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1997-03-17 第140回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月十七日(月曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  三月十四日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     山本 一太君  三月十七日     辞任         補欠選任      寺崎 昭久君     林 久美子君      橋本  敦君     吉岡 吉典君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松浦 孝治君     理 事                 石川  弘君                 河本 英典君                 荒木 清寛君                 鈴木 和美君                 小島 慶三君     委 員                 阿部 正俊君                 上杉 光弘君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 山本 一太君                 岩瀬 良三君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君                 林 久美子君                 益田 洋介君                 志苫  裕君                 千葉 景子君                 吉岡 吉典君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        林  正和君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省関税局長  久保田勇夫君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       榊原 英資君        証券取引等監視        委員会事務局長  若林 勝三君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        厚生省生活衛生        局食品保健課長  堺  宣道君        厚生省薬務局監        視指導課長    間杉  純君        農林水産省農産        園芸局植物防疫        課長       古茶 武男君        農林水産省畜産        局衛生課長    青沼 明徳君        自治省財政局地        方債課長     伊藤祐一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○平成九年度における財政運営のための公債の発  行の特例等に関する法律案内閣提出衆議院  送付)     —————————————
  2. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十四日、嶋崎均君が委員辞任され、その補欠として山本一太君が、また、本日、橋本敦君が委員辞任され、その補欠として吉岡吉典君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 きょうは、関税定率法の一部を改正する法律案について質疑をしたいというぐあいに思っています。今回の定率法等の一部改正の中で何点かあると思いますが、その中で関税手続簡素化ということで税関申告する仕様書等についての簡略化の条項が盛り込まれているように思います。  それで、税関手続簡素化するあるいは輸出入申告の時間を短縮するというのはいろいろな観点はございますでしょうけれども、全体として手続簡素化されれば、例えば港湾の国際競争力が増してくる等、我が国経済にとって望ましい結果を与えるものと思っているんです。よく税関入管申告手続については、手続時間がかかり過ぎるんじゃないのと、あるいはもう何日も待ったけれども全然やってくれないとか、いろんな不平が出ているように思います。  いずれにしても、税関効率化することが現在において緊急の課題の一つであるというぐあいに思います。私は、いわゆる税関で行う輸出入申告処理というものには、税関で行う申告書処理と、それから他省庁外国から我が国に通させた貨物国内法に照らして適合性があるかどうかということを検討するためのいろんな手続があるように思っています。  先般、昨年の九月だったでしょうか、大蔵省通関手続についてどの程度の時間を要したかということを発表されました。私はそれを見て大変びっくりしたんですけれども、その調査結果によると、申告から貨物輸入許可までに要する時間は、この種の調査は継続的に行われているようですけれども平成三年には申告から許可まで二十六時間かかっておるんですね。ところが、最近の調査である平成八年には約十時間に短縮されている、半分以下になっているということで、それなり迅速化が行われているなという印象を受けているんです。今申し述べたのはいわゆる海上貨物の話でございまして、航空貨物はこれまた非常に迅速にやっておられるように思います。同じく平成三年は二・三時間、そして平成八年には一・八時間、申告から輸入許可まで非常に迅速化されているような資料でございまして、私は大変感服をしております。  しかし、それなりに詳細に調べていくと、全体の時間が短縮される中にあっても物によっては大変時間を要しているものがあります。これも調べてみると、いわゆる通関難関四天王というのがありまして、その難関をもって誇っているわけじゃないでしょうけれども、時間がかかっているのが一つ食品衛生法であり、一つ植物防疫法であり、一つ家畜伝染病予防法であり、一つ薬事法検査対象となる物件については、非常に多くの時間がかかっているように見えます。  そこで、税関は、やはりいろいろな国内法規がございますから他の省庁手続が終了していることを最終的に確認しないと輸入許可が出せないということになるんだと思いますが、きょうは厚生省農水省から御出席願って御説明を承ろうと思っておりますが、例えば食品衛生法に関連するものというのは大体五〇%ぐらいは所要時間が非常にかかっているというぐあいに聞いておりますが、実情はいかがでしょうか、厚生省
  5. 堺宣道

    説明員堺宣道君) 輸入手続に関して食品についてでございますが、ただいま委員指摘のようなことがございまして、平成八年二月に輸入食品監視支援システムというものを稼働いたしました。これはFAINSと呼んでおりますが、従来書面による手続のほか、輸入者等の設置したコンピューター端末による届け出を可能として輸入手続簡素化迅速化を図ったものでございます。さらに、ことしの二月から厚生省FAINS税関手続通関情報処理システムNACCSとのインターフェース化を図りまして、その利用の大幅な拡大を図ったところでございます。  このシステムによりますと、輸入者輸入の都度に手続のために検疫所に来る必要がなくなった。さらに、FAINS自動審査機能によりまして検査の不要なものについては即時に手続が完了する。例えば、これまで検査不要の届け出であっても手続の完了が翌日になるようなこともあったわけでございますが、その日のうちに手続が完了するということでございます。輸入手続に要する時間が短縮されて、手続の大幅な迅速化が図られるというようなことでございます。また、届け出事項コード化による事務入力簡素化のほか、届け出事項の他の省庁との共通項目との入力を省略するということが可能になりまして、届け出事務簡素化というものが図られる、そういうふうになっております。  以上です。
  6. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 食品衛生法の場合は、類型化していろいろなことができると思いますけれども、今インターフェースとのネットということを言われましたが、類型化したものはどのようにしておられますか。
  7. 堺宣道

    説明員堺宣道君) 一部重複いたしますけれども、いわゆる税関手続のものとそれから私ども食品輸入というものの届け出というもの、それが項目的に重複する場合もあるわけでございまして、それらも一つに統一できるということで簡素化できるということだと思います。
  8. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 次に、植物防疫法関係について御説明ください。植物防疫法は全体のうち一七%ぐらいを占めているやに聞いていますので、重要な品目だと思います。
  9. 古茶武男

    説明員(古茶武男君) 植物検疫について、お答えいたします。  輸入植物検疫に要する時間でございますが、これは植物の種類あるいは量によって若干の違いはございます。その中でも特に迅速化が要求されます切り花、これについて見てみますと、検査自体は二十分程度で終わるという状況になっております。ただ、申請から書類手続が全部終わるまで、例えば朝申請がなされれば午前中には終わってしまうという検査体制をしかせてもらっておるわけでございます。  この植物検疫に関します輸入検疫の一層の迅速化あるいはペーパーレス化を図るために、食品衛生と同様に税関通関手続の電算システムとのインターフェース化を進めてきておりまして、この平成九年四月からの供用開始を予定しておりまして、そのための準備に今鋭意努力しているところでございます。これによりまして、輸入者輸入検査申請コンピューターにより行うことができるということでございますので、手続迅速化が図られるというふうに考えておるところでございます。
  10. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 インターフェース化を、要するに電算機でこういう申請があったよということで適応するというぐあいに判断すれば、すぐ税関に聞かせてすぐ許可を出す、こういう制度のように思いますけれども、現在食品衛生法はやっておられると。しかし、農水省物件についてはこの四月ぐらいから始めようとされているわけで、大変結構だと思うんですけれども、結局は全部検査をやっておられるわけですね。若干、農産物ですからしょうがないのかなという感じがしますが、そこら辺の迅速化に努めていただきたいとも思っています。家畜伝染病については、いかがですか。
  11. 青沼明徳

    説明員青沼明徳君) 御説明いたします。  現在、貨物として輸入されます畜産物につきましては、それの検査手続に要する時間については、輸入業者から申請手続提出後、航空貨物につきましては三時間前後、船舶貨物につきましても二十四時間前後で検査手続を終了いたしているところでございます。  これら動物検疫に係る輸入検査手続迅速化を図る観点から、大蔵省等関係省庁との緊密な連携のもとに、その手続電算化あるいは通関手続電算処理システムとのインターフェース化についてシステム開発等を行ってきているところでございまして、現在、九年の早期からの供用開始に向けて最終的な調整を行っているところでございます。このインターフェース化の導入によりまして、輸入者は従来は書類によりまして行っていた輸入検査申請輸入者の所有しますコンピューターにより行うことが可能となることによりまして、手続迅速化が図られるものと考えております。
  12. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 それでは、薬事法の関連はいかがですか。
  13. 間杉純

    説明員間杉純君) 薬事法関係で、医薬品等輸入ということに関しまして、これはもう先生御案内のとおり、二つのタイプがあるわけでございます。  まず、医薬品等を業として輸入するということでございますと、これは薬事法に基づきます許可が要るということになるわけでございますけれども、こうした医薬品通関に当たりましては、昭和六十年八月からもう許可証の写しを税関にお示しをしていただくだけで通関ができるということとしておりまして、現在この点に関しましては特別な手続を必要としておりません。  ただ一方、サンプルあるいは試験研究用ということで許可のない医薬品等輸入するという場合には、あらかじめ税関限りで御判断ができる部分とそうでない部分というのを類型化しておりまして、税関限りで判断できないものにつきましては、私どもにおいて、これは業としての輸入ではないということを確認させていただいた上で確認書を、薬監証明と呼んでおりますが、薬監証明発行させていただいております。  こうした許可のない医薬品等輸入につきましては、これまで税関限りとするものの範囲をできるだけ拡大いたすとともに、私ども証明書類発行に必要な書類削減等々できるだけ簡素化迅速化を図ってきたところではございますけれども、ただ、貨物が届いて当日あるいは翌日ぐらいに私どものところに来られる、私ども薬監証明発行そのものは一通五分ないし十分ということでございますが、そうした点からいきますと、先ほど先生から御指摘のありました平均十時間というふうなところに比べますと、やはり人間がやるということの限界があるのかなというふうに思っておるところでございます。
  14. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、ちょっとお話しになりましたけれどもサンプルをお持ちになって云々というぐあいに言われましたが、私は薬事法だけはインターフェース計画がまだ進んでいないというぐあいに認識をしているんです。インターフェースというのは、税関の持っていますNACCSとの間の電算化作業、これを薬事法においても、一々現物を持って役所に行って云々と、この電算化時代に何をやっとるんじゃというような感じすらするんですが、いかがですか。
  15. 間杉純

    説明員間杉純君) 御指摘のとおりでございまして、実は私も食品輸入監視FAINSシステムを拝見させてもらいましたけれども、ああいう形でできますれば、本当にユーザーにとっても行政にとっても非常に効率的であろうというふうに思っております。  ただ、問題はどこまで類型化あるいは情報定型化ができるかということかと存じます。例えば、私ども薬監証明する際にも、やはり物を見るということで商品の説明書を出していただく場合もございますし、あるいはお医者様が自分の患者さんにお使いになるというふうなケースの場合ですと、例えば医師であることの証明とか、あるいは治療計画ということを審査させていただくということもケースによりましてはあるわけでございまして、そういった個別の提示書類の取り扱いをどう考えるかという点も含めまして税関当局の御意見も伺いながら、インターフェース化が可能かどうか検討させていただきたいというふうに思っております。
  16. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 冒頭で申し上げましたように、通関手続輸出入手続を短縮するということは同時に経済活性化にもつながる、また手続簡略化するということは、これは大変失礼ですけれども職員のセービングにもつながるということなので、ぜひインターフェース化を推進されていかれるように努力をしていただきたいと思うんです。  ついでのことで言いますと、皆さん方御存じだと思いますが、現在の通関のところで、昔々ですけれども、やせる石けんというのがありましたね、あれをいっぱい買って持って帰ろうとすると、二十四個まででなきゃだめだと言うんですよ。業としてやる、要するに横流しするんじゃないかというので、二十四個までは個人の使用にたえるんだと。ところが、口紅もそうなんです、これはみんな薬事法関係なんですけれども。なぜそういうぐあいに制限されるのか、ちょっと御説明願います。
  17. 間杉純

    説明員間杉純君) 化粧品につきましても、業として輸入国内で販売をするということになれば、これは無許可の物も入ってき得るわけでございますから、それは薬事法で厳密な規制をするということかと思います。  一方、ただいまの先生の御指摘個人輸入ということでございまして、これはこういった薬事法の厳密な規制の中におきましても、輸入される方御自身がみずからの責任で使うというふうな場合に輸入を認めているということでございます。化粧品個人輸入につきまして今二十四個以内としているわけでございますが、今先生から口紅あるいは石けんというお話もありましたけれども、これは化粧品の特性から個人の方が短期にそう大量にお使いになることはないのではないかというふうなことも考えまして、いっとき十二個という時代もございましたけれども、今では二十四個ということにしておるわけでございます。  何でも、調査によりますとクリームとか口紅ですと大体五、六年、二十四個ありますともつというふうな調査もございまして、個人がお使いになるという個人輸入の枠の中でお考えいただいた場合に、不足することはないのではないかというふうには考えております。  一方、率直に申し上げまして、私ども問題認識といたしまして、この個人輸入というふうな制度を、悪用と言うと語弊があるかもしれませんが、一人の方が頻繁に個人輸入で入れる、あるいはグループ買いをするというふうなことで、いわば無許可化粧品国内に流通させてしまうという例も薬事監視の中で見つかっておるわけでございまして、御指摘のような個人輸入拡大ということはまことにそのとおりかと思いますが、一方でこうした消費者の保護ということも重要であろうかというふうに考えておりまして、今後もこの両面からの検討が必要なのではないかというふうに考えております。
  18. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今伺いまして、各省ともそれぞれの工夫を願っているように思います。今後とも十分税関と協議していただいて施策を進めていただきたい、かように考えております。  さて、最近では覚せい剤麻薬などが青少年にも随分浸透が進んでいるように言われております。また、一般市民を標的としたけん銃犯罪が多発しているとも聞きます。日本は世界で一番安全な国だと言われきましたが、今や国民の健康で安全な生活がこのような犯罪によって脅かされているという現状であります。  伺いますと、これらのけん銃麻薬はもちろんのことながら国内ではつくっておりません。海外から輸入をされています。輸入というんですか密輸されています。税関では水際作戦ということで、本件について非常にナーバスに取り扱われていると思いますが、現在の水際での押さえ込み状況、いわゆる社会物品水際における取り締まりというものは税関に課せられた重大な使命であると思います。現在どのような状況にあるのか。  それから、さらに申し上げたいことは、国際的な協力がこれはどうしても必要なんで、警察でいえばインターポールというようなものがあります。これらのものについてどういうぐあいにやっているのか、さらに税関職員は一体どのようにやっておられるのか。私は、税関職員の数が足らないというぐあいに思っているんですが、いかがでしょうか。
  19. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) けん銃とか不正薬物等社会物品取り締まり状況についての御質問でございます。  まず、その状況がいかがであるかと、こういうお話でございますが、特に麻薬覚せい剤等につきましては、税関水際国内押収量の六割程度を押さえておりまして、物によっては九十数パーセントまで押さえるというふうな比較的いいパフォーマンスを示しているという気がするわけでございます。  それともう一つ、このような状況税関が、先ほどからお話ございました限られた人の中で取り締まりを効果的にやるためには外国当局との情報交換が大変必要でございまして、これは去年の三月のアジア欧州会議、ASEMと申しておりますが、そこでも取り上げられておりますし、さらに六月のサミットでもこの協力を強化しようと、こういうふうなことが言われているわけでございます。我々といたしましても、いろんなことをやっておりますが、特に関税協力理事会、いわゆるWCOとの協力でございますとか、さまざまなルートを通じて外国税関当局との情報交換に努めているわけでございます。この種のやつは特に情報が大事だということで、特に一九八七年に香港にアジア太平洋地域情報連絡事務所というのを置いておりますが、これには一九九一年より日本から税関職員を派遣して積極的に貢献しておりますし、さらに来る九九年には同事務所を東京に持ってくるということにして、さらに一段と貢献を増していきたいと考えておる次第でございます。  さらに、最近、諸外国税関当局間で活発に締結されております二国間税関協力取り決めというのがございますが、現在この重要性を我々は非常に大事だと思っておりまして、政府部内の関係機関と前向きに検討しているところでございます。  定員はいかがかと、こういうお話でございます。このような状況のもと、御承知のように定員は非常に厳しい中でございますが、事務重点化機械化等業務運営効率化に努める一方で、税関定員の確保につきましては、非常に厳しい定員管理のもとではございますが、最大限の努力を払っているところでございますし、今後とも払っていきたいというふうに考えております。
  20. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 時間がないので、これで質問をやめますけれども、いずれにしても水際作戦で有効に阻止していけるように御努力を願いたいと思います。  これで質問を終わります。
  21. 荒木清寛

    荒木清寛君 平成会荒木清寛です。  まず、関税定率法に入る前に、大蔵大臣に一点だけお伺いをいたします。  それは、十四日にいわゆる年金自主運用検討についての確認書厚生大臣と締結をされたという件であります。財投原資の三分の一を占める年金資金について、財投からの切り離しを検討することで合意をする確認書だと、読めばそういうふうに感じます。  小泉厚生大臣は、もうかねてから郵政事業民営化を主張しておられまして、同じ十四日の参議院本会議でもその主張をもう一度やられたわけです。民間でできるものは民間でと、そういう改革一般論を具体的に適用すべきだという、それはそれで非常に私は筋が通っている話ではないかというふうに思って聞いておりました。ですから、厚生大臣の側としては、こういう確認書を結んだ真意というのは、同じ財投の入り口に位置をする郵便貯金改革論議への転化をすることが真意だったんではないかと、そういう観測もあるわけですね。  そこで大蔵大臣に、こういう見直しをするという、検討をするという確認書を締結された真意といいますか、何を目指されているのか、お尋ねをいたします。
  22. 三塚博

    国務大臣三塚博君) いろいろ取りざたされておりますけれども、エッセンスだけを申し上げますと、財投あり方検討は、国会におきましても国民間におきましても出ておるところでございます。よって、私ども資金運用審議会懇談会を設けまして論議をいただいております。  そういう中で、平成十一年の次期財政再建計算時に間に合いますように年金の問題について結論を出していきたい、そういうことを申し合わせしたところでございます。それ以上でもそれ以下でもございません。私との正式の懇談の中では、主管外郵政事業の問題については、彼は言及するところではございませんでした。
  23. 荒木清寛

    荒木清寛君 今、大臣の最初のお話で、財投あり方がいろいろ国民的な関心というか、議論になっていると、そういうことを前提にした確認書だという趣旨だと思うんですね。  そうなりますと、郵便貯金原資としては年金の二倍近いそういう巨額な一つの供給があるわけでありまして、年金資金運用の仕方を見直すのであれば、検討するのであれば、当然これはそれ以上の金額である郵便貯金原資をどうするのかというのもこの審議会で、資金運用審議会ですか、これで検討されていかれるんではないかと思いますが、そうではないのでしょうか。この資金運用審議会というのは郵政省も所管になっておるんではないですか。そうであればなおさらのこと……(「大蔵だよ」と呼ぶ者あり)大蔵だけですかね、間違っておれば訂正していただきたいと思いますが、いずれにしましても、年金運用だけを見直すというのであればどうも整合性がないというふうに思いますが、その辺いかがでしょうか。
  24. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは、資金運用審議会懇談会大蔵大臣の諮問機関でございます。本審議会におきまして、資金運用あり方について、また有効性等について、今後の進め方等について論議が行われておるわけでございまして、この審議会の中に財政投融資の改革を推進する観点から懇談会を設置いたしました。専門家の意見を聞き、本格的な検討研究を進めていくとしており、第一回が二月十七日に開催をされました。  私と小泉厚生大臣の間におきましては、昨年の予算の際に小泉厚生大臣から今後のあり方について格段の協力を願いたい、こういうことでありまして、年金運用についてでありますが、重く受けとめながら対応を考えてまいりましょうと、こういうことで終わっておるわけです。  その重く受けとめたことを受けて、ただいま申し上げました二月十七日に第一回会合を開きました。第一回で終わるわけでなく、二回、三回、四回、五回と、平成十一年の年金運用についてどうあるべきかということについて検討をし、結論を出していこう、こういたしておるわけでございますから、これをもって大きな前進であるというので預託利子の改定に賛同をいただいたというのがすべてでございまして、御説のように入り口における二百二十兆に達しようといたしております郵便貯金の問題は問題として、これは懇談会の中で意見が今後出ていくのではないでしょうか。そういうことであります。
  25. 荒木清寛

