○山本保君 私は、
平成会を代表し、
衆議院送付の
健康保険法等の一部を改正する
法律案及び参議院における修正案に対する反対の討論をいたします。
最初に、今回とられた修正の手法について批判いたします。
本来、議院内閣制においては、
政府が
国民の支持を受けた与党と十分協議をし、閣法原案を国会に提案するものと私は
理解してまいりました。その上で、野党の修正要求あるいは与党側が修正すべき
課題があれば、委員会で十分審議し、修正していくのが議会制民主主義の
あり方です。こうした手続を踏まえ、国会審議を進めていくのが
政府・与党の責任であります。
ところが、今回、与党三党は、厚生委員会の審議をよそに、
衆議院に引き続き、またもや密室での協議を行い、突然修正案を提出、わずか二時間の審議でこれを成立させようとしております。こうした暴挙は断じて許されるものではありません。
もしこのようなことがなされるのであれば、今後、本質にかかわらない周辺の
課題をまず提出し、時間を費やしてから、議論もせず修正案を成立させることが慣行となってしまうのではないでしょうか。
これこそ、議会制民主主義を破壊し、衆愚政治を招きかねないことを
政府・与党各党は厳しく反省すべきであります。
次に、
法案の
内容について申し上げます。
事務が煩雑であるからという理由で、一日ごとの薬剤費計算を
衆議院で改め、それをまた再びもとに戻すというような修正がなされました。このことは、
国民の目から見れば、
政府・与党各党が行ってきたことは全く場当たり的、思いつきにすぎなかったことが明白であります。
私どもは、このような修正案に賛成するわけにはまいりません。
特に、本案で進めようとする
高齢者の入院費
負担は、
現行七百十円を、
平成九年度は一日千円、十年度は千百円、十一年度は千二百円と順次値上げするものであります。これはお年寄りの
生活の実態を無視した弱い者いじめであります。余裕のあるお年寄りからは応分の
負担をというのであれば、もっときめ細かな対応をとるべきであり、一律の引き上げは
医療保険制度の抜本改正とは何の関連もありません。
さらに、来年からでも
改革を
実施する、今回の法改正はそれまでの一時的な対応であると御
説明されながら、今申し上げましたように、細かく三年間の
負担の漸増を定めることは全く矛盾しております。
また、薬剤費
負担はこれまで診療報酬に当然含まれておりますのに、外来時の薬剤費は別途
負担というのは筋が通りません。
しかも、
患者のコスト意識を高めるのであれば、実際にかかった
費用をもとに算定すべきところを、薬の量とは
関係なく種類数だけで算定するということでは、正確な情報提供にもならず、抑制効果があるとは
考えられないのであります。
そのほか、お年寄りの外来
負担の実質的倍増、また、被用者の
保険料の引き上げ等、抜本改正とは全く無縁の、単に一時的に
財政赤字を糊塗するものと言わざるを得ません。
政府案の提案理由においては、
医療保険制度の安定的な
運営の
確保と述べておりますが、そのためには、審議で明らかになったように、老人
保健制度の
見直し、あるいは
医療の
需要と供給の調整のため、医師数やベッド数の適正化、
医療費二十七兆円余の三〇%を占める、そして一兆二、三千億円の薬価差益や新薬シフトを生む薬剤費の
見直し、診療報酬体系の
見直し等々の方策を具体的に示し、そのりち何を最初に着手するかの優先順位を決めることこそが国会の仕事のはずであります。これらの構造的、抜本的な
改革を先送りし、
国民負担増を第一歩とする改正案がどうして多くの
国民の
方々に
理解していただけるでありましょうか。
さらに、
総理は、
国民負担率を五〇%を超えない、四五%を目途に抑えるとしておりますが、このために進めるべきことは行
財政システムの内部
構造改革のはずです。ところが、今回の手法を見る限り、単に公費
負担を
国民の自己
負担に振りかえるだけではありませんか。
財政構造改革会議の
最終報告においても、
平成十年度の
社会保障関係費について、自然増八千億円超の当然増に対し、五千億円を上回る削減を行うことにより、
増加額を大幅に抑制するとしていますが、その道筋も明らかでなく、これもまた
国民に押しつけようとしているのではないでしょうか。まさに
構造改革の第一歩は
国民の
負担増から、この方針を明らかにしているのが本法なのであります。
最後に、八月中に
医療改革プログラムを提出し、抜本改正をするというのであれば、それまでは本
法案、修正案も凍結し、
医療構造改革とセットで提出し、審議されるべきである、これが私どもの結論であります。
以上をもって、今回の修正案及び修正案を除く
衆議院送付の
法案に対しての反対討論といたします。(
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