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1997-06-04 第140回国会 参議院 国会等の移転に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月四日(水曜日)    午後三時三十一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         千葉 景子君     理 事                 中曽根弘文君                 溝手 顕正君                 山崎 順子君                 国井 正幸君     委 員                 石渡 清元君                 太田 豊秋君                 佐藤 泰三君                 鈴木 政二君                 保坂 三蔵君                 真島 一男君                 矢野 哲朗君                 片上 公人君                 続  訓弘君                 平田 健二君                 赤桐  操君                 瀬谷 英行君                 緒方 靖夫君                 江本 孟紀君    政府委員        国土庁大都市圏        整備課長        兼国会等移転審        議会事務局次長  五十嵐健之君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    参考人        作     家  堺屋 太一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 ○国会等移転に関する調査     ―――――――――――――
  2. 千葉景子

    委員長千葉景子君) ただいまから国会等移転に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する調査のため、本日、参考人として作家堺屋太一君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  4. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 国会等移転に関する調査を議題とし、参考人から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。堺屋参考人におかれましては、御多忙のところ当委員会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。  本日は、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人から三十分程度意見をお述べいただき、その後九十分程度、午後五時三十分までを目途に委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御意見及び御答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、堺屋参考人にお願いいたします。堺屋参考人
  5. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 堺屋太一でございます。  本日、首都機能移転委員会にお呼びいただきましてありがとうございます。  まず、私は現在の日本は大変大きな変革の時期を迎えていると思います。これは恐らく、徳川幕府ができたとか、明治維新とか、そういうものに匹敵するような大きな変革期だと思っております。それは単に行財政の問題とかそういうことではなくして、日本全体あるいは世界全体が近代工業社会から次の社会、脱工業化社会、私の言葉で言いますと知価社会に移らねばならない、そういう大きな変革期だと考えております。  では、そういうときに日本を本当に改革していくにはどうすればいいか、これが私たち現代人に与えられた大きなテーマだろうと思います。ところで、日本の歴史を見ますと、各時代の区分がすべて首都機能所在地によって呼ばれております。奈良時代平安時代鎌倉時代室町時代、安土・桃山時代江戸時代というわけです。恐らく現代は何百年か後にはまた東京時代と呼ばれるようになるでしょう。  すべての時代区分首都機能所在地で呼ばれている歴史を持つ国は世界で我が国だけであります。このことは、日本では首都機能移転しなければ本質的な改革はできなかったということを意味しています。  また、首都機能移転すれば必ず世の中が変わったことも意味しています。平安時代は三百九十八年もあったわけでございますけれども、我々から見ると前期も後期も一つの時代でございました。やはり、平安京が変わらないと時代は変わりませんでした。この間に随分乱暴な改革を試みた人がたくさんいました。  例えば、平清盛などは猛烈な改革をやったのでございますが、全く効果がありませんでした。したがって、清盛も最後には平安京にいたのではだめだと気がついて福原遷都というのを考えたんですが、彼の寿命は尽きてしまいました。  ところが、その後で源頼朝が出てきて鎌倉に首都機能を移しますと、時代は一遍に変わって、武士の時代と言われる、文化までことごとく変わったわけであります。同様のことは鎌倉時代から室町時代、室町から安土・桃山、そして江戸時代と変わるときにもことごとく起こっていることであります。  明治維新のときも、どうしてあの改革ができたかというと、十年間江戸から首都機能が事実上京都に移ってしまいました。将軍様も京都に在住されまして、会津藩も京都へ行った。したがって、幕末の政治事件新選組であるとか何とか事件というのはたくさんありますが、ことごとく京都でございまして、江戸ではなかったんです。この十年間にまさに改革が行われて、そして改めて明治維新政府東京に天皇とともに遷都してきたという形になっておるわけです。もしあの十年間がなかったら、明治維新改革もできなかったのではないかと思っております。  したがって、時代を新しくするためには、日本の歴史にかんがみ、首都機能移転がなければならない。首都機能移転なくして抜本的改革が行われたことは日本史上一度もなかったということであります。  第二番目には、東京一極集中を是正することが今や急務になっております。  政治、行政経済文化、あらゆる機能東京集中しておりますので、日本経済的にコストが非常に高くなり、文化、言論の一源化、源が一つになるという状況が生まれ、また地域の個性が喪失してしまいました。このことは、日本規格大量生産近代工業社会を目指しているときには有利な条件でございまして、この結果、日本も大いに電機産業自動車工業を発達させることができたのでありますが、創造性多様性を発揮する上では大きなマイナスになってまいりました。  現実の生活でも、東京圏地価高騰通勤距離の延長、ごみ処理水供給の限界、国際機能の流出などさまざまな問題が起こっております。バブル景気の崩壊後、土地価格が下がった、家賃が低下したと言われておりますけれども、これはバブル以前に戻っただけでございまして、抜本的な改革にはなっておりません。  また、一九九四年、九五年の二カ年、東京圏東京都と埼玉、神奈川、千葉の一都三県の社会的な流入人口流出人口より少なかった、社会減になった。これをもって東京圏一極集中は終わったという意見もございましたが、実際には筑波を初めとするその外周部、あるいは新幹線通勤などが非常にふえておりまして、そういう状況からしますと、東京集中は明らかに進んでおります。  また、日本経済の停滞、人口少子化等が進む中で、一極集中がさらに進むということは、五月三十日、つい最近でございますが、厚生省社会保障人口問題研究所が発表いたしました二〇二〇年ないし二五年の府県別人口構造を見ていただければ一目瞭然でございまして、各地域は全部減少しております。沖縄県、これは出生率が高いので唯一例外でございますが、それ以外は九州も四国も中国も減少であり、近畿地方などは百十五万人という大激減が予想されております。その中で、東京圏関東圏だけが増加を続けるという傾向が出ておりまして、このままでいきますと、少子化が進む中で全国が非常に過疎化する、東京圏だけがかなりの過密化をするというような予測が出ておるわけでございます。したがいまして、やはり一極集中問題というのは何らとまっていないと私は考えております。  第三番目は、文化的多様性情報公平性が失われている、これを再現しなければ、実現しなければならないということです。  今日の日本は、東京一極集中の結果、文化の創造と情報発信がすべて東京集中してまいりました。他の地域では文化創造活動が著しく衰えてまいりました。多様で個性的な文化経済活動を起こすためには都市間競争を引き起こさなければなりません。  このことは、アメリカドイツ、イタリアなどでは実現しておりますし、またEUにおいては非常に重視されておりまして、各都市が競争しなければならない、そのことによって新しい都市の力が生まれてくる、都市産業が出てくると言われております。よく日本ではイギリスフランス一極集中だと言われておりますが、イギリスはかつて大英帝国としてさまざまな地域、カナダもオーストラリアもインドもそれぞれ地域競争下にあって経済文化が発達いたしました。フランスはそれほどではないけれども、同じような形態をとっております。したがって、一極集中になった途端に経済文化の疲弊が見られ、今度EUによって各地域間競争を再現しようとしているわけであります  ところが、日本東京一極集中しておりますために文化創造面都市間競争がございません。特に困ったことは、行政に入るニュース東京ニュースに限られております。アメリカでは各州の州都のあるところは州の最大の都市である例が非常に少ない。大体そうではございません。それは、最大の都市に置きますと、その都市情報環境に州の役人が埋没をして公平な行政ができない。ワシントンをつくったのもそういう条件でございましたけれども、ニューヨーク州はニューヨーク市ではなしにオルバニーにある、カリフォルニア州はロサンゼルスやサンフランシスコじゃなしにサクラメントにある、これは全部の公平な情報をとるためということであります。  現在、日本では東京情報が偏っておりまして、県境を越えた広域情報をとりますと、東京が一人当たり十六万円ぐらいの情報発信をしているのに対して、何と三十県以上が自分の県の外に情報発信をする手段がゼロであります。非常な格差がある。いわゆる一言の重みというのが大変違うわけです。世論調査などをしますと必ず東京の話ばかり出てくるものですから、何となく東京世論全国を風靡する、そういうような不公平性が生まれておりまして、これを是正するためにもやはり行政地域情報的公平性を持ったところに移すべきではないかと考えております。  第四の問題は、よく言われることですが、国家国民社会の安全であります。  東京一極集中していることは、東京都民が非常に危険なだけではなしに、日本の国家あるいは国民経済にとっても非常に危険であります。特に、国家行政機能情報発信機能が一極に集中しておりますので、大災害が起こったときには災害救援活動も非常に困難になるでしょう。