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1997-06-10 第140回国会 参議院 商工委員会 第17号 公式Web版

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  1. 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法 (会議録情報)

    平成九年六月十日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木宮 和彦君     理 事                 沓掛 哲男君                 吉村剛太郎君                 片上 公人君                 前川 忠夫君     委 員                 大木  浩君                 倉田 寛之君                 斎藤 文夫君                 中曽根弘文君                 林  芳正君                 平田 耕一君                 加藤 修一君                 木庭健太郎君                 平田 健二君                 梶原 敬義君                 竹村 泰子君                 藁科 滿治君                 山下 芳生君    国務大臣        通商産業大臣   佐藤 信二君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 梶山 静六君    政府委員        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        公正取引委員会        事務総局経済取  塩田 薫範君        引局長        法務大臣官房審        議官       柳田 幸三君        大蔵大臣官房審        議官       尾原 榮夫君        通商産業大臣官        房審議官     藤島 安之君        通商産業省産業        政策局長     渡辺  修君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        中小企業庁長官  石黒 正大君        労働省労政局長  松原 亘子君    事務局側        常任委員会専門        員        里田 武臣君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       山本  晃君        大蔵大臣官房審        議官       中井  省君        大蔵省主税局税        制第一課長    伏見 泰治君        大蔵省証券局証        券市場課長    柏木 茂雄君        労働大臣官房審        議官       日比  徹君        労働省労政局労        政課長      村木 太郎君        労働省労働基準        局監督課長    青木  豊君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○電気事業法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     —————————————
  2. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 平田でございます。よろしくお願いいたします。  法案の九条改正メーンでございますから、九条から御質問申し上げたいというふうに思います。  事業支配力過度集中することとなる持ち株会社禁止するということでございまして、その事業支配力過度集中することの定義は五項に書いてあるわけであります。五項の中に、「持株会社及び子会社その他持株会社株式所有により事業活動支配している国内会社」ということで、事業支配力過度集中ともう一つ意味が違うんでしょうけれども、事業活動支配するという言葉が出てまいりますので、そのことにつきましてちょっと御説明をいただければありがたいというふうに思います。
  4. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 今回の改正法案におきましては、持ち株会社定義を変更いたしまして、子会社株式保有額とそのある会社の総資産額の対比でその五〇%を超えるものということを第三項において規定をしようとしておりますけれども、今の先生の御質問は、三項の定義持ち株会社に当たった場合に、その持ち株会社事業支配力過度集中に当たるかどうか。当たるものが第一項あるいは第二項で禁止されるわけでありますけれども、その持ち株会社グループとして事業支配力過度集中に当たるかどうかというのを、どういう企業構成傘下にある会社の中からどういうものをとらえて判断をするのかということでございます。  第五項の案文によりますと、今先生指摘のように、「持株会社及び子会社その他持株会社株式所有により事業活動支配している国内会社」と言っておりますので、子会社には当たらないけれども、株式所有によって事業活動支配している子会社ということを、これも含めて持ち株会社グループとしてとらえて過度集中になるかどうかということを考えるといいますか、判断をするということでございます。  繰り返しになりますけれども、持ち株会社グループ国民経済影響をするという実質的な判断をする必要がありますので、ここに書いてありますように、持ち株会社子会社とそれ以外の株式所有比率が五〇%以下のものであっても、その支配下にある、支配力が及ぶというふうに考えられるものも含めて判断しようとしているわけでございます。  具体的には、株式所有比率株主の順位から見て実質的に支配しているかどうかということを判断するということを考えておりまして、その考え方についてはガイドラインの中で記載をしたいというふうに考えております。
  5. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 これは大変重要な、これがメーン改正でありますからお尋ねをしておきますが、持ち株会社は個々の会社その子会社、ここに規定された持ち株会社子会社に関する支配力というのは強大であろうと。それから、そのほかにも事業活動支配することは可能な場合があるということをお認めになっての条文であろうというふうに思います。  そのことの内容につきましてはガイドラインでと、もう早々におっしゃいましたけれども、大体どんな線で規定されるのかということは、概略案をお持ちであればお聞かせをいただきたいと思うし、それからこの項で、持ち株会社子会社関係以外に事業活動過度集中国民経済に大きく影響を及ぼすような場合にもその他の形態支配規定しなきゃならぬということにつきましては、かなり独占禁止法全体に影響があるんじゃないかなというふうに思っておるんですが、そのことについての大まかな考えをお聞かせいただきたいというふうに思います、重なるかもしれませんけれども。
  6. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 子会社以外で、つまり五〇%以下の株式所有比率状態にあるもので株式所有により事業活動支配している国内会社というのは、具体的にどういうふうに解釈するといいますか、考えているのかということでございます。  これは先ほど申し上げましたように、持ち株比率はどの程度かということと他の株主持ち株比率がどうなっているかということで、ある程度具体的な当てはめ方をすることが必要だと思いますけれども、例えば、私ども現在その株式所有比率が二五%を超えておって、なおかつ筆頭株主であるという会社はこれに該当するというふうに考えております。  それから、二番目の御質問で、この第五項で、今申し上げた子会社ではないけれども株式所有により事業活動支配している会社も含めて事業支配力過度集中になるかどうかを判断するという規定を今回九条においてするというと、それがほかの規定との関連で何か影響が出てくるかどうかという御質問だと思うんですが、私、必ずしも先生の御質問趣旨、よく理解しているかちょっと自信がないんですけれども、株式所有によって結合関係が生ずると。それによって、例えば十条におきましては、特定市場における競争を実質的に制限することとなる。これは九条の方の事業支配力過度集中、それとはまた別なあれで、特定市場における競争制限になるような株式所有規制をする、禁止をするという規定でございますけれども、こちらも株式所有による結合関係が生ずるかどうかということの判断でございますので、この九条の五項のあれとすぐ同じあれにはならない、なるとは考えておりません。  ただ、いずれにしましても、株式所有関係事業支配力があるかどうかということ、あるいはその結合関係があるかどうかということを判断して九条なり十条なり、そういったことを考えたいというふうに思っております。  株式所有関係では、たしか十条以外に十四条、これは会社以外のものでございますけれども、そういった規定もございます。
  7. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 それはお聞きをしておきまして、三項の規定の中で、総資産に占める割合で子会社の総資産に占める持ち株会社が五〇%以上ということが一つの条件になっておるわけですけれども、これは、それで割り切るためにはこういう書き方がいいと思うんですけれども、この五項のその他五〇%を切っても支配する可能性があるということの規定がもっと私はいろんな形で表面に出てきた方がいいんじゃないか、今でなくてもですね、いいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、それは五〇をちょっと超えたという段階であれば、簡単にその総資産の分母を借り入れによって変えることはできるわけですね。ですから、これは例えば四八とか四五とか、五〇近辺になってきたときには、全くこの五〇という条文というのは簡単に、事業者からすれば一瞬にしてクリアできることでございますが、その辺のお考え、見通しというのはいかがでございましょうか。
  8. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) なかなかお答えするのが難しい御質問だという感じがいたしますけれども、今回の改正法案の第三項におきまして、先生指摘のように、持ち株会社定義を現在の規定とは少し変更しております。  現行規定ですと、持ち株会社定義が、「株式所有することにより、国内会社事業活動支配することを主たる事業とする会社」ということでございますので、「主たる事業」と、そういう概念をどのように解釈するか。若干解釈に幅があるような規定ぶりになっておりますけれども、今回お願いしております改正法案ではここを、ある会社の総資産の中で子会社株式がどのぐらいあるか、五〇%を超えるかどうかということで持ち株会社であるかどうかを判断する。したがって、五〇%以下になれば持ち株会社には該当しないという案になっているわけでございます。  先生指摘のように、例えば総資産の中に占める子会社株式保有総額が五〇%をちょっと超えた、したがってこれは持ち株会社という定義に該当するということで九条の適用になる。それが、ぐあいが悪いと言うと語弊があるかもしれませんけれども、持ち株会社でない形にするために例えば借り入れをふやすなりなんなりでほかの資産子会社株式以外の資産をふやすということで五〇%以下に簡単にといいますか、容易にすることができるんではないか。その場合はどうするんだ、そこに問題はないのかという御質問だろうと思うのです。  確かにそういう操作といいますか、をいたしますと、持ち株会社であったものが定義持ち株会社でないということになるわけであります。したがって九条の適用がない。九条の適用がなくなるということは、九条によって規制すべき過度集中という問題はその会社には規制がかからないということになるわけですけれども、大規模会社といいますか、五〇%超で持ち株会社であってはぐあいが悪いといいますか、九条の規制があって規制されそうだということであるとすれば、単に持ち株会社であるかどうかという判断ではなくて、そのくらい大きな会社であるとすれば、常にそうなると言うつもりはありませんけれども、かなり大規模企業ではないか。  そうであるとすれば、九条の二の規定で大規模会社定義がございますけれども、そちらに該当する蓋然性が高いのではないかなという感じがいたします。いずれにしましても、先生指摘のように、九条の適用は五〇%というところで画然と区分するということにしておりますので、そういうことはあり得るというふうに思います。  ただ、今回、第三項におきまして持ち株会社定義をこのように五〇%超ということでお願いしようとしておりますのは、今回の改正法案一定規模以上、現在のところ総資産三千億円以上を考えておりますけれども、定期的な事業内容の報告を義務づけるということ。それから、大規模会社に対する株式保有総額制限という九条の二の規定持ち株会社には適用しないという案にいたしておりますので、ある会社持ち株会社に該当するかどうかはできるだけその当事会社自身が容易に判断できるようにしておくのが望ましいということでこのような定義を提案しているところでございます。
  9. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 今の質問については、九条の五項の持ち株会社及び先ほど申し上げた持ち株会社認定をされなかった会社ということも、その両方というのを実情によって、例えば期末直前両方持ち株会社じゃないような借り入れをして両方持ち株会社じゃないという認定をされた場合でも、国民生活影響を及ぼすような状態については自主性を持って判断する、こういう答弁を御期待申し上げたわけであります。  先ほどのお答えの中で、九条の二項ですかそれとも九条の二を言われたのですかどっちですか。
  10. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 九条の二の大規模事業会社の方に五〇%以下になれば適用関係がいくと。
  11. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 九条の二ということですね。
  12. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) はい。
  13. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 そうしますと、ついでに九条の二をちょっと御質問しますけれども、九条の二は前から意見が出ておって百億を三百五十億、三百億を千四百億に変えたと、こういうことでございますけれども、これはこれで現在の状況に合わすということで妥当であろうというふうに思うんですけれども、この九条の二はこれ以上会社はもう持ってはいけないよということですね、一定の歯どめですね。  しかし、これはこの九条の持ち株会社原則解禁過度集中しない場合に解禁をすることにおいて、この九条の二というのは、これはそれこそいとも簡単にクリアできるということになってくるわけですね、ほかの持ち株会社に移せばいいわけですから。  九条の二の意味も問おうと思っておりましたけれども、先ほどの御答弁でこの九条の補完もそういう形で九条の二ができるよということになりますと、いやおかしいな、九条というのは持ち株会社をつくりなさい、つくっていいですよという話になって、九条の二もそういう形でクリアしやすくなる法律であって、その補完が九条の二であるというのは、非常に話が難しくなるなと思いますが、わかっていただけますでしょうか、御答弁をお願いします。
  14. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 御質問趣旨を取り違えたら御指摘をいただきたいと思います。  二点ありまして、二番目の方から申し上げますと、第九条も第九条の二も規制趣旨といいますか、この規定目的といいますか、それは第一条の目的規定の中に書いてあります事業支配力過度集中を防止するということに源を発するものでございます。ただ、今回御提案しております案文におきましては、九条の二は持ち株会社以外の会社について先生おっしゃったように資本金あるいは純資産一定規模以上のものを対象として、そういった会社について資本金なり純資産額のいずれか大きい金額を超えてその株式を持ってはならないという規制の方式をとっているところでございます。  それから、九条の方は持ち株会社という定義規定に該当するものについて、九条第五項に規定しております過度集中ということの定義に該当するものは禁止をするということで、規制の仕方は異なりますけれども、過度集中の防止というところにそのことを目的といいますか、趣旨としているところでございます。  ただ、先生おっしゃるように、九条の二の規定を免れるといいますか、持ち株会社でない事業会社株式保有額資本金なり純資産額という天井に近づいちゃった、そういった場合に、自分が持っているのではなくて、関係会社に移しちゃうという操作も可能ではないかという御質問だろうと思うんです。その点は確かに今回若干修正をお願いしておりますけれども、この修正前の条文現行条文におきましても、大規模事業会社そのものについてその規制をする、大規模会社だけが持っている株式だけを対象として上限範囲内におさめてもらおうと、こういう規定でございますので、そういった危惧といいますかそれはあることはおっしゃるとおりだと思います。  それから、第一番目の御質問、これはまたあるいは御質問趣旨を取り違えているかもしれませんけれども、持ち株会社定義に該当した、例えば五〇%ちょっと超えちゃった、それはくあいが悪いと、九条で問題にされるかもしらぬということで、例えば何らかの操作子会社株式のあれが五〇%以下になるように操作をした。そうなるとこの規定から考えますと、持ち株会社ではないということで、先ほど申し上げましたように第九条の規定適用がないということになりますけれども、こういう事例があり得るのかどうかわかりません。  独占禁止法の第十七条に脱法行為禁止という規定がございます。第十七条でございますけれども、「何らの名義を以てするかを問わず、第九条から前条までの規定による禁止又は制限を免れる行為をしてはならない。」という規定がございますので八本当に極めて例外的な場合には、この規定適用ということもあり得るということはあろうかと思いますが、一般的にこの十七条がありますから大丈夫ですというあれではなくて、通常の事業活動の一環として株式を移すということだってあり得るわけですから、五〇%を超えたのを下げたものは全部十七条でという話にはならないと思いますが、場合によってはそういうこともあり得るということだけお答えをさせていただきます。
  15. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 大体法案の気分というのはよくわかりますし、方向性もわかるわけですが、冒頭に申されましたように、これからそういったところの支配についてのことももう少し詳しくガイドラインで定めていくということであります。    〔委員長退席理事沓掛哲男君着席〕  私が思いますのは、ある一定以上の会社というのは、過去にいろんな経済事件、現在も野村証券とか第一勧銀、そしてその関係会社大和信用ですか、そういういろんな経済事件がありますけれども、ほとんど強いかかわりがある、あるいは支配をしておるという会社も、実際調べてみますと、ほとんど株式所有が五〇を超えておるとか、明確にこの持ち株会社に当てはまりますよという会社は少ないと思うんですね。大きくなればなるほど五〇は抑えなくても、もう二五を抑えておれば十分支配権が及ぶということがあります。  したがいまして、様子を見ながら、できたら持ち株会社という定義自体も、じゃ実際に支配権があるけれども、その支配権を行使しておるかどうか、あるいは行使していない場合でも役員を派遣しているかどうかとか、じゃそれが過半数を占めているか占めていないかとか、資金はどうなんだとか、いろんな形で分類をしていかないとどうも明確にならないような気がしておりまして、それは整理されるおつもりだろうというふうに思いますが、今後のことを御期待したいというふうに思っています。  それで、次の質問に行きますけれども、ここでは持ち株会社子会社とかということが出てくるわけでありまして、現実に今のままでも事業持ち株会社というのがあって、実質的に私の質問状態のことはあるかと思うんですけれども、これから一つ新しいことが出てくるというのは、事業の度合いが非常に少ない持ち株会社がこれから株式公開をしてくるという状況があるだろうというふうに思うんです。そのことはお認めになることだというふうに思いますけれども、そのことについてお尋ねをしたい。  それから、そうした場合に、これは既にあることなんですけれども、例えばNTT存続公開に対する、一般株主が持っておる会社存続会社持ち株会社である、それで公開をしておると。したがって、その子会社がこれから存在するわけです。一〇〇%子会社が二つ存在するのか特殊会社一つという形で子会社が存在する。そしてまた、あれだけの規模になれば孫会社がまた株式公開していくとか、いろんな形で関連会社株式公開というのは、今までもありますけれども、さらにその頂点に君臨する、あるいは崖下にあるような持ち株会社株式公開というのも出てくると思うんですけれども、これまでは株式公開については、かなりそういった事業をしていない持ち株会社については整理をした上での株式公開を指導しておられた時期が長いし、それは妥当なことだろうというふうに思います。  そういう経緯がありますが、その辺について、株式公開に対してまず基準、どんなふうに持ち株会社のことをお考えなのか、お聞かせいただければありがたいと思いますけれども、大蔵お願いいたします。
  16. 説明員(柏木茂雄君)(柏木茂雄)

    説明員柏木茂雄君) お答え申し上げます。  先生今御指摘のとおり、今般の独禁法改正が成立いたしますと、純粋持ち株会社の設立というものが解禁されることになるわけでございますけれども、それに伴いましてこれから純粋持ち株会社あるいはその持ち株会社子会社株式公開というか新規上場、そういうことが出てくることが予想されるわけでございます。  株式会社上場審査証券取引所において行われているわけでございますけれども、今後証券取引所においては、これら純粋持ち株会社あるいはその子会社企業形態特性等を考慮して、上場審査基準につきましては所要の検討を進めると。いずれにせよ、投資家保護が損なわれることのないように万全を期していくことになるというふうに私ども思っております。  この際、上場審査基準検討を進めるに当たりましては、先生が今御指摘なさいましたとおり、持ち株会社というのがその子会社事業活動支配を通じて配当収入を得るということを主たる収入基盤としている、そういう特殊性があるわけでございますから、それに応じまして、例えば持ち株会社上場につきましては、持ち株会社だけではなく、グループを構成する企業全体の経営状況を一層重視した審査を行う必要があるんではないかというふうに思っております。  また、子会社上場につきましては、現在、親会社からの経営独立性確保する観点から、一定上場要件を設けているわけでございますけれども、これらにつきまして見直す必要がないか、そういう点について今後考慮していく必要があるんではないかと思っております。  持ち株会社につきましては、そういう観点から、連結ベースでのディスクロージャーというのが重要だということも言うまでもないというふうに思っております。
  17. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 一言で考慮していくというお答えをいただいたんですが、非常に大きなことをこれから考慮していくということでこの法案が出てぎているので、多少不安に思っております。  例えば、NTT親会社持ち株会社となるべく想定をされている会社株式公開をしておるということですね。一般の方が株式を持っておる会社持ち株会社となる、そしてそこは基本的な開発機能だけは残すということですね。そうすると、子会社開発費用というのは大変なことなんですけれども、それを集中してやるということは開発費用持ち株会社が負担するわけですね。そうしますと、配当収入の分だけ開発研究投資すれば利益はゼロ、株の価格はそれによって移動するということであります。  ここで考慮していくとおっしゃいましたけれども、どんな方向で考慮をされていくのか。今の日本のいろんな市場、金融市場というものは開放に向かっていますけれども、逆にいろんな問題も提起をされてきておるので、もう少し大きな考慮の内訳の方向性は具体的にお示しいただかないといけないなというふうに思っておりますが、追加の御答弁をお願いしたいというふうに思うんです。
  18. 説明員(柏木茂雄君)(柏木茂雄)

    説明員柏木茂雄君) 先ほどもお答え申し上げましたけれども、持ち株会社上場につきましては、その事業特殊性ということを十分考慮しなければならないという御答弁を申し上げたところでございますけれども、今までの会社形態とは随分異なるということでございますので、持ち株会社だけではなくグループを構成する企業、そういうもの全体を重視した審査を行っていく必要があるのではなかろうかと思っております。  その関連で申しますと、持ち株会社につきましては、連結ベースということで見ていく、あるいはディスクロージャーをしていくということが重要になってくるということではなかろうかと思っております。これにつきましては、先日、六月六日でございますけれども、企業会計審議会総会というところにおきまして、連結財務諸表制度につきまして、従来個別の情報を中心にやっておったわけでございますけれども、そういうディスクロージャーから今度は連結情報を中心としたディスクロージャーに転換していくというような意見書が取りまとめられたところでございますので、私どもとしてもこういう審議会意見を踏まえてディスクロージャーを充実し、それを踏まえた上場審査というのが必要になってくるのではなかろうかと、かように思っております。
  19. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 連結ベースでとらえるというのは大事なことだというふうに思いますし、それはぜひお願いしたいと思うんですけれども、多分にその一つの連結グループの中で親子関係、兄弟関係はいずれにいたしましても、複数会社株式公開しているという状況は現在の事業持ち株会社でもあるわけですね。そういう状況はたくさんあるわけです。そこへ持ち株会社ということが入って、なおかつそのために連結ベースが重要だということになってくるわけですけれども、明確にこれは連結ベースで見なきゃならないグループだとした場合に、その親子、兄弟関係の中で幾つか株式公開をしておった場合には、そのグループの利益責任というか、株主に対する責任、逆に株主が利益を受ける権利というのはどの会社が優先をするかとか、そんなことはどのようにお考えでございますか。
  20. 説明員(柏木茂雄君)(柏木茂雄)

    説明員柏木茂雄君) 具体的にどうと言うのはかなり難しいかと思いますけれども、そういう企業形態というのがはっきりあらわれるように審査をしていくということで、いずれにしましても、投資家保護ということが十分図られるような形でのディスクロージャー、それに基づいた審査というのが必要ではなかろうかと思っております。
  21. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 それでは、簡単に言って親会社子会社と二社あったと。親会社株式公開した、子会社株式公開したという場合はこれから存在しますか。親会社持ち株会社であった場合に、その子会社株式公開するということはあり得ますか、どうですか。  その他の要件が株式公開基準を満たした場合、持ち株会社とその子会社があった場合、二つの関係があった場合に、持ち株会社株式公開をする、NTTのように。そして、その子会社がまた何らかの部分で株式公開するということはあり得ますか。
  22. 説明員(柏木茂雄君)(柏木茂雄)

    説明員柏木茂雄君) それはあり得ると思います。それにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、持ち株会社については子会社を含めた連結で見ていくということが重要ではなかろうかと思っております。
  23. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 そこまでにしておきたいと思いますけれども、そうした場合には、ではどちらの株主を保護するのかということで、利益折半みたいな話になって、私は最前から申し上げておりますように、やっぱり持ち株会社というものであれば、もう少しそれは実質的に事業をどの程度支配しておるのかという分類を幾つかしていく必要があるんじゃないかなというふうに思っておりますので、ぜひともひとつ御勘案をいただければありがたいというふうに思います。  それから、概して申し上げますと、先ほど十七条のことを局長おっしゃいましたが、なかなか十七条の適用までいくには公取の皆さんの相当の勇気と決断が要るだろうというふうに思います。  それから、今分社化だとか持ち株会社で戦略的にやるために分けるんだとかと言っておりますけれども、実際に国際競争力を高めたり、リストラをするためには、合併とか企業集中というのは一方では相当に行われておるわけですね。その場合にいろんな打診があると思います。これちょっと委員長に総論でお尋ねを申し上げたいんです。  いろんな御相談があるというふうに思います。その場合になかなか明確にその合併なり営業譲渡というのは、これからその市場のお客さん、国民に影響を与えるからノーだと言うことができる状態というのはなかなか難しいんじゃないか。かなりその業界のインサイダーにならないと判断できないことでありまして、多分難しいことだなと思います。私は、最前の状況からしてこの持ち株会社解禁になる、そしていろんな形で金融の規制緩和になる、自由市場になっていくということの中で、まだ日本の市場というのは随分閉鎖的な部分があるし、あるいは株式の持ち合いだとか、あるいは総会日の一斉開催だとか事業者側も随分改めなきゃいかぬ点がある。こうした法律が先行していって、いろんな整備が後からついてくるという状態も歴史の過程で仕方がないのかなというふうに思いますけれども、そんな中で個々の業態とか業種についていろんな形の相談というものがあったり、あるいは企画、計画を持ってこられた場合に、私は、これが正しいという中立的な判断をされるというのはなかなかできないかもしれませんけれども、できるだけ弱者という観点を重視してやっていただくのが正しいんじゃないか。  それで、これはなかなかこの合併をノーと言うのは難しい。難しいけれども、しかし弱者がこういう点を申し立てておるということについては、そのことを勘案してノーと言う勇気も持ってもらいたいなというふうに思います。これからそういう場面がたくさんあるんじゃないかなというように思いますが、そういったかじ取りとか御決意について委員長のお考えをお聞かせいただいて質問を終わりたいというふうに思います。
  24. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) この持ち株会社解禁のみならず公正取引委員会の事務運営全般についてお尋ねだというふうに理解しておりますが、私も一年間弁護士をしておりまして、そのときの印象でありますけれども、やはり民と官との壁といいますか、アクセスというのが非常に高いということを民間に行ってつくづく思ったわけでございますけれども、そういう私の個人的な経験にも照らしまして、やはり公正取引委員会としては門戸を大きく開いておく、あるいはそういう壁を低くしておくということがまず大事だろうと思っております。  そういうことで、これは私に限ったことではありませんが、職員全体がやはり御相談については親切に対応して、その人の立場に立って回答するということをまず第一に心がけているところでございますけれども、ただ、公正取引委員会という中立機関でございますので、余り片方に偏って物を申すわけにはいきません。そういうことで、今先生がおっしゃった世界情勢とか日本の経済の情勢等を十分に把握いたしまして、その上で親切に対応する。  そして、その対応の状況についてはこれはいろいろ御意見がありますように、例えば合併のときの事前審査につきましても、これは事務の方からの意見もございましたけれども、いろいろ問題点を公開して新聞等に発表する。これは企業の方のお立場もございますけれども、企業の方の御了解を得て、なるべく詳細に発表して御参考にしていただく、こういうふうな方針でやっていきたいと思います。  なかなかこういう合併とかそういう問題になると、おっしゃるようにノーと言いにくい点がございますけれども、それはいつも独占禁止法の第一条の規定を頭に置きまして、その規定に反するかどうかということを原点にしまして、そこで応用問題ということで考えていきたい、こういうふうに考えておりますので、この委員会でもいろいろ御叱責、御叱正を賜ればありがたいと思っております。
  25. 平田耕一君(平田耕一)

