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1997-03-27 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月二十七日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     松前 達郎君  三月二十五日     辞任         補欠選任      松前 達郎君     千葉 景子君  三月二十七日     辞任         補欠選任      千葉 景子君     藁科 滿治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 小島 慶三君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 片山虎之助君                 清水 達雄君                 嶋崎  均君                 楢崎 泰昌君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 益田 洋介君                 志苫  裕君                 千葉 景子君                 藁科 滿治君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        防衛庁経理局長  佐藤  謙君        大蔵政務次官   西田 吉宏君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵大臣官房審        議官       尾原 榮夫君        大蔵省主計局次        長        林  正和君        大蔵省主計局次        長        溝口善兵衛君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        国税庁次長    堀田 隆夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        防衛施設庁施設        部施設取得第二        課長       米岡 修一君        防衛施設庁労務        部労務厚生課長  加藤  双君        経済企画庁調査        局内国調査第一        課長       古川  彰君        自治省財政局財        政課長      瀧野 欣彌君     参考人        国民金融公庫総        裁        尾崎  護君        日本開発銀行総        裁        吉野 良彦君        日本輸出入銀行        総裁       保田  博君     —————————————   本日の会議に付した案件中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加  盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○平成九年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付)、平成九年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成九年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)について  (大蔵省所管国民金融公庫日本開発銀行及  び日本輸出入銀行)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 河本英典

    河本英典君 自民党の河本でございます。  きょうは、中東開銀加盟措置法及び世銀IDA加盟措置に関します法律質疑をさせていただきます。  先般の大蔵委員会なり予算委員会なりで、財政が非常に厳しいということがたびたび言われておるわけでございますけれども、その財政の厳しい中でこうして海外お金を出すということの意義というのをここできっちりしなきゃいけないということを最初に思うわけでございます。おつき合いということもございますし、それから海外への援助ということもあるわけでございますけれども、特に今度新しく出資するということで中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟ということで、これは新しく取り組むものでありますけれども、まずは我が国財政事情の厳しい中、国際機関支援していくことの意義を伺いたいと思いますし、国民にわかりやすい説明をするためにもお話をいろいろ聞きたいというふうに思うわけでございます。そこから、まずお聞きしたいと思います。
  4. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 国際開発金融機関への支援は、我が国にとっても次のような大きな意義を有するというふうに思っております。  世銀を初めとする国際開発金融機関は、貧困削減環境問題あるいは人口問題といった国際社会共通課題について重要な役割を担っているわけでございます。我が国でも、戦後の復興のプロセスで例えば新幹線について世銀融資を受けたというようなことがございます。ですから、私どもとしても、日本が成長するにつれて国際社会での応分の役割を担って国際社会全体の発展に尽くしていくということが非常に必要ではないかというふうに思っておる次第でございます。  また、例えば世界銀行というのは七千人の専門家を抱えているわけでございまして、私どもいろいろ努力はしておりますけれども世界のすべての地域について専門家をそれほど多数抱えておりませんので、世界銀行等開発金融機関専門家、あるいはそのエキスパーティスト、そういう者を有効に利用するということもまた非常に重要なことではないかというふうに思っているわけでございます。  また、我が国企業もこういう国際開発金融機関融資協調融資をしたり、いろんな形でそういうところに参加しておりますので、我が国企業にとってもかなりメリットが大きいということでございます。  ただ、各国際開発金融機関ともその資金の効率的な運用、あるいはその組織の見直しというのには積極的に取り組んでおるわけでございますので、今後とももちろん二国間援助というのもそれなり役割があるわけでございますけれども、こういう開発金融機関を通じた国際社会への貢献というのも極めて重要なものだというふうに思っておる次第でございます。
  5. 河本英典

    河本英典君 今お話しございました新幹線も当初借りたということを、私はそのころ高校生ぐらいだったんですけれども世界銀行存在というのを初めて知ったのは、新幹線でそういうお金が出たということを聞いておりまして、世界銀行という正式の名前かと思っておりましたらちゃんと長い名前があるわけでございまして、改めて振り返ってみてありがたかったんだなというふうに思っているわけであります。裏返しますと、これからそういったことが、資金が必要な国にそうしたお金を循環させていくということは非常に大事な役割であると思うわけでございます。  今、少しお話出ました二国間で行われる援助ですか、二国間援助と比べてこうした国際機関を通じて行われる援助は、その効果の面でどのように違うのかなというふうに思うのでありますけれども、少しお話を伺いたいと思います。
  6. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 確かに、国際開発金融機関を通じた援助は二国間援助に比べまして日本名前というか日本の顔が直接見えない、そういうことはあるわけでございますけれども、例えば、二国間援助にないようなメリットを持っている。例えば、世界銀行構造調整融資というようなことをやっておりますけれども、その融資をするときにその当該政府特定政策をとれと、あるいは民営化を進めろと、規制の緩和を進めろと、そういうようなリコメンデーションをするわけでございますけれども、二国間ではなかなかこれはやりにくい、内政干渉というようなことになってやりにくいというようなことがございますけれども国際開発金融機関の場合にはそういうことが比較的やりやすいということで、その政府に対してかなり積極的にいろいろな政策提言をできるというようなメリットがございます。それから、先ほども申し上げましたけれども、これらの機関というのはそれぞれ大変なエキスパーティス、専門知識を有しておるわけでございまして、その専門知識専門家を我々が活用することができるというようなことがございます。  それから、やはり多数の国にまたがる、地域的に広がりのある、そういう支援ができるというようなことで、例えばメコンデルタ地帯というようなところの開発をやろうというような計画がアジア開発銀行中心にありますけれども、そういうことをやる場合には、やはり国際開発金融機関からの援助というのが非常に有効であるということでございます。  ただ、当然のことながら我が国考え方我が国政策、そういうものを国際開発金融機関の運営に生かしていかなきゃいけないということはございますから、それに対して我が国は今までも非常に大きな努力を払っておりますし、今後とも日本政府考え方国際機関政策に反映されますように努力をしたいというふうに思っております。
  7. 河本英典

    河本英典君 触媒機能という言葉が適当かどうか知りませんけれども民間資金を導入してやるということは少しのお金で膨らますことができるということで、まさしく経済活動そのものであると思うわけであります。そうした大変アクティブな資金援助になるというお話でございます。  今、専門知識やネットワークを通じてそういったことが活用できると、国際機関の。先ほど七千人の人材というお話が出ましたけれども、そうした国際機関というのは、一度つくってしまいますと、今行政改革日本で言われておりますように、肥大化してしまいまして組織維持のために逆にむだとか、例えばダム建設などで自然環境を破壊するような行為につながる、環境破壊や住民を移転させて人権問題を起こすような場合も出てくるというようなことも聞いておるんですけれども一つの独立した国際機関でありますので、国のお金を有効に使ってもらうという意味では使っていただけているんでしょうけれども、別のまた問題を引き起こすという危惧もあると思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  8. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 環境問題には特に今世界銀行を初めとする開発金融機関が積極的に取り組んでおりまして、プロジェクトをやるに当たって、環境への影響ということでABCと三つぐらいのカテゴリーに分けまして、環境への影響が大きいと思われるような案件については環境アセスメントというのをして、それに基づいて融資をしているというようなことをやっております。環境あるいは貧困の問題、そういう社会問題に非常に積極的に世界銀行は取り組むようになっておりまして、例えば環境関連NGO等との対話もこのところ非常に積極的にやっているというような実情でございます。  また、先ほど、一度組織ができてしまうとなかなか組織が減らないじゃないかというようなお話もございましたけれども、確かに全体としてはその傾向がございますけれども、特に世界銀行等、今開発金融機関は大変積極的にコストの削減効率化ということに取り組んでおりまして、先ほど私七千人と申しましたけれども、九四年には七千人いたわけでございますけれども、既に今は六百人ほどそこから人員を削減しております。六千四百人強ということに現在なっておりまして、そういう意味で積極的に効率化に取り組んでいるということ。そういうことをしないと、これは日本のみならず各国政府とも非常に財政事情が苦しいということがございますので、そういう中で各国政府支援を得るためには、積極的な効率化あるいは組織改革というのをやらざるを得ないし、それを極めて積極的に進めているというのが現状でございます。
  9. 河本英典

    河本英典君 今、国際機関全般お話をさせていただいておるわけですけれども、今回、中東開銀中東北アフリカ対象にされるわけですけれども世銀があり、第二世銀があり、それからアジア開発銀行があるとか、いろいろ地域開発銀行とのテリトリーといいますか、もちろん設立の当初は明確につくる意味というのははっきりされておるわけですけれども、オーバーラップといいますか、いろいろ役割重複してくるようなおそれもあって、むだなことにはならないかなというようなことも考えられるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  10. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 国際開発金融機関には大体二通りのタイプがございまして、一つは全世界対象とするような国際開発金融機関、これは例えば世界銀行あるいは世界銀行グループと呼ばれております、今度お願いしておりますIDA、第二世銀とか、IFCとか、そういう組織がございます。一方で、特定地域対象としている国際開発金融機関というのがございまして、これは例えばアジア開発銀行あるいはアフリカ開発銀行欧州開発銀行等があるわけでございます。今度の中東アフリカ開銀もこの地域国際開発金融機関一つでございます。  やはり、そういう特定地域対象とする国際開発金融機関は、世界銀行のように全世界対象にするものに比べてその地域ノウハウ、その地域に継続的に支援をしていくという意味それなり存在意義があるというふうに思っております。中東北アフリカ地域については、既にアフリカ開発銀行というものがあるわけでございますけれども、今おっしゃられましたような重複を避けるという意味で、まず中東という地域は今どの地域開発金融機関もカバーしていないということでございますけれども北アフリカについては、確かにアフリカ開発銀行とオーバーラップするというようなことがあるわけでございます。そういうこともありまして、今回の中東開銀については、アフリカ開発銀行がやっておりますような調整融資というようなことは行わないで、主として民間部門対象とした融資を行う、民間インフラというようなことを中心にした業務を行うということで、アフリカ開発銀行業務重複は生じないように、設立に当たって十分議論をし、そういうものとして今後育てていきたいというふうに思っている次第でございます。
  11. 河本英典

    河本英典君 先ほど冒頭申しましたように、大変厳しい財政状況の中で、今回の出資限度といいますのが、中東開銀への出資限度が四百六十八億円、それから世銀増資出資限度額が三十三億協定ドル、それからIDA出資限度二千三百四億円というふうに聞いておるわけですけれども、これは大変大きな金額であります。  そこで、全額払わなければいかぬのだとか、何か部分的に払えばいいという話と、いろいろあるそうでございますけれどもIDAは貧しい国、言うならば危ないところへ貸すからたくさんお金を準備せにゃいかぬと。世銀への出資は少なくて済むとかいうお話を伺っておりますけれども、その辺を少し詳しくお伺いしておきたいと思います。
  12. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 中東開銀につきましては約四百六十八億円、また世界銀行増資につきましては三十三億協定ドル、これは円に直しますと約四千二百八十九億円でございます。  この出資授権をお願いしているわけでございますけれども、実際に私どもが払い込む財政負担は、おのおのの出資限度額に対して、中東開銀についてはほぼその四分の一の百十七億円、世界銀行については六%の二百五十七億円でございます。これは、中東開銀にしても世界銀行にしても、実はマーケット資金を調達する、債券を出してマーケット資金を調達すると。その際の信用というのは非常に重要でございますので、そういうことで、実は授権資本という形でいただいておくということがそういう機関信用につながる、そういうことでございまして、実際に払い込む分はその四分の一あるいは六%ということで非常に少ない財政負担でございますけれども、そういう機関に国として信用を与えるということで、かなり大きな資本授権をいただいているわけでございます。これをベースにして、それぞれの機関民間から資金を調達していると。それで、民間から調達するときには、非常にいい格付、それぞれの政府がそういう形で授権をしておりますので、いい格付をもって低廉な資金を調達できる、こういうことになっているわけでございます。  また、先生からもお話ございましたけれどもIDAにつきましては貧困途上国への無利子融資でございます。利子がゼロで、しかも極めて長期間、三十年、三十五年、四十年というような長期間の融資でございまして、この場合には出資限度額全額を実際に負担するということになっております。ただ、これは我が国欧米諸国も極めて厳しい財政事情というようなことでございますの  で、我々の資金だけではなくて、世銀が今まで持っておる資金を最大限に活用しろということを増資につきましては厳しく指摘したところでございます。そういうことで、今回の増資規模、実は融資全体の規模はほぼ同じものを維持しておるわけでございますけれども世銀グループ自己資金を使うということで増資規模は相当抑制されております。ちなみに、IDAの十回増資というのがございまして、今度は十一回目の増資でございます、IDA11と呼んでおります。IDA10に比べてIDA11は、私どもが出します資本の額は、IDA10のときは四千七百十五億円でございますけれども、今回は二千三百四億円ということで、ほぼ半減しておるということでございまして、こういう努力各国ともIDAあるいは世界銀行に求めておるところでございます。
  13. 河本英典

    河本英典君 そういう意味では、手品と言ったら失礼ですけれども、本当に便利な方法だなというふうに思うわけです。資金需要としては、やはりお金のないIDAからの要求が一番あると思うんですけれども、実際の財政支出の少なくて済む世銀であるとか中東開銀の方へ逆にたくさん出せば負担が少なくていいなというような気もいたしますけれども、その辺はどうなんですか。
  14. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 確かに、民間市場等資金を調達して融資を行っている機関に出すということであれば、より効率的な資金運用ができるわけでございますけれども、ただ、先生も御承知のように、今特にサブサハラ最貧国あるいはアジアの一部の貧困国、そういうところに対してはやはり無利子資金を提供しないと彼らの経済が立ち行かなくなる、こういうことがございますので、最貧国をいかにして救っていくのかというのが世界的に非常に大きな課題になっております。  世界的に、やはり所得格差あるいは資産の格差が非常に拡大をしているというようなこと、実際に飢餓というようなことがアフリカで進行している、こういうことがございますので、やはりIDAのような無利子融資というのも非常に重要なもので、我々としてもそれなり貢献をしていかなければならないというふうに思っております。
  15. 河本英典

    河本英典君 日本国内の金利が大変安いので、為替の問題さえなけりゃ日本はそういう意味でたくさん出してあげたら非常に喜ばれるんじゃないかなというような気もいたしますけれども、今お話しさせていただいたのは全般お話でございます。これから、それぞれの機関について少しお聞きしたいと思います。  まず、中東開銀についてお尋ねしたいと思います。中東開銀の構想は、中東和平交渉の中で具体化されたというふうに伺っておるわけですけれども、その経緯について伺いたいと思うわけであります。
  16. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 中東北アフリカ経済協力開発銀行は、中東北アフリカ地域経済開発貧困削減及びこれを通じた和平促進目的に一九九四年十月の第一回の中東北アフリカ経済サミット、これはカサブランカで開催されましたけれども、そこで設立が提案されたわけでございます。その後、さまざまな交渉経緯を経まして、昨年の八月に設立協定について最終合意がなされたところでございます。  交渉経緯、過程におきましては、どのような金融支援メカニズムをつくるかということでさまざまな議論がございました。特に、ヨーロッパ系諸国はむしろ譲渡的資金、つまり無利子資金をこういうところに提供するようなそういう機関をつくった方がいいんじゃないかというような意見がございました。ただ、アメリカあるいはロシア日本という国々は、むしろインフラを整備する、あるいは民間部門の育成のために投融資技術支援中心とした方がいいんじゃないかということで、最終的にアメリカあるいは日本意見が通りまして、むしろ投融資技術支援を行う開発金融機関設立しようということで合意がなされたものでございます。  我が国としては、同銀行目的地域開発金融機関を通じた開発支援中東和平促進という我が国の基本的な考え方に合致するものでございますから、これに対して積極的な対応を行い、米国に次ぐ第二位の出資国出資シェアは九・五%でございますけれども、第二位の出資国になるということを目指しておるわけでございます。.
  17. 河本英典

    河本英典君 これも単純に考えますと、一番我が国から遠い中東北アフリカに、米国世界アメリカでございますのでちょっと意味合いが違うと思いますけれども我が国が第二位の出資国になるというのは何となく奇妙なというふうに受け取ったんですけれども植民地関係があってフランスであるとかヨーロッパ諸国、それから向こうの方の国々がもう少し出してもええやないかなという気もしたんですけれども我が国が非常に遠い中東北アフリカ開銀に割と中心的な存在になるという意義というのは、どの辺にあるんでしょうか。
  18. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先生承知のように、この地域は古い歴史があるわけでございまして、ヨーロッパ、特にアメリカロシア等がいろんな形でこの地域に関与してきたところ、政治的にも非常に歴史上問題になった地域でございます。  先生御指摘のように、伝統的には我が国はこの地域余り足がかりを持っていなかったということでございますけれども、むしろ足がかりを持っていなかっただけに、こういう国際機関を通じて中東北アフリカ支援にかかわれるというのは我が国にとって大変プラスではないかというふうに考えておるわけでございます。  ヨーロッパにせよアメリカにせよ、歴史的な経緯もございますから、大変なノウハウ、大変な人脈というのを持っているわけでございますけれども、それに比べて我々は若干そういうものについて欧米におくれているところがあるということでございますから、そういう意味でこういう国際機関を通じてこういう地域とかかわっていくということは大変我が国にとっては有意義なことではないかと。  特に、こういう国際開発金融機関出資額に応じて発言権を持てるということでございまして、国連等は一国一票でございますけれども、こういう開発金融機関出資額に応じた発言権、投票権を持っているわけでございますから、この中東開銀の運営については我が国は九・五%の投票権を持つということになるわけでございまして、そういう意味で、今後この地域我が国にとっても例えば資源等で非常に重要な地域でございますので、積極的にかかわっていくためには今までの歴史経緯等をかんがみますと、こういう国際機関を通じてかかわっていくということは大変有効であろう、そのように考えている次第でございます。
  19. 河本英典

    河本英典君 経済的な意味で、そういうかかわりを持っていくということは非常に大事なことだと思うわけでございますけれども、まさしく経済大国日本そのものでありますけれども、政治的に非常に、中近東の石油のところとちょっと違いまして、中東北アフリカというのは日本からいいますと一番政治的には遠いところだと思うんですけれども、せっかくこうしてお金を出すんですから政治的な発言なり政治的なつながりというのを強めていただきたいなというふうに思うわけですけれども、その辺を少し大蔵大臣からお聞かせいただきたいと思います。  これは、外交的な問題も含めまして、大いにその発言権を増すようなスタンスをとるということが、別に金を出したから威張るということじゃないんですけれども、せっかく出しますので政治的なつながりというのをつくるということは大変大事じゃないか、いいタイミングじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  20. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 今、河本先生と国金局長質疑応答の中で具体的な項目は御承知をいただいたものと考えます。  議員から御指摘を受けております、財政極めて困難な折あえてここに税金を投入するということはいかん、国益との関連でいかんと、そういう問題であろうと思っております。具体的な面において局長から、今ここにアプローチをしていきますことが国益につながってまいると。それともう一つは、極めて貧しい国々でございます。そういう中で中東のあり方、アフリカのあり方を考えますときに、冷戦時代はまさに代理戦争で深刻な争い、戦争の行われたところであります。特に中東は、サミットの会議におきまして、外務大臣だけでやります政治会談の中では、常に中東、東欧が実は地域紛争の基本的な命題でございました。中東は長い歴史の中でイスラム圏、そうして興亡を続けた地域であります。そういう中で宗主国がそれぞれあります中で利害の衝突のあるところでございますが、中東が安定することが世界平和への大変大事なポイントではないのかという共通認識があります。  それと、油ごい外交という言葉で象徴された一時期、油が欲しいからそっちに援助するのかねと、こういうストレートなこともございました。そういう中で、全くそれはなしとしない、友好関係を確立しておりますことがエネルギー源を確保する国益にかなうものでありますから、あからさまな形でない形の外交また援助の体系をとりながら我が国が対応してきたことは事実であります。  今回の問題を特別だとは申し上げませんが、極めて入りやすい形の中で中東及びアフリカにアプローチしていく、それも発言権がキープされる組織の中でございますから、精いっぱいの努力をしていくと。しかし、さはさりながら各国とも財政窮乏で、国際機関の出資金等については深刻な国会の議論がございます。そういう中で最小にして最大、しかしながら国の風格に合った、経済力に合ったぎりぎりいっぱいのところを考えながらとり進めてまいると。  こういうことで、覇権を求めない平和国家である我が国が、経済的手段、その根底に人道的また地域平和、安定ということで考えますと、我が国の立場というものは大変大事でありますし、何の因縁もないシルクロードでつながっておった中東でありますから、そういう点で戦後中東とのかかわり合いがエネルギーで出てまいりました。そういうことの中で、請われてやるということでスタートをしたことが今度は積極的な形の中で全力を尽くす、これも国会の皆様、議員各位の審議の御決定の中でそれをスタートさせていただく。  これだけの議論が出ておるわけでありますから、有効適切に大事な税金が目的どおりこのことが生かされていく、我が国の今後の展望に確かなベースがそこででき上がっていくということにしていかなければならぬ、こんなふうに思っておるところでございます。
  21. 河本英典

    河本英典君 今、大蔵大臣からお話いただきましたけれども、国際紛争の種というのは一つ貧困ということでありますので、そこへお金を入れて還流させるということは非常にいいことだと思います。また、先ほども申しました環境問題にも配慮していただきたい。これは地球環境が今大変大きなテーマになっておるわけでございますし、そういった意味でも国の経済活動ということ以上に、国の外交それから国際政治の方で大きく連動して、そういったことをお願いしたいなというふうに思うわけでございます。  それでは次に、伺うところによりますと、最大出資国であるアメリカの方の中東開銀加盟のための国内手続が少しおくれているというわけじゃないでしょうけれども、ちょっと日本と少し国の決算の時期が違うからなのか知りませんけれども、そういったことでずれがあるそうですけれども、そこも少し伺っておきたいと思います。
  22. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) アメリカは昨年の十一月に協定に既に署名をしております。協定の署名に当たっては、これは議会の承認を得ているということでございますから、設立そのものということについては議会の承認を得て既に署名をしているという状況でございます。  ただ、同国の出資に必要な予算は九八年度の予算案に計上されております。九八年度の予算案に国務省所管の二国間援助予算の一部として五千三百万ドルが計上されているわけでございますけれども、御承知のように、アメリカの会計年度は十月一日から九月三十日でございますので、九八年度予算の恐らく最終的な審議はことしの八月あるいは九月に行われるということでございますので、予算年度のずれということで私どもより六カ月程度出資についてはアメリカの議会の承認がおくれる、おくれるということではございませんけれども、若干日本と比べて遅くなるということでございます。  ただ、クリントン大統領は、二月四日の一般教書演説で、米国国際開発金融機関に積極的にかかわるということの重要性を強調しておりまして、議会に対してクリントン政権は極めて積極的な働きかけを行っていくものというふうに考えられます。
  23. 河本英典

    河本英典君 そうすると、日本も今外務委員会で並行してやっていただいているわけでございますけれども、うまく期日に間に合うようにやらにゃいかぬというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  今までは大体中東開銀について伺いましたけれども、次にもう一つの方でございます第二世銀IDAの法案について少し伺いたいと思います。これも基本的問題でございますけれども世銀増資我が国は、これは特別増資というんですか、特別割り当てというんですか、日本が今回の増資でまたシェアが上がるというふうに聞いておるわけですけれども、それを行う理由というのは、ずっとこれ今までのシェアを資料で見せていただいたら、いろんな事情があって各国のシェアが変わってきているわけでございます。今回の特別増資につきまして、日本がこの特別増資を行う理由というのを、少し明確に伺いたいと思います。
  24. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先ほども申し上げましたように、国際開発金融機関でのその投票権というのは、出資のシェアに応じておるわけでございます。各国際開発金融機関でトップのシェアを持っているのは米国でございますけれども、私どもはほぼ第二位の出資国ということになっておりますけれども、今までの増資前の例えばシェアで申し上げますと米国が一七・三七%、日本が六・一五%ということで米国の三分の一というようなことになっていたわけでございます。  米国日本のGNP、経済力、そういうことを考えますと我が国発言権がもう少し増してもいいのではないか、GNPでいえばほぼその半分というようなことでございますから、そういうことで我が国のその発言権を増すために従来ともに増資ということに関して私どもは積極的に対応してきたところでございます。  それからまた、先ほどお話がございましたけれども世界銀行の場合にはIDA等と違って全額を出資するということでなくて、その一部、六%を実際に現金として出すということで極めて効率的な資金の活用ができるということもございまして、我が国としては米国あるいはヨーロッパ国々がシェアを下げて私どものシェアをふやしてくれ、我々の発言権をふやしてくれ、こういうふうに要望していたところでございまして、今回、日本のシェアが六・一五%から八・一五%に増加することが決定されたわけでございます。  この増加につきましては、当然ほかの国のシェアが減るということでございまして、米国は一七・三七%から一七%へ、それから独仏英等もそれぞれ〇・一%程度のシェアの減というものに応じておるわけでございますので、私どもとしては日本経済力に見合った発言権を確保するために、こうした増資というものは非常に重要なことではないかというふうに考えておる次第でございます。
  25. 河本英典

    河本英典君 先ほどから何度もお話ありますように、一国一票じゃなしに、出資に応じて発言権があるというのはまことにそういった意味では出しがい、やりがいのあることだというふうに思うわけでございます。これは、先ほどから言っておりますように、単なる経済援助という切り口だけじゃなしに、やはりこれを本当に国際政治の場で生かしていただきたいなと。日本は軍事力というものがない国でありますので、金に物を言わせているというわけじゃ決してございませんけれども、しかし大きな発言力であることは確かであります。  お金を出すにいたしましても、やはり最終的に使っていただく国が日本に対して感謝してもらうようにしないと、国際機関に感謝してもらっても日本としては何も意味がないわけでありますので、お金を使ってもらう国に感謝してもらうようにするということがこれからの政治の力、仕事ではないかというふうに思うわけであります。  よく言われますけれども海外の留学生が日本に来ても、特に今アジアが問題になっておりますけれども日本にせっかく留学に来たのに嫌いになって帰るというようなことがよく言われておるわけでありますけれども、せっかくお金を出しても、札束で何かいろんなことを言われたというような印象、そんなつもりはないわけですけれども、そういうような印象でとられましたらせっかくやったことが実らない、意味がないということになりますので、これが一番の趣旨ではなかろうかというふうに思うわけであります。これは、経済援助という切り口だけじゃなしに、本当に政治の舞台で、大いにこのことと連動して我々は国際舞台で発言していかなければならないというふうに思うわけであります。  その辺について大蔵大臣、一言お願いいたします。
  26. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 御指摘、私もかねがね痛感をいたしておるところでございます。  せっかく国費留学または招待留学等がございまして、大きな夢と将来への展望を持って日本に学ぼう、日本で学んでいこうと、こう来られた学生諸君、帰りますと確実にその国の政治、経済政府の場面において枢要な地位についていく諸君が多いわけでございます。せっかくの努力が反日で帰られるということは、大変目的から乖離をいたしまして、是正をしていかなければならぬところでございまして、ハート・ツー・ハートというんでしょうか、アジア人の連帯の中で自分たちの住む地域、国が立派な国になってほしいということでありますから、心して留学生の対策というのを政府を挙げてありとあらゆる角度からやっておるところであります。ただいま、留学生会館、それぞれの国立大学のキャンパスの中に会館をつくる等が徐々に展開をされておる昨今であります。
  27. 河本英典

    河本英典君 人材の話で、ついでにちょっとお話ししておきたいんですけれども、この国際機関の中で職員のシェアといいますか、国別の表が出ておりましたが、ぱっと気がついたら日本が少ないな、インドなんかが割と多いなというような感じがいたしました。それなりの理由はあるんでしょうけれどもお金のシェアと職員のシェアが一緒でないといけないという理由は何もないわけですけれども、人材という意味で、決して日本人の数をふやせというわけじゃございませんけれども、いろんな意味日本のそうした活動の中で、間接的にはそうしたよその国の、特に途上国の職員が働いていただいておるわけですから、その辺も先ほど申しましたお話と連動させて、お金の使い方というのを有効にしていただきたいなというふうに思うわけでございます。  時間がありませんので、最後に局長に一言その辺を含めてお伺いして、終わりたいと思います。
  28. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先生御指摘のとおり、国際機関に働く日本人の数というのは、我々の例えば出資シェアに比べますとかなり少なくなっております。それで、私どももまた国際機関そのものも、日本人職員をふやそうということで大変な努力をしておるところでございます。  ただ、幾つか基本的な問題点がございまして、一つは、まず語学力の問題がございます。インドとかパキスタンというところであれば英語ができるというのは当然のことでございますけれども日本人の場合には専門的な知識を持ちかつ語学力を持つというような人材が総体的に少ないというのが一つのポイントでございます。  それから、もう一つは、我が国の人たちは余り長期にそういうところに行きたがらないということ。このごろの若い方たちは若干変わってきておりますけれども、三年、四年国際機関に勤めたら日本に帰ってきたいというような方が多うございます。ただ、国際機関の職員というのは大体二十年、三十年勤めるケースが多うございまして、なかなか日本人で二十年、三十年国際機関に勤めようというような方が総体的に多くないということでございます。  それから、もう一つは、日本国内の給与が大変よくなってまいりまして、国際機関の職員の給与というのは日本民間に比べるともう大変低い。日本の役人と比べてもほぼとんとんだというぐらいな感じになっておりまして、この給与の低さというのはやっぱりもう一つの原因になっております。私も二十数年前にIMFというところに職員で出向しましたけれども、そのときは給与は非常に高くて、私の月給が五倍ぐらいになったのを記憶しておりますけれども、今やそれが全然逆になってしまったというようなことがございます。  そういう理由はございますけれども我が国としても、せっかくの資金を有効に活用するためにも日本人職員を特に幹部クラスでふやしたいと、こういうふうに思っておりまして、現在も積極的な努力を続けております。ちなみに、最近、これは大蔵省の人ではございません、ずっとアメリカに住んでいた女性でございますけれども、西水美恵子さんという日本人女性が初めて地域担当の副総裁に就任しております。今後とも、そういうアポイントメントが次々出てきますように、私どもとしても世界銀行初め国際機関に積極的に働きかけていきたい、そういうふうに思っております。
  29. 河本英典

