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1997-05-29 第140回国会 参議院 厚生委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十九日(木曜日)    午前九時三十一分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月二十八日     辞任         補欠選任      星野 朋市君     木暮 山人君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         上山 和人君     理 事                 尾辻 秀久君                 佐藤 静雄君                 和田 洋子君                 菅野  壽君     委 員                 大島 慶久君                 塩崎 恭久君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 南野知惠子君                 宮崎 秀樹君                 木暮 山人君                 水島  裕君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 釘宮  磐君    衆議院議員        修正案提出者   長勢 甚遠君    国務大臣        厚 生 大 臣  小泉純一郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省薬務局長  丸山 晴男君        厚生省社会・援        護局長      亀田 克彦君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁運営        部長       真野  章君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        大蔵省主局主        計官       丹呉 泰健君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十八日、星野朋市君が委員を辞任され、その補欠として木暮山人君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 上山和人

    委員長上山和人君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 大島慶久

    大島慶久君 おはようございます。自由民主党の大島慶久でございます。通告に従いまして質問をさせていただきたいと思います。  最初に、健康保険法等の一部改正に伴う診療報酬体系に関して質問いたします。  今般、与党医療保険制度改革協議会医療制度改革基本方針、これは平成九年の四月七日に提出されたと思いますが、「診療報酬体系」の項目には「出来高払い我が国の良質な医療に寄与してきたことを評価しつつ、いわゆる定額払いが有効に機能する医療領域においてそれを積極的に活用するとともに、出来高払いとの最善の組合せを目指す。」と述べております。このことは、先般の厚生委員会でも本会議場でも厚生大臣からたびたびお聞きしている事柄でございます。さらに続けて、「この場合、定額化が粗診粗療を招くことがないように配慮する。また、医科歯科との差異に配慮する。」と記述をされております。  この点、歯科診療患者一人一人の口腔歯科疾患診療行為にかかわることはもとよりでありますけれども、一人の口腔における三十二本の歯牙一本一本について、おのおの異なった治療内容とそれに対する技術評価によって成り立っていると思います。したがって、歯科診療医科における入院等定額払いに見られる疾患別単位あるいは月別単位などと同列に取り扱うのにはなじまない診療体系であります。もちろん、歯科診療においても、現在、包括的診療として歯科再診料、歯科口腔衛生指導料歯科即日充てん処置等診療行為実施をされております。  今後、診療報酬体系改定に当たっては、歯科診療実態医科における内科的行為ではなく、むしろ患者疾患に即応する外科的診療行為に近いことを配慮して体系改革が行われる必要があると考えられるわけでありますが、この点についての御見解をまずお伺いしたいと思います。
  5. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 診療報酬体系の抜本的な見直しに当たりましては、それぞれにやはり診療科特性というものがあるわけでありますから、それを踏まえて考えていく必要があるというふうに考えております。いずれにしても、質の高い医療をどう確保していくのかという観点から考えていくべきだろうと思っております。  そういった意味で、歯科につきましてもそれぞれの特性に十分配慮いたしまして、ただいまの御指摘の点も参考にさせていただきまして、今後それぞれの診療報酬体系の中における最善組み合わせという中で検討を進めていきたいというふうに考えております。
  6. 大島慶久

    大島慶久君 ありがとうございます。  一昨日の当委員会におきましても、我が党の田浦委員質問の中で、大臣答弁でありますけれども、今回のこういった改正もとよりでありますけれども実施時期の前にでも抜本的な改革ということで一生懸命努力をしていくんだと、こういうお言葉がございました。その中で、やはり今回の抜本的改正中身ということで診療報酬改定あるいは薬価基準改定老人保健改正なんかが大きな柱になるんだろうと、こういうお言葉でございました。私もそのとおりだと思います。そういう中で、これは診療報酬改正に伴う技術料是正といいますか、極めて深い関係にございます。今の局長答弁にございましたように、ぜひその最善組み合わせというものをよく配慮いただいて、これからの抜本改革を進めていただきたい。今、局長から答弁いただきましたけれども厚生大臣もそういう強い姿勢でぜひとも御理解を賜りながら進めていただきたいと重ねて要望しておきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  続きまして、国立長寿科学研究医療センター構想完遂ということに対しまして質問をいたしたいと思います。  私のふるさと愛知県が三十万坪の敷地を有する広大な「あいち健康の森」構想とともに、この地にぜひナショナルセンターを誘致したいと、こういう思いから熱心に推進を進めてきたところでございます。世界の著名な学者を名古屋に招き、国際長寿科学シンポジウムを開催する等、私どもも大いに期待をする構想でありました。二十一世紀日本はまさに前例のない世界一の超高齢化社会を迎えることは確実でありますし、未知の経験に対応するにはそれなりの十分な研究準備が必要となるわけであります。この構想完遂して得られると予想される成果は、日本世界に貢献できる極めて大きな意義があるはずであります。  長寿医療センター創設のため、国立療養所中部病院院長に就任された元鹿児島大学学長井形昭弘先生は、就任当時のごあいさつの中で、日本長寿問題は東西両ドイツの合併にも匹敵する国家的大事業と位置づけ、同センター長寿科学研究に関する世界情報基地に、さらには世界のすぐれた研究者が集まるメッカにしたいと、こういうふうに表明をされていたわけであります。ところが、このセンター日本の将来に果たす役割がまことに大きく重いにもかかわらず、国はこのスケールの大きなすばらしい構想から科学研究の四文字を抜き取った、単なると言っては御無礼かもしれませんけれども医療センター方向転換をしようとしているような気がしてならないわけであります。また、もう既にそういうふうにしてしまったのかもしれません。  そこで、お伺いをしたいわけでありますが、こういった構想のある程度の中身、そして本当に私が危惧しているような状況であるとすれば、このままでいいのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  7. 小林秀資

    政府委員小林秀資君) 今、先生がおただしになられました長寿科学研究センター構想につきましては、昭和六十二年九月に出されました、長寿科学研究組織検討会というところがつくられた報告書もとになっているものと思います。  この構想、大変すばらしい構想のことが書いてございます。厚生省ではこの構想を具体化するために、引き続き専門家による検討会を設けまして、「長寿科学研究振興のために 長寿科学研究センター設立に向けて」という、平成元年十一月にセンターの具体的な内容を取りまとめたところでございます。  そこに書かれていることを少し述べさせていただきますと、そこでは、まず一つ、そもそも長寿科学とは、高齢者長寿社会に関して、自然科学から人文科学に至る幅広い分野を総合的、学際的に研究するものだが、その中でも当面解決が必要な問題や将来に向かって今から取り組む必要性の高い課題を優先的に考えて、センター研究すべき内容を決定していくべきこと。二つ目に、構想に掲げられていた臨床医学研究推進するためには臨床施設が必要だが、新たな国立病院の設置が困難な状況下では、既存の施設の活用が現実的であること。三つ目に、長寿研究研究分野も幅広く、単一の組織においてすべての領域を担うのは現実的ではないことから、所外の研究にも重点を置いて研究費を配分し、大学、病院研究所等協力機関として共同研究を進めていくべきことといった方向が示されたところでございます。  こうした方向性に基づき、国立療養所中部病院を活用する形で長寿医療研究センター平成七年七月に設置いたしたところでございます。また、長寿医療研究センターで直接実施していない研究、例えば社会科学系研究とかそういうことがありますが、この社会科学系研究分野を含めた研究助成というのを別途行っておりまして、これらについても長寿医療研究センターと密接な連携を図りながら、総合的、学際的な研究推進されるよう、体制を確保しているところでございます。
  8. 大島慶久

    大島慶久君 今、局長の方から概略の御説明がございました。重複する点があるかもしれませんけれども、当初この構想に何が期待をされたのか、いま一度振り出しに戻って考え直してみていただきたいと思うわけであります。  この構想の原点は、昭和五十五年に日本学術会議高齢化に備えて国立老化老年病センター設立を国に勧告したことから始まっているわけであります。政府はこれを受けて、昭和天皇御在位六十年記念事業として長寿科学研究機構設立を決め、長寿科学研究組織検討会、当時の座長は杉村隆先生、元国立がんセンターの総長でございましたけれども、発足をしたわけであります。その結果、昭和六十二年、長寿科学研究医療センター構想が誕生じ、その実現のために長寿科学振興財団設立をされました。  ここで特筆すべき事柄として、平成二年、昭和天皇一周年祭に当たり、今上天皇、皇太后両陛下より、御遺産の中から特に五千万円がこの財団に御寄附をされたことであります。国民を愛された昭和天皇の御遺志を尊重し後世に引き継ぐためにも、国立長寿科学研究センター構想完遂というものを私はぜひとも果たしていただきたい。最初掲げられたような、本当に大きな夢があり、そしてこれから、私たちがこういう厚生委員会を含めてたびたび二十一世紀長寿社会ということを論じてまいりましたけれども、まさに今、日本が一番世界発信基地としての役割が果たせる私は唯一の分野だと言っても過言ではない、そういう期待をしているわけであります。  これを契機に、国は二十一世紀世界人類発展に寄与する厚生行政を力強く展開していただきたいと思うわけでございますけれども、ぜひこれは大臣の方から御感想なり御決意なりをお聞かせいただけたらと思います。
  9. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 長生きしよう、あるいは長生きできるというのは長年人類が望んできたところだと思います。日本は幸いにして今世界で一番長生きできる国になりましたけれども、これからは、いかに元気で長生きできるかということを今目標にしなきやならないところに来ていると思います。  そういう中にあって、この長寿研究というのは大事な研究だと思っておりますし、特にこれからの長寿医療研究としては老化機能解明高齢化に特有の疾病の原因解明と予防、診断、治療の確立、高齢者の社会的、心理的諸問題の研究等の幅広い分野総合的研究推進、この三点は大変重要な課題として取り組む必要があると思います。  こういう観点から、長寿医療研究についてどういう施設がいいかということで、今、委員指摘のとおり、国立療養所中部病院長寿医療研究センターを開設してその充実強化を図っているところであります。今後とも、この国立療養所中部病院が高度かっ専門的な長寿医療実施して、全国の中核施設として長寿医療科学の進展に寄与するよう今後とも鋭意努力をしていきたいというように考えております。
  10. 大島慶久

    大島慶久君 どうも御答弁ありがとうございました。  この地は、近い将来中部国際空港、これは国の方も認知をいただいて完成を図る今途上にあるわけでありますけれども、非常に近い距離にございます。アクセスの面でも世界各国からそういう学者に集まっていただくのに地の利も非常にいいところにあります。先ほど申し上げましたように、愛知県が大きな事業として期待をしております「あいち健康の森」、これはいろんな機能を持っておりますけれども、そういった今の長寿科学研究センター、こういったものの発展と比例して「あいち健康の森」にも大きな弾みがっくはずであります。  今それぞれ御答弁いただきましたけれども、今、国の財政状況が極めて厳しい中でいろいろと無理難題を申し上げるのは慎まなければならない点であるかもしれませんけれども、この構想は、先ほど局長からもお話しになりましたように、急に降ってわいたような構想ではなかったわけでありますから、そういったことを勘案すれば、やはり私が先ほど申し上げた、何か一歩も二歩も後退しつつあるような、せっかくこれだけの構想厚生省も中心になってお考えになられたわけでありますから、ぜひもとへ戻って充実したものに仕上げていただきたい、再度強く御要望を申し上げておきたいと思います。  次に、医療保険財政の悪化によるこのたびの健康保険法改正は、つまるところ薬剤比率是正にあるだろう、いろんな議論を踏まえて、私は個人的にもそう思う分野が非常に強いわけであります。  これは一九九五年、少し前の調査資料ですけれども医療費が当時二十四兆三千四百億円、こういう金額に対して薬剤比率が、我が国においては二九・一%、そしてアメリカでは二・三%、イギリスにおいては一六・四%。いろいろ比較をしてみますと、確かに我が国医療費に占める割合というものは高比率である。医療費の三割が薬剤費なんだということが言われている、まさにそのとおりのデータでありますけれども薬価を二年に一回引き下げているにもかかわらず、薬剤比率はなかなかそのような変化をしてまいっておりません。  この要因はどこにあると認識をされているのかということを私はお伺いをしたいわけであります。私の感ずるところ要因の主なるものは、やはり薬価差背景とした新薬シフト、これは我が国医療を見ておりますとまさしくそうであると思います。それから二番目には、薬剤使用量の増加、これも非常に多く薬を使い過ぎているんじゃないかと、ここにメスを入れていくべきじゃないかと、これはたびたび議論をされていることであります。  我が国製薬会社の実績というものは、この数年間大変経済状況の悪い中で、ずっと眺めておりますと、こういった製薬部門だけがということは申しませんけれども、実にその伸び率というものは他企業と比べますと一四・五%の伸びを見せているわけであります。日本新薬に占める割合が五割、ドイツがよく比較をされるわけでありますけれども、片やドイツはわずか一割、そういう実態があります。  もし、ドイツ並みにそういった新薬比率といいますか、薬剤使用量も含めて抑え込むことができるとすれば二、三兆円の財政効果を十分予測できるわけであります。けれども製薬会社それなり研究費をつぎ込み、いろんな新薬を開発をしていることも事実でございます。いろんな議論を我々もさせていただいておりますと、つまるところとにかく、端的に申せば製薬会社がもうけ過ぎているんだと。そこをもう少しきっちりと理解をしていただいて抑え込むことができれば、今回のこういった健保法改正、当面はそういったことで賄えるという議論もいろんなところでたびたび出てまいったわけであります。けれども、私は製薬会社だけにそういった努力を認めないような方向で、何か罰則を科すように、もうけ過ぎないようにしなさいというのも、これは国全体の経済活動ということからいたしますと、これもまたいかがなものかなと。  そこで、これは私の極めて私見でありますけれども、やはり製薬会社企業として努力をされて、企業を立派にしそれだけの収益を上げるということは、とりもなおさず一生懸命努力をされればされるほど利益が上がるわけでありますから、その反面税金も国の方にしっかりと納めていただける、むしろ私はそこら辺のところも重視をしていかなければならない。  製薬会社というのは、やはり医療関連利益を上げるわけでありますから、そういった利益を少なくするように努力をさせるよりも一層努力をしていただいて、もっともっと立派な企業に育っていただいて税金をたくさん納めていただく。その税金の使い道をぜひ医療福祉という面に、全部ということはとてもかなわないかもしれませんけれどもシフトをしきながら国民のコンセンサスを得ていくということになれば、厚生大臣も先般来申されておる、近い将来手をつけていかなければならないこの医療制度改革あるいは医療保険制度の抜本的な改革の中にそういった一つ方向づけができるんじゃないかと私は思っておりますけれども、その点はいかがでありましょうか。
  11. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 薬剤使用適正化の問題については、この国会におきましても、参議院においても衆議院においても、あるいはまた本会議場におきましても多くの委員から指摘されたところであります。今後、医療全体の構造的な改革の中で当然この問題に取り組まなきゃいけないと思っております。  その際には、市場取引の実勢にゆだねるという原則に立って根本的な見直しをするべく今準備を進めているわけでありますけれども、今後、薬の重要性、そして医薬産業というのは、これからの日本産業を考えますと、これは知識集約型であり、なおかつ先端医療先端科学技術ということを考えましても大変重視すべき産業だと思っております。  このような医薬産業国際社会で通ずるような産業として発展することが望ましいわけですし、日本経済のことを考えましても、経済の活力を発揮してもらって健康のために貢献することが、とりもなおさずあわせて経済発展を促し、なおかつ利益を上げてくれて税収もふやしてくれれば、この成果をさらに社会福祉充実に回せるわけですから、そのようないい循環ができるような形で抜本的な改革ができないかという視点から、この薬価の適正な見直しについても取り組んでいきたいと考えております。
  12. 大島慶久

    大島慶久君 どうもありがとうございました。  私の思いと今の大臣の御答弁はかなり類似した方向があるなと、こんな気持ちを今抱いたわけであります。  今せっかく大臣からお答えいただいての後で、またぶり返すようでありますけれども局長から、現在の日本のいわゆる製薬企業あり方、外国のそういう製薬企業と太刀打ちできるような状況にあるのかどうか。また、その前に、そういった努力といいますか、今私が前段で申し上げたような、私は必ずしもそう思っているわけじゃありませんけれども、とにかくこれだけ医療が厳しい厳しいと言いつつも製薬企業だけは大きな利益を得ているんじゃないかということで、我が国の中でそういった非難を浴びないような努力を過去から現在に至っていろいろとされている気配があるのか。そして、今私が申し上げたように、このまま我々が世論という形でそういう議論だけしていた場合に、果たして日本製薬企業は生き延びていけるだろうかどうかということを、もしいろんな観点から、恐らくいろんな考え方、資料をお持ちだと思いますけれども、わかる範囲で結構でございますけれども、ちょっと教えていただけませんでしょうか。
  13. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、我が国製薬企業、これは一般的に申し上げますと、どちらかというと輸入型の企業というふうに言われておりまして、むしろ私どもとしてはこれからもっと国際的にも競争できるような、そういった企業に育っていただきたいというふうに思っておるわけであります。  そういった中で、比較的高収益を上げていると言われておるわけでありますが、その背景として、我が国における医療保険制度、安定的にその中で支払いが行われるような、医療費の確保ができるような制度というものがバックにある。また、我が国医療産業の国内における医薬品マーケットというのもかなり大きなものがある、世界的にも我が国医薬品マーケットというのはかなり大きなものがございます。  しかし、これからの時代を考えてみた場合に、我が国の中だけで収益を上げ活動していくというような企業のままであっては、やはり国際的に通用するような企業が育っていかないだろうというふうにも言われておるわけであります。  そういった意味では、私どもとしては現在の製薬産業自体国際競争力を持ったような形の製薬産業に育っていくためにどうしたらいいのかということになるわけでありますけれども、やはりそれは現在の医療保険制度がとっておりますいわゆる公定価格を定めている薬価基準制度、これは結果的には保護政策的な面があるのではないかというふうにも言われております。だとすると、やはりそういったような行き方ではなくて、きちっとした競争力を持った形に育っていただかなきゃいけないわけでありますから、そういった意味で現在の医療保険制度あり方薬価基準制度あり方も国際的に通用するようなシステムに変わっていった方がいいというふうに考えておりまして、そのことが長い目で見て我が国製薬産業の力が強くなる、またそういうふうに強くなるべく努力をしていただきたいというふうに考えておるわけであります。  ただ、今回の薬価基準制度の抜本的な改革というものを行った場合に、製薬産業に与えるインパクトというものはやはり大きなものが予想されますから、そういった面について私ども十分分析をし、そしてまた、必要があればそれに対する対応ということも考えていきながら、製薬メーカー製薬産業自体が大きな不安を持たずに移行できるような配慮も必要であろうというふうに考えております。
  14. 大島慶久

    大島慶久君 ありがとうございました。  今、局長の方からも薬価基準に触れたお言葉の中で、我が国はややもすれば保護型だと、まさにそういったところがいろいろと議論をされております。この法案が可決されれば、もうこれと並行して同時進行で、急ピッチでいわゆる抜本改革というものをやらなきゃいけないわけでありますから、そういった今の御答弁の中にある精神を込めて、さりとて製薬会社にも国際競争力にたえていけるような指導をしながら、両方がうまく回っていくような、そういった態度でこれからも進んでいただきたいと要望をさせていただきたいと思います。  それでは、一昨日のこれは我が党の田浦議員の質問の中でも既に同じ質問がなされておりましたけれども、私もちょっとわからない点がございますし、再度改めてお伺いをさせていただきたいと思います。  今回の健保法等の改正の趣旨説明の中にも文言として入っていることでありますので、あえて重複をして質問をさせていただきたいと思います。  健康保険法等改正に当たり、既存の審議会を統合し、新たな審議会を設置することとしておりますが、その内容、それから意義。従来、既存の審議会があったわけでありますけれども、そういった審議会はもう既にすべての役割を果たしたから新しい統合的な審議会をつくるということであるのか、まだまだそういった要素は完全に果たしていないけれども、やはり新しくこの際は審議会をこしらえて再スタートを切るんだと、ちょっと私にはわからない点がありますのでお尋ねをしたい。  それから、そのメンバー構成でありますけれども、特定の団体の代表者を除くというふうにたしか二十七日の厚生委員会でも御答弁がありましたけれども、私はむしろ、こういう医療関係というのは極めて専門色の強い分野があるわけでありますから、あえてなぜそういった特定の団体の代表者をそのメンバー構成から外して、全くわからないという御無礼な言い方で思っているわけじゃありませんけれども、素人に近い方たちだけでメンバー構成をしていかなければならないのか、その意味を御説明をいただきたいと思うんです。
  15. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このたびの改正案の中で新しい審議会の設置というものをお願いをしているわけであります。これは現在、医療保険審議会がございますし、それからまたもう一つ老人保健福祉審議会がございます。それぞれの審議会がそれぞれの所掌分野についてこれまで御審議をいただいてきましたけれども、やはり医療保険改革というものを考える場合に横断的な、また総合的な検討ということがやはり必要であろうということで、そういった意味では従来の縦割りになっております審議会をむしろ統合して、そして幅広い御議論をいただく方が適当であるというふうに考えたわけであります。  それからもう一つは、従来の審議会はどちらかというとそれぞれの団体なりの代表者にお願いをし、建前はそれぞれ学識経験者の方をお願いするということでありますけれども実態的にはそのような形で委員の方々をお願いしてきたという経緯がございます。したがって、人数も相当大勢の委員の方々で御審議をいただいてきた、こういうことであります。  これまで三十年間、医療保険制度抜本改革ということがうたわれてまいったわけですけれども、全く改正されなかったというわけではありませんが、やはりこれからの高齢化社会、二十一世紀に向けての新しい時代に対応した制度というものを構築するに当たって、待ったなしでこの改革というものをやらなきゃいけない。しかも、それはそれぞれの利害関係というものをしょった形の議論ということではなくして、やはり国民的な視点から我が国医療保険制度のあるべき姿ということを御議論いただき、そしてそれに対する見識を出していただきたい、こういうふうに考えているわけであります。  そのためには、私どもとしては新しい審議会、とりわけこの医療保険の抜本改革をお願いする審議会につきましては、国民的な視点に立った御議論をいただきたいということでありますので、それぞれの利害関係のある団体の代表という形での委員の委嘱ということは考えておりませんで、むしろ先ほど申し上げたような形からの見解をいただけるような形でのお願いをした方がいいのではないか。  ただ、これは特定の団体の代表ということではお願いしないということでありますから、当然それぞれ医療に関する専門家の方々に入っていただくということは、これはあると思います。当然だろうと思いますが、そのような考え方をとっているわけであります。  それから、新しくできます審議会の運営でありますけれども、これは抜本改革については、それぞれ審議会にどういうふうな形の案をつくっていくべきかということを丸投げするような形じゃなくて、厚生省として成案を策定いたしまして、それに対する御批判なりというものをいただく、それに基づいて御審議をいただく、こういう形にしたいと思っておりまして、そういった意味では従来の審議会とはその辺の方法も変えた形で取り組みたいというのがございます。  それからまた、今回お願いしております新しい審議会でありますけれども、やはりそういった中でも、いわゆる健康保険法なりあるいは老人保健法なり、現行の制度がございますし、そういった制度の運営事項に関するものもございます。こういったものについては、これは抜本改革とは一応離れまして、ルーチンのこういう運営事項ということについても御議論をしていただかなきゃいけないという面がございますので、セクションとして、こういった既存の制度の運営事項について御審議いただく部門と、それから最初に申し上げました医療保険制度抜本改革、これを御検討いただく部門という形の二つを考えておりまして、この医療保険制度抜本改革を御検討いただく部門については比較的少人数で国民的な視点からの御議論をお願いしたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  16. 大島慶久

    大島慶久君 結論的に申せば、要するに二つの機能を持つ審議会ですから、今回の抜本改革がうまく進まなければならないわけでありますけれども、それまでのつなぎというのか、そのための審議会を新たに設置するというふうに少し理解をしました。けれども、もう一つ違う機能もあるということでありますから、抜本改革が終わったらこの審議会はもう一回解散するというんでしょうか、という意味でもないわけですね。今そういったことは決まっているんでしょうか。
  17. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これから新しく発足して、そしてメンバー等もお願いしていくわけですから、そしてまた、そこにおける審議の状況というものをにらまなきゃいけないというふうに思います。  ただ、二つの部門ということで考えておりますので、この抜本改革を御検討していただく部門については、文字どおり抜本改革が実現をすれば一つ機能というのは終わるわけであります。ただ、この制度改革というのは、これは時代の要請の中で常に検討見直していかなきやならないという要因もございますので、その辺のところは今後抜本改革の審議の状況というものを見た上で考えてまいりたいというふうに考えております。
  18. 大島慶久

