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1997-06-10 第140回国会 参議院 厚生委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  六月九日     辞任         補欠選任      小山 峰男君     釘宮  磐君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上山 和人君     理 事                 尾辻 秀久君                 佐藤 静雄君                 和田 洋子君                 菅野  壽君     委 員                 大島 慶久君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 南野知惠子君                 宮崎 秀樹君                 木暮 山人君                 水島  裕君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 釘宮  磐君    国務大臣        厚 生 大 臣  小泉純一郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        社会保険庁運営        部長       真野  章君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        大蔵省主計局主        計官       丹呉 泰健君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五日、朝日俊弘君が委員を辞任され、その補欠として今井澄君が選任されました。  また、去る六日、瀬谷英行君が委員を辞任され、その補欠として菅野壽君が選任されました。     —————————————
  3. 上山和人

    委員長上山和人君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 上山和人

    委員長上山和人君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事菅野壽君を指名いたします。     —————————————
  5. 上山和人

    委員長上山和人君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 おはようございます。  健康保険法につきましてはきょうまで数多くの質疑が行われてまいりました。そこで、きょうは私なりに整理をさせていただくために何点か質問をさせていただきます。  社会保障国民生活の安定に極めて重要な役割を果たしており、今後とも維持発展させていかなければなりません。現在その財政規模一般歳出の三分の一に達しておりまして、社会保障構造改革抜きには今回の財政構造改革は実現できないと言っても過言ではありません。とりわけ、社会保障関係費の半分近くを占める医療については、構造改革が必要であることは申すまでもないところであります。  医療保険制度状況を見ますと、近年大幅な赤字を計上しておりまして、このまま推移すれば制度が崩壊するおそれが出てまいりました。そこで、今回の法律改正につながるわけでありますけれども、まず大臣お尋ねしたいのは、今日私たちが持っておりますこの医療保険制度医療提供体制についてどういう評価をしておられるかということであります。  なぜまず初めにこのお尋ねをするかといいますと、財政的には確かに破綻のおそれが出てきましたけれども、そもそも私たちが持っているこうしたものというのは、一言で言うと大変すばらしいものである、だからこそ長寿世界一の国をつくり上げてきたんだ、基本にはそのことがあると私は思っておりますから、まずこの評価をしてから議論を始めたいと思いますので、大臣にそのことをお尋ねするところであります。
  7. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) だれでも長生きしたいというのは今までの一つの大きな夢といいますか目標でありました。いつの間にか日本世界で  一番長生きできる国になった。この点については、医療関係者並びに現在の医療制度の果たす役割は大変大きかったと私は思います。基本的に、今の医療に対しての国民保険制度、だれでも病院を選択できて適切な医療を受けることができるこの制度は、私は評価されてしかるべきではないかと思います。  しかしながら、今までよかったといいましても、一方では、三時間待って三分しか診療できないと端的に言われるような大病院集中傾向、さらには、他国に比べても入院期間が長いのではないかとか、いろいろ問題が出ております。また、人口構造的に見ても、高齢者が急激にふえていく一方で少子化の傾向が進んでいるという財政的な面も考えなくてはいけない。これからどんどん医学は機器においても技術においても日進月歩の世界であります。このような新しい時代に対応するような制度の不断の見直しが欠かすことはできないのではないかということで、現在まではよかったからこれからもいいとは限らない、そういう点で私は総合的な見直しが必要ではないかなと考えております。
  8. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今、大臣が最後にお述べになったとおりだと私も思っております。今までは大変よかった、そして大変すぐれたものを持っていた、だけれども、行き詰まった面もあるから、そこのところを変えなきゃいけない、こういうことだろうと思います。それが財政的な面である、こういうふうに私も思っております。医療保険制度の中長期的な財政の安定を確保することが必要だと考えます。そのために早急に医療保険構造改革に取り組まなければなりません。  そこでお尋ねをいたします。  医療保険構造改革にどのように取り組むのか、お答えをください。
  9. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今まで医療制度については各方面からいろいろ改革すべきだという声が出ておりました。また、与党におきましても医療制度改革基本方針というものも出ております。その中には、医療提供体制あるいは医療保険制度両面にわたる改革を実施することが不可欠であるというふうに多くの方が認識しておられますし、私としてもそのような方向医療提供体制医療保険制度両面から構造的な改革に着手しなければいけないと考えております。今後どのような改革が望ましいかということを考えて、できるだけ早い機会厚生省としての一つの案というものをまとめて国民に批判を仰ぐような材料を提供しなければならないと考えております。
  10. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 そこで、もう一点お尋ねしたいことがあります。ちょっと順番を変えることになるかもしれませんが、お許しください。  私は、とりあえずの今度の制度改正については、これは抜本改正の前の言うならば緊急避難措置だと思っております。もっと言うならば、ちょっと言葉は悪いのかもしれないけれども、とりあえずの時間稼ぎだと思っておるんです。そして、そこで時間を稼いで緊急避難をしておいて、その間にしっかりした抜本改正の案をつくって、それをしっかりやり遂げる、この順序だと思っておりました。ところが、先日発表された財政構造改革会議においては、抜本的構造改革第一歩として今回の制度改正を位置づけておるのかな、ちょっと私が思っていたのと認識が違うのかな、この辺がどうなんだろうと思うものですから、今改めてお尋ねをいたすわけであります。
  11. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の制度改正の位置づけでありますけれども、まさに現在の医療保険制度が非常に厳しい財政状況にあるということがバックグラウンドとしてございます。この厳しい財政状況をまず立て直すといいますか、とりあえずの制度の安定的な運営の確保を図るということが急がれるわけであります。  そういった意味では緊急避難と申しますか、当面の財政的な対策と申しますか、そういった側面があるわけでありますけれども、さらには中長期的に我が国医療保険制度あり方そのものをこれからの少子・高齢化社会に備えて安定したものとして確立していかなきゃいけない、まさに医療保険制度の抜本的な改革構造改革というものが緊急な課題になっているわけでございます。  そういった中で、今回、医療保険制度改正をお願いしているわけでありますが、そういった抜本的な改革というものを行うに当たりまして、現在の各制度財政運営の安定というものを確保する。そういった意味では抜本改革に向けての第一歩であるというふうに言えると思っておりまして、まさに先生指摘のとおり、ある意味では見方によっては両面あるかもしれませんが、全体として見ればこれからの制度抜本改革のまず第一歩だというふうにも考えておるわけであります。
  12. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今お答えになったことは、とりあえずまずしのがなければ抜本的改革もできないわけだから、ここ二、三年をしのいでいくことも改革第一歩だよと、こういうお話かなと思って理解をいたしました。  そこで、今、財政構造改革会議の今度発表されたものについてお尋ねをしましたから、この機会にもう一点、この発表されたものについてお尋ねをしてみたいと思います。  与党医療保険制度改革協議会では、昨年十二月の三党確認に基づいて、本年一月より医療提供体制医療保険制度両面にわたって抜本的改革の検討を進めてまいりました。そして、去る四月七日に医療制度改革基本方針を取りまとめました。実はこのメンバーの一人でございます。ですから議論の中身は承知しておるんですけれども、この中で議論されたことの一つは、じゃこの抜本改革、いつから実施できるんだろう、いつから実現するんだろうと。早いほどいいけれども、なかなかこれは大変なことだからそう簡単にはいくまいということでいろいろ議論して、あの中では実は二〇〇〇年を目途に実現するよう取り組むこととしたわけであります。これが私たちが率直に思っていることなんです。頑張って頑張って二〇〇〇年からできればいいなという思いがありました。  ところが、今度発表されたものではさらにそれを前倒しにして、来年からでもやるんだということが書いてあります。それは、私たちがこの医療制度改革基本方針の中で取りまとめたものがそのまま幾つか書かれていて、具体的には言いませんけれども幾つか書かれていて、そして以下の施策に取り組むのはできる限り十年度から着手する、こう書いてあるんです。  率直に言って、その心意気はいいんだけれども、私たちがいろいろ考えて、頑張っても二〇〇〇年からだなと思ったことが、それは来年度からできればいいけれども、果たしてどうなんだろうという思いがあるものですから、ちょっとそこのところを今改めてお尋ねするわけであります。
  13. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今、私が感ずるのは、改革の速度が実に速い、のんびり構えていられない、時は待ってくれないということだと思うんです。  当初はもう少し悠長に構えていた方がいいんじゃないかという考えがかなり多かったと思うんですが、いろいろ論議をしていくうちに、そんなに状況は甘くないという認識に変わってきたと思います。そういうことからこの社会保障制度改革も、九月一日までに厚生省として案をまとめなさいという意見が各方面から出てきた。当初は年内ということでかなり私自身も幅を持った言い方をしていたんですが、そういう環境でもなくなってきた。それがいつの間にか気がついてみますと、年内が九月までにはということから、最近では七月中にはとどんどん早まっているんですね。それだけ危機感を皆が共有してきたのではないかと思っております。  ですから、この案をまとめて与党並びに審議会で御議論をいただきますが、できるところがら早い機会に実施に移していかなきやならない。中には、抜本的な総合的な改革案を出しても、十年度に実施できるもの、十一年度以降になるものが私は出てくると思います。そういう抜本案の中で、十年度にできるものは十年度から実施していきたいという考えで取り組みたいと思っております。
  14. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 早過ぎて悪いということは決してないのであります。ですから、急げるものなら本当に急がなきゃいけないと思いますし、今の大臣の御決意のように、かねて七月中旬には厚生省としても考え方をまとめられると言っておられますから、お互いに頑張っていかなきやならないと思っております。  私たち与党協議会も、八月は一日の休みもなく頑張って検討して、八月いっぱいには私どもの案も出したいと思っておりますので、とにかく一緒に頑張って抜本的な改革案をつくり上げていかなきやならないと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。  今回の医療保険改革をめぐってはこの委員会での御質疑の中でもいろいろ御指摘がございましたし、各方面から医療の非効率性、むだが指摘もされました。改革に当たっては、これは病気の治療と同じように、まずその原因を突きとめることが先決だと思います。  そこで、こうした医療の非効率性やむだの解消を初めとする、医療抜本改革に関する問題についての厚生省認識と取り組みについて何点かお伺いをいたします。  これはもう皆さん指摘なさるんですが、私もポイントは三つだと思っております。一つ診療報酬体系の問題、一つは薬の問題、もう一つ老人医療の問題だと思います。  そこで、まず診療報酬体系のことについて一点お尋ねいたします。  私は、我が国においては、今日まで診療報酬体系上、医師技術料というのは適正には評価されてこなかったと思います。ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、言うならばどんぶり勘定になっていて、医師技術料病院経営に要する費用も、もうそんなものは全部とにかく一緒くたに計算されていて、もっと言うと、それを薬価差のところで賄ってくださいと言ってきたのは隠せない事実であるような気がいたします。薬剤費国民医療費の約三割を占めて、薬価差多剤投与等の問題もこの委員会でもたびたび指摘されておりますが、こうした問題を解消するためにはまず基本のところで、診療報酬体系上の医師技術料、あるいはまた病院経営するなら、ホスピタルフィーというんでしょうか、経営に必要な経費というのを薬価差に頼らなくてもいい体系としてきっちりつくり上げていくことが肝心なんじゃないかなと思って御議論を聞いておりましたので、私の思うことを率直に申し上げて、所見をお伺いしたいと存じます。
  15. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 医療機関経営には当然のことながら経営原資が必要であるわけでありまして、それをどういう形で医療保険の中からお支払いをしていくかということでありますけれども我が国診療報酬体系を見ますと、薬価基準制度と一体的なものとしてできておるというふうに言えると思います。  そういった中で、まさに御指摘のとおり、薬価基準、これは公定価格を定めておるわけでありますけれども、一方で、医療機関が薬を購入しますのは、これはそれぞれの医療機関自由価格購入をする、そういった中で保険公定価格で償還されるわけでありますから、医療機関はできるだけ安く買えばそこに薬価差というものが発生する、こういう仕組みであったわけであります。  これは経緯をたどりますと、戦後、薬というものは非常に貴重品であり、なかなか医療機関といえども満遍なく手に入らなかった時代というものがあったわけであります。そういった中で、いわゆる九〇%のバルクライン方式ということで、九割の医療機関が買えるような価格で設定しようというようなことから始まったわけでありまして、それがその後改定され現在のような薬価基準制度になっておるわけであります。  いずれにしても、ただいま申し上げたようなことで薬価差というものが発生する、こういう仕組みになっておるわけであります。それで、医療機関における経営原資としてこの薬価差が機能してきたということではないかと思います。  しかしながら、これはかねてから言われておりますように、やはり診療報酬の中でそれぞれの医師技術料をきちっと評価し、それからまた医療機関経営面コストというものもきちんと確保していくべきではないかということが指摘されてきたわけでありますけれども、なかなか今日まで根本的な改革に至らなかったというふうに考えております。  これはなかなか難しい問題ではございますけれども、まず今回私どもが目指しております薬価基準制度、これは薬価差のない、透明性の高い、こういつたものにしていこうというふうに考えております。そうなりますと、当然のことながら診療報酬体系そのものも、医業経営がきちっと成り立つように技術料を適正に評価し、それからまた医業経営コストというものも適正に評価していく、そういったものにしていかなきゃいけないというふうに考えておりまして、まさに方向としましては先生指摘のとおりでございまして、そういう方向を目指した抜本的な改革をしてまいりたいというふうに考えております。
  16. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 薬の話も出てまいりましたので、薬のことについても一点お尋ねをしておきます。  今もお話ございましたが、今度は薬価差のない、そして透明性の高い薬価仕組み考える、こういうことでございました。そうしたことを議論しておりますときに、厚生省導入考えておられるのかどうかはわかりませんけれども、どうしても出てまいりますのが参照価格制ということであります。  皆さんの御意見を伺っておりましても、この参照価格制については非常に評価が分かれます。画期的なやり方だと言う人もあれば、いや公定価格制の中の単なる一変形であって、しょせんそんな公定価格制の枠を外れるものではないよ、いずれやっているうちに参照価格そのものに薬の値段が収れんされてきて、そこに公定価格として落ちつくだけの話であって、言うほど効果の上がるものではないよと評価する人もいます。  また、実際これをドイツでやった経験に対しても、言う人に言わせると二万人の失業者が出たんだ、この制度を取り入れたために二万人の失業者を生んだと言う人もいれば、また別の人に言わせると、いや全然そんなことはないんだと言っている人もありで非常に評価の分かれるものでありますから、この際、厚生省がどういう評価をしておられるのか、お尋ねをするところであります。
  17. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 参照価格制というのはドイツで最初に導入されたわけでありますが、これは要するに保険で償還すべき価格というものを設定して、そしてあとは医療機関はそれぞれ自由に購入をする、こういうことであります。問題はこの償還基準というものをどういう水準に定めるか、それからまた、それぞれたくさんの銘柄があるわけでありますから、それらをどういうふうな形でグルーピングをしながらやっていくのか、この辺の技術的な問題、これをどううまく克服するかということが一つあろうかと思います。  しかし、この制度というのは少なくとも公定価格を定めているものではございませんから、そういった意味での現行のような制度とは相当大幅に異なる。いわゆる医療機関における取引というのは、これはもうそれぞれが市場取引でありますから、そういったものをベースにしているという面では相当物考え方が違うと思います。  我が国において、こういったような制度というものを参考にしながら、しかもいろいろ指摘されているような問題点というものを解消できるような仕組みというものを考えていくということが導入に当たっては必要であろうというふうに思います。さらには、この償還基準の定め方、これは相当権威のある、かつ透明なものでなければならないというふうに思っておりますから、そういった仕組みというものもきちっと考える必要があると思います。そういったものを総合的に制度として構築をするということができれば、これは一つ方向ではないかというふうに考えておりますし、ヨーロッパでもかなりこういった形が採用されておりますから、そういったものも当然参考にしながら考えていく一つの方策であろうというふうに思います。  それから、もう一つドイツにおいての失業者の問題でありますが、私どもが調査している限りにおいては、直接的にこの制度導入によってドイツ失業者が発生したということは聞いておりません。  ただ、我が国において現在の薬価基準制度というものを改める、新しい制度を採用するということになりますと、製薬産業全体に与える影響、それからまた当然のことながら医療関係者に与える影響というものがございますから、やはり導入に当たってはそういった影響というものを十分見きわめ、そして必要があればそのための適切な対応というものをとりながら、ソフトランディングといいますか、スムーズに新しい制度にのせていくということが必要だというふうに思っております。  そういった意味では、新しい制度をつくる際における工夫なりあるいは弊害というものをどううまく除去できるか、そういった知恵の問題ではないかというふうに考えておりまして、制度そのものに内在する問題であるというふうには考えておりません。
  18. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 老人医療制度についてもお尋ねをしておきたいと存じます。  いずれも頭の痛い問題ですが、私はこの老人医療制度が一番というか、とりわけというか、頭の痛い問題だと思っております。与党協議会でもいろんな方の御意見をお伺いいたしました。いろんな方に来ていただいてお話を伺いました。大体においてそれまで極めて歯切れよく話をしていただいていた方も、この老人医療制度の問題になると一言で言うと急に歯切れが悪くなるというか、正直に私自身も自信を持ってこういういい案があるというふうには言えないんです、大体こうおっしゃるんです。私も本当にこれは難しいなと思っております。  現行老人保健制度は各医療保険制度が共同して支える制度になっておりまして、そのために老人医療費の増大に伴い、いずれの医療保険制度をとってみても老人保健拠出金が支出に占める割合が増大していて、これが医療保険制度を圧迫しておるわけであります。これでは行き詰まるというので、今、大体四つの改革案があると言われております。日本医師会も独自の案を発表されましたし、連合もかねて俗に言われる突き抜け案というのを言っておられます。こうした幾つかの案があるわけでありますけれども、どれをとっても決め手というものはないような気がいたします。  いずれにいたしましても、高齢化の進行に伴い老人医療費の負担は急速に増大すると見込まれておりますし、したがって老人医療制度抜本的見直しが必要なことは言うまでもないんですけれども、こうした保険制度医療制度老人皆さんのことをどういうふうに今後の方向考えておられるか、この際ですからお聞かせをください。
  19. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 老人医療制度の問題につきましてのお尋ねでございます。  先生も御指摘ございましたように、これから高齢者の方々が非常にふえてまいります。そうすれば、必然的に老人医療費の問題のいわば重圧というものはどうしても大きくならざるを得ない。それをどういうふうにしていくかということで、抜本改正の中の、重大であり、また先生おっしゃったようになかなか難しい問題でございますけれども、ぜひ取り組まなければならない大きな柱として、この今回お願いします改正を施行されますならば、施行までの間にそのプログラムをつくるという、いわゆる抜本改正の中の大きな柱としてこのことを考えていかなければならないと思っております。  その際には、この制度体系をどのようにするかという問題と同時に、やはりこの老人医療費は非常に増加をしてまいります。この老人医療費をいかにお年寄りにふさわしい医療を確保しながら効率的なものにしていくかということをまず考えなければならないであろうというのが一つの柱だと思います。と同時に、そうしてもふえてまいります医療費をいかに公平に、いかに国民の理解を得やすい形で負担をし合っていくかということになってくるだろうと思います。  その際に、先生指摘のございましたような、医療費のいわば共同事業として負担をしてやっていくという現在の仕組み、やはりそれなりの知恵とそれなりの歴史的な役割を持って出てきたものではございますし、現在もそういう意味での役割を果たしておるとは思いますけれども、やはり先生指摘になったような大きな問題が老人医療費の全体の増加とともに指摘をされるようになってきております。したがって、これについては、これから制度体系としても抜本的な改正を進めていかなければならないであろうというふうに思います。  その際も、私どもといたしましては、やはり自助努力を基本にし、それを社会連帯と申しますか、相互扶助と申しますか、で支えていくという社会保険仕組みというものは基本に押さえながら今後考えていくべきであろうというふうに思っております。  その際に、やはり今後の方向は、今もお話のございましたようないろんな案を総合的に検討して出していくわけでありますけれども、その際の一つ考え方としていえば、負担の公平、給付の公平ということを考えますならば、今後の高齢者の方々の経済能力というようなものも勘案をしながら、高齢者の方々も単に制度の受け手としてではなくて、今申し上げました社会保険ということの一つの大きな柱として、制度のいわば支え手として応分の負担もいただきながらやっていくということはやはり基本にしなければならないであろうと思います。  しかしながら、そうしましてもなお、お年寄りの方々の負担において老人医療費をすべて賄うということは、しょせんこれは無理でございます。したがって、これはどういう形であれ、現役世代あるいはそのほかの世代の方々のいわば負担というものを求めていくという形でどういう制度を仕組んでもやっぱり考えていかなければならない。そうしますというと、そういった現役世代あるいは若人世代の負担というものが、納得をしやすい形でいかに負担をしていくかということが一つの難しさでもあり、この制度のいろんな案が出てきている一つの、タイプを分けている考え方の違いだろうと思います。  御案内のように、与党協議会におきましては、別建ての高齢者制度の創設あるいは退職後も継続加入していく方法、こういつたようなもの全体を視野に入れながら幅広く検討するようにということでございます。  したがいまして、そこの具体論はこれからでございますけれども、先ほど申し上げましたような視点を押さえながら、これらの中でどういうふうに考えていくか、あるいはそれらの組み合わせということでどのように考えていくかということで、早急に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  20. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今のお答えを聞いていても、改めてみんなで知恵を絞るしかないなと、よっぽど知恵を絞ってうまい方法を考え出さないとどうしようもないなと思います。とにかく、私どもも必死で考えていますので、お互いに知恵を絞ってみたいと思います。  冒頭に大臣も言われました。私たちは長寿世界一の国をつくり上げました。それを支えた大きな理由の一つといいますか、それが国民保険だというふうに考えます。我が国医療保険制度は、この国民保険のもとですべての国民医療保険を通じて安心して医療を受けることができる制度になっています。中でも国民健康保険制度は、被用者保険の対象とならない農林水産業関係者や自営業者、高齢者などの職を持たない皆さんをも被保険者としておりますために、我が国国民保険体制のよりどころの大変重要な制度であります。しかしながら、一方からいうと、言うならば保険としては一番割の合わないところを引き受けておるところでありますから、これはもう必然的に財政状況は極めて厳しいものがある。最近の市町村国保の財政状況というのは、これはもう申し上げるまでもなく皆さん御存じのとおりであります。  ですから、医療保険制度の安定化を言うならば、まずこの国保制度の安定化ということが第一に必要だと思うわけでありますけれども、今回の改正でどのような改善措置を講じておられるのか、また今後この国保制度のあり方についてはどのように考えておられるのか、お尋ねをいたします。
