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1997-06-10 第140回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十日(火曜日)    午前九時三十分開会     —————————————    委員の異動  六月九日     辞任         補欠選任      石川  弘君     山本 一太君      亀谷 博昭君     松村 龍二君      沓掛 哲男君     岩永 浩美君      吉村剛太郎君     橋本 聖子君      海野 義孝君     益田 洋介君  六月十日     辞任         補欠選任      林  芳正君     岩井 國臣君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 片山虎之助君                 倉田 寛之君                 永田 良雄君                 松谷蒼一郎君                 今泉  昭君                 広中和歌子君                 清水 澄子君                 齋藤  勁君                 笠井  亮君     委 員                 岩井 國臣君                 岩永 浩美君                 狩野  安君                 久世 公堯君                 斎藤 文夫君                 塩崎 恭久君                 関根 則之君                 中島 眞人君                 長尾 立子君                 橋本 聖子君                 保坂 三蔵君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 宮澤  弘君                 山本 一太君                 阿曽田 清君                 荒木 清寛君                 石田 美栄君                 泉  信也君                 岩瀬 良三君                 小林  元君                 鈴木 正孝君                 浜四津敏子君                 益田 洋介君                日下部禧代子君                 角田 義一君                 峰崎 直樹君                 須藤美也子君                 佐藤 道夫君                 田村 公平君                 山口 哲夫君    政府委員        内閣審議官    白須 光美君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    参考人        株式会社共同通        信社国際金融情        報本部顧問    西崎 哲郎君        慶應義塾大学経        済学部教授    池尾 和人君        株式会社大和総        研副理事長    賀来 景英君        青山学院大学経        済学部教授    小林 襄治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○金融監督庁設置法案内閣提出衆議院送付) ○金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備  に関する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を開会いたします。  金融監督庁設置法案及び金融監督庁設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案を一括して議題といたします。  本日は、両法律案審査に際し、参考人の方々から御意見を賜ることとしております。  参考人皆さん方一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。皆様の忌憚のない御意見を賜り、両法律案審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  まず、西崎参考人からお願いいたします。
  3. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 西崎でございます。  きょう、当面の金融行政の非常に重要な課題について参考人として意見を述べさせていただく機会を得まして、大変光栄に思っておりますし、感謝いたしております。  私は金融学者でもなければ金融機関関係者でもないんですが、経済記者として昭和三十年代の初めから金融行政金融政策を一貫して取材しまして、特にこの二十年間は金融制度調査会委員として金融制度の問題にかかわってまいりました。この数年間は特にディスクロージャー、あるいは金融法制定にかかわった基本問題委員会、あるいは早期是正措置検討会、それから日銀法改正小委員会委員、それから現在日本版ビッグバン検討中の金融機能活性化委員会、これは池尾先生と御一緒しているんですが、そういった最近の金融行政転換あるいは金融改革に直接かかわってまいりまして、そういう立場で率直な意見を述べさせていただきたいと思います。  現在、日本金融制度はあらゆる分野改革が進んでおります。その規模の大きさと深さにおいては恐らく戦後最大の改革だと思います。  第一は、金融行政転換であります。これは、金融機関自己責任市場の規律を中心として、行政役割というのは市場ルールをつくり、それから違反に対してペナルティーを科す、それからプレーヤーである金融機関健全性をチェックし、問題のある金融機関に対しては業務改善指導、さらには破綻処理、それから預金者保護、こういったものを透明な形で図っていくという役割に徹することになっています。その中核をなすのがディスクロージャーであり、早期是正措置であり、この新しい金融行政のかなめをなすのが現在設立を御審議中の金融監督庁であります。  こうした規制保護、つまりいわゆる護送船団行政からの転換というのは実は金融制度調査会でも数年前からその必要性が強調され、大蔵省も一応は転換を宣言してきたわけでありますが、今回、国会の論議の高まりの中で金融監督庁設立という形ではっきりした制度が確立されようとしていることは、裏打ちが確立されようとしていることは大変高く評価いたします。  第二は、日本のすべての金融市場金融業務に関する規制の撤廃、自由化であります。いわゆる紀元二〇〇一年を目標にしました日本版ビッグバンでありまして、これは金融産業を活性化し、国際競争力強化し、利用者利便向上を通じて国民経済の発展に貢献しようとするものであります。この金融システム改革は、会計制度あるいは税制国際的整合化、さらには昭和十七年以来の日本銀行法改正までを包含し、戦後制度の全体的な改革が同時並行的に進行しようとしております。  これら一連の改革は、日本金融制度金融機関に対する内外信頼を回復し、千二百兆円を超す個人金融資産を有効に活用し、二十一世紀の日本経済を支える一翼として金融産業が正しく発展するために必要不可欠であることは明らかであります。  しかし、その反面、改革規模の大きさは、現在改善傾向にあるとはいえ、依然巨額の不良債権を抱える金融不安定要因を加速しかねません。  このため、金融システムの安定に細心の注意を要することは極めて明らかであります。しかも、最近のトップ証券トップ銀行不祥事件が、金融機関に対する信頼度を著しく低下させていることは御存じのとおりです。  金融システム安定の重責を担うのはまさに新設される金融監督庁であります。私は、必要最小限金融制度企画立案機能大蔵省に残して、銀行局、証券局金融局に統合し、証券監視委員会を含め検査監督機能大蔵省から分離独立させる今回の金融監督庁設置法案関係法律整備に関する法律案に賛成いたします。  しかし、ここで幾つかの要望を述べさせていただきたいと思います。  最も重要なのは、金融監督庁が円滑に機能するかどうかというより、円滑に機能するために最大限の配慮を払う必要があるということです。そのためには、まず第一に検査体制拡充強化の必要であります。  日本検査官の人数は、例えばアメリカに比べますと圧倒的に少ない。しかも、検査の頻度、回数ということでは、アメリカは原則一年、検査官常駐制度も見られるわけですが、日本は平均二、三年、大手銀行は四年に一回、生損保に至っては五年に一回という状況です。もしすべての金融機関を二年に一回の検査ということにすると、現在五百十九名いるわけですが、二倍の人員が必要だという試算もあります。しかも、早期是正措置導入によって、基準を下回り行政処分を下す金融機関には臨時検査が必要になります。さらに、デリバティブなど金融技術高度化に対応して検査官専門能力向上も必要になります。  量、質とも拡充強化の必要があり、米国のように民間から適材を集めるべきだと思います。  第二に、人事交流の必要です。検査監督専門的技能だけではなくて、金融制度全般状況内外金融界経済の動向など広い視野と知識が必要です。大蔵省企画立案部門にしても現実監督行政を知る必要があり、監督庁大蔵省、さらには日本銀行との人事交流を図るべきだと思います。  第三点は、信用秩序維持に重大な影響を与える破綻処理です。早期是正措置に伴う業務停止命令金融監督庁任務であり、通常の破綻処理は問題ないのですが、大型破綻になりシステミックリスクの危険性を持ち、大蔵大臣の要請によって発動される日銀特融、預金保険機構資金不足に対応する公的資金導入、国際的な信用危機対策、こういったことは大蔵大臣との連係プレーが極めて必要でありますし、それも緊急の処理が求められるわけです。法案では監督庁長官大蔵大臣協議を規定しておりますが、特に当面の金融不安定期間は、大蔵省影響力を排除するといったような微視的なことではなくて金融システム安定という大局的な立場から密接な協議協力関係が必要であると思います。  実は、まだ私は財政金融分離あるいは各党から提出されている法案その他について意見を述べたいのでございますが、ちょうど十分時間がたちましたので、質疑のときに機会があれば意見を述べさせていただきたいと思います。  御清聴ありがとうございました。
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、池尾参考人にお願いいたします。
  5. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 慶応義塾の池尾と申します。  本日は、意見を陳述する機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。  私は、今般設置が予定されております金融監督庁任務明確化、言いかえますと今後の金融行政内容の再定義の必要性といった点を中心意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。  一般に、新しい皮袋には新しい酒を入れろ、新しい酒は新しい皮袋に入れろというふうな言い回しが存在いたしますが、これは私の理解が不足しているためかもしれませんが、どうも新しい皮袋をつくるという話はよく行われていると。つまり、新しい皮袋組織をつくる、組織を変更するという点についての議論は大いになされているというふうに思いますが、それに比して、新しくつくった組織役割内容、言いかえますと新しい皮袋に入れる新しい酒の内容については相対的に議論が不足しているのではないかというふうに私は思っております。  せっかく組織を変更し、新しい皮袋をつくったとしても、そこに入れられる酒が昔のままのものであればこれは全く意味のないことになりかねないわけであります。組織というのは器でありますから、中に入れられるものによって、器だけ新しくすれば新しい内容が自動的に実現するという性格ではなくて、どういつだ任務が与えられているかということによって、組織形態自体はある程度むしろ運用上の柔軟性を持って変更し得るということだと思います。  そういう意味では、分離するかしないかといったようなことは確かに重要ではありますが、それ以上に、どのような金融行政を今後展望するのかという点の方が、私の個人の考え方からいたしますとより重要なポイントではないかというふうに思っております。  それで、現在、橋本総理の指示を契機に日本版ビックバンという標語のもとに金融システム改革が推進されようといたしているわけでありますが、そこでも掲げられておりますように、我々が目指すべきなのはフリーでかつフェアな市場であります、そしてグローバルスタンダードにかなった市場をつくるということであります。我が国金融システムがこれまで決してフリーなものではなかった、自由なものではなかったということはよく知られているわけですが、今般再び明らかになったような不祥事等をかんがみますと、残念ながらフリーな市場でなかったのみならずフェアな市場でもなかったというふうな現実が明らかになっているわけです。  そうしたことを踏まえますと、今後自由かつ公正な市場をつくっていくという課題は極めて重要であるというふうに考えますが、自由と公正を両立させるということは実は非常に困難な、決して生易しい課題ではないということが指摘できると思います。単に自由であるだけであればこれはすごく簡単な話でありまして、一切の規制を外せばいいわけですが、その場合、そうした措置だけであれば不公正な取引等が横行しかねないということが懸念されるわけであります。  そうした観点から申し上げますと、残念ながら現在の我が国には公正取引確保し、利用者保護を図るための制度的な基盤が決して十分に整っているとは言えない状況があるわけであります。  一つ例を挙げさせていただきますと、現在は、多くの者から資金を集めて、その資金をプールして合同運用するというふうな商品仕組みが多数あるわけであります。集合的投資商品というふうな表現もいたしますが、そうした仕組みは現在多数存在するわけですが、そうしたものが現状においては縦割りでばらばらな法律によって規制されているというふうな現状があります。  具体的には、証券投資信託証券取引法規制されている、商品ファンド商品ファンド法規制されている、不動産証券化商品不動産特定共同事業法規制されている、それからリース、クレジット債権流動化商品特定債権法規制されているということで、これらの商品は名前こそ違いますが、今申し上げましたように、多くの者から資金を集めて合同運用する投資商品であるという点において全く経済的機能においては共通のものでありますが、それが縦割り規制のもとにあり、したがって利用者保護公正取引確保のための規制のレベルに相違があるというふうな現実があるわけであります。  そうしたことを考えますと、今後必要なことは、横断的で包括的な、それを金融サービス法と呼ぶかどうかは別の問題でありますが、とにかく内容として横断的で包括的な公正取引確保のための法制的枠組みを確立するということがぜひとも必要であるというふうに思っております。そうした横断的、包括的な法制的枠組みのもとでディスクロージャー規制インサイダー取引相場操縦等を防止するための不公正取引規制、ディ.スクロージャー規制と不公正取引規制の二つに関しては徹底的にむしろ強化をするというふうなことが、冒頭申し上げましたように、自由でかつ公正な市場を確立するための最低限必要な条件ではないかというふうに思っております。  ところが、そうした法制的枠組みを実際に現実にエンフォースしていくといいますか、そうしたことを実際に実現していくためには、それを支える組織機構をやはり整備しなければならないということになるわけであります。先ほど西崎参考人もおっしゃいましたが、そうした組織機構整備するといたしますと、それに伴う人員等は当然のこととして増員が必要になるというふうに思われます。  そうした意味で、今後の金融行政を実質あるものとして遂行していくためには、それに伴う行政コスト増大という問題が避けがたい問題として存在するというふうに考えます。しかしながら、そうした意味での行政コスト増大はいわば惜しむべきではないコストだというふうに私は考えております。そうしたコストまで惜しんでしまうならば、それはやはり立派な金融市場はできない。  ロンドン、ニューヨークは、そうしたコストは決して惜しんでいないということがあると思います。  今、申し上げたような組織機構として金融監督庁というのは設置されるべきであるというのが私の意見でありますが、そして現在予定されております内容での金融監督庁設置は望ましい方向に沿った第一歩であるというふうに私は評価いたしております。  しかしながら、あくまでも第一歩であって、もしこれで金融行政改革が打ちどめだということになりますと話はもう全然違ってくるわけでありまして、決して満足できないということになります。この十一月には行政改革会議中央省庁の抜本的な再編政策を打ち出す、提示するということが予定されているわけであります。そうした全般的な行政改革の中で、さらに財政金融の完全な分離を図り市場監視任務とする強力な監督機関の確立ということが図られていくというふうな将来展望の中といいますか、そうした文脈の中で位置づけた場合には、今般の金融監督庁設置法案については正しい方向第一歩であるというふうに評価し、賛成したいと思っております。  最後に一言だけ付言しておきたいと思いますが、私は、監督機関の完全な一本化ということについては必ずしも賛成ではありません。  現在、通産省や労働省、農水省等に分散化している金融監督権限、今般共管ということになる権限ですが、その部分に関して金融監督庁権限を集中することは必要であるというふうに思っておりますが、金融監督庁だけが独占的監督機関になることは決して好ましくないというふうに思っております。私は、金融監督庁中央銀行である日本銀行相互にチェック・アンド・バランスを働かせる形で金融監督を行うという体制が望ましいというふうに考えております。  国鉄を民営化する際にJRを全国一社にしないで分割したのは、その相互の間の、経済学言葉で申し上げますとヤードスティック競争と申しますが、そうしたある種の競争を働かせるということがねらいであったわけでありまして、同じように金融監督制度に関しましても、金融監督庁中央銀行相互ヤードスティック競争をするというふうな状況が望ましいというふうに考えております。  以上です。
  6. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、賀来参考人にお願いいたします。
  7. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 賀来でございます。  本日、このような場で意見陳述機会を与えられまして大変光栄に存じます。  私は、現在は大和総研という民間金融機関に勤務いたしておりますが、昨年まで大分長く日本銀行におりまして、そこで、日本銀行では余り銀行監督という言葉は使わないのでございますが、銀行の考査という仕事にも若干携わったことがございます。  そうした経験も交えて、意見を三点ほど述べさせていただきたいと思います。  第一点は、検査監督体制枠組みについてでございます。  今、世界の金融の先端的な流れは、申すまでもなく銀行証券保険といったいわば伝統的な金融の中での業務区分がだんだん取り払われて、次第にそのような区分がもう意味すらなくなってくる、こういう方向にあるわけでございます。日本ビッグバンもまさにこうした流れにさお差すものであるわけでございますが、そうなると検査監督体制あり方もまたそれに対応して変化が求められるわけでございまして、今度の金融監督庁の場合、銀行証券保険をすべて対象とするということは、こうした流れに見合うものだと思うわけでございます。  ただ、ここに私は二つ問題があるようにも思います。  一つは、運用の問題でございます。監督庁の中に銀行証券保険が全部含まれるといいましても、その中でそれぞれがいわばタコつぼ的に縦割り検査監督されるということであると余り実態的な意味は乏しい。この中の内部組織あり方とか運用について工夫が必要ではないかという気がいたします。  第二は、より大きな問題でございまして、これは池尾参考人からも今お話があったところですが、労働金庫等はほかの省との引き続き共管になっている部分がかなりあるという問題でございます。しかも、この中には労働金庫等のいわば伝統的な金融機関のほかに先端的な部分、例えば商品投資販売業者であるとか特定債権等譲り受け業者等、いわばこれからのセキュリタイゼーションを担うという新しい分野、これについてそのまま単に共管になっておる。  こういうことで、どうも今回の場合、次代の今後の業界のビジネスの壁を取り払っていくような、新しい動きを先取りしたような検査機関がつくられたとはどうも言いにくいのではないかという気がいたします。  二番目に、私の意見として、いわゆる財政金融分離について一言申し上げます。  今回の金融監督庁が総理府の外局として設立されたという中には、財政金融分離論が大きな背景をなしていたかと思います。財政金融分離というのはさまざまな側面があるわけでございまして、一番重要な問題はもちろん金利政策に代表されるような金融政策財政政策分離ということであるはずでございますが、これはもちろんここでのテーマではなく、むしろ日銀法改正テーマでございますので持ち切れないわけでございますが、銀行に対する検査監督財政とのかかわりという点はどうか。  そうすると、従来言われておりましたのは、財政当局は税の当局でもある、税の当局の主要な関心事は当然のことながら税収確保である、それと金融機関経営健全性確保を第一の使命とする監督当局とは立場が違うと。例えば、よく言われることでございますが、銀行不良資産査定に当たって税収確保観点からは甘目になるということがあり得る。実際そういうことがどのぐらい起きたかどうか、こういうことは別問題としましても、そういう可能性があるということは事実でございまして、そしてその可能性があるということは軽視されるべきことではない。  そのような意味で、今回検査監督機能に関しましては財政当局から分離されたというのは好ましい改革であろうと思うわけでございます。  ただ、残された問題はあるわけでございまして、企画立案の問題は別にしましても、分離が完全ではない。一つ議論対象になっておると承知しておりますのは、金融監督庁長官は、法律の書き方は「内閣総理大臣は」となっていると存じますが、場合によっては破綻金融機関処理に当たって大蔵大臣協議を要するという決めがあるわけでございます。これは、協議を要するということで、場合によって協議を要する、特にいわゆる公的資金の投入をも含むようなケースにおいて独断専行ができないというのはある意味で当然のことと思います。  ただ、いささか懸念を感じますのは、その協議を要する条件が「信用秩序維持に重大な影響を与えるおそれがあると認めるとき」と極めて漠たる表現でございます。このことは、私の考えでは、言いかえますと日本において破綻金融機関処理は残念ながら今後もなお必要と思いますけれども、そのルールというものがはっきりと定められていない。その反映として、このような金融監督庁権限の限界についても非常に漠たる決め、定めになっているという問題があるように感じております。  最後に、三番目の意見としまして、検査監督の中身ということについて申し上げたい。  これは、池尾参考人が言われたところと私は考えが全く同じでございまして、組織よりもまず中身が問題である。本来であれば、中身の議論があって、次に組織議論に移るというのが私は筋道と思います。やや議論の順番が逆転しているという残念な印象を持ちます。  この点につきまして、私は二点申し上げたいと思います。  一つは、今までの事前にチェックする、金融機関業務活動のあり方等を事前にチェックしてこれに縛りをかけるという監督あり方から、そこのところは相当自由にして、不正行為がないか、あるいは健全性を結果として損なうような取引が行われていないか、事後にチェックをするという方向に重点が移らなければいけない。これが大きな原則であろうと思います。これがまさに今進められようとしているビッグバンに見合った検査監督あり方ということであろうと存じます。  二番に申し上げたいことは、監督あるいは検査と申しましても、民間の自主性を引き出すとか、あるいは市場の制裁、市場によって罰せられる、例えば取り入れ金利が高くなるというような形で市場の制裁を受ける、そういう面を大いに活用すべきではないかという気がするわけでございます。  最近の一連の金融機関不祥事によりまして、罰則規定を強化するということが検討中と伝えられております。私は、これも池尾参考人と同意見でありますが、自由化にはコストが伴う、そうした罰則の強化ということは、それに伴う行政機関のある種の拡大ということは必要なことと考えます。しかし、このような問題をすべて当局のいわば取り締まりで防ごうと考えますと、これは巨大な警察国家をつくらなければならないということになろうと存じます。そのためには、やはり最初に申し上げたような民間の自主性ですとか市場の力をかりるのがいいのではないか。  一つ極端な例を申し上げますと、規制緩和を各方面で非常に思い切って進めておりますニュージーランドの場合、ここでは当局による銀行検査は一切停止しております。そのかわりに非常に徹底したディスクロージャー金融機関に求める。  そしてそのディスクロージャーの後に虚偽が発見された場合、そのディスクロージャーにサインをしました経営陣は投獄の覚悟をしなければならない、こういう形で歯どめをかけようとしているわけでございます。これは一つの非常に壮大な実験と申すべきで、まだ十分なテストを得たとは言えない。しかし、今申し上げたような、当局規制民間の自主性あるいは市場の制裁との組み合わせという一つの注目すべきパターンを示しているものかと思うわけでございます。  私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
  8. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。
  9. 小林襄治

