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1997-05-29 第140回国会 参議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十九日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動   五月二十八日     辞任         補欠選任      木暮 山人君     林 久美子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         清水嘉与子君     理 事                 小野 清子君                 鹿熊 安正君                 石田 美栄君     委 員                 井上  裕君                 釜本 邦茂君                 田沢 智治君                 馳   浩君                 菅川 健二君                 林 久美子君                 山下 栄一君                 山本 正和君                 本岡 昭次君                 阿部 幸代君                 江本 孟紀君                 堂本 暁子君                 長谷川道郎君    国務大臣        文 部 大 臣  小杉  隆君    政府委員        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省教育助成        局長       小林 敬治君        文部省高等教育        局長       雨宮  忠君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君    事務局側        常任委員会専門        員        青柳  徹君    説明員        労働省労働基準        局監督課長    青木  豊君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○大学教員等任期に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、木暮山人さんが委員を辞任され、その補欠として林久美子さんが選任されました。     —————————————
  3. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  大学教員等任期に関する法律案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 大学教員等任期に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 馳浩

    馳浩君 おはようございます。自由民主党の馳浩と申します。よろしくお願いいたします。  大学教員任期制導入しようという法案についてではありますが、我々国会議員も六年間という任期のもとに仕事をしておるわけでありまして、任期が終わって再任というか再選されなかったときのことを考えますと大変寂しい気もいたしますが、気を取り直して質問に入りたいと思います。  さて、二十一世紀の日本というのは科学技術創造立国というものを求めておるわけでありまして、そういう観点から翻って今現在を見れば、まだまだ日本科学技術模倣立国で、そういう意味でも各大学における基礎研究の充実、教育研究活性化人事流動化といったものは必要不可欠な問題であると認識してはおりますが、今回とられます任期制だけでは、十分な教育研究活性化人事流動化、現在問題になっております各大学人事の派閥といった問題でありますとか、そういった問題に対応していくのはなかなか難しいのではないかという観点から、この任期制のほかにももちろん教育研究に対する環境整備も進めていかなければいけないと思うのですが、この任期制の意義も踏まえまして、まず大臣からの御所見を伺いたいと思います。
  8. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) これはあくまでも大学教育研究活性化を図るための方策一つということで、数々の大学活性化方策の中のワン・オブ・ゼムである、こういう位置づけをしております。  本来、教員流動性を高めることによって多様な人材を交流して大学教員相互学問的な刺激を与える、そのことによって教員教育研究能力向上教育研究活性化をする、こういうことをねらっているわけでございます。  また、異分野、違った分野研究者や異なる経験、発想を有する者との出会いが学問的な関心や豊かな着想力を生むということで、そういった趣旨でこのたびの法案を提出した、こういうことでございます。
  9. 馳浩

    馳浩君 今の基本的な質問に関連しての質問ではありますが、今回のこの任期制は強制ではなくて選択制ということであります。いわば学問の自由、大学の自治に配慮してのことだと思いますが、それでは私は問題があると思っております。  選択制の結果、ごく一部の大学、学部での導入にとどまった場合に、よほどのよい条件、例えばそのポストがより高い収入が得られるとか、あるいは移った大学によりよい研究設備が充実しておるとか、そういったインフラ整備がない限りには、身分の不安定な任期ポストに優秀な先生がどんどんついてくるとはなかなか考えられません。そして、肝心のこの条件というところでありますが、今般の財政難の折には多くは期待できないのではないかと思います。今現在のままでは、給料に関しましても総じて一律でありますし、国公立大学研究施設老朽化はなかなか改善されておりません。そう考えますと、このままでは任期制導入はごく一部にとどまり、任期制導入に伴う人材交流、ひいては教育研究活性化はなかなか実現不可能となるのではないかと思います。  さらに、今現在紳士協定として任期制導入している百一校の大学も、紳士協定で認められた再任を拒否された教員の居座りの自由をこの法案では認めない趣旨であることからも、任期制法制化に移行しないのが相当数に上るのではないかと考えられます。  そこで問題となりますのは、教育研究活性化政策全体の中での任期制位置づけでありまして、文部省はこの任期制活性化策のあくまでも一つ方策としか考えず、大学側活性化策の有力な選択肢を提供するにとどめる基本方針なのか。あるいは、活性化策の中核と考えていわゆる財政誘導して、半ば強制的にもこの任期制導入を果たそうとするお考えなのか、お答えを願います。
  10. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) ただいまお尋ねの、大学教育研究活性化対策ということの中での今回の法案位置づけについてのお尋ねでございます。  先ほど大臣からお答え申し上げましたように、教育研究活性化対策と申しますものの中には、今先生が御指摘のような教育研究条件改善の問題もありましょうし、処遇の改善の問題もありましょうし、さまざまな問題があるわけでございます。また、教員流動性の確保ということに限定いたしましても、必ずしも今回の法案のねらっております任期制だけが流動化のすべてであるというようにも考えておらないわけでございまして、大学審議会の昨年秋の答申の中におきましても、例えば採用の仕組みの改善公募制の活用を大いに進めるとか、あるいは学外の専門家の積極的な登用を進めるでありますとか、あるいは教育研究組織自体を非常に弾力的にしたらどうかとか、さまざまな提言も行い、また現実にも進められているものがあるわけでございます。  したがいまして、私ども今回の法案位置づけといたしましては、それらの今までやってきた努力、これはこれとして引き続いてやってもらわなきゃならないというように考えてもおりますけれども、しかし、法制度上の任期制、すなわち大学の方として任期を付した任用というものが今までの法制度上認められておらなかったことに着目した場合に、その道を開くということがやはり教員流動性という分野におきましての有力な手だてとなるものではなかろうかというような考えのもとに今回の法案を出させていただいた次第でございます。
  11. 馳浩

    馳浩君 もとより私は任期制導入については賛成派人間でありまして、今回の法案の中身では手ぬるいのではないか、むしろ積極的にこの任期制採用していくべきではないかという考えであります。  でなければ、一般の産業社会ととりわけ基礎研究に携わる大学の中といったものが乖離してしまってはいけないわけで、より一層の人材流動とともに若手の登用、あるいは巷間言われるところの、親分と言われる大学教授人事やあるいは予算についての権限を持って大学を私物化するような、そういったいわゆる本来望まれている教育研究大学の状態と違う方向の現状を変えていくためにも、私はこの任期制というものを活性化のためにもよりよく利用していくべきだと思っております。  ただし、今回この任期制導入すれば異動を伴ってくるわけでありまして、この異動に伴うマイナス面の解消、あるいは逆にプラス面としてのインセンティブの付与を図らなければ人材流動性向上は実現しないであろうと考えます。  そこで、まず異動に伴うマイナス面に関する質問をさせていただきます。  任期制の関連で異動する場合には、とりわけ理工系先生に当てはまりますが、実験設備輸送費は国または大学が負担すべきものと考えますが、いかがでしょうか。これが第一点目の質問です。  さらに、その先生スタッフである院生移動するのが通常であります。そのためには移動先大学院編入試験を受けて合格しなければなりません。問題はその先でありまして、編入試験検定料の支払いはやむを得ないとして、合格した後に再度入学金を支払わせるのはおかしいと思います。院生は総じて苦学生が多く、先生が立てかえる場合も間々あります。同じ国立大学問同士の移動であるならばせめて入学金の免除をするべきと思いますが、いかがでしょうか。この二点についてお答えをお願いします。
  12. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 理工系教員が他大学異動するという場合に、それまで当該教員が使用していた実験設備異動先大学に移して持っていくということに関するお尋ねでございます。  実験設備自体当該教員が使っていたばかりではなくて、多分学生も使っていたわけでございましょうし、ちょっと雑駁な表現で恐縮でございますが、それを根こそぎ担いで持っていくということがどの程度適切なのかどうかというのはあるわけでございます。  いずれにいたしましても、物品管理上の問題といたしましては、必要な場合以外は認められていないということでございまして、必要な場合とは、物品の効率的な使用のため、こういう限定が物品管理法上ついているわけでございます。この場合には、物品管理法上の概念といたしまして管理がえという手続があるわけでございまして、移転を行いたい両大学問で協議を行いまして、学長承認を得た上で移転することができる、その際の輸送費については国が負担すべきものだ、こういうことでございます。具体例としましては、前の先生が使っていて、次の先生はほとんど使わないというようなものが多分該当するのではなかろうかと思いますが、制度的にはそういうことになっておるわけでございます。  国立大学から公私立大学物品を移転することにつきましては、財政法の規定によりまして、国の財産を「適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」ということになっておるわけでございますので、制度上難しいものがあるのではなかろうかというように考えております。現在の物品管理法上はそういうことでございます。  今先生お尋ねのいわゆるインセンティブという観点からいたしますと、行った先にやはりそれなりの設備が整っておらなきゃ何にもならないだろうということはまことにごもっともなところでございまして、文部省といたしまして今年度の予算に、十分とは言えないわけでございますが、教員流動化促進経費というのを計上いたしまして、例えば民間の研究機関から教授や助教授として採用したという場合に、その受け入れ先大学研究環境整備のために必要な経費を支給するというような努力もいたしておるところでございます。  それから、二番目のお尋ね院生の点でございます。  これまた、異動する先生が強制的にその指導下にある大学院学生を連れていくということが一体受け入れられるものなのかどうかというのは一つあるわけでございますが、あえて申しますと、大学院学生の自主的な判断で、ぜひ引き続き当該先生指導を受けたい、籍を変わっても、大学を変わってでも行きたいというようなことはないわけではなかろうと思うわけでございます。そういう場合でのお尋ねであろうかと思うわけでございます。  基本的に国立大学入学料につきましては入学許可の際に徴収するわけでございまして、その学生当該大学学生としての地位を取得することについて徴収する、こういう建前になっておるわけでございます。したがいまして、国立大学学生が他の国立大学に動くということの場合につきましては、取り扱いといたしましては、改めて転入先大学入学料を徴収する、こういう扱いになっておるところでございます。
  13. 馳浩

    馳浩君 私は二点ぐらい要望したいと思います。  研究スタッフがその教授とともに移動するというのは、院生の自主的な判断というふうに今おっしゃられたと思うんですけれども研究チームとして教授異動する限りは、その薫陶を受けている院生が移って一緒に勉強するというのは、自主的な判断というよりもこれはいたし方のないところで、学問の世界では私は当然のことだと思うんです。その点について、これからこういう任期制導入していこうとするならば、文部省としてもあるいは移動を受ける大学にしても、優先的にそういった学生を受け入れやすい基盤整備をしてほしいというふうな要請をむしろ私はしたいと思います。  これは人間だけじゃなくて、最初に申し上げた設備のことでも、細かい陳情で申しわけないかもしれませんが、理工系の場合には設備を持っていく、ところが、移った大学電源設備工事をしなければその研究設備を受け入れることができないといった場合に、電源増設工事にしたところでだれがその工事代を払うのかといったときには、これは科研費の中から出るわけでもあるまいし、その大学管理費の中から出さざるを得ないわけでありますから、そういった点の配慮というものを積極的にしていただかなければ、この任期制導入した上での本当の意味での人事交流化というのはなされないのではないかという観点から、この二点の御要望を申し上げたいと思います。  次に移ります。  今回の任期制導入に当たりまして大変私も反対陳情あるいは陳情書の郵送をいただきまして、これは感謝しております。その中でちょっと私も理解できない御指摘がありましたのでお伺いいたします。  現在既に教授職にある人にはそれ以上の昇任はないので、任期制は適用されないという認識で反対をするという陳情の文面がありました。  そこで二点質問いたします。  現在教授職にある先生でも、例えば同じ大学の中で学科再編などの組織がえで配置がえが生じる場合に、その配置がえ先の教授職ポスト任期制がついているのならば、制度上はこの教授には任期制が適用されることになると思いますが、いかがでしょうか。  二点目は、同じ現在教授職にありまして、Aの大学に所属しておってBの大学に移る、そのBの大学任期制が付されている場合には、やはりAの大学では任期制採用されていなくてもBの大学に移った場合にはその教授には任期制が新たに採用されると考えてよろしいのですね。この二点確認を申し上げます。
  14. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今回の法案におきましては、国公立大学教員につきまして任用に際して任期を定めることができるというようにしておるところでございまして、この場合の任用には採用昇任だけでなく転任配置がえも含まれるということでございます。  したがいまして、配置がえによりまして教授ポスト異動する場合に、異動先教授ポスト任期が付されているということでありますれば、異動前に任期がついていなかった教授であっても任期を定めることができるということでございます。
  15. 馳浩

    馳浩君 次の質問に移ります。  法律案の第二条四号の部分について質問させていただきます。  ちょっと読ませていただきます。任期についてです。  国家公務員としての教員等若しくは地方公務員  としての教員任用に際して、又は学校法人と  教員との労働契約において定められた期間で  あって、国家公務員である教員等にあっては当  該教員等が就いていた職若しくは他の国家公務  員の職に、地方公務員である教員にあっては当  該教員が就いていた職若しくは同一地方公共  団体の他の職に引き続き任用される場合又は同  一の学校法人との間で引き続き労働契約が締結  される場合を除き、当該期間満了により退職  することとなるものをいう。というふうに、ちょっと法律の文言というのは時としてわかりづらいのでありますが、ここの部分意味について質問をさせていただきます。  今読み上げました条文の部分は、対象となる教員があくまでも任期制のあるポストについていて、その任期期間満了していることを前提として引き続き任用される場合を定めたものなのでしょうか。
  16. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 第二条の第四号で、この法律案におきます「任期」という言葉の定義をいたしておるわけでございます。  今先生指摘のように、当該定義におきまして、教員がついていた職に引き続き任用されるということでございますが、これにつきましては、任期満了となった教員が再びその任期つきの職に任用されることを意味しておるわけでございまして、いわゆる再任の場合であるということでございます。  また、他の国家公務員の職、または同一地方公共団体の他の職に引き続き任用されるということの意味合いでございますが、任期満了となった教員当該任期つき教員の職から他の職へ任用されると。任用というのは、御案内のように昇任、降任、転任配置がえを含むわけでございますが、任用されることを意味するということでございます。したがいまして、引き続き任用される場合とは、任期を定めて任用された教員につきまして、任期期間満了していることを前提に規定したものだということでございます。
  17. 馳浩

    馳浩君 そこで、「引き続き任用される」の意味には同じポスト再任される場合も含んでおりますが、原則が退職とある以上、再任にはおのずと限界があると思いますが、いかがでしょうか。
  18. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 再任可否につきましての実際の運用は各大学にゆだねられているところでございます。  規則で、どのポスト任期つきポストであるのかどうか、それからその場合の任期の長さはどうであるとか、あるいは再任を許すのか許さないのかというようなことどもについてはそれぞれの大学で決めていただく事柄でございまして、そういう意味合いにおきまして、再任可否におきましての運用は各大学にゆだねられているわけでございますが、教員流動性向上による教育研究活性化という本法案趣旨がございます。また、第四条の第一項各号で規定されている任期を定めることのできる場合ということから考えますと、やはり適切な運用がなされる必要がございまして、今先生指摘のように、再任を許すということがあるからといって、ただそれを無制限に繰り返していくということでありましたらば、何のための任期制かということにもなるわけでございます。したがって、再任ということは認められるにしても、おのずとそれには限度があるであろうというように考えておるわけでございます。
  19. 馳浩

