運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1997-05-08 第140回国会 参議院 国会等の移転に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月八日(木曜日)    午後三時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         千葉 景子君     理 事                 中曽根弘文君                 溝手 顕正君                 山崎 順子君                 国井 正幸君     委 員                 石渡 清元君                 太田 豊秋君                 鈴木 政二君                 保坂 三蔵君                 真島 一男君                 矢野 哲朗君                 片上 公人君                 続  訓弘君                 平田 健二君                 山本  保君                 瀬谷 英行君                 緒方 靖夫君                 江本 孟紀君    政府委員        国土庁大都市圏        整備課長        兼国会等移転審        議会事務局次長  五十嵐健之君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    参考人        帝京平成大学長 八十島義之助君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国会等移転に関する調査     ―――――――――――――
  2. 千葉景子

    委員長千葉景子君) ただいまから国会等移転に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する調査のため、本日、参考人として帝京平成大学長八十島義之助君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 国会等移転に関する調査を議題といたします。  国会等移転審議会審議状況について、政府から説明を聴取いたします。五十嵐国土庁大都市圏整備局長
  5. 五十嵐健之

    政府委員五十嵐健之君) 国会等移転審議会につきまして、最近の状況を御報告申し上げたいと存じます。  資料に基づきましてごらんいただきたいと存じます。  一ページ、「国会等移転問題に関する経緯」とございます。上の方はかねてから御説明申し上げているところでございまして、昨年の国会におきまして法律の一部改正が行われまして、移転審議会が昨年の暮れ、十二月十九日、第一回会合が開かれたところでございます。ほぼ月一回といったようなペース審議が進められているところでございます。そして、その下に調査部会が設置されておりまして、調査部会もやはり月一回というようなかなりペース審議が進められているところでございます。  メンバーが三ページでございます。国会の同意をいただきまして任命されました先生方、合計二十名でございます。二重丸が書いてあります平岩外四委員会長でございます。そして、有馬朗人理化学研究所理事長会長代理をお務めでございます。そして、各界の先生方で構成されております。  それから、後ほど申し上げますけれども調査部会というのが設置されました。それが四ページでございます。審議会委員、それから専門委員両方から構成されまして、これは要するにそれぞれの分野専門家の方々に、例えば石井威望先生でありますと情報関係でありますとか、専門委員の方に池淵先生が書いてありますが、防災研究所教授と書いてありますが、御専門は水問題でございます。それから地震関係。それから、環境問題の井手先生等々でございまして、それぞれの専門分野から先生方に御就任いただきましてこの部会が構成されているところでございます。  調査審議経過につきましては五ページでございます。今まで四回、それから調査部会につきましては二回開かれました。後ほど申し上げたいと存じます。  今後の段取りでございます。六ページに書いてございますように、今後の移転審議会の流れといたしましては、調査といたしましては第ーターム、第二ターム、第三タームというように書いてございます。  第ータームは、移転調査会報告書で九つの選定要件、このほかに二つ配慮しなければいけないという事項が記されているわけでありますが、こうしたことに基づきまして、全国からこの調査会報告内容なりました要件に該当するところ、どういったところが該当するのであるかというのを抽出していく、これが第ータームであります。  その結果、数は、例えば十でありますとか十五でありますとか、そういうように第ータームで該当するところが出てまいりますと、その十なり十五なりを今度は詳しく調査する、これが第二タームということになります。  そして、一番最後段階の第三タームで、それぞれの十なり十五なり地区についての情報が集積いたしますので、第三タームでそれを相互比較いたしまして、どこが該当するかという絞り込み作業が行われる、これが第三タームということになるわけでございます。  この六ページの表では、真ん中あたりに横に点線がございます。点線から上が審議会審議の今後の大まかな段取りでございます。それから、その下が調査部会の大まかな段取りであります。  審議会としましては、ポイントは移転先候補地選定ということになるわけでありますが、それ以外につきましても関連事項とありまして、首都機能移転国会等移転意義効果に関するいろんな項目でありますとか、関係機関からのヒアリング、それから海外事例等々の調査、こういったようなことが行われるわけであります。そして、そういう関連検討事項が行われながら、先ほどの候補地選定抽出作業が進められて、それが中ほどの幾つかのこまに書いてあるわけであります。  第ータームのⅠ-3というこまがあります。ここで調査対象地域抽出方法審議会が決める。そういたしますと、下の調査部会のところのⅠ-bというこまがありますが、この抽出方法の決定を受けて、これを具体に作業をするというのが調査部会で、調査対象地域抽出方法とその問題点検討いたします。  Ⅰ-cの方に行きますと、その一応の結論が出ます。そうすると、結論が出た段階でまた上の審議会のⅠ-6に上がっていきまして、調査対象地域の設定ということになります。これで審議会がオーケーということになりますと第ータームが終わる。そして第二タームに入っていく。こういうように審議会部会の往復が繰り返し行われることになります。全体的には第二タームでの作業かなりの時間を要するのではないかと思っております。  真ん中にⅡ-3でありますとかⅡ-5があります。公共団体ヒアリングあるいは現地調査と書いてありますが、これは審議会とそれから各専門先生方から構成されます調査部会が合同でヒアリングなりあるいは現地に入っていく、こういうことを想定したものでございます。  全体といたしましては、これは三月の段階国会等移転審議会会長代現有馬先生が会見で言っておられますのをそのまま引用いたしますと、今後、あと一年半ほどの審議時間が欲しいというようなことでございまして、来年の秋ぐらいを目指してこの審議会は動いていきたい、こういうことを申しておられます。最近の動きはそういったことでございます。  それからもう一つ、今の六ページのところで、Ⅰ-4というのがその下にありまして、昔の移転懇談会から平成四年に報告がなされておりますが、そこでは全体で十四兆円、これは繰り返し申し上げますが、六十万の新しい九千ヘクタールの都市をつくるときの、言ってみますと総投資額土地代を含みます総投資額といったことで十四兆円ということになっておるわけでありますけれども移転特別委員会での御質問にもありまして、これを見直すべきではないかという御指摘もあったわけでございます。  審議会でも、やはり大分時間がたっているというようなこともありますし、それから総投資額というのがなかなかわかりにくい。要は、民間がどのぐらい投資して、それから官側がどういった投資をするのか、そういったところも示すべきではないか。全体で四十年、五十年の大プロジェクトでございますので、当面の十年間ぐらいはどんな状況になるのか、こういったことを示すべきではないかというのが審議会の方で御議論なりまして、その結果、Ⅰ-4の費用のモデル的試算前提条件、これを整理して、これが調査部会の方におりまして、部会で現在検討が始められたといった状況でございます。  七ページ以降は、第一回から最近に至ります審議会議事要旨でございます。審議会ではできるだけ詳しい議事内容を御報告するという考え方になっておりますが、ただ個々の委員がどの発言をされたかというようなことになりますと、いろいろ各地元の方で一生懸命そういったところをねらってといいますか、いろんな運動が出てきたりいたしますので、固有名詞は挙げないで、御議論になった内容をできるだけ詳しく報告するということでこの議事要旨が作成されております。この議事要旨につきましては、インターネットで、国土庁のホームページにこの辺がこのまま載っておりますので、全国各地からそのまま引っこ抜きができるというような状態になっていることをあわせ御報告申し上げたいと存じます。  概要は以上でございます。よろしくお願いいたします。
  6. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 以上で説明の聴取は終わりました。  次に、国会等移転に関する件について参考人から御意見を承ることといたします。   この際、一言ごあいさつを申し上げます。  八十島参考人におかれましては、御多忙のところ当委員会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。  本日は、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人から二十分程度意見をお述べいただき、その後九十分程度委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御意見及び御答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、八十島参考人にお願いいたします。八十島参考人
  7. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 八十島でございます。  本日は、私から意見を述べさせていただく機会をおつくりいただきまして、どうもありがとうございました。国会等移転調査会経過報告につきまして、まず私から御報告させていただきたいと思います。  国会等移転調査会といたしましては、平成五年四月に第一回の調査会を開催いたしまして、それから設置されました二つの部会を合わせまして大体四十回前後の会合を重ねまして、平成七年十二月七日に最終的な取りまとめの審議をいたしまして、調査会報告としてまとめたわけでございます。  本日、お手元に要旨が配付されているかと思いますので、その要旨につきまして報告をさせていただきます。  最初の第一ページをごらんいただきますと、まず第一章「今なぜ首都機能移転か」というところから始まっております。本文は相当分厚いものでございますが、きょうは要旨に沿って説明をさせていただきます。  なぜ移転かということにつきまして二項目挙げておりますが、最初の方は、要点だけ申しますと、来るべき二十一世紀を展望しつつ、国政全般改革を強力に推進する契機として首都機能移転を行うんだと、こういうことを述べております。  それから、第二項といたしましては、現在の首都東京が巨大化し、過密化し、これに伴って交通渋滞その他さまざまな弊害、さらに地震等災害に対する脆弱さ、それから国際的政治活動への制約など、首都としてさまざまな限界に直面したということをここに挙げております。  このことは、ちょっと余分につけ加えますと、東京都市圏以外の日本全土東京都市圏人口が大体三千万と言われておりますが、あと九千万の日本国民の方がやはりこの首都東京肥大化影響を受けている、むしろマイナスの影響を受けていると見られる。そういうこともこの際、移転に関連して解決する、こういうことが言外に含まれていると見ていただきたいと思います。  それから次に、「首都機能移転意義効果」であります。これは全部で五項目挙げておりますが、これを少し簡単にかみ砕いて申しますと、一が東京中心社会構造が変革されなくてはいけない。これは一極集中の現在の東京というのは大きく言えば江戸時代初期からですが、近くで言えば明治初期から、さらに近くから言えばこの五十年間、日本がとにかく外国に対して追いつけ追い越せということで富国強兵とか殖産興業に専念してきた。そういうようなことで、東京中心のいわば一種の序列意識あるいは国民全体の東京に対する志向、もちろんそんなことを考えない国民もいるわけですが、東京志向かなり強い。そういうものをこの際改めるというのが第一項であります。  それから、第二項が新しい政治行政システムが確立されること。これはもちろん首都機能移転調査会としての直接の作業ではありませんでしたが、規制緩和あるいは地方分権など国政全般改革を推進する牽引力になるということであります。  三番目が新たな経済発展が図られること。もちろん、今まで日本がここま経済発展をしてきたのは、首都東京中心にした日本国土構造によるとは言いますが、今一つの転換期を迎えていると言ってもよろしいかと思います。  それで、この際、次の世代にまで及ぶ経済波及効果をもたらす。さらに、国際社会における貿易の不均衡の是正、こういったようないわば単なる国内的問題でなくて、国際的な社会の一員としても貢献できるようにということで新たな経済発展が図られることが一つ意義であると。もちろん、これは単に現下の不況状況とかなんとかということでなくて、もっと長期的に見て日本のため、世界のためにこの際、経済発展が図られなくてはいけない、こういうことを言っております。  四番目は国土構造の改編。これはやはり首都移転をするということの効果東京への吸引力、これをかなり減殺する。それで、東京への集中集中を呼ぶメカニズムを打破する、こういうような意味がある。こういうことが一つ意義効果と言ってよろしいと思います。  五番目は首都機能災害対応力が強化されること。東京は実は、かつての統計から申しますと、何十年かに一回の割で大地震が来ております。ですから、今でさえいつ来るかわからないというふうに考える方もおられるわけでありまして、そういうようなところにいるということは東京のためにも日本のためにもよくない。災害可能性の少ない場所首都機能移転するというところに意味がある。こういうようなところが首都機能移転意義効果というふうに私どもは見たわけでございます。  二ページに参りまして、第二章「移転対象は何か」ということでございます。ここで五つの項目を挙げておりますが、まず最初移転をするにしてもできるだけ簡素で効率的な中央政府移転することを中心にする。もちろん、政府移転すれば付随するいろいろなものが必要ですけれども、とにかく簡素で効率的な中央政府移転させるということが第一番であります。  それから、その移転対象の二番、三番、四番は、この際やはり国会、これは当然衆議院、参議院及びそれに関連する各組織、機能。それから、その次は行政機能でありますが、これは内閣及び中枢性の高い政策立案機能、それからもう一つ忘れてならないのは危機管理、これが中枢的な機能を発揮できるということが行政機能として移転させる大事なものである。それから、その次が司法機能でありますが、これは当然国会最高裁判所中心にして移転をする、こういうことであります。  五番目には、分都論ではないよということを申しております。分都論でないということは、要するに移転をするなら中枢的な機能を一括して移転する、日本のあちらこちらにばらばらに分けないで一括して移転するという意味で分都論ではないと、こういうふうに書いたわけであります。  それから、第三章でございますが、新首都は、新しい首都機能はどんなことになるかといいますと、まずイメージでございますが、これはとにかく国会議事堂中心にした世界じゅうの大きな国の地区のありさまを見ますと、アメリカ合衆国に行くと非常に立派な国会議事堂周辺の設計ができておりますが、私どもがここで議論してお答えしたいのは、小ぢんまりとした、それで日本進路をなおかつ象徴するような、そういうようなことをまず考えたいということであります。  それから二番目は、やはり国会議事堂が当然中心になるわけであります。これは日本進路を象徴するという意味が当然そこに盛り込まれなくてはいけませんけれども、ただ単に豪壮であればいいというものではない。簡素で、しかし日本の将来の進路が象徴できるような国会議事堂でありたいということを申しております。  その次に中央官庁地区、これはもちろんこれから当然ですが、環境を重視するという意味で水とか緑が豊富な都市景観も備えた地区をつくるということであります。  それから四番目には、これからの首都機能としてはやはりモビリティーが大切である。これは地区外とのかかわり、それから地区内のモビリティー、これは当然両方が必要でありますけれども公共交通機関あるいは外国の元首が楽に到達できるような、少なくとも専用機が使えるような空港を持つということ、それからもちろんこの地域内でも楽に移動ができるということも私どもは念頭に置いております。つまり、片方では非常に環境を重視したゆとり、あるいはゆったりとしつつ、しかし首都機能としては効率的に仕事ができる、そういうようなことがまずイメージとして取り上げられます。  さらに追加いたしますのは、次の三枚目に第五項目と第六項目がありまして、これは当然ながら、例えば高度の情報通信設備は当然持たなくてはいけないということであります。  そういうような新首都の規模と都市形態でありますが、今申し上げましたような三権の中枢をとにかく中心にした首都機能というものは、都市的な意味からいいますと人口は六十万程度、現在の東京の千二百万から申しますと非常に少ないんですが、身軽な中央政府中心にするということで六十万程度、それから面積は九千ヘクタール、これは東京でいいますと山手線の内側ぐらいに相当いたします。  それから、当然国会中心にしておりますから、国会都市というようなものを考えていいわけでありますが、これは今後のいろいろな用地事情その他からいいまして、大きな都市を一括してつくるというよりも幾らかずつ分散をして、私どもクラスター方式と言っておりましたが、分散をした格好の都市にする。中心になるのはあくまでも国会都市である。そういうような国会中心にした都市、その周辺にさまざまな首都としての機能を持つ施設を持った地域都市をつくっていく、こういうような形を考えております。つまり、大体一つごとには人口三万から十万ぐらいの小ぢんまりした都市群をもって新首都を構成する、こういうようなイメージを描いているわけであります。  それから、三ページの第四章でございますが、この「首都機能移転はどのように進められるのか」。これはたとえ人口六十万と申しましても、一どきに全部つくるというのは並大抵なことではございません。ですから、まず順番をつけて、最初は国権の最高機関である国会をまず移転させる。当然国会に付随するいろいろな機能は同時に移らなくてはいけませんけれども、それを第一段階にしまして、それから次々に新首都として必要なものをつくっていく。それで、国会中心にした最初国会都市ともいうべきものは大体人口十万人ぐらい、面積が二千ヘクタールぐらい、こういうように考えております。  それから、これはどのくらいの期間でできるかということですが、着工してから大体十年で国会が開催できる、こういうようなタイムスケジュールを持とう、こういうことを報告しております。さらに、かなり早い時期に情報センタも一緒につくる。これは当然いろいろな緊急事態に対応できるように、情報センターというのは国会移転すると同時ぐらいに早目につくらなくてはいけない、こういうことを言っております。  四ページの(2)「新首都づくり制度手法」でございますが、これは日本でも今までいろいろな都市づくりをやってまいりました。東京周辺でも筑波研究学園都市とか多摩ニュータウンとかやっておりますけれども、今度は中央政府移転いたしますから思い切った制度手法を導入しなくてはいけない。  それから、二番目の項目といたしましては、公的な主体ができる限り広範な土地を取得するということがいい町づくりをする前提なりますので、これを考えるということであります。  それから、その次には、当然その経過において土地の投機が起こったりすると非常に作業がしにくいからこれを未然に防止する、そういうようなことについての手法、法制を整備するということであります。  それから、事業そのものも当然国が第一義的な責任を持つ、こういうことをしていかないといけないし、また、その次に書いてありますが、当然公正であり、透明なプロセスを持たなくてはいけないということであります。しかし、そうかといって国だけでやるというものでもありませんから、国と地元地方公共団体との役割をうまく分担しまして、並行して協力してやっていくということでございます。  それから、四ページの最後でございますが、これは国が中心なりまして、当然地元地方公共団体などに生じる負担については国が適切に支援をしていかなくてはいけない。つまり、その財源確保ということについては十分検討をしなくてはいけないということであります。  それから最後ですが、ではどこに移転するか、いつ移転するかということ、それから東京は一体その後どうするかということでありますが、五ページの第五章「新首都はどこへ」ということは実は新首都場所選定基準でございます。  調査会といたしましては、この場所ということは一切申しませんで、どういう方式選定するか、選定をするときの基準は何かというところまで提言をいたしました。五ページに九項目ございます。  日本列島上の位置、これはどこからもなるべく便利であるということ。  それからもう一つは、せっかく首都機能移転して次の時代に向く首都をつくるからには、東京に余り近いと結局今までの東京に飲み込まれてしまう。ですから、ある程度離す。しかし、そうかといってやたらと離すと、どうしても東京に残存した機能と連絡がとりにくいから余り遠くても困るというので六十キロから三百キロという数字を出しました。これはもちろん特例を全く認めないわけではありません。  それから、先ほども申しましたように、国際的な空港、これは当然そばにないとまずいわけであります。  それから四番目は土地取得容易性、これも先ほど申しましたように、土地を得るためには当然このことが選定基準の中に入らなくてはいけない。  それから地震災害などに対する安全性日本は、正直言いまして全く地震がないというような場所はありませんが、それでも非常に影響が大きいところと小さいところがあるわけですから、そういったような安全性は当然考えなくちゃいけない。  それから同時に自然災害、風、雨、日本はそういうものに絶えず襲われますから、それに対する安全性。  それから地形、これも外国首都でほとんど平たんなところにあります。日本で全く平たんとは言えないとしても、余り急峻ではまずいから地形も選ぶと。  それから水ですが、これは我々が生活するためには水がないと生きていかれませんから、水供給のこと。  それから最後の九番目が既存都市との距離でありますが、先ほども東京の例を挙げましたが、東京のみならず、ほかにも大きな都市、いわば政令指定都市ですが、政令都市から近いとその影響が大きいからそれは避けるようにすると、そういうことであります。  それから、第六ページの移転先の選定方法でありますが、これは現在、審議会の方で着々その方式に沿って進めていらっしゃいます。  それから、第六章のいつ移転するかということですが、これも先ほど申しましたが、大体来世紀早々に着工して十年ぐらいに仕上げる。それまではいろいろ必要な準備作業を行う、こういうことであります。  それから最後に、第七章として、じゃ東京はどうするんだというわけでありますが、簡単に申しますと、要するに、東京は仮に中央政府がいなくなってももう既に経済あるいは文化施設に対しては非常に大きな蓄積がありますので、そういう点でこれからの東京はさらに発展できるはずだと、また発展させなくてはいけないということでありますし、また中央政府が移動することによって移転跡地も都心部に相当出るわけでございます。二百十ヘクタールということを書いておりますが、これもうまく活用すればよろしい。こういうことで、東京は決して中央政府移転したことで衰退するというようなことは我々は期待もしておりませんし、当然それは防ぐ、発展をさせようということを書いているわけでございます。  そういうようなことで調査会報告はまとめているわけでございますが、結局、要するにこれは今までの懇談会から調査会に移りまして、我々としましては、これからいろいろ御審議をいただくにしても、調査会報告としては何とかいい形でよい移転ができるようにということを骨組みにしまして報告をまとめたわけでございます。  時間が参りましたので、まず以上の御報告をいたします。
  8. 千葉景子

