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参考人(
堺屋太一君)
堺屋太一でございます。
本日、
首都機能移転の
委員会にお呼びいただきましてありがとうございます。
まず、私は現在の
日本は大変大きな変革の時期を迎えていると思います。これは恐らく、
徳川幕府ができたとか、
明治維新とか、そういうものに匹敵するような大きな
変革期だと思っております。それは単に行財政の問題とかそういうことではなくして、
日本全体あるいは
世界全体が
近代工業社会から次の
社会、脱
工業化社会、私の言葉で言いますと
知価社会に移らねばならない、そういう大きな
変革期だと考えております。
では、そういうときに
日本を本当に
改革していくにはどうすればいいか、これが私
たち現代人に与えられた大きなテーマだろうと思います。ところで、
日本の歴史を見ますと、各
時代の区分がすべて
首都機能の
所在地によって呼ばれております。
奈良時代、
平安時代、
鎌倉時代、
室町時代、安土・
桃山時代、
江戸時代というわけです。恐らく現代は何百年か後にはまた
東京時代と呼ばれるようになるでしょう。
すべての
時代区分が
首都機能の
所在地で呼ばれている歴史を持つ国は
世界で我が国だけであります。このことは、
日本では
首都機能が
移転しなければ本質的な
改革はできなかったということを意味しています。
また、
首都機能が
移転すれば必ず
世の中が変わったことも意味しています。
平安時代は三百九十八年もあったわけでございますけれども、我々から見ると前期も後期も一つの
時代でございました。やはり、
平安京が変わらないと
時代は変わりませんでした。この間に随分乱暴な
改革を試みた人がたくさんいました。
例えば、平清盛などは猛烈な
改革をやったのでございますが、全く
効果がありませんでした。したがって、清盛も最後には
平安京にいたのではだめだと気がついて
福原遷都というのを考えたんですが、彼の寿命は尽きてしまいました。
ところが、その後で
源頼朝が出てきて鎌倉に
首都機能を移しますと、
時代は一遍に変わって、武士の
時代と言われる、
文化までことごとく変わったわけであります。同様のことは
鎌倉時代から
室町時代、室町から安土・桃山、そして
江戸時代と変わるときにもことごとく起こっていることであります。
明治維新のときも、どうしてあの
改革ができたかというと、十年間江戸から
首都機能が事実上京都に移ってしまいました。将軍様も京都に在住されまして、
会津藩も京都へ行った。したがって、幕末の
政治事件、
新選組であるとか何とか事件というのはたくさんありますが、ことごとく京都でございまして、江戸ではなかったんです。この十年間にまさに
改革が行われて、そして改めて
明治維新政府が
東京に天皇とともに遷都してきたという形になっておるわけです。もしあの十年間がなかったら、
明治維新の
改革もできなかったのではないかと思っております。
したがって、
時代を新しくするためには、
日本の歴史にかんがみ、
首都機能の
移転がなければならない。
首都機能の
移転なくして
抜本的改革が行われたことは
日本史上一度もなかったということであります。
第二番目には、
東京一極集中を是正することが今や急務になっております。
政治、
行政、
経済、
文化、あらゆる
機能が
東京に
集中しておりますので、
日本は
経済的に
コストが非常に高くなり、
文化、言論の一源化、源が一つになるという状況が生まれ、また
地域の個性が喪失してしまいました。このことは、
日本が
規格大量生産の
近代工業社会を目指しているときには有利な条件でございまして、この結果、
日本も大いに
電機産業や
自動車工業を発達させることができたのでありますが、
創造性と
多様性を発揮する上では大きなマイナスになってまいりました。
現実の生活でも、
東京圏の
地価高騰、
通勤距離の延長、
ごみ処理・
水供給の限界、
国際機能の流出などさまざまな問題が起こっております。
バブル景気の崩壊後、
土地価格が下がった、家賃が低下したと言われておりますけれども、これは
バブル以前に戻っただけでございまして、抜本的な
改革にはなっておりません。
また、一九九四年、九五年の二カ年、
東京圏、
東京都と埼玉、神奈川、千葉の一都三県の
社会的な
流入人口が
流出人口より少なかった、
社会減になった。これをもって
東京圏一極集中は終わったという
意見もございましたが、実際には筑波を初めとするその
外周部、あるいは
新幹線通勤などが非常にふえておりまして、そういう状況からしますと、
東京集中は明らかに進んでおります。
また、
日本経済の停滞、
人口の
少子化等が進む中で、