    参考人小林襄治君) 青山学院大学の小林です。  こういう場での発言の機会を与えてくださいましたことにまず最初に感謝申し上げたいと思います。  私は、どちらかといいますと海外の証券市場の研究、特にイギリスの証券市場の研究をこの十何年間かやってきております。ビッグバンということでイギリスが八〇年代に大改革を行った、そういうようなことに関連した論文が目にとまって、きょう呼ばれたということです。どちらかというと、海外などの慣行から見て日本の視点がどうであるのかというような点から、若干の御意見を述べさせていただきたいと思っております。  一つ、イギリスで八〇年代にいろんな改革が行われて、それが総称的にビッグバンと呼ばれるようになったわけですけれども、それをどう評価するということはともかく、イギリスに即して言えば、いわば銀行法が七九年、いわば証券取引法に当たる金融サービス法が一九八六年ということで、それ以前にはほとんどもう自主規制というかいわゆるギルド的な規制しかなかった。それが新しい規制の枠をつくり始めてきたということです。そこの経験から学ぶとすれば、規制というのは年がら年じゅう中身が変わってきている、絶えず改革されているというふうに言ってよろしいかと思います。  ということは、今回我が国において金融監督庁がつくられていく、今まで検査とか監督とか行われていたわけですけれども、それも基本的には業者とか市場とかそういうものを育成していく、そういう意味での産業政策的な観点、それに有効な範囲内で使うというようなことだったのではないかと思うわけです。それが今回は、これからやはり一定のルールさえ守れば自由に何でもやってよい、競争を促進していく、そういう中で効率性を追求していく、そういう方向に変わっていった、そういうことの表現一つのあらわれじゃないか。そういう意味で大いに歓迎したいと思っているわけです。  ただ、そうであっても、業務の展開というものは常に金融革新の激しい中で変わっていく。そういう中で常にフレキシブルにルール等を見直していく、あるいは法律も必要に応じて絶えず変えていく、そういうことが必要になってくるのではないかということがまず一つ今後の課題としてあるのではないかと思います。また、イギリスの経験もそういうことだったと思います。  それから二点目に、今度の監督庁、ある意味では銀行証券、これに多分保険も入るんだろうと思いますけれども、同一の機関でそういうものをすべて監督する、これは恐らく世界的に見ても最も最先端と言ってもいいほどの新しい動きじゃないかと思います。そういう意味では、銀行とか証券、あるいは保険とは区別しにくい商品、あるいは金融業務がふえてくる中で、これも方向性としては歓迎したいとは思っております。  ただ、そこの中でやはり厄介なのは、企画立案検査監督、そういうものを分離していくということなんですけれども、これもよく考えると、どこからどこまでが企画立案でどこからどこまでが検査監督なのか、常にこの両者はフィードバックしなきゃならないという関係にありますので、その点が必ずしもまだ明確には定義されていない。  やはりこれからもっとそういう点を明確にしていくべきじゃないのか。あるいはまた、極論すれば、ルールを決めるのは国会の仕事であって大蔵省の仕事ではないという見解も、極論ですけれども成立し得る面があるということではないかと思います。  そこら辺が大枠のところなんです。そうしますと、今回できょうとしている検査監督の問題、これはもう既に他の参考人の方々が指摘したことですけれども、現在の五百名程度の大蔵省検査官検査する、これはアメリカやイギリスの例を見ても事実上不可能ではないか。イギリスの例でいえば、いわゆるSIBと言われる証券投資委員会アメリカのSEC的な機関ですけれども、そこが二百名、それから自主規制機関の最大手のSFAで三百名、それだけで五百人です。それはもう証券業務だけです。それ以外に銀行関係の監督が入るわけです。SECは二千とかそのぐらいということです。  それから、やはりコストの問題というものを本当に真剣に考えなきゃいけない。検査官の数も必要でしょうし、やはり相当にコストがかかる問題じゃないか。その場合、SECは罰金でかなりそれを賄っているとか、それからイギリスの場合ですといわゆる取引の一件ごとにレビーをかけられてそれをみんなが負担するというような仕組みをつくっているとか、この点はやはりまた違った、日本でも預金保険に対してみんなが預金保険料を払っているわけです。そうしますと、こういうことをやるためにはこのぐらいのコストがかかるということをもっとはっきりと提示して、それの負担の方法も考えるべきではないのか。こういう課題がやはり残っているのではないかと思います。  それから、監督庁を独立させるわけですけれども、伝え聞くところでは地方段階で財務局を利用するという話を聞いておりますけれども、それはちょっと一貫しないんじゃないか。やはり監督庁が地方段階でも独自のシステムをつくるべきじゃないかというふうに思っております。  それから、この点も既に指摘されていることですが、スタッフは国家公務員になる、これは当然だろうと思います。ですけれども、海外のこういう監督機関等を見ても、弁護士とか会計士とかそういう専門家というものが非常に活躍しているということが一つ。それから、例えばSECですと、これは有名な話ですけれども、初代の委員長になるのがケネディという、ケネディ大統領のお父さんですけれども、これは二〇年代にさんざん投機で稼いだと言われている人でもあるわけです。特に証券取引は最近デリバティブとかいろいろ複雑化してきている。そうすると、そういうものに対応できる経験者、実務家をやはり積極的に抱え込んでいくということがいま一つの重要な要素になってくるんじゃないのか。その点では、今まで検査というものをやってきたけれども、この間の不祥事というのが示すものは、それほど検査が徹底できなかった、そういう原因がちょっとどこにあるのかいま一つ私にもわかりませんけれども、そういうことを反省して、それから専門家あるいは実務家、そういう者を起用しつつやはり今後の体制というものを考えていくべきではないのかと思います。  その過程で、もう一つ言わせていただきますと、やはり検査あるいは監督の目的というものをどこに置くのか。従来、法律違反を摘発する、不正行為を摘発するという話がありました。私に言わせれば、それは警察がやるべき仕事じゃないかと。それで、やはりこういう検査をするのは銀行であり証券会社であり、公正な市場をつくっている、あるいは預金の保護が図られるそういう健全な業者である、そういうことが納得できるようなスタイル、そのための要するに監督ということになるのじゃないかなと思っております。そういう意味で、検査の目的とかあるいは何をやっているのか、そういうものを非常に国民にとってわかりやすく説明できるというか、そういうふうな活動というものも私は期待したいと思います。  それと、ちょっとずれるかもしれませんけれども、例えばイギリスなんかの例ですと、SIBとかSFAとかそういうところに実務家の代表が入っているということは申しましたけれども、最近の一種のいわゆる社外取締役的な感じでもないですけれども、むしろ国民が、預金者代表であれ投資者代表であれあるいは借り手代表であれ、そういうような者が監督庁に参加できる、あるいは恒常的に参加できるというようなことも考えられて、やはりこういうものがあることによって我々の預金が守られ、あるいは市場が公平にできている、何かそういうことも考えていただけたらよいのじゃないかなと思います。  それと絡んで、やはり今度の監督庁というもの、これは本当に権限が十分なのかなと。例えば危ない金融機関、財務比率等から見て危ないとかいうふうに思ったとき大蔵大臣あるいは総理大臣と協議する、重大な場合はそうなるでしょうけれども、そうでなくて、これから自由化されていけば、一定の基準ができたら、自己資本比率がどこまで行ったら、危なければ直ちに営業を停止するとか、場合によればもう少し権限というものを持たせる、監督機関として権限を持たないというのは不十分じゃないか。あるいは、その罰則規定というものも、これは監督庁の問題でないのかもしれないんですけれども、やはり罰則規定というのはほとんどないわけですけれども、そういうことも今後考えて、入れていっていいのでないのかというふうなことを感じております。  以上でございます。どうも御清聴ありがとうございました。
  10. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 自由民主党の保坂でございます。  きょうは、四名の参考人の先生方においでをいただきまして、大詰めに来ております私どもの審議に大変役に立つ切り口でそれぞれのお立場からお話を承りまして、心からお礼を申し上げる次第でございます。  限られた時間でございますが、何点かお尋ねしてまいりたいと思います。  最初に池尾参考人にお尋ねをしたいと思います。  先生は、知る人ぞ知るどころか皆さん御存じのとおり、日本版ビッグバンという言葉を最初に概念そして言葉ともども世の中に御提案していただいた、私どもも注目をした先生の行動でございました。  現在、先生が発表されておりますいろんな論文などを今日まで拝聴してまいりましたけれども、今の日本版ビッグバン、これが現実には二面作戦になっていると。不良債権の対策が終わった後で本来やるべきだった。しかし、現実はそうじゃない。二面作戦でやるのは戦術的に言っても本当は愚かな行為だけれども、やるしかない。しかも、二〇〇一年に仮に日本版ビッグバンが成功しても、世界の一九九六年に日本は追いつくだけであると。こういう非常に極めて厳しくも、しかしやらなくちゃならないと。九九年のヨーロッパの統一通貨のユーロを展望しながら、はっきりと私たちに方向を示していただいているわけでございますが、今ここにもう一つ金融不祥事が日本のトップバンクあるいはまた野村証券等によって引き起こされた。  こういう状況の中で、先生がお考えになっている現在のビッグバン枠組み、そしてまた進行状況をどういうふうに御評価されるでしょうか。それから、先生がお考えになっている急ぐべき次なる手というのはどんなところにありますでしょうか。そしてまた、今度の金融機関の不祥事はビッグバン影響を与えますでしょうか。  その点のお話をお願いしたいと思います。
  12. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 大変包括的な内容の御質問で、全面的にお答えするのはやや難しいかと思いますが、若干私の思うところを述べさせていただきたいと思います。  一つは、今の御質問の中にもありましたが、金融改革のテンポといいますかスケジュールというものに関しまして、残念ながら実は我が国だけで決められるものではなくなっているという問題が一つあるわけであります。国内事情だけを考えて金融制度改革のテンポを決めてよいのであれば、今のような状況を考えますと、あるいは不良債権問題等の処理を優先させて、それが本格的な解決のめどを見た段階で制度改革に踏み込むというふうな二段階での改革ということもあるいは考えられ得るかもわかりませんが、残念ながら、我々は国内事情だけで物事を決められる段階にはもういない。  金融というのは、八〇年代以降、最もグローバル化が進んだ産業であるというふうな側面を持つているわけでありまして、俗に言われます大競争時代の中で、そうしたグローバル化が最も進んだ側面を持つ金融にかかわる制度改革というのは、残念ながら我が国の事情だけでは決められない。  今の御質問にもありました、例えば、一九九九年の一月から統一通貨のユーロの発足が本格的に見込まれているというふうな事態を踏まえた形での対応を迫られざるを得ないという事情があるわけであります。  そういたしますと、どうしてもといいますか、極めて困難であって、したがって非常な慎重さは要求されると思います。慎重さというのは、従来日本金融制度改革で慎重にと言うと、やらないとか、おくらせるという意味で使われることが多かったわけですが、そういうことではなくて、言葉本来の意味での慎重さを持った形での取り組みというものが求められるわけです。対外的関係等を考慮した場合、現在予定されている速度をおくらせるということはかなわない話ではないかというふうに私は思っております。  それから、改めてまた明らかになった今回の幾つかの不祥事でありますが、これはちょっと誤解を招きがちな表現になるかと思いますが、中期的には改革にとってプラスだというふうに私は考えております。現在明らかになった事態を見れば、改革必要性がないということはもう絶対に言えないということはますますはっきりしたという意味において、短期的な影響は別にして、中長期的には日本金融システムをより健全なものに改革していくための促進材料であるというふうにとらえております。
  13. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 また賀来さんにちょっとお尋ねしたいのでございます。  先ほどもいろいろお話を承りまして、日本ビッグバン、基本的には自己責任市場ルールの確立ということによって、何かあったときには事後にチェックをしていく、事後のチェックというのは当然罰則規定などの強化と、こういうお話がございました。私も全くそのとおりだと思うのでございます。  実は、先ほどもどなたかの先生からお話がありました、昭和五十六年の五十年ぶりの日銀法あるいは金融四法の改正にさかのぼる状況を私たちも顧みますと、あの当時、既にディスクロージャーの問題だとか自己責任の問題が十二分に論議をされて、しかも市場の自由性に任せた、そして行政の介入は極力避けた、罰則規定もむしろ旧法よりも緩和して懲役刑などを廃したというような歴史があるんですけれども、今度のトップバンクの事件などを見ますと、全くその反省がないわけですね。当然強い罰則をもう一回復活しなくちゃいけないんじゃないかということで、私ども去年も与党三会派で論議をいたしまして、例えば、金融人を対象とした特別わいろ税の新設だとか、業務報告書の虚偽記載などには懲役刑の復活を目指すなどを提案したんですが、結局まとまらなかった。  ところが、今度の事件で一気にまた罰則規定がわっと世論として出てきた。  こういう刹那的なものでいいのか、もっと長期的な展望で、本来好ましくないものなのか、そのあたりを明確にそろそろ決着をつけなくちゃならない時期に来ていると思いまして、御意見を承りたいと思います。
  14. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 非常に重要で根本的な問題を提起されたように思います。  私は、罰則とかあるいは当局による規制というのは必要であると思います。自由化が進むとか、あるいは従来金融と思われていなかったところが金融業務に似たことを行う。例えばスーパーの西友で決済ができるとか、だんだん金融金融でないと思われていたものの境目がはっきりしなくなるという変化がございます。しかし、それにもかかわらず、やはり金融産業というのはほかの産業とは別である。  何が別かはいろいろな議論がございますが、簡単に言って、つづめると二つのこと。一つは、やはり決済のシステムというものは社会全体にとつて非常に重い存在である。これが壊れると社会的なコストが非常に大きい。それからもう一つは、そうすると資本市場は余りそれと関係がないように見えますけれども、金融商品というのは、例えば車のように目で見ればわかるというふうなものではどうもない。かなり抽象度の高い商品である。しかも、それがますます難しさの度が加わりつつある。そういう商品については、やはり公正な取引確保のための特別の手段が必要である。そういう意味で、金融産業というのはほかの産業とは違う、当局による規制とか介入がどうしても必要なのだという気がいたします。  したがって、なるべく先ほど申し上げましたような金融機関自己責任とか自主努力、あるいは市場の制裁に任せるということは必要でありますが、それで事は済まない。どうしてもペナルティーというものが必要になると思います。ただ、これはバランスの問題でございまして、必ずペナルティーにもまたコストが伴う。したがって、コストとリターンとのバランスを考えなきゃいけない。  コストとは何か。いろいろなコストがあると思います。一つは、当然、行政、それに属する行政機構の拡大に伴う直接的なコストということがございます。それからもう一つは、そういう規制の度合いを強めればやはり金融機関の自主努力をどうしてもそぐところがあります。そういう種類のコストがある。それからさらに、規制が強いとそれに甘えてしまうという、よく金融のことを論じる人がモラルハザードと言うふうな種類の問題もある。そういうさまざまなコストがあるわけでございます。さらに、行政機構を、規制する機構をどんどん拡大していったとき、その中に不正が生ずるとか癒着が生ずるということも当然頭に入れておくべきである、可能性もかなりあり得ると思います。  そういう意味で、ただただどこかの規制強化すればいいというものではなく、難しいバランスを考えていかなきゃならないということでございますが、私は、現状では規制の程度は弱過ぎると。事前的な規制は強過ぎるのであります。業務の自由が奪われているという種類の規制が明らかに強過ぎて、これは緩和というよりも撤廃すべきでございますが、事後的な規制、例えば虚偽報告の罰金が五十万円以下、これはどう考えても弱過ぎると思っております。
  15. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 日本版ビッグバン、いろんな手法がありますけれども、トップランナーとして外為法の改正があった。また、今日、財政金融分離ということで金融監督庁の論議を今しているわけでございます。いろいろ出てくると思います。  私は、実はこのトップランナーの前に、昨年の金融三法の成立もやはり大きなビッグバンに位置づけていける内容を持ったものだと思っているわけでございます。  ここで注目しておりますのは、西崎参考人にお尋ねしたいのでございますが、西崎さんは、早期是正措置に関する検討会大蔵省銀行局長の私的な研究会の座長をお務めいただいた。それで、来年の四月に導入が決定ということで、既にことしの三月にガイドラインが通達として出されて、いよいよ九月期の中間決算では恐らく大手の金融機関ディスクロージャーに踏み切るであろう、こういうふうに思われておりますが、資産査定についてのガイドラインを拝見いたしましても、今までフリー、フェアでやってくれるはずの業界が罰則を取り入れますよと。それから早期是正措置に対するガイドラインも、自己資本比率が客観的にばっちり出されちゃうわけですね。  これは大変な思いをしているはずなのでございますけれども、このあたりの早期是正措置導入した必要性をもう少しお話をいただきたいと思います。それから、今後、経営の健全性をチェックするのに自己資本比率だけを一つのメルクマールにしていっていいのか、ほかになかったのか、また外国では何かはかにあるのか。  それから、特に私が心配しておりますのは、有価証券の含み益の算入を認めたということで、株価の変動によって、これはやはり自己資本比率が相当乱高下する可能性もあるというリスクがあるような気がするんですけれども、今後、この含み益の問題についてはどういうふうにお考えになっておまとめいただいた御提言を出したんでしょうか。
  16. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) お答えいたします。  まず、導入必要性、背景ですが、一口に言うと、日本の今の金融機関の財務諸表、例えば不良債権の公表総額ですね、それが海外では信頼されていないということです。国内でも、もっと多いんじゃないか、倍もあるんじゃないかという見方もある。つまり、日本金融機関の財務諸表が本当に正確であるかどうかということに対して信頼度内外で非常に低下しているということなんです。  今度の早期是正措置では、金融機関がまず資産を自己査定していくわけですね。債権を全部分類して、正常債権、要注意先債権、あるいは破綻懸念先債権とか破綻債権とか、それぞれの債権に対して必要な引き当て償却を積んでいくんです。これは、今までは大蔵省検査で、いやこれは問題ですよと。それから、じゃ引き当ては無税の千分の三、あるいは過去貸し倒れ実績の三年分を積めば無税、これが基準になっていたわけです。自主的に一々債権を査定して、有税無税にかかわらず必要な引き当て償却をするということはやっていなかったんです。  それを今度まず金融機関自己責任でやらせると。これは大変な作業です。それを外部監査がチェックして、公認会計士ですね、それでそれに基づく自己資本比率は正確なものが分子と分母で出てきます。これを国際基準あるいは国内基準ということで基準を決めて、上回ったところには検査を減らすとか優遇しますけれども、基準をどんどん下回っていったところには、その状況に応じて経営改善命令、あるいは最終的には業務停止命令まで出すということです。  それで、これは大変なことで、実はアメリカでしかやっていないんですね。しかもアメリカは資産査定というのを前々からやっていて、金融が安定したときにこれを導入したわけです。欧州はやっていないんです。それを日本がやるということですから、この不安定なときに。それだけやっぱりある意味では金融機関の財務諸表に対する信頼回復が絶対必要だと、これが一つ背景です。  それから、自己資本比率だけでいいのかということは非常に問題なんです。しかし、現在、大体自己資本比率の八%とか四%という数字は、八%は、BISの責任者が曇りガラスを見てたら何か八の字に見えて八にしたとかという説もあるので絶対的なものではないんですが、国際的な基準になっているということははっきりしている。しかし、アメリカでは今、自己資本比率だけではなくて、もっといろんな金融機関の本当の自主ガイドライン、自分のガイドラインを優先して、それがだめな場合はペナルティーを科するとか、いろんな方法を検討しています。ですから、今回も三年以内に見直すということになっているわけです。  それから、含み益は国内基準については導入していません。算入していません。ただし、自己資本比率で債務超過になっても清算価値という意味で、含み益、含み損を清算して、つまり清算価値としてプラスの場合は破綻命令を猶予する、早急な経営改善計画がはっきりしているときは猶予する、そういう規定になっております。  以上です。
  17. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 余り時間がないので大変残念なんですけれども、ただいまの西崎参考人のお話を伺いましたけれども、この早期是正措置制度では、とられた措置内容は基本的には公表しないというふうに受けとめていいんでしょうか、結果はともかくとしまして。  それで、いずれにいたしましても、自己資本比率は表へ出ますから、そうするとマスコミなんかはランキングだとかレーティングをしていきますね。これは弊害がありませんでしょうか。これが一つ。  もう一つ、実は一番私が心配しておりますのは地方金融機関なんです。分子も分母も細っている状況の中で貸し渋りが出てくる。そして、本来助けなくちゃならない地域の零細企業に回っていかないということになりますと、東京市場が活性化しても、真ん中の地域の金融というのは空洞化しちゃうというような、非常にいびつな現象を誘導してしまうんじゃないだろうか、こんなことを感じてなりません。  特に、信用組合の場合は地域に密着しておりますから、また協同組合なんかの場合は相互扶助という立場がありますから、本来的に言えば預金者もお金は赤字の企業であっても仕方ないと。相互に助けようという気持ちを持って預金しているようなグループが現にいるわけです。そういう基本的な地域金融機関の特性まで大きな銀行と横並びにならないか、こういう懸念がございます。  一分でお答えいただくのはまことに申しわけないと存じます。
  18. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 私は、まさに先生の今おっしゃったことを非常に危惧しております。  現実に地域金融機関については、きょうお配りした私のあの中に入っておりますが、今度の活性化委員会でもそういった、つまり大銀行がとれないリスクを地域金融機関がとってきている。特に協同組合系はとってきている。それがとれないということになると、地域金融はまさに空洞化するわけです。したがって、地域金融機関本体に対する例えば信託兼業の増大とか、あるいは自己資本拡充の手段、劣後ローン以外、それも認めろとか、そういった地域金融が空洞化しないように配慮しなきゃいけない。それを私も強調しましたし、その趣旨は今度の日本版ビッグバンの提言にも入るはずです。
  19. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 小林先生、済みません、時間がなくなりまして。  ありがとうございました。
  20. 泉信也