    平田耕一君 終わります。ありがとうございました。
  26. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 平田先生から大変に専門的な御質問があったところでありますが、私からも引き続き、特に持ち株会社解禁となるわけでございますが、なった後で本当に使いでがあるものにしていかなければならないと思っておりまして、そういう観点から法務省、また大蔵省主税局、公取にそれぞれ御質問をしてまいりたいと思います。  それでは、まず法務省にお聞きしたいと思うんですが、これが解禁になりましてから、例えば日本だけではなくてほかの国、世界各地に多くの支店を持っております銀行や商社等が、いわゆる抜け殻方式と言われておりますけれども、この方式で持ち株会社になろうとした場合、例えば海外現地法人化していればいいんですが、海外支店の場合、有しております債権債務関係子会社に譲渡されなきゃいけないことになるわけでございます。この場合、各国の法制度に対応した債権譲渡手続を踏まなきゃいかぬということで大変な手間がかかるということでございます。  米国ではこうした問題に対応するために株式交換方式というものを認めておりまして、持ち株会社がスムーズに設立できるように、いわゆる持ち株会社子会社となる会社の既存株主株式が、すべて持ち株会社株式に強制的に交換されることを可能とする規定が整備をされておるわけでございまして、この規定では、株式交換に当たって株主総会での承認決議が必要となっておりますから、株主の権利の保護も同時に図ることができるような配慮もされておるということでございます。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕  我が国の商法ではこのような規定がないわけでありますから、現在、持ち株会社を設立する場合は事実上この株式交換ができないということであります。抜け殻方式を利用するしかないということでありまして、先ほど申し上げましたいろんなリーガルコストがかかってくるということであります。  ここでせっかく独占禁止法改正が通るわけでございますけれども、余り意味がないんではないかという指摘もあるわけでございますが、この辺につきましての法務省の御見解をいただきたいと思います。
  27. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) お答え申し上げます。  御指摘株式の交換制度は、自己の意思によりましてある会社に出資をいたしまして株主となった者を、強制的に業種、業態、会社規模事業等が異なる全く別の会社株主とするという制度でございまして、株主の地位に重大な変容を生じさせるものであると考えられるところでございます。  ただいま御紹介ございましたけれども、アメリカにある制度でございますが、我が国にとりましてはこの制度、全く新しい制度ということでございまして、こういった新しい制度に対しましてすべての株式会社が幅広く具体的なニーズを有しているのかどうかの点、あるいは特定の業種の会社にだけこういったニーズがあるのか、あるいは会社をめぐる利害関係者の利益を損ねるおそれがないのかといった点、あるいは既存の会社制度との整合性がどのようになるのかといった幾つかの問題点がございますので、慎重な検討を要する問題であると考えているところでございます。
  28. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 今、慎重な検討ということでありますが、この持ち株会社解禁はもうずっと審議というか検討してまいったわけでございまして、こういう問題が発生するということはあらかじめわかっていたことでございますから、もう少し早目にこの解禁に合わせてやっておいてもらいたかったというふうに思います。  それで、今、地位に重大な変容を生じさせるという御説明があったわけでございますが、これは抜け殻でやっても、結局、株主が保有する株式の発行会社の法人格自体変わらないわけでございますが、事業内容は全く変わるわけでございます、持ち株会社になるわけですから。この辺については株式交換を認めるということと余り変わらないのではないか、こういうふうに思います。そうであるがゆえに、抜け殻方式で子会社に営業の重要部分を譲渡する際には定款変更や会社の解散と同様、株主総会における特別決議が必要というふうになっておるわけでございますから、株式交換の方も、先ほどちょっと申し上げましたが、例えば株主総会の特別決議を経るということであれば株主権利の保護というのは尽くせるんではないかということでありますから、この法形式上の論理的整合性だけを慎重に追求する余り経済の実態とだんだん乖離していくのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  29. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) お答えを申し上げます。  ただいま申しましたように、これは我が国のこれまでの制度にない全く新しい問題でございますので、御指摘の点も踏まえまして、我が国でどういったニーズがあるのかというようなこととか、あるいは今御指摘ございましたように、利害関係人の保護ということで特別決議を要するとか、いろんな制度の仕組みの問題もございますと思いますけれども、そういった点についてなお勉強させていただきたいということでございます。
  30. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 ニーズにつきましては、もうたくさんの業界から私のところには早くやってくれということが参っておりますということを最後に申させていただきまして、時間も限られておりますから、その件につきましてはそれぐらいにしておきたいと思います。  次に、親会社子会社関係につきまして、今までの衆議院での審議等見ておりますと、法務省の御答弁としては、今の一般事業会社とその子会社、今認められておる体系の中での関係と同じ関係であるので、純粋持ち株にしたからといって新しい問題が生じるわけではないという答弁がよく見受けられるわけでございます。  確かに、これまでの事業持ち株会社形態のもとであれば、その少数株主事業持ち株会社の会計帳簿を見ておれば、この子会社というのは、親会社事業をやっておりますから従属する子会社の帳簿等までは見なくてもそれほど大きな支障がないのではないかという指摘もあるわけでございます。しかしながら、今度純粋持ち株になりますと、親会社だけを見てもなかなか難しい。株主が単に持ち株会社の会計帳簿、書類を閲覧したところでなかなか本当に意味のある情報を入手することが難しくなるのではないかという気がいたしておるわけでございます。  このように、持ち株会社解禁に伴って商法で持ち株会社の方の少数株主というものの権利保護規定が今のままでは不十分ではないか、コーポレートガバナンスということをよく最近言うわけでございますが、これがなかなか実行できないのではないかというふうに思うわけですが、この点に関しての法務省の見解をお伺いしたいと思います。
  31. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) お答え申し上げます。  持ち株会社は商法上はいわゆる親会社というものに相当するわけでございまして、ただいまも御紹介ございましたように、我が国の企業社会におきましては一〇〇%子会社あるいは親子会社というのはかなり一般的な存在になっておりまして、この親子会社の存在によって商法上特段の弊害は生じていないというふうに認識しているところでございます。  持ち株会社解禁されましても当然に商法の手当てが必要になるというふうには考えていないわけでございますけれども、持ち株会社解禁に伴いまして、今後持ち株会社の存在が株主、債権者に実際にどのような影響を与えるのか持ち株会社の運営が今後どのようなものになるのか、あるいは株主の権利が害されるという事態が生ずるのかどうかといった問題につきましては、重大な関心を払いながら必要に応じて適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。  御指摘持ち株会社の少数株主による会計帳簿の閲覧の問題につきましては、親会社子会社とは法人格が異なるということでございまして、親会社株主の権利が当然に子会社に及ぶというふうにするということにつきましては慎重な検討を要する問題であるというふうに考えているところでございます。
  32. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 慎重に検討するということでございますが、事業をやっている親会社、例えばトヨタなんかのあれを見る場合と、純粋持ち株になって実際事業をやってない会社と全く違った内容になるんではないかな、こういうふうに思うわけでございまして、慎重に検討という御答弁でありましたけれども、来年の四月から七月の間ということでありますから、実際にはそこからもう始まってしまうわけでありまして、それまでにある程度の対応をしていただかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  特に、持ち株会社子会社を通じて特定事業を行うということであれば、例えば子会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書、このような一式を親会社の営業報告書に添付してもらう必要があるんではないか、こう思いますが、その点についていかがか。  そして、もしそういうふうにお考えであれば、やはり条文上にこういうことを明記していただくことが適当と思われますが、その辺について御見解があればお伺いしたいと思います。
  33. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) 商法計算書類規則におきまして、持ち株会社はその営業報告書におきまして、親会社との関係、重要な子会社状況その他の重要な企業結合の状況、その経過及び成果を含むわけでございますが、それから子会社に対する債権の明細、子会社との間の取引の明細、各子会社に対する債権債務の増減等の情報を開示しなければならないということになっております。それから、持ち株会社はみずから特定事業をすることがないわけでございまして、子会社を通じて特定事業を行うということになるわけでございますので、当該特定事業についての会計情報が企業結合等に関する情報の内容をなすというふうに解されるところでございます。  したがいまして、子会社が作成いたします計算書類、これは商法二百八十一条に規定があるわけでございますが、この計算書類の重要な内容持ち株会社の営業報告書に記載すべきものになるというふうに考えているところでございます。
  34. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 時間もありませんけれども、最後におっしゃいました今の重要な内容というところが、そこがどういうことになるのかということをぜひこれが始まる前に決めておいていただきたい、強く要望いたしておきたいと思います。  それから、次に参りますが、持ち株会社にかかわる商法上の問題というのは、今申し上げました少数株主の権利保護という問題に限らず、もう一つは、純粋持ち株会社の方の取締役と株主総会の権限配分、分配のあり方が出てくる、こういうふうに思っております。  例えば、純粋持ち株会社の定款に事業目的というのを書くわけでありますが、ここに、あらゆる種類の会社株式所有してその会社支配するということ、こういう書き方が可能であるかどうかということでありまして、もしこういうことが可能になりますと、純粋持ち株会社子会社化する会社事業内容の種類については株主総会を通らなくて取締役会で決められる、こういうことになるわけでございますから株主総会からは余り有意義なチェックは行われない、こういうふうになるんではないかと思います。  また、持ち株会社子会社事業運営に対する株主総会による直接的な関与を義務づけるような規定がそういった意味で商法上設けられていなければ、株主総会の権限というのは、純粋持ち株会社の取締役を通ずるコントロールのみに限られているということでありますから、余り実効性のあるコントロールが、今の株主総会にあるのかどうかという議論は別にしまして、この新しい制度のもとで、余り実効性のあるコントロールができなくなるのではないかと思われますが、この点についての御見解をいただきたいと思います。
  35. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、持ち株会社は商法上は親会社に相当するということになるわけでございまして、一般親会社が発起人といたしまして子会社を設立する場合には、その設立行為会社目的の範囲内でなければならないということになっております。したがいまして、子会社が行います新規事業親会社の定款の目的の範囲内の行為でなければならないという制約がありますので、この目的の範囲に含まれていない場合には株主総会の定款変更決議が必要になるというふうに解されているところでございます。  このような考え方によりますと、親会社目的の範囲に含まれない事業を営む子会社の設立につきましては、親会社の定款の変更の決議が必要になりますので、この決議におきまして親会社株主の意思が反映されるということになると考えられるところでございます。  また、御指摘持ち株会社株主の意思を子会社事業運営に反映させる手段の問題につきましては、現行法上は次のような手当てがなされております。  まず、持ち株会社解禁に伴いまして親会社事業の大部分が子会社に移されるということになる場合におきましては、その移転については、子会社に対する親会社の営業の全部もしくは重要な一部の譲渡に該当するということになりますので、親会社株主総会の特別決議が必要になるわけでございます。したがいまして、親会社株主持ち株会社への移行の際にみずからの判断でその株主になるかどうかを選択できるということでございまして、これを望まないという株主株式買い取り請求権を行使いたしまして投下資本を回収することができるということになっております。  それから、持ち株会社株主株主総会におきまして、子会社に対する支配、管理のあり方につきまして取締役に質問をし意見を述べ、持ち株会社の取締役の選任、解任をするということができるわけでございまして、これらの権限を通じまして、重要な子会社の営業のあり方、子会社の役員人事、その他の持ち株会社の権利行使につきまして自己の意思を反映させることができるということになっております。  それから、三番目といたしまして、持ち株会社株主は、持ち株会社の取締役が子会社に対する支配につきまして、法令、定款に違反する行為を行い、その結果持ち株会社に回復することができない損害を生じるおそれがあるときには、その行為の差しとめを請求することができるということでございます。持ち株会社の取締役が子会社に対する違法な支配行為によりまして子会社に損害をこうむらせた、その結果持ち株会社にも損害が生じたという場合には、代表訴訟によりまして当該取締役の責任を追及することができるということでございまして、現行法におきましても以上のような手当てがされているということでございます。
  36. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 大変詳細にわたって御答弁いただいたわけですが、最初にお聞きしました、ちょっと聞き方が悪かったのかもしれませんが、今の御答弁で触れられてはいなかったわけですが、純粋持ち株会社の定款には、私が先ほど申し上げたような書き方はできるというふうな解釈でよろしいわけですか。
  37. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) これは定款の書き方の問題でございますので、具体的にどういう記載になるかということの関係で決まるということでございますけれども、一般的にはこの定款所定の事業目的というのは具体性と明確性を備えなければならないというふうに考えられておりますので、そういった意味での具体性、明確性があるかどうかということで決せられるということになるのではないかと考えられるところでございます。
  38. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 あと一分ぐらいよろしいと思いますので、具体性、明確性という基準、具体的には、例えば私が持ち株会社をつくるときに事前に御相談に行ったりして、これでよろしいですかというのは法務省に参ればよろしいわけでございますか。
  39. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) お答え申し上げます。  これは商業登記の場面で一般的には問題になりまして、一般には地方法務局で、登記をする事業目的が適法であるかどうかということにつきましては事実上の相談を受け付けているということでございます。
  40. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 もうここから先は水かけ論になるかもしれませんが、事実上の相談のときの、例えば今我々ここでガイドラインについて多くの先生方から取り上げられておりますけれども、そういうものが今の件につきましてはほとんど議論されておらないし、ないのかなということでありまして、大変にわかりにくいことになるし、いいか悪いがよく御答弁を聞いているだけではわからないので、じゃそういう規定で持っていってだめだと言われた場合にどういうような回復措置があるのかということにも発展していくわけでございますが、今余り用意を、通告を差し上げていない問題でございますけれども、この辺につきましては来年始まる前にある程度の法的安定性の観点から担保していただきたいな、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。それでは、衆議院の方がおありになるようですから退席していただいて結構でございます。  それでは次に、主税局いらっしゃっていますか。税についてお尋ねをいたしたいと思います。  一般事業会社持ち株会社になろうというときに、先ほど触れましたけれども、資産譲渡益課税というのがありまして、圧縮記帳制度優遇措置というのがあるわけでございますが、これがないという場合になりますと、例えば工場と設備が所在する土地の資産子会社に譲渡しますと含み益が出ちゃうということでありまして、じゃ例えば子会社親会社である持ち株会社から当該土地資産を賃貸するかこんなことになるわけであります。  細かい話ですが、その賃貸料に対しては消費税がかかりますし、また設備と土地の所有者が変わってしまうということでいろんな問題が出てくるというふうに思うわけでございますが、そもそも土地の現物出資について一〇〇%圧縮記帳となっていないのは、お聞きするところによりますと、バブルのときに土地記帳を通じて租税回避するような例がたくさん見られまして、そのためにやったということでありますが、これとこの持ち株会社で単に組織変更するだけの場合に同じようなことになってしまうということについては非常に疑問があるわけですが、この点についての御見解をいただきたいと思います。
  41. 説明員(伏見泰治君)(伏見泰治)

    説明員(伏見泰治君) 御指摘のございました企業子会社を設立するために資産を現物出資した場合でございますが、原則としては含み益課税というのは行わないこととしておりますが、今御指摘がございましたように現物出資資産に土地が含まれているという場合には、現行法では含み益の二〇%相当につきまして課税の対象としているわけでございます。  この改正でございますが、平成三年の改正で、今お話がございましたが、当時の土地問題との関連もございまして改正が行われておりますが、実は子会社を設立しました後、一定の要件のもとで一〇〇%の圧縮記帳ということで認めてきたわけでございますが、一定の要件を満たさなくなるというような形で一種の租税回避を行うような企業もあったというようなことに着目したものだと思います。  ただ、理論的に申していきますと、資産の含み益というものをどう考えていくかということなのでございますが、理論的には毎期の所得の概念に実は含まれるという考え方もあり得るわけでございます。含み益というのはある日突然発生するのではなくて、長い年月にわたって発生する。したがいまして、学説の世界では毎期まさに課税してもいいんではないかというふうな一部学説もあるような世界でございます。もちろん、現実には実際そこを課税するとしましてもどう把握するかという問題がございますので現実化していないわけでございますが、税制上は、そういう点を踏まえてまいりますと、できる限り早い時点で実現した利益として課税していくという考え方もあり得るわけでございます。  ただ、いずれにしましても、今御指摘がありましたような土地などの資産を現物出資しまして子会社を設立する場合の譲渡益の課税のあり方ということにつきましては、組織形態の一種の企業の組織変更の問題、そういった問題、それから御案内のように現在、法人税につきましては、課税ベースの見直しについても幅広く今御議論を進めていただいているところでございまして、そういった観点、あるいは先ほども申し上げましたように理論上の含み益課税のあり方の問題、あるいは税負担の公平という観点も広くあろうと思います。そういった点を総合的に今後議論していく必要があるかなと思っているところでございます。
  42. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 ありがとうございます。  時価会計ということになると思うんですが、例えば土地が上がったときに所得としてやれば下がったときにまた返してくれるのかとか、いろんな問題になると思いますけれども、おっしゃられたような認識で早急に見解をまとめていただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。  それからもう一点でございますが、よく聞きますのは、特に持ち株を解禁しても、多くの先輩議員もおっしゃっておられましたけれども、連結納税というものを入れないと余り意味がない、メリットがないんだということをよく聞くわけでございまして、実はけさの党税調の勉強会でもそういうお話が出たわけであります。この点につきましていろいろ議論があるところでありますが、実はアメリカ型の損益通算でやっておるところは余りないんだという御議論もあるわけですが、例えばドイツ、イギリスのように振りかえ型で、まさにNTT型ですけれども、やっておるところもある。課税客体が一つであるということをよく聞くわけでございますが、振りかえでやればいろんな問題も解決できるんではないかな、こう思います。  その点も踏まえて、私は連結納税というのは早くやってもらいたいし、単に税金を逃れるということではなくて、例えば同じ一つ会社だったら払わなくていい税金を、会社経営戦略上分けたために税金をたくさん払わなきゃいけなくなるということだけは何とか手当てをしていただきたい、こう思うんですが、見解をお願いいたします。
  43. 説明員(伏見泰治君)(伏見泰治)

    説明員(伏見泰治君) いわゆる連結納税の問題でございますが、今御指摘ございましたように、世の中で連結納税といういろんな御議論が最近あるわけでございますが、実はどうもそのモデルとするようなものがいろいろさまざまに分かれているというのが現状でございます。  現行の法人課税、法人税制でございますけれども、個々の法人格、個別の法人格に着目をして個々のそれぞれの法人に課税をするという仕組みをとっているわけでございます。これは基本的には商法の法人の考え方をベースにした税制を組んでいるわけでございます。  これに対しまして、いわゆる連結納税制度でございますが、個々の法人ではなくて何らかの企業集団、その企業集団をどうとるのかというのはまさに現実にいろいろあるようでございますが、その企業集団を一つの課税単位あるいは納税者と見まして、その企業集団に対して課税をしていこうという考え方になるんだろうと思います。  したがいまして、現行の税制があくまでも個別の法人格に着目をした税体系になっておりますので、仮にそれを変更するといたしますと、地方税を含めまして我が国の法人税制についてかなり基本的な考え方の変更を生じることになるんだろうと思います。したがいまして、今後につきましては現実に企業経営の姿というものがこれから変わりつつある、あるいはさらに変わっていくという事態であるかもしれませんが、同時にいろいろな商法との関連、諸制度の考え方は一体どうなるのか、あるいはもちろん税制上固有の問題といたしまして租税回避の問題とか、これは私どもとしては当然に考えておかなきゃいけない問題だと思います。  そういった問題あるいは税収の問題、そういったいろいろな角度からの御議論をさらに積み重ねていただく必要があるのかなということで、昨年の政府税調の方でも一昨年から法人課税の見直しの一環としまして、この連結納税の問題も繰り返し御議論していただいておりますけれども、研究課題という位置づけをしていただいているわけでございます。今後とも幅広く勉強させていただきたいと思っております。
  44. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 ありがとうございました。  大変難しい問題だと思いますが、先ほど御紹介しましたアメリカ、フランス、これは通算型ですし、ドイツ、イギリスでは振りかえ型でやっておるということであります。国際競争上、我が国だけが認められないということになりますと、回避しないで逃避してしまう、要するに逃げてしまうということになってしまわないように、先ほど平田先生の御質問の御答弁柏木課長おっしゃっておられましたけれども、ディスクロージャーの方はこの間新聞で拝見いたしましたけれども、かなり連結または時価というものを取り入れてやっていこうという報告が出ておりますから、それに平仄を合わせるというよりも、早く持ち株の方に平仄を合わせていただいて、早急な対応をお願いしておきたい、こういうふうに思います。  主税の方は結構でございます。ありがとうございました。  それから、公取にお聞きいたしますけれども、今回は金融ビッグバンということも同時に進行しておるわけでございます。金融持ち株について十一条に株式保有制限を課さないということになっておりますが、先日、参考人質疑のときに舟田先生がいらっしゃって、ガイドラインの運用などによって金融持ち株会社に対する合算の五%ルールを設けるなどの措置が必要だとしているというふうな御発言があったわけでございます。これはいろいろ議論が分かれるところだと思いますけれども、このような措置が行われると、せっかくビッグバンをやって、私もいろんな方にお聞きしましたけれども、いろいろ戦略上自由にやれるようにしてくださいということになっても、結局そこで合算五%ということは今よりも強化になるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  いろんな外為の自由化もやりまして、外からもいろいろ入ってくるという中でこれでやっていけるのだろうかなというふうに思うわけでございますが、この辺につきまして公取の御見解をいただきたいと思います。
  45. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) 先日来、いろいろ御意見がありましたように、この十一条の規定を今度の持ち株会社適用するかどうかということには甲論乙駁といいますか積極、消極両論があろうかと思います。  今お願いしております法案では、これは十一条は個々の法人に適用する、こういうことで合算ルールというのを適用していないわけでございます。これはただいま委員からも御指摘ありましたように、私どもも九条の解禁ということを考えた場合に、この合算ルールを適用しますといよいよ窮屈になるわけでございまして、九条の解禁趣旨が若干損なわれることに相なるのではないかということで、現在のところ合算ということは考えておりませんし、また合算を考えるといたしました場合には例えば法律上の手当てといいますか、そういうものも必要だろうと考えております。
  46. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 時間も迫ってまいりましたから最後にもう一問お聞きしますが、今の関連で持ち株と子会社で合算をしないということになりますと、今の十一条に親子金融会社の場合の合算五%ルールというのがあるわけですが、それとの並びといいますか平仄を合わせていくということになりますと、こちらも見直していかなければならないのではないか、こう思いますが、その点についてはいかがでございますか。
  47. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) 平たく言えば、兄弟会社は合算しないのに親子金融会社は合算するというのもおかしいといえばおかしいわけでございますから、その後者の方、親子金融会社につきましてはこれから十分検討をいたしまして回答を出したい、こういうふうに考えております。
  48. 林芳正君(林芳正)

    ○林芳正君 終わります。ありがとうございました。
  49. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 平成会の平田でございます。私は、今回の法改正の問題について、特に労働問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に公正取引委員会お尋ねをいたしますが、今回の法改正は当初は昨年の通常国会で提出をするということになっていたと聞いております。昨年からことし一年間おくれたわけですが、その大きな原因は労働問題にあったというふうに認識をしておりますが、そういうことでよろしいでしょうか。
  50. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) お答え申し上げます。  持ち株会社禁止制度のあり方につきましては、御存じのように平成七年三月の閣議決定が行われました規制緩和推進計画におきまして検討を開始するといったことがまず決められたわけでありますが、これを受けて私ども関係方面からいろいろヒアリングをしたりということで準備作業をいたしまして、平成七年の秋に独占禁止法第四章改正問題研究会、これは四章研とよく言われておりますけれども、これを開催して鋭意検討していただきました。十二月末に報告書を取りまとめていただいたわけでありますが、そこにおきましては、「持株会社禁止制度については、事業支配力過度集中の防止という独占禁止法第一条の目的規定を踏まえ、これに反しない範囲内で見直すことが妥当である。」という趣旨の報告をいただいたわけであります。  これを受けまして、私ども公正取引委員会におきまして法案作成作業を行いましたけれども、昨年、平成八年の二月に与党内に設置をされました独占禁止法改正問題検討プロジェクトチームにおきまして、私どもの改正考え方を御説明して御議論をいただきましたけれども、主として労働問題と持ち株会社解禁の範囲について意見の一致を見るに至らず、先生指摘のように昨年の通常国会には法案を提出するということは見送られたわけでございます。  今回、昨年来の御議論を踏まえ、さらに与党協議会等にも御相談をいたしまして検討を進めまして、今回御審議をいただいております法案提出に至ったものでございます。
  51. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 労働省にお尋ねをいたします。  衆議院の審議の中でもありますが、今回の法案の提出がここまでおくれたのは労働省の責任ではないかというような指摘まであったわけでございますが、先ほど言われましたように、政府の規制緩和推進計画が決定された平成七年三月以来二年がたっておるわけですけれども、労働省としてはどのような努力をしてきたんでしょうか、お尋ねいたします。
  52. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) この持ち株会社解禁の問題につきましては、昨年一月に公正取引委員会の基本的な考え方が示されましたのは先ほどの御答弁のとおりでございます。その後、労使関係上の問題も含めてこの問題について種々議論がなされたところでございます。  そこで、労働省といたしましては、持ち株会社解禁に伴います労使関係上の問題につきまして、持株会社解禁に伴う労使関係専門家会議、これを開催いたしまして、ここに検討を御依頼申し上げました。この専門家会議は昨年十二月に検討結果をまとめ報告書となったわけでございますが、労働省は労使にこの報告書の内容説明いたしまして、労使のコンセンサスづくりを働きかけましたが、残念ながら合意には至りませんでした。  その後、本年一月二十九日に与党独禁法協議会が設けられまして、この協議会の要請によりまして、連合、日経連、経団連、すなわち労使が話し合いを行い、二月二十五日に労使合意に達したところでございます。この合意は与党独禁法協議会に報告され、また与党から労働大臣にも協力方の要請がございました。  労働省といたしましては、この労使合意及び要請、さらに今国会でのいろいろな議論を踏まえながら、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  53. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 説明が今ありましたけれども、その労使関係について、この専門家会議の報告書にもありますが、与党に言われて検討を始めだというような報告が書かれております。労使関係を含む労働条件、雇用その他労働者全体に与えるこの持ち株会社解禁影響を労働省としてはどのようにとらえられておったのか、どのように検討をしてきたのか。今回の法改正が労働者の雇用や労働条件に全く影響ないと労働省は考えておられるのかどうか、お尋ねいたします。
  54. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) 先ほどお答えいたしましたように、持ち株会社解禁に伴う労使関係上の問題等につきましてさまざまな御議論がある中で、労働省としても専門家に依頼をして検討していただいたわけでございますが、その中では労働条件の決定のいわば基本的な枠組みでございます労使関係上の問題点、それについて検討をしていただいたわけでございます。
  55. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 いや、労働省として今回の持ち株会社解禁について、労働問題については全く影響ないというふうに考えておられたかどうか。じゃないと、これ「与党独占禁止法改正問題検討プロジェクトチームの要請を受けて、」とあるでしょう。要請がなかったらやっていないんじゃないですか。
  56. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 持ち株会社解禁の議論があったことは労働省としても承知しておるのでございますけれども、既に現在におきましてもいわゆる事業持ち株会社というのは解禁をされておりまして、親会社子会社関係というのはたくさん存在をするわけでございます。そういうことから、この独占禁止法改正されたとしても、労使関係問題について特段新たな質的な問題が生ずるというふうには労働省としては認識をしておりませんでした。しかしながら、さまざまな御議論があったということもまた事実でございます。  そういう観点から、私どもとしては、与党からの要請を受けたというより、時間的には与党での御検討があったその結果といいますか、それも見て専門家会議を発足したというような時間的な経過はございますけれども、まずもって関係者の議論がいわば客観的なバックグラウンドといいますかそういうものをもとにした議論が行われることが必要だということから、持株会社解禁に伴う労使関係専門家会議におきましては法的な問題を整理する必要があるだろうということから整理をいたしたというのが経緯でございます。
  57. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 それじゃ、ちょっとお尋ねいたしますけれども、現在の持ち株会社事業持ち株会社における親子関係親会社子会社関係において労使交渉がありますけれども、現在の事業持ち株会社の労使交渉をめぐる中で、使用者性の問題については労働省は現行法で何ら問題ないというふうにお考えですか。
  58. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) お尋ねの件は労組法の第七条の使用者の解釈の問題になるわけでございますけれども、この問題につきましては、労働委員会及び裁判所におきまして、労働契約の当事者たる雇用主であることを基本としつつ、個々の具体的な事案ごとに、形式的には雇用主の地位にない場合であっても、労働者の労働条件に関して雇用主と同一視される程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合、そういう場合かどうかというのは判断をして個々具体的に適切に処理がなされてきたというふうに認識をしております。
  59. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 私は、今の事業持ち株会社のもとでも子会社の労使関係においては親会社の使用者性をめぐっていろんな争い事が起きておりますし、大変重要な問題だと思っております。あわせて、現在の事業持ち株会社でも問題があるのに、今回純粋持ち株会社解禁されることによってもっと深刻な労働問題が発生するんではないかなというふうに思います。この労使のスタディーチームでも、「持株会社解禁によって、労使関係に様々な問題を生ずる可能性については認識が一致した。」、こうあります。  この問題は労働組合法を改正して対処することが必要ではないかなと思っておりますけれども、いかがでしょうか、繰り返しになりますが。
  60. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 今御答弁申し上げましたように、現行法の使用者の解釈は最高裁判例によっていわば確定をいたしているわけでございます。そういう観点からすれば、労働組合法の改正がなければおかしいといったようなことではないというふうに認識しております。
  61. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 それでは、具体的にお尋ねします。  労働省は最高裁の判例が蓄積をしておると言いますけれども、例えばこの報告書にあります朝日放送事件の判決、事件がいつ発生したのか、そして最高裁判決までにどのくらい時間がかかったのか教えていただきたいと思います。
  62. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) お答えいたします。  朝日放送事件につきましては、地労委に申し立てがございましたのが昭和五十一年一月二十九日でございます。最終的に判決が確定いたしましたのが平成八年二月二十八日でございます。その間で二十年一カ月でございます。
  63. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 二十年でしょう。さらに、この報告書の十六ページにありますね、阪神観光事件不当労働行為の事件、それからネスレ日本事件。阪神観光事件についても十三年。地労委で初審の命令から最高裁の命令確定まで阪神観光事件でも十三年、ネスレ日本事件で十一年。  いいですか、労使の使用者性をめぐって、あなたが使用者ですかどうですか、交渉しておるんじゃないんですよ、あなたが交渉相手がどうかを決める、最高裁に持っていく、二十年、十何年、大変な時間がかかるんですけれども、どういうふうに思っていますか、労働省は。
  64. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 御指摘の件、お答えしました件も含めまして、確かに時間がかかっているというのはそのとおりでございます。  ただ、雇用関係というのは、まずは雇用契約の当事者である労働者と使用者というのが基本でございますが、これは非常にわかりやすいわけでございます。ただ、実際には雇用契約の当事者でない者が労働者の労働条件に対して具体的に決定する、そういったようなことにあるかどうかというのは非常に多面的な検討が必要だということは御理解いただけるかと思います。また、いろんな事案がございますけれども、ある意味では非常にばらばらと言ってもいいわけでございまして、そういう意味では非常に慎重な検討も必要ということになってくるわけでございます。  裁判所のことを申し上げるのはいかがかと思いますが、労働委員会につきましては簡易迅速に解決するということを旨としているわけでございますので、長く時間がかかるということは、もちろんいかに慎重にやるかということとのバランスをどうするかという非常に難しい問題はあるのでございますけれども、基本的には簡易迅速な解決を心がけなければいけないというふうに思っておりますので、引き続き労働省としても努力をしたいというふうに考えているところでございます。
  65. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 後ほどまた申し上げますけれども、使用者性をめぐる争いだけじゃなくて、その他の不当労働行為、いろんなのがあるわけですね。お尋ねいたしますけれども、不当労働行為の救済の場としては地方労働委員会、中央労働委員会がありますが、最近の地労委、中労委それぞれの不当労働行為の救済の申し立てから最終結審に至るまでの平均年数はどのくらいかかっておりますか、件数と年数。
  66. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) 平成八年に終結いたしました事件についての平均処理日数それから件数を申し上げますと、まず地労委で終結いたしました事件に関しましては、全体で三百六件で、平均の日数は八百日、二年強となっております。この中で、命令・決定による終結が九十一件、千三百二十七日。それから、取り下げないし和解による終結が二百十四件、平均すると五百七十九日となっております。  一方、中央労働委員会でございますけれども、全体で四十一件につきまして、平均千四百七十七日の処理日数でございます。内訳では、命令あるいは決定によるものが二十七件、これが千九百五日。それから、取り下げあるいは和解によるものが十四件、六百五十一日が平均ということになっております。
  67. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 今御説明いただきましたように、不当労働行為事件が起きますと非常に長い年月がかかるわけです、解決するまでに。解決すればいいんですが、先ほど申し上げましたように、だれが交渉相手がということを決めるための裁判が二十年かかっているんですね。決まってからまた裁判するわけです。二十年かかってどなたが交渉相手ですかということを決めてもらって、それからさらに今度は交渉するわけでしょう。  例えば、高校なり大学を卒業して二十年間といったらもう相当な年数ですよ。その間ずっと争っておるわけですね。労働者の地位というのは非常に不安定なんです。しかも、その収入というのは完全には保証されませんね、二十年間も。あるいは今不当労働行為事件で二年、三年、四年、五年とかかっておるわけです。その間は非常に不安定なんです。こういった状況が続くわけです。  ですから、少なくとも使用者はだれかということぐらいは法律で決めてあげる必要があるんではないか。交渉して個々の労働条件を決めなさいと、法律でつくるわけじゃないんですから、交渉相手がだれかということを法律できちっと決めなさい、ただそれだけのことじゃないですか。それだけのことをなぜできないのかなと私は思うんですが、労働省は、法改正の必要はない、不当労働行為や使用者はだれかということはその都度裁判で争って判定してください、こういう考え方ですか。
  68. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 先ほど申し上げました持株会社解禁に伴う労使関係専門家会議におきまして、その点十分御検討をいただいたわけでございます。  繰り返しになりますけれども、最高裁判例、既に先生も御承知のとおりと思いますけれども、「一般に「使用者」とは、労働契約上の雇用主をいう。」というわけでございますけれども、ただ、「雇用主以外の事業主であっても、基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、「使用者」に当たる。」と、こういう判例上の考え方が定着しているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。命令におきましても、このような考え方に基づきまして、労働委員会に事案が上げられる場合には検討をし、判断を下しているということでございます。  ただ、この専門家会議でも、じゃ具体的に使用者性の認定基準というのは定式化できるか、一定基準ができるかどうかといったことを御検討いただいたわけでございますけれども、これまで出ております命令ですとか裁判例、いろいろ御検討された結果、一般的に適用し得る使用者性の認定基準を定式化することは現時点では困難であるというのが法律の専門家の方々の御判断でございます。  そういうことを考えますと、労働省といたしましても、現時点において、今先生が御指摘なされたようなことを法律で書くということは困難であるというふうに判断をいたしているわけでございます。
  69. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 今、専門家会議のお話をされましたので、次にこの専門家会議の報告について御質問をいたしたいと思います。  専門家会議の報告では、「持株会社と自ら事業を行う会社との間で個別の子会社に対する株主としての権限には変わりはないのである。」、したがって、「持株会社解禁が新たな問題を生じさせることはないと考える。」と結論づけておるわけですけれども、事業持ち株会社純粋持ち株会社の違いを株主の権限だけという見方からしかとらえていない。株主の権限という観点からのみとらえ、労使関係の変化なしとするのは余りにも私は一面的ではないかなというふうに思っております。事業持ち株会社純粋持ち株会社とのそれぞれの要素の違いが全く無視をされておる。  例えば、報告書の中にもありますが、この純粋持ち株会社というのは企画立案、本社機能に専念するのが主な目的ですから、一般的には労務、いわゆる人間をどうするこうするというセクションがないではないかなと思われますし、また少数の幹部だけで純粋持ち株会社が運営をされているということから、まず労働組合は存在しないであろうな、大きな違いですね。  それから、純粋持ち株会社は、今も言いましたように、やはり一つの指標というのは、もうかっておるかもうかっていないか、ちゃんと株の配当があるか、おおよそその部分だけで子会社判断するという傾向が強くなるおそれがあると私は思っております。そして、グループとして企業側は、純粋持ち株会社持ち株会社を頂点に子会社を幾つもつくって、いわゆる企業家としての情報交換なり、いろんなあらゆる経営の情報交換なりをやる。しかし、純粋持ち株会社子会社はそれぞれが別の会社ですから、それぞれ仮に労働組合があったとしてもグループ全体での意思統一、労働組合として経営に対する意見を言うことができるかどうかということを考えてみますと、私は、事業持ち株会社純粋持ち株会社とは労務問題で大きな差があると思うんですけれども、労働省の見解をお聞きしたいと思います。
  70. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) この純粋持ち株会社解禁によりまして、労使関係を取り巻く状況がどのように変わっていくかということ、これは純粋持ち株会社がこれからどのように活用されていくか、さまざまな状況があろうかと思いますけれども、そうしたことによっても異なってくると考えられます。  したがいまして、今後の推移について十分注視をしていかなくてはならないというふうに考えておりますけれども、ただ、現時点におきまして法的問題について検討したところ、事業持ち株会社純粋持ち株会社の間で新たな法的な問題というのは生じないというふうに考えているところでございます。
  71. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 さらにこの報告書では、親子企業における労使の紛争は少ないものとする根拠として、不当労働行為の労働委員会への申し立て数が少ないということを根拠にしておるわけです。  よく考えていただきたいんですが、今でも子会社というのは金もあるいは仕事もすべて親会社からもらう、あるいは資金的な援助をしてもらう、そういうところに子会社の労使が親会社を相手に訴訟するなんということがそうしょっちゅうあるでしょうか。不当労働行為で訴える、子会社の組合が親会社を、よっぽどのことがない限り、親会社を相手取って不当労働行為だといって労働委員会に持っていくのはよっぽどのケースだと私は思います。そうじゃないというお考えならそれでいいんですが、普通の人間社会で親会社に向かって物が言えるでしょうか。  ですから、私は労働委員会への申し立てが少ないことを理由に紛争は少ないということを結論づけることはいかがかなというふうに思っております。労働委員会への申し立てが少ないから紛争は少ないというふうに労働省は考えておるんでしょうか、お尋ねいたします。
  72. 説明員(村木太郎君)(村木太郎)