    大島慶久君 ありがとうございました。  団体代表ということでは参加をしないけれども、学識経験者という形ではそういう関連の方もそのメンバー構成には入り得る、こういうふうに私は今理解させていただきまして、安心をいたしました。  今回のこういった健保法改正、いろいろと薬剤観点から非常に複雑であるなという感触は皆さんが抱いているわけでありますけれども、まさにそういった現場の状況が余りわからないままこういう審議会、国にはいろんな各分野の審議会がありますけれども、私が心配いたしましたのは、現場の声というものが余り吸収されない形で、ある程度のたたき台というものがコンクリートされてしまってから、さあ審議してください、検討してくださいといってもなかなかこれはうまく機能し得ないだろう、こういう心配がありましたのでくどくどと御質問をさせていただきましたけれども、大方今の局長の御答弁理解をすることができました。  ありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。
  19. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 自民党の塩崎恭久でございます。  健康保険法等改正質問の前に、けさほど財政構造改革に関する臨時の閣僚懇談会があったかと思うわけでございますけれども、二十六日に例の企画委員会からの報告というのが出ました。それから、昨日、財政構造改革会議の全体会議というのがあったようでございますけれども、けさ閣僚懇談会を行ったということでございますが、けさの新聞を見ますと、何か大蔵大臣から電話があって行くのをお断りになったという記事が載っておりましたけれども、その分きょうは閣僚懇談会で思う存分御意見を言ってきたんじゃないかなと思うわけでございます。  特に、我々にとって一番心配なのは、社会保障の部分がどうなるのかということでございますが、けさほどの閣僚懇談会での議論の模様等、大臣からまずお伺いいたしたいと思います。
  20. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) けさ八時から一時間ちょっと財政構造改革についての閣僚懇談会が行われたんですが、その中で社会保障関係として、財政構造改革五原則の中には、十年度予算は九年度予算に比べてマイナスにすると、一般的政策経費はマイナス予算にするということが五原則の一つとしてうたわれており、この線に沿って今後予算編成に取り組まなければならないわけですが、厚生省関係予算に限って言えば、私は十年度予算を九年度マイナスにするということは困難だということを申し上げました。  なぜならば、当然増が八千億円程度ふえる見込みになっております。この当然増の八千億円をいかに削るかでも大変な困難を生じているんだと。当然、厚生省関係は五年計画を十年計画に延ばせばいいというような予算ではありませんと。構造的な改革をしても、大変国民に影響が深いし、一般的な議論を今までの委員会から聞いておりますと、むしろ予算をふやせというような議論が多いと。そういう中で削らなきゃならないわけで、医療保険制度改革におきましても、今回の健保法改正案において、当初の政府案でありますと三千五百億円程度の削減が予想された原案ですが、これに対しても与党がこの負担は多過ぎると言って約半分ほど削っちゃったんです。しかし、そういう中で来年はマイナスにしろと言うんですから、これ八千億円程度をどのぐらい削るかがこれからの課題であると。  となれば、厚生省関係予算にとっては、十年度予算はどんな努力をしても九年度より若干ふえます。黙っていたって八千億円ふえるんですから。この八千億円を何千億円減らすかがこれからの課題なんだと。となれば、全体の予算が政策経費のマイナスだったならば、厚生予算は十年度予算は九年度よりマイナスにならないわけで、当然増から比べて切り込みますけれども、何千億円かふえた分は他省庁が減らしてくれないと、この財政構造改革五原則の十年度予算マイナスというのは守れないんだと。その辺を御理解いただいて、各省庁協力してくださいということで御了解を得ました。  厚生省関係についてはこのとおりであります。
  21. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 大変理論的で、かつ力のこもった、また情熱のこもった御発言をしていただいて、恐らくこれは与野党問わず、また国民も大変力強く思ったと思うわけでございます。  特に、この後また聞きますけれども大臣に引き続いてお聞きするとすれば、一番心配されているのは当然増の中でも年金があるんですね。みんなは財政再計算のときにやる抜本改正と来年度の予算に基づく年金給付が多分ごちゃごちゃに印象として入っちゃっていると思うんです。ですから、何か減らすぞと言うと、来年の自分がもらえる年金もマイナスになるのかと、そんな約束はしていないぞと、こういうふうに思っておられる国民が多いんじゃないかなと思うんですね。  この間、組合の連合が日銀まで押しかけて、金利を上げろと、こういう大変珍しい前代未聞のことが起きましたけれども、そのくらい年金受給者は金利が今低くて御苦労されているわけであります。こういうことも踏まえて、これは単純といえば単純かもわかりませんけれども、報道から国民が受けた印象は、来年自分たちのもらえる年金はひょっとするとことしより減るかもわからぬと、こういうふうに思っているかもわかりませんが、それはないというふうにお答えできますか。
  22. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 来年なり、これから行われる制度改正において、今までの決められた年金給付が削られるということはありません。はっきり申し上げます。  この問題については、過日の財政構造改革の企画委員会でも出まして、一部の委員の方から、年金改革平成十一年度の財政再計算のときに制度改革を行うことになっているが、これを来年度からできないかという意見が出ましたが、年金制度というのは多くの約束事でなっておりますし、国民期待感もあります。既に決まっている分をまた手直しして給付をカットするという場合には、よほど国民議論を経ないとかえって制度改革をしょうということに対して混乱を来すから、私としては平成十一年度の既定の路線で改革に取り組むつもりであるし、急に財政再建が必要だからといってそれを前倒しにして来年度、十年度でやるというのは、これは考えていないということをはっきり申し上げました。  ただ、これから年金改革については、老後の給付をどの程度にするのか、それから若い世代の保険料負担をどの程度にするのか、支給開始を何歳にするのかという議論が出ましたから、この問題については、ことしの秋ぐらいに材料は提供します、いろいろな選択肢を提供します、その中で議論をしていただいて、来年度中には十一年度改正に向けた抜本改革案がまとめられるような環境整備には努力していきたいということを申し上げたので、幾ら財政再建といっても来年度すぐ、十一年度を前倒しして十年度やるという考えはないということをはっきりと申し上げておきました。
  23. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今、十一年度の財政再計算を一年前倒しはやらないということをおっしゃったわけで、企画委員会の出したペーパーの第二案という中に、「十年度に前倒しして、」と、こう書いてありますけれども、これはやらないと、こういうふうに理解してよろしいわけですね。  ちょうど年金審がおとといからスタートしたわけでありまして、年金局長からお答えをいただくべきことを大臣がほとんどしゃべってしまったんじゃないかと思うのですが、何かつけ加えることはありますか。
  24. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) 一昨日、五月二十七日に、次期制度改正へ向けての初めての年金審議会が開催されたわけでございます。  それで、第一回目ということで、今後のスケジュールと検討項目、この二点に絞って議論が行われたわけでございます。スケジュールにつきましては、ことしの秋から冬にかけて論点整理と選択肢を示す、それから来年の九月には年金審議会としての意見書を取りまとめる、それを受けて政府では平成十一年の通常国会に法案を出す、こういうことでスケジュールについて意見の一致を見たわけでございます。  何しろ、年金を取り巻く状況というのも少子・高齢化の進行とか大変厳しい状況にございまして、次期改正というのは相当大幅な徹底した見直しが避けられない、こう思っております。  それだけに、手順をちゃんと踏んで国民議論をやって、それで合意を得ながら進める、こういうことが非常に重要だと思っております。ただいま大臣から答弁ございましたように、制度改正を一年早めるというようなことはこれはもうとても不可能でございまして、そういうことはもう全く考えておりませんし、審議会でもそういう意見は一切出なかったということでございます。
  25. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今回は六つの改革ということで、あらゆる面で日本を変えていこうということでありますから、この年金制度についてもかなり抜本的な改革をしなければいけないのかなと思いますし、そうすべきだろうと思うんです。  そういう意味では、ぜひ年金審では幅広いメニューを、例えば介護保険のときも初めから公費を半分入れるということでスタートしていまずけれども、例えばドイツみたいに全部保険料だったらどのくらいを払わなきゃいけないのかというところがら、実現するかしないか別として、やっぱり頭の体操をかなり幅広くやる中で国民にメニューを示して議論をしてもらって、そして詰めていくということが大事だと思うので、余りこれで決めるというような狭い選択肢じゃなくて、ぜひ幅広い選択肢を出してお願いしたい、こう思います。  もう一つ、本題に入る前に、実は前回の委員会でちょっとお尋ねしたことで、時間切れで大臣からも十分なお話を聞けなかったことがございました。  例の財投機関としての社会福祉医療事業団の位置づけ、そしてまた、これからの運営方針についてでございますが、不祥事も出てきたこの社会福祉分野で、我々も初めて、ケースによっては国庫補助よりも多い財投のお金が行っているということがある、理論上は大体上限は国庫補助と同じ額までしか行かないということになっているらしいですけれども、この間見たケースは少し上回っているというようなことがあるわけですね。  今、財投をスリム化しようというような議論が大分定着しつつある中にあって、この問題について、確かに不祥事の後に、三月末に施設整備業務等の再点検のための調査委員会報告書厚生省も出しておりまして、自民党も一月末にたしか出したと思いますが、どうもいろいろ聞いてみると、補助単価の見直しをやりますぐらいのことで、何かアンケート調査をやるということになっているようで、そういうことをよく答えていただくわけでありますけれども、私は、そういうことではないんじゃないだろうかなと。つまり、国庫補助と一体的な見直しをしなければ一つの政策を達成するという意味においてこの見直しは完成しないんじゃないかと。  もともと一般会計にはお金がなかった、民間金融機関もそんな力もなかったという中で、財投が有効に活用されて今日まで福祉施設事業団からお金を借りながらやってきた。もちろん、いろいろなほかの補助もありますけれども、そういう意味でありますから、この仕組み自体を全部やめるなどというようなことは私はないのだろうと思っておりますけれども、どうも国庫補助と同額ぐらいの融資が出るというのは一体どういう意味なんだろうかと。  それは、一つはこの間申し上げたように、そもそも国庫補助の基準が低過ぎる、だから融資を上乗せするんだと、それは基準そのものがもう十分じゃないんだということを言っているのか。それとも、いや、国庫補助基準そのものはおかしくないんだ、むしろその上乗せしているのが多過ぎるんだと。つまり、もちろんアメニティー部分とかいろいろなものをやるためにあるという施設でもありますけれども、それにしても必要以上にそういうお金が行っているんじゃないだろうかなと。心配は、何しろこういう財投機関というのは必ず一般会計からまた利子補給が行っているわけです。これは国民の血税から当然行っているわけであります。  そういう点で、もちろんこれから何度も申し上げますけれども福祉施設にしても医療施設にしてもどんどんよくならなければいけないし、数もふえなければいけない、それはわかっているわけであります。しかし、今のままで本当にいいのかどうか、その点をやっぱり国庫補助と一体的な見直しということをぜひ考えていただかなければならないんじゃないかということを言いたかったんです。  特に財投の出口の見直しという観点も含めて、大臣もう一回、この辺の一体的見直しをする気があるのかどうか。補助単価を見直すとかなんとか、そういうことはぜひやってもらいたいと思いますが、もっと全体として国がどういうバックアップの仕方をするのか。それを犠牲と言ってはあれですけれども、そこに国民のコンセンサスをもって一般会計から補助をするということでなければならないんだろうと思うんですけれども、その点ぜひお答えいただきたいと思います。
  26. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) けさの閣僚懇談会でも私は財投の見直しについても触れておきました。  今、委員指摘のとおり、財政構造改革という限りは単なる財政再建では終わりませんよ、財政構造を根本的に見直すというならば、財投の見直しを避けて通れないという点から、その財投に来ている資金、その管理している資金運用部、さらに融資先の特殊法人、この全体の見直しは避けて通れないわけであります。今までは、財政投融資制度の預託金利の金利と融資先の金利の差を一般会計、いわゆる国民税金で負担していた、これを見直さない限りはしり抜けになってしまうということから、この財投の見直しもやるんですねという確認をとっておきました。  そういう中で、今、委員指摘社会福祉医療事業団の融資記事につきましても、恐らく委員は自民党の行革推進本部でも議論されていると思います。今の問題も含めて、総合的な基準の見直し、当然関連してくると思いますから、この見直しに取り組んでいきたいと思います。
  27. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 我々自民党でもこれを検討してまいりますけれども、ぜひ厚生省としてもこれからの効率的な、また限られた資源を有効に使った社会福祉医療政策を推進するためのそういう仕組みを考えてもらいたいというふうに思います。  いよいよ本題に入りますが、医療保険改革の問題でございます。  まず初めに、きょうたまたま朝日新聞の一面に、小児科医会からの御懸念ということで、「薬代「払い過ぎ」の恐れ」というのが記事になっているわけでございますが、実は私の地元でも小児科の先生からお話を聞いております。これは、例の外来時の薬剤費別途負担を議員修正で出して決めたわけでございますが、特にこの点から来ている御懸念だろうと思うんですね。  まだ決まって時間も間もなしてございますから材料も十分そろっていないのかもわかりませんが、こういう懸念があるということは厚生省として認識をしているのか。そして、実態をちゃんと調べて、御心配がそうならないように、特に今問題になっているのは、高齢者に特にしわ寄せが行くという中で、今度は子供さんにしわ寄せが行くかもわからぬという話でありますから、そういうことがないように、ぜひきちっと調べてもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  28. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このたびの衆議院の修正で、いわゆる種類についてもグルーピングされ、それからまた投薬日数についての平均的な日数ということで定額の四百円、七百円、千円というふうな負担に修正されたわけであります。  したがいまして、制度的に内在する問題としまして、平均よりも少ない投与日数という場合等につきましては、やはり一部負担額との比較において下回るケースというのは、これは発生することはあり得るというふうに私どもは認識をしております。  これは、本委員会においてもいろんな角度から御議論いただいているわけでありますけれども制度の仕組みの組み方をどういうふうにするかという中での、ひとつ割り切れる問題なのか、あるいはそこはやはり特別の配慮というものを考えなきゃいけないのか、その辺のところは私どもとしてもなお研究させていただきたいと思います。
  29. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 ぜひ、よく検討して対処してもらいたいと思います。  次に、社会保険健康管理センターというのが全国に十四カ所あるわけでございますが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。  実は、これは三月十二日に参議院の予算委員で、私どもの同僚の武見敬三議員から、東振協、東京都総合組合保健施設振興協会、長ったらしい名前でありますが、ここの例の健康診断を請け負ってやっているという話がございました。それとやや似た話でありますけれども、やはり根拠はこれは健康保険法第二十三条というところが根拠になっているわけでございます。  政府管掌健康保険、つまり今回の我々が今議論している健保法改正の一番の端緒となった、政管健保が今度パンクしそうだと、こういうことから始まったわけでございます。この保険の被保険者に対して効果的な健康管理活動を行うことを目的とすると、こういうふうになっているようでございますが、中身は健康診断、それから成人病検診、結核検診等の疾病予防活動、健康相談とか、健康結果の管理分析、データの収集、こういうものであって、昭和六十二年度から社会保険病院のない都道府県等に設置しており、現在十四カ所設置していると、こういうことになっているわけでございます。  経営は独立採算制になっているんだと、こういうふうに伺っているわけでございますが、実はこの施設、十四カ所あるわけでありますが、政管健保の保険料からその施設にお金が回っていると。というのは、つまり建設費に回っているということで、私もちょっとびっくりして、一つ大体十億ぐらいかかっている、つまり十四カ所ですから百四十億ぐらい。今まさに保険がパンクしそうだと言っているときに、百四十億円を使ってきたということであります。これは価値観が分かれるところではありますが、私は、これから新しい時代にこういうことを続けるべきかどうかなというところについては、大変疑問を持っている一人でございます。  特に、これができた時期を見てみると、一番たくさんできているのは平成七年、四カ所であります。一番新しいのは何と今月できたばかりで、大分に平成九年の五月にできたばかりであります。実は私どもの地元にもございまして、これは平成六年に二つできております。実は六十二年からでき始めて今まで十四カ所できている。特に平成七年に四カ所できているあたりなんかは、我々はもう政管健保がパンクしそうだという話は三、四年前から聞いているわけでありまして、そのときにまだこういうことが続いていたということを知って、我々もびっくりしたわけであります。  この点について、この実態と今後の方針はどうだろうか、幾ら本当に保険料から投入をしたのかということを聞きたいわけであります。実は私どもの地元にも大変立派なやつがあって、身近な人でも行っている人がおりますけれども、大変便利だし、きれいたし、親切だし、大変いいという印象を持って帰ってきているわけであります。できているところが、北からいくと、青森、盛岡、秋田、山形、いわき、水戸、八王子、長岡、京都、高槻、鳥取、岡山、松山、大分ですから、大体県庁所在地に近いようなでかいところにあるわけです。  今はもう人間ドックだってどこへ行ったって健康診断なんかできるところに大体できているということで、一つ十億ということでありますから、これはどうなんだろうかなということで、まず実態と幾らお金をつぎ込んだか、今後の方針はどうなのかということをお聞きしたいと思います。
  30. 真野章

    政府委員(真野章君) 社会保険健康管理センターにつきましては、今、委員指摘のとおりでございます。大体、一施設十億程度ということで整備をしてきております。  ただ、最近の整備が平成六年なり、七年に多いではないかと、もう政管健保が財政上非常に厳しい状況のときにできているではないかという御指摘でございましたが、若干経緯を言わせていただきますと、もともと中小企業にお勤めの方の多い私どもの政管健保の被保険者の場合にはなかなか健診の機会に恵まれないというようなこともございまして、健康保険法に基づきまして、健診機会の確保ということを図ってまいりました。  平成四年に中期構想懇談会というところで、特にやはりそういう健診部門に力を入れるべきではないかと、そしていわゆる独立型と言っております健康管理センターを整備していってその健診の中核施設にするべきではないかという御指摘をいただきました。そういうこともございまして平成四年、いわばその方針を受けまして整備を進めたと。  ところが、整備をいたします場合に直ちにすぐ設置ということにはまいりませんで、用地の関係、工事ということから、結局、平成四年、その当時健診を充実すべきだという御指摘を受けまして動き出してから、結果として整備が終わり実際に運営を開始する時期がいわば政管としては既に財政的に非常に苦しい時期に当たってきたということでございます。苦しい時期でありながら、それを承知の上でわざわざ支出をしたということではなくて、計画をしてたまたま完成がそういう時点に当たったんだということはぜひ御理解をいただきたいと思っております。  採算は独立採算でございまして、私ども、今後この施設につきましては、委員今御指摘がございましたように、民間の健診機関の充実ということもございますので、この施設の新設ということは考えておりません。
  31. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 労働安全衛生法に基づく健診というのもございますし、この健保法の二十三条に基づく健診というのもあるわけであって、考え方によっては予防するということが医療費を抑える役割をなすという考え方もないことはないと思うんですけれども、今、部長さんも認めていただいたように、民間でも十分できる、おまけに大体県庁所在地みたいなところでやっているわけでありますから、何ぼでもやるところはあるわけであります。  今まさに老人にしわ寄せが行くんじゃないか、今の質問のように子供にしわ寄せが行くんじゃないかと言っているときにこういうことが行われるというのは余りよろしくないんじゃないかなというふうに思います。もちろん、事業自体はさっき言ったように行った人は大変いいところだという評価はしていまずけれども、しかし大体官業というのは安くていいといって民間の同じところが困るというのがパターンでありますから、その辺はよく考えていただいて、運営の仕方も、まさか建物をつぶすわけにいきませんから、そんなことじゃなくてもっと前向きにやってもらいたい、地域医療のために頑張ってもらいたいと、こういうふうに思います。  そこで、きょうはちょっと配付させていただいた資料がございますので、ごらんをいただきたいと思います。  見ていただければ当たり前みたいな話ではありますけれども、改めてこうやって見てみると、これは一人当たりの医療費と自己負担及び保険料、つまり自分がどれだけ負担をして、そして同時に自分がどれだけの医療のサービスを受けているのかというのを、世代別に十歳刻みで見てみるとどんなふうになっているのかということを厚生省から数字をもらってつくったものでございます。  これを見てわかるように、当然のことながら、医療費というのは年齢が重なるに従って急速に加速度的にふえていくということでございます。その一方で自己負担及び保険料、つまり自分が払うものというのがどうなっているかというと、ピークは五十歳代で年間で二十五万円ぐらいですね。それが今度はだんだん下がっていって、だから七十歳以上のところがかなり問題かなというふうに思うわけでございます。  今これを見ますと、大体受けているサービスの方が負担をしているものより多いという世代というのは二十歳未満とそれから六十歳以上。あとは全部払っている方が多いということになっておるわけでございます。とりわけ七十歳以上においては、負担が九万円に対して受けているのが七十二万円ということでありますから、大体八倍のサービスを受けているということになっているわけで、これが本格的な少子・高齢化時代になったときにはどうなるんだということで今回いろんな議論が起きていると考えてもいいんだろうと思うわけでございます。  そこで、今これをお配りいたしましたけれども大臣、このグラフを改めてごらんになって、もう十分頭に入っていることだと思いますけれども、感想をちょっと一言お願いしたいと思います。
  32. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今いただいた資料を見ますと、確かに七十歳以上の高齢者にかかる医療費というのが若い世代の大体五倍ぐらいですか、そういう状況ですね。確かに高齢者の方が病気にかかる率というのは多いから、これはやむを得ない面もあると思いますが、この資料を見ても高齢者医療のかなりの部分というのは若い世代の負担によって支えられているというところがわかると思います。  今後、高齢者がますますふえていく、若い世代が減っていくという状況を考えますと、この医療保険制度を安定的に運営する、高齢者も若い者も適切な負担と給付をということを考えますと、この公平な負担というのはどうあるべきか、まさに給付と負担、この均衡を図っていく改革がぜひとも重要だなということを改めて痛感いたしました。
  33. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今、大臣もおっしゃられたように、老人の医療費を若い人が支えるということで、保険の制度そのものがそういうふうになってしまっている。それを、間に立って行っているのがいわゆる老人保健制度というものであろうかと思うわけでございます。  今回、こういう問題認識のもとに抜本改正をやるんだということで、聞くところによりますと政府は七月いっぱいぐらいにはびっくりするような案をつくってくれるということのようでございますし、それから与党も、与党協、与党医療保険制度改革協議会というところで八月末までに、つまりは今回の改正が施行される前までに案をつくるということになっているわけでございます。その中には、さっき大臣がおっしゃったような薬価の問題、診療報酬の問題、医療供給体制の問題、そして老人保健制度の問題等々入ってくるわけでございます。  きょうは、少しこの老人保健制度、老人医療をどう賄っていくのかということをお話しをしてみたいと思うわけでございます。まず、この老人保健制度の抜本的改革について厚生省は今どういうふうに考えているのか。つまり、今ほかの国保とかあるいは組合健保とか、そういうところがらいわゆる拠出金の形でお金が行っているわけでありますけれども、これももはや継続ができないんじゃないかという声が多いわけでありますけれども、まずこの点についての厚生省の考え方をお聞きしたいと思います。
  34. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  先生、今お挙げになりましたように、医療保険の抜本改革が、今回のこの法案をお通しをいただきますならば、改正法の施行時でございます九月一日と申しますか、八月末と申しますか、それまでに医療改革プログラムを取りまとめるということになっておりまして、その中において老人保健制度抜本改革は大きな柱の一つでございます。厚生省としましては、その九月一日あるいは八月末ということを目指しまして、精力的に老人保健抜本改革にも取り組んでまいりたいというふうに思っております。その際には、今グラフをもってお示しのございましたような実態を十分踏まえまして、今後におきましても、一つにはやっぱりお年寄りの方にもいわば制度の支え手としてしっかりそこは位置づけていくという方向は目指さなければならないと思います。  しかし、一方において、そうしたからといってもやはりお年寄りの医療というものを何らかの形で国民全般と申しますか、あるいは若人の世代と申しますか、そういった方々の御負担も願わなければならないという仕組みはやはり避けられないと思います。そうしますと、その若人なりが負担をしていただく仕組みというものがいかに皆さんの納得をされる仕方になるのかというところが大きなポイントだろうというふうに思います。そういう点から、これも先生指摘ございましたように、現在の拠出金の負担というものにつきまして、老人医療費がふえるという中で非常に各医療保険制度の中でいわゆる拠出金のウエートというのが非常に大きくなってきた。その拠出金というものについては、各医療保険制度にとってみると、これはみずからの被保険者の医療あるいは被扶養者の医療を賄うというよりは、ほかの人を賄うという観念でとらえられやすい形に拠出金というものがなっているということから、拠出金というものに対するある種の御不満というものは非常に高まっているというのは事実だろうというふうに思います。  したがいまして、今後いずれやはりそういった若い世代からの支援というものは必要だということの前提に立ちまして、それがいかに広く納得がいく方法にしていくかというところあたりは大きなポイントとして考えていかなければならない。そういったことも含めまして、もちろんその前に、その老人医療費全体をいかに効率的にしていくかということについても大きな柱で考えていかなければなりませんけれども、そういったことを全体含めまして、先ほどの医療改革プログラムの取りまとめということの中にこれも大きく位置づけられているということを認識しまして、取りまとめを急ぎたいというふうに考えております。
  35. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 今、局長からお話がございましたけれども、今の拠出金制度による財政調整というのは給付と負担の関係が極めて不明瞭な形になっているわけですね。これからいろんな改正をやっていくときに大事なのは、やっぱり国民に対する透明度というか、自分が出したものは約束どおり使われているんだ、それがどういうふうに行っているのか見えるという透明度が大事だと思うんですね。  保険制度ということで、保険局長が答えていただけるのかもわかりませんが、大体保険というのは、原点に立ち返ってみると、自分が払った保険料というのは当然その自分が入っている集団の中で相互扶助のために使われる。そのために保険料を払うわけでありますから、コンティンジャンシープランというか、そういうことでやっているわけでありますから、自分が払った保険料が別個の集団に使われてしまうというのは保険の原則からいっておかしいのではないかなというふうに思いますけれども、今の制度がいいとか悪いとかという善悪は別として、局長、いかがですか。
  36. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 老人保健の現在の仕組みに即しての御質問ということで、私から答弁させていただきます。  現在の老人保健医療といいますものは、各保険者によります七十歳以上の加入者に対するいわば医療の給付の共同事業という側面がございます。そういった形でとらえられるとするならば、被保険者につきましてその保険料により給付が行われるという関係そのものは、社会保険の一般の考え方というものから大きく逸脱をするところにはなっていないんじゃないかなと、また保険料という仕組みと制度的に相入れないというところまでの考え方はとらなくてもよろしいんじゃないかなというふうに思っております。そういう限りにおいては、現在の仕組みもいわゆる保険原理からの逸脱であるというところまでは行かないと思います。  しかし、先生今御指摘ございましたように、どうしても制度的なところからいうと、例えば被用者保険に入っている人たちにとってみれば、自分の集団のお年寄りというよりは他の集団のお年寄りのために出しているというような観点に立ちやすいということ、それからもう一つは、やっぱりそうやって出したものについて支出の方のコントロールがみずからの保険集団でききにくいというような御不満というのを非常に聞いております。それと、そもそも非常にそのウエートが大きくなってきちゃった、自分の保険集団の中で三割もそういうものが占めるというようなことになってきちゃったというようなことから、非常に保険財政の圧迫要因にもなっているということを背景にいたしまして、各保険者の不満というものが高まってきている。それはそれで、やはりある意味からいうとそういう御不満があり得るだろうなということであろうと思います。  こういつたことは、いわゆる保険原理という形の中においてどのようにすればそこが、先生は透明性とおっしゃいました、透明にかついわば納得性と申しますか、納得が得られるような形で持っていけるかというところが言ってみれば工夫のしどころであろうというふうに思います。
  37. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 最初はいろいろ苦心の末でつくり出した制度だったと思うんですけれども、やっぱり本質が少しずれているとだんだん時間がたつに従ってそのずれが大きくなって、今おっしゃったように三割も拠出しないといけないというようなことになりますと、これは保険なのか何なのかよくわからないねというふうに言われても仕方がないと思うので、これからその辺は本質をきちっと踏み違えないようにして新しい制度をつくっていった方が私はいいんじゃないかなと思うんですね。  そういう意味で、今いろんな方々がいろんな案を、特に老人医療についてどう保険で賄っていくかということのアイデアを出しているわけでございます。それについて幾つかちょっとそういうアイデアについて厚生省がどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。  まず、千葉大の広井さんですけれども、この方はまだ厚生省につながっているのかつながっていないのかよくわかりませんが、なかなかクリアカットな分析をいつもされて、私も時々拝読させていただいております。彼は、将来の老人医療制度というのは高齢者は職域とは切り離した体系とする、もう一つは、税を財源として公費で全部見ろと、ざつくり言ってしまえばこういうのが主張だと思うんですね。この考え方は、衆議院なんかでも公費でやるべきじゃないかという議論が新進党からも出ていたようでありますけれども、さあ果たして本格的な少子・高齢社会の中で巨額の公費財源確保というのができるのかねという気もいたします。  この広井さんの考え方について、特に彼ははっきりしていて、若い人はもう保険だ、若い人には公費では全然入れませんよということになっているわけですね、つまり若いというのは現役世代ということであります。さあこれが果たして可能なのかどうか、その辺についての考え方、ちょっと二つ質問を通告していましたけれども、一遍にお答えいただけたらと思います。
  38. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今お挙げになりました御提案を含めまして、老人保健制度の抜本改正に関するビジョン、構想につきましては幾つかの考えがいろんなところがら出されております。その一つとして、今お挙げになりました千葉大の広井助教授の構想でございますが、概要は先生が今お話しになったとおりでございます。  これにつきましては、やはり考え方として、老人医療というものがいわゆる保険原理と相入れないという視点が非常に強く出されているように思います。私どもとしては、その点は果たしてそうかなと。やはり高齢者の方々についてもいわゆる社会保険原理としての自助努力を基本としながら、それを社会連帯と申しますか、相互扶助ということで支え合っていくという基本はできるだけ貫きながらやっていく方が老人保健制度につきましてもいいんじゃないかという考え方は基本的にございます。  そういった一つのあらわれとして申し上げれば、高齢者につきまして、いわば一律に税による所得移転を受け、いわば支えられる存在であるというふうな位置づけになっておるように見受けますけれども、こういつたとらえ方でいいだろうかという点。それから、現実問題としていえばやっぱり、今、先生おっしゃったように、こういう形で老人の方々の医療費を税で賄うということになれば年間八兆円を超える医療費ということになりますから、これを賄うということになれば現実問題としても大幅な公費負担の増をもたらすということになります。今後の少子・高齢化の進展ということを考えますとそれもなかなか大変ではなかろうかというようなことなど、いろいろそれなりに私ども考えましても、現時点で問題点が挙げられると思います。  ただ、この案に限らずでございますけれども、今日ただいまの状況は、できるだけ虚心にいろんなお考え方の掬するべきところ、あるいは克服すべきところをちゃんと検討するという姿勢で考えたいとは思いますけれども、今考え得るところとしていえば、そういった問題点が考えられるんじゃないかなというふうに考えるわけでございます。
  39. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) もう一つの、若人の医療保険制度には公費を投入しないということが実現可能かというお尋ねがございましたので、その点についてお答えしたいと思います。  私は、保険制度をとっておるということである限りにおいて、できる限りやはりそれは保険料で賄う制度にしていくことが望ましいというふうに思っております。  ただ問題は、我が国は皆保険システムをとっております。そうしますと、そういった中で、いわゆる被用者とそれから被用者保険に入れない方々、受け皿としては国民健康保険ということになるわけでありますが、が現行制度ではございます。この制度を、例えば現行制度をほかの形に仮に改めるにしましても、所得に応じた負担の公平という点が、これが基本にあるわけでありますけれども、問題は被用者保険に入れない人たちの保険料をどう考えるか、やっぱりここのところが最大の問題でありまして、被用者保険についてはこれは事業主負担というのがございます。本人負担と事業主負担というのは原則的には二分の一ずつになっておりますから、そういった形で全体を賄っております。現行では政管健保に一三%の国庫負担が入っておりますけれども、被用者保険全.体で負担のバランスを図るということを考えれば、私は純粋に保険料に特化した制度というものは構築し得るというふうに思っております。  ただ問題は、被用者保険に入れない、いわゆる国保に入っている方々、この中には無職の方も多いわけであります。そういった方々は所得に応じた負担の公平といった場合に、所得が低いわけですから、やはりそういった方々の保険料だけで構成するというのは相当高い保険料というものをお願いしなきやならなくなるというふうに思います。そうすると、そこにどうしてもバランスをとるということを考えますと、現行制度国民健康保険について給付費の二分の一を国費で見ておりますごとく、それでもなお国民健康保険給付率も七割であります。財政が非常に苦しいという状況であります。  そういうこと等を現実的に考えますと、私は若い人についても全く保険料だけでやるということになりますと、負担の公平という点でまだまだ国民的な合意は得られないんじゃないかというふうに思っております。ただ、保険制度ということを基調とした制度でありますから、私はできるだけ保険料で賄えるような制度というものを構築することが望ましいと思っております。
  40. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 組合の連合は退職者健康保険制度ということで、職域ごとの保険を卒業しないでそのままいっちゃうという、国保に行かないという制度をどうも御主張されているようでございますけれども、これから雇用もいろいろ流動化するわけで、同じ職場にずっといるかどうかもわからないという時代に、じゃ果たして連合が今唱えていらっしゃるこういう制度というのがうまくいくかどうかという点についてはいかがでしょうか。
  41. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 連合がお示しになっておられます案であります。退職高齢者の方々については、職域医療保険の被保険者としまして、国民健康保険とは切り離しまして職域保険、地域保険、それぞれ別個に運営を行っていこうという、先生のお話のようなことを基本にする案でございます。  考え方として、どういうグループで老人医療を支え合うのがいわば納得されやすい、理解をされやすいかということから考えますと、確かに被用者保険でずっと、先ほどのグラフでもわかりましたように、医療費がそれほどかからない時代は被用者の中であれしてきた。それで、いよいよかかり始めたらその地域にお世話になるということについて、それを地域保険のあれとして考えていくのはいかがかということはあると思います。  そういうことから、今の老人保健制度の共同事業というのも実はそこから入っているわけですが、それを徹底すれば被用者保険についてはOBになっても被用者保険グループでずっと支えたらいいではないかというのは、考え方としてはそれなり一つの考え方としての説得性というものは持ってあろうというふうに思います。  しかしながら、今、先生お挙げになりましたように、これから雇用が流動化をするというのはもう世の趨勢であろうというふうに思います。そうしますと、そうした中でいわば退職者の健康保険制度の加入資格というようなものをどんなふうに考えていくかということで、それは実務という面ももちろんございますけれども、そういうことをどう仕組んだら納得が得られるかというところについてもなかなかそこは問題が残ろうかと思います。  それから、先ほど保険局長が前の案についてお答えを申し上げましたのと同様に、そういう形になりましたときに、相対的に中高齢者を多く抱える国民健康保険制度がそれ自体一つのグループとして今度は保険運営が可能かどうかという点への目配りと申しますか、そこをどう考えていくか。そうしますと、先ほどのように自律的に運営ができるか、あるいは公費負担というものを考えるとそれがどうなっていくかというようなことが一つの克服すべき課題という形で出てくると思いますので、そういった点が一つの問題点ではないかなというふうに思います。  これにつきましても、先ほどのように全体の中でよく検討させていただく際の一つとして考えていきたいとは思っておりますけれども、今思いつきますところではそのような問題点があろうかというふうに思います。
  42. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 日本医師会も提案をされていて、何か最近高齢者だけ独立にという案になったような話も聞くわけでありますけれども、いわゆる長期積立型医療保険制度というのを日本医師会は提案しているようでございますけれども、この点についてはいかがですか。
  43. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 日本医師会におきましても今御検討なさっておられる、あるいは構想を発表されておりますところでいきますと、高齢者医療につきましては分離独立をさせて、それについては高齢者御自身の負担、これをきちんと位置づけて、さらに足らざるところは公費で、さらにごく最近の医療構造改革構想という形でついせんだって御発表になった中でも、さらに現役の被保険者がみずからの老後に備えまして積立保険料を拠出しまして、制度がだんだん成熟してまいりますと、いわば積立保険料がその老人医療の何がしかを賄うというような仕掛けを考えていこう、それまでの間は公費をそこに入れることによりまして賄っていこうという構想、ちょっとアバウトな言い方でございましたが、そういう構想でございます。  これにつきましても、私どもとしては高齢者を保険の支え手としても位置づけるという考え方がはっきり出ている点、あるいは将来これから老人医療費がふえていくところについてまで視野に入れた構想を考えておられる点、そういった点については私どもとしても十分参考にし考えていかなければならないと思いますけれども、実際、制度を仕組む面から考えますと、制度が成熟するまでの間、仮に積み立てでやりましても巨額の公費負担というものが出てくる、それをどうしていくか。  そうしますと、制度移行期の現役世代の負担というものが特に重くなるというような点をどう考えていくか。あるいは積み立てということについて、これは当然そういうことが出てくるわけですが、いわば運用益収入のリスクというものをどういうふうに考えていくかというようなことで、医療という短期的な需要と申しますか、それとの接合をどう考えていくかというような点についてさらに克服をし、検討しなければならない問題は残るであろうというふうに思います。  これをも含めて、先ほどのようなことで全体を検討していく際のこれも一つの考え方として十分検討させていただきたいというふうに思っております。
  44. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 もう一つ厚生省の会計課長の堤さんみずからが提案されている、ドイツ制度を御参考にされているのではないかなと思いますけれども、いわゆる老人医療と被用者年金制度をリンクするという制度を提案しているようでございまして、老人医療に被用者年金の方から拠出をしていくというような制度かと思うわけでございます。  なかなか複雑でございますし、年金制度もちょっと違うのかもわかりませんから全く同じように比較することはできないかもわかりませんが、日本に合った形でということで堤さんが御提案されているようでございますので、これもまたどういうように評価されているのかお願いします。
  45. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今お挙げになりましたものは、いわば私案として堤氏が出したものでございます。確かに実務をやってきておりますし、それなりにプロ好みの案になっているなというふうに思いますが、またその分だけ一見複雑だと思われがちなところも確かにあるのかなという感じもいたしております。  被用者年金制度とリンクをさせまして、被用者年金受給者を被保険者とします新たな保険制度を創設して、被用者OBをやはりこれも国民健康保険から切り離しまして、被用者グループあるいは国民健康保険グループそれぞれ独立をしまして制度運営をしょうという点では先ほどの連合のと一脈通ずる案になっております。みそは被用者年金制度とリンクをさせ、被用者年金受給者からやっていくということだろうと思います。  これにつきましても、この新たな保険制度の財源ということがやはり問題になるわけであります。現役の被用者年金の被保険者から年金保険料に上乗せしまして、いわば世代間扶養の考え方に基づく医療連帯保険料を徴収するということになっておりますけれども、この新たな保険料徴収ということについてうまく理解が得られるであろうかというような点がやっぱり一つあるだろうと思います。  これも先ほどと同じことになりますでしょうけれども、就業構造が変化をする中で、やはり中高齢者を相対的に多く抱える国民健康保険制度をどうするかということとの裏腹でないとなかなか成り立たない、そういう意味での課題がそこに残っているだろうと思います。そういう意味では、克服する課題も問題もそれなりにやっぱりあるだろうと言わざるを得ないのかなということでございます。
  46. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 幾つかの案について厚生省として今どう考えているかを聞いたわけでございますけれども、いずれにしても、物によっては全部税で見ろというのもありましたけれども、やはりそれなりの負担を高齢者がしなければいけないということだと思います。  ちょっと数字の確認というか、今、日本で七十歳以上の高齢者で保険料を支払っている人というのは全体でどのくらいいるのか、それでどのくらいの金額かということと、それから被用者保険の被保険者の被扶養者となっているために保険料負担を免れておられる方々というのがどのくらいおられるのかということについて、簡単にお願いします。
  47. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) データの関係で平成五年度で、かつ政管健保と健保組合、それから市町村の国保、これでほぼカバーしていますのでそれで申し上げますと、七十歳以上のお年寄りの方の数がトータルで千十八万人でございます。そのうち保険料を納めている額が五千四百億円でございまして、全体の保険料の四・二%でございます。それから、保険料を納めてない被扶養者の数が三制度で二百四十七万人、千十八万人の中の二四%という数字でございます。
  48. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 実はほかにも私は教えてほしいというのがあったんです。  例えば公的年金等控除というような制度があるわけですけれども、これを受けることによって保険料負担がないという方々はどのくらいいるのかとか、それから仮に公的年金等控除がなければ保険料はどのくらいふえるのかというような問題とか、被用者保険の被扶養者から高齢者が除外されると高齢者が納める保険料はどのくらいになるのかということをちょっと聞いてみたんですが、そういう数字はなかなか難しくて出ないということでございました。  ただ、我々地元で、例えば田舎の方に行って山の中で聞いてみると、国民健康保険の加入者の中で所得なしというジャンルに入ってくる方々が例えば七割とか八割とか、そういうことで所得割が免除されるという方がたくさんおられるので、その辺をどう考えるのかということをこれから考えなきゃいけない、それも七月には抜本改革の答えを出さなきゃいけない。そのためのベースになる数字がわからないというのはいささかどうかなという気がいたしましたので、ぜひそれは推計でもいいからやっぱりきちっと出してこれからの議論をしないといけないのじゃないかなと思います。  今いろいろなお話を申し上げました。最初にきょうお配りしたここから始まって、老人医療を保険で賄う仕方等々、いろいろ議論ありましたけれども、最後に大臣のこれからのこの問題に対する基本的なスタンス、私はより保険原理に基づくものになるべきかなと思っておりますけれども大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  49. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今のいろいろな御議論をされている中でも老人医療制度だけを切り離して改革するというのは難しい。むしろ総合的に考えるべきではないかと思っております。  当然、老人医療保健制度の場合には高齢者経済能力というものも考えなきゃいかぬ。しかし、基本的には高齢者も若い世代もお互いが支え合うという観点なしにはこの社会保障制度は持ちませんから、お互い給付と負担をそれぞれがするんだ、給付を受ければ負担もするんだというような公平な改革案というものを念頭に置くべきだし、そして、これから介護保険制度が導入されます、それとの整合性も考えなきゃいかぬ。  要は高齢者と若い世代というのはどのような給付と負担の均衡を図るかということでありますし、基本は自助努力でありますが、日本の社会保障制度の成り立ちを考えますと、それは社会保険方式、この仕組みを維持すべきだと。そういう中で公費はどの程度負担すべきかという点も考えなきゃなりませんので、その点の議論を踏まえまして総合的な改革に踏み込むよう検討していきたいと思います。
  50. 塩崎恭久