  21. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回お願いしております医療保険制度改正の中では、現行制度を前提としまして、国保の財政基盤の安定措置というものを盛り込ませていただいております。  一つには、現在、国保の中に保険基盤安定制度というのがございますけれども、これに投入しております国庫負担の増額措置、それからまた高額医療費につきまして保険者間での共同事業どいうものをやっておりますが、これに対します地方財政措置の増額措置、こういったもの。それからまた、国保財政の安定化支援事業ということも講じておりますけれども、それに対します地方財政措置の継続、あるいは国保制度の安定化のための配慮、こういうふうなことを講じさせていただいておりますが、これはいずれも根本的な国保制度の安定化という面から見ますと、なかなかこれでは現行の国保制度が中長期的に安定するということにはならないだろうというふうに私は思っております。  先ほど先生が抜本的な改革の柱としまして大きく三本柱を御指摘ございましたけれども、これはまさに非常に重要な柱であることは間違いありません。ただ、今の三本柱というのはどうしても、昨今における医療費の増嵩圧力と申しますか、そういったものに対応するということに主眼が置かれるものですからこの三本柱がまず来るのでありますが、私はもう一つ大きな柱として、まさに先生今御指摘国民健康保険財政の安定、さらには医療保険制度体系、すなわち保険者間におけるそれぞれのあり方、こういったものをやはりこれからの時代に向けて考え直す必要があるというふうに思っておりますし、とりわけそういった中で国民健康保険制度財政的な安定というものは、これは緊急を要するというふうに思います。  皆保険制度が昭和三十六年に達成されてからもう三十数年たちますが、その間における産業構造なりあるいは雇用形態の大幅な変化、また高齢化の中における年金受給者等の増加等々を考えてみますと、現行の枠組みではやはりこれからの安定した医療保険制度というものにはならないだろうというふうに考えておりまして、そういった意味で、もう一つの大きな柱としてまさに医療保険制度体系をどうするかということについて、私どもとしては抜本的な制度改革案というものを提案していきたいというふうに考えております。
  22. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 もう一回財政の話にちょっと戻らせていただきたいと思います。  我が国財政は、平成九年度末に国債残高が二百五十四兆円に上がりました。主要先進国中最悪の危機的状況に陥っております。ですから財政構造改革に取り組む必要が生じておるわけでございます。  その財政構造改革会議において、社会保障について約八千億円の当然増が見込まれる、しかしそのうちの五千億円を超える削減を提言してあるわけでございますけれども、これはやっぱり大変なことだと思います。先日の委員会質疑でも随分このことは質疑されましたけれども、私も聞いていて、率直に申し上げて余りすっきりしたお答えでなかったようにも思いますから、もう一回厚生省の方針を改めてお伺いするところであります。  そして、通告していませんでしたからそうした数字は今お持ちでないかもしれませんが、今度の制度改正で抑制効果というのを随分言われておると思います。今この部分の中で医療費については抑制効果を随分言われておるわけでありますから、今度の制度改正でどの程度の抑制効果を見込んでおられるのか。そして、その抑制効果の見込み額と約八千億円と言われる自然増との関係、これは全然別個の話なのか。その辺のところもできることならお答えいただきたいと思います。
  23. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 財政構造改革会議には私が出席して各省庁大臣、総理にお話ししたんですが、財政構造改革五原則で、将来国民負担率が五〇%を超えない、そして十年度予算は九年度予算よりマイナスにするという大方針を打ち出しております。それに全大臣は従っているわけです。そういう中にありますから、当然厚生省としても当初は、ことしの暮れの十年度予算編成は九年度、現在の予算よりもマイナスでしなさいということをみんな理解していたと思うんです。ところが、私は、それは無理です、困難ですということを申し上げたわけです。  今、一般的政策経費で国民の税金を一番使っている省が厚生省です。その中で、黙っていても年金受給者だけでも約百万人ふえる。これはもう法律で決まっています。それを来年度予算からカットしなさいなんと言ったら、今までの約束を破ることになる。年金にしても医療にしても、生活保護関係、福祉関係にしても全部法律で決まっていますから、これをマイナスにするんだったら今までの約束をほとんど見直ししなきやならない。現実にそんなことはできないというので、黙っていても八千億円程度ふえますと。でありますから、この八千億円ふえるのをどのくらい切り込むのがいいか、これが精いっぱいだと。  九年度に比べて十年度予算をマイナスにするのはまず困難、不可能と言ってもいいということをようやく御理解いただいて、それでは厚生省は例外として前年度に比べてプラス予算を認める、そのかわり厚生省のふえた分は各省庁はより削減してもらわないと、全体として一般政策経費は九年度に比べてマイナスにならないんです。各省庁にとっては大変ですよ、厚生省のふえた分を、今までふえた予算をより削減しなきゃならないんだから。そこをようやく理解していただいた。そして、最終的に出た結論が、厚生省は当然増八千億円あるのは理解するが、それを何とか五千億円を上回る削減をしてほしいと。ということは、約三千億円ふえる分は各省庁でかぶりましょうということですね。より以上の削減をしようという方針が出て了解したわけであります。  ですから、これから来年度予算編成に向けましては、この当然増八千億円の中からいかに五千億円を削減するか、これが最大の焦点になってくると思います。その中でも、年金関係が約千五百億円、医療関係が五千五百億円、社会福祉関係が千億円。年金関係はもうほとんど削減できません、ずっと前から決まっているわけですから。となりますと、社会福祉関係も千億円の中をどの程度削れるか。補助金等いろいろあります。そして、あと一番大どころが医療費関係です。  結局のところ、五千億円を上回る削減となりますと、一番多く削減しなきやならないのは医療費関係だと思います。今年度予算でも、当初政府としては約三千五百億円の削減効果を見込んでおりました。ところが、今、修正案が出ていますから、恐らくその削減効果は半減になるでしょう。この穴をどうするのかというのはこれからの問題。それと別に、さらに今度は五千億円近くをこれから見直ししなきやならない。まずその大部分は医療関係の抜本改革案の中で出していかなきやならない。大変困難な作業でありますけれども、これに向かって国会が閉会したら直ちにその作業に精力的に取り組んでいきたいと思っております。
  24. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 それでは、残された時間がわずかになりましたからその時間で、このたび衆議院から送られてきた修正案について厚生省がどういうふうに見ておられるのか、評価しておられるのか、何点かお尋ねをしてみたいと存じます。  率直に申し上げます。質疑をお聞きしておりまして、私たちももう一回修正が必要である、再修正が必要であると考えております。そういうことも踏まえて、衆議院から送られてきた修正案についての厚生省のお考えを改めてお尋ねしてみたいわけであります。  まず、衆議院においては、政府案における薬剤負担については実務上非常に煩雑であるという批判がありました。そこで患者に対するわかりやすさ、それから薬剤使用の適正化に資するという観点、それから医療現場における実務のことを考える、こうしたことを配慮して修正がなされたというふうに聞いております。  その結果どうなったかというと、薬剤負担は日数にかかわりのない定額負担となりました。ところが、この委員会でも盛んに御指摘がございました。日数に関係なくなるとどうしても長期投与がふえる心配がある。それは、先ほど申し上げたように、今回の制度改正の中には、いろいろあるけれども、やっぱり医療費の増大を抑制する抑制効果を持たせようとしておることは事実でありますから、その抑制効果を持たせようとすることに対してむしろ逆行するものではないかという御批判も多くあったように私は感じております。  この薬剤負担に日数を入れない定額負担とすることに対する厚生省のお考えをまずお尋ねいたします。
  25. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このたびの衆議院におきます修正の考え方は、今、先生指摘のとおりであるというふうに私どもも理解をしております。  一方、日数というものに関係なく定額負担という形になったことに伴う弊害というものが指摘されておることも私ども十分承知をいたしております。  御承知のとおり、政府原案はなかなか煩雑だ、実務的に非常にややこしいという御指摘で修正になったわけでありまして、政府原案では日数も種類数も両方加味するような形になっておりましたが、そういった意味では、日数が加味されることによって計算は現在の修正案に比べるとよりその分だけは確かに手間暇がかかると思いますけれども、ただ、それぞれ薬剤使用の適正化という点で考えますと、むしろ日数というものも加味された方が適切かなというふうに思っております。  ただ、衆議院の修正案の場合は全く加味されていないというわけではありませんで、いわゆる平均的な日数で割り切ったということでありますので、それぞれ長所、短所あると思いますけれども、私どもとしては、今回参議院におかれましてもいろいろ修正の議論与党内でございますが、そういった結論というのを見きわめて対応させていただきたいと思っております。
  26. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今まさに平均の投与日数を勘案したと言われました。たしか十二・五日じゃないかと思いますが、それであればむしろ十二・五で割って一日幾らになるという数字を示した方がいいんじゃないかなと私は思うということを、これは私の意見として申し上げておきます。  もう一つ指摘がありましたのは、日数の要素を考慮していないために短期間投与された薬については薬の実費よりもむしろ負担額の方が大きいという場合が出てくるじゃないか、こういう言うところの逆転が生ずる問題についての御指摘もいろいろございました。これについては厚生省はどのように見ておられますか。
  27. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これは平均の投与日数十二・五日という格好でありますから、そういった意味では、それよりかなり短い処方の場合、あるいは薬の値段が非常に安い場合、実費よりも一部負担の額の方が上回るというケースがございます。  そういった意味では、これは衆議院の委員会の中でもいろいろ御指摘がございました。私どもとしましては、この問題については委員会の御議論を踏まえまして十分研究させていただきたいというふうに申し上げてきたわけでございまして、やはりこの点についてはそれなりの対応というものが、衆議院における修正案の原案では必要ではないかなということを私どもとしても念頭に置いて考えてきておったわけでございます。
  28. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 さらにもう一点お尋ねいたします。  これは私自身も小児科の先生方から、随分多くの先生方から言われました。小児の医療というのは複数種類の薬剤を短期間投与する。ですから、今のこのやり方だと随分薬剤負担が重くなってしまう。少子化時代で何とかしなきゃいけないと言っているときにこれは何だというのが小児科の先生方の御指摘でありまして、これも言われてみればもっともだなと実は思っておるのでありますが、何か配慮が必要じゃないかな、こういうふうに思い厚生省はどういうふうに見ておられるかお尋ねするわけであります。
  29. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさにただいまの御質問と関連するわけでありますが、平均投薬日数を基本考えておる、それからまた非常に低廉な価格の場合には実費よりも一部負担額が上回るというのが顕著にあらわれるのがこの小児科のケースであるということでございます。そういった点から、これはちょっと対応をきちっとすべきではないかということで小児科医会が中心になっていろいろな御指摘が出てきたというふうに理解をしておるわけでございます。  これはいわゆる子育てに対します社会的な支援というような観点から、子供についても医療費における負担の軽減を図るべきかどうかという視点の問題と、それからもう一つ、今回の薬剤の御負担をお願いすることに伴う、またその仕組みに伴うただいま出てまいりましたような矛盾点なり問題点というものと一応二つの視点があろうと思いますけれども、やはり今回の薬剤負担に伴う矛盾点という面ではそれなりの配慮ということが必要であるというふうに思っておりますが、子育てに対する社会的な支援というような観点からこれを考えるかどうかということになりますと、私ども、今回一部負担をお願いするに当たりまして、そういった意味での特段の配慮というものはいたしておりません。  医療保険制度というものの性格からしまして、一般的にそれぞれの対象というものを区別することなく御負担をお願いしておるというようなことがございますものですからこのような形でお願いをしておるわけでございますが、この辺につきましては、この委員会におきます御審議等を踏まえ、その結論が出ましたら私どもとしてもそれに対して適切な対応をさせていただきたいというふうに考えております。
  30. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 残り四分になりましたから、あと一問だけお尋ねいたします。  高齢者の薬剤負担についても多くの御指摘がございました。申すまでもなく、高齢者というのは長期の療養を要する慢性疾患が多いわけでありますから、こうした皆さんに対する薬剤負担についての配慮、特に低所得の高齢者には何らかの配慮が必要でないかと御指摘がありましたけれども、この辺についての厚生省の御見解を伺っておきます。
  31. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 高齢者の患者負担につきましては、お話しの薬剤負担につきまして現在御提案を申し上げておりますのは若人の場合と同様の負担をお願いするということにしております。したがって、その中で一種類の場合には負担を要しないといったような配慮は既に織り込まれておりますし、また高齢者の一部負担全体につきましては、若人の方々の場合の半分以下の水準にしていること、あるいは高齢者の負担のしやすさというような点でいろいろな定額負担、あるいは外来についての場合の月五回目以降の定額負担を要しないといった配慮等々をやっておりますので、全体としてはお願いをできるところの枠ではないかなというふうには私ども考えて提案を申し上げておるところでございます。  今、先生お話しございましたように、特に外来の薬剤負担については高齢者という点を配慮し、低所得の方々に対する何らかの配慮をすべきであるという御議論は先般来ございましたし、今、先生からもそういうお話がございました。ここらにつきましては、さらにこの委員会での御論議等を踏まえまして私どもも対応を考えてまいりたいというふうに考えております。
  32. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 最後に何点か御質問いたしましたのは、御質疑をお聞きいたしておりまして、私どもも再修正が必要ではないかと考えている点についてお尋ねをいたしました。今の厚生省のお考えもお聞きいたしましたので、私どもなりの再修正案をお出しいたすつもりでありますから、明後日の委員会で御審議いただきますようにお願い申し上げて私の質問を終わります。
  33. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 平成会の渡辺孝男です。  先週の金曜日に、各界を代表される方々から、現在審議しております健康保険法改正についていろいろ貴重な御意見をお聞きしたわけでありますけれども、その中で、薬剤費の別途負担というものはやはり根拠に欠けるのではないかというような声が多かったと思います。積極的にこれを進めようというような意見は余り見られなかったのではないかというふうに思います。薬剤費の別途負担の中身をどうこうというものよりも、診療報酬の中に薬剤というのは当然含まれておりますので、そういう診療行為のほかにまた新たに別途負担を設けるということに対してやはりいろいろな公述人の方は種々の疑問を呈していたと、そのように私は理解いたしました。  もしこういう別途負担というものが将来また違った形であらわれれば、例えば末期医療費が非常に高くなるということで、じゃ終末期医療別途負担というのは将来つけ加えられてくるのか、あるいは検査機器が非常に高額なものになりまして、その検査費用も高くなってくる、じゃ検査費用の別途負担というものも将来認められてくるようになるのか、そういう根本的な別途負担を設けることに対しまして、やはり根本的な疑問というものが提示されているのではないかというふうに私自身は理解しております。  今回の薬剤費別途負担に対しまして、やむを得ず緊急避難的にもし行うのであれば時限立法で何年間と区切ってやるべきだというような意見も出されたわけですけれども、その次に抜本改革がいつになるのか、その計画が見えなければ何年間の時限立法にするのかということも当然わからないわけで、そういう意味では時限立法にしてこの薬剤費別途負担をするということ自体も少し疑問が残るのではないかというふうに考えます。  新聞報道によりますと、つい先日までまた薬剤費の別途負担の再修正が行われるというような記事が載っておりまして、きょうその再修正の案が出されたわけですけれども、私自身は、そういう別途負担というのは根拠のないもので、すべきではないというふうに、やはり抜本改革を先行すべきであるというふうに考えるわけですけれども、別途負担ということが必要であるという立場から考えれば、再修正が出てくるということでありましたので、その再修正、僕が新聞で見ておりましたのは、一処方当たり一種類は無料、二種類、三種類の薬剤の場合は一旦二十円、四種類、五種類の場合は一日当たり六十円、そして六種類以上の場合は一日当たり九十円として、日数を掛けて別途負担をお願いしたいというような案が出るのではないかというような新聞報道でありました。  もしそういう形であれば政府の原案、それから衆議院で行われました修正案、そしてまた私が述べましたような再修正案が出た場合に、診療報酬上の変化といいますか、医療保険制度財政効果がどのように変わってくるのか、そこをもし厚生省の方で試算されておりましたらば教えていただきたい、そのように考えます。また、抜本改革につながるのかどうか、それを再度検討してみたいなと私自身思いますので、もし試算がありましたらお教えいただきたいと思います。
  34. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ちょっと長くなって恐縮でございますけれども、今回薬剤の一部負担を新たにお願いしておりますが、一部負担というものの性格をどう考えるかという場合に、まず基本的には、相扶共済制度である医療保険制度の中で、受益と負担の公平という観点から、受益を受ける際に一定の一部負担をお願いするというのが非常に基本的な考え方としてあると思います。  今回の薬剤の一部負担につきましては、そういった中で、やはり我が国医療費に占める薬の割合というものは非常に高い、なかなかこれが下がらないという問題が指摘されておるわけであります。我が国は非常に薬の使用が多いのではないか、それからまたいわゆる高薬価の新薬にシフトする傾向がある、そういったことで医療費を圧迫しているということがあるわけでございます。  そういった中で、この薬の使用の適正化を図るというような視点から、これはもちろんこの一部負担で完璧にできるということではありませんけれども一つの方策として、このたびの一部負担をお願いすることによって薬の使用の適正化を図りたいという面がございます。それから同時に、非常に窮迫している財政状況でございますので、そういう財政効果という面を考えているということがございます。それら等を勘案いたしまして、このたび新たに御負担をお願いすることにしているわけでございます。  そこで、この薬剤に係る一部負担に関係します財政効果でございますけれども、衆議院の段階で修正されたことに伴って、政府原案と比べてみた場合でありますが、平成九年度満年度ベースで見てみますと、国庫負担で五百二十億円の悪化といいますか、財政効果がその分だけ縮減されてしまっております。  そこで、現在、与党内で検討されておりますいわゆる参議院段階における再修正と申しますか、その案、これは私どもがお聞きしたあれでは、一日につき一種類の場合にはこれは取らない、それから二種類から三種類の場合については一日当たり三十円、それから四種類から五種類の場合には六十円、それから六種類以上については百円ということで聞いております。それからまた、六歳未満の乳幼児についてはこの薬剤の一部負担を取らない、それからまた低所得の高齢者についても薬剤の一部負担を取らない、こういうようなことが御議論されているというふうに聞いております。  これらを全部合わせますと、平成九年度の満年度ベースでさらに八十億円ほど国庫負担ベースで財政的には効果が縮減されるというふうに考えておりまして、合計いたしますと、政府原案に比べますと平成九年度満年度ベースで約六百億円ほどの国庫負担が縮減される結果になるというふうに見込んでおります。
  35. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 私が新聞で見たときには六種類以上の場合が九十円となっておりました。きょう提示されました修正案では百円ですか、それより少し負担が多くなっているので、また数値は少しは変わってくるのではないかというふうに考えます。  以前の審議のときに、そういう薬剤費の負担増を含めました患者さんの負担増と、それから保険料の負担増のほかに波及効果といいますか、そういう診療を抑制するための効果というようなものも加えられて医療費の総枠が抑制されるというようなお話を聞いておりますけれども、その波及効果に関しまして、前の試算では、衆議院から通ってきました修正案では、平成九年度ですと、患者さんが受診抑制等を行って起きる波及効果というのが四千百億円というような試算がされておりますけれども、先ほど私が申し述べました再修正案でありますと、やはりその波及効果というものは変わってくるのかどうか。それから、波及効果を計算する場合、どういうものを足し合わせて波及効果というふうに厚生省の方は考えていらっしゃるのか、そこをお教えいただければと思います。
  36. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) いわゆる波及的効果という際の計算でありますが、これはこれまでの経験則から専門家が割り出した一定の数式がございます。長瀬効果とか計数とか言っておりますが、これは一部負担の額が、あるいは一部負担の割合がふえることによりまして医療費が縮減される、そういう経験則がございます。それを長年の経験の中で一定の数式化したものでございますけれども、今回また再修正が行われますと、先ほど申し上げましたように、トータルとしては国庫負担ベースで約八十億円ほど平成九年度満年度ベースでは縮減されますから、そういった意味で一部負担の額がその分だけ要するに軽くなる形になりますので、衆議院段階における修正に伴う波及的な効果というのは四千百億と申し上げましたが、これがもう少し少なくなるというふうに考えております。
  37. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 波及効果を算出する場合のファクターといいますか、因子というようなものは何種類かあるのでしょうか。経験則でということでありましたけれども、僕もちょっと経験則というのがどういうファクターを足し算掛け算してやるのかわからないんですが、何種類か分析される因子というようなものはあるのでしょうか。
  38. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ちょっとここに持ち合わせがございませんけれども、いわゆる数式化されておりまして、その中に一定の一部負担の割合というものを係数に当てはめて計算したものでございます。それで、例えばお年寄りの場合と一般の方の場合とでも状況が違ってくるというふうなことがございますので、何式か、それぞれ対象者によって式が違っております。  手元に今届きました。これ相当大ざっぱでありますが、いわゆる長瀬式の原型を申し上げますと、ちょっと細かくて恐縮でありますが、数式としましては、yイコール、このyと申しますのは……
  39. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 要因だけで結構です。細かい数値は……
  40. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) yというのは医療費の水準でありますが、y=0.760x2-0.678x+0918、こんな式がございまして、このxのところに患者負担の割合というものを代入する、いわゆる給付率を代入する、こういうふうな計算式になっておりまして、このxの前の係数がそれぞれこれまでの過去の経験則で割り出した係数であるというふうに聞いております。
  41. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 そうしますと、係数は別にしまして、患者負担の割合だけが変化する数値というようなことになりますか。先ほど年齢によっても違うんだというようなお話もありましたけれども、後で数値に関しましてはまたお教えいただきたいと思います。  それでは、次の質問に移ります。  医療保険制度財政がかなり厳しくなってきていると、やはり抜本改革をしないとこれから医療保険制度そのものが崩れてしまうということでありまして、やむを得ず国民もある程度の応分の負担をということでこの改正の法案が出てきていると思います。そのように国民の負担増を求めるのであれば、前々からもう何回も指摘されていると思うんですけれども、政管健保の繰り延べ金ですね、八千二百億円あるんだということを言われております。先日も質問で大蔵大臣にお伺いしたわけですけれども、やはりそれを返却する見込みが全然示されておらないということであります。  また、そのほかに、平成四年の医療保険改正のときに政管健保に対します国庫補助率を千分の百六十四から千分の百三十まで下げたわけですけれども、これはまた将来政管健保の財政が悪化した場合には国庫補助率を引き上げるというような趣旨の決議もされているということでありまして、国民にこれだけ二倍から三倍に医療費の自己負担増が行われるのであれば、やはり政管健保の財政を立て直すためにきちんと約束どおり借金は返してもらうというようなことが当然必要ではないか、あるいはもう少し国庫補助率を上げるべきだ、それも約束ではないかという議論がずっとあったわけで、それに対するなかなかいい回答が得られないということであります。  ここでもう一度、いつごろなのかということを、大蔵省の担当の方、いらっしゃっておりましたらばお答えいただきたいと思います。
  42. 丹呉泰健

