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1997-06-06 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月六日(金曜日)    午後一時五分開会     —————————————    委員異動  六月五日     辞任         補欠選任      益田 洋介君     林 久美子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 久保  亘君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 岡  利定君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 林 久美子君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        金融制度調査会        会長       館 龍一郎君        全国銀行協会連        合会会長     佐伯 尚孝君        早稲田大学商学        部教授      立脇 和夫君        東京国際大学経        済学部教授    田尻 嗣夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本銀行法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、益田洋介君が委員を辞任され、その補欠として林久美子君が選任されました。     —————————————
  3. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 日本銀行法案議題といたします。  本日は、本案審査のため、四名の参考人方々から御意見を承ることとしております。  御出席をいただいております参考人は、金融制度調査会会長館龍一郎君、全国銀行協会連合会会長佐伯尚孝君、早稲田大学商学部教授立脇和夫君、東京国際大学経済学部教授田尻嗣夫君、以上の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  参考人の皆さんから忌憚のない御意見をいただきまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず、館参考人佐伯参考人立脇参考人田尻参考人の順序で、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお、意見陳述質疑、答弁とも、発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず、館参考人お願いいたします。
  4. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 御紹介いただきました館でございます。  本日は、大蔵委員会日本銀行法改正問題について参考人としてお招きをいただきまして、意見を述べる機会をお与えいただきましたことに対してお礼を申し上げます。  現行日本銀行法は、昭和十七年の太平洋戦争の最中に制定された法律でございまして、御案内のように戦特色が非常に強く残っておりまして、戦後GHQの指令に基づきまして政策委員会を新設して日本銀行最高意思決定機関とする等若干の改正はありましたが、これらの点を除いて基本的な改正を見ることなく今日に及んでおります。したがいまして、今日の時代にそぐわない点も多々ございまして、経済金融市場化国際化が進展いたしました現在においては、その抜本的な見直しが必要であり、改正は遅きに失したと思われるのでございます。  もちろん、この間、政府においても洪手傍観していたわけではなく、昭和三十二年から三十五年にかけて、金融制度調査会において、中央銀行制度に関する広範な議論を行い、三十五年には日本銀行制度に関する答申が出されましたが、その際には立法化を見ないまま見送られました。また、昭和四十年にはこの答申をしんしゃくした上で大蔵省日本銀行との間で集中的な検討が行われ、改正案を作成し、金融制度調査会へその改正案報告も行われたのでございますが、結局、国会に上程されるに至らず今日に至っているという次第でございます。  今回の改正が比較的短期に行われ得たのは、まず第一に、その前段階として昭和三十二年以来、中央銀行制度について広範にわたる検討が行われてきたということ、それから第二には、海外諸国におけるインフレーションと中央銀行独立性に関する豊富な経験と理論・実証の両面における近年の研究の蓄積があったということが短期間に行われた大きな原因であったというように申してよろしいと思います。  今回の日本銀行法改正金融システム改革の一環として最初に取り上げられたのは、いわゆるバブルの発生と崩壊、その後の不良債権問題が金融政策に関する国民の関心を高めることになりましたが、日本銀行国民市場信認を得るためには、中央銀行独立性政策運営透明性という観点から政策決定枠組み全般について改革を行うことが必要であるというだけではなく、二十一世紀に向けて我が国市場を自由かつ透明で信頼できる市場とすることを目指した改革を進めるに当たって、二十一世紀我が国金融システムの中核にふさわしい日本銀行のあり方を検討する必要があるという考え方に基づくものでありまして、昨年、総理の私的研究会として中央銀行研究会が開催されまして、開かれた独立性を軸とする報告書が提出されました。  その報告書提出の後、金融制度調査会では、先ほど述べました問題意識に立ちまして、中央銀行研究会の基本的な考え方を踏まえながら、調査会として日本銀行法改正小委員会を設けて、具体的な法案についての検討を行い、平成九年二月、改正に関する答申を行ったところでございます。  なお、本日、私がお招きをいただいている肩書は金融制度調査会会長というようになっておりますが、金融制度調査会会長として申し上げる場合にはどうしてもそれを読み上げればほぼ目的を達するということになってしまいますので、多少私見を交えながらお話をすることをお許しいただきたいというように考えるわけでございます。なるべく調査会答申に沿ってお話をいたしますが、多少の私見を述べることをお許しいただきたいと思います。  そこで、私見でございますが、独立性自主性という二つ言葉が使われてきたわけでございますが、私見では独立性自主性というのはほとんど区別がなくて、ほぼ同義というように解してよろしいと考えております。したがいまして、その二つの違いは結局は実質の問題ではないだろうかというように考えております。  なお、中央銀行についてなぜ独立性あるいは中立性が問題とされるかと申しますと、金融政策にはまず第一にインフレ圧力が加わりやすいという先ほど申し述べました理由に加えまして、金融は専門的、技術的であり、かつまた第三に信認と申しますか、信頼を確立するためには政策連続性がなければならないということから、短期的な視点あるいは感覚的な判断によってもたらされる混乱をできるだけ小さくしていく必要がある。そうでないと、どうしても中央銀行に対する信頼確保が難しいということから、日本銀行あるいは世界各国中央銀行において独立性あるいは自主性ということが強調されるのであるというように考えております。  次に、日本銀行の行う金融政策を法文に即して申しますと、「通貨及び金融調節」というようになっておりますが、以下ではそれを一まとめに金融政策と呼ばさせていただきますが、金融政策目的を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というように、物価の安定を日本銀行目的として明示しておる。と同時に、物価の安定を通じて国民経済発展に資するというように目的規定したというのが今回の改正一つの特徴ではないかというように考えております。  この点につきましては、マネタリストと呼ばれる人々の考え方がございますが、そのマネタリスト考え方からは当然反論があり得ると思いますが、日本銀行法改正に当たりましては、マネタリスト考え方を採用することなく、多少の弾力性を与えるという意味で、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということを政策目的というようにしておるわけであります。  なお、物価の安定として、通貨価値の安定というようにしなかったということに対しては、これは外国の中央銀行の最近設定された例にならったというわけではなくて、変動レート制のもとで国際的な資本移動が自由な場合、通貨対内価値対外価値、この二つを同時に安定させるということは非常に難しいという場合があるということから、何よりも優先すべきは国内の物価であるという意味で、物価の安定というのを掲げているわけであります。  金本位制であるとかあるいはドル本位制を採用しているというような国の場合には対内価値対外価値が一致するわけでございますけれども日本のように変動レート制を採用し、かつ資本の自由な移動が行われているところで通貨価値の安定を達成しようということになりますといろいろの問題が生ずるというところから、以上のような規定を置いたということであります。  それから、改正案日銀目的の二といたしまして、「資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序維持に資すること」を挙げているわけでありますが、日本銀行流動性最後貸し手ではあっても、経営健全性に問題がある銀行救済日本銀行機能ではなくて、大量の救済融資等についてはこれを限りなく行っていくというような場合には、日本銀行信用自身影響を受けることになります。したがって、救済融資という問題については、政府から特別の要請があった場合に日銀が適切であると判断した場合に限定するということが適切であるというように考えられまして、この法案においてもそういう考え方がとられております。  また、同じような問題として、政府に対する信用が限りなく行われるというようなことになりますと、日本銀行に対する信認が失われる危険性があります。そこで、現在は財政法第五条に規定しております対政府信用の問題について、これを日本銀行法の中に入れて、特別な場合を除いては日本銀行が担保を徴求することなしに政府に対して貸し付けを行ったり国債の引き受けを行うということを禁止するという規定を置いております。  改正の最大の課題は何かと申しますと、それは、外部からのインフレ圧力等の干渉を排して物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するためには、政策委員会強化してその自主性を高めると同時に、政策委員会判断独断偏見によってゆがめられることがなく中立的で公正、的確なものでなければならないということ、これが今度の改正の一番の眼目であるというように考えておるわけであります。  そこで、政策委員会強化のための規定をしているわけであります。そのときに問題になってくる一つは、つまり政府日本銀行関係をどういうように規定するかという問題であるというように考えます。言葉の問題については、一番最初に申し上げましたように、独立性と言うか自主性と言うかということはそれほど基本的な問題ではないというように考えるわけでありますが、実質的には日本銀行決定自主性が今申しましたような意味確保され、同時に一方で、日本銀行独断偏見によって判断をゆがめられてしまうのに対するチェックがないという状態を排除するということが一番重要な点であるというように考えているわけであります。  政府日銀関係につきましては、改正法の第三条、四条、五条におきまして、第三条は金融政策については日銀自主性尊重規定しておりまして、これは今回の改正のポイントでございますから当然のことであります。それから、第五条については、金融政策という狭い範囲を超えた業務全般について、その第二項で、「この法律運用に当たっては、日本銀行業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」というように規定するという形で、日本銀行独立性を担保するという規定を置いているわけであります。  なお、独立性の重要な指標の一つであります政府による総裁以下の役員の罷免あるいは政策委員意見の違いに基づく罷免等を禁止する、さらに任期を相当長期に決定しているといったようなことは、これすべて政府からの日銀独立性を担保するための要件であるというように考えております。  しかし同時に、もう一方では、一番最初にも申しましたように、開かれた日本銀行にして、さらに独断偏見に陥らないようなチェックをかけるという意味で、アカウンタビリティー、説明責任を非常に重視するという考え方をとってこの法案はつくられているように見受けられます。  したがいまして、私といたしましては、この法案ができるだけ早く成立し実施に移されていくことが何よりも重要ではないか。この旧日本銀行法について言いますと、もう既に大変時代おくれのものになっているということを考えますと、何よりもこれが承認され実施に移されていく、そして先ほど来申しました自主性尊重とそれから独断チェックするというその両面からのチェックが必要であるというそのことを関係者一同が正しく認識してこの運用に当たっていかれれば、新日本銀行法世界一つ範例になっていくのではないかというように思います。  正確な情報はまだ得ておりませんけれどもイングランド銀行法改正議題に上っておりますが、この改正もほぼ今回の日本銀行法改正に近い状態になっておるということを御参考までに申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  5. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ありがとうございました。  次に、佐伯参考人お願いいたします。
  6. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 全国銀行協会連合会佐伯でございます。  参議院大蔵委員会参考人としてお招きいただき、意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことに対してお礼を申し上げます。本日は、日本銀行法の抜本的な改正の御審議に関して、民間金融機関経営に携わる者として意見を述べさせていただきたいと思います。  なお、意見陳述に先立ちまして、一連の不祥事件に関しまして一言述べさせていただきます。  今回の事件につきましては、銀行界といたしましても大変重大に受けとめておりまして、遺憾のきわみでございます。常日ごろより銀行公共性社会的責任重要性を踏まえて経営に当たってきたつもりでありますが、改めて身を引き締めて組織規範の徹底を行うなど、不退転の覚悟で信頼の回復を図ってまいりたいと存じております。反社会的勢力に対する私どもの取り組みを含めて、先生方におかれましても、引き続き大所高所よりの厳しい御指導をぜひお願い申し上げたいと思います。  さて現在、我が国金融のみならず経済社会のあらゆる面におきまして構造改革を進めるという壮大な目標の実現に向けて国を挙げて取り組んでいるところであります。今般の日本銀行法改正もこうした流れの中に位置づけられていると思います。この金融システム改革要請二つの側面を持っていると認識しております。  まず第一は、金融システム改革金融機能活性化を通じて日本経済活力維持に不可欠であるという面がございます。いわば内からの自律的な要請ということであります。経済活動資金仲介面からお手伝いさせていただく金融機関は、成長産業に対して円滑に安価で良質な資金供給することのみならず、千二百兆円に達する我が国の家計の金融資産をより有利に運用する手段を提供するためにも、血液を送り出す心臓のごとく強靭なポンプとしての役割を期待されていると認識しております。  次に、金融システム改革各国金融市場間の主導権争いが進む国際金融市場の中で、避けて通れない試練であるという面がございます。これは外からの他律的な要請ということが言えると思います。経済活動国際化に加えて情報通信技術の驚異的な発展を背景に、世界金融市場は大きく変貌を遂げております。この結果、金融商品を選ぶのと同じようにどの金融市場を利用するかを利用者自身が自由に選択できることが現実のものとなっております。  この間、各国金融当局金融機関はこぞって利用者に魅力的な金融市場づくりに力を入れております。九九年の通貨統合に向けた欧州の金融システム改革、本年改めて持ち株会社傘下での金融業務の一層の自由化を議会において討議している米国等、二十一世紀をにらんだ金融システム改革主導権争いは、これからさらに強まり、加速されるものと考えます。  海外金融システム改革我が国以上に急速に進んでいることを考えあわせれば、我が国改革はドラスチックかつスピーディーに行われることが必要不可欠であると考えます。  昨年十一月に橋本首相が指示され、検討が進められております我が国金融システム改革、すなわち日本版ビッグバンでは二つ改革の柱が示されております。  第一に、グローバリゼーションのうねりの中で、我が国金融市場を国際的にも競争力があり、利用者投資家にとって魅力ある市場へ向けて改革すること。それから第二に、現在の不良債権問題を早期に解決することであります。そして、そのいずれにおいても我が国中央銀行である日本銀行は重要な役割を果たすことが期待されていると考えます。  すなわち、新しい金融システムにおいては何よりも市場規律の貫徹による市場メカニズム発揮が求められております。国籍を問わず、世界金融機関市場規律自己責任を十分理解した上で、多様なノウハウを生かして公正な競争を行うことができる土俵をつくることがすべての前提だと考えます。  中央銀行には、その市場メカニズム発揮の重要な機能を担っていただかなければなりません。既に日本銀行金融政策は、金融機関への貸し出し等を通じたボリューム調節から公開市場操作を中心とする市場参加者との取引を通じたマーケット調節へとスタイルを変えております。そうした流れの中で一段と重要性を増すのが中央銀行金融政策への信認であろうと考えます。  この意味で、中央銀行には今まで以上の確固たる権限責任が与えられる必要がございます。その上で、その金融政策海外を含めた市場参加者に透明かつ公正であるという理解を得る工夫を凝らすとともに、信認を得るための着実な実践の積み重ねが必要であると考えます。  また、瞬時に大量に発生する金融取引が安全、確実に遂行されるために、決済システム充実強化も重要となってまいります。これまで民間金融機関日本銀行の支援のもとに効率的かつ安全な決済システムの構築に努力してまいりました。さらに、現在日本銀行におかれては、私ども金融界を交えて日本銀行当座預金即時決済化、いわゆるRTGS化決済システム改革について取り組まれておられます。銀行銀行として金融機関に対する決済サービスを提供する日本銀行役割はこういった面からも一層重要となるのであります。  次に、二つ目の柱である不良債権処理でありますが、当然のことながら、私ども金融機関自己責任において解決すべき問題であり、早期処理に向けて努力してまいりました。  ただ、私ども民間金融機関といたしましては、経済安定成長に向けた適切な金融財政政策実施とともに、万一、信用秩序維持に不安が生じた場合には、最後貸し手機能を持つ日本銀行による流動性供給日銀大蔵省預金保険機構等関連機関信用秩序維持のための機動的かつ適切な対応をお願いしているところでございます。  さて、ここで日本銀行法改正において、金融界からの要望等につき三点ほど述べさせていただきます。  第一点は、開かれた独立性を確立していただきたいことであります。  日本銀行独立性確保につき、この法案では、まず政策委員会を改めて最高意思決定機関として位置づけ、学識経験者等金融政策に造詣の深い人物本位の構成とするなどの手当てがなされております。そのほかにも、現行法における大蔵大臣による業務命令権の廃止や広範な監督権の制限、人事面経費面における政府監督権限明確化等により、日本銀行独立性は高められたと考えます。さらに、現行法では規定のない議事録等の公表により、政策運営にかかわる意思決定過程透明性が高められております。  日本銀行組織的独立性が高まり、政策決定過程が私どもを含め市場参加者に公開されるようになることは、冒頭でも申し上げましたように、中央銀行への信認を高める必要条件が相当程度満たされたものとして評価できるのではないかと考えます。と同時に、金融制度調査会答申にも述べられておりますように、今後新しい制度運営に携わる日本銀行の皆様が適切な政策運営の遂行に取り組み、独立性強化があわせ持っている国民に対しての重大な責任を果たすことによって、世界金融市場をリードしていただくことを期待しております。  次に申し上げますのは、金融システム安定性維持についてのお願いでございます。  一国の金融システム信認を獲得するためには、まず決済システムの運行の安定性確保しなければなりません。現在、日銀当座預金を利用して、九六年、年間平均で一日当たりおよそ三百十五兆円の決済処理されております。グローバルレベルにおいてはさらに巨大な規模の決済がなされているわけで、決済のスケールは飛躍的に拡大していっております。こうした状況にかんがみ、たび決済システムに不測の事故等が生じた場合には、金融システム全体にはかり知れない影響をもたらすことが予想されます。  法案では、決済システムの機械上の事故などに際し、日本銀行政策委員会の独自の判断で期間を限定して流動性供給ができることが法制化され、機動的に対応するすべが図られております。さらに、信用秩序維持に重大な支障が生じるおそれがあると認めるとき等においては、大蔵大臣要請により中央銀行最後貸し手機能が発動されると定められております。  これらの手当て日本銀行による資金供給発動条件を明確化するとともに、信用秩序維持に対して大蔵省日本銀行役割分担責任の所在を定めたものであると認識しております。  こうした法案の趣旨にのっとった金融システム安定性維持についての日本銀行の適時適切な措置及び関連機関役割分担と連携による迅速な対応をお願いしたいと考えます。  最後に、日本銀行による考査について申し上げたいと思います。  私ども金融機関経営健全性については、各金融機関における内部考査、会計士による外部監査に加えて、大蔵省検査日本銀行考査によってチェックが行われております。  さらに、今般の不詳事件を踏まえ、各銀行において改めて法令遵守体制の拡充や、反社会的勢力に対する従前にも増した毅然とした行動をとってまいります。  一方、今回の改正法案では、日本銀行考査につきまして、任意考査契約を結ぶことについて法制化手当てがされております。ただ、日本銀行考査は、監督権に基づく大蔵省検査とは異なり、あくまで日本銀行最後貸し手機能発揮するため、目的に沿った必要な範囲相手先金融機関との任意契約に基づき行うものと位置づけられております。したがって、まず法案の四十四条二項にもございますように、大蔵省検査との様式の統一化等、私ども金融機関の事務負担軽減等には十分御配慮いただきたいところであります。  今後、考査約定の内容については御検討いただくことになろうと思いますが、全銀協としてはみずからの自浄能力を高める努力を続けるとともに、日本銀行考査目的と平伏を合わせた考査実施方法等につきまして、誠意を持って御当局と協議してまいりたいと考えております。  また、九七年度から早期是正措置の試行開始に伴い、金融機関の資産内容については自己査定と外部監査の組み合わせによる新たな管理体制がスタートいたしますこともあり、金融機関の健全度による考査の頻度、内容の柔軟かつ弾が的な実施等、運用面の工夫についてもお願いしてまいりたいと思います。  以上、日本銀行法改正の御審議に際し、私どもの考えを述べさせていただきました。本国会には、日本銀行法、独禁法、金融監督庁設置法と、我が国金融システムの根幹に触れるシステムの見直しを図る法案が提出されております。これらはいずれもほぼ半世紀ぶりの改正であり、二十一世紀の新しい金融システムのフレームワークを構成するものと認識しております。  その中で、私ども金融機関は、社会的責任の重さを自覚しながら、みずからの経営資源を最大限に活用し、創意と工夫で利用者に最大の満足をもたらしたいと願っております。そして、二十一世紀においても金融サービス業が我が国経済発展にお役に立つ、信頼される産業であるべく改革に全力で取り組んでまいる覚悟でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。先生方におかれましては、どうか私どもの趣旨をお酌み取りいただくとともに、今後とも御指導、御鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  7. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ありがとうございました。  次に、立脇参考人お願いいたします。
  8. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) 御紹介にあずかりました早稲田大学教授の立脇でございます。  本日は、日本銀行法案の審議に際しまして、参考人としてお招きをいただき、意見を申し述べる機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。  さて、近年、世界各国におきまして中央銀行法の改正が相次いでおります。一週間ほど前に金融学会全国大会が開かれまして、イスラエル中央銀行総裁で著名な経済学者でもあるジェイコブ・フレンケル氏の特別講演がありました。演題は「中央銀行独立性金融政策」ということでありましたが、このフレンケル氏によれば、一九九〇年代に入って中央銀行法を改正した国は三十カ国に及ぶということであります。しかも、そのいずれもが中央銀行独立性強化する方向での改正であるということでございました。  我が国におきましても、御高承のとおり昨年六月、連立与党の金融改革プロジェクトチームの報告を契機といたしまして、橋本総理のお声がかりで中央銀行研究会が設けられ、その報告書を受けて十一月以降は金融制度調査会でさらに検討がなされて、二月にこの答申が出されました。そして、三月には法案が国会に提出されてまいったわけでありまして、大変喜ばしいことと存じます。  今回の日銀改正の柱は、館先生からもお話がございましたように、日銀独立性強化政策決定過程透明性を高めるということでありまして、私ども学会の人間も大きな期待を持ってこれを見守ってまいりました。  しかしながら、国会に提出されました法案を拝見いたしますと、その内容は、確かに戦時中に制定されました現行日本銀行法に比べますと、大蔵大臣の一般的監督権業務命令権の廃止、役員の身分保障、政策委員会議事録の公開など幾つかの前進は見られますけれども中央銀行独立性確保という点では依然として問題が多く残されているように感じられます。例えば、欧州諸国では今通貨統合を目指して欧州中央銀行制度の創設を進めているわけでありますが、その欧州中央銀行制度の内容などと比べますと相当な開きが感じられるわけであります。  その内容については後ほど触れさせていただきますが、今後、世界金融資本・為替市場のグローバル化が一段と進むと見られる中で、果たして新生日本銀行が二十一世紀にふさわしい中央銀行たり得るのかということに少なからず懸念を持つものであります。  そこで、以下、幾つか疑問に思われる点を取り上げてお話を申し上げ、諸先生の今後の御審議の御参考にしていただければ幸いかと存じます。  まず第一点は、金融政策目的のところであります。法案第二条には、「日本銀行は、通貨及び金融調節」、これは金融政策と読みかえてもいいと思いますが、金融政策を「行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とありますけれども通貨価値の安定を図ることを目的とするというふうにはっきり明示すべきではなかろうかと思うわけであります。法案ですと、国民経済の健全な発展目的になっているような印象さえ受けるのであります。  申すまでもなく、我が国の無制限法貨である日銀券の発行者であります日本銀行は、通貨を適切に管理し、その価値の安定を図るということは何にも増して重要な使命であるとありまして、それを担保する手だてが当然必要なわけであります。それが独立性の根拠であろうかと思います。例えば、貨幣価値が変動いたしますと、不当な富の社会的な再配分が生じますし、また通貨には価値尺度の側面もございますので、物差しが伸びたり縮んだりしたのでは価値尺度の意味をなしません。そして、一般に物価といいますと、生産物とかサービスを含むわけですが、資産価格というものは含まれておりません。さらに、対外価値、つまり為替相場も通貨価値の重要な側面ですので、これを無視するわけにはまいりません。今日のように国際化、グローバル化が進んだ時代におきましては、なおさらであります。したがいまして、為替市場介入も日銀責任で行うべきではなかろうかというふうに考えるわけであります。  もちろん、対内価値の問題と対外価値の問題は常にパラレルに動くとは限りませんので、その運用面で難しい面もあるかと思いますが、両方が相並び立たずというときには、やはり国内物価を優先するということにいたしましても、為替相場はどうでもいい、金融政策担当者はこれを顧みないということでは問題があるのじゃないかというふうに考えるわけであります。  次に、第二点でありますが、日銀政府関係であります。法案の第四条には、日銀金融政策政府経済政策と整合的なものとなるように、「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」というふうに規定されておりますが、こうした規定がありますと、日銀は前もって政府と相談しなければ独断では何もできないということになりはしないかと懸念するわけであります。もしそうだといたしますと、現状と余り変わらない、公定歩合を変更するのに一々事前に大蔵省の了解を得ないと実行できないという現状と余り変わらないことになってしまうのではないかと思うわけであります。  この点、欧州中央銀行法では、政策運営に当たっては欧州中央銀行及び加盟国中央銀行は、欧州連合の諸機関あるいは加盟国政府から指示を受けたりあるいは加盟国政府に対して指示を仰いだりしてはいけないということで、一切の接触を禁止しているわけでございます。それと比べますと余りにも対照的ではなかろうかと思うわけであります。  第三点は、第十九条第二項に規定されています大蔵大臣等による議決延期請求権であります。これは、恐らくドイツ連邦銀行法の規定を導入した結果であろうかと思いますけれども、ドイツの場合は議決延期権でございますが、ドイツの議決延期権はマーストリヒト条約に違反するということで、欧州通貨機関、EMIから指摘を受けまして、ドイツも既に改正を決めているというふうに伝えられます。つまり、ドイツが四十年前に採用した議決延期権、そして今これを放棄しようとしているわけです、それを日本銀行で取り入れようというわけであります。  もちろん、議決延期請求権は、議決延期権と同じではありません。しかし、日本の現実に照らした場合、政府日銀のバランス・オブ・パワーからしてその差は歴然たるものがありますから、政府から議決延期請求権が出された場合に、果たして日本銀行がこれを拒否できるかというと、大いに疑問であるからであります。  第四点は、政府に対する信用供与であります。法案第三十四条でございますが、日銀大蔵省証券などのいわゆる政府短期証券の引き受けができるというふうに規定されております。現に、日銀は公定歩合を下回る金利で巨額の政府短期証券を引き受けておりますけれども、今度の法案はその事実を追認することになるというふうに考えられます。これがインフレーションを引き起こさないという保証はありません。この点でもマーストリヒト条約では、欧州中央銀行及び加盟国の中央銀行政府並びにEUに対して一切の信用供与を行ってはならないというふうに規定しているわけであります。  私は、四月の初めに所用でカンボジアに行ってまいりました。新生カンボジアの中央銀行を訪問する機会がありまして、そこで、カンボジアが去年一月に制定したカンボジア国立銀行法を見せていただきました。その中にも、やはり政府に対する中央銀行信用供与を原則的に禁止するという規定がございました。それで私は、カンボジアはどこの中央銀行法をモデルにしたんですかと聞きましたら、彼らはどこかの銀行法をモデルにしたんではなくて、自分たちはグローバルスタンダードにのっとってつくったんだということで胸を張っておりました。  ちょっと話が横道にそれましたが、第五点は銀行券の発行保証に関する事柄でございます。現行日銀法三十二条には、「日本銀行銀行券発行高ニ対シ同額ノ保証ヲ保有スルコトヲ要ス」という規定を置いております。ところが、改正案では、これがきれいに消えてなくなっております。この発行保証の規定がなくなりますと、私、感じるんですけれども国民の保有するお札の発行基盤が失われまして、ひいては日銀経営基盤まで脅かされることになりはしないかという点であります。  ちなみに、九六年三月末現在の日本銀行の自己資本は約二兆円であります。これを総資産で割りますと、自己資本比率三・五%、決して高い数字ではありません。しかも近年、金融機関の破綻が相次ぎまして、日銀法二十五条あるいはその他の法律に基づく特融がたくさん行われておりまして、日銀の保有する資産内容は確実に悪化しているわけですが、こうした資産内容の悪化に歯どめをかけるためにも、銀行券の発行保証はぜひ復活してほしいというふうに思うわけであります。  それから第六点は、これが最後でありますが、大蔵大臣あるいは大蔵省、つまり財政当局と日銀との関係であります。さきに触れましたように、改正法案では大蔵大臣日銀に対する一般的監督権とか業務命令権は確かに廃止されています。しかし、限定つきながら予算の認可権とか違法行為の是正権限が財政当局に与えられておるわけであります。しかし、財政当局は財政資金の借り手でありますから、中立的であるべき日銀の監督者としては不適格ではなかろうかというふうに思うわけであります。  そもそも、各国政府中央銀行を設立し、本来国家主権の一部である通貨発行権を中央銀行にゆだねたのは政府みずからが通貨を発行した場合、これを財政資金に流用しようとの誘惑にかてない。そこでインフレを惹起したような苦い経験があったからであります。ですから、財政当局が中央銀行をコントロールするということになれば、何のために中央銀行をつくったのかということにもなりかねないわけであります。したがいまして、日銀の監督が必要だということであるならば、財政当局ではなくて、例えば総理府のようなところに監督をゆだねるというのが適切ではなかろうかと考える次第であります。  以上、大変辛口のコメントをさせていただきましたけれども、しかし、本法案は非常に短期間に極めて精力的に関係各位の御努力で今日に至ったものでありまして、現時点で修正するということもなかなか困難もおありかと思うわけであります。  そこで、私は大変僭越ではありますが、一つの提案がございます。よく欧米の法律で見かける例ですけれども、この法律の施行後、例えば五年を経過した時点で、しかるべき機関でこの法律をレビューしてもらう、そして当初立法者が予定したような改革が果たして進んでいるのかどうか、うまくいっていないとすればどこに問題があるのかといったことを調査させて、そしてこの大蔵委員会報告させるといった方法もお考えくだされば幸いかというふうに思うわけであります。  以上で私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。
  9. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ありがとうございました。  次に、田尻参考人お願いいたします。
  10. 田尻嗣夫