    ○塩崎恭久君 最後に一言だけ。  今、大臣からお話しありましたように、給付と負担の公平性、そしてまた大事なのはやっぱり世代間、世代内、それから制度間の公平性だと思いますので、この辺、これはもう日本の将来を決めるような大事な社会保障制度改革でありますからこの委員会においてもきちっと議論をしていきたいと思います。  ありがとうございました。
  51. 水島裕

    ○水島裕君 私も厚生委員会で随分話をさせていただいております。いつも少しでも国政に役に立てばということでお話ししているわけでございますし、それが少しずつはお役に立っているような気もいたしますけれども厚生省もなかなか動きが悪いというか、悪い意味で足腰が強くてなかなか動いていただけないというところもございますので、科学技術は足腰が強いのは大切ですけれども厚生省は余り足腰が強くなく、今度七月にびっくりする抜本改革ができるそうでございますけれども、それをぜひ期待したいと思います。  大臣は、ほかの方がかわってもいつもそこにいらして大変だと思いますけれども、なるたけわかりやすく役に立つことだけを申し上げるようにいたしますので、どうぞまたところどころで御発言を願えればというふうに思います。  まず一番最初に、早速、大臣にお伺いしたいと思いますけれども抜本改革、非常にこれは重要でございますけれども抜本改革をするときに全体の医療、医学というものが論理的、科学的になっていませんと、抜本改革をするとあちこちに矛盾が出てきたり問題点が出てきたりするという話からまずしたいと思います。  今度の抜本改革一つの柱は恐らく情報開示、情報提供だと思います。そうなりますと、レセプトとかインフォームド・コンセントというのが重要になってくると思います。その二つに関して現在の問題は、一つは、がんみたいなもの、あるいは人によってはがんよりか教えてもらったら困る、そういう病気をどうするかというのを早く決めておかないと、レセプトにしましてもインフォームド・コンセントにしましてもうまくいかないのが一つ。それからもう一つは、いわゆる保険病名ということで、薬を使ったり検査をするのでやむを得ず、こういう国会で言うのもどうかと思いますけれども、にせの病気を書いているというのを何とかしないといけないわけであります。  つまり、今度は仮にレセプトを患者さんに見せるということにしますと、例えば難病にがんの薬というのは非常に効くわけですね。大概はそういうふうに書かないのですけれども、人によってはがんの名前を薬を通すために書く。それから、がんの薬というのも意外とがんの種類によって許可を得ているものと得ていないものとがありますので、ある患者さんに例えば胃がんがあっても、ほかのがんを一緒に書いておかないと許可が通らないと。今度、そういうのを患者さんが見ますと、リューマチの患者さんなのに私はがんもあるんですかということになってしまいますし、私には三種類のがんがあるんですかということになってきて、非常に混乱を来すわけであります。実際、私の同僚なんかも、リューマチを見せた同僚でございますけれども、家族の人が泣き泣き来るので、やっぱりがんもあるんですかとかと、いろんな問題点が既に出てきているわけでございます。  がんみたいな病気のインフォームド・コンセントをどうするかということと、いわゆる保険病名とか、そういうことをしっかり決めていかなくちゃいけないというのと、それからまた、後で申し上げますけれども病院機能分化、分担。大病院はどういうことをする、それからホームドクターはどういうことをするということも早くちゃんと決めておかないと、診療の情報開示をこれからしよう、情報を出そうというときに、ある病院にばかりたくさん人が行っちゃったりとかいうことがございますので、その辺、今までの医療では結構そういう科学的なところがおろそかになって論理的じゃないところがございますので、本当はまずそれを直さなくちゃいけないのだけれども抜本改革をするのでしたら、それも一緒に検討していただかなくちゃならないので、その辺、大臣、御意見をお伺いいたします。
  52. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 専門的なお話を伺って大変参考になりますが、今回の総合的な改革に取り組む姿勢として、保険制度はもちろんでありますが、医療提供体制、いわゆる病院機能分担、これも当然視野に入れて総合的な改革に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  53. 水島裕

    ○水島裕君 もう一回いろいろ出ますので、局長から御意見をお伺いできればと思います。  それでは、各論に入りまして、大学病院のような大病院と、それからホームドクターの関係についてお尋ねしたいと思います。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕  大学病院のような大病院役割ということはいろいろディスカッションされていまずけれども、一般的に医療とか経済面のことがディスカッションされるんですけれども、やはり私はそのほかの大きな任務として教育とか研究とか、それから情報提供というものがあると思いますけれども、それは総論的でございますけれども、健政局長、いかがでございましょうか。
  54. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 大学病院についての機能ということでお尋ねになったと思いますが、私ども理解しております大学病院機能というのは、今、先生がおっしゃいましたように、診療、それから研究、教育、この三つが三位一体としてあるというふうに理解しております。
  55. 水島裕

    ○水島裕君 それでは、大きな病院に風邪のようないわゆる軽い急性疾患の人が行くとか、それからコントロールができている慢性疾患、糖尿病なんかがいい例だと思いますけれども、そういう患者さんが非常に押しかけていくということがこれからの病院機能分担ということに関してはいろいろネックになるわけでございます。  例えば、名前を出して問題かもしれませんけれども、慶応大学病院の外来は一日五千人行っているわけですね。大体ほかの大学病院もそうですけれども、そういうところのお医者さんに聞いて、専門外来している人は別としまして、一般外来をしているお医者さんに聞いて、何人ぐらいはこういうところに来なくてもよさそうな患者さんかというと、大体五割ぐらいですね。ですから、五割ぐらいの人はむしろホームドクターに行ってもらうというんですけれども、どういうわけだかそういうところに行ってしまうということでございます。はっきり申しますと、それが半分に、半分といっても専門外来がございますから、例えば三分の二になって診療報酬を上げるとか、ほかのことをすればもっと確実な医療ができるわけでございます。  といって、今の医療制度では、そういう風邪引きとか高血圧のコントロールとか、そういうことで病院に来るなとはなかなか言えないので、現在も既に制度がありますけれども、特定療養費、ホームドクターとか、ほかの病院で、こうこうこういうことがわからないのでここをきちんと診断してほしいとか、あるいは治療方針を立ててほしいという紹介状を持って大きな病院、特定機能病院と言っているわけでございますけれども、そういうところに行く患者さんは一番理にかなっているわけですけれども、それ以外の人は来るなとは言えないから、どうしたらそういうのが抑制できるかというと、お金を余計に取るということぐらいしかなかなか考えつかないのでございます。つまり、特定療養費の枠をもう少しそういうところでふやして考えていったら、医療費の足しにもなるんじゃないかというふうに思いますけれども、これは保険局長でございますか。
  56. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに、患者さんの外来の特に大病院集中というのは我が国医療一つの問題点、非効率な医療になっているんじゃないかというふうに思っておるわけであります。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  やはり、本質的な問題というのは、医療に対する情報の提供といいますか、国民理解を深めていくということが基本だと思いますが、そればかりということではなく、やはりそういった負担の面においても何らかの差があってもいいということも考えられるわけでありまして、既に特定療養費制度というのがございますから、今、先生指摘のとおり、こういつたようなものをもう少し広げていくというのも一つの考え方だろうと思いますし、あるいはこれは国民的な合意が得られるということが前提になりますけれども、一部負担の割合とか、そういった面での調整というようなこともあるかもしれませんが、いずれにしても、その辺のところはこれからも私どもとしても検討課題ということにさせていただきたいと思います。
  57. 水島裕

    ○水島裕君 一回名前を出しちゃいましたからあれですけれども、慶応病院が五千人いる。今度、慶応病院ではこういう治療法をやっている、こういう診断ができるという情報を仮にどんどん出すようにということになりますと、ふえることがあっても減ることはないんですね。  ですから、これはかなり大きな問題で、三時間待って三分診療というのも、これも言い方がまずいと怒られてしまいますけれども高齢者などは病院に行って三時間ぐらい待つのがかえって高齢者も送り出す家族もいいというような人もおります。だけれども、そういうことでは本当はぐあいが悪いわけでございますので、やはり病院機能分担を進める何らかの施策というのをやっていかないと、これは抜本改革をやったら思わぬことになってきた、副作用が出てきたということにもなりますので、よくお考えいただきたいと思います。  それから、その次がもっと難しいことでございますけれども、こういうものも抜本改革の中に少しでも入ってくればいいと思いますけれども、大病院というのは、先ほど申しましたように、ただ患者さんを診療するのではなくて、やはり日本国としてどうしてもやらなくてはならない研究、教育とかということをやる義務があると言ってもいいと思います。  例えば、画期的な医薬品とか画期的な治療技術が出たときに、もちろんそういうものを最初から大学病院で開発するということも重要ですけれども、仮にそういうものがどこかでできたとき、あるいは外国でできたときに、それをいち早く日本できちっと評価しなくちゃいけないのであります。ところが、日本のいろんな今までの制度がぐあいが悪くてということもありますけれども、今度こういうことで国際協調するためにGCPというのができたわけでございますけれども、それにのっとりますと、より科学的、より倫理的でいい方向のはずなんですけれども、なかなかみんなが、一口に言っておびえてしまいまして、例えば臨床試験ですと、もうほとんど日本では進まなくなったりできなくなってきたという感じで、一口に言って、厚生省は全面的に賛成なさらないかもしれませんけれども、空洞化が起きてしまっているわけです。後の薬のところでお聞きしょうと思いましたけれども、ここで一緒にお聞きしますので、業務局長、大丈夫でございますね。  それで、けさも実はアメリカの医療医薬品関係者と懇談してきたんですけれども、そのときにこちらで説明しまして、恐らくそうだろうと、では日本に何を求めるかと言ったら、二つのことと。その一つは、臨床試験とかいうものをお医者さんがやるのじゃなくて、お医者さんももちろん中心になってやるんだけれども、リサーチスタッフ、例えばリサーチナースとか、それからコーディネーターとか、そういうのを日本ではっきりくっつけて整備しなくちゃまずうまくいかないというのが一点。それからもう一点は、治験をしてくれる医者に能力に応じてきちんと謝礼をすべきだと。その二つをしない限りはうまくいかないだろうと。  私ば、もう一つ追加するとすると、治験に加わってくださる患者さんのメリットを考えなくてはいけない、こういうことをしないと、多分これから空洞化が起きて、四、五年後は、ちょうどほかのいろんな日本の政策と同じように、外国から非難されるようにまずなると思うんです。  私は、非難されるからこういうふうにやれというのは一番好きじゃないんですけれども厚生省の方はそういうことを言わなくて、ただ私が正論を言っているとなかなか言うことを聞いてくださいませんので、将来非難されるとかと言うときっと少しは動きがよくなってくるんじゃないかと思いまして、決して全然動いてくださらないというわけじゃないわけでございますので誤解しないでいただきたいわけでございますけれども、そういうことになると思います。  もう一つついでに申しますと、きょうは文部省の方がおいでにならないので、もしかしましたら来週また質疑をやらせていただきますので、そのときに文部省の方に答えていただきたいと思いますけれども、非常に文部省にしろ厚生省にしろ決まりが厳しいんですね。仮に、我々がある建築物を建築業者に頼むというときは、法律は守ってくれ、法律に合う建物をつくってくれ、法律は犯さないでほしい、だけれどもこの値段で一番いい建物をつくってくださいというふうに頼むわけですよね。そのときに、大工さんが自家用車で来たり、大工さんは絶対歩いてこなくちゃいけないとか、そんなことは何も決めなくて、あとは会社の好きにやって、そのかわり、この値段で一番いい、医薬品の場合だったらGCPに合う治験をやってほしいというふうに頼むわけですから、私も将来はそういう姿がいいんじゃないかと思うんです。  ところが、それを日本全国でやってもきっと倫理的、科学的にいろいろ問題があるでしょうから、特定機能病院のうちの幾つか、あるいは特定機能病院の多くを、仮に名前を例えば特定試験研究病院とか、そういうふうに厚生省で名づけていただいて、そういうところでは今の請負制、法律にも反しないし、科学にも反しないし、倫理的にもきちっといける、あとはもう余り細かいことは言わないできちっとやるという制度でもつくらない限り、ここは臓器移植も反対されている方もいらっしゃるかもしれませんけれども日本だけは臓器移植はしないとか、日本だけは何とかしないとか、そういう国になるような感じがいたしますので、お答えによってはまた質問させていただきますけれども、これは業務局長からでございますか、よろしくお願いいたします。
  58. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 幅広い御専門のお立場からのむしろ御提言でございますので、よく勉強させていただきたいというのが本音でございます。  治験につきましてはいろいろ問題がずっと起きてまいりまして、その問題の中でいわば何が問題かというと、やはり治験を受ける患者さんが余り十分知らせられないままで治験が行われているのではないかという問題。  それからもう一つは、本来医療施設と治験を実施する製薬メーカーとの契約でございますけれども、治験を実施する医師の方に直接金銭の授受があり、それが、要はいわば治験疑惑ということで治験に対する国民の信頼性についての問題、懸念が出てくるといったようなことが、治験をやっておられる製薬メーカーあるいは医療施設あるいは専門医の方という範鷹の外から眺めた場合に、治験においては今申し上げたような患者さんの同意の問題や費用の透明化という問題が指摘をされておるわけでございまして、やはりそういう国民的な信頼を得ながら新薬の開発を進めていくという上に立ちますと、そういった疑念にもやはり明確にお答えしていく必要もあるだろうというふうに考えられるわけでございます。  それから、もちろん大変高度な専門知識に基づく治験の実施ですので、それを支える人的体制も大事でございますし、空洞化ということがあってはならないわけですけれども、同時に、現在の製薬企業、その多くが海外にも研究開発拠点を設けて、日米欧三極でむしろ同時に研究開発を進めていき、世界市場に乗していこうといったような戦略も持っているわけでございまして、そういう目で見ますと、国内の治験のデータが国際的にも通用できるものとして評価されるということも大事でございます。  したがって、先生よく御承知のとおり、この四月からICH、日米欧の三極の協議によります治験の基準を見直しまして、そのおおむねは従来からあったものでございますが、その中で三点ほど内容の強化をさせていただきまして、四月から一部実施し、準備が要るものについては一年間の準備期間を設けて来年四月から実施をするということで、現在各治験の実施機関にとりましてはいわば過渡的な状態といいますか、どういう体制で今後治験を実施するかということを前向きで検討しておりますために、当座、直ちに引き受ける治験の数が減っているということも事実だというふうに承っております。  ただ、これはシュリンクして受けないのではなくて、新しい治験の実施基準に照らして、それぞれの医療施設でどのような受け入れ体制をつくっていくかということを議論しながら進めているということで、その結果、新しく受ける治験の数がやや減っているということであろうかとも考えております。  また、CROのように、いわば日本の総合商社のようにまとめて注文して、うまく治験が総合的に進められていくという仕組みも将来的には理想の姿だろうかと思います。  ただ、医療世界先生よく御承知のとおり、大変専門分化され、医学会も大変多岐に分かれておりまして、治験で少し私ども相談しようと思うと六十から七十の医学会に相談するということで進めないといけないということで、大変高度化し、先端化し、専門分化しておる、いわば非常に高度な構造でございますので、その中で国民的な御理解をいただきながら、なおかつ所期の効果を上げていくということで、この四月から始まりました治験の実施基準を各治験の実施機関でよく御理解をいただきながら前向きに対応していただくということで我が国の治験の水準を上げていき、またさまざまな支援体制の整備と相まちまして、効率的な実施が進んでいくということを私どもとしては大変念願をしているところでございます。一例を申し上げますならば、そういった大学病院あるいは国立病院等の参画を得ながら治験の実施についての連絡協議会といったようなものもつくり、よく実情を聞きながら、新しい基準への適用についても率直な意見交換をしていこうということで作業も進めているところでございます。  とりあえず、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  59. 水島裕

    ○水島裕君 おっしゃっている御心配とか何かはもちろん全部よくわかってお聞きしていることでございまして、お聞きしていると、ちょっと問題というか、ぐあいが悪いのは、厚生省の方もよくわかっているのになかなか進めないというところが一番困るわけでございますけれども、多少はドーナツ化の現象が小さくなる可能性もあるかなという御答弁と前向きに受けとめておきます。  大臣、お答えいただかなくても結構ですけれども、事実関係だけ申しておきますと、我々医学界のことだったら大概わかりますけれども日本で生まれている多分画期的と思われる薬を日本で頼むのと外国に同じお金で頼むのと、外国はこうやって手で決めてサインしてお金を払えば、あとは向こうのCROその他がきちっとやってくれて、データもきちっとしているし、期限までに大体やってくれるし、しかも外国の一流の雑誌にも結果は載ると。だけれども日本でやったのではもう全部それと逆みたいなことになってしまうというのが一つ。  それからもう一つが、国立大学あるいは国立病院の方と、これは治験ばかりじゃなくてほかの研究会もそうですけれども、行いますと、途中でお茶菓子が出てもまだ国立病院の人やなんかは気にして食べない。それから、終わって食事が出てきても、それもすごい粗飯であっても。我々は帰りますから、それで帰るときは大阪まで、本州の中ですか、飛行機に乗っちゃいけないと。そういうことを我々、建築屋さんに頼むときに、大工さんに途中でお菓子は食べちゃいけませんとか、帰りは特急に乗っちゃいけませんとか、そういうことは言わないわけでございますので、もちろんすべて透明にしておいて、後で仮に何か問題があったときはそれを示すというのは大切でございますけれども、とにかく今のままではうまくいきませんので、ひとついろいろお考えいただきたいと思います。大臣も少しわかっていただけましたでしょうか。  それでは次に、時間の関係でホームドクター、しり切れトンボになればまた次回にさせていただくとしまして、ホームドクターについてお尋ねをいたします。  日本ではホームドクターというのが案外定着しないんです。もともと私はずっと大学病院で仕事をしてきた関係で、ホームドクターに関して理解がやや悪いというところもあるかもしれませんけれども、ただ私の同僚で若いうちある専門を持ったりして一生懸命医学をやった、それから研究もやって満足したと。だけれども、四十とか五十になって、これ以上大学病院とか大病院にいてもそれだけの価値はなさそうだし、私は患者が好きだし、人間が好きだから、地元の人たちを診て、ちょうどいいつてが大学病院にもあるから、問題が起きたり定期的な検査は大学でやってもらうということで、町でいわゆるホームドクター、厚生省はかかりつけ医と言うんですけれども、私は、かかりつけ医というと何かただかかっているだけでどんなお医者さんでもいいというような気がしますので、ホームドクターというといろんなことが十分できる人ということがわかりますので、そういうホームドクターの資格というのはむしろ医学全般で結構できないと。私は、重装備とかそういうこともホームドクターには必要ないし、そういう重装備すると、それだけまたもうけて取り返そうという気持ちも出てきちゃいますので、やはり体一つで、あるいは検査会社に出すとか、そのぐらいでもってやっていくから、より以上の実力を要求されるわけですね。  だけれども、私は、そういう人がこれからだんだんできてきて、一方ではホームドクター、一方では特定機能病院というシステムがいいのではないかと思いますので、そういうホームドクター、かかりつけ医の重要性、それから我が国で余り普及しないというよりは認められていないというようなこと、それから今後そういうホームドクターの育成をどういうふうにしていったらいいか、そういうようなことについて、これは健政局長でございますか、お考えをお願いいたします。
  60. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 先ほどの最初の方の御議論の中にありましたように、現在の患者さんの流れというのは大病院集中というか、そういう流れがあるということは認識をしています。  その背景としてはいろいろあると思いますけれども、今、先生がお話しになりましたホームドクターあるいはかかりつけ医、あるいはその以前には家庭医というような言葉も使っておりましたけれども、そういう方たちの重要性というか、そういうものが十分認識をされていないと。やはり、その背景としては、どうしてもかかりつけ医に対する地域の第一線の医療機関として位置づけていくという考え方が必要だというふうに考えておりまして、そういう意味で、私どもとしては、このかかりつけ医が地域におきます第一線の医療機関として身近な医療で対応し、また必要に応じて専門病院を紹介する、そういったような機能が大事だというふうに考えております。  そういう観点から、ぜひかかりつけ医を第一線の医療機関として位置づけて、医療機関の機能分担や連携を進め、まずかかりつけ医に受診をするという流れをぜひっくりたいと。そのためには、やはりかかりつけ医を支援するということも必要だと思いますが、その地域住民の方のそういったようなかかりつけ医に対する信頼の回復あるいは活性化ということが必要だというふうに考えております。  先生がお話しになりましたことに関連して申し上げますと、専門医あるいは認定医というものがございますけれども、そういうかかりつけ医の方もかつては大学なんかで専門的な分野で勉強をされ、あるいは経験を積まれて開業されるという方も多いわけでございまして、そういう意味で、かかりつけ医の方が専門医としての信頼を得るという観点から、そういう専門医制度について例えば広告ができるようにするといったようなことも一つの方法じゃないか。  ただ、現在の認定医あるいは専門医というのはさまざまな学会で行われておりまして、必ずしも基準が統一されていない。その中には、例えばプライマリーケア学会のようなところも認定医というようなものをひとつ認めていこうというような動きがあるようでございますが、いずれにしても、基準が統一されていないというようなことがございますので、先般、この関係の認定医制度をやっておられます協議会の代表の方にお会いをいたしまして、もう少し基準を統一してもらいたい、その上でぜひ、若干時間がかかる話でありますけれども、かかりつけ医の方もそういうことが広告ができる、表示ができる、積極的にできるというようなことにぜひ私どもとしては持っていきたいというふうに考えております。  その他、生涯研修ですとかあるいは在宅医療に対する取り組みですとか、幾つかの点についても私どもとしてはやっていかなきゃいけないというふうに考えております。
  61. 水島裕

    ○水島裕君 これは大変議論の多いところだと思いますが、私、あえて追加させていただきますと、一つは、包括払いみたいなものをホームドクターに入れて、この人をちゃんと管理していてくれたら幾らとかいうような制度もいいと思いますし、それからやはり診療報酬、かかりつけ医はどうしても高額医療とかそういうことはできないわけでございますので、そういうことをしなくても経済的にやっていける診療報酬体系というものの見直しというようないろいろなことがあると思います。  それでは次に、医療費が高いというのはいろいろな原因がありますけれども、高額医療費の抑制ということについてお話ししてみたいと思います。  それで、御存じのように、一カ月で一千万円を超える超高額医療費というのが平成八年ではついに六十七件、平成七年ではたしか三十八件だったわけでございます。一月にとにかく一千万かかる、ひどいのは、ひどいと言ってはいけません、二千万円かかるわけであります。そういう方がどうなったかというのを調べてみますと、平成七年では、データが出ているわけでございますけれども、上の十位のうち、次の次の月までに亡くなった方が九人、九割はもう亡くなってしまう方に、そう言っては悪いですけれども、非常に高額の医療をしていた。医療をしてもしなくても、多少不謹慎かもしれませんけれども、ほぼ同じだったというような感じでございます。それから、三十八人の方もそれ以上生きた方はわずか七人であったということですから、一口に言うと、そういうのはむだなことをしている可能性がかなり高いわけでございます。  そこで、今度、情報公開とともに、私は多少契約的な、いい意味での契約的なことを日本でも入れていかなくちゃいけないと。つまり、本人の意思、リビングウイルとか患者の自己決定権とかそういうものを入れて、それを患者に聞くか家族に聞くかは別としまして、これだけの高額医療をすればもしかすると数日生き延びるかもしれないけれども、まあまあこうこうこうだというようなことで、やはり終末医療ではもうちょっとインフォームド・コンセント的な精神を入れて余りにも高額な医療はしないようにしたらどうかという考えでございますけれども、いかがでございましょうか。
  62. 谷修一