    ○泉信也君 平成会の泉信也でございます。  本日は四人の先生方、ありがとうございます。  早速お尋ねをさせていただきます。  私どもは、今回の日銀法あるいは金融監督庁法律につきましていろいろな議論をしてまいりました。その背景はもうここで私から申し上げるまでもございません。住専問題等、いろいろな問題がございました。そういう中で、企画立案部門というものを検査監督と分けておくということが本当にいいことかどうかということの議論を今日までしてまいりました。  四人の参考人の方々から、もうコメントをいただいた先生もございますが、もう一度、企画立案部門とそれから検査監督部門を別々にしておくということが本当にこれからの金融財政政策を考えていく上においていいのか悪いのか、四人の先生方にコメントをちょうだいいたしたいと思います。
  21. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) さっきの意見陳述では時間がなくて省略したんですが、金融だけの効率で見れば、確かに検査監督企画立案を一体化した方が効率的だという考え方もあり得ると思います。しかし逆に、これまでの金融行政のいろいろな失敗を見ますと、企画立案検査監督部門がやはり相互に密接な連絡、協調は必要なんですが、一定の緊張関係にあった方がいいのではないかという指摘もあり得るわけです。  さらに、一体にして、しかも財政分離しちゃうという点は、私はこれは反対なわけです。というのは、やはり財政金融というのは経済の両輪でありますし、経済政策としても一体的に把握して調整していく必要があるわけです。従来、財政金融の利益相反と言われたのは、一つは、マクロ金融政策をめぐる財政当局大蔵省と日銀の問題です。しかし、これは大蔵省というよりは政府全体、あるいは政治の問題であったかと思います。  それからもう一つは、余りにも金融行政が裁量的、恣意的な面が多かった。したがって、検査監督も含めて非常に恣意的になっちゃう。しかも、金融政策金融行政の背景には、例えば財政畑が大蔵省で実権を握るという人的な関係もあったというふうに言われています。  しかし、マクロ金融政策における利益相反は、日銀法の今度の改正で最終責任は政府が負うわけですが、金融政策の独立性という意味ではこれはかなり解決した。問題は中身です。それから、金融行政の恣意性、裁量性という意味では、例えばディスクロージャー早期是正措置、今回の金融監督庁設立の趣旨、こういったことでフレームワークがはっきりしてきていますから、恣意的な過剰介入ということはもう許されないし、はっきりしちやうわけです。  ですから、そういう中で、財政金融企画立案機能、これは金融制度その他を含めてやはり一体的に大蔵大臣で把握して、これが各国の今の、アメリカ財政権限は非常に弱いわけですけれども、共通のことですし、しかも、イギリスの今度の中央銀行法改正では逆に監督大蔵省が取り込んでいる。アメリカも多元化している監督機構をむしろ財務省寄りに一元化しようとしている。  そういう傾向も出ているわけです。  ですから、全部切り離して、例えば金融庁にする、あるいは金融政策まで含めて金融委員会行政委員会にしてという考え方は、私はちょっと今非現実的ではなかろうかというふうに思います。
  22. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 私は、基本的には財政金融は分けるのが適切であるというふうに考えております。  それで、経済政策に関しまして、かつては政策協調、政策の間のコーディネーションということが非常に言われたわけですが、現在は少なくとも経済学者の中では考え方が少し変わってきておりまして、協調を考えるよりは各セクションごとに政策を割り当てて、一つの目標を割り当てて、そのセクションはその目標を追求する。全体としてチェック・アンド・バランスが働くような形を考えた方が好ましいというふうに、政策協調から政策割り当てというふうに考え方が変わってきていると思います。  金融財政、もちろん両方とも重要な課題であるわけですが、それはそれぞれについて責任を持つ主体を設けて、その主体は割り当てられた課題について最善を尽くす。その結果として調整が事後的に行われるという姿が望ましいというふうに思っております。  ただ、今申し上げましたように、したがって本質はチェック・アンド・バランスが働くということが重要でありまして、一つ組織にするか分けるかということは、結果としてチェック・アンド・バランスがどの程度有効に働くかということで判断されるべきだと思います。  確かにアメリカの場合、OCC、通貨監督庁ですが、それは財務省の一つの外局に当たるわけです。そういう意味では財務省の一部分なわけです。しかしながら、OCCの長官は平気で財務長官を批判できるような自由度といいますか独立性が与えられているわけでありまして、そうした独立性が実質において担保されるのであればいいわけでありまして、ちょっとくどくて申しわけありませんが、基本は、相互のチェック・アンド・バランスが十分に働く、一方が他方に従属するというふうなことが実質的に排除されるということが重要であるというふうに考えております。
  23. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 私は、企画立案の機能の位置づけについて、一般論と日本現実論と分けて考えてみたいと思います。  まず一般論で申し上げれば、私は結論は出ないと思います。つまり、ここでの問題は二重のように思います。一つは、企画立案なるものと検査監督は一緒なのがいいのか、離れていた方がいいのかという問題、それから企画立案財政と一緒の方がいいのか、離れていた方がいいのか、こういう二重の問題であろうと思います。  後者から申し上げれば、先ほど申し上げたような理由によって、検査監督財政と一緒にあることはぐあいが悪い。かなり重大な利益相反の可能性があると判断されますが、私は、企画立案なるものと財政について、それほど深刻な利益相反の可能性は余りないのかなという気がいたします。  それから、企画立案検査監督につきましても、これもやはり両方の考え方があり得て、検査監督の実地を日常的に知っている者が企画立案した方がいいという考え方もあり得るし、それからやっぱりある種の緊張関係、牽制関係を持たせた方がいいという考え方もあり得る。私は、組織論というのはほとんど多くの場合、そう申しますと身もふたもなくなりますけれども、両論あり得て、一般論としてはなかなか結論が出にくいものではないかと。少なくとも、企画立案について財政と一緒であるとか、あるいは検査監督と離れているということによって重大な深刻な問題が生ずるというふうには考えにくいように思います。  以上が一般論でございます。  しかし、日本現実論から考えますと、今の位置づけは私は適当ではないというふうに考えます。私はしばしば感情的と思われる大蔵省批判論にくみするものではございませんが、しかし、やはり今までの大蔵省の物事の進め方というのは現実としてあるわけでございまして、企画立案についても、先ほどの検査監督と同様中身が問題でございますが、今までと同じ人たちが担っているとき、また中身が変わるだろうかという重大な疑問がございます。  それから、企画立案と申しますが、日本で今重大な企画立案とは何かと考えると、これはビッグバン及びそれに続くものを進めることであろうと思います。ビッグバンは、今言われている六月に答申、報告が出るであろうもので完結するとは私はとても思わない、これから数年あるいはもっと長い期間で連続的な改革を続けていくことが極めて重要なことだろうと思います。  そういうことになりますと、これは従来の大蔵省枠組みをも本来超えるものなのであって、そういうビッグバンあるいはそれに続くもの、日本金融の大改革、連続的改革をどういう機関が進めるのが、担うのが最も適当かということが今の日本に課せられた、企画立案なるものを考えるときの具体的な現実的な問題ではないかという気がいたしております。  以上でございます。
  24. 小林襄治