    委員長千葉景子君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者等を定めず、委員には懇談形式で自由に質疑応答を行っていただきたいと思います。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。また、委員の一回の発言時間は、おおむね三分程度でお願いしたいと思います。  なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  9. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 自民党の矢野でございます。  出身が栃木県でありますから、先生の御報告を積極的に受けとめさせていただきたいなと、こう思う一人でありますけれども首都機能移転意義効果、まさに阪神・淡路大震災の直後、こういった災害に対する対応力が東京はどうなのかなということも含め、なおかつ行革という一つの大きな方向性に一つの節目をつけるべくの今回の首都機能移転だと。この効果たるや相当我々も期待して、なおかつ国民広く首都機能移転意義並びにその関心度が高まるのかなと、こう思っていたところなんでありますけれども、残念ながらあと一つ国民の関心が高まらない現実、と同時に、この財政構造改革の一環として公共工事の抑制というふうな話が具体的な展開になってまいりました。  それで、一つは、共産党さんも特に反対しているのは、こんな公共工事予算をどこから持ってくるんだというのが一番共産党さんの反対の一つの原因だと思うのでありますけれども、その辺をもってして、なおかつ今でもやる意義があるのかなと、その辺でのひとつお考えを聞かせていただきたいと思うのでありますけれども
  10. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 結局、費用の問題が、この場合は大変問題かと思います。  それで、私ども調査会報告としては十四兆費用がかかるということを試算結果として報告しております。これはある意味では決して小さい数字ではございませんが、まずその試算そのものはいろいろ時世が変わってきましたのでもうちょっと丁寧にしていただかないといけません。つまり、その金額の中には減る要因もありますし、ふえる要因もございます。ですから、十四兆だけで、またあるいはきっかりそめ数字で移転をするというような性格ではありませんので、よくこれからまた練っていただかなくてはいけないかと思います。  ただし、十四兆という金額は、これは一朝にして、一年度に使うわけではありません。まず、国会都市をつくるのに十年見ているわけであります。もちろん、十年間初めから同じように金を使うわけではない。ちっとも計画段階では使わないし、ある時期には使うから、十で割ればいいという数字ではございませんけれども、しかし十四兆を一年で、単年度で使うわけではございません。  そうなりますと、日本の一般会計の公共事業費が大体十兆円ぐらい今のところは使っていると思いますが、それから比べまして、十四兆の中には民間投資もありますし、それほど大きな数字ではないと思っております。ただし、やはりそれだけのお金を首都移転に使いますから、その段階でも私は国民の合意が必要だと思っております。しかし、全く飛び抜けて大きな金額だとは私は思っておりません。ひとつこれはまた今後のいろいろ御検討、御批判をお願いしたいと思っております。
  11. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 先生にお尋ねする前に、ひとつ見解もあわせて聞きたいんですけれども国土庁が今計画しております新しい全総、全国総合開発計画、これが昨年の十二月に計画部会の取りまとめが発表になりまして新しい全総の骨子を世間に問うているわけですけれども、この中で、一つは、他の機関が検討している調査結果だとか検討項目を整合性を持たせてやると一方では言いながら、東京圏の機能のあり方について、今までの一次から四次までの全総では政治、経済、文化の中枢であるというような位置づけでこられたのが、今回はすっぽり政治の部分を脱落させているんですね。  これは、先生は国土庁じゃございませんけれども国土庁はかつて首都機能ではなくて首都移転だというようなパンフレットをつくって、橋本総理が回収しなさいと言ってパンフレットを回収させたことが一回あったんですね。こういうフライングというのを今度の全総の中でもう一度おやりになっているということに対して非常に遺憾だと思うんです。既に決まっているがごとくの既成事実化をして、東京圏の機能の中からもう既に政治の部分をカットしちゃっている。これはあくまでも行き過ぎじゃないか、フライングじゃないかと思うんですが、このあたりのことをなぜ伺ったかといいますと、事務局においでになるんです、国土庁が。そのもとで先生は調査会を展開されて、基本部会を展開されているわけですから、そこで御見解をいただければというのが一つ。  それから、私の本当のお尋ねは費用と効果の問題なんです。先生が今度の調査会の前に八十島懇談会をおつくりになって検討を開始されましたのが平成二年の一月、そしてバブル高揚のさなかに検討を進められて、平成四年の六月に取りまとめを行った、これが骨子になっているわけですね。しかし、バブルの最大に高揚された時代検討された首都機能移転の骨子がそのまま現在の調査会に持ってこられて検討の骨子になっているというのは、やっぱり今、矢野先生がおっしゃるとおり、矢野先生はこの首都移転に賛成の立場でお話しになったとは思いますけれども、TPOという立場でいえば、費用と効果の問題ではいささか問題があるんじゃないだろうか。  特に、最近の新聞論調などでも、これはけさの某紙ですけれども首都機能移転に関しましては、「「財政改革、逆行」 反対論依然強く」と、こういう見出しがもう既に躍っております。先生は十四兆についてはそう高いお金ではないとおっしゃいましたけれども、財政審、財政制度審議会あるいは財政構造改革会議などでは、既に公共投資の基本計画でやる、あるいは十六の長期計画を見直すと、そしてその中に明瞭に首都機能移転についてもと触れているんですね。  こういうことがありまして、医療費から始まってODA、防衛費まで聖域なしで出るを制すると。そして、長期計画については完全に抑え込むというような橋本五原則が出ているわけなんですが、そういう中で、先生からさっきお話がありました、首都として東京に限界を感じた、三千万人のひとり勝ちで、九千万人がマイナスの影響をもろに受けているということなんですが、この東京志向を改めるというお話は、移転の理由にはなっておりますけれども、どうも最近の内容を拝見いたしますと、要するに移転を契機として人心一新だとか、中央政府と地方の心理的な距離が等しくなって、等距離感が一億二千万の国民に行き渡り、一極集中などを避ける効果があるというような、先生の書物などを拝見いたしますとその理由が情緒的に拝見できるんです。ロジカルにどうも受け取れない。  そして、最後効果なんですが、これだけの九千万人がマイナスを受けているというのに、新しい場所国会都市移転しただけで本当に費用にかかるような最大のベネフィットというのが我々は獲得することができるのかという疑問がどうしてもついて回る。この費用と効果の問題を、もう少しロジカルに私にお話しいただきたいと思います。  最後に、国会等移転に関して、東京との比較考量というのがありますけれども、先生はこの部分は、一年半後には東京との比較考量はどういう手法をお考えになっているのか、個人的な見解でも結構ですから教えていただきたい。
  12. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 今、大体三項目お挙げになったと思います。  それで、最初は五全総と調査会報告とは一体どうなんだということでしたが、調査会報告書をまとめましたのが一昨年の十二月でございまして、そのころはまだ五全総がほとんど動き出していなかった。こういうようなことで、調査会影響は五全総にあったかもしれませんが、五全総の影響は私どもがっくりました調査会報告には入ってきておりませんので、今のその問題については今後のしかるべき場所での御審議をお願いしたいと思っております。  それから、費用対効果ですが、これは正直に言って非常に長丁場のプロジェクトですので、今そう簡単には私は出せないと思います。別に逃げるわけではありませんが、先ほど申しましたように、総費用十四兆と、これについては今、審議会の方でかなりもう煮詰める作業をしていらっしゃいますので、結局それを拝見せざるを得ないと思います。したがって、それが出てきませんと、一体九千万にどれだけのプラスがあるのかということも言えませんが、しかしこの問題は、少なくとも調査会段階ではある程度九千ヘクタールとか、それから十四兆とかという数字を出しましたけれども、それ以上細かい詰めばやっておりませんし、また必ずしも数字で出るものばかりとも限りませんので、私どもとしてはそれ以上深くは突っ込んでおりませんでした。しかし、これも今後の調査にお任せせざるを得ないと思います。  ただし、量的でなくて質的な点から申しますと、やはり中央政府は、分権が進んだとしても私は任務は相当大きいと思います、立法機関がとにかく移りますし。ですから、日本の国土全体がやはり皆同じように中央政府の動きに関心を持ち、また同じように発言が届くということはこれからの時代に大切かと思います。  それで、これはあるいは私の私的見解かもしれませんが、現在、東京中央政府の周りに東京都初め東京都市圏人口三千万と申しますが、どうしても三千万の方々の発言が中央政府に強く響くのじゃないか。また、中央政府も、やはりどうしても目の前に横たわる三千万の国民、あるいはそこにもたらされている経済力に目が早目に届いてしまう。九千万よりも三千万の方へ届いてしまう。これはやはり日本の国政あるいは国の発展のために私としては必ずしもいいことではなくて、ですから一億二千万人、これはまあ全国民とばかりは申しません。都市かもしれませんし、あるいは有識者かもしれませんが、一億二千万の都市地域あるいは人材が、皆さん等距離に同じように中央政府影響力を持ち、また中央政府も同じように  一億二千万の方々に影響力を持つ、そういう関係をまず立てるということが大事なのではないか。もうちょっと言い直しますと、やはりどうしても、私もその一人ですが、東京中央政府のそばにいる人間の声とか考えが中央政府に強く響くのじゃないかというのが今の問題かと思います。  そういう点で、一億二千万人から等距離にある政府というところが、これは量的には何とも申せませんけれども、質的には私はやっぱり一つの大事な要素ではないかと思っております。  それからもう一つ最後東京関係が反対あるいは批判、そういうことを御指摘だったと思いますが、私は東京都が反対しておられるという声をもうちょっとはっきり伺いたいと思っています。つまり、本当に皆さんが反対なのか、あるいは経済人が反対なのか、あるいは行政執行の方が中心で反対なのかがどうも私どもはよくわかりません。  それで、恐らく言えることは、東京都の方は皆さん東京都に長年住んでおられて東京都での生活になじんでおられて、なじんでおられるだけに欠陥がわかると、同時に非常に親しみも持っておられる。ですから、東京から反対の声が出るというのは、ある程度東京の生活を通して東京に愛着を持っておられる方々の発言じゃないかと思います。  しかし、これは私なんかも東京に愛着は持っております。ただ、愛着を持っていることと日本のため、東京のために中央政府移転させるということはまた別だと思いまして、その辺が、東京で反対される方々がどういう視点で反対されておられるのか、これは私としてはもうちょっと知りたいと思っております。それで、知った上でまた私なりに考えをまとめていきたい。今は何か愛着があるために反対しておられるという要素もどうも少しはあるんじゃないか、その辺を確かめたい、こういうふうに思っております。
  13. 平田健二