    河本英典君 ありがとうございました。
  30. 益田洋介

    ○益田洋介君 法案に関する質問に入る前に、きょうはお忙しいところ大蔵大臣に御出席いただいて、余り答弁を求められていない様子なので、最初に大臣に二、三お伺いをさせていただきます。  まず、三月二十四日、衆議院の税制特別委員会におかれまして、自由民主党のある委員の方からの質問に、薄井政府委員とそれからその政府委員の答弁を補てんするというような形で大蔵大臣が答弁をされておりました。薄井政府委員の答弁の骨子はどういうことかと申しますと、少子・高齢化が進むと予測されるので、勤労世代の給与所得だけに重い税金をかけるのは無理がある、消費に応じて老人が負担することによって子供や孫が楽になるだろう、したがって、中長期的には消費課税は大切にしていかなければならない、こういった趣旨の答弁をされた。  それを受けて大蔵大臣は、消費税の再引き上げの必要性を示唆する発言をされ、そして直間比率の見直しを進める、こうしたことを述べられて、このことを一部の報道機関が、大臣みずからが消費税率の再引き上げの必要性を示唆したものであるというふうに報じたために、翌二十五日、株価が五百円以上急落いたしまして、一万八千円台割れ寸前にまで下げたわけでございます。  日経の平均株価が一万八千円を割るということになりますと、もともと力の弱い、体力の弱い金融機関におきましては保有株の含みはすっ飛んでしまう。したがって、三月末の株価がこの水準を下回ることを恐れて、それを未然に防ぐために当局は、土地の流動化策を打ち出すとかあるいは金融債も元本を保証するというさまざまな、これは口先介入というふうに市場では言っているそうですが、そういう形で相場を支えてきたわけでございますが、その結果として、日経の平均は先週末までに五日間で七百三十円近く上昇して、マーケットでは、一部には月末には一万九千円前後に推移するのではないかという予測があったわけですが、一気にそうした安定的な株価が低落した。  こうした発言は閣議でよくお話し合って、そして橋本内閣の重要なポストを占める大蔵大臣として公式のこうした特別委員会の場で発言をされたわけでございますから、私は、そうした考え方政府の統一見解かと驚きましたが、翌日慌てて、株価の低迷を受けて、二〇〇五年までは増税を視野に入れないんだと、こういうふうに一転した発言をされているわけでございます。どちらが本当なのか。二十五日の記者会見での蔵相の発言は、単なる国民に対するリップサービスにすぎないのか。実際は、内閣としては将来的にまた、五%にまでアップして大問題になったばかりでございますが、将来的な消費税の税率アップというのを考えていらっしゃるのか、その辺の見解をお伺いしたいと思います。
  31. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) お答えしますが、前後しておるところは後ほどおわかりいただけることでありまして、それは時間の、時間帯、発言したのは正確に発言しておるわけですけれども、通信社がすぐに打つものですから、見出しが私の発言の真意と違う見出しになっておりましたことが市場に影響を与えた、こう報ぜられておるわけでございます。  そういう時差の問題がありまして、翌日閣議後の定例記者会見におきまして、時事通信でありますけれども、私は通信社の名前をきちっと言いまして極めて遺憾と、発言の真意を明確に伝えておればそういうことにならぬのに、見出しがそういうことになったことで市場に影響を与えたことは全く本意ではないし、残念至極だし、遺憾なこと、十二分に今後注意をされたいと、こう申し上げたところであります。  そこで、税制について、消費税についてのただいまの御質疑でございますが、既に何回も申し上げておりますとおり、財政構造改革そして今後の税制のあり方等については、それを視野に入れてどうするということではなく、ひたすら六つの改革、このことの前進のために全力を尽くすことによって財政の健全化を図ってまいりたいと、こう申し上げてきておるわけでございますので、この大前提が、当日もそのとおり申し上げつつ最終的な論議の中でそのことが行われております。自民党の議員ではございませんで、民主党の議員さんの御質疑であったわけでございまして、論議を税制の基本的なあり方としてということで議論がありました。  よって、高齢化社会、二〇二五年、国民負担財政赤字分も入れますと大変な、五〇%を超えて七〇に近くなるなどという計算もこれあり、それはそれとしても、まず健全財政をやり抜いていくことが大事ですし、国民の負担は税にだけ頼るという従前の形ではなく、自助努力、保険料その他ということになるわけでありますが、そういうことも真剣に論議をしていくべきときでありますと、こう申し上げさせていただきました。  土地の有効利用については以前から、実は土地政策の基本が発表されましてから、大蔵省、法務省、国土庁、建設省等々との連携、協議をやりまして、不良債権化しております担保である土地の有効利用、証券化、これについて進めてきておりまして、ようやく輪郭が出ましたものですから発表をいたしたところでございます。これも我が国経済に極めて有効に働いていくことになればと思っております。  先ほど民主党と申し上げましたが、質疑者は新進党の中野清議員でございました。
  32. 益田洋介

    ○益田洋介君 次に、国連を初めとして、今回の法案にも関連しますが、国際開発金融機関ではかなりさまざまな面での行政改革を訴えて、その機運が高まってきているわけでございますが、我が国行政改革のかなめであります大蔵省の改革、これについて若干の質問をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、現在の大蔵省は徴税権、予算編成権、企画立案、検査・監督、破綻処理と、すべて金融、財政に関する問題を丸抱えにしているわけでございまして、その運営にやはり物理的に無理が生じてきたのがさまざまの最近における大蔵省に絡んだ、あるいは大蔵省の体質が招聘したと思われる不祥事あるいは不都合の元凶の一つである。そこで、大蔵省の改革の論議が積極的になってきたわけでございます。  今回の法案を見たところ、あるべき金融行政の姿を本来であれば徹底的に今の段階で議論すべきであると私は思いますが、実際は大蔵省の分割論の是非が先行したという印象をどうしても免れないわけでございます。ですから、本来であれば預金者保護また利便性の高い金融サービスの提供のための改革という当初の本来の目途とした改革案からはかなり視点がぼけた法案になっている。これは私の偽らざる印象でございます。  予算編成権を官邸に移したい、この議論も長い間なされていますが、これはアメリカの事例を念頭に置いてのことだと思いますが、大統領制をとっているアメリカの場合はこれは例外的でございます。日本の総理大臣をアメリカの大統領と同じような権限まで引き上げない限り、予算編成権を官邸に持ってくるということは私はできないというふうにも考えております。  そして、検査・監督権だけを分離させる、こういったことでありますと、当然のことながら人員も相当数ふやさなきゃいけない。約三百名ぐらい、常時二百四十七名ぐらいを想定しているというふうに伝えられますが、これは公務員を削減していこうという行革の趣旨とは相反するものではないか。また、支出増を財政危機の中でどうしてひねり出していくのか。こういう議論が実際になされたのかどうか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  33. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 今、金融監督庁についての、検査・監督を分離するということについてお話がございましたが、特にこの体制につきましては、金融機関に対します検査の方向といたしましては、これから基本的には充実していく方向にあるというふうに考えております。  ただ、公務員の定員というふうな具体的なお尋ねでございますけれども、全体で見ますれば、現在の行政改革の大きな流れの中で定員を抑制するあるいは削減するという方向にあると思いますが、その中で重点的な配置をしていくということは十分に考え得ることではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。  今回、いろいろな御議論がございましたけれども、金融機関に対します検査と監督を大蔵省、大蔵大臣のもとから分離いたしまして総理府に監督庁という形で新設する。これは法案の上では来年の四月から七月の間に政令で定める日から実施するということになっているわけでございますけれども、そういう方向については、従来の金融行政に対するいろいろな御批判を踏まえて昨年末に与党三党におきましてお決めいただきました方向に沿ったものということでございまして、これによってより市場原理を基軸といたしました行政に転換されるものというふうに考えております。
  34. 益田洋介

    ○益田洋介君 加藤幹事長が、金融監督庁設置法案に対する説明を自民党の総務会で法案提出の直前に行った。その中で、今回は過渡的な措置であります、根本改革は今後の課題にするのでこれで了承していただきたい、そういうトーンで出発しているわけでございますので、抜本的な改革はこの法案の提出の時点から既に考えていない、そのように私は理解するわけでございます。  そしてまた、例えば免許取り消しによる破綻処理についても、法案では、信用秩序に重大な影響を与えるおそれがあるときは大蔵省との事前協議を義務づけると。どういう場合を信用秩序に重大な影響を与えると解釈するかということについては、何ら言及がなされていない。私は、これは財政資金の投入を余儀なくされる場合ではないかと推定しているわけでございます。そうしますと、ほとんどの案件にこれは大蔵省がかかわる可能性が出てくる。全く機能が分離していない。  さらに申しますれば、破綻処理に当たっては、今後は金融監督庁に加えて大蔵省、日銀、預金保険機構の四者がかかわってくる。こういうことでは金融破綻のときに即刻の判断をすることもできなくなるし、意見の相違が生じた場合には四者の間で収拾がつかなくなるような結果になるんじゃないか。もっと複雑な機構、機能が実現されてしまうのではないか。そういう私は懸念を持つわけでございます。  この金融監督庁の設置法案というのが、何でこういうふうな骨抜きのような形にされてしまったのかということを考えてみますと、昨年の十二月に与党三党は法案づくりを総理府に設置しました設立準備室にゆだねた。しかし、配属されてきた二十五人の官僚のうち、十五人は大蔵省の役人であります。これでは大蔵省の思いのとおりに法案が骨抜きにされるのは当然のことです。そして、与党の途中のチェックも報告もないままに先月末に準備室が提出した法案の概要を与党三党は了承してしまった。そういうのが実態であります。これは、やはり政治が怠慢であったと言わざるを得ないと私は考えるわけでございます。  それから大蔵省としては、この十五人の設立準備室のメンバーは、やはり金融行政の頭脳に当たる企画立案部門を本丸として死守しようとしていた。ですから、本来であれば検査機能の分離までということで、論議の焦点を検査だけの分離かあるいは検査・監督の一体分離かという論議にすりかえてしまった。これが実態であると私は考えます。  このように、役所に法案づくりを任せれば骨抜きにされるのはわかり切ったことで、私は、こうした重要な法案についてはやはり議員立法すべきであるというふうに考えます。まさに政治の怠慢、最終的には企画立案を含めて財政と金融の完全分離という、そうした方向まで持っていかなければならないんではないかと考えますが、大臣の見解をお伺いしたい。
  35. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 益田議員の段々の御見解をお聞きしておりましたが、大分誤解があられるようでございます。  本件は、住専の大論議の中におきまして、今後の金融システムはどうあるべきかと。国民の強い批判もこれあり、政治としてこれに取り組まさせていただいたところでございます。御案内のとおり、総選挙前でありましたけれども、与党三党が真剣に代表者会議を、連日と言っていいほど非公式のやつを入れまして協議が行われてきたところでございます。そして、検査・監督を主とした役所、独立機関、三条機関なのか八条機関なのかと、こういう論議、そこで人員の配置はどうするか、定員削減の厳しい行革の観点の中で本件のスタッフはどうあるべきかということから国内の金融システムのあり方、そして日本経済国家リーダー国になっておるわけでありまして、国際金融に占める我が国の金融のあり方、本件を三党の幹事長そして政策責任者、書記長、いわゆる政策責任者六者会談、その前にそれぞれの党の政策担当者、プロジェクトチームをつくりながら本件に対して論議をしてきたところであり、総選挙後、さらにその決められた公約の基点を踏まえてかんかんがくがくの論議を進めまして最終的な答申が政府に出されると。総理・総裁に出されて、政府としてこれにどう取り組むかということで段々の報道のとおり、忠実に三党の決定事項に基づいて完全分離をすると、こういうことでございました。  そのときに、企画立案の機能は大蔵省に残す、金融局として銀行、証券を一局に統合する、こういうことに基本的に決まりまして、そういう中で総理大臣、主管大臣という位置づけの中で、総理府においてただいま真剣な法案作成の努力をされまして本件の提案と、こういうことに相なったところであります。  基本だけ申し上げさせていただきました。よろしければ、それを担当した総務審議官から補足説明をさせます。
  36. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 一つ信用秩序の維持というのはどういうことなのか。ほとんどのときに大蔵大臣がかかわるのではないかというような御趣旨のお尋ねがございましたけれども信用秩序の維持に重大な影響を与えるおそれがあるかどうかということの判断は、金融監督庁を所管する主任の大臣であります内閣総理大臣自身が御判断されることになります。したがいまして、そういう判断がない限り、大蔵省が関与することは起こらないわけでございます。  その関与する考え方は、破綻処理が必要になった場合に、現行のスキームのままでその処分をいたしますと取引者等に重大な影響を及ぼすというそういうおそれがある場合、したがいまして、協議される事項も現行スキームで予定していないような善後策を講ずる。それは、財政資金の投入というような直接的な言及がございましたけれども、必ずしもそういうことではございませんで、例えば新たな受け皿銀行をつくるとか、これは現在の破綻処理の中においてもとられている措置でございますけれども、具体的な例として挙げれば、そういう場合にもこれは新たな善後策を講ずるということで、企画立案を担当する大蔵大臣と協議をするということになるというふうに考えております。  それから、日銀、預金保険機構等々挙げられて、四者で即刻の判断ができるのかというお話がございましたが、そもそも日本銀行は円滑な資金の供給という観点から関係してくるものであり、預金保険機構につきましてはセーフティーネットとしての保険金の支払いということから関与されるわけでございまして、これらはそれぞれ異なった機能を発揮するわけでございますので、現在でも、これは三者ということになるわけでございますが、緊密な連携が必要なわけでございます。  確かに、検査・監督が分離されたことによりまして四者ということにはなりますけれども、それは検査・監督を分離するまた一方での必要性ということから出てきたわけでございまして、四者の適切なる連携が行われればそういう御懸念はないのではないかというふうに考えております。
  37. 益田洋介

    ○益田洋介君 昨年末から、十一月からですが、大蔵大臣が非常に関心をお持ちの日本版ビッグバン、二〇〇一年の完了を目指しての大変意欲的な取り組みであると承知いたしておりますが、もともとこのビッグバンの論争が、金融市場の門戸の開放というのが必要になってきた直接的な引き金というのは、住専の問題ですとか、大和銀行ニューヨーク支店の不祥事といった事件を招いた不透明な今までの金融、財政の手法であったというふうに私は考えているわけでございます。  そこで、このビッグバンが完了するまでの二〇〇一年にきちっとしたやはり機構をつくり、体制を整えていく必要があるのではないか。今回の金融監督庁の設置についての法案ではそこまではとてもいかないと、私は先ほど来主張しているわけでございます。  例えば、新しい機構と大蔵省の間の人事交流の問題でございますが、これについては法案では、長官が持つ人事権はその独立性を厳正に確保すると述べているにとどまって、交流を認めるのかどうかということには全く論及していないわけでございます。したがって、当面の間は交流を認めざるを得ないという雰囲気が、考えが私は底流にはあるように推測するわけでございます。このことはやはり、大蔵省から監督庁に出向した場合に、片道切符であって戻ることができないというのであればだれも行き手がないのではないかと、そうした大蔵省の強い圧力があった、働きかけがあったというふうに認識をしております。  ですから、監督庁の主要ポストがほとんど大蔵省からの出向者で占められる。しかも、それが監督庁と大蔵省の間で定期的に交流が図られるということになれば、これは完全に、新しい機関というよりは事実上の附属機関だと、大蔵省の附属機関にすぎなくなる、人事面ですね、そういうおそれがあるのではないかと思っております。  さらに、破綻処理などの危機管理についても、こういうふうに法案には書かれている。現行スキーム、枠組みを超える場合、新機関は大蔵大臣と協議をする。そういうわけで、これはまさに折衷案と言わざるを得ない。与党三党の中でさまざまな議論がなされたと大蔵大臣はおっしゃっていましたが、結局、落ちつくところは折衷案になってしまった。本当にビッグバンができるのかどうか、大蔵大臣は熱心でいらっしゃる、私はこの点からも非常に不安でございます。  それから、さらにまた農林系金融機関、ノンバンクといった農林水産省や通産省が所管をしているこうした金融機関については、監督庁は分離して検査するのじゃなく、従来どおり共同で検査・監督するという共同管理の体制をとるべきだという形になっております。これは、やはり農林水産族議員と言われる人たちの圧力があったために法案がねじ曲げられてこういう形になった。  しかし、私たちはいまだに忘れることはできませんけれども、あの忌まわしい住専事件、住専問題で、大蔵省は住専への銀行からの融資に総量規制というのを行ったわけですが、これが農林系の金融機関には及ばなかった、規制がなかった。だから、その結果として農林系の住専向けの融資が膨大に肥大して、そして、最終的に私たち新進党は反対しましたが、多額の国民の血税を投入せざるを得なくなった。  その原因は、結局は縦割りの官庁間の言ってみれば縄張り争いのようなことが協定書というようなものを生んだ結果であり、最終的にツケは国民に回された。まだ記憶に真新しいところでございます。今後も、監督庁ができたとしても、農林族議員たちが新機関に圧力をかければ公正な検査とか監督は全く望むべくもない、不可能になってしまう、そういう懸念を私はいたします。さらに申すならば、今後の金融マーケットではデリバティブ、これは金融派生商品と呼んでおりますが、そうした金融ハイテク商品が主流を占めていく。そうなれば、財政担当の主計局を主流とする大蔵省が金融行政まで担当していくには相当これは無理がある、限界があるという懸念も一部にはございます。  それから、先ほども申し上げましたが、今回の改革では、金融の企画立案を担当する金融局という形にしてそのまま大蔵省に残すことになってしまう。ですから、大蔵大臣が重ねて強調されています二〇〇一年までの中央省庁との省庁間の再編では、財政と金融行政の完全分離を私は目指していかなきゃいけないと考えますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  38. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 幾つかのお尋ねがございましたが、まず大事についてのお尋ねにつきましては、現在この金融検査・監督というものを大蔵省が所管しておりますので、金融監督庁に分離され、その監督庁が発足するに当たりまして大蔵省から職員が行くといいますか、向こうから見れば大蔵省から来るというのは自然なことかというふうに考えます。  問題は、その後の職員の大事についてのお尋ねかとも思いますけれども、それは長官がすべての人事権を持っているわけでございまして、長官がお決めになることだというふうに現時点では申し上げるのが一番適切かと思います。一般的に人事交流がどうかということになれば、省庁間の人事交流というものが縦割り行政の弊害の是正のために必要だといったような御意見もあるわけでございまして、もちろん御指摘のように金融監督庁が大蔵省の職員の定期的な交流の場になるというようなことはあり得ないといいますか、望ましくないということはそのとおりだと思いますけれども、一般的に人事交流を全面的に否定するというのが本当にいいことなのかどうかというのは、いろいろな観点からの検討が必要になるのではないかというふうに考える次第でございます。  それから、農林所管あるいは通産所管の金融機関についてのお尋ねがございましたが、この点については大蔵省かちお答えする立場にございません。ただ、一言申し上げれば、この与党の合意の中で、農協系統金融、労働金融、ノンバンクなどを含めて一元化を図るけれども、農政、労政、通産行政の観点から、引き続き農林水産省、労働省、通産省と共管とするということが三党で明確に書かれておりますので、それに従って法案化されたものというふうに理解しております。  それから最後に、金融局が大蔵省に残るということでありますけれども、これは、これも三党の中で企画立案を担当するものとして仮称金融局が大蔵省に残る、大蔵省には金融局を置くということを与党においてお決めいただきました。それに基づいて今後検討を詰めていくことになると思いますけれども、ただ、今委員御指摘の省庁再編の中で、金融の企画立案というものも分離して、いわゆる完全な財政と金融の分離というような方向についてのお話がございました。私どもは、財政と金融が完全に分離してしまうというのはいかがなものかというふうに考えております。  まず、具体的にG7等の国際会議の場におきましても、主要国はすべて大蔵大臣、財務長官等々大蔵大臣に相当する立場の方が来られて、財政問題、税制問題金融問題あるいは国際金融の問題、為替の問題を全部論ずるわけでございます。そういう国益全体の観点から見たときに、我が国だけが金融については別の大臣ということで本当に通用するのかどうか。それから、そもそも銀行の検査・監督ということになれば、いろいろなお考えがあるかもしれませんけれども、通貨というものを考えた場合に、その安定を図るというのは本来大蔵大臣の仕事ではなかろうか。  いろいろなことを考え合わせますと、この財政と金融を完全に分離するということは考えられないというふうに私どもは思っております。現に主要国でも、詳しくは申し上げませんけれども、金融に関します金融制度の企画立案については、財務長官なり、イギリスでも大蔵大臣、フランスでもドイツでも大蔵大臣が所掌しておるという現実があるわけでございまして、そういうことで財政、金融の完全分離は適切でないというふうに考える次第でございます。
  39. 益田洋介

    ○益田洋介君 それでは、中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案についてお尋ねをいたします。  一九九五年は、国際連合とともにブレトンウッズ機関設立五十周年を迎えたわけでございます。そこで、国際開発金融機関を含む国際機関のこれまでの役割を再評価するとともに、その見直しを実施するということの機運が高まっているわけでございます。例えば、世界銀行融資するダム建設などの大規模開発案件環境破壊や住民移転による人権侵害を引き起こしているという批判がございますし、世銀、IMFによる構造調整融資の前提となる政策が社会的弱者に過大な負担を強いているという批判も一方ではございます。さらには、世銀とIMFの間や世銀地域開発銀行の間の役割分担が不明確であるというようなことを言われております。  G7諸国は、九五年のハリファクス・サミット、そして翌九六年のリヨン・サミットにおいて国際機関の見直しを主要課題一つとして取り上げております。この中でG7諸国は、世銀とIMFの任務の重複を減らさなければならない、そういうことで、世銀は構造調整及び部門別政策、IMFはマクロ経済政策に専念してはどうかというふうな提案がなされておりますが、今回設立をしようとしているこの中東・北アフリカ開発銀行役割は明確になっているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  40. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先生御指摘のように、いわゆる国際開発金融機関を含むブレトンウッズ機関役割の見直しというような議論が進んでおるのは事実でございます。そして、世銀グループとIMFグループの間では、今先生御指摘のように、マクロあるいは為替というようなことをIMFがやり、部門別の開発というようなことを世銀グループがやるということになっておるわけでございます。また、国際開発金融機関そのものの中にも二種類の機関がございます。一つは全世界対象とする世界銀行あるいは第二世銀と呼ばれているIDAというようなもの、もう一つは各地域対象とするアジア開発銀行、米州開発銀行あるいはアフリカ開発銀行等の地域開発金融機関でございます。  今の議論は、こういう世界的な開発を担当する世銀のような機関地域開発金融機関、これが双方それぞれの役割を持って事業を続けるということは適切なことであろうということではございますけれども、当然そこにそれなり役割分担がなければいけないというふうに考えられておるわけでございます。  今回、設立されます中東開発銀行は、特定地域開発ということを目的設立されるわけでございますけれども、まずアフリカ開発銀行という地域開発銀行がございまして、そことの役割分担をどうするかというのが一つ議論でございます。特に北アフリカにつきましては、今度設立されます中東開発銀行アフリカ開発銀行のエリアがオーバーラップするわけでございますけれども、基本的に役割分担としては、アフリカ開発銀行が例えば構造調整融資、そういうことを担う一方で、中東北アフリカ経済協力開発銀行は、むしろ民間企業向けの投融資民間インフラ、そういうものを担うために融資を行うと、こういうことで役割分担を定めたところでございます。  また、マクロ政策あるいはセクター政策の改善、支援等は、当然のことながら世界的なエリアを持ちますIMF、世銀等が中心に行う、そういうことになると思っております。
  41. 益田洋介

    ○益田洋介君 平成九年二月に外務省が発表されました資料によりますと、「中東北アフリカ経済協力開発銀行設立する協定について」という表題ですが、そこの五ページ目の二「締結の意義」というのがございまして、協定を締結することは、中東和平プロセスを経済的側面から支援することに資するものであると、こういうふうな表現がございます。どういうことを言っているのか具体的によくわからないわけですが、ただ域内のシェア配分を見てみますと産油国が入っていない。例えば、アラブ首長国連邦、イエメン、イラク、イラン、レバノン、バハレーンというような主要産油国が入っていない。これはこうした、今局長がおっしゃっておりましたが、特定地域における開発協力のための銀行だという目的からすると非常におかしな状況になっていると私は考えるわけでございます。  さらに、域外においても、イギリス、フランス、ドイツといった欧州の先進国が加入していない、これも非常に私は奇妙な事柄であると感ぜざるを得ないんです。そして、そのシェアにつきましては、アメリカが二一%というふうに一番大きいわけでございますが、これは大蔵省の資料、ページ七、日本は九・五%、イタリア五%、日本をこのシェア比率で一〇〇としますと、アメリカは二二〇、イタリアは五二という指数になるわけでございますが、一方で名目GDPの比率を日本を一〇〇とした場合に、アメリカは一四六でありますし、イタリアは二二ということでございますので、こうした数値を比較する限りにおいては日本のシェアは決して大きいとは言えないわけです。  しかし、これは国民の大切な血税を相当額支出するわけでございますので、百十七億円を分割払いで支払う、九年度予算の一般会計に十一億七千万円を計上するということでございますので、相当に慎重に事を運んでいただかなきゃいけないと同時に、公開性を持たせて国民の皆さんによく理解できるような、どういったたぐいの支出であるのか、そして中東和平プロセスに資する、経済的側面から資するというが、具体的にはどういうふうに資していくのかという説明が私は国民の皆さんになされなければ本当ではないと、そのように考えますが、いかがでございますか。
  42. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 幾つか御質問がございましたので、順を追ってお答えさせていただきたいと思います。  まず、中東開発銀行に産油国あるいは欧州の先進国が入っていないじゃないかと、おかしいじゃないかという御指摘でございます。確かに、EU諸国のうちイタリー等は入ってございますけれども、ドイツ、フランス、イギリス等が含まれておりません。これは、この開発銀行設立経緯で、実はドイツ、フランス、イギリスもこういうものをつくろうと、金融支援をしようと、中東和平のプロセスに資するためにこういうものをつくろうという意見は持っておったわけでございますけれども、ドイツ、フランス等は伝統的にこの地域に無償の援助を相当しております。そういう経緯から、むしろ無償資金を含んだ譲許的な資金を提供する、そういう機関をつくったらどうだと、こういう意見をかなり強く持っていたわけでございます。また、アメリカあるいは日本等は、この譲許的な資金というよりはむしろ民間セクターを対象にした投融資、こういうものを中心機関設立したらどうかということでございまして、これはいろいろ議論をいたしました結果、アメリカ日本型の意見が最終的に通って、この開銀設立されることになったということでございます。  こういう経緯もございまして、ドイツ、フランス、イギリス等は、当初からはこの開銀に参加しないということになったわけでございますけれども、フランス等はいずれこれに参加するんだというようなことを言っておりますし、私どもとしては、時間がたてばこれらのEU諸国もこの開銀に参加してくるものというふうに期待しておるところでございます。  また、湾岸諸国でございますけれども、サウジアラビア等の湾岸諸国はこの銀行に参加しておりません。これは、この地域国々がこの中東北アフリカ諸国支援の必要性について理解していないということではなくて、この地域国々は既に支援のための金融機関組織をみずから持っているということでございまして、例えば湾岸諸国が持っている機関の中でイスラム開発銀行というのがございまして、これはイスラム地域対象民間セクターの支援をするというようなこと、あるいはアラブ経済社会開発基金、あるいはアラブ経済開発クウェート基金、あるいはサウジ基金ということで、みずからそういう銀行なり基金を持っておりますので改めてこれに参加する必要がないと、そういうことで参加しなかったという経緯がございます。
  43. 益田洋介

