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1997-06-13 第140回国会 参議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十三日(金曜日)    午後一時三十分開会     —————————————    委員異動  六月十三日     辞任         補欠選任      聴濤  弘君     有働 正治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鎌田 要人君     理 事                 板垣  正君                 鈴木 貞敏君                 鈴木 正孝君                 清水 澄子君     委 員                 海老原義彦君                 狩野  安君                 矢野 哲朗君                 依田 智治君                 大久保直彦君                 永野 茂門君                 山崎  力君                 角田 義一君                 齋藤  勁君                 有働 正治君                 笠井  亮君                 北澤 俊美君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        三井 康有君        国際平和協力本        部事務局次長   新貝 正勝君        防衛庁長官官房        長        江間 清二君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査並びに国防衛に関する調査  (「日米防衛協力のための指針」の見直しに関  する中間とりまとめについて)     —————————————
  2. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、聴濤弘君が委員を辞任され、その補欠として有働正治君が選任されました。     —————————————
  3. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題とし、先般、外務大臣及び防衛庁長官からそれぞれ報告のありました「日米防衛協力のための指針」の見直しに関する中間とりまとめについて質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 板垣正

    板垣正君 ガイドラインを中心として、また基本的な問題についていろいろ伺ってまいりたいと思います。  ガイドライン見直しのいわゆる中間報告、これは私はたたき台として出されたというふうに受けとめさせていただいております。いろいろ討議も進められてまいりましたし、先般、外務大臣また防衛庁長官からこれについての御報告も承った次第でありますから、改めてこの意義ということを定義立てる必要はないと思いますけれども、私はこれは大変重大な問題だと思う。法制的な問題にとどまらない、つまり日本国家としての基本的な姿勢といいますか、またそれを取り巻く内外情勢の中で、冷戦が終わり、あるいは日本自身が戦後五十余年を経ていろいろな意味における大変な改革を迫られておる。これはもう申し上げるまでもなく、行革関連の問題にまさに国家の命運をかけた明治維新に匹敵する第三の開国と言われるような意気込みでこの改革に取り組んでいる。  こういう流れの中で、国家存立の一番の根本であります国の平和と安全、安全保障の問題、また防衛の問題、このあり方を大きく見直すといいますか、新たなる視野に立ってこの問題について新たな出発をしなければならない、こういう流れの中にこの問題が位置づけられていると思うのであります。  もちろん先般の御報告にもありましたとおり、またこの報告にもうたわれておりまするように、これがあくまで我が国の平和と安全を維持するための我が国みずからの防衛であり、また周辺有事における我が国対応ということでありますが、この根底にありますのは、我が国の平和と安全を守り抜くということであります。同時に、今の世界において、アジアにおいて、アジア近隣諸国を含めたアジアの平和、安定なくして日本の平和、安定はあり得ない。  こういう意味では、いわゆる一国平和主義的な立場で一国に閉じこもってひたすら事なかれを願うという姿勢ではなく、むしろみずから進んでみずからの国の国家基盤、平和の基盤をつくり上げるとともに、アジア太平洋地域における積極的な平和政策といいますか、そうした立場平和環境をつくり上げていく、こういうことが特に今回の見直しについての意義づけとして、私どもも、また広く国民もぜひこの点を御理解いただかなければならない点ではないかと思いますが、こうした問題につきまして外務大臣防衛庁長官の率直な御見解を承ります。
  5. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 委員指摘のように、冷戦も終えんいたしましてかなりの月日が経過しておりますし、そういった安全保障の面でもそうでございますが、経済あるいは政治、いろいろな面で国際社会状況も大きく変化してきております。  また、日本自体考えましても、そういった国際社会とのかかわりにおいていろいろな改革を求められるという面もございますし、また我が国自体として、戦後半世紀余のいろいろな歩みの結果、その基本に立ち返っていろいろ検討をし、二十一世紀を展望しながらもろもろ改革を進めていかなくちゃならない、そういう極めて大切な段階に我々が際会しているということは御指摘のとおりであると思います。であればこそ、現在、橋本内閣といたしましても、経済、財政、社会金融あるいは教育に至るもろもろ分野での改革を進めているわけでございます。  そういった意味では、安全保障あるいは防衛の問題につきましても、そういった国際的なあるいは国内的な大きな変化というものを踏まえて、将来へ向かって真剣にこの段階考える、そうした流れの中の一つの大切な分野であるという位置づけ、それは私も委員の御指摘に同感する部分が多いわけでございます。  しからばその改革をどういうふうに進めていくかという点になりますと、それはいろいろ分野によって考え方は違うと思います。物によりましては、これまで我々が歩んでまいりましたその根底にある、例えば金融枠組みでございましたらそういったものを根底から考え直し変えていかなくちゃいかぬということもございましょうが、安全保障の面についてどうかと言われますと、確かに大きく世界は変わりましたが、これまで我々が構築し、またそのもので安全の確保に努力してまいりました基本的な枠組みというものは今の段階で変えようということを我々考えているわけではございません。  しかしながら、これまでございました基本的な枠組み変化した今の時代、今の日本を取り巻く状況の中でも有効に機能するかどうか、そして有効に機能するために改善するべきところがあればどこかということを考えなくちゃいけない、そういった観点からの検討だというふうに私は考えております。大きな枠組みは同じだといたしましても、やはりその情勢変化に応じまして、それの持つ効果とかあるいは役割についてのウエートの移行というものは、これはあるんだということは否定いたしません。  そういったことでございますので、私どもは、憲法その他の枠組み、そしてまた安保条約その他の国際的な約束についての枠組みというものは基本的に維持するわけでございますが、それが現在の状況においても有効である、さらに即応的に機能するようにいろいろ工夫をしようと、そういった努力の一環として今回のガイドライン作業もあるんだというふうに認識しております。  それからなお、一国平和主義と、さらに今回、これから進んでアジア太平洋地域のために日本役割を果たすという姿勢が大切ではないかという御指摘がございました。  私は従来もいわゆる一国平和主義と言われるような考えのみで我が国歴代政府が国の安全保障あるいはアジア太平洋地域とのかかわり考えてきたとは必ずしも思いませんけれども、これから将来を展望いたしましたときには、我々は外交政治経済あらゆる面で、国際社会とりわけアジア太平洋地域とのかかわり、そしてそこで我々の担うべき責務、役割というものを重視しながら絶えず対応しなくちゃいけないと思います。  そういったことは安全保障分野についても御指摘のとおり私はあるんだと思っております。しかし、それは先ほども申しましたように、これまでの安全保障に関する基本的な枠組み維持した中においてそういった基本的なニーズにどうこたえるかということで対応していくということかなと、こういうふうに考える次第でございます。
  6. 久間章生

    国務大臣久間章生君) ただいま外務大臣からも述べられましたように、我が国は適切な防衛力維持しながら、日米安保条約に基づく日米関係をきっちりしたものとしてすきのない防衛態勢をつくることによりまして、この地域の平和と安定にそれがまたつながっていくんだと、そういう自覚のもとに従来もやってまいりましたが、さらにそれをよりしっかりしたものにするために今度ガイドライン見直しをするわけでございます。  しかしながら、それと同時に、やはり我が国外交努力により、あるいはまた防衛交流安保対話、さらには最近強まっております地域における多国間のASEAN地域フォーラムみたいな取り組み、そういったもろもろのことも相まって、とにかくアジア太平洋地域がどこにも増して平和であり続ける、これが一番この地域にとって、経済発展等にとっても大切なことなんだということを絶えず認識しながら他国とも協調していくことがいいことだと、そういうふうに思っておりまして、そのためにもその一つであります今度のガイドラインガイドラインとしてきっちり見直していこうということで進めておるところでございます。
  7. 板垣正

    板垣正君 これはことしの一月十四日に橋本総理ASEANを回られたときのシンガポールでの演説ですが、日米安保体制はこの地域の安定及び経済的繁栄維持のための一種公共財役割を果たすものであり、いかなる意味においても特定の国に向けられるものではないと。一種公共財であると言い切ったところは、さっきも申し上げましたように、大きな転換期に立って、かつ開かれたアジア世界における日本というものは胸を張っていくんだという思いも込められていると感ずるわけでございます。  そこで次に、この日米安保協力問題点について入りたいと思いますが、今のそれぞれの御見解、よく理解できる面もありますとともに、またさらに大きな問題がある。つまり、憲法の問題を出されましたが、憲法を初めとする基本的枠組み、これは守っていくということでございます。  しかし、私から言わせますと、このガイドライン見直しにせよ、こうした問題について従来から積み重ねてきたもの、それを基盤にして進めていくということは当然でありますけれども、初めから憲法という枠組み、またそれに伴ういろいろな規制、それはあくまで守っていくんだ、この枠の中でやるんですと、この姿勢で初めから論議に枠をはめてしまっているという点は私は非常に問題だと思うんです。  やはりこの問題については、何よりも国民皆さんにわかりやすい、また国民皆さん方がみずからの問題として御理解もいただくし、またみずからの視野としても受けとめていただくようなわかりやすいものでなければならない。憲法枠組みというものがどうもわかりにくい。私は、憲法というのが制定の経緯から、開かれた面とともに、また日本に対して極めて厳しい制約を課した憲法であることは間違いない。そういうもとで幸いここまで平和と繁栄は築いてまいりましたけれども、今迫られているのは、まさに憲法を含めた戦後体制をやはり抜本的に見直すという中で、国家戦略国家平和政策あるいは防衛安保位置づけ、こうしたことに入っていかなければならないのではないのか。  逆に、初めからこの憲法には指を触れられません、今までの憲法解釈は変えられません、こういう枠の中でこの論議をやりますと、せっかく苦労はしながらますます混乱をする、ますますわかりにくくなる、こういうところに入り込んでしまっているのではないのか。  具体的に申し上げます。  いわゆる集団的自衛権の問題ですが、これをめぐって、いろいろ聞いておりますと、つまり戦闘行為一体となったらもう集団的自衛権になっちゃうんだと、だからそういうところには入っていかないと。端的に言うならば、そういう危険なところにはもう近寄らない、危ないところには行かない、そういう姿勢というものがある。日米同盟国として責任を分担するだけではなく、同盟という以上はやはりある程度危険も分担すると、そうであってこそ本当同盟でありましょう。  あえてここで集団的自衛権論議をやろうとは思いませんけれども、そういう意味合いで、ややもすると法的な制約、そういう論議が先行して、この問題は集団的自衛権に触れるか触れないか、その論議をしていると、内閣法制局も、今まで余り見解を出していなかった問題も含まれますけれども、非常に苦しい見解を述べる。  もう既にいろいろ論議のありました機雷の問題にしても、あるいは情報提供の問題にいたしましても、あるいは米軍に対するいろいろな支援の問題、後方支援の問題においても、その辺に非常に問題があるのではないのか。つまり、観念的に武力行使一体の理論でそこにもう一線を引いてしまうことによって、むしろ事態を混迷させ、かつわかりにくくさせ、かつ国家存立そのものにも影響をもたらすということになるんではないのか。  米軍戦闘行為一体性のある支援は許されない、こういう見解に対してはいろいろ論議をされております。例えばアミテージさん、これは池田外務大臣長官もよく御存じの方でございますが、五月三十一日の読売のインタビュー記事がございます。このアミテージさんも、お会いになれば、憲法の枠の中で結構ですよ、その中である程度やれますよとおっしゃるでしょう。しかし、こういうことも言われているわけですね。日本の国益のためにももう少し柔軟性を持つべきじゃないか、現在の憲法解釈というものが日米協力を非常に難しくしている、もう一度再解釈すべきではないのか、このままいくと日米同盟維持は非常に難しくなる、トップの政治的意思でこの問題を見直してもらいたいという、言うなれば本音の言葉が語られておるし、これに類する言葉日本学識者の中からも、あるいは米側にもいろいろあることは御承知のとおりであります。  つまり、国家固有自衛権というものがある、その自衛権には集団的自衛権があり個別的自衛権があると。これはもうそれぞれ独立国家である以上、国際法的にも保障された集団的自衛権という面、個別的自衛権という面、しかも大きな流れから言えば、単独で自分の国を守るという時代ではなくして、多くの国が連合して共同して平和の秩序を守っていこう、また我々もアジアにもそういう確固たる安全保障体制がいずれは欲しいんだ、こういう流れ期待も持つわけです。  そういう流れと、個別的自衛権しかないんです、集団的自衛権というものはもうタブーで、憲法違反で踏み込めないと。しかも、それに武力行使の問題というもののあり方で持ってくるということによって、後方支援といえども米側との新たな形における、今まで具体化されてこなかったいわゆる安保第六条関連の中における後方支援の面において日本アメリカとの同盟的な関係を果たしていこうというとき、アメリカ期待するのは、例えば日本の持っているすぐれた哨戒の能力をそういう同盟関係の中での位置づけとして、後方支援の中での位置づけとしてでもぜひここまではやってもらいたいという期待があると思うんです。そういうものもまた率直に語られている。  しかし、我が方は集団的自衛権個別的自衛権、これはおのずから別個といいますか、態様としてはそれにかかわる武力行使というか、そうした行動というものが背景にあるにしましても、それを武力行使という側面でとらえて、同盟関係といえども危ないときには行けません、あるいはそういう巻き込まれそうなところには行かない、一点切り離したところでやるんですと。しかし、普通の国々が普通の姿における同盟関係を結び、お互いに協力し合って平和の維持を図っていこう、抑止していこう、あるいはそれに対処していこうというのが国際的な常識的な流れではないのか。  我が国はこの誇るべき憲法があるからそういうことはやれませんというので今までは通用したかもしれませんけれども、それでは日本という国はあくまでさっき言った一国平和主義ではないか。そうではないと言うが、どうもその辺に、せっかくこの論議を積み重ねながら解釈を混乱させ、あるいは本来あるべき同盟の姿からいうと非常に遠い姿で、本当のお互い新たな信頼関係のもとにおける同盟の局面を開いていこうということに非常に大きな問題があるのではないのか。その辺を含めてこれからの論議の棚にのせるべきではないか、こう考えますが、いかがですか。
  8. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 憲法最高法規でございます。しかし、だからといっていわゆる不磨の大典である、どんな事情の変化があってもこれを変えてはならないものだとは考えておりません。それは委員もおっしゃいましたように、この国の存立維持し、その中で国民が安全に、そうしてまた幸福を求めていろいろな活動をする、それをきちんと確保していくのが国の使命でございますから、それとのかかわりにおいて、最高法規といえども実定法の一つである憲法を改正することが必要であれば、それは改正するということがあっても不思議ではないと思います。そういったことが国民皆様方の間であるいは国会の場で御論議されるということは、それは何ら不思議なことではないと思います。  しかしながら、私ども行政府立場といたしますならば、やはり現にございます憲法あるいは現にございます法体系枠組み、これを前提にしながらもろもろ行政行為を行っていく、これはまた我々の踏み外してはならないのりであろうかと、このように存ずる次第でございます。そういった意味で、あるべき議論はともかくとして、現実に行政府として今この安全保障の問題に対処していく場合にも現に存在して行われている憲法前提とする、これが当然であるということはひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。  しかし、それにしてももろもろ憲法解釈については変化があってもいいじゃないかという御指摘もございました。私もあえてその御議論に異を唱えようとは思いません。しかしながら、現在の私ども橋本内閣、そしてこの内閣を支えております政権の枠組み、そういったものの中でどう対処していくか、こう考えました際に、安全保障の問題につきましてはこれまでの歴代政府がとってまいりました基本的な問題に対する憲法解釈は踏襲していく。御指摘のございました集団的自衛権行使をめぐる問題についても、橋本内閣としては従来の政府見解を踏襲した上で作業を行おうとしているという点についても御理解を賜りたいと、こう思います。  そうなると、本当に新しい時代あるいは国際社会情勢対応した適切な対処ができないじゃないかというおしかりもあろうかと思いますが、私はそうは思いません。この憲法前提とし、これまでの基本点に関する解釈というものを前提といたしましても、我々がまだこれまでやっていなかったことでなし得ることはいろいろあると思います。そして、それが憲法との関係で時々グレーゾーンなんという言われ方をいたしますけれども、私はグレーゾーンという言葉は必ずしも適切ではない、むしろ白地部分かなと思います。  これまでそれがどうかということについて結論を出していなかった、そういった部分につきまして、このガイドライン作業を通ずる日米協力あり方から我が国としてこういうことは出すべきではないか、こういう考えになったときに、それはこれまで白地になっておったけれども憲法その他の関係からいっても禁じられるものではないということを明確にすれば、それはこれから新たに行うことができる、そして日米同盟関係有効性を高める上で力になるものだ、役立つものだ、こう考える次第でございます。  そしてまた、集団的自衛権行使について云々という一体化のお話もございましたけれども、この問題につきましても、これまでも考え方として米国による武力行使一体化するものはやはり集団的自衛権行使に当たるだろう、したがってこれまでの伝統的な解釈からして我が国は行うことができない、こういうことを言っております。しかし、個別具体的な行為一体化になるかどうかにつきましては、これまで詰めた議論が行われなかった部分がございます。そういうところを詰めて行うことにする、そして日米安保体制役割をこれまで以上に高めていくということは可能だと思うのでございます。そういった考えでやっております。  それから、枠内という話がございましたけれども、私どもはまず憲法はこうあると枠をつくりまして、そしてその枠はどこまでできるんだろうかという議論ばかりやっているわけじゃございません。安全保障を確保する観点からどうかなと、いろんな行為について必要かどうか検討していく。ただ、憲法の面からの検討も必要でございますから、それが憲法の壁にぶつかってこれはだめだぞということになればこれはやらないということでございますが、しかしそのことは専ら議論を法的な側面に、とりわけ憲法との関係にのみ限定し、あるいは集中してそれに終始しているわけではございません。基本はやはり安全保障を確保するためにどういうふうなことをしなくちゃいけないか、それを考えておる、こういうことでございます。
  9. 板垣正