    荒木清寛君 それでは、関税定率法に関連しまして、一、二点お伺いしたいと思います。  関税といいますのは、歴史的には国家の財源として大変重要な位置を占めておりましたが、国家の財政規模の巨大化や国内の徴税体制の整備に伴いまして、財源調達手段としての意義は次第に失ってきております。税収に占める割合等を見ればそれは明らかであるかと思いますが、一方で関税は輸入品に対して課税されるということから、関税分だけ輸入品の価格を引き上げ、国産品を保護するという機能があるわけです。こういう国内産業を保護することに重きを置いた関税を保護関税というそうでありますが、今日の先進国ではほとんどすべての関税がそういう意味での保護関税であると指摘をされています。  この保護関税について考えてみますと、一方では国内産業にとりましては輸入品との競争を有利に運ぶことができるという、そういう国内産業を保護する効果があるわけでありますが、消費者の立場からすればその分高い輸入品を買わなければいけないということになるわけであります。つまり、保護関税というのは国内の生産者と消費者、需要者との間に利害の対立関係を生むという構造にあります。したがいまして、関税政策の運用に当たりましては、その一方だけに偏らないように配慮をすることが重要になってまいります。さらには、WTOやAPECの一員として関係諸国に対する配慮も必要でございます。  そこで一つお伺いしますが、そのあたりの利害関係を関税率の設定に当たってはどう考慮をしているのか。特に関税の率というのは関税率審議会というのがありまして、そこでの検討がベースになるようでありますけれども、そういう審議会の場に十分消費者側の意見というのは反映されているのか、そういう利害の調整の仕組みについてお答えをいただきます。
  26. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 大変、関税政策の基本にかかわる御質問をいただきました。  今、委員指摘のとおり、今日国際社会における経済の相互依存化が非常に進展をしておりまして、それで人や物の国際的な移動がますます活発化しておりまして、税関の話は国境を越える物なり人が対象でございまして、そういう意味で、その中で今おっしゃいましたようなWTO、APEC等の活動強化を通じた多角的な自由貿易体制の維持強化が国際的な潮流になっているというのが一方にございます。  他方では、今おっしゃいましたように、こういう潮流のもとで国内産業の保護それから消費者の利益、税収の確保それから税関における円滑な政策執行等の観点を含めて総合的に勘案してやっていくということになります。さらに、その具体的な仕組みを考える場合には、関税率体系上のバランスでありますとか、あるいは税制としての整合性をも踏まえながら毎年度の関税改正を適切にやっているつもりでございます。  そういうことから、今回の関税改正におきましては、適正な納税申告を確保するという観点から過少申告加算税等の導入を盛り込まさせていただいておりますが、税関は、低くなりましたと申しましても、なお三兆円の税収にかかわる徴税機関でございまして、今後とも行政の面では適正、公平な課税の確保が非常に大事だというふうに考えておりますし、もう一つ大事な諸外国税関協力してけん銃麻薬等の社会物品水際取り締まりを強化してまいりたいと思っております。  御質問趣旨は二つあるかと思いますが、一つは保護機能に非常に、保護に偏っているのではないかということでございます。確かに、これまでの累次の関税引き下げによりまして関税率の水準は低くなっておりますが、農産品、繊維製品など高い関税率が設定されている品目もありまして、そういう意味では関税の保護機能は効果的に働いていると思いますし、また必要な分は十分存在するというふうに考えているわけでございます。さらには、関税には不当廉売関税や相殺関税など、不公正な取引貿易を是正しWTO体制のもとでの自由貿易秩序を維持するというものも我が国にはあるわけでございます。  最後に、関税率審議会についての御質問でございますが、関税率審議会にはしかるべき方も代表となっていただきましていろいろな御議論をいただいておりまして、その議論の結果等の概要は報告をさせていただいております。いろんな要素をいかにバランスをとってやっていくかというのは行政の大きなポイントだと思いますし、私どももその辺を踏まえて一生懸命に対処したいと考えております。
  27. 荒木清寛

    荒木清寛君 そこで、具体的に今回の改正で新設をされました石油アスファルト等に係る関税の還付制度についてお尋ねをします。  私は、反対をするわけではありませんが、しかしこの還付制度の新設について若干十分に理解ができない点があるわけです。そこで、こういう還付制度を新設した理由といいますか趣旨、それを説明願えますか。
  28. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 石油アスファルトに係る関税の還付制度の新設の理由いかん、こういう御質問でございます。  まず本制度は、これは趣旨にかかわるのでちょっと最初に簡単に御説明させていただきますが、石油精製業者等が関税納付済みの原油から石油アスファルト等を製造し、それを製造工場から移出した場合または工場内で燃料として使用した場合、その原料として使用した原油について納付された関税の一部を還付するということでございます。本制度は、石油製品をめぐる環境変化に配慮する観点から講ずるものでございまして、特に石油アスファルト等が生産され、円滑に消費される環境をつくることにより、重油の増産の抑制を図る、あわせて中間留分の安定的供給を図るために創設するものでございます。  もう少し補足させていただきますと、今後需要が減少すると見込まれる重油の生産抑制と、今後需要の増加が見込まれる中間留分の安定供給を積極的に進めることが総合的な石油政策の推進の観点から特に必要であるということを踏まえて、石油精製業者に対して石油アスファルト等の生産のインセンティブを与えるために本制度を導入するということでございます。
  29. 荒木清寛

    荒木清寛君 そこが、私よくわからないんです。簡単に言いますと、私も石油はそう専門でありませんが、今後需要の増加が見込まれる中間留分というんですか、これの増産を円滑に、そして需要の減少が見込まれる重油を抑制するというお話なんですけれども、そんなことは何も税制で考えなくても市場原理に任せておけばいいんじゃないかというように素朴に思うわけです。当然需要がふえればつくるに決まっているわけですし、需要がないものは市場のメカニズムからいえば生産をしませんから、ほっておいたって今後は、そういう需要がふえ、減るという関係にあるんだったら、供給の方も当然そのようになっていくというのが市場メカニズムでありますから、それをなぜそんな税金を還付するなんという異例なことをやりまして、異例というかほかに例がないということじゃありませんけれども、全体の税制から見れば還付制度というのは常態じゃないわけでして、そこまでして企業の生産活動にかかわっていく必要はあるのかというふうに思うわけですが、この点いかがですか。
  30. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 確かに重要な点だと理解をいたしております。  実は原油につきましては、我が国で原油がほとんど生産されていないのに、なぜ原油に対して関税が課されているかというところから本来の議論はあるのではなかろうかと、考えているわけでございます。御高承のとおり、この原油等につきましては、いわゆる石炭等エネルギー対策の特定財源ということで課税をされているわけでございまして、そういう意味ではそういうふうなものとしての仕組まれている中で産業政策の要請がある程度入ってくるということは一つの考え方ではないかと思うわけでございます。  さらに申し上げますと、今おっしゃいました中に入っておると思いますが、関税政策自身、産業政策とは全く無縁ではあり得ないという面があることもまた事実だろうと思います。そういうものとして、関税の特に油関係の関税の政策は運営されてまいりましたし、そういう意味で石油政策の観点からいろいろなことをやるということはこれまでもやってきているわけでございまして、特に今回はこの新しい還付制度はつくりましたが、中間留分の増設等にかかる還付制度は廃止をいたしておりまして、これはそういう意味では石油政策の運営に沿ったといいましょうか、めり張りを含んだ関税政策というふうに全体としてなっているということではないかと思うわけでございます。
  31. 荒木清寛

    荒木清寛君 確かに、これまでの行政のあり方からすれば一つの考え方ではないかと思うんです。  ただ、今はもう規制緩和、自由競争という大きな柱がある時代なんですね。石油行政自体も、特石法が昨年の四月からもう廃止になっているというような環境の変化もあり、なるべくそういう民間の活動にかかわって行政が介入といいますか、関与するのはやめようということになっているわけでありまして、これは税を軽減することでありますから、あえて問題にすることでもないかもしれませんけれども、しかしそういう形で行政が特定の製品をつくるように仕向けていこうということでありますから、やはりそういう規制緩和、自由競争という流れから見るとちょっと私は異質ではないかというふうに考えるわけで、今後こういう還付制度等を新設するのであれば、十分その辺も今の流れを踏まえなければいけないと思うんですが、いかがでしょうか。
  32. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 確かに、その時々の経済政策あるいは産業政策を踏まえて、この関税政策もそういうところから独立してはあり得ないわけでございまして、産業政策がそういうものとして推進されますと私どももその意を受けて関税政策を議論していくということになろうかと思います。
  33. 荒木清寛

    荒木清寛君 今の議論は、この関税率審議会の議事概要というのを今公表していらっしゃいますね、それは非常にいいことだと思いますけれども、その中でいろんな意見が出ているのを見て私はそういう問題意識を持ったわけなんです。  そのくだんの関税率審議会では、この石油アスファルトに関する関税の還付制度の新設というのはいつから検討し始めたんですか。随分慎重に検討されて、こういう結論をお出しになったんですか。
  34. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 最初に関税率審議会で大臣から諮問の御議論を、年度改正の諮問を始めましたのは、たしか九月ごろだというふうに記憶をいたしております。
  35. 荒木清寛

    荒木清寛君 そうしますと、諮問をされたのは三塚大臣の前任の大臣ということになりますが、大臣はこういう還付制度を設けましてひとつ行政がそういう、あえて言えばひとつ石油をめぐる製造工程に関与していくといいますか介入していく、そういうあり方規制緩和というような点を含みますと慎重にすべきではないかと思うんですが、最後にいかがでございますか。
  36. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 規制緩和はまさにオープンで自由闊達な経済・商業活動の中で国民生活に寄与する、こういうことであります。同時に、先ほど来局長言われますとおり、石油は秋田沖にスズメの涙ぐらいしか出ていない、ほとんど無生産国と言ってもよろしゅうございます。  そういう中で、需要の多い石油アスファルト製造ということに対するインセンティブを与えることによりまして産業政策としてこれを決定した、こういうことでございまして、この分野はやはりそれなり規制緩和の世の中とはいえ、足らざるものをそこでバランスよく製造して、公益のため、また地域のために、国民のために貢献するということはあり得てもやむを得ない、またある意味で必要なものなのかな、こう考えておるところであります。
  37. 荒木清寛

    荒木清寛君 終わります。
  38. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 私は持ち時間が少のうございますので、二つの点について御質問申し上げます。  その一つは、過少申告加算税の導入についての問題です。二つ目は、反面調査についてお尋ねを申し上げたいと思います。  御承知のように、この過少申告加算税の導入につきましては、昭和四十一年当時に申告納税制度が導入されるときに通関業法とか事前教示制度等が整備されていないという意味で、輸入者が適正な納税申告を行う環境が整備されていないということでこの加算税の導入が見送られたと思うのでございます。三十年過ぎましてその環境が整ったという意味で、この際加算税を導入したいというのが第一の理由のように大蔵省説明を聞いていると思います。  ところが近年、税関調査によって把握された申告納税税額、これを見てみますと、平成七年度には約四十六億円、平成二年度には二十二億円であったものが五年間で二倍になっているわけです。その要因を大蔵省はどのように述べているかというと、一つは貿易取引の形態が著しく複雑化し、輸入者自身が関税の申告に必要な情報を把握できない事例が増加している、これが一つ。二つ目には、規制緩和や円高の進展に伴って、貿易取引について十分な知識を持っていない新規の輸入者が増加しているというようなことを挙げているわけでございます。  こう考えると、むしろ環境が整っていないんではないかというようにも考えられますが、言っていることがちょっと矛盾じゃないのかと思うんですが、どういうふうに認識すればいいのか、お尋ねをいたします。
  39. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 今、委員指摘のとおり、昭和四十一年に申告納税制度に移りました。本来でありますと、申告納税とあわせて国内と同様に過少申告加算税等の導入をやるべきではないかという検討をかなりやったようでございます。その際、これも委員指摘のとおり、まだ環境が整っていないということで見送ったという経緯がございます。  その後、昭和四十二年に通関業法が制定をされまして、これによって専門家がこれに関与し得る道ができたわけでございますし、その後、事前教示制度運用体制の整備を着々と重ねました結果、一つは環境が整ったというふうに判断したわけでございます。  それから第二番目は、今これも委員指摘の中に入っておりましたが、税関の事後調査によって把握された申告漏れ税額がかなり増加をしておって、これはやはり適正な納税申告を確保する必要があると、きちっと納めいただいた人と過少に申告された人との間で何らかのペナルティーがないのはいかがなものかという当然の話でございます。  それから第三番目は、最近、今御指摘の中にもあったと思いますし、御議論をいただいておりますように、迅速通関というのに非常に大きな力点が置かれておりまして、国際的にもAPECの場でありますとかASEMでありますとか、税関手続の円滑化という、いわば規制緩和と申しますか、簡素化の話が非常に強く行われているわけでございます。しかしながら、翻って考えてみますと、この適正な通関と迅速な通関とは車の両輪のようなものではないかというふうに考えられるわけでございまして、一方では簡素化なり円滑化を進めますけれども、その裏側として、やはり不正があった場合にはペナルティーが要るということが当然の帰結ではないかというふうに考えたわけでございます。そういうことで、これを導入するということにしたわけでございます。  委員指摘の、関税等の申告漏れ額が増加している原因ということでありますが、ちょっとあるいは私ども説明のところで不正確なところがあったかもしれませんが、一つは、近年貿易取引が非常に複雑になっておりまして、なかなかそれによって正確なものができていないというところがございます。それから、貿易取引の額が大きくなりますと、どうしても一個一個の取引も大きくなるし、全体も大きくなるということで高額の申告漏れも当然出てくる、一個当たりの単価が大きくなるということが増加をいたしまして、私どもといたしましては主としてこれらが大きな理由かなというふうに考えているわけでございます。  もちろん、申告漏れ税額という意味では、平成二年の二十二億、直近の平成事務年度で四十六億円ということでございまして、国内の税に比べればそれほどではございませんが、絶対額としてはかなり大きいというふうに考えているわけでございます。  それにもう一つ、最近ふえたのは一つ輸入者に対する調査数を増加させたと、調査部門の人員を多少強化したということもあるいはあるのではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、私どもはこういう人からもちろん申告漏れ税額なり加算金を取るというのが当然でございますが、メーンではございませんで、いかにして適正な申告をしていただけるかということが大変ポイントでございます。  そういう意味では、事前教示制度を従来より以上にいろんな形で充実させることによって、願わくばこういう過少申告がないように、そして結果的には過少申告加算税を課さなくて済むように、そういうふうな方向で努力をいたしたいというふうに考えております。
  40. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 今お話しのように、事前教示制度ということにつきまして、これは知識上の問題なのですか、それとも人が足りないために輸入業者に対してそういう教示ができないというように考えるべきなのか、どちらなのですか。
  41. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) できないというよりは、むしろそういうことをより一層充実させることによってできるだけ納税者の輸入者が適正な情報を得られるように努力したいと、こういう趣旨でございます。  これは、加算税の導入がおくれた一つの理由でもあるんですが、国内の税金の場合と多少違いまして、分類というのが委員御承知のとおり税関輸入には大変大きなポイントでございます。これは国際的なスタンダードがございまして、品目、項目数でいきますと七千ほどになっております。もちろん、これすべてが税金にかかわるわけではございませんが、そういう意味でやや複雑であるというのと、プロフェッショナルな目を要すると  いう意味で申し上げているわけでございまして、そういう意味では、今回の加算税の導入を機により一層の事前教示制度をやりたいというふうに考えております。  ちょっと時間をとって恐縮でございますが、二つの方向がございまして、一つは分類がどうかということと、もう一つは価格がどうかと、こういうことでございまして、従来は分類の方を主体にやっておりましたが、今後は価格についても、国際的な価格等についてどういうふうに考えるかということを口頭さらには将来は書面をもって、一部はもう既にやっておりますが、書面をもって提供することによって、抽象的な言葉で言えば法的安定性ということにも努力をしていきたいというふうに考えております。
  42. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 大蔵大臣にもちょっと聞いていてほしいと思うんですが、私は、今のお話じゃございませんけれども、非常に貿易の複雑化とか規模が大きくなったというような意味でその調査体制ということが非常に不備な現状になってきているように思うんです。  特に、外国資本が入ってきて、親会社、子会社などの関係などがあって、これから適正な税を納めてもらうという意味の調査もなかなか国内では十分でないような面があると思うんです。例えば、外国資本が進出してきておって輸入業者が子会社であったときに、そこのところに調査に行っても、私のところはよくわかりません、本店によく聞いてくださいというような話で調査が十分にできないというような問題があるわけです。  これを俗称反面調査と述べておりますけれども、反面調査ができない原因とか、どうしてできないのかと、それから反面調査をやろうとしても、現在この加算税等にかかわる職員というのは私の調べでは全国で三百人ぐらいしかいないわけです。取引の数からいうととても人が足りないということは、もう歴然としているわけです。そこへきて、外国にも調査に行けないというような問題があることは非常に私は不備だと思うんです。そういう点について、現状と対策についてお聞かせをいただきたいと思います。
  43. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 現状ということでございますので、事務方からお答えをさせていただきます。  委員も御承知のとおり、税関において輸入貨物に課される関税及び内国消費税については、輸入者に対する事後調査を実施しているわけでございまして、事後調査では納税申告の内容が適正であるかを確認するために、今これも委員おっしゃいました専門用語で反面調査と言っておりますが、必要に応じて輸入者以外の者に対する反面調査を行っておりますし、あわせて、またそのときにいろんな知識を向こう側から聞かれることもあって教えているというのが実態でございます。  そういう意味で、海外について調査体制どうかと、こういうことでございますが、これは現在の状況では海外について反面調査という話になりますと、いろいろ人員以外の難しい問題がございまして、恐らく主権の問題というふうなものがあろうかと思いますが、なかなかそういうことからやりづらい状況にあるというのが正直なところだろうと思います。しかしながら、輸入貨物の代金を適正に申告しているかという点につきましては、金融機関に対する反面調査を行いまして、送金の事実の方から確認することができるわけでございます。  いずれにしましても、御質問の中に入っております国際間の、相手が国際的な取引でございますので、あらゆることが外国とつながりがございます。これにどうやって対応するかというのは、我が国のみならずほかの税関の共通の悩みでございまして、先ほどお話をしたかと思いますが、アジア太平洋の地域情報連絡事務所を活用したり、あるいは二国間の個別の情報の交換等を通じて、できるだけの努力をやっていきたいと考えております。  そういうふうなことで、実態はそういうものだというふうにお話をさせていただきたいと思います。
  44. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今、久保田局長言われましたとおり、主権の問題が一つ存在します。それをクリアしながらいくということになりますと、輸入者に対しまして関係資料の提出を求めるというのも一つの方法かなと思います。適正な課税が行われますこと、世界の国々において措置が行われておる中で一つの抜け道かと思いますので、今後とも検討研究、実現に向けて取り組んでまいります。
  45. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 一番最後ですけれども、今お話しの点はこれからも十分議論してまいりたいと思いますが、いずれにしても税関職員というのは、麻薬、港が広いとか、それから貿易が拡大するとか、そういう意味で非常に複雑多岐にわたっていると思うんですが、そういう意味で税関職員の要望についても、定員をふやすなどして、大蔵省それなり努力していると思いますけれども、今後も努力していただきたいということを申し上げまして、大臣からその点についてのみ一言御答弁をお願いします。
  46. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 税関職員、人員不足の中でよく御健闘をいただいておると思います。  鈴木議員の御提言ごもっともでございまして、総員の中でどうしたならばこの分野の強化ができるか。必要不可欠の状態になっておりますので、努力を続けてまいります。
  47. 鈴木和美

    ○鈴木和美君 終わります。
  48. 小島慶三

    ○小島慶三君 大臣、御苦労さまでございます。  私は、今回の関税定率法の改正の内容につきましては、ほぼ異論がございません。しかし、一問、大臣にお伺いしたいと思いますのは、昔は関税自主権というものが確立をしておりまして、これは国の主権の非常に大きな要素であったと思うんでございます。最近、国際化あるいは自由化というふうな流れの中で、この関税の意味するものが大分変わってきているのではないかというふうに思うのでございます。  そこで、この関税政策のこれからの位置づけといいますか、ありようといいますか、そういうことについて大臣の御所信を伺いたいと思います。よろしくどうぞ。
  49. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御指摘のとおり、自由貿易体制の維持強化が国際的に潮流となっておるさなかで関税政策の運営をどうするかでございますが、国内産業保護という観点もございます。消費者の利益という観点、税収の確保、税関における円滑な政策執行等の観点を総合的に勘案をしながら、関税体系上のバランス及び税制の整合性を踏まえながら、先進国として取り組んでいかなければならない課題でございますので、毎年度関税改正を引き続き行いまして適切に実施してまいりたいと考えておるところであります。  税関、約三兆円の税収にかかわる徴税機関でございますから、今後とも適正、公平な課税の確保に努力をしていかなければならないと思っております。
  50. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  それで、少しデータを見ますと、この十年間の関税収入で一般会計分が約四割ぐらいふえています。逆に特別会計分は半額に近く落ち込んできております。この点は今後どういうことになるのか、一般会計分、大体こういったレベルでふえ続けていくのか、特別会計分はこういう形で減り続けていくのか、その辺の推移、見通しについてお伺いしたい。これは事務方で結構でございます。
  51. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) およそ税収がどうなるかというのは、恐らく今から国会その他で御議論をいただきまして、どういうものを保護すべきか、あるいは保護すべきでないか。新しいものを入れるか、入れるべきではないかというふうな結果として出てまいるものですから、私どもでこれをどうなるだろうかということを予測するのはなかなか難しいというのが率直なところでございます。  ただ、一般会計と特別会計というふうな観点からという御議論でございますと、特別会計の方につきましては、御高承のとおり、これは特別会計、正式のあれは石炭その他何とか特別会計というやつは特定財源になっております。したがいまして、基本的にはそういうエネルギー政策がどのような方向を向いていくかということが非常に大きなポイントになろうかと思うわけでございます。  さらに申し上げますと、その中で原油の関税、これはほとんど原油及び関連品の関税が特定財源になっているわけですが、これは実は日本のように自分の国で生産しないのに、なぜかけるのかということになっていることから出発したものでございますので、例えばその大宗、恐らく税収的に大分大きなシェアを占めると思われます原油関税につきましては、既にこの四月から三百十五円から二百十五円に下がることになっておりまして、これは将来ゼロになるというのが既にでき上がっておりまして、そういうふうなことからまいりますと、特別会計の税収というのは、今のままのような政策で、今のままの率であれば下がっていく、絶対額としても、絶対額としてはちょっと取り消させていただきますが、余り大きくならない、むしろマイナスになってくるという従来のトレンドがあるのかなという気がするわけでございます。  ただ、御高承のとおり、関税の場合には国内の税収でありますとか、政策目的以外に国外との関係で導入をしたり、あるいはやめたり、あるいは特定のことがあればそれを相殺するための関税をかけたりと、こういうことがございますので、国内要因だけで判断していくということもなかなか難しいかなというふうに考えています。  いずれにいたしましても、余りお答えになってないかと思いますが、お伺いしましたところのとりあえずの考え方というのは、そういうことではなかろうかというふうに考えております。
  52. 小島慶三

