等交付総額がどうなるか、今事務当局で詰めているところでございます。可及的速やかに措置していきたい、このように思っております。
  82. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) ナホトカ号の油の事故に起因いたします被害のうち、地方団体が行政的に対応すべき経費、具体的には現地での対策本部の設置に要します経費とか、あるいは油の回収のための経費、ボランティアの活動を支援するための経費等でございますが、これらにつきまして特別交付税の算定対象と考えております。  これらの経費から、ただいま運輸大臣から御答弁のございました応急対策にかかる交付金が出ることが予定されておりますので、それ以外の部分につきまして、地方団体における所要額を今年度中の見込み額を含めて調査いたしておりまして、それを特別交付税によって措置することにいたしております。
  83. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 ぜひお願いいたします。  続いて、農水省に質問したいんですが、水産業にかかわる被害への対応についてです。  まず一つ、漁業に対する直接被害、例えば油の漂着により岩ノリ漁場は壊滅的な打撃を受けました。それによる被害。それから二番目、洋上を漂流する重油の回収や監視のため、その後の船体の洗浄、また陸上で漂着油の回収に従事したための休漁による被害。それから三番目、風評被害で二月にはカキ等の価格が半減いたしました。これらによる被害についての対応をお尋ねいたします。
  84. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 今運輸省、自治省からお答えがございました。農水省の関係いたしております関係分につきまして概括的にお答えいたしたいと思いますが、まず船主側による補償の円滑な実施につきましては関係省庁と一緒になりまして働きかけを行っているということでございます。  それから二番目の、漁業者の受けました被害につきましては、農水省といたしましてはこの被害対策を十分に行う必要を感じておりまして、その対策には万全を期していきたいというふうに思っております。現在のところは、一つはこの被害を受けました漁業者の経営また生活上の点について安定を図るために金融措置を行っておる、それから先ほど御指摘がございました風評被害対策も行っておるということでございます。  それから三番目につきましては、油の防除の経費につきまして、漁業者に対しまして支払いが円滑に行われますように国から海上災害防止センターに対しまして資金の融資が実施されることとなっております。詳細は今詰めておる、こういう状況でございます。
  85. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次に、運輸省に質問したいんですが、沿岸温泉旅館の減収について相談のできる窓口を県、国を通じて設置していただきたい。二月は大体三〇%から四〇%ぐらいお客が減っておりました。最近、少しまた回復の兆しがあります。  それから二番目。このたびの事故による補償の時効期間は六年と聞いていますが、この間に生ずる今回の重油流出に伴う風評被害、例えば海水浴場の減収等の相談窓口も同様に県、国において設置していただきたい。  それからもう一つ。まとめて質問させていただきたいんですが、被害関係者が集まって話し合い、また相談に乗ってもらえるような国の窓口を設けていただきたい。また、船主及び国際油濁補償基金の補償限度額は船主二・六億円、基金二百二十五億円と言われておりますが、被害総額がそれを超える場合には民間の被害補償を優先してもらいたい。国が出すいろいろな株など、取得している株等について、優先株とか後配株がありますが、あのような関係をお願いしたいと思います。  以上三点、運輸省にお願いします。
  86. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 最初の観光関係の方々に対する被害についてでございますけれども、御承知のとおり、観光関係の被害につきましても、この事故との因果関係が認定をされますと当然国際油濁補償基金によります補償の対象になり得るものでございます。これらの窓口については御承知のとおり運輸省に対応窓口を設置いたしておりまして、被害者等に対する一元的な対応を行っているところでございます。今後、こうした被害者の方々の御不便のないように県ともよく連絡をとりまして、補償交渉等の円滑な調整ができますように運輸省の窓口を通じましてさらに努力をしてまいりたいというふうに思います。  それから、被害額が二百二十五億を超えた場合の処置についてお尋ねでございますけれども、現在被害総額について、ただいま農林水産大臣からもお話がありましたように、その総額についての把握を急がせているところでございます。もし仮に二百二十五億を超えるというようなことになった場合でございますけれども、これにつきましては、もし仮に国が先生御指摘のように基金に対する債務を放棄するということになりますと、結果的には国の負担において民間の補償を行ったと同様のことになるわけでございまして、御承知のとおり、今日では地震また自然災害等の場合において個人に対しての国家補償というのは行っていないところでございます。そのバランス等のことを考えれば問題があるのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、二百二十五億の総額を超えた被害に対してどういう対応ができるのか、関係閣僚会議等を通じまして可能な対応等について検討してまいりたい、こういう姿勢でおります。
  87. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次に、今回の流出重油が環境及び健康に及ぼす影響についてお尋ねします。  流れ着いた重油の中でたくさんの人が長時間除去作業をしているのを見て、健康被害及び環境への影響が大変気にかかりました。これらの問題への対応について環境庁長官にお尋ねいたします。
  88. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 油の回収作業に伴います健康上の注意事項につきましては既に一月二十一日に都道府県に通知をしたところでございまして、皮膚とか粘膜に対する影響を防ぐために手袋とかマスクとか眼鏡などを使用するようにというような指示をいたしましたり、また救護所を設けたり健康相談にも応じているところでございます。  環境庁といたしましても、重油の健康影響などに関する情報を関係省庁とか専門家からも収集いたしまして、さらに厚住省や労働省、また地方自治体とも連携をとりまして、今後の健康被害の防止に対しまして万全を期していきたいと思っているところでございます。  特にすぐれた自然環境が破壊をされたということにつきましては大変残念に思っているところでございます。この環境影響につきましては、去る一月十五日に私自身も現地を訪れたところでございまして、第一段階の調査に着手いたしました。その後、ニカ月間にわたりましてサンプリング調査を行ってまいったところでございまして、三月の下旬ごろには分析結果を検討する予定でございます。  特に、環境庁におきましては、二月七日に専門家によります検討会を設置いたしまして、今後の調査内容とかあるいは調査期間等のことにつきまして意見を聞きながら、関係省庁とも連携し、水質、大気、底質、生態系、景観などの環境に及ぼす影響の調査を継続的、段階的に行っていく方針でございます。
  89. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 被災海岸における生態系、特に水産資源への影響調査とその復旧対策についてお尋ねいたします。
  90. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 漁業被害につきましてはできるだけ早く被害の把握に努めてまいる所存でございますが、御承知のように春以降本格的な操業に入る漁業種類が多いわけでございまして、今の段階ではこの被害の実態を把握するまでに至っておりません。しかし、関係府県、業者の皆様方の御協力をいただきましてできるだけ早く被害の状況は把握してまいろうと考えております。  それから、復旧対策でございますが、これが最も地元の方々から関心があり、また御要望の高い問題でございまして、特に漁場の再生、それから漁港の機能の保全また再生、こういう問題がございます。これらの問題につきましては、いろいろな制度がございますので、そういう制度を活用してその被害の状況に応じて対処してまいる考えでございます。  それから、水産生物への影響把握につきましては現在調査中でございますので、近々結論が出ると思っております。
  91. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次に、被災した海岸の復旧について、関係省庁の調査と養浜事業等の措置をお願いしたいと思います。四省庁にかかわるんですけれども、一番長いのは建設省かと思いますので、建設大臣にお願いします。
  92. 尾田栄章

    政府委員(尾田栄章君) ただいまお尋ねの海岸保全施設に対する影響でございますが、関係をいたします農水省、運輸省、そして私ども建設省連携をとりまして、現在海岸への油の漂着汚染に関する緊急調査を実施いたしておるところでございます。この調査結果に基づきまして、海岸保全施設への影響がある場合には、海岸環境整備事業等の制度の活用を検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  93. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次に、大変に気にかかることですが、島根沖に沈んでいる船尾に残存しているC重油約一万一千キロリットルの取り扱いについてはどうなるのか、これからどういうふうに検討されるのか、教えていただきたいと思います。
  94. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 船尾部から湧出いたしております浮流油についてでございます。  まず、その状況を御説明申し上げておきたいと思いますが、現状は幅二百メーターから三百メーター、そして長さが数キロまた十数キロというように長くなる状況もございますが、これは静穏な日、荒天の日によって状況が違ってきております。現在そういう帯状になっているわけでございますけれども、先端は拡散消滅をしているという状況にございます。  海上保安庁といたしましては、二十四時間体制で航空機それから巡視船等によりまして監視、注意をいたしておりますと同時に、浮流油につきましては航走拡散、放水拡散等の処置で油の防除に努めているところでございます。  今後につきましてでございますけれども、大事なことは、先生今御指摘のように、この湧出油がどうなるのか、また沈んでいる船体がどういう状況になってどうなっていくのか、こういうことを国民に明らかにしていくということが重要なことだと思っております。  二月十四日だったと思いますが、私の委嘱によります学識者またいろいろな関係の専門家の代表の方々に入っていただいて検討委員会をつくらせていただいておりまして、どういう処理ができるのか、また船体がこれからどういう状況になっていくのか等々、専門的な検討をしていただいているところでございます。  いずれにいたしましても、難しいのは水深二千五百メートルという地点でございます。こういう地点で今申し上げましたようなことが具体的に対応できるかどうか、技術的に非常に難しい点があろうかと思いますけれども、早急に結論を出していただきたい、こういうことで検討委員会の方で今検討を進めさせていただいている状況にあります。
  95. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 事故再発防止対策についてお尋ねします。  日本海にはロシアの老朽船がまだ多数航行しているとのことです。NHKでロシアの保有する老朽船九十隻のうち四十一隻が極東アジアで運航していると報じていましたが、これらの老朽船が今回のような事故を生じさせないような措置を講じていただきたい。欧州ではPSCが有効に機能しているとも言われておりますが、いかがでしょうか。
  96. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 今度の災害、いろいろな問題点で検証し、また反省をさせられているわけでございます。今おっしゃったような、まず防除の資機材等についても、静穏な太平洋側、荒天の日本海側、油の防除資機材の配置等についても反省すべき点が大変あったわけでございまして、そういうことを含めましてこれからあらゆる問題点を検証し、そしてどういうところに問題点があったのかということを反省すると同時に、再発防止、そしてまた油の防除体制のあり方等々について総合的な検討をさせていただきたいと思っております。
  97. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次に、閉鎖的な日本海で今回のような重油流出事故がたび重なれば日本海の汚染も懸念されます。日本海での重油流出事故の場合の危機管理体制の整備をお願いしたいと思いますが、お願いします。
  98. 古賀誠

    国務大臣(古賀誠君) 危機管理体制というのは問題点が幾つかあろうかと思っております。  まず、ああいう老朽タンカーをどういう機関の中で日本海のあの荒天の中で運航しないようにやっていくのか、こういう防除体制というのも必要でしょうし、実際に災害が起きたときの油の回収に対して日本海のあの荒天の中で対応できるどういう防除体制をつくるのか、また初動態勢等を含めた即応態勢のあり方等も問題点として反省していかなきゃいかぬだろうと思っております。  先生、具体的にお尋ねの点がどの辺にあるかは別にいたしまして、私どもが今回一番検討してみたいなと思っておりますのは、あの荒天の中で油の災害が起きたときの油の回収に当たって、例えば油の回収船、また防除資機材、こういったものが技術的にまずあの荒天の中で可能かどうか、実用化できるかどうかということを含めて検討してみたいと思っております。  また、仮にあの荒天の中での油の回収船ということを考えた場合に、油の回収船だけで莫大な費用を要すると言われております、技術的には大丈夫だろうけれども費用が随分かかり過ぎるんじゃないかという実は専門家の御論議もあるわけでございます。そういう中で、果たして油の回収船だけにそうした対応を必要とするのかどうか、もっと多目的な意味での油の回収船を兼ねたそうした対応が必要になってくるんではないか、そういう点も今後の御論議の中で検討していきたいというふうに思っております。  先生にもぜひひとつそういう意味での御支援もお願いしておきたいというふうに思います。
  99. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 沓掛哲男君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  100. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成九年度一般会計予算平成九年度特別会計予算平成九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、沓掛哲男君の質疑を行います。沓掛哲男君。
  101. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 では、これから財政再建と日本経済の再建とのかかわりについて述べてみたいと思います。  財政再建のもとで、日本経済を再建するには経済にかかわる人たちにやる気を起こしてもらうことが何よりも効果的であります。そのためには、規制緩和、税制改革、技術革新のための基礎研究等を強力に推進するとともに、これらを円滑に進めるための選別的な公共事業の執行も重要であります。  まず、これらの財政再建を支える施策について三点質問したいと思います。  第一点は、まず税制についてであります。  増税なき財政再建は、財政再建にかける橋本内閣の決意を示し、国民からも理解しやすいものです。しかし、増税しないで税収をふやす方法、例えば不公平税制の改正等については積極的に取り組んでいただきたいと思います。  一例を挙げれば、我が国の企業数は平成七年で二百四十万社ですが、赤字企業がその六五%です。企業が三つあればその二つは赤字で、法人税は納めていません。資本金百億円以上の大企業は千五十二社ありますが、その三四%は赤字ですから、三社に一社は法人税を納めていません。国税等に会社名を聞きましたが、プライバシーか何か知りませんが、その百億以上の資本金の赤字会社は教えてくれませんでしたので、私の方で調べてみました。えっと驚くような大大会社がたくさんあります。ここにおられるみんなが毎週一回か月何回かお世話になっている大大会社もそこに入っていました。  法人税収はほぼ横ばいですが、企業数だけは着実にふえています。平成六年から七年にかけても三万五千社もふえています。企業が活動するためには多くの公的な資産や部門をも使用するわけですから、これらの使用料的な意味をも含めて、赤字でも一定規模以上の企業から、外形標準的ないろいろなやり方もあると思いますけれども、法人税にかわるべき税を取ることも検討してはいかがかと思いますが、大蔵省、いかがでしょうか。
  102. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 御答弁申し上げます。  赤字法人につきましての計数、御指摘のとおりでございますが、このところの経済の不況のもとにおける損失が重なっておりまして、黒字が出た際にもそれが繰り越してきて赤字となってくるというようなことで、最近この比率が非常に高くなっているということは御指摘のとおりでございます。  この点につきましては、政府税調でも大きな問題であるとして議論の対象になっておりまして、今後とも議論を続けていきたいと思っておりますが、いわゆる国の税金である、法人所得課税である法人税の世界でこれに対応することがなかなか難しい問題がございます。現在地方税で所得がなくても課税される部分があるといったようなこととの関係等々を含めて、赤字法人課税がどういう問題を持っておるのか、なお詰めていきたいと思っております。  なお、その際に、法人税の課税ベースが適正でないがゆえにそうなっているという面もあろうかと思いますので、この点も勉強してまいりたいと思っております。
  103. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 ぜひ検討していただきたいと思います。  銀座を歩くと本当に立派な大会社があって、その社長室に入ったことはありませんけれども、すばらしい社長室で立派な給料もいただいているんだと思います。そういうところが全然法人税を、ほかのはいろいろ納めて、法人税を納めていないというのには非常に矛盾を感じます。固有名詞を挙げるとまた問題ですから挙げませんけれども、本当に皆さん、ああ何だというふうな気持ちになる会社がたくさんあります。ですから、ストレートでなくてもひとつぜひ検討していただきたいと思います。  では次に、技術革新のための基礎研究を充実させるための施策についてお尋ねします。  これは、私自身、国立研究所に五年いた体験に基づいて、私も一生懸命これを進めるためにやってきたものですから、聞いていただきたいと思います。  科学技術部門の研究は、基礎研究、開発研究、応用研究に大別されます。我が国では、基礎研究の成果を活用して製品化する開発、応用研究は世界のトップに位置します。しかし、肝心の基礎研究はアメリカに比べてはるかにおくれています。それは、開発、応用研究の主体は民間部門にあり、基礎研究の主体は公的部門にあるからだとも思います。  そこで、基礎研究を充実させるため、昨年閣議決定された科学技術基本計画で、大学や国の研究機関での研究者が発明等により特許権を取った場合、従来は国のみに一〇〇%帰属されていましたが、これからは国が二分の一、発明者が二分の一特許権の権利を持てること、また発明者はその発明を生かした製品をつくるために民間の研究者と一体となって応用、開発研究ができることが決められています。この基礎研究への施策とベンチャービジネス育成の施策が一体となってこれからの我が国の産業経済発展の基盤となるものと期待しています。この制度の実施のためには、各省庁関係法令の改正等の手続をとる必要があります。既に科学技術庁、通産省ではその必要な措置が講じられています。  そこで、関係省庁での手続の進みぐあいについてお尋ねします。最初に、多数の研究者等がおられる大学等を所管しています文部大臣に、次に、取りまとめておられる科学技術庁長官から、他省庁の進みぐあいやその促進策についてお願いいたします。
  104. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 基礎研究の重要なことは、先生御指摘のとおりであります。  国立学校、国立大学等の教員が行う研究に係る特許につきましては、昭和五十二年の学術審議会の答申に基づきまして、昭和五十三年に学術国際局長会計課長通知に基づいて行われているところであります。現在、国立大学の教官の特許については、国から特別の経費や国により特別の研究目的のために設置された特殊な研究設備を使用して得た研究成果は国に帰属することになっておりますが、原則として研究を行った教員に帰属することとなっており、実態につきましても、平成八年度の状況を見ますと、約九〇%が発明者に帰属し、国が承継したものは約一〇%と、こういう現状になっております。
  105. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 委員から今いろいろ科学技術関係につきましてお尋ねがあったわけでありますが、先生は過去そういった分野で大変御造詣が深いわけでございます。  そこで、我が国は、御案内のとおり資源の八割を海外からの輸入に頼っている国でございますので、これから二十一世紀へ向かいまして科学技術創造立国を目指すためには、先ほど先生がおっしゃられたとおり、基本計画に基づきまして、新産業の創出等の社会的、経済的ニーズに対応した研究開発を進めると同時に、御指摘のような基礎研究を特に推進する必要があると思います。そのため、同計画に示されましたいろいろな新しい研究開発システムの構築のための制度改革に努めていかなければならないと思っております。  そこで、具体的な制度改革の内容について申し上げたいと思いますが、今も文部大臣からお話がありましたように、私たち、国立試験研究機関等の研究者に対する任期制の導入、国の研究者が民間等の研究活動に参画するための兼業許可の円滑化の問題、それからさらに研究者にインセンティブを与え研究成果の活用を促進するための特許権等、先ほどもお話がありました特許権等の研究者個人への帰属、さらに国と民間の共同研究を促進するための規程の整備、また外部評価制度の導入等による厳正な評価の実施などでありまして、その一部につきましては当庁を初め関係省庁で先ほどもお話がありましたとおり実施に移しているところでございます。  したがいまして、今後とも、科学技術振興全般につきまして責任ある私としましては、先ほどの御指摘のとおり、約二十省ぐらいの関係省庁があるわけでございまして、大学さらに民間の研究機関等とも密接に連絡をとりながら、これから制度改革を含めて一層の科学技術振興のために努力してまいりたいと思っておりますし、世界の国々におくれをとらないように、世界のフロントランナーになるつもりでこれからも気を引き締めて頑張ってまいりたい、このように思います。
  106. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 もう一問質問したかったんですが、時間の関係で次に飛ばさせていただきます。  今までお尋ねしたのは財政改革の支援策でしたが、これから財政改革についてお尋ねします。  まず、予算の歳出面では、多い順から社会保障、公共事業、文教・科学技術、防衛等でありますので、歳出削減となると社会保障と公共事業がいつもやり玉にされておりますが、今回は抜本改革ですから、まず第一に聖域を設けないこと、第二に、それぞれの事業の創設の原点に戻って見直し、時代変化に的確に対応しているか、特に肥大化部分の削減を強力に進めていただきたいと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  107. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 御説のとおりでございます。  原点に戻ってやることも当然、同時に、任務が終わっておるのか終わっていないのかという分析も極めて重要でございます。聖域なしとは、まさにすべての分野について原点を踏まえ、その後の経過を踏まえ、その後の実績を踏まえ、社会的ニーズ、国家的ニーズを踏まえて決めていくことになろうと思います。
  108. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 そこで、例を公共事業にとってみたいと思います。  一番古く公共事業の概念をまとめているのはアダム・スミスの、「公共事業」とは、「社会にとって大いに有用であるが、その性質上その利潤が個人又は少数の個人に対してその経費を償うに足らないため、個人又は少数の個人がそれを作り、又は維持するとは考えることのできないものを、作り且つ維持することである。」となっております。その後、公益的なものが入り、さらに福祉的な観点からのものも入ってきたというふうに思います。  私も、役所におりまして、経済企画庁にいたとき、山村豪雪センター等をとるときには「公共」という二字をどこかへくっつけなきゃだめだというので、一生懸命に勉強したのがこのスミスの出てきた根拠でもあります。  そこで、公共事業の見直しに当たっては、省庁別ではなくて個々の事業別に着目して、その事業創設の原点に戻り、その後の時代変化に的確に対応してきたか、また今後の必要性について検討の上総合的に判断していただきたい。それから二番目に、実施する事業についても市場原理を生かすことができる部分には極力民間資金等の活用を図るようにしていただきたいと思います。その他、公共事業のコストダウンについては最大の努力が必要ですが、一挙には下がりにくい分野です。それは、付加価値部分が少なく資材や労働力や機械等の費用が大部分ですから、各分野でのコストダウンを持続することによって確実に効果が上がると思います。  さて、財政改革においてはそれぞれの事業に対する適正な評価が大切であり、基本であると思います。にもかかわらず、公共事業に対する極めて不適切な評価を昨年の経済白書が行っていますので、それについて一言述べてみたいと思います。  私は四十年から二年間経済企画庁でお世話になりました。そして、輪講を通じて初めて経済白書を知りました。大変立派な本ですし、現在も白書の中では一番信頼され、一番多く読まれていると思います。昨年の経済白書の百五十ページですけれども、まずこう書いてあるんですよ。  公共投資の拡大は、九三年から九四年にかけてGDP成長率を一%ポイント程度押し上げる効果があったとみられる。これは、九二年度から九三年度にかけて公共投資が一五%前後増加したことと対応しており、公共投資のGDPに占めるシェアが八%程度であったことを勘案すると、九〇年代においては、公共投資自身の需要としての効果が主体であり、公共投資はそれ自体の成長率押上げ効果から景気を下支えしたものの、民間需要に対する波及効果はバブル崩壊等の影響により相殺されて顕在化しなかったとみられる。 と書いてありますが、これは何を意図しているのでしょうか。事務当局で結構ですから、経済企画庁、説明してください。
  109. 中名生隆