    ○益田洋介君 わかりました。  最後になりましたが、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案についてでございます。  世銀の総裁であるウォルフェンソンさんは、最近、先進工業国に援助疲れと援助嫌いというふうな政治の風が吹いているということに関しまして、ドイツは援助予算を一・五%減らした、どの国の有権者も財政赤字の削減を求めている、国際開発協会IDA、第二世銀の仕事である貧しい国への援助が八十七カ国への低利の援助資金の原資が集まるかどうか深刻な問題になっている、アメリカの議会は当初約束していた九億三千五百万ドルよりもはるかに少ないと億ドルしか増資に応じられないという姿勢であると。そして、やはりこの基金につきましても、ウォルフェンソン総裁自身が主張するように、IDA等の大胆な行政改革が断行されなければ今後の支出については国民は納得しないだろうと、このように述べておられますが、我が国のこうした国際機関への大胆な行政改革断行についてのお考えを大蔵大臣にお伺いして、質問を終えます。
  44. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 大事な国民の税金を使うわけですから、ただいま御紹介にありましたとおり、先進国と言わず全体の国柄がそうなってきておるところであります。私どももその点を踏まえながら、有効適切、我が国の国是、外交方針に従って取り組んでいかなければならないと思っております。  ビッグバンが成功していくと思いますが、また御理解をいただき、御協力をいただきますけれども民間会社も、不良債権の克服が徐々に進行しておる中で、本来の姿に戻りますとそれなりの働きをしてくれるでありましょうし、そういう場面にぜひとも一千二百兆の個人資産が活用されるような金融システムをつくり上げてまいりたい。徐々にそれが今進行しておるところでありますことを申し上げて、答弁にかえます。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 座ったままで失礼します。  中東・北アフリカ開銀は、中東和平のプロセスからできてきた問題ですから、数世紀にわたる民族の対立、世界の火薬庫にようやく和平の機会がこれで訪れるとすれば非常に歓迎すべきことだと、こう思います。  ところで、この地域というのはかつてオイルダラーでじゃぶじゃぶ潤っていた場所ですよ。援助しようかという先進国はそこから短期に金を借りて、逆に途上国に貸していたといういきさつがありますね、オイルダラーの還元といっていつも歓迎されたわけでありますが。しかし、なかなか貧困の解消あるいは格差の解消には寄与しない。金があるんだが貧困の解決にはならない、格差の解消にならない、こういう問題をどのように評価、総括をするのか。それによって、これからの金の使い方も違ってくると思うんですよ。その辺についての日本の認識はどういう認識ですか。
  46. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) いわゆるオイルマネーと申しますのは、二度の石油危機によって産油国の石油収入が増大して、中東諸国に大変な余剰資金ができたというものでございます。この時期は、中東諸国は主としてこのオイルマネーをロンドンあるいはニューヨークで運用して、そのお金が実は世界の金融市場に流れたということでございますけれども、実は八〇年代に入りまして石油需要が低迷したこと等によって中東諸国の経常収支はもう赤字ということになりまして、この十年あるいは十数年は、オイルマネーがどんどん中東諸国にたまっていくという状況にはないわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、そこでたまったオイルマネーが、その地域開発あるいは貧困の解消というものに十分使われてなかったという事実はそのとおりだと思います。ただ、先ほども申し上げましたけれども、サウジとかクウェートとか、そういう国が若干の基金をつくって特にイスラム諸国等に対する援助というものに回していたことは事実でございますけれども、今回この中東・北アフリカ開発銀行ができることによってこの地域貧困削減あるいは開発というものに大きな進展が見られるのではないか、そういうことがあって、私どもこの開銀設立に積極的に参加しておるわけでございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 世銀それから世銀グループ、ODAも含めていいですが、一体日本は総額でどれぐらいの拠出なり資金協力をしていることになりますかね。例えば、IDAの一九六〇年ですか、それから十一次までの増資、この間にはもちろんIDAだけではなくて世銀増資があったんでしょう。その他の地域開発銀行も幾つかできまして、その都度出資増資もあるようですが、この出資、拠出を含めて、一体我が国は総額どれぐらいのものを出していますか。
  48. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 我が国は、一九八七年から資金還流計画というものを立てまして、六百五十億ドルを五年間の間に国際市場に還元するというようなことを言ってまいったわけでございます。また、その後資金協力計画というようなものもつくっておるわけでございますけれども、その間の八七年以降の我々の資金還流の状況でございますけれども、まず公的資金ということで輸銀基金、世銀等の援助機関を通じたものが千二百億ドル。それから民間資金でございますね、これは貿易保険、輸銀の保証等何らかの公的な支援を受けた民間資金協力が二百六十億ドル、バイのODAが六百億ドル、マルチの援助が六百億ドル、そういう形になっておるわけでございます。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 それで、冒頭に聞いたことと関連するんですが、そういう産油国、この中東のようなところは市中で資金を調達してほどほどの金利で貸し付けるという、むしろそういうケースに似合う場所じゃないんですか。
  50. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) これは設立経緯のところでも若干述べさせていただきましたけれども、まさに先生の御指摘のように、この地域投融資中心として民間インフラあるいは民間セクターを今後伸ばしていくということが非常に重要であろう、そういうふうにアメリカ日本等は考えたわけでございまして、そういうことで、金利のついた投融資をこの銀行を通じて提供をしていく、こういうことでございまして、我々は、もちろん出資という形で資本は提供いたしますけれども、この銀行自身がさらに民間等から資金を調達して、その資金をこの地域国々に貸していく、そういうことになっていくのではないかというふうに思っております。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 今、日米の話がありましたが、アメリカはこのイスラエル、ユダヤの問題には、場所は遠いんですがいつでも積極的にかかわっていく。今度の場合も、アメリカのイニシアチブというのが非常に大きいような気がします。若干それへの反発があってヨーロッパの幾つかの国が横を向いておるという情報もないわけではありませんが、アメリカはずっと、第二次大戦からずっと戦後の中東へのかかわり方で今のようなスタンスをとることはわからぬわけではありませんが、日本はちょっとまた違うわけでして、何でもアメリカアメリカと言うんですが、私らがEU会議に行きますと、日本は何でもアメリカの言うことを聞き過ぎるよと言いますよ、よく。ウイスキーのときもそうでした、ウイスキーの話は別の話ですが。  今度のケースも、言い出しっぺは、仕掛けたのはアメリカで、ただあの会議に提案したのはイスラエルだというふうに言われておりまして、それが気に食わぬというのがどうもヨーロッパの大国ぶっている連中のところにもあるんでしょうね、アメリカへの対抗意識も強いですから。ヨーロッパの国にしますと目と鼻の先ですから、あそこは。アメリカは少し遠いですよね。そういうことが背景にあるのかなという感じがしたもので、さっきの話、興味深く聞いていたんですが、域外国では産油国が入っていないのは独自のそういうあれを持っているからと。域内国もどっちかと言うとそれに近いわけですけれども、むしろ貸すというよりはグラントに近いことをヨーロッパはやってきましたから、だからあえてこういうものは要らぬという発想なんですね。それはわかりました。  非常に積極的なアメリカなんですが、アメリカの議会は消極的と言っては語弊がありますけれども、なかなか厳しい議論をして、第十次のIDA出資増資アメリカがイの一番に増資を決めて、おれがこれだけ持つんだから、日本、おまえはこれぐらい持てといって持たされて、先ほどの話ですと、日本もいい顔できるというのでほどほどの発言権を持つたような説明をしていますが、アメリカが十と言ったち、しょうがない五ぐらいだといって大体相場を決められてきているわけでしょう、今までのずっといきさつを見ますと。肝心のアメリカは、どうも払い込みの状況は余り成績がよくないようだ。IDA10についての、アメリカの払い込み状況はどうなっていますか。
  52. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 米国IDA10に関します出資予定額は、三十七億五千万ドルでございます。現在の時点で、この三十七億五千万ドルのうち九億三千四百五十万ドルが延滞となっております。ただ、このうち九七年度予算から七億ドルの歳出が既に議会に承認されておりますので、延滞分の残額は現在二億三千四百五十万ドルでございます。  この二億三千四百五十万ドルについては、米国政府は九八年度予算案に計上して議会に対して承認を求めているところでございますので、この予算案が承認されればIDA10に関する延滞はなくなるということでございまして、これはクリントン政権が国際機関に対する延滞というものはできるだけ早く解消しなきゃいけないということを非常に強く言っておりますので、議会に対しても極めて積極的にこの延滞解消のための二億三千四百五十万ドルの承認を求めているというふうに聞いております。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  先ほど同僚議員の発言にもありましたが、例えばIDA融資についてもさまざまな改善の意見議論が、各国の議会はもちろんですが、それぞれ被対象国、援助国のNGO等からもたくさん出されていますね。それらは、私が代弁する立場じゃありませんが、大体要約してみると、IDAはあくまでも本来の目的であるBHNに重点的に行われるべきであるとか、少なくとも構造調整プログラムには使ってはならぬとか、あるいはそのプロジェクト実施によって影響を受ける地域の住民やNGOの参加を拡大せよとか、一九九四年に採択された参加と行動計画の全面的な実施を求めるとか、それからIDA資金を第一世銀の債務の元利支払いに使っているという実態があるのでそれはいかぬと、せっかく貧困の解消のために回ってきたお金をもともとの借金にみんな返してしまうというのでは何も改善に役立たぬわけでありまして、そういう議論アメリカの議会の方では非常に強いようです。あるいは、一九九四年に採択した再定住とリハビリテーションに関する政策を全面的、有効的に実施せよと。インドと中国をIDAから外すという意見もあるようだが、それは外してはならぬとか、今言った五点ぐらいが各国の議会やあるいはそれぞれのNGO等議論になっている諸点だと思います。  私、ちょっと要約して申し上げましたが、日本は今度大株主になるわけですから、どういう政策、どういう方針を持ってこの増資交渉に対応してきたのか、ちょっとその辺を語ってくれますか。
  54. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 世界銀行あるいは世界銀行グループが、財政事情各国とも非常に厳しい折に幅広い支援を受けていくためには、環境問題等の適切な取り組みや、途上国の現場で活躍するNGO等との積極的な連携が重要だというふうに認識されております。特に、今度ウォルフェンソンが総裁になってから、そういう活動を積極的に進めておるところでございます。  例えば、NGOとの定期的な協議というものも世銀はやっておりますし、NGOに対して積極的に情報を開示するというようなこと、あるいは環境というものについては環境ガイドラインというものを策定し、それぞれのプロジェクトが環境に与える影響をきちっと評価する、それで環境に大きな影響があるというものについては環境アセスメントをきちっとやるというようなことでございます。  それから、構造調整融資というものについて各国の反発あるいはNGO等の反発が非常に強いわけでございますけれども構造調整融資というのは、融資する一方で、その政府政策を変えろというようなことをかなり強く言うわけでございます。これが非常に無理なものが多いじゃないか、あるいはむしろ所得格差を拡大するような傾向を有するものがあるじゃないかという批判があるわけでございまして、この構造調整融資に対しても、各国の個別の事情に配意しながら、新たな政策を求めるときにはそういうものに十分配意していく、そういう方針をとっておるところでございます。  我が国といたしましても、こういう世銀あるいは世銀グループの今の政策を積極的にバックしていくとともに、我が国自体もこういうことに積極的に取り組もうということで、この四月、五月から大蔵省としてもNGOと定期的な協議をやるというようなことを表明いたしまして、現在、いつどういう形でやるかというようなことで協議を進めておるところでございます。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 アメリカは少し厚かましいですから、簡単に構造協議とか構造調整と言いますが、日本も日米構造協議で大分ありましたけれども、構造というのはやっぱりその国の文化なり歴史の問題でしょう。商取引にしましても、そういうものを急に直せといったって、そう簡単にいくものじゃないんです。それがまた新しいリアクションを生むのでして、その辺は日本日本のスタンスを、もう少しはっきりして臨んだ方がよろしいんじゃないかというふうに意見を申し上げておきます。  いずれにしましても、市場で資金を募って市中金利で貸し付ける銀行業務を行っておる第一世銀と、貧困問題の解決を目指すIDAとその他の世銀グループが、機構もスタッフもみんな同じところに少し無理があるんじゃないかなと。むしろ、IDAは現行のソフトローンからグラントに近いような形に切りかえていくとか、あるいは機構を切り離すとか、そういう機構改革も論じられているようですが、これらにも積極的に対応すべきだというふうに申し上げておきます。何しろ大株主になるわけですから、ちょっと日本の言ったことが通ったところを見せてくださいよ。  それから、二国間援助はここでも議論できますし見えますが、やっぱりマルチのやつは国際機関を間接的に通しますからレポートはなかなかこういうところに来ませんので、情報が全く我々は不足です。そういう国際機関のものについても、例えば予算なんかを出すとき、こういう協定なんかを出すときには、もう少し情報をつけて提起するようにしてください。各国の議会があれだけの議論をして、日本だって貧乏のくせに無批判に議会が賛成するのも、何か不勉強のようで僕らも気が引けますよ、本当に。
  56. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 御指摘のとおりでございまして、世界銀行あるいはIMFが、かなりアメリカ的な物の考え方あるいは欧米的な物の考えで意見を押しつける傾向があるというような批判は、このところ特に強くなっているわけでございます。  私ども日本の立場として、少しそういう欧米型モデルではなくて、違うモデルというものにも配慮しなければいけないじゃないかというようなことを積極的に言ってまいりまして、そういう働きかけの結果として、例えば「東アジアの奇跡」というような本がつくられております。あるいは、アジアにはアジアなりのシステムがあっていいじゃないかという議論が非常に世界銀行の中などでも強くなってまいりまして、今後ともそういう活動は積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。  また、情報の開示ということについてもおっしゃるとおりでございまして、積極的な情報公開をやっていきたいというふうに思っております。世界銀行については東京事務所というのがございますから、そこを通じて積極的な情報公開を行っていきたいというふうに思っております。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 先ほども同僚議員から質問がありましたが、世銀グループにも幾つかの窓口があって、そのオーバーラップしているところをどうするんだろうという話がありましたが、日本で言うと開発銀行と北東公庫みたいなものですかね。そうですが、そういうふうにわかりやすく言ってください。  一問だけちょっとお伺いします。法案以外に一問だけ、済みません。日債銀が時折新聞種になっております、日本債券信用銀行。九二年の十二月八日の本委員会で、私は、日債銀が不良債権を小さく見せるために不良債権飛ばし、あの当時は証券飛ばしという言葉がありましたので、をやっているんじゃないかと言ってただしました。少し説明を加えますと、日債銀が系列のダミー会社をつくって、ペーパーカンパニーをつくってそこへ不良資産を、不良債権を移しかえる、それにはもちろん金は貸せる、そうしますとまだ延滞債権が発生しませんから、新しければ。したがって、不良債権が姿は小さく見えます。そういうことをやっているんじゃないかといって、当時の読売新聞の記事を示してお伺いしました。  そのときの答弁は、例によって銀行の取引先である第三者の取引にかかわる事柄ですからコメントはできない。なお、一般論で言えばそのような取引、すなわち担保不動産の売却はよく行われる行為だと。のどかな返事でしたけれども、だが、それから幾らもたたないうちに、御存じ東京協和、安全の不良債権が問題になって、さらに木津へ、そして住専、六千八百五十億円と大あらしになったんですが、当時からは随分と不良債権をめぐる景色も変わったわけですが、今この段階で何か答弁の補足なり訂正がございますか。
  58. 山口公生

    政府委員山口公生君) 当時、委員の方から今の御趣旨の御質問がございまして、御紹介いただいたような答弁をしておりますが、当時それの関連で私どもが聞いたときのヒアリングでは、当該取引の売却物件の事業化を目的としておったということでございまして、意図的にその不良債権を隠すというようなことではなかったように聞いておりますけれども、それ以上の情報はございません。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 日債銀については、海の向こうのムーディーズの格付をめぐって話題を呼びました。一体事実はどうなっておるのか。言ってもよし言っても悪しというところもありますけれども、新聞によると大蔵省もコメントをしておりますが、そう気にすることはないみたいなことを言っているようですが、しかしムーディーズの格付は何か一つランクが下がりまして、投資不適格というんですね。これはどういう機関なのかというのを調べましたら、ジョン・ムーディーとかいう男が開発した方式なんだそうです。  なお、これは大蔵大臣に聞きますが、これに関連をしてなんでしょうか、金融改革のときは早期処理というのが一つの目玉にされたわけで、何だかすごい怪しげな雰囲気ばかりそれで出ますが、そうなっては困るというんでしょうか、与党の政調会長は金融債券を預金保険の対象にする、だから余り心配するなと言いたいのかどうかわかりませんが、そのような発言をしていますが、金融債を預金保険の対象にするのか。与党政調会長の発言は、せっかくですが私に言わせれば、日債銀の後始末を予言してその先ぶれをしているような気もしないでもないが、とかく評判のよくない銀行でありますし、政治絡みで評判がよくないんだ、この銀行は昔から。したがって、どっこいそうは簡単にいかぬということだけは、この機会に申し上げておきましょう。いかがですか。
  60. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 評判悪いみたいなお話ですが、一生懸命早期是正のための努力をしておられます。それとリストラを断行しておると聞いております。  金融債は銀行局長から。
  61. 山口公生

    政府委員山口公生君) 補足させていただきます。  ムーディーズのお話がございましたが、ムーディーズは民間格付会社でございまして、これが意見を言っているということでございまして、大蔵省当局として、これにどうこうコメントするのは適当ではないというふうに思っております。  金融債につきましては、いろいろな御議論がありますけれども、金融債につきましては、やはり基本的には発券している銀行が健全性を維持するということが一番大切でございまして、またそういうことで業務純益の積み上げとかリストラの自助努力をやっておりますので、それらを支援していくということだろうと思います。  それから、評判がよくないというふうな御指摘をいただきましたが、それは過去はいろいろあったかと思いますが、最近は非常に頭取初めいろいろな努力をされていると私どもは伺っております。
  62. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと答弁足りないんですが、与党政調会長の発言には大蔵省は何らかの了解を与えているんですか。
  63. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 政調会長は政調会長として、時折発言をします。連携は何もありません。
  64. 志苫裕

    志苫裕君 どうもありがとうございました。
  65. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  66. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  中東北アフリカ経済協力開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  67. 小島慶三

    ○小島慶三君 きょうは、大蔵大臣もお見えになっておりますし、西部君の雑誌その他で存じ上げている榊原局長さんもお見えでございますので、ひとつこういうことを伺ってみたいと思うんです。  それは、日本の発展途上国のテークオフについてのスタンスというか、これは一体どういうものであるかということがまず第一の問題でございます。  これは、私かつてメコン委員会におりましたときに、メコン川に十のダムをつくる、大開発をするというプロジェクトがありまして、それについていろいろ大変な議論をしたわけでありますが、フォード財団からこういう意見が出ましたので、それを今でも記憶しております。それはどういうことかと申しますと、メコン川にダムをつくれば毎年毎年のように繰り返される洪水がなくなる。洪水がなくなるということは、あの洪水というのは毎日一センチずつ水かさが増すようなそういう洪水ですから、日本のような猛烈な洪水とかそういうものじゃないんですけれども、洪水がなくなれば年三毛作、四毛作もできるような、そういう農業も不可能になる。そしてまた、大体げた履いていますから、家が、だから非常に高い。だから、それでちゃんと洪水の期間中は魚を釣ったり後ろの林の果樹をとったりということで、何の不自由もないというわけです。  それで、各戸で船を持っていますから、船で自動車がわりにどこへでも行けるというわけであります。そういう自然との調和した生活というものは非常に長く続いている。そういうものを、どうしてそれがいけないということで破壊するのだろうかというのがフォード財団の強力な主張でございました。私は、今でもそのことだけは覚えておるんです。日本がこれから援助する立場になりまして、そういった発展途上国のありよう、それから歴史的な伝統なり環境なり、そういうもののありようというものに対してどういうスタンスでいくのか、これをお伺いしたいというふうに思っておりますが、いかがでございましょうか。
  68. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先生御指摘のように、ただダムをつくるとか道路をつくるとか、そういうタイプの援助というものについての批判なり限界なりは国際社会からも広く指摘されているところでございます。現在でも環境問題への配慮というのが非常に重要なことになっておりますし、あるいは貧困問題あるいは農業問題、そういうものにどう取り組むかという、環境あるいはその社会の特性、貧困、そういうものに配慮した援助をしなきゃいけないんじゃないかというようなことが大きな世論になっております。私どもも、そういう大きな流れをサポートしながら意味のあるODAをやっていきたいと、そういうふうに思っております。
  69. 小島慶三

    ○小島慶三君 そういうことで、これからの視点の置き方をそういうふうにしていただけば大変結構だと思うんですけれども日本歴史なんかを考えれば、日本は明治のときには技術と、それからいろんな教育とかそういった面で大変に外国の文物を受け入れた。しかし、余り金は受け入れなかった。戦後の復興のときにはむしろ金を中心として受け入れて非常に早い復興を遂げた。しかし、その割にマイナスも大きかったと思うんですね。それが今、環境問題としてクローズアップされているということで、それとのつき合いというものをこれからも考えなきゃなりませんし、今国会にも環境のアセスメント法案が出ておりますから、そういう方向でぎっちりとやはり環境と手を結んでいくという姿勢が必要だと思うんです。  今度の中東の新しい銀行の場合に、そういう視点が織り込まれておりますでしょうか。タイトルからいいますと、中東平和のためとかなんとかいうことがありますけれども、本当にこれが中東平和の具体的な国づくりとかそういうことのためになるのか。二階から目薬というふうな危険性もあると思うんですが、その辺についてはいかにお考えでしょうか。
  70. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) まず、中東和平というものを促進するために今度の開発銀行ができたわけでございますけれども、その中でやはり非常に重要な問題は、あの地域貧困というものに対して積極的に取り組むということだと思います。その貧困削減することによって平和を長期的に維持するということが一つ設立の大きな目的でございます。  また、環境につきましては、今度の協定の中の十五条というところで「環境上の義務」ということを非常に明確に指摘しております。これは中東開銀のみならず国際開発金融機関の今大きな流れになっておりますけれども開発ということをする場合には環境に対する配慮というのは大変重要であるということで、協定の十五条に明確に今度の開発銀行についても規定しているところでございます。
  71. 小島慶三

    ○小島慶三君 非常に中東というのは生態系の不安定なところでもありますし、そういう特段の配慮が必要だろうというふうに私は思います。ぜひそういう方向で新しく対応を進めていただけるようにお願いをいたします。  それからもう一つ、ちょっと私わかりにくいんですけれども、これは先ほど来質問のありました方の問題点と重複するかもしれませんが、一つはこの銀行のテリトリーといいますか、そういったものがちょっとわからないんですけれども、この参加者を見ますと、サウジアラビアとかあるいは湾岸諸国、オマーンといったようなところは入っておりませんですね。だから、それはどうされるんでしょうか、これからも説得を続けて一緒にやるというふうなことになるんでしょうか。この辺を伺いたい。
  72. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) これは、先ほどからも述べていますように、イスラエル、パレスチナの中東和平、そういうものがきっかけになってできた銀行でございまして、そういう意味中東北アフリカというものがその範囲になっているわけでございます。  それで、御指摘のように湾岸諸国、サウジアラビア、クウェート等の湾岸諸国がこの銀行加盟していないのでございますけれども、これは湾岸諸国は、特にオイルマネーがたくさんあった時期以降、その湾岸諸国の中でさまざまな銀行なり基金なりをつくりまして、主としてイスラム圏の諸国に対して援助する仕組みができておりますので、そういう国々が今度の中東開発銀行設立意義そのものは理解しておるわけでございますけれども、今個々の国々がやっている、あるいはあの地域国々がやっている活動と重複するので今回の銀行には入らないということでございますので、将来にわたってのことは私がここでちょっと予測はできませんけれども、そう近い時期にそういう諸国が参加してくるということは聞いておりません。
  73. 小島慶三

    ○小島慶三君 例えば、イランはいかがでしょうか。
  74. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) イランは入っておりません。将来ともに余り入る可能性はないというふうに考えております。
  75. 小島慶三

    ○小島慶三君 そうしますと、中東問題にイランが影響力を持たないケースというのは恐らくないと思うんですけれども、ちょっとその辺が不備ではないかということが一つでございます。  それからもう一つ、今度の対象にはモロッコとかエジプトとかそういうところが入っておりますね。これは明らかにアフリカ開発銀行とは重複するのではないかと思われますが、その辺はいかがでしょうか。
  76. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 確かに、御指摘のように、この開発銀行一つ中東問題全部に対して抜本的な解決策というか、対策になるということでは必ずしもない。おっしゃるように、湾岸諸国とか、イラン、イラク等が入っていないということがあるわけでございますけれども、ただパレスチナ、イスラエルを初め北アフリカ諸国、あの地域和平というものにとってかなり重要な国々が含まれているということで、それなりの大きな意義はあるというふうに考えております。  それから、重複の問題につきましては、確かにアフリカ開発銀行北アフリカ諸国についてはカバレッジが重複するわけでございますけれども、これについては機能で二つの機関を分けるということをやっておりまして、中東開発銀行の方は民間対象にした投融資ということを中心にやる、アフリカ開発銀行の方は構造調整融資とか、民間ということではなくパブリックセクターを中心とした融資をやる、こういうことで機能的に二つのファンクションを分けているということでございます。
  77. 小島慶三

    ○小島慶三君 わかりました。  その辺で両方の調整ができるのかと思いますけれども、できるだけ日本の悲願である中東和平がこういった機関組織を通じて進められるように私は期待をかけております。  それから、もう一つお伺いしたいのは、先ほども同僚議員から御質問がありましたように、日本は今財政危機ですね、まさに。ですから、恐らく、恐らくというか、そういうことに対してあらゆる施策が向けられなければいけないというのが現在の時点の要請だろうと思います。そういう時期に、あるいは理財局の方は直接そういった財政問題にタッチしないということであるかもしれませんが、こういうふうな資金を次々と出していくというふうなことについて私は少し疑問に思っております。だから、全般として国際開発銀行に対する出資にも考えられることでありますが、なぜこの時期にそういった金を出さなければいけないのかというのが私の疑問でございます。そういう点についてわかりやすくお教えいただければと思います。
  78. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 確かに、御指摘のように、日本のODAは絶対額では世界一位のレベルに達しておるわけでございます。九五年の数字でございますけれども日本がトップで百四十五億ドルというようなことでございますけれども、ただ日本のODAも、GNP対比で見ますとまだヨーロッパ諸国の方がGNP対比では大きいということで、例えばフランスなどはGNP対比で言いますと〇・五五%ということで、日本は〇・二八%でございますから、欧州諸国は伝統的にかなりODAを多く出しているという事実はございます。  ただ、御指摘のように大変な財政危機でございますから、ODAといえども聖域ではない、我々も効率的なODAの執行に心がけていかなければいけないというふうに思っております。ただ、マルチの機関に対するこういう資金の提供というのは比較的私ども効率のいい援助の仕方の一つではないかというふうには考えておりますけれども先生御指摘のように、ODAといえども聖域ではないので、今後予算の執行については十分配慮していきたいというふうに思っております。
  79. 小島慶三

    ○小島慶三君 それから、これは今の件に関連して感ずることでありますけれども、例えば世銀とか上部の国際金融機関を通じて金を出す場合と、それから直接に二国間交渉で金を出すといったような場合、ちょっと先ほどもそういった御質問がございましたけれども、この点の優劣というか、そういう点はどういうふうに考えたらよろしいでしょうか。  例えば、中近東の今非常に大きな問題になっている水の問題ですね。ああいうふうなものに対して集中的に金を出すということは、大いに直接的な相手に対する外交的なインフルエンスとか、そういうものもあると思うんですけれども、しかし、全体の中東開発銀行の中で若干の金を出すというのでは、そういったプロジェクトに対しての影響力というのはそう出てこないというふうに思うんですけれども、薄くばらまいてしまう方がいいのか、それとも集中的に、例えば二国間でさっき言ったような問題に集中して金を出すとか、そういうふうなことについての優劣、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  80. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) バイの援助とマルチの援助とどちらがいいかというのは、これは一概にどちらがいいというふうに言えない問題だとは思いますけれども、確かに国際開発金融機関に対する資金の提供というのは、顔が二国間援助に比べて見えにくいということはあるわけでございます。  ただ、国際開発機関を通じての援助の幾つかのメリットというのは、例えば地域全体の開発、今メコン川流域なんということをやっておりますけれども、そういう場合にはなかなか二国間援助でそれをうまく組織するということができにくいことがございますので、そういう意味でのメリットがあるというのが一つ。それからもう一つは、やはり国際機関の持っていろいろんな形でのエキスパーティス、技術、そういうものを使うことができると、そういうメリットがあるわけでございますから、国際機関に対する援助もバイの援助もうまく組み合わせて、そして有効に活用するということではないかというふうに感じております。
  81. 小島慶三

    ○小島慶三君 これは最後の御質問になるかと思いますが、先ほど来、こういった財政危機のもとでも日本は国際的な役割を果たすという意味から、こういった仕組みが必要であるという話もありましたのですけれども、それはそれとしてわかるんですけれども、例えばどこの地域についての日本出資は第一位であるとか、それからIMFについても第二位とかいうようなことで、かなり高い地位を占めているんですね。今、日本の実力は恐らくイタリー並みだと思うんですけれども。  そういった点から見て、この際は多少対外的なそういった意味のある出資でも抑えていくというのが本当じゃないかと私は思うんですけれども、いかがなものでございましょうか。
  82. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま財政構造改革のいよいよ本番の審議に入ります。そういう中で、聖域を設けないということでございまして、ODAといえどもまさにその中に入ります。量より質ということで九年度予算編成をしたつもりでありますが、やはり貴重な国民財産、税金を出します以上、そのことが有効でバイの関係地域に対しても信頼が増すものでなければなりません。御提言は、私どもの基本的な方針と一致であります。
  83. 小島慶三

    ○小島慶三君 若干時間が残っておりますが、これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
  84. 山口哲夫

    山口哲夫君 予定していた質問、ほとんどもう全部終わったようなものですけれども、やめるわけにいきませんし、少し具体的に立ち入って質問してみたいと思います。  まず第一に、世界銀行の収支決算についてですけれども、九六年度の単年度の純益ですね。それと、これまでの累積留保利益、この正確な金額を教えてください。大ざっぱな数字なんですけれども、間違いなければ、この単年度の純益はたしか日本円にして千五百億円くらいと踏んでおります。それから留保利益、いわゆる累積黒字と言っておりますけれども日本円にして一兆九千三百億かなと思っております。もし違っていたら後から訂正してください。  それで、先ほど来出ておりますように、これだけの黒字を持っているわけですから、財政再建、日本の重大な政策を考えたときに、もう少し出資の方に回してもいいんでないかなと私は実は考えていたわけです。そうすると、日本が今回は二千三百四億円ですか、出すわけですから。全部出せとは言いませんけれども。  先ほど局長の答弁では、今回、随分IDAの方でもいろいろな面から出資はしておりますというお答えがありましたけれども、具体的にそれでは今回どのぐらい全部で増資するのか、その全体の金額と、それからIDAの方として、どういうところからどのくらいの資金をつぎ込んでいるのか、その辺をちょっと具体的に説明してください。
  85. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先ほどの、純益及び留保利益でございますけれども、九六年度の純益は約十二億ドル、九六年度末時点での留保利益は百六十一億ドルでございます。
  86. 山口哲夫

    山口哲夫君 日本円にして。
  87. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 日本円にしますと、十二億ドル、千五百億円程度でございますね。百六十一億ドル、大体これは二兆弱ということでございます。  今回、おっしゃるように、日本だけではなくて先進国の財政事情は極めて厳しい折でございますので、今度のIDA融資規模、二百二十億ドルというのが融資規模でございますけれども、このうち約百億ドルを世銀グループ自己資金で賄うというふうにしておるわけでございます。その中で、世銀の留保利益につきましても、各年度の純益の発生状況を勘案しつつ総額十二億ドルの活用が目標とされております。世銀の九六年度、今申し上げました純益の中からも六億ドルがIDAに移転されたところでございます。  なお、留保利益の額につきましては、不測の事態に備えるための準備金が大きな部分を占めておりますので、世銀融資規模等を勘案した場合に、健全な財務体質を維持するために必要な水準ということになっておりまして、この留保利益をすべて吐き出すというわけにはいかないと。特に、世界銀行等民間の市場で資金を調達いたしますので、こういうのを吐き出しますと逆に調達資金のコストが上がってしまうと、こういう問題もございますので、おっしゃるように、世銀あるいは国際開発金融機関の内部資金をできるだけ充当して、増資に当たっての各国負担を減らそうということは、これはこのIDAだけではなく、いろんなところで努力しているところでございます。
  88. 山口哲夫

    山口哲夫君 確認しますけれども、今回、自己資金は六億ドルですか。
  89. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 六億ドルでございます。
  90. 山口哲夫

    山口哲夫君 そうしますと、百六十一億の留保利益があるわけですね。百六十一億も累積黒字を持っているわけですね。そのうちの六億くらいというとまことに微々たるものでないかなと思うんですね。  それで、今局長がおっしゃるように、信用関係からいきましても全部吐き出すということにはならないことはよくわかります。しかし、少なくともこれは一割や二割くらいは吐き出しても別に大勢にはほとんど影響ないと思うんですが、そういうことを考えたことはありませんか。
  91. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 確かに、九六年度の留保利益からは六億ドルIDAに移転されたということでございまして、九六年の留保利益は先ほど申し上げましたように十二億ドルということでございますから、この十二億ドルのうち半分を割いてIDAに移転をしたということでございます。  おっしゃるような視点というのは、当然私どもは持っておりまして、できるだけ内部資金増資を補うということ、ただその際に国際開発金融機関の市場における信用というものに傷がついてはならないということでございまして、例えば同様のケースがIMFで金を売却して増資に充てたらいいじゃないかというような議論がこのところ二、三年ずっとされておりますけれども、それも我々の、出資国負担を減らすということと、IMFの市場における信用と、そのバランスをどこでうまくとるかということだというふうに考えております。
  92. 山口哲夫

    山口哲夫君 いや、おっしゃることはわかりますよ、信用関係は。しかし、私が言っているのは、累積黒字が百六十一億ドルでしょう、そのうちの六億ドルだけでしょう、金額で比較すると。これじゃ余りにも少ないんじゃないんですか。九六年度単年度で言えば約半分でしょうけれども、全体からいくとちょっと少な過ぎないですか。これをもう少し出していただければ、二千三百四億の日本出資が半分でも済むんでないんですか。そういうことを、どうして主張されませんでしたかということなんですよ。
  93. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) おっしゃることは非常によくわかりますけれども、それぞれの機関がどの程度の留保、準備金を持っているかということに対して大体の基準がございまして、世界銀行の場合には大体一四・二五%ということがほぼその妥当な基準であろうというふうに考えられておりまして、今大体そういう水準に達しているということでございます。  これが、また単年度の純益がどんどん上がってくるようになればそれを当然使うということでございますけれども、今健全性の維持ということで、持っておりますものを次々崩していくということは、先ほど申し上げましたような市場への信頼ということとの兼ね合いでなかなかできにくいということでございますけれども、御趣旨は非常によくわかりますので、私どもとしても市場での信頼を傷つけない範囲で、できるだけそれぞれの機関が持っている手金で増資等をやっていくということに努めていきたいというふうに思っております。
  94. 山口哲夫

    山口哲夫君 一四・二%という数字について、今結構ですけれども、その積算根拠を教えてください。実際に本当に一四・二%なのか。そして、一四・二%がどういう理由でそこにそういう数字がはじかれているのか。これは非常に微妙なこともあると思うんです。その数字を後ほどで結構です。時間が恐らくないでしょう、今すぐ出ないでしょうから。  それで、先ほど来たくさんいい意見が出ていましたですね。中東和平に本当に貢献するんですかとか、あるいは貸し出し地域の国民の生活に直接結びつくような形で我々は融資してほしいという気持ちはたくさん持っているわけですね。そういうことが、どうしてきちっと主張されてこないのかなと私なりに考えたんですけれども先ほどお話が出ているように、上級職員の数というのが物すごく少ないんですね。私もこの資料を見て実はびっくりしたんです。日本というのは大体二〇%も出しているわけですからね、出資額が。そうしたら二〇%くらい職員を出したっておかしくないんですけれども、一番多いのはアメリカで二六%ですね、四千三百六人のうち。日本は八番目で二・三%、九十七名しかいないんですね。その間に、もう先ほど来出ているようにインドからフィリピンまでずっと入っているわけです。  さっき局長がおっしゃったように、随分難しい問題があってなかなかそれが出にくいんですと。局長自身が行ったころには大変あっちのIDAの賃金もよかったけれども、今だったら逆転していますという話ですね。しかし、だからといって日本からもっと送らなくていいかといえば、私はそういうことにならないと思うんです。特に、大蔵省の職員の方々はできるだけ国際的な感覚を身につけていただきたいし、我々国会の意見というものも、こういう国際機関の中で大いに反映させてほしいんですよ。そのための、何らかの方法があるんでないんでしょうかね、どうですか。
  95. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 午前中もそういうお話がございまして、幾つか構造的な問題があるというふうに申し上げましたけれども先生のおっしゃるとおりで、世界銀行等国際機関での職員の数、特に上級職員の数をぜひふやしたいというふうに私ども非常に強く希望しております。そういうことで、実はこの一年、二年、これから先もできるだけそういうラインで日本の職員を採ってくれというようなことを世銀に要望しておりまして、特に上級ポストに採ってくれというようなことを要望しております。  これは、いわば一つの国際政治の駆け引きみたいなところが一方であるのと、一方ではやはり上級職に向くような能力、資質を持っている人を充てなければいけないということでございまして、できるだけ先生のおっしゃるように上級職を採るべく我々としても努力をしたいと思っておりますし、例えば賃金が余り高くないとか、そういうことはあるわけではございますけれども、まあ生活のコストはむしろワシントンの方が東京より安うございますから、そういう意味でそこそこのものは出るわけでございますから、使命感を持って長い期間そういうところで働くという日本人ができるだけ多く出てきていただきたいと思っておりますし、我々もこのことの最大限の努力をするつもりでございます。
  96. 山口哲夫