東京阪神大震災クラスの災害が発生いたしますと、東京都民はもちろんのこと、日本全体が深刻な打撃を受けまして、世界経済にも大混乱を与えることが想像されます。そのとき、首都機能東京にございますと、国が救助活動をすることが非常に困難であります。東京都あるいは各区の自治体の活動と同時に国の活動ができなくなる、これは大変重要な問題です。しかも、東京には情報発信機能集中しておりますので、全国情報を受け入れるということができなくなってまいりますから、非常に難しい問題になります。  東京都でもいろいろと災害防止をやっておられまして、私もその東京都の委員を務めたことがございますけれども、東京を改造しようと思いますと、独裁的な権限がありましても五十年以上の歳月と百兆円以上の費用がかかることは全部の都市計画家が認めておるところであります。首都機能移転は最も安価にして唯一現実的な防災対策になるのではないかと考えております。  また、阪神大震災の場合には職員の通勤距離が大体十キロでございました。ところが、国家公務員の場合は二十四キロぐらいあるわけです。そうすると、交通機関がとまると出勤はほとんど事実上不可能でありまして、防災関係の役人を便利な公務員宿舎に集めるとかいろんなことを言われておりますが、現実的にはなかなか難しいと思います。そういう意味からも不可欠な事業ではないかと思います。  第五番目に、国民の士気の向上であります。現在、日本は非常な閉塞感に襲われておりまして、特に若者たちには、世の中は変わらない、大きな夢は持てないという声が広まっています。首都機能移転は、日本は変わるんだ、変えられるんだという自信を国民に与えまして、全国的に新たな発想と投資を生み、新しい産業、文化を引き起こすことになるでしょう。  六番目には、全国地域構造が変わるということです。  しばしば首都機能移転があった地域だけが繁栄するように言われておりますが、これは全くの間違いでございまして、日本の現在の交通は東京一極集中型にできておりますが、これを東京を中継しないで地方が相互につながるようなネットワーク型に変えていきますと、全国流通コストが非常に安価になりまして公共事業効果も高まると思います。首都機能移転に伴って全国交通通信ネットワークを構築すること、すべての地域から全国にアプローチを持つことは首都機能移転によって非常に大きな効果が上がると思います。したがって、日本の経費が大変大きく節約できる、これが首都機能移転の重要なポイントであります。  最後に、第七番目といたしまして、首都機能移転をいたしますと最新技術が集積されます。二十世紀は残念ながら軍事技術世界をリードした時代でありました。二十一世紀は恐らく都市環境技術世界をリードするのではないでしょうか。日本のような豊かな国が首都機能所在地を建設するとなりますと、全世界からハード、ソフトの都市環境技術が集まってまいりまして、世界に誇るような集積ができるだろうと思います。以上が首都機能移転する効果でございますが、次に、首都機能移転することの経済性についてお話ししたいと思います。  首都機能移転は、前回、一九九六年三月に終了いたしました首都機能移転調査会におきまして、六十万人、九千ヘクタール、十四兆円という数字が出ました。これがなぜかマスコミにひとり歩きをしております。私もこの調査会委員でございましたので、この数字を出すときにはこれは危険だからひとり歩きするぞと盛んに言って、最大限というのを何度も書いていただいたのでございますが、案の定、最大限というところは言われておりませんで、何となくひとり歩きをしております。  この試算の根拠は、行政改革等が全く他のところで行われているのでこの首都機能移転調査会では云々できない、したがって全部が移転するという最大限をとってみようということで出した数字であります。したがいまして、非現実的な高い数字が出ておるわけです。実際には、行政組織改革あるいは行政機能電子化によって大幅に縮小されますので、こんなことは絶対にあり得ません。少なくとも当面の移転国会開設から十年程度に必要なのは上記の三分の一と考えられておりまして、人口で二十万人、用地で三千ヘクタールが最大限であります。したがいまして、所要資金も七兆円以下ということになるでしょう。  ちなみに申しますと、ドイツが今ベルリンに移転しておりますが、これは二百億マルク、一兆六千億円で始めましたが、行事が進行するに伴って予算は減少しております。時期が早まって確実に減少しておりまして、これ以下になりそうであります。  日本の場合も七兆円ぐらいと言いますが、その支出の大半は税金ではございません。民間支出になります。これをお手元の資料の四ページに分類しておりますが、公的支出公的財産取得、これは特別会計であります。それから公益事業、これは電力とか水道とか後で料金の取れるものであります。それから純粋民間投資、これは個人の住宅あるいは企業のホテルでありますとか売店でありますとか、そういうものでありますが、こういう四種類に大まかに分けることができます。そのそれぞれについてここに書いておりますが、その費用を考えますと、公的な支出、いわゆる税金で行わなきゃならないのは全体の大体三分の一程度であろうと考えられております。  これを移転後に得られる東京都内の用地と置きかえれば、都民に安価で豊かな空間を与えることになりまして、財政負担は決して大きくありません。都民の安全と快適性を高めるためには東京公的空間を広げることが必要でありますが、首都機能移転の有無にかかわりなく公的土地を取得するとなりますと大変な費用がかかりますが、移転によって公務員宿舎外国公館等があきますので非常に効率的であろうかと思います。  実際の首都機能移転費用を計算してみますと、調査会答申最大限をとって十四兆円と申しましたけれども、その数字でさえも財政支出は五兆円以下、特別会計公共企業投資等独立採算部分が五兆円、純粋民間部分が四兆円という配分になろうかと、これは私の個人的試算でございますが、考えております。これを十五年間ぐらいで支出するとしますと、全公共事業の〇・四%ないし〇・五%ぐらいであります。  ちなみに申しますと、過去十年間、一九八四年から九三年という期間でございますが、この期間に支出されました公共投資を見ますと、全国では三百五十三兆円、東京都だけで三十八兆八千億円、このうち国が十二兆二千億円、都が十八兆一千億円、区が八兆五千億円でございますが、その程度支出が行われております。臨海副都心だけでも六兆一千億円の支出が行われております。また、国の営繕で七兆七千億円が使われております。そういうことを考えますと、この首都機能移転費用というのは営繕を振りかえるだけでも可能性が出てくるというような数値でございます。さらに、財政再建との関係について別に一枚紙をお配りしておりますが、目下の重要問題であります財政再建との関係を見ていただきますと、首都機能移転財政再建に一番貢献する事業だろうと私は考えております。  首都機能移転のための財政支出はまず五兆円以下でございまして、それが二〇一〇年までに支出される分はまたその中でかなり下回ってまいります。したがって、東京都の過去の十年間の公共事業の十分の一以下、これからでございますとさらにそれよりも低い数字になります。国の営繕の二分の一、これからでございますとさらにそれ以下になろうと思います。  それから、東京の再開発用地震災対策用地等を活用することで、現在計画されている対策よりもはるかに安価に東京都民の安全と利便が確保されると思います。したがって、首都機能移転特別会計のようなものを設けて財政支出を極小に抑えることを研究すべきだ、具体的な制度を研究すべきだと思っております。  また、首都機能移転いたしますれば、これによって行政機構簡素化、いわゆるリストラクチャリング、それから行政手法の革新、リエンジニアリングが一挙に進められまして、行政費用は現行よりも大幅に縮小できると考えております。また、首都機能移転経済的波及効果が極めて大きな事業でございまして、他の公共事業よりも経済活性化に役立ち、納税額を拡大する効果は非常に大きいと思います。そういう意味でも、財政再建が必要だからこそこの事業を進める必要がある、もともとそういう発想でこれは平生から行われてきた事業であります。  第三番目に、首都機能移転調査重要性について一言述べておきたいと思います。  さきの調査会におきまして、行政改革についての議論がないままに最大限で算定をいたしまして、立法、行政、司法の三権の最高機関を一括して移転するというような結論を出しました。私もこの結論には反対ではございませんで、それが一番いいと思いますが、しかしいかなる問題も絶対ということはございません。だから、いいところもあれば悪いところもございますので、今後、国会等移転審議会の方では、最終的に国権の最高機関である国会でお決めいただくわけでございますが、その選択肢としていろんなものを出すべきではないか。  その一つは、立法、行政、司法の三権を二ないし三の地域に分割した場合にどうなるか、こういうシミュレーションもやってみる必要があると思います。立法と行政は密接でございまして分けるのは非効率でございますが、司法については分けられないか、あるいは行政の中でも特許庁でありますとか国土地理院でありますとかそういった部分は分けられないか、いろんなことが考えられるので、国土の均衡とあわせてそういう問題も考えてみるべきではないか。  ちなみに申しますと、ドイツ移転するときにはかなりいろんな分割を行っておりまして、国防省と社会福祉庁はボンに残ることになりました。そして、最高裁判所はカッセルというところに前からございまして、これは移転いたしません。いろいろそういう分割が行われております。日本もそういうことも考えられる、その場合にどうなるか、これをコンピューターシミュレーションでやってみるべきではないかと思っております。第二番目には、行政組織改革行政手法改革、つまりリストラクチャリングリエンジニアリング、この二つをやはり大々的に考えてみるべきではないかと思っております。  現在、審議会におきましては、国家公務員を全員移転する場合と二分の一の場合について検討することになっておりますが、さらに三分の一というようなケースも考えてみる必要があるんじゃないかと思っております。そして、特に東京から離れることによって、電子機器を利用した行政手続、今の稟議書を回すのは太政官布告以来ほとんど変わっておりませんが、これを斬新なものに変えていくリエンジニアリングを進めていくべきではないかと思っております。  三番目には、つくりやすさよりも使いやすさが重要でございます。  しばしば国の事業というのは、あそこに国有地があるからとか、ここはこういう施設が今あるからとかいうようなつくりやすさで事を決めてしまいます。これは非常に危険なことでございまして、首都機能というのはやはり何年も何百年も使うものであります。したがって、一番使いやすいものをつくらなきゃいけない。これはややもすれば建設優先になりまして、つくりやすい方、つくる方が主導する。  我々個人の家を建てるとき、あるいは企業で工場や本社を建てられるときには、まず発注者が使いやすいもの、使いたいものを言うわけです。それを建築家なり施工業者なりがつくるわけですけれども、ややもすれば先に設計ができちゃうということなんです。それから、極めて短期的な政策によって、例えばある種の土地指定農地何とかとかいうような指定があるからどうだ、去年あそこに花を植えたから本社ビルは建てられないというようなことがよく言われるんですね。  