    ○平田健二君 私は、九つの選定基準、こういったことについてお尋ねをしていきたいと思います。  まず、日本列島上の位置というのがございますね。先生のお書きになられた論文を拝見させていただきました。先生の御主張の中で、物理的な距離はさることながら、何よりも心理的な距離ということに重点を置かれておるようでございます。ただ、心理的な距離といっても、例えば日本の北の端とかあるいは南の端とかいうことではなかなか心理的等距離にはならないというふうに私も考えておりますし、心理的等距離という観点からも、むしろ物理的な等距離、すなわち地理的には日本真ん中に近いところに首都があるということが重要ではないかと思うんですが、まず先生の御見解をお伺いしたい。  次に、土地取得容易性という問題ですが、私は今日まで長い議論を続けてきたこの首都機能移転がやはり実現しなきゃならぬとへ前の方の意見とちょっと違いますが、ならないと思うわけですね。ところが、建設予定地が決まったとしても、実際に建設をするとしたら土地の収用がままならない。例えば、成田空港の二の舞を踏んではならぬというふうに思うわけですね。そういった意味から、土地の収用の容易さ、確実さ、そうした観点から国有地の有無あるいは公有地の有無、こういったことも重要なポイントになると思うんですが、この辺について先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  14. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 初めは距離の問題、私さっき申しましたのはまさに心理的な意味での距離感に差をつけないようにした方がいいだろうということでございますが、選定基準というのはやはり地理的な問題をここで取り上げておりまして、第一項にありますこれはやはり地理的に余り遠くてはまずい、そうかといって余り東京に近くてもまずい、こういうような趣旨でここに書いてあるわけでございまして、ですからここに書いてありますのは、とにかく物理的といいますか、地理的な距離というふうにお考えいただいていいと思います。  そこで言わんとするところは、とにかく移転は一朝にしてできるわけじゃありませんで、国会移転するまで十年かかるし、それからあと個々の問題が移転するにはまたその先大分かかる。その間、東京には政府機能がある程度当然残っていると思います。いろいろ分権とかそういうことが進むにしても、東京から政府機能が一切なくなるということは考えられませんから、そうしますと東京との連絡ということもあります。ですから、余り遠いとまずいということ、それからもう一つは、やはり中央政府にはどこからでもそう不便なく来れるという地理的な意味でこの第一項は書いてある、こういうふうに御理解いただきたいと思います。  それから、土地取得は、私は実はこれから具体的に移転事業が始まるときには非常に大きな問題だと思っております。成田だけに限らず、どこでもこの問題はあるわけです。ですから、今度いよいよ着工に至るまでにその土地対策といいますか、どういう法制でこの土地問題を解決するかということは十分煮詰めていただきたい。  それで、これは場所が決まってからやろうというのでは多分私は遅いと思うんです。もう場所が決まれば、うっかりしているとすぐ土地投機が起こります。だから、場所が決まる直前ぐらいには、その土地に対してどういう手を打つかということは今後のしかるべき場所でお決めいただきたい、こういうふうに考えておりまして、これはやはりこれから移転先を決めるときの非常に大きな要素になると私は思っております。
  15. 太田豊秋

