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1997-06-05 第140回国会 参議院 商工委員会 第16号 公式Web版

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  1. 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法 (会議録情報)

    平成九年六月五日(木曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動  六月三日     辞任         補欠選任      水島  裕君     加藤 修一君  六月四日     辞任         補欠選任      梶原 敬義君     村沢  牧君  六月五日     辞任         補欠選任      村沢  牧君     梶原 敬義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木宮 和彦君     理 事                 沓掛 哲男君                 吉村剛太郎君                 片上 公人君                 前川 忠夫君     委 員                 大木  浩君                 倉田 寛之君                 斎藤 文夫君                 中曽根弘文君                 林  芳正君                 平田 耕一君                 木庭健太郎君                 平田 健二君                 梶原 敬義君                 竹村 泰子君                 藁科 滿治君                 山下 芳生君    政府委員        公正取引委員会        事務総局経済取        引局長      塩田 薫範君        通商産業大臣官        房審議官     藤島 安之君    事務局側        常任委員会専門        員        里田 武臣君    参考人        立教大学法学部        教授       舟田 正之君        関西学院大学経        済学部教授    土井 教之君        社団法人経済団        体連合会事務総        長        内田 公三君        日本鉄鋼産業労        働組合連合会顧        問        千葉 利雄君        東京商工会議所        中堅・中小企業        委員会委員長        オーデリック株        式会社社長    伊藤 和夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付)     —————————————
  2. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る三日、水島裕君が委員辞任され、その補欠として加藤修一君が選任されました。     —————————————
  3. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案審査のため、お手元に配付いたしております名簿の五名の方々参考人として御出席願っております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております本案につきまして、皆様方から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず参考人方々から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただいた後、委員質疑にお答えをいただきたいと存じます。また、発言の際はその都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知願います。  なお、参考人方々には、意見の陳述及び委員質疑に関する答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、舟田参考人からお願いいたします。舟田参考人
  4. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) 舟田です。よろしくお願いします。  それでは、特に独占禁止法九条の持ち株会社原則禁止改正案について、私個人意見として多々疑問があるということで、色分けすれば反対意見ということで述べさせていただきます。  お手元に「参考人意見」として一枚紙のものと、それからこれは特に事務局の方にお願いいたしまして「参考人意見(原稿)」とありますが、お配りする予定はなかったんですけれども、お配りしていただく、その方が後でもし何かのときに見ていただくということで、それが四ページついております。法律家議論ですので、どうしても細かい点になってしまうので、こういうことにさせていただいた次第です。  一昨年、九五年に公正取引委員会持ち株会社についてどうあるべきかということで独占禁止法第四章改正問題研究会というものを設置したときに、私はその一員として討議に参加し、九五年の暮れに中間報告が出されましたが、そこでは四類型に限って持ち株会社解禁するということであったことは御承知のとおりであります。  その間、私もいろいろ意見を述べ、論文を書き、あるいは新聞インタビュー等に答えましたが、その中間報告の認めた四類型でも広過ぎるというような意見を持っておりました。今回はその四章研の報告と照らして、現在提案されている改正案はどういうものであるかということを述べさせていただきたいと思います。  二でございますが、もう既に皆様御審議なさっておりますので簡単に申し上げますが、持ち株会社禁止趣旨というものをここで再確認していただきたい。独占禁止法自体は、第一の目的はもちろん競争制限あるいは市場支配力をどうやって抑止するかということでございますが、それとともにAとして事業支配力過度集中防止する。これは、例えば私的な経済力を抑止するというようなことで、経済的な目的と別に社会的な目的があるということは、我が国独禁法の母国であるアメリカでも従来から言われてきたことであります。また、我が国の場合、特に大企業について経営所有の分離について非常に特殊な形をとっておると私は思っております。このことはよく言われていることでございますが、その観点からも持ち株会社禁止するあるいは厳しく制限するということには意味があるであろう。  我が国企業は、しばしば純粋の投資目的で株を持つのではなくて、さまざまな別の考慮で株式を持つということが一般的によく広がっているわけてあります。そのことが独特の経営者支配の形態を生み出している。その結果として、一般投資家あるいは個人株主という者からのチェックというものがなかなかうまく機能しない。我が国株式市場個人株主がどうしてふえないのか、どんどん減っている、あるいは株主総会はどうして儀式で終わるのかということが言われますが、それは日本企業経営者支配特殊性によるものであります。その背後には、日本企業株式所有特殊性があるんだと、そういうことを踏まえて、我が国独特と言われますが、持ち株会社禁止する理由があるんだということが私の考えであります。  次に、個別の問題として三から七まで書いてありますが、実は九条自体の問題は三と五でございまして、四、六、七は九条以外のことをきょうは申し上げたいと思っております。  三については、これは簡単なことでございますし、また新聞紙上でもよく言われることでございますが、改正案によりますと、持ち株会社の定義は五〇%以上の株式を持つ子会社、それを考えるということでございますが、五〇%というのは先ほど申しましたような我が国株式所有とその支配実態から見で狭過ぎる。何%がいいのか。いろいろございますが、例えば財務諸表規則にある二〇%とか、いろいろな基準は考えられるのではないか。そのように、持ち株会社をもう少し実態に合わせてきちんと把握して、公正取引委員会監視すべきだというのが三の趣旨でございます。  それから、四は特に金融持ち株会社についてでございますが、公取の先ほどの研究会では、金融持ち株会社に対しても五%ルールを適用すべきだということを念頭に考えておったわけです。しかし、現在提案されています改正案においては、金融持ち株会社金融事業を営みませんから何%でも持てるということになっております。これは非常に大問題でありまして、持ち株会社の下にある銀行なり証券会社は五%の適用を受ける。しかし、上の持ち株会社は何%でもいいということで果たしてよろしいのでしょうかということでございます。  それから、(2)は、金融持ち株会社及びその傘下の全企業に対して五%を実質的に維持できるような運用基準を考えたらどうかという意味は、これからどんどん金融持ち株会社傘下金融関連会社というのができてまいります。それで、それぞれが五%を持つ。そうしますと、累計して二〇%、三〇%を持つということになる、そういうことでよろしいのでしょうか。合算の方がよろしいのではないか。しかし、単純に合算はどうかということも十分考えられるので、その辺御議論をもう少し詰めてはいかがかということでございます。  それから三番目、これはお聞きいたしますと、公取は十一条の認可の際にこういうことをやっているということですが、金融会社傘下子会社は、そのまたその下の孫会社を持てないという認可基準を現在とっているそうでございますが、それはやはり法律上書くべきではないかということでございます。  実は(4)に書いたことがある意味では一番大事なことかもしれませんが、金融会社は五%しか持てないと言いながら、実際には何とか銀行系列証券会社とか、何とか銀行が母体行である住専各社とかいうことで、さまざまな金融会社の実質的な支配下にある事業会社というのがあるのではないか。これ、字が間違っていまして、友好関係、友達といいますか、親しい会社にちょっと株を持ってくださいと。それで株主総会のときには白紙委任状を下さいとかいうことがよく行われておりますし、もちろん法律上はちょっと問題があるのですが、名義貸しということもかなり行われているというふうに推測されます。これは、もちろん実際に摘発した例はほんの数件、野村証券等の事件でございますが、実際はまだなかなか難しいという問題もございます。これについては、アメリカなどではかなり厳しい追及をしているようでございまして、我が国もこの点を考えたらどうかということでございます。  五番目が、改正案の九条五項、問題のどういう類型持ち株会社を許すかということです。もう時間がないので、駆け足で結論だけになってしまいますが、第二類型金融持ち株会社ですが、それ以外の第一と第三類型というものを読みますと、公取がどう運用するかにもちろんかかってくるわけでございます。衆議院参考人意見にもそういうことがございましたが、しかし、競争制限と別の類型事業支配力過度集中という世界に類を見ない要件でございますので、果たしてこのような若干具体化した要件のもとで公正取引委員会がきちんと運用できるのか。結局、画一的な規制となるか、あるいはケースバイケースの広い裁量にゆだねざるを得ない。そのことは、結果として事業者の自由な活動を制約するおそれがあるのではないか。実は公取の四章研の中間報告は、そういうことで細かい要件をつくっても、むしろ有害ではないかという結論を出しているわけであります、  六番目でございますが、独禁法九条二は、大規模事業会社が他の会社株式を余りたくさん持ってはいけないという総額規制でございます。しかし、持ち株会社がもし認められますと、この九条の二の適用を免れるために、例えば子会社であるある商社の一部門が、自分は九条の二の違反になってしまうから、じゃ親に持ってもらおう、あるいは兄弟会社に持ってもらおうという操作が余計可能になってくるのではないか。そういう意味で、九条の二をどうやって有効に維持していくかということについては、まだ御議論が十分なされていないのではないかということでございます。  七は、これは皆さんもう従来から言われていることで、ただ大事なことは、本改正と同時並行して商法ディスクロージャー強化改正をすべきであって、この独禁法の九条の改正を先行させるべきではないというのが私の趣旨であります。これがどうなるかわからないうちに持ち株会社を認めるということは、制度設計のバランスとして非常に悪いのではないかということであります。  いずれにしろ、細かい点は、私は実は商法なり証券取引法専門ではございませんが、商法なり証取法の先生方のほとんど一致した意見として、持ち株会社によってディスクロージャー規制必要性がより高まるはずだということではほぼ一致しているのではないかと思います。  最後に、もう十五分たちましたが、七の(3)に書きましたのは、「支配あるところ、責任あり」。親の持ち株会社子会社に対して支配権を行使します。その場合には、その子会社のことについても責任を負うべきであろう。労働関係でもそういうことについて問題がありますが、特に株主代表訴訟について、持ち株会社子会社とは別会社ですから、それぞれ自分会社の役員しか訴えられないというのでは、持ち株会社をつくれば代表訴訟を回避できるということになりはしないか。これも少し議論が出ているところでございますが、例えばアメリカの場合には、この代表訴訟の問題があるので、実はヨーロッパもそうですけれども、ほとんど一〇〇%子会社持ち株会社傘下にある子会社は一〇〇%子会社であるわけです。  最後に変なことを申しますが、実は持ち株会社の下に一〇〇%子会社だけ並ぶなら何の問題もないんです。資本の集中はないわけです。単に事業部制なりカンパニー制を別会社にするだけで、独禁法上何の問題もない。問題は、一〇〇%子会社でない、五〇%なり二〇%なり二五%、あるいは五%という子会社がうようよ出てくるというところに問題があるわけです。株主の権利というものが十分これで守られるのかという心配をしているわけであります。  時間も超過いたしましたが、以上で終わります。
  5. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ありがとうございました。  次に、土井参考人にお願いいたします。土井参考人
  6. 参考人(土井教之君)(土井教之)

    参考人土井教之君) 土井でございます。  私は経済学、とりわけ産業組織論という分野がございますけれども、その産業組織論を専攻する者であります。したがいまして、そういう観点から本日意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。お手元の配付されておりますレジュメに従って、話を進めていきたいと思います。本来ならもう少し詳しく書かないといけなかったかと思いますけれども、時間の関係こういうふうになってしまったということをお許しいただきたいというふうに思います。  今日、市場経済システムが十分に機能することが求められているというのは御存じのとおりであります。今、とりわけ規制緩和議論をされ、かつ実施されている。他方独占禁止法もまたその市場経済システムを有効に機能するように非常に重要な役割を担っている、こういう中で今回の法案が出されたというわけであります。御存じのとおり、戦前の財閥支配の反省から、その復活の阻止のために独禁法の中に持ち株会社禁止規定が挿入されたと。しかし、ちょうど本年は独禁法制定五十周年に当たりますけれども、この五十年の間に政策環境もかなり変わった、それに伴って持ち株会社規定の論拠も少し変化したというふうに考えていいと思います。  そこで、最初にとりあえず結論を先に述べまして、以下、解禁背景とか競争政策上の問題、あるいは執行上の問題について若干意見を述べてみたいというふうに思います。  私の結論は今回の法律案に賛成であるということであります。  そこで、まず最初解禁背景ということで、解禁を検討する場合に当たって考慮しましたバックグラウンド、どういう認識を持っているかということをお話ししたいというふうに思っております。  まず第一番目でありますけれども、持ち株会社禁止規定というのは、ある特定産業競争関連を問わずに導入されてきたということであります。持ち株会社関連する事業支配力過度集中という問題は、経済学では一般集中というふうに呼ばれておりますけれども、これはある特定産業の枠を超えて広い分野における問題であります。しかし、この一般集中がある特定産業競争にマイナスの影響を与えている、そういう実証研究はないわけであります。ここでは細かく言いませんけれども、そういう研究はないというわけであります。したがいまして、産業組織論の分析結果に照らして判断すると、今回の法律がこういう競争制限問題を引き起こす可能性が小さいというふうに判断しております。  第二番目は、技術革新あるいは国際競争という形で競争が激化しております。こうした競争が社会的に望ましい成果をもたらすということは言うまでもありませんし、しかも実証的にも確認されている。したがいまして、激しい競争のもとで解禁議論されているということが第二番目であります。  第三点は、近年、独禁法強化されあるいは整備されまして、また公正取引委員会も積極的にその運用を行っているということであります。したがいまして、これは厳正な独禁法運用がある限り競争制限的な問題は発生しないのではないだろうかというふうに思っております。こういうふうな政策スタンスが定着する中で解禁が大きな独禁政策上の問題を含むとは余り思われないというふうに思います。  最後に、最近日本経済はさまざまなデッドロックに直面しているわけですけれども、デッドロックを打ち破るために技術進歩とかあるいはメガコンペティジョンのような新しい環境のもとでその打破を行う必要があるわけですけれども、そのためには広い意味での革新が必要である。そうしますと、こういう解禁革新には一つの契機となるんではないだろうかというふうに思っております。これは一種の期待というふうにも考えられますけれども、こういう期待という意味においても私は解禁をサポートしたいというふうに思っております。  二番目に、競争政策上の課題となっておりますが、問題で、私の間違いであります。訂正をお願いしたいと思います。  幾つかコメントしてみたいと思うんですけれども、まず第一番目は持ち株会社解禁の効果ということであります。  これは一般的な議論をしてみたいと思うんですけれども、持ち株会社グループ経営あるいは分社化、こういうふうなことをとると思うんですけれども、それにはメリットデメリットも持つということであります。まずそれを確認したいと思うんです。  一般的にメリットとしまして、事業体効率化とかあるいは意思決定が迅速に行われて革新を行いやすい、こういうメリットは多分一つあるだろうと思うんです。加えて、グループ全体、すなわち持ち株会社グループ化を通しまして統合経済性経済学では多角化経済性あるいは多様化経済性とか垂直統合経済性という形で呼ばれますけれども、あるいは範囲の経済性、こういう統合経済性がある。あるいは事業再編成の利益があるだろうというふうに思います。  しかし、他方デメリットももちろん考えられます。一つは、分社化することによる不経済性あるいは前回と違って統合の不経済性、こういう形の非効率が発生する可能性があるということであります。加えて、産業組織レベルで考えますと、系列強化を通しての垂直競争制限あるいは水平的な競争制限可能性がある。あるいはよく指摘されますように市場閉鎖性などの問題が発生する、これは一般的な議論でありますけれども。従来こういうデメリットが強調されてきたということであります。そうしますと、一般的な話としては、まず解禁デメリットを回避し他方メリットを引き出すように行う必要がある。  そこで、以下条件の整備に関して若干話をしてみたいというふうに思っております。  まず、二番目の事業支配力過度集中防止という点であります。三つケース禁止ケースが示されておりまして、事業支配力過度集中防止というスタンスは堅持されている。この三つケースは妥当なものと思われます。  二番目に監視システムですけれども、今回の案では設立に関する届け出制あるいは事後の状況報告、こういうふうな監視システムが設けられている。多分これは有効なチェックシステムを構成するであろうというふうに思っております。  したがいまして、第三番目の、こういう厳正な政策スタンスというものが堅持され、かつ厳正な監視が行われるならば解禁に伴う弊害が起こらないだろう、そういうふうに思っております。  その際に、いろんな関係者の理解を得るためにも公正取引委員会監視あるいは審査などに透明性を持つ必要がある。具体的には情報開示が求められるわけですけれども、今日私の見るところでは公正取引委員会は非常に情報開示努力が行われている。一層の努力をお願いしたいというふうに思っております。  最後競争促進政策の項でありますけれども、より一般的には有効なカルテル規制などの十分な競争政策が必要であろうというふうに思っています。今日、競争政策強化努力が続けられておりまして、恐らく、このことは、先ほど申し上げました産業界競争激化ということと並んで解禁への重要な条件を構成しているというふうに思っております。  それに関連いたしまして、一つの要望でもありますけれども、公正取引委員会機能強化が必要ではないだろうかというふうに思っております。例えば、従来、公正取引委員会企業集団とかあるいは系列実態調査をし公表しておりますけれども、引き続きそういう調査を行う必要がある。そのためにも、公正取引委員会政策上の資源、具体的には予算とかスタッフの数あるいはスタッフの構成、こういうふうな政策資源あるいは公取委の機構というものについて常に検討されなきゃならないというふうに思っております。  以上のことを勘案いたしまして、改正案は大きな競争政策上の問題を引き起こす可能性はないというふうに思われます。ただし、最後に申しましたように、公正取引委員会の厳正な政策スタンスあるいは透明性などが必要であるということを強調したいというふうに思っております。  時間になっておりますけれども、最後執行上の問題で少しお話ししてみたいというふうに思っております。  まず、ガイドラインですけれども、ガイドラインについてはいろんな御意見があるだろう。例えば、公正取引委員会裁量性が非常に大きくなり過ぎるんではないだろうか、こういう懸念も出されているわけでありますけれども、経済法というものは、経済の実体に即してケースバイケースで解釈し、運用するのが望ましいというふうに思います。とりわけ、今日のように産業構造の変化が激しいときですから、なおさらではないだろうかというふうに思っています。ガイドラインで詳細に明記してしまうと、かえって政策弾力性が失われる、実効が上がらない、こういう可能性も出てくるんではないだろうかというふうに思います。  このときに重要な前提条件があるだろう。それは公正取引委員会独立性中立性であります。例えば英国の政策当局に見られますように、政策当局独立性あるいは中立性確保がやはり必要であるだろうというふうに思います。また、その確保のためには、公正取引委員会責任というか、あるいはアカウソタビリティーというか、そういうシステムが必要である。逆から見れば、公正取引委員会への十分なモニタリングというものが必要ではないだろうかというふうに思っております。  二番目には、政策整合性の問題でありますけれども、時間の関係ではしょって議論いたしますけれども、いろんな政策あるいは法律の施行において、そのいろんな政策間の整合性を十分に維持するように実行が行われなきゃならないというふうに思っております。時間の関係で、これはこのぐらいにしたいと思います。  最後に、見直しですけれども、改正案では五年後の見直しが決められている。政策の適切な見直しというのは政策の実効性を高めるためにはやはり必要であろうというふうに思っております。また、そのためには、初めに申しましたように、公正取引委員会の機能、とりわけ調査機能の強化が必要であろうというふうに思います。  最近、私は独禁法あるいは独禁政策五十年の経済分析を試みました。この研究の中で非常に気づいたことがあるわけですけれども、従来、公正取引委員会で取り扱った事件とかあるいは施策などのフォローアップ調査を十分に行われていないということであります。恐らくこれは公正取引委員会調査機能が不十分であったということであります。恐らくこういうフォローアップ調査政策執行する場合に非常に重要な示唆を与えてくれるだろうというふうに思います。この機を利用して一層していただきたいというふうに思っております。  時間の関係でこのあたりで終わりますけれども、以上のことを勘案しまして、私は今回の改正案にサポートしたいというふうに思っております。  以上です。どうもありがとうございました。
  7. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ありがとうございました。  次に、内田参考人にお願いいたします。内田参考人
  8. 参考人(内田公三君)(内田公三)