これはやはり国家百年、それ以上の大計でございますから、使いやすい位置、使いやすい町をつくる、そのための利便性シミュレーション経済性シミュレーションを大いにやるべきだと考えております。  四番目の問題といたしましては、できるだけ新技術、新法規を研究するということです。  現在の建築基準法とかそういうものをそのまま適用して新都市をつくったのでは余り意味がございません。したがって、世界じゅうの新しい技術あるいは新しいコミュニケーション、コミュニティーのつくり方、こういったものをやはり大いに研究したいと思っております。  そういった形で日本に新しい技術の蓄積ができますれば、日本が将来、世界じゅうに大きなバーゲニングパワーを持つことになるでしょう。これから世界には、特に発展途上国では都市環境問題が重要になってまいりまして、その技術がどれだけ蓄積されているかがその国の大きなバーゲニングパワーになるに違いありません。そういう意味でも、この際には従来の法規、制度を超えた新しいつくり方を考えていくべきだと思っております。それができますれば、これまた大変大きな効果が、世界の英知が日本に集まる蓄積ができてくるということになると思います。  以上のような観点から、この際、十分な調査研究費を投じまして、官民の研究機関を動員して、国民が納得できるようなシミュレーションを行いつつこの問題を解決していきたい、場所を決め、形を決めたいと思っています。  現在、審議会では、場所の問題を、土木建設あるいは災害、地形等々と同時に文化の問題からも詰めております。どのような都市、どのような首都機能を持った場所をつくれば日本が本当に自由で民主的な国になるのか。この東京をつくるときには、戦前は帝都と言われましてそれにふさわしいものをつくろうといたしました。戦後は近代工業社会にふさわしい町をつくろうといたしました。そういうこともいろいろと関係いたしますし、また国と地方、官と民の関係をその首都機能の中でどのように満たしていくか。これも日本の歴史を見ますと、鎌倉時代はどうだったか、室町時代はどうだったか、江戸時代はどうだったか、それぞれ首都機能所在地と形態によって違っております。世界的にもそうでありました。こういうこともあわせて研究していきたい。そして、できるだけ国民の納得が得られるようなものを国会にお出しして、国会で十分御研究いただいて決定していただければありがたいと思っています。今この機会にこれを実現しなければ、日本は新しい時代に、世界の新しい潮流に立ちおくれてしまうんじゃないか。今いろんな改革が行われておりますけれども、やはり官庁制度全体を変えないと、過去の例に見られますようになかなか動きません。ぜひこの際は、首都機能移転という大きな刺激をもって日本を新しい国にすべきであろうと思っております。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 千葉景子

    委員長千葉景子君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者等を定めず、委員には懇談形式で自由に質疑応答を行っていただきたいと思います。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。また、委員の一回の発言時間は、おおむね三分程度でお願いしたいと思います。  なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  7. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 きょうは、首都機能移転の理論的なバックボーンの堺屋先生のお話を聞く機会を得まして大変感謝をしております。  お話を承りまして、ちょっと二点お尋ねしたいのでございますが、一つは、国家百年の計どころか数百年に一遍の計であると、こういうお話がございまして、お話としては納得いたしましたが、さすれば首都機能移転などという言葉の上で非常に国民もわかりにくい、こういうことではなくて、むしろはっきり遷都となぜおっしゃらないんだろうか。特に東京が危ないとおっしゃるならば、陛下をお残しになっていいんだろうかということを含めて、私は先生の口から遷都と、あるいは首都移転と、こういうふうに御説明を承った方がわかりやすかったと、こう思います。これは御見解をひとつ承りたい。  それからもう一つは、TPOという問題でお尋ねしたいんですが、やっぱり状況の大きな変化がここのところへ来て何回かあったんじゃないだろうか、こう思います。過去の首都移転論をずっと拝見しておりますと、例えば宇野先生を初めとする関西財界、中部財界、東海財界、そして今日は経団連、ほとんどどちらかといいますと、はっきり言ってケインズ理論的に公共投資というインセンティブを求められているような気がしてならないのが、先生のとは違う私の見方です。  かつて、先生には先ほどお話の中にありましたけれども、東京の問題なんですが、東京は臨海部を開発いたしました。そのときの開発を決めたのは金丸先生だと、こうおっしゃるんですね。金丸先生は当時、東京駅の周辺の再開発だとかあるいは臨海部もつぶさに視察していただきまして、よし行こうとゴーサイン、何といいましても五五年体制のときの自民党のリーダーでございますから、これはもう結果的に決め手になったと、こう私たちは思っているんですけれども、その金丸先生が一方では臨海部を進めながら、一方では首都機能移転を進めていたんですね。ですから、そこのところに、私がさっきケインズ的じゃないかと申し上げたのはそういう背景があるわけですけれども、そのときに町づくりを促進し臨海部を強化する、これははっきり申し上げまして東京都では、続先生おいででございますけれども、七番目の副都心、臨海部を、ということは首都機能の強化をやったんですね、臨海部の再開発というのは。その首都機能の強化をより一層付加価値を高らしめて事業を推進するためにということで、大阪がかつて万博で町づくりに寄与したように東京でもというので、結果においては世界都市博覧会、当時は東京フロンティアというのをやりました。そのときの座長が丹下健三先生で、先生には小委員長をお務めいただいた。ということは、大変失礼な言い方ですけれども、関西弁の先生に東京の行く末をお任せしたわけですよ。そういうことがございまして、先生に私たちも大いに御期待申し上げ、先生の理論についていこうと思ったんですが、しかし結果においては、ここはバブルの崩壊と同時に、また青島知事の誕生とともに世界都市博覧会は中止になったと。それで、大変失礼ですけれども、状況の余りにも大きな変化がバブルの崩壊であったんじゃないかということで、先生におかれては、東京一極集中を批判しつつ、一方では東京首都機能の整備とか機能集中にお手をかしていただいたということで、まあ御立腹いただくかもしれませんけれども、自家撞着はなかったんだろうかと。  もう一つは、状況の変化は今言ったバブルの崩壊と大世界のコンペティション時代に入っている中で東京は今衰退しようとしているんですね。それから、もう一つ状況の変化は、財政改革で実際問題として聖域なしということになりまして、今こういう状況下になろうとしているわけなんですが、最初の遷都という言葉をなぜお使いになっていただけないのか、それから状況の変化というのはどうなんだろうか、この二点をお尋ねしたいと思います。
  8. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) ありがとうございます。全く立腹いたしません。大変いい御指摘をいただきました。  まず第一に、遷都というのにはかなりはっきりした定義がございまして、憲法か何かで首都を定めたときにはできるのでございますけれども、何をもって遷都と言うかというのは非常に誤解が多いんです。今、陛下のことを申されましたけれども、首都機能移転した場合に、陛下のお使いになる、皇室のお使いになる施設が新しい首都機能の土地にもできますが、東京にあります皇居あるいは那須の御用邸あるいは京都の御所等々、現に皇室がお使いになっている施設がなくなるわけではございません。一つ追加されるだけであります。これは国事の必要上お使いになる。それがどれぐらいの頻度になるか、東京におられることが多くなるのか、あるいはかなりの程度、新首都機能のところへ行かれるのか、これは恐らく国事の都合、実際のお仕事の状況等によって決まるものだと思います。現在もどれだけ那須に行かれるのか、どれだけ葉山に行かれるのか、海外に行かれるのか、それはそれぞれのときのお仕事で決めていただいておるのでありまして、今からどちらへどうというような問題ではないと思います。したがいまして、平安時代に平城京から平安京移転したときにも遷都という言葉は使っておりませんし、鎌倉のときにも使っておりません。それから、東京京都から陛下が来られたときも使っておりません。そういうような厳しい、厳格な意味で言いますと、これは遷都と言うべきではないと私は理解しております。やはり、国会等首都機能移転ということだろうと思っております。  第二番目に、状況の変化でございますが、この国会等移転の決議案ができましたのは平成二年でございまして、それからさまざまな法律はバブル崩壊後にできたのでありまして、バブル中にできたのではございません。だから、バブル崩壊の状況を踏まえて起こったことでございます。  先ほど臨海副都心との関係を言われましたが、私は臨海副都心は首都機能のためのものだと思ったことは一度もございません。あれは東京の民間企業あるいは国際機能、そういったものを高めるためにつくられたものでございまして、あそこに国会が移るとか官庁が移るとかいうことは寡聞にして聞いたことがございません。  この首都機能との関係でございますが、あれをやるときに、これは鈴木知事とも随分お話ししたのでございますけれども、まず最初に新しい都市技術、例えば裏動線のある都市というものをつくってみようじゃないか、そしてそういう実験を重ねて次に、そのときは首都機能東京であるかどうかは別といたしまして、そういう新しい都市の形態をつくり、それを皆さんに見ていただくために東京フロンティアをやる。初めは博覧会じゃなかったんですね。というような発想で続けたのでございまして、これが首都機能移転と矛盾するとは一度も考えたことはございません。  この点につきまして、東京都の方々、全部ではないでしょうが多くの方、都庁の方々とは同床異夢であったかもしれませんが、共通の目的、つまり新しい都市、裏動線のある都市、自動車に頼らず自動車を拒まずという都市をつくるという都市技術の点で共通していたと考えております。  バブルが崩壊して東京が衰退しているではないかということでございますが、先ほど申し上げましたように、バブルは異常でございましたけれども、それ以後の人口集中から見ても衰退しているとは思いません。国際的に、例えば金融市場がおくれているのはこれは金融統制のせいでございまして、都市機能の問題とは違うんじゃないでしょうか。だから、今の橋本内閣が行っておられますビッグバン政策とかそういう自由化政策をやっていけば、東京はやはりニューヨークのような立派な国際都市になる。  むしろ、東京にとって、昔は江戸というのは将軍さんのおひざ元と、こう言われて、江戸御線引きの中の六割は大名屋敷や武家屋敷で、二割がお寺や神社、百四十万人の江戸市民はわずか二割のところに住んでいたんですね。だから、将軍さんのおひざ元というのが形態にもあらわれていました。ところが、今や東京は立派な文化経済の町でございまして、首都機能はいわば同居人でございます。これが移転したからといって東京が衰退するとは思いませんし、それによって東京が安全になり安価になりますと、さらに多くの国際機能文化機能が発達をして東京は立派な町になると思っております。その点は、恐らく仮にニューヨークにワシントンが重なっていたときのことを考えていただきますと、ニューヨークはあんな発達は絶対していません。あれはやっぱりワシントンがなかったからこそニューヨークは発達したと言えるんじゃないでしょうか。恐らく、あれが重なっていたら物すごい過密都市になりまして窮屈なところになっていたという感じがするんです。  そういうことを考えますと、今、世界的に国際的な中心都市になろうとしているのはフランクフルトであり香港であり上海でありニューヨークであり、ことごとく首都機能のないところなんです。だから、私は、東京も本当に立派な世界都市世界経済文化の二十一世紀の代表的な都市になるためには、首都機能がない方が安全かつ発展するのではないかと信じております。