    ○太田豊秋君 先生のお話の中で、例えば三千万、九千万の論理というのは、私は地方が福島県なものですからよく理解できるものが多いのであります。  ということは、この首都機能移転の問題じゃなくて、例えば公共投資のいわゆる高速道路の問題にしても、地方にはもう公共投資はいいんだとか、あるいは道路なんかは、高速道路なんか延ばすことはないんだとか、こういった財界とかあるいは大都市圏の方々の中からそういう理論が出るたびに、私ども地方は、例えば道路特会で揮発油税とかそういったことを曲がりなりにも幾らかでも三十年近く納めてきていて、その一端が高速道路とかそういったところに使われてきているにもかかわらず、せっかく我々の地方にそういう道路が延びようとしてきたときにこういう話が期せずして大都市圏、東京都あたりから出てくると、そのたびに私どもは、何でこういうことを言うんだろう、もう少し地方というものを視野に置いた形で共存を考えていただければ我々ももっと東京というものに協力できるのになと、こんなことをよく思うのでありまして、先生の論理的な三千万、九千万というのは私は全く同感なんです。  ところで、先生、この六十万都市というのはある意味では、先ほど来、保坂先生からもお話が出ましたように、バブルの時期にこれがある程度考えられた都市構想人口だと思うんですね。しかし、今回は行政機構改革の中で、例えば中央省庁を半減しようとか半分にしようとか、そういった改革案が今検討されているときの中での六十万構想というのは、どういうふうに今後整合性を持たせて、大体これがまだこのまま六十万構想でいくのか、あるいはまた省庁のこういったことを視野に入れながらこういう首都機能移転の大きさというのは決まっていくのか、この辺の問題というのはどうなんでしょうか。
  16. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) そういったような問題が出てまいりますが、私ども調査会としてはここまでまとめたというわけで、ここから先にはまだいろいろ問題があるかと思いますが、なかなか煮詰めた格好ではまだ御報告できないという段階でこの報告ができましたので、ひとつその点御了承いただきたいと思います。
  17. 鈴木政二

    ○鈴木政二君 先生の御報告をいただいた五ページの国際的な空港の話で、「欧米主要各国の元首専用機等が発着可能な滑走路」云々と書いてありますけれども、十年、二十年後になりますと当然ながら地方分権がこれに合わせて進んでいくと思います。そうすると、中央政府が一番大事なところは、元首とかいろんな首脳会議が主な大きな要素を踏まえている。その中でちょっとわかりにくいのは、「都心から概ね四十分以内で」と、こう書いてあるんですけれども、まだ候補地は決まっていませんけれども、この「都心」というのがどこを指しているのか、それからなぜ「四十分以内」とここで明示をされているのか、ちょっとわかりにくい部分があります。  それからもう一点、一番最初のページに、「「新首都」とは、「国会並びに」」云々と書いてありまして、先輩の皆さん方は当然外国へ行って外交や何かいろいろお話をするときに、皇室の役割というのは非常に大きいわけであります。  私もきのうまで北アフリカだとか中近東へ行ってきまして、日本に対する皇室の皆さん方の外交というのが、そこの国において親善の仲とかいろんな文化の面で非常に大きなウエイトを占めるんですね。そうすると、ここの文章の中で、私はまだ一年八カ月しか国会へ来ておりませんけれども、どうもこの皇室の問題についてはタブー視みたいな感じで、触れてはいけないような雰囲気もあるわけであります。  現実に、憲法においても、陛下を初めたくさんの方々の皇室に関係する国事行為が非常に多いわけでありまして、ここらの文面が一つも入っていないというのは、先ほどから国会の中で国民的合意とかいろんな公共事業、財政再建、いろいろありますけれども、そういうものもあわせて、なぜ触れていないのか。  その二点をちょっと教えていただけますか。
  18. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 最初に、四十分という数字が何でここに出てきたかということかと思います。  これはちょっと私も正確には覚えておりませんが、やはり一応国際空港と都心というのは一時間ぐらいと。それで、一時間といっても、実際にアクセスする時間はそのうちの四十分ぐらい。つまり、空港に着いてからいろいろ手続がある。また、いろんな場所から、高速道路なら高速道路に乗るまでにまた時間がかかると。そうなりますと、正味四十分ぐらいだろうと、私はそういう議論だったように覚えております。  それで、今お話しの都心はどこかと。これはそんなに厳密に議論はいたしませんでした。ただし、やはり国会中心なりますし、それから国会から重要な官公庁はそんなに離れていない、あるいは離れていたとしても平均的に散らばっているであろうと。そういうことからいきますと、どこかということを決めるとなると、やはり国会だというふうに私は漠然と考えておりました。  それから、あとの問題についてはなかなか議論が煮詰められないので、正直言って調査会としては触れておりません。しかし、本当は大事な問題で、最終的にはその辺を決めていただかなくてはいけないと思います。ただし、やはり世界的には何種類かありまして、離れている場合もあるし、くっついている場合もあるというわけで、これが常道だというのはすぐには決められないんだろうとは思います。ですが、やはり我々の国としては大事な問題だという意識は非常に強く持っております。ただ、調査会報告段階ではそれには触れていなかった、こういうことでございます。
  19. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方です。  国会移転について八十島先生が座長として取りまとめられた構想は今述べられたことの内容になると思うんですけれども、それと現在進行中の中身ですね、それが実際問題としては随分違ってきていると思うんですね。  政経分離ということが相当強調されて、国会はもちろん立法ですね、ですから立法、行政、司法、これが移り、それから大使館も移り、政党の本部もみんな移るという、そういうことが述べられていたと思うんです。ところが、昨年六月の国会移転法の改正のときには、またその際の橋本総理の答弁等々を見ても、やっぱり国会とその活動に関連する行政、あるいは司法も中枢部分にうんと限定する、そういう方向が出されてきたと思うんですね。  ですから、そういうことでいくと、国会とともに移るのはうんと限定された政策立案部門ということになってくる。それから、この五月の行政改革会議の中間整理を見てもこれを追認する意見が基調になってきているんですね。  そうすると、最初に懇談会が描いてきた九千ヘクタール、六十万という今、先生がおっしゃられた新しい都市づくりという方向と、今進んでいる方向とは実際に随分差があると思います。例えば、首相官邸の今改築をしていますけれども、その問題でも、引っ越しの準備中にそういう大改造をすることがあるのかということに対して、国会では二つ官邸は必要だと。新しい首都と、それからここにも必要だという、そういう答弁が返ってくるわけですね。そうすると、随分これまでと違ってきてしまうなと思います。  そうすると、今の五点の意義という点、これは平成四年の衆参における参考人としての先生の説明を読ませていただいたんですけれども、その中では、多極分散型の新しい国土づくりということと、それから東京の過密解消ということと、災害対策、その三点を強調されていますけれども、こういうことになってきた場合、その三点ですね、この国会説明で言われた三点。それに沿って考えてみた場合に、その目的というのはそれぞれ果たされることになるのか、その論点に沿って御説明いただけたらと思いますが。
  20. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) ちょっと済みません、もう一回。
  21. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 先生が言われた三点なんですけれども、多極分散型の新しい国土構造をつくる、これが一つですね。それから二番目は東京の過密解消。それから三番目に災害対策。その三点だったわけですけれども、それに沿って今のような形で、規模をかなり縮小してきているというもとで、それぞれの目標というのは達成されることになるのかどうか。
  22. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 完全なお答えになるかどうかわかりませんが、懇談会報告の取りまとめが平成四年にできました。それから、調査会報告が七年に出ました。その間、やはり関係者の中の学習で、これはおわかりかと思いますが、懇談会取りまとめでは東京の過密解消だけに非常に焦点が絞られておりました。ですが、その後いろいろ調べてみますと、これは東京だけの問題ではなくて、むしろ全国の問題にもなるというふうになりましたし、中には人心一新などという言葉、これは有識者会議から出てきた言葉ですが、だんだんそういう経過を踏んで調査会報告になってきているというふうに見ております。ですから、当然調査会としては最後までこれはもう大事だと。  ただし、過密解消というのは同時にいろいろな要素がありまして、例えば東京の都民といいますか、東京都市圏国民の生活がこんなに過密になったためにうっかりするとひどいことになる。例えば交通問題、通勤問題、それから供給排除問題、上水は一体大丈夫なのか、ごみは大丈夫なのかという、これは非常に心配をしておりますが、それは最後まで残っております。  それからもう一つは、東京中央政府があるということで、こんな広いところにやはり公務員の方は相当ばらばらに住んでおられます。それで、緊急時にどう対応できるかといったような、だから東京の過密問題というのは市民生活での問題と、それから中央政府を維持するための問題と、私は二つがだんだんはっきりしてきたと思います。  それから、災害対策も初めから問題にはしておりましたが、ただこれは報告書からちょっと逸脱して私見かと思いますが、実は移転をすることで災害対策をとろうというのでは、それだけでは遅いので、実はあした何が起こるかわからないので、やるべきことは早速でもやらなくてはいけない。だけれども、それはそれとして、やっぱり首都機能移転をするときは、東京のような危ないところよりももっと安全なところに移すべきだと、こういうことでございます。  もし必要ならば追加いたします。
  23. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 一つだけ関連して。  先ほど先生は政経分離ということをおっしゃられましたけれども、結局、東京政府機能が残っている、官邸も残っている。片や、新しく移転したところにももちろん国会を初め行政の大事な部分があるという。そうすると、今の状況でいきますと、二つにそういうものが分かれてしまうということになって、以前に先生が取りまとめられた政経の分離ということがかなり強調されたそれとは相当違ったものになってきているということを痛感するんですけれども、その点いかがでしょうか。
  24. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 官邸の問題ですね。
  25. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 それも含めてです。
  26. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) これはやはりタイミングで、もしもぴたっと移転が決まった瞬間に建てかえというようなことになっていれば非常に話は簡単だと思います。しかし、やはりどうしても時間的にずれて直すものが先に来ちゃった、決定は後になったというときには、これはちょっとダブるようですが、二重になる可能性はあります。しかし、国会移転するというときはそれに必要なものはそちらに移るので、むしろ何か余ればそれはほかのことに効果的に転用するというふうに考えるよりほかにないのだろうと思います。  今、東京の場合、建物とかそういうものはみんな永久構造物じゃありません。最近の例で丸ビルなんかもまだ立派に使えると思ったらもう七十年で寿命が来ているわけです。そうなりますと、これから首都移転の時間経過から見ますと、東京の建物は相当いろいろなところで交代していかなくちゃいけないというようなことになってくるのだろうと思うんです。ですから、私は転用とかそういう活用法はかなりあるというふうに思っております。  それで、政経分離というのは、これは建物、がどこにあろうと何しようと、やっぱり国会移転したら、関係している  あるいは内閣もそうです。それは当然一緒に移らないと意味がないので、それが分かれていたら移転意味は私はもう非常に薄らいでしまいますと思っておりますから、政経分離と決めたらやはりその線でいっていただくと。  ただし、政経分離ということはやはりできるだけその線でいっていただかなくてはいけませんが、じゃ経済関係のものは全く新首都に行かないのかというと、私はそれもちょっとしゃくし定規だと思います。例えば、経済団体のリエゾンオフィスといいますか、交渉関係の部局は首都の方に行ってもいいし、それは経済団体に限らず、学問のアカデミックな問題も、やはりそういうものは一緒に国会などにくっついていくという意味で、政経分離ということは今回は我々の調査会報告としては相当重視はしておりますけれども、それは何もぴたっとしゃくし定規に切って分けるという格好ではないと思っております。
  27. 石渡清元