    政府委員(谷修一君) まず一般論として、医療従事者側から患者さんの方に十分な説明をするということは基本だというふうに考えております。そういう観点から、現在国会に提出をしております医療法の改正案において、医療従事者側から適切な説明を行い患者理解を得るということの努力規定を設けているところでございます。  今、先生が直接お触れになりましたのは、このリビングウイルあるいは末期医療におきますいわゆるインフォームド・コンセントあるいは説明ということだと思いますが、当然のことながら、末期医療の段階においてもそういうことを十分説明するということは必要だと思うし、むしろ非常に重要なことだと。そういう意味で、今回の医療法の中で設けております努力規定というものをさらに十分周知徹底をして、理解を得るようにしていきたいというふうに考えております。  ただ、これは私の方から申し上げることかどうか。その際に先生がおっしゃったのは、これ以上続けると医療費が何千万にもなりますけれどもどうしますかという、そういう意味も含めて言われるという、そこのところはそれぞれの場合場合の判断だろうと思いますので、それについての答弁はこの程度にさせていただきます。
  63. 水島裕

    ○水島裕君 私もそういうことを申し上げるべきでなかったのかもしれませんけれども、最後で申し上げようと思いましたけれども医療費が今、公的に援助されているわけですけれども医療の中には、値段が高くて、やったら多分少しはいいんじゃないかなという医療がたくさんあるわけでございますね。私は、そこまで公的な資金で面倒を見る必要はないんじゃないかと思います。  そういうものに関しては、やはり自己負担かあるいは民間の保険とか任意のものとか、そういうふうにだんだん変えていかないと、やっぱりこれをやったら少しでもいいかもしれない、それをやらないのは人道的におかしいということを言っていますと、これはすべての医療を全部やらなくちゃいけないということになって、あちこちに管を差し込んだりということとまた同じみたいになってきてしまうわけでございますから、なかなかこういうのは現場をきちんとわかっていないと言いにくいことではございますけれども、やはりその辺も思い切って議論をするだけはしていかなくちゃいけないんじゃないかと思います。  ついでに、今度は高額の器械ということについて申し上げますと、例えばCTとかMRI、これは画像診断する器械でございます。それから、結石の粉砕機、尿管結石とかそういうものを粉砕する高額の治療器具でございますけれども、それが外国と比べてどうかと申しますと、例えばCTでいいますと、これは平成五年、六年のデータですけれども、アメリカが人口百万人当たり一四、フランスが七・五、ところが日本は六一もあるわけですね。つまり、CTを持っている病院がアメリカ、ヨーロッパよりも四倍とか五倍、七倍ぐらい多い。それから、MRIは米国とやや同じでございますけれども、フランス一・四、ドイツ一・四で、日本が一二・五、十倍なわけです。  ですから、あること自体は私はいいことだと思いますけれども、何もあちこちの病院でこういうのはできなくて、隣近所にどこか一カ所にあれば済むし、それほど撮らなくても済むときも撮っている嫌いがありますし、一回器械を買っちゃいますと、どうしてもたくさん使わないとペイしません。そういうこともあるので、やはり高額の器具の配置ということについても何かアイデアをお出しになるといいんじゃないかと思いますけれども、これはいかがでございましょうか。
  64. 谷修一

    政府委員(谷修一君) この高額医療機器の適正配置ということにつきまして、私どもいろいろ議論をしてはおりますが、具体的に配置を、先生がおっしゃるような意味で規制をするということはなかなか現実問題として非常に難しいという感じがしております。現在、私どもが進めておりますのはむしろ高額医療機器の共同利用、ひいては病院の開放、ベッドの開放ということも含めて共同利用ということを推進しておりまして、そういう意味病院と診療所の連係事業というようなことを都道府県を通じて若干の補助金等も出しながらやっているところでございます。  また、今後、医療計画において、従来任意の記載事項となっておりましたものについて幾つか必要的、つまり必ず盛り込むべき事項ということを医療法の改正案の中でお示しをしておりますが、その医療計画の中で、医療提供施設の設備、器械あるいは器具の共同利用あるいは医療施設の相互の機能分担あるいは業務連係というようなことについても医療計画の中に記載をして、それぞれの地域でそれに合わせて対応していただくといったようなことを考えておりまして、そういうようなことを通じて共同利用ということについて推進をしていきたいというふうに考えております。
  65. 水島裕

    ○水島裕君 医療費の抑制については、そのほかにゾロ新のような不必要な医薬品を減らすようにとか、予定外に高収入になった薬価を考えるとか、そういうこともありますけれども、それはお答えも大体わかっていることだと思いますので、今の谷健政局長のお答えで、こういうことはなかなか制度でうまくいかないとおっしゃっているのはもっともだと思いますし、私の言っているのもなかなかやりにくいことを言っているわけですのでそう簡単にいくとは思わないんですけれども、ただこういうことをやっていかないと、日本医療費医療システムというものはうまくいかないので、私は、もしかしましたらそういうことがすべてうまくいくのは、ユーザー、患者さんの方の知識とか判断力とか責任というものをもっとアップしていただいて、それでいろんなことを非常に自由にする、規制緩和して市場原理を入れるとか需要価格とかいろんなことにしていくというように、そういう点からでもいかないことには、一つ一つ考えていってもなかなか、規制すれば規制はいかぬということにもなりますので、うまくいかなくちゃいけないので抜本改革のときはひとつその辺まで踏み込んでやっていただきたいと思います。  私の言っていることがすべてに通用するかどうかわかりませんけれども、今度のびっくりする抜本改革一つ薬価の公定制の廃止ではないかというふうにひそかに思っているわけでございますが、それはそういう意味では非常にいいわけでございますけれども、心配するのは、それによって何か副作用が出てくるのではないかということで、特にそういうものだけ、どこかからしなくちゃいけないわけですけれども、自由薬価制にしまして、ほかのことはそのままにしてそこだけやるというと結構ひずみが出てくるものなんですね。  私は、先ほどのように患者さんの知識が上がって、判断力もできて、それから責任もある程度分かち合うというふうにして、それからもちろん医者は当然でございますけれども、そういうふうにして薬価を自由化すると非常にうまくいくと思いますけれども、何にもほかのものが変わらなくて薬価だけを自由化にしますと何か問題が起きてくるんじゃないかというふうに思いますので、これはやるべきだと思いますけれども、どういうことを懸念されているかということをお答えいただいて、またそれをお聞きして、今回あるいは次回にでも申し上げたいと思います。
  66. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに先生指摘のとおり、やはり患者国民サイドの知識なりあるいは判断力なり、また自己責任というものの自覚というようなものがベースにありませんと、どんないい制度をつくっても十分機能しないという面があります。  ただ一方、鶏と卵どちらが先かみたいな話になりますが、制度がこのままではやはりそういう面もなかなか生まれない面もあるわけでありまして、薬の問題について申し上げますと、やはり私どもとしては一つ製薬産業に与える影響ということが一番懸念されるということで考えておりまして、そういった面での対応なりあるいはどういうような影響が出てくるかというような分析なりというものを十分した上で、無理のないような仕掛けというものを考えていくべきだろうというのがまず一点であります。  それからまた、医療機関におきましてもこれは薬価基準だけを廃止すればいいということではありませんで、当然これは現在の我が国医療経営の中では診療報酬薬価基準制度というのは一体的なものだというふうに考えておりますので、そういった意味では、やはり診療報酬体系あり方薬価基準制度の抜本的な改革というものは同時進行しなきゃいけないだろう、このように考えておるわけであります。  それからまた、当然のことながら、国民といいますか、患者さんも従来とはまた違った仕組みになりますから、そういった意味での理解を深めるということは不可欠だというふうに思っておりまして、いずれにしてもあらゆる分野に大きく影響が出てまいりますので、そういった面について十分配慮いたしまして、できるだけ円滑な移行といいますか、無理のない形というもので実施していきたいというふうに考えておるわけであります。
  67. 水島裕

    ○水島裕君 この点は厚生省ともおおよそ意見が合うんじゃないかと思いますけれども、ここでいろいろまたディスカッションしていても時間のむだということもございますので、いろいろ問題点を検討されましたらぜひそれを一度見せていただきまして、また意見でも言わせていただければと思いますので、これはこのぐらいにいたしますけれども、恐らくいい結果になるのではないかというふうに思っております。  それから次は、厚生省とこれは多分意見が合わないと思うし、将来はぜひこれは改革していただかなくてはいけないんですけれども、将来、銘柄別じゃなくて一般名処方をする、それは一つの方法であって、どの時点からするか、そういうことに関してはいろいろ意見があるし、違うかもしれませんけれども、本質的にはそういう制度があってもいいと思いますけれども、その場合に、一番最初に申し上げましたように、現状が極めてぐあいが悪いわけですね、そういうことをするのには。例えば、一般名収載、一般名で処方するというと、ほかのいわゆるコピー商品、ゾロのどれを使ってもいいということになります。今、日本ではあるものと同じ薬が、最近調べたわけじゃありませんで、ちょっと前ですけれども、五十とか七十あるんですね、同じものが、ひどいものになりますと。そうすると、そういうものがすべて同じ価値だということは到底言えないのであります。  私も研究一つとして臨床薬理なども専攻しておりますので、もう十何年前だったですか、痛みどめの薬を、全く同じ成分のいわゆるコピー商品を五つ自分とか患者さんに飲ませてみて血中濃度をはかりましたら、そのうち二つは全く血中濃度が上がってこないんですね。ですから、コピー商品といってもコピーじゃなくて全く何でもない、薬でも何でもない。ですから、我々が一般名処方を書いてそんな薬が出たのではたまったものじゃないわけですね。  ですから、そういうことが、例を言えといえば幾らでもございますけれども、毒性につながるパイロジェンとかそういうものもございますけれども、それも生物製剤なんかを調べてみますとこんなに違うんですね。確かに厚生省に出す書類は違っていなくて認可されるのかもしれませんけれども、実際にそれを公平に調べてみると違うわけでございますので、今の現状で一般名処方ということをすれば、極端に言いますと、我々が正しい治療患者さんにはできないということになるので、そういう問題があるわけでございます。  ですから、一つの注文は、なかなか制度でまたするのが難しいということがあるでしょうけれども、何かしらの決まりをつくって、少なくともコピー商品は十ぐらいまでは本来の意味薬価を下げるという意味で役に立つと思いますけれども、それ以上あっても益はなくて害ばかりあるわけでございますので、その辺を考えていただかないと一般名処方ができない、つまり薬代を下げる一つの方法が使えないということになるわけであります。  それから、逆に今度はどんどん安くなり過ぎちゃった薬の救済ということもありますけれども、ダブりますのでやめます。  それから、今のコピー商品についてもう一つ重要だと思いますのは、おととしでしたか、十一月二十二日の中医協の建議で、私はあれは大変評価しているわけでございますけれども、画期的医薬品は四〇%ぐらいの薬価を上げる、それから製剤上の工夫で明らかなメリットができたものは三%上げるということでございますので、ある製剤、これは製剤上の工夫でいいということになったわけでございますから、そのコピー商品をつくるときは、これは次回でもまた業務局長質問には出していなかったかもしれませんのでお答えいただければと思いますけれども、そういう製剤上の工夫などの場合は、人での同等性の評価がないと、いろんな工夫でそういう薬が成り立っているわけでございますので、そういうことがきちんと人で同じように得られるかどうかということがない限りはやはりこれはコピー商品とは言えないわけでございますので、そういうことをすべてクリアにいたしますと、初めて一般名処方というのが可能になってきます。  それからもう一つ問題なのは、仮に同じ薬をつくったといいましても、製薬会社の任務というのは薬をつくるだけじゃないわけですね。それについての情報をきちんとドクターに届けて、また何か問題があったらそれを厚生省に届けるなり自分のところで解決するなりしなくちゃいけないわけでございますから、ただ薬だけつくって、同じだからいいだろうと、こっちの方が病院にたくさん、そのときは病院にお金がもうからない仕組みになっているはずでございますけれども、どこでもうかるかわかりませんけれども、それだからいいということにはなりませんので、やはりコピー商品についての政策というのはこの辺できっちりしていただかないと、近い将来、一般名処方ということもできないということになりますけれども、もし御答弁がありましたら、業務局長、お願いいたします。
  68. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) コピー商品、いわゆる後発品、ゼネリックでございますが、これにつきましては、品質面での恒常性の問題、それから先生今御指摘されました情報提供、安全性情報を含めまして市販後の情報提供の問題、また安定供給の問題という三点の面から問題が解決されれば、医療機関における信頼性が確保されるんじゃないかという論議がかねてからございます。  最初の品質の恒常性につきましては、お話のとおり、承認段階では確認をいたしておりまして、その後の製造段階の恒常性の確保につきまして、最近は溶出性試験が技術的に可能になりまして、特に徐放性製剤、徐々に溶ける薬とか、あるいはフィルムコーティング製剤といったようなかなり高度な医薬品も出ておりますので、製品間あるいは製造ロット間での有効成分の溶出性に差がないかどうかといったような溶出性試験の規格試験として始めております。こういったような形で、より品質の恒常性を確保していこうということでございます。  また、市販後調査実施基準を定めまして、市販後の情報提供につきましても義務づけをするということで、医薬品の使われた後の情報提供につきましても先発品と同様の情報提供体制をつくっていくという課題。  また、安定供給ということで、売れ筋のものに集中的に販売をして薬価が下がった場合にはその生産をやめてしまうといったような、安定供給上の問題についてそういった問題がないような供給体制を考えていくという三点につきまして、後発品業界につきましても指導し、業界としても前向きに対応しているところでございます。
  69. 水島裕

    ○水島裕君 いろいろおわかりになっていることはおわかりになっている、同じ意見だと思いますけれども、要するに問題は書類審査だというところですよね。承認時点では同じだとおっしゃいましたけれども、その時点でも公平な第三者機関でやりますと違うということがしばしばございますので、ですからやはり数が余り多くなるともうどうにも収拾がつかなくなるということで、七十個あるのが全部同じかというのを公平な第三者が検討するというわけにはいかないわけでございますので、この辺は思い切った政策をしていただかないとぐあいが悪いんじゃないかと思います。  今後の医療ということに入ると思いますけれども、今の薬関係でもう一つ申し上げますと、先ほど申し上げた適応外使用の件でございますね。これも私どもも一生懸命厚生省にお力になるようにと思いまして、実は私どもの臨床薬理学会で研究班をつくりまして、十六分野、例えば循環器、呼吸器、がんとかという十六分野でそれぞれ五、六人ですから全部で百人の専門医を集めまして、これは厚生省の審査会よりは充実したメンバーだと思いますが、その人に現在日本にある薬で当然こういう、ちょっとくどいことを言って、もう業務局長も余り私がくどく言うから何とかせいとおっしゃるらしいのでそれを期待して申しますと、日本で今ある薬でこの疾患には絶対使った方がいいんだけれども許可になっていないという薬のリストにそれを評価してもらったわけでございます。  そうしますと、今の十六分野、全部の合計ですけれども、今ある薬で治験とかそういうことはなしで、書類だけちゃんと出してもらえばすぐにでも使えるようにすべきだと文句なしに五人中ほぼ全員が、たまには一人賛成していない人もいますけれども、賛成していない人でも本質的には同じ意見でございますけれども、これは後でお見せいたしますけれども、そういうのが八十八個あるわけですね。つまり、この人たちはこういう薬をその適応症に使っているわけなんです。使っていなくてはこんなことは言えませんから。  つまり、その人たちは、その人たちというのはほとんど全部医者でございますけれども、常に交通違反を犯しているわけです。スピード違反を犯しているわけです。スピード違反の方は、大概の人は高速道路に行くとどうしても少しスピード違反しますけれども、仮にスピード違反しなくても目的地まで行けるわけで、仮にと言うと問題ですけれども、スピード違反しなくても運転はできるわけでございますけれども患者のための医療をしょうと思ったら、スピード違反しなかったらできないというのが今の状況でございますので、これは本当に何とかしなければいけない。  特に、小児がぐあいが悪いわけですね。さっきの薬のことでも小児科のことを余り考えていないと。小児科の学会の人と会うと、いつもこういう行政では小児科のことを一つも考えてくれないと文句を言われるんですけれども、そういうときは、言っておきますけれども、私は厚生省の立場に立って、いろいろ治験とかそういうものを最初から小児にやると危険があるので、まず大人でやるので大人の方が先に承認になるからとかと、一生懸命厚生省をよそではかばっているわけでございますので、ここではいろいろ意見を言わせていただきたいわけです。  小児科の方のリストを見ますと、例えば抗生物質、各種細菌性感染症というのは全員直ちに認めてほしいと。つまり、私も完全にチェックしていませんけれども、抗生物質は子供の疾患にほとんど許可になっていないんですね。ですから、全部あれは交通違反を犯してみんな抗生物質を使っているんです。ですから、厚生省の言うとおりにやったら、子供が感染症になっても薬は使うなということじゃないかと思います。  この辺は随分何度も言ってきたんですけれども、解決はどこにあるかと申しますと、例えばPL法を使ってもうまくいかないかもしれませんけれども、現にこういうものを使っていて事故が起きたときのことなどを恐れていらっしゃる。これは厚生省もそうだし、製薬会社も恐れているんだと思いますので、そんな例数もないし、現にやっていることでございますので、そういうのは例えば医薬品機構の救済とか、そういうものを利用するとか、あるいはちゃんとインフォームド・コンセントをするとか、何かそういう工夫があるんじゃないかと。  これは直ちに経済効果になりませんけれども抜本改革というのは何も医療費が安くならなくてもよろしいわけでございますよね。ですから、そういうこともひとつ近い将来やっていただきたいと思いますけれども、これも業務局長でございますか。あるいは大臣ももし一言、大臣もこの間、医者が良心がとがめないように診療ができるようにいたしますと大分前に一回おっしゃっておりますので。
  70. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 二月二十日の当委員会先生からのお尋ねがございましたので早速調査をいたしましたところ、実はこれまでもかなりの努力をしてございまして、オーファンドラッグ制度、希少医薬品につきましては現在百九品目指定をしておりますが、それにつきましては優先審査をしております。  このうちの七割から八割程度につきましては追加適応症についての優先承認ということで、難病関係六十数品目、感染症関係三十数品目、その他がん等につきましても希少医薬品として追加適応を指定いたしまして、若干の補助金も出しながら承認申請を促進させ、申請があったものについての優先審査をしてまいっております。  また、その後、難病の研究班から適応外使用につきましてのガイドラインの意見も出てまいりまして、その中でも先生お話しのような幾つかの適応外使用につきましてのデータもございますので、それらにつきましては海外で適応追加例があるかどうか、また海外における臨床データがそろっているかどうかということをアンケート調査をしながら、そういった大変科学的な蓄積があるというものにつきましてはできるだけ承認申請が促進されるように、これは一義的には製薬企業から申請をしていただく必要があるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたオーファンドラッグ制度を活用して奨励するとか、あるいは研究班を組織して臨床データをさらに蓄積して求めていく。  また、四月から医薬品機構で治験相談を始めておりますので、適応症追加につきましても、この機構が専門家の御意見あるいは厚生省との協議をしながら医薬品企業に追加適応につきましての適切な助言、指導をするということで、適応拡大につきましては、ある意味では第一次対応といいますか、最も大事なものにつきましてはこれまで数年かかって希少疾病用医薬品として開発促進を既にやっておりますけれども、さらに難病等で必要な追加適応症につきましてはそういったデータの整備というものをよく聞きながら対応してまいりたいと考えております。
  71. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今のお話を伺っていまして、建前と本音の部分で、建前上は許されないけれども、実際の面においてはある程度規則を破ればその人のためによくなるという場合は随分あると思います。うそを言っちゃいけないというのはだれも認めるところでありますけれども、場合によっては、本当はがんなんだけれども、がんと言ったらこの人はショックを受けてだめだなという場合には、あえてうそとわかっていてもがんではないと言わざるを得ない立場もあると思います。  今回の問題は、認められていないけれどもこの薬を使えば、今までの医者としての経験、技術、見識、そういう自信を持ってこの患者に使えばいいんだけれどもと思っているんだけれども、規則があるから使えないというのは大変残念なことであるのは私は事実だと思います。  これはお医者さんと患者さんとの信頼関係、そして薬事法にも問題があると思いますが、お互いの医者と患者の信頼関係を保った上だったらば、医者の自由裁量権というのはどこまで認めるかという観点も大事だと思いますので、この抜本改革の中でどういう方法があるか、薬事法の申請の問題もあると思いますけれども、そういうものも含めて考える必要があるのではないかと思います。
  72. 水島裕

    ○水島裕君 ぜひ早急にお願いいたします。  車も随分動き出したようでございます。我々のデータもきちんとなりましたら差し上げますので、またこれを参考にして、ぜひ車がとまらないようにしていただきたいと思います。  あと幾つか質問もございますし、それから肝心の今度の法案、特に修正で小児科その他に問題があるということも触れたかったわけでございますけれども、また来週時間をいただけるかもしれませんので、そのときに残ったところをやらせていただくことにいたしまして、これで終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  73. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十五分開会
  74. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  公聴会の開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案の審査のため、六月六日午後一時に公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 上山和人

    委員長上山和人君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 上山和人

    委員長上山和人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  77. 上山和人

    委員長上山和人君) 休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 和田洋子

    ○和田洋子君 平成会の和田洋子でございます。  きょうは、発議者の長勢先生においでをいただきまして、ありがとうございます。質問をさせていただきます。  衆議院厚生委員会での修正は、五月七日に趣旨説明が行われ、その日のうちに採決にまで持ち込まれるという大変強引なやり方で行われました。このことは既に我が平成会の渡辺議員が本会議質疑においても申し上げたところであります。国会における審議の権威を踏みにじるものであると私は思っております。しかも、与党のみにより修正されたということは、もともと法律案は欠陥法案であったのではないかと言われかねないものであります。  このような乱暴な運営の修正案が可決されたことに対し、与党修正案提出者はどのように認識をしておられますか。また、大臣にもお尋ねをいたします。
  79. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 衆議院議員の長勢甚遠でございます。本修正案を提案した立場から御答弁をさせていただきます。  衆議院の審議は、御案内のとおり、四月九日から四月三十日まで、ゴールデンウイークの間も委員各位の熱心な三十五時間に及ぶ審議の中で進められてまいりました。当然、法案は提出した段階から国民各位に大変な影響を与える問題でもございますので、審議の状況あるいは国民の皆様方の御意見を踏まえながら、きちんとした審議を行うという方針で与党としては取り組んでまいりましたので、かつ大変緊急な大事な法案であるということでございましたので、その間もいろいろな面から我々与党として検討してまいりました。三十五時間に及ぶ審議も行われ、最終段階に参っておりましたので、国会での議論国民の動向等も踏まえて、与党として修正案を作成し、五月七日に正式には提案をさせていただいた経過でございます。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕  その日のうちに採決をしたということについての御質問でございますが、今申し上げましたような慎重な審議を踏まえた中での経過であり、かっこの法案が大変緊急を要し大事な法案であるという理解もとに、五月七日には丸一日六時間、政府案及び修正案についても各党から十分な質問をいただき、私自身も答弁をさせていただいたことでございますので、十分な審議を得て採決が行われたと、このように私は理解をいたしております。  そういう意味で、強引な採決という批判については私は当たらないと考えておりますし、与党として提案をさせていただいたことについても政党としての国民に対する責務を果たしたものと理解をしておる次第でございます。
  80. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 修正案がその日のうちに採決されて、強引ではないかというようなお話ですが、この修正案は、今、長勢議員がお話ありましたように、原案と全く無関係なものではありません。むしろ、原案の審議の中で薬剤の負担方式においていろいろ問題があるのではないかという御指摘は与党のみならず野党の議員からもあったわけであります。そういう意見も入れて与党の議員が勘案して修正案を出されたわけでありまして、修正案だけの審議を見れば一日でありますけれども、その間の審議というのは本会議委員会等で私は十分審議がなされたと思っております。  そういう意味において、この採決が急過ぎたのではないかというよりも、むしろ与党の皆さんが審議の経過、議論、野党の意見も踏まえて、原案にこだわらないで柔軟に対処した結果ではないかと私どもは受けとめております。
  81. 和田洋子

    ○和田洋子君 ありがとうございます。  原案の審議が長かったというのはよくわかります。そして、修正案が原案に沿った形で強引ではないというお答えですけれども、やはりこれは強引な採決ではなかったかという感じは私は否めないと思います。  次に、この修正案は途中までは与党三党及び民主党で固めていかれたものでしたが、結局民主党は修正案からおりられて、しかも法案にも反対をされました。この経緯については発議者はいかがに思っておられますか。
  82. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 健保法改正につきまして、民主党の方々とも修正等について協議をさせていただいたことは事実でございます。どのような修正をするかについて民主党の御意見も踏まえながら我々も真剣に討議をしたわけでございます。また、我々自由民主党としての意見も申し上げて御理解いただきたいという努力を一生懸命やりました。最終的に合意に至らなかったことはまことに残念に思っておる次第でございますが、政党としての御意見であろう、そのように受けとめておるわけであります。  提案者としてというよりも、個人の政治家としてこの作業に加わらせていただいて、政策だけでなくていろんなことを考えながら政党というのは行動するんだな、なかなか難しいものだなと。これからいろんな面で抜本改革をやらなきゃならぬときに、国民の前で政策を中心にしたわかりやすい政党の協議が行われればもっといいのになという思いをしたというのが私の個人的な感想でございます。
  83. 和田洋子

    ○和田洋子君 このたび、我が参議院の厚生委員会では衆議院で行われなかった公聴会が開かれることとなりました。これは大変有意義なことだと思います。五月七日の衆議院厚生委員会で修正案の提出者である自民党の津島議員が言われたように、既に昨年の十二月十九日の与党三党の確認事項において、公聴会などを通じて国民の幅広い議論を十分に聞き、その声を法案審議に反映させたいというふうにおっしゃっておられます。公聴会を持つことはむしろ当然のことであろうと思います。平成会としては、国民各層の御意見を伺う公聴会とは別個に、学識経験者等からの御意見を伺う参考人意見聴取も強く求めていきたいと思っております。  この修正案が提出された経緯を改めて質問をいたします。  特に、政府案に対する論点が多岐にわたった中で、施行期日は別として、特に外来薬剤一部負担、老人入院一部負担及び政管健保保険料率という三項目に修正箇所を絞った理由をお尋ねいたします。
  84. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 健保法政府原案に対しましては、各党からも国会の論議を通じてでもいろんな御意見がございましたが、その中で特に強く出された御意見、また与党としてもここは直した方が国民のためになると思った点に絞ってこの提案をさせていただいた次第でございます。  具体的には、薬剤負担につきましては、政府原案の一日一種類十五円という方式につきまして、事務が大変煩雑になる、また患者の皆さんにも大変わかりにくいのではないか、こういう強い御批判が各方面からあったところでございます。それを踏まえて、医療現場において実務的にもやりやすい、また患者の皆さんにもある程度どれくらいの負担になるかというのがわかりやすい、こういう観点、そしてまた高薬価シフトなり多剤使用という現在の薬剤についてのいろんな各方面から出されております御批判にも若干でも方向としてお役に立てるという方向で今回の修正を提案いたした次第でございます。  また、老人の入院一部負担につきましても、いわゆる通院の方々とのバランスにおいて今回の千円への引き上げというものがバランスがとれているかどうか、また、これから介護の問題が大変大きくなるわけでございますが、社会的入院を解消するという意味でもこの程度の形でよろしいのかどうかという御意見が強く各方面から出されたところであります。その点を踏まえまして、今後、介護保険法も施行になりますので、段階的にでも負担のバランスがとれるようにした方がいいという考え方からこの修正を提案させていただいたところであります。  保険料率の修正をお願いいたした次第でございますが、今回の改正で、被保険者の方々の過重な負担を避けるためにも、従来の最高の料率であった八・五%程度にとどめることが、審議会での答申でもそのようなことも述べられておりましたので、その方がより国民の皆さんに御理解が得やすいであろう、こういう考え方から修正をさせていただいた次第でございまして、いずれも最も各方面から出されている意見をよく検討したところ、この三点になったという経過であります。
  85. 和田洋子

    ○和田洋子君 修正案は薬剤費負担のあり方を大幅に変えたわけでありますけれども、この積算根拠、また政府原案にあった日数に係る要件を除外した理由はなぜだったのでしょうか、お伺いいたします。
  86. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 今御説明申し上げましたとおり、薬剤費の別途負担につきましては、政府原案の一日一種類十五円というやり方は大変事務が煩雑になる、そしてまたわかりにくい、こういうことが一番大きな批判であったと理解をいたしております。  煩雑である一つの理由は、毎日の日数を各種類ごとに計算をして、それを積み上げて患者の御負担を窓口で計算しなければならない、またそのことがよく患者の方々にも理解しにくいというところでありましたので、修正案では日数を計算することを省略させていただいて平均的な投薬日数に合わせて種類ごとに区分を設けて一定額を御負担いだだく、そのことによって事務負担も簡略化され、国民の方々にもどれくらいの負担になるかということがわかりやすくなる、こういう形で修正をさせていただいたということであります。
  87. 和田洋子

    ○和田洋子君 今の御答弁の中にもあったんですけれども、積算根拠としてお使いになった平均的な薬剤費とか平均的な投薬日数のデータというのはどういうところの調査によるものなのか、またその調査の結果は、どのような形で公表されているのか、お聞かせください。
  88. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 今回の修正案の考え方は先ほど御説明いたしたとおりでございますが、具体的には、老人の一日一種類分の内服薬の平均的な薬剤費の一割程度、これが約十三円でありますので、それの平均投与日数、一回当たりの処方の投与日数が平均しますと十二・五日になります。これを積算の根拠といたしまして種類ごとに、例えば第二区分の二、三種類につきましては二・五種類掛ける十三円掛ける十二・五日、これを少し丸めて四百円、このように算定をしたところであります。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  これらの平均投与日数の十二・五日という根拠は、平成六年の社会医療診療行為別調査結果の特別集計に基づくものございまして、この調査は厚生省が毎年行っているものであり、その平成六年の結果につきましては社会医療診療行為別調査報告薬剤使用状況の概要として公表されておるものであります。
  89. 和田洋子