  9. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ありがとうございました。
  10. 国井正幸

    ○国井正幸君 民主党・新緑風会の国井正幸でございます。  二つの点についてお聞かせをいただきたいと思います。  一つは、昨日、政府・与党の中で、財政構造改革との絡みでこの首都機能移転問題については慎重に進めると、こういうふうなことが言われているわけですね。これについて、先生のお考えはこれまでお聞きをしましたが、そういうふうな閣議決定もされたわけでございますが、この御感想をひとつお聞かせいただきたいということ。  もう一つは、いただきましたレジュメの六ページの3の「首都機能移転調査重要性」というところの①の「三権集中移転効果」、これの最後部分なんですが、これまでの調査会報告等では分都はしないというふうな一つ結論がありますね。それとの絡みの中で、やっぱり三権とも一緒に移った方がいいのではないか、こういうふうに調査会報告ではなっているように理解をしているんですが、先生は調査会のメンバーでもあられましたし、今日の審議会のメンバーでもあられると。その辺の、調査会報告と先生のおっしゃっている部分とに、これは全体で決めたことでありますから、ちょっと矛盾があるのではないかなというふうなことと、今日の調査会そのものは、どこに移転をするか、移転地を決めるという段階になっているんですね。こういう議論になりますと、もう一度もっと広い範囲で、議論がまた逆戻りするのではないか、そういう危惧を持つんですが、その辺いかがでしょうか。
  11. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 第一の点につきまして、慎重にという表現が何を意味するのか非常にあいまいだと思いますので、特にこれが首都機能移転を延期もしくは中止するものだとは受けとめておりません。  やはり、国家百年以上の大計でございますから慎重であるのは当然だと思うんですが、財政的に見ますと、私は慎重に検討していただいて、これが財政的にマイナスでない、プラスであるということをよく理解していただければいいと思っております。  ただ、閣議あるいは担当の方々、大臣、その他の方々が、あたかも今のままでございますと十四兆円というのがひとり歩きしておりますから、非常に大きな公共事業を認めたような雰囲気を出して、ほかの予算も削れない、そういう波及効果があるということを心配しておられると思うんです。そういう意味では、むしろこの際、この費用がどれぐらいのもので、それの効果がどれぐらいのものか、まさに慎重に国民の皆さんに理解していただければよりありがたいのではないかという気がしております。  それから、第二番目の点でございますが、仰せのとおり、調査会では分都はしない、三権を重ねて一カ所に移すということになりまして、私もそれに賛成でございます。しかしながら、最終的に決定するのはやはり国権の最高機関である国会がお決めになることでございますので、審議会といたしましては選択肢を出す方がいいんじゃないかというのが私の意見なんです。  それで、私個人といたしましては一括して移転することがいいけれども、例えばこういうぐあいに分けたら、これだけの点ではマイナスで、これだけの点では利点がある、あるいは政治的に各地域の比率とかあるいは東京に対する配慮とかいうことを考えた場合に、一括移転だけを出すのではなしに、国会の先生方に選択肢をお見せした方がいいのではないか、そのための勉強はすべきではないか、こういう意見でございます。
  12. 佐藤泰三

    ○佐藤泰三君 この移転問題で今御意見を伺ったんですが、我々も福島県の阿武隈地帯と栃木県の那須、それと岐阜県と茨城県と四カ所を見て歩きまして、一長一短はありますけれども、根本的に今、日本の工事を見たときに、成田空港、最初は御料牧場だから土地は心配ないといって始まって、二十年たってまだ滑走路一本しかない、変則で、見通しがつかない。沖縄もそうだと。国民の権利義務、権利は主張があるんですが、義務がほとんど遂行されていない。憲法二十九条ですか、国民の私有財産は正当なる補償のもとに国民国家のためにはそれを使用してよろしいと憲法にあるんですが、恐らく履行したことがないんじゃないかなと思うんです。どこに決めてもまずその問題で、成田は二十年ですから、膨大になるとこれは恐らく五十年かかるんじゃないか、不可能じゃないかと思うのでございますが、憲法の二十九条ですか、権利義務、非常に今の日本では個人の権利は国家より強いという形がありますので、その点をまず危惧するのでございますが、いかがでございましょうか。
  13. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 今お挙げになった成田、あるいはそのほかでも原子力発電所その他いろいろございますが、そういう大変不幸なトラブルを起こした例もあります。  その一方では、例えば私も担当させていただきました万国博覧会なんというのは、百万坪の土地を九十九日で全部買い上げると、全部民有地でございましたが。あるいは沖縄でも、今いろいろ問題がありますけれども、海洋博の土地は全部民有地でございましたが、百四日で全部買い上げました。その地元の人々の御理解と関係者の熱意と、それからかなりは運もあると思うんですが、そういうことに恵まれますとこれはできると思っております。  特にこの施設、つまり首都機能でございますが、これにつきましては地元の人々の理解も得やすい施設でございますから、その心配は余りないと思います。ただ、特定のところ、例えば成田の場合は、あれは御料牧場があるというのであそこに固定したのでございますけれども、そのやり方がどうだったかという気がいたします。  したがいまして、幾つかの候補地、あるいは候補地の中でも、これはごろっと半径何ぼで買うというんじゃなしに、クラスターという幾つもの点在を買う仕掛けでございまして、関西学園都市とか筑波とかというようなものに似ておりますが、そういうケースでございますと、必ずしもここでなきゃいけない、ここでなきゃいけないというわけではございませんから、競合的あるいは競争的な買収方法もできると思います。  ただ、一つ重要なことは、やはり土地投機が起こりませんように地価抑制の法律、これは候補地が決まる前に何らかの手法をとる必要がありますし、また土地投機のおそれのあるところは候補地から落とすということも大事だと思うんです。そうすると、危なくて土地投機ができませんから、非常にそういう経済合理性を働かせた手法も採用すべきではないかと考えております。
  14. 佐藤泰三

    ○佐藤泰三君 ごもっともと思うんですが、四カ所とも土地の取得の問題でお伺いしたら、いや、うちの県民は大丈夫ですと言うんですが、御案内のように、一坪地主、座布団地主とございますので、それは非常に懸念するのでございますが、そういう場合には国権にやはり義務というものが全然遂行されないと、そういう風潮は強いのでございますので、まずその点で私は不可能じゃないかなと一番危惧するのでありますが、いかがでしょうか。
  15. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 地元の方々が圧倒的に誘致したいというときには反対していられなくなるんですね。だから、名神も新幹線も千里ニュータウンもいろいろ買収をやった後で、非常に難しいところだと言われた万博のところも、もし何月何日まで、あれは博覧会の条約がございまして、今、名古屋がやっておりますが、あの条約が通ってから何日以内に計画を出さないかぬということでございますから、期間がないわけです。そういうときに、もし何日までに買えなかったら場所を変わるよと言ったら、反対の方もおられましたけれども、やはり地元の人々が猛烈に、隣近所の人々が説得してくれるんですね。だから、御理解をいただければ、かなりそれは楽だと思います。私の経験では余りそれは心配しておりません。むしろ、誘致運動の方でとり合いになる施設じゃないかという感じの方が強いわけです。
  16. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。大変興味深いお話をありがとうございました。先ほどお話が出ましたけれども、きのう財政構造改革会議の最終報告の中で、「状況を総合的に勘案して慎重な検討を行う」という提起がありました。  この報告の中には私はいろんな異論はありますけれども、しかしこの問題について言いますと、やはり政府がこれまで推進ということで進めてきたことについて、今の時点で殊さら慎重にと述べた点に非常に注目しているわけです。もちろん、中止とかそういうふうにはどう考えてもとれませんけれども、私は昨今の公共事業の問題等々を考えてみても、やめる事業は早ければ早いほど被害が少ない、それが一つの教訓だと思うんですね。ですから、この時点でこの問題についてもきっぱりやめる方向でそういう問題提起があってもしかるべきではないかということを私自身は痛感しております。  この間のいろんな動きを見ますと、例えば与謝野官房副長官が移転費用について試算が十四兆円、いわゆるその数が動いていますけれども、それをもとにして移転すると、今の時点で数倍から十倍かかると。十倍というと百四十兆円になるんですね。それから、この委員会で宇野会長に来ていただいて御意見を伺ったときにも二十兆円から二十五兆円という数字が出ました。今、先生は五兆円以下と言われましたけれども、いずれ審議会でその試算については出ると思います。  しかし、非常にはっきりしていることは、中曽根元総理も言われているわけですけれども、首都移転は延期がいいということだけではなくて誘致合戦が非常に激しい、だからそれだけでむだな出費がふえているということを指摘しているんですね。私、この指摘は非常に興味深いので、実は国土庁にそれぞれ候補地になっているところで幾ら出費しているかと尋ねたら、そういう調査はない、調べていないということだったんですね。私の方で調べてみました。全部こういう表にして調べたんだけれども、こういうことになるんですね。今年度だけで、新潟県を除いて十一道県なんですけれども、約四億八千九百万円、これが全部宣伝費等々、ポスター、チラシをつくる等々で出ているわけですね。