    参考人(内田公三君) 経団連の事務総長の内田でございます。本日は、経済界を代表して意見を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  昭和二十二年にいわゆる原始独禁法が制定され、持ち株会社禁止されて以来五十年間の懸案でございました第九条の改正がいよいよなされようとしておりますことは、この間、持ち株会社解禁を推進してまいりました私ども経団連として、まことに感慨深いものがございます。当然でございますが、本日は、今回の独禁法改正法案についで、賛成の立場から意見を申し述べさせていただきます。  レジュメの内容に入る前に、まず独禁法あるいは競争政策に対する私ども経団連の考え方をちょっと御紹介いたしたいと思います。  私ども経団連では、この独占禁止法というものをいわば経済憲法、市場経済の基本的なルールとして考えて、これを尊重すべきものと思っております。そして、その遵守を会員企業に呼びかけてまいっております。とりわけ、近年、いわゆるディレギュレーション、規制の撤廃、緩和が進みつつありますが、規制緩和が進めば進むほど、それに反比例してこのルール、すなわち独禁法というものが重要になっていく。つまり、消費者の利益を守り、公正な競争を行っていくために、独占禁止法というものを経済の隅々にまで徹底していくということが求められてくるというふうに考えております。そういう観点から、昨年には企業行動憲章というものを、既にあったわけでありますが、それをさらに改定強化しまして、独禁法違反事件を起こしたような会員企業に対しましては一定期間その会員の資格を停止するというような思い切った処分も実際にとっておるわけでございます。  しかしながら、この独占禁止法そのものにつきましても、もしその内容に不当なものがあれば、あるいは規制緩和観点から行き過ぎた規制があるならば、それもやはりこの際思い切って見直して、自由濶達な競争の推進を図る必要があると考えております。  釈迦に説法でございますが、独占禁止法目的は、いわゆる一定の取引分野における競争の実質的制限を排除するというのがこの法律全体を一貫して流れている基本的な思想でございます。しかしながら、同時に、日本のこの独禁法の中には、必ずしもそういう競争制限につながらないものまで、競争制限につながるかどうかにかかわらず、一律的に外形的に禁止しているというものが二、三あるわけでありまして、その最たるものがこの第九条の持ち株会社の原則禁止でありますし、あるいはまた第九条の二の大規模会社株式保有制限であるわけであります。こういったものは外国の競争法には例を見ないものでありまして、競争政策の国際的整合性観点からも問題であると考えております。  公正取引委員会も、近ごろ事務総局体制のもとに組織、陣容を強化しつつございまして、そういうことを考えますならば、このような一律的な規制によらずとも、競争制限となる場合にのみこれを有効に防止、排除していく、いわゆる弊害規制を徹底するということが現実に可能になってきているんじゃないかと考えるわけでございます。  そこで、レジュメに入りまして、まず第一に、なぜ持ち株会社解禁を私どもが求めているかということでございます。  旧ソ連、東欧諸国の自由主義経済への参加、アジア諸国の急速な発展ということで、今世界はいわゆるメガコンペティジョンという時代に入っております。そういった情勢の中で、今までは効率的でございました日本企業のあり方も、グローバルスタンダードに立って見直す必要が強くなってきております。  事業の再編、多角化あるいは新規産業の積極的展開を行っていくためには、硬直的で巨大なピラミッド型の会社組織ではなくて、経営戦略を専らつかさどる本社機能と個々の事業を担当する子会社とに分離しまして、絶えず経営資源の最適配分を図っていく。そして、グループ全体としてフレキシブルな運営を進めていくということが重要でありまして、持ち株会社というものはそのための一つの有効なツールであるというふうに考えているわけであります。  従来、欧米諸国では当たり前の組織形態として認められております持ち株会社日本では認められないということは、日本企業経営戦略の選択肢を不当に狭めていたのではないかと存じます。  また、最近、いわゆる金融ビッグバンによる金融業務の自由化、金融業界の再編が求められておりますが、ここにおきましても、持ち株会社が重要な役割を果たすことが期待されておるわけであります。金融制度調査会や証券取引審議会、保険審議会等で現在検討が進められているわけでございます。  日本経済の活性化のために、企業がそれぞれ創意工夫を発揮して国際競争力を強化できるように現行の過剰な規制を見直して、ぜひともこの機会に持ち株会社解禁を実現していただきたいとお願いするわけでございます。  さらに具体的に、現行九条の問題点を改めて念のために二、三指摘しておきたいと思います。  第一に、現在の第九条は、実際に競争制限する可能性があるかどうかにかかわらず全面禁止と、先ほども申し上げましたが、そういうことになっておるわけでありまして、独禁法規定の中でも特に異質な規制になっているということであります。  それから第二に、純粋持ち株会社の全面禁止は、日本と一九八四年に日本の制度をモデルに独禁法を導入した韓国だけにある極めて異例な規制でございまして、競争政策の国際的な整合性の上からも問題があると考えます。現に、外国企業かるも、日本持ち株会社禁止していることが海外からの直接投資を妨げているという指摘が実際に、例えばヨーロッパビジネス協議会とか在日米国商工会議所等からなされているところでございます。  そこで、純粋持ち株会社によらずとも、社内分社化とか事業持ち株会社で十分に目的が達せられるんじゃないかという御意見もございますが、やはりそれぞれの企業にとっての最良の組織形態というものは、その企業の業態でありますとか成り立ち、あるいはその企業の持つ人材や技術力等によって異なっておるわけであります。どういう組織形態をとるかというのは、それぞれの企業の事情というかニーズに任せることが望ましいわけでありまして、競争上の弊害が生じない限り、持ち株会社の幅広い活用に道を開いていただきたいとお願いするわけであります。  それから第三に、持ち株会社解禁すると、戦前の財閥のような事業支配力の強大な集中が生ずるおそれはないかという指摘がございます。この点につきましては、戦前の日本経済と今日のグローバル化された、国際化された経済の中で厳しい国際競争にさらされている日本経済とでは全く状況が一変しているということは申すまでもないところかと存じます。しかし、いずれにしても競争上何らかの弊害が生じた場合には、独占禁止法を有効に活用することによって十分防止することができると考えております。  次に、提案されております改正法案について賛成の立場からやや立ち入った見解を申し述べさせていただきます。  まず第一は、基本規定でございますが、現行法九条で全面的に設立等が禁止されている持ち株会社について、今回の改正法案では、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社の設立等を禁止することに改めることになっております。経団連ではかねてから、一律、外形的な禁止は改めていただいて、具体的な弊害が生じる場合に事後的に規制する方式を求めてきておりまして、今回の改正は私どもの主張が受け入れられたものとして評価しております。  それから第二点は、事業支配力過度集中の定義の規定でございます。新しい九条の規定で特に重要になるのは、事業支配力過度集中とはどのような状態を指すのかという問題でございます。法案では三つの場合が列挙されておりまして、それぞれ読む限りにおいて納得できるものと考えております。  その詳細については公正取引委員会が策定するガイドラインにおいてより明確に示されるとお聞きしておりますが、ガイドラインの策定に当たりましては公正取引委員会裁量の余地をできるだけ少なくしていただきたい。少なくすることによって、企業にとっての予測可能性を高めていくことが肝要かと存じます。また、その際、競争実態を踏まえたガイドラインとするためにも、ぜひ企業意見も十分に聴取しながら策定を進めていただきたいと存じます。  第三は、監視手続と実効確保手段でございます。持ち株会社に対する監視の方式につきましては、私どもがかねてから主張しておりましたとおり、事前届け出や許可制等の公取による事前の規制が不要、必要でないということにされました。そして、事後報告によって持ち株会社の状況を把握して、具体的な弊害が生じた場合には、それを排除するために必要な措置を公取がとるということとされました。このことは規制緩和の流れに沿ったまことに適当なふさわしいものと存じます。事後の規制によりましても、競争政策上の要請に十二分にこたえることができると存じます。  次に、独禁法第九条の二の問題でございますが、経団連では、第九条とともに、その補完規定として昭和五十二年改正で追加されました九条の二の大規模会社株式保有制限規定も廃止するようにお願いしてきたのでございます。しかし、この点については、今回の独禁法改正では、株式保有総額規制の対象としないいわゆる適用除外株式が追加されるということのみにとどまりました。  この規制は、九条と同じように、競争上の弊害の有無を問わず、資本金額あるいは純資産額が一定規模以上の企業株式保有の総額を外形的に一律に規制するものでございまして、事業多角化のための子会社の設立や育成を不当に制約するものとなっているのではないかと考えます。  今回の改正で、会社の総資産に占める子会社株式の割合が五〇%を超える会社持ち株会社ということになります。そうしますと、これは九条の二の規制対象にはなりませんので保有株式総額に制限はないわけであります。ところが、総資産に占める子会社株式の総額が五〇%未満であった場合には、これは九条の二で、総資産額を超えて株式を保有することができないということで、ちょっとちぐはぐな片手落ちのことになっているんじゃないかというふうに考えるわけであります。  なお、この点は、行政改革委員会におきましても、私どもと同様の理由から九条の二の廃止を求めておると承知しております。  今回の法案には五年後の見直し規定が含まれておりますが、この九条の二については、五年後を待たずになるべく早く見直しをお願いしたいと存じます。  ところで、最後に、ちょっと時間がオーバーしておりますが、残された課題について申し述べさせていただきます。  独禁法改正によって、持ち株会社、純粋持ち株会社の道が開かれたとしても、実際に持ち株会社をつくって有効に活用していくためには、さらに解決を要する課題が幾つかございます。  一つは、現行の税制の問題でございます。持ち株会社の設立あるいは既存の会社持ち株会社に転化するそのための方法としては、現在、脱け殻方式と呼ばれております分社化による方式、あるいは持ち株会社となる会社を新たに設立して既存の会社株式を新会社が買収していく方式か、新会社と既存の会社株式を交換していく方式等が考えられますが、いずれも資産や株式の移転に伴う譲渡益課税が巨額に及ぶことが予想されます。NTTの持ち株会社による再編におきましてもこれが大きな問題となって、特例として措置された経緯があるわけであります。これは特例じゃなくて、この際、一般的な制度として早急に整備していただきたいというのが一つのお願いでございます。  それから、もう一つの課税の問題は連結納税制度の問題でございます。経団連では、持ち株会社の問題とまた別途、かねてから連結納税制度の導入を強く求めてまいりましたが、これが導入されませんと、持ち株会社解禁意味というものが半減してしまうというふうに思っております。  それから最後に、労働法制の問題でございますが、これにつきましては、連合と日経連、経団連の間で昨年来話し合いを続けてまいりました。二月二十五日の与党独禁法協議会の取りまとめと同時に、連合、日経連、経団連の間で合意いたしましたとおり、これから誠実に話し合いを進めたいと考えております。万一、現実に問題が生じましたならば、迅速な解決が図られるよう、経団連は日経連と歩調をそろえて努力してまいりたいと考えております。  以上で私の意見陳述を終えます。ありがとうございました。
  9. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ありがとうございました。  次に、千葉参考人にお願いいたします。千葉参考人
  10. 参考人(千葉利雄君)(千葉利雄)