    説明員(村木太郎君) この報告書の中にもございますけれども、昭和二十四年に現行労組法が施行されて以来平成七年までの四十七年間に、いわば親子会社の労使問題、ある会社の労使関係に関して当該会社以外の会社が労組法第七条の「使用者」に当たるか否かと、そういったことが争われた件数は、四十七年間で九十件でございます。この間の全体の件数四千八百八十八件の一・八%でございます。これはこの報告書に出ているとおりでございます。  この数字をどういうふうに見るかということについてはさまざまな御意見、御議論があろうかと思いますけれども、こうした労使関係に係る問題につきまして、労働委員会制度というものが労使の間に定着した制度であるということは言えるのではないかというふうに思っております。
  73. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 次に、報告書の中の「今後の対応について」という部分ですが、いわゆる持ち株会社が雇用主と同視できる地位に立つことになれば使用者としての責任を負うことになることを十分周知することが必要と、こうなっていますね。十分周知するには相手の特定が必要なんですね、だれに周知徹底するのかということですが。  そこで、公正取引委員会と通産省にお尋ねいたしますが、これから純粋持ち株会社、大きいのから小さいのまで全国でたくさんできると思うんですが、いわゆる持ち株会社というジャンルで全国の所在地や代表者を掌握する予定でしょうか、お尋ねいたします。
  74. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) お答えいたします。  今回の改正法案が実施に移されるということになりますと、いろんな形での持ち株会社が誕生するといいますか、活用されるということだと思いますけれども、今回の改正法案におきましては、そういった持ち株会社の中で事業支配力過度集中するということになるようなものを禁止するという規制をするわけでございます。  この過度集中になるような持ち株会社をどうやって把握するかというのが問題といいますか、御質問の点だと思いますけれども、今回の改正法案の第九条の第六項、第七項におきまして、持ち株会社子会社の総資産の額が一定規模を超える持ち株会社につきましては、これらの持ち株会社グループ事業に関する報告を毎事業年度終了後三カ月以内に提出を義務づけるという制度を設計しているわけでございます。  この一定規模以上というのは、何度か御説明を申し上げましたように、法案では三千億円を下回らない範囲内で政令で定めるということでございますので、現時点におきましては、スタートに当たりましては三千億円ということで政令で規定をしたい。したがって、持ち株会社グループとしての総資産が三千億円を超えるというものについては、この規定といいますか、届け出制度によりまして把握ができるというふうに考えております。
  75. 政府委員(藤島安之君)(藤島安之)

    政府委員(藤島安之君) 私どもは、この持ち株会社解禁につきましては、経済構造改革の推進に向けての非常に重要な項目の一つと、こういうことで位置づけておるわけでございます。  先般、閣議決定いたしました経済構造の変革と創造のための行動計画にもこのことがうたわれております。その中で、全体でございますけれども、経済構造改革に伴う施策のフォローアップを行うということは大変重要であるというふうにもしております。  したがいまして、持ち株会社解禁に伴うもろもろの問題についての適切な対応あるいは新たな課題の有無を検討するということで、実際の持ち株会社の利用実例を把握するということは大変重要なことだと考えております。  通産省といたしましては、中小企業庁も含めましてこうした実態把握に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  76. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 公取にもう一回聞きますけれども、三千億以下はどうなんですか。
  77. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 今回の第九条の報告義務を規定した第六項、第七項におきまして、三千億円を超える範囲で定めるということでございますので、三千億円以下の持ち株会社グループについては報告の義務がないということでございます。したがって、私どもとしては、持ち株会社グループとして制度的に把握をするというのは三千億円を上回るものだけということでございます。
  78. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 そうすると、三千億以下の持ち株会社純粋持ち株会社というのは掌握ができないと、こういうことでしょうか。
  79. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) ただいまの御質問に少しずれる答弁かもしれませんけれども、今度の改正法案では五年間の見直し規定というのを置いていただくことでお願いしているわけでございます。ですから、九条解禁に係る、要するに届け出義務という点でとらえますと先ほど申し上げたとおりでございますけれども、こういう法律解禁されました場合にいろいろ問題が起こる可能性があるわけでございますし、また見直し規定、見直し期間というのも置かれているわけでございますので、私どもは、やはり独占禁止法上いろいろの調査義務、調査権限というのは認められておりますので、いろいろの調査をいたしまして全体的に把握していろいろの問題を解明したい、こういうふうに思っております。
  80. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 公正取引委員会が報告を求めるのは、今お答えがありましたように、グループの総資産規模が三千億を超えるものに限ってということですけれども、それ以下の持ち株会社純粋持ち株会社は、今お話ありましたように、公取としての監視といいますか掌握ができないということですね。しかし、比較的小さい純粋持ち株会社もまたこれ今回解禁になってできるわけですね。中小の純粋持ち株会社子会社、零細という言い方がいいかどうか、適当かどうかわかりませんが、こういった方々もやっぱり自分の持ち株会社に大変影響されるわけですね。  ですから、三千億以下の持ち株会社の公取としての監視体制というものは、今五年後に見直すということでしたけれども、監視体制というのはどういうふうにするのか、お尋ねします。
  81. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) 今度の改正というのは第九条の改正でございまして、事業支配過度集中があるかどうかという点に着目してやっているわけでございますので、ただいまお話のありました小さなといいますか、中小企業といいますか、そういうものについては、仮に持ち株会社がございましてもそういう事業支配過度集中というふうなことは考えにくいということで三千億円という線を引いたわけでございます。  そういう観点から申しますと、三千億以下といいますか、それが高過ぎるか低過ぎるかという御議論がございますけれども、これ以下につきましてはそういう心配がなかろうという考え方でやっているわけでございます。  先ほど私が申し上げましたように、この法律というのは、五十年間禁止されてきたのが今日解禁されるわけでございまして、正直言って私どももどういうふうに展開するかということについてはそんなに自信があるわけではございません。  それから、いろいろ国会方面でも御指摘がありましたように、中小企業の問題、先ほど来問題になっております労働問題とか会社法の問題とか、いろいろ派生する問題がございます。そういう問題を私どもが所管するわけではございませんけれども、平たい言葉で言うと私どもが種をまいた話でございますから、そういう点についても私どもに認められた調査権限を駆使いたしまして十分調査していく、また関係当局にお願いする点があればお願いする、こういう姿勢でやっていきたいと思っております。
  82. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 私が質問申し上げておるのは、働く側の視点ということでお尋ねをしておるわけでございまして、三千億以上の過度集中ということよりも、むしろ三千億以下の、公取の監視の網をくぐったといいますか、そういった中小の持ち株会社に働く人たちの問題という面で実はとらえておるわけでございまして、個々の労働者あるいは零細な事業者にとって大変大きな影響があるのではないかなということだと思っております。  通産省にお尋ねいたしますけれども、持ち株会社純粋持ち株会社というのは、先ほど申し上げましたけれども、この子会社はもうからぬ、もうこれを早く合理化しようと、こういったことが今の事業持ち株会社よりもトラスチックに、もうからぬからもうつぶせと、こういったことが、頻繁に行われるというと語弊がありますが、そういったことにも有効だなというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  83. 政府委員(藤島安之君)(藤島安之)

    政府委員(藤島安之君) 委員御指摘のように、持ち株会社の利用でございますけれども、これは、御案内のように、子会社経営責任を明確化しまして、経営資源の適切な配分を通しまして企業グループ全体の生産を向上し競争力を強化するということで、そういう目的のもとに行われる積極的な経営戦略の一つだ、こういうふうに評価すべきものだというふうに私ども考えておるわけでございます。  九六年の東洋経済の調査によりますと、これは千四十四社ほど調査をしておりますが、国内グループ企業を新設する場合の目的、理由としては、一番多いのが新事業、新分野への進出、それからグループ力の強化、効率化、そうしたものが圧倒的に多いわけでございます。もちろん、余剰人員対策としてのグループ企業の新設もないわけではございませんが、約一〇%ということで七位ということでございます。  確かに、おっしゃいますように、グループ経営の中で積極的な経営をしていく場合には、こうした不採算部門の整理合理化ということがないわけではないと私は思いますけれども、こうした調査結果を見ますと、持ち株会社の設立を選択するというのはむしろ積極的な経営のあらわれだと、こういうふうに理解すべきじゃないか、こういうふうに思っております。
  84. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 私は、今お話がありましたように、やはり純粋持ち株会社というのは、子会社をもうかるかもうからないかということだけでトラスチックに企業合理化なり閉鎖なりをする、切り捨てるというか、そういった危険性が非常に強いというふうに思います。  労働省にお尋ねいたしますけれども、我が国の判例では、従業員の整理、解雇の四原則として、一つは、どうして整理をしなきゃいけないかというその必要性、それからもう一つは解雇、首を切る回避の努力をされたかどうか。人選の合理性、だれをやめさせるかという人選をどうやってやったか。それから、そういった手続の妥当性を検証するというふうに我が国の判例ではなっておりますけれども、この純粋持ち株会社、言いましたようにトラスチックに、この部門はもうからないから合理化だということが予見されるわけですけれども、今言いました合理化四原則といいますか、こういったものは、今回の純粋持ち株会社子会社を整理するときも、こういったことを原則としてしなければ従業員は解雇できないということですね。
  85. 説明員(青木豊君)(青木豊)

    説明員(青木豊君) 今、先生指摘のように、整理解雇をする場合の考え方として、判例上、今おっしゃった四要件ということで考え方が確立していると考えております。  これは、持ち株会社でありましても、その子会社が現実に今、整理解雇をするという局面になりましたならば、やはり当然のことながらこの法理がそこの場面で適用されるものと考えておりまして、労働省としてもこういった考え方については周知を図っているところでありますが、このことについても、今後ともその周知に努めていきたいというふうに思っております。
  86. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 専門家会議の報告書の中に、労使の自治にゆだねるべきだという言葉がよく出てきます。  中小企業には、御承知のように労働組合が余りない。例えば、全国の民間の労働組合の組織率二〇・二%、その中で九十九人以下の企業で見ますと、組織率は一・六%という数字が、これは労働組合基礎調査という平成八年度の資料で出ておりますけれども、九十九人以下の事業場はほとんどと言っていいほど労働組合がないわけですね。  ですから、いわゆる労働組合法で労使交渉という問題にはならない。そうですね。労働組合がないわけですから、労使間で交渉するというケースが余りないというふうに考えられるわけですけれども、そういったところは逆に親会社から就業規則の一方的な変更で非常にきつい労働条件が押しつけられたりする可能性があるわけですけれども、労働基準局としてはそういったところの対応を強化する必要はございませんか。
  87. 説明員(青木豊君)(青木豊)

    説明員(青木豊君) 労働基準法八十九条では、常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、これを届け出なければならないということになっております。その際には、基準法の九十条で、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、それがないという場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければいけないということになっております。  でありますから、労働省としては、就業規則の作成、変更に当たって、労使が十分に話し合いをしていただいてやっていただきたいというふうに考えているわけでありまして、そういった就業規則の作成、変更に当たりましては、労働者からの意見聴取等の措置がきちんと行われるように今後とも指導をしていきたいというふうに考えております。
  88. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 ちょっとお尋ねしますが、十人以上の従業員を雇用するところは就業規則を基準監督署に届け出なきゃならぬということですよね。そのことは、出さなければ罰則規定がありましたか。
  89. 説明員(青木豊君)(青木豊)

    説明員(青木豊君) 八十九条において、十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成、届け出の義務がございます。それに対しましては、百二十条で三十万円以下の罰金ということに相なっております。
  90. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 質問になかったのでごめんなさいね。  労働基準監督署は、立入検査といいますか、あなたのところは就業規則ちゃんとなっていますかということの検査というのは定期的にするんですか。
  91. 説明員(青木豊君)(青木豊)

    説明員(青木豊君) 労働基準監督署におきましては、労働基準法等の労働基準関係法令が適正に施行されているか、各事業場において実施されているかということで、全国の監督署に監督官を配置しまして、それぞれの事業場を訪問しまして、調査をしたり事情を聞いたりして、適切に運営されるように指導監督をしているところでございます。
  92. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 通産省にお聞きをします。  通産省は、この間ずっと純粋持ち株会社解禁について積極的に取り組んできたわけですけれども、税制、それから商法の改正の必要性を通産省としては企業法制研究会では指摘をしておるわけですけれども、その中に労働法制への記述がないんですよね。通産省としては、労働者への影響というものは視野にないのかどうか、なかったのか。それから、現段階では周辺の関係法制は何ら変わっていませんが、通産省としての問題意識はあるのかどうか、お尋ねします。
  93. 政府委員(藤島安之君)(藤島安之)

    政府委員(藤島安之君) 今、委員御指摘ありました企業法制研究会の報告書におきましては、先ほど来申し上げております日本の企業をめぐる厳しい国際環境の中で分社化等、グループ経営をやっていくためには、独占禁止法禁止しております持ち株会社解禁を含めまして、連結財務諸表の導入あるいは連結納税制度の導入等につきまして、企業グループ経営の実態を踏まえた諸制度についての必要性を提言されておるわけでございます。  それから、この報告書におきましては確かに労使問題については触れておりませんけれども、既に先般来御議論ありますように、労使で今後検討を進めていくと、こういう方針になっておるわけでございまして、今回の合意をベースに関係者間で速やかな検討が行われることを期待しておるところでございます。  なお、労使関係の良好な関係を維持する、あるいは雇用の安定、そういったことは経済構造改革を進める上で大変重要なことであると私ども思っておりますし、先般来、有料職業紹介事業の自由化が行われておりますが、そうした運用につきましても、安定的な雇用環境の整備に配慮されて行われていく、そういったことが大切だと考えている次第でございます。
  94. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 もっとしっかり答弁をしてもらわぬと困りますね。  次に、時間もありませんので、衆議院で行われました附帯決議についてお尋ねをいたします。  この法案衆議院を通過する際に附帯決議が六項目なされておりますけれども、重要な問題を含んでおるんで御質問をいたしたいと思いますが、附帯決議の四項目めに「労使関係者を含めた協議の場を設け、」とされていますが、私はこの際、今重要な問題となっております使用者性の問題を含めて、この労働組合法が制定後半世紀を迎えたわけですね。この労働組合法を時代の変化に即してやはり見直す必要があるんではないか、そのための審議会を設置して根本的な議論をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  95. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 今御指摘のこの附帯決議の四番目、これを具体的に実施するためのいわば協議の場といいますか、これをどういう形でつくるかということはこれからの問題でございますが、そのために審議会をつくるという今の御指摘につきましては、御承知のとおり、今政府を挙げて行財政改革に取り組んでいるときでございます。そういうことからすれば、新たに審議会を設けるということは難しいということにつきましては御理解をいただけるのではないかというふうに思うわけでございます。
  96. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 行財政改革を政府がやっておるから必要なものまで要らないんだという議論にはならぬと思うんですね。  戦後といいますか、五十年、半世紀を迎えたわけです、制定後。見直す審議会をつくるのが行革に反するかどうかという議論は私はぜひ一度きちっとしてほしいと思いますね。法を見直す審議会をつくることが行革に反をするんだという議論は私はどうも理解できないですね。その辺についてどうでしょうか、行革だから審議会をつくることはできないんだと、これからすべての問題について審議会をつくらぬということでしょうか。
  97. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 必ずしも私はそういう意味お答え申し上げたわけではないんでございますが、この協議の場というのをどういう形でつくるか、いろんなオプションがあろうかと思います。この問題を扱うために審議会をつくるということについて、いろんな状況考えますと困難であり、またそこまでは必要がないというふうに判断をしているということでございます。
  98. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 審議会をつくることが無理だという今お答えですけれども、じゃ、この附帯決議にある「協議の場」というのは労働省としてはどういう位置づけをしておるんですか。
  99. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) この附帯決議、そしてそれのもとになったというふうに思われます労使の合意があるわけでございますけれども、ここに言われております「労使関係者を含めた協議の場を設け、」という附帯決議の文言、これにつきまして実際どういうような位置づけにするか。例えば労働省の方から労使、それに場合によりまして学識経験者が入るということもあろうかと思いますが、そういう方々に検討をお願いする、労働省からお願いするということで協議の場をつくるのか、もとが労使の合意というところから出てきているわけでございますので、労使関係者が集まって自主的にお話し合いをされる、それに場合によっては学識経験者が入ったり行政の関係者が入ったりするということにするか、私ども十分今後労使の関係者とも相談をいたしながら、今御指摘の位置づけの問題も含めまして検討をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  100. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 今、局長が言われたことは大切なことなんですね。公労使で協議の場をつくるのか、あるいは労使で話し合って、あるいは専門の学者が協議の場をつくって、そこに労使が呼ばれて意見を述べるのか、いろんな形があると思うんですね。ですから、やはりこの際早くこの協議の場という場を明確にしていただきたいと思います。  次に移りますが、この協議の場というのはいつから始められる予定なのか。今後二年をめどにとありますが、この法案が通ったらすぐやりますということなのか、いつからやるんでしょうか、具体的に。
  101. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 今御審議をいただいております独占禁止法改正法案の成立を見まして私どもは労使と相談をいたしたい、できるだけ速やかに相談をし、なるべく早くこの協議の場が開けるようにいたしたいというふうに考えているところでございます。
  102. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 この附帯決議には労働組合法の改正問題を含め検討し、必要な措置をとると、こうあるわけですが、協議の場で法改正が必要だという結論が出た場合、これはやっぱり法改正をしなきゃいかぬなという結論が出た場合には法改正を行うということでよろしいですね。いやいや、そうじゃないんだと、協議の場はあくまでも協議の場で、あれは研究会だと。研究会だったんだからということで法改正はしませんよと、こういうことでは困るわけでして、協議の場で決まったことはきちっと法改正をしますと、ぜひ答えていただきたいんですが、どうでしょうか。
  103. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) この附帯決議におきましては、その御指摘の点については、「労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。」ということにされているわけでございます。そういうことから私どもは、労使関係者を含めた協議の場で御検討いただき、その結果に沿って必要な措置をとるようにいたしたいというふうに思っております。
  104. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 必要な措置をとるじゃなくて、法改正をしますと、ぜひ言っていただきたいと思いますが、無理でしょうか。
  105. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) この附帯決議では労働組合法の改正問題を含め御検討されるということでございますので、私どもの方からあらかじめ今御指摘の点をお答えするということは適切ではないというふうに思っているわけでございます。
  106. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 衆議院あるいは今までの審議を見ていますと、労働省はよく国会の御論議を踏まえと、こう言うわけですが、労働省は、今日まで国会の論議、衆議院あるいはこの参議院、それぞれの委員会で質問がありました。各党の各先生方、各議員の主張をどうとらえておりますか。私がこの議事録を見る限り、労働組合法を改正しろという声が強いようでありますが、労働組合法の改正は必要ないという意見ですか、そういう意見がありましたですか、どちらでしょう、お答えいただきたいと思います。労働組合法を変える必要があるという声が強かったんですけれども、いやそうじゃない、労働組合法を改正する必要はないという意見が強かったんでしょうか、どうでしょうか。
  107. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 確かに、御指摘のように、国会の場では労働組合法の問題について御指摘をいただいた際には労働組合法の改正が必要であるという御指摘でございました。もちろん、この問題について全く御議論がなかったということもあったというふうに思います。  いずれにいたしましても、労使のスタディーチーム、労働省の専門家会議の報告が出る前に、労使で自主的にお話し合いをされた中で、この労働組合法の改正問題というのもお話し合いがなされたわけでございますけれども、この労働組合法の改正が必要だ、必要でないということについては労使の意見というのは非常に大きく隔たっていたということは、先生も御承知のとおりだというふうに思います。そういう観点からすればまだこの労働組合法の改正ということについてのコンセンサスの形成というものはできてないというのが今のところの私どもの認識でございます。
  108. 平田健二君(平田健二)

    平田健二君 きょうこうやって質問をさせていただいて、あるいは衆議院の議論の経過を見ますと、労働省の姿勢というのはまるで他人事みたいに言っておるわけです。しかも、労使の問題は当事者間で決めてもらいましょうという感じですね。当事者間というのは利害関係者ですから、そんな簡単に結論が出るわけじゃないんです。そのために労働省があるわけですよ。労働省設置法の第三条には、「労働条件の向上及び労働者の保護」と明記してあるんですね。ですから、労働省はやはり主体的に労働者の保護を目的として行政をやっていかなきゃいかぬわけですよ。  何か今までの議論をずっと聞いていますと、あたかも行司役みたいな格好で、労使の間に挟まってどっちが正しいかと言うぐらいのそういう行司役みたいな格好にしか見えません。もう終わりですので、ぜひ労働者サイドに立って、先ほどもありましたように、使用者がだれかということを決めるまでに二十年もかかるような裁判ですから、使用者が初めてあなたと決まってそれから団体交渉する、二十年ですよ、そういった実態があるわけですから、もう少しこの法を見直す、労働者の立場に立って物事を考えるということを積極的にやっていただきたいと思いますが、最後に御見解をお聞きして、終わりにいたしたいと思います。
  109. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 労働省は、労働省に与えられました基本的なスタンスに沿いまして行政を展開しておりますし、また今後ともそうしたいというのが基本でございます。  ただ、労働行政というのも全く世の中から独立して存在するわけではございません。全体の国の経済社会のバランスの中で労働行政を適切に推進していくことが必要だというふうに考えているわけでございます。
  110. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時十五分開会
  111. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  112. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 我が国における株の保有状況を若干見てみますと、金融機関を含む法人と個人の割合、昭和二十五年のときには法人の株の保有というのは全体の三五%でございました、個人が六〇%。それが平成五年度になりますと、法人の株の保有が七〇%で、逆に個人が二五%に半減をしております。  アメリカの場合は、平成三年の個人の保有率というのは五〇%を超えているようでありまして、間違っていたら指摘をしていただきたいんですが、日本の個人の株の保有割合から見ますと、アメリカが約倍持っている。こういう状況に一体どうしてなったんだろうかと、不思議でたまりません。これが持ち株会社解禁することによってさらにこういう状況が進んでくるのではないかと、そういう心配を私はしております。この点について何かお考えがあったら承りたいと思います。
  113. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 先生おっしゃるように、日本の上場企業株主構成、変化してきて法人の所有比率が非常に高いということはそうだと思いますけれども、今回の法律改正によりまして、持ち株会社一定の範囲内で解禁をするといいますか、許容をするということにした場合に、こういった株主保有、所有状況というのはどういうふうになるかということでございますが、これはなかなか難しいお話ではないかなという感じがいたしております。  ただ、独占禁止法といいますか、競争政策の観点から申しますと、言うまでもありませんけれども、持ち株会社というのは株式所有といいますか、子会社株式所有というのが半分以上ということで、当然に法人の株式所有に当たるということでございます。  ただ、それが競争政策上弊害をもたらすといいますか、問題があるというような場合については、今回の改正法案事業支配力過度集中を防止するということで、過度集中に該当するような場合には禁止をするという規定にしておりますし、それから従来からございます、例えば独占禁止法の第十条におきまして、会社株式所有により一定市場における競争制限するということは禁止をされるということでございますので、全体の株式所有の構成がどうなるかということはなかなか予測困難でございますけれども、競争政策の観点からは問題となるような株式所有についてはきちんと規制ができる、そういうような法案といいますか、法律になるということで、競争政策の観点からは特段大きな問題は出てこないんではないかというふうに思っております。
  114. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 よくわかりません。聞いておりましてもよくわかりませんが、私は、そういう傾向というのはちょっと心配があるんじゃないかということだけ指摘をしておきます。  あなたも通産省の審議官競争政策上ということをよく言うのですが、一体どこと何をどう競争するというのか、よくわからない、競争政策上というのが。  では、今円高で、円安になって自動車がどんどん出だした、あるいは円高になって競争が厳しくなった、いろいろその時々の状況によって違うと思うんです。どうも競争政策上ということが、この法律に何か大義名分をつけさせるために余りにもそれをにしきの御旗に掲げ過ぎているのではないか、そのように思うんです。  それで、次に移りますけれども、金融の持ち株会社というのは、これは私はいろいろ考えなきゃならないと思うんですよ。そこで、今この問題について事業の整理とかなんかをやって準備をしているんだろうと思いますが、どこまで進んでいるかお聞かせください。
  115. 説明員(中井省君)(中井省)

    説明員(中井省君) お答えいたします。  金融の持ち株会社につきましては、現在、大蔵省の方で、二十一世紀をにらんだいわゆる金融システム改革の議論を各種の関係審議会で御議論いただいております。例えば、金融制度調査会、証券取引審議会、それから保険審議会でそれぞれの立場から御議論いただいているわけでございますが、金融システム改革の中の非常に重要な項目の一つとしまして、金融持ち株会社のあり方についても御議論いただいております。議論が大分最終段階に来ておりまして、恐らく今週の末には我々の方に最終報告をいただけるんだろうと考えている次第でございます。  現在の途中経過でございますが、金融持ち株会社と申しましても、いわゆる保険会社それから証券会社と銀行の持ち株会社、それぞれ各国の制度を見てみますと、例えば証券会社持ち株会社でありますとか保険の持ち株会社というのは諸外国で余り規制がないようでございます。唯一、銀行の持ち株会社ということにつきましてはアメリカにおきましていろんな規制がある。これはひとえに預金者の保護を通じます信用秩序の維持を図る。  それから、銀行の場合につきましては、やはり預金保険機構等の公的なサポートのシステムが確立しておりますので、そういう公的なサポートをある程度受けたような機関が、例えば一般的な不動産業でありますとか事業会社に進出をする際の競争条件の公平性の問題、それから利益相反の問題等々いろいろ問題があろうかという御議論になっておりまして、その点につきましては、銀行の持ち株会社につきましては、持ち株会社の下に持つことができる子会社の業務の範囲をある程度制限していくのが至当ではないかというような形で議論が進んでいるわけでございます。  我々といたしましては、このような審議会の御答申をいただきまして、その趣旨も踏まえてさらに検討を加えまして、できるだけ早い機会に何らかの法律という形で御審議を賜りたいと考えている次第でございます。
  116. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 結論から先に言いますと、私は、銀行持ち株会社というのはもう最小限にとどめるべきだと。  というのはどういうことかといいますと、先般の土地バブル、こういうような状況を引き起こして、あるいは住専についても、それは国会で大変苦労をして住専処理をしたわけでありますが、ああいうような状況でみずからの本業である銀行経営を逸脱して、放置をすればああいう不動産にどんどん金を出していくようなそういう体質をまだ持っている。今度の第一勧銀の事件も、それは中身は違いますが、しかし決められたことや法律やなんかを越えてやる。  そういうところがまたいろんなところの株を持って持ち株会社を、事実上そこが中心になって、脱け殻方式になるのかどうかわからないが、そういうことをやるべきではない、最小限にとめるべきだと、このように思うんですけれども、これは審議会は審議会、国会は国会ですから、その点についてどなたでも結構ですが、お伺いします。
  117. 説明員(中井省君)(中井省)

