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1997-05-26 第140回国会 参議院 本会議 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十六日(月曜日)    午後一時一分開議議事日程 第二十八号     —————————————   平成九年五月二十六日    午後一時 本会議     ————————————— 第一 雇用分野における男女均等機会及  び待遇確保等のための労働省関係法律の整  備に関する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。  日程第一雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案趣旨説明)  本案について提出者から趣旨説明を求めます。岡野労働大臣。    〔国務大臣岡野裕登壇拍手
  3. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について、その趣旨を説明申し上げます。  男女雇用機会均等法施行されて十年が経過いたしました。この間、女性雇用者数の大幅な増加勤続年数の伸び、職域拡大が見られ、女性の就業に関する国民一般の意識や企業の取り組みも大きく変化しております。  また、週四十時間労働制実施などにより年間労働時間も着実に減少しており、育児休業制度介護休業制度法制化に代表される職業生活家庭生活の両立を可能にするための条件整備進展をしております。  しかしながら、女子学生の就職問題に見られますように、雇用分野において女性男性均等取り扱いを受けていない事例が依然として見受けられ、近年、企業における女性雇用管理改善足踏み状態にあります。  働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境整備するとともに、働きながら安心して子供を産むことができる環境をつくることは、働く女性のためのみならず、少子高齢化の一層の進展の中で、今後引き続き我が国経済社会の活力を維持していくためにも極めて重要な課題であります。  政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、一昨年十月より婦人少年問題審議会において雇用分野における男女均等機会及び待遇確保あり方について御審議をいただいてまいりましたが、昨年十二月、同審議会から全会一致建議をいただきましたので、この建議に沿って法律案を作成し、関係審議会にお諮りした上、ここに提出申し上げる次第であります。  次に、この法律案内容につきまして概要を説明申し上げます。  第一に、募集採用配置及び昇進について、事業主女性労働者に対して差別することを禁止するとともに、実効性を一層確保するため、公表制度の創設、調停制度改善等を行うことといたしております。  あわせて、女性労働者能力発揮促進に積極的かつ自主的に取り組む事業主に対して国が援助を行うこととするとともに、事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な配慮をしなければならないことといたしております。  第二に、女性労働者に係る時間外・休日労働及び深夜業の規制について、女性職域拡大を図り、均等取り扱いを一層進める観点から解消することとしております。  第三に、母性保護に関する措置充実を図ることとし、妊娠中及び出産後の女性労働者健康管理に関する措置事業主に義務づけるとともに、多胎妊娠の場合の産前休業期間を延長することといたしております。  第四に、育児家族介護の問題を抱えた一定の範囲の労働者が請求した場合においては、事業主は深夜業をさせてはならないこととする制度を新たに設けることとしております。  第五に、都道府県婦人少年室名称都道府県女性少年室に変更することとしております。なお、この法律平成十一年四月一日から施行することといたしておりますが、母性保護に関する部分については平成十年四月一日から、都道府県女性少年室への名称変更に関する部分については、公布の日から六月以内の政令で定める日から施行することといたしております。  以上が雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案趣旨でございます。  何分よろしくお願いを申し上げます。(拍手)     —————————————
  4. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。武田節子君。    〔武田節子登壇拍手
  5. 武田節子

    武田節子君 私は、平成会を代表いたしまして、ただいま議題となりました雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について、橋本総理大臣労働大臣質問をいたします。  我が国において、男女雇用機会均等法制定され十年余が経過いたしました。しかし、この法律は、女性労働機会待遇改善のための役割を果たすには限界があったと言わざるを得ません。  特に、中小零細企業等で働く女性職場では、女性の処遇は制定以前と何ら変わらず、この法律は彼女たちの頭の上をかすめもせず十年が過ぎ去ってしまったというのが正直な実感でございました。  私は、組合のない中小零細企業で働く女性皆さんと約二十年間にわたって働く女性地位向上のため活動してまいりました。労働組合のない未組織職場で働く中高年女性対象実態調査を行い、その調査結果をもとに政府への要請もたびたび行ってまいりました。生計の主体者として家計を支えるため、男女差別年齢差別企業間格差等、厳しい職場環境の中で自己の能力を最大限発揮して必死に働く姿はまことにとうとく、また、涙ぐましくもあり、私はこの方々こそ最も法で守られなければならないと痛感してまいりました。  私は、今日の我が国経済発展は、ひとえにこのような多くの女性の支えによってかち得たものであるということを、私たち政治家も、事業主も強く認識すべきであると思います。現在、女子雇用労働者数は約二千百万人となり、全雇用者数の四〇%を占めております。  そこで、まず、橋本総理にお伺いいたします。  総理は、男女共同参画推進本部長として、我が国経済活動に対する女性労働者貢献についていかなる評価をなされておられるのか、御見解を賜りたいと存じます。  今回の改正は当然のことながら二十一世紀を展望してなされた改正でありますが、二十一世紀における女性労働者職場進出状況待遇あるいは労働環境などがどのようになっているとお考えでしょうか、また、どのようにすべきであると考えておられるのか、総理の描いておられるビジョンを伺いたいのであります。  ところで、十年前の男女雇用機会均等法制定のときには、婦人少年問題審議会は意見の一本化ができず、公労使の三論併記答申が行われ、労働者代表にとってはまことに残念な思い答申であったろうと思うわけであります。  今回の婦少審の答申においては、労働者代表にとって何としても実のある一本化した答申をとの強い決意で臨まれ、真剣な議論の結果が今回の答申にあったと思いますが、その努力に対して敬意を表します。  しかし、結果として女性男性並みの長時間労働になり、女性労働者環境が悪化するのではないかと多くの女性が疑問と不安を持っております。また、新聞の社説などでも明らかなように、マスコミも今回の改正に対して危惧すべき点を指摘しております。  本改正案をめぐっての女性労働者の不安あるいは世論に対しどのような認識をお持ちか、これも総理に御答弁を願います。  以下、具体的に伺ってまいります。  