    政府委員(中名生隆君) お答え申し上げます。  昨年度の年次経済報告書では、委員が今御指摘になりましたような記述をいたしております。  それで、昨年度の年次経済報告書いわゆる経済白書でこの問題を取り上げました趣旨と申しますのは、いわゆるバブル崩壊後の景気が停滞している局面におきまして、政府は五十兆円、あるいは九五年度の対策まで含めれば事業規模で六十兆円を超える景気浮揚策をとってまいりました。その中で非常に大きな割合というのは公共事業の追加ということだったわけであります。  それにもかかわらず、九二年度、三年度、四年度と三年連続して実質成長率が一%に満たないという状況がありまして、政府の対策というのが果たして効果があったのかどうかということが巷間いろいろ議論をされたわけであります。また、経済学の世界でも、公共投資自身は効果があるけれども、かつてのケインズ経済学で言われるような民間需要を引き上げる、そういう効果がなくなっているのではないか、そういう議論もあったわけであります。  それで、経済白書の中ではまずその点を検討いたしまして、金利や為替レートを通じて民間需要を逆に抑える、そういうことは九〇年代においても日本経済では見られなかったということを言っているわけであります。しかし、どうして民間需要が盛り上がらなかったかという点については、これはその時期の企業のバランスシートが悪かった、そういうことから本来の効果が相殺をされてしまって顕在化しなかったということを言っている、こういうことでございます。  それからもう一つ……
  110. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 いいよ、それは局長。  意図していろいろなことをやろうとしたことを私は反対しているのじゃなくて、ここに書いてあることが間違っているから私は指摘しているんです。  九二年度から九三年度にわたって公共事業が一五%ふえたというんでしょう。そして、公共事業のGDPに対するシェアが八%でしょう。ですから、一・二%のGDP相当額のお金が公共投資されたわけでしょう。それに比べてGDPが一%から上がらないというのはどういうことですか。公共投資はそれ自体、仮に一兆二千億投資すれば最低一兆二千億GDPを押し上げ、それから波及効果として何千億かがプラスになるんでしょう。それなのに一%ですと、一兆円しかGDPを押し上げないというと、一兆二千億の公共投資をしてGDPは一兆円しか押し上げないといったら、二千億はどこへ飛んで消えていったんですか。これはあなた方のこのデータが間違っている、考え方が間違っているんですよ。  そこで、きょうこれを持ってきたからちょっと見てください。(図表掲示)  正確にこの文章を読むと、九三年度は九二年度に比べて公共事業が一五%ふえたんです。数字がふえました。そして、今検討しているのは九三年の、度ではありませんよ、九三年のGDPと九四年のGDPを比較して、公共事業を一五%ふやしたのにGDPは一%しかふえていないというんですが、このふえた公共事業は、九三年には九カ月影響を及ぼし、それから九四年には三カ月しか影響を及ぼしていないんです。そして、九四年度というのは公共事業は減っているんです。したがって、九三年に比べて九四年にそんなに上がるわけがないんですよ。  それを、あなた方がやりたいと言うのなら、九三年の公共事業を見つけ、そして九四年の公共事業費を見つけて、その比率でやるべきなんです。その比率はそんなに、一五なんか全然ありません。ここは下がっているんですから。そういうミスを犯した上でこういうデータをつくり、そして断定的なことを言っているから私は文句を言っているんですよ。  そして、その次にもう一つ、徹頭徹尾合っているんですよね、この書き方は。今の同じページの下から四行目です。   また、財政政策の中長期的な効果についても検討する必要がある。財政支出のなかでも公共投資は産業活動の基盤を提供し、経済活動が効率的に行われるようになることから、民間部門の生産性を上昇させて経済の中期的な成長力を高める効果を有するとされている。これを公共投資の生産力効果と呼ぶが、こうした生産力効果を推計してみると、七〇年代後半以降、下がってきているとみられる。ただし、八〇年代には小幅な云々と。  ともかく、公共投資には需要創出効果と生産力拡大効果があるんですよ。そして、その需要創出効果については、あなた方の間違ったデータの取り入れ方で、ないということを断言している。そして、今度は生産力効果についてもどんどんどんどん下がっていったと言っているんですよ。それは下がりますよ。どういうものだってだんだん豊かになれば限界生産力は下がっていく。  そのほかに公共事業にはこういうことがあることをあなた方は見落としているんですよ。公共事業のシェア、例えば建設省だけのデータによると、昭和四十年、建設省のシェアの六九%を道路が占めていました。そして、現在は四一%です。二八%はどこへ行ったかというと下水道と住宅なんです。下水道と住宅をしたからといってすぐ生産力効果が上がるものではないんですよ。  ですから、福祉が上がる、生活水準が上がる、そういう別の指標と経済のこれとあわせて公共事業の効果を見るべきなんです。
  111. 中名生隆

    政府委員(中名生隆君) ただいま委員から二点御指摘がございましたので、お答えを申し上げます。  第一点は、短期的な需要効果の面でありますが、これについてはある意味では昨年度の経済白書がわかりにくい表現であったということは反省をいたしております。  もうちょっと詳しく申し上げますと、委員が今一五%の伸びで公共投資の規模が八%というふうにおっしゃいましたけれども、ここでは九二年、九三年に一五%の伸びをした。それから平常状態といいますか八〇年代の後半には二%程度の公共投資の伸びであった。したがってその差額の一三%分の効果というのを見ているということでありまして、十三掛ける八でありますから約一%ということで、公共投資を出しただけのものというのは景気の下支えをしたということを申し上げているわけでございます。  それから、第二点の生産力効果の点については、これはまさに委員がおっしゃったとおり、どうして下がっているかということにつきましては、社会資本整備が進んでまいりますと限界的な効果が小さくなる、あるいは公園とか下水道というように生活関連の投資については直接の生産力効果にはなりにくい、それはまさに御指摘のとおりだというふうに思っております。
  112. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 最後に、赤から青になるまでちょっとお願いします。  それで、公共投資の道路事業などについても、例えば二千五百億円有料道路政策に入れるとしても、建設費は一兆一千七百億円やると地方及び国の税金というのは二兆七千億も上がってくるんですよ。  それからまた、せっかく図面をかいてきだから三十秒だけ。一図表掲示一  例えば、ことしの高速道路の最大の課題というのは、郡山から新潟の県境の二十二キロの道路が供用されます。これをすると日本の大改革が起こるんですよ。それは、郡山から日本海を通して関西へ行くルートと関東を通じて行くのがありますが、こちらへ行く方が今度は短縮されるんです、約六十キロほど。時間短縮もすごいので、そうすることによって日本全体のいろいろ流通その他を通じての活性化が図られます。そういうような具体的な例をぜひ皆さんに理解していただきたいと思いましたが、残念ながら時間が十分ないので、これで終わります。  どうもありがとうございました。
  113. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で沓掛哲男君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  114. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、浜四津敏子君の質疑を行います。浜四津敏子君。
  115. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 平成会の浜四津でございます。  本日は、官民格差、官業癒着あるいは官尊民卑などと言われる官と民についてを主たるテーマとして質問いたします。  まず、野村証券の証券取引法違反等の疑惑事件について伺います。  証券取引等監視委員会が設置されておりますけれども、その設置の経緯、目的、そしてこの委員会に課せられた役割、責任を説明してください。
  116. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) お答え申し上げます。  証券取引等監視委員会は、平成三年夏に一連の証券問題がございましたが、その際、行革審の方から「市場の公正性を確保する観点から、市場ルールの遵守状況を中立的・客観的な立場から監視する機能を充実・強化することが特に重要である。」という御指摘がございまして、そうした御指摘を踏まえまして平成四年に設置されたものでございます。  証券取引等監視委員会は、証券取引法等の法律の規定に基づきまして、証券会社等に対する検査、日常的な市場監視及び取引の公正を害する犯則事件の調査等を行っておるわけでございまして、これらの活動を通じまして市場の公正性、透明性を確保し、我が国証券市場等の健全な機能の発揮に貢献する、これが責務であると考えておる次第でございます。
  117. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 「証券取引等」という言葉になっておりますが、これは、証券市場を初めとして、金融市場全体の不正取引を監視することにその目的あるいは使命があったはずであります。  今回の野村証券の不祥事は野村証券の社内調査の結果判明した、こういうことでございます。証券取引等監視委員会の調査に余り時間がかかるので独自の調査をした結果判明した、こういうふうに報道されました。本来であれば、監視委員会が迅速に厳正に調査を進めて、その調査の結果を発表するのが当たり前ではないか、こう思います。  なぜこういう事態になったのか。そもそもなぜ今回の事件を事前に監視し、調査し、かつ防止できなかったのか。この事態になった経緯、背景、そして委員会としてどういう取り組みをしてこられたのかを御説明いただきたいと思います。
  118. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) お答えいたします。  証券取引等監視委員会は常日ごろからいろいろな市場の取引に関する情報収集また分析をいたしております。また、証券会社の検査等を通じまして証券市場を監視いたしておるわけでございます。  証券取引につきましては、日々膨大な取引が行われておるわけでございまして、そういう取引の中にやや不自然かなと思われるようなものをピックアップいたしまして、それについてより深い審査を行う、こういったものが年間二百件ぐらいございます。また、証券会社の検査につきましても百社程度についてその検査を行っておるわけでございます。  日々こういった監視、検査をいろいろ行っておるわけでございまして、こういう中で不自然ないしは違法性、不当なものがあるのではないかと言われるような取引などがございましたら、それについてさらに深度ある調査を行う、要すれば資料、情報をさらに収集する、さらにはまた必要であれば関係者からの事情を聞くといったようなことで活動をいたしておるわけでございます。  個別具体的な事案について具体的に言及することについては差し控えさせていただきたいと思うわけでございますけれども、ただいまお尋ねの野村証券の件につきましては、昨年の夏ごろから何か取引に不自然なものがあるというふうに我々はいろんな情報収集の中で考え、感じたわけでございまして、そういうものをどういうものかということの事実を解明するということで、その後さらなる資料、情報の収集に努めてまいりました。さらにまた、必要に応じて関係者からの事情を聞くといったようなことで実態の解明に努めておったわけでございます。  そういった中におきまして、我々としては理解できないといいますか不自然なものについての疑念というのをかなり深めるに至りまして、さらなる深度ある調査を進めてまいったわけでございます。そういった過程において、現在事実関係を解明しておるというところでございます。そういった中で、今回野村証券がああいった発表をしたものと理解をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、我々はこれからさらに事実関係について解明に努めまして、法の手続に従って厳正に対処してまいる所存でございます。
  119. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 監視委員会が十分に監視していなかった結果だ、あるいは十分に機能していなかったと、こういうふうに言われても仕方がないのではないかと思います。  ところで、野村証券は総会屋に利益供与していたことを認め、みずから公表いたしました。なぜ総会屋に利益供与をしたのか、その裏には何があったのか、総会屋とどういうつながりがあったのかなとについて監視委員会としては調査し、掌握しているでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  120. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) 先ほど御答弁させていただきましたように、野村証券の一部取引について不審なものがあるということで事実解明に努めておるわけでございます。そういった中において、元総会屋と言われるようなところへの一定の利益供与があるのではないかといったようなことも含めまして、我々事実解明に現在努めておるところでございまして、まだその解明を完全に終えているわけでございません。現在、その調査を鋭意行って、一刻も早い事実解明に努める、そういうことでやっておるところでございます。
  121. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 今後、迅速にしっかり調査して、またこれは国民のための監視あるいは調査ですから、情報を秘匿しないでその結果を公開するように求めます。  ところで、政府は、金融監督庁を新たに設置するため今国会に法案を提出する予定である、こう聞いております。金融監督庁をなぜ設置するのか、その目的、必要性、そして権限、責任、規模について御説明ください。
  122. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 金融監督庁、仮称でございますが、この設立準備会の準備委員長を務めておりますので、私からお答えを申し上げます。  今般の金融行政機構改革案は、金融行政に対し国民の皆様方からいただいた批判を重く受けとめ、与党内における議論を踏まえ、民間金融機関等に対する検査・監督という執行面の機能総理府設置の金融監督庁が担い、いわゆる企画立案という政策面での機能を大蔵省が分担する、それぞれ相互に牽制し合い、緊張し合う、そういう機構を通じまして、市場規律を基軸とした透明かつ公正な金融行政への転換に資することの趣旨によって設立されるものであります。
  123. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 証券取引等監視委員会も、今言われたほぼ同じ目的で同じような説明のもとに設置されたものと理解しております。  この証券取引等監視委員会、今ある委員会と金融監督庁との違いとかあるいは関係についていま一つ余り明確ではないんですが、いずれにしても官が業を監督する機関を幾らつくっても、官業癒着、あるいは情報を開示しない、あるいは国民に背を向けた姿勢が抜本的に改まらない限り機能しない、意味がないと、こういうふうに思っております。  また、先ほど規模についてお答えありませんでしたけれども、三百人規模と伺っております。証券取引等監視委員会は現在九十人、この九十人を三百人に拡大する。これは行革に反するのではないかという批判がありますけれども、大臣、いかがですか。
  124. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 金融監督庁は、証券取引等監視委員会が現在の体制のまま移管をされることとなるほか、現在大蔵省が担われている民間金融機関等の検査を含む監督の機能を移すわけであります。ですから、今までの証券取引等監視委員会は九十一名の定員であります。それに、今大蔵省の官房の金融検査部は百五十名、検査部門だけでおいでになります。それから、証券局、銀行局はこれからも企画と立案はいたしてまいりますが、そのうちの監督権限は新しい機構に移るわけであります。  そういうことをあれこれ考え、今までどちらかというと、よく言われるように護送船団方式というか、日本の経済が青壮年期の向上、拡大の一途をたどる間においてはそれほど矛盾を発見しないで済んだわけでありますが、一昨年来、金融の不祥事件、特に住専その他において大蔵省の計画立案あるいは検査・監督機能、こういうものに対する疑問が呈されて、いわば今までの計画立案、それと検査・監督機能が一緒に大蔵省の中にあってはもうとてもうまいぐあいにはいかないだろう、そういう大変な不信が今回の金融監督庁の発足をするいわば動機になったことは御案内のとおりであります。  そういうものを踏まえて、これから多岐にわたる金融行政のいわば検査・監督、これを行う場合、委員今おっしゃられる簡素化というか行政効果、必ずしも小さいことが国民のためになることではない分野もあるわけであります。ですから、この分野でまだまだその定員等については決定をいたしておりませんが、少なくともこの金融監督庁の責任というのは、証券の検査の部門を今まで除いておりますが、この検査の部門も、それから監督、監視の部門も、そして新たに金融機関全般のものでありますから、私はそんな小規模なものでできるはずがない。例えばアメリカなんかは、OCCというのは二千四百名も、もちろん金融の組織自体が違いますけれども。  それにしても、国民の預貯金者あるいは金融その他の機関の不正やあるいは適正な運営、こういうものに対して監視、監督をいたしながら指導をしてまいったわけであります。こういうことを考えますれば、こういうものは早く機能的に権限も強く指導監督、検査ができること、監査ができることがこれからの国民の利益につながるものでありますから、ぜひとも立派なものを皆さん方で生み出してほしい、このように考えます。
  125. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 この三百人の大半は大蔵省出身者で構成されると伺っております。本当にこういう体制で監視、監督の実を上げられるのかどうか危惧があると思いますけれども、この点につきましてはまた改めて議論させていただきたいと思います。  ところで、アメリカでは個人が資産として株式を持つというのは非常に一般的であります。日本では個人投資家というのはごく限られた人たちで一般的ではないと言われておりますが、この違いはどこから来ているとお考えか、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  126. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) お答え申し上げます。  アメリカと日本の個人投資家層の厚みの違いにつきましてはいろいろな指摘がなされております。一つ大きなことでよく言われますのが、国民性といいますと少し大きな言葉に過ぎるかもしれませんけれども、日本の場合には個人の金融資産の選択におきまして安全性とか流動性とかを重視する傾向が強い、したがって預金に対する選好が非常に強いということが言われることがございます。  また、市場の構造の点におきましては、我が国におきましてはかなり広範に企業間における株式の持ち合いという構造がございまして、その中で、アメリカでは認められておりませんけれども、日本においては金融機関による株式の保有が認められておる、そういったことが日本の株主構造におきまして金融法人を初めとする事業法人の持ち株比率が高いという結果をもたらしておるのではないか、あるいは企業の配当政策等々におきまして、その株主、特に個人株主に対する気配りというものがどうであったか、そういったことが個人の株式市場への参加といったものに影響してはいないか、もろもろの御指摘があるところでございます。
  127. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 私は、日本で個人投資家がふえない、一般化しない大きな原因の一つ国民の証券会社に対する不信感がある、それが原因の一つであるというふうに思っております。  今回の野村証券の事件でもわかるように、結局、証券会社というのは自社の利益、それから大口のお得意先、企業の方しか向いていない、いざとなると小口の個人投資家というのは損をさせられる、だから株に手を出すのは危険だ、こういう根強い不信感が広く国民の間にある、これが大きな原因であると思います。この証券会社の体質が改まらない限り市場に幅広い個人投資家は入っていかない。その結果、株式市場も萎縮して、また国民にとってはそれだけ資産選択が狭められている。そういう意味で不幸なことだというふうに思います。  こうした証券会社の姿勢国民の証券会社に対する不信感を大蔵省としてはどう認識しておられますか。
  128. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 御指摘のいわば株式市場における仲介者としての証券会社というものが国民にとりましての株式投資におきます第一の接点でございますから、その仲介者が投資家から見て信頼に足るものであるということは、個人の投資家の株式市場への参加のためには大切な要素であろうと思いますし、御指摘の点は、私ども行政といたしましても、またそれに当たります証券業界としても心しておかなければいけないことであろうと考えます。
  129. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 アメリカで多くの国民が安心して株式に投資できるもう一つの理由としては、アメリカのSEC、証券取引監視委員会は非常に厳しいルールのもとに業界の不正取引を監視しております。公正、迅速、透明な監視をして、そして情報も公開すると。その本来の使命を十分に果たしている、だから国民も安心して取引ができると、この点が大きく違うと思います。  このSECと同じ名前のものを日本はつくったわけですけれども、今回の野村証券の不祥事でも明らかなように、十分な監視・監督機能を果たしていたのかどうか疑問がある、こういうことがもう一つの大きな理由として挙げられると思います。  ところで、証券会社、そしてその関係団体、業界団体に大蔵省出身者は現在何人在職しておられますか。
  130. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 本省の課長相当職以上であった者で人事院の承認を受けて証券会社に再就職しておる者は七人でございます。また、証券業協会及び証券取引所に就職している者は、証券業協会三人、証券取引所、日本じゅう合わせまして八人でございます。
  131. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 やはり長年にわたって恒常的に監督官庁である大蔵省からこういう証券会社に天下っていく。ですから、国民から見ますと、どう見てもこれは官と業の癒着が生まれても不思議はない、こういう疑惑を持たれるわけであります。  次に、変額保険について質問いたします。  これまでにも何度も国会でこの変額保険については取り上げられてまいりましたので、問題点は既にほとんど指摘され、議論し尽くされてまいりました。  変額保険は、バブル期に相続税対策として、主として土地を持っている高齢者、年金生活者、あるいは収入がない、他に資産がなくても土地だけ持っている、こういう高齢者を主としてターゲットにして、一銭も手元から出す必要がない相続税対策、こう称して、一億とか二億あるいは多い人は五億、こういう巨額のお金を全部銀行が金を貸し出して、そして保険料を一括払わせて、保険会社がそれを運用し、巨額の損失分を全部契約者に押しつける、こういう保険であります。この巨額の負債を抱えさせられた高齢者の人たちが、これは話が違うではないか、こういうことで多数の訴訟になっていることは御承知のとおりです。自殺者まで出ております。  ところで、大蔵省が変額保険を認可して昭和六十一年十月から発売されたわけですけれども、大蔵省がこの保険を認可した理由と背景、経緯を簡単に説明してください。
  132. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 保険部長の福田でございます。  変額保険についてのお尋ねでございますが、変額保険につきましては我が国より早く欧米各国で既に販売されていた商品でございます。また他方で、我が国におきましても、いわゆる消費者の金利選好の高まりとか生存保障ニーズの増大などを背景といたしまして昭和四十年代から既に議論されたところでございまして、委員御指摘のとおり、昭和六十年五月の保険審議会答申を受けまして六十一年十月から販売されたわけでございます。  商品の性格につきましては、消費者にとりまして御自分の契約に対応する資産の運用成果を直接的に保険金額や解約払い戻し金額に反映させたいというニーズに対応したものでございまして、その仕組みといたしましては保険数理に基づいております。また、死亡保障のために一定額の保険料を収受いたしておりまして、死亡した場合については一定額の基本保険金額を最低保証することに加え、一部保険金額を運用実績に基づいて変動させるという保険でございます。  商品の性格について申し上げたわけでございますが、変額保険につきましては、従来のいわゆる定額の保険とは異なる面もございますので、保険審議会答申を踏まえまして、変額保険についての分離勘定の設置あるいは資産評価の方法、ディスクロージャー、募集体制等について所要の措置を講じた上で販売を認めたところでございます。  以上申し上げましたように、大蔵省といたしましては、消費者ニーズに対応した保険商品として、募集上十分な注意を払えば他の定額保険と比べても商品内容としてそのこと自体に問題はないものと考えております。  いずれにしましても、保険会社に対する国民の信頼が損なわれないように業務運営につきましては適切に指導してまいる所存でございます。
  133. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 大蔵省保険第一課の中に変額保険研究会を設置したのはいつですか。
  134. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 恐縮でございますが、ちょっとその変額保険研究会というものについては承知しておりません。
  135. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 大蔵省保険第一課変額保険研究会監修ということでパンフを発刊しているのではないですか。
  136. 福田誠

