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1997-06-12 第140回国会 参議院 厚生委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十二日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  六月十一日     辞任         補欠選任      渡辺 孝男君     阿曽田 清君  六月十二日     辞任        補欠選任      水島  裕君     加藤 修一君      菅野  壽君     山本 正和君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         上山 和人君     理 事                 尾辻 秀久君                 佐藤 静雄君                 和田 洋子君                 菅野  壽君     委 員                 大島 慶久君                 塩崎 恭久君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 南野知惠子君                 宮崎 秀樹君                 阿曽田 清君                 加藤 修一君                 木暮 山人君                 山本  保君                 山本 正和君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 釘宮  磐君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君    政府委員        大蔵省主計局次        長        溝口善兵衛君        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生大臣官房審        議官       江利川 毅君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十一日、渡辺孝男君が委員辞任され、その補欠として阿曽田清君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 上山和人

    委員長上山和人君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 総理、おはようございます。本日は、私ども委員会に来ていただきまして、ありがとうございます。せっかくの機会でありますから、少しでも多くお考えをお聞かせいただきますように質問は手短に申し上げます。  総理は、六つの改革一つ社会保障制度構造改革を挙げておられます。  そこでまず、このところよく議論されます社会保障国民負担率についてどのようにお考えか、お尋ねをいたします。
  5. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私の記憶では、国民負担率というものを一つ目標としてかざされ、それをおおむね高齢化のピークに達する時代においても大体五〇%以内という数字を明示されましたのは、第二次臨時行政調査会作業の結果であったと記憶をいたしております。その当時におきましては、まさにこの国民負担率という言葉は租税負担率及び社会保険料とにとどまっておりました。  しかし、今、財政構造改革というものに着手をし、その中で五原則を示してまいりましたわけでありますが、この場合、私どもはこの従来からの概念に加えて財政赤字を含め国民負担率を五〇%以下に抑えたい、そういう目標を立てております。そして、この目標に向けてあらゆる歳出分野についてまさに聖域を設けることなく見直しながら縮減に取り組んでいかなければなりません。  社会保障におきましても、この目標を踏まえまして、国民経済と調和のとれた社会保障制度を構築していくことを目指しながら、介護など必要な需要に対応しつつ、年金医療中心にしながら効率化を図っていくことが避けて通れない必要なことだと考えております。  もとより、その社会保障というものの性格、これは申し上げるまでもなく国民の受益と負担に密接に関係するものでありまして、その改革を行っていく上におきましては、国民合意を得ながら、将来世代負担が過重にならないように長期的な視点に立って考えを固め進めていかなければならない、そのように考えておる次第でございます。
  6. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 社会保障制度構造改革を進める中で、医療については抜本的な改革が必要であります。そして、その抜本改革はまさに待ったなしの状況であります。  今後どのように抜本改革に取り組んでいかれるおつもりか、総理の御所見をお伺いいたします。
  7. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 現在御審議をいただいております健康保険法そのものが、その抜本的な改革に取り組んでまいります。その期間内においても、少なくとも保険財政を安定させるだけのものを国会において御承認をいただくべく法案化し、御審議を願ってきたものでございます。言いかえますならば、現在御審議をいただいております医療保険制度改革、これ自体がそのいわばスタートの地点にあると申し上げても過言ではありません。  そして、将来を考えてまいります場合には、恐らく本院における御論議においても御指摘をいただいてまいったと存じますけれども、現在の薬価制度あるいは診療報酬体系、こうしたものを見直していくこと、老人医療制度の根本的な見直し、さらに医療保険制度そのもの仕組みにまで入っての再検討、あるいは医療提供体制改革などにつきましての総合的な改革を進めていく必要がございます。  与党三党が今回の法案の施行時期までに医療改革のプログラムを取りまとめることとしておられますし、厚生省協力を得て与党医療保険制度改革協議会がその取りまとめの作業をされることとなっております。  政府の立場といたしましては、この結論が出されましたら、これを尊重しながら抜本改革具体化に向けて成案を取りまとめまして、法案等の形において国会でぜひ御審議をいただき御協力を賜りたい、そのように願っております。
  8. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 医療技術高度化国民医療に対するニーズの多様化が進む中で、今後ともこれまでのようにすべてを公的医療保険でカバーしていくべきかどうかについても検討していく必要があります。  国民保険体制の達成以来三十数年を経た今日、公的医療保険役割そのものを見直す時期が来ていると私は考えておりますが、総理の御見解お尋ねいたします。
  9. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに、限られました公的医療保険財源制約というものを考えました場合には、どこまでを保険給付の対象とすべきかという点についてさまざまな御議論が現に存在をいたしております。そして、これは公式な答弁を申し上げれば、国民の必要にして適切な医療は今後とも公的医療保険により対応していくことを原則として考えておりますが、その給付範囲については、医療技術進歩医療に対する国民要求多様化などを踏まえ、抜本改革を進める中で検討してまいりたいという答えになるのだと思います。  その上で、逆に私は今後の御論議の中でぜひ御検討いただきたいと思っておりますことが二点ございます。  一つは、本委員会医療専門家もおられますので特に申し上げたいと存じますけれども国民保険仕組みが生まれましてから今日まで、国民には保険診療自由診療かその一方を選択するという選択肢しかございませんでした。しかし、その保険給付というものを土台にしながら、それに例えば民間保険なり御自身負担なりこれを組み合わせる、いわば自由診療保険診療という二つ選択肢の上に公的医療保険制度というものを基盤に置きながらみずからの選択によってこれを組み合わせる、継ぎ合わせる、そうした方式は考えられないものであろうか、こうした問題意識一つ私にはございます。  同時に、もう一つ問題点、これは我が国診療報酬体系発足時におきまして、ドクターズフィーホスピタルフィーを分離した形にはせず、ある意味では薬剤差益というものをもって医療機関経営の安定に資することを制度の根本から組み込んでスタートして今日まで参りました。果たしてこうした姿が今後も望ましいものであるのか。少なくともドクターズフィーホスピタルフィーというものはある程度分離できないか。その上で、実勢価格における薬剤取引とともに、薬剤差益というものを医療機関経営の収入の大きな柱として考えなければならないような診療報酬体系考え直す必要はないのか。実はそうした問題意識も個人として持ち続けております。  何回かそういう試みにも挑戦しながら私自身は残念ながら成功いたしませんでしたが、抜本的な改革をお考えいただきます際にこうした視点にも目を向けていただくことができれば、私は将来における一つ検討すべき課題の中にそうした問題も存在するのではないか、そのように考えております。
  10. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今、医療保険につきましては、総理の御持論だと思いますが、お聞かせをいただきました。  国民医療あり方を見直すためには、この医療保険制度のことだけでなくて医療提供体制にも踏み込んだ改革が必要であります。よく言われます三時間待ちの三分診療などということにあらわされますように、国民の不満もいろいろございます。  そこで、医療提供体制見直しについて総理の御所見をお伺いいたします。
  11. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに御指摘のように、国民医療あり方見直してまいります場合、医療保険制度だけではなく医療を提供するその提供体制というものに対しても改革が必要であることは論をまちません。こうした観点から、先般閣議決定をいたしました「財政構造改革推進方策」におきまして、医療につきましては「医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたる抜本的構造改革を総合的かつ段階的に実施する。」、そのようにいたしております。その上で、医療提供体制というものをどうとらえて組み立てていくのか。  昭和四十年代の後半であったと記憶をいたしますけれども、無医大県解消というかけ声のもとに全国に国立医科大学を設置し、医師を非常に大量に養成するということを目指した時代がございました。これはこれなりに私は一つの大きな役割を果たしてきたと思いますし、地域医療体制の整備の上でも大きな効果を持った部分があることを決して否定いたしません。同時に、その中で逆に大病院志向と言われる状態が全国的に広がってまいりました。  そして、かつて私どもが育ってまいりました時代には、御近所におられるお医者様がいわばホームドクターかかりつけ医役割を果たしていただくことにより、地域健康管理というものは自然体のうちで組み立てられていたものがあったと存じます。現在、全国的に見てその体制は大きく大病院主義にシフトしつつあるように私には見えます。言いかえれば、身近に相談のできるお医者様が次第次第に存在しておられない、これは一般医科ばかりではなく歯科診療の場合にも同様な問題点が生じつつあるという感じを私は持っておりますけれども、こうした点にまで御論議を深めていただくことができるなら、私としては非常に幸せだと。  医療提供体制というものを論議の俎上にのせるだけの、その価値ある御議論をいただける、これは当然のことながら医師歯科医師だけではございません、薬剤師さんたち、あるいは医療のチームとして欠くことのできない存在であります看護婦さんたち、さらに各種の検査技師等も含めまして、私は提供体制というものを改めて御論議をいただく、その中に政府としても加わり政府としての考え方も申し述べてまいりたい、そのように思います。
  12. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 患者負担見直し中心とする今回の制度改正は、私はやむを得ないと考えておりますが、それでもあくまでも緊急避難的な措置であると考えております。  そこで、今回の改正を今後の医療保険改革の中でどのように位置づけておられるのか、総理の御見解お尋ねいたします。
  13. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今回御審議をいただいております医療保険制度改革案につきましては二つ側面があろうかと思います。  一つは、抜本改正に必要な検討の時間、その時間を与えてくれる、言いかえればその間の保険財政の安定を図る、これが一つでありましょう。同時に、給付負担見直しというもの、これは国民痛みを伴うものでありますけれども、まさにそういう問題点存在というものを改めて国民にも御認識をいただき、その上であるべき姿を探していく、その土台となる共通的な問題意識を育てていただく、私はそういった意味でも医療保険制度改革第一歩として本法案のできるだけ早い通過成立というものを心から願ってまいりました。  この機会に改めて、でき得る限り早くこれを成立させていただきますことの必要性を心から委員各位にお願いを申し上げる次第であります。
  14. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 先日、私はこの委員会での質問でまさにその点についてお尋ねをし、そのときに、抜本改革第一歩であると同時にやはりはっきり言えば時間稼ぎの側面も否定できないのではないだろうか、そんなことも申し上げましたが、今、総理もそういう趣旨の御答弁をいただいたものと存じます。  財政構造改革会議は、八千億円とも見込まれる社会保障関係費の当然増のうち五千億円を超える削減を求めております。医療保険抜本改革は、最初に申し上げましたように、いよいよ待ったなしであります。その実現に向けての総理の強力なリーダーシップを期待いたしまして私の質問を終わります。
  15. 木暮山人

    木暮山人君 おはようございます。平成会木暮でございます。  本日は、せっかくの機会でもありますので、まず財政構造改革医療保険改革の問題についてお伺いしたいと思います。  政府与党財政構造改革会議は、去る六月三日、「財政構造改革推進方策」をおまとめになりました。  そこで、財政構造改革社会保障構造改革、なかんずく医療保険構造改革との関係について総理の御所見をまずお伺いしたいと思います。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本質論に入られましたので多少時間をちょうだいすることをお許しいただきたいと思うのでありますが、今、我が国財政が危殆に瀕している、この点につきましてはほとんどの方々の認識が既にその状態を迎えているということでそろっておると私は考えております。  そうした中で、財政構造改革というものは政府として避けて通ることのできない緊急の課題一つであります。同時に、この少子・高齢化の進展いたしております中、我々は出生率の低下というものを問題視しながらも、実は一・四二といった数字現実のものとなるところまで深刻に問題をとらえてはおらない時期がつい先ごろまで続いてまいりました。一方で、高齢化は従来からの速度を緩める状況ではございません。  そういたしますと、財政構造改革考えていくと同時に、社会保障構造改革は、この高齢化がなお進み年少人口が減少していく中において、働く世代が支え得る仕組みというものをいや応なしに模索しなければならないわけであります。  そして、それは現実の問題に置きかえました場合、年間新たに毎年のように百万人ぐらいずつ新たに年金受給権が発生するという状態現実のものといたしております。この新たに年金受給権を発生させる百万人という人口、これは決して年金給付額だけではございません、老人医療費等々をもちろん加えてのことでありますけれども厚生省という一つ行政官庁予算でこれを考えます場合には、年間継続して何らの制度改正を加えず、改善措置をとらなかったとしても八千億円ぐらいずつこれからふえ続けるという状況にあることも否定のできない事実であります。  我々は、一方では将来においてもその時代における現役の働き手の世代が支え得る仕組み社会保障において構築していかなければなりません。同時に、これは財政構造改革を進めます中で、八千億と言われる当然増の中において、社会保障構造改革を進めることでその当然増をどこまで抑え込むことができるのかというテーマを与えることにもなります。  今、私どもとして、その中の一つであります医療保険制度につき、先ほど御議論のありましたように、痛みを確かに伴う改革でありますけれども、その第一歩とも言うべき医療保険制度改正についての御審議をお願い申し上げております。これによりまして、今後しばらくの間の保険財政の安定を図りながら次の抜本改正への内容を固めてまいりたいと。  その両者の関係は私はそのように位置づけております。
  17. 木暮山人

    木暮山人君 どうもありがとうございました。  先般の財政構造改革会議報告では、社会保障関係伸び率を二%以下に抑制することとともに、平成十年度においては五千億を上回る削減を行うとしております。しかし、診療報酬薬価基準等抜本改革効率化によってどれだけ当然増の切り詰めが可能でしょうか。結局は、社会保障給付を切り下げ、国民負担を押しつけるだけの結果に終わるのではないでしょうか。この点について総理の御見解をお伺いしたいと思います。  また、仮に国民に何がしかの負担を求めるおつもりであるならば、その点については今ここで国民の皆さんの前で明らかにする必要があると思います。いかがなものでございましょうか。
  18. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど御答弁を申し上げましたように、社会保障関係費は、人口構造の変化のみを土台として考えましても、当然増経費として年間八千億円余りの歳出の拡大の要因であります。我々としては、あらゆる歳出削減策を講じながら、検討しながら当然増の抑制に努めてまいるわけでありますが、特にその相当部分を占めております医療関係予算伸び抑制というものは非常に重要な要点でありますし、政府としては、与党三党の御議論も尊重いたしながら医療保険制度抜本改革案をできるだけ早くに取りまとめた上で、できる限り十年度から実施に移してまいりたい、そのような願いを持っております。  いずれにいたしましても、増加する社会保障の費用、それは税であるのか、社会保険料であるのか、あるいは自己負担であるのかを問わず、結局は国民の御負担ということになります。これを国民の御理解をいただきながら、どのような組み合わせで全体を構成していくのか、これは社会保障構造改革というものを進めていく上に大きな課題であることは議員が御指摘のとおりでございます。  その上で議員は、国民負担増を求めるのか、もしその必要性があるならこの場ではっきりと申し上げるべきであるということを言われました。我々はできるだけ医療費効率化を進めなければなりませんけれども、それでも増加する医療費というものは存在するわけでありまして、国民にこの点については公平な御負担をいただかなければならない、そう考えております。  同時に、例えば、今、議員診療報酬体系見直しということをお触れになりましたが、診療報酬体系そのものの中に矛盾点を含んでおることは議員専門家として御承知のとおりであります。例えば、現在の医療保険制度仕組みにおいて、歯科診療を例にとりました場合、中間材料消耗品として診療報酬の計算のベースに入っておりませんけれども現実中間消耗材料を使用しないで義歯が作製できるかといえば、作製ができるわけはありません。しかし、その分は実は診療報酬体系の中において顧みられていないといった問題点がございます。  先刻、他の議員の御質問に対し私が、ドクターズフィーホスピタルフィーをきちんと分離していくということも考える必要があるのではないか、そのようなあえて答弁者問題提起の形をとらせていただきましたのも、診療報酬体系を見直すといった場合に、そうした問題点も洗いざらい出した上で新たなものを組み立てていく必要があるのではないか、そのような問題意識を持っているからであることも申し添えたいと存じます。
  19. 木暮山人

    木暮山人君 特に、平成十年度予算においては五千億を上回る当然増経費削減が打ち出されております。この点、先日の当委員会において小泉厚生大臣からは、その大部分医療から捻出しなくてはならない旨の答弁がありました。  そこで、改めてお伺いいたしたいのですが、総理は当然増を削減するために来年度の医療保険改革において再び国民負担増を求めるおつもりでしょうか。あるいは、来年度は新たな負担増は求めないと国民の皆様に説明し、明確な御答弁をいただけないものでしょうか。
  20. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、ここで来年度全く新たな国民負担を求めることはありませんと申し上げるだけの自信はございません。それは、社会保険料制度を賄うにいたしましても、一般財源から繰り入れてその補てんをいたしますにいたしましても、これは皆国民負担であります。そして、それだけの当然増を圧縮いたしましてもなお三千億という現時点においては大変巨額なお金を厚生省はみずからの予算範囲内でやりくりをしていかなければならないことになります。自己負担もまた国民負担であります。  私どもは、制度としての効率化については全力を挙げて取り組んでまいりますけれども、その効率化を進めていきました中におきましてもなおかつ増加をいたす医療費というものには、国民合意をいただき、公平な負担をお願いしなければならない場合が存在すると考えております。その点を私は隠して国民に申し上げるつもりはございませんし、それだけのむしろ内容を持つ保険制度を今後とも継続して確保していきますためには、どうした形であれ国民の御負担をお願いする部分存在するであろうということは否定することはできないと考えております。
  21. 木暮山人

    木暮山人君 私もそのような格好になるのではないかと考えております。  次に、医療保険抜本改正考えるとき、その守備範囲重点化をどう考えるかが重要になってまいります。しかし、医療保険は、ナショナルミニマムで足りる年金と違い、相当程度守備範囲給付水準を維持しなければ国民の健康を守れません。  総理は、医療保険守備範囲給付水準についてどのような御見解をお持ちでしょうか。また、公的医療保険民間保険との役割分担について御所見をお伺いしたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 限られた公的医療保険財源制約というものを頭に置きました場合には、どこまでを給付水準にすべきかという点について今までも大変さまざまな御論議がございました。  私は、基本的にまず申し上げておくべきこと、それは国民が必要とされる適切な医療、これは今後ともに公的医療保険において対応していくことを原則とすべきだと、そう考えておりますけれども、その給付範囲あるいはその給付水準あり方というのは、一つは今後、今我々が想定している範囲を超えるかもしれません。当然のことながら、医療技術進歩してまいります。その医療技術進歩医療に対する国民の御要求というものが多様化していることを考えました場合、給付重点化という観点もこれを捨てることはできません。  そうした点については、抜本改革を進める中で十分検討してまいりたいと考えておりますが、同時に私は、先ほども申し上げたことでありますけれども、果たして自由診療保険診療という選択肢しかない今の姿を今後ともに継続することを前提でこれからの仕組み考えるのか。そこを民間保険あるいは自己負担、どういう形でも結構です、私はむしろ私的な保険民間保険を組み合わせることが一つの方法と考えておりますけれども、いずれにいたしましても自由診療保険診療との間に保険診療をベースとしながら私的保険民間保険を組み合わせる手法というものもあり得てよいのではないだろうか。年来、自分の持論としてあらゆる場に検討の対象としていただくようお願いを申し上げてまいりました。そうした手法も、今後ぜひ視野に入れた御検討が願えることを心から望んでおります。
  23. 木暮山人