最初に、均等法に関してお尋ねいたします。  まず第一は、今回の改正案女性労働者対象とするのみで、片面性解消がなされていないという点であります。憲法の精神からしても、性による差別は到底許されるものではなく、男女双方に対する差別的取り扱い禁止する法律制定すべきは当然であります。  今日、諸外国の法制を見ますと、性差別禁止法あるいは雇用平等法として男女双方に対する差別禁止している例が多くなっており、いわば世界の潮流と言えましょう。  均等法施行後十年を経た今日、また、我が国経済発展の現状を見るとき、男女労働者が誇れるような男女雇用平等法をこの際制定すべきであったと考えますが、片面的な性格を残したままの改正にとどまった理由労働大臣お尋ねいたします。  第二は、募集採用配置昇進における差別禁止規定実効性についてであります。  今回の改正によって、これら雇用における全ステージが差別取り扱い禁止になりました。しかし、その実効性については甚だ疑問を持たざるを得ません。  まず、本改正案では、制裁措置として、法に違反した事業主女性少年室長勧告にも従わなかった場合、労働大臣はその旨を公表することができることとしております。しかし、障害者雇用促進法など既に公表制度は導入されておりますが、いまだに法定雇用率達成企業が多く、しかも二十年以上も経過しているにもかかわらず、公表された実績はわずか一回にすぎないのであります。これでは制裁措置としての機能を有しているとは言いがたいのであります。  したがいまして、法の実効性を高めるためにも、また、差別に対する国の厳しい姿勢を示すためにも、何らかの罰則規定が不可欠と考えますが、労働大臣に御見解を求めます。  次に、女性少年室長関係当事者双方または一方からその解決援助を求められたときは助言指導または勧告することができることとしておりますが、強制力のある是正命令改善命令権限がございません。調停制度についてはこの十年間調停に持ち込まれた唯一の案件についても、使用者調停勧告に従わず裁判係属中で上り、解決に至っておりません。  したがいまして、多くの女性使用者に裁判しなさいと開き直られ、泣き寝入りするしかありません。本改正案実効性が期待できない大きな理由であります。  今回の改正案でなぜ女性少年室権限強化がなされなかったのか、また、調停を実効あるものにするために救済命令を出し得る救済機関の設置などの構想もあり得ると思いますが、なぜ改正を試みなかったのか、労働大臣にお伺いいたします。  第三は、本改正案に、セクシュアルハラスメントに対して「事業主は」「雇用管理上必要な配慮をしなければならない」と新たな規定が入りました。  しかし、いわゆるセクハラに対する相談件数が年々増加の一途をたどっている状況の中で、今回の規定が歯どめになり得るとは思えません。セクハラは反社会的、野蛮な行為であり、存在そのものが恥ずべき行為であります。  政府は指針を定めるとしておりますが、そもそも法文の中でセクハラ禁止を明確に定めるべきではありませんか。また、セクハラについても調停対象に加えるべきものと思いますが、排除した理由労働大臣にお伺いいたします。  第四は、間接差別禁止についてであります。  表面的、形式的な女性差別禁止措置によって減るではありましょうが、逆にさまざまなこそくな手段を弄するなど、カムフラージュする形での女性差別が進行することを懸念いたします。したがいまして、間接差別禁止する規定が必要であると痛感いたしております。  労働大臣は、間接差別については定義が困難であると答弁されておりますが、先進国においては既に法制化しているではありませんか。労働大臣、今回の改正においては全く触れられていない理由お答えください。  次に、労働基準法に関して伺います。  第一は、女子保護規定撤廃についてであります。  私は、女子保護規定撤廃職域拡大女性雇用の場の拡大になることは否定いたしませんが、過労死に象徴される我が国の長時間労働実態、あるいは年間総実労働時間千八百時間をいわば国際公約としていることなどから、むしろ時間外労働、休日労働、深夜業については男女共通規制をすることこそ先決であり、最も重要なことであると考えます。  特に、三六協定すら機能していない中小零細企業で働く多くの女性からは、女子保護規定撤廃によってさらに深刻な影響を受けることになるとの訴えが参っております。  無制限な長時間労働、深夜業を強いられ、過酷な労働によって健康や家庭生活が破壊され、働き続けることができなくなるのではないかという心配に対し、政府は全く解答を示していないのであります。  女性労働者業務命令によって法外な労働を強いられたとき、不利益をこうむることなく拒否できる方法は明らかではございません。大臣全国二千一百万人の女性労働者に対し、具体的な納得のいく答弁を求めます。  また、男女共通規制については、本法律施行前の平成十一年三月までに決定するよう、強く要求いたします。労働大臣の誠意ある答弁を求めます。  第二は、政府は、今日の我が国経済行き詰まり打開策として、六分野経済構造改革に沿って高コスト経済是正推進を図っていくとしておりますが、その中に女子保護規定撤廃が掲げられていることが気になるところであります。女子保護規定撤廃によって女子は時間外、休日、深夜に男性より低い賃金によって活用される心配があるからであります。  女子保護規定撤廃が高コスト経済是正に悪用されることのないよう、厳しく監視する必要があると思いますが、いかがでしょうか。総理労働大臣に伺います。  関連して、男性賃金引き下げが懸念されるところでもあります。労働大臣見解をお伺いいたします。  第三は、三六協定についてであります。  現在、労使間における三六協定については、今回の改正に伴い、当然、全事業所においても見直しが必要であると思います。労働省労働者保護女性労働者保護視点からどのように指導していかれるのか、お尋ねいたします。  組合組織率が年々低下する中で、三六協定有効性に疑問があります。三六協定実質青天井協定もあり、余りにも法外な三六協定については、労働省目安時間を遵守するよう指導すべきであると思いますが、指導実態と今後の指導方針について、労働大臣の所見をお伺いいたします。  次に、職業生活家庭生活調和視点から育児介護休業法改正について伺います。  政府提案している男女雇用機会均等法及び労働省関係法律整備に関する法律案はへ単に女性労働者機会均等推進するのみでなく、今後、進展する少子高齢化社会の中で、労働力確保少子化対策役割も担わなければならないことは当然であります。  現行の、男女ともの職業生活家庭生活調和を図るための政府の施策は不十分であると言わざるを得ません。特に、育児介護における法整備充実は重要な課題であります。  法案によれば、小学校就学前の子を養育する労働者及び家族介護を行う労働者については、請求により深夜労働を免除される権利が認められております。しかし、深夜労働だけでは不十分であり、時間外労働及び休日労働も免除の対象に加えるべきと思いますが、いかがでしょうか。  また、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者だけではなく、小学校生活リズムが確立する年齢である小学校二年までの子を養育する労働者まで広げるべきと思いますが、労働大臣の御見解を求めます。  最後に、我が国が超高齢化社会進展する中で、これ以上の少子化経済活動、年金、医療、労働力確保等すべてにわたって危機的状況をもたらすことは明らかであります。男女共同参画社会時代的要求であり、男女差別事業主にとっても、労働者にとっても、国にとっても悪影響をもたらすことは言うまでもありません。  