    政府委員(福田誠君) そのようなものは設置しておらないと思っております。
  137. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 もう一度確認いたします。私は、経緯、背景の中で当然お答えいただけるものと思って聞いていたんですけれども、一言もないのであえて伺ったわけです。  この国会の中でかつて議論があったときに、これは大蔵省の方がこう答えて、大蔵省の方かその辺は明確ではありませんが、いずれにしても大蔵省保険第一課内変額保険研究会監修の変額保険ガイドというのを業界に配ったと、これをお認めになっているんじゃないですか。
  138. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 失礼いたしました。ちょっと誤解いたしておりまして、研究会、いわゆる正式の審議会とかそういう類似のものとしてはないということで申し上げましたが、変額保険についてのガイドブックのようなものを今御指摘の名前で作成したことはございます。
  139. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 その研究会があったかどうかについてもう一度確認いたします。
  140. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 正式なものとしての研究会については、そういうものがあったとは承知しておりません。
  141. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 それでは、もう一度伺います。変額保険研究会というのはあったんですかなかったんですか。
  142. 福田誠

    政府委員(福田誠君) ちょっとその実物を私自身拝見したことはございませんが、いわゆる正式の研究会というようなものはなかったと存じます。ただ、。パンフレットのようなものを作成したのではないかと、ちょっとそこは確認をさせていただきたいと存じます。
  143. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 その詳細について後ほど御報告いだだければと思います。  いずれにいたしましても、こういうガイドブックを発刊したり、先ほども御答弁がありましたけれども、約二十年間も議論してきたと。ですから、大蔵省としては、この変額保険の仕組みもあるいは危険性も、顧客がこうむる損害の可能性、保険会社には損害はない、こういったことは議論し尽くされ、熟知していたわけですね。
  144. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 先ほど簡単に御説明申し上げましたが、六十一年の十月から本商品が販売されておりますが、変額保険の発売に際しましては当局におきまして通達を発出しております。六十一年七月十日でございますが、その内容としては、将来の運用成績についての断定的判断を提供する行為とか、変額保険が経理されております特別勘定の運用成績について、募集人が恣意的に過去の特定期間を取り上げ、それによって将来を予測する行為、あるいは保険金額、解約返戻金額を保証する行為などを募集上の具体的禁止行為として示し、健全な募集の徹底を指導したところでございます。  その後、バブル経済の崩壊以後、変額保険を解約した場合の解約返戻金が払込保険料を下回るようになったためにトラブルが発生したわけでございますが、そのために平成三年九月には保険料ローン契約を伴う変額保険の販売につきまして保険本来の趣旨から外れた取り扱いがなされることがないよう改めて指導したところでございます。  さらに、多数の訴訟が提起されていることにかんがみまして、当局といたしましては、行政庁としての制約の中ではございますが、昨年の十月と十一月に次のような対応を行っております。すなわち、各生命保険会社、銀行に対しまして、契約者及び債務者から相談、苦情が寄せられた場合には適切な対応を行うよう指導したところでございます。さらに、生命保険協会、銀行協会及び個別会社、銀行に対しまして、相談・苦情処理体制の充実強化について要請する通達を発出したところでございます。
  145. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 通達を出せばいいというものではありませんで、その通達が守られているのかどうかきちんと監視して、守られていなければ効果的な指導をする、それでなければこれは十分な指導をしたとは言えないのではないかと思います。  いずれにしても、今の御説明では要するに業界、業者に対して変額保険の危険性については顧客に十分に説明しなさいと、こういう業者に対して指導したと。しかし、国民に対しては何にも知らせようとはされなかったんじゃないですか。
  146. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 先ほど申し上げたわけでございますが、変額保険というものも保険商品の一つでございますので、先ほど申し上げた通達によりまして、保険会社に募集体制上問題のないよう対処するようにという指導を常々行ってきたわけでございます。
  147. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 次に進みます。  答弁の中で、欧米各国で当時既に変額保険が実施されていた、特にアメリカやイギリスにおいて堅調な推移を示している、そういう状況だったと。だから日本でも認可したんだという旨の答弁をこれまでもされておりますけれども、この変額保険、確かにアメリカでも現在も人気のある、そして信頼の置ける商品として健在しております。日本のようなトラブルはほとんどない、全くないと言ってもいいほどであります。  なぜアメリカではトラブルがないのか、むしろ国民の皆様に好まれているのか。それは、名前は変額保険と同じでも仕組みが違うからではないですか。アメリカの変額保険と日本の変額保険の仕組みの大きな違いがどこにあるのか、大蔵省としては認識していますか。
  148. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 変額保険につきましてはいろいろなタイプがございます。大きく三つあるようでございますが、アメリカの場合は運用により当初の予定より増加した責任準備金の差額を一時払い保険料に充てて購入し得る分だけ保険金額を増額するタイプ、配当による保険買い増しの考え方で構成されているものと承知しております。
  149. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 そうではなくて、アメリカ政府はこの変額保険を証券法やあるいは証券取引法の厳しい規制を受ける証券と位置づけたわけです。証券としての厳しい規制のもとに売り出したわけですけれども、日本は証券ではなくて保険と位置づけました。  アメリカではなぜ証券として位置づけたのか。十分議論した大蔵省としてはそのことも十分調査し研究されたのでしょうから、アメリカが当時導入のときに保険業界からの強力な要請があった、いわば圧力があったにもかかわらず保険ではなくて証券とした理由をどのように理解しておられたのか、御説明ください。
  150. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 米国におきましては、原則としては保険商品は連邦証券法の適用除外となっておりますが、変額保険につきましては投資リスクが保険契約者に帰属するといった理由等から、一九五九年の連邦最高裁の判決によりまして証券関係商法の規制の対象となったものと承知しております。  ただし、米国の連邦証券関係商法におきましては、対象となる証券の範囲を例えば単なる証拠証券等も含む幅広い概念で規定しておりますが、日本におきましては証券取引法の対象となります証券の範囲は有価証券に限定されているというようなことが違いではないかと存じます。
  151. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 これはアメリカの証券取引委員会の方の発言ですけれども、こう述べておられます。これはテレビでも報道されました。  アメリカではなぜ証券なのかというと、変額保険の場合、投資によるリスクを生命保険会社ではなくて個人の契約者が負います、この投資によるリスクを個人契約者に負わせるということは、証券が持っている目的と同じだと、こういうふうに最高裁と証券取引委員会が認定したからです。  そしてまた、アメリカでは、変額保険を導入する際に、精力的にSECがヒアリングを重ねた後にこういう認定を下しました。変額保険は投資商品の性格を持っている、したがって証券と位置づけられる、この商品を大衆に売る場合には証券法によりSECに対しその商品とセールスマンの登録を行わなければならない、こういうふうに認定いたしました。こういう厳しい規制に加えまして、アメリカでは、保険会社に投資の内容などすべての情報を公開させる大変厳しいディスクロージャーの義務を負わせました。  個人契約者はアメリカでは自分の意思で投資先あるいは投資の中身を選べる、そういう仕組みです。日本の場合は、保険会社が一任勘定取引ができる、何に投資してどうなったのかというのが全く情報開示されていないのではないですか。
  152. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  変額保険の契約者に対するディスクロージャーでございますが、この点につきましては、資産運用実績によって保険金額が変動する、契約者の自己責任原則を前提とする商品でございますので、契約者保護の観点からディスクロージャーの徹底を図ることが重要でございます。このため、生命保険各社では、先ほど来申し上げました特別勘定の運用方針、運用実績のディスクロージャーを実施しているところでございます。  具体的には、特別勘定の運用実績等を月次で、また株式相場の動向や当面の運用の基本方針を四半期ごとにそれぞれ支社に備えつけておりますほか、契約者に対しましては、毎年、当該契約の保険金額の状況、過去一年間の保険金額の変動状況、解約返戻金等をディスクローズしているところでございます。
  153. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 要するに、結果をディスクローズさせる、事前には何も情報開示しないわけで、日本の保険契約者というのは要するに全部お任せしますと、こういう仕組みになっているわけです。  大蔵省の方もよく言葉として言われる大変危険な商品、ハイリターン・ハイリスクの商品。これはだれにとって危険かといいますと保険会社や銀行ではないんですね、一方的に個人にとってだけ危険な商品。こういう商品をなぜ保険として認可されたのか、もう一度お答えいただきたい。
  154. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 繰り返してございますが、この商品につきまして既に欧米諸国で発売されており、かつ当時の日本におきましても金利選好とか生存保障ニーズが増大してまいったということでございまして、保険審議会におきましてもその実現方の答申をいただいておりますし、たしか当時の国民生活審議会の答申あたりにも、早急にこういうものを実現するようにというような文言があったように記憶しております。  また、商品につきましても、これはあくまで保険数理に基づく生命保険でございまして、被保険者が死亡した場合には最低保証としての基本保険金額が支払われる商品でございます。また、かつ転々流通するものではございませんので、証取法の対象とする有価証券ではなく保険業法上の保険として認可しているものでございます。
  155. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 たびたび国民のニーズが当時あったとおっしゃいますけれども、日本の世帯の約九五%が何らかの生命保険に加入しているというふうに言われております。しかし、みずから進んで生命保険に加入したという世帯はほとんどないはずでございます。保険会社も、自分から進んで高額の保険に入るという者については危険人物だと、そういうのが日本の慣例といいますか伝統でございました。  ですから、国民のニーズニーズとおっしゃいますけれども、それは国民のニーズではなくて、当時、保険会社の成績を上げたい、銀行はあり余っている金の融資先を確保したい、そういう企業側のニーズだったんじゃないんですか。
  156. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  変額保険を認可したわけでございますが、一般的に保険商品の認可基準につきましては、契約の内容が契約者等の保護に欠けるおそれのないものであること、保険契約の内容に関し、特定の者に対して不当な差別的取り扱いをするものでないこと、内容が公序良俗に反するものでないこと等の基準で審査をいたしておりまして、これは昨年四月の新保険業法で明文化されておりますが、それ以前から商品審査についての基準は今申し上げた内容で対処いたしております。  そこで、変額保険につきましては、昭和六十年五月の保険審議会答申におきまして契約者保護の観点等から審議が行われ、認可に当たり具体的に講ずべき措置、商品のモデルについても示されたところでございまして、私どもとしてはこの審議会の答申を踏まえて変額保険の商品審査を行い、認可をしたものでございます。
  157. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 日本で証券として位置づけるとやはり不都合なことがあったから証券としなかったと、こう言わざるを得ないと思うんです。例えば証券取引法では、証券の取引について、つまり証券と位置づければ四十六条で取引態様の事前明示の義務が生じます。あるいは四十七条の二、取引概要等を記載した書面を交付しなければならない。また、四十八条で取引報告書を交付しなければならない。また、これは後で改正になってつけ加えられたものですけれども、第五十条は一任勘定取引を禁止しております。つまり、この変額保険の大きな特色の一つは一任勘定取引、こういうところにあります。  また、他国では見られない巨額な保険金を認めている、しかも一括融資を銀行に認めている。ほとんど無収入の人についても何億という金を貸し付ける、不動産さえ持っていれば貸し付ける。また、その巨額融資を自宅を担保に認めた、これが他国には見られない日本の変額保険の仕組みの大きな特色であると言えます。これらの特色すべてが共通しているのは、個人の契約者、消費者の利益、これをほとんど考えていない、これが大変大きな特色であると、こう言わざるを得ません。  この欠陥がある商品だからこそこれだけの巨額の被害が生じた。そして約六百件の訴訟が起きてきた。その元凶は認可にあったと言わざるを得ませんけれども、この欠陥商品を認可したという責任を感じておられますか。
  158. 福田誠

    政府委員(福田誠君) いろいろ現在起きておりますトラブルの事例は、主として保険料ローン、銀行の融資が関係するものと承知しております。バブル期におきまして、変額保険への加入に際して、一部に保険料ローンが利用されたことは事実でございます。  大蔵省としましては、昭和六十三年の五月に、保険料ローンに代表されるような、いわゆる財テク等の保険本来の趣旨を逸脱した提携を自粛するよう生命保険会社に対して要請しており、その後も引き続き指導趣旨を徹底してまいっております。  この指導趣旨からしますと、変額保険につきまして、専ら財テクを目的とし、保険本来の趣旨を逸脱した目的で加入が行われる場合につきまして、保険料ローンを生命保険会社と銀行等が提携して行うことは自粛されるべきことだと存じます。  なお、ただ一般論として申し上げれば、保険契約者がそれぞれの事情のもとで保険料を銀行借り入れで調達することもあり得るわけでございまして、保険料ローンそのものを一律に当局が禁止することは適当ではないのではないかと考えております。
  159. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 詳しい議論はまた後ほどさせていただきますが、もともと保険というのは、例えばここにいらっしゃる皆さんも、保険は確実な保証を意味する、そういうのが国民的な常識だったはずであります。私はちなみに国語辞典を引いてみました。どういうふうに書いてあるかといいますと、もちろん保険そのものの定義が載っております。それから、比喩的に使われる場合として確実な保証、これが日本における保険の意味なんですね。巨額な一億も二億も損をする結果になるような保険と名のつくもの、これは常識外だったわけであります。だからこそ、大変危険なもの、厳しい規制が必要だったはずであります。  いずれにいたしましても、六百件を超える訴訟が、そのうちの大半がまだ係属しているようでございますけれども、この裁判手続の中で、例えば裁判所から和解勧告がなされる、あるいは当事者間で和解の話し合いがなされる。ところが、そうした席で銀行や生命保険会社の側からこういう声が出されると聞いております。自分たちは和解したくても和解内容を大蔵省がチェックして認めてくれない、大蔵省に通らないから和解したくてもできない、こういう声があると伺っていますが、大蔵省はそういうことを指導していらっしゃるんですか。
  160. 福田誠

    政府委員(福田誠君) そのようなことは全くございません。
  161. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 わかりました。  それから、現在係争中の事件、つまりまだ裁判所で審理中の事件にもかかわらず、抵当権が設定されていますからその抵当権を実行する、競売の手続を進める、そういうケースがちらほら見られますけれども、この訴訟、昨年の最高裁でも保険会社の違法行為が認定されました。また、昨年末の横浜地裁でも、これは保険会社だけではなくて銀行の違法行為が全面的に認められました。つまり、銀行の社会的責任のみならず法的責任まで問われている。こういう段階で、裁判の決着がつくまでは競売手続を停止するのが望ましいのではないでしょうか。  確かに法律的には、理屈の上だけからいきますとこれは違法ではありませんけれども、今競売されてしまうと、ほとんどが自宅あるいは自営者の仕事場でございます。特にバブル期に相続税が払えない、自宅から追い出される、そういう不安の中で、その不安に駆り立てられてといいますか、それが利用された結果になったわけですけれども、自宅やあるいは自営業のその土地家屋を抵当に入れました。これが競落されてしまいますと、自宅から追い払われる、あるいは営業ができなくなる、こういう結果になるわけですけれども、この係争中の競売手続については大蔵省としてはどのような見解をお持ちですか。
  162. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  お尋ねの事例でございますが、これは変額保険の購入のために銀行から融資を受けた債務者に対しまして当該融資の保証を行っている保証会社が銀行に代位弁済を行っておりまして、当該保証会社が債権保全の観点から競売申し立てを行っているものではないかと承知しております。基本的には銀行、保証会社とその個人債務者との関係の問題でございますので、私法上の契約に関する問題として当事者間で解決すべきものでございまして、早期に相談が行われ解決されることが望ましいと考えております。  大蔵省としましては、銀行の業務の公共性にかんがみ、これまでも健全な融資態度の確立や審査管理の充実強化について指導したところでございますが、変額保険を初めとしまして銀行と個人債務者とのトラブルの状況を踏まえまして、各銀行に対しまして冒頭申し上げましたように苦情相談体制の充実強化を求めるとともに、協会、連合会に対しましても各地の銀行協会を指導するように要請したところでございます。  ただ、競売の申し立てそのものにつきましては、申し立てを行っておりますのが保証会社でございまして、申し立て自体は法的に許容されているものでございますし、大蔵省として保証会社に直接監督指導を及ぼす立場にございませんので、これを取り下げるよう指導すること自体は困難であることを御理解賜りたいと存じます。
  163. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 保証会社と契約者との関係だと、こうおつしゃいますけれども、保証会社というのはほとんど銀行と密接な関係にあるわけで、銀行と契約をすれば特定の保証会社がそこにくっついてくる、そういう関係にありますから、これはぜひとも一体と考えて御指導いただきたいと思います。  それから、この件に関しましては、昨年の四月に参議院の大蔵委員会で当時の大蔵大臣がこういうふうに約束をしておられます。「現在の大蔵行政機構の中でどのような方法が可能か、」、どのような方法というのは、要するにこういう苦情についてどうするのか、「どういう部門でやったらそういうことが可能になるのか、少し検討させていただきたい」、よく検討して結論といいますか、やるべきことは何があるのかということをはっきりできるように努力をいたしたいと思っておりますと、こういう御答弁がありました。  この検討の結果、どういう指導をされたのか、報告していただきたいと思います。
  164. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 確かに昨年の国会でそのような御指摘がございまして、当時の大臣の御指示に基づきまして鋭意検討を行いました。その結果、先ほど申し上げましたように昨年の秋に通達をお出ししておる。それから、各銀行、各保険会社、そして協会を通じて苦情処理の体制について万全を尽くすように要請したところでございます。
  165. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 銀行取引に限らずいろんな取引の中で消費者保護の視点というのが欠けている面がかなりあるわけです。例えば、銀行と融資契約を結ぶ約款、この約款というのは契約書でありますけれども、それが契約の一方の当事者には交付しないと、こういうことが行われております。  こうした問題も含めまして、日本版ビッグバン、この中には消費者保護の視点が欠落しているように私には思えるんですけれども、金融自由化の大きな流れの中で消費者保護という視点からも改革に取り組むべきではないでしょうか。これは大蔵大臣にぜひお答えいただきたいと思います。
  166. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) ビッグバンは、ニューヨーク、ロンドン並みの市場に変えていこうと、そして一千二百兆に及ぶそのうちの半数近くが個人の預貯金でございますが、この点に視点を明確に当てながら安全運用を同時に大事にして、今言われたような問題が起きませんようにという視点も踏まえなければなりません。  証券市場が極めて不安定なところであり、株に手を出すななどという声が依然として昨今あるわけであります。そういうことで、信頼をかち取るためにはディスクロージャーが必要でありますように、こういう問題がたびたび起きるということではいけませんので、ディスクロージャーが明確にされていかなければなりません。ビッグバンの柱の中に、まさにディスクロージャーによる信頼感を得て、安心をして個人の投資者も参加できるようにと、こういうことで事件の起きませんような措置を講ずるべく、ただいま検討を進めておるところでございます。  本件及びさらにビッグバンのスタートに当たりまして、本件の勉強をよき材料としながら、そちらに進めますように研究、検討してまいりますことをお約束申し上げます。
  167. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 今後、金融自由化あるいは金融商品も拡大の流れの中で、消費者保護の必要性が高まってまいります。ディスクロージャーを初めといたしまして、ぜひとも具体的な消費者保護の施策に積極的に取り組んでいただくことを要請いたします。  私は大蔵省の方々にいろいろ、認可に問題がなかったのかどうか、あるいは責任をどう感じているかというような質問をさせていただきましたけれども、長年の官と業の癒着と言われている、あるいは政官業の癒着と言われている中で不祥事が後を絶たないわけであります。例えば、岡光前事務次官にいたしましてもあるいはほかの問題を起こした方々にいたしましても、入省のときには恐らく国家国民のため、こういう使命感やあるいは理想を持っていた、こういうふうに思います。また、官僚の方々の中には人格識見の非常に高い方々も現に何人もいらっしゃるということも承知をしております。  しかし、こうした使命感とか理想とかあるいは人格識見がそもそも生かされないシステムになっているのではないでしょうか。どれだけ天下り先をふやすかあるいは権限を拡大するか、それが成績として評価される、こういうシステムを初めといたしまして、結局こういうがんじがらめのシステムの中で使命感を失わざるを得ない、業界からの要請やあるいは業界のために動かざるを得ないという現実があるのではないかというふうに思います。これは優秀と言われている官僚の方々にとっても大変不幸なことですし、国にとっても大変な損失である、こういうふうに思いますが、こうした点も含めた行政改革、これが必要だと考えます。  大変雑駁な質問になって申しわけありませんけれども、行革に一生懸命取り組む方のお一人として期待の声がある小泉厚生大臣、どうぞ御見解をお聞かせください。
  168. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) いろいろな理由があると思いますけれども、どんな制度であっても使命感がなくなったらおしまいだと思いますが、特に最近の時代においては消費者の視点が重要ではないか。どちらかというと、戦後日本は生産者側の重要性というものに傾きがちではなかったかなと。今市場性、透明性、消費者の視点が役所の世界でもより重要じゃないかというふうに私は感じております。  そのほかいろいろな意見があると思いますが、この辺で終わらせていただきたいと思います。
  169. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 以上で終わらせていただきます。
  170. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で浜四津敏子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  171. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、石渡清元君の質疑を行います。石渡清元君。
  172. 石渡清元