    ○小島慶三君 これからの輸出入というものを見ていると、大体エネルギー関係は今のお話のようなことで、日本輸入依存度というのは非常に高い。それから自主開発もなかなか進まないということになれば、これはやはりかなり輸入の圧力というのは続いていく。したがって、この関税収入がどんどん減っていくというふうには考えにくい。  一方、輸入の製品化というそういう形がだんだん出てきて、従来は原材料が圧倒的だったけれども、これから製品化という形で、そういった意味の輸入がふえるということになりますと、関税制度が適用になるものがどのくらいあるかによって違いますけれども、これもそうは減らないということになるのではないか。  しかし、一方ではウルグアイ・ラウンドというようなことがどんどん進んでまいりますので、その影響というものがどの程度出てくるか。これが非常に予測困難と今おっしゃいましたけれども、その一つの要素を占める、こんなふうに考えられるんですけれども、このデータに関する限りはウルグアイ・ラウンドの影響はどうも余り出ていないみたいですけれども、これはどうなんでしょうか。
  53. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 確かに、そういう見方が可能でございます。  ただ、ウルグアイ・ラウンドの場合には、これまで輸入制限品目、いわゆる輸入制限をしていたやつを関税化した品目がございますので、そういうやつは、輸入制限にかかっていた品目については従来関税が入っていなかったわけです。これをウルグアイ・ラウンドの過程で関税化をいたしました。関税化というのはそういう意味で関税を取るということになりますので、当然輸入割り当てになっていたものにつきましては高い関税率が課されることになります。したがいまして、そういうものはウルグアイ・ラウンドの結果として関税収入はふえたという側面もあるわけでございまして、そういうことを精査する必要があるかなという気がいたすわけでございます。
  54. 小島慶三

    ○小島慶三君 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  55. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 この一月、盗難車ベンツが香港で発見されるという事件が起きました。どういうわけでそういうことが起こったのか、最初にお伺いしておきたいと思います。  私の聞いているところでは、これは現品検査を行わないままの輸出許可であるというところから起こったものではないかと、こういうふうに感じますが、現品検査が行われたかどうかということを含めてお答え願います。
  56. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 確かに、今委員指摘のとおり、この一月以来国内において盗難に遭いました高級車、ベンツなどがコンテナに詰められて香港に密輸出されまして、現地の警察や税関に摘発されたということで報道されております。  この取り締まりの現状でございますが、これはもう委員十分御承知のとおりでございまして恐縮でございますが、税関では、中古自動車を含め輸出貨物については関税法に基づきまして輸出者からの申告を受けて書類審査及び必要な現品検査を行う。その許可を行っているわけでございます。  そういうことでございますが、限られた人員で膨大な申告件数を適正かつ迅速に処理していく必要があるということからいろんな工夫をいたしまして、不正輸出の可能性が高い貨物、ハイリスク貨物と、可能性が低い貨物、ローリスク貨物に選別をいたしまして、ハイリスク貨物については重点的に審査、検査を行うなどして、全体としてチェック機能の重点化と申しますか、を図っているわけでございます。  こういうことは実は密輸出をしていただかなければ一番いいわけでございますが、そういうふうな実態のもとでいろんな対策を講じながら日々の行政を行っているというのが実情でございます。
  57. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 現品検査は行われなかったと、見ればベンツの輸出申告があるかどうかわかったはずですけれども。問題は、現品検査がどの程度行われるか。私は、現品検査を行っているのは一割にも満たない、大体六、七%ぐらいじゃないかというふうに聞いております。あとは申告許可、あるいは書類審査という状況だというわけですね。  今回の簡素化ですが、もちろんスピードアップということは必要でありますが、簡素化によって税関、関税の機能がおろそかになってはならないと思います。今でも人手不足などで現品検査は一々できない。一々どころか一割もできないという状況の中で、さらに簡素化がそういうことを一層弱めてしまうことにならないのかという心配が持たれるわけであります。  そこで、一つ聞きたいんですが、今回の簡素化として三十一条の削除が行われておりますね。これは貨物の保税区域の出し入れに当たって届け出及び税関検査職員の立ち会い義務を持たせていた、それをなくしてしまうということです。この問題というのは、関税当局の文書によっても、関税の確保及び監視、取り締まりの万全を期そうとするために必要なものだと、こうされていたわけです。要するに輸出入貨物管理の土台となるものだと、そうされていた。それを削除するということによって貨物管理というものがきちっと行われるのかどうなのか。この削除というのは、今まで日本で行われてきた保税制度というものを根本的に改める、ないしは廃止するというふうな方向をも目指すものではないかというようにさえとれるものですが、いかがでしょうか。
  58. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 今、委員からお話がございました適正通関の必要性というのは、我々も非常に大事だというふうに考えております。まさに税関業務運営におきましては、適正通関と迅速通関が車の両輪であるということでございまして、これまでも税関手続簡素化迅速化を推進するに当たっては適正な通関の確保を損なうことのないよう私どもとしては十分留意してきたつもりでございます。  特に、今回の話でございますが、今委員お話ございましたように、保税手続簡素化を今度幾つかやらせていただくということをお願いしているわけでございまして、これは最近、特に自主管理制度の定着によりまして、貨物の管理者による貨物管理が徹底されてきたことなどの現状を踏まえて、税関手続における規制緩和を推進し、保税地域の利用者等の事務負担の軽減を図る等の見地から、現行の保税制度の中でこの簡素合理化を図ろうとするものでございまして、今回の保税手続簡素化が今おっしゃるような保税制度自体を変えるものではないというふうに考えているわけでございます。  ただ、いずれにしましても、御指摘趣旨の中にありました適正通関の必要性というのは私ども強く考えておりまして、そういうことからいろんな手を打っておりますし、過少申告加算税の導入等も、あるいはいろんな施策もそういうふうな趣旨に出ているというふうに御理解をいただけると考えております。
  59. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 同じ簡素化として、仕入れ書の省略ということについても私は同じような心配があると思います。  これも関税当局自身が適正な課税を保障するために必要なものだと、こういうふうに言っていたわけですね。それをなくすということは、そういう適正な課税の保障を要らなくすると大変問題を残すのではないかと思いますが、どのようにお考えですか。
  60. 久保田勇夫

    政府委員久保田勇夫君) 仕入れ書につきまして、委員指摘のポイントは、この輸出入申告の際に提出することとされている仕入れ書につきまして、その提出を省略することができる範囲を拡大するということで、全くだめにするというか、不要とするということではないわけでございます。仕入れ書自身はそれなりの役割を商取引で果たしているというふうに考えるわけでございます。  ただ、本件について直接関係あるわけではございませんが、物の取引というものは国境を越えてやるものでございまして、そういう意味で、国際的に物事の簡素化でありますとか迅速化が図られているときに我が国だけ格別取り残されているというわけにもまたいかない。それは我が国のいろんな面から悪影響を与えるというふうに考えられているわけでございまして、一方では適正通関を確保しつつ、また簡素化もやっていくというふうな、なかなか難しい仕事を進めざるを得ないというふうに考えております。
  61. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は、簡素化に当たって考えなくちゃいかぬことは、スピードアップというふうな要請にどうこたえるか。そのこたえ方で、今までどうしても必要だと言ったものをなくすということではなくて、体制の強化とかそのほかいろいろなことによって今までの機能が損なわれてはならない、むしろ強化しつつそういう新しい国際的な要請にもこたえるということでなくちゃいかぬと思うんです。  私は、今回提出されている法案というのは、そういうものではなくて、日本通関機能を弱める方向に向かうものではないかという心配があるわけです。大臣の御答弁を、お願いします。
  62. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大変深刻なギャップであります。その中にありまして、水際作戦ということで密輸、けん銃輸入、不正なものの輸入等に全力を挙げて対応しておるわけでございますが、極めて限られた人員の中でどうこれに対応するか。そこで、電算化でありますとか、簡素化でありますとか、そういうことをやらせていただく。しかし、その間隙を縫って、ベンツの輸入の話が出ましたが、この種のたぐいが出てくるということは、法治国家として、また我が国の体制が極めて立派な体制だとお褒めをいただいていること等にもかんがみますれば、本件に対するさらに研究と実態に合った対応を考えていかなければなりませんでしょうし、機械化ももちろんでありますが、最終的には人間がこれに対応するというのがコンピューター情報社会においても重要な最大のポイントでありますから、この辺をさらに努力をして体制を整備してまいりたい、こう思っております。     —————————————
  63. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、寺崎昭久君が委員辞任され、その補欠として林久美子君が選任されました。
  64. 山口哲夫

    山口哲夫君 今も大臣から取り締まりの体制強化のお答えがありましたけれども、私からは税関職員の増員問題一本に絞って質問をしたいと思っております。大臣は薬物乱用対策推進本部の一員でございますから、その一員としての大蔵大臣質問をしたいと思います。  日本経済の発展で税関業務が非常にふえてきております。十年間で、出入国者数だけでも二・六倍、商業貨物輸出入許可件数は二倍、外国郵便物の輸入は二・一倍、大変なふえ方であります。しかし、これらの業務量に対応できるだけの職員がいるのかといえば、恐らく相当少ないんではないかと思っております。毎年若干の増員はされておりますけれども、問題ではない、私はそう思っております。  一方、覚せい剤の乱用で補導された少年というのは、昨年一年間で三三・一%の増であります。これは二年連続大幅にふえております。特に、高校生の覚せい剤乱用で補導された数というのは、驚くわけですけれども二・三倍であります。少年に覚せい剤を譲渡したり使ったりして検挙された人員というのは、前年に比べて五〇・二%もふえております。  警察庁で出したことしの犯罪白書を読んでみますと、覚せい剤事犯の検挙人員は昭和六十年以降減少に転じたけれども、依然として高い水準で推移しておりまして、平成七年における検挙人員は一万七千三百六十四人と、これは前年に比べて一六・六%の大幅な増加になっております。  そこで、政府は、相当これには力を入れなければならないというふうにお考えになったのでしょう、ことしの一月二十一日に薬物乱用対策推進本部の初会合を開きました。これまでは本部長は官房長官でしたけれども、今度は総理みずから本部長になってこの徹底を期そうということになったと思うわけです。大蔵大臣も、そのメンバーの一員であります。総理は、この席上で、青少年による麻薬覚せい剤の使用の広がりに懸念を表明いたしまして、密輸の取り締まり強化などを柱にする薬物乱用対策の基本要綱の策定などを指示いたしております。  私は、この総理の方針は了といたしますけれども、そのためにも薬物を水際で何としても阻止をするということが重要かと思います。そのためにも、税関職員を早急に大幅に増員することが必要だと考えておりますけれども、これに対する大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
  65. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本年度九年度予算編成においても、局長を先頭にいたし、また後押しをしながら定員の増について努力をいたしたところでありますが、十名、こういうことでございます。ただいま委員会において、水際作戦も極めて重要なこと、それから具体的例を御提示いただきながら不正薬物以下密輸入まがいの行動が跳梁しておるのではないかという御指摘をちょうだいいたしました。今後におきましても、本件の整備強化に向けて、委員会の各議員の御提言もこれあり、努力してまいりたいと思います。
  66. 山口哲夫

    山口哲夫君 今もお話がありましたけれども、ことしは十人程度の増員予定と言っておりますが、平成七年は二十四名、平成八年は二十二名です。そして、ことしはなお一層力を入れなければならないということで総理みずから本部長になった途端に人員を減らすというのは、これはおかしいんじゃないんでしょうか。これはぜひ大蔵大臣もその一員でございますから、決意を今お述べになったように、今我が国としては青少年の健全な育成、それから社会不安の解消、このためにはどうしても社会物品と言われる密輸入を何としても水際で阻止するということが最大の課題なわけでございます。  現場の話を聞きますと、もっと職員の数がふえればこれは調べたいものはたくさんあるんです、しかし残念ながら今の人数では十分な検査ができないと、こう言っております。ぜひひとつ大蔵大臣、その一員として総理に、去年の半分になるというのはこれは全くおかしな話なんですから、ことしからなお一層力を入れる以上は、私は中長期的な人員の増員ということでは、これはとても間に合わないと思うんです、もう早急にこれは何をおいてもやらなきゃならない、総定員法に関係なくやちなければならない我が国の一番大きな課題だとさえ思っておりますので、大臣のお力で総理にひとつ進言をして大幅な増員を図っていただきたい、このことをお願いしておきます。
  67. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本年度十名でございましたが、機械化と業務運営効率化等について手当てをしながらという最終決定であります。前年度から半減は、行政改革という厳しい環境の中における極めて深刻な問題でございました。しかしながら、これからまさにこの体制をあらゆる観点から点検をして強化してまいりませんと、人員が重要な問題になることは一致した御意見でありますが、御指摘を踏まえ全力を尽くします。
  68. 山口哲夫

    山口哲夫君 最後に、税関職員は、社会不安をなくしよう、青少年を薬物から何としても守らなければならない、そういう使命感と責任感に燃えて一生懸命頑張っているわけでございます。  そういう仕事の性格上申しますと、非常に特殊性、困難性、専門性というものが要求される職場でありますから、どうかひとつ増員とともに処遇の改善についても十分配慮をしていただきたい、これに対する所見をお伺いして、終わります。
  69. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 給与は御案内のような体系の中でできておりますものですから、御提言は受けとめてまいります。
  70. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  71. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 日本共産党を代表して、関税定率法等一部改正案に反対の討論を行います。  第一に、本法案は保税地域への貨物搬出入の届け出制の廃止や、輸入申告の際の仕入れ書の省略の範囲の拡大など、一連の税関手続簡素化を図っています。税関輸入貨物に適正に課税するとともに、貨物の出入りを水際で監視し、不法な輸出入を取り締まる重要な役割を持っています。これを規制緩和の名のもとに弱めることは許されません。  我が国の保税制度は、関税徴収はもちろん、輸出入貨物を法の規制のもとに置くことによって、秩序ある貿易取引を保障するために大きな役割を有していますが、今回の措置はこの保税機能の根幹にかかわる緩和となるものであります。また、仕入れ書は関税の課税標準決定などのために欠かせない文書であり、これを省略する範囲を拡大する今回の措置は大きな問題をはらむものであります。  第二に、石油製品の関税引き下げは、原油関税の段階的引き下げとともに、石炭対策特別会計石炭勘定の財源をなくす計画の一環としてとられる措置であり、我が国石炭産業を完全に切り捨てる政策をさらに推進するものとして賛成できません。  以上が主な反対理由であります。
  72. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  関税定率法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  73. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、荒木君から発言を求められておりますので、これを許します。荒木君。
  74. 荒木清寛

    荒木清寛君 私は、ただいま可決されました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会社会民主党・護憲連合、民主党・新緑風会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    関税定率法等の一部を改正する法律案に    対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべき  である。  一 関税率の改正に当たっては、貿易自由化の   流れに基礎を置きながら、国民経済的な視点   から国内産業、特に農林水産業及び中小企業   に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和ある   対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向   上に寄与するよう努めること。  一 関税の執行に当たっては、過少申告加算税   等の導入を踏まえ、より一層適正・公平な課   税の確保に努めること。  一 著しい国際化の進展等による貿易量及び出   入国者数の伸長等に伴い税関業務が増大、複   雑化する中で、その適正かつ迅速な処理に加   え、銃砲を始め、麻薬覚せい剤、知的財産権   侵害物品、ワシントン条約物品等の水際にお   ける取締りの強化に対する国際的・社会的要   請が高まっていることにかんがみ、税関業務   の一層の効率的・重点的な運用に努めるとと   もに、税関業務の特殊性を考慮し、中長期的   展望に基づく税関職員定員確保はもとよ   り、その処遇改善、職場環境の充実等に特段   の努力を払うこと。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  75. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいま荒木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  76. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 全会一致と認めます。よって、荒木提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣
  77. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。
  78. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時三十六分休憩      —————・—————    午後二時二分開会
  80. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  平成九年度における財政運営のための公債の発行特例等に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 自由民主党の阿部正俊でございます。  大蔵委員会は初めてでございますので、委員長初め皆様方に大変御迷惑をかけるかもしれませんけれども、政府側もひとつ、いわば素人っぽい質問になるかと思うんですけれども、御寛容いただきましてお答え願えればと思います。  と申し上げますのは、やはり予算委員会でもちょっと取り上げさせていただきましたけれども大蔵省からこうした「財政構造改革への取組み」というふうなパンフレットも出されておられます。よくよく中身を見るにつけましても、日本の財政構造改革といいますのは、言ってみればいわば大蔵省の収支の問題というのをはるかに超えまして、日本のこれまでの六十年ないしは五十年の歩みそのものの中でとられてきましたさまざまな財政的な、財政というは結果としての財政でございますので、それに至るさまざまな道筋というもの、あるいはその一つとしてはやはり私は政治もあろうかなというふうに思うんでございますけれども、そうしたものの幾つかの仕組みそのものがいわば再編成という形で問われているのではないかなと。  大蔵省がおつくりになりました資料の中にもあったように思いますけれども、例えば財政民主主義という言葉があったような気がするわけですけれども、そうしたものをもう一度やはり新しい時代に合わせて再構築していく作業というのがいわば財政構造改革なのではないかな、こんなふうに思っているわけでございます。  そうなりますと、やはりお金の収支というふうな域をはるかに超えて、これからの社会あり方というものを国民に語りかけていくというふうな基本的な姿勢、あるいは率直に申し上げまして、国民というのは別なところにいて、一方で政治家とか行政というのが別なところにいて、何かそういうところの行政なり政治なりの改革、あるいは痛みといいましょうか、というものがうまくやってくれれば国民はうまくいくのであるということでは多分ないのではないかと。  痛み痛みと申し上げますが、本当の痛みというのは国民自身が相当痛む痛みではないかということになりますと、やはりそれを率直に訴えかつ協力を求めていくというふうな勇気といいましょうか、筋書きといいましょうか、というものが要るんだろうと思うんでございますけれども、こうしたものを拝見しますと、その心組みといいましょうか思いというものが、もう一つ伝わってこないというのが率直なところでございます。  もちろん、ことしが改革の第一年度の予算ということでございますけれども、そうした国民に向けた、国のために何とかしょうということではございませんけれども、一緒になって日本の将来を考えていき、かっともども痛みを伴いながらもあすへ向かって歩みを続けていくための思いがもう一つ伝わるようなことがどうしても必要なんじゃないのかなと、こんなふうな気がするわけでございます。何を言っているかわからないかもしれませんけれども、どうかそんな思いをひとつ御理解願えれば大変ありがたいものだなと、こんなふうに思います。  それで、具体的に今年度の予算といいますのは、平成九年度予算はよく言われますように財政改革初年度の予算だと。多分、大蔵大臣も胸を張られるほどそんなに御立派ではないのかもしれませんけれども、第一年度の予算だということは間違いないと思いますけれども、大変世の中にいろんな批判がございます。私はどうもその辺が何か言っているほどうまくいっていないんじゃないかなと。大蔵御当局はそうおっしゃるかもしらぬけれども、一般はどうもそう見ていないんじゃないかというふうな疑念も、あちこちで聞こえてまいります。  これじゃまずいので、やはり財政改革というのは大変難しい仕事だけに、一年、二年、あるいはどこまでいったというようなことで簡単に言えるものじゃないだけに、一歩踏み出すことが非常に大事なんじゃないかというふうな意味で、今度の予算がベストなんだということ。もちろん、それは政府提案ですから悪い予算を出すはずはありませんので、いい予算であることは間違いないんですけれども、財政再建という点から見ますと、これは本当の初めでございまして、いわばこれから先よりきつい山登りが待っているんだぞというふうなことを、むしろ私は申し上げていただいた方が率直なんじゃないだろうかなというふうな気がするんです。  この間、予算委員会で質問するときに、総理大臣がエベレストの総隊長も務められた方でございますので、アルピニストに例えて申し上げればということを聞き損ねたのでございますけれども、言ってみれば財政再建の第一のハーケンが打ち込まれた予算が九年度予算だと、こういうことであります。その高さが問題ではなくて、第一のハーケンが打ち込まれたというところから新しい歩みが始まるんだというふうなことを私は思うわけですけれども大蔵大臣ひとつ、平成九年度予算が財政再建元年の予算である、言ってみれば一番のセールスポイントはどこにあるのか、ちょっとお尋ね申し上げたいと思います。
  82. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 一番のポイントは、後世にツケ回しをしないということです。ツケ回しがあるのかねということになるんですが、既に二百五十四兆円、一般会計、国の責任で公債がたまりました。そして、国及び地方の長期債務と合わせますと四百七十六兆になり、隠れ借金という要処理を必要とするもの、やむを得ず処置したもの四十五兆を入れますと五百二十一兆円と、完全に五百を超えたわけでございます。  しからば、借りたものは払わなくちゃいけませんし、借金は確実に毎年償還日が来るわけであります。国がこれを不義理するわけにまいりません。不義理するということになればアウトですから、借金も払えない状態に、利子も払えない状態になるということが大蔵委員先生方はよく理解できると思います。  国鉄再建がなぜ必要だったかというと、借金は元金を払えないところか利子まで払えないものですから、毎年借財を起こして利払いをしていくということになりました。その結果として、総裁を初め理事も、もちろん働いておる職員各位も国鉄は日本国が保障しておるので日本国がつぶれるまでつぶれないんだということだったわけであります。毎年その収支決算、予算を見るにつけても働く意欲が完全になくなった。ですから、労働慣行が悪慣行の限りに陥って生産効率が上がらなくなり、いつつぶれるのかではなく、つぶれておるんですけれども公共性ということで続いたということがございました。働いておる人たちにとってもざんきであり、生きがいかないわけでありますから、ましてやそのことによって、御案内のような労働慣行の中で要求が貫徹しなければストライキということであったわけでございます。  この点を考えますと、やはり健全財政、許容される公債の限界というものは、財政民主主義というお話がありました。財政民主主義はまさに国民に責任を負うという、借金の繰り延べ、そして破産状態は確実に予想せず、国会の議決において許される範囲でこれが行われていくということしかないのではないかということだろうと思うのであります。  要すれば、バブル崩壊、バブルの不況、バブル時の、一体これで日本はどこまで行くんだろうというときに一億総不動産屋と言われるほど踊りに踊りまくったと、こういう残滓がまだ頭の片隅に残っておるのではないだろうか。そのときの予算、財政運営というものが敢然と立ち向かうということでなければならぬのであったわけですが、なかなかそのことは好況時にはよかったのでありますが、崩壊後不況が訪れることによって、不況を乗り越えることが国民生活安定のため、また国会の役目、政府の役目ということで、赤字公債がゼロになっておった起点から引き続きそれを発行することによって今日の雪だるまになった、こういうことであろうと思います。  長くなりますから、この辺でとどめさせていただきますが、やはり国会の役目というものはまたもちろん政府、総選挙の結果としておあずかりをするわけでございますが、現実に吹きたまった深刻な状態はそのとおり国民各位にお知らせを申し上げ、ともに事態を認識し、ともに痛みを分かち合いながら改善のために前進をしていきませんと破局になってからでは手だてを講ずるわけにまいりませんから、今財政審の深刻な答申もこれあり、その答申をストレートに受けて、赤字公債の発行を二〇〇五年と言っておりますが、ゼロにし、なお残りました借金についてはこれ以上ふやさないようにしていく。いわゆる赤字体質から脱却をしていきませんと、後世代との世代間の段差が出、ギャップが出ることによって断絶になるわけでございますから、それじゃ国家経営の根幹が崩れるのではないか、率直に言いますとそういうことでございます。  阿部議員おっしゃいますとおり、構造改革元年へのスタート、一気に急カーブを切りますと車がひっくり返っちゃうものですから、まず原理原則の赤字公債の発行をやめるという決心の中で隗より始めよということでスタートを切ったと。こういうことで、二十八兆の公債発行を受けて財政運営をしましたが、これを思い切って低減することによりまして二一・六%までおろす、依存度が二八%、二丁六%までこれを引き下げる。二十一兆の公債金を十六・七兆円まで思い切ってこれを下げるという、象徴的にここからスタートを切らさせていただき、一般歳出予算一・五の増でありますが、いつも言うことでありますけれども、特別の消費税の初年度の見返りをこちらに置くとしても、政府が払わなければならない四千億円の消費税額を加算いたしますと、四十三兆の一般会計でございますから、そういう意味で〇・六増の九年ぶりの予算編成に相なりました、御辛抱をいただきますと、こういうことで二つここにあわせ持ったわけでございます。  最後に一言申し上げますと、要すれば国債費を除き税収に見合う歳出を行うというプライマリーバランスを達成していくことからスタートを切ることによって、平成十年の予算編成はただいまの諸点をしっかりと踏まえながら、名実ともに国民の御協力を得て思い切った財政構造改革の二年度が全部押し出して御協賛をいただく、こういうことになる年ではないだろうかと思っております。
  83. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 例えば、今私の持っております「財政構造改革への取組み」、この辺が一般国民に向けてのパンフレットではないのかなと思うのですけれども、率直に申しまして例えば財政の現状がこういう赤字ですよ、あるいはこれだけの累積債務が積み重なっていますよ、あるいは国際化、高齢化がこれだけ進みますよと。あまつさえ経済審議会の表現ではございますけれども、「破局のシナリオ」というのが書いてあるんです。それで、いわゆる双子の赤字の問題、問題点をいっぱい書いてあるんですけれども、これで「活力ある21世紀への条件」とは書いていますけれども、正直に申しまして、これだけのことをやるには国民に語りかける迫力というものがもう少し何かないものだろうかなというふうに思えでしょうがありません。大変だ大変だ、よくわかります。だけれども、少なくとも未来に向かって日本というのは歩いていくんだよというふうなところを、もう少し何か語りかけられないものかなという気がするわけです。  したがって、大臣、雄弁会で鍛えられた雄弁家だと承知しておりますけれども、いわば未来の子供を代表する大蔵大臣として語りかけていくというふうなこと、大変だ大変だと、もちろんわかりますけれども、そうではなくて、永遠に続く日本の国というものの未来の子供たちから今の大人にどう話りかけるのかというふうなあたりをむしろ私はお聞きしたい。また、その方が率直なんじゃないかなという気がしますので、どうかそんなふうなことで未来の子供たちを代弁する雄弁家としてぜひ語りかけてもらいたいものだな、こんなふうな感じを蛇足でございますけれども申し上げておいて具体的な話に入ります。  まず第一は、いわゆる建設国債、赤字公債という表現の区別がございますけれども、その違いと、言ってみれば特に建設国債についてはいわゆる六十年償還といいましょうか償却といいましょうか、ルールがあるわけでございますけれども、その両国債の考え方の違いと、それから建設国債についての六十年償却の根拠といいましょうか、考え方というものは何なのか、簡単に御説明願います。
  84. 林正和