    山口哲夫君 意欲はわかるんですよ。失礼だけれども、言葉ではよくわかります、それは。しかし、それじゃ具体的にどういう手を打ったら今局長がおっしゃったようなことが実現できるのかなと。  例えば、賃金の差額を何とか面倒見たらどうですかという話をすれば、恐らくそれはIDAの方で余り好まないんですと、そういうひもつきの人はとおっしゃるでしょう。しかし、もう少し工夫してみたら、それは賃金だけで払わなくたっていろんな出し方というのはあると思うんですよ。それはせっかく行ってもらうんですから、生活だけはきちっと日本にいるときと同じように保障してあげるべきだと思うんです。そこをやっぱり知恵を働かして、もう少し考えて、できるだけ多くの職員を出して、我々の主張も大いにひとつ通していただきたい、こう思います。ちょっと大臣の御意見いかがですか、そういうことについて。
  97. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 局長が苦心の話をされております。そして、再度の御質疑に決意の一端を言われておるわけでございまして、私もさらにサポートしながら、我が国の、大蔵省と言わず各省にも世界的な展開の中で勉強をしたいという公務員がおられると思いますので、そういうことで勤務いただくということをしていきたいと思っております。世銀への就職を希望する日本人を対象とする世銀日本人奨学金制度、後ほど局長ちょっとエッセンスを言ってください、この創設に向けて努力をしようと、こう思います。
  98. 山口哲夫

    山口哲夫君 特に上級職員をたくさん送っていただきたいと思いますので、その点十分今後検討していただきたいと思います。  最後に、アメリカが随分滞納しているんですね。先ほど局長の答弁では九億三千五百万ドルも滞納していたけれども、あと残っているのは二億三千四百五十億ドルになりましたと。これも九八年度の議会で決められれば出るようになっておりますというんですけれども、何といっても第一位の出資国がそういう、国連もそうですね、国連も調べたらやっぱりアメリカが第一で二五%、そして二番目が日本で一五・六五%。だから、大体日本が国際的なこういう機関に対する分担というのはアメリカに次いでいるわけですね。そうすると、やっぱり第二位の日本がもう少しアメリカに対して私は物を申すべきだと思うんですよ。遠慮し過ぎているんじゃないですかね、少し。  それで、思い出して古い新聞出してみたんですけれども、湾岸戦争のときに日本は九十億ドル、約一兆円出しましたね。ところが、アメリカでこの湾岸戦争の決算をしたら何と五十億ドルの余剰金が出たというんですね。五十億ドルというと、約百円で計算しても五千億ですか。これどうして返すように日本が言わなかったのかなと思うんですね。アメリカ議会の中でさえ、これだけ余剰金が出たらこれは出してくれた国に返さざるを得ないだろうなという意見が出ていたというんです。そのくらいの情報を日本の大使館でキャッチしていないはずないと思うんですね。日本はそれでなくても財政苦しいときなんですから、余ったんなら返してくださいというくらいのことを言わなければ、これはやっぱり国民としては納得できないと思うんですよ。どういうことについて、大臣の決意を聞かせてください。
  99. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 私も外務大臣をやりましたが、同盟国の間においては、意見を闘わすところから本当の意味の同盟が生まれます。そういうつもりでやってきたのでありますが、今後も御指摘の点、まさにそういうことでございまして、国民代表としてそれぞれのポジションでキャリアの諸君も頑張るわけですから、国会代表もそうでありますし、国会の皆様方がかの国に行きまして、またこちらの国に行きまして、いろいろと日本の秩序を正すべき点を正しながら議員外交をやられておりますが、やはりGGの関係政府ということになりますので、その点は御激励しかと受けとめながら今後ともそのように取り組んでまいりたいと、こう思います。
  100. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 若干補足させていただきますけれども、このアメリカの滞納の件については、ヨーロッパ日本とも非常に強い態度をとっておりまして、実はIDAについても、アメリカが滞納している分についてはアメリカ企業を入札から排除しょうというようなことまでヨーロッパ日本が言ったわけでございます。そういうヨーロッパ日本の極めて強い態度が反映されて、アメリカが滞納の解消ということに積極的に動き出したという経緯がございますので、かなり強い態度でアメリカに挑んでいるということはわかっていただきたいと思います。
  101. 山口哲夫

    山口哲夫君 信用しましょう。終わります。
  102. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この委員会と別の委員会とが重なりましたので、これまで皆さんの審議を全然聞くことができませんでした。したがって、全く繰り返しの質問にもなるかもしれませんけれども、お許しを願いたいと思います。  まず、戦後世界の特徴の一つは、私は経済の問題、福祉の問題、国民生活の問題というのを平和、安全保障の問題と同じく重視して、こういう問題も一国の責任に任せないで国際協力によって国際的な解決を図ってくる、そういうことが国連憲章で提起されて以来の一つの重要な特徴だと思います。しかし、そういう提起があるにもかかわらず、世銀でもIDAでもそういう役割を果たしていないということが現在の問題ではなかろうかと思います。そして、人口の多数を占める発展途上国と発達した資本主義国との格差はだんだん大きくなっているということがいろいろな形で指摘されているところであります。  そこで、まずお伺いしますが、人口一人当たりのGDPの成長率、先進国と途上国と分けて知らせてください。それから、一人当たりのGDP、これも低所得国と高所得国とに分けて報告していただきたいと思います。
  103. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) まず、一人当たりのGDPの成長率でございますけれども、先進国が七八年から八七年の平均が二・〇%でございます。九五年にはこれが一・四%になっております。それから、途上国は七八年、八七年の平均が二・一%、九五年は四・二%ということでございます。ただ、途上国の中、これは二極分化しておりまして、アフリカは七八年から八七年の平均でマイナス〇・七%、アジアは四・七%という、かなりアジアが高い成長をして、アフリカがむしろ成長が下がっているというような状況でございます。ちなみに、九五年のアフリカの水準は〇・三ということでございますから、このところ若干よくなってきているということでございます。  それから、人口全体に占める貧困人口の割合の推移でございますけれども、人口全体に占める一日一ドル以下で生活する貧困層の割合ということでございますけれどもIDA対象国を全体として見ますと、一九八七年に三八%、九〇年に三七%、九三年に三六%という数字になっております。
  104. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今、アフリカは若干よくなっているということですが、マイナスでなくなったというだけでありまして、格差はやはり広がり続けているということが言えるわけでありまして、先進国と発展途上国との開きはおさまる方向に向かっていないと。  それから、一人当たりのGDPですが、私の別のもらった資料ですと、低所得国が三百九十ドルですか、高所得国が二万四千百七十ドルと、実に六十倍以上、こういう開きが現にあるという、これ九六年の数字ですかね、これは間違いありませんね。
  105. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 間違いございません。
  106. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 こういう形で、やはり発展途上国と発達した資本主義国との格差が極めて大きく、それがまだ縮まるに至っていないという問題を抱えているわけであります。  どうして、こういうことの解決ができないでいるのかということですが、私は、このIDAの問題が論議になりました平成五年三月二十九日ですか、大蔵委員会でこの問題について論議したときに、世銀IDAが近年、構造調整融資に力を入れて、その結果、アフリカでは貧困を招いたと言われるような事態を幾つかの国連経済機関などの文書も挙げながら指摘して、こういう問題の解決について強く要望しました。その後も私、資料を読んでみましたけれども、例えば発展途上国を代表するグループ24の報告書は、調査計画は、構造調整の調査計画に関連して、その内容は、「実質賃金の引き下げ、政府支出の削減であり、大幅な平価切り下げ、輸入自由化措置が付け加わる。その結果調整の負担は債務国側に一方的にかかり、ネットでの資金の流出、生産高と雇用ならびに一人当たり所得の減少に帰結」するに至ったと、こういうふうにして強く批判していると。つまり、所得の減少が結果としてあらわれていると、こういう文書も出しているわけですね。  私がこの問題を提起したのに対して、当時の林大蔵大臣は、役所の方にももっともっと勉強するようによく言っておきますと、こういう答弁でありました。私は率直に言って、こういう実態についての調査が当時非常に不十分だと思いました。その後、林大蔵大臣の指示に従ってよく勉強なされた結果、この実態をどのように把握しておられるか、こういう実態が改善しているというのかどうなのか、お伺いします。
  107. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先生御指摘のように、世界銀行構造調整融資構造調整融資と申しますのは、持続的な経済成長達成のために経済構造全体を変えようと、こういう政策でございまして、例えば民営化とか輸入の自由化とか、そういう規制の緩和を含む構造改革をしようと、そういう条件をつけた融資、これを構造調整融資と呼んでおるわけでございます。  ただ、この構造調整融資にはいろいろ批判がございまして、まずそういう条件が画一的過ぎやしないか、つまり欧米的なものを一方的に押しつけているんじゃないかと、こういう批判がございます。それからまた、融資の条件が厳し過ぎる、厳し過ぎることによって途上国に大きな負担を課しているんじゃないかと。それから、例えば民営化とか輸入の自由化とかという規制の緩和の政策等が貧困層に悪影響を与えるんじゃないかと、こういうような指摘があるわけでございます。この指摘の中にはかなり重要な示唆を含んだものもあるわけでございまして、これは大蔵省内でも勉強してまいりましたし、世界銀行自体がこの問題に相当積極的に取り組んできております。  例えば、現地事務所等を使って借入国との政策対話を十分やるというようなことをやってきておりますし、また今、世銀の総裁がやっている行政改革の一環として、地域の担当者はできるだけワシントンに常駐させないで地域に常駐させる、そういうようなことをして対話をより強めていくというようなこと。それから、確かに構造政策というのは規制の緩和等があるわけでございますが、これはやはり社会的摩擦、コストが非常に高いわけでございますから、そういうものについてセーフティーネットをつくると、セーフティーネットをどうつくるかというようなことを構造調整融資の中で考えていくというようなことをやっているわけでございまして、その構造調整融資の従来までの問題点を解消するための努力世銀も積極的にしておりますし、私どももそれを積極的に支持していきたいと、そういうふうに考えております。
  108. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今、こういう問題について打開されているというお話ですけれども、最近出版された「世界銀行は地球を救えるか」という朝日選書がありますが、この本の中にも構造調整融資を受けた途上国に何がもたらされたかの豊富な資料がたくさん紹介されております。  その中には、例えばアフリカのジンバブエの例を見ますと、コーリン・ストンマンというイギリスのヨーク大学の教授の研究ですけれどもアフリカ諸国の中でも、世銀構造調整融資を受ける前、例えばジンバブエの経済は比較的うまくいっていたと。ところが、九〇年、九一年に構造調整融資を受け、通貨切り下げ、最低賃金制の廃止、価格統制の廃止、保健、教育の利用者負担実施など一連の経済政策パッケージを受け入れた。その結果、アフリカで最高水準を誇っていた保健、教育水準の記録を元も子もなくしてしまったと、こういうふうな例とかいろいろ書かれております。そして、日本海外経済協力基金がまとめた文書の中にもこれは非常に問題があるということを幾つか挙げて書いているわけです。  こういう資料を見ると、最近出された本でもそういうことの指摘が続いているわけですね。しかも、格差先ほどの数字でもあるように開く一方。私は、これはまだ解決していないし、根本的にこれまでのあり方を検討していかなければ、これが戦後世界で期待された形、役割を果たさないところか、結果が貧困を招いたと言われるような事態では根本的に問題があると思うんです。  こういう点で、私は、日本世界銀行のこういう政策に、こういう援助方式にどういう態度を今後とるのか、世銀自身がこういうことをはっきりとまずかったということを認めて本当に是正に向かっているのかどうなのか、ちょっとお伺いし、もう時間も来るようですから、結論的に大臣の御意見もお伺いしたいと思います。
  109. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 御指摘のような批判は大変強くなっておりまして、一方で構造調整融資そのものは私ども重要だと思っております。経済構造、社会構造を大きく変えないとなかなか貧困というものを省くことはできないということでございますけれども構造調整融資がやはり歳出の大幅な削減とか、大幅な規制の緩和とか、そういうことが中心なものですから、非常にいろんな意味でのコストが高い。そのコストをどうやって削減していくかということが非常に重要な課題になっております。  実は、今度の世銀の総裁は非常に積極的で、そういう今までの問題点の指摘に積極的に耳を傾け、大きな改革をしていこうというようなことを現在やっておるところでございます。例えば、農村における雇用ということが非常に重要だと、農村における雇用の拡大を推進するようなそういうプロジェクトをつくっていこうとか、最貧困層、そういうものに実際に確実に届くようなそういうプロジェクト、例えば医療とか保健とか教育、そういうものに重点を移していこうとか、そういう努力を非常に積極的に始めております。  今後とも構造調整融資をやる傍ら、こういう貧困層に向けての、あるいは農村の貧困というものに対しての、そういうプロジェクトを同時並行的にやっていくということが大変重要だということは、こういう機関でも非常に強く認識されておるところでございまして、例えばNGOとの対話なども積極的に拡大しているというのが現状でございます。
  110. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま御指摘のような九〇年代の初頭に行われました批判、対応が画一的であるという点については存じております。局長が言われましたその趣旨、まさに大事なポイントでありますから、国際会議等において総裁の新しい観点の対応も出ておるわけですから、サポートしてまいりたいと思います。
  111. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今、もう一つ議題になっております中東北アフリカ経済協力開発銀行というのにしても、こういうことの根本的な転換なしに銀行をつくっただけでは決して本来果たさなくちゃならない目的を果たすことができないと思います。その点で、私は中東・北アフリカ開発銀行についても幾つか質問したかったんですけれども、もう時間が来ましたので、これは世銀IDAの問題と共通の考え方で進んだり、それからこの条件の中には明らかに民族自決権の尊重でなく、やはり条件をつけるというものがあるというふうに思います。  時間が来ましたので、これはまたの機会にして、終わります。
  112. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  113. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、日本共産党を代表して、国際通貨基金等への加盟措置法の一部改正案に反対の討論を行います。  本法案は、世界銀行に対する我が国出資割合をふやすことに伴う追加出資を行うとともに、第二世銀増資に伴う追加出資を行うものであります。  途上国に対する経済援助において、国際開発機関は大きな役割が期待されています。しかし、世界銀行は戦後アメリカ世界戦略の一翼を担ってきたものであり、現在もその本質は変わっていません。その構造を維持したまま我が国出資をふやすことはアメリカの戦略の肩がわりの性格を持つものであります。  その活動内容についても、融資に際して途上国に過酷な条件を押しつける、いわゆる構造調整融資が近年重視されており、途上国の貧困を一層深刻にして、健全な経済発展を抑える役割すら果たしている事例も多く報告されています。  以上が本法案に対する主な反対理由であります。
  114. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  115. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、荒木君から発言を求められておりますので、これを許します。荒木君。
  116. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 私は、ただいま可決されました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合、民主党・新緑風会、新社会党・平和連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国際通貨基金及び国際復興開発銀行への     加盟に伴う措置に関する法律及び国際開     発協会への加盟に伴う措置に関する法律     の一部を改正する法律案に対する附帯決     議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべき  である。  一 国際機関の運営等に当たっては、人材面等   での協力を進めるとともに、主要出資国にふ   さわしい指導力の発揮に努めること。  一 国際機関への我が国からの出資及び拠出等   の支援について、納税者の理解を得られるよ   う、その活動内容の透明性の確保に努めるこ   と。  一 国際開発金融機関について、それぞれの特   性を踏まえて役割分担を明確化するなど、全   体として効率的な運営に努めるよう働きかけ   ること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  117. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいま荒木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  118. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 多数と認めます。よって、荒木君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣。
  119. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
  120. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  122. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 次に、去る三月二十六日、予算委員会から、本日午後の半日間、平成九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、大蔵省所管国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査の委嘱がありましたので、本件を議題といたします。     —————————————
  123. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  委嘱審査のため、本日、参考人として国民金融公庫総裁尾崎護君、日本開発銀行総裁吉野良彦君及び日本輸出入銀行総裁保田博君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  125. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) それでは、委嘱されました予算について三塚大蔵大臣から説明を聴取いたします。三塚大蔵大臣。
  126. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 平成九年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十七兆三千九百億四百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及び印紙収入は五十七兆八千二十億円、雑収入は二兆五千二百一億四千三百万円、公債金は十六兆七千七十億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は十八兆七千四百八十八億八千八百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れば一千七百十五億四千百万円、国債費は十六兆八千二十三億二千九百万円、政府出資は四千六十億円、予備費は三千五百億円となっております。  次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百六十九億九千七百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。  国民金融公庫におきましては、収入四千十五億九千四百万円、支出四千二百十億一千八百万円、差し引き百九十四億二千四百万円の支出超過となっております。  このほか、日本開発銀行等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、既に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  127. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 以上で説明の聴取は終わりました。  なお、お手元に配付いたしております詳細な説明書を本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  129. 清水達雄

    ○清水達雄君 委嘱審査でございますので、やや雑多な御質問になるかと思います。  まず第一でございますけれども、二十六日の新聞に、土地の流動化策、政府が概要をまとめるというふうな記事があるわけでございます。例えば五百カ所、簿価二千億円ぐらいの土地につきまして、公共用地の先行取得として取得をするといった内容でありますとか、それからいわゆる虫食い地などにつきまして土地区画整理事業を推進しながら、整形化した土地に整備をして有効利用を図るとか等々のことが書かれておりますけれども、これについては総理大臣から大蔵大臣に対して要請があって、三月三十一日に発表されるというふうに聞いているわけでございますけれども、まず最初にその概要といいますか、スケルトンについて御説明をお願いいたします。
  130. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  去る十八日に、担保不動産等の流動化を進め、不良債権問題の処理を促進し、市場活性化を図っていくことが大変重要だという認識に立ちまして、総理大臣の方から大蔵大臣の方に御指示がございました。そこでは、大蔵省におきましては、昨年十月に担保不動産等関係連絡協議会を設置し検討してまいってきているところでございますけれども、その検討をより進め、三月中に担保不動産等の流動化の総合対策を取りまとめてほしいという御指示がございました。  したがいまして、今鋭意進めておりまして、今先生の御指摘のような虫食い、不整形の担保不動産をどうするかとかという問題について今至急詰めておるところでございます。
  131. 清水達雄

    ○清水達雄君 今のお話にちょっとなかったのですけれども、その五百カ所で二千億円以上の土地の先行取得というふうなことが書いてありますけれども、こういうのを盛り込まれるのかどうか。それからこの取得のための資金ですね、公共用地先行取得債などを活用してやろうとしているのか、その点についていかがでしょうか。
  132. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、鋭意検討しておるところでございますが、今御指摘の先行取得債の活用をやるということ、それから箇所が何カ所か等については、今鋭意検討しているところでございます。
  133. 清水達雄

    ○清水達雄君 今のような事柄が、こういうことを推進するという発表の中に含まれるのかどうかというのが一つ。それからもう一つは、虫食い地をいわゆる整形化して有効利用ができるようにするという事柄でございますけれども、これは我々も以前から、こういうことをやって有効に利用できるような形にしないとなかなか不良債権担保土地というのは活用されないという心配をしておりまして、建設省なんかにもよくそういうことをやったらどうかということを言っていたんですけれども、やっと大蔵省と建設省とうまく連携がとれて、こういうことが推進されるということで、私大変結構だというふうに思っているわけですが、こういうのを進めるにはモデル的にある程度円滑にこういうように進むぞというふうなことを見せてやるということも非常に大事だろうと思います。  この新聞によりますと、七カ所を選定して官民共同で有効利用するというようなことが書いてありますけれども、この辺についてどんなことをお考えになっておるのか、お伺いいたします。
  134. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生のお尋ねで、先ほどの御指摘のような点が発表に含まれるかという点については、含む予定で検討しております。  さらに、その虫食い、不整形の問題というのは大変重要な問題で、これがある意味ではちょっとネックになっているというのは御指摘のとおりでございまして、大蔵省、建設省、国土庁等関係者が今真剣に取り組んでおります。御指摘のように、ただ抽象的なことを言うだけではなかなかそのイメージもわかないし、具体的にどういうふうに進むかということを国民の皆様にもお示しすることができないという懸念がございますので、御指摘のように、具体的に典型的な例を幾つか選びまして、その有効利用策を官民合同で検討していこうというような、今御指摘のような方向でやっておるところでございます。
  135. 清水達雄

    ○清水達雄君 次に、財政構造改革の問題に触れたいと思うんですけれども、それの基本的考え方というぺーパーを私見ているんですが、この中で、財政赤字の対GDP比を三%にする、それから赤字国債の発行をゼロにするというのを二〇〇五年までのできるだけ早期にやるんだ、こういうことを言っておられますが、赤字国債の発行ゼロというのはよくわかりますけれども財政赤字対GDP比三%という、この財政赤字の定義というのはどういうことになっているんでしょうか。
  136. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 国、地方を通じます一般政府財政の赤字ということでございます。
  137. 清水達雄

    ○清水達雄君 それで、いわゆる経済審議会で検討した財政と社会保障の関係の検討結果の報告書を見ますと、一九九四年度における一般政府財政赤字が二・六%、これが二〇二五年には現状のままで推移をしていくと一四・七%にふえるというふうなことが書かれているわけでございますけれども、今おっしゃった一般政府財政赤字というのはこの資料に書いてあるとおりのことなんですが、これが一九九四年度に二・六%であったとしたならば、いわゆる平成九年度の予算とそれから政府経済見通しをもとにするとどの程度の赤字  になるのか、教えてください。
  138. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 委員御指摘の二・六%という数値は経済審議会のシミュレーションに示されている数値でございます。  これは、政府の中にも社会保障のように、年金のように、将来の給付のために保険料を今いただきまして、それを支払うと。その期間の支払いと収入のギャップで一定期間黒字がたまります。そういうものを社会保障基金と言っております。こういうものは一般政府と性格を異にいたしますから、普通見ます場合にはそういうものは外すわけでございます。それで、二・六の中には社会保障基金の黒字分が入ってございます。黒字分を除きますと大体五・七ぐらいになります。この五・七に相当する一般政府の赤字でございますが、国、地方を通ずる赤字でございますけれども、お尋ねの九年度の数字はGDP比で五・四%でございます。これを、できるだけ早い時期に三%に落とす努力をするということでございます。
  139. 清水達雄

    ○清水達雄君 財政構造改革会議で、前提条件として、「財政の危機的状況と破局の危機」なんというところに書いてあるベースの数字と、それから三%という目標の数値とが違うものを使っているということになるわけですね、そうすると。
  140. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 委員が引用されました経済審議会が昨年の十月シミュレーションをしたわけでございます。それは、今の財政の仕組みなり制度なりをそのまま放置した場合にどういう財政経済の姿になるかということを示したものでございます。最終的には二〇二五年にどうなるかという数字を示しておるわけでございますけれども、その数字は、私が先ほど申し上げましたように社会保障基金の黒字分を含んでおります。したがいまして、初年度の発射台は低くなっております。という違いはございますが、政府財政再建目標として掲げておりますGDP比三%以下でできるだけ早く赤字を減らしたいという場合の三%は一般政府、通常の一般会計でございますとか、そういう部門の赤字でございます。
  141. 清水達雄

    ○清水達雄君 そうすると、平成九年度で五・四%の赤字を三%に持っていきたいということですね。  こういった財政改革議論を今後やっていくに当たりまして、現状がどうなっているかという足元を固めて、将来の展望につきましてもいろんなケースの試算を提示して、そこで議論をしていかなくては国民の理解も得られないし、我々検討する側もそういうものが必要なわけです。だから、経済審議会のああいった資料に任せずに、財政構造改革会議できちんとしたものを、これは大蔵省がっくるのかどうするのかよくわかりませんけれども、そういうものをつくって、私は議論をすべきではないかというように思うわけでございます。その点についてはいかがでしょうか。
  142. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 委員が引用され、私どもも長期的に財政の状況が非常に深刻であるという場合に、経済審議会が試算されたシミュレーションというのを一つの例示として引用したりはいたしますが、その数字がベースになっているわけではございません。ただ、大まかな傾向としては、社会保障基金を含めましても、社会保障基金の黒字は将来は減ってまいりますからそう大差はないわけでございます。ということで、大まかな姿を見る場合にこういう例がございますということで引用しているものでございまして、計画のベースになっているものではございません。
  143. 清水達雄

    ○清水達雄君 だから、あれを私もざっと見ましたけれども、前提条件の置き方がよくわからなくて、本当のところよくわからないのですよ、もっと詳しく聞かないと。しかし、そういうことではなくていろんな仕組みをこういうふうに変える、あるいは税がどうなるかというふうなことで、幾つかの選択肢をつくって、その姿を見せるということが私は必要だろうと思うんです。そういうことをぜひ御検討いただきたいというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、今非常に財政状況が悪いことについて、評論家等は、いわゆる経済対策で補正で公共事業をどんどんやって、その国債がたまったから悪いんだというような言い方をする人がかなりいたりするわけです。平成四年度から平成九年度までの六年間にどういうことをやったかというのを見てみると、減税特例公債を八兆円発行している。それから非常にバブルの崩壊後で景気が悪かったから、いわゆる特例公債を発行せざるを得なくなった、これが十九兆円。それから経済対策で、いわゆる補正で建設国債を幾ら発行したかといったら十七兆円あると。  結局、バブル崩壊後の景気低迷と、それから税制のいわゆる直間比率を変えるといったふうな税制改革、こういうものに伴って非常に多額の国債が発行されているわけです。だから、私はこれはある意味でいわば特異な現象であったというふうに思うんです。こういうことに余り振り回されてはいけないというふうに思うので、そういう意味でさっきも現状、足元をきちっと固めて、それで将来をしっかり展望してやらなければいけないのじゃないかということを言ったわけでございます。  このことは、例えばOECDの「エコノミック・アウトルック」というので、国、地方の債務残高というのが出ておりますが、一九九三年は我が国の場合にGDPに対して六七・九%だったんです。それが一九九七年には九三・一%にまでべらぼうに上がっているわけです。ちょうど五年間ですよ、五年間に六七・九から九三・一まで上がっている。一九九八年には九八・四になるというような数字が載っていますけれども、そういうバブルの崩壊というのがいかに日本経済社会に大きな影響を与えたかということだろうと私は思うんです。  だから、そういうことを踏まえた上で、余りゆがんだ構造改革にならないようにやっていく必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点について大臣はどのようにお考えになりますか。
  144. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 今、次長から状況についてのお話しありましたが、基本的な点は、なぜ危機的かということでありますと、既に明示されております国の一般会計残高二百五十四兆、地方を入れますと四百七十六兆ということなんですね。これに清算事業団、どの程度の残になりますか、私の計算ですと二十兆を超えるんでしょうと思うんです、精いっぱいやりましても。林野特別会計等、これも何とかしなくちゃいけないと。三十前後のものが処理すべき債務として残っておりますと。  御案内のとおり、さっき言った合わせて地方、国で四百七十六兆、こういうことになりますと、元利合計で相当な負担になりますし、我が国一般会計予算で、御案内のとおり国債費は一六・八兆と、このようになるわけです。毎年これを支払わなければなりませんし、歯どめがなく特例公債が発行される。建設国債も見合いで六十年で出しておりますが、財政から見れば借金でありますことは間違いございません。これも節度のない形で発行されることによって、後世にツケを回すことは間違いありません。ただ、財産が残るというのがあります。特例公債はとめどもない孫子の代に借金を送り、それで現代がいい目を見るということに批判が後世出ることは間違いないわけでありますから、ここで歯どめをかけることによって健全財政にするということであれば、先生方に大蔵省が配りました財政の中期展望というのがあります。  よって、赤字公債、特例公債は毎年一兆円ずつ、八カ年計画で二〇〇五年までゼロにする、こういうことで計算をするとしましても、この場合は諸改革を断行していきませんとそこまで行かないと、こういう計算が行われております。特に、今回二〇〇五年を前倒しすることによって、前期三カ年集中期間、後期三カ年諸改革が終了するめどとする、それで二〇〇五年は完成と、こういうことでやることによりまして、ようやく赤字公債発行の体質から抜け出ることができまして、借金がふえる構造がそこでストップになるだろうと、こういう目標を掲げたことはそのとおりでございます。  よって、景気が上がらなければ、その目標三・五という名目経済成長率を達成できないのではないかという両院における議論がございました。しかし、需要を喚起してそれをやるということについては、議論は残っておりますけれども、従前方式では逆に赤字が累積をすることになると。よって、諸改革の断行をまずやり抜かなければならぬと。財政構造改革は赤字、借金体制からの脱却、経済システム構造改革はまさに現代に通用する経済事業体を、産業界をつくりかえていくと、こういうことでありましょうし、金融システムは一千二百兆になんなんとする国民財産を大いに活用して、東京市場が活性化するようにすることによって、経済のこれまた血液でありますから、活性化への道にしようと、こういうことであります。清水委員もおわかりのとおり、諸改革を断行して初めて財政の中期展望が示します懸念が確実に解消に向けて前進をしていくだろうと、こんなことでございます。
  145. 清水達雄

    ○清水達雄君 大臣がおっしゃいましたように、それは国債だけではなくて、国有林野にも清算事業団にも相当な債務、処理しなければならない債務が残っていると。そのほかの住宅金融公庫などについても、利子補給金は十分払えないで繰り延べで払わなきゃならぬというようなことがいろいろあります。しかも、これから高齢化、少子化の進行ということを考えますと、これは財政再建はどうしてもやらなきゃならない。総理が必死の覚悟でやっておられること、私はこれに水を差すつもりはありませんけれども、それはやらなきゃならぬと思います。  ただ、増税なき財政再建ということを強調し過ぎるのは、おかしいというように私は思っておりまして、そんなことでうまくいくんだろうかとか、そういうことで健全な財政再建になるんだろうかということを非常に思うわけでございます。  我が国の国民負担率というのは、非常に今低いわけですね、アメリカと並んだぐらいで、三七%かそこらというふうなところで。ヨーロッパはもっと高いわけですけれども。中でも我が国の租税負担率が非常に低いわけですよ。先進各国の中では最低の負担率ですね。日本の場合は租税負担率が低くて貯蓄率は高くて、それで債務残高は大きいという、これは非常にアンバランスな構造であって、本当はもっと租税負担率が高くなきやおかしいんですよ。こういうことはなかなか政治家は言いにくいし、だれもこんなことは言わないですけれども、バランス論として考えると、私は税金はもっとたくさんとちなきゃならぬと思いますよ、各国との比較を見ますと。  そういう構造を持っているところに持ってきて、当面は消費税率を上げたばかりですから、さらに増税しますよなんということは言えないと思いますけれども、しかし、増税なき財政再建というようなことを言って、国民の間にそういう認識を植えつけちゃうということは私は非常に危険だというふうに思っているわけでございまして、我が国が抱えているそういう構造について、国民によく理解をしてもらう努力をむしろしなきゃならないというふうに私は思うんです。これは、大臣の御発言がきょうの午前中もあったわけでございますから、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  146. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 御説でございますが、ポイントは六つの改革、すべて痛みが伴います。これをやることによって、ぜひ新たな財政体質の日本をつくり上げていこうというのが橋本さんの基本的な方針、私もそれに全く同意でございますので、全力を挙げて取り組んでおるところでございます。  全体があらわれればあらわれるほど、国民の皆様からいえばえらいことだなと。産業界の皆さんから、これは大変だなと。金融界の皆さん、ビッグバン、よくよく調べてみれば、これは死に物狂いの競争の中で、生き残りはどうなるのかなと、こういうことであります。  それらについては、改革の方向に向かって全力を尽くすということ以外に道はないわけでございますが、そういう当面の苦しみを、これはお互い分かち合いながら新しい体質をつくることによって再生をさせようと、活性化させようという六改革を全面に押し立ててやらせていただいておりますから、まずは歳出の改革と縮減に取り組まざるを得ないというのは財政構造改革の主管大臣である小生の果たさなければならぬ役目でございまして、大蔵事務方もこのことを基本に、一致して今全力を尽くしておるところでございます。  よって、中長期的な税体系のあり方については、経済社会の構造変化を踏まえつつ、税制調査会や国会での論議を通じ、国民的な選択を求めていくべき課題であると、このように締めくくりをさせていただきたいと存じます。
  147. 清水達雄