    参考人田尻嗣夫君) 東京国際大学の田尻と申します。  初めに、日本銀行法改正案につきまして、本日この場において私の見解を述べる機会を与えられましたことは、中央銀行制度研究してまいりました者の一人としてまことに光栄に存じ、感謝申し上げたいと存じます。  最初に、まず日本銀行法改正案そのものに対する私の基本的な見解を申し述べさせていただきます。  第一に、今般の改正案は議会主導でわずか一年数カ月で具体化したわけでございまして、このことは戦後の日本銀行法改正論議を初めといたします金融制度改革が官庁主導で進められてきた経緯に照らしまして、我が国金融史上画期的なことであると存じます。金融システム中央銀行国民の手に取り戻すための議会並びに各党の御努力に対して心から敬意を表したいと存じます。  今般の改正案は、全体主義と戦時金融体制に塗りつぶされました恐るべき現行日本銀行法を実に五十五年ぶりに抜本改革するものでございまして、民主主義と市場経済体制に基づく近代国家にふさわしい中央銀行を設計、構築していく、そのスタート台として、私はその基本精神を高く評価しておるものでございます。  もちろん、改正案の個々の内容、条文につきましては、中央銀行のあり方を理論と現実の双方から考えてまいっております者の一人として少なからぬ不安と不満足な点もございます。全体として、この改正後の日本銀行法のもとで、日本銀行がどのような形態の中央銀行に生まれ変わることができるのか不透明な部分も残っております。あるいは二十一世紀へ激変いたします金融環境にこの改正案で設定されました日本銀行の新しい枠組みがいつまで、どの程度の現実適合性を発揮していけるのか、その点についての疑問もなしといたしません。  しかしながら、もともと中央銀行制度には万古不変にしてかつどの国にも通用する普遍的な最適モデルというようなものは存在しないわけでございます。そもそも、中央銀行制度だけをその国の市民社会や市場経済の成熟度からかけ離れた形態に構築することは不可能なことでございますし、仮にそのような中央銀行制度を移植いたしましても、それは十分に機能し、効果を発揮するとは考えられないからでございます。中央銀行は、そういう意味におきまして、それぞれの国の経済風土あるいは法制度の体系、国民性との関係において決まってくる極めて個別的、個性の強い組織特性を持ったものだと考えます。  また、先進諸国も含めまして、中央銀行制度は、その理念、目的、組織論あるいは政策技術論などの面におきまして極めて未成熟かつ、なおエボリューションと申しますか、進化の段階にあるものでございます。したがいまして、今回の日本銀行法改正案づくりも、これが究極の決定版であるというものを期待するのは難しいわけでありまして、現実に可能な範囲中央銀行の枠組みをつくり上げ、金融経済環境の変化に即応する形で今後とも法改正運用上の工夫を積み重ねていくべき課題であると私は理解しております。  さて、中央銀行を設計する思想として、世界には政府中央銀行関係をめぐりまして二つの対極的な流れがございます。  第一の流れは、ドイツ・ブンデスバンクのように、中央銀行に対して憲法上と法律上で独立性確保さえすれば、殊さらに中央銀行に制約を加えずとも、中央銀行通貨価値を守るために正しいことを実行してくれるんだという信頼をよりどころにした自由の保障によって、中央銀行にその使命を果たさせていくという考え方であります。  もう一方の対極にあります考え方は、ニュージーランド準備銀行のように、物価抑制目標値の設定とその実行過程をカバーする契約を政府中央銀行が結ぶという法的な枠組みをきちんと整えることが通貨価値の安定に対する政府中央銀行の動機づけになるという考え方でございます。要するに、契約による法的な縛りをかけることによって中央銀行に使命を果たさせようという考え方でございます。  しかしながら、我が国の場合には、ドイツほど通貨価値を守ることについての国民的合意が強いとは言えませんし、ブンデスバンクほどには日本銀行国民からの信頼をかち得ているとも言い切れないわけでございます。また、ニュージーランドのように政府物価抑制目標を設定させるほどに国民政府信頼しているとも考えられないわけでございます。といたしますと、我が国におきます中央銀行制度は、中央銀行政府の緊張関係の中においてそれなりの独自の姿を求めざるを得ないわけでございます。  結果的には、新しい日本銀行法は、日本銀行政府権限責任がかなり交錯した、入り組んだ形にならざるを得ないという現実がございます。と同時に、このことは法律運用を誤りますと改正の実際的成果を確保できなくなるという落とし穴を持つことになるわけでございます。  このような理論と現実のずれ、そして二十世紀末の今日において初めて近代的な国家にふさわしい中央銀行法をようやく持つに至ったという歴史的な経緯を総括いたしますと、我々はこの日本銀行法改正案にはそれぞれの立場からそれぞれの意見はありましても、とにかくこれをあすへの踏み台といたしまして、金融政策とプルーデンス政策の実効性を高めていく真摯な努力が政府中央銀行、議会と国民、それぞれに求められているんだというふうに受けとめております。  改正案の個々の項目につきましては、修正が可能であればという前提でお話を申し上げたいと存じますが、立脇教授がいろいろ御指摘された部分と大筋において私もその意見を同じくするものでございます。  第一に、日本銀行目的でございます。第二には、日銀政策委員会政府代表が出席する場合に、「必要に応じ、」という表現が使われておりますが、この「必要に応じ、」というのはいかなる意味であるのか。常時出席することになれば現在と何ら変わりはないわけでありますし、あるいは政策当局の最高責任者ではなくて官僚が出席することになりますと、政策委員会が重要な意思決定をいたします場で、その場で答えられない場合には、事実上審議を中断するか延期せざるを得なくなる。つまり、政府が議決延期権を持つということになるわけでございます。あるいは、政府代表に議案提出権あるいは議決延期請求権を付与する問題、あるいは大蔵大臣に限定条件つきながら日銀業務の監督権限あるいは業務認可権、予算に関する認可権等々を与えております。  次に、今回の改正案ではカバーし切れなかったと申しますか、積み残された問題が四つございます。第一は、日本銀行による政府短期証券、いわゆるFBの全額引き受けの問題でございます。  諸外国におきましては、政府短期証券は市中公募を採用しておりますけれども我が国日銀全額引き受け方式は、通貨増発の抜け道になるおそれがあるばかりか、今御説明がございましたように、日本銀行の資産の健全性を損ない、結果として通貨に対する信頼性を損なうおそれのある危険な方法でございます。これを市中消化いたしますれば、市場金利並みで新しい発行が可能であるといたしますれば、その新しいマーケットは円の国際化を加速する極めて力強いマーケットとして成長することは間違いないわけでございます。  第二は、為替政策市場介入を大蔵省に一元化したことでございます。このことは現行と基本的に変わりはないわけでございますけれども、先ほど御説明ございましたように、国際的な流れの中で二十一世紀中央銀行がこれで対応していけるのかどうか、金融政策と為替政策というのは不即不離の関係にございます。  第三点は、日本銀行剰余金処分の方法についての改革が事実上見送られたことでございます。  第四点は、国際協調行動における日銀の主体性でございます。  国際金融市場では主導的立場に立つべき世界最大の債権大国であります日本中央銀行が、政府から対外的にも独立性、主体性が与えられてこそ初めて世界金融市場から信頼をかち取ることができるわけでございます。日本版ビッグバンが目指します東京金融市場世界のマネーセンターにすることも、それによって初めて可能になるわけでございます。  国際金融市場は、さまざまの自由を要求いたしますだけではなくて、国際金融市場我が国国内に存在いたしますことが国民に将来にわたって自由を保障してくれるものでございます。このことは九七年七月、中国に返還される香港のケースで、今後半世紀にわたって市場経済と自由が保障されるという事例をもってしても明らかなことでございます。  最後に、日本銀行法改正された後の問題として、私は日本銀行の自己改革こそ金融政策とプルーデンス政策の実効性を上げる上で最も重要なことだと考えております。  改正日本銀行法は、直ちに日本銀行独立性を与え金融政策とプルーデンス政策の実効性を上げるものではございませんし、ましてや通貨価値の安定や金融システムの安定に直結するものではございません。そういう意味で、法制度上の独立性の保障にもまさって日本銀行二つの点において自己改革をすることが必要だと考えます。  第一は、金融政策とプルーデンス政策独立性は新しい日本銀行法で自動的に与えられるものではなく、この新しい法律を盾にとって日本銀行が日常的な政策運営と業務の遂行に当たってみずから闘い取っていくものだという断固たる決意を固めることでございます。  一九三九年一月七日、独裁者のなすがままに通貨膨張を許し政策的に追い詰められましたライヒスバンクの重役会は、ヒトラー総統に対して、これ以上の財政赤字を中央銀行金融し続けることはできないとの建白書を送った事件が起こりました。この文書には、総裁のシャハトを初め、第二次大戦後のドイツ・レンダーバンク総裁となりましたフォッケ、そしてブンデスバンク初代総裁となりましたプレッシングら、戦後に世界最強の通貨マルクを育て上げることに貢献しました人たちが理事として全員署名しておったわけでございます。国家社会主義体制と軍靴のもとにライヒスバンクを隷属させようとしたナチス政権に対して、中央銀行が素手で立ち上がったという歴史でございます。この建白書がどのような結果をもたらすかということは承知の上での血判状であったといたしますれば、通貨価値を守るという中央銀行国民に対する責任に殉じようとした彼らの使命感と勇気に現代でも我々は脱帽すべきであります。  このような気迫と気骨が我が日本銀行にございますれば、一九七〇年代前半の実物価インフレ、さらには八〇年代後半の資産価格インフレを、わずか二十年足らずの間に二度もの大インフレを引き起こすことにはならなかったか、あるいはそれを軽微なものにとどめることができたに違いないと考えるわけでございます。  第二は、二十一世紀中央銀行とその総裁に求められるのは指導性ではなくて説得性であるということを強調したいと存じます。  透明性、すなわちアカウンタビリティーによりまして独立性はかなりの程度まで確保できるからでございます。中央銀行独立性透明性が相互補完関係にあるというのは中央銀行理論上の理想ではございますが、現実の世界中央銀行運営ぶりを見ますと、独立性を高めれば高めるほど透明性が低下するという二律背反的な問題が生じておるのでございます。  中央銀行透明性は犠牲にしてでも法制度上最大限の独立性さえ与えれば通貨価値の安定は期待できるという、いわゆるドイツ・ブンデスバンク流の考え方の前提には、第一に通貨価値の安定が何にも増して重要であるとの国民的合意と、中央銀行の行動に対する揺るぎない国民信頼感があることが条件となります。  しかしながら、残念ながら、我が国においてはこのような二つの条件は整っておりません。したがいまして、国民の合意と信頼が必ずしも高くない我が国の現状から申しますと、何より重要なことは政策決定透明性を高めることが重要だと考えます。  市場経済の時代におきましては、国民やあるいは市場参加者の先行きに対する期待形成、あるいは政策そのものに対する信認の度合いというものが金融政策の有効性に非常に大きな影響を与えます。  伝統的な中央銀行総裁の資質といたしまして、超然たる権威、知的厳格さ、そしてこうかつさといった三つの要素が指摘されてきたわけでありますけれども、このような旧態依然たる考え方にとらわれるならば、日本銀行は法改正後も新しい経済社会に適応していくことは不可能なことでございます。  最近の英国におきます中央銀行改正の動きに至ります経過を見ましても、法制度上の独立という名目上、外形上の改革よりも、政策決定過程の透明化という実質的な措置の方がはるかに重要性を持っておることを示しております。  最後に、インフレは常に通貨的現象であり、政治的現象であり、庶民の犠牲において進行するものでございます。  インフレはチューブ入りの練り歯磨きのようなものでございまして、一たん発生いたしますと二度ともとに戻すことはできないわけでございます。したがいまして、中央銀行に対するアカウンタビリィー、責任のとらせ方には限界があるわけでございまして、金融政策並びにプルーデンス政策と申しますのは、その政策決定過程運営過程の監視が何よりも重要でございます。  そのような意味におきまして、本院におかれましても、専門的かつ常時に金融政策、プルーデンス政策にかかわる中央銀行の行動をモニターされる専門の委員会としての金融委員会を創設していただくことをお願いいたしまして、私の意見といたします。  御清聴ありがとうございました。
  11. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行いたいと思います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 河本英典