    木暮山人君 ありがとうございました。  財政構造改革報告では、医療保険構造改革についてできる限り十年度から着手するとされております。一方、四月の与党方針では、医療保険構造改革については二〇〇〇年を目途に実現するよう精力的に取り組むとされておりました。しかしながら、先日、本委員会質疑においても、ここ一月の間に医療保険抜本改革の時期がどんどん早まってきております。政府の危機意識もそれだけ強まってきていることと感じております。  そこで、医療保険構造改革の実現時期について、改めて総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 医療保険制度抜本改革につきましては、与党三党は今回の法案の施行時期までに医療改革プログラムを取りまとめることとして、厚生省協力を得て与党医療保険制度改革協議会がその取りまとめ作業を行うことといたしております。我々は、その結論が出されましたならそれを尊重し、抜本改革具体化に向け成案を取りまとめて逐次実施に移していこうと考えておりまして、できる限り平成十年度から着手してまいりたいと考えております。  ただ同時に、提供体制の問題につきましては、医師歯科医師あるいは看護婦薬剤師、それぞれの職分に応じた教育カリキュラムがあり、その養成にはそれだけの年数を必要とすることを考えますと、医療提供体制部分につきましては、私はそう計画を大きく変更するといったことには多少問題があろうかと考えておりますし、大病院を非常に重視する今の国民医療に対するお考えかかりつけ医中心とした地域医療あり方等に結論を得ますためにはなお多少の時間を必要とするのではないか、率直にそのように感じております。
  25. 木暮山人

    木暮山人君 ありがとうございました。  社会保障の当然増経費切り詰めるとなると、当然心配になってくるのが新ゴールドプランやエンゼルプラン、障害者プランの達成であります。これらのプランの達成は、二十一世紀に向けて政府全体で取り組むべき課題であり、厚生省だけの問題ではないと私は思います。総理はこの三プランの達成についてどのようにお考えか、お伺いいたします。  さらに、来年度は診療報酬改定の時期に当たります。集中改革期間中であれ、必要な改定は行われるべきであると考えますが、総理の御見解をお伺いさせていただきます。
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私どもは、新ゴールドプラン、エンゼルプラン、障害者プラン、それぞれにつきましてそれぞれの事業の執行状況などを踏まえると同時に、各種規制緩和の実施やあるいは民間活力の導入などによりまして事業を効率化していくという視点もあわせて持ちたいと考えております。そして、その目的を達成できますようにでき得る限りの努力をしてまいりたいと、そのように考えております。  同時に、これはぜひお考えをいただきたいことでありますけれども、現在の我が国の家族制度、形態というものが非常に中途半端な形で迷っている状況にあるという点をぜひ御考慮願いたいと思うのであります。かつて日本は極めて世代間同居志向の強い国家であり民族であり、また現実世代間同居というものが非常に多くのウエートを占めておりました。今、その傾向は大きく変化しつつありますが、欧米諸国ほど極端に分化が進んでいる状況でもありません。そして、その中において介護という問題が今まで以上に極めて大きな状況になっていることは委員各位御承知のとおりであります。  現在、健康保険についての、医療保険制度についての御論議をいただいておりますが、こうした三プランを推進してまいりますためにも、介護という柱がしっかり立つかどうか、これが将来の事の成否を分けていく可能性を多分に持っておりますだけに、ぜひともこうした問題につきましても院の御協力を心から願う次第であります。
  27. 木暮山人

    木暮山人君 次に、年金改革についてお伺いします。  財政構造改革会議年金改革について支給開始年齢、給付水準見直し等の課題に取り組むことにしています。しかし、本来こうした問題は、仮に実施に移すとしても、長い経過措置国民の周知期間を要するものであります。このため、即効的な政策改善効果は直ちには見込めません。  この点、総理はどのようにお考えでありましょうか。支給開始年齢引き上げの前倒しや保険料率の段階的引き上げの見直し、ドラスチックな給付カットもあり得るか等、お伺いしたいと思います。
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 我が国年金制度がスタートいたしましたとき、完全積立方式を目指してスタートしたことは議員御承知のとおりでありますが、それがたび重なる制度改正の中におきまして修正積立方式に移行し、その状況を随分変化させてまいりましたプロセスは御承知のとおりでございます。  そうした中におきまして、一定年度ごとの再計算というものが法的に定められ、明後年、平成十一年は次期の財政再計算の年に当たります。この平成十一年の再計算の時点におきましては、先般の「財政構造改革の推進について」という閣議決定を踏まえまして、世代間の公平あるいは高齢者雇用のあり方といった観点を含めまして、給付負担の適正化など制度全体の抜本的な見直しを行い、国民が将来にわたって安心できる制度を構築してまいらなければなりません。そのため、先月から年金審議会において次期財政再計算に向けての検討を始めていただいたところでありまして、この審議会においては改正の方向や内容などについて十分御検討をいただくことになろうと思います。  これにあわせまして、年金に関する情報あるいは考え方といったものをわかりやすく積極的に国民にお示しをしながら、同時に国民的な御議論をも十分に尽くしていただき、合意を得ながら制度改革に取り組んでまいりたいと。  現在、その十一年度の財政再計算に合わせましてそのような考え方で対応いたしております。
  29. 木暮山人

    木暮山人君 厚生年金の国庫負担の繰り延べ措置についてもお伺いしたいと思います。  隠れ借金は後代に負担を転嫁する点では赤字国債と同じであります。仮に当然増経費切り詰めても、隠れ借金を続けるならば財政構造改革の看板に偽りありと言わざるを得ません。  総理、この点、どうお考えでしょうか。集中改革期間において隠れ借金は継続しないと明言されましょうか、お伺いしたいと思います。
  30. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員が例に挙げられました以外にも、今まで私ども予算編成時におきまして必要な財源をつくり出すという点からさまざまな対応措置を講じてまいりました。  そして、今、例示に挙げられましたものをも含めまして、いわゆる特例的な歳出削減措置など、厳しい財政事情のもとにおける歳出歳入両面での検討の中におきまして、それぞれの制度や施策をめぐる状況を十分検討した上で、その時々の運営に支障を来さない範囲でやむを得ざる措置として採用されたものばかりでございます。こうした措置についてもできるだけ抑制しなければならない、これは議員の御指摘のとおりでありますし、平成九年度予算におきましても、それぞれの制度、施策のあり方を考慮しながら慎重な検討を行い、ぎりぎりやむを得ないと言えるものに限定をしてまいりました。  今後におきましても、それぞれの制度、施策をめぐる状況、あるいは国の財政需要等を踏まえながら適切に対応していく必要があると考えておりますし、こうした努力は今後ともに全力を挙げて傾けていかなければならないもの、そのように考えております。
  31. 木暮山人

    木暮山人君 次に、予防医療に関しまして総理の御意見をお伺いしたいと思います。  この問題については、総理も衆議院において坂口委員質問に対し前向きな答弁をなさっておられます。また、昨年十一月の「産業構造審議会総合部会基本問題小委員会 中間とりまとめ」においても、予防医療の充実は中長期的には医療費削減につながるとして、その一層の充実が提案されております。  この点、総理はどう御認識になっておられますか。また、医療保険において予防給付を対象とすることについての御見解をお伺いしたいと思います。
  32. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 衆議院における議論と御指摘をいただきましたものは、恐らく、私が大変若い議員でありましたころ、岡山大学の医学部公衆衛生学教室を中心として高知県の当時医療僻地と言われました地域におきまして、保健所活動というものの中に地域住民を全体をカルテ化し、健康な方、半健康状態の方、半疾病状態の方、疾病状態の方、そのように分類をし、国保の保健婦さんから市町村保健婦さんまでをそこに統合し、巡回的な健康管理を行う、食生活指導を行うといった体験を申し上げたケースであろうと存じます。  まさに私はこの試みというものには非常に大きな期待を持って眺めておりました。これが中断してしまったことは極めて残念でありますけれども、その地域において得られる食材をもって日ごろの食生活を組み立てることから始め、お年を召した方々、年配の方々、それぞれの段階に応じた健康指導を行うことによっていわゆる予防給付というものを広範に押さえた場合、地域医療の上でどれだけの効果があるかというものを私はそのときにそばから学んでおった一人でございます。  同時に、こうした作業診療報酬体系の中に取り入れられることの難しさも当時体験をいたしました。それだけに、私は、予防というものが極めて大きな役割を果たすものである、そして間違いなく医療保険において効果的な保健事業の実施に努めているゆえんというものもそうしたところにあろうと存じます。その上で予防給付保険給付の中に取り入れるということにつきましては、財政上の問題だけではなく、むしろ逆に画一的な保険給付というより実態に即した保健事業の方がより現場において適切に対応のできる性格のものである、こうしたことを振り返ってみますと、私は、当然のことながら保健事業というものとしてこの予防についての努力というものは今後ともに一層継続し、力を入れていく価値があるものだと考えております。
  33. 木暮山人

    木暮山人君 ちょうど時間も参りましたので、これで質疑を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  34. 菅野壽

    菅野壽君 社民党の菅野でございます。  財政構造改革医療保険構造改革の問題については同僚議員からいろいろ御質問を申し上げましたけれども、私はこの際、財政構造改革の中で国民負担率の問題を中心に御質問申し上げたいと思います。  今回の健康保険改正については、私ども国民の皆さんから厳しい批判をいただきました。これは国民の皆さんが国や医療保険財政が安定するならば私的負担がふえてもよいとは必ずしも思っていないというあらわれであると思っております。  さて、せんだって政府与党は「財政構造改革推進方策」を決定されましたが、ここの大原則国民負担率抑制であります。しかしながら、少子・高齢化に伴い費用の増大は避けられません。その中で国民負担率抑制しょうとすれば、結局は私的負担の増大という形で国民負担にはね返ってまいります。  総理は、この点、どう理解されておられますか。また、私的負担の水準、限界についてどのような御所見をお持ちですか、伺いたいと思います。
  35. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今、議員の御指摘になりました問題点存在を否定するつもりはありませんが、同時に健康においても自己責任というものはぜひやはり強調させていただきたいと思うのであります。  そして、少子・高齢化社会における問題のとらえ方、これは私は議員と本来問題意識を異にするものではありませんけれども、その中で社会保障というものを取り上げて考えます場合には、税であるのか、社会保険料であるのか、自己負担であるのか、そのいずれかで費用を賄わなければならないということは同じでありますし、それは皆国民の御負担でございます。  そして、これをどう組み合わせていくのが一番望ましい姿なのか。これには世代間の公平という視点も必要でありますし、経済の活力への影響という視点も必要でありますし、同時に制度の効率性という観点からも検討すべき点があると思います。  私は、私的負担という言葉をお使いになりましたけれども、それは同時に受益者としての自覚、あるいはコスト意識の喚起を通じまして制度効率化をもたらすという機能があることも留意をしておく必要があると考えております。  私的負担というものはそのようにとらえた上で、必要な給付というものは公的に保障をしながら、負担能力のある方々にはそれなりの応分の御負担をお願いすることは許される、そう考えておりますし、社会保障に関する経費というものは高齢化が進展するにつれ増大する性格を持ち、しかも少子化というものは同時に若年労働力の逼迫、言いかえれば現役の働き手の層が減っていくことをも意味するわけでありますから、この構造改革をきちんと行っておくことによって将来に対しても安定した制度運営ができるようなものを組み立てていかなければならない、そのように考えております。
  36. 菅野壽

    菅野壽君 国民負担率という言葉は、あたかもこれが国民負担のすべてであるような誤解を招きやすい言葉でございます。そのため、平成七年の社会保障制度審議会勧告ではこの言葉を避け、「社会保障給付水準と公的負担の水準との調和を図るべく絶えず点検を行うこと」と提言しておられます。  にもかかわらず、社会保障に精通しておられる総理はあえて国民負担率という言葉を積極的に用いていらっしゃいますが、その意図するところはどういうことでございましょうか。また、国民負担率五〇%という水準にどういう理論的意味、根拠があるのでしょうか、お示し願いたいと思います。
  37. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、国民負担率という言葉が非常に普遍的に用いられるようになりましたのは第二次臨時行政調査会、いわゆる土光臨調のときに一つの目安として使われたときから非常に普遍化したように記憶をいたしております。  ただ、その当時に用いられました段階では、租税及び社会保険料、この二点に絞り込んで国民負担率という言葉を使っておられました。そして、私はその点では国民負担率という言葉はある程度国民の皆様に既になじんでおるという感じを持っておりましたし、これは国民に対し提供する公的なサービスというものを賄うためにどういつだ、租税あるいは社会保険料、これはいずれにいたしましても強制的な形で国民に御負担をいただく手段でありますから、これを国民所得との対比であらわす数字としては適切なもの、そのように従来から考えてまいりました。  これは、言いかえれば、国民負担の側から公的部門がいかに国民経済の中で関与するか、こうしたものを示すものでありますし、経済あるいは財政運営に当たりましても重要な指標になるものだと考えております。  さらに、一点補足させていただきますならば、今回の五原則をつくりますとき、この国民負担率という言葉の中にあえて私は財政赤字も加えて問題提起とさせていただきました。これは確かに御指摘のように従来と多少趣を異にした部分がございます。  土光臨調において国民負担率論議されましたときには、私の記憶ではたしか北欧等の国々におけるいわゆる社会保障先進国がその結果として若年労働力の海外への流出を招き、残る現役世代への負担が非常に高率なものとなり制度の改変に追い込まれていったプロセス等をごらんになっておられ、ぎりぎりが五〇%という数字、しかもできるならばそれよりできるだけ少ない数字でというような感じでこれを議論しておられたと記憶をいたしております。  従来型にとらえますなら、確かに現在、租税及び社会保険料負担、これは国民負担率として三八・二でありましたか、三九にまだ達していないと存じます。しかし、実質的にこれを考えますとき、財政赤字を抜きにしては考えられないわけでありますし、財政赤字を加えて考えますならば国民負担率は既に四五%に手が届くという状況にあるわけでありまして、我々の置かれている状況はそれだけ深刻だということをぜひ国民各位にも御理解をいただきたい、そのような思いを込めております。
  38. 菅野壽

    菅野壽君 総理がお示しになっておられます構造改革の中で最も急がれるのが財政構造改革であります。  しかし、この主眼はあくまでも社会保障仕組みや行政におけるむだや非効率の排除に置かれるべきであります。国民への負担の押しつけや給付削減のみが先行することはあってはなりません。  この点について総理の御見解を伺うとともに、総理が描く財政構造改革達成後の社会保障の姿、水準をお尋ねしたいと思います。
  39. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員にお言葉を返して恐縮でありまずけれども、私どもは今、財政構造改革とともに行政改革にも必死で取り組んでおります。  しかし同時に、例えば国家公務員を半減し、それだけで一体幾らの財源が出てまいるでしょう、あるいは省庁統廃合そのものによって財源として幾ら出てくるのか、ぜひお考えをいただきたいのであります。  政府は、当然ながら、規制の緩和によりあるいは地方分権の推進により、さらには官から民に仕事を移しかえていくことにより行政をスリム化し、より簡素で効率的な政府を目指すべく今全力を尽くしつつあります。しかし、それだけを行えば国民に新たに負担を求めずに済むといった甘い状況でないことは、特に社会保障の世界においてそのような甘い状況でないことは十分御理解の上の御発言と心得ております。  要は、社会保障構造改革の名に甘え、いたずらに国民負担の増大のみに頼らず、自主的な努力もせよという御叱正と受けとめ、その努力をいたしますとともに、社会保障構造改革というものをやらなければならない理由につきましてもぜひ国民各位に御説得をお願い申し上げたい、心から御協力をお願いする次第であります。
  40. 菅野壽