    ○清水達雄君 アメリカ財政再建でも、いわゆる包括財政調整法という、九〇年の包括財政調整法、それから九三年の包括財政調整法、これを合計すると約一兆ドルの赤字削減ということになるわけですけれどもね。この中でも、歳入増加が約三千九百億ドルぐらいあるんですね。歳出削減の方が六千億ドルぐらいというふうなことで、やっぱり一方で増税をし歳入を増加させながら歳出削減もするというふうなことをやっているわけでございます。  我が国の場合に、そんなことを言っていたら歳出削減なんかなかなかできないよと、とにかくもうみんなで聖域なしでどんどん切っていくんだというものにならないと実際にはできないから、今の段階はあるいはそれでもいいのかもしれませんけれども。やっぱりその辺は、お答えにありましたように、バランスを見ながらうまくやっていくことが必要ではないかというふうに思うわけでございます。  それから、国民負担率の表現の中で、今度のこの財政構造改革の資料を見ましても、「国民負担率(財政赤字を含む)が五十%を超えない」とかいう表現を使っているんですけれども、私はこれは非常におかしいなという気がするんですね。確かに、国民負担率という場合には、政府の財貨サービスの国民に対する提供の量をあらわすという面があることはありますけれども、これはむしろ財政支出率みたいな、国民に対して国民所得の中で何%ぐらいを財政支出しているかという一つの指標として財政支出率みたいなものを考え、その中で今どれだけ国民が負担をしているか。そういう意味で国民負担率というのを使わないと、例えば財政赤字を含む国民負担率といったら、現実には余り負担しないでほとんどが赤字という場合でも、国民負担率は非常に大きいですよというふうなことになっちゃうわけですよ、そうでしょう。国債にうんと依存していても、含めて国民負担率何%といったら、赤字も含めていっていたんじゃ国民が負担したことになっていないわけですよ、今の国民はね。  だから、こういうことでは私は非常におかしいと思うんだけれども経済審議会の表現では、潜在的国民負担率というような表現をやっておりますけれども、何かこの辺ははっきりと、例えば財政支出率と国民負担率というふうな対比をさせるとかいうふうなことを考えていかなくちゃいけないんじゃないかなという気がするわけでございます。これは特にお答えは要りません。  それで、今度の改革を進めるに当たって、三年間、集中改革期間については「主要な経費について具体的な量的縮減目標を定める。」というふうなことが書いてあるわけでございますし、それから各項目別に見てみますと、もう全項目についてとにかく縮減をやるんだということが、あるいはその検討をするんだということが書いてあるわけでございますけれども、何かとにかくみんな削れ削れと、一様な縮減の印象を非常に受けるわけですね。  私は、そういうことで本当にいいのかなと。アメリカ財政再建なんかを見ましても、中身を非常にきちんとやって、ビジョンを示しながら、こういう世の中をつくっていくんだからこうしなきゃならぬというふうなことをやって、それで各項目別に縮減目標を決めながら包括財政調整法というのはやっているわけですね。こういうことを見ましても、我が国の将来の望ましい姿を描いた改革、そういうことにしないと、夢もなければビジョンもない、何にもないと、ただ削ればいいのかということではうまくいかないんじゃないかなという感じがいたしますけれども、その辺についてはどんなふうにお考えでございましょうか。
  148. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 先般の財政構造改革会議で示された五原則の中に、一切の聖域なしに歳出の改革等縮減を行っていくということがうたわれておりまして、みんなそういう見直しの対象になるわけでございますけれども、その際に、各分野ごとにどういう考え方で見直しをやっていくべきかということもあわせて決定をされておりまして、各分野ごとに基本的な考え方が示されておるわけでございます。  その基本的な考え方を見ますと、委員おっしゃいますように、将来の姿といいますか、明るい姿のところまでは今の段階では入っていないわけでございます。これから財政構造改革会議の下で、企画委員会で一カ月半ぐらいかけまして各分野の見直しをいたします。そういう中で、将来の姿をあわせて議論がされるというふうに理解しております。  それから、委員の方から一律的な削減の感じがするが、というような言及があったかと思いますけれども、今回の基本的な考え方におきましても、分野ごとに一定の考え方は示して、そこはいろいろ違いがございます。例えば、社会保障のようなことでいいますと、これは制度予算でございますから、制度を変えていかないと歳出の見直しというのはできないわけでございます。例えば、医療保険改革は九年度、今お願いしているわけでございますけれども、それを引き続きやっていく必要があるとか、それから児童福祉の関係は、これも今年度の改正が一部ございますけれども引き続き行うとか、あるいは年金は平成十一年度に五年ごとの財政再計算の時期が参りますから、そのときにあわせて受益と負担関係だとかいろいろ考え方については書いてございます。それから、公共事業につきましては、これは長期計画の見直しとか、建設コストの縮減とかいうような、やや一般的でございますけれども、例えば文教なんかになりますと、児童生徒数が縮減していくけれども、そういう中で教育サービスをどう考えたらいいかというような、各分野ごとの基本的な見直しの視点と申しますか、施策というのはうたっておりまして、この施策を踏まえながら、企画委員会において委員のおっしゃるようなことも含めて検討がなされていくものというふうに理解しております。
  149. 清水達雄

    ○清水達雄君 それで、経済政策という観点からひとつ見てみたいというふうに思うんですけれども我が国から外国への資本の純輸出、これは対外資産の純増から対外負債の純増を引いたものでございますけれども、これは平成七年度までの十年間で百十兆円、この間の経常海外余剰は百四十八兆円ということでございまして、我が国の場合には経済の供給力が非常に大きい。貯蓄率が高い。いわば非常に強い経済を持っている状況にあるわけですね。  ところが、その供給力に見合い、あるいは貯蓄に見合ったような、いわゆる内需拡大、国内の社会資本整備をするとか、あるいは内需振興をするとかいうことをやらないままに外国へ資本を流出させているというのが、我が国の現状であると思います。これはどこの国もそうだと思いますけれどもヨーロッパなんかでそれぞれ立派な町をつくっておりますけれども、これはその国の経済が繁栄して隆盛のときに、きちんとした町づくりをつくって、それがいまだに残って、多少維持管理、維持修繕はもっとやればいいなと思われるところもあるけれども、骨格としてはすばらしいものができている。そういうものをやっぱり残す時期にあるわけですね。もうそろそろそれも終わりになりかけてきているのかなという感じがしますけれども。  そういうときに、国土づくりというか国づくりというのをやらなきゃならないんですよ。だから、そういう機会を逸してしまうということになったら、私は将来の日本にとりまして非常に残念なことじゃないかという感じがするわけです。ですから、今しかできない、こういうときにそういう国づくりをやり、そうすれば内需は拡大し、成長率も高まるという、私は経済政策としてはこれが正道ではないかと思うんですね。  ただ、もちろんそうはいったって、赤字国債を出せば利息も払わなきゃならぬ、償還もしなきゃならぬ、これは六十年ではあるけれども財政を圧迫する。しかし、これだけの貯蓄があり、しかも租税負担率は低いという、本当にこういう状況であっていいのかという感じもあわせてするわけで、この辺について経済政策との兼ね合いで、私は、公共投資について非常に批判が強いけれども、国づくりをやる期間はそんなにもう長くはない。一たんこれは二十一世紀初頭ぐらいまでに概成をすれば、後は今の欧米先進国がやっているようなGDPに対する比率もだんだん下がってくるということに当然なるわけですから、そういう考え方でこの財政再建についても取り組んでいかなくちゃいけないんじゃないかなという感じがするんですけれども、いかがでございましょうか。
  150. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 社会資本の整備ということにつきまして、長期的に見た場合あるいは外国と比較した場合にどうだという委員の御指摘は大変傾聴に値すると思うのでございますけれども、そういうふうにしてお聞きしておりましたけれども、他方で財政の現状ということを見ますと、建設支出の部分は今建設公債で全額賄っておると、約九兆、十兆あるわけでございます、その財源は全部国債で、建設国債でほとんど賄っておると。その上に収入が足らないので赤字公債を、七兆五千億、特例公債を出さざるを得ないという財政の現状があって、それにつきましては先ほど大臣から答弁もございましたけれども、国民が今選択している経済の、財政の運営の基本的な指針としては、国民負担をふやさないで歳出の方を見直すことによってそのバランスを回復してくれよというのが今の意思でございますから、そういうことを踏まえて財政の運営を考えていくということになりますと、やはりあらゆる歳出につきまして聖域なく縮減抑制等を図っていかざるを得ないというのが現実ではないかというふうに考えるわけでございます。
  151. 清水達雄

    ○清水達雄君 それは、公共投資は全部建設国債でやるというふうになったのはいつごろだったか忘れましたけれども、昔は国債でやっていたわけじゃないんですね。だんだん金がなくなってきて、もう税収は経常経費に充てる以外ない、もう投資的分野に充てられないということになってきちゃって、こういう状況にはなっているんですけれども、少なくとも経常的経費について赤字を出すというようなことは到底考えられない話であって、これはバブル崩壊後の非常な景気の低迷の時期こそやむを得なかったということで、私は二〇〇五年とかなんとかの話じゃないと思うんですよ、赤字国債をゼロにするなんという話は。やっぱりそういうことでやっていかなきゃならぬと思いますけれども、いずれにしてもその税収等との兼ね合いも考えながら、これは国のもう全く基本設計の話ですから、惰性に流されるんじゃなくて、政治家としてやっていかなくちゃいけないんじゃないかなという感じが非常にするわけでございます。  それで、今後だんだん高齢化が進む等によりまして貯蓄率がだんだん下がっていくと。これは、実体経済的に公共投資なんかやろうにもそんなにできなくなるということはもう容易に考えられるわけですけれども、そこでマクロの貯蓄率が、経企庁来ておりますね、五十年代初期には二〇%ぐらいあったのが平成六、七年には一五%程度に落ちていると、マクロの貯蓄率。それから、家計貯蓄率も六十一年度以前は大体一五%から一六、七%ぐらいまであったんですね。ところが、六十二年度以降が一三%台で安定しているというふうに、最近は貯蓄率が落ちているような気がするんですけれども、このことについて経企庁はどのような分析、解析をしておられるか、お伺いしたいと思います。
  152. 古川彰

    説明員(古川彰君) マクロの貯蓄率の御質問ですけれども、貯蓄率をそもそも決定する要因ということで、一般的に私どもは、所得がどうであるか、それから人口構成、年齢構成がどうであるか、それから資産の状態、インフレの動向と、それから社会保障制度がどれだけ整備され信頼されているかといったことによって決まってくると考えております。  高度成長期に貯蓄率が御指摘のように高かったわけですけれども、この背景といたしましては、所得の増加率が非常に高く貯蓄ができやすかったと、それから人口構成が非常に若かったということがございます。それから、社会保障制度が未成熟であって人々の信頼がまだ十分でなかったといったことが指摘されておるわけですが、それから第一次石油ショックのときには、さらに家計貯蓄率でいきますと二三%ぐらいまで高まったんですが、これはインフレが高まりまして実質的な金融資産が目減りしたということで貯蓄率を高めたというふうに考えております。  一九七〇年代後半以降、貯蓄率が下がってまいったわけですが、その背景といたしまして、経済が安定成長へ移行したということで、かつての高度成長のような所得がどんどん伸びるという状態ではなくなってきたということ、それから金融資産の蓄積が非常に進んできて、それからインフレも安定してきたということでございます。それから社会保障制度の整備も十分に進んできたといったことによって貯蓄率は徐々に下がってきたというふうに認識しております。  人口構成の影響ですけれども、高齢化によって貯蓄率というのは下がっていく方向にあるわけですが、九〇年代の初めぐらいまで六十五歳以上人口の増加はあったわけですけれども、出生率が低下いたしまして、子供の十五歳未満人口の減少も大きかったということで、働ける労働年齢人口が大きかったということで、貯蓄率がなかなか下がらず安定していたというふうに認識しております。ただ、それ以降につきましては、その十五歳未満人口の減少テンポが鈍化したと。一方、六十五歳以上人口、高齢化人口を加えましたいわゆる従属人口比率ということですと増加に転じておりますので、これによってごく最近は貯蓄率がまた押し下げられているというふうに認識しております。
  153. 清水達雄

    ○清水達雄君 これからの動向として、かなりこの貯蓄率の低下傾向が進んでいくということになるんでしょうか、予測として。
  154. 古川彰

    説明員(古川彰君) 貯蓄率の予測、大変難しい問題いろいろあるわけですけれども、高齢化の進展ということ自体はやはり貯蓄率を徐々に下げていく要因になるというふうには認識しております。
  155. 清水達雄

    ○清水達雄君 というふうなことで、今後の我が国経済力、特に貯蓄の面、それが投資に結びつくわけですけれども、だんだんと高齢化によって力が弱くなっていくということも踏まえて全体としての検討をしていく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  それで、ちょっと具体の問題なんですけれども、道路整備のための特定財源、これについて一般財源化をすべきであるというふうな議論がこれは前からも時々あるわけでございまして、今回も構造改革の基本的考え方の中にも、特定財源については見直し等の検討をするというようなことが書かれているわけでございますけれども、これについては、三月十四日の参議院本会議の総理答弁で、これは本岡先生の質問でございますけれども、本岡先生は、道路特定財源は一般財源化すべきではないかというふうなお話があったわけでございます。それに対して総理は、  道路等の特定財源について一般財源化すべきではないかという御意見をいただきましたが、特定財源制度は、それが資源の適正な配分をゆがめ、財政の硬直化を招く傾向を持つことから見て、その妥当性について常に見直していくべきものではございますけれども、道路整備事業などにつきましては、施設の利用者による施設の整備費用の負担という受益者負担の理念に基づいて特定財源制度によって事業を実施することにつきましては、現時点では私は合理性があると考えております。 こういう答弁を総理はされておられるんですけれども、大蔵大臣も同じように考えておられますでしょうか。
  156. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 委員が御指摘になりました総理答弁のふうに、大蔵省も理解をしております。
  157. 清水達雄

    ○清水達雄君 それで、尾原さんもお見えでございますので、一つ伺いますけれども、道路特定財源につきましては大体、本則税率の倍の暫定税率を今課しているわけですね。仮にもしこれを一般財源化するというようなことになりますと、二倍にもなるような暫定税率をやる根拠がなくなるといいますか、維持できなくなるんじゃないかというふうにも思うんですけれども、この点は過去の経緯等も考えて主税局としてどんなふうにお考えになっておられますか。
  158. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 特定財源制度について申し上げますと、特定される公共サービスの受益と負担関係に密接な対応関係がある場合には税としても一定の合理性があるということかと思います。それが資源の適正な配分をゆがめ、あるいは財政硬直化の傾向を招いているか、これについては常に吟味していかなきゃならないというのが基本的な考え方かと思います。  先ほど暫定税率と本則税率の話がございましたが、これまではそれぞれ道路の事業の五カ年計画を定めまして、それとの関連において税率がどうあるべきかという議論がなされてきたものと承知しております。
  159. 清水達雄

    ○清水達雄君 今度は、いわゆる資金運用部、財政投融資の問題、時間も余りありませんから、もう多くは割けませんけれども資金運用資金財政投融資をやることにつきまして大変な今いろいろ議論が行われているわけでございます。  現実にも、例えば住宅金融公庫であるとか年金福祉事業団などは平成七年度ぐらいで恐らく十兆円ぐらいずつの繰り上げ償還があったりしたわけですね。非常に高い資金コストの金が返ってきて、それぞれは資金運用部に返すわけにいかぬものだから、またそれを使って融資をすると、それで利子補給金が非常にかさむ等々の問題もあるわけでございまして、そういうことがあるわけでございます。それから、もともと資金運用資金というのは郵便貯金等を使っておりますから、短期資金とかあるいはユーロ債だとか、いろんな都市銀行なんかだったら金が川の流れのように流れている、その上に長期資金だって利子や何かを決められるというふうな構造になっていると思うんだけれども、いわゆる単細胞なわけですね、資金運用部というのは。だから、非常に今後金融市場の競争が激化してくると、なかなかこれ資金運用部の中は変えられないんじゃないかと。弾力的な運用がなかなか非常にできにくいという、そういうものを持っていると思います。  それからもう一つは、特殊法人改革を進めるということで、今幾つかの公団、事業団について挙がっておりますけれども政府系金融機関をどうするかということが非常に大きいわけですけれども、この両方を合わせると、政府系金融機関と公団、事業団合わせると百八十兆から百九十兆ぐらいの金が行っているわけです。だからこれが、使途がかなり縮小をされてくるということもあり得るわけです。そうなってくると、今郵便貯金について民営化とかいろんな議論が行われているけれども、そんな議論をしなぐてもそのニーズの方から縮小というか、改革を余儀なくされるということは、もう容易にそういうふうに思わざるを得ないという感じがするんです。こういう点につきまして、理財局として、今私が言ったようなことについて、今後どんな状況になることを想定し、どんな方向の改革を考えようとするのか。今こうやりますなんということはとても言える話じゃありませんけれども、感想的な話でも結構ですので、お聞かせいただきたいと思います。
  160. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今、委員の御指摘は、この金融情勢の中で今後財政投融資をどう考えていくかとか、いま一つは特殊法人改革の中で財政投融資をどう考えていくか、全体としての今後の財政投融資の姿ということだろうと思います。  最初の、金融情勢の中での話でございますが、財政投融資につきましては、その中心でございます資金運用部が郵便貯金、年金等からの預託に付する金利でございます預託金利、これを現在長期金利の代表的な指標でございます十年の利付国債の表面利率を基準として設定しているわけです。先ほど、単純というかわかりやすいと委員もおっしゃいましたのですが、貸し出しの方はそれと同一の水準で貸出金利である財投金利を設定しているわけですが、この預託金利、貸出金利ともに今言いましたような国債の表面利率と連動しているわけでございますので、その意味では基本的に市場原理と調和した制度であると私どもは考えているわけでございます。  そうはいいましても、九年度の財政投融資計画の編成におきましても、さらにその調和を一層促進するためにも、例えば資金運用部から対象となっている公庫とか公団等に対する資金の融通条件につきまして、これはいろいろ多様化とか弾力化を図る努力を講じているところでございます。  いずれにいたしましても、市場との関係でいきますと、財政投融資民間では実施困難な大規模な超長期のプロジェクトなどの財政政策を金融的手法によって行う仕組みでございますが、今後ともその財政政策として関与すること、そのものがまず適切な分野につきましては、これはそれに対応しつつ投融資といういわば手段、手法を用いまして市場原理との調和に努めていかなければならない、努めてまいりたいと考えております。  二番目の、先ほど委員が言われました特殊法人の改革が進むとそこがしぼんでいくではないかという話でございますが、それとの関連での財政投融資でございますが、特殊法人の改革の結果として、仮にある特殊法人が民営化されることとなりますと、これはその法人は制度上、この財政投融資対象から除外されることになるわけでございます。  いずれにいたしましても、特殊法人の改革につきましては、これは特殊法人それぞれの担っている政策そのもののあり方のまず問題があるわけで、その意味では財政投融資対象となっているとか否かにかかわらず、まずもって政策的な必要性の観点からそれは取り組むべき課題であると考えておりますが、九年度も、その意味では財政投融資計画の編成に当たってスリム化とか、それから対象機関の除外とか、対象事業の除外、民業補完の徹底という意味から図っておるわけでございますが、特殊法人の改革が行われた場合には、しかもそれが財政投融資対象となっている場合には、その結果を踏まえましてやはり有償資金の活用が適切な分野に極めて重点的に、効率的に図っていかなきゃならない、そういう意味で全体として、先ほど言われましたいろいろ原資の問題も含めまして今資金運用審議会の懇談会で幅広く議論をいただいて、まさにこれから真摯に取り組んでいかなきゃならない課題だと思っております。
  161. 清水達雄

    ○清水達雄君 私は、政策的に必要な分野については資金運用部からの財政投融資というのはこれは絶対必要だと思っておるわけです。しかし、例えば住宅金融公庫みたいに、あれは段階金利制をとりましたから十年間は金利が固定されます。しかし、十一年目以降、あるいは長いのは三十五年までありますけれども、その間二十五年間も固定の金利でやるということについてはかなり疑問を感じるんですよ。今のように金利が安ければいいですけれども、金利が高くなったときにそれをやっていったらまた繰り上げ償還云々というような議論に当然なってくるわけです。だから、十年ごとぐらいに金利を見直すとかいうぐらいの弾力化は考えるべきじゃないのかなという感じがするわけでございます。  いずれにしましても、今後、資金運用部、財政投融資につきまして、円滑にうまく動いていくことを期待いたしまして、ちょっと時間はありますけれども、ここで終わらせていただきます。     —————————————
  162. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、千葉景子君が委員辞任され、その補欠として藁科滿治君が選任されました。     —————————————
  163. 海野義孝

    ○海野義孝君 平成会の海野でございます。  大蔵大臣を初めとしまして大蔵省の関係の各局の皆様方、大変ありがとうございます。  清水先生専門家でいらっしゃいまして、その後私が出るというのはいささか場違いな感じがしますけれども、私がお聞きしたいということにつきまして清水先生の方からもかなり突っ込んだ御質問がありましたので、その辺は一応省きましてお話をさせていただこうと思います。  まず第一点は、平成九年度の一般会計予算につきまして、これまでも大蔵大臣にも何度か御質問させていただく機会がありましたけれども、全体的な締めというような感じで私としましてはお聞きしたい、このように思います。九年度の一般予算につきましては、いろいろと問題含みではありますが、私が一番重要に考えている点はいわゆる財政構造改革という、まさに財政再建という総理の六大改革の重要な部分に位置づけられるそういったものとの絡みでのスタートの年の予算編成ということでありまして、そういう意味で大変御苦労もおありであったと思いますし、これがうまく平成十年度以降の予算編成あるいは財政再建と結びついてくれればいいがなと、このように思うわけでございます。  平成九年度の一般予算案でございますけれども、全体的には三%の伸びになっているわけでございます。その中で義務的な経費、いわゆる国債費それから地方交付税、こういったものを除いた言うなれば自由に使える一般歳出、これは一・五%の伸びということなのであります。この一般予算の三%の伸びの中身を見ますと、大蔵大臣が再三おっしゃっていらっしゃいますけれども、四兆円以上の思い切った公債の削減をしたということであります。一方で、先ほど御趣旨の説明を大蔵大臣からいただきましたけれども、租税及び印紙収入が五十七兆八千二十億円ということでありまして、これは前年度当初予算に比較しますと何と一二・六%伸びているということなんです。つまり、税収が一二・六%、六兆四千五百七十億円伸びまして、一方でそういった公債を四兆円強カットした。差し引き一般予算としては三%の伸びであり、一般歳出は一・五%の伸びである、こういうことであります。  私は、この平成九年度予算、大変苦労の跡がしのばれるわけでありますけれども、一方では先に問題をはらんでいる、このように思うわけでございます。つまり、一般歳出一・五%増となっておりますけれども、この中にはいわゆる厚生年金特別会計に本来八千億円繰り入れるべきものをわずか八百億円にとどめて、七千二百億円は繰り入れできなかったと。この分を一般歳出に加えてみますと、何と三・二%増ということになるわけでありまして、つまり、これは四十五兆円の隠れ借金があるというようなことがよく言われますように、財政再建ということでありまするならば、こういった面をやはり国民の前にあからさまに出すということが私は大事ではないかと思うのです。  そのことからいいますと、大蔵大臣がプライマリーバランスがとれたとよくおっしゃっていますけれども、私はまことにこれは一過性のものになるのではないか、このように思うわけでございます。平成九年度の一般会計予算に対しての私なりのコメントでございますけれども、大蔵大臣の御所感、御所見をお聞きしたいと思います。
  164. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 全体を見て、出入りの点は御指摘のとおりであります。一般会計予算として閣議決定を経て国民に明示をし、国会に提出をするということになりますと、本件はまさにすべての出入りというよりも、税収を基本としてそれに見合う歳出をつくり上げたと。  御案内のとおり、税収、九年度については六十・七兆と、こうなるわけでございまして、それで国債費を除く歳出が六十・六兆、こういうことになります。これには、公債金ということで歳入で十六・七兆、それで歳出で千億円ふやすことにより十六・八兆という国債費ということになります。いわゆるバランスをとるという意味からいいますと、税収に見合う一般歳出がそこで組まれておる。議員言われますとおり、交付税、御案内のとおりこれは十六・八兆でありましたことは、これが国債費と同額の数になるのはいみじくもなったわけでございまして、合わせた歳出が七十七・七ということになります。こういうことであります。税外収入が二・七、これを丸めて今申し上げたところで、その辺は御理解をいただきます。  ディスクロージャーの問題にも言及をされましたが、国会論議におきまして、いわゆる国債費除きの税収に見合う歳出を何としても実現する、こういうことの中で、歳出の査定については、最終的には国民各位の理解を得ることに相当努力をしながら、前面に与党三党それぞれの要望がございました。また、国会政党としての各党からの要望もありました。そういう中で、限られた財源の中で、国民生活の上から、また国際的な日本の位置づけから、必要なものは必要なものとして計上してやりました結果、プライマリーバランスが初めてここにおいて達成をした。このことは平成十年の予算編成の基本的ベースでございますから、このベースは平成十年にも確実に受け継がれていく、また受け継いでいかなければなりません。  そういう点で、今後、財政構造改革会議企画委員会において、真剣な検討を進めることによって最終的に決定をしていかなければならない、こう思っておるところです。
  165. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。  ちょっともう一点、その点につけ加えて申し上げたいと思います。平成九年度税収は約六兆四千億円強増収になるわけでありますけれども、これはいただいた資料を以前読んだことがありますけれども、それによりますと消費税増税及び所得・住民税の特別減税の打ち切り、こういったものが五兆円、残りの一・四兆円が税の自然増収である、こういうように読めたわけです。  この一兆四千億円の税の自然増収というのは前年の税収に比べますと二・八%増ということでありまして、これは政府経済見通しである名目の三・一%、実質の一・九%、税収ですから名目でいいわけですけれども、その名目の三二%に比べても平成九年度の税の自然増収が二・八%増というのは、私の今までの見通し計算等では大体GDP名目に対して一・一ぐらいの乗数効果があるわけですから、その面から見ると名目の成長三・一に比べても自然増収が二・八というのは下回っている。この点、四月以降のいろいろな負担がかかってくる中での、特に個人消費を中心とした景気に対する一時的かもわかりませんが悪影響等によって、平成十年度の予算編成におけるいわゆる税収見積もり等を出していく場合に大変これがポイントになってくると私は思うんです。  そういう意味で、プライマリーバランスという面は来年も維持しなくてはならない、平成十年も維持しなくてはならないとおっしゃいましたけれども、片や国債費はなお残がどんどんふえているわけですから、これはふえていくという形ですね。それに対して、国債費の方については、これは一般歳出をどれだけ減らせるかによって決まってくるという問題ですから、平成九年のように大幅な増税あるいは減税打ち切り等による負担によってプライマリーバランスが一時的に達成されたということを財政再建の、来年度以降の二十一世紀に向けての見通しの中でお使いになるということは余り得策ではない、私はこのように思うんですけれども、いかがでしょうか。
  166. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 確かに、九年度はプライマリーバランスが達成されました。その先どうなるかということにつきましては、財政の中期展望というのを一月にお示しをいたしたわけでございます。  その中で二つの試算をしておるわけですけれども、成長率が三・五%の場合は、歳出等を自然体で見込み、投資的経費は横ばい程度に見込んで、税収は過去の弾性値等から推計いたしますと、要調整額は四兆円ぐらいになるということでございます。成長率が一・七五ですと四・五兆円に要調整額が見込まれるということでございまして、そういう意味で十年度どうするか、どうなるかということは、これからどういう歳出削減をやっていくかにかかっているわけだというふうに考えております。  そういう意味で、先般の財政構造改革会議で、十年度は一般歳出をマイナスにするようにやっていこうということが申し合わされ、これからは各分野の歳出の見直しを企画委員会で行っていくというふうな段取りになっているわけでございます。
  167. 海野義孝

