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参考人(
八十島義之助君)
八十島でございます。
本日は、私から
意見を述べさせていただく機会をおつくりいただきまして、どうもありがとうございました。
国会等移転調査会の
経過報告につきまして、まず私から御
報告させていただきたいと思います。
国会等移転調査会といたしましては、
平成五年四月に第一回の
調査会を開催いたしまして、それから設置されました二つの
部会を合わせまして大体四十回前後の
会合を重ねまして、
平成七年十二月七日に最終的な取りまとめの
審議をいたしまして、
調査会報告としてまとめたわけでございます。
本日、お手元に
要旨が配付されているかと思いますので、その
要旨につきまして
報告をさせていただきます。
最初の第一ページをごらんいただきますと、まず第一章「今なぜ
首都機能移転か」というところから始まっております。本文は相当分厚いものでございますが、きょうは
要旨に沿って
説明をさせていただきます。
なぜ
移転かということにつきまして二
項目挙げておりますが、
最初の方は、要点だけ申しますと、来るべき二十一世紀を展望しつつ、
国政全般の
改革を強力に推進する契機として
首都機能移転を行うんだと、こういうことを述べております。
それから、第二項といたしましては、現在の
首都東京が巨大化し、過密化し、これに伴って
交通渋滞その他さまざまな弊害、さらに
地震等の
災害に対する脆弱さ、それから
国際的政治活動への制約など、
首都としてさまざまな限界に直面したということをここに挙げております。
このことは、ちょっと余分につけ加えますと、
東京都市圏以外の
日本全土、
東京都市圏は
人口が大体三千万と言われておりますが、
あと九千万の
日本国民の方がやはりこの
首都東京の
肥大化の
影響を受けている、むしろマイナスの
影響を受けていると見られる。そういうこともこの際、
移転に関連して解決する、こういうことが言外に含まれていると見ていただきたいと思います。
それから次に、「
首都機能移転の
意義と
効果」であります。これは全部で五
項目挙げておりますが、これを少し簡単にかみ砕いて申しますと、一が
東京中心の
社会構造が変革されなくてはいけない。これは一極
集中の現在の
東京というのは大きく言えば
江戸時代の
初期からですが、近くで言えば
明治初期から、さらに近くから言えばこの五十年間、
日本がとにかく
外国に対して追いつけ追い越せということで富国強兵とか
殖産興業に専念してきた。そういうようなことで、
東京中心のいわば一種の
序列意識あるいは
国民全体の
東京に対する
志向、もちろんそんなことを考えない
国民もいるわけですが、
東京志向が
かなり強い。そういうものをこの際改めるというのが第一項であります。
それから、第二項が新しい
政治行政システムが確立されること。これはもちろん
首都機能移転調査会としての直接の
作業ではありませんでしたが、
規制緩和あるいは
地方分権など
国政全般の
改革を推進する
牽引力になるということであります。
三番目が新たな
経済発展が図られること。もちろん、今まで
日本がこ
こまで
経済発展をしてきたのは、
首都東京を
中心にした
日本の
国土構造によるとは言いますが、今
一つの転換期を迎えていると言ってもよろしいかと思います。
それで、この際、次の世代にまで及ぶ
経済の
波及効果をもたらす。さらに、
国際社会における貿易の不均衡の是正、こういったようないわば単なる国内的問題でなくて、国際的な
社会の一員としても貢献できるようにということで新たな
経済発展が図られることが
一つの
意義であると。もちろん、これは単に現下の
不況状況とかなんとかということでなくて、もっと長期的に見て
日本のため、世界のためにこの際、
経済発展が図られなくてはいけない、こういうことを言っております。
四番目は
国土構造の改編。これはやはり
首都移転をするということの
効果が
東京への
吸引力、これを
かなり減殺する。それで、
東京への
集中が
集中を呼ぶメカニズムを打破する、こういうような
意味がある。こういうことが
一つの
意義と
効果と言ってよろしいと思います。
五番目は
首都機能の
災害対応力が強化されること。
東京は実は、かつての統計から申しますと、何十年かに一回の割で大
地震が来ております。ですから、今でさえいつ来るかわからないというふうに考える方もおられるわけでありまして、そういうようなところにいるということは
東京のためにも
日本のためにもよくない。
災害の
可能性の少ない
場所へ
首都機能を
移転するというところに
意味がある。こういうようなところが
首都機能移転の
意義と
効果というふうに私
どもは見たわけでございます。
二ページに参りまして、第二章「
移転の
対象は何か」ということでございます。ここで五つの
項目を挙げておりますが、まず
最初は
移転をするにしてもできるだけ簡素で効率的な
中央政府を
移転することを
中心にする。もちろん、
政府が
移転すれば付随するいろいろなものが必要ですけれ
ども、とにかく簡素で効率的な
中央政府を
移転させるということが第一番であります。
それから、その
移転の