    ○河本英典君 自由民主党の河本英典でございます。  参考人方々に順番に質問させていただきたいと思います。  きょうは四名の参考人方々、本当にありがとうございます。いろんな立場からお話を聞かせていただいたわけでございますけれども、まず館参考人からお話を聞かせていただきたいと思います。最初の部分でおっしゃいました、昭和十七年以来の改正で、タイミングとしては遅きに失したという言葉がございました。時間的にも長いということもあるんですけれども、状況が大変変わった、それから、その途中にも改正の動きがあったにもかかわらずできなかったのか、しなかったのかわからないんですけれども、遅きに失した。  このことを裏返しますと、我々はこの間から議論してまいりましたのは、この改正がもっと早く行われてうまく機能しておれば、金融政策がうまくいっておれば、あのバブルは少しは避けられたのではないかなという話が随分出ておったわけでございますけれども、その辺について御意見を伺いたいと思います。
  13. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 大変難しい問題でございまして、何によってバブルが生じたかということになりますと、単一の、例えば金融に原因がある、あるいは財政に原因があるとかというように一義的には決められない点があるように思います。  御承知のように、バブルが発生する過程でずっと物価は完全に安定していたわけでございます。日本銀行政策目標を仮に物価の安定一本に絞って考えていくとすれば、この場合には物価は安定していたんですから、金融政策には何の問題もなかった、こういうことになり得るわけでございますね。しかし、実際は資産価格がどんどん高騰して、資産における国民の間の格差は開いていくという状況が起こっているわけでございます。そういう意味で、どれか一つ、例えば日本銀行法が現在の形に改正されていればバブルは全く起こらなかったと言い切れるかということになりますと、そういうことも言えないだろうと思います。  しかし、現在のような改正が行われていれば、ある程度そのバブルを早期に発見し、抑えていくことは可能であったという面があることも事実であるというように考えております。
  14. 河本英典