こういう予算が計上されている。この間、億を超える単位でいうと、宮城県は二億円以上、あるいは栃木県は一億円以上、また岐阜県は二億六千万円かかっている。累計すると、候補地のところだけで九億七千万円以上かかっているわけですよ、こういう費用で。長引けば長引くほどこの費用はふえていく。しかも、ことしと去年とは全く額が違うといったら、こういうことを考えている中曽根元総理の言われていることは非常に道理があるわけですね。  それから、東京でいうと、これは逆の立場ですけれども、ことしの予算が三億円近くあるわけです。東京都はこれまで一極集中の解決にならないというそういう東京都の主張をするために累計して四億四千六百万円を使っているわけですね。  ですから、こういうことを考えると、これは明らかにむだなんですね。つまり、移転するところ一カ所なわけですよ。ほかは全部そのためにもうこっちへ来なさいということで宣伝する。ですから、少なくともこういうことがずっと長引いていくと大変なむだになる。このことは自明のことだと思うんですね。ですから、その辺の問題と、それから先生が言われた、先生の御意見はいつもいろんな新聞等に出ておりまして、移転投資ほど財政立て直しに効率的な投資はないということも先生は前から主張されているわけですけれども、その辺について先生、財政の観点から、とりわけ誘致合戦の中でのこういう出費について、これは部分的かもしれません、しかしどう考えられるのか。  それからもう一点、移転について私ははっきり言って熱が冷めてきている、雰囲気が去年と今とではこの一年間余りで随分変わってきていると思う、率直に言って。その雰囲気というのは国会の中でも感じますし、それからまた各地の視察のところでもその辺は痛感しているわけですけれども、先生はその辺、空気の変化、まあ変化を感じられたかどうかはあれですけれども、どう認識されているのか。その二点をお尋ねいたします。
  17. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 今の誘致運動の費用についてはどういう計算をされたのかちょっと認識がございません。印刷費その他でそれほど使っているとは思わないのでございますけれども、どういう計算かわかりませんが、確かにゼロでないことは間違いないですね。ゼロでないことは間違いないんですが、それが全くむだな費用なのか、あるいはその地域の人々に夢を与えるような効果があるのか。公共団体、いろんな役所の宣伝広報費がどれだけ役に立っているかというのはよく議論されるんですけれども、私の認識では、日本はやはりハード志向でございまして、もう少しいろんな意味での宣伝広報費、情報発信はやった方がいいんじゃないかという気がしております。  私の認識では、多少パンフレット等をつくっているところもありますが、多くはやっぱり県の位置あるいは未来というようなものを知らせるために使っておるので、これが全部むだだとは思いません。失敗してがっかりするところが出てくるのは、これはオリンピックの誘致でも何でもそうなんですけれども、あると思います。ちょっとその点につきましては先生と意見が異なるんじゃないかという気がします。  それから、熱が冷めているかどうかということでございますけれども、私はそうは思っておりません。かなり議論が盛んになってまいりました。特に、東京都なんかが積極的に議論に参加していただいたことによりまして反対論も強まっておりますが、認識が深まっていることは間違いない事実だと思うんですね。  ちょっと変な言い方ですが、やっぱり反対論が出てきたということは現実に近づいているということなんですね。本気になっているから反対する人がいるので、ついこの前までは、あんなのどうせできないから反対する必要がないんだという人が多かったような気がいたします。正直言いまして、私はこれはどこでも申し上げておるんですが、現在、日本人はこの問題について半信半疑までいかない、三信七疑だと申しておりますが、とにかく国民的な議論の場に出てくるということはいいことでございます。その結果、国民の多数が反対ならやめるべきだけれども、やはり認識していただいた上で結論を出してもらいたい。密室でやめるとかやるとかいうことはやるべきではないと思っております。  そういう意味では、九億円も行っているかどうかわかりませんけれども、これもむだなものではないんじゃないか、国民の国政参加の一つの道ではないかというように思っております。
  18. 続訓弘

    ○続訓弘君 堺屋理論を聞きますと、この首都機能に賛成しないのはばかだと、こういう感じなんですね。ということは、財政再建効果もまず首都機能移転はあるんだぞと、こういうお話を今承りました。ところが、先ほどからお話が出ていますように、慎重に対応しなさいと、例の。そこで国民はやっと一安心したような感じを私どもは受けるわけですね。それに対する先生の考え方を伺いたいことと、もう一つは、かねがね東京都は首都機能移転よりも地方分権が先じゃないか、要するに国はスリムな行政に終始し、同時に地方もスリムな地方政府をつくると、まず地方分権が先ではないかという反対の議論をやっているわけですね。それに対する堺屋先生の反論をひとつ伺わせていただきます。
  19. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 私は、首都機能移転効果があると申し上げておるのでございまして、これは理解していただきたいと思うんですが、理解しなかったらばかだと申し上げているわけではございません。  それと、慎重に対応しろと言ったので安心している人もいるでしょうけれども、がっかりしている人もいるでしょうし、いろいろだと思います。したがいまして、問題は、かねがね東京都を初めとする自治体が地方分権を推進すべきだとおっしゃっておられる。これはほとんどの都道府県がおっしゃっていることでございまして、私もあらゆる論調の中で地方分権の推進を書いておりますし、主張しております。  ところが、現実を見ていただきますと、この規制緩和、地方分権等が本格的に話題になり出したのは鈴木善幸内閣、それに続きます中曽根内閣であったのではないかと思いますが、以来十数年たっております。ところが、その間に地方分権がどれだけ進んだか、規制緩和がどれだけ進んだか、これを見ますとやはり暗たんたる気分にならざるを得ません。  例えば、各県知事が東京に来られる回数はこの間にどんどんふえております。また、規制の数も中曽根内閣発足のときに九千六百項目ぐらいでありましたが、今や一万一千六百項目ぐらいにふえております。百年河清を待つという言葉がございますけれども、河清を待っているだけじゃなしに濁りがひどくなっているんじゃないか。また、都市計画が建設大臣から知事に移っても、事前協議と称してより詳細なことは本省と詰めなきゃいけない。  そういうような事態を見ますと、私は平清盛のときも三好長慶のときも、あるいは幕末のときも、あるいは戦争中もそうでありましたけれども、大改革がないとなかなか地方分権や規制緩和ができないんじゃないか。今も六大改革を進めておられまして、これはぜひ私もやっていただきたいと思っていることばかりでございますが、だんだんと財政だけに偏ってまいりまして、現実的という言葉の中でなかなか抜本的改革ができない。それに比べて、首都機能移転を行いますと、各官庁がどういうような形で移転するか役人自身が、官僚機構自身が議論しなければならなくなります。実は、私たちがこの首都機能移転を提唱いたしましたそもそもの始まりは、まず第一にこの世の中を変える、役人、官僚機構自身に官僚機構がいかにあるべきか、どの機関が本当に国会と密接な関係を持つ国政であり、どの部分がそれとは関係のない地域行政あるいは業界行政であるのか、これを本人がしっかりと考える必要がある。その契機を与えるということが重要なポイントでありまして、したがって地方分権を進めることが先だというのは理論的にはあり得ますけれども、現実問題十八年間やってまいりまして進まなかったことも直視しなければならないと思います。これをあともう十八年やってもそう変わらないんじゃないでしょうか。  これは、日本歴史をひもといてみますと、あらゆる時代に起こっている現象でありますし、また昭和の初めに革新官僚と言われる方々が出てまいりまして、日本を大改革するということをやりました。昭和維新と言われることが起こりました。これも相当大胆なことをやったのでありまして、当時は今よりももっと強権発動でどんどんやりました。けれども、結局仕組み自体が変わらない、仕方だけを変えたんですね。その結果、結局は悪い方に流れてしまいました。  私は、この日本の固定化した行政機構あるいは経済構造、教育構造を含めた社会全体の形から見ると、やはり今大きな刺激が必要ではないか。そうでなければ脱工業化社会日本は立ち至らないのじゃないか、こういう考えを持つに至ったのであります。約二十五年間、いろんな形で地域構造の問題あるいは分権の問題あるいは地方財政の問題、そういうことも勉強させていただいたのでありますけれども、結果としてこれが一向に改善されていない。そのことを考えると、やはりこの首都機能移転という大きな刺激が今や不可欠になっているという結論に十五年ぐらい前に達したわけでございまして、その信念は年々強まるばかりでございます。
  20. 山崎順子

    ○山崎順子君 山崎順子こと円より子と申します。  この委員会には、多分かなり首都機能移転に反対の方と賛成の方、いろいろいらっしゃると思うんですが、私は多分どちらの話を聞いてもなるほどと思うかなりいいかげんな中立派でございます。  ただ、阪神大震災があった後、私の周りのほとんどそれこそ国会移転に余り関心のなかった方たちが、やはりこれは危険を分散するためにも移転が必要なんじゃないかというふうに思われている方たちがたくさんいらっしゃって、この問題は相当関心が逆に私は出てきているんじゃないかなという気はしているんです。反対というか慎重派の方たちは、確かに地方分権や規制緩和をする方が先だとおっしゃいますが、個人的な話をして恐縮なんですが、私は、小さいころから父親が転勤をしょっちゅうしておりましたので引っ越しと転校を繰り返してまいりまして、同じところにずっといたいという気持ちが結構子供のころ強かったんですが、なぜか模様がえが大好きで、家の中を二十回くらい模様がえをして、もうできなくなるとすぐ引っ越してしまうという形で、引っ越し貧乏かもしれませんが、逆に引っ越すことで気分も仕事の中身も全部違ってくるというようなことをたくさん経験しておりまして、やはり場所を変えるということは人間の心とか感情とかだけじゃなくてあらゆるものに影響が結構大きいんだなということを思うんです。  そういう個人的なものとこの首都機能移転を一緒にしてはいけないんですが、先生が最初におっしゃった、日本歴史ではそれぞれ時代区分がすべて首都機能所在地名で呼ばれており、そしてその首都機能移転することで本質的な改革が行われてきたとおっしゃいました。今回の国会等移転だけでは、例えば東京はまだ本当に物すごく文化情報、それから経済集中しておりますけれども、かつてのそういった歴史上の教訓というかそういったものをもし私たちが生かすことができるとしたら、ただ単に場所が変わることだけでいいのか、それとも国会等だけでは中途半端ではないのかということ。それから、場所が変わるだけじゃなくて何かもっと大きなエネルギー、先生はさっきつくりやすさだけじゃなくて使いやすさを考えなきゃいけないともおっしゃいましたが、何か大きな努力があったのかどうか、その辺のことも含めてお話しいただけませんでしょうか。