    ○石渡清元君 自由民主党の石渡清元でございます。  私は、少子化問題、そして当面する雇用労働問題について時間までお尋ねをさせていただきます。  まず、少子化問題でございますけれども、最初は現状認識、そして後半はその対策ということでお伺いをいたします。  少子・高齢化社会という言葉を随分使われます。高齢社会対策はいろいろなことが議論されますけれども、なかなか少子対策についての具体的議論が少ないように感じておるわけでございます。平成九年一月二十一日に厚生省社会保障・人口問題研究所が発表いたしました将来推計人口においては大幅に下方修正をされまして、日本の総人口が平成十九年、二〇〇七年をピークに減少してくる、百年後には半分ぐらいになっちゃうんじゃないか、こういうことが報じられておりますけれども、一体この人口減少社会、少子社会というものをどういうふうにとらえていらっしゃいますか、まず御所見をお伺いいたします。
  173. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今振り返ってみますと、私は、その当時でも少子化というところまで深刻に問題をとらえていたわけではございませんが、ちょうど厚生大臣を拝命いたしましたころに高齢化という言葉が随分使われるようになり、その時点において、既に年を召しておられる方々に対する今後の対応というものに議論が集中しておりましたころ、高齢化社会への対応というのは、既にお年を召した方々、現在支える世代であるけれども間もなくお年を召す方々、そういうところにだけ問題が集中することは間違いだと。要するに、既に少子化の傾向が出ておりましたから、いかにして心も体も健やかに子供たちに生まれてきてもらうか、そのためには母子保健対策というものに目を向けるべきだということをその当時相当言い続けました。  たまたま国際児童年が近かったこともありまして、こうした問題でのシンポジウム等も海外からの学者をお招きして開いてみましたが、我が国の場合に、高齢化社会という議論の中で、反面論じておかなければならない子供というものがなかなかテーマにならなかったということを何回か経験いたしております。  そして、昭和二十三年でありましたか二十四年でありましたか、議員立法でできました優生保護法が、当時の提案理由説明を見てみると、日本列島において養い得る人口がたしか八千万と推定していたと思います。そういう立論の中でつくられており、つい先ごろまで、例えばハンセン氏病が断種の理由として残っているといった問題を取り上げて、改正をしようとしてもそれがどうしても関心を集め切れない。世の中の関心を集め切れず、議員立法でやろうとしてもそれがうまくいかない、異質の議論になってしまう。何か私は、子供たちに対する問題というのが、国会で議論をされることの一つのタブーであったような気がして仕方がないんです。  当然のことながら、少子化によって人口が減少してまいれば、まず経済活力は低下をいたします。そして、若年労働力は当然ながら減少を続けていくわけでありますから、非常に労働力供給に問題を生じます。  そして、私どものころは、本当にまだ兄弟のたくさんいる御家庭が大半でありましたし、自分のところは少なくても近所に必ずたくさん同じ世代の友達がおり、子供たちがいや応なしに地域社会の中で集団で暮らす社会訓練を別に意図しなくても受ける場面がありました。今日、周りを見てみると、本当に子供の数が減少しております。そして子供たちが、家庭の中だけではなくて、地域社会の中でも同じ世代の友達を持てる率が減ってきてしまう。これは子供たちに社会性の低下というものをもたらすのではないだろうか。さらに、これは当然のことながら社会保障負担の増大というものを招いていくであろう。  私どもは、この少子化という問題の中から少なくともそのような問題が出てくるのではなかろうか、さらに、高学歴化の傾向とこれが重なっていけば、一層若年労働力の不足とこれは当然ながらやっぱり社会的な活力の減につながる、そういうことを問題視せざるを得ない、そのように考えております。
  174. 石渡清元

    ○石渡清元君 御丁寧な答弁、ありがとうございました。  それでは、具体的にこの少子化現象、今の総理の答弁の中に労働力供給力の話が出ました。産業経済にどういったような影響を与えるか、特に労働力供給力というのは人口と労働力率の積でありますので、それが今どんどん高齢化をしておる現状でございます。こういったような状況について、今の経済社会に対する影響、これをお伺いいたします。通産大臣と労働大臣
  175. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今おっしゃるように、我が国においては急速なこうした少子・高齢化の進展に伴って労働人口が減少するということで、経済の活力が低下するおそれが大変大きゅうございます。こうした中で、意欲ある高齢者が労働参加することは経済に対して好影響を与える、こういうふうに認識しております。  実はこうした観点から、高齢者が働きやすい労働環境を整備していくことが重要だと考えておりますし、また一方、我が国経済の中長期的な発展を可能にするためにはあわせて生産性を高めていくことが必要だろうと、かようにも思っております。  こうした認識に立って、昨年の十二月に閣議でもって「経済構造の変革と創造のためのプログラム」というものを実は決定させていただきましたが、経済構造改革の一環として、高齢者の働く環境を整備するための能力開発の一層の充実、そして柔軟な雇用システムの構築を進めるとともに、既存産業の高付加価値化を含めた高付加価値型の新規産業の創出、こういうものを行っていく所存でございます。
  176. 石渡清元

    ○石渡清元君 労働大臣、労働供給面からこの少子化現象というのをどうお考えになるか。
  177. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 総理もおっしゃいました、先生もおっしゃっておられますが、子供さんがたくさん生まれ、健全にそれが育てられて生産人口に加えられ、日本の経済その他の発展のために大いに役に立つ、非常にいいことだと思います。  ただ、労働行政としては、赤ちゃんを産もうとなさるかなさらないか、育てようとなさるかなさらないか、これはやはり男女の夫婦の御意思の問題で、私の手が届かないところだと、こう思います。しかしながら、産み育てようというようなお気持ちがあるならば、我々はそれが可能なような、それが容易なような、そういう職場環境というものをつくっていかなければならない、これが労働省の責務であると、こう思っているところであります。  したがいまして、具体的に言いますと、一つには労働時間の短縮がございます。これによりまして職場生活と家庭生活が両立するようにということであります。あるいは男女雇用機会均等法というのがございます。これもやはり女性の保護でありますとか母性の保護というものにいろいろな目配りをした施策、これを中に包含しているわけであります。それから、あとは育児休業法というようなものがありまして、これら三者を労働省の言葉で言いますと一体的にうまく総合活用いたしまして、安らかに子供さんが産めるような、そうして健全に育てられるような、そういう職場をつくってまいりたい、こう思っているところでございます。
  178. 石渡清元

    ○石渡清元君 子づくりは確かに個人の問題と言ってしまえばそれまででございますけれども、私は、特に若年労働力がどんどんどんどん減少している状態というのは、これからの産業経済を支える、技術革新を支える力あるいはマンパワーが減っていくということでありますので、これは日本の将来にとって非常に大事なことではないかと思っておるわけでございます。投資マインドもおっこちる、あるいは国内需要も余り伸びない等々の問題について、ともすれば高齢社会対策に偏りがちな政策を少し少子対策に振り向けていくべきではないかと考えておるわけでございます。  そこで、この少子の状態というのが高齢者福祉に対してはどういう影響を与えるか、厚生大臣、お願いします。
  179. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) ただいま総理から出生率低下による影響というのがいろいろお話しありました。  「健やかに子供を生み育てる環境づくりについて」という平成三年一月に各省庁連絡会議で行った中にも主に四つあると。一つは経済活力の低下、二つ社会保障負担の増大、三つ目は労働力供給の制約、四つ目は子供の社会性の低下と、大きく分ければこの四つだと言われておりますが、今の御質問の中の社会保障への影響、これは当然大きいと思います。予想以上に高齢化率も高まっておりますし、社会保障の負担が一層増加するというのは皆様御承知のとおりであります。  そういう点において、今高齢化社会において、介護保険法案を御審議していただいておりますけれども、これについても十二年度導入に向けて保健、福祉にかかわる人材をいかに確保するか、整備拡充も必要でありますが、その人材をどうやって確保するかというのは、早く法案を通していただきまして十二年度に向けてその施策を現実のものとしていく、そして民間のサービスも期待しながら医療と福祉の両面からその準備体制を早く私は整備する必要があると思います。
  180. 石渡清元

    ○石渡清元君 結局、人口減少社会というのは日本の過疎化現象というふうに考えていいと思うんです。  それでは、今の日本の過疎地域、そこで少子現象というのはどうなっているか。これは自治省かなと思って自治省に聞いたら、いや、それは国土庁だという答えが質問を出したときに返ってまいりました。過疎地域においての現状をちょっと御説明願います。
  181. 鈴木正明

    政府委員(鈴木正明君) 過疎地域の現状でございますが、高齢者比率は御指摘のように二五%で、全国平均の一四%に比べますと相当高くなってきております。また、出産適齢期の女性の割合が低いということもございまして、出生率自身も全国に比べて低くなってきております。  こういう傾向が長い間続いておりますので、現在では例えばひとり暮らしの高齢者の方の世帯あるいは高齢者の夫婦世帯、こういった世代が増加した問題を含めまして、高齢者福祉の必要性の増大、あるいは地域の担い手層が少なくなってきておりまして、農地の耕作放棄地の増加あるいは後継者難などによる地域の産業面での弱体化、こういった問題が出てきております。あるいは地域コミュニティーの相互扶助機能の低下ということで、全体的に地域の活力の低下というものが見られる状況になっております。
  182. 石渡清元

    ○石渡清元君 今の答弁のように、いわゆる過疎地域には既にもう出産適齢期の人がいない状態になっちゃっている、みんな高齢者だけになってしまっているのが現状でございます。その超過疎地域でも今度は農村にお嫁さんが来ないと言うんですね。三十、四十、五十の男性がみんなお嫁さんを探している。  少子化現象というのを少しチャンネルを切りかえるとするならば、いかに出生率を上げるかということ、あるいは出生率のディスインセンティブをいかになくすかということに尽きるかと思いますけれども、そういう意味で今度は少子化対策の方についてお伺いをいたします。  厚生省のエンゼルプランを少し変えようということが議論されておるようでございますけれども、今までエンゼルプランの効果についてどういうふうに評価されているか。
  183. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) エンゼルプランは、平成六年十二月に厚生、文部、労働、建設四省が合意のもとに作成したものでございます。  この趣旨は、急速な少子化の進行を踏まえまして、子供を持ちたい人が安心して子供を産み育てることができるような環境を整備する、家庭における子育てを支援するために社会のすべての構成員が協力していくシステムを構築するといった認識に立って子育て支援施策を取りまとめたものでございます。  これが策定されたことによりまして、子育て支援につきまして、国、地方公共団体を初め、民間企業、地域社会も含めまして、社会全体で取り組むべき課題であるという認識が深まってきたのではないかというふうに考えております。また、関係省庁が連携のもとに、それぞれ計画的にこの支援を推進するという機運が出てきたということでございます。  厚生省といたしましては、エンゼルプランの具体化の一環といたしまして平成七年度から緊急保育対策等五カ年事業を推進いたしまして、保育ニーズの多様化に対応して低年齢児保育等の充実に努めているところでございます。
  184. 石渡清元

    ○石渡清元君 厚生省はエンゼルプランだけやってそれでいいというわけじゃございません。地方自治体でもそれぞれエンゼルプランを策定しておるようであります。平成六年のエンゼルプラン策定後、地方版がそろそろ始まっておりますけれども、なかなか合計特殊出生率というのは上がってこないんですね。地方版の状況というのはどんな状況でしょうか。
  185. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 子供なり家庭を取り巻く環境というのは地方によりまして大きく異なっております。このため、都道府県、市町村が策定する児童育成計画、いわゆる地方版エンゼルプランの策定を進めておりまして、平成七年度からその策定に要する経費の補助を行ってきているところでございます。  現時点におきましては二十一県五十市町村において既に策定されております。また、現在二十四都道府県百三十市区町村において策定中ということになってきております。これによりまして、現在関係機関の連携の強化あるいは子育てに対する関係者の意識の高揚が図られてきているというふうに考えております。また、各計画におきましてもそれぞれ五年ないし十年計画というような形で具体的な目標が設定され進められつつあるところでございます。  私どもといたしましては、こうした各都道府県の進捗状況を把握いたしまして、その計画実現に向けて支援してまいりたいというふうに考えております。
  186. 石渡清元

    ○石渡清元君 外国もいろいろ努力をされておるようでございまして、フランスとかスウェーデン。ところが、外国もなかなか思ったようにはいかないようであります。フランスあたりは人口こそ国力の基礎だ、あるいはルクセンブルクはもう公然と人口増強策というのを言っておるようでございますけれども、外国の例に倣ってもう少し大胆な人口強化策ができないものか、その辺のお考えを。
  187. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 人口増加策をとろうというのはまだ早いんじゃないでしょうか。私はそう思いますね。産めよふやせよという形をとる時代でもないと。  子育て支援策は大事でありますけれども、個人の人生観は多様ですし、国が人口増加策をとるというよりも、もう少し幅広くいろんな意見を聞くことが今の時点では重要じゃないか。厚生省だけの問題ではございません。そして、日本も私はこれからずっとこの出生率が続いていくともまた思っておりません、確かに低下しておりますけれども。その点をもうちょっと見きわめる必要があるというふうに考えております。
  188. 石渡清元

    ○石渡清元君 私は今人口強化策と申し上げたわけでございます。というのは、出生数がいわゆる労働力供給までいくのに約二十年ぐらい時間がかかる、出生数の増加の効果が二十年後にしかあらわれていないので、今からぼちぼちそういう政策が必要なのではないかということを申し上げたわけでございます。  外国でアメリカは二二ぐらいだと聞いておりますけれども、アメリカの子供さんの約半分の親御さんが離婚経験者であります。量はある程度アメリカはあるかもしれませんが、ややそれでは質的に子供さんにツケが回っているような、社会背景がそうでありますので言えませんけれども、やはり外国の人口政策のもう少しいい部分を取り入れるべきではないかなというふうに考えておりまして、そういうことを申し上げたわけでございます。  次に、子供の養育環境の整備、これも厚生省は保育所を初めいろいろされておりますけれども、特にこれからどういうことを重点に子育て支援をされるか、お願いいたします。
  189. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 共働きが一般化する中におきまして、子育てと就労の両立を図るということは大変重要である、このために保育所の役割は大変重要であると思っております。こうした観点に立ちまして、エンゼルプランの一環として平成七年度に緊急保育対策等五カ年計画をつくりまして、これを着実に実施しているところでございます。また、放課後児童対策あるいは地域子育て支援センター等の事業を進めているところであります。  また、今回、利用者が利用しやすい保育所制度に改めるという観点に立ちまして、児童福祉法等の改正案を今国会に提出いたしたいと考えているところでございます。
  190. 石渡清元

    ○石渡清元君 女性がゆとりを持って家庭生活、社会活動を営めるような環境をつくらなきゃいけない、こういうことでございまして、これは保育所ばかりではございません。幼稚園もありましょうし、さまざまな問題があろうかと思います。  これから国会に出されます児童福祉法の改正、これの保育システムがどう変わって、少子化対策との関連を御説明願いたい。
  191. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 今回提出を検討いたしております児童福祉法改正案につきましては、保育所制度について、現在入所の仕組みは措置ということで市町村が行政処分により入所を決定する仕組みになっているわけでありますが、これを保育所について、情報提供を前提といたしまして、保護者が希望する保育所を選択できるような仕組みに改めたいというふうに考えております。このことによりまして、保育所において児童あるいは保護者の要請に即した運営面での改善が図られるようになるのではないかというふうに考えているところでございます。  こうした子供を持ちたい人が安心して産み育てられるような環境を整備するという観点から見ますと、今回の改正というのは少子化対策の方向に沿ったものというふうに考えているところでございます。
  192. 石渡清元

    ○石渡清元君 次に、子供の教育費コストの軽減策についてお伺いをいたします。  これは、学費を初めとしていろいろな側面があるわけでございますけれども、よく言われるのが児童手当、これが何とかならないかと。あるいは、一橋の高山教授に言わせますと、子供の扶養控除を児童手当に全部振りかえちゃうと十倍の効果がありますよというようなことを言っているんです。  そういったような教育費のコスト軽減策について、児童手当の教育費補助も支援も含めてどのようなお考えをお持ちになっているか。
  193. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 厚生大臣からも答弁があろうかと思いますが、文部省としてやっておりますのは予算、税制面での対策なんです。例えば育英奨学事業、これも日本育英会を中心に今度の予算でも六・一%増の二千五百三十八億円を計上しておりますし、また幼稚園就園奨励費の補助もふやしておりますし、また私学助成についても一般の予算よりもはるかに増額をしております。そのほか税制面におきましては、十六歳以上二十三歳未満の扶養控除につきましては、一般の扶養控除額よりも所得税において十五万円、住民税において八万円の割り増しとなっております。  それから、少子化につきまして教育上も問題があると思いますのは、全然子供のいない、あるいは一人っ子というような場合、一人っ子よりもやっぱり二人、三人兄弟がいた方が教育上の観点からも私は望ましいと考えております。  いずれにしても、少子化対策は、これは文部行政だけではなくて、あらゆる角度から子育て支援社会というものをつくっていく必要があろうかと思っております。
  194. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 児童手当についてでございますが、この制度につきましては、平成三年度におきまして支給対象年齢をそれまでの小学校就学前から三歳未満の児童に改めますとともに、支給対象を一子からにいたしまして給付額も倍増する等の改正を行い、平成六年からちょうど全面施行されたところでございます。  今後児童手当をどうするかにつきましては、こうした制度の沿革あるいは他の制度との関係、財源問題、さまざまな問題がございますので、今後行われる人口問題審議会等における少子化関係問題全体の議論の中で検討してまいりたいというふうに考えております。
  195. 石渡清元

    ○石渡清元君 次に住宅政策。  これも非常に大事なことかと思いますけれども、良質な住宅をいかに供給していくか、少子化対応の観点からどのような政策をお持ちか、御説明を願います。
  196. 小川忠男

    政府委員(小川忠男君) 少子化問題と住宅政策のかかわりでございます。二つの点を御説明させていただきたいと思います。  一つは、少子化問題というのは統計的には大都市圏において著しいというふうな状況がございます。その意味では大都市圏における住宅政策を引き続き強力に展開する、これが第一点だろうと思います。  こういうふうな観点からは、私ども特定優良賃貸住宅と言っておりますが、行政が供給するのではなくて、民間がおつくりになった住宅を借り上げて公的に供給するという制度がございます。これにつきましては、ここしばらく年間四万戸余り供給いたしておりますが、八〇%を大都市圏に振り向けております。引き続き努力いたしたいと思います。  それからもう一点は、女性の社会的参加ですとか共稼ぎというふうなことを考えますと就業の場と住宅の場所との関連がございます。やはり、都心部、比較的便利なところにきちっとした住宅を供給する、これが重要だろうと思います。都心居住というふうな言い方をしておりますが、都心部での住宅の供給についていろんな施策をやっておりますが、容積率の大規模、基本的な緩和、こういうふうなことも有効に役に立つのではないかと思っております。
  197. 石渡清元

    ○石渡清元君 それで少子化対策になるかどうかあれですけれども。  労働大臣、雇用環境も両立支援ということで大幅に変えていきませんとなかなか功を奏さないと思うんです。特に、男女の役割分担は相当な理解がありませんと今のままではだめじゃないか。ということは、今まではだんなは会社で奥様は家庭と、こういったような雰囲気というのが非常に日本社会にあったわけでありますけれども、これからは労働力自体が減っていくわけですから、長時間働いていればいいという問題ではなくなると思うんです。朝ぼうっとしていて夜遅くまでというのでは能率が上がりません。ヘッドワークの時代ですから、労働省の奨励しているサテライトオフィスとか、時間をいかに生かして効率的に使うかというそういう環境整備が必要になってくるのではないかと思いますけれども、これを強力に推し進めるようないい、アイデアマンの大臣でありますので、その施策がありましたら御説明を願いたいと思います。
  198. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生、私どもが準備をいたしております数字、家庭の主婦が雇用関係にあるようなそういう職場でお働きになるパーセントは、四十五歳から五十歳までの方で五二%に相なっております。したがいまして、八百屋さんでありますとかあるいはお肉屋さんでありますとか、そういった家庭の中にお店があって働くということを入れますと七十数%ぐらいが労働に従事をしている、これが実態であります。  そういうような意味合いで私どもは、女性の方が安んじて働けるようにというような意味合いで、男女雇用均等法ということで先ほどもいろいろ話をしていたわけでありますが、具体的に言いますと、例えば育児をしながらお勤めができるようにという意味合いで家事のアシスタントをお雇いになる、それを使用者側の方が支援をするとか、あるいは事業所の中に託児所を設けるというような事業所、これについては雇用者の方にこれから支援をしてまいりたいということを九年度本予算案の中に盛り込んでおります。  というようなあれやこれやのすべを先ほどお話をしましたように総合的に展開してまいりたい、こう思っておるところであります。
  199. 石渡清元