    政府委員(林正和君) 第一点目の建設国債の関係でございますが、先生御案内のとおり、財政法はいわゆる非募債主義をとっておりますけれども、財政法四条のただし書きで公共事業費、出資金、貸付金の財源については例外として公債発行が認められておりまして、これがいわゆる建設国債でございます。このように、財政法が建設国債の発行を例外的に認めておりますのは、公債発行が負担を将来世代に転嫁するものでありますので世代間の公平の観点から問題ございますが、こうした公共事業費、出資金及び貸付金はいずれも消費的支出ではございませんで、国の資産を形成するというものでございます。そして、通常その資産からの受益も長期にわたりますので、これらの経費につきましては公債発行あるいは借り入れという形で財源を賄って、元利償還を通じて後世代にも相応の負担を求めることを許しているものというように考えております。  これに対しまして、特例公債は御案内のとおり将来に負担のみを先送りすることから財政法上に根拠がございませんで、特例措置として立法措置を講じていただくことによりまして発行されているというものでございます。  第二番目の、建設国債について六十年償還としている理由ということでございますが、これも先生御案内のとおり、建設国債のこうした六十年償還ルールというのは、建設国債を発行することになりました際に、建設公債の見合い資産につきまして、平均的効用発揮期間を税法の耐用年数等に従って計算しましたところ、おおむね六十年であったということで、これを一つの目安といたしましてルールとして採用されたものでございます。  以上でございます。
  85. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 わかりました。  いわゆる建設国債というのは、表現としてはちょっと間違いなのではないかなと思うんですね。公共事業債と言った方がいいのかもしれませんけれども、ということだと思うんです。今の六十年という話でございますが、私の聞くところですとまさに四十一年ですか、あれするときに建物や何やらの耐用年数が幾らで、じゃ土地というのはどうするんだというので、土地は永久資産だからまあええやというのはちょっと失礼でございますけれども、例えば百年と計算したらどういうふうになるかということでやったら六十年になったということではないのかなという気がするんですね。土地というのは、百年どころかいわば何百年でも続くわけですから、土地を二百年にすれば償還期限はどうなるのかな、三百年ならどうなるのかなということになると、言ってみれば余り根拠のある話じゃないのではないかなという気がするんです。  それは、今さら蒸し返してもしようがないから何にも言いませんけれども、それじゃ土地以外のいわゆる有形資産というものが税法上の建前としてのいわば耐用年数からとったと、こうおつしゃいますけれども、現実に役に立ったのか。昭和四十一年からですから二十年なり三十年なりたつわけですけれども、本当にこれから先もずっと有用、役に立っていく自信があるのかないのか、この辺どうでしょうか。本当に有用性というふうな、言うならば将来の世代まで役に立つものなのかどうなのか、本当に。ただ、税法上こうなっているからとかいうことだけじゃ、だめだと思うんです。それはどうでしょうか、実情はどうでしょうか。
  86. 林正和

    政府委員(林正和君) 先生指摘のように、この六十年ルールを計算いたしました際には、先ほど申し上げましたように平均耐用年数、平均効用の発揮期間というものを加重平均いたしまして、税法の耐用年数等に従って計算したところでございます。今先生の御質問は、果たして効用がそれだけ、税法の耐用年数だけではなくて、実際に効用が発揮されているかどうかという御指摘でございますが、その点は現実問題としてどうお答えしていいか、なかなか難しいところがあろうかと思います。  ただ、この財政審の答申等にもございますが、結局一つのルールとして定めますには、こうした資産、借金をもってつくりました資産の平均的な効用発揮期間という一つの客観的な基準として税法の耐用年数がございますので、こうしたものを採用せざるを得ないと。それによって計算をして一つのルールをつくると、こういうことではないかと存じております。
  87. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 お役人さんの説明はそうなるかもしれませんけれども、つまり将来の子供たちのあるいは担税能力というのを担保にして借金をして今つくってしまうというのが、いわば公共事業としてのさまざまな施設であり道路であり橋であり河川であると、こういうことになると思うんです。となると、その効用というものを残さなければ、やっぱり将来の子供たちに対するいわば公約違反なんだと思うんですね。この辺は、どうでございましょうか。
  88. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 後世に資産を残すという結論を次長が言われたわけでありますが、例えば道路にしろ社会福祉施設にしろ教育施設にしろ、そのことが現代にももちろん生きるわけですが、同時に後世に確実に担保されて活用されていくということの効用、ぎりぎりいっぱい六十年という税法上の観点からもとったものと思います。  ただ、阿部議員が言わんとするところはよくわかるんです。役に立っておるのかねと、六十年後と言わずとも四十年目に入ったら本当に役に立っておるのかねと、こういうものまでと、言わんとするその辺のところがあるのかなと思います。  そういう点では、建設国債資産見合いでありますからということで、際限なく発行できるということになりますと歯どめが効かなくなって、さらに借金として後世にこれが倍加されていくということにもなりかねません。財政民主主義の根幹の中にこれもあったように記憶をいたします。建設国債といえども国の借金でありますと、いわゆる特例公債またしかりと。払えなくなればいずれも同じになるわけでございますから、費用対効果の中でこれらのものが、後世のことも考えながら、真にそのことが国土形成に、地域形成にプラスになっていくものであれば許容される範囲と、こういうことなんでしょうか。
  89. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 いや、私が申し上げるのは、むしろ将来の子供たちといいましょうか、ということからしますと、それでは例えば六十年でも結構です。だけども途中で、六十年と予定したけれども、大体そうだと思ったけれども、橋をかけたけれども二十年で別な橋をつくらなきゃいかぬというようなときに最初にかけた橋の代金、資産として残ったかどうか知りませんけれども、その分のいわばもし、公共債の歳入でやったとするならば、その分は一たん整理基金に繰り入れをして、後世には役に立たなくなったんだから戻して、新たに公債を発行するというようなことはまた考えるべきじゃないかな。あるいは資産価値が残ったものを売却したら、その分というのは整理基金に一たん入れて、それでやるというのが本来の減債制度趣旨なのではないかなと、それをやっていますか。  有価物を売却したときに、財政法四条の特例の公債発行で賄ったものでつくったものであるならば、それを売却したときには、あるいは価値がゼロだったら、それをつくったときの繰り入れというのを優先的にやるべきではないかなという理屈も成り立つと思うんです。やっておりましょうか。
  90. 林正和

    政府委員(林正和君) 御指摘のようなことはやっておりません。
  91. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 それはどうしてですか。
  92. 林正和

    政府委員(林正和君) 建設国債につきましては、個別の取得する資産、国が取得をする資産について御指摘のようなことで公債を発行する、その公債をそれぞれの特定の資産に結びつけて考えるという考え方も、考え方としてはあり得るんだと思います。ただ、我が国の場合には、御案内のとおり、公共事業でありますと公共事業全体についてこれを公債対象経費とし、公債発行をした場合には発行いたします公債を全体として管理していくということをとっております。  つまり、先生今減債制度お話ございましたが、減債制度は、結局この公債政策に対する公債全体についての国民の理解と信頼の確保でありますとか、あるいは財政負担の平準化であるとか、あるいは財政の膨張、公債の累増に対する歯どめであるとか、そうした趣旨から設けられているものでありまして、一たん出しました公債を全体として管理するという考え方から公債政策を運用しているということでございます。
  93. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 例えば、仮に三十年後にこの借財を払う立場からしますと、私はどうもいまいち納得がいかないなという感じは否めません。  それでは角度を変えまして、あまつさえ今度はいわゆる赤字公債、まさにきょう法案の審議の対象になっておるわけでございますけれども、これの借金分の減債の仕組みというのはどうなっているんでございましょうか。借金の建設公債は将来の子どもたちにも資産を残したり、あるいは有用性があるからということで六十年ということであるならば、まさに赤字国債というのは、今の世代がつくって六十年先まで役に立つものだとはちょっと言いにくいんじゃないかなという気がするんですけれども、この辺の返済の減債制度といいましょうか、いわば借りた金は返すというのが大蔵大臣のおっしゃったとおり一般の経済人の常識でございますので、それをどうやって処理するべきなのか、何か原理原則があるんでございましょうか。
  94. 林正和

    政府委員(林正和君) 特例公債につきましては、建設国債と異なりまして見合いの資産が存在しませんので、本来できるだけ早く残高を減少させるべき性格のものだと考えております。そういう意味では原理的に何年でこれを償還するというのが定めにくいものでございます。  ただ、御案内のとおりの厳しい財政事情のもとでより短期の一定年限で償還するというルールを設定するといたしますと、財政事情をさらに厳しくするということから、やむを得ない選択として建設国債と同様の六十年償還ルールによってきたところでございます。  今後におきましても、直ちにその六十年償還ルールにかわるべき新しいルールを設定することは、先ほど申し上げましたような特例公債の性格からいって困難ではございますけれども、今後の財政事情の中で特例公債の発行を授権いただく法案に盛り込まれました減債規定の趣旨等を踏まえて、特例公債の残高を速やかに減少させていくよう、できる限り早期の償還に努めていく必要はあろうかと思っております。
  95. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 もう少し申し上げたいことがあるんでございますけれども、時間的な制約もありますのでこの程度にいたします。それにしても、例えば財政法四条の特例である公共事業公債金収入、これの例外として認められているいわゆる公共事業と言われているものの数というものは、どうも私の見た限りでは、昭和四十一年ころに導入されたわけでございますけれども、非常に項目も制限されていたように思うんです、項目数だけからしますと。ところが、最近非常にその対象項目がどんどん膨らんでいるような気がしてならぬわけでございます。  じゃ、何が公共事業債の対象になり得るのか、あるいはならないのか。もちろん公共事業債というのは財政法からすると、大蔵省の担当者に聞きますと、諸外国にはない日本的な非常に堅実な制度だというふうに説明ございますけれども、どうもうっかりするとしり抜けになっているような気もしないでもないという感じもするわけです、その数だけからしますと。  そうしますと、何が対象事業で何が対象事業でないのか。項目数としては物すごく私はふえているように思うんですけれども、その原理原則をだれがどこで決めているのか。国会に出して国会の議決を経ればいいんだというだけの話だとするならば、これは我々の責任かもしれませんけれども、大変形式論に過ぎるんではないのかなという気がするわけです。  将来の子供たちに資産を残せるということが、原理原則の一番大事なところだとするならば、もう少し何か中身を精査していくということがあるんだと思うんですけれども、例えば公債対象事業はだれがどのように決めておるのか。対象になる事業が何で、対象にならない事業は何で、一般財源で賄うべきものと公債発行で賄うべきものとの仕分けといいましょうか、原理原則はどこにあるのかということについて、まさに財政のプロとしての大蔵省の御見識をお聞きしたい。
  96. 林正和

    政府委員(林正和君) 公債発行対象経費でございます公共事業費につきましては、御案内のとおり財政法上定義規定は設けられてございません。  ただ、他の法律におきます公共事業という用語の定義例でありますとか、あるいは法律用語の解説書等から見ますと、一般に公共事業とは公共的な土木工事及び施設の建設をいうと解されておりまして、財政法上の公共事業費もそのような事業に充てられる経費をいうものと考えるのが自然だろうと存じます。  ただ、御指摘のように公共事業につきましては各種各様のものがございまして、画一的にその範囲を確定しがたい面がございます。このため、財政法第四条第三項で、「公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」とされておりまして、予算総則でもって議決をいただいているところでございます。  いずれにいたしましても、この公共事業の範囲につきましては、財政法が公共事業費の財源について公債発行によることを認めている趣旨を踏まえまして、従来から公債を発行するのにふさわしい性格、あるいは一定の耐用年数を有する資産を取得、形成する経費を選定してきているところでございます。
  97. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 結論からしますと、国会にちゃんと出しているからそれでいいんだ、強いて言うならば、いわばふさわしいものはふさわしいんだというような感じに聞こえないでもないんですけれども、大変失礼ながら、というふうなことではないかなという気がするんですよ。これでは何か将来の子供たちに残す数百兆円という借金の言いわけといいましょうか、説明としては私はどうかなという気がするんです、正直申しまして。  しかも、これから乗り越えなきゃならぬ、まさにこれから登山なんですね、というときの装備としては私はちょっと軽装備過ぎるんじゃないかなという気がするんですね。もっとしっかりした重装備が要るような気がしますし、そういう意味で、どうかひとつこれから、まだ遅くありません、遅いと言う人もいます、世の中には。何かもうだめだというようなことを言う人もいますけれども、私はそうじゃないと思う。やはり日本というのはこれからだというふうに私は信じます。そういう意味でも、ぜひもう少ししっかりした、過去の説明ではなくて改革なんですよ、まさに。言いわけじゃないわけです。今の制度じゃだめだということでしょう、端的に言えば。  ということから、やはり私は物事を考えていく迫力が必要だと、こんなふうに思います。それは我々政治家にとってもあるいは国民にとっても冷水かもしれません、あるいは一時的に景気も後退するとかなんとかということがあるかもしれませんけれども、私はそういうことをはるかに乗り越えてやらなきゃいかぬ仕事なんじゃないのかな、こんなふうな気がしますので、どうかひとつそんな視点からやってほしいなということを申し上げておきたいと思います。  そういう意味でもう一つ、将来の資産といいますと、たまたま言葉じりをとらえて恐縮ですけれども、公共的な土木事業とかいう発言がございましたけれども、後世への資産等からしますと、もっと大事なことありゃせぬかなと。例えばその調査・研究費とかあるいは将来に何か、日本の将来として何というか、知識集約型といいましょうか、レスター・サローの本なんかによると何か別な表現ですけれども、そういういわば頭脳集積技術といいましょうか、というものがこれからの産業の、国の成否を決めるというふうなことを言われます。  そういう意味で、将来に残る資産というのはほかにもいっぱいあるんじゃないかなという気がするわけですね。というふうなところはなぜ公共事業ではなくて、というようなところはどう説明したらいいんだろうかなと。これからの財政再建等々考えますと、あるいは将来に残すものを借金としていいんだよという論理があるならば、もうちょっと別な視点から、本当にゼロからもう一回やり直してみるということが必要なのじゃないのかな、こんなふうな気がします。もう時間もありませんので、お答えは結構です。  それで、私の一つの提案でございますけれども、どうも今までの財政法四条の例外について適用される六十年の償還ルールというのは、いわば戦後間もなくの、あるいは四十年ごろの、何としてもやらにゃいかぬいわば基礎的なインフラの整備のためにとられた一つの六十年という、まあ虚構とは言いませんけれども、仮定されたルールにすぎないのではないだろうかなと。これだけ豊かになった、ある意味ではですね、六十年それから三十年たちました。より豊かになった状態でこれからより多様な社会をつくっていくときに、そのまま適用されるルールとしては私はいかがなものだろうかなと、こんなふうに思うんです。  したがって、これからさらに財政再建ということで国民の理解を得ながらやらにゃいかぬというときに、もうひとつわかりやすく例えば分野ごとに、道路なら道路あるいは社会福祉なら社会福祉施設等々について、これは一般財源で幾ら出します、それから借金で幾ら持ちますから三十年後の世代にはこれぐらい負担になってどうなりますというふうな、わかりやすい論議をしませんと、トータルとして何十兆円が借金になりますというのだけじゃ、将来の国民の理解を得るには少し雑過ぎるんじゃないだろうかなという気もするわけです。もう少し、いわば分野別に一般会計で幾ら、それから特定財源で幾ら、あるいは例えば社会保障なんかでいいますと保険料で幾ら、あるいはいわゆる借金で幾らと。それで、借金の返済には何年かかりますよというふうなことをわかるような予算書のつくり方というものを、私はぜひお願いしたいもんだなと。  それでどう判断するか。これはやっぱり国民でしょう。だれかがいいことをやってくれるはずはなくて、国民がやはり決める世界に入るような気もするわけですけれども、そうした御努力をお願いしたいんでございますけれども、どうでしょうか。私、非常に早口で短時間で言い尽くせないところはございますけれども、余り時間もあれですけれども、簡単に大臣の御所感をひとつお願いしたいと思います。
  98. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 阿部議員の予算編成に対する哲学、基本的な問題提起をいただきました。しっかり受けとめまして、平成十年予算編成の中でその思想を取り入れると。既に九年度においては、科学技術調査・研究分野は思い切ってダブルの予算づけをさせていただきました。余り評価されておりませんが、意気込みは、まさに阿部議員の言われたポイントを踏まえてやっておるわけで、さらにそれを広げるということであろうと思います。
  99. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 大臣、本当にありがとうございました。  あと四、五分ありますので、最後に一、二問。特例法の二項目の二条目といいましょうか、二つ目として社会保険の年金の国庫負担の繰り延べをやっておりますので、これについて一つ二つ聞かせていただきたいと思います。  今回の特例法の中の一つとして、厚生年金の国庫負担について特例措置を講じておられますね。七千数百億円を、三十六年四月以前の分に対応する国庫負担の一部を繰り延べしているという格好でございます。どうもこの年金についての国庫負担の繰り延べとあわせまして、私は昔、厚生省におりましたものですから記憶いたしますが、今回は国庫負担の方が出すべきものを出さなかったと、こういうことでございますけれども、逆に言うと、昔々は政府が保険でやると言っていながら足らなかったので、その分を、赤字が出て棚上げしたやつを国がいずれ出してあげるよというふうな、いわゆる短期保険の政府管掌健康保険の赤字分を棚上げして、いずれ国庫負担で賄いますよみたいなことをやったような記憶があるわけですね。やったといいましょうか、そんなふうな時期があったような気がするんですけれども、今の年金の国庫負担の一般会計に繰り入れるべきものを繰り延べをする分と、その逆のいわば保険が出した赤字を国庫負担が引き受けますよというふうなことをやったいきさつあたり、その二つを簡単にちょっと御説明いただけませんか。
  100. 林正和