    説明員(丹呉泰健君) お答えいたします。  政府管掌健康保険の国庫負担の繰り延べの返済につきましては、先般の本会議で大蔵大臣から答弁したところでございますが、まず八年度の補正予算におきまして千五百四十三億円の返済に着手したところでございます。  今後の返済につきましては、私どもといたしましてはできるだけ速やかに返済できるよう引き続き誠意を持って努めてまいりたいと考えておりますが、御案内のように、異例に厳しい財政事情のもと、例えば十年度におきましては一般歳出を九年度に比べましてマイナスにするなど、引き続き財政構造改革をより推進していかなくちゃいけないという厳しい状況にございますため、将来の返済につきまして具体的にお約束することは困難であるということを何とぞ御理解いただきたいと思います。  私どもといたしましては、政管健保の財政事情が厳しいことを念頭に置きまして、今後とも返済財源の確保に最大限努めまして、できるだけ速やかに返済できるようさらに努力を傾注してまいりたいと思っております。  それから、第二点目の御質問の政管健保の国庫負担の件でございますが、平成四年の改正法の附則の検討規定におきまして、政管健保の中期的財政運営状況等を勘案して、必要があるときには国庫補助規定についても検討を加えることとされております。  現在、社会保障の予算の中で医療関係の国庫負担は平成九年度では六兆六千億を超える巨額に達しておりまして、一般歳出の中でも非常に大きなウエートを占めており、さらに引き続き十年度においても自然増が非常に大きいというような状況にございます。他方、国の財政事情は非常に厳しいという状況でございます。  このような状況の中で、昨年末の医療保険審議会の建議におきましても、医療費に対する公費負担については、国や地方の財政構造が著しく悪化している現状ではふやしていくことには限界があるとされているところでございます。  以上を踏まえますと、政府管掌健康保険の国庫負担率を現行以上に引き上げることは大変難しい状況にあるということを御理解いただきたいと思います。
  43. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 やはり国民も消費税のアップとかかなり家計が厳しいところで生活しているわけであります。政管健保を含めた医療保険制度財政を改善するためにということで今回国民にも負担増を求めているわけでありまして、その財政悪化の一因子ともなっております、返済が滞っている、国庫負担金の方が繰り延べされているということは非常に大きな問題で、国民もなかなか納得できないのではないかというふうに考えるわけであります。早急に返済の計画を国民に対して明らかにしてほしいということを再度お願いして次の質問に移らせていただきます。  先ほども尾辻委員の方からお話がありましたが、政府・与党財政構造改革会議の論議で社会保障関係費、これからはそこにもメスを入れて削減していくんだというお話であります。当座、高齢・少子化というのはどうしても抑えることができないものでありまして、それに伴う自然増が約八千億円。そして、それを五千億何とか減らして三千億プラスになるので、ほかの予算から見れば厚生省は頑張っているというような、小泉厚生大臣のそのようなお話もありましたけれども、五千億を減らすというのは、それもあくまでも自然の当然ふえてくる費用でありまして、それを五千億減らすというのは本当に大変なことではないかというふうに考えております。  社会保障費のどういう部門のどういう内容をどの程度抑えていくのか、そういう分野ごとの抑制を図られる案といいますか、政府の方の計画が見えておりましたならば、そこのところを大蔵省の方からお聞きしたいと、そのように考えております。
  44. 丹呉泰健

    説明員(丹呉泰健君) お答え申し上げます。  先般の財政構造改革会議で決定され、さらに閣議決定もなされました「財政構造改革の推進方策」におきましては、今世紀中の三年間を集中改革期間と定めまして、その期間中は一切の聖域なしで歳出の改革と縮減を推進することとされておりまして、社会保障関係費もその例外ではございません。社会保障関係費は、その大部分が義務的経費でございますので、その当然増の抑制につきましては、医療、年金、福祉といった各分野での制度改革を行うことが必要であるなど、その改革は容易でないと考えております。  今後、具体的にどういつだ改革を進めていくかということにつきましては、財政構造改革会議の報告を受けまして、その中で提示された具体的な改革あるいは歳出削減の方策につきまして、厚生省の方で概算要求までに御検討いただくということになると思いますが、私どもといたしましては、先ほど小泉大臣からも御答弁がございましたように、当然増の大宗を医療関係予算が占めていることからかんがみれば、十年度におきましても医療保険制度改革に着手いたしまして、医療関係の伸びの抑制をしていくことは必要であると考えております。
  45. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 以前から医療費に対しましては厚生省も、経済成長が鈍化していくに従いまして、やはり高齢・少子化に伴って医療費の方はどんどんふえてくるということで、医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えるという基本方針を立てて取り組んできたというふうに言われておりますけれども、我々医療現場で働いておりますと、余りにも財政論議が先行しまして、国民の必要な医療というものまで抑制されてしまうのではないかというふうにいつも懸念をしておったわけでありますけれども国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とするというような基本方針を出されましたその理由といいますか、根本的な理由につきまして厚生省の方からお伺いしたいと思います。
  46. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これは医療だけではありませんけれども社会保障制度全般について言えると思いますが、この社会保障制度というものの内容の充実には、当然のことながらそれを支える経済の発展充実というものが不可欠でございます。そういうふうに考えますと、やはり経済と調和のとれた社会保障制度ということを考えていきませんと、これは結局は最終的に国民が負担するわけでありますから、破綻に結びつくということになるのではないかというふうに思います。  かねて高度経済成長が望めた時代、この時代においては何とかそういった中でもやりくりの中で、またあるいは借金政策の中でその財源というものを支えてきたというふうに考えられるわけでありますが、これからまさに子供が少なくなる、そして高齢化の社会が来る、そういうような社会を前にして考えてみた場合に、やはり現在の財政構造の改革、これは不可避であるというのが今のまさに政府の方針であるというふうに思いますし、まさに我々の子供や孫の時代に明るい展望のある我が国というものを引き継いでいかなきやならないということが、政治におきましても喫緊の課題ではないかと言われておるわけでございます。  そういった中で、医療保険について見てみますと、これまでの経済の伸びと医療費の伸びというものを見てみますと、医療費の伸びの方がかなり上回った時代の方が長かったように思います。これではやはり健全な医療制度の発展は望めないということで、昭和五十九年ごろから厚生省としましても経済の伸びとの調和のとれた医療制度ということを考えまして、医療費の伸びというものを国民所得の伸びの範囲内に極力おさまるように制度というものを考えていこう、そのためには制度に内在するむだというものを極力排除して、そして限られた医療費財源というものを効率的に使っていく、こういうことが必要である、こういうふうに考えてきたわけであります。  そういうようなことで、やはりこれまでもこのような目標というものを掲げながら政策努力をしてまいったわけでありますけれども、これからはもっとそういった意味での制度的な構造的な配慮といいますか、国民所得の伸びとのバランスのとれた制度になるようにつくっていかなきゃいけない面がますます重要になってきているというふうに思います。ただ、これからの高齢社会というものを考えますと、これはなかなか難しい面がございますけれども、やはり新しい時代に向けて私ども知恵を絞ってそういうような制度というものを構築していかなければいけないと思いますし、また広く国民の皆様方にもそういった点についての御理解を十分得ていかなきゃいけないというふうに思っております。  いずれにしましても、この医療費につきましても国民が何らかの形で負担をするわけでありますから、そういった意味での調和のとれた負担ということはますます重要になってくる、このように考えております。
  47. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 これまでの方針としましては、そういう国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内におさめていくという基本方針があったということであります。  そうしまして、今度の政府・与党財政構造改革会議の中で、またもう一つそういう抑制の数値が出てきたのではないかというふうに考えます。  それは社会保障費でありますけれども高齢者数の増によるやむを得ない影響分、全体の二%程度以下に抑制するという、またそういう上限を抑えるような目標というのが新たに加わってきたのではないかと。そういう自然増が二%ぐらい起こり得る、高齢者の増加に伴って起こってぐると。しかし、それよりもさらにまた社会保障費を抑えていくんだと。当然、社会保障費の中で抑えるべき一番ターゲットとなっているのが医療費でありますので、その医療費も当然二%自然増よりもさらに今度低くなるということではないかなというふうに解釈しまして、新たなまた上限抑制の目標が加わったのではないかというふうに考えております。  そうすると、前に小泉厚生大臣にも質問したんですが、適正な医療と過剰な医療、過剰な医療は当然抑制されてしかるべき、しかし国民が必要としている適正な医療は当然今後も維持していかなければならない、その境界がなかなか難しいということでありましたけれども、この二%というまたさらに上限が加わりますと、本当に適正な医療が保たれていくのかどうか非常にまた懸念を抱くわけであります。その高齢者数の増によるやむを得ない影響分、全体の二%程度以下に抑えていく、これは医療費に関しましても二%以下に抑えていくことに直結することになるでしょうか。  その点に関しまして御見解をお伺いしたいと思います。これは大蔵省の方に質問させていただきます。
  48. 丹呉泰健

    説明員(丹呉泰健君) 財政構造改革会議の報告では、ただいま先生指摘のとおり、社会保障の対前年度の伸率を高齢者の数の増によるやむを得ない影響分、全体の二%程度以下に抑制するということで、これは社会保障関係費全体につきましての言及でございます。社会保障関係費の中には当然医療費、それから年金、福祉等々ございまして、全体でございますので、この基本原則の全体の二%というのが直ちに医療の伸びになるわけではないというふうに私どもはこの報告を理解しております。
  49. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ただ、一番抑制されるターゲットは医療費の方になっておりますので、社会保障費といいましても一番抑制される方向にあるのはこの医療費ではないかというふうに考えておりまして、その点で医療費の方の抑制がどんどん強くなってくるのではないかというふうに考えておりますが、その点に関しましてもう一度御見解をお伺いしたいと思います。
  50. 丹呉泰健

    説明員(丹呉泰健君) 厚生省の方から出されております十年度の社会保障関係費の自然増は約八千億円超ということでございますが、その内訳を見ますと、年金が千五百億円程度、それから医療が五千五百億円程度、それから福祉等が一千億円という状況になっております。  年金につきましては、財政構造改革会議の報告におきましても、財政再計算は十一年度ということになっております。したがいまして、特に十年度ということを念頭に置いた場合、この八千億の当然増を三千億円程度に抑えるためには、先ほど大臣の方からもお話ございましたように、やはり医療のところで伸びの抑制を図っていく必要があるのではないかということではないかと私どもも理解しております。
  51. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 先日、日本世論調査会が世論調査を行っておりまして、五月三十一日と六月一日の両日に実施しておりますけれども、この社会保障費に関しましてどう国民考えておられるか、そういう世論調査があります。  その回答があった部分をちょっと一部分読ませていただきますが、「急速に高齢社会が進み、年金など社会保障費の増大が予想されます。あなたは、高齢社会における福祉と、その財源について、どう思いますか。次の中から一つだけお答えください。」という項目でありまして、国民社会保障費の増大と財政に関しましてどういう意見を持っていらっしゃるかということで一番多い回答を示されましたのが、「福祉以外の歳出を抑えて社会保障費に充てる」、福祉をカットするのは一番最後にすべきであるというような御意見の方が一番多く、「福祉の水準を維持するため、使い道を社会保障に限った目的税を導入する」というのが二番目に多かった回答であります。三番目に、「福祉水準を切り下げても、消費税などの負担増を抑える」べきというのが八・四%。近年、高福祉・高負担の社会から中福祉・中負担の社会、そういうものを求めていこうというふうに、政府の方針がそういう方向にあると思うんですが、国民はそのような福祉の水準を切り下げても消費税みたいな負担増は下げていく、そういう中福祉・中負担の方向を求めている人というのは八・四%でありまして、やはりマイナーである。国民の中ではそういう意見を持たれている人はまだまだ少ない。逆に多い意見というのが、福祉以外の歳出を抑えて社会保障費に充てるべきであるという考え国民は一番持っているわけであります。  このような世論調査に関しまして、大蔵省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるかお答えいただきたいと思います。
  52. 丹呉泰健