    菅野壽君 ありがとうございました。  私の質問は十三分でございますが、これで終わります。
  41. 今井澄

    ○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  どうもこの厚生委員会、健康保険制度改正について、私の前の質疑者の菅野先生と大分、これまでもダブってまいりましたが、きょうもかなりダブります。というのは、私も実は国民負担率ということについて、その言葉や概念等についてお尋ねをしたいと思います。  結論から先に申し上げますと、先ほど総理はこの言葉は国民になじんでいるというふうに言われました。確かに、土光臨調以来どなたも国民負担率という言葉を簡単に使ってしまうわけで、そういう意味ではなじんでいるのかもしれませんが、実はこの言葉は非常に誤解を与えやすい言葉ですし、また概念自体が非常にあいまいだということから、特に今のような厳しい状況国民の皆さん一人一人に御理解をいただいて負担していただくところはしっかり負担していただかなければならないと私も思いますので、そういう意味ではやはり今ここで率直に、これまでのことにこだわらずに概念なり言葉なりの整理をしていただいた方がいいのではないかというふうに思っております。  先ほどから尾辻先生の御質問に対する御答弁でも今の菅野先生の御答弁でも、たびたびもう総理の方からお話がありましたが、国民負担率という言葉は、従来、土光臨調以来、租税及び社会保険料の合計が国民所得に占める率、割合ということが定義だったと思います。それで各国比較がされて、日本とアメリカが低い、スウェーデンは七三%とかいうことで大変だと、こういう議論がされてきたと思いますが、今度の財政構造改革原則では確かに「国民負担率財政赤字を含む)」というふうに定義が変えられているんですね。  私も総理質疑をさせていただいた機会は余りないんですが、昨年の十二月十六日の本院の行財政特別委員会、そのときにこの国民負担率論争をさせていただきましたが、そのときは総理自身のお考えも旧来の税と保険料というお考えだったと思います。その後、財政構造改革に真剣に取り組まれる中で、三月十九日、やはり本院の予算委員会の集中質疑のときには、もう明らかにそのときの総理のお考え財政赤字を含むんだというお考えに変わっておられたと思います。  私は、国民経済とか財政構造改革考えるときにはそういう財政赤字等を含めるべきだと思いますし、それは十二月十六日の質疑のときにも申し上げたわけで、単に保険料と租税の国民所得に占める割合だけでは国の財政は判断できないということを申し上げたのでよろしいと思うんですが、それはどの時点、いつ、理由はいいとしても、どういう議論の経過を経て変更されたのか、その辺をちょっとお尋ねしたいと思います。  と申しますのは、旧来の意味での国民負担率という定義は大蔵省なり経済企画庁なり、そういう経済官庁もかかわって一応きちっと決めた数字だと思うので、今度の変えられたことについては政府全体のお考えとしてどういう経過なのか、お尋ねしたいと思います。
  42. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政府全体としてというお尋ねになりますなら、これに対するお答えは財政構造改革会議における論議を踏まえという言葉に要約をするのが一番正確であろうと思います。  そして、議員が御指摘のように、私は両方とも問題意識を持ちながら、あえて従来はこの二つを分けて、後世代負担にかかわるという意味で累積債務の問題を論じ、現在の負担という意味での国民負担率という二段の説明を申し上げてまいりました。  しかし、よく考えてみますと、実はこれ確かに、議員が御指摘になりましたように、いつからと言われますと非常に私もいつ自分の頭の中が整とんがついたかと申し上げにくいんですけれども、要するに国民の租税及び社会保障負担国民所得というとらえ方をいたしてまいりますと、公債発行による公共サービスの供給、これは実はその時点での国民負担率から抜けてしまいます。しかし、確実にその公共サービスというものは最終的に国民負担に裏打ちをされていくわけでありますから、後世代負担という意味考えますと、実は問題は、この場合、あわせてとらえて論じなければなりません。  そうした思いでおりましたところ、昨年の十二月、経済審議会が国民負担率財政赤字を合計した数値を潜在的な国民負担率という形で表現をしておられました。そのようなことも頭になかったとは決して申しません。しかし、今の時点で御説明を国民にいたしますとき、やはりこの赤字を加えた、その上で現在御負担を願っているものの水準はどれだけであるのか、そう申し上げることの方がより本質的な御理解を得やすいのではないか、そのように考えております。
  43. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、従来の意味で日本は三八%、スウェーデンは七三%というのは租税と保険料ですから、やはり財政赤字を加えるとなると今度は別の言葉を使わないと、潜在的というのはちょっと問題だと思います。  それよりも何よりも、先ほど菅野先生も言われましたけれども国民負担率というと、国民が受け取るのは自分の負担というふうに直接受け取るわけですね。三八%というと税金と保険料で給料の三八%持っていかれているのかと、こう誤解をするわけですが、実際にサラリーマンの平均的な税金と保険料はたしか一五から一七ぐらいの間だったと思うんですよね。  そういう意味で、私は前にも御提案申し上げましたが、少なくとも租税と保険料という意味、旧来の意味での国民負担率という言葉をやめて公的負担率と、ほかに窓口負担とか私的負担があるわけですから、そういうふうに言いかえるということが必要なのではないだろうかと。  それから、今度は租税、保険料、その他財政赤字等を入れて計算する場合、やっぱり何か経済官庁と御相談をいただいて新しい指標というものをつくって、しかも国際比較のできる指標をつくっていただくようにこれはぜひお願いを申し上げたいと思います。  なお、その場合に、分母が国民所得、ナショナルインカムになっているわけですが、これを分母として租税や保険料の比率を出している国は日本以外にはないと私は聞いております。むしろ経済の指標としては国内総生産、GDPを使う方がより実態に合う、将来の子孫へのツケ回しという意味も含めて相応ではないかと思いますので、その辺も専門家の御意見、あるいは政府部内の御統一を図ってやっていただいてはいかがかなというふうに思います。これは御提案を申し上げておきたいと思うんです。  時間が極めて限られておりますので最後に、これは実は菅野先生の御質問とも重複することになるんですが、先ほど引用されました一昨年七月に出されました社会保障制度審議会の勧告、これがたしか三十年ぶりぐらいに勧告という重い形で出されたと思います。実は私もこの勧告をつくるときに委員として参加させていただきました。非常に私としてはいい経験ですし、名誉なことだと思っております。これは、実は草案からこれができ上がるまで四回書き直され、その中の一つがやっぱりこの国民負担率をめぐる論争だったわけです。  菅野先生も先ほど簡単に引用されましたが、そこのところは、「本来、社会保障に係る公的負担、すなわち社会保険料社会保障公費財源は、望ましい公的給付の水準と利用者負担金などの私的負担とを併せて考慮し、選択・決定されるべきものであり、公的負担だけが前もって給付水準と切り離されて数量的目標として決定できるわけではない。」、ここが実は重要であると思います。  これからの医療保険構造改革でも、小泉厚生大臣が何回も言っておられますが、これからは抜本的な改革のメニューを示すと。だけれども、それは場合によっては複数示して、国民に選んでもらうと。  私は、やっぱり国民参加の時代、これがある意味では行政改革というのは、前も申し上げましたが、さっき総理が言われたように、何も国家公務員の数を減らすとか民営化とかそういう問題ではなくて、行政を効率化すると。それはもう国民にも責任を持って参加してもらわなきゃならない、国民の自己責任も大事だと思うんですね。そういう意味で、やっぱり国民がどちらを選ぶかということが非常に大事なのではないか。  先ほど土光臨調のお話のときに、当時のスウェーデンはいわゆる国民負担率が高いので若年労働力が海外に流出したとかいって、当時有名なスポーツ選手がアメリカに行っちゃったことなんか随分言われましたが、結局スウェーデンに帰ってきているんですね。やはり自分の国に帰った方が老後は安心だ、こういう国はいい国だというので帰ってきているというお話もあるわけで、それはやっぱり国民も学習をして選択をすると思うんです。  そういう意味では、私はあらかじめ五〇%以下というふうに総理政府がお決めになるのではなく、こうなったらこうなりますよということですね。そういうふうなことで、いわゆる公的負担を減らせば私的負担がふえる、あるいは私的負担を減らそうとすれば公的負担がふえる。例えば、私はこの審議でも申し上げましたが、老人医療費の無料化の失敗ということを私どもは十分わかっているわけですから、何でも私的負担が少なければいいどいうことではないので、その辺も含めてあちかじめ決めるのではなくやっていただいて、複数示していただけないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  44. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、社会保障制度審議会勧告の中で議員が果たされた役割、そしてまとめられましたその内容というものを決して否定するものではありません。しかし同時に、社会保障関係審議会会長会議の中間まとめの中で、受益者負担についてはコスト意識の喚起を通じて制度効率化をもたらすという機能もあり、また社会保障制度審議会が言う公的負担、すなわち国民負担率国民経済全体の中で公的主体の活動が占める比重を示す指標として意義がある、こうした御意見も並行して出されております。そして、それがどちらがいい悪いを私は論ずるつもりはありません。それぞれにその問題の指摘の重みはあると思います。  また、先ほど国民負担率という言葉をこの場合使うことは必ずしも適切ではない、新しい言葉を考えるべきだと。私はそこに別に異論があるわけではありません。ただ、これは本院を含めまして、従来から国会におきましてこうした問題を御議論いただきます場合、やはり所得との対比においての負担という形での議論が行われてまいりましたケースが極めて多かったと私は記憶をいたしております。そうしたことからも、国民負担率のベースとして国民所得が用いられてきた、そうした沿革があることは御理解をいただきました上で、なおよりよいものがありますならば私はそうしたものを考えることに異論はありません。  ただ、最後に一点申し上げたいのは、先ほど議員がおっしゃいましたケース、あれは実は大変問題なケースでありまして、働けて収入をうんと上げられる時代に外国に国籍を持ち、年金受給権が発生してから掛金を全く払わないままにスウェーデンの年金制度の恩恵に浴したという、ああいうケースがこれからふえていくような日本だったら日本の社会保障なんてとてももたないんです。これだけはちょっと一点反論させていただきたいと思います。
  45. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  私は三月の参議院予算委員会総理質問をさせていただきました。今回の医療保険改革というのは非常に問題が多い、国民医療関係者の意向を十分に聞くべきだということを申し上げ、また医療保険の赤字をなくすためには何よりも高過ぎる薬価、大き過ぎる薬剤費にメスを入れるならば国民負担増、今回のような負担増を求めなくても済むのではないかという点で御質問させていただいたわけです。  当厚生委員会でも、衆議院から送られてまいりました修正案なるもの、私たちは修正の名の改悪修正であるという点でこの間審議で明らかにしてまいりました。とりわけ薬剤費の一部負担を課す、これは薬の二重取りであるということ、そして薬代よりも多く払う薬代の払い過ぎが起こるという問題、事務は現場では非常に煩雑になるし、患者さんに合理的な説明ができない、こういう点で厳しく批判をしてまいりました。  再修正案なるものが出されたわけでございますけれども、この点につきましては国民の皆さんから私の部屋に毎日二百通を超えるファクスが入っておりますけれども、その中で「「定価」のない日替わり法案」だ、こういうような非常に厳しい批判の声が上がっております。  なぜくるくる変わるのかということですけれども、それはやはり政府原案にございました薬剤の種類がふえるごとに負担がふえる、一部負担、二重取りをする、そういうことが、医学的に根拠はもちろんありませんし、説明するとするならば薬をたくさん使ってほしくないからだ、こういうふうなことしか説明ができない、そもそもこの原案に矛盾を持っているというふうに私は思います。  六月六日の公聴会のときに、与党の推薦でありました公述人の日本医師会の糸氏先生が、私の質問に対しまして、今回の薬剤の別途負担というのは恥すべき改革だと、こういうふうにおっしゃられました。なぜ問題かとお聞きしますと、一番憂えることはやはり医師と患者の信頼関係の喪失であるということで、国民の犠牲を強いるような、あるいは国民医師との信頼関係をぶち壊すようなこういう悪い制度は早く改めてほしい、こういうようなお言葉をいただいて私も少しびっくりしたようなことなんです。  こういう御指摘がある今回の法案、深刻な制度上の欠陥を持つものではないでしょうか。
  46. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 現在御審議をいただいております薬剤の一部負担の方式、これにつきましてはさまざまな御議論がございますことは承知をいたしておりますし、より各方面の御理解がなされるように本院でも御論議をいただいている、与党における議論もなされていると承知をいたしております。  しかし、いずれにいたしましても、御党からは新薬に対して非常に強く価格設定から薬剤の使用というものに問題を提起をされているぐらい薬剤の多用というものについての指摘が多いことから、その適正化を図るために薬剤に着目した負担を求めることが適当だと、政府は最初からそれを変えておりません。
  47. 西山登紀子

    西山登紀子君 現場の先生方は、この法案が強行されますと本当に混乱が起こる、もうそういう場面を想像したくないというようなお声も京都の保険医協会の先生方から私のところに寄せられているわけです。  重ねて私はこういう法案というのは撤回しかない、これを強行したら現場は本当に混乱をする、患者には負担増が襲いかかる、こういうことを指摘させていただいて、次の問題に移りたいと思います。  厚生委員会の私の質問の中で、お年寄りの入院費が非常に高くなるという問題で、年金暮らしのお年寄りが一カ月入院した場合、例えば九九年度では病院給食費が変わらないとして五万八千八百円になる、そうなりますと国民年金で四万五千円ぐらいの年金者は入院することもできなくなるのじゃないかというふうに質問いたしますと、保険局長はそういう場合もあるとお認めになりました。これ以外に保険負担というのはおむつ代で、衆議院の厚生省答弁ではおむつ代も含めて三万二千四百二十円というのが保険負担でかかるわけです。  そうなりますと、総理にお伺いしたいわけですけれども、本当に低所得で生活保護にまでいかないけれども非常に低い年金暮らしというお年寄りが、これは本当に病院に行けない。こういうお年寄りは病院に行くな、入院はするなということになるのではないでしょうか。
  48. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本日、本委員会に出席をいたします前にあらかじめ説明を聞きましたところ、同じ問題で小泉大臣との間にしばしば御論議を交わされたと聞いております。ですから、恐らく数字その他につきましても政府として申し上げられるべきものはきちんと申し上げたでありましょう。  今、低所得者という言葉を使われました。例えば、老齢福祉年金の一カ月の年金額と、低所得者の方々が一カ月入院される場合、その食費込みの数字、この手元にあります数字が、私は厚生省が間違った数字をくれるとは思いませんけれども、一カ月が三万三千五百三十三円に対し、低所得者が入院をされました場合、食費込みで二万四千円、十分に入院をしていただける数字であると思います。
  49. 西山登紀子

    西山登紀子君 私が質問いたしましたのは、四万五千円から四万三千円ぐらいの国民年金のお年寄りが入院できなくなるというふうに申し上げたんです。小泉厚生大臣はそれを老齢福祉年金受給者ということで、私はすりかえて御答弁をなさったというふうに思いますけれども、そうではなくて、四万五千円、四万三千円ぐらいの年金暮らしのお年寄りが、これは一日千二百円ということになりますと、病院給食七百六十円といたしましても一カ月五万八千八百円になって年金では払えないじゃないか、この点を質問申し上げたわけであります。御答弁がいただけませんので次に移ります。  受診抑制と治療の中断の問題であります。  これはこの間の厚生委員会でも論議をしてまいりましたけれども、八四年に一割負担が導入されたときには、本人の受診抑制だけではなくて家族にも深刻な受診抑制が起こりました。これは厚生省もお認めになっていたわけですけれども、今回、私はそれ以上の受診抑制が心配されます。  これは、全国老人クラブ連合会が私のところにも要請に来られましたけれども、「この度の改正案では、現行制度と比較して、外来では二倍増、新たな薬剤負担を含めると三倍増、入院においては五割増及び低所得者の負担期限撤廃などが図られることになり、高齢者、特に低所得者・年金生活者にとっては、あまりにも厳しい負担増であるといえます。」ということで、全国老人クラブ連合会が私たち日本共産党に要請に来られたのは初めてですけれども、こういう要請を持ってこられております。  そこで、総理にお伺いしたいわけですけれども総理はたびたび受診抑制が起こるのではないかということに対して正常な受診抑制までは起こらないというふうに答弁をしてこられております。しかし、私は、私の手元に入ってまいりますファクスを見ましても、本当にそうだろうかと思います。  例えばこういうお声があります。医療機関の方から来たファクスですけれども、「患者さんの中には、「負担が大きいので薬を減らしてください」「二回の受診を一回にしないと」」、今からそういう声がある。あるいは、「食べる物を減して病院へ来るか、病院へ来ないで生活するか」、こういうふうなせっぱ詰まったお声もあるわけです。  総理、こういう声を聞いていただいて、総理が言われるいわゆる正常な受診、これが抑制されるおそれが十分にあると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、現在審議をされておりますこの患者負担見直しについて、より各方面の御理解がいただけるように、本院における御論議も行われ、また与党における議論もなされておるものと思っております。  いずれにいたしましても、政府としては、現在審議をされております案程度の御負担でありますなら無理のない負担として受けとめていただけるものと考えておりますし、十分御審議をいただいて速やかに成立をさせていただきたい、そう願っておるものであります。
  51. 西山登紀子

    西山登紀子君 総理、十分な審議とおっしゃいまずけれども、もうきょう打ち切って採決をするということです。日本共産党は反対をして慎重審議要求しているわけですけれども、そういうことなんですよね。途中で審議を打ち切って強行してしまうわけですよね。  それで、最後にお伺いしますけれども、新薬シフトの問題です。  私たちは、新薬シフトというのは非常に日本の薬剤費を押し上げている、また保険の赤字の主要な原因だというふうにこの間質問をしてまいりました。原価に注目をして、そして新薬シフトを見直していけば二兆円から三兆円は優に浮いてくると。改定は二年に一回行われているわけですからそういう方向で、国際的にも高過ぎる、また私も予算委員会質問させていただいたように、先発品がいつまでも後発品の二・五倍の高値を保持している、そして製薬メーカーが非常にたくさんの利益を得ている、こういうことにメスを入れるべきではないか、まずここにメスを入れて国民に二兆円もの負担増を押しつけるということをおやめになるべきじゃないでしょうか。
  52. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、小泉大臣が答弁しておられるのをしばしば横で聞いておりまして、どんなやり方をしても、今少なくとも保険財政を安定させるためにある程度の国民の御負担を願わなければならない状況にあるということを繰り返して説明してこられたと考えております。  その中で、薬剤の使用の問題というものが、今回の制度改正でも薬剤に着目をいたしました定額負担というものを設けることによって、その使用の適正化を図ることといたしております。  そして、薬価の問題につきまして、保険で償還をする医薬品の価格を公定価格として定めていることに従って起こっております新薬シフトの問題等さまざまな問題があることを我々は答弁でも認め、また積極的に問題視していることもお答えをしてきております。そのために、薬の価格というものにつきましては市場価格の取引の実勢にゆだねる、そうした原則によって薬価基準制度の根本的な見直しに取り組むということも既に厚生大臣は繰り返して御答弁を申し上げたはずであります。  できるだけ速やかに具体案を示し、国民的な議論を得ながら、その中から成案を得たいと政府自身が努力をいたしておりますということを繰り返し申し上げます。
  53. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 健康保険法の改正につきましての参議院厚生委員会での議論というのはもう既に四十時間近く行われてまいりまして、その中でいろいろな議論が出てまいりました。その中で、やっぱり今回の改正の中で、あくまで抜本改革というものがその主流になっていかなければいけないということが多くの指摘ではなかったかというふうに思っております。  きょうはせっかく総理においでいただきましたので、私は、技術論的な話ではなくて、これから要は、小泉大臣ではありませんけれども、政治の決断だと、やるかやらないかだと、いろいろな問題点はある意味では出尽くしたというような答弁があったわけですが、きょうは総理にそういう前提に立ってぜひ決意をお聞かせいただきたいなというふうに思っております。  冒頭に尾辻委員から質問がありましたように、私どもは、今回の改正については、保険財政をとにかく破綻させてはいけない、まず保険財政を安定化させて、その間に抜本改革をやるんだ、そしてその抜本改革はこの法が施行されるまでの間、八月中にそれをなし遂げるという自民党の皆さんとの協議の中で衆議院でこの法案について賛成をさせていただきました。私どもは、あくまで改革を実現していく、そのために総理がこれからも思い切ったリーダーシップをとっていただけるならば、どこまでも支援をさせていただきたいというふうに思っております。  しかし、今回私が若干の疑念を持ったのは、今回の改正案の中で薬剤費の負担、これがいろいろな批判を浴びていることは総理も御承知のとおりだと思います。私は、こういった問題をこれから本当に政治がリーダーシップをとっていく中で、いろんな利害が絡んでくると思うんです。一方で、この改革を実現することによって利益を失う、また、かえってマイナスになる、そういう団体や組織もあろうかと思うんです。そういうようなものに結果的に振り回されてしまった結果、非常にわかりにくいものになってしまってはこれは大変なことになってしまうと。  私は、そういう意味で、総理にこの点を踏まえてこの抜本改革に向けての決意をまずお聞かせいただきたいと思います。
  54. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今御指摘をいただきましたけれども、我々はこの抜本改正というものを医療保険制度改革部分提供体制改革部分と大きく二つの柱に分けてとらえたいと思います。そして、持つ問題点はそれぞれに異質なものがあります。  そして、例えば医療保険制度あるいは老人保健制度の体系を見直していきます中で、例えば診療報酬体系を全面的に見直していくこと、薬価基準あるいは薬価制度そのものまで入るのかもしれません。こうしたものを見直すことの必要性、こういうものを欠くことはできません。  同時に、昭和四十年代の後半に、無医大県解消という言葉で全国に医科大学が設置をされる機運が出ましたときに、私は当時反対論文を書きまして、大変あちこちからおしかりを受けました。そして、確かにその後全国に医科大学がつくられていきました。しかし、本当はその医科大学がつくられていく中で求められていたものは地域における医療体制のより充実だったはずでありますが、むしろ開業医の姿はどんどんと減少し、大病院シフトが起きているのが現状であります。  こうした点がどこに問題があったのか、なぜなのか、解決策があるのかないのか、あるとすればどうずればいいのか、ないならかわるべきものは何なのか、我々は真剣に議論をしていかなければなりません。そうした思いをも込めまして、この改革に全力を挙げて私は取り組んでまいりたいと考えておりますので、ぜひともお力添えをお願い申し上げる次第であります。
  55. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 私が一番お尋ねをしたがったいわゆる利害調整という中で改革そのものが非常に中途半端に終わってしまうというようなことのないように、その点については強く指摘をさせていただきたいと思いますが、その点何か。
  56. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 利害調整にはさまざまなものがございます。あえて私、そこまでおっしゃいますから申し上げますけれども議員のふるさとも当時医学部をつくれ、医学部をつくれという大合唱をされまして、特色を持った医学部をつくるからということでありましたが、必ずしもその当時豪語されたほどの特色が生まれたとは言えませんでした。  しかし、そういうことを言い合うのではなくて、私は利害調整というものは当然ながらある程度必要な部分があると思います。どちらかが一〇〇%完全に正しいといった問題というのは世の中にそうたくさんあるものではありません。そういう意味で、仕組みを新たにつくろうとするとき、それぞれの役割に応じた責任の分担をしていく、そういうことは当然ながら、むしろ政治が主導権を持って調整していかなきやならないんじゃないでしょうか。利害調整がなしにデスクのプランだけでそれがすべてできる、私はそう思いません。  そして、むしろ、例えば医療仕組みをつくっていきます上でも例えば大病院中心医療体系を築いていくとか、あるいはもう一度ホームドクターといった発想にまで戻って身近なところにお医者さんがいていただける仕組み国民が求めるのか、その間に我々は調整しなければならないものを当然見出すだろうと思います。  ですから、あしき利害調整をするつもりはありません。あしき利害調整をするつもりはありません。しかし、むしろ利害の対立する部分を調整するのは政治家の役割だと私は思います。
  57. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 総理のおっしゃることも私は決して否定するわけではありませんが、この問題だけやっていますと終わってしまいますのであれなんですが、私は利害調整というものがいわゆる一部の利益というものに振り回されるということではなくて、あくまでもやっぱり国民のサイドに立つ、非常にこれはきれいな言葉ですけれども難しいことだと思います。しかし、あくまでそういう状況の中でこれからの改革というものがなされていくように私は切に希望したいと思います。  この医療制度改革というものとあわせて、今回、政府与党財政構造改革会議において財政立て直しのためにまとめた最終報告が先日出されました。この中には、社会保障、公共投資、ODA、各分野ごとに数値目標を盛り込んであるなど、その姿勢については一定の評価をいたしております。  しかしながら、その中身の中で、報道等によりますと、従来型のマイナスシーリング型の域を脱していないとか財政再建の道が見えないとか全体構造が見えないとか、そういういろんな批判があったことも事実であります。  私は、きょうもこの議論の中でもありましたが,また今までの議論の中でも、いわゆる社会保障費八千億円の自然増を三千億まで抑制する、これが要するに一番大きな医療がその抜本改革の中でこの五千億の大半を捻出しなければならないというような厚生大臣のお話もございました。私は、これはもう大変厳しいことだろうというふうに思っております。  私は、そのことについて、これは医療改革社会保障費の削減のみならず、すべての面で総理はこれから大変な厳しい状況に立たされるのではないかと。そういう意味で、総理にその決意をお伺いしながら、私ども総理がこれに向かって邁進ずる際に支援をしていきたいというふうに思っております。  先日、読売新聞だったと思うんですけれども、ドイツのコール首相が与党の会合の中で、もし財政再建に失敗したならば辞職をするというような、そういう辞職を示唆するような報道があったというようなことが書かれておりました。総理は、火だるまになって取り組むとその姿勢を示されたわけでありますが、私はある意味では退路を断ってやるぐらいの総理の気概というものが国民なり、また議員なりに伝わっていかなければなかなか、こういったマスコミ報道の批判等もありますけれども、本当にできるのかいなというような思いが出てきているのも事実だろうと思うんです。  私は、そういう意味で、総理の決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。
  58. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、余り大言壮語は好きじゃありませんし、命をかけてとか、余りそういう言い方も使ったことがありません。そして、今も余りそういう言葉を使うことを好んでおりません。  ただ、二日申し上げたいのは、例えば社会保障関係費において、八千億の当然増に対し五千億円以上を切り込みたい、ODAは一〇%カットしたい、公共事業についてそれぞれの長期計画を延伸する、明年度事業費を七%は抑えたい、何でこれが一律なんだろうといつも思っております。一律というのは同じ率で削るのが一律なんでしょう。それぞれの目標によってその数字を分けて目標設定をしたのが一律と言われるのは、その方々の御発想が一律なんだろうなと思うんです。そして、そのもとで私どもはこれから来年度概算要求の各省のそのフレームをつくる作業にかかります。当然ながら、先日発表いたしました内容の枠内でこれをつくっていくわけでありますし、そしてそれをベースにしながら臨時国会で御審議をいただけるように、財政再建法とでも仮の名前をつけたものをお示しできるようにと、今、作業を急いでおります。  私は、そうした努力を一つずつ積み重ねていくことを見ていただくことによりその気持ちを受けとめていただけることを願っておりますし、形容詞で済むほど甘い事態だと今の世の中を考えてはおりません。
  59. 上山和人