    ○河本英典君 そのお話は大変長くなることを承知でお伺いしたんですけれども、どうしても聞いてみたい質問でございましたので聞かせていただいたわけでございます。  それから、先生おっしゃいました、これも我々の議論の中であったんですけれども独立性という言葉を使わずに自主性という言葉を使ったということについて、先生は同じ意味と解釈してよいという話であったんですけれども、同じ意味でよいというなら独立性の方がいいんじゃないかなというような気もいたすのですけれども
  15. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) この点につきましては、主には語感の問題ではないかと。自主独立というように、かつては自主と独立とを並べて使っていたわけでございまして、自主独立という言葉になじみを持ってきた世代の人間にとっては自主といっても独立といっても基本的にはそれほどの違いがないというように思います。  独立という場合には何々からの独立、必ずからなんですね。自主ということは、そういう何々からの自主ということではないという意味からいいますと、ある局面から見れば、自主の方が強いという側面さえあるというように考えておりますが、先ほども申しましたように、基本はその独立なり自主の内容としてそれを担保するようなシステムが本当につくられているかどうかという点が一番重要な点ではないかと思います。
  16. 河本英典

    ○河本英典君 ありがとうございます。先生にはまた後でいろいろお伺いしたいと思います。  佐伯参考人にお聞きしたいと思います。民間の金融機関としてお一人せっかく来ていただいたわけですので、日銀と民間の金融機関という関係で幾つかの接点があると思うんです。それをいろいろお話を伺ったわけですけれども、取りまとめて聞かせていただいて、どういったところにポイントがあるのか、それからどういった御要望、御要望があれば特に今言っておいていただいたらいいんじゃないかなと思います。  私ども日銀というのは、民間銀行に対して天下りの問題であるとか、それから威張っているんじゃないかなというような印象を持っておるわけです。その辺もなかなか言えないでしょうけれども、きょうは、だれか来ておられるでしょうけれども、せっかくですのでこの際いろいろ言っておいていただきたいなというふうに思うんで、どうぞお述べください。
  17. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 幾つかの視点があると思いますが、また歴史的にも戦後の時期には、さっきも私の冒頭の中で申し上げましたけれども日銀の貸し出し枠というような規制があって、そういうものが例えば一億ふえてもそれだけいろいろメリットがあるというようなことで、日銀との接点はそういうもの、それから公定歩合の貸し出しあるいは考査というようなものがあったわけですけれども、現在になりますと、そういういわゆる量的な規制も含めましてほとんどが外れております。  したがって、今接点というとおかしいですけれども、一番接点があるのは考査ではないかと思います。考査についてもいろんな見方があるんですが、我々の銀行の中の一定のところ以下の人は、考査が来れば一カ月か二カ月大変忙しいというようなことでいろいろ不満があるかもしれませんけれども、我々トップの方から見ますと、日銀が来ていろいろ中を見てもらった結果を我々にアドバイスをしてくれるというようなメリットもあるというふうな、決してお世辞を言っているわけじゃないんですが、双方いろいろあるんです。  ただ、今回この考査について特に改めて、日銀考査というものを表に出して法定化をされたということでございます。法定化といっても今までもあったわけですが、今度は契約を結ぶことができる、そして契約を結んで考査をすることができるということではっきり考査というのが位置づけられたわけです。  そうなりますと、必ず行われるということになるんですが、片方で大蔵省の検査というのがあって、今のままで実態を見ますと大変ダブっているところも多いし、報告事項も多いし、それで少し中身が変わって、また受ける方にすると大変な面があるというようなこともあるわけです。したがって、今回この四十四条でそういう考査について、取引金融機関の実態をその事務負担を配慮するというようなことまで入れていただいて、これから考査の中身というか、あり方を検討していただけるようです。  したがって、あえて細かく言えば、一つはそういう報告なりなんなり、あるいはやり方を必要がなければといいますか、同じでよければ大蔵省と同じようにするし、全く違った、これはいわゆる最後貸し手という流動性の提供者という意味考査に入るわけですから、違った面であれば違ったやり方をするというようなことで、ひとつ重複感をなくしてもらいたいということ。  それからもう一つは、やはり考査に入るからにはその企業、その銀行の中身に応じて見るんでしょうから、中身のいいところについては間隔を延ばしてもいいんじゃないか、中身が悪いと思えば間隔を縮めてもいいというような、そういういろんな面で具体的にお話もしておりますし、全銀協としてそういう要望を出していきたいというふうに思っているところでございます。
  18. 河本英典

    ○河本英典君 日銀考査大蔵省の検査ということで非常に重なる部分があれば、できるだけうまいこと、うまいことというか効率よくやりたいという御意見なんでしょうけれども、それは今聞かせていただいたわけでございます。  もう一つ伺いました、日銀というのは威張っておるのかというのは、これは非常に変な聞き方ですけれども、今少し話題になりましたのは天下りの問題であるとか、それからそういうのというのは表向きの話はやはり人材ということで請われて行っているんだという話になっておるわけでございます。  銀行を全部代表されておるわけですけれども、いろんな形で行かれておるわけでございますけれども、非常に言いにくい問題でしょうけれども、せっかく来ていただいたんで、民間の銀行の受け取り方というのはどうなのかなということを、ちょっと本当のことは言っていただけないでしょうけれども、せっかくですのでお伺いいたします。
  19. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 本当のことというか、私個人としての本当の意見ですけれども、都銀の上位六行とか、あるいは興長銀も入れて二十行ぐらいあるんですが、大体そういう銀行同士は、おっしゃられるような意味では対等に日銀関係があると思います。ある銀行は一人とかあるいは二人行かれているところもありますし、私どもは今は一人もいただいておりません。若い事務の人はいただいておるかもしれませんけれども。  そうは言いましても、昔は私どもの頭取は日銀から来られた人で、そのときにはそういう人材がいなかったということで、現在も相談役でおられます。だから、本当のことを言わないんじゃないかと言われるかもしれませんが、やっぱり人に応じて人をいただいているんじゃないかと思います。
  20. 河本英典

    ○河本英典君 余り本質的な話じゃないんで申しわけないんですけれども。  もう一つ日銀は給与が高いという話がこのごろ非常に話題になっておるんですよね。それは民間で同業の、要するにほかの市中銀行参考になったわけですね。それもまた一番給料のいいトップの六行ですか、そこを基準にして決められているわけですけれども、それが結果的に高いという評判になっておるわけなんです。  全産業の中でやっぱり銀行の給与というのは高いんですか。幾らであるとかそんなことはどうでもいいんですけれども、高い低いの主観的な物差しで結構ですから、ちょっとおっしゃっていただけますか。
  21. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) ここ一、二年そういう御意見がたくさん出ていまして、我々もそれなりの見方で比較をしておりますが、単純にといいますか、一定の地位の人の年収という形で比べると高いと思います。
  22. 河本英典

    ○河本英典君 わかりました。それはちょっとついでで申しわけなかったんですけれども、大変話題になっておりまして、本来ですと、先ほど先生方お話ししていただいた中央銀行のあり方ということと、それをどう法改正に落とし込むかというのが本来の議論でありますので、そのことをもっとお話を聞かなきゃいかぬわけでございます。  田尻参考人最後の部分で非常に印象的なことをおっしゃっていたのでちょっと反復して聞かせていただくんですけれども、ナチスドイツのヒットラーの金融政策に対して建白書を出したという話は有名な話なんでしょうけれども、私は初めて聞かせていただいて、すばらしい話だなというふうに思ったわけです。  改正後いろいろ手直しができるものなら盛り込んでもらいたいという話も伺いましたし、改正後一番大切なことはこれからの日銀の自己改革が問題であると。それから、いろいろ必要ならば改正も重ねていかなきゃいかぬわけですから、今までの法則でいきますと次の改正は五十五年後になりますので大分先になりますが、それじゃいかぬわけでして、その辺ちょっと重複するかもしれませんけれども、もう少し述べていただきたいと思います。
  23. 田尻嗣夫

    参考人田尻嗣夫君) 余り論理的でないことを申し上げ過ぎたかもしれませんけれども、私の意図いたした点は、日本銀行制度的な独立性の保障がこれまで主として議論されてきたわけでございますが、中央銀行独立性はそのこと自身が目的ではなくて、金融政策並びにプルーデンス政策独立性確保するための手段でございます。かつ、そのための条件としては、法的な独立性の保障というのはその一つにすぎないわけでございます。  世界中央銀行の現状並びに沿革を見渡しましても、法制度上全く金融政策についての権限を持たない現行のイングランド銀行でございますが、九二年以降、その中でも透明性確保するためのさまざまの情報開示をイングランド銀行サイドから積み重ねてきたわけでございます。その結果といたしまして、大蔵大臣が実際に握っております金融政策権限を、イングランド銀行総裁との合意と申しますか事前調整と申しますか、そういうことを経ませんと現実には決めかねるという段階にまで持ち込んできたわけでございます。これは、現在のエドワード・ジョージ総裁の個人的な資質、人間的な努力による面も極めて高いかと思います。  もう一つ申し上げたいのは、今般、新しい政権、労働党政権が金融政策独立性、主権をイングランド銀行に与えることになりました。これは極めて象徴的な出来事でございまして、労働党政権と申しますのは、終戦直後にイングランド銀行を国有化し政府に服従させる中央銀行にねじ伏せた党でございます。その同じ党が、今や中央銀行独立性を与えようという、過去二十年近かった保守党政権ですらやらなかったことを労働党政権がやることになったということを考えますれば、あるいはそこにまで持ち込んだということを考えますれば、私はイギリス国民の世論と同時に、それを動かしてきた力の一つとしてのイングランド銀行サイドの努力を高く評価しておるわけでございます。  その意味で申しますと、法改正後の日本銀行は、これまで半世紀の間の、ちょっと行き過ぎた表現かもしれませんが、小日銀主義ではなくて、財政経済政策全体に視野を広げまして積極的に肉声で国民に語りかけていく、いい意味での大日本銀行主義をとっていただきたいと考えております。
  24. 河本英典