    板垣正君 憲法そのものは、それは今の内閣がすぐ百八十度変えるわけにはいきませんよ。しかし、やはり憲法解釈ですね。内閣法制局が、解釈の変更などできるはずがないとか、一%といえども変えないんだと。これはちょっとおかしいんじゃないですか。内閣法制局というのは最高裁じゃないんですからね。やっぱり行政機関に属するものでございましょう。そういう立場で、時の行政権憲法運用の中身は、さっきのアミテージさんの話じゃないけれども、もう少し柔軟といいますか、そういう対応でないと、国際社会じゃ全く通用しない、理解できないような理屈がいつまでもまかり通るということはおかしいし、まさに国家存立基盤を危うくするものだと私は思いますよ。  例えば、PKOで行っていただいておる自衛隊の現場の方たちに、ほかの国にはない精神的な負担をどのくらいかけているかということですよ。ほかの国の若人は、国連の制服を着て一緒作業をして、すばらしいものをつくっている。ゴランで今自衛隊人たちも溶け込んでやっているが、しかし常に縛られたものがあるんですね。それも、国連のそういう場においては全くだれも考えられないようなことをやっている。一緒に訓練をやりますとか、分担して警衛しますとか、あるいは万一襲われるというような場合における対応においてもそれぞれ共同で対処しましょうというのがあるでしょう。ところが、我が方は部隊の命令で撃つちゃならないと。また、個々の隊員が個人の判断でやれと言われてうっかりやり過ぎたら、これは懲罰に遭うどころか、裁判にかけられかねない。  そういうほかの国にはないような非常な精神的な負担を負わせて、それで機関銃が一丁がよくて二丁がよくないとかという論議のもとで、ただただ現地に行かれている。カンボジア以来、そういう制約の中で、しかしすばらしい自衛隊の訓練のもとで育った方々が実に立派にやっていただいている。これは大いに評価し感謝しますけれども、同時に我々はそういう人たちに要らざる負担をかけている。世界では我が国の常識が通用しないので、一々説明しなければならない。私の国には憲法がありまして、こういうことで、ですから協力できませんとか。  こういうことですと、また憲法かと、日本という国は一緒にはやっていけない何か特殊なものを持っているよというような扱いを受けるということは、国家存立のためにもいいことじゃありませんね。  それから、このガイドラインも、四十項目にわたるいろいろな態様がありますけれども、機雷の除去にしたって、艦船の検査にしても、後方支援にしても、現実には情勢は千差万別です。くるくる変わります。入り乱れます。その状態は、ある学者が言っていますが、いろいろ組み合わせてみたら何万というケースが出るだろう、計算できるだろうと。何万というケースに対応しなかったら憲法違反になるとか、そういう枠の中で本当に円滑な日米協力が機能できるんでしょうか。  むしろ、日本は海外で武力行使はしないと言うなら、じゃ後方支援はやりますと、後方支援一本に絞ればいいじゃないですか。そういうすっきりした形で、国内においても許された範囲における対応というもので取り上げていかないと、そんな法制局のペースに巻き込まれていては、一般の国民は読んだって何かわけがわからない、どういうことになっているのかわからない。  どうでしょうか、防衛庁長官、最高指揮官としてどういうふうにお感じになりますか。
  10. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 委員の思っておられる気持ち、いらいらしておられる気持ちもよくわかるわけでございますけれども、先ほど外務大臣が言われましたように、やはり現在の憲法があって、そのもとで私ども政府として行政をつかさどっている以上は、どうしても憲法の、他国に対して武力行使してはならないという、そういう制約の中でしか行動できないわけでございます。  ただ、委員も今指摘されましたように、行政府の一員である法制局の法解釈行政府がやるのならば、これはある意味では本当はおかしいわけでございまして、行政府が法解釈をどんどん変えていって、そしてどんどんやっていった場合には歯どめがきかないわけでございますから、本来ならその役割は立法府がすることでございます。しかし、残念ながら我が国は従来から行政府の法制局がそれを解釈して、それを行政府が行ってきて、それが当たり前であるかのような、そういうことがされているわけでございまして、憲法はかくあるべきだ、こういう内容だというのは、行政が間違った行動をするときには立法府がくぎを刺すのが本来のあり方だと思っております。  そういう意味では、我々もどうかなと思うことがございますけれども、少なくとも行政府としては、従来から行政府解釈をしておったその解釈に反して行動するということはなかなかできないわけでございます。それは大きな何かの変化があったときはともかくとしまして、そうでない限りは今までの解釈にやはり引きずられるといいますか、それに沿って行動するというのはやむを得ない点があるわけでございますので、どうかひとつ我々の立場もぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  11. 板垣正

    板垣正君 まさに立法府の大きな責任がありますから、私もその一員として与党の身ながら申し上げさせていただき、また今後こういう姿勢でこういう論議がやっぱりあるということですね。そして、これはいずれ国会に正式な憲法の常任委員会をつくって、憲法をあらゆる角度から見直しをして、日本国家にふさわしい憲法をつくり上げていく、こういう流れをつくっていかなければならないときに来ている、そういう中での御苦労はよくお察しはいたすわけであります。  次に、この安保の問題について非常に海外の誤解が多い。特に中国の誤解が大きい。だから、早速、田中審議官らがもうその日に行かれて、いろいろ説明したと。我が党からも山崎政調会長、それから依田先生もこの間行かれていますから後でお話があると思いますけれども、いわゆる透明性を保つということは一体どういうことなんですかね、この問題で透明性を保つために中国に説明に行くというのは。  あの国はしたたかな戦略を持っています。国家戦略を持っていますよ。それに、変わりはありません、今までの安保と変わっておりません、悪い気持ちはございませんからお見逃しをみたいな態度では両国の健全な関係というものは成り立たない、こう思うわけであります。  そこで、中国は日本安保は二国間の枠にとどまるべきだというようなことも言うようですね。それはどういうことなんでしょうか。また、さらにはこう言っていますね。日本が侵略を受けたときにアメリカ一緒協力してやるんだ、それが安保なんだ、その枠を出るなと。どうもその辺のところを見ると、むしろ中国の方が冷戦時代の意識にまだとらわれているんじゃないか。新しい時代における我々の思っている日米安保体制の姿というものはまだまだ理解に遠いのかな、あえて理解しない姿勢をとっているのかな、そんな思いがいたしますが、いかがですか。
  12. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず第一点でございますが、我が方はなぜ中国に説明しなくちゃいかぬのかという点でございます。  これは申すまでもございませんけれども我が国我が国自身の安全を確保しようとする場合に、周辺の地域の動向あるいは近隣諸国安全保障にかかわる動向に関心を持たざるを得ません。それはまた逆に、我が国近隣諸国におきましても、我が国のそのような安全保障面あるいは防衛面のいろいろな政策なり動向に関心を持つというのはまた自然なことかと存じます。現に従来から持っておりました。  そういったことでございますので、私どもの今回のガイドライン作業につきましても、我々が意図していることがどういうことなのかということを誤りなく近隣の諸国に理解してもらうということは必要だということで説明しているわけでございます。  これは何もガイドラインの話だけじゃなくて、最近、中国も含めた近隣諸国との間で安全保障問題に関する政治対話、あるいは最近、国によってはいわゆるポリティコミリタリーの対話も進めておりますし、また信頼醸成のためのいろんな措置、交流等も行っているのは委員御高承のとおりでございます。そういうふうなことで今回も中国を含めた近隣諸国に説明をしている、こういうことでございます。  それから第二点といたしまして、中国が日米安保は二国間の枠組みであるはずだ、それはどういう意味なんだろうか、冷戦の思考にむしろ中国がとらわれているんじゃないかという御指摘がございましたけれども、その点につきましては確かにそういう面もございます。  中国側も、日米安保体制というのは本来冷戦時代に二国間の枠組みとしてつくられたものじゃないのかということを主張し、その上に立って二国間の枠組みを超えるということになると、中国としても関心あるいは懸念を持たざるを得ないということを言っているわけでございます。その点に対しまして私どもが説明しておりますのは、日米安保体制ができたとき確かにその時代冷戦時代であったかもしれない、しかしその時代でも、もとより二国間の同盟関係ではあるけれども、そこには御承知のとおり極東条項というものもあるわけでございまして、我が国の周辺といいましょうか、極東地域の平和と安全にも関心を持ち、その地域の安定を維持するために日本の提供する基地を利用しながら米国が活動していくことはあるんだ、そういうことも説明しております。  そしてまた、現在の時点において冷戦は終えんしたけれども変化した新しい国際情勢の中においても、これまでの日米安保体制枠組みというものが新しい地域の安定を図るという意味でも機能を果たし得るということを我々は考え、そしてそういった意味日米安保体制我が国の平和と安全を守っていく上で新しい情勢のもとで有効に働いていくためにいろいろ工夫もしているわけだし、またそのことがアジア太平洋地域全体の安定にとっても有効な作用を及ぼすと申しましょうか、その安定、平和に資するものだ、こういうふうに考えているんだということを説明しているわけでございます。  そして、それと同時に、もちろん中国であれどこであれ、特定の国を対象として念頭に置いているものではない。とりわけ中国については、昨年の安保共同宣言においても、良好な関係をきちんと維持していく、そしてアジア太平洋地域における建設的なパートナーとしての役割を中国も果たしてくれる、そういったことを日本もまた米国も期待しているんだということを両国首脳が明確に表明しているということを説明している、こういうことでございます。
  13. 板垣正