    ○和田洋子君 もう一つ確認をさせていただきたいんですが、安価な薬剤に関しては従来から一処方合計額が二百五円未満の場合は一種類とみなすとのルールがあるというふうにおっしゃっておられますが、このような取り扱いがされている理由、その二百五円というラインの設定の理由が私にはよくわかりません。一般の国民がこの会議録を見てもすぐにわかるものなのでしょうか。わかるようにお知らせをいただきたいと思います。
  90. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 二百五円ルールというのは、一般にはそれほど知られていないルールかもしれませんが、医療現場では常識的なものと理解をいたしております。レセプトの事務処理の簡便化のために設けられたというふうに承知をいたしておりますが、種類数を考える際にこれが現場での常識でございますので、そのルールに沿って今回の修正案を提案させていただいたところであります。  二百五円ルールの根拠につきましては、正直言って、もともとある制度でございますので、政府からお聞き取りをいただきたいと思います。
  91. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この取り扱いは、基本的には医療機関における請求事務の簡素化を図るということから、かねてからこういう取り扱いをさせていただいております。ただ、この金額につきましては、これは平成六年の四月から二百五円、それまで百七十五円、こんな取り扱いになっておったわけであります。  これは、比較的安価な薬を何種類も使った場合に、請求書工事細かく品目等を書かなくていい、そういう取り扱いなのでありますが、その際の診療報酬上の取り扱いは、服用時点が同じで服用回数も同じ、いわゆる一剤という言い方をしておりますが、例えば朝昼晩この薬を飲むというときに、数種類の薬をあわせて朝昼晩飲むということがありますが、それを一剤、こういうふうに数えております。その場合は、種類数が何種類あっても、合計の薬価金額が二百五円以下であればそれは一種類というふうにみなす、こういう取り扱いでございます。
  92. 和田洋子

    ○和田洋子君 衆議院で修正案の提出者は、この修正によって高薬価シフトへの抑制効果もそれなり期待できると御答弁をされておられます。また、保険局長政府案になかったよさというものが盛り込まれているとおっしゃっておられますが、具体的にどのようなメカニズムで高薬価シフトが抑制されているとお考えなのでしょうか。修正案の提出者にお尋ねをいたします。
  93. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 先生、今お話しのとおり、今回の修正案では一種類のみの場合はゼロ負担とする、二、三種類は四百円とするというふうに段階別にしておるわけでございますが、同時に、服用時点が同時で服用回数が同じである薬剤薬価の合計額が二百五円以下の場合には一種類として勘定する、こういう二百五円ルールを前提にこの制度を運用することにいたしております。  正直言いまして、二百五円ルールをそのように使うということは政府原案でもそのようになっておったところであります。二百五円ルールをこのように使いながら、ゼロ区分を設け、また各負担区分を設けることにいたしましたので、例えば同じような効能の薬がある場合に、二百五円ルールを適用するような調剤をする場合には、例えば六種類が丸められて四種類になるという場合には当然負担が軽くなるわけでございますが、それが行われる場合には高薬価を使わないで同じ効能の低廉な薬剤が使用されるということもあり得ると思いますし、また、二、三種類使っておったのが一種類になるというケースも起こり得ると思います。また、医薬現場でそういうことが行われることを期待いたしておりますし、それが高薬価シフトへのある程度の抑制になるのではないかと期待しておるのであります。  しかし、これによってすべてそのようなことが起こるということを強制するものでももちろんございませんし、どの程度あるかについてはこれからの実態を見なければならないと思っております。
  94. 和田洋子

    ○和田洋子君 保険局長にもこの質問をお尋ねしたいんですが。
  95. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回、政府原案における薬剤の一部負担をお願いした趣旨でございますけれども、これは我が国における薬剤医療費に占めるシェアというのは非常に高い割合でございまして、それがなかなか下がらないという問題がございます。  その原因として、大きくは二つの理由があるというふうに考えておりまして、一つ我が国の場合は薬剤使用量が多いのではないかということがございます。それから、もう一つの原因がいわゆる高薬価新薬シフトするという傾向があると言われておりまして、この二つの要因薬剤費のシェアというものを高くしている、こういうふうに考えておるわけであります。  そういった中で、薬剤の多用ということについては、今回新たに薬剤に対する一部負担をお願いすることによって薬剤に対するコスト意識を持っていただくということから、その歯どめというものを期待しておるわけでありますが、一方、高薬価シフトの方は、私どもの案では直接的には歯どめになるような形のものは入っておりませんでした。  そこは、私どもとしては、やはり現在の公定価格を決めておる薬価基準制度そのものに原因があるというふうに考えておりまして、そういった意味で、これを解消するためにはやはり現行の薬価基準制度そのものの抜本的な見直しが必要である、こういう認識に立っておったわけでありますが、今回の修正では一種類については薬剤の負担はゼロとするということになりまして、そのベースとしてただいま御議論になっております二百五円ルール、こちらの方に薬剤の使用が進んでいけば、これは二百五円ルールが適用されるケースというのは安価な薬が多いわけでありますから、そういう意味では高価な新薬シフトというものの是正ということに役に立つというふうに考えられるわけでありまして、そういった意味政府原案にないよさが新たに入ることになったというふうに申し上げたわけであります。
  96. 和田洋子

    ○和田洋子君 今度はまた逆に薬剤のむだ遣いがふえるんじゃないかというおそれもあるんですね。これは皆さん何回も御質問をされたと思いますが、重複して質問させていただきます。  この修正の理由の一つに窓口の事務が煩雑になることなどへの配慮というお答えがありますが、しかし日数要件を外したことによって短い日数分の薬剤投与についてはかなりの負担増になってしまうというふうに懸念をされております。これは全く不公平であるというふうに思います。  また、どうせ同じ額の負担をするならできるだけ長い期間の投与を求めるというようなことにもなりかねない、そういうむだ遣いを誘発するおそれが大きいと思います。確かに療養担当規則では、例えば内服薬は十四日分以内などの上限が設けられているけれども、逆にその限度ぎりぎりまでの投与が施されるおそれが出てくるなど、かえってむだ遣いになるのではないかという懸念がありますが、いかがでしょうか。
  97. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) この修正案を作成するに当たりまして、党内また各方面といろいろな議論をさせていただきました。また、衆議院の審議においても、今、先生指摘のような問題も提起をされました。  定額制で考える以上、先と言われたようなことも含めてある程度の、何らかの不公平は免れないというのはやむを得ない点であると思っております。しかし、完全な定率制であるというふうにすることについてもまた現在では十分な御理解が得られない等々の問題もあり、それを総合的に勘案してこの案にさせていただいたところであります。  したがって、非常に短期の方々においては負担の割合が高いとか、あるいは投与日数が長期化をするのではないかという問題が全くないと言い切ることはできないと思います。しかし、平均的な形で提案をさせていただいておりますので、非常に許しがたいような不合理な結果が生ずることはないであろう、このように思いましてこの案にさせていただきました。しかし、これはやってみなければわからないという点もあろうかと思いますので、そういう点が起きれば当然見直しをしなければならない、その旨の規定も設けておるところであります。どうかその点、よろしく御理解いただきたいと思います。  なお、今御指摘のように、不必要に長期間の投与が行われるということは当然あってはならないことでありますし、また、医師の方々の良識の中でそういうことが起こることは私はあり得ないことだと信じております。そういうことがあるようであれば、当然審査の適正化等々において是正を図っていかなければならない、そういう問題であろうかと思います。
  98. 和田洋子

    ○和田洋子君 このことについては大変疑問が残ります。例えば、近くのかかりつけのお医者さんに行って診てもらって、一日、二日のお薬をもらって、そのお薬代が不公平になるということはみんなこれは感じるはずですから、ぜひにこのことは十分に検討をいただきたいと思います。  次に、これは政府原案でも指摘されていた問題でありますけれども改めてお尋ねをいたしますが、そもそも薬剤費の自己負担を設けることで薬剤の投与種類とか投与量、あるいは高薬価製品へのシフトといった問題の改善が図れるのでしょうか。患者が医師に投薬内容を云々できる状況にない今の医療現場の雰囲気の中で、余り現実性はないのではないかというふうに思われます。私たち、お医者さんに通っても、この薬がどうのこうのなんて言える立場にはないのでありますから、もっと配慮があってしかるべきだと思いますので、ぜひにお答えをいただきたい。
  99. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) その点も各方面から御意見としていただいておる点でございますが、先ほど御答弁いたしましたように、お医者さんにおかれましても不必要にいろいろなことをなさっておるということは信じがたいことでございますし、適正にやるようにという規則上の制限もございます。  そういうことは丹念に精査をしなければならないと思いますが、同時に、今、副作用問題ですとかいろいろな問題も起きている中で、患者の方々の薬に対する関心も深まっておりますし、またお医者さん方におかれましてもそういうことを患者説明しなければならない、それが一つ役割という認識も深まっておる中で、今、先生おっしゃったように、全くお医者さんの言いなりになっているということだけではないのではないか、また今回の改正がむしろそういう意味で良質な医療を確保する上でも役に立っていければ大変いいことではないかと思っております。  現実に、政府から健康保険法改正案が提出された後、私の地元でもいろいろな方々が関心を持って議論をされておられますが、そういう中では、先生今お話しのとは違って、やはり医療現場における投薬のあり方、薬のもらい方についての反省というか、現状認識についての評価という議論もたびたび耳にするようになりました。そういう中で、この修正内容を含めた改正案が適正に運用されて所期の成果が発揮できれば大変いいことではないか、このように思います。
  100. 和田洋子

    ○和田洋子君 同じ質問厚生省にもお伺いしたいんですけれども
  101. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 新たに今回薬剤の一部負担をお願いしましたのは先ほど申し上げたような趣旨でございまして、今、長勢先生からお話がございましたように、私どもも今回の新しい措置がまさに良質な医療の確保に役に立てていただきたいし、そういう方向に向かうことを期待しております。
  102. 和田洋子

    ○和田洋子君 国庫負担増への対応の問題を大蔵省にお伺いいたします。  今回の修正によって、伝えられるところでは、政管健保に対する国庫負担が約千六百億円ふえると試算されております。この部分の財政上の手当てについてどのように考えておられるのでしょうか、確認をさせてください。既に補正予算での赤字国債追加は必至であるというような報道も出ているところでありますけれども、その点については財政当局の見解はいかがなものでしょうか。
  103. 丹呉泰健

    説明員(丹呉泰健君) お答え申し上げます。  今回の修正によりまして九年度施行時期の見直し及び薬剤負担の見直し等によりまして、九年度の医療関係の国庫負担額は政府案を前提とした予算よりも千五百九十億円程度増加すると試算されております。この修正につきましては、国会における御議論の結果として私ども真摯に受けとめなくてはいけないと考えておりますけれども、御案内のように、現在巨額の財政赤字を有し、財政構造改革推進しなければいけない状況で、政府案に比べまして国庫負担が千五百九十億円増加することは財政当局にとりましてその対応のために厳しい課題を負うことになると考えております。  過去、こういった追加財政需要への対応は予備費の使用あるいは補正予算の使用によりまして行われておりますが、九年度におきます医療費に係る追加財政需要の規模につきましては、この法案の修正の国庫負担の増加のみならず、九年度の医療費自体がどういつだ動向を示すかということを見きわめる必要があると考えておりまして、現時点でその具体的な規模を確定することは難しいところでございます。  したがいまして、追加財政需要への具体的対応について現段階で申し上げることは困難でありますが、いずれにいたしましても、今後追加財政需要の規模を確定した段階で適切に対応していく必要があると考えております。
  104. 和田洋子

    ○和田洋子君 それが国民の負担になるということに納得がいきませんが、老人入院の一部負担についてお伺いいたします。――大蔵省は結構でございます。ありがとうございました。  老人入院の一部負担に係る修正についてお伺いいたします。  入院一部負担については、平成九年度以降、毎年百円引き上げられることになり、政府原案に比べむしろ負担増となっている、これが大きな問題になっておりますが、入院一部負担を毎年百円ずつ引き上げることとした理由、そしてその額の算定根拠をお示しいただきたい。また、この結果、老人の自己負担率は平成十年度、十一年度でどうなるのか、お伺いさせていただきたいと思います。これは発議者と厚生省にお伺いします。]
  105. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 老人の入院時の一部負担につきまして、修正を考えました理由といいますか、経過は御説明したとおりでございます。  いわゆる外来の方々が、例えば病院のサロン化と言われておるような批判がある、また入院については社会的入院といったような批判がある、こういう問題についてコスト意識を持ってもらおうというのが今回の改正一つの理由だと思いますが、そういう中で外来の方々については、今まで千二十円ですか、これを一日五百円という形で上げ、また薬剤費の別途負担もいただくことにしたのに比べて入院費についての引き上げは若干低過ぎるというか、バランスを失するのではないか、こういう批判もありました。また、今後介護保険法を施行する中で社会的入院を解消していかなければならない、こういう意味においてこの程度の御負担をいただくことで十分なのだろうかという批判もあったところであります。  そういう方向を見定めて、少しでもこの問題の解消の方向に向けて修正をすることが適当であると考えた次第でございますが、ただ一時期に大幅な引き上げをすることについては国民の方々の御理解も得られにくいであろう、こういう考え方から百円ずつ各年度上げさせていただくと、方向とりあえず提案させていただいた経過でございます。  何とぞ、よろしく御理解を賜りたいと思います。
  106. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回、老人の入院の一部負担金につきまして修正をいただきました御趣旨につきましては、今、長勢先生より御説明のあったとおりでございますが、それによりまして患者の負担増というものがどういう形になったかということでございますけれども、今回の修正によりまして、入院時の一部負担金につきまして、平成九年は九月からでございますが、一日千円ということでございますけれども、これは原案もそうなっておりますが、これによりまして現行の一日七百十円の場合に比べまして三百六十億円程度の患者負担増になります。  同様に、平成十年度で申しますと千五十億円、それから平成十一年度につきましては千三百五十億円程度ということになりまして、その結果お尋ねのいわば一部負担の割合というものにつきましては、老人の一部負担全体でございますけれども平成九年度、これ満年度で考えますと八・四%、それから十年度は同じく八・四%、それから平成十一年度において八・六%ということで、この間の医療費伸び等も勘案をして負担を見込みますと今のようないわば負担割合になってまいるということでございます。
  107. 和田洋子

    ○和田洋子君 また、先日の我が会派の山本委員への答弁で、保険局長は九年度九月実施医療保険全体で四千百億円の医療費抑制効果があると答弁をしておられます。老人医療費における医療費の波及効果、九年度九月実施ベース、そして九年度の満年度ベース、十年度、十一年度ベースについてお伺いをいたします。
  108. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 平成九年度、それから十年度、十一年度におきます老人の一部負担の見直しによる医療費への影響額でございますが、平成九年は九月施行で現行に比べまして千二百億円減少いたします。平成十年度、これは満年度になってまいりますけれども、そうしますと三千億円、平成十一年度におきましては、同じく満年度になってまいりますが、三千四百億円ということに減少をするというふうに見込んでおるところでございます。
  109. 和田洋子

    ○和田洋子君 最後に、厚生大臣にお伺いいたします。  今まで御質問させていただいたように、薬代のあり方一つとっても薬剤費抑制の効果が不明確であるなど、到底国民の納得を得られるものではないと思われます。そもそも抜本改革を先送りして患者へ負担をツケ回すという悪法であるのだから、大変失礼な言い方ですけれども、本当に原案も修正案も本質は何も変わらないというふうに思われます。  大臣は、今後どのような改革がなされようとも今回程度の負担増はやむを得ないとおっしゃっておられる。しかし、国民に負担増を求める場合は、政府のとるべき道はまず真摯な説明を行い、今後の展望を示した上で国民理解を得る努力をすることが必要だと思います。初めに負担ありきというのは政治家のとるべき態度ではないと思います。  改めて大臣の御意見をお伺いして、質問を終わらせていただきます。
  110. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今回の改正案は、確かに総合的な抜本的な改革案とは言えないと思いますが、これだけ長年いろいろ問題点が指摘されながら抜本的な改善策が講じられなかったと。そういう中で出てきた今回の案が、いよいよもう構造的な本格的な改正案をまとめなきゃいけないなという雰囲気になってきたと思うのであります。今回の案が出たからこそ、もうこれでは済みませんよという機運が私はだんだん盛り上がってきたと思います。  患者に負担をツケ回すなと言いまずけれども、もしそうじやなかったらば、だれも負担をしないのかというと、そうじゃなくて、関係ないと見えても税金か保険料かいわゆる患者さんの負担の組み合わせしかないわけですから、今回放置してどこも負担がないというと、これまた全然別の問題であります。そういうことからいって、患者が負担しようが、税金で負担しようが、保険料で負担しようが、お互い支え合っていかなきやならないのが医療保険制度だと思います。今回の案は十分とは言えないと思いますが、この第一次的な段階的な案を契機に、今後、今までの議論の経過、そしてなぜできなかったのかという抜本案の反省も含めて、この法案が成立次第、本格的な総合的な抜本的な改善策を厚生省としても責任を持ってまとめて、国民の批判に供するような本格的な案をできるだけ早い機会に提示したいと思っております。
  111. 和田洋子

    ○和田洋子君 長勢先生、ありがとうございました。  終わらせていただきます。
  112. 菅野壽

    ○菅野壽君 健康保険法等の一部を改正する法律案について二回り目に入りますけれども、今まで同僚議員が質問し、その間の質疑で不明な点がございますので質問させていただきます。  政管健保の財政見通しは、今日、三年どころか二年もつかもたないかというふうなことを言われておりますけれども平成九年の改正において、「三年程度の間収支が均衡するような財政計画とする。」とした医療保険審議会の建議との整合性について伺いたいと思います。
  113. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 政府原案でありますが、まず政府原案の作成過程におきましては、先生指摘医療保険審議会におきます議論、それから建議を踏まえまして改正案を策定して国会に御提出したわけでありますが、政府原案におきます財政バランスでありますけれども、政管健保の単年度収支差につきましては、平成九年度は五億円の黒字、それから平成十年度に五十億円の赤字、それから平成十一年度に二千四十億円の赤字というふうに見込んだわけであります。平成十二年度になりますと、四千三百六十億円の赤字が生じまして、ここでこれまでのいわゆる積立金であります事業運営安定資金を使い果たすような形になるというふうなことで、おおむね三年間は何とかやっていける、こういうような案を御提案させていただきました。  衆議院におきまして、これが御承知のとおり修正がなされまして、その結果、単年度収支差が平成九年度には三千九百七十億円の赤字、それから平成十年度には千二百五十億円の赤字ということでございまして、年度末にはこの積立金である事業運営安定資金は残高も二百六十億円しか残りません。したがって、平成十一年度には三千二百五十億円の赤字が見込まれますので、事業運営安定資金をすべて使い果たしてしまっても二年ぐらいしか財政が安定しない、こういう状況になってしまっているわけでございます。
  114. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、附則第四条の規定についてお伺いいたします。  改正案では、当分の間、政管健保の保険料率は、二年から五年の範囲内で厚生大臣が定める期間を通じて財政の均衡を保つことができるように定めることと規定されています。  厚生省は、この期間について現時点でどう設定するおつもりか、またこうした財政の均衡を保つという趣旨を聞かせてください。
  115. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の政府原案を示したときには、改正前の健康保険法ですと五年間を見通して財政均衡が保たれなければならないというふうになっておりましたが、経済動向が非常に厳しい、そういう中でそんなに長期間安定を保てるような、収支バランスが保てるような形のものはなかなか難しいということがございまして、今回の法案ではここを二年ないし五年の範囲で財政運営の期間を定めさせていただくことにいたしました。  ただいま申し上げましたとおり、このたび衆議院の修正が行われ、そういった意味では辛うじて二年の収支の均衡しか保てない状況にございます。  そういった意味では、財政の均衡を保つというこの期間中の措置としましては、積立金である事業運営安定資金をすべて取り崩しても二年間の収支のバランスしか保てないという非常に厳しいぎりぎりのラインにあるということでございます。
  116. 菅野壽

    ○菅野壽君 それでは次に、財政構造改革医療保険改革の問題点について伺いたいと思います。  財政構造改革については、去る二十六日に政府・与党財政構造改革会議企画委員会報告が提出されております。この財政構造改革と社会保障改革との関連について伺いたいと思います。  この点については、先日の本委員会質疑において、最終的には財政構造改革厚生省が進める医療保険改革の方針にそごを来すことはない旨の局長答弁がありましたが、この点についていかがでございますか。
  117. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 財政構造改革会議としての最終的な結論はまだ出ておりませんが、今、先生指摘のとおり、企画委員会の報告が行われておるわけでありまして、この財政構造改革会議政府・与党挙げての会議でありますから、この結論につきましては、私どもこれから医療保険制度抜本改革を進める上においても、やはり整合性といいますか、尊重していかなきやならない、こういうふうに考えております。
  118. 菅野壽

    ○菅野壽君 財政構造改革は、橋本総理も最も急ぐ改革である旨の発言をなさっております。一切の聖域を設けない歳出改革が予定されております。  そこで、懸念するのは、医療保険改革方向が、むしろ財政構造改革方向に引きずられ、たがをはめられるのではないかという点であります。財政構造改革は、当然のことながら歳出削減の観点から社会保障改革にメスを入れるものであります。しかし、社会保障の給付と負担は結局は国民の選択にゆだねられるべきものであり、歳出の削減先にありきというものではありません。  社会保障改革論議に多くの問題がありますが、厚生大臣はこの点についてどう認識され、どのような主体性を発揮して財政構造改革に取り組んでいらっしゃいますか、この点をお伺いいたします。
  119. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) これから高齢社会が進んでいくうちに社会保障関係の費用が増大していくということは避けられないと思います。そういう中にあって、我々長年社会福祉充実させていくということに日本国民政府挙げて取り組んできて、このような欧米に遜色のないような社会保障水準を持つような国家として成長発展してきたと思います。  そういう中で、予算を拡大していけばいろんな仕事、あるいは国民の要望にこたえられますが、同時に、財政状況を考えないと、これまた逆に借金によって首が回らなくなる、若い世代にツケを残す。この財政破綻状況は逆に経済成長の足を引っ張るというような状況に最近なってまいりました。  現に十六兆円ものお金が何の新規政策事業に使われないで、ただ今までの借金の利払いに回っていると。厚生省予算よりも上回るお金が、税金が、ただただ国債を買ってくれている人の懐に入ってしまうというこの問題をどう解決するかということで、今挙げて政府は財政再建、行財政改革に取り組んでいるわけであります。  そういう中で、歳出削減先にありきと言いまずけれども、歳出削減しなくていいんだったらば、私は構造改革は進まないと思います。財政に余裕があったら改革の機運は起こってこないと思います。どうにもならないからこそ今改革の機運が起こってきたんだと思います。  そういう中にあって、橋本内閣が財政構造五原則を掲げて来年度、十年度予算は九年度の予算のマイナスにすると。これで本格的に全省庁九年度予算よりマイナスにするとなったらば、厚生省はどうなるのかと一時本当に心配しました。しかし、ようやくけさの財政構造問題における閣僚懇談会におきましても、全体のマイナスは結構だけれども厚生省予算に関しては前年度よりマイナスにするのは不可能だと。いかに当然増を削減するかについては、構造改革を含めて抜本的に改革するようこれから進みますと。しかし、八千億増をいかに減らしても、さらに八千億以上、前年度マイナスになる分は全体で考えてもらわないと困るということで、厚生省予算に関しては、全体の予算としては九年度よりマイナスにはならないけれども、この当然増の八千億円をどの程度切り込むかにこれから本格的に検討すると。  そして、八千億円から三千億円切り込めるのか四千億円切り込めるのか五千億円切り込めるのか、足らざるところ、その分はどこかの省庁がさらに前年度よりマイナス予算を組んでくれないと十年度予算は九年度予算より一般政策費はマイナスになりませんよ、この辺をよく考えてくれということで各閣僚から御了解を得たわけでありまして、厚生省としては、当然増八千億円をいかに切り込むかの構造的な抜本策をまとめる。あと全体でマイナスというのは全省庁挙げてやる、この財政削減に取り組むということでありますので、厚生省としては政府の方針と思い切った改革案を提示するという整合性を今後の努力で果たしていきたいなと思っております。
  120. 菅野壽

    ○菅野壽君 ただいまの厚生大臣の御発言を聞いて非常に力強く思っております。何しろ実力大臣でございますが、そのように十分な御活躍をひとつお願いいたします。  以下、企画委員会の報告の内容に従って数点お伺いしたいのでございます。  まず、同報告は、「国民医療費伸び国民所得の伸びの範囲内とするとの基本方針を堅持」することとしていますが、しかし厚生省医療費将来推計においても国民所得の伸びをはるかに上回る国民医療費伸びが予測されております。今後、医療制度抜本改革により医療費適正化を進めていくこととしても、この効果には一定の限度があるのではないでしょうか。今後の高齢化の進展と経済成長の動向を勘案したとき、厚生省は本当にこの基本方針が妥当で実現できる内容であるとお考えでしょうか、お伺いします。
  121. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 財政構造改革会議の企画委員会の報告で、今、先生指摘のとおり、国民医療費伸び国民所得の伸びの範囲内に抑えるという政策目標が掲げられております。この考え方は、これはかねてから厚生省もこういう考え方を持ってまいりました。これは医療費伸びとそれから経済伸びとの調和を図る、そして医療保険制度の安定的な運営を確保していくと、こういう考え方でございます。  しかし、今、先生指摘のとおり、近年の経済基調から判断いたしますと、この目標は非常に厳しいものがございます。それがゆえに今まさに医療保険制度の財政危機というものを迎えておるわけでありますけれども、今後、この目標というものを掲げて、そしてできるだけむだのない医療保険制度というものをつくっていかなきやならないというふうに思っております。  そのためには、老人保健制度を初めとしまして、まさに現行の医療保険制度あり方そのものについて抜本的な見直しを図っていかなきやならない、このように考えておるわけでございます。  私どもとしては、医療保険制度につきましても経済との調和というものが図られた制度でなければ長期的に見て安定的な制度たり得ないというふうに考えておりますし、それからまた、とりわけ二十一世紀におきましては少子・高齢社会ということで子供の数も減ってくる、現役の数が減ってくる、そういう中でやはり世代間のバランス等々も踏まえてみんなで支え合うような制度をつくっていかなきゃいけないというふうに考えております。  そういった意味では、この政策目標というのはやはり今後とも堅持をしていく、そういう努力をしていくべきではないかということで私ども考えております。
  122. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、企画委員会報告では、「慢性疾患は定額払いとするなどその積極的な活用を図り、」としていますけれども、この表現は四月の与党協議会における医療制度改革方向で合意された内容と同じものと考えてよいのか、あるいは一歩踏み出した意味であるというふうに考えていいのか、厚生省の受けとめ方を教えてください。
  123. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私どもは本年四月に与党の医療保険制度改革協議会がおまとめになりました基本方針内容の趣旨と基本的に同じであるというふうに受けとめてございます。
  124. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、患者負担のあり方について年金制度との連携を踏まえ見直すとしても、年金制度との連携とは具体的にどういうことを指すと理解しておられますか、お示しいただきたいと思います。  他方、入院患者に対する年金カットなども検討項目とされているやに聞いておりますが、在宅療養患者との均衡等を理由に生活費相当部分の患者負担増を求める一方で年金の方も切り下げることは入院患者に二重の負担を求めることではございませんか。御見解を伺います。
  125. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  財政構造改革会議の企画委員会報告におきましては、年金制度との連携といった観点を踏まえ、患者負担のあり方を見直すということがうたってございます。これにつきましては、まさに生活保障といういわば年金の目的、性質、それから医療に伴います特別の出費を賄うという医療保険の給付の性質、こういったものにつきまして検討いたしまして、両方の給付がいわばカバーをしている需要というものを検討いたしまして、それらの適切な連携、分担を図っていくべきであるという御趣旨であろうというふうに思います。  そういうことでございますから、ストレートに入院患者に二重の負担を求めていくというような趣旨ではもちろんないのであろうというふうに思います。今のような年金あるいは医療、保険、それぞれがカバーする範囲を十分検討した上で、それぞれの適切な連携、分担を図っていくという見地は、今後の老人医療あり方あるいは年金制度あり方を考えていく場合に、これは大事な視点であろうというふうに思いますので、そういったことを踏まえまして、具体的な年金給付の水準なりあるいは老人医療における患者負担のあり方なりというものを考えます際には、そういう点を踏まえて検討していかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  126. 菅野壽

    ○菅野壽君 また、国立病院・療養所のあり方について、「廃止、民間への移譲を含め見直しを行う。」とされておりますけれども、これは現在の再編成計画の着実な推進意味するのか、あるいはこれを超えた内容理解してよいのか、お伺いいたします。  また、行政改革会議においては国立病院・療養所の外庁化も検討されているようですが、具体的な外庁構想があればお聞かせください。  また、国立病院等を外庁化した場合、国が果たすべき政策医療との整合性はどのようになっているのか、外庁化によって民間病院の経営を圧迫する懸念もあると思いますが、この点について厚生省の御見解を求めます。
  127. 小林秀資