    政府委員(林正和君) 一つは、今回の厚生年金の繰り入れの特例措置でございますが、これは御案内のとおり、九年度予算におきましては歳出の一層の抑制を行う必要がございました。また、こうした歳出の伸び率を抑制していくということは財政構造改革を進める上で厳しい姿勢を示すことにもなり、そのことが各般の制度改革を促すということにもつながるというように考えたわけでございます。  他方、厚生年金につきましては、御案内のとおり、修正積立方式を採用しておりまして、成熟化の途上におきましては、一定の積立金が積み上がることが制度的に予定されてございます。御案内のとおり、八年度末の積立金が百十八兆円ございまして、九年度におきましてもさらに積立金が増加をする見込みでございまして、こうした状況の中で、国庫負担の一部を繰り延べるとしても、年金支払い等、制度の運営に支障を生じないと考えられたわけでございます。つまり、今回の厚生年金の国庫負担の一部繰り延べは、極めて厳しい財政事情の中で、中期的な財政健全化に向け、ぎりぎりの調整を図ったやむを得ざる措置というように考えているところでございます。  第二番目の政管健保の棚上げの債務でございますが、これは御案内のとおり、政管健保におきましては、昭和四十八年度末累積債務、それから昭和五十九年度に政管健保に統合されました日雇い健保に係る累積債務、これが現在棚上げ債務とされておりまして、八年度末で残高が一兆四千七百九十二億円となってございます。  これは、先生指摘のように、これらの棚上げ債務につきましては、従来から一般会計からの繰り入れにより償還するものとされておりまして、現在もその方針に変更はございません。棚上げ債務は速やかに償還することが望ましいわけですが、他方で一般会計の財政事情が非常に厳しい状況が続いておりますので、債務の解消には至っておりません。ただ、その債務の増大を防ぐということから、平成四年度以降、単年度の発生利子の全額を一般会計からの繰り入れによって償還をしておりまして、債務額を凍結しているところでございます。この棚上げ債務の処理につきましては、今後とも、これまでの方針を変更することなく健康勘定の健全性の観点、それから国の財政状況等とを勘案しながら、できるだけの努力をしていきたいと思っております。
  101. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 時間が参りましたので、終わりますが、お話をお聞きしていますと、これから社会保障、特に年金、医療というものは非常に膨らんでいくコストだと思うんです。  財政、いわゆる国の財政がどの程度どういう形で対応するかというのはまさに本格的な議論はこれからでございますけれども、私は、今までは、社会保険それから税金あるいは自分での支払いというものが、どうもはっきり言って原則論なしで、そのときそのときの財政状況でいわゆる貸したり借りたりといいましょうか、というものをやってきたように、正直申しまして若干の反省も込めまして思います。  これから先、やはり相当本格的な論議をした上で国庫負担のいわば守るべき分野というものをしっかり原理原則を立てなきゃいかぬ時期なのではないかなというふうな気もいたしますので、まあ今回健康保険法の改正、財政構造改革への取り組みにも一つ努力をしたというあかしの一つとして書いてございますけれども、これだけじゃやはりだめ、将来につながるわけではないんでございますので、本格的な論議が要るんだろうと思うんです。ただ、国の負担なりを減らせばいいということだけでもなさそうな気もするわけです。年金につきましても医療につきましても、まさにこれからの日本の将来をきっちり国家運営していくためには必要不可欠な仕掛けであることだけは間違いないわけでございますので、どうかその辺の守備範囲をきっちり分けながら、国民に語りかけていけるような形をぜひお願い申し上げたいなと思います。  その辺の財政改革及び社会保障の、これからのありようについての国庫負担その他の役目というふうなことについて、最後に大臣、御所見ございましたら一言お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 重要なポイントの御指摘をいただきました。まさに負担と給付の対応関係が明確になっていかなければ、高齢化社会を乗り切るわけにはまいらぬと思っております。  医療保険制度でありますから、すべての国がこれを負担しておるのかということで調べてもらいましたところ、先進国のドイツ、フランスでは公的医療保険制度においては原則国庫負担を行っていないという事実がございます。北欧三国、御案内のとおり既に国民負担率は七〇%近いところまで参っております。揺籃から墓場まで、それで完璧な社会保障制度が確立をし、それでよろしいというので総選挙で与党がつくられる。しかし、交代してもこの原則は貫いていくということのように聞いております。実際定着をしておるという意味で、それはそれとしながらも、我が国はこれだけの文化の積み上げのあるところでありますから、負担と給付の問題について深刻な論議をして、ともにその道を開いていくということではないでしょうか。御提言を受けて、明日、第四回目の与党三党に総理以下主要閣僚出まして財政構造改革の理念と基本目標、阿部議員から言われました子供たちにわかりいい呼びかけの文言が出るか出ないか、若干もう少し時間をかりることになろうと思いますが、本件も重要な課題であると認識をいたしております。
  103. 阿部正俊

    ○阿部正俊君 どうもありがとうございました。
  104. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 平成会の岩瀬でございます。  初めに、野村証券関係から御質問させていただきたいと存じます。  この件につきましては、我が党の荒木議員等が予算委員会で質問しておるわけでございますので、できるだけダブらないような形でと思っておりますけれども、ダブった場合には御了承いただきたいと思います。また捜査中と申しますか、調査中の案件であろうかと思いますので、そういう範囲内でお答えづらい点もあろうかと思いますが、できるだけお答え願いたいというふうに思っておるわけでございます。  今、我が国は、大蔵大臣お話の端々にも出ておりましたけれども、いろいろな改革ということをやっておる中でございまして、中でも経済改革、こういうものの中心にあります金融システム改革、こういうものは本当に大事なものでございます。二〇〇一年の東京市場の再生に向けていろいろな方が努力されておる最中でのこういうような事件だというふうに思って、私も非常に重大な事件ではないかというふうに思っておるわけでございます。  そういう中で証券取引等監視委員会、以下簡単に監視委員会というふうに略させていただきますけれども、昨年九月以来、地方の新聞社の記事によりますと九月以来そういうものに調査に入っておるということが言われておるところでございますし、今月の六日ですか、野村証券の副社長がまたこれについて新聞記者発表もしておるというようなことであるわけでございますので、監視委員会として調査しておる状況、またその事実関係、こういうものについて、まずお話し願いたいと思います。
  105. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) お答えいたします。  証券取引等監視委員会におきましては、日ごろから市場取引に関するさまざまな情報を収集いたしまして、かつそれの分析に努めておりまして、証券市場の監視を行っておるわけでございます。そこで、取引の公正という観点から、どうもおかしいなとか、不自然な、不審な取引というようなものが見出された場合にはさらに関係者から事情を聞くといった深度ある調査を行っておるところでございます。  御指摘の野村証券の問題につきましては、こうした当委員会独自の監視活動の中で不自然な取引、不自然な点が見られたということで、御案内のとおり昨年の夏ごろより事実関係の解明に努めてきたわけでございます。こうした中で、事実関係の解明もある程度進んできたというところで、先般野村証券の記者会見が行われたことは御承知のとおりでございます。  これから委員会といたしましては、今後ともその事実関係をさらに解明をいたしまして、その結果を踏まえて、法の定めるところに従って厳正に対処させていただきたいと思っております。
  106. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 監視委員会の方としては今のようなお話かというふうに思っておるわけでございますけれども、また大蔵大臣は、この新聞記者発表を受けてということなのかもしれませんけれども、七日の閣議後の記者会見で、監視委員会の方も調査するけれども、それと並行して大蔵省証券局にも事実関係調査を命じたということを明らかにしておるようでございますので、この辺のところ、大蔵省の方から答弁をお願いしたいと思います。
  107. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 具体的な事案に関します内容の解明につきましては、ただいま若林事務局長から御報告がありましたように、監視委員会において今後なされていくことと存じますけれども、その実態解明と同時に大切なことは再発防止、内部管理体制の再点検といったことであろうと存じます。  そのような観点から、私どもといたしましては、ただいまお触れになりました大臣の御指示に基づきまして、野村証券側の発表の翌日でございますけれども、私から当時の野村証券の酒巻社長に対しまして、行政としては監視委員会からの法令違反行為に基づく勧告があれば法に従い厳正に対処する所存であるが、御社としては今日より直ちに内部管理体制を総点検するなど、再発防止に全力を挙げて取り組まれたいということの指示をいたしました。  行政としては、事実関係の確認は監視委員会の調査を待つ必要がございますけれども、当事者であります野村証券におきましては、いかなる問題があったか、これからいかなることに取り組むべきかということは、監視委員会の結論を待たずとも取り組める課題があるはずでございますから、そのようなことで取り組んでほしいということを申し上げたものでございます。
  108. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 この問題は、この事柄については今回の事件かもしれませんけれども、九〇年、九一年ころ証券会社が非常にこういう観点について問題になったわけでございまして、株式の取引をめぐる損失補てん等のことで暴力団等による株買い集めについても加担した、こういうようないろいろな経過があって、損失補てんについては今後こういうことをやってはいけないよというようなことで、この法律の改正もなされたというようなこともあるし、また監視委員会ができたということもあるわけでございます。  そういうことを踏まえると、今回、今までの反省が全然見られてないんじゃないか、同じようなことが言えるんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、その辺のところの反省はいかがでございましょうか。
  109. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 平成三年、御指摘のいわゆる証券不祥事ということがございました。あの事案は多岐にわたっておりましたけれども、大量推奨販売、損失補てん、あるいは暴力団関係者との取引といった問題がございまして、営業の自粛あるいは行政処分といったことも行われましたし、その反省に立ちまして証券取引法の改正が行われ、また監視体制の強化のための監視委員会の設立等の改正が同年及び翌年にかけて実施されたところでございますけれども、現実にこのような形で事案が起こりましたことは、大臣もしばしばおっしゃっておられますけれども、まことに遺憾としか申し上げようがございません。  特に、冒頭お触れになりました金融市場の改革、これは透明性の高い公正な市場を確立して日本の市場が世界に信頼を得ていこうとする取り組みをしておるところでございますので、そういった観点からも甚だ残念としか申し上げようがございませんけれども、今後とも監視委員会において適切な監視をとられる等々の措置を行政としてできる限りのことを尽くしていきたいと存じますし、証券市場関係者におきましては、こういったことの再発のないように、当事者である会社のみならず、他の会社もひっくるめて点検をしていただきたいと考えておるところでございます。
  110. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 たまたま今、六十年ころのいろいろなそういう証券不祥事の話の反省の問題になったわけでございます。  これにつきましては、その当時大蔵大臣でありました今の総理がいろいろこの問題に御苦労されておりまして、この証取法の改正案というものに答えておるわけでございまして、「今回この証取法の御審議を願っておるわけでありますが、」というようなことで、「再発防止につきましては、このたびの改正法の施行によりましてその効果は必要かつ十分なものと考えております。」、こういうようなことも答弁されておられるわけでございます。  また、大蔵大臣はその当時党の大幹部でいらしたというようなことで、これについても必要があれば堂々とやるべきだ、前向きに取り組むべきだというような見解を漏らしておるということが記録に残っておるんですけれども大蔵大臣どうでしょうか、感想と申しましょうか。
  111. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま若林事務局長、また証券局長からお話がございました。まさに平成三年の事件は、我が国経済大国として国際的な信認を得ておる真っただ中の事件でありますだけに、青天のへきれきのような感じがしたわけであります。よって、証取法改正、そして証券取引等監視委員会が生まれたわけでございます。自来、証券業の正常化に向けて努力をしてきたものと存じます。しかし、そういうやさきに再度本事件が発生をいたしましたことは極めてざんきであり、言い尽くせない深刻な衝撃を国民各位にも、また私どもはそれを倍加して受けとめておるところでございます。  監視委員会の調査がただいま全力を挙げて行われておると承知いたしております。最終的に勧告が大蔵大臣あてに出されるものと存じます。再発防止は世界の市場を目指す日本にとって絶対の信認の条件でありますので、厳正な対処をしながら再発防止のためにさらなるその対策を、業界みずから、市場みずからはもちろんでありますけれども、徹底して行われますよう、この分野は大蔵省の業務でございますものですから、三度目、またかと絶対に言われない体制をつくり上げていかなければならぬと思っております。
  112. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、大蔵大臣から決意が述べられたわけでございますけれども、今我々この東京市場もニューヨークやロンドンと並んで三大市場ということに、再生のために努力しているところであるわけでございますし、またその一つの原則としてフリー、フェア、グローバルということをもう何回も承っておるわけでございます。全然フェアでないような事柄、一般の人はこういうことに本当に無関係であるわけでございますし、また補てんをされるということは、一般の人が損をしても補てんされるということはあり得ない話であるわけで、また本当にアンフェアな話であろうかと思いますし、またグローバルというような観点から見ましても、こういう密室で行われたものであろうかというふうに思うわけでございます。  私も、証券会社の知っている方に聞いてみたんですけれども、一般の人は恐らくこういうことはわからないんだろう、特定の人だけしかこれはわからない話だろう、またそういうことはあり得ないということを、証券会社の社員といってもかなり中堅の方でございますけれども、そういうことはあり得ない話だと、こういうようなことを言っておるわけでございます。  こういう中でございまして、そういう世界的な注視の中でもありますので、ただ、国民の代表というような形で国会で審議されておりましても、今調査中だというようなことで事柄が全然出てこないということだと、これはいつの時点で国民に向かって物事を言うのかなというのが疑問になってくるわけでございます。一般的な話で結構でございますから、その取り組みと申しますか、これからの展開と申しますか、それはどういうふうになっていくのか、ちょっとその辺のところを、お答えいただければと思うわけでございます。
  113. 若林勝三

    政府委員(若林勝三君) 証券取引等監視委員会の調査を今続けておるところでございまして、鋭意事実解明に努めております。したがいまして、この結果、事実が解明されますと、その結果を踏まえまして、仮に違法な行為があるということでございますと、大蔵大臣に対して行政処分を求める勧告を具体的にいたすことになると思います。仮に、刑事罰を伴うような条文に違反しておるということになれば、検察当局に対して告発というようなことも当然あり得るわけでございます。  いずれにいたしましても、告発ないし勧告、そういった形で不当、違法な行為があれば対外的に手続が進んでいくということでございます。
  114. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、監視委員会の方からは勧告というようなことになるわけですけれども、あとは大蔵省の方の取り扱いということになりますと、どういうことになりましょうか。また、いつの時点で国民に向かって話をするというようなことになるんでしょうか。
  115. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) ただいま監視委員会の方から御説明がございました。勧告が行われますと、特に行政処分を求める勧告が行われますが、私どもはそれに従いまして行政処分の手続に入ります。  細かいことになりますけれども、行政処分の手続につきましても聴聞その他の法定の手続がございますので、そうした点を踏まえながら実施することになろうかと思います。
  116. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうすると、これは大臣にお聞きしたいんですけれども、今大臣からこういう形で今後再発防止にできるだけ努めるというようなお話でございましたけれども、ただ再発防止というだけではこれは今後防止ができないんじゃないかというふうに思うわけでございます。  と申しますのは、罰則がどうも各国との比較で日本はかなり軽いというふうに思うわけでございます。また、そこで不当利得を得た者があっても、これは返さなくても済む、または返しても非常に少ない額でいいということになるとやり得だというようなことがあるようでございますけれども、再発防止に加えましていろいろな罰則等の強化も見込んだ形での法改正、こういうのもお考えになっておるのでしょうか。
  117. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) アメリカの市場におきましても公平性、透明性が信じられておりますのは、違法な行為に対してはきちんとした処断がおりるということに信頼があるのであろうと思います。アメリカは、今日におきましても三千人のSECの職員を擁し、年間、昨年でございますと九十二件の刑事告発があり行政処分数は四百八十六件でございますから、その意味では証券不祥事はたくさん起こっておるということでありますけれども、市場がそれとは別に健全に動いておりますのは、そういった不祥事が起こったときにきちんとした処断が行われるという大勢の人の信頼に立っておるんだろうと思います。  そのような観点から、ただいまお触れになりました罰則の問題につきましても、私ども、これから証券市場改革の中で、現在の罰則制度において、実際の運用もよく見なくちゃいけませんけれども、どういう問題があるかないかという点も含めまして今御検討いただいておりますし、改正すべき点が見つかればそれに取り組んでまいりたいと思います。
  118. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、見つかればというようなお話でございますけれども、こういうインサイダー取引的なものについては、改正された証券取引法上は懲役六カ月以下または五十万円以下の罰金というようなことでございますけれども、これがアメリカだと懲役十年とか、イギリスが七年とかドイツが五年とか、非常に日本と差が大きいようでございます。また、罰金刑につきましても非常な額になっておるようでございますけれども、こういうのをそのままにしておいてこれが防止できるというふうに考えられるのかどうか。これは個々に言ってもしょうがありませんので、大臣の御答弁をお願いしてこの問題は終わりにしたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  119. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 証券局長から基本的な対応という意味でお話がありました。再発防止三度目ということでありますから、何事も三度は起きないように、どうすればよいのかを含めて真剣に検討をしてまいりたいと思っております。
  120. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それじゃ、予算関係の事柄に入らせていただきたいというふうに思います。  これは予算委員会でもお話しになられましたけれども、別の観点からちょっと聞かせていただきたいと思います。先月、アメリカの財務省が、日本経済について、内需の回復を圧迫するような財政てこ入れ策の撤回、こういうものがあってはならないというようなことを指摘しておったわけでございます。また、サマーズ財務副長官は、三塚大蔵大臣との会談に触れまして、大臣の方へ、景気回復と黒字の再拡大を防ぐために必要な追加措置を実施してくれよというようなことについて大臣が約束されたというようなことが報道されたわけでございますし、また大臣は、そういうことは言ってないよと、こういうようなことを言っておられるわけでございますが、その当時のやりとり、これは言葉のニュアンスもあるのかと思いますけれども、そういうやりとりは実際にどうだったのか、大臣にお伺いいたします。
  121. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいまサマーズ副長官とお話をいたした折、サマーズさんのブリーフィング、国金局長の記者へのブリーフィング等がございました。これを取り上げまして、日経と毎日ですか、日経は四段で「追加措置約束」とこう書いております。「日本側とズレ」と、こういうことでありますが、約束はございません。私からは、表敬訪問にサマーズさんが来られたわけでございますが、日本経済の今日の現況、月例経済報告その他の調査等を紹介しながら、全力を挙げて内需主導型の経済体質をつくるべく一歩一歩前進をいたしておるところと。これに対しましてサマーズさんからは、外需主導に移りつつあるのではないかという意味のお話がありました。これは円安に伴う自動車業界、情報通信等が堅調な伸びを示しておることにかんがみ、そう言われたわけであります。そういう意味では懸念表明であったと思います。よって、私からさらに、前段申し上げましたとおり、日本経済は諸改革の断行をいたしておる、政府も経済構造改革、そして健全財政こそ健全な経済体質をつくることに通ずるという観点から全力を尽くしておるところであり御理解を得たいと、こういうやりとりでございます。表敬訪問の中の懇談でございましたからそれで終わったわけで、会議目的を持ってやったわけでございません。  総体的に見れば、御指摘のように内需主導もさることながら、もっと財政支出を考えてやるべきだというトーンの話があったことは事実でありますけれども、今申し上げましたとおり、私は、五改革が着実に今前進の緒についておるところであり、特に本年度予算が成立をさせていただくということになれば切れ目のない財政執行ができ得ますからどうぞ見ておいてくださいと、こういうことが内容でございました。
  122. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 大臣からのお話、ありがとうございました。大臣お話のとおりじゃないか、そのとおりだろうと私も信ずるわけでございます。  ただ、ここで出された事柄は、恐らくはアメリカの方はそういう期待を持っているんじゃないかというふうに私は受け取ったわけでございまして、外需と内需の寄与度というのを見れば、最近は外需分が少し今までより上がってきたというのも事実でございまして、そこら辺はアメリカもケアしているんだろうというふうに思うわけでございます。  ただ、経済成長という観点から見れば、今後とも緊縮財政というようなふれ込みのようでございますけれども、緊縮財政ではなくて、景気の緩やかな拡大型でいくべきじゃないかと、そういうふうに我々は思っておるわけでございまして、そういう意味で特別減税も廃止じゃなくて継続していくべきだと、こういう立場をとるわけでございます。そういう意味で、大臣のこれからの経済運営、そのお考え方はどうでございましょうか、その辺のところをお願いしたいと思います。
  123. 三塚博