    ○石渡清元君 どうも参考人、御苦労さまでございます。  今までの首都機能移転意義あるいはイメージ選定基準等々、よくわかるわけでございますけれども、これはもう先生のおっしゃるとおりに五年や十年じゃなくて長丁場、百年、二百年を見据えた大事業だと思うんです。  そういう中で、総人口も六十万とか人口の問題が出ておりますけれども、現在の日本人口動態というのを私は深刻に考えている。ということは、一つは超高齢社会に今向かっております。アメリカの合計特殊出生率が二二ぐらいなんですけれども、それでさえアメリカではもうアメリカの繁栄は老人がみんな墓場へ持っていったと言われるぐらい高齢化負担というのは非常に大きい。反面、日本は今どんどん少子化現象、私は今、自民党の労働部会長を仰せつかっておるんですけれども、生産人口が減っているんですね。  そういうときに、これから五十年、百年に向かって日本の今の豊かさとかこういう状態が延長線に続いていくとは限らないわけでございまして、そういう中で国会移転候補地を見ますと、かなり人口の少ない、あるいはそういう自治体を見ても高齢化が進んだ地域が多いんです。ということは、若い人が少ないということは子供さんが生まれる可能性が非常に少ないところが多いわけでございます。  この少子化現象、いわゆる人口政策を何らかの形でとっていかないと、せっかくの首都機能移転自体が成功するかどうかはそういうキーポイントで分かれてくるんじゃないか。その辺のお考えやら、何かいい政策があったら、これは日本全体の問題ではありますけれども、非常にこれは大きいのではないかと思いまして、先生の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  28. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) ただいまの御質問、実は二つ、三つの要素があるかと思います。  最初に、首都移転は百年、二百年の問題だというお話がありました。現に、徳川幕府以来東京は四百年たっておりますし、一つ決まるとそのくらいのことを考えなくてはいけませんが、私どもの知恵ではとても百年、二百年先までは読み切れないので、そうかといって十年先に、あるいは二十年ぐらい先にすべてができるというのもちょっと無理だと思います。それこそ、筑波研究学園都市あるいは多摩ニュータウンかなりはっきり計画を立てても人口は計画どおりついてきておりませんから、そう十年や二十年ですべてが解決するとは言えませんけれども、百年、二百年のオーダーで考えるのはちょっと我々の知恵が及ばないと思っております。  それから、少子化、高齢化の問題ですが、これは私的には大分議論をしまして、確かにだんだん労働力も減るし、それから生産力も減る心配もある。このことは逆に言うと、首都機能移転はいいんだいいんだといって議論だけしていて先送りになってしまいますと非常にやりにくい要素がふえてくるから、だから余りぐずぐずしていてはいけないということが一つ。  それから、それとは別にして、どっちにしろ生産人口が減ってくるから全体の経済規模がどうなってくるかわからないという心配に対して首都機能移転なんかできるのかということですが、これは私は、ある程度相対的な問題で、非常に生産力も減る、経済力も減るからといってこういう基盤整備が一切できなくなるという世の中にはならないと思っております。ですから、その都度の経済規模に応じて、やはり首都機能移転に割り当てる部分というものは私はある程度は必ず残っていくと、こういうふうに思っていますので、楽観はできませんけれども、それに歩調を合わせていくということはできると思っております。  ですから、高齢化、少子化は問題としては大きいんですが、だからといって首都機能移転そのものの計画はもうやめたということにはならないと、私はそう思っております。
  29. 石渡清元

    ○石渡清元君 結局、今の少子傾向ですと、百年後に日本人口は約半分ぐらいになっちゃうんですね。生産人口はもう今減っているんです、ことしても。そういう状況ですので、やはり何らかの形での人口政策は必要ではないかという意味でお伺いしたわけでございます。
  30. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) わかりました。
  31. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、実は東京で生まれて東京で育ったんです。戦前の東京というのはよく知っているんですよ。我々が子供のころ、環状線の中でしたので、今の豊島区、それから文京区、こういうところを転々としてきました。  そのころの東京には住宅問題というのはなかったんです。貸し家を探して歩くというとどこかで見つけられる。ほどほどの貸し家を見つけてそこに入ると。私の父親なんかはそういうところに学生の下宿人と、自分は勤め人だったけれども、一軒借りて自炊をして暮らしてきた、こういう経験があるんです。  それで、そのころの物語としては、公務員であれ、あるいは会社員であれ、定年まで勤めて退職金でもって家が一軒建てられると、東京都内の話です。あるいは二軒ぐらい建てられると、こういう話もあるんです。だから、一軒は自分が住んで、一軒は貸し家にすると、こういうスタイルがつくられた。ところが、今はまるっきり全然違っちゃったわけですね。六畳間に夫婦が二人で住むにはよかったかもしれないけれども、それが五人になり六人になり七人になると六畳間では間に合わなくなる。今の東京は六畳間に十人ぐらいに.なっちゃっているんじゃないかという気がするんですね。だから、この過密状態はどうしても解消しなきゃいけない。  昔のようにというわけにはいかないかもしれないけれども、十四兆で済めば私は安いと思うんです。これから国会審議になる国鉄の長期債務なんというのはその倍ですよ。それに比べれば、十四兆でこんなすがすがしい新首都ができれば安いものだと私はそう思う。やはり、東京の過密状態というのは防災の面からいっても何からいってもどうしても解決しなきゃならぬだろう、こういう気がいたします。  その意味一つ心配なのは土地価格なんです。今までの例だと、これは戦後の住宅難がもたらしたものなんですけれども、どこかに何かができるということになると土地価格が暴騰するというのは当たり前だったんです。だけれども、新しい首都をつくろうということになれば、そういうやり方でもって自然のままに土地価格が上がるのを傍観するということは許されないと思う。したがって、法律的に土地価格を凍結するとか、あるいはこういう面では社会主義政策をとって、少なくとも土地というものは公のものである、こういうような考え方をここに確立するということになればこれらの問題も解決できるんじゃないか、こういう気がいたしますが、時間の関係もありますので、ちょっとその辺についてのお考えをお伺いしたい。
  32. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 私ごとですが、私も実は戦前からずっと東京に住んでおりまして、そういう意味では、今の先生の御発言を伺いまして、東京に相当愛着をお持ちでいらっしゃると思うんですが、私もそうなんですが、それは人口過密がやはり一つの原因だと思うんです。  それで、今六十万の新都市というと、六十万というのは東京人口からいったらほんのわずかなんですが、これが契機になって、中央政府が外に移ることによって日本じゅうのいろいろな遊ぶ、生産する何かの機会が東京以外の場所でも同じぐらいに効果がある、そういう場所がふえる。ふえれば何も東京にいなくてもいいということで、実際に金をかけて移転する部分と一度移転すれば自動的にそれについていく部分が出てくる。私は、そういうようなことで、今急に何人人口が減るからどうという計算はできませんが、入口が動けるような要因をつくるのが首都機能移転一つのねらいではないかと、こういうふうに思っておりまして、東京でなくても東京と同じように働ける、楽しめるという場所ができることを期待しているわけなのでございます。
  33. 国井正幸

    ○国井正幸君 民主党・新緑風会の国井でございます。  二点ほどお伺いしたいと思うんですが、四ページの(2)の「新首都づくり制度手法」というところの[1]なんですけれども、いわゆる「特別な公共性を持ったプロジェクトであることから、思い切った制度手法の導入が必要である。」ということなんですが、この「思い切った制度手法」というのは、どんなことをイメージとして描かれておるのかということが一つでございます。  もう一点は、やはりどこかに移るということになると、今、土地取得容易性の問題も出ているわけでございますが、日本列島のどこかの位置に、六十キロから三百キロ、そのとおりになるかどうかは別にして、そういうことをイメージして移転するということでありまして、そこには多かれ少なかれ住んでいる人がいるわけですね。全く住んでいる人がいないというところに移っていくはずがないのでありまして、何がしかの人が住んでいる。そういう意味では、国会等移転していくに当たって、もとから住んでいる人たちに受け入れられやすいような首都をつくるということが必要なんだろうというふうに思うんですね。  そういう意味からすると、どういうものをつくるかということのイメージというか、まあこれはそういうことを目的にされた調査会ですからやむを得ないというふうに思うんですが、やはり既存の先住者というんでしょうか、その方との融和をいかに保っていくか、こういうことも非常に土地取得容易性とも関連をしてくるのだろうというふうに思うんです。移転先から排除されるようなものであってはなかなか受け入れてもらえない、こういうふうなことにも通ずると思いますので、その辺のお考えがどうなのかなと。強いて言えば、三万人から十万人という、余り巨大なものをイメージしないのがそういうことにつながるのかなと想像しているんですが、先生の御見解を二点についてお伺いしたいと思います。
  34. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) きょうの要旨には触れておりますが、この本報告書の中にもちょっとありますが、結局、問題指摘だけは我々もしております。つまり、そういう地元の方の既得権に対して十分配慮しなくちゃいけないというところまでは書いてありますが、正直言ってそこから先の具体的なことは書いてありません。  ただ、例えば、きょう御説明した中で、公的な主体ができるだけ土地を取得しなくてはいけないということ、これも目的であって手段は書いていないんですが。それからもう一つは、既存の法制度も、例えば規制区域とかいろいろ打つべき手は打つと同時に、私はそれだけではどうも足りないような気がいたしまして、そういう点で、今度審議会の方でその辺の取得が円滑にいくようなこともぜひお考えいただきたいと。調査会としてはそこら辺までしか申し上げられないんですが、問題意識としては非常に強く持っております。
  35. 国井正幸

    ○国井正幸君 「思い切った制度手法」というのはどんなことをイメージされているか、その辺はいかがなんでしょうか。
  36. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) ちょっと、そこから先もまだほとんど具体的には調査会段階では検討しておりませんでした。
  37. 真島一男