    ○河本英典君 ありがとうございます。  ドイツはドイツで大変なインフレがあったという歴史もあるでしょうし、イギリスの近代国家としての早い立ち上がりがあったからという歴史的なこともありましょうし、物の考え方もあるんでしょうけれども、外国の話は外国の話として大変参考になるわけでございます。  実際、そうした中央銀行はどうあるべきかという議論から、法定化というか法律につくるという落とし込みをやらなきゃいかぬという作業で大変御尽力いただいた館先生、その辺、あるべき中央銀行ということと、それから今回の法というもののできばえというのはどんなものでしょうか。
  25. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) またまた大変難しい問題でございますが、外部で非常に強く独立性という言葉がひとり歩きをしてしまったようなところがございまして、それと現実を踏まえてどの辺に現実の落としどころを決めていくかという問題があると思います。  と申しますのは、一番最初に申しましたように、例えば外部からのインフレ圧力というものを一方では遮断するためにはできるだけ独立性が高い方がいいだろう。それは外部からの何らかの圧力に対してはそういう必要がある。しかし一方では、これは日本日本銀行世界中央銀行の中でも多様な業務を行っている銀行だと思うんです。例えば、アメリカの連邦準備制度理事会であれば、みずからは業務を行っていない、政策決定のいわば政策委員会に相当するわけです。ですから、政策委員会だけの独立性を高める、アメリカ流に高めるということと、日本のような業務も実際に行っている中央銀行独立性を一方で尊重しながら、業務を行っている主体としての日本銀行制度をどういうふうに決めていくかということは、やや違った観点が入ってこざるを得ないと思うのでございます。  それから、例が挙がっておりますドイツ等についても、それぞれの国のやっぱり特徴があります。したがって、日本日本銀行というものを考えて、さっきの二つの点、外部からの撹乱的な圧力を排除すると同時に、一方、日本銀行が独善に陥ってしまうということを排除していくという、その二つの調和点を実際どこに決めていくかということで、つまり、言葉としては開かれた独立性という言葉研究会では採用したわけでございます。その後におきましては、そういう独立性透明性、あるいはアカウンタビリティーというものを同時に入れてくることによって、一方では国民のサイドからのチェックを入れ、一方では不当な官僚的な議論で短期的な視点に立って政策が動かされないようにということでいろいろ考えた末に、大体こういうところが日本中央銀行としては適当であり、恐らくこれがうまく機能していけば、マーストリヒト条約に加入している国はそれの制約を受けていますから、独立の中央銀行と必ずしも言えないような面があるので少し違うと思うんですが、日本としてはほかの国の範例になっていくものではないかというように私は考えております。  しかし、そのためには、日本銀行はそのことをよく自覚して努力していただくということは必要だと思っております。
  26. 河本英典

    ○河本英典君 大変御苦労いただいたと思うんですけれども、本当にありがとうございました。  最後立脇参考人にお聞きしたいんですけれども、我々の議論の中で、ちょっと話が前後しますけれども物価の安定ということが目的になっているだけではどうかという話が随分議論されたわけでございます。先生がおっしゃったのは、通貨価値の安定ということで、内外の話ということだったと思います。  もう一つ我々の話の中で出たのは、資産価格の話まで規定する問題、制度の問題じゃないですけれども、そこまでは配慮せにゃいかぬなという議論まで出ているわけですけれども、もし直せるものならばという前提でございましたけれども通貨価値の安定ということを先ほどのお話でおっしゃっていたんですけれども、そこら辺をもう少しお伺いしたいんですが。
  27. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  法案では、おっしゃるとおり、「物価の安定」とございますけれども、これは非常に範囲が狭いというふうに思うわけであります。つまり、消費者物価指数とか卸売物価指数とかいうのがございますけれども、その中には資産価格は入ってないわけでございます。株価とか地価といった資産価格は入ってないわけでございます。ですから、国内における通貨価値、つまり対内価値ということを考えれば、当然資産価格まで入れなくてはいけないということでございます。  そして、もう一点は、対外価値という側面があります。アメリカは御存じのようにドルを外国人に相当保有させていますけれども、お札だけで見ても、何か連邦準備銀行の発行したお札の半分が国外で流通しているという話なんですが、日本も場合によっては将来そういうことになるかもしれません。そうしますと、外国で円ないし円資産を持っている人に対してもその価値の安定を図るということは、やはり日本中央銀行である日本銀行の使命ではないかというふうに考えられる。  もちろん、対内価値の安定、つまり対内均衡の問題と、対外価値の安定、つまり対外均衡と両立しない場合もあるかもしれません。そういう場合には対内均衡、対内価値を優先させるとしても、やはり対外価値にもそれ相応の配慮を払っていく必要があるんではなかろうかというのが私の持論でございます。
  28. 河本英典

    ○河本英典君 ありがとうございました。終わります。
  29. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 平成会の荒木清寛でございます。  きょうは、先生方大変ありがとうございます。まず、佐伯参考人にお尋ねをいたします。冒頭にも御発言がございましたけれども、第一勧銀をめぐる利益供与事件は本当に残念でございます。ただ、この問題は、単に一つの第一勧業という銀行の問題ではなくて、総会屋との関係を断ち切れないという金融機関全体が抱える潜在的な問題ではないかという見方も根強くあるわけですね。その点どうお考えなのかということと、先ほどこの不祥事の再発防止に向けての決意をお話しになりましたけれども、具体的に協会としましてどういうことをお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  30. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) まず、第一勧銀一つではなくてほかにもというお話でございますけれども、我々は新聞で読んでいる第一勧銀とそれから自分のところしかわからないわけでございますが、少なくともああいう形のものはないというふうに考えますし、私どもはございません。商法改正によって各社みんな断ち切っていったわけですから、そういうことはないと思いますし、またそういうことを願うわけです。  もう一つ銀行協会としてと。この銀行協会というのは、言いわけになりますけれども、各地の銀行協会が集まって全国銀行協会になっているということで、例えば三和銀行が全国銀行協会に入っているのではなくて、三和銀行が大阪の銀行協会あるいは福岡の銀行協会に入るということで、それが集まって協会になっているわけです。したがって、協会として各行に指令を出してというような形にはなってないんです。これは前置きですけれども。  私どもの方に社会的責任に関する委員会というのがございます。そこで、一昨日ですか、緊急に集まりをいたしまして、それでこれからの対応を考えるということで委員会をつくりまして、もう討議に入っております。どういう形の方向に行くかというのは、今討議をしているところでございますけれども、少なくともきちんとした方針を出して、結論を出して進んでいきたいというふうに思っております。
  31. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 第一勧銀に限らず、依然として総会屋のようなものが存在しているというのは、私は一つには特に大手企業の総会に対する考え方という問題があるんではないかと思います。要するに短くてしゃんしゃんで終わるのがいい総会なんだという。そういう考えを改めて、むしろ言いたい株主にはもう言わせるというぐらいに考え方をお変えになることが一つの解決になるんではないかという気もするわけなんです。  そういう意味で、ことしも六月二十七日に一斉に総会をやるというようなことも一つの問題になっておりますけれども、その辺の意識改革といいますか、株主総会に対する取り組みの意識改革といいますか、そういうこともやっていかれたらどうでしょうか。
  32. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 決算月の問題については、法改正後みんな同じ月に集まったという経緯はありますけれども、これは今さらどうこうということはできないと思うんですが、開催日をあえてずらすというならば、もしそれが有意義であれば、そういう方向に考える必要があると思います。  これは個人のあれですけれども、三和銀行について言いますれば、もう商法改正の翌年から総会はマスコミに公開をしているわけです。私どもの方では短ければいいというようなことでやっていることはありませんし、あるときは三時間もかかって総会屋と議論をした結果、総会屋を退場させたというようなこともあって、総会が荒れることについて私らのところは何もアレルギーを持っているわけじゃありませんし、すべてがそうではないというふうに思います。  いずれにしても、こういうことが起こったという状況を考えて、今先生がおっしゃったような方針も含めて総会に対する対応を考えていかなきゃいけないんじゃないかと思っております。
  33. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 佐伯参考人に引き続きお尋ねをいたします。不良債権の問題につきましては、これに関しまして国民の間からも金融機関の徹底したリストラを求める声が高まったところでありますけれども、この経営の合理化、リストラの進捗状況はどのようになっておりますでしょうか。
  34. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) これも金融界全体として云々という答えはできないんですが、とにかくこういう時期にリストラが必要であるということは前回の住専処理のときにも決心、決定したわけでございまして、我々について言いましたら、人員の削減、それから店舗の統廃合、そして遊休不動産の売却というような形でやってきております。  ちなみに数字を申し上げますれば、九六年からの三年間で千人という計画を出しましたが、前期で五百人の削減をいたしております。それから店舗については三年で十数カ店というのを出しましたが、昨年度は六カ店の統廃合をしたというようなことで、前向きに進めているつもりでございますが、引き続きこれは進めていくつもりでございます。
  35. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 館参考人におかれましては、金融制度調査会会長としてのお取りまとめ、大変に御苦労さまでございました。  ただ、厳しいことを言って申しわけございませんが、いろいろ私もこの審議会の経過、マスコミ報道等を見ておりますと、大変厳しい批判的論調が強かったわけですね。それは大蔵省寄りではないかという一点に尽きるんではないかと。ある日の社説では、「同調査会の事務局である大蔵省の意向が強く反映され、日銀独立性にさまざまな制限が加えられている。」、これは一月二十一日の某新聞であります。  確かに、たたき台というは恐らく事務局が作成されたんだと思いますし、私もそういう懸念を持っているんですけれども、実際のところはどうだったんでしょうか。そういう批判にどうお答えになりますでしょうか。
  36. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) お答えいたします。  確かに検討のための資料の準備等は、これは大蔵省金融制度調査会の事務局でございますからそこで準備をしてもらったということでございますが、それらのもとになっている基本的な考え方について申しますと、これは先ほども申しましたように、総理のもとに設けられました中央銀行研究会報告を踏まえて、それを現実に法案化していくとすればどういうところが問題になるかという形での資料が提出されて、それをめぐって金融制度調査会の中で議論を行ったわけでございます。  毎回必ずそこで意見が一致するということはございません。それから、それじゃそこに出した資料の考え方がそのまま次の会に持ち込まれるかというと、決してそうではございません。そのときに出された資料に基づいて議論した結果を踏まえて、原案そのものを書きかえるという形の繰り返しを行いながら意見の一致を求めていくという形でございますから、したがって、基本的には審議会で十分審議を尽くして、あれだけの短い期間に、委員の皆さんには非常に迷惑をかけることになったわけですけれども、結論を得たわけでございます。  したがいまして、ある会議で行われた議論と称するものが新聞等に掲載されて、それと最終結果とを比べていただきますとよくわかりますように、それらの議論を反映しながら最終結論に至っているという状況になっていると考えております。
  37. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 改正案日銀政府意見の調整ということに関しまして、政府からの政策委員会への出席権というのがあるわけですね。それがあるんであれば、この議決延期請求権、そこまではあえて必要ではないんじゃないかというふうに思うわけでありますが、しかも国際的なスタンダードという意味からすると、やはりこれは日銀独立性を阻害する要因になるんではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  38. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 必要に応じて出席ということでございまして、あらゆる会議に出席するわけではございません。出席が求められるのは政策問題にかかわる政策委員会にまず限られるということが一つございますし、これも必ず毎回出席するということではなくて、必要がないと考える場合には出席されないということになってくるでしょうし、私は、別の条項にも書いてございますように、当然、日常的な接触、事務的な接触というものは日本銀行大蔵省の間で行われていなければ一国の金融政策は行い得ないということではないかというように思いますので、当然そういうものは前提にされて、その上で出席し提案権を持つということでございますから、特別な問題の場合に、例えば議案提出権というのは、出席して発言権がある以上、議案をそこで提出しているのと実際上変わらないわけでございますね。そういう意味で本質的な問題というようには私は考えておりません。  ジャーナリズムの上で、この点が非常に大きく扱われましたけれども、その原因になりました一つは、延期請求権と延期権とを混同して、ジャーナリズムの一部にそういう混同があったことから、非常に強い権限を要求しているというような報道がなされて、やや誤解が広まったという問題があるのではないかと私は考えております。
  39. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 館参考人にもう一問だけお尋ねします。あるインタビューで、「国会への業務報告を蔵相経由としたのはなぜか」と、そのお答えとして、「残念ながら日銀は国会に対して直接報告し、政治からのプレッシャーをはね返せるだけの訓練を受けていない。」というお話がありまして、いろんなところでこれは引用されているわけですね。  そうなりますと、むしろ館参考人のお考えの中には、独立性というのは政府からというよりも国会からの独立性を意識されているんではないかというふうにも読めるわけですが、また逆に政治からそういうプレッシャーを受けてきた実態があるというふうに御認識をされてこういうお話をされたのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  40. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 私自身はその報道を正確に読んでおりませんので、報道についてはやや私自身として責任を持ちかねますが、繰り返しここで申し上げておりますように、独立性というのは、要するに例えばインフレ圧力というようなものが、大変短期的な観点とか、あるいは日々そういう現象に接しておられる人は、どうしても日々の判断に左右されがちな面があるということもあります。そういうことからできるだけ独立てないと、前にも申しましたように、日本銀行政策についての信頼性が失われていってしまうと。そういうことが起こらないようにできるだけそういう圧力からは独立な形にしておきたい。  しかし、一方で、繰り返しこれも申し上げている点ですが、アカウンタビリティーといいますか、説明責任、あるいは議事の公開をできるだけ速やかに行っていくということは、これは非常に重要なことであるというように考えております。そのことを私は繰り返し申し上げているつもりです。
  41. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 立脇参考人にお尋ねをいたします。  先ほどのお話で、日銀の監督者としてはむしろ総理府などを考えた方がいいというお話でございました。具体的にそうなった場合、では総理府から政策委員会出席をするのかとか、あるいは議決延期請求権を持つのかという話になるんですが、その場合には総理府によるどういう監督といいますか、それをイメージされていらっしゃるんでしょうか。
  42. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  私の考えでは、政策委員会政府代表が出ていかない方がいいんではないかというふうに考えるわけです。それはやはり中央銀行独立性強化するという観点からそういうふうに考えるわけであります。  そして、監督云々という問題は、これは法案ではかなり後の方に出てまいりますいわゆる違法行為のチェックでございますか、そういうことが織り込まれていますので、そういうことであれば総務庁とか総理府とかそういうところが適切ではないかと。要するに、私が主張したい点は、財政当局と日本銀行ははっきりと分離しなくちゃいけないということに尽きるわけでございます。そのために、その関連で日銀に対する監督が必要であるとするならば、財政当局ではなくて総理府のようなところが適切ではないでしょうかというふうに申し上げているわけでございます。
  43. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 立脇参考人に続いてお尋ねいたします。この為替介入権につきましては、政府が一元的に管理をするというのが今回の基本的な改正案考え方でありますが、中央銀行も一定の役割を果たすべきではないかという指摘もございます。現にブンデスバンクは為替の介入権を持っているということでありますが、この点につきましての御意見を伺います。
  44. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  為替政策に関しましては、私は日々の市場介入といいますか、スムージングオペレーション、いわゆる変動を滑らかにするような日々の介入に関しては日本銀行判断で行うべきではないかというふうに考えます。それは通貨対外価値の安定にもつながるということであります。  ただし、為替に関する制度的な変更、例えば変動相場制から固定相場制に移行することが将来あると思うんですね。そういう場合の対外折衝あるいは協定の締結というふうなことであれば、これは政府の所管ではないかというふうに考えております。  繰り返しますと、日々の市場介入は日銀であると、そして制度的な変更は政府で担当していただくと、これがよろしいのではないかというふうに考えます。
  45. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 先ほどのお話では、日銀法の目的としまして物価の安定と通貨価値の安定を掲げるべきだというお話でございました。相対立する場合には物価の安定の方を優先すればいいんだというお話だったと思いますが、ただ、先ほどの館参考人お話でしたでしょうか、もともと両立ということは難しいんだというお話であったわけですが、実際そういう二つのことを目的にして日銀が行動するということは可能なんでしょうか。
  46. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  私が主張したい点は、通貨価値の安定を目的とすべきであるということであります。通貨価値の中身はといいますと、対内価値対外価値ということになります。改正法では物価の安定というふうにうたわれていますけれども、それと対内価値の違いは先ほど申し上げたとおりです。  そして、外国では、例えばマーストリヒト条約ではプライススタビリティーの維持、メーンテイニング・プライススタビリティーと書いてある。これを一般に物価の安定と訳しているようですけれども、そうじゃなくて、これは対内価値ではないかというふうに思うわけです。ですから、そういった外国の例にも照らしまして、物価の安定ではなくて、この場合プライススタビリティーですから、対内価値の安定が重視されるということになると思います。  そして、そういった対内価値対外価値というのは、田尻参考人からも御指摘ありましたように、非常に関係が深いわけであります。例えば、円安になりますと輸入物価がたちどころに上がってくるわけですね。ですから、為替の市場の方は日銀の手に負えない、自分たちは物価の安定だけしか責任持てません、そういうことでは困ると思うんです。ですから、時として対内価値の安定と対外価値の安定が両立しないことはあるかもしれないわけです。極力その両方を達成させるように運営を行ってもらう。どうしても序列をつけるということになれば、これは対内価値の安定の方を優先させるということが望ましいと思います。
  47. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 最後田尻参考人にお尋ねいたします。もし日銀法が改正されておれば、この二度のインフレにおける日銀の失敗というのはなかったというふうにお考えなんですか。
  48. 田尻嗣夫