    参考人小林襄治君) 今、賀来参考人が言われたように、企画立案検査監督分離の問題に関して、これは一般論では何とも答えようがない。  ただ、日本現状で見るとやはり検査監督部分というものが非常に弱かったという印象を持っている。そういう意味で、独立性を図るということが当面の日本状況に即せばいいんじゃないかなというふうに思っております。  ただ、それ以上に問題なのは、これから将来の企画立案といった場合一体何を指すのかというのは、私に言わせるとよくわからないんです。  ビッグバンに絡んでもそうなんですけれども、例えば政府なりどこかなりが何年何月に何を自由化してどうこうなりますとか、あるいはどういうふうにしなさいとか、そういうことを言う時代というのはもう過ぎ去っているんじゃないか。ただ必要なのは、銀行業務をやる人はこういう条件を守りなさい、証券業務をやる場合にはこういう条件を守りなさい、それからディスクローズしなさいとか、そういうさまざまなルールをきちんと決めておく、後はそれに従って皆さん自由にやってください、そういうのが要するに今後のあり方なんだろうと思うんです。  そういう意味で、企画立案ということ自体が全くなくなるということはあり得ませんけれども、従来のような意味で政策的にこういう機関をつくらなきゃいけないとかあるいは育成していくとか、そういう発想での企画立案というのはもう必要なくなってくるんじゃないかな、あるいはそうすべきじゃないかなというふうに私は思っております。
  25. 泉信也

    ○泉信也君 西崎参考人、そしてまた池尾参考人にお尋ねをいたします。  もう一つ、私どもは、いわゆる金融業を営みます民間事業者のみを今回は対象とした金融監督庁というものの議論がなされておりますが、むしろ公的金融機関につきましても一元的に検査監督をしていくという体制をとるべきではないかという思いを持っておるわけです。このことにつきましてお二人に御意見をちょうだいいたしたいと思います。
  26. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 私も全く同感でございます。  特に、政府系金融機関の場合、一方では早期是正措置ということで、これは郵便貯金の問題ですね、公的金融まで含めて。それから、ビッグバンとの関係では、これは市場原理の徹底ということで政府系金融機関との競合の問題。これが現実の問題になってきているわけです。この出口、入り口の問題を解決しないと、財政という立場から離れても、早期是正措置ビッグバンを円滑に遂行するには今の公的金融機関を見直す必要がある。  そうすると、そのためにはまず今の公的金融機関の実態がやっぱり正確にディスクローズされていなければいけない。これは極めて不十分なわけですね。会計検査院の検査というのは、つまり政府からの補助金その他が適正に使われているかどうかということで、補助金それ自体は問題にしていないわけです。ですから、例えば開銀は開銀法の目的に違反した分野まで融資をしているというところまで現状があるわけです。  ですから、こういう公的金融機関の問題については整理、統合、縮小、それから財投計画との関係での見直しとか、いろいろあるわけですけれども、少なくとも今現に金融機関として活動しているわけですから、これの正確なディスクロージャーとそれに対する適正厳正な検査監督、これは今一応の枠はあるわけですけれども、やはりもっと徹底的に行う必要があると思います。
  27. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 言うまでもなく、公的金融財政投融資制度に関しましてはそれ自身の抜本的な見直しということが推し進められていかなければいけない、でき得るならば民間金融、資本市場改革と平氏を合わす形で公的金融、財投制度改革が実現されていくべきであるというふうに方向性としては私も考えております。  その中で、より具体的に、例えば政府系金融機関の経営形態について見直しをする、例えば特殊会社化というような形での民営化を考えるということと関連する形で仮に特殊会社化をするといたしますと、自己資本比率規制の適用でありますとか、御質問にありました検査監督の実施といったことをやはり考えていかざるを得ないということでありまして、御指摘の点はそのとおりだと思いますが、それは政府系金融機関等の今後のあり方をどう考えるかによって具体的な内容はかなり変わってくるんではないかというふうに思っております。
  28. 泉信也