    ○真島一男君 この首都機能移転問題は過密問題から端を発していると。もともと首都移転と言っていて、首都機能というふうにだんだん議論してくるとそういう格好になってきたと思うんです。  六十万という数字はどういう意味があるかと私も考えてみたんですけれども東京人口にとって六十万動いたところで過密問題の解決には影響はないと思います。しかし、受け入れる側の六十万というのは大きいんですね。鳥取県で六十万ですから、県を一つつくることになるんです。私は六十万という数字にはちょっと首をかしげます。首都機能移転というのはもっと小さいものだろうと思います。そして、説得力があるのは、災害があったときにどうするかねというような――国会だけを持っていくだけでもそれは意味があると思いますけれども、今十万で二千でも私は大きいと思います。その半分ぐらいでいいんじゃないかと思います、率直に言って。  そして、そこでつくられる町はどんな町かということはまだ語られたことはないですね。私は、  それは世界の町でいくとどこの町ぐらいなのかなというのをちょっとイメージした方がいいと思います。それから、世界の町のどこかをまねしなくたって私はいいと思うんです。低層の木造でエコシティーのような首都があっても私はおもしろいと思うんです。おもしろいというより大事なことだと思うんです。  私は、筑波に行って寂しいと思うのは、突然高層のアパートが林立して、そしてほったらかした土地がたくさんあるというのは、あの都市は結局美しいものにならないなと、こう思っているんですが、そういうことについて先生の御見解を聞きたいと思っております。
  38. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 六十万が多いか少ないかというようなことが最初のお話の中にあったと思いますが、これはなかなか算定根拠が難しいので、六十万を最初に算定しました段階では、余り行政改革などが進まないで、現在の首都機能、準首都機能、関連機能というものが東京じゃどのくらいあるかというのを算出いたしますと、大体六十万になるんです。  というのは、六十万という数字は、実は実際に就業をしておられる方はそのうち十万ぐらいですか、それで御家族を入れるとそれが三十万ぐらいになるし、その三十万人を保険とか教育とか、つまり病院とか、そういうものを入れると六十万、大体そんなところで、行政改革などは余り顧慮しないではじき出した数字なものですから、これはまだ減る要素もありますし、私は幾らかふえる要素もあるかなという気がするんです。  というのは、国際的な機能日本はどうもまだ少ないんじゃないかと。例えば、国連の機関などもスイスあたりは随分たくさん入っていますが、日本はほとんどない。国連大学が東京にありますし、そのほか若干あるくらいで、本当に日本が国際貢献をするときになったら、あるいはもっと入りやすい、来たくなるような国にしなくてはいけないのじゃないか。  これは何も新中央政府のそばとは限らないので、全国的でもいいんですが、やはり中央政府移転したら、そういう国際関連もかなり入りやすい町にしなくちゃいけないし、そうなると人口は、どちらかというと、ほんのわずかかもしれませんが、プラス要因になる。そんなわけで六十万というのは、私はまだこれから行政改革その他が進む段階においてかなり変わると思います。  また、東京から見て六十万ぐらい出てもしようがないんじゃないかということがありますが、私はやはりそれが出ること、中央政府東京から出ることになって、政経が分離することによって、東京にいなくてもいい企業その他は相当移動に対して自由度がふえますし、そういうことが要因になりまして千二百万の人口も相当動くのではないかというふうに見ております。  そんなわけで、六十万という数字が多いか少ないか、またどういう意味があるかということは、かなり流動的ですが、いろいろな考え方が出てくるというふうに見ております。  それから、六十万入ってくると大変だと、殊に受け入れ側にしてみると六十万も入ってくると大変だと、こういうようなことにもなりますし、それから現に、筑波などの様子を見ましても、地元出身の雇用もある程度あるようでございます。だから、六十万が東京からすぽっと抜けるというんじゃなくて、六十万のある部分は地元の方が就業されると、こういうようなことで、いろんな組み合わせがそこで出てくるかと思います。ですから、六十万というのは、私どもはもうそれでずっとやってきましたが、これは検討はぜひやっていただかなくちゃいけないと、そういうふうに思っております。
  39. 真島一男

    ○真島一男君 もう一つ、どんな都市イメージされているのか。
  40. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 都市についてはさっき申しましたような、中央政府があるけれども、決してそんな……
  41. 真島一男

    ○真島一男君 いえいえ、そういうことじゃなくて、都市の風景として。
  42. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 風景までは……。  ただ、私が外国を若干見た感じでは、割に新しい中央政府所在地では、オーストラリアのキャンベラあたりが非常に緑が多くて、それから水があって、いいと思います。  ただ、私として一つまだ脇に落ちないのは、二十世紀になってからできた都市はどうもまだ、さっきモビリティーという言葉を使いましたが、移動が本当にうまくでき切っているんだろうか。例えば、ブラジリアあたりでも道路だけはうんと広いのがありますし、自動車はやたら多い。だけれども、じゃ、その自動車を置いておく場所があったかというと、駐車問題で、要するにモータリゼーションを完全に消化できるような都市設計というのは、どうもまだ私は結論が出ていないような気がいたします。ですから、これから具体的な設計段階に入ったときには余り従来のものにとらわれないで、ひとつここでよく基本的に考え直して設計をしていただくという必要があるかと思っております。
  43. 真島一男

    ○真島一男君 その中の中心的なイメージというものをはっきりさせていくということは大事だと思いますね。ぜひやってください。ただこういう機能を持てばいいというんじゃなくて、どういう町にして、世界に誇れる町を日本でつくろうじゃないかとか、そういう志が大事だと思います。
  44. 山本保

    ○山本保君 二点お聞きしたいんです。  今、真島先生がおっしゃったことと実は同じようなことなんですが、一つは、最初に、権力者の交代や武力抗争の結果ではなく、まさに戦争や革命じゃなしに平和裏に首都機能移転を行うというすごいことが書かれておるわけですが、どういうイメージで、本当にそれは可能だというふうにお考えだったのかなという、ちょっとこれは質問というよりもどんなイメージを持っておられたのか。先ほどの社会主義的にやらなくちゃいかぬじゃないかとなればこれは革命ですし、本当にそんなことができるのかなという気がするんですが、ちょっと望洋とした質問で申しわけございません。今のお話の続きのようなつもりで。  もう一点は、これは二章の[5]ですが、こうなりますと、本当にいろんな機能、いろんな問題点があるとすれば、さまざまな手法が考えられると思うんですが、その中で分都論はとらないんだということをえらく明確に並べているわけですが、私、不勉強で、どういうものを分都と言っているのかということから始まって、一体なぜこれはとらないという結論になったのか、ここを教えていただきたい。
  45. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 一つは、移転のきっかけの話ですか。
  46. 山本保

    ○山本保君 そうですね。それでも結構でございます。イメージというか、または先例でも結構ですが、どんなことを首都を変えるときに可能であると。
  47. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 町の姿、あるいは移転をするときの…
  48. 山本保

    ○山本保君 移転ですね。
  49. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 確かにここに書いてありますように、新しい首都ができるときには、何というか引き金といいますか、そういうものがみんなありまして、例えば連邦政府ができたからとにかく首都をどこかに決めなくちゃいけないという引き金があって、それから探すと。だから、必ずどこかに探して移らなくちゃいけないというような行き方がかなりあったと思います。オーストラリアもそうですし、アメリカ合衆国も独立してから南北問題を解決するためにどこに場所を決めるかと、何かちょうど間に決めたとか、そんなようなことがあった。しかし、とにかく独立したんだから中央政府をちゃんと置かなくちゃいけないという引き金があった。日本は一体どうなんだと、こういう御指摘かと思うんです。  それで、これは確かにおっしゃるような意味での強い引き金は私はないと思います。早い話が東京で何とかなるんですから。だからといって移転ができないというのも何かおかしな話です。  先例を強いて求めますと、私はブラジルがそれに近かったような気がします。リオデジャネイロがそれまで首都でしたが、リオデジャネイロがもうとてもここには首都が置けないという状態ではなかったと思うんです。ただし、あそこは憲法か何かで中央高地に将来移転するというぐらいの文言はあったはずなんですが、その程度のことで移ったんです。ですから、絶対にもうリオデジャネイロにはいられないから移るということではなしに、しかし移転は何とかやったと。そういう例も外国にはありますし、外国に例がないことは日本ではできないというのも情けない話で、やはり本当に必要だとなれば、何とかそれはみんなで移る方向に足並みをそろえるということが必要だと思います。  それから分都の話です。  これは、やはり今まで有識者の中にも、国会議事堂はこの都市、それから行政の中心はこっちとかいうお話もありました。我々も調査会の中でそういう議論をしまして、ただなかなか論理的な決め手というほどまではいきませんでしたが、しかしとにかく三権がばらばらになっていては行政その他の能率がどう考えてもいいはずはないと。これから通信技術などはどんどん進むでしょうけれども、しかしとにかく同じ場所に集まろうということで、私どもは、つまり能率を大事にして同じ場所にみんな移転するならそこに行くと、そういうことで組み立てたわけです。
  50. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 先ほど真島先生の方から風景みたいな話がありましたけれども、それと関連して、きょうこういうことを聞いていいのかどうかわかりませんけれども移転をもし仮にするとしたらこの場所がいいというような、この日本の国土を見て先生のイメージされるところはございますかどうかということ。これは参考にさせていただきたいと思います。これを選定するときに、私はここにいて起立てきるかどうかとか、そのときのことはあると思いますけれども。  それから、先ほど先生のお話の中で、もし移転をするのであれば、技術的な問題はいろいろありますけれども、水と地震関係のお話がありましたが、水不足とかそういうことは非常に起きない場所であるということと、それから地震の場合は、もう既に地震予知は不可能であると。国土庁はどう言うか知りませんけれども、文部省関連で言ったら不可能だということでもうバンザイしておるわけですね。だから、どこにいても絶対地震がないという場所はないと思いますので、そういうことを踏まえて、しかしなおかつそうやって考えてみると場所が大体決まってくると思うんですね。そういう場所選定と、そして技術的な、先ほどの土地の収用の問題とか、そういったものなども最初からある程度並行して考えていかないと、私はこれはできないのじゃないかと思うんですね。そういうことで、ちょっと二点ほどお聞きしたいと思います。
  51. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 最初は風景などから場所はもう決まるんじゃないかと、こんな御指摘かな。
  52. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 いや、先生個人が大体ここだったらいいんじゃないかという場所がございましたら、参考にさせていただきたいと思います。
  53. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 調査会でもいろいろ議論しましたが、調査会段階では選定条件を九つ並べたところで打ち切りまして、どうもそこから先は本気でもっと調査をしないと私としては申せません。  ただし、これも抽象論と言えば抽象論ですが、首都だから大きければいいということになる必要は全くないと思うんです。それから、ワシントンなどに行きますと、国会議事堂がえらく高くそびえております。そびえればいいというものでもない。ただし、やはり何というか、周りより低いというのも困りますが、ほどほどに、何というか品格があって、決して大きければいいという印象が持たれるようなことでなくて、しかも日本の将来が何かそこでイメージできる、そういうような中心というと国会議事堂ですが、それがあって、それをうまく守り立てるような格好で都市設計ができればいいなと。ですから、そういう意味からいきますと、一つ言えることは、平べったくて広くさえあればいいというものではないと思います。多分、ワシントンの中央のモールと称するところとか、ブラジリアなんかはほとんど平べったいところにあります。そういうところだったら何でもできますけれども、キャンベラあたりはやはり山があったりしまして、それをうまく利用しておりまして、そういうようなことからいったら、単に平べったければいいというわけではないと思います。ただ、これは私の個人的な感じですが、どうもやはり内陸の都市は水が欲しい。ブラジリアもキャンベラも殊さらに川をせきとめて池をつくっているのではないかと思うんです。つまり、それだけやはり緑があれば水もあるというような風景が、私としては、抽象的ですが、いいかなと思っております。  それからもう一つ地震ですが、確かに日本じゅう地震の心配がないところはないと申しますが、それでもやはり非常に危険なところと、まあそれほどでもないところは多分専門の学者に伺えばあるんだろうと思うんですね。そういう意味からいえば、やはり危険度の少ないところを選べたら選ぶと。東京はとにかく一時は六、七十年には一回必ず大地震があると言われて、最近ちょっとないんですが、かつて私が聞きましたときのことを考えますと、東京はやはり危ないところの一つに数えられているんじゃないかと思います。ですから、その辺はひとつ可能性のゼロのところは日本にまずないにしても、比較的安全なところ、比較的危険なところというのは多分専門の学者の方はおわかりだと思いますから、それはやはりしんしゃくをして場所選定しなくてはいけない。それから、水は我々いつも心配なく使っているようですが、思い出してみますと、東京もやはり何年かに一回ぐらいは相当心配したときもあるので、例えばオリンピックのときもすごい水不足が予測されて、あのときはそれがあって、それ以降だと思いますが、利根川の水がどんどん東京で使えるようになったとか、それからそれ以降でも時々えらく心配させられたことがありますから、東京は少なくとも今の人口に対しては相対的に水は心配な場所だという感じがいたします。ところが、六十万ぐらいの人口でしたら、まあ今の東京が心配するのとは絶対量としてはかなり違ってくると思っております。
  54. 溝手顕正