    参考人田尻嗣夫君) バブルの発生という一番直近のケースでお話ししたいと存じます。  確かに、先ほど館先生からもお話がございましたように、バブルの発生の原因というのは一つに求めることは無理でありまして、さまざまの要因で複合的に起きたものだということだと私も思います。  しかしながら、金融政策運営していく上での制度論、組織論から考えてみますと、当時の日本銀行の内部におきまして、八〇年代後半、バブルがそろそろはっきりしてきました段階で、既に危機を感じ取っていろいろな政策提言をスタッフ部門から上層部に進言をした、動いたという事実も確認されておるわけでございます。しかし、そのようなことがなぜ政策委員会を動かす形にはならなかったのかという問題もございます。  それから、先ほどの為替政策との問題でございますが、国内の金融政策を為替政策の犠牲にしたと申しますか、為替政策、国際協調優先だというG7タイプの国際協調の中で、中央銀行を政治家である大蔵大臣の交渉の場で従属的な立場に置いたというような政治的なメカニズムも大きく影響しておるかと思います。あるいは金融政策技術上、資産価格と一般物価のどちらをどのように重視しながら政策運営していくかということについては、これまで余り経験してこなかった事態であったというようなこともあろうかと思います。  しかしながら、それが完全に防げたとは私は申しませんけれども、あそこまで長期にわたってなぜ日本だけがより深刻なバブルの拡大、そして崩壊過程に立ち至ったのか、なぜドイツはそのようにならなかったのか、あるいはアメリカ、イギリスその他欧州諸国が日本に比べますと軽微に終わったのかということについては、政府中央銀行関係からまだまだ究明されるべき問題だと思っております。
  49. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 ありがとうございました。
  50. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、社会民主党の鈴木和美でございます。  本日は、参考人の皆さんにはお忙しいところ御出席をいただきまして、大変ありがとうございます。  早速二、三点について質問申し上げたいと思いますが、まず館参考人、それから立脇先生と田尻先生に同じ質問をちょっと申し上げたいと思います。  先ほど日銀自主性独立性という言葉が出てまいりましたが、館参考人からは自主性でも独立性でも同じようなものだというようなお話がございました。自主性にしても独立性にしても、今日、日銀がしっかりした立場というか、つまり自主性を持ってやっていくことは私は当然だと思うんです。そればそれで考えればよいことなんでございましょうが、現実には私は国会や内閣から完全に独立した存在とはなり得ないと思うんですね、これは経済政策にしても財政政策にしても。そういう意味からすると、余り自主性とか独立性ということを強調するよりも、中立性の方がより私は理解がいくように思うのでございますが、これは館参考人の方から議論の経過なども聞かせていただきたいと思います。
  51. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) ただいまの御指摘の点でございますが、私はそういう表現は使いませんでしたけれども日本銀行が国会なり政府から完全に独立てあるというシステムが今日望ましいというように、完全に独立てあるという状況が望ましいとは考えておりません。  そういう意味では、あくまでも独立性自主性といいましても相対的な独立性中立性にとどまるものというように考えております。ただ、従来の日本中央銀行の相対的な独立性はこれは十分なものでなかったという意味で、独立性中立性ということを強化していくべきであるというように考えている次第でございます。  中立性独立性という今のような考え方、相対的な独立性ということを考えているならば、むしろ中立性の方がいいのではないかという御意見でございますが、私はその中立的という、やはり全体として一国の経済政策の一環を構成しているという点は、いかなるシステムを採用するにしてもそれは避け得ないことだし、その一環でなければならないというように考えておりますので、中立性という言葉はあえてとらないわけでございます。
  52. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 それでは立脇参考人お願いします。
  53. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  私は、金融政策中立性を守らなくちゃいかぬ、つまり、あらゆる市場参加者に対してフェアでなくてはいけないという意味金融政策中立性を保たなければならないと考えております。そして、それを担保するためにはやはり中央銀行独立性が必要であるというふうに考えます。  しからば、どこからの独立性かということになりますけれども、よく言われますように、ドイツ型ですと第四の権力です。これは憲法で決められています。アメリカ型ですと、議会が通貨に関する権限を持っていますので、これを連邦準備制度理事会に委託したという形になっておりまして、それを議会がチェックしているということであります。  日本はといいますと、イギリスと同じ議院内閣制でございますから、そのいずれでもないということになります。したがって、究極的には内閣の指揮を受ける形になるかと思いますけれども、再々申し上げていますように、財政当局との間では利害の対立がある。つまり、財政当局は自分の利害を追求するわけですから、財政当局だけ優遇いたしますと他の市場参加者に対してアンフェアになりますので、財政当局からは少なくとも独立する必要があるというのが私の考えでございます。
  54. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 それでは田尻参考人お願いいたします。
  55. 田尻嗣夫

    参考人田尻嗣夫君) 独立性中立性自主性かということの前提といたしまして、そこで申します独立性というのは、どの国の議論におきましても政府あるいは国会から全く遮断された真空状態において中央銀行独断的にひとり歩きをするというような意味での独立性論議は全く行われていないわけでございます。つまり、政府中央銀行の間でどのような適正距離を保つかという議論で行われておるわけでございまして、独立か中立かと申しますと何か非常に両極にあるような印象を与えるわけでございますが、そういう文脈の中で館先生は語感の問題だとおっしゃったのではないかと私は理解しております。  しかしながら、私の個人的な感じから申しますと、今も立脇先生がおっしゃいましたように、お金というのは極めて危険な道具であり便利な道具であります。権力を持った人間がこの最も便利かつ危険な道具を自由に使いこなすということの悲劇が人類の歴史の中で繰り返されてきた。そういう反省の上にお金の価値を守る中央銀行は財政からできるだけ分離すべきであるという一つのコンセンサスがあるように思うわけであります。  しかしながら、今先生もおっしゃいましたように、大衆民主主義でありあるいは高度情報化社会である現代社会におきまして、中央銀行国民からも独立、中立であるということは絶対に許されないわけでありまして、私はそういう意味中央銀行は国会との関係においてアカウンタビリティーを最大限に問われるべきであると思います。  今回の日本銀行法改正案で盛り込まれましたアカウンタビリティーは、これは日本銀行にとって最大限のものではなくて、私の理解では最低限のものであると思います。この上に日本銀行が国会に対してどれだけ誠実にどれだけ積極的に情報開示をされていくかということが必要な問題ではないかと思います。
  56. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 ありがとうございました。  それでは、佐伯参考人にお尋ね申し上げます。現在〇・五%という史上最低の公定歩合が長期にわたって続いていると思います。そのため百万円を預金しても利子は二千円ですね。そういうような状況の中で、年金世帯者からは人生設計をもうやり直さにやならぬというような話が出ているように思っています。  そういう状況の中で、他方を見ますと、この超低金利は異常事態だということでやったわけでございましょうが、ある面から見ると金融機関救済しているんじゃないのか、こういうような意見もまたあるわけでございます。そういうことについての御所見があれば聞かせていただきたいと思います。
  57. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 今、先生のおっしゃったことは皆事実でありまして、したがって大変な低金利で苦しんでいらっしゃる方が多いと、年金基金も含めてそうですけれども、それはよく承知しております。  金融機関を助けるためのレートかということにつきましては、一面では当たっておりますが、一面では低金利に下がっていくときには確かに金融機関は非常に助かるわけですけれども、前期、今期と比べてみますと、我々利ざやで食べているわけですが、利ざやは逆にマイナスになっているということで、去年に比べるとことしはマイナスになっているということも事実でございます。  こういう超低金利が続くというのは異常でありますけれども、それでは上げるような状態になっているかというのは、これは日銀なりが判断することですけれども、今の景気の状況とかいろんなものを考えて、まだ上げる状況にはないというふうな御判断をされているんではないかと思います。
  58. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 もう一問、佐伯参考人にお尋ねします。現在の市中銀行日銀運営状態を見たときに、市中銀行の方はそれぞれ不良債権を抱えながらリストラに一生懸命取り組んでいるわけですね。そういう立場から日銀を眺めた場合に、現在の日銀運営状態というのは適正なのか、例えば適当なのか合理的なのかというようにごらんになりますか、それともちょっと日銀はたるんでいるんじゃないかとか、緩んでいるんじゃないかとか、威張っているんじゃないかとか、そういうような見方にお立ちになりますか、どちらでございますか。
  59. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 大変難しい御質問なんですが、先ほどもちょっと同じようなことを申し上げたんですけれども日銀との接点というのは、銀行はこの自由金利になる十年ほど前まではもう日銀枠といういわゆる貸し出し枠を中心にしていろんな面で規制を受けておりました。したがって、確かに関係は物すごく深かったということはあります。今はもう日銀枠は全く撤廃されておりますし、そういう形での関係はある意味でいえばほとんどないということなのでございます。片方で一つ日銀考査というのがございますけれども、これも三年ぐらいに一回ということで、これはむしろ我々の方からいえば一つチェック機能としてありがたいというか、そういうふうなとらえ方もしているところでございます。  したがって、日銀の仕事のやり方をどうこう言うほど接点は深くないんですけれども、いわゆる決済システムをすべて日銀に依頼しているといいますか、日銀の方で最後決済をしておられますから、決済するシステムの面では非常に進んできていると。今即時決済機能なんかも含めてやがて実現されるわけですけれども、そういういわゆる決済のシステムづくりには非常に貢献していただいているというふうに思っております。
  60. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 最後の質問でございますが、館参考人にお尋ね申し上げます。  今の佐伯参考人意見ではございませんけれども、これから日銀政策委員なり役員なりの給与を決めることになりますね。給与を決めるときに、つまり社会一般の情勢に適合した給与をつくりなさいというような指摘というか考えというか、そういうのがあると思いますね。  なぜ今、佐伯先生にお尋ねしたかというと、この次の委員会で、日銀が何で四十幾つもゴルフ会員権を持たなきゃならぬのかというのを私は質問したいと思うんですが、つまりそういう状態から見ると、一般市中銀行とは確かに日銀は性格が違うはずなんですね。だから、そういうところから最近の状況を見ると、私は何かたるんでいるというか、威張っているみたいな感じがしてならないんです。そういうときに、役員の給与というものを一般情勢に合わせてつくりなさいという指摘がございますけれども、これに関してはどのような見解をお持ちでございましょうか、お尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  61. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 給与の水準が一般的に妥当なものであるかどうかというのは、特に変革の時期、インフレを経過した後に賃金が決まってくるときに、直接生産に従事しているところの人々の賃金というのは比較的容易に見出し得るわけですけれども、一般的にそれ以外の事務職とかそういう問題やあるいは役員というようなことになりますと、これは社会がそれを容認するかどうかということによって最終的には決着してくる問題であるというように私は考えております。日本銀行の場合には、何といいましても中央銀行でございますから、どうしてもほかの都市銀行等の銀行との比較ということが一点あると思います。  それから、一般に銀行の場合には、ほかの職業と違って直接現金にタッチしたりするケースが多いわけですから、やはりその人たちに出来心が起こらない程度の俸給を支給していかなければならない。そういう意味では、多少ほかよりも賃金が高くなってくるというのが常識的な線ではないだろうかというように思っております。  したがいまして、私が期待することは、社会が承認するようなレベルで適正な給与を決定していただくのが望ましいと、こういうように考えているということでございます。
  62. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 どうもありがとうございました。
  63. 千葉景子

