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今泉昭君 ここで少し
空洞化のことについてお聞きしたいと思うんですが、盛んに
空洞化空洞化ということがこれまで言われてまいりました。私の判断に誤りがあったら
指摘していただきたいと思うんですが、今まで
製造業の中におけるところの
空洞化の
中心というのは、いわば
一つの
企業の中のエンジニアリング部門と組み立て部門を
中心とした基盤が
海外にどんどん出ていった、そして
海外におけるところの安い
労働コストと結びついてそこで収益を上げるというような形になってきた。そういう意味合いで、どちらかといえば大
企業が、もちろんここに書いてあるような基礎基盤は大
企業は持っておりますし、先端
技術開発の基盤も持っておりますし、エンジニアリング部門やあるいは組み立てを
中心とするいわゆる付加価値をつけて新しい製品をつくり出していくという部門も大
企業は持っていたわけですが、大
企業は、その中の付加価値をつけてエンジニアリング部門の知識を駆使して収益を上げるという部門が大変多く
海外に転出をしていったのが今までの状態の特に
空洞化の
中心であったんではないだろうかと私は思っております。もう既に
海外で活躍をする
我が国の
企業に働く
海外の
労働者が何と三百万人を上回るんではないか。国内でそれだけの
労働力が確保されていったら
我が国はもっと
雇用情勢はよかったはずでございますが、実はそういう部門がごっそり抜けていった。
しかしながら、これは同じようなことがこれから各国に起こってくるわけでございまして、この点については私どもは余り心配する必要はないと思っているんです。むしろ私どもが一番心配なのは、さらにその下の部門である基盤
技術と言われる、さっきは金型とか鋳物とかメッキとか言われましたけれども、それにとどまらずいろんな意味でのいわゆる人の
技術でもってつくらなきゃならない
集積基盤というもの、この部門がどうやら外国から今注目の的になっている。
東南アジアは一定の開発、
経済発展をしますと、今度はさらにもっとおくれているところから追い上げられる。そうすると、
日本がやったように彼らも外に出していかなきゃならないような
状況に追い込まれるわけでございまして、その際、彼らが一番気がついているのは自分たちには
技術の
集積基盤がなかった、そこで、
日本の
中小企業にごっそり来てくださいと、甘いいろいろな条件をつけて、
日本の政府がつけるよりももっと大きなあめをぶら下げて、来てくれ来てくれと。私はそこに一番危険性があるのではないかというふうに思っているわけでございまして、特にそういう意味で思い切ったこれに対する
対策をとらなければ、
我が国は大変なことになるんじゃないかというふうに思っているわけですね。
特にここの部門というのは、大
企業ももちろん持っていますが、大
企業は全体の
企業経営の中でこれはカバーしていけますけれども、問題はその基盤だけに集まっている
中小零細
企業だと思うわけであります。
中小零細
企業の特色を見てみますと、
一つは高齢化が物すごく進んでいるということですね。それから、いろんな意味での設備が老朽化してきているということです。この高コスト構造の中でなかなか設備投資も行えない、そういう中から設備が老朽化をしている。さらにもう
一つは、いわゆる
取引相手というのが比較的大
企業なものですから、どうしても下請という位置づけをなされて、その商
取引の中で常に過酷なコストダウンを要請されている。収益性が物すごく上がらないというこういう
状況の中に生きているグループではないかと思う。しかも加えて、若手の新しい
労働者が三K職場ということもありまして入ってこない。だから、そこでこれまで蓄積されてきた技能の継承というものが大変危ぶまれている、こういうふうに私は思うわけです。
そこで、この
特定産業集積の
活性化に資する法律の中で特別皆さん方から出てくる言葉は、新しい製品の開発と言われる。新しい技能の開発などに援助をすると言われる。それも
一つの柱として重要だと思う。ところが、今持っているこの技能がなくなっちゃったら、これはもう元も子もないわけですよ。これを守るための施策というものが実は物すごく欠けているんじゃないか、要するに、人に向ける視点というものが大変欠けているんじゃないかと思うんです。
御存じのように、アメリカは大変高度技能開発に力を入れてまいりました。ベンチャーも大変起こっていますよ。しかし、彼らが開発した技能をつくるのはどこか、
日本なんですよね。あのICだって、ICをつくる機械は
日本が供給しているじゃないですか。例えば、精密機械で物すごい世界的な技能を持っていたニコンであるとかキャノンだとかというところが、あのステッパーというICを生産する機械をつくってアメリカに持っていっているわけです。要するに、アメリカと違って
我が国はそういう技能がまだ多く底辺に残っているわけでありまして、それを支えているのはその機械をつくる実は技能
労働者なんですよね。
ところが、この技能
労働者はどちらかといえば三K職場に働いているから、
子供たちもおやじの油まみれの汚い姿を見ていると、おやじと同じ仕事をやろうなんて思わないですよ。家庭の中においても、おやじは技能工であるかもしらぬが、おまえは会社の経営者になれよというような形でホワイトカラーを志向する。そういう人ばかりであっては困るわけでありまして、だから、どちらかといえば今
我が国の要するに
高等学校におけるところの専門学校というのがどんどん寂れていっている。かつては、いわゆる貧乏な社会の
時代は、大学に行きたいけれども大学に行けない、そこで手に職をつけるために
高等学校の専門学校に行った優秀な
方々が大変多かった。そういう方が社会に出て今日の
技術、技能
集積を果たしてくれたわけですが、今その後継者というのが全くもう途切れるような状態になっているんじゃないだろうか。
そこで、これは
通産省だけに言うのも気の毒なんですが、縦割り行政だけの問題じゃないですよ、これは。省庁を超えた形での
日本の技能教育というものをどうしていくかということを改めて見直さなければ、今外国から来てくれ、来てくれと言われる
中小企業がすとんと基盤ごとなくなってしまう危険性がある。今の
段階ではまだ
中小企業の基盤
技術のところの
空洞化というのはわずか二%か三%ぐらいでしょう、恐らく。ところが、その上の
段階のエンジニアリングであるとか、あるいは組み立て技能をつくっていく
段階の
空洞化というのはすごいものでありまして、例えばカラーテレビの
海外生産比率なんというのはもう八〇%を超えている、VTRだって六〇%を超えている、洗濯機だって七〇%を超えているというような
状況です。それと同じような形で、この技能基盤がもし
日本から移動していったら、これは大変なことになるわけであります。
日本では物がつくれないということになる。
そういう意味で、人に向けた施策というもの、これは大変重要なことだと思うんですが、その点についてのこの
法案におけるところの施策というものは考えられているかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。