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国務大臣(
橋本龍太郎君) 第百四十回
国会の開会に当たり、国政に臨む私の所信を申し上げます。
まず初めに、在
ペルー日本国大使公邸占拠事件が今もなお解決していないことは、極めて遺憾であります。人質とされている方々の御苦労と御家族の御心配に思いをはせるとき、本当に心が痛みます。
我が国は、テロに屈することなく、
人命尊重を第一としながら事件の
平和的解決を図り、人質の
早期全面解放を実現するよう努力しております。また、
国際社会は一致してテロに対する断固たる姿勢を示しております。今後とも、
フジモリ大統領に全幅の信頼を置き、
ペルー政府や
関係国と緊密に連絡をとりながら、この事件を一刻も早く平和的に解決し、人質が全面解放されるよう全力を傾ける考えであります。
テロ活動は、すべての国家と
社会に対する重大な挑戦であり、
国際社会が一致して対応することが不可欠であります。
我が国としても、国際的な合意を踏まえ、国内外における
各種テロ対策を推進するとともに、
テロ行為など
我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態に対応できる体制を一層
充実させてまいります。
私は、今般、
東南アジア諸国を訪問いたしました。この訪問を通じ、この
地域が
民主主義と開放的な
市場経済体制に基づいて
世界の
成長センターとも言われる
発展を遂げ、
社会全体に
躍動感と未来への確信がみなぎっていることを改めて実感いたしました。また、米国は
規制緩和や
技術革新を通じて
経済を再活性化し、
欧州も
市場統合に加え、さらに
通貨統合を進めるなど、
世界の一体化に対応した動きを進めております。
重ねて申し上げますが、私が目指す
社会は、
国民一人一人が将来に夢や目標を抱き、
創造性と
チャレンジ精神を存分に発揮できる
社会、
世界の人々と分かち合える価値をつくり出すことのできる
社会であります。戦後五十年の間、
我が国は、
国民各層、そして
地域の
平等性を求めながら、豊かな
国民生活を手に入れることを目標としてまいりました。現在の
我が国の
システム、具体的には
行政の
システム、
民間活動に対する規制、
社会保障・福祉の
仕組み、
教育行政、国と
地方公共団伝との
関係などは、この目標に沿った形でつくられ、長期間にわたり、総じて効率的に機能してまいりました。そして、それゆえに、これらの
システムは日本の
社会そのものに深く根をおろしております。
しかしながら、
世界が一体化し、人、物、資金、情報が自由に移動する時代にあって、現在の
仕組みがかえって
我が国の活力ある
発展を妨げていることは明らかであり、
世界の潮流を先取りする
経済社会システムを一日も早く創造しなければなりません。
社会に深く根を下ろした
仕組みを変えることは大きな困難を伴います。しかも、これらの
システムは相互に密接に関連し合っております。私が、
行政、
財政、
社会保障、
経済、
金融システムに
教育を加えた六つの
改革を一体的に断行しなければならないと申し上げているのは、まさにこのためであります。
また、私が目指す
社会の建設は、
社会の
仕組みを変えるだけでは実現できません。私は、この国で暮らすすべての人が、正義や公正を重んじ、他人や弱い者への思いやりを持ち、人生の先輩を敬い、郷土や国、そしてかけがえのない地球を愛する心を持つことのできる
環境をつくり出すことこそが政治の役割であると考えます。
沖縄に係る諸問題につきましては、総理に就任して以来、国政の最
重要課題として取り組んでまいりました。
沖縄の方々が背負ってこられた
負担は、本来、
国民がひとしく負うべきものとの姿勢に立ち、引き続き全力で
取り組みます。
このような
基本認識に立ち、私は、三
党政策合意に基づく
協力関係のもと、
考え方を同じくするすべての方の未来に対する
創造力と熱意を結集し、二十一世紀の
幕あけを
国民全体が希望に満ちた気持ちで迎えられるよう全力で外交と内政に邁進いたします。
我が国は、歴史的にも地理的にも
アジア太平洋国家であります。