したがいまして、総理労働大臣がリーダーシップを発揮して真剣に男女共同参画社会の形成と少子化対策のために対処されますよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 武田議員お答えを申し上げます。  男女共同参画推進本部長として、女性労働者貢献についていかなる評価をしているのかというお問いかけがありました。  社会人の振り出しを綿紡績の現場からスタートさせました私にとりまして、女子労働というものはその当時からさまざまな思いがあった分野であります。そうした思いを持ちながら今日我が国経済活動の中における女性労働者貢献というものを考えますとき、その大幅な増加職域拡大等女性労働者我が国経済社会において極めて重要な役割を果たしておると考えており、議員の御指摘のとおりの状況と考えます。  その上で、二十一世紀におきましては、働く女性が性により差別されるのではなく、かつ、母性を尊重されながら、その能力を十分に発揮できる社会が実現するよう努めてまいりたい、そのように考えております。  次に、本改正案をめぐりさまざまな声が出ていることについての御指摘がありました。  議員女性労働者等の不安についてお述べになりましたが、本法律案につきましては、期待の声を含めましてさまざまな声が寄せられていることを承知しております。  私としては、女性自身が新たな法改正に戸惑うことのないように、その内容を熟知され、最大限生かしていかれることが極めて重要だと考えておりますし、全国の働く女性がそれぞれの職場におきまして男女平等の基盤に立って大いにその実力を発揮していかれることを支援していきたいと考えております。  次に、女子保護規定解消経済構造改革についてお尋ねがございました。  女子保護規定解消は、女性労働者能力発揮促進し、男女均等取り扱い確保する観点から行うものであり、我が国経済が二十一世紀におきましても引き続き繁栄を維持し、豊かで安心できる経済社会を創造していくために実施する経済構造改革にも大きく役立つものと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣岡野裕登壇拍手
  7. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 武田先生からいただきました十問についてお答えをいたします。  まず、男女雇用平等法性差別禁止法、なぜこれをやらなかったのかというお尋ねであります。  やはり、究極的には、先生がおっしゃいますように、男女雇用平等法ということだと思います。しかしながら、現行法施行十一年に相なりますが、その間婦人少年室等に寄せられましたいろいろの問題、これを分析いたしますと、女性を劣位に置く性差別、これの案件がほとんどでございました。  したがいまして、かかる実態にかんがみまして、今回は男女雇用機会均等法ということで御提案を申し上げた、そんな次第でございます。  二つ目であります。罰則規定をなぜ設けないのかと、こういう御提案でございます。  この男女雇用均等法に違背をする、やっちゃいけない行為が起きた、それでは、刑罰で罰金だ、それで一件落着、一事不再理だということになりますよりは、男女雇用均等職場全体で根づくように助言だとか指導だとか勧告だとかというようなものを繰り返していき、かつ、企業名公表をする。社会的制裁といいますか、こういうものにゆだねて、じっくり均等世界をつくってまいりたいと、これが私ども提案趣旨であります。  三つ目であります。女性少年室に、是正命令改善命令、これがなぜ与えられなかったのであるかと。  今お話をしたとおりであります。命令違反について、担保罰則命令担保罰則というよりは、今お話をしたような粘り強い雰囲気をつくってまいるというようなことを我々は中心に考えた次第であります。  なお、救済機関でありますが、これは今日も仲裁、調停というものが機関としてございまして、今度これを一歩改善いたしまして、一方的な調停申請ができるというようなことで対処をしてまいりたい、かように存じているところであります。  次、四つ目であります。セクシュアルハラスメントについてのお尋ねであります。  セクシュアルハラスメントがいけないということは、これはもう当然のことであります。しかしながら、セクシュアルハラスメントといいますのは、その企業主従業員にというものとは限られません。やっぱりその職場の中の個人間のプライベートな問題の中で発する。その調停といいますのは、事業主とそれから労働者側の方との調停というものが目的であります。したがって、企業主はそういう雰囲気をつくるのだというような意味合いで調停にはこれは上せないというような法案にいたした、そんな次第でございます。  次に、間接差別というようなものがないじゃないかというおしかりであります。  でも、先生、本当に間接差別という概念はなかなか、どういうのが間接差別だと我が国ではまだ確立した考え方というものができてまいりません。今回、本法実施の過程の中におきまして経過を見、検討をしていこうというような気持ちでありますことを御理解賜りたい、かように存じます。  なお、労働者は法外な労働超過勤務命令等々に服さなければならないか、お断りができないかということであります。  適法になされた超過勤務命令、これには正当な理由がなければ断れないというのが在来の考え方でございます。しかし、正当な理由があればこれは断れるということも反面解釈から出てまいります。  家庭的責任を負った男女労働者皆さんにつきましては、深夜労働でありますとかあるいは超過勤務等々につきまして、やってはならないという義務規定あるいは努力義務規定というようなものが企業主にも課されている。要するに、職場というのは使用者労働者皆さんが同じ気持ちになって仕事をするということで初めて企業というものは発展をすべきものだと。したがって、超過勤務命令等につきましても、今後労働省はさらにこの指導をしてまいろう、こう思っているところであります。  なお、今お話しの時間外労働等について男女共通規制を設けろという先生お話であります。そして、本法の十一年四月施行までにそれを間に合わせろというお話であります。  しかし、時間外労働、休日労働、深夜労働、これは景気の好不況によりますところの労働調整というような機能を持っております。国民生活にこれは利便というものからして必要だというような労働提供をいただかなければならないということもありますし、生産技術の面からこれも必要だというようなもろもろの点がありまして、法的規制を設けるということには私どもは極めて慎重でなければならないのではないかと。  ただしかし、この時間外労働、休日労働あり方につきまして、中央労働基準審議会の諸先生にいかがなものかとお諮りを申し上げているところであります。なるべく早く結論をお出しいただくようにお願いをしてありますので御理解を賜りたい、かように存ずるところであります。  それから、女子保護規定撤廃が高コスト経済是正云々というお尋ねがございました。  先ほど総理から答弁を申し上げたとおりと労働大臣も心得ております。  次に、男性が賃下げになってしまうような影響、これなきにしもあらずだという先生のおしかりでありますが、労働基準法、もう五十年前にできましたころから男女同一賃金ということでありまして、本法施行によりまして即男性賃金が引き下げられるというようなことは私は考えられませんし、そういうことがないように今後も相努めてまいろう、こう思っております。  第九問目であります。労働基準法三十六条に基づく協定、これについてどういうふうに指導をしていくのか、目安時間はどうだと、こういうお話であります。  今、幸いに目安時間を私ども設定しております。三十六条協定労働基準監督署提出をされます。