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1997-06-05 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月五日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  六月四日     辞任         補欠選任      依田 智治君     金田 勝年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 久保  亘君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 岡  利定君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 益田 洋介君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵政務次官   西田 吉宏君        大蔵大臣官房長  涌井 洋治君        大蔵大臣官房金        融検査部長    中川 隆進君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省銀行局保        険部長      福田  誠君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        証券取引等監視        委員会事務局長  若林 勝三君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        警察庁刑事局暴        力団対策部暴力        団対策第一課長  中林 英二君        法務大臣官房参        事官       菊池 洋一君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本銀行法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、依田智治君が委員を辞任され、その補欠として金田勝年君が選任されました。     —————————————
  3. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 日本銀行法案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 清水達雄

    清水達雄君 自民党の清水達雄でございます。  私は、金融の問題には全くの素人でございまして、大変幼稚な質問も出ると思いますけれども、よろしくお願いいたします。  今まで、日銀法改正制度面法律の面での検討が大分議論されてきたわけですけれども、やつばり日銀がやっておられる金融政策そのものがよくならないと、よくなるという言い方はちょっとあれなんですが、幾ら法改正しても日本経済における日銀の機能というか、そういうものはよくならぬわけでございますから、私はそういう点に絞って、特にバブル発生から崩壊に至るプロセスにおける金融政策、そういうものに焦点を当てて、勉強も交えながら御質問いたしたいと思います。  御承知のように、バブル発生の段階でございますけれども昭和六十一年の一月三十日ごろから公定歩合が五%を切って、四・五%ぐらいから二・五%に至るかなり急速な公定歩合引き下げが行われ、それから平成元年の五月、二・五%から三・二五%に引き上げた以後、かなり急速に公定歩合引き上げが行われるというふうな金融政策がとられたわけでございます一このような政策というのは過剰流動性バブル発生期における過剰流動性というのがバブル発生誘因になったのではないか、それから急速にバブルからその崩壊後に至るプロセスにおける引き締め政策というのが、言うなればバブル崩壊を助長するようなことになったんではないかというふうな感じがするわけですが、この一連のプロセスについて日銀としてはどういうふうな見解を持っておられるか、総論的にお伺いいたしたいと思います。
  5. 松下康雄

    参考人松下康雄君) いわゆるこのバブル発生につきましては、自由化国際化というような経済環境変化あるいは首都圏への一極集中、また、土地取引に関します法制、税制などのいろいろな要因が相互に複雑に影響し合います中で、経済全体にどうも右肩上がりという一種の神話が生まれてきたということではなかったかと思うのでございますけれども、その中で、ただいまの御指摘のように、長期にわたります金融緩和にもその原因一端があったということは今日否定できないところであると考えております。  当時、昭和六十年のプラザ合意以降、急速な円高が進行いたしまして、そのデフレ的な影響が非常に強く懸念をされていた中におきまして、国の経済政策面でも大幅な経常黒字是正とか、あるいは円高の回避というものが優先的な課題となつておりまして、そうした中で金融政策運営におきましても、これはぎりぎりの選択を迫られたものであると理解をいたしておりますけれども、その結果として、長期にわたる金融緩和バブル発生原因一端となったということであろうと考えております。  その後、私ども平成元年金融引き締めに転じたのでありますが、これは当時の景気の急速な拡大や、またマネーサプライの高い伸び企業金融の著しい引き緩みなどに照らしまして、インフレなき持続的成長を図ってまいりますために必要と判断をして講じた措置でございます。平成三年半ばには金融引き締め効果が確認をされましたので、同年中に三回の公定歩合引き下げ実施いたしまして、その後も思い切った金融緩和措置を講じてまいったつもりでございます。それにもかかわりませず、その後の景気の低迷が長くかつ厳しいものとなっておりますのは、やはりバブル時代経済の行き過ぎが極めて大きかったために、その調整がどうしても深く、また長いものにならざるを得なかったという事情によるところが大きいと考えております。  このように、バブル発生崩壊経済に大きな振幅をもたらしました経験は、金融政策あり方につきましても重い反省をもたらすものであると受けとめておりまして、私どもとしましては、当時の教訓をしっかりと念頭に置きまして、適切な金融政策運営を行ってまいるように努めてきているつもりでございます。
  6. 清水達雄

    清水達雄君 六十一年の一月三十日に公定歩合を四・五%に引き下げたわけでございますが、それから二・五%に至るまでかなり急速にこの引き下げを行った。  このことは、今総裁もおっしゃいましたが、いわゆる経常黒字が大きくなって内需拡大というふうなことで、中曽根内閣のときの民間における都市開発の推進だとか公共用地有効利用とかいろんなことが言われた、あるいは外国の物を買えとか、いろんなそういうことが言われた時期であるわけでございまして、結局、この辺の公定歩合引き下げというのは、円高を抑制する対策、これが引き下げの主たる要因であったというふうに思うんですけれども、その辺いかがでございますか。
  7. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 昭和六十一年初頭の経済情勢を振り返ってみますと、景気はその前年の六月にはピークを打ちまして、しかも九月、プラザ合意を契機としまして急激な円高が進んでおりましたので、この面からの景気に対します悪影響も強く懸念をされていた時期でございます。  そこで、日本銀行といたしましては、こういった状況にかんがみまして、日本経済内需中心成長に資するということを目的といたしまして公定歩合引き下げに踏み切ったものでございます。また、当時問題とされておりました対外均衡是正というものにつきましても、こうした金融政策運営によりまして内需を強化することが寄与するというふうに考えた次第でございます。  そこで、当時の政策判断といたしましては、御指摘公定歩合引き上げ措置は、円高の抑制ということを直接の目的として実施したものと申しますよりは、そのような内需中心経済拡大を図ってまいりたい、円高不況に対する対策といたしたいという趣旨中心であったと考えております。
  8. 清水達雄

    清水達雄君 公定歩合為替レート関係につきましては、要するに公定歩合引き上げると金利も上がる、そうするとレートも強くなるというふうなことが、言うなれば円でいえば円高に向かってくるというふうなことを時々よく聞くんですけれども、そういうふうな関係というのは常識的にあるということなんでございましょうか。
  9. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 為替レートがどのように決定をされてまいるかということは大変難しい議論がございますけれども長期的に見ますというと、やはりそれは、貿易によってつながっております主要各国の間で取引をされる貿易財の相対的な価格動きが大きな役割を持つのではないかというふうに考えられているところでございます。  しかしながら、中期的にあるいは短期的に見まして、両国間におきます金利の差あるいは将来の動向に対する読みといったものでありますとか、あるいは、さらに短期的に申せば為替市場におきますところの短期為替、外貨の需要供給関係といった、そういうものが総合されてレートが形成されるものであると思います。  御指摘の時期におきましては、日本の場合は確かにこの公定歩合引き下げ実施いたしたわけでございますけれども、この年には同時にアメリカの方におきましても公定歩合引き下げられていた時期でございまして、そういう点から見ましても、その効果というのはやはり国内内需拡大景気振興ということにあったと思っております。
  10. 清水達雄

    清水達雄君 六十三年一月以降の公定歩合操作というのが、その円高を抑制する対策であったのかという私の質問に対して、いや、むしろそうじゃなくて内需拡大する対策だったのだというお答えでございますけれども、確かにそう答えないと現実と合わないわけでございまして、どんどん公定歩合引き下げていきましたけれども、その間において、引き下げたけれども円高はどんどん進んだというのが実態なんですね。  だから、例えば六十一年の状況を見てみますと、一月に一ドル二百円だったものが、十二月には百六十二円になりまして、三十八円も円高になっていますね。それから、六十二年の二月には公定歩合は二・五%に引き下げましたけれども、その円レートは二月の百五十三円から、十二月には百二十八円というので二十五円の円高になっている。公定歩合はどんどん引き下げたけれども、一方において円高もどんどん進んだというのが実態でございますから、結局これは内需拡大のための公的歩合引き下げだというふうにしか理解できないということだろうと思います。  ところが、この六十二年の二月二十三日から平成元年の五月三十日まで、二年三カ月間も公定歩合二・五%を維持し続けたということについて、私は理解ができない、納得ができないわけですけれども、これはどうしてこういうことになったんでしょうか。
  11. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘の六十二年の金利引き下げ当時の状況でございますけれども、やはり昭和六十年のプラザ合意以降の急速な円高進行によりまして、デフレ効果が強く懸念される状況でございましたために、日銀としましては公定歩合の二・五%までの引き下げ実施いたしたわけでございます。  この当時は、国際収支あるいは為替レート動向というものがやはり経済全体として見ますと大きな関心事でございましたけれども、そういう背景の中での実施でございます。そのような背景の中で、やはり経済状態におきましてもちょっと予想しなかったようなことが起こりましたのは、例えば昭和六十二年の秋のニューヨーク株式市場暴落でございます。  あの当時は、景気の方は日本もドイツもやや落ちついてまいったかなという状態でございましたけれども、このニューヨーク為替暴落によりまして、やはり各国は一斉に金利の低下あるいは通貨供給量の増大というものを通じましてこの不安の拡大を防がざるを得なかったというようなこともございます。そのようないろいろの経緯を経まして、私どもといたしましては二・五%という水準平成元年まで据え置いたわけでございます。
  12. 清水達雄

    清水達雄君 それで、一方バブルの言うならば本体みたいなものの地価動向なんですが、六十二年の一月の公示地価につきまして、これは発表されるのは恐らく三月ごろにならないと発表されないということでございますけれども、六十二年の二月二十三日から二・五%に公定歩合引き下げられているんですけれども、大体それと時を同じくした六十二年一月に発表された公示地価というのは、東京圏住宅地が二一・五%上昇し、それから商業地が四八・二%上昇している。それから、翌年の六十三年の一月の公示地価は、東京圏住宅地が六八・六%上昇し、商業地も六一・一%上昇している。大阪圏におきましても、住宅地が一八・六%、商業地が三七・二%も上昇するという異常な地価高騰なんですね、六十二年の一月及び六十三年一月に発表された公示地価動向というのは。  こういうものを見ながら、何でこんなに長い間いわゆる過剰流動性的な金融政策をとったのか。こういった地価動向というのは政策判断の材料にならなかったのかということについて、お伺いしたいと思います。
  13. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、平成二年の公示地価は非常に大幅な上昇でございますから、現実地価上昇はその前の昭和六十一年には相当進行していたわけでございます。  私どもとしましては、この地価そのもののそういった警戒を要するような動きには留意をしていたのでございまして、例えば六十一年には、金融機関に対しまして節度ある融資態度が望ましいというような要請を行い始めました。また、六十二年以降には、その指導の程度も強めてまいりましたし、また講演その他いろいろな機会におきまして、金融緩和の副作用には留意しなければならないということも折に触れての説明はいたしていたところでございます。  それから、その時期におきましても、一方におきまして、卸売物価あるいは小売物価、いわゆる物価水準というものは安定をいたしておりましたし、また地価上昇そのものもキャピタルゲインねらいのものでございまして、それが地代、家賃というものには必ずしも波及はしていなかった情勢でございました。そういう経済環境の中で、私どもの本格的な金融政策の転換は平成元年になったわけでございますので、今日顧みまして、この間の経験というものは、金融政策あり方につきましても非常な反省をもたらすものであるというふうに受けとめております。  私どもとしましては、当時の経験を踏まえまして、第一に、為替相場の安定あるいはこの対外均衡是正ということのために、過度に金融政策に依存をした対応をとるということは適正ではないのではないか、あくまで金融政策としましては、インフレなき国内持続的成長というものを目標としていくべきではないかということ。  それから第二に、またその物価の安定を通じる持続的成長を考えてまいります際に、単に卸、小売物価水準、サービスの価格水準ということだけでなくて、資産価格でありますとか、マネーサプライ動向などにも十分留意をいたしまして、早目早目対応をとっていくというようなことを念頭に置いて、適切な金融政策運営を行うべきものであるというふうに感じ、またそのように努めている次第でございます。
  14. 清水達雄

    清水達雄君 総裁から今、こういった経験教訓として今後いわゆる為替の問題だとかそういったことにとらわれずに、総合的な判断金融政策をやっていかなきゃならぬという趣旨お答えがあったと思うわけでございます。  今、私が質問いたしましたのは、バブル発生誘因にこの金融政策がなったんではないかというふうなことを申したわけですけれども、今度はバブル崩壊過程でも、平成二年の公定歩合が、年初の四・二五%から八月には六%まで上げるとか、これは平成三年になって若干ダウンさせて年初の六%から年末には五%に下げるというふうなことをやりましたけれども、これもかなり急速な公定歩合引き上げをやった。それから、マネーサプライにつきましても、昭和六十二年から平成二年ぐらいまで毎年一〇%増ぐらいのマネーサプライ拡大があったけれども平成三年には二・六%の非常にマネーサプライ増加幅が小さくなるというふうなことで急激な平成三年からの引き締め効果の徹底というようなことができてきたわけですね。  全くそのとおりに地価も動いているわけです。例えば平成三年につきまして、平成三年というのは、平成四年一月に公示される地価がまさに平成三年の中の動きを示すわけですけれども、ここで、東京圏住宅地が九・一とか商業地が六・九%下がり、大阪圏でも住宅地が二二・九%、商業地も一九・五%というふうにがたっともうかなり急激な下落が起きている。確かに地価は物すごく上がりましたから、やっぱり上がったものは市場の中でこれは下がっていくのは当たり前の話なんで、山高ければ谷深しということだろうと思うんです。  そういう市場動向を、金融政策がむしろ加速させているのではないかというふうにも思えるわけでございまして、総裁からさっきお話があったことに尽きるわけですけれども金融政策というものがこういった地価動向影響を与え、それがまた日本経済に非常に大きな深刻な打撃を与えているという意味におきまして、単に物価の安定、一般物価の安定を目的として金融政策をやればいいんだとか、あるいは為替レートの大幅な変動がないようにやればいいんだというふうな問題ではないと。非常に幅広い観点から金融政策はやっていかないと経済に非常に大きな影響を与えちゃう、そういう要素になってきているというふうに思うわけでございます。  それで、このマネーサプライのことなんですけれども、六十二年から平成二年まで年間一〇%もマネーサプライがふえたわけですが、ちょっと私よくわかりませんので勉強したいんですけれども、この中でマーケットオペレーションとそれから日銀貸し出し、これはどのようにふえたのか、マネーサプライが非常にふえた原因としてどういう要素要因によるものが大きかったのかというふうなことをお話しいただければと思います。
  15. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘昭和六十二年から平成二年までの四年間について見ますというと、この間に日銀貸し出しは累計では二千億円減少を実はいたしております。ただ、手形でありますとかTB政府短期証券オペ残高は二兆七千億円増加をいたしておりまして、両方合計いたしまして、日銀がこの間に市場資金供給いたしました残高はこの間年平均で五・二%ずつ伸びております。  このような、日本銀行からの資金供給額増加がそのままマネーサプライ増加対応していたというわけではございませんので、まず資金の需給は、人々が銀行から預金を引き出しましたり、また銀行を通じて政府に税金の納付が行われるという場合にはこの銀行の部門に資金不足が生じてくるわけでございます。  日本銀行オペレーションとしましては、まずこうした資金のぶれを埋めまして、現金の引き出しなり銀行間の決裁が円滑に行われるように実施をしていくわけでございまして、結果として見ますと、オペレーションの金額というのは、こうして市場での取引を通じて生じてまいります資金不足額に一致することになるわけでございます。  その際に、ただ、日本銀行は必ずしも日々機械的にその不足額の穴埋めを行うということではございませんで、その程度をある程度締めたり緩めたり調整をすることによりまして、金融市場で成立をいたします金利の方に影響を与えることができるわけでございます。こういった市場金利変化というものが金融機関行動とかあるいは実体経済活動影響を与えまして、それが現実マネーサプライ変動に結びついていくわけでございます。  そこで、御指摘マネーサプライの高い伸びにつきましても、これはオペレーションの規模から直接生まれてきた、それに対応しているということよりも、むしろ低金利長期にわたって継続したことの結果として生じた経済活動実態というものにその原因一端があるというふうに考えております。
  16. 清水達雄

    清水達雄君 経済活動がふえていくとマネーサプライもふえていくということは観念的にはわかるんですが、今のお話もまだちょっとよくわかりませんで、日銀には各金融機関当座預金があって、金が足りなくなるとその当座預金日銀券にかえて引き出すわけですね。そういう形で通貨供給される。今のお話ですと、マーケットオペレーションの方はかなりふえてきているけれども貸し出し自体は減っているというふうなお話でございますから、経済活動がふえるがためにマネーサプライがふえるというのは、どの形でふえていくんでしょうか。つまり、よく言う成長通貨供給というのはどういう形で出てくるのか。
  17. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘がございますように、経済活動自体拡大をしてまいりますというと、それに伴いまして通貨量も余計に必要になってまいりますから、銀行券需要経済成長につれて増加をしてくるわけでございまして、それに見合った資金を市中に供給をしていくことを今御指摘成長通貨供給というふうに私ども言っているわけでございます。  そこで、こうした成長通貨供給におきましては、実際の市場での動き銀行券伸びとそれから日銀オペ実施の間には多少の時期的なずれが生ずることが間々ございますけれども、原則として私ども市場から長期国債の買い切りのオペレーションというものを実行しております。この操作を通じまして、市場が必要とする通貨需要増加というものの大枠は賄っているわけでございます。  そこで、昭和六十二年から平成二年までの四年間に銀行券そのもの年平均で約三兆二千億円ずつ増加をいたしました。この間におきまして、国債買い切りオペの方は年平均で一兆三千億円実施をしてまいったわけでございますけれども、これが大宗を占め、あとその他の要因増加をしてまいったということでございます。
  18. 清水達雄

    清水達雄君 大体わかってきたような気がいたしますけれども、そこで結局今までのお話で、物価の安定という点からいうと、物価は非常に構造的に安定しておりましたから、どういう意味金融政策を動かしてきたかという点になると、法律に書いてあるように、物価の安定を通じて云々なんという話じゃもう関係ない話でありまして、要するに今の日本経済の構造からいうと、物価面で問題が出るような状況にはないわけでございまして、一体何で金融政策を動かすのかということを考えるとその他の要因だということになるんですね。  それで、バブル発生当時においてはこれは内需拡大だと、それからバブル崩壊過程において公定歩合引き上げるといったふうなことについては、やっぱり膨張し過ぎた経済正常軌道に戻すということだろうと思うんです。ただ、その間に地価とか株価とか資産価格が著しく変動した、それに対する対応が極めて不十分だったというふうに私には思えるんですけれども、この辺をひっくるめまして、日銀がどういう観点から金融政策をやるのかということについてお伺いしたいと思います。
  19. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 物価の安定ということの定義はいろいろあろうと思いますけれども、私ども政策の運営を行いますときに目標とします物価の安定というのは、じゃ具体的にどういう状態のことを考えてやっているのかということを申し上げますと、それは家計なりあるいは企業なりがいろいろと消費、貯蓄、投資などに関係をいたします決定をしてまいるわけでございますけれども、その決定をするときに当たりまして、将来物価がずっとどんどんと上がっていくとか、あるいはどんどんと下がっていくとか、そういうことを考慮しないでよいような状態を保ち続けるということであると考えているわけでございます。そういった物価の安定が達成できるならば物とかサービスの価値の尺度が安定をいたしますし、企業も家計も効率的な支出あるいは投資の計画をつくることができるわけでございまして、それが経済の持続的な安定成長の必要な基盤となっていくというふうに考えるわけでございます。  そういう点の考え方で、いわゆるバブルの時代のことを振り返ってみますというと、やはり当時は足元の物価は安定をしていたのでありますけれども、やはり当時の経済活動自体は非常に過熱をしておりましたし、そういったものが地価その他の資産価格上昇の中にもあらわれていたと思われます。このような過熱を放置しておきますと、それが物価安定を軸とする安定的な成長の基盤というものを損なってしまうという危険が増大していたと思われるわけでございます。  私どもとしましては、そういった情勢を踏まえまして、平成元年の五月の第一回の公定歩合引き上げを行いました場合にも、先行きの物価情勢に注視を要するものがあるから引き上げを行うんだということを説明しているわけでございます。それからまた下げますときには、景気の後退に伴って物価上昇率が低下をしていくのにつれまして公定歩合引き下げを続け、最終的に平成六−七年、消費者物価が前年割れとなってしまうというような状態のもとで、現在の〇・五%という思い切った緩和措置を講じたわけでございます。  こういう考え方の中で、この物価として考えるものはやはり資産価格動き方というものが非常に重要になってまいると。それ自体を、資産価格動き自体を何らか政策目標としょうとすると思いますと、これは例えば将来の経済成長はどうなるかとか、企業収益はどうかとか、需給はどうなるかというような、一種のそういう予想に基づいて値段が非常に上下するという要素もございますので、そのほかの一般の経済活動の現在の水準とぴったり同じということではございません。  将来の予測が入ってまいりますだけ、そういう点で非常に重要な経済指標でございますけれども、そちらの方だけを向いて対処するということも困難でございますので、私どもとしましては、やはり金融政策の運営上、この足元の物価水準とその将来見通しということを基本に置きまして、しかしながら、それを補完すると申しますか補強すると申しますか、そういう非常に重要な経済指標として、そういう資産価格水準動きというものを織り込んでいくという考え方でやるべきであろうと思っております。
  20. 清水達雄

    清水達雄君 今、現に公定歩合引き下げとか引き上げとかやるときに、将来の物価についてのある程度予想的な考え方を示しながらやっているというふうな今のお答えだったと思うんですけれども、どうもそういうのは余りぴんとこないですね。今の日本のような供給力が非常に大きくてむしろ需要が少ないような経済におきまして、どうもそれは将来についてはどうなるかわからぬよとか、こういう状況だとどうなるかもしらぬということは、それは全然言えないこともないかもしらぬけれども経済を見る目としてそんな感覚じゃないと思うんですね。  資産価格お話が出ました。これは確かにそういう問題はあって、これは特に資産価格問題というのはバブル的になりやすいし、あるいは急激なデフレ的になりやすい、そういう乱高下的な要因を持っていますから、それはあるんですけれども、普通の物価について何か今総裁のおっしゃっていることはちょっと時代離れした昔の教科書の説明を聞いているような感じが非常にするんですね。金融政策の目標といいますか目的が何かということについて、今までもここでもかなり議論がありまして、私は金融政策の理念というのは経済の発展段階によって異なってくるんじゃないかと。確かに、供給力がいまだしという発展途上国なんかにおきましては、物価の問題というのは非常に大きな問題なんですね。ところが、成熟経済になってきた場合に、やっぱりストック経済化してきますから、むしろストックの価格変動の方が経済に与える影響というのは非常に大きいと思うんですよ。  そういうふうに考えていくと、今や日本ではむしろこの資産価格が乱高下しないというか、ある意味の安定性を持つということが非常に大きな要素だと思いますね。それは確かに株とか地価とかいうものが物価と同じように一定であればいいということは言えないと思いますね。それは株式なんていうのもだんだん上がっていくということでなければ、これはある意味では株としての機能を果たさないと思いますから、それはそれでいいんですけれども、何かそういうふうに政策目標が変わってきている、あるいは重点が変わってきているということだろうと思うんですね。  そういうことを考えますと、どうも今回の日銀法の全面改正におきまして、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」という考え方は、何か昔の教科書をそのとおり書いてあるというふうな感じがして仕方がないわけですが、この点につきましては銀行局長なり大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  21. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生のおっしゃいました点は非常に重要なポイントだということで、金融制度調査会の小委員会でもいろいろ御議論があったやに記憶しておりますが、資産価格の乱高下が好ましくないと、それはそのとおりだと思いますが、ただ安定していることがいいといっても、じゃその水準という話になりますと、先生御指摘のように、土地にしましてもこれから買いたい人はもっと下がってほしいと思いますし、お持ちの方はもっと上がってほしいというふうに思うわけでございます。そういった水準の議論になりますと、また非常に難しい問題でございます。  したがいまして、日本銀行金融政策の理念としましては、やっぱり諸外国と同じように物価の安定ということを置きますが、その際にこれは金融制度調査会の答申でも書かれたんでございますが、「一般物価水準が安定している中でも、地価・株価等の資産価格の高騰・急落が生じ、国民経済に深刻な影響を与える可能性があることは、過去の経験が示すところであり、日本銀行は、資産価格変動にも留意していく必要がある。」というふうに指摘されております。この指摘を受けまして、日本銀行金融政策が適切になされておるということを期待し、またそういう運営がなされると理解しておるところでございます。
  22. 清水達雄