    説明員(丹呉泰健君) 社会保障国民一人一人の生活にかかわっていく非常に大事な政策であるということは私どもも理解しております。  ただ、一方で予算を見ますと、その政策的経費の三分の一が社会保障である。さらに今後の少子・高齢化でその社会保障関係費が伸びていく状況にございます。  他方、御案内のように、我が国財政は非常に厳しい状況にある、こういったことで財政構造改革が進められているわけでございますが、総理からの指示も財政構造改革に当たりましては一切の聖域を設けず歳出の改革と縮減をするというようなことで、社会保障関係費もその例外ではございません。  ただ、その最終報告におきましては、例えば十年度の各予算でございますが、基本原則といたしまして、十年度にはその政策的経費である一般歳出は九年度に比べて全体としてはマイナスにするという基本原則がございますが、主要経費別に見てみますと、例えば政府開発援助予算はマイナス一〇%にする、それから公共投資予算はマイナス七%にする、その他多くの経費をマイナスないしは横ばいとしております中で、社会保障につきましては三千億程度を確保するというようなことになっております。  この三千億円を実現するのも決して容易なことではございませんが、私どもといたしましては、今後、少子・高齢化が一層進展するということで、やはり二十一世紀においても安定した社会保障制度を築くことを基本といたしまして、例えば官と民の役割分担の見直し、それから世代間の公平の確保、それから、これまで御議論になりました、むだといいますか、社会保障における重複給付の見直し等々、情報公開を進めながらその効率化、合理化を進めまして、効率的で質のいい社会保障制度の確立に向けて努力をしていかなくちゃいけないと考えております。
  53. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 政府としては、小さな政府の方向に向けて政策をつくっていこうというような方向性にあると思うんですが、国民としては、高福祉・高負担でいいんだというような意見を持っていらっしゃる方もいるし、中福祉・中負担、もうちょっと税金とかそういうものは軽くしてもいい、福祉の水準を下げても税負担とかそういうものを下げるべきであるというような考え方の方も当然いらっしゃると思います。ただ、なかなか国民の合意としましてはできていないのではないかと。  その場合に、もう中福祉・中負担でいくんだということを、政府がそういう方針で走り出していいのかどうかをやはり国民にきちんと説明をして、国民がその方向でいいという合意が形成される、そういう国民との対話といいますか、そういうものがやはりもうちょっと必要なのではないかというふうに考えます。  医療費の問題におきましても、必要な医療費であれば国民がもうちょっと負担してもいいというようなことになるかどうか、あるいは保険料とかそういうものの負担は少し減らして適正な医療のレベルを少し抑えるべきだというふうになるのかどうか、まだ国民の方も迷っているのではないか、あるいは資料、情報が少なくて判断できないでいるのではないか、そのように感じるところもあります。  政府としては、国民に対する説明並びに同意を形成するような努力といいますか、アカウンタビリティーと呼ばれるものでありますけれども、そういうものの努力がやはりもうちょっと必要なのではないか、そうでなければ今回の薬剤費別途負担に対しても国民には理解してもらえない、反対ということになるのではないかというふうに考えております。  次の質問に移りますけれども高齢化の問題と同時に少子化の問題が非常に今後の日本にとって重要な問題であります。  これまでの人口統計で見ますと、九七年現在におきましては、十四歳未満の子供さんの占める比率が一五・四%、六十五歳以上の方が占める比率が一五・六%とおよそ均衡しているわけですけれども、小児の占める比率というのはどんどん下がってまいりまして、二〇三〇年が一番底の値になります。今の試算でありますと、一二・七%ぐらいまでは十四歳未満の子供さんの占める割合が減ってくるのではないかというような人口動態の見込みがあります。  そういう意味では、そういう子供さんの健康を守っていく、それが私たち、私たちと言ってはおかしいですが、今後高齢世代に入っていく私たちを支えてくださるのがこれから育っていく子供さんではないか、そういうことでありまして、小児に対する医療費というものは若い家庭にとりましてはやはりかなり大変な負担になるのではないかというふうに思います。各自治体におきましては、小児に対します医療費の無料化というような努力をしているところが多いわけであります。  現在、全国におきまして、そういう小児に対します医療費の無料化あるいは軽減化、そういう努力をされている自治体というのはどの程度になつておるのか、その実態について厚生省の方からお教えいただきたいと思います。
  54. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 各自治体におきます乳幼児医療費の無料化についての取り組み状況でございますけれども、入院、通院あるいは年齢等によって種々さまざまでございますが、すべての都道府県におきまして何らかの形で助成制度が実施されている状況にございます。  若干詳しく申し上げますと、無料化を実施している県が三十県、軽減化を実施している県が十七県ということであります。所得制限の有無で見ますと、所得制限がない県が二十八県、所得制限を設けている県が十九県ということでございます。また、年齢で見ますと、入院ということでありますが、ゼロ歳児のみというところが七県ございます。それから、一歳児までというところが五県ございます。それから、二歳児までというところが二十五県ございます。三歳児以上のものが十県というような状況になっております。
  55. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 最後の、三歳児までが十県ですか。
  56. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 三歳児以上が十県ということで二歳児までが二十五県でございます。
  57. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 三歳児以上まで無料化あるいは軽減化されている県の方が十県あるということでありまして、我々成人、今後の高齢世代に入っていく方を将来支援してくれる子供さんの健康を保つということは、自分自身を支援していくというようなことにも当然なるのではないかと思います。  もし、国としましてそういう三歳児までの医療費を無料化する、あるいは六歳児までの医療費を無料化するというようなことになりました場合に、国費と地方自治体の負担を半分、二分の一ずつにした場合にどの程度の費用が必要なものか、厚生省で試算されておりましたらお教えいただきたいと思います。
  58. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 大ざっぱな試算でございますが、仮に乳幼児の医療費の無料化を実施いたしましてその半額を国庫負担で行うというふうにした場合、三歳児未満の場合には約四百億円でございます。六歳児未満の場合で約七百億円程度の国庫負担と試算されます。
  59. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 三歳児未満までで四百億円あれば小児の医療費無料化ができる、六歳児以下まで含めますと七百億円あれば無料化ができるんだというお答えでありましたけれども、今後そういう貴重な大事な子供さんを育て上げ、そしてまた若い夫婦世代を支援するためには、やはりこういう小児の医療費の無料化というものも念頭に置いていかなければならないのではないかというふうに私自身考えております。  小泉厚生大臣、今後政府の取り組みとしましてこういうことを計画されているか、あるいはどういうふうに子供さんの医療費無料化に取り組んでいくか、そういう御見解がありましたらばお教えいただきたいと思います。
  60. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 三歳児未満の乳幼児に対する医療費を無料化すると四百億円かかる、六歳児までで七百億円ということを考えますと、今十六兆円というお金が何の政策事業にも使われないで借金の利払いに回っている、いかに我々はひどいことをしてきたか、これは深刻に考えなきゃいけないと思います。  ただ国債を買ってもらおう、借金をしよう、増税はできない、歳出は削減できない、借金をしよう、景気がよくなったら返せばいいじゃないかと。景気がよくなってきたら所得減税に回そう、公共事業に回そう、もっと景気がよくなればそのとき借金返せばいいじゃないかと。気がついてみたら二百五十四兆円借金している。毎年十六兆円以上のお金がただただ国債を買ってくれる人の懐に行っちゃう。ここに気づいたからこそ、これはとんでもないことをした、借金は若い人に対する増税と同じだ、後の人のことを考えなきゃいけないということで行政改革財政構造改革が始まっているわけであります。  当然、経済成長がどんどん進んで税収も上がってくれば、私は、乳幼児に対しても、高齢者に対しても無料なり軽減化というのはいいと思います。かつてしてきたことです。ところが、低成長に入り、もたないということでだんだん一部負担をお願いすることになってきた。  しかし、現在、そういう中であらゆる制度に聖域なしということで改革をしていかなきやならない、ツケを若い人に残しちゃいけないということで、今一切の聖域なしで改革に取り組んでおりますが、今後医療費に関しましては、高齢者のみならず乳幼児に対しても配慮が必要でないかという意見を私も十分感じております。将来、これから抜本改革の上において、乳幼児に対して一定の配慮というものも私は検討していきたいというふうに考えております。
  61. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 また別な質問になりますけれども、六月二十日よりデンバー・サミットが始まるということであります。橋本総理は昨年のリヨン・サミットにおきまして世界福祉構想というものを訴えました。各国に日本の取り組み方というものを訴えて、先進諸国でありますと今後ますます高齢・少子化が進んでいくと思いますけれども、そういう諸国に対しましても、また開発途上国に対しましても、日本のこれまでの福祉関係、今問題になっていますのは医療でありますけれども医療に関しまして日本がどういうふうに取り組んできて、どういう成果を上げてきたか、そういうものを恐らく参考としてお示しになって、今後の先進諸国、他国に何らかの益するものがあるのかどうか、それを訴えていくような形になるのではないかと思うんですね。  日本の場合は、これまで国民保険制度のもとで世界最長寿国をつくり上げたということでありまして、また乳幼児の死亡率というものも一番低く抑えてきたと。しかも、GDPに対する医療費というものは先進諸国から見ると低い方で抑えてきた、そういういろんな成果が出ているわけであります。  今後、日本が今度は高齢・少子化になりまして、そういう制度を変更していく、改革していくというような段階に入ってきているということでありまして、そういう点に関しましても、橋本総理は恐らく何らかの訴え、こういうふうに日本改革していくんだ、今までの制度はよかったけれども、やはり抜本改革が必要であって、それに対してこのように取り組んでいくんだというようなお話をされるのかなというふうに考えてもいるわけであります。  きょう、橋本総理はここにおられませんので直接お聞きすることはできないわけでありますが、今後の世界福祉構想というものを積極的に日本はリーダーシップをとって考えていくというような立場にあるというふうに思われますので、小泉厚生大臣に橋本総理からいろいろ御相談ないし今後のデンバー・サミットでの取り組みに関して打ち合わせといいますか、そういうものが行われているのではないかなと私は思うんです。  デンバー・サミットに向けて、特に世界福祉構想というものに関しまして日本世界に対してどのようなアピールをしていくのか、その点に関しまして小泉厚生大臣に橋本総理から何らかの御相談ないし意見表明の構想といいますか、骨格みたいなものが示されているのかどうか、その点に関しましてお聞きしたいと思います。
  62. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 橋本総理は社会福祉に実に熱心な総理でありまして、昨年十二月も沖縄県で東アジア社会保障担当閣僚会議というものを開催して、社会福祉、社会保障制度に関する経験なり知恵を共有しながら今後の社会福祉の充実に生かしていこうじゃないかという会議が開かれました。総理も出席し、私も出席し、各国の社会福祉担当大臣初め代表が出席されて熱心にそれぞれの国の実情を考えながらの福祉制度の進展なりこれからの抱負なりを語り合いました。大変有意義な会合だったと思いますが、総理は既に昨年のリヨンにおける先進国サミットにおいても世界福祉構想を提唱しております。  今月二十日からアメリカのデンバーで開催される主要国首脳会議、いわゆるサミットにおいても、昨年総理が提唱した世界福祉構想を踏まえて、人口の高齢化や感染症・エイズ問題が議題の中に含まれる見通したと伺っておりますが、その具体的な内容については今調整中でありますので今この段階で申し上げる状況にはないということを御理解いただきたいと思います。
  63. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 ほかの国に対しまして日本の経験を知らせていって、今後の高齢・少子社会に悩んでおられる先進諸国に対しまして有益な提言といいますか、そういうことができれば非常にすばらしいことではないかというふうに考えます。  橋本総理が昨年のリヨン・サミットにおきまして述べられたことでありますけれども日本としても、自分たちの体験の中から他の国々に生かしていけるような体験をまとめて今回のデンバー・サミットに伝えていきたいというようなことを昨年の記者会見で述べられておりましたので、非常に私としては期待している次第であります。  話は変わりますけれども、本日、こういう健康保険法の再修正案が出てきたわけでありますけれども、これが本当に国民のためになることなのか。日本のこれまでの皆保険制度、いつでもだれでもどこでも適切な医療を受けられるというすばらしい皆保険制度のもとで日本はすばらしい成果をおさめてきた。先ほども述べましたけれども、最長寿国を達成した、そして乳幼児死亡率を最低のレベルに下げたというようなことがありますので、その骨格をどのように維持しながら改革を進めていくのかということがやはり各国にとっても注目の的ではないのかなというふうに考えます。  今回、また修正案というのが出されてきますけれども、それに対しましてもやはりそういう根本的なところがら検討を加えて有意義な審議をしていきたいな、そのように考えております。  以上で私の質問は終わりにします。
  64. 山本保

    ○山本保君 平成会の山本保です。これまでも質問させていただきましたが、その中で疑問に思ったことなども含めて、通告をしておきながら時間の関係で割愛せざるを得なかったところもありますので、そんなことをお聞きしたいわけです。  その前に、今、渡辺先生からもお話ありましたけれども、何か修正案が出されてくるということで、またそのための時間もとってあるというふうには内々聞いておりますので内容についてはそのときお話しするとしましても、先ほど尾辻先生の方からまさにアリバイづくりというような形での、先生はいつも非常にさわやかに御質問されるのに、きょうは明らかに原稿を読んでいるんですよという形で言われたというのも、これはもう本人もふんまんを持っておられるんじゃないかという気がするわけでありますけれども、あらかじめこの委員会でこういう話があったという形をとっておいて急速修正案を出す、こういう手法はやはり参議院としては非常に面白くないやり方だと思います。(「考え過ぎだな」と呼ぶ者あり)考え過ぎだというお話があるかもしれませんが、私はそう思わざるを得ないわけであります。  この前申し上げましたけれども、院の中で修正されていくということは、これは民主主義としては非常に結構なことではあります。しかし、今回の場合は与党の中での整理がうまくつかなかったと。それはまさに今の政治状況の中でそうなってきたということでありまして、安保問題だけが特に新聞などで取り上げられますけれども、こういう国民生活に直結するような問題についても同じような問題があるということでございます。ぜひ厚生大臣、政治家としてこの辺についてはよくお考えいただきたいと思っております。  それは最初の前置きですが、そこで一つだけ確認的に申し上げますけれども、私どもは、今回の修正案に出てきたような別途負担を持つ、今までのような一部負担に加えて薬剤費などを持つということについては、先ほど渡辺先生からもはっきり指摘がありましたように、基本的に賛成できないと思うわけであります。  一部負担というもので今まで取ってきたのであれば、考え方からすれば、その薬剤分その他については何らかの査定をしてこれまでの一部負担のところがら除くというような手法をとらなければ、当然国民の了解を得られないだろうと思います。もとより、もっと持っていただくのであるというのであれば、そういうふうにはっきり出されるべきであって、薬剤についてというふうな言い方をされますと、結局今回の修正案騒動のように矛盾が出てくるということだと思います。  また、出すにしても、このような形で修正案が出てきたということは、参議院議員の一人として申し上げれば、衆議院は一体何をやっていたのかということでありまして、参議院で修正する場合に新たな修正案が出てくるということについてはともかくとしまして、衆議院で修正したことをまた再修正しなければならないというふうなことは全くおかしな話だというふうに思います。(「民主主義だからおかしくないよ」と呼ぶ者あり)まあそのとおりですね。ですから、出すにしても、そんな不合理なものを出してもらっては困ると思います。  そこで、一つこれは通告していなかったことでございますが、先ほどの渡辺先生議論の中で局長が抑制効果について細かい数式を言われました。結局、渡辺先生が総括されましたように、抑制効果については患者負担率の割合だけが因子だということが明らかになったわけでありまして、これは考えますとまことにおかしなことでございます。医療費が下がるかどうかというのが患者負担費だけで決まるというのは全くおかしいわけで、ここの先生方がすぐ考えられましても、例えば情報開示はどの程度なされていて、どの段階、どの分野における情報開示でチェックをするかとか、また薬価差益の幅をどのぐらいの割合に抑えるかとか、技術評価指数をどうするかとか、いろんな検査機器の技術化、高度化というふうなものをどういうふうに因数に入れるかとか、もっと単純には病床数はどうだとか、こういうものでいつも説明されているはずだと思うんですね。  ところが、それを先ほどの説明では一部負担だけふやせばなるという、もともとそういう数式というか、それをもとにして考えているということが明らかになったわけでありまして、これは全くおかしいのではないか。最初からもうそれならば、抑制効果を出すといったら、じゃ一部負担をするんだという、そのことを言っているだけにすぎないと。もしそういう方式しか使っていないとすれば、もともと根拠自体が全くおかしいと思うんですけれども局長、この辺をどうお考えでございますか。
  65. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 委員指摘の、ちょっと物の考え方なのでありますが、いわゆる一部負担がふえることに伴う医療費の波及的な効果はどのぐらいかという意味で申し上げておるわけでありまして、抑制効果を出すためにどういう手法があるかということではありませんのでそこはちょっと誤解があるとすれば、その点について再度申し上げますとそういうことで御理解いただきたいと思います。
  66. 山本保

    ○山本保君 本来ですと、それではどういうふうに全体の抑制効果をというふうに話を持っていかなくちゃいけないと思いますけれども、きょうは私も通告しておりませんのでそういう準備もないかと思います。もしあれば言っていただきたいんですが、特に今の考え方だけをお伺いするということで、私はきょうはこの質問についてはこれ以上深入りしませんけれども、ぜひそこはわかりやすい全体像を見せていただかないといけないというふうに思っております。まだ一日あるようですから、ぜひお願いいたします。  次に、これまで私、構造改革会議についてお話を伺った中でちょっと突っ込みが足らなかったところがありますので、同じことになるかもしれませんが、少しお話を伺います。  今回の改正が余り根本的なものではない、抜本改革が必要であるということについての厚生大臣お話は私も全くそのとおりだと思っておりますので、八月、九月以降にならないうちに、あえて今のうちにいろいろ議論をしてきたわけであります。  診療報酬において参照価格制というのが出てきているということで、この前もそんなお話を伺ったわけですが、まずちょっとこれは簡単な確認でございますけれども構造改革会議では定額払い制という言葉を使っておりましたよね。これは厚生省のいろんな資料による外国のさまざまな方式とは別の言葉ですけれども、もう一度確認ですが、ここで言う定額払い制というのは、例えばアメリカとかイギリスとか総額請負とかいろいろ今までも議論されて、それとこの定額払い制というのはどういう関係になるのかということと、そして次に、一緒にお聞きしますけれども、この定額払い制というものをとった場合に、メリットはわかるとして、デメリットというものはどんなものが考えられるのか、もう一度お答えいただきたいと思います。
  67. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 定額払いというのは診療報酬の支払い方の問題でありまして、これはむしろいわゆる出来高払いに対比される言葉であるというふうに考えております。  いわゆる出来高払いというのは一種の積み上げでありますから、一つ一つの行為について一つ一つ評価をし、そしてそれを合計したものが診療報酬という格好で支払われる、これが原型だと思います。それに対して定額払いというのは、今も既に行われておるわけでありますが、例えば老人の慢性期の医療、これについてはもう幾ら幾らというふうに定めまして、その中でどのような医療行為を行うかというのは、それはそれぞれの医師なり医療担当者の判断のもとに適切な行為を行っていただく、こういうものであります。したがって、言うなれば、余分な行為をたくさんやればやるほど、そういった意味では定額払いの場合には出来高払いに比べると割が合わないようなことが起こり得る。出来高払いというのは、これはやっただけもらえるわけでありますから、むしろ逆に必要のないものまでやるというような場合にはいわゆる過剰診療に陥りやすいと、こんなようなことになるわけであります。  そこで、定額払いということになりますと、逆によく言われますのが、今度は必要な医療行為もやらないで済ませてしまうのではないかということが心配されるということであります。そういった点がいわゆるデメリットと言われているものでありまして、この辺のところはそれぞれがいい面、悪い面あるわけでありますので、我々としては、出来高払い、それから定額払いというものを最善の組み合わせをすることによって適正な医療というものの確保を図っていきたいというのが現在の方針でございます。
  68. 山本保

    ○山本保君 今おっしゃいましたように、定額払いにしたときのデメリット、問題点というのは医療の質が下がるんじゃないかということであり、効果というのは財政的な効果があるというふうに考えられますから、そうしますと、私どもといいますか一般の国民にとっては、お金の方も大事だけれども、もちろん医療の質が下がってくるのはもっと困るということになるわけです。  やらないようになるというふうにたしか局長が今おっしゃいましたけれども、その場合でも、例えば難しい病気、時間がかかりそうな病人の方はよそへ回してしまうというような形でセレクトするというようなことと、それから診療内容自体が私たちの目にはほとんど見えなくなってくると。後で最後に聞こうと思っていますが、レセプトなどの形できちんと把握されなくなってくるということから、その中身自体が今度は見えなくなってくるというようなおそれが、今お聞きしても感じられます。ですからこの辺は、組み合わせるといいましても、マイナスとマイナスだけ組み合わせるなんということになっては困りますので、プラスとプラスだけ合うように組み合わせるということになると思いますから、この辺はきちんとやっていただきたいと思うわけです。  ちょっと今のお話の中でお聞きしますが、この構造改革会議の決定を見ますと、もう既にこの中に「慢性疾患は定額払いとする」と書いてありますが、今、局長は慢性はやっているというようなお話があったように思いますけれども、もう一度この辺お願いできますか。
  69. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず最初に、誤解があるといけませんので、繰り返しになりますが、定額払いにすればすべてが粗診粗療になるというようなことでありませんで、そこのところはちょっと誤解のないようにお願いしたいと思います。要するに、そういうふうなことになりやすいということが言われておるということであります。  この医療診療報酬の支払い方というのは、これは医療機関あるいは医療担当者のいわゆる一種の所得保障といいますか、報酬としての支払い方でありますから、そういった面での支払い方としてどういうやり方がいいのか。それが現行の出来高払いだけでは過剰診療ということを招いているんじゃないか、そのことが医療費のむだにつながっているのではないか、こういうような御指摘我が国の場合は非常に強い。むしろそれよりも、医療担当者、お医者さんに対する一定の所得保障というものをするということが前提でありますから、そういった意味で、定額払いにしたら何か安上がりに済むとか、そういうことで御理解いただいては私は適当ではないのじゃないかというふうに思います。むしろ、医療費というものが効率的にどう使われるのがいいのかという観点から御理解をいただきたいというのが一点であります。  そういった意味では、医療というのはすべて医師の倫理観というものが基本でありますので、すべての医療担当者が何か稼ぎまくるとか、余りいい言葉ではありませんが、そういう前提で考えるということは余り適当ではないということを申し上げておきたいと思います。  それから、そういった支払い方の中で、やはり慢性的な医療の場合には、これはある程度病状が安定しているといいますか、そういう側面もあるというようなことから、一つ一つの治療行為を積み上げるよりも包括的に定額払いという方向というものがなじむという側面がございます。これまで老人医療の面においてはそういった意味でかなり取り入れられてきております。ただ、この辺のところは現在医療機関の選択性になっておりますから、そういうのを選択する医療機関はこれを採用するというふうになっておりますけれども、やはりこれまでも定額払いになじむものとしてこういった慢性期の医療というふうに言われておりますし、これまでも今申し上げたような仕方で導入されてきている、こういうことでございます。
  70. 山本保

    ○山本保君 今の御説明ですと、最初の、つまり確かにお医者様の倫理観とか、お医者様をどれだけ信用するのかというところに乗った上でのものであってということはわかります。了解できますけれども、もちろん基本的に信用した上で制度が成り立っておりますし、我々もそう思いますが、しかしいつもそうではないということもあり得るわけですから、先ほどの情報開示ということについてはそれなりの対応をしなければならないということは繰り返して私は申し上げます。  その次に、定額払い制、包括払い制ですか、老人の慢性疾患について御説明ございましたけれども、現在、小児医療についてもやっておられますよね。これについてはどういう御説明で、どんな効果があったというふうに評価されるんでしょうか。
  71. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 平成八年四月の診療報酬改定におきまして、外来の小児科の診療につきましてその特性ということから、三歳未満の小児への指導等につきまして定額制によって評価しましたいわゆる小児科の外来診療料というものを採用いたしております。これは平成八年四月から導入されておりますので、そういった意味で私どもが平成八年七月現在で調べましたところ、全国では一万一千四百余の診療所、それからまた千二百四十余の病院がこの小児科の外来診療料というものを採用いたしております。まだまだこれは今後ふえてまいると思いますけれども、そういうような状況でございます。これを採用することによって、一つにはやはり小児科の医業経営の面におきましても安定が図られてきているということが言われております。  ただ、具体的に従来の出来高払いの状況のときと今回のこの定額払いを採用したときとで中身において、例えば検査とかあるいは投薬とかそういったものが従来とどういうふうに変わったのかということについては、ことし実はこの関係の調査を行いたいというふうに考えておりまして、その結果というものを分析していきたいというふうに考えております。
  72. 山本保

    ○山本保君 今までのお話をまとめて考えてみますと、ただ単にお金の分野というような二つの概念ではないということで、さまざまなファクターを使って検討しなければならない問題であるという答えだと思います。ですから、そういう結果につきましても具体的に出した上で検討をしていただかないと、医療というのはただ単に概念操作で大きな枠だけを変えればいいという問題ではありませんので、そこは当然よくおわかりだと思いますけれども、慎重にやっていただきたいというふうに申し上げます。  それから次に、話題を変えますが、先ほど渡辺先生からもお話があったことでありまして、先回私もお聞きしたことですけれども、もう一度確認をしたいと思っております。  平成十年度のこの予算について、自然増八千億に対して五千億ぐらい削減をするんだというお話があったわけですが、まずこの可能性というのはどのように、もちろん出た以上はやらなくちゃいけないということでしょうけれども、具体的にどんなふうにできるのかということについてお話しいただきたいと思います。
  73. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 今後、十年度予算編成に向けまして五千億を上回る当然増を削減していくということでございますから、厚生省としてあらゆる形で縮減策を検討していかなければならないというふうに考えております。  その中で、先般来御答弁申し上げておりますように、当然増のウエートからいたしますと医療関係予算の伸びが一番多うございまして、十年度の予算編成という問題を考えますと、医療保険制度について、その中身とか程度とかいうのはこれからの検討課題でございますが、できる限り改革に手をつけていかざるを得ないのではないかというふうに認識いたしておるところでございます。
  74. 山本保

    ○山本保君 もう一度これは確認させていただきたいんですけれども現行の衆議院の修正の案でいきますと、毎回お答えありますけれども、国庫負担としては大体三千三百億ぐらいの減になるというふうにお聞きしておりましたね。これはその今の五千億の中には入っていないということでよろしいんでしょうね。
  75. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 先ほど大臣からも御答弁ございましたように、本年度の予算編成につきましては政府原案を前提として予算を組んでいるわけでございます。満年度ベースにして約三千五百億国庫負担を減した上で予算を組んでおるわけでありまして、その予算を前提として、その上に高齢者の増等からする当然増というのが上に乗っかってくると。さらに修正論議、これがどういうふうにまとまりますかあれでございますが、それが国庫負担のさらなる増を招くとすれば、それが平年度化した形で当然増にオンしてくると、こういう構造になってございます。
  76. 山本保