これを見ておりますと、九割方は我々のつくった目安というものよりも下回るというような結び方に相なっております。なるほど目安といつものは効果があるなと、こう思っているところであります。今後も目安の方向で実施をされるよう十分指導を尽くしてまいりたい、かように思っているところであります。  最後に、育児介護等に家族的な責任を有する男女皆さんについて、深夜業を免除ばかりじゃなくて、超過勤務だとか時間外労働、これについても考えてはどうかという御質問であります。  これは、私が先ほどお話をいたしましたが、言いますならば努力義務でありますとかあるいは義務でありますとかいうような規定育児休業法等に定められておりますところであります。これの徹底を期してまいりたい、かように思っております。  なお、今は小学校就学年齢まで、つまり六つまでだと、こういうふうになっているが、小学校一年までにもう少し拡大をせよという先生の御要望であります。今こういう法律で就学に至るまでと、こうなっております。私どもは、それ以上の労働条件といいますものは労使の間のお話し合いにゆだねるのが妥当であろう、こう思っているところであります。  以上、十問について答弁を申し上げました。(拍手)     —————————————
  8. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) 大脇雅子君。     〔大脇雅子君登壇拍手
  9. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について、総理並びに労働大臣質問いたします。  現行均等法が一九八六年四月一日に施行されて以来、女性労働者は、今や雇用労働者の四割に達し、基幹労働力としての役割を果たしています。にもかかわらず、男女賃金格差は縮小せず、平等処遇も遅々としています。そして現在、経済のグローバリゼーションと規制緩和の中で、労働のフレキシビリティーが世界的に広がり、雇用構造の変化に伴う就業形態の多様化が進み、労働者の既得の権利が奪われつつあるという厳しい情勢の中で、ようやくにして法改正のときを迎えるに至りました。  均等法改正法案は、性別を理由とする差別禁止法になお遠く、間接差別も含まれていず、実効性確保にも問題を残しています。  しかし、募集採用から退職、解雇に至る雇用の全ステージにおける女性差別が全面的に禁止されました。その禁止される差別労働大臣の指針によって示されますが、それは裁判規範としての効果を持ち、差別撤廃社会意識の変革にやがて大きな影響を及ぼすものと考えます。  また、調停制度における一方当事者の同意条項が削除されたことは、この十年、会社側の不同意または婦人少年室長の判断に阻まれて無念の思いであかずの扉の前に立ちすくんだ多くの女性たちのことを思えば感慨深いものがあります。  さらに、均等法は、セクシュアルハラスメントに対する使用者配慮努力義務とポジティブアクションの奨励策を規定し、曲がりなりにも国際的課題を法に盛り込むことになりました。  以下、三点についてお尋ねいたします。  禁止さるべき差別の指針はどのように定められますか。  セクシュアルハラスメントについても、その指針を策定することになりますが、救済措置まで盛り込まれるのでしょうか。  ポジティブアクション施策を定着させ、より積極的に企業における実効性を確立するためにどのように取り組む所存でありますか。  第二に、労働基準法改正部分についてお尋ねいたします。  女子差別撤廃条約の考え方が示すように、私は次の三つの原則を確認する必要があると思います。第一は母性保護、つまり、妊娠、出産とそれにかかわる機能については、ますます保護を厚くして、いかなる場合も差別理由とされないこと。第二は、健康と生活にかかわる労働条件は、人間としてゆとりある生活と健康の維持のための男女共通の基準を確立すべきこと。第三は家族的責任、すなわち育児介護社会男女共同の責任で果たし、職業と家庭の両立を図ることであります。そのためには、労働基準法女性に対する保護規定は三つの領域に分化し、それぞれ、より質の高い水準へと組みかえられるべきであります。  その観点から、まず男女の時間外・休日労働あり方について質問いたします。  労働大臣は衆議院の審議において、現行の時間外労働の適正化指針の実効性を高めると答弁されています。実効性を高めるためには、私は労働基準法本則あるいは施行規則に指針の根拠を規定すべきであると考えますが、そういったことを含めて実効性を高める措置を検討していくお考えはありますか。また、均等法改正法の施行は一九九九年四月一日となっていますが、指針の実効性を高める措置はこれに間に合うのでしょうか、お尋ねをいたします。  次に、女子のみ保護規定解消後の経過措置についてであります。  日本貿易振興会、ジェトロの欧州主要国の女性労働に関するレポートによれば、日本のフルタイムで働く男女の週当たり総労働時間は、男性が六十一・七時間であるのに対し、女性は七十四・四時間で世界一長く、家事時間については、女性二十六・五時間、男性四時間で、他の諸外国では男女差が二倍以内であるのに、日本は六・六倍であります。  女子のみ保護規定解消されることに伴い、家族的責任を持つ女性労働者は、年間時間外労働百五十時間から三百六十時間という労働条件の急激な変化に見舞われることになります。仕事と家庭の両立が困難となり、働き続けられなくなる人が出ることも考えられます。そのために、それを緩和する適切な措置、いわゆる激変緩和措置が必要不可欠であると思います。その措置をとられるでしょうか。  加えて、女性労働者が新たに深夜業につくためには、当然就業環境整備がなされなければなりません。そのために指針をきちんと定めて事業主を強く指導すべきであります。新たに指針を定められますか、そしてその内容はどのようなものでしょうか、お尋ねいたします。  第三に、育児介護休業法改正について質問いたします。  私は、家族的責任を持つ男女労働者について、要件の厳しさはありますが、深夜業の免除の請求権が盛り込まれた今般の改正に注目いたします。それは、これまで規制対象とならなかった男性労働者及び既に深夜業を解禁されている女性労働者対象とされること、その請求権は有給休暇請求権のように形成権に準じて行使できる法的構成になっているからです。  そこで、労働者が深夜業の免除を請求した場合でも、事業主が事業の正常な運営を阻害する場合に当たるとして、労働者がその権利を行使できなかったり大幅に権利行使を妨げられるのでは意味を失います。この点の運用についていかがお考えか、お尋ねいたします。  次に、パート労働者等有期雇用者も、契約の更新によって雇用期間が一年を超えた場合には、正社員同様、深夜業の免除が権利として認められる旨の答弁が衆議院の審議においてなされていますが、改めて確認したいと思います。  加えて、少子高齢化社会のもとで、育児介護等の家族的責任を有する男女労働者の時間外・休日労働については、原則として抑制されるべきであります。育児介護休業法においては、各休暇とともに時間外労働をさせない措置を選択的に使用者努力義務として定めていますが、女性に対する保護規定解消されるに当たって、家族的責任を持つ男女労働者の時間外・休日労働の抑制について今後どのように対応されるか、その具体策について御質問いたします。  最後に、今般の法改正をより実効あるものにし、職業と家庭・地域におけるバランスのとれた、ゆとりのある生活を保障し、真の男女共同参画社会を実現するためには、国際公約とも言うべき年間総実労働時間千八百時間を二十一世紀までには達成しなければならないと考えます。この点について総理大臣の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  10. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大脇議員お答えをいたします。  私には一点、年間総実労働時間千八百時間についての決意を求められました。  労働時間短縮というものが、職業と家庭そして地域とのバランスのとれたゆとりのある生活の実現、あるいは男女共同参画社会の実現にも資するものであることは御指摘のとおりであります。  週四十時間労働制の完全定着、有給休暇の取得促進、長時間残業の削減に一層努力をしながら、年間労働時間千八百時間達成の早期実現に向けて、今後ともに全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣岡野裕登壇拍手