    板垣正君 中国の存在というものは、何といってもこれから二十一世紀に大きな存在になり、特に米中関係または日本と中国の関係、そして日米、この三国の関係というものが広い意味におけるアジア太平洋の安定なりあるいは国際安定につながっていくということで、非常に大きな課題だと思います。それだけに、我が国もよほどそうした対応というものをきちっとしていかなければならない。  では中国の見通しはどうなんだろうということについて、ある専門家が、二十一世紀前半の好ましい中国の姿、好ましくない中国のコース、それからシナリオがどう書けるかということで分析しております。  好ましい中国の姿は、経済的には安定した継続的な経済成長を遂げる、政治的にはより民主化した政治が行われる、外交的には国際社会と相互依存を強める外交を行う、軍事的には自衛のために限定した軍備を持ったような中国ということであります。好ましくない中国のコースは、経済的には過度な急成長による経済崩壊、政治的には教条的で一党独裁の政治が続く、外交的には国際社会に溶け込まない外交、軍事的には近隣諸国へ覇権を追求する軍備、これが好ましくない中国のコースであります。  これらを総合して、二十一世紀の中国はどんな姿になっているだろうか、三つのシナリオを描いています。一つはソフトランディングのシナリオ、つまり好ましい姿の中国、第二は軍事大国へのシナリオ、第三番目は大崩壊、国家分裂のシナリオであります。私もほぼこれに同感できるんです。だれも断言はできませんが、しかしこの可能性はあるんだと。好ましい姿もあればこういう姿もある。  そういう流れの中だから、アメリカも封じ込めじゃない関与政策で何とかソフトランディングさせようと、これを基本に据えていると思うし、同時にアメリカはやはり人権問題とか武器輸出、拡散の問題については厳しく対処します。そこにお互いが元首を交換しながらも、かつお互いがお互いを認め合うというか一日置くという関係があると思うんです。我が国も、アジアにおけるこれだけの国の動向がアジアの安定にかかわってくるとすれば、今のようなシナリオの中で日中関係というものをどういうふうに築き上げていくかということです。  そういう面で、中国が何かというと歴史の教訓に学べというようなことを言う。我々もいろいろ思いはあるわけです。反省もないことはありません。しかし、事ごとに歴史の教訓に学べと、だから安保改定なんて変なことをやるなと言わんばかりの姿勢とか、あるいは学校教育の教科書の内容にまで干渉してくるとか、靖国神社に総理が参拝することまでこれはまた日中友好の精神に反するんだという、全く日本国民大多数の心情を理解しない、そういうことに今までのところは我が国が何か中国に対して後ろめたいというか、すねに傷持つというような感じを持ってきた。しかし、そういう姿勢というものが、さっき申し上げた二十一世紀を展望しながらの大きな国際的な外交を展開していこう、まさにこの日米安保体制公共財なんだ、世界安定の公共財だぐらいのスケールでいこうという矢先でありますから、ぜひ外務大臣、中国に対する姿勢というものは、まず一番の基礎の問題は、内政干渉みたいなことはやらないということ、それから未来に向けて率直な対話をして、その中からお互い健全な関係をつくっていくことであります。  同時に、我々は台湾の民主化というものを非常に評価をする、また尖閣なり我が国の命綱とも言えるあのシーレーンの安定なり、こういうものを含めて、我が国は毅然たる姿勢のもとで中国がさっき申し上げたような好ましい中国の姿になっていけるように、そういう外交をひとつお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  14. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、これからのアジア太平洋地域の、あるいは世界全体と言ってもいいかもしれませんが、その安定なり繁栄にとりまして、日米中、この三つの国の関係が極めて重要であるという御指摘は私どもも全く同じ認識を持っておりまして、その関係がさらに良好に進展していくことを常に考えながら外交を運営しているところでございます。  そしてまた、中国の今後においてあり得る姿といたしましていろいろなシナリオが考え得るという御指摘がございました。我々もいろんな道があり得ると思います。その中で望ましいのは、当然のことでございますが、ソフトランディングの姿である、このように考えております。  そして、そのことは中国自身にとっても一番好ましいと思うのでございます。成長を急ぐ余りに崩壊するなんというシナリオは中国の国民の幸福という観点からいってもそれは望むはずもないわけでございますし、軍事力に資源を割き過ぎる余りに近隣の諸国との関係もぎくしゃくし、内にあっては民生の安定、向上のために割くべき資源が相対的に少なくなるという道も中国自体にとって望ましい道であるとは思いません。そういった中国自体の観点からいってもソフトランディングの姿がいいということだと思います。  現在の中国の政策はいろいろございますけれども、一番優先されておるのは改革・開放路線を追求することによって経済も成長させ、そして国民生活も向上させることだと思うのでございます。しかも、その改革・開放路線を進めていくためには、どうしても国際社会との関係を良好に保ち、そして従来以上に広め深めていくということが大切であるということは、これは中国自体もよく認識しておると思います。  また一方、我が国あるいは米国を初め国際社会も中国がそのような道を進むことにそれぞれの利益もあるわけでございますし、またそれを願ってもおります。そういった観点からいろいろな形で働きかけていきたい、こう考えておる次第でございます。米国がいわゆるコンテーンメントではなくてエンゲージメントということでやっている、それはその根底にそういう考えがあるからというのは御指摘のとおりだと思います。我々日本といたしましても、基本的に中国が今言ったような望ましい方向に来るように我が国としていろいろな面で働きかけもいたしますし、またいろんな我が国としての中国とのかかわり考えていっておるところでございます。ただ、具体的な手法については、米国のエンゲージメント政策の具体的なあらわれと我が国がとる個々具体的な政策において手法の違いがあるということがございますけれども、目指すところは同じでございます。  そういった中で、中国が過去との関係に余りにもこだわり過ぎじゃないか、そして日本がそれに余りにも唯々諾々と従い過ぎるんじゃないかといった趣旨の御指摘がございました。委員御自身も、過去の一時代のいろんな出来事のうち反省すべき点もあるというように今おっしゃいました。私どももそういったことで過去の教訓というものも大切にしなくちゃいけないと思います。  しかし、それは専ら過去をのみ見るのではなくて、やはり未来に向かって、本当に日中両国にとって、あるいは国際社会にとっても好ましい道が開ける、それを進めていくために過去の経験、教訓というものを反省も含めてしっかりと持ちながら進んでいくべきものと、こういうふうに考えている次第でございます。その基本の我々の気持ちが、そうしてその姿勢というものがしつかりしておれば、中国側においてもそこは理解し、また日本に対して求めてくるところも具体的にまた変わり得るんじゃないかと、こういうふうに思っております。  それから、台湾との関係についてお話がございましたけれども、私どもも台湾においていろいろ民主化の動きが着々と進んでいるということは歓迎しておるところでございます。ただ、それと同時に、我が国自体存立という観点から申しましても、台湾あるいはその周辺の海域が平静であり、安定した姿であるということは本当に大切なことだと、こう考えております。  ただ、台湾の将来がどうなるかということにつきましては、御承知のとおり、二十五年前の日中共同声明を出しましたときに、中国の立場日本理解するということで、そして中台の関係はその両岸の当事者の平和的な話し合いによって解決されることを望む、こういう姿勢になっております。我々はそういったことを期待しながら、また我が国としてもそのような両当事者による話し合いを通じた平和的解決が可能になるような環境を整える上で日本として果たすべき役割があるならば、そういうことは果たしていかなくちゃいけないと、こう考えておる次第でございます。
  15. 板垣正

    板垣正君 最後に、防衛庁長官、今財政構造改革防衛予算の問題、大変御苦労をいただきまして、その際にも率直に申し上げたわけでありますが、私ども非常に心配をいたしております。  国家財政火の車でありますから、それで国がつぶれたのではこれはどうにもなりません。しかし、防衛の問題というものは、これは改めて申し上げるまでもありませんが、せっかく新しい大綱ができ、中期防ができ、その中で随分リストラをやっています。そういう新しい理念を描きながら行くその出ばなに、やみくもにとにかく一兆近いものを切ってしまえということでは、国家一体防衛というものをどう考えているんだと、こう言わざるを得ない。  そこで、早速もう来年度以降の予算なり、いろいろな問題はありますけれども、特にこれからの自衛隊の装備も非常に大事だと思うんですね。正面装備的なものが、ウエートが今度は空中警戒管制機とかあるいは情報収集なり、そういう面からいけば空中給油機というものはどうしても必要なものだと思いますよ。  そういう面の装備において、中期防で描かれていたものがここで挫折してしまうということになると、国家防衛体制の上からも、もろもろの今描かれている日本の対外姿勢からいっても、日米関係からいっても私は致命的なことになっていくんじゃないか。その辺について防衛庁長官の御決意を承りたい。
  16. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 先般の財政構造改革会議において、聖域なき見直しをやるということで、その結論として、委員指摘のように、これから先の経費につきまして一割をカットする、そういう報告が出されまして、それを受けて閣議決定もされたわけでございます。  実はけさ安全保障会議も開かれまして、その中で、中期防について一年早くといいますか、本来でございますと三年後でございましたが、本年中に見直しをするということも決定されたわけでございます。今言いましたように、我が国の平和と安全を守っていくために防衛大綱がつくられまして、それを目指して一生懸命取り組んでおるときでございまして、そのための中期防でございますだけに大変厳しい状況にございます。  そういう中で、ともかく差し当たっては来年度の予算でございますけれども、どういう形で対九年度比ゼロで抑え込んで、しかもなおかつ我が国防衛のあるべき姿に欠落がないようにするか、この辺について一生懸命検討しなければならないわけでございます。早速、庁内に検討委員会を設けて取り組んでまいろうと思いますが、なかなか厳しい状況でございますだけに、果たしてバランスよく調和のとれた形の予算が組めるかどうか、大変難しい点がございます。  そういう中でございますけれども、一応政府として決めましたので、その中で精いっぱい努力してみたいと思っているところでございます。
  17. 板垣正

    板垣正君 ありがとうございました。終わります。
  18. 依田智治

    ○依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。  ただいま一時間にわたりまして、板垣先生のまさに国家安全保障基本にかかわる問題を踏まえましての質問がございました。私は、これらの基本を踏まえつつ、八十分という時間をいただいておりますので、これからいろいろ関係する諸問題を質問させていただきたい、こう思います。  まず初めに、今回の日米防衛協力指針、いわゆるガイドライン見直しというのは当然やるべきことをやるんであって、今まで安保体制というのが何十年も続いていながら何でなされていなかったんだろうかというのがもう何しろ疑問でございました。  以前に予算委員会でも質問したことがあったんですが、きょうは特に質問通告していないので申しわけないんですけれども、例えば現ガイドラインでも、日本武力攻撃があった場合の諸問題というのはもう既に何回か研究されて報告もされている。第二項目のそれ以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を及ぼす場合の諸問題については研究、協議の事項ということになっている。  私の記憶では、昭和五十年代の終わりごろにもう既に第一項目の研究報告をやり、第二項目の方のいわゆる極東有事というか極東に関する問題についても研究しましょうということになっておったと思うんです。それが今回のガイドライン見直しに非常に参考になるほど内々で進んでおったのか。十年以上の歳月が過ぎていますから、公表はされていないけれども中身は結構あるのかなと期待しておるんですが、外務省、そのあたりはどの程度まで進行しておったのか、まずお伺いしたいと思います。
  19. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 委員指摘のとおり、現行ガイドラインの第三項に「日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」というのがございまして、その中で、そのような場合に日本米軍に対して行う便宜供与のあり方を研究するということが書いてあるわけでございます。  この研究につきましては、私の記憶では、たしか五十七年の一月だったと思いますけれども日米安全保障協議委員会の場で研究を開始するということで日米間で意見が一致して研究が始まったわけでございますが、実はその後この研究は余り進んでおりませんで、何か見るべき成果があったかということでございますと、そういう成果が出るまでには至らなかったということでございます。  それではなぜおくれたかということでございますが、最初の協議はやはり日本に対する武力攻撃があったときの場合の研究に重点が置かれたということがあろうと思いますし、特に米軍に対する便宜供与ということになりますと、単に外務省、防衛庁のみならず、関連する省庁も多数ございまして、その辺の調整の問題等々もあったやに承知しております。
  20. 依田智治