    参考人(千葉利雄君) 私、鉄鋼労連の顧問というものをしております千葉でございます。私は、連合を中心とする労働界の一隅に身を置いておりまして、この立場から、雇用労働者及びその公正な利益を代表すべき労働組合の立場から意見を述べさせていただきます。  本来ならば、連合でこの分野を担当しております現職の者が参上いたしましてお話を申し上げるべきでありますが、たまたま本日、連合の側によんどころない事情がございまして、やむなく私のような者が、いわば代理として意見陳述をいたすことになりました。この点をまずお許し願っておきたいと思います。  今回の独占禁止法の第九条を中心とする改正の問題につきましては、私どもは少なくとも二つの側面での厳密な検討が必要不可欠と考えておるわけでございます。  その一つは、言うまでもなく、純粋に経済的な側面、すなわち内外の経済的な環境条件のかなり激動的な変化、長い時間をかけての変化あるいは激動的な現状といったようなものを踏まえましての経済政策論的な、さらにそこから発する経済体制や企業組織のあり方論的な視点からの検討でございます。そして、恐らく本件につきましては、もちろんこれが一番メーンな検討視点であることは紛れもないかと思います。  しかし、それだけではなく、この問題につきましては、いま一つ社会的な側面からの検討が極めて重要であると私どもは考えております。  そこでは、何よりもまず労働者の雇用・労働条件、それらを律する労使関係等に及ぼす影響という問題がございます。さらに、今日非常にシリアスな問題になっております企業行動における倫理性の追求、厳守、あるいはもろもろの企業の社会的責任の遂行といった点において、この新しい持ち株会社というものの認知が一体どんな問題を提起するのかという問題、これらはぜひあわせて検討が、主として社会的な側面という見地から検討が求められるべきだと思っておるわけでございます。  初めの経済的側面についてでございますけれども、これまでの経済界を中心とした議論では、これは純粋持ち株会社解禁必要性という点に専ら軸足を置いて論じられてきたと思います。  私どもは、さらにその前に、なぜ戦後五十年、これをかくも厳しく全面禁止してきたのかという点を十分にかみしめた上での議論というものが必要不可欠であるということを強調したいと考えておるわけでございます。  これまでの禁止の理由は、既に前者の方々もおっしゃいましたが、まず戦前の財閥のような、一国の経済社会、さらには政治までも左右する反民主的な巨大なコンツェルンの復活ないしは新たなる出現というようなものは絶対に許してはならないということがあったかと思います。また、それほどではなくても、これを許容することによって企業結合が極めて容易になり、その結果、経済力過度集中事業支配力過度集中というものが、あれこれの産業レベルで、さらには産業横断的に起こりまして、それによってあれこれの市場での有効競争が著しく阻害されるというようなことが起こること、さらには自律的な中小企業事業活動が著しく圧力を受ける、公正でない圧力を受けるといったようなこと、こういうことは厳に避けねばならないという観点禁止の理由の基本にあったかと思うわけでございます。そして、これらの弊害というものは、今後とも厳しく防除していくべきは、これは自明のことでございまして、その意味において、このような観点というものは今回の改正に当たっても厳しく貫かれねばならないだろうというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、一方でこの持ち株会社という新しい企業システムというものは、システムとしてはいろいろと有効性がある。とりわけ、今日、環境変化に即応して多くの企業が必要に迫られておりまする事業活動の多角化となかんずくそのダイナミックな展開、これはなかなか言うべくして難しい状態にあるわけでございますが、これをうまくやるのに少なからずこれは有効性がある。あるいは世界的な大競争時代に立ち向かっために、あぐらをかいていた日本企業がここで厳しく自省して、企業経営主体としての機能の高度化というものを図る、いろんな形で図る。広い視野に立った高度な状況掌握力とか高度な戦略的な意思決定能力といったようなものをその経営企業組織の中に確立をしていくといったような点でも、この純粋持ち株会社というものは一定の有効性があると言われておりまして、私ども、特に民間で、現場で、大変そのメガコンペティジョンのるつぼの中でそれこそすさまじい苦しみを味わいながら頑張っておる民間の労働組合運動は、多少そこから火の粉をかぶることがあろうとも、大局を考えて、この種の問題については理解をしていかなきゃならぬというふうに考えているわけでございます。  となりますと、これを禁止してきた理由であるところの弊害の除去、防除というものが十分に担保できる条件をきちんとつけた上でのことであるならば、必ずしも全面禁止ということでなくてもよいということになりましょう。  そういう見地から今回の改正案を見ますると、そうした条件整備というものはかなり踏み込んで行われているように私どもにも見えます。この改正案は、その限りにおいては是認できるかと思うのでございますけれども、しかし果たして、これだけで今なされているその条件整備だけで本当に十分なのかについては、なお確信を持ち切れません。まさにこの点につきまして国会がしっかりと検討、審議をいただいて、しかるべき答えを出していただくことを強くお願い申し上げる次第でございます。  次に、いま一つの私どもにとってよりメーンな社会的側面につきましてでございますが、これらについては、これまでの論議あるいは審議の限りでは、生じ得る問題に対する十分な対応措置が具体的に講じられたという段階にはとても至っていないわけでございます。  まず第一の労使関係にかかわる問題でございますが、ここでの最大の問題は、純粋持ち株会社の出現によって労使関係上における括弧づきの使用者というものの所在が法的にも実態的にも不明確化する、不明確になるという問題があるわけでございます。  そして、それはしかるべき対応措置をとらない限り、労使関係、ひいては雇用・労働条件、それには倒産時の労働債権の確保といった問題まで含めての諸問題における労働者の正当な権利というものを確保する上で非常なふぐあいを生じせしめるおそれが十分にあるということでございまして、そもそも純粋持ち株会社というものは、株式を保有することによってあれこれの事業会社に対して事業支配力というものを持つことを目的とするものでございます。したがいまして、当然、持ち株会社は、あれこれによりましょうが、子会社経営方針、経営上の達成目標、それを達成するためのもろもろの要件なりノルマといったような事柄につきましてそれぞれ具体的な目安を設定して、それの遂行を厳しく子会社に求めるという行動に出ることは重々あり得るわけでございますね。  そして、それは当然、子会社の雇用・労働条件その他を強く規定することになるのは自明でございます。かくて、持ち株会社は実質的に使用者性というものを持つ、こういうことになる可能性が非常に強いわけでございます。  ところが、御承知のとおり、現行の労働法制は純粋持ち株会社の出現を全く予定しておらない。その不在を前提にすべてを取り決めておる。実は、昭和二十四年、二十八年の独禁法改正規制を大幅に緩和して事業持ち株会社を容認したわけでございますが、その際には、労働運動側の未熟さもございまして、労働法制面でのしかるべき対応措置というものは全くとられずに今日まで来ておるわけでございます。  結果といたしまして、労使関係、労働条件決定のかなめとなる使用者というものの性格規定が、直接事業に携わる事業主、またはその代理人に限定をされておるわけでございます。したがって、このままでは、法制上では持ち株会社下の団体交渉機能というものは子会社の範囲にしか及ばない。雇用・労働条件の実質的な規定者たる親会社には及ばないわけでございます。団交応諾義務を含めてそうなるわけでございます。さらに、子会社は当事者能力を持たないという存在になるケースもしばしばあり得るという状況になるかと思います。こういうことでは、団体交渉権の正当かつ実質的な機能発揮というものはとても期待できない。そこから子会社従業員の雇用・労働条件の適正な維持というものは困難化をし、当然労使紛争が激化してまいる、こういった状況が生じるおそれが多分にあるわけでございます。  実は、このように親会社の使用者性の不明確ということからくる労使紛争あるいは労働者の正当な権利の侵害というものは、現在野放し状態にありまする事業持ち株会社あるいは大企業系列支配システムのもとで頻発をしているわけでございます。結局、そこでは個別のケースごとに紛争を通じて、あるいは訴訟によって親会社の実質上の使用者性というものを確認し、それに基づいて責任の遂行を迫る。そして、ときにはこれが成功もしているが、多くの場合なかなか成功しないといったような実態が広がっておるわけでございます。  したがいまして、今回の解禁におきまして、もし適切な対応措置をとらなければ、こうした事態が新しい純粋持ち株会社の世界に広く多発をするという可能性は十分にあるわけでございます。しかも、現行の事業持ち株会社あるいは系列体制のもとでは、親会社子会社のつながりが事業活動を通じてかなり実態的な内容を持つ場合が多いわけでございます。それを手繰り寄せて親会社との話し合い、あるいは使用者責任の行使を求めることが多少ともやりやすいという面もあるわけでございます。ところが、純粋持ち株となりますと、親子の関係というものが極めて抽象化される。一段と本件の問題は深刻性を深めるという可能性が強いことも御指摘申し上げねばならないと思います。  加えまして、現在、日本における労使関係の安定と、いい意味での労使協力の重要な基盤となっておりまする労使協議制、すなわち経営方針や経営実態あるいは問題の解決課題とその方策といったような事柄につきまして、経営審議会等で情報を共有し突っ込んだ話し合いをするといったような活動が極めて有効に機能しておりますが、これも単に子会社の段階だけでのものにとどまらされるという可能性が強くなりますし、そうなりましたら、これは実質的な意味が失われてしまって完全に形骸化してしまうという可能性もある、こういった問題点もございます。  御承知のように、こういった問題につきましては、先ほど御紹介がありましたように、与党の側の介添えによりまして、既に、今後二年を目途に労組法改正問題を含めて検討し、必要な措置をとることを附帯決議していただくことにつきまして、連合、日経連、経団連、三者での合意が成立しております。これは、当然この合意に基づいてその流れの中でこれら三者が真剣に今後検討を行って何らかの答えをきちんと出して、それを議会及び政府の対応措置に反映していただくということになるわけでございますが、私どもは、それであればあるほど以上のような諸問題の所在というものがあることを十分に御理解いただいて、国会側の御努力、御指導というものを特段にお願い申し上げたい。  加えまして、連合としましては、法における使用者性等についての定義を明確にすること等を含めまして、労組法全体を審議する労使法制審議会というものの設置を要請いたしておりますが、これにつきましてもよろしく御理解、御尽力をいただきたくお願いを申し上げる次第でございます。  なお、本件に関しての社会的側面にかかわるもう一つの問題として指摘をいたしました企業倫理の厳守とかもろもろの企業の社会的責任の遂行において、持ち株会社子会社というものがどういう位置づけになるのか、どういう責任の所在になっていくのか、この辺につきましても、これは極めて重要な問題だと思いますので、今日の不祥事が頻発しておる際であるだけに、これはかなりしっかりと明確にしていかなきゃならない、商法上の位置づけ、その他全部含めまして。こういうことだと思っておりますが、もう時間が参りましたので、本件につきましては問題の指摘のみにとどめまして、国会における十分な御検討をお願いいたしたい。  以上をもちまして、私の意見にいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  11. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたしたいと思います。伊藤参考人
  12. 参考人(伊藤和夫君)(伊藤和夫)

    参考人(伊藤和夫君) 東京商工会議所の中堅・中小企業委員会の伊藤でございます。  本日は、参議院商工委員会で純粋持ち株会社解禁に関して参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。この機会に、商工会議所の立場から本件に関して意見を述べさせていただきたいと思います。  この五月七日に、商工会議所は、衆議院商工委員会でも経団連や連合などとともに意見陳述をさせていただきました。その際に、当商工会議所は、純粋持ち株会社解禁には基本的に賛成する旨の意見を述べさせていただきました。  昨年来、我が国経済規制緩和という大きな潮流の中にございます。今回の持ち株会社にかかわる独占禁止法改正の動きもこの規制緩和の流れの一環としてとらえることができるのではないかと思います。そして、今度の改正は、中堅・中小企業にとっても、より柔軟に企業組織や経営組織が選択できるというメリットをもたらすものであり、これから中堅・中小企業経営多角化多様化を図ったり、新規事業を行っていく上で持ち株会社というのは有効な経営手段の一つと言えると思います。特に、分社化などの動きが促進され、現在、閉塞状況にある日本経済に力強い活力を与えることが期待されます。また、グループ支配の中核をなす持ち株会社は、事業経営はすべて子会社にゆだね、みずからはグループ全体の経営戦略の企画・立案を行い、そして策定された戦略の実行に専念できるという観点からも歓迎すべきことであると考えております。  さらには、日本では最近かなり脚光を浴びるようになってきたのですが、ベンチャーキャピタルが将来の有望なベンチャービジネスを発掘して、その企業の発展に直接的あるいは間接的な支援を行おうとしております。そのような場合、ベンチャーキャピタルが持ち株会社という形式で新しいベンチャービジネスの株式を保有し、その企業に必要とされる資金を提供することが可能となります。通常、新規に事業を起こそうとする起業家は、その創業期にはなかなか必要な資金を集めることができません。しかし、この純粋持ち株制度が導入されることになれば、この方式はベンチャーキャピタルの経営手法の一つの有力なツールになり得ることは明白でございます。  このように、これから二十一世紀の日本産業を担う新しいベンチャービジネスを発掘して、そしてその活性化を促すことが日本経済の喫緊の課題です。そのためにも、中堅・中小企業を初めとして日本企業がこの純粋持ち株会社という有力な選択肢が手にできたということは非常に大事なことだと判断いたしております。  次に、今回の公正取引委員会の骨子では、事業支配力過度集中する場合に、その持ち株会社禁止されるべきだとして三つケースが定義されております。この定義を最終的にどのように規定するのかは、具体的に細かく数字を入れたガイドラインというものをどのようにするかについて与野党の間でも種々議論がございました。  私は、たとえ純粋持ち株会社制度が導入されたとしても、現在の日本経済において、戦前のような形の財閥が復活するような事態はあり得ないと思っております。しかしながら、事業支配過度集中して、そのことが私たち商工会議所の大宗をなす中小・零細な企業の正常で、かつ公正で自由な競争取引を阻害するような状況が生じたり、その結果、国民に不当に高い製品価格を強要したりするようなことは極めて重大な問題だと思っております。そのようなことは決して起こってはなりません。そのためにも、現在、公取委によって大枠が示されているようなある種の歯どめが必要と考えております。そして、その歯どめが法令によって明確にできない場合は、ガイドラインによってその範囲が規定されることになっております。しかし、そのガイドラインも余りに当局の裁量の余地が大きいものでは困ります。できるだけ当局の恣意的な判断の入る余地の少ない形で、かつわかりやすいものにする必要があります。  私は、この独禁法に関して、法律論からは余り意見を述べることはございません。むしろ、今回の改正をめぐって実態面から中小企業にとって懸念される点について、以下五点を述べさせていただきたいと思います。  第一点は、事業支配力過度集中した持ち株会社は規模の経済を実現できるという面では好ましいことであります。しかし、一方、大企業がその優越的な地位を利用して、当該持ち株会社以外のグループ中小企業をその会社の意向に反して無理やりに傘下におさめるような行動がとられないようにする必要があります。そのためにも、企業買収などに一定の歯どめは必要かと考えております。公正取引委員会事業支配力過度集中させたグループの行動を絶えずチェックできるように、現在検討中の事前事後の届け出、報告を義務づけることのほかに、持ち株会社企業買収などに不正な動きがないかどうかの監視を強めていただきたいと願っております。  これは将来の懸念についで申し述べているわけではございません。現在、既に大企業が存在しているわけであります。また、事業持ち株会社も認められていることから、今回の純粋持ち株会社解禁すると否とにかかわらず、中小企業が大企業との関係で不公正な取引を強いられたりすることがないように、独禁法や下請法等を厳正に運用していただきたいと思っております。  第二点は、市場を構成する当事者が事業支配力過度集中させた持ち株会社グループだけになると、企業集団内の不透明な取引を助長したり、閉鎖的な市場形成につながることなど、最終的には日本経済の活力をそぐことになります。絶えず、日本経済社会に異質な、ベンチャー企業も含めて、元気のある中小企業がこの事業支配力集中させた持ち株会社のカウンター勢力として存在することが重要であります。そして、そのような経済社会であれば、経済自体に活力があるでしょうし、また新しいベンチャービジネスが次々に起こってくることもありましょう。我々は、そのような経済風土を醸成するような努力が必要と考えております。  第三点は、昨年、公正取引委員会審査部を中心にその強化が図られました。したがって、大企業事業支配力過度集中し、中堅・中小企業や零細な企業事業活動が不当に圧迫されないように監視強化が一層図られることを望みます。  四番目に、我々商工会議所も今回の改正について十分に配慮と協力をしたいと思っております。  御存じのように、中小・零細企業は、社内になかなか法令に関する専門の組織や人材を抱えておく余裕はございません。しかしながら、商工会議所は全国各地の組織の中に相談窓口を有しております。中小・零細企業が大企業などから不当な圧迫を受けた場合には気軽に法律面の相談ができるような、一種の駆け込み寺のような機能を発揮したいと考えております。そのために必要な体制の整備などについて、今後、関係省庁とも相談しながら鋭意検討をしてまいりたいと思っております。  最後に、持ち株会社系列企業集団関係についてはいろいろ議論がございます。御存じのように、経済はますますボーダーレス化し、中堅・中小企業も好むと好まざるとにかかわらず、このメガコンペティションのあらしの中にほうり出され、そして中小企業も含めた日本企業はこの大競争に勝ち残っていかなければなりません。そのために、現在企業はますます経営効率化を実現することが要請されております。そして、中堅・中小企業も当然のことながら自分たちがこのような厳しい状況にあることを十分に認識しております。非効率経営体質をそのまま温存するような企業は今日生き残っていくことはできません。  さて、このように日本企業は日夜猛烈な競争を強いられております。そして、中小企業、特に下請企業は現在極めて厳しい経営環境にあることを御理解いただきたいと思います。このメガコンペティションの中で、親会社から従来の長期的な取引慣行の継続よりも、むしろ親会社競争強化のため下請企業がさらにコストを削減するよう強く要請されている場面が多々ございます。このような親会社の要求にこたえられない場合には、下請企業は親会社から取引先の選別、下請の切り捨てというような深刻な事態に直面しております。このような観点を十分に御検討の上、懸命に自助努力を重ねておりまする中小企業や下請企業に対して、政府の支援のための施策の格段の強化をお願いするものでございます。  以上、商工会議所の立場から持ち株会社解禁について意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
  13. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人方々に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 吉村剛太郎君(吉村剛太郎)