    ○山本保君 そういうお答えを聞きますと、余計この五千億削減というか縮減というのは大変なことだというふうに思うわけですけれども、ただ今の御説明だけ、表面だけ聞いていますと、八千億ふえるところを三千億にするんだということだけですと、これはちょっと言葉のあやというか、意識的に言われているのか正確に言われているのかわかりませんが、実際十五兆、十六兆の厚生省予算全体の中からそれだけ削減をするという、当然そういうことだと思います。  そこで、大臣じゃなくて局長さんで結構なんですけれども大臣は先ほど五千億は抜本改正の中でやっていくんだということをお答えになったわけですが、抜本改正というのはまだ二年か三年先だということで来年のこの議論には関係ないと思うんですけれども、その辺はどうだったですかね。
  77. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 来年度に関係してきます。これから抜本改革案を示しますが、これは十年度にできるものと十一年度以降でないとできないものがあると思います。当然、十年度にできるものは十年度に実施していきたいと、そういう  ことでございます。
  78. 山本保

    ○山本保君 わかりました。また積極的な御返事があったということかもしれません。十年度からもやれることはやるということでございますね。  それでは、また議論をちょっと戻しまして、今回のこの財政改革の案を見ましてちょっと気になることがあるわけですね。それは、橋本内閣は以前から国民負担率を四五%目途であって絶対五〇%にはふやさないと、こう言っておられたことがこの中には全然出てきていない。うがった見方をすると、つまり国民負担率はふえないということはまず放棄しちゃったんじゃないかという気がするんですが、(「大原則」と呼ぶ者あり)大原則であると。じゃ、これはお聞きするのをやめます。その前提の上でもう一つ。聞きたいことはこちらなんです。  そうしますと、国民負担率は上がらないとしても、しかし患者負担の実際の一部負担だとか薬価だとか入院費だとか、こちらを上げれば実際国民負担率は上がらなくたってできるわけですね。ですから、国民負担率を上げずに、しかし構造改革をするとすれば、それは国民のその一回ずつ使うときの負担料をふやすだけじゃないかと、こういうふうに素直に考えればそっちが非常に心配になってくるわけですけれども、この辺はいかがでございますか。
  79. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 結局、医療にしても年金にしても、すべて国民負担なんですね。税金をどれだけ投入するか、保険料をどのぐらい出してもらうか、自分から給付なり受益を受けた場合の負担をどのぐらいにするか、年金の場合は支給開始年齢も入ってきます。現在の負担割合だったら、じゃ若い人に借金をしようかと、国債を発行する、いずれも国民負担であります。しかし、財政の五原則の中で税と保険料を含めて将来五〇%を超えないというのが大原則でありますから、その中でどういう構造的な改革をするかということに向かって最善の努力をしていきたいと思っております。
  80. 山本保

    ○山本保君 ちょっと定義が違うのかなという気もするわけですけれども保険料の率を上げるというようなことについては大臣が今おっしゃったとおりだと思いますけれども、診療を受けたときのその負担、一日に払うお金であるとか薬価であるとか入院費というのは今までの考え方ではこの国民負担率の中には入ってこないんじゃないかと思いますけれども、私の理解が違っておりますでしょうか。
  81. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この国民負担率をめぐっての議論というのはいろいろあります。いわゆる税と社会保険料という形でどこまで公的な制度として負担していくかということが基本でありまして、そこをもっとふやして、そのかわりいわゆる自己負担のようなものは余りしないでいこうというやり方もあろうかと思いますけれども、先進諸国等々、ヨーロッパなんかの国等々を見て、やはり国としての活力、こういったものを考えてみた場合に、我が国においては国民負担率というものを五〇%以内にとどめようということではないかと、こういうことであります。  そういった中で、今まさに委員指摘のように、従来負担していた分を結局は自己負担の方に回すだけじゃないかという議論がありますけれども、やはりこういつた構造的な改革ということを考えながら、かつ国民負担というものをそれにとどめていくというその大前提としては、やはり現行制度におけるむだなりあるいは現行制度における非効率な面というものを改善していく、こういうことをきちっとやっていくことによって、その結果としてできるだけ国民負担率というものを抑えていこうではないかということがまず大前提だと思います。  ですから、そのところをこれからの構造改革というものはまさに目的とするところでありますので、そういった面との絡みの上において御理解いただく必要があるだろうというふうに思っております。
  82. 山本保

    ○山本保君 今、局長がフォローされましたように、国民負担率という言葉自体がそれほどきちんとした概念じゃありませんので、ここで大臣がおっしゃったことを細かくあげつらうつもりはありません。  ただ、問題は結論のところでして、自己負担がふえていくんじゃないかという心配はやはりあるわけであります。特に今回の改正でも、公的な負担だけが減る、国の予算、そして保険料、こういうような税金、保険料が減るとしても、その分国民が実際その場で払わなくちゃいけない、強制的に払わなくちゃいけないというものが、これは所得とか関係なしに、例えば健康保険でいえば病気の状況によって、全く自分には何の責任もない偶然的な病気のときだけたくさん払わなくちゃいけないというのは、これはやっぱり社会的な公正ということから考えてもなかなか難しい問題があるのじゃないかなということだけ指摘をします。  次に、時間のこともありますので、大臣にちょっと。  私、前にも何回も申し上げていますが、この場合、つまり国の税金と保険料というようなもの、それが今度は無理だから自己負担と、こういう考え方は、実はアメリカ型のといいますか、NPOというものを入れますと変わってくるわけですね。  先日、衆議院でNPO法案は与党案が通りまして、これはいろんな意味がありますけれども、まだ参議院では議論されておりませんけれども、ここは大事なところでして、私どもの方で出した案は、そのときに寄附金という形で、準公的といいますか、つまり自分の意思でもって、さっきのように無理やり、または自分の意思に関係なく出さなくちゃならないというお金ではなく、自分の意思によって社会のために出しましょうという分野、これを税を削る形でつくっていくという法案を出したわけで、残念ながら否決されたわけであります。  この辺が私はこれからのこの社会保障の問題のときの非常に重要な観点ではないかと思っておるわけですけれども、厚生大臣、直接のこの問題とは違うかもしれませんが、御所見をお聞かせください。
  83. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) これからの活力ある日本経済社会を考えると、民間の方々が、民間人にしても民間企業にしても、どうやって今まで公的な分野、役所の仕事だと思われた仕事に参入してもらうかと、これは大変大事なことだと思います。そういうことを考えますと、いわゆる非営利団体が非常に活発にいろんな活動に参加してくれるということは今後大事なことであるし、そういう意欲のある人にどんどん参加してもらうような環境を整備していくことは必要だと思っております。  それと税制の問題、これも税制的な刺激措置を講ずることによってその活動が活発になったりなえたりすると思いますので、その点は、今の公益法人とか税制全般との視点でどのような助成措置が講じられるかというのは今後の税制全般の改革の中で見直すべきではないかな、また検討すべきではないかなと、そう思っております。
  84. 山本保

    ○山本保君 大蔵大臣の答弁ならそれで私も満足するかもしれませんけれども、今最も財政が厳しいし、また実際に、人々の善意であるとか、その善意が形、お金になったり、または時間になったりしてくるこの分野に一番関係のあるのがこの社会保障と福祉分野でありますので、ぜひこの分野が先行されて、公益法人税制一般という形に持っていく前にぜひ積極的に一歩を踏み出すべきではないかなと。  というのは、単にボランティア団体云々というのを、サービス提供の分野だけを問題にするのではなくして、これまで議論をしてきた財政の面から、これこそが実はNPOというものを見ていく一番肝心なものであると。はっきり言えば、与党案ではそういうものは全く欠けていると。いろんなサービスをするときに、公立のもののほかに、そしてボランティアのほかに民間法人立というのをふやすだけで、実際にはその全体の構造は変わらないというものではだめだということは、申しわけございません、これは私の意見でありますけれども申し上げます。  少し時間がありますので、次の問題であります。  この前、釘宮委員からももうお話が出たことでありまして、私も聞こうと思っておったことですのでちょっとお聞きしたいんです。  レセプトの処理、七億ですか、国保も入れるともっとすごいということですが、その処理が、この前お話ありましたように、手で一々毎月出すというのはいかにも時代おくれのような気がするわけでありますけれども、コンピューターを入れるということについて、時間がありませんのでまとめてお聞きしますけれども、どれぐらい今それが進んでいるのか、そして厚生省はそれについてどういう方針を持っているのかについてお答えいただけますか。
  85. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、医療機関におけるレセプトの作成、これはかなりコンピューターの導入が進んでおりまして、そういった意味で、各医療機関は手書きでレセプトを書くというのは余りありません。とりわけ病院においてはほとんどがコンピューターを導入してやっておるわけであります。  問題は、支払基金なりあるいは国保連合会がそれを審査し、そして支払いをしているわけでありますが、その受け手の支払基金なりあるいは国保連合会の方が直接例えば磁気テープなりあるいはディスクという形でそれを受けるというようなシステムがまだほとんど進んでいない、全く実験段階という状況でございます。  いわゆるレセプトの電算化と言った場合には後者の方を指して言っておるわけでありまして、現在はそれぞれの医療機関は、せっかくコンピューターの中にレセプトの内容が入っているにもかかわらず、それを一たん紙に打ち出して、そしてそれを紙で支払基金なりあるいは国保連合会なりに請求書という形で出してきている、こういうことでありまして、その枚数が支払基金で七億枚、国保で五億枚という非常に巨大なボリュームになっておるわけであります。これを何とかやはり時代に合った形で電算化をしょうということでありますけれども、はっきり申し上げて進捗状況はそれほどよくないというふうに私は思っております。  これはなぜかということなのでありますが、これはやはり役所が統一的な仕様あるいは統一的なやり方をつくる前に、もう既に民間企業はそれぞれ独自のプログラムを織り込んだコンピューターを医療機関に売りさばいておるわけでありまして、それを受け手の方が統一的なものじゃないと受けられないということである限りにおいてはこれは進まないわけであります。これまで受け手の方はそれを何とか統一的なものにしてもらおうというふうな方向での検討が行われてきたのでありますが、これは十年検討してきたけれども、全体に行き渡るようなことはできないという状況でありまして、私は、やはりそういった物の考え方を改めて、むしろどうやったら実現できるのか、実態に合った形のものを考える方が大事だということで、できるだけ早く実現できるように今発想を転換し、検討を指一小しているところであります。
  86. 山本保

    ○山本保君 最後に一つだけ。それと関連しまして、きのうの新聞にも載っていましたけれども、レセプト公開ということについて消極的であるという報道もあるわけですね。  今は薬については結構いただけたりするわけですよ。そのときにどんな診療があるのかということは、カルテを見せてくださいという要求もあるようですけれども、これはなかなかやはりお医者さんとしても、と思うんですが、よそに出している、つまりカルテのように全く専門家、治療者の中だけでやっているものとは違って、もう既にある意味では公開しておるようなものを患者さんにもちゃんと見せるということによって、先ほどちょっと申し上げましたが、チェックできるということが重要じゃないかと思いますが、この辺についてはどういう方針でございますか。
  87. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) レセプトの性格がございますが、患者のプライバシー等の問題がございます。しかし、こういった面に十分配慮し、そして私どもとしてはレセプトの公開という方向で今検討しておりますし、医師会もそういった意味では前向きに対応していただいております。
  88. 山本保

    ○山本保君 どうもありがとうございました。
  89. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十五分まで休憩いたします。    午後零時一二十六分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  90. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  91. 菅野壽

    菅野壽君 先週、先々週に引き続きまして、健康保険法等改正案の質疑をさせていただきます。  まず、先日の質疑保険局長は、患者負担が医療費総額を上回ることがないよう政令で規定する旨御発言がありましたが、これを一歩進めて、政令において薬剤に係る患者負担が薬剤費を上回ることがないよう規定する必要があるのではありませんか、お伺いします。
  92. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 衆議院の修正で、政府原案では薬剤に係る患者負担の額が医療給付費の総額を上回ることのないようにということでそれを法律で規定していたわけでありますけれども、修正によりましてこれを政令で定めるという格好になりましたので、この部分については私ども指摘のとおり政令を制定するということで考えております。  ただ、薬剤に係る患者負担が薬剤費を上回ることがない、要するに実費を上回ることがないようにという規定でございますけれども、これはまさに本委員会においてもいろいろ御議論されていらっしゃいますし、そういった本委員会における審議の状況、結果を踏まえまして、私どもとしましては必要があれば適切に対応させていただきたい、このように考えております。
  93. 菅野壽

    菅野壽君 去る六月三日の財政構造改革会議報告では、保険集団のあり方の見直しが提言されております。  この具体的内容をお示しいただきたいと思います。また、国保組合のあり方について厚生省はどのようにお考えですか、お伺いします。
  94. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 財政構造改革会議の先般の取りまとめの中で、保険集団のあり方についても見直しをするという提言がございます。  この内容についてはこれから私どもとしましても医療保険制度抜本改革を検討する中で検討をしていくということになりますけれども、これまで保険集団のあり方についていろいろ御指摘がございますのは、昭和三十六年に我が国における国民保険が達成されたわけでありますけれども、その後の産業構造の変化なりあるいは就業構造の変化というものの中で、一つには、非常に我が国保険者というのが分立しておりますけれども、そういった中における給付と負担の公平あるいはまた一元化が必要ではないかというようなことが言われておりますとおり、それぞれの分立している保険者間における給付なり負担なりの公平というものをどう図っていくのかというのが一つございます。とりわけ国民健康保険、これは各保険者、財政が相当窮迫しておりますし、そういった中で、この国民保険というものを維持していくためには、やはりこの保険集団のあり方の見直しというのが非常に重要であるということで考えておるわけでございます。  今後の方向としては、やはりそれぞれの保険集団の分立というものを前提として考えていくにしましても、あるいはその辺の再編成というふうなことをにらんで考えていくにしましても、国民がいずれかの医療保険制度に加入しておるわけでありますから、そういった中で負担なりあるいは給付なりにおいて不公平があってはいけないというふうに思うのであります。そういった意味での公平化、これをどういうふうに実現していくかということではないかと思います。そういった意味では、国民健康保険の中におかれます国保組合のあり方というものもその一環として考えていくべきであるというふうに考えております。
  95. 菅野壽

    菅野壽君 ただいまの御説明で私が御質問申し上げようとするところはもうほとんど答弁されておりますけれども保険集団の見直し医療保険の一元化、給付と負担の公平化という点でどのような関係があるのか、お知らせ願います。
  96. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) やはり、我が国の場合、現在は保険集団が細かくは五千からそれぞれの保険者があるわけでありまして、そういった中で、給付と負担の公平という面で申し上げますと、例えば給付の面では国民健康保険、これは現在七割給付であります。それに対しまして、被用者保険の方は、今回の改正でお願いしておりますのは本人が八割給付ということでございますし、家族の外来はやはり七割というふうなことがございますし、そういった意味制度間における給付の格差というものはあります。それと同時に、また負担の面におきましても保険集団、それぞれの保険者によって保険料額というのは違っております。もちろん、そういった中で国庫負担の入れ方というのもそれぞれ違っておるわけであります。  その辺のところについてどういうふうに考えるかということがあるわけでありますが、やはりこれまでいろいろな審議会等でも御議論いただいておりますのは、国民保険の中でそれぞれ給付についても、それから負担の面においても皆同じように公平にしていくということが適当ではないかという御指摘はかねてからございますので、そういった面を踏まえた保険集団のあり方の見直しということが必要ではないかというふうに考えております。
  97. 菅野壽

    菅野壽君 医療保険における給付率について、医療保険審議会建議では、「今後、各制度を通じ適切な実効給付率とすることとし、法定給付率についても将来的に統一を目指す。」としておられますが、この点について厚生省の御見解を承りたいと思います。
  98. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 昨年十一月二十七日に出されました医療保険審議会の建議におきまして、まさに、今、先生指摘のとおり、「各制度を通じ適切な実効給付率」、それからまた「法定給付率についても将来的に統一を目指す。」と、こういうふうになっておりますけれども、これまでそれぞれ分立していた各制度の中における給付の公平という意味では高額療養費制度というものを加味した実効給付率で見てきたわけでありますが、やはりこれからの制度というものを考えた場合に法定給付率というものをどういうふうに統一していくのか、これは将来の問題というよりもまさに今回の抜本改正の中における制度体系を見直す際には実現をしていかなきやならない問題の一つじゃないかというふうに考えております。
  99. 菅野壽

    菅野壽君 さらに、医療保険審議会第二次中間報告におきまして、「風邪の治療等軽医療についての負担率の引上げ等、幅広い観点に立った見直しが必要ではないか。」という問題提起が行われておりますが、この点について厚生省の見解を承ります。  また、ここで言う「軽医療」とはどういうような概念でしょうか。風邪は万病のもとと言うように、軽医療か重医療かの区別は実際には大変難しいんじゃないかと思いますが、この点についてお伺いします。
  100. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 医療保険審議会の第二次報告で御指摘のような内容が記載されているわけでございます。  これは、確かに先生指摘のとおり、なかなか難しい問題だと私も思います。ただ、こういった議論というのはこれまでもございました。この軽医療か重医療かということは、医療保険審議会の第二次報告では、その区分というのは恐らく、比較的費用負担が少ない、そういったものについて軽医療というふうに考えているのではないかなというふうに推察されるわけでございます。  ただ、病状について、それが軽医療なのか重医療なのか、この区別は御指摘のとおり非常に難しいというふうに私も思いますし、こういうような行き方で今後の医療保険制度の給付率なりというものを考えていくのがいいのか、ここは相当慎重に検討しなきゃいけないというふうに私どもは思っております。    .
  101. 菅野壽

    菅野壽君 今後の医療保険財政の安定化において最大の課題の一つは、国民健康保険制度の抜本見直しであると思います。国民健康保険制度は、小規模国保の増大や保険料の格差、低所得者層の増大等多くの問題を抱えています。こうした国民健康保険の実態について御説明を願いたいと思います。  また、保険者規模の広域化について、そのメリット・デメリット及び現行の一部事務組合方式との違いについて教えていただきたいと思います。
  102. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに国民健康保険状況というのは大変窮状をきわめているというふうに一般的には言えると思うのであります。  そこでまず、現在の国保の状況について、ちょっと長くなりますが、申し上げますと、いわゆる国保の中の小規模保険者、これは平成六年度現在で被保険者三千人未満の保険者を仮に小規模保険者というふうに考えますと、全体の三七・一%が三千人未満の被保険者という状況になっております。  それからまた、保険料についてもかなりの地域格差がございまして、保険者間における格差というのは非常に大きく出ております。平成六年度で見てみますと、高いところと低いところを比べますと七・一倍からの保険料の格差がございます。  それからさらに、いわゆる低所得者の世帯が非常にふえておるわけでありますけれども、これは同じく平成六年度で見てみますと、国保の中の加入者の二二%がいわゆる無職者というような形の低所得者ということになっておるわけであります。  この保険者規模の広域化というものをどう考えるかということでありますけれども保険数理上から見ますと保険者規模というものが大きい方が危険分散ということにおいては機能するわけでありますが、しかし保険者の機能といった場合にいろんなことが考えられます。とりわけ国民健康保険、これは市町村単位を原則とする地域保険でございまして、そういった中でやはり健康づくりなりあるいは予防活動なり、そういうことが非常に重要でありますし、これからの高齢化社会あるいは少子化社会においてはますますそういう面の活動というのは重要になってくると思います。  そういうことを考えてみた場合に、現在のそういった予防衛生と申しますか、そういう基本的な活動というのは市町村が担っておるわけであります。これは福祉もそうでありますけれども、市町村にできるだけそういった権限なり機能というのはおろしてきております。そういうものと一体的にやはり考えていくということになりますと、市町村を保険者とする単位というものも意義があるというふうに思います。  その辺のところのよさを生かしながら、かつ保険がきちんと成り立つような、そういったような仕組みというのをどういうふうにつくっていくかというのがまさにこれからの体系考える上における基本だろうというふうに思っております。  なお、事務組合の状況について御質問がございましたけれども、これは単独市町村ではなく、もうちょっと広域的に複数市町村が事務組合をつくって国保を運営する、こういうやり方でありますからその限りにおいては広域的な保険集団ができるのでありますが、我が国においてはこの事務組合方式というのは余り普及はしておりません。現在、全国的に見ますと、和歌山県で三カ町に一部事務組合というような形、あるいは新潟県で一つ事務組合が設立されている、そんな状況でございます。
  103. 菅野壽