  11. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 大脇先生からも十にわたる御質問をいただきました。お答えをいたします。  第一問であります。指針を設ける、これは重要だ、どんな中身であるかと、こういうお話でありました。  これは、目下、審議会で議論をいただいているところであります。差別と一言で片づけますが、どういう行為、どういう行為、どういう行為かということがはっきりいたしませんと十分目的を達成することができません。その中で、特に女性のみ対象になっている部分、あるいはこれは例外だと言われているような部分、これについてはっきりした具体的な定めを指針の中でいたしてまいりたい、かように思っております。  二つ目であります。セクシュアルハラスメントについて、指針には救済措置が盛り込まれるかというお話であります。  セクシュアルハラスメントにつきましても、公労使の研究会でいかなるものがセクシュアルハラスメントに当たるかということを審議いただいているわけでありますが、相談をするとか苦情処理をするとかいうような救済措置、これについても御相談を申し上げているところであります。  三つ目。ポジティブアクションについてどういう取り組みをするかというお話であります。  ポジティブアクションといいますものにつきましては、やっぱり均等法にもとるようなことがあったならば企業名公表するというようなことで、言いますならばそちらで押していくわけであります。同時に、ポジティブアクション、これは立派なことだと表彰をするというようなことで、今度はエンヤコラということで前から引っ張るというような、二つの機能を我々は十分活用をして定着を図ってまいりたい、こう思っております。  四番目。時間外労働の適正化指針、これを施行規則に根拠として規定すべきであると、こういうお話でございます。  これは、今度指針をつくります場合に、現行の指針というものがございますが、そのほかに何を加えるかということでありますが、その指針というものの根拠、これもひとつ何らかの方法を講ずる必要があるかなというようなことで、関係の審議会の方にお諮りをしているところであります。先生お話しになりました施行規則でどうだというような御意向が出ているということも先生方に伝えたい、かように思っているところであります。  また、五番目であります。労働基準法に基づく三つの規制緩和、これは平成十一年四月から用意ドンということになるわけであります。その十一年の四月からそういった規制が緩和されるというようなことも関係審議会先生お話をいたしまして、労働時間のあり方等についてのお答えを賜るべく御相談を申し上げてまいりたい、かように思っているところであります。  その次、六番目であります。女性が深夜業もできるようになった、非常に激変だ、ひとつ激変緩和の措置はいかがなものかと、こういうお話であります。  家庭生活職場生活を両立させていかなければならないというところで、今般、規制解消ということが出ました。やはりそういった面の影響というものもあるであろうというようなことをおなかの中に入れまして、何らかの方法があるか否か、これも関係の諸先生に御相談をしてまいりたい、かように思っているところであります。  その次は、就業の環境が深夜業等に働く場合必要ではないかというのは、私どもも当然考えているところであります。したがいまして、仮眠が必要だ、あるいは休息する場所、休憩の場所、それから通勤で安全性が保たれるかどうかというような諸点について私どもは指針の内容の中に定めてまいりたい、こう思っているところであります。  八番目であります。深夜業の免除の請求がございますが、事業の正常な運営を阻害する場合は深夜業の免除の請求を断れるというふうに相なっておりますが、事業の正常な運営を阻害するというのは、深夜業に従事しなくてもよいという請求権に重みがあるというような意味を頭の中に入れまして、正常な運営を阻害する場合の解釈が今の機能を無にするというようなことがないような指導というものもこれからやってまいりたい、かように存じているところであります。  九つ目であります。有期雇用契約の労働者についての深夜業の制限について、おまえは衆議院の方で答弁をしているがいかがかというお尋ねでありますが、継続して在籍一年というものを超えました労働者皆さんにつきましては、この深夜業の制限の言いますならば請求権、これが行使できるものである、かように存じております。  十番目であります。家族的責任を有する男女労働者の時間外あるいは休日労働の抑制のための具体的方策、根拠、これはどうかということでありますが、育児あるいは介護休業法におきまして所定外労働等を断れるという制度、これはあるいは義務として、あるいは努力義務として規定をされていること、先生御存じのとおりであります。したがいまして、こういった女子保護規定解消されるに当たりまして、我々としてはその辺の周知、指導というものも存分に行ってまいりたい。  以上、十問についてお答えを申し上げました。(拍手)     —————————————
  12. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) 川橋幸子君。    〔川橋幸子君登壇拍手
  13. 川橋幸子

    ○川橋幸子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案につきまして、橋本総理及び関係大臣に対して質問を行います。  均等法施行十年余が過ぎましたが、女性たちは、法制定当時から均等法強化のための次なる見直しに期待をしておりました。このため、衆議院段階では延べ七百人に近い人たち本法案の審議を傍聴し、本日もまた大勢の女性たちがこの本会議を見守っておられます。  これまでの審議に対する世論の反応を見ますと、主として働く女性の側からは労働基準法女子保護規定の廃止に対しまして非常に大きな不安、懸念が表明されております。また、新聞の論説等におきましても保護廃止は緩やかにといった指摘がなされております。  そこで、第一に、今回の法改正に対するこうした世論の反応をどのように受けとめておられるのか、総理にお伺いいたします。  次に、我が国における固定的な性別役割分担意識の問題についてお尋ねをいたします。  総務庁の社会生活基本調査によると、共働きの女性が家事、育児に費やす時間は一日二時間三十四分、これに対して男性はわずか七分です。このように生活時間において男女間に極端なアンバランスがある日本の現状をどうごらんになるのか。  また、閣僚の中から、政治的な局面における比喩としてですが、女房が掃除、洗濯も料理もしてくれないなら、器量が悪いかもしれないけれど隣の奥さんに頼まなければしようがないとの発言があったやに伝えられております。  このように、頑固頑迷なまでの我が国における性別役割分担意識の強さを男女共同参画推進本部長である総理はどのようにお感じになるのか。  