    委員長上山和人君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 上山和人

    委員長上山和人君) 御異議ないと認めます。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  61. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、水島裕君及び菅野壽君が委員辞任され、その補欠として加藤修一君及び山本正和君が選任されました。
  62. 上山和人

    委員長上山和人君) 休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の修正について宮崎秀樹君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮崎秀樹君。
  63. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 私は、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党及び社会民主党・護憲連合を代表いたしまして修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。  これよりその趣旨について御説明申し上げます。  本法律案は、医療保険制度の当面の財政危機を回避し、引き続き医療保険制度の抜本的な改革を着実に進めていくことを前提として、給付負担見直し等の措置を講じようとするものであります。  本案に対する本委員会での審議等を踏まえ、薬剤に関する一部負担について、日数の要素を勘案することとするとともに、小児及び低所得の高齢者の負担に配慮し、所要の修正を行うため、本修正案を提出するものであります。  修正の要旨は、第一に、外来の際の薬剤に係る一部負担については、薬剤の支給を受けるごとに、一日分につき、二種類または三種類の場合は三十円、四種類または五種類の場合は六十円、六種類以上の場合は百円とし、また、外用薬については、一調剤につき、一種類の場合は五十円、二種類の場合は百円、三種類以上の場合は百五十円とすること。  第二に、六歳未満の小児及び老齢福祉年金の受給者であって、その属する世帯の主たる生計維持者が市町村民税が課されない者等であることにつき市町村長の認定を受けている者については、外来の際の薬剤に係る一部負担を支払うことを要しないものとすること。  なお、今回の新たな薬剤に係る一部負担の額については、薬剤費の実額を超えることがないよう、政令で措置することとしております。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  64. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまの宮崎君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。小泉厚生大臣
  65. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としては諸般の事情を勘案してやむを得ないものと考えます。
  66. 上山和人

    委員長上山和人君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は順次御発言願います。
  67. 和田洋子

    ○和田洋子君 平成会の和田洋子でございます。  初めに、修正案の審議あり方について一言申し上げたいと思います。  衆議院でもそうだったのですけれども法案の根幹にかかわるような重要な修正が採決の直前に提案をされ、わずか数時間の審議しかされないという実態は、私はこれまでの慣例というものを知らないのですけれども国民にとっては全くわからない、見えないものと言わざるを得ないのではないでしょうか。こうした審議あり方の是非について、与野党の皆さんに私は問題提起をさせていただきたいと思います。  それでは、質問をさせていただきます。  今回お出しになった修正案についてですが、その提出の理由と、また薬剤一部負担額についてこのような金額及び刻み方をした根拠をお示しいただきたいと思います。そしてさらに、この修正によってもたらされる財政への影響額をお知らせいただきたいと思います。
  68. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 ただいま和田先生から御質問ございました点でございますが、今回の修正案は衆議院の修正の考え方を踏まえておるわけでありまして、外来薬剤の定額負担に関しまして問題があるところを参議院の審議でいろいろ御指摘がございました。その点を中心にいたしまして、実は参議院の与党におきまして修正案をつくりまして、本日参議院に提出したものでございます。  外来薬剤の定額負担につきましては、衆議院の修正の結果、投薬日数にかかわらず平均的な投与期間を考慮して算定することとしております。短期投与の場合に薬剤患者負担薬剤給付を上回ったりすることがございます。また、負担率が極めて高くなる事例が生ずる可能性が指摘されております。  例えば、二日間投与いたしますと、二種類でありますと修正案は一回投与が四百円でございますから八百円ということになるわけでありまして、そういうことを考えますと、今回の修正では、薬剤の投与日数を勘案することによりまして、短期間の投与の場合における薬剤患者負担等は非常に配慮されておるというふうに考えておるものでございます。また、御審議中にいろいろ問題が出ました小児や低所得の高齢者のような方々に特に配慮をしたわけでありまして、負担の軽減を図っております。  また、最後の財源の問題でございますが、今回の修正に伴う財源影響は、平成九年度満年度ベースで衆議院の修正と比べまして八十億円国庫負担増が見込まれております。また、九月一日実施になりますと、その半分の四十億円、こういうことになるわけであります。
  69. 和田洋子

    ○和田洋子君 今回の健保法改正薬剤負担の問題ですけれども政府原案に対して衆議院の与党修正は、日数に関する要件を外すことは、これまでの事務処理が煩雑であると、そして患者さんがとてもわかりにくいという問題があって衆議院は改正された。衆議院はこれをクリアするために改正されたと言われております。  今回、与党修正ですが、衆議院の与党修正案をひっくり返して、再び日数要件を算入することになっていますが、事務の煩雑化と患者に大変わかりにくいということをどういうふうに御説明されますか。
  70. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 衆議院におきましての修正でございますが、この医療機関における実務的な煩雑さということがたしか指摘されておったわけでございます。また、高薬価シフトに対する一定の歯どめ等、やはりこの二点を考慮して修正されたものと承知しております。  参議院におきましては、薬剤投与の適正化の観点からは投薬日数の要素を考慮すべきである、また患者にわかりやすくすることなどから再修正を行ったわけであります。薬剤の種類数に応じた四区分の定額負担の設定ということにつきましては、そのスキームは衆議院の修正の考え方を生かしたものになっておるわけであります。  そういうわけでございまして、患者さんに説明するにはこの参議院の修正案の方がわかりやすいということは言えるのではないかと思っております。
  71. 和田洋子

    ○和田洋子君 薬剤費の一部負担部分についてですが、厚生省は、政府案では高薬価シフトへの対応は十分でなかったけれども、衆議院の修正はこの点への対応を図ろうとしたものと理解すると述べられておられます。  今回の修正案について、この高薬価シフトへの抑制効果、また薬剤の多剤使用量抑制への効果をどのように考えておられますか。
  72. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 これは、二剤から三剤は三十円、そして四剤から五剤が六十円、そして六剤以上が百円というふうになっておりまして、この百円という一つの、何と申しましょうか、コスト意識というものを持たせる意味ではこの高薬価シフトというものに対しては私はある程度機能してくるのではないかというふうに思っておる次第であります。
  73. 和田洋子

    ○和田洋子君 厚生省もそれでよろしいですか。
  74. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 我が国医療費に占める薬剤の比率が非常に高い。その原因として二つ主な原因があるわけでありますが、一つ薬剤の使用量が非常に多いということがございます。それからもう一つが、今、先生御指摘のとおり、いわゆる高価な新薬へシフトするという傾向があるというふうに言われておるわけであります。  そこで、そういった状況に対する歯どめということを考えましてこのたび薬剤についての新たな一部負担をお願いしたわけでありますが、そういった中でいわゆる薬剤の使用量が多いということについては今回の一部負担をお願いすることによって歯どめの効果というものが出てくるというふうに考えております。  それからもう一つ、高価な新薬へのシフト、これをどういうふうな形で是正するのかということでありますけれども、この一番大きな原因というのは薬価差というものがあるというふうに考えておりまして、そういった意味ではこの薬価差というもののないいわゆる薬価基準制度というものを導入するということが根本的な解決方策でありますけれども、現行の薬価基準制度の中で、政府原案よりもそういった面の配慮という意味では衆議院の修正において一種類の場合は薬剤負担を取らないと。  この背景といたしましては、服用回数が同じで服用時点が同じ場合、これはいわゆる二百五円ルールといいますか、その場合の薬価の合計額が二百五円以下であれば何種類であってもこれは一種類とみなすという取り扱いをしている、いわゆる比較的安価な薬についてはそういう格好で対応していくというルールがございまして、そういうふうなルールがより働けばできるだけ安価な薬が使われるということになるわけでありますが、そういったものが導入されたという意味では、政府原案に比べるとよりすぐれた修正になっているというふうに考えておるわけであります。今回の修正案におきましてもこの考え方を踏襲されておりますから、そういった意味では私どもとしては衆議院修正と同じように政府原案に比べるとその面の配慮がなされているというふうに考えております。さらには、今回の修正で平均的な投薬日数によらずにいわゆる一日分について計算する形に改められますので、そういった意味では薬剤の使用量という点についてもより効果的な姿になるのではないかというふうに私どもは期待しております。
  75. 和田洋子

    ○和田洋子君 高薬価シフトへの問題はまだまだ議論のあるところでありますけれども、次に移らせていただきます。  今回の我が厚生委員会における審議では、衆議院でされなかった公聴会がなされたということは大変有意義なことであったと思います。しかしながら、そもそも公聴会というのは国民的な関心を有する重要議案について国民の御意見を広くお聞きして、これを法案審査に反映させるというのがその役目だと思います。  先般の公聴会では、この薬剤費の一部負担の不合理さや医療現場での混乱、そして今回の改正法や衆議院修正について、例えば日本医師会の糸氏先生なんかは恥すべき制度、薬の別途負担というのは本当に恥すべき改革だというふうにおっしゃっておられたのを初めとして、公述人の皆様からは大変厳しい御意見が表明されたと私は思っております。それにもかかわらず、この修正案がこれらに全く配慮が示されていないことを強く批判せざるを得ない。  この点について修正案の提出者はどのようにお考えでしょうか。
  76. 山本正和

    山本正和君 御指摘のような部分についての公述人の御発言がたくさんございました。また、各界からも、そういう医療保険制度の基本にかかわって二重負担ではないか、その他の御指摘があったことは事実でございます。これは私どもとしても、本来あるべき保険の姿ということからいったらこれは問題なしとはしません。  しかしながら、今度の改革の趣旨は、政府案の基本的な精神とは何かといえば、このままではもう医療保険制度が破綻すると。特に、今までの流れていた傾向が、その中に占める薬剤費の負担が非常に大きいと。何とかこれを緊急避難的にでも対応をして一年か二年か、政府の方は三年だったようでありますけれども、そういう猶予期間を設けたいと。そのために国民の皆様に、大変御無理とは思うけれども、ひとつ薬剤費の高騰の部分だけ多少なりとも御負担を願いたいというのがこの立法の趣旨だったというふうに思うんです。  ですから、基本的な部分でどうあらねばならないかということは、これは当然国民の広い御議論をいただかなきゃいけない。また、公聴会等での御意見あったことを踏まえなきゃいけませんし、厚生委員会における先生方の御発言というものが大切にされなきゃいけないんですけれども、問題は、そこは抜本改革をしなければどうにもならない大きな課題がたくさん残されている。しかし、保険制度が破綻してしまう、特に政府管掌保険が赤字でパンクするというふうになりますと、これはもう国民保険制度ですし、信頼がなくなる。これじゃいけないというのが今度の趣旨でございますので、そういう中でのやむを得ない措置であると。したがって、御指摘のようなことについては、当然抜本改革の中で検討すべきであるというふうに考えているわけであります。
  77. 和田洋子

    ○和田洋子君 抜本改革のことは後でまたお尋ねをします。  修正案提出者にお伺いをします。いわゆる逆ざやの解消問題については、これは政省令で解消するというふうな御説明があったと思います。これについて、まず逆ざやという言葉の内容意味を教えてください。
  78. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 今回の改正によりまして、例えば外用薬を一つとりますと、前回の衆議院の修正案では一回投薬ごとに一種類八十円。ところが、今回は一種類外用薬を投薬ごとに五十円、二種類が百円、三種類以上が百五十円というふうに改正されたわけであります。例えば外用薬で一種類五十円といいますと、これはトローチ、のどが痛いときのトローチというなめる薬がありますが、これは四錠が大体一日の投薬量、これを二日出しますと八錠であります。これは外用薬として請求するわけでありまして、これは四点であります。四点ということは、八錠出して四十円。四十円ですと、五十円の負担を投薬ごとに取るわけですから、十円余計に取り過ぎておるということになりますとこれは問題が出てくるので、そこは政令で実額四十円にすると、こういうことでございます。
  79. 和田洋子

    ○和田洋子君 それでは、厚生省お尋ねをいたしますけれども、これを法律で規定しないで政省令で決めるということをお知らせください。
  80. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) これは衆議院におきまして薬剤の一部負担関係の規定が修正をされたわけでありますけれども、その際に法律で定められた事項のほか一部負担金の額の算定方法に関して必要な事項は政令で定めるということに改正されたわけであります。そして、これに基づきまして今回、今、宮崎先生から御説明ございましたようなことで、私どもとしては実額を上回るケースについてはその実額をもって一部負担とするということで、そういった趣旨の政令を制定するということで考えておりまして、これはそういった意味では法律で政令に授権されている、そういった意味での立法技術上の問題として私ども政令で制定いたしたいと、こう考えております。
  81. 和田洋子

    ○和田洋子君 それでは、高齢者の入院一部負担の問題についてお尋ねをいたします。  政府原案では一日千円とされていたものが衆議院の修正で、今年度は一日千円とするのを皮切りに来年度は千百円、次は千二百円というふうな改定をされました。これはまさに改悪であるというふうに思います。お年寄りは、来年は千百円になるのか、再来年は千二百円かと。お年寄りに大変酷な改正であるというふうに思います。これについては、世論から厳しい批判があるのにもかかわらず、今回の修正案がこの問題を積み残してしまいました。  御議論をされたと思いますけれども、この問題の解消が図れなかった理由を社民党の方にお尋ねします。
  82. 山本正和

    山本正和君 この入院の一部負担につきましては、与党内の議論の中で八百円という案もできないかということでの計算もいたしました。さらに、政府原案に戻して千円にした場合はどうかというふうなことでいろいろな試算をしたわけであります。  しかし、結局、平成十年度末に残されるいわゆる積立金の額というもの、それから政府管掌保険が今からどういうふうな形で流れていくかというその数字の中でどうしても負担を削る場合の額が大変な額になってくるということから、到底これは難しいと。今ここで小手先でいじるということは、もっと根っこの部分のところを直さなければいけないところに、違った観点での議論になってくるのではないかと。  例えば、老人保健制度の問題があります。それから、医療改革そのもの、全体の問題がありますから、そこでの議論にせざるを得ないと。ところが、当面、外来と入院との間でのさまざまな議論もございましたし、衆議院段階ではそういう中でいわゆる社会的入院というふうな議論もされたということもずっと残されてきておりますので、衆議院段階での御意向というものをこの段階では一応尊重せざるを得ないんじゃないかと。  そして、これも繰り返しで大変申しわけございませんけれども抜本改革の中でひとつ議論をしていかざるを得ない、また老人保健制度そのものも基本的な立場から議論しなきゃいけないと、こういうことでもって今回は見送ったというのが経緯でございます。
  83. 和田洋子

