○今井澄君 二十七日、二十九日に続いて三回目の
質疑をさせていただきたいと思います。
これまでは主に薬剤費の問題、薬価の問題、それから支払い
制度、出来高払い制の問題等についてやってまいりましたが、本日は
高齢者の経済
状況、特に
高齢者の低所得者への配慮の問題について
質疑を行いたいと思います。
その前に、今、菅野
先生からもいろいろ
質疑があった中で出てきたことでありますが、私
どもは衆議院段階で今回のもともとの政府案について少なくとも
抜本改革につながるような
方向にすべきであるということでいろいろ御
意見を申し上げて、その中で健康保険本人を二割
負担にするならば家族も三割
負担から二割
負担に引き下げる
方向とか、それから
老人の
負担を一割という
方向に近づけていくとするならば小児についても同じように今の外来三割
負担ではなく一割
負担に近づけていくというふうな
方向を
提案しましたし、また保険料の徴収についても月給からだけではなくボーナスからも徴収するという
方向で、月給の保険料率を上げるよりはボーナスの保険料率が今非常に低いわけですからそっちを上げていかなければ不公平だというふうなことを
提案しましたが、なかなか入れられないままに来ております。
前回の
質疑の中で、今、菅野
先生の
提案されたように、小児については特に薬剤の実効
負担率が五九%と非常に高くなるわけですから、六歳未満の薬剤費は無料にすべきであるということも御
提案いたしました。
なお、前回の答弁の中で明らかになってきたことで、現在の政府案あるいは修正案について大変おかしな点も出てきたと思います。それは実効
負担率、外来の場合は
老人が従来の四・四%から八・九%、倍に上がるということですね、それから若人の場合は二八・八%が二二・二%に上がる。一方、
入院を見てみますと、
老人はこれまでの六・六%が七・九%ということで、外来は二倍に実効
負担率が上がるのに、
老人の
入院については六・六から七・九と外来よりも実効
負担率がむしろ低くなるんですよね。
これは、先ほど
老人保健
福祉局長も言われましたように、今、
医療費のむだがどこにあるかということで、
老人の
医療費にむだがある、
老人の外来でお薬が出過ぎている。と同時に、
社会的入院、いろいろな条件はあるでしょうけれ
ども、
老人が
入院し過ぎであるということが問題になっているのに、外来は倍に上がるのに
入院の方は外来よりも低く抑えられている、上がり方が大変少ない、このこと自身にも私は今の修正案の非常に大きな
問題点があると思います。かといって、単に上げろという
意味を言っているんじゃないんです。
そこで問題は、低所得者への配慮に入る前に、今も議論になっておりました
高齢者には一体どのぐらいの
負担をしていただくのがいいのか、この議論をきちっとやることが実は
抜本改革につながると思うんですね。今度の案が
国民に評判が大変悪いのは当然だと思いますね。それは、さっき中島
先生の方から三万一両損といいますか、みんなそれぞれに痛みを感じながらやるならわかるけれ
ども、国の方はほかにむだ遣いをしておきながら国費は全然出さない、それで自己
負担だけ上げる、これは非常に問題だと思いますね。それから、
抜本改革の
方向がはっきり見えないままに自己
負担だけ上げる、これも問題だろうと思いますし、もう
一つは二倍、三倍と急激に上がることも大変これは問題だろうと思いますね。
しかし、その最後の問題については、私はやっぱり本当に
国民皆保険を守るために
医療保険財政を健全化する、そのためにむだをなくし
抜本改革をやるという場合には、今、菅野
先生からも言われましたように、これから
老人はどう位置づけたらいいのか、
負担はどうあるべきかという議論をきちっとやらなきやならないと思うんです。だから、二倍、三倍にふえるということだけを取り上げて私は
負担の問題を論ずるべきではないと思うんです。
さはさりながら、消費税が二%上がるわ、特別減税はなくなるわ、その上に
医療費まで上がればこれは大変なことですから激変緩和ということが必要だろうと思うんですよね。そういう
意味では、急激に上げることには反対ですが、ただ私は冷静に議論をすべきである、二倍、三倍に上がるから感情的にこれはひどいというだけではなく、
老人に一体どういうふうに
負担していただくのが適当かということを論ずるべきだと思うんです。
それで、私
どもは昨年十一月の
医療保険審議会の建議というものを基本的には支持いたします。
定率制の
負担ということであって、
老人をすぐ一割にするのがいいかどうかは別として、やっぱり定率で一割に近づけていくという
方向でいくべきだろうというふうに思いますし、薬も今度のような変な案ではなくて、薬代は診察代と別にして三割なら三割というふうにした方がやっぱりすっきりする、それは一貫してそう思ってはおります。しかし、激変緩和とかいろいろなことがありますので、現在の案をまるっきりだめだというふうに否定するつもりはありません。
その
医療保険審議会の建議の中でこう書いてありますね。「人口高齢化への適切な対応」、「
