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山下芳生君 それも十分わかっております。しかし、その上でいろいろ農家の方々は自分なりにほかの要因も調べてみたけれ
ども、確かに環境基準にはもちろんクリアしておりますけれ
ども、こういう被害がふえているということで今農家の方々が改めて御坊火力発電所に対して疑念を強めているんです。
私は、関西電力が梅枯れについて発電所が原因ではないということを宣伝しているパンフレットをいただきました。これをよく
検討してみますと問題点が少しあるんじゃないかなということに気がついたんです。
第一は、まず運転開始前と後の周辺
地域の大気環境の変化が見られなかったということなんですけれ
ども、しかしこの
データのとり方をよく見ますと、周辺
地域というのはどこに設定しているかと申しますと、十二局測定所を設置しているんです。その十二局は実は梅産地には一つもないんです。しかもごく発電所に、ごくと言ったら語弊があります、比較的近いところの
地域に十二点が
集中しています。ここは煙突二百メーターですから、大体ふうっと風が吹いて流れますと、近くよりもむしろ十五キロとか二十五キロとかのところにたくさん着地をするんじゃないかということが言われておりますので、これは、こういう測定地点のとり方はいかがかと。しかも、よくよくまた見ますと、この火力発電所に常に吹く風は北側からの風が強いという
データが載っているんですけれ
ども、この測定十二地点はほぼ北側に、風上の方に大体
集中しているということですから、これをもって前後の大気の環境が変化がない、梅の生育について
影響がないと断定はできないのじゃないかということが一つです。
それからもう一つは、この元
データ、ここにはもう一つ
データが載っておりまして、和歌山県果樹園芸試験場及び先ほど出た電力中央
研究所においてSO2、NO2、オゾンの暴露試験を行いましたということが載っております。結果として、「現状レベルのSO2、NO2、O3濃度では梅に対して被害は認められないことがわかりました。」ということにもなっております。
しかし、実際やられた二つの
研究機関の
データを取り寄せて見てみますと、例えば和歌山県果樹園芸試験場の実験ですけれ
ども、まず「
背景と目的」というところにこう書いてあります。「御坊火力発電所の稼動による大気環境の
影響予測によると、発電所を起点として半径十四ないし二十四キロメートル付近が、亜硫酸ガス、窒素酸化物、浮遊ばいじんの最大着地点となり、その
影響は十六市町村の
地域におよぶことになる。」この
地域には果樹などがたくさんあると。「環境
影響予測から
判断すれば、直接の
影響は考えられないものの、硫黄酸化物等の恒常的な排出により、土壌の酸性化を始めとして、農作物等に対する低濃度汚染の慢性
影響、特に作物体への蓄積による不化視的作用、散布農薬との関連性等未解決な問題が多い。」というふうに問題意識を設定されて、それでいろいろ梅とかその他の作物について実験をされています。
結論を見ましたら、梅の生育への
影響というところで、葉の分析結果は、葉中に含まれる硫黄の含有率ではSO2ガス濃度の濃い区ほど有意に高まったと。しかし、この濃いというのはどの程度の濃さかというと〇・〇四ppmですので環境基準のぎりぎりのところですね。もちろん、現場の梅の産地あるいは周辺では、これ以下の測定基準が出ておりますけれ
ども、それ以下の実験はしておりません。
それから、もう一つの電力中央
研究所の報告書を見ましてもやはり同じような試験をされて、「低濃度ガス接触実験」にこう書いてあります。低濃度のガス接触においては「実験に供試したウメ、スモモ、ハマナスとも」「S(イオウ)の含量が増加していた。増加したSとしては特に水溶性Sの増加が著しく、〇・〇四ppmのような低濃度のガスも植物にかなり取り込まれていることを示している。」
結論として、「今後の大気環境は、低濃度の大気汚染が慢性化していくものと予想されることからも、大気由来のSの植物体への蓄積、被害発現の限界濃度等に関する知見の集積が望まれるものと思われる。」と、こう
結論づけております。
ですから、確かに〇・〇四ではやっておりますけれ
ども、それ以下の低濃度での試験というのはやっていない。しかも低濃度であっても葉中硫黄の増加というのが見られる、これからこの点に関して知見の蓄積が必要だというのがこの実験の
結論なんです。ですから、これをもってして梅に対して
影響がないということを言い切るというのもまたいかがなものかなと私は思いました。
ですから、ここはやはりこれだけ事実として被害が出ているわけですから、しかも試験の詳細な結果というのは、これから知見の集積が必要だというふうに言っているわけです。もっと言いますと、私は重大だと思うのは、運転開始前から低濃度の汚染の慢性的な
影響というものを予想しているわけです。しかも、県の試験場では十四ないし二十四キロが最大の着地点だというふうに予想している、これからの知見の蓄積が必要だということも
結論として出している。
しかし、そのまま運転を開始して、予想どおりと言ったら失礼ですけれ
ども、やはり十四ないし二十四キロ最大着地点に広がっている梅に今立ち枯れがずっと広がっていっているわけです。それが広がってきたらこんなパンフを出して、安全なんですということを、この
データをちょっと正確ではない使い方をして広げるというのは、私はこれはいかがなものかなというふうに思います。
ですから、こういうことがあるわけですので、地元の皆さんが要求している脱硫装置をつけること、それからきちっと
影響調査をやること、それからそれがはっきりするまでは御坊第二火力発電所の建設はやらないこと、延期することということは、やはり通産省として当然指導すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。