アジア太平洋地域が、開かれた
地域協力を基盤とした政治の安定と
経済の
発展の好循環を維持することは、
我が国外交にとって極めて重要であるとともに、この
地域が人口問題、食糧問題、エネルギー問題、そして
環境問題という
課題を克服できるかどうかは、二十一世紀の
世界にとって重要な意味を持っております。
我が国は、米国との間で
地球規模の
課題への
協力を進めておりますが、今後、
アジア諸国との間でも同様の
取り組みを強化することが重要であると考え、このような
認識に立って、私は、先般の
ASEAN各国首脳との会談において共同の
取り組みを強化することを提案いたしました。APECなどを通じてもこの
分野の
協力を強化するとともに、また、この
地域における貿易・投資の一層の
自由化、さまざまな
分野における
経済・
技術協力や
政策対話に力を入れてまいります。
米国が
アジア太平洋地域への関与を続けることは、
安全保障面においても
経済社会面においても
地域全体にとって好ましいものであり、私は、本日をもって二期目に入られる
クリントン大統領とともに、
我が国外交の基軸である良好な
日米関係を一層強固なものとするよう最大の努力をいたします。中でも
日米安全保障体制は、
我が国の平和と安全にとって不可欠であるだけでなく、
アジア太平洋地域全体にとって極めて重要であり、
日米防衛協力のための指針の
見直しなどにより、その
信頼性の向上に努めます。
我が国の防衛については、
日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような
軍事大国にならないとの
基本理念に従い、
文民統制を確保し、非核三原則を守るとともに、
防衛大綱及び
中期防衛力整備計画に基づき、現行の
防衛力の一層の
合理化、
効率化、
コンパクト化、及び必要な機能の
充実と
防衛力の
質的向上を図ります。また、
アジア太平洋地域における
安全保障面の
信頼醸成のために、
ASEAN地域フォーラムを初めとする
安全保障面の対話や
防衛交流を進めてまいります。
沖縄に所在する米軍の施設・区域の整理・統合・縮小を
日米安全保障条約の目的との調和を図りながら実現することは、内閣の最も重要な
課題の一つであり、
普天間飛行場の返還を初め
沖縄に関する
特別行動委員会の
最終報告の内容を的確かつ迅速に実施するよう全力を尽くします。
沖縄振興に関しましては、
基地所在市町村に関する
懇談会の提言の実現に向けて
予算を確保したところであり、今後とも
沖縄とともに真剣に施策を検討し、内閣を挙げて全力で
取り組みます。
日本・米国、中国のいずれの二
国間関係の前進も、
アジア太平洋地域全体の安定と
発展に寄与するものであります。
米中関係が改善の方向に向かい始めたことを歓迎し、
我が国と中国の両
国民が
国交正常化二十五周年を心から祝福できるよう
相互信頼に基づく
両国関係の
発展に努めるとともに、中国の
WTO早期加盟の支援などにより、中国と
国際社会との一層の協調を促します。
朝鮮半島に関しては、今週末の
首脳会談などを通じて韓国との
友好協力関係を一層強化するとともに、
朝鮮半島の平和と安定に資するとの観点をも踏まえ、韓国などと緊密に連携しながら
日朝関係に対処いたします。
欧州諸国との
関係においては、
我が国と
欧州との間の広範な
協力を推進するとともに、
アジアと
欧州が
国際社会における責任を共有し相互の利益を増進するため、
アジア欧州会合の
発展に努力いたします。
ロシアとの
関係では、さまざまな
分野で
活発化しつつある対話や
協力をさらに強化するとともに、特に、
東京宣言に基づいて北方領土問題を解決し、
平和条約を締結して
関係の完全な
正常化を実現するため、引き続き努力してまいります。
我が国は、本年から
国連安全保障理事会の非
常任理事国となりました。
国際社会が直面するさまざまな問題の解決に向けて、国連の場などを通じて
国際社会を先導し、これまで以上に主体的に行動いたします。国連が時代の要請に適合した役割を果たすことができるよう、全体として均衡のとれた
国連改革の実現に努めるとともに、安保理
常任理事国入り問題については、
国連改革の