    清水達雄君 じゃ、どういうふうに書いたらいいかといってこっちから積極的にこう直したらどうかということはありませんので、確かに金融政策の運営に当たってかなり幅広い視点が必要であるということだけは確かで、特に資産価格の乱高下を防止するというのが非常に大事な時代になってきているということだけはそうだろうと思うんです。  実は私も公務員をしておりまして、土地政策にも関与してきて、国土庁にもいたわけですけれども、その当時、バブル発生した昭和六十二、三年ごろですか、あのころ不動産業界の人なんかから聞いた話というのは、銀行が金を使ってくれと、使うについては土地もここにあるよと、両方持ってくるというわけですよ銀行が、金と土地と両方を持ってくる。金利を払う金がないと言うと金利も上乗せして貸すよというふうなことが相当行われてきた。これは不動産業界の人たちがそう言っていました、何とか使ってくれ使ってくれと言ってくると。  それから、いわゆる内需拡大都市開発事業みたいなことをやっていかなきゃならぬということで地上げがかなり行われたわけですけれども、地上げされた土地から郊外に土地を買いかえるときに、これは税制の問題がありますから同じ値段で買えるぐらいの土地を郊外に探したい、都心部で売った値段と同じ値段で買えるぐらいの土地を探したいということであって、土地の単価は幾らでもいいよと、総額幾らというふうな話とかいっぱいありました。それから、金融機関も、いわゆる産業界が資金を証券市場等で調達ができるようになりましたから、立派な企業は余り銀行から金は借りなくていいというふうな動きが相当ありましたですね。だから、銀行自体が今後の自分たちのマーケットは中小企業と不動産業だと、ここのお客を開拓するために我々は一生懸命やらなきゃならないんだというふうな動きというのは金融機関にも相当あった。だから、言うなれば、そういう特に不動産業なんかについて資金が過剰に流れる環境というか土壌というのは物すごくできていたわけですね。  こういうことを、私は日銀政策委員会の委員なり日銀の役職員というのは知っていたんだろうと思うんですよ。そういう形で不動産融資というのが非常に行われるということを見ていながら、地価動向等については十分な配慮をした金融政策はとっていないと私は思うんですけれども、これはどうしてそういうことになっちゃったのかということを伺いたいと思います。
  23. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘の点でございますが、日本銀行としましては、先ほど申しましたように、昭和六十一年ごろから金融緩和長期化に伴いますいろいろの現象に注意を払ってきたところでございます。そういう点で、マネーサプライ増加あるいは金融機関の融資の動向、また地価、株価の値上がりといったような点につきまして随時政策委員会でも検討を行いながら、こういった傾向には十分に注意が必要だということを定例の公表資料でありますとか総裁記者会見などで説明もいたしていたところでございます。また、その後も情報収集や分析を続けまして、金融機関に対しましては土地融資も含めて節度ある融資姿勢を求めていったところでございます。  平成元年に至りまして、そういった資産価格の高騰の背景にあります経済活動の過熱に対処しますために本格的な金融引き締めに転ずるということを決定いたしました。その後も平成二年におきましては、地価動向やあるいはその経済に及ぼす影響というものを総括的に検討いたしました結果を論文として発表をいたしまして、当時、地価の下落がもう始まっておりましたので、リスク管理の重要性などについても指摘はいたしたところでございます。  私どもとしましては、そのときそのときの資産価格動向にもそれなりに注意は払ってまいったつもりでございますけれども、今から振り返ってみますというと、インフレなき持続的成長というものを本当に達成していきます上では、この資産価格の大きな変動がそのころどのような意味を実際に持っていたのかという点につきましての洞察が必ずしも十分でなかったということは否定できないところでございます。  私どもとしましては、しかしこういった非常に貴重な経験を十分踏まえまして、資産価格経済変動を示唆する重要な材料の一つということで位置づけまして、その動向十分留意をいたしながら適切な経済政策運営を図るように努めてまいる考えでございます。
  24. 清水達雄

    清水達雄君 実は私も、この東京圏で物すごく地価が上がった昭和六十二年一年間、この年に国土庁にいたのですけれども、この年に住宅地商業地東京圏で六〇%以上地価が上がったんですね。これはいたけれどもわからなかった、それは。というのは、やっぱり情報が遅いからなんですね。地価公示というふうなものは一年間で一回しか出ませんし、もうそれぞれ不動産鑑定士が鑑定して集まってきたものが、実際には解析、検討した上で翌年の三月ごろしか結果が出ないわけですね、ということでわからなかった。  結局、情報不足状況に役所もあるし、恐らく私は、日銀なんかは実務部門も持っておられますから本当はもっとわかっているんだろうと思うんですけれども、僕はそういうことを考えたときに、この土地政策もそうですけれども金融政策もやっぱり生の情報がリアルタイムに把握できるそういうシステムというか仕組みをつくらないとだめじゃないかなという感じが非常にしていまして、例えば日銀が短観をやってそれを見て判断する、あるいは支店長会議で地方の情勢を聞くというようなことは新聞なんかでよく見るわけですけれども、あるいは銀行等市中金融機関とつき合ってはいるけれども資金の決済だとか、あるいは資金が足りるか足りないかとか、どうするかとかいうことじゃだめなんですね。市場経済、生の市場とか産業の実態というのがやっぱりわかっていないとだめだ。何かそういうところにかなり機構とかスタッフとかというものが要るんではないかと。その辺が私は、この日銀法改正の議論が出てきたときに一番大事なところで、一番そこを議論しておかなきゃいけないところじゃないかというように思ったんですけれども、その辺はどんな状況なんでしょうか。
  25. 松下康雄

    参考人松下康雄君) その経済実態が、殊に統計にあらわれたところだけでなくて、実際に生の実態が各地でどういうふうに今動きつつあるかという点は、私ども政策判断をしてまいります上で非常に重要な点であると思っております。  私どもがそれに対してとれる手段と申しますと、例えば、全国に三十三カ所ございます支店を通じましてその支店からの情報を吸収し、また日銀の本店の考え方というものを支店を通じて各地の金融界あるいは経済界の方に流していくというようなこともございます。それから、本店におきましては、そういう生の情報以外に直接企業に対しましていろんな形でヒアリングを実施しておりまして、東京には支店がございませんけれども、かわりに本部の方から直接そういうところでの経営者の判断なり感覚なりというものの資料は集めることに努力をいたしております。  ほかには、調査統計の局の組織がございまして、いろいろ統計上の資料の収集、またそれの各官庁におけるいろいろな持っておられる統計との交換のような、そういう点は日常の仕事としてやっているわけでございます。こういう点につきまして、私どもはやはり法律改正によって日銀が独立性を高め、それだけにまた立派な金融政策を行っていく責任も非常に強まるという点をよく考えまして、そういった責任を果たすのにふさわしいような機構の改善でありますとか、今の情報の収集、分析の手法等についての見直しというものを進めてまいりたいと思っております。  また、この政策委員会が今回は非常に重要な任務を果たすようになりますので、この政策委員会におきましても政策委員会の委員の方々のための例えばスタッフを、これは外部の方も含めまして充実をし、絶えず委員の方々にいい情報が集中的に集まってそれをお互いの中で議論、討議をしていけるような運営の仕方も考えていきたいと思っております。
  26. 清水達雄

    清水達雄君 今、政策委員会の委員のスタッフ機能みたいなお話がございましたけれども、この点については十分手当てをしてやっていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから、これは大臣に伺いたいんですけれども政策委員会へ政府からの出席とか議案の提出とかあるいは議決の延期請求とかいうような規定があるわけでございますけれども、大蔵大臣は必要の都度この規定を積極的に活用する考えがおありなのかどうか、またその担当職員をあらかじめ指名しておくという考えがおありなのかどうかということを伺いたいわけでございます。
  27. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 大改正の中で、政策委員会が重要な役割を担うということになります。  大蔵大臣及び経企庁長官もしくはその代理と、こうなっておりますが、ただいま来の御発言もこれあり、できるだけ法律に明示されておりますようにその会議に出ていくことが大事で、日程調整はそういうことでなされていかなければならないと。出張、海外出張その他等々の場合は、政務次官をして担当せしめる等の法改正の趣旨に沿った形で出席をし意見を申し述べるということは極めて重要なことだと思っております。
  28. 清水達雄

    清水達雄君 今、大臣がおっしゃったように、政府といいますか、やっぱり役人のところに相当な情報が集まるわけです。私は、日銀政策委員よりも大蔵省の役人のところの方に情報が集まると思うんです。  そういうこともありますし、何か事があったときだけ出ていくというんじゃ出ていったときはこれは何かあるぞというような話にもなりますから、私はできるだけフリーな気持ちで出ていって議論を大いにやっていただくということが必要ではないかというふうに思っております。ですから、そういうためには一応だれか、大臣や政務次官が行かれればいいんですけれども、そうでない場合について担当の人を決めて、その人はいつもそういう情報を集めたり勉強しておくということも必要ではないかなという感じもするわけです。  それから、もうちょっと時間がありますけれども、これまた総裁なんですが、非常に今公定歩合が低い状態で、〇・五%というようなことで決まっているわけですけれども公定歩合引き上げてもうちょっと金利を高くしたらどうかという議論も非常にあるんですが、今後の金利自由化に伴って公定歩合操作というのが、上げたいと思えばいつでも上げられるものなのか、はっきり言いますと。そうじゃなくて、金融市場市場金利動向等もある程度考えて、それにある意味では公定歩合自体がかなり左右されるということなのか、あるいは短期市場金利の誘導というようなことがよく言われます、日銀がそういう低目誘導しているとかいろいろ言われますけれども、そういうふうなことによって上げようと思えば、若干の準備時間は必要だけれども上げられるということなのか。金利自由化に伴って、公定歩合操作というのが従前と変わってきているのかどうかということを伺いたいと思います。
  29. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 金利自由化がもうすっかり行われましたので、公定歩合を変えればこれに連動して預金金利とか貸出金利が機械的に変わるという仕組みではもうございません。それらの金利は皆市場金利に応じてそれぞれ変動してまいることになるわけでございます。  そこで、金融政策手段としましても、実際の市場金利をどういうふうに誘導していくかというそのあたりが重要になってきておりまして、金利誘導の機能も強化をされてまいりましたし、私ども日々行っておりますことは、短期市場金利金融調節を通じてコントロールをいたしながら、その水準が長短のいろいろな金利に波及をしていくということを通じて経済全体に影響を与えるという運営が行われているところでございます。  しかしながら、それじゃ公定歩合というのはどういう役割が残っているかということでございますけれども、これは従来からの長い歴史がございますから、やはり日本銀行金融政策のスタンスというものがこういうふうに変わったんだということを国民各層にわかりやすくアナウンスをするという点で今なお非常に重要な役割を持っているわけでございます。これは、金融自由化が完了いたしましても変わってはおりませんので、私ども政策の動かし方としましては、市場金利誘導と公定歩合操作というのが、どちらが優先でどちらがということではなしに、その両方を組み合わせながら適切な操作を行ってまいりたい。  例えば、市場金利誘導というものを情勢に応じて何度か行いました後で、それにつれた形で公定歩合を動かすというやり方もございましょうし、また、まず公定歩合の方でその変更によって金融当局としての非常に強い政策姿勢はこういうことだということを示しました後で、市場金利をそれに沿うように誘導していくという場合も考えられると思います。  いずれにしても、市場実態と全くかかわりなしに一方的な政策判断、運営ということはできないわけでございますので、これをよくにらみながらこの手段の使い分けは考えてまいりたいと思っております。
  30. 清水達雄

    清水達雄君 終わります。
  31. 河本英典

    ○河本英典君 自由民主党の河本でございます。  日銀法改正の本委員会での議論も本日で第三回目といいますか三巡目でございまして、いろいろな議論が活発に行われておるところでございます。私も私の視点で疑問に思ったこと、聞いてみたいなと思いましたことを、散発的になるかもしれませんけれども、お伺いしたいわけでございます。  今、同僚の清水議員からは、国土庁におられたということでお役人をされていた立場からのお話があったわけでございますけれども、私は、前にこの委員会でお話ししたんでございますけれども、議員になる前は民間会社ということで民間人として仕事をしておりました。その民間人としての日銀を見る目というのは、議員であるとかお役所の人から日銀を見る目というのとはまた違うと思いますので、その辺を逆に違った目でいろいろなことを見ていきたいなというふうに思うわけでございます。そういった意味で少し変な質問になるかもしれませんけれども、お許し願いたいと思うわけでございます。  日本銀行といいますと、この間も見学させていただきまして、日銀へ入れていただいて権威なり伝統なりを肌で感じたわけでございます。私は関西でございまして、滋賀県でございます。日銀の支店といいますのは京都支店でございまして、日銀といいましたら京都支店長とか京都支店とがいうぐらいのイメージであったわけでございますけれども、本店を見せていただいたと。そういうような意味で、議員をさせていただいているから、権威ある日銀総裁を前にしていろいろ伺えるということで、非常に感慨深くきょう質問させていただくわけでございます。よろしくお願いいたしたいと思います。  一つは、今申しました私の一つの接点でございました支店ということでございます。先ほど三十三カ所にあるというふうなお話でございましたけれども、支店があって、支店長会議があるというふうに聞いておるわけでございます。支店長会議というのは、どの程度の頻度で集められて、どういったことをお話しされておるのか。これは言うなら、今清水議員のおっしゃった全国の経済活動の情報を集める一つの体制であるわけでございますので、その日常的な業務の中からどういったことを吸い上げておられるのか。そんなことを中心に、その支店長会議のことについて少し伺いたいと思います。まず、ちょっとさわりをお願いいたします。
  32. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもでは年に四回、毎回二日間という日程で支店長会議を開催いたしております。一月、四月、七月、十月と開催月が決まっております。  この会議には、全国の支店長のほか、ニューヨーク、ロンドン、香港の海外駐在参事、それから本部からは政策委員の皆様方と私以下の役員、各局の局長が出席をいたしております。この席上では、まず支店長や海外参事からそれぞれの地方経済あるいは各地の金融機関動向、また地方の経営者その他の方々と面談をした上での皆様方の地元での御意見なり御要望といったようなもの、またあるいは海外経済情勢などにつきましての報告を受けます。また、本部からは、政策、業務運営全般につきましての考え方を説明いたしております。  これは情報交換でございますけれども、その上で、経済情勢判断などをめぐりまして出席者と本部役員との間で毎回非常に突っ込んだ活発な議論をいたしております。こういった議論は私ども政策判断を行ってまいります上で非常に重要なプロセスの一つであると考えておりますが、この議論を踏まえました私どもの現状認識につきましては、毎回支店長会議の都度、会議の直後に開かれます記者会見の場で私からも詳しく説明をいたしますとともに、また別途大阪、名古屋等の支店長は東京で、また現地で会見をいたしまして、各地の経済動向についての説明を行うと、そういう運営をしております。
  33. 河本英典

    ○河本英典君 そうすると、議長は総裁がされるんですか。
  34. 松下康雄

    参考人松下康雄君) さようでございます。
  35. 河本英典

    ○河本英典君 我々は、会社の運営に当たっては、役員会なりそれなりの幹部の会をやるわけでございます。それなりの議長を決めてやるわけですけれども、民間の会社でさえも、ともすれば割と続けてやっていますと何か形を追っかけてしまうような、本当に実情が伝わってくるかどうかというのは、逆に言いますと議長、総裁、執行部が状況を本当に聞こうとする姿勢があればしつこく聞くわけですけれども、表面的な報告だけ受け取って、ああそうかそうかで終わってしまうわけなんですけれども、そういったところを実際、支店長会議というのはかなり突っ込んだ報告をされているのかなというふうに思うんです。  言うならば、組織は民間的なところもあるんですけれども、官僚的な会議になっていないかなという気がする。これは私は見たことないので想像で物を言っておるわけでございますけれども、いかがでございますか。
  36. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 各地の支店長にとりまして、支店長会議に出席をして情勢報告をし意見を述べるというのはもう大変重要な仕事の機会でございます。  そこで、この支店長会議の前には、常日ごろ意見交換をしております企業等に対して、また必要があると思えば改めて訪問をしましていろいろ個別に御意見を伺うということもやっておりますし、また地域経済に関する統計の分析というようなことにも通じまして、地方経済実態の的確な把握ということの準備のために非常に一生懸命努力をしているわけでございます。そういう準備の作業を通じまして、支店長は各地におきまして中小企業を初めいろいろな業種、規模の経営者の方々あるいは経済団体、また金融機関とか地方自治体というような方々との間に幅広く意見の交換を行っております一同時に、この支店にはそれぞれ専属の経済調査のスタッフがおりますので、平素からいろいろの計数の収集でありますとか、またいろいろの意見交換でありますとかを日常業務として行っておりますが、それらも取りまとめて本店に対して報告をしてまいるわけでございます。  また、その際には、特に先任の支店長は非常にいい機会であるということで、相当はっきりといろいろ意見を私を初め役員の方に申し述べてまいりますので、私もまだ二年半ぐらいの経験でございますけれども、これは相当こちらも本気で議論をやってまいるという機会になっております。
  37. 河本英典

    ○河本英典君 支店長会議の方はそれでよくわかったんですけれども、一方、支店長はそれぞれの支店におられて日常的に地元の経済人なりいろんな人と会われていろんな形で情報収集をされるんですけれども、私はその支店長に特にお目にかかる機会もなかったわけですが、これもイメージですけれども、敷居が高いというか、まさしくお上でありまして、威張っておるなという感じが民間人から見れば本当にするわけでございます。  総裁も民間の銀行におられたのでよく御存じだと思うんですが、同じ銀行でもそれは全然違うかもしれませんけれども、民間の銀行の支店長であれば、かなり足しげくいろんなところへ回られて、それこそ小さいところであっても成長性のあるところへ行くとか、いろんな出先へ回られるわけです。しかし、日銀の支店長になると、特定の一部の地元の名士であるとか財界人であるとか、そういった方々ばかりとの話で、その辺が実際に経済動向を知るのにどうかなというような、これも印象でまことに申しわけないんですが、現地の方の動きというのはどういうふうにごらんになっていますか。
  38. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私も、御指摘のように民間の銀行におりましたのですが、例えば神戸でございますと、銀行協会の会合がございます。必ず日銀の支店長が出席をされまして非常に情報あるいは意見を述べて、会員の方々と本当に腹蔵のない意見交換をやるということがございまして、大変それは役に立っていたように思っております。  ただ私は、今度は現在の立場で支店を訪問いたしますと、今度は支店長はやはり地元のいろいろな方々で平素御意見を聞いているような先の方々に紹介をしてくれまして、直接お話ができる機会を持てるのでありますけれども、そういった場でいろいろ話を聞いておりますと、大体平素どういうふうな範囲で積極的な地元との意見交換が行われているかということは見当がつくものでございますけれども、私自身の現在の感じでは、そのあたりは各支店長とも意識をしまして非常によく努力をしてくれているというふうに考えております。
  39. 河本英典

    ○河本英典君 それなら、銀行としての仕事をしていただいておるんだなと、大分大蔵省とは違うなという感じがいたしておるわけでございますけれども。  先ほど出ておりました指標といいますか、いろんな調査なり、短観という言葉が出ておりますけれども、ああいった指数で経済動きを見るということは非常に大事だと思うわけでございますけれども、私は、経済というのは民間が非常にぞろぞろとがさがさと日常活動の中で経済活動を行ってやるのが一般的でございますので、数字だけで判断するということと、肌で感じるとか聞いて回るとかいうそういったことが非常に実は大事な、血の通った情報収集じゃないかと思うわけでございます。  昔よく言ったんですけれども、民間銀行の話でございますけれども、ある支店長が金を貸すか貸さぬかとかで、その判断はそこの経営者なりその責任者の顔色とか様子を見て決めたというような話を本当に聞くわけでございます。どういった考え方をして、どういう顔色をしているかと。何か変な顔をしていたらこれは危ないなということですし、前向きにやっているならこれは安心だなということで、人と人が会うということが非常に私は大切だと思うわけでございます。これは、総裁一人にそういうふうにハッパをかけていただいてもできるかどうかわかりませんけれども、そういったことは非常に重大であるというふうに思うわけでございますので、ぜひとも頭の隅に入れておいていただきたいなというふうに思うわけでございます。  今、短観の話が出ましたんですけれども、一方では数値的なことで押さえていかなきゃいかぬわけですけれども日銀は短観、主要企業短期経済観測調査ですか、短観短観とよく聞くのですけれども、それ以外にどういったことで情報収集され、経済動きを見ておられるんですか。
  40. 松下康雄

    参考人松下康雄君) まず、お話が出ましたので短観につきましてごく簡単に御説明をさせていただきたいと思いますが、短観は企業短期経済観測調査と申しまして、これには主要企業短観と全国企業短観の二種類がございます。  主要企業短観の方は、原則資本金十億円以上の大企業対象でございまして、製造業では十五業種三百八十八社、非製造業では九業種三百二十二社、合計で二十四業種七百十社に回答をお願いしているわけでございます。  それから、全国企業短観の方は、原則従業員数五十名以上の法人企業につきまして、中小企業も含めました幅広い企業が対象でございまして、製造業で約四千社、それから非製造業で約五千五百社、合計九千五百社に回答をお願いしているところでございます。  この短観は、これまで長い歴史もございまして、非常に企業の方々から御協力を得ておりまして、例えば本年三月におきましては、回答率が主要短観では一〇〇%、全国短観では九一%と大変高い回答率をいただいております。調査内容といたしましても、個々の企業の業況でありますとか製品の需給や価格、また設備投資、雇用、企業金融、そういういろいろな件に関する経営者あるいは企業の判断、それから企業の持っております売り上げ、収益、設備投資計画などの包括的な企業活動をカバーしたものでございます。  これは、私ども非常に経済情勢判断の上での重要な材料であると考えているところでございますけれども、もちろんそのほかにも個別の企業からのミクロの状況判断、あるいはいろいろの計画、事業見通し等についての御意見も日常はお聞きをしております。  そのほかに、一般的な全体のマクロ経済統計でございますけれども、これは各官庁がつくっておられる統計も含めまして景気判断に際しましてはいろいろなものを利用いたしているわけでございまして、ごくその一部を実例として申し上げますと、物価面におきましては消費者物価指数やGDPデフレーター、それから日銀自身でつくっております卸売物価指数や企業向けサービス価格指数などがございます。それから、最終需要動向につきましては、GDP統計でありますとか家計調査、機械受注、公共工事の請負金額、国際収支などの統計がよく利用をされるところでございます。そのほか、生産統計や雇用間連統計も経済全体の動向把握の上での資料でございます。  もちろん、マネーサプライとかあるいは銀行貸し出しなどの金融それ自体のいろいろの量的指標も経済の現状や先行きを把握してまいりますための重要な手がかりでございますし、また債券市況や株価あるいは地価というような資産価格動向につきましても、これは経済変動を示唆する重要な判断材料の一つであるということで活用をしていると。  そういったものを私どもは総合的に判断をいたしながら、景気の先行きなりあるいは物価上昇・下落圧力なりというものをできるだけ正確に把握していくように努力をしてまいりたいと思っております。
  41. 河本英典

    ○河本英典君 日銀だけでもいろいろそうした数字を持っておられて、また今少しお話しいただきました。いろいろ各省庁それなりの経済動向を知る数値をお持ちなんですけれども、俗に言われます縦割り行政であれば、それぞれの数値は大事にされるんでしょうけれども、ほかの省庁の数値というのは少しは参考にされながら、金融政策というよりもっと広い意味経済政策というのには使われるんでしょうか。総裁に、少しお話を聞きたいと思います。
  42. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 各省の作成をしておりますもろもろの経済統計は、経済企画庁を初めといたしまして、いろいろの現業官庁が非常に有益な統計を長い期間にわたって継続性を持って作成しておられます。  そして、統計を担当している者たち同士はお互いに知り合いでございまして、そういう組織もあったかと思いますけれども、それぞれの統計につきまして、例えばこういう点を変えるから今後の利用には気をつけてもらいだいとかいろいろの情報交換をいたしながら、総合して政府全体も私どもも、この日本の国が持っております統計資料をうまく活用できるように協力し合っているところでございます。
  43. 河本英典

    ○河本英典君 数値は、恐らく正確なものだというふうに思うわけでございますけれども、あとは時期を逸しないかどうか、早くそれが使えるかどうかというところが実はポイントではなかろうかと。先ほど清水議員の話にございましたように、それが金融政策に本当に生かされるのかどうかということが一つの聞きたいところなんですけれども、お役所の資料はどうも遅くなりがちであるということについて、どういうふうにお考えでしょうか。
  44. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この点は、それぞれの統計を所管しております部局の方々に伺いますと、やはり時期をおくれて出てくる数字というのは大変値打ちが下がりますので、どこともできる限り工夫をしてそして早く数字を集め、そしてそれを早く公表したいという点では努力をしておられるように考えております。  特に最近では、通信その他のコンピューターなり通信の能力とかやり方が非常に進歩をいたしましたから、そういう点では統計の集計も年を追って少しずつではありますけれども、早くなっているような気がいたします。私どもの短観につきましても、その集計のスピードは少しずつ上がってきております。  それから、そのほかに重要なことは、まとまりました数字を世の中に公表するときに、できるだけ早くそれが一般に正確に行き渡るような公表の仕方ということが大事であると思いますけれども、私どもも短観その他の主要の計数につきましては、このごろインターネットというものを活用いたしまして、できるだけ即時に国の内外の方々から御利用をしていただけるように努力しているところでございます。
  45. 河本英典

    ○河本英典君 ありがとうございます。  それはこの辺で終わりまして、次は日本銀行目的であります物価の安定ということです。いろいろ先ほどからお話が出ておったわけでございますけれども物価の安定とそれから通貨の安定、為替の安定、それから資産価格の安定といろいろ話が出ておったわけでございます。  最初からの議論ででも、金融政策のやり方次第でバブルは防げなかったかどうかという話も出ておったわけでございまして、それは結果の話でございますので、もちろんそれは結果からいった話かもしれませんけれども、しかし我々は、反省としてこれからの経済運営なり金融政策に生かしてもらいたいというふうに思うわけでございます。私は、特に資産価格の安定ということで、土地価格とそれから株価について少し意見なり質問をさせていただきたいわけでございます。特に株価につきましては、下がると非常に、毎日毎日言っておるわけでございますけれども、私は株式を持つというイメージがどうもよくないのがおかしいなというふうに思うわけでございます。  議員の資産公開とかなんとかででも、株なんか持ってたら悪いようなイメージ、何か新聞なんかでもそういう、それから土地もそうなんですけれども、特に株は何か悪者のようなイメージがついて回っている。これはだれかがおっしゃっていたんですけれども、私は株をこれだけ持っているんだと堂々と言ってくれたら大分株式の値打ちが上がるんだ、有価証券の値打ちが上がるんだという話が出ておったんですけれども、どうも避けて通るような状況でございます。そういった意味で議員なんかがもっと、それはインサイダーみたいなことをやったら困りますけれども、大いに持って私は持っているんだということをはっきり言っていく必要があるんじゃないかなというのが株式に対する一つの意見でございます。  私は、実はお話をさせていただきたいのは土地価格についてなんです。土地価格、先ほど清水先生もいろいろお話しされたわけでございますけれども、私が思いますのは、これは明治以来といいますか、日本の近代化の中で経済成長とちょうど連動した形で土地の値上がりというのはちょっとずつきたわけでございますけれどもバブルという過剰流動性とかいろいろな状況があったわけですけれども、暴騰したと。暴騰したことはこれは困ることでありますけれども、私は下落し過ぎるということも、これは非常に経済の回復のブレーキになっていることは間違いないわけでございまして、不動産業界の代表じゃございませんけれども、土地の価格についてもっとよく考えていかなければならないのではないかというふうに思っておるわけでございます。先ほどお話ございましたように、金融政策の中に資産価格の安定ということも大いに考えていただかにゃいかぬと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  46. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 地価あるいは株価というような資産価格は、やはり長い目で見ますというと、日本経済全体の成長を反映してまいるものであると考えます。  ただ、これは将来の経済成長でありますとかあるいは企業収益の見通しというようなものも随時織り込みながらその価格が形成をされまして、そういう条件のいかんによりましては、非常にこの経済実態そのものから一時的には大きく変動する場合もございます。そういった性格がございますので、資産価格そのものの安定ということを主たる目的として金融政策を運営してまいろうということになりますと、この条件によりましてはかえって物価あるいは景気に好ましくない影響を与える可能性もございます。そういう点では、一般の物及びサービスの価格の安定を図っていくということと、多少この意味合いが違ったところがあるように考えます。  しかしながら、例えばこの資産価格、株価、地価がどんどん上がっていく、あるいは将来非常にそれが上がりそうな懸念があるというようなことが発生をしておりますと、それはやはりその背景におきまして経済活動の中に何らか行き過ぎが生じているのではないかとか、あるいはそれに伴って一般の物価上昇圧力が高まっておりまして、何かのきっかけでそれが一般の物価上昇の方にそれをもたらす引き金になるのではないかとか、そういった場合が多くあるということも事実であろうと思われます。  そういった意味で、私どもはこの一般物価の安定を維持し、ひいてこの経済インフレなき成長というものを確保していく上に役立たせようと考えますというと、資産価格動向をよく見きわめて、よくそれを内容的に何を意味しているかということも早目早目に必要な対応ができるように分析をやっていくことに努める必要があると思います。これが私どもの、先般のバブル発生なり崩壊なりに関連をいたしまして、経験をいたしたところからの反省でございます。
  47. 河本英典