  21. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 今、国会等移転審議会で、物理的な場所の問題、土地の問題とか地形の問題とか地震の問題とか水の問題とか交通の問題とかいうことと同時に文化の問題を研究しております。この文化の問題は、どこの場所がどうだということよりも、その首都機能の形状あるいは機能によって、国と民との関係、官と民との関係、あるいは中央政府と地方自治との関係、そういったものがどういうぐあいになるか、そしてそれがまた町の形状や建物の形等でどんな心理的影響を与えるかということも考えております。  どういうような町をつくるか。例えば、首都機能所在地は新しいふるさととしてそこで生まれてそこで死ぬ人がいるのか。また逆に、仕事が終われば、役人が退職すれば故郷へ帰るような町なのか。例えばワシントンはそうなんですね。ワシントンで生まれて死ぬというのはワシントンで商売をしている人でございまして、公務員は主としてやっぱり出身地に帰る。それから、議員さんになりますと完全でございまして、ワシントンで投票している大統領はいないんですね。日本では、総理大臣になりますとなぜか東京で投票しておられる写真がよく出ておりますが、アメリカの場合には、ブッシュさんはテキサスで、クリントンさんはアーカンソーで投票なさるという形になっております。そういう町にするのか。  そうすると、その首都機能というものの形、首都機能所在地の形が国の行政の印象に対して非常な影響を与えます。そこが故郷でなしに帰るという公務員でございますと、やはり地方分権に非常に役立つ状況が生まれてくるだろうと思うんですね。そういうような、どんな文化の町をつくっていくか。文化と非常に広い意味で使っておりますけれども、そのことも大変重要なことで、あわせてどういうような種類のことが考えられるか、いろいろと研究しております。  例えば、定年退職になってもそこで老後を過ごすような町にするのか、あるいは、もっと極端に言うと単身赴任の町にするのか、そういうことも大事なんです。それから、その部分東京の飛び地みたいな印象を持つべきなのか、あるいは全く違った独立のところにすべきか、あるいはそれはどこかの都道府県に属するのか、ワシントンDCみたいになるのか、いろんな形態が考えられるわけです。そのことによって日本全体の時代が変わると思うんです。  例えば、平安時代鎌倉時代を考えていただくと一番よくわかると思うんですが、平安時代というのは、文化経済行政平安京にございました。鎌倉のときには、鎌倉行政機能はありましたけれども、文化はほとんど京都にあったし、経済機能も、全国経済は少なかったんですが、やっぱり京都にありました。だから、徒然草など鎌倉時代のものを読みますと、京都の吉田兼好は、鎌倉武士というのはあれは政治と軍事をやっておるやつだというので、文化的にはやはり自分たちの誇りを持っております。そういうような形にする。そうしますと、やはり東京というものの文化経済に占める位置というのは世界的に揺るぎない存在になってくるだろうと思います。  あわせて、そうなりますと、政治的中心と東京という経済文化の中心がありますと、二点観測をいたしますと必ず三つ目はどこだという話が起こります。これはアメリカなんかのいいところでございまして、ニューヨークとワシントンがあると、じゃシカゴはどうだ、ロセンゼルスはどうだと、こういう情報発信多様性が生まれてまいりまして、そこに新しい文化の競合性が出てくるんですね。  日本も昭和の初めまではそういう状況がございました。ところが、昭和十六年ごろから情報発信機能東京一極に集中する。これは歴史的に見ますと検閲制度などと関係があって、文部省思想局なんというのがあったようでございますけれども、それと関係があるようですが、そういうことでだんだんと一極集中した結果、都市間競争、新しいアイデアの競争がだんだんなくなってまいりました。新しいアイデアの競争がないことが国家官僚の統制が非常にやりやすい、統制はやらないまでも自治体の方が自主規制しちゃって新しい案を出さないというような状況を生んでいる場合もあるんじゃないか。  そういうようなことを考えますと、やはりどんな首都機能をつくるかによってかなり変わるし、今度は、つくるのならもっと小さくて軽やかでしなやかなものをつくるべきじゃないか、そういう気がしております。また、国会の建物とか議場とかそういうことも非常に心理的影響があるものでございますから、そういうものももっと民主的といいますか、これからの時代にふさわしい形のものを研究すべきだと思っております。そうすると、日本全体にかなり心理的な違いが出てくる。  そういうことをずっと浸透させながら、まだ本当に移転するまでは十年以上あるわけですから、浸透させながら各官僚機構に移転のことを真剣に考えてもらうと、今と違ったような形のものを官僚機構自身も本当に目覚めて出してくるんじゃないか。今、行政改革といいましてもやはり皆さん守りの姿勢に入りますけれども、移転するとなりますと、例えばある省に人員で半分だけ移転してくれと言うと、その半分がだれであるかということ、どの機能であるかということを考えなきゃいけません。そうすると、もう全部の機能について再検討が官僚自身の手で行われますから、非常に改革に劇的な効果があると思います。
  22. 山崎順子

    ○山崎順子君 ありがとうございます。
  23. 鈴木政二

    ○鈴木政二君 きょう本当に堺屋先生楽しみにしておったんですけれども、さっき同僚の保坂先生からお話があった、私も先回、陛下の問題を質問させていただいて、きょう堺屋先生が初めていろんな委員会の中でこの陛下のお住まいのことを言明されたんですね。御意見をいただいたんです。  私は、非常に感じますのは、首都の問題ですね。首都というと、先ほどからいろんな議論がありますけれども、私ども日本人の感覚でいきますと、もちろん歴史的な、さっきの鎌倉時代のこともありますけれども、やはり陛下がお住まいのところが首都だという感覚が国民的に非常に私は根強いと思うんですね。その中で、先ほど遷都と首都機能移転とは違うと。  その意味でもう一度お聞かせ願いたいのは、この間、私も名古屋の出身なものですから、愛知万博でずっと外国を回りました。そうしますと、やはりイギリスでもどこでも皆さんそうですけれども、大体皇室の方が住んでいらっしゃるところを首都と外国の方は思っていらっしゃるし、そういう面では陛下とか皇室の方々の外交というのは非常に重たいわけでして、私は、この首都機能移転と遷都が違うというこの問題が国民的に非常に難しくさせているんだろうという気がいたします。  先ほど堺屋先生は、陛下は東京にお住まいをいただいて、国事行為があったら要するに国会移転したところへ行っていただくということも初めて私は聞きましたけれども、ここらは大変大きな、国民の皆さんが関心を持つ意味では非常になじみの深い話だと私は思っております。  私ども名古屋で、御存じのように三英傑が、信長が天下をとったときにこの地区じゃなしに安土桃山へ行ってしまった。堺屋先生に書いていただいた例のNHKの秀吉は大阪へ行ってしまった。そして家康、三河の出身の家康は今度東京へ行ってしまった。どこにも私どもは行かないわけであります。だから、その時代の中で、私は今見ておって、一つは大阪から東京まで、鎌倉から初めて東へ行ったわけなんですけれども、この間というのはどういう意味合いがあるのか。  もう一度繰り返しますけれども、じゃ日本海へ行ってはいけないのか、こういう論議というのは、今、関東が有力だとか、もう東京は放さないとかいろいろ言っておりますけれども、そういう面で私は首都と遷都の問題というのはもう一遍改めて、それからさっきの地域の話と、二点お聞かせ願いたいと思います。  それから、国連の首都というのをどう考えておられるか。
  24. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 首都につきましては、日本の憲法には首都の規定がないようであります。首都圏とか首都高速道路公団とか、首都という名前を使っているのはいっぱいあるんですが、首都は東京とは書いていないんですよ。ただ、国会東京に召集するというのがあるようでありますが、そういう条件であります。  外国の法律を調べてみますと、首都というのを書いているところもあります。例えばオランダですね、あれはハーグに全部行政機能があるんですが、アムステルダムが首都なんですね。それで王宮があるんです。おっしゃるとおり王宮があります。それで、女王さんがどこに住んでおられるかは私よくわかりませんが、アムステルダムに住んでおられることが多いんでしょうね、きっと。ハーグにもあります、女王さんのお住まいは。だから、どちらをお使いになるか、それはわかりません。  私は、陛下のお住まいがどこであるかというのは法律上決まっておらぬようでありますけれども、住民登録もなさっておられないようでありますが、やはり現在の状況が便利だから一番長く東京におられるんじゃないかという気がしているだけでありまして、よくわかりません。本当にどれだけのお仕事でどういうことになるのか、それはよくわかりません。  いずれにしても、そういうこともございまして、遷都という言葉ではないんじゃないか、首都機能移転というのは鎌倉型の移転じゃないかというような気がしています。そうであることの方が、これからの官僚と民間の関係、あるいは国と地方関係で軽やかな関係ができる。全部遷都してどんといくんだという形にすると、また第二の東京のような権力機構ができてしまうんじゃないか。そういう気もしますので、遷都という言葉はなるべく、なるべくじゃなしに絶対に避けたいと思っております。  地域につきましてはいろいろ議論百出でございまして、今、立候補しておられるところに北海道もございます。その利点欠点、これはいろいろございまして一概に言えません。私があえて言えることといいますと、やはり長い目で見て使いやすい場所、これは日本海側が使いやすいか、北海道が使いやすいか、沖縄が使いやすいか、それはよく調べなきゃわかりませんが、つくりやすいところより使いやすいところを選びたいということだけでございます。
  25. 鈴木政二

    ○鈴木政二君 ありがとうございました。
  26. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、「首都機能移転経済性」の中に「最大限人口六十万人・所要面積九千ヘクタール」、こう書いてありますけれども、九千ヘクタールはともかくとして、人口六十万人で間に合うのかどうかなという疑問をちょっと持っています。  ということは、私は埼玉県ですけれども、二日に東京へ通勤する人が百万人いるんです。それから、新幹線も高崎とか宇都宮というのは東京から百キロなんですね。新幹線ができた当初は高崎や宇都宮から乗る人は余りいなかった。それが最近はもう高崎、宇都宮からほぼ満員の状態で列車が、新幹線が運んでいるんです。それから、千葉県は新幹線はありませんけれども、そのかわり千葉へ行く道路が、これは時たま通ると慢性渋滞なんですね。だから、やはり新幹線のかわりに道路が込んでいるのかなとも思ったんです。それから、委員長の出身の神奈川県もこれまたやはり東京通勤者が昔から多いんですね。小田原を越えて御殿場あたりから通っている人が新幹線ができる前から結構いるんですよ。そうすると、これらの人たちをかき集めると六十万や百万では間に合わないんじゃないかなと、こんなような気もするんですけれどもね。  六十万という一つの首都所在地として考えられたということで、これでいいのかどうかなという気も少ししたものですから、その点と、一体どのようにして現在の多過ぎる東京通勤者をさばくことができるのかという点もあわせてお伺いしたいと思います。