    ○依田智治君 結局、当時これを突っ込んで研究するような情勢になかったということじゃないかと思うんですね。  それで、その後湾岸危機、湾岸戦争等も経て、我が国本当に国際の平和があっての貿易国家日本ですから、やはり一国平和主義的にやっておるわけにもいかない、今の憲法の枠内でもやるべきことはやらなきゃならぬ、こういう状況になってまいりまして、今日PKO法もあり、いろいろなされておると思うのであります。  そういう中で、去年、日米安保共同宣言によって安保体制というものについて意義を再確認してやるべきことはしっかりやりましょうどいうことですから、今回のガイドライン見直しというのはただ単なる研究でなく、そういう腹構えを持った、当然やるべきことをやるということで、私はこういう見直しを本格的に進めるという姿勢については賛成でございますし、私も今度、与党政策調整会議のメンバーにも入れてもらいましたので、本質的議論を展開してまいりたい、こう考えておるわけでございます。  そこで、こういう問題のほかに、ガイドライン研究と混乱しちゃうといけませんので、頭の方でちょっと整理しておきますと、今ガイドラインとともにいわゆる有事法制研究というのが大きく取り上げられております。この有事法制というのも本当に当然なことなんで、国家国民の安全というものに責任を持つ国家として、何かあった場合にはどうするのかということを真剣に考えておくのは当たり前のことです。  しかし、これも我が国の場合には、自衛隊の行動する場合の諸問題ということで、第一分類の防衛関係とか、他省庁の所管とかいうところについての研究は終わっても、一番国民の権利義務にかかわるような第三分類はなされておらない。また、米軍の行動に関する諸問題等については全くの手つかず、こういう状態になっておるわけでございまして、これはこのガイドラインとは別に私はじっくりと国家として研究すべき課題だと思います。  今、自民党でも安全保障調査会でこれを研究しておりまして、私もそのメンバーとして、ガイドラインとは別の問題だけれども、別といっても米軍の行動なりこういうガイドラインの実施に伴う関連ということになると当然関係してくる部分もあるわけでございまして、少なくともその部分は真剣に現実的な面から検討すべきものだ、こういう認識を持っております。有事法制についての取り組みという問題については特に回答は求めませんが、我々としてこの問題は別途検討すべき課題だと思っております。  憲法にこういう問題について一言も触れられていない国家というのは非常に珍しい。もっとも、イギリスとかアメリカ等についても憲法自体にそういうのがあるというわけでもないようですが、ドイツは御存じのように防衛上の緊急事態ということに対する詳細な規定が設けられておる。  我が国の場合に一番欠けておるのは、平時的な感覚で有事を判断するという感じが強いということです。だから、テロが起こるとわっと一時的には大騒ぎする、こうしろああしろと。ところが、時間がだんだんたってきて、ちょっと規制を強化しようとすると、いや行き過ぎだ、権利の侵害だ、こういうことになる。サリン事件なんかがあって、あれだけ凶悪な犯罪があって、オウム真理教みたいなのを解散、これだって公安審査委員会で大分たってから、これは解散には及ばずみたいなことになっちゃったわけです。  これは国際常識的に見ると非常におかしい。結局は有事というか、まさにその時代の公共の福祉を守るために、多少窮屈になっても対応する法律をつくることが結局国民の権利を総体として守ることになるんですが、そういう点については、ちょっといじろうとすると危険だと。もともと危険な事態が起こっているから、だから平時においてそういう危険な事態を想定してつくっておくということが大変重要だと思うんです。  こんなことで、私はこれから我が党としても真剣に取り組むべき課題だと思っておりますので、これは質問に入る前に私の見解を述べておきたいと思います。  あと一つ、せっかくPKO事務局が来ておりますから伺いますが、これもガイドラインに直接関係ありません。平和維持活動について米軍と密接に協力するというような点がありますが、これは別に関係ないんです。  せっかく送り出している自衛隊等が今もゴランで、また期間も延ばすということになってきている。相当長期にわたって続いておる。サイプラスなんというのはもう相当長いこと続いたりしている。こういう中で、自衛隊の諸君がカンボジア以来送り出されてきているわけですが、このPKO法についても三年後見直し、かつ武器使用規定なんかについても大変要望が出ております。  要するに、部隊で行っていながら個人の判断で撃てというのは非常におかしな法律で、私も警視庁警備部長をやっておったときに、機動隊がガス銃等を持っていろいろ行動する場合に、個人が撃ったらやっぱりばらばらになってしまいます。中には小度胸の人間もいたりして、撃つべきでないときにバンバンなんて撃つちゃって、そうしたらまた大混乱に陥る。そういうときに、部隊で行動する以上、適正に武器を使用するということは、やはり指揮官が冷静な目で判断して使用せよと。個人を防衛するためにもそういう的確な判断が必要なわけで、まさに国際部隊に送り出すPKO、個人がばらばらに判断して撃っている場合はいいけれども、指揮官が判断して一斉に撃ったら武力行使になる、こういうことはないと思うんです。  だから、そのあたりのところは私は今国会で少なくとも成立するような方向でやろうと。そうしたら、安保等プロジェクトチームでも十分大丈夫だというので、今国会ぐらいにはぜひこの法律をやってもらおうかなんて言っておったんですが、今国会はいろいろ重要法案が山積みということで実現しませんでした。  それにしても大変な法律が次々と参議院でも通過しておりますが、沖縄に関する特措法もこの間大変な賛成多数で通過した。これも安全保障上大変なことですが、このPKO法について、今国会は無理としても、現在、総理府と関係省庁等で改正についての作業等が行われていると思いますが、どんな段階になっているのか、事務局次長、御報告をいただけたらありがたいと思うんです。
  21. 新貝正勝

    政府委員(新貝正勝君) お答えいたします。  国際平和協力法の見直しにつきましては、平成七年八月に同法に規定する見直しの時期を迎えました。したがいまして、国際平和協力本部事務局及び関係省庁との間で、先ほど先生がおっしゃいましたようなこれまでの派遣の教訓、反省等を踏まえまして、法律改正案の具体的内容について検討を行っているところでございます。  先般、その作業状況につきまして、国際平和協力本部事務局から総理等にその状況報告いたしたところでございますが、今後どういうふうな取り進め方をするかにつきましては、諸情勢も勘案しつつ関係省庁とも十分調整を行いながら検討してまいりたい、そういうふうに思っておるところでございます。
  22. 依田智治

    ○依田智治君 答弁を求めると恐らくそういうことになるんじゃないかと思います。  しかし、いろいろ伝え聞くところによりますと、今武器の使用を認めているのは個人として身を守るための自然権として認めているので、集団としてやるときもその自然権の延長として認めるというような非常に苦しい論理をしておるようでございますね。  先ほど板垣先生が言われたように、もっと本質的に考えてみると、国連憲章にのっとり国連加盟国の責任としてPKOに送り出すわけです。停戦協定が成立した後の平和を一日も早く確立するために、しかも武力行使を目的として行くわけでない。そういうときに、たまたま武器を使用する、身を守る状況が生じたというときには、少なくとも行っている部隊が公務として身を守る、私はこれは当たり前のことだと思うんです。公務として行っている人間が公務として武器を使用するのは当たり前なことで、それを適正に使用するために冷静に指揮官が判断するのは当たり前のことです。  したがって、この点については今後とも我々としても努力していく。それがやっぱり国際的に努力し得る道であり、また適正にこれから国連協力していくという道ではないか。こんなことで、これはガイドラインの質問に入る前に、関連の問題として、当然やるべきことを積み残している問題がいろいろあるので、こういう問題を並行しつつ努力していかなきゃならぬという決意も込めて述べさせていただいたわけでございます。  そこで、いよいよガイドラインに入りますが、先ほど板垣先生から最後に懸念が表明されましたけれども、財政構造改革の中で本当防衛態勢維持できるか、私も実はずっと心配しておりまして、去年の日米安保共同宣言でもぴしっとこれは約束されておる事項でございます。ここのところは私が読むまでもなく、「一九九五年十一月策定の新防衛大綱において明記された日本基本的な防衛政策を確認し」ということ、そして「自衛隊の適切な防衛能力と日米安保体制の組み合わせ」でこれが成り立っている。これはわかる。  今回、ガイドラインというのはその協力あり方をやるんですが、その重要な柱として日本の適切な防衛力というのがあるわけでございますし、それから今回の中間報告の中でも、例えば「平素から行う協力」ということの中で、真っ先に「基本的な防衛態勢」という問題を掲げておるわけです。「日米両国は、日米安保体制を堅持する。日本は、「防衛計画の大綱」に則り、自衛のために必要な範囲内で防衛力を保持する。米国は、そのコミットメントを達成するため、核抑止力を保持するとともに、アジア太平洋地域における前方展開兵力を維持し、かつ、来援しうるその他の兵力を保持する。」、こういうふうに、米軍が相当な義務を負い、日本防衛力を整備いたします、こう力強く中間報告でも述べておる。  そこで、我が国の現下の財政事情というのは大変でございますし、財政構造改革五原則ということの中でまず来年の経費を大幅削減する、長期計画も量的削減目標を設けてやるということで、防衛費につきましても来年は同額以下ということであります。ODA一〇%は外務大臣は相当不満でございましょうが、そういう中にあって多少甘いぞというぐらいな意見もあります。しかし、中身を見てみた場合に、前年同額にするということは、少なくとも二千億、計算によってはもっと上回るような削減が予定されなきゃならぬということは大変なことであります。  また、今後三年間で九千二百億ですか、一兆円近い削減というのは、二十五兆円の中のこれくらいは大したことはないというような見方をする人もありますけれども、中身を見た場合にとんでもないことでありまして、人件・糧食費も、みんなが給料上がったときに自衛隊だけは上げないというわけにはいかぬ。また、大分定年延長してきたけれども、さらに延長して、ちょっと走ったら息切れする人ばかりが出てきたのでは、これは国家安全保障として大変なことになるなと思っています。  それから、私が一番懸念しているのは教育訓練です。共同演習・訓練を強化する、こうガイドラインの中にありますが、これだって強化すると言っているけれども、果たしてそれだけの予算が確保できるかということを私は大変心配しております。  それから、装備品の調達ですが、これも結局一年延ばせばいいという問題じゃなく、この基盤として防衛産業、技術、これを維持していくというのが国家安全保障として極めて重要ですし、今の予算の削減、去年は六百七億の繰り延べということをやったんですが、さらに大幅な繰り延べをせざるを得ないような事態になり得るんじゃないか。  それから、他の役所と比べて非常におくれておるのが自衛隊の隊舎とか、そういう施設でございます。削るとすればそういうところしか削るところがないということになってくると、米軍の方と比べて、あるいは一般の公務員と比べてますます格差が増大するという問題になってくる。そうなると、米軍駐留経費あたりも手をつけざるを得ない、削減せざるを得ないなんという事態になってくるのか。これはまた大変なことであります。  そういう点も含めて、均衡のある予算の確保ということは、これはもう私が聞くまでもなく、防衛庁長官、真剣に御検討という先ほどの話はございましたが、今のような問題を含めまして、もう一度これからの取り組む決意というものをお伺いできればありがたいと思います。
  23. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 先ほども述べましたように、そういう形の中で決まりましたので、私どもは庁内に検討委員会を設けて中期防については見直しを行うことにしておりますし、また概算要求はもうすぐでございますから、それに向かって平成十年度の概算要求の取りまとめをしなきゃならないわけでございますが、委員も御指摘になりましたように、本当に今厳しい状況でございます。  人件費等につきましては、民間の会社でございますと、勧奨退職をお願いして、やめた場合には、退職金なんか積み立てをやっておりますからそれで払えるわけでございますけれども、もしそういうことをやりますと十年度の予算は退職金がぐんとふえるわけでございまして、そういうこともできないわけでございます。  一つ一つどれをとってみましても、本当にできるんだろうかという不安が頭をよぎります。しかし、そう言ってもおれないわけでございますので、あらゆる角度から総洗いしまして、必要なものはきちっとやっていかなければなりませんけれども、節約ができるかどうか、もう一度点検し直す中でとにかく切り詰めていこうと。その場合には、委員が御指摘されましたように、繰り延べをまた来年度においてもせざるを得ないような場合も出てくるかもしれません。また、隊舎等の整備等でもあるいはまた少し我慢してもらうということもあるかもしれません。  とにかくそういうことをやっていって、防衛大綱、また中期防は見直しますけれども、その防衛大綱を踏まえて今度のガイドライン等もやっておるわけでございますから、そういうのに影響のないようにどこまでやれるか、一生懸命やってみようと思うところでございます。  ただ、今までみたいに、そうしながらバランスある予算を編成してとか、各分野において均衡ある予算を編成してとか、そういうことを本来なら言いたいわけでございますけれども、今度は場合によってはかなり不均衡になる場合だってあり得るんじゃないか、それぐらいの気持ちで取り組まなければならないというふうに思っておるところでございます。
  24. 依田智治