    ○河本英典君 ちょっとまとめてきたんで、少し土地についての考え方を述べたいと思うんです。  まず、土地価格を適正水準に維持することということで、我が国には明治初期以来、土地を担保にする間接金融のシステムが定着している。近代化の過程の中で、いわば無から有を生じるがごとく土地を担保にしながら資本形成を進めてきた。その間、果たした日本の土地の経済的役割と機能というものは他国に例を見ない独特のものである。日本における土地は国土でありまして、物理的に有限であるわけですから、その公共性のゆえに市場原理にゆだねるべきでないという考え方なんですね。だから、先ほど言いましたように、上がり過ぎたから抑えるのは当然のことなんですけれども、そういった意味でいろいろな税制上の土地税制が行われたわけですけれども、今は言うならば下がり過ぎて、いろいろ浮上のきっかけがっかめない。だから考えにゃいかぬのは、地価が下がれば下がるほどよいという考え方は、ある意味ではこれは逆神話であるということでございますね。  土地問題は今まで、これは大蔵省にも聞いていただきたいんですけれども、先ほどの株式の話じゃないんですけれども、土地という言葉の響きからも何か適正なポジショニングが得られなかったんではないか。土地価格は、需給によって形成される市場価格にのみゆだねられておったわけでありまして、国民経済の先ほどお伺いしました諸統計、いろんな統計をとられておるわけですけれども、その国民経済の諸統計の枠外に置かれているのではなかろうか。もちろん土地の調査はされるわけですけれども経済指標としての土地の値段とか、そういった意味で土地の価格というのは余り考えられていないんじゃないかということなんですね。  そういう仕組みになっているということで、言うなら知的判断基層を形成すべき近代経済学においても、日本経済の重要な生産要素である土地の機能が過去に果たしてきた歴史的な役割と特性すら十分理解されてないということ、これをちょっと申し上げておきたいなというふうに思うわけでございます。金融政策、それから資産価格のところから入ったわけでございますけれども経済政策の中で、そういった意味で土地の政策というのはとにかく抑え込むばかりじゃなしに適正な価格水準を維持しなきゃならないというふうに私は思うわけです。  その辺、先ほど言いましたように、とにかく株式と土地は悪いイメージがありまして、何か株は余り損したら困るということで、ちょっとこのごろいろんなことで上げたり、いろいろこちょこちょやっていますけれども、土地についての税制も少し考え直していただいて、やっぱり適正な水準まで上がるような、これは暴騰を招くようなことはしたらいかぬことはもちろんわかっておるわけですけれども、適正水準へ戻すことは非常に大切なことではないか、これは一番私は実質的な近道ではなかろうかと思うわけでございます。そうしたらまた税収もふえますし、その辺を考えてもらいたいなと。とにかく一時的に上がった、暴騰した土地の値段で東京都の都庁の建物が建っているみたいなものですからね、あれは。  本当にそういうふうに思うんですけれども、ちょうど資産価格の話に関連しまして土地に対する考え方を述べさせていただいたんですけれども、大蔵省、ちょっとその辺についてコメントをお願いいたします。
  48. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 土地価格のあるべき姿については、私ども述べる立場にはないと思います。土地税制についての御指摘がございましたので、この点について私どもの考え方を申し述べたいと思います。  バブルの時期に私ども強く指摘されましたのは、土地税制も原因で甘過ぎるから地価が上がる、つまり土地に対する需要が非常にふえてしまったんだ、それが積年の積み重ねのもとでああいうことも生じてきたんだと、したがって土地税制を適正化して余り土地の価値を高める方向での税制は是正すべきだと強く指摘されました。  これに基づきまして各種の措置を講じたわけでございますが、その中で幾つかの部分につきましては、その後の土地の状況を反映して、本委員会でも何度も御指摘をいただき、かなりのまた改正というものをやっております。そういう意味では、現在の税制の枠組みがかなりもとの姿に戻ってきているということは御理解いただきたいと思っております。  現時点で私ども認識しておりますのは、二月に新総合土地政策推進要綱というものを閣議決定いたしておりますけれども、この考え方に基づきまして、土地の有効利用の促進という観点から現状においてさらに見直すべきことがあるならば見直していくべきだと思っております。その際に、ここ十年ぐらい議論してきました地価水準と税制という議論よりもといいますか、それ以外にむしろ金融問題等々がこの間大きく話題といいますか議論になってきております。  そういった中で、土地と金融との関係等々から考えますと、土地信託受益権だとか、あるいは特別目的会社を通ずる何か手当てができないかとか、そういった新しい発想に基づいたときに、土地税制がうまく機能していないというならば、そういうところをきちっと見ていくと。これは土地税制だけではできませんけれども、そういう新しい状況に応じた見直しは必要だと思っております用地価水準と税制という議論をしてもこれはなかなか答えが出てこないし、決して今の税制が重いとだけは言えないと思っておりますけれども、ただし時代に応じた税制のあり方というものを土地政策全体の中で、あるいは金融政策全体の中で考えていくことは必要だと思っております。
  49. 河本英典

    ○河本英典君 税制で土地の取引とかいろんなことで税収を上げろということでなしに、やはりあるべき姿へ誘導するような税制に変えていってほしいということのお願いですし、私があえて言いましたのは、土地が何か悪者になっておりますけれども、実は今の経済を一番早く回復させるのにはバブル以前の水準にまで土地が戻る、これは戻すんじゃないですよ、戻るように誘導して、実際に相場がそこへ来るとかなりよくなるということのお話をさせていただいておるんです。  こういった場では、土地と株式はどうも悪者扱いされておりますけれども、土地は国土庁の扱うものだというような感じもないこともないでしょうけれども経済政策そのものの、特に先ほど言いました日本の土地のあり方というのは、担保であるとかそういった値上がり、ちょっとずつ上がってきたというそういった経過、特殊な事情があるということを御認識いただきたいということであえてこのお話をさせていただいたわけなんで、頭の隅にでもしまっておいていただいたらありがたいなということでさせていただいたわけでございます。  これは、この辺にさせていただきます。今までは大体金融政策なり経済政策お話なんですけれども日銀の今度は業務のお話、組織内の話になるんですけれども、この間からお話ございましたように、給与水準が非常に高いということで、本委員会でも平成会、社民党、新社会党からも要請のありました日本銀行職員の給与水準についての年代別の平均の実績を示してほしいというお話があったんですけれども、それを示していただけますでしょうか。
  50. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども日本銀行におきましては、職員の給与でございますけれども、これは年齢をもとにして、あるいは特定の俸給表というようなものをもとにして定めているのではございませんで、職員のそれぞれにつきましての職務評価や考課査定、業績査定などに基づいて決定をいたしているところでございます。したがいまして、一概に職員の給与水準を金額でお示しするというのは大変難しゅうございまして、特に特定の年齢層、この年齢の者は幾らの水準ということをお示しいたしますと、その同じ年齢の中に考課の査定等によりまして大きな給与格差がつけられている現状でございますので、組織運営上大変難しい面があるということを御理解いただきたいのでございます。  ただ、私どもの職員の給与の水準の考え方でございますけれども、これは昭和三十四年の金融制度調査会実態調査小委員会報告というものに基づいて決定をされたものでございまして、そこには日銀職員の給与水準については少なくとも市中大銀行並みの水準にすることは適当であるという指摘をいただいております。また、そういう基準のもとで、個々の職員の給与につきましては、各職員ごとに厳正な考課査定、職務評価、業績評価等を行いまして、個別に決定をしているところでございます。
  51. 河本英典

    ○河本英典君 高いとか安いとか、いろいろ議論は、主観の問題もあるわけですけれども、今おっしゃいました市中銀行と比べてということなんですけれども、市中銀行というのは大体民間でも一番高い水準にあるわけでして、それに合わすと当然高い水準になるのは当たり前でして、総裁の年俸が三権の長より高いとか安いとか、いろいろ言われておるわけでございますが、私がどうこう言うということでなしに、国民から見た視点でどうであるかということが今議題になっておるわけでございます。この辺は今だけの話なのか、これからどういうふうに受けとめられて何かされようとしておられますのか、お伺いします。
  52. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 改正法案におきましては、給与等の支給の基準が法律に定められておりまして、まず三十一条におきまして、役員及び職員の報酬、給与の「支給の基準を社会一般の情勢に適合したものとなるよう定め、これを大蔵大臣に届け出るとともに)公表しなければならない。」とされております。そしてまた、その中で、役員に関しては、別に特別職の職員の給与に関する法律の適用を受けます国家公務員の給与等「その他の事情を勘案して定められなければならない。」となっております。  このように、社会一般の情勢に適合したものとなるようにという考え方に基づきまして、私どもとしましては、これは新しい政策委員会で今後考え方を定めることになっておりますけれども、やはりいろいろの労働市場におきます同じような仕事をしております場合の民間の賃金の水準とか、その他いろいろ社会一般に納得を得られるような比準の仕方を考えまして、その上で新法に基づく決定を行ってまいるようにしたいと思っております。
  53. 河本英典

    ○河本英典君 改正法の第三十一条で、日本銀行の給与及び退職手当の支給の基準につき、公表することを前提とした条文になっているということなんですけれども、そうですと、先ほど言いました俸給表というのは一概に言えないということなんですけれども、俸給表を公表すると考えてよいということなんでしょうか。
  54. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 公表の具体的な内容はどういうふうな俸給決定の仕方を採用するかということと関連をいたしますけれども、法の定めのように私どもは大蔵大臣に届け出をし、これを公表して社会一般の御理解を受けられるものにしなければならないと考えております。
  55. 河本英典

    ○河本英典君 次に、大蔵省にお聞きします。法令で給与及び退職手当の支給基準を作成することになっているほかの特殊法人の場合はどうなっておりますか、お聞きしたいと思います。
  56. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、一つ例で申し上げたいと存じますが、住宅・都市整備公団の場合、この法律の第六十条で、「公団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、建設大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。」ということで、支給基準を明らかにしております。
  57. 河本英典

    ○河本英典君 それから、またお金の、人の財布の話ばっかりなんですけれども、衆議院の議論で日銀総裁の交際費が年間三千万円というふうなことなんですが、これも多い少ない、いろいろ考え方はあるんでしょうけれども、アメリカの中央銀行である連邦準備銀行では接待禁止であるというふうにされているんですけれども、その辺はこれからどのように考えていったらいいのか。日銀法改正に当たってこういう話が出てきたんでしょうけれども、少し考え方をお聞きしておきたいと思います。
  58. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもでは、業務の性格上、金融機関でありますとか産業界あるいは学者、そういう識者など各方面との金融経済情勢などに関します意見交換の場を設けてまいっております。また、近年の著しい傾向といたしましては、金融国際化の流れの中で、海外中央銀行または国際機関等との交流や、日本銀行主催によります国際会議の招致というような機会もふえてまいってきております。  そこで、私どもといたしましては、こういった外部の方々との意見交換等は業務上必要なものでありますから、そういったものにかかる費用につきましては会議・交際費という形で銀行の経費で支出をしているところでございます。ただ、会議・交際費として支出を認めますものは、当然業務上本当に必要なものに限定をいたしておりますので、内容的には私どもはむだなものは使わないように運営をしていると認識いたしております。  直近の半期の予算額は、これは全体の会議・交際費で一億円程度でございますけれども、そのうちの三千万円程度は、先般福岡で大蔵省と一緒に開催をいたしましたアジア開発銀行年次総会の開催に関する費用として計上したものでございまして、こういう予算は現行法のもとにおきましてはすべて大蔵大臣の認可を受けまして使用をいたしております。
  59. 河本英典

    ○河本英典君 交際費の話はもう出しましたので、大蔵省にちょっとついでにお話ししておきたいんですけれども、今官官接待であるとかいろんなことで、交際費という言葉は使わないんでしょうけれども、いろいろ言われておるわけですけれども、先ほど言いました民間の立場からいいますと、お役所というのは集めてきた税金を使うんですからそれだけでいいんですけれども、民間会社ですと損金不算入で使ったお金に余分にまた税金を払わにゃいかぬというので、大変むだなことになっておるんですね。  ところが、個人の所得税が非常に高いから、少しぐらいポケットマネーで持てばいいものを会社とかその所属する組織に払わすというのが、これは非常に一般的な習慣になっておるわけです。これも本当に余談ですけれども、やはり大きな意味での税制改革の、非常に俗っぽい話かもしれませんが、そういったことというのは非常に大きく働いておるわけです。たくさん税金を払った残りのお金を使うということは、幾らになるか知らぬけれども、半分としましたら、五千円使うのに実際一万円を自分は支出することになるわけですけれども、それが法人であればいいとか、まして役人で税金を払っていない組織が払うなら、それはそれ以上税金を払う必要はないですから、随分違うんだなと。  個人が払う場合、民間会社が払う場合、それから役所が払う場合、役所というのはいろんな特殊法人も含めてでしょうけれども、税金を払っていない、損金不算入にならないところが払う食事なり、郊外へ遊びに行くとかいろいろあるわけです。私はそういうことが好きですので、余り否定はしませんけれども、その辺は少し話をきっちりしておかぬと、これは非常に世俗の話でございますので、こんな機会にこんなことを言う人はおらぬと思いますので、これはもう余談でございますけれども、申し述べておきます。何かコメントをいただきたいと思います。
  60. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 今、御指摘のように、現在法人税の世界でもいわゆる大法人とそれから中小零細の法人とは取り扱いを異にしておりまして、大法人につきましてはいわゆる交際費は損金に入れないということになっております。しかし、中小法人については、そこはそれもそこまでするのは無理であるというのが現在の考え方ですが、これはどういう背景があるかといえば、大企業であれば、例えばテレビで広告をするなりいろんな商売のやり方があるけれども、小さな法人にとってみれば、それは人間関係で仕事をしていくことも重要であるといったそういったバランスから、今できております。そういう意味で、今の考え方がおかしいと私どもは思っておりませんけれども、商慣習の中における交際費のあり方みたいなものと一緒にこれは考えていくべき問題だと思っております。  外国においてもいろんな取り扱いがありますが、一方でアメリカなりヨーロッパでは商売上の交際費というのはこの程度である、あるいはこうしたものは株主との関係で交際費に落とせないんだといったところが日本よりはしっかりしているというか、いうような感じを私どもは持っておりまして、その辺、税制だけでなく商慣習なり社会的なこういうものに対する見方との関係で考えていくべき問題だと思っております
  61. 河本英典

    ○河本英典君 終わります。
  62. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      —————・—————    午後一時開会
  63. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本銀行法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 海野義孝

    ○海野義孝君 平成会の海野でございます。  本日本銀行法案に関する審議も日にちを重ねてまいりまして、もう終盤に近いかと、このように思います。私も、五十五分間という限られた時間でありますし、本日も午前中に自民党の先生方からも大分踏み込んだ、大変聞きごたえのある御論議もありまして、私から改めて重ねて申し上げるようなことはほとんどなくなっておりますけれども、今般の日本銀行法案が五十六年ぶりに全面的に改正されるという意味合いというのは大変重いものがあると思いますし、同時に、今日のいわゆる国際化時代の中で、我が国の中央銀行の役割というものを世界に問うという意味合いからも大変重要な意義がある、このように思いますので、私の思いつくままに関係の皆様方に御質問させていただきたい、かように存ずる次第であります。  きようの質問につきまして、事前に私どもの方からお願いしてありますけれども、多少順序不同もあろうかと思いますが、既に今日までいろいろと御説明していただいていることと若干の切り口が違う程度でございますので、その点はひとつ事前の質問にないものもあろうかと思いますが御容赦いただきたい、このように思います。  つい先日、この大蔵委員会におきまして外為法のいわゆる自由化の問題につきまして審議がありました。いよいよ我が国の金融制度の改革、つまり日本版ビッグバンのまさにフロントランナーについての御審議があり、これが可決したわけでございます。  昨年の十一月に橋本総理から六つの改革についての御提案があり、その中でもこの金融制度改革の問題については比較的早くそのスケジュール、そういったこともだんだんはっきりしてまいりましたし、そうした中で幾つかの法案がこの常会において通過するというような運びになるわけでございまして、このことを考えましても、現在の我が国の置かれております中にあってこの金融制度の問題というのは喫緊の大変重要な問題であるということで、早急にその点の審議を進め具体的な法案をつくっていく、こういうことになったと思うわけでございます。  まず最初に、この日本銀行法案、全面的に改定されるわけでありますけれども、これにつきましては、昨年、橋本総理の私的な諮問機関である中央銀行研究会が審議を尽くされ、そしてこれの答申があったというところから始まったわけでございますけれども、まず、この中央銀行研究会というものの、要するにこれがいつ総理の御下問によってでき、そして具体的にその中央銀行研究会のメンバーの方、主要なメンバーの方はどういった方々であったかということにつきまして、唐突な質問かと思いますけれども、ひとつ簡潔で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  65. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答えいたします。  総理大臣のもとでの中央銀行研究会は七月三十一日に始められまして、最終的なレポートをいただきましたのが十一月の十二日でございました。メンバーを申し上げますと、座長に慶応大学の塾長の鳥居先生でございました。メンバーは、経団連の副会長の今井さん、東京大学の商法の教授の神田さん、それから京都大学の憲法、行政法の佐藤さん、それから学習院大学で経済学の須田美矢子さん、それから東京大学名誉教授の経済学の館龍一郎先生、それから電通総研社長の福川伸次さん、それから専門委員として慶応大学の教授の経済学の吉野直行先生、以上でございます。
  66. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変ありがとうございました。  その中央銀行研究会での御審議というものが今般の日本銀行法案、この骨子となっているということは当然考えられるわけでありますけれども、その中央銀行研究会におきましての審議の中で、論点の中で幾つかの問題はあろうかと思うんですが、特にそこで時間をかけたといいますか、大変審議が白熱したと申しますか、そういった面ではどういった点があったか、簡単で結構でございますけれども銀行局長お願いします。
  67. 山口公生

    政府委員山口公生君) もちろん中央銀行制度でございますので、かなりいろいろな角度からの御議論があったわけでございますけれども、まず独立性というものをどういうふうに考えるべきかということがもちろん基本にあったわけでございます。それと同時に、それがいかに開かれたものであるかということが議論されたわけでございます。  その結果、政策委員会の機能の強化、あるいは組織の強化というように話が発展してまいったわけでございますが、そこで、この議論の途中から強く意識されたなという感じを持ちますのは、やはりこれからの金融行政あるいは金融をめぐる諸事象を考えたときに、マーケットとのかかわりをどうするのかというところだろうと思うわけでございます。  日本銀行金融政策の決定事項あるいは決定過程、これは何が議論され、どのようにしてそのような政策が選択されたのかということを、国民一般は無論のこと、マーケットの金融専門家にとってもやはりわかるようにする必要があるだろうと。そうすることによってマーケットを基軸にしたこれからの金融行政のあり方、あるいは金融市場あり方金融業界の活躍の仕方というものが実現できるのではないかということが意識されまして、そこで、今申し上げた独立性と透明性という二つのキーワードが生まれてきたというふうに理解しております。
  68. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変ありがとうございます。  実は私、今回のこの日本銀行法案の審議、この問題が出てきましたのは、先般来委員の方々からもいろいろ御質問があり、お答えがあったわけでありますけれども、やはり一昨年秋以降といいますか、いわゆる金融不祥事といいますか、こういったものが内外で続発したということがあると思います。  さかのぼれば、一昨々年の暮れの安全信組、協和信組の問題、これは一般預金者等にとってみれば大変不幸な事件というか、まさに金融機関の経営者にあるまじきそういった問題から発端したわけであります。それを除きましても、一昨年夏の兵庫銀行あるいは木津信用組合等のいわゆる大手のそういった金融機関の問題、あるいはまた海外での大和銀行事件、さらには昨年の今ごろでしたか、やっておりましたいわゆる住専問題での国会での論議等々、従来の我が国におきましてはまさに想像できなかったようないろいろな問題がありまして、この問題が国内のもちろん株式を初めとしまして、あるいは債券、金融為替等の市場にも少なからず影響を及ぼしたわけでありますけれども、それのみならずジャパン・プレミアムというような形で、いわゆる国際的にも我が国の金融機関というものが、あるいは日本金融業界というものが大変厳しいそういった評価を受けるに至ったという問題がございます。  この日本銀行法、これは昭和十七年ですからもう既に五十六年になるわけであります。先ほどの山口局長お話のように、今回の日銀法案では明確に、当時の戦時体制下での日本銀行法案とはまさに比較にならない、今日的、国際的なそういった情勢の中で十分に比肩できるそういったものであるというような御答弁もかねてよりありましたけれども、そういうような中においてこの日本銀行法案の問題と、一方ではいわゆる金融行政の問題で大蔵省の改革という問題が当時相前後して出てきたように私は記憶しております。これは恐らく昨年の二、三月ごろの常会、いわゆる住専国会の中でそういったことが起きてきたと思います。  それから、今の中央銀行研究会の方々を初め、金制調等の御苦労があって今日こういった法案の審議の運びになったと思うわけであります。私は、そういった中で今回行革・税制特別委員会で現在並行して審議されております金融監督庁設置法案及びその関連法案、これとはやはり切り離すことではなくて、まさに今回の我が国のそういった金融行政政策、こういったものの根幹の問題についてここで抜本的にこれを改めていくという、そういった大変重要な意味合いを持った二つの法案ということかと思うんです。  そういった意味で、この日本銀行法案とそれからもう一方での大蔵省のいわゆる改革に伴う金融監督庁設置の関係、この辺についてはまさに車の両輪として、これはもちろん御審議された方々は違うかと思いますけれども、これは銀行局長それからその後で大蔵大臣にお聞きしたいわけでありますけれども、その辺の関係についてはこれまで政府御当局におきましても、あるいは大蔵省におきましてもどのようにこれを検討してこられたかというあたり、ポイントだけで結構ですので教えていただければありがたいと思います。
  69. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大蔵改革の中での議論も日本銀行の改正の問題も、いずれもこれからの二十一世紀の新しい金融システムの中での行政のあり方日本銀行あり方という将来に向けての検討だろうと思うわけでございます。  先ほどちょっと御紹介しましたように、これからは透明性のあるマーケットを中心とした行政を行っていくということに関しまして、行政の方もそうしたことに対応できる体制にしていく。それと同時に、金融政策を担当しておられる日本銀行もそういったマーケットを志向していく形が実現できるように組織を変えていくということだろうと思うわけでございます。
  70. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 先ほど中銀研の概要の説明がありました。同時に、金制調を初めとして金融システム改革、いわゆるビッグバンと言われることが本年の当初からスタートを切ったわけでございます。私に対する総理からの指示は十一月八日だと覚えております。大きく変わろうとしておる世界経済の中、経済の血である金融、これをロンドン、ニューヨーク並みにしっかりとしたものにつくり上げていきたい、こういうことでございました。  フロントランナーと言わさせていただきました外国為替管理法、御努力によりまして成立を見たわけでございます。同時に、日銀法は中央銀行の役割を開かれた独立性というこの中に包含をしながら中銀の独立、そして政策運営、決定の経過の透明性の確立、こういうことで取り進め、その目的を達成していただくことが同時に重要な課題。それと、御案内の住専問題に発しました諸問題、これに対応することとしたわけであります。企画立案と検査・監督の分離、機能分担でございます。同時に、護送船団と言われる今日までの金融政策に業界から距離を置くことを明確にすることによりまして、企画立案の基本を取り進めていく、金融監督庁は検査・監督の執行面を担当してまいる、こういうことでここまで来たわけでございます。そういう観点から取り組まさせていただきました。一つだけ訂正します。十一月八日ではなく、十一月十二日でございました。  この三点が前進し、効果を出すことによりまして、経済国家としての日本ニューヨーク、ロンドンと同じ信認を世界からも得ることができますし、我が国の国民各位からも信認を得ることによりまして経済全体を押し上げていくことができるであろう、こんなことでございます。まさに金融システム改革を断行し、その安定、維持を図るための三つの大きな改革であると認識をいたしております。
  71. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変御丁寧にありがとうございました。  まさにおっしゃるとおりだと思いますけれども、実はきょうの午前中にもいろいろ御審議がありまして、バブル当時の問題、これは八〇年代の問題でありまして、これはまだ今日的な問題であり、なお今日いろいろな銀行あるいは保険会社等が大変経営的にも苦しい状況にある、こういった問題もあります。さらには、私も勤めていた関係で余り触れたくありませんけれども、大変残念な問題がここ証券また銀行、大変大きな問題になりつつあるということで、これは私ここであえてお聞きはしませんけれども、こういったことを見ておりますと、まさに現在取り組んでいるいわゆる大蔵省の改革の問題、あるいは日本銀行のまさに改革と言っていいかと思いますけれども、この問題というのは大変大きな問題を実は含んでいる、こういうように私は言っていいと思います。  今、大蔵大臣がいみじくもおっしゃいましたけれどもニューヨーク、ロンドンと並ぶ金融センター、あるいはニューヨーク、ロンドンと同じような信認を得る東京市場、まさに私はこの点が極めて重要な問題であって、ロンドン、ニューヨークに比肩するような我が国の金融市場の隆盛という問題はその先の問題であって、今まさにその整備を始めているという問題であろうと思います。そういたしますと、まさにこのそういったロンドン、ニューヨークに並ぶような信認を得るような、そういう行政あるいは政策、こういったものが問われると。また、世界は今はやりのグローバルスタンダードというような物差しで我が国の今のそういったこの法案の審議等につきましてもやはり注意深く見守っているんじゃないか、このように思うわけであります。  そこで、午前中に十分論議し尽くされておりますから重ねて申し上げませんけれども、狂乱インフレの七〇年代、それからバブルの八〇年代、これについてこれまで政府御当局あるいは松下総裁からもるる御答弁が再三ありましたけれども、この七〇年代、八〇年代のインフレあるいは資産インフレ、さっき資産インフレのいわゆる土地と株式の問題と、いわゆる一般物価の問題という面がどうも違うような、日銀目的としていわゆる物価の安定ということをおっしゃっておりましたけれども、この二つの七〇年代、八〇年代のインフレ問題について、これは日銀がどうこうということを言うわけじゃありませんけれども金融政策というものがいわゆる独立性を持って十分に機能していればこういう問題は起こらなかったんじゃないかと。例えば欧米におきましても、我が国と違っていわゆる金融政策対応というのも大変早かったわけです、金利政策なんかもそうでした。  そういう意味で、この辺のところも今回のいわゆる日銀法案によって明確に変わると、法案が変わってもそう簡単に変わらぬというのが私の個人的な考えであって、それほど生易しいものではない。これからの国際金融情勢の中で、我が国の日本銀行が独立性をお持ちになって金融政策をおとりになっていっても、やはりそういった問題がまた出てくるんじゃないかという私は心配をしているわけで、そういうことがまたもしあれば、ビッグバンを進めていく中でさらにまた我が国の信頼性を失墜させるようなことになるという感じがいたします。  その辺でひとつ、松下総裁とそれから山口局長の方からこの狂乱インフレあるいはバブル発生、このときのそういった政策の問題について、簡単に回顧していただきたいと思います。
  72. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま御指摘がございました七〇年代、また八〇年代の我が国の経験日本銀行のこれに対する対応のことでございますけれども、七〇年代半ばにおきまして大幅な物価上昇経験いたしましたが、これはニクソン・ショック後の金融の緩和に当時の列島改造ブームが重なりまして、そこにまた石油ショックの発生からコスト面での激しい物価上昇が加速されたという面がございますが、この時代に非常に激しいインフレが生じましたことは、やはり金融政策の運営におきましても私どもはいろいろと反省すべき点がある、早目早目の厳しい対応ということに努める必要があったものというふうに考えます。  ただ私どもも、この点の、この時期の金融政策の運営についての問題におきましては、この時期の教訓を生かしまして、この次の第二次の石油ショックのときにおきましては非常に早い対応をとることによりまして、国際的に見ましても、アメリカ、ドイツ、日本の三国は早期の第二次石油ショックからの脱却が可能となったということもございました。  その後のバブルにつきましては、最前もお答えを申し上げましたように、私どもはやはりこの教訓を通じまして、物価に対する注意を怠らないと同時に、土地、株価のような資産価格動向につきましてもよくこれを観察し、その意味するところを分析いたしまして、これが経済全体の運営、また一般物価動向に悪影響を及ぼすということが認められます場合には早目早目対応金融政策面からもとっていくことが非常に重要であるという教訓を得たと思っております。  このような点を今後の金融政策の運用上に生かしてまいりたいと思いますが、それに当たりまして、今回の日銀法の改正が行われまして、私ども政策決定についての開かれた独立性というものの確立ということがございますというと、それは私ども自身もそのような独立性の強化によりまして責任もまた非常に重くなったということを痛感することでございます。このような開かれた独立性を与えられたことにふさわしい機構、それから業務運営、いろいろな面での自己改革を行いまして、今後の金融政策の問題、また金融システムに対する対応の問題等につきましては、でき得る限り誤りのない立派な対応をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  73. 山口公生