    ○和田洋子君 修正案における高齢者の外来薬剤の一部負担の免除について、先ほど修正案提出者から老齢福祉年金の受給者の一部の方々についてはこれに配慮するという説明がありました。  この間、今井先生の御質問の中でも指摘をされていますが、免除対象とする高齢者の範囲が余りにも狭いのではないか。老齢福祉年金より低い額の年金しか受給されていない方も少なくないことを考慮するときに、極めて細かい配慮を図るべきではないかという考えもあります。また、外来における高齢者以外の低所得者への配慮も当委員会議論がなされたにもかかわらず配慮が見られない。  これらの点を含めて、修正案提出者は免除対象者はこの程度で十分であるとお考えなのでしょうか、お尋ねをいたします。
  84. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 決して十分だとは思っておりません。ただ、今の財源等を考えたときに、抜本改正を念頭に置いて、その抜本改革の中で初めて国民の方に改めて負担あり方というものを、やはり社会保障の問題、そして国民負担率の問題等を勘案した中で弱者救済ということは念頭に置いておるわけでありまして、今回はそういうところまで残念ながら財源的に及ばなかったと、こういうふうに御理解をいただきたいと存じます。
  85. 和田洋子

    ○和田洋子君 今回の改正について政府抜本改革の断行を前提とした、そのための第一歩であると何回も御答弁をいただいております。また、衆参の与党修正でもそれを踏まえたものであるというふうに言われていますが、そうした考えのもとに国民負担増を求めるならば、今回の改正は、これは糸氏公述人なんかもおっしゃいました、もう極めて悪い改革ならば時限立法ではどうだというふうなことも提案をされておられました。これは昭和四十二年のいわゆる健保国会において、今回と同様に薬剤の一部負担の導入などを内容とした健保特例法を二年間の時限立法とするという国会修正が行われた経緯もあります。  与党として抜本改革断行くの意思を国民に明確に示すためにも時限立法とすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  86. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 今、委員指摘のとおり、その昭和四十二年の改正政府管掌保険の臨時恩給の赤字対策として二年間の時限立法をやったわけであります。  しかし、今回は時代背景が大分その当時とは変わりまして少子・高齢化社会を目前にしております。そういう中で、やはり抜本改革ということをやらざるを得ない。その段階で目前の緊急避難的な措置でありまして、これはその抜本改革を見た中できちっと整理をし、そして将来に向けた対応というものを立てるという意味で時限立法にしなかったわけでございます。どうかその辺の背景というものを御理解いただき、そして世代間の負担の公平とか薬剤費の適正化問題とかいろいろ抜本改革の中でこれからやるわけであります。そういうことがございますのでこれは時限立法にしなかったということでございます。
  87. 和田洋子

    ○和田洋子君 緊急避難であるからこそ時限立法だと私は思いますけれども、これは答弁は要らないです。  厚生大臣にお尋ねをいたします。  高齢者の負担が重くなっていくことについて、高齢者の経済力も若年層と比べて遜色がなくなつている、応分の負担を求めるのは世代間の公平の観点からも必要なことであると何度も大臣から御答弁がありました。  しかし、私が思うには、お年寄りというのは、これまでこの社会に貢献をされて、急に八十になったわけではないんです。そして、今一生懸命負担をしている子供さん、孫さんを育ててこられたお年寄りなんですから、そのお年寄りにもつと配慮のある御答弁があってしかるべきだと私は思います。  そして、この入院費が来年、再来年と多くなつていくなど本当にお年寄りに酷としか思えないこの負担増でありますけれども、お年寄りに対して厚生大臣はどういうお考えでしょうか、御答弁をお願いします。
  88. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今までも国保の加入者は三割負担、健保はこれから二割負担していただきます。高齢者に対しては一割に満たない負担をお願いしているということは今までも高齢者に特別の配慮をしてきたあらわれだと思います。  今回におきましても、一般が三割負担、二割負担、高齢者も一割負担がいいじゃないかという意見もありました。しかし、一割だと三千円かかるのか五千円かかるのか一万円かかるのか、額に対する一割だからわからない、やはり定額の方がいいという意見も配慮して高齢者に対しては定額、当初は千二十円から一回五百円という形でお願いしたわけであります。今回も一回五百円でありますけれども、二千円を限度とする、四回を限度とする、それ以後はもうただ、無料ということになりまして、私は当然高齢者に対する配慮はされていると思います。  しかも、これからの医療というものを若い世代も高齢者もお互いが支え合っているという気持ちなくしてはこの国民保険制度は維持できません。そういうことを考えますと、高齢者の世代も若い人に比べて所得水準においてはむしろそれほど遜色ない水準にあると。なおかつこれから高齢者はますますふえていく、一方、若い世代は少子化傾向になっていく。利益を受ける、給付を受ける側とそれを支える負担の側、両方に公平感を持ったような制度でないとこれから長い社会はもたないという観点から改正をされたわけでございますし、私はこの程度の負担ならば高齢者にしても御容認できるのではないかということで今回改正案を提出した次第でございます。  いずれにしても、これで事足れりとしているわけではございません。この国会が閉会されましたらば直ちに本格的な、現在の医療制度にむだはないか、より効率的な制度はないか。さらに、若い世代と高齢者がお互い世代間戦争、自分は負担する人、自分は給付を受ける人というだけじゃなく、お互い給付を受けるけれどもやっぱり負担もしていこう、負担もするけれども給付を受けよう、そういうお互いが支え合っている制度を何とか構築するために抜本的な総合的な案を早急にまとめて国民の御理解と御協力を得たいと思いますので、どうかよろしく御配慮をお願いいたします。
  89. 和田洋子

    ○和田洋子君 今回の改正法案審議では、すべての矛盾が抜本改革ということで言いくるめられているんですね。何かするともう抜本改革までの緊急だから、時間稼ぎだからというようなことなんですけれども、それでこそ時限立法だと私は思います。  かつて昭和四十四年に、政府が今回と同様に健保制度抜本改革を約束したけれども、これが果たされずに当時の佐藤総理が本会議で異例の釈明に追い込まれたということがありますが、小泉大臣におかれましてはそのようなことにはならないように特段の御努力を求めたいと思います。  最後に、改めて大臣の決意と覚悟をお聞かせいただきまして質問を終わります。
  90. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今まで抜本改革をしなければならないと言いながらできなかったではないかと。そのような難しさをはらんだのが私は医療制度だと思います。過去何度も抜本改革ができなかったという歴史の教訓も踏まえて、今度こそ抜本的改革に踏み切りたい。よろしくお願いいたします。
  91. 和田洋子

    ○和田洋子君 終わります。
  92. 山本保

    山本保君 平成会山本保です。  私は、今、和田委員から基本的なところの御質問がありましたので、それに絡めてもう少し細かいところまで聞いてみようかなと思いますが、何分にも実際の案が出てまいりましたのは午前中ということでありまして、全体的にちょっとあっちへ飛んだりこっちへ飛んだりするかもしれません。また、提案者の方はそういう点では政府官僚ではありませんので大変かと思いますけれども、よろしくお願いいたします。  まず、これはもう何度も言わなくてはならないと思うんですけれども、今回の修正案がなぜここで出てきたのかさっぱりわかりません。これは議論の中であったじゃないかというようなお話もあったようですが、確かに一昨日、私も尾辻委員の発言に対して少しコメントを申し上げたように、なかったことはない。しかし、もっとほかにもたくさんあったわけでありまして、これだけがなされたわけでも何でもないわけです。改正すべきである、もしくはやめるべきであるという議論がたくさんあったわけで、これはその中のほんの一部ですね。ですから、議論があったからここで出したというのは、これはただ言を弄しているだけだと思います。  しかも、衆議院でも同じようなことがなされ、衆議院では十何時間やったようですが、私ども参議院では、きょうの予定を見ますとわずか二時間弱で修正を我々は審議し、そして決定しなければならないというわけでありまして、これでは参議院の重みというか存在意義というのを問われるのは当然だと思うわけであります。  最初にお聞きいたしますが、この修正案提出に至った経緯について簡単に御説明いただけますでしょうか。
  93. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 先ほど和田議員にお答えしたとおりでございますけれども、御議論の中で皆さんが異口同音におっしゃったのは小児の負担の問題であります。また、低所得者層高齢者への配慮、この辺のことはこれは恐らくやったからといって怒られる話ではないと思います。  そういうことで、御議論の中でいろいろ考えた中で、やはり参議院の独自性ということを考えた中で、与党といたしましても少しでもプラスになる修正であればいいではないかという議論がありまして、これは議論の中で出てきたわけでありまして、そういうことで本日修正案をこちらに提出したわけでございます。
  94. 山本保

    山本保君 私どもの郷土の先輩、尊敬すべき宮崎先生のお答えでございますので、もう一言それについて、では少しかみつかせていただきます。  今おっしゃったように、私は内容についての評価は申しません。つまり、小児医療とお年寄り、特に低所得のお年寄りについてのものが入ったということについての評価は今言いませんけれども、確かにこのような衆議院ではなかったものが、ここでつけ加えるといいますか、議題になってきたというものについては、私も先生のおっしゃることと、こういうことが議論になった、そしてこれが修正案の形で出されたということについては評価いたします。  しかし、先生、今問題になっております大きなものは、先ほどから言われておりますように、外来の薬剤負担のことなんですね。これはまさに衆議院で直したものなんですね。衆議院で直したものをまたここで直す、これは一体どういうことなのか。  先生、改めてお聞きしますが、衆議院でのあの改正というものについて参議院議員として先生はどういう評価をなされるということでしょうか。
  95. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 先生も御案内のように、衆議院の場合は、あれは投薬ごとの一回の数字であります。二種類から三種類が四百円、四種類から五種類が七百円、そしてもう一つ上の六種類以上千円という三つのくくりで、それをしますと急性疾患には全く不合理な点が出てまいります。それから、特に小児の分につきましても逆ざやがほとんど出てきてしまう、そういう不合理はやはり現場の方からも何とかしてくれよという話がございました。また皆さんからも御指摘がございました。  ですから、そういう意味も含めて参議院の与党としてこれは何とかした方がいいんじゃないかと、そういう意味合いがありまして、いろいろのものを考えた中でこういう修正案ができ上がったと、こういうことでございます。
  96. 山本保

    山本保君 率直なお答えがあったのかなという気もいたします。  つまり、簡単に言ってしまえば、衆議院の修正は粗雑であったと。全く短時間で大した議論もなされずに行われたがゆえに専門家の目から見たら非常に粗雑なものであった、そういうことをおっしゃられたんだと思います。  先ほどの話がまた後で出るかもしれませんが、例えば実費以上にふえることが、政令で書きますと局長もお答えになりましたけれども、こんなのは本当は全くおかしいわけでして、最初から当然法律に書いていてもいいわけです。こんなことが出てきてしまったということについて、やはり現場も、またもともとの原案を出した方からしても大変なことだったということじゃないかと思います。  もちろん、悪いことを直すというものについていけないとかそう言うものではありませんけれども、私非常に心配しますのは、こういうことがなぜ起こったかといいますと、内容はまずおきましてそのプロセスだけ申しますと、先ほどから言っていますように、実は何十時間議論したといいましても、このことを最後に決定するところについてはほんの数時間しか行われなかったということが一番の原因になっているわけであります。  もし、こんなことが今後国会審議の常道ということになってしまったのでは、全く民主主義なんというのはどこかへ飛んでしまうのではないかと思うわけであります。もちろん、今回のこの修正につきましても、評価というのは、宮崎先生、同じようにまた後の後輩からされるわけでして、やはりたった二時間の議論でやって粗雑だと言われてしまったのでは全く立つ瀬がないと思うわけであります。私は、これ以上このことについて申し上げても仕方がないという気もいたしますけれども、こんなことはやっぱり許されるものではないということを申し上げます。  そこで、もう一つこの修正案について観点を変えてお聞きしますけれども、これも絡むようで申しわけありませんが、たしか衆議院で修正案が出されたときの説明は、厚生省案よりもその取り扱いが簡素で楽である、事務的にも楽だと、こういう説明だったはずですね。それがまた今度日数をつけるというようなことで楽じゃなくなってしまったわけで、今回の修正案の利点といいますか、一体どういう効果を持ったものであるというふうに御説明されるのか、それについてお聞きします。
  97. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 国民負担を求めるということは、何をやってもそれはパーフェクトというのはないんですね。特に、今回のように薬価負担をお願いするというときには、百人いて百人がこれがいい、これ以上もう欠点も何もないという案というのはあり得ないと思います。それは定率制を一つやっても、薬だけを抜き出すということはおかしいじゃないかと、これも出てまいります。  今回、やはり薬価の抜本改正ということを、先ほどから僕が抜本改正と言うと怒られますけれども、しかし今度は本気になってやっておるわけでありますから、そこら辺をきちっと御認識いただきまして、今回の何がいいかと言いますと、まず患者さんに説明しやすいことは、一日幾らですよということがはっきりしたわけですね。今までの修正案は、例えば四種類出して七百円、三日たって来ても七百円、もらうものは同じ、それを一週間もらっても一緒、これは非常に説明しにくいですね。ところが今回は、三日分ならそれなりに、同じ薬なら三日分の計算で、あなたの負担は一日三十円ですよ、あるいは三日来れば九十円、これはきちっと説明がつくわけであります。そういうところが一つ私は今回の薬剤の中ではいいと思っておるわけであります。  また、先ほど来申し上げました小児だとか高齢者に対して配慮をしたということも今回の再修正では利点ではないかと、かように思っている次第であります。
  98. 山本保

    山本保君 今までは本気でなかったというようなお言葉がありまして、私も厚生省のOBとして、そういうことを言われますと、そんなつもりで仕事をみんなしていないと。ただし、大変なところを頑張っておりますが、大臣がおっしゃるように、これからはもっと、今まで積み残してあった問題をここで解決したいというその意欲については私も高く評価しておるわけでありますけれども、その辺の言葉のあやは結構です。  しかし、今のお話で薬剤費の負担でございますけれども、一日ずつを入れたからよくなったと言いますが、それを言い出しますと、結局、薬剤それ自体の値段が高いものと低いものの差があるとか、そういうことが当然あるわけですね。ですから、今回薬剤費というものを今までの一部負担のほかに加えたという新しい概念を入れたわけですから、そうしたとき、一体こんなうろうろした方針でよろしいのかということなんですね。  それで、まず薬剤費の別途負担を入れたということについての基本的な考え方をお示しください。
  99. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 これは、そもそも政府原案が出てまいったわけでありまして、それは政府の方がその方針で入れてきたものであります。それに対して我々は国会議員の立場で、衆議院でそれなりの御苦労があって修正をされてこちらへ送られてきたものでありますから、これは今の立場でいきますと政府に対してきちっとそこはお聞きいただかないと、私の個人的な意見ということになりますと、この再修正案の提出者でありますのでなかなかそこはお答えしにくい、こう申し上げたいと思います。
  100. 山本保

    山本保君 通告してありませんけれども局長、いかがでございますか。
  101. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 今回、薬剤費の一部負担を新たにお願いした理由でありますが、これはやはり現在の医療保険制度財政が非常に窮迫している中で運営の安定というものを確保していかなきやならないということがあるわけであります。  そういった中で、やはり財政が窮迫している一つの要因として医療費の増嵩というのが当然あるわけでありまして、その中で我が国薬剤の割合が非常に高い、そういった中における一つの問題が薬剤の多量使用ということがございます。  こういったものをやはり適正化していく、こういうことが医療費の適正化につながっていく、こういうふうに考えたわけでありまして、そういった意味で、このたび薬剤について新たに別途一部負担をお願いすることによりまして薬剤についての適正化、多量使用の歯どめというものに役に立てたい一こういう考え方が基本でございます。  と同時に、冒頭申し上げましたとおり、財政的な効果というものも考えましてこのたび政府としては薬剤の別途一部負担をお願いした、こういうことでございます。
  102. 山本保

    山本保君 やはり今の論理というのは一部だけだと思うんですね。これは私は薬剤関係は詳しくありませんので想像ですけれども、これは専門の方であれば多分、ある症状等に対してどんなものが必要かというとき、いろんな種類のものを少しずつ使ったってそれは効果が高い場合は使わなくてはならないわけでして、そのときに種類を制限したから効果が上がるというわけにはいかないはずですね。これは考えてもすぐわかることです。  ですから、局長がおっしゃるように総額を下げたいというのであれば、こんな種類であるとか一日当たりというのではなくして、まさに実際に使った実費について明確にし、情報をきちんと消費者といいますか、患者側にも示し、先日私、レセプトを公開すべきだということで質問を終わったわけですが、そんな形で実際を出すと。実際のものを出すことによって患者の方も、またはそのことからお医者さんも、薬剤師さんもいろいろその辺に抑制がかかるというのが当たり前じゃないでしょうか。  それを正しい情報といつも言っておられながら、これですと情報の正しさではなくして単なる種類数だけが要因となってくるわけですから、はっきり言えば誤った情報ではないかと言われても仕方がないという気がいたします。  じゃ、このことについてはこれくらいにしまして、もう一つ薬価について、単純な話で申しわけございませんが、今まで例えば二、三種類であれば一回ごと四百円であったのが今度は一日三十円というふうになると。単純に考えますと、一回当たり大体二週間分出るそうでありますので、そうしますと、これ二週間ですと高くなってしまうのじゃないか。  この単価というのはどういうぐあいに決められたのでございますか。
  103. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 これは通院の投薬の日数が十二・五日というのが平均値だそうでございます。ですから、これは修正案ですが、四百円割る十二・五は三十二円、これは大体三十二円を三十円にしたということでこの二種類から三種類の部分は平均より安くなると思います。それから四種類から五種類は修正案は七百円であります。それ割る十二・五は五十六円であります。これは六十円であります。ですからこれは四円ばかり高くなってきておる。それから六種類以上になりますと、これは千円割る十二・五ですから八十円であります。これが百円になっております。ただ、この百円になった部分につきましては、六種類以上ということでございますので、その辺のところを考えてこれは多少高目に設定をされておるわけであります。  以上であります。
  104. 山本保

    山本保君 今、非常に明快にといいますか、その根拠が平均値であるということをおっしゃられました。  それでは、もう一つお聞きしますけれども、外用薬は一体どうして八十円が五十円になったのでございますか。これは平均値なんですか。
  105. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 外用薬につきましては、八十円というのは非常に高い設定であると。すなわち、設定の根拠が一回投薬数が八百三十円の一割だから八十円、こういうことを政府の方は言ったわけでありますけれども、これは大病院はそうでありましても診療所は一回にそういっぱい出さないわけであります。そうしますと、やはりちょっとそこは設定が高過ぎるんじゃないかと。しかも、一種類ごとに八十円でやりますと、例えば四種類出せば三百二十円ということになりますね。それではちょっと困るので、やはり頭の打ちどめをつくっておかないと負担が大きくなるということでこれは五十円というふうに単価を落としていただいたと、こういうわけであります。
  106. 山本保

    山本保君 どうも結局どんぶり勘定だというふうにお答えになったとしか思えないのでありますけれども、特に診療所側にそれなりの配慮をしたんだというところが本音かなという気もいたします。  それで、通告しなかったんですが、先ほど山本先生がここでお答えになったので、ちょっとついでにもう一つお聞きしたいんです。  入院負担について和田委員の方から、千円、千百円、千二百円と上がっていく、おかしいではないかという話がありましたが、どうしてこのことについては修正を考えなかったのか、その辺をよろしければお答えください。
  107. 山本正和