進捗状況や
アジア近隣諸国を初めとする
国際社会の支持と一層の
国民的理解を踏まえて対処いたします。
中東などにおける
地域紛争の予防と解決や、アフリカなどで深刻化している難民問題の解決にも、国連の
平和維持活動への参加などを通じて積極的に対応いたします。
大量破壊兵器や
通常兵器の軍縮と不拡散に関しては、唯一の
被爆国の立場から、
核兵器に用いられる
核物質の生産を禁止するための
条約交渉の
早期開始に努力するなど、
核兵器のない
世界を目指し、率先して
取り組みます。
途上国の
開発努力を支援することは、
世界全体の平和と繁栄だけでなく、
我が国の利益に資するものであります。
国民の皆様の御理解をいただきながら、
政府開発援助を一層効率的に実施してまいります。同時に、
途上国が直面する
課題の変化に的確に対応するため、
開発援助の質の向上に重点を置いて、
政府開発援助のあり方をさまざまな角度から検討いたします。
我が国は、これまで戦後の
経済発展の成功を中心にみずからの経験を諸外国に伝えてまいりましたが、今後、
環境問題を初めとする
我が国の経験を、
成功例にとどまらず、
失敗事例やその解決の過程における困難、そしてそれを克服してきた努力などを含めて紹介し、他の国々が同じ過ちを繰り返すことのないようにすることが重要であります。昨年末に
我が国が主催した
東アジア社会保障担当閣僚会議は、私のこのような
考え方を
社会保障・福祉の
分野において具体化したものでありますが、
世界福祉構想に基づき、今後ともあらゆる機会をとらえ、各国との間でお互いの経験を共有するよう努めてまいります。
この三月には、国と
地方を合わせて四百四十二兆円にも上る
長期債務を抱える中、
財政の
健全化を進めていくためには、
歳出歳入両面にわたる
構造改革が不可欠であります。私は、このような
認識に立って平成九年度を
財政構造改革元年と位置づけ、九年度
予算を編成いたしました。
歳入面においては、
消費税率の引き上げ及び
地方消費税の導入を予定どおり実施するとともに、
特別減税を実施しない決断をいたしました。これは、これ以上の
赤字拡大を放置することが
財政の破綻につながる状況のもとで、
地方や福祉の
充実のための財源を確保するとともに、働く世代の
負担を軽減し、
社会を構成する一人一人が広く
負担を分かち合うことにより、
経済構造改革にも資する
税制改革を行うためであります。六十五歳以上の低
所得者層など
税制改革による影響が大きい方には必要な措置を講ずることとしております。
歳出面においては、
一般歳出の
伸び率を
名目成長率より相当低い一・五%に抑えることなどにより、
国債費を除く
歳出を
租税収入などで賄える範囲にとどめ、
財政健全化の
第一歩としております。
景気との
関係では、九年度
予算にあわせて八年度
補正予算の
早期成立と円滑な執行に努めるなど、適切な
経済運営を進めてまいります。
財政再建は九年度が
第一歩であり、今後さらに厳しい努力が必要であります。
財政の
健全化については、平成十七年度までのできるだけ早い時期に国及び
地方の
財政赤字の対
GDP比率を三%以下とすること、国の
一般会計においては
特例公債依存からの脱却と
公債依存度の引き下げを図ることなどを目標といたします。その実現に向けて、
財政構造改革会議を設置し、
政府・与党が一体となって
歳出の
改革と縮減を具体的にどう行うかを早急に検討し、十年度
概算要求段階からその成果を反映させ、
予算編成において一段と
歳出の
改革と縮減を進めるとともに、
財政再建のための法律の骨格を定め、できるだけ早い機会に
国会に
法律案をお諮りしたいと考えております。私自身、こうした
検討作業の先頭に立ち、皆様から評価いただける平成十年度
予算を編成いたします。
同時に、少子・
高齢化の進展の中で、働く世代や企業の
負担の増大が
経済活力を低下させる懸念を踏まえ、現在及び将来の世代の
負担の抑制に最大限努力いたします。処理すべき債務が二十七兆円を超え、深刻な状況にある
国鉄長期債務については、十年度から
本格的処理を実施すべく
具体策を取りまとめてまいります。
財政投融資につきましては、
改革を推進するとの