    政府委員山口公生君) 過去の狂乱物価あるいはバブル発生のいろいろな教訓ということは、これから十分に検討をされ、またそれが生かされていかなきゃいけないと思うのでございますが、私自身の個人的な思いからいたしましても、当時私自身がバブルのときに、これが今のバブル崩壊のような時代、必ず来るというふうに私自身が本当に心底そう思っていたかと言われますと、私も日本経済の質がひょっとしたらここで変わるのではないかというような疑念すらを持ったような反省もございます。  私が何を申し上げたいかといいますと、国民一人一人の皆様方がやはりいろいろな政策あるいは日本銀行が行います金融政策を含めて、そういったもののインフォメーションというのをやはり正確にこれからは知り、みずからが自分で判断し、自律的に行動するというような社会にしていくべきであろうと思うわけでございます。  今回、透明性ということを強調させていただき、アカウンタビリティーというバタ臭い表現もさせていただいておりますけれども、これは日本銀行の行います金融政策が国民に対し、また国会を通じ国民の一人一人に対して正確にその意思を伝えていくということができるようになるのではないか、そうしなければならないのじゃないかというふうに思うわけでございます。また、政策委員会の議論も通じ、政府がそこで何を主張しようとしたのかということも公開、明らかにされるわけでございます。そういったことが国民の一人一人の皆さんにわかっていただく、それで自分で判断をしていただくというような時代になる必要がある、またそうなってほしいというふうに思っているわけでございます。私の反省も含めて、そういうふうに申し上げたいと思います。
  74. 海野義孝

    ○海野義孝君 お二方から大変よく御説明いただきました。  これから申し上げることは過去の話でして、これからの新しい法律、大蔵省の方においては金融監督庁、こういったことと絡んで私は申し上げたいのですが、午前中も清水先生がお話しになって、もうちょっと突っ込んだことをおっしゃりたかったんじゃないかと思いますが、実は私、当時は証券界におりまして、今だからということですけれども、ああいう渦中にいましてはなかなかわからなかった面があります。日本の統計、大変すぐれているわけです。しかしながら、アメリカなんかに比べると、我が国の統計数字というのは、例えば四−六のGDPの数字なんかも出てくるのは九月ごろですから、そういう意味ではいろいろ施策の上でそういう統計というものがどれだけ、正確ではあるけれどもアメリカ的な速報的なものが我が国の場合はないんです。  ですから、当時行政に携わっていた方、あるいは国会にいらっしゃった方、あるいは私どもみたいな一般業界で働いていた者、それぞれがあの渦中にいてはなかなか見えにくかったのですが、私はどうもこのバブル発生ということが、金融政策というものを、先ほどから総裁おっしゃっているような、インフレの抑制以外の目的に使った、その結果起こった問題ではなかったかというふうに私は思うんです。  ですから、これは一金融政策だけの問題ではない。もともとがプラザ合意以降に起こった問題でありますから、その対応の仕方の巧拙という問題もいろいろあったかもしれませんけれども、本来であれば日銀は独立した金融政策を貫くと。  例えば、当時はボルカーさんだったかと思いますけれども、あの方も余りやり過ぎてついに嫌われましたけれども、しかし彼は頑として日本の中央銀行、ドイツの中央銀行に対しても、まさに国のためということで、本来であればFRBの独立性というもの、中立性というか、貫くべきが、大変いろいろな私に言わせれば圧力をかけてきた。ドイツあたりは頑とはねつけた。これは過去の苦いインフレ経験があるということで、そのことは中央銀行のそういった一貫したいわゆる行動というか、こういったものに対して国民的な信頼も大変厚いということですけれども、我が国の場合はどうもその辺のところが、狂乱インフレありまたバブルの段階、これは一般物価が下がっていくのは当たり前のことで、どんどん円高になっていったわけですから、円高になって物価が上がるというんじゃまことにおかしいわけで、ただ土地と株がなぜ上がったかということを考えたら、私はあのバブル発生というものは金融政策インフレ抑制のために使ったということじゃないと、別のことであったんだということを、これはいろいろな物の本なんかを読んでみましてもそのように思うんです。  そういう意味で、これからの日本銀行のまさに独立性といいますか、金融政策について独立性をお持ちになって今後おやりになるという意味は大変私は重い響きを持って聞こえるわけでありますけれども、そういった意味でいろいろと日銀金融政策というのはおありになるかしれませんけれども金融政策だとか為替の問題だとか金融システムの安定だとか、いろいろありますけれども、本来は金融システムの安定とかそういった問題は大蔵省の行政の問題じゃないかと私は思います。やはり、今後いかなることがあっても日本銀行インフレ抑制、物価の安定ということではかたくなに、いかなる圧力がかかろうとも断固としてこれを今後は貫いていっていただきたいということが、やはりこれからの二十一世紀に向かって我が国がビッグバンをなし遂げていく上で海外からの信頼を得るんじゃないかと思いますけれども、この点について総裁の御所見をお聞きしたいと思います。
  75. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども金融政策の目標につきまして、今回の改正法案の第二条に規定をされておりますように、「通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」と明確に規定をされております。  この点で中央銀行の本来の目的が何であるかという点は、海外の例を見ましてもいろいろと議論のあるところでございますけれども、我が国のこの新しい法律案を含めまして、近時の欧州におきます中央銀行改革におきましても、やはり物価の安定を最大の目的とするという点につきましては一般的に同じ考えで、今改革すべき点は改革がされております。  私どもも、この規定がここへ設けられましたゆえんのところを十分肝に銘じまして、今後の政策運営に当たってまいりたいと思っております。
  76. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  次に、いわゆるアカウンタビリティーというような言葉が最近ははやっておりますけれども、今般の日本銀行法の改正の大きな目的として、やはりそういった説明の重要性といいますか、そういったことが大きな改正の目的だろうと、このように思うわけであります。この点、確かに我が国の場合、特にアメリカあたりと比較しましても、そういった金融政策の内容等あるいは議事の内容等について、国会での説明、これは従来いろいろと必要に応じて委員会に御出席になって御説明をいただいておりますし、あるいはまたいろいろなところで総裁も講演をされるというようなことを通じて私どももそのときの状況というものを把握しておるわけでありますけれども、今度、新しい日本銀行法によりましては、総裁としては具体的にはどういったことを、どういった場で、どの程度の頻度でおやりになるかということをちょっと教えていただきたいと思います。
  77. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 今回の改正法案におきまして、中央銀行政策運営の透明性を高め、そして国民や国会に対しましての説明責任を十分に果たしていくという点につきまして、条文の上でも明らかにされている点が幾つかございます。  私どもといたしましては、まず金融政策を審議します政策委員会の議事要旨、議事録の公表につきまして規定が整備をされておりますし、また現在は年に一回とされております政策委員会からの国会に対する報告書の提出を年二回に充実すべきこと、また国会から求められました場合に、私どもの出席をいたして説明をする義務等につきましても明文の規定が置かれているところでございまして、その具体的な内容につきましては国会の方でのお決めに従って、私どもも極力、私どものやっております政策の決定の経緯、考え方、ねらいどころといったものにつきまして詳細御説明を申し上げて責任を果たしてまいりたいと思っているところでございます。  これらの点以外にも、従来からいたしております年報、月報等の公刊の内容をさらに充実させますとか、記者会見あるいは講演等の機会の活用をさらに図ってまいりますこととか、また最近におきましてはインターネットその他の新しい情報伝達手段を活用いたしてまいりますとか、そういう点を十分に配慮をしてまいりたいと思っております。
  78. 海野義孝

    ○海野義孝君 それでは次に、金融政策面のことにつきまして二、三お聞きしたいと思います。  今、総裁の御答弁で、いわゆる政策の透明性の問題につきまして、あるいはまさに民主的な方法によっていわゆるそういう政策についての内容等については御説明をされるということでありますけれども、もう一点はいわゆる政府からの独立といいますか、そういった面につきましてはいかがでございますか。  これは、山口局長にちょっとお聞きします。これからの日本銀行といろいろな関係がございますですね、例えば検査・監督の部分につきまして片や大蔵省にもある、それから日本銀行にも考査というのがある。これは法的に今回一応意義づけられておりますけれども、そういったこと等も含めて、政府御当局と日本銀行のいわゆる独立という面で特に強調される面、お聞きしたいと思います。
  79. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回のお願い申し上げております法改正におきましては独立性、政府との関係での独立性確保の措置が幾つか図られております。  具体的に列挙させていただきますと、広範な業務命令権がございましたが、これは廃止いたします。それから、役員の解任事由がともすれば政府との意見の相違で解任できるように読めるというような規定でございましたが、これを限定いたしましてそういうことはないようにいたしました。それから、預金準備率の変更認可の廃止をいたしております。これは日本銀行が決められるようにいたしました。それから、銀行券の発行限度、発行保証認可の廃止、それから政府代表委員制度の廃止、これは今まで必ず政府、大蔵省と経済企画庁から決まった人間が出ているという制度、これは廃止いたしております。それから、私が務めさせていただいております日銀監理官、この制度は廃止いたします。それから立入検査権、これを廃止いたします。  法律上は以上のような独立性の確保をさせていただいておりますが、特に強調して申し上げたいことは、主務大臣の広範な業務命令権あるいはその解任権みたいなものがあったわけでございます。こういった措置を廃止することによって法律上も独立ということを担保しております。  なお、検査と考査との関係につきましては、検査部長の方からお答えを申し上げたいと思います。
  80. 中川隆進

    政府委員(中川隆進君) 検査と考査の関係、あるいはその違いということの御質問であろうかというふうに存じます。それにつきましてお答えを申し上げます。  大蔵省の行います民間金融機関に対します検査は、委員御承知のとおり、銀行法等それぞれの業法に基づきまして、信用秩序の維持あるいは預金者保護を図るという観点から個々の金融機関を監督をするという、あるいはまた監督をして是正を求めるという立場から行っているものでございます。金融機関の業務の内容あるいは経営状況、資産内容全般についてその対象にしているというものでございます。  一方、日本銀行の考査は、これは日本銀行の方からお答えがあろうかと思いますけれども金融機関等を監督する行政機関ということではなくて、考査は、金融機関等を監督し、是正を求めるというものではないことは御承知のとおりでございます。そういう観点から、考査は、金融機関の最後の貸し手として一時貸し付けなどのみずからの業務の適切な実施に備えるためのものとして取引先との契約に基づいて行われるというような性格のものでございまして、そういう意味で検査と考査はおのずから目的、性格等を異にするものでございますけれども、もちろんこの金融機関の健全性あるいは金融秩序の維持という意味で言いますと、考査、検査ではお互いに共通する部分がございます。  そういう意味で検査、考査ともに連携を保ちながら、時期等の調節をいたしながらあるいは情報の交換をしながら、金融機関の負担にも配慮しながら適切に対処してきておりますし、今後ともそういう必要があるだろうというふうに認識をしているところでございます。
  81. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  これは大蔵省の今回のいわゆる執行部門としての検査・監督、これを独立した監督庁にするということですけれども、これは銀行局長にお聞きしたいんですが、アメリカあたりに比べますと、先ほどからいろいろおっしゃっているように、我が国もこれから開かれたそういった金融市場、いわゆるその市場の規律というか市場のルールに基づいたそういった、従来の規制があってそういった中で、ですから規制によってかなりそういう業者のいわば行為というかそういったものが抑えられていたのが、むしろ市場のルールに沿っていけば、今度逆にルール違反の方については厳しくこれを取り締まっていくということになっていこうかと思うんですね。  ですから、その辺が逆になるんですけれども、アメリカあたりの例を見ますと、やはり相当その検査のスタッフというのは我が国なんか比肩できないほどの人を抱えているんですけれども、今回の、ちょっとこれはここでやる話じゃないかもわかりませんが、いわゆるそういった金融機関の検査・監督ということは、行政あるいは政策にも絡んでくる問題でありますのでお聞きするんですが、我が国の場合のそういった新しい金融監督庁といいますか、これはどのぐらいの人数で始めようというふうにお考えなんですか。ちょっとそれをお聞きしたい。
  82. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 現在、大蔵省の官房金融検査部に百五十人ばかりの検査官がおります。この百五十人の検査官がほぼそっくり新しい金融監督庁の方に移っていくということになるわけでございます。そのほか金融監督庁の方には、証券取引等監視委員会の現在九十名ぐらいおられますけれども、それがそっくり移っていくと。さらに加えて、銀行局と証券局にあります監督部門の定員をこれを監督庁の方に移すことになります。これはまだどういうふうにどのくらいの人数になるかというのは、十年度の機構・定員要求の中で総務庁等の関係当局の御裁断を仰がないと決められないことなんでございますけれども、今申し上げましたとおり、百五十名と九十名を合わせてもう二百名を超えることになりますので、恐らく新しい監督庁の員数というのは三百名台の人数になろうかというふうに考えております。
  83. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  銀行局長、ちょっとお聞きしたいんですが、このところいろいろな事件がありまして、これもまあ悪質といえば悪質かもしれませんけれども、我が国の優秀な検査の網にもひっかかってこないというような問題。あの証券関係の問題も、あれは検査でわかったんじゃなくて内部告発だというような話も聞くんですけれども、そういうふうに一般の協力があれば結構な話ですけれども、今後、我が国が透明なそういうルールに基づいて行政をおやりになっていくという場合に、こういう検査関係というのはもっと強力なものにしないとというような感じがするんです。  その辺についての、例のビッグバン、これは省庁のいわゆる統合等々も含めて、現在の大蔵省の金融、財政の問題等についてもこれは先送りというようなことで、今回の金融監督庁もこれはあくまで過渡的な措置であるというようなことをおっしゃった政府高官もいらっしゃるようですけれども、いずれにしても、そういった二十一世紀を踏まえて、こういう金融の検査・監督、こういった部門についてこれは将来どういうような展望というか、あるいはどういった組織体というものがふさわしいと思われるか。これは、なかなか難しい問題だと思いますけれども銀行局長それからあと大蔵大臣、その辺ちょっと簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。
  84. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大変難しい問題の御指摘だと思うのでございますが、確かに検査に従事する人員も一挙に十倍、二十倍とふやすわけにもまいりません。また、そのようなコストをかけられる、かけるのがいいのかという問題もございます。  したがいまして、ますます複雑多岐になってくるこの金融機関活動、多様な商品、こういったものにどう対応するかというのは重要な検討課題であります。  その意味では、私どもとしましてはまず自己管理というものをやはりもっともっと高度なものにさせていくという指導の面が必要であろうと。ただ、これはいわゆる護送船団と言われるような意味の指導ではありません。つまり自己規律を働かせる、自己の管理をきっちりやるという面での体制をつくってもらう必要があると、それに大きく言うと二つぐらいあるのかなと。  一つは、大きな意味のリスク管理でございます。これは、リスクを放置したままずるずるいって預金者に迷惑をかける、他の金融機関に迷惑をかけるということがあってはならないという部分が一つあります。もう一つは、コンプライアンス。つまり法令をきちっと守る、それから特に金融機関におきましては社会的公共性というものを十分に認識して、それに沿った行動をするということをやっぱりお互いにチェックをし合って、そういった不正なものが侵入する余地をなくしていくということ。世の中にはそれは不心得な者がたくさんいると思いますけれども、そういった者が活躍できないようになるべく自己規律を働かせる、そうすると検査・監督はそういったものをできるだけきっちりしたものになるように指導し、またそういった体制ができているかを検査していくというような姿になるのではないかと。時には抽出調査もいたします、時には抜き打ちにやることもあると思います。そういったことをやりながらも、一罰百戒ということで、時々検査で挙げるということもあるかもしれません。  しかし、大きく言いますと、そういった方向で監督・検査というものを、一つのそういったルール化されたものというような形でもって、例えば早期是正措置というような新しい監督のルールを来年の四月から設けさせていただいております。これにきっちり沿った体制をやるべく指導していくというようなことを図っていくことによって、少ない人数で最大の行政効果を上げていく、国民の期待あるいは国会の御期待に沿うように努めていくということではないかというふうに考えております。
  85. 海野義孝

    ○海野義孝君 済みません、大蔵大臣には最後に御質問します。了解を得ましたので、ちょっと一、二分超過します。  今回のいろいろな不祥事件での検査によって債務超過の問題とかいろいろなことがだんだんわかっできますけれども、どうも今の自己査定というのは護送船団方式の時代の名残があるように私は思うんです。大蔵大臣は盛んに護送船団方式を払拭して新しい時代のいわゆる行政指導もしているし、そういう時代に入っているんだということをおっしゃっているわけですけれども、どうも出てくる数字がだんだん膨らんでくるというのを見ると、そんなに一カ月や二カ月で膨らむようなものじゃないので、どうも今までの護送船団というのは大体が漸進方式ですから、アメリカとは基本的に違うやり方なんで、どうも小出しにしてきてだんだん大きくなっていくというような、こんなことをやられていった日にはどうにもならぬわけでして、そういう意味で、今まで護送船団方式だったから検査もスタッフも少なくて済んだかと思うんですね。余り露呈するような問題がなかったからという面があるかもしれません。  今後は、完全なまさにグローバルスタンダード的なそういった中で、まさに我が国もメガコンペティションのそういう競争に入っていく、金融業界も入っていくということになれば大変今までとは違ってくるという面があると思うんです。その点ひとつ大蔵大臣にちょっとお答えしていただきたいのと、もう一つは、いわゆる日銀金融政策の問題とそれから政府当局の経済政策との整合性ということが新しい法律の中でも言われておりますけれども、その辺の絡みというか、その辺についてどのように今後指導というか指揮をとっていかれるのか。その二点をあわせてひとつ大蔵大臣にお答えいただいて、銀行局長申しわけありませんけれども、それで終わりたいと思うんです。よろしくお願いします。
  86. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 外部監査は監査としてやらなければならぬことでございます。  それで、ただいまの御質疑でございますが、護送船団もたれ合いということを言われて久しいわけであります。それを乗り越えるのが実はビッグバンであります。自己責任、自己規律の中で取り進めていただかなければ乗りおくれ、取り残される、こういう事態だけは明快であります。よって薄身の努力を払わなければなりません。  官もその与えられた任務を忠実に、時に今局長が言われました果敢に目的を達成するためにやることはやっていただく、こういう体制であろうと思いますし、同時に無法者もおるわけでございますから断固たる処置をとらなければなりません。こういうことについて万般に目を光らせるということで法律の改正、自由化の決定等々を行うこと、政府として当然のことであろうと私は思っておりますので、その研究、検討を進めておるところであります。
  87. 海野義孝

    ○海野義孝君 終わります。
  88. 益田洋介

    ○益田洋介君 法案の質疑に入る前に、通告はしておりませんでしたが、大蔵大臣に緊急の質問をさせていただきたいと存じます。  昨日、東京地検は、東京地裁に対して、野村証券が小池隆一容疑者に五千万円相当の利益を供与したとされる事件で、野村証券の元の二人の常務、松木新平株式担当、それからまた藤倉信孝総務部担当の二人を起訴することを決定した。同日中に起訴いたしました。こういう事件が発生している。おおむね二人の容疑者とも容疑を大筋で認めている、こういったことでございますが、この件について大蔵大臣の所感をまずお伺いしたい。
  89. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 野村証券をめぐる問題につきましては、極めて遺憾である旨かねがね申し上げてまいったところでございます。  今回、会社及び元役員の起訴という段階に至りました。引き続き事件の全容解明が鋭意行われるものと期待をいたしておるところでございます。その推移をまず見守るというのが現在の立場でございます。行政としては今後その推移を見守りつつ、監視委員会は監視委員会という立場の中で所要の措置を考えておると思います。勧告がございますれば、厳正に対処してまいる所存でございます。
  90. 益田洋介