    説明員(中井省君) 確かに、先生指摘のとおり、いわゆる八〇年代後半からのバブルの生成、それから崩壊に至る過程の金融機関の行動、それから最近におきますいろんな不祥事の頻発につきましては、まことに先生のおっしゃるとおりでございまして、我々金融行政に携わっている者にとりましても大変反省すべき点が多いんではないかと考えている次第でございます。  ただ、一面で、逆にいろんなところから我々御批判いただいておりますのは、まさに従来の金融行政のやり方ということのとがといいますか、おりがたまってそういう事件が起きてきた。銀行についてももっと競争にさらしてやっていかなきゃいかぬじゃないか、そういうような観点で諸外国を見ますと、今やグローバルな市場の中で各金融機関がコングロマリット的な形でいろんな業務を展開してやっておられるということでもございます。  そういう両面があるわけでございまして、先生の御指摘のあった点の反省も踏まえながら、まさに新しい制度というのが、こういういろんな不祥事が起こらないためにどういう制度を組み入れていったらいいかということを審議会で御検討いただいております。その答申の趣旨も踏まえまして、我々としても鋭意検討してまいりたいと考えている次第でございます。
  118. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 この法律を与党の中で議論をする際に資料を大分いただきまして、そして今、都市銀行の、大手銀行の採算状況とか見まして、何か皆さん、日本の大手の銀行が競争に弱いような話だけれども、あの不動産処理やなんかがなかったら、これはもう世界の金融機関の上からだあっと相当のところ、東京三菱とか住友とか入ってくるような状況なんですね。だから、そういう点では、競争にさらすとかさらされるとかなんとかかんとか言っておりますが、実態は必ずしもそういう状況じゃない。非常に強い体質を持っている。  むしろ、問題は日本国内にありまして、国内でそういう集まったお金をなかなか借り手がおらない、どっちかというと設備投資をやっても物が売れない、経済の成長が鈍化をしている。そこで、これから心配になるのは、金融機関がどこにどういうようにお金を貸していこうかというような問題の方がむしろ心配になって、国際競争をやる上においてそんなに言われるようなことはない、このことを私は強く感じております。  次に、これは公取にお尋ねしたいんですが、持ち株会社経営責任ですね。持ち株会社がおります。これはウ飼いのウ匠みたいなもので、ここにおりまして、その周辺に五〇%以上の株を持った持ち株会社をいっぱいつくっていこうということなんです。そこで、何か事故が起こって、その持ち株会社子会社一つがつぶれるということになったときに、しかも五〇%以上の株を取得している親会社経営責任というのは一体どういうものか。これは世間の常識では、普通の世の中ならけしからぬということになるのですが、そうはいかぬようです。この点について、まず公取のお考えを聞きたいと思います。
  119. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) お答えいたします。  今、先生おっしゃったように、持ち株会社傘下の会社一つが倒産をしたような場合に、その経営責任なり債権債務関係の責任をどこがどういうふうに負うのかということ、それで、その株式保有比率が五〇%以上の場合とそうでない場合、どんなふうに考えるのかということでございます。  この辺の問題は大変恐縮でございますけれども、公正取引委員会の所掌を越える範囲でございますので、全く個人的な意見を申し上げたいと思いますけれども、いずれにしてもこういった問題につきましてはそれぞれ関係法令がございますので、関係当事者間で法令に基づいて適切に対処されていくべきものというふうに考えております。
  120. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 そういうお答えはわかるんですが、この法律を起案して、そして責任を持っているのはおたくですからね。おたくが法律をつくればあとの関係法律はよそがやるんだというのは、いつも議論していますけれども、ちょっと無責任じゃないか。そうすると、金融取引の関係ではこういう問題が生じますとか、それについて一定程度問題意識を持って、そして法務省なら法務省にこれは今の現行法律ではやっぱりかばい切れない、何か要るんじゃないかとか、そういうことは前からあなたともずっと議論してきたけれども、どうもそこになるとさっと逃げて、ただこれだけということは、起案をしている公取委としては本当に何か無責任な感じがしてならぬのですよ。もう一回ちょっとそこを。
  121. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) おしかりをいただきましたけれども、役所の場合、それぞれの役所がそれぞれ所管行政といいますか、所管法制を持っているわけでございますので、何らかの法律改正等を行う場合には当然国会の御審議をいただく前に関係省庁で御相談をさせていただくということでございます。そういうプロセスはございますけれども、個々の具体的な問題についてどういうふうな法律に基づいてどういうふうな対応がされるのかということは、やはりそれぞれの所管官庁といいますか、それぞれの関係法令に基づいて所管官庁なりあるいは関係当事者間で対処されるべきものというふうに考えております。
  122. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 それでは、少し具体的なことについてちょっとどなたでも結構ですが、お答え願いたい。  例えば、持ち株会社支配している親会社というのは経営にくちばしを挟むわけで、人も、恐らく役員、重役も派遣をすることになる。そういう会社が具体的につぶれた場合に、そことの債権債務の関係のある取引先やなんかというのは、やっぱり後ろに親会社がつき、しかも経営の指導をして人も派遣しているという、そういう信用に基づいて取引をするでしょう。あるいは、そこで働いておる労働者というのは、もちろん経営の指揮権というのは現場にある程度任されておるが、究極のところはその持ち株会社で左右されている。そういう人たちがつぶれたときに全く親会社に対する責任あるいは刑事責任というのを追及できないのかどうなのか。  僕は先ほどからずっと聞いておりまして、労働問題もそうだけれども、これは商取引の中でもそういうことはたくさん起こると思うんですよ。これは新たな問題で、こういうような持ち株会社がどんどん出てきますと、こういう問題がどんどん発生するというのは避けられないと思うんですね。その持ち株会社の下の子会社というのは全部うまくいきますよというわけにはいかないような時代が来る。これに対してどう考えるべきなのか、お答え願いたい。
  123. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) 民商二法を所管する立場からお答え申し上げます。  持ち株会社は商法上は親会社に相当するものでございます。親会社子会社は法人格が異なりますので、親会社子会社の債務について特に保証をしたといったような事情がない限りは、原則といたしまして子会社の債務が親会社の債務になったり、あるいはその債務について取締役が弁済の責めに任ずるということはないわけでございます。  ただし、持ち株会社の取締役が五〇%を超える持ち株を背景といたしまして子会社に対する支配を行い、その支配につきまして違法な行為があったという場合には、損害を受けた子会社持ち株会社またはその取締役に損害賠償を請求することができるということになっております。それから、この場合に、子会社の債務者も不法行為責任あるいは取締役の第三者に対する責任ということで損害賠償が請求できる場合があるということでございます。
  124. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 損害賠償をどこに請求することができるのか、親会社に対してですか、今のは。聞き取れなかった。
  125. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) 親会社に請求することができる場合もございますし、それから、その違法な行為を行いました取締役に請求をすることができる場合もあるということでございます。
  126. 政府委員(藤島安之君)(藤島安之)

    政府委員(藤島安之君) 今、委員御指摘の問題は大変大きな問題だと思います。親会社子会社間のいろんな問題について今後どうしていくのかという御指摘かと思います。これは持ち株会社解禁に伴う固有の問題じゃなくて、現在でも認められております事業持ち株会社にも共通の問題でございますけれども、グループ化が進展していく中でどう対応していくのか、そういった問題意識かと思います。  子会社あるいは子会社の従業員の問題あるいは少数株主の問題、そうした者の利益が今後不当に害されることがないかどうか。これは労働法制とか商法等、現在、関係法制で対応しているんですけれども、グループ化の進展を見ながらそういった問題についても私ども持ち株会社解禁の後も実態把握に努め、いろんな意味で問題があれば関係当局にも所要の対応をお願いすべく研究を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  127. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 さっき法人は親会社子会社別だからそこで切れていると。じゃ一〇〇%株を持った親会社子会社関係の場合はどうなるんですか、法務省。
  128. 政府委員(柳田幸三君)(柳田幸三)

    政府委員(柳田幸三君) 一〇〇%子会社の場合でも同じでございます。  ただ、一般的に申しますと、法人格否認の法理というのがございまして、その法人格が乱用であったりあるいは形骸化ということに該当するというような場合には、一定の要件のもとにその法人格の否認を認めるというのが最高裁判所の判例でございます。
  129. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 これは事業会社の例ですが、昔大分県に臼杵鉄鋼という会社があった。石川島播磨がちょうど調子のいいときに五〇%株を地元の経営者に出せと言って出させた。そして造船不況がばっと来まして、そして地元で七百人ぐらい雇用している、下請になるともっと大きい、そこをいっときしたら工場閉鎖するというわけです。それで、労使問題、争議が起こりまして、私も現地に入っていった一人なんですが、大騒動しました。石川島播磨の親会社が決めだというのは大体はっきりしている。それで、なかなかどこへ行ったって救ってくれるものはない。しようがないから大手町の石川島播磨へ行って、私が先頭へ行って何人か連れていって座り込みをした。何度も何度もそういうことを繰り返して、進藤さんはとうとうやめましたけれども。  そういう本当に究極の、そういうことまでしなきゃ相手は全く逃げ回ってしまう。これは先ほど平田委員からもずっと話がありましたように、これは大変なことなんです。やっぱり親会社子会社関係がどんどん膨らんでいきますと、恐らく気に食わなかったら企業閉鎖とかなんとかをさせる。だから、親会社子会社は別法人だから切れている。こういう社会がどんどん進んでいくとすれば、これはよくないことだと。だから、かたいことじゃなくて、少し現実に即応した対応というものを公取もそしてきょうお見えの皆さんも考えていただきたいと思います。  そこで、労使問題といいますか、特に企業がつぶれない場合はまあまあと、それでも合理化の問題とか解雇基準の問題とかいろいろお話がありますが、ある日突然何かの事情で倒産をした場合、恐らく未払い労働債権や何かというのが大変で、これは優先権があるじゃないかといっても、日本の場合はほとんど銀行が抵当権を一番か二番にだあっと入れております。その次に強いのは国の税金ですね。税金で押さえておる。その次にその未払い労働債権の順番が回ってくる。放置をしたら取れない。こういうことだってあるわけです。これは容易に考えられることです。  だから、親会社子会社関係ははっきり労働省も、いや、あなたたち労使でこれから闘って、あなたたちちゃんと道をつくりなさいと。これならこれではっきりわかる。いや、しかし、労働省はやりますよと言いながら、難しいところに来ますと、これはいろんな意見がありますからと、こうなったら、これはやっぱりどうも弱い者が困ると。  ですから、お願いなんですが、この問題は非常に深刻にとらえていただいて、労使関係の問題というのはウ匠のウ飼いのその本元に話ができるような、そういうものをやっぱり模索すべきじゃないのか。労働省の見解を承りたいと思います。
  130. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 労働問題につきまして関係者が話し合いをするということは、極めて私どもとしても重要なことだというふうに考えているわけでございます。  この問題につきまして、労働問題という観点から御検討いただきました専門家会議におきましても、労使で十分協議をするといったようなことが望まれるとかそれから親会社経営方針その他について子会社が自主的にみずからの経営責任を発揮できるように、当事者能力を発揮できるように必要な情報を開示することの必要性といったようなことは指摘をされているわけでございます。  先ほど来、この持ち株会社解禁に伴って労使関係法上どういう問題が出てくるかということにつきましては、現在でも認められております事業持ち株会社における問題と質的に異なる問題は基本的にはないという認識を私どもは持っているというふうに申し上げましたけれども、それは現在そういうふうに考えておるということでございまして、今後持ち株会社解禁されて、それがどのように活用されていくのか、先ほど来公取からも答弁がありましたが、なかなかまだわからないところもあるわけてございますので、その活用の状況ですとか、持ち株会社を頂点とする企業グループの労使関係状況がどうなっていくかといったようなことについては、十分フォローアップをしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  131. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 またもとに返りますが、アメリカの破産法の五十七条というのを、僕もちょっと勉強不足ですが、見てみますと、例えば銀行の場合、銀行が支配をしている会社の倒産に対しては債権の請求権を失う場合があると。要するに、日本の場合よりもアメリカやドイツの例は、持ち株会社というのはあるけれども、事業法やなんかで非常に厳しい条件をつけている。そこいらをしっかりせぬで、ただアメリカが持ち株制度だから、あるいはよそがそうだから、そして競争上だからということだけでどんどん進んでいくところに危険な側面を感じてならないのであります。ぜひそこは少し時間をかけても十分手を尽くしていくべきだ。いいところだけ比較して、そしてとっととっと行くようなやり方にはどうも納得ができないところがあります。  時間でありますから、もうこれでやめますが、公取の根來委員長、もう一度持ち株制度の解禁に当たってのお考えを承りたい。
  132. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) 再々申し上げておりますように、この九条の解禁が行われた暁には、一体経済界がどういうふうに使っていくかということについては大きな問題でございますが、こう言うとまたおしかりを受けるかもわかりませんけれども、私どももどういうふうな世の中になっていくのかということについて必ずしもはっきり考えているわけではないわけでございます。ただ、繰り返して申し上げておりますように、九条の持ち株会社禁止というのは大きく網をかぶせておるわけで、その不要なところを切り捨てるというところから始まっているわけでございます。  したがいまして、この九条の解禁をお認めになっても、それで雨後のタケノコのように持ち株会社があちらこちらに出てくるというほどの話ではないと思うのでありますけれども、先生がいろいろの御懸念を持っているところは、私も個人的にはそういう懸念を持っていることは否定いたしません。  ただ、余り楽観的なことを持つよりも、懸念を持って、その懸念の上に立っていろいろこれから研究していく方が安全だというか、持ち株会社の運用にとっていいのではないかと自分では思っておりますけれども、そういういろいろな御意見がございますので、先ほど来申し上げておりますように、私どもに認められた調査権限あるいは今後法律認められました届け出の内容等を十分検討いたしまして、またいろいろ問題がございますれば各省庁にもその善処方をお願いする、こういうつもりでおりますので、今後ともひとつよろしくお願いしたい、こういうふうに思っております。
  133. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 終わります。
  134. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 前回、三日にお伺いをした確認をさせていただいたり、あるいは補強をさせていただいたりという意味質問をさせていただきたいと思います。  最初に、通産省の方にお伺いをしたいんですが、お忙しいところ局長にわざわざお出ましをいただきましてありがとうございます。前回お答えをいただいた審議官が決して十分ではないからというのではなくて、最初から実は局長をお願いしておりましたら、風邪を召されたということで体調不十分ということだったものですから、改めてまた質問させていただきたいと思います。  決して揚げ足をとるわけではありませんが、今、根來公取委員長から、持ち株会社解禁になった後、どういう形でこれが活用されていくのかというのがなかなかイメージがつかめないという話がありました。実は私もその一人なんですけれども、当然のことなんでしょうが、熱心に推進をされたのは通産省だというふうに私はお聞きをしていますが、これまでの通産省の中の産構審の基本問題小委員会やあるいは企業法制研究会等の中で、持ち株会社解禁することの経済的な意義といいますか、こういう問題についてさまざまな議論があったと思うんですが、通産省自身はどんなイメージでお考えになっていたのか。  私は、ついせんだっても経済企画庁の方から、規制緩和にかかわって一体どれだけの経済効果といいますか、当然のことですが、国民生活なら国民生活にどれだけのプラスの面があったんだろうということで、いろいろなお話を聞きました。非常に大ざっぱな数字なんで間違っているかもしれませんが、九〇年からの五年間の間に、年平均で大体四兆六千億円ぐらい国民生活にはプラスになっている。例えば、車検制度がああいう形で直された、規制が緩やかになった。したがって、そのことで約九千億だとかいやそんなにあるのだろうかなと私も思いましたけれども、さまざまな規制緩和というのは、何がしかの具体的な計量的なといいますか、数量的なといいますか、そういうもののイメージというのがやっぱりありますと、なるほどなという話になるんですけれども、極めてこの問題は漠然としているんです。一体どれくらいの企業が使うんだかもわからない、どんな使い方をするんだろうと。議論だけはいわゆる事業支配力過度集中と、日本のかつての戦前の大財閥が復活する議論にすりかえた議論さえ行われるんですね。この辺のイメージがどうもつかみにくいものですから、ぜひ通産省の方からどんなふうなイメージをかいておられたのか、お聞かせをいただければと思います。
  135. 政府委員(渡辺修君)(渡辺修)

    政府委員(渡辺修君) 今、先生から持ち株会社ができ上がった場合にどういうふうな形でこれが実体経済に導入されて、どういう活用になっていくだろうか、その具体的なイメージいかん、こういう御質問でございます。  先ほど公正取引委員長の方から申し上げましたように、実は、本件は解禁されてみた後の個々の企業の具体的な経営実態によってその影響というのは大きく違ってくるというのは我々も全く同じように思っておりまして、そういう意味で、先ほどの規制緩和に伴います一定の前提を置いた数量的なこれからの可能性というのを打ち出すというのはなかなか難しゅうございます。  ただ、私ども過去において本件について議論しておりましたときの実態を申し上げますと、既にもう経済はグローバル化いたしておりまして、これに伴って、あらゆる企業組織のある意味で弾力化、あるいはできるだけそれをリストラに有効に活用するという動きが相当高まってきております。  それで、過去のデータで申しわけございませんが、例えば主要企業一社が幾つ子会社を持っているかという過去のデータで見ますと、六十年で大体一社当たり平均十二・三の子会社を持っておったんでございますが、平成六年の数字ですとこれが三十七・一社ということで、約三倍くらいにふえておるわけでございます。これは一にメガコンペティションに対応するための企業の組織のまさに弾力化によって対応している実態の数字だろうと思いますし、他方、合併の数を申し上げますと、昭和五十六年に一千四十四件の届け出がございましたけれども、平成七年ではこれが二千五百件を超える、こういう姿になっております。  そういう、この一連の過去のリニアに続いてきております経済実態の変化、そういうことを頭に置きますと、私どもといたしましては、今回企業持ち株会社解禁によりまして、企業組織の形態の選択に対する制約というのがもう相当解除されるわけでございまして、そういう意味企業が迅速かつ機動的に新規事業の展開を図るとか、あるいは既存事業の効率化を進めるとか、そういったようなことに大きくこれはコントリビュートするんじゃないかと、こんなふうに思っておるわけでございまして、そういう観点から大変な今国際メガコンペティション化、国際産業立地競争が行われておりますけれども、我が国の事業環境を魅力あるものにしていく、そういう意味で大変大きな意味を持っているんじゃないかこういう位置づけをいたしておる次第でございます。
  136. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 通産省としては、今局長おっしゃったように、それなりの効果、効用があるだろうということなんでしょうが、昨年、企業法制研究会の松下座長においでをいただいてヒアリングを受けた際に、企業法制研究会の中では純粋持ち株会社、いわゆる九条の解禁ですね、解禁が有用だという前提での議論はしていませんと、このことの規制の必要性についてさまざまに議論をした結果、なぜ規制が必要なんだというそのことが明確に出てこなかった、したがって、これは緩和をすべきだという結論に到達をしたということなんですね。  私は、そういう意味企業法制研究会の議論の視点がどこにあったかということももちろんあるんでしょうけれども、少し過大に評価をし過ぎているんじゃないかなというような気がするんですね。有用性について私は頭から否定をしているんじゃもちろんありません。ありませんけれども、例えばこれまでも議論されてきていますように、今の経済あるいは産業構造の非常に大きな転換期に、かなり大きなツールとして使えるんだというほどの効果があるんだろうかなというのはいまだに懐疑的なんです。  しつこいようですけれども、もう一度お聞かせいただけますか。
  137. 政府委員(渡辺修君)(渡辺修)

    政府委員(渡辺修君) 今御指摘ございましたように、松下先生企業法制研究会での議論をいたしましたときに座長を実は務めていただいたわけでございますが、いろんな議論はございましたけれども、恐らく松下先生のおっしゃっておられるところは、有用かどうかという議論はもちろん一つあるんだけれども、論理的に法律学者として整理をしてみると、論理の問題として今の解禁というのは法律論的に引き出せるんじゃないかと、こういう趣旨で整理をした一つの論理の立て方ではないかなと、こんなふうに今何いながら私は理解した次第でございます。  私どもといたしましては、そういう論理の問題に加えまして、今の有用性という点についても、先ほど申し上げました、もう繰り返しませんけれども、それなりの問題意識を強く持っておるわけでございます。  そんなこともございまして、例えば昨年の四月でございますけれども、私どもで上場企業を中心に約二千六百社ぐらいに対しましてアンケート調査を実施したわけでございます。昨年の四月でございますから、そういう意味ではまだ問題が俎上に上った段階で、国会、特に党の関係でいろいろ御議論がされておったその時点でございます。アンケート調査いたしました四百六十六社から答えをいただいたわけでございますが、その中で持ち株会社の採用の可能性について、採用したい、条件によってはぜひ採用したいということと採用を検討しているというこの両方を合わせまして三七・七%の回答をいただいております。それから、まだ検討はしていないけれども大いに関心がある、こういうのが五〇・九%でございまして、この両方を合わせますと、関心を持っておるというのが九割ということでございました。  そういうこともございまして、先ほど申し上げましたけれども、当然のことながら、これが解禁されました後の具体的なものというのは、個々の企業がそれぞれの場に応じて選択する問題でございますから、直ちに今の数字が私は持ち株会社の有用性につながるとは思いませんけれども、今申し上げたように一年前の段階でそういう具体的な数字が出ておるということも、私はその関心の強さをあらわすものではなかろうかこんなふうに思っておるわけでございます。
  138. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 実は、日米の経済摩擦の中で、日本の系列の問題だとかグループ化の問題というのはかなり前から取り上げられていましたですね。私も民間のメーカーにいましたのでこの辺の事情というのはよくわかるんですが、昔ほど、例えば自動車一台をつくるにしても、タイヤはどこどこ、あるいは何々はどこどことばあっと決めるんじゃなくて、いわゆる一社発注ではなくて、かなり分散をして発注してリスクを軽減するとか、あるいはコスト競争をしてもらうという意味で、さまざまに、例えばトヨタの下請に日産が発注するというような形のあれは出てきましたですね。出てきましたけれども、やはりアメリカあたりから見ますと、依然として参入の障壁になっているのはそういうグループとかあるいは系列だとかいうものがあるんじゃないかという指摘があります。  先だって経団連の内田事務総長にもお見えをいただいてお話をお伺いした際に、在日のアメリカ商工会議所がこの持ち株会社の問題について解禁をすべきだという報告書をまとめたと。これはたしか九五年だったというふうにお聞きをしておりますけれども、実は、私も昨年在日アメリカ商工会議所のグレン・フクシマさん、これは副会頭だと思いますが、お話をお聞きしました。この報告書というのは、在日商工会議所の中に三十幾つかあるいろんな部会の中の一つの部会の報告書だと。なおかつ、その報告のベースになっているのは実は経団連の報告書の内容をベースにしてつくったと。いろいろとその後の情報等を収集してみると、むしろ持ち株会社解禁グループ化やあるいは系列化の強化につなからぬか、あるいは拡大につながるんじゃないかという懸念もないわけではないという話がグレン・フクシマさんからされているんです。  ですから、私は、必ずしも海外といいますか、外国からこの問題についてああせい、こうせいと言われたからそれをやった、私はそういうやり方がいいとは言っているんじゃないんですよ。何か海外にもそういう声があるんだ、したがってという声を時々、先ほど経団連のお話をしましたが、私は、それはちょっと間違いなんじゃないかと思うんです。  そういう意味で、私は、確かに先ほど最初に申し上げたようにグループ化とか系列化というのは昔に比べれば少し弱くなってきました。六大企業集団の場合でも、同じ系列のところに発注するなんというのは本当にわずかな比率になってきていますけれども、そういう懸念があることは事実なんですね。このことについて、今度の持ち株会社解禁がどういう影響を与えるというふうに通産省としてはお考えになっているか、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  139. 政府委員(渡辺修君)(渡辺修)

    政府委員(渡辺修君) 今、先生指摘ございましたように、過去の日米構造協議その他特に外交・経済交渉の場において、日本の民間の系列企業の存在が外国品の対日輸入の障壁になっているんじゃないかという議論があったことは事実でございまして、日米構造協議の最終報告においても、そういう懸念に対しては系列関係をより開放的なものにしよう、あるいは透明性にしよう、あるいは独禁法の運用をより厳格にしよう、こういったようなことがうたわれておるわけでございます。  ただ、現在の経済実態でございますけれども、例えば今、先生は具体的に日産とトヨタの例を引かれて、自動車の例で御指摘がありました。まさに実態はそのとおりでございまして、系列関係はかなり緩やかに錯綜いたしてきておるという状況でございます。  それを具体的にあらわします数字等を申し上げますと、例えば今回話題になっております財閥系の六大企業集団でございますが、それの六大企業集団内での取引というのが一体どういう数字になっておるかという推移を若干数字を挙げてみますと、六大企業集団の平均で見まして、売上高、つまり企業集団内での取引の売上高というのは、昭和五十六年では大体一〇・八%というのが企業集団内での取引だったのでございますけれども、平成四年ではこれが六・八%ぐらいということに比率が低下いたしてきております。また、仕入れ比率で見ましても、昭和五十六年一一・七%でございましたのが、七・七%ぐらい。そういうことで、いずれも集団内の取引比率というのがウエートを落としてきておるということでございます。これは恐らく、先ほども申し上げましたように、あらゆる錯綜したそれぞれの専門分野に応じた最も効率的な企業経営が行われることの反映ではなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございます。  そういう数字の実態を眺めるに加えて、先ほど申し上げましたような自動車部品の一連の動き、さらにこれからもっと欠きぐあらわれてくるだろうと思い、既にその端緒が出ておりますのがいわゆるパソコンその他ネットワークを通じますエレクトロニックコマースによる各種の部品あるいはアセンブリーメーカーとの間のネットワークによる仕事でございます。これによりまして、今までどちらかというと系列で結びついておったものが、系列をある程度オープンにすることによって、最も効率的に情報を収集しあるいは部品を収集することでコストを下げることによって逆に製品で勝負する。こういうことがかなり大きくなっておりますし、恐らくこのエレクトロニックコマースが現実化していく過程において、従来とは全く変わったような、従来の系列とは異なります新しい企業形態になっていくんじゃないか、こういう要素がこれからますます強まってくると思っておるわけでございます。  今申し上げましたような経済実態、さらには将来の電子技術を利用した新しい取引形態、そういうふうなことを頭に置きますと、私は、持ち株会社解禁によって、今先生指摘のようなそういった懸念が皆無だとは申し上げません。そういうことを危惧される一部の御意見があることは承知いたしておりますけれども、今回その解禁に当たって事業支配力過度集中を招くというようなことはゆめないんではなかろうか、こんなふうに思っておるわけでございますし、かねて日米構造協議でも報告書に書いておりますように、もし万一そういうことがある場合には、独禁法の運用その他我々行政当局としてもやるべき透明化のための最大限の努力をしていきたい、このように考えておるわけでございます。
  140. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 そこで、今国際的な関係についても若干触れたんですが、国際的なハーモナイゼーションということで、むしろヨーロッパやアメリカの場合には、持ち株会社というのはある意味じゃかなり当たり前になっていたためということもあるでしょう。それから、アメリカの場合にはかなり別な制約がありますから、そういう意味で使い勝手が悪いと思っておられるのか、その辺はちょっと日本の企業の場合と事情は違うのかもしれませんが、一般的に経済全体の中でそう有用に活用されているというふうに私なんかは余り聞いていないんです。それから、例えばドイツの場合には、例の持ち株会社の優等生と言われていたダイムラー・ベンツが事実上持ち株会社から撤退をするような動きがございますね。  そんなことを考えますと、日本の場合に、まさに世界と伍して競争しようという前提で物を考えた場合に今何が必要なんだろうかというふうに考えますと、私は、むしろ強力な本社機構といいますか機動的、機能的に動けるそういうことであって、資本とかさまざまなそういうお金の方の面での持ち株会社というイメージとはちょっと違ったふうに実は考えているんです。  いろいろ考えてみますと、具体的に経営者の方やあるいは財界の皆さんとお話をしていますと、分社化の話が出てきたり、それからリストラの話がよく出てくるんです。さまざまな分社化やリストラの話を聞いていますと、何かリストラというのは、私は広い意味考えれば決して頭から否定していないんですけれども、イメージがよくないんです。人員整理やなんかにどうもぴんときちゃうんですね、これは私の誤解であればいいんですけれども。それから、例えば分社化というような場合は、もうかっている事業部あるいはもうかっていない事業部を労働条件で格差をつけようとかという発想につながっていく。考え過ぎだよと言われればそれで結構なんですけれども、そんな、つまりマイナスのイメージしかないんですね。  それから、具体的にそういうものが、これは先ほど通産省の四百数十社の調査がありましたけれども、新聞等でちらちらとお見受けしたり、あるいはこれはたまたまですから名前を出していいのかどうかわかりませんが、行政改革委員会の規制緩和小委員会の今座長をやっておられる宮内さんあるいはダイエーの中内さん、大体オーナー経営者に多いんです、これを使ってみたいというふうにおっしゃっている方は。オーナー経営者の場合の使ってみたいという考え方は、普通のところの例えばメーカーなんかの場合とちょっと私は視点がずれているんじゃないかというふうな気がしてならないんですが、その辺はどんなお感じをお持ちでしょうか。
  141. 政府委員(渡辺修君)(渡辺修)