    ○海野義孝君 今おっしゃったとおりでございまして、平成十年度の予算編成に対しては、先般総理がおっしゃったようなまさに画期的といいますか、六つの大改革も私は至難のわざだと思いますけれども、さらにそういった中で、財政構造改革という中での五つのルールという問題、これはもう既にいろいろなところでこれに対してのコメントが出ておりますけれども、なかなかこれもまた大変なことであろうと。  この辺、先ほど清水先生が、いわゆる財政再建と社会資本整備との兼ね合いの問題等について大変深みのある御質問をされておりました。私も、やはりその辺の議論というのは、本来であれば避けて通れないのに、今はひたすら歳出削減歳出削減というような大合唱だけ起こっているということは、国民にとってみれば、平成九年は相当な負担を国民もするわけですけれども、今後景気がよくなっていく中でやはり改革も進めていってもらって、特に経済構造改革などはその効果が出てくることによって雇用もふえていく、成長率も上がっていくということが、片方では国民には期待があると思いますけれども、どうもその辺が、平成十年度の予算編成に対しては、まさに日本ペシミズム的な、そういったことを再び海外から声を大にして言われるんじゃないかということを、私は大変心配するわけでございますけれども、大蔵大臣、その辺の御所見をお願いします。
  168. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 本件は、そういう声は出ることもなしとしないなと。時折そういう話を海外の各位されるわけでございます。  我が国の六改革、教育改革も入れるとそうですが、教育改革はこの国をどう思うかと、この国に対する思い入れ、また国民としての感情、伝統と文化と言っていいんでしょうか、つらいときはみんなで助け合いながらこの国の伝統と文化をしっかりと守り後世に伝えるという意味で大変大事だと思います。  経済的な財政的な五つの計画は、いろいろ御批判がありましたが、御批判は激励と受けとめるということで着実に今前進をしております。六月にはそれぞれの中間取りまとめとして出てくるはずでございますし、財政構造改革はただいま申し上げたとおり、そして金融システム改革はそれぞれの金融商品のあり方等について真剣な論議が関係審議会で行われておりまして、これも六月中には取りまとめとして御報告をいただくことになっておるわけであります。    〔委員長退席、理事石川弘君着席〕  経済構造システムも、まさにこれは大改造でございますから、本件についても関係中心に頑張っておるところでございます。リストラを断行し、新時代にふさわしい、また雇用を確実に創出できる経済構造、産業構造というものを、今ピッチを上げてそれぞれの政府官庁が相提携しながら取り組んでおるわけでございますから、財政の手法をまたずして確実に一・九という政府目標のところには行くであろうと。  幸いに、一千二百兆の国民預貯金があるわけでございますから、そういう基本を踏まえ、民活もできていくでありましょうし、財政投融資制度の中で見直しの論議は論議として進行しておるものでありますが、金融的な手法というものもあるでありましょうと思いますし、そういうことどもの中で取り進めていくということでありますと、金融システムがなるほど経済の血液としてここまで変わったかということになりますと、全体を押し上げる下支えになるのではないでしょうか。  こんなことで取り組んでまいり、私のところにおいでになるそれぞれの、主としてアメリカが多いのでありますが、そのことを申し上げ理解を求めておるところであります。
  169. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  大変、史上壮大なる実験に挑戦していくわけですので、私どもも含めてその成功を当然期待するし、また努力をしなくてはならない、こう思います。  次に、いわゆる財政構造改革について先ほどもお触れになっておりますけれども、大蔵大臣の財政構造改革に関する御認識と、あわせて時間の関係財政投融資の問題についてお聞きしたい、こう思います。財政構造改革の問題、最近政府当局におかれましても、今一般会計予算の審議中でありますけれども、第二の予算と言われる財政投融資につきまして、いわゆる特殊法人の問題あるいは官業の民営化の問題等々についても最近は踏み込んだ議論が始まっておりまして、そういう意味からいいますと、この常会の始まった一月下旬ころに比べますと、かなり前向きに事は運んできているというように私も実感いたします。  そこで、財政構造改革という問題、これは大変大きな問題でありまして、今私は具体的には平成九年度の予算、単年度の予算の中でまさに財政構造改革について思い切ったことをやろうという面が、国民の負担なりあるいは平成九年の景気に悪影響を及ぼすのではないかということを懸念しますけれども、そういった意味財政構造改革というのは、私は予算の単年度的な問題ということよりはもっと大きな、五年、十年と、いわゆる長期の公共事業基本計画じゃありませんけれども、まさに中長期的に取り組んでいく財政再建計画でなくてはならないというように思いますが、その辺の大蔵大臣の御認識をお伺いします。  もう一つ財政投融資についてお聞きしたいのは、財政投融資規模平成九年度は四・五%増の五十一兆円余、こういうふうになるわけでありますけれども、これは政府予算の一般歳出ですね、先ほどの四十数兆円、これを上回っており、しかも近年財政投融資規模は肥大化の一途をたどっているということでございます。しかも、その中身を見ますと、五十一兆円の中で一般財投は三十九兆円、これも実は使い道をもてあますような時代に今入ってきている。その結果、平成八年度に比べまして一般財投は三%減というようなことになっております。一般会計予算がこのようにすんなりどんどん減っていけば言うことはないんですけれども、不本意ながら財投については、一般財投が三%減というのは使い道がなくて減っていくということであります。  しかも、驚くべきことは、さらにこの中でいわゆる財政投融資の中の資金運用事業、これが五十一兆円から三十九兆円を除きますから十二兆円、これは何と四〇%もふえているということでございまして、我が国のマクロ経済、産業等を広く見ましても、今時四〇%も伸びるようなものはまずそんじよそこらにはないわけであります。ひところの携帯電話の年間の伸びであるとか、液晶の伸びであるとか、あるいはパソコンの成長のまさにピークのころの伸びにはそういうものはありましたけれども、要するにいわゆる公的資金システムに組み込まれている財投にこういったものがあるということ自体、今はこの問題は議論されるようになりましたからいいわけでありますけれども一般会計予算の問題に血道を上げているというようなことよりも、もっとトータル的にこの財政投融資の問題、きょうは時間がありませんからお聞きしませんけれども、ひいては地方行政、財政の問題等々を考えると、私は財政構造再建五百二十一兆円、来年度末の一般財政、これについては切り口は幾らでもあると、このように思うわけであります。  財政構造改革に対する蔵相の御認識と、そういった中での平成九年度を含めた財政投融資のこういう実態、この辺について蔵相はどのようにこれからこれの是正といいますか、に取り組んでいかれるか、その辺の御所見をお聞かせください。    〔理事石川弘君退席、委員長着席〕
  170. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) お答えします。  ただいまの今後の財投、財政構造改革会議に対する認識等、考え方、決心という意味の御質問でございますが、ロングで取り組むという基本的命題もわかります。しかしながら、期限を切ってまいりませんと、役所の機構、政治の機構、経済の機構、こういうものを総合判断してみました場合、転換期をどこに置くか。こういうことで二〇〇五年という計画を最終的に決めたわけでございますから、二〇〇五年に財政構造改革、その名のごとく制度全体の見直しからくる制度、こういうことを目指して完成をする、こういう考え方のもとで基本方針を立てたわけであります。  先般の五原則は、その中でも国会の論議等を含めまして、二〇〇五年までのんびりやるのかという御批判もございました。やるなら鉄は熱いうちに打て、こういうこともございました。よって、六カ年の中で前三カ年は集中的な改革期間とし、同時に後半の三カ年を完成のめどとしてやり抜くと。もちろん集中的期間でありましても歳入歳出の問題だけではなく、全体の期間を見直しながらこれに対応し、ベストな道を追い求めて進めなければならない、こういうことでございます。  いろいろ、マスコミ的にある意味で激励を超えた、そんなこともできないんじゃないか、族がどうのというようなことなども聞こえる昨今でございますが、しかし政治というのは政府・与党一体の中で決めると決定をしたならばそれにまっしぐらに取り組んでいきませんと、鮮明にした決意が批判を受けることになり政治不信の原因もつくりかねないことになりますので、これは全くつらいことでありますけれども、政権の基本をかけてもやり抜かなければならないことでありますから、そういう点で今取り組んでおるというのが現状であります。  来月になりますと、週三日、企画委員会を長時間、一回の時間も相当長い時間になると思うのでありますが、三党の政党政治でございますから責任者の皆さんにお出ましをいただき、私ども政府代表という意味で出まして、個々の問題に真摯に取り組み決めていく、こういうことになりますので、どうぞ御鞭撻のほどよろしくお願いを申し上げておきます。  第二番目の問題は、財投について九年度編成いかんということでありますが、先ほど局長からも財投の考え方についてのお話がありました。そういう中で、絶えず見直しながら政治として国民各位の賛同を得られるように、またその動向を踏まえて見直しをやってきておるわけでございますし、財投は民業の補完と、以下幾つかのテーマがございます。  そういうことで、今後も引き続き全力を尽くして見直してまいりますし、特に役目が終わったという判定が出れば、それはやはりやめていくという決心をしていかなければならぬことでございまして、転換期において金融システムの大改革が行われるさなかでありますから、維持しなければならない財投計画、金融というものは、大規模長期プロジェクトという問題は民間金融機関がそれをおやりいただくのであれば話は別でありますが、到底やり得る状況にまだございませんから、その間は政策目的の遂行のために内容をさらに効率、実効あるものに深めることによって取り組んでいくというのが大事なポイントであろうと思っております。  九年度の問題は局長から説明させます。
  171. 海野義孝

    ○海野義孝君 簡単にひとつお願いします。
  172. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  先ほど先生から御指摘がございましたが、九年度の財政投融資、まず財政投融資改革を推進するという基本方針のもとで民業補完の観点をも踏まえまして、先ほど先生引用されましたのですが、一般財投、いわゆる政策的な資源配分を行う一般財投の規模、これは抑制を図るということで御指摘のありましたようにマイナス三%でございます。  内容的には、いろんな金融情勢等ございますが、中身としては、例えば財政投融資対象機関を除外するということもやっております。鉄道整備基金とか中小企業事業団を除外するとか、また対象機関そのものじゃなくても事業、例えば住都公団の分譲住宅の建設とか、年金福祉事業団の大規模年金保養基地整備事業、これは事業を除外するというようなことも努めておるということを御理解いただきたいと思います。  その次に、まさに先生が言われました資金運用事業でございますが、これを加えますと、確かに四・五%の増になっております。そこで、一般財投は縮減されたと言っても、その資金運用事業が先ほど言われましたように四〇%増でございますので、これは全体としては肥大化しているんではないかという御指摘も確かにございますが、ここはちょっと理解いただきたいのは、資金運用事業は四〇%増ということは、数字的に言いますと三兆四千億、この資金運用事業でふえておりますのですが、そのうちの大部分が実を言いますと特殊事情がございまして、郵便貯金特別会計、これはちょうど十年前に金融自由化対策資金を創設したわけでございますが、ちょうど十年たったものですからその償還が二兆円来たわけでございまして、この償還というものはそのままこの中に含まれております。  同じく年金福祉事業団も一兆五千三百億、簡保事業団も三千五百億の償還分があるものですから、これはちょうど十年来て全くそのまま償還というわけにもいきませんので、引き続きいわゆる自主運用に投入することになりますと、これだけの増になるということでございますので、御理解いただきたいと思います。  この資金運用事業は、先ほど先生も引用されました、いわゆる政策的な資源配分を行う一般財投とは性格を若干異にしておりますので、したがってこれが増加しているからということで財投が引き続き増加、肥大化傾向にあるということは必ずしもそうではないということで御理解いただきたいと思います。
  173. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。  今のお答えに続いてお願いしますが、きょういただいたこの資料の中にもあるんですけれども平成九年度の一応見込みとしまして、予算ということですけれども資金運用部の預託金の利子二兆二千億円というふうに見積もっておられるわけですけれども、これは平成八年度は幾らであったのか、幾らの見込みを達成しそうなのか、それからこれの対象となる資金運用の総額、これが幾らであるか、教えてください。
  174. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 今ちょっと突然の御質問なので、資料は今取り寄せますが、今言われました預託の利子の話は、これはまさに見積もりでございまして、先ほどからも御説明いたしておりますように、実際預けていただく場合には十年利付国債の表面利率、それを基準といたしまして、その都度その都度預託金利を設定しておるものでございますので、これはあくまで見積もりであるということは御理解いただきたいと思います。数字は、ちょっと今取り寄せますので。
  175. 海野義孝

    ○海野義孝君 次に、大蔵大臣にお願いします。  かねてよりもうさんざんお聞きしていますし、新聞報道等でもされていらっしゃいますので、ひとつ簡潔に、私に対して発言の時間を与える思いやりをひとつよろしくお願いします。
  176. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) わかりました。
  177. 海野義孝

    ○海野義孝君 金融制度改革、いわゆる日本版のビッグバン、これのスケジュールにつきまして、本当は六大改革全部、二〇〇五年にかけての年別スケジュールをお聞きしたいんですが、そうはいきませんから、金融制度改革に絞りまして、今後の進め方、具体的にはこういう法案をいつごろつくるとか、いつごろこういった制度を取り込むとか、いつごろ法律改正する、税制改正する、そういったタイムテーブルをお差し支えのない範囲でひとつ教えていただきたいと思います。
  178. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、基本的には関係審議会において二〇〇一年までに改革が完了するプランをできる限り早急に取りまとめていただくことといたしております。  まず外為法、御案内のとおりフロントランナーとして今国会に提出いたしたところであります。さらに、証取審、金融制度調査会、保険審議会におきましても、本年六月まで報告を取りまとめるよう議論が進められておるところでございます。六月までに、二〇〇一年までに金融システム改革が完了するプランの全貌が見えてくる、こういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、本改革は遅くとも二〇〇一年までに完了するという明確な期限を示しております。各方面においても精力的な検討が行われておりますし、結論を得られたものから速やかに実施してまいる、こういうことにいたします。
  179. 海野義孝

    ○海野義孝君 国金局長、お見えですので、一、二、教えていただきたいんですけれども、今大蔵大臣がおっしゃった来年の四月、今回常会に出ているわけですけれども、外為法を改正するということで、ほぼ実質的には外為関係管理については完全自由化に近いということになるんですけれども、具体的にこれによって世の中がどういうふうになるかということを少し簡単に教えていただきたい。  いわゆる一般の庶民はこんなことができるとか、あるいは国同士とか金融機関ではこういうことができるとか、あるいは今のドル円ベースというのはすさまじくレートが変わってしまうのかとか、いろいろな面をちょっとお願いします。
  180. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 先生御指摘のように、今回の外為法改正は全面自由化でございます。ですから、国境を越えた取引、通貨を越えた取引が全面的に自由になるということでございますから、具体的には例えば日本の居住者が海外に預金口座を自由に持つことができるようになる、あるいは海外の金融機関と自由に取引することができるようになるということ、それからもう一つは国内で自由にドルなりポンドなりフランを売買することができるということでございまして、例えばドルショップのようなものをつくることも可能でございます。ドルで価格を表示して、実際にドルを受け取って物を売るというようなことも可能でございますし、それから両替商というのもなくなりますので、町の中、例えばコンビニエンスストアとかスーパーマーケットで円をドルにかえるという業務をやることも可能になると思います。  いずれにせよ、一般企業あるいは個人にとっては為替に関するコストが大きく削減されるということになるのではないかというふうに思っております。
  181. 海野義孝

    ○海野義孝君 もうちょっと教えていただきたいんですけれども、いわゆる今までの外為管理ということでありましたから、日本の水際で要するに海外からの我が国への進入をある程度シャットアウトしていたという部分があるかと思います。  今おっしゃったのでは、私どもがコンビニで両替して、そしてこれも恐らく競争が激しくなれば交換レート、手数料が安くなって、それを持って成田へ行って海外へ行ってくる。帰りのその残った金はまた、今までは友人にそのときのレートでやったらこれは懲役、罰金ということだけれども、これからはそれはいいと、そのときのレートで売ることもできると。大変便利ですけれども、私が一番怖いのは、いわゆるバブルの崩壊後の兜町の崩落も私に言わせると、言っていいかどうかわかりませんが、海外から日本経済戦争で、特に株式市場戦争ではこっぱみじんにデリバティブという商品を使ってやられたという恐怖があるんですけれども、いまだ立ち直れないでいるわけですけれども。  そういう意味で、外為が完全フリーになったときに海外からむしろ攻め込んでくる方が、こっちから攻めていくよりも力が強いんじゃないかということがあると、この金融制度の改革ということが初年度において既に火だるまになってしまうんじゃないかという懸念があるんですけれども、その辺、国金局長お願いします。
  182. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) 御指摘の点でございますけれども、今回は完全自由化でございますけれども、今まで全く自由化してなかったということではございませんので、そういう意味で全く規制しているところから全く自由になる、そういう状況ではないので、若干その点についてマスコミ等で誤解があるというふうに考えております。  例えば海外預金、全部自由になるわけでございますけれども、今まででも外貨建ての預金につきましては投資用と、大きな金額、外国で預金するのは大体投資用でございますけれども、投資用に限っては二億円まで自由に預金ができるということになっておりました。それから、海外の証券会社についても今までも一億円まではこれは届け出をしないで、許可をとらないで海外の証券会社は使えるということでございましたので、外為法改正によって一気に日本資金海外に流出するということはないというふうに考えております。最終的な完全な自由化ではありますけれども、今までも相当いろいろ規制の緩和をしてきたということでございますので、御心配のような日本の金融機関が一挙に崩壊しちゃうとか、日本の金が一挙に外へ出るということはないんではないかと。  それから、外国証券会社、外国銀行については今までも当然支店で相当の業務をやっております。既に、例えば株の扱い高などというのは四大証券全部足しても外証の方が多いというような状況になっておりますので、この外為法改正によって一挙に雪崩のようにいろんなことが起こるというふうには考えておりません。
  183. 海野義孝

    ○海野義孝君 そのように願いたいと思います。  次に、銀行局長、それから理財局長に、例の金融制度の改革ということと公的金融システムの問題の関係について、お聞きします。  きのうかおとといでしたか、全銀協が公的金融システムの問題について立派なパンフレットをつくり、そしてその中でいわゆる郵政業務につきましては、特に郵貯の問題でしょうけれども、全国をブロック制にして云々というようなことが出ていました。全銀協がそういったところに立ち入るということが、果たして私はどうかなとは思いますが、こういうことなんです。  つまり、ビッグバンを進めていった場合に、ここでは橋本総理もおっしゃっていましたようにフリー、フェア、グローバルということを実現していこうということなんですけれども、これは大変なことなんです。そうした場合に、今の金融システム、特に財政投融資についての入り口と中間と出口、この辺を見ますと今後はまさに市場原理にゆだねた金融行政というかそういったものを進めていくようになる。これはまさにグローバルスタンダードということなんでありますけれども、その場合に今の財投などのような郵貯あるいは簡保、あるいは国民年金等々のこういったものが、いわゆる公的金融というか資金ですけれども、それが今の制度だと入り口の場合はそういったものが自分勝手にやるわけで、これはどこがコントロールするわけでもないわけですね。金は幾らでも集まっちゃうという問題。  ところが、片や今国内の一般民間金融機関では大変な、いわゆる不良債権の処理等々の問題もあるし、来年の四月からのいわゆる早期是正措置ということ等を考えると、おいそれと危ないところに金は貸し出しできないというような貸し渋りの現象がある。ところが、そういった公的な資金というものはどんどん入ってくると、防ぎようがないと、こういう状況。中間に立って理財局がやる、資金運用でさっき申し上げたようなことで四苦八苦されているということであります。  そして、さらに出口では事業団、公団、公庫等々いわゆる特殊法人等を含めた、あるいは政府系の金融機関、こういったところがそういった資金運用する。こういうことになって、これはもう膨大なストックになってきていると、残を抱えているということですけれども、その公的な金融システムは入り口、中間、出口が市場原理に基づいて動いているわけじゃないわけですね。それぞれがそれぞれの段階で勝手に動いているということなんで、これがもし今後ビッグバンになったときに、まさに日本がフリー、フェア、そしてグローバルということを標標していったときに、たちどころにこの問題がやはり海外からも大変な日本に対する厳しいあれになってくるということは火を見るよりも明らかだろうと、こう思うんです。  そういう意味で、銀行局長それから理財局長に、こういった金融制度改革の推進上において、公的金融システムというものが今の市場原理が働かないようなこんなシステムでいいのかと。私は決して郵政三事業を民営化しろなんていうことを言っていないわけです。それは今のままだっていいかもわからない。むしろ銀行なんかよりもかなりコストは低いらしいですから、賃金も低いし。だから、そういう意味じゃ私は必ずしも小泉さんの言うことが正論とも思っていませんけれども。これは、むしろこれからのまさに論議をしていく問題であると思いますが、今のそういったビッグバンという問題、大変大きな問題でありますから、そのスケジュールの中でどこかでこれがかみ合わなくなってくるという問題が出てくると思います。  その辺について、どのようにお考えになっているか、あるいはどのように今後対応されていくか、お聞かせいただきたいと思います。
  184. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生の御指摘の点につきましては、銀行局長としての立場から答えるのもなかなか難しい面がございますが、一応考え方として私どもが頭に置いておりますのは、こういった公的な金融の存在というものがこのビッグバンとのかかわりを持ってくることは重々承知しておりますけれども、ただそれがあるからといって民間におけるビッグバンの改革をおくらせるというわけにはいかない。これはまた海外との市場間の競争の問題もありますし、それから日本民間の金融機関が力強くなっていただく必要がある。これは、国民のためにぜひそう頑張ってもらわなきゃいけない、そのためのシステムづくりでもありますので、まずは公的な金融のいろいろな諸問題はあるものの、それはそれとして民間の方のビッグバンの構想をどんどん進めていくということが日本全体のためにもいいのではないかと思います。  そのときに、先生がおっしゃいますように、市場メカニズムが非常に働くようになるわけですから、そうすると公的な金融のあり方ということが当然その対比でもあるいはそのかかわりでも問題になってくることは容易に想像されるわけでございますが、それにつきましては総理も国会の御答弁で、国がどのような機能を果たすべきなのかというようなことも含めて聖域なく検討が今後行われるというふうにおっしゃっておりますし、その辺は、やはり国の経済システムというのはそれぞれ関連しておりますので、一つだけが突出して改革が進むというものでもないと思いますので、そういったところはバランスがとられた形で行われていくものであろうというふうに思っておるわけでございます。
  185. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今、銀行局長が答えましたいわゆる日本版ビッグバン、金融システム改革、これは先ほど委員も言われましたような、いわゆる日本の金融市場を国際市場として復権するように金融市場を活性化させるための改革であるわけでございますが、他方、そこで委員の言われた財政投融資との関係ということになりますが、財政投融資の方は民間では困難な大規模かつ超長期プロジェクトの実施などのいわゆる財政政策を金融的な手法により行うものでございまして、今回の金融市場の活性化策とは若干性格が異なるものだと考えておるわけです。しかしながら、財政投融資につきまして、やはり改革を推進するという基本的な考え方のもとで、やはりこれも民業補完の観点をも踏まえまして対象分野、事業を見直して、資金の重点的、効率的な配分を図っていかなきゃならないと考えておるわけでございます。  そこで、先ほど委員が言われました入り口と出口、別々に決まっているんじゃないか。確かにおっしゃいますように、一つは原資の方の事情でございますが、これは郵便貯金や年金積立金など国の制度、信用に基づいて集められた資金を原資として、これを政策目的の効率的、効果的な推進のためにはやはり統合的に運用することが大事であるということで、統合的な運用ということで財政政策先ほど言いました金融的な手法によってやっている仕組みでございます。  他方、その出口の方の話でございますが、これは各年度の財政投融資の計画で公団、事業団等のそれぞれの資金需要、それからいろんな社会経済情勢等に基づいて決定されているわけでございまして、その意味では、まさにその規模は郵便貯金等の原資の伸びとは全く独立して決められているわけでございます。しかしながら、出口の方が肥大化していいわけではないわけでございまして、常にその対象分野を見直して、それはニーズに応じた適切な資金の供給を図っていかなきゃならないわけです。  結果として、仮に原資に余裕が生じてしまったような場合には、これは国債等へ運用されまして金融市場に結局は還流されていくということになるわけでございますが、いずれにいたしましても、これらの問題全体を含めまして、先ほどもお答えしましたが、まさに広く専門家意見を聞きながらこれから本格的な検討、研究を進めていかなきゃならない課題だと考えております。
  186. 海野義孝

    ○海野義孝君 それでは、つい最近、私も院の参考人質疑に時間をいただいて御質問させていただいたときに、ある総合研究所の理事長がおっしゃったんですけれども、いわゆる今回のビッグバンというのは、これはとにかくいろいろな犠牲を払ってもやらなくちゃならないんだと。まさに、サッチャーさんの八六年の本家のビッグバンじゃありませんけれども我が国にとってみても大きくいえば国家存亡のかかっている問題であるというお話でありました。私も全く同感であります。ですから、相当厳しくこれは取り組んでいかないといけない。まさに総理の五つの原則も、退路を断ったそういった思い切ったまさに大作業であると思います。そういうことで、その理事長がおっしゃっていたのは、日本の金融の再生というには三つのポイントがあるということを言われたわけです。一つは規制緩和の問題、それからもう一点はいわゆるグローバルスタンダードの問題、もう一点は高コスト構造の是正の問題ということをおっしゃいました。  銀行局長にお聞きしたいんですけれども、規制緩和という問題はあるんですが、我が国の、戦後だけでもいいんですけれども、いわゆる銀行日本の金融市場に新規参入してきた例があるかどうか、これを一点教えていただきたいと思います、これまでにですね。例えば、つい数年前に子会社方式で銀行が信託とか証券とか保険とかいうのを経営するというのがありますが、いわゆる銀行そのものの、戦後、大蔵省の金融行政でしょうけれども、認可業務でしょうけれども、新規に国内にそういった銀行の参入を認めた例はありますか。結論だけで結構です。
  187. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、手元にちょっと正確な資料を持っておりませんが、少なくとも最近は先生のおっしゃったような外銀が信託で入ってくるというような例はあったと思いますが、いわゆる典型的な例で、例えば都銀のようなものが出てくるというのはなかったと思っております。
  188. 海野義孝

    ○海野義孝君 国金局長にお聞きしますけれども、またぞろ最近ジャパン・プレミアム〇・二%ぐらいになってきたということですけれども、現在我が国の金融機関でジャパン・プレミアムの対象となっていない銀行が、名前は要りませんけれども、何行あるか。今言われているのは、我が国には都銀あるいは長信、信託等で二十行あると言われていますが、その中でジャパン・プレミアムゼロという金融機関、何行あるか教えてください。
  189. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) ジャパン・プレミアムという概念の定義でございますけれども、これは一般的に日本銀行がそのプレミアムを払わなきゃいけないということでございますので、最も評価の高い銀行でもジャパン・プレミアムを払っておるということでございます、
  190. 海野義孝

    ○海野義孝君 それは、多少のあれはあるわけですよね。
  191. 榊原英資

    政府委員榊原英資君) そのプレミアムの大小はあると思います。今ちょっと手元に、どの個別銀行がどのくらいのプレミアムという資料を持っておりません。
  192. 海野義孝

    ○海野義孝君 次に、銀行局長にお聞きします。いわゆる規制緩和ということを、ビッグバンというものを進める中では我が国の金融界も思い切って規制緩和をやるべきだということで、日本の例えばビッグの超一流の民間企業、これは非金融会社でありますけれども、ジャパン・プレミアムは全くつかない、むしろおまけがつくような超優良企業日本にも三十社ぐらいあるんじゃないかと私は思うんですけれども、こういったところに銀行業務の免許を与えるというようなお考えはありませんか。
  193. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かに、そういった見方も十分成り立つと思いますが、ただ銀行の場合はかなり自己資本比率のような厳しい規制がございまして、特に海外で活躍するところはBIS規制によって八%以上の非常に高い自己資本を求められるわけでございます。しかも、八%で十分かというと、いやもう一〇%要るんだというようなこともございます。したがいまして、資本を相当注入しなきゃいけないということと、やはり銀行というものは信用でございますので、かなり取引関係等が長い歴史でもって培われないと、すぐに立ち上げられるかどうかということは難しい問題でございます。  ただ、御指摘のように、金融界に外から例えば資本の形で資本参加、あるいは買収というふうな形で入ってこられるということは今後あり得るんではないかという気はするわけでございます。
  194. 海野義孝

    ○海野義孝君 今の点で、私はそういったまさに完全な自由競争になるとなれば、我が国の今までの護送船団方式の金融行政の中で、いえばトップ企業、トップバンクと言われたようなところも、確かに今我が国の金融機関の中では、大手で見ましてもニューヨークにDRで上場しているのはたしか一行しかないはずでして、その点から見ましても、日本の一流の民間の第二次産業の企業というのは相当ニューヨークにも上場しているわけでございまして、そういった面、それはもちろん今おっしゃったような比較できない部分があるかと思いますけれども、超一流企業になったというのはそれだけの関係があって築かれてきているというので、絶大なる内外での信用というのはあろうかと思うんです。  そういうことを考えると、国内の来年早期是正措置でおびえる云々よりも、むしろそういった超一流企業、ちょうど今独禁法の問題で純粋持ち株会社なんというのも考えられるわけでありますから、御承知のようにアメリカあたりはGEの傘下に巨大な一流の銀行もあるわけですから、そういうことを考えたら同じようなことを日本もやらないと、日本だけがそういうことにこだわって今までのような漸進主義の金融行政をやっていたのでは、これは口ではビッグバンと言っても、スケジュールはできてもなかなか結果的には、今のちょうどイギリスのビッグバン後の、イギリスは証券だけでありましたけれども、要するに家を貸しちゃって、まるっきり外の資本が経営をして、そこで働いている人だけはイギリス人がふえたと、こんなことになりかねない。これは証券だけじゃない、このように思います。これは、ここで銀行局長に結論をどうこうということではありません。  私は、そのぐらい発想を豊かにしていかないと、世界がやっていないことを日本がやれと言っ  ているわけじゃありませんので、世界に一気に、総理も言っているように六大改革は一気に進めると。ただ、私が気に入らないのは、できるところからやるというのがひつかかるんです。できるところからというのはどういうことかというと、反対されないようなところからやると。そういう面からいうと、私は金融制度改革は、一千二百兆円のお金は別に、国内の超低金利でまさに元本が利息を生まないわけですから、それだったらむしろ海外へどんどん出ていけばいい。今のそこら辺の外資系の銀行では、定期預金だとか普通預金なんかの勧誘は物すごいわけです、四%、五%と、問題は為替でしょうけれども。そういうことを考えると、意外に国民の方が賢い。現に今、年率十五兆円ベースぐらいで毎月金が海外へどんどん逃避しているという時代ですから。  そういうことを考えたら、このビッグバンというのは、スケジュール闘争という背後にある国民のそういう心情とか、あるいは外資の日本に対する攻撃のそういうありようとか、広くそういったものを考えないと、ただひたすらスケジュール闘争をやったら、この間もある大学の教授が言っていましたけれども、二十一世紀の入り口で達成したと思ったら、ほかの海外の一流のそういった金融機関は十二年先を行っていると。つまりそれは、今回日本が、一九八五年秋のいわゆる円・ドル委員会が設置されたプラザ合意のあのときから今日まで、いわゆる協和信組、安全信組、あるいは兵銀、木津信、あるいは大和銀行の不祥事問題、こういったことをずっとそのまま漸進主義の中で放置してきたということも含めて、海外にキャッチアップするということはちょっとやそっとじゃできないという状況ですから、そういう意味でも思い切った改革ということを考えていただかないといけない。  外為も自由化されるわけですから、個人の一千二百兆円は私はむしろ国内の財政再建に使ってもらいたいぐらいですけれども、いや自分のことは自分で守る、自己責任だなんということで、預金もそれこそペイオフは、二十一世紀の入り口というのが前倒しになったんじゃたまったものではないと。どうも預金保険機構も日銀もそんなに金はありそうもないと、しかも預金保険率をさらに上げるなんといったら、それは御免だというような銀行が今出始めている。自由化という時代に預金保険制度はおかしいんじゃないかということを言い出しているところもあるぐらいなわけであります。  時間が来ましたので、最後に一言、大蔵大臣に金融制度改革の取り組みについて、お伺いします。
  195. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 先ほども申し上げました、六月までに三審議会が取りまとめるということで議論が行われておりますから、まさに二〇〇一年までには金融システムの改革が完了するというプランの全貌がそれによって見えてくるわけでございまして、基本的なものはそのときからスタートを切るように、改正が必要であれば来年度国会を目指して準備に入れることになりますし、法律の要らないものについてはさらに議論を深めて決定をするということもあるでありましょうし、許認可の中でいろいろと研究をされて、大蔵省の中でそのことも整理をされつつありますから、それらも見ながら二〇〇一年完了と。基本が進みますと、全体がビッグバンに向かって流れるわけでありますから、時流をしっかりと見詰めながら頑張っていかなければならぬ、こう思います。
  196. 海野義孝

    ○海野義孝君 ありがとうございました。
  197. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は、きょうは納税者番号について主体的にお伺いしょうと思っておったんですが、同僚の志苫議員の質問の中で、先般二十一日に発表になりました米国のムーディーズの発表の問題、志苫先生が時間が少なくてさわやかに質問したようで、その答えがさわやかな答えになっておるようで大変心配でございます。  というのは、銀行局長は、日債銀については今はそれなりにリストラをやっていますよ、大丈夫なんですというお答えです。それから大蔵大臣は、党の政調会長は政府と違うんだから、それは時々いろんなことを言いますよと言って終わっているんです、志苫さんの質問で。私は、これは大変楽観的なお話じゃないのかなと実は思うんです。  そこで、改めてお聞きいたしますが、この日債銀について金融債不適格というようにムーディーズが認定したということは、一体日本の金融業を預かる大蔵省として、本当にこの格付というものはどういう意味を持っているかということに対しての改めての認識をお聞きしたいと思います。
  198. 山口公生

    政府委員山口公生君) この委員会の場におきまして、特定銀行お話を余り申し上げるのもいかがかと思いますし、またムーディーズ自体が民間の調査会社でございまして、それが自己の判断で出しているものでございますので、これにつきましては、ちょっと当局の方で正式に、これは正しいとか間違っているとか、こういう評価をすべきだとかいうのは適切ではないのではないかということを申し上げているわけでございます。  確かに、ムーディーズの理由を見ますと、不良債権の額に比して体力が云々というようなことを言っておるようでございます。それに対して銀行の方も、今一生懸命リストラ策を練っているときに、その中身も聞かないでどうだろうかというような反論をしているやに新聞等では伺っております。  そういったたぐいのものでございまして、各金融機関、ほとんどすべて大手になりますとこういった格付機関、これはムーディーズだけじゃございません、S&Pとかいろいろございます。日本にも格付会社があります。それぞれいろいろな自己の判断で、これくらいの格だ、格付だということで出しております。それを上げたり下げたり、また時によってはそれをまたとんとんと上げていくということもございますし、この点については、当局から余りそれについてお話し申し上げるのもいかがなものかというふうに申し上げているわけでございます。
  199. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 先ほどの、海野先生お話じゃございませんけれども、これから国際金融の中で日本銀行についても国際競争、つまりアメリカでどういう仕事をしていくのかというような場合に、今お話のあった点は、一格付会社という位置づけではあるかもしれぬけれども、私はそれによってアナウンス効果というのが、これはばかにならぬと思うんですね。それで、発表された中身は何も日債銀のことだけではないんですね。これは不適格だというような話だけであって、この表を見ただけでもスリーAのところは全然なくなつちゃったというぐらいのところで、東京三菱銀行から始まってずっと格付が行われているわけです。こういうようなものは、やっぱりアナウンス効果として私は大変影響力を持つと思うんですが、それが一つ。  もう一つは、何も日債銀だけのことを問題にしているのではなくて、私が思うのには、各種銀行の金融債というものについて一体どういうふうに考えたらいいのか。つまり、今までの日本政策は、金融債について非常に不透明、そういう状態になっているからというような基礎的な判断でこういう格付が行われているというようにとるべきなんじゃないかと私は思うんです。その点いかがですか。
  200. 山口公生