対象の二番、三番、四番は、この際やはり
国会、これは当然衆議院、参議院及びそれに関連する各組織、
機能。それから、その次は
行政機能でありますが、これは内閣及び
中枢性の高い
政策立案機能、それからもう
一つ忘れてならないのは
危機管理、これが
中枢的な
機能を発揮できるということが
行政機能として
移転させる大事なものである。それから、その次が
司法機能でありますが、これは当然
国会、
最高裁判所を
中心にして
移転をする、こういうことであります。
五番目には、分
都論ではないよということを申しております。分
都論でないということは、要するに
移転をするなら
中枢的な
機能を一括して
移転する、
日本のあちらこちらにばらばらに分けないで一括して
移転するという
意味で分
都論ではないと、こういうふうに書いたわけであります。
それから、第三章でございますが、新
首都は、新しい
首都機能はどんなことになるかといいますと、まず
イメージでございますが、これはとにかく
国会議事堂を
中心にした世界じゅうの大きな国の
地区のありさまを見ますと、アメリカ合衆国に行くと非常に立派な
国会議事堂周辺の設計ができておりますが、私
どもがここで
議論してお答えしたいのは、小ぢんまりとした、それで
日本の
進路をなおかつ象徴するような、そういうようなことをまず考えたいということであります。
それから二番目は、やはり
国会議事堂が当然
中心になるわけであります。これは
日本の
進路を象徴するという
意味が当然そこに盛り込まれなくてはいけませんけれ
ども、ただ単に豪壮であればいいというものではない。簡素で、しかし
日本の将来の
進路が象徴できるような
国会議事堂でありたいということを申しております。
その次に
中央官庁地区、これはもちろんこれから当然ですが、
環境を重視するという
意味で水とか緑が豊富な
都市景観も備えた
地区をつくるということであります。
それから四番目には、これからの
首都機能としてはやはり
モビリティーが大切である。これは
地区外とのかかわり、それから
地区内の
モビリティー、これは当然
両方が必要でありますけれ
ども、
公共交通機関あるいは
外国の元首が楽に到達できるような、少なくとも
専用機が使えるような
空港を持つということ、それからもちろんこの
地域内でも楽に移動ができるということも私
どもは念頭に置いております。つまり、片方では非常に
環境を重視したゆとり、あるいはゆったりとしつつ、しかし
首都機能としては効率的に仕事ができる、そういうようなことがまず
イメージとして取り上げられます。
さらに追加いたしますのは、次の三枚目に第五
項目と第六
項目がありまして、これは当然ながら、例えば高度の
情報通信設備は当然持たなくてはいけないということであります。
そういうような新
首都の規模と
都市形態でありますが、今申し上げましたような三権の
中枢をとにかく
中心にした
首都機能というものは、
都市的な
意味からいいますと
人口は六十万
程度、現在の
東京の千二百万から申しますと非常に少ないんですが、身軽な
中央政府を
中心にするということで六十万
程度、それから
面積は九千ヘクタール、これは
東京でいいますと
山手線の内側ぐらいに相当いたします。
それから、当然
国会を
中心にしておりますから、
国会都市というようなものを考えていいわけでありますが、これは今後のいろいろな
用地事情その他からいいまして、大きな
都市を一括してつくるというよりも幾らかずつ
分散をして、私
どもクラスター方式と言っておりましたが、
分散をした格好の
都市にする。
中心になるのはあくまでも
国会都市である。そういうような
国会を
中心にした
都市、その
周辺にさまざまな
首都としての
機能を持つ施設を持った
地域、
都市をつくっていく、こういうような形を考えております。つまり、大体
一つごとには
人口三万から十万ぐらいの小ぢんまりした
都市群をもって新
首都を構成する、こういうような
イメージを描いているわけであります。
それから、三ページの第四章でございますが、この「
首都機能移転はどのように進められるのか」。これはたとえ
人口六十万と申しましても、一どきに全部つくるというのは並大抵なことではございません。ですから、まず順番をつけて、
最初は国権の
最高機関である
国会をまず
移転させる。当然
国会に付随するいろいろな
機能は同時に移らなくてはいけませんけれ
ども、それを第一
段階にしまして、それから次々に新
首都として必要なものをつくっていく。それで、
国会を
中心にした
最初の
国会都市ともいうべきものは大体
人口十万人ぐらい、
面積が二千ヘクタールぐらい、こういうように考えております。
それから、これはどのくらいの期間でできるかということですが、着工してから大体十年で
国会が開催できる、こういうような
タイムスケジュールを持とう、こういうことを
報告しております。さらに、
かなり早い時期に
情報センタも一緒につくる。これは当然いろいろな
緊急事態に対応できるように、
情報センターというのは
国会が
移転すると同時ぐらいに
早目につくらなくてはいけない、こういうことを言っております。
四ページの(2)「新
首都づくりの
制度・
手法」でございますが、これは
日本でも今までいろいろな