    馳浩君 ここは、今現在その職にある方々にとっては非常に微妙な問題であると思いますので、重ねて御質問を申し上げます。  やっぱり再任される限界回数であるのではないかなと。つまり、二回までは再任は許されるのか、五、六回は大丈夫なのかという点でありまして、この再任限界というのは一律に論ずることはできないと思います。といいますのは、そもそも任期制のあるポスト任期期間が長いか短いかで大きく左右されるからでありまして、さらにはそのポストの職種にも影響されるでありましょう。  しかし、そうはいっても、何回も何回も再任される事例が多くなれば、明らかにこの法の趣旨に反すると考えます。再任回数任期期間をベースに明らかにしなければ、法律が必ず持つべき予測可能性あるいは法的安定性に反するのではないかと考えます。大学側再任回数につき自由裁量を与えたのではないのであるとすればなおのことであると思いますが、文部省としては、いま一度御答弁いただきたいんですけれども、そういった事例が出てきたとしたならばどのような対処をしていくおつもりなのでしょうか。
  20. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 一人の教員につきまして何回まで再任を認めることが適当かどうかということでございますが、これは任期の長さ自体をどう設定するかということにもかかわることでもございますし、また分野によりましても、あるいはその職の性格ということにもよって異なるものがあろうかと思うわけでございます。  したがいまして、あらかじめ、一般的に再任回数が何回までとか、あるいは再任の結果、当該任期が何年までということを一律に私どもの方で決めてしまうということは必ずしも適当なことではないと思うわけでございまして、それぞれの大学において、今回の法案趣旨や目的を踏まえまして適切に判断していただくべき事柄であろうかと思うわけでございます。
  21. 馳浩

    馳浩君 適切に判断していただく事柄でありますが、事任期制に関しては非常に微妙な問題でもありますので、これについては私は法案成立後も関心を払っていきたいと思います。  次の質問に移ります。法の第三条について質問いたします。  ここで言う大学管理機関とは、国公立大学については「評議会の議に基づき学長」という意味と思いますが、問題は、「評議会の議に基づき」の意味でありまして、この意味は、任期に関する規則内容すべて評議会承認を得ていることを意味するのか、あるいはこの規則内容について評議会一任学長が取りつけておればそれで事足りるという意味か、お教えください。
  22. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今回の法案におきまして「評議会の議に基づき」としておりますのは、任期制導入するに当たりまして、それぞれの大学におきまして任期制が必要であるか否かは全学的な見地から評議会において十分検討されるべき事柄であるということでございまして、学長といたしましては、教員任期に関する規則内容を定めるに当たりまして、当該大学評議会の決議に拘束されるというように考えるわけでございます。  したがいまして、教員任期に関する規則内容につきまして、今お尋ね評議会一任学長が取りつけておくことで足りる、一切学長に任せてくれ、あるいは評議会の方も学長に任せて結構だというような扱いということは、全学的な見地から任期制導入云々について審議、決定するという評議会位置づけあるいは立法の趣旨ということからいたしまして適切ではなかろうというように考えておるわけでございます。  なお、現在、教特法上、評議会の議に基づき学長が行うこととされている事項といたしまして、例えば学長部局長任期を定めることでありますとか、あるいは教員の停年を定めることでありますとか、教員の選考基準の制定というような事柄教特法上書かれてあるわけでございますが、これらにつきまして、各大学におきましてはそれぞれ評議会において審議、決定が行われておるわけでございまして、国立大学のうちでこれらの事項について学長一任というような運用を行っておるところは、私どもとして聞いておらないところでございます。
  23. 馳浩

    馳浩君 わかりました。  では次、第三条の二項で規則変更権を大学に認めておりますが、この変更権について二つ質問いたします。  時間的に、いつでも一定の手続さえ踏めば変更は可能なのでしょうか。二番目に、内容的な変更の限界はないのでしょうか。  以上二点をお聞きします。
  24. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 任期を定めたポストの新たな設置でありますとか、あるいは任期の長さを変更するのでありますとか、あるいは再任の取り扱いの変更などを行うときには任期に関する規則を変更することが必要でございまして、一定の手続を踏むことによりまして規則内容を変更することは可能であります。  ただ、例えば、既に三年の任期ということで現に任期つきポスト教員がおる場合に、途中で五年に改めるんだとかというようなことはいかがかというようなことでございますし、逆に、五年と定めておって三年と変更するということも、これはおかしなことでございます。  そういうようなことはございますけれども、いずれにしましても規則の変更ということは可能でございまして、それぞれの変更される規則内容につきましては、当該大学教育研究上の必要性やらあるいは立法の趣旨に照らしまして、それぞれの大学で適切に判断していただくということでございます。
  25. 馳浩

    馳浩君 私が心配しておったのは、例えば五年という任期採用されて、ところがその人が三年のときに大学側が、五年という任期だったけれども、じゃ十年にするというふうにすれば実質上再任が認められてしまうわけでありまして、そういった変更が可能なのかどうかということをお聞きしたがったんでありますが、今の御答弁によりますと、そういったことは認められないという姿勢だと思いますので、その点、どこまで変更の内容限界があるのかといったことも、今後各大学においてのいろんな事例が出てくると思いますので、想定した対応をお願いしたいと思います。  次の質問に移ります。  今度は、第三条の第三項、規則についてですが、記載事項は文部省令で定めることになっておりますが、記載すべき事項についてできる限り明らかにしてください。
  26. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 記載すべき事項を定める文部省令におきましては、任期制導入する教育研究組織、それから教員の職、任期の長さ、再任の取り扱い等を規則に記載するよう定めることを考えておるところでございます。
  27. 馳浩

    馳浩君 その程度だと最低限のものだと思いますが、それ以上については各大学の裁量に任せて規則を定めてもよいと理解してよろしいのでしょうか。
  28. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今お答え申し上げたような事柄さえ規則に記載するならば、こういうような条件のもとで任期が付されているなということが明らかになる、骨格は明らかになるというふうに考えているところでございますけれども、もちろん、それぞれの大学で必要に応じてその他の事項についてもつけ加えて規定するということを否定するものではございません。
  29. 馳浩

    馳浩君 次に、第四条についての質問に移ります。  任期制の対象となるポストは三種類に分けております。いわゆる流動型、研究助手型、プロジェクト対応型、これは第四条の第一項一号、二号、三号で分類されておりますけれども、第一号の流動型についてですが、確かに前段の方では「先端的、学際的又は総合的な教育研究」と規定されて限定的と言えますが、その後段において「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」となっているだけで、必ずしも限定的なものとはなっておりません。  そもそも、今日の大学教員自体が多様な人材の確保が必要なわけでありまして、条文でその必要性が特に求められると規定しても、判断する人によってその判断はまちまちであります。したがって、極端な話、その大学教員ポストすべてが任期制の対象になる場合も出てくると考えますが、そうとらえてよろしいのでしょうか。
  30. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 若干微妙なお尋ねでございます。  と申しますのは、その一号で書いておりますことの判断を百人が百人とも同じように判断をするかというようなことになってまいりますと、それは必ずしもそうでもなかろうというように思っておるわけでございます。しからば、これは無限定なのかということになってまいりますと、一号に書いてございますように、いわゆる当該教育研究組織で行われる教育研究分野や方法の特性から、組織構成員に任期を付しまして、時間の経過とともに一定数入れかわることによりまして常に多様な知識、経験等を有する人材を確保し、教育研究を推進していくことが必要な教育研究組織の職に任期をつけられるというものでございます。  したがいまして、ここにあえて「先端的、学際的又は総合的な教育研究であること」という一つの例示も書いたわけでございます。また、一号の後段のところに書いてございますように、「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」というような表現もしているわけでございまして、私どもといたしましては、これらの表現全体をとりまして、やはり限定的な書きぶりにしてあるというように考えておるところでございます。
  31. 馳浩

    馳浩君 この「特に」というところが非常に問題でありまして、何かこの法案が成立しました後に不平不満あるいは争議が起きてきた場合に、この取り扱いについての文部省側の対応が求められるときもあると思いますので、これは検討をぜひしておいていただきたいと思います。  最後に、第五条第五項について質問を申し上げます。  この規定は労働基準法第十四条違反を意識して規定されたものと思いますが、労働基準法の第十四条をどういうふうに解釈して五項の規定となったのかを教えていただきたいというのが文部省に対する質問と、労働省にも来ていただいておると思いますので、この解釈は学会では少数説であるという意見もありますが、十分な解釈論を展開していないとの意見もありますが、この点、大丈夫なのでしょうかという確認の意味で労働省にも質問を申し上げて、私の質問を終わります。
  32. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今回の法案におきます私立大学教員任期につきましては、現行の労働関係法制の枠組みの中で必要な規定を整備しようとするものでございます。  労基法十四条との関係についてでございますけれども、その特例を定めるというものではございませんで、同条項が長期にわたる不当な人身拘束を防止する趣旨から設けられた規定であるということにかんがみまして、一年を超える期間を定めた労働契約でありましても、その間雇用が保障され、一年経過後は教員がいつでも退職する自由を保障されていれば同条に違反しないという解釈に基づきまして、私立大学教員任期について規定したものでございます。  このため、私立大学教員任期につきましては、任期開始後一年以内を除きまして、教員の意思による退職を妨げるものであってはならない旨を明確にする規定を設けたものでございます。
  33. 青木豊

    説明員(青木豊君) 労働基準法十四条の解釈の関係は、今文部省からも御説明ありましたけれども、長期にわたる人身拘束の弊害を防止するということでそのような解釈をとっているわけでございます。  これは、昭和二十三年の末弘博士の労働基準法解説以来、基本的にそういう考え方をとっているところでありまして、労働者の退職の自由が保障されているいわゆる雇用保障期間としてであれば、これは一年を超えても基準法違反にはならないんだということについては、これと違った学説というものは承知していないところでございます。
  34. 馳浩

    馳浩君 ありがとうございました。
  35. 菅川健二

    ○菅川健二君 平成会の菅川健二です。よろしくお願いいたします。  本題の法律案についてお尋ねいたしたいと思います。  私は、この任期制に関する法律案を見たときに昨年九月の朝日新聞の社説を思い出したわけでございますが、この社説の表題が「「患者の楽園」と任期制」という非常にショッキングな見出しになっておるわけでございます。  若干の内容を申し上げますと、世間には、十年一日のごとき講義ノートで、論文も書かない教授らが住む「患者の楽園」像があって、任期制というむち論にうなずく向きは少なくない。それから一番末尾に、「自己改革を怠り、外部から任期制という創業を処方される事態を招いた大学人は、不明を恥じるべきではないか。」ということを書いておるわけでございます。  確かに、現状におきまして、大学人事を見てみますと閉鎖的、硬直的でございまして、また同一大学の出身者の比率が高く、大学問、大学と社会との間の人事交流も乏しいという状況でございます。  また、一たん教員採用されますと、業績評価が適切に行われず、年功序列人事が行われ、教育研究が停滞しがちであることから、日本大学研究教育が国際標準から見て生ぬるいという指摘がされてまいったわけでございます。  こうしたことを踏まえて、大学教育活性化一つ方策として大学教育任期制導入することは、我が国の大学における教育研究活性化を促す効果をもたらす意味では一定の意義を認めるものでございます。  しかしながら、一方におきまして、我が国が終身雇用制を基本とした雇用制度採用している現状において、大学教員についてのみ直ちにこの制度導入することになりますと、大学教員の雇用と生活を不安定にするばかりか、アカデミックフリーダムとの兼ね合いからも、大学教育研究の不安定化がもたらされるのではないかと危惧されるわけでございます。このことは多くの大学関係者の反対論や反対行動にあらわれておるわけでございます。私もたくさんの反対の書面をいただき、読ませていただいたわけでございます。  そこで、文部大臣に対しまして、この任期制導入に当たってのねらい、目的を改めて広く周知徹底していただきますとともに、大学関係者の反対論や疑心暗鬼に対しまして、制度の適正な運用について十分配慮をしていただく必要があるんじゃないかと思うわけでございますが、その所感のほどをお聞きいたしたいと思います。
  36. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 今回の法案趣旨は、先ほども申し上げたように、教員流動性を高めて教育研究活性化を図る、こういう趣旨でございます。  先ほど患者の楽園という御指摘もありましたが、これは現状認識が少し足りないんではないかなと思っております。十年一日のごとく同じノートで講義しているような大学はもう落ちこぼれていく、学生も来ない、こういう特に少子化の時代ですから、そういう安閑なことはやっていられません。大学によっては大変思い切った自己改革をやっているところもたくさんございます。例えば教員採用改善とかあるいは弾力的な教育研究組織体制の工夫など、教員流動化を高めて、硬直的とか閉鎖的と言われるような大学にしない、こういうさまざまな取り組みが行われておりまして、一定の成果も上がっていると聞いております。  今度の法案で、今いろいろと懸念をされましたけれども大学教員の身分の保障とか大学の自主的な判断の尊重というようなことでいろいろな配慮を行っております。例えば、先ほどもお話が馳委員から出ましたけれども国公立大学では大学管理機関がその任期制を行うかどうかの判断をするということ。あるいは教員任期に関する規則とかそういうものを定めて公表するとか、あるいは本人の同意を必要とする。あるいは私立大学においても、学長の意見を聞く、あるいは教員学校法人との労働契約において定めることというようなことで、いろいろな歯どめ策といいますか、そういうものをやっておりまして、私はこの法案趣旨に沿って各大学とも適切に運用されるというふうに信じておりまして、御懸念のようなことはないと考えております。  文部省として各大学に今回の法案趣旨を十分周知させることは当然でありますし、ぜひこの制度教育研究活性化のために運用されるように配慮していきたいと考えております。
  37. 菅川健二

    ○菅川健二君 確かに、ここ近年、大学自体が大変改革に意欲を持って取り組んでおられるということについては、私自身、地元の大学からよく話をお聞きいたしておるわけでございます。この法律が通りますと、ぜひ適正な運用に努めていただきたいと思うわけでございます。  そこで、幾つか大学関係者が疑問や不安を抱いておることにつきましてお尋ねいたしたいと思います。  任期制導入は、制度上はあくまでも大学の自主的、主体的な判断に任せられておることになっておるわけでございますが、文部省サイドからの補助金交付やあるいは大学の施設・設備整備してやるからというような条件をつけまして、任期制導入を強制したり誘導したり何らかの干渉が行われるんではないかという疑念があるわけでございまして、その点についてお考えをお聞きいたしたいと思います。
  38. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今回の大学教員任期制教員流動性を高めるための一つ方策でございまして、任期制導入するかどうかにつきましては各大学判断にゆだねるといういわば選択的任期制という考え方をとっているわけでございます。したがいまして、各大学におきまして、教員流動性を高めるための方策として任期制につきましても十分検討いただきたいというように考えておるわけでございますが、文部省として、今御指摘の中にございましたように、大学に対しましてこの導入を強制するのでありますとか、あるいは何らかの財政措置等によって誘導するというようなことは考えていないところでございます。
  39. 菅川健二

    ○菅川健二君 ぜひ制度の本来の趣旨を貫いていただきたいと思うわけでございます。  それから次に、任期制を定めることができる教員分野と職について三つに限定いたしておるわけでございます。この点につきましては先ほども委員から御質問がございましたけれども、特にその第一項といたしまして、先端的、学際的または総合的な研究分野という項があるわけでございますが、この点につきましては実際上かなり広範囲に解釈できる、事実上は全教員を対象にすることも可能ではないかということが言われておるわけでございます。したがいまして、三項目限定的に列挙しておるけれども、お経の文句にとどまつちゃって、事実上は全教員が対象になるんじゃないかというようなことについての疑念をお持ちの方がおるわけでございます。  そこで、この解釈につきまして、全く大学側の自主的な裁量に任せられるのか、あるいは大学側の勝手な恣意が入らないよう、例えばこの法律の施行通達、必ず法律が成立しますと施行通達というのが出されるわけでございますが、施行通達等におきまして明確な定義を行い、限定的な解釈を示されるのかどうか、文部省としての御見解をお聞きいたしたいと思います。
  40. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) ある教育研究組織法案の第四条第一項第一号の「多様な人材の確保が特に求められる」ものに該当するか否かにつきましては、それぞれの大学におきまして、大学管理機関任期に関する規則を定める際に実質的な判断がなされるということになるわけでございます。これはどのような教育研究組織がその分野または方法の特性から特に多様な人材の確保が求められるものであるか否かという判断にかかるわけでございまして、こういう種類の判断につきましては、当該大学において最も適切に下せると考えたことによるわけでございます。  今回の法案におきまして、第四条第一項第一号に該当するものとして教員任期を定めることができますのは、「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。」ということでございまして、これを文部省の側でこのポストこのポストのことですというようにあらかじめ一律に定めるということは必ずしも適切ではなかろうというように考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この条項の趣旨等を含めまして各大学において適切な運用がなされるよう、施行通知等によりまして周知徹底してまいりたいというように考えておるところでございます。
  41. 菅川健二