    ○石渡清元君 今までそれぞれの各省の支援策というのをお伺いしたんですが、何かもう一つ決め手に欠けるような気がしてならないわけでございまして、特に経済社会に与える影響というのは非常に私は大きいと思います。  子供は自分ではつくらないけれどもほかで産んでやってくれとか、子供をつくらない方が得な社会になるような、そういう形じゃいけないと思います。したがって、いわゆる人口減少社会、これに対する強力な国家プロジェクトみたいな、人口減少社会対策基本法とか、何かそういったような基本的なマスタープランを国策として取り組んでいく必要が私はあろうかと思いますが、さっき申し上げたとおり、ちょっと出生から役に立つまで時間のかかるスパンの長い問題でもありますので、この辺については、総理、いかがお考えになりますでしょうか。
  200. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) この出生率の低下の原因というものが主として未婚率の上昇にあるという分析が今回なされました。プラスして、恐らく結婚年齢が遅くなっているという点もこれをなお加速しているだろうと思います。  しかし、その点をどう解決するかとなりますと、先ほど来、議員御自身がそれぞれの分野について問題を提起されながら、まとめてこれならばという対策がないと嘆じておられたとおりでありまして、これはいろいろな考え方ができますけれども、私は一つのことを講じればそれで終わりというようなものがあるとは正直思いません。  そして、そういう意味では、関係のいろいろな分野から出されている意見をずっと目を通してみましても、これが決め手というものはなかなか出てこないと思います。むしろ、多少のスパンを持って考えさせていただくということになりますと、人口問題審議会での検討を踏まえたいわゆるグリーンペーパー、問題提起資料を取りまとめて、幅広い国民への意見聴取を通じてこの問題に対する周知徹底を図る、こうした考え方を土台に置いて、その上でさまざまな施策を組まなければならないのではなかろうか、そのように思います。  ただ、先ほど来の議論を聞いておりまして一つ感想をつけさせていただきたいと思いますのは、私は本当に世の中変わったなと思うんです。残念ながら今党派は違っておりますが、西岡武夫さんや既に本院で引退をされた粕谷照美先生などと一緒に、私どもは医療職、教育職、福祉職、三職の育児休業制度をつくりましたときのそれぞれが責任者でありました。  ところが、そのときに、せめて前年度所得にかかる所得税を負担できるぐらいの何かの給付を必要とするはずだということを私どもは超党派で唱えましたけれども、圧倒的に多くの方々は働かざる者食うべからずと。それならせめて、民間の場合であれば厚生年金の保険料、公務員の場合であれば共済の保険料負担分ぐらいを何とか出せないかと。残念ながら、その当時研究課題とせざるを得ませんでした。今育児休業制度のもとで一定程度の収入があるのは当然のことであります。  また、阿部議員がそこにおられて、先ほど建設省住宅局長の答弁を聞いてにやっと笑っておられましたけれども、実は私が厚生大臣のとき、世代間同居のできる住宅、三世代住宅というものを随分働きかけ、結果として見事に失敗をいたしました。建設省自身から、要するに子育てに便利だ、スペースのある住宅をというような言葉が出てくる。それだけこの問題が深刻化したんだということを思います。  その上で私は、あと一つともに考えていただくことがあるとすれば、この少子化の時代において一番の問題は、地域社会の中でいかにすれば子供たちを守り育てるかという合意がまだ形成されておらず、そのために特に地域社会における学齢以下の子供たち、低学年の子供たちを含めてもよろしゅうございますけれども、その子供たちを地域社会が支えるという通念ができ上がっていないことに一番の問題があるような気がいたします。  子供たちが本当に宝だとするなら、それぞれの地域社会の中で、例えば御両親が働いておられる時間帯の相当部分を、子供たちが公園で遊んでいようとどこか道端で遊んでいようと安全だと言えるぐらいの地域のネットワークはできないものだろうか。私自身、自分の子供を郷里と東京とで、一番下の子は途中から東京で育ててみまして、東京で子供を育てる場合と郷里で育てる場合の落差というものを一番感じたのはその点であります。  私は、どうすれば地域社会の中で子供たちを守り育てられる、安全を確保し得る仕組みを用意できるか、考えるべきことの一つのポイントはこの点にあろうかと思います。
  201. 石渡清元

    ○石渡清元君 人口減少社会、これが私は、何回も繰り返しますけれども、予想以上にこれからの社会に与えるインパクトというのは強いと思うんです。特に、社会保障なんか子供がいなければ成り立たないわけでございます。そういう意味で、少子・高齢化の中で、高齢化対策の優先順位の中に出生あるいは子育て支援策というのを少し加えていただいて、それでこの少子化現象というのを何とか少しシフトすることができないかなというふうに考えておるわけでございまして、これからもひとつよろしくお願いを申し上げる次第でございます。  それでは、雇用労働関係に参りますが、最近の例で、御案内のとおりに三井三池閉山対策でございますけれども、大量の失業者が発生をする、それが予想されております。この炭鉱離職者の雇用対策についてさまざまな要請等々があろうかと思いますけれども、一般的にどのような取り組みをされようとしておるか、労働大臣、お願いします。
  202. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生のお尋ねは、今般三井三池が閉山になるという対策ではありませんで、一般的な炭鉱離職者に対する対策でございますか。
  203. 石渡清元

    ○石渡清元君 三井三池。
  204. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 三井三池につきましては、先生御案内のとおり、この三十日に閉山ということで会社側の方から通告がございまして、会社側の数字によりますれば千五百三十九というような離職者が予定されていると。しかし、在来の赤平でありますとかあるいは大夕張等々を見ますと、実際の離職者は会社当局の発表よりももっと数が大きくなる。つまり、商店街その他が入ってくるわけですね。  したがいまして、私といたしましては、もう少し大きな規模の離職者ということを頭に描きながら言いますならば、一つには公共職業安定所の全国的なネットワークをフル活用してまいりたい。それから、職業訓練につきましてひとつ精いっぱいの努力をいたしたい。それから三番目は、通称黒手帳、緑手帳、こう言われる離職者求職手帳の発給等々を絡み合わせましてひとつ精いっぱい頑張りたいと思っておるところであります。
  205. 石渡清元

    ○石渡清元君 特に、特定雇用機会増大促進地域の指定を早くやっていただいて離職者対策を進めたらいかがか。黒手帳、緑手帳も結構でございますし、またなるべくまとめて言えと、こういう御指示でございますので申し上げますけれども、先週末に組合からの要望事項について労働省はお答えになっているかと思いますが、その辺も含めてこれからどういうふうに取り組んでいかれるか、ぜひひとつ三井三池を安心させていただきたいと思います。
  206. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生お話しの特定の雇用増大地域の問題でありますが、現在大牟田市もまた荒尾市も、いずれも雇用増大の地域の中に指定をされているところでありますが、これを先般来石炭特あるいは労働委員会等々で諸先生からぜひ特定地域に指定せよということでございます。今まで考えてまいったところではございますが、先生のお話もこれありましたので、今特定地域に指定する方向で事務的に検討をせよということで労働省事務局に命じているところでございます。  先生のお話の労働組合等々からの要望につきましてはいっぱいあります。例えて一つだけお話をしますと、職業安定所が、その離職者あるいは予定になっている皆さん、さあ、おいでをいただきたい、相談をしようではないかと。ちゃんと三井三池の鉱業所の中に入って、そこで臨時の仮設のものを設けて、そこに大勢の職安事務職員を派遣して人事相談その他万般に応ずるというような体制をしきたいと、こう思っておるところであります。一つだけお話しするとそんな答えになります。
  207. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 三井三池炭鉱が閉山になった場合というまだ前提がつくわけでございますが、委員御指摘のように、地域の経済情勢あるいは雇用状況に大きな影響が生ずることは十分に予測されます。  そこで、まず通産省としては、閉山ということが決定した場合には閉山交付金を通じて円滑に事を進めるということがまず第一でございます。また、離職者の再雇用対策及び地元への企業誘致等、こうした地域対策というものを会社に対して万全を期すよう指導するとともに、三井鉱山、いわゆる親会社、そして三井グループに対しても要請をしております。  そういうことで、引き続き三井鉱山グループの行う新分野開拓事業を支援していく。そしてさらには、工業団地の造成だとか地域の活性化に資するプロジェクトの推進ということを通じて地元の自治体、各省庁とも連携をとりながら地域対策、雇用対策、こういうものに万全を期してまいるというのがまず基本でございます。
  208. 石渡清元

    ○石渡清元君 三千人を上回る離職者が大いに期待をしておりますので、ぜひひとつ強力にお願いを申し上げます。  次に、産業、雇用の空洞化対策についてお伺いをいたします。  国際化が一層進展する中で、我が国の産業の空洞化を防ぎ高失業社会の到来を防ぐためにベンチャー企業への雇用支援等新産業の創出、既存企業活力を生かした新商品開発等の努力が欠かせません。特に、我が国の製造業においてはすぐれた技能の集積が見られる地域も多いわけでございます。ただ、一たんその技能が失われてしまいますとなかなかもとに戻らない。将来、我が国の産業発展に深刻な影響をもたらすおそれがあろうと思います。  そういった意味で、労働省はこういう産業、雇用の空洞化を防ぐためにどのような取り組みをされているか、御説明願いたいと思います。
  209. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生、御専門でいらっしゃいますので、簡単にお話をいたします。  一つは、中小企業の活力、活性化、とれによって雇用の増大を図ること。二つ目は、失業なき労働移転について全面的に対処をしてまいりたい。三つ目は、職業能力を大幅に活用する、つまり訓練でございますね。先生がお話しになったそういう技能がなくなってしまってはいけない、したがってそれが継承できるようにしよう、あるいは新たなジャンルに対応できるような高付加価値の技能を身につけていただくというような職業能力の開発。この三点を中心に進めているところでございます。
  210. 石渡清元

    ○石渡清元君 その空洞化でございますけれども、イギリスのロンドン・レポートをちょっと読んでおるんですけれども、イギリスは一月の失業者数は前月比の六万七千八百人も減っちゃったというんですね。これは一九七一年の統計開始以来、二番目に大きな減少幅となって、昨年の年間所得の伸び率も四・二五%、九三年以来最高の数字を示したというふうに神奈川県のロンドン駐在員が報告をしておるわけでございます。その中に、日産自動車の三千五百人の雇用を含む新たな投資計画とか、あるいは韓国LG社の六千人の雇用を含む電子機器工場設立が明るいニュースとなってマスコミをにぎわしている。  結局、企業は国境を選ばなくなっちゃった、投資しやすい環境のところへどんどん行ってしまう。ですから、幾ら労働力を押さえようとしてもなかなか功を奏さない。ましてや、ベンチャービジネスとよく言うんですけれども、やはりリスクを伴う、海のものとも山のものともわかりませんので、どうしても足踏みをしてしまうような傾向があるんではないか。  そういう中で、労働省、統計も結構ですけれども、やはり具体的な雇用の創造というのを何らかの機関を通じて地域社会にサジェスチョンするような、もう一歩雇用をつくり出す、創造するような施策というのが必要ではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  211. 佐藤信二

    国務大臣佐藤信二君) 今おっしゃるように、大変ここのところ空洞化という現象が恐れられます。  今、委員の御指摘のように、日本から海外に出る企業、これを抑えるというよりか、新しい企業の創出というかつくり出すこと、あるいは外国からそうした企業に来てもらう。こういうことで、日本の場合にはこれから徹底した規制緩和と高コスト構造の解消と改造、この二点に力点を置けば、必ず海外に行っているのがこの種の歯どめになるしということでもって、昨年の十二月に閣議でもって「経済構造の変革と創造のためのプログラム」というものを設定したわけでございまして、現在これに向けて全力を挙げる所存でございます。
  212. 石渡清元

    ○石渡清元君 次に、今日的な問題で就職協定の廃止。そうでなくても新卒者の就職難、特に女子学生についてはもう超氷河期だと、こういうふうに言われておりますけれども、企業の採用活動がもう原則として自由になってしまうと。これはかなり学生に対して悪い影響、ということは勉強ができないというんですね。  それでなくても、どんどんどんどん企業の方が前倒し募集のような形、特に中小企業が先行してやっちゃう。そうしますと、中小企業を受けて受かった、もっといいところから後から合格通知が来るんじゃないかとか、そういったようなことで非常に学生が動揺をしておるわけでございまして、文部省はそういう就職協定の廃止に伴う学生への影響についてどのようにお考えになっているか。
  213. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) この問題につきましては、昨年十二月四日に日経連の根本会長から、平成九年度から従来の就職協定を廃止したいと、こういう発表がありました。私は、先生が今憂慮されているようなことを考えまして、直ちに翌日、十二月五日でしたけれども、日経連を訪れまして、根本会長にその真意をただしました。  そういたしましたら、時代が非常に変化して、従来と違って通年採用であるとか、あるいは現実に協定破りが横行しているとか、あるいはインターネットによって早くから情報が収集できるとか、いろいろそうした時代変化に伴って従来の就職協定はやめたいと、こういうことでありました。  しかし私は、これを直ちに廃止するのではなくて、何らか中間的な措置はとれないものか、そうして大学側ともう少し協議をしてもらえないか、こういう要請をいたしました。その後、企業側と大学側でそれぞれの機関がありまして、三回にわたって協議を重ねたと思います。  そして、一月の末になりまして合意ができました。それは、企業側は自主的に一つのルール、企業の倫理憲章というものをつくったり、また大学側は申し合わせというものをつくりまして、お互いに自主的な努力とそして良識に基づいて、新しいルールに基づいて就職活動をやると、こういうことに決まったわけであります。私のところにも一月二十一日に根本日経連会長と大学の代表である鳥居慶応大学塾長が訪れまして、お互いにこうした新しいルールで尊重してやると、こういうことになったわけでございます。  この問題は、大学における教育活動というのが正常に行われること、そして就職活動が秩序を持って行われること、さらには学生に対して機会均等であることということが重要であるわけでありますが、残念ながら最近の動きを見ていますとかなり前倒しで採用活動が始まっている。こういうことを私どもは注意深く見守っておりまして、もし行き過ぎがあるようであれば適切に対応してまいりたい。これについては通産省や労働省関係省庁の御協力も得たいと考えております。
  214. 石渡清元

    ○石渡清元君 通年採用というふうに言われてしまえばそれまでかもしれませんけれども、ひとつ学生の勉学環境というのを少し考えて、お互いの企業なり相手とよく協議をしながらぜひ守っていただきたい。  こういう問題については、労働省はどのようにこの問題にかかわっていくのか。特に、雇用関係がインターネットとか別な媒体でどんどんされちやっと、全く今までの職業安定所等々はどんどんブルーカラーを初めとして限られた部分しか職安を使わなくなってしまうような、そういう関係も出てくるんじゃないか。  そこで、就職協定廃止中心とした労働省のかかわり、どのように取り組んでおられるのか。
  215. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 御質問の点でございますが、私どもといたしましては、来年度の採用あるいは就職活動にできるだけ混乱が生じないよう、公共職業安定機関におきましては大学側の申し合わせと同じように六月一日から求人受理公開を開始するというふうにすること、二点目といたしましては、主要経済団体あるいは就職情報出版企業等に対しまして、正式な内定開始は十月一日以降とする企業側と大学側の合意の徹底、あるいは公平公正な採用選考の実施、内定取り消しの防止等の要請を行っているところでございます。  また、今後、学生の就職活動を支援するために、公共職業安定機関におきましては求人の確保を図り、求人情報の提供や就職面接会の開催等を積極的に行ってまいりたいと考えております。  なお、女子学生の就職につきまして男子学生に比べ不利に取り扱われることのないように、均等法の趣旨に沿いました公正な募集、採用についての徹底も図ってまいりたいと考えております。
  216. 石渡清元

    ○石渡清元君 次に、労働力需給のミスマッチ対応についてお伺いをいたします。  最近若者の失業率が非常に高い水準になっている。これは日本ばかりでない世界的な傾向だと言われておりますけれども、その原因が新規学卒者の就職が困難である、これが一つ。もう一つは、若年者の転職志向にある。  そういうふうに言われておるようでありますけれども、若年者がどちらかといえば製造分野あるいは営業分野の就職よりも事務分野での就職を望む、そういう傾向が多い。あるいは、中小企業よりも超一流の大企業、有名企業を目指す。したがってなかなか自分の適職が見つからない。それが一つの若年者失業率の高い大きな原因だと、こういうふうに言われておりますけれども、労働省としてこのミスマッチをどのように解消しながら若者の就職を一日も早く促進することができるか、案があったらお願いをいたします。
  217. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 先生御指摘のような問題点が若年者につきましては確かにございまして、なかなか難しい問題もございますが、若年者の職業選択に当たってのミスマッチの解消を図り適職選択を促進するためには、やはり多様な就職機会あるいは職業情報の提供、若年者の職業意識の形成の促進が重要であると考えておりまして、学生職業センター等におきます職業相談、就職情報の提供、それから就職面接会の開催等、数多くの企業と接する機会の設定等によりましてきめ細かな就職の支援を行っているところでございます。  さらに、今後、若年者が職業の社会的意義、内容、あるいは自己の適性等を理解し、適職を選択できるように、関係方面とも連絡をとりながら産業や職業についての理解を深めるためのセミナーの開催、あるいは学生が在学中に就業体験を積むためのインターンシップ制度についての検討、学生が必要とする企業情報を効果的に提供するための方策の検討等、若年者の職業意識啓発のための事業を推進してまいりたいというふうに考えております。
  218. 石渡清元

    ○石渡清元君 それでは最後に、持ち株会社解禁問題についてお伺いをいたします。  今まで世界で持ち株会社が禁止されたのは日本と韓国だというふうに言われておりました。五十年来の競争政策が今度は解禁に変わろうとしておるわけでございますけれども、この持ち株会社の解禁について総理はどのように評価をされるか。そして、特に今までいろいろ与党の中でも議論がありましたのは、労使間の、特に労働側からいう使用者性をきちっとしてくれと、そういったような主張が非常に強かったわけでありますけれども、労働省としてこの問題についてはどうお考えなのか、お伺いをいたします。
  219. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 持ち株会社解禁に伴いますところの独占禁止法の改正につきましては、もう先生御承知のとおり、三与党の間で独禁法改正の協議会、これをおつくりになられて案をいろいろ詰めてこられたようであります。  そのうち、問題になりました一点が、先生お話しの今後の労使関係といいますか、労使の話し合いがどういうふうになるか、使用者性がどうかという問題だったと、こう存じております。  この面につきましては、実は先月の二十五日、労使の間でどうやら話し合いがまとまりまして、これを今お話をした協議会の方に報告なさったと、こういうふうに私は理解をいたしております。今後この構成につきましての御審議等々を私ども十分見守ってまいりたい、こう思っているところであります。
  220. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 第二次世界大戦敗戦そして占領という一時期におきまして、御承知のように財閥解体という動きがあり、集中排除法という法律が生まれました。そして独占禁止法が生まれ、その体系は今日まで続いてきたわけであります。  しかし、私は今回の改正案というものは、事業支配力が過度に集中する事態は避けなければならないという、その独占禁止法の目的を踏まえながら、最近における国際競争に対応できる、そして我が国の経済構造改革を進めるに足る事業者の活動をより活発にする、こうした積極的意義のある改正だと考えております。
  221. 石渡清元

    ○石渡清元君 終わります。
  222. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で石渡清元君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  223. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、関根則之君の質疑を行います。関根則之君。
  224. 関根則之

    ○関根則之君 日銀にお伺いいたしますけれども、この前のバブルはなぜ起こったと思っておりますか。
  225. 松下康雄

    参考人松下康雄君) いわゆるバブルの発生につきましては、自由化、国際化などの経済環境の変化、あるいは首都圏への一極集中、あるいは土地取引に関する法制、税制などのいろいろな要因が相互に影響し合う中で、経済全体にいわゆる右肩上がりの幻想が生まれたということではないかと思っておりますが、長期にわたる金融緩和にも原因の一端がありましたことは否定できません。  ただ、当時を振り返ってみますと、景気回復が強まる中で物価の安定基調は維持されておりましたし、また為替円高のデフレ的な影響が強く懸念をされておりまして、国の経済政策面でも大幅な経常黒字是正とか円高の回避が優先的な課題とされておりました。そういった中で、金融政策運営面でもぎりぎりの選択を迫られたものと理解しておりますが、結果として長期にわたる金融緩和がバブル発生の原因の一端となったであろうと考えております。
  226. 関根則之

    ○関根則之君 大蔵大臣、日銀法の改正、近く国会に提出されると思いますけれども、いつごろになりそうですか。
  227. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 十一日です。
  228. 関根則之

    ○関根則之君 今回の改正によって、日銀が機能することによって二度とバブルが起こらないようになるかどうか、いかがですか。日銀と大蔵、どうぞ。まず日銀で結構です。
  229. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもといたしましては、バブルの反省も踏まえまして、資産価額の動向などにも十分留意をいたしながらインフレなき持続的成長を目的としまして政策運営を図っていくという考え方をこれまでも繰り返し申し述べてきたところでございます。  私どもといたしまして、先ほど申し上げましたように、バブルの発生につきましては、金融も一つの要素ではございますが、それだけでなく社会全般に過度の楽観論が支配的になったというようなときに発生しやすい。その過程は相当複雑であると存じておりますけれども、私どもはそうした事情も念頭に置きながら、今後制度改革の基本的な考え方にのっとって適切な政策運営を図ってまいりまして、新しい時代における中央銀行の責務を果たしてまいりたいと思っております。
  230. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) もう松下日銀総裁の言われたとおりでありまして、金利は専管でございます。しかしながら、議院内閣制における国民への責任という意味で内閣の連帯、また国会への報告、これは当然あるわけでございますから、そういうことの中で万全を期されるものと期待します。
  231. 関根則之

    ○関根則之君 日銀法の改正があったからといって、すぐにバブルが絶対に二度と発生しないということにはどうもなりそうもありませんけれども、ひとつぜひ万全の体制で金融政策をやっていただくようにお願いをしたいと思います。  ところで、この前のバブルの発生について、ぎりぎりの選択であった、しかし金融の緩和が少し行き過ぎていたんじゃないか、そんなお話がありましたけれども、そういう金融政策をやってきた日銀が、だれか責任をとった人がいますか。
  232. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまも申し上げましたように、前回のバブルは金融も含めましてその他のさまざまな要因が複雑に絡み合って発生したものでございますので、ある特定の措置がその原因になったという意味での責任の解明は非常に難しい事情にあったと存じます。  そこで、私どもといたしましては、個人の責任ということよりも、バブルの反省として、その経験を踏まえまして、今後資産価額の動向にも十分に注意をいたしながら金融政策の運営を図ってまいるようにしていく考えでございます。
  233. 関根則之

    ○関根則之君 特定の人の責任じゃないからだれも責任とらなかったということですが、今度は日銀法が改正されるわけですから、きちっと責任をとれるようなそういう改正がなされると思いますけれども、それは大丈夫でしょうか。
  234. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 改正法案、明日提出予定でございますが、現在準備中でありますけれども、日本銀行の金融政策については、政策委員会の議事要旨の公表を通じましてその政策決定の過程を明らかにするという方向でございます。こうした政策決定の透明性の確保が、万が一日本銀行の金融政策に問題があった場合もそうした政策の決定過程が明らかになりますので、その意味で責任の所在は明らかになったものと考えるわけであります。
  235. 関根則之