    菅野壽君 最後に、医療保険構造改革について厚生大臣にお伺いします。  厚生大臣はたびたびの御発言で非常に前向きな御姿勢を示しておられるので、私も大変感服し御期待を申し上げているところでございます。医療提供体制医療保険制度両面にわたる抜本的改革の全体像を速やかに国民に示すとともに、できる限り早期に着実に実現に移すことが政府が国民から課せられた使命であると思います。  最後に、大臣の御決意をもう一度お伺いしたいと思います。
  104. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今国会の衆参両院の委員会の御審議を伺いまして、もはや一部的な手直してはいけない、抜本的な総合的な改革に踏み切れという委員の方々の大変強い御指摘も踏まえまして、私ども厚生省としてできるだけ早い機会抜本改革案を取りまとめなきゃならないと思っております。  この国会が終わり次第、医療提供体制も、そして診療報酬体系も、さらに薬価の適正化も含めまして、この委員会指摘されました点を踏まえて総合的な抜本的な改革に取り組みたいと。当初は年内にと考えておりましたけれども、皆様方のいろいろな御意見もあります。できるだけ早くということでありますので、八月いっぱいということではなくて、できれば七月中にも厚生省としての抜本案をお示ししまして、国民の広い批判なり国会の議論の材料として提供しなきゃいかぬと、もう精力的に取り組んで御批判を仰ぎたいと思います。
  105. 菅野壽

    菅野壽君 ありがとうございました。  終わります。
  106. 今井澄

    今井澄君 健康保険法等改正案の審議も公聴会を含めてきようで六日目になりますが、大分きょうも興味深い議論が出てきたと思います。国民負担率論争の問題、それから私なんかは非常に興味がある出来高払いと定額制の問題、それからきょうは長瀬計数という、医療費の自己負担をふやすと受診抑制の効果がどうあるかという経験則の大変おもしろいお話をいただきました。  私もそういう議論をしたいところでありますけれども、最初に尾辻先生の方からお話がありました現在の衆議院から回ってきた修正案の欠陥をどう直すかという中で、やはり子供に対する配慮、それから低所得者、高齢の低所得者に対する配慮、これは非常に大事だと思います。私も前々回、三日の日ですが、いわゆる低所得者対策の問題について質疑を行いましたが、きょうはそれをもうちょっと深めていきたいと思います。  一般的に言いますと、自己負担をふやすと当然受診が抑制される。これは別に医療世界だけではなく、タクシーが値上げすると利用者が減る、しかしまたもとに戻るということは、これは医療世界でも過去ずっと繰り返されてきたわけで、これは単に一時的なものだと思いますね。やはり、ある程度の所得のある、あるいは資産のある高齢者は何とかしてやっていくわけですね。  三日の日に私の方で配付しました資料を見ましても、例えば高齢夫婦の無職世帯、この人たちは実収入の九割がほとんど年金に頼っているわけでありますけれども、支出を見ますと四分の一、二四%余りが食料ですね、食べるものにかかると。その次が交際費で二八・七%、次が教養娯楽費で一一・四%、次が住居費、次が交通・通信費、そして光熱・水道費で、七番目にやっと保健医療費というのは出てくるんですね。それ以下はその他でくくられているんですよ。ということは、高齢世帯が懐から支出しているお金の大ぐくりで集計できるものでは保健医療費が実は一番少ないという実態があるんですね。それだけ今は無料化以降の高齢者に対する配慮、優遇策で負担が少なくて済んでいるわけですね。ところが、この保健医療費のうち実際に医療機関の窓口で払うのはその半分ぐらいで、あとはやっぱり売り薬を買ったり、はり、マッサージに行ったり、そういうので使われている。  だから、医療費の負担がふえても年金がちゃんともらえている人や貯蓄のある人はこの支出の配分で切り抜けていく。これは日本の過去の歴史だけではなく世界各国で言われていることで、だからそういう意味でやっぱり応分の負担というのをお年寄りに求めることについては当然のことだし、私は定率で求めるべきだと思って前々からそう主張しております。  しかし、問題は、ぎりぎりで生活している人、食費の次ぐらいに保健医療費が来るような人、交際費も教養娯楽費も支出できないようなそういう低所得の人にとっては自己負担がふえるというのは非常に大変なことでありまして、これは本当にかかりたくてもかかれなくなるわけですね。結果的に重症化してからかかるということになると、本人が大変なだけではなく、医療費もかえってふえるということは例えばアメリカの低所得者層の分析でも出ているわけであります。  ですから、低所得者に対する配慮というのは非常に大事だというふうに思いまして、けさの尾辻先生質疑をさらに深める形でいきたいんですが、実はけさほど参考までに配られた修正案らしきものを見ましても、このところに何と書いてあるかといいますと、こう書いてあるんですね。「老齢福祉年金の受給者であって、」ということなんですね。  それで、三日の質疑のときにも厚生省の方からお答えがありました。現在、老人に対して医療費の支払いの上でどういう対策が立てられているかというと、例えば一つは高額療養費制度がありますね。高額療養費制度は、今六万三千六百円を超えるものはだれしも日本人は払わなくていいわけですね。これが非常に助かっているわけですが、それも低所得者になると三万五千四百円まででいいというのがあります。それからもう一つが、今度千円になろうとしている入院時の一部負担、今は一日七百十円ですが、これについても三百円という軽減措置がある。これも低所得者対策。それからもう一つ、前回改正のときから食事療養費が一部、材料費と申しますか、自己負担になったわけですが、この一日七百六十円の食事代の負担も六百五十円とか五百円とか三百円とか状況に応じて軽減されるわけでありますけれども、こういうときに出てくる低所得者という判断が、まず前提条件が老齢福祉年金の受給者ということなんですね。  そこで、厚生省お尋ねしたいんですが、この老齢福祉年金というのは昭和三十六年、一九六一年に国民保険制度ができたときに、その当時五十歳を超える人、つまり五十歳を超えるんだからもうそれから幾ら保険料を払っても年金をもらえる資格が得られないわけですね。ですから、当時五十歳を超えていた人はもう年金は国費で見ましょうということにしたのがそうだと思うんですが、この老齢福祉年金の受給権者、受ける権利のある人と現に受けている人は何人いるのか、また月額あるいは年額は幾らか、それを最初にお答えいただきたいと思います。
  107. 真野章

    政府委員(真野章君) 平成七年度末現在におきます老齢福祉年金の受給権者は五十三万人でございます。このうち、年金の支給が全額停止となっている方を除きました実際に年金を受けておられる方は四十万人でございます。平成七年度末現在におきます老齢福祉年金の月額は三万三千五百三十三円でございますが、受給者の平均支給月額につきましては、他の所得があることによります一部支給停止がございますことから、三万一千六百四十円ということになっております。
  108. 今井澄

    今井澄君 今のような実態で、受ける権利のある人が約五十三万人、受けている人が四十万人ということですが、それは先ほども言いましたように、昭和三十六年に五十歳以上だった者ということは、ことしで八十六歳以上の者なんですよね。年々減っていますよね。年間に十万人近く減っているんじゃないですか、受給権者が。つまり、どんどん高齢化して亡くなっていく。この老齢福祉年金受給者は、率直に申しましてだんだん日本から数が少なくなって消えていく世代なんですね。その最低年齢が八十六歳のはずなんですね。そういうことだと思うんですけれども、要するに八十六歳以上の人で、だんだん数が減る人だけが低所得の対象になっていると思うんですけれども、それはいかがですか。
  109. 真野章

    政府委員(真野章君) 原則は先生が今おっしゃられました明治四十四年四月一日以前に生まれた方、すなわち皆年金制度になりました昭和三十六年の四月一日におきまして五十歳を超える者が七十歳に達したときに老齢福祉年金が出るというのが本体でございますが、若干の経過措置がございまして、明治四十四年の四月二日から大正五年の四月一日までに生まれた方で、国民年金の保険料納付済み期間が一年未満であり、かっこの保険料納付済み期間と保険料の免除期間を合算した期間がその方の生年月日に応じまして四年一月から七年一月以上ある者が七十歳に達したときに老齢福祉年金が出るということになっております。  したがいまして、前段で申し上げました方が大部分でございますが、大正五年四月一日という方の層もございまして、平成七年の八月時点で見ますと八十四歳以下の方も四・四%おられると。ただ、逆数の九五・六%は八十五歳以上の方だということでございます。
  110. 今井澄

    今井澄君 したがって、今、低所得者はこの老齢福祉年金をもらっている人に限ると、八十五歳にならない人で六十五歳以上あるいは七十歳以上の高齢者というのは一切低所得者の範囲から外されちゃうんですよ。じゃ、その世代に低所得者がいないのかという問題なんですね。  そこでお尋ねしたいのですけれども、八十五歳以下で、あるいは下は六十五歳以上ということにしましょう。そういう高齢者の中で、いわゆる国民年金と申しますか、老齢年金と言えばいいですかね、基礎年金と言ってもいいです。昭和六十一年に改正されて以降、一階部分の年金、六万何がしの年金をもらえる権利を持っている受給権者は一体全部で何人いるのか。つまり、この年齢層の人が全部で何人いるのかということですね。その中で基礎年金、老齢年金しかもらっていない人というのが何人いるのか、それをお答えくださ  い。
  111. 真野章

    政府委員(真野章君) 平成七年十月一日現在の六十五歳以上八十五歳未満の人口は千六百六十八万人でございます。そのうち、国民年金の老齢年金だけをもらっている方、これは正確には判明をいたしておりません。実は共済との関係がはっきりいたしませんで、厚生年金はもらっていないという方ははっきりいたしておりますが、これが平成七年度末現在で六百九十六万人ということでございます。
  112. 今井澄

    今井澄君 今、六百九十六万人ということですか。厚生省からいただいた方の数字では、これは八百二万人とかいう数字をいただいたように思うんですけれども、違いますか。
  113. 真野章

    政府委員(真野章君) 八百二万人というのは六十歳以上全体を含めまして申し上げたわけでございます。
  114. 今井澄

    今井澄君 そうすると、約七百万人がそういう老齢年金しかもらっていない。この老齢年金というのは満額で月六万五千円ちょっとということになるわけですね。これは満額もらったとして六万五千幾らということになりますけれども、実際にもらっている人たちは例えば二万円しかもらっていない人とか三万円しかもらっていない人、いろいろいると思うんですね、条件によって。  それで、ちょうど老齢福祉年金が三万三千五百三十三円ですからそれをちょっと低目に見て、三万円以下しかもらっていない人は一体この七百万人のうちでどのぐらいおりますか。
  115. 真野章

    政府委員(真野章君) ちょっと三万円というきっちりした数字は、今の老齢福祉年金の三万三千五百三十三円という数字、これも若干統計的数字処理をいたしておりますが、先ほど先生指摘のとおり、六十五歳未満を含みます全体、国民年金の老齢年金だけをもらっているであろうと思われる方が六十五歳未満を含めまして全体で八百二万人でございますが、このうち三万三千五百三十三円を下回る方は約二百六十万人、三三%程度と推計をいたしております。  ただ、この場合には、本人の希望によりまして年金の繰り上げ支給をして減額されているという方が入っておりますので、六十五歳から年金をもらっておられる方、本来の国民年金の老齢年金をもらっておられる方々で見ますと、三万三千五百三十三円を下回られる方は一二%程度ではないかというふうに推計をいたしております。
  116. 今井澄

    今井澄君 そうしますと、老齢年金しかもらっていない人で満額もらえていない、老齢福祉年金未満しかもらえていない人が二百六十万人ぐらいいると。ただし、その人の中には、本人の希望で六十五歳になる前に六十歳からもらえますから、確かに六万円はもらえないわけですね、下げられちゃう。本来、六十五歳になってからもらった人だけでも一二・二%、三十七万人ぐらいですね。そうすると、今、老齢福祉年金をもらっている八十六歳以上の人の数にほぼ匹敵するぐらいの人が老齢福祉年金以下しかもらえていないという高齢者が現にいるということだと思うんですね。  それで一方、老人医療は七十歳以上ですが、七十歳以上で無年金の人はどのぐらいいますか。
  117. 真野章

    政府委員(真野章君) 無年金の方は私ども業務統計はとっておりませんのではっきりいたしておりませんが、国民生活基礎調査というのが行われておりまして、これによりますと、平成七年におきまして七十歳以上で年金を受給していない方は七十歳以上人口の四%というふうに見込まれておりまして、その人口から推計をいたしますと、約四十七万人というふうに推計をいたしております。
  118. 今井澄

    今井澄君 そうしますと、今、低所得者対策ということで、例えばお薬の自己負担はそういう方たちは免除しようという案も出ているようですけれども、その対象者が今四十万人と。だけれども、その額未満しかもらっていない老齢年金だけの人が三十七万人、そのほかに無年金の人が四十七万人いると。もちろん、だからこの人たちが無年金だとか低年金だから暮らしていけないというわけではなくて、例えば大変豊かな家族に養われているとかあるいは財産をたくさん持っているとか、それはいろんな人がいるでしょうけれども考えてみると、それに倍する人々が無年金か年金が老齢福祉年金より少ないわけですよね。老齢福祉年金というのは、条件として昭和三十六年のときに五十歳を超えていた者に支給されたわけですから、この人たちは別に特別低所得だとか財産がないとか家族がないとか、そういう条件は一切ついていないんですよね。その中にもいろいろいるわけなんです。  そうすると、全くこれは同じような状況に置かれた八十五歳以下の高齢者が八十万人以上いるということなんですよ、厳密に見て。しかも、先ほど実はその老齢福祉年金未満しかもらっていない人が二百六十万人いると。だけれども、その中には本人の希望で早目にもらったから少ないのはしようがないというふうな、本人の責任だみたいな言い方がされましたけれども、それ以外の人だってこの二百六十万人の中にはいるはずなんですよ。今、老齢福祉年金受給者を低所得者と定義すれば、それに当たる人が百万人を超えるというふうに考えざるを得ないんだと思います。  そうなると、やっぱり今、高齢者の低所得者という定義は拡大しなければいけないだろうと思うんです。そうでないと、たまたま八十何歳以上の人だけがもらえて、七十歳から八十五歳あるいは六十五歳から八十五歳までの間の人は何も恩恵を受けられないということなるんですね。これは非常に問題がある、バランスを欠くのではないかと思います。  しかももう一つ、低所得者対策として前々回の委員会お答えいただきました。最初に私が御紹介した高額療養費の限度額が低いとか、入院時の一部負担を軽減してもらうとか、食事療養費を軽減してもらう、これはほとんど入院にかかわることなんですよね。高額療養費だって、外来で高額療養費制度にひっかかる人というのはそうはいない。ごく特異な人しかいない。入院するから高額療養費で救われるわけですね。  そうすると、今回、外来の負担をふやすと、しかも外来の薬剤の負担をふやすという改正があるとこれは大きな考え方の転換ですよね。これまではお年寄りはできるだけ低負担あるいは無料でやってきたのがだんだん負担がふえる。私は一般論としてそれはやむを得ないことだと思うんですね。一割負担とかはやむを得ないことだと。そういう流れに今大きく、高齢者の自己負担あるいは高齢者の経済状況についての把握も変わってきたとなりますと、一方で低所得者に対する対策も入院主体からやっぱり外来に対しても考慮しなければならないんじゃないかと思うんです。  例えば、何かのことでお薬が非常にかかってしまったと。どうしてもある高いお薬を飲まなければならないとか、少ない例であっても、やむを得ずたくさんの種類のお薬を飲まざるを得ないという人も中にはいる。それから、例えば今の日本医療体制でいうと、血圧は内科の先生にかかる。ところが、白内障は眼科の先生に行く。そして、腰が痛い、ひざが痛いというのは整形外科の先生に行く。日本の場合にはいわゆるかかりつけ医というか一般医というのは余り多くなくて、むしろ大学で専門をやってきた先生がその専門を中心に開業するというふうなこともあります。そうなると、一カ月五百円の最大四回二千円という、二千円負担がかかるたびにふえていくんですね。患者さんの病院集中はいけないと言うけれども病院にかかればこの三つの科を回っても一回で済んじゃうわけですね、二千円で済んじゃうというところにおかしなことがあるんです。  その医療提供体制の問題は別として、そうなりますと、例えば血圧で内科にかかって、白内障で眼科にかかって、腰痛で整形外科にかかってということになると、ひょっとすると最大二千円の三倍、六千円、その上に今度薬代が、種類がどうなるか、例えば二、三種類で済めばいいですけれども四、五種類ということになると、今の衆議院修正案でいくと七百円をそれぞれのところで払わざるを得ない。それも毎回、通うたびになんということになるとこれは一万円を超えるような負担も決してあり得ないことではないということになってくる。そうすると、例えば三万幾らしか年金をもらっていない人、そのほかに若干の収入があるかもしれないけれども、その人が外来通院でタクシー代もかかる、いろいろかかる上に一万円も医療費を負担するというのは非常にこれは大変なことになってくるんですね。  そういう時代に今なりつつあるということを考えると、この低所得者対策も、入院主体の高額療養費制度、食事療養費、入院時一部負担金から、今度は外来のこういう負担金についても何らかの形で上限を設ける、高額薬剤費制度とかあるいは高額多科受診制度とか、そういうふうなことを考える必要があると思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。
  119. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 高齢者の患者一部負担につきましてのお尋ねでございます。特に、低所得の場合のお尋ねでございますけれども、まず全体的には、おっしゃるように今後の高齢者の負担ということを考えました場合に、やはり相応の負担ということを一般論としては考えていかざるを得ないだろうということです。  ただ、今回の改正の場合には、全体水準といたしましてはまだ若人の水準の半分以下に今回もとどめて、しかも総体として言いますと、払いやすさという形から定額にとどめているという一般のまず負担の形をそういうふうにいたしております。そういう中でのいわば低所得者特例ということでございますから、従来の延長線上で、年金のいわば制度的制約によって老齢福祉年金しか受けられない方、そういった方々に絞っての低所得という形にいたしております。  したがいまして、今後これをさらに応益的な要素を入れた負担ということを考えました場合の低所得者対策ということにつきましては、先生お話しのようなことも踏まえまして、やはり別途の観点から考えていかなければならない要素はあるであろうというふうに思います。  そして、今、特に外来についてのお話でございました。外来につきましても、今回の場合には入院よりも引き上げ率として言えば確かに高うございますけれども、全体水準として言えば実効負担率八・九%ということで、若人の一割に比べましてまず半分以下の水準でございますし、そうした中で、それぞれの医療機関を変えて受診をされるということになればまたそれだけかかるという御議論はございますけれども、しかしいずれにしても四回を一つの限度という形、一日一医療機関四回までというようなことは一つの頭打ちの形としてはつくっております。  そういった形でのものでございますので、今回の一般の老人の通常の負担について、若人の負担よりも低い水準で、しかも定額を維持しているという前提の中での限度として言えば、外来についてもここらのところがお願いをいただけるぎりぎりのところではなかろうかというふうにお願いをいたしました。  ただし、それでも御議論の中で、外来についても薬剤についてはやはり若人と同じではぐあいが悪いのではないかという御議論が確かにございました。けさほども申しましたように、そういう御議論につきましては、これからこの御議論でどのような結論をこの委員会でお出しいただけますか、それを見守りまして対応していきたいというふうに考えております。
  120. 今井澄

    今井澄君 今の老人保健福祉局長さんのお答えは、従来のお答えから一歩前進したように私は受け取りましたので、これはできれば九月一日実施までに本当に低所得者に配慮をするとすれば老齢福祉年金受給者というだけでは不公平ではないかということについてぜひ手をつけていただきたいと思います。確かにまだ若人に比べれば負担の水準は低いし、定額だとは言っても明らかに定率負担へ、そして若人とある意味では負担を近づける方向に今行こうとしているわけですから、そういう流れの中で考えていただきたいんです。  そこで、実はそういう低年金の人たち、老齢福祉年金も含めてですけれども、老齢年金で非常に低額の人について、その人の生活の状況、例えば家族と同居している人がどのぐらいいるのか、本当にひとり暮らしの人がどうなのか、年金だけで生活している人がどうなのか、そういうふうな実態については、これは低所得者の調査というのはやったことがありますか。あるいは低年金者でもいいです。
  121. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今直接のお答えになるような調査がやられているかどうかという点については、確かに低額の年金受給者ということに着目をいたしまして、その方々の老人医療の受給実態という形で、そう銘打った、そういう調査は今日までのところはやってはございません。そういうデータはございません。  ただ、六十五歳以上の方のいる世帯の状況ということでの調査として言えば、御案内のとおり、国民生活基礎調査がございます。そうした中で、今お話のございましたような世帯、単独世帯であるとかあるいは核家族世帯がどうなっているか、あるいは三世代の世帯がどうなっているか、それから所得階級別の世帯の分布がどうなっているかという実態は、その国民生活基礎調査が一番権威あるものとしてございまして、それに準拠していろんなことを考えているということになります。
  122. 今井澄