一極集中がさらに進むということは、五月三十日、つい最近でございますが、
厚生省社会保障・
人口問題研究所が発表いたしました二〇二〇年ないし二五年の
府県別人口構造を見ていただければ一目瞭然でございまして、各
地域は全部減少しております。沖縄県、これは
出生率が高いので
唯一例外でございますが、それ以外は九州も四国も中国も減少であり、
近畿地方などは百十五万人という大激減が予想されております。その中で、
東京圏、
関東圏だけが増加を続けるという傾向が出ておりまして、このままでいきますと、
少子化が進む中で
全国が非常に過疎化する、
東京圏だけがかなりの
過密化をするというような予測が出ておるわけでございます。したがいまして、やはり
一極集中問題というのは何らとまっていないと私は考えております。
第三番目は、
文化的多様性と
情報公平性が失われている、これを再現しなければ、実現しなければならないということです。
今日の
日本は、
東京一極集中の結果、
文化の創造と
情報発信がすべて
東京に
集中してまいりました。他の
地域では
文化創造活動が著しく衰えてまいりました。多様で個性的な
文化や
経済活動を起こすためには
都市間競争を引き起こさなければなりません。
このことは、
アメリカや
ドイツ、イタリアなどでは実現しておりますし、またEUにおいては非常に重視されておりまして、各
都市が競争しなければならない、そのことによって新しい
都市の力が生まれてくる、
都市産業が出てくると言われております。よく
日本では
イギリスや
フランスは
一極集中だと言われておりますが、
イギリスはかつて大
英帝国としてさまざまな
地域、カナダもオーストラリアもインドもそれぞれ
地域の
競争下にあって
経済、
文化が発達いたしました。
フランスはそれほどではないけれども、同じような形態をとっております。したがって、
一極集中になった途端に
経済、
文化の疲弊が見られ、今度EUによって各
地域間競争を再現しようとしているわけであります
ところが、
日本は
東京に
一極集中しておりますために
文化創造面の
都市間競争がございません。特に困ったことは、
行政に入る
ニュースが
東京の
ニュースに限られております。
アメリカでは各州の州都のあるところは州の最大の
都市である例が非常に少ない。大体そうではございません。それは、最大の
都市に置きますと、その
都市の
情報環境に州の役人が埋没をして公平な
行政ができない。ワシントンをつくったのもそういう条件でございましたけれども、
ニューヨーク州は
ニューヨーク市ではなしにオルバニーにある、カリフォルニア州はロサンゼルスやサンフランシスコじゃなしにサクラメントにある、これは全部の公平な
情報をとるためということであります。
現在、
日本では
東京に
情報が偏っておりまして、県境を越えた
広域情報をとりますと、
東京が一人当たり十六万円ぐらいの
情報発信をしているのに対して、何と三十県以上が自分の県の外に
情報発信をする手段がゼロであります。非常な格差がある。いわゆる一言の重みというのが大変違うわけです。
世論調査などをしますと必ず
東京の話ばかり出てくるものですから、何となく
東京世論が
全国を風靡する、そういうような
不公平性が生まれておりまして、これを是正するためにもやはり
行政地域は
情報的公平性を持ったところに移すべきではないかと考えております。
第四の問題は、よく言われることですが、
国家国民社会の安全であります。
東京一極集中していることは、
東京都民が非常に危険なだけではなしに、
日本の国家あるいは
国民経済にとっても非常に危険であります。特に、
国家行政機能と
情報発信機能が一極に
集中しておりますので、大災害が起こったときには
災害救援活動も非常に困難になるでしょう。
東京で
阪神大震災クラスの災害が発生いたしますと、
東京都民はもちろんのこと、
日本全体が深刻な打撃を受けまして、
世界の
経済にも大混乱を与えることが想像されます。そのとき、
首都機能が
東京にございますと、国が
救助活動をすることが非常に困難であります。
東京都あるいは各区の自治体の活動と同時に国の活動ができなくなる、これは大変重要な問題です。しかも、
東京には
情報発信機能が
集中しておりますので、
全国の
情報を受け入れるということができなくなってまいりますから、非常に難しい問題になります。
東京都でもいろいろと
災害防止をやっておられまして、私もその
東京都の
委員を務めたことがございますけれども、
東京を改造しようと思いますと、独裁的な権限がありましても五十年以上の歳月と百兆円以上の
費用がかかることは全部の
都市計画家が認めておるところであります。
首都機能の