    吉村剛太郎君 自民党の吉村でございます。本日は、参考人皆様方には、大変お忙しいところ当委員会にお出ましをいただきまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。  我々自民党は当然のことながら与党の立場といたしまして、本法案に対しましては積極的に検討もし、また推進にこれ努めてきた次第でございます。しかしながら、我々自民党議員の中にも、この独禁法改正持ち株会社解禁といいますものについては、それぞれ持ち株会社のイメージのとらえ方というのも千差万別であろうかなと、このように思っておりますと同時に、これについて積極的に解禁すべきという意見の者、まだかなり慎重な方々、それぞれあるわけでございます。  そういう中で、本日、経団連の内田参考人、わざわざお見えいただきまして、先ほどから意見の陳述を伺った次第でございます。経済がこれだけ国際化しておる中で、日本企業が生き延びていくという一つの方向づけの中で、持ち株会社解禁というのは積極的に進めるべきだという御意見と、このように承った次第でございます。しかしながら、その中にあっても経済過度集中といいますものは避けるべきであろうかと。そういう面では、独禁法の精神といいますものを十分に尊重しながらこれから世界の経済の中で日本企業が生き延びていかなければならない、このように伺った次第でございます。  これは大変高邁な精神だと、このように判断をする次第でございますが、実は本日、御存じのように、衆議院の予算委員会で問題の野村証券の方が参考人として出席されましていろいろと意見を聞かれておるわけでございます。一連の第一勧業銀行も含めまして、また味の素も含めまして、今日ほど企業の不祥事というのがこんなに続発した時代というのはないのではないか。特に業界のリーディングカンパニー、いや日本経済をリードする企業がこのような不祥事を起こしておるわけでございます。それを考えますときに、これはもうどうしてこういうことになったのか、戦後五十年のいろいろな経緯の中からこういうものになってきたのか。先ほどおっしゃった経団連としてのそういう高邁な考え、思想といいますもの、これとは随分と乖離した現実ではないかな、このように私は正直考える次第でございます。  私なりにいろいろと考えてみますと、特に野村、一勧、これは経営トップが関与しておるのではないか、最終的には司法が判断してどうなるかということであろうかと思いますが、いわゆる取締役が深く関与しておると。取締役というのは、すなわち株主から委託された株主の利益を責任を持って誠実に運用していくという一つの大きな責任があるんであろう、このように思う次第でございますが、その取締役が全く反社会的な人物とつき合ったり、それに利益を供与したり、また全く考えられないような融資を行っておるというふうなことを、これも先ほど申しましたように、日本をリードする企業の取締役なんですね。これを現実として見ますときに、私はここにどういう形でこういうことになったんであろうかという思いをするわけでございます。  参考人経営者ではないとお聞きしておりますが、経営者を統括する経団連の事務総長として、この来るべき要因、それから今申しましたような取締役というのはどうあるべきかというようなこと、また株主総会が何となくしゃんしゃんで終わるのがいいんだ、また同一日にちの同一時刻に一斉にやって総会屋みたいなのの介入を避けるとか、まさにこういう中から、先ほど申しましたような反社会的な人物の介入を許しておるのではないか、このように考える次第でございます。  今、まさにグローバル化の中で日本企業がこれからやっぱり国際経済の中で勝ち抜いていかなければならない。そして、今独禁法改正し、持ち株会社解禁していく。しかしながら、その制度がそうなっても肝心かなめの経営者が、それもトップがこういう形では、持ち株会社解禁を言うのは百年早いと私はもうまさにここで言いたいような気持ちもするんですが、経団連の立場でそのことについての御意見があればお聞かせいただきたい、このように思います。  それと同時に、こういうことに絡みまして、株主代表訴訟というのが今般非常にやりやすくなってきたわけでございまして、これは違法行為をやれば株主から訴訟を起こされるのは当然であろうかと、このように思う次第でございます。  まず、内田参考人にいわゆる経済界の立場として経緯等、御意見と問題点とをお聞きしたい。それから、経済学者として、同じ質問になりますが、土井参考人舟田参考人からお聞かせいただければと、このように思います。よろしくお願いします。
  15. 参考人(内田公三君)(内田公三)

    参考人(内田公三君) お答えします。  ただいま吉村先生からいろいろ御意見がございました。一連の企業不祥事について経団連としての対応といいますか、どうなっておるのかということでございます。これは本当は経団連の会長がお答えしなくちゃいけない問題でございますが、きょうは私がここに来ておりますので、私の事務総長としての立場からお答えいたします。  私どもも、最近の味の素なり野村証券なり第一勧銀の新聞を騒がしている事件については大変遺憾に存じております。今までの経緯は、この三社ともそれぞれ社長さんとか会長さんあるいは名誉会長さんが経団連の委員長とかあるいは評議委員会の副議長とか、そういう役職をされておられましたが、これらの役職につきましては会社側から直ちに辞任したいというお申し出がございまして、私どもはいわばそれは当然だろうということでそのまま受理しております。  これから先どうするかということでございますが、経団連の定款には、ちょっとここに持ち合わせておりませんが、要するに甚だしくそういう名誉を傷つけるというか、破廉恥行為的なようなことを会員企業がやった場合には退会を命ずるというような規定もございます。そこで、そういう措置をとるかどうかということについて定款の十二条委員会というものを近く開かなければならないというふうに考えております。たまたま、来週の月曜日に定例の経団連の会長、副会長会議というものがございますので、その機会にこの十二条委員会をいつ開くか、あるいはもうその日にそれを十二条委員会にして、どういう措置をとるか、そこで決められるかどうか、いずれにしても来週の月曜日に会長、副会長の皆様の間で審議することになっております。  その場合、問題は、逮捕されたりはしておりますけれども、またこれは司法上結論というものがはっきり出されておるわけではないので、新聞報道等に基づく情報だけでどれほどの措置がとれるのか、とるべきなのかとるべきでないのか、その辺が一つ問題になろうかと思っております。  それから、経団連という組織が裁判所でもありませんので、会員企業のそういう行動に対して退会とか何かそういう制裁措置をとるということが社団法人という性格上ふさわしいのかどうかというような問題もあるかと思っております。  しかし、いずれにしても、何年か前に企業行動憲章というものを作成し、昨年さらにそれを強化、改定して、そのやさきにどうもそれに違反するような、それにもとるような事件が相次いでおりますことは大変に私どもとしても残念に思っておるところでございます。そういう行為を起こした企業に対する措置は当然のことでありますけれども、会員企業あるいは広く経済界に対してもう少し企業の倫理、企業行動というものを責任を持ってしっかりとやっていくように訴えていかなければいけない。これからの経団連の役割といいますか使命というものは、そういう問題が恐らく一つの重要な使命になってくるんじゃないかというふうに私は考えております。  冒頭の陳述で申し上げましたけれども、規制緩和とかそういうことが進めば進むほど、やはり自己責任原則というものがそれだけ強く求められるわけでありますので、これから経済団体の社会的な使命というものはそういったことが非常に大事になってくるというふうに考えております。  今ここで、あれは退会することにしたと私が言えればいいのかもしれませんが、まだちょっとそういう段階ではございませんので、このぐらいでひとつ御勘弁いただきたいと思います。
  16. 参考人(土井教之君)(土井教之)

    参考人土井教之君) 先ほどの件でございますけれども、非常に難しい問題で、エコノミストとして非常に難しい問題ですけれども、二点ばかり私のコメントをしてみたいと思うんですけれども、一つは、独禁法との絡みでもあるんですけれども、恐らく公正な競争を行うというふうな精神が企業の間で十分に浸透しておれば、そういう企業倫理は守られるだろうというふうに思います。そういう意味では、独禁法の厳正な適用あるいは運営というのは重要だろうというふうに思うのが第一点目であります。    〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕  私は大学の教員ですから、大学教育との関係でちょっと今思いついたことを申しますと、アメリカのビジネススクールのランキングを見る場合に、最近一番重要なファクターは企業倫理の科目が十分に行われているかどうかというのが一番重要なランキングの評価項目になっております。そういう意味では、日本も大学教育の中にこういう企業倫理の科目が充実するようなことがあればいいんではないだろうかというふうに、今お話を聞きまして思った次第です。  以上二点だけ。
  17. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) 先ほど吉村委員から、最近ほど企業不祥事が目立っているときはないとおっしゃいましたけれども、しかし四年前、五年前はもっとすごかった。軒並み大企業が損失補てんを起こしたわけです。私は、これは単なるある企業が偶然やったというふうには思われない、構造的問題であろうと思います。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕  例えば、企業倫理あるいは自己責任原則というようなことが今ほかの参考人から聞かれましたが、むしろ構造的問題であるならばその構造を直すべきではないか。その原則は、私が最初に言いましたところの日本企業独特の経営者支配構造にあるんだというふうに私は思っております。株式会社ですから、もちろん株主株主総会経営者を選ぶ。皆さんは何年に一遍、選挙で厳しい試練を受けて選ばれるわけですが、では大会社経営者はそのような厳しい試練を受けているか。受ける建前なんですが、事実上は企業がお互いに株を持ち合って白紙委任状をもらって、だからこそ三十分で株主総会が終わり、人事が承認されるということになるわけです。  その意味で、これは非常に日本的な特色ですが、会社がほかの会社の株をこんなに広範囲に持っていていいものだろうか、そのことが経営責任者のお互いの、ちょっとこういう場で余り厳しい言葉を言うのは失礼なんですが、お互いの甘え合いというものを支えているのではないのか。その意味で、九条の二というのは大規模事業会社自分の資本金なり総資産を超えて他の会社株式を持ってはいけないと。余りたくさん株を持つと、今言ったような株式会社本来の原則、株主経営者をコントロールするべきだということが全く形骸化してしまう、そういう意味で九条の二というのは非常に大事な規定だというふうに思います。きょう問題になっている九条も、同じような危険をもたらしはしないかということで厳重な縛りをかけるべきだろう。  それからもう一つ、十一条ですが、実はいろいろ意見がありまして、金融会社には証券会社は含めるべきではない、なぜならば銀行と証券は全然力が違うではないかという証券業協会からの要望書を拝見いたしました。確かに力の点では銀行の方がもちろん圧倒的に大きいわけですが、証券会社というのは各上場企業に対して等距離につき合うといいますか、すべての株主を平等に扱うということが非常に大事な、非常に特殊な役割を担った会社であろう。そういう意味で、証券会社も十一条の五%ルールというものをきちんと守らせる必要があるのではないかというふうに思います。  なお、ちょっとついでですが、十一条は保険会社に対しては一〇%まで保有を認めております。したがって、日本の大企業のほとんどすべての一位企業は生命保険会社が一位株主になっております。八%、九%、一〇%まで持ってます。金融大改革で相互参入が認められます。保険、証券、銀行の垣根が次第に取り外されつつあります。その中で、保険会社だけが一〇%まで持っていいという理由は全くないのではないかなというふうに思います。これは御検討をお願いいたします。  以上です。
  18. 吉村剛太郎君(吉村剛太郎)