基本方針のもと、対象となる
分野・事業について、
公的部門は、本来、民間の活動を補完すべきものであるとの観点や、
償還確実性といった観点などから見直すとともに、効率的かつ重点的な
資金配分に努めてまいります。
我が国が
世界的にも高い
教育水準を達成できたことは、
教育に対する
国民の情熱のたまものでありますが、今後、
国民一人一人が
充実感を持って暮らしていくためには、学歴が一生を左右しかねない現状を改め、一人一人が自分の適性に基づいて能力を伸ばし、努力し、生涯にわたって活躍できる
社会を建設する必要があります。また、
国際化、
情報化が進展する中で、
国際社会に通用する人材を育成することはますます重要であります。かかる
認識に立ち、
平等性、
均質性を重視した
学校教育を、個々人の多様な能力の開発と、
創造性、
チャレンジ精神を重視した生涯学習の視点に立った
教育に転換する
教育改革を進めてまいります。
私は、この国の将来を担う次の世代が、みずからの夢や目標のために努力すると同時に、国や
地域の将来に高い志と
国際的視野を持って積極的にかかわっていく世代であってほしいと願っております。こうした人材を育てるためには、答えが決められている問題を解く知識だけではなく、みずから
問題意識を持って自分なりの解答を出し、その実現に努力できる知識、見識、良識をバランスよく育てる
教育が必要であり、また、
子供たちが多様な夢や目標を目指して努力するには、
教育の
分野においても選択の幅を広げることが必要です。このような
認識に立って、
学校週五日制に移行するための準備を進めながら、
中高一貫教育などの
学校制度や
教育課程の
見直しにより、
子供たちの持つ
可能性を十分に引き出し、生きる力をはぐくむことのできる
教育を実現したいと考えます。いじめや非行の問題については、家庭、学校、
地域社会が一体となって取り組むことができるよう支援を強化いたします。
社会の進歩と人々の幸福につながる
知的資産を
世界に発信できる
科学技術創造立国を目指し、独創的、基礎的な
研究開発体制の
充実、
創造性に富む人材の育成、
産学官の
連携協力の推進、
脳科学や
遺伝子研究の
充実など、
科学技術の振興にも努力いたします。また、開かれた
大学づくり、
自己啓発、
公共職業訓練などによる生涯学習の
充実、スポーツ、文化、
芸術活動の振興、留学生の
交流拡大を含めた諸外国との
文化交流、
文化協力の
活発化にも力を入れ、だれもが生きがいのある人生を送ることができる
社会の建設に努力いたします。
女性政策については、
男女共同参画社会を実現するための
行動計画を着実に実施するとともに、新たな
審議会の設置を図ります。また、働く女性が性により差別されることなく、かつ、母性を尊重しながらその能力を十分に発揮できるよう
関係法案を今
国会に提出いたします。
人権が守られ、差別のない公正な
社会の実現に向け、人権に関する
教育や啓発など人権の擁護に関する施策を推進いたします。また、アイヌに関する文化の振興や理解の促進を図ります。
急速な少子・
高齢化が進展する中で、給付と
負担の均衡がとれた
社会保障をいかに実現するかは
国民の
公的負担水準とかかわる重大問題でありますが、
社会保障の費用は、本人の
負担か
事業者の
負担か税金を使った国や
地方の
負担かにかかわらず、だれかが
負担しなければならないものです。個人の尊厳と自立・
自助努力を縦軸として確立した上で、
社会の連帯の精神を横軸に据え、民間の参入を促しながら、
利用者の選択に応じ、質の高い
サービスを効率的に提供できる
社会保障制度を整備してまいります。
切実な問題となっている
高齢者介護の問題に対応する
介護保険制度の創設は
社会保障構造改革の
第一歩であり、今
国会における
法案成立に全力を尽くします。また、大幅な
赤字体質となっている
医療保険制度をこのまま放置することは許されません。
国民皆保険の
仕組みを維持しながら、適切かつ効率的な
医療サービスを安心して受けられるよう、今
国会に提出する法案を
出発点として、医療の
提供体制と
保険制度全般にわたる総合的な
改革を行います。さらに、
高齢者や