    政府委員(渡辺修君) 経済実態あるいは企業での経験を踏まえての先生の御質問でございまして、大変難しい御質問だと承知いたしますけれども、御案内のように、既に我が国の企業のグローバライゼーションで、海外で事業活動をするときには諸外国にこういう法制というのはございませんものですから、それを利用してジョイントベンチャーをつくるとかあるいはそれぞれの国の持ち株会社を利用するとか、外の面での活動というのは幾つも例が出てきておるわけでございます。問題は、それを国内においてやる場合にどれだけこれが活用できるかということになってくるんだろうと思います。  そこで、もう繰り返しませんけれども、先ほど検討しておるのが三七%、さらに非常に関心を示しているのは五割と、こういうことでございまして、それは恐らく今先生指摘ございましたように、一般の大企業会社経営形態の場合とそれから中堅企業の場合と、それからいわゆるオーナー型の場合と、それぞれ私は違ってくるようないろんな企業戦略を練っておるんだろうと思います。そこが具体的にどうこれから出てくるかというのは、必ずしも私個々の企業のこれからの経営戦略というのにつまびらかでございませんのでそこは一概に申し上げられませんけれども、いずれにいたしましても、そのあらゆる可能性を、選択肢を広げるというところが実は今一番求められておるところであって、しかもグローバルな経済になったときに、諸外国で、外では自由にできることが国内では全く手を縛られているという内外の差異に基づく各種の格差が出てくるということが一番今我々問題視しなきゃいけないことではなかろうかと、こんなふうに思っておるわけでございます。  そういうことで、今回のこれに伴いまして、私は今まで外で行われていたような形で国内でもいろんな工夫が行われるだろうと思いますし、もう一つ大きいのは、外資の動向でございます。特に外資系企業は、いろんな形で外で経営を行っておりますが、日本に入ってくる場合には、現在持ち株会社というのはございませんものですから、したがって外国の、向こうで持っておる持ち株会社のそれぞれの子会社孫会社を日本に全部つくって縦系列で経営しているとか、いろんなそれぞれの工夫があったわけでございます。これが、恐らく外資系企業にとってみますと、日本でジョイントベンチャーをつくるとか、あるいは独自の企業戦略を展開する上で、今回の解禁というのは大変、それだけのノウハウを持っておるわけでございますから、私は、従来とは違った自由度を増して外資の進出というのが大いに期待されるんではないか。  幸い、今いろんな経済環境が変わってきておりまして、十三対一ぐらいの割合で日本の場合は海外投資に対して対内受け入れというのは圧倒的に少なかったのでございますけれども、昨年一年間を見ますと急速に外資の日本への進出というのがふえてきておるわけでございます。これは私は、魅力ある事業環境を整備するという意味で非常に好ましいことだというふうに、投資の片貿易が是正されつつあるわけでございます。そういう意味で、今回の独禁法改正がそれにさらなるコントリビュートをしてもらえます。それは非常に経済構造改革で我々が目指しております目的にもかなうんじゃないか、こんなふうに思っておるわけでございます。
  142. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 ありがとうございました。音頭役といいますか旗振り役の通産省のお話ですから、それを私としては、真に受けると言うとしかられますけれども、しっかり受けとめておきたいと思います。  そこで、公正取引委員会の方にちょっとお伺いをしたいんですが、時間の関係もありますので少し要約をして質問させていただきます。  前回のこの委員会の中でも、たまたま野村や一勧の問題が大きな話題になっている時期にちょうどこの委員会がぶつかったものですから、さまざまに日本の株式会社という会社のあり方についての議論がございました。  私は、日本の株式会社というのはヨーロッパあるいはアメリカあたりとは少し違う。先ほど梶原先生の御指摘の中にもありましたが、約七割の株を法人が持っているという実態、このことが結果的に企業に対するチェック機能を働かなくさせているんじゃないか。グループやあるいは系列による株の持ち合いという問題ももちろんあるでしょう。そういう問題点が今ここに浮上してきているわけですね。そのことと、今ここで持ち株会社解禁しようということとは必ずしも、イコールで議論することがいいかどうかの議論はもちろんあります。しかし、結果として解禁をするということのゴーサインを公正取引委員会としては出すわけですね、ここで法律として。ですから、そういう意味での公正取引委員会の責任というのは非常に重くなるというふうに私は思うんです。  先ほどお話をしましたように、平田先生からも御指摘がありましたが、例えば三千億円未満の場合にはほとんどチェック機能が働かないわけですね、はっきり申し上げますけれども。あるいは十五兆円を超える部分については禁止ですよと。それはさまざまな類型やガイドラインをこれから示されますけれども、そういう意味では公正取引委員会の責任というのは非常に重くなるんですけれども、今の公正取引委員会の体制でこれが十分できるというふうにお考えになっておられるのかどうか。  昨年、公正取引委員会の機能強化を実施していただきましたですね。総局制をしくと同時に人員についても若干ふやしていただきました。これは、昨年の場合には部分的な解禁にとどまっていたんです、あの当時の公正取引委員会の見解が。今回の場合には事実上の、全面解禁とはもちろん言いませんけれども、原則自由に近い形の解禁になるわけですね。なおかつ、弊害があったらば規制をしていくという考え方に近づいているわけですね、今度の考え方というのは。弊害規制をやるという場合にはやはりかなり網の目をきちっと張っておいていただかないといけない。そういう体制が今の公正取引委員会で可能なんだろうかという心配があるんですが、いかがでしょうか。
  143. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) 私は、公正取引委員会委員長を拝命しているわけでございますけれども、そういう御質問がありましたら当然大丈夫ですと言わざるを得ない立場にございますけれども、正直なことを申しまして、やはり公正取引委員会のこれまでの歴史あるいはこれからの仕事の内容を見まして、果たして今のままでいいだろうかという危惧というかそういう悩みがあるわけでございます。  もちろん、昨年はこういう組織改正をちょうだいいたしましたし、また増員なんかの難しい事情のときに毎年十数人の増員をいただいております。しかし、増員をいただいたといっても、これはまだ初年兵でございますからきょうから使い物になるかというと、またおしかりを受けるかもわかりませんけれども、なかなか戦力になりがたいわけでございます。だから、そういう意味公正取引委員会もいろいろ御配慮をいただきながらも十分な力をなかなか発揮できないんじゃないかというおそれも持っております。  さらに、先ほど御指摘のように、事前規制という言葉がいいかどうかは別としまして、事前に網をかけているところから今度は事後に一々チェックしていくということになりますと人の数も要るわけでございまして、そういうことでもなかなか人も足りないなと、今五百五十人ぐらいおるわけでございますけれども。そういうことで、これが一大悩みであります。  だから、私は部内で、やはり遠いところを見据えて一人一人が力をつけるしかないんじゃないか、この行政改革の時代に何百人欲しいと言ったところでこれはなかなか実現できるものではありませんから、一人一人それぞれ専門家としての力をつけ、またゼネラリストというかそういう意味でも力をつけていくしかないんじゃないかということを言っているわけでございます。  御質問に対して万全であるというお答えができないのは極めて遺憾とするところでありますが、真相はそういうところでございます。
  144. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 アメリカの場合の公正取引委員会の陣容と比べまして、ただ数だけ言っているわけじゃないんですけれども、まだまだ私は手薄だと思うんです、はっきり申し上げて。さまざまな規制緩和をすればするほど必要になってくる部分というのがあるんですね。ぜひ公正取引委員会としても、確かに今、行政改革あるいは財政改革の時代ですからなかなか声が上げにくいというのはわかりますけれども、自信を持ってやっていただきたいというふうに思います。  そこで、大蔵省にもお見えをいただいておりますが、これは確認ですのでできるだけ端的にお答えをいただきたいと思うんです。  一つは、先ほども梶原先生やあるいはその前段で林先生との議論にもございましたが、いわゆる持ち株会社親会社とそれから子会社との間で、例えばAという会社があったとします。Aという会社株主総会で、Bという工場をAダッシュという子会社にしました、C工場をBダッシュという子会社にしましたといった場合に、従来で言うA会社の方の株主の方々の保護というのは現在の法律で十分になし得るんでしょうか。本来法務省のあれなのかもしれませんが、大蔵省のベースで考えてどうなのかというのをちょっとお聞かせいただければと思います。  それからもう一つは、連結納税制度の話ですね。  連結納税の話というのは、先ほどもちょっと議論がありましたが、今度の解禁が使い勝手がよくなるには連結納税制度が必要だというのは私は理解をしているんです。ただし、今の財政の実情を考えますと、さまざまな分野で今財政の支出をカットしようということでやっているわけです。そういう中で連結納税制度だけが先行する形の議論には多分ならないとは思うんですけれども、仮に議論を俎上にのせる場合には、そこで多分瞬間的には税収は減になると思うんですね、かなりの部分。その部分をどこでカバーをするのかという議論をきちっとした上でやっていただかないとこれは困るという意味で、できるだけその議論は、恐らく税制調査会等の場でやられるんだろうと思いますけれども、透明性を持ったものにしていただきたい。  この二点だけひとつ、要請を含めておりますので、簡単で結構ですから、もしお答えがありましたらお聞かせをいただければと思います。
  145. 説明員(山本晃君)(山本晃)

    説明員(山本晃君) 今、先生からの御質問は、分社化された場合のその株主の権利保護の問題だと思います。  基本的には、私どもはこれはむしろディスクロージャーという観点から考えておりまして、そういう意味では、現在、企業会計審議会におきまして一昨年の十月から実は連結財務諸表制度の見直しの議論をやってまいりまして、そこで先週の金曜日にこの意見書が公表されたところでございます。  持ち株会社関係について申し上げますと、持ち株会社の場合にはその業績というのは一般事業会社に比べまして傘下の子会社の業績に左右されるということになるわけでございますので、連結ベースの情報、特にセグメント別の情報の重要性が高まるというふうに考えられるわけでございます。そのために、例えば分社化された場合には、その主要な子会社の損益情報等、開示項目についてもさらに検討を加えて、必要な措置を講ずることが適当であるという意見書をいただいているところでございます。  私どもとしましても、こうした企業会計審議会の意見書を踏まえまして、いわゆる一般的に持ち株会社のディスクロージャーの充実の問題として的確に対応してまいる所存でございます。
  146. 政府委員(尾原榮夫君)(尾原榮夫)

    政府委員(尾原榮夫君) 連結納税制度についてお尋ねをいただきました。税制はもとより公共サービスの歳入調達手段でございまするから、減税につながるようなものはその代替財源をどうするかという議論は、税制を議論する場合には当然やっていかなければならない議論だと思っております。  ただ、この連結納税制度と申しますのは、税収減の前に税制としても相当研究していかなければならない問題だというふうに私どもは考えているわけでございます。つまり、現行の法人税制は、商法に基づきまして個々の法人を納税義務者としてとらまえております。今度は一つ企業集団が課税単位に変わってくるわけでございまするから、いわば地方住民税等の地方法人税を含めて我が国の法人税の基本的考え方を変更することになるわけでございます。  したがいまして、私どもの理解では、この連結納税制度というのはまさに株主本位の経営がなされているというようなところに最も当てはまるのかなと思っておりますけれども、そういう観点から見て、我が国の企業経営の実態がどうなっているのか。現在、子会社との間で損出し益出しとか、あるいは単体をよく見せかけようというような話もございます。先ほどの先生の話とも関連するかもしれませんけれども、そういうことをどう考えるのか。税制は国民の信頼が大切でございますので、そういう点から始まりまして、じゃ商法はどうなんだろうかどう変わっていくんだろうかということも検討しなければならないと思っております。  それからさらには、租税回避の問題をどう考えるか。また、今、法技術的に単体課税ですべての法律ができ上がっておりまするから、調整ができるのかできないのか。そして、先生に最初に御質問いただきました税収減の話をどうするかと、こういう問題につきまして慎重な議論が必要とされる研究課題であろうというふうに考えているわけでございます。
  147. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 ありがとうございました。  それじゃ、時間がありませんので、労働省の方にお伺いをしたいと思います。きょうは労政局長にお見えをいただきましたが、時間の関係がありますので、二つに絞ってお伺いをいたします。  先ほどの平成会の平田委員の質疑を私も注意深くお聞きをしておったんですが、一つだけ確認をさせていただきたいんです。労働省としては労働組合法の改正については現段階では考えておらないとおっしゃいましたが、これは事実ですか。
  148. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) この持ち株会社解禁に伴います労働組合法の改正問題につきましては、先生も御承知のとおり、専門家会議をやりますのとほとんど相前後しておったかと思いますけれども、労使のスタディーチームで相当熱心に御議論をいただいたというふうに私どもは思っております。  そこでまとめられた報告書を見ますと、さまざまな点において労使の意見は共通しておったかというふうに思いますけれども、ただ一点、労働組合法の改正という点に関しましては、労働組合側の方々の意見は改正が必要である、使用者側の方は現行法で十分対応できるので必要ない、こういうことで、全く別の御意見でございました。  労働関係の法制をどうするかということにつきましては、当事者である労使のコンセンサスの形成、これをどのように図っていくか、図られてきているか、現実がどうなっているかといったことをやはり踏まえて検討しなければいけないというふうに考えております。  そういう観点からいたしますと、現段階におきまして、労働省としてそれをしなければいけないということは労使のコンセンサスの面からも難しいというふうに思っておりますし、かつ現行法制におきまして、じゃ十分対応できていないということがあるとすれば検討しなければいけないということになろうかと思います。  御承知のとおり、既に最高裁の判例で確立された考え方があるわけでございますので、それにのっとって、労働組合法を実際に施行しているといいますか、具体的な事案があった場合に、救済機関として機能しております労働委員会におきましてもその考え方によって適切に事案を処理してきておりますので、そういう観点からすれば、現段階においては必要性はないというふうに考えているわけでございます。
  149. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 非常に問題だと思うんですね、私は。  少なくとも昨年あれだけ議論をしています。それでスタディーチームのああいう結論が出ています。ことし議論を引き継ぎまして、二月二十五日に、連合と経団連、日経連の合意ができました。それを受けて、連立与党は今度の独占禁止法改正案を出したわけです。今の局長のお答えを連合、きょうは連合の傍聴の方はおらないと思いますけれども、もし聞いたら、これをほごにしてくれと言うかもし札ませんよね。  私は、少なくともこの法律を出す前提として、連立与党の皆さん方は労使の合意を受けてこの法案を出した、私もそう聞いているんです。もちろん、それはこれから検討するんですから、改正が必要なのか必要でないかの議論はあります。しかし、今の局長のお答えのように、改正の必要はありませんという前提で、これから二年間何をやるんですか、時間つぶしをやるつもりですか。
  150. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 先生がおっしゃいましたように、確かにこの法案が提出されるに至りました経緯では、労使が労働組合法などの改正の問題も含めて検討し必要な措置をとるという合意があって、それを前提として提案をされたということは私どもも十分承知をいたしております。  したがいまして、午前中にも御指摘がございましたけれども、この労使の合意、そしてそれをもとにしたというふうに私ども思っております衆議院での附帯決議、こういったことを受けまして労使の協議の場を設けるわけでございます。  私が先ほど現段階において労働省として必要性はないというふうに判断していると申し上げましたのは、一つは労使のコンセンサスの問題、それから法的にも現段階では十分対応できているんだという問題、二つの点を申し上げたかと思いますけれども、この労使の協議の場においてどういう議論がこれからされていくかということは今の段階では全くわからないわけでございます。したがいまして、労使に入っていただいた協議の場での検討の結果を踏まえて対応したいということが一点でございます。  また、持ち株会社解禁をされまして、これがどのように活用されていくかといったようなこと、持ち株会社を頂点とする企業グループにおける労使関係にどういったようなことが実態として出てくるのかということも見きわめなければいけないという問題があろうかと思います。  検討期間二年というふうにされておりますけれども、この二年の間に、労使で十分事実関係について共通認識を持ち、真摯な御検討をいただけるというふうに期待しておりますし、労働省としてはそれをもとに、そこの御審議の経過も踏まえて対応したいというふうに考えているわけでございます。
  151. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 労働省というのは一体何の省なのか。先ほど平田委員から労働省令を御紹介していただきましたけれども、こういう言い方は余り適切じゃないかもしれませんが、今、省庁再編成の波が押し寄せてきていますね。  私は、やっぱり労働省は必要だという考え方を今でも持っています。しかし、今の話を聞いていますと、片方は使用者側、それから労働者側の意見が必ずしも一致をしていないから労働省が動けませんと、そういうことですね。ということは、労使で合意をすれば何でもやるということですか。そういうことじゃないでしょう。労働省というのは役割がきちんとあるはずなんです。私は、何でもかんでもやってくれと言っているんじゃないんですよ。労働省自身の今のスタンスが問題だと言っているんです。  本当はきょう、もっと労働省をかばうつもりでいたんです、はっきり言って。スタートのときに、これは公正取引委員会にクレームをつけたいんだけれども、最初からこういう関連法制の問題について十分な周到な準備がなかったんですよね。後になって労働問題が出てきて、さあ労働省はというものだから、労働省だって決して、こういう言い方がいいかどうかはわかりませんけれども、おもしろくないですよ、はっきり言って。それはわかるんです。だけれども、これだけ大きな問題になってきたんです。なおかつ法案が一年間も先送りされたんです。ようやくここでゴーサインしたその条件というものをきちっと踏まえてもらわなければならない。  私は、先ほど平田委員も言っていましたけれども、大企業のことなんか心配していないんですよ。労働組合もないような小さい企業のことが心配なんです。しかも、今度の三千億円以下は公取の監視の目も届かないんです。とすれば、従来まで事業持ち株会社の段階でもあった事例がこの持ち株会社解禁をされればふえるということは間違いないんです、これは。減るということは絶対ありませんから。とすれば、今までも問題だったんです。  だれに言っても十年、二十年かかる裁判が当たり前だなんて言う人はいないでしょう。とすれば、それに対する対策を立てる。ただ一言でいいんですよ、使用者とは何々だと書けばいいんです。労働基準法にも労働安全衛生法にも書いてあるんです。なぜ労働組合法にだけは書けないんですか。そういうことを言っているんです。さまざまな書きようがあるだろうから、専門家の皆さんも含めてこれから議論をしたらどうですか。審議会がだめならば懇談会でも何でもいいんです。いわゆる白紙の状態でなぜ議論ができないのかと言っているんです。  あらかじめ必要ないという前提でこれから二年間やるとなれば、時間つぶしでやるとしか私どもとしてはとれないんです。そういう状態の返事でこれに賛成しろと言われても、私ちょっとちゅうちょしますね、はっきり申し上げて。いかがですか。
  152. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 何度も同じことしかお答えできないかと思いますけれども、労働組合法の改正を含めた検討がこれから労使の協議の場で行われるというのは労使の合意にあるとおりでございます。そういう意味におきまして、この二年間の検討期間におきましてさまざまの実態、また持ち株会社解禁された後の状況、こういったことを踏まえて労使の間で御議論がなされるというふうに私どもは期待をいたしているわけでございます。  そういう意味におきまして、その結果を踏まえて対応するということは先ほど来申し上げているわけでございますが、今どう考えているかというふうにお尋ねがあれば先はどのようなお答えをせざるを得ないということでございます。
  153. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 これ以上やると水かけ論になりますからこれ以上は言いません。後ほど官房長官が見えたときに確認をさせていただきます。  私は今は民主党にいます。しかも、政権という意味では野党です。しかし、今度の法律は昨年からいろんなところでかかわってきました。昨年から何とかこの問題に早くけりをつけて実施に移したいというスタンスなんです、はっきり申し上げて。いろんなことを心配しながらも何とかけりをつけようじゃないかと。ですから、正直に申し上げますが、経団連あるいは日経連の人たちにも会いました、決着のつけ方についてね。肝心な労働省が全然その気になってくれないんじゃ正直言って本当に困るんです。  結論を出せと言っているんじゃないんです。白紙の状態で一回議論の場をつくって、組合であったりあるいは使用者であったりあるいは学識経験者を集めて議論をしていただきたいと言っているんです。それができないんですか、本当に。
  154. 政府委員(松原亘子君)(松原亘子)