    吉村剛太郎君 ありがとうございました。  今回の野村とか一勧の件で一つ不思議なのは、監査役の機能が全く発揮されていないということ、これも一つ大きな問題ではないか。これはこれとしてまたこれから論じていかなければならない点でもあろうか、このように思っております。  いずれにしましても、企業というのは株主から委託されて経営者が、取締役が運用していくものではありますが、やはり何といっても社会を構成する一員なんですね。社会の公器ですから、先ほど先生がおっしゃいましたように、経営自体がやっぱりワンランクアップして、よりよい日本経済をつくっていかなければならない。ただいま同僚の斎藤議員が、経団連で規約を厳しくするとメンバーが半減するんじゃないかなんという冗談みたいな話がありましたが、決してそのようなことがないようによろしくお願いしたい、このように思います。この問題はこれで終わらせていただきます。  実は、これは六月二日の日経新聞なんです。ここに「大型合併容認の独禁政策」、これはアメリカのことなんですけれども「米国内からも反発」、こうなっておりまして、一つは、アメリカの石油メジャーですけれども、「テキサコとシェルが共同で計画中の石油精製子会社の設立に異議を申し立てた。」、シチズン・アクションという消費者団体、これがガソリンの価格が上昇する可能性を指摘して、「米連邦取引委員会(FTC)に対し、計画を却下するよう求めている。」と。これが一つあります。  もう一つは、「小売り分野では、カリフォルニア、ニューヨーク、イリノイなど全米八州の州政府検事局長が三十日に、ステープルスの合併計画に対する意見書を連名で連邦地方裁判所に提出した。各州が独自に域内での二社の競争によるこれまでの価格低下の経緯を調査した結果、「合併が値上げを招くのは必至」」だと、こういう主張なんですね。  もう一つは、「ワシントンに事務局を置く米弁護士協会では、中心メンバーが、反トラスト法に関する米政府の解釈について、法律的な分析に着手した。 法曹界では、政府が企業合併のガイドラインで示した「経営効率化」を重視する論理に対し、法的根拠を疑問視する声も出ている。」と。  それぞれの合併とか提携とかいろいろあったんでしょう。この内容については私はよく存じ上げませんが、こういう過度集中が消費者に対して不利を及ぼすというようなときに、消費者団体とか弁護士会とか、また地方自治体がこういうことをやっておるんですね、アメリカというのは。アメリカというのは自由に競争させる。しかし、自由に競争させる反面、社会のメカニズムの中に自由競争の中から経済過度集中するとか、消費者に不利益を及ぼすようなことについては生理的にチェック機能が働いているんだなという感じを私は受けておるわけでございます。  先ほどから参考人のお話を聞いておりますと、なべて公取の力を強化すべきだ、持ち株会社解禁は消極、積極は別としてもおおむねいいだろうと。しかし、一方では、やはり競争社会の中で経済過度集中とかそれを避けるために公取の仕事というのを強化させなければならない、組織的なものを強化させるべきだという御意見を大体皆さんお述べになったな、こんな感じがするわけなんですね。  私はまさにそのとおりだ、このように思うんですが、本来なら公取という制度でチェックするよりも、社会全体の中にそういうものに対するチェック機能が果たして日本にあるのか。消費者団体とか、またオンブズマンとかいろいろございますが、日本の場合はどうもイデオロギーに流れたり、政治勢力とつながったり、そういう市民運動的ながら市民レベルのチェック機能というのが本質的にこの日本の社会にはまだ育っていないのではないかなと。しかし、一番大切なのはそういう素地ではないかな、そしてそういうものの上に立って、やっぱり公取があり、独禁法のもとにいろいろと過度集中などその他国民のため、また消費者のためにならない不利益を及ぼすことについてしていくような土壌を育てていかなければならないんじゃないかな、このように思う次第でございます。  私はアメリカの社会がどうなっているのかよくわかりませんし、またこうやって政治の立場におりますが、そういう機能があるのかないのか、まだこの辺もよくわかりません。その辺の実態、もしあればお教えいただきたいと同時に、諸外国のそういう面について、これは学者でございます土井先生と舟田先生、再度ということでございますが、御意見なりをお聞かせいただければと、このように思っております。
  19. 参考人(土井教之君)(土井教之)

    参考人土井教之君) 今の御指摘、そのとおりだろうというふうに思います。  二点ばかりコメントしたいと思うんですけれども、まず第一点はそういう市民レベルあるいは消費者レベルのこういう力が出てこない、多分そのとおりだと思います。その理由として、一つはそういう消費者組織のあり方あるいは消費者問題に関する教育の問題も一つあるんだろうというふうに思われます。そういう意味では重要な御指摘をしていただいたというふうに思っております。  二点目は、イギリスの例を挙げますけれども、例えばイギリスではナショナル・コンシューマー・カウンシル、全国消費者協議会というんでしょうか、こういうのがありまして、公正取引庁あるいはガス、電力等の規制機関にいろいろ物を言っている。しかも、そういう規制当局とは独立の組織である、これは非常に一つ参考になる事例だと思います。恐らくこういう一般的な教育とこういう組織がうまく機能するならば、今先生が言われたような市民レベルのチェックシステムというものが芽生えてくるのではないだろうかというふうに思います。  以上です。
  20. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) 独禁法の実効性を高めるために単に公正取引委員会だけではなくて私人なり企業あるいは消費者団体等の活動が重要である、それをどうやって制度にのっけていくかということは私ども法律家の長年の懸案でございます。正直言いまして、例えば今のアメリカの例に比べて日本はその点で公取中心主義過ぎるという点はまことに私も賛成でございます。  今回の九条について考えてみましても、果たして九条の五項で、もし消費者があれはちょっと過度集中だと言った場合にどうやったらいいのか。措置請求はできるんですけれども、それに対して公取はこたえる義務はないので、恐らく権利として何も言えないのではないかなというふうに思います。  私も詳しく詰めておりませんが、そうすると、もうあとは何か損害を受けた場合の損害賠償請求ということになって、これは皆様御存じのとおり、石油カルテルの最高裁判決があって、消費者が企業独禁法違反を訴えるというのは非常に困難だということがわかった。私は、もしそんなに日本だけが困難であれば新しい立法をしたらどうかというふうに思いますが、今の御指摘の新聞にございましたようにアメリカにはシビルアクションの制度がありますから、そのような制度を日本でもいろいろ考えたらどうかなというふうに思っております。  その意味で、今回あるいは前回独禁法強化が少しずつ図られてまいりましたが、今後とも市民なりあるいは独禁法違反によって被害を受けた企業からの競争秩序維持のための行為というものを促進するような法制度をぜひ、私どももそうですが、皆様にも考えていただきたいというふうに思います。
  21. 吉村剛太郎君(吉村剛太郎)

    吉村剛太郎君 ありがとうございました。  アメリカの場合は事前にそういう機能が社会の中に反応として出てきているんだなという感じがして、日本の場合は表に結果として出てきて、それに対してリアクションをするという、その辺の違いかなと。これから先生方、またきょうお見えの参考人先生方、その辺をぜひ、法律とか制度以前に集中とか独占とか寡占とかそういうものを避ける日本人のそういう体質を持たなければならないのではないかな、このように思っております。  私も、かつてある業界のトップメーカーに勤めておりまして、十年ほどサラリーマンをした経験がございます。そして、事業子会社をその当時でも全国に六、七十持っておりましたですかね、そして、その事業持ち株会社に私は勤めておったわけです。同僚なり先輩なりが子会社に出向するんですよ。何年かたつと本社との縁が切れてそこに移籍されてしまう、こういうケースがたくさんあったわけなんです。出向するときにまさに都落ち的なメンタリティーで出ていくわけなんです。そして、そのままメーカーとは縁が切れる。その当時は同じ会社ですから同じ社宅に住んでおるんです。一方はメーカーの人、一方は子会社の人。本人同士もつらい思いもするかもしれませんが、奥さん同士もうちのだんなはメーカーだ、こちらは子会社の人だと、何となくぎすぎすした感じがしたわけなんです。  純粋持ち株会社も恐らく同じようなことが起きるんではないかなと。今度NTTがああいう形になる、もう御存じのようになるでしょうが、みんな持ち株会社側にいたいんですね。NTTぐらいになるとどうかわかりませんけれども、子会社には行きたくない、この辺の日本人のメンタリティーというのがやっぱり一つあるんではないか。  これはいい悪いではなくて、そういう問題もあるんではないかと思いますときに、国際化の中で、持ち株会社解禁というのはまさに国際的なハーモナイゼーションでしょうが、その国々によって国民としてのメンタリティーというのはやっぱりあるんではないかなと思いますときに、この制度が解禁になりまして、各企業それぞれのとらえ方があるかもしれないが、経済の論理、資本の論理ではなく、そういうものまで含めたときに、さあどの程度これが実行段階に移されるんであろうかなと、こんな感じもするわけなんですけれども、経団連のお立場で何か御意見があればお聞かせいただきたい、このように思います。
  22. 参考人(内田公三君)(内田公三)

    参考人(内田公三君) ただいま吉村先生の御経験に根差した御質問がございました。実は、親会社から子会社に移されると何か左遷されたとか、こういった問題も純粋持ち株会社解禁されるとある程度解決といいますか、回避できるのじゃないかというふうに私どもは考えておるわけです。  といいますのは、従来は事業持ち株会社しか認められでおりませんから、親会社のやっている事業、例えば鉄鋼会社だったら粗鋼をつくるという本来の親会社事業、祖業とか言っていますけれども、祖業に従事している人がやっぱり一番偉いんだと。それで、何か関連会社とか子会社に人事異動になると、そいつはもう余り出世できない、左遷されたんだというような受けとめ方がどうもえてしてなされる。  しかしながら、もし仮に純粋持ち株会社、つまり親会社事業はしない、純粋の持ち株である、そしていろんな事業はもう全部子会社にやちせる、そして純粋持ち株である親会社は国内外の情勢とかいろんな条件をにらみながら、どの子会社にどれだけ資源を、人材を配分し、どの部門を拡張してやっていくかという戦略を打ち出していくというようなことになっていきますと、必ずしもどの子会社がどうだこうだという、それは親の純粋持ち株会社経営者と子会社の役員とではちょっとこれは意味合いが違うかもしれませんけれども、少なくとも子会社がやっているいろいろな事業の部門の間での、どっちの方が本業だとか、どっちが枝葉だとか、どっちが島流したとか、そういうことは相当程度避けられるんじゃないかというようなこともございまして、本日ここに来れませんでしたが、経団連で競争政策委員長をやっておられた旭化成の弓倉さんは、つまり祖業からの解放というか、そういうことが一つ持ち株会社解禁のねらいなんだということをよくおっしゃっておられましたので、それだけちょっとお話しさせていただきます。
  23. 吉村剛太郎君(吉村剛太郎)

    吉村剛太郎君 千葉参考人には大変お待たせしまして申しわけありません。  先ほどからいわゆる親会社、使用者の支配力ということを陳述されたわけでございまして、労働側からは、これはおっしゃっておるように、三者のスタディーチームがこれから二年かけて検討していくんだろう、このように思っております。  一方では、企業のそれぞれの子会社独立性といいますか、そういうものがこの持ち株会社一つの特徴なんですね。それぞれの単体が一生懸命仕事をして利益を上げていくというところにこの特徴がある、そういう見方もあるだろう。それが親方日の丸的に持ち株会社の方との関連、いつもそこを見でおるというのではかえって、もしこれが解禁になりますとこの制度が生きてこない。むしろ自分らでやるんだ、自分らの経営者はこの子会社の社長だと、そことの関連でお互いが意見を出し合って頑張っていくところにこの制度の一つの特徴があるんではないかなという気もするんですが、いわゆる持ち株会社との関連といいますものを非常に強調もされたわけでございますが、その辺をもう一度ちょっと御意見をお聞きしたい、このように思います。
  24. 参考人(千葉利雄君)(千葉利雄)

    参考人(千葉利雄君) 純粋持ち株会社というものが実際に動き出していく中で、恐らくその持ち株会社のビヘービアというか基本的な戦略の選択とか実際行動というものは非常に多様であるだろうと思います。そして、経団連等のお話の流れでは大変高次元な御議論が多いわけですね。非常に戦略的に強力な判断力を構築して、管制塔をしっかり立てて、大局的なリーダーシップを発揮するためのものであって、そんな子会社をいじめたり、理不尽にコントロールしたりするためのものではない、こういう御議論も多いわけでございます。  しかしながら、一たんこれを制度的に認知した場合に、私は必ずしも性善説で企業というものを見ることができないわけでございまして、この新しい制度をうまく利用して労働者側からの団交機能発揮を逃げていくとか、それを阻害するとかいうような方向にこのシステムを悪用するというか活用するという見地から、このシステムを利用しようとする動きというものはあれこれの企業の中には重々生じ得ると見なきゃならないと思うのでございます。それは今現に展開されている事業持ち株会社あるいは系列支配の中でもそれに類することは多々実際に生じておるわけでございますから、このような新しいシステムが一段とそういったことをやりやすくする、非常に親と子の関係を抽象化することによって一段とそれをやりやすくするという反面も持っておるだけに、そういう使い方というものは重々あり得る。  したがいまして、このような新しい選択をするにつきましては、ポジティブな面だけじゃなくて、そういうネガティブな側面が重々起こり得るということも十分念頭に置いて、きちんとした対処をしていかないとやはり間違いが起こるんじゃございませんでしょうか。そういう点を強調申し上げたいと思うのでございます。何も高次元な高いレベルの見地からの持ち株会社運用だけでは決してないだろうと思っております。
  25. 吉村剛太郎君(吉村剛太郎)

    吉村剛太郎君 外国なんかの例を見てみますと、やはりそういう面にこの持ち株会社を利用したというケースがいろいろとあるようでして、今、千葉参考人の御懸念というのはよく私もわかりますし、これから三者のスタディーチームが時間をかけてじっくりと検討をしていくものと、このように思います。  続きまして伊藤先生。  我々の仲間にも中小企業をみずから経営している人もおりますし、私の友人にも多々中小企業経営者がおるわけなんです。この問題についていろいろと話もしたわけでございますが、この解禁は決して反対でないけれども、温度差としては大企業方々と随分違うものを実は私は肌で感じておるわけなんです。  確かに、ベンチャービジネスを育成していくという面で、ベンチャーキャピタルがどちらかというと持ち株会社として資本援助をしていく、こういうプラスの面もあるかもしれませんが、一方ではやっぱり大企業に併呑されていくという傾向もこれはなきにしもあらずだと、このように思っております。  今日までの日本経済成長といいますのは、かつてソニーでも本田でも町工場の零細企業だった。それが今日、世界の本田、ソニーになってきて、これは営々として努力してこれだけの企業に育て上げたというわけでございまして、随分、資本的にも金融面でも財政面でも苦労されたんだろうと思いますが、もしあのときこういう制度があればよかったのか悪かったのか、これまた何とも言えない面があるんではないかな、そういう中から、苦労しですばらしい経営者としてまた育ち、すばらしい会社に育っていったんではないかなと、このように思う次第でございます。  プラスの面とマイナスの面が中小企業においてはあろうかと、このように思っておりますが、そのウエートがどっちが大きいかということは、これまた私も存じ上げませんが、その点について、先ほどもちょっと述べていただきましたけれども、御意見を拝聴したい、このように思います。
  26. 参考人(伊藤和夫君)(伊藤和夫)