    ○関根則之君 オレンジ共済の問題に移ります。日銀総裁、結構でございます。  この前の参議院の選挙におきます新進党の比例名簿の順位のつけ方をめぐりましてはいろいろな問題が出ているわけでございます。特に新進党では何か新人のコンテストをおやりになった。その結果、合格した人合格しなかった人いるんでしょうけれども、これは大丈夫だというので、いわば試験を免除されて無試験でパスした人が十六位にランクづけされた。逆に、やっぱりもう一回というかきちっと試験をする必要があるということで試験を通って合格したのでしょう、その方が。友部さんはそういう方ですけれども、十三位だと。それから、水島さんですか、この方は試験を受けたかどうかわかりませんけれども、割かしいいところにランクされておる。少なくも新人コンテストの結果と全然リンクしていないというような問題なんかもあるようでございます。  そこで、特に今までいろいろ問題が出ておりますけれども、最近また報道等にも出ておりますけれども、県知事の選挙に関連して相当多額の献金がオレンジ共済ないしは友部サイドから行われているんじゃないかということが言われております。三重県の知事選挙につきまして陣中見舞いに百万円の献金が行われたと。これは何か御本人も認めているというようなことも言われておりますけれども、自治省、これは届け出はなされておりますか。
  236. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 御指摘の三重県知事選挙に関連いたします北川正恭氏の選挙運動の収支報告書には御指摘のような記載はございませんし、また同氏の関係政治団体、私どもで確認ができます政治資金管理団体あるいは指定団体すべて確認をいたしましたが、御指摘のような記載はなされておりません。
  237. 関根則之

    ○関根則之君 何か、本人は認めているにもかかわらず収支報告がなされていないということは、これは政治資金規正法上やっぱり問題があるんじゃないかと思います。  それで、岩手県と秋田県の知事選挙におきましても、何か百万円単位の献金がなされていたんじゃないかと言われておりますけれども、これについては収支報告、いかがですか。
  238. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 秋田県知事選挙の佐藤敬夫氏、それから岩手県知事選挙の増田寛也氏、両氏の政治資金収支報告書には記載はございませんし、また関係いたします資金管理団体あるいは指定団体、いずれにも御指摘のような記載はございません。
  239. 関根則之

    ○関根則之君 いずれもないということですけれども、初村謙一郎さんに平成七年の四月と平成七年の七月にそれぞれ一千万ずつ、合わせて二千万が渡されたんじゃないか、こういう報道もあるんですけれども、これについての初村さんの資金の収支報告には何か記載がありますか。
  240. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 初村謙一郎氏の関係政治団体、私どもが確認できますのは、同氏の資金管理団体であります二十一世紀政治経済懇話会でありますが、この届け出先であります長崎県選挙管理委員会に確認をいたしましたところ、御指摘のような記載はなかったという報告を受けております。
  241. 関根則之

    ○関根則之君 いろいろな今まで出た話を総合しますと、相当多額のお金が動いているということになると思うんですよね。まだ全容は解明されていないわけでございますけれども、オレンジ共済系列から新進党へ流れていった金は総額で、それぞれ一つ一つ問題になったものだけを合わせましても九千四百万ぐらいになる、一億近い金額になるということでございます。  そこで、この前も佐藤議員からお話がありましたけれども、それだけ多額の資金が詐欺によって集められた、そういう資金が新進党に渡っておるということに対して新進党としてやっぱり責任をとってもらいたい、そういう要請が自民党の方で、私もプロジェクトチームに入っておりますけれども、大変切実な訴えとしてなされているわけでございます。  弘前支部長の藤田さんから出てきている要請書のようなものでございますけれども、「組合員の了解もなしに、いわばドロボウした金を新進党は受け入れたわけです。一般的にいって盗んだ金を貰った場合は返済するべきが通例です。新進党は頬かむりして猫ばばをきめこむつもりでしょうか。天下の公党のするべきことでありません。」、ちゃんと返してもらいたい、喚問でも何でもしてけりをつけてくれ、こういう要請がなされております。  そこで、ちょっと自治省にお伺いいたしますけれども、政党交付金がありますよね。詐欺によって得られた金がずっと渡っていって新進党に行っているとすれば、新進党に対して仮に請求権が出た場合を想定いたしまして、政党交付金は差し押さえの対象になりますか。
  242. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) あくまでも一般論でございますが、政党交付金は使途が特定をされておりませんので、損害賠償等に使用することは可能でございます。  それから一方、差し押さえでございますが、過去の判例を見ますと、国庫補助金であるからといって差し押さえができないという考え方には立っていないようでございます。物によって差し押さえが可能な補助金もあるということでございまして、交付の趣旨からして差し押さえを禁止する趣旨のものであるかどうかということが問題になるようでございますが、一般論として言えば政党助成金が損害賠償に使われることも可能であるし、また特段差し押さえを否定するような根拠は私どもの段階では見当たらないというふうに考えております。
  243. 関根則之

    ○関根則之君 法務省、いかがですか。
  244. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 民事執行の手続上、金銭債権というのはもちろん差し押さえの対象となるというのが一般でございますが、解釈上、債権の性質によっては差し押さえることができないものがあるというふうに考えられております。  御指摘の政党交付金につきましては、自治大臣の交付の決定等の手続を経て政党に支払われるもので、その請求権は金銭債権に該当するものと考えられますが、今申しました解釈論上差し押さえをすることができるかどうか、これは政党助成法の規定する政党交付金の趣旨、目的等に照らして定まるものでございまして、差し押さえ命令を発する裁判所において判断される問題であろうと考えております。  したがって、行政当局の立場として、どちらの判断になるかということは御答弁申し上げかねる問題でございます。
  245. 関根則之

    ○関根則之君 それはおかしいんですよ。すべての法律の具体的な適用というのは裁判官が決めるので、あなた方が決めることじゃないから、そういうことで議論をするんだったら、役所に対して法律の解釈を聞くということは一切無意味になっちゃうんですよ。  そうじゃなくて、一般論として、こんなものは損害賠償請求権なんですから、その債権の実行として差し押さえの対象になるなんというのは当たり前の話なので、そこを確認しているんです。もう一回民事局、どうぞ。一般論で。具体の裁判のことを言っているわけじゃないよ。
  246. 濱崎恭生

    政府委員(濱崎恭生君) 先ほども触れましたように、金銭債権は一般的には差し押さえの対象になるというものでございます。
  247. 関根則之

    ○関根則之君 それでは、こういう問題につきまして捜査の状況ですけれども、詐欺によって得られた資金のいわゆる出のところ、集めたところの方もまだ必ずしも明確にはなっていないようですけれども、出の方の捜査はその後どういう状況になっておりますか、警察。
  248. 山本博一

    政府委員山本博一君) 現在鋭意捜査に努めておるところでございまして、いつも答弁をさせていただいておるところでございますけれども、詐欺において取り込みました金額の解明、さらにはその使途先の追及ということを中心に鋭意捜査に努めておるところでございます。  以上でございます。
  249. 関根則之

    ○関根則之君 警察当局は真剣に、一生懸命捜査に当たっているということでございますが、自治大臣国家公安委員長から、この捜査の進め方につきましての決意といいますか、徹底的な捜査をやるということにつきましての御決意を伺いたいと思います。
  250. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 衆参両院でたびたびお尋ねをいただいております。  警察はいろんな意味で捜査をするわけでございますが、大変多額のかつ広域の詐欺でございます。そして、その集めた金をどう使われたというか、どこにどうなっているのかということが何よりも被害者救済にもつながるという前提で、使途についても鋭意捜査を進めているものと承知をしております。  また、その使途の段階で公職選挙法二百二十四条の三に違反するというような報道等もなされているようでございます。当然これらも視野に入れ、また一方では政治資金規正法に違反するという事実もたびたびいろんな方々から提起をされているわけでございますので、そういう点も視野に入れて警察は鋭意捜査しているものと承知をいたしております。
  251. 関根則之

    ○関根則之君 候補者選考に関する罪の問題もきちっと視野に入れて捜査を進めるということでありますから、ぜひひとつしっかりやっていただきますように重ねてお願いを申し上げておきます。  比例順位十三位の友部の問題がずっと前面に出てきておりますけれども、どうもいろいろほかにも多少問題があるんじゃないかというような感じがこのごろしてきているのが水島議員のケースだと思います。  そこで、自治省に対してお伺いをいたしますけれども、未来医療という政治団体があると思いますが、これは代表者といいますか関連した政治家はどなたですか。
  252. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 未来医療は水島裕氏の資金管理団体でございます。
  253. 関根則之

    ○関根則之君 この未来医療から、細川さんの関連の政治団体に対しまして、平成六年ないし七年で何か献金の収支報告は出ておりますか。
  254. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 未来医療からは、平成六年の収支報告書に、寄附金といたしまして、細川護煕氏の改正前の政治資金規正法に基づきます指定団体でありますフォーラム「二〇一〇」という政治団体に三百万円支出したという記載がなされております。
  255. 関根則之

    ○関根則之君 新進党参議院比例代表選出第三十三総支部というのがあります。これは多分友部さんがその支部長をお務めしていらっしゃるんじゃないかと思いますが、その団体から平成七年度分として新進党関連の支部なりあるいは何かはかの団体に対して寄附金が支出をされていると思いますけれども、収支報告上はどうなっておりますか。
  256. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) お尋ねの新進党参議院比例代表選出第三十三総支部の代表者は水島裕氏でございまして、これにつきましては、平成七年の収支報告書におきまして、寄附金といたしまして新進党に対して二十万円、新進党熊本県第一総支部に対しまして六百万円、新進党熊本県第四総支部に対して二百万円、新進党熊本県第五総支部に対して二百万円支出したという記載がなされております。
  257. 関根則之

    ○関根則之君 失礼しました。この三十三総支部は水島さんが支部長でございます。  ところで、大分大きな金額の献金が新進党系列になされているわけですけれども、平成八年度の収支報告はまだ出てきておりませんか、この三十三総支部からは。
  258. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 平成八年の収支報告につきましては三月末までに提出をするということになっておりまして、まだ確認をいたしておりません。
  259. 関根則之

    ○関根則之君 いずれにいたしましても、相当多額の献金がなされている。そのことが何を意味しているのかということにつきましてはこれから私どもはしっかり事実解明をしていかなければいけない課題だな、そんなふうに思っております。  ところで、水島裕さんは、聖マリアンナ医科大学ですか、そこの教授ということでございますが、いつごろから教授になり、今やどういう地位にある人であるのか。文部省
  260. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 現在、聖マリアンナ医科大学の教授であるという事実は把握いたしておりますが、いつからということは承知しておりません。
  261. 関根則之

    ○関根則之君 聖マリアンナ大学というのは国庫補助を受けているでしょう。平成七年度の国庫補助金の額は幾らですか。
  262. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 聖マリアンナ医科大学に対する補助金でございますが、平成七年度におきまして私大等経常費補助金にいたしまして二十五億八千九百万一千円、それから私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助金といたしまして一億四千八百十六万円、それから私立大学研究設備整備費等補助金ということで一千四百八十七万円が支出されているものでございます。
  263. 関根則之

    ○関根則之君 二十七億円もの国庫補助金が交付されているような大学なんですから、その運営等については文部省も経理に不正なり疑惑があるようなことはないかということをしっかりと調べていただいているんだと思います。  この大学の中にエルティーティー研究所というのが何か同居しているようですけれども、これはいかなるものでございますか。
  264. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) ただいま御指摘の学校法人聖マリアンナ医科大学とエルティーティー研究所との関係につきまして、詳細は承知しておりません。
  265. 関根則之

    ○関根則之君 既にもう数日前の新聞にもこのエルティーティーを通じてどうも政治献金が細川元総理サイドに相当多額の、この記事によりますと三千五百五十万円流れている、こういう記事が出ているぐらいなんですから、二十七億もの補助金をもらっているそういうところの敷地の中に存在しているその法人か何かがどういう動きをしているのか、そのくらいのことをやっぱり調べておかなきやおかしいと思うんですが、全然調べていないということですか。
  266. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 今後学校法人から両者の関係につきまして事情をよく聞いてまいりたいと考えております。
  267. 関根則之

    ○関根則之君 何をぐずぐずしているんだというような感じですけれども、まだ調べていないというのではしょうがないと思いますが、今後しっかり調べていただきたいと思います。  そこで、水島さんはこの聖マリアンナ医科大学の難病治療研究センターの主任者というんですか教授のようでございますが、そことエルティーティー研究所とは共同研究などをやって非常に密接な連携を保っておるということのようです。何かエルティーティー研究所というのは実質的に水島さんが責任者のような形になっているんじゃないかと思いますが、そこもわかりませんか。
  268. 雨宮忠

    政府委員(雨宮忠君) 聖マリアンナ医科大学に附属研究所といたしまして難病治療研究センターというものが置かれているのは事実でございます。いわゆる企業として報道されているわけでございますが、そことエルティーティー研究所との関係がどうなのか、それから先ほど来の聖マリアンナ医科大学自体との関係はどうなのか、これらにつきまして承知しておりませんので、今後事情を聞いてまいりたいと考えております。
  269. 関根則之

    ○関根則之君 今後しっかりその辺のところを調べていただく必要があると思います。特に、補助金の使途との関連で何か変な問題でも起こってきたら大変なことになりますので、お願いを申し上げておきます。  ところで、厚生省、医療問題新政策研究会という会のことを御存じですか。これはどんな委員構成なりでどんな活動をなさっていらっしゃるか、御説明ください。
  270. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 先生御指摘の研究会でございますが、厚生省として詳細は承知してございませんけれども、入手いたしました平成六年九月九日付の同研究会の医学・医療問題新政策案という文書によりますれば次のとおりであると承知をいたしております。  まず、医療問題新政策研究会は医学医療に関する政策提言を行うシンクタンクを目指して設立されたものであること。同研究会は水島裕聖マリアンナ医大教授ほかを世話人として医学関係者などの十六名から構成されているものであること。また、同文書では六つほどの検討テーマを掲げておりまして、長期ビジョンに基づく画期的な医薬品の開発から医療情報ネットワークの推進、がん、エイズ、難病治療開発、患者への医療医学情報の提供、高齢者医療、保健医療に関する意識改革という六項目から成る提言がその文書において行われたところでございます。
  271. 関根則之

    ○関根則之君 今、委員は十六人というお話でしたけれども、これはいつ時点の委員の数でありますか。
  272. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 平成六年九月九日付の同研究会の文書による資料でございます。
  273. 関根則之

    ○関根則之君 これが非常におもしろいんですよね。平成六年二月二十四日にはまた全然別な委員の名簿があるんです。その名簿によりますと、新進党系の政治家も大分入っているんですが、先ほど示していただいた、私の方へ文部省からいただいた資料によりますと、その辺の系統の人たちが全部抜けちゃっているんですね。これはどういうことなんですか、改選がその間にあったということですか。
  274. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 申しわけございません。承知いたしておりません。私どもは、水島裕議員の質問に際しまして、同議員から関連資料として入手した資料でございまして、平成六年九月九日付の文書だけいただいております。
  275. 関根則之

    ○関根則之君 平成六年二月二十四日付の役員の構成の表があるんですが、それによりますと、世話人は同じです。幸田さんと高久さんと水島さんという方なんです。顧問の中には鴨下一郎さん、円より子さんが入っている。そういう団体なんですが、その中の幸田正孝さんという人はどういう人ですか。
  276. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 幸田正孝氏は私どもの元厚生事務次官でございまして、この一月まで年金福祉事業団の理事長をしておりました。
  277. 関根則之

    ○関根則之君 年金福祉事業団というのは特殊法人ですよね。公共的な目的のために一定の一どんなことをする団体ですか。
  278. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 年金の積立金の還元福祉事業を行う団体でございまして、具体的には積立金の自主運用事業、それから年金の住宅の融資事業、それから年金の担保事業、それから大規模保養基地の運営、こういったものをいたしております。
  279. 関根則之

    ○関根則之君 したがって、そういう仕事というのはともかく公的な仕事ですよね。公的な仕事である以上、当然公正に政治的に申立てやっていかなければいけない、そういう団体に要請される性格を持っているものであろうと、そういう感じがするんです。そういう性格の中立性を持って公正公平に業務執行をやらなければいけない事業団の理事長さんが、こういう特定の政党の国会議員さんたちが何人が入ってきている、そういうところで世話人役をやっていくということは私はちょっといかがなものかと思いますけれども、厚生省はいかがですか。
  280. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 私ども、この研究会を十分承知いたしておりませんけれども、平成四年か五年にできて、二年ぐらい活動したというふうに聞いております。その中で、二回ぐらい会合を開かれたというふうにお聞きして、提言をまとめたと、こういうふうに聞いているわけでございまして、学識経験者の一人として参加ということでございますので、必ずしも事業団の性格に反しないのではないかな、こういうふうに感じております。
  281. 関根則之

    ○関根則之君 いかがでしょうか、厚生大臣。一向に差し支えないという、役人の……。
  282. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 役人は政治的活動を厳しく制限されておりますから、普通の勉強会ならともかく、政治活動についてはきちんとけじめをつけなきゃいけないと思っております。
  283. 関根則之

    ○関根則之君 政治活動についてはきちんとけじめをつけなければいけないと、こういうお話がありましたけれども、大変突っ込んだ答弁のようではありますが、やや一般論のような感じがしないでもない大変聡明な大臣の御答弁だと思います。  そこで、内容をちょっと私申し上げますけれども、この幸田さんが司会をして、平成六年の二月二十四日に、場所は赤坂プリンスホテルクラウンルームでこの研究会というのをやっているわけです。その中に出てきたのは、先ほど申し上げましたように、水島裕さんは当然入っております、これは世話人ですからね。それから、鴨下さん、円さん等がメンバーとして入っていらっしゃる。  そこで、その議事録というか簡単なこれはメモみたいなものですけれども、司会は幸田さんがやっているんです。幸田さんというのはまさに事務次官の卒業生です。そこでやっているのが、まず水島先生が講演をなさったようでございまして、ともかく日本の医薬品の開発は欧米に比べて大変おくれているようである、だからこれからちゃんとやっていかなきゃいけないということのようでございますが、その中で「極めて画期的医薬品については、厚生省での審査上また薬価上で十分のメリットをあたえること等の政策がぜひ必要である。」というようなことも御講演なさっていらっしゃるんですよ。  相当政策の指向性を、勉強していい医薬品を開発することは結構だと思うんですけれども、どうも薬価上でのメリットをちゃんとつけてなきゃいけないというような発言をなさっておる。  それから、しかもその中に、このメンバーの中には日本の有数の製薬会社の皆さんが入っているんですよね。河村喜典さんですか、これは三共という会社の社長さんのようですし、それからまだほかにもございますけれども、山之内製薬の森岡茂夫さんという方も、会長さんですか、入っていらっしゃいます。そういったのがずらっとあるんですけれども、一々は申し上げませんが、そういう状況の中で幸田さんが司会をなさるということは、大臣いかがでしょうか、客観的な状況から。
  284. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は、今初めて聞いたものですから、これが純粋なる勉強会なのかあるいは政治的目的を持った会なのか、今まだ定かに実情を把握しておりません。そういう状況でありますので、何とも言いようがないと。
  285. 関根則之

    ○関根則之君 さらに、この総会には時の総理の細川さんからメッセージが届いているんですよ。それで、それを代読したのが永田良三さんですよ。永田良三さんというのはどこかで聞いた名前だなと思って調べてみたら、よくわからないんですよ。よくわからないんですが、何かフォーラム「二〇一〇」という先ほど自治省の方からお答えがありました、これは旧法の段階だと思いますが、細川さんの指定団体の代表者をやっているというようなことがわかったんです。  自治省、今の私が申し上げた永田良三さんのいわゆる政治団体上のポストといいますか地位はわかりますか。
  286. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 今お話のございましたフォーラム「二〇一〇」の代表者として届け出がなされていたということでございます。
  287. 関根則之

    ○関根則之君 そうすると、フォーラム「二〇一〇」というのは、これはもう細川さんの指定団体ですから、まさに細川さんのぴったりそばにいらっしゃる方ではなかろうかと、そういうふうに思います。その永田良三さんが代読をして、文章の内容は長いから、時間ありませんので一々読み上げられませんけれども、「この研究会は政治的には無色と聞き及んでおりますが、そういう公平で中立的立場から、」政策立案をすることは大変結構なことだと言って、大いに頑張れというような感じのメッセージを出しているんですよ。  さっき読み上げたように、大体は細川総理当時の与党の皆様を中心に入っているので、こんなところの団体が政治的に中立だなんてとんでもない話なんですね。非常に偏った物の考え方、運用をなさっている研究会ではないかというような感じがいたします。  そういう点からいたしまして、厚生大臣、これはこのまま非常に不明確なまま置いておくということはやっぱりよくないと思いますので、徹底的に調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  288. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 調査いたします。
  289. 関根則之

    ○関根則之君 大変信頼を集めていらっしゃいます厚生大臣が、調査しますと、一言短く、しかし重い御答弁をいただきましたので、しっかりひとつ御調査いただきますようお願いを申し上げます。  ところで、今まで申し上げましたような、オレンジ共済に関連してこの前の参議院議員選挙の名簿作成の前後にわたって初村謙一郎さんに対してオレンジ共済から相当の資金が渡っているんじゃないか、献金が行われているんじゃないかというようなことも言われておりますので、初村謙一郎さんにつきましては既にもう予算委員会の理事の皆さんの中で証人として喚問をするというお話が自民党サイドから出されておって御協議が進んでいらっしゃるという話をお聞きしますが、委員長、なるべく早くこれは実現をしていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  290. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 証人喚問問題についてはそれぞれの会派から要求がございまして、ただいま理事会において協議中でございます。
  291. 関根則之

    ○関根則之君 それから、今ずっと申し上げてまいりました水島裕さん、現在参議院の議員でございますので、議員である以上、やはり私どもとしては議員の立場というものをしっかり尊重しながら慎重に取り扱いを考えていかなきゃいけないと思います。しかし、今ずっと申し上げてまいりましたようないろいろな問題が出てきているわけでございますので、証人喚問をして究明をしていくに値するような問題をはらんでいるんじゃないか、私はそんな感じがいたします。  それからまた、先ほどの医療問題新政策研究会というものが存在をしておって、今でもあるようでございます。  これは現在でもありますか、ちょっとそこだけお答えください。厚生省。
  292. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 必ずしも十分確認したわけでございませんけれども、一、二の当時の委員の方に聞きますと、六年九月ごろで終わっているという話もございます。
  293. 関根則之