    山本正和君 何とか八百円にならないかということで、厚生省の方からも資料を取り寄せまして検討いたしました。そしてさらに、これが無理ならばせめて政府原案の千円にならぬかということでの検討もしたわけです。  ところが、いろいろ計算していきますと、結局今度の改正案の趣旨というものは何かと、このままでは保険制度はパンクする、そのパンクの原因が薬剤費である、だから薬剤費の負担をお願いする、しかしお願いするについてもいろいろな限度があると。そのところを中心にいきますから、どうしても入院費の分を仮に軽減させる、そうすると薬剤費の負担が多くなるというふうな問題が、相矛盾する結果として数字が出てくるわけです。  さてどうするんだと、この際千百円、千二百円ということにした意味は何だろうかということで、衆議院段階の議論をもう一遍取り寄せて調べたわけです。そういたしますと、社会的入院の抑制というふうな観点の問題がいろいろ出されておったと。さらには現実問題として、これは小泉大臣からも何遍も言っておられるように、抜本改革が目の前にある、そこでこの入院の問題も含めて当然議論されるべき余地があるんじゃないかと。したがって、衆議院で議論された経過をこの段階では一応尊重して、しかしながら希望としては何としても入院費の軽減ということについては検討を加える、こういうことでもって今回はこの案では衆議院修正案通りにしたと、こういう経緯でございます。決してこのままでいいという観点じゃないと、これだけは御承知願いたいと思います。
  108. 山本保

    山本保君 ずっと読んでいって、まさにそのところが、改正案など一般の方が見ても一番おかしなところはこの十年度、十一年度のところだと思うんですね。大臣もできれば来年からでも改正部分的にはやろうとか、またこの八月以降抜本改革を出そうと言っておられるときに、これは時限立法ではないということでありますけれども、事実上もう時限立法であると。でありますのに、どうしてここで十年度、十一年度まで決めていくのか、この辺が非常に不思議なんですが、この辺はどうですか。もう一つ、もう一声お願いします。
  109. 山本正和

    山本正和君 実は、私も率直に言いまして素人でございまして、そういうことは思いました。  ただ、政府が、政府というか、ここで法案として出す以上はその法案についての一つの整合性といいますか、例えばこれは予算に絡んで法律には見通しをはっきり示すという責任があると。となれば、それを書かないというわけにいかない。したがって、法律が背負わされている任務として、これはやっぱり展望を示すために必要である、こういうふうに私は理解をしたところでございます。
  110. 山本保

    山本保君 まさに先生のおっしゃるように、予算の責任があるがゆえに政府案は一日千円であるというふうにつくってきたわけじゃありませんか。この案こそが当然予算執行に責任を持つ厚生省がその全体構図の中で生み出してきたものじゃないんですか。それに対してどうしてこう変えたのかということをお聞きしているわけですから、はっきり申し上げれば全然理由がない。  全体の総額をある程度政府案より後退させるわけにもいかない、しかしながらこちらで少し減ってくるのでこの分は来年以降のところで目くらましで少し足していこうというふうな、はっきりいえばそういう単なる数字のバランスをとっただろうということは想像できるわけですよ。ですから、いかにこの衆議院の修正案がいいかげんだったかということを先生ははしなくもおっしゃったと私は思います。ここは参議院ですから、衆議院のことをこれ以上非難をしても仕方がないかと思いますが、こういうことをやっぱり出してきてはいけないと思います。  大臣は、先ほども言われましたけれども、何度も抜本改革と言われるわけですから、私は最初のときにも申し上げた記憶がありますけれども、こういう単なる数字を、赤字を少しだけ減らして長生きさせようというような案は厚生省として責任を持って今回限りであるというふうに言っていただきたいのですけれども、高木局長、お答えいただけませんか。
  111. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 政府案としては三年程度財政が均衡するような形で御提案申し上げたわけでありますが、衆議院の修正において薬剤のところについて大幅な修正が加えられ、財政効果としては満年度、九年度ペースで見ましても国庫負担ベースで五百二十億の削減がなされたというようなこと等々によりましてかなり財政上は窮屈になったという結果になります。  しかし、そういった中で薬についての患者負担の軽減というようなことで修正がなされたと思いますけれども、その際に外来と入院との負担のバランスといった点に配慮して、そして入院については、政府案は今年度も千円、来年度以降も千円という格好になっておりましたが、修正案では来年度は百円ふやしまして千百円、それから平成十一年度は千二百円というような、そういうバランス上の修正がなされたというふうに理解をしておるわけであります。私どもとしましては、いずれにしましても今回のこの案でありますと二年とはもたないような財政計算になってまいりますので、制度の根本的な改革というものはこれはもう避けて通れないというふうに考えております。  そういった意味で、私どもとしては国民の理解が得られるようなきちっとした案というものをお示しをし、そして国民の御批判を賜りたい、このように考えております。
  112. 山本保

    山本保君 来年以降については全く白紙のはずなんでして、そこでいかにも決まったような案を出してきたというのは、ここにその提案者がおられませんが、それはやはりよくないと私は思います。  そこで、今お話に出たことなんですが、全体で一体今回の修正はどのような財政効果といいますか、または財政は苦しくなったのかもしれませんけれども、どんな効果を上げたのか。これは本当は与党の方からお聞きすることかもしれませんが、与党がおられませんので、これはちゃんと残すためにも全体の総額についての動きについて教えてください。財政効果についてですが、局長で結構でございます。
  113. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 今回の修正案によりますと、国庫負担ベースで申し上げますと、平成九年度の満年度ベースで衆議院の修正に対しましてさらにトータルとしては八十億ほど国庫負担がふえるという格好、いわゆる財政効果としては縮減される格好になります。  内訳的に見ますと、薬剤の一部負担の単価の見直しということで二十億円、それから六歳児未満の小児につきまして薬剤の一部負担を免除するということ、それからまた低所得の高齢者の方々については薬剤負担を免除するということがございますのでそれぞれ二十億、それから低所得者の方については最大限で四十億、こんな内訳になっております。  それが政府管掌健康保険に与える財政影響を見てみますと、薬剤の一部負担の単価の見直しで九十億円さらに悪化をするという格好になります。それからまた、六歳児未満の小児の薬剤の一部負担を免除する、それからまた低所得者の高齢者の方に対する薬剤の一部負担の免除、合わせまして六十億、それぞれ四十億、二十億でございますが、合計で百五十億円ということでありまして、政管健保の財政状況からしますと、平成九年度満年度ベースで見ますと百五十億ほど悪化をいたします。  なお、これが平成九年、ことしの九月実施ということでございますから、九月実施で見ますと、この二分の一がことしの九年度分、こういうような財政状況になります。
  114. 山本保

    山本保君 一部の新聞などには、社会保障制度抜本改正というようなこの大目的に対して、今回のまた修正によって、今お話あったように、実際上恐らく悪化していくということでありますけれども、結局さまざまなファクターからの圧力に抗し切れなかったんだというような批判もあるようです。  今後、九月以降抜本改正であるというその最初から、もうこの短い審議の間でもあちらへ行ったりこちらへ行ったりというのでは非常に心配な気がするわけです。  大臣、突然ですけれども、もう一度構造改革についての、こんなことで今回の修正を大臣としては横でごらんになっておってどんな気がされましたか、できれば率直なお考えを下さい。
  115. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 去年の十月に選挙が終わった、橋本第二次内閣が十一月七日に成立した、予算編成を年末までに編成しなきゃならない、その短期間では私はある面においてはやむを得ない面があったと思います。そういう中で出てきた案に対して、これは抜本的改革案じゃないじゃないかという御批判が衆参両院で出ました。その経過を踏まえながら、抜本改革案の機は熟したと私は見ております。  この年末の予算編成、与党三党が努力していただいた、利害調整のいかに困難かということを認識していただいた、そしていろいろな委員会で御批判をいただいた、私は、この委員会の意見、経緯を踏まえながら、抜本改革の機は熟した、この機を逃さずに本格的な抜本改正案をまとめてみたいと考えております。
  116. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。  まだ少しだけ時間があります。もう終わりますけれども、今、大臣からはそういうお話がありました。  繰り返しになりますけれども、確かにさまざまな意見の中で調整がなされてきたということは認めます。しかし、それが政府与党内だけで行われた。しかも、その方向についても、きょうはもちろんそういうことを言う場ではないということで各党派の立場などは出ませんでしたけれども、しかしそれが何だかその力関係、単なる数字などで押し合いへし合いしてきて、そしてやっと終盤になってまとまって、それを国会に出し短時間で通すというようなことは、これはやはりよろしくないです。  今まで確かに国会というところは、私も外から見ておりまして、一年生で生意気なことを言うかもしれませんが、実際には政府案がそのまま通る世界であった。それがいろいろな今の政治状況の中でだんだんとそうではなくなってきたということについては非常にいいことだと思いますけれども、しかし国民の前でその議論がきちんとなされ、それについての意見が本当に集約していけるようなルールというものを今後つくらなくてはならないのではないかなというふうに思っております。  そのためにも、九月以降の構造改革審議会、またそれを受けてのいろいろな審議というものが本当に国民の目の前にさらされるということであれば、よほどふんどしを締めてかかっていただかないといけないということを申し上げまして私の質問を終わります。
  117. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 ちょっと補足発言がございますのでよろしいですか。
  118. 山本保

    山本保君 じゃ、まだ時間ありますから、どうぞ。
  119. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 先ほど、外用薬のどんぶり勘定ということで私説明不足でございました。全体は八百円、一割が八十円という設定でありました、修正案。しかし、診療所だけをとりますと、これは平均五百円でございます。その一割の五十円、これが根拠でございます。  それから、和田先生から冒頭、修正案の審議の時間が非常に少ないという御発言がございましたけれども、参議院の先例で質疑終局後でなきやそういう修正案は出せない仕組みになっておりまして、これはルールでございます。それで今度初めて、先例がないわけじゃありませんが、二時間という、これは初めてこういう長い、これでも長いというようなことでございますので、そういう事実だけを申し上げます。
  120. 今井澄

    ○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  今、山本委員の方からのお話の最後にありましたけれども、私は今回の修正案、これがこの間の非常に熱心な委員会質疑の中で取り上げられた問題をこの修正案に結実させたという意味でやっぱり一定の評価をしたいと思います。  私は、小児の薬剤負担の問題、それから老人の低所得者の問題に特に力を入れて質疑をしてまいりました。そういうものが生かされたことにつきまして私も大変喜んでいるわけであります。また、山本委員も言われましたが、従来は案が出ますと与党はとにかくしゃにむにその成立だけを考えるというところから与党の皆さん方も考え方が変わってきた、国会自身がやはり本当に国民に開かれる方へ一歩進んできたということは私は好ましいことだと思います。また、傍聴の皆さんも連日大変熱心にお見えになっている、そういう中で私どももまじめに審議しているということはやはり前向きだと思います。  しかし、今回修正が行われたということは、そういうプラスの面と同時に、余りにももともと回ってきた案がひどいものだったわけですので、これは修正せざるを得ないということもあったんだろうと思います。  さてそこで、この修正につきまして私が質問しようとしたことをもう既に和田先生の方から質問が出ましたが、高齢者の低所得者に対する配慮というのが入ったことは、これはプラスに評価いたします。しかし、老齢福祉年金受給者というのは既にもう、新規にもらう人は全然いないわけで、八十六歳以上の人なんですよね。じゃ八十六歳未満の人はどうかということについて、先ほどの御答弁では、いろいろ検討はされたけれども財源的な問題なんかがあったというふうにお聞きをいたしました。  そうすると、例えば老齢福祉年金月額三万三千五百三十三円に満たないような老齢年金しかもらっていない八十とか七十の人にまでこれを及ぼすと一体どのぐらい健康保険財政に穴があいて当面の緊急策としてはとてもやれないということなのか、その額をお尋ねしたい。
  121. 山本正和

    山本正和君 これはちょっと数字でございますので、政府の方から。
  122. 今井澄

    ○今井澄君 それじゃ、時間がもったいないので、それは後でお答えいただきたいと思います。  それから、先ほどからの質疑をお聞きしていましても、この間の経過は、去年の十一月二十七日に医療保険審議会が抜本改革につながる中身を持った今年度の医療保険改革案を出したわけですね。それがいわゆる一・二・三と言われる、老人一割負担、健保本人の二割負担、そして薬剤についてはその一割、二割とは別に薬剤だけ取り出しておいて、だからその一割、二割には薬剤は入らないわけですね、薬剤は三割から五割ということで三割負担という案だったと思います。  これは大変抜本改革につながる案でして、例えば薬剤について言えば、今みんな負担率が違うわけですね。健康保険の本人はもらったお薬の一割を負担すればよかったわけですね。国保は三割を負担しなければならなかった。サラリーマンの場合には本人は一割を負担すればよかったけれども家族は三割、子供も三割負担しなければいけなかったという制度、そこを医療保険審議会は一律に薬だけは外してみんな三割にしろというのはある意味で公平にもなりますし、それから薬剤というものに特に目をつけて薬剤の使用量や高価格薬を減らすという意味では意味があったと思うんですね。  そういう意味からいきますと、政府案が二割とか三割の中に薬剤費を含めた上にさらに薬剤の定額負担を持ってきたというところからまず矛盾は始まったと思います。そういう意味で言うと、今回の修正の議論の中で、これはいつそのこと医療保険審議会の答申のように戻して、薬剤の二重取りとかなんかという批判も受けて、じゃ薬剤だけ別途の三割なら三割の負担にしょうとかいう御意見はなかったのかということですね。あわせて一老人の問題ですけれども、こんなことを言うとあれですけれども、私はやっぱり政府自身が実は外来とのバランスを欠いていたと思うんですよね。外来は定額五百円の四回、二千円まで。その上に薬の負担ということになりますと、この間の審議でわかりましたが、八・数%の負担率になるわけですね。一割にかなり近づく。ところが、入院の千円という政府原案ではこれが七・何%なんですね。今、できるだけお年寄りは入院するんじゃなくて外来で、家でやろうという時代に入院の方だけ軽いものにするということ自身政府案の中でおかしかったわけです。うわさに聞くと、一割だと千八百円ですか、八%だと千数百円ぐらいになるんですかね。それが千円ということは、これは怒られるかもしれませんけれども、むしろ外来に比べれば安過ぎるぐらいの負担を設定してしまったわけですね。  そういう点も含めて、定率とか薬剤は別途三割とか、そういう議論は出なかったんでしょうか。
  123. 山本正和

    山本正和君 実は、まだこの厚生委員会の議事録が二十七日の分しかなかったんですけれども、議事録はもう拝見いたしました。それ以外のいろいろな御議論を全部もらいまして、こういう議論があったということを前提にしながら議論をしたわけでございます。  したがって、今おっしゃったような基本的な問題についての御指摘が非常に多かったということで何とかしなきゃいけないということを思ったんですけれども、何分にもとにかく平成十年度までは何とかこの政府管掌健保が財政破綻をしないようにしょうという枠の中での議論というふうに制約されたものですから、厚生委員会の中でありましたさまざまな基本的な議論につきましてはそれをきちんと取り置きまして、抜本改革の段階での議論にこれを回さざるを得ないのじゃないかというふうなことでの判断をした、こういう経緯でございます。
  124. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 もう今井先生は与党保険改革協議会にお顔をお出しになっていらっしゃったのでいろいろなことを御存じだと思いますが、はっきり申し上げましてこの給付の問題と負担の問題、これからの制度の問題、ここを全部考えていかないと一律に課すということにそもそも不公平感が出てくるのではないかと。負担は軽いけれども給付だけはしっかり取るということも、これはおかしいではないかと。いろいろ保険制度でそれぞれまた内容が違うものですから、この抜本改革の中で早くここら辺も整理した中ですっきりした形を国民の前に示してやろうということが私どもの基本的な考えでありますので、先生のおっしゃることはもう十分理解しております。
  125. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、この再修正については大分議論が出ております。先ほどから抜本改革抜本改革ということが言われておるんですが、これはもう審議の中で終始言われていることでもあるわけですが、その抜本改革に関連して保険者の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。これは政府の方にお尋ねをしたいと思います。  これまでの審議の中で大体のことは議論され、老人保健制度をどうするか、あるいは国保制度の問題等論じられてきましたけれども、ちょっと論じられていない問題があるので幾つか御質問したいと思うんです。  例えば、保険者の規模とか保険者の機能の問題ですね。規模を適正化しなければならない、保険者の機能も単にお金を集めてあとは支払うというだけではだめだということで、もうちょっと国民、被保険者の立場に立って頑張らなければならないということがずっと言われてきたと思います。市町村国保、国保はもちろん組合もありますけれども、市町村国保が基本ですね。市町村、特に町村では非常に規模の小さいものがあって、これは財政的に苦しいだけではなく保険者の機能としてもとても住民のために保険者として頑張るということができないということで規模拡大をしたらどうかということで、私どもも都道府県単位ぐらいにしてはどうかというふうに一つ考えているわけですが、国保を市町村単位から都道府県単位にしたときのメリット・デメリットについて簡潔にお答えいただきたいと思います。
  126. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) まさに先生御指摘のとおり、現在の医療保険制度の体系といいますか、保険集団という点で見た場合に最大の問題はやっぱり国民健康保険をどうするかということであろうと思いますし、また、国民保険というものを今後健全に維持していくということになりますと、やはりこの国保制度あり方というのは抜本的にまさに改革しませんと待ったなしの状況に来ているというふうに思います。  そういった中で、保険者の規模というものをどういうふうに考えるかということがあるわけでありますが、これは社会保険制度でありますから、そういった意味におけるあり方ということを考えますと、一つには行政単位というものもやはり考慮すべきであろうと。これはなぜかと申しますと、医療保険というのはいわゆる医療費保障制度でありますけれども、やはりこの医療保険制度が常に破綻に瀕する状況というものが起きてくるのは医療提供体制あるいは健康づくりとかそういった保険事業等と密接に絡みますし、また高齢者の場合については福祉制度等とも非常に密接に絡みます。  そういうような点等を踏まえて考えた場合に、どういっだ形の保険集団がいいのかということになってまいりますと、医療提供体制というものを県単位で現在考えていっているということから見ますと、それとの裏腹の関係に立ちますから、都道府県単位の制度というものは一つ大きく意味があるというふうに思います。  ところが、 一方、健康づくりとかあるいはまたヘルス事業のようなもの、あるいは福祉との関連、こういった面で考えますと現在は都道府県単位よりもむしろ市町村の方にどちらかというとウエートが大きいというふうに思いますし、それとの関係ということを考えますと、市町村と切り離して都道府県にしてしまうということがいいのか、いわゆる保険数理という問題だけ考えますと規模が大きい方が危険分散は大きいわけでありますけれども、そういった問題がございます。しかし、保険数理の問題の中で現在の市町村で余りにも高額医療費が非常にふえていますから小さ過ぎるという問題もあります。  その辺のところを適正な単位としてどう考えるかということでありますが、私は今井先生がかねてから都道府県単位で医療保険制度というものを考えたらどうかというお考えをお持ちであることは承知しておりまして、これも一つ考え方であろうと思いますし、この辺のところはこれから私ども制度の体系を考える上において十分先生の御意見等も踏まえながら検討させていただきたいと思っております。
  127. 今井澄