    ○千葉景子君 民主党の千葉景子でございます。  きょうは参考人先生方に大変貴重な御意見また御示唆をいただきまして、本当にありがとうございます。実は、私が所属をいたしております民主党では、先ほど立脇参考人、そして田尻参考人から今回の法案に対する問題点の幾つかを御指摘いただきました。その点、ほぼ共通な問題意識を持ちながら衆議院で修正案を出させていただき、残念ながら皆さんの御賛同をいただくまでには至らなかったものですから、その修正案は成立するには至りませんでした。  全体として、これまでの日銀法から考えますと、今回の案が大きな前進であるということは私も評価をさせていただいている一人でございます。ただ、今の国際的な動きやあるいは日本のこれからの新しい二十一世紀に向けた金融市場のあり方、そしてその中における中央銀行のあり方、こういうものを考えたときには、もう一歩前進をさせることができたらと、こんな思いで私もこの審議に加わらせていただいているところでございます。そんな前提を頭に置いていただければ大変幸いであろうかというふうに思います。そこで、何点かそれぞれお伺いをさせていただきたいと思います。  まず、田尻参考人にお願いをしたいと思います。先ほど田尻参考人中央銀行のあり方に最適なモデルはないと、そしてドイツのあり方やあるいはニュージーランドのあり方も紹介をいただき、そういう中で一つの形として今回の日銀法というものがあるという御評価であったかと思います。ただ、そこで運用を誤ると本来の趣旨というものがねじ曲げられてしまう、生かせられないと、こういう御指摘がございました。その点、もしこの日銀法が施行されるということになった際に、運用に当たってどういう点に私たちは注意を払うべきであるのかについて御指摘をいただければと思います。  それからもう一点。これも大変興味深いお話で、日銀の自己改革というのが大変重要だというお話がございました。これは私もそのとおりであろうかというふうに思います。形はできても、やはりそれを動かしていく、確固たる信念を持って行っていくということがなければこの案を生かすことはできないであろうと思います。そこで、そうなりますと、その中心となる政策委員会等の人選などにも大変重要な問題があるだろうというふうに思います。決して従来が悪いとかいう意味ではございませんけれども、その点について先生のお考えなどございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  64. 田尻嗣夫

    参考人田尻嗣夫君) まず、運用を誤るとという部分でございます。  これは、先ほど掲げました、私として気になります六つの項目それぞれに政府中央銀行権限責任が交錯しておるわけでございます。つまり、必要に応じというのを政府側が判断するとなれば、一体それは何回出てくるのか、あるいは金融政策を決めるときにのみ出てくるということでありますと、その金融政策を決めるか決めないかがまず事前に決まってしまうことになるわけでありまして、そうなりますと政策委員会が形骸化して、事前協議が実質的な意味を持ってくるというように変わってしまうわけでございます。  そのように、先ほど挙げました六つの項目のいずれも、その運用の仕方によりまして針は独立性の方に大きく振れるか従属性の方に大きく振れるか、そういう問題が非常に多いということであります。これは、先ほど申し上げましたような流れの中で、あるいは我が国のいろいろな条件から考えまして、法案としてはある程度いたし方のない部分が相当あろうかと思います。したがいまして、その針の振れぐあいをだれがモニターしていくのかということが一番大きな問題になろうかと思います。それは、政府中央銀行関係に割って入れるのは国会しかないわけでございますから、国会がより高い立場からその針の振れぐあいを常時ウォッチしていただきたいというのがお願いでございます。  それから、自己改革の点でございますが、今御指摘の人事あるいは機構、予算編成、そういったことが、これから実はこの改正案が通りました後、日本銀行問題意識がどの程度のものかということがそういうところに反映されてくるものだと私も注目しております。  大事については、国会の同意を必要とされる枠組みができ上がっておるわけでございます。これは、金融政策というのは極めて多岐にわたるいろんな角度から判断しなければならない問題でございますし、もう一つ金融政策の波及の仕方、影響の受け方というのは、社会階層あるいは産業部門によって一様ではなくて、相当のでこぼこと申しますか、ばらつきが発生するわけであります。そうしますと、どの部門にどれだけのしわ寄せをすることが政治的に許されるのか、あるいは社会的に妥当なのかということは、これは金融のプロだけに任せておいてよい問題ではないわけでございます。つまり、金融政策というのは、余りにも国民生活にかかわっておりますために、ちょっと変な言い方でありますが、戦争は余りにも重要だから将軍たちには任せておけない問題でございます。  そのようなことを考えますと、金融政策にかかわる政策委員会の人選というのは、できるだけ広い分野から多様な人材が集められることが重要でありまして、金融界に近い方あるいは政策当局に近い方だけで構成するというのは適切ではないと考えます。
  65. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。  それでは、次に立脇参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。立脇参考人が御指摘になりました幾つかの問題点、私もかなり同感をさせていただく部分が多いんですけれども一つ先生が御指摘をされました総論的な部分ですけれども日銀政府関係についてお触れがございました。  これは、私もなかなか難しいと考えているんですけれども、やはり全く無関係ではないであろうし、しかし、先ほどから議論がございますように、余りにも金融政策運営影響のあるような介入とかあるいは関与の仕方というのもいかがなものかという気がいたします。  この間の議論の中では、やはり行政の一部であるから一定の協力関係というんでしょうか、財政当局とそれから金融機関中央銀行との連携というんでしょうか、そういうものも必要だと、こういう御議論なども大蔵省などからも聞かせていただいているんですけれども、行政であるということと、それから参考人も御指摘の独立性といいましょうか、その問題というのはどうお考えになっておられましょうか。
  66. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  この第四条の規定、つまり、「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」というのは、いかにも私は日本的な発想のように感じられます。  つまり、こういう規定がございますと、日銀としては自己の判断、意思決定をする前の段階にいろいろ御相談をしなくてはならない。つまり、日銀自体の政策決定がそれによって影響を受けるということになると思うんですね。もちろん財政政策金融政策は密接な関係がございまして、経済学でもその両方の政策をうまく組み合わせて使うことをポリシーミックスと言っておりまして、それはそれなりの意義はあるんですけれども、過去における日本経験を顧みますと、一九七〇年代のあのエネルギーショックの後の狂乱物価であるとか、八〇年代後半のバブル経済とか、いずれも金融政策政府財政政策の犠牲になっているわけです。つまり、初志を貫徹することはできなかったんですね。  ですから、自己の意思決定をする前に他の人の意見を聞く、それは全くむだとは言いませんけれども、それによって自己の意思決定が貫徹できないということになると問題だと思うんですね。したがいまして、この第四条の規定というのは非常に危険性をはらんでいるというふうに私は見るわけでございます。したがいまして、やはり政府、特に財政と金融は一定の距離を置く必要がある。  諸外国においてこういうふうに、「政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」という強制規定を置いているところは私は見たことがございません。もちろんイギリスなんかでは、アメリカもそうですけれども大蔵大臣ないし財務長官と中央銀行総裁が定期的に会合を持っているということは聞いておりますけれども、それは規定には書いてないわけでございます。  ですから、一たび規定に織り込んでしまうとそれに縛られるわけですから、日本銀行の行動もそれによって制約を受けると考えるわけでございます。したがいまして、この規定はない方がよろしいのではなかろうかというふうに考えます。
  67. 千葉景子

    ○千葉景子君 それでは、佐伯参考人にお尋ねいたします。  きょうも冒頭で、一連の金融関係のさまざまな不祥事などについて改めてお考えをお聞かせいただきました。私も、これは今回日銀法の問題を審議させていただいておりますけれども、これからの国際的な時代に向けて金融市場あるいは金融機関そのものが世界に通用する透明度、信頼性を持っていかなければいけない、そういう意味で今後また私どももいろいろな議論をさせていただきたいと考えているところでございます。  それはさておきまして、そういう反省ということも踏まえながら、今の国際的な金融状況、金融市場の動向、そういうものを見たときに、今回の日銀法がグローバルスタンダードという観点から見て、御専門の立場で、それに適合する、満足できる内容であるかどうか、その点についてはどんなふうにお考えでしょうか。  それから、もう一点は、これから新しく再出発する日銀に対して、ある意味では金融のトップにある日銀に対する期待とかあるいは望むことがございましたら、お話をいただきたいと思います。
  68. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 大変大きな問題であれなんですけれども、その前に、先ほど鈴木先生からも御質問があって、私はちょっと範囲を狭めて、我々、特に三和銀行とといいますか、個別の銀行日銀との関係という意味で随分あれがなくなったということを申し上げたんですが、それはなぜかといえば、みんなそれがマーケットで関係するようになってきた。したがって、マーケットを通じては銀行銀行としての日銀と我々とはもっと深くなってきていますし、そこでは今度はまさにフリー、フェア、グローバルスタンダードという市場原理に基づいた競合が行われているわけですから、日銀の側はそういうものに対しての仕事というのは非常にふえてきております。ということでございまして、ちょっとつけ足しといいますか、訂正をさせていただきたいと思います。我々との関係だけをとって、随分薄くなっていますということを申し上げました。  今回の改正でグローバルスタンダードからはどうかということですけれども、先ほど三人の先生方からいろいろ御意見がありまして、片方で例えば政府の広範な監督権とか業務命令権が廃止されていっている、あるいは人事や独立性強化されていっているというようなことが規定されているんですけれども、それに対しては、いやしかしこちらにもう一つ違うものがあるということで、必ずしも御意見が一致しないような感じはいたしました。  私は、いわゆる一民間銀行として考えた場合には、今回の日銀独立性、特に開かれた独立性というのが担保されるような部分といいますか方策が十分とられているというふうに考え、したがって海外中央銀行に比べても遜色のないものであるというふうに考えております。したがって、グローバルスタンダードの状況になったのではないか。田尻先生もおっしゃいましたように、あとは日銀のそれを運用する態度だというようなことで、ドイツの例も引かれてお出しになりましたけれども、私もあの話は非常に興味深くといいますか、感心して聞きましたけれども、やっぱり最後はやる人の心構えかなというふうに思います。
  69. 千葉景子

    ○千葉景子君 あと、日銀に期待をする点などはございませんか。
  70. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) ですから、開かれた独立性というのが、せっかくこれが主眼になったわけですから、まずこれをどういうふうにして実現するかというのは、これは日銀自身がやることであります。本当はあってはならないんでしょうけれども信用秩序維持に対する機動的な対応とか、考査に関してもいろんな軽減策というような法的な対応が打たれているわけですから、そのような信用秩序維持なんてものは起こらない方がいいんですけれども、ぜひ機動的に対応していただきたいというふうに思いますし、法の決められた精神というものをそのとおり実現していっていただければ、今回の日銀改正は非常にいい方向に行くのではないかと思っております。
  71. 千葉景子

