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海老原義彦君 懲戒処分というのは各省それぞれの事情に応じて、実態に応じていろいろと弾力的に
考えにゃならぬという面も確かにあると思います。しかし、同じ
国家公務員として同じ行為をやって、ある者は処罰を受ける、ある者は処罰を受けない、こういう不公平は私はあってはならないと思うんですね。
国家公務員法で懲戒に関する規定は第八十二条でございますけれども、この第八十二条を見ますと、極めて抽象的にしか書いていない。これでは全く基準にならないんです。
ちょっと読み上げてみますと、
職員が、左の各号の一に該当する場合におい
ては、これに対し懲戒処分として、免職、停
職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この
法律又はこの
法律に基づく命令に違反
した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った
場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非
行のあった場合ということで、これだけでは一体どんなことをやったら懲戒処分を受けるのか職員だってわからないはずですよ。また、各省庁の管理者だってわからぬ。だから、省庁の実態に応じてと言いますけれども、やはり職務の実態に応ずる面と同時に、省庁の伝統的な厳しい甘いということもあるかもしれません。これはぜひ横断的な会議を開いて、先ほど来
研究会を続けておるという
お話もございましたが、その
研究会においてでも何でもいいですけれども、
公務員として統一的な処分基準というものが、これは成文法でなくてもいいです、それは
人事院のおっしゃるように事例の積み重ねという形でもいいですけれども、共通の
理解というものができなければ、まことに不公平を招くんではないか、現に省庁別に不公平になっておるんじゃないかなという気がいたしますので、一言申し上げておきます。
さて、時間も残り少なくなってきましたので、先ほどちょっと申しました抜本的な改正ということについての私の
考え方を一言申し上げたいと思います。
国家公務員法というものは、国と
公務員との
雇用関係を規定するものでございますから、そうすると一度
雇用関係を離れたら
任命権者の懲戒権は及ばない、これが普通の公定解釈でございます。恐らく
総務庁長官も何度もその話を聞かされて、だからだめなんですと人事
局長に説得されて、それにもかかわらずここまで踏み切ったということなんだろうと思うんです。しかし、私はこの公定解釈に根本から疑問を持っているんです。何で
国家公務員法が
退職者を処分してはならないということを規定しているのか、そんなことはないはずだと。
例えば秘密を守る義務というのがあるんです。これはやめた後だって秘密を守らにゃいかぬのですよ。それから、
国家公務員法じゃないけれども、
国家公務員を表彰するとか、あるいは一番極端な例は叙勲でございますけれども、こういったものは、やめて長いことたってから在職中の功績に基づいて叙勲するというようなことが行われておるわけでございまして、在職中のことはもうやめたらばそれきりだ、終わりだというのは全くおかしいと思うんですよ。
岡光事件の場合は別といたしまして、普通、収賄事件では在職中に発覚する場合もあるけれども、
退職後に初めてあらわれるというケースが多いんです。そうしますと、
退職後に発覚して、これはけしからぬということが新聞に出ても、検察で調べてみて起訴までは至らない軽微な事件であるということだと、これは終わりになってしまうわけなんです。行政罰の方は刑事罰よりも軽微なものでももちろん取り扱うわけでございまして、軽微だったらば軽微なりに何らかの懲戒処分をすればいい。減給あるいは戒告、あるいはもっと下の訓告とか厳重注意とか、そういったものがあってもいい。殊に芋づる式で在職者と
退職者と絡んで出てきたというような場合に、在職者は重い処分をします、
退職者はおとがめなしですと、こういうことはまことに不公平なんですね。
それからもう
一つ、監督責任という問題がございます。例えば、税務署でも警察署でもいいですけれども、署員の悪いやつがいて収賄しておった、それが発覚した時点で、もう五年も十年も悪いことを続けておったという時点で、昔の署長さんはみんなやめちゃっていますから今の署長さんだけが代表で監督責任処分を受けるというようなことになる、これも全く不公平な話でございまして、そういう汚職のきっかけとなったときにいた署長が一番監督が悪かったわけですから、その人が一番重い処分を受けなきゃならぬはずですね。そんなようないろいろな問題を
考えますと、
退職後に在職中の非違行為について処分できるという
制度がぜひ必要だと思うんです。
これは
公務員法の枠の中で
考えられないということは何か私もわかるような気がします。だったら別の
法律だっていいじゃないですか。何かこれを
考えるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。これはやはり所管からいっての
人事院とそれから
総務庁と両方に伺います。