    ○依田智治君 「国防の基本方針」でも、四項目で、外交等の積極的展開、次がやっぱり内政基盤ですね。安定した内政基盤があったからこそ次に防衛力整備とか日米安保体制国連、こういうような問題があるわけでございまして、この財政構造改革の厳しい時代防衛だけが局外に立つということは不可能なわけでございます。  そういう点も踏まえつつ、しかし今のこの数字というのは、もう既に一昨年の秋に大綱、中期防をつくったときにコンパクト化ということで相当スリムな、何しろ十四万五千の正規軍であります。米の援助を受け入れたいと言っている北朝鮮は百万以上の地上軍を持っている。それに比べてそんな少ないんですかというくらいの数字で、これだってこれから即応予備自衛官一万五千と合わせて十六万体制、これに見合う装備というのを維持していくのもこれではぎりぎりであります。それをさらに削減したわけですから、私は大変な努力だなと思います。  そんなことで、今後、場合によったら不均衡にならざるを得ないということですが、それぞれについて本当に致命的な形にならないように、これは当然なことでございますが、御努力をお願いしたいと思います。  けさ安保会議があって、中期防を本年中に見直すということを了承したようでございますが、この構造改革検討されている当初から、せっかく安全保障会議というのが日本にはあるんだから、こういう問題について、正規の安全保障会議でなくても、議員懇談会もあるわけですし、ちょっと集まってくれ、今こういう問題がある、国家安全保障としてもいろいろ考えにゃいかぬと。そういう結果は国民にも明らかにしつつ、なるほどこういう基本的諸問題があるのか、そういう中でこれくらいはやむを得ないのかな、これは大変なことだというくらいの認識を高めることが必要だと思います。  そういう意味においては、六月三日に決定されてきよう十三日、十日もたってから安保会議に報告というのは何だかちょっと寝ぼけているなという、私が元安保室長でやっていたからこんなことになったのかもしれませんが、やはりもうちょっと国家安全保障というものの顔を国民に対して見せていくべきであります。  外務大臣だって、恐らくODAが一〇%減で、防衛費がこういうことではちょっと甘いぞと思っているかもしれませんが、そこは元防衛庁長官ですから十分御理解されていると思いますが、与党の自民党の中でも、いろいろ議論すると、案外と防衛費はちょっと甘いなんて思っている人もいる。これではいかぬので、安保会議というものは、何か結果が出てかくかくでございますと言ってから形式的に開いて、しかも中身の議論は一切外に公表しませんというようなことで、きょう安保会議は終わりました、終わりというような安保会議じゃ、それではある意味があるのかというくらいの感じを持っていまして、もうちょっと活用して、そして国家の重要な問題について真剣に議論して、それを国民に明らかにしていくというような運用が望ましいんじゃないか、そういう感じがします。  安保室長にきょう来ていただいていますが、今後、中期防等を見直したときに、また改めてガイドラインでは開くというような計画なのか、このあたりの安保会議についてのお考えをちょっと例えればありがたいと思います。
  25. 三井康有

    政府委員(三井康有君) 初めに、どうして財政構造改革会議の結論が出る前に安保会議を開かなかったのかというような御指摘もございましたのでその部分についてお答え申し上げますと、先般の財政構造改革会議の決定といいますのは、経済構造の改革を進めながら、財政構造を改革し財政の再建を果たすことが喫緊の課題であり、もはや一刻の猶予も許されないという考え方のもとで、具体的な改革と歳出削減の方針、方策を明らかにしたものでありまして、防衛についても、危機的な財政事情のもと財政構造改革が喫緊の課題となっていることを踏まえた抑制を行う必要があるという考え方に立って、中期防の所要経費の縮減を含めた経費の抑制策を示しているものでございます。  その一方で、中期防の具体的なあり方につきましては、本年中にその内容を見直すとして、むしろ今後の作業にゆだねているところでありますが、そのような見直し作業こそ、経済財政事情のみならず、国際情勢、技術的水準の動向等、安全保障という観点から種々の要素を勘案して検討を行うことが必要であり、まさに安全保障会議における審議にふさわしいものと考えられますし、きょうを皮切りとして今後精力的に審議をしていくこととしているところでございます。  また、中期防は平成七年十二月十四日の安全保障会議において決定されておりますが、委員十分御承知のとおり、もとより安全保障会議は諮問機関でありまして意思決定機関ではございません。したがって、中期防の所要経費の縮減につきまして、経済財政事情の観点を特に重視して閣議で決定するということについては何ら法的な瑕疵があるわけではございません。  いずれにいたしましても、特定の案件を安全保障会議の審議事項とするか否か、するにしてもどの時期に行うのかといったことは安全保障会議の議長であります内閣総理大臣がその事案に応じましてその都度判断されるものであり、今回も財政構造改革会議の検討過程において安全保障会議を開催することの可否についても慎重に検討されたところでございますけれども、以上申し上げましたような、今般の財政構造改革会議、あるいはその後の閣議決定の趣旨、その他の諸事情を総合的に勘案いたしまして、財政構造改革会議の決定に先立って安全保障会議を開催することは行わないということにされたものでございます。
  26. 依田智治

    ○依田智治君 従来の運用からするとそういうことだと思うんです。したがって、私はこの間、国際テロ対策小委員会でも提言しまして、やはり安全保障会議というのは、ただ諮問されて受けて立って、はい結構ですという組織でなくて、何か重要な問題があったときには集まって意思統一して、こういう方向で行くべきじゃないかというようなこともできるようなある程度実質的な意味を持たす機関に改組していかないと、あっても余り、余りと言うとちょっと二代目安保室長としては問題なんですが、やっぱりもうちょっとそのあたりの議論をする必要がある。そして今回でも、例えば首都機能移転先延ばしなんて言ったら、早速集まって委員会で、いや先延ばしじゃなくてこうこうですというのが決定したんですね。  だから、中期防なんというまさに安保会議で決定してこれでやりますと言っている問題が、勝手に構造改革の方でこれだけ削りこれだけやりますなんということを決められて、後からよかろうというんじゃ何だか生ぬるいなと。やっぱりそういう方向に協力する必要があるということを意思統一するだけでも意味がある、私はこんな感じがしております。これはまた行政機構改革とかそういう面で本当に真剣に取り組んでいただく必要があると思っております。  それでは次に、このガイドラインというのは指針ということでございますが、どうもこれをめぐって国会で承認せよとかやれ云々とかいろいろありますが、そもそもこの防衛協力指針というのは日米安保条約ないしその関連取り決めとの関係において公式に言うとどういう性格のものかということをわかりやすく説明していただきたいのでございます。
  27. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 安保条約及び関連取り決めとの関係ですが、今回の指針を見直すからといって安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務関係に変更を加えるものではないということが第一にございます。  それから、先ほど委員指摘日米安保共同宣言というのがございました。そして、今回の指針見直しはこれまで進めてきました日米間の防衛協力基盤として新しい時代におけるより効果的な防衛協力関係を構築することを目的とするものでございまして、防衛協力の方向性、大枠をガイドライン、いわゆる指針という形で作成しょうとしているものでございまして、日米間で何らかの法的な権利義務関係を設定するような文書ではございません。
  28. 依田智治

    ○依田智治君 共同宣言でこれを研究、見直しをしようということが決定されたということになっているわけですが、そうすると、これはどういう文書ですか。これは内閣で承認したわけでもない。いわゆる防衛協力委員会が作成して、さらにその上の2プラス2みたいなものが作成責任者になっているのか。この文書の作成責任者というのはだれになるわけですか。
  29. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) この中間取りまとめもそうでございますし、現行のガイドラインもそうでございますけれども日米安全保障協議委員会、これは大臣レベルのものでございまして、この下部機構として防衛協力委員会、英語でSDCと言っておりますが、そこでなされた研究、協議の結果を取りまとめまして、それを日米安全保障協議委員会に報告し、了承を受けるといったぐいの文書でございます。現行のガイドラインはまさしくそういう形で取りまとめられたものでございまして、今回もまだどういう取りまとめをするか正式に決定したわけではございませんけれども、現行の例に倣った扱いにすることになろうと思います。  そういう意味で、文書の作成の責任者というのは、日本側でいえばSDCの日本側代表、米側はその米側代表ということになりますが、もとより文書を作成するに当たっては政府の指示を受けながら、御判断を仰ぎながら文書を作成するということでございます。
  30. 依田智治

    ○依田智治君 そうすると、SDCが責任者ですか。それで、それをその上の日米安保協議委員会、これが了承したと。しかし、了承したということはそこはよかろうということで、これはもう一歩進めて、安保会議とか閣議とかそういう手続というのはどんなぐあいになるんですか。
  31. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 現行の防衛協力のための指針の例で申し上げますと、昭和五十三年十一月二十八日に、当時は国防会議というのがございましたが、国防会議で審議を行い、その後、閣議において資料を席上配付の上、所管大臣たる外務大臣及び防衛庁長官が発言をされて、その経緯、内容を報告し、了承された、そういう手続でございます。
  32. 依田智治

    ○依田智治君 これは有名で、今まで国会等でも、資料を席上配付して了解と、これはどういう性格のものかというような議論が大分行われています。  したがって、SDCがつくり、その上の安全保障協議委員会も了承し、安保会議でも報告があって了解し、閣議も了解したということですから、SDCがつくったんですが、やっぱり日本側の最高責任者としては、閣議の責任者である総理がこの問題については最終的責任者として一応これは了承しておるということになるんでしょうかね。そこのところはどんなぐあいでしょうか。
  33. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) これはまず外交関係の文書でございますから、所管という意味外交関係の文書、それからこれは防衛にかかわる文書ということでございますから、所管大臣ということでいきますと外務大臣、それから防衛庁長官の責任で作成された文書ということになろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、閣議に報告し、了承を受けているということであります。
  34. 依田智治

    ○依田智治君 これはそういう文書であって、今度の場合はただ単に研究するだけでなくて、やはりおのおのの責任においてこれを実行に移していくというか、そういうことが期待されるというような文書になっておるわけですね。だから、これは当然のことだと思いますが、条約でも協定でもない、ましてや覚書みたいな細部の取り決めでもない、しかし閣議においてまで了解して、その結果というものはやはり実行されることが期待されるという文書であります。  特に今回は英文をちょっと見てみますと、「アー・エクスペクテッド」という言葉を使っているんですね。期待されるという表現は日本でどういうふうに解釈するのか。期待するというのは、オックスフォード・ディクショナリーを引いてみますと、「シンク オア ビリーブ ザット サムシングウイルハップン」というのと、あと一つは「リクワイアー サムシング アズ ア ライトオア デューティ!」というのがあるんですね。どっちなんだろうと。やっぱり中間的にこういうものが取り決められた以上は、今後は日米安保共同宣言の趣旨にのっとり、また今回の研究を踏まえて、おのおのの責任において実効を期するよう努力しましょうということであって、その努力する中身は半ば義務的に考えるべきくらいなものではないか。この上の文章には「ウイル・ノット・オブリゲート」という言葉を使っている。だから、それではないがエクスペクトと、こうなっているんですね。  私も英語はそれほど強くないんですが、したがってこのあたりのところは外務大臣はどんなぐあいに考えておられるか、期待されるという意味を。それによってこの文書というものは非常に重要な意味を持つし、そういう意味からして今回の衆参両院における慎重質疑とかというような問題も起こっているんだと私は思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  35. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 先ほど来委員政府委員との間でのやりとりがございましたけれども、そこで明らかにされておりますように、これは日本あるいは米国の政府に何らかの行為、つまり立法あるいは予算あるいは行政といった意味で何らかの措置をとることを義務づけるものではないということは明確になっているわけでございます。そういった意味で条約、協定といったぐいのものではないということでございます。  それからまた、国内法的に見ましても、先ほどお話がございましたように、少なくとも現行のガイドラインにつきましては、これも具体的な行政措置等をこの指針そのもので行うものじゃございませんから、閣議決定を行うというような性格のものじゃないということで、当時の国防会議、今の安保会議に当たるものでございますが、そこでいろいろ審議された上で、閣議で所管する大臣である外務大臣及び防衛庁長官から説明をし、閣議で了承された格好でございます。  したがいまして、先ほど委員は総理大臣がとおっしゃいましたけれども、むしろ我が国の法制上は内閣でいろいろなことを決定しておりますから、内閣として了承したと、こういうことになっておるわけでございます。しかし、だからといって余り重要なものじゃないのかといいますと、決してそんなことはない、内容的には非常に大切なものである、こういうふうに考えております。  そして、「エクスペクテッド」と書いてあるのをどういうふうに理解するかと。オックスフォードの辞書にも強いエクスペクトともう少し弱いエクスペクトと両方あるというお話がございました。そのとおりでございまして、いずれにしても強い意味でとりましても法律的な意味での義務づけをするものでないということは明確に言えると思います。しかし、一方におきまして、非常に弱い意味にとりましても、例えばホープという言葉、そういうことを望みますというようなものではないということですね。  やはり行政府を代表する責任者の間で真剣な議論をした上で、両国間でこのような協力をすることが望ましいということを検討の結果としてまとめたものでございますから、それはそれぞれの政府の判断に任されておりますが、当然のこととしてそれぞれの政府もそれを真剣にあるいは重く受けとめ、そしてそれを政策に反映するか否かということで真剣に検討する、これは当然のことだと思うのでございます。  そういったことでございますので、この「エクスペクテッド」と書いてありますのも、政策面にそれぞれの政府において反映していくことをかなり強く予想している、予定しているとまで言えるかどうかあれでございますが、義務づけてはいないけれども、そういうことが、ハップンということを言われましたけれども、そういうふうになることがかなり強く見込まれているということは言えるんじゃないかと思います。
  36. 依田智治