    ○菅川健二君 せっかく三項目限定列挙いたしておるわけでございますので、そういった趣旨を生かした形の施行通達等でより大学側に疑念を持たれるようなことのないように配慮をお願いいたしたいと思います。  それから、任期制導入前提といたしまして、まず大学自体教育研究活動を不断に見直し改善を図るといった観点から、自己点検あるいは評価システムの導入が図られることが非常に重要ではないかと思うわけでございます。幸い、目下各大学でこの点の取り組みがなされているわけでございますが、その点検・評価の客観性を確保するためには学外の有識者による外部評価が欠かせないんではないかと思うわけでございます。客観的点検・評価システムの確立が急務であると考えますけれども、文部大臣の御所見をお聞きいたしたいと思います。
  42. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 確かに、自己評価並びに外部評価というのは重要だと思います。それぞれの大学でも、そういった外部評価を導入してその結果を公表している大学もかなり挙がっております。北大、東北、筑波、東大、東工大、名古屋大、京都大、大阪、岡山、広島、高知、九州、鹿児島、その他私立大学等でもやっておりまして、やはりそうした内部の評価、外部の評価というものを公表することによって、よりその大学に対する社会的な信頼感なり評価を高めるということに私はつながっていくと考えております。
  43. 菅川健二

    ○菅川健二君 今大臣が後段で申されたわけでございますが、点検・評価の結果というのは一般国民や受験者にわかりやすい情報公開が必要ではないかと思うわけでございます。  現在の取り組み状況やそのあり方について局長にお伺いいたしたいと思います。
  44. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 大学が行っておりますところの教育研究活動の状況を広く世間に知らしめる、知らしめると言うと言葉はなんでございますが、広く知っていただくというようなことの活動というのは大変これから重要なことになると考えておるわけでございます。  今先生指摘の自己点検・評価ということ自体は、平成三年の大学設置基準の改正によりまして、いわゆる教育課程の大綱化と称しておりますけれども大学教育課程自体大学の自主的な判断のもとに自由な教育課程を編成することができるようにというような規定を設けたこととの関連で、そういう一種の自由裁量的な場が保障されたということをいわば自己規律という形で補っていく、制度的に補っていくというような意味合いを込めまして、自己点検・評価というのを大学設置基準上の義務としてそれぞれの大学にお願いしたわけでございます。  その結果、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、それぞれの教育研究活動の状況を点検・評価の結果という形でオープンするという大学が大変多くなってきておるわけでございます。その対応は必ずしも一律ではございませんで、例えば、各教員教育研究業績というものを小冊子のようなものにまとめて発表するというようなところもございますし、かなり大がかりに研究所、学部、大学院まで含めたいわばレビューのような形でまとめたというようなものもございます。あるいは学生による授業評価というようなことについてまとめるというようなこともございます。  いずれにしましても、大学が行っております活動のありさまというものを世間に広く知っていただくということが、やはり大学の社会におきます存在意義と申しますか、そういうものをまた際立たせていくことにもなるわけでございまして、そういう意味合いからも、私どもといたしましては、できるだけ大学の状況というものの広報、PRと申しますか、そういうような意味合いも含めまして、広く世間に知らしめるということを大学に対しまして勧めておるということでございます。  もちろんそれは単に知っていただくということだけではございませんで、当然外部に知っていただくという活動を通じましてみずからを省み、自らの教育研究活動の改善の種にしていくという意味合いがあるわけでございまして、そういう意味合いからも大変重要なことであるというように考えておるところでございます。
  45. 菅川健二

    ○菅川健二君 さらに、この任期制導入に伴いまして、教員の業績評価が適切に行われるような評価システムの確立が急務ではないかと思うわけでございます。業績評価には研究に伴う評価と教育評価とに別れると思うわけでございますが、現在、各大学で多様な基準づくりが検討されておると思うわけでございますが、文部省といたしまして、例えば先進国でこういった評価というのは非常に発達いたしておるわけでございまして、それらの例からして、基準でどういった項目が重要であるとお考えか、その辺を先進国の事例等を踏まえてお教えいただきたいと思います。
  46. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 教員の業績評価というのは、ある意味で大変難しいものでもございますけれども、また大変重要なものでもあるわけでございます。任期制導入の有無にかかわりませず、教員の業績評価というのは特に採用選考というような段階におきまして適時かつ適切になされるべきものであるというように考えておるわけでございますが、しかし、任期制導入ということによりまして業績評価の機会がふえることも事実でございます。今後とも、各大学におきまして従来にも増しまして教育研究業績についての信頼性と妥当性のある評価方法の工夫、それから業績評価の基準の公表など、業績評価のあり方についての工夫や努力が進められるということが大変重要であるというように考えているところでございます。  教員の業績評価のあり方につきましては、昨年秋の今回の任期制の母体となりました大学審議会の答申におきましても、教育面、研究面及び教育研究以外の面につきまして、それぞれ評価の観点を例示しまして、各大学におきます業績の適切な評価への取り組みを促しているところでございます。その審議の過程におきまして、先生指摘のように、外国の大学の例なども当然念頭に置きながら検討していただいたところでございます。  若干細かくなって恐縮でございますが、例えば教育面の業績につきましては、担当する授業、学生に対する教育研究指導、教材・教育課程などを評価項目として取り上げまして、授業担当時数、休講の状況、同僚の評価はどうか、学生による授業評価はどうかなど、質・量両面のデータを活用することを提案しているところでございます。  また、研究面につきましても、博士の学位に限らず、研究歴や業績等を広く評価の対象とするということや、研究途上の業績等を含める。これはただ短期的な研究成果ということを求めるのが大学の機能ではないということでございます。そういう意味合い研究途上の業績等を含めるということでございますが、研究途上の業績等を含めるとともに、論文の数ではなく、その質を重視することが大切であるとしているところでございます。  文部省といたしましては、今のような答申の内容ども参考としながら、より充実した業績評価の方法や基準等について工夫や努力がなされることを期待しておるところでございます。
  47. 菅川健二

    ○菅川健二君 この評価のことにつきましては、もとより各大学はそれぞれ判断されるわけでございますが、文部省としましても、各大学に対しまして、こういう評価方法もあるんではないかと、先進国の事例等を含めて啓蒙、啓発をしていただきたいと希望いたしたいと思います。  それから、教員の皆さんの懸念の中に、長期にわたる研究によって初めて業績が判明する場合、中途で任期が切れまして評価されないままに異動しなければならないような心配があるんではないかということでございますが、この点についていかがお考えでしょうか。
  48. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 長期的な目標を有するような研究の業績評価につきましては、昨年秋の審議会の答申におきましても、「長期的な視野に立った研究がおろそかにされることのないよう、研究途上の業績等も含めた広い意味での研究業績を考慮するとともに、論文の多寡ではなく、その質を重視した評価の方法を工夫することが重要である。」というように述べているところでもございます。  長期的な研究が顧みられなくなるということは、任期制導入する大学自身にとっても望ましいことでないことは明らかでございまして、文部省といたしましては、各大学におきまして、今申し上げました答申で提言されておりますような一層適切な評価方法を工夫することによって、任期中に必ずしも完結しない長期を要する研究についても、適切な形で業績評価が行われることが大切であるというように考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、任期制導入ということによりまして、先ほど申しましたように業績評価の機会がふえるわけでございますので、今後とも各大学におきまして、従来にも増して教育研究業績についての評価方法の工夫を一生懸命やっていただくということ、それから業績評価の基準を公表するなどの努力を重ねていただくということが重要であろうかと思うわけでございまして、それらのことどもにつきまして、各大学におきます努力を促していくようにしてまいりたいというように考えておるところでございます。
  49. 菅川健二

    ○菅川健二君 次に、任期つき教員が意欲を持って研究活動に邁進できるようにするための条件づくりにつきまして、若干質問させていただきたいと思います。  特に、国公立大学教員の場合、公務員として身分が保障され、終身雇用制が原則になっておるわけでございます。したがいまして、待遇につきましても、例えば退職手当の場合は勤務年数が二十年を超えた時点から支給率が高くなっておる。いわゆる長くおればおるほど退職手当も割り増しになるというような制度になっておるわけでございます。  したがいまして、仮に任期制によりまして短期に身分が切りかわる、例えば国公立大学から私大に移るということもあるわけでございます。そうした場合は、必ずしも退職手当等については優遇されないといいますか、むしろ任期つきでない教員との間に待遇上の格差が生ずるということもあるわけでございます。  この点について、待遇上の格差等についてどのようにお考えでございますか。
  50. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 公務員の給与につきましては、先生御案内のところでございますけれども、いわゆる職務給の原則があるわけでございまして、その原則に従いまして、その官職の職務と責任に応じて決定されることに法制上なっているわけでございます。  今回の大学教員任期制は、教員流動性を高める方策として導入されるものでございまして、任期の有無によりまして職務内容に差が生じるわけではない。あるいは私どもして、任期つきポストにつく方と任期を付されないポストにつく方とで職務内容が違うんだということをあらかじめ法制上予定しているわけではないわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、この法案において特別な給与上の措置を講じることは予定していないわけでございます。  他方、任期制導入を含めまして、教員流動性を高めるための各大学の取り組みを支援する観点から、平成九年度の予算におきまして、民間の研究機関等からすぐれた人材教授や助教授として任用する場合に、異動に伴う教育研究環境の変化による活動の停滞を防ぐというようなことのために研究費等を重点的に措置するということを始めております。また、事実上のものも含めまして、任期を付された若手の助手につきまして、柔軟な発想のもとに取り組む教育研究活動を支援する経費を措置したところでございます。  これらは、今回の法案による任期つき教員に限った措置ということではないわけでございますが、任期つきポストへの異動に際しましても、一つインセンティブとして機能するのではないかというように考えておるところでございます。  先生から今退職手当のお話もございました。御指摘のように、今の退職手当の制度自体は、勤続年数が長ければ長いほど優遇されるということになっておるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、長期間勤続した者と短期の者との間で差が生じてくるというのは御指摘のとおりでございます。ただ、これは退職手当制度という大きな制度の骨格にかかわることでございまして、なかなか今すぐどうこうということは難しかろうと思うわけでございます。  ただ、給与等の問題につきましては、昨年秋の大学審議会の答申におきましても、やはり今後考えていかねばならない一つの課題として提起していることは事実でございまして、この法律のもとにおきまして職務上こうこうだという差がないことは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、この任期制導入後、どういう実態に相なっていくかということの様子も見ながら、私どもとしてもどんな給与上の措置が考えられるのかどうなのかということについてやはり検討していくべき課題ではなかろうかというように考えておるところでございます。
  51. 菅川健二

    ○菅川健二君 本来から申し上げますと、任期制導入に伴う待遇上の問題というのは同時に解決する、むしろ待遇面における措置を先行するというぐらいな気構えが要るんではないかと思うわけでございます。現状では、今話がございましたように、任期制導入というのは、大学自体のいわゆる教育研究活性化にはある程度役立つということはあるものの、任期つき教員にとっては必ずしも居心地のいいものではないということが待遇面からも言えるわけでございます。  したがいまして、待遇につきまして検討するというような段階ではなくて、早急に改善をするという姿勢で臨んでいただきたいと思うわけでございます。  このたび成立いたしました一般職の任期つき研究員の場合を見てみましても、顕著な業績を上げた場合には業績手当が支給されるというようなことが、つい先日でございますが、法律で成立して法制化されたわけでございます。そういったものとのバランスからいっても、抜けておる点があるのではないかと思うわけでございます。  再度、御答弁いただきたいと思います。
  52. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) いわゆる国立試験研究機関等におきまして、任期つき研究公務員に対する給与上の措置とのバランスの問題でございます。  従来の研究交流促進法上の任期つきの者に対する給与上の措置がとられていなかったものもあるわけでございまして、それは引き続きあるわけでございます。例えば、民間から何年間か招致して、また戻っていただくという場合の給与上の措置というのは従来のとおりであるわけでございますが、今回の研究公務員のものにつきましては、若干雑駁な言い方でございますが、例えばノーベル賞級の研究者を呼んできて一定期間働いていただくというようなこと、あるいはいわゆる若手の登竜門というような形で優秀な若手に一定期間任期を付して働いていただくというようなことの場合に、それと関連して給与上の措置を講じていることは事実でございます。  これは全体の制度の設計自体の違いがあるわけでございまして、研究公務員の方につきましては、私どもの理解といたしましては、その職務内容が他の任期を付されていない研究公務員とは異なったもの、それから例えば勤務時間につきましても異なった扱いをするというような、勤務条件全体あるいは職務に期待している内容自体が他とは異なっているという、そういう制度上の異なった設計になっておるわけでございます。  したがいまして、私ども今回教員任期制ということでお願いしているように、かつて任期を付されておらなかった職場から任期を付されておる職場に移った場合に、その職務が基本的には変わっておらぬという、職務の内容でございますが、変わらないものだという前提のもとに制度を設計していることとはやはり趣旨が異なっているというように理解しておるわけでございます。  ただ、そうは申しましても、先ほども末尾に申しましたように、基本的に研究公務員に対する給与上の措置とのいろいろな意味でのバランスというのはこれから考えていかなければならないことでございまして、その点につきましては、大学審議会の答申におきましても教員の処遇の改善の項目としてそのことを特記しておることでございまして、私どもとして今回あらかじめこういう給与上の措置をあわせてお願いするということにはなっておらないわけでございますが、任期制導入後、その実態等を勘案しながら必要な給与上の措置につきましては関係省庁と検討していきたい、かように考えておるところでございます。
  53. 菅川健二

    ○菅川健二君 ただいまの点は給与面に限りませんで、一般的な待遇全体の中でやはり任期つき教員が意欲を持って安んじて教育研究活動が行われるようにする前提をぜひ早く整備してもらいたいと思うわけでございます。  文部大臣、いかがですか、ひとつ大臣としても力を入れていただきたいと思いますが。
  54. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 大学がこの任期つき教員についてすぐれた人材を確保しようという場合には、やっぱりインセンティブが必要だと思うんですね。ただ、給与面でどうかと言われると、今局長が答弁したような状況がありますから、私はそれ以外の教育研究条件をやはり提示する必要があると思うんです。  実際にも、今いろいろな学長さんの話を聞きますと、最近は学長さんの裁量である程度の金額がプールされておりまして、そこで少し裁量権を発揮してそういう面での優遇を図るとか、あるいは研究室のスペース、特に地方などへ行きますと東京なんかよりもはるかにスペース的には余裕があるわけですから、そういう研究条件、非常にいいものを提供するとか、さまざまな工夫を凝らしてインセンティブを持たせて優秀な人材を確保するということが必要だと思います。  これも、従来のいわゆる年功序列型あるいは終身雇用制という制度で来た日本の中で、今度任期つきという制度導入するわけですから、まだまだこれから検討すべき課題はあろうかと思いますが、それは今後、実際にこの法律ができて運用の実態を見きわめながら、そういった制度の充実というか、待遇の面あるいはインセンティブの面の充実を図っていくべきだというふうに考えております。
  55. 菅川健二