障害者の方がハンディキャップを克服し、できるだけ自立した生活を送ることができるよう、新ゴールドプランと
障害者プランを着実に推進いたします。
少子化傾向が定着し、
夫婦共働き家庭が一般化した今日、
社会の支えなくしては仕事と育児の両立は困難です。今
国会においては、子供を持つ家庭のさまざまな要請に応じて
保育サービスを選択できるよう制度を改正したいと考えております。
私が目指す
日本経済は、民間の需要が原動力となって安定した
成長軌道をたどり、質の高い雇用の場が拡大する
経済であり、豊かな
国民生活や
財政の
健全化はこうした
経済のもとで可能となるものであります。強靱な
日本経済を再建するためには、富をもたらし新たな雇用をつくり出す重要なかぎとなる新しい産業について、資金、
技術、人材などの観点から
環境を整備し、成長が期待される
分野に応じて総合的な施策を展開しなければなりません。また、
経済的に効果の大きい規制の撤廃や緩和、
企業税制の
改革や
持ち株会社の解禁などを通じ、魅力ある
事業環境を整備し、
経済の
効率性や
柔軟性と産業の
競争力を高めることも不可欠です。
同時に、
サービス産業化が進む中にあっても、
製造業は
日本経済の基盤であり、
先端産業を支える
部品産業など、
物づくりを支える
地域における
技術や技能の集積を守り育てることは重要な
課題であります。あわせて、
経営革新に努力する
中小企業を支援することも必要です。
昨年末に決定した「
経済構造の変革と創造のための
プログラム」は、このような
認識に立って、
経済構造改革を大胆に実行していくための
政府の
取り組みを明らかにしたものであります。特に、物流、エネルギー及び
情報通信は
産業活動の基盤であり、コストを含めた
サービス水準を二〇〇一年までに国際的に遜色のないものとすることを具体的な目標に掲げております。
情報通信の
分野では、NTTの
国際通信業務への進出、
情報通信基盤の整備を推進いたします。
今後、
関連法案の成立に努力するなど、この
プログラムを着実に実施してまいりますが、
プログラムの
基本的考え方に示された
課題に対する今後の
取り組み内容をできる限り
充実するなど、その実現に向け、
政府の
行動計画をこの春までに策定いたします。
農業についても
構造改革を急がなければなりません。
農業農村をめぐる
環境は
農業基本法が制定された昭和三十年代から大きく変化しており、意欲あふれる
農業者の育成、活力にあふれた農村の再生など、
WTO体制にも対応した農政を実現するための新たな
基本法の制定に向けて本格的な検討を進めます。
水産業については、韓国、中国との新
漁業協定の
早期締結、
資源管理やつくり育てる漁業の推進に努めます。
公正で透明な
多角的国際経済システムは、これらの
経済構造改革を支えるものであり、
貿易関通の
国際紛争を
WTO協定に則して解決するとともに、新しい
ルールづくりにも積極的に
取り組みます。
国際的な
自由化の進展や
情報技術の革新を先取りし、東京をニューヨーク、ロンドンと並ぶ
国際金融市場に復権させることを目指す
金融システム改革は、円の
国際的地位を向上させ、本格的な
高齢社会の到来を控えた
我が国の
経済活力を維持するために不可欠です。国境を越えた
金融取引を抜本的に
自由化する法案を今
国会に提出することを初めとして、銀行、証券、
保険分野への参入を促進し、千二百兆円に上る
個人金融資産を有利に運用することができるよう規制を
見直し、
国際化に対応した
法制度を整備するなど、二〇〇一年までに逐次
改革を実行してまいります。
この
改革は
利用者が多様な商品や
サービスを選択することを可能にしますが、その一方で、リスクを伴う取引を自己責任のもとで行うこと、さらには規制に安住する経営が許されなくなることを意味します。
政府としては、こうした状況に的確に対処するために、ディスクロージャーの徹底、ルールの明確化などにより透明かつ公正な金融
行政を行います。同時に、金融危機が国際的に瞬時に伝播することも考えられるため、緊密な国際
協力体制を確立してまいります。あわせて、
我が国金融システムの安定に万全を期すとともに、金融機関の不良債権問題の速やかな処理に全力を尽くします。
