○立木洋君 私は、
日本共産党を代表して、橋本首相並びに
関係閣僚に
質問いたします。
まず初めに、
国民に対する不当きわまりない過重な負担を押しつける
予算の問題についてです。
政府は、九七年度
予算で消費税率の五%への引き上げと特別減税二兆円の打ち切りを計上しています。それは合わせて七兆円、乳幼児から
高齢者まで
国民一人当たり年間五万八千円にも上り、消費税導入以来最大
規模の負担増であつく
年金生活者や低所得者にとって死活の問題であります。
また、
中小企業向けの特別措置であった限界控除
制度が廃止されると大幅な増税になるケースも続出しますし、特に大手との販売競争で消費税を商品・サービス価格に転嫁できない中小零細
企業は、自腹を切ってその税金分を負担せざるを得ません。
さらに、この増税によって国内総生産の六割を占める家計消費は冷え込み、現に、長引く不況のもとで景気回復の一層の鈍化をもたらすとの不安から生じた東京株式
市場の
下落低迷と相まって、
日本経済を一層困難に陥れようとしております。
既に、民間の五十六
調査機関の九七年度の
経済見通しによりますと、物価上昇を差し引いた実質
経済成長は平均で一・四一%にとどまり、こうした株価全面安に象徴される
日本経済の陰りが引き金どなって、政界、
経済界からも四月一日の消費税引き上げを見送るべきだとの
議論が出ているのは当然ではありませんか。
世論調査では消費税率引き上げ反対と廃止を合わせて六四%の多数の
国民が反対し、今日、
日本共産党を通じて既に七百万以上の請願署名が
国会に提出されています。この
国民の声にこたえて、今回の
通常国会において消費税問題を徹底して
議論し、
国民生活を脅かすだけではなく、景気を一層悪化させ、
国民経済を停滞させる消費税率五%引き上げを中止すべきではありませんか。明確に
お答えいただきたい。
首相、代替の財源は十分あるのであります。首相も
演説で、「公共事業に対する批判を重く受けとめ、建設コストを大幅に縮減する」と述べていますが、実施しようとはしていません。肝心なことはむだと浪費をなくすことです。
そのためにも、まず十年間で六百三十兆円もの金を注ぎ込む公共投資
基本計画に固執することは改めるべきです。
日米構造
協議で公共投資の四百三十兆円拡大が問題になったとき、当時
大蔵大臣だった首相は、干渉ではないかと批判したではありませんか。昨年の臨時
国会での
日本共産党の不破委員長のこの
質問に対して、首相は、あくまで自主的に取り決めたものと
答弁をいたしましたが、それなら、初めに六百三十兆円ありきのこの計画は、この際、根本的に見直すべきであります。明確な
答弁を求めます。
公共事業では、三千六百億円投入した北海道の苫小牧東部開発のように明らかに失敗した
企業誘致の事業や、一方で減反を進めながら大
規模な農地を造成する中海干拓事業に既に七百五十九億円も投じるなど、浪費とも言うべき投資にさらに巨額の国費をつぎ込もうとして、どうして財政再建を真剣に
考えている姿勢と言えるのでしょうか。この
予算のどこに
改革があるかとの厳しい批判が浴びせられていましたが、九七年度
予算案は、公共事業のむだを総点検し、高いコストにメスを入れ、徹底した削減を行うことを強く求めるものであります。
軍事費について言えば、戦車、護衛艦などの正面装備や、さらに米軍への思いやり
予算、
沖縄の
米軍基地移転などに投じる費用も含めるならば、抑制どころか、一般歳出の平均一・五%を上回る二・一%増という実質的伸びは際立ったものになっております。
世界が軍備縮小の道を進めている今日、軍事費こそ大幅に削減のメスを入れるべきではありませんか。はっきりとした答えをいただきたい。
さらに、最も肝要な大
企業を優遇する不公平税制の見直しも放置したままであります。
税金のかからない引当金、準備金や租税特別措置法、さらに外国税額控除などの大
企業に対する
我が国の優遇税制の現状については、他国に例を見ないものであります。
政府税制
調査会の法人課税小委員会でも、課税ベースをあわせて
考えると法人課税の税負担の水準の高低は容易に判断できないと、大
企業の税負担が欧米諸国に比較して大きいとは言えず、全般的な見直しを求めたのであります。
ところが、自民党がさきの総
選挙で、法人税の税率を引き下げるという方向で
検討を進めますと述べていましたが、首相は、欧米諸国に比べても高くない法人の税負担を財界の要求に応じてさらに軽減を行うのかどうか、
答弁を求めます。
首相は、二〇〇五年には赤字国債の依存からの脱却を述べていますが、浪費の構造をそのままにして法人税を引き下げて財政再建を行うというのであるならば、将来ともさらなる消費税率の引き上げ、
福祉、
医療、教育など