    ○菅川健二君 給与面を含めました教育研究条件整備をぜひ早急にいたしていただきたいということを要望いたしたいと思います。  それから、一般の公務員の場合、終身雇用の教職員の場合も同じでございますが、恣意的な運用によりまして本人が失職に、職を失うわけでございますが、失職に至ったと判断した場合に、国家公務員法等に基づきまして本人の不服申し立ての道があるわけでございます。任期つき教員の場合はそういった道がないわけでございます。例えば、引き続き任用されるかどうかという段階におきまして大学は本人の業績評価をいろいろすることが必要であるわけでございますが、その際、本人みずからが教育研究活動の到達状況について大学側に弁明する、そういった機会を設けることも重要ではないかと思うわけでございますが、この一点についていかがお考えでしょうか。
  56. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 任期満了によりまして当該任期を付された職に係る身分を失うということは任期制本来の趣旨からして明らかなわけでございます。問題が生ずるとするならば、今先生指摘のように、任期満了後引き続き同じ職に採用されないことについての不服ということになるわけでございますが、これは基本的には通常の採用選考において採用されなかったということに対する不服と同じ性格のものだというように理解しておるわけでございます。  この場合、採用されること自体当然の権利だということではございませんし、また採用しないということがいわゆる行政法上の処分に当たるということではないわけでございますので、例えば国公立大学教員について申しますと、人事院や地方公共団体の場合の人事委員会あるいは公平委員会に対する不服申し立てというものは受理されないものだというように考えておるわけでございます。  各大学におきましては、教員任期つきの職に採用するときに、再任の手続につきまして採用と同様に厳格な審査が行われる旨を本人に明示して、再任することが当然であると申しますか、あるいは再任されることが優先的な権利であるというような誤解を生じないようにあらかじめ十分説明しておく必要があるというように考えておるわけでございます。  また、今先生御提起の、本人から不服を聞く機会というものを大学が設けたらどうかというようなお尋ねでございます。具体の再任の審査あるいは採用選考自体に関連して直接その不服を聞くというようなこと、これは大変生々しいことでございまして、大事については、これは共通のことでございますが、そういうことを設けることがかえってトラブルを生ずるということにもなりかねないというように私どもは理解しておるわけでございます。  しかし、そういうことに直接かかわりのない段階で、例えば任期の途中で、あなたは一体どういう教育研究活動を最近しているのかというようなことについて話を聞くとか、あるいはその任期中の教育研究活動についてアドバイスをするというようなチャンスを設ける、これはあっていいかと思うわけでございます。  ただし、繰り返しになるわけでございますが、具体の採用選考に関して、あるいは具体の再任可否のことに関して直接本人から不服の申し立てを受けるというような機会を設けるということは適切なことではないというように私ども考えておるところでございます。
  57. 菅川健二

    ○菅川健二君 法制的には大変難しいわけでございますが、事実上本人の意思というものを、あるいは本人がこういう教育研究活動をやったということについて十分大学側にわかるような機会を設けるということは重要であろうかと思いますので、大学当局に対して十分その点の配慮を要請していただきたいと思うわけでございます。  まだいろいろございますけれども、私は、この法律運用によりまして、冒頭申し上げました、大学が患者の楽園から賢者の学園に世間から敬意を表されるような大学になるということについて、文部省当局並びに大学関係者の一層の御尽力を期待いたしたいと思います。  最後に、当面の教育課題について一つだけ御質問させていただきたいと思います。  何回か私自身文教委員会質問をいたしたわけでございます教育改革と財政構造改革との関係についてでございますが、時々刻々情勢が動いておるようでございますから、その刻々動いた情勢の中におきまして、文部大臣の御見解なり決意をお聞きいたしたいと思うわけでございます。  と申しますのは、財政構造改革会議におきまして、文部省関係の来年度予算につきまして、いろいろ切り口の課題が提起されておるわけでございます。  たびたび申し上げて恐縮でございますが、教育改革というのは、教育の質的な転換による教育水準の向上にあることは論をまたないわけでございまして、いわんや財政構造改革の名のもとに教育水準の低下を招くことがあってはならないと思うわけでございます。  特に、来年度の教職員の改善計画でございますが、これは最終年次に当たっておるわけでございます。現下の不登校やいじめ対策に欠くことができないものでございまして、この停止や繰り延べは絶対にあってはならないと考えておるわけでございます。  教職員の改善計画の見直しを含め、財政構造改革に対してどのような態度で臨まれるか、文部大臣の御決意のほどをお聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  58. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) この件に関しては、けさの閣僚懇談会におきましても私から発言をしたところでありますが、この教職員の配置改善計画については、超党派の全会一致で成立した標準法に基づいているわけでありますし、この少子化の中で改善計画をやってもなおかつこの六年間で三万人の縮減があるんだという点。それから、もしこれを中断、凍結をいたしますと、今御指摘のようないじめとか登校拒否のそうした個に応じた教育というものに非常な支障が出てくる。あるいは、定数改善が平成十年度行われませんと、職員の採用という面でも深刻な状況になりますし、将来の年齢構成にも非常なアンバランスが生ずるというようなさまざまな憂慮すべき事態が起こるわけでございますので、私からは再三にわたって、この点は昨日も大蔵大臣と特にひざを突き合わせてそういった実情を申し上げましたし、五月二十日の閣僚懇談会でも、慎重にこの問題については対処してほしいということを申し上げております。  蛇足ですけれども教育改革を今進めているさなかでありますだけに、出ばなをくじかれるということのないように、十年ほど前のあの臨教審のときも、せっかくいいことをいろいろ提言したんですが、その直前に臨調でいろいろ歯どめがかけられまして、やりたいこともできなかったという経緯もございます。めぐり合わせが悪いというか、そういうことも率直に私は申し上げました。この件に関しましては、私どもも最後までしっかり努力をしていきたいと思っております。
  59. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私が質問を予定しておりましたことについてかなり出ましたので、ちょっと順序を変えたりしながら質問をいたします。  そこで、先ほど雨宮局長が、教員流動化促進費ですか、何かそういうことに言及されましたが、教員流動化促進費というものは一体どういう費用ですか。
  60. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) かいつまんで申しますと、今年度から国立学校特会の中で予算措置したものでございまして、一つには、民間等から教授、助教授として迎えた場合に、その受け入れの大学におきまして、例えば研究設備が不十分であるというようなことであっては、せっかくの異動ということがその実をなさないというようなことに着目いたしまして、当該異動を受け入れる大学におきまして、その者の研究条件改善するための経費というのが一つ。  それからもう一つは、これは事実上行われている行われていないは問わずして、任期を付されている若手の助手につきまして、やはり研究条件経費を措置する、この二つでございます。
  61. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 予算の総額は幾らですか。
  62. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 最初に申し上げましたところにつきましては、いわゆる教員流動化促進に係る経費といたしまして二億六千七百万円、それから若手教員研究支援、任期つきの若手助手に対する経費措置でございますが六千七百万円、こういう措置でございます。  また、これは国立学校分でございますが、先ほど言い落としましたが、私学助成の面におきましても、ちょうど今の特別会計上の措置に見合うものといたしまして、教員流動化促進に係る経費といたしまして五千万円、それから若手教員研究支援に係る経費といたしまして二千五百万円、新規に計上しているところでございます。
  63. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私はそのことで一つの心配があるんです。というのは、先ほどもこの話は任期制の問題とリンクして答弁されました。先ほど馳さんが、ある大学研究者が別の大学研究室に移ったときに、施設が整っていなければ、その大学の施設を根こそぎ持って向こうに行かないかぬようになったらどうするのやというような話をされたわけで、そのときに局長は、そういうことのないようにこういうお金があると、こうおっしゃったわけですね、一つの例として。  とすると、この任期制導入する、それで若手の助手の問題も、今お話を聞きよりましたらその任期制と何か深く関係しておるようであって、任期制促進のための予算ではないかというふうに思えて仕方がない。そして、その当該大学条件整備というのが、民間から教授を迎える場合は任期制による任用で来る、そういう事態が多く想定されます。そうすると、二億六千七百万とか六千七百万円とかいう金額ではありますけれども、結局、任期制導入していない学校にはこういうものは対象にしないよと、もしこれの対象になりたければ任期制をそれぞれ導入しなさいよということに私はなるとさっきは聞いていました。  だから、これは文部省に注意したいんですが、この大学教員について各大学判断任期制導入するという、大学の自主性というものを前提に置いてやっておられることはそれでいいんですよ。だけれども、こういうふうに促進剤のようなものを財政的に次々裏打ちして、任期制導入しているところとしていないところが財政的に差が出るということに結果としてなる。政策的に文部省任期制導入する誘導をやっぱりやると。僕は、官庁として当然おたくらやると思うんです。僕が逆の立場だったら僕はやりますよ、これはね。任期制導入したいと思うんだから、導入している学校に対してはやはりそういう財政政策。しかし、私はそういうことはよくないんではないかと基本的に思うんです。  だから、ここできちっとした答弁をいただきたいのは、この教員流動化促進費を初め、これから任期制導入した大学導入しない大学、それはいずれも大学が自主的に判断したことであって、任期制導入した学校が文部省の言うことを聞いたいい大学で、導入しない学校が言うことを聞かぬ大学だとかいうふうなある一つの判定基準があって、そして国の予算がその後いろいろと格差がつけられるとか、差別をつけられるとか、そういうことを絶対してはならぬと思うんですが、そういうことはしませんということをここで、この問題も含めて明言をしておいてください。
  64. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 若干説明が不足していたかと思うわけでございますが、先ほど教員流動化促進に係る経費ということで御説明した内容でございますが、民間企業等から教授とか助教授として招聘した場合に、その異動による教育研究活動の停滞を招かぬようにその受け入れ大学研究費等を措置する、こういうことでございまして、受け入れた大学ポスト自体任期を付しているとかあるいはいないとかにかかわらないわけでございます。したがって、もっと申しますと、従来型の形でずっと大学にいていただくというような方についての措置も当然含むわけでございまして、任期を付す付さないということにこだわっているわけではございません。  それから、二番目に申しました若手教員研究支援に係る経費につきましても、任期つきの助手ということを申しました。申しましたが、これは今回の法案による任期制によるものと、それからかねてから事実上やっている、いわゆる事実上の任期制というものがあるわけです。いずれであるかを問わないわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、今回の経費自体任期制導入ということをねらいとして、今回の法案による任期制というものの導入をねらいとして措置したものではない、むしろ一般に教員流動性というものを高め、あるいは流動化しやすいような環境をつくる、こういうねらいのもとに措置したものだということを御理解いただきたいと思うわけでございます。任期制をとる大学、それから任期制をとらない大学、これについて、そのことによって財政的に差をつけるというようなことはやらないということはこれまでも申し上げたとおりでございます。
  65. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 文部大臣、一言裏打ちしてください。
  66. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 先ほど来御説明しておりますように、今回のこの大学教員任期制というのは、大学教員流動化を促進する一つ方策ということで、それを採用するかどうかは各大学判断にゆだねるといういわば選択的任期制、こういう建前になっておりますから、各大学でそれぞれ検討を加えて決められることだと思いますけれども、私どもは、その大学任期制導入するから、あるいは導入しないからということで差別をして任期制導入を誘導したりあるいは強制したりということは、財政措置等でそういう差別をつけるということは一切考えていない、こういうことだけは申し上げたいと思います。
  67. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ぜひそこのところは大学のやはり自主性というものを、教育研究の自由というものを堅持するという立場でお願いをいたします。  それで、今も文部大臣おっしゃいましたが、今回の選択的な任期制導入は、教育研究活性化なり、あるいはまた閉鎖的だと言われている大学流動化して活力をそこに、そのことを通して求めていく一つ方策である、こうおっしゃっておるわけで、あくまで一つ方策と私は考えなければならぬと思うんですね。  そこで、先ほども出ましたけれども、本当の大学教育研究活性化なり、あるいはまた閉鎖的であると言われている、私は閉鎖的であるかどうかわからないんですが、閉鎖的であると言われている大学流動化させて流動性を高めていくということは、もっとほかの要素で解決できるんじゃないかと思っています。大学を患者だとか賢者だとか私は言いたくありません。私は賢い人が集まっておると思っておるんです。そして、日本の国のために立派な教育をやっていただいておると思って信頼をしております。  そこで申し上げたいのは、それならば本当の意味研究条件あるいは処遇改善というふうなものが、そこに優秀な人材がたくさん集まるような状況になっているのかどうかという、やっぱりそこのところが常識的なことですけれども一番の重点だと思います。  例えば、審議会等でも提言されているように、定期的な留学研究制度というんですか、そういうふうなものを大学教員に与えて、そしてその研究の質、教員自身の教授としての質を高め、そしてみずから大学教員であるという自覚と誇りをさらに拡大していくというふうなことを、閉鎖的であるとか、やれ質が悪いとか幾ら言ってみたってそれは問題の解決にならないわけでありまして、積極的にそうした問題を解決していくために、こうした定期的な研究留学制度導入したらどうだとか、自主的な研修制度をもっと積極的に導入したらどうかという提言があります。私は、任期制よりもむしろそちらの方をこそ重きを置くべきではないか、その上で、ある職種、ある研究機関研究に対して任期制の方がより有効だとなれば、それはそういうものもあってもいいというレベルの問題ではないか、こういうふうに思うんです。  文部大臣なり局長、その一つ方策というならば、そのほかいろいろな場で述べられているこの研究条件あるいは研究条件改善、それから処遇の改善、こうしたものを今後それではどのようになさろうとしているのかということがきちっと出ていかなければ、何か任期制任期制というふうなことばかりが前面に出るというのは余りよくないんじゃないかという思いがするんですが、その点はいかがですか。
  68. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 今お話しのとおり、任期制導入はあくまでも大学教育研究活性化方策のワン・オブ・ゼムと。一つの手段でありまして、おっしゃるように文部省としては、教育研究条件整備というその全体にわたって財政的にも措置をしていかなきゃいけないと思っておりますし、また、その財政とかお金を伴わない大学独自でいろいろ活性化を図っていくためのその他の努力も私は不断に行っていただきたいと思っているわけでありまして、それぞれの大学が目的や理念に沿ってさまざまな工夫、知恵を生かして特色ある教育研究が行われるように努力をしていると信じております。  具体的な答弁が必要であれば、局長からします。
  69. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今先生指摘のように、例えば大学教育研究条件が十分かということになりますれば、それは不十分であるということでございまして、これはこれまでも先生から何度も御指摘をいただいたところでございます。  例えば、私学助成約三千億円でございますけれども、これについても年々努力してきてはおるわけでございますけれども、今後ともやはり改善を図っていかなければならないというように考えておるわけでございます。  また、国立大学につきましても、ゆとりがあるかというとそんなことはないわけでございまして、五一%余りは施設だけとりましても老朽化、築後二十年以上というような状況であるわけでございまして、高等教育全体をとりましても公財政支出の割合というものが先進諸国に比べて約半分でしかないということは、非常に大きな、私どもにとっては重い課題であるわけでございます。したがって、厳しい財政状況のもとではございますけれども、それらにつきまして引き続きできるだけの努力を払っていくというのは今後の課題であると、これはもう先生と理解を共通にするところであろうかと思うわけでございます。  ただ、任期制の問題につきましては、今大臣からお答えいたしましたように、これですべて解決するなどと私どもは思っているわけではないわけでございます。ただ、任期制の他と異なった問題といいますのは、何分にもこれは制度上の問題でございまして、任期制をとろうとしておりますと、これは現在の公務員制度のもとでは原則的に禁止されておるわけでございまして、大学の方として現在事実上のいわゆる紳士協定のもとで行われておるようなものもあるわけでございますが、法制上の裏づけもないわけでございます。これはやはりきっちりとした形にしなければならないという課題があるわけでございます。  このことについては、若干さかのぼって恐縮でございますけれども、もう四半世紀以上前からこれが一つの課題であるとされて検討を重ねてきたわけでございます。これにつきましては単に予算措置をどうこうということでは片づかない問題でございまして、現在の大学教員流動性というのはやはり諸外国に比べて必ずしもそれに匹敵するものではないようなこと、また、いわゆるインブリーディングと称せられておるような、ある特定の大学を出て、その大学にずっと在職してそこで退職するというような形、これがすべて悪いとは言わないわけでございますけれども、こういう率が高いというようなことが、やはり教育研究活動の活性化という点から考えて問題であるということを関係者が指摘したわけでございます。  そういう認識の上に立って今回制度改正をお願いするということでございまして、他の教育研究条件改善、その他関連する諸方策はあるわけでございますが、進めるべきは進めなきゃならぬわけでございますが、これはこれとして、やはり制度的な問題として解決しなければならなかった問題である、こういう位置づけになるわけでございます。
  70. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その面は私どもも理解をしますので、全面的に賛成はしませんけれども、そういう一つの今おっしゃるようなことの役に立つならばということで反対はしないという立場に立っております。  今おっしゃった一方、やはり教育研究の遂行のためには、その学校を卒業して、そしてその学校に就職して長期間にわたって教員として定年までいたということが必ずしも悪であるんでなくて、やっぱりそういうふうな安定した身分の保障をされた状況の中でまた立派な研究もできるということもあるわけで、それはそういう一つの形が問題じゃなくて、どういう研究をできる条件がそこに具備されているか、あるいはまた、処遇の改善によってどういう流動化が起こるかという、そういう面も積極的に議論をしていただきたいし、私たちもそうしたいと思っておることをこの点については申し上げておきます。  次に、私は労働組合出身なものですから、この種のものが変更されるときには、それぞれの大学に労働組合の職員団体があると思うんですが、その任期制導入ということは、これは管理運営事項だから大学管理機関等、学長とか理事長とかいう責任者によって決めていくのであって、労働組合、職員団体は一切関係ないというわけにいかぬと私は思うんです。  やはり賃金の問題、今も退職金の話も出ましたけれども、それから労働条件、あるいは年金の問題いろんなことにかかわってきます。したがって、地公法上の職員団体との交渉ということをそれぞれの大学が踏まえ、また文部省も、労働条件、賃金、今言ったようなことは労働組合との交渉事項であるという認識をきちっと持ってもらって、そして各大学を御指導いただきたいし、私学の方も、これは公務員じゃありませんから、任期制という問題を労働協約という中にきちっとうたい込んでやるということができなければ、これは労働組合の存在そのものが否定されるということになるわけで、国公立と私学の職員団体、労働組合の関係を間違いのないように、ここのところをきちっとすることが、困難なくこのことが正常に導入され、そして所期の効果を上げると、私はこう思うものですが、そこのところどうですか。
  71. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 国立大学やあるいは公立大学におきましては、先生かねてから御案内のように、それぞれ国家公務員法それから地方公務員法がかかってくるわけでございます。任期制導入をするとかしないとか、あるいはどういう形での導入をするとかというような事柄につきましては、任期を定めた任用という任命権の行使に密接不可分な事柄でございまして、職員団体との交渉の対象にならないいわゆる管理運営事項というものに該当するというように考えるわけでございます。ただし、任期を定めて任用される教員の勤務条件、例えば給与でありますとか勤務時間等につきましては交渉の対象になり得るというように考えておるところでございます。  以上が国公立大学教員の場合でございますが、他方、私立大学の場合でございます。  私立大学におきまして任期制導入することにつきましては、一般に教員の労働条件にかかわる事柄だというように考えられるわけでございまして、団体交渉事項に該当するというように考えるわけでございます。労使交渉後に労働協約を締結するかどうかということにつきましては、これは労使当事者間で決定されるべき事柄であるというように考えておるところでございます。
  72. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私学は今おっしゃるとおりでいいと思います。国公立の場合、基本的には局長のおっしゃるとおりだと私も認めます。ただ、管理運営事項だからそこの職員団体が一切かかわってはいかぬということではないと私は判断しておるんですね。要するに、団体交渉等で最後に確認したり協約を結んだり合意したりという性格のものではないけれども、少なくとも任期制導入についてその相談にあずかるとか意見を聞く対象であるとかというものでなければいかぬだろうと私は考えるんです。だから、そこのところを一切口出しするなとか、決まった後あなた方はやりますよという、こういう関係は私はよくないというように思いますので、文部省考え方として、管理運営事項は管理運営事項として結構です、しかし、今言いましたように相談、意見を聞く、そういう最後の判こを押すとか協約を結ぶということでない相談事のようなことをやる立場に職員団体はあってもいいということはひとつお認めいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  73. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 交渉事項であるのかないのかという制度の建前の議論になってきますと、先ほど申し上げたようなお答えにならざるを得ないわけでございます。ただし問題は、こういう基本的な人事制度がどう円滑に機能するかということがやはり大きな問題であるわけでございます。したがって、教員の勤務条件に密接にかかわる事柄も出てくるということもございますし、任期制を円滑に実施するという観点に立って、交渉というような形に必ずしもこだわらなくても、日ごろからいろんな形での大学当局と職員団体あるいは職員との意思疎通を図っておくということはそれなりに重要なことではないかというように考えております。
  74. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 終わります。
  75. 山本正和