    ○泉信也君 賀来先生にお尋ねをいたします。  いわゆる先端商品あるいは取引というようなものが新たにふえてくる中で、これからの検査監督業務あり方、中身が問題だということかと思いますが、そういうことが大変憂慮される実態があると私は思っております。  特に、これまでの議論大蔵省金融監督庁人事交流について、監督庁へ行った者はもう帰ってこないということの方が必要だというような意見が一方にあったり、きょう先生方に伺いましても、密接な連携が必要だ、人事交流も必要だという御意見もあったと承知いたしておりますが、金融監督庁の職員のレベルアップの問題と、大蔵と金融監督庁人事交流というようなことについて、先生はどんな御意見をお持ちでございましょうか。  二つお尋ねをさせていただきます。
  29. 賀来景英

    参考人賀来景英君) お答えいたします。  私は、大蔵省企画立案機能なるものはもちろん残る前提でございますが、その場合の大蔵省金融監督庁との人事交流はやはりかなり制限があるべきだと考えます。少なくとも、やはりあるレベル以上の人たちの人事交流は好ましくないと思います。それは、先ほど申し上げた検査監督機能財政との間の遮断が望ましいという理由に基づくものでございます。  しかし他方で、企画立案機能そのものと検査監督については人事交流はむしろ好ましいかもしれない、お互いのフォーメーションがある程度共有されることが好ましいかもしれない。そのように考えると、先ほどの御質問に戻って、企画立案検査監督は一体化した方がいい、つまり企画立案財政とともにあるがゆえに企画立案検査監督との人事交流は遮断が望ましい、しかし人事交流そのものはある程度あった方がいいと考えると、財政企画立案は切った方がいい、こういう議論一つ成り立つのかな、その点だけから考えましたときにそういう気はいたします。
  30. 泉信也

    ○泉信也君 民間との人事交流みたいなものも御示唆があったと思いますが、それは、金融監督庁という特殊ないわゆる秘密保持みたいなものとの関係をどういうふうに整理したらいいのか。いかがでしょうか。
  31. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 非常に難しい問題があると思います。  一つは、先ほどお話がございました、非常に先端的な商品が進んでいる中で検査監督をする人間が、これは日本銀行にしても金融監督庁にしてもしかりでありますが、どうやってそれに追いついていくか。まず追いつけないと私は考えるべきだと思います。商売をしている人間に商売をしていない人間が追いつくはずはないわけでございますので、せめて一歩のおくれになるべくとどめるにはどうするか。そういう観点から、やはりある種の人事交流は必要でございます。  ですから、そこは、守秘との問題は、それについての一種の壁をきちんと決める、ルールをきちんと決めるということでクリアしていく。しかし、それにしても壁の効用には限界がございますから、したがって人事交流の範囲はおのずと限られる、こういうことが現実的な解ではないかという気がいたします。
  32. 泉信也

    ○泉信也君 短い時間でございますが、小林先生、最後でございます。  企画立案検査監督というものについては境界が不明確だ、明確にすべきだというような前提の中で、それでもなお地方の組織についても金融監督庁は独自のものを持つべきだ、全体で今五百人ぐらいという中で、もっともっと組織の拡充をということのお話でございますが、もうちょっとこの部分について先生の御意見をお願いいたします。
  33. 小林襄治

    参考人小林襄治君) お答えいたします。  せっかく独立の機関をつくったのだから、やはりそれを徹底してやるべきじゃないかという趣旨で述べたわけです。  それと、やはり特に銀行等を検査する場合、これは銀行業務が将来どう変わるかということにもよりますけれども、現在、銀行でいえばノンバンクとかそういうところまで含めれば猛烈にこれだけたくさんの数になっている、しかもそれが絡み合っている。しかも、銀行検査といったって、結局ノンバンクが派手に赤字を出せばそれを全部しょわなければいけない、そういう構造ができ上がっている。そういうところまでチェックしていこうと思ったら相当なコストがかかる、そういう認識から出発すべきじゃないか。そのコストも負担できないようであれば、検査監督なんて事実上意味がないものになってしまう。  行革の精神に反するかどうかは私は存じませんけれども、金融の問題はそういう要素をやはり持っているということをもっとはっきりと示して、それに必要な措置をとるということが大切なんじゃないかなということです。
  34. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。
  35. 清水澄子

    ○清水澄子君 どうもきょうは四人の参考人、ありがとうございます。  一連の金融システム改革のポイントは、ルール監督への転換であると思うわけです。  先ほどのお話の中で、ルールづくりは大蔵省ではなくて国会であるというふうにお話があったわけでございますけれども、現実日本のこの法案のできるプロセスからいろんなシステムの中では、この法案が通りましたら、政省令とか、金融監督庁検査監督を行う上でのルールをつくっていくという運びになると思うわけです。  アメリカ、イギリスなどの市場監視組織は非常に慎重な手続を踏んでいると聞いているわけですけれども、ぜひ四人の参考人の皆さんから、金融監督庁がどのようにルールを策定していくべきか、そういう点について一言ずつお願いいたします。
  36. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) お答えいたします。  大変具体的な実務に関することと、それから基本的な考え方と二つあるかと思うんです。  金融監督庁権限それから職務、確かに、企画立案部門との関係あるいは金融監督庁長官大蔵大臣との協議体制、これを具体的にどうするかという点はこれから恐らくいろんな試行錯誤を経てはっきりしていくと思うんですが、それ以外はもう決まっておるわけですね。  いずれにしても、例えば早期是正措置の発動にしても、これはもうこの十九日の検討会で最終的に要綱を決定いたしますけれども、公表された基準で、非常に透明な形で検査監督庁がそれを実施していくということで、従来通達に非常に裁量部分が多かったというのは、つまり全体の金融行政のフレームワークが非常に恣意的な部分が多かったために、それが通達の拡張ということでいわゆる行政指導を肥大化させたわけですが、今の環境としては、従来に比べるとそういう危険性は非常に減少してきたと私は思います。  ただし、この検査監督庁も民間金融機関に対する監督機関であるんですが、できるだけやはりその意見も聞いて、それで全体としてともかく金融システムがうまくワークしていくような配慮が非常に必要だろうと思うし、それから生みの親である行革委員会が、その責任もあるわけですから、今後ずっとフォローアップしていただきたいというふうに思います。  大変抽象的な答弁になりましたが。
  37. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 私は、アメリカ規制監督当局でありますとかそれから国際決済銀行、BISのような国際機関が採用しているやり方のうちで、ぜひこれは我が国も取り入れた方がいいと思うルール策定に関するやり方が少なくとも一つあるというふうに考えております。  そのやり方はどういうものかと申し上げますと、規制当局ルールに関する原案を固めた段階で、それを公表するわけです。提案という形で公表して、一カ月なり二カ月なり、それに対する意見をあらゆる者からヒアリングするという機会を設けるということであります。そうしたルールあり方に関して、もちろん直接の利害関係のある団体のみならず一般の公衆からも意見を求め、聞く期間をつくる。そうした意見を集約してプロポーザル、提案の内容を改定した上で最終的な実施ルールとするというふうな手続を、冒頭申し上げましたように米国の当局とかBISなどは採用しておるわけですけれども、そうしたやり方はぜひ我が国においてもとられるべきではないかというふうに思っております。
  38. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 私も考えたことがほとんど既に出ておりますので、同意見であるとだけ申し上げておきます。
  39. 小林襄治

    参考人小林襄治君) その点、例えばイギリスなんかではルールブックが一年間で十センチぐらい改定されたものが出てくるというような状況で、細かにはフォローできるはずはないんです。  その際、やはりルール改定、池尾さんが今言われたようにいろんな人から意見を聞くわけですけれども、その前段に、何を目的にしてどういうことを変えようとしているのか、そういうことを非常にわかりやすい形でのサマリーを載せて、それから意見を聞くという形のことをかなり広範にやっています。  それからあと、必ず当事者、要するに利害関係者と言ってもいいんですけれども、証券業者であるとかあるいは銀行とか、そういうところのやはり実務家レベルでの意見というのを最もよく聞いている、その両方が必要になるんじゃないかなと思っております。
  40. 清水澄子

    ○清水澄子君 ちょっと賀来参考人にお伺いします。  金融監督庁検査と日銀考査との関係がどうあるべきか、それと協同組織金融機関に関する監督あり方、この二点をちょっとお伺いします。
  41. 賀来景英

    参考人賀来景英君) お答えいたします。  最初の日銀考査と監督庁による検査との関係でございます。まず、目的、着眼点が、中央銀行である日本銀行、それからまさに金融監督のために設立された専門機関である金融監督庁、それぞれの組織自体の目的が違いますので、考査、検査の着眼点、目的というのはかなり違ってまいります。しかし、実際のやっていることになりますとかなり重なる部分が多いというのも事実でございます。  例えば、銀行業務が貸し出しに重点が置かれている限りにおいては、したがって貸し出しがら大きいリスクが発生することが考えられる状況においては、やはり貸し出しの内容を見るということがどうしても考査、検査の大きなウエートを占める、そういうふうな意味で実際には重なる部分が多いわけでございます。  そうしますと、その重なってやる理由、理屈は何か。これはさっき池尾参考人もおっしゃったような規制当局間の競争ということでございます。  アメリカは御存じのように非常に複雑な監督体制あるいは規制機関の体制になっているわけでございまして、少な目に数えても四つはあるわけでございますけれども、アメリカの場合、その当局者がそういうことを言うだけではなくて、アメリカ銀行に聞きましても、規制当局監督当局検査当局が複数であるのは負担であると感ずることもある、しかし彼らが競争することが自分たちにとっても好ましいと思う場合がある、こういう言い方を何度か聞いております。  それから次に、協同組織金融機関に対する検査監督あり方でございますが、これにつきまして、根本のところは、その検査監督あり方よりも今の協同組織金融機関なるものが本来その名に値するものであるのか。私が念頭にありますのは、非常に大きな信組、本来の職域とか地域とかいう本来の協同組織金融機関とはなかなか言えないようなものが生じているのは御存じのとおりでございます。私は、その協同組織金融機関現状を、これでいいのか、どう改めるべきかというところがまず最大の問題ではないかという気がしております。
  42. 清水澄子

    ○清水澄子君 護送船団方式によるこの保護行政を脱して金融機関の自助努力を促進していくためには、この現行の仕組みを思い切って見直す必要があるということは皆さんもおっしゃっているわけです。  そこで、一方で公正なルールを定めながら、そして他方でそのルールを踏まえた上で、例えば預金保険料の可変料率などの経営インセンティブを導入していくことが私は大切じゃないかと、この間も大蔵大臣に聞きましたけれども、今はそういうことはやりませんという答えが返ってまいりました。その点について四人の方の御意見を伺いたいと思います。
  43. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 金融機関自己責任、自己規律、これは今度の早期是正措置の資産の自己査定ですね。自分のガイドライン、自分の銀行の方針に従って資産を査定して引き当て償却を行っていく、それに対して外部監査、さらにはこの基準を下回った場合、大蔵省検査が発動されるわけですけれども、基本はその金融機関自己責任でリスク管理を行い、資産を査定し、財務諸表をつくっていくということに、制度的に今度そうなったわけです。これは非常に大きいと思うんです。これは金融機関にとって大変な負担であるということは、今までそれをやっていなかった、厳密にやっていなかったということの裏返しになるわけで、幾ら負担になってもこれはやらざるを得ないことであると思うんです。  それで、問題は、それによって当然優劣が出てくるわけですし、例えば自己資本比率が非常に高い金融機関の場合、アメリカの場合も随分いろんな恩典を与えているわけです。もちろん保険料率も、それによってリスクの大きい金融機関と少ない金融機関は区別しています。おっしゃったような可変料率の導入です。  日本の場合は、今はペイオフもできないという、つまり要治療期間で、二〇〇一年までは今の体制を続けざるを得ない。しかし、二〇〇一年までのできればもっと早い段階でペイオフができる、そういう金融環境になれば、今の臨時の保険料率の改定から可変料率の導入も当然検討すべきでしょうし、それから検査回数の頻度を少なくするとか、いろんな形でこれは優遇していくべきだろうと思います。
  44. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 若干繰り返しになって恐縮ですが、最初の意見陳述の際も申し上げましたように、自由でかつ公正な取引を確保するということは非常に大変な作業でありまして、それを実現するためには一定の行政コスト増大ということを覚悟せざるを得ないということを申し上げたわけでありますが、決してそれは野方図に行政コストの拡大を容認していいということではないわけでありますから、できる限りそうしたコストを抑制する努力、工夫というのも同時になされなければいけないわけであります。そうした際に、銀行に対する検査等は今まで以上に強化する必要があるということで、そこで発生するコストの負担に関して、検査される側の金融機関にその負担を求めるというふうなことも当然検討課題として考えられるというふうに思います。検査料を金融機関から徴収するということであります。  しかしながら、そのときに健全な経営をしている金融機関もそうでない金融機関も同じようにとにかく一律に検査料を徴収されるということでは、これはむしろ公平ではないわけでありまして、銀行検査の結果、健全な内容であるということが確認された金融機関に関してはある種の検査料の割り戻しをするということは考えられていいわけでありまして、それがインセンティブをつくり出すという効果が考えられるわけであります。  例えば預金保険料に反映させるという形で実質的な割り戻しを行う、検査料そのものは一律で取るんですけれども、健全だというふうに判断されればより低い預金保険料で済むという意味での可変的預金保険料率の採用と銀行検査とをリンクさせる等々の工夫を最大限図っていくということがやはり必要だろうというふうに思っております。
  45. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 私は可変保険料率の導入に賛成でございます。それで、従来その導入に対する反対論の論拠として私の頭にあるのは三つぐらいあったかという気がいたします。  第一に、そのことが公に明らかになるつまり高い保険料率を払っているのは危ない金融機関であるということが知られることのマイナスをどう考えるかでございますが、しかしこれは今は保険料率を可変にしようがすまいがディスクロージャーは進めなければいけない。特に自己資本比率の公表を進めるという体制でございますから、これは既に片づけられている問題である。  それから二番目に、それと似たような議論でございますが、経営の悪い金融機関は高い保険料率を払うことになってさらにじり貧になり、悪循環に陥らないかということでございますが、これも一種の悪くなることのコストであって、それを回避する努力が期待されるというふうに考えるべきであるし、また考えるしかないのではないかという気がいたします。  多分、第三のこれから申し上げる批判が最も根本的な批判であって、つまりこれは当局による金融機関のランクづけをすることと同じでございますが、当局がそのような基準を持っていると考えてよいのか、当局はそんなに偉いのか、こういうのが多分私は一番根本的な問題であろうと思います。しかし、これもある種の割り切りの問題であって、これも可変保険料率をとろうととるまいと早期是正措置というものが必要だと考えられている、そしてこれが導入されようとしている。この思想は既に同じところにございますので、この疑問は私は実はなかなか根本的な疑問だという気はいたしますが、そこはどうも割り切っていかないと金融機関に対する監督というのはできないのか、このように考えております。
  46. 小林襄治