ちなみに、国連の女子差別撤廃条約第五条(a)項では、締約国は「男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女社会的及び文化的な行動様式を修正する」ためのすべての適当な措置をとると規定しております。  次は、性差別禁止法の実現についてであります。  均等法施行以来、世界の動向は大きく変わりました。「国連婦人の十年」を経た一九八〇年代後半から、建前としての男女平等と現実の男女差別の残存を問題視する意識が次第に高まるようになり、法的な平等、デ・ジュール・イクオリティーと申すようでございますが、を超えまして、事実上の平等、デ・ファクト・イクオリティーを強く求めるようになりました。欧米先進諸国では、いわゆるポジティブアクションはもとより、間接差別禁止セクシュアルハラスメントヘの対処、家族的責任を有する労働者のための政策などを含む男女双方差別禁止する性差別禁止法が次々と立法されるようになりました。  労働大臣は、性差別禁止法が究極的な姿であり、今回の改正は実質的にそれに近いと述べておられますが、それならば、衆議院労働委員会での附帯決議にあります法施行後適当な時期における法律の見直しは、施行後三年程度、二〇〇二年程度を目途に、さまざまな構造改革が実現していく時期とあわせて行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。  次に、労働基準法女子保護規定の廃止に伴う男女共通の時間外労働の上限制限についてお聞きいたします。  今回の女子保護規定の廃止は規制緩和の一環として位置づけられております。諸外国でも、規制緩和の取り組みの中で労働時間法制が見直されるとともに、一方では時間外労働あり方について新たなルールを設けた国が多いと聞いております。時間外労働法的規制がないと言われるイギリスでも、実はEU指令の適用があり、四カ月平均で一週四十八時間までが所定内外を含めた労働時間の上限規制となっております。また、アメリカでは、時間面の規制はないものの、賃金面で時間外労働の割り増し賃金率が五割と高くなっております。  中央労働基準審議会審議においては、こうした諸外国の法制について十分な情報提供を行い、法的整備を含めた審議お願いすべきだと思いますが、労働大臣見解をお伺いいたします。  次に、規制緩和についての基本的な考え方という観点からお伺いいたします。  八〇年代後半に規制緩和に取り組んだ欧米先進諸国では、その後生じた問題の把握や経験に即して、デ・レギュレーション、規制緩和から、新たに必要となるリ・レギュレーション、再規制の方向に来ていると言われます。この傾向に照らすと、我が国労働関係では、当面課題となっております時間外労働の上限規制あり方、それから純粋持ち株会社の解禁に伴う労使関係のあり方の二つがこの問題に該当すると思いますが、総理はどのようなお考えをお持ちか、お伺いいたします。  次に、ポジティブアクションの進め方についてお尋ねします。  国連の女子差別撤廃委員会は、日本政府の報告に対します最終コメントにおきまして、「日本が全般的な資源開発において世界各国第二位に位置づけられているにもかかわらず、日本の女性社会経済的地位が考慮される場合にはその順位が第十四位に下がることを懸念を持って観察した」と述べ、また、「委員会はこれを、女性を国の経済的発展の過程に十分統合することに関する日本の無関心を示すもの」と指摘しています。こうした指摘に照らしますと、今回のポジティブアクションの規定の新設は政府の姿勢として大変意義が深く、今後はその実効確保が重要になってまいります。  そこで、ポジティブアクションの実施について労働省は今後どのように展開していく戦略的な構想を持っているのか、見解をお伺いいたします。  次に、公務部門におけるポジティブアクション及びセクシュアルハラスメント措置の導入についてお聞きいたします。  公務部門におけるポジティブアクションの促進については、既に男女共同参画推進本部が昨年来決定した二〇〇〇年プランがあります。同プランにおきましては、女性国家公務員の採用、登用等の促進についての課題への取り組みを示した計画を策定することを検討することが記述されています。これについて女性問題担当大臣である武藤総務庁長官は、衆議院の審議の段階で、二〇〇〇年プランを絵にかいたもちに終わらせないとの所信を明らかにしておられます。  ついては、この計画を策定するための検討について実際に着手することが必要であります。国民の税金によって雇用する公務部門こそが均等法施行にあわせて率先努力する姿を示すことが求められております。男女共同参画推進本部長としての総理御自身の言葉で決意のほどをお聞かせいただきたいと存じます。  最後に、育児介護等についての社会的な条件整備について質問いたします。  家族的責任を有する労働者に対する育児介護等についての社会的な条件整備充実し、家庭と仕事の両立支援を図ることが要請されています。このため、今国会においては、児童福祉法の改正介護保険法の制定について鋭意審議促進することが望ましいことはもちろんです。しかし次がら、より緊急には、二年後に予定される改正均等法施行及び女子保護規定の廃止と十分な整合性を保つエンゼルプランの推進及び新ゴールドプランの確実な実現が必要であります。労働、厚生両省の密接な連携のもとに、とりわけ働く女性の側から要望の強い育児介護ニーズに対しても的確に対応し、女性たちの願いを充足することが政治、行政の責務であると考えます。  労働、厚生両大臣の所信をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 川橋議員お答えを申し上げます。  まず、女子保護規定撤廃についてのお尋ねがございました。  女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、賛否さまざまな声をいただきましたが、女性職域拡大し、男女均等取り扱いを一層進める観点からこれを解消するものであり、改正法の円滑な施行に向けて適切に対処していきたいと考えております。  次に、夫と妻の家事分担に関するお尋ねがございました。  働く女性がその能力を十分に発揮するためにも、家庭責任を男女がともに担うことが重要であると思います。  政府としては、今後とも、性別役割分担意識の解消に努めるなど、職場、家庭、地域における男女共同参画の実現に向けて取り組んでいきたいと思います。  欧米諸国がリ・レギュレーションの時代に入った、そういう御指摘がございました。  しかし、私は欧米諸国におきましても開かれた経済社会を築いていくために規制はできるだけ撤廃、緩和すべきだという原則は変わっていないと思っております。  同時に、国民の安全の確保等のため最小限の社会規制が必要である、こうしたことは最近の欧米の認識でもありますし、御指摘のリ・レギュレーションの時代とは、恐らくこうした意味で理解をされるべきものだと思います。我が国としても、こうした世界の流れを認識しながら規制緩和に取り組んでまいっております。  次に、時間外労働についての上限規制の御意見をいただきました。  時間外労働は景気変動に対する雇用調整機能を有することなどから、慎重な検討が必要なもの、そのように考えております。本問題につきましては、現在関係審議会で検討されているところでありまして、その結果を待って対処してまいります。  また、持ち株会社の解禁に伴う労使関係についての御意見をいただきました。  この点につきましては、先般、今後二年を目途に検討して必要な措置をとることなどにつき労使の合意がなされ、衆議院の商工委員会でも附帯決議が付されたところと承知をいたしておりますが、この合意や国会での論議というものを踏まえて政府としては適切に対処していきたいと考えます。  