  27. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) この六十万人は、先ほども申しましたように最大限でございまして、現在、首都機能にかかわる国会、中央官庁、裁判所、大公使館、それから関連の施設あるいは情報機関、報道機関等の勤務者を出しまして、それにサービス人口を加えて三倍にして家族をつけたというような数字で出したものでありますが、実際には全部が移転するわけではありませんし、全部移転すると、先ほど申しましたような国家機能をスリムにして財政、経済改革するということには役立たないものですから、もっと少なくなると思っております。大体、国会開設のときが十万人、それから十年ぐらいで二十万ないし三十万ということは、現在のキャンベラやオタワやボンの規模でありますが、それぐらいのものになるんじゃないかというふうに予想しております。  そういたしますと、わずかそれぐらいでは東京の過密防止にならぬじゃないかという声がもちろん出るわけでございますが、確かにそうでございまして、この移転によって東京が急にがらがらになって電車がすくというようなことはございません。一番重要な東京の問題はこの増加率であります。  御指摘のように、高崎からも三島からも通わなければいかぬというこの増加率をとめると都市計画は着実にできます。今まで余りに増加率が速かったものですから都市計画ができなかった。これをとめますと、移転しますと、東京は恐らく今後二十年ぐらい平準的な人口、減りもしなければふえもしないような状況になるんじゃないでしょうか。  その後は日本全体の人口が減少いたしますが、これはほかの問題、例えば移民の問題その他がありまして、今簡単に二十年も先のことは言えません。その二十年間ぐらいは東京一つの平準状態になって、そして空間があいてきて、それを埋めていくことによって安全にして効率的な都市がっくれる。そこへ新たな機能が、首都機能移転とあわせて規制緩和等を進めますと、文化機能等が来まして、本当に東京が二十一世紀の人類文明を代表するような町になれるのじゃないか。今の状況でございますと、東京に新たな機能が入るというのは大変負担の大きいことでございます。  外交大公使館なんかでも、最近は東京コストが高いこともございまして、ソウルは兼館するというような例も二、三出てきておりますが、そういうこともなくなるんじゃないか。そういう東京の増加をこの程度にとめるというのが非常に重要なことだと思うんです。  したがいまして、これからの日本の成熟社会に合わせた文化中心地というのがここにできて、しかも安全性も高まってくるというような気がしております。御指摘のように、急に通勤者が減るというほどの効果はないと思います。
  28. 片上公人

    ○片上公人君 平成会の片上でございます。いろいろお話を聞いて非常に参考になったわけでございますけれども、この首都機能移転とか遷都とかいう話はこれまでも何回も出ては消えていったことがありますよね。村田敬次郎先生初めずっと頑張っていますけれども、出ては消え、出ては消えするから、今回出たときもまた消えるだろうというような思いで見ておった人たちが非常に多かったと思うんですよ。  ところが、今度は割方いっておるなという話がありまして、それは、一つは先ほど先生がおっしゃったように、この間の閣議の話にしても、やっぱり本物だからそういうことを言ったのではないかということは私もなるほどと思うんですね。  ただ、いろんないい意見はあってもなかなか決まらぬ。けれども、日本人の性格として、本当は自分で決めなきゃいかぬのでしょうけれども、流れを見ますと、黒船みたいなやつが来ぬと動かぬ悪い癖がありますよね。だから、この首都機能移転についてもある種の黒船が来ぬとやらぬのかと。百年待って来なかったらどうするのか、日本がつぶれておるじゃこれは困るので、自分で考えてやらにゃいかぬときも来ておるんですけれども、そうであったら黒船を呼んでやらぬかというのもあるんじゃないかと。  だから、外圧というんですか、六大改革も、ビッグバンもそうですが、相当な世界の動きがあって重い腰を上げてやろうとしておるわけですね。同じようにこの移転問題も、ちょっといろんなところからの圧力がなかったら、思いがあっても動けないというところは私はあるんじゃないかということがあります。  例えば、変な話ですけれども、これを言うとまた緒方さんみたいに余計な費用を使うなと言われるかもしらぬけれども、例えばちゃちなことかもしらぬけれども、この首都機能移転についてはグランドデザインみたいなやつを世界から募集してみるとか、いろんなことをやって動きを加速させるようにしなかったら難しいんじゃないかと、こういう思いもあるんですが、その辺について。
  29. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 確かに、おっしゃるようになかなか決められないということがあると思うんですね。私事にわたってまことに恐縮でございますが、今、朝日新聞に「平成三十年」という小説を書いておりまして、きょうのところで、首都機能移転はぐずぐず言ってまだできていないということになっておるのでございますけれども、その可能性も確かにあるんですね。  さりとて黒船にということになりますと、今、外国が来るわけではございませんから、この問題に関しては、私は阪神大震災というのは一つの黒船だったんじゃないかという気がするんですね。あれで今までいろんな団体、自治体なんかが考えていた地震対策というのは全部間違いだった、根本的に違うということがはっきりしたわけですから、これが黒船とどれぐらい認識されるか。黒船は、ペリーは二回も三回も来ますけれども、地震は一回しか来ないから忘れちゃうんじゃないかという心配はあるのでございますけれども、本当にやっぱり日本人が自分で改革をしなきゃいけない。黒船やマッカーサーじゃなしに、自分で改革しなきゃいけない。これは織田信長、徳川家康の時代から余り成功していないのでございます。江戸時代にも享保の改革とか寛政の改革とかいろいろやりますが、全部統制強化です。官僚主権が強化します。これはやっちゃいけないんですね、今。  したがいまして、やはりここで日本人がみずから危機感を持って改革をしなきゃいけない。体制を変えたのは、緒方先生もおられますけれども、体制を変えるときに、レーニンも毛沢東も首都機能移転しておるんですね。だから、やっぱりそれは必要なんじゃないかという気がするんです。
  30. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 きょう、先生のお話を伺って、私たちもむしろ慎重な方の立場から伺った御意見に対してかなり論理的にお答えいただいたという感じがするんですけれども、三百年から四百年という過去のタイムスパンで日本歴史を振り返りますと、そういうときに、時代の急激な変化に伴って遷都をしたり、あるいはまた首都移転をした、こういうお話だったのでございますけれども、今の時代は確かに大きな変化はしておりますけれども、鶏と卵ではありませんが、その変化を促進させるためにやるというふうに先生のお話を承ったんですね。  そうすると、東京は、今の力は、さっき衰退と申しましたけれども、衰退の可能性と、こういう意味で言ったわけでございまして、今、勢いは何かとまったような感じで、ちょっと懸念しています。リセッションみたいな感じがするんですけれども、しかし問題は、人口におきましても、東京都が確認した数字で、予測でございますけれども、三十年後にはおおむね二〇%の人口が減るであろうと。今、約千二百万人近い人口が九百万を割るのではないかと、東京においても。そういう一つ数字もあるわけです。  そうなると、今この時期において、世界的な大都市のコンペティションをやっている中で東京がフロントランナーとして走ってきたと。しかし、そのフロントランナー役を変えろというような所作、あるいは基本的にダウンサイジングなんですね、東京の膨張をとめるわけですから、物理的に。それで、そのことが結果において日本の地軸は変えたと、しかし結果は日本の発展に寄与しなかったと、あるいは日本の発展がつまずいたというようなハイリスクというのはないものなんでしょうか、先生の御洞察の中で。そこのところ一点だけお尋ねしたい。
  31. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) 大変基本的で、大変いい質問をいただきました。  五月三十日に厚生省の社会保障・人口問題研究所が出しました、三十年後、二〇二五年の人口推計によりますと、東京人口は現在の千二百万人余から九百何万人、二百三十万入減少するという数字が出ております。それに比べまして神奈川県、埼玉県、千葉県、それから栃木県、茨城県等が非常に増加をいたしまして、この関東圏全体では、日本人口が四%、四百六十六万入減少するときに関東圏だけが人口が増加する、山梨県も増加するようでありますが、という数字が出ております。  このことは実は大変恐るべきことを予測しているんです。というのは、東京の都心の周辺に高齢化、少子化の大ドーナツができまして、その外側から通勤がふえるという極めて非効率な状況を予測しているんですね。今、瀬谷先生がおっしゃいましたように、遠くからどんどん通勤していて、真ん中の通勤時間一時間内外のところに現在、一九六〇年代、七〇年代、八〇年代に入居した人たちのところがそのまま高齢化して子供がいなくなって、それで東京とか川崎あたりの人口が減って、その外側に膨大な人口が出てきて、これは全体数がもっと多いんですね。これが長時間通勤をしなきゃいけないという、極めて非効率にして不経済な状態が予測されておるわけです。  したがって、東京が衰退するのではなしに、東京が不便になって、なおかつ東京に依存する人口はふえるという状況が想定されているわけです。これはやはり不幸なことでございまして、改めなきゃいけない。  だから、この通勤時間一時間圏内のニュータウンをオールドタウンにしないような政策をとる必要があると思うんですが、東京がどんどん発展するか衰退するかということは、今、東京がフロントランナーで走っているのは私は首都機能があるからではないと思います。やはり、東京経済であり、文化であり、学術であり、そういうものがあるから日本のフロントランナーになっているので、首都機能に依存していた、昔、明治、大正、昭和の初めぐらいまではそうでございましたけれども、今は東京の魅力というのは首都機能じゃないんじゃないかという気がするんです。  観光客の統計などを見ましても、昭和四十年代の末まで一番観光客の写真を撮るのが多かったのは皇居前と国会前だったのでありますが、今はディズニーランドであるとか東京ドームであるとか原宿ファッション街であるとかいう方に移転いたしました。  私は、この東京都心部を公務員宿舎や大公使館などを取り払って、そこを一つ都民の潤いと安全のために使う、もう一つは周辺の人を、遠い通勤の人がもっと近くから通えるようにする。