    ○依田智治君 昨年の日米安保共同宣言以来の流れを見た場合に、ただ単なる机上の研究ではない。やはり真に日米安保体制というものの実効を期していくためには当然やるべきことだ、そして足らざるものがあればそれを補っていくということは私は当然なことだと思うんです。そういうことで、この「エクスペクテッド」というのは私なりには非常に強く考えております。  それから、ここの一番最後に何かわけのわからない、「日本のすべての行為は、その時々において適用のある国内法令に従う。」というような表現があって、部会でも聞いてみると、法治国家ですから法律としては当たり前のことで、超法規的措置はとらないという意味ですということですが、「その時々において適用のある国内法令」というと、何か今あるものでということなのか、新たにつくることが含まれるのか。私は足らないのを新たにつくって、そのときに適用あるというように解釈するんだろう、それでいいんだろうと思うんですね。  この英文を読むと、ゼンというのが使ってあります、そのときにというのが。適用するときに現に不備なものは補ってと。だから、そこまで考えて、やはりこの実効を期すために必要な限りの法律とかいろんな不備なものは政府として十分手当てをし、法律をつくるべきものは国会に出して、そして実効を期するようにしていく、このように解釈してよろしいかどうか、この点について伺います。
  37. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) おっしゃるとおりでございます。  その時々においてというお話がございましたけれども、その時々というのは現在もありますし将来もあるわけでございます。このガイドラインで大枠なり方向性の示されたところに従っていろいろ具体的な措置を講じていこう、とっていこうというときに、所要のそれを根拠づけるような法律がない場合には新たな法律をつくる、あるいは既存の法律を改正するということを通じて法律上の根拠あるいは権限等を付与するということがございますし、あるいはそれまでございます法律上、検討の結果とろうという措置が行えないというような形になっておりました場合には、その法律を改正しまして行えるようにする、法的な面からの障害を取り除くということもあろうかと存じます。
  38. 依田智治

    ○依田智治君 先ほど板垣先生からも中国の情勢の話がございました。やはり近隣諸国その他の理解を得るというためには、情勢認識というものが関係諸国間で一致しているということが極めて重要だと思います。このガイドラインの「見直しの背景」のところでも、「冷戦の終結にもかかわらず、この地域には不安定性と不確実性が依然として存在しており、日本周辺地域における平和と安定の維持は、」云々と、こういうふうになっておるわけですね。  私は、実は今回、自民党の安全保障調査会、外交調査会で中山元外務大臣を団長として五人ばかりで行って、この前提は当然に中国側も理解しておるだろうと思ってばっぱっと発言したんです。そうしたら全然違うんですね。先ほど板垣先生が言われたように、これは高度な国家戦略の中で承知していて言っているのかどうか知りませんが、まず真っ先に言われたのは、アジア地域世界にまれに見るぐらい経済が発展していて非常にうまくいっておる、それに比べるとヨーロッパではあちこちで紛争が起こったりして非常に不安定性が高いと。したがって、今は軍事的色彩の強い同盟関係というのを強化するような動きは非常に時代流れに逆行する、もっと経済面を中心に協力体制を強化するということでアジア地域は十分だと、こんな感じのことを言っておるんですね。  それで、私は反論しまして、ところで、じゃ北朝鮮というのはどう見ますかと聞くと、あれはこの七月に三周忌が過ぎる、そうしたら比較的明るい展望が開けるようなことを銭其シンさんが言っておるんですね。だから、日本側が考えておることと大分違うんですね。私は今にも崩れるんじゃないかという心配をしておるんですよと言うと、いや、ああいう国はしっかりしておると。自分のところが共産主義体制の経験があるからそう言われるのか、それとも意識的に言っておるのか知りませんが、そんな感じでありました。  そこで、私も、中国は一番北朝鮮に近い関係にあるからそういう人の言うことはある程度信憑性があるのかなという感じもしたんですが、いろんな人と、参謀本部副参謀長、それから外交学会の学者とかその他ともディスカッションしても、みんな同じことを言っているんですね。これは安保条約、このガイドライン見直し理解するどころか、これは大変だなという感じを受けました。  そこで、外務大臣、中国がそういうことを言っておるんですが、少なくとも外務省としては、中国なり関係諸国と安保のこういう再確認の前提となる情勢認識というものは本当に一致するという必要があるんじゃないかと、こんな感じがするんです。外務省からも審議官等を派遣して、中国に説明、ASEANにもいずれ行くということのようですが、そのあたりについての外務省の御見解をちょっとお伺いしたいと思うんです。
  39. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも、アジア太平洋地域の安定を図るという上において、この地域情勢がどういうふうになっているか、そういうことにつきまして、中国も含めた近隣諸国といろんな対話を通じて認識のすり合わせをしていくということは極めて大切だと、こう思っております。  そして、御承知のとおり、いろんなレベルでそういった努力もしておりまして、ごく最近の例で申しますと、あれは三月でございましたか、きょうもここに出席しております防衛局長、そして外務省からはアジア局長が出ましたけれども、そして中国側からもカウンターパートが出てきまして、安全保障問題について極めて濃密な、また時間をかけた対話をしたところでございますが、そういったことを通じて認識のすり合わせをしてまいりたいと思っております。  しからば現時点でどうかと申しますと、それは必ずしもすべてが一致しているわけではございませんけれども、しかし逆に認識が全く違っているというわけでもないわけでございます。  ただいま委員が、先般中国においでになり先方の考えをお聞き取りになりまして、それを御紹介になりました。私も先方にその発言の根拠を確かめたわけでございませんから、なかなか正確にはわからないところがございますけれども、ちょっと今お伺いしていたところで印象を申しますと、例えばアジアが非常に経済成長しているから、だから安定しているんだというような趣旨の発言があったということでございますが、そこはどうなんでございましょうか。  我々の認識としても、今アジアが非常に経済の面で立派な成果を上げている、世界における成長センターと言われるように、中国も含めて大変大きな経済成長をしておりますし、今後もそれは続くだろうと見込まれております。そういった意味では、経済が発展していくならば、それぞれの国も国内において基本的に民生も安定していくということが期待されますし、また経済成長を実現していくためには、国家間の経済面での交流が促進されるということが不可欠の要素でございますから、そういった面からも安定化の方の力が働いてくるということ、これはあると思います。我々もそこのところは同じだと思います。  しかし、いいことばかりかと申しますと、一方におきましては、経済成長の成果を軍事面での力を強化するために利用するという可能性もあり、またそういう面がアジアの諸国において起こっているんじゃないかという指摘がいろいろな論調の中にもあらわれているというのは御高承のとおりでございます。ただ、そういったところについては、一方において相互の安全保障対話あるいは信頼醸成措置をとりながら、お互いに軍事レベルのエスカレーションにつながらないように努力していくという主体的な努力が必要だと思います。そんな感じがいたします。  それともう一つは、先般訪問されたときの中国側の論調の中で特にヨーロッパとの関係で抜けているんじゃないかという感じがいたしましたのは、安全保障の面での多国間の枠組みでございます。  これは御承知のとおり、ヨーロッパの方ではOSCEというようなものもございますし、それから現にNATOという実力を伴った安全保障装置がある。これが何といいましても地域の安定を図っていく上での一つの支えになっていると思うのでございますが、アジア太平洋の方ではせいぜいASEAN地域フォーラムにおける信頼醸成の話し合いぐらいの枠組みでございますので、その辺が随分違うということ、それを補うような意味で、日米安保体制もそうでございますが、二国間の枠組みが現在でも有効性維持しているし、また必要でもあるという点がある。そこの認識が中国と我々とでちょっと違うところがあると思います。  それからもう一つ、ヨーロッパの方ではいろんな騒動が起きているけれどもアジアの方では起きていないじゃないかという指摘もあったということでございますけれども、これも確かにヨーロッパの場合は冷戦構造が崩壊して現在の枠組みに変わる過程において、東欧においてあるいはCISの国においてもいろんなことがございましたし、現にボスニアのあたりではまだそういった状況が続いているわけでございます。  しかし、これは逆に申しますと、冷戦構造がかちっとしておった、それが崩壊するのもまたドラマチックであったが、その冷戦後の枠組みも今急速に安定したもの、堅固なものが構築されつつあります。その移行が急激であっただけにそこの過程でいろんな摩擦現象というものが起きたわけですが、将来に向かってはこれが確保される土台ができつつあるのでございます。  こちらのアジアの方では、確かに言われるようにヨーロッパに比べてそういった動乱、騒乱が相対的に少なかったということが言えるかもしれませんけれども、逆に言うと冷戦後の安定した枠組みへの移行がおくれているという面もあると思うんですね。そういったところの認識がどうなのかなという感じがいたします。  それから、北朝鮮の問題についても中国側は触れたようでございますけれども、そこのところはどうも、確かに今の金正日書記を中心とする体制というものが政治という意味で国政全般を掌握しているというのはそのとおりだと思いますし、ああいった性格の体制というものがかなり強固だというのはそうかもしれません。しかし、その基盤になる経済社会状況をどう見るのか、そして将来的にどう考えるのか、あるいはああいった体制の、そしてああいった姿勢の国が存在することは周辺の国々との関係で将来どういうふうな可能性を秘めておるのかという点も洞察しなくては、この地域の安定度がどうであるか、あるいは将来の見通しがどうであるかということは言えないんじゃないかと思います。  そういった意味では、我々これまでも努力はしておりますけれども、今後とも一層中国その他の近隣諸国とも国際情勢、とりわけ安全保障情勢についての認識のすり合わせをし、そして安定化に資する方向に情勢変化させていくように、それぞれの立場であるいは協調しながら努力をしていかなくちゃいけないと、こういうふうに考えている次第でございます。
  40. 依田智治

    ○依田智治君 まさにただいま池田大臣が言われましたような線で我々も強力に反論して、結局平行線のまま帰ってきたわけであります。しかし、印象としては、中国という国には遠慮せずに本当のことを言い合って、実際に理解させる、理解してもらうと。こっちも中国という巨大な国が何を考えているかということをそういう対話を通じて理解していくことが重要だなという印象を持ちました。  今のヨーロッパと違って安全保障枠組みがないんだ、これも大きく主張したんですが、今回我々が行って、やはり大きく我々と違っていたのは、中国は自分のことは全然考えに入れていないわけです。こっちはアジア不安定、不確実という様相の中で中国はどうなるのかということが非常に大きな要素でございまして、実は率直にそういう話もしました。  それで、実は中国経済というものを考えた場合に、一国でありながら社会主義・市場経済という壮大なる実験をやっております。  ゴルバチョフのソ連は政治経済と一挙に大改革をして大混乱が起こった。三年前、私は民間におりまして、モスクワを訪問したとき、前年には物価が二十六倍上がった。恩給生活者はみんなこじきになっているような状態で、そういう激変を経ながら、今日、苦労しながらよくやっているなという感じでありますが、まだ資本主義の機構とかそういうものも未成熟ですし、これからこの巨大な国家がどういう形になっていくかということが私は非常に関心も深いし、心配しておるわけですが、いずれにしろ一回崩れたものが何とか安定しながら、サミットにも入ってくるというような状況です。  ところが、中国というのは共産主義体制維持しながら市場経済をやっているわけです。主要企業を国営化しながら自由主義経済というのは、本当は成り立たないというくらいなものだろうと思います。本当にこれがうまくいくようなら大変なことだと思っておるんですが、どうもやってみますと、国営企業は軒並み赤字になっていて、物価の値上げを抑えるために相当な補助金も出したりいろいろしながら、相当無理してWTO加盟の条件とかその他いろいろ考えておるという状況の中で、私はこの中国の行方というのは大変な問題であると思います。それだけに、日米安保体制に対する理解がないとか、いろいろそういう問題については本当に真剣に、先ほど板垣先生が言った大破局に至らないようなサポートやまたいろんな形の意思疎通、交流を図りながらやっていくということが大変重要だなという感じがしました。  これは意見を申し上げて、見解が一致していると思いますので、もう時間もなくなってきましたが、あとガイドラインの本論に入ります。  検討項目が四十項目挙げられています。これは修正も追加もあり得ると。当然だと思うんです。私も読んでみて、これはプラスアルファ、これはちょっとないなというので、気がついたのがいっぱいあります。恐らくこれをもとに検討し、そして秋までに結論を出そうと、こういうことだと思いますので、これはこれとして了解しておるわけですが、このガイドライン考える場合に、私はきのうも与党連絡調整会議でちょっと申し上げたんですが、この表題も「日米防衛協力のための指針」ということなんで、どうしても日米の、アメリカ協力するためにどうあるべきかというような感じのとらえ方が非常に強い。そのために、日本が巻き込まれるとか、いろいろそういう発想から非常に後ろ向きな議論が行われている。  だけれども、さっき本会議のときに不謹慎ですが斜め読みしていたんですが、ここを読んでみた場合に、我が国としてやはり情勢の中で独自にやらにゃならぬ問題というのは結構取り上げられているんですね。私はそうだと思うんです。  もし安保体制がないとしても、独立国家として日本が存在しておる。そこに自衛隊がおる。対岸で何か事態が起こったとき、何もしないことはないと思うんですね。これはどうなっているんだろうか、我が国に対してどういう影響があるか、まず情報収集強化のための行動に出る。それから、領空侵犯なり機雷の漂着なり領海の侵犯なり、いろいろあるかもしれぬとなってきたら、防衛庁長官、総理大臣としては全軍に警戒態勢発令ぐらいをやるんじゃないかと思うんですね。警戒なんて当たり前のことだと思うんです。  それで、機雷処理という問題が出てくる。機雷なんというと、もう機雷だけでも嫌いですという人もおるわけでして、これは実際上やっぱり注意していて、何もしなかったら、漁船が当分の間、戦争終結まで日本漁船は日本海域では出ないことになったら、これは生活にかかわる大変な問題であります。そうすると、国民の安全を守るためにある海域についてはやはり出張って、海上自衛隊なり海上保安庁というものがそういう安全性を確保することが大変重要じゃないかということも考えます。  その他、もしぷかぷか浮いてきたという場合に、実際に何かあったときに浮いてくれば、法制局が言うように遺棄した機雷だから九十九条なんて本当に言っておられるんだろうか。これは場合によったらもう日本に対する消極的攻撃があったとみなした防衛庁長官のまさに防衛出動による機雷処理、武力行使に当たるかもしらぬ。だから、ただ危険物としての機雷の処理か、防衛事態における武力行使としての機雷処理かというのは非常に難しい。私は現実には難しいことが起こり得るんじゃないかと思います。  その他にもこの項目を挙げて一々本当は聞きたいところがいろいろあるんですが、そのあたりを考えると、やはり我が国の安全のためにやるべきこと、憲法上当然やるべきことがいっぱいあると思うんですね。それはまさにオーケー、オーケーと丸がつくと思うんですよ。さらに、憲法我が国はできないけれども我が国安全保障という面に立った場合に、米軍なり国連軍がやってくれる、それをどこまでサポートするかという問題があると思うんですね。ここで日米安保体制における施設の提供とか給油とか物資の輸送とかいろいろあるんじゃないか、こういう感じがするんです。  そういう点で、分けて考えた場合に、じゃ米軍しかできない、日本はやっちゃいかぬのだけれども米軍にやってもらう部分についてどこまで手伝うか。それが武力行使一体だったら何にもできないですね。基地を貸すことすら本来は一番できないことになるので、そこの部分独立国家として、現行の憲法の枠内で結構ですから、しっかりと解釈をする。本来、独立国家として国の安全、国民の安全のためにはこれだけの行為をするのは当然であり、これは憲法上当然な自衛権の範囲であるというような腹構えでこれに取り組んでもらう必要があるんじゃないか、こういう考えを持っておるわけでございます。  そういう点で、これらの点についての防衛庁長官見解をお伺いできればありがたいと思います。
  41. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 今、委員が御指摘になりましたように、我が国として当然しなければならない問題が多々あるわけでございます。まして、我が国自衛隊なら自衛隊がそれをやることが日米協力に資するといいますかプラスすることがあるわけでございまして、そういうことは委員が言われたとおりだと思っております。  個々具体的な話じゃございませんのでちょっと抽象的な話になりましたけれども、いずれにしましても我が国としては自分でやれることは一生懸命やるし、やれない点で米軍がやる分については後方地域支援なりなんなりでまた協力するということで両々相まって、こういう我が国の周辺地帯で我が国の平和と安全に大きな影響を及ぼす場合に、これらの問題をそういう両方の協力によって切り抜けていこうというふうに考えておるわけであります。
  42. 依田智治