    政府委員(松原亘子君) 今、先生お尋ねになった、それができないということを私は申し上げたつもりは全くございません。労使の合意を踏まえまして、この法案の成立を見た後にどういう形で協議の場をつくるかということも十分御相談しながら協議を行う、環境づくりといいますか、どういう形でできるかはこれからの問題でございますが、私どもとしてはそういう形でやっていきたいというふうに思っているわけでございます。  あくまでも労使の合意がスタートになっているものだというふうに認識しておりますので、十分関係労使と相談をしながらやっていきたいということでございます。
  155. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 時間ですので、後ほどまたやります。
  156. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 原始独禁法の解説書として、当時の司法省民事局第一課長の石井良三さんがお書きになった「独占禁止法」という本があります。    〔委員長退席理事沓掛哲男君着席〕 昭和二十二年に発行された本で、私も国会図書館でお借りして読ませていただいて大変勉強になりました。  この本の総論の部分にこうあるんです。「第一条に明確に規定されているように、国民経済の民主的で健全な発達を促進することが、独占禁止法の究極の目的である。」と。今でもこの立場は変わらないでしょうか。
  157. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 独占禁止法第一条に独占禁止法目的といいますか趣旨、あるいは具体的にどういうことをその規制対象にしているかという概要らしきものを書いてありますが、その中で、私的独占等を禁止し、事業支配力過度集中を防止して、「公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」というふうに書かれておりまして、前段の方に、ちょっと飛ばし読みをいたしましたけれども、不当な取引制限禁止であるとか事業支配力過度集中禁止するとかいうことを通じまして市場メカニズムをよりよく発揮させると。最終的に、今先生がおっしゃったような、消費者の利益を確保する、あるいは国民経済の民主的で健全な発達を促進するということが目的というふうに規定されているところでございますし、私どもも大変重要な規定であるというふうに思っております。
  158. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 一条を全部お読みになっていただきましたので、次に私が聞こうと思っていたんですが紹介だけにとどめます。  続けて、この石井さんの本は、  さて、独占禁止法は如何なる方法で右の目的を達成しようとするものであらうか。同法第一条は、この点に関しても明確な回答を与えている。「私的独占、不当な取引制限及び不公正な競争方法を禁止し、事業支配力過度集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進」することによって、右の目的を達成せんとし、又、これによって、その目的が達成されることを期待しているのである。 ということですが、今御説明のあったとおりだと思います。もちろん、この独禁法の一条は戦後五十年間ずっと変わらなかったわけですので今でも同じだというのはいわば当然なんです。  そこで、持ち株会社について少し伺いたいんですが、これまで持ち株会社禁止してきたのは、この一条の目的を達成するために、幾つかある方法の中で事業支配力過度集中の防止という方法の具体化として禁止されてきたと考えられていると思うんですが、間違いありませんか。
  159. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) おっしゃいますように、第九条で持ち株会社を全面的に禁止しておりますのは、第一条の規定の中での関連を直接的に探るとすれば事業支配力過度集中を防止するということでございますし、沿革的には戦前の財閥が復活をするというようなことを事前に防止するといいますか、そのために置かれた規定だというふうに理解をしております。
  160. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 ありがとうございます。  念のためにこれも紹介しておきますが、「商事法務」という雑誌の九五年五月五日号に、公正取引委員会事務局経済部企業課長の舟橋和幸さんが「独占禁止法における持株会社規制」という論文をお書きになって、その中に「持株会社の反競争性」ということを述べて、こうあるんです。   持株会社は、その機能が他の会社事業活動支配そのものであり、かつ、それ自体が経済力集中の手段であることから、事業支配力過度集中をもたらし、被支配会社の自己責任原則を曖昧なものとして、市場メカニズムの機能を阻害するおそれのある性格のものである。   また、持株会社は、他の会社支配するという面においては市場経済の競争原理に服することがないという問題もある。 いろいろ言われている理由を圧縮してお述べになっておりますし、その中にやはり事業支配力過度集中の防止という観点から禁止しているんだという御説明が当時の公取の課長さんからもされております。  そこで、改めて伺うのですが、これまで持ち株会社禁止してきた理由とされている事業支配力過度集中という概念について、わかりやすく御説明いただけますでしょうか。
  161. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 大変難しい御質問でございますけれども、単独の企業なり、あるいは持ち株会社グループなり、あるいは持ち株会社でなくて複数の企業結合関係によって、日本経済全体に対する、何というんでしょうか、他の企業に対する、あるいは自分の事業自身も含めて事業に対する支配が及ぶ、それが日本経済における公正かつ自由な競争の維持促進という観点から見るとそういう点について問題が出てくる、その程度に及んだ状態をいうものというふうに理解しております。
  162. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 今の御説明は、持ち株会社に限らず、事業支配力過度集中一般的な御説明だったやに思うんですが、これまで持ち株会社禁止するという理由に使われてきた事業支配力過度集中という概念のわかりやすい御説明をいただけますでしょうか、一般論じゃなくて。
  163. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 事業支配力過度集中という概念自体につきましては、持ち株会社の場合であろうとそうでない場合であろうと同様であろうと思っております。ただ、それを具体的にどういう形で規制をするかという点については、場合によっては差が生ずるということはあろうかと思います。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕
  164. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 どういう場合であろうと同じという御説明なんですが、今回持ち株会社解禁するという際に、事業支配力過度集中に至らない持ち株会社解禁するという理由が付せられています。ですから、私はこの事業支配力過度集中という概念が今回の法改正の非常に大事なポイントだというふうに思っております。  そこで、いろいろ読んでみても今回の法改正に当たっての説明は九条の五項の中にある説明でありまして、今御説明のあった概念と九条の五項の概念の相関関係はどういうものなんでしょうか。
  165. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 事業支配力過度集中を防止するというのは、持ち株会社形態をとろうと、あるいは持ち株会社形態でなくて企業グループというような形でありましても、やはりその事業に対するあるいは日本経済に対する影響力が大きくて、公正かつ自由な競争という市場における市場メカニズムの円滑な機能が期待できなくなるようなそういう状態を指すものだと思っておりますけれども、それで持ち株会社一定の範囲で解禁をするという場合に、事業支配力過度集中を招くような持ち株会社というのは当然これを禁止しなければならないというわけであります。  それで、具体的にその事業支配力過度集中ということを法律の中である程度といいますか、できるだけ明確にする必要があるということで置いたのが九条第五項の過度集中定義でございます。同じく過度集中の防止という第一条のところから出た規定として九条の二の規定がございます。これは一定の大規模事業会社につきまして過度集中とならないようにするための規制を設けておりますけれども、これは保有株式の総量につきましてその会社資本金なり純資産額ということをメルクマールにしてその範囲内にとどめるという規制の方法をとっておりますけれども、これも基本的には事業支配力過度集中を防止するための規定であるということでございます。
  166. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 今御説明を伺っておりまして、まだまだわかりにくいんですが、しかし、おっしゃることはやはり量的な問題を一つの物差しにされているように私には聞こえるんですね。  先ほど紹介した石井さんの本の中には持ち株会社の設立禁止について説明をされた部分がありまして、少し長いですけれども、引用させていただきます。   持株会社目的乃至機能は、これを二つの方商に分けて考えることができる。一つは、支配統制の機能であり、他の一つは、支配資本節約の機能である。   持株会社の貨幣資本は生産資本に転化されることなく、単にその会社の株券が他の会社の株券に置き代へられるだけのことである。この証券代位の方法を何回もくりかへすことによつて、持株会社支配者群は、小額の資本をもつて多数の会社支配することができる。即ち、支配者団は先づ持株会社のマヂョリテイを所有し、その持株会社は他の持株会社のマヂョリテイを所有し、更にその持株会社は其の下に位置する他の持株会社のマヂョリテイを所有するという様に何回も繰返へされ得る過程が発展する。茲に於いては、その組立の層にしたがつて、支配せんとする産業企業の全資本の二分の一、四分の一、八分の一、十六分の一、三十二分の一等幾何級数的に少き自己資本を以て支配する事が可能となるのである。   持株会社組織は、法律的手段による企業支配の最も確実にして有力な方法である。と同時にそれはまた、最も簡単容易な会社支配の方法でもある。   かくして、一部の支配者たちは、自から事業会社経営することなく、又、会社の合併、営業の譲受等の複雑な手続によることなく、その欲するままに、その欲する企業を自由に選択して、持株会社組織を利用して、これを支配することができる。 とあるんです。  つまり、最小限の出資によって最大限の支配を獲得することが可能となるという支配資本節約機能がこれは持ち株会社の機能であって、ここから持ち株会社禁止しなければならないという説明だというふうに私は理解しました。つまり、量の問題もさることながら、質的な問題としてやはり原始独禁法の持ち株会社の設立禁止説明はされていた。  今度の法改正についての御説明はこの観点が抜けているんじゃないかと私は思うんですが、いかがですか。
  167. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) お答えいたします。  今回の改正法案では、先生おっしゃるように、九条第五項で総合的事業規模がどうであるというようなことを過度集中定義規定として置いておりますから、量的なといいますか日本経済に対する影響力がどのぐらいあるかということをメルクマールにしていくということはおっしゃるとおりでございます。  ところで、持ち株会社という性格について今、石井大先輩の御著書を御引用になりましたけれども、確かに五〇%を超える株式所有する、一〇〇%子会社でなくて五〇%そこそこの株式所有でもって事実上一〇〇%の資本を出したのと同じような支配といいますか、事業活動ができる、そういう面があることはおっしゃるとおりだと思います。それは先日も御質問いただきましたように、私どもの方も四章研の報告書の中でも、表現は違いますけれども、持ち株会社はその機能が他の会社事業活動支配そのものであるということで、それ自体が経済力集中の手段となりやすいということを記載しております。  ただ、持ち株会社の場合に、先日も申し上げたかと思いますけれども、五〇%そこそこの株式所有支配をするといいますか、持ち株会社グループを形成するか、あるいは一〇〇%の子会社を中心とする持ち株会社グループを形成するか、それはいろいろ企業判断、あるいは先日も申し上げたかと思いますけれども、アメリカにおきましては一般的にといいますか比較的多いケースは、一〇〇%の子会社を下に置くという形のものが多いように承知をいたしております。
  168. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 もう少しわかりやすく答えていただくためにまた聞くんですが、つまり今回の検討の中に量的な問題だけではなくて支配資本節約機能というものが持ち株会社の本質としてあると、その点について検討されたんですか。
  169. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) これも四章研の報告書を引用しながらの御説明で恐縮でございますけれども、持ち株会社禁止している理由として三つ挙げております。一つは沿革的な理由ということで、戦前存在しましたような財閥が復活することのないように持ち株会社の全体を禁止したというのが一つ。それから、持ち株会社の性格として、今申し上げましたように、持ち株会社という方式自体が経済力集中の手段となりやすいという点。それから三番目に、市場の開放性・透明性の確保といいますか、我が国の現在の株式保有状況企業グループの存在その他、そういった現在の日本の経済の状況を見た上で、やはり第九条の存在を検討する必要があるということで、一番目の沿革的な理由というのは、もうそういうことはまず想定しなくていいだろうということでございますが、二番目、三番目の点については、その後検討した上で全面解禁ということではなくて、過剰な規制になっている部分を除外するといいますか、解禁するという議論をしていただいた、我々もそれが適当であるというふうに考えております。
  170. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 四章研を使って御説明されたんですが、私は四章研の評価自身が原始独禁法の当時の立場と変わってきているというふうに理解しております。  ですから、今御説明のあった中で、「経済力集中の手段となりやすい」というくだりを引用されたんですが、なりやすいということの認識からでは、なった場合に、つまり弊害規制したらいいじゃないかという論も成り立ち得るわけですね。  しかし、この昭和二十二年の石井さんの本をしっかり読ませていただきますと、石井さんがおっしゃっているのは、支配資本節約機能そのものが経済力の過度集中になるということを指摘されているんではないか。つまり、原始独禁法のときの解説と四章研の立場というのは、そこは違うんですね。  もう少し紹介しますと、石井さんの本の中に、原始独禁法の第十条、事業会社株式保有の禁止のくだりがありまして、そこにこうあるんですね。   株式の取得は、原則として被取得会社株式の全部を取得する場合でなければ、許されない。このことは、一見奇異のようにみえるが、事業支配力過度集中を防止しようとする見地からすれば、極めて当然のことである。株式の保有は、持株会社について述べたように、支配資本の節約をもたらすものであるから、株式の一部取得を認めることは、被取得会社に小額の資本を拠出した取得会社に、一般株主の拠出した多額の資本を利用し、支配させる結果を招く。このことは、取得会社事業支配力過度集中させる危険がある。 というくだりなんですね。  つまり、持ち株会社が被支配会社株式を、全部なら問題はない、しかし一部取得することによって、これが他の少額の資本を拠出した株主の多額の資本を利用し支配させる結果を招くのが、これがだめなんだ、事業支配力過度集中に当たるんだという私は概念だと、これがもともとの原始独禁法時代の概念ではないかというふうに思うわけです。  ですから、ここで四章研の理解、それから今法改正に当たって公取の方から説明のある概念は、原始独禁法のときの概念からずれている、私はこれは歴史的な定義に対しての不理解、誤解があるのではないか、あるいは意図的に持ち株会社解禁するためにこの概念を変えているんじゃないかと思うんですが、わかりやすい説明をお願いしたいと思います。
  171. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) わかりやすくという御指示でございますが、うまく御説明できるかどうか御趣旨に沿えるかどうかわかりませんけれども。  原始独禁法といいますか、昭和二十二年に制定されましたときの、今先生お読みになりました独禁法第十条、現在の規定は、会社は、国内株式を取得し、または所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる場合には、所有してはならないということで、取引制限になる場合だけを禁止しているということでありますけれども、独占禁止法が制定されました昭和二十二年のときの独禁法第十条の規定は、金融業以外の事業を営む会社は、他の会社株式を取得してはならないということで、会社が他の会社株式を取得することを全面的に禁止しておったわけでございます。  したがって、この当時の第十条の規定の位置づけというのは、現在は不当な取引制限になるようなものだけを禁止しているということでございますけれども、当時の解説書、今の石井さんの説明なんかもそうでございますけれども、過度集中の防止というものの中の一つ規定というふうに位置づけられていたと思います。  したがって、当時の規定ぶりのときの第十条と、それから現在の十条の意味づけというのは、それは当然違ってくるわけでありますけれども、持ち株会社あるいは会社株式所有する、それが特に持ち株会社のような場合ですと、それを主たる事業とする、あるいは今度の定義でももっときっい定義になりますけれども、主としてそういう事業をするということでございますから、経済力の集中の手段となりやすいという性格は強く持つ、強くといいますか、持つということは従来と同じだろうと思います。  ただ、第一条の「事業支配力過度集中」との関係でどういう規制が好ましいかということでございますけれども、従来のように持ち株会社は全部禁止しておくという選択肢もあるだろうと思いますし、なりやすいという性格を認めた上で、なおかつ過度集中にならないような歯どめをかけた上で解禁をするという選択肢もあるだろうと思います。
  172. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 私が聞きたいのは、そういう十条が変わっている説明じゃないんですね。そこに原始独禁法の十条とそして当時の九条、持ち株会社禁止と、それから金融業以外の事業会社が他社の株式を保有してはならないという説明両方支配資本の節約機能があるから、それが事業支配過度集中に当たって、これは禁止するんだという、形は違いますけれども、両方底辺では合流する、そういう考え方、概念があったと私は指摘しているんです。その概念が今、今度の法改正に当たっては全く無視されて量的な問題として九条の五項に入っている。これは変節ではないかということを私は思っている次第です。  これ以上議論してもあきませんので次に行きますけれども、最後に、私はそういう意味では持ち株会社は引き続き禁止すべきだという立場です。同時に、九条の五項で事業支配力のあなた方が言う過度集中に当たらない定義を盛り込みました。これを読んでも、何が禁止されるのかよくわからない。極めて不明確であり、ガイドラインにゆだねるということは罪刑法定主義からもよくないんじゃないかということを前回の質問で問題提起させていただきましたが、きょうはガイドラインに盛り込もうとしているライン、線ですわ、この線の引き方そのものについて少しお聞きしたいと思うんです。  もう時間がありませんから端的に聞きますが、例えばトヨタ自動車が持ち株会社を中心にした結合になった場合、これはこの九条五項によって禁止されるのか否か、いかがですか。
  173. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) トヨタ自動車が持ち株会社に転化した場合に、現在御検討をお願いしております九条五項の規定過度集中に該当するかどうかということでございますけれども、トヨタグループと言われるものの中で、現在手元にいろんな具体的なデータはありませんけれども、子会社として持っているもの、それから五〇%の株式は持っていない、もっと低い株式所有関係にあるもの、いろいろあるだろうと思います。  そういったもろもろの何というんでしょう、子会社あるいはその他の関連会社を傘下に置いたと、そういう持ち株会社ができたというふうに仮定した場合に、このケースの場合ですと、第五項の第一番目の類型、持ち株会社グループの「総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きい」かどうか、それから第三番目の類型として、「相互に関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていること」になるかどうか、第二番目のグループは金融会社を中心とするものでございますから、多分今のトヨタの場合ですと、その問題はないんではないかと思いますけれども、この第一番目なり第三番目のケースに当たるかどうか。具体的に総合的事業規模が大きいとか、あるいは相当数の事業分野にわたって著しく大きい、これを先日、当委員会の他の委員の御質疑の際に、具体的にガイドラインの中にどういう形で解釈を明確にするつもりかということで御説明を申し上げたかと思いますけれども、私どもとしては、それに沿ってこれを当てはめた場合に問題になるのか、禁止対象になるのかそうでないのかということを判断するべき問題だろうと思います。  ただ、第一番目のグループの場合ですと、総合的事業規模というんですか、持ち株会社グループの全体の規模が十五兆円を超えるということを一つのあれにしておりますので、多分私の記憶では現在のトヨタグループの総資産というのはそこまでいっていないということで、多分第一グループの問題としては出てこない。そうすると、第三分野の関連性のある方で問題になるかどうかということだと思います。
  174. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 もう結論だけ言っていただいたらいいんですが、第一グループには恐らくならないであろうと、総資産関係で。第三グループはどうですか。現状のトヨタですよ、それはどうですか。
  175. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 具体的にトヨタグループに属している企業がどんなものがあるのか正確に承知をいたしておりませんので、したがってきちんとしたお答えはできないと思いますけれども、印象だけで申し上げると無責任ということになるので本当は申し上げない方がいいのかもしれませんけれども、基本的にはトヨタグループというのは自動車あるいはそれに関連する部品その他のあれをやっているということでございますので、第三グループで言っております相互に関連する事業分野の相当数のものということに該当するかどうか、これはちょっと具体的に材料がありませんので、お答えは御容赦をいただきたいと思います。
  176. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 きのう質問通告してあるんですから、資料はすぐ手に入るはずですよ。どうですか、それはならないんじゃないですか。
  177. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 質問の通告があったかないかということをこんなところで申し上げるのはちょっとあれでございますけれども、私どもの理解しているところは、持ち株会社になったときに下請の関連で問題が出てくるのではないかと。従来はトヨタの下にあった下請企業、これが、持ち株会社の下にトヨタ自動車があって同じく持ち株会社の下にその下請企業というのか、部品製造業があると、そうなったときにという話だったように記憶しているんですが、誤解だったら大変申しわけありません。
  178. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 もう少しきちっと答えを準備していただきたい。しかし、なるということはお認めにならなかったわけですから、トヨタグループが丸々持ち株会社化になっても九条五項で禁止するということは今言えないわけですよ。  それから最後にもう一つ、第三類型は相当数の主要な事業分野で各事業分野におけるシェアが一〇%以上または順位が三位以内としておりまして、相当数というのは三つ以上ということですから、例えば都市銀行第三位の住友銀行、これは貸し出しシェアで十二・七%を占めておりますが、それと証券第一位の野村証券、受け入れ手数料で一四・五%を占めておりますが、この住友銀行と野村証券の二つが単一の持ち株会社に統括された場合、どうでしょうか。
  179. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 第三類型の場合の相当数の事業分野においてということでございますが、相当数ということについては現在のところおおむね五以上を考えておりますけれども、ただ、この第三類型につきましては、それぞれの産業の規模あるいは事業者の有力性の程度、そういったものも勘案する必要があるということで、例えば今先生指摘になりましたような金融分野におきましては、かなり規模が大きいといいますか、産業規模が大きいというところがありますので、三つの分野でもこれに該当するというふうに考えられるんではないかというふうに思っておりますけれども、そう考えたとしても、今先生おっしゃったように銀行と証券の二社だけの場合ということであれば、これには該当しないということになると考えております。
  180. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 今のやりとりでわかったように、トヨタといえばGMやフォードに次ぐ世界第三位の自動車メーカーですよ。国内のシェアは軽自動車を除いて三八・二%です。このトヨタが今でも系列支配が非常に強いということでいろんな問題が下請や労働者の中で起こっておりますが、さらにこれが丸々持ち株会社として統括されてもこれは禁止するんだということを今言えない。それから、住友銀行と野村証券を二つ傘下におさめる持ち株会社ができたとしてもこれも禁止はできない。  ですから、線の引き方そのものが、これほど既に事業支配力集中しているであろう企業企業群ですね、これをさらに支配力集中して強化していくために持ち株会社が設立されても防止できないということになろうとしていることについて、国民的なこれは批判が起こるであろうということを私は指摘して、終わります。
  181. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  182. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 速記を起こしてください。  引き続き、梶山内閣官房長官に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  183. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 自民党の斎藤文夫でございます。梶山官房長官を中心に御質問をさせていただきたいと存じます。  既にいろいろ我が党の議員あるいはまた各党の委員の方から、持ち株会社解禁問題についてはいろいろと御質問を重ねてきたところでございます。したがいまして、重複をするようなことが当然出てまいりますが、やはり総責任者の官房長官にお尋ねをするということをひとつお許し賜りたいと存じます。  まず、今回の持ち株会社解禁というのは、まことに日本経済にとりましてはかってなかった大きな出来事である、このように私は位置づけておるところでございます。  それも思えば、戦後のいわゆる昭和二十年、米軍に占領されて以降、米軍の占領政策の中でとられた政策が、御承知のように軍国主義を、封建主義を排して民主主義政策を日本に植えつける、農地解放によって地主階級を追放する、あるいは崩壊させる、同時に軍部と結託したと称される財閥を解体させる、これが戦後の米軍占領下における大きな経済政策あるいは思想政策であったと、このように私は認識をしておるところでございます。  したがいまして、戦後の財閥解体あるいは焦土と化した日本で経済力、工業力、日本全国のいわゆる当時の工業地帯というものは爆撃によって壊滅的な打撃をこうむりましたから、まさに裸の中から日本は出発したということが申せるわけであります。  資源を持たない日本にとりましては、原材料を輸入してきて、そしてそれに付加価値を高める生産をして外国に売る、言うならば貿易に活路を求めたのが戦後の日本の方向でございました。その結果、今日世界でも有数たる経済大国に発展をし得たことは、日本国民の知恵と力、努力のなせるところと、このように認識をいたしております。そのバックグラウンドは、考えてみれば、財閥が解体されて、本当にドングリの背比べのような時代もございまして、そういう中からかえって活発な自由競争が積極的に行われた、その集大成が今日の日本である、このように考えておるところでございます。  戦後間もないときに財閥解体をされたわけでありますから、過度経済力集中排除法が制定をされる、あるいはまた独禁法が制定をされる、今日までこういう経過を経たところでございまして、持ち株会社解禁は、言うならば財閥再編成につながる、こういう観点において、とりわけ終戦直後は厳しく監視されたところでございました。独禁法は、私的独占とか、あるいはカルテル、企業結合、独占状態等々を禁止して不公平な取引を是正する、こういう目的でつくられたわけでありまして、それなりの立派な効果を生んできたことはよく承知をさせていただいておるところでございます。  しかしながら、その後の世界的な国際化ということ、これは即日本も世界の大きな産業と伍して国際競争場裏の中で海外へどんどん進出をしていく、あるいはより生産性を高めるために海外へ現地生産という形のものでどんどんと進出をしていく、こういうような状況になりますと、当然我が国の事業持ち株会社は飛躍的に増大をいたしました。  詳しい数字を今持ち合わせておりませんが、昭和六十年と平成六年、約十年の間の対比は、実に三倍の規模に膨れ上がった。それだけ事業関連会社というものが日本の大手企業の中でどんどんと増加をしていった。こうなってきますと、好むと好まざるとにかかわらず持ち株会社解禁せざるを得ない客観情勢が整ってきた。ましてやこういう国際化、自由化、グローバル化、ハーモナイゼーション、こういうような状況下でございますから、どうしてもアメリカやあるいはヨーロッパ各国がそれぞれ国内において最初から持ち株会社というものを認めている、そういうような状況で来たところでございますから、今五十年にしてこれだけの経済力を持った日本、そこに持ち株会社禁止の条項がいつまでもあるということは、やはり日本は海外から見ると異質なのかな、こういう感じすら抱かせかねない情勢をつくりつつあったところでございます。  こういうことを考えてまいりますと、私は今回の純粋持ち株会社解禁あるいは来年四月自由になります外為法、この外為法だって、戦後の日本の経済を文字どおり、ある意味においては大きな柱となって日本の経済を支えてきた大変機能した法律だ、その外為法をここで思い切って自由化していくということは、日本経済が完全に異質な体質をこれからっくり上げていかなければならない、そのように私は大きく考えておるわけでございます。  さらに、二十一世紀の初頭には、金融持ち株会社認められ、銀行、保険、証券の垣根が本当に相互乗り入れてなくなる、俗に日本版ビッグバンとでも申しますが、こういう今大きな大改革が行われている。まさに隔世の感があるところでございます。  冒頭申し上げましたように、例えば財閥解体というようなところから出発した独禁法、そういうものが今五十年余にして新たな段階へ発展をしていくということは、戦後のその当時をいささか知る一人として、国民として本当に感無量の思いがいたすわけであります。特に、長官は同じ世代の大先輩であられます。いろいろと戦後を振り返られて、今の日本、そしてこれから二十一世紀へ日本が選択をしていかなければならない、通らなければならない道というものをお考えになられたときに、いろいろと感慨がおありになると拝察をいたしておるところでございまして、ぜひ御意見を拝聴させていただきたいと存じます。
  184. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 冒頭申し上げておきたいことは、私は内閣官房長官ですが、公取委員会を主宰する親玉でも何でもございません。これは独立機関として、ここにおいでになる根來委員長のもとに、まさにその公取が作動しているわけでございまして、便宜上私は、貸し席業と言っていいのかどうかわかりませんが、内閣の番頭としてこの法律改正に当たっての担当を仰せつかっておりますので、いわば主務大臣というよりは読む大臣で、提案理由の説明は私がお読みをいたしましたし、恐らくこの後議決を賜ったり附帯条件がつけられれば、それに対して所感を述べることが私のおよそこの委員会に対する責任の大半であろうというふうに考えております。  どうぞ、これから御質問もあるようでございますが、そういう意味合いで、私に対しては専門的な質問をされないで、エキスパートがそろっておりますから、どうか各位にお願いを申し上げたいと思います。  今、戦後を顧みての斎藤委員の御発言、まことに感慨深いというか、私もよくぞここまで生き延びてこれたものだなという感慨を深くいたしております。戦争に昭和二十年敗れて、日本の占領政策の中でやはり弱体化をねらわれたことは間違いがない事実であります。そして、特にそのうちもう一度戦争という手段、武力による手段というものを完全に放棄をさせ、その根底を覆させることが大きな目的であったかとも思われる側面がございます。  しかし、あの敗戦の当時、既に米ソの対立は各地で始まっておったわけでありますから、そのことが私たちをある意味で裨益したかもしれません。それは徹底的にたたきのめすという一つの強者の理論もあったかもしれませんが、米ソの対立というものは、戦争に敗れた日本やあるいはドイツ、そういう国を見事に復興させることによって、いわば自由主義陣営に参加をした日本、ドイツ、これが東側に対するショーウインドーというか、そういう場であって、立派に復興させ、経済として発展をさせることもこれまた戦勝国の務めであったのかしらという気がいたします。  相当な部門が閉鎖をされ、今言われるように財閥解体をされ、いろんなことがありましたが、その中で誘導路として残ったものは自由主義経済、開放経済、市場原理であります。何物も失った日本という国は、その道をひたすら歩むことが許された一つの道であったわけでありますから、私たちは右顧左べんすることなく、やはり資源を外国に求め、あるいは新しいパテントを移入し、そして物をつくり、売り出すことによって日本の経済を今日まで高めてきたことは、委員今御指摘のとおりであります。よくぞここまで来れたということがございますが、よく見てみますと必ずしも完全ではなかったのかなという気がいたします。  よく私は田舎で卑近な例えをするわけでありますが、日本という国を体に例えるならば経済は身長という見方をよくいたします。そして、身長は少年期、青年期、伸びるべき時期に伸ばさないと伸びません。私は戦争中の人間ですから、一メートル六十一しかありません。私の子供やその他は一メートル八十にもなっているんですから、やっぱり苦しい時代、その伸びるべき時代に伸ばせないと幾らやっても伸びない。その意味で、戦後我々のただ一つの道というのは経済以外になかったわけであります。その経済という身長に我々は全力を注いたおかげで、身長に例えられるかどうかわかりませんが、日本の経済は一メートル八十にも九十にもなったわけであります。人間の価値というのは必ずしも身長だけで、身長は大きいことはいいことでありますが、しかし、二メートルにも三メートルにもなったらばこれは大変なことになりますから、そんなには伸びられないと思いますが、身長に比例してやっぱり内臓が丈夫であり、筋肉が鍛練をされ、そしてバランスがとれ、なおかつ知育や徳育というかそれぞれの頭脳も持たないと、むしろ大きいなるがゆえに驕気になりがち、そういう思いを現在いたしているのもまた事実であります。  そして、今委員御指摘のように、いわば第三の開国というのは、好むと否とにかかわらず今までの体制ではなくて、国際化、自由化というものが求められて、我々から見ると異質な体制というか、そういうものに進みつつあると思いますが、諸外国から見れば日本が今まで異質だったので、国際化を進めれば当然そういうことになるわけであります。好むと否とにかかわらず、今国際的な基準で物を考え、物が通用する社会をつくり上げなければならない時代に逢着をしておると思います。  そういう意味から考えますと、私たちのやるべき仕事はたくさんあるわけであります。恐らく、この独禁法の改正もその一環として、日本の国際化のために踏まなければならない道すがらだという意義づけを私はいたしております。  いずれにしても、戦後日本の、いわば九条というものが財閥の復活を防止するという大きな目的があったことは事実でありますが、この過度集中というか、独占禁止法に一片の例外規定がなかったというその厳しさなるがゆえに、ある意味で今日までの発展があった。しかし、それだけではもう既にやっていけなくなったというのは、国際化というのはどうしても、今よく護送船団方式といいますが、護送船団方式というのは決して悪い方式じゃございません。みんなが一緒に暮らせる社会、進める社会をつくる意味ではよかったわけでありますが、諸外国がそうでなくて、今まである者とない者の差を縮めること、国内的には社会主義的な手法と言われますが、そのことが日本の今日を築き上げた世界でも珍しい例ではないかと思うんですが、国際化ということになりますと、諸外国はいいものは伸びる、だめなものは消されるという、そのいいものが伸びる社会にどう対応していくかということを我々は求められるし、下を切り捨てないでなおかつやれるかという極めて大変な時期を我々は迎えているわけであります。難しい時代ではありますが、懸命にそういう時代を生き抜いて、次の展望を切り開くための仕事を私たちは一生懸命やってまいりたい、このように考えます。
  185. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 大変いいお話を拝聴させていただきました。細々とした話はもう質問したくなくなるぐらいでございますけれども、持てる時間をなお進めさせていただきたいと思います。  いよいよ、先ほども触れましたが、日本の戦後の経済、まさに新たな段階を迎えた。だからこそ、今、日本版ビッグバンと言われるいろいろな改革が積極的に進められておりますし、橋本内閣としても行財政、経済、金融、社会福祉あるいは教育、それぞれの分野の大改革と真剣に取り組んできておるところでございます。  さて、こういうような重大なときに、日本の二十一世紀の経済界を展望して、とりわけ金融等々はもっともっと国民に信頼をされ、世界から十二分なる信用をかち取る金融機関であらねばならない。にもかかわりませず、野村証券あるいは第一勧銀、そしてまた一部の著名な製造会社においてもいろんな不祥事が次から次へと出ておりまして、いかにバブルの後遺症から抜け切れないよということではございましょうけれども、世界から見ると日本という国はどうもおかしい国だな、こういう批判を強くされるのではないでしょうか。私も、いろいろ総会屋だとかあるいはそれに対して天下の野村が恩典を与えたとか、こういうことは外国ではまずあってはならないこと、まだない、こういうことすら思える中で、これだけ近代的な経済大国と言われる日本でああいう前時代的な土壌が今なおあるというところに、やはり日本の異質論とかあるいは世界の人たちから見ると日本という国はと首をかしげられることになると思っております。  したがいまして、どんなに規制を緩和し、欧米並みの制度とバーモナイスしたとしても、日本の本当の経済の発展に資することが果たしてできるのかなと危惧を抱く一人でもございます。企業の厳しいディスクローズ、それ以上に経営者としてのモラルというものをまずしっかりと持たせなければならないと存じますが、長官いかがお考えでございましょうか。
  186. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 特定の業種、特定企業を名指して言うことは差し控えたいと思いますが、確かにこのバブルというか資産のインフレ、デフレ、これをだれが演出し、だれが利益を受け、だれが損失を受けたかという議論をここで申し上げる気はございません。しかし、いずれにしても資産のインフレとデフレがあった、それ以外ではインフレもデフレもなかったわけでありますから、これはつくられたものと私は自分の頭の中では整理をいたしております。  しかし、いずれにしても因果応報というか、それによって受けた利益あるいは受けた損失、例えば私の方でたくさん活発な企業活動で日立製作所の、日立製作所と言ってしまいましたが、地域的なことを考えれば下請企業がたくさん盛んになりましたけれども、その後、自動車産業その他がどんどん表に出ていってしまうことによって、ペンペン草しか生えない、下請は完全に参っている。自己責任でお金を借りたその人たちは、全部自分の本来昔から持っている家作田畑を担保にとられてきれいにすっからかんになってその完済を図っていた。ですから、そういう方々のあれは全部終わったわけであります。  しかし、公の利益、公共性の強い社会的責任の大変追求をされる銀行、これは国民的な信用不安や預金者の保護ということを考えれば、みだりにこの中に手を突っ込むわけにはまいらないという一つの聖域でもあったわけであります。この問題は、やはりいろんな社会情勢の中で不良資産を抱えたことはやむを得ないという側面もあるかもしれません。我々も公的な資金を投入してまでこの処理に当たったわけでありますが、それはバブルの崩壊によって受けた社会的な打撃、個人的な犯罪やその他ではない、ある意味で不可避であったかもしらぬ、そういうことに対する私たちは配慮をしたわけであります。  その根底にある企業家としてのモラル、これに欠けた人間が何物かを行ったということになれば、私はこれは許すべからざる所業と言わざるを得ない。恐らく今々の人がやったわけではないと思いますが、過去のバブル時代に膨張政策というか、大きく伸びるときにはこのぐらいのことはいいことだ、大丈夫だと思ってやったことが急激に変わった。それをあからさまにする勇気がなかったことによって今日の事態を発生したということをよく考えなければなりません。恐らくそういうものを内在するところがほかにあろうかとも思います。私は、勇気を持って早くそういうものを払拭してもらうように、表に出たものだけではない内在するものがあったらば、どうかこの機会にそういうものをあからさまにして企業の存立の範囲内で頑張ってほしい、そういう思いがいたします。  いずれにしても、私はいい意味での日本の心、明治の方々は和魂洋才と言ってくださいました。こういうことを今もう一回改めて考え直さなければなりませんが、今は逆に、和魂というのは銭もうけさえすればいいので、外国の方がよっぽどすばらしいモラル、倫理観を持っているのではないかという気がいたすような始末すら出ているわけであります。  こういうものをお互いにため合いながらどうして健全な社会を、責任を負う社会を、そして恥の文化と私は前から言っておりますが、そういう恥を知るという強い倫理観をその経営者に求めなければ、幾らいい制度をつくってみてもこれはしょせんあだ花でしかないわけであります。根底にあるものが崩れてしまうと大変なことになる、そういう思いを深くいたしております。
  187. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 ありがとうございました。  これから少し具体的なことをお尋ねしてまいりたいと思っております。  先ほども触れましたが、今回の持ち株会社解禁は国際的に日本の近代化を世界に認めさせる、その意味では大変効果がある。しかしながら、なかなか日本国内の習慣とか過去の経緯というようなものの中、そしてまた今起きているような不祥事等で、結局外国にすっきりとしたような印象を与えないなど。何も外国追随ということではありませんが、本当にこれからは、国の内外、特に企業等々を中心としてディスクローズということが非常に大きな命題になっていくと思っております。それだけに、こういう解禁をすることによって海外とのより平準化というものがさらに進められることであろうと思うわけであります。  そこで、これによって対日投資の円滑化が図れると思っておりますけれども、具体的に外国から日本に、持ち株会社解禁された、それじゃぜひひとつ日本へ投資をしようと。今までは株式投資等いろいろあるようでありますけれども、現実に日本が海外へ出ていく、あるいは海外から日本へ来る、これとの対比でははるかに日本の方が海外へ投資をしております。よく言われますように、今回の解禁によって企業の活力を、あるいはまた産業、金融の空洞化を何とか防げるかなと期待をいたしておりますけれども、例えば金融一つとってみても米国債の三〇%は日本が所有をしている、これなんか考えてみれば極めて私は異常だろうと。それは確かに千二百兆の預金資産を持つ日本でありますからそのうちの幾らかは米国債でも何でも結構です。しかし、米国債の三〇%を日本のいろいろ機関投資家が購入をしている、こういうようなこと自体はやっぱり何となく異常であるなど、個人的にそう思っておりますし、さらに製造業の空洞化というのは、御案内のように、もう家電装品は七〇%以上海外の現地生産、逆輸入をされている状況。  こういうことを考えますと、これらを何とか今回の持ち株会社解禁によって防ぐことが期待できるのかな、こうも思っておるわけでありますが、ぜひひとつ対日投資というものがこれによって増大をしてもらう、どんな形で日本に入ってくるのか、もしも類型が想定されるものであればお教えをいただきたいと思います。
  188. 政府委員(渡辺修君)(渡辺修)