    ○益田洋介君 またさらには、特捜部は小池容疑者側に巨額の融資をし続けていた第一勧業銀行関係者についても商法違反の容疑が強いと見て詰めの捜査に入っている模様でございますし、近々逮捕あるいは起訴といったことが次々と起こってくるのではないか、こういうことが残念ながら予測される現況でございます。  こうした不祥事が引き続き起こるということは、さまざまな形から予見ができなかったことではない。検査を二回も行って、特に第一勧銀の場合は、大蔵省はあらかじめそうしたことについては気がついていた。しかし、何もその不祥事に対して手を打たなかった、これは大蔵省である。  本来であるならば監督官庁は、例えば、今海野先生のお話にもありましたが、イギリスとかアメリカでの証券市場がこれだけ今日まで発展してきたというその背後には、監督官庁が不祥事を厳しく摘発する、そうしたことにマーケットが信頼感を寄せている。ですから、この点を厳しく我が国でも本腰を入れて取り組んでいかない限り、東京のマーケットなんかビッグバンにすらならない、スモールバンで終わってしまう、そういう危険性があるわけでございます。  ですから、罰則を強化して違法行為を未然防止するという、行政としての当たり前の機能を現在まで大蔵省は果たしてきていない、私はその責任は非常に強いものだと思うわけですが、いかがでしょうか。
  91. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま野村証券に関して申し上げました。この関連におきまして、第一勧銀の不祥事件、起訴の段階に至りましたこと、極めて遺憾千万、言う言葉がない極めて厳しい現況にあると私は思っております。  既に、商法違反等刑事事件としての問題でございますから、捜査当局の捜査を注意深く見守りながら、本件に対しまして厳正に対処してまいらなければならない時期も到来するのかなと思っております。その折には、かねがね申し上げておりますように、法令に基づき厳正に対処してまいります。
  92. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、法案の質疑に入りたいと思います。  まず、私は中央銀行の独立性の確保、これについて質疑をさせていただきたい。独立性の確保というのは、各国において国際的な潮流に今なってきております。例えば、アメリカのFRB、ドイツのブンデスバンク、これらは既に行政府から完全に独立した存在であることは周知の事実でございます。また、欧州通貨統合の後に設立が予定されている欧州中央銀行、この設立に当たっても、高度の独立性を持たせるということを既定路線として今まで話し合いが進められてきた、そのように伺っている次第でございます。さらにはレーバー、労働党が政権を奪還したイギリスにおきましても、ブレア首相、またブラウン大蔵大臣等が協議をして、イギリス銀行、バンク・オブ・イングランドに政策の決定権を全面的に移譲するということを決定し、その発表が非常に世界じゅうの注目を浴びている、こういう状況でございます。  翻って、今回の我が国の日銀法の改正案を見てみますと、こうした国際基準に照らし合わせてみて、まだ独立性に関しては不徹底があって遜色があるのは極めて残念であり遺憾でございます。私は、なぜそのような主張をするかということを以下四点に分けてお伺いしたいと思います。  まず第一、それは政府経済政策との整合性維持という束縛が設けられている。これは第四条でございます。日本銀行は、「政府経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、」「十分な意思疎通を図らなければならない。」、こういう一文がありまして、そうすると、日銀が本来担っている通貨価値の安定ということ、また自由と効率を保障する市場経済構造の全体の秩序を支える、そのかなめとなるのが日銀の施策でございます。そして、そのことは時々の政府によって実施されております各種経済政策のよって立つ前提条件とならなければならない。したがって、整合性維持への過重な縛りをかけるということは、こうした観点から不当なわけでございます。ブンデスバンク.法、また欧州中央銀行法の規定には、中央銀行はその任務を妨げない限りにおいて政府政策との整合性を図る、そのような規定がございます。  ですから、健全な通貨なくして健全な経済発展はないというわけでございますから、現在のこの第四条を読む限りにおいては、この原則がちょうど逆さまにされているのではないか。そのように私は感じますが、いかがでしょうか。
  93. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、御指摘ございました第四条は、政府経済政策の基本方針と整合的であるようということでございますが、我が国の広い意味経済政策の一環であることには間違いがないわけでございます。司法、立法、行政と分けたときには行政のジャンルに入るものでございます。したがいまして、政府のそういった基本的な経済政策と全然全く無関係金融政策というものはないのではないかというふうに思うわけでございます。  今、御紹介賜りましたドイツにおきましても、ドイツは非常に戦後の大インフレという経験にかんがみ、かなりこの辺は厳しく書いておるわけでございますが、その任務を妨げない限りにおいて政府の一般的経済政策を支援する義務を有すると書いてあります。それからフランス銀行におきましては、フランス銀行政府の一般的な経済政策の枠組みの中でその任務を遂行するというふうに書いてございます。  考え方、表現はいろいろございますが、いずれにせよ、この整合性の規定があるからといって、何も政府が指示をするとか、あるいは政府政策に完全に金融政策を従属させるというような意味では全くございません。いずれにせよ、よくそこは整合的な関係を保つべきだという理念を、考え方を言っているわけでございます。各国とも、その考え方は共通しているというふうに私どもは思っております。
  94. 益田洋介

    ○益田洋介君 整合性を保つということは、当然これは必要でございます。全く政府とかけ離れた経済政策日銀が志向するということを私は意味しているわけじゃない。ただ、余りに金縛りをかけてしまっては、本来この法案の目的の一つである中央銀行の独立性ということに若干の懸念が出てくる、そうしたことが保てなくなるのではないか、そういった意味で喚起を促しているわけでございます。  それから、私が独立性に対して今回の法案が不十分であるという論点の第二は、業務運営面での政府の過剰介入、このことでございます。これは法案の第五条、「日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」、こういうことになっておるわけでございますが、そうした規定をする一方で、定款、業務方法書、役員任命、服務、経費会計、監査報告などについては、一々これは大蔵大臣の許認可を必要とすると事細かに定めているわけでございます。こうなると、日銀政策委員会の権限強化を図ろうとしているこの法案の意味が薄らいできてしまう、政策決定の独立性と日銀の業務運営の自主性とは一体不離でなければならないと私は考えるわけでございます。  本来、中央銀行は公権力を背景とするものであってはならず、市場原理に即した形で運営されていくべきものである。したがいまして、行政府の仕事とはもともと性格を異にするものでありますが、こうしたことで許認可は行政権の行使の一部だというふうな、戦時立法であったから現行法においてはそういうことになっているわけでございますが、そのとらえ方から一歩も抜け出していないんではないか、このように私は懸念する次第でございますが、いかがでしょうか。
  95. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今回、御審議いただいておりますこの新しい日本銀行法の最も大切な部分は、日本銀行が行います金融政策の決定の自主性、独立性なんでございます。しかし、それに限りませず、業務運営についてもできるだけ自主性を勘案するということでございます。  したがいまして、条文を逐条的にお読みいただきますとわかりますように、政策委員会が行います金融政策に関する部分については、金融政策の決定が政策委員会にすべて任されるというのが確保されております。その他の部分につきまして、例えば予算等御指摘いただきましたけれども、それにつきましては範囲を限定するとかあるいは認可しないときは公表をするとか、いろんな形での逆に政府側にかなりのチェック、縛りをかけてございます。いろいろな形での縛りをかけた上で、日本銀行の業務全体の自主性あるいはそういった独立性というものを尊重しているという意向は十分に反映されている法案ではないかというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  96. 益田洋介

    ○益田洋介君 日銀政府に対して縛りをかけているというところは、この細目からは私は読めないんですけれども、第三点に行きます。  それは財政赤字のファイナンス、これは三十四条、日本銀行は「国との間で次に掲げる業務を行うことができる。」と規定されて、財政法第五条ただし書きの規定による無担保貸し付け、それから国の会計に関する法律の規定による無担保貸し付け、三番目は国債の応募または引き受け、四番目は大蔵省証券その他の融通証券の応募または引き受けと。こういったことで何がこの中で言いたいかと私は私なりの読み方をしてみましたが、通貨政策を円滑に遂行するという意味で最大の障害とされておりますのは政府による中央銀行への公債引き受け圧力である、これは通念としてどの方も存じ上げていることだと私は思います。そして、今申し上げたような大蔵省証券また国債の応募、引き受けを許容しているということは、本来そのセーフガードに、防御措置に欠けているんではないか。  特に、ここに書かれている規定とちょうど逆の立場をとっているのが欧州中央銀行の新しい規定であります。そこでは公的機関または当該国政府に対する信用供与はかたく禁じられている、全く逆なんです、これ。政府は本来資金需要者であって、したがって資金需要者が中央銀行を自分の機関銀行のごとく利用して資金の造出者になるということは本来許されてはならないと私は思うわけでございますが、この三十四条を読む限りにおいては全く逆のような形になっていると考えますが、いかがでしょうか。
  97. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、御指摘のこの規定は、財政法の考え方と整合的にさせていただいたわけでございます。したがって、ここで認められておりますのは財政法でも認められている範囲ということでございまして、それは日本銀行銀行銀行という側面もございますが、もう一面、政府銀行政府の国庫を扱う銀行という性格もございます。そうした性格のものの反映として、財政法の範囲内での規定をここに明示させていただいたということでございます。したがいまして、そこで政府日本銀行に例えば長期の国債を無理に圧力としてはめてしまう、消化させてしまうというふうなことを意味しているわけではございません。
  98. 益田洋介

    ○益田洋介君 それは、今度は法律の解釈の問題でなく、実務面での運用面での問題だと思いますので、その辺のかじ取りを誤らないようにぜひ進めていただきたいと望むものであります。  四つ目は、中央銀行の独立性の究極の受益者はだれかという議論でございますが、私はこれは中央銀行ではなくて国民である、実際は国民でなければならないというふうに考えるわけです。  銀行券は、発行者たる銀行の側からすれば国民に対する債務証書であって、逆にまた保有者である国民の側からすれば中央銀行に対する債権証書である、そういうふうな組み立てに本来なっていなければならない。したがいまして、インフレ状況が生じた場合には通貨価値の減価が当然追随してくるわけでございますが、そういう場合は中央銀行による国民に対するなし崩しの債務不履行が生じるんだ、そんな考え方が成り立つのではないかと思うわけでございます。  ですから、中央銀行にとって独立性の確保ということは、同時に国民の負託にこたえる責務を果たすということにもつながりますし、言ってみればこの二つの事項は表裏一体であって、本来中央銀行の独立性の論議というのは国民の利益のためにという視点で行われなければならない。だから、政府と中央銀行との間の権限争いといった、そういった次元で行われてはならない。今までの議論を拝聴していますと、残念ながら政府と中央銀行の間の権限、こういった考え方しかされておりませんが、私は基本的に究極の受益者である国民の利益という観点から中央銀行の独立性というものを担保していただきたい。そのように考えますが、いかがでしょうか。
  99. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、これまでの長い間のこの日本銀行法改正のときのいろいろなマスコミ等の取り上げ方が、ともすれば政府日本銀行との権限争い、あるいは大蔵省と日本銀行の権限争いのようなとらえ方をされて、私ども大変残念に思っておりました。  それは、先生おっしゃるとおり、私ども目的としておりますのは国民の福祉の増強、国民経済の発展のためだと思っております。したがって、今の御指摘の点については、究極のこの法案の目的は何か、それは国民のため、日本国の経済発展のためということであるというふうに私どもも思うわけでございます。
  100. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 認可法人といえども国家機関という位置づけが成り立つと思います。同時に、その中で開かれた独立性、透明性。透明性は政策決定のプロセスを明示する。そういう点から考えますと、当然にその責任の重大性にかんがみて、総裁を初め審議委員はもとより役員のスタッフは全力を尽くしていかなければならぬと思います。  究極的には国民の利益、そのとおりであります。国民の利益は、局長も言われましたとおり、まさに国益にリンクしなければなりません。国益という意味物価の安定による国民経済の安定、国民生活の安心、ここに直結するものと考える次第であります。
  101. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、論議の視点を最近起こったドイツの中央銀行政府との間の論議に移したいと思います。  これは、先月二十八日前後に、ドイツの連邦銀行政府に事実上反旗を翻しているといったことでございます。それはどういうことかといいますと、財政赤字削減の切り札として与党が予定していた金準備の評価がえを、連銀の政策、予算の独立性を侵害するものだとティートマイヤー連銀総裁が発言をしていると、御存じだと思います。  どうしてそういうことになるかというと、欧州連合条約、マーストリヒト条約に違反することになる、そしてまた統一通貨ユーロの信頼性を損なう危険性が大であるからだと、こういうことを言っているわけです。連銀としては、コール政権が今至上命題としております通貨統合を実現するための歴史的な低金利政策を続けている状況でございますので、こうした反発を食らうということは政府としては大変な痛手であるというふうに思うわけでございます。こうした一部通信を受けて、総裁の辞任の噂も流れているようでございましたし、ドイツ債券やマルクが一時市場で大変に売られたというニュースも入ってまいりました。  ちなみにドイツの現在の公定歩合は二・五%、これは九六年の四月以来ずっとこの基準を守ってきているわけでございます。ちなみに九一年では八%、九四年で五・二五%、九五年で四・〇%とずっと下げる努力をしてきているわけでございます。この中央銀行の独立性の主張は、おとついですかコール政権によって認められて、それで連銀の主張どおり、政府としては帳簿操作のような信頼関係を損ないかねない、そうした金準備の評価がえは取りやめだと。非常に私はいいニュースだと思いますが、こうしたこともやはり我が国の中央銀行また政府としては十分にいい例として見守っていっていただきたい、そういうふうに思うわけでございます。いかがでしょうか。
  102. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘の件につきましては、私どももなおまだ具体的な詳細について十分な情報を得ていないところがございますけれども、大筋で申し上げますと、中央銀行が保有いたします金の再評価益を、国庫において九七年度、八年度の赤字の補てん財源として用いるかどうかという点の議論であったようでございます。  この点につきましては、金そのものは、九九年に仮に欧州中央銀行ができますというと、その機会に再評価はされることになるわけでございますけれども、それを、今度の通貨統合に加入する資格を審査する目的判断をされる九七年度分の財政赤字の穴埋めに使うということになりますと、この通貨統合参加国の条件判定の点で何か緩い例ができるということに対する批判が非常に強かったようでございます。  私どもの聞いておりますのは、中央銀行と大蔵省との間の話し合いの結果は、九七年度の国庫にそれを納付いたしまして、新しい通貨統合参加の要件の中にカウントするということはしない、九八年度以後の処置については別途検討をするということでありますが、方向的には何か再評価されるものでございますから、何らかの形でカウントをされるということに今なっているようでございます。  いずれにしましても、それは中央銀行としてはきちっと自分たちの言うべきことを申したように私どもは受け取っております。
  103. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、我が国の中央銀行の話題に戻りたいと思います。  九一年度の日銀の第一勧業銀行に対する考査に関して、松下総裁は二十八日に記者会見をされて、こういうことをおっしゃっている。九一年八月から九月期の前々回の日銀考査で、小甚ビルディングと小池嘉矩向け融資の調査票が提出されなかったことが判明した。非常に遺憾であると。そして、このことは第一勧銀が事実を意図的に隠した疑いがあるとして、同行に対して月内にも報告するよう求めたことを明らかにされている。月内というのは先月ですが、これは実際出たんですか。
  104. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘の第一勧業銀行の件につきましては、昨日、同行から、前々回の平成三年八月−九月の考査におきまして、小池嘉矩及び小甚ビルディング向け融資は本来貸出金調査票の提出基準に該当していましたにかかわらず、これを日本銀行に提出しなかったこと等の経過説明を受けたところでございます。  しかしながら、なお、そうしたこととなった詳細な経緯や、それからその際の内部管理体制面での問題等につきましては、十分な説明が得られませんでしたために、現在追加調査を指示したところでございます。本件につきましては、そういうことでございまして、同行からの原因調査に係る最終報告を得ました後に、そのリスク管理上の問題点等を分析しまして、内部管理体制も含めましたリスク管理体制全般の一層の強化を促すことによりまして、こういった事件の再発防止に最大限の努力を傾注いたしたいと思っておるところでございます。
  105. 益田洋介

    ○益田洋介君 それからさらに総裁は、日銀としては不良債権として早期の処理を促したんだけれども、この融資の資料を提出した後、九六年一月から二月の日銀考査でございますが、遺憾ながら翌年に先送りされたということで、第一勧業銀行のこうした問題に対する姿勢に非常に遺憾の意を表明された。  それからさらには、債務者が総会屋と深い関係にあるということを知る立場になかった、日銀としては。したがって、そうしたことの認識ができなかった。なぜかならば、どうしてですかという質問が記者からあったんだと思いますが、大手都銀の貸し出しは膨大なものでありますと。したがって、一定期間で考査するには相手側からの協力がどうしても不可欠であると、このように述べている。総裁は、今回の改正法によってこうした状況是正されると言う。考査が迅速にしかも正確に厳正に行われるようになると、そのようにお考えですか。
  106. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの御指摘の点につきましては、私どもといたしましては、考査に対します相手先金融機関対応の点で問題があったのではなかろうかと考えております。  今回、この私どもの考査が法律上の事項で日本銀行の業務として認定をせられるようになりましたことから、私どもとしましては、従来以上に考査の内容につきましては、その効果が本当に上がるように改善を図っていかなければならないと思っております。  したがいまして、この今の債務者、問題の債権につきましての債務者の属性の判定等につきましても、何らかこれはそういう情報について相手先からの資料の提供が今後確実に行われることになるような、そういう取り決めの改善のようなものが必要であろうと思っておりますが、これは事実関係がいま少し明らかになりました後に、そういう点についての改善の方法を考えてまいりたいと思います。
  107. 益田洋介

    ○益田洋介君 九一年九月の考査で発見できなかったことが今問題にされているわけでございますから、どうか早急に事実関係をつまびらかにして国民の前に公開していただきたい、このように望むものでございます。  それでは次に、大蔵省の検査の信用度についてのお話をさせていただきたい。  二十二日、総理が記者会見をして、第一勧業銀行の問題で大蔵省が検査で見落としたのが事実であるならば大変な問題である、こういうふうな発言をされている。それに対して、質問を受けた小川大蔵事務次官は別の記者会見で、総理の発言は直接聞いていないしコメントする立場ではない、このように答えている。しかし、官邸側から大分圧力がかかったんでしょう、すぐに第一勧業銀行銀行局の幹部の方が、どなたかこれわかりません、話し合いを持って、この問題に対応するシナリオを決めて二十三日に発表した。第一勧業銀行が大蔵省に提出した中間報告の要点は二つある。一つは、相手が総会屋と知りながら不正融資をしていたこと。過去二回にわたる大蔵検査時に不透明な融資の発覚を恐れて隠ぺい工作をしていた疑いがある、まだ内部調査しているからわからないと。その二点についての中間報告がなされていると。同じ日に、二十三日ですが、銀行局の幹部は、事実が最終的に固まれば銀行法二十六条と二十七条に従って行政処分を考える、さらには刑事告発も辞さないつもりだ、このような大変強気な発言をされています。  これは、しかし基本的には大蔵省の二回にわたる検査で発見できなかったというところに原因があるのであって、変な言い方をしますと、同じ穴のムジナがつつき合っている、そういうふうな構図に私には見えますが、いかがでございますか。
  108. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生から御紹介いただきましたように、確かに五月二十三日にちょうど第一勧業銀行が決算役員会をやりまして、人事もそこで決めたわけでございます。したがって、そのときにあわせてこの中間報告的な発表をいたしたと、こういう経緯でございます。大蔵省が云々ということではございませんので、そこは誤解なきようにお願いしたいと思います。  そこで、さらに詳しく調べないと非常に不透明な部分がございますので、さらに十分チェックするように、それからそのほかにもそういった取引がないかどうかあわせて厳重に調べるようにという指示を出したところでございます。今捜査中の段階でございまして、まだその捜査の状況もよく見なきゃいけませんので、今すぐどうこう対応できるものではございませんけれども、そのときに大蔵省の方から申し上げたのは、その結果がわかり次第、また捜査状況の進展によって法令に基づいて厳正にやりますということを申し上げております。  その法令に基づくというのは具体的に言うと何かというと、今御紹介いただいたような条文でございます。しかし、あくまでそれは仮定の話でございまして、事実関係がきっちりしないうちはそれを具体的にどう発動するか、どういった措置をとるかということはまだ申し上げられませんけれども、大臣からも先ほどお話がありましたように、法令に基づいて厳正に対処させていただきますということでございます。  なおまた検査につきましては、ちょっと担当官がおりませんけれども、できるだけの努力をしております。膨大な資料の中で懸命にいろいろな検査を行っているということでございます。またその点、この件についてどうだったかということもあわせて今第一勧銀の方に調べるようにということで指示を出しているところでございます。
  109. 益田洋介

    ○益田洋介君 きょう検査部長に出席するようお願いしていたと思うんですけれども、見えていないようですね。この問題はまだ先がありますから、次回に質問させていただきます。  いずれにしても、大蔵省のこの検査体制が非常に甘い。二回にわたって検査をしながら不正行為を見抜けなかったというのは事実であります。動かせない事実。大蔵大臣は、ビッグバンだ、自由、公正、グローバルなマーケットを東京に取り戻すんだ、あるいはつくるんだということを盛んにおっしゃっていますが、このような当局の甘い検査体制でそういうことが果たしてできるんだろうか、非常に私は疑問を持つわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  110. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 今日の一連の不祥事件、解明をされ、それぞれ厳正に対処してまいりますが、さらに、なぜこういう事件が検査を行った中で実行されたのか、こういう点。先ほど来御指摘のように、五月二十三日、役員会見だったでしょうか、隠ぺい工作の疑念ありと、こういうことがございます。それとの関連の中で、これを反省の材料として、今後そういうことのない検査体制というものを考え、構築していかなければならぬと思っております。
  111. 益田洋介

    ○益田洋介君 いずれにしましても、今大臣がおっしゃったような是正策をきちっとした形でとつていただかないと、こうした不祥事の再発ということが未然防止できないわけでございますから、よろしくお願いいたします。  それで、来年四月から導入予定の、金融機関への早期是正措置ということを実施される予定だと聞いておりますが、これは具体的にどういうものでしょうか。
  112. 山口公生

    政府委員山口公生君) 新しい行政手法として、早期是正措置を先般の金融三法で入れさせていただきました。これはまず前提としまして、各金融機関が貸出金等の資産についてまず自己査定をやります。それに対しまして、公認会計士等あるいは監査法人が外部のチェックをいたします。そうしますことによって自己資本比率というものを出すわけでございます。その自己資本比率でもってある程度水準を切った場合に行政処分を客観的ルールに基づいてやるということでございます。  二つの基準がございまして、国際的な統一基一準、つまり海外に拠点を有するような銀行につきましては八%、四%、〇%という基準でございます。国内基準を適用するところはそれ以外の銀行でございまして、四%、二%、〇%でございます。したがいまして、例えば国際的な活動をやっている銀行が八%を切る、自己資本比率が八%を切るという段階になりますと、自主的に改善計画を出していただきます。それを実行しなさいという命令を出させていただきます。それがまた不幸にして四%を切るような状態になりますと、具体的に例えば資産の圧縮とか、あるいは新規の業務の制限とか、あるいは配当についての制限とか、いろいろな個別措置の命令を打つということになります。〇%を切るような状況になりますと、いわゆる債務超過状態であるかどうかよくチェックしまして、業務の一部または全部停止ということが命令できるようになっております。  ただし、その場合におきましても、客観的に見て回復の余地があるような計画が進行中であるような場合におきましては、直ちにその業務停止命令をかけるというようなことはいたさないで済むような措置は講じてございます。いずれにせよ、そういった客観的な数字でもって行政措置をとっていくというのが早期是正措置の大まかな姿でございます。
  113. 益田洋介

    ○益田洋介君 この問題は、金融問題特別委員会でさんざん議論されたわけでございます。自己資本比率をはじき出すのに必要な資産の査定が金融機関によって行われるというところに問題がある。これについては外部の監査法人を入れればいいじゃないかという議論を今局長がされていたようでございますが、監査法人がまた問題なんですね。だから私は、その点を何でもかんでも監査法人にやらせればいい、基本的に自己資本比率を決める資産査定がいいかげんであったり、あるいは手を加えたものであったとすれば、要するに判定基準がなくなつちゃうわけです。あるいは正確に見られない、この点を私は心配しているわけです。  商法改正では監査役の権限を強化したということになっているわけですが、監査役会や社外監査役といった人たちですが、このところ企業の不祥事が発覚するたびに監査役のチェックの機能が働いていなかったという場合が往々にして見られる。ほとんどのケースがそうです。隠ぺいをしているわけです、そういう企業は。隠ぺいしているのは大蔵省だけじゃない、一般の企業も隠ぺいしている。過去には監査役がインサイダー取引をしたこともあったし、五年前に摘発された大手スーパーのイトーヨーカ堂に至っては総会屋の利益供与を常勤の監査役が現金を渡して行っていた、こんな事件もあったぐらいですから。私は、この検査体制はまだ十分ではないと金融特で申し上げましたけれども、いまだにこれは問題が尾を引いているんです。第一勧銀の事件もそう、野村の事件もそうなんです。この点を本当にしっかりしないとだめです。  それで、例えば、おもしろいと言っちゃ失礼なんですが、興味のあるある調査においては、日本監査役協会の一千百九十一社の監査役を対象にした調査では、企業不祥事が起こる背景として実にその原因の四二%が監査役の監査が機能していないからだ、こういう指摘があるぐらいです。このことは御存じですか、またはどういうふうに思われますか。
  114. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほど資産の査定についての問題点も御指摘いただきましたが、その点につきましてはいろいろなガイドライン等を設けてできるだけ公平、公正にきっちりやるように努力したいと思います。  それから、償却引き当てについても公認会計士協会のガイドラインを設けて客観的にやっていきたいと思っておりますが、さらに大事な点として外部監査あるいは監査役の使命、役割ということの御指摘がございました。この辺の話になりますと、ひとり金融界の問題だけではなくて商法全体の問題でございますけれども、それは金融界についても同じでございまして、今申されました監査役というものの役割というのがこれから相当重要になってくるんだろうというふうに私どもも思っておるわけでございます。  したがいまして、先般の商法改正におきましても、外部監査役を入れるとかいうような改正が行われております。そういった制度的な整備が行われつつあると同時に、今度は監査役自身の監査の中身ということが問われてくるし、問題になるだろうということは先生の御指摘のとおりだというふうに思うわけでございます。
  115. 益田洋介

    ○益田洋介君 余りいろいろな事件が頻繁に起こるものですから、大和銀行ニューヨーク支店の事件、また現地法人事件なんというのはもう遠い過去のことのように思われるかもしれませんけれども、この事件で一番注目されたことは、事実が発覚した後のアメリカの当局が大和銀行に科した科料です。これはこの違法行為に対して一日当たり十万ドル、あるいは検査妨害といったことを勘案して一日十万ドル、十年間にわたって行われてきたということで実に三億四千万ドルという大変多額の罰金を科して、司法取引で大和銀行はこれを了解して解決して、そしてアメリカから撤退した、こういったことがあったわけでございます。  日本の場合はいかがかといいますと、虚偽の報告や検査を拒んだ場合、これは銀行法の六十三条でございますが罰則を含めて罰金刑だけ、しかも五十万円以下、これでは全然比較にならないんじゃないですか。やっぱり法律を変える必要があると私は思います。法務省来ていますか。
  116. 菊池洋一

    説明員(菊池洋一君) お答え申し上げます。  今お尋ねの点は検査等でございますので、これは直接法務省の所管ではございませんが、商法の立場から申し上げますと、御指摘のとおり、いわゆる総会屋絡みの事件がなかなか後を絶たないということがございますので、私どもといたしましては罰則の見直し、強化といったことにつきまして真剣に検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  117. 益田洋介

    ○益田洋介君 今ごろ真剣にと言われても困るんで、これはぜひ早急に、可及的速やかに立法措置をとってもらいたい、このようにお願いしておきたいと思います。  それからもう一つ、この検査に関してでございますが、昨年、当時の連立与党が金融機関の職員を対象として特別わいろ罪の新設などを検討した。金融犯罪の罰則強化の検討を真剣に行っていたところ、大手都銀などの反発を食らってこれが頓挫してしまったと、この案は。表に出ることはなかった。こうしたことが伝えられていますが、この点についてはいかがでしょうか。
  118. 山口公生