    ○溝手顕正君 私は首都移転と防衛の問題を絡めてちょっと聞いてみたいんですが、地震とか災害とかそういう話は随分出てくるんですが、十四兆円の中には首都を防衛する基地とか装備とか、これについてどうお考えになっているんだろうか。というのは、北朝鮮からノドンが届く距離に大体入るというのはもう常識なわけですね。それで、新しい都市に国の中枢を全部持っていこうとしたら当然地下ごうも必要だろうし、近所に基地も私は要るだろうと思います。移転を歓迎している土地は、そこへ核ミサイルが飛んでくると、これは覚悟しなくちゃいかぬと思うんですよ。新しい日本土地と、日米安保に常に完全に守られていればいいですが、これは将来にわたってずっと日本首都になるわけですから、その防衛の話というのはどうも幾らめくっても全く出てこない。そうすると、十四兆円にプラスして防衛費がある、防衛費の話はどこで議論するんだと。これは勝手によその委員会でやるのか、移転委員会が関与できないのかと、こういう話だって当然出てくると思うんですね。私は、天災についてはいろいろ議論をされておりますが、そういう有事に際しての首都というのはどうあるべきかと、それに対してどう金をつけていくんだと。それをどうやって、ディスクロージャーという問題もありますから大変な議論が出てくるだろうと思うんですが、この辺についてどうお考えになっているのか、見解をお伺いしたいと思います。
  55. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 今の話は防衛ですね。この問題につきましては、実は場所を選ぶよりも町の設計の段階で、今、東京は、調査会の中で伺った話としては、国際的な要人が見えたり日本の要人が歩かれるときに非常に危機管理が難しいというお話は聞いております。  ただ、場所選定するときにその話は私は出ていなかったように覚えておりますので、どうしてもそれが問題だという前提に立てば、これからひとつお考えいただかざるを得ないと思うんですが。
  56. 溝手顕正

    ○溝手顕正君 これは極めて重要だと思うんですよ。ミサイルが飛んでくるんですよ、戦争になれば一番に飛んでくるところなんですよ。ですから、それを覚悟の上で誘致はおやりになるべきだということを申し上げたいし、それに対して十分装備ができた町を考えなくちゃいかぬ。今までの議論の中で全く出てきていない、こんなことで安心して移転できるのか、私は大変疑問に思っているんです。  しかも、それを心配しているのは、それは防衛でやってくださいよ、それじゃこの移転特は何のためにやっているのだと、こういう話になるわけです。我々は防衛問題、首都を守るための議論にこの委員会がどれだけかめるのか、その辺もやっぱり議論すべきじゃないかと、こう思っております。
  57. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 今申しましたように、今までの調査会議論ではどうもそこまではやらなかったというのが実情でございますが、とにかく都市設計の段階では、東京では非常にやりにくいから、これから設計するときはそういうことは当然念頭に入ってくると思います。ただ、場所選定段階からそこまでは調査会としては触れておりませんでした。
  58. 山崎順子

    ○山崎順子君 平成会の山崎です。国会等移転調査会基本部会とか先生の調査会等には、最初のころから例えば東京都の住民代表のような方はいらっしゃるんでしょうか、専門の方がたくさん入っていらっしゃいますけれども。  それはなぜお聞きするかと申しますと、東京ほか首都圏の自治体から慎重意見というか反対意見が随分出ておりますね。先ほど保坂委員の質問の中で、先生が、東京都の住民はやはり愛着があるからではないか、ほかにどういう反対理由があるかよくわからないと。そして、国家、日本全体のことを考えれば、やはり愛着からだけ反対してはいけないのじゃないかみたいなお話がありましたけれども、政治、経済、文化の中心であった東京という中から政治というものが分離されるということは東京にとっては大変大きなことですし、それは最初のうちから東京の人たちの意見が組み入れられるような調査会とかであった方がもしかしたら反対意見が出なかったのではないかという気もするのですね。  といいますのは、ここにも触れていますけれども、遷都というか国会移転がなされた後でも、「誇り高き経済首都として、輝き続けるであろう。」とか、これから再生していく絶好の機会ととらえるべきであるというふうに報告書などには書いてありますけれども、その後の具体的な東京の姿が余り見えないんですね。  そうしますと、先ほど石渡委員からも合計特殊出生率のお話がありましたけれども東京は都道府県の中で今一番低いわけです。政治、経済、文化、さまざまなところで享受できる部分もたくさんありますけれども、女性が例えば子供を育てながら働くというときにはこんなに住みにくい町はないわけですね。  ですから、移転した後、できればそういう住みやすい町になるならばいいけれども、その辺もただ経済集中しているだけではとても変わりそうもないとか、この跡地が一体どうなるんだろうか、少し書いてありますけれども、やはりその辺のことが見えない限りは愛着を持って東京に住んできた人たちの戸惑いや不安は解消できないし、せっかくの移転というもののコンセンサスが得られないのではないかという気がするんですが、そういったことは今までにかなり検討されてきたのでしょうか。  また、どういう具体的な東京のこれからの将来像を考えていらっしゃるのか、お聞かせ願えますでしょうか。
  59. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 今の御指摘は、住民としての意見が入っていないんじゃないかと……
  60. 山崎順子

    ○山崎順子君 そうです。学者の専門家だけではなくてですね。
  61. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) これはどうも調査会のメンバーを選ぶ立場ではなかったんですが、ただし調査会メンバーの中には家庭をお持ちの方とか、男性だけではなくて女性の方もいらっしゃいましたし、ですからそういう視点での御発言も当然入っていたと思います。  それから、幾らかアンケート調査なんかで出てきたような気もしております。これは私、ちょっと記憶違いだと申しわけないんですが、やはり本当に首都移転だと、自分が移転すると。そうすると、移転するときの手間暇というのが立場によってみんな違うんですね。自分は体だけ持っていけばいいという人もいるし、家財道具一切、子供の世話までしながら移転しなくちゃいけないという人もおられるから、私はアンケートなんかに幾らかそれが出てきたかと、ちょっと記憶ではそう思っております。  ただ、問題は、六十万人というのは東京都民の中のほんの一握りですので、そこのところをどういうふうに見るかというのもまた問題で、私、最初に申しましたが、東京関係の方の御発言で移転反対の御意見が多いのに対して、どういう方がどういう意見をお持ちかということをもうちょっと知りたい。同じ東京都民でもどういう方の御意見がどうなのかということを知りたいというのは実はそういう点もありまして、これはやはり調査会報告としては、今のような格好で当然いろんな立場の方がメンバーに入っておられますが、これ以上のことはちょっと今後の検討にまつより、あるいは御発言をまつより仕方がない。
  62. 山崎順子

    ○山崎順子君 並行して東京をどうしていくかという論議はなかったのかというような意味です。移転後の東京をどういうふうな姿にしていくのかという、そういう並行した論議はなかったのでしょうか。
  63. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 移転後に具体的にどういうイメージというのはなかなか描きにくいんですが、私どもはやはり調査会審議をしておりますときに、筑波とか多摩ニュータウンのことはかなり頭の中に入れながら議論はしておりました。例えば、よくこんな話がありまして、新都市はおよそ暮らしにくい、潤いもなければ非常に無機的な町しかできないという御意見があるんです。ただ、これはやはり時期が問題で、どうしてもある程度時期がたたないと……
  64. 山崎順子

    ○山崎順子君 先生、申しわけありません。私は新首都のことを言っているのではなくて、常に新しい町のことばかりが今まで取りざたされてきておりますけれども移転後の東京はどうなるかというその姿についての、将来像についての具体的議論は今まで並行して進められてこなかったのかということを聞いているわけです。それがないから私たちは、じゃその後どうなるんだろうということで、ただの愛着だけではなくて、やはり東京をよくしたいという思いがありますから、それと並行して移転の論議をすべきではなかったのかというふうに先ほどからお伺いしているんですが。
  65. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 東京については、さっきも申し上げた程度のことまでは議論をいたしましたが、一人一人の個人的な生活までは議論が入りませんでした。  ただ、東京はもうどうなってもいいといったようなことはだれも考えていなくて、東京東京なりにこれから持続的に発展してほしいと。ただ、それには経済的な蓄積とか文化施設的な蓄積とかありますから、それはそれだけの要件は大丈夫だろうというような程度までは議論しましたが、そこから先もっと細かくはやっておりませんでした。
  66. 続訓弘

    ○続訓弘君 今の山崎先生との関連ですけれども、私は、先生御案内のように都政にずっと長くかかわって、八十島先生自身もいろんな意味で都政にいろんな御示唆をいただいた。そんな関係もございますのであえて伺いますけれども、千二百万都民が首都移転にいろんな不安を感じていると。それはまさに今、山崎委員が指摘されたように、移転後の東京はどうなるんだろうかと。今まで我々は通勤地獄だとかあるいは狭い家に住まわされているとか、そういう自分たちの犠牲の上に日本経済を発展させたんだというのが都民感情だと思いますね。そういう状況の中で、今度はそれがとにかく悪だからよそに移転をするんだという、そういう率直な都民の意見があると思います。だから、そうではなくて、移転をすることによってこうなるんだよということをはっきりお示しいただければ東京都民は安心するんじゃなかろうかなと。そのことは第七章で書いてありますね。その第七章を具体的に都民の前に明らかにしていただくことによって、千二百万都民はとりあえずは安心するんじゃなかろうかと。  こういう意味で、最終報告段階でそういう今述べられたようなことを具体的に書いていただくことがいわば都民の協賛を得られると、こう思いますので、ぜひそのことをお願い申し上げたいと思います。
  67. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 私も都民の一人として同感なんですが、調査会報告としてはさっき申し上げた、非常に抽象的と言われても仕方がありませんが、抽象的なことまでは申しまして、東京都は東京都として発展させなくちゃいけないし、またそれの要件もそろっているというぐらいのところまでは触れまして、そこから先の細かいところまでは触れておりませんが、御意見、御趣旨は同感でございます。
  68. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 お疲れのところ、先生、本当に済みません。  財政負担の問題と国民世論の形成との関係についての質問なんですが、それは例えば財政審の特別部会の最終報告、これは去年の十二月ですけれども、その中には首都移転をわざわざ挙げて、国民合意の形成の状況等々、十分議論が行われる必要があるという指摘があります。あるいは読売新聞の社説には、今の厳しい財政状況のもとで「多額の資金をどのようにして手当てするのか。その明確な見通しがなければ、国民の理解と支持は得られないだろう。」、そういうことで、「首都移転の原点を忘れるな」という社説があるわけですね。  そうした中で、私は、先生の書かれたもの、また発言されたものを読ませていただきましたけれども、先生も国民合意が得られないという心配はあるという、そういうことも言われているわけです。その点で、やはり財政問題というのは非常に大きな問題で、現時点で先生の御判断といいますかお考え、それを財政負担の重さ、それから昨今の公共事業に対する厳しい批判とのかかわりでこの問題についてどうお考えになっているか、教えていただけたらと思うんですが。
  69. 八十島義之助