次に、公務員部門の取り組みを示す計画につき御意見をいただきました。  男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましては、女性の公務員の採用、登用について現状を的確に把握、分析しながら計画的に取り組むことが効果的である、こうした観点から、採用昇進等の状況を定期的に調査し、改善が必要とされた課題への取り組みを示した計画の策定を検討することになっております。今後、このプランの趣旨を十分に踏まえ、鋭意検討していきたいと考えております。  最後に、公務部門におけるセクシュアルハラスメントにつきましてお尋ねがありました。  今後、雇用機会均等法中の関係規定施行にあわせまして具体的な対策が講じられるよう、人事院等において公務職場実態等を踏まえ、総合的に検討が進められるものと承知しており、こうした問題は解決していく努力をしていかなければなりません。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣岡野裕登壇拍手
  15. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 川橋先生からの御質問お答えをいたします。  まず、均等法改正、もう一遍見直せということであります。  先生、三年以内というお話がございましたが、私どもといたしましては、本改正案をもし可決、成立いただきますならば、全力投球でこれの普及定着を図ってまいろう、その過程において執行状況等々の資料も集めてまいりたい、そういうような中で検討すべきは検討してまいりたい、かように思っているところであります。  二番目。中央労働基準審議会でいろいろ審議をいただくという、こういう宿題を私どもは持っておるところであります。その場合に、いろいろ外国法制等の資料も出せということでございます。  おっしゃるとおりだと思います。ただ、米英法あるいはヨーロッパ等々におきまして、それぞれ扱いが異なっております。同じく大陸法制の中でも、イタリアあるいはスペインあたりとドイツ、フランスあたりとは違っております。というような資料もあれやこれや作成、提出を申し上げて、慎重御審議をいただこう、かように存じているところであります。  三番目。国連の差別撤廃委員会の指摘がある、それにかんがみてポジティブアクション、これの戦略展開はいかが考えているかと、こういうお話であります。  先ほど大脇先生お話を申し上げたとおりであります。公表制度等によってやってはいけないことはやってはいけないよということと同時に、我々はポジティブアクションというようなものを、表彰制度等を使いまして一生懸命エンヤコラで引っ張ろうということであります。そのためには、制度というものがどういう制度であるかということの周知はもとよりのこと、それぞれトップの皆さんのセミナーでありますとか、あるいは地域あるいは職域別の勉強会だとかいうようなものをいろいろ積極的に展開いたしまして、本法の成立後の努力をいたしてまいりたい、かように思っております。  次に、本法を初めとする、あるいは育児介護法等、言いますならばエンゼルプラン等の推進に当たりまして、労働省の本来業務を推進するべく関係省庁と連携を密にせよというお話でございます。  文部省あるいは厚生省あるいは中小企業庁、建設省等々と連絡を密にしてまいるつもりでありますが、厚生大臣おいでであります。厚生省とは特に密接な連携を保ちつつ努力をしてまいりたい、かように思っております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣小泉純一郎君登壇拍手
  16. 小泉純一郎

    国務大臣(小泉純一郎君) 川橋議員お答えいたします。  働く女性の保育・介護問題についてですが、現在国会に提出中の児童福祉法の改正法案及び介護保険法案の早期成立に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。  関係省庁との連携のもとに、いろいろ工夫をしながらエンゼルプラン、新ゴールドプランの着実な推進を図り、働く女性の子育てや介護を支援していきたいと思います。(拍手)     —————————————
  17. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) 吉川春子君。    〔吉川春子君登壇拍手
  18. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、雇用分野における男女均等機会及び待遇確保等のための労働省関係法律整備に関する法律案について質問します。  最大の問題は、男女雇用差別をなくすという名目で女性の深夜業を全面的に解禁し、時間外・休日労働法的規制を取り払うという労働基準法の大改悪を行おうとしていることです。  総理、あなたも女子保護規定がどのような苦難の歴史を経て実現したものか御存じでしょう。  それは、明治政府が西南の役直後に着手し、主務大臣の更迭を二十三回も重ね、三十年の歳月をかけて、ようやく明治四十四年に成立した工場法で初めて取り入れられたのです。  当時の基幹産業である紡績業を底辺で支えた女性労働者たちは、過酷きわまりない労働条件のもとで次々に結核や精神疾患に倒れました。細井和喜蔵が「女工哀史」に書いたように、「籠の鳥より監獄よりも寄宿ずまいはなお辛い、工場は地獄よ主任が鬼で回る運転火の車」という悲惨なものでした。  女性の深夜業の禁止規定は、紡績工場主らの猛反対に遭って、工場法施行後も十五年間も効力をとめられたのです。ようやく実施された後も、戦時特別法によって再び奪われました。そして、新しい憲法の生存権、勤労権のもと、女子保護規定はようやく権利として認められたのです。長時間・過密労働が横行する今日、この規定は一層重要なものになっているのです。歴史に逆行する女子保護規定廃止に私は強い怒りを禁じ得ません。  総理、これは我が国憲法のみならず、日本も合意した第四回世界女性会議の行動綱領の女性の健康、真の雇用平等など、国際的にも今日確立されている基本理念に真っ向から反するものではありませんか。  政府は、女子保護規定の廃止は婦人少年問題審議会の一致した建議だなどと、あたかも労働者側の要求ででもあるかのように言っています。しかし、これは全く事実に反します。婦人少年問題審議会労働者委員を送っているのは、全労働者のわずか一四・五%しか組織していない連合だけではありませんか。しかも、その連合の内部にさえ反対論があることは当の事務局長自身が認めているのです。  多くの労働者は一方的な女子保護規定の廃止に明確に反対しています。このことは、昨年九月、女子保護規定見直しについて労働省に寄せられた意見でも明らかです。廃止を認める意見はわずか〇・一%しかなく、残りは、反対もしくは男女共通規制など、新たな措置を求めるものだったのです。撤廃を要求したのはひとり財界のみだったのではありませんか。  国民の広範な声に耳を傾けず、どうして一%にも満たない要求を強行しようとするのですか。余りにも道理がないのではありませんか。総理見解を求めます。  過労死を生み出す我が国の長時間・過密労働是正は緊急の課題です。だからこそ政府は、年間総実労働時間千八百時間達成を国際公約として掲げてきたのではありませんか。ところが、十年たってもこれは達成されていません。衆議院で労働省は、時短のためには、週休二日制、有給休暇取得に加え、時間外労働を百四十七時間以内に抑えることが必要と答弁しています。