○林芳正君 ありがとうございます。
武見先生から
中国の詳しい
お話があったわけですけれども、今、社会主義市場
経済という大変に矛盾したような制度で微妙なバランスに乗りながらやってきている、これは私の個人的な見解でございますが、市場
経済がどんどんと
発展してミドルクラスがふえていく
段階でどこかで整理をしなければこれはもたないだろう、こういうふうに思っております。
この間、キッシンジャー博士がいらっしゃったときにその
お話を聞いたわけでございますけれども、何らかの形でコミュニズムといいますか、社会主義という政治
体制が、市場
経済との整合性をとるバランスの
方向へ動いたときに出てくるのは多分ナショナリズムであろう、ナショナリズムに対する強いテンプテーションがあるだろう、こうおっしゃっておりました。そういった
意味でそのときに備えるということが
一つの大きな我々の考えでおかなければならない議論だろうと思っております。
そういった
意味で、多くの
参考人からコンテーンメントとかエンゲージメントとかというような
お話がありました。私は、田中
参考人がおっしゃったように、リアリズムとリベラリズムというのを全く対立概念としてとらえるのではなくて、一応最低限の保険としてリアリズムというものを持ちながら、例えば先ほど魚住先生がおっしゃいました、CBMのチェアマンというのは
中国が引き受けてくれているという現実の動きもありますから、マルチの中で、そういったところでなるべく
中国をエンカレッジしてやるということが必要になってくるだろう、こういうふうに思っております。
その中で大変重要になると思われますのは、WTOに対する
中国の加盟問題でありまして、連休に
日米国
会議員
会議でワシントンに行きましたときも、なかなか
アメリカの議会の方はコンディショナリティーについて強硬でありました。
中国に、例外的にいろんな配慮からほかのルールを少しパスしてアクセションを認めるというのはなかなか国内世論的に難しいということが大半の、これは超党派の
アメリカの議会の方の総意であったように聞いて帰ったわけでございます。一方で、
ヨーロッパまた
アジアの皆さんというのはほとんどこの件については推進派というふうに理解していいんではないかなという印象を持っておりまして、この辺が大変に大きな問題になってくるのではないかなと。
私も先ほど申し上げたようなスタンスに立ちますと、ある程度
中国というのは特別扱いをしても仕方がないんではないか。そして、出てきてもらって、そこでいろんなものに接していただくことによって
中国の国際化というか、インターナショナルスタンダードに対する適合を進めていくという方法しかないのではないか、こんなように思っております。
アメリカはそういうところは非常に理論的にすっきりしないと済まないようなところがあるようでございまして、ここが大きな
一つの問題になるなというふうに思っております。
それからもう
一つは、この
アメリカの国内世論に関してでありますけれども、
冷戦が終わった後で、アドミニストレーション、行政の方から余り出てこない議論でありますが、議会からは、トレードの問題が非常に抜き差しならないところまで行くと、今までは国防または国務省の方から
日米関係がトレードで悪化することは避けてほしいというようなことが暗にあったんだけれども、今からは余りそういうふうにならないぞというようなことがコメントとしてありました。
これは、非常に我々も肝に銘じておかなければならないなと、こんなような気がいたしておったところであります。特に、そういった
意味で今財政構造改革を進めておるところでありますけれども、
日本の景気をぜひ輸出主導ではない方法で回復してほしいということを随分言っておりまして、我々もそれは一生懸命やっておりますし、多分そういう数字に今なっておる。
蛇足でございますけれども、今の収支を見ますと、むしろ物サービスの収支といいますよりも所得収支、今まで対外投資をしておりますから、その投資に対するいわゆる果実の収支というのが大変に大きくなっておるわけでございます。むしろこれは
アメリカの国債を買ったりして非常に資本の還流をした結果の収支が出てきておるわけです。この議論を随分と向こうでもやってきたわけですけれども、
アメリカではやはり出てきた数字について世論が敏感に反応するということでありますから、これは正々堂々と我々も議論していかなければならないし、一方で、やはり
経済構造改革を進めてこれをやって、内需
拡大ということをこちらが一生懸命やるということが必要になってくる、こういうふうに思っております。
ちょっと蛇足になりましたけれども、もう
一つは、やはり
安全保障で、このマルチの場でいろんなことをやっていくということがいろんな
参考人の方から
意見が出たわけでございます。私も、魚住先生おっしゃったように、予防
外交、また
信頼醸成ということをもうちょっといろいろと議論をしていって進めていかなければならないな、こういうふうに思っております。
その中で、第三者によるメディェーションといいますか、仲裁ということをいろんなところで今、特に理論的なところがまだ多いわけでありますけれども、研究をされておるところでございます。予防
外交で出ていく前に、また
紛争がある程度、実力行使の前と後の
段階で仲裁をするという
役割が今から大事になってくるんではないかなと、こういうふうに思っております。
日本はそういった
意味では第三者による仲裁というものにいろんな
意味で適しているポジションにあるのではないか、こういうふうに思っております。この第三者仲裁に積極的な
役割を果たしていくという道を少し検討をしたらどうかなと、こんなことを思っておるところでございます。
それからもう
一つは、先ほどの
経済の問題と絡むわけでありますけれども、やはりインターディペンデンスというものが最強の予防
外交といいますか、マルチにおける
安全保障の
一つになるんではないかなと、こういうふうに思っております。EUがあれだけいろんな難しい面を抱えながら通貨統合までやっていこうという背景には、ドイツと
フランスが二度と戦争をしないというEC設立以来の強いモメンタムがあってのことだと、こういうふうに思っております。昨今は通貨をEUは統合するというところをにらみながら、例えば電子マネーといったようなものが流通してまいりますと、一部の識者の中にはこれで通貨統合が事実上進んでしまうんではないかという
お話もあるようでありますけれども、
経済的にお互いに行き来がふえてお互いに依存するようになれば、ネーションステートというのを超えて攻撃をすることが、自国の資産や国民に対しての攻撃になるというようなところまで進んでいけば、それはかなり強い
安全保障の予防、予防という
意味での
安全保障になるんではないかなと、こういうふうに思っております。
そういった
意味で、
我が国は今シーレーンというものに大変に大きく依存をしておるわけであります。例えば、天然ガスのパイプラインという構想がありますけれども、北朝鮮や
ロシアとともにこういうものに対して前向きに取り組んでいくということが、
経済の相互依存というようなことを進め、かつまたシーレーンに対する
我が国の依存度ということを薄めるといういろんな
意味があるんではないかなと、こういうふうに思っております。この
経済の側面というものが今からは
安全保障と切っても切れない
関係になっていくという観点で、こういったことについても
安全保障の
一つの側面として議論の中に組み入れていかなければならない、こういうふうに考えております。
以上でございます。