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最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君)
国民の側から
裁判所を使う場合の問題ということでございますので、主として民事
事件について申し上げたいと思います。
地裁、簡裁、これはいずれも、
国民の側から持ち込まれます法的紛争を適正かつ迅速に解決するということ、またわかりやすく利用しやすい裁判をやっていくという点ではこれは全く共通でございますけれ
ども、やはりその
手続の
あり方の特徴等が多少違ってまいります。
御
承知のように、地方
裁判所に提起されます
事件というのは、訴えの額といいますか、請求金額が九十万円以上という比較的金額の大きな
事件が提起されることになっておりますので、どうしてもその
手続自体慎重にといいますか、そういう点が出てまいります。そういたしますと、どうしてもその審理期間もおのずから長くなるという傾向がございますが、
国民の側からいたしますと、この地方
裁判所の裁判につきましてももう少し短い時間で解決をしてもらえないかという要望があるだろうと思うんです。そこが今一番の大きなポイントでございますので、
裁判所の方としましても、この地方
裁判所におきます民事訴訟の運営の
あり方というものを
改善いたしまして、できるだけ早期に解決ができるような、そういう工夫をしてきております。また、わかりやすい裁判にするために、判決書の書き方自体も余り難しいものにしないで、御本人がお読みになっても比較的わかっていただけるような平易な判決書というものを考えていこうというふうな、そういう工夫をしております。
今回の民事訴訟法の
改正というのは、こういった実務上の工夫をいわば法制化したものでございますので、今後ともこの新しい民事訴訟法の趣旨にのっとりました集中的な争点の整理と集中的な証拠調べ、こういうものが実現できるような訴訟運営を考えていく必要があろうかと思っております。
それからもう
一つの、簡易
裁判所の方でございますが、これはどちらかといいますと、もう少し
国民の身近なといいますか、そういうふうなイメージの
裁判所として
充実させていく必要があるだろうと思っております。
実は、簡易
裁判所に提起されてまいります
事件というのは、もうほとんどが双方とも弁護士さんがおつきにならない
事件でございます。全
事件のうち九割ぐらいは、双方とも御本人だけで裁判をおやりになるという、そういう
事件でございますので、どうしても法律の知識が乏しいわけでございますので、地方
裁判所の
事件の審理とはやはり違ったいろんな工夫が必要になってまいります。例えば、訴訟におなれになっていない方には、どういう
手続でその裁判を進めていったらいいかということを御
説明するとか、あるいは
手続の案内等もいろんな形でやっていくというふうな工夫が必要になってまいります。
最近の簡易
裁判所では、新しいところをごらんになっていただきますとわかるかと思いますが、受付の窓口のイメージを一新いたしまして、オープンカウンターといいますか、低いカウンターで、
裁判所の者が対面方式で、その
裁判所に来られた当事者の方等といろいろお話をして、
手続の教示をしたりあるいは案内をしたりするような、そういう雰囲気をできるだけつくるような
施設も考えております。
さらに、
委員が先ほど御
指摘になりました新しい民事訴訟法では、少額訴訟
手続という
制度が設けられました。これは、市民同士の間での簡単な紛争を、原則として一回
裁判所へ出てきていただければ判決まで行けるような、そういう解決方法を用意しようというシステムでございます。
国民の利用しやすい簡易
裁判所という観点からは、この少額訴訟
手続というものを的確に運用していけるような、そういう
体制をつくっていく必要があろうかと思います。
それからもう
一つ、簡易
裁判所の
裁判官の
配置の問題がございましたが、
裁判所は全国に多数の簡易
裁判所を持っておりまして、庁によりましては非常に
事件数が少ないところがございます。人一人を
配置しておきますと効率が悪いというところがございますので、一部兼務の
裁判官になっている庁もございます。
ただ、このあたりは、実はこの十年来、簡易
裁判所の
配置の見直しというのをやってまいりまして、戦後すぐの時期とは交通
事情も違っておりますし、人口動態にも変化が出ておりますので、今の時代の交通
事情なり人口動態に合ったような形に簡易
裁判所の
配置を見直そうということで、こういう作業を進めてきたわけでございます。
その作業の
過程で、
配置を見直すけれ
ども、そのかわり、新しく
配置が決まった
裁判所については、できるだけ常駐の簡易
裁判所判事を
配置していこうということで、従前兼務になっておりました庁にも専任の簡易
裁判所判事を
配置するというふうな
努力をやってきておるところでございます。