    参考人小林襄治君) 他の参考人と基本的には同意見ですが、ただ厄介なのは、可変保険料の料率というものをだれがいかに算定するのか、やはりこの問題はかなり難しいし慎重であってほしいということが一つです。  それからあとは、日本金融制度を考えてみた場合、先ほどからも議論がありましたけれども、例えば地方に行くとその銀行しかないとか、あるいはその地域にはそういう銀行しかない、そういうことを一県一行主義以来つくってきてしまった、それが要するにつぶすべき銀行をつぶせないということにもしている。そういうところは、いわゆる預金保険とは別ですけれども、そういうシステムもかなり変えていくという展望を持たないと、こういうものを導入してもワークしないんじゃないかなという感じはしております。
  47. 清水澄子

    ○清水澄子君 もう時間がありませんので、消費者の立場からなんですけれども、そういう中で金融監督庁の情報公開のあり方、これにつきましても、やはり金融監督庁は消費者に対して、この金融ビッグバンにおいてはもっと金融サービスの自己責任が求められているわけだから、預金者が自分で判断できるような情報を公開すべきだ、ぜひ金融監督庁ではそれをやってほしいということを要望しましたけれども、これも今いろんな理由をおっしゃったように、結局自助努力を阻害してしまうとか、それから破綻予測は不安を惹起するとか、そういう点で、これもほとんど建設的な答弁がなかったわけです。それについて、あと二分しかありまぜんが、一言ずつお願いいたします。
  48. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 私はディスクロージャー作業部会の部会長をしておりまして、現在までのディスクロージャー基準について報告し、ここまで来たわけですが、さっきも言いましたように、新しい金融行政、特に消費者、利用者の利便ということから考えると、ディスクロージャーが非常に大きな手法になるわけです。  ただし、このディスクロージャーはますます詳細、膨大になっていきますから、今の預金者向けのディスクロージャーでは限度があるので、マーケット、プロ向けのディスクロージャーと、利用者預金者向けのディスクロージャーと区別して、今おっしゃったような観点はやっぱり利用者向けのディスクロージャーとして大いに商品情報その他比較情報も出していくべきだと思います。
  49. 清水澄子

    ○清水澄子君 もう時間がありませんので。どうもありがとうございました。
  50. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 民主党・新緑風会の齋藤勁でございます。  今、私どもは衆議院に引き続きまして参議院でも修正案を準備しておりまして、時間がかかっていますけれども、一両日のうちというか、もう本日あたりにはでき上がるんですが、これを述べますと膨大な時間がかかりまして、これにまた御意見をいただくというと、大変限られた時間でございますので不可能だと思うんです。  冒頭の四名の先生方からの御見解の中で、共通する点として、各委員からもあった部分もございますが、私どもは地方支分部局に対して規定の追加をして、今地方財務局が兼務をして当たるということになっておるんですが、これは民主党の方の法案では金融庁というふうにするので、金融局を置いて、そしてまたその金融局に支局を置く、こういう支部組織にしていこうではないか、こういう提案をすることになっています。  西崎参考人からは、とにかく回数とか常駐体制アメリカの例も出ました。私もいろいろ文献を読ませていただきまして、アメリカでもいろいろまだ常駐することがいいのかどうか両論あるみたいですけれども、確かにある意味では非常に進んでいるということ、そして人員体制につきましても倍以上の人員が必要ではないか、こういうことを述べられたというふうに思っております。  それから、池尾先生につきましても、人員はもちろん必要ですよ、行政コスト増大というのは惜しむべきではない、しかし何でも肥大化すればいいというものではない、これも先ほどお話がございましたけれども、私もそのとおりだと思います。  また、地方財務局については独自につくるべきだというのは小林参考人からも伺っておりますが、今度の法案には独自の組織をつくるということについては明確にうたっていないので、私どもは独自組織をつくるべきだという修正案を出すつもりなんですが、この検査監督体制をやはり充実させていく、中央だけではなく地方もきちんとさせていく。この間の金融スキャンダルというのは中央だけではなく地方でもあったわけでありまして、一体化というのは私は当然の考え方だというふうに思いますけれども、改めて地方の検査監督についてのあり方について、具体的な組織も含めまして、それぞれの先生方から御意見を賜ればありがたいなというふうに思います。
  51. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 私は理想的には地方の検査官金融監督庁直属のものにしてやられればそれはいいと思います。ただ、現在、例えば財務局の中で机だけで仕切って、これは金融監督庁、これは財務局ということでやっても、果たしてどんな意味があるのか。  それから、特に地方の監督の場合は、地方金融機関は信用金庫及び信用組合、特に信用組合の場合は県の検査、県が権限を持っているわけですが、これも共同検査をやろうという体制になってきています。そうすると、そういった今まで不十分だった協同組合系に対する検査、しかも大蔵省所管、ここで一元化を言っておられますが、それに対する検査監督体制をどうするかという問題も非常に絡んでまいりますので、今度の発足としては私は無理だと思うんですが、将来の課題としては十分これは検討すべき問題だと思います。
  52. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 私も基本的には西崎参考人と同じ意見であります。これは繰り返しで冒頭に申し上げたことと重なりますが、私はこれで金融行政改革が打ちどめだとは絶対に思いたくないわけでありまして、より本格的な行政改革中央省庁の再編成の中で当然見直しがあるべきものであって、そういう意味ではワンステップとしての改革であるというふうにみなしております。そのワンステップの改革として考えるならば方向性としては望ましいだろうということでありまして、今後より本格的な改革につなげていく必要があるというふうに思っております。  それで、これも何度も申し上げておるわけですが、私は規制監督当局検査当局の間のある種のチェック、相互牽制というのは非常に重要だと思っておりまして、規模の大きな金融機関に関しましては現状においても日本銀行の考査と大蔵省検査というような形での相互ダブルチェックが入っているわけです。先ほど指摘がありましたが、協同組織金融機関に関しましては都道府県のみが検査をしているという問題があり、ダブルチェックの体制ができていないわけですね。この点に関して、ダブルチェックの体制を確立するということを含めて西崎参考人と同じ意見ですが、将来的により監督体制の見直しを地方についても行っていくということが必要であるというふうに考えております。
  53. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 基本的な考え方は今のお二人と同じでございますので省略させていただきますが、一つだけつけ加えさせていただきますと、私も日本銀行で考査という仕事に携わったわけでございます。この場合には、今おっしゃっている、要するに地方にある支局とかというものがどういうふうにカバーするかという、地方と中央との分業の問題について、一つ、非常に技術的な話ですけれども、日本銀行の例を申し上げると、日本銀行の場合は信用組合まで考査をするわけでございます。信用組合についても、すべてではありませんが、多くは本店から、中央から考査をするという体制になっておりまして、地方のものについても、地方にある小さい金融機関はその地方にやらせるのがいいのかどうか、そういう技術的な分業論は工夫の余地があろうかという気がいたします。
  54. 小林襄治

    参考人小林襄治君) 結局これは地方をどう考えるかということなんだろうと思います。現状でいえば、道府県という単位で考えていけば金融機関の数が少なくとも少ないと。それは別に独立の支局がやらなくてもいい、あるいは財務局で十分だという考え方もできるだろうと思いますけれども、将来までそういう状況でいいのかということ、あるいは地方の時代などとも言われておりますということと、それから別に各県ごとに支局を持つわけでもございませんから、それなりのいろんな工夫ができる。そういう意味では、今回わざわざ変えるのであれば、むしろ監督機関としての一貫性という意味で財務局は独立した方がいいんじゃないかなということが先ほど私の述べた趣旨でございます。
  55. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 どうもありがとうございます。  今回は第一勧業銀行そして野村証券と、銀行証券ですけれども、もう一つ、生保の破綻が、先般日産生命保険業務停止になったことで、生保についての不倒神話が崩れたという大きな見出しがございましたけれども、このことについて、この間の大蔵省検査並びに指導等今日から将来についてやりとりをした経緯がございます。たまたま昨日の夜も放送していた部分もありますが、きょうも各紙で生保がことしの三月期の決算を発表したということでそれぞれ公表されております。  総論的には別にいたしまして、情報開示に関してなんですけれども、生保に関しては銀行と同一視というのはなかなか難しいのかもわかりませんが、この情報開示が若干進んだ部分も今回の公表ではあるものの、いわゆる経営指標の一つでございます支払い余力、ソルベンシーマージンという指標があると思います。このこともこれから政府の方ともやりとりをさせていただくつもりでございますけれども、わかりやすい情報開示というのをいかに契約者に果たしていくか。  先ほど西崎参考人も、生保に限らずマーケットとしての情報開示というふうに、これもあろうと思うんですけれども、いずれにしましてもこの決算発表では保有している有価証券市場での取引が少ないなどの理由で開示していなかった時価情報の開示が進みましたけれども、結果的には決算資料では明記をされておりません。  この情報開示について残る時間お話をさせていただくんですが、ソルベンシーマージンについて、いわゆる経営指標の一つにすぎないんだというような会社関係の発言もあるんですけれども、この生保に対する情報開示のあり方というんでしょうか、このことについて御見解があればそれぞれの先生方から御意見を賜ればありがたいなというふうに思います。
  56. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 私は実は生保の方は余り勉強しておりませんで、大変雑駁なお答えになると思うんですが、いずれにしても私など比較的金融機関にはあるいは通じていると思われる、そういう立場の人間もなかなかわかりにくいんですね、見ますと。ですから、いかにわかりやすい情報開示をするかという、つまりそれは一つは財務諸表と、もう一つ商品内容ですね、約款も含めて、この両面あると思うんですね。  それからさらに、基本的には今の相互会社の仕組みで一体本当にチェック機能が、つまり株式会社の場合は株主からチェックされるわけですが、これも必ずしも十分に機能しているとは言えない面もありますけれども、相互会社におけるチェック機能のあり方という基本的な問題もあるんだと思うんです。  ですから、先生が今おっしゃったように、やはり生保における情報開示のあり方、これは機関投資家としてのマーケットに対する情報開示と、それから莫大な契約者を持っているわけですから、契約者、利用者に対する情報開示のあり方、約款のあり方、それから基本的には今のソルベンシーマージンの問題から支払い保証基金とかいろんな形で健全化を促進しているようですけれども、相互会社におけるチェック機能をどう強化していくかという問題も含めて集中的に検討する必要があろうかと思います。これは保険審議会の課題ではあると思うんです。
  57. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 支払い余力、ソルベンシーマージンの割合に関しましては、確かに経営指標の一つにすぎないわけですが、これは多分契約者が最も知りたいと思っている経営指標の一つだというふうに位置づけるべきであって、どうして経営指標の一つであるということが公開を阻む理由になるのか私には論理的に全く理解できないことであります。  それに関連して一言だけ補足させていただきますと、S&P、スタンダード・アンド・プアーズが生保に関しても格付を行っております。全社についてではありませんが、その一部大手に関しましてはいわゆる勝手格付で、依頼を受けない形での格付を行っております。  その格付の結果に関しまして、特に勝手に低目の格付をされた生命保険会社が、雑誌によりますと、これは雑誌の記事ですからもしかしたら間違いがあるのかもしれませんが、私が見た雑誌の記事によりますと、こういう低い格付は公開情報に基づく一方的なものだというふうに反発したと書いてありまして、私はその記事を読んでもうあいた口がふさがらない状態です。  非公開の情報を含めたらもっと内容がいいんであればさっさとそれを公開すればいいんであって、公開情報だけで見ると格付が低くなるのに文句を言うというのは実に何か転倒した状況であるということで、私は生保業界の情報開示に対する姿勢に対しては基本的に不満を持っております。
  58. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 私の生保について持っている非常に乏しい知識は既にお二人の方によってお話がございましたので、少し関連したことを一言だけ申し上げたいと思います。  それは、生保がもっと情報開示を進めて責任ある経営をするということが単に生保契約者に対してのみならず日本全体にとって非常に重要であるということでございます。  先ほど西崎参考人からもお話がございましたように、日本において株主による企業経営チェックということがこれまで非常に不満足であったわけでございますが、今後どういう株主が大きい役割を占めてくるかを考えると、やはり年金をしょった生保などが非常に重要な位置を占めることは間違いがないわけでございます。この機関投資家である生保がきちんとしたチェック役を果たすためにはその自身がチェックされるようでないとだめなわけでございまして、生保が情報開示を進めてチェックされる経営になるということが契約者に対してのみならず重要であると申し上げる次第でございます。  以上でございます。
  59. 小林襄治