    政府委員(渡辺修君) 先ほど来の先生の御質問で、特に経済のグローバル化に伴いまして我が国の対外投資、大変ふえていっておりますけれども、同時にまた国内の各種の空洞化問題、そういったようなものが起こってきておることに対して今回の持ち株会社というものがどういうコントリビューションをするか、こういうことが御質問趣旨だと思います。  私ども、今手元に具体的な将来の数字を持っておるわけではございませんけれども、残念ながら、今までの我が国の対外投資というのと日本への対内投資、これの比率というのは十三対一という大変アンバランスになっておるわけでございます。アメリカあるいはイギリスを見てみますと、大体対外投資を十といたしますと対内受け入れが八ぐらいの関係のバランスをとっておるわけでございまして、そういう意味で、我が国のこれからの国内の対内投資の受け入れというのは非常に重要な問題だ、こういうふうに考えておるわけでございます。  そういうことで、我が国の経済体質を考えましたときに、我が国の国土というものが諸外国に比べて高コスト体質あるいは制度の硬直性その他で魅力ある事業環境として欠ける面があるんではないか。こういうことを、できるだけ諸外国並みにコストを引き下げて魅力ある事業環境をつくろうというのが先般の経済構造改革の我々の目的でございます。そういう目的に照らしまして、今回の持ち株会社解禁というのは、まさに諸外国で行われておりますようなグローバルなスタンダードを我が国にも入れようということでございますから、そういう意味で、魅力ある事業環境、とりわけ企業組織の自由な、フレキシブルな企業経営を行う上で大きく貢献するんではなかろうか、かように思っているわけでございます。  ただ、最近の状況でございますが、この対内直接投資でございますけれども、私の持っておる資料によりますと、特に平成八年におきまして対内投資が相当ふえてきております。これは、我が国内で各種の経済構造改革が行われて、まさに行われようとしておる、御指摘のありますこういうビッグバンも含めましてそういう要素もございましょうし、資産価値が非常に下がってきていることに伴い投資環境がよくなっていることもあろう、さらに、この持ち株会社解禁その他のことも、こういう最近ふえてきております対内投資の傾向、これを反映しているんじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  189. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 戦後は特に独禁法を中心として公取はいろいろと努力をしてこられました。先ほども御質問がございましたが、公取の目的とする第一条等々を見てみますと、ぜひひとつ公取としての機能は今後とも高めて、国民生活の向上とかあるいは雇用の向上とかいろいろな点についてもひとつ市場の閉鎖性を防ぐだけじゃなくて、そういう観点に立っても活躍をしてもらいたいな、こんなことを考えながら特にお尋ねをしたいわけであります。  公取は、今まで業界の談合等にメスを入れてきた、正義のお立場からいろいろと御努力をされたことは十分承知をしておるところでございます。しかし、今回の持ち株会社解禁という、これはすべてが新しくなるということではございませんけれども、こういうエポックを築くような改革が行われておるときに、果たして今までのような体制あるいは公取としての考え方でいいのかなと。今まではとにかく系列化を抑えていこう、あるいは巨大資本の市場独占を抑えよう、そういう立場で公取は努力をしてきたと思います。しかし、現実にこれから、それは確かに十五兆円とかあるいは三千億とかいろんな規制はございますけれども、いわゆる中小企業、零細企業から見たら、これはもう当然足元にも及ばない大きな流れの中へいつ自分が埋没するか、流されちゃうかわからないというような経済情勢というものが想定をされる。そういう中において、私は、これからの公取はより高い視点、日本経済とか国民生活とか、いや世界経済の観点に立ってジャッジをきちんと間違えないようにされるべきではないだろうか。要するに、弱きを助け強気をくじく公取であらねばならない、その精神がこれからますます必要になると期待をしておるところでございます。  そのためには、公取は確かに格が上がりました。上がりましたけれども、もっともっと機能を強化していく必要がある。談合だけの取り締まりの公取じゃなくなったということになれば、違った観点の公取の機能というものを高める必要があると思いますが、委員長いかがでございましょう。
  190. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) 先ほど来御説明いたしましたように、私どもの五百五十人の人数でいろいろの問題を処理していくということはなかなか難しいわけでございますが、委員が御指摘のように、一つは情報公開といいますか、これもこの委員会でいろいろ御質問がありましたように、役所の仕事の内容をよく国民の皆様方に御理解いただくということで、例えば合併の場合の事前相談あるいはこの持ち株会社についてもお認めになれば事前相談という制度を入れる予定だと思いますけれども、そういうような事前相談のあり方等について情報公開をしていくということが一つあろうと思います。  そして、せっかく国民の皆さん方が独禁法の重要性ということを十分認識していただいておるわけでございますから、これまで以上にひとつ認識していただくようにPR活動をやっていくということでございますし、また私どもは独占禁止法だけではなくて、いわゆる下請法とか景品表示法とかいう法律も所管しているわけでございます。そういうことで、中小企業あるいは消費者という視点からも十分意見をそしゃくしまして、また立法が必要ということになれば国会でお願いするということになろうかと思いますが、これまで以上にひとつ御指導をお願いしたい、こういうふうに思っております。
  191. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 物事にはメリット、デメリット両面があります。時間が余りありませんから項目だけでよろしゅうございます。今回の解禁によるメリット、デメリット、これをはっきりと教えていただきたい。
  192. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 今回、一定の範囲での持ち株会社解禁をする、それのメリット、デメリットいかんということでありますけれども、持ち株会社解禁のメリットとして指摘されているものを箇条書きに申し上げますと、第一番目に既存会社事業部門を別会社とすることによって事業部門ごとの経営責任の明確化が可能となって組織の活性化が図られる、二番目に経営不振会社の救済の目的で利用できる、三番目にベンチャービジネスヘの投資あるいは新規事業分野への進出の手段となる、四番目に金融会社の異業態への相互参入の手段となり競争の活発化に資する、それから五番目に外国企業の対日進出の手段になる、そういったもの等のメリットがあるというふうに言われております。  デメリットと言っていいかどうかわかりませんけれども、私どもの立場で配慮しなきゃいけないという点を申し上げますと、まず、今回の持ち株会社解禁事業支配力過度集中を防止するという点は維持をいたしまして、これに反しない範囲内で持ち株会社解禁するということで、私ども公正取引委員会といいますか、競争政策の観点からは問題は出てこないというふうに考えます。  それから、デメリットあるいは問題点として留意しなきゃいけないということは、持ち株会社形態を利用することによりまして大企業がますますその力を強める、そういうことによって中小企業経営を圧迫する、そういったような懸念があるということが言われております。持ち株会社グループ特定事業分野で集中度を高めるということにつきましては、競争制限的な株式所有等あるいは合併につきまして現行独禁法の十条あるいは第十五条の規定によりきちんと対応をする、それから持ち株会社グループが他社の事業活動を排除するような行為につきましては、私的独占禁止ということに該当するということでございますでしょうから第三条の規定、それから不公正な取引方法の禁止規定に該当する、そういうような場合につきましても、それぞれ適切な措置を講ずるということで、競争政策上その持ち株会社解禁した場合に懸念される、そういった点についてもきちんと対応することが必要であるというふうに考えております。
  193. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 メリットについてはそうであろうなと。ただ、デメリットについては、先ほどもお話がございましたが、やはりこれ以上大手企業が巨大な力になった場合、特に日本経済の姿を考えた場合に八〇%中小企業が支えている、この姿をお忘れになられると、やはり系列化等々が進んで、あるいは中小企業や零細中小企業が締め出される、そういうようなことをこれによって生じるようなことがあってはならない、それだけはもうぜひひとつ公取が積極的に監視、監督をしてもらいたい、このように思っております。  もう一つ、これはデメリットの関係考えられることでありますが、メリットの一つにお数えになられた新規産業だとか、あるいは起業家精神がより活発になるとか、お話はございますけれども、日本の戦後のあのドングリ状態の中で松下やソニー、あるいは本田等の世界的な産業が成長したというのは、やっぱりそういうような持ち株会社的なものによって系列化されたり巨大化したりするようなことがなかった、そういう自由な競争の中だからこそああいうような企業がかえって成長したと。言うならば、ジャパンドリームとでもいいましょうか、そういうことが今後二十一世紀出てくるのかな、ちょっと期待が遠のいたような感を私は持っておるところでございます。これについてはどうお考えになりますか。
  194. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 日本経済が活性化するといいますか、そういうことのためには大企業、中小企業を問わず、それぞれの企業が独立してそれぞれ創意工夫を発揮しながら切磋琢磨していくということが必要だと思いますけれども、そのためにはそのための条件といいますか、それなりの必要なところがあると思います。  持ち株会社関連で申し上げますと、持ち株会社解禁のメリットの一つとしてベンチャービジネスに対する投資を行うベンチャーキャピタルというものが活動しやすくなるんではないかというようなことが言われておりますし、逆に先生おっしゃったように、小規模で発展性のある企業が芽を摘まれちゃう、そういうことがあっては困るということでございます。中小企業がその意に反して持ち株会社の傘下に組み入れられるというようなことにつきましては、一つは今回の九条で、過度集中になる持ち株会社禁止をするということのほかに、先ほど申し上げましたように、独占禁止法の他の規定によりまして、例えば株式保有によりまして特定市場において競争制限的な状況になるとか、あるいは不公正な取引方法により国内会社株式を取得する、そういったことは現行の独禁法に触れる問題でございますので、我々としてもそういった規定をきちんと運用をして、中小企業が本来あるべきといいますか、活躍できる素地をその独禁法違反行為によって没却されないように配慮していかなくてはいけないというふうに考えております。
  195. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 確認をさせていただきます。  先ほど来、労働問題、もうこれはずっと最初からこの解禁に当たっては労働関係にしわ寄せが起きるんじゃないかとか、いろいろと論議を重ねてきたところでございます。  したがって、私は、この持ち株会社解禁され、いかなる姿、形になろうとも労使関係というものは従来どおりの延長線上に置かれるもの、言うならば心配ないと、こういう観点に立っていいかどうか、御見解を聞かせていただきたいと思います。
  196. 説明員(日比徹君)(日比徹)

    説明員(日比徹君) ただいま御指摘ございました労働問題でございますが、持ち株会社解禁ということが労働問題に対してどういう影響を及ぼすものか、これについてはいろんな見方というものがあろうかと存じますが、いずれにいたしましても、経済社会の発展という観点から見ましても、労使関係が安定しているということは非常に大切だと思いますので、どういう改革、その他起こりましても、労使関係の安定というものが図られるようやっていくということを基本に考えてまいるべきものと思っております。
  197. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 最後の項目に入りますが、やはりこの持ち株会社一つのメリットに数えられるのはタックスの問題です。連結納税ができるかできないか、これは私がもう説明するまでもなくアメリカとかフランスは既にそれをやっておられる。あるいはイギリスとかドイツは、多少形は違いますけれどもそれに準ずる納税方式をとっておられる。ところが、日本では連結納税は認めない。税法上のいわゆる減収につながるとかいろんな問題があります。  ある組織でこの減収を計算された数字を申し上げますと、初年度は約四千億であろうと。しかしながら、二年目には二千五百億ぐらいになる。必ずそれによって企業は数年のうちにより利益を生んで、また赤字企業についても立ち直って納税に十分対応するから、減収減収と言って騒ぐよりは、むしろ一企業でも五年間の言うなら連結の損益計算が認められる税制でありますから、この際思い切って外国と同じような連結納税を認めたらどうだと。また、これを認めないと、失礼ですが、日本は異質だねという指摘を受けるのかなと、そんな思いをいたしておりますが、いかがでございましょうか。
  198. 政府委員(尾原榮夫君)(尾原榮夫)

    政府委員(尾原榮夫君) お答え申し上げます。  言うまでもなく、現在の法人課税は商法に基づきまして法人格に着目して個々の法人に課税する仕組みになっております。これに対しまして、今先生から御指摘のございました連結納税制度でございますが、企業集団を一つの課税単位として見る、そしてその企業集団に課税していくという制度でございまして、この導入問題といいますのは、先ほども申し上げましたが、地方税を含みまして我が国の法人税制の基本的考え方を変えることになるわけでございます。  それで、税制でございまするが、やはり国民の納得を得られるものでなければならないと思うわけでございます。この連結納税制度は、やはり株主本位の経営がなされているというところにひとつよく当てはまるのかなと。そういう面から見ると、我が国の今の企業経営の実態をどう考えるんであろうか。税負担が減るだけになおさらのことかと思っております。それから、商法等まさに税法の基礎となっております根拠法がどうなっていくのか。さらには、租税回避行為がさらに激しくなるという見方もございます。それから、言うまでもなく税収減の問題がございます。こういう問題について、慎重な検討が必要とされる今後の研究課題であるというふうに認識しているところでございます。
  199. 斎藤文夫君(斎藤文夫)

    ○斎藤文夫君 もう時間ですから、最後に、これからいよいよ解禁をされてくると大規模分野の分社化というのが行われていく。そうなりますと、当然大きな土地を分譲しなきゃいかぬ。これはもう避けて通れない道ですね。そのときにこの土地の譲渡益課税というものがもう大変な壁として立ちはだかって、結局、一方では解禁しましたよ、大いにひとつあすを夢見て頑張りなさいということを言いながら、一方では、いや連結納税はだめですよ、譲渡益税はがっぽり取りますよと、こういう体制に私は基本的に矛盾を感ずるんです。  大手企業を保護しようとか、より以上手厚く対応せよというんではない。ルールというもの、これはきちんと国際場裏で説明のつくようなものにしないと、残念ながら、いつまでも日本は前時代的な影を引きずっていかなきゃいかぬ。こういう点についても十分お考えをいただくように、今ここで言ったっておっしゃられた結論なんでしょうから、これはもう官房長官、ぜひひとつ大所高所でやはりすべての制度と整合性というものが成り立つように御指導をお願いいたして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  200. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 御苦労さまでございます。  持ち株会社の有用性につきましては、必ずしもこれは明確にされていないと言われておりますが、いわゆる経済構造改革プログラムの策定に当たりまして持ち株会社解禁を盛り込まれたと。この解禁を持ち込んだことが経済構造改革にどのようなプラスになると思っておられるのか。これはひとつ通産省と官房長官、見解をお伺いいたします。
  201. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 私は、一つに、今、斎藤委員が最後に御指摘になった分社化、これに大変利便な制度であるという気がいたします。  私はなぜそれを申し上げるかといいますと、私の全く私見でございますが、日本という社会、特に工業社会は戦後まさに無一物のソニーが、あるいは松下が、日立が全力を挙げてゼロからの出発をして、今日の巨大産業に成長したわけであります。その成長する過程はすばらしく立派であったわけであります。  ところが、日本の製造業を見てみますと、うろ覚えですから正確なものではないかもしれませんが、日本の大企業の工業生産は約六割程度ないしは六割強と言われております。それに比較をいたしまして、アメリカという国は大体二割強、ヨーロッパで三割と言われておりますから、日本のいわば大企業の寡占体制が大変進んでいるということであります。  そのこと自身が悪いとは申しませんが、むしろ小さいときに本当にやるときには自分の新商品、新製品を開拓していったんですが、大きくなりますとどうしても守りに入る。それから、六割、七割近くのものが大企業で占めておられますと、新しいベンチャービジネスのいわば発生というものはおよそ不可能に近いというか、その圧力に負けてだめになってしまう。  そうなりますと、むしろ新しい意欲を守り立てるのは、その巨大な一つ企業体が幾つかに分社化をして、それぞれの新しい分野で物事を見、新規創造をしていく。いわばベンチャービジネス的なものの発生の起源になるであろうということを、私はこの持ち株会社解禁というか、それによっていわば分社化が進み、新しい企業の創造ができるのではないかという期待をいたしているわけであります。ぜひともひとつそのぐらいの風穴はこれであけてみて、日本の新しい生きる道を模索したい、そのような大きな期待を持っているわけであります。
  202. 政府委員(渡辺修君)(渡辺修)

    政府委員(渡辺修君) 先生御案内のように、今や世界はメガコンペディション、大競争時代に入っておりまして、主要先進国間では強烈な産業立地競争が行われております。かつまた、あのアメリカですら、今官民一体となって自分の国の経済システムを最も有利にしたい、その競争にたえるようにと、こういう絶えざる見直しが行われておるわけでございます。  そういう視点に立って今我が国の各種の経済改革を私ども行っておるところでございまして、その大きな視点の一つは、我が国の経営の資源を一番自由に、人材あるいは資本を有効に使えるように、企業組織のできるだけ自由な選択ができるようにと、こういうことで持ち株会社解禁に実は踏み切ったわけでございまして、最も大きな点は今既に官房長官からお答えいただきました。  さらに、そういう意味では、経営の人材をより有効に使おうという意味では、持ち株会社の中間持ち株会社をつくることもあるでございましょうし、あるいは各種のそれぞれの企業経営戦略に基づきまして今までに我々考えられないようないろんな自由な発想が出てくるのではないかそれが我が国の活力を取り戻す重要な要素である、こんなふうに思っているわけでございます。あわせて、外資が日本に入ってくることも大いにこれによって促進されるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  203. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 お話がありましたように、この持ち株会社、いわゆる有効な手段となるかあるいは問題を生ずるか、基本的には経営者の姿勢に左右されるんじゃないか。そういう意味では、先ほどから話がありますように、最近の企業の不祥事が続発する中で企業経営者のモラルが問われておると。官房長官の話もございましたけれども、そのことについてもう一度官房長官の見解を伺います。
  204. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 持ち株会社解禁という問題に限らず、制度を有効に活用できるかどうかは経営者の資質ないしは倫理観、使命感、こういうものにかかっていると思います。社会的な使命やあるいは企業をどう維持発展させるかという大きな使命感とモラル、これを持ち合わせる起業家精神というものをこれから旺盛にしていかなければ、どの分野でも衰退国家になってしまう。  ぜひとも、そういう意味で高い倫理観の養成というか、それは企業みずからがつくり上げるもの、人それぞれがつくり上げるもの、そういうもので公が支配すべき分野でない一つのことであろうし、私たちはむしろそういうものに違反した際に一罰百戒的なものができるのかどうなのか、これを考慮に入れて対処してまいりたい、このように考えます。
  205. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 今回の改正では持ち株会社の部分解禁となっておるわけですが、これを全面的な解禁にするとどのような問題が生まれると考えていらっしゃるのか。公正取引委員会委員長の見解を伺いたいと思います。
  206. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) この前からいろいろ御議論がありますように、我が国の経済社会の特異性といいますか、そういう特異性に現在まだいろいろ批判があるわけでございます。  一つは、大規模企業集団があるとか系列が存在するとか、あるいは法人の株式所有の比率が高いとか、あるいは株式の持ち合いがあるとかということを指摘しているところがございます。このこと自体が必ずしも悪いという評価をするものではないと思いますけれども、やはりこういうものが重なりまして日本の経済社会というのは不透明な部分があるという批判があるわけでございます。そういう土壌を背景にしまして全面解禁をしますと、やはりそういう土壌をさらに加速するのではないかという批判が出てくると思います。そういうことで、今回御審議いただいておりますように、事業支配過度集中を招くようなものは従来同様禁止するという法案をお願いしておるわけでございます。  さらに申し上げますと、この五十年間、持ち株会社というのは禁止されてきたわけでございますが、この時点に至って突然全面解禁というのはやはり何となくそぐわないという気持ちはあると思います。これはやはり段階的に解禁していって、あるいは様子を見ながら解禁していくというのが一つの常道だと思うのであります。そういうことで、今回の法案は部分解禁ということでお願いしているわけでございます。
  207. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 持ち株会社解禁によりまして大企業と中小企業の格差が拡大するのではないかという話がちょっと出ておるわけでございますけれども、確かに持ち株会社解禁に伴いまして総合的事業能力が強化されてきますと、中小企業の立場が悪化するおそれがあると思います。公正取引委員会はこのような公正な競争関係確保の問題にどのように取り組んでいるのか、伺いたいと思います。
  208. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) お答えいたします。  先ほどの斎藤議員の御質問へのお答えと重複するところがあろうかと思いますけれども、持ち株会社解禁していろんな弊害が出てき得る、それに対してどういうふうに対応するのかということだと思いますけれども、今回の持ち株会社解禁は全面的な解禁ということではなくて、何度も申し上げますように過度集中にならない範囲で解禁をするということでございます。  それから、持ち株会社という形態を利用するということによって大企業がますます力を強める、それによって中小企業の活動の素地といいますか、それを制約されるといいますか圧迫される、そういう懸念が指摘されるわけであります。  これにつきましても、私どもは、持ち株会社グループ特定事業分野でその集中が進むということについては、現行の独禁法の十条、株式所有による競争制限になるようなものを禁止するであるとか、あるいは合併についても同様の趣旨規制がございますし、それから不公正な取引方法によって他の会社、中小企業株式を取得するというようなことも第九条で禁止をするということで、持ち株会社一定の範囲で解禁いたしましても中小企業にとっても圧迫されることなく十分活動できるような独禁法の運用に配慮していきたいということと、それからもう一つ持ち株会社利用のメリットといいますか、それは大企業だけでなくて、もちろん中小企業にとっても同様に経営の選択肢として活用できるということでございます。
  209. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 持ち株会社解禁を初めとするいわゆる規制緩和の進展に伴いまして、市場の番人としての公正取引委員会の果たすべき役割はどんどん拡大すると思うわけでございますが、委員長の見解を伺います。
  210. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) お説のように、私どもはこの規制緩和の時代に何が必要かというと、自由競争のルールというのが必要であり、このルールを遵守するということが必要になろうかと思います。  そういう意味で、このルールを策定すること、あるいはこのルールの遵守を監視することというのは私どもに課せられた大きな使命でございますので、これまで以上にそういう目的意識を持って万全を期していきたい、こういうふうに思っております。
  211. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 この役割の増大に合わせて、先ほども話が出ていましたけれども、機構とか人員の拡充を図る必要があるという話もあるわけでございます。  持ち株会社が導入されて懸念しておるいろいろな問題が先ほどの質問にもちょっとありましたけれども、経営姿勢のスタンスがいい人ばっかりだったら公取は今の人数でも私は十分やっていけると思うし、むしろ監視する公取が余り活躍しない方がよりいい状況なんだけれども、しかしそうは言っても、やっぱり大変な競争の中でもうけなかったら商売は成り立たないとなると、必死でいろいろいい知恵も悪い知恵も出す人が出てくると思うんです。それで、いい知恵の人ばっかりだったら世界の競争に負けるかもわからぬし、さりとて悪い知恵を出して国民を痛めてもいかぬし、これは非常に悩むところでございますけれども、私のこの前の質問のときにも根來委員長は、少ない人数で三倍、五倍、十倍と働いてやりますと。それは一日や二日はいいけれども、そんな一年も三年もやったら公取の人は皆死んでしまうのではないかという心配があるわけです。  そこで、大変な中で日本は何とか浮上しようと。官房長官の話では風穴をあけてやろうという中で、本当の意味でうまくこれが乗るためにも最低限の公取の拡充というのは私は必要だと思うんです。やっぱりこうなってくると、それはもう官房長官の仕事だと思うんです。機構とか人数の問題についてもいろんなことを考えてやってほしいと思うんですが、御見解を。
  212. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 確かに、国際化が進み社会が複雑になればなるほど、そして人心が荒廃するというか企業モラルの喪失というか、これを予定に入れますと、一人に一人ついても間に合わなくなりますから、企業のモラルは守られるものという前提に立って、そしてやはり経済の憲法と言われ、そのまた番人と言われる公取が正常に作動するためには、確かにいろんな複雑になった体制ですから、拡充強化が必要と思うことはだれしも同じであります。ですから、いろんな制度上あるいは運用上あるいは目的もひっくるめて今日まで公取の改組、改善が図られてきたわけであります。これで十分とは申し上げるわけにはもちろんまいりません。  しかし、少ない人数でも何とか、一罰百戒というか一つのルールをつくることによって、一つの物事に物差しを入れることによってその基準、経済の憲法を守ってほしい。モラルというか、物差しの上にそれぞれが競争し合うべきものであって、アウトローの競争は絶対社会的に許されるはずがないし、悪は栄えるとは思わないで、やっぱり悪は必ず滅びると思ってやるほかないと思います。
  213. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 官房長官の言う和魂洋才のいい意味が出れば非常にありがたいと思っております。  そういう意味では、経済環境の変動が大きい時代であります。五年後の見直しというのは、いろんな意味で五十年間の、公取委員長流に言うと鎖国を破っての今回のあれですから、鎖国を破るということは、明治維新的な話から言うと、鎖国を破る前後というのは黒船の問題もあったけれども、安政の大獄みたいなこともあったわけだから、何が起こるかわからないようなことも私は心配されると思うんです。だから、五年後の見直しというのは、そういう中にあって労働問題を初めとしていろんなことを見ながら真剣に見直さなければいかぬというだけに慎重に見ていってもらいたいという思いがございます。  こういう見直しに当たりまして十分な検討が必要と考えるわけですが、その前提として持ち株会社の実態が明らかにされる必要があると思います。公正取引委員会として持ち株会社の実態調査をする予定がどうか伺いたいと思います。
  214. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) これも御説明いたしましたように、私ども独占禁止法上いろいろの調査活動をすることが認められておりますので、その権限をフルに発揮いたしまして十分実態を把握したい、こういうふうに思っております。
  215. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 もう一つ、我が国の市場の開放性を高めることが海外諸国から求められておるわけでございますけれども、海外諸国から我が国の企業に見られる株式の持ち合いとか系列支配に対する批判の声が強いと聞いておりますが、取引委員会はこの問題にこれまでどのように取り組んでこられたかということを伺いたいと思います。
  216. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) いわゆる系列関係といったことが言われますけれども、系列関係それ自体は安定的な取引あるいは長期的視野に立った経営を可能にするといった経済合理性を有する面もありますし、他方、独占禁止法の立場から考えますと、直ちに独占禁止法上問題となるものではないということではございます。それ自体は直ちに問題ではないということでありますけれども、グループ内取引を不当に優先させたり、競争阻害的な行為を引き起こす場合には独占禁止法上問題となり得るものでございます。  数年前に系列等の問題がかなり大きく取り上げられたということもありまして、その時期に、株式持ち合い関係がある場合を含めて、系列関係にある事業者間取引において公正な競争を阻害するような取引が行われることのないように、一つは平成三年に流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針、これは流通・取引慣行ガイドラインと俗称しておりますけれども、そういったものをつくりまして公表いたしておりますし、それから六大企業集団におけるメンバー企業の結びつきの状況あるいは集団内取引の状況等の調査あるいは個別業種における事業者間取引に関する実態調査を行いまして、独禁政策あるいは競争政策上の問題点のチェックといいますか、そういったことをやってきているところでございます。
  217. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 官房長官に伺いますけれども、我が国の系列問題に対しては海外からのいろんな批判があるわけでございますが、これについての御見解を。
  218. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 私も不勉強で、どの程度の批判があり、どの程度のものかわかりませんけれども、しかし系列というのは、それぞれお互いに株を持ち合い、あるいは相互に取引の長期的なことを行う、そういうことによって起きる弊害というか、なかなか外国企業が参入しづらい壁になっているという批判を受けていることは現実に承知をいたしております。  ですから、ある意味で今度の持ち株の緩和というのも、いわばそういう影の連帯というよりは表の連帯にした方がより透明度というかそれが確保されるのではないかということがありますので、系列それ自体の全般について私は悪とか善とかという決めつけ方はできませんけれども、その隠れた分野というものを表に顕在化することは一つの利点ではないかなという思いがありますので、そういう批判にもこたえ得る道というふうに今回の改正考えております。
  219. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 そういう意味からも、例えば六大企業集団と言われておりますけれども、この集団内取引の状況というのはどういうふうになっているか、閉鎖的に行われているのかどうか、これをちょっと伺いたいと思うんです。
  220. 政府委員(塩田薫範君)(塩田薫範)

    政府委員塩田薫範君) 日本には現在いわゆる六大企業集団と言われるものがございます。この六大企業集団に属する企業間で株式の持ち合いあるいは一方的な株式所有もございますし、役員の派遣あるいは取引関係、融資、そういったものもございます。趨勢的なここ十年、十五年ぐらいの感じで全般的に申しますと、次第にグループ内の依存関係が少しではありますけれども、薄れつつあるというふうに思っております。ただ、それぞれの企業グループ規模が大変人きゅうございますし、かなりの、かなりといいますか、結びつきがなくなったわけではございませんので、私どもとしてはやはり独占禁止政策の観点から実態調査をする等によりまして状況を把握していく必要があるというふうに考えております。
  221. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 私ら、こういうのは非常に不勉強だから、最初聞いたときに、六大企業のあれを基準にして十五兆円云々という基準の話があったときに、ということは十五兆円以上の人は皆悪いグループかいなとふと思ったりしておったんですが、その辺のことをひとつ、これは答弁は要りません。  最後に、持ち株会社解禁に伴う労働問題について、午前中からずっと出ておったわけでございますが、非常に大事なことだと私も思います。今後労使の話し合いが行われることになっておるわけでございますけれども、政府としても合意形成に向けてできる限りの支援を行わなかったらいけないと思うんですけれども、官房長官の見解をお伺いいたしまして質問を終わります。
  222. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 戦後はいざ知らず、最近の労使間の関係は世界にも珍しいほど極めて良好な環境に私はあると思っております。それがあればこそ今日までの発展もあったわけであります。ですから、今回の持ち株会社解禁に伴う労働問題、既に今後二年間を目途に検討を行うということが言われておりますが、私はこれによって直ちに労使間に不穏当な影響を及ぼすようなことはないと確信をいたしておりますが、それにしても分社をされれば、いわば分社化の方向にある組合というものが弱くなる方向にあるのではないかなということは頭の中で私も理解はできます。  そういうものをやはり同じ系列の中で、系列というか、持ち株の中でやり得る会社でありますから、表切った議論をしながら、私は組合間同士ないしは労使間で話し合いの決着のつく問題という確信をいたしております。
  223. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 官房長官にお尋ねする前に、先ほど聞いておりましたら、競争政策上の立場から必要だとかあるいは大競争時代の対応のために必要だというようなことがどんどん大義名分で語られておりますね。  しかし、大競争時代をつくり出したというのは、振り返ってみますと、我が国が日本円に直せば毎年十兆円以上の貿易黒字がどんどん出る、これがやっぱりアメリカに対してもヨーロッパ諸国に対しても日本の貿易黒字、これが大競争をつくり出した原因でしょう。もう一つは、我が国の資本が東南アジアを中心にして特に家電や何かがどんどん出ていく、それが日本に入ってくる、これはもともと我が国に原因があって、余り大言壮語するようなことではない、このように思うんです。文句があれば反論をしてもらえばいいと思います。  官房長官、戦後の日本経済がここまで成長発展をしてきた、そのもとに経済の憲法と言われる独禁法があり、また九条があったわけでありました。これを改正するなりの今の状況というのはそれはそれとして、やっぱりこれまで果たしてきた役割というものについては僕は高く評価をすべきだと思うんですが、官房長官いかがでしょうか。
  224. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 前段意見があれば物を申せということでありますが、大して大きな意見は持っておりません。  ただ、私は、やはり日本のように何もない加工型の貿易立国の国は絶えず黒字志向の国家であるという現実はお互い認識をしなければやっていけなくなってしまいます。そのことを前提に考えれば、確かに成長のテンポの速さ、これがありましたから大量の膨大な黒字を抱えた。しかし、黒字を抱えたことが悪であるかというと、黒字はやはりどこかに投資をしなければならないわけでありますから、これが海外投資に向かい、それぞれの国の経済を裨益してきた、その循環の中で今日を迎えたことは間違いない事実であります。  そして、その延長線上で大競争時代が来たというのは、そうではなくて、逆にそれぞれの世界各国が経済というもの、国民を豊かにするということに大きな視点が当てられたわけであります。ソ連の崩壊というのは軍事国家が崩壊をしたということであって、国民の生活向上に対する意思、これが強かったがために戦争によらずしてソ連という国は崩壊をし、ロシアという国がまだ試行錯誤はしておりますものの市場原理を導入もしながら、今までの長い経済体制を変えようと思って努力をしているわけであります。  そして、考えますと、たかだかヨーロッパやアメリカ、それに若干後から日本がついた先進七カ国とか八カ国とか言われるその十億足らずの人たちが物をつくり物を流通し、世界の経済を西側としてリードしてきたという側面、それに対して軍事国家であればいずれよくなるという側面を持った国々。ところが、それはだめだということでソ連改めロシアも東欧諸国もお隣の中国も東南アジアも経済というものに一番国家のいわば物差しを当てることによって、大競争時代が招来したというふうに私は意識をいたしております。その大競争時代というのは、確かにそれぞれが所得を高めることによって購買力がふえるわけでありますから、総体の利益につながる。  しかし、見てみますと、我々が欧米先進国に追いついてきたと同じように、後なるものは先にという聖書の言葉がありますが、いずれにしても条件の悪かったものは、所得の低かったものはそれを競争の武器にしてやってくるわけであります。今まで私たちは欧米という先進国と戦ってきたというか、経済的な営みをした。それと同様に、後なる国が私たちに挑みかかることは当然でありますし、そのハンディを私たちは高度に成長したがために、逆に言うとコストが高くなり、高コスト構造になって空洞化をするほど海外に出ていってしまった。そういう現実を踏まえながら、私は今やるべきことは、国際化という一つのつらくもあるし、またいい意味も悪い意味もありますけれども、国際化という物差しを当てない限りはなかなか競争に耐えられることはない。  そういうことを思いますと、今まで独禁法の果たしてきた役割は極めて強い大きなものがあります。しかし、これだけ国際化が進みますと、内なる日本だけでいいのかどうなのか。それを考えますと、日本がただ一つ持ち株会社認めない国家であるということが果たして競争条件に合うのかどうなのか。先ほども言われたような系列などというのはいわばその弱点をカバーするための方式であったのかもしれない。  そういうものを考えれば、私は今公取委員長が言われたように、見直しをし、弊害が出ればとめもする、もっと緩やかにした方がよければ緩やかにするという弾力的な思考を持つことによって日本の経済の活性化というか国際化を進めていきませんと、国内だけの水準で物を考えますと、世界の進んだ一番強いものと対抗できるかどうか。  それを考えますと、私は国内政策というよりは国際的にそれをなし遂げなければ、私たちの成長というかある意味での発展というか、そういうものを失って衰退国家になってしまうのではないかという懸念を持つ一人でもあります。そういう意味で、勇敢に私はこの問題には対処をしていくことを心がけねばならないし、間違えばとめもする、それだけの私たちは覚悟を持ってやってまいりたい、このように思います。
  225. 梶原敬義君(梶原敬義)