    ○山本正和君 重複しないようにと思いますが、若干重複した場合はひとつもう一遍御答弁をいただきたいと思います。  今度のこの改正は、誤解と言ったらおかしいんですけれども、こんなことは本当に大丈夫かという疑点からいろんな議論が生まれている要素がありますから、それをひとつはっきりと解明をしていく必要があると思うわけであります。  まず、任期制ということを言って、幾つかのポスト任期制というふうに決めていきますね。ところが、そのポストというのが実は、任期制ということを言いながら、例えばどこかの国のように大学教員はすべて任期制にしてしまうんだと、こういうふうなものになるんじゃないかという懸念も一部言われることがあります。要するに、この法案で言うこの任期制というのは極めて限定的なポストについての適用である、こういうふうに言えるんじゃないかと思いますが、その辺はどうですか。
  76. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今御指摘のように、法制度の立て方といたしまして、例えば大学がおよそ教育研究上の必要性があると判断すればいかなる場合でも任期制をとり得るというような制度設計を考えるということもあながち不可能ではないと思うわけでございます。しかし、一方におきまして、大学の雇用保障と申しますか、身分保障と申しますか、安定した形で教育研究を実施するということもまたあわせて考えなければならないわけでございます。大学審議会の答申で幾つかこういう場合が教育研究上の必要に当たるんだということをかなり具体的にも書いておるわけでございます。また、そういうことを念頭に置きながら第四条の第一項の一号から三号までを書いたつもりであるわけでございます。  したがいまして、基本的な私どものスタンスといたしましては、一号、二号、三号で、こういう場合に限定して任期制をとり得るんだと。こういう場合には必ず大学がとりなさいということでもありませんし、こういう場合には大学判断にまってとり得るというように相当程度限定した形で定めたつもりであるわけでございます。  先ほど来のお尋ねにもございますように、例えば一号の読み方によってはかなり広がるのではないかという御懸念もあるわけでございますが、私どもとしては、先ほど申しましたように、「先端的、学際的又は総合的な教育研究であること」ということをわざわざ例示いたして、要するに多様な人材の確保が特に求められるような、そういう教育研究組織の職につけるときなんですということを書いたつもりであるわけでございます。  この判断をどの程度弾力的に行うか、これはもちろんあるわけでございまして、先ほどもちょっと触れましたように、百の大学がすべて同じ判断でするとは必ずしも限らないと思うわけでございますが、ただし、こういうような特定したということでもございますので、こういう趣旨に沿って大学として慎重な判断をしてもらいたい、こういうことでございます。
  77. 山本正和

    ○山本正和君 だから、現在の段階ではこれは限定的に導入されるものというふうに立法の趣旨としてはなっているということでよろしいですね。
  78. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) そのとおりでございます。
  79. 山本正和

    ○山本正和君 それからもう一つの問題は、任期制ということの意味でどうしてもつい心配になるのは、任期が切れたら失職しないか、こういうことを任期制と言われた場合にみんなひょっと思うわけです。ところが、法律をよく読んでみると、また大臣趣旨説明等を読んでいきますと、そうじゃないように私は思うんですが、そこのところをちょっと解明してもらえませんか。
  80. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 先生お尋ねは、任期満了者の異動先の確保ということに関連するお尋ねかと思うわけでございます。  任期満了者の異動先の確保につきまして、大学審議会の議論といたしましてはいろいろな御議論があったわけでございます。それぞれの御経験を踏まえた意見であったわけでございますけれども、何分にもこれは公私を問わず長い間終身雇用的な慣行が支配してきたわけでございますので、こういう制度が定着するまでの間は、上司と言うべきか、主任教授とかあるいは学部長のような立場に立つ者が次の就職先の確保ということについてしかるべき、平たい言葉で言いますと面倒見をするというようなことが必要じゃないかというような御意見も一方にはありましたし、また他方では、むしろここは突き放してそれぞれの教員の、それはもう最初から任期が付されたというのがわかってそれを納得ずくの上で任用されているということであるので、むしろ教員自身の自助努力に任せた方がいいんじゃないかというような御議論も実際あったわけでございます。  いずれにしましても、任期という定義から明らかなように、引き続き任用されたり再任されたり、あるいは国立学校の教員の場合でしたら他の国家公務員の職に継続任用されたりというようなことがない限りは任期満了すれば退職するということになるわけでございまして、各大学におきましては日ごろからすぐれた人材採用に努めるとともに、任期を付しまして採用しました教員教育研究能力向上を期すということで、例えば任期の途中に当該教員の業績を中間評価して必要なガイダンスをしてみるとか、異動先の確保についても、単に本人の努力だけに任せるということだけではなくて、事情にもよるわけでございますけれども、できるだけ所属組織の長などがある程度の面倒を見ていくというようなことがやはり必要なことではないかというように私ども考えているわけでございます。この点につきましては、大学に対してもいろんな工夫をお願いしようというように考えているところでございます。  また、若干側面的な事柄ではございますけれども、いわゆる教員流動性ということは、今空きポストが一体どのぐらいあるのかというような情報が知られているということが重要であるわけでございまして、今年度の予算におきましていわゆる公募情報というのをインターネットで流すという仕組みを設けることにいたしまして、実は今月からそのサービスがスタートしております。  大学共同利用機関としての学術情報センターというところで今月から研究者公募情報データベース整備事業というのが実施され、既に相当数の機関の公募情報が画面の上に乗っかることになっておるわけでございまして、こういうような努力も通じましてできるだけ教員流動性が円滑に機能するように配慮してまいりたいというように考えておるところでございます。
  81. 山本正和

    ○山本正和君 要するに、任期が切れた場合に、それでもう失職というふうなことに直ちにつながるというようなことのないようにいろんな配慮をしていきたい、こういうことですね。  その次ですが、任期を越えてまた新し、任期採用されるという人もおるわけですけれども任期が切れた場合にもとへ戻る。例えば国立大学で言うと国立大学の助手をしている人、その助手が任期を決めたもののある職に充てられた。それが外れたときに、その初めからの条件の中でもとへ戻れるというようなことは、これはし得るのかし得ないのか。
  82. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 任期を付したポストについた者の行き先をあらかじめ云々するということが適当かどうか疑問ではございます。ただ、任期を付したポストについた方の行き先として任期を付されないポスト異動するということは、これは当然あり得るということでございます。
  83. 山本正和

    ○山本正和君 それは当然含まれるというふうに考えていいわけですね。  次に、私立大学の場合、実は私も息子が私立大学教員をしておるもので、おまえどうだといって聞いてみたら、やっぱり私立大学というのはそれぞれ学校のカラーがありましていろんな状況があるようですけれども、私立大学の場合は、経営をしている理事者の立場とそれから学長教授会、この辺の関係が非常に微妙だということを心配するわけです。  ですから、私立大学において任期制導入の場合は学長の意見を聞くとされているんですけれども、その辺の手順、そしてまた大学内における教授会との関連、この辺を今の法案趣旨に照らした考え方はこうだということをちょっともう一遍説明してくれますか。
  84. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 法案の第五条の第三項でございますが、「学校法人は、前項の教員任期に関する規則を定め、又はこれを変更しようとするときは、当該大学学長の意見を聴くものとする。」、こういうような規定ぶりをしておるわけでございます。  これについてのお尋ねでございますが、御案内のように、私立大学におきましての任命権者は学校法人、具体的には理事会が持っているというように言えるわけでございます。ただし、私どもとして、理事会だけの判断、手続でこの任期制導入云々ということが処理されていいのかどうかということについて検討した結果、やはりここはいわゆる教学側の意見というものも聞く必要があるのではなかろうかということでこのような規定ぶりにさせていただいたわけでございます。  さらに進んで、「学長の意見」ということの中身と申しますか、その前段階としてどのような手続が想定されるかということでございます。これは、それぞれの大学教授会の運営の仕方なり、あるいは学長が何か物を判断しなければならないときに部内でどういう手続きをとるか、これは多分いろんな多様なものがあろうかと思うわけでございまして、これをあらかじめ法律の段階でかくかくの手続を経るべしというような形で規制することは、私学の運営の自主性という観点から見ても必ずしも適当なことではなかろうということでございます。この法律の上では「学長の意見を聴く」ということにとどめているわけでございまして、その大学内部の先のことにつきましてはそれぞれの大学の自主性に任せる、こういうことでございます。
  85. 山本正和

    ○山本正和君 法文上はそうだけれども、常識的に言えば、学長は大体教授会の意見等を聞きながら判断していくものというふうにこの法律は予測しているというふうに解釈してよろしいな、そこは。
  86. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 教学側の意見をどういう形で取り入れて判断するか、これは私学の判断の問題であろうというように考えております。
  87. 山本正和

    ○山本正和君 その次に入りますが、労働基準法十四条との関連で、一年を超える契約という問題については、この辺のことはどういうふうに判断しているか、ちょっと見解を聞かせてください。
  88. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 労働基準法第十四条におきましては、「労働契約は、期間の定のないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、一年を超える期間について締結してはならない。」というように定めておるわけでございます。若干わかりにくい条文でございますが、この規定の趣旨は、一年を超える期間、例えば三年とか五年とかというような期間を定めて、その契約によって雇用する側だけでなくて労働者側もその契約から逃れられないというようなことになるとするならば、若干古い言葉でございますけれども、いわゆる人身拘束的なことになってそれはいけないということでございまして、その限度は一年なんだということを定めたものだというように理解しているわけでございます。  したがいまして、その裏返しになるわけでございますが、たとえ一年を超える期間を定めた労働契約であったとしても、その期間中は労働者側にとって雇用が保障される、その期間中は身分は大丈夫なんだということ、逆に言うと使用者の解雇権が原則的に排除されるということでございます。  そういうことであるとともに、労働者側の方からしましたら、仮に三年、五年と定められたとしても、一年経過後はいつでも解約できる、そのことについて一種の債務不履行というような形での責任を追求されないというような、いつでも解約できるものとして設定されている、こういう条件がありさえずれば仮に一年を超えた契約であったとしても労基法の十四条には違反しない、こういうように解釈しているわけでございまして、この点につきましては労働省とも十分すり合わせの上でそのような解釈になっているわけでございます。  したがって、このような条件を満たす限り、それぞれの私立大学任期制をどのポスト導入するかといった任期制の具体的な内容につきましては、各私立大学が自主的に判断すべき事柄であると考えるわけでございますけれども、今回の法案に基づきまして各私立大学任期制導入する際には、この法第四条第一項に規定する三つの場合に限定されるということでございまして、それは先ほど来の第四条第一項に定めております第一号から第三号までの事由である、こういうことになるわけでございます。
  89. 山本正和

    ○山本正和君 だから、労基法のこの趣旨が十分に生かされる、こういうようになると。簡単に言えば、任期が仮に三年となっても、三年間働く権利はあるけれども、そうかといって拘束されるものではないということは保障されている、こういうふうに解釈してよろしいな。
  90. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 御指摘のとおりでございます。
  91. 山本正和

    ○山本正和君 それじゃ最後に一つだけ質問をしておきたいんですが、今のお話なんかを含めて考えた場合、特に私立大学の場合ですけれども、そういうことを労働契約というか何か一般化してやれるということを考えてもいいんじゃないかと。ちょっと難しいかもしれぬ、この法案とは直接なじまないかもしれない。今後こういう問題がいろいろ出てくるんじゃないかと思うので、一般化するという発想についてはどういう見解を持っていますか。
  92. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今回の法案におきましては、大学教員の職務が教員自身の自由な発想で主体的に取り組むものだという特殊性を、他の職種に比べての特殊性でございますが、そういう特殊性を有していることにかんがみまして、教員流動性を高めて異なる経験や発想を持つ多様な人材が相互に切磋琢磨するという状況をつくり出すことが、教育研究活性化に通ずるんだというねらいのもとにでき上がっているわけでございます。  したがいまして、今のお尋ねに直接お答えしているかどうかちょっと疑問でございますが、大学教員任期制導入するということが、大学以外の社会における労働慣行に直接的に影響を及ぼすようなものではないというように考えておるわけでございます。
  93. 山本正和