    政府委員小林秀資君) 政府・与党財政構造改革会議企画委員会の御報告は、国立病院・療養所のあり方について、「廃止、民間への移譲を含め見直しを行う。」というふうに記載をされております。ただ、私どもこの具体的な中身については承知をしておりません。  現在、国立病院でも、この報告をいただくまでもなく、みずから改革実施している最中でございます。  その中身を少し申し上げますと、国立病院・療養所は、国として果たすべき役割、責任を適切に果たせるようその機能強化を図るため、再編成計画を策定いたしまして、昭和六十一年当初二百三十九ありました国立病院・療養所を百六十五に集約すべく、従来から統廃合及び経営移譲による民営化、地方移管をやってきたところでございます。まだ計画半ばでございますけれども、やっているところでございます。  再編成の推進につきましては、昨年、再編成特別措置法の改正によりまして民間の移譲先の範囲の拡大等、再編成を一層推進するための条件整備を図るとともに、基本方針改定し、統廃合及び経営移譲の終了していない施設については平成十二年までに対処方針を決定することといたしておりまして、その内容施設の廃止も含めておるところでございます。  また、行政改革の一層の推進という観点も踏まえまして、国として果たすべき役割を適切に遂行できない施設につきましては、新たに再編成対象施設としての追加を検討することにしているところでございます。  以上のようなことから、私どもはこの報告におおむね沿ったものと理解をしているところでございます。  次に、外庁化の話並びに民間医療機関への影響についてでございますが、行政改革会議からは国立病院・療養所等の民営化、地方移管、または独立機関化についてどう考えるのかという御質問をいただきまして、五月十四日には厚生省としての考え方を述べさせていただいたところでございます。そこでは、医療提供における国の責任と役割を明確にするとともに、そうした責任を果たすものとしての国立病院・療養所等の存在意義を明らかにしたところでございます。  また、外庁化を含む独立機関化についての質問に対しては、現段階では独立機関の性格、基本的枠組みが明らかでありませんので、その検討に当たっても国の責任と役割の遂行と両立するものであることが大前提であるとして、少なくとも六つの点について確保することが必要である旨述べましたところでございます。その六つの点とは、国立病院・療養所の再編成計画と整合性のとれたものであるということが必要であること。二番目に、大臣が国の責任と役割を果たす上で必要な事項につき随時具体的に指示ができるものであること。三つ目に、職員の地位・身分は国の責任と役割の遂行が保障されるものであること。四つ目に、国の責任と役割を果たす上で必要な財政措置が講じられるものであること。五つ目に、行政部局との人事交流が可能であること。六つ目に、予算・組織に関しての裁量性を有すること。こういう点を述べて、今後行政改革会議の審議を見守りたい、このように考えておるところでございます。  なお、今述べましたように、仮に独立機関化するにせよ、国立病院・療養所等は本来国が果たすべき役割を継続して果たしていくものと認識をいたしておりまして、政策医療との整合性は十分図られるとともに、民間医療機関への圧迫という懸念はないものと考えております。
  128. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、年金改革の進め方について伺いたいと思います。  年金改革については、企画委員会報告でも意見が分かれ、三案併記の形になったように聞いておりますが、いずれにしろ、予想を上回る少子・高齢化の進展により給付と負担のあり方について抜本的改革が必要な情勢にあることは御存じのとおりであります。その反面で、平成六年に導入した支給開始年齢の引き上げでさえ開始しないうちからさらなる支給開始年齢の引き上げや給付水準カットを行うことは公的年金に対する国民の信頼を著しく損なう懸念がありますが、厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
  129. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 年金改革につきましても財政構造改革の企画委員会議論がなされました。その際、次期財政再計算の年であります平成十一年度前に前倒しで抜本的改革案を示せないかという議論も出たのは事実でございます。  しかしながら、年金制度というのは、長年議論されて、そして改正するにも時間をかけて実施されるものであり、現に平成七年でしたか制度改正が行われたときに、六十五歳を支給開始年齢にするというのも二〇一三年にするということで、二〇〇一年から六十一歳、三年かけてやるというふうに決まっております。そういうときに、まだ六十五歳になっていない段階でこれをまた制度を改めるというのはいかがなものかと。  それよりも、今後十分国民理解と合意を得て行うためにも、この次期財政再計算期の十一年にやるというのはそのままにして、そしてできるだけ早く材料を提供して判断を仰ぐようなじっくりとした議論が必要なのではないかということで、私としては、この十一年に前倒しして年金の抜本的な改革案を示すのはほとんど不可能であり、またやらない方がいいということを述べたわけであります。  そういうことから、この年金改革は今後大変重要な問題でありますが、まず、ことしの秋ぐらいから、一つの案ではなくていろいろな選択肢の材料を、厚生省としては年金審議会に議論してもらうためにも、また国民にいろいろな判断材料として御批判を仰ぐためにも、その材料を、選択肢を幾つか出して、そして来年中には年金審議会でそのような材料、資料もとにして議論をしていただく。結果的に来年の秋から暮れにかけて十一年度の国会に提出できるような抜本改革案を示す方がむしろ年金に対する信用を得る方策ではないかということで、私としてはこの行き方において御理解を得ているものと現在のところ考えております。  ですから、この財政再計算期の十一年前に繰り上げて抜本改革案を示すという状況にはないというふうに私は考えております。
  130. 菅野壽

    ○菅野壽君 厚生大臣は先日の委員会で、新しくできる医療保険構造改革審議会においては白紙委任ではなく、厚生省抜本改革案を提示し、それをもと議論を進めてもらう旨の見解を示されましたが、年金改革においても同様の進め方をなされるおつもりですか。また、財政構造改革会議の結論は年金審議会等の議論をどこまで拘束するものなのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  131. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) この医療制度改革と年金制度改革は、私は違う方法で行うということを考えております。  医療保険の方は、今までの議論で早く厚生省出しなさいという意見が多かったと。この三十数年来、大体の方向はあるいは考えなきゃならない案というのはほぼ出そろっているじゃないかと。あとは選択の問題だ、決断の問題だという意見が大分多かったということも踏まえまして、医療制度改革に関する審議会が九月一日以降設置されますが、その前に厚生省として責任を持って案をまず提示して、それを与党の中で議論していただく、あるいはまた審議会で議論していただく、その案をまず厚生省は、医療に関してはこの健保法案が成立し次第、できるだけ早い機会に出したいと思っています。  年金の改革につきましてはいろんな選択肢が考えられます。支給年齢の開始問題とかあるいは保険料の負担の問題、給付水準の問題、そういう問題がありますから、その判断できる材料を厚生省としてはできるだけわかりやすく情報提供したい。そういう中にあって、年金審議会等の専門家、識者の意見をじっくり聞いて、同時に財政構造改革会議の意見も踏まえながら練り上げていく方がより理解を得られるのではないかということで、年金審議会等の意見も尊重していきたい。ですから、医療改革と年金の改革とは若干手法が違うということを御理解いただきたいと思います。
  132. 菅野壽

    ○菅野壽君 いずれにしろ、今後財政構造改革を進めるに当たっては、国民に開かれた論議が必要であります。また、特に社会保障改革については歳出面のみならず社会保障が本来の機能である社会のセーフティーネット機能を果たし得るかという観点からの再点検が必要であります。このことを申し上げて、次に診療報酬改革の問題に入りたいと思います。  我が国においては、これまで出来高払いを基本に最小限の自己負担で最大の効果を上げてまいりました。この評価を抜きにして診療報酬抜本改革は考えられません。  そこで、改めて出来高払い制のメリット・デメリット及び我が国においてこの制度が果たしてきた役割について説明していただきたいと思います。
  133. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、出来高払い制のメリット・デメリットでありますが、メリットとしては医療サービスが医師の自由な裁量によって提供できるということが最大のメリットであるというふうに言われております。ただ一方、このことが医薬品の過剰投与とか、あるいは場合によっては不必要な入院期間が長くなるというようなことになりやすいということがデメリットとしてよく言われております。さらにまた、診療報酬の請求事務とかあるいは審査事務とか、そういった面が非常に複雑化するということがやはりデメリットということで言われております。  そこで、我が国はまさに、先生指摘のとおり、これまで出来高払い制を基本にやってまいりました。その結果、我が国医療水準というものは世界でも相当高いレベルに確保されてきたというふうに思っております。また、医療機関においてもこれが定着をしてきておるということではないかというふうに思いますし、とりわけ医学・医術の進歩の成果というものを国民が広く享受できるような、そういうシステムであったということが言えるのではないかというふうに思っております。  ただ、一方のデメリットの問題等も出てきておりまして、そういった中でこれからの時代、とりわけ非常に経済が厳しくなってきている時代の中で安定的な医療保険制度というものを考えていくということになりますと、出来高払いだけではなくて定額払いなり包括払いというものとの最善組み合わせの中でこれからの医療保険制度というものを安定的に運営していくということがやはり今求められているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  134. 菅野壽

    ○菅野壽君 同時に、我が国においては、出来高払いを原則としつつ、定額払いがなじむ部分については部分的にこれを導入してきました。定額払い制には過剰診療を防止する等のメリットがある反面、多くの欠点もあります。おのずからこれになじむ部分とそうでない部分が存在しております。  厚生省は、この点について現時点ではどのような整理をされているのか、お伺いしたいと思います。
  135. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現在の診療報酬の中におきましても、それぞれ患者の心身の特性に応じた評価と申しましょうか、そういった意味では老人医療あるいは精神障害者等における慢性期の医療あるいは急性期の集中治療室における医療、こういつたようなところで既に定額払いというものを一部導入いたしております。  今後、この出来高払い制と定額払い制のそれぞれの最善組み合わせというものを考える基本でありますけれども、これはまさに先生指摘のとおりでございまして、やはりどのような分野でそれぞれなじむのか、そして最もふさわしい形の分野に対してそれぞれの制度を適用していくということが望ましいと思いますし、そういった意味では、単に医療費を抑制するという観点だけで定額払いなり包括払いを入れるということではありませんで、やはりそれぞれのふさわしい分野というものに対してそれぞれの長所を生かした支払い方というものを取り入れていきたい、こういう基本的な考え方でございます。
  136. 菅野壽

    ○菅野壽君 さらに、診療報酬体系見直しに当たっては物と技術の分離が大原則であります。ホスピタルフィーとドクターフィー、運営費用と資本的費用の区分等、物と技術の分離について現状分析、論点、これまでの検討の経緯及び今後の方向性についてお示し願いたいと思います。
  137. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 我が国診療報酬あり方でかねてから指摘されておりますのがこの物と技術の分離と申しますか、とりわけ医療担当者の技術料の評価というのがやはり一番問題になってきたと思います。そういった意味で、診療報酬体系の根本的な見直しを行うに当たりまして、やはりこの技術料に対する適正な評価、それからまたいわゆるキャピタルコストに対する評価というものをきちっとしていくことがこれからの近代的な医療機関の経営に役に立つというふうに思っております。  そういった意味で、典型的に分離されていない部分が薬の問題と診療報酬の関係じゃないかと思います。そういった意味で、このたび薬価基準制度の根本的な見直し、そして新しい方式を導入するという際には、やはりこの診療報酬体系と一体的に考えていく必要がある、そういった中で御指摘のような物と技術の分離というものをきちっとした新しい形の診療報酬体系を目指したものができるのではないかというふうに思っております。
  138. 菅野壽

    ○菅野壽君 最後に、いずれの診療報酬体系をとるにせよ、国民に良質の医療を提供していくためには安定した医療保険財源の確保が不可欠であります。.  我が国においては、近年、国家財政を理由に必要な診療報酬改定が抑制される状況が恒常化しております。これが診療報酬のゆがみを拡大する結果をもたらしていることは御承知のとおりであります。  安定した財源確保方策につきどのような見解をお持ちか、厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  同時に、平成十年度は診療報酬改定の時期に当たり、財政構造の集中改革期間であれ、必要な診療報酬改定が行われることは当然の理でありますが、この点についても厚生大臣の御所見を賜りたいと思います。  私は五十年近く医師をやり、地区医師会理事、県医師会理事、日本医師会の理事をやって今日までまいりましたが、医者としてはこの診療報酬改定、今度のことは重大な関心事で、二十四万医師会員は全国に控えております。どうかひとつ、実力大臣で賢明な大臣でありますので、二十四万医師会の意向をしょっていただいて、立派な改革をやっていただきたいということを念願して、終わります。
  139. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 診療報酬改定については今までも必要な改定を行ってまいりました。また、今後の診療報酬改定につきましては、これは保険料、また公費に対して国民に負担を求めるところでありますので、理解を求める、また協力を求めるために十分な議論が必要だと思います。これまでも中医協の審議に基づいて改宗を行ってきておりますので、中医協の状況を踏まえながら適切に対応していきたいと思っております。
  140. 今井澄

    ○今井澄君 一昨日、二十七日の質疑に引き続いて、抜本改革方向に向けて、特に今問題になっておりますお薬のむだをなくすにはどうしたらいいか、また、菅野先生が今取り上げられました出来高払い定額払いかという医療費の支払い制度の問題についてお尋ねしていきたいと思いますが、その前に一昨日の質疑の中で、またきょうの質疑の中で明らかになってきた現在の修正案自体の問題点ということを最初にちょっと問題にしたいと思います。  けさほど塩崎委員の方からもけさの朝日新聞の一面の記事のことが指摘されました。私も、かねてから小児科のお医者さんから、今度の修正案というのは何日分出したかにかかわらず薬の種類で四百円とか七百円とか負担が決まる、そうすると、先ほどのお話では十二・何日が平均だというから、一月分もらう、あるいは二週間分もらう人にとっては負担としていいんでしょうけれども、風邪で三日分もらう、そうすると非常に負担が重くなるということを、特にその中で小児というのは大体普通はそんなに長くお薬出すわけじゃありませんし、そういう意味では非常に問題だということをかねがね小児科のお医者さんからも聞いてきたわけであります。  まず第一点、一昨日の厚生省答弁の中で、小児については総体的に見ると薬剤の自己負担比率は五九%というふうに答弁があったと思いますが、それが事実かどうか確認したいのと、それから、それにかかわる答弁の中で、そうはいっても小児の、特に三歳未満の場合は包括払い制があるんだからもう診察料に含めてまとめてお支払いしているので薬の負担は別途には取らないんだと、だから問題ないという趣旨の答弁があったんです。  ところが、病院で小児科を標倍している科でどのぐらい包括制を採用しているのか、これは選択制ですからそれについてはわからないと。それから、小児科を標擁している開業医さんではどうなのかといったら、わからないと。ただ、わかるのは小児科医会に所属している会員の中では約六四%が包括だから特に負担を求めないというお話だったんですが、しかし小児科医会だけとってみても三割以上の、要するに三分の一のところにかかっている患者さんは負担をやっぱり求められるわけですね。  そこで、一昨日の答弁は本当にそれでいいのかどうかということをお尋ねいたします。それは確かですね、二十七日の答弁は。
  141. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 何点かございますが、最初の自己負担比率でありますけれども、ちょっと舌足らずで申しわけございませんでした。  まず、この場合、小児と申しましてもゼロ歳から十四歳までということでまず考えておりまして、統計上はこれしかございませんで、ゼロ歳から十四歳までの小児の平均的な外来の場合、一月当たりの薬剤費が千八百円ということでございます。そういった中で、このたびの薬剤費の別途負担と申しますか、新設分の定額負担の平均が五百二十円となります。そうすると、千八百円に対する割合で見ますと二九%であります。  それから、二重負担になっているんじゃないかということで言われておりますが、三割の全体に対する自己負担がありますから、これが仮に薬についても同じようにかぶっていると仮定しますと、三割で五百四十円ということになりまして、これを合わせたもので千八百円と比較しますと五九%、こういうことであります。  それから、どの程度いわゆる包括点数をとっている医療機関があるかということでありますが、たしか一昨日は小児科医会でお調べになった数字を申し上げました。これは非常に数が少ない抽出的なあれでありますから、本当にこれがそうかという点については私どもも確定的なことは申し上げられないわけでありますが、一応六四%ということが出ております。  そこで、診療所・病院別の、これはわからないというふうに申し上げたわけではありませんで、き上う追加の資料のお求めがございましたので、いろいろ推計をしてもらいました。したがって、かなりラフな、時点なんかもちょっと違ったものでの推計でございますので、そういったことを前提にお聞きいただきたいと思います。  まず、病院でございます。小児科を標倍している病院、一般病院でありますが、これで見ますと約三二%程度でございます。それから診療所、これは小児科を標擁している診療所ということでありますが、これが全体の約四二%というのが推計されております。
  142. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、今、具体的な数字を伺ったんですが、もう一度お尋ねいたします。  小児という場合に、ゼロから十四歳までのデータしかないというお話なんですが、実際は三歳児未満というのと学校に上がるまでの四歳から六歳まで、それから学校に上がってからの十四歳まで、これはやっぱり大事なのでこういう統計はきちっととらなければいけないと思うんですね。特に、少子化対策で一体どういうことをすべきかということで、私どもも今度の案に対しては、老人を一割負担ということにするんだったら小児も小学校に上がるまで一割負担にすべきだ、これは四党協議会の中でも主張したわけですし、厚生省にも伝わっているわけですね。  そこで、もし数字があればお聞きしたいんですが、十四歳まででもいいんですが、小児の薬剤の別途負担の総額がどのぐらいになると試算しておられるか。そしてその場合に、積算根拠にもなるんだと思いますけれども、医者にかかった場合、小児の平均の投薬日数というのは大体何日分ぐらい投薬されているのか。それから、一日のお薬の種類というのはどのぐらいなのか、あるいは何剤なのか。それから、そのお薬代が一日平均大体どのぐらいなのか。一方でいわゆる二百五円ルールというのがあるわけですね。それ以下の場合は取らないというのがあるわけですから、医者にかかっている子供の患者さんの場合、二百五円以内におさまっている比率は何%くらいなのか、もしわかったら教えてください。
  143. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず小児、これはゼロ歳から十四歳というのじゃなくて、これはゼロ歳から六歳児未満、ちょっと統計がばらばらで申しわけないんですが、それで推計させていただきまして、小児の薬剤費の別途の自己負担総額でありますが、これが平成九年度満年度で推計をいたしてみましたら約百十億円という額でございます。  それから、今度はゼロ歳から十四歳ということで、またさっきのデータに基づいたものなのでありますが、小児の平均的なまず投薬日数でございますが、四・一日ということであります、一処方当たり四・一日。それから、薬剤数でありまずけれども、一処方当たり二・九種類ということでございます。それから、薬剤費でありますが、一処方当たり千四百円、こんなふうな形で推計をいたしております。  それから、いわゆる二百五円以下におさまっている場合の比率でございます。これですと一種類ということになりますから今回の薬剤の新たな一部負担は取られないわけでありますが、これが種類数全体の中で見ますと二五・六%、約二六%程度というふうに推計いたしております。
  144. 今井澄

    ○今井澄君 そうすると、やっぱりかなりのお子さんが自己負担、薬剤の別途負担というのを徴収されるわけですね。四分の三と見てもいいと思います。  それで、最初のあれですけれども、結局お薬代のうちの五九%、六割ぐらいを自己負担するということになると、これはやっぱり特に子供に重いということになるんじゃないかと思うんですね。  一昨日、西山先生が出された資料の二枚目を見ましても、これは子供でも慢性疾患、気管支ぜんそくの方ですけれども、大人の場合にはお薬代の約四割を負担することになるんだけれども、子供の場合には八七・一%と書いてあるんですね。ほとんど薬代は全部自費で払っているようなものになっているんですよね。これは非常にやっぱり問題だろうと思うんです。  それで、お年寄りに負担を求めるという論拠として、例えば平均貯蓄率が七十歳以上は二千百五十万あるとかいうデータが出ていますけれども、その逆に三十代は六百五十万とか二十代は三百五十万とか、小さいお子さんを持つ親は貯金する余裕がないというデータも一方で出ているわけですね。そして、その中で少子化が進んでいるということになると、やっぱり子供に対しては今度の修正案は余りにもひど過ぎるんじゃないだろうか、やっぱりこれは参議院として考えるべきじゃないかと、私は一昨日の議論をお聞きし、きょうも議論をお聞きしてつくづくそういうふうに感じますが、少なくとも西山先生が一昨日出されたこれについては簡単に直るわけですよね。  というのは、これはぜんそくのような慢性疾患は大人の場合は二十八日分、一カ月分薬を出していいんですよ。だから月一回来ればいいんですよね。そうすると、二種類で四百円で済むわけです。ところが、子供は、この療養担当規則に、この分厚い本の中に書いてあるわけですけれども、薬は一応二週間以内ということが書いてあるわけですね。そうすると、月二回来なきゃいけないわけですよね。落ちついているときは何も来なくても、お薬だけでもいいわけですよね。そのための長期投薬がある。  そうすると、この西山先生が出された例を解決するのは簡単なんですよ。これは子供の場合にも慢性疾患については長期投薬を許可するというふうにこれは厚生大臣が指定すればいいんですよ、この病名と薬剤名を。これは早急に直してもらわないと、ぜんそくのお子さんが薬代の九割近くも自己負担というのはこれはもうぜひ改善していただきたいと思うんですが、いずれにしてもこの小児に非常に負担が重いという今回の問題は非常に大変なことだと思います。  先ほど和田先生の御質問にありましたように、この修正案の根本的な欠点というのはそこにあるわけですね。確かに、慢性疾患の場合にはちょこちょこ通わせて血圧をはかって薬、ほとんど変わりがないのにしょっちゅう通わせる、診察料と処方料をそのたびにいただくという、これはやめて月に一回でも、場合によっては三カ月に一回でもいい、長くていいと思うんですけれども、一方で急性期の病気、風邪だとか気管支炎だとか、そういうのに対してはとにかく重い負担になるということが今度の改正の目的ではないはずなんですよね。  ですから、特に今度の場合は、お薬に注目するということは余分にお薬を飲んでいる人、あるいはたくさんお薬を出している人、そういう患者さんとかそれを出しているお医者さんにコスト意識を持っていただきたいということなんですから、急性の病気を重くするというのはこれは何としてもおかしな方向ではないだろうか。特に、小児の場合についてはこれは考え直さなければならないのではないだろうか。  先ほどお聞きしていますと、ゼロ歳から六歳まで年間百十億円ですから、今、大蔵省は来ておりませんけれども、ここはもう一つ、当初の予定より千五百億ほど財政効果は減ったわけですが、あと百億円、子供のために何とかこれを除外するような方向というのは考えていただけないかというか、参議院としてそれを考えるかどうかというあたりが一つあるだろうと思います。  さて、本題に戻りまずけれども……
  145. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) ちょっと済みません。  その百億円の数字なんですが、先生の方からのお尋ねが別途の自己負担総額がどのぐらいになるかというお尋ねでしたので百十億円と申し上げました。今のお話をお聞きしておりますと、国庫負担ベースのお話のような感じがいたしましたものですから、これは全体で百十億円ということでございます。
  146. 今井澄

    ○今井澄君 そうすると、国庫負担ベースではどのぐらいになりますか。
  147. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 平成九年度の満年度で約二十億円です。
  148. 今井澄

    ○今井澄君 そうすると、満年度で二十億円ですから、九月一日実施であればさらにその十二分の七ということになるわけですから、これはぜひみんなの力で実現できればありがたいなと思っております。  ところで、前回の質疑の続きに入りますが、前回、お薬のむだは、例えば何軒もかかることによって意図せずに重複してお薬が出されてしまう、このことはむだであるだけではなく副作用にもつながるということから、できればかかりつけ医という全体を診るお医者さんがいればそういうこともなくなるのではないかということを申し上げたわけですが、しかしよく考えてみますと、ここにお医者さんが何人もおられますから、御意見は違うかもしれませんが、私は自分がずっと医者をやってきた経験や周りの医者を見てきた経験から、医者は物の形については強いんですね、形態学。見て触ってやりますから、これは一番強い。次には生理学的なことは割合強いんですよね、電気的にどうのこうのというのは。ところが、化学、カメの甲については私は一番やっぱり医者はそこが弱いんじゃないだろうかと思っております。ですから、薬屋さんの宣伝なんかに軽く乗ると言ったらおかしいけれども、それで勉強して薬効とか副作用を見る。  やっぱりこれはこれで薬の専門家の方、化学の専門の薬剤師さんの方にお任せして、こういう重複投薬がないだろうか、飲み合わせでまずくなることがないだろうか、相互作用ですね、そういうことを見ていただくというのが大事なのではないか。そのためにはやっぱり医薬分業を進めるということが非常に大事なんだろうと思いますね。  それから、同時にこの情報というのは、紙に書いたものを集めるというのは非常に大変ですから、これはカードを使うということをしますと非常にいいと思っているんですけれども、その辺については具体的な計画はどうでしょうか。
  149. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 分業の関係でございますが、先生お話しのとおり、薬歴の一元的管理ということで複数の医療機関からの重複投薬の防止が期待されております。いわゆる面分業、これが大きな課題でございます。  現在、全国的には平成七年度で二〇・三%の分業率でございまして、先般からの質疑でございますように、国立大学病院では約五割弱の分業率、また国立病院の三十八のモデル病院では三五%の分業率ということで大変分業率が高まっております。  こういった分業率の向上のために各般の事業をやっておりまして、これの一層の推進を図っていくことが必要と考えております。
  150. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、この分業のことに関係しまして、きょう午前中に水島先生が大変大事な問題提起をされたと思います。それは一般名の処方ができないかということですね。  例えば、今ビタミン剤というのはよほどのことでないと出せないようになっておりますけれども、例えばビタミンB1の誘導体でアリナミンという有名なお薬がありますね。ちょっとこの薬の本で調べてみますと、今このビタミンB1誘導体の飲み薬で二十五ミリというのは十二種類あるんですね。そのお値段が六円四十銭、六円五十銭、八円十銭と、アリナミンが飛び抜けて高いということになるわけですね。これはアリナミンと処方せんに書いて出すと、薬局の方もアリナミンを出さなければならないわけですね。ところが、ビタミンB1誘導体と書いて出すと、そこで今度は薬局の方で患者さんと相談しながら安いお薬にするかどうかということを決められるわけですね。それで、一般名で出すのは私も賛成なんです、水島先生が言われたとおり。  ところが、非常に恐ろしいことをさっき言われたんですね。同じように厚生省が認可したから効いているのかと思って飲ませて血液をとって血中濃度を調べてみたら、あるお薬は全然血液の中まで入っていない、効いていないという結果があるというんですが、実際そんな薬を厚生省は認可しているんですか。ということは、血中濃度は認可を受ける上で必要なデータじゃないんですか、基礎データじゃないんですか。
  151. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 後発品につきましては書類審査が基本でございますけれども、今お話しのように、血中濃度、吸収代謝ですね、これにつきましては実際に、何といいますか、治験を出していただいておりまして、それでそれの生物学的同等性が担保されて初めて承認をされております。  それは従来からやっておりまして、最近問題になっておりますのは製造工程に入った後の品質の恒常性の問題でありまして、いわば溶けやすいか溶けにくいかということでございますが、最近の技術開発によりましてその溶出性試験が比較的できるようになりましたので、最近は品質の恒常性という点で溶出性試験も導入をいたしております。  したがって、品質は同一でございますが、それは承認段階での同一性が担保されておりますが、それに加えて実際の製造工程における同一性の担保もやってまいってきているというところで、より同一性の担保に努めているという状況でございます。
  152. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 一般名処方の件でありますが、平成六年以降、銘柄名での処方ばかりでなく一般名でも処方ができるという取り扱いに今なっております。ただ、実際には医療機関からは一般名での処方というのはなかなか行われていない、実態がそういう格好であるということでございます。
  153. 今井澄