    国務大臣三塚博君) たびたびの御要請を予算委員会、そして大蔵委員会において、また重ねての御要望でございますが、予算編成方針に明示をいたしましたとおり、後世にツケを回すことはしないという決心の中で特別減税の中止を決心をいたしたところでございますので、御理解を賜りますようお願いを申し上げます。
  124. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そういう中で、財政構造改革元年というようなことで、四月から始まる本年度の予算が今審議されておるわけでございますけれども、この財政構造改革元年と銘打った予算、この予算につきまして私どもはどう考えてもなかなか財政構造改革元年というような感じを持てない。というのは、その前年に、これは村山内閣のときであったわけですけれども、財政危機だというような宣言が出されておるわけでございます。財政危機はそのとき始まったわけではなく、徐々に来ていたわけでございまして、もう長い間、以前から財政危機であったわけでございまして、同様に、今年度予算から財政構造改革元年一こういうような決意のあらわれであろうと思いますけれども、財政危機である点には変わりはないというようなことから考えると、歳出抑制、こういう問題について思い切った切り込みができていなかったんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  これのどういう点、「どういうところが財政構造改革というようなことで言えるのか、と申すとちょっときつくて恐縮でございますけれども、構造改革というようなところへの入り込み方はどこから入っているのかという点について、お答えいただきたいと存じます。
  125. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本件は、第二次橋本内閣が総選挙後を受けてスタートを切り、改めて総選挙時における国民各位の声、それと審判を下した国民の声と、こういうものを踏まえながら、待ったなしの財政構造改革に取り組まなければならぬと。こういう観点で三党協調の中にそのあり方を協議し、平成九年度予算編成に当たり、かくあれということで正式な申し入れもこれあり、同時に内閣としても本件に対しては現代と後世に責任を持つという意味で少子・高齢化社会を乗り越えるためにはという視点を明示しながら、G7構成国の各国の財政運営方針なども十二分に参考としつつ、基本理念を総理大臣を中心につくり上げたものであります。  もちろん、国民代表としてございます財政制度審議会等、それぞれの審議会の御意見もあったわけでございますから、それも含めまして内閣としての方針を決めたところでございます。  よって、本年平成九年予算は医療保険制度改革年金も含め、高齢化社会に向けての最大の問題でございます。歳出予算の第一位に位する三分の一の予算支出が予定される社会保障関係費でございますから、本件の改革、そして公共事業を初め文教、科学技術、防衛、ODA等々、聖域を設けることなく全体を見直し、そして歳出を削減していくと、こういうことでスタートを切らさせていただきました。そこで、後世に借金を残さないという言葉に表現されるとおり、公債依存による財政運営はこの際やめようと、これが第一点であります。隗より始めよで、四兆三千億の特例公債減を立てたということはそこにございます。  その結果として、国債費除きの歳出予算編成は税収に見合う歳出でなければならないと、こういうことでまさに税収に見合う編成をなし遂げたと、こういうことでございます。九年度一般歳出は前年度対比で一一・五%増と、こういうことであり、たびたび申し上げて恐縮ですが、特殊要因増、いわゆる消費税の国庫負担分四千億円強ございます、これを歳出からカットをいたしますと、伸びは〇・六%程度の伸び、十年ぶりの低い数字にさせていただきました。ただいまちょっと公債全体と申し上げました四・三は最終的に特例公債分は四・五兆と、こう訂正をさせていただきます。  以上のようなことでスタートを切りまして、さらにそれは単年度だけではございませんで、平成十七年度までの間に特例公債の発行はゼロとするという中期展望の試算の中にも明示をさせていただきましたが、そんなこともやらさせていただいたところであります。公債残高が累増しない財政体質を、速やかにつくり上げてまいるということでございます。  今、岩瀬議員の御指摘の中で、なかなか認められないというのは、ウルグアイ・ラウンド対策費であったり新幹線の予算措置であったりと、衆議院の審議においても指摘を受けました。決してばらまきではなく、民営会社であるJR鉄道の最終の合意があって初めてその線区がスタートできると、こういう厳正な措置をとらさせていただきました。  旧国鉄という言葉がありますが、国鉄ではございません。小田急でありますとか阪急でありますとかという鉄道会社と完全に同じ民鉄でございますものですから、民鉄がこれを地域と一体となってやるということであれば、そうなるわけでありまして、最小限の、財政再建下でございますが、地域住民の皆さんの強い意思、それを受けて御陳情をいただいた与党三党だけではなく、野党の各位の皆様方からも御陳情を受けたわけでございますから、そういう決定の仕方をさせていただきましたことを付言させていただき、格段の御理解をいただきとう存じます。
  126. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ありがとうございます。  全然努力の評価はしないということじゃないんですけれども、ただ、この問題に対してはちょっと今までも何回か出ておるようですから、あとちょっと意見ありますけれども、別の方に入らせていただきます。  結局、今国債の残高をふやさないようにというようなお話があった点ですけれども、いわゆる財政健全化目標というようなことで、二〇〇五年までにこの健全化目標を果たしたいというようなことのようでございます。また、その基準になりましたものは、よくEUの方で使われております国と地方の財政赤字の対GDP比を三%以下にしていく、それとともに国債の方もふやさないというような決定を、健全化目標をされているんだろうというふうに思うわけでございますけれども、この三%というのはEUの目標をそのまま持ってきたのかどうか、また別の一つの考えがあってのこの三%目標なのか、それと公債をふやさないというのを組み合わせたのか。その辺のところは、いかがでございましょうか。
  127. 林正和

    政府委員(林正和君) 昨年末に閣議でお決めいただきました国、地方を通じた財政赤字対GDP比三%以下という基準はどこから持ってきたんだということでございますが、財政再建の目標をどうするかということは財政制度審議会でもいろいろ御議論をいただきました。その際、まずとりあえずは債務残高、国、地方合わせました借金、これの経済に占めるウエートといいますか、それを上昇しないようにしようということがまず当面の目標だろうという議論になったわけでございます。  そのためには、現在の我が国の債務残高の対GDP比は約九〇%でございます。それで、今後の経済成長率の見通し、これは名目三・五%を前提にいたしますと、この我が国の債務残高GDP比九〇%を、三・五%で名目伸びていく経済の中でこれを上昇しないようにするにはどうしたらいいかというと、三・五%に〇・九を掛けますと約三%に相なります。つまり、毎年度のフローの赤字をGDP比三%以下にするということができますと、国、地方合わせました債務残高のGDP比がその時点で一定になるということからこの三%というものを計算したわけでございます。  こうした財政構造改革、財政再建の目標をどうするかという発想はヨーロッパでも同じでございまして、ただヨーロッパの場合には、現在、国、地方合わせますと債務残高が約六〇%でございます。それで、経済成長率を名目で五%と、こう計算をいたしまして、五%掛ける現在の対GDP比〇・六、これを掛けて三%というところになってきておるわけで、考え方は同じでございますが、その計算の数字といいますか、それが異なっているということでございます。
  128. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、三・五の〇・九掛けの三%というようなお話を承りましたけれども、名目ということであるわけでございますけれども、名目成長で、今三%の成長というのが本当に可能なんだろうか、これは私も非常に疑問に思うわけでございます。名目ですと、ちょっとこの数字、正確かどうかわかりませんけれども、例えばちょっとさかのぼっていきますと、九五年が一・八、九四年が〇・四、九三年が〇・八と、こんな低い名目成長で来ているように思うわけでございますけれども、これが実際可能なのかどうか。  それから、もう一点あわせて時間の関係がありますのでお聞きしたいと思うのは、国債残高をふやさないというようなお考えなんですけれども、今我々が問題にしているのは、国債残高が非常に多いんじゃないか、これが後世の人の借金と負担になっていく、それができるのかどうか、好ましくないんじゃないかということが今議論されておるわけで、先ほどのいろいろな疑問の点でお話がありましたのも、それが一つの基本ではないかと思うんです。そういう意味で二点目は、ふやさないというのはちょっと消極的過ぎないか、減らしていかないとこれからの少子・高齢化社会に合っていかないんじゃないか、そういうふうに思うんですが、その点お願いしたいと思います。
  129. 林正和

    政府委員(林正和君) 一つは、名目の経済成長率でございますが、これはほかによるべきところもございませんので、二〇〇〇年までの経済計画がございますので、これの三・五%を採用したということでございます。  ただ、御指摘のように、じゃこの成長ができるかどうかということは、これは私、責任を持ってお答えできる立場にはございませんが、今申しましたような計算ですので、仮に経済計画で言われております規制緩和が進まなかった場合、経済の構造改革が進まなかった場合、一・七五というようにすると、当然のことながらこの財政赤字対GDP比をさらに低くしなければいかぬということでございます。そういうこともありまして、昨年末に御決定いただきました目標では、できるだけ早期に国及び地方の財政赤字対GDP比を三%以下とするということを決めていただいているところでございます。  なお、もとより国、地方の債務残高は絶対額としても極力減らしていくのが望ましいことは御指摘のとおりでございます。ただ、今の財政状況を見ますと到底そういう状況ではないわけでございまして、まずはこのGDP比が上昇しないように、債務のGDP比が上昇しないように、そこを目標にしているということでございます。
  130. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 どうも経済成長の点で、なかなかこれは骨な計画だろうというふうに思うわけでございます。  それからもう一つは、ふやさないということは確かにそれも大事なことなんですけれども、それで済むかどうかというのが今あるんじゃないかと思うわけでございます。ただ、送り込んだ場合、我々の次の世代の人が今度は少なくなっていく、生産年齢人口がもう三十年もすれば一千万も減っていくというような中で負担し切れるのか。しかも、今我々はどうも次の世代から便宜供与を受け取り過ぎているんじゃないか、こういう議論もある中で、我々はただ今の現状をそのまま何とか持っていこうというのではなくて、我々が今度は逆に耐え忍ばなければならないのが出てくるんじゃないか、そういう観点から申し上げておるわけでございます。  大臣、これはもう考え方の問題だろうと思うんで、いかがでございましょうか。
  131. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御指摘は私も正しいと思います。そういう中で、大変困難な命題である三%以下に抑える、そして長期債務を六〇以下に抑えるということなのであります。G7諸国、ヨーロッパ諸国がEU参加の条件として出しておるのは、それはそれ。林次長から申されましたように、三%のセッティングは三・五名目成長をベースにしながらつくり上げたものでございます。  そこで、まず一般会計予算、いわゆる税収に見合う歳出という本来の財政運営の原点に戻るということに全力を尽くそうではないか。六〇%以下に下げる長期債務の努力はきっちりとあるのでありますが、それは目標としつつも、まず毎年度毎年度編成のフローの部分において達成をしていくことの方がより確実であり、より国民の皆様に御理解をいただけることではないのではないかと、赤字国債いわゆる公債に依存する財政運営ではない堅実な運営に立ち戻らさせていただくと、こういうことでございます。  現世が、利益を得ることのみにきゅうきゅうとして、後世の皆様方に、孫子の世代に何でこんなしんどい状況なんだろうかと言わしめてはならぬわけでございますから、これは当然親の世代は心がけねばならぬことでありますので、まさにこの命題は、今御指摘いただきました基本的な命題に真摯にこたえるという意味で、まず確実にやり抜くという決心を三%以下に抑えるということからスタートを切る、こう決心をさせていただいたわけでございます。
  132. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 もう時間がなくなってきましたけれども一つだけ。自治省の方にも来ていただいておるんですけれども、きょうの本会議でも質問がありましたけれども、国も地方も今非常に債務残高が多くなってきている中でございますけれども、地方債の許可がこれ五十年この方、当分の間ということなんですけれども、国の許可を得なければ地方債の資金が借りられない、こういうことなんですけれども、これはいろいろな審議会とかなんとかの検討段階を経るのかもしれませんけれども、もう当分の間が五十年間来ておりますので、自治省の方のお考え、これはもう今度の検討の中に入れるよということの御返事があってもいいんじゃないかと思ったんですけれども、きょうの本会議でははっきりした御答弁のないままだったんですが、この点いかがでございましょうか。
  133. 伊藤祐一郎

    説明員伊藤祐一郎君) お答えいたします。  地方債の許可制度につきましては、御案内のように、公共事業等の重要な財源であります地方債を財政基盤の脆弱な団体でも円滑に発行することができるようにするなど、地方交付税制度でありますとか地方税等々と並びまして、地方財源を保障いたします地方財政制度の重要な仕組みの一つであります。  地方債制度あり方につきましては、今御指摘もいただいたわけでありますが、地方団体の自主性を重視する立場があります。また一方では、今申し上げましたように社会資本の整備に必要な資金の確保を重視する意見もございますし、また財政構造改革や地方行革のためには計画的な地方債の縮減が必要である、したがいまして現在の制度を維持した方がいいのではないかという意見もあるわけであります。さらに、御案内のように、大変多額の財政不足が生じている現状におきまして当面の財源不足を地方債でカバーしているという面もあるわけであります。  したがいまして、こうしたいろんな考え方がございますので、こうした点を視野に入れつつ各方面の論議を踏まえまして幅広く、私どもといたしましては検討を進めていきたいと考えております。
  134. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 終わります。
  135. 志苫裕

    志苫裕君 私は体調がまだ十分でありませんので、恐れ入りますが座ったままの発言をお認めください。質問者が座っておって答弁者を立たせるのはまことに気が引けますが、答弁者にもどうぞ着席の配慮をしていただきたいと思います。  三塚大蔵大臣には初めてのお目見えですから、この際三塚財政の哲学と当面する財政の課題及び広く日本経済社会の諸問題について若干お伺いします。しばらく病室の壁だけ見詰めて暮らしておりましたので、政治に疎くて少しピントがずれているかもしれませんが、お許しをいただいておつき合いいただきたいと思います。  今、世間には財政改革のコーラスが起きております。今国会での本会議あるいは予算委員会の論議でも歳出削減、収支均衡、財政均衡化といった論調が主流で、それ以外の論議は不協和音のたぐいにされてしまう雰囲気です。今の日本で財政改革のコーラスが沸き上がるのは理由のあることで、時の大蔵大臣としてその衝に当たられるのは大変御苦労です。労を多といたします。  しかし、政府や政界はさることながら、財界も労働界もすべてのメディアもことごとくパックツアーのようにどやどやと同じ場所へ向かつて同じ場所を見て同じ角度で写真を撮る、そういう光景はついこの間政治改革のときとうり二つの雰囲気で、いささか気にならぬわけでもありません。何をどうするのか、抽象的なムードだけが先行して、具体的な検証やあるいは異論や懸念を交換し合うという状況がなければ、しょせんは物にならない。異論を挟もうものなら、たちまち守旧派のレッテルを張られて締め出されてしまう。そういう風潮は恐ろしいことで、現に政治改革の後には思ってもみなかった小選挙区比例代表制といういまだに評判の悪い代物が残った。  こういうことを考えると、果たしてこの財政改革の後には何が残るんだろうかと。残ればいい方で、下手をすると戦後民主主義のもとで確立されてきた市民的権利が跡形もなくなくなってしまわないか、明治以来百年、近代化の中で営々と築き上げて日本社会の活力の源泉となった世界に類を見ない平等化社会が根底から崩れてしまわないか、そんな不安にふと襲われることもありますが、これは大臣、私の杞憂でしょうか。
  136. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今、志苫先生、多年の政治経験、地域活動、全国運動の中で端的な御指摘をいただきました。私は決して志苫先生の言われること、その心配はないと言うつもりも全くありません。やはり我が国は地域によって構成される地域文化の集積の中に日本文化があるわけでございますから、このよりよき伝統をしっかりと後世に伝えることも現代で生きておる私どもの大きな役目であることは間違いございません。  許すことであれば、経済が安定成長をし、その中で借金のない財政体質の中で、おのおの所を得てやれるような状態をつくり上げることが理想ではありますけれども、この理想はほぼ不可能であるという状態にありますことから、まず借金を後世に残さないというわかりやすい原点からスタートを切っていく。しかし、このスタートは先ほども阿部議員から指摘を受けましたとおり、孫子の世代の共感を得るものでなければならない。志苫先生もその点を強調されておることでありましょうし、そして地域に根差したよき伝統と文化はしっかりとその中で補てんをされていかなければならない、そして継承していかなければならない、こういうことであろうと思います。全くそういうことでは同感であります。  しかし、今このままの財政運営を続けていくということでありますと、税収を超える予算編成を毎年やり借金を後世に積み残していくということになりますと、財政体質は疲弊して細っていくことは御案内だと思います。既に地方、国を合わせて五百兆というGDPに匹敵する、それを超す債務に相なってまいりました。ここで、やはりストップをかけて踏みとどまって聖域の設けない予算編成をしていくと。しかし、聖域を設けない予算編成でありましても、それぞれの担当省は、その中でプライオリティーをいわゆる優先順位というものを決めてやるべきものはやると、こういうことで編成時に臨むと、こういうことであってはなりません。  言いたいことは、ただ一点、いわゆる優先順位を決めて、あの省がやるから我が省がやるのではなくして、我が省でなければやれないものがあるはずであります。そういうものをきちっと取りまとめ御提出をいただくと、こういうことで聖域ないという公平な政治の原理原則が満たされるということになるのではないでしょうか。こんな点を考えながら、志苫議員言われるその改革後何が残るか、何だと言われませんように、腹を据えて自戒をしながら、また将来に向けての政治の方向、橋本総理大臣をしっかりと支えながら、閣僚全員このことと一体となり、与党の皆様方の深い理解を得、そして各党の皆様方の理解を得ながらスタートをまず切ると。結論としていいますれば、ただいまならば間に合うと、ここであります。もう一年待て、もう二年待ったら一緒、行くよということでは遅いと、ここのところに来たということでございます。  専門的な国際経済、財政経済の数理的な問題はうまく申し上げられませんが、エッセンスとして聴取をしてまいりますと、やはりここでスタートを切らなければいつ切るのかと、こういう感じが強くございますものですから、こうやって御理解を得たく申し上げさせていただくところでございます。
  137. 志苫裕

    志苫裕君 そこでお伺いしますが、政府はこの改革によってどんな国あるいは社会をつくろうとしておるんでしょうか。そして、財政はそれにどんな役割を果たそうとしておるんでしょうか。  ことしを改革元年と位置づけて財政健全化計画の実行に乗り出しておりますが、財政赤字をGDPの三%、あるいはストックで六〇%とか、特例公債をゼロにするとか、量的な目標はありますが、質的な目標は姿が見えない。この辺の点について、ちょっとお答え願えますか。  それから、赤字を減らさないというお話ですが、例えば所信表明によりますと、「現在の景気の回復力を一層強固なものとし、民間需要を軸とした中長期的な安定成長につなげていくため、引き続き適切な経済運営に努めてまいる」。前段では、第一の課題は、「自律的な景気回復を確実なものとする」と。この発想で、これでもかこれでもかというふうに財政を出動させて、そして幾らも時間がたたないうちに今日の財政赤字をつくり上げた、それが今日の事態じゃないんですか。その反省が、この所信表明には出ていない。その点については、いかがですか。
  138. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 全体としての流れを御解釈いただきますと、そのことは出ておると思うんです。それぞれの役割をそれぞれに指摘しておるものと存じます。  志苫議員の言われる、財政出動によって不況を乗り切ろうと累次にわたって行った結果はどう見るかという御指摘もございます。深い反省の中で、そこからスタートを切っておるわけでございます。経済システム改革を断行することにより、企業がみずからの足で立って、国民各位の要望にこたえるものをつくり上げ、また販売者は販売者でそこで頑張ると、こういうことでありましょうし、自律的経済成長は経済体質が変わりますればそこに到達できる道のりであることは世界経済の中でよく例がございます。我が国も、戦後そのことでここまで来させていただいたわけでございます。  そういう点で、どんな社会をつくるのかということであれば、老壮青一体となった地域社会づくり、国家づくりということだろうと思います。世代が他の世代を反発するものではなく、協調、融和の中で社会が保たれていくことが世界の中でも一番すばらしいことであるでありましょうし、理想的なことを申し上げますと、国の制度によってすべて補てんをするのではなく、家族がやはり年老いた両親のために愛情と信頼の中でサポートをするという社会は理想社会であるに違いありません。  自立した人間ということがよく言われますけれども、それは自立は正しいことでありますが、しかし精神的なきずなというものは厳然と残らなければなりませんし、そういうものをつくり上げることが私ども会議員に与えられた大きな目標であろうと思いますし、そして相互扶助の協調の社会ということであろうと、そんなふうに思っております。  財政の役割は、これだけの経済国家になったわけでございますから、自律的な財政運営を基本として取り組まなければならないわけでございます。国民一人一人が豊かに暮らせるというベースが築かれていくこと、そして人権と自由が尊重をされながら自由で活力のある二十一世紀をつくるということが、六つの構造改革橋本首相が提唱し、その方向の中で取り組んでおるところでございます。  限られた時間でありますので、基本的な考えのみ申し上げさせていただきました。
  139. 志苫裕