    参考人(伊藤和夫君) これからの意見は個別の問題ですから、商工会議所の総意ではなくて、私の個人的な考えとして受け取っていただきたいと思います。  私も幾つかの公職の中に、数多い会員を抱える団体の会長、理事長というのを受け持っておりますが、今やっぱり一番ひしひしと感じるのは、戦後五十年と申しますか、この長い間、日本経済を支えてきた見えざる大きな力というのは中小企業、その数は全体の九八%、就労人口が六割。個々の企業体力あるいは総合力が低下していて、極端なことを言いますと、株が上がらないのも土地がどうも動かないのも、もともとそういうことにやっぱり一生懸命働いて利益を上げて株を買ったのも、中小企業経営者が非常に大勢いたと思いますね。これがもうこの長引く不況とやっぱり産業構造経済構造の変化で相当体力が落ち込んでいると。  商工会議所としても統計を見ますと、企業を起こすより廃転業をする人の方が多いというのがこの数年前からの大きな現象で、やっぱり工業と商店街のことが、特に商店街は目につきますけれども、工業の転廃業も表に見えないけれども実態は相当な数になっていると。言わば、サクセスストーリーの夢が日本社会になくなったということで、そういう面では、ベンチャービジネスの育成ということに対しては非常にこれは大きなインパクトを与えて、期待されていると思います。  それは一面、やっぱりデメリットはいろいろありましょうけれども、私も千人の社員を抱えている製造業、照明器具のメーカーでございます。だけれども、私が会社で一番早く毎日七時には出勤していますし、一番遅くまで働いていますよ。だから、金で人を操るなんという時代じゃないので、やっぱり社長が率先して、ですから朝七時から、夜はいろいろこういう会合があったりするとセブンイレブンだと私言っているんですよ。そのくらい働かないと社員がついてこないんで、金で子会社が、一部を除いてそういうことができる組織があるのかもしれませんが、もはやそういう時代じゃありませんと、こう思って、本当に経営者とそこに働く社員の質が非常に問われる時代かと思っております。  こんな機会だから少し離れて申し上げますと、去年の十一月に経済企画庁から東京商工会議所に、傘下企業の景況状況について知らせてほしいということで御依頼がありまして、私と、衆議院参考人でお話ししました小柳さんと二人で行ってまいりました。  あらかじめ、経済企画庁からの公式な依頼ですから、傘下会員一万七千社の統計をずっと集めて、去年の十一月の末に経済企画庁の調査局、この局長以下関係者大勢のところで二人で発表してまいりましたが、その統計によりますと、去年の暮れのことですから、景気は緩やかに明るい方向に行っていますと経済企画庁もそういう発表をしていますし、世の中、明るいような感じの時代でございましたけれども、中小企業のアンケートをとりますと、七割が去年の春より秋の方が景気が悪くなっていると、こういう答えなんですね。私は、それは我々のアンケートも正しいし、それから経済企画庁の統計もきちっとしたものに基づいている。両方正しいわけです。  じゃ、どこが違うかといいますと、日本の照明器具製造メーカー、小まで合わすと数百社あろうかと思います、関連する部品を入れますと。その大企業の部分というか、中堅・大企業の部分だけが入っている社団法人の日本照明器具工業会という大きな団体があるんですが、会長は松下電工さんで、私は副会長なんです。一方、私は零細な方の協同組合の方の、これは会員が関東地方だけですから百六十社ですけれども、そこの理事長を受け持っているんです。そういう通産省、企画庁に行く大きな統計は、日本に数多いメーカーがあるけれども、ブランドメーカー約十八社の統計しか行かないんです。東芝から始まって、ずっと私ども含めた十八社の統計資料が通産省に行って企画庁に集まるんだけれども、これは前年から見ますと大体数%上がっているんです。リストラをやってコストダウンを徹底的にやりますから、合わなければ異業種から物を買うし、もっと合わなければ海外から部品を取っちゃっていますから、従来納めていた中小企業は、僕が理事長をやっている会員は年にやっぱり五、六社ずつ廃転業してみんな軒並み悪いけれども、工業会の統計では数%成長しているわけです。  ですから、一日本の今の統計をとる機構の中で、そういうブランドメーカー、大きいところの資料はとれるけれども、零細な資料はとる機関がないんですね。だから、経済企画庁は緩やかに明るい方向と言うけれども、これは外国から部品を買ったり、異業種から買っていて上がっているわけでして、従来納めていた先はどんどん減っているかもしれません。ですから、実態と実感の差だと、両方とも正しいと。しかし、中小企業はひとついろんな対策を立ててやってもらわないとばたばたもう姿を消していきますよと、こういう意見を述べてまいりましたが、長くなってあれですけれども、あらゆる角度から中小企業を支えてもらわないと、大企業だけいかに数字がよくても、支えてきたここが悪ければ日本経済は明るくなりませんというのが私の持論でございます。  長くなりまして済みません。
  27. 吉村剛太郎君(吉村剛太郎)

    吉村剛太郎君 参考人方々、本当にお忙しいところありがとうございました。  いずれにしましても、大企業中小企業も、また経営者も労働者も一体となって日本経済のこれからの活性化のために邁進していただきたい、このように思っております。  また、質問の中で大変失礼なこともあったかと思いますが、心からおわびを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  28. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 参考人皆様方、ありがとうございます。私は、平成会の木庭健太郎と申します。早速質疑をさせていただきたいと思います。  まず、内田参考人にお聞きをしたいと思います。  先ほども企業の不祥事の問題が提起されておりました。私も、日本企業の体質自体が変化しているのかどうか。本当に私が指摘したい点というのは、今、日本企業というのは国際化ということでいろんな意味で御努力なさっている。その国際化ということに走る一方で、逆に株主であるとか国民であるとか、そういう視点が企業からより一層失われている危険性が今あるんじゃないかと。だからこそこういう問題が起きてくる、そう感じてならない一人でございます。まさに国際化とともに、先ほどからお話のあったような企業倫理という問題を本当に確立していかなければ、せっかく国際化して大きくなった企業であっても国民の支持を得ない。その企業では、これは本来のあり方ではないんじゃなかろうか、こう感じてならない一人でございます。  その上で、先ほど不祥事の問題に対する対応はお話をされましたので、私は、最近、特に企業の中で一つ問題になっているのは、この持ち株会社の問題とも関連あるといえば関連ありますけれども、株主総会のあり方の問題でございます。  これは、経団連でも何回かいろんな意味で指摘をされていることもあるそうでございますけれども、今回の一連の不祥事というのはすべて株主総会絡みと言われております。これから事件の真相は究明されていくでしょうけれども、この株主総会のあり方というのに対して、今まで不透明だったという部分に対して、経団連としてこれは全体お取り組みにならなければいけない課題ではなかろうかと思っております。また、そういう認識でいろんな取り組みをされるんだろうと思いますが、その点どんなお考えを持っていらっしゃるのかというのが一点でございます。  さらに、株主総会だけでなく、ほかの参考人意見からもありましたけれども、持ち株会社ができますとより一層重要になるのがディスクロージャー、情報公開の問題でございます。  これをさらに企業が進めていかなければ、この持ち株会社の問題はさまざまな問題をさらにはらんでいく危険性がある。これもやはり企業自身が取り組んでいかなければならない問題ですし、その企業をある意味では指導する立場にある経団連として、情報公開、ディスクロージャーという問題について、特に持ち株会社ができるのをきっかけにしてどうお考え、どうお取り組みになるのかという点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  29. 参考人(内田公三君)(内田公三)

    参考人(内田公三君) まず第一の株主総会のあり方の問題でございますが、これはかねがね批判の的になっている問題でございまして、例えば、大体今そのシーズンを迎えようとしておりますけれども、各社が何かみんな同じ日に総会を開くというのは一体どうなのか、もっと分散して別々の日にやるというようなことはできないのかというようなことは今までも言われております。その問題は、経団連におきましても関係委員会で総会開催日の分散を検討しております。今までも検討してまいりました。そして、なるべく別の日にするようにというようなことで、会長会社などは率先して別の日に開いたりしておりますが、なかなか思ったように分散というのが進んでおりません。これは別に総会屋対策というようなことでどうしても同じ日になるということだけでは必ずしもないようでございまして、いろんな事情で、商法上の総会の開催の手続をいろいろ段取りを踏んでいくとどうしても同じような日になってしまうというようなこともあるようでございます。  それからもう一つは、そういう株主尊重、株主総会でもってもっと本質的な議論を、セレモニーじゃなくて実質的な議論をするということについても、よく東京電力の会長さんなんかがおっしゃっていますけれども、東京電力なんかでそういうことをやるとすれば、たしか株主が何万人でしたか何十万人だったか、何万人も一緒に会議室に集めてやるというようなことはなかなか実際にはできないわけなので、つまり株主への情報公開とか率直なディスカッションというようなことをやるためには別途株主懇談会とかそういうようなことを各地でやっていくとか、そういう努力をこれまでもしていると思うんですけれども、さらにそういうことをやっていこうと。株主総会そのものもなるべく形骸化しないようにする必要もありますけれども、いろんなそういう物理的等の事情でそれが無理であるならば今度はそういう懇談会という形でやっていく、そういうことを今経団連では会員企業に訴えて改善方をお願いしております。  それから次に、ディスクロージャーの問題でございます。  これも非常に大事な問題でございまして、特に持ち株会社解禁に伴ってますます重要になる問題だと思います。現在、企業グループ全体の姿を適切にディスクロージャーするということで連結財務諸表の抜本的な見直しが進められております。経団連としても、連結ディスクロージャーを重視する、そういう方向でいくべきだという立場から、企業会計審議会の検討に、この審議会には経済界のメンバーも入っておりますので、その検討に前向きに協力しております。  聞くところによれば、この夏には新たな制度の全貌が明らかになるようでございまして、来年以降順次施行されていく予定と伺っております。これによって持ち株会社につきましてもグループ全体の情報開示が適切に進められていくのではないか、いくように企業としても努力すべきであるというふうに考えております。  以上です。
  30. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 本当に情報公開の問題に今お取り組みですけれども、より積極的に経団連としてこういうやり方をということを開示していくことが、逆に言えば、財閥の復活はあり得ないといういろんな話はありますけれども、そういう問題への解決につながっていきます。今の不祥事に対する一つ経済界としてのお答えというか、私は内田参考人に、失礼なことを申し上げちゃいけないんですけれども、確かに事件の最中でございまして、まだ司法の取り組みの最中ですから結論は言えないということをおっしゃいましたけれども、例えば実態論から、先ほど言われた株主総会の問題とかいろんな問題についていろんなことを指摘されるならば、積極的にこういう問題についてもそちらから御意見をいろんな意味で出していただくようなことも私は国民に対する責任だと思うし、そういうことをぜひお取り組みいただきたいなということを要望しておきます。  舟田参考人に次はお伺いします。舟田参考人は、第四章改正問題研究会、いわゆる四章研の委員でもありましたから、また一段の思いがあってここに来られていることだと思っております。  そこで、公取委の方もいらっしゃるかもしれませんけれども、今回の法案提出に至るまでの公取委の姿勢の問題ですね。一部報道によれば、これは随分姿勢が変化したなどといろんな指摘がございました。その辺、どうこれを四章研から法案提出に至る変化を御自身感じていらっしゃるのか。率直な意見とともに、もう一つ大事なことは、ここでも論議になっておりますけれども、いわゆる持ち株会社禁止規定の今日的意義を委員会でもいろいろ論議しているんですけれども、そこの部分も社会的規制経済規制、いろんな話がございます。これはどうとらえていけばいいのかという点もあわせて、参考人としてお話しにくかったら公取委に対して望むものでも結構でございますから、ぜひお話をいただきたいと思います。
  31. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) 大変お答えしにくいお話であります。ちょっと脇筋から入りますが、私は、実は電気通信審議会の委員でもございまして、NTT分割に二年間、大変時間を費やしてまいりました。その過程で持ち株会社方式は分割ではないということを強く言ってまいった者であります。郵政省の事務局に対して、持ち株会社というのは妥協案に見えるけれども、持ち株会社というのは資本の集中の手段なのであって、先ほど吉村先生がおっしゃったように、経営のあり方として分権するということをもちろん十分使えますが、しかし親の持ち株会社子会社をコントロールし人事権を持つという意味では集中の手段ですよと。ですから、NTT分割も持ち株会社方式では審議会答申の分割とは全く異なるものですということを言っていたんですが、これについても非常に微妙な対応を私自身迫られまして、しかし、それは今後のNTT親会社子会社経営者がお互いにどれだけ分担し合って、親も子会社経営を客観的に評価する、その中で次心意的な親会社による支配ではなくて子会社の活動をきちんと客観的に評価できるような仕組みができれば少しは、分割とは違いますが、それぞれの会社が自由な活動ができるようになるだろうというようなことを申し上げたことがございます。  今回の九条の改正についても、きょう時間がなくて申し上げなかったんですが、全体として、小規模事業会社とベンチャーキャピタルについてこれを解禁するには、私は最初から賛成でした。そういう意味では全面禁止を一部禁止に変えること自体に私は問題はない。問題は九条五項が果たしてうまく機能するかなというのは法律家としては非常に心配なところでございます。  しかし、そのことではなくて、今の御質問は公取のこれまでの経緯をどうお考えか。これの質問は、客観的に申しますと、四章研は九五年十二月の最後中間報告を出してからは、この問題についてはほとんど議論しておりません。書類として、こういう何とか合意ができましたというのは情報はいただいていますが、今回の法律案についても説明をいただいておりません。個別には実はいただいたんですが、四章研としては専ら、四章のほかに合併とか株式保有の手続問題がございまして、これも大変な問題で、そちらの方に一年ちょっとかかっておりまして、その意味では、この九条の改正が出たというのは四章研のメンバーとしては非常に唐突な感じを持っております。そういう意味で、この改正案についで私の意見は全く四章研の委員というよりは個人意見でございます。  ただし、この改正案が出た経緯を新聞等で拝見した限りでございますが、四章研と比べて少なくとも一つは、純粋分社化はいいというのが四章研の第三類型にあったんですが、それが落ちたんですね。これは運用では何か残るようですが、純粋持ち株会社自体一つ会社を一〇〇%子会社にするだけですから、もちろん独禁法上何の違法性はないんですが、それが今度は持ち株会社がまた拡大する、ほかの会社株式を取得するということがあり得ますから、もう一度言いますと、純粋分社化自体はそれを禁止する理由はないが、それがさらに拡大するおそれがあるので、純粋分社化ならいいという類型には問題があるというふうに思っておりました。それがこの九条五項でどういうふうに運用されるかということにかかってくるんだろうと思います。  それから、むしろ四章研当時から問題になっていましたのは、実は金融持ち株会社をどれだけ独禁法の枠内で、あるいは公正取引委員会のイニシアチブでやるかという問題で、皆さんも御承知のとおり、金融関係については別の省庁でもちろん検討しているところであるわけです。特に、私はきょうは十一条問題が大事だということを強調いたしましたが、これは果たして独禁法の問題なのか、それともいやそれは金融問題なんだから大蔵省に任せたらいいのか、その辺ざっくばらんに言いまして非常に難しい問題があるわけです。  私個人としましては、金融政策というのは基本的には金融機関の経営の健全性及び預金者保護に第一の力点が置かれる。その意味で、独禁法競争政策あるいは金融会社による事業会社支配という問題はどうしても第二次的になるのではないかな。その意味で、九条改正の場で金融持ち株会社を正面からきちんと議論しておくことが必要だと。それはある意味では二重規制になるのかもしれません。そこは今後調整を要するかもしれませんが、競争政策観点からも十一条の実効性が失われないようなことを考えていただきたいというふうに思っております。お答えになっていませんか。
  32. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 余り言いにくい側面もあったと思うんですけれども、やはり公取委がどういう立場で物を今後考えていくか、まだこれ見直し規定もございますし、今後の問題として残っているわけでございます。そのときに、参考人もかかわり深いわけですから、その点公取委にこう望むよというお話が一言でもいただけたらなという気持ちもちょっとあったものですから、ちょっとつらい御質問になったかもしれませんけれども、お尋ねした次第でございます。  お一人に一つずつぐらいお聞きしたいと思って、今度は土井参考人にお伺いしたいんですけれども、この持ち株会社解禁、確かにもういろんな意味で重要な意味合いがあるし、やらなくちゃいけない点もある、特に国際化の中で必要な分が出てきていると、そのとおりでございますけれども、伊藤参考人中小企業にも非常にいいメリットがある、こういうお話もあったんですけれども、私たちがやっぱり一部危惧するのは、そういう系列化みたいな問題が起きてきたときに、かえって経済活動そのものも持ち株会社によって活性化することが本当にできるのかなというような危惧も一部抱くようなところもございます。その点について御意見があれば伺っておきたい。  もう一つは、今ですら日本というのは株という問題でいいますと、個人株主というのが非常に少ない問題があるんですけれども、諸外国と比べても非常に低いことはもう先生の方がよほど御存じでございます。ただ、持ち株会社という問題が解禁になった場合に、今ですら低い個人株主比率、こういう問題は一体どう推移するんだろうか、経済学者としてその辺どんなふうにごらんになっているのか。もし御意見があれば伺っておきたいと思います。
  33. 参考人(土井教之君)(土井教之)