    今井澄君 前回配った資料で、先ほど最初に引用しました食費が二五%、交際費が次でという高齢者世帯の支出ですね、これは実収入二十二万九千九百五十二円の老夫婦世帯なんですよね。そうすると、例えば実収入が数万か数万を超える、あるいは十万以下の低所得の高齢者は一体どういう支出構造なのか、こういうことをやっぱり調べてみないと、こういう平均値だけでお年寄りは金持ちだと言っていただけじゃだめだと思うんですね。こういう世帯からは私はいただいてもいいと思うんです、自己負担は。だけれども、やっぱりそこのところは十分調査していただきたいと思います。  そこで、今、老人保健福祉局長さんからお答えをいただいたわけですが、大臣からも改めて、老齢福祉年金受給者だけではなくてそれ以外の低年金者、無年金者も低所得者としての扱いを受けてしかるべきではないか、また特に医療における軽減措置、それは入院に着目した措置になっておりますが、今後こういった外来の負担もふえることになるとやはり外来についてもきめ細かい軽減措置を医療上やるべきだと思うんですが、大臣のお考えもお聞きしたいと思います。
  123. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 高齢者に対するいろんな調査を見ても、平均的な収入で見ますと若い世代と高齢者において大して遜色ない、余り違いがないという結果が出ておりますが、これからの国民保険制度を永続的に安定的に運営していくということを考えますと、世代間、若い世代と高齢者もお互いこの保険制度というものを支え合っていこうという観念から構築していかないと、公平感からいいましてなかなか難しい面もあると思います。  しかし、さはさりながら、これからの抜本改革案をまとめるに当たりましては、私は、低所得者に対する配慮をどのようにするか、これが大変重要だと思っています。これによっていかに多くの国民の理解を得られるかにかかっていると言っても過言ではない。そういう観点から抜本的な改革に取り組む必要があるのではないか、十分検討していかなきゃいけないと思っております。
  124. 今井澄

    今井澄君 ぜひよろしくお願いいたします。  私も何となく老齢福祉年金というと本当に年をとった気の毒な人に出している年金だと思ったら、そうじゃないんですね。たまたまある年齢で切っただけのことですので、ぜひお願いします。  あと二分ほどありますので、一言だけ午前中の質疑を聞いていてどうしても発言したくなったことがあるんです。  出来高払い制の欠点はもうわかっております、いい点もわかっておりますが、先ほどちょっと議論されましたが、定額払いにすると粗診粗療になるんじゃないか。もうこの病気の人は月幾らとか決まっているから手を抜くんじゃないか。ところが、これは医療現場を全然無視した単なる机上の空論でありまして、一たん患者さんを受けた医療機関は、医者は粗末なことはできないんですよね。  現にアメリカでもDRGという定額払いになっていまして、そういう心配がありますけれども、アメリカで粗診粗療になったという報告はないと思います。問題は、重い患者さんを引き受けると金がかかって困るから、重い患者さんを敬遠して軽い患者さんだけを入れてベッドをいっぱいにしておいて、重い患者さんが来ると断る、むしろそこに問題があるんですよね。  ですから、そういうことからいうと、私は定額払いを大胆に拡大していいと思うんです。定額払いをとっている国でも粗診粗療になったという事実はほとんどない、むしろ患者の選別が困るというふうに私は理解しておりますが、保険局長、いかがでしょうか。
  125. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 定額払いの問題点として指摘されるものということにおきましては、今、先生指摘のとおり重症の患者さんを敬遠しがちだと、これは言われる一つであります。それから、これは机上の空論ということになるとの御指摘でありますが、一般的にやはり粗診粗療になるおそれがあるということは言われております。
  126. 今井澄

    今井澄君 いや、そういう事実があったかどうか、アメリカのDRGで。私はほとんどないと聞いています。
  127. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 一件一件のその事実というのはあれでありますが、そういうようなおそれがあるということが指摘されていることもまた事実だと思います。
  128. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  前回、私は、健康保険の赤字の主要な原因の一つであります新薬シフトの解消、どうやったら新薬シフトを解消することができるかということについて質問をさせていただいたわけですけれども、きょうもその続きをさせていただきたいと思います。  六月五日、私の質問に対しまして、つまり私は、新薬シフトを解消していくのは原価に着目をして、そして薬価が決まっていくその過程をきちっと公開していくこと、このことがどうしても必要だということで原価の公表ということを質問いたしました。それに対しまして局長は、これまでの薬価については原価を公表することはできないけれども、これからは個別の値段の決め方についても製薬企業も納得と合意のもとに原価も出ていくというふうなことを答弁なさいました。これは非常に重要な答弁だというふうに受けとめております。  薬価というのは公定価格でもございますし、また普通の商品とは違いまして人の命を預かるもの、欠陥があれば薬害を起こしますし、使い方を間違えれば命を左右するものでもあります。この点で非常に厳密性が要求されます。しかも、製薬企業の収入の八割は国民保険料から支払われているわけですから、この点で薬価を決める際に原価に着目をしてきちっと決めていく。  その際には、適切な経費やマージンを考慮いたしまして、私たちは企業がもうけてはいけないというふうに言っているわけではありません。適正なマージンというのは取ってもいいわけでございますけれども、しかし今のように異常に高い薬価でもって異常に利益を得ているということについてはきちっとメスを入れる必要がある。このことをやれば、今回のような急激な国民負担増を求めなくても済むというのが私たちの主張でございます。  局長にお伺いいたしますけれども、こういう新薬シフトをきちっと改善していく、そうすれば国民負担をしなくてもいいということについてぜひ着手をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  129. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに、我が国の薬剤の医療費に占める割合が非常に高いという中で高薬価の新薬にシフトする、そういう傾向があるというふうに指摘されておるわけであります。  新薬シフトというのはなぜ起こるのか、やはりそこのところをきちっと見きわめていく必要があるわけでありますが、その原因として言われておりますのは、一つには処方する医師のビヘービアといいますか、そういった面によるところが一つある、要するに最新の薬というものを使いたがるというのが言われております。それからもう一つ、これが現在の薬価基準制度の大きな問題点でありますけれども、いわゆる薬価差、これがあるために高薬価の新薬の方にどうしてもシフトをしがちであるというふうに言われておるわけでありまして、そういった意味では現行公定価格を定めております薬価基準、これを抜本的に見直していくということが新薬シフトというものを是正する一つの手段であろうというふうに考えておりまして、私どもとしましてもそういった意味では新薬シフトの是正ということは必要であるというふうに考えております。  そういう面で、根本的に薬価基準制度あり方そのもの見直し、そして薬価差のない仕組みというものを採用していくというふうに考えておりますし、その際における薬価透明性、これは確保する必要がありますから、そういう点について十分配慮した上で新しい方策というものを考えたい、このように考えております。
  130. 西山登紀子

    西山登紀子君 お医者さんが新薬を使い過ぎるというふうな御答弁だったと思うんですけれども、問題はそこにあるんじゃないんですね。新薬シフトというのは、厚生省がいわゆる製薬企業とこれは癒着というふうにも国民が言っているわけですけれども、製薬企業の言いなりになって高い薬価を決めてきた、国際的に見ても道理がない高い高い薬価を決めているし、また国内的にも後発品に比べれば先発品が必ず二・五倍の高値がついているというような薬価を決めてきた、そこに私は問題があるというふうに思うわけです。  それで、局長は四月二十五日の衆議院の答弁のところで、我が党の児玉議員の質問に対しましてこういうふうに述べていらっしゃるんですね。例えば、非常に今の薬価基準に対して不透明感が強いというふうに受け取られていると思う、これを透明性を高めるためには、フランスのように二つの委員会をきちっとセットしてそれでチェックするとか、そういった一定の透明性を高めるような仕組みをさらにつくっていくということでもない限り、透明性の確保はなかなかできないと思いますと答弁をされて、さらに続けて、公定価格を決めながら、そういうふうなやり方も方法論としては私はあると思うということで、フランスの方式に大変着目をした御意見もあります。  確かにフランスは公定価格制度を採用しておりまして、そこでは保険給付の対象となる薬というのはほかの常用生活物資と同じように価格計算基準に従って個別に原価計算がされています。原材料の原価と直接製造過程の労務費を詳細に積み上げていって、一定のマージンを加え、研究費も加え、管理費も加え、そして販売価格を決めるという仕組みになっていて、しかもそのプロセスを公開しているということですけれども、こうしたフランスのシステムを研究してみるべきではありませんか。
  131. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私どもフランスのシステムというものも十分研究をいたしております。そういった意味では、公定価格を定めて、一定の委員会なり透明性のあるチェックシステムをそこに入れることによって薬価を決めていくというのも一つのやり方であるというふうに私は思います。  ただ、我々はやはりこういつた薬の値段について考える場合に、薬のマーケットの状況なりあるいは医薬品産業という供給の側の実態、こういったものも考慮する必要はあるわけでありまして、あらゆる品目について同じやり方がいいということで考えているわけではありません。  我が国における今の医薬品の供給状況あるいは国際的な競争力を今後高めていかなきやならない等々のことを考えていった場合にどういうやり方が一番いいかということになりますと、公定価格を定めるということよりもむしろ市場取引の実勢というものを踏まえた価格の形成、それにのっとって医療保険でどこまで償還すべきかという考え方、これも一つの方法だろうというふうに思っておるわけであります。  ただ、その際には当然償還基準というものを定めることになります。これは公定価格ではございませんけれども、この償還価格を設定するための透明性のある委員会なり、そういったものは必要だろうというふうに考えておりますが、我々一つ方向として考えておりますのは、むしろ市場取引の実勢というものを基礎にした薬価の定め方ということが好ましいのではないかという方向で検討しております。
  132. 西山登紀子

    西山登紀子君 薬価の問題を論ずる場合に、やはり医療費の三割、八兆円を占めている薬剤費、これを何とかして低めて、そして国民に負担増をしなくてもいいようにというところでどうやってメスを入れるか、この点が非常に肝心だと思うんですけれども、今の局長の御答弁はどうしても企業寄りといいますか、そういう御答弁ではないかなと私は感じました。  それで、フランスも研究しているとおっしゃるんですけれども厚生省が非常に熱心なのはドイツ参照価格制ですね。  先日の公聴会で大阪の保険医協会の細川公述人はこういうふうに述べていらっしゃいます。今直接薬価を下げる手段をとらないで、今後の薬価制度のあり方として薬価基準を廃止し自由価格制とすることや参照価格制導入などが有力な選択肢として挙げられていますが、これは率直に言って問題のすりかえです、こういうふうに厳しく公述をされたわけですが、私もそうではないかと思います。  この五カ月間、国会の中で新薬シフトの問題についてはほぼ共通の認識になってまいりましたし、国民の常識というふうにもこの間なってきたように思うわけですけれども、この新薬シフトを解消する上でドイツをいろいろ例にされておりますけれども参照価格制、これを導入すれば新薬シフトを解消できるのか、薬剤費が減っていくのかという問題です。  私も少し勉強をしてみましたけれども、このドイツ参照価格制の対象になっている薬というのはどんな薬かといいますと、特許が切れて後発品が登場した薬品を中心にして、いろんな類似薬効とか類似成分とかでゾーニングをしてグルーピングをして対象薬品を決めているわけですけれどもドイツでは参照価格の対象薬は全医薬品の中のどのくらいでしょうか、パーセンテージ。
  133. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) その前にまずちょっとお断りしておかなきゃいけませんのは、我が国においてドイツと同じやり方を採用したいというふうに考えているわけではないということ、ここはまず大前提でありますので……
  134. 西山登紀子

    西山登紀子君 それはわかっていますよ。
  135. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) そこで、御質問についてお答えしますと、ドイツで採用しております参照価格の対象品目、この売上額に占める割合ということでありますが、参照価格の設定をしております事務局、そこが、これは企業疾病金庫連邦連合会というところでありますが、この調査によりますと、一九九六年七月現在で約六割ということでございます。
  136. 西山登紀子

    西山登紀子君 いろんなデータもありますが、売上高で、シェアで三八%とか、そういうふうな数字もあるんですけれども、六割ですか。
  137. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 六割。
  138. 西山登紀子

    西山登紀子君 それで、次にお伺いしたいんですけれども、もちろんドイツ参照価格制度をそのまま日本に当てはめようというふうに考えていると私も思っておりません。しかし、ドイツ参照価格制というものを熱心に研究をしていらっしゃる。参照価格制というものを何とか次に、今の薬価基準制度を廃止した後に入れようというふうな研究を厚生省がしているということだと思いますので、それでドイツの場合はどうなのかということを私も勉強してみたのでお伺いをしているわけです。  次に、ドイツ参照価格制の対象とならない薬があるんだと。それはワクチン、それから薬局製剤、三つ目が既存薬より有効性、または安全性にまさることが示された特許期間の処方薬というふうになっていて、三つのものは参照価格の対象にならないんですね。つまり、ドイツで言う既存薬より有効性があり安全性があるというのは新薬なんですね。この新薬というのは参照価格の対象にはならない、そういうことではないでしょうか。ドイツでは新薬は参照価格の別枠だと。これはどうですか、そのとおりですか。
  139. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ドイツでは特許の医薬品については参照価格の対象外ということでありますから、したがって特許の医薬品である新薬、これは参照価格の対象外になります。
  140. 西山登紀子

    西山登紀子君 次に、仮にドイツのやり方によった場合、日本のいわゆるゾロ新というのは参照価格の枠外になる、新薬だから適用されないという、そういうことになりますか。
  141. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ドイツでは特許期間中の医薬品ということでやっておりますから、新規性のあるなしにかかわらず、いかなる医薬品であっても特許期間中の医薬品というのは参照価格の対象外というふうに承知しております。
  142. 西山登紀子

    西山登紀子君 そのドイツの参照価格から外された新薬というものは保険薬から外されるのでしょうか。
  143. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) いわゆる参照価格制というのは一定の償還価格を設定するその価格基準でありますから、そこでこれの対象外ということはどういうことかといいますと、ドイツの場合は医薬分業でありますが、薬局の購入価格全額が保険償還されるということになります。
  144. 西山登紀子

    西山登紀子君 ということであります。つまり、参照価格の対象にされるお薬と参照価格の対象から外されるお薬とがあるわけですね。参照価格から外されるお薬というのは、さっき言ったようなワクチンだとか三つあって、その中で私は特に注目したいのはいわゆる新薬です。特許期間をきちっと持った新薬、それは参照価格の対象から外されてしまうと。そして、外されたその薬というのは保険薬で全額が償還されることになるというわけですよね。  そうなりますと、仮にドイツのこの制度日本に当てはめた場合、参照価格の網のかかる薬と、それから網のかからない薬の割合というのはどれほどになるでしょうか。
  145. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 何かもう日本でも参照価格が採用されたというような感じを受けてしまいますが、そこは御質問にお答えしますと、まず一点、現在の薬価基準制度薬価基準に収載されている医薬品についてどれが特許期間中のものか、そういう格好での調査はございませんので、そういった意味ドイツと比べた場合、正確な比較をすることが難しいということをまずお許しいただきたいと思います。  ただ、ドイツにおける特許期間中の新薬品、これを我が国薬価基準に収載、我が国の場合六年間特許期間がありますが、そういった意味で、我が国薬価基準に収載された後六年間、要するに最近六年間ということでありますが、これを仮に新薬というふうに置きかえて計算してみますと、平成五年の時点において収載後六年間の新薬の使用頻度、これが約三割ということでございます。
  146. 西山登紀子

    西山登紀子君 結局、約三割ということですよね。ところが、十年間、九年収載というんでしょうか、その薬の割合でいくと平成五年度で五五%というわけですから日本はいかに新薬が多いかということがわかると思うんです。  さっき網のかかる部分はまだおっしゃっていませんね。かからない部分はおっしゃったけれども、かかる部分、つまりゼネリックだとかそういう部分はおっしゃっていませんね。まあいいです。次に移ります。  つまり、私が心配するのは、いわゆる参照価格制が対象にしないゾロ新の価格は、仮にドイツ型をそのまま日本に当てはめた場合ですが、全額が保険の償還払いとなるということになりますと、結局その部分は大手製薬メーカーの言いなりの価格保険で償還するということになるんじゃないでしょうか。そうなると、結局、市場を独占している大手製薬メーカーの価格は上がる一方で、薬剤費、つまり保険で払う薬剤費部分というのは下がる保証がないというふうになるんじゃないでしょうか。仮に当てはめた場合ですよ。
  147. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、製薬企業の言いなりということでありませんで、医療機関購入価格であるというところ、そこはちょっとまず一点押さえておいていただきたいのであります。  そこで、ドイツの場合、これはドイツの弁明をしてもしようがないのでありますが、ドイツで言われておりますのは、高どまりするんじゃないかというお話との絡みだと思いますけれども薬剤費に対してはドイツは総額予算制というのが採用されておりますので、あらかじめ決められた予算額を薬剤費全体で支出が超えた場合には保険医協会、それから製薬メーカーがそれぞれ超過負担を負う仕組みになっておるというふうな、そういったような仕組み等が導入されておりまして、御指摘のような懸念がないようなことをそれぞれやはり工夫して考えております。  我が国においてどういう形で新しい方式というものを導入するか、これはこれからの課題でありますけれども、御指摘のような弊害が起きないような仕組みというものをやはりきちっとビルトインしていかなければいけないというふうに考えております。
  148. 西山登紀子

    西山登紀子君 つまり、参照価格の対象から外れた部分は全額が保険で払われるということになりますと、日本の場合はその部分のシェアが非常に大きいと、今も局長が言われたように三割、九年収載薬でいえは五五%のシュアを持っているその部分が丸っぽ保険で払われる、全額償還されるというふうになれば、これはもう大手製薬メーカーの言いなりに、むしろ今の保険から薬剤費をどんどん払わなければいけないという事態になるんじゃないか、これは一つの問題であるということだと思います。  それから、特に今ドイツではこの参照価格導入した後で製薬メーカーの方が参照価格でこうむった損失をむしろ補うためにゾロ新の価格を引き上げていく、こういう事態が生まれているということを厚生省からいただいた資料で知りましたけれども、これでは日本の新薬シフトと同じじゃないですか。
  149. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まことに申しわけないんですが、厚生省の資料というのはちょっと私、今手元に持っておりませんけれども、今御指摘のような弊害が仮に日本でも起こり得ることが予想されるとするならば、それは当然その歯どめなりというものを工夫していきたいと思っております。
  150. 西山登紀子

    西山登紀子君 大変その点は私は問題だというふうに思うわけですね。  それで、参照価格というのは、ドイツの例で見ますと、先発品の最高価格よりも低く、それから後発品の、ゼネリックの最低価格よりも高く決められているわけですが、普通は最低価格に近く決められているというふうに聞いておりますけれども、しかしこの参照価格よりも超えた価格の分は患者負担、患者さんが払わなければならないということになるわけです。そうなりますと、この参照価格の基準、つまり一つのバーをどこに設定するかによって患者負担がふえたり少なくなったり、こういうことになるわけですね。
  151. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさにそのとおりでございます。
  152. 西山登紀子

    西山登紀子君 その場合に、このバーを、基準を一体だれがどのようにして決めるのかということが問題であります。  ある方に聞きますと、今の保険薬辞典、いわゆる俗名これは赤本というふうに言っているそうですけれども、この参照価格というのは、その赤本の、今の薬辞典の表紙を変えるだけのものじゃないかというような御意見もあるわけですね。もちろん価格を決めるというのと、それから保険で払われる基準を決めるというその違いはあったとしても、保険ですから国民皆さん保険料をそれに充てるということになれば参照価格というのはきちっとしたものを決めなければいけない、基準を決めるというこの作業というのは非常にこれまた問題であります。  その参照価格というのは、ドイツの場合にはだれがどのようにして決めているのでしょうか。
  153. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ドイツの参照価格の設定の手続でありますが、まず連邦の保険医協会の代表、それから連邦の疾病金庫、これは保険者でありますけれども、この代表から構成されます連邦薬剤委員会というものがございます。そこで医学、薬学の専門家、それから医薬品の製造業者、それから薬剤師等から意見を聞いた上で同一参照価格を設定するために同一成分等に着目した医薬品のグループ分けをまず行うということでございます。  それからその次に、連邦の疾病金庫の代表が医薬品の用量単位あるいは包装単位、こういったものを考慮しながら、同一グループに属する医薬品の市場取引価格、これをもとにしまして統計的に処理して参照価格というものを算出する。医学、薬学の専門家、それから医薬品製造業者、それから薬剤師等から意見を聞いた上で最終的に決定をする、こういうふうなことで、この参照価格というのは年一回調査をし、物価の上昇率なども参考にしながら適正に修正を行う、このような決め方をドイツでは行っております。
  154. 西山登紀子