    ○梶原敬義君 十分の持ち時間で、もうほとんどなくなりました。  大体、流れとして企業集中台併あるいは今度の持ち株をやってくれという通産省を取り巻く意見なんかは、二けたぐらいでどんどん日本の経済が成長しているときは余りそういう声は出なかった。ところが、経済の成長が鈍化をして、そしてそれぞれが取り合ってたたき合う、これではやっぱり先行きあれだからというときに持ち株とかあるいは企業の合併とかいうような動きというのは傾向的に出てくるわけであります。  私は、持ち株会社をつくって、持ち株会社がどんどん何十年かしたときにタケノコみたいにぼんぼん出たら、日本の経済は非常に硬直した、競争をむしろ制限する方向に働くそういう社会になるだろう、そのように考えます。だから、見直すところは見直すということは非常に賛成でありますから、私はぜひそういうように指導してもらいたいと思います。  最後に、もう時間があと一分でございますから、これは要望でありますが、持ち株会社というのはウ飼いのウ匠みたいなもので、子会社がいっぱいあるわけです。この子会社のやったことに対して親会社は責任を持たぬような形、きょうも大分議論をしてきましたが、やっぱり子会社のことに対しては親会社がある程度責任を持つ、こういうようなシステムを考え直していく必要がある。そうしなきゃ経済社会秩序は保てない、そのように思いますので要望して、もう時間が参りましたから終わります。ありがとうございました。
  226. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 官房長官に主として質問をさせていただきたいと思います。    〔委員長退席理事沓掛哲男君着席〕  今まで今度の改正にかかわる問題をいろいろと質問しましたので、これから後の話を中心にしてお聞きをしたいと思うんですが、一つは、この後、金融持ち株会社の問題がこれからの課題として残されています。私は、物づくりという視点から新しい日本の産業を起こしていくという意味で、持ち株会社というのはかなり使いようによっては使い勝手のいい制度になる可能性があるという思いはあるんですが、金融の場合にはどうなんだろうか。橋本総理の方針としていわゆる金融ビッグバン、これが提起をされて、これの一つの手法として金融持ち株会社というものを考えるという点では頭から否定することもないのかなという思いも一つあります。  その反面、ごく最近の一勧を含めた企業の不祥事を見るにつけ、こういう事態が本質的な解決をされないままで金融持ち株会社解禁したらどうなるんだという懸念の声があることもこれまた事実なんです。もちろん、大蔵省の金融制度調査会の方で議論されていることでありますけれども、現時点で特に金融問題を中心にして官房長官の御所感があればお伺いをしたいと思います。
  227. 説明員(中井省君)(中井省)

    説明員(中井省君) 私の方から検討状況を御説明させていただきます。  御指摘のございましたように、橋本総理の指示のもとでの金融システム改革、鋭意進めておりまして、大蔵省にございます各種の関係審議会で御検討いただいているところでございます。御検討が最終段階に参ってきておりまして、恐らく今週末には最終報告がいただけるものと考えている次第でございます。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕  その中におきまして、いわゆる金融持ち株会社を有効に活用するというのはシステム改革の一つの大きな項目になっております。しかしながら、御指摘のございましたように、いわゆる金融、特に銀行と申しますものは預金者から集めた金を使いまして、いわゆる信用秩序の根幹をなす業態でございます。このためにいろんな規制もございますし、それからまた預金保険というセーフガードもついている。こういう銀行なるものがその地位を利用して例えば一般事業会社にまで業務範囲を広げる、そのことによります競争上の不公平の問題、それから一般事業を行うことに伴いますリスクの遮断をしていかなきゃいかぬと、いろんな問題がございます。基本的な議論としまして、銀行を中心とする持ち株会社についてはある程度現在の業務範囲等も勘案して業務の範囲を絞っていかざるを得ない、こういう議論になっております。  それから、先ほどの不祥事の関連でございますが、確かに最近の一連の金融関係の不祥事、我々としても行政面で足らない点があったんではないかということで深刻な反省をしております。しかしながら一方で、いろんな世論の動向を見ますと、逆に今まで競争が少な過ぎることによってこういう不祥事が起きたという議論もございます。したがって、まさに自由な競争とはいわゆる規律の問題、そのバランスをいかにとっていくかということが非常に大切なことかと考えております。  そういう視点も含めて、現在各審議会で御検討いただいておりますので、その結果を待ちまして、また持ち株会社関連法規につきましてできるだけ速やかに国会に御提出申し上げて御審議を賜りたいと考えている次第でございます。
  228. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 これから具体的な議論がありますのでその場でやってもいいんでしょうが、要望だけ申し上げておきたいと思います。  これは大蔵省への要望であると同時に、公正取引委員会への要望でもあるんですが、今回の改正では十一条は手つかずになっているんですね、基本的には。金融という場合に従来のような銀行というイメージだけでは今はなくなりつつありますね。相互参入をする、垣根を低くする、あるいは金融持ち株会社というイメージになってきますと、もう垣根は事実上ないに等しいということになってまいりますと、十一条で言うところの、いわゆる銀行は五%ですよ、生保については一〇%株を持ってもいいですよと、この差は一体どう説明をするんだろうかという問題がある。これは今回の改正では出てきませんでした。きちっとこれは将来の検討事項に入れておいていただきたいというふうに私は思います。  それから、いわゆる金融機関といっても、特に銀行の場合は預金者保護という非常に重要な役割を、役割といいますか責任があるんですね。例えば金融持ち株会社解禁をされた場合に不公正な取引が行われた場合には、これは例えば生保と銀行の間あるいは生保と損保の間、銀行の間、きちっとしたやっぱりファイアウオールというものを義務づけていただかないとこれは大きな社会問題に発展をする可能性がある。したがって、これらの問題について、今度の議論の中ではきちっとやはり透明性のある、説明ができるようなことをひとつ検討しておいていただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、次に公正取引委員会の機能の問題についてお伺いをしたいんですが、先ほど平成会の片上委員の方からも御指摘がありました。一つ規制緩和をする場合に、規制を廃止しました、すべてそれでおしまいになるというケースももちろんあります。規制を緩和したことによって行き過ぎた事態が起きないようにチェックをするということもまた必要になってくるんですね。今度の持ち株会社解禁というのは、例えば全面解禁をしてお好きなようにやりなさいといろんならこれはまた別なんですね。それから、非常に限定的な部分的な解禁だというんであれば、それだけチェックをしていればいいんです。ところが、今度の解禁というのはかなり広範囲にわたる解禁になるわけです。  そうしますと、一体どこがこれをチェックするんだろうかということを考えてみますと、やはり最終的には公正取引委員会ということにならざるを得ません。それから、もちろん今度の持ち株会社解禁以外にも、政府の規制緩和推進計画の中でさまざまな規制を今緩和しようあるいは廃止しようということが進んでいます。それから、この後の商工委員会の議題にもなるわけですが、カルテル法の廃止の問題、これらの関連等いろいろ考えてみますと、やはり公正取引委員会の役割というのは、むしろ本来は役割がどんどん少なくなっていくのが普通なんですが、公正取引委員会に関してはむしろ仕事をどんどん、ふやしていると言うとしかられますから、廃止をすることによって仕事がふえるんですね。これは、例えばアメリカなんかの場合の公正取引委員会の機能というのはかなり強大な権限を持っているわけですね。  そういう点から考えますと、現在、公正取引委員会の陣容を見ておりまして、もちろん東京におられる方、それぞれ地方にもおられますし、全体として今年度のたしか予算で五百五十名というふうに承知をいたしておりますけれども、果たしてこれから先これで大丈夫なのかなという点が一つは心配なんです。  それからもう一つは、大変言いにくいことですけれども、公正取引委員会というのはやはり厳正、中立、公正でなければならないという立場からいきますと、公正取引委員会の特に大事に関して昨年もいろいろ議論がありました。余り生臭い話は申し上げたくありませんけれども、特に各省庁からの派遣ということについてはできるだけ慎重にしていただきたい、あるいは公正取引委員会の委員大事についても昨年からことしにかけてもいろんな議論がございました。その点も十分に踏まえた議論をしていくべきじゃないか、こんなふうに考えていますけれども、公正取引委員会の機能の問題とそれから人事を含めた中立性の問題等について、御所見がありましたら官房長官の方からお伺いをしたいと思います。
  229. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 確かに持ち株会社一つを見ましても、全く全面禁止ということであればただ一つの視点で済むわけでありますから、それほどのことはありませんと言うとしかられるかもしれませんが、部分的にも限定的にもつくりながらこれを許可するということになれば、それなりの仕事量がふえることは間違いがございませんし、それを誤ると大変なことになりますから、この機能は強化をしなけりゃならない、充実をしなけりゃならないということだけは私も間違いなくそういう方向に行こうかと思います。  そして、あらゆるものを全部見切れるかというと、なかなかそれはどの機構でも、役所もそうでありますが、全部を見るということではなくて部分的にピックアップをしながら一罰百戒的なものをする、特に公取は準司法的な役割も持っているわけでありますから、そういうものを厳正に行うこと、それから極めて中立公平に行うこと、それによって私はその信用を確保しながらやっていただきたい、このように思います。
  230. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 次に、今度の解禁で一番議論になりましてまだ決着がついていないのは、関連法制の中でも労働関係の法制の問題が一番私は気になっているわけです。  既に六月三日の委員会、あるいはせんだっての参考人に対する意見聴取の際にも、労働組合の法制についてはいろんな議論がございました。今、政府が進めているさまざまな経済やあるいは産業構造を変えていこう、あるいは規制緩和、行政改革を進めていこうというに当たって、これは予算委員会あるいはもちろん本会議もそうでありますが、総理もおっしゃっているように、さまざまな痛みを伴う、これはお互いに乗り越えていこうじゃないかと。  そのためには、特に痛みを伴うという点で申し上げれば、例えば行政改革を進めるに当たっても、省庁再編成やあるいは特殊法人の整理合理化に当たっても、そこに働いている人たちへの影響というのはやはり考えなければいけないことだというふうに私も思っていますし、きめ細かな配慮といいますか、手だてが必要なんじゃないか。あるいは仕事が変わる人たちに対してはそれなりの職種転換や職業訓練というのは必要だろうと、いろんな手だてがとられています。  ところが、私は大変気になっていますのは、今度のこの持ち株会社解禁を通じての議論で労働省の考え方というのは非常に硬直的なんです、はっきり申し上げて。どうも私はこれはスタート段階のボタンのかけ違いにあったんじゃないかというのが一つあります。  これは今ここで繰り言を言っても仕方がありませんから、ぜひ官房長官には御理解をいただきたいと思いますのは、例えば今の労働組合法制、それから今でもいわゆる事業持ち株会社というのは事実上認められているはずです。事業持ち株会社のいわゆる親子会社関係の中では、さまざまな問題が実は起きています。  労働省にもいろいろと調査をしていただいて資料を提出していただきましたが、今の事業持ち株会社における親会社子会社関係で、例えば子会社の従業員が子会社経営者に対して交渉したと。しかし、事実上子会社経営者が、使用者性が非常に希薄だ、むしろ親会社の方が問題だといった場合に、親会社と交渉する権限というのは子会社の従業員には与えられていません。どうしてもという場合には、裁判に訴える以外にはないわけです。裁判に訴えれば、長い裁判では二十年かかるんです、現実に。ただ二つ、使用者はだれかということを決めるだけのために。今の労働組合法制では、使用者というのは一人だけなんです。子会社経営者も使用者、親会社経営者も使用者とは認定してくれないんです。要するに、親会社経営者を使用者と認定をするためには、子会社経営者をいわゆる法人格否認の法理で否定をしなければならぬ。  私は、今度の純粋持ち株会社解禁によって、従来の事業持ち株会社で起きていた問題が解決をされるんなら別です、あるいは全くそれ以上にふえることもありませんといろんなら別なんですが、ただ純粋に株を持って所有をするけれども支配をせずという言い方をされる方がいますけれども、そんなばかなことはあり得ないんです。  例えば経営者の皆さん方は連結納税制度がなければ使い勝手が悪い、事経理、決算に関しては親子会社で連結をしたいと言っているんですね。ところが労使関係についてだけは切りたいと、こんな不合理な話はないんです。しかも、今の労働組合法というのは、今のこの使用者性に関して言えば、昭和二十六年の改正以来ほとんど手つかずなんです。  私は、先ほど言ったように、さまざまなものを変えようというときには、やっぱりそれに合わせて法制度も変えていってもいいじゃないかなぜこの部分だけかたくなに変えられないということをおっしゃるのか、それがどうしてもわからないんです。  先ほど労政局長にお伺いをしました。できれば白紙で一回議論をしてくれないかというふうにお願いをしましたが、立場上なかなか白紙からというふうにはおっしゃられなかったんだろうと思います。私は、受け取っている皆さん方に誤解があるようなんで、あえてちょっと細かいことを申し上げますが、二月二十五日に連合と経団連、日経連が合意をしました。このことによって今度の法律法案として提出をされたという手順を踏んでいるんです。  この際の連合と経団連、日経連の合意は、労使の間でこれから話し合いますということではないんです。労使ではこういう意見の一致を見ました、したがってこれをもとにして国会の審議を通じて附帯決議を行って、労働省に対して責任を持って答えを出してくださいというのが労使の合意なんです。ところが、労働省の方は、労使で話し合うんでその話し合った結果を待ちたいというふうなニュアンスの話もあると。これは私はとんでもない話だと思うんです。  もちろん、その二月の二十五日以降、ほとんど議論がされていなかったといろんならまた別です。少なくとも官房長官も御指摘いただいた衆議院商工委員会でも議論がありました、参議院のこの商工委員会でもさまざまな議論をしてきました。したがって、できれば私は二年という期間の中で今申し上げたような問題についてきちっと解決をしてもらうような手順を踏んでやっていただきたい。  少なくとも大企業の場合ですとか、あるいは労使の機能がきちっとしているところは私はそんなに心配していません。先ほど官房長官がおっしゃったように、昔に比べれば労使協議制というのは確かにしっかりしてきました。ところが、労働組合の組織率はどんどん下がっちゃっているんです。むしろ、労働組合のないところがどんどんふえているんです。しかも、三千億円以下は公正取引委員会の目も届かないんですね。ですから、法制度で万が一という場合を考えてきちっとカバーをしていただきたいというのが私の意見なんです。  ぜひその辺の趣旨についてはひとつ御理解をいただいて、これは労働省に対する問題ですけれども、私は今度の法律の所管が官房長官であるということをあえて承知の上で、私からもう一度念のために官房長官の見解をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
  231. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 詳細についての経過、それからこれから持っていくべき具体的な手段、方法を実はよく私は知りません。しかし、衆議院での審議の経過においても随分議論がなされました。それから附帯決議の中には、「労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。 なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。」という附帯条件をつけられております。そういう趣旨に沿ってこれから懸命に頑張りますということを私はこの附帯決議にお答えをいたしております。  恐らく議論は衆参ともにおよそ同等の、同様の意見がなされたというふうに理解をいたしております。全力を挙げてその問題の解決に努力をし、このいわば独禁法改正が成功裏に終始できるためには、やはり良好な労使関係というのは何よりも大切であるということを自覚しながらやってまいりたい、このように思います。
  232. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 官房長官に、まず独禁法の存在意義についてお伺いをしたいと思います。  独禁法の第一条は、公正かつ自由な競争を促進することによって国民経済の民主的で健全な発達を促進するとその目的を明記しております。ただ、もう御承知のとおり、資本主義経済においては自由競争というのは一定の段階において必然的に独占に転化する、独占はほかならぬ自由競争そのものの子供だということも言われております。したがって、独禁法で私的独占、不当な取引制限、不公正な競争方法を禁止事業支配力過度集中を防止し云々という規制が加えられているわけです。  私は、そういう点では、公正かつ自由な競争の促進、国民経済の民主的で健全な促進のためにはどうしてもこういう規制を含む独占禁止法というのは必要だというふうに認識をしておるんですが、官房長官の御認識を伺いたいと思います。
  233. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 御説のように、独占禁止法の今日的な意義については、独占禁止法は自由経済の基本ルールを定めるものであり、規制緩和を進め、我が国経済を自己責任原則と市場原理に立つ自由な経済社会としていくことが求められている今日、独占禁止法の意義は従来にも増して有効かつ重要なものと認識をいたしております。
  234. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 次に、規制緩和と独禁法の関係について、これも官房長官にできればお答えいただきたいと思うんですが、私は、規制緩和を推進される皆さんの御意見を聞きますと、その目的というのは競争の促進にある、規制緩和は競争を促進するために行うんだというふうに理解をしております。  そうしますと、規制緩和を理由にして独禁法が今緩和されようとしているということは一つの矛盾じゃないかというふうに思うわけです。競争を促進しようとすれば独禁法は逆に強化をしなければならないんじゃないか。橋本総理も通産大臣時代に、当委員会におきまして規制緩和についての質問に答えられて、何でもかんでも規制緩和すればいいという立場ではないというふうに御答弁されていたのを覚えているんですが、まさに独禁法というのはそういう性格のものではないか、規制緩和をし競争を促進するということで、自由かつ公正な競争を促進するための独禁法を緩和するというのは、これは矛盾ではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  235. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 規制緩和は競争条件の整備であろうということは当然であります。そして、規制緩和、競争の導入というか、競争を適正に行わさせるということで、今委員の御指摘から見ますと、諸外国と比べて日本という国、諸外国と日本という場で競争が正当に作動するかどうかというのを見ますと、諸外国は少なくとも持ち株に対する制限はないわけであります。それに対して、日本があるということはいわば規制を我々は持っているわけであります。それを緩和をすることによって諸外国との競争の原理がここに作動をする、そのように御理解をいただければ、私は一つの方法。  それから、先ほど申し上げましたように、完全に持ち株を禁止をしている動向の中で、企業がいわば肥大というかその方向をたどり、また系列という問題、こういうものが出たことは、むしろ私は今までこれを厳密に守ってきたがゆえに起きる陰の部門、そういう認識をいたしますから、陰のものを表に出すという作用があり、むしろ規制緩和の大きな方向に役立つはず。しかも、今回の問題は、規制緩和という名のただ小さい、いわば持ち株の全面禁止よりははるかに分社化、そういうものを促進するであろう、そういう側面を持つために私は今回のものが行われる意義を感ずるわけでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  236. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 国際的な競争でいいますと、私は単に持ち株会社が諸外国で禁止されていないかどうかということだけで判断するのはいささか狭過ぎるんではないかという意見を持っておりますが、きょうはもう時間がありませんが、その点について長官、どうですか。
  237. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) 諸外国においてということと日本の比較をいたしましたけれども、諸外国は一〇〇%持ち株を許しております、特にアメリカ。その国に自由な競争がないかといえば、これは極めて熾烈な競争を行っているという現実もお認めをいただければ、この持ち株会社の緩和によって競争制限をされるということはむしろ逆になる、私はそのように思います。
  238. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 ほかにも諸外国にあって日本にない競争政策というものがありますので、そういうことを総合的に判断しなければならないということを私は申し上げたいわけです。  最後に、公取の研究会のあり方について少し伺いたいと思います。  御承知のとおり、持ち株会社禁止制度のあり方について、独占禁止法第四章改正問題研究会が報告書を出されました。この報告書の「はじめに」というところで、この研究会は公正取引委員会から依頼を受け、開催されたものであると。ですから、公正取引委員会が頼んで検討していただいた。そしてこの答申、報告書が出たわけですね。そして、御承知のとおり、研究会として報告をまとめられた中身を見ると、持ち株会社については原則禁止、例外解禁という立場になっております。  ところが、今度の法案内容はいわば原則解禁、例外禁止というふうな評価が一般的にはされております。理由なき全面転換というふうにも言われておりますが、そこで、こういうことがあっていいのかなというふうに私は率直に思うわけです。  この間の参議院の参考人質疑にも来ていただきました舟田立教大学法学部教授はこうおっしゃっております。部分解禁にとどめていたのに、その努力が宙に浮いてしまった、公取委はもう一度腰を据えた議論をし、国民を納得させる義務がある。また、先日の参考人質疑の際にも、こういう法案になったことについて、非常に唐突な感じを受けるというふうにおっしゃっておりました。  私は、せっかく頼んで答申をいただいた、検討いただいて報告書をまとめていただいたにもかかわらず、それがこういう形で非常に関係者、当事者たちの不満を買うような結果になるというのはいかぬのではないか、失礼ではないかというふうに思うんですが、こういう研究会のあり方について見解を伺います。
  239. 政府委員(根來泰周君)(根來泰周)

    政府委員根來泰周君) この研究会でいろいろ御努力願った先生方に対していろいろ申し上げることも、またおわびせにゃいかぬこともあることは間違いないと思います。  この研究会というのは、一般の審議会と違って、文字どおり研究会でございまして、各方面の、主として独占禁止法関係の学者あるいは経済法の学者、商法の学者、一部企業の方も入っておられますけれども、こういうメンバーでいろいろ研究していただいているわけでございます。  中間報告というのが出ましたけれども、この中間報告の読み方もいろいろありますし、また中間報告を、その研究会のメンバーというのもまた右から左までいろいろ意見があるわけでございまして、大方こういう意見でおまとめをいただいたと、こういうことでございますが、事立法に関する限りは、私ども競争政策あるいは独占禁止法だけの立場で立法をお願いするということは到底不可能な話でございます。  私ども立法権も何もないわけでございますし、これは内閣にお願いして国会に提出していただいて、国会で御審議いただく、こういうことでございますので、そのほかの独占政策あるいは競争政策以外の要素も当然入ってくるわけでございます。まず内閣で国会提出を決められる場合も、各省の御意見もありますし、また国会でも産業政策の面からもいろいろ御討議されるわけでございますので、私どもの狭い分野でお願いするというわけにはいきません。これは決して公正取引委員会の変節というようなものじゃなくて、立法をお願いする過程でいろいろ意見をちょうだいして、その意見の中でこういうふうに変わってきたということでございますが、私どもとすれば、この中間報告を基本にして立法をお願いしたというふうにみずから考えているわけでございますので、この辺御理解を賜りたい、こういうふうに思っております。
  240. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 終わります。
  241. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  242. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 私は、日本共産党を代表して、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。  反対理由の第一は、公正取引委員会みずからが掲げてきた持ち株会社禁止の理由が今日においても何ら解消されるものではないからであります。  侵略戦争の経済的基盤となった財閥の復活防止という沿革的理由についても、日米安保体制の強化や改憲策動、国会の翼賛化の危惧など、今日の情勢のもと、その根本精神は一層重要であり、維持されるべきものであります。  また、持ち株会社それ自体が小さな資本で大きな事業支配する反競争的な本質を持つことは今日においても何ら変わらず、さらに日本企業の特徴として、企業相互の株式の持ち合い、系列内取引などの実態がある中で、市場の開放性や透明性の確保が困難であることも広く指摘されるところであります。  反対理由の第二は、本法案の根幹をなす事業支配力過度集中定義そのものが不明確かつ恣意的なものであるという根本的に欠陥のある法案だからであります。  政府、公正取引委員会は、事業支配力過度集中する持ち株会社禁止するといいますが、その定義は多義的かつ根拠が不明確であるばかりか、公正取引委員会の価値判断によって左右されるものであり、およそ定義とは言えないものであります。また、ガイドラインには法的拘束力はなく、かつ違法性の判断基準たり得ないことも明瞭となり、罪刑法定主義の原則に反する疑いのあるものであります。したがって、本法案は、持ち株会社の実質上の全面解禁と言わざるを得ないものであります。  第三に、しかも、ガイドライン定義するとしている三類型の過度集中に抵触するラインは極めて緩いものであります。例えば証券一位の野村証券と都銀三位の住友銀行が傘下となるような持ち株会社禁止されないということであり、これでは大企業、大銀行の資本集中を飛躍的に加速させ、巨大企業グループと多国籍企業の経済支配力を著しく強め、独占の弊害を大きくして、日本経済の民主的発展と国民生活に重大な悪影響をもたらすものであるからであります。  第四に、持ち株会社解禁は、不公正な取引方法、不健全な企業経営をより一層助長し、大企業経営公開や公益事業等の公的規制の回避、経営責任の追求の遮断など国民の監視を弱めるおそれがあること、また企業の切り売り、合併、買収や大規模なリストラなどによる下請中小企業の切り捨てや労働者の労働条件の切り下げを一層促進する危険性が大きいこと、さらに金融制度の公的性格をゆがめ、大銀行による金融支配、産業支配を強める危険性のある金融持ち株会社解禁を前提とするものであることなど、多くの問題があるからであります。  最後に、以上申しました商法、労働法制、金融業法や税法寺我が国経済制度の根幹に関連するさまざまな問題点は、法案賛成の立場の委員からも指摘されたところであります。にもかかわらず、それらの問題点の究明が先送りされたまま、本法案を成立させることは極めて重大であります。  国民的な議論を白紙からやり直すことを強く要求して、本法案に対する反対の討論を終わります。
  243. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  244. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  片上公人君から発言を求められておりますので、これを許します。片上君。
  245. 片上公人君(片上公人)

    ○片上公人君 私は、ただいま可決されました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合及び民主党・新緑風会の各会派の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。  一 事業支配力過度集中することとなる持株会社に関するガイドラインの作成に当たっては、国会の審議を十分に踏まえ、禁止される持株会社の解釈をより明確にし、公正取引委員会審査における行政裁量の余地を極力排除すること。    なお、事前相談については、透明性を確保する観点から、その経過や結果等を適当な方法で開示すること。  二 金融持株会社については、競争政策及び金融政策の観点からすみやかに検討を行い、その解禁に当たっては、金融関係法制の整備等の必要な措置を講ずること。    なお、一一条については、九条の改正に伴う影響等を勘案しつつ適切な制度運用に努めること。  三 持株会社によるグループ経営における連結ベースのディスクロージャーの充実等、情報開示制度の改善を行うとともに、持株会社株主子会社事業への関与や子会社関係者の権利保護のあり方等、会社法制について検討を行うこと。  四 持株会社解禁に伴う労使関係の対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。    なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。  五 持株会社の設立等企業組織の変更が円滑に行われるよう、資産譲渡益課税に関する圧縮記帳制度の優遇措置や連結納税制度等の税制上の検討を進めること。また、株式交換制度等、会社法上の企業組織の変更規定についても検討を行うこと。  六 持株会社制度が中小事業者への系列支配の強化等につながることのないよう、独占禁止法等の厳正な運用に努めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  246. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ただいま片上君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  247. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 多数と認めます。よって、片上君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、梶山内閣官房長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。梶山内閣官房長官
  248. 国務大臣(梶山静六君)(梶山静六)

    ○国務大臣(梶山静六君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、本法案の適切な実施に努めてまいる所存であります。
  249. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  251. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 速記を起こしてください。     —————————————
  252. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 次に、電気事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る五月二十九日に質疑を終局しておりますので、これより直ちに討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  253. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  統一的な環境アセスメント法の制定を求める国民の世論を反映して、環境庁から提出された環境影響評価法が成立し、懸案であった発電所のアセスメントも規制対象に含まれることになりました。ところが、発電所の具体的な手続は、事実上、統一的な環境影響評価法の特例である本法案に基づいて行われることになっています。  反対理由の第一は、本法案による発電所のアセスメントは、一般のアセスメントの手続と違って、原発を中心とした発電所の立地を推進する立場にある通産大臣が手続の各段階で介入するものになっており、環境保全を優先したアセスメントが保障されないおそれがあるからであります。  電事審報告が、発電所の建設は通商産業省が策定する長期電力需給見通しを踏まえつつ主体的に関与すると述べているように、環境保全よりも電源立地を優先させるおそれがあります。このことは、本委員会で関西電力御坊火力発電所の排煙による梅枯れ問題をただしてまいりましたが、これも省議アセスをクリアしたものであり、省議アセスを法律化したという本法案によるアセスがどういう結果になるかを示す好例であります。  反対する第二の理由は、本法案は環境影響評価法と異なり、住民の声を代表する都道府県知事が環境アセスメントの実施者である事業者に対して、直接意見を言えない仕組みになっているからであります。  電事審報告が、電力の安定供給確保のための電源立地政策の責めに任ずる国(通商産業省)が主体的に関与すると述べているように、住民の代表である知事の意見は直接電力会社には言わせないということで、発電所建設はアンタッチャブルにするということであります。  反対する第三の理由は、環境庁長官事業者の作成した環境影響評価書に意見が言えない仕組みになっているからであります。  環境影響評価法では、事業者が作成した評価書について、環境問題を所管する環境庁長官が意見を言える仕組みになっているにもかかわらず、本法案では、準備書段階で出された環境庁長官の意見が正確に反映しているかどうか確認できません。  以上の理由で本法案に反対であることを表明して、討論を終わります。
  254. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  電気事業法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  255. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会      —————・—————