国民の必要な
分野を切り捨てて過酷な
国民の負担増を求めること以外に道はないではありませんか。
この際、
政府は、真にむだを省き
国民生活を守る立場に立って、所要の手続を踏み、異常な
国民負担増の九七年度
予算案を組み替えるべきであります。このことを強く要求いたします。
首相は、
行政改革については内政の最大
課題とまで述べています。それならば、
行政改革の原点である政官財の癒着を打破するという根本問題こそやるべきではないでしょうか。
さきの臨時
国会で、病院向け寝具や
医療食の
一つの業界団体からこれまで自民党などの政党や
政治家に対して四億二千万円に上る巨額の
政治献金が行われていたことが明らかになっています。この問題で、橋本首相も小泉厚生大臣も、この業界から受け取った
政治献金は届け出がしてあるからとか、よくなかったので返却したとかでは問題は済みせん。
橋本首相は、七五年五月のこの業者総会の懇談会で、病衣は近い将来に基準寝具の中に入れなければならない、私はこの
制度の
実現のために大いに
努力したいとあいさつをしていますが、翌年二月、病衣に初めて二点の診療報酬がついたのであります。
小泉厚生大臣も、八八年十二月、大臣になったとき、当時の寝具協会会長であった安倍晋太郎氏から、よく気をつけておいてくれよと言われたとみずから述べています。同協会は寝具診療報酬引き上げの要望を行い、点数は十四点から十五点に引き上げられました。このように協会加盟の業者は、
業務代行保証
制度という厚生省から与えられた特権を悪用して新規業者の参入を排除するという、独占禁止法に違反する悪徳商法を繰り返して行う一方、加算点数の引き上げで一点で年間六十億円の報酬増という暴利をむさぼってきたのであります。
業界の要求に沿って病衣を診療報酬に入れ、さらに点数を引き上げたことがこの業界の
政治献金と無
関係だとどうして言えるのでしょうか。こうした
政治家と業界との
政治献金による癒着
関係は明確に断ち切り、責任を明らかにすべきではありませんか。改めて、首相、厚生大臣にはっきりとした
答弁を求めるものであります。
国民の求めている
行政改革は、何よりも
企業・団体献金の禁止を実行することであります。口では行革を言いながら、資金を財界に求める。これでどうして政官財の癒着を断ち切り
国民のための本格的な
行政改革ができるというのでしょうか。
さらに、
政治家が身を切る覚悟というのであるならば、三百十億円もの巨額の
国民の税金を使い放題にしている政党助成金も即刻禁止すべきではありませんか。あわせて
答弁を求めます。
第二に、高級官僚の天下りの禁止の実行であります。
首相が
大蔵大臣在任時の一九九一年八月、証券不祥事の厳しい批判を受けて
大蔵省の天下りの自粛を取り決めましたが、その後も
大蔵省を初め他省庁でも天下りは後を絶っていません。例えば、
日本医療食協会への厚生官僚の天下りは十五人に上り、建設業界への建設官僚の天下りは六百二十三人の多数を占めています。
国民を憤激させた運輸省元次官の今回の事件は、関西国際空港会社への天下りであります。真の行革を断行する上で、特殊法人をも含めることを初め、徹底した天下り禁止を行うことは重要な措置ではありませんか。
第三には、情報の公開であります。
地方自治体による空出張あるいは官官接待などで、住民の強い情報公開の要求によって、昨年十二月までの一年間に不正支出として二十の都道府県で総計百三十七億円が明らかになっております。これは
国民の監視によって行政を正していく上で不可欠のものであります。この情報公開は、憲法に由来する
国民の知る権利を具体的に保障し、情報公開の範囲を狭める行政当局の恣意的な解釈が入り込む余地のないように厳密に規定することが求められています。首相は、これらの
基本的な内容を明らかにした情報公開の重要性をどう認識しておられるのか、その
実現の計画について見解を求めるものであります。
今回の
予算案で
国民の
痛みの最たるものの
一つは、
社会保障負担に向けられている
医療保険の改悪であります。
政府は、
医療保険の赤字等を理由に被用者保険の本人負担も一割から二割に引き上げ、お年寄りについても、薬価負担を合わせればこれまでの三倍に近い負担増になるわけであります。厚生
年金受給者ですら五百九十二万人のうち四五%の人々が
年金月額十五万円以下で
生活しています。それに
医療費が三倍にもなるという自己負担増は、
高齢者が病院に行くこともできないようにする極めて冷酷なものではありませんか。
健康保険の赤字の最大の原因は、
国民医療費の三割を占める薬剤費にあります。
日本の薬代、とりわけ新薬などは、同じ効用を持つ薬でも欧米諸国と比べて一・五倍から三倍という異常な高さであります。