    ○山本正和君 それで結構です。  ぜひひとつ今度の法の趣旨を十分に徹底して浸透して、また当事者にも十分理解を得られるように文部省としては格段の努力をされることを要望いたしまして、質問を終わります。
  94. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  95. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、大学教員等任期に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  96. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 世界一高い授業料を払わされている国民の立場に立って、大学間格差の問題について初めに質問いたします。  東大、東北大、埼玉大、高知大について大学間格差の実態を調べてみました。  まず、教員一人当たりの学生数を教育学部及び理学部について見てみたんですが、九六年度、教育学部で、東大九・三人、東北大十一・二人、埼玉大十八・六人、高知大十二・二人、東大と埼玉大のこの開きは二倍になります。理学部では、東大六・九人、東北大人・一人、埼玉大十二・七人、高知大十五・〇人です。東大と高知大のこの開きは二倍以上になります。  教員一人当たりの研究費を比べてみました。九五年度、教育学部で、東大千五百三十九万円、東北大千五百十一万円、埼玉大千二百九十一万円、高知大千百十三万円、東大と高知大の開きは一・四倍です。理学部で、東大二千五百八十七万円、東北大二千八十六万円、埼玉大千三百四十四万円、高知大千百五十一万円、東大と高知大の開きは二・二倍以上になります。  科研費の配分について、採択件数と配分額を比べてみると、九七年度、東大二千百八十二件、九十三億七千六百十万円、東北大千二百十一件、四十億一千四十万円、埼玉大百二十一件、二億四百四十万円、高知大五十三件、八千八百万円です。  教員一人当たりの学生数や研究費にこれだけの格差があれば、学生にとっても教員にとっても教育研究内容そのものに格差が生まれてきてしまう、そのように思うわけです。世界一高い授業料を払っている国民は、これを当然と思って甘んじなければならないのでしょうか。
  97. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今、先生から幾つかの大学教員一人当たりの学生数、それから一人当たりの研究費の状況、それから科研費の採択状況についての御紹介がございました。御紹介の数字にもございましたように、それぞれの大学において異なった様相が見られるわけでもございます。また、同じ大学一つとりましても、学部によって異なった様相というのもまたあるわけでございます。  何ゆえにこういう異なった状況が出ているかということでございますけれども、基本的には、入学定員の規模の問題でありますとか、あるいは文科系、理科系というようないわゆる分野の違いの問題、それから大学院の修士課程、博士課程、あるいは大学院の規模の問題、規模の大小というようなことどもに応じて措置されているということでございますので、おのずとそういうような異なった状況が出てくるということでございます。  ただ、研究費についての数字は、私ども文部省の調査の方できちっとしたものがあるわけでございませんで、総務庁の方で科学技術研究調査報告というものに基づきまして算出しているところでございます。したがいまして、調査技術にかかわることでございますが、人件費とか原材料費とか施設整備費その他の経費を含んでおるということでございますので、ある年に施設整備が行われるとなると一人当たりの研究費が高まるというような若干別途勘案すべき要素がございますが、いずれにしても研究費についてもいろいろな異なりがあるわけでございます。  また、科研費につきましては、これは大学に対して交付されるということではございませんで、先生御案内のように、研究者あるいは研究者のチームに着目して、優秀な研究テーマに対してしかるべき厳正な評価を通じて交付決定されるものでございますので、大学に対して交付される研究費、ちょうど国立大学で申しますと、いわゆる講座当たりの研究費、校費というようなものと同じようには論ぜられない、そういう点はございます。  いずれにいたしましても、今申しましたようなさまざまな要素が絡み合いまして御指摘のような異なった状況が出てきている、こういうことでございます。
  98. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 違いの説明をしていただきましたが、ですから比べやすいように教員一人当たりということで私は比べてみたんです。  衆議院の文教委員会参考人質疑に際し、有馬氏が、地方の小さな大学でもよい研究をしている人がいる、この趣旨のことをおっしゃっていました。私もそのとおりだというふうに思います。地方だから、小さいから格が下だとか質が劣るとか、こういうことは絶対ないのだと思うんです。あるのは教育研究条件の格差なのだと思います。この教育研究条件の格差ということを認めますか。
  99. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 国立大学に対する教育研究条件、さまざまな側面があるわけでございますけれども、今申しましたいわゆる講座当たり校費というような形で、いわゆる教員の数でありますとか、あるいは分野としてどんなものがあるかとか、あるいは修士課程を持っているか、あるいは博士課程まで持っているかというようなことどもに応じて比較的自動的に計算する研究費というものが一方にあるわけでございます。これは大学によってどうこうということではございませんで、いわば大学のそういう状況に応じて計算されるものだというように考えておるわけでございます。したがいまして、おのずと大学の構成要素に応じて異なってくる、こういうことでございます。  したがって、それを認めるかと言われれば、それはそういうおのずと大学を構成する要素が異なっておるわけでございますので異なってくると、こう言わざるを得ないわけでございます。  それから科研費のことについて申しますと、科研費につきましては、先ほど申しましたように、それぞれの教員ないし教員のチームの研究者としてのテーマの優秀性ということに着目して交付されるということでございます。その申請が認められれば交付されるし、認められなければ交付されないということでございますので、そういうことからおのずと差が出てくるということでございます。
  100. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 世界一高い授業料を払っている国民の立場で答えていただきたかったのです。教育研究条件の格差があるということです。  さきに述べた四つの大学について、高度化推進特別経費あるいは大学院最先端設備費、大学改革推進等経費教育研究特別経費等の配分実績を比べますと、その格差はますます大きくなってまいります。私は、もとより全部同じにせよという空想的なことは申しませんけれども、この格差是正のためのボトムアップが必要であるというふうに考えるんです。  そこで問題にしたいのが、最も基本的な研究費である校費の問題です。私はこれを何度かこの委員会で取り上げました。教官当たり積算校費も学生当たり積算校費も、その単価をこの十年間の推移で見てみますと一・〇九倍、ほとんどふえていません。これを私が学生時代の一九七〇年を基点に比べてみますと、今日二倍程度にしかふやされていなくて、この間の物価上昇率が約三倍ですから実質的には減らされてきているんです。このようにして格差が政策的につくられてきたわけです。このままで教員条件のよいところから悪いところに自由に異動できると思いますか。
  101. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今御指摘の校費でございますが、教官当たり積算校費、それから学生一人当たり積算校費について今年度は対前年度〇.四%の増額を図ったわけでございまして、それによりまして教官当たり積算校費につきましては約千五百四十一億円を、また学生当たり積算校費につきましては約四百九十億円をそれぞれ確保したところでございます。  ボトムアップが必要だと、まことにおっしゃるとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては限られた財源のもとでできる限りの努力をしてきたつもりでございます。一方におきまして、科研費その他、いわば私ども総括して競争的資金というような言い方で言うわけでございますけれども、競争的な資金の拡充についてもあわせて努力してまいってきているところでございます。  何分にも全体的な財源が限られておるということでございます。その中での資金配分をどう考えていくか、これは非常に重要な課題でございます。先生指摘のようにボトムアップも重要でございますし、また競争的な資金の拡充ということも重要なわけでございまして、私どもとしてはそれぞれにつきましてできる限りの努力をしてまいりたいというように考えております。
  102. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 こういう状況で自由に異動ができるか、もう一つです。
  103. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 先ほどのお尋ねの中でも先生みずから御指摘のように、いろんな大学におきまして特色ある立派な教育研究活動が行われているところがあるわけでございます。ただ平均的な数字だけでなかなか事を一般的に論ずるわけにはまいらないわけでございまして、先生方の異動といいますと、非常に望ましい形としては、その先生にとってさらによりよい職場に向けてという動きがその先生にとっては最も望ましいわけでもございます。そういう動きが円滑にいくためには、それぞれの大学がそれぞれの特色を生かした教育研究活動を行っていくということが重要でもございます。また、全体的な教育研究条件改善ということももちろん必要であろうかと思うわけ  でございます。
  104. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今いみじくも局長がお認めになつたと思うんですけれども、上昇志向の異動は大いにあり得るだろうということをおっしゃったと思うんです。地方の小さな大学の場合、科研費も来ない、研究者の数も少ない、院生もいない、要するにこれではとても教員の自由な意思で喜んで異動しようというふうにはならないわけです。とりわけ中央の大きな大学から喜んで自主的に異動しようなどというふうにはならないということを客観的に思いませんか。
  105. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 大学教員異動する場合というのはいろいろな要因があろうかと思うわけでございます。先ほど私が申し上げましたのは、それぞれの大学教員にとって一般的に望ましい異動というのは、その大学教員にとってさらに魅力ある職場が先にあるということが最も望ましい異動であろうかと思うわけでございます。それ以外にもいろいろな異動のケースがあろうかと思うわけでございまして、一概に異動のケースについて個別に論ずるということはなかなか難しいところがあろうかと思うわけでございます。
  106. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 研究者教員にとっての魅力というのはやはり教育研究条件だと思います。安心して、異動しても異動した先に研究費もあるし施設・設備もあるし、また一緒に交流を深めることのできる研究者がいるということです。それから、研究スタッフあるいは研究者の卵である院生がいるということだと思うんですね。それで実際、大学教員異動が今日、大学間の格差がある上に、異動そのものの負担が大きいために大変困難になっています。  雑誌「科学」の六月号に「大学教官の任期制研究活力を向上させるか」、こういう小論が掲載されています。京都大学、東京大学、九州大学の三大学四部局を異動したという筆者が強調するのは、異動というのはいわば新しい研究室をつくることを意味していて、個人的に大きなコストがかかるということです。「アクティブな実験系の研究者なら、自分の研究に必須の大型実験設備や精密機器を少なからず保有している。」、備品ではなくて自分のです。  東京から福岡まで輸送するのに百万円から二百万円はかかる。その上、自分の研究に適した環境整備するのに電源工事、水道工事まで必要になって、科研費はそれに充当できないし、校費予算による工事実施も無理。それで、結局この方はほかの講座から校費予算を借金して最低限度の整備をしたのだそうです。でも、電源工事まで間に合わなくて、今機器を使うたびに一々電源を外して使っているそうです。そのため、マイナス二十度Cのフリーザーの電源が長時間切れたままに放置されたりの事故が絶えないということです。  また、大学院生の指導教官である場合、院生を連れて動く必要があるということで、この方はその入学金二十六万円の負担までしているんですね。筆者が何よりも強調するのは、異動のタイミングと研究の区切りがうまく一致するとは限らないということです。フィールド系の研究にしろ実験系の研究にしろです。  文部省はこういう実態をよく把握しているのでしょうか。
  107. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) こういう御論議の際にこういう例を出すのが適切かどうかあれでございますけれども、いろんな職場があって、その職場の中で人事異動というのはあるわけでございます。その異動に伴いまして、新たな異動後の態勢を整えるということのためにいろんな形での苦労があるわけでございます。先生もおっしゃいました大学教員異動という場合に、研究室を建て直す、あるいは十分な研究条件がなかったならばその研究条件を整えるべく努力する、これはあろうかと思うんです。  したがいまして、今校費を隣から借りてくるというようなお話がございましたけれども、そういう場合でしたら、校費というのはこれは積算上の問題でございますので、大学の方でその辺について配慮して弾力的な校費の運用というものを考えることもできましょうし、またいわゆる学長の裁量経費というようなことの運用によって、そういうような流動性が事実上円滑にいくような配慮というものもまたなされてしかるべきであろうかというように考えるわけでございます。
  108. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 現に教員異動がこういうふうに困難をきわめているときに任期制導入されるとどういうことになるかということです。  任期制は、期限を切ることによって無理やり教員異動させることになります。高いお金をかけて新しい研究環境をつくって、そして研究が軌道に乗り始めるのに二年かかるそうです、研究が軌道に乗り始めるか否かのころになると次の職探しをしなければならないんです。当てのない職探しです。こういうのを教育研究活性化と言うのでしょうか。
  109. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 一つだけ伺っておりまして気になった点がございます。  無理やりというお言葉がございました。今回の法案でも明らかに書いてございますように、任期を付された職につくかどうかということについてさまざまな手続を大学にも課しているわけでもございますし、また、最終的にはその任期を付されたポストにつくかどうかということについては本人の同意を得て行うということでございます。  したがいまして、本人の意に反して無理やりに任期を付されたポストにつかされるとか、あるいは職をやめさせられるとかということを、今伺っておりまして私は感じたわけでございますが、そういうようにはこの法案はできておらないということでございます。
  110. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 だから、私の言ったような今の先生みたいな事例、こういうのを教育研究活性化と言うのですか。
  111. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 直接のお答えになるかどうか疑問でございますけれども教員一つの職場にずっととどまるということでなくて、別の職場をも経験するということによっていろいろな経験や知識を持った教育研究者の方々と相互に学問的な交流をするということが、当人にとっての教育研究能力を高めるということにももちろんつながるわけでもございますし、また、大学全体のいわゆる教育研究活動の活性化ということにもつながるものだというように私ども確信しておるわけでございます。  大学審議会の答申におきましても、そういう意味合いでの教員流動性というのが大学教育研究活性化にとって大変重要であるという認識の上に立って任期制を提唱しているわけでございまして、その考え方に従ってこの法案をつくったわけでございます。
  112. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今回の法案審議でキーワードになっているのは流動化活性化という言葉だと思うんですが、何しろ大学先生を動き回せば物事がよくなるというのは大間違いだと思うんです。年がら年じゅう出入りのある大学がいいとは限らないでしょう。つまり、学問研究の本質、学問研究労働の本質が本当に欠落しているというふうに思うんです。学問研究そのものの論理、真理ですよ。ですから、学問研究労働というのは、その真理にのみ従う自由な精神、自発性、これが命だと思います。それ抜きに、期限が来たらそのときに職がなくなるんですから。それで、選択的任期制とか本人の同意とか言いますが、その選択的任期制、本人の同意でこれが実施されていったらどうなるか、その先の見通しを行政は持つ必要があるんだと思います。ですから、責任転嫁をしないでいただきたい。  大学教員の給与水準が製造業の半分程度で極めて低い上に、使い捨ての任期制導入すればどうなるか、西澤潤一先生がおっしゃっております。大学はよりすぐれた人材を得ることが不可能になるだろう、また、今でも大学の一極集中が進み、施設整備研究費、学生定員、教官定員もすさまじい勢いで偏差値序列に組み入れられている、任期制で一極集中が一層強まるでしょうと。  つまり、任期制大学活性化につながらないということを警告しているんですね。こういう警告をどう受けとめますか。
  113. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) いかなる制度も動かすのは人でございます。その制度本来の趣旨に従って運用するということでありますれば、私どもといたしましてはその制度のねらった効果というものはおのずと出てくるものだというように考えておるわけでございます。その意味におきまして、今回の任期制につきましても基本的には大学の良識ある判断というものを私どもは任せてあるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、大学として十分慎重な配慮と改善、いろんな意味での改善、工夫の努力をお願いいたしたいというように考えておるところでございます。
  114. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 制度を実施すれば効果が出るというふうにおっしゃいましたけれども、実はこれはもう既に試され済みで、一九八八年の教育改革法でテニュア制を廃止したイギリスでどんなことが起こっているか。  これは、国立教育研究教育政策研究部長喜多村氏が、「IDE 現代の高等教育」、一九九七年三月号に書いているんですが、「試練にさらされる大学教授職」という論文です。  その中で、「イギリスではすでに今から五年も前に大学教員の身分に対する重大な変化が生じているのである。その結果、大学の教職に魅力を感じず、他の職を求めて大学を去る教員も激増していることも、タイムズ高等教育版は伝えている。」、こういうことを書いています。こうした先例に学ぶべきではないのでしょうか。この方は、「イギリス高等教育日本の高等教育の未来を暗示するものなのか、それともわれわれは独自に、イギリスとは違った道をえらび、より活力のある高等教育体制をきずき上げることができるのか。」、これが問われているんだ、こういうことをおっしゃっています。  既に試され済みです。どう考えますか。
  115. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) イギリスのテニュアの仕組みと、それから我が国のいわゆる終身雇用的な身分保障の仕組みというのは基本的に違うというようにまず私ども考えておるわけでございまして、イギリスもアメリカも基本的には同じだと思うわけでございますけれども、雇用者とそれから被用者との契約によって事を決していくというのがまず基本にあって、その契約の上に立って、その契約内容をある意味で制限するような形でテニュアというのが乗っかっているというようにも理解できるわけでございます。  それに対しまして、日本の例えば公務員の場合に認められている身分保障と申しますのは、公務員制度のもとで法律に定められた事由がなければその身分を失わない。これは若いころからずっとそうであるわけでございまして、イギリス、アメリカのようなテニュアのように、いわゆる若いころ、助手とかあるいは助教授のころに非常に競争的な、いわゆる試用期間という形の任期のついた期間を徒過した後に初めてテニュアを認められるか認められないかという判断があって、それによって終身在職権を認められるという世界とやはり基本的な出発点が異なっておるというような感じを持っておるわけでございます。したがいまして、イギリスの場合と日本の場合とを同じ紙の上で比較するというのはなかなか難しいところがあると思うわけでございます。  今、先生が御指摘の論調でございますが、これは基本的には、イギリスにおいて外部資金によって期間を定めて雇用される研究員が増加しているということに関連しまして、これらの研究員が大学の経常予算によって定員管理されていないことから、過度に増加すると大学教員としてのキャリアパスとしての位置づけが困難となるおそれがあるという指摘があるということでございまして、いずれにいたしましても、先ほど申しましたような、異なった状況にあるということをまず出発点として考えておかなきゃならないということを申し上げておきたいと思うわけでございます。
  116. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 阿部さん、時間がなくなっておりますので、簡単にお願いします。
  117. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 要するに、定年までの安定した身分保障をやめたということなんですよ。それをこれから日本でも導入しようとしていることは同じではありませんか。それで試されているということです。  格差是正こそ、学問の論理と研究者の自発性に基づく自由な交流、学問研究者の交流を促進する道であるし、この道こそ高い学費を払う国民にとっての大学活性化の道です。任期制導入をやめること、このことを強く主張して終わります。
  118. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 自由の会の江本です。よろしくお願いします。  今回の大学教員等任期に関する法律案というのは、私は大学の中身というのは余りよくわからないので、この任期制というものについて少しいろんな資料その他を集めて自分なりにいろいろ考えたんですけれども、どうもこの法律案そのものは、大学教員となっておりますけれども、これはよく見てみると大学教授のことを言っているんではないかな、対象にしているんではないかなというふうに私は思います。日ごろ大学教授の人たちとつき合っているわけではありませんので、どんな職業なのかというふうなことでいいますと、私たちも非常に理解しづらいところもあります。そういうことで、私は教授というふうに限らせてもらってちょっといろいろ調べてみたんです。  私たちのような職業の人間も一応スタッフがおります。御存じのように政策秘書がいて、その政策秘書が一応手足となってこういうときに資料をいろいろ集めてもらえるわけです。そういうことによっていわば学校で言う研究みたいなことをするわけですが、大学教授とは何かということで国会図書館と本屋もいろいろ見てみたんですが、どうも私が見る限りは、大学教授は余りよくないというふうなことを書いてある本ばかりなんですね。そんなはずはないと。私は大体、大学教授というとはなから立派な方だ、これはすばらしい方だというふうに思っておるんですけれども、こうやって見てみると、本には余りいいことは書いてないんですね。国会議員と一緒で、国会議員はすばらしいと書いている本がほとんどないのと一緒で、ちゃんとしている仕事を理解されないで悪いことばかり恐らく書かれているとは思います。  そんなことで、きょうは悪いことが本当なのかどうかということを確認したいなというのがあります。というのは、この審議は、今回これをやって、その後参考人を呼ばれて、その後にもう一度質疑をして採決するわけですから、そういう時間的な余裕もありますので、私は素朴な疑問も含めてお聞きしたいと思います。  新聞なんかを見ていましても、患者の楽園だとかいろんなことを書かれて任期制の問題というのは随分出ておりまして、私も切り抜きをいろいろ見てみたんですけれども、何度も言うようですけれども、どうも私なりに今の時点で解釈するには、こういうことじゃないかなと。先ほどからお聞きしているお答えの中には、それからまた衆議院の議事録等を読んでも、任期制導入する目的は、大学研究等を活性化するということが最大の目的だということを大臣局長も何度も言われております。でも、私なりに解釈すると、どうもこれは古くいつまでも居続ける厄介な教授を追い出したいがための、そういう者を早く楽に追い出せるような法律をつくるんじゃないかというのがどうも見え隠れしておるわけです、私には。私のこの考えが間違っていればまた後ほど自分で理解し直すんですが。  そういうことも含めますと、教授と言われる、または教員と言われる人たちの職業、こういったものをもっと広く理解すべきだなと。そういうことを言いますと、文部省の方としても十分そういう仕事がどういう仕事であるかということを御理解されていると思いますので、とりあえずお聞きしたいことが何点かございます。  一番目に、国公立、私立を合わせた大学教授の平均的な月収、それから勤務時間、それから退職年齢、こういったものをちょっとお教えいただきたいと思います。
  119. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 大学教授の平均月収でございますが、学校教員統計調査報告書によりますと、平成七年度におきまして、国立大学は五十五万四千円、公立大学は五十六万円、私立大学は五十七万二千円ということでございます。  また、国立大学教授の勤務時間でございますが、一般職の職員の勤務時間等に関する法律第五条で一週間当たり四十時間とされております。また、公立大学教授の勤務時間につきましては、地公方第二十四条で条例で定めるとされておるわけでございますが、実際上は、国立大学と同様に一週当たり四十時間と定まっていることが多いものというように理解しております。私立大学教授の勤務時間につきましては、労働省の調査でございますが、平成七年度におきまして週平均三十九時間という結果が出てございます。  また、平均離職年齢でございますが、これまた教員統計調査報告書でございますが、平成六年度におきまして、国立大学は六十三・三歳、公立大学は六十四・八歳、私立大学は六十八・二歳ということでございます。
  120. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 いろいろ私も勉強したいものですからお聞きしているんですけれども、給料が高いとか安いとかというのはまたこういう問題とかかわってくると思います。  二番目に、大学教授任用の仕組み。先ほどもこの話はちょっと出ましたけれども、一応、国公立の場合は国家公務員、特別公務員ですね。それはもちろん我々と一緒ですけれども。ちょっとさっき話が出ましたけれども教授の場合は何か試験等がございますか、どうでしょうか。
  121. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今御指摘のように、国公立大学教員選考は教特法の規定によって行うことになっておるわけでございます。教授会の議に基づき学長が行うという規定になっておるわけでございますが、具体的な手続につきましては、大学やあるいは大学の抱えております学部等によって異なるところもあろうかと思うわけでございますが、おおむね次のような方法、手続で行われているものと理解しております。  一つは、これは物の順序として当然とも言えるわけでございますが、採用すべき教員の担当する教育研究分野を学内で決定し、それから関係機関に候補者を公募する等によって候補者を探し、その次に学内に選考委員会を設けて候補者を絞り込み、最後に教授会で採用予定者を決定し、これに基づいて学長採用予定者を最終的に選考する、こういう段取りになろうかと思うわけでございます。
  122. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 そういうような答えをいただいて、後で、六月二日でしたか、そのときにいろいろまたお聞きしたいと思います。  三番目に、アメリカ、イギリスに比べて日本大学教授研究論文の生産率は非常に低いというような指摘があります。これはいろんな本にも出ておるんですけれども、これは本当でしょうか、どうでしょうか。
  123. 林田英樹

