○及川順郎君 三つの法案のうち二つが廃止、
一つは一部
改正でございますが、この
内容に入る前に
大臣に今回の
法改正についての率直な感想を承りたいと思っております。
と申しますのは、私、縁ありまして
山梨県に居を構えましたのが三十年前でございます。
養蚕農家のうちへ宿泊をいたしました。そして、朝起きたら雨が降っているんじゃないかというざあっという音が耳をつきまして、きょうは雨かいなと言ったら大笑いされまして、
養蚕農家ですから幼虫が桑の葉を食べている音が雨の音に聞こえたという、こういう
状況の中でいろいろ
養蚕農家の今までの歴史や悲哀や誇りを懇談したことがございます。
あの小さな繭を吐く前の、
養蚕農家ではおぼこさんと言うんですね。おぼこというのは方言で子供という
意味なんです。同じ家に住んでおりまして、そして同じ家で繭を吐いてもらう。要するに、
養蚕農家の方々は我が子のようにかわいがり、慈しんで
養蚕にいそしんでいる、こういうことを聞かされました。今はだんだん厳しくなってきているけれ
ども、当時三十年ぐらい前ですけれ
ども、厳しくはなってきておりますが、かつて明治から戦前の初期にかけては
日本の国を
代表する大きな輸出産物であって、そして
日本の経済、
日本の国づくりの
基礎になってきた
部分だと、こういうことを一
養蚕農家の主からるる私聞かされたことが今でも耳栗に残っているわけですね。甲府盆地の周辺はそういうところなんです。
大臣の国元は
養蚕農家が少ないようでございますし、余りないようでございますけれ
ども、もう
一つは、富士山のふもとに富士吉田という町があるんです。そこから川沿いに都留市、大月、東京の八王子、短な期間ですけれ
ども、ある
意味では
日本の
シルクロードというような、ミニ
シルクロードというぐあいに呼ばれておりまして、非常に撚糸、
製糸の盛んなところでございます。昔は機織りのがっちゃんという音がしますとざらざらと
お金が出てくる、こういうぐあいに言われる非常に華やかな
業界の時代もあった。それが少なくともここ三十年の間には
織物機はほとんど姿を消しました。撚糸業を富士吉田でやっておられる方々も、この先どのぐらいもつのかなと、こういう思いもしておりますし、八王子の
業界を回ってみましても、非常に先行きに対して厳しい見方をしている
意見を私は承っているんです。
それで、ある
意味では国がバックアップしている
法律を廃止するということは、
一つの幕引きになるようなイメージというのは非常に強いわけでございます。私はやはりこの
業界が果たしてきた役割、西陣や丹後ちりめんなんかも
日本の
伝統文化としては歴史的な
日本文化的な
意味も持っておりますし、そういう観点から
考えますと、時代の趨勢とはいえやはり
考えさせられるものがあるわけです。
現状にかんがみてこうした
措置はやむを得ないかなという思い、私自身個人的にもそういう思いはございますが、今までそうした歴史と
伝統の
業界の中で誇りを持って従事してこられた方々の心情を推量いたしますときに、やはり感慨ひとしおなところがあるわけでございます。
大臣に、まずこの点についての御感想を承りたいと思います。