政府はどうしてこの新薬の不当に高い薬価にメスを入れないのでしょうか。不当な薬価のつり上げのシステムを
是正すれば数兆円も負担が軽くなり、
国民への
医療費の負担増は必要がなくなるのであります。
問題の製薬業界からの自民党やいわゆる厚生族
議員への献金は巨額なものになっていますが、こうした
政治家に対する献金が高い薬価の構造を温存する目的のためのものとして薬価行政のゆがみをもたらしたのではないでしょうか。明確にしていただきたい。
阪神・淡路大震災から既に二年を迎えました。今日も仮設住宅で
生活を余儀なくされている人は七万人にも上り、その人
たちの多くが
高齢者であります。交通の便も悪く、病院に行くのもままならない。
調査によりますと、六百五十八人の方に生命の危険があると言われています。また、中小商工業者で営業が再開できても住民が町に戻らないため売り上げは落ち込み、被災者の
生活再建のおくれは最大の問題であります。
憲法が保障している生存権や災害救助法の規定に基づくならば、個人補償は
政府の
努力によって可能なことであり、しかも緊急な
課題であります。今、
生活再建のための援助金を支給する
法案を作成し、超党派の
議員の賛同で
実現を目指す市民グループなど、公的
支援を求めるさまざまな活動の広がりに大きな期待が寄せられているのは当然のことであります。
首相は、被災地の
生活再建のためなどに最大限の
努力を払うと述べましたが、個人補償を含め具体的
施策について明確な
答弁を求めるものであります。
国民の命や安全がないがしろにされてきたことが悲惨な形で示されたのがロシアのタンカーからの重油流出事故であります。漁業
関係者や多くのボランティアの
方々の必死の
努力にもかかわらず、依然として被害は拡大を続けて、犠牲者まで生じ、最大
規模のものになりつつあります。
昨日、我が党の不破委員長はこの
対策の
基本について詳しく
質問をしたのに対し、首相は、
対応のおくれを反省するとともに、今後総合的に
検討すると
答弁されました。首相は、
国民の生命と財産を守るべき
政府の責任を深く認識され、今後への教訓としてどういう
対策を具体的に
考えておられるのか、首相及び運輸大臣に
答弁を求めたいのであります。
いま
一つは、既に甚大な被害への補償であります。運輸省によりますと、保険から出るのはわずか二億円、国際油濁補償基金を合わせても最大二百二十五億円ということであります。これでは到底拡大する損害補償を賄うことはできません。
我が党は、去る二十日、ロシア大使に対し厳重に抗議するとともに、損害補償についてロシア
政府としても最善を尽くすよう強く申し入れを行いました。
政府としても、損害補償について速やかに最善を尽くすよう強く求めるものであります。
首相は、
経済構造改革で、
規制の撤廃や
緩和を通じて
経済の
効率性や
柔軟性と
産業競争力を高めることが不可欠と述べたことは、大
企業の海外進出、大型公共事業の増加、
規制緩和による新しいもうけ口の拡大、さらに
企業の負担の軽減とリストラによる大
企業の
競争力の強化に力を集中しようとするものではありませんか。これでは
国民との矛盾を深め、
経済の一層の行き詰まりをつくり出すものと言わざるを得ません。
日経連は、昨年来、
規制緩和の名のもとに、八時間労働制の規定の削除、残業の労使協定の届け出廃止、罰則規定の廃止、深夜業などを
規制した女子保護規定の撤廃など、人間らしい
生活と労働のために最低の基準を定めた労働基準法そのものの大幅な改悪を執拗に求め、首相も改悪の意図を隠していません。
昨年十二月、横浜郵便集中局で、夕方五時から明朝九時まで事実上仮眠時間をとれなくされた悪名高いニュー夜勤についていた四十一歳の職員が、体調を崩して仮眠室に行ったまま死亡し、四日間も発見されないで放置されていたという痛ましい事件が起きたではありませんか。全国の郵便局にこの勤務体制が導入されて三十二人目の在職死であります。首相はこの過酷な事態をどう
考えますか。
さらに、今、厚生省が強行しようとしている国立病院・療養所看護婦の二交代制十六時間拘束勤務の導入は、今述べた郵政労働者の悲劇を看護婦に拡大するものであります。そのことは、導入に当たって行われた研究結果が、患者に対するサービスの低下はもちろん、看護婦本人の健康に悪
影響を与えることを示していることからも明らかであります。これは看護婦不足を一層深刻にし、病院の存立にもかかわる根本問題であります。ところが、厚生省は、全国十の病院・療養所の看護部長がまとめた九十二ページにわたる試行結果報告書を、都合の悪い多くの事実を隠ぺいし、わずか十数ページにしてしまったのであります。
厚生大臣、長時間夜勤の二交代制の導入は中止すべきではありませんか。強く求めるものであります。