移転は最も安価にして唯一現実的な
防災対策になるのではないかと考えております。
また、
阪神大震災の場合には職員の
通勤距離が大体十キロでございました。ところが、
国家公務員の場合は二十四キロぐらいあるわけです。そうすると、
交通機関がとまると出勤はほとんど事実上不可能でありまして、
防災関係の役人を便利な
公務員宿舎に集めるとかいろんなことを言われておりますが、現実的にはなかなか難しいと思います。そういう意味からも不可欠な
事業ではないかと思います。
第五番目に、国民の士気の向上であります。現在、
日本は非常な
閉塞感に襲われておりまして、特に
若者たちには、
世の中は変わらない、大きな夢は持てないという声が広まっています。
首都機能の
移転は、
日本は変わるんだ、変えられるんだという自信を国民に与えまして、
全国的に新たな発想と投資を生み、新しい産業、
文化を引き起こすことになるでしょう。
六番目には、
全国の
地域構造が変わるということです。
しばしば
首都機能の
移転があった
地域だけが繁栄するように言われておりますが、これは全くの間違いでございまして、
日本の現在の交通は
東京一極集中型にできておりますが、これを
東京を中継しないで地方が相互につながるような
ネットワーク型に変えていきますと、
全国の
流通コストが非常に安価になりまして
公共事業の
効果も高まると思います。
首都機能の
移転に伴って
全国の
交通通信ネットワークを構築すること、すべての
地域から
全国にアプローチを持つことは
首都機能移転によって非常に大きな
効果が上がると思います。したがって、
日本の経費が大変大きく節約できる、これが
首都機能移転の重要なポイントであります。
最後に、第七番目といたしまして、
首都機能移転をいたしますと
最新技術が集積されます。二十世紀は残念ながら
軍事技術が
世界をリードした
時代でありました。二十一世紀は恐らく
都市環境技術が
世界をリードするのではないでしょうか。
日本のような豊かな国が
首都機能の
所在地を建設するとなりますと、全
世界からハード、ソフトの
都市環境技術が集まってまいりまして、
世界に誇るような集積ができるだろうと思います。以上が
首都機能を
移転する
効果でございますが、次に、
首都機能を
移転することの
経済性についてお話ししたいと思います。
首都機能の
移転は、前回、一九九六年三月に終了いたしました
首都機能移転調査会におきまして、六十万人、九千ヘクタール、十四兆円という
数字が出ました。これがなぜかマスコミに
ひとり歩きをしております。私もこの
調査会の
委員でございましたので、この
数字を出すときにはこれは危険だから
ひとり歩きするぞと盛んに言って、
最大限というのを何度も書いていただいたのでございますが、案の定、
最大限というところは言われておりませんで、何となく
ひとり歩きをしております。
この試算の根拠は、
行政改革等が全く他のところで行われているのでこの
首都機能移転調査会では云々できない、したがって全部が
移転するという
最大限をとってみようということで出した
数字であります。したがいまして、非現実的な高い
数字が出ておるわけです。実際には、
行政組織の
改革あるいは
行政機能の
電子化によって大幅に縮小されますので、こんなことは絶対にあり得ません。少なくとも当面の
移転、
国会開設から十年
程度に必要なのは上記の三分の一と考えられておりまして、
人口で二十万人、用地で三千ヘクタールが
最大限であります。したがいまして、
所要資金も七兆円以下ということになるでしょう。
ちなみに申しますと、
ドイツが今ベルリンに
移転しておりますが、これは二百億マルク、一兆六千億円で始めましたが、行事が進行するに伴って予算は減少しております。時期が早まって確実に減少しておりまして、これ以下になりそうであります。
日本の場合も七兆円ぐらいと言いますが、その
支出の大半は税金ではございません。
民間支出になります。これをお手元の資料の四ページに分類しておりますが、
公的支出と
公的財産取得、これは
特別会計であります。それから
公益事業、これは電力とか水道とか後で料金の取れるものであります。それから
純粋民間投資、これは個人の住宅あるいは企業のホテルでありますとか売店でありますとか、そういうものでありますが、こういう四種類に大まかに分けることができます。そのそれぞれについてここに書いておりますが、その
費用を考えますと、公的な
支出、いわゆる税金で行わなきゃならないのは全体の大体三分の一
程度であろうと考えられております。
これを
移転後に得られる
東京都内の用地と置きかえれば、都民に安価で豊かな空間を与えることになりまして、
財政負担は決して大きくありません。都民の安全と