    参考人八十島義之助君) 国民合意の問題が一つと、財政問題かと思いますが、国民合意は、これからそういう立場におられる方、あるいは私らみたいな人間もそうですが、やはり機会を見てよくお話し合いをしていかなくちゃいかぬということが一つです。  それから財政の方は、さっきも申しましたように、単年度に十何兆使うなんということはまずとてもできないでしょうが、これは時間をかけてやることですからそれで何とか、これもやはり私は合意が必要だと思います。というのは、やはり国の予算から出る分がありますから、恐らくはかの部分がそのために幾らかへこんでしまうということがありますから、これは合意が必要だと思います。  そういう意味でも、合意をとりつつこの話を進めていくということが今の考えだと。それ以上具体的なところにはちょっとまだ入りません。
  70. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。
  71. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑はこれにて終了させていただきます。この際、参考人に一言お礼を申し上げます。八十島参考人におかれましては、大変お忙しい中、当委員会のため貴重な御意見をお述べいただき、また質疑に対して御丁寧にお答えいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)八十島参考人、どうぞ御退席いただいて結構でございます。
  72. 千葉景子

    委員長千葉景子君) この際、国会等移転に関する実情調査のため、先般実施いたしました視察について報告を聴取いたします。まず、岐阜県について報告をお願いいたします。国井正幸君。
  73. 国井正幸

    ○国井正幸君 去る二月二十五日、千葉委員長、太田委員、佐藤委員、鈴木委員、平田委員、緒方委員、そして私、国井の七名は、岐阜県において国会等移転に関する実情調査を行ってまいりました。  以下、その概要を御報告いたします。  岐阜県においては、県議会において平成四年に首都機能移転に関する意見書を決議するなど、早くから首都機能移転問題に対する取り組みが進められておりましたが、平成七年十二月の国会等移転調査会の最終報告の後、翌年一月に県議会の特別委員会、市町村関係団体等において県内の候補地を岐阜東濃地域とすることが決定されました。岐阜東濃地域は、県の南東部に位置し、多治見、土岐、瑞浪など七市と十六町五村から構成されており、JR中央本線、中央自動車道が地域を縦断しております。岐阜県側の説明によれば、山地が地域の二分の一以上を占めているが、標高や傾斜度の点では起伏が少なくなだらかなところが多い地形であるとのことであります。今回の調査では、土岐市、瑞浪市を中心にヘリコプターにより上空から地域状況を視察してまいりました。全体としては緑豊かな山地、丘陵が連なっており、その間に中小市街地が存在し、特にゴルフ場が非常に多く目についたというのが印象であります。なお、東濃地域にはゴルフ場が工事中を含め六十カ所あり、地域面積の約三%を占めているとのことであります。  また、県の説明によれば、本地域国会等移転調査会選定基準項目すべてに合致しており、特に日本人口重心地に近いことから、全国からのアクセスの面で他の地域に比較して優位であると自負しているとのことであります。  次に、概況説明会における岐阜県知事ほか関係者の方々の説明及び視察委員との意見交換の概要について申し上げます。  梶原岐阜県知事からは、第一に、首都機能移転に対する基本的考え方について、一極集中により東京への公共投資は非常に効率が悪い中で、その首都機能維持のために莫大な国費が費やされており、首都機能移転はそのむだをなくし、行財政改革を推進するために必要不可欠なものである。第二に、新しい首都に期待される役割として、三つの貢献、すなわち地球への貢献、人類への貢献、地域への貢献を考えている。このため、我々は「エコメディアンティ構想」を進めている。これは、自然環境と共生した新たな情報社会を推進するため、本県と三重県、滋賀県、愛知県、名古屋市が連携してネットワーク都市の構築を目指すものであり、三つの貢献の一翼を担うものと位置づけている。  第三に、岐阜東濃地域首都機能移転することは、多くの国民が往来するコストという国民経済的な視点から見て最も合理的であり、リニア中央新幹線が開通すれば東京、大阪へ三十分圏になる。新しい全総計画で提起されるであろう四つの国土軸が交わるいわば日本中央交流圏として、人、物、情報、文化の交流拠点の役割も果たすことができる等々、さまざまな意義があるとのことであります。次いで、岐阜県議会議長及び首都機能移転対策特別委員会委員長、多治見市長、瑞浪市長、土岐市長、首都機能移転推進に関する組織の代表者並びに地元経済界の代表者の方々から、首都機能移転に対するそれぞれの期待、これまでの取り組み状況等についての発言がありました。  次に、視察委員関係者の方々との間で意見交換が行われましたが、その主な内容を御紹介いたします。  岐阜東濃地域国会等が現実に移転する場合、知事として新都市の具体的なイメージをどのように描いているかとの質問に対しては、森林をできるだけ自然のまま残し、その中に自然共生型建物を分散配置していく。また、まとまった主要施設についてはゴルフ場を活用して整備していきたい旨、移転先用地の確保については法制上の措置も必要と考えるが、見通しはどうかとの質問に対しては、公有地が多く、例えば土岐市の公有地だけでも三千ヘクタールある。また、ゴルフ場経営者側から全面的な協力を得られることになっており、大きな問題は生じないと考えている旨、国会等の誘致に当たって地元として国に要望することはあるかとの質問に対しては、国家公務員が地域社会の一員として生活しながら国政を考えていけるようにするため、公務員宿舎は既存の都市の中に分散配置すべきである旨、それぞれ梶原知事からの発言がありました。  このほか、リニア中央新幹線の実現可能性候補地内の土地の価格、中部圏への首都機能誘致に向けての東海ブロックの連携体制等について質疑応答が行われました。以上が調査の概要でありますが、調査に御協力いただいた方々に厚く御礼申し上げ、報告を終わります。
  74. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 次に、茨城県について報告をお願いいたします。山崎順子君。
  75. 山崎順子

    ○山崎順子君 去る四月七日、千葉委員長、国井理事、石渡委員、佐藤委員、片上委員、赤桐委員、瀬谷委員、緒方委員、そして私、山崎の九名は、茨城県において国会移転に関する実情調査を行ってまいりました。  以下、その概要を御報告いたします。  茨城県の移転候補地である茨城中央地域は、県のほぼ中央部を東西に横断し、石岡市を初め二十四の市町村から構成され、南部は霞ヶ浦に接し、中心部を常磐自動車道が縦断しております。このほかにも、本地域の北部を横断する北関東自動車道と東部を縦断する東関東自動車道の二つの整備計画が決定されており、本地域へのアクセスをさらに高める高速ネットワークの完成が期待されているとのことであります。  現地調査においては、茨城中央地域のうち、常陸平野に広がる茨城町、小川町、美野里町、そして茨城中央工業団地の造成地の視察を行いました。  茨城県側の説明によりますと、この地域一帯はいずれも平たんな土地であり、山林、畑地が多く、主に園芸野菜や果樹の栽培及び酪農等を営む農業地域であります。また、人口密度は低く、可住地面積の高いことが特徴であるとのことでした。  茨城中央工業団地は茨城町にあり、北関東自動車道のインターチェンジを内包した工業団地で、現在造成中であります。常磐自動車道からのアクセスもよく、開発面積は百七十六ヘクタールと大規模なもので、四百名ほどの地権者があったにもかかわらず、土地買収は非常にスムーズに行われたとのことでした。  次に、概況説明会において、茨城県知事ほか関係者の方々から説明を伺い、視察委員との意見交換を行いました。  以下、その概要を御報告いたします。  橋本茨城県知事からは、茨城県全体の概況及び首都機能の誘致に関する県内の動きを初め、成田空港に極めて近く、移転先候補地の中で東京に最も近いにもかかわらず地価が安いこと。農用地や山林が多く、森林の大規模な伐採による環境破壊につながらないこと。首都機能移転に対する住民の理解もあり、土地取得も容易で十分な協力体制が整うことなど、移転先の選定基準項目から見た茨城中央地域の優位性等について、順次説明がありました。茨城県議会の山口首都機能移転調査特別委員長からは、平成七年三月、県議会において、首都機能の誘致に関する決議を行うとともに、六月に特別委員会を設置し、移転効果、近県との連携の可能性等について検討し、平成八年三月、議会に中間報告を行ったところである。その後も土地確保の可能性等について調査を行い、また宮城、栃木、福島及び山形の各県と利根川以北への移転促進をテーマに広域的な取り組みに努めており、今後も議会活動等を通じ、県民の合意形成に努めていきたいとの説明がありました。石川茨城県首都機能移転促進協議会会長からは、新首都が完成するまでの間のいわゆる重都構造への対応が国として大きな問題になる。また、移転事業が完成した後も、経済・文化都市として高度に発展を遂げている東京との密接な連携が必要で、新首都と皇宗との距離は近ければ近いほどよいことが重要であることから、茨城中央地域全国で最もすぐれた地域であるとの説明がありました。郡司茨城中央地域首都機能誘致推進協議会会長からは、東部地域と西部地域の二つの地域で進められていた誘致活動が、平成八年七月、その周辺市町村をあわせ五市十四町五村から成る茨城中央地域として統一されて以来、産業界も加え、県を挙げて積極的な活動を展開しているとの説明がありました。次に、視察委員関係者の方々との間で意見交換が行われましたが、その主な内容を御紹介いたします。茨城県としては中央地域のどこに中心地を置こうと考えているのかとの質問に対しては、正式に決定していないが、クラスターのっけ方等を含めて順次詰めていきたい旨、港湾、空港等、立地条件は最高であるが、日本人の土地に対する愛着心の強さを考えると、この豊かな農村地域移転が可能か疑問であるがどうかとの質問に対しては、豊かな農地であった中央工業団地においても百七十六ヘクタールが極めて短期間のうちに買収できたことから、開発適地は十分にあると考えており、その点は地元農民も同様に考えていると思う旨、筑波研究学園都市プロジェクトの経験を踏まえ、本地域国会移転してくる場合には茨城県としては何を望むかとの問いに対しては、かつてのつくば市より現在の中央地域の方がなじみやすい、家を移すなど積極的に取り組んでいただければ短期間のうちにいい都市ができると考えている旨、それぞれ橋本知事からの発言がありました。このほか、水及びエネルギーの供給体制、国会等移転された場合の当地域の発展性いかん、百里基地の民間供用化問題、候補地内の国公有地と民有地の割合等について質疑応答が行われました。  以上が調査の概要でありますが、調査に御協力いただいた方々に厚く御礼申し上げ、報告を終わります。
  76. 千葉景子

    委員長千葉景子君) 以上で報告の聴取は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散