    ○今井澄君 ここのところは実は非常にシビアな内容を含んでおりまして、特にお医者さんの方は銘柄で、同じビタミンB1誘導体でもアリナミンを出すかそれ以外の後発品を出すかということ、ここに医師の裁量権があるというふうに多分医師会の方は解釈していると思うんですね。ここのところがかなりシビアな問題ではないかというふうに思いますね。ここのところはよく関係団体と話し合ってみなければいけないと思います。  病院の場合には、私は病院に勤めていたし、院長をやっていた経験から言えば、今の薬価差がある限りやっぱり銘柄別に選びますね。選びますけれども、この薬価差がなくなるようなシステムになれば、薬効さえ同じであれば、あるいは多少似たようなものであれば、それは薬剤師さんと患者さんの相談にお任せして一般名処方ができるのではないかと私は思っております。  ですから、そういう意味では、この医薬分業を進めるというのは、そういう意味ではやはり処方を出すお医者さんの方と調剤をする薬剤師さんの方との話し合いを含めて厚生省が十分そこに立ち入って大胆にやっていかないと、ただ進めてくださいというのでは進まない。特に、一般名処方を考えると非常に問題が出てくるだろうと思うんですね。  そこで、実はお薬の問題であと幾つもやりたいことがあるんですけれども、先ほど出来高払い定額払いの問題で、特に医師の裁量の問題が出てまいりましたので、私はここでちょっとその問題に移らせていただきたいと思います。  というのは、医師の裁量とか、よく言われるプロフェッショナルフリーダム、ある意味で医者も歯科医師も薬剤師も、こういうのはみんな技術屋であります。理学療法士も看護婦も技術屋です。技術屋さんに気持ちよく全力を出して働いていただくためには、何から何まで統制するというのは、これはうまい方法でないというのはもう過去の歴史からわかっているわけです。  しかも、同じ病名がつく病気であっても、それから同じ患者さんが同じ風邪を引いてもその時々によって違うわけですから、そこはやっぱり現場の裁量というものを十分に生かす方法がないといけないと思うんですが、その裁量性がどう発揮されるかということとの関係でちょっとお尋ねしたいと思います。  私は、これは先ほどの菅野先生の御質疑とは逆の表現になるかもしれませんが、ここで抜本改革をやるということは発想も転換することだと思うんですね。発想を転換するというのは、確かに出来高払い制度によってこれまでの日本医療がこれだけのレベルに来たということはあるんだけれども、今、全体的に財政的に厳しい、医療費もある一定の伸び以下に抑えざるを得ないかもしれないというところに来たときに、最も有効な医療資源の使い方はどうしたらいいかという白紙から考えた方がいいと思うんですね。  とかく医療現場にいる者にとってみると、この間、出来高でやっていたものがだんだん丸められてきた、だんだん定額制が入ってきたのでそれが医療費抑制策だと。まして、出来高をなくされるということは、これ以上に医療費が抑制されて現場は苦しくなるんだという、そういう受けとめがあるものですからなかなか御理解はいただけないと思いますけれども、やっぱり医療現場の方も行政の方もそこのところは本当の抜本改革であれば白紙からやってみた方がいいと思うんです。  私は、出来高払い医療現場の夢をなくしているのではないか、むしろ医師の裁量、医師に限らず現場の裁量をなくしているのではないかという例を三つほど挙げさせていただきたいと思っております。  一つは、私ども病院でかつてまだ診療報酬点数に訪問看護をやったら幾らという点数がない時代から訪問看護をやっておりました。それはどうしてかというと、病院がいっぱいになってくるので早期に退院していただく、盲腸なんかもまだ糸を抜かないうちに退院していただく。そうすると患者さんは不安だからこちらは訪問に行かざるを得ないんですね。そういうことをやっていた。そこへ訪問看護の点数がついたから私どもは大変喜んだわけです。これは病院の経営も楽になると喜んだわけです。ところが、私どもの近くのある大きな病院は訪問看護をやっていなかったんですね。点数がついたらすぐお始めになりました。だから、点数をつけるということはいいことなんですけれども、反面、その病院がおやりになったことは、そのときに決められていた寝たきりか寝たきりに準ずる人しか点数を上げませんよ、月に二回までですよ、三カ月行ったらもうおしまいですよと、それしかやらないんですね。だから、寝たきりだろうと寝たきりでなかろうと、訪問看護の必要な人に行くという、そういう行動パターンに一般的に医療機関はならないんです。そういうことが一つありますね。  それから、病院でもそうなんですけれども、いろんなことをやりますと、事務の方からそれは点数にありませんからやめてくださいというのが必ず経営の立場からは出てくるんですね。やりたいことができないということでは裁量権の問題がなかなか私どもは現場では不自由だったというふうに思います。  それから、一つ情けない話は、昨年の診療報酬改定で、お薬を出したときに紙に書いてちゃんと説明をすると五点、五十円つくという、ことし七点に上がったんですか、私はこれは非常にある意味医療現場をばかにした情けない話だと思うんです。説明をするというのは医療業務本体なんですよ。忙しいからできないとか、そういう理由はいろいろあるにしても、これは医療本体の仕事なんです、説明するというのは。それを説明をしたら五十円つけますよというふうなことは余りにも医療現場をばかにしているというか、逆に言うと点数がついたからせっせと説明を始めるというのは余りにも医療人として情けないと私は思うんですね。  それから、もう一つだけ例を挙げます。  最近、テレビで盛んに言われています。厚生省が薬を締めつけた。特にビタミン剤をもう保険から外すという傾向にあるから、妊婦さんで重いつわりがあって食べられない人、点滴をやるんだけれどもビタミンが入れられない、その結果何が起こったか。ウェルニッケ症候群が起こった。テレビでやっていますよね。ウェルニッケ症候群というのは何かというと、これは例えばアル中の人や栄養失調の人がなるんですね。簡単に言えば脳がおかしくなって痴呆になるんですよ。妊婦さんがですよ。こういう例が昨年で十何件発生しているというのをテレビでやっている。これは一体だれの責任ですか。  私は、率直に言ってこれは厚生省の責任というのは責任転嫁だと思うんです。これはお医者さんがやっぱり現場で診て、この妊婦さんはつわりがひどくて点滴をやるときにどうもビタミンも欠乏しそうだからビタミンを入れるとか、そういう判断をすべきだと思うんですよ。かってはビタミンというのをむだに使ったのは事実ですね。私たち盲腸の手術をやると、まあ三日目ぐらいに御飯を食べられますけれども、必ずビタミン一式というのを食べられないときには入れていたんです。でも、元気な大人が盲腸の手術をした後二、三日何もビタミンを一式全部、AからBからCから入れなくたって済むんです。そういう意味で、ビタミンの使い過ぎということでこのビタミンは一般的に使わなくなったんですね。だけれども、妊婦さんがつわりのときに、この人が本当にウェルニッケ症候群になるような重い長いつわりで食べられないのかどうかというのは現場の医者の判断なんですよね。そこにこそ医者のある意味で言ったら力というか裁量があると思うんです。  だから、それが点数に認められていないから点滴に入れなかったからウェルニッケ症候群が、去年十何人も痴呆ができちゃったんですよ、妊婦さんの痴呆が。私は、このことはやっぱり今の出来高払いというのが細かい一つ一つのことを、これをやったら幾ら、これはやっても点数になるならないというのがあることがかえって今の医療の裁量をなくしてきているんじゃないかと私は逆に思っているんです。  そこで、例えばアメリカのDRGという方式だと、例えば心筋梗塞で入院した場合には一件につき二十五万とか、重い場合は三十万とか、軽い場合は幾らと、こう決まっているわけですね。そうしますと、その範囲内でこれをやったら幾らとかなんかじゃないので、その患者さんを治して幾らなわけですね。そうすると、その点数が標準で設定されていれば、ある患者さんについては安くて済むからもうかる、ある患者さんについてはちょっとこれじゃ足りないからやり過ぎて、お薬も使わざるを得なくて足が出る。だけれども、結果的にとんとんになれば私はいいと思っているんですよね。そういう意味では、むしろある意味では定額の方が医師の裁量権が生かされるという世界をこれから築いた方がいいのではないだろうかというふうに思っている面があります。もちろん、定額で決まったのがぎりぎりで一番安い値段に決められたら、これはやっていけません。だけれども、そこのところは適当な値段に決められれば、もうかる症例もあるしと言ったらこれは変な言い方ですけれども、安く上がる人もいるし足が出ちゃう人もいるしという、そこにこそ裁量が私は出てくるのではないだろうかなと思うんですね。  そういう意味で、慢性期は大体が決まっているから定額でいい、急性期は何が起こるかわからないから出来高、こういう考え方が割合言われているんですね。厚生省もそういうことをどうも言っているような感じがあるんですけれども、私はそういうところを超えて踏み込むべきだと思うんです。そうでないと、発想の転換をして本当に医療のあるべき姿とその支払い方式というのを考えないと、今までのこの点数の積み上げたけでやっていったら、もう私は恐らく医療現場にとっても夢が、希望がないだろうと、抑えられるだけだろうと思うんですね。そういう意味では、先ほどの厚生省答弁でもベストミックス、出来高払い定額払いとのベストミックスというふうな話がありましたけれども、私はいっそのこともっと踏み込んで出来高払いを抜本的に見直すと、幾ら定額にしたって、出来高を加味しない、原価計算しない定額なんてないわけですから。ただし、今お話ししているのは病院の話ですよ。今、資料をお配りいただきましたように、外国でも日本でも診療所、開業の先生方はほとんど全部出来高ですよね。出来高です。今の定額については、病院については私はそうすべきだと思うんですが、厚生大臣の所見を伺いたいと思います。
  154. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 実に傾聴すべき御意見だと思います。  出来高払い制度と定額・包括払い制度最善組み合わせを考えるということは、要するに今までの診療報酬制度を抜本的に見直すということで御理解をいただきたいと思います。
  155. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私どもとしてはへ考え方としましてはいつも申し上げているとおりでありますが、やはり医療関係者の方々が十分そういった意識を持っていただくということが非常に重要であろうと思います。  資料をいただきましたけれども、まさに外国等においては病院と診療所でかなり違っております。今回の診療報酬改定においても、我が国病院と診療所をどうするかという問題がございますが、そのときに、我が国の場合の病院というのは二十ベッド以上持っているのがいわゆる病院であるという、それだけの仕分けでありますから、やはりその辺のところがら考え方を整理して、そして医療機能にふさわしい医療機関に対して、それにふさわしい診療報酬をつくる、そういう考え方でやっていきたいというふうに思っております。
  156. 今井澄

    ○今井澄君 つまり、先ほどちょっと舌足らずでしたけれども、やっぱり病院と診療所の果たす役割は根本的に違うと。それが今回じ診療報酬点数表で、こういう分厚いのに何をやりたら幾ら何をやったら幾らと書いてあるわけです。患者さんに洗腸をしたら何百円とか、便を掘り出したら千円とか書いてあるわけですね。だから、こういうのを病院でも診療所でも全部一緒に適用しているということがおかしいと思うので、今度の医療費の支払い制度の場合には病院と診療所は全然違う支払い方式にするというふうに、まずそこからスタートすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  157. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これから目指そうとしているものがそういうふうなことだということではないので、そこはちょっと誤解のないように受けとめていただきたいんですが、我が国もかつていわゆる甲乙点数表という格好で病院向けと診療所向けということを念頭に置いた形の仕組みというものがとられたことがありました。それがほとんど変わらないのでドッキングされてきて今日になったわけでありますが、そういった歴史の中で今後どうしていくかということでありますが、やはり基本は病院と診療所という区分の仕方が、先ほど申し上げたように、病院といっても非常に幅がありますから、単なるベッドの数だけですから、だからそこら辺は病院と診療所というような格好でいいのか、そこら辺をもうちょっと機能に応じて区分するのか、やっぱりその辺から考えないといけないというふうに思っております。
  158. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、医療機関の機能分化、分担、そういう話に入っていくわけですが、もう時間があと五、六分しかありませんので、それについてはまた次回改めて医療機関をどういうふうに区分分け、性格・機能分けをしたらいいのか、それと支払い制度はどう関連させたらいいのかということについてやっていきたいと思いますので、きょうは支払い制度のことはそれだけにしたいんですが、くどいようですがもう一度言います。  先ほど保険局長答弁にもありましたように、今、包括化されているものは単に慢性疾患だけじゃなくて、救命救急入院料とかICU管理料とかあるわけですから急性期だから定額でいけないということはないでしょう。これ不満が来ているわけじゃないですよね。これやめてくれと来ているわけではないと思いますから、急性期だって包括化できるというそのことだけは十分、それで今までのような型どおりの出来高と包括とを組み合わせるなんということじゃなくて、もっと踏み込んだことをやっていただきたいんです。  そこで、一つお薬のことに戻って、きょう実は先ほど水島先生からもお話がありましたが、けさほど水島先生と釘宮先生と、ほか何人かでアメリカの製薬工業協会会長のトーレルさんという方、それからヨーロッパ製薬団体連合会会長のクレープスさんという方たちと話をしてきたんですね。そこで、もう一つ、これ次回の宿題としてまた議論を進めさせていただきたいと思いますが、今、大方の方向としてはどうも薬価制度公定価格はよくないと、これは市場価格に任せようという話になっておりますね。市場価格に任せた上で保険ではどこまでお薬代を補償するのかというのでどうも参照価格という話が、大体みんなそれ以外にないのかなという話になっているんですが、けさアメリカとヨーロッパの製薬業界の会長さんにお聞きしたところが、やっぱり参照価格制も価格統制であって、これは薬剤費を下げることには何の役にも立たない、こういうことを言っておられたんですね。結局、参照価格制は二年後に修正をして現在また修正の話が出ているけれども、コスト引き下げにはつながらなかったと。ところが、アメリカの方は新薬の特許期間が切れて後発品が出てくると七、八〇%下落するというんですね。ヨーロッパではどうなのかまでは詳しく聞く時間がなかったですけれども、まあせいぜい半分以下だと思うんですけれども、それはなぜかという違いなんですね。  これは非常にシビアな話なんですけれども、アメリカは市場原理が徹頭徹尾貫徹しているんですね。これは、外来の患者さんは薬代は全額自己負担なんですよ。だから、さっきの一般名処方じゃありませんけれども、処方せんをもらって薬局へ行って薬局で相談をして一番安い薬に患者さんがしてもらうということになるわけですね。それから、入院の方は入院料の中に薬代が含まれますから、病院の経営者もお医者さんも看護婦さんも、この患者さんを一番効率よく治すには効き目がちゃんと効いて一番安い薬を使うというので、そこで市場原理が働いてお薬がどんどん下がるわけですね。ところが、ヨーロッパの場合にはやっぱりある程度保険で見るわけですね、どの値段かは別として。例えば全額見るとか半額見るとかとなると、そこでお薬が高どまりしちゃうというわけですね。だから、市場原理に任せて薬価を決めようというのも実は容易な話ではないと、アメリカのようにまでは私はなるべきではないと思います  そうしますと、ここでもう一度きちっと考え直さなければいけないと思うんですけれども、単純に市場原理、参照価格といかないということを私どもはきょうつくづく感じてまいりましたが、保険局長、いかがですか。
  159. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) やっぱり制度の仕組みを大きく変えるときにはいろんなやり方があろうと思いますけれども我が国のこれまでの歴史というものもありますから、そういった中で最善の方策がやはり一番いいんだろうというふうに思います。  そういった意味では、まさに御指摘のような問題というものを我々も十分承知いたしております。そこら辺を念頭に置いた上で新しい試みと新しい仕組み、しかも日本の実情に合い、また関係者も受け入れやすいような形のものをまず導入するということが一番いいのではないか。だけれども、少なくとも今のようにこれだけ薬が過剰に供給されている時代に、役所が公定価格を決める、商品として公定価格を決めなければならないこのシステムはやはりいかがなものか、もう時代に合わないのではないかというふうに思っております。一方、それがゆえに診療報酬のシステム自体も合理化されてきていないという面があるわけですから、そういった意味からしてもやはりここのところは改めるべきだと。あとはできるだけ市場の流通実勢というものを尊重して、しかも国民がこれを負担するわけでありますから、できるだけ適正な競争のもとに、そして安く国民が入手できるようなそういったシステムというものを知恵を出すということだと思います。  制度というのはもう常に、一回つくったらそれで終わりということではありませんから、導入をして、そしてさらに直すべきものは直していく、そういうことだと思いますし、やはり幅広く関係者の方々の御理解を得られるようなやり方というものをとっていくことが一番いいのではないかなと、こんなふうに思っております。
  160. 今井澄

    ○今井澄君 時間が来ましたので次回に譲りますが、基本的にはやはり市場原理に任せるという中で薬の値段が高どまりしない方向をこれからお互いに探っていきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  161. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  先日の第一回目の質問のときに、私は、今度の修正というものが非常に内容政府原案よりもむしろ国民の負担をふやしていると、そういう意味では修正が非常に改悪修正であって、これは修正の名に値しない前代未聞の、しかも採決が強行されたということについて代表質疑の中でも問題として指摘をさせていただいた点ですけれども、先日は主に薬剤の二重負担、二重取りというような点について主に質問をさせていただきました。  先日の質問の続きということになるわけですけれども、きょうも朝日新聞のこの記事が非常に当委員会でも問題になっているわけですけれども、私もそれに触れて、先日問題にいたしました小児科の薬剤の二重取り、局長が言われたいわゆる重ねもちというところのいわゆるペナルティーについて引き続き問題にしたいと思うわけです。  先ほど、小児科外来診療科の率の問題が出されておりました。私も実はその率を聞こうと思っていたんですが、既に質問で同僚の議員の方から取り上げられているわけですが、私が問題にしたいのは、小児科の医療というのは日数が短くて薬の量は少なくて回数が多くなるから、結局定額が四百円とか七百円というのが何回も取られるということで非常に負担が高くなるじゃないかということを質問したら、包括制のところがあるからそこは薬代は取らないんだと、二重取りはしないんだという御答弁があって、結局包括払い制をとっている小児科の病院の率というのはお示しにならなかったわけですよ、先日の質問のときには。  ところが、きょうの質問の中では包括払い制の看板を上げているところは四割だということを御答弁になりました。これは私も質問しようと思っておりましたので、請求した資料の中では確かに四割ということになっております。四割で、あと六割は出来高払いですよね。結局、六割の病院では小児科の外来で薬の二重取りということはあるわけですね。そうでしょう。包括払い制の看板を上げていない六割の小児科に行った患者さんの場合は二重取り、払わなきゃなりませんね。  ということになれば、指摘されたその問題の解決は、六割の出来高払いの小児科の病院に通われた患者さんには結局その問題の解決ということにはならないと、こういうことではないですか。
  162. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 二重取りというのを強調されるんですが、ここはもう全く、私ども何遍も申し上げているとおり、私どもはそういう趣旨で二重にも薬の費用を取るんだというつもりで今回の一部負担というものを創設させていただくということではありませんで、これは何遍も繰り返しになりますが、従来の一部負担、これは定率という格好と、今度は定額の薬の一部負担になるものですから二重取りというようなことがとかく言われるんですが、従来の定率一部負担というのは医療費全体に対する受益と負担の公平という角度から御負担をいただいておるわけであります。  今度の薬剤の定額一部負担というのは、これは我が国薬剤の使用の実態というのに着目して、その適正化を図っていくということがやはり我が国医療の質の向上につながっていくという点も含め、さらにまた当然財政的な面もございますけれども、そういうような角度からの御負担をお願いするということでありまして、そういった意味ではそれぞれの一部負担のお願いする趣旨なり目的というものを異にしているわけでありまして、決して二重取りというようなことでお願いしているわけではありませんので、そこは何とか御理解を賜りたいと思います。
  163. 西山登紀子

    西山登紀子君 局長説明をすればするほど、私はやっぱり二重取りだと思いますよ。趣旨が違う内容の重ねもちですよ。やっぱり二重取りですよ。患者にしてみたら、ちゃんと一割負担なり三割負担で薬代のお金を払っていますよ。それ以外にまた薬代を取られるということは、これはもう二重取り以外の何物でもないと思うんですね。  それで、きょうの朝日新聞に関連してお聞きしたいんですけれども、これは薬代の二重取りの中身ですけれども、払い過ぎになると。実際かかったお薬代の額よりも、定額の二重取りの部分も含めて払った総額がそれを上回ってしまう、そういう例があるということで朝日新聞は薬代の払い過ぎということで一面で問題視しているということですけれども、実際に薬代のこういう払い過ぎの実態というのは小児科以外も含めて起こり得ますね。
  164. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の薬剤の一部負担、これは種類をそれぞれグルーピングし、それからまた日数については平均的な日数というものを基準に定額の負担をお願いする形になっておるわけであります。  これは、政府原案につきましては、実務的に非常に煩雑である、それからまた患者さん方の方も非常にわかりにくい、そういう御指摘が非常に強かった。そこを改善するというのも一つございまして、そして今回の修正が行われたというふうに理解をしております。  こういうような考え方、いわゆる日数についても平均的な日数を基準に定額ということで簡便化をするということに伴う制度に内在する問題として、それは起こり得るというふうに私は思っております。  問題は、そういった中で、制度に内在しているこの問題が決定的に問題となるのかどうかというところだろうと思います。小児についてはかなりそういうケースが多く見られるということでこういう格好になっておりますが、そういった意味では比較的日数が少ない、かつ薬価が低い薬を使っている診療科等についてはこういつたケースというのは起こり得るというふうに思います。
  165. 西山登紀子

    西山登紀子君 これは非常に重大なことだと思いますね。厚生省自身が今そういうことがこの制度に内在するとおっしゃったんですね。たまたまのケースじゃなくて、制度に内在する矛盾だということを私はお認めになったということは非常に重大だと思うんですよね。後で修正案を出された発議者の方にもお聞きしますけれども、これこそがやはり薬代の二重取りの一層の矛盾じゃないかと思います。  三割なり一割なり払っている上に定額の四百円、七百円を払います。そうすると、本人がかかった薬代以上の薬剤費を払ったという結果になるということは、これは言いかえれば、もう薬というのは患者さんが全部自己負担してしまうということになるんじゃないですか。
  166. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私が制度に内在すると申し上げましたのは、矛盾ということで申し上げたわけではありませんで、制度自体を簡便化した形で行った場合に、平均的な投薬日数というものを基準にし、そういった形で計算するわけでありますから、平均的な投薬日数を上回るケースもあれば下回るケースもある。それを平均したものとして今回の一部負担を定額という形で定めておるわけでありまして、そういった意味で起こり得るということで申し上げたわけであります。
  167. 西山登紀子

    西山登紀子君 質問にお答えいただいていないと思うんです。  こういうふうにがかった薬代以上のものを窓口で払うということは、結局はその方の薬代は全部自己負担した、こういうことになるんじゃないですか。
  168. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) そういうケースについてはそのようになると思います。
  169. 西山登紀子

    西山登紀子君 ですから、この改正案というのは薬代を全部自己負担、オーバーに払う、払わされる、払い過ぎる、こういうことを内在した矛盾のある法改正ですよ。だから私たちは改悪修正だと言っているわけです。私は、こういうことを強行しても、いずれは現場では必ず行き詰まる、撤回しなければならない日は必ず来るというふうに思いますよ、こんな矛盾の多い制度は。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕  そこで、発議者の方にお伺いしたいんですけれども、きょうはありがとうございます。  先日の私の質問では、確かに小児科の頻度が非常に頻繁ですね、子供の場合には。薬も二、三日投与しては経過を見て次を投与するというようなことで日本小児科医会の先生方が大変心配だといって、緊急の全国連絡をして陳情書もつくって、この薬代の別途負担、子供の場合問題が多過ぎる、外してほしいという要望を出してこられた。私は、この要望こそやっぱり現場の医師であればこういう声を上げられると思うんです、こんなに矛盾の多い制度に改悪されようとした場合には。  そこで、発議者にお伺いしたいんですけれども、今、厚生省がお認めになった薬代の払い過ぎが実際起こる、こういうことについてどのようにお考えになって修正されたんでしょうか。
  170. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 答弁の機会を得まして、大変うれしく思います。  今の御質問でございますが、政府原案の一日一種類十五円という案につきまして、その政策目的についてはぜひやらなければならないと思っておるわけでございますが、同時にその運用において大変事務負担が多くなる、また患者にもわかりにくいという大きな問題が指摘をされましたので、よりそれに沿った修正を考えたいということで検討した結果でございます。  その際、定額制でやります以上、何らかの意味において不公平というものが免れない。これはこの問題に限らず、どのような制度であってもそういう問題が若干出てくるわけでございますが、できる限りそういう問題も少なくしたいということで区分を二、三種類あるいは四、五種類というように若干の細分化を図るなど、そういう問題の少ないようにということも対応させていただいたところであります。  しかし、これは制度でございますから、医療の各科あるいは各個人の対応によっていろんなケースがあり得るわけで、今、保険局長から御答弁のあったようなことも理論的に絶対にあり得ないことはないということはそのとおりだろうと思いますが、これは政策目的を達成するための制度でありますから、極めて少ない負担で済む方もおられれば、比較的高い負担もやむを得ないという場合も起こるわけですが、これは制度としてやむを得ない範囲ではなかろうか、こういうふうに思って提案させていただいた次第でございます。  小児科につきましては、先生指摘の点も起こり得るケースがほかの科よりも多いのではないかということはそのとおりだろうかなと思っておりますが、ただこれは今後こういう制度を踏まえた運用の実態によってどういうようになるかということも見きわめなければなりませんし、そしてまた制度の目的に沿った観点から総合的にどういう仕組みがいいかということを考えた場合に、この案で何とかひとつよりよい修正として皆様方にも御理解いただいて実行させていただきたい、このように思っておる次第でございます。
  171. 西山登紀子

    西山登紀子君 政策目的のためにはこのような矛盾もやむを得ないというような御答弁だったと思うんです。  私は、定率制の二重取りがいいか定額制の二重取りがいいか、そういうことを問題にしているのではありません。二重取りそのものを問題にしているんです。  定額制にした場合にこういう非常に大きな矛盾があって、しかも、厚生省も今お認めになったように、薬代が全額自己負担になってしまうような全く保険の空洞化が起こる、こういうことをわかって、しかもそれをいいものだというふうに、よりよい改正だと思って改正をされたんでしょうか、小児の場合も含めて。
  172. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 私は、ある種の不公平が生ずることは制度というものの性格上ある程度はやむを得ないということを申し上げたわけで、特に小児科に関してほとんどが払い過ぎになるとかということを是認するという意味で申し上げたわけではございません。  朝日新聞で診療所の一部の例が紹介をされておりますが、これが全体の実態としてどういうことになっておるのか正確には私もわかりませんけれども、私どもとしてはいろんな方々の御意見も聞きましたが、そういう極端な払い過ぎといったような事例というものはほとんど少ないであろうという前提で議論をし、修正をさせていただきました。  しかし、理論的にそういうことが絶対あり得ないということまでは言えないだろうなということは覚悟しましたが、それは極めて少ない事例であろうということでこの修正案を提案させていただいた次第でございますので、払い過ぎがたくさんあっても仕方がないというふうに御理解いただくのは心外でございます。
  173. 西山登紀子

    西山登紀子君 今の御答弁は納得するわけにいかないわけですが、こういうことは定額制をお決めになるときには十分御検討されたと思うんですよね。検討したと思うんですよ、こういう例がどれぐらい起こるかということは。今ごく少ないとおっしゃったんですけれども、ちゃんとデータはデータで把握されて検討されたんでしょうか、今ごくごく少ないとおっしゃったけれども
  174. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) あらゆるケースをデータで精査することはできませんでしたが、関係の方々の御意見等、また実態等も我々なりにお聞きをし、また何よりも平均的な数値の中で出させていただき、またそういう不合理が生じないようなという方向での努力もいたしましたので、今申し上げましたような考え方で修正をさせていただいた次第でございます。
  175. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、こういう薬の二重取り、しかも自分がかかった薬代以上の薬代を、全額以上の薬代を自己負担するというような、こういう制度の矛盾、内在化した矛盾を持っている制度というのはやはり撤回をすべきだということを強く申し上げたいと思います。  次に、この改悪修正したと私たちが指摘をしている二つ目の点というのは、お年寄りの入院費用、それから外来負担がさらにふえるという問題であります。  これは衆議院の参考人質疑の中でも日本医師会の代表の方が、今回はやたらと患者負担のみが前面に押し出されて、患者や老人いじめに終始している感じが強いというふうなことも述べていらっしゃいますし、朝日新聞などではこんなに患者負担ばかりが前面に出た改正というのは珍しいというような報道もあるわけです。  そこで、お聞きしたいわけですけれども、外来の場合、これは今現行は一月千二十円です。四回を限度にして一回一回五百円ということですけれども、この場合、お年寄りというのは複数の病院にかかる場合が非常に多いわけです。限度は二千円ということになっているわけですが、幾つかの診療科でたくさん診療する場合だと、それにプラス薬代もまた別途負担で加わってくるわけですから、非常に急激な負担増ということで深刻な影響を与えると思うんですけれども、どうでしょうか。
  176. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の老人に係ります一部負担の引き上げ、特に外来についてのお尋ねでございますが、今回の改正案におきましては、高齢者の一部負担につきましては、一方において若人の方々に、現下のこの危機に瀕している医療保険財政にかんがみまして、一割を二割に御負担を願うという中で、高齢者にも応分の御負担を願わなければならないということでございますけれども高齢者の一部負担につきましては、やはり高齢者の負担のしやすさというようなことにも配慮いたしまして、定額負担を維持する。そして、外来につきましては、同一医療機関については月四回までで、五回目以降は定額負担をしないというような形でのいわば頭打ちをさせるというような配慮をしたところでございます。そういう意味での現行からの急激な変更ということについて、お年寄りということに着目した配慮というものをいたしております。  また、外来一部負担金の額でございますけれども医療機関ごとに一日五百円ということでございまして、薬剤負担と合わせましても負担割合医療費の一割に満たないということでございまして、この点につきましても、若人の今回の負担の割合の引き上げということと比べましても、高齢者の方々にも配慮をさせていただいた額であるというふうに思いますし、このぐらいの額につきましてこれはお願いをしていかなければならないであろうというふうに考えたところでございます。
  177. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、今度の負担が非常にお年寄りに過酷な負担だと、それをどう思うかというふうにお聞きしたわけですよね。制度説明をお聞きしたわけではありません。しかし、この程度の負担ならというふうなお答えであったわけですけれども、これはもう今、きょう私が持ってきましたのは、五月七日に衆議院で強行採決がされた後、各委員の皆さんのお部屋にもファクスが届いていると思いますけれども、全国からこうして届けられたファクスのつづりです。千三十九件ということで、こんなにたくさん寄せられております。その中の声を私はできるだけ御紹介したいと思うんですよね。お年寄りがどんな気持ちでいるかということであります。  大阪のある病院で訪問看護をしていらっしゃる方からこんな便りが来ているわけです。おばあちゃんが家人と一緒になってしきりに往診回数や訪問回数を減らしてくださいというふうに言われる。リハビリが必要で一生懸命リハビリをしなきゃいけないのに、訪問回数減らしてくださいということを一生懸命頼まれる。九月まではいいかというふうなことも聞かれるということですね。診察室では、先生に要らない薬は減らしてくださいというようにお頼みになる患者さんが大勢いて、説明に大変困っている。こういうふうなお話もあります。  さらに、おはがきでいただいているんですけれども、この診療科がたくさんあるということの一つの例ですけれども、   私は七〇才の一老女です。今回の改正案私共年金生活者にはとても可酷な成行きだと心細く思っております。私高血圧症と変形性関節症で内科と整形外科へ通っています。極力節約してもだんだん症状が悪化すればそれこそお金のない者は死ぬしかありません。そんなに長生きしようとは思いませんが神様から与へられた命はマットウしたいと思います。どうぞ改正案を廃案とされるよう呉々も御尽力下さい ということで、これは私の地元の京都市伏見区にお住まいのお年寄りの方からおはがきでいただいたわけであります。こういうファクスはそれこそ挙げると枚挙にいとまがありません。  先ほど若人とお年寄りの関係なんかおっしゃいましたけれども、娘さんからのお便りもあるんですよね。八十三歳の母は強度の貧血、白内障、心臓の病気で通院している、医療保険が改悪されたら通院できません、食べていけない、治療代に困るんだという娘さんからの訴えもあるわけです。  結局、お年寄りというのは私たちにとってみれば両親であり、子供たちにとってみればおじいちゃん、おばあちゃんであるわけですけれども、そういうふうにやはり娘さんからも今回のこういうお年寄りの医療費上げるのをやめてほしいという切実な声も出ているということをぜひわかっていただきたいと思います。  次に、入院費の負担を上げたという問題なんですけれども、これは今七百十円を千円に上げるわけですね、政府原案は。ところが、修正案というのはその先のことも決めています。千百円に上げる、千二百円に上げるというふうに決めているわけです。さらに、これは政府原案と同じですけれども、二カ月を限度とするという低所得者の特別な制度ももうやめにしてしまう、もっともっと二カ月も先も取ってしまうという、そういう非常に冷たい、私はもう本当にこれは血も涙もないと申し上げてもいいと思います。こんなところまで取り上げる、取り立てるということを、むしろ修正でこういうところをもっと続けるとかいうなら話はわかるけれども、さらに取るというふうになっているわけでしょう。  政府は豊かになったとかいろいろおっしゃるけれども、多くの高齢者実態を見れば、老齢年金受給者の過半数、千四十四万人というのは平均月額わずか四万三千円ほどの年金暮らしです。この方々が入院すればどうなるかということですが、入院給食の負担が一日七百六十円が変わらないとすれば、現行の七百十円が千円になれば一カ月の入院で五万二千八百円になります。千百円になったら五万五千八百円になります。千二百円になったら五万八千八百円になります。こういう点では政府案よりも患者負担は大きくなるわけです。これでは年金をオーバーして、年金の中では支払えない患者が出てぐるんじゃないでしょうか。この点はどうでしょうか。
  178. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の老人の一部負担の引き上げが非常に冷たい措置であるという観点からのお尋ねでございます。  老人医療を含む医療保険制度を現行のままだれも負担をふやさなくてもいける状態ならば、それはそうでございますけれども、したがって、今回の医療保険制度を何とか支えていかなければ、それこそ医療を保険制度が支えられなくなりましたらば、お年寄りも含めてこれは大変なことでございます。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  そういう意味からいきますと、やはりこのふえる老人医療費また医療保険全体をどう支えていくかという観点からして、それをどう負担をし合っていくかという視点はやはりこれはどうしても必要になってくる。したがって、そうした中で老人医療費は、けさほどの御質疑でもございましたように、その大半は若い人の世代によって支えられております。そういったところの中で、一方において若い人の負担についても今回引き上げざるを得ないという中で、老人の方々についても、これを喜んで引き上げをお願いしているということじゃございません。先ほどいろいろお手紙もお読みをいただきましたけれども、私どもとしても全体を支えていく中にはこのぐらいの負担をお願いせざるを得ないということでお願いをしているものでございます。  入院につきましても、今回、一般の場合について千円ということにしておりますけれども、市町村民税の非課税世帯に属しておりまする老齢福祉年金受給者につきましては一日五百円ということでとどめるというような措置をし、またいわゆる入院時の食事療養費の標準負担額につきましても、従来どおり、低所得者に対する特例という形での負担の軽減も図っております。こうしたことで、いわゆる低所得の方々につきましては一部負担と食費負担を合わせましても二万四千円になるような配慮もいたしております。  こういつたいろんな配慮の中で、今回こういつた負担を、言ってみれば本当につらいことではございますけれども、お願いせにやならぬということでお願いをしているところでございますし、そういった負担であれば、今回のそのほかもいろいろ負担をしなければならないという中ではお願いはできるのではないかということでお願いをしているところでございます。
  179. 西山登紀子