    ○関根則之君 わかりました。それはしっかり確認してからまた報告をいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、その研究会には、先ほど申し上げましたように、いろいろな関係の薬品会社の代表の皆さんも入っていらっしゃるようでございまして、そういったことも必要に応じて参考人なりあるいは場合によれば証人喚問というような形で実態を解明していく必要があるんじゃないかと、そういうふうに私は考えております。ただ、もちろん証人喚問というのはそう軽々に要求をしたりあるいは決定をしたりすべきものではございませんので、その辺のところを十分わきまえながら今後やってまいりたいということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  294. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で関根則之君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  295. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、高橋令則君の質疑を行います。高橋令則君。
  296. 高橋令則

    ○高橋令則君 平成会の高橋でございます。  私の前に質問された関根委員からは長年御指導をいただいておりまして、めり張りのきいた御質疑を伺っておりましたが、そのようにできるかどうか非常にじくじたるものがありますが、これから総理及び閣僚の皆様方に質問させていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  私は、まず行革をテーマにしまして、その中でも地方分権の推進中心質問させていただきたいと思っておりますが、その前に、いわゆる総理が言われる六つの改革を必要とするような我が国の厳しい行財政環境の中にありましても、やはり政策的に我が国として重点的に配慮しなければならない分野といったものがあると思うんです。それは私は、科学技術の振興ではないか、厳しい中でも科学技術は本当に大事にしていかなければならないのではないか、このように思っております。  総理は科学技術会議の議長でもいらっしゃいますので、そういう厳しい環境の中でどのようにこの科学技術振興に取り組んでいかれるのか、御所信をまず承りたい、このように思います。
  297. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これからの日本、新たな産業分野を切り開いていこうといたします際、当然のことながら規制緩和、撤廃といった作業の中から、既に力を持ち、それが我が国の持つ官の、あるいは業界の、いずれにせよルールによって妨害をされていたものが取り除かれて新たな産業が興る分野、あるいは現在の規制において立ち上がれないだけで、それがなくなれば新たな分野として業が成立し得る、そうしたものと並んで我が国の科学技術研究開発の中から新たな事業分野を起こしていかなければならない、こうした環境に置かれていることは議員も御指摘のとおりであります。  そして、その限りにおきまして我々は科学技術創造立国ということを一方において申しております。本日も御論議が一部の中でございましたように、ややもすると我が国の科学技術分野への投資というものが民の応用技術に対する投資を中心として行われる。本来、公の受け持つべき基礎科学の分野においてその投資が決して多いとは言えなかった状況の中から、特に基礎科学分野における思い切った投資を必要とするという御論議がありました。私はこれらの点はそのとおりだと思います。そして、当然のことながらテーマを洗い、期間を設定しといった努力は必要とすると思います。しかし、科学技術というものが今後の研究開発の中で大きなウエートを占めるべき分野であることは間違いがありません。
  298. 高橋令則

    ○高橋令則君 今重要性について総理は述べられたわけでございますが、私はまさに同感とするものでございます。  平成七年に科学技術基本法ができ、そしてこれに基づいて科学技術基本計画ができました。五年間で十七兆円という巨額の額が示されているわけでございます。平成八年度、これは補正を含めてですけれども三億円余、それから平成九年度、当初予算で三億円、六億これまで計上されてきております。今後十一億が必要になるわけであります。しかしながら、これはもう大変な努力を要することではないかなと、このように思っております。  金額的なことを今申し上げるわけではありません。私はこの際少し古い話を申し上げますが、戊辰の役の後、越後の長岡藩で米百俵の話がございます。御存じのように、長岡藩が戦いに敗れて、そしてあれは十二万石が三分の一ぐらいになったんですか、もう塗炭の苦しみを味わうような苦しみの中で当時の大参事であった小林虎三郎という人が、その支藩でしたか、三根山藩から贈られた米百俵の処置をめぐって、今食べてしまったのでは何にもならない、これは教育に投じよう、学校を建てようということで、その後の同藩の人材輩出の因をなしたというふうに感動的に、これは山本有三先生の本ですけれども、書いてあります。私は、相当前に読ませていただいて、また確認をさせていただきました。  私は、今非常に我が国は厳しい状況、行財政環境の中にありますが、やはり古人のこのような見識といったものに学んで、そして厳しい中にあっても精いっぱいの努力をしなければならない、このように思いますが、総理の御見解をもう一度お示しいただきたいと思います。
  299. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 幕末から維新史を見ましたとき、越後長岡藩というのは独特の人材を輩出しております。河井継之助あるいは山本帯刀、そしてその山本家を継がれた高野五十六、後の山本五十六、その中に小林虎三郎も数えられる。私は越後の方々が、長岡の方々が誇られる人材であったと思います。  そして、将来というものに、人をつくるということにその投資を向けた、長岡藩独自のやはり士風の中からそのようなものが育った、私はそんな感じでこの話を受けとめておりました。
  300. 高橋令則

    ○高橋令則君 ぜひその思いを科学技術振興にお向けをいただきたいということを重ねて申し上げて、次に進みたいと思います。  最近、数日前ですけれども、報道でいわゆるクローン技術が相次いで取り上げられました。御承知のように、イギリスでクローン羊が誕生した。そうしたら、アメリカで実は猿ができておったという話が伝えられております。クローン技術は、いわゆるライフサイエンスと言うのは変ですけれども、こういう分野では非常に画期的な技術であると言われております。しかしながら、人間への応用などの問題から大きな懸念も持たれております。  まず、政府委員から、伝えられるこれらの実験例の内容、それから技術的な意義、そしてまた今後の利活用の可能性の問題、最後に、我が国ではこの種の研究はどこまで進んでいるのか、その現状について説明をしていただきたいと思います。
  301. 落合俊雄

    政府委員(落合俊雄君) 御指摘ございました、今回報道されましたイギリスのロスリン研究所の羊に関する研究でございますが、成長した羊の乳腺の細胞の核を、核を取り除いた別の未受精卵に入れて成長させ、その結果、もとの成長した羊と同じ遺伝的性質を持つ子羊が得られたというものでございます。  また、アメリカのオレゴン霊長類研究所の猿に関する研究でございますが、これは発生初期段階の猿の受精卵から得られる細胞の核を、核を取り除いた別の未受精卵に入れて成長させ、その結果子供の猿が得られたというようなものでございます。この研究は分化が進んでいない発生初期段階の細胞を用いたという点で、分化が進んだ羊の乳腺の細胞を用いて行いましたイギリスの研究の例とは異なるものでございますが、この猿と同様の研究は既に牛などの家畜で行われております。  我が国におきましては、牛などの家畜に関しまして発生初期段階の受精卵を使用する研究が行われておりまして、これらの研究を通じてすぐれた性質を有する家畜を多く育てることができるようになるなど、畜産の生産性の向上の点において画期的な成果をもたらすものと認識をいたしているところでございます。
  302. 高橋令則

    ○高橋令則君 今御説明があったような内容だと私も承知をしております。しかしながら、先ほど申し上げましたように、やはり人間への応用などをめぐって非常に議論の多い、懸念の持たれる技術でもあります。  したがって、今後の我が国のこの問題に対する対応をどうすべきか、こういう問題について科学技術庁長官のお考えを承りたいと思います。
  303. 近岡理一郎

    国務大臣近岡理一郎君) 高橋委員には過般の委員会でも大変科学技術振興のために励ましていただきまして、厚く御礼申し上げたいと思います。  ただいま総理からいろいろ基本的な考え方、また政府委員からは今いろんな事例を挙げましてお答えされたわけであります。この問題につきましては、先ほどの政府委員の話のようにいろいろなメリットはあるわけでありますが、その反面、生命に関する倫理上のいろいろな問題が惹起しております。  したがいまして、現在、科学技術会議におきまして、ライフサイエンスに関する研究開発基本計画を作成するために、生命倫理の問題を含めましてライフサイエンスにかかわる幅広い審議が行われているわけでありまして、今後、この問題につきましては、科学技術会議の審議を踏まえまして、生命倫理の問題に我が国としても適切に対処していかなきゃならないと、このように理解しております。
  304. 高橋令則

    ○高橋令則君 伝えられるところによりますと、文部大臣の諮問機関であります学術審議会が七日の総会でやはり一定の見解と申しますか対応について定められたと、このように聞いております。文部省としての対応を小杉大臣にお願いしたい。
  305. 小杉隆

    国務大臣(小杉隆君) 先ほど政府委員から答弁があったように、家畜の複製をつくるのに大変画期的な技術であるというお話があった反面、科学技術庁長官から今言われたようなマイナス面、重大な倫理上の問題があるということから、去る三月七日の学術審議会におきましては、これからのクローン動物作製に関しての倫理的問題の対応については、指針のあり方を含めて検討をお願いすることにしております。それから、科学研究費補助金の申請があった場合には、人にかかわる課題の問題については採択は当面差し控えたい、こういう決定をいただいたところであります。  今後、学術審議会の状況を見ながら、関係省庁と連絡をとり合って適切に対処してまいりたいと思います。
  306. 高橋令則

    ○高橋令則君 それぞれ各省庁で適切な対応をとられているものと、このように理解をいたしました。  伝えられるところによりますと、クリントン・アメリカ大統領、そしてまたシラク・フランス大統領も、医学倫理や生命、いわゆる人間への応用の問題について非常に懸念を示され、それぞれ政府に対し、あるいは国家生命倫理諮問委員会というのがアメリカにあるようですけれども、そこに検討を命ぜられた、こういうふうに出ております。また、宗教界ではローマ法王が懸念を表明された。欧米では日本以上に大きな影響が出ているというふうに私は聞いております。  日本は背景も違いますから一概には言えませんけれども、我が国の扱いいかんによっては、いわゆる国際的にも、今後の我が国のライフサイエンスの取り組みの進度いかんによっては問題も出かねない、そういう大きな問題でもある、このように思いますので、この件に関して総理に最後に答弁をお願いしたいと思います。
  307. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 多少の脱線をお許しいただきたいと思います。  と申しますのは、きょう議員がこの問題を取り上げられるということを聞きまして、秘書官たちと一つの議論をいたしました。それは、心臓移植が非常に華やかにスタートをし始めたころ、私自身が自分の考え方を整理する上でどうしても結論の出なかった幾つかの移植例についてであります。  当時、南アのバーナード博士を初め、非常に積極的に心臓移植を行うべきであり、脳死を人の死の判定基準として当然のことながら用いつつ移植を行うという一つの流れがございました。逆にアメリカには、人工心臓を研究し、将来人工的に機械で代替し得る道はないかという研究を推進していたグループ、また特殊なケースにおける心臓移植というものを研究していたグループがあったように思います。  そして、その中での幾つかのケースを私は今でも忘れられずにおりますが、その代表的なケースの一つは、このままでは間もなく死亡するという病状の悪化した患者に本人の同意を得た上で霊長類の心臓を移植したケースであります。これは人の心臓と言えるんだろうか、果たして成功するんだろうか。結果的にはたしか一日半ぐらいで、サイズが合わなかったために胸郭内で鼓動するたびに動き、縫合面が破れて亡くなった。免疫が発生どうこうという以前の状況でこのケースは失敗をいたしました。しかし、霊長類の心臓を生体の人間に移植するという可能性を模索する動きはここで誕生したわけであります。  またもう一つは、先天的に心臓に問題のあるお子さんを救うために、出生時に先天的に脳の組織を欠いている赤ん坊を求め、その無脳児の出生を待って、無脳児の心臓を心臓に障害を持つお子さんに移植したケースでありました。結果的に、その無脳児の誕生を待つために時間がかかり過ぎ、体力的にこのケースも失敗をいたしました。逆に、南アにおけるバーナード博士の成功例というものは目をみはるべきものがあったと記憶をいたします。何百日という生存例の大半はその一連の心臓手術から発生をいたしました。ただし、非常に単純に脳死をもって人の死と割り切っておられたという記憶を持っております。  私は、いまだに実は臓器移植法について自分の意見を決めかねております。他の臓器について移植というものは積極的に行われて、人間のために非常に立派な技術だと私は思います。しかし、本当に脳死で人の死を判定してしまっていいんだろうか。私自身の心の中でどうしても答えが出ません。その原因は、実は心臓移植が我が国においても一例行われ、それが相当な問題を呼んだわけでありますけれども、こうした事態から発した疑問であります。秘書官たちも答えが出ませんでした。  そして、私はクローン技術というものを同じような思いで答えが出せずにおります。今幸いに、人に対するクローン技術の活用といった研究は我が国においても欧米においても出ていないと思います。そして、そういう状況の中で、ある意味では、二卵性双生児に対する一卵性双生児という比較の仕方が正しいかどうかわかりませんが、それぐらい自然の摂理で起こるとすれば差があるであろうと。  今回、羊のクローン技術による研究というものが行われました。私はこれは本当に産業技術としても大変なものだと思いますし、先ほど事務方答弁にありましたように、酪農の世界、畜産の世界等に利用された場合には大変なものだと思います。ある場合、極端な言い方をしますなら、医学の分野においてもこれが応用されることによって変わるものはある。あるいは移植手術を必要としないという時代かもしれません。しかし、そこに係る人の生命、生命の倫理というものを考えますとき、私は自分の心の中で簡単に結論が出せる問題ではないと思っております。  科学技術会議の責任者として、昨年の六月、ライフサイエンスに関する研究開発基本計画を諮問いたしました。この中で議論を十分にしていっていただくべき、また国会等におかれてもむしろ党派を抜きにしてある意味では心の中の問題に連動する部分としての御論議をいただくべきものだと私は思います。  長くなって済みません。
  308. 高橋令則

    ○高橋令則君 非常に重い問題として受けとめる、そういう御趣旨に伺いました。私も、臓器移植法案等の勉強もさせていただいておりますが、大変な問題であるというふうに承知をしております。しかしながら、見てみると、このクローン技術は臓器移植問題よりももっと大きな問題があると思うんです。そういう意味で、ひとつ今後まさに他の国の大統領等と同じような真剣な取り組み、そういったものを総理にもお願いしたいと思います。  余談になりますが、私の県には前沢牛という大変いい牛がありまして、こういうのがクローンで出ていっておいしければ物すごくいいんですけれども、まあ委員長も御存じですけれども、間違って私みたいなのがぞろぞろ出てきたんじゃもうとんでもない話になるわけでして、余談は余談として、これはもうまさに国民的な問題、国際的な問題として今後私どもは取り組んでいかなければならぬ問題だと、そのように承知をしております。  次の問題に移らせていただきます。  行政改革、その中でも先ほども申し上げました地方分権関係についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず行政改革に対する決意、これがまず基本でございます。総理は六つの改革を断行するということを再三述べられました。私も所信表明で伺いました。しかしながら、考えれば考えるほどこれはもう大変な問題だ、容易ならざる問題だと、このように思っております。改めてこの席で総理の改革にかける御決意、御熱意といったものをお聞かせいただきたいと思います。
  309. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 事務方に同じ質問の答弁を用意させますとこれだけの量を用意してきます。しかし、一番大事なことは、私の決意いかんにかかわらず、これはどうしてもだれかがこの時期に責任を持つ限り必ずやらなきゃならないことなんだということなんです。そして、それは全部が連動しているものであり、どれか一つだけを手がければそれでこの国のあすが開けるといったものではございません。  今たまたま議員、科学技術を取り上げていただきました。この科学技術の方向づけをしていきますためにも、それにたえられるだけの財政構造をつくらなきゃなりません。また、その中から生み出される研究成果が産業の立ち上げにつながるような経済構造改革規制緩和というものをやっておかなきゃなりません。さらに、それの立地を有利にいたしていきますためにもできるだけ規制の少ない場所が選べるようなそういうことを考えますときには、地方がより有利な条件をつくり出すといった意味で分権の推進も必要になります。そして、何よりもそれだけの負担に耐えられるだけの財政構造を築かなきゃなりません。行政の仕組みも当然変わらなきゃならぬ。実はすべてが重なり合っております。  たまたまこの時期を私が責任を持たせていただくことになりました。時代としてこれを仕上げなければならないことであり、全力を尽くしていきたいと思います。
  310. 高橋令則

    ○高橋令則君 御決意を伺いました。だれがやってもというふうにおっしゃいましたけれども、私はやっぱりリーダーシップをとられる方のやり方によって改革というのは非常に変わってくるんではないかと思うんですね。  歴史的に振り返ってみると、私は歴史は詳しくはありませんが、社会経済システム全体の仕組みを変えていかなきゃならぬなんというケースはそう多いわけではありませんで、古くは大化の改新かなと。それから、戦国時代末期の元亀、天正のころですか、織田信長が軍事そして楽市楽座といった経済のシステムを基本的に変えました。それから、時期を下って明治維新になります。そしてまた、今の我が国の体制をつくっている戦後の復興があります。  こういったことが頭に浮かんでくるわけであります。これもいずれも物すごい犠牲を伴っているんです。おびただしい血が流れている。もう本当にすさまじいと言っても間違いがないわけですが、これらの改革でなされた既存の勢力との葛藤というのは本当に大変なことと思います。当然ながら、今存在するものにはすべてその理由があるという論理を残していたのではブレークスルーできないと私は思います。かといって全くむちゃくちゃにやっていくわけにもいかないというのも、これも人の世の論理だと思います。  そういうふうな歴史の教訓を踏まえ、その時期時期のリーダーが、例えば大化の改新でしたら中大兄皇子でしょうか、織田信長、そして明治維新ですと大久保利通でありましょうか、そういうふうな先人のリーダーとしての勇気、決意といったものをぜひ総理に持っていただきたいと思うのですが、総理いかがですか。
  311. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員がそれぞれに挙げられました場面、私も歴史に決して詳しいわけではありませんが、維新の際には開国への動き、そのまた開国への動きというものをつくり出すだけの外圧というものがございました。敗戦の結果、海外の多くの邦人が引き揚げてくる、それを受け入れる。しかも、国土が焦土と化している中、私どもの世代はまさに辛うじてその時期を覚えている程度の世代でありますが、敗戦後の混乱の中でいかに国を立ち上げるか。しかし、ここには占領軍という抵抗のできない存在がありました。  ある意味では、今そうした存在はありません。あるのは、本日も非常に厳しい御論議をいただきました我が国の少子・高齢化へ向かういや応なしの道のり、そして現実に存在する国、地方を合わせての公債の残高、そして企業が国を選ぶ時代と言われ、我が国を代表するような生産企業が次々に生産拠点を海外に移していく時代、この時代を生き延びていかなければならないという我々の責任があるということにすべては尽きると思います。  そうした中で、私は私の力の及ぶ限りを尽くしてこの時期を乗り切っていきたい、その責任をとってまいりたいと考えておりますが、いずれにせよこの時期をこのままで過ごしていくことができない、この認識はどなたも私は共通にお持ちをいただいているものと思います。痛みは生じます。しかし、その痛みが生じてもそれを覚悟して乗り切っていかなければならないと私は思います。
  312. 高橋令則

    ○高橋令則君 ありがとうございました。  総理の御決意に対して、これは総理はお読みだと思いますが、各紙でさまざまなことを書いております。その中の一節に、今の「状況を乗り越えるためには、首相は、国民に直接、改革の必要性を訴えていく努力を惜しんではなるまい。要は、「行革は、やらなかったら、この日本の明日はない」とまで述べた”危機”の実情を丹念に訴え続けることである。その際は、改革には「痛み」が伴うことも率直に語ることが必要だ。」、このように述べております。  今、総理が言われたことと軌を一にしております。ぜひそういうことで、総理は先頭に立ってこのことを繰り返し訴えて、そして進めていただきたい、このようにお願いを申し上げる次第であります。  それから次に、行政改革地方分権の関係について、総理の御認識を承っておきたいと思います。  地方分権推進委員会の諸井委員長が談話で、行革には地方分権を推進することが不可欠だというふうな趣旨のことを述べられているのを拝見しました。私もそのように思っておりますが、御認識はいかがでしょうか。
  313. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一点だけちょっと御報告をさせていただきます。  先刻、台湾の高確から台北に向かって飛び立ちました遠東航空機がハイジャックされ、現在中国に向かっているという情報が入っております。ちょっと今それをにらみつけておりまして、大変失礼いたしました。  私は、地方分権推進委員会から、昨年のいつごろでしたか、二度ほど作業の途中のお話を伺いました。そのときに、できるだけ具体的なものをいただきたい、そしてすぐに手をつけられるものをいただきたいとお願いをしました。そして、機関委任事務中心にしていただきました項目、たしか二十五ございましたうちの二十二を前倒し、そのほかのものを十ほど年度中にあわせて施行したいということで、今事務方努力を願っております。  私は、規制緩和地方分権と、あえてつけ加えますなら官から民へというものがどの程度ありますか、こういうものが組み合わせられて中央行政をスリム化していく、欠くことのできないものだと思っておりまして、その意味では規制緩和地方分権、そして官と民との役割の見直し、この三つの作業が必要かと思います。
  314. 高橋令則

    ○高橋令則君 総理から地方分権についてその重要性の認識が述べられたわけでございまして、私もそうだと同感の気持ちで聞いておりました。  そこで今、総理地方分権委員会の諸井委員長等とお会いになった話がはしなくもちょっと述べられたように私は聞いたんですが、実は私の手元にある資料によりますと、第一次勧告が昨年十二月二十日に委員長から総理に手渡されたんですね。そのちょうど一カ月前に諸井委員長らと総理が会談をされたということが伝えられておりますが、事実ですか。
  315. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 日時は忘れましたが、今私の方から申し上げましたとおりお訪ねをいただき、お目にかかりました。
  316. 高橋令則