快適性を高めるためには
東京の
公的空間を広げることが必要でありますが、
首都機能の
移転の有無にかかわりなく
公的土地を取得するとなりますと大変な
費用がかかりますが、
移転によって
公務員宿舎、
外国公館等があきますので非常に効率的であろうかと思います。
実際の
首都機能の
移転の
費用を計算してみますと、
調査会答申は
最大限をとって十四兆円と申しましたけれども、その
数字でさえも
財政支出は五兆円以下、
特別会計・
公共企業投資等の
独立採算部分が五兆円、
純粋民間部分が四兆円という配分になろうかと、これは私の
個人的試算でございますが、考えております。これを十五年間ぐらいで
支出するとしますと、全
公共事業の〇・四%ないし〇・五%ぐらいであります。
ちなみに申しますと、過去十年間、一九八四年から九三年という期間でございますが、この期間に
支出されました
公共投資を見ますと、
全国では三百五十三兆円、
東京都だけで三十八兆八千億円、このうち国が十二兆二千億円、都が十八兆一千億円、区が八兆五千億円でございますが、その
程度の
支出が行われております。臨海副都心だけでも六兆一千億円の
支出が行われております。また、国の営繕で七兆七千億円が使われております。そういうことを考えますと、この
首都機能移転の
費用というのは営繕を振りかえるだけでも
可能性が出てくるというような数値でございます。さらに、
財政再建との関係について別に一枚紙をお配りしておりますが、目下の重要問題であります
財政再建との関係を見ていただきますと、
首都機能移転は
財政再建に一番貢献する
事業だろうと私は考えております。
首都機能移転のための
財政支出はまず五兆円以下でございまして、それが二〇一〇年までに
支出される分はまたその中でかなり下回ってまいります。したがって、
東京都の過去の十年間の
公共事業の十分の一以下、これからでございますとさらにそれよりも低い
数字になります。国の営繕の二分の一、これからでございますとさらにそれ以下になろうと思います。
それから、
東京の再
開発用地、
震災対策用地等を活用することで、現在計画されている対策よりもはるかに安価に
東京都民の安全と利便が確保されると思います。したがって、
首都機能移転の
特別会計のようなものを設けて
財政支出を極小に抑えることを研究すべきだ、具体的な制度を研究すべきだと思っております。
また、
首都機能を
移転いたしますれば、これによって
行政機構の
簡素化、いわゆる
リストラクチャリング、それから
行政手法の革新、
リエンジニアリングが一挙に進められまして、
行政費用は現行よりも大幅に縮小できると考えております。また、
首都機能移転は
経済的波及効果が極めて大きな
事業でございまして、他の
公共事業よりも
経済活性化に役立ち、
納税額を拡大する
効果は非常に大きいと思います。そういう意味でも、
財政再建が必要だからこそこの
事業を進める必要がある、もともとそういう発想でこれは平生から行われてきた
事業であります。
第三番目に、
首都機能移転調査の
重要性について一言述べておきたいと思います。
さきの
調査会におきまして、
行政改革についての議論がないままに
最大限で算定をいたしまして、立法、
行政、司法の三権の
最高機関を一括して
移転するというような結論を出しました。私もこの結論には反対ではございませんで、それが一番いいと思いますが、しかしいかなる問題も絶対ということはございません。だから、いいところもあれば悪いところもございますので、今後、
国会等移転審議会の方では、最終的に国権の
最高機関である国会でお決めいただくわけでございますが、その選択肢としていろんなものを出すべきではないか。
その一つは、立法、
行政、司法の三権を二ないし三の
地域に分割した場合にどうなるか、こういう
シミュレーションもやってみる必要があると思います。立法と
行政は密接でございまして分けるのは非効率でございますが、司法については分けられないか、あるいは
行政の中でも特許庁でありますとか
国土地理院でありますとかそういった部分は分けられないか、いろんなことが考えられるので、国土の均衡とあわせてそういう問題も考えてみるべきではないか。
ちなみに申しますと、
ドイツが
移転するときにはかなりいろんな分割を行っておりまして、国防省と
社会福祉庁はボンに残ることになりました。そして、
最高裁判所はカッセルというところに前からございまして、これは
移転いたしません。いろいろそういう分割が行われております。
日本もそういうことも考えられる、その場合にどうなるか、これを
コンピューターシミュレーションでやってみるべきではないかと思っております。第二番目には、