さらに、新たな金融
行政に対応するために金融
行政機構を
改革する法案と、日本銀行を開かれた独立性を持つ中央銀行に
改革する法案の今
国会中の成立を期します。
発生から二年を経過した阪神・淡路大震災は多数の死傷者と甚大な被害をもたらしました。また、昨年末に姫川蒲原沢で発生した土石流災害は、とうとい人命を失う結果となりました。亡くなられた方々と御遺族に対しまして改めて深く哀悼の意を申し上げますとともに、これらの教訓をもとに今後の災害対策や災害発生時の危機管理に万全を尽くします。また、
補正予算や九年度
予算における措置などにより、阪神・淡路大震災の被災地の生活の再建、
経済の復興、安全な
地域づくりや全国的な防災対策の
充実に最大限努力いたします。
また、阪神・淡路大震災の教訓や東京圏への一極集中などを踏まえ、全国総合開発計画の策定や首都機能の移転に積極的に
取り組みます。
社会資本の整備に関しては、限られた
予算を効率的に活用するために、住宅・都市、
環境衛生など
国民生活の質の向上に直結する
分野や、国際ハブ空港や高規格幹線道路など次世代の
発展基盤となる
分野に一層重点的に
予算を配分してまいります。同時に、公共事業に対する批判を重く受けとめ、建設コストを大幅に縮減するための
行動計画を早急に策定し、実施いたします。また、整備新幹線の未着工区間については、整備区間ごとに、収支採算性、並行在来線の経営分離についての
地方公共団体の同意、JRの同意などの基本条件が整えられていることを確認した上で、その取り扱いを厳正に判断してまいります。
都市に関しては、大都市とその周辺に暮らす住民のために、職場と住宅の近接した快適な住
環境の実現や密集市街地の整備などによる都市の
構造改革に努めるとともに、土地の有効利用や実需に基づく取引の活性化のために土地政策を利用重視に転換することとし、新しい土地政策要綱を早急に策定いたします。
また、ゆとりと潤いにあふれ、緑豊かな国土を目指し、農山漁村の振興に努めるとともに、森林の多面的な機能を踏まえ、
我が国林業のあり方を検討いたします。
環境と開発に関する国連特別総会が開催される本年は、持続可能な開発の重要性に
世界の首脳が一致した地球サミットから五年目に当たり、
我が国としても
環境問題への
取り組みを大きく前進させるべき年であります。特に、十二月に京都で開催される国際会議は、二十一世紀における地球温暖化防止のための国際的
取り組みを定める重要な会議であり、効果があり、かつ公平で実行可能な合意が得られるよう各国に積極的に働きかけてまいります。
同時に、原子力の平和利用は、地球の温暖化と
我が国の脆弱なエネルギー供給構造に対応するために不可欠であり、徹底した安全の確保を前提に積極的な情報公開に努め、
国民の皆様の御理解をいただきながら着実に推進いたします。また、循環型
社会を目指した廃棄物のリサイクルや排出抑制、産業廃棄物の適正な処理や不法投棄問題への対応に必要な制度改正を行うとともに、
環境アセスメント制度についても所要の法案を今
国会に提出する考えであります。
日本海で発生したタンカー海難事故により流出した重油は広い範囲の海岸に漂着しており、自然
環境や漁業への影響が懸念されます。いち早く重油の回収に当たられた
地域の皆様方やボランティアの方々に一日も早く安心していただけるよう、
政府としては、
地方公共団体と緊密に連携をとりながら、また、民間の御
協力を得ながら、
関係省庁が一体となって被害の拡大防止に万全を期します。
また、市民生活の安全を脅かす銃器の使用や薬物の乱用への対策、組織犯罪対策、交通安全対策にも力を入れます。
以上申し上げた変革と創造を実現するという内閣の決意を示し、
国民の皆様の御支持、御
協力をいただくためには、
政府みずからの
改革を率先して行うことが不可欠です。そして、それはまさに政治の責任であります。
私は、
行政サービスを利用する
国民の立場から国が果たすべき機能を見きわめ、
国民が求める
サービスを最小の費用で提供できる
行政、
我が国の活力ある
発展のために
経済社会の変化に柔軟に対応できる
行政をつくり上げることが
行政改革の目的であると考えます。この目的に照らし、国や