    参考人土井教之君) ある意味で非常に難しい問題ですけれども、まず最初の、本当に解禁経済が活性化するのかどうかというお話でありますけれども、むしろ私は最初のところで申しましたように期待という表現を使ってしまったので、必ずしも明確ではないわけですけれども、ただし解禁することによって持ち株会社メリットというものがある競争条件のもとで発揮されるならば、いろんな意味での革新を引き起こすのであろう、一つの契機になるのであろうというふうには思っております。  それはどれくらいかというのは私も非常に難しいんですけれども、いろんなほかのファクターも影響しますし、あるいは日本の場合でしたら、企業支配市場というのが未成熟、企業の売買市場が未成熟だということがあって、どれだけ今すぐ有効に働くかというのはまだ不確定。多分、当面はいろんなファクターがあってまだ働かないところがある。ただし、徐々に働く可能性があるというふうに思っております。  二点目が、これで個人の持ち株比率がだんだん下がってくるんじゃないかと。それに対して、もし持ち株会社解禁になって経済が活性化して、そのことによっていろんな新しい企業が生まれてくるというふうになれば、そういう問題はバランスをされるんじゃないだろうかというふうに思います。  これも私、明確には答えることはできませんけれども、むしろそういう革新を通して経済が活性化することによって新しい事業が興る、それを通して新たな株主が発生する、生まれるということを期待したいと思いますし、そうなるんだろうというふうに期待したいと思います。  以上です。
  34. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 それでは、順序で次に千葉参考人に。  先ほどお話しされた中で、現在でも企業持ち株会社の中でそういう労使の争議が頻発している状況もあるんだというお話を千葉参考人されました。もしよろしければ、頻発というだけではわかりにくいものですから、大体どんな現状になっているのかというのを一つお聞きしておきたい。  もう一点は、これから経団連ともいろんなお話をされていくんでしょうけれども、例えばそのほかに労働法、その中で、千葉参考人はこんな点の改正というのは必要なんじゃないかと考えでいらっしゃるとか、そういったこの際お話ししておきたいことがあれば、法制度の問題でもあればお聞きをしておきたいと思います。
  35. 参考人(千葉利雄君)(千葉利雄)

    参考人(千葉利雄君) 現状の事業持ち株会社あるいは系列支配システムといったような枠組みの中で起こっている親会社責任性の不明確性、使用者性の不明確性から生ずるいろんなトラブルは、これは実はここにちょっと資料は持ってきておるんでございますけれども、もう枚挙にいとまがない実態でございます。  これは多分、連合の要請で労働省から出させたんだと思いますけれども、これだけの資料が労働省の調査によって提供されております。その中では、恐らく裁判なり判例などを中心にたくさんのケースというものをトレースしております。これをここで一々申し上げるのはいささか難しい話です、時間的に。むしろ、こういうものを連合から正式にきちんとした形でその実情を資料としてこの商工委員会に提出することをお許ししていただければいかがかと思います。もしお許しいただけるならば、連合としてそう進めたいと思うわけでございます。
  36. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 理事会で協議いたしまして、御通知申し上げます。
  37. 参考人(千葉利雄君)(千葉利雄)

    参考人(千葉利雄君) そうでございますか。いずれにしても、大変枚挙にいとまがないという状態でございます。  それから、もう一つの、じゃどうやってその問題の所在に対して労働法制面で適切な手を打っていくべきかという点に関しまして、私どもなりの意見を持ってはおります。最大限考慮と最小限考慮というか、マキシマムな考え方とミニマムなものと両方があるかと思うんでございますけれども、一番最大限的には労働基準法の第十条の規定そのものをやはり基本的に見直して、しかるべく使用者というものの定義づけを明確にすると。その中では、やはり子会社に対しての経営活動なり経営方針等に関して強い影響力を行使できる立場にある者また現に行使しつつある者については、これは使用者の対象とみなすといったような方向での規定づけをきちんとやっていただけるかどうか、いただきたいものであると。  あわせまして、労組法における使用者定義というものを明確化しなければならないと思います。労組法は労働基準法を基礎にして、これを踏襲する形で事を展開しておりますようですから、使用者ということに関しましては、法律上の概念規定が労働基準法と違いましてないわけでございまして、ただ一般的に使用者とこう言っているわけでございます。ここでも、この際改めて明確に労組法上における使用者とはかくのごときものであるということを、先ほど申し上げたのと同じような方向で明確化するということができれば望ましい一番基本的な解決の方向ではなかろうか。  しかしながら、それがいろんな意味でちょっと難しい場合が仮にありましても、最低限問題のかなめである団体交渉に対する応諾義務と申しますか、団交拒否を禁じるという、いわれなき団交拒否を禁じておりますね、労組法第七条第二項において。あの項目についてのみでも結構だから、この項における使用者とは先ほど申し上げたような概念でこういった働きを実際にやっているか、またやる立場にある者を含むといったようなただし書き的な条項の見直し、挿入を、これは法制的にはいろいろと技術的な問題がございましょうが、何らかの実効性のある形で持ち込むというようなことは最低限やっていただいた方がよろしかろうと思います。  これについては、恐らく今度の合意に至りますまでに見てまいりました日経連、経団連側の対応というものは今日やっとあるところまで来てくれましたけれども、率直に言って並々ならない道のりであったわけでございますね。非常な拒絶感、抵抗感が経営側にはあるわけでございます。今後、二年間の論議においてもそれは必ず随所に出てまいるでありましょう。  そういう状況でございますけれども、私はもう本当の意味で、これから本当に開かれた、産業民主主義にしても、その他すべての自由、人権、民主主義にかかわるアイテムにおいても、真に一歩も二歩も前へ向かって進まないとこの国はだめになるところへ来ていると思います。  しかも、国際的なバーモニゼーションという見地に立ちましても、アメリカというのはいろいろと揺れが大きいわけでございますけれども、ヨーロッパにおいてはもう相当以上のところまで労使関係問題におけるいわば産業民主主義の質的発展というものが進んでおりまして、今度ブレアが勝ったことによって、一番の全体的合意における障害となっていたイングランドが、大英帝国が恐らくある程度態度を変えてくることにもなりましょうし、さらに実態的に産業民主主義の進展というもの、質的な進展、高度化というものが進展すると思います。  こういう文脈の中で、日本が国際的なハーモニゼーションというのをつまみ食い的に、産業にとって都合のいいところだけハーモニゼーション、ハーモニゼーションと言って虫食いな状態のままで推移するならば、恐らく世界的なポジションにおいて、孤児とは言いませんが、非常に苦しい立場に経済界自身が立つことになるだろう。こういう大局的な大きな、ロングで大局的な視野に立って、この際こそくなくだらない抵抗というものはもうやめてもらいたい、またそれをやめさせていただきたい。こういうふうに私は実は思っておりますので、ちょっとつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  38. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 伊藤参考人に、具体的に中小企業がこれをどんなふうに利用できるのか、その実例あたりを本当はちょっとお話ししていただきたかったんですけれども、私の持ち時間四十一分まででございます。もし何か伊藤参考人が一分間で一言しゃべりたいことがあればしゃべっていただいて終わりにしたいと思いますが、この持ち株会社、ぜひ中小企業もうまい活用が何かできると思っておりますので、一言あれば。
  39. 参考人(伊藤和夫君)(伊藤和夫)

    参考人(伊藤和夫君) 一分間だけ申し上げます。  いろいろありますけれども、例えば持ち株会社解禁についても、これは入り口であって、連結がきちっとならない限り大きなメリットはないわけです。  それからもう一つ、さっきの個人株主が減るんじゃないかと。しかし、裏側には、例えばアメリカはやっぱり株を買えば所得から控除になるとかそういう恩典があるんですね。それで、もうけた株を売ってこれを現金にしちゃうと控除の部分は税金を払わなきゃいかぬと。ですから、株式市場に一定の金がくるくる回っているわけです。日本はもうけると引っ込めたり出したりしますけれども。これは、個人株主は投資信託でも同じだと思います。  このようなバックグラウンドが別々で、アメリカ日本を比較されても困るし、国際化の時代で、これは入り口で、だんだん社会制度がグローバル化に沿っていく中でやっぱり必ずいいものが出てくるんだと思っております。
  40. 木庭健太郎君(木庭健太郎)

    木庭健太郎君 ありがとうございました。
  41. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 民主党・新緑風会の前川でございます。  大変、公私ともにお忙しい中、参考人としての御出席ありがとうございます。限られた時間ですので、私の持ち時間二十分しかございませんので、できるだけ単刀直入、簡潔にお伺いをしたいと思います。  最初舟田参考人土井参考人に一言ずつお伺いをしたいんです。  よく財界の皆さん方や経済界の方は、すぐ外国と比較をして、国際化時代だ、やれ国際的なハーモナイゼーションだとおっしゃいますけれども、今の日本株式会社の制度というのは非常にいびつになっているんじゃないか。つまり、圧倒的に法人が多数の株を支配して、七割近くを占めているという言い方もあるわけです。このことが逆に、先ほどからも話がありますように、株主総会の形骸化ですとか、あるいは企業ディスクロージャーを妨げているとか、あるいは何かあったときに例えば同じグループなり系列の中で株を持ち合うことによってかばい合う、こういう非常に不自然な形が今存在していると私思うんですね。今度の純粋持ち株会社解禁がこのことに拍車をかけないという保証があるんだろうかというところに実は一番今の経済的な側面から言う心配があるんです。  このことについて御感想がありましたら、最初舟田参考人、そして土井参考人から一言ずつお願いしたいと思います。
  42. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) 大変難しい問題ですが、同時に非常に重要な問題であろうと思っております。  九条が一部解禁になったことによって現在のような日本会社間の株式所有状態がどうなるかということは、もちろんこれからの公取運用にもかかってくるわけでありますが、一つはっきりしていることは、先ほどから申しましたように、金融持ち株会社については今御指摘のようなおそれがあるのではないかなということであります。理由はもう繰り返しません。事業会社の場合はどうかというのは、これはまた難しい問題でございますが、九条五項の三つ類型、特に第一と第三の類型をどういうふうに、これからガイドライン、もう少しつくっていくのかもしれませんが、にかかってくる。  少なくとも、私の今回の主張は、この九条だけではなくて九条の二を、つまり大規模事業会社が他の会社株式を余り持ってはいけないというのが九条の二ですけれども、これをうまくといいますか、これが空洞化しないような方向に進むことが今御指摘のような御懸念を防止する一つの施策ではないかと。具体的にどういう効果があるかどうかは、私は法律家ですから、むしろ土井参考人にお話ししていただいた方がいいかもしれませんけれども、法制度としてはそういう意味で九条と九条の二はリンクしているんだというふうに考えております。  不十分かもしれませんけれども、一応お答えにします。
  43. 参考人(土井教之君)(土井教之)

    参考人土井教之君) 舟田参考人と同じ、難しいということを述べざるを得ないんですけれども、先ほど御質問があった点も含めて、マクロ的に見ると、もし経済がこれによって活性化するならば、新しい事業が生まれて企業が生まれるという形で相殺される余地がある。ただし、新しい企業を買収するとか分社化することによってどうかというふうになると、どういうふうになるんだろうか。私も明確な判断を示すことができない。むしろ活性化することによって新しい企業が生まれて、全体として個人株主のウエートが高まるというふうになるのを期待したいというところです。
  44. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 ありがとうございました。  今、両先生からお話がありましたように、いろんな方にお聞きをしますと必ず返ってくる答えは、今度持ち株会社を仮に解禁したら、どういう形が想像できますかあるいは想定できますか、あるいはどんなシミュレーションが描けるんですかとお聞きをしても、なかなか的確な答えが返ってこないんですよ。五十年間、いわゆる事業持ち株会社はありました。純粋持ち株会社というものがどういうものであるのか、あるいはどんな使い勝手で使えるのか、よくわからないと。わからないから、その結果を教えてくれと言われてもなかなかわからないよというのがお答えなんですね、いろんな方にお聞きをしても。  そこで、内田参考人にお伺いをしたいんですが、例えばベンチャーですとか、あるいはそう大きな規模ではない、例えば分社化ですとか、よく議論として出たのは町の小さな、例えば魚屋さんを娘がやっているよ、八百屋を息子がやっているよと、その上におやじさん、持ち株会社にして、おやじさんはもう手を抜きたいと、こういうたぐいの純粋持ち株会社なんというのはそれは大した問題ないわけですよ。まさに独禁法の世界じゃないですからね。  ところが、今問題になっていますのは、日本経済を活性化しなきゃならないという話になりますと、かなり大きな規模のという話になるわけですね。その際に、頭から反対をしにくい事情というのが今の日本経済の、ある意味ではかなり成熟をして、新しいものを求めなければならない。新しいものを求めるときに、こういういわゆるツールも、経済界といいますかあるいは産業界の皆さん方にお渡しをするというと変ですが、法律解禁をするわけですから、これに対する不安があるんです、はっきり申し上げて。  これは先ほどから吉村先生も御指摘になったし、それぞれの先生から御指摘がありましたように、今の会社のさまざまな問題を起こすような体質、それから、これは一つ一つ企業の問題ではなくて、日本会社全体の、あるいは日本産業界といいますか経済界全体の構造的な問題じゃないかということが一つあります。  それからもう一つは、これは公取さんから毎月毎月、その月に公正取引委員会がいろんな調査をやった、あるいはこの件についてはこういう措置をしました、あるいはこういう勧告をしました、あるいはこういう審決が下りましたとか、つい最近は水道メーターの談合問題が摘発をされましたけれども、これはほとんど毎月のように続いているんですよ。こういう実態があるところに持ち株会社の問題を解禁したら一体どうなっちゃうんだというのが、反対論をおっしゃる、これは評論家や学者の方々の中にもこういう意見があるんですね。  このことについて、先ほど独占禁止法はいわゆる経済憲法として大事に守っています、違反には厳しくやっていますとおっしゃいましたけれども、こういう体質が温存をされたままこの問題を解禁して大丈夫なんだろうかなという不安があるんですが、そんな心配はないよというお答えをできればいただけますか。
  45. 参考人(内田公三君)(内田公三)