    政府委員山口公生君) 与党の方でのいろいろな御議論でございますので、私、詳しくその辺は承知しておりませんが、そういったいろいろな刑罰についてのお話があったやに聞いております。
  119. 益田洋介

    ○益田洋介君 連立与党がしないんだったらば新進党が案を出してもいいと思っています。  それから、八二年の商法改正に関してですが、この時点での総会屋の数はいかほどであったか、そして現在はどのぐらいなのか、活動状況はどうなのか。それから、商法の改正によってつぶれたのは、廃業したのは弱小の総会屋だけであったと。したがって、総会屋と企業とのおおむね基本的な構造は変わっていない、こういうふうにも言われていますが、この点はいかがですか。
  120. 中林英二

    説明員(中林英二君) お答え申し上げます。  まず、警察ではいわゆる総会屋につきまして昭和五十七年、お尋ねの商法改正がございましたが、その当時約六千八百人弱の総会屋等を把握しておりました。平成八年末現在でございますが、約一千人の総会屋の勢力を把握しておりまして、このうち約九十人が暴力団の構成員または準構成員であります。このほか、かなりの者が暴力団と何らかのつながりを有するものと見られているところでございます。  総会屋につきまして、私ども現状について申し上げますと、最近の総会屋等をめぐる情勢につきましては、株主総会の会場における検挙事案の発生がここ三年ほどないなど、表面的には平穏に推移をいたしておりますけれども、総会屋等によります企業訪問、これは依然として継続しておりまして、こういったものにつきましては十分な関心を持ってその動向について見守っているところでございまして、十分監視を行っております。  今後とも、総会屋等の動向につきましては十分な関心を払いながら、商法違反その他の不法事案、これを検挙するとともに、企業との連携を一層強化いたしまして総会屋等の排除を徹底してまいりたいと考えております。
  121. 益田洋介

    ○益田洋介君 終わります。
  122. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、たくさんの委員から御質問があった中で、我が党として三つの問題について確認の意味でまずお聞かせをいただきたいと思います。  その第一点は、一昨日の質問におきまして、私は日本銀行政府とが意見交換を十分に行うことは重要であるが、その結果としてさまざまな情報が関係者から外部に流れるようでは困る、日銀では情報管理、マスコミ対応に十分注意してほしいということを申し上げました。これは議事要旨及び議事録をきちんと公開することと、それを前提にしてこうした正規のルート以外の面では情報管理をきちんと行っていただきたいということを述べたのであります。  そこでお尋ねします。まず、第十九条では、大蔵大臣や経済企画庁長官、またはそれぞれの指名する職員は、必要に応じて金融調節事項を議事とする会議に出席し意見を述べることができる、また議案を提出し、議決の延期を求めることができるとされておりますが、こうしたことも公表される議事要旨や議事録に盛り込まれるのかどうか、日銀総裁にお尋ねいたします。  同時に、それらが議事録要旨に盛り込まれるというのであれば、大臣を初めとする政府からの出席者についても議事要旨が公表されるまでの間は守秘義務があると考えてよいのかどうか、お尋ねをいたします。
  123. 松下康雄

    参考人松下康雄君) お尋ねの点につきましては、金融制度調査会の報告におきましても、政府日本銀行の「金融政策に関する意見が異なった場合に政策の整合性を確保するための明確かつ透明性の高い仕組みを用意する必要がある。」とされているところでございます。  議事要旨や議事録の公表というものはまさにこうした透明性の確保のための大事な仕組みの一つでございます。こうした制度の趣旨にかんがみますと、政府代表が出席をいたして意見を述べました場合には、これは当然議事録に記載されることでございますけれども、議事要旨の段階でも記載することが求められているものと理解をいたしております。
  124. 山口公生

    政府委員山口公生君) 委員のお尋ねの後段の点でございますが、政府からの出席者につきましては国家公務員法等に基づく守秘義務の規定の適用を受けるものでございます。  ただ、この場合、例えば政策委員会で決定され、議長等によって記者会見が行われるような事項や公知の事実、事項につきましては、政府からの出席者対外的に言及することは容認されるものと解されますが、いわゆる守秘義務の対象となるような秘密に当たると解される事項につきましては、守秘義務を踏まえ適切に対応すべきものというふうに考えております。
  125. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 よくわかりました。  二つ目の問題は、ただいまも触れましたように議決延期の問題でございますが、日銀総裁はこれまでの答弁で、議決を延期することを求めることができるとは最終的には政策委員会がその採否を判断する仕組みなので独立性を損なうことはないと述べられたし、また大蔵省も、他の委員の答弁で同様の趣旨はよく言われているところでございます。だとすると、わざわざ議決の延期の求めを別個に定めたのは、なぜ定めたのか大蔵省にお尋ねしたいと思います。  同時にまた、この規定のモデルとなったと思われるドイツでは、議決の延期に関する規定を廃止する動きがあると今答弁がなされているようでございます。日銀としては、なお改正法案はグローバルスタンダードに照らして問題はないと思っているのかどうか、この点もお尋ねしておきたいと思います。
  126. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) まず議案提案権でございますけれども、これは政府日銀法の十五条の第一項に掲げられた事項、これはすなわち通貨及び金融の調節に係る事項でございますが、これに関してみずから提案し、政策委員会の判断を求める場合に行使される権限でございます。  これに対しまして議決延期請求権は、政府として、政策委員会の議題につき一定の期間の検討でありますとか、あるいは政策委員会に対して十分な説明を行う機会を確保するために政策委員会の御判断自体について一定の期間の延期を求めるものでございます。またその延期を求めるというものは次回の会議までに限定して求められるということでございまして、議案提案権とは異なる仕組みとして構成したところでございます。  もう一つ、ドイツのことにつきまして御指摘がございました。ドイツにおきましては、政府がドイツ連邦銀行に対して有しております権限は議決延期権でございまして、政府が議決の延期を求めますと自動的に議決が二週間を限度として延期されることになります。  これに対しまして、今回の改正案におきます仕組みは、御承知のとおり、政府が議決の延期を求めた場合に政策委員会がその採否を決定するものでありますので、ドイツにおいて廃止の方向である議決延期権とは性格の異なるものでございます。
  127. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま答弁がございましたように、ドイツの場合には政府がいわば議決の延期を命令するという形でございまして、延期の請求があれば延期をされるという仕組みでございますが、この改正案におきましては、政策委員会が最終的にその採否を判断できるという仕組みでございますので、このやり方であればグローバルスタンダードにも合致をしておりまして、私どもといたしましてもこれを規定することによって独立性を損なわれるおそれはないであろうと考えているところでございます。
  128. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 その点は、説明はそれでわかりますけれども、いずれにしてもドイツでも余り適用されたことはないわけでしょう。請求権であろうと要請権であろうとですが、言葉はどうでもいいんですわ、つまり同じようなもんですわ。だから、いずれ独立性とか中立性から考えればこれは取り除かれるというような方向に進む方が私は一番妥当だと思うんです。きょうはそれ以上議論はしません。  三つ目の問題ですが、緊急時の対応であるが、中央銀行研究会以来、天災や恐慌といった緊急時に日本銀行に対して政府が指示権を持つか否かについてはさまざまな意見があったと聞いております。今回の改正法案では、指示権の形では法定していないが、金融制度調査会ではどのような議論があったのか、大蔵省に紹介していただきたいと思います。  また、日銀は、そうした緊急時に備えて人の面、システムの面、どのような対応を施しているのか、またそうした仕組みは万全なものになっているのかどうかをお尋ねしたいと思います。
  129. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  緊急時の日本銀行の役割につきましては、今御指摘のとおり、中央銀行研究会報告における御指摘を受けまして金融制度調査会答申におきましても、次のように書かれております。   天災・恐慌等といった緊急時に、信用秩序に重大な混乱が生じた場合、日本銀行が、中央銀行の本来の使命に照らし、当然のこととして、信用秩序の維持に寄与していくことが求められるのは言うまでもない。今後、緊急時に信用秩序に重大な混乱が生じた場合には、日本銀行においては、そうした見解に沿って、政府の要請等に応じ、最大限の協力を行っていくことが期待される。 というふうに指摘されているところでございます。日本銀行法改正小委員会におきまして、天災、恐慌といった緊急時に政府に指示権を認めることにつきましては、危機管理の観点から有意義と考えられる一方、その要件が厳格でない場合には政府の指示権の乱用が懸念されるとの意見や、日本銀行の緊急時の対応については政府全体の危機管理の一環として考えることが適当といった御議論がございました。金融制度調査会では、緊急時の指示権につきましては、こうした御議論を考慮し、今後とも政府全体の危機管理のあり方も踏まえつつ、さらに検討することとされたものでございます。
  130. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日本銀行におきましては、従来から、天災等の緊急時におきましても、銀行券供給資金決済など金融経済活動のインフラとも言えるような中央銀行業務は円滑に行えるように十分の備えをしてまいっております。  例えば、人員面におきましては、本支店を問わず災害対策要員を任命しておりまして、緊急時の要員確保を行っておりますほか、システム面におきましては、府中市にある電算センターが災害等によって機能停止に陥るような事態がありましても対応できるように、大阪支店の中にバックアップセンターを設置いたしております。また、銀行券供給体制につきましては、近隣店からの応援等によりまして、緊急時でも支障を来すことがないように備えております。二年半前の阪神・淡路大震災におきましても、私どもの神戸支店は、近隣店からの応援で要員を確保すること等によりまして、業務を停止することなく銀行券供給資金決済等を円滑に行うことができました。この経験を踏まえまして、さらにその内容は一層整備したところでございます。  日本銀行としましては、今後も緊急時に備えた対応には万全を期してまいる考えでございます。
  131. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 ただいま三つの問題について確認をさせていただきました。ありがとうございました。  さて、その次の問題は、日銀金融政策の問題について若干お尋ねしたいと思います。日銀金融政策は、公定歩合操作、それから公開市場操作、そして準備率操作、この三つが大きな手段であると言われていると思うんです。とりわけ、私は、この準備率操作ということがどういう意味合いをなすのか、この内容について若干の説明をいただきたいと思います。
  132. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 初めに、この第一と第二につきましてごく簡単に申し上げますが、私どもが第一に行っております公定歩合操作でございますけれども、これは、日銀取引先の金融機関に対して貸し出しを行います場合に適用する金利のことでございます。現在では、以前のように公定歩合の変更が金融機関預金金利や貸出金利を直接に変化させるという規制の仕組みはなくなっておりますけれども、私ども公定歩合を変更いたしますと、それは金融政策スタンスの重要な変更について国民の各層にわかりやすくアナウンスするという重要な役割を持っておりますので、こういった機能は、金利自由化が誕生いたしました現状でも変わっていないと考えております。  第二に、公開市場操作でございますが、これは、市場金利を適切な水準に誘導するために日々の金融調節の一環としまして、市場において手形や債券などの売買を行うことでございます。金利自由化の完了に伴いまして、金融機関預金金利や貸出金利市場金利に応じて変動するようになりましたので、独立した金融政策手段としての公開市場操作を通じました市場金利誘導の機能は強化をされておりまして、日銀金融政策におきましても、それが長短のさまざまな金利に波及することを通じて経済全体に影響を与えるという重要性を高めているところでございます。  第三に、御指摘の準備率操作でございますが、これは、準備預金制度というものがございまして、市中の金融機関等に対しまして、自分の持っている預金の中の一定の割合を中央銀行に預け金という形で保有させるという制度でございます。この制度におきまして、預金に対する一定の割合というものを上げ下げするのが準備率操作でございます。準備率を変更いたしますと、金融機関預金の中から貸し出しを行うその信用をつくり出す能力というものに影響を与えまして、これがひいて経済全体に影響を及ぼすものでございます。  近年、我が国も含めまして主要の先進国では、金融政策の運用上、準備率操作を用いる頻度が減少いたしておりますけれども、しかし、依然としてこれが有効な金融政策手段の一つであることには変わりはないというふうに考えております。
  133. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 詳しく御説明いただいてありがとうございます。  私は、公定歩合の方と公開市場の方は別にして、きょうはこの準備率の方だけに集中をさせていただきたいと思うんですが、総裁、今御説明なさったことと諸外国の例というのはどんなぐあいになっているんですか、諸外国は、準備率の問題に対して。
  134. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 諸外国におきましては、この準備預金の制度を最初に導入いたしましたのはアメリカでございます。御承知のように、アメリカの中央銀行は連邦準備制度と、準備という名前がついておりますが、これでもおわかりいただけますように、アメリカの中央銀行が導入をいたしました。  ただ、第二次大戦後には、欧州におきましても、また我が国におきましても、金融政策の手段として各中央銀行が相次いで導入をいたしまして今日に至っているところでございます。
  135. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 諸外国においても、そういう制度があることは私も十分承知しておるわけでございますが、いみじくも今総裁がおっしゃったように、この準備率を調べてみますと、公定歩合操作ほど頻繁に活用し動いているわけではないんですね、これ。九一年十月に変更されたままじゃないんでしょうかね。  ということは、準備率操作金融政策としての有効性が必ずしも高くないということを意味しているんじゃないですか、これは。確かに、信用度ということは十分関連しますけれども、実際適用されていないということであるならば、有効性は必ずしも高くないというように理解していいんじゃないかと思いますが、どうですか。
  136. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 御指摘のように、我が国を含めまして主要先進国では、近年、金融政策の運営に当たりまして準備率操作を用いる頻度が減少をいたしております。その背景としましては、金融自由化が進展しますとともに、ほかの金融政策手段、特に日々の金融市場調節を通じました政策運営手法が発達をし、よく用いられるようになってきたということが挙げられるように思います。  しかしながら、だからと申しまして準備率操作の有効性というものが低下したということではないわけでございまして、準備率操作を行いました場合の金融に及ぼしますいろいろの効果というものは、やはり今日におきましても依然効果的な金融政策手段の一つでありますので、私どもとしましては、今後とも必要があります場合には金融市場の調節に加えまして、この操作を今後も活用する余地は十分にあろうと考えております。  同時に、準備預金はまた金融機関のそれぞれの資金繰りの中のクッションという形の意味を持っておりまして、これが金融市場におきます短期金利の乱高下を防いでいるという効果もあると考えられます。そういった意味でも準備預金制度そのものの重要性には変わりはないと考えております。
  137. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 これから国際的な競争が激化していくわけでございますから、物の考えとして国際競争時代に金融市場間の競争が激しく行われるときに、準備金というか準備率というか、これが高いということはちょっと信用が薄いということに逆につながっていくんじゃないですか。つまり、自由競争の中では準備率が高いということは競争に不利じゃないのかというように考えるべきだと私は思っているんですが、その点はいかがですか。
  138. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 準備率自体につきまして、これが信用の判定上マイナスに働くという要素は大きくないというふうに考えますけれども、また他面におきまして、これは金融制度調査会の答申の中におきましても、「金融政策の主要手段のひとつである」という位置づけは行っておりますが、「日本銀行の準備率の設定に当たっては、民間金融機関の負担にも十分配慮した水準とすることが適切である。」という御指摘もあります。  同じ答申の中で、「金融システム改革の進展に伴い、準備預金制度の金融政策上の重要性や金融機関の競争力への影響等を考慮し、将来的には、準備預金制度全体につきそのあり方を検討していくことが考えられる。」というふうにされたところでございます。私どもとしましても、準備率の設定に当たりましてはこれまで金融政策の必要に応じながら水準を決めてきたのでございますが、その際にもこの金融機関の負担という点には十分配慮を払ったつもりでございます。  前回は、御指摘の九一年十月に準備率の引き下げを行っておりますけれども、そのときには金融機関の準備預金負担はそれまでに比べて約四割方の軽減になっております。さようなことでございまして、私どもとしましては、準備率の操作に当たりましては今後とも金融機関をめぐる環境変化も十分に踏まえてその運用を図ってまいりたいと考えております。
  139. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 今の議論と関連して大蔵省にお尋ねいたしますが、この準備預金制度については、今回の日銀法の改正の一環として準備率の設定、変更等にかかわる大蔵大臣の認可制というものが廃止されたわけですね。これはいかなる理由ですか。
  140. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現行の日本銀行法は準備率の設定、変更等は政策委員会の権限として規定されておりますが、別に準備預金制度に関する法律というのがありまして、そこで準備率の設定、変更等には、今御指摘のとおり、大蔵大臣の認可が必要とされているところでございます。  今回、御提案申し上げております日本銀行法の改正によりまして、日本銀行金融政策の独立性を強化するとしておりますが、先ほど総裁からのお話にありましたように、金融政策の重要な柱の一つでもあるという観点からしまして、金融制度調査会の答申をも踏まえまして、その観点から準備率の設定、変更等についても大蔵大臣の認可を廃止するというふうにいたしたわけでございます。
  141. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 もう一度総裁にお尋ねいたしますが、だとすると、その金融制度調査会の答申というのは、今御紹介がありましたが、そこにはこう書いてありますね。  最近の主要国の動向を見ると、以前ほど準備率操作は利用されていない。準備預金の負担はノンバンク等に比べて、預金取り扱い金融機関の競争力を下げる可能性があり、国際的にも金融市場間の競争においても準備率が高いと不利になるとも指摘されており、将来的には制度全体のあり方について検討すべきである、こういう指摘があるわけでございます。したがって、今独立性、中立性の観点から認可を外したというのであれば、これは日銀のこれからの対応の仕方というのは私は重要になってくると思うんです。  そこで、金融ピックバンを控えまして、金融機関の負担軽減の観点からこの制度の改廃も含めて、そういうものを視野に入れてこれからのあり方を検討すべきじゃないかと私は思うんですが、総裁の見解をもう一度お尋ねいたします。
  142. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの金融制度調査会の御指摘の中に競争力の点の指摘がございましたが、我が国の預金準備率の現状は、九一年の率の引き下げによりまして、諸外国と比較いたしましても現状は最も低い部類の一つに入っております。  私どもも、各国における準備率制度の今後の運用等も見ながら、また我が国の金融市場の公開市場操作等の今後の展開というものもあわせ考えながら、この準備預金制度につきまして改善を図る余地がないかどうか、これは見てまいるつもりでおりますけれども、現状はそのようなことでございますので、一つの私ども金融調節上の有力な手段としてこれを持っていることといたしたいと思っております。
  143. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 ぜひ、この問題については日銀金融政策の重要な三つの柱ではございますので、これから恐らくこの問題が国際的にもまた問題になってくると思いますから、十分対応していただきたいと思います。  もっと別な質問があるんでございますが、きょう私は総裁の答弁を聞いておりまして、ちょっと意外だなと思ったことが二、三ございますので、聞かせていただきたいと思うんです。  午前の部で河本先生が御質問なさった日銀の交際費という問題についてですが、どうも私は釈然としないんです。総裁の交際費というのは幾らあるんですか、本当のところ。
  144. 松下康雄

    参考人松下康雄君) けさほどお答えをいたしましたのは、会議費の予算でございまして、総裁の交際費といいますものは、半期の予算として千五百万円を計上しております。
  145. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 午前のお話では、三千万があって何にお使いになったんですかと聞いたら、九州の会議でそのお金を使いましたと、そういうことですとお答えになったわけですよね。交際費は幾らあるのかと言ったら三千万で、それは九州の会議のところに使いましたと答弁なさったから、あれと思って、大体国際会議なんというのは会議費でしょう、交際費の中で会議をやるんですか。
  146. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 午前中にお答えをいたしましたのは会議費でございまして、本年の予算額は一億円ございます中で、会議費でございますので、福岡の国際会議に使用いたしたわけでございます。  ただいまの御質問の交際費は、これは総裁及び役員の交際費といたしまして、これは会議費と別でございますが、年間半期で千五百万円計上しているところでございます。
  147. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 千五百万というのは、半期ということは六カ月ということですか。六カ月で千五百万、そういうふうに理解していいですか。
  148. 松下康雄

    参考人松下康雄君) さようでございます。
  149. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私も国務大臣をやった経験があるんですけれども、三塚大臣は何ぼ交際費あるかわかりませんけれども、大臣なんか余りないですわな。いや、本当にないと思うんですな。大臣室でビール一杯飲むぐらいの話でございましてね。それにしては随分多いんじゃないかなという印象を持つんですよ。けれども、それは、外に出ていって外国の要人とも会ったりするときはあるんでしょう。けれども全体から見ると、どうも日銀全体のこの予算の組み方と、私は全部予算を見ているわけじゃないものですから、ちょっと甘いというところがあるんじゃないのかなと思うんですが、総裁自身が就任されて、今までいろいろやってきた中で、これはどういう感じを持たれますか。
  150. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 交際費でございますので、必要がございますれば使用いたしますけれども、特に必要がなければそれは余ることもございます。これの枠の中に常にいっぱいにあれをする、交際費を公式使用するというものでもございません。  そういう点から申しまして、私も、日銀の性格は、一方では公的な機関であるという性格がございますけれども、同時にまた、日常の仕事におきましてはマーケットに入って金融機関取引をする、そういったことを通じながら業務をやっていくという性格もございますので、そういう点では官庁と同じような交際費でちょっと十分な交際がいたせないということもやはりぐあいが悪かろうと思っております。  日銀のことでございますから、むだ遣いをしているとは思いませんけれども、これまでに長年の間、実際に実務をやりながら、このあたりが適正かということを感じて予算に計上し、大臣の認可をいただいてきたんだと思いますが、こういう時世でございますし、また、今回法律改正の機会もございますので、今後どのように本当に必要なものであるかということは私自身も見てまいりたいと思っております。
  151. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、一昨日も申し上げたと思うんですが、高いとか低いとかということは、一般的に高いと言うと数字のことを言いますけれども、必要があるなら必要があるようにきちっとすればいいんですよね。  それは総裁、幾らそう言ったって、日銀だって消費会計なんですよ。予算が回れば余らせるなんてありっこないですよ、そんなこと。予算をもらったら使っちゃうのが役人のもうすべての世界なんですから。だから、そういうふうに思うと、余りきれいごとは私は言わない方がいいと思うんですよね。けれども、使わにゃならぬことは使わにゃならぬということで、そこに透明性というものを私は発揮した方がいいという意味で申し上げているんですよ。ですから、仕分けにしても、そういうものをきちっと私はしてもらいたいと思うんです。きょうは質問しませんけれども、いずれ総括のところでやらにゃいかぬと思うんですが、どなたかやってくれるかなと思って私じっとやらなかったんですが、ちょろちょろと言っておりましたけれども。  私は、次の問題として、ゴルフ場の問題について聞かせていただきたいと思うんです。どういうことを聞きたいかというと、ぜひこの委員会に出してもらいたいんですけれども日銀が所有するゴルフの会員権の数と場所について、公式に委員会に提示されたことはございますか。
  152. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 衆議院の大蔵委員会におきまして御質問がございましたので、委員部の方と相談をいたしまして、その御質問のときには手元に資料がございませんでしたが、後刻御質問をなさった委員の方にお届けをしたということでございます。
  153. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 それでは、改めて委員長にもお願い申し上げておきますが、日銀から次のような資料を提出していただきたいと思うんです。  外国をも含めたゴルフ場の個別の項目について、カントリークラブの名前を入れて、これをまず提出してください。  同時にそのときに、名義人はだれになっているかということを入れてください。法人なのか個人なのか。まあ大体支店長というのは役でついているようなものかもしれませんけれどもね。  三つ目は、全く個人名になっているところがあるはずですね。私が耳にしているだけで九カ所か十カ所ぐらいあるらしいというんですがね、正式に見たことはないからわかりません。  それからそのときに、購入した金額と現在の価格、この四つを並べたものを一覧表にして出していただくと大変わかりやすいんですが、いかがなものですか、出していただけますか。
  154. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの数字は、委員会に対する御提出でございましたらば、委員会から御指示をいただければ、これを提出いたします。  ただ、購入した金額は、戦後間もなくとか、そういう非常に古いものが中に幾つかございますので、ちょっと詳細判明しないものがあるいはあるかもしれませんが、できるだけのことは用意できると思っております。
  155. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は委員長にお願い申し上げます。私一人がもらってみたってどうにもなりませんから、皆さんによくわかるようにする意味で、委員会として日銀に資料提出を要求します。委員長からお願いします。
  156. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 理事会において相談して処置をしたいと思います。
  157. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 あとはまた次回の機会に移したいと思います。特に、私がその資料を要求したことについてぜひ日銀からも後日明確な答弁をいただきたいことは、個人名義になっているところが一番問題なんですよ、九カ所のところ。なぜ個人名義でずっとなっているのかと。何だか古い人の名前をそのまま載っけているようなところがあるんですね。これは日銀の所有なのか、個人の所有なのか、明確でないんですね。そういう点について次回また質問させていただきます。  きょうは、これで質問を終わります。
  158. 千葉景子