    ○依田智治君 個別項目についてなかなかやっている時間がありませんが、周辺地域という場合、ある新聞をちょっと読むと、周辺地域に台湾は含まずとかございました。私は具体的にどこを想定しているわけではないと思うので、やはり我が国の安全にとって非常に重要なそういう地域というのは当然この対象の中に入ると思う。しかし、相当先の中東の向こうまでが周辺地域とは読めないと思うんですが、場所を限定する、ここは含みませんということはないと思うんです。我が国があり、その周辺において我が国の安全にとって重大な事態が起こった場合はこれを合理的な範囲で発動していく、こういう考えでいいんじゃないかと思うんですが、この点はいかがでございましょうか。
  43. 折田正樹

    政府委員(折田正樹君) 日本周辺地域は、そこにおいて発生する事態が我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼし得る地域であるという一般的な意味で用いているわけでございまして、このような事態が生じる場所をあらかじめ特定しておくわけにはいかないということでございます。  そして、じゃ実際にどういう事態が日本の平和と安全に重要な影響を与える場合に当たるのかどうかというのは、まさしくその事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断するということになろうかと思います。
  44. 依田智治

    ○依田智治君 項目の中には、後方地域における補給と輸送とか、民間空港の利用とか、傷病者の救護、治療とか、いろいろございます。  しかし、これを個々に言っていてもあれですが、本来、日本が独立国としてまた同盟国として、国家の安全と近隣における平和を維持するために少なくともやるべきという範囲で、具体的な戦闘行動に参加するというようなことは当然考えるべきではないし、戦闘行動が行われている地域と一線を画すというのがどの範囲で画すのか。今のロケットとか飛行機の足からしたら、相当遠くまでが地域だなんといったら何もできませんから、そのあたりは合理的に判断して、やはり同盟国ないし独立国としてやるべきことはやるということで考える必要があると思います。  あと一点だけ、こういう周辺の事態という場合には、基地の使用という問題と、いわゆるガイドラインでは事前協議に関する事項は対象としない、こうなっていますが、非常に近接した地域の周辺で何か起こった場合に基地が使用されるという問題、そういう場合における戦闘作戦行動のための基地の使用というようないわゆる事前協議に関するアメリカとの取り交わしがいろいろあるわけですけれども、このあたりは検討の対象としないわけでございますが、現時点でどんな考えを持っておられるか、外務大臣に伺います。
  45. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今回、いわゆる安保条約、それを実行するための岸・ハーター交換公文に定められた事前協議、これについては何も変えない、こういうことにしております。それはそのとおりでございます。  しかし、一方におきまして、いろいろな日米間の協力をしていくという場合に、適切にそれをやるように調整のメカニズムなどをつくることにしております。そして、また一方において、ガイドラインで示された大枠に従って共同作戦計画なりあるいは相互協力計画なりをつくることになっております。そういうところで日米間におけるいろいろな相談、協議は行われるわけでございます。
  46. 依田智治

    ○依田智治君 今、大臣が御指摘のように、これが一応この秋に発表される。そうしたら、これを具体的に実行に移すための共同作戦計画なりいろいろマニュアルみたいなもの、こういったものを当然つくって、今私が指摘したような問題も含めてこれが真に実効あるようにつくっていかなければいかぬ。ただ、従来この作戦計画というのは長々とやっていまして、いつこれが終わるのかというような感じですが、もう本当は並行してでもマニュアルづくりは始まっていてもいいぐらいな感じを私は持っているんです。  したがいまして、この中にもいろいろ各関係部門を含めた共同作業推進体制をつくって云々と書いてありますが、策定後の今後の取り組みの体制と、それからこれはできるだけ早くそういう結論を出していく必要があり、そして実施すべきものは実施し、必要なものは国会等で処理していくということが必要だと思いますが、このあたりについての外務大臣のお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員指摘のとおり、ガイドラインはこの秋に策定する、こういう計画で進めておりますが、それを踏まえまして、今御指摘のございました具体的ないろいろな措置をとるかどうかを判断し、また進めていくわけでございます。  そういった中には、共同作戦計画とか相互協力計画だとかいうものもあるわけでございます。段階的には当然まずガイドラインを決め、それからいろいろその後で検討することになっておりますけれども、それは当然のこととして、ガイドライン検討する過程においても、これに基づいて具体化を図るとするならばどういうことになるかということは当然念頭に置きながら相談をしていく、考えていくということになると思います。そして、我々としても、ガイドラインに基づく具体的な措置につきましても、時期おくれにならないように適切に作業は進めていかなくちゃならない、こういう心構えでおります。
  48. 依田智治

    ○依田智治君 終わります。
  49. 永野茂門

    ○永野茂門君 本日のしんがりを承りまして、若干御質問を申し上げたいと思います。大変に長い時間が続いておりますので、できる限り短縮したい、こういうように思います。  私の第一問は、ガイドライン見直しの目的は何か、また見直し基本方針を伺いたいということでございますが、この件に関しましては、主として板垣同僚の質問において大体お答えをいただいておりますので、次の観点からの質問を集中して、集中してといっても三つぐらいに分かれますけれども、分解してお伺いします。  基本的な枠組みをちゃんと守るということで、非核三原則でありますとか、専守防衛でありますとか、もちろん大きく憲法の範囲内であるというようなことがあるわけでありますが、この中の専守防衛というものについて、今さら神学論争はやるつもりはありませんけれども、依然として相手の基地に対する反撃はやらない、日本自体はやらない、そういうような考え方日本有事の場合においてもとるのでしょうか。これが第一です。簡単にお願いします。
  50. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 中間取りまとめに書いてありますように、これは、「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の二番目のところに書いてありますが、こういう場合に、「自衛隊は、主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は、自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力の及ばない機能を補完するための作戦を実施する。」ということで、これは現在のガイドライン基本的な日米役割を踏襲したいという考えでございます。
  51. 永野茂門

    ○永野茂門君 その次は、基本的な方針の一つとして、日本日米間の役割を適切に積極的にやる、できるだけ双務的な方向にまで拡大すべきである、あるいは日米協力において当然なすべきこと、あるいは米側が特に要求するようなものは積極的に前向きにやるべきであるということが一つの原則であり、基本方針であると思いますけれども、これについては、私はこの中間報告を読みまして、一部を除いて非常に積極的に取り組んでいらっしゃるという所見を持っておりますが、この点について両大臣はどういうように認識しておられるでしょうか。
  52. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) まず、今できるだけ双務的なものにするつもりかという点、それから当然なすべきことは早速やらなくちゃいけないのか、それからあと米軍が求めるところ、こういう三点がございましたけれども、私は基本的にそれはいつでもそのとおりだと考えております。  ただ、最初の双務的という点につきましては、もう委員御承知のとおりでございますけれども日米安保体制そのもの我が国憲法上のあり方その他の関係からある程度は片務的だという言われ方もするわけでございます。そこのところは先ほど防衛局長が言いましたような点もございますし、特に極東地域の安全、平和を守るというときに、米軍が行う行動、それから日本が果たすべき役割というのは違うという御指摘もございますけれども、そういった制約の中でできる限り双務的だと思います。  それから、米軍の求めるところにもできるだけ対応するのかという点でございますが、私はその点もそうだと申しましたけれども、その根底にある考え方は、米軍日本に駐在いたしますのは我が国の平和と安全を守る、それからまた我が国の平和と安全にとっても大変な重大な関係のございます極東地域の平和を守るために行動するわけでございます。そういったことを基本に置きますと、米軍もそのような安保体制上の米軍役割を果たしていくために必要とする協力日本に求めるのでございましょうから、それは日本にとっても基本的に大切な協力であろうと考えるゆえんからでございます。
  53. 永野茂門

    ○永野茂門君 私が双務的という言葉を使いましたのは若干の誤解を招いたかもしれませんが、おっしゃるような意味における双務的であります。ただ、日本国民日本をみずから守るという、そういう感じ方が薄い人がかなりいる。というのは、何もかも米軍に依存すれば可能なのであると。前回、防衛庁長官には同じようなことを御質問申し上げたんですけれども、何でもかんでも米軍依存だ、うちはできるだけのことをやっていればいいんだという、あるいはもうそれさえも忘れてしまうという状況にありますので、こういう機会を利用して、拡大といいますか、当然持つべきもの、機能等はそこまで持つように努力することが大事なんじゃないかと、そういう意味で双務的という言葉を使ったことを弁解申し上げておきます。  第一問につきましてはそれだけといたしまして、第二問は、見直しに際しまして憲法九条の解釈を変更することは検討しなかったか、またその理由は何か、さらに解釈を変更せずに現行解釈に基づく対米協力に限定する際のマイナスをどのように評価しているかということでありますが、これも大体今までの御答弁で理解できますので、次の点の御認識を承ってこの質問にかえたいと思います。  御承知のように、米国の中には、お役人の中にそういう人が多いことはありませんけれども、お役人を終わった人でありますとか、学者でありますとか、議会の人でありますとか、一般世論とかの中には、日本はもっと責務を果たすべきである、当然やるべきことがもっと広く深くあるんじゃないか、それをやらないのはどうしたことか、特に集団的自衛権行使については一緒に血を流すのが本当ではないかというのが底流に残っております。  今すぐ憲法解釈を変えてどうのこうのということはもちろんできるわけではありませんし、それはまた現在得策ではないだろうと思うわけでありますけれども、しかしながらこの九条解釈について、そういう意味検討をやるのとやらないのとでは、その根底日米安保に対する信頼感の米側におけるマイナス、あるいはもっと言えば日米安保に関する不安定性が底流に残っているということを認識しておかなきゃいけないんじゃないかと思いますが、その点について御見解はいかがでしょうか。
  54. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 今、委員が御指摘になりましたように、米国の政府の当局者は、我が方の憲法あるいはその解釈、そして現在の政府のとっている立場というものを十分認識して、その範囲内での協力の強化ということを求めているところでございますが、政府を一歩外へ出ますといろいろな論調があるというのは、私もそのとおりだと考えております。しかし、それが特に集団的自衛権解釈についてもう一切検討をしないという姿勢でいると、ますますそういった論者の不満を高めるんじゃないかというような御趣旨だと存じますけれども、そこのところは私はこう考えるのでございます。  その解釈も変えないということを明確にいたしましても、解釈を変えなくてもできることで今までやっていなかったことが随分ある、それをあたかもそのような解釈をとっているがゆえにできないんじゃないかというふうに米国のそういった主張をされる方々が考えておられるという面もあると思うのでございます。そういう意味では、解釈そのものは変えないでもここまではできるし、それはやるんだということを明確に出していくならば、今懸念されましたようなマイナス面を顕在化させることなく、むしろそのプラス面を引き出すこともできるんじゃないか、そういうふうに努力したいと思います。
  55. 永野茂門