    ○千葉景子君 最後に、館参考人にお伺いいたします。  時間がないものですからほんの一言になりますが、本当にこれまでおまとめいただいた大変な御努力、私も敬意を表させていただきたいと思います。  この間この委員会でも、あるいはきょうのそれぞれのお考えでも、必ずしも一致しない部分あるいはこれが山でいえばまだ頂上まで行っていないという部分も幾つかあるかもしれません。そういう意味では、今回の問題が前進であるということは前提としながらも、今後順次いろいろな見直しなり、あるいはプラスするものあるいは積み残したものを検討していくということは必要になってくるのではないかと思います。その点については、今回おまとめいただいた立場ではなかなか難しいことかと思いますけれども、もし率直な御感想があればお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  72. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 私見といたしましては、もちろんこれで完璧であるというようなものではございません。  私自身が早急に見直してもらいたいと思っておりますのは、例えば短期市場、特に政府短期証券が従来のような形式で大量に累積していくというような状態をそのまま放置しておくことは、中央銀行の力に対する国際的な信頼を弱めていってしまう可能性があるというようなことがございますから、これは調査会そのものでもその点について早急に検討してもらいたい。ただ、一遍にそれを廃止しようとしても、今や累積残高が非常な巨額に上っておりますので廃止することはできないということは承知しておりますけれども、そういう問題点については、金融制度調査会が適当な検討場所でないことも事実でございますので、別の委員会で早急に検討してもらいたいということを申し入れているというようなこともございます。事実、検討を始めているという状況でありますが、なかなか大変だと思います。しかし、そういうところは、周辺的にそういう部分は早急に検討してもらいたいと要望している点がないわけではございません。それを進めてもらいたいということでございます。  あともう一つ申し上げておきたいのは、今まで議論になりながら最終的に決着がつかない点でございますが、対内価値対外価値の問題について一言だけ、貴重な時間を恐縮でございますが申し上げさせていただきたいと思います。  それは、現在のように金融国際化が進んだ状態のもとで、為替を操作するということを為替市場に対する介入によってやろうとしても到底為替を自由に変動させるということはできないわけでありまして、為替に影響を与えたいならば金利を動かす以外にその方法はないわけです。しかし、最も望ましいことは、日本通貨の国内価値を安定して、そのことを通じて為替レートが適当なレベルに収れんしていくということを進めていく。つまり、国内価値の安定を通じて、国民経済の健全な発展というときには、そのことも中に含めながらもう少し広く解釈したいというように考えてそういう規定を置いているということをお酌み取りいただきたいというように思います。  念のためにくれぐれも申し上げますが、これだけ資本移動自由化されそして大量の流動資金が存在するところで、為替介入によってそれに対抗していこうというようなことは全く問題になりませんし、そういう意味で介入権がどっちにあるかというような問題はそれほど重要な問題ではないんだということも、この際私見でございますが、申し上げさせていただきたいと思います。  そして、最後に申し上げたいのは、日本銀行自主性独立性を高めるということはそれだけ日本銀行責任が増大するということでありますから、日本銀行としては責任が増大したということを真に自覚して、その責任にこたえるように努力をしていっていただきたいというのが私の希望であるということを申し上げさせていただきます。  以上でございます。
  73. 千葉景子

    ○千葉景子君 ありがとうございました。
  74. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。  四人の参考人、どうも貴重な意見をありがとうございました。  最初に、佐伯参考人にお伺いいたします。日本版ビッグバンとの関係で、我が国中央銀行である日本銀行に重要な役割を果たすことが期待されると強調なさいました。ビッグバンで日本銀行にどういうことを期待なさっているのか、ちょっと具体的にイメージがわくようにお話し願いたいと思います。
  75. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) ビッグバンというのは、御存じのように、フリーでフェアでグローバルスタンダードと、こういう理念でマーケットができていく、こういうことでございますから、マーケット原理、市場原理の貫徹というのが求められるわけです。  したがって、日銀もそういう意味で開かれた独立性というか、そういうものをもとにした金融政策実施ということで、我々もマーケットに入っていく、世界もマーケットに入っていく、すべてがマーケットの中でやります。したがって、そのマーケットの中へ日銀が入っていく場合のいろんな金融政策決定過程も、それから決定後なるべく早く開示をするということも含めて、中央銀行がそういうふうに変わっていきます。今まで政策委員会決定が表に出るわけでもなかったわけですから、そういう意味でまず関与をしていくということでございます。  それから、マーケットが自由になっていけば決済も大きくなりますし、したがって今度は決済システムというものがいろいろ円滑に行われないと、どこかで一つ切れたらこれだけ大きな決済システムの中では大変なことになりますから、これは決済システム日銀が預かってやってくれているわけでして、ここをきちんと、どんなことが起こっても大丈夫なようなシステムをつくってもらわなければならないというようなことが大きな二つの使命ではないかなと思います。  もちろん、信用不安が起こったときの決済システム維持、これは大蔵大臣の命により、あるいは大蔵大臣の認可を得てということになるわけですけれども、重要な使命だと思いますけれども、これは起こらない方がいいということではございます。
  76. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 佐伯参考人に、今のお話とも関連してですけれども不良債権の問題です。九七年三月期の不良債権は、新聞報道によれば大手二十行ベースで十九兆三千二百六十二億円とか言われますが、不良債権処理は全体として進んでいると言われますけれども銀行全体ではどうなっているのか。また、これは公的資金日銀特融に頼らなくても自己努力で解決できる見通しをお持ちなのか。先ほどのお話だと、それだけでは不十分でそちらにも期待したいという意味お話だったかなと思いながら聞いておりましたけれども、いかがでしょうか。
  77. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) 今の段階では大手二十行の統計しかまだできておりません。今月中ぐらいに銀行協会としては百五十行やりますけれども、それでも信用組合とか金庫の分はこれは大蔵省にやってもらわなければ出ないわけです。  今おっしゃいました不良債権の残高というのは、確かに十九兆という数字がございます。これは大手二十行でございますが、不良債権といいますけれども、十九兆不良債権がありまして、そのうち八兆一千億ほどを引き当てておりますから、四十数%の引き当てということで、したがって十九兆が不良債権として焦げついているわけではございません。この十九兆というのも、前年度に比べますと六兆円減っているわけでございまして、したがって前年度は二十五兆あったものが十九兆ということで、不良債権処理については自分のところ以外私どもわからないわけですが、今回は各行こういう形で決算で処理をしたということは、大手二十行については少なくとも進んでいると思います。  もっと申し上げれば、来年度からは早期是正措置という形で、今度は不良債権の含みがある場合は必ずそれを引き当てるなり、あるいはそれをしなかった場合にはいろんな是正措置が入ってくるわけですから、二十行以外のところでも恐らくきちんとすべてそういう処理をされているんではないかというふうには考えます。
  78. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 公的資金日銀特融に頼らなくてもやれる見通しがあるか、やっぱり頼りたいということか、その点。
  79. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) これは国全体の問題ですから、私どもには全くわかりません。  ただ、公的資金とかに頼るということは不良債権処理を頼るという意味ではございませんで、破産あるいは倒産あるいは金融システムがおかしくなるという段階で、そういうことによって被害を受ける預金を保護するというか、預金を支払うためにその支払いが行われるというふうに解釈しておりますから、一つずつの金融機関が倒産する、それを救うために公的資金を使うとか云々という話は一切ないものと思われます。
  80. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 田尻参考人にお伺いします。今も問題にしました日銀特融ですけれども現行法も一層あいまいですけれども、この新法案でも日銀特融についての規定というのが非常にあいまいで、その形態とか対象、条件、限度、こういうふうなものの規定がない。私はこれは問題があるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、新しい法案日銀特融の規定についてどのようにお考えになるでしょうか。
  81. 田尻嗣夫

    参考人田尻嗣夫君) 今、先生御指摘のとおり、新しい改正法案によりましても基本的には何も変わることは期待できないと思います。日本銀行最後貸し手機能と申しますのは、あくまで最後最後貸し手でございますが、現実には民間の金融支援をまとめるためのその呼び水としての最初貸し手であると思われるような動きも私は見ておるわけでございます。  もう一つは、日本銀行資金の動員の形態でございますが、現行法の二十五条によります特別融資、これは本来の最後貸し手機能でございますが、出資するとかあるいは資金拠出をするとかいうようなことは中央銀行最後貸し手機能からは完全に逸脱した行動でございます。  そのようなことが今般の改正案でもその他必要と認める措置を講ずるというような包括的な表現の中に含まれているということであれば、これは極めて残念なことだと思います。  諸外国の例を見てみますと、大き過ぎてっぷせないというツービッグ・ツーフェールという考え方日本では一つの普遍的な原理として報道されたりしておるわけでございますが、このような考え方が前面に出ておる国はもはや少ないわけでございます。もともとツービッグ・ツーフェールというのは極めて未成熟な考え方でございまして、一九七〇年代のアメリカにおきましては、一つの地域社会においてその金融機関がなければ住民に基本的な金融サービスを提供できない不可欠の存在であるというエッセンシャリティールールというのが本来の姿でありました。これがアメリカで拡大解釈され、ついには八四年のコンチネンタル・イリノイ銀行の、大銀行救済、そこへの公的資金の投入あるいはSアンドLへの救済の公的資金十六兆円を投入することになったわけでありますが、アメリカはこれを反省いたしまして、ツービッグ・ツーフェールを九〇年代に入りまして法律上禁止したわけでございます。  もし、公的資金を導入する、あるいはツービッグ・ツーフェールに近い行動をとらなければならないということを財務長官が考えましたときには、その財務長官の単独の考えではなくて、それはFRBの議長との合意の上で大統領が最終的に決断をしなければならないという歯どめをかけたわけでございます。  その他先進国におきましても、中央銀行資金の動員とか公的資金の動員にはいろいろな原則や歯どめが採用されておるわけでございまして、そういう点では我が国の場合には無原則に近い状態が今後も続くということでございますので、これは国会の場で個別に制御をしていただくしか方法は当面ないのではないかと考えます。
  82. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 立脇参考人にお伺いいたします。  ここでもいろいろお話がありました第一勧銀問題をめぐって、国民の怒りが広がっていると言っていいと思います。こういう事件の再発を防ぐ、あるいはできるだけ早期に発見していくというための日銀考査あるいは大蔵の検査というもののあり方ですけれども日銀に限定しての考査体制ですけれども、大体今度の法案に書かれていたようなのが日銀考査のあり方としては望ましいものとお考えなのか、もうちょっと何か方法があるとお考えになるのか、お聞かせください。
  83. 立脇和夫

    参考人立脇和夫君) お答えいたします。  考査に関しまして、私は必ずしも詳しくはございませんけれども、一部に報道されていますように、金融機関監督権限を一カ所に集中するということよりか、やはり現在のような大蔵省検査とそれから日銀考査と両方あった方がいいんではないかというふうに考えます。それぞれ持ち味があって押さえるつぼが違うというふうに聞いていますので、この点に関しましては私はそれほど問題はないと思っております。  アメリカですと、国法銀行は国法銀行監督官が検査をいたしますし、州法銀行はいろいろ分かれておりまして、連邦準備に加盟していますと連邦準備制度が検査しますし、加盟していなくても預金保険機構に加入しているところは預金保険機構がやる。その他は州の銀行監督局が検査をするということで、いかにも二重三重になっているように見えますけれども、ある一カ所で検査したその検査報告を他の検査機関に全部回すと、ですから他の検査機関はもらった検査報告を見て、それで足りないと思うところはまた自分がやるという形のようです。  ですから、アメリカはアメリカなりのやり方をやっていますので、日本も一カ所に集中するんではなくて二カ所に、つまり二重に検査した方が最近のような金融不祥事が起こることが幾らかでも防止できるんじゃないかという感じがいたします。
  84. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 こういう機会ですから、佐伯参考人にちょっと具体的な問題でお伺いしておきたいことがあるんですけれども、私、去年、銀行の内部のいろんなところの人に、大蔵省の検査や日銀考査に対してどういう対応をするかということを話を聞いて歩いたら、一番大変なのは書類を隠す仕事で事務量じゃないと、来ることが決まると大体段ボールで何千箱わっと隠すんだと、こういうふうなお話を内部の方に聞きました。あなたの銀行ではどうか知りませんけれども、大体そういうふうなことは一般的にあるものですか、ちょっと考査に関連して。
  85. 佐伯尚孝

    参考人佐伯尚孝君) どんな状況を話されたのか、私も考査の現場からは離れて大分なりますけれども、まず考査が入れば、それから過去にさかのぼった日を基準にしていろんな書類をつくるわけです。ですから、きょうやってきょうごまかしても過去のことですからもうあれだということ。  それから、やはりつくってもらった書類を厳重にチェックしますので、つくり方は非常に精緻にできていますから、私はどうやってごまかすか、それはよく知りません。それと、今度は実地の調査がありますから、書類を隠したらそれがないわけですから、調査に行った人はわかるわけで、書類がなくていいような書類なら隠してもいいですし、そんなことは私はちょっと起こり得ないと思うんですね。  ですから、積み上げて余りにも汚らしいから隠すとかいうならわかりますけれども、調査を受ける、考査を受ける、検査を受ける書類を隠してしまったら検査ができないわけですから、そういうことは私はあり得ないと思うんですね。
  86. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間が来ましたけれども館参考人に一問だけお願いします。  衆議院の論議でも参議院の論議でも、大蔵省日銀もお答えになっているんですけれども現行日銀法の評価及び現行日銀法下での実際運用の問題ですけれども、両方ともおっしゃるのは、現行法はこうだと、しかし実際の運用は現実対応しているので障害も矛盾もないんだ、今度の改正は実際運用しているのを法律の上でもはっきり明示したんだと、こういう御答弁でしたけれども、大体そういう考え方でやられたんでしょうか。
  87. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) ただいまの御指摘、現在の日本銀行法がそのままの形で適用されているのかといいますと、運用の面では随分改正される新日本銀行法に近い形での運営が行われております。したがいまして、現行日本銀行法がそのまま行われているものとして世界の中で日本銀行独立性のランクづけをいたしますと、二十五位以下に下がってしまうわけでございます。しかし、実際の運営についての日本銀行のランクづけはずっと高い方にランクづけされるというのが現在普通経済学者が分析をしているときの結果になっています。  そういう意味では、独立性法律上は非常に低いわけですけれども、実際には日本銀行自主性が相当程度尊重されているという点では御指摘のとおりというふうに言ってよろしいと思います。
  88. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間が来ましたので、終わります。
  89. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会