    ○今井澄君 今の国保なんですけれども、実は国民健康保険法第八十二条に、治療、医療給付だけではなくて健康づくりをやるということがあって、それがもとになって国保というのは地域医療活動をやる。  健康づくりとかなんかでは、岩手県の沢内村を初め有名なところはみんな国保なんですね。そういう意味では市町村単位でやる。また、国民健康保険法にそう規定されているという歴史的なことからあるんですが、ただそれは市町村単位がいいかといいますと、例えば岩手県の沢内村というところは有名なんですけれども、岩手県全体はどうか、広島県の御調町というところは日本のリーダーですけれども、広島県はどうかということを考えたときに、自分の長野県のことを申し上げるのは大変気が引けますけれども、長野県の場合は長野県のどこどこということだけじゃないんですよね。長野県の国保連合会が中心となって全県の国保の医者と国保の保健婦と住民とが一緒になってやってきたという、ある意味では健康づくりは県単位でできるということ、長野県を一つ例にとってもこれは県単位にしていくことは何ら障害がないと私は思うんです。  今は一つは、県単位にしたときに大きなお金の上での障害があるのに保険局長はわかっておられながら時間の関係もあって言われなかったんじゃないかと思うんですが、保険料の徴収なんですね。県に移した場合、県の役人が保険料を集められるかというと、とてもそんなことはない。結局、市町村に依存するということになるわけで、そこが痛しかゆしの面だろうと思います。  一方、日本では、年金にしても医療費についてもそうですけれども、税金を納めなかったら罰則があるから納めます。だけれども保険料を納めなくても罰則がないから未納者がいるという、これは払える払えない以前のシステムの問題として日本はおかしいんじゃないだろうか。ドイツは保険料を納めないとペナルティーなんですよね。例えば、医療保険でも介護保険でも納めなければ五千マルク。五千マルクということは、購買力平価で大体百円ぐらいと考えていいとすれば五十万円の罰金なんですよね。やっぱり税金と同じように保険料をきちっと納めるというシステムを整備する必要があるだろうと思います。  そういう関連で私は政管健保についても国が保険者で全国のっぺらぼう一律でやっているというのは非常におかしいと。これもむしろ都道府県単位ぐらいにした方がいいだろうなというふうに思っております。  さて、組合健保ですけれども、一般的に規模が小さいほど経済的には苦しいだろうと。それで国保なんかも経営が市町村から都道府県へという話が随分あるんだろうと思うんです。実は組合健保についても組合の六割以上が赤字になっているというので、厚生省の方にお願いして組合の規模、被保険者の数と赤字の程度をグラフにしていただいたんですね。ところが、全然相関関係がないんですね。被保険者の数が二十万人を超えるところ、あるいは十七、八万というところも大赤字のところがあるんですよね。むしろそっちの方が多いということ。非常に小さな最低の規模である七百人をもう割っちゃったようなところでもちゃんと黒字でやっているところもあるんですよ。だから、保険料率も小さい組合ほど保険料率が高いのか、大きい組合ほど楽々やっているのかというと、そうではないんですよね。これは厚生省からいただいた数字で、私びっくりしました。その後、厚生省にお願いしておいたんですが、財政が全くこの規模に関係ないと。  そうすると、一体ほかにどういうところにこの赤字、黒字になる要因があるとお考えか、お願いします。
  128. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) まず、組合健保の場合の赤字、黒字ということを考える場合に、政管健保とはやっぱりちょっとそこは違った目で見なきゃならない面があります。  それは、当然医療費に対して必要な保険料を取らなければ赤字になるわけでありまして、その保険料の水準というものをどうセットするかということについてはそれぞれの組合において決定する、こういうような格好になっているわけであります。ですから、適正な保険料が取られているのかどうかという問題が一つありますし、それからまた給付費のレベルというものをどこで比較するのかという問題があろうと思います。  そういった意味で、政管健保の場合は保険料率が法定化されておりますし、そういった中でまさに赤字になった場合は国会にお願いをして保険料率を変更させていただいている、こういうことであります。そういった意味では、かなり医療費保険料率というものの見合いというものを基本にした格好で動いているというふうに私は思いますが、組合健保の場合、そこら辺が全部そういう形になっているかどうかというのをよく見なきゃいけないと思います。  それからもう一つは、代表的なのは企業を単位に組合健保というのはできていますから、石炭のようなああいう非常に斜陽産業になってまいりますとなかなか組合が苦しくなってまいります。これは被保険者が非常に減ってくる、そういった中で高齢化が進んでいく、あるいはまた生産が上がらないために収入自体もそれほど高くないという、そういう面がありますから、そういった意味でこの赤字、黒字という場合にはかなりいろんな角度から分類分けした上で比較しないといけないのだろうというふうに思っております。  ただ、沿革的なことを申し上げますと、組合健保というのは、これは本来政管健保にみんな入れるわけでありますけれども、そこから特別に自分たちだけで保険集団を形成するという形でできておるわけでありますから、それが単に収支だけじゃなくて健康づくり対策等、そういったいろんな事業等々のメリットというものも考えながらつくっておられるわけでありますが、基本的にはやはり政管健保にいるよりもプラスの面が多いということでもともとできておるわけでありますから、そういった中で考えますと、その赤字になってきたということの要因というのはかなり複雑なものがあるだろうというふうに思います。
  129. 今井澄

    ○今井澄君 実は、こういうデータをお願いしてつくってもらって、つくった方自身関係ないんですねということでびっくりしておられたような感じもするし、一般的に小さなものがたくさんある、千八百もあるというよりも統合した方がいいんじゃないかというふうに考えていますが、どうも要因は今のお話のように複雑だと思います。  例えば、大きな健保組合は若い組合員が多くて病気になる人も少なくて本来は豊かなはずなんだけれども、付加給付をやっているとか、あるいは保養所をたくさん運営していて赤字だとか、そういう要因だって一方であるだろうと思うんですね。ですから、そういうことでこれは厚生省の使命としてきちっとデータを分析して、赤字、黒字だけの問題ではなく、本来の健康保険というのはどうあるべきか。それから、確かに健保組合というのは一つ一つ社内的にできてきたという意味ではあれですけれども、やっぱり全体の助け合いの制度の中にあるわけですから自分の組合だけ勝手にいいことだけやっているという時代ではもうないだろうと思いますので、そういう点ではぜひこの分析を早急に進めていただいて、いずれにしても小規模保険者が多いというのは保険者機能の強化とか効率性の面でも好ましくないことはまず間違いないと思いますので、ぜひやっていただきたいと思うんです。  そこで、実は健保組合に関して、御承知だと思いますが、週刊ポストで最初が三月十四日号でしょうか、それから何と最近では第九弾までやられているんですね。こういう暴露物的なものは大体二回か三回で終わっちゃうのが多いんですが、これはなお今後も続きそうなんですね。内部告発が大分あるらしい。  それで、この中でかなりの乱脈、特に健保組合への厚生省あるいは社会保険庁からの天下り。政管健保に行ってもいいわけですね、もう苦しいから。むしろ政管健保よりも保険料率が高くなった組合があるんだから。政管健保に行きたいけれども行かせてくれないとか、どうも健康事業と称しながら何かパンフレットをやたらたくさんつくって、そんなことにむだな金を使って倉庫に眠っているとか、そのパンフレットのつくり方も特定の業者に発注してその業者からは接待を受けてどうのこうのとか、もういろんなことが書かれているわけですよ。  これは単なる週刊誌と言ってしまえばそれまでですが、実はその第九弾のところで小泉厚生大臣がちゃんと取材を受けているわけですね。ただ、取材がそういう問題とはちょっと筋が違うような気もするんです。  厚生大臣、この取材を受けられたのか、またこういう今の実態、特に天下りが多くて、天下り一般がいけないと私は言いませんけれども、もしこういう保険財政が苦しいときに保険料を食い物にしているようなことがあるとすれば大変問題だと思いますし、最後にこの健保組合の今後のあり方について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  130. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 週刊誌の取材を受けたことは事実であります。そこで、私は批判は歓迎する、この批判にこたえたような改革を今後したいから批判はどしどししてくださいという形で受けました。  天下り問題、いろいろ言われていますが、そのような問題も含めまして、変な勘ぐりを受けないような体制厚生省としてもとっていきたい。健保組合の財政状況におきましてもいろいろ理由があるようであります。保険者集団の問題、今後の抜本改革の中で今までいろいろ受けてきた批判を参考にしながら改革案考えてその批判にこたえていきたいというふうに思います。
  131. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の修正案で低所得高齢者の薬剤負担につきまして再修正がされましたわけですが、それによります効果額は、先ほど保険局長が答えましたように、最大で四十億と申しました。四十億のときのいわば人数ベースの前提は三十万六千人ということで老齢福祉年金全部をなにしたらという前提でいたしましたから、それじゃそれを拡大したらどうなるかというのはその拡大の規模を今三十万六千対四十億という関係で拡大をしていただければそれが効果額になろうかというふうに思います。ちょっと個別の数字を突然のお尋ねでしたのでお持ちをしておりませんけれども、そういう関係になろうと思います。
  132. 今井澄

    ○今井澄君 そうしますと、老齢福祉年金受給者だけではなく、老齢福祉年金相当額より低い人、あるいは無年金の人、この前の質疑で百万人ちょっとということですから、四十億円の二・五倍というと、あと百億円ぐらいですね、こういう財源が何とかなればぜひそういう実質的な低所得者にも拡大させていただきたいと思います。  あと、三十秒ぐらいありますから一言だけ申し上げさせていただきたいんですが、この週刊誌の中でも、レセプトの審査がいいかげんだ、一枚七秒と言うけれども実は三秒でやっているんじゃないかとかいう話がありまして、これは前に釘宮委員からも出たと思います。現在これだけコンピューターが発達しているのだからぜひコンピューターを使ってもう少しきちっとした審査をすべきだということ、まさに私はそのとおりだと思います。手作業というのは非常に非効率だと思います。  ただ、ひとつ誤解をしないようにしていただきたいのは、私も十二年間審査委員をやっていましたけれども、確かに二日間で一万枚見るというと一枚につき何秒ですよね。だけれども、そういうふうに見ているのではなくて、事務局がいて事務局が事務チェックをまずするわけですね。事務局と連携をとりながら集中的にこの医療機関については見るとか、この医療機関は残念だけれどもパスするとか、点数の割合とか、そういうことをやっていますので、単に一枚何秒ということでの評価だけはしないでいただきたいなと一言申し上げて終わります。
  133. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  先ほど来、再修正案の質疑の時間の問題が出ておりましたけれども、私は、修正案に対する質疑もさることながら、国民に二兆円もの負担増を押しつけるその原案の質疑をもっともっと慎重にやるべきであると。地方公聴会も、もちろん中央公聴会はやられましたけれども、地方の公聴会も、それから参考人も、そして現場の視察も、可能なことはすべてやる、そして審議を尽くす。そして、会期制の原則からいいましても、六月十八日までにそのことがやられなければこの法案は廃案になる、それが議会制民主主義のルールではないかというふうに思います。  そういう点で、きょう採決をするということについて我が党だけが反対をしてまいりましたけれども、きょう審議を打ち切るということについて私は反対であります。しかし、再修正案についての質疑もやらなければなりませんので、その点で発議者の皆さんも含めて質疑をさせていただきたいと思います。  午前中の総理質問のときにも申し上げましたけれども、修正案にしろ再修正案にしろ、いろいろくるくる内容が変わると。国民の皆さんから私の部屋に寄せられますファクスの中に、今二千八百五十四通に達しているわけですけれども、その中に「「定価」のない日替わり法案」は反対だというファクスがありました。実に私は言い得て妙だなというふうに思ったわけですけれども、幾ら塗りかえても結局は国民を納得させられません。  それはなぜかといいますと、もともと政府原案にありました薬剤の種類がふえるごとに国民に別途負担を押しつける、そういうことは結局医学的な根拠は何もありませんし、説明を求められれば薬をたくさん使わないでほしいんだと、そういうことしかないわけですよ。だから幾らやり方を変えてもおかしな案しか出てこないということではないかと思います。  現場の専門の先生方から意見がもう早速参りました。私の地元の京都ですけれども、京都府保険医協会の保険部の方からファクスをいただきました。再修正案が実行されたらどんな不合理が起こるかということなんですね。  厚生省にお伺いいたしますけれども、済みませんが資料を配らせていただいておりますので見ていただきたいわけですけれども、まずこのタイトルは「参議院修正案における矛盾点現実離れ度チェック」という、こういう表題がついているわけなんですね。いかに現実から離れているか、混乱を起こすかということであります。  激変例①、「薬剤の量を減らしたにもかかわらず、減ったがために「薬剤負担」額が増大することがある。」ということなんです。これは一番最後のページの激変例①というところでございます。処方Aと処方Bというのがあるわけですけれども、これは一日三回に分けて服用するプレドニゾロンという薬が経過がよくなって一日二回でよくなった、処方Bでございます。そうすると、薬代がふえて、ゼロ円だったのが二百十円プラスされまして、結局のところ一〇三・六%の薬代の払い過ぎというのが起こるという例なんですが、厚生省、こういう例がありますね。
  134. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) ちょっと長くなるかもしれませんが……
  135. 西山登紀子

    西山登紀子君 短く、質問時間が短いから。
  136. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 短くお答えいたしますが、このお示しの資料を私どもも事前に見させていただきました。  それで、この状況というのが今回の一部負担の修正案なり再修正案に伴って出てくるという問題よりも、むしろ現行の制度仕組みの中で、そういう中で今回薬剤費の適正化という観点から一部負担をお願いすることに伴うものであります。  それはどういうことかと申しますと、一つにはレセプトの事務の簡素化というような視点からいわゆる二百五円ルールということで記載の簡素化をいたしております。この二百五円ルールというものを引き続き踏襲しているというのが一つあります。  それからまた、服用時点が同じで服用回数が同じの場合はこれは一剤というような扱い方をしておりますが、そういった剤というものの取り扱い方、これを踏襲して考えております。  それからまた、新たな負担をお願いするという観点になりますが、どうしてもそういった意味では現行に比べれば窓口の事務というのはふえできます。そういうようなことの中でこのお示しのようなケースというのはそれは全くないというわけではないと思います。
  137. 西山登紀子

    西山登紀子君 その最後の結論だけ最初に言っていただいたらそれでいいわけです。時間がないんです。  次に、激変例②、「必要性から安価な薬剤を追加処方しただけで、一剤が二百五円を超え、「薬剤負担」額が跳ね上がることがある。」というのが激変例②ですね。  時間がないので先に行きますけれども、一枚目のページの3のところですけれども、「外来の薬剤負担と現行のレセプト記載が連動していない」という問題です。これは非常に専門的なので私も教えていただいたんですけれども、今のレセプトからはどれだけ薬剤の別途負担を取ったかということは、もちろん今そういう制度がないわけですから書かなくていいわけですね。    〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕  そうすると、二枚目のページです。このA剤、B剤、C剤、D剤というのをいろいろな日数で出したと。そうすると、組み合わせが順列組み合わせのようにこれは七通りの組み合わせが出てきて、幾ら患者さんから別途負担を取ったかということは、これは一々レセプトをもう一度詳しく記入をしていただかなければなりませんね。  こういうことが起こり得るということを厚生省はお認めになりますか。
  138. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 現在のレセプトにおいても患者さんから幾ら一部負担をいただいたかということは記載するようになっておりますから、そういった意味では記載をしていただくということになると思います。
  139. 西山登紀子

    西山登紀子君 どのような組み合わせでも、こういう五百四十円だとか四百八十円だとか百二十円でいろいろ違うわけですけれども、これからはそれを一々書くわけですね。
  140. 高木俊明

    政府委員(高木俊明君) 今回の薬剤の一部負担の導入に伴いまして、窓口の事務あるいはレセプトの記載というものが煩雑にならないような、そういう工夫というものをできるだけすべきであるというのがこれまで両院を通じての御指摘でございました。私どもとしては、そういった御意見を踏まえて、できるだけ簡便なかつそういった中でも適正なレセプトの記載というものを検討していきたいと思っております。
  141. 西山登紀子

    西山登紀子君 当然のことながら、払わされる患者の方は、どうして自分の薬剤費が五百四十円になったり、四百八十円になったり、百二十円になったのかということを説明を求める権利がありますよ。窓口で一々そういうことをお聞きしたり、いろいろお医者さんは説明をしなければなりません。そうですよね。  宮崎先生にお聞きします。  先生はお医者さんで同じ窓口でこういうことをなさるわけですけれども、合理的な説明を、激変例①、激変例②、それからこのレセプトで自分は幾ら、何でこういう薬代なのかということを患者さんに説明ができますか。
  142. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 大変特殊な例をここへお書きになっておるようでございますが、百人来ますと一人ぐらいこういう方がいらっしゃると思います。そうざらに出てくる例ではないと思います。これに関しましては懇切丁寧にやはり窓口で……。  今の制度の中で何をやってもやはり矛盾が出てくる私は薬剤負担だと思います。それはやはりなるべく早い時期に、先ほど言ったように、抜本改正をした中で簡素化に向かうように努力をしていきたいと思いますが、今御指摘のあったことは確かでありまして、診療報酬上の制度で一種類二百五円ルールというのがあるわけでありますから、そういうことも含めた今後の検討ということでこれはやっていかなきやなりません。と同時に、患者さんに対しましても窓口でポスターなり周知徹底の方向をやる必要があると思います。矛盾点は確かにあることは御指摘のとおりであります。さらに、レセプトの問題だとか、それから薬剤負担仕組み国民への幅広いPR、周知などを政府の方へ求めてまいりたいと思っております。
  143. 西山登紀子

    西山登紀子君 二百五円ルールがあるからこういう矛盾が起こるんじゃないんですよね。    〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕 新たに別途負担をこういう形で取るからそういう矛盾が起こるんじゃないですか、先生。だから、幾らやり方を変えたってやっぱり矛盾が起こるんですよ。  午前中も申し上げましたけれども、日医の、日本医師会の糸氏先生が私の質問に対して、別途負担が強行された場合に実際医療の現場で何が起こるかと聞いたら、一番憂うることはやはり医師と患者の信頼関係の喪失だということをおっしゃって、そしてやはり国民に犠牲を強いるような、あるいは国民医師との信頼関係をぶち壊すような、こういう言葉を使っていらっしゃる、ぶち壊すようなこういう悪い制度は早々に改めてほしいという日医の糸氏先生のこの御発言、先生はどのようにお受けとめになっていらっしゃいますか。与党の推薦で来られた公述人です。
  144. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 私も国会与党におりますから、一個人の発言という立場でのことになりますと、これはまたいろいろ個人的な考えがあります。しかし、国全体のことを考え、そして今後のこの医療制度考えた中で、やはり現在、当面行ういわゆる改正案としては、衆議院でやってきた修正というものをさらに改善をするということでこの再修正ということに私も賛同しておるわけであります。いずれにいたしましても、先生の御指摘のようなこの矛盾点というのは、負担ということにつきまして、これは今すぐ一〇〇%パーフェクトということはあり得ない。その中で何とかしのいでいける対応というものを今やらなきやならないというわけでこの案に実は私も賛同していると、こういうことでございます。
  145. 西山登紀子