    ○永野茂門君 今の点は大体私の感じていることと同じだと思います。ただし、私はこの九条の解釈変更ないしは改憲については将来はそういう方向に持っていくべきであると考えていることを付言させていただきます。  その次、第三問は、日本周辺事態に対するガイドラインにおいては、我が国の安全に重大な影響を及ぼす周辺有事の案件について示すことになっていますが、私は、その中で特に重大な影響を及ぼす地域、例えばということでは申し上げない方がいいかと思いますけれども、そういう地域の案件について、それを中心にガイドラインもつくっていただくということが大事であって、それと同時に地域を、いや台湾海峡はどうだとか、マラッカ海峡はどうだとか、南沙はどうだとか、インド洋がどうだとか、中東はどうだとか、そういうことを余り限定しない方がいいと考えます。なるべくそれはそのときの状況によって判断して、日本の安全に特に影響がありそうだというときには日本はこのガイドラインに基づいて動かなきゃいけない、こういうことがあると思います。  したがいまして、他の案件につきましても除外することなく地域研究は進めるべきではないか、こう思うわけでありますが、これについてどういうような御見解をお持ちでしょうか。
  56. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 御承知のとおり、ガイドラインは大枠あるいは方向性を示すものでございますから、そういったことで御理解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、特に周辺事態については、そこで起きる事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす、そういうことでございますから、委員も今おっしゃいましたように、余り特定の地域だとか特定の事態を限定せずに、起こり得べき事態に対して対応する、それはおっしゃるとおりだと思います。  それからまた、これはあるいは防衛庁長官から御答弁をいただいた方がいいのかもしれませんが、私ども関係ございますけれども、いずれにいたしましてもこのガイドラインの先の話として共同作戦計画であるとか相互協力計画もあるわけでございます。それから、もう委員御高承のとおり、現在でも我が国武力行為を受けた場合共同対処する、そのときにどうだということについてはいろいろ研究はしておるわけでございますが、当然そのときにはいろんなことを想定しながら作業が進められるんだと思います。ただ、それは事柄の性格上、幾ら透明性と申しましても、すべてオープンにして議論できるものではないということは御高承のとおりでございます。
  57. 永野茂門

    ○永野茂門君 防衛庁長官、何かつけ加えられることはございませんか。
  58. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 今、外務大臣がおっしゃいましたように、このガイドラインそのものは大枠並びに方向性を示すものでございますから、特定の地域その他を全然想定しないという形になるわけでございますけれども、先ほど言いましたように、共同作戦計画あるいはまた相互協力計画、こういうものについて、今までの研究と違いまして今度は検討をするというふうに一歩踏み込んでおりますので、その過程においてはかなりの具体性を念頭に置きながらそういうものはつくられていく。しかし、これはこのガイドラインの先の世界でございますので、ここでは余り言及したくないと思います。
  59. 永野茂門

    ○永野茂門君 次に、第四、第五とやや具体的なことについて承りたいと思います。具体的なことでありますけれども基本的な考え方を含みますので。  第四問は、経済封鎖のための臨検は国連決議がある場合にのみ実行ができるというようになっておりますが、それでいいでしょうかという意味で、拒否権行使によって決議が成立せず、米国の独自による封鎖の場合は日本は何もやらないんでしょうか、それでいいんでしょうかということでございます。  非常に近いところの、例えば半島事態なんというのは一体決議がうまくいくかいかないか、ほとんどいかないんじゃないかと私は見るわけです、一番大事な協力をしなきゃいけないところで。というのは、中国もそうでありましょうし、恐らくロシアも状況によってはそういうことになる。ロシアは必ずしもそういうように断定し得ませんけれども、中国は恐らく、しょっちゅうこういうことをやれば拒否権を行使すると思いますが、一番大事なところで何もできないというようなことではないでしょうかと。これは私がそう観察しているだけで、いやそうじゃないというお答えをいただければそれでも結構ですけれども、いかがでございましょうか。
  60. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) 私どもも決して経済封鎖の有効性を保つために行う臨検等の行動を安保理の決議があるときのみに限定しているわけではないのでございます。それ以外のこともあり得るとは思っております。ただ、現時点において具体的に安保理の決議のない場合の経済封鎖に対しての行動ということを想定していないということでございます。  それでは、その後どうするかというのはなかなか難しいところなのでございますけれども、しかし安保理の決議がない場合、経済制裁そのものがさあどういう形でできるかな、そのものがなかなかつくりにくいんじゃないかということが一つはございます。  それからいま一つは、今特定の地域を挙げられましたから私ども御答弁申し上げにくいのでございますけれども、一般的に申しまして、我が国が非常に重大な関心を持っている地域におきましてはそもそもそういったような経済封鎖措置などをとらないで済むような状況維持するべく外交努力を傾注するというのが一番だと思います。  そういった意味では、拒否権を持っている国として先ほど二つの国を挙げられましたけれども、そういった国々も我が国と同様な関心を持つ地域というのがございますね。そういった面では、具体的にもう言っちゃいましょう、中ロとも平素からそういった共通の関心の対象になり得る地域状況についていろいろ対話もし、そして今おっしゃるような困った事態が起きないように努力をしてまいりたい、こう思います。
  61. 永野茂門

    ○永野茂門君 それでは、第五問に移ります。  第五問は、後方地域支援でいろんな業務をやるわけでありますが、その中に一つの例として、武力行使との一体化について、航空機に対する支援で時間的近接性という概念を持ってきて適用するようにしております。したがって、そこから飛び立って直ちに戦闘になるような米軍の航空機に対して武器弾薬等を含む支援をすることは一体化につながるからよろしくないということなんですが、私は、これは地域的分類、後方地域であるとか作戦地域であるとかというのがありますが、後方地域ならばいいんじゃないかというような地域的分類によるべきではないかと思うわけであります。  例えば日本にある米軍基地から発進する米航空機は、もちろん日本側が支援するわけではありませんけれども、みずから同じようなことをやって出かけていくわけですね。そうすると、これも実は日本から発進することはお断りだということと同じことになってしまうんじゃないか。さらに、同じように、日本の国内の民間の飛行場を基地として使わせている場合に、日本側が特に給油支援等もやらなきゃいけないという事態は起こり得ると思うんです。そういうことも全部いけないということになりますと非常に不便だと思うんですね。  そもそも輸送支援であろうが警戒支援であろうが、これはもう米軍の戦闘を直接支援することになることは間違いないのでありまして、ただこれだけの時間的な問題で、日本から飛び立って直接戦闘行動に入るから油を含めて戦闘に直接影響あるようなものの補給はよくないというのは、どうも私は納得できないのでありますが、これはいかがでございましょうか。
  62. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 指針見直し検討されている後方地域支援でございますけれども、これは中間取りまとめにも書いてございますように、日米安全保障条約及びその関連取り決めに基づく米軍が行う施設・区域の使用及びその諸活動が効果的に行われることを主眼として、米軍に対して補給、輸送、整備、医療、警備、通信、その他それ自体としては武力行使に該当しない活動を行おうとするものでございます。  以上のような行為のうち、ただいま委員の御質問にございました戦闘作戦行動で、例えば発進する米軍機に対して、我が国がその機体、エンジンの点検ですとか、あるいはお触れになりました燃料の補給ですとかあるいは例えば武器弾薬の搭載、こういったような行為は現実には想定されないと我々は考えておりまして、指針見直しにおける検討の対象とされていないわけでございます。  各国の部隊におきまして、このような準備活動を自分の国のサービスといいましょうか力でやるという理由でございますけれども一種の準備活動でございますので、即応性を確保する必要があることですとか、戦闘行為につく直前の行為でもございますので秘密保全ですとか、あるいは航空機の機種その他専門知識等非常に高度の技術が必要だということで、もう委員御案内のとおりだと思いますけれども、通常、パイロット及び整備員が一つの部隊として平時から訓練し運用しそして活動するということでございますので、これは他国あるいは民間の整備員がそういうことをやるということは一般的ではありませんし、今回もそういう事実認識の上でこの点については検討の対象から外しているということでございます。
  63. 永野茂門

    ○永野茂門君 原則的にはよくわかりますけれども、不慮の事態というのは戦争が始まりますともうしょっちゅうあちこちで起こるのでありまして、そのときに臨機応変にやるというわけにはいかないと思いますので質問をいたしました。  それから、今のことと関連して、米軍に対する自衛隊からの物資補給について武器弾薬を除くということになっておりますが、これは先ほどちょっと触れましたように、我々がやる支援というのは全部戦闘に直接関係するものであって、武器弾薬もその支援の中の一つにすぎないわけですね。輸送がよくて補給がよくないとか、これはちょっと考え過ぎのような気がするのでございますが、またこれも、例えば米軍の方がうちは十分持っているし日本の方は必ずしも持っていないだろうからうちがちゃんと賄うよと。一般的にはこれもそのとおりでありますけれども、そうでない事態が起きないとは言い得ないと言った方がいいと私は思うんですが、どうしてもこういう原則を貫きますか。
  64. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 今回のガイドラインの策定に関しましては日米間で共同作業という形でやってきたわけでございます。特に今の御指摘の点は周辺事態における米軍に対する日本支援ということでございますけれども、これまでの日米間の共同作業の中で、周辺事態において武器弾薬、特に完成品としての戦車ですとか銃のような武器弾薬の補給といったような事態ということが米側からも想定されていないということでございましたので、今回そこのところは除くということで議論の対象から外したと。作業前提として、日米間で現実的に起こり得るようないろいろな日米の相互協力ということを考えながら作業をしておりますので、実際にありそうもないと米軍も言っていることにつきまして検討の対象から今回外しているということでございます。
  65. 永野茂門

    ○永野茂門君 米軍が歴年の経験によってそう言っているのだろうと思いますけれども、ぜひNATOはどうなっているかということを御調査してみるのもいいかと思います。  五問目につきましては以上で終わります。  第六問は有事法制の関係でございますけれども、これはもう当然この作業に伴って、あるいは伴わなくても、もともと完成しなきゃいけないもの、準備しなきゃいけないものであって、今回のガイドラインによっていろんなことがさらに補足して立法されなければいけない、あるいは改正しなきゃいけないものを含んでおると思います。これは当然整備すると見ておりますが、いかがでしょうか。有事ACSAについては特にまた特別な規定が要るんじゃないかと思いますが、これについての御見解を承ります。
  66. 久間章生

    国務大臣久間章生君) いわゆる有事法制につきましては、かねてから五十六年あるいは五十九年に防衛庁に関係いたします、要するに自衛隊の運用に関係しますものについては一応研究の成果を国会の方に報告もしておるわけでございますが、なお国会の御論議とかあるいは高度の政治的な判断を要するということで今日までそのままになっておるわけでございます。  自衛隊としましては、いざというときに行動がスムーズにできますように、それはぜひやらねばならないというふうに考えておりますが、特に今度のガイドライン見直しで、これから先いろいろと秋までにガイドライン見直しが煮詰まっていきまして、そこで国内で実行体制をつくるときに法整備が必要かどうか、そういうことについての法的な課題も洗いざらい挙がってくるわけでございますので、そういうときに今まで研究しておりました成果等につきましてもあわせて検討さるべきものだと、そういうふうに考えております。
  67. 永野茂門

    ○永野茂門君 今から申し上げることは有事法制の中に入れるべきかどうかということはよくわからないわけでありますが、安全保障関係の危機管理といいますか、戦争状態に入るときのいろんな手順でありますとか、警戒レベルでありますとか、レディネスの決め方とかそういうこと、いろんな手続のことにつきまして、やはり今まで検討されておりました有事法制のほかに、そういうものもしっかり整備されておらなきゃいけないと思います。ただし、これはここで私が質問したり提案したりするほど詰まっておりませんが、そういう着意が必要ではないかと思いますので付言をさせていただきます。  最後に、先ほど同僚の依田議員の方から、このガイドラインの国会における取り扱いといいますか、あるいは閣議決定をして処理するという重要性についてお話がありました。何を国会承認しなきゃいけないかということにいろいろとかかわりがありますけれども、極めて重要なガイドライン見直しでありますし、そしてまた確かに予算でありますとかその他には直接かかわるものではないということになっておりますが、依田同僚が英語能力を誇示して、エクスペクテッドですか、そういうこともございますので、私はやっぱり国会承認という手続をとったらどうかなと思うわけであります。その意味で、例えば国会の方からこれは承認手続をとれというようなことが仮にあったらどうするんでしょうか。見解だけで結構です。国会承認になじまないならなじまないで結構でございます。
  68. 池田行彦

    国務大臣池田行彦君) これまでの御審議でも何度かこの問題についてはお答え申し上げましたけれども、このガイドラインの性格は日米協力の方向性なり大枠なりについてガイダンスを与えるというものでございまして、そしてまた内容にも具体的な義務づけをしておりません。そういった性格上、我が国に具体的な権利義務関係を生ずるような例えば条約、協定とは明確に性格が違いますので、どうしてもそこのところは国会の御承認ということにはなじまないような気がするわけでございます。  しかし、私どもは内容的にこれは重要なものであるということは十分承知しております。であればこそ、今回も作業の途中の段階でこうして中間取りまとめをし、国会で御論議を賜っておりますし、我々はこれからこの御論議を十分踏まえまして作業を進めていきたい。そして、ガイドラインを策定した後に具体的な措置をとる必要が出てくるということになりますならば、先ほど防衛庁長官からの御答弁にもございましたように、法制的な面、場合によっては条約、協定といった側面のことも可能性としては排除できないわけでございますが、そういった措置が必要ということになれば、当然のこととしてその際に国会の御判断を仰ぐ、こういうことになろうと存じます。
  69. 永野茂門

    ○永野茂門君 終わります。ありがとうございました。
  70. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十四分散会