    ○高橋令則君 先ほど、その会談で総理は少しでも具体化できるものからというふうなことをおっしゃったと、こういうように私は聞きました。  そこで、もう一遍お伺いしたいんですが、報道では、総理が、ここでパーフェクトでなくとも実行可能なしっかりとした案をというふうに注文したと報ぜられております。先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、そのようなことでございますか。
  317. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私が、漠然としたものでなく、より具体的なものをとお願いしたことは事実であります。なぜなら、今までもいろいろな角度で地方制度調査会等の当時から分権の議論というものはいただいておりました。そして、それがなかなか進まなかったのが実態であります。分権推進委に作業をしていただく以上、少なくとも機関委任事務についてお答えをいただくならできるだけ具体的なものをいただきたいと、それは私は確かに求めました。  そして、そのいただきましたものを、先ほど申し上げたようにたしか二十五あったと思うんですが、どうやってもすぐにできないのが三つぐらいありました。そして、その中に入っておらなかった項目も加えまして地方分権推進計画をつくる前に前倒してこれを進めたいと思っております。
  318. 高橋令則

    ○高橋令則君 総理は決してそのような御意図じゃないんじゃないかと私は思うんですが、伝えられるところによりますと、総理のただいまの御発言が各省庁に伝わって、実行可能なこととは各省庁の同意が必要という意味だというふうに受け取った官僚はますます抵抗を強めた、このように伝えられているんですね。これもどなたかわかりませんがある委員が、首相の真意はともかく、霞が関がこの発言を既得権死守の格好の口実としたのは事実だと嘆いたというふうにも伝えられております。  これについて総理はどのようにお感じですか。
  319. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) よほど前世の行いが悪かったのでありましょう。私の言うことはすべて否定的にとらえる方が正しいという信念をマスコミの皆さんがお持ちなのかもしれません。  しかし、まじめな話で、私はやはり分権推進委からいただいたお答えが具体性を持ったものであったことは非常によかったと思うんです。だからこそ前倒しもできます。これが具体性を持ったものでなかったら、この意味するものはといって議論をしたらまた時間がかかっちゃうでしょう。少なくとも、いただきました二十五項目だったと思いますが、きちんと具体的なものでした。  そして、すぐに手をつけられないそれなりの理由のあるもの、親の方の施策があり、それを受けてあるものだけにもとが変わらなきゃできないというものが三つありました。しかし、それ以外の二十二は地方分権推進計画をつくる以前に前倒してまいります。そして、そこに書かれていないものも既に自治省の諸君が総務庁の諸君と力を合わせながらそうした努力をしてくれておりまして、そうした項目もあわせて前倒して実施をいたしてまいります。  それが答えです。
  320. 高橋令則

    ○高橋令則君 どうも総理の真意を本当の意味で理解していないマスコミが多いようでございまして、一例を挙げますと、さらにこういうことも書かれてあります。地方分権の第一次勧告案づくりの過程でも首相の発言が官僚に巧みに利用された云々と書いて、首相は火だるまになる覚悟と言うが霞が関はまだ本気とは見ていないのではないか、不退転の決意で行革をやり抜くことをもっと明快な形で具体的に示さなければならないと書いてあるマスコミもあります。  私は総理が先ほどおっしゃったことを十分に理解をいたします。しかしながら、前段歴史の教訓を引いて、歴史に詳しくもないのに申し上げてちょっと恐縮だったんですが、今回の改革はいろんな意味でブレークスルーしなければだめだと思うんですね。既存のいわゆる延長線上の改革では思い切った、総理が今言われるような、火だるまという表現は何か違うんだということを総理がおっしゃったというふうにも聞きましたけれども、先ほど挙げたような歴史上の大改革にならないのではないかという懸念を私は持つんです。  したがって、実行可能な今の制度の延長、その枠内というふうなことであれば、残念ながらこれはもう非常にレベルの高い改革にならないのではないか、歴史上橋本総理は先ほど挙げた幾つかの改革のリーダーと同じように残るということにならないのではないかと私は心配をいたしますが、姿勢の問題としていかがですか。
  321. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員が心配してくださると同じような気持ちを多分マスコミの諸君も持っておるんだろうと思います。  ただ、一つお考えをいただきたい。  今国会、外為法を金融システム改革関係で提案させていただき御審議をいただきます。仮にここでやめてしまうと、その場合、一体この国はどうなるんでしょう。外為法が改正され外国為替管理が行われなくなり、そこで金融システム改革がとまった場合、ここに生まれる市場というものは日本の国民の資産運用の有効な場ではありません。日本の企業が有利に資金調達を行う場でもありません。千二百兆という我が国の貯蓄を海外の投資家が自由自在に資金調達の場にする、そのような市場しか生まれません。  日本人はそんなに愚かでしょうか。私は日本人がそれほど愚かな国民だとは思いません。既に一歩を踏み出し、私は国会でも外為法の改正案は成立をさせていただけると信じております。これがいただけなかったらもっと問題です。しかし、これが通過、成立をした瞬間から条件は全く変わるわけです。次のステップ次のステップと踏んでいかなかったら、日本の市場というものは外国の資金調達の場にしかならない。私はそんな日本が国民の求めるものだとは思っておりません。
  322. 高橋令則

    ○高橋令則君 今金融のビッグバンについて総理が述べられました。私は、この金融ビッグバンについて総理がとられたリーダーシップといったものを私なりに理解をして、そのような勇気ある決断とか指示をぜひほかの方でも示していただきたい、そういうことでお願いをしたいわけでございます。先ほどるる申し上げた霞が関の抵抗に使われるようなそういうことではないリーダーシップをきちんとこの際お願いを申し上げておきたい、このように思います。  次に進ませていただきますが、このたびの地方分権推進委員会の第一次勧告で、機関委任事務廃止が俎上に上ったと申しますか、大きな一歩を踏み出したと私は思っております。この意義は非常に大きい、このように思いますが、この件について行革を担当されている総務庁長官と自治大臣にそれぞれ御見解をお願いしたいと思います。
  323. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 今、総理から非常な御決意のほどが示されました。地方分権もその一つの大きな流れの大切なものであるということは先ほどお話しのとおりでございます。そして、規制緩和、それから官民仕事分担、この三つでできるだけスリムな中央の役所をつくっていこう、そしてまた新しい次の時代に対応できる中央の役所の統廃合といいますか再編成をやっていこうということでございますが、その中で地方分権というのは大変大切でございます。  ただ、私が承知しているのは、第一次勧告で出てきた数字は、機関委任事務を全廃する中で、五百六十一でございますが、そのうち百六十五が対象になって七十一を法定受託事務にする、こういうことになったと私は承知をいたしております。  いずれにいたしましても、そういう形でございますが、もう少し本当は法定受託事務が少ない方がいい、そしてまだあと残っている分が今度の六月か七月までに第二次の勧告をいただけると承知をいたしております。そのときには税の配分その他も含めて勧告をいただけると思っておりますが、法定受託事務ではなくて自治事務ができるだけ多くなるようにぜひ私は期待をいたしておるわけであります。
  324. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 地方分権というのは前から地方自治の関係者が求めていたものであります。行政改革、このたびの行政改革は少なくともこの一年以内の間に急に出てきたものであります。したがいまして、行政改革のために地方分権を行うものとは私は承知しておりません。それとは別に行政改革はやらなきゃいけないし、特に地方行革は国の行革に比べてやはり手薄だったものですから、この際思い切って地方行革もやらなければ国民が求める地方行政改革にはこたえられないと私はいつも訴えております。  ただ、行政改革というのは、総理が申されるとおりどうしてみたところでつらいものであります、苦しいものであります。ただ、それと地方分権とをうまくかみ合わせ、そして地方分権も一緒になされるんだとしたならば、地方行政改革はただ苦しい、痛みを伴うものではなくて、夢のある、ロマンあふれるものになるんだと、こう私は考えて、その旨地方自治関係者にお願いをしております。
  325. 高橋令則

    ○高橋令則君 このたびの機関委任事務廃止を中核とする第一次勧告の内容は、私は意味合いとしては非常に大きいと思っております。先ほど久世委員は八十点ぐらいかなというふうにおっしゃいましたけれども、私は、意義自体は私自身もそう思うぐらい非常に大きいと思います。  内容的には先送りされたものもあり、それから法定受託事務が思っていたよりも多いというふうなことから、個別に言えば不満が残るものもあります。これは地方六団体もそう言っておりますし、私も同じような見解を持っております。しかしながら、いわゆる上下主従の関係から対等、協力の関係へという理念、これはもう画期的なことだと思うんですね。  今まで地方自治法別表改正でもって新しい法律ができますと、これが地方の事務か国の事務かという吟味を、区分けとかいうものを余りしないままにというのは失礼ですけれども、ばっぱっと別表に書き込んで、そして都道府県知事とか市町村長が国の事務の仕組みに組み込んでいくというのが今のやり方なんですね。これができなくなる、できなくなるというか変わるというのは意味としては非常に大きなことだと、私はそう受けとめております。  したがって、この法定受託事務、自治事務という振り分けは今後非常に大切な問題になると思いますし、さらに先ほど久世委員も取り上げられましたけれども、これに対する国の関与、その中でもいわゆる事前協議、合意を要する事前協議、これがかなり散見される、散見じゃなくいっぱいある。これをやはりできるだけ詰めていかないと、本当の意味の対等、協力ではなくて、同じように上下主従の関係ということになりかねないのではないかというふうに思うんですね。これは残念ながら、私がここで言っているだけでなく、先ほど自治大臣がいみじくも言われましたけれども、地方の意識の問題もあるんですね。  したがって、私は決してこれは国だけのせいだとは申しませんが、いずれにしてもこの第一次勧告の扱い、そして今後第二次勧告が出るでしょう、そしてまたそれに基づく分権計画がつくられますね。この過程の中で法定受託事務を限定する。そしてまた、これらの事務に関する国の関与、その中でもいわゆる許認可が合意を要する事前協議に意味なく化けるようなそういうふうなことはしないように、そういう取り組みをしていただきたいと思いますが、武藤長官、いかがですか。
  326. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 法定受託事務は、今のお話で、従来の機関委任事務と私は率直に言ってそんなに変わらないんじゃないかと。ただ、はっきりしてきたことは、従来は法律に基づかないで上下の関係のような形で行われてきた。今回の法定受託事務は法律に基づいて、今お話しのとおりで、国といいますか中央地方が対等の関係、協力の関係で進むというところが非常に変わってきたと思います。  中身について、法定受託事務についてはそんなに仕事の面では機関委任事務と実際は変わっていない点も起きてくるのではないか。地方自治、もうよく御存じでございますからあれでございますが、しかし国民から見てわかりやすい、要は法律なり政令に基づいてきちんとした形で行われるというところが私はプラスではないかと。  もう一つは自治事務でございます。どうも残念ながら、私はどちらかというと事務当局の案に異議を実はまだ唱えておる、現時点でも異議を唱えておるのは、自治事務についてまでなぜ事前協議をしなきゃいけないのかと。法定受託事務は法律に基づいて国がやるべきことをお願いするんですから、これは事前にある程度協議をお願いしなきゃならぬ場合はあると思いますけれども、自治事務というのはもう地方にお願いをしちやうのでございますから、それまで事前の協議をしなきゃいけないというのはいかなるものかという率直な私の考え方をもって事務当局とまだ議論をしておる最中でございます。
  327. 高橋令則

    ○高橋令則君 ただいまの件について、白川自治大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  328. 松本英昭

    政府委員(松本英昭君) 御説明申し上げます。  先ほど総務庁長官の方からお話がございましたように、事前協議、場合によっては合意というような国と地方関係をこのたびの第一次指針勧告においても採用することといたしております。  一つは、今までの機関委任事務制度の中にありましたいわゆる一般指揮監督権、これはもう今後なくなってしまいます。そういたしました際に、やはり国と地方の間で調整の必要なものもあろうかと。国と地方はそれぞれ一体となって一つの目的に向かって行政を行っていくものでございますから、そういうことも事務によってはあるのであろうということで、場合によりましては事前協議、そして特に必要なものに関しては合意ということにいたしているわけでございます。  ただ、先ほども総務庁長官から御答弁ありましたように、この関係は今後は法律または政令に基づいて行われていくというようなことでございまして、その点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  329. 高橋令則

    ○高橋令則君 この種の権限の事務その他についてはもうまさに神様みたいに詳しい松本行政局長ですから信頼はいたします。私も長年おつき合いさせていただいておりますが、しかし説明はそうでしょうけれども、これはやはり多いということは絶対に望ましくないと思うんですね。これはやっぱり形が許認可事務になりかねないと私は懸念をするんですよ。いかがですか、自治大臣
  330. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 御案内のとおり、私も国会に出させていただいて十七年になりますけれども、日本の役人というのはまあしつこいというかしぶといというか、我々がこうしろと言っても、それを手をかえ品をかえて何とか今までと同じようにしたいと、こういうさがなんでしょうか。  しかし、今私は申し上げましたが、そういうことをやっている仕組みでうまくいっているときはいいんだけれども、その手法が今日のこの深刻な状態をつくったというのもあるわけでございます。国民は、政治家は三流だ五流だと言うけれども、中央省庁は一流だと言ってこれを許してきたわけですが、そうでないことがわかったんですから、この際は中央省庁もある程度覚悟を決めて往生際よくきちんとやってもらいたいと私は思っております。
  331. 高橋令則

    ○高橋令則君 大変結構な気概をお示しいただきまして、ぜひ自治大臣はそういうことで頑張っていただきたい、このように思います。  第一次勧告から先送りと申しますか、いわゆる継続検討とされた事項がたくさんあります。それから、それに載っていない事項もあるんですね。したがって、これらの取り組みについては今のような論議も踏まえながらより一層、さっき言われた総理の真意が誤解されないような、霞が関を抑え込んで、そして徹底をさせて、本来の姿に持っていくような環境づくりが大事だと思う。これは総務庁長官にお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、これは石井環境庁長官にちょっとお尋ねしたいんですが、新聞に公害というかいわゆる環境関係については今回合意に達しなくて云々という記事が出ておりました。私は、四十五年、公害対策基本法ができた当時に公害担当を、初代担当を命ぜられまして、環境庁とも長くおつき合いした人間なんですけれども、はてな、環境庁が全部取り仕切らなければこういう事務はできないなとは実は思っていないんです、実感として。したがって、その件について今後どのように対応されるのか、これは石井長官にお伺いしたいと思います。  まず、総務庁長官からお願いします、前段の先送りされた事項とか。
  332. 東田親司

    政府委員(東田親司君) お答えいたします。  先ほど委員御指摘のとおり、今回、地方自治法の別表の数の五百六十一ベースで見ますと、そのうち百六十五ということで、大体三割につきまして結論を得たわけでございます。残りが七割残っているということになるわけでございますが、その際の考え方といたしましては、原則自治事務・例外法定受託事務、まずこういう基本原則をできるだけ貫いていきたいと思っております。  それから、自治事務にした場合の国の関与につきましても必要最小限にするという考え方で対応してまいりたいと思います。そのほかの課題も種々あるわけでございますけれども、私どもといたしましては五百六十一の全部につきまして今回結論を得たいと思って努力するつもりでございます。
  333. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 環境行政の扱いにつきましては今いろいろ御心配をいただいているところでございますが、環境問題というのは地域を越えて広がりがあります。自治体の線引きを越えての問題もあるわけでございますし広域的な扱いということになりますが、それと同時にこれからの長期的な取り組みも必要でございます。そして、環境問題というのは人間の健康、命にかかわる問題でございますので長期的に取り組む必要がありますし、また貴重な自然を保全していくという点については、地域住民を含む国民全体の共通の財産として考えなければならないというふうに考えております。  環境問題の重要性が高まる中で、最近は地球環境の破壊の問題が心配をされておりますし、国民にとって、また日本の将来にとってどうあるべきかということ、そしてどのような方法が最善の方法であるかどうか、このようなことについて、その視点も私は欠かすことができないのではないかというふうに思っております。地域的な視点とか全国的な視点をあわせ持って対応するということも必要であるというふうに思っております。  この環境を保全するための事務の位置づけをめぐりましては、地方分権推進委員会の御専門の委員を初めといたしまして、関係方面においてもさまざまな御意見があると伺っております。環境庁といたしましては、このような環境問題の性質を御理解いただいて、そして環境行政の実態を踏まえた勧告がされますように期待もしているところでございます。また、機会が与えられれば十分説明も行ってまいりたいと思っているところでございます。  機関委任事務というふうなことでいろいろございますが、現在の地方自治体の取り組みの状況につきましてはさまざまな取り組みがございます。それで、地域の実情に応じた多種多様な環境保全の取り組みが行われておりますから、そのことも生かしながら取り組んでいく必要があると思います。しかし、先進的な自治体もありますし、また環境行政に関する予算や組織などにおいても大きなばらつきがあるということも事実でございまして、そのような問題も含めまして地方分権推進委員会における十分な検討が行われることを期待しているところでございます。
  334. 高橋令則

    ○高橋令則君 微に入り細にわたり御答弁をいただきましたが、私は結論的に申し上げますと、公害行政というのは、これは全部じゃありませんが大体地方の方が先に手をつけたという歴史もあるわけですね。したがって、そういうことも踏まえながら、やっぱり地方団体を信用するところは信用する、やらせるところはやらせるということで環境庁もきちんと対応していただきたいということをお願い申し上げておきます。  次に、実はかなり用意したのですけれども、時間がなくなりましたので二問ほどにとどめさせていただきたいと思いますが、歳入の問題でございます。財源確保の問題でございます。  まず、政府委員から、国、地方の税収配分の実態、それから国、地方の歳出の割合の実態を御説明いただきたいと思います。それからまた、地方の歳出と地方の税収の比率の国際比較があれば教えていただきたいと思います。
  335. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) 一番直近ですと六年度の決算によりますが、国税と地方税を合わせた総額は八十六・五兆でございまして、国税が五十四兆、地方税が三十二・五兆、おおむね二対一の割合になっております。それから、最終支出ベースの歳出の計は百四十一・四兆でございまして、うち国が四十八・七兆、地方が九十二・七兆ということで、おおむね一対二の割合になっております。
  336. 湊和夫

    政府委員(湊和夫君) 諸外国の地方税収入の歳入等に占める割合についてのお尋ねに御答弁申し上げます。  これは平成五年の数字でございます。各国は州の連邦制をとっているところ等いろいろございますけれども、便宜上、州も含めて地方税という形で分類させていただきます。  地方歳入中に占める地方税収の割合は、平成五年、アメリカは四六・一%、イギリスは一〇・七%、ドイツは四八・三%、フランスは四四・二%。ちなみに、平成五年の日本の地方税収の割合は三五・二%でございます。  なお、参考までにでございますけれども、近年税収のウエートが日本の場合は大変急速に下がってきておりまして、昭和六十三年ごろでは歳入に占めます地方税収の割合は四四%程度まで達しておったということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  337. 高橋令則

    ○高橋令則君 今御説明をいただきましたが、これらから我が国の特徴を言いますと、私は、国際的に見ても地方の歳出の比重が非常に高い、にもかかわらずこの中での地方税の比重が我が国は非常に低いというのが特徴ではないか、このように思います。累次の行革審の答申ですとか地方制度調査会の答申でもこの乖離を縮めるべきだということが何遍も出ております。したがって、私はこの努力を今回はきちんとすべきだ、このように思います。  その方途は二つ一つはやはり地方税、この税源配分を変えるべきだ。それからもう一つは国庫支出金、その中でもいわゆる補助金と言われるもの、こういったものを中心仕事にあわせて、先ほどの権限移譲とあわせてやっていかなければ本当の意味の地方自治は出てこないというふうに私は思います。  歳入の自治がなければ歳出の自治もない、このように言われるわけですが、この件について自治大臣のお考えを承りたいと思います。
  338. 白川勝彦

    国務大臣(白川勝彦君) 地方の課税自主権の話だと思いますが、どういう地方税を考えても地方の隔たりが出てまいります。  それからもう一つ、冒頭言いましたが、一つの税を立てるというのはそんなに簡単なことじゃありません。今お考えいただきたいのは、地方税という形でいただきますが、たびたび発言しておりますとおり、地方交付税の割合というのは、国税としていただきますが、一方ではその比率、地方に交付すべきものは地方独自の財源という形で認識をさせていただいているわけでございまして、それらを含めれば、私は日本の場合、地方税の割合がそんなに少ないものではない、こう思っております。
  339. 高橋令則

    ○高橋令則君 今、自治大臣がおっしゃったのは、いわゆる依存財源を含めての一般財源のお話であろうかと私は思います。私が申し上げたのは、やはり自主財源、それをふやさないとだめだということを申し上げているわけです。そういう面で、地方と国の税源配分の問題について大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  340. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 一般財源なのか依存財源なのかといいましても、税収という意味では同じであろうと思います。  ただいま事務方が説明いたしましたように、歳入は二対一、歳出は地方が多く二対一、こういうことであります。よって、財源の配分について考えなければなりません最大の問題は、分権と並んで執行していかなければなりませんが、国と地方役割分担に応じた税財源というものはどういうものなのかということを考えなければなりません。それと同時に、財政構造改革は国と地方あわせて今真剣な論議を始め、地方自治団体にも自治省を通じ直接地方六団体に向けてお願いを申し上げておること、御案内のとおりであります。  こういうことを考えてまいりますと、一体となりまして財政構造改革を断行していかなければなりません。よって、これを進めるに当たりまして、地方団体の歳出の見直しとさらに縮減が不可欠になってくるだろうと。こういう観点で、私は担当大臣として財政の健全化に向かうということで二十一世紀によりよき状態をバトンタッチするということになりますと、よけて通れない極めて重要な問題であります。権利があれば義務がございます。そして、お互いがそれぞれのポジションでこの国に、この地方に責任を負うということなくして財政構造改革も未来もないのではないでしょうか。
  341. 高橋令則

    ○高橋令則君 時間ですから終わります。
  342. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で高橋令則君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会