そうすると、またこのニュータウンのリニューアルの行動にも使えるわけですね。そういうような入れかえをどんどんやっていく、その中で国際機能文化機能というものが東京に流入しやすくする、そういうインセンティブも掲げています。そうすると、新しい東京というものが生まれるんじゃないか。  今、ニューヨークでも上海でも香港でもフランクフルトでもそうなんですけれども、大体国際的な機能集中していくところというのは、首都機能がないか、極めて小さいところなんですね。イギリスはロンドンにありますが、猛烈な勢いで首都機能を分散いたしまして、今、環境庁がウェールズにあったりいろいろしておりますけれども、これも一つの方法でありますが、かなり不便もあると思います。それで、イギリスの政府というのはかなり小型にしてあそこにあるわけですが、それ以外は大体国際機能首都機能が分かれてきている。昔はパリのような首都機能のあるところに集まったのでございますが、最近は、例えばEUでもパリに行くかというと、やっぱりあそこはフランス首都機能があるから、もっと小国のブラッセルの方がいいとかストラスブールがいいとか、あるいは今度は銀行はフランクフルトがいいとか、避けておるわけですね。  そういう点で、東京首都機能をなくしても、これがフロントランナーでなくなる、あるいはダウンサイジングに直接つながるのではなくして、むしろ東京の効率化、多様化、そして文化国際機能を受け入れる条件をつくり出すだろうと思っています。  もちろん、それには間違いがないのか、リスクはないのかと言われると、これは確かにあります。そうならない可能性もあります。けれども、このままじり貧でいくのが利口だとは思わないんです。だから、やっぱりここで日本が新しく生まれ変われる国だ、これを若者にも、日本は変えられる国だ、変わる国だということを信じてもらう。この閉塞感を払いのけて、国民の士気を向上させる、新たにするという、そういう意味ではこれほど象徴的で効率的で、かつ経済的にもいい条件のものはないんじゃないか。  だから財政問題、これが今のままでございますと、大土木事業ができたというような意味に受け取られる可能性がありますから、慎重に検討し、かつ発表していかなければいけない、説得していかなければいけないと思いますが、このプロジェクトは国家百年の大計であると同時に今まさに必要なことであり、そしてそれは全日本のためにも東京のためにも、さらに大きく言いますと、人類の文明のためにも必要な条件だと私は考えております。
  32. 溝手顕正

    ○溝手顕正君 きょうは大変ありがとうございます。自民党の溝手でございます。  一つ、二つお伺いしたいんですが、まず一つは、今二十万人、三千ヘクタール、五兆円という数字が出ましたが、私はこれでも少し高いのではないかと、私個人はそう思っております。というのは、今回いろんな移転先を見に行っておりますが、野っ原か山の中かわかりませんが、人がとてもふだんでは住めないようなところを何とかしょうという発想で候補地が選ばれていると私は思っております。これは大変問題ではないか。例えば、何とか県何とか県を、どことは言いませんが、そこを開発するために首都を持ってこいと言っているようで、これは発想に私は問題があるなというように考えております。例えば、ベルリンが一兆六千億でできたというのは、多分ベルリンの、国土もあそこは広いですが、恐らく既存の都市基盤というのを随分利用して、建物も利用したりして少なく上げたんだろうと思うんですね。その辺を考えてみますと、我々も何か一つ対抗馬があって、先ほど言ったように、日本の征服者がみんないなくなった名古屋の周辺で、都市基盤を利用してひとつ、これは対抗馬とすれば対抗馬なんですけれども、対抗馬を立てて、その周辺をもっと小刻みに上手に活用していくというような思想、考え方で新しい首都機能をそこへ移すんだ、こういうような考え方をとるべきではないかというような気がしております。これがまず第一点。この点についてお考えを聞きたいということ。  それからもう一つは、ここで前に防衛の話をして笑われたんですが、これは首都ですからノドンがいつ飛んでくるかわかりませんし、これは大変な防衛、危機管理のために我々は装備というのは相当しなくちゃいかぬ、将来にわたって。そうすると、そういう観点からのコメントというのが全くないわけですね。なくてもいいのかもしれませんが、我が国の本当に中枢の防衛力がうまくカバーできるような、これはどういう言い方をしたらいいのかちょっと言葉が見つかりませんが、この辺についてどう考えたらいいんだろうか。最後に、もう一点気になっておりますことは、首都圏がちやほやされている理由は中央集権であって、東京にいれば銭になると。日本というのは先生のおっしゃり方によってもかなり計画経済社会主義経済的なところ、ということは東京で金になるということなんですね。それで、いろんな種族が集まって何とかやっている。だから、東京で金にならなければ東京に余り来なくなるんだろうというような気もするんです。  その点で鶏と卵、先ほどございましたが、地方分権とどうとかという問題がありますね。私はインパクトを与えるという意味では大変先生の御意見に賛成なんですが、やっぱり東京というのは今おいしい町だから放したくない、人が集まるんだというように考えておるんですが、この辺を切るためにはどうしたらいいんだろうか。その辺についてお考えがあれば教えていただきたいと思います。
  33. 堺屋太一

    参考人堺屋太一君) まず、第一点でございますが、首都機能所在地をつくるときに開発型というのと調整型というのと二つあるんですね。  開発型というのはブラジリアが典型でございまして、未開発な土地を開発するために開発拠点としてそれを置いたというところであります。調整型というのはワシントン、これは今でこそ東に偏っておりますが、独立十三州では北と南の真ん中でございました。あるいはキャンベラ、あれもメルボルンとシドニーが引っ張り合いをいたしまして、だんだんとその間の場所を詰めてきて、最後は双方の代表がサーベルで決闘して場所を決めたと、そういう写真も残っておりますから、恐らく本当だと思います。あるいはオタワですね、あれもケベックとオンタリオの間に決めた。そういうような調整型の首都と両方ございます。  今おっしゃいましたように、開発型にするか調整型にするかというのは考え方でございますが、両方あると思います。そのそれぞれについて私たちは審議会でも検討したいと考えておりまして、必ずしもどっちと思っているわけではございません。  それから都市機能、現にあります大都市機能あるいは大都市でないまでも中都市機能をもっと活用したらどうか。これも確かにございまして、その点についても調査、検討すべきだと思っております。特に、流通とかサービス機能は、近くに都市があった方が有利だということも事実でございます。そういうことを含めていろんなタイプが考えられますので、多様なものをこれから研究していきたいと考えています。  それから、防衛の問題でございますけれども、これをもっと広く言いますと危機管理なんですね。危機管理でいいますと、これは地震も爆弾も同じような条件でございまして、今どこがどうというようなことは言えません。日本じゅうどこへ行ってもやっぱり地震はあると思った方がいいんですね。神戸なんかも、ないと言われていたのが急に揺れたりしますから。  そうしますと、何が大事かといいますと、まず分散であります。例えば、大地震でもほかの人的な災害でも、全部が集中しているところをどかんとやられると大変困るんですね。だから、分散していることは安全性につながります。  特に、大災害が起こったときの第一次災害、例えば地震でいいますと、第一次災害というのはぐらっと揺れてどすんと落ちてそれで受ける被害、これは都市の規模に比例します。それによって発生じた火災、これは類焼がありますから都市の規模の二乗に比例する。第三次災害というのはライフラインが壊れることなんですが、これは規模が大きいほど修繕も難しいし距離も長いものですから、都市の規模の三乗に比例する。第四次災害というのは、一つ都市がつぶれたことによりまして経済文化が破壊されて停滞する、これは都市の規模の四乗に比例します。  だから、神戸に比べて、東京で地震が起こりますと、同じようなものが起こったとしますと、第一次災害が大体東京人口が十倍でございますから十倍、それで第二次災害が百倍、第三次災害が千倍、第四次災害に至っては一万倍になるというのが災害学者の説であるんですね。正しいかどうかはわかりませんが、大体そんな感じになろうかと思います。  そういう意味でいいますと、危機管理というのは、まず第一に分散することが一つ。それから規模が余り大きくならないことが一つ。それからすぐに救援体制がほかに置かれることが一つ。  日本の防衛でどこが安全かということは、日本列島みたいな重心の浅いところではほとんどないだろうと思うんですね。地震もそうですし、防衛もあそこが安全だというところはないだろうと思うんです。そういう意味でいいますと、分散とそれから規模をある程度に抑えるということの二つが大事だと。そういうものが片一方にありますと、東京や大阪が被害を受けたときにも救済活動が非常にしやすいわけでございます。  そういう意味で、この危機管理の上では首都機能移転は大きな役割を果たす。これを立川につくるとかいろんな条件がありますが、コンピュ一ターとか施設だけをつくっておきましても人間が行かないとそのノウハウがないことには動かないんですね。副首都という議論もありますが、これも常に人間がいて動かしていないと、そこに物が置いてある、あるいは予備の人員がいるだけでは動きません。だから、やっぱり機能としての分散が大事だろうと思います。  それから三番目に、中央集権だから東京がおいしいという話でございますが、これは確かにお金だけではなしに、東京の方が勲章がもらいやすいことまで含めましていろいろとあるようでございます。けれども、私たちはやっぱり中央集権というものをこの際、変えなきゃいけない。だから、東京文化経済が発達しているからいろいろと仕事が多くておいしいところがあるというのはこれは当然でございますが、中央集権がゆえにおいしいという部分はやっぱりやめていくべきなんでしょうね。  だから、首都機能移転したところが中央集権のゆえにおいしいというのではまずい。そのことは誘致をなさる、あるいは建設をする、選ばれるところにはやはり中央集権の町じゃないんだよということは重々理解していただく必要があると思います。  私の知る限り、審議会委員でも、また地方の誘致を言っておられる関係者でも、これが中央集権の大都市になると思っている人は今のところ存じておりません。皆さん、やはり小規模な、中には官庁、国会までオール木造にしてはというような分散型の考え方はかなり浸透しているんじゃないかと、現在のところ、そう認識しております。
  34. 溝手顕正

    ○溝手顕正君 ありがとうございました。
  35. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑はこれにて終了させていただきます。  この際、参考人一言お礼を申し上げます。堺屋参考人におかれましては、大変お忙しい中、当委員会のため貴重な御意見をお述べいただき、また質疑に対して御懇切にお答えをいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会