地方公共団体が規制などによって
民間活動に関与していることを廃止できないか、国の現業や特殊法人などの
公的部門が提供している
サービスを民間にゆだねられないか、
行政が関与する場合であってもその主体を国から
地方にゆだねられないか、この三つの観点から、一切の聖域を設けず
行政のあり方を総点検いたします。
官民の役割分担に関しては、市場競争の原理を尊重し、
行政改革委員会がまとめた判断基準を最大限活用して
見直しを進めます。公的規制に関しては、
規制緩和推進計画を三月末までに再度改定し、さらに
経済的規制の原則排除、
社会的規制の白地からの
見直しによって必要最小限に絞り込んでまいります。
地方公共団体との
関係では、
地方の自主性と自立性を高めるために、権限の委譲を進め、中央集権型
行政の象徴とされている機関委任事務制度を廃止すると同時に、補助金等の整理
合理化や、国と
地方の役割分担に応じた
地方税財源の
充実確保を行います。自主的な合併を初めとする
行政体制の整備と徹底した
行財政改革に取り組むよう
地方公共団体に強く求めながら、平成十年の通常
国会が終了するまでのできるだけ早い時期に
地方分権推進計画を作成し、総合的かつ計画的に
地方分権を推進いたします。
政府は、九年度中に情報公開法案の
国会提出を図り、また、特殊法人に関する一層のディスクロージャーなど
行政活動の状況と政策を積極的に説明し、開かれた
行政を実現するために努力いたします。一カ所で複数の事務手続を可能にするワンストップ
サービスの導入や
情報技術を利用した
行政情報の提供など、
行政サービスの質の向上にも努力いたします。
中央省庁の再編については、以上申し上げた
認識に基づき、
行政改革会議において十一月末までに成案を取りまとめます。
行政改革を進めるに当たり、政治の責任でこれをなし遂げるためには、政治への信頼を回復することが不可欠であります。
政治の浄化に関しては、各党各会派で政治資金や
選挙制度について十分御論議をいただき、その結果を踏まえて適切に対処するとともに、政治や
行政が個別
地域や特定業界の利益をいたずらに守っているとのおしかりを受けることがないよう毅然と対応いたします。また、閣僚に対しては、各省庁の立場を離れて高い識見とリーダーシップを発揮するよう、公務員に対しては、縦割りの弊害を克服し
国民本位の
行政改革の実現に全力を尽くすよう、それぞれ求めます。あわせて、
行政に対する信頼を回復するため、すべての公務員が
国民全体の奉仕者であるとの自覚を持って各省庁の定めた倫理規程を遵守するよう徹底するとともに、全省庁の事務執行体制を再点検し、不祥事の根絶に万全を期します。さらに、公務員制度のあり方について総合的な
見直しを行います。
以上、私の所信を申し述べてまいりました。
戦後五十年の間に極めて精緻かつ強固になった
経済社会システムを変革し創造することはかなりの痛みを伴うものであり、新しい
システムをつくり上げる以上の英知と勇気を必要といたします。
規制を撤廃すれば、規制の傘のもとに保護されてきた
事業者は競争の荒波にさらされ、
利用者にもみずからの責任において商品や
サービスを選択する目が求められます。
財政を
効率化すれば、それに依存している方々は厳しい状況に置かれます。個々人には、逆境にあっても失敗をしても立ち上がる不屈の精神が求められます。真に手を差し伸べるべき方々には必要な手だてを講じます。しかし、痛みを恐れて
改革の歩みを緩めたり先延ばしにすることは許されません。今を生きる我々には、よりよい
社会を実現し、次の世代にそれを引き継ぐ責任があります。
変革と創造の実現のために困難を乗り越えるリーダーシップを発揮することは政治の使命であります。みずから方向性を示し、
国民の皆様からいただく御意見、御提案には真剣かつ謙虚に耳を傾け、その上で、議論し、決断し、実行する、そのためにすべてをささげる、これが私の申し上げたいことのすべてであります。
国民の皆様並びに御臨席の議員各位の御支援と御
協力を心からお願いいたします。(拍手)
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