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衆議院議員(横光克彦君) 谷本議員にお答えいたします。
脳死を人の死とするとの回答が半数を切ったとの世論調査に対する受けとめ方についてのお尋ねでございます。
御
指摘の調査におきましては、四月十九日と二十日が調査日であり、
中山案の
衆議院での可決日、四月二十四日より前に行われたものでございますが、これによれば、
脳死を人の死としてもよいとする回答の割合が、前回調査時に比べ減少し、半数を少し下回る結果が出たことは
承知しております。
しかしながら、
国民世論の動向につきましては、各種の世論調査を見ますと、
脳死を人の死と認める人の割合は全体としては増加傾向にあると
承知しており、また、御
指摘の調査におきましても、
臓器の
提供については過半数の方が肯定的な回答をするなど、
国民の
脳死、
臓器移植に対する理解は確実に深まってきているものと認識いたしております。次に、
脳死者の
医療について当分の間、健康保険を適用することとされているが、「当分の間」とはいつまでなのかとのお尋ねでございます。
御質問の「当分の間」につきましては、具体的な期限を念頭に置いたものではありません。しかし、いずれにいたしましても、今後の
我が国の
移植医療をめぐる
現場の
状況あるいは
国民の理解を勘案した上で
判断されるべき問題ではないかと考えております。
次に、自賠責や民間
医療保険における取り扱いについてのお尋ねでございますが、私ども提案者といたしましては、自賠責や民間の
医療保険につきましても、この健康保険の特例
措置の
趣旨を踏まえた取り扱いがなされることを期待する次第であります。
次に、
脳死状態での
臓器提供を希望する人については
脳死を人の死とし、それ以外は従来の三
徴候説をとるという
考え方についてのお尋ねでございます。
こうした考えについては、
脳死臨調においても
検討され、
脳死か
心臓死かの選択権を認めることは、本来客観的事実であるべき死の
考え方としては不適当であり、大きな問題があるとされてきたものと
承知しております。
ただし、
脳死の
判定がされた後において初めて死となるものであり、
脳死判定がなされない場合には従来の三
徴候死によるものと考えております。
なお、先ほどから御
説明がございますように、
脳死は全死亡例の一%未満程度であると考えております。
次に、
本人の事前の
意思によって
脳死判定を拒否することは可能かとのお尋ねでございますが、先ほど申しましたように、
患者に
脳死か
心臓死かの選択を認めることは、本来客観的事実であるべき死の
考え方としては不適当であると基本的に考えております。
しかしながら、実際の
脳死判定に当たりましては、
家族に対して、
脳死について理解が得られるよう、必要な
説明を行うことが必要と考えており、
本人の事前の拒否があったことなどにより
家族の
同意が得られない場合には、結果として
脳死判定が行われることはあり得ない、このように考えております。
次に、
脳死判定基準として竹内
基準で必要十分かとのお尋ねでございますが、この竹内
基準につきましては、
脳死臨調
答申の中では、専門委員からの
報告や国内外の専門家の
意見を総合的に
判断した結果、竹内
基準は現在の医学的水準から見る限り妥当なものとの結論が出ているとともに、厚生省に設けられました専門家によるワーキンググループにおきましても竹内
基準は妥当であるとの結論が出されております。
もとより、医学的・科学的
見地からの
妥当性の検証は今後とも必要と考えておりますが、現在の
医学的知見に照らしても竹内
基準は妥当なものと考えております。
次に、
脳死の
判定について、できれば主治医と複数の専門
医師による三人以上の
医師の関与があることが望ましいのではないかとのお尋ねであります。
竹内
基準におきましても、
脳死判定に十分な経験を持ち、
移植と無
関係の
医師が二人以上で
判定するとしており、複数の専門
医師の関与を求めているところであります。
竹内
基準の二人以上という点は、
脳死の
判定に当たって必ず満たさなければならない
基準を示したものでありますが、より多くの専門家の目を通し、
判定結果の客観性を高めるという意味で、できれば三人以上の
医師によって
判定を行うことが望ましいとの考えも竹内
基準とは矛盾しないものと考えております。
次に、
脳死判定における観察期間についてのお尋ねでございますが、竹内
基準におきましては観察期間を六時間を基本として定めておりますが、年齢や原疾患、経過、検査所見などを考慮しつつ、さらに長期間観察すべきであるとしております。また、特に二次性脳障害、例えば溺死や窒息死などの場合ですね、こういった二次性脳障害や六歳以上の小児を
判定する際には観察期間を六時間以上置くこととしているところであります。
この竹内
基準につきましては、
脳死臨調での
検討や厚生省に設けられた専門家のワーキンググループの
検討におきましても、医学的に見て妥当な
基準とされているところであり、