    志苫裕君 どんな国をつくろうとしておるのかというのは、おぼろげながら今お話わかりましたが、国家の役割あるいはひいては国の財政の役割、こういうものについての見直しは改革のテーマに入っておるんですか、入らないんですか。
  140. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 改革のテーマに入っております。  そして、平成十年度予算編成が概算要求七月決定ということの中で、末には決めなければなりません。そういう点で、財政構造改革が至近の最大の問題である。それと経済システム改革、金融のシステム改革というのが相並列してただいまスタートを切っておる、こういうことであります。
  141. 志苫裕

    志苫裕君 所信表明では、依然として景気の調整を第一義的な財政の課題にいたしておるものですから、あるいは見直しは含まれていないのかなと思って聞いてみたんですが、資源配分の適正とか、あるいは所得再配分とか、景気の調整という伝統的な古典的な財政機能の変更というのは余り変化がないんですね。  先ほどもお話がありましたが、やっぱり国家目標をはっきりして戦略目標を定めて優先順位のある財政運営をしないと、聖域なき歳出削減というだけでは、政策選択のプライオリティーがなければ、これはらまき予算の反対ではら削りになっちゃうだけでして、ばら削りという言葉、あるかどうかわかりませんが。やっぱりプライオリティーを持った方が国民にはわかりやすいわけですし、何がよくなるのかがわかるわけですから。  いずれにしましても、これからは政府も国民も汗をかいて一山も二山も越えなければならぬのですが、その山の向こうに何があるのかを国民にわかるようにすることが一番肝要だと思います。山のかなたの空遠くというドイツの詩人の歌がありますが、三塚さんが越える山の向こうには何があるのか、ちゃんとはっきりした方がいいと思います。行ってみたら何もなかったなんて、これはだめなんですから、これは広く国民に語ってもらいたいと思います。これが財政改革成功のかぎだと思いますね。  行政改革規制緩和の潮流からいきますと、純粋公共財に限ってその他の財やサービスは市場にゆだねるというアダム・スミスまで戻るようなトーンもあるかと思うと、やっぱりきのうと同じように財政の出動で景気の方を支えていくというところにウエートがあるようにも感じますし、若干それ迷っておるんでしょうか、その辺の点にちょっと懸念を感じたものですから、意見だけ申し上げました。  それから、財政健全化目標によりますと、国、地方の財政赤字をGDP比三%以下云々と。地方に対しても国と同様に歳出の伸び率を抑制するよう要望するとありますね。新しい国づくりのキーワードというのは地方主権の確立にあるわけでして、なぜ地方を一律に十把一からげに律しようとするのか。地方は最も住民に身近ですし、民主主義が貫徹できる場所なんですね。どんな公共財を提供しようが、どんな財源を交付しようが、それは地方主権に任せるというのも財政改革の主要な観点だと思いますね。そうしますと、サービスと負担の関係もわかりやすくなりますから、タックスペイヤーの理解も得られやすいという気がいたしますが、どうですか。
  142. 三塚博

    国務大臣三塚博君) いわゆる地方自治は、民主主義の根幹であると言われ続けてまいりました。地方自治の健全な発達がそうさせるわけでございます。それが完成の暁には、主たる部分が地方に移管をされ、分権が終了をすると思います。  私も地方議員の経験を持つものでございまして、県会議員になりました四十年前には、既に地方分権、権限の移譲、財源の再配分、地方制度調査会で毎年毎年これが決議をされ、提案をされて今日まで来ております。そういう点から考えますと、地方自治こそ名のごとく自律して、議員言われますとおりサービスと負担、タックスペイヤーの原理、原点で物事が判断をされて、地方の地域づくりが行われていく、こういうことであろうと思っております。  そういう点で、今後この地方自治という根幹は、諸改革の目標、大きな国家の目標ということで、イコールで地方の願い、地方の目標でなければなりませんし、改革、改善の両輪として今後取り組んでいくべきものと考えております。
  143. 志苫裕

    志苫裕君 改めて伺います。これは大蔵省の専門家で結構です。  財政赤字が経済社会に及ぼす悪影響というのは、一体どういうものなのか。財政経済学の理論的に、わかりやすく説明してくれませんか。財政赤字があると経済社会にはこんな悪い影響があるということをわかりやすく、その辺を歩いている人にもわかるように言うには、どう言ったらいいでしょうか。
  144. 林正和

    政府委員(林正和君) 財政赤字の問題点としては、次のようなことが言われております。  一つは、先生御案内のとおりに、二十一世紀に入りますと人口の高齢化が急速に進展してまいります。政府が昨年の末に二〇〇五年までにということで財政再建の目標を定めましたが、二〇〇五年といいますと、ちょうど戦後六十年でございまして、二〇〇五年以降になりますと、戦後生まれのベビーブーム世代が皆退職年齢に差しかかってまいります。そんなことから、貯蓄が減少していくということが見込まれるわけでございまして、現在のまま放置しておきますと、大量の公債が市場で円滑に消化されにくくなる結果、金利が上昇をする。経済成長の源泉であります民間設備投資が抑制されて、経済の活力を喪失するということが第一点だろうと思います。  もう先生、御案内のとおりでございますが、必ずしもこれそのままストレートに当てはまるかどうかでございますが、かつて財政赤字で大変苦しんでおりましたスウェーデンで、一九九四年の六月、国内の最大の生命保険会社が国債の引き受けを拒否いたしまして、その結果長短の金利が非常に大きく上がった。その結果、国民経済が非常に窮地に立ったというようなことがございます。これが第一点だろうと思います。  それから二番目は、当然のことながら財政赤字がふえますと、利払いあるいは国債の償還という費用が多額にかかってまいります。したがって、その結果、政策的な経費として使えるお金が少なくなるということがございます。現在、御案内のとおり、一般会計のうち五六%程度がこうした政策的経費に使われているにすぎません。これから将来世代、どういうことが起きるかわかりませんが、そうしたときの国の対応というものの力が弱まってくるということが二番目の問題だろうと思います。  それから三番目に、これは当然でございますが、公債、これは将来の税金でもって償還をしていくわけですが、将来世代のこの国債償還に伴います税負担が一層高まってまいりまして、世代間の公平の問題もあるということが指摘できょうかと存じます。
  145. 志苫裕

    志苫裕君 もう一つお伺いしますが、日本のみならず先進国の財政が、二十世紀の後半から急速に拡張的になってきて、共通の悩みを抱えるようになりましたが、その根源はどこにあると思われますか。
  146. 林正和

    政府委員(林正和君) 先生指摘のように、財政赤字の拡大、これは先進各国に共通している問題でございますが、その要因としては、一つは低下傾向にあります経済成長率が挙げられようかと存じます。それから二番目には、人口の高齢化等財政を取り巻く状況の変化というものがあろうと存じます。それから三番目に、これは社会保障分野に見られますような政府の役割の増大、これに伴います歳出拡大等が挙げられようかと思います。世界各国の、特に政府の最終消費支出あるいは社会保障移転支出、こういうものを見ましても非常に大きく最近ふえてきているということでございます。こうした、恐らく大ざっぱに言いましてこの三点が我が国も含めます先進各国の共通した財政悪化の原因であろうというように思われます。  そのため、昨年のリヨン・サミットにおきましても、こうした状況を踏まえまして、先生御案内のとおり、信頼できる財政健全化計画、成果の上がるようなインフレ抑制政策、及びその結果としての低金利、並びに一層の構造改革というものがリヨン・サミットのコミュニケにおきましても言われているところでございます。
  147. 志苫裕

    志苫裕君 済みません、もう一問。  平成十七年、二〇〇五年を一応の財政健全化の目標年にしています。二〇〇五年、平成十七年、八年後ですね。普通、五年後とか十年後というのはありますが、八年後というのは何か特別な意味があるんでしょうか。何か経済社会に特別な大きな変動が起きるとか、ハルマゲドンでもやってくるとか、そういう何か特別な意味があるんでしょうか。
  148. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 二十一世紀がスタートをしてちょうど五年と、五年というけじめが一つあるんだろうと思うんです。専門家にも聞いてやっていただけますか。
  149. 林正和

    政府委員(林正和君) 二〇〇五年ということでございますが、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、二〇〇五年以降になりますと戦後生まれのベビーブーム世代が六十歳を迎えることになりますし、またこうした状況を反映しまして、一九九五年十月のG10、先進各国の集まりでございますが、そこのレポートでは、こうした状況も踏まえて我が国においては貯蓄率が顕著に低下し始めると予想してございます。  このように、二〇〇五年ころが我が国社会構造あるいは経済構造というもののターニングポイントであるというように考えられまして、遅くともこの目標年次までには財政構造改革を強力に推進し、二十一世紀の活力ある豊かな国民生活を実現するとともに、子供たちや孫たちに対する責任を果たす必要がある。そういう意味で、この二〇〇五年というものを閣議決定のときの年次にしているわけでございます。
  150. 志苫裕

    志苫裕君 財政の収支均衡には、歳出の削減と増税の双方向があります。増税も選択肢の一つに入りますか、端的にお伺いします。
  151. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは改革を推進いたし、財政構造を健全なものに仕上げてまいらなければならないものですから、増税を今直ちに視野に入れるということはせず、基本的な理念に基づいて全力を尽くす、こういうことであります。
  152. 志苫裕

    志苫裕君 増税ありは財政健全化のシナリオには入っていないと確認をいたします。それで、増税ありでは改革のプランが中途半端になります。財政当局は消費税という打ち出の小づちを持っておりますし、その誘惑に引かれて安易になるおそれもありますから。  ところで、橋本総理は予算委員会では今のところ考えていないと、この問題を時期の問題に置きかえていますが、時期は危ないんだね。これは中曽根さんのときに経験がある。この顔がうそをつく顔に見えますかと言って、うそをついて売上税がやってきまして、それですったもんだの結果、消費税が入ってきたという歴史がありますので、これは増税なしで厳格に財政再建のシナリオを描いてもらいたいと。これは強く要求しておきます、よろしいですね。  時間が来ました。これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  153. 小島慶三

    ○小島慶三君 幾つかお伺いしたいわけでありますが、初めの一つはさっきの岩瀬委員質問と大分重複いたしますので、ごく簡単にいたしたいと思います。  日経の世論調査を見ますと、八〇%近くが財政再建賛成であると、これ優先すること賛成であると、こう言っている。しかし、景気回復を優先しろというのが二六%ぐらいありました。それから、八〇%近くが財政再建を支持しているならば、橋本内閣に対する支持率も、これも上がっているのかといえば、これはかなり下がっている。これは一体どういうことかというわけであります。  私の解釈は、総理が命がけでおやりになるということで、私はその気概に賛成しているわけでありますが、言うこととやることが違うんじゃないかと、有言不実行であるという感じが私はしているわけであります。  規制緩和、地方分権、これもいろいろ立派な名論卓説が横行しておりますけれども、実際のテンポはかなり遅い。例えば、規制緩和であれば認可を許可にする、あるいは許可を認可にする、認可を届け出にするといったような非常に微細な規制緩和が多い。一番肝心な郵政とか通信とか、これからの産業構造を担うような、そういった方向というのがさっぱり浮かび上がってこない。そういった面の規制緩和が浮かんでこない。  それから、地方分権にしても、地方に権限を移譲するという項目が七十八でしたか、あると。しかも、それが全部お互いに相談をして、そして同意を得てやりなさいと、こういう注釈書きがついている。そんなことで果たして地方分権が進むだろうかと私は非常に疑問に思っております。財源の問題もあります。それから、そういった地方分権とか規制緩和がうまくいけば、今後の成長率は何もしない場合の一・七五から三・五に上がる。これが企画庁の説明なんですね。きょう御説明を伺っていますと、マーストリヒト条約の赤字三%以下、それから公債依存率六〇%以下、こういうものに到達する計算根拠はわかりました。実は、この前の予算委員会のときに主計局長に伺ったのですけれども、余り簡単で全然わからなかった。しかし、きょうの説明で計算根拠はわかりました。  しかし、計算根拠とどうすればそれに近づいていくかというプロセスですね、あるいはポリシーミックス、ポリシーのプロセス、こういったものがその裏に果たしてあるんだろうかということは私疑問であります。だから、そういう点はいずれまた詳しくお教えをいただきたい。今後の二〇〇五年までの手順が、どういう手順でどういう可能性を秘めて、それがさつきの目標に到達するのかと。これはよくわからないですね、きょうの話では。だから、これはいずれお伺いしたいと思っております。  それからもう一つ、三・五というのはどう考えても高い、どう考えてもこれは高過ぎる。私は相当努力しても一%台だと思っております。だからそういった意味で、これもいずれ後で議論をさせていただきたいというふうに思っております。  それから、そういういろんなお話で、政策意思はあるけれども計画的な確認はないというわけでありますが、そういったものを含めて、これ立法措置をおとりになりますか。これは大臣にお伺いしたいんですけれども、財政再建法というようなものをお出しになりますかどうか。
  154. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 私は閣僚懇談会等においても申し上げたわけでございますが、平成十年の予算編成を新しい視点で、いわゆる本年度予算編成の基本的理念を正しく継承し深めるという意味で行うということであるとすれば、常会の後期に財政再建法、これを出すべきであると、こう申し上げてきております。まさに、そういう意気込みで取り組んでまいりませんと概算要求基準が定まらないという気持ちであります。総理も、本件についてはできるだけ早く大蔵大臣の言うとおりの方向で対応をしなければならぬという、基本的には一致をいたしております。  そういう中で、今予算が各位の御理解と御決定によりまして議決、決定をいただきますと、その後具体的な項目についての検討会議が週三日くらいのペースで行われることになります。そういたしますと、常会の終わりころには確実に方向と具体的目標が明示されるであろうと。明示されるのであれば、国民的支持を得るためにも会期末に法律の提案をするということが大事ではないのかと、こう申し上げておるわけであります。国会では到底、常会決まっておるわけですから、本会議趣旨説明を申し上げる程度が精いっぱいかもしれませんが、それでも国民に対する一つの義務であろう、政府として国会として政党としてと、こんな感じで申し上げておるところでございます。少なくとも臨時国会召集されるとすれば、また召集をお願いするという形の中で本案の審議が行われませんと、平成十年の年末の予算編成に魂と筋が入らないと、こう思いますので、大蔵大臣として全力を尽くしておるところであります。
  155. 小島慶三

    ○小島慶三君 今、大臣は臨時国会云々ということをおっしゃいましたけれども、私は従来と同じような手法で、例えば一般予算の、年頭予算の編成のときには隠しておいて、また臨時国会で補正予算を組んで、そしてまた自分の思いどおりにするといったような今までのやり方はもうおやめになった方がいいというふうに思います。いかがでしょうか。
  156. 三塚博

    国務大臣三塚博君) おっしゃるとおりでございまして、財政再建法は至近の国会において御論議をいただく、そういう意味で臨時国会と申し上げさせていただきました。
  157. 小島慶三

    ○小島慶三君 わかりました。  それで、今補正予算という話が出ましたが、私は今度の補正予算も実は余り賛成でなかった。私ども反対させていただきました。それから、それにある程度支えられて平成九年度予算をお組みになったというわけでありますが、この平成九年の予算についても、私どもは随分まだ切り込みが足りないのじゃないかと。せっかく消費税も上げる、あるいは減税もやめる、こういうことで得た財源というものがあるわけでありますから、そういった財源をもっと思い切って公債削減に充てるべきではないか。  確かに、公債というのは、大臣のおっしゃるように我々の子孫に残すべきものではない。公債の最大の欠点は、世代間のアンバランスということが最大の僕は問題だろうと思っております。世代間の公平というのは、財政の非常に大きな要件であると思うんです。それが保たれないというのは一番大きなあれである。だから、公債の利払いによる財政運営の硬直化、これも大問題でありますが、それ以上にそういう点に気を配るのがやっぱり政治の要請ではないかというふうに思うわけであります。  さて、そういう点から見ると、一般歳出の切り込みというのは私どもにとっては全く不足である、だから民主党の衆議院の方では三兆ぐらいのものはもっと削れないかと言っております。私は、それに加えて場合によっては歳出の、実行予算の五%各省別一律カットというのを実施されたらどうか。  今、一番我々が気になって仕方がないのは、お役人の方の財政支出に対する感覚が麻痺しているのではないか、言葉が少しきつければお許しいただきたいけれども、そういうことです。だから、いろんな事件が方々でわき出ております。だから、そういう点に関していろんな役人の、公務員の倫理規程をつくるとか、そういうことも確かに必要かもしれませんが、それ以上にやっぱりもう実物教育というか、五%カットということでかなり厳しい線を出したらどうか。そうしますと、四十三兆に対して大体二兆ぐらいのカットになります。だから、民主党の言っている三兆と合わせると五兆ぐらいカットできるということになるわけであります。  それで、あともう余り時間もございませんから一つだけお願いしておきたいのは、ことしの八月ごろですか来年度の概算ができる、さっき大臣おっしゃいました。来年度の概算の場合に一番肝心なのは、私は特殊法人に対する手入れだろうというふうに思っております。一般の国民の零細な郵便貯金、それから集めたのが資金運用部に入って、それから特別会計に入って、一般会計、特別会計合わせて全体の資金計画が三百九十六兆と。これは私、役人資本主義だと思っております、それを役人が運用するというのでは。だから、そういうことをやめて、それをできるだけ民営に移す。総理も、官から民へ、中央から地方へというのが自分の理想だとおっしゃっております。確かにそうだと思うんです。だから、民営に移すということをできるだけ主眼にすべきである。  八十八の特殊法人、それによって支配されている会社が千百二十五、これは我々の仲間の石井君の計算だと三千あると言ってます、子会社、孫会社。あるいは社会経済生産性本部の資料では二万六千あるというんですね。二万六千というのは少し計算が違うんじゃないかと思いますが、とにかくべらぼうな数の子会社、孫会社が政府の金でうごめいているわけであります。これは、何としてももうちょっと思い切った整理をすべきであるというふうに思っております。  ですから、私は一応の私案もございますが、特殊法人については廃止するもの、目的を達したので廃止するというのもあります。それから民営化するもの、これはかなりございます。それから統合するもの、これもございます。それから、何とか残すものというものもございます。そういう点を全部今度の予算の編成期まで、できれば整理をしていただいて、それでそれによって十年度予算をお組みになる、その主眼は民営化であるというふうに私は思っております。この辺、お願いできますでしょうか。
  158. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 行政改革も極めて重要で、今その作業が進んでおります。また、総務庁を中、心に特殊法人の問題についての検討が行われております。  ただいま御提言の廃止するもの、民営化するもの、統合するもの、残すもの、まあ統合は残すものの中の範疇に片足入るんでしょうか、この基本的な理念というのは極めて大事なことだと思っております。御提言を承らさせていただき、当然のこととして、任務が終えたということが明確であれば、それは雇用の問題は政府の責任でやることでありますから、国鉄民営化の際に一人といえども失業者は出さないという基本的な約束事が達成をされた前例もこれあり、そういうことできっちりと対応をしてまいりますならば理解と協力が得られるものと、こう考えております。
  159. 小島慶三

    ○小島慶三君 それから、こういった特殊法人も関係があるわけでありますが、もう一つの問題はやはり公共事業だと思うのでございます。一遍仕事を着手してしまうと十年でも二十年でも継続してそれを、いい悪い、つくるつくらない、そういった議論を続けている、こういうのは随分あります。  例えば、ダムでも去年十一ばかり凍結をいたしました。ことし四つばかりそれに追加をいたしました。それから、いろいろと公共事業の中にはほとんど使われていないトンネル、こういったものもございます。海岸はテトラポッドでいっぱいであります。また、農業改善については河川の三面張り、直線化、そういうことが行われて、必ずしもそれが現在どうしても必要だというものではないものもあると思うのであります。ですから、そういった点で公共事業は、あるプロジェクトは非効率であり、あるプロジェクトは環境破壊だけに通ずる、あるプロジェクトは民間投資に連動しない、こういったものを一つ一つ洗い直して、そして思い切った整理をこれはぜひお願いをしたいというふうに思うのであります。  この際は、入るものも検討しなきやなりませんが、その出し方についてやっぱり検討すべきである。だから、さっき申しましたような民営化とそれから公共投資の民間投資連動化というふうなことで予算をお組みいただきますように、ぜひお願いをいたします。  私の質問はこれで終わります。
  160. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 最初に、一つ私も確認をしておきたいんですが、先ほど志苫議員から問題提起がありました増税なき財政再建。予算委員会で、総理はそういうことは言った言わないという論議もありました。橋本内閣のもとで、また大蔵大臣自身として増税なき財政再建という方針かどうか、はっきりしておいていただきたいと思います。
  161. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 増税の問題は、私は、財政再建のために増税を国民にお願いする状況ではございません。まずは歳出の改革と縮減に取り組むべきときであります。
  162. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 それはそれぐらいにしておきましょう。  ずっと論議になってきました財政再建目標ですが、私は、これまでも財政再建の目標が繰り返し掲げられながら、実際はそれは実行されなかったということを振り返ってみると、この目標もそっくりそのまま実現するかどうかということに大きな疑問を抱かざるを得ません。従来のとこれは今度はどこがどう違うかということは、もちろんこれまでの論議でもいろいろ問題になってきたところです。  私は、それはもう時間の関係論議しませんけれども、私がこの見通しに疑問を持つのは、歴代二番目の巨額の国債を発行しながら、財政再建元年だと言われる、こういう感覚だとやはりどうかなという気がします。  それともう一つ、きょうの冒頭の論議にありました建設公債の問題です。林主計局次長の答弁を聞いていますと、建設公債は財産を残すから全然問題ないと言わんばかりの響きで私にも聞こえました。それは私は全然違うと思うんですね。大体財政法は、赤字公債の発行はもちろん認めていませんけれども、建設公債とてもこれは例外措置であって、本来は出さないでやるのが筋であって、例外措置として認めているのを、資産が残るから当たり前だみたいな響きで聞こえる答弁を聞いて  いると、さてどうかなという気がいたしました。  それで、建設公債ももちろん利子は伴うものでありまして、今残高百七十一兆ですか、これは一体、総額についてはどれだけの利子が伴うのかと、これは大蔵省に聞いたら計算していないそうですけれども、私が聞いたところでは、十年債で六十年間償還、利率三%だと、一兆円の公債発行で利払いが一・一兆だそうですね。だから、元本よりも利子が多くなると。これは大蔵省からいただいた資料でもそういうふうになるわけで、それはやはり財政を圧迫することは、これは目に見えているわけです。もう一度建設公債についてどういうふうな認識でおられるか、お答え願います。
  163. 林正和