以上のように、大
企業の横暴やリストラで多くの労働者が苦しめられているとき、勤労者の
生活権、勤労権を定め、労働基準の向上を図ることを目的とした労基法の改悪は絶対に許されません。幕、労働大臣、明確な回答を求めるものであります。
今、
農村では、米を輸入しながら減反せよとは何事か、許せないという怒りの声が広がっています。ことしになって橋本高知
県知事は、行政が減反の強制を行うことを中止することを明らかにし、大きな反響を呼んでいます。これは減反
政策の行き詰まりを示しており、その抜本的な転換が求められているのではありませんか。
また、昨年発表された
総理府の
世論調査では、
食糧は外国産より高くとも国内でつくる方がよいという
調査の結果が八三・四%にも達しており、
食糧自給率の向上は緊急の
国民的
課題となりています。
幕、WTOから農産物輸入の
自由化を排除するための交渉を開始すべきではありませんか。
さらに、今、
農業者が最も望んでいることは、農産物の価格保証の問題であります。さらに、中山間地の所得保障、輸入農産物の
規制、これこそが
食糧自給率を引き上げ、担い手を育てていくことができることになるのであります。首相並びに農水大臣にあわせて見解を求めるものであります。
日米両
政府は、十二月二日、
日米特別行動委員会の
沖縄基地の
返還計画の
最終報告を発表しましたが、これは基地のない平和な
沖縄を求める県民の願いに背を向けるいわゆる基地のたらい回しにほかなりません。そこでは普天間基地のほか十施設が
返還されるとしていますが、
返還の対象のほとんどが県内のほかの基地内への移設条件つきではありませんか。とりわけ海兵隊普天間基地の海上基地への移設は、
世界に向けた殴り込みの海兵隊をこれまでどおり
沖縄に居座らせるだけではなく、侵略出撃基地を一段と強化することになるのであります。
沖縄に駐留する第三海兵遠征軍司令部の資料によっても、海兵隊は太平洋などのすべての地域への出撃を任務とする部隊で、九一年の湾岸戦争のときも、また、九五年のソマリア出兵にも見られるように、
日本防衛とは無
関係な、文字どおり
沖縄を本拠とする遠征軍そのものであります。
政府閣僚は、米軍は現在の水準を維持する
方針であり、
日本もそれを支持していると述べていますが、アメリカの国防総省は国防計画見直しを行っていますが、元太平洋米海兵隊司令官クルーラック氏は、
沖縄に巨大基地はもう必要ないとの見解を表明しております。また、アーミテージ及びナイ元国防次官補でさえ、朝鮮半島に
変化が生じれば
沖縄からの海兵隊撤退が可能だと述べているわけです。
そういう
状況がアメリカで問題になっているのに、これから七年間も八年間もかかって海上にヘリポートをつくるなどというようなことがどうして必要になるのでしょうか。なぜ
日本は、アメリカがそういう状態になっているときに、
日本政府こそこれを中止することを要求すべきではありませんか。
沖縄の海兵隊の撤退こそ米側に要求することを強く求めるものであります。
次に、
日米防衛
協力指針の見直しに関連して
質問を行います。
九六年七月二十三日の米議会
調査局報告書に、この見直しについては次のように述べています。地域の突発事変に備えた米日共同の計画立案の強化や、地域軍事紛争において米軍を
支援するための最も具体的な約束の取りつけに導くはずである、こういうのであります。このことはさきのクリントン米大統領の就任
演説でも、「全
世界に自由の灯を広げ」として、とりわけ強力な防衛力の維持を強調したように、強大な軍事力を背景にしてアメリカの国益のために他国を従わせ、
世界の憲兵的立場を示したものにほかなりません。アメリカの覇権主義に基づく国益のために行う地域軍事紛争に自衛隊が
協力していくなど、事実上の参戦計画の段取りをつくるのがこの見直しの
基本ではありませんか。はっきりしていただきたい。
最後に、
我が国は、憲法前文と第九条から、国際紛争の解決の手段として戦争へ武力の威嚇・行使は永久に放棄しています。これは厳然とした
我が国の最高法規に基づく禁止規定であります。口では
我が国の憲法の枠内と言いながら、さらにアメリカの軍事紛争に
協力を拡大しようとするガイドラインの見直しなるものは、いかなる口実をつけようとも憲法に真っ向から反する道を一層拡大するものであることは明らかではありませんか。明確に説明をしていただきたい。
憲法
制定五十年を迎える今年、憲法の原点に立ち戻ってガイドライン見直し
作業を中止することを強く求めて、
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
国務大臣橋本龍太郎君
登壇、
拍手〕