現行女子保護規定の百五十時間より低く抑える必要性をみずから認めているのです。それなのに、なぜ女性の残業規制を取り払うのですか。労働時間短縮という政府の公約に逆行するのではありませんか。  労働省はまた、深夜、時間外・休日労働について、今後は女性も正当な理由がない限り拒否できないと言明しました。これは過労死の平等を強制することにはなりませんか。明確な答弁を求めます。  総理、人が深夜働くということがどんなに大変なことかについて伺います。  五月九日、十五万七千人を組織する日本医療労働組合連合会が深夜交代勤務に従事する医療労働者労働・健康実態調査中間報告を発表しました。驚くべきことに、二年半の間に妊娠した二千五百九十二人中、順調な経過をたどったのはわずか二割にすぎず、切迫流産三割、早産、死産、帝王切開など異常出産も三割に上っているのです。  政府は、私の質問に対し、深夜業の妊娠・出産機能へのマイナス影響はない、そういう知見はないと言って、調査すらしてこなかったことを合理化していますが、ここには深夜業が健康や母性に与える悪影響がはっきりあらわれています。このことは、労働省自身が、従来、深夜勤務は自然の生理に反し、また社会生活上も支障があると指摘してきたことです。その考えをなぜ変えるのですか。明確に答えてください。  医労連の調査では、妊産婦で深夜勤を免除されている人は四人に一人にすぎません。法の定める権利を知らなかったという人が二六%、職場の都合で免除されないという人が五三%もありました。権利はあっても人員不足で深夜業をせざるを得ないのが現実です。政府は、今度、家族的責任を負う労働者には深夜業免除を認めたと言いますが、実情を見れば、多くの労働者はこの制度を利用できないのではありませんか。  人命を預かる医療の職場等での深夜・交代労働は必要であるにしても、そこで働く労働者には健康のため十分な保護措置が講ぜられるべきであり、二交代・十六時間制の導入は論外です。公共、緊急の場合などのほかは深夜業を禁じることこそ必要だということは、この実態を見れば明らかではありませんか。総理答弁を求めます。  ドイツでは、連邦憲法裁判所が、九二年、夜間労働はどんな人間にとっても有害である、女子のみの深夜労働禁止規定は違憲との判決を下し、その結果、九四年に新しい労働時間法が制定されました。そして、深夜労働及び交代制労働に従事する労働者労働時間は人間にふさわしいものにしなくてはならないとし、深夜労働男女共通の保護規定を設けたのです。男女とも規制に踏み切ったドイツに対し、我が国では全く逆のことが行われようとしています。  どちらが人間を大切にする道か明らかです。総理、日本はなぜこの道を選べなかったのでしょうか。伺います。  政府は、深夜業・残業規制を外すことが職域拡大になり、雇用均等扱いを保障するとしています。それなら、女子学生の就職差別解消せず、低賃金社会保険にも加入できないパートや派遣労働者が増大しているのもこのためだということですか。女子保護規定を廃止すれば、家族責任の大半を負わされている女性は正規の職員として働き続けることがもっと困難になり、賃金格差もさらに開くのではないのですか。  パートを含めた男女賃金格差は、一九七八年以降拡大の一途です。長い困難な闘いの末、芝信用金庫や診療報酬支払基金での女性賃金差別は不当であるとの判決が出ました。男女賃金格差の是正は、均等法施行後も裁判に頼らざるを得なかったのです。だからこそ、企業の違反行為への罰則や権利侵害に対する迅速な救済が強く求められきたのです。それなのになぜ今回この点について改正しないのですか。  この法案をこのまま成立させれば、将来に禍根を残すことは必至です。法案の撤回を私は強く要求いたします。また、さきの上院議長サミットで、二院制における参議院の役割は「熟慮の府」であるという指摘がありました。徹底審議を行い、真の男女雇用平等の実現こそ立法府である本院の責務であることを表明し、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  19. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 吉川議員お答えを申し上げます。  まず第一に、女子保護規定解消が国際的な基本理念に反するという御指摘を受けました。しかし、国際的に見ましても、一九七五年の国際婦人年世界会議において採択されました世界行動計画以来、母性保護を除く女性一般に対する保護は女性に対する差別的効果がある、そうしたところからその解消が求められているところだと認識をいたしております。  次に、その女子保護規定の廃止について国民の声に耳を傾けるべきであるという御指摘をいただきましたが、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制につきましては、国民のさまざまな声を伺わせていただいた上で、女性職域拡大男女均等取り扱いを一層進める観点から、男女雇用機会均等法の強化とあわせて解消するものといたしました。  次に、女子保護規定解消労働時間の短縮との関係について御意見をいただきましたが、女子保護規定男女均等取り扱いを一層進めるという観点から解消するものであり、労働基準法の時間外労働等につきましては男女同一の枠組みとなります。  その枠組みの中で、今後とも週四十時間労働制の完全定着、長時間残業の削減など、労働時間の短縮に積極的に取り組んでまいります。  それから、女子保護規定解消と健康についてのお尋ねがございました。  規制解消により、男女均等取り扱い促進され、深夜勤務等を希望される女性労働者がその能力を十分発揮することが可能になります。  また、深夜業につきましては、従来から男女労働者の健康確保や妊産婦の就業制限など母性保護のための規制整備充実したところでありまして、その徹底を図ってまいりたいと思います。  また、深夜業の免除について御意見をいただきましたが、本法案では、育児介護休業法改正し、育児家族介護を行う労働者の深夜業の免除について請求権という強い権利を創設いたしました。  政府としては、この権利について広く周知し、その実効性確保していきたいと考えております。  また、深夜業を禁止すべきではないかというお尋ねがございましたが、本問題につきましては関係審議会で検討されておりまして、その結果を踏まえて対処してまいりますが、生産技術上の問題やあるいは国民生活の利便などで不可欠な面もあるということもぜひ御理解をいただきたいと思います。  女子保護規定解消影響について御意見がございましたが、この規制解消によりまして女性職域拡大が図られ、男女均等取り扱いが一層促進されるものと考えております。一方、私はパートタイム労働や派遣労働というのは多様な働き方の選択肢の一つとして意義のあるものだと考え、議員が述べられましたように、何か一段違ったニュアンスを持つような感じで私はこれらを受けとめておりません。  なお、家族的な責任を男女がともに担うことができる環境整備が必要であること、これは御指摘のとおりであり、引き続き労働時間の短縮や職業生活家庭生活の両立支援などに努めてまいります。  また、法の実効性確保につきましては、今回の法改正において、勧告に従わない法違反企業に対する企業名公表制度、あるいは一方からの申請による調停開始等が盛り込まれておることも法の実効性確保する上で非常に十分なものだと考えておりまして、提案者である労働大臣に御質問がありませんでしたので私から申し上げますが、法案を撤回する意思は提案者もないと存じます。(拍手
  20. 斎藤十朗

    ○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十七分散会      —————・—————