    西山登紀子君 質問にちゃんと答えていただきたいんですね。千二百円の場合に、一カ月かかったら五万八千八百円。四万三千円か四万五千円しかもらっていない年金暮らしのお年寄りは入院できないんじゃないですか、年金内で払えないんじゃないですか。どうですか。
  180. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 年金の額をどう考えるかでございます。  年金が四万四千円という、今現在での恐らく平均の、現実に支給されておる基礎年金の平均額でお話しになったんだろうと思いますけれども、それで負担ができないではないかということでございますが、確かに低所得といいますか、今の年金額だけで生活をされている方との比較でいえば、一カ月丸々入院をしておられて、いわゆる今申し上げました低所得特例に該当しないということでおっしゃいますならばそういうことはございますけれども、それは事医療だけに限らず、全体的に生活全般をこの年金で、どこまでを年金の中で見ていくかという形の中で考えてまいりませんと、それだけで、それとの直の比較において患者負担が負担し切れる、し切れないという議論というのはなかなかしづらいのではなかろうかというふうに思います。
  181. 西山登紀子

    西山登紀子君 結局は年金の中では払えないわけですよね。年金以外の収入を当てにしろというわけですけれども、そういうことは本当にお年寄りの実態を御存じないという暴論だと思いますよ。  大臣にお伺いしたいわけですけれども、入院患者の負担の場合、このぐらいの負担はといつも大臣は御答弁なさっているわけだけれども、こういう例があります。  夫婦で、八十一歳のだんなさんが二万七千三百円の年金暮らし、七十七歳の妻が三万八百円の年金暮らし、こういうお二人で年金だけで生活をしていらっしゃる中で、だんなさんの方が入院をされた、そういった場合に入院費が全部合計すると四万八百円かかるという一つの例ですけれども、そうすると残された妻は一万七千三百円で生活をしていかなければならない。一日千円に上がった場合でも、入院費用が四万九千五百円というふうに膨れ上がりますから、残るお金は八千六百円で生活していかなければならない、残された妻は。  こういう実態になるんですけれども、これでもお年寄りの入院費用を引き上げるということについて、この程度の負担、あるいは千二百円に引き上げるという負担、この程度の負担というふうにお答えになりますか。
  182. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 後ほど老健福祉局長にも足りないところは答弁してもらいますが、今、老齢福祉年金が月額三万三千五百三十三円なんですよね、年金を掛けていない方が。この老齢福祉年金しかもらってない方に対しても一月当たり食費も合わせて大体二万四千円となると。この額は老齢福祉年金の月額を下回るものですから、入院によって生活に要する費用は全部提供されるということも考えれば、これは低所得の方にも十分負担いただける額ではないかなと。そして、今言ったような状況に対してはいろいろな措置が講じられるので、その人によって所得がどの程度によってか低所得者対策というのは私は講ぜられるものだと考えておりますので、今の御負担というのは私は低所得者の方にも負担いただける額ではないかなと。私の足りないところは老健局長に答えてもらいますけれども……
  183. 西山登紀子

    西山登紀子君 もう時間がないですからいいです。
  184. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 老齢福祉年金よりも下回る額を配慮しているわけですから、私は全部の生活費を考えればこれは負担していただけるのではないかなと考えております。
  185. 西山登紀子

    西山登紀子君 生活保護基準でも入院中に二万三千円程度の日用品費というのは確保されているわけですから、大臣衆議院で我が党の瀬古議員にお答えになった二万四千足らずですか、これで丸々だから、入院生活丸々だからやっていけるんじゃないかと。これはやっぱり暴論だと思いますね。生活保護基準の方でも入院中に二万三千円の日用品費は残そうと、こういうことであります。また、入院生活でそれが全生活というような生活というのは本当に十分な健康で文化的な生活と言えるかどうかということについては、やはり私は大臣の御答弁は大変実態を知らないというか、知っていてもそういうふうにおっしゃっているのか知りませんけれども、大変過酷なお年寄りの実態について本当に厚生大臣として私は問題のある発言ではないかと思います。  時間がなくなってきて、発議者の方にあと一問だけお伺いいたします。申しわけありません、三問用意をしていただいていたわけですけれども。  結局、入院費用を七百十円から十一年度までさかのぼって政府原案になかった分まで、千二百円に引き上げたわけですけれども、その引き上げた額が、ふえた部分が私どもの試算では約八百億ぐらいあるんじゃないかと思うわけですが、先日、五月八日の採決直後のNHKの討論会で社民党の出席者の方が、この修正案というのは薬剤の負担の点でも高齢者の入院負担が多い点でもやはり問題が多いから参議院の段階で再修正をしたいということをNHKのテレビを通じて全国民に公約をされたわけであります。ですから、むしろ協議に加わってきた与党の中でもやはり問題だなというふうな点があったと思うんですね。  この九月実施ということになったその間の赤字を取り戻すためにこのお年寄りの入院費を十一年度までさらに千円を上げていったというふうな批判があるわけですけれども、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  186. 長勢甚遠

    衆議院議員(長勢甚遠君) 今回の修正の提案に当たって、党内でもたくさんの議論をいたしました。当然、国民の方々に大変な負担を求めることでございます。しかし、この事態を乗り切らなければならないという思いで真剣な議論をいたしました。そういうことでございますので、過程においていろんな議論のあったことは当然であります。しかし、与党としてこの緊急の健康保険財政、健康保険制度が危機に瀕しておる事態に対してこのような修正が必要であるという判断に立って共同で提案をさせていただいたところであります。  そういう中で、今御指摘の穴埋めですか、というふうなお話でございますが、まことに言われなき批判であり、心外の至りでございます。
  187. 西山登紀子

    西山登紀子君 質問を終わります。
  188. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 先日の私の質問の中で、特に抜本改革について、これを八月いっぱいに何としてでもやり上げる、道筋を示すという大臣の力強い答弁がございました。私は、きょうはそういう意味でこの抜本改革を含む医療保険構造改革の取り組みについて引き続き質問をさせていただきたいと思います。  医療保険審議会の建議書、そして厚生省の諮問事項、それらの中にこの抜本改革とあわせて平成九年中に進めていくべき改革というのが書かれております。これをちょっと見てみますと、特に費用負担の分についての言及がここに幾つかあります。「平成九年の改正においては、例えば三年程度の間収支が均衡するような財政計画とする。」とか、それから「ある程度保険料率を引き上げることも止むを得ない。」、さらには「各制度間の公平、老人医療費を支えている現役世代と高齢者世代との公平及び保険給付の重点化を図る観点から、見直しを行う。」、「被用者保険本人の患者負担を、」「二割とすること。」、さらに「高齢者患者負担について、一~二割の負担とすること。」、「薬剤給付について、給付除外ないし三~五割の患者負担を設定すること。」、こういうことが平成九年改革ということでうたわれております。  このことについては今回の改正の中には確かにしっかりと盛られておるわけでありますが、その他の点についても平成九年中に改革できるものから直ちにやるべきであるということが書かれてあるわけですから、以下、その点について順次お伺いをしていきたいと思います。  そこで、まず、この中には薬価基準の抜本的見直し、それから薬価設定の適正化、透明化、それから診療報酬体系の抜本的な見直しについての記述があります。この抜本的な見直しについてはこれからいよいよ議論に入るわけなんですが、少なくとも今年度、厚生省としてこの抜本見直しとは別に、「薬剤使用適正化等」ということの中に「薬価差の早期縮小を図る。」とか、「検査について重複や過剰を是正するため、必要な措置を講ずる。」とか、こういう幾つかのある意味では取り組みが建議書の中に書かれてあるわけです。  塩野谷医療保険審議会会長からは、法改正を伴わないものについて行政的に実施できる各種施策は含むべきであるというような発言も衆議院の参考人質疑の中でも行われておりますけれども、この点について、特に薬価、それから診療報酬体系見直しという中で何をまずやろうというふうにお考えになっているのか、そこからお伺いしたいと思います。
  189. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 医療保険審議会の建議書が昨年十一月二十七日に出ているわけでありますが、これをもとにしまして今回の法案をお願いしておるわけであります。今回の国会における御審議等におきましても、全体的には当初医療保険審議会が考えていたスケジュールよりもテンポが速くなっているというふうに私は思います。  そういった意味で、平成九年度、医療保険審議会で指摘されているところをなぞらえて申し上げるとすれば、薬価基準については既に今年度四月から薬価基準の引き下げを行っておりますし、その中でR幅も改定をしてきているというようなことでやっております。しかし、これは従来の延長の域を出ていないわけでありまして、むしろ今やまさにこの秋までに薬価基準制度についても抜本的な見直し案というものを策定するという段階に来ておりまして、私どもとしてはそこに全力を投入するということで考えております。  それからまた、診療報酬体系の関係でございますけれども、これは定額払い制との関連におきまして、今年度は、この建議にもありますように、国立病院等におけるいわゆるDRG、急性期の入院医療定額払い方式を試行するということで考えておりまして、この秋にもこの試行に踏み切っていきたいというふうに考えております。
  190. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 それじゃ、給付と負担の見直しに関連してお伺いをいたしたいと思います。  同じく平成九年改正の中で触れられております一般用医薬品類似医薬品についての給付のあり方見直し、さらに高額療養費の自己負担額及び入院時の食事療養費の自己負担について見直しを行うことが言及されております。これについては厚生省としてどういう考えを持っておられるのか。
  191. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 市販薬類似品についての給付の見直しというのが建議で指摘されております。これは私どもとしてこれを実施するということはまだ決めておりませんけれども、この建議で触れられております内容について、果たしてどういうふうな方法というものが考えられるのか、また医薬品の範囲といったものをそういった際にどう考えるのか、そういった幅広い角度からの検討を今年度はしなきやならないというふうに考えております。  それからまた、高額療養費でありますけれども、これはこれまでも一定の改定ルールに従って改定してきております。その基本はやはり所得水準の伸び等を勘案して一定の限度額の設定ということをやってきておるわけでありますが、今年度もそういった意味でそれらを勘案しながらこの高額療養費の基準というものについて検討をいたさなきやならない、また検討を進めているところでございます。
  192. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 入院時の食事療養費は。
  193. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 失礼いたしました。  それから、入院時の食事療養費でございますけれども、これも建議で指摘されておるわけであります。現在の基本的な考え方というのは、食事代については食事に要する費用の中でいわゆる材料費、これに相当するものを御負担いだだくという形になっておるわけでありますけれども、在宅の患者さんとの均衡、あるいはまた食事というのは病院食は除きまして一般的な食事であればどこでも召し上がらなきゃならないということでありますから、そういった中でその均衡というものを図る必要があるのではないか、そういうふうな視点から建議は述べられているというふうに思っておりまして、私どももこの建議の線に沿って現在検討を行っております。
  194. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 第三番目に、社会的入院の是正に関して建議書では「医師が入院治療を行う必要性がないと認めた者が入院を継続する場合、医療保険制度上の取扱いを見直す。」というふうなことが書かれてあります。この点について。
  195. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この社会的入院の問題、これは我が国の場合、非常に入院期間が長くなっておるという一つの原因にもなっておるわけでありますが、そういった中での解消ということになりますと、受け皿の問題等々がございます。  そういった意味では、今御審議をお願いしなきやならない介護保険法の早期成立を私どもとしては期待をしておるわけでございますけれども、それはそれといたしまして、私どもとしては、平成九年四月の診療報酬改定におきまして、長期入院の是正、その誘導策と申しますか、そういうような観点から入院診療計画というものをきちんと策定していただいて、そして患者さんへ十分御説明いただいて、そして早期退院というものを図れるような、そういう診療報酬上の手当てをさせていただいております。  それからまた、退院の際のアフターケアと申しますか、退院時における指導料というものを新たに診療報酬上創設いたしまして、一カ月を超える入院患者さん等に対する退院後のケア計画、こういうものをきちっと作成をし、そして患者さんに十分御説明をして、そして安心して退院できるような、そういった方策というものも診療報酬上手当てをいたしております。  この社会的入院の解消というのはなかなか決め手がないわけでありますけれども、今年度、診療報酬上における手当てを講ずることによってこの誘導というものを図っていきたい、こういうようなことを実施いたしております。
  196. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 社会的入院の解消にあわせて、この建議書の中では、医療計画上の必要病床数のあり方見直し、これについてうたっております。これは具体的に何をどういうふうに見直すのか、お聞かせをいただきたい。  また、昨年十一月の国民医療総合政策会議の中間報告では、「過剰病床に対する医療法上の許可のあり方及び保険医療機関の指定の取扱いについて検討する必要がある。」というふうに書いてあります。  この点を含めて、過剰病床解消策について厚生省はどのように考えておられるのか。
  197. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 今お触れになりました医保審の建議書あるいは国民医療総合政策会議の中で、一つは必要病床数の見直しでございますけれども、これにつきましては、入院期間を短縮することによって必要病床数を見直す、あるいは全体の必要病床数の枠の中で急性期病床と慢性期病床に区分をするということが指摘をされております。  この点につきましては、平成九年度に新しい患者調査の結果がまとまりますので、それをもとにして、一つは現在あります必要病床数の算定方式の見直しを行いたいというふうに考えております。それとあわせまして、急性期病床と慢性期病床の区分についても検討に着手するということにいたしております。あくまでも現在ある必要病床数の枠の中でそういう区分をする、またあわせてそれによって病床数全体を減らすということでございます。  二点目のことでございますが、これは現在の医療計画の中では過剰地域に新たに病床を設置するということは事実上できないということになっておりますけれども、一方、過剰地域に既にある病床については手がつけられないということになっております。  昨年の国民医療総合政策会議での意見といたしましては、具体的な方策として、医療機関の承認の更新制あるいは保険医療機関の更新制、そういうふうなものを活用して議論すべきだということでございますが、私どもとしては全体的な医療改革の中でそういうことについて今年度検討したいと思っております。
  198. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 五番目として、これは先日の渡辺委員質疑の中にもありましたが、国民医療総合政策会議の中でも提言されているんですが、保険医の定数制、定年制の問題です。  これは先般、保険局長が非常に慎重な答弁をなされたというふうに私は受けとめたんですけれども、こういった問題については余り踏み込んで議論がされなくて、どちらかというと患者負担とかそういうようなものはどんどん進んでいく、私はここのところを一番問題にしたいわけです。  きょう、この問題を私があえてなぜテーマとして取り上げたかというと、この建議書の中で保険の負担、これは国民の皆さんに、医療保険が大変だ、だからぜひ何とかこれを国民の皆さんで支えていただきたい、若い人だけに支えさせたらいけないからお年寄りにもお願いしますよ、そういうことで、ある意味では我々もそれはやむを得ないと。  しかし、やっぱりそれは国民だけではなくて、医療機関もまた薬剤のメーカーも、こういうすべての人が同じように痛みを伴わなければいけないということを私は先日も申し上げたんですけれども、なぜきょう私がこういう問題について一つ一つ問うて厚生省からの答弁を引き出したかというと、今までの問題というのはどちらかというとかなり抵抗のある問題だと思うんですね。この抵抗のある問題については何となくまだはっきりと物が言えない。私はそこにこの前の大臣の決意から感じ取るものと若干の違いを見るわけなのであります。  まず、高木局長に保険医の定数制、定年制の問題、これをぜひお答えいただきたいわけであります。これは個人タクシーの運転手にもないんですよね。この前私が乗ったタクシーの運転手に年を聞いたら八十歳と言っていましたけれども、本当にいつまでもこの人に命を預けていいんだろうかというような思いも実はするわけです。  そういうふうなものも含めて、私は、本当に厚生省として慎重な答弁だけでいいのかどうか、それをまずお伺いして、今の一連の話の中で大臣答弁をいただきたい。
  199. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 確かに建議では触れられておるわけであります。しかし、これを実施するかどうかということについては、やはり私どもきちっとした検討をする必要があるわけであります。そのときに、この問題については私は、どういうようなねらい、どういう趣旨で保険医の定数制なり定年制を導入する必要があるのか、そこの必要性なりねらいというものが理解が得られるものなのかどうかということではないかというふうに思っております。  そういった中で、我が国の医師が過剰になってきている、これは指摘をされているわけでありますけれども、しかし保険医になるに当たってはニューカマーは阻止されるということはないわけでありまして、そういう意味では一定の枠があって上が出ないと下が入れないというわけではない、やはりそこには自由に参入はできる、そしてそこできちっとしたいい先生が信頼されてそして多くの患者さんを診ていただく、こういうシステムがやはりいいわけでありまして、私はそれがいいと思っております。  そういうふうに考えますと、定数制をしくとか定年制をしくというのは、これは一種の規制であります。そういうふうに考えて、とりわけ定数制というよりも私は定年制の問題でお答えしたと思うのでありますが、そういう格好で医療というものを考えるのがいいのかどうか、その点については私は個人的には疑問を持っておるものですから、これは慎重にやっぱり対応すべきだというふうに申し上げたわけでありまして、これが非常に抵抗が強くて、だからどうもシュリンクしているのだろうというふうに思われたかもしれませんけれども、私の考え方は今申し上げたとおりであります。
  200. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 定年制の問題ですが、これは確かに余り年をとって技術なり治療行為が劣る場合もあり得ると思いますが、何歳でいいのか、現在の高齢者の時代では七十歳なんというのは本当に元気な方が多いですし、むしろ経験を積んでますます診る目が高くなって、黙って座ればすぐ病気がわかるという名医がおられるのも事実であります。  そういう中で、私は、お医者さんの場合に、非常に教養のある方ですから、もう人を診れなくなるなというのは御自分で判断されるんじゃないかと。それと、患者さんの方もこれは危なっかしいなと思ったら行きませんよね。日本の場合はどの病院を選んでもいいんですから、ここの病院しか行っちゃいけませんよといった場合は、それは私はこの定年制というのはもっと真剣に考えていいと思いますけれども、現在の場合は選べるわけですから、このお医者さんはおっかないなと、危ないなと思ったら行かないんじゃないかという点がありますので、定年制というのは検討はいたしますが、そういう点も考慮してこれからの抜本改革に臨むべきではないかなと思っております。
  201. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 局長は、これは抵抗があるからじゃなくて基本的な問題点がまだあるんじゃないかというような御趣旨でありましたけれども、私は多分これ、建議書の中では、医者がどんどん生まれてくる、医者がふえればこれはもう開業は自由ですからどんどん開業をする、そのことによってふえればそれだけ、自分が診療所を開業すればそれを運営していかなきやならないからそこに過剰診療、過剰検査みたいなものが出てくる、だからある意味では縛るべきではないかということが私は趣旨だろうというふうに思うんですね。  これから老健施設だとか特別養護老人ホームだとか、こういうようなところにも医者の配置というのが義務づけられてくる。最近ではデイケアあたりも今までは百人以上でも一人の医者でよかったのが、これからは何十人以上には一人医者を置かなきゃならない、そういうふうに医療の需要というのが随分メニューも幅広くなってきているわけです。例えば、これ以上の年齢になったらそういう老健施設だとかデイサービスだとか、そういうようなものに行くお医者さんを、年齢の高い人は行くようにすればいいと思うし、私はそういう意味での定年制というのは保険医としての部分で整理をしていくことは、この建議書の中でうたわれている部分はそれなり検討の余地はあるのではないかというふうに思うわけであります。  この点については終わりまして、次に、きょうも老人の一部負担の問題が随分議論をされてきました。ちょっと気になったのは、今回の改正で老人の一部負担が外来、入院ともに引き上げられました。入院の一部負担については衆議院において修正をされて、段階的にこれを引き上げていこうということでありまして、先ほどから発議者の答弁もありましたが、私はこれはどうも薬剤の別途負担の修正に伴う財政補てんというふうな見方がどうも否めないような感じがしてならないんです。先ほど一部負担の額の算出の根拠について説明があったんですが、どうも私は納得がいかないのでもう一度説明していただけませんか。
  202. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の老人の一部負担でございますけれども、入院につきましては、先ほどお話しのように、今回の修正によりまして平成十年度、十一年度と段階的に引き上げをさらにされるということでございました。  今回のまず政府案の一部負担の改定に当たりましては、一つには、全体としてまず引き上げを行った理由は先ほども申し上げましたけれども、ふえる老人医療費というものを大きな原因として医療保険財政が非常に危機になっている。それをいかにみんなで支え合っていくかという形の中で、主として老人医療費も負担していただいている若人の一部負担というものも一割から二割に引き上げさせていただくということとの見合いにおきまして、一方、高齢者の方々、平均的にいえばやはり若人の方々と遜色のない状態にだんだん経済的な条件もなっているという背景の中で老人にも応分の負担を願うということからお願いをしておるんですけれども、その際に介護保険というものが一方において今御提案申し上げております。その自己負担も一応一割ということでお願いをいたしております。そういったことを考えますと、世代間の負担の公平というようなことからも、審議会におきましても一割程度の負担をすべきであるという御意見も相当多くございました。  そういったことを踏まえまして、一つにらむ方向としていえば、全体としておおむね一割程度の負担水準というものをにらみまして、ただ現行からして急激な負担増を避けるというような配慮もありまして、そして比較的わかりやすく御負担もいただきやすいということから定額を維持する中で、しかし今まで外来でございますと月一回払うと後はないという状態をそれぞれのたびごとに払うとか、そういう工夫をする中で水準としてはおおむね一割程度の負担水準をめどにしつつも急激な負担増加を避けるということで、現在のそれぞれおおむね五割程度のアップの範囲内におさめるということで政府原案としてのそれぞれの額をお決めをさせていただいたということで御提案をしたところでございます。  この政府案に対しまして、今回の修正におきまして、入院につきましてはさらに、先ほどのお話のように、政府案の引き上げ後の水準ということからいうと外来と入院の負担とにやはり少しアンバランスがあるんじゃないか、端的に言えば少し外来の方が引き上げが大きくて入院の方は逆に少ないという、引き上げる中でのことでございますけれども、そういうアンバランスがあるんじゃないかというようなこと。あるいは先ほどのことからいえば、介護保険との整合性ということで、社会的入院等を解消するということからいえば、今の政府案による負担水準というものは、一割はめどとしつつも、先ほどのような急激な負担を避けるということからしましたから、大分一割の負担水準からすれば低いところになっております。そこについてはもう少しやはり一割という、介護保険後の状況もにらみながらそこに近づける努力をするべきではないかということで段階的に一部負担の額を上げるという修正をなされたものというふうに承知をいたしております。そのことは衆議院における修正のときの趣旨説明としてもそのように私ども拝聴させていただきましたし、その際にはそういったほかで目減りした分をこれで補ったんだというような御説明ではございませんでしたし、明確に先ほどもそういうことではないということでお話がございまして、私どもの方もそういうふうに受けとめて対応すべきものであろうというふうに思っております。
  203. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 非常に何か苦しい答弁に聞こえてならないんですが、先ほど長勢議員がコスト意識を涵養する、社会的入院や病院のサロン化の解消だというような答弁をなさっていましたけれども、私はその辺が確かに一つの本音の部分というか、そういうふうに答弁したわけですから、でも、そういうことになると私はやっぱりこれは定率制にすべきだと思うんですね。  この今回の修正というのはそういう意味では今回皆さんの質疑の中でも非常に説明がしにくいという意見もありますし、根拠があいまいだというようなことも言われておるわけです。この建議書の中でも定率負担を求める声の方が強かったというふうに書かれてあるわけですね。それをあえて定額負担と選択をしたのはなぜなのか、そこのところちょっとお聞かせください。
  204. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 確かに、老人医療の一部負担については、現在の高齢者の方々の経済的な水準、それからやはり今後は高齢者制度の受け手だけではなくて支え手という形で位置づけていくべきである、そういったこと、それから先行する介護保険との関係等を考えて定率性というような御議論がございました。医療保険審議会、老人保健福祉審議会、両方ございましたけれども、そういった審議の中で定額制の御議論と同時にやはり定率制の御議論がございました。これらの議論を踏まえまして、昨年末予算決定時、あるいは政府案を決めます際に与党とも御相談を申し上げ、御議論がされたところでございます。  その際、やはり介護保険との整合性なり、あるいは若人もお年寄りも応益的な負担を貫くべきであるという同じ原理原則に立つべきであるということをきちっとしますならば、おっしゃるように定率負担というお答えが出てくるんだろうと思いますけれども、一方において、やはり現在こういう形で定額がやられてきているということから出発をするということを考えると、高齢者の方の負担のしやすさという点にも配慮をすべきであるという御議論もございまして、最終的にそういう意味での定額負担を維持するというところにとどまった。そういう意味で、それが中途半端ではないかという御議論はあるいはあるかもしれませんけれども、むしろ定額制による高齢者の負担のしやすさという点、要するに幾ら負担したらいいかという部分が見えるという点について、そのことを重視すべきであるという御議論も与党内に相当ございまして、そういったことに配慮をいたしまして今回の御提案をさせていただいたわけであります。  ただ、繰り返しになりますけれども、そうした負担の中で、従来のいわゆる外来でございますと月一回だけ払うというような形ではなくてその都度という形を考えさせていただくとか、あるいは医療費伸びに応じましたいわゆるスライド制を入れていただきますとか、そういったある種の給付に応じた負担となるような工夫というのはその中でさせていただいたというのが今回のいわば政府案でございます。  修正案につきましては、もう繰り返しは避けさせていただきたいと思います。
  205. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 要するに、きょうも小児医療の問題の中で薬価が非常に高過ぎるのではないのかというような議論もありました。これはある意味では定率でかかったものについて一定の比率を掛けて徴収すれば、そこにはもう全くの不公平というのは出てこないわけですよね。特にきょうは老人保健福祉局長がこの問題について答弁していますが、これから介護保険が審議に入るわけですけれども、この介護保険は一割なんですよね、一割負担でもう決めているわけです。なのに何で、今回抜本改正をしなきやならないということの前提なのに、なおかつこれができなかったということにまた私は不安を感じるわけですよ。やっぱり、そこにいろんな利害調整みたいなものが働くと、最終的には本当に苦しい答弁をしなきやならない、また我々だって国民に対してわかりにくい形で決めてしまったということのある意味では批判を浴びるわけでありますし、私はそういう意味でぜひこういった問題については一つの筋をきっちりしていくべきだろうというふうに思います。  特に、医療福祉とりわけばらばらだということが言われてもう久しいわけですよ。それを一体化しようということで介護保険というものができ、福祉医療のある意味ではのり代の部分でそこをやっていこうというわけですから、そこはやっぱり制度としてきっちり私は整合性を持たせていかなきゃいけないというふうに思うわけでありまして、この後の高齢者の問題、もう時間がなくなっちゃいましたけれども、踏み込もうと思ったんですが、私はやっぱり定率にしながら一方で低所得者に対する配慮というものをきっちりやっていかないといけないというふうに思うんですよ。ただ、定率にするとどうしても低所得者が本当に厳しくなるという部分が私はあると思います。  この問題についてあと一問だけで終わりますが、先ほど西山委員の方からもお話がありましたけれども、年金が成熟した、だから高齢者経済状況が向上したというふうなこと、これはあながち否定はできないと思うんです。確かに、都市部のお年寄りは家を売ったり、そういうふうな意味で蓄えもあるでしょう。しかし、私の大分県の場合は、過疎ナンバーワンの県ですが、農業が主ですから国民年金の方が多いんですけれども、一人当たりの年金月額は四万二千七百十一円、これは全国平均でも非常に低い状況にあるわけですね。先ほど西山委員の方からもありましたように、入院時の食事療養費の標準負担額を合わせると今回の改定で五万二千八百円になる。これはそこに一つの不足額が出るわけで、先ほど局長は若干の蓄えがあるだろうというふうな話がありましたけれども、もう田舎じゃ売るものがないんですよ、ほとんど。もう牛を売るぐらいですよ。  しかし、そういう状況にあるということを考えたときに、私は一律にやっぱり決めてしまうというのは非常に問題があるんではないのか。これは地域差もあるでしょうし、また個人の状況もあるでしょうし、その辺をどういうふうにこれから抜本改革の中でうたい込んでいくか、考慮していくかということが非常に大事になってくるんですけれども、そこの点について御意見をいただいて質問を終わります。
  206. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 今回の改正案におきまする一部負担につきましては、先ほど来御説明を申し上げておりますような考え方に立ちまして、ある意味では先生今お話しのことからいうと、一割負担ということからいえば中途半端ではないかということ、仮に一割にするとまたそれは医療費が多ければ医療費負担がふえるわけですから、そういう意味において一方において低所得者に対する配慮ということが要るのではないかと、両面からのお話をなさいました。今後の一部負担を考えていく場合に、その両面の配慮というのは要ると思います。今回のものにつきましては、先ほど申し上げましたように、一割負担をめどとしつつもそれに至らないところで定額負担にとどめ、なおかつ引き上げ幅も一割に満たない、全体としていきますと修正後でいえば八・四%にとどめるというような配慮をする中で全体やっております。  医療保険というのは、ある意味からいえば画一的な給付をするところでございますから、それぞれのケースの中で例えば四万三千円しか年金がない人をどうするかというようなことについていえば、先ほどのような個別のケースでいえば確かに入院されますとそれ以上かかるではないかというケースが生じます。それも非常に低所得の場合については、現在老齢福祉年金の受給者のところについては手当てをしているということで申し上げましたが、それ以上のところについては今お話しのようなことがございますと思います。  今後につきましては、やはりそういった医療保険の中でどこまでを給付として見るか、それからそのときに給付水準というものをどのように設定するか。これは一つは給付と負担の公平をどう考えていくか、それからお年寄りの特性というものをどう考えていくか、それから今お話しのございましたように今後における介護保険というものをどのように考えていくか、それからそういった中で医療保険がいわゆる所得階層ということについて負担の面、それから給付の面でどういうふうに考えていくべきなのか、そういったことを総合的に考えて、抜本改正の中における患者負担のあり方というのはやはり一つの大きなテーマだろうと思いますので、そういった観点に立ちまして検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  207. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十分散会