    西山登紀子君 配付させていただいたこの資料の三枚目に、「おわりに」というところにこういう言葉がございます。「根本的な見直しがなされないまま、実施されることにより、どれだけ医療現場が混乱するか、どれだけの患者が不信に思うか、想像したくはない。」、このように言っていらっしゃるわけです。これは京都府保険医協会の保険部の方がまとめてくださったものでございますが、御紹介をしたいと思います。こういう混乱を招くような法案は撤回する以外にないというふうに私は思います。  次に移らせていただきます。  宮崎先生にお伺いいたしますが、先ほどお年寄りに配慮をしたということで修正案の趣旨説明をなさいましたけれども、この薬剤負担の免除になるお年寄りは何人ぐらいでしょうか。
  146. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 今回の参議院の修正案によりまして、外来薬剤に係る定額一部負担が免除となるのは、先ほど来から御説明しておりますように、老齢福祉年金受給者で主たる生計維持者が市町村民税の非課税の方であります。  老齢福祉年金受給者の数は、平成九年度において三十万六千人と見込んでおります。最大でこの三十万六千人が免除の対象になるというふうに承知しております。
  147. 西山登紀子

    西山登紀子君 非常に少ないというふうに思うわけです。政治的には低所得者にお年寄りに配慮をしたというふうな宣伝がされているわけですけれども、大変数が少ないというふうに申し上げたいと思います。  それで、少し時間が迫ってきましたので、次に発議者の山本先生の方にお伺いをしたいと思うわけです。  当委員会の社民党の菅野先生はしばしば逆ざやのことを問題にされておりました。そして、それを政令で正すということを何度も厚生省の方に質問をされていたわけですけれども、この逆ざやが起こるということをわかっていてこの法案与党として出していらっしゃるということですけれども、これはもう制度上に逆ざやが起こるということをお認めになっているのであれば、これはもう制度上の欠陥でありますから、その法案は撤回する以外にないのではないでしょうか。
  148. 山本正和

    山本正和君 確かに衆議院の修正案は、これは逆ざやがかなり出るという指摘を当委員会でも受けましたし、いろんな方から御質疑がございました。御意見がございました。  しかし、今度の私どもが提起しております案では逆ざやの部分はかなり少ない、ゼロとは言いませんけれども、かなり少なくなってきていると。しかし、それをどうするかということになると、これを法律に書き込むべきかどうかという御議論もあったようですけれども、法制局その他と検討した中で、法律というものの持っている性格、そしてその法律というものを解釈する政省令の立場というものから勘案した場合、政省令でもってこれは補えると、こういうふうに法律構造上から判断してその部分については触れてないと。しかし、事実上は今度の案によって逆ざや分はかなりなくなってきている、ゼロとは言いませんけれども、うんと少なくなっている、これだけは申し上げておきます。
  149. 西山登紀子

    西山登紀子君 ゼロとは言わずとも逆ざやがあるということをお認めになっているわけですから、私はやはりこれはもう法案の持っている欠陥であり、撤回しかないというふうに申し上げたいと思います。  さらに山本先生にお伺いしたいわけですけれども、私たちはもちろんくるくると修正をすることによって政府原案がよくなるというふうに考えてはおりませんけれども、しかし社民党さんは五月二十三日の代表質問で、患者にとって非常に負担が大きいので薬剤の別途負担の切り落とし、これを参議院の本会議場で代表質問の中で主張なさいましたね。ところが、この再修正案にはそのことが盛り込まれておりません。しかも、今私が御紹介をいたしました京都府保険医協会、実はこの京都府保険医協会だけではございません、もう全体の、日本の保団連の皆さん、各県の皆さんから私の部屋にファクスが、こういう不合理なことが起こるんだから何とか取り上げてほしいというお声が来るわけです。それほどに結果としてはますます混乱をしてきている、むしろアリ地獄のように変えれば変えるほどますます混乱をしていく、幾ら取り繕ってもよくならない。その原因というのはやはり理由のない薬剤の二重取り、こういうことがあると思うんですね。  根本にはこの薬剤の二重負担というのを正す必要があるんじゃないでしょうか。
  150. 山本正和

    山本正和君 私どもも、また政府の方も恐らく薬剤費の今度の別途負担というものを国民に求めるということを好んで行っていないと思うんです。現実問題として、今の日本の医療が何によって支えられているかといったその基幹の部分が崩れそうだと、このままでは健康保険パンクしますよ、そのことを当面どう忍ぶかと。しかし、それは長い歴史があるから抜本改正をしなきゃいけない。これは歴代の大臣でこれぐらいはっきりと医療改革を断固やりますと言った大臣はおらぬと思うぐらい小泉大臣は強調をしておられる。  私はここで思うのは、一番今の問題の根本は何かということを国民の前に明らかにすることが一つです。それからもう一つは、現実に我々が入っている、使っている健康保険というものがどうなっていくか。パンクしますよ、パンクしたら貧しい人はもっとほうっておかれるんですよ、だから当面この一年ないし二年をどう忍ぶかというのが今度の案なので、ついては国民の皆様に何とか薬剤費をこの程度ひとつ御負担いただけないかというのがこの中身であると。そこをわかりやすく提案しようというのがせめて修正の限界だというふうに私ども考えて修正案を出した、こういう経過でございます。
  151. 西山登紀子

    西山登紀子君 先ほど山本委員は、政管健保がパンクするとかいろいろお話しになりましたけれども、この点について質問通告はしておりませんけれども、この政管健保というのは、もともと政府が出さなければならない国庫負担率を一三%に黒字だからといって引き下げておいて、そして赤字になってもその補てんをしない、あるいは繰り延べをするということで実際赤字になっているわけですよね。ですから、今おっしゃったように、パンクするパンクするとおっしゃいまずけれども、実際赤字の要因というのは政府の本当にそういう、大臣答弁にも反するし法律にも反するこういうようなことをやって国庫負担を引き下げたというのが一つの赤字の原因であります。  もう一つは、高過ぎる薬価ということがもう今国会審議の中で既に明らかになっているわけですね。それを国民負担を押しつけるということでのみ切り抜けようというところに一番の問題があるし、代表質疑薬剤別途負担の切り落としを主張していながら、再修正案で出してきたのはまたまた別途負担の形を変えた二重取り負担、これを提案されるということについて私は国民は絶対に納得ができないというふうに思うわけですね。  次に、もう一つ山本委員にお伺いしますけれども、先ほど来出ておりましたお年寄りの入院負担軽減の問題、やはり今回入っておりません。これはもう衆議院を通過した直後のNHKのテレビで政審会長がお年寄りの入院負担の軽減ということを国民に公表されました。しかし、今回の修正案には入っておりません。ともに与党の修正であるわけですけれども、くるくる内容が変わる。  原案よりもさらに九九年の千二百円というところまで値上げをしているということですけれども、これでこれからも与党として責任を持っていかれるということでしょうか。この案で与党として責任を持っていかれるんですか。
  152. 山本正和

    山本正和君 大変誤解といいましょうか、ためにする御発言のように聞こえるところもあるんですが、私どもは老人の方の入院費がこのままでいいなんということは一言も言っていないんです。できたら、本当からいえば、国民の皆さんが安心して入院できる、医療を受けられるような制度にしていきたい、その思いを常に言っているわけですから、そこは何も変わっていないんです。  ただ、今回の法律は何かといえば、このままでは財政がパンクしますよ、パンクするのをどう当面補修するかという法律なんです。その法律をこの間につくらなければ国民健康保険が、政府管掌保険がパンクするわけですよ。そこのところの問題点議論せずにあるべき姿を言って、そのあるべき姿のみ議論するのはこれは簡単なんです。しかし、それは国民にとって幻想を与えることであって、真実を知らせたことの上での議論にならない、私はそこだけ申し上げておきたいと思います。
  153. 西山登紀子

    西山登紀子君 原案でも国民負担は二兆円でもありますし、くるくると修正をされてきたものはますます悪くなっているわけですよ。  最後に、大臣にお伺いいたします。  この修正というのは非常に混乱が起こります。現状で強行した場合には非常に混乱が起こりますので、こういう混乱が起こるような法案はやはり撤回すべきだと思いますけれども、最後に大臣の御見解をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  154. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 薬剤負担についてのあり方についていろいろ御批判があるということは承知しております。しかし、我が国医療について薬剤の使用が多過ぎる、適正な薬剤に対する負担をお願いしょうという場合に、一定の額の方がいいという場合に、ある一定の額を決めた場合は必ず払い過ぎの問題あるいは逆ざやの問題は出てくると思います。  例えば、一万円かかっても二万円かかっても一定ですよ、千円という場合に、じゃ五千円の薬をもらった方、一万円のものをもらった方は千円で済む。一方、千円ですと決めれば、百円しかかからない、二百円しかかからないのに千円取られれば、これは取り過ぎという。額がいい、定額がいいと決めれば必ず逆ざやの問題が起こってきます。  もしその逆ざやはいけない、もっと合理的な負担あり方を示せばよろしいというんだったらば、私は全体にかかった費用を何割取るか、定率の方がはるかに合理的だと思います。しかし、共産党は定率がいいとは言わない。そうですね。しかし、定額という額発想でする限り、その逆ざやの問題、矛盾は解消し得ない。  しかし今後、抜本改革の中でそういう御批判も踏まえて、それから今の薬価の基準の決め方も問題があるということを再三言われています。その点も含めて、薬価基準の見直しも含めて、そして患者さんにどういう形で負担をいただくか、定額がいいのか定率がいいのか、それも含めて今後、今までの御議論をいただいた経緯を踏まえ、総合的な抜本的な改革に踏み込んでいって国民の理解を得たいと思います。
  155. 上山和人

    委員長上山和人君) 他に御発言もないようですから、これより原案及び修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  156. 山本保

    山本保君 私は、平成会を代表し、衆議院送付健康保険法等の一部を改正する法律案及び修正案に対する反対の討論をいたします。  最初に、議院内閣制における予算執行を伴う政府原案というものは、政府国民の支持を受けた与党と責任を持って協議し、国会に提案するものと私は理解してまいりました。その上で、野党の修正要求あるいは与党側が修正すべき課題があれば委員会で十分審議あるいは協議をして修正するのが議会制民主主義のあり方です。そして、こうした手続を踏まえ、国会審議を行うのが責任ある政府与党ではないかと考えるのであります。  ところが、今回、与党三党は、厚生委員会審議をよそに、またもや密室での協議により突然修正案を提出、十分な審議もせず成立させようとしております。こうした暴挙は断じて許されるものではありません。  もしこのようなことが許されるようなことがあれば、本質にかかわらない周辺の課題をまず提出し、その後議論もせず修正案を成立させることが慣行となってしまうのではないでしょうか。それこそ議会制民主主義を破壊し、衆愚政治を招きかねないことを政府与党は大いに反省すべきであります。  衆議院で修正されたまさにその点が再び修正されるということなどは、国民の目から見れば、政府与党がしてきたことは全く場当たり的、思いつきの修正であったことが明白であり、私どもはこのような手法をとった修正案に賛成するわけにはまいりません。  さらに、本案が進める外来時の薬剤負担という名目での負担増、高齢者入院の根拠なき負担漸増や外来負担の実質的倍増、また被用者保険料の引き上げ等、抜本改正とは全く無縁の単に一時的に財政赤字を糊塗するものと言わざるを得ません。  政府案の提案理由においては、医療保険制度の安定的な運営の確保と述べておりますが、将来にわたり制度を安定的に維持し、運営するのであれば、当然総合的な改革のプランを国民の前にお示しすることが先でなくてはなりません。そのためには、審議で明らかになったように、老人保健制度見直し医師数やベッド数の適正化・効率化、薬価差や新薬シフトの解消、診療報酬体系見直し等々をまず示し、そのうちの優先順位を決めていくのが国会のはずであります。それをせず、改革第一歩負担増であるという、こういう改正案がどうして多くの国民の方々に理解していただけるでありましょうか。八月中に医療改革プログラムを提出し、抜本改革をするというのであれば、それまでは本法案、修正案ともに凍結し、医療構造改革とセットで提出し、審議されるべきであります。  以上の理由をもって、今回の修正案及び修正案を除く衆議院送付の本案に対しての反対討論といたします。
  157. 佐藤静雄

    ○佐藤静雄君 私は、自由民主党及び社会民主党・護憲連合を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について賛成の討論を行います。  現在、医療保険制度は、人口構造や産業構造など制度の根幹にかかわる環境の変化に伴い、根本から見直さなくてはならない状況に来ておるものと考えております。このため、皆保険体制を維持し国民が安心して適切な医療を受けられるように、医療提供体制医療保険制度の両面にわたり国民の立場に立った抜本改革を実施するとともに、当面の差し迫った財政危機を回避して制度の安定を図るための措置を講ずることが不可欠でございます。  政府案は、このような要請にこたえて、薬剤使用の適正化や世代間の負担の公平などの観点に立ち制度の安定的な運営を目指すものであり、その趣旨については一定の評価を与えることができるものというふうに考えております。  さらに、以下の修正により一層の内容改善が図られるものと信じております。  第一に、薬剤負担について、薬剤の種類がふえるに従って一日当たりの単価を引き上げることとしたことは、薬剤の投与日数を勘案することにより短期間の投与の場合における薬剤患者負担に配慮したものであり、評価いたしたい、そのように考えております。  第二に、六歳未満の小児及び低所得の高齢者について、外来の際の薬剤に係る一部負担を支払うことを要しない、そうしたことは、これは小児については大人に比べ相対的に薬剤の使用量が少ないことに加え、少子化対策の一環として負担の軽減を図るものであり、かつ低所得の高齢者につきましては負担の軽減を図るものであり、その工夫につきましては十分な評価を与えることができるというふうに考えます。  このように、修正案及び修正部分を除く原案は、二十一世紀に向けて医療制度抜本改革の第一段階となるものであり、極めて重要な改正でありますことから賛成するものでございます。  最後に、今後の医療保険制度抜本改革に、連立与党が協調して、全力を挙げて他党にも呼びかけながら取り組むことを、その決意を申し上げまして、私の賛成討論を終わります。
  158. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等改正案並びに修正案について反対の討論をいたします。  本改正案は、医療保険財政の浪費構造にメスを入れず、二兆円もの患者負担増のみを押しつける道理のないもので、断じて認めるわけにはいきません。  反対理由の第一は、医療保険財政赤字の大もとである世界一高い薬価にメスを入れていないことです。薬剤費の五割以上を占める新薬の値段が国際的に見て異常に高く、これが日本の医療費を押し上げている大きな原因であることは今や常識となっています。この新薬シフトを改善し、さらには高額な医療機器の価格の是正を行えば、優に二兆円を超える財源を生み出すことが可能で、国民負担増の必要はありません。  反対する第二の理由は、薬代を通常の医療費の一部負担とは別枠に、二重に取り立てるという点です。このような薬代の二重取りや払い過ぎは、この法案制度上の重大な欠陥と言わざるを得ません。  第三の反対理由は、深刻な受診抑制、治療中断の問題です。今回の患者負担は、お年寄りの外来、入院負担の増大など、現行の二・五倍から四倍以上にもなり、長引く不況や消費税五%の増税が加わって、国民負担感は耐えがたく、国民の健康破壊に拍車がかかることは明らかです。  第四に、国民医療費に対する国庫負担の割合をもとに戻さないことです。これでは、政府がつくった赤字をそっくり国民にツケ回しするものであり、国民に対する公約も法の趣旨も踏みにじるものです。  以上の理由から私は改正案に反対いたします。  また、修正案は、国民の批判をかわすためのものであり、政府案の本質を変えるものではありません。  医療保険の改悪に反対する請願署名は今や千八百万を数え、私の部屋にはきょうまでに二千八百通を超える怒りのファクスが届いています。国会はこの声にこそ耳を傾けるべきであり、採決の強行など言語道断です。  日本共産党は、今後ともこのような理不尽な医療改悪を断じて許さないことを表明し、政府案及び修正案の撤回を要求して、反対の討論といたします。
  159. 上山和人

    委員長上山和人君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより健康保険法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、宮崎君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  160. 上山和人

    委員長上山和人君) 多数と認めます。よって、宮崎君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。  修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  161. 上山和人

    委員長上山和人君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  和田君から発言を求められておりますので、これを許します。和田洋子君。
  162. 和田洋子

    ○和田洋子君 私は、ただいま可決されました健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、社会民主党・護憲連合、民主党・新緑風会及び太陽の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講すべきである。  一、医療提供体制医療保険制度の両面にわたる抜本的構造改革について、スケジュールを含めた全体像を速やかに国民に示すとともに、その早急な実現を目指し、できる限り平成十年度から着手すること。  二、政府管掌健康保険に係る国庫補助の繰入特例措置分及びその利子については、国及び政府管掌健康保険財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかな繰り戻しに努めること。  三、薬剤負担については、薬剤費を限度とする等その算定方法について適切な措置を講ずること。  四、被用者保険保険負担について、賞与等を含めた年間の総報酬に保険料を賦課する方式への移行の検討を進めること。  五、老人医療制度について、できるだけ早期に新たな制度の創設も含めた抜本的見直しを行うこと。なお、低所得者への充分な配慮を行うこと。  六、就学前児童の一部負担について、少子化対策の観点及び地方公共団体における単独事業の実情も踏まえ、その軽減を検討すること。  七、現行の出来高払い中心診療報酬制度見直し、慢性期医療等に対する包括払いの活用など、出来高払いと包括払いの最善の組合せを図ること。  八、高薬価シフトを防止し、薬価差の解消を図るため、現行の薬価基準制度に代わる市場取引に委ねる原則に立った新たな方式の採用を含め、薬価基準制度を抜本的に見直すこと。  九、医薬分業の推進のため、今後とも所要の措置をとること。あわせて薬剤師教育の充実を図ること。  十、医療提供体制の適切な機能分担が行われるよう、「かかりつけ医」機能の充実など、体制を整備すること。また、そのための医学教育について検討すること。  十一、医療における情報公開を進め、患者の立場や選択を尊重した医療情報の提供の在り方について、さらに検討を加え、必要な措置を講ずること。また、薬価算定の透明化を図り、診療報酬や薬価を決める中央社会保険医療協議会の審議を公開すること。  十二、医療保険制度運営の安定化を図る観点から、国民健康保険政府管掌健康保険、組合健康保険等における保険集団の在り方を見直すとともに、給付負担の公平化に向けた取組みを進めること。  十三、医療費の不正請求を防止するため、審査及び指導監査の充実等医療費の適正化を図るための対策を強化すること。  十四、この法律の施行後、施行の状況を勘案し、その全般について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ、御賛同いただきますようお願いいたします。
  163. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいま和田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  164. 上山和人

    委員長上山和人君) 多数と認めます。よって、和田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、小泉厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。小泉厚生大臣
  165. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重して努力をいたします。
  166. 上山和人

    委員長上山和人君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 上山和人

    委員長上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十三分散会      ―――――・―――――