提出者といたしましても、観察期間を含めて竹内
基準で妥当であると理解しております。
次に、現在、各
大学病院等におきまして独自の
判定基準を策定しており、その観察時間が異なっていることから、
死亡時刻に
混乱が生じないのかとのお尋ねでございます。
確かに、現在、大学病院で定められている
脳死判定基準の観察時間につきまして多くの施設が竹内
基準に準拠しておりますが、一部ではさらに長時間の観察時間を定めている施設があることも
承知しております。
法案の成立後は、
脳死の
判定基準は「
厚生省令で定めるところにより、行うもの」とされており、観察時間についても竹内
基準に準拠して定めることになるものと考えておりますので、
死亡時刻の
混乱は生じないものと理解いたしております。
次に、
臓器提供の
意思表示と
臓器移植についての理解に関するお尋ねでございます。
臓器提供の
意思につきましては、基本的に尊重されるべきものであり、その
前提といたしましては、
臓器提供及び
臓器移植に対する正しい知識と理解が
前提となるものであります。これを理解し、
臓器提供に関する
意思表示の効果を理解した上で、主体的に
判断する能力、すなわち
意思能力を備えていれば有効に
意思表示をすることができるものと考えております。
お尋ねの有効な
臓器提供の
意思表示につきましては、年齢等により画一的に
意思能力の
有無を決定することは難しいと考えておりますが、特に年齢の低い者については有効な
意思表示であると認めることについては慎重であるべきと考えております。
また、いわゆる知的障害者の方につきましては、その
意思表示を一律に無効とすることは適当ではないと考えますが、
意思の確認等その取り扱いにつきましては十分に慎重に行われるべきものと考えております。
レシピエントにつきましては、知的障害者の方がそのためにレシピエントになり得ないということはないと考えております。
次に、竹内
基準におきましては六歳未満の小児を除外しており、
法案が通っても小児の
臓器移植は難しいのではないかとのお尋ねでございます。
竹内
基準では、小児の
脳死の
判定については六歳未満の小児を
判定対象から除外しているところであり、その結果、
臓器提供者となれないものと考えております。
したがいまして、
肝臓につきましては
提供された成人の
肝臓を小児の大きさに分割して
移植を行う
方法があるものの、
心臓につきましては残念ながら小児への
臓器移植は見込めないと考えております。
また、
遺族の
範囲についての御質問でございます。
遺族とは、死亡した者の近親者の中から個々の事案に即し慣習や
家族構成に応じて定まるものと考えておりまして、類型的、一義的に決まるものではありません。通常は、喪主ないしは祭祀主宰者が
遺族の総意を取りまとめることになるものと考えております。
なお、
現行の
角膜腎臓移植法、献体法等におきましても
遺族と
規定されているところでありますが、適正な運用がなされていると
承知いたしております。
また、この
法案の
附則第二条における
検討規定についてのお尋ねでございます。
御
承知のように、
平成六年四月に提出されました旧
法案は、
臓器の
移植について
一般的に定めた初めての
法律案であり、
制定段階においても考えられ得る事項については十分配慮するものの、実際に制度として動き出して初めて改善すべき点が明らかになることも考えられ、五年を
目途として
検討が加えられる旨
規定していたところであります。
その後、昨年十二月に今回の
法案を提出するに至るまで既に三年近くが経過し、その間、国会における
参考人意見聴取、いわゆる
地方公聴会の開催、マスコミによる報道などを通じてこの問題に対する
国民の理解は確実に深まっているものと考え、今回提出させていただきました
法案におきましては、この
検討期間を三年としているところであります。
この
検討規定は、この
法律の
施行後に明らかになる改善すべき点に対応するための
規定であり、現段階におきまして何を主眼に見直しを行うべきかについて想定することは困難でありますが、その時点での
臓器移植の実施
状況、
移植医療を取り巻く環境の変化等を踏まえ、さまざまな角度から
臓器移植全般について
検討がされるべきものと考えております。
最後に、ネットワークの整備、ドナーカードの普及、
移植コーディネーターの資格等についての御質問でございますが、これらの
検討については、厚生省に設置された
臓器移植ネットワーク準備委員会において
検討が行われているものと
承知しております。
既に
腎臓移植については
腎臓移植ネットワークが設置されておりまして、また一方で自由配布制のドナーカードの普及等の取り組みも行われていると聞いており、これらを基盤として今後必要な体制を整備していくことが求められているものと考えております。
以上でございます。(
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〔竹村泰子君
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