    政府委員(林田英樹君) 大学教授の論文の生産率というものをどのように比較するかというのは単純な仕事ではないように思いますけれども、御参考までに関連の情報として私どもが持っておりますことを申し上げますと、一つ文部省の学術情報センターが平成七年度の科学研究費補助金で実施をいたしました研究の報告によりますと、一九九三年におきます日本、米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、カナダの七カ国の論文数の比較をしておりまして、サンプルをとりまして理工学、化学、工学、医学分野の中で、またその中で選びまして、二十九の分野についての年間数千誌の学術雑誌に掲載された論文を収録しております国際的評価の高い論文抄録データベースについて調べたものでございますけれども、この中では米国が第一位となっておるわけでございますけれども日本の場合は医学の三つの分野で英国に第二位を譲っておりますけれども、その他の部分では第二位というふうな形になっておるというようなデータがございます。  それから、我が国の論文数を一九七六年と一九九三年で比較しますと、七六年レベルでは対象七カ国のうちの三位から五位あたりというものが多いわけでございますけれども、先ほど申しましたように九三年ではほとんどの分野において二位を占めているというような状況にあるというデータが示されております。  総数については以上のような状態でございますけれども、じゃ、時々批判を受けます注目度と申しますか質についてはどうかというような議論が行われるわけでございますけれども、これは科学技術庁の平成八年度の科学技術の振興に関する年次報告の記載によりますと、論文の他の研究者から引用された回数というものについてシェアを見てみますと、アメリカが断然でございまして、次いでイギリス、ドイツで、日本が四番目になっておるというようなことで、被引用回数のシェアは小さいんではないかというようなことの指摘はございますけれども、しかしこの点でも、一九八四年と九四年の十年間で比較をいたしますと日本の比率もかなり高まっているというようなこともございますので、研究者努力があらわれているんではないかと思っているわけでございます。
  124. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 次に、大学教員の世界は非常に仕組みからしても排他的な徒弟制度ではないか、そういうことによって大事に情実昇格というようなものの温床になっているというような批判がありますけれども、その点についていかがでしょうか。
  125. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) それぞれの大学がそれぞれの理念、目的に基づきまして教育研究を展開していくためには、やはりすぐれた適材を確保していくということが重要であるわけでございます。  今御指摘のように、大学によりましては教員について自校出身者の比率が高いとか、あるいは他校との人事交流も乏しいとか、あるいは業績評価が適切に行われずに年功序列的な人事が行われるといったことなど、教員人事をめぐりましてはややもすれば閉鎖的であるというような指摘もなされているわけでございます。  こうした点を踏まえまして、大学審議会におきましても「教員採用改善について」という答申を平成六年に出しておるわけでございますが、ここにおきましては、公募制の活用とかあるいは社会人の採用でありますとか、教員に対する適切な業績評価の実施などの改善方策を提言していただいているところでございます。  現在、各大学におきましてはこういう観点からいろいろな工夫、改善がなされておるわけでございまして、例えば公募制を実施しておりますのは、平成六年度におきまして五百五十三大学中三百十三大学、五七%でございますけれども、に及んでおります。また、企業等から採用された大学教員につきましては、やはり同じ年度でございますけれども三千八百四人ということでございまして、次第次第に、単に内々の選考でということから少しずつ改善されておるというようなこと、それから適格者を必ずしも我が身の身の回りのところ、いわゆる大学内だけでなくて幅広い社会から選んでいく、こういう傾向が徐々に出てきているのではないかというように考えておるわけでございまして、私どもといたしましてはこういうような方向で努力がなされていくということを今後とも期待いたしたいと思っておるわけでございます。
  126. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 その辺も次のときにもうちょっと掘り下げてお聞きしたいと思います。  そういった中で、文部省としては大学教授とそれから教員というものに対してどんな資質、それからその役割、こういったものを実際求めているのかということを少しお聞きしたいと思います。
  127. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 御案内のように、大学は学術の中心としての性格を一方で持っているわけでございます。あわせまして、広く国民に高等教育の機会を提供するということをその主な役割としているわけでございまして、これまでさまざまな面で我が国の発展に大きく寄与してきたものと私ども考えているわけでございます。  教授を初めといたします大学先生方でございますけれども、こうした大学教育研究の中心を担っておるわけでございますので、その果たすべき役割は大変重要なものだというように考えておるわけでございます。大学教員の資格自体につきましては、制度上は大学設置基準におきまして、博士の学位を有することやあるいは教育研究上の業績を有することのほか、専攻分野について特にすぐれた知識及び経験を有する者であるということなどを定めているわけでございます。  文部省といたしましては、大学設置基準に定めております教員の資格というのを有することはもとよりのことではございますけれども教育研究に対する深い識見と教育に対する情熱、深い洞察力、国際的視野の高い資質を持ったすぐれた人材が多様な形で確保されることが望ましいと考えておるわけでございますが、特に昨今、大学審議会の方といたしまして注目いたしておりますのは、やはり大学先生に、これまでもないがしろにしてきたとは申しませんけれども、えてして教育ということについてエネルギーのかけ方が少ないのではないかという注目の仕方があるわけでございます。今、大学、短大に四六・二%の生徒が進学してきているというような状況で、学生の能力あるいは意欲、適性は大変さまざまなものがあるわけでございまして、それらの状況に応じてやはりしっかりとした教育を展開していく、そのことにより多くのエネルギーをかけてもらいたいなということが審議会の議論でもなっておりますし、また、私どもも客観的に見てやっぱりそういう時代ではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  128. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 その辺が一番重要なところだと思うんですね。というのは、先ほどの御答弁の中にも、この任期制採用することによって業績評価とか授業評価、こういったものがどんどん上がっていくんじゃないかというようなお話がありましたけれども、実際にそういった質の向上ということについては非常に重要なことだと思っております。  そこで、我々参議院議員は任期は六年ですけれども、無試験の国家公務員の国公立の教授という職業について、大体任期は何年が妥当だとお思いでしょうか。
  129. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) 今回の法案におきましては、任期期間の長さにつきましては、学問分野や職の性格等によって事情が異なることなどを考慮いたしまして、法令等におきまして任期の長さの上限を定めず、各大学において定めるということにいたしておるわけでございます。もちろん、私立学校の場合には民法の規定がございまして、任期の長さ五年を超えて定めてはならぬという規定がございますので、再任があるなしはともかくといたしまして、そこが一つの上限になろうかと思うわけでございますが、国公立大学の場合につきましては民法のそういう規定はございませんものですから、特段に定めてございません。  いずれにしましても、任期期間を定めるに当たりましては、各大学におきまして教育研究の継続性やら、あるいは教員流動性を高めるという任期制導入の意義を踏まえまして決定していただくべきことだというように考えておるわけでございます。したがいまして、文部省の方として妥当と考えられる任期の長さは何年だということをあらかじめ数字であらわすことは必ずしも適当なことではないであろうというように考えておるわけでございます。  ただ、極端に長い任期を定めるというのは任期制自体の性格からして適切ではなかろうというように考えておるわけでございまして、現在いわゆる紳士協定のもとで行われております事実上の任期制の状況を見ておりますと、短いところでは一年というのもございますし、長いところでは十年というようなところがあろうかと思うわけでございまして、だからこの範囲内とは申しませんけれども一つの参考にはなろうかなというように考えております。
  130. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 この任期制というのは、ちょっと私も調べてみたんですけれども外国にはほとんどない。それから、陳情でファクスが例の調子でどんどん来ますけれども、あれを見た中にもそういうことを書いてあるのもありました。なぜ我々だけ、日本だけがこういう任期制導入したりするのかと。  私は、そういう意見もあるんですけれども、しかし今回のこの法律案というのは、大学教授または教員の実態、こういったものを本来やっぱり知っておかなくてはいけない。それともう一つは、逆に言えば余り知られていない。知られていない原因の一つに、聖職であると、そしてここは聖域であると。もう一方では労働者であると。終身雇用制というような部分がどうも入り交じっていて、そしてそのことがよく理解されていない。そういうことで言いますと、もう少し大学の中身についての積極的なディスクロージャー、これが必要ではないかと私は思っておるんですけれども、その点について大臣、最後にお答えください。
  131. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 社会に開かれた大学づくりというのは非常に大事だと思います。かつてのような、何か徒弟制度のような閉鎖的なイメージを払拭して、非常にオープンな大学ということが私は必要だと思います。そのために、大学でも社会人をどんどん採用するとか、今でも社会人から大学教員になっている人が三千四百人にも及んでおります。  それから、公募制というものを採用して、例えば大学によってはこのような、九州大学のこれは研究者総覧なんというのをインターネットに乗せまして、これを全国の大学にオープンにする、あるいは民間にもオープンにするということで、実にこういう研究者のデータベースというのは大体十三万件以上、学術情報センター、これは文部省の所管の機関ですけれども、今そこに登録されておりますし、それから先ほど局長から答弁した、ことしから始めた、新規にこれだけの教授なり助教授を公募しますよというようなのも非常にふえておりまして、ことしからそういうサービスも始めているわけでありますから、そういった努力を通じてできるだけオープンな大学づくり、こういうことでやっておりまして、私はやっぱりそうしたできるだけ大学の情報を積極的に外部に発信することが大切だ、こう考えております。
  132. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 ありがとうございました。
  133. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 新党さきがけの堂本暁子です。  まず、細かい質問は私のところへ来るまでにほとんど終わっていますので、私は大学そのものをもう一度改めて考えてみたいというふうに思っております。  大学が本当に研究者にとって研究しやすい場であり、それから学生にとって最も自分の、社会へ出る前あるいは研究者として大学に残るにしても、そこで充実した学生生活が送れる場でなければいけないし、そして今大きな時代の変革期の中で、大学だけが今までどおりの伝統的な枠組みで存在するということは全く考えられないことでございます。  そこで、今任期制の問題が出ていますけれども、文部大臣にお伺いしたいのは、今大学教育の改革が叫ばれておりますけれども、この任期制導入どいうものが本当にポジティブに、うたわれているように大学活性化していくための道を開くものなのか、それから今るる御心配のあること、例えば身分の問題ですとか労働条件ですとか、それから任期制で就職した場合にそれ以後の就職の問題とか、その両面が多く今語られているわけなんですけれども大臣教育改革の中でこの任期制をどのように位置づけ、そしてどのようなビジョンでこれを提出なさったのか、まずそこから伺わせてください。
  134. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 大学の改革につきましては、大学審議会でたびたび答申も出しておりますし、私は大学自体もかなり時代の変化に合わせて進展してきていると思っております。  今回提案したこの任期制法案もこの大学改革の一つの有力な方策であると、これがすべてではありませんが、この一つ方策であるというふうに受けとめております。  それから、先ほど来いろいろ懸念が表明されております。これは従来の終身雇用制という長年日本の労働慣行という状況の中で例外的に導入しようということでありますから、いろいろ心配をされることもわかりますけれども、これはネガティブなことばかり考えていると無限にいろんな懸念が出てくると思いますけれども、ひとつここはポジティブな面も大いに考えていただいて、私たちはできるだけこの法案趣旨に沿った運用がなされるように努力をしたいと思っております。  ただ反面、懸念材料というものについては、私はないと思っておりますけれども、今後の運用の実態を踏まえて改善すべきものは改善していくと、こういう姿勢で臨んでいきたいと思っております。
  135. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 まさに懸念を招くようなことが最小限度と申しますか、あってはならないというふうに私は思うのですけれども、そのためには、大学管理機関と申しますか、最高の意思決定機関というのは教授会なのでしょうけれども教授たちはとかく忙しい、雑用だらけだというようなおっしゃり方をなさる。それから、日本の場合は教授、特に学部の学部長が一年とか二年とかで交代されるというふうにも伺っております。このような形でくるくる変わっていくのだと、本当に若い人たちがしっかりと、自分の人生にかかわることですから、その人生にかかわることを、安易にこまを動かすような動かされ方ではなく、その人が最も適しているところに適した形で仕事を続けることができるようなことが判断できるのかどうか。  欧米諸国ではもっと大学にマネジメント機能を今は入れているというふうに聞いています。ですから、研究者が四十時間労働というふうにさっき答弁がありましたけれども、私の知る限り、本当に研究の好きな方はもう四六時中研究しておられる。そういった研究に没頭できるような体制をつくるためには、マネジメントをする方がそれぞれのレベルに、例えば学長のレベルあるいは学部長のレベル、事によったら教授のレベルでもそういった雑用を引き受けたりマネジメントを考えるという職能のある人がいてもいいんではないか。しかし日本にはそういう人材がないというふうに聞いております。  その点はいかがお考えでしょうか。
  136. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 私もこの間、東大総長にお会いしたときに、これからは少し研究とか評論を書くのを断念せざるを得ないのかなというようなことを言っておられましたけれども、もう本当に学長になると大学のマネジメントの方にほとんど精力を使い果たすというのが実態であります。  私は、大学改革あるいは大学がその理念や目的を明確にして学問分野の進展や社会の変化などに対応していくためには、従来にも増して学長のリーダーシップが必要だと思われるわけでございます。  この学長の補佐体制というものが今余りにも貧弱ではないかということで、例えば今、大学審議会の答申に基づきまして、国立大学においては副学長というのを三十七の国立大学で設置をしております。そのほか、大学審議会では、教員の業績評価ということに当たっても、管理運営への貢献といった要素も適切に評価することが大事だということとか、事務職員を含む大学構成員に対する研修を充実させるということも指摘しております。  いずれにしても、学長一人が大学運営の責任を全部かぶるというのではなくて、学長の補佐体制を総合的に充実していく、こういう姿勢が必要ではないかと思って取り組んでいきたいと思っております。
  137. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 次に、この任期制というものが導入されたときに私が懸念することは、果たしてどれだけ公正さが保たれるかということです。今、学部長なり教授なりが、先ほども徒弟制度的という言葉が出ましたけれども、大変心配されるのは、そういったところでごく客観的な評価がなされるかどうかということなんです。  天野郁夫さんの「大学教育革命を」という本がここにございますけれども日本でも教育改革をやっている大学が非常に多いということが書かれているわけです。それで、この天野先生指摘によりますと、教育改革をやっているかというような質問をすると、国立大学で九〇%、私立大学で七三%がカリキュラム改革について実施しているというふうに答えている。ところが、そう答えているけれども実際に改革が実現できているかどうかはわからない。なぜならば、そこに意識の改革がないからだというふうにおっしゃっているんです。  私は、別に教授を信用しないわけではありませんけれども、むしろ若い人たちのことが大変不安でございます。ファクスがいろいろ入ってきている中で、東大の史料編さん所の組合からファクスをいただいている中に、就職できるのが早くて三十歳前後、多くは三十代になってようやく定職につける。今、私どもも国会で科学技術基本法を通し、そして大変な科学予算がつきましたけれども、史料編さん所のように日本の古典、江戸期とかもっと前の室町期の古文書を毎日丁寧に読んでくだすっているようなところの仕事というのは、私は大変に高く評価されるべきものだと思うんです。大変地味ではありますけれども、大事であると。とすれば、三十代まで本当に石にかじりついて、好きな学問だからということで若者が我慢しなければならない体制の方がむしろ問題なんじゃないかというふうに考えます。  したがって、任期制導入される場合には、やはりそういった周辺の整備、先ほどから身分保障とかそれから退職金の問題などが多く指摘されているんですけれども、私はそれ以前に、若い研究者がとにかく余り間を置かないで、大学を出たならば、例えばドクターの途中ぐらいからでもきちっと生活が保障される形で、それが任期制であったとしても、きちっとそこで研究ができて将来本当に定職につく場を探していけるような、そういう期間になるといいと思うのです。  そのことで文部省に確認したいことは、この史料編さん所でも心配していることなんですけれども、どういう組織で、どういう職に、そして任期はどのぐらいで、再任ができるかどうか、これはけさほど馳さんが質問されたことへの御答弁ですけれども、そういったことは文部省令で定めるということになっています。  そこの中で定められることが、本当に伸び伸びと若者が研究できるようなそういった形になるのかどうか、その辺のところがいささか心配な気がいたします。これは局長に御答弁いただければと思います。
  138. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) いろんな面を含んでおるかと思うわけでございまして、私ども行政の立場で努力すべき課題それから大学の方として努力すべき課題、それぞれが含まれておるように考えるわけでございます。  例えば、若い研究者のしかるべきポストを確保するという点で考えてまいりますと、いわゆる教員の定数をできるだけ確保するという方策もございますし、また一方で、最近特にポスドク一万人計画ということで推進しておりますように、博士課程の後期の学生、それから博士課程を修了して例えばこれから助手になろうかというような段階の方々に対して特別研究員という形でのポストを用意するというようなこと、これはやはり必要なことであろうと思うわけでございまして、そういういわば職のチャンスというものをできるだけ幅広く確保していく、これは一つ行政の課題であろうかと思うわけでございます。  また、研究条件の問題先ほど来もいろいろ御指摘をいただきましたけれども、これもできるだけ努力をしてまいらなければならないというように考えております。  もう一つ先生指摘の中に、若い研究者ができるだけ自由な雰囲気の中で勉強できるようにすると。これは行政というよりは、やはりそれぞれの大学の現場において努力されるべき事柄であるというように思っておるわけでございまして、先ほど大臣からも徒弟制云々ということでお答え申し上げましたけれども教員の下に大学院学生指導を受ける形でいると。その間において、例えばその教員のテーマでしか研究してはならぬというようなことであってはいけない。そこは大学院学生といえどもやはり独立した研究者としての能力なりもあるわけでございます。また、ある一定の研究テーマを押しつけるというようなことがあってはならない。その辺はやはり大学の現場で、これは制度的にどうこうとかあるいは予算的にどうこうということ以前の問題として、そういう学問の自由さというものを醸成していくということが大学にとって大変重要なことであるというように考えておるわけでございます。
  139. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 これは質問でお願いをしてございませんけれども、私、女性の研究者が大変周りに多うございますが、非常に非常勤の講師が多い。これは一つの差別だと思います。女性に限らず、例えば専門性であるとか、それから思想とか、そういったことでの差別が学問の領域であってはならないというふうに思っております。  女性を例に挙げて申し上げますと、日本の場合は諸外国に比べて非常にアカデミックな分野での女性の地位が難しくなっています。これは局長、女性、思想、そして学問の専門、もちろん思想的な問題それから学問の専門性で差別はないということはお答えくださると思うんですが、女性のことについて、こういった任期制導入された場合にも女性研究者への差別がないか、絶対にしないということを確約していただきたいと、そういうお願いですが、いかがでしょうか。
  140. 雨宮忠

