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政府委員(楠田修司君) 事務的な問題、動きもございますので、あわせて三件お答え申し上げます。
一つは、
放送法における
報道の自由とそれに対する人権とか、そういう問題であります。
御
承知のように、
放送法では、
放送法三条におきまして、憲法の表現の自由からくるものであろうと思いますが、
放送番組編集の自由というものが規定されております。「
放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と。ただ、三条の二におきまして、「
放送事業者は、
放送番組の編集に当たっては、次の」ということで、公序良俗、政治的公平、
報道は事実を曲げないこと、それから対立している問題は多角的な見地から見る、こういうことをしなければならないというふうに内在的制約としてなされておるわけであります。
これは、これまでも何回か御説明申し上げましたが、
放送法というのは
放送された
放送に対する規律でありまして、
放送の取材とかそういうものには及ばないということを考えておるというふうに理解しております。
そうしますと、取材とかそういう
段階のこういう行き過ぎとか人権侵害等はどういうふうに規律するのかということは、先ほど
大臣からも申し述べましたように、やはり
報道倫理の問題、こういうふうにとらえまして、
放送事業者がみずから倫理を決めていく、このよしあしはありますけれ
ども、まずそこが基本であるということであります。
次に、じゃ
報道番組の適正化をするのにはどういうものがあるか、十分ではないのではないかというところで、
放送番組審議
機関というものが現在の
放送法には決められておるわけでありまして、これは、各
放送事業者が外部の方を招きまして番組に関する適正化の審議をするわけであります。大体月に平均一回やっております。
しかしながら、何らかの形で
諮問がなされて
意見が出されるということは非常に少ない。といいますのは、法
制度上、個人がいろんな番組に
意見を言っても、それは番組審議
機関の
意見ではない、個人の
意見でありまして、番組審議
機関として大きく
意見をまとめて
放送事業者に言う、あるいは
放送事業者が何かを
諮問するということは事実上行われなかった、こういう点がございます。そういうことで、この番組審議
機関をまずひとつ活性化することが大事であるということがございます。
それからもう
一つ、番組審議
機関は外から何をやっているかなかなか見えない、内部で何かこそこそやっているんじゃないか、こういうふうな感じがどうしてもするという
意見がたくさんございました。そういうことで、外部に見えるようにするということが大きな
課題であります。そういう
意味で、現在、この
放送番組審議
機関の活動
内容が外によく見えるようにする、これが
一つの
課題でございます。
それから、審議
機関が活性化するようにする。例えば、いろんな審議事項というものを法律で決めていく。苦情なんかが来たときにどういう苦情があったかということを番組審議
機関でやったらどうだ、こういうようなことも
一つの
課題でありまして、そういうことを含めまして、これは
放送法の改正をお願いしなければならないものでありますから、
一つの検討
課題として現在考えておるところでございます。
それからもう
一つは、苦情の処理の問題であります。現在、
放送番組におきまして、松本サリンのときもそうでありましたが、人権侵害のようなことが起こる、あるいは
放送基準に反するような
放送が行われて非常に問題になる、いろんな場合があろうかと思いますが、そういう場合、一般の苦情というのは個々の
放送事業者に参ります。
これは非常にたくさんありまして、例えばNHKですと、激励とか
意見とかいろいろ含めますと年間数百万件あると言われております。そういうふうな中で、やはり権利侵害に関するような大きな苦情が出てまいります。基本的には
放送事業者で解決されるものでありますけれ
ども、どうしても解決されない場合は今は裁判に訴えるしかない、こういうようになっております。
ところが、日本の裁判
制度というのは、残念といいますか非常に時間がかかる。それから、日本人はなかなか
アメリカのようには裁判に訴えない。こういうようなことも議論になりまして、そうすると、そういうふうな大きな苦情について、
放送事業者への苦情では
放送事業者であるからどうなっているかわからない、第三者的な人の
意見を聞くような、外の人の
意見を聞くような何らかの
機関をつくるべきではないか、これが今考えられておる苦情処理
機関であります。
したがいまして、基本的には、
放送事業者で解決できないもので、裁判に行くまでの
段階で、苦情処理
機関をつくって、そこで第三者的な外部の方が五人とか七人集まって、そこで独立的な
意見を聞いて、それを
放送事業者に見解として示すとかいろんな形で反映していく。それでもどうしてもまとまらないときは裁判になると思いますが、そういう
制度がいいのではないかということになります。
これのつくり方として、先ほど
先生御
指摘のように、
放送事業者が自分たちで自主的に、NHKもありますし民放各社もありますから、それらがお金を出し合って人を独立的に選んでつくるというのが
一つあります。それから、法律にやっぱりそういうことを基礎づけるべきではないかという
意見があります。それから国が公共的につくるべきではないか、こういう
意見が大きくあります。それから全く別の見地でありますが、こんなものは一切要らないという
意見もございました。
こういうふうな中で、
郵政省、我々としては、やはり何らかの形で
意見を聞く独立の苦情対応
機関というのが必要だと考えておりまして、どのようなつくり方が適切かということは、現在各界の
意見を聞きながら検討しておるところでございます。