    ○千葉景子君 私も前回、日銀の独立性などを中心にいたしまして質問させていただきましたが、それに引き続きまして、少し整理をしながら御質問をさせていただきたいというふうに思います。  ちょっとこういうことを言わせていただくと、何かこういう審議の場で大変恐縮ですけれども、二人三脚というのを思い浮かべていただきたいんですね、二人三脚。私もお祝いの席などでスピーチをということをいただいた際に、二人三脚というのは力を合わせて二人でお幸せに頑張ってくださいと、こういうよく例えに使われるんですけれども、実は二人三脚というのは下手をすると一緒にこけてしまう。二人でそれぞれ足を踏ん張って歩いていれば、そして心が通じ合っていればというとおかしいですけれども、そうすれば一人がこけたときに一人がまた引き起こすと、こういうこともできるのではないか。そういう意味では、二人三脚というのは大変結構ではあるけれども、大変危険も大きいと、よくこういう話もさせていただくことがあるんです。  今度の日銀法の改正についても、私は若干そういう思いをいたしているわけです。これまで確かに日銀が、実質的には局長からもいろいろ御答弁をいただいておりますように、でき得る限り独立した自主的な運営ができるようにと、そういう配慮をしてきた、法律の上ではなかなかそれは明確になっていなかったけれども、そういうことに配慮をしながら実際には運営、運用をしてきたと、こういうお話もいただいてまいりました。  しかし、この間のいろいろな政策運営、こういうのを見ておりますと、皆さんからもいろいろ御指摘がありましたバブル発生やあるいはそれをもたらしたいろいろな金融財政政策、これらの背景を見ますと、二人三脚でお互いに足を縛り合って歩いていたものですから、いざとなったら何か一緒にこけてしまった。しかも、こけた理由がどうもひとつ、どっちが足を引っ張ったんだか、どっちが先にこけたのやらよくわからないと、何かそんな感じがしないでもありません。  そういういろいろな反省も含めてということでありましょう。今回は、これまでの自主的な運用ということも含めて、制度としても明確に日銀金融政策の運営の独立性を規定して、そして責任を持って、これもこけたらやっぱり日銀がそれだけの大きな責任も感じてもらうんだと、こういうことも含めて独立性というのをきちっと明確にしていこうじゃないかと、こういう大きな理念といいますか考え方が根底にあるだろうというふうに思います。これは、これまでの議論の中でもこの考え方というのはほぼ基本的にはコンセンサスがある内容であろうというふうに思います。  しかし反面、独立てあると言っても、いろいろな御指摘がありますように、大変公共的な、公共性の強い、そして国民からいろいろな財産を預かるそういう立場にもあるそういう機関でもございます。そして、きょうこの点をもうちょっと詰めてお聞きしたいと思っているんですけれども、確かに国の経済政策全般ともかかわりを持っている、全くこれは無縁だというわけには確かにいかないだろうというふうに思います。  そういう意味では、独立だとは言っても、何かたこがぷうっと飛んでいっちゃったようなそういう意味を言っているのではないだろうと。しかし、その基本的な理念でもある金融政策の独立した運営、そしてそれのきちっと責任を負っていくと。こういうものに対して、どこまでその運営を阻害しないような形で公共的な側面を担保していくんだろうか、あるいは局長が常日ごろよくおっしゃるんですけれども、行政という意味でどこまで政府などが関与をしていくべきなのか、こういう問題が私はどうもいま一つなかなか整理されていないような感じがしているわけです。  これは私の視点でございますので、そういうところを頭に置きながら、きょうは何点か、少し逐条的になろうかと思いますけれども、お尋ねをします。法律というのは重いだけではいけないわけでして、やはりできる以上は、それがそれぞれどういう意味を持って、そして今後どういうそれが使われ方を本当にしていくのか、そういうことをきちっとしておいてこそ初めて誤解もなく、そして安心して独立した運営をしていくことができるんだろうというふうに思いますので、ぜひそんな観点を頭にちょっと置いていただきながら、少し議論をさせていただきたいというふうに思います。  そこで、冒頭なんですけれども、これはこの間久保委員の方からもございました。私もその独立性ということを考えましたら、確かにこの法律案でははっきり言われていないんですね。自主性という形では、例えば三条には「日本銀行通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」と、こういう文言が使われておりますし、それから五条でも「法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」と、こういうことがございます。確かにこの間の御答弁で、独立性という言葉を使うと法的に一体何からの独立だという議論が起こるのでと、こういう御発言もございました。そう言われるとそうかなという気もするんですけれども、ただ、やっぱり言葉として、独立てあるということと自主性を尊重するということは、どうもそこの意味というのは違うんじゃないかという気がするんです。  独立というのは、システムとしてもきちっとしたどこからも支配されない、そういう構造を持っているということを意味するでしょうし、自主性というと一定の枠の中で自分の頭で考えたりすることを尊重するよと、そういう何か一定の枠をはめられた中での自主性というようなニュアンス、こういうものが考えられるわけですけれども、これは余り議論してもなかなか答えの出るというものではないというふうに思いますので、私の感想として述べさせていただきます。  そういうことになりますと、そうすると一体その独立性というのは個々のこの法律のへあるいはこれから運営されるであろうシステムの一つ一つの構造がどう組み立てられているか。そういうことで本当に、独立性というのが言葉にはないけれども、実質的に担保されていると言えるということを証明することになるんだろうというふうに思うんですね。そういう意味で、独立性という言葉がきちっと法律的にも明確になっているということが私は望ましいと思いますけれども、少なくともそれが難しいということであれば、一つ一つのこれから指摘させていただくような点で本当に独立性というのが十分に担保し得ているのかということを少し検証させていただきたいというふうに思うわけでございます。  さて、そのまず第一点でございますけれども、独立性を持つ、それによって金融政策を十分に適切に運営をしていくということになるんですが、常々言われていますように、だけれども行政の一部といいますか、大きく見れば全くの民間の一機関というわけではないわけですね。その意味で、中央銀行である日本銀行がいわゆる認可法人として位置づけられている、この意味というものはどういうことでございましょうか。  行政ということを強調すれば、極端な話ですからこれは私がそう望んでいるというわけじゃなくて、例えば大蔵省の金融部門と考えてしまえば行政権の執行という意味では一番極端な、極端なというかわかりやすい構造になるわけですけれども、やっぱりそうはいかない。その独立性と自主的なそういう運営あるいは経済運営、そういうことを考えたときに、認可法人という性格づけがされているのだろうかというふうに思うんですけれども、この点は今回の法律の中でどういう意味を持ってくるのでしょうか。
  159. 山口公生

    政府委員山口公生君) この日本銀行法の持つ側面の一番奥深いところの議論だと思うわけでございますが、その独立性の議論、それとのかかわりでの公的な側面の調和というところでございます。  そこで、今御指摘の、その観点からの認可法人云々という話でございますが、これはちょっと歴史的に振り返ってみる必要があると思うのでございます。実は、日本銀行は明治十五年に、一八八二年でございますが、国及び民間が株主となって設立されております。それでその際日本銀行条例、これは太政官布告という非常に古いものでございます。これの二十三条で、「定款ヲ作り政府ノ許可ヲ受クヘシ」というふうになっております。したがって、認可法人とは、特別の法律により設立され、かつその設立に関し行政庁の認可を要する法人というものでございまして、日本銀行はそのような設立の経緯から認可法人とずっとされてきたわけでございます。  明治十五年から三十年間の期限で日本銀行は設立されました。明治四十五年に一回期限が切れました。もう一回延ばして昭和十七年と、そこで法律が要るんだということで、いわゆる現行の日本銀行法という形になっております。その間ずっとこの法形式は変わらない。しかし、戦前は株主総会という形でございましたが、十七年以降はこういったいわゆる株主権という形ではなくて出資者という形で、しかも出資総会というのは存在しないという形になっておるという法的な性格づけがなされております。そういった歴史的な経緯があってずっと認可法人という形になっておりますけれども、性格からいいますと、業務の公共性からいって特殊法人的存在というふうに言われております。    〔委員長退席、理事石川弘君着席〕それは、広い意味で認可法人も入れたということの概念として受けていただきたいと思うのでございますが、この性格につきまして金融制度調査会でもいろいろ御議論ありました。しかし、特段この位置づけが金融政策の独立性を確保する上で支障がないという結論になりまして、この認可法人という現在の法的位置づけのままで構わないというような御結論をいただきましたので、このままの姿での御提案を申し上げております。  したがいまして、法的な性格そのものからいいますと、広い意味の行政の一部、しかし、かといって行政そのもの、政府の中の一員という形ではございませんので、認可法人という形です。それは歴史的な経緯からしてそうなっていると。しかも、ちょっとつけ加えさせていただきますと、五五%が政府で四五%が民間が保有している、こういう姿でございます。
  160. 千葉景子

    ○千葉景子君 この認可法人であるということによる要件というか、認可をするということ自体は要件ですけれども、じゃ認可法人だからこうあらねばならないとか、政府がこういうかかわりをしなければいけないということは、この認可法人であるがゆえの何か条件はございますか。
  161. 山口公生

    政府委員山口公生君) 認可法人は、先ほど申し上げましたように、特別の法律によって設立され、その設立に関し行政庁の認可を要する法人、つまり認可があった法人、こういうことでございます。認可法人であるからという形からいいますと、設立が認可行為によってできたということでございます。例えば、法律によって設立まで書かれたものは今特殊法人という形に分類されておりますけれども、そういった設立行為に着目して今分類されておるわけでございます。
  162. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっと確認をさせていただいたのは、認可法人であるということで、それからこの法律にいろいろな条件が書かれているわけですけれども、直接には関係がないというふうに考えてよいというふうに受けとめておきたいと思います。  そこで、次にお聞きするんですけれども、先ほどもちょっと御議論がございました。やはり最大限政策運営の独立性を尊重しなければいけないということと、それから、かといって政府全体の経済政策というんでしょうか、そういうものとは全く無縁ではない。そういうところの調整といいますか、そこの橋渡しの条文というのが多分この四条ということになるんだろうというふうに思うんです。「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」、こういうことが書かれております。わかるんですけれどもね。実際に自主的な政策運営を阻害しない形で、それも尊重しながら、しかし連絡を密にし、十分な意思疎通を図るというのは、具体的には例えばどういうことを実際には行われるというふうに考えればよいのでしょうか。  これは、例えば政策委員会への政府からの出席のような形である意味では具体化されていると思うんですね、一部。多分それが一つの形であろうというふうに思うんですけれども、これ一般的なこういう規定がございますので、先ほども指摘ありましたけれども、これは下手に使われるとやっぱり自主性、独立性を阻害する、いつも口を出しているというそういうことにもなりかねないわけでして、その点についてはどういうことをお考えになっておられるか、お答えいただきたいと思います。
  163. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 一般的な連絡を常に密にするという観点から現にいろいろなレベルで意見の交換をやっております。    〔理事石川弘君退席、委員長着席〕  一番はっきりしておりますのは、例えば月例経済報告に関する関係閣僚会議というのがございますが、ここには日銀総裁が常に出席されて月一回開かれております。それから、今度は事務当局間でも意見交換を行っております。それは関係部局でそれぞれ行っているという意味で、いろいろなレベルで議論を行っておりまして、そういう意味では別に法律に基づいて何とかということじゃないわけでございますが、日々の接触の中での意見交換が行われていると。あと、恐らくこの規定をもとに、政策委員会への政府の出席とか、そういうものが法定化されているものではないかというふうに理解しております。
  164. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひ、私も全くお互いに意思が通っていない形でうまく経済が発展をしていくということにはならないだろうと思いますので、これはいい意味で、お互いの政策議論を活発に行うという意味で運用されるように期待をしたいというふうに思っているところでございます。  それから、これと同じように第五条というのも「その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。」と、これは当然のことであろうというふうに思いますし、その際にやはり自主性を尊重せい、こういう形になっております。  これは、業務のやはり内容といいますか、それに着目をした規定と考えてよろしいんでしょうか。あるいは前回ちょっと局長の御答弁では、やはり日銀通貨発行益などによって運営をされるという意味で公共的であるし、行政の一部というか、そういうようなニュアンスもおありだったような気がするんですけれども、これは要するにその業務の公共性といいましょうか、あるいは日銀の存在の公共性、そういうことを背景にした趣旨と考えてよろしいでしょうか。
  165. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今御指摘の、業務の公共性という点のよって立つゆえんのようなものは、二つぐらいあるのかなと思うわけでございます。  一つは、日本銀行の業務が日銀券の独占的発行が認められておりまして、それは公的性格が高いということになるわけでございます。また、その運用いかんによっては、取引金融機関の損益に直接影響を与え得るということもあるわけでございます。したがって、業務運営に当たりましては、当然のことながら、恣意性があってはならないし、そこに適正、中立という要素が求められるわけでございます。それが一つの公共性だと思います。  もう一つの側面は、私が前に述べましたように、日本銀行の利益の大宗が日銀券の独占的発行権からくる、つまり発行益からくるものでございます。したがって、その日本銀行の財産の公共性というのも極めて高い。そういったものを使いながら業務を行うわけでございますが、そういった観点からもやはり適正かつ公平かつ効率的にという公共的な要請が出てくるんではないだろうかと思うわけでございます。したがって、第五条については業務の「公共性にかんがみ、適正かつ効率的に」というふうにしておりますし、第二項でこの「業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」としております。  その前の、ちょっとつけ加えさせていただきますと、第三条で「日本銀行通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」、これは実を言いますと、日本銀行の業務の中でいろんな種類のものがございます。その中で一番尊重されなければならないものは、金融政策そのものなんでございます。したがって、そこの部分については尊重されなければならないというふうに書いてございます。五条におきましては、そういった公共性あるいは財産のもと、通貨発行益というようなことで自主性というものを十分配慮しなければならないというふうになっておるわけでございます。
  166. 千葉景子

    ○千葉景子君 なるほど、それが尊重と配慮のやはり区別ということになるということです。今のその公共性が非常に高いということから、特に独立性と、そしてやはりそれをきちっと透明にする、アカウンタビリティーをきちっと確立する、こういうことにつながっていくんだろうというふうに私も理解をさせていただいているところでございます。  さて次に、「日本銀行は、本店を東京都に置く。」と、これも規定をされております。そして支店とか、まあ本店を移転するというのはめつたなことで首都移転でもなければどうかなと思いますけれども、支店の設置とか廃止、そういうものについては大蔵大臣の認可ということになっております。これは独立性ということを徹底して考えれば、業務の運営上金融政策を円滑に、そして日本の全国のいろいろな状況を把握しながら運営をしていくということになれば、ある意味ではこの金融政策の独立性ということとも全く無縁ではないというふうに思うんですね。  それについて、とりわけ大蔵大臣の認可ということになっておりますけれども、これについては、例えば独自に日銀判断をするということで、私はそんなに公共的に反するような行為を日銀がやるとか、そういう結果にはならないんじゃないかというふうに思います。多分、国民の財産であるからというお答えが出てくるんじゃないかなという気がするんですけれどもね。  それともう一つ、定款の変更などは当然認可事項ということになります。本店、支店の所在地ということで定款を変更するときには認可法人として承認を受けるということですから、そのときにとんでもないところに支店を移して、定款の変更を届け出るようなことというのはまず考えられない。だとすれば、一つ一つのその支店の設置のようなことについては自主的な判断というものに任せることも一つの選択ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  167. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かに金融政策の自主性、独立性ということと、この本店、支店の認可ということを全く無縁のものとは私は申し上げるつもりはございません。しかし、先ほどお聞きいただきましたように、この日本銀行の業務の公共性、二つ側面があると申し上げましたが、いわゆる公共的、行政的色彩という点と、それからその通貨発行益で賄われているということからしまして、やはり公的なチェックをすべきではないだろうかと思っております。  ただ、それが当局の恣意的な裁量であってはならないわけで、その点につきましては、もし認可しないような場合には理由を公表するというそういうセーフガード的なものをつけてございますので、その点は、決してこれに基づいて金融政策の自主性にまで影響を及ぼすということはないというふうに思っております。
  168. 千葉景子

    ○千葉景子君 さて次に、先ほど理念といいましょうか、そういう中で政府との意思疎通を図っていくという理念の一つの具体化として、政策委員会への政府からの出席ということが規定をされております。これは必要に応じて会議に出席して意見を述べるということになりますけれども、それと絡んで、先ほども御議論がありました議決について一定の制約を今回の法律というのは付しているわけですね。それが議決延期請求ということになろうかというふうに思います。  これは、もう何回か議論がされておりますので、余り繰り返しをしたいというふうには思わないんですけれども、やはりどう考えても、余りどうも発動される様子はない。逆に言えば、発動されたら大変だということでもあろうかというふうに思うんです。それから、ドイツなどでも議決延期権でしたけれども、発動されないということでもございます。しかし、やっぱりここに規定をされているというのは一体何なんだろうかなというのが正直言って考えているところです。  先ほど、最初から私変なことをぐだぐだ言ってきたんですけれども、要するに、例えば公共性があるからこういうある程度チェックをしなければいけない、こういう問題は幾つかあることはわかります。それから、一定の大きく見れば行政権といいますか、それの一環でもございますから、そういう意味で、先ほど言ったような意思疎通をできるだけ図って一体的な経済政策ができるようにということもわからないではありません。しかし、この議決延期請求というのは決して、これがなければいけないとか、あるいは行政の一翼と大きく考えたときでもこれがないとそれが全うされないというものではない、しかもほとんど発動はしない方がむしろよいといいますか、そういう存在であろうというふうに思うわけです。  そこで、実際にもし議決延期請求のようなことがあり得るとしたらどんなことを前提として予測をされるんだろうか、あるいは置いてはあるけれども予測する必要はないんだということなのか、そこをちょっとお聞きしたいと思うんです。  それから、日銀総裁にも、万が一もしこういう請求などがされる事態がありましたら、先ほど政策委員会が最終的には決定をするんだし、次の政策委員会の開催までの非常に短い期間の議決延期というようなことでもあるというふうにお聞きをいたしておりますけれども、これは政府日銀政策の方向性が大きくずれるということが、そのときにわからなくても議事要旨の公開などで判明するというようなことになれば相当市場の混乱とかあるいは戸惑いとか、そういうものにもつながっていくのではないかというふうに思うんですけれども、これは実際に運営、運用されたりすることになっていくとどんなことになるんだろうか。もし、そんなことになっては困るんだからできるだけそういうことはもう使わないようにするということであれば、何でこれを残しておく必要があるのか、その点について改めてお尋ねしたいと思います。
  169. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 日本銀行が独立性といいますか自主性を持って金融政策を運営、決定していくということと、さはさりながら政府経済政策と整合性がとれなければならない、それをどうやって調和させるかということに尽きるわけでございます。  先ほども議論になりましたので繰り返しはいたしませんが、この議決延期請求権というものが判断そのものを政策委員会に一定期間延期を求める、その延期をするかどうかは政策委員会が決めるということで、いわゆる独立性には決してそれを阻害することのないように配慮してあると。その上で、それではどういう場合なのかということでございますけれども、この改正法におきましては、政策委員会というのは相当活性化された実質的な議論をする場でございますから、もちろんある程度議題は事前に通知されるものと思いますが、その中からどのような結論になるかというのは会議を開いてみないとわからないということになります丁事前に通知していただいた範囲内において、恐らく政府から出席する者は、いろいろ検討していくんだと思いますけれども、その場で予想どおりの展開にならないといいますか、準備のないことを尋ねられたり、あるいは政府の中ではどういう方針であるか必ずしも明確でないことについての議論が進展することもあるということでございます。  そうなりますと、そこに出ていた者は、一つは、まずそこで事前に十分準備されていないような議題について議論になった場合の一定期間の検討のための時間をいただきたい、あるいは説明を求められたことについて全部が全部その出席者が知悉をしているとは限りませんので、さらに説明を行う機会を設けてほしいといったようなことが考えられるわけでございます。もちろん、その政策判断について少し待ってほしいということもあるかもしれませんけれども、そういうこともあるわけでございまして、そういうことで延期請求権が設けられたと。この点については中央銀行研究会及び金融制度調査会においてもいろいろ議論がございました。  そうちょくちょく発動されることはないのではないかという御指摘でございますけれども金融制度調査会でもそういう議論がありましたけれども、結局この仕組みの趣旨というのは何かといえば、政策委員会が最終的には独自に金融政策について判断をするんだけれども、その運営に当たっては政府の見解を十分聞くように、政府の見解を十分説明しないまま議決は行わないようにということであろうかと思いますので、この制度の趣旨を踏まえてそういう運営がなされるということが一番大事なことではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  170. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この規定につきましては、やはり第四条の「常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」という規定が基本でございますが、この規定だけでございますと、訓示規定と申しますか、そういう趣旨はよくわかるけれども、では具体的にどういう場合にどういう方策で政府との必要な意思疎通が確保されるような、何か担保のようなものがあるかどうかという点が恐らくこの立法のときに問題であったのかなと思うわけでございます。そういったものの一つのあらわれとしてこれは考え出された措置であろうと思うわけでございます。  したがいまして、実際に常に政府と連絡を密にして、お互いにこの四条の規定そのもので進んでおります場合にこの条項が発動されるということはなかなか考えにくいところでございますし、またこれが発動されるということは、御指摘もございますように、これは大変異例なことだという印象を市場その他に与えることになるかもしれません。  したがいまして、ただいまの答弁の中にもちょっとございましたけれども、こういう規定が置かれることによりまして、政府の側におきましても中央銀行の側におきましても、極力こういう規定の発動を必要とするようなそういう事態に陥らないように、実際問題としての平素の意思疎通というものに万全を期していくということがやはり大きなねらいではなかろうか。ただし、これは条文でございますから、単なるそれだけの抽象的なことではございません。ただいまの御説明の中にちょっとございましたような方々が一という場合にはそれは発動されることはあり得るという趣旨でここへ置いたというふうに私ども理解をいたしております。  ドイツの方の議決請求権も一度も実際には発動されたことはございませんでしたけれども、何らかそれがあることが両者の理解をしようという努力を深めた効果はあったのではなかろうかと思うところでございます。
  171. 千葉景子