    政府委員山口公生君) 格付につきましては、確かに単に数字、格付が公表されるというだけではなくて、先生がおっしゃいましたように、それによって調達の金利が決まってくるというような意味で、かなり重要なものでございます。したがいまして、非常にこれは無視できないものであることは事実でございますが、ただ性格としては、あくまで私が申し上げたように、いろんなたくさんの機関の中の一つ意見ということであることには変わりないわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、昔非常に格付が高かった日本銀行が不良債権問題によってだんだん下げられていった、それでこういった非常に話題になるような銀行が出現してきたということについては、やはり我々としましても不良債権問題のこれから早期脱却ということに一生懸命になっていかざるを得ないという認識は持っておるわけでございます。  加えて、金融債につきましていろいろ御議論がされておりますが、金融債を発行しております金融機関というのは、預金を受け入れている機関とは違いまして、比較的特定されているわけでございます。興銀、長銀、日債銀、農林中金、商工中金、全信連、それから東京銀行が出しておりましたので東京三菱と、七つの銀行でございます。  その七つの銀行議論でございますので、一般論として保護する保護しないというよりは、そういった金融機関がそれぞれ健全性を保っていくということで、すなわち金融債全体の信認が高まると。そうしますと、その発行金利も比較的低く資金調達ができるということでありますので、保護する保護しないという破綻を前提とした議論よりは、そういった個々の銀行が健全性を維持するということをまず考えるべきではないかというのが基本的なスタンスでございます。
  201. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私、これをきょうはそんなに議論するつもりはなかったんですが、しかし、今のお答えの中でも私はまだ問題点を抱えています。なぜかというと、金融債というものはそれぞれが商品として一生懸命やっていることは事実です。けれども、それが思うように売れなかったらどうなりますか。  今、巷間言われている中では、それこそ財投から、資金運用資金から日債銀の金融債を買っているという話もあります。そういうような話を聞くと、片方、山崎さんに至っては、個人の預金者保護の立場でやっているんであって、団体とか機関投資家にはそんなことはやらないという発言も行われているわけです。けれども、他方、よく調べてみると運用資金から支えをやっているわけでしょう。そういうような現実があるわけでございまして、これはいずれにしても公的資金というようなもの、公的資金という範囲はどういうことかという議論はあるかもしれませんけれども、下支えするために、これはいずれ手を入れなきゃならぬような状態が私は来るんじゃないかと思っているんですよ。そういうときに、住専の問題ではないけれども銀行がそれぞれリストラをやっています、改善策をやっていますとよく言うんですが、そのテンポは全然走っていないと私は思いますよ。いろいろな改善策は発表はしているけれども、今だって退職金は一億円もらっている人もいるんだし、銀行の職員は一般のサラリーマンから見たら、ちょっとぐらい下げたってまだ高いですよ。  そういうような状況にあるときに、公的資金を入れるというときは、本当に銀行そのものが確実なるそれこそ健全策をやっているのか、そのことを大蔵省銀行局はどの程度までつかんでいるのかということを私は知りたいんです。全部でなくたっていいんですけれども、知っている範囲で結構。しかし、そこのところには力を入れてもらいたい、調査の段階には。そこだけはお願いしながら、ちょっと聞かせてください。
  202. 山口公生

    政府委員山口公生君) 個別の銀行、それぞれ相当なリストラに取り組んでおりますし、とりわけいろいろと問題にされがちな銀行はさらに思い切った措置に取り組んでおることは事実でございます。  それで、一般論として金融機関の給与がどうとか賞与がどうとかいう議論はありますが、個別銀行のリストラの話と一般論としての金融機関のリストラ状況云々という話はやはり性格が若干違うんではないか、非常に調子のいい銀行の給料がいいからといって金融機関全体が努力していないと言うべきものではないんだろうと思います。だから、リストラというのはあくまで、全体の問題でもありますけれども、個々の銀行が判断すべきものだと思うわけでございます。  具体的に、かなり今銀行も力を入れておりまして、トータルにしますと少しならされてしまいますので、思ったほどのデータをお示しできないかもしれませんが、例えばで申し上げますと、まず店舗を五年度ぐらいからずっと減らしております。それから新規の採用は、私の手元に今、平成四年度が一万六千三百人採っておったんですが、平成八年度は六千二百人と半分以下に抑えております。それから職員数も、銀行は都銀、長信銀、信託で二十万人は優に超えておりました。これがいよいよ切っております。それから、個別銀行の例で幾つか拾ってみましたら、まず役員賞与を全額カットとか、それから店舗の統廃合を大幅にする、それから人員を削減する、そういったことがいろいろ個々の銀行ごとに出てきております。したがいまして、その銀行の経営状況によりまして非常に厳しくやっておるところもございます。報酬を返上してまでやっているということもございます。そういうところは、やはり私どもとしては評価をしてあげるべきだと思いますし、さらなるリストラをやっていただきたいということで強く要請しているわけでございます。  昔はともすれば、信用機関でございますので、外見をよくしておかなきゃいけないというところに物すごく銀行は気を使ったんです。ところが、これだけディスクローズをしていかなきゃいけない、真実を知らせていかなければ本当に信用されないということになりますと、自分がどれだけ努力をしているかということを見せる方がむしろ評価をされてきていると。今度の決算の予想見込みでも、いろいろ思い切って、もう赤字を出してでも不良債権を償却しますという方が評価されているんです。昔は赤字決算すると預金がどんどん逃げた。そういう時代ではなくなってきているということでございます。  したがって、今はリストラはプラスに評価される。したがって、銀行も、ちょっと言い方は変ですが、目の色が変わってきていると私は思っておりますし、これは引き続き強く要請していきたいというふうに思っております。
  203. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 どうぞその点は、大変関心事でございますから、しっかりやっていただきたいと思います。金融債問題については、いずれまた時間があり次第私の意見を述べたいと思います。  先般のこの委員会で、私は税の捕捉について大臣の見解もいただきまして、大変ありがとうございました。国税職員大変喜んでおりまして、本当にありがとうございました。  そこで、きょうはグリーンカード問題からずっと捕捉に必要な番号制度をつくったらどうかというような議論が大変長く続いていると思うんです。それで、政府税調の中でもこの問題は取り上げられておるわけでございますので、もう大体論点は絞られてきて議論も深まったというような私は感じをしているんですが、大蔵当局としてはこの納税者番号制度について現状をどのように把握をしているのか、まず聞きたいと思います。
  204. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) お答えいたします。  納税者番号制度につきましては、かねて税制調査会においても検討が続けられてきております。検討すべき問題点といたしましては、一つは、この納税者番号となるべき番号というのはいろんな要件を満たさなければなりません。この番号をどうするのかというのがございます。  それから、何といいましても大きな問題といたしましてプライバシーの問題をどう考えるのか、さらに民間行政のコストをどう考えるのかというのがございます。民間行政のコストといった場合に、いわゆるコンピューターに幾らかかるかというような話もございますけれども、実はこの納税者番号制度を仮に行うということになりますと、ほとんどの国民の方が預金をするときに子供さんに至るまで番号を提示しなきゃならない、そのようなコストから、さらには金融機関はそれを受けとめましてきちっと名寄せをするというようなところまで出てまいります。あるいは、民間の会社でございますると、まさにそれぞれの番号によって従業員の管理の問題が出てくるというようなこともございます。いずれにいたしましても、民間行政のコストをどう考えるのか、さらには経済取引の影響をどう考えるのかという問題がございます。  それで、今の状況でございますが、これからこういう残された問題につきましてさらに検討を深めてまいりたいと思っておりますけれども、同時に、この納税者番号制度といいますのは、先ほど一例を挙げましたが、国民生活に非常に影響が及んでまいります。例えば、納税者番号制度が一部の脱税をするような悪い人のためのものだというものではないわけでございまして、みんなに関与してくるものでございますから、どのような仕組みで、どのような目的で、また納税者番号制度を導入する場合の考え方として三つの類型を考えておるわけでございますが、私ども国民の方に理解してもらうということがまずあわせて重要な作業だと思っております。  それで、「納税者番号制度を一あなたはどう考えますか?」というような。パンフレットをつくりまして……
  205. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 その辺で答弁を一回切ったらいいですよ。番号制度とか、プライバシーの問題であるとか、経済取引の問題であるとか、コストが何ぼかかるかというような質問を私が用意していたから全部やってあると思うんだが、時間がないから、要するに大蔵省としては納税者番号をもうそろそろ入れるべきかどうかということだけ聞かせてください。
  206. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 失礼しました。  納税者番号制度は我々税務当局にとっては大変便利な制度でございます。便利な制度でございまして、また適正な税務の執行をしていく上でも有力な手段の一つだと考えております。  他方、私ども申し上げておりますのが、一方においていろんな国民の方に、公平のためには国民の方々もそれなりの手間をかけていただかなければならない、そこを認識していただくということもあわせて重要でございまして、私ども意見を言えといえば、それは便利な制度というわけでございますけれども、正確に申し上げますると、やはり国民の間で広く議論をしてもらう必要のある問題ではなかろうか、こういうふうに思っているところでございます。
  207. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私も、もうそろそろ環境が整ったのではないかという理解に立っているんです。なぜかと申し上げますと、それは先ほど番号の問題も出ましたが、アメリカみたいに年金番号にするのか、住民台帳を主体にした住民基本台帳の制度にするというヨーロッパ型にするのか、そういう問題もありますけれども、自治省は自治省で住民台帳番号制度を、これは平成十一年度から導入するというんでしょう。  片一方、今度は労働省は労働省で考えておるし、平成元年二月に税務等行政分野における共通番号制度に関する関係省庁連絡検討会議というのがあるんですが、ここではそれぞれが検討されておって、税務以外についても年金、年金以外の社会保障、輸出入通関手続等の問題、労働行政、運転免許などについてもそれぞれ番号をつけましょうというようなところまで来ているんです。だから、それは環境的にはそろそろやってもいいんじゃないのかなというように私は思っているんだけれども、いかがですか、環境的に。
  208. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今、委員御指摘のように、かつては国民総背番号制というような議論もございましたが、まさに情報化の流れとともにこのようなことに対してくるアレルギーとでもいいましょうか、問題点も国民の間では少なくなっていることも事実のようにも思います。  ただ、今申し上げましたように、プライバシーの問題一つとりましても、我々にとってと申し上げましたが、集中的にそういう納税者番号制度で情報が国税当局に集まる。国税当局には、いわば税務をやっていく上でプライバシーの問題というのはある程度犠牲にしてもらわにゃいかぬと思いますけれども、やはり国民の意識の中には莫大な情報が集まることをどうするかという漠然たる不安もまた残っていることも事実だと思います。  それからさらに、どうしても取引の都度に番号なら番号を民間の間でも示すことになってまいります。そうなりますと、民間の金融機関あるいはそういう金融機関に限らず、それをキーワードにして民間に莫大な情報データがたまりはせぬか、またたまったとしてもそれをどう考えるのかという問題もあるように思います。  長々となりましたが、番号に対するアレルギーは昔よりは減っていると思いますが、なお検討すべき問題が多いということを申し上げさせていただきたいと思います。
  209. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 大臣、答弁は要りませんけれども、ぜひ大臣に承知しておいてもらいたいんですが、今お話しのようなプライバシーの問題、これは大変大きい問題であることは事実だと思うんです。でも、昭和六十三年に制定されたものがあるんです。行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律というのがあるんです。六十三年ですよ、これによって一生懸命今やっているはずなんです。しかし、今情報化時代だから、なかなか決定的に結論が出せないという問題はあるかもしれませんけれども、この法律をつくって、今になってもまだプライバシーの問題はと言っているのではそれは話にならぬと思うんです。だから、これは問題であるということは私も重々承知しているんですけれども、ここのところを早くクリアするような議論を進めてほしいと思うんです。  それから、もう一つの問題は、納税者番号ができると海外との取引の関係というのも、これも確かに問題点はあると思うんです。しかし、これはやはり税の問題として解決すればいいんであって、それはそれなりに私はクリアできると思うんです。そういう意味から、ぜひ頭に置いていただきたいと思っています。  そこで、先ほどのコストの問題、これをちょっともう少し詳しく聞かせてください。納税者番号を導入した場合に行政庁が必要なコストは、あとは人員が何ぼだとか、さらに納税者はどのようなコストを払うのかというような点について、これは簡単でいいですから聞かせてください。
  210. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) コストは三つあるかと思います。一つは、納税者自身が有形無形の番号を提示するコスト、それからもう一つ民間企業においては、例えばソフトを直さなきゃならない、金融機関のシステムを改変しなきゃならない、そういう問題があるかと思います。それからもう一つは、先生がおっしゃいました役所側にどういうコストが生ずるか。私どもこれを検討してまいりましたが、民間側でのコストの試算が難しいものでございますから、役所側でのしかも電算システムで幾らかかるかという計算だけはさせていただきました。  納税者番号制度の類型が三つあると申し上げまして、微妙に数字は違ってまいりますけれども、納税者番号制度導入時の初期コスト、あるいは年間の経常的運用経費だけについて申し上げますると数百億円以上という試算を我々は得ております。
  211. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 数百億円というのは、何が数百億円ですか、ちょっと。
  212. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 失礼いたしました。  三つの類型と申し上げましたが、後でまた資料を届けさせていただきたいと思っております。現在、いろんな法定資料が出ております。それを税務の機械化、効率化のために今ある業務を全部電算化してしまう、制度は変えずに電算化するというのが一つ。それからもう一つが、総合課税を実施する場合にどうか。それからもう一つが、相続税等の資産課税に利用する場合はどうかということで電算関係のコストを計算いたしました。  そういたしますと、例えば最初の機械化、効率化のための、これも磁気テープがどのぐらい提出割合が変わるかで試算が変わってまいりますが、初期コストとして二百三十億円か、ランニングでは五百十億円ぐらいか、このようなイメージでございます。あるいは総合課税ということになってまいりますると、初期コストが六百八十億円で経常コストが二千百十億円ぐらいかかってくるかというような試算がございますが、後ほどお届けしたいと思っております。
  213. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 もう一つは、今国税庁が検討しているという中に、今のお話と一致するのかどうかわかりませんけれども、KSKというのが検討されていますね。国税総合管理ということで、納税者のデータを一元的に集約管理するために、全国の税務署をコンピューターで一元的に結ぶKSKシステムというのが検討されている。これを導入する計画があると聞いているんですが、この内容についてちょっと聞かせてください。同時に、これと納税者番号制度というのはどういうふうに関連するのか。
  214. 堀田隆夫

    政府委員(堀田隆夫君) お答え申し上げます。  お尋ねのKSKシステムでございますけれども、これは最近におきます情報化の進展といった税務行政をめぐる環境の変化に対応いたしまして、私ども国税組織が任務を的確に遂行していくためにはどうしても必要な基盤整備であるということで導入を進めているコンピューターシステムということでございます。  今、先生お話がございましたように、全国の企業務を総合的、一元的に管理いたしまして、国税で持っております各種の資料データを有効に活用する、それを使いまして効果的な税務調査を実施するなどいたしまして税務行政の高度化を図る、それでもって適正、公平な課税の実現に資するというものでございます。現在、東京国税局、仙台国税局の二十三署で試行をしておりまして、来る平成九年度におきまして東京国税局、一局八十四署に拡大することを予定しております。  したがいまして、納税者番号制度の問題につきましては、先ほど来御議論がございまして、私ども執行当局として非常に関心は持っておりますけれども、執行する際に便利で有効な制度であるとは思いますけれども、かたがたいろいろな問題が指摘されているところでございますので、そこは税制調査会等の御議論の検討の方向を見守っていきたいと考えておるところでございます。  したがいまして、KSKと納税者番号制度というのは別の観点のものでございまして、KSKが納税者番号制度の導入を前提としているといったような性格のものではございません。
  215. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 今お話しのKSKというものを、納税者番号制度とリンクさせるというか結合するというか、やろうと思えばできない相談ではないんでしょう。今は目的が違うということで入れますということになっていますけれども、やろうとすればできるというように理解していいんですか。
  216. 堀田隆夫

    政府委員(堀田隆夫君) 納税者番号制度は、税務署、国税当局に提出されます提出書類に納税者番号が打たれておりまして、その納税者番号でいわゆる名寄せをするというところに一つの重点があると思いますけれども、今やっておりますKSKシステムと申しますのは、今の国税庁が使っておりますほかのADPシステムと同じように、名寄せは住所と氏名によってやっているということでございます。したがって、そこは別であるということでございます。  ただ、納税者番号制度が導入されるということになりますれば、その納税者番号を使って名寄せをするということは十分可能になるわけでございます。ただ、それはそのときにまたシステムの見直しをする、再構築をするということになると、また別の局面を迎えるということでございます。
  217. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 その点はよくわかりました。  時間ですから結論にしますけれども、この納税者番号というものを考えるときには、やはり今でも大きい問題はプライバシーの問題だと思うんです。それから、これを入れたときに、経済的なもので資金のシフトがどこまででどういうふうになるのかという分析がよくできないと、入れてみたもののさっぱり税が入らないというようなことになつちゃいかぬので、そういう問題点があることは重々承知しています。  けれども平成九年度の税制調査会においても、もうそろそろいいんじゃないのかという結論みたいなものを出して、それを国民的に理解をしてもらう啓蒙宣伝が必要だということが結語になっていますね。税制調査会は調査結果を出しているわけです。けれども、やはりまだ啓蒙とかそういうものがないために、それはみんな番号つけさせられて税金取られるのは嫌だというのは当たり前なのでございまして、そういう意味からすると、啓蒙とかそういう普及活動に十分留意していただきまして、私は個人的には早急にこれを導入する方向で固めてもらうようなことが一番いいんじゃないのかなと思いますが、大臣の所見を伺って、終わりたいと思います。
  218. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 今、段々のお話を承ってまいりました。審議官が言われましたようなことで、また委員御指摘のような効果性の問題、もろもろの基本的な問題があるようでありますから、御意見を承りましたので、今後の対応はすべてを見て対応します。
  219. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 終わります。
  220. 小島慶三

    ○小島慶三君 私、予算委員もやっておるんですけれども、いよいよあしたで結論を出すという段階まで詰まってまいりました。参議院に送付されましてから余り時間もなかったわけでありますが、各党からのいろんな議論で私ども完全に政府原案を納得したというわけではございませんが、一般的には世論の喚起にはかなりの役に立ったのではないかというふうに思っております。そうなりますと、あとはこの九年度予算の執行ということでどのようにやっていかれるのか、その問題と、平成十年の予算にどう結びつけていくか、これが最大の課題になるというふうに思っております。  それで、先般、政府としては公債依存度の削減の目標を繰り上げるという、これは内閣の御決定でございますか、それは後でお伺いしますが、そういうふうにお決めいただいたわけでありますが、これは内閣の御決定というふうに承知してよろしいんでしょうか。まず、大蔵大臣に伺いたいと思います。
  221. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 国、地方を通じます財政赤字を対GDPで三%以下にする。それから、国の一般会計におきまして、特例公債の依存から脱却する、こういう目標につきましては、昨年十二月の閣議におきまして二〇〇五年までのできるだけ早期に達成をするということで閣議決定  がなされました。これは閣議決定です。  今般なされましたのは、政府・与党の首脳の方々が参加をされております財政構造改革会議での決定でございます。その中身は、先ほどの二〇〇五年までに達成する、できるだけ早期に達成するというふうに閣議では決定されておったわけでございますけれども、その早期というめどを二〇〇三年にしますということをこの会議で決めたわけでございます。閣議という手続はまだ経ていないわけでございます。  それで、二〇〇三年の意味は二つございまして、一つは、今申し上げましたように、数値目標の方をできるだけ早くということで二〇〇三年にいたしますと同時に、財政の健全性を確保するための構造改革を早期に達成する、そのための歳出各般にわたる制度改正を実現するめどとして二〇〇三年というふうな決定をしたわけでございます。  以上でございます。
  222. 小島慶三

    ○小島慶三君 そうしますと、それは政府・与党両方の意思の統一ということであろうかと思います。ただ、これは希望であるのか、あるいはある程度の目安、腰だめであるのか、それとも政府の計画意思であるのか、その辺のところがちょっと我々としてはやや理解に苦しんでおります。  仮に、政府の計画意思であるとするならば、その背景となる成長率は一体どのくらいなのか、三・五で押し通されるのか、それともその成長率の中での貯蓄率、資本係数、こういったものはどういうふうにお考えか。それから、毎年同じようなテンポでいくのか、それとも前にかなりウエートをかけていかれるのか、そういうふうな点についてお伺いしたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  223. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま小島議員から言われました、本件はどこに明確な意思があるのか、政府の意思かと、こういうことであります。  そのまま言わせていただきますと、橋本首相の不退転の決心、そういうことの中で今回の構造改革に関する五原則が決定をされました。これを決定するに当たりまして、三党の責任者との懇談が前日ございまして、そこで三党の責任者から思い切ったことをできるだけ前倒しでやらなければならぬという決意が述べられたこともございまして、その意思ますますかたしと、こういうことで、先般のこの発表の閣僚懇談会、長時間、二時間近くやりましたが、その会議において、私が座長を相務めたのでございますが、閣僚各位から推進のための意見はありました。  この五原則及び基本的な考え方十二項目についての問題についてとかくのことは全くなく、やはり決心を持って本件の推進に当たろうと、こういうことで確定をいたしたというのが事実でありまして、閣僚懇談会としては大変整然とした、やはりこのタイミングをおいてないというそれぞれの意見表明がありました。私が座長を仰せつかったものですから、総理以下二十名、全閣僚に一人ずつ御発言をいただきました。そういうことで、方針を堅持しながら全力を尽くしてやり抜こうと、こういうことになりました。
  224. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) それで、委員の質問の中に、前倒しをどういうふうにしてやるのか、各論をどういうふうに決めるのかということがあったかと思うんですが……
  225. 小島慶三

    ○小島慶三君 ちょっと聞こえないんですが。
  226. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) 委員の御質問の中に、前倒しをどういうふうにやっていくのか、各論をどういうふうにやっていくのかという御質問がございました。その点、ちょっと補足させていただきます。  前倒しの点につきましては、今世紀の残り三年間を集中改革期間といたしまして、主要な経費について具体的な量的の削減目標を定め、必要な分野につきましては制度改革を早期に断行することによりまして、次の三年間でその効果が発現し両者合わせて二〇〇三年までに財政構造改革の達成を期すというふうになっております。  それから、あと分野ごとにつきましては、社会保障でありますとか、あるいは公共事業でありますとか、あるいは教育でありますとか、いろいろな分野につきまして改革の基本的な考え方を示しております。この改革の基本的な考え方も、先ほど大臣申されましたように、構造改革会議で決定をされ閣僚懇談会で了承されているものでございますけれども、その基本的な考え方に基づきまして、これから一カ月半ぐらいかけまして企画委員会という場で議論をされ結論を得ていくというふうになっております。
  227. 小島慶三

    ○小島慶三君 私が実は伺いたかったのはマクロ的な、計数的な根拠なんですけれども、そういうものはむしろなくて、政策的な積み上げ、そしてそれによる計画意思ということでございましょうか、そういうことで理解してよろしゅうございますか。
  228. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) マクロ的なことはもちろん当然、これだけの苦しい血の出る話でございますから、きっちりとやらなければなりません。  同時に、積み上げということになりますと、大蔵省が財政展望、中期展望に対する試算、両院の予算委員会に提出をさせていただきました。私も提出する前に報告を受け、きちっとしたものをお出しいただき、官邸にもそのことはきっちりと報告をしたところであります。中期展望三・五の場合、そして改革を断行した場合、さらにやらない場合、一・七五の場合が二つありますけれども、そういう一・七五%見通しはありますが、それによって積み上げられたところをほぼ目安としてお考えをいただければよろしいわけでございます。  いずれにいたしましても、企画委員会におきまして、財政構造改革政府一般会計その他だけではございませんで、地方財政と車の両輪でこれを行うという数値も御案内のとおりストックとフローということで出ておるわけでございますから、まさにその目標に向かってマイナスシーリングで対応をしていこう、あらゆるものを見直していこうと、こういうことになっております。
  229. 小島慶三

    ○小島慶三君 この御質問は、前にも申し上げたので重ねて恐縮でございました。  そういたしますと、後の問題として来年度予算の概算が今度八月に出てまいりますが、その辺との関係というのは後の進行状態としては一番重要になるかと思います。それで、来年度の問題の中心は恐らく私は民営化という問題ではないかというふうに思っております。特殊法人あるいは認可法人の民営化というのが焦点になるのではないかというふうに思っております。そういうことで、橋本内閣の大方針である官から民へ、そして中央から地方へというのが今度の前倒しの中に織り込まれていく、こういうふうに理解しているわけであります。  けさの新聞を見ますと、特殊法人の廃止あるいは民営化というものについて、「自民案第一弾きょう決定」というふうに書いてありまして、厚生省は年金福祉事業団、農水省は農用地整備公団、それから通産省は電源開発、これは事業団ではないと思うんですが、それから労働省は雇用促進事業団、もっともこの一部は新しい法人に移すということになっている、それから建設省は住宅・都市整備公団、文部省は国立教育会館ということで、いずれも我々が前から疑問に思っていた事業団、公団がリストアップされているわけであります。  この辺については、まだこれから政府との折衝が始まるのでございましょうから、今御意見をお伺いしても仕方がないとは思うんですけれども、大体こういう方向でいくということでございましょうか。お答えが無理なら、結構です。
  230. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) いや、申し上げます。  けさの新聞は、自民党本部に設置をされました行政改革推進本部、本部長佐藤孝行代議士でございます、その中で論議が重ねられ、一応中間取りまとめとしてまとめたということを聞いております。総理・総裁である橋本さんの指示があり、党において検討、もう一つありますのは与党三党との協議が残っておるかなと、私は政治家としてそう思っておりますが、月内には首相の手元にそのものが報告をされ、いわゆる政府に置かれております行政改革本部、本部長橋本龍太郎であります、そこで協議が行われるということになると思います。
  231. 小島慶三

    ○小島慶三君 私は私案として、今の特殊法人については、廃止すべきもの、民営化すべきもの、統合すべきもの、それから存続すべきものと四つの分類に分けて整理をしていくということが問題をクリアにする非常に大事な要点ではないかと思っております。その案は申し上げませんけれども政府・自民党の方でも二十二の特殊法人からもっと絞り込むんだということを新聞に、これは感想記事かもしれませんが、書かれておりますので、あるいはそういう努力がされるのかというふうに思っております。  いずれにしましても、この成否が恐らくは私は十年度の予算のかぎになるというふうに思っておりますので、なおこれからその他のいろいろな民営化も出てくると思うんですけれども、サッチャーのあの改革だって民営化から始まったわけです。結局、後先十年かかりましたけれども、とにかくこれがサッチャーのイギリス再生計画の起点になったというふうに私ども受けとめております。そういった意味で、民営化にかけてはよほどの努力が必要であるというふうに私は思っております。  きょうは、幸いお三方にお見えになっていただいておりますので、お三方からそれぞれ、お三方の仕事についても民営化したらどうだという意見がぼつぼつ出ております。そういう点についてのお考えを、せっかくの機会でございますから、わざわざおいでいただきましたのでお伺いしたい、かように思っております。
  232. 尾崎護

    参考人(尾崎護君) それでは、国民金融公庫からまずお答えをさせていただきたいと存じます。  私は、国民金融公庫のいたしております仕事は営利を目的とする民間企業の仕事としてはなじまないものであろうというように思っております。その理由を申し上げますと、私ども大きく申しまして三つの仕事をしております。一つは、小規模零細企業に対する事業資金の貸し付けであります。それからもう一つは、恩給それから共済年金の担保貸し付けであります。それからもう一つは、国の教育ローンと言っておりますが、教育資金の貸し付けをいたしているわけでございます。  代表的なものといたしまして、小規模零細企業に対する資金の貸し付けの中で普通貸し付けと言っております代表的なものをちょっと申し上げますと、その貸し付け対象は、個人が半分以上、法人は半分以下でございます。それから、従業員の数が一けた、九人以下というものが八五%でございます。それから、無担保のものが八九%、約九割でございまして、逆に言いますと担保をいただいておりますのは一割しかございません。この普通貸し付けのほかに経営改善資金、いわゆるマル経というのがございますが、そのマル経は無担保、無保証であります。それから、一件当たりの貸し付けが大体七百万円でございまして、しかも貸付件数が百七十万と大変零細なたくさんの企業に一件一件のロットは非常に小さい貸し付けをしているのであります。  こういうような仕事をしておりますのは、先生よく御承知のことと存じますけれども国民金融公庫は昭和二十四年にできたわけでございますが、その前身は庶民金庫とそれから恩給金庫でございます。庶民金庫は、対人保証による小口の資金の貸し付けということ、本当の零細の企業あるいは個人を対象にしてやってまいりました。それから戦後は、御承知のように引揚者でありますとかそれから戦災を受けた方に生業資金を貸すという仕事をしておりました。それから、恩給金庫の方は、これは恩給でありますとか、あるいは勲章年金を受けておられます方々が何か一時に少しお金が要るというようなときに、恩給権などを担保に入れてお金を借りる、それを限ってここだけがかつてそういうものを質に入れて大変高利を取られたということがございましたので、そういうことをやれる機関を限定したわけでございます。そういう仕事を我々引き継いでいるわけでございます。  そして、国民金融公庫法の第一条は、「銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な事業資金等の供給を行うこと」ということになっておりまして、それが私どもの仕事の内容でございます。これは到底コストの問題を抱えております民間の金融機関の仕事としてはなじまないものであろうかと存じます。  私どもは、この国民金融公庫法第一条に盛られました趣旨を体しまして、小規模零細企業に対する貸し付け等に今後とも精進してまいりたいと存じます。
  233. 吉野良彦

    参考人(吉野良彦君) 開発銀行の吉野でございます。  申し上げるまでもないわけでございますが、私ども、いわゆる政策金融機関でございます。金融という手法を通じて国の政策遂行の一手段という役割、その一端を担わせていただいているわけでございますが、私ども銀行につきましてやや敷衍して申しますと、国民経済的に大変必要性の高い分野あるいはプロジェクト、そうではあるが同時に投資資金の回収に極めて長い期間を要するとか、あるいはリスクの判断について非常に困難を伴うとか、あるいはまた収益性が非常に低いとかいうような理由で、なかなか一般の民間の金融ではカバーし切れないそういった分野あるいはプロジェクトにつきまして、私どもはいわば長期の安定的な資金を供給するということで、いわば決して競争しないで民間金融を補完し、あるいは誘導をしていくという仕事をさせていただいているわけでございます。  今お話しの民営化の是非いかんということでございますが、先ほどお話しございましたように、党あるいは政府におきましていろいろこれからも御議論があろうという状況のもとで、私のような立場にある者が申し上げるのはややはばかられる点はございますが、お尋ねでございますので申し上げますと、ただいま申し上げましたような私どもの仕事の基本的な性格から申しまして、いわば競争原理のもとで互いにより大きいといいますか、より高い収益を求めて競争し合う民間企業というような形態は、もともとなじまないのではないかというふうに考える次第でございます。  言いかえますと、仮に民営化をされるということになりますと、今私どもがやっておりますリスク補完あるいは収益補完、あるいは期間補完といったような私どもが現に果たしております役割の遂行というものは困難になるのではないかというふうに考えている次第でございます。  もちろん、私ども行政改革の重要性というものは政府の中におります一員として極めて重要なものという認識をいたしております。ただ、私ども開発銀行につきましては、御高承かと存じますが、実は一昨年、ちょうど二年前でございますが、二年前の春、やはりこの行政改革問題に関連をいたしまして種々与党三党の間におきまして御議論がございました。最終的な与党三党の決定といたしまして、日本開発銀行の簡素合理化についてという文書が取りまとめられました。  その内容は、要するにいわゆる私どもの本来の役割でございます民間金融の補完に徹しろと。そのために、一時バブル崩壊後のいろいろな景気対策の要請で私ども融資規模がかなり急速に拡大をした時期がございますが、そういったいわば一種異例の拡大分を勘案して今後その融資規模の圧縮に努める。それからまた、融資対象なりあるいは、私どもはいわゆる協調融資でございますので民間銀行と協調する比率をいろいろ勘案してやっておりますが、協調融資の比率を引き下げるというような方向で最終的な御方針が決定をされました。  私ども、それ以来、もう既に二年になりますが、毎年度予算編成の過程におきまして関係政府御当局とも十分に協議を重ねまして、融資規模の圧縮それから融資対象の見直し等々努力を続けているところでございまして、今後ともそういった態度で取り組んでまいるのが私どものあるべき筋道ではなかろうか、こういうふうに考えているところでございます。
  234. 保田博