    参考人小林襄治君) 既に他の参考人から言われているのと基本的に同じ意見ですけれども、できるだけその情報は開示すべきだというお話。それから、ソルベンシーマージ、少なくとも生保にとっては、保険会社にとっては最も重要な経済指標の一つのはずだと理解しております。  今、保険会社の話であったんですけれども、これは銀行に関してもある意味では全く同じだと。  生保であれ銀行であれ、そういう機関というものは、自分たちが実際どういうふうに資産を運用しているのか、これはもうできるだけ公開すべきである。それが今までされてこなかったというところが、ディスクロージャー等を推進しているわけですけれども、具体的にもう少し踏み込んだ内容まで含めたディスクロージャーが必要になってきているんじゃないかというふうに考えております。
  60. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 どうもありがとうございます。  この日産生命、そして引き続き生保のこれからの行く末につきましては、だれでもが大変危惧をしていることだというふうに思います。とりわけ、私も今お尋ねさせていただきました情報開示をやはり徹底して行うということ、そして生保業界では銀行に比べてディスクロは怠っていないなどとか、こういうことを発言しているんですけれども、銀行はいわゆるBISの自己資本比率、そして証券会社、大蔵省は自己資本規制比率を公開しているわけです。生保のソルベンシーマージンぐらいは当然ではないかというふうに思うんですが、なかなかこのことも、この間の生保業界と大蔵省のやりとりですと、どうも逆に、公表するとむしろ契約者に余計な危惧を来すのではないかと、こんなような事情もあるようでございますが、これは今後ただしていきたいなというふうに思っているところでございます。  最後に、時間もあと二分になりましたので、先ほど賀来参考人でございましたでしょうか、労働金庫の共管部分のお話があったと思うんですが、このことについて私どもは、今回はまずこの共管部分というのはなくして、いずれにしろ預金保険機構、農水産業協同組合、貯金保険機構等、主務官庁は金融庁に、金融監督庁にすべきだと、こういう指摘をしております。信用秩序維持のために財政的な措置が必要となる場合に限り大蔵省との共管という、信用システム関係機関の主務官庁は金融監督庁金融庁にすべきだと、金融庁というのは私どもの党の方の案なんですけれども、これらにつきまして御意見をいただければありがたいというふうに思います。
  61. 賀来景英

    参考人賀来景英君) お答えいたします。  既に冒頭に意見陳述をさせていただいたときに申しましたように、基本的に労働金庫等についての共管体制というのはよいものではない、適当なものではないという意見を持っております。  そのときにも申し上げたのでございますが、特にセキュリタイゼーションの担い手としていろいろな新しい業者と申しますか、新しい担い手ができているわけでございますけれども、そういうものについても従来型の縦割り監督体制がそのまま続いていこうとしていると。これは最初に池尾参考人からもお話があった監督機関の問題ではなくて、規制する法律縦割りであるということと見合うものと思っておりますが、その規制体系、法体系についても、それから監督機関についても一つのところが見る、あるいは一つ法律が基本的な基本法となるという意味での一本化が望まれることだと思っております。
  62. 齋藤勁

    ○齋藤勁君 ありがとうございました。
  63. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  きょうは、四人の参考人の皆さん、どうもありがとうございます。それぞれ大事な問題で御意見いただいたと思っております。私いろいろ感想あるんですけれども、池尾参考人賀来参考人が、組織をつくるということもあるけれども、それよりもまず検査監督あり方、中身の議論が先じゃないかということを言われました。私もそのようにその中身の問題が本当に大事だというように思っております。そういうふうに伺いました。  今この法案に対して政府が説明をしながらいろいろ質疑をしているんですけれども、これまでの弊害がいろいろあったということで別建てにして分けるということなんですが、いろいろ聞きながら、二つに分けたらそれだけで検査監督がきちっとやれることになるのかと、もっと中身をきちっと詰める必要あるなという感をいよいよ強くしておりまして、結局別建てに移すだけじゃないかということも非常に感じるところでありますが、そんなことを感じながら具体的に幾つか伺いたいと思います。  まず、賀来参考人に伺いたいんですが、御経歴ということで日銀におられて考査にも携わってこられたと。日銀の考査と大蔵省検査は違うこと、私も性格が違うというのは一応は承知しておるんですけれども、今回の野村、第一勧銀問題、大変な問題になりまして、そして大蔵省は九〇年と九四年に検査をやった、しかし的確に発見し切れずに対応がおくれたということも言われております。  そういう点で、こういう問題も具体的にクローズアップされているわけですけれども、賀来参考人が、そういう意味では考査という立場では専門でやっておられた経歴もあって、この大蔵の問題ではもうわきから見ていらっしゃつる立場であると思うんですが、これまでの大蔵省検査あり方として、今回の問題を通じてでも結構なんですが、どういう問題があるというふうに感じていらっしゃるか、例えればと思います。
  64. 賀来景英

    参考人賀来景英君) お答えいたします。  私も大蔵省検査は外から見ているだけなんでございますけれども、例えば最近、野村、一勧という問題がございましたが、私がやっておりましたころには大和銀行という問題もあったわけでございます。そして、これもまたやはり発見できなかったわけでございますが、これはさらにアメリカも発見できなかったことはよく知られているとおりでございます。  それから、先ほどから何回かお話がありましたように、アメリカ日本に比べ膨大な人間と時間を投入したしつこい検査をやっております。期間も投入人員も到底日本の及ぶところではないし、これまた話がございましたように、マークされた金融機関には検査員が常駐するわけでございます。大和は常駐のケースではありませんでしたけれども、それでも発見できなかった。これは決して開き直るわけではないのでございますけれども、そのような不正事件、不適当な行為を必ず今後ともすべて発見するということはなかなか言えないように思うわけでございます。いかに検査員を増強しましても、これは決して開き直りでございませんけれども、アメリカの場合もそうでございます、発見できなかったわけでございます。  私ども当時思いましたのは、これは大蔵省も同じだと思いますけれども、恐らく今度の野村、一勧にしてもしかりでありましょう、そういう一つ一つのことを発見できなかったのは、これはある意味で、そう申しますとおしかりを受けるかもしれませんが、仕方がないところがあると思います。しかし、本来、中で発見しなきゃいけないわけでございますが、中で発見できないような体制を私らもチェックできなかったということはやはり検査当局としては恥じるし、反省すべきところはあると思っております。  それからもう一つ、これも必ずしも大蔵省ということに限りませんけれども、先ほどもちょっと申し上げたんですが、デリバティブ等の最近の新しい商品についてのキャッチアップは、これは大蔵省にしても日銀にしてもなかなか大変なことでございます。そして、先ほど申し上げましたように、民間の人たちは商売のために日夜開発に邁進しておるわけでございますから、商売をやっていない人間はそれだけインセンティブが低いわけですので追いつくことは本来できません。追いつく努力はしなければいけませんけれども、今後とも追いつけない、追いつけない中でどういうチェックをするかというふうに考えていく必要があるだろうと思うわけでございます。  そうしますと、ここにおいてもそのものすべてをとらえることは、複雑なデリバティブに潜んでいるリスクをすべてとらえるということは恐らくできないであろう。やはり彼らのリスクをチェックする体制を見るというところに当局としては腕を磨いていかなければいけないのだと、そんなことを考えております。十分なお答えではなかったかもしれません。
  65. 笠井亮

    ○笠井亮君 ありがとうございました。  次に、西崎参考人に伺いますが、早期是正措置のことで突っ込んでいろいろやっていらっしゃると伺いまして、それに関連してなんですけれども、先ほども議論の中でありましたが、地域経済の活性化のために、信用供与のニーズにこたえるために金融機関が義務を果たすということも大事なことになっていると思うんです。  中小企業の産業活動の活性化に資するような中小企業金融とか、あるいは協同組合金融や地域的な金融業者の健全な営業の保障もきちっとやっていかなきゃいけない、そのことが求められると思うんです。そのために、一律ではなくて必要な手だても尽くすべきじゃないかというふうに思うんですが、その点についてのお考えと具体的にはどういうことが必要か、例えればと思います。
  66. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 地域金融機関の場合は地元企業の育成、地域経済の活性化と地域貢献という非常に大きな責任を持っているわけです。それで、大銀行がなかなかとれないリスクもこの地域金融機関がとっていく。ですけれども、これが今度早期是正措置対象になりますと、例えばそういうリスクの大きい貸し出しをした場合は、途端に要注意債権という形で分類されるわけです。もちろん自己資本をふやせばいいんですが、例えば協同組合系の場合はとてもこれは限界があるわけです。それで、劣後ローンを今度とるという、そのほかの拡充策もという要望を出しているわけです。  先ほどの御質問にお答えできなかったんですが、実は早期是正措置導入まで一年間の準備期間を置いてあるわけです。その間にできるだけ自己資本を拡充して分子を大きくして、それで自己資本比率を改善してほしいということを我々は願ってのことなんですが、例えばマスコミから主月期決算でこれは自己資本比率何%、どういう行政処分に該当するかというようなことをマークされると、自己資本の拡充も難しくなってくる、そうなると結局分母を減らさなきゃいけない。分母を減らすとなれば貸し渋りであり、同時に今までとってきたリスクがとれないことによって地元企業の育成、地元経済の活性化、貢献という面が非常に制約されるという問題になるんです。しかも、これがビッグバンによって、地域金融機関が本当にビッグバンを活用できない場合はさらに地域経済にいろんな問題が起きてくるという二重の課題を実は今背負っておると思うんです。  例えばアメリカの場合は、地方で集めた資金は地方に一定比率還元するということを義務づけているわけです。日本はもちろんそれがないんですが、しかしこれから日本は地方の時代と言われるときに、ですから早期是正措置の基準の発動の場合もあそこに幾つか猶予措置がついておるわけです。つまり、仮に基準を下回っても一定の経営改善のめどが立っていればこれはワンランク上げるという猶予措置が入っているわけですし、例えばそういった問題に地域貢献の問題をできるだけ反映できないものだろうか。  それから、貸し出しにしても、政府金融機関の問題が出ていますが、確かに民間と競合する部分から撤退するのは当然ですけれども、例えば保証業務として地域金融機関に対して保証していく、リスクの大きい信用供与に保証していくとか、そうなればこれは自己資本比率としては改善されるわけです、分母が調整されますから。いろんな形で考えていかなきゃいけないと思うんですが、基本は健全経営の原則から大きく下回って金融機関としての存在条件が果たせない金融機関は、地方経済の貢献とか地域企業の活性化といってもこれは限界があるだろうというふうに思います。
  67. 笠井亮

    ○笠井亮君 ありがとうございました。また、いろんなことで議論もしていきたいと思います。  小林参考人に伺いますが、イギリスの問題を突っ込んで研究されてきたということであります。検査監督への国民の参加ということも言われて、私、国民の視点というのは大事な問題の一つかなということで伺っておりました。  その上で伺いたいと思うんですけれども、適者生存ということが今よく言われたりしまして、先ほど来、日本版ビッグバンということが問題になっていますが、証券保険銀行の垣根を取り払って金融市場自由化を進めるということになると、残るのはごく少数の大銀行になって、外国からもどんどん来るということになるのかなということを一つ想定しているわけです。  ビッグバンの成功例と言われるイギリスの場合、古い歴史を持つ証券会社まで整理、淘汰されて、それに追い込まれて国外の大金融機関にいわばのみ込まれたというような形で言われたりもしておりますが、そのことで中小企業や商店の預金を預かったり、それから融資を担っていくような信金、信組など中小金融機関の整理、淘汰がそういう意味ではさらに激烈に進められて、地域経済や国民に対してさまざまな影響があるんじゃないかというようなことを思うんです。イギリスの場合、その辺の地域経済や国民に対する影響という点では、ビッグバンという点で、もちろんイギリスのビッグバン日本ビッグバンはまた規模内容も違いますが、どんなようなものがあったのか、その辺についてもしお話しいただければと思います。
  68. 小林襄治

    参考人小林襄治君) お答えいたします。  大変大きな問題で、短時間に答えるのは非常に難しいのですけれども、ビッグバン金融界の変化があったというのは基本的に証券業者の話です。要するにブローカー、それからイギリスではジョバーというディーラーの話なわけです。要するに、これは今まで個人組織の比較的小規模の会社でやっていた、それで外部資本の参加も認めない、そういう形でやっていた業者たちなわけです。それができなくなって大銀行に買収されていく、あるいは業務をやめるという形があった。ただ、それを通じて利用者にとって不便があったのかというと、私はほとんどそういう現象というのはなかったんじゃないかなということが一つです。  それからもう一つ、ベアリングズのような有名な銀行ですけれども、ただ規模からいうと非常に小さい。大和銀行は一千億ぐらい何でもないですけれども、ベァリングズは一千億赤字になりますと買収されざるを得ないという構造であったと。  むしろ私は、逆に一千億も赤字を出したらそこの経営者は全部かわって買収されるというぐらいの銀行体制の方がいいんじゃないかなというふうに個人的には思っております。  それで、あとイギリスの方で中小企業金融とかその他の話になるわけですけれども、これは直接ビッグバンの問題というよりも、この間、銀行法とかその他いろいろ変わってきております。ただ、広い意味ビッグバンとも絡むとすれば、競争促進政策、それから新規参入というのをかなり歓迎するというふうに見ていく。むしろそういうことで、例えば中小企業とベンチャーキャピタル絡みの、あるいは日本的に言えば店頭市場というか、そういうものの振興策というものをかなりとっている。これも紆余曲折ありますけれども、そういう面では新規参入を歓迎した、それから外国のノウハウを相当導入してきた、そういうことがそれなりの活性化にはつながっている、そういう意味では一面成功だとも言えると思います。  それから同時に、逆に特に現在アセットマネジメントのビジネス、これは年金の管理ですけれども、結局そういうものがイギリスで今最も重要な金融ビジネスになっているわけです。そして、そこは大手五社がシェア全体からいえばかなりの部分を握っていくとか、そういう意味での集中が進んでいく。ですから、それに関して、証券市場では何かを行う場合は必ずイギリスの公正取引委員会の許可を得てからルールを決めろとか、そういうルールまで加わっているというような事情で、総合的にちょっと一言で何とも言えないんですけれども。
  69. 笠井亮