    ○千葉景子君 若干ニュアンスが違うのかなという感じがいたします。  先ほどお聞きして、政府が出席をして余り準備がなかったりしたときにはもうちょっと待ってくれということもあり得るやに感じますし、余りそういうことで準備がないままに出席するということはほとんど考えられないですし、その場でちょっと待ってくれということでこの条文が使われるということは、私はこの条文の意味ではないだろうというふうに思うんです。総裁もめったにこれが使われるようなことはないだろうと、期待を込めた観測かなという感じはいたします。そうなると、この規定というのは、抜いてはいけない伝家の宝刀ではありませんけれども、置いておくことによって何となく独立性に対するおもしというか、そういう機能を結果的には果たすことになってしまうのではないか、そういうおそれというのを私は考えないではないわけです。  国際的な動きから考えても、こういうものを撤廃しようとドイツなどでも、もともとの制度は違いますけれども、独立性をより明確なものにという動きもある中ですから、これは先ほど言った公共的な観点あるいはいわゆる行政運営の一翼というそういう観点から考えても、なければならない。というよりは、むしろ独立性から考えれば弊害になる方が大きいのではないか、そういう規定ではないかなという感じがいたします。  これは、今後改めて、この改正というかこの法案がスタートして、多分一〇〇%いい中身だと、山の頂上までたどり着いたということではないだろう、いずれグローバルスタンダードなども含めて考え直す、あるいは見直していくという、そういうこともあるんだろうと私は期待をいたしますので、そういう際の一つの検討課題としてぜひお考えをいただきたいものだというふうに思います。  時間がなくなりました。あと幾つかお願いしていた部分がございますが、審議の機会がまだあるようでもございますので、後日に譲らせていただいて、終わらせていただきたいと思います。
  172. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 きょうも議運の理事会と重なってほとんどこの場にいなくて、申しわけありません。最初に皆さんの御理解を得たいと思います。  きょうは、私は、日銀特融の問題を中心にしてお伺いしたいと思います。  日銀特融は、一九六五年のいわゆる証券恐慌のときに発動されて以来、しばらくは発動されておりませんでしたが、一昨年、東京の二つの信用組合の破綻に際して東京共同銀行に対して二百億円の出資がなされて以来、コスモ信用組合、兵庫銀行、みどり銀行、住専処理のための新金融安定化基金、木津信用組合、阪和銀行と続き、一時は特融の残高が一兆円を上回る事態となりました。  現在、特融残高はどうなっておりますか。また、これ以外にも日銀貸し出しなどを通じて問題銀行にかなりの金が流れているという指摘もありますが、どうなっているでしょうか。まず、日銀総裁にお伺いします。
  173. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 初めに、日銀法第二十五条に基づきます貸出残高は五月末の計数で三千四百五十億円でございます。  それから、この二十五条の貸し出し以外に問題貸し出しがあるかどうかという点の御質問でございますけれども日本銀行の通常の貸し出しは、日銀法二十条の規定に基づきまして、手形、国債、その他の有価証券等を担保として実施するものでございます。  通常の貸し出しの中には、これまでは金融調節のために行う貸し出しと、それから何らかの事情によって資金繰りに窮しました個別金融機関に対する一時的な流動性供給目的とした貸し出しの二種類がございましたが、昨年初め以来、私どもでは金融調節面では原則として日銀貸し出しを用いないような仕組みにいたしておりますので、現在ではこうした貸し出しは主として個別金融機関に対します資金繰り支援のための一時的な流動性の供給に限られているものでございます。  いわゆる特融につきましては、二十五条の規定に基づきまして大蔵大臣の認可を得まして、信用制度の保持、育成のために行っているものでございまして、これは今申し上げました二十条の通常貸し出しのような担保の徴求ということを前提といたしていないものでございます。そのように、通常の貸し出しと二十五条の特融とは要件や手続も違っておりまして、御指摘のような二十五条貸し出し以外に二十五条的な貸し出しということはございません。
  174. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日銀特融の内容を見てみますと、東京共同銀行への出資から始まった出資という形態の特融が一つの新しい形態となっている。当面戻る当てもない金であり、一時的な流動性の供給という最後の貸し手機能の限界を大きく越えたものだと私は思います。  そして、出資という形態での融資が、その後も住専処理に関して預金保険機構に対する一千億円の拠出、さらに新金融安定化基金への一千億円の拠出というものがあり、またこの基金から阪和銀行の破綻に際して、営業の譲渡を受ける新銀行に対し百億円の出資を行い、また日債銀の破綻に対しても八百億円の出資を行うという形で破綻銀行への出資が繰り返されております。  もう一つのパターンは、兵庫銀行の営業を譲り受けたみどり銀行に対してなされた千百億円の劣後ローンであります。これはローンという形ですが、期間十年という破格の長期の特融であり、これまでのような預金者への払い戻しに備えるための緊急性を要する特融とは明らかに性格が異なる特融である、こういうふうに言わざるを得ません。出資に近い形の資金供給であり、損失補てんに近いものであると言わざるを得ません。  これらの措置は、あなた方がおっしゃる日銀法二十五条に照らしてすべて正当であったとお考えなのかどうなのか。さらにまた、日銀のいわゆる特融の四原則、その中の一つであるシステミックリスクが顕在化するおそれがある。こういう規定に照らしてもこれは問題なしと言えないではないかと思います。  総裁、こういう次々とパターンが変わっての特融をどのようにお考えになっているか、お伺いします。
  175. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいまの御質問の出資の方でございますが、ただいま御説明をいたしました日銀法二十五条の貸出残高の五月末の計数は三千四百五十億でございますが、そのほかに、二十五条に基づきまして新金融安定化基金向けの資金拠出が一千億円、また、整理回収銀行向け出資が二百億円、これを合計いたしまして、二十五条に基づきます資金供与全体の合計は、四千六百五十億円になっているところでございます。御質問の中で、阪和銀行関係の百億円と、それから日債銀に対します八百億円は、これは新金融安定化基金向けの一千億円の資金拠出の中から支出をされたものでございます。こういうことでございますが、これらの日銀金融システム安定化を図りますための資金供給につきまして、日銀といたしましての資金供与の原則を四つ掲げてございます。  その四つは、まず、日銀資金供与を行わない場合には金融システムに混乱を生ずるリスクがあるということ。それから第二には、日銀以外に資金供給ができる者が存在をしないということ。そういう条件がございますときに、そういう事態を招きましたこの責任者という者の責任がきちんと追及をされるということと、それから日銀自体の経理の健全性に支障を生じさせないという、この条件を考えまして、それぞれの案件ごとに判定をいたしまして、これに適合すると考えられたものにいわゆる特融を行っているところでございます。
  176. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日銀特融の法的根拠というのは、今も二十五条というふうにお話がありました。この問題については、いろいろな議論が行われております。  現行日銀法には、明確な特融についての規定はないんだと。二十五条と言われるが、それは、戦争遂行のために政府が必要と判断した場合には、信用制度の保持育成のためならば何でもできる道を開いたものだと、こういう解釈があるということも紹介されております。二十五条を根拠としての特融ということができるというふうに見た場合でも、資本参加や資金拠出も二十五条で可能だという議論はこれは意図的な拡大解釈と見なければならないと、あした参考人として出席していただいて意見をお伺いする田尻嗣夫さんは、この「中央銀行」という本で書いておられます。  私は、こういう議論があることも念頭に置いて、個別に戦後のこれらの特融を見ていただきたいと思います。そして、例えば具体的な問題で見た場合でも、日債銀に対する出資は、これまでと違って破綻銀行を引き継いだ銀行に対するものではなく、まさに破綻した銀行に対する直接の出資だという点であります。これは、四原則の第三の基準である、破綻銀行の経営者の責任が十分追及されることという条件に照らしても問題があるんじゃないかというふうに思いますが、そうではないとおっしゃるんでしょうか。
  177. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 第一に、この日債銀の現状についての判断でございますけれども、日債銀の経理内容につきましては、最近の大蔵省の検査も含めまして、日債銀自身、公認会計士、監査法人の了解も得て公表しております資料によりましても、現状で債務超過に陥っているわけではございません。  これは必要なリストラを厳格に実施し、かつまた必要な自己資本の充実ができ、そして今のリストラということの中には、海外部門からの一斉撤退でありますとか、内部の本店、支店の建物の売却でございますとか、人員のカット、給与の引き下げというような非常に厳しい措置を含んでいるわけでございますけれども、そういう真剣な自主的な努力をいたしますれば再建が可能であるという判断のもとに、同行の経営再建におきまして、民間金融機関からの出資によって調達し切れない必要な資本を新金融安定化基金から供与することに決めたものでございます。  この新金融安定化基金自体は、我が国金融システムの安定化及び内外からの信頼性確保に資するということを目的といたしまして、金融機関の資本的基盤の構築のための事業を行うという機構でございまして、こういう件への出資はその目的趣旨に沿ったものであると考えております。  なお、経営責任等の問題についてでございますけれども、一部株主の点につきましては、今回の新しい資本参加等によりまして、株主においてそれぞれこれを引き受けるということは、必要な追加の協力を行うという点で姿勢を明らかにしたものであると思います。また、現在の経営者等におきましては、適切な時期に責任につきましては明らかにされるというふうに考えております。
  178. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日銀独特の日債銀弁護論だと思います。日債銀が破綻でなくて云々というのは、これはやっぱり一般的な常識に反すると思いますよ。だから特融も必要だったんじゃないかと、そういうふうに私は言わざるを得ません。これはここで議論をすることはさておいて、次に進みます。  新しい法案での日債銀の規定にかかわる問題になりますが、今度の法案では金融機関の破綻処理に対する日銀資金を投入することについて、資金投入の形態や対象に何ら公的歯どめを設けておらず、資金の貸し付けその他の業務ができるとされており、これは現行法と同様の規定ぶりで、その業務の内容について何の限定もされていなければ、引き続き限定なしに資金投入をやれるということになると思いますが、この点はいかがですか。
  179. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもが信用秩序の維持に資するための資金供与を行います場合には、いわゆる先ほど申し上げました四原則に照らしまして、個々の事例について本当に必要不可欠と判断される金額に限って資金供与を行うということにいたしております。  こういった資金供与が今後どんどん拡大していくという事態は考えられないところでございますけれども、一般論として申し上げますと、先ほど申し述べました原則の中で、日本銀行自身の財務の健全性への配慮といったような観点から見てのおのずからの限界もあるものと考えております。また、この日銀の財務のそれでは健全性につきましては、これは日銀の現在、資産、負債全体の規模でありますとか内部留保の状況などを踏まえて総合的に判断をする問題でございまして、ここで信用秩序の維持に資するための資金供与に限界があるかどうか、そういうことについて具体的にお示しをすることは難しゅうございますので、この点は御理解をいただきたいと思います。
  180. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 さっきも紹介しましたこの「中央銀行」という本で田尻さんは、現行日銀法の日銀特融についての一つの弱点として、「特別融資の対象や条件、その限度などに関する具体的な枠組みを全く設定していない。」ことだということを指摘しております。  私は、際限なくなどということは考えられないという答弁でしたけれども、考えられるか考えられないかということではなく、そういう条件というのはやはりきちっと設定しておくべきものではないかと思います。とりわけ、この日銀法案が出される理由の一つとして述べられていましたビッグバンへの条件整備ということとのかかわりでいえば、やはり銀行というのも倒産する時代だということで、これまでの論議を見ても一体二十行のうち何行が残るのかという議論さえ行われてきているものであります。  そういう銀行の倒産ということが、銀行のみならず金融機関の倒産が当然予想されるときに、金融機関が問題を起こしてそういう必要が出たときには最後の貸し手としての供給を行うんだということだけでそういうことがきちっとしていなければ、やはり問題が残ると思います。明確な歯どめを規定しておくべきではないのか、これは今度は大蔵省の側から、なぜそういうことはやらないのか、お伺いしておきましょう。
  181. 山口公生

    政府委員山口公生君) この三十八条の新しい規定は、信用秩序の維持、それに資するための業務に関するものでございます。仮に信用不安というものが起きるとしますと、そのあり方というものは現時点ではなかなか想定できない態様になることも考えておかなければならないと思います。これに対処し得るように、信用秩序維持に資するための業務を包括的な形で規定することが適当ではないかと思います。  ただ、そうした措置の発動に当たりましては、大蔵大臣の要請に応じて日本銀行政策委員会の議決により実施されるわけでございまして、日本銀行の講じる措置が真に必要なものかどうかにつきましても、政策委員会が十分に確認するための手続も用意されているということを御理解いただきたいと思います。
  182. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その政策委員会が判断するときにもやはり法的なきちっとした基準が必要でないかというのが私が言いたかった点であります。  次に、お伺いしたいんですが、新日銀法は、日銀特融の主語が現行の「日本銀行ハ」できるから「大蔵大臣は、」できると、こういうふうに主語が変わっておりますね。これはどういうわけでこういうふうに変わったのか。日銀特融についての責任の主体がどこになるかという問題ともかかわってくると思いますので、お答え願います。これは大蔵省。
  183. 山口公生

    政府委員山口公生君) これは、御指摘のとおり「大蔵大臣は、」というのが主語になっておりますが、これは信用秩序の維持の最終的な責任は大蔵大臣という考え方が根底にあるわけでございます。したがって、大蔵大臣が日本銀行に対し、すなわち政策委員会に対して要請をする、その要請に対して日本銀行判断して必要な業務を行うことができるという形にさせていただきました。最終的な責任が、信用秩序維持に関しては大蔵大臣にあるということを明確にしたわけでございます。
  184. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、法律の上では、現行法は日本銀行が考えて大蔵大臣の認可を得てやった場合もあるわけですけれども、今後は日銀の発想からの日銀特融はなくて大蔵大臣の側から提起したもののみがある、こういうふうに考えていいだろうと思います。  そこで、今度はそれと関連する問題ですが、大蔵大臣の要請は法解釈としては日銀が断ることができるかどうか、これは法解釈ですからやはり大蔵省にお伺いいたします。
  185. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、御紹介しました三十八条をお読みいただきますと、法的には日本銀行が大蔵大臣の要請を拒否するということも可能になっております。現実問題としてどうするかという話はまた別でございますが、法解釈としてはそうでございます。
  186. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、法律上は拒否できる、そういう要請を受けて日銀はどういう態度をとるのか、これまでの論議を速記録で読んでみますと拒否することはないというような考え方で答弁なさっているような印象を私は受けます。総裁お答え願います。
  187. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもは、こういう資金供与を行うに当たりまして、これまでも日銀資金供与が不可欠である、システミックリスクを起こすおそれがあるという場合に限って資金供与を行ってきたところでありますけれども、これまでの供与に当たりましては日本銀行政府との間で密接な連絡を通じて十分な意思疎通を図りました上でそのような措置を講じてきたわけでございます。  今回の法改正案におきましても、決済システムの円滑、安定的な運行を通じて金融システムの安定に寄与するということは日本銀行自身の目的の一つであるということになっております。日銀といたしましては、これまで同様、この業務につきましては政府とも密接な連絡をとり合いながらそうした目的達成のために対応に誤りなきを期してまいりたい、そういうふうに考えております。
  188. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 対応に誤りがあっちゃ困るわけで、それはもうわかり切ったことですが、つまり今のあれはやはり政府から言ってくれば断らないということですか。私、それだけを聞いているんです。というのは、なぜそういうことを聞くかといえば、法律日銀特融の最終責任は要請した大蔵大臣にあるのか、法律上断れるのに断らなかった日銀にあるのかという問題は、やはりはっきりさせておかなきゃならない問題だからそういうふうに言っているわけですよ。  もう時間が来ましたからここで終わりにいたしますけれども、私は日銀特融というのが戦後、二年ほど前から再開されて、それがいろいろなパターンを持って広がっていると。これのあり方をめぐっていろいろな議論があるときにやはりだれが読んでも法律上わかる明確な基準が設けられると思っていましたが、それも設けられない。しかも、銀行は倒産する時代だという時代にこういう形のままの日銀の特融というのがいろいろな形で続けられるということは、やはり護送船団方式は少しも変わらないのだなというふうに言わざるを得ません。  護送船団方式というのは、日銀特融と一体だったという指摘もあるほどの問題で、その護送船団方式を改めるんだといえばこの日銀特融のあり方についてもそういうことが必要ではなかったかというふうに言わざるを得ません。  論議はきようで終わりということではありませんから、引き続いてまたこの問題も含めて論議させていただくことにして、時間が来ましたので、終わります。
  189. 山口哲夫

    山口哲夫君 きょうは、日銀から民間金融機関に対する天下りの問題について取り上げてみたいと思います。  日銀というのは各銀行を考査する、そういう立場にありますけれども、その考査される側に日銀から天下りをするということは、これはいろいろと誤解を招く点が非常に多いと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  190. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 日銀の役職員の民間への再就職についてでございますけれども、これまでも個人の識見、能力を期待して金融機関等が人材を求めてこられた場合に限りまして、世間からいたずらに批判を招くことのないように慎重に対応してまいったところでございます。  新法におきましては、政策委員会において私企業からの隔離などに関する服務の準則を定めることとされておりますが、役職員の民間金融機関への再就職につきましては、これまで以上に慎重な対応が求められているものと認識をしております。日本銀行といたしましては、そうした立法の趣旨を踏まえまして、再就職に関する内部ルールを制定すべく具体的に検討をしてまいりたいと考えております。
  191. 山口哲夫

    山口哲夫君 今、民間金融機関からの要請を受けて出しているというお話がありましたけれども、私は必ずしもそうではないだろうと思います。  私は、地方行政委員会にずっと長くおりましたけれども、いわゆる政府から地方自治体に対する天下りという問題について質問をいたしますと必ず同じ答えです、要請を受けてやっておりますと。しかし、自治体側でいろいろと調べてみますと、そうではありません。大体ポストがもう決まっておりまして、ここのポストは自治省から、ここのポストは農林省からということで、決して要請で出しているんではない。最初はそういうことがあったかもしれないけれども、一つの慣例になってしまっている。私は、恐らく民間銀行に対する天下りについてもそういうきれいごとでは済まされない面があると思います。調べてみますと、九四年現在で日銀から五百人も金融機関に役職員が天下っているという数字を見まして、実は驚きました。  それで、地銀の関係者の話を総合してみますと、こういうことを言っております。大変興味深いお話ですが、一つには日銀貸し出しや考査で有利に扱ってもらえる、二つ目には経営が破綻したときの保険になるんだと、三つ目には専門知識や人脈に加え、日銀を通じた情報を得られる。受ける方は自分たちの仕事に有利なようにということで来てもらっているんじゃないかなと思いますけれども、しかし、これでは日本金融界というのは政府とか日銀に管理をされているんだなという、そういう誤解を私は招くんではないだろうかと思いますけれども、そういう誤解を招くことについてどうお考えでしょうか。
  192. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 先ほど申し上げましたように、私どもとしましては、民間金融機関との間の関係という点から申しまして、私ども自体に対する民間金融機関の信認というものに不都合が生ずることは非常に避けなければならないことであると思っております。  そういう点におきまして、この再就職の話につきましても、これまでも私どものいろいろの業務を背景として再就職の問題についての何らかいろいろの圧力があるのではないかというような受け取られ方をしませんように、よく慎重な取り扱いというものに配慮をしてまいったつもりでおりますけれども、今申し上げましたことは、今回の法案の規定にもかんがみまして、この際そういう点で、内部ルールでございますけれども、一般に御理解をいただけるようにしっかりしたものを制定してまいりたいと思っているところでございます。
  193. 山口哲夫

    山口哲夫君 ある地銀の幹部はこういうふうにも言っております。内部昇進の頭取の方が組織の士気を高め、優秀な人材確保に有利だとわかっていても、長年の慣行を断ち切るのは容易ではない。こういう言葉を聞いてみますと、できれば日銀から頭取に来てもらいたくはないんだというふうにも受け取れます。  なるほど調べてみますと、千葉銀行の頭取、今玉置さんとおっしゃるんですか、何か日銀頭取の四代目だと、こんなふうにも出ておりました。一つの銀行で四代にわたって日銀の出身者が頭取を占める、こういうことですから、そこの恐らく銀行の職員にしてみたら、これはもう一生懸命頑張っても頭取にはなれない、だから組織の士気を高めるということからいえば、この言葉というのは、私は当たっていると思うわけです。  日銀政府からの独立性の強化は大変いいことですけれども日銀の役職員が民間に天下りをするということは地方の民間金融機関の独立性を日銀そのものが侵しているんではないだろうかと、こういうふうにも受けとめられますけれども、いかがでしょうか。
  194. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私といたしましては、この再就職につきましては、むしろ日銀の出身者がその地位につくことによりまして各地の金融問題の対応に対して役に立つ、また組織自体の役にも立っていくということを、そういうふうな形の再就職を考えてまいりたいというふうに思っております。その場合にどういうふうな再就職に対する新しい考え方と申しますか、ルールをつくることが適切かという点は、私の方でも十分これ検討をいたしたいと思っております。
  195. 山口哲夫

    山口哲夫君 元日銀キャリアの職員で、現在経営コンサルタントをなさっている石井正幸さんという方がこんなことを言っております用地銀の頭取になっても忠誠心は日銀の方を向いている。自分の後任に日銀出身者をつけることで現役やOBの中で評価を上げたいという思いが強いからだと。  ここまでもし本当だとすれば、昔、国鉄一家という言葉はよく聞いたことがありますけれども、まさにこれは日銀一家という言葉が出てもおかしくはないなと思います。そういう雰囲気というか、日銀一家なんということが言われるようなものがあるんでしょうか。
  196. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私自身は、この今の例えば日銀一家的な考え方で地方銀行の人事が決まっていくということではない、そういうふうな考え方に今全体の空気もまた変わりつつあるのではないかという感じもいたしております。  ただいまちょっとお話が出ました千葉銀行の頭取は日銀出身者でございましたが、今回、生え抜きの方に後を譲って退任をするということを聞いております。
  197. 山口哲夫

    山口哲夫君 天下る方は、これは人事の新陳代謝が図れるんですね。そういう考え方というのは私は多分にあると思いますよ。適当なところへ行ったらやめていただいて、そうするとその行き先は民間銀行だということがあるのではないかなと思います。恐らく日銀にしても退職される後の再就職まで面倒を見てやっているという、そういう気持ちは私はぬぐい去れないと思うんです。  しかし、受ける方からいえば、さっき一番最初に申し上げたように、必ずしもきれいごとではない不純な面があるんじゃないだろうか。日銀と結びついていれば何か利益がもたらされるんだという、そういう不純な面がどうしても私はそこにはあるだろうと。そういう癒着が、結局国民から見ると思わしくないような事件にも発展しかねないものだというふうに私は思うんです。  そういう点からいくと、私はこういう天下りはやめるべきだろうと思います。しかし、いきなりやめろといってもなかなか大変でしょう。総裁は先ほど来、何らかの形を、誤解を招かないように考えてみたいとおっしゃるんですけれども、具体的に今どんなことをお考えでしょうか。
  198. 松下康雄

    参考人松下康雄君) その前にちょっと申し上げますけれども、この今のような受け側の空気というのも実際におきましてはだんだんと変わっていくものではないかと思いますのは、さっきのお話の中で日銀貸し出しの話がちょっと出ましたけれども、先ほどお答えを申しましたように、金融調節のために貸し出しを手段として用いるということは昨年以来もうやめているわけでございます。金融調節はマーケットでの操作を主として行ってまいる、そのようにやっぱり社会全体の流れというものは大きい目で見れば変わってまいるものでございますから、何らかの時期にこうあつた、それがいつまでも同じ感じで残るというものではないと思います。  そういう点を考慮に入れながら、私どもは、しかしながら、この日銀で養成をいたしまして、それぞれ立派な技能なり知識なりというものを身につけた人材を、仮にそういうものとして受けとっていただいて、それがその能力をこの後でなお金融界のために生かしていけるならそれは非常にいいことだというふうにも思いますので、その両方の要素を考えまして、これからの持っていき方を考えてみたいと思っております。
  199. 山口哲夫

    山口哲夫君 国家公務員の場合には、前にも出ておりましたけれども、天下る場合には人事院の許可が必要だという制度もあります。それからもう一つは、今まで関係していた行政に関係する業界に天下る場合には、退職後二年間以上でなければならないという規定があります。  それで、私は二年間では果たしてどうかなという疑問はありますけれども、少なくともそういう何らかの基準というものを決めておかなければ、これはやはりどんなにきれいごとを言っても誤解を招くことは間違いないだろうと思うんですけれども、具体的に何かお考えがあったら聞かせていただきたいと思います。
  200. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 国家公務員につきましての御指摘でございますけれども、やはり国家公務員は法令に基づきまして行政の権限を与えられてこれを行使する立場でございますから、やはりそういう点から申しましても、何らかこの行政の権限行使というものを適正に行っていくための法令あるいは制度的な措置が必要という点があろうと思います。  日本銀行におきましては、そういうことは性格上はございませんで、やっておりますことも市中の金融機関との市場におけるあるいは相対の取引というようなものの積み重ねでございますから、ややそのあたりには再就職につきましての考え方も差があってもいいのかという気はいたしますが、ただ、もちろんこれは日本銀行といたしまして市中銀行に対して考査を行うその他のいろいろの立場がございますから、その両方をあわせて私どもとしては適正なやり方というものを工夫をしてまいりたいと思っております。
  201. 山口哲夫

    山口哲夫君 どうか誤解を招かないような制度というものを総裁みずからひとつ発議をしていただいて、政策委員会の中でも十分ひとつ御論議をいただきたい、そのことをお願いしておきたいと思います。  天下り問題はこのくらいにいたしまして、次に議事録の提出の問題でございますけれども法律が通った後の問題はちょっとその次にいたしまして、今回の日銀法の改正に当たりまして、日銀の独立性と金融政策の透明性を実現するためにも、本来であればこの審議に入る前に橋本総理の私的諮問機関であります中央銀行研究会あるいは金融制度調査会日銀法改正委員会の議論の経過を私どもは本来やっぱり知っておきたかったと思うんです。どういう議論がそういう関係者においてなされたかということを十分把握した上でこの日銀法の全面改正の審議に入るべきだったと思うんですけれども、残念ながらこれが提出されておりませんでした。  できれば私は、最後もう一、二回あるんでしょうから、これからでも出せるものであれば出していただきたいものだなと思いますけれども、これはどうしても出せないでしょうか。
  202. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金融制度調査会や中銀研の議事の模様でございますが、一昨年九月の閣議決定を踏まえまして、審議会における審議の透明性の確保という観点から、審議の様子やプロセスを国民に知ってもらう、こういうことが大切だという意識は持っております。したがいまして、審議会終了後に記者に詳しくその模様をお話ししておりますが、しかもこれ事務方の私どもがやるのではなくて、座長である金制の場合は館先生みずからがおやりになりまして、記者からもいろいろな質問がありまして、その都度翌日の新聞にもかなりの膨大な情報が出されております。  そういったことで、かなり金制の議論の中身というものはディスクローズされておりますが、議事録全体を出すということになりますと、これは各委員の先生方はかなり自由闊達な、また時とすればあえて議論を起こすという御発言もあるかもしれません。それぞれの先生方のプライバシーにかかわる問題でもありますし、その点については少し慎重に考えるべきものかなと思っておりますけれども、いずれにせよ、金融制度調査会や中銀研の各委員の先生方がお決めいただく話でございまして、事務方の私どもとしてちょっと今の段階で申し上げるのはできないということを御理解いただきたいと思います。
  203. 山口哲夫

    山口哲夫君 地方分権推進委員会というのがありますね。ここは終わりますと事務方の方からニュースが流れてくるんですよ。こういう意見がありましたというほとんど大体の意見が流れできます。たしか名前は出ておりません、どんな先生がどんなことをしゃべったかというのは載っていませんけれども、ほとんどわかるようなものが出てくるんです。これは事務方で出しているんですがね。  ですから、私はこういう金融制度調査会等についても、これはやはりそういう諮問機関の先生方にこの程度のものは透明性からいっても出しておくべきだと思いますよということで御了解いただいて出すべきでないかと思いますけれども、どうですか。
  204. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金融制度調査会等におきましても、毎回の会合の後には議事概要というものを、ほぼ先生方が座長に一任されまして議事概要というものを記者クラブで配っております。  したがいまして、私どもとしても議事概要そのものはオープンにしております。先ほどお尋ねの議事録全体というお話でございましたので、そういうお答えをさせていただいたわけでございます。
  205. 山口哲夫

    山口哲夫君 我々には来ていない。記者会見で出しているから、あとは新聞を読みなさいと言われればそれまでかなと思いますけれども、しかしせっかく関係している大蔵委員会なんですから、そのくらいの親切さがあってもいいんじゃないですか。
  206. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘がございましたので、早速これまでの議事概要をそろえて提出させていただきたいというふうに思います。  ただ、中銀研については私どもは事務方をやっておりませんので、金制の小委員会について出させていただきます。
  207. 山口哲夫

    山口哲夫君 法第二十条、「議長は、金融調節事項を議事とする会議の終了後、速やかに、委員会の定めるところにより、当該会議の議事の概要を記載した書類を作成し、」これを会議にかけて「これを公表しなければならない。」と。  要するに、これからは政策委員会等で審議した内容についてはその概要だけは速やかに出せというふうに法律で決まっていますけれども、何日以内に今度は出してくれるんでしょうか、日銀の方ですね。
  208. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この議事要旨につきましては、早期の公表についてこれまで私ども内部で検討いたしておりますが、現段階ではまだ具体的な結論が出ているわけではございません。どういう点を念頭に置いて検討しているかということを申し上げますと、まず議事要旨につきましては、市場の安定を損なわない範囲で速やかに公開をすることが適当であると考えております。  それはどういうことかと申しますと、速やかな公開によりまして、政策運営の基本的な考え方に関しまして国民や市場理解を得るように努めるということは当然重要なことでございますが、その一方で、議事要旨にその後の会合におきますいろいろな議論を先取りしたような内容が含まれております場合には、このことが市場に無用な憶測を招きまして相場形成を混乱させるおそれがあるということも考慮する必要があるところでございます。  このために、米国でもFOMC、公開市場委員会の議事要旨は会議開催の一カ月ないし一カ月半後に公表するといった工夫が講じられておりますし、また今般発表されましたイギリスの中央銀行改革におきましても、ただいま申し上げました点にイギリス側で配慮をいたしまして、議事要旨は会合後六週間以内の発表とするというふうに考えているところだと言われております。こういった海外の事例も参考にしながら、検討いたしてまいりたいと思っております。
  209. 山口哲夫

    山口哲夫君 直接市場に大きな影響を与えるような、例えば公定歩合を何%にするとか、そういう議論をすぐに、翌日にでも発表しなさいということにはならないと思うんですが、しかし大体そういうものというのは政策委員会で決定すると同時に次の日あたりには実施に移されるんじゃないかなというふうに思うんですが、そういう点ではそれほど市場を混乱させるようなことというものは余りないんじゃないかと思うんです。  ですから、そういう意味では一カ月とか二カ月とかというお話もちょっとありましたけれども、速やかにというのはそういう意思だと思うので、できるだけひとつ早く、総裁御自身がその日程を早く決めて、それで政策委員会で、何か前に聞きますと政策委員会の意向も聞きたいというけれども総裁はこの法律でも日銀を代表する方でございますから、みずからそういう透明性を考えれば、本当に早く出さなきゃならないということを政策委員会の方にも申し出をしまして、できるだけ速やかに公表できるように、それが私は今回の改正の透明性にもつながると思いますので、どうかひとつそのことをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  210. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま申し述べましたことも、またそれから委員のただいまの御指摘も参考にしながら、これから私どもで検討いたしてまいりたいと思います。
  211. 山口哲夫

    山口哲夫君 終わります。
  212. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五分散会