都市づくりをやってまいりました。
東京の
周辺でも
筑波研究学園都市とか
多摩ニュータウンとかやっておりますけれ
ども、今度は
中央政府が
移転いたしますから思い切った
制度・
手法を導入しなくてはいけない。
それから、二番目の
項目といたしましては、公的な主体ができる限り広範な
土地を取得するということがいい
町づくりをする
前提に
なりますので、これを考えるということであります。
それから、その次には、当然その
経過において
土地の投機が起こったりすると非常に
作業がしにくいからこれを未然に防止する、そういうようなことについての
手法、法制を整備するということであります。
それから、
事業そのものも当然国が第一義的な責任を持つ、こういうことをしていかないといけないし、また、その次に書いてありますが、当然公正であり、透明なプロセスを持たなくてはいけないということであります。しかし、そうかといって国だけでやるというものでもありませんから、国と
地元の
地方公共団体との役割をうまく分担しまして、並行して協力してやっていくということでございます。
それから、四ページの
最後でございますが、これは国が
中心に
なりまして、当然
地元の
地方公共団体などに生じる負担については国が適切に支援をしていかなくてはいけない。つまり、その
財源確保ということについては
十分検討をしなくてはいけないということであります。
それから
最後ですが、ではどこに
移転するか、いつ
移転するかということ、それから
東京は一体その後どうするかということでありますが、五ページの第五章「新
首都はどこへ」ということは実は新
首都の
場所の
選定基準でございます。
調査会といたしましては、この
場所ということは一切申しませんで、どういう
方式で
選定するか、
選定をするときの
基準は何かというところまで提言をいたしました。五ページに九
項目ございます。
日本列島上の位置、これはどこからもなるべく便利であるということ。
それからもう
一つは、せっかく
首都機能を
移転して次の
時代に向く
首都をつくるからには、
東京に余り近いと結局今までの
東京に飲み込まれてしまう。ですから、ある
程度離す。しかし、そうかといってやたらと離すと、どうしても
東京に残存した
機能と連絡がとりにくいから余り遠くても困るというので六十キロから三百キロという数字を出しました。これはもちろん特例を全く認めないわけではありません。
それから、先ほ
ども申しましたように、国際的な
空港、これは当然そばにないとまずいわけであります。
それから四番目は
土地取得の
容易性、これも先ほど申しましたように、
土地を得るためには当然このことが
選定基準の中に入らなくてはいけない。
それから
地震災害などに対する
安全性、
日本は、正直言いまして全く
地震がないというような
場所はありませんが、それでも非常に
影響が大きいところと小さいところがあるわけですから、そういったような
安全性は当然考えなくちゃいけない。
それから同時に
自然災害、風、雨、
日本はそういうものに絶えず襲われますから、それに対する
安全性。
それから
地形、これも
外国の
首都でほとんど平たんなところにあります。
日本で全く平たんとは言えないとしても、余り急峻ではまずいから
地形も選ぶと。
それから水ですが、これは我々が生活するためには水がないと生きていかれませんから、水供給のこと。
それから
最後の九番目が既存
都市との距離でありますが、先ほ
ども東京の例を挙げましたが、
東京のみならず、ほかにも大きな
都市、いわば政令指定
都市ですが、政令
都市から近いとその
影響が大きいからそれは避けるようにすると、そういうことであります。
それから、第六ページの
移転先の
選定方法でありますが、これは現在、
審議会の方で着々その
方式に沿って進めていらっしゃいます。
それから、第六章のいつ
移転するかということですが、これも先ほど申しましたが、大体来世紀早々に着工して十年ぐらいに仕上げる。それまではいろいろ必要な準備
作業を行う、こういうことであります。
それから
最後に、第七章として、じゃ
東京はどうするんだというわけでありますが、簡単に申しますと、要するに、
東京は仮に
中央政府がいなくなってももう既に
経済あるいは文化施設に対しては非常に大きな蓄積がありますので、そういう点でこれからの
東京はさらに発展できるはずだと、また発展させなくてはいけないということでありますし、また
中央政府が移動することによって
移転跡地も都心部に相当出るわけでございます。二百十ヘクタールということを書いておりますが、これもうまく活用すればよろしい。こういうことで、
東京は決して
中央政府が
移転したことで衰退するというようなことは我々は期待もしておりませんし、当然それは防ぐ、発展をさせようということを書いているわけでございます。
そういうようなことで
調査会報告はまとめているわけでございますが、結局、要するにこれは今までの懇談会から
調査会に移りまして、我々としましては、これからいろいろ御
審議をいただくにしても、
調査会報告としては何とかいい形でよい
移転ができるようにということを骨組みにしまして
報告をまとめたわけでございます。
時間が参りましたので、まず以上の御
報告をいたします。