    参考人(内田公三君) 基本的には、いろいろな企業の倫理の問題と今度の純粋持ち株会社解禁の問題というのは直接的な関連は私はないと。ということは、つまり、いろいろ不祥事が続いているから持ち株会社解禁はお預けだよなんということを言われてはかなわないという気がしておりますが、しかし全く関係がないかというと、それは必ずしもそうじゃないかもしれません。  というのは、やはり今いろいろ先生方からお話が出ておるのを伺っておりまして、やはり日本における株式市場というのが非常に不透明である。公正でないと言うと、私がそういうことを言うとちょっと問題になってしまうかもしれませんけれども、個人として見るとなかなか不透明でちょっと信頼しにくいというような感があることは否めない。それはなぜそういうことになったかというと、やっぱり御指摘のように、戦後の日本の資本主義の発展というのが株式の持ち合いとかいうことで、企業の相互間のもたれ合いの中で成長してきたということがあったと思うんですね。  では、市民の、個人のお金はどうなったかというと、結局、郵便貯金ということを通して、それが間接的な形でいろいろな政策金融に使われて日本経済の発展を促してきたということはあると思うんですけれども、その結果、結局個人というものは産業資本の活動に対して余り直接的な関連とか、したがって関心とかいうものが薄れてしまったということが私はあるんじゃないかと思っております。  そういう点では、ちょっと脱線するかもしれませんが、アメリカなんかではもう子供のときから株式投資ということをみんな勉強というか、小学校の教科書にも書いてあるそうですけれども、それで大もうけするとみんなからよくやったと言われると。ところが、日本では、株なんかやってもうけると、何か悪いことしたんじゃないかとかいうような雰囲気があるということが一つあると思うんですね。  したがって、今後の課題は、やはりそういういろんな証券市場あるいは証券取引をめぐる不透明さとか、あるいはもしあるとすれば不公正さとかいうものを徹底的にこれから是正していく。そして、個人投資家にとっても魅力のある株式市場あるいは企業活動というものをつくっていくということがこれからの課題ではないか。そして、そういうことが実現していけば、私は、その過程において、持ち株会社の利用も恐らくいろいろ花が開いていくんじゃないかというふうに考えております。
  46. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 ありがとうございました。  千葉参考人にお伺いをしたいんですが、ちょうど私どもがこの法案審議をしている多分同じ時間にやっていると思いますが、逓信委員会の方でNTT三法の審議を実はやっていまして、こちらの方の法案が通れば、NTTの方も採決をして、これは少し先になりますから実際に第一号になるかどうかわかりませんが、持ち株会社第一号がどうもNTTになりそうだという話もあるわけですね。  このNTT、いわゆる労働組合という意味では電通という言い方が一番なじみやすいんですが、組合の方にお話をお聞きしましたら、もう最初から、持ち株会社、今度どういう名称になるんでしょうか、NTTという名前になるんでしょうか、それはちょっとわかりませんけれども、そこと交渉をするあるいは交渉ができるという約束ができて初めてNTTの組合も、例えば東日本、西日本あるいは長距離と、さらには場合によってはドコモやなんか含めた子会社といいますか、持ち株会社のもとでの交渉ができるということで、NTT、電通の組合はゴーサインを出した。今ここで、分割の問題やさまざまあったけれども、ここで決着をつけたいというのが電通さん、組合の方の考え方だというふうにお聞きをしました。NTTのような大きな組合だから、逆に言うと、いわゆる法律事項ですから当たり前と言ってしまえば当たり前なんでしょうが、労使交渉の仕組みというものも歴史もありますから、できたわけですよね。  ところが、今度の場合、確かに経済という視点からいきますと、非常に大きなグローバルな企業の誕生ということを私たちイメージするんですが、実際にこれを悪用しようという経営者がいないかどうかというのが心配なんです。しかも、今労働組合の組織率は二三%にまで落ち込んでいるんですね。圧倒的多数は労働組合もないところ、つまり労働者代表そのものもあいまいになっているんです。  そういう中で、例えば親子会社関係が出てきて、よく財界の皆さん方がおっしゃるのは、所有はすれども支配をしない、だから団体交渉に応じる義務はないんだという言い方をよくされるんですね。ところが、分社化をしたい場合に何の指示も命令もしない分社化なんというのはあり得ないと思うんです。全部お任せしました、あとは好きにやってくださいなんということはあり得ないんです。そういうことが私ども実は心配なわけでして、特に中小企業の問題で、何か千葉参考人の方からアドバイスをいただければこれからの議論の参考にしたいと思うんです。  というのは、裁判が長引くんです。持ちこたえるのが大変なんです。そちらに事例がたしかおありになると思いますけれども、例えばこれを短縮するにはどうするとか、あるいは法律は先ほど木庭先生の御質問にお答えいただきましたが、そんなことを労働組合の経験の長い先生の方から御指摘をいただければと思うんです。
  47. 参考人(千葉利雄君)(千葉利雄)

    参考人(千葉利雄君) 御指摘の点は全く同じような認識を持っておりまして、その見地から、先ほども悪用のおそれを特段に私どもとしては警戒しなきゃならぬという観点を申し上げたつもりでございます。  これはいろんな使われ方があり得るわけですが、この新しい制度はだれでも使えるわけですね。そうしますと、大手とか中小とを問わず、企業の体質によってはこれをいい方に使うところもある反面において、子会社経営を厳しくコントロールして、そして厳しい注文をつけて、追い回す方は大いにやるけれども、それから生まれてくる労使の諸問題については別だよということで逃げるといったような理不尽な使い方をする可能性というのは多々あるというふうに私も思っております。  だからこそ、そういう可能性があるならば、いわば予防のためにしかるべき相当なきちんとした歯どめをかけて新しい枠組みをつくって、そういう理不尽が起こらないように対処するということが求められるのではないか。そのような枠組みに対して、これは嫌だとか迷惑だとか思うならばこのシステムを利用しなければいいのであって、そういうくだらぬことはしないという姿勢に立つ企業であれば、このような枠組みができたからといって何もとやかく言うことなく、自分たちはそういうことをしないんですから、堂々とそれを前提として新しい持ち株会社の選択をなされるはずでもあるだろう。そういう意味合いも込めて、だからこそしっかりした枠組みをこの労使関係の側面についても前もってきちんとつくるということが必要不可欠である。  むしろ、私は、企業側が持ち株会社をつくったら、持ち株会社とその翼下の子会社全部が一堂に会して、経営上の問題なり経営審議会的な話し合いもやるし、そして子会社それぞれの団体交渉に関しては、持ち株会社自身が十分に誠意を持って責任ある対応をともにやりますぐらいな、そういう積極的な態度をなぜとれぬのか、そのぐらいのことをやるときが来ているんじゃないか、我が日本企業社会も。そういうふうにむしろ思うわけでございます。お答えになっているかどうか。  そういう意味合いにおきまして、このような枠組みづくりは大手、中小問わず一般的な問題として有効性がある。そのような対処によってのみ恐らくまた抽象的な諸問題も基本的に解決されるであろうというふうに思うわけでございます。それが第一点でございます。  関連して、NTTについて申せば、分割に対して初め当局側も組合もしゃかりきに反対をしたわけですが、次善の策をとらざるを得ないという段階になって、これをああいう形で決着させるということにある意味で組合も含めて渋々合意をしたわけでございます。そういう特異なケースの中で生まれた持ち株会社三つ会社の設立でありますだけに、単に労働組合が強いということだけじゃなくて、のっけから持ち株会社との団交もするというような約束というものが生まれ得たんだろうと思います。  それで、大きくて強い大企業であって組合が強ければということだけであのような、形式的には非常に先端、先進的なケースが生まれようとしているわけですが、そんなような先進的なケースが生まれたとは考えられない。先ほど申したような一般的な枠組みの新しい枠組みづくりこそが、やはり最も有効でしかも公正な本件に対する労使関係を正常に律する上での対処であるだろうと思っておるわけであります。
  48. 前川忠夫君(前川忠夫)

    ○前川忠夫君 時間が参りましたので、大変申しわけないんですが、伊藤参考人の方に御質問する時間がないんですが、先ほどお話の中で系列化等を含めて中小企業の皆さん方の御心配、私ども十分承知をしておりまして、中小企業の皆さん方からもこの種の問題について真っ向から反対をするというのはしにくい、しにくいからさまざまなところに目配りをしてほしいという声は私ども聞いております。  余談ですけれども、例えばあるとき円高で急激にコストの引き下げを要求された、ところが円安になった、じゃもとへ戻してくれたかというとほとんどもとの値段で変わらない、全部そのしわ寄せは中小企業に押しつけられているんだという話も聞いております。  今度の問題とは直接関係ないかもしれませんけれども、さまざまなしわ寄せが全部中小企業に行ってしまってはこれからの日本経済はどうなるんだという私どもは懸念も持っておりまして、そういう点では貴重な御意見を聞かせていただく機会をまた得たいと思います。  きょうは大変ありがとうございました。
  49. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 日本共産党の山下です。  舟田参考人にお伺いいたします。  持ち株会社を通じて事業支配力過度集中による弊害が生じた場合には、個別にその弊害を除去すれば足りるのではないかとする弊害規制論について御意見を伺いたいと思います。  とりわけ、先生の論文にある持ち株会社という集中形態それ自体日本競争秩序にとって問題であると考えられるという持ち株会社の本質にもかかわる御指摘の御説明とあわせてお述べいただければと思います。    〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕
  50. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) これも大変難しい問題でございますが、どういうふうに説明したらいいでしょうか、例えば先ほどの内田参考人のペーパーの一ページの下の方に、「一律・外形的な禁止を改め、具体的な弊害が生じる場合に事後的に規制する」、そういう意味で今回の改正はいいと。  今回、九条を改正して一定の持ち株会社を認めた。九条の五項で、九条の五項もややこしいんですが、ある会社が幾つか相当数の事業分野にわたって著しく大きな会社を持った、さてそれでは、それは具体的にどのような弊害が出たと言えるかと。これは私は非常に難しいと思うんですね。難しいという意味は、具体的な弊害というのは立証も難しいし、具体的な事実関係を摘発することも難しいし、それが弊害なのかどうかということを評価することも難しい。そういう意味で、事業支配力過度集中というのは弊害規制とそもそもなじまないのではないかというのが私の主張であるわけです。  ですから、むしろ一律に一定の類型だけ認める。先ほども言いましたように小規模な持ち株会社あるいはベンチャーキャピタル、あるいはこれはさまざまな考慮をした上ですけれども、一定の金融持ち株会社を認めるというのがいいと。しかし、事業会社について、ここまでは過度集中にならない、ここからは過度集中になるということを判断できるか。その理由は、弊害が出るからだということは、先ほど言いましたように社会的に説得が非常に難しいだろうと。そういう意味で、もともとは私は持ち株会社という形態そのものが非常に問題であるというふうに考えていたわけであります。    〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕
  51. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 もう一つ、先生の論文の中に、持ち株会社という集中形態それ自体日本競争秩序にとって問題であると考えると、この点についてもお願いします。
  52. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) その意味では九条を改正する必要はないというのが私のもともとの考え方でございます。  ただ、先ほど言いましたように、小規模とかベンチャーキャピタルの場合にはそれを禁止する必要はない。それは今までお話が出ましたような日本独特の企業株式保有関係というものが前提になっているからだということでございます。
  53. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 続けて舟田参考人に伺いたいんですが、実効性を持って機能するか甚だ疑問と、改正案の九条五項が。今のお答えの中にかなり含まれているのかとは思いますが、私はこの条文を読んでもどういう形態、規模の持ち株会社禁止されるのかよくわからない。そもそもそういうことをわかるように線引きできるのかどうかという疑問、これは今お答えがあったこととダブる面もあるのではないかと思うんです。  もう一つ、たとえ線引きができたとしても、今、法案ではなくてガイドラインで定めようとしている十五兆円以上だとか五事業分野程度であるとかあるいはシェア一〇%、上位三位以内だとかというこの線引きの仕方が、これでそれ以下なら事業支配力過度集中に当てはまらないと言えるだろうか。そういう線引きそのものがそもそもできるのか。できるとして、こうやろうとしている線引きが果たしてこれでいいのかどうか、この点の御意見を伺いたいと思います。
  54. 参考人(舟田正之君)(舟田正之)

    参考人舟田正之君) 詳しくは「参考人意見」の原稿の方に少し書いてございますが、特に産業界の御要望はなるべく明快にあるいは透明性のある規制が望ましい。そうしますと、もう完全に数規制をしなきゃならない、シェア一〇%以上とか順位三位以内。そうしますと、いわば画一的規制になる。自分企業が、ある持ち株会社がある有望な全く関係ない分野企業を買収しようと思った、そうするとこれは三つ以上になるからだめだとか、幾つにするか、五つですか、六つ目になるからだめだということをもしやるとすると、非常にそれは画一的でむしろ事業者の自由な活動を制約するということにならざるを得ない。  じゃ、それをやめましてもう少し公取裁量を認めようということになりますと、どういうやり取りをするか、私も想像つきませんが、恐らく毎年の事業報告の際に公取事務局へ行って相談することになるだろうと思うんですね。公取の方から、あなたの企業はちょっと多いから、ちょっと持ち株を一〇%減らしなさいよ、いやそれは困りますよというようなやり取りになる。透明性といいますけれども、それがむしろ欠けてくる。しかも、それは裁判で争えるかというと非常に私は裁判では争いにくい仕組みではないか。  そういう意味で、今回の九条五項は大変事務当局として御苦労なされた規定ぶりだというふうに思いますけれども、先ほども言いましたように世界に類のない規定を初めてつくったわけで、これがうまくいくかどうか疑問があるということでございます。よろしいでしょうか。
  55. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 次に、内田参考人に御質問いたします。  国際競争力を維持、強化するために持ち株会社解禁が必要だという御主張ですが、先ごろ出そろった大手企業の九七年一二月期決算を見ますと、雇用情勢の悪化やあるいは先ほど伊藤参考人がおっしゃったように中小企業分野での高水準の倒産がずっと続く中で、つまり日本経済全体としては景気回復の軌道になかなか乗れない中で、大手企業は三年連続二けたの増益を上げています。金融を除く全産業ベースで見ますと、売上高が前期比〇・六七%減、しかし経常利益は一一・五六%増と、売り上げは減っても利益はふえるというのは、この間、人員の削減や賃上げの抑制あるいは下請単価の切り下げなど、労働者や中小企業に負担を押しつけながら大企業が利益を上げやすい体質をつくってきたからではないかという指摘があると思います。  つまり、今でも十分国際競争力はあるじゃないか、もういいじゃないか、これ以上持ち株会社解禁することは、これは労働者、下請企業にさらなる負担、犠牲を強いることになるだけじゃないかという批判もあると思うんですが、いかがでしょうか。
  56. 参考人(内田公三君)(内田公三)

    参考人(内田公三君) お答えします。  まず、実態認識で、大手企業は二けたの利益を享受しているというお話ございましたが、最近の日本経済の特徴というのは、業種間格差あるいは企業間格差というのが非常に強くなってきておりまして、どの業界はもうかっていてどの業界はだめだということでは必ずしもなくて、例えば自動車業界なんというのは、ある会社は非常にもうかっているけれども、中には余りもうかっていない会社もある。要するに、非常に今消費者のニーズ、それも国内だけじゃなくて、国際的にいかに市場のニーズを的確にとらえてそれに商品、サービスを提供していくかという、ニーズそのものが非常に多様化、個性化しておりますから、非常に企業の個別性というものが問われている。そういうことで、一律に中小企業は悪くて大企業はいい、しかもそのいいのは労働者を下請を収奪しているからじゃないかという批判は私は余り実態に合っていないんじゃないかというふうに思います。  それから、既に国際競争力があるからもう持ち株会社解禁なんというのはやらなくてもいいんじゃないか、持ち株会社解禁するとさらにまた中小企業、下請の収奪が強まるという御意見については、私は持ち株会社解禁しても、それを解禁したからということだけでそういうことになるというふうには必ずしも言えないというふうに考えております。  それから、国際競争力の強化必要性というのは、これは冒頭にも申し上げましたが、諸外国の企業はそういう純粋持ち株という経営組織の選択肢を持っていて、日本だけがそれを持ってないということは、これから国際化して国際的に競争をしていく場合にやはり一つの負い目というかハンディキャップになっている、なっているからこそいろんな企業から早く解禁してもらいたいという声が出てきているのであると。したがって、すぐにそれがどういうふうに利用されるかはこれから見ていかなくちゃなりませんが、必ずやそれは国際競争力の向上にも寄与するものというふうに私は考えております。
  57. 山下芳生君(山下芳生)

    ○山下芳生君 ありがとうございました。終わります。
  58. 委員長(木宮和彦君)(木宮和彦)

    委員長木宮和彦君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑を終わります。  一言ごあいさつ申し上げます。  参考人方々には、御多忙のところ当委員会に御出席いただき、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時十五分散会