    参考人(保田博君) 日本輸出入銀行の保田でございます。  日本輸出入銀行は、御承知のように、民間の金融機関が市場原理に基づきまして融資をするといったようなことでは必要な資金が十分に確保することができないような種類の国際的な資金供給の分野におきまして、輸銀法の第一条にあります言葉をかりますならば、民間金融を補完し奨励をするということを目的として設立されたものでございます。  我が国経済の安定と発展ということのためには、外国との貿易あるいは投資といったようなものを促進いたしますとともに、開発途上国あるいはまた市場経済移行国に対する資金協力等を通じまして、世界経済の持続的な成長に寄与することが必要でもございます。そしてまた、これらを支えるための国際的な資金供給につきましては、その性格からいたしまして民間金融機関の活動のみでは対応が困難である、融資量を把握することが困難であるということのために輸銀の政策金融による補完が必要であるというふうに考えております。  多少、具体的に御説明をさせていただきたいと思いますが……
  235. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 時間がないから、少しに。
  236. 保田博

    参考人(保田博君) 輸銀が融資対象としております例えば輸出でございますが、これは工場の施設とか機械あるいは発電設備といったようなプラント類の輸出でございますとか、あるいは日本国が必要とします石油、石炭、鉄鉱石、銅鉱石といったような資源の開発輸入、さらには日本国の企業海外進出といったような国際的な貿易・投資活動がございますし、あるいはまた開発途上国等に対する資金協力につきましても、例えば受け入れ国の、あるいはその周辺での戦乱、内乱あるいはまた通貨制度の急激な変更といったようないわゆるカントリーリスクあるいはまたその他日本国内での取引では考えられないような多様なリスクが伴うものでございますし、また一つ一つ融資の額も大きくかつ長期を要するものでございます。  そしてまた、これらのプロジェクトを実施するに当たりましては、相手国とのいろいろな交渉、あるいは各国日本輸出入銀行と同様な立場にあります輸出入銀行等との協調、折衝、あるいはまた物によりましてはIMF、世銀といった国際的な金融機関との協調、交渉といったようなことも必要であります。  それらの仕事を、民間金融機関が行うというにはやはり限界もあろうかということでございまして、我々としては公的金融機関としての輸銀の役割はなお大きいものがある、民営化にはいささかなじむところが多くないというふうに考えております。
  237. 小島慶三

    ○小島慶三君 時間がなくなりましたので、いろいろ政策金融のメカニズムというふうなことについてもちょっと御議論したかったんですけれども、これは後刻に譲りまして、また適当な機会がありましたらお三方からそれぞれお話を賜りたい、かように思います。  それで、私の最後の質問でございますが、これは自治省の方にお伺いしたいと思っております。というのは、地方債というものが一般の国債と同じようにどんどんふえていくということで、この歯どめがないような気がしておるわけでございます。そういう点で、地方債のこれからの歯どめといいますか、そういう点についてのお考えが何かございましたら承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  238. 瀧野欣彌

    説明員瀧野欣彌君) 地方債についてのお尋ねでございます。  平成九年度におきます地方債につきましては、地方消費税の税収が平年度化しないことに対応するために臨時税収補てん債という特別の地方債を発行いたしましたり、あるいは地方財源が非常に巨額の不足を来しておりますが、これを補てんするために財源対策債の発行をする、こういうようなことがございまして、地方債依存度につきましては、平成八年度よりは下がりますけれども、一三・九%と極めて高い水準になっておるわけでございます。  また、地方財政全体といたしまして、平成九年度末の見込みでございますが、借入金残高も百四十七兆円ということでございます。個別の団体を見ましても、我々危機ライン、危険ラインと見ております公債負担が一五%を超えるような団体が全体の約四五%ということで、非常に財政の硬直化を懸念しておるところでございます。  こうしたことから、平成九年度の地方財政計画におきましては、地方の一般歳出を〇・九%ということで圧縮をいたしまして、借入金に対します依存度を引き下げるというようなことで財政の健全化に留意してきたわけでございますが、特にお尋ねの地方債につきましては、臨時地方道整備事業に係る地方債というようなものにつきまして、平成八年度までは一〇〇%充当というようなことをしておりましたけれども、そういった充当率を引き下げるというようなことなどによりまして、地方債の発行額を前年度に比較いたしまして八千三百億円強縮減をいたしたところでございます。  もとより、こういった取り組みは財政健全化の第一歩というふうに考えております。今後、国、地方合わせまして財政赤字を対GDP比三%にするようにしていくんだ、こういうことでございます。今後、地方債の発行額の抑制、重要な課題であると我々も考えておるわけでございます。今後、財政構造改革会議におきましても財政構造に踏み込みました財政再建方策について検討されるわけでございますが、我々、各地方団体に対しましてより一層徹底した行政改革の取り組みを求めますとともに、国、地方を通じます行政の簡素効率化の方策を講じまして財政健全化に全力を挙げていきたいというふうに考えております。
  239. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 大蔵大臣、四月一日から消費税の税率をあなた方は引き上げようとしていますけれども、私はきょうもそれを中止してもらいたいということを申し上げたいと思います。そして、このところ連続してここで言わせていただきましたけれども、やるべきことはむだを省くこと、あるいは不公平な税制を正すことだということをきょうも申し上げたいと思います。  政府は、聖域なき財政支出の見直しということをおっしゃっており、大蔵大臣はこの間ここで私の質問に対して、軍事費もその見直しの対象であり、それは正面装備も定員もまた在日米軍経費も当然検討対象だとおっしゃいました。そこで、きょうは在日米軍経費に関して、こういうものは少なくともやめてもらいたいということを指摘しまして、大臣の意見もお伺いしたいと思います。  今、日本負担している在日米軍経費というのは世界でも有名で、アメリカでも最も日本は優等生だということがしばしば論議になっており、アメリカ本国に置くよりも日本に置いた方が安上がりだという議論さえあるほどであります。私が持っております九六年度の資料では、米側負担日本負担合わせた在日米軍経費は九千七百億円、そのうち日本負担が六千三百八十九億円、実に六六%が日本負担日本負担と米側負担の比率は二対一ぐらいになっているという、こういう数字もあります。  こういう状態、特に日本負担の中には、安保条約に基づく地位協定ではアメリカ負担することになっているそういうものまで負担している。それが新しい予算案では二千七百三十七億円ですか、に上っている。金丸さんがかつて、これは条約上の根拠は何かということを問われて、思いやりであるということを言われて以来、思いやり予算と言われるようになっております。  私は、在日米軍経費全体、とりわけ少なくともこの思いやり負担というふうなものは今や検討し直すべきときではないかと思います。アメリカ財政赤字を考慮して思いやりと言っていましたが、今日本の公債依存度は一二・六%、アメリカは七・七%です。日本が借金してアメリカに思いやりをやるという時代ではなくなったと思いますが、こういうことを検討し直すというわけにはいかないものですか、大臣。
  240. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 御案内のとおり、橋本内閣、構造改革、大原則聖域なしと、こういうことで全体を見直して対応する。御案内のとおり、来週から企画委員会が週三回精力的に開かれ、五月中旬に結論を出します。それを踏まえながら今後に対応をするということになります。
  241. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それでは、きょう私は、そこでぜひ検討の対象にしてもらいたいテーマにちょうどよくなったと思いますので、これから幾つかただしていきたいと思いますが、時間の節約とわかりやすくするために資料を配付いたします。これは防衛施設庁から私がいただいたものでありますので、私の勝手な資料ではございません。    〔資料配付〕
  242. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 思いやりというのは、安保条約に基づく地位協定上の日本の義務のない、アメリカ負担することになっているものですけれども、やはりこれは中身から見ても検討し直すべきものだと思います。  ちょうど七年前ですか、予算委員会ですけれども、我が党の吉川春子議員が思いやり予算の中身を質問して大変話題になったことがありますけれども、これを見ますと、まず資料の一、提供施設整備において整備している施設、昭和五十四年度から平成九年度予算案までのものがここにずっと、これ項目だけあります、六十二項目に及んでおります。この六十二項目というのは、これは隊舎から航空機のシェルター、運動施設、学校、教会、クラブあるいは滑走路の移設費といろんな項目があります。クラブって何だろうか、七年前の論議では、よくわからないけれどもお酒なんかを飲むところではありませんかという答弁が七年前には行われております。  私は、日米安保条約が必要だという政府の立場に立っても、こういうことまで乏しい金から出して、世界最大の財政危機だという時期に必要なのかどうなのか。酒を飲むところと安保とどういう関係があるのか、教会と極東の安定といかなる関係があるのか、こういうことを私は考える対象に、いよいよあさってからですか、始まる協議では当然なるだろうと思いますが……(「来週です。」と呼ぶ者あり)来週ですか。これはいかがですか。まず防衛施設庁に、そういう六十二項目にわたる日本側の思いやりの負担があったと、これは事実としてお認めいただけますか。
  243. 米岡修一

    説明員(米岡修一君) 整備項目につきましては、当方が整理している項目によりますと六十二項目ということで、本体着工ベースで昭和五十四年度から整備しているということは事実でございます。
  244. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それでは、もうちょっと進めて、また大臣の意見をお伺いするとしまして、隊舎がありますね。これを見ますと、七年前吉川議員が取り上げたときの数字では平成元年度百三十棟でした。それが今度の資料を見ますと百八十三棟にふえております。私どもはこういう経費だけはやめるようにと強く求めましたが、どんどんふえて今百八十三棟になっている。経費は幾らぐらいかかっていますか。
  245. 米岡修一

    説明員(米岡修一君) 昭和五十四年度から平成九年度予算案までに提供施設整備により整備している隊舎の金額でございますが、契約ベースでは千七百二十五億円、歳出予算額ベースでは千六百十八億円でございます。
  246. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 こういう隊舎があります。隊舎のほかに家族住宅というのがあります。これもこの七年間に六千三百七十五戸から一万三百十六戸にふえております。七年間に一・六三倍というようにどんどん隊舎をつくってやっている。これの予算は幾らですか。
  247. 米岡修一

    説明員(米岡修一君) 昭和五十四年度から平成九年度予算までに提供施設整備により整備している家族住宅に要した経費でございますが、契約ベースで約四千六百三十四億円、歳出予算額ベースでは約四千三百九十九億円でございます。
  248. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 住宅の中で、私が、吉川議員が質問して以来この七年間、いろんな機会に問い合わせても納得得る答えがもらえないのが、資料の二にある司令官の住宅の間取り図なんです。これを見ると、浴室が三つあるんです。大臣の家、浴室が幾つあるか知りませんけれども、なぜ浴室が三つもある住宅をつくらなくちゃいかぬか。私は、外務省に聞いたり防衛庁に聞いたり施設庁に聞いたり七年間繰り返しましたけれども、だれに聞いても納得できる答弁はいただけません。七年前の答弁は、アメリカ国防総省からもらった見取り図にそうなっているので、それに沿ったまでだという答弁でした。今答弁してもそういうことになるんじゃないかなと思いますけれども、いかがですか。
  249. 米岡修一

    説明員(米岡修一君) 提供施設整備で建設しています司令官用の家族住宅は、米側の基準に基づいて整備しているものでございます。浴室の数につきましては米国の基準に基づいて整備しているものでございまして、米軍人の生活形態、文化、体格等を考慮して決定されているものと考えております。
  250. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 いや、米軍は浴室が三つなきゃ生活ができないのかどうかという米国の生活慣習についてだれも納得できる答えをしてくれないんです。これは本論じゃありませんが、要するに私は、アメリカがこれをよこせと言えば何でもつくって提供する、そういう仕組みになっていると思うんです。私はこういうことを続けていったんじゃ、これは借金しながら、アメリカの三倍ですよ、公債依存度。その国がそういうことをして向こうから言われるとおりのものを、しかも安保条約の義務外の負担をしなくちゃいかぬのかどうなのか。大臣、やっぱりやらなきゃいかぬと思いますか。
  251. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) お風呂の件を聞いておりまして、司令官三バスというのはいわゆる米軍の基準だと思うんですね、司令官、将軍でございますから、ということかなと。そのほかの将校、兵隊さんはそんなことはありませんから、司令官という意味なんでしょう。  そこで、いずれにいたしましても、今後とも日米安全保障の観点と財政事情等を踏まえながら、適切に対処をしてまいりたいと思います。
  252. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この思いやりの中には、今言ったようなものから航空機のシェルターあるいは滑走路の移設費というふうなものまで含まれておりますけれども、私はこれももう一つ、大臣によく考えて、来週からの検討でこれは論議してもらいたいんですが、資料の五です。  「制服等貸与対象品目一覧」というのがあるんです。大きい項目を読んでみましょう。エプロン類、帽子類、手袋類、それから靴類、シャツ類、ジャケット類、作業衣類、ズボン類、靴下類、防寒衣類というふうになって、ネクタイ類。この前も話題になったものですが、ちょうネクタイ、こういうふうなものに至るまで提供されているわけです。こういうのが百一品目もあるとこの資料には書かれております。  私は、これを読んでみても、ジャケットと安保、ちょうネクタイと安保、一体いかなるかかわりがあるのか。借金してこういうものを提供しなくちゃいかぬということが、いかにも日本がいいかげんなことをやらされてきたということを示すものだとしか思えません。一体、ネクタイ何本、幾らぐらい経費かけて提供しているんですか、施設庁。
  253. 加藤双

    説明員(加藤双君) 従業員の制服等につきましては、従業員が職務に当たりまして任意の福利厚生の一環としまして、作業上の安全管理それから衛生管理それから品位、儀礼等の観点から貸与しているものでございます。
  254. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 数とか額を聞いたんだよ、私は。ネクタイ、ちょうネクタイ何本、経費幾らということを聞いているんだ。
  255. 加藤双

    説明員(加藤双君) ちょうネクタイは平成七年度百四十個でございます。それからネクタイですが、千七百個でございます。
  256. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 経費は。
  257. 加藤双

    説明員(加藤双君) ちょうネクタイは七年度で十四万。それからネクタイ類は百三十万でございます。
  258. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私が、こういう問題を取り上げたのは、やはりこういうことをきちっと先に見直すと。アメリカ財政赤字で日本に泣きついてきたときに思いやりだということで金丸さんが思いついた。それにも我々はもちろん反対しましたよ。しかし、今や状況が変わって日本世界で最も深刻な財政危機にあるというときに、こういうのが何ら見直しされないまま次々積み重ねてきている、こういうあり方の中に大きな問題があると思うんです。これから、来週からじゃ遅いんですよ、今までやっておかなくちゃならなかった。私はこの前も言いましたけれども、こういうことをやってから消費税の税率は決めるというのが約束だったんですよ。それをやらないでこういうふうになっている。  私は、大蔵大臣に、この米軍事費については正面装備も定員も在日米軍経費も聖域なく見直しをやるとおっしゃった、そのためにも、これが実態ですよということを考えていただこうと思って、きょうはお土産の資料とあわせて質問させていただきました。大臣の御意見を、もう一度お伺いします。
  259. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 個々の問題は初めに承ったところでございます。いずれにしましても、安全保障の観点と厳しい財政事情の観点から適正に対処をしてまいります。
  260. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最後に、こういうことを踏まえての質問ですが、こういう見直しをやらないまま消費税の税率五%が決定された。この間の参考人意見を聞いていると、税調のメンバーの人が二けたになる必要があるという答弁もなさっている。このことを見ると、五%への税率引き上げが結局は二けたへの第一歩ということになりかねない、そういう心配をするものであります。  消費税の税率が二けたになりますと、これは直接税、間接税、大体五分五分になりますね。そうなると、所得税中心だと言っていた日本の税制というのはすっかり変わってしまうことになる。所得税中心でなくなるわけです。私は、税制の今後の基本方向として所得税中心ということを貫くのか、それは検討し直すべきときが来たと考えておられるのか、これを最後に質問しまして終わりにいたします。
  261. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。  税体系のあり方でございますけれども、それぞれの個々の税目には長所もあれば短所もあるわけでございます。したがいまして、それぞれの各税目を適切に組み合わせて構築していく必要があると考えております。今回の税制改革でございますが、まさに少子・高齢化の構造変化を踏まえながら活力ある福祉社会を構築していくために、まさに所得、消費、資産のバランスのとれた税体系にするというものでございまして……
  262. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 質問に一言で答えてください。後がつかえるから。
  263. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) はい、わかりました。今後の話でございますけれども、まさにその時々、国民的な議論を踏まえて税体系の議論が行われるものと承知しておりますけれども、所得課税を基幹として今後考えていくべきものというふうに考えております。
  264. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 終わります。
  265. 山口哲夫

    山口哲夫君 まず、大蔵大臣にお尋ねをいたします。  総理は、財政構造改革五原則の中で、今世紀中の三年間を集中改革期間として歳出削減に聖域は設けない、こうおつしゃつております。先般の当委員会におきましても、同じように大蔵大臣が述べられていると思います。ということは、防衛費も当然聖域ではないというふうに考えてよろしいですね。
  266. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) そのとおりです。
  267. 山口哲夫

    山口哲夫君 防衛庁の方としても、その趣旨でこれからも対処するということでよろしいですね。
  268. 佐藤謙

    政府委員(佐藤謙君) ただいま大蔵大臣からお話がございましたが、財政構造改革会議におきましては、聖域を設けずあらゆる経費を対象議論が行われているところでございます。防衛関係費につきましても、同会議において示されました基本的な考え方に従って、今後企画委員会において議論が行われるものと承知しております。  いずれにいたしましても、防衛関係費につきましては、財政構造改革会議におきまして、防衛力整備については我が国の安全保障上の観点と経済財政事情等を勘案し、節度ある整備を行うことが必要との観点から、基本的な考え方が示されているところでございまして、私ども防衛庁といたしましても、財政構造改革会議における議論を踏まえまして真剣に検討してまいりたいと、かように存じております。
  269. 山口哲夫

    山口哲夫君 来年度予算案を組むに当たっての腹構えがまず大事だと思うんです。確かに、その会議の結果を見てということでありますけれども、少なくとも総理の方針としては聖域を設けないで歳出も削減するということでございまして、これを実行しようとすれば間違いなく前年対比マイナスにしなければなりません。したがって、総額としては前年対比マイナスを腹構えとしてお持ちだと思うんですけれども、防衛庁としての考えを聞かせてください。
  270. 佐藤謙

    政府委員(佐藤謙君) 私どもといたしましては、先ほど申しましたように、財政構造改革会議におきます基本的なお考え方、これに沿いまして検討をしてまいりたいと、かように存じております。財政構造改革会議におきましても、我が国の安全保障上の観点と経済財政事情等を踏まえて節度ある整備を行うと、こういうお考えを示されておりますので、そういう考え方を踏まえて真剣に検討をしてまいりたい、かように存じます。
  271. 山口哲夫

    山口哲夫君 いずれにしても、これは前年対比マイナスの予算になることは間違いないと私は思っております。そうなりますと、この主要な正面装備、この分を削除しない限り前年対比マイナスにはならないと思うわけですね。その点、正面装備についても削減をしていかなければならない、そういう腹構えはございますでしょうか。
  272. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 一昨年、新しい防衛大綱がつくられたわけでございますけれども、その防衛大綱の一つ考え方として合理化、効率化、コンパクト化という方針が出されております。部隊編成あるいは装備品につきまして、この新しい防衛大綱の別表に旧防衛大綱の別表と違ったコンパクト化した形のものが示されておりまして、それに沿って現在、五カ年間の中期防衛力整備計画というものができているわけでございます。  装備品につきましても、あるいは部隊につきましても、コンパクト化、量的に見ますと縮小というものが織り込まれた形の大綱でございますが、それに従ってできた中期防に従いまして、諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう、現在老朽設備の更新、近代化ということを基本として必要な正面装備を積み上げて毎年予算要求をしているところでございますが、しかし、今経理局長から答弁しましたように、財政構造改革会議において聖域を設けずあらゆる経費について検討するということでございますので、我々もその方針に従って真剣に検討してまいるつもりでございます。
  273. 山口哲夫

    山口哲夫君 そこで、少し具体的な問題で質問します。  正面装備の一つとして九〇式戦車というのがあります。これはソ連が大変大型の戦車をつくったことに対抗してつくったものでございます。それで大変大きいものですから、これを北海道、私北海道出身ですけれども、北海道に輸送するのに上下に分けて輸送して北海道で組み立てなければならないという、そのくらい大きいものと聞いております。これはあくまでも対ソ連との関係でつくられた戦車だと私どもは認識をいたしております。現在、ソ連脅威論がもうなくなって、それでもこの戦車が一体必要なのかどうか。私は、当然この戦車は、防衛庁の中にももうそろそろ戦車は必要がないという声もあるというふうに聞いております。  この機会に、この九〇式戦車の新しい発注は行うべきでないと思いますけれども、どうでしょうか。
  274. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 冷戦が終えんしたということは事実であろうかと思います。  我が国の防衛の基本的な考え方といたしまして、特定の脅威を見積もって、そしてそれに対抗し得る防衛力を整備するという考え方をとっているわけではございません。旧防衛大綱も新防衛大綱も基本的に同じ考え方をとっているという点ではまさに基盤的防衛力整備をするという意味で同じでございまして、そういう意味我が国が侵略をされた場合の陸海空自衛隊の防衛力を整備しておるところでございます。  そういう意味におきまして、陸上自衛隊における戦車の整備というものは我々必須と考えております。
  275. 山口哲夫

    山口哲夫君 基盤的防衛力整備というよく使う言葉ですけれども、しかし今もお話があったように、日本に侵略してくる国がないという考え方に立った場合に、これに対抗する武器は必要はないだろうと思うんですね、兵器は。さっき言ったように、九〇式戦車というのは明らかに北海道を中心にしてソ連が侵入したときに備えるためのものだというふうに、私内閣委におったときに議論をしたことがあります。そういう点では、私はこれは今後どうしても廃止をしてもらいたいものだと、このことを強く要求をいたしておきます。  そこで、以前にも議論したことがあるんですけれども、防衛庁の予算の組み方というのは後年度負担が物すごく多くなるんですね。例えば、今回F1の後継機と言われるF2支援戦闘機、これは八機ことし発注することにしております。恐らく全部で九百億くらいになるでしょうか。今年度の予算は二億足らずでございます。例えば、戦車なんかはことしはゼロですね。それで、十数台の戦車を発注するわけです。ですから、少し財政的に麻痺されているんじゃないですかということを防衛庁に申し上げたことがあります。そのように後年度負担が次から次へとふえてくるわけです。  そこで、まず継続費について申し上げてみたいと思います。継続費というのは、第二次世界大戦のときに、どうしても急激に武器をふやさなければならない、兵器をふやさなければならないということで設けたのがこの継続費ですね。しかし、戦後、平和な民主国家日本としてはこの継続費は廃止したはずです。それが昭和三十年からまた復活をしてくるわけですね。  それで、これは具体的には護衛艦と潜水艦に限って継続費ということになっているわけですけれども、この継続費を見ますと、来年度平成十年度の支払い額というのは千八百九十億円、ことしは一千四百四億円、もう黙っていても来年はことしよりも四百九十億も多いわけですね。こういう継続費をどんどんやられたのでは、これから財政再建をやろうと思っても、毎年支出することがもう決まっているわけですから、これでは防衛費を削減できないと私は思うんです。  そういうことを考えた場合に、この機会に継続費はやめると。百歩譲ってですよ、後年度負担であっても債務負担行為に回していく。債務負担行為に回しますと、当然これは財政支出がもうできないという場合には、財政再建しなければならないのでもうちょっと待ってもらいたいという場合には、これは当然その年その年によって決定していくものですから、そういうことでは繰り延べできると思うんです。継続費を債務負担行為に回す方法はありませんか。
  276. 佐藤謙

    政府委員(佐藤謙君) 先生御案内のように、防衛庁が調達いたします装備品、これは生産、調達に長期を要するものが多うございます。したがいまして、財政法上も継続費あるいは国庫債務負担行為という制度によりまして契約権限あるいは支出権限をいただいてその調達を行う、こういう仕組みになっているところでございます。  これも、先生御存じの上でお尋ねだとは思いますが、継続費それから国庫債務負担行為、ともに長期にわたる債務負担をする制度ではございますが、継続費の場合ですと、例えば契約権限が初年度に限られずに、初年度に全体の限度額の範囲内で契約をしてもよろしゅうございますけれども、それ以降の年度にわたって契約をする権限があるのに対して、国庫債務負担行為の場合ですと初年度に全部の契約をしなければならないと、こういう制度的な違いもございます。  そういたしますと、護衛艦のように、一遍に契約をせずに船体であるとかあるいは機関であるとか、それに載っけますいろんな武器等につきまして契約をする時期がそれぞれ異なってくるものがございます。このように、やはり製造工程が長くしかも複雑だという場合には、国庫債務負担行為ではなくて継続費でやはり対応せざるを得ないのではないかなと、かように私は思います。
  277. 山口哲夫

    山口哲夫君 今お話があったように、債務負担行為というのは初年度において何年か分を全部総額を確定させる、これはそのとおりだと思うんです。しかし、支払いについては毎年議会で決定をする。ですから私は、防衛庁に、それではF2のこれからの年度ごとの支払いを示してくださいと言っても、それは毎年国会で決めるんですから出すわけにはいきません、こういうことになるわけです。しかし、継続費だけは毎年きちっと決まって出されているわけです。ですから、そういうことを考えたときに、国会できちっと財政との関連の中で支出をできるような形をとるためには、私はやっぱり債務負担行為を行った方がいいだろうと思うんです。そのことを強く要請をしておきたいと思います。  さて、そこで、どうも正面装備を削れないというのは別なところに何か理由があるんではないか。例えば、九〇式戦車なんというのは、さっきも言ったように、防衛庁の中でさえもう要らないだろうなと、自民党の防衛族と言われる方々の中にも、やっぱりもう戦車は要らぬだろうなというような声があったということを私は新聞で読んだことがあります。そんなように、それでも何でそんなに発注しなければいけないんだろうかな、調達しなければいけないんだろうかと考えたときに、防衛産業との関係があるのかなという、そういう感じもいたしました。  これもかつて何か雑誌で間違いなくあったと思うんですけれども、防衛庁の幹部の方が防衛産業のことも頭に入れながら考えないわけにはいきませんというような話が出てきたことがありました。私は、そういう考え方で見るときに、この新防衛計画の中で、防衛関連メーカー百三十一社が日本防衛装備工業会というのをつくっておりますけれども、経団連と一緒になって、昨年の五月、武器輸出三原則の見直しを求める提言を発表しているわけですね。  ですから、そういうことを見ると、経済界の方は、多くの兵器をつくらせてもらった方がそれは企業としては利益が上がるわけですからそういう考え方に立つでしょうけれども、しかし私どもとしては、こういうことで防衛産業との関連の中でこれからの中期防などを考えられたんではたまつたものではないと思うわけですね。その辺についてどうですか。
  278. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 先ほど申し上げましたけれども、陸海空自衛隊の力で我が国の防衛を行うという考え方に基づいて、これは防衛大綱でも「我が国が保有すべき防衛力の内容」につきまして、それぞれその自衛隊に分けて記述してあるわけでございます。  そして、その別表の大綱に部隊編成と同時に、例えば陸上自衛隊でございますと、「主要装備」として「戦車約九百両」、「主要特科装備約九百門」あるいは「約九百門/両」といったような記述があるわけでございまして、我々としては陸上の自衛力を確保するために戦車はこれは必須の装備品であるというふうに考えておりまして、この戦車について取得をやめるというわけにはまいらないと考えております。
  279. 山口哲夫

    山口哲夫君 防衛産業との関係
  280. 秋山昌廣

    政府委員(秋山昌廣君) 防衛大綱には、「防衛力の整備、維持及び運用における留意事項」という項目がございまして、その項目の中で「装備品等の整備に当たっては」ということでいろいろ書いてありますが、そこに「その際、適切な国産化等を通じた防衛生産・技術基盤の維持に配意する。」という留意事項として書いてあります。  我々は、一国の防衛を確保するに当たりまして、その防衛の装備ないし武器を生産ないし整備する防衛産業の基盤を維持するということは、一つ重要なポイントであると認識しております。
  281. 山口哲夫

    山口哲夫君 その防衛産業の基盤を維持できるようにという、その考え方が私は非常に問題があると思うんです。  アメリカのアイゼンハワー大統領が、こういう名言を吐いたことがあります。産軍複合体がアメリカの民主主義を崩壊させるだろうと。要するに、防衛産業と軍隊との癒着ということについて非常に心配をして述べたことだと思うんです。私も、日本でそういうことになっては大変なことになります。余り軍事産業の維持、基盤の整備なんということを考えるのではなくして、まず日本の防衛力を、削れるところはきちっと削っていくということをしっかりやっていただきたいということを強く要求しておきます。  次は、SACOの問題です。沖縄行動委員会、この関連経費をどうして防衛予算と別枠でしなければならないのかということです。これまで駐留軍の経費についてはすべて防衛費の中で支出をしていたはずです。ところが、昨年の、八年度の補正予算からこれが別枠になっております。これは明らかに、防衛費を一緒にしておきますと今までの既存の防衛費を削らざるを得なくなる、そういう配慮からやったんじゃないかとさえ思われますけれども、どうでしょうか。
  282. 佐藤謙

    政府委員(佐藤謙君) 今、先生お尋ねのSACO関連経費でございますけれども、その取り扱いにつきましては、概算要求段階での閣議了解におきまして、予算編成過程で重点的に検討、こういうふうにされ、昨年の十二月二日に出されたSACO最終報告、これに盛り込まれた措置の実施につきまして、政府として、十二月の三日でございましたが、閣議決定が行われまして、「政府全体が協力して、あらゆる努力を行っていくことが必要」であり、これを「的確かつ迅速に実施するため、法制面及び経費面を含め、政府全体として十分かつ適切な措置を講ずること、」とされているところでございます。  こういうものを踏まえて検討なされました結果、平成九年度予算におきましては、四兆九千四百十四億円とは別途六十一億円が措置された、こういうことでございます。
  283. 山口哲夫

    山口哲夫君 大臣にお願いしておきたいんですけれども、せっかくGDPの一%を防衛費が切ってきましたね。しかし、このアメリカの駐留軍経費を別枠にしておきますと、今後普天間基地を海上基地にしようという今動きがありますね、これは数千億から約一兆円くらいはかかるだろうと言われている。これを別枠でやっていきますと、そのままいくと思うんです。しかし、防衛費の中に今までと同じように入れれば、これはもう一%を超えてしまいますよ。しかし、一%で抑えなければならないという方針がある以上は、その中でどうしたって抑えていかなければならないと思うんです。これは防衛費を大幅に引き上げるためにどうしてもこれは分けたと、私は思うんです。  ぜひ、これは枠内において、防衛費の枠内でやっていただきたいということを強くお願いしておきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  284. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) SACO関連経費の九年度補正予算の扱いについて、ちょっと補足をさせていただきます。  いわゆるSACO関連経費につきましては、沖縄に関する特別行動委員会最終報告が出まして、昨年十二月三日に最終報告に盛り込まれた措置の実施促進に関する閣議決定が行われたことを踏まえ、八年度補正予算及び九年度予算において、その同報告に盛り込まれた措置を実施するために防衛関係費として所要額を計上しているところでございます。つまり、防衛関係費の中に含まれているということでございます。
  285. 山口哲夫

    山口哲夫君 それは、今までの防衛予算、駐留軍経費というのは、すべて防衛費の予算として組んだわけでしょう、自衛隊関係の経費として。しかし、今回は別枠として組んでいるじゃないですか。
  286. 溝口善兵衛

    政府委員溝口善兵衛君) SACO経費が一つのまとまりとしてではございますけれども、防衛関係費の一部を構成していることは間違いございません。防衛関係費の一部でございます、中でございます。
  287. 山口哲夫

    山口哲夫君 全体に言えばそうかもしれないけれども、全然違います。大臣、最後にどうでしょうか。
  288. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま本年度補正と本年度、九年度予算ですね、これについてはただいま答弁のとおりでございます。そういうことで、ここのところは御理解しておいてください。
  289. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 以上をもちまして、委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会      —————・—————