高齢者の置かれた経済
状況の変化等を踏まえ、」云々、「
老人保健
制度」云々があって、「
老人医療の費用
負担の
仕組みを見直す。」ということ。それで、「
高齢者の一部
負担については、
世代間の公平の
観点から、」「現役
世代の
負担と均衡を図る
方向で見直す。」。ただし、「その際、低所得の
高齢者については適切な配慮が必要である。」ということだと思います。
きょう、資料を配らせていただきましたが、この資料は参議院の
厚生委員会調査室及び衆議院の
厚生委員会調査室等につくっていただいた資料の中からコピーをしてきたものであります。確かに、一ページ目の上の①、「世帯主の年齢階級別にみた一世帯当たり・世帯人員一人当たり平均可処分所得金額」を見ますと、特に可処分所得を見ますと年齢層で余り違いがないんですね。五十代で少し高くなっておりますが、むしろ二十九歳以下あるいは三十代なんて非常に可処分所得が低い。それに比べれば六十五歳以上あるいは七十歳以上の可処分所得の方が一人当たりで高いという
現実が出ているということですね。
それからまた、めくっていただきますと、上の⑤、「世帯主の年齢階級別貯蓄」を見ますと、七十歳以上というのは最近のデータで二千三百万ぐらいの平均貯蓄を持っておられる。それに比べて三十歳未満の
方たちは四百万ぐらいの貯蓄しかないという、こういうこと。それで、きょうの資料にはありませんが、資産という面では高齢になるほど資産がある、持ち家比率は七十を超えると九〇%を超えるとかいうことですね。
そういう
意味から見ますと、私は、確かにかつてお年寄りは貧乏だった、お年寄りはかわいそうという時代とは明らかに違ってきていると思います。年金も成熟化して、最近年金をもらい始める方は二十万とか二十一万とかもらうようになっている。そうすると、特に今は若い人
たちが減る、若い人
たちは子育てだとか家のローンだとか、いろんなことで大変な
負担を
考えると、お年寄りはただがいいとか、今のような五%前後がいいとは言っていられないと思いますので、順次激変緩和をしながら上げていく方がいいと思います。
しかし問題は、これ平均値で出ているんですよね。これはたしか
厚生省が
国民生活基礎
調査というのをやられているわけで、これは全国の三万三千人ぐらいの方を調べているんですかね、三万三千人ぐらい調べておる。これは無作為抽出ですから、そうしますと当然人口の比例でやりますから、この三万三千人の
調査対象者のうちの約一割は東京ということになるわけですね。
私
ども地方で見ていますと、この平均値というのはなかなか信じられないわけですよ。お年寄りがみんな二千百五十万も二千三百万も貯金を持っているという
現実は、私は長野の田舎ですけれ
ども、なかなかそういう
現実は違うなと思うんですね。例えば東京で、私も東京に親戚がありますが、バブルで土地が上がって、それを売ったとかいろいろなことをして貯金をふやした人が現に私の身内にもいます。そういうことを
考えると、平均値で物を言うのはどうかということなんですね。
貯蓄なんかを調べてみても分布が随分違うんですね。お年寄りはかなり高額の貯蓄を、五〇%が一千八百万円以上でしたかね、だから確かに貯蓄を持っている人もたくさんいるんですが、四百万円以下の人もかなり多いということを
考えると、真に手を差し伸べるべき人はどこにいるかということを見なきゃならない。例えば、八十五歳以上の女性のひとり暮らしなんというのは、これはもう老齢
福祉年金ですね。三万幾らしかもらってなくて、自分の持ち家もない。借家だって、お年寄りに一人で住まわせておくと火事で心配だからというので余りアパートも貸してくれないということで住むところにも事欠くような、そういうふうな非常に大変な方もいる。それを押しなべてお年寄りは金持ちだと言ってはいけないだろうと思います。
それで、資料の②、これも
厚生省資料ですが、見てみますと、可処分所得が大体各年齢層同じだとは言いまずけれ
ども、やっぱりこの山はずれてくるんですよね。特に年間の可処分所得五十万円以下、あるいは五十万円から百万円のところを見ますと、やっぱり七十歳以上の人が多くなっている。ここのところを注目して、
高齢者の低所得のところに手を差し伸べなければならないだろうと思います。
それからまた、お年寄りの場合には、若い人と同じ可処分所得があったりあるいは同じ貯蓄を持っていても、若い人と決定的に違うのは将来の問題ですね。将来に対して希望、頑張って何年後にはよくなるという希望がないから不安だということもあるし、病気が多いということもあるし、その病気が慢性疾患だという若者と違う点もあるのでそこも考慮しないと、一概にお年寄りはこうやって若者と同じようになったから
負担はそのままでいいということにはならないと思うんですね。当然、
医療保険審議会も若者の
負担は二割、だけれ
ども老人はとりあえず一割というところの差ぐらいは
考えているんだろうと思います。
そこで、
高齢者の場合、一人当たりの可処分所得が幾ら以下を低所得者として
医療費の自己
負担についても、その他いろいろについても考慮すべきと
厚生省は
考えておりますか。