行政組織の
改革と
行政手法の
改革、つまり
リストラクチャリングと
リエンジニアリング、この二つをやはり大々的に考えてみるべきではないかと思っております。
現在、
審議会におきましては、
国家公務員を全員
移転する場合と二分の一の場合について検討することになっておりますが、さらに三分の一というようなケースも考えてみる必要があるんじゃないかと思っております。そして、特に
東京から離れることによって、
電子機器を利用した
行政手続、今の
稟議書を回すのは
太政官布告以来ほとんど変わっておりませんが、これを斬新なものに変えていく
リエンジニアリングを進めていくべきではないかと思っております。
三番目には、つくりやすさよりも使いやすさが重要でございます。
しばしば国の
事業というのは、あそこに
国有地があるからとか、ここはこういう施設が今あるからとかいうようなつくりやすさで事を決めてしまいます。これは非常に危険なことでございまして、
首都機能というのはやはり何年も何百年も使うものであります。したがって、一番使いやすいものをつくらなきゃいけない。これはややもすれば
建設優先になりまして、つくりやすい方、つくる方が主導する。
我々個人の家を建てるとき、あるいは企業で工場や本社を建てられるときには、まず
発注者が使いやすいもの、使いたいものを言うわけです。それを
建築家なり
施工業者なりがつくるわけですけれども、ややもすれば先に設計ができちゃうということなんです。それから、極めて短期的な政策によって、例えばある種の
土地指定、
農地何とかとかいうような指定があるからどうだ、去年あそこに花を植えたから
本社ビルは建てられないというようなことがよく言われるんですね。
これはやはり国家百年、それ以上の大計でございますから、使いやすい位置、使いやすい町をつくる、そのための
利便性の
シミュレーションと
経済性の
シミュレーションを大いにやるべきだと考えております。
四番目の問題といたしましては、できるだけ新
技術、新法規を研究するということです。
現在の
建築基準法とかそういうものをそのまま適用して新
都市をつくったのでは
余り意味がございません。したがって、
世界じゅうの新しい
技術あるいは新しいコミュニケーション、コミュニティーのつくり方、こういったものをやはり大いに研究したいと思っております。
そういった形で
日本に新しい
技術の蓄積ができますれば、
日本が将来、
世界じゅうに大きなバーゲニングパワーを持つことになるでしょう。これから
世界には、特に
発展途上国では
都市環境問題が重要になってまいりまして、その
技術がどれだけ蓄積されているかがその国の大きなバーゲニングパワーになるに違いありません。そういう意味でも、この際には従来の法規、制度を超えた新しいつくり方を考えていくべきだと思っております。それができますれば、これまた大変大きな
効果が、
世界の英知が
日本に集まる蓄積ができてくるということになると思います。
以上のような観点から、この際、十分な
調査研究費を投じまして、官民の研究機関を動員して、国民が納得できるような
シミュレーションを行いつつこの問題を解決していきたい、場所を決め、形を決めたいと思っています。
現在、
審議会では、場所の問題を、土木建設あるいは災害、地形等々と同時に
文化の問題からも詰めております。どのような
都市、どのような
首都機能を持った場所をつくれば
日本が本当に自由で民主的な国になるのか。この
東京をつくるときには、戦前は帝都と言われましてそれにふさわしいものをつくろうといたしました。戦後は
近代工業社会にふさわしい町をつくろうといたしました。そういうこともいろいろと関係いたしますし、また国と地方、官と民の関係をその
首都機能の中でどのように満たしていくか。これも
日本の歴史を見ますと、
鎌倉時代はどうだったか、
室町時代はどうだったか、
江戸時代はどうだったか、それぞれ
首都機能の
所在地と形態によって違っております。
世界的にもそうでありました。こういうこともあわせて研究していきたい。そして、できるだけ国民の納得が得られるようなものを国会にお出しして、国会で十分御研究いただいて決定していただければありがたいと思っています。今この機会にこれを実現しなければ、
日本は新しい
時代に、
世界の新しい潮流に立ちおくれてしまうんじゃないか。今いろんな
改革が行われておりますけれども、やはり官庁制度全体を変えないと、過去の例に見られますようになかなか動きません。ぜひこの際は、
首都機能の
移転という大きな刺激をもって
日本を新しい国にすべきであろうと思っております。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)