    政府委員(林正和君) 先ほどもお答え申しましたように、基本的に我が国の財政というのは非募債主義をとっているわけでございますが、ただ、公共事業等につきましては、その見合いの資産も残る、その効用も長く続くということで、それの財源に充てるために公債を発行してよろしいということが決められているわけでございます。  先生指摘のとおり、これは当然のことながら、その償還あるいは利払いというものの負担が将来世代にわたるものですので、これは財政制度審議会でもいろいろ御議論いただきましたが、そういう意味で、建設公債も含めたところでこれからの公債政策あるいは公債残高をコントロールしていくべきだという議論が行われているところでございます。
  164. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 やっぱり今の答弁ひっかかるんですよね。原則は発行しないんですよ。例外措置として認めているわけで、それを発行してもよろしいというふうに無条件に言われると、私はその姿勢を疑わざるを得ない。しかし、これだけで時間つぶすわけにいきません。次に進みます。  今の財政危機をめぐって、大蔵省は一昨年財政危機宣言を行われた。それ以降、日本の財政が大変だという大宣伝を開始しておられます。私がちょっと手元にあるものを持ってきただけでも、去年盛んに、各地下鉄、私鉄の駅に出ました「ご存じですか。国の抱える大きな赤字」というこういうタイプのあれから、「財政構造改革への取組み」、これも去年とことしと二種類つくられておりますし、それから経済審議会の答申に基づく宣伝もあります。  こういうものを出して、日本の財政が大変だという実態を知らせること自体は、私はもちろん必要なことだとも思います。これにかけた予算についてもお伺いしましたら、こういうパンフだけでも百万部出していると。三種類出て九百六十二万円、一千万円近い宣伝費がつぎ込まれているわけですが、問題はその内容ですね。私は、この内容について非常に疑問を持たざるを得ません。  それは、先ほど一部引用がありましたけれども、「破局のシナリオ」だとか、「財政・社会保障は21世紀には破綻へ」、「双子の赤字で純債務国へ転落する日本」とか、こういうのが大きい見出しでこう次々書かれておる。そして、このパンフレットを見ますと、赤字の実態として、例えば一万円札で積み上げると富士山の六百三十七倍になるとか、エベレストの二百七十二倍になる、東京から横にすると北京までつながると、こういうことを書いて一生懸命に出しているんですね。  私は、何のためにこれを出しておられるのか、こういう破局だ何だという宣伝をやって、これも見出しの一つにありますが、活力ある二十一世紀への展望が国民の間で持てるかですよ。これほどまだかまだかとばかりに危機感をあおって、国民は、これは日本はお先真っ暗だという気になると思いますよ。これでよくも活力ある二十一世紀へのなんていう見出しがついたものだと思います。  私は、これは間違った宣伝だと思いますよ。私は結論的に言えば、こういう大宣伝で国民への負担を求めている、恫喝ですよ、これは。一番問題は、なぜこういう赤字が生まれたかというまじめな分析がない。これは、財政健全化目標についても、なぜ出たかの原因はないわけですけれども、そういう謙虚なきちっとした分析、反省の上に立って国民に、我々として、政府としてどういう努力をやるということを訴えないでこんなものを出したら、これは本当に国民は読んで、やっぱり日本の将来お先真っ暗だなと、こういうふうに思うと思いますよ。  大臣、これは僕は間違った宣伝を大蔵省はやっていると思いますが、立派な宣伝と思いますか。
  165. 林正和

    政府委員(林正和君) 私ども、いろいろな機会を通じまして財政の現状について国民の方々に説明をさせていただく、あるいはその御理解をいただくために資料をつくっておりますが、基本的な認識は、我が国の財政状況が非常に厳しいにもかかわらず、国民の方々の財政に対する御理解あるいは危機感というのは必ずしも強いものではないように思われます。  これはなぜかと考えてみますと、我が国の場合に、先生御案内のとおり、投資を上回る大幅な民間貯蓄がございまして、大量の公債が市場で円滑に支障なく消化されているということもあって、現在諸外国が直面しているような金利の上昇あるいはそれに伴う民間投資の抑制あるいはインフレといったような財政赤字の問題がこれまで顕在化してこなかったということなんだろうと思います。
  166. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 もうちょっと簡単に、聞いていることに答えてください。
  167. 林正和

    政府委員(林正和君) はい。また、どうしても将来世代へのツケ回しといいますと身近な問題として認識されにくいということもあるんだろうと思います。ただ、これからの日本経済社会状況をかんがみますと、我が国だけが財政赤字の弊害からいつまでも無縁であるということは考えられません。  したがいまして、私どもはこれから財政改革を進めていく、そのためには国民の御理解が必要であるということでこれまで広報活動をしてきたものでございます。
  168. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国民の理解を得られない宣伝をやっているということを、私は言っているわけですよ。それはそれで置きましょう。  問題は、私はこれを読んでいると、もうこれは大体消費税による国民の負担増は前提として書かれている。重点が置かれているのは、私が読む限りでは社会保障の問題、これは社会保障費負担の増大要求ですね。続いて、文教費の問題が強調されている。私は、消費税に続いて医療費初めこれから本格的な社会保障費負担が考えられているのだなと、これを見ながら思いました。そして、続いて文教費をめぐって国民への負担が来るなと。  それで、この財政制度審議会の最終報告を読んでみると、教育の問題で、これはまた一体どういうことが考えられているかなと思うことが書かれております。それは、小中学校の人件費の国庫負担を見直すという問題、教育施設の負担を見直すと、教科書無償制度も見直すと。そして、最後に私は、これはちょっとどういうことなのかわからないんですが、国立大学については自己財源の充実に努める、これは大学に商売でもやれということなのかどうなのかわかりませんが、同時に法人化を含めて組織運営のあり方について検討すると。国立大学の法人化というのは、これもまた民営化しようということなのか、一体どういうことが考えられているととったらいいのか、ちょっとお答え願います。
  169. 林正和

    政府委員(林正和君) 今、先生指摘の点ですが、昨年の七月に出ました財政構造改革白書、それのもとになるものでございますが、そこの中でも言われておりますように、国立大学のあり方につきましては財政制度審議会で、運営の自主性あるいは自立性を高め、教育研究の活性化を図るため、国立大学という設置形態を改め法人化等の検討が必要というように指摘されているところでございます。つまり、ここでは国立大学について言いますと、自主性、自立性あるいは教育研究の活性化と、そういう観点から御議論が行われてきているものと承知しております。
  170. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私が聞いたのは、人件費をどうするか、教育施設も国庫負担をどうするのか、教科書の無償も検討すると言っている、大学については法人化というのは国立大学をなくしちゃうのかどうなのか。それを聞いているわけで、文章はわかりますよ、僕は字が読めるから。
  171. 林正和

    政府委員(林正和君) 文教予算につきましては、財政制度審議会の報告では、今先生指摘のようなところの議論が行われているところでございます。それは、御案内のとおり、文教予算で義務教の国庫負担金あるいは国立学校の人件費、それが八割を占めておる構造になっておりまして、そういう意味で非常に硬直化した予算だという指摘がされております。  そういう観点から、国庫負担金の問題等の見直しの必要性が指摘されているところだというふうに理解しております。
  172. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国立大学をどうしようというんですか、民営ですか。
  173. 林正和

    政府委員(林正和君) 法人化等の検討が必要と指摘されているところですが、文教予算だけではなくて、すべての経費につきまして財政構造改革会議でこれから議論をされていくところでございますので……
  174. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国立大学をどうするかということを聞いているんじゃないか。
  175. 林正和

    政府委員(林正和君) 文教予算についても、そういう議論も踏まえながら、具体的にその見直しについて検討していくということになろうと思います。
  176. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 大臣、今の答弁を聞いていると、何でかくもわかりにくいことをお答えになる人がそろっているのか疑問を持たざるを得ません。そんなことを悪態ついていたって話は進みませんから、もう一つお伺いします。  この閣議決定でも、聖域を持たないで見直しをやるとあるわけですね。これまでの論議で、公共事業費も見直すということを初め、多くの問題で政府の答弁がありました。そして、中期防についても見直しを行うということでした。  そこで、私はお伺いしたいんですが、中期防の見直しというのは正面装備だけなのか、それから、この財政制度審議会の報告でも言っているように、定員も含めて見直しするのか、在日米軍経費も含めて見直しするのか、そこの範囲はどういうふうに見たらいいのか、お答え願います。
  177. 林正和

    政府委員(林正和君) 現在、構造改革会議で、すべて聖域を設けないで、あらゆる経費を対象に議論が行われているところでありまして、その一環として、御指摘の点についてもさまざまな議論が行われることになろうと思っております。
  178. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そうしますと大臣、今の答弁だと、中期防の見直しについては正面装備も、それから自衛隊の定員も、在日米軍経費も再検討対象だと、そうとっていいわけですね。
  179. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本件は、先ほど来申し上げておりますように、財政構造改革会議は三回やりましたが、四回終わりますと検討委員会、具体的な検討に入ることになります。次長が答えましたとおり、あらゆる支出について聖域を設けずと、こういうことで全体を見直すということでありますから、この言に偽りはございません。
  180. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 終わります。
  181. 山口哲夫

    山口哲夫君 最後でございますので、約三時間にわたる議論を聞いての感想をまず述べてみたいと思うんですけれども、大蔵当局は、我が国の財政赤字がずっと続いていけば将来に大変な悪影響を及ぼすということをよく知っているんだなと、それなのに今までよくこれだけ借金したもんだなという、そんな感じがいたしました。国民一人当たり、自治体の借金も含めますと四百三十四万円と、大変な負担です。  もう一つ我が国がアメリカの双子の赤字を批判した本人ですね。あれだけアメリカに対して双子の赤字を解消せいと言った日本、アメリカはそれを受けて財政再建のための法律をきちんとつくって、そして今解消のために進んでいるわけです。ところが、そういうことを主張した日本が逆にアメリカ以上の赤字を背負っている。まことに無責任だなと思うわけです。これは今日までの歴代内閣の責任でもあるし、大蔵省の責任も私は大変重いと、そう思います。とにかく将来に与える影響が大きいわけですから、きちんとしたやっぱり財政再建をやってもらわなければいけないだろうと思います。  そこで、具体的な質問ですけれども、二〇〇五年には国内総生産比で三%以下に単年度赤字をして、赤字国債から脱却すると言っております。それで、橋本総理は所信表明演説で既存の歳出に思い切ったメスを入れるとも言っております。  ところが、今年度の予算を見ますと、問題になっている公共事業も削らなければ防衛費も削らない。逆に予算がふえているわけです。これでは私は財政再建というのはもうかけ声だけに終わってしまうと思うんですが、けさの新聞に、橋本首相は十六日、きのうですね、一九九八年度予算編成から歳出削減を進めるための基本指針を固めたと。それで、この目標というのは今の財政再建ですけれども、この目標達成のために一般歳出の伸びをゼロにするという数値目標を盛り込むかどうかについては調整中だというわけですね。数値目標をゼロにするかどうか調整中では、これはもう本当に財政再建をやる腹が総理にあるのかなという感じを私は受けるわけです。  先ほどの答弁を聞いておりますと、大蔵大臣は財政再建法を今国会中に提案して、臨時国会で議論をしていただくと、大変結構だと思います。それは信じていきたいと思うんですけれども、そこで質問は、やっぱり歳出の伸びをゼロにしない限り、毎年約二兆円の歳出削減をしなければこの目標は達成できないということを政府は言っているわけですから、はっきりと来年度予算からは歳出はもう伸び率ゼロ、ゼロ以下にしなければいけないと思うんですけれども、最小限ゼロにするということだけははっきりさせていただかなければいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  182. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 山口議員から全体を見ての御提言をいただきました。私の決心は決心として、明日、財政構造改革会議第四回目がございます。重く国会の声として受けとめてまいります。
  183. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひこの財政再建の初年度をきちっとしたやっぱり財政、歳出だけはもう絶対に伸ばさない、そういう決意でやっていただきたいと思います。  それから次に、自治体財政を見るときに、この自治体が危険なのかどうなのかということをはかる一つの指数があります。それは公債負担比率というのがあります。いわゆる公債費に充当された一般財源の一般財源総額に対する割合を言うものです。これが一五%を超えますと警戒ラインと言われていまして、二〇%を超えると危険ライン。二〇%を超えますと、まず起債はほとんど許可されないということです。ちなみに、本年度のこの比率は全国平均一三・八%ですから、警戒ライン以下ということになります。それだけ自治体は財政健全化のために大変な苦労をしてきていると思うんですけれども、私なりにこの数値を国家の財政に当てはめてみたわけです。一律に当てはめることはなかなか大変難しい計算です。しかし、誤差は一、二%あるんでしょうけれども、それにしても私の計算では二九%になります。これは、自治体の財政からいえばもう明らかに危険ラインを通り越してしまって、もう破産状態だろうと思うんです。政府の一方の自治省はこういう指導をやっているんです。  ところが、肝心の大蔵省はそういうラインをとうに超えているのに平気で借金をしている。これは実におかしな話なんで、こういうことについて一体どういうふうに考えるのか、その辺を聞かせていただきたいと思います。
  184. 林正和

    政府委員(林正和君) 今、先生から地方の起債制限に関する要件を引用されましてお話がございました。それぞれ財政制度に相違があるために一概に比較はできないと存じますが、ただ、いずれにしましても国の財政状況が極めて悪いということは事実でございます。  なぜこうなったかというのは、もう既に御案内のとおりでございますが、一般的な状況に加えまして、我が国の場合にはバブル崩壊後、累次の経済対策を打ってきた、建設国債を財源に公共事業を中心とした対策を打ってきたということもまた一つの要因だろうと思います。  ただ、いずれにしましても大変な状況に立ち至っておるものですから、再三申し上げておりますように、平成九年度、財政構造改革元年度予算ということで、構造改革、各種制度改革を含む改革をし、歳出については極力抑制をしたところでございますが、いずれにしましても今の状況を見ますと、できるだけこれは早期に健全な財政体質を回復していくということが極めて重要なことでございますので、国会の御議論あるいは財政構造改革会議での御議論というものを踏まえて、全力を挙げて取り組んでいきたいということでございます。
  185. 山口哲夫

    山口哲夫君 次に、特例公債いわゆる赤字国債について大臣質問したいと思います。  この特例公債というのは、本来、財政法からいえば禁止されているものですね。建設国債は当然でしょうけれども、しかし赤字国債というのは、これは財政法で禁止されているものなんです。ところが、財政が苦しくなると禁止条項をちゃんとつくった大蔵省自体が今度は勝手に法律を変えて赤字国債も出せるようにする。これはまことにおかしな話です。今相撲の最中ですけれども、負けそうになったら自分で土俵を広げていくというようなものです。  少なくとも、日本の財政の基本法ですよ、財政法というのは。そこで禁止されているものを、赤字国債を発行しなければやっていけない、だからこの法律を改正して特例法をつくるというのは、これは法治国家としてやるべきことではないと私は思うんです。どうでしょうか。
  186. 林正和

    政府委員(林正和君) 先生指摘のように、赤字国債は、建設国債と異なりまして見合いの資産がないということで極めて不健全なもので将来世代に対してツケだけを回すということでございますので、本来発行すべきではございませんし、発行しましたならばできるだけ早くその残高を減少させていくべき性格のものだろうと思っております。
  187. 山口哲夫

    山口哲夫君 大臣、法治国家としてこういうことを法律でやるということはどう思いますか。ちょうど今、沖縄の問題でも特措法をまた改正しようとしている、これだってそうですよ。法律できちっと決めたことが都合悪くなるとそれを拡大していって自由にやれるようにしていくというのは、それだったら何もこういう基本的な法律というのは必要がなくなる。法治国家というのはそういうものでないと思うんです。  この赤字国債の禁止されているものについて、あえてこれをやっているということについては、どう思いますか。
  188. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 財政運営は、単年度で申し上げますとその年の歳出の額を抑え、ナショナルミニマムともいうんでしょうか、シビルミニマムというんでしょうか、こういうものをすべて点検をし、最小限にこれを抑えたといたしましても税収がこれに追いつかないということになりますと、その分を公債として承認をお願い申し上げる以外にないということがあります。  しからば、当然反論として税収に見合うものをきちっとおやんなさいと。実は、九年度編成はプライマリーバランスを達成したわけであります。それは国債費除きでございます。十六兆になんなんとする元利合計がございます。最小限これに相当する分を公債費として捻出をいたしませんければならぬわけでございまして、建設国債そして特例公債合わせましてこれまた十六兆、これに見合うものが計上をされておるわけでございます。法律的に、財政法に違反をするのでは、また他の法律にも違反しないかということでございますが、財政法の規定にございますとおり、国会の議決をお願い申し上げ、そこで本年お許しを賜りたい、こういうことになるわけでございます。  御説のように、そうならぬようにしていかなければなりませんこと、これからの財政運営の基本的理念でありますことは御指摘のとおりでございまして、その脱却を目指してこれから全力を尽くしていかなければならぬと、こう思っておるところであります。
  189. 山口哲夫

    山口哲夫君 しかも、問題は、その償還期限が十年間というものを六十年にするわけですね。家庭に置きかえてみますと、孫子の代まで使える住宅を建てた、だから償還期限は六十年です、これはわかりますよ、孫だってその家に入るんですからね。ところが、この赤字国債というのは、これは家庭に例えてみれば生活費の赤字でしょう。おやじの生活の赤字を孫の代まで引きずらなければならないものでしょうか。これはどう考えたっておかしいと思うんです。  さっき大臣が、孫子の代の共感を得るものでなければならない、こういう答弁をしておりました。これは、孫の立場からいえばとてもじゃない、じいさんやおやじの借金ばかり背負って生活せいといったってたまったもんじゃないです。大臣の言っていることと、今までやってきたこととは随分違うんじゃないかなと思うんですね。これはどんなことがあっても十年に戻すべきですよ、最低限十年に戻すべきだと思うんです。どうでしょうか。
  190. 林正和

    政府委員(林正和君) 特例公債は、御指摘のように、その見合いの資産がございませんので、本来できるだけ早く残高を減少させていくという性格のものだろうと思っております。  ただ、もう御案内のとおり、厳しい財政事情の中でより短期の一定年限、今十年というお話がございましたが、それで償還するルールを設定するとしますと財政事情をさらに厳しくするということから、やむを得ない選択として建設国債と同様の六十年償還ルールというものによってきたところでございます。  今後も、直ちにこの六十年償還ルールにかわるべき新たなルールを設定するということは困難でございますけれども、特例公債の発行を授権する法案に盛り込まれた減債規定の趣旨、これらを踏まえまして、特例公債の残高を速やかに減少させていくよう、できる限り早期の償還に努めていく必要があると思っております。
  191. 山口哲夫

    山口哲夫君 大臣、いかがでしょうか。大臣在任中に六十年を少しでも、五十年にでも四十年にでもするくらいの御決意はございませんですか。
  192. 三塚博

    国務大臣三塚博君) まさに財政法に規定しておる条項とはいいながら、国会議決をもって御承認を賜る本年度予算編成の根幹にかかわった問題でございますから、御批判はしかと受けとめさせていただきます。  来年度予算編成の際、国会論議を十二分に踏まえながら、後世に借金を残さないという特例公債の性格からいいましても真剣に検討を進めてみたいと思います。
  193. 山口哲夫

    山口哲夫君 期待しておりますので、ぜひ検討していただきたいと思います。  質問通告していませんけれども、最後に一つだけ。  官房長官が、公務員の賃金について、人事院勧告があってもそれを実施しないということもあり得るということを言いました。しかし、人事院勧告というのは、公務員の労働基本権を剥奪した代償としてつくられたものですから、当然これは人事院勧告が出た以上はやらざるを得ない。もちろん財政は苦しいでしょうけれども、しかし公務員の賃金、生活にかかわる問題ですから、給与関係閣僚会議の強力なメンバーの一員として、これは官房長官の言葉については私は到底納得しかねますので、大臣としてぜひそういうことのないようにやっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  194. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 人事院制度は、私もよく存じ上げております。  梶山長官の発言は、予算委員会で同様趣旨質問がございまして、記者会見の際、恒例による記者から見解を求められたことに対しコメントを申し上げたと。財政再建、聖域なき検討見直しを加えて縮減をしていくということに対し、正確に言いますと公務員の人件費についても対象になり得るものだという趣旨を述べたと、こう言われておるところであります。  私からは、ただいまその段階にさせていただきますが、人事院制度は代償措置としてとっておりますこと、しかと知っておるものであります。
  195. 山口哲夫

    山口哲夫君 終わります。
  196. 松浦孝治

    委員長松浦孝治君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会