    西山登紀子君 そのように参照価格を決めるにはプロセスがあるわけですけれども、仮に参照価格制日本導入するという場合にも、やはり今の薬価基準を決めているようなプロセスの公開、情報の公開、それから原価に注目したそのバーの設定ということが同じように、今の薬価基準に対して国民が疑問に思っている、その点は同じようにやはり参照価格制についても国民は疑問に思う点だろうと。その点、やはり公開するなり透明化をしなければ、参照価格というのは一体だれがどんな基準で決めたのかと。あるときにはここに決まり、あるときにはここに決まりということになるじゃないかということで、私はバーの設定というのは非常に問題があるだろうなというふうに思いますね。  バーが低く決められた場合には、それを超える部分は全部患者負担ということになっていくわけですからこれはもう非常に、今、薬価基準で三割負担、一割負担というふうになっているわけですが、この参照価格のバーの設定によっては何割を国民が負担するのかということがばらばらになつてしまうというようなことにもなりかねないんじゃないかなというふうに思うわけですね。  最後に、大臣に御質問したいわけですけれども、この間ずっとこの医療保険の赤字の主要な原因というのは新薬のシフトであり、国際的にも非常な高薬価、そして国内的にも大手製薬メーカーの先発品に非常な高値をずっと保証している、ここのところにきちっとメスを入れるべきだということを繰り返し私たちは主張してまいりましたし、大臣もその点については新薬シフトをお認めになっているわけですけれども、しかしその解決の仕方が、薬価基準を全部外してしまうということで、むしろ問題になっているそのところを本当にすりかえているというふうに私は思えるわけなんですね。  東京大学の醍醐先生という方がこんなふうに言っていらっしゃいます。「高薬価、とくに、成分を少し変えただけの新薬に高い薬価がつく薬価制度によって、医薬品メーカーは高収益を持続してきた。この現実にメスを入れない制度改革では抜本改革とならないのではないか。」と、参照価格制導入するに先立って、「現在の高薬価にメスを入れておかなければ、特定の薬剤の「保険はずし」による患者負担増をもたらすだけとなりかねない。」と、このような指摘もされているわけであります。薬価基準を廃止することによって、それで国民の薬剤に対する高負担がなくなるのかということではないだろうと思います。  今なすべきことは、個々の薬品の原価に着目をして公正に薬価を下げること、新薬シフトを解消すること、そして薬価決定のプロセスを原価の公開も含めてきちっと情報公開をしていただくこと、新薬の承認制度の透明化を図っていくこと、このことをまず何よりも迷わずに行うことではないかと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思  います。
  155. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今国会の議論におきましても、現状の薬価の決め方に問題があるという意見が非常に多かったわけです。そういう中で、今後総合的な抜本的な改革案の中では当然薬価基準を根本的に見直していく、その際には市場取引の実勢に見合った薬価の決め方を考えるということを原則にしていきたいんですが、当然一つの基準を決めなきゃなりません。その基準を決めるという際には透明性の確保、そして国民の理解の得られるような基準を設定しなきゃいかぬと、今までにはでき得なかった根本的な見直しをしていきたいと思います。
  156. 釘宮磐

    釘宮磐君 きょう午前中、尾辻委員の方から、今回の改正案というのは、ある意味では赤字をこのまま放置すれば保険制度そのものが崩壊してしまうと、したがってまずカンフル剤を打って、この保険制度を維持する中で抜本的な改革を進めるというのが今回の目的のように思えてならないんだがというような話がありましたが、私も全く同感でありまして、そういう意味から、尾辻委員もその辺の指摘があったんだろうと思うんですが、局長はあくまで抜本改革に向けての第一歩だというような答弁がございました。それで、私はこの抜本改革に向けての第一歩であるというそういう観点で、今回の特にこの薬価の問題、薬剤の問題についてその線でお聞きをしていきたいと思うんですが、まず今回提示されている薬剤の別途負担についてであります。  この点については衆議院において修正が行われたわけでありますが、その衆議院における薬剤負担額の算定というのは、この委員会でも随分その根拠について質問があったわけでありますが、どうも私どもにはぴんとこない、そういう感を持ったわけであります。私は、そういう中で、これを定率で行えば不公平感も起こらないし極めてわかりやすい。その際に、弱者、低所得者に対する配慮をやることこそが大事ではないかというようなことを指摘させていただいたわけであります。  そこで、もう一点お伺いをしたいんですが、もう一つ問題点となっている、今、西山委員からも指摘のあったいわゆる高薬価新薬シフト、これに対して今回の改正がどういうふうな効果をもたらすのか、その点についてお聞かせをいただきたい。  また、今回の修正によって長期投与が促進されるのではないかというような懸念もあるわけですが、これもきょうの朝の尾辻委員の質問の中にもありました。また、それに伴って再修正というような話もあるようでありますが、その点について見解を聞かせてください。
  157. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、衆議院における修正の考え方、算定根拠ということでございますけれども、これは私どもが承知しておりますのは、まず政府提案、これは一種類につき一日十五円ということでございましたけれども、種類がふえる都度、それからまた日数がふえるに従って二回掛け算をやらなきゃいけないというような問題がこれあり、実務上も非常に煩雑である、それからまた患者さんにもわかりにくい、こういう御批判を強く受けたわけであります。  そういった中で、衆議院において修正が行われ、この簡便化というような観点から一つ工夫が加えられたということでありまして、それがまさにゼロ区分を入れますと全体で四区分の形で種類分けが行われたと。一つが一種類の場合、二番目が二から三種類、三番目が四から五種類、それから四番目が六種類以上、こういうふうに分けられたわけであります。そして、一種類の場合には患者負担はゼロということでございまして……
  158. 釘宮磐

    釘宮磐君 局長、その辺はわかりますから。
  159. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) そういうふうな形で、平均的な投与日数と平均的な老人の薬剤の内服薬の単価というものを掛けて四百円、七百円、千円という格好にしたと、こういうふうに承知をしております。  そこで、高薬価シフトの問題でありますけれども、これは我が国における医療費に占める薬剤のシェアというものが何で下がらないのかということで、大きくは二つの理由があるというふうに考えておりまして、一つが薬剤の使用量が我が国の場合は多いということであります。それからもう一つが、やはり高薬価の新薬にシフトしているというこの二つの要因でありまして、学者の研究によりますと大体寄与率は半分半分ぐらいだと言われております。  そういった中で、政府原案はむしろ薬剤の多量使用ということについては一部負担が効果はあるだろう、その歯どめに役に立つであろうというふうに考えておるわけでありますが、高薬価シフトについては、これはその原因が何かということになりますと、やはり基本的には経済的な誘因としては薬価差というふうに言われております。  そういった意味で、この薬価差というもののないような薬価基準制度というものでない限り、やはりこの辺はなかなか歯どめが難しかろうというふうに私ども考えておりますし、また今後の抜本的な改革の中で薬価差のない制度というものを考えていこうということであります。  ただ、現行制度の中でそれでは少しでもそういうふうな歯どめができないものかということに着眼されてこの衆議院の修正というのが一点なされたというふうに私ども理解しておりますのは、一種類については患者負担を取らないというところであります。  これは現在、何種類出しても薬の値段が二百五円以下の場合、この場合については一種類と計算するという診療報酬の請求上の取り扱いをしておりまして、そうしますと比較的安価な薬というものを使って二百五円以下におさめるならばこれが一種類になりますから薬剤の負担がかからない、こういうことになるということが誘因となって高薬価シフトというものの歯どめに役立つのではないかということが盛り込まれたわけであります。その限りにおいては、考え方としては政府提案よりも財政効果はかなり縮減されますけれども、新薬シフトというものの一応歯どめというものにおいては工夫がなされたというふうに考えておるわけであります。  それから、長期投与の問題でありますが、修正案のここがもう一つ欠陥ではないか、問題点ではないかというふうに指摘されるゆえんでありますけれども、投与日数に関係ありませんで平均的な投与日数でやっておりますから、そういった意味では目いっぱい薬を出すことになるのではないかということが言われておりまして、これについては現行健康保険法に基づく療養担当規則で薬というのは際限なく出していいということになっておりませんで、原則として一回の処方について内服薬は十四日分、外用薬は七日分というのを限度とするということになっております。もちろん例外がございますけれども基本はこういうことであるというふうなことから、適正な指導あるいは適正なレセプトのチェックというものを行うことによってこの辺のところがみだりに流れるということにはならないという考え方で衆議院の修正案というのは構築されているというふうに考えております。  ただ、やはり日数に比例する格好の方が好ましいのではないかという御意見が今出ているわけでありまして、この辺のところが簡便化されましたけれども、そういった意味では必ずしも完璧たり得ないというところではないかと思います。
  160. 釘宮磐

    釘宮磐君 答弁は極力短くお願いをしたいと思うんです。今の答弁を聞きながら、きょう傍聴の方もたくさんおられますが、多分よくわからないのではないかなというふうに思うんです。  私は、今回の改正で服用時点が同時で服用回数が同じである薬剤の薬価合計額によって種類を算定することと、要するにもらった薬の合計金額が二百五円以下は無料だということなんですけれども、しかしこれが合計が二百五円以下であっても服用時点と服用回数が異なると自己負担額がふえていく。現場でそれを説明するというのは非常にわかりにくいし、やっぱり患者さんは何か損をしたような気がする。得をした人は余り得をしたとは言わないんですね。損をした人はやっぱりどうしても何か損をしたというような感覚が否めないのではないか。この辺が私は非常にわかりにくいというふうに思うんです。  薬剤の別途負担ということで、患者のコスト意識を喚起して薬剤使用の適正化を図ろうというのが今回の目的だというふうに言われているんですが、薬剤の処方というのは医者が行うわけでありまして、そういった意味ではその効果というのは患者には非常に理解しがたい。したがって、私は今回、何度も言いますが、定率でやるべきだったというふうに思うわけです。今回の定額負担の算定根拠を含めて非常に中途半端な感は否めない。したがって、私は今回がその抜本改革に向けての第一歩なのかということを特に言いたいわけであります。  そこで、ならば局長にお伺いしますけれども、これから抜本改革を行っていくわけでありますが、抜本改革が行われた後もこの薬剤の別途負担というのは続くんですか、その辺を聞かせてください。
  161. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 抜本的な改革案、これはまさに薬価基準制度そのものをどうするかという問題が一つあります。  これまで御議論いただいておりますような形で、いわゆるドイツで行われておりますような参照価格制のような形を採用するということになりますと、一定の水準を超える分については患者負担という格好になるわけでありまして、そういった中でさらに薬の別途一部負担ということをお願いすべきかどうかという問題があるわけでありまして、そういった意味ではこの薬価基準制度そのものをどういう形に新しい制度として直していくかというものとの絡みで考えていかなきゃいけないというふうに考えておりまして、この辺の取り扱いというものも含めて全体的に考えていかなきやならないと思っております。
  162. 釘宮磐

    釘宮磐君 私は、そういう意味緊急避難的な要素が強いのではないかなということを私自身の感想として言わせていただきたいと思います。  今回の改正で、私は今も指摘しましたけれども抜本改革と今回の改正案との関連性というのがいま一つ、何度も言うようですけれども、見えてこないんですけれども局長、もう一度この点について、抜本改革との関連について今回の薬剤も含めて今回のこの改正というものがどういう意図のもとに行われたのかということについて聞かせていただけませんか。
  163. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 先生のお考えからしますと、やはり抜本改革というものがゴールとしてあって、そしてそこに至る一つの道筋として一歩一歩それに関連した方向に進んでいくというのが、これがまさに第一歩というふうに考えるべきだろうというお考えだと思います。私もそういう考え方がごく当然の考え方だというふうに思っております。  今回のこの制度改革というのは、私ども考え方としては、あるいは抜本改革との関係でわかりにくいとおっしゃるかもしれませんが、言うなれば制度の抜本的な改革案というものをつくるというのはまさに本法案というものが成立したなら直ちに着手をしていくということでありますから、そういったことで考えますと、今回提案している内容そのものについて今後の抜本改革の内容に直結した考え方考えているわけではないわけでありまして、むしろ今後抜本的な改革を進める上においても現下の医療保険制度財政状況が非常に窮迫しておりますからこの運営の安定というものを図らないと抜本改革というものに進み得ないという意味でこの抜本改革を行う上においての第一歩であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  164. 釘宮磐

    釘宮磐君 よくわかりました。  我々は、この抜本改革をまずきっちりやるということが前提で今回衆議院では賛成をしたわけでありまして、そういう意味ではこれは保険制度そのものが崩壊してしまったのではもう元も子もなくなるわけですから、そういう意味での認識としては今の局長の答弁を聞いてやっとわかりました。  それで、参照価格制導入についてはきょうも随分出ましたし、西山委員からも参照価格制がもう導入されるかのようなというような話もありましたけれども、この中でちまっと私一つだけ気になるのでお伺いしたいんですが、先日、欧州の薬品工業会の会長さん、米国の方もちょうどおいでになって、私も今井先住もそれから水島先生も一緒にお会いしたんです。そのときにドイツの例をとって、結果的に価格が高どまりする傾向となっているというような話がありました。私もちょっと外国語はわかりませんので詳しく聞きませんでしたが、これはどういうことでそういうことが起こっているのかわかりますか、教えてください。
  165. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これはいろいろ言われておりまして、私どももいわゆる政府としての正式な調査等々で聞きますと、必ずしも高どまりしているという意見だけではありません。だからこの辺のところはどうもはっきりいたしませんけれども、ただ一般的に言われますのは、先ほどから出ておりますが、例えば特許期間中の薬については、これは言うなれば自由価格制のもとで、そして保険でそれを償還するという格好になっていますし、そういった中でバイイングパワーとの関係で値段の設定いかんによってはこれがなかなか下がらないということはあり得るのかなという気はいたします。  それからまた、問題は償還基準の決め方いかんになるわけでありますが、その償還基準より低い価格の薬があるとすると、これは自己負担はありませんから、そういった意味ではそれ以上下がるということはなかなか難しいというふうに言われておりますし、問題はどういうふうな形で薬のグルーピングをするか、その辺の決め方、そういったようなものにもまたよってくると思いますし、そういった意味ではいろんな見方があるんですけれども、私どもとしては、そういったようなドイツの現状というようなものも考慮しながら、やはり我が国に一番ふさわしいような仕組み導入したいと思っておりますけれども、そこら辺はいろいろな見方がございます。
  166. 釘宮磐

    釘宮磐君 介護保険制度についてもドイツの方で先行実施をして今いろんな問題点が出ていますが、同じように参照価格制を仮に一つ議論にのせるとすれば、我々とすればこのドイツの問題というのは非常に絶好の参考事例だろうと思いますし、この辺のところを十分分析しながら抜本改革に向けての議論を積み上げていっていただきたいというふうに思います。  それでは最後に、一つこういうデータが出ていましたのでこれについてちょっとお伺いをしたいと思うんです。  これはいわゆる医療費の高騰の中でよく言われる社会的入院についてでありますが、この社会的入院の解消支援を行うために各健保組合が実態調査をしておるんですね。これを全国総合健康保険組合協議会、全総協、ここがまとめて昨年の十二月に発表しております。  このデータを見て私も非常に興味深く思ったのでちょっと皆さんに御披露したいと思うんですが、これは平成七年の八月から平成八年の一月までで約半年間、新規入院した老健対象者を対象として行った調査なんですが、まず第一に社会的入院と思われる人、これが全体の三六・五%に及んでいたということであります。次に、入院者の病名の多さというのが指摘されております。平均病名数、要するに一人の人が幾つの病名を持っているかというと九・六、要するに社会的入院というふうに思われる人たちの中の平均の病名数というのは九・六あった。そのうち十六病名以上あった者が一五%になっている。病名が多いということは医療費も当然高くなるわけでありまして、一から四病名数のレセプトが一件当たり三十六万三千八百六十九円、これは特養あたりですと二十九万ですけれども、こういう人たちは当然介護を中心とした施設に入るべき人たちなんでしょうが、驚くことにその十六病名以上の人の金額は何と六十五万四千三百五十五円、一・八倍も高くなっているんですね。  この多病名者の診療内容を見ると、適正を欠くと思われるものが約四割に及んでいるということであります。いわゆる社会的入院状態でありながら入院者の検査、投薬、注射を行っていることが疑われるわけでありますけれども、結果的には介護施設に入っていれば歩けるようになる人が寝たきりというよりももう寝かせられているという状況というのがこの調査を見ても極めてわかる。  わずか半年の間にこれだけの数ですからそれ以前からずっと入院している人というのはもっとパーセンテージは高いのではないかなというふうに思うんですが、こういう調査結果を見てどういうふうに厚生省としてはお感じになりますか。
  167. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先生が今お挙げになりました全国総合健康保険組合協議会の調査結果、私どもも承知をいたしております。  先生、今お挙げになりましたいわゆる社会的入院と言われる三六・五%、内訳は先生今お挙げになりませんでしたけれども、在宅介護が可能と患われるもの、あるいは長期入院がやや疑問と思われるものというようなものがここに含まれているという結果であるというふうに思っております。  そして、そういういわゆる社会的入院の方に今お話ございましたように多病名、いわば適正受診という面から疑問を感ぜざるを得ないようなケースがあったということでございまして、根本的に解決をするためにはいわゆる社会的入院、つまり本来介護というサービスをするにふさわしい方がいわば治療という面での医療をお受けになって、それが長期にわたっているという状態をいかに解消していくか、そのことを通じて今お話のございましたような多病名、適正受診を欠くというような点についての対応も考えていくのがまず基本だろうと思います。  そういう意味におきましては、私ども繰り返しお願いをしておりますように、介護保険導入ということでお願いをいたしておりますのも一つ大きなその方向でございます。本来、介護サービスにふさわしい方がいわゆる医療保険の領域で長期にわたって一般病院に入っておられるという事態を介護保険導入することによっていかに解消していくか。また、それにあわせまして介護サービス基盤を在宅で、先ほどの中にも在宅で可能と思われるものが相当あるという結果が出ておりますから、在宅で受けとめるべき介護サービスをどう整えていくか。さらに、特別養護老人ホーム等の施設の介護サービスをいかに整えていくかということを一方においてきちっとやっていくと。  あわせまして、介護保険導入によりまして、いわば負担というような面におきましても、入所者の流れというものをそういう形に流れるような流れをつくっていくということが非常に大事だろうと思いますし、あわせまして診療報酬の面におきましても長期療養に対しまする診療報酬上の適正な評価ということからそういう流れをつくっていくというようなこと、もちろんそういったことを総合的に進めていくことは非常に大事だろうと思います。そういうことを総合的に進めることによりましていわゆる社会的入院というものの解消を図っていく。繰り返しになりますが、そのためにも介護保険導入というのはぜひ必要だというふうに私ども考えておるところでございます。  あわせまして、社会的入院以外にも、やはり今お挙げになった適正受診という面からすれば、これは総務庁からの指摘にもございますし、また私どもの調査の中にもそういうものが出てきていますから、そういった適正受診のための施策というものはあわせてやっていかなければならないであろうというふうに思います。
  168. 釘宮磐

    釘宮磐君 私がこの後言おうとしたことを局長がもう今言っていただきました。  やはり、介護保険というものを早く成立させなきゃいけないんだろうというふうに思います。あわせて、今回の議論の中でも随分出ましたが、こういった状況一つ一つ検証してみると、やはり包括払いというものが特に保険の部分では必要になってくるのだろうということを改めて感じた次第です。  それじゃ最後になりましたが、大臣、これまでにいろんな議論がなされてきました。特に私は大臣には小泉大臣だからやれるのではないかという期待感も実は持っているわけでありまして、これからいよいよ抜本改革を進めていくことになるんですが、いろんな利害がここでぶつかり合うわけでありまして、もはやもう利害調整はやるべきではない、本当にこの国の二十一世紀の医療保険制度というものがどうあるべきなのか、そのときに国民にのみ負担を課すようなそういうものであれば私はもうこの保険制度は終わってしまうというふうに思うわけであります。そういう意味では、大臣のよく言われております、何が何でもやるんだということでありますけれども、最後に大臣の決意をお伺いいたして私の質問を終わりたいと思います。
  169. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今までいろいろな委員の方から御意見を伺いまして、根本的な構造的な抜本改革をしなければこの医療保険制度ももたない。医療制度を今後より安定的に運営するためによりよき改善策を図れという声を受けましてこれから抜本的改革に取り組むわけでありますが、その際には、当然今日まで日本が目指してきた長生きできる社会にしょうというこの目標を達したということは、医療関係者初め国民の健康に対する関心、多くの方々の努力、そして医療制度の充実、それぞれが相まって今日まで、気がついてみたら世界で一番長生きできる国になったと思うんです。  そういう中で、一つの目標を達しますと当然よりよいもの、より高水準のものを求めます。現在いいと思われても中には弊害も出ております。今御指摘された点、多々あると思います。そういうことを踏まえまして、これからの抜本改革案に臨むに際しましては当然専門家の方の意見を伺います。医療関係者意見も伺います。利害関係者の意見も伺います。しかし、そういう方々の意見を聞いた上で、厚生省が三十年間にわたって、あれやれこれやれと言われながらも、なかなか抜本的、構造的改革に手をつけなかったじゃないかというこの御批判も受けて、むしろこういう時代に、あらゆる改革をしなければならないという時代に、厚生省独自の見識を発揮して案を出したらどうかという意見にこたえられる機会がめぐってきたということは、私は、重荷ではありますけれども考えてみれば千載一遇のチャンスだと思っております。  いろんな意見は来ますが、厚生省としては、今後これからの案は、単なる利害調整ではない、全国民のためにどういう医療制度がいいか、この一点に絞って改革案をまとめていきたいと思います。御理解と御協力をお願いしたいと思います。
  170. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時二十六分散会      —————・—————