    政府委員雨宮忠君) おっしゃるとおり、この任期制運用に関しまして、女性に対して異なった扱いをするというようなことがあってはならないことは当然でございます。
  141. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 また天野さんの方に戻りますけれども、欧米の大学は三つのポイントがある。それは、教育研究とそして地域へのサービス、地域に開かれた大学になるということが私は大事だと思うんですね。  この任期制のことで、大学で教職についている方たちが不安になっては困ることでございまして、大臣に、どうやって本当に日本大学が世界に誇れるダイナミックな学問の場となれるのかどうか、その辺について大臣の御所見を伺いとうございます。
  142. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 大学の機能として今言われた教育研究、社会へのサービス、この三つがあることは御指摘のとおりだと思います。  今、大学改革を進めておりますけれども、こうしたそれぞれの教育機能あるいは研究機能あるいは社会サービス機能というものをそれぞれ強化していくことが必要だと思いますし、特に最近は国際化、情報化あるいは経済のグローバル化なんという時代の変化に伴いまして、私は教育という面でも研究という面でも社会へのサービスという面でも非常に考えていかなければいけないと思うんです。  今度の任期制法案でも、例えば流動型とか研究助手型とかプロジェクト対応型というふうに分かれておりますけれども、例えば一番目のこの流動型というのは、最先端の技術開発あるいは学際的な教育研究ということで、今世界がしのぎを削っている情報であるとか材料であるとかバイオであるとか、あるいは環境とか防災とか、そういう分野の充実というのは非常に大事だと思いますので、このような点について今度の任期制導入がそうした改革の一助になればと、こういう我々は期待をしているわけでありまして、今後ともそうした観点から積極的に取り組んでいきたいと思っております。
  143. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ぜひとも、この任期制のために実際に研究者が何らかの不便を感じるのではなくて、むしろ前向きに仕事ができるというような形を周辺からつくっていただきたい。  例えば若い者、それから退職金の問題その他もろもろありますけれども、やはり何よりも研究しやすい、そして学生たちに聞きますと、高校より大学の授業の方がずっとわかりにくい、先生たち教えるのが下手なんだと単純に言いますけれども、私の友達が最近オックスフォード大学のジョブインタビューを受けました。外国では本当に先生採用するのに真剣なんだということをたまたま知りましたが、ちゃんとその科目の授業をやらせてみて、そして学生にこの人を先生として採用するかどうかということを聞かれたわけなんです。  ちょうどオックスフォードの学長日本に来ておられて、友達が今オックスフォードを受けていますということを言いましたら、それはどれだけ学生にその学問をきちっと教えられる能力がその日本人の人にあるかどうかにかかっているということで、まだ結果は聞いておりませんけれども、どれだけ教育に向いているのか、研究者だけである場合も史料編さん所のようなところではあるのかもしれませんが、教育というところでも、私は大学先生たちがこれから本当に世界に通用する大学教授、助教授、講師というふうになっていただきたいというふうに考えております。  最後に大臣に、そういった意味でこれから大学自体をどのように日本の二十一世紀に向けてしていきたいというか、どういう理想を描いていらっしゃるか、ビジョンを伺わせてくださいますでしょうか。
  144. 小杉隆

    国務大臣小杉隆君) 大変難しい質問なんですけれども、私は今言われたことで感ずることは、点検とか評価ということが非常に大事だと思うんですね。ひとりよがりでただ教育をする、あるいは研究をするというんではなくて、自分がやっている研究とか教育とかあるいは社会へのサービスというものがどういう価値があるのか、どういう評価があるのか、そういう自己評価も、また外部からの評価も私は必要だと思うんです。そのことによってまた、自分がやっていることはこういう点がちょっと欠けていたんじゃないかとか、こういうところは誤っていたんじゃないかとかいうことで改善策を検討して、それがさらにまた回って教育研究の充実につながっていくと。この一つのサイクル、好循環というんでしょうか、そういうことを通じて大学が改革をされていくということが必要だと思います。  私は、今後のそうした大学改善のためには、先ほど言いましたように、もう少し社会に開かれたオープンな大学というようなことがぜひ必要だと思いますので、その点については、各大学とも公開講座をどんどんふやしたり、社会人の学生を受け入れたり、あるいは産業界との共同研究とか、あるいは地域の有識者の声をできるだけ大学の運営に取り込もうとする枠組みづくりとか、そういうことに非常に今努力をしておりますので、私どもはそういった各大学の取り組みをエンカレッジしていくようなそういう文部省でありたいと、こう考えております。
  145. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 大変心強く伺いました。これからとかく科学、先端技術、環境、情報という方に予算が強くシフトしていくんですけれども、この任期制導入されたことによって予算面でのまたそこに配分が変わるというようなことがぜひないように、これは局長の方にお願いをしておきたいというふうに思いますし、それから大臣にも、史料編さん所、私も時々遊びに行くんですけれども、私が読めないような昔の文書を読んでこつこつと研究している。そのことが私は日本の文化の土台になることだと思いますし、万葉の古代音韻を研究しているような方たちが本当に大事だと思います。そういう方たちこそ、任期制という形があっても恐らく長い期間かけて研究をすると。いろんな国で一生かけて一つの文書を読み終えたというような研究者はいるわけですので、そういった中で、そういう地味でしかも直接何か社会と産業とつながってなくても、日本の文化の基礎になるような学問、そういったものをぜひ大事にしていただきたい。  そして、私は大学が大好きですから、本当に日本の中で日本人がみんなで誇れるようないい大学にぜひともしていただきたいと思っているんですけれども、特に文科系の方たちのために一言申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
  146. 清水嘉与子

    委員長(清水嘉与子君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後二時五十八分散会