    ○笠井亮君 かなり広範な問題を申し上げたものですから。どうもありがとうございました。  それでは、池尾参考人に伺いたいと思うんですけれども、先ほどのお話でも利用者、それから消費者の保護の問題についてもお触れになって、若干質疑もあったのを伺っておりました。今グローバルスタンダードということがしきりに言われるわけですけれども、そのことを言うのであれば、この消費者保護の問題についても世界標準並みにしていくということが求められているし、法整備の問題とそれから被害者が実際いる、そういう救済の体制の問題だとか含めてやっていく必要があるのかなと。アメリカの著名な弁護士なんかからも、そういう点では日本は十五年おくれているというような指摘もあったりするのを私も読んだりしているんですけれども、なかなかこれも難しい問題がいろいろあるなというふうに感じているところなんです。  ディスクロージャー、情報公開ということで、この問題はやっぱり大事な問題だと思うんです。  よく賢い消費者ということが言われまして、それでもう懲りているから大丈夫だということが一面言われたり、あるいはディスクロージャーされて後は自己責任できちっとやれるんだという話になってくるわけです。  先ほど日産生命の話も出ておりました。例えばディスクロージャーによっていろいろな面があると思うんですけれども、金融機関の経営実態あるいは危機の実態が本当に消費者に知らされるのか、そうしたらそういう金融機関が一遍につぶれちゃうということになりかねないという事態もあると思うんです。どの時点でどうだれが知らせていくのか、そしてそういうことが及ぼす効果やその影響も考えますと、結局は一般的なルールとか一般的な情報を提供するにとどまるということになりかねないんじゃないか。その辺がなかなか難しい問題もあると思うんです。  他方で、商品が多様化してハイリスク・ハイリターンという問題もあるということで、そういう意味では消費者がきちっと判断できるような情報が欲しいというのもあると思うんですけれども、全体として今必要な情報提供あるいは適合性の原則とか、それから貸し手責任の問題ですか、片や圧倒的に貸し手の方が資金力も情報も持ち、それから公共性、社会的責任もあり、他方でいわば消費者は弱者の立場にあるということになるわけですから、そういう問題も含めて問題になってくると思うんです。  全体として欧米とも比べながら、そういう消費者保護利用者保護がどうあるべきなのか、それから監督、監視ということで新しい体制を今提案されているわけですけれども、どういうものがその中にきちっと盛り込まれ、つくられていかなきゃいけないのかということについて御意見をいただければと思います。
  70. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 今後、公正な取引を確保し、消費者、利用者保護していくために我々がなさなければならないことというのは非常にたくさんあるといいますか、要するに課題は山積みだというふうに私も思っております。そうした課題の大きさに比べますと、この間急に、極めて安易に預金者なり保険契約者なりの自己責任という言葉を使うというふうなことが見受けられるような気がいたしまして、これは実に不適切だというふうに私は思っております。そんなに簡単に預金者自己責任を問うなんということは本来できないことであって、自己責任を問うからにはそれなりの体制をとってきたという裏づけがあって初めて自己責任という言葉を使えるのであって、そうした十分な体制をとってこないまま急に自己責任だと言うのは、まさにそれは言っている人の責任を回避するための発言ではないかというふうに勘ぐらざるを得ないような気がいたしております。  それで、一つ大事なことは、自由化されれば何をやってもいいんだということでは全くないわけでありまして、金融取引に関しましては適合性の原則というのが徹底して確保されていく必要があると思います。それは個々の消費者の理解力にかなった商品、サービスのみを提供するという重い責任が供給者のサイドにあるんだ、そういう責任を十分に果たした上で初めて利用者の側の自己責任ということが問題になるんだということを徹底する必要があると思います。  そうしたことを徹底していく上でも、事故が起こった際の事後的な救済を図る上でも、司法的な基盤をもっと強固にし、たやすく利用できるような形での司法的救済の道を開くというふうなことも重要ではないか。場合によっては製造物責任法に対応する、金融に関する貸し手責任等を明確化した消費者保護立法の必要性もあるというふうに考えております。
  71. 笠井亮

    ○笠井亮君 ありがとうございました。
  72. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 最後になりましたが、いましばらく御辛抱ください。  私はちょっと角度を変えまして、株主代表訴訟制度につきまして皆さん方の御意見を承れればと思います。  金融界の不祥事があります。今回はそういうことに対応するために金融監督庁をつくる、そして検査の徹底を図る、あるいはまた罰則を強化する、こういうことで対応していこうと。これは言うならばお役所による上からの規制、監視だろうと思います。これと車の両輪と例えてもいいのでしょうけれども、下からの一般株主による監視も必要だろう、こういう気がいたします。それが株主代表訴訟だろう、こう思います。車の両輪でありますけれども、やっぱり上からの規制、監視よりは、ビッグバンを控えて下からの自主的な監視の方がはるかに意義深いものではないか、株主代表訴訟の意義はますます大きい、私はこう考えておるわけであります。  第一勧銀のいろんな問題が取り上げられておりますけれども、あれの原因は何だと一言で言えば、やっぱり歴代の頭取たちが、特定株主、総会屋と癒着する、結託する、そういう風土を見て見ぬふりをしてきたことに最大の原因があるんだろうと思います。あのうちのだれか一人が、もう総会屋とは手を切ろう、やめようと、株主総会は自分が責任を持って対応する、五時間かかろうが六時間かかろうが問題ではない、こういうことできちっと言えばあの問題は起きなかったわけでありますが、そういう立派な頭取が遺憾ながら一人もいなかった。何とか簡単に済ませるように考えてくれよということを陰に陽に下の者に押しつけて、それでこういう事件がひっきりなしに起きてきた、こういうことだろうと思うわけであります。  いつまでたってもこういう問題は解決しない、この体質が一掃されない限りはどんな立派な組織をつくってみても仕方がないことだろう。やっぱりこれを監視していくのが各株主でありまして、株主代表訴訟を提起して、例えば第一勧銀の場合には焦げついた不良債権の七十五億、あれは当然のこと歴代の頭取たちに請求すべきだろうと思います。そして、多分裁判所はそれを認めると思います、ああいう不正行為、不法行為を黙認していた、こういうことでありますから。株主代表訴訟の持つ意義はますます大きくなってくるだろうと思うんです。  しかし、これまでもこういう総会屋絡みの事件というのは、実は最近でも味の素、高島屋、それからキリンビール、伊勢丹、そごう、イトーヨーカ堂とかいろいろ起きたわけです。これはやっぱり経団連にも一つの責任があるんだろうと思うんです、経済界の指導者ですから。もういいかげんにしよう、もう総会屋を追放しよう、これから事件を起こすような会社があったらもう我々の仲間に入れない、永久追放だと。それぐらいの宣明を発すべきであったにもかかわらず、その都度何か陰でぼそぼそ困ったな困ったなと言っている程度なんですね。一体どうしたんだろうかとある席で私はこの話をしましたら、ある経済人が、先生、そんなことを言っても無理ですよ、経団連の会長その他の幹部連中の会社も皆やっているんですよ、とても無理ですよと。本当かうそかわかりませんけれども、そういうことを言っておりました。  やっぱりそういうことじゃいかぬので、株主代表訴訟を我々としても守り立てていく必要があると思っておりましたら、つい一月ほど前でしょうか、経団連が株主代表訴訟を制限しよう、こういう提案をしたということが新聞に出ておりました。その理由が大変振るっておる。こういう制度があると経営者が萎縮してしまうと。これこそまさに盗人たけだけしい話だろうと思うんですね。  自分で悪いことをしておいて株主に訴えられる、そうすると萎縮してしまうと。そんなことは普通にやればいいことなんです。普通にやって利潤を上げる、それだけのことなんですね。ところが、陰でこそこそ悪いことをしておいて、訴えられるのほかなわぬ、制限しようと。  まさかこんな盗人たけだけしい提案に賛成する政党があろうとは思えませんけれども、その新聞によると、何か近々各党に話しかけて議員提案ででも持ち込みたいんだということも書いてありました。おかしな話だなと、こういう気もしておるわけであります。  こんなことが続く限りいつまでも問題は解消しない、やっぱり株主代表訴訟できちっと対応していく。こういう問題につきまして、皆さん方経済が専門のようですから、株主代表訴訟は商法の問題、法律の問題なので専門外かもしれませんけれども、やはり経済人として無関心ではおられないと思います、経済専門家といたしまして。いろんな意味で御研究もなさっておるので、この株主代表訴訟を制限しようとかかっておる経団連の態度につきまして、皆さん方のひとつ高道な御意見を承れればと、こう思うわけであります。  残り時間がほぼ五分ありますので、一人一分ぐらいでお願いいたします。
  73. 西崎哲郎

    参考人西崎哲郎君) 経団連のその提案がどういうものか私は存じていませんが、当然しかし株主代表訴訟は私は活用すべきだろうと思いますし、現実にこれはもうどんどん出てくると思います。  問題はさらに、株主代表訴訟ではなくて、要するに企業防衛、企業のためにということが社会的責任、公共的な責任あるいは株主に対する責任より優先しているわけですから、ペナルティーを大きくして、企業のためにと思ってしたことがもちろん経営者としてもあるいはその金融機関、企業全体にとっても取り返しのつかない打撃を受けるという、それがはっきりしてこないと、基本には日本の原因責任や米法の結果責任という法体系の考え方の問題もあるんですが、しかし私は総会屋の問題だけではなくて、過剰融資の問題にしても不良債権の問題にしても解決しないだろうと思います。
  74. 池尾和人

    参考人池尾和人君) 私も、株主代表訴訟を初めとして外部からの経営に対するチェックということが今まで以上に強く働くような体制をつくり上げないことには、日本企業の抱えている問題は根深い構造的な問題であって、経営に対する外部からのチェック体制の確立ということがなければ、解決といいますか克服していくのは非常に難しいと思います。  それで、株主代表訴訟の場合もさまざまな壁があるわけでありまして、経営の内部情報等について一般の株主はアクセスしにくい。したがって、訴訟をしてもなかなか勝てない可能性等があるわけですね。したがって、刑事事件になったりとか、とにかく検査当局が入って明らかになった事例についてしか実質上の株主代表訴訟はできないというふうな問題等があるわけでありますから、これはずっと出ております情報開示等の問題と絡みますけれども、株主代表訴訟は一つの手だてとして、それを支えるようなほかの手だても含めて外部からの経営チェック体制ということを強化するべきであっても、それを緩和するということはあり得ないことだというふうに思っております。
  75. 賀来景英

    参考人賀来景英君) 今、株主代表訴訟の点を強調されましたけれども、そして私はそれは重要な意義を持つと思いますけれども、これは申すまでもなく株主が権利を行使するときの一つの極限形態でありまして、そういうものが存在する、実際に起こされなくても存在するということだけで牽制効果を持ちますが、しかしこれはあくまで極限形態でありまして、やはり日常的にもっと、訴訟という形態でなくて、株主による経営のチェックが行われるということが重要なことだと思うわけでございます。  ですから、やや逆説的に申しますが、私は総会屋の跳梁を許しているのは一般株主の責任である、このように考えております。彼らが黙っているから総会屋の独壇場になるわけでございます。  しかし、これはもちろん一般株主よしっかりせよというふうな精神論を説いても全く無意味でございまして、そうなっている仕組みを改めなければいけない。その仕組みの最大のものは日本経済の持ち合いに象徴されるような構造でございます。当然に黙っている株主が大多数を占めている、そこを変えていくことが一番必要なことだと思っております。
  76. 小林襄治

    参考人小林襄治君) 株主代表訴訟も一つの経営をチェックするシステムだとは思いますけれども、先ほど池尾さんからもあったように、それでできる範囲というのも現状においては限られるという話が一つと、それから今、賀来参考人がおっしゃったように、現実には多数株主というのが相互持ち合いのもとで、結局仲間が多数派の株主になってしまっている、お互いにそういう構造になっている、したがってチェックもきかない、そういうふうな問題が根本にあるんじゃないかということだろうと思います。
  77. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私も全く同意見でございまして、役所による上からの検査、監視よりも、さらに一般株主による、むしろ一般国民と言ってもいいかもしれません、監視が極めて重要な意義を持つのだろうと。先ほど国民参加の検査という言葉も使われておりましたが、そのシンボルとして株主代表訴訟を考えていると、こういうわけであります。  最後になりましたけれども、もしこれから経団連がこの株主代表訴訟を制限しようという動きがあるといたしますれば、皆さん方にもお願いしておきますけれども、どうぞ健筆を振るって、そんなばかなことはない、許されないということを大いにPRしていただきたいと思いまして、私の質問を終わります。
  78. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様方に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。  次回は明十一日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時七分散会      —————・—————