○今井澄君 ここのところは実は非常にシビアな
内容を含んでおりまして、特にお医者さんの方は銘柄で、同じビタミンB1誘導体でもアリナミンを出すかそれ以外の後発品を出すかということ、ここに医師の裁量権があるというふうに多分医師会の方は解釈していると思うんですね。ここのところがかなりシビアな問題ではないかというふうに
思いますね。ここのところはよく関係団体と話し合ってみなければいけないと
思います。
病院の場合には、私は
病院に勤めていたし、院長をやっていた経験から言えば、今の
薬価差がある限りやっぱり銘柄別に選びますね。選びますけれ
ども、この
薬価差がなくなるようなシステムになれば、薬効さえ同じであれば、あるいは多少似たようなものであれば、それは
薬剤師さんと
患者さんの相談にお任せして一般名処方ができるのではないかと私は思っております。
ですから、そういう
意味では、この医薬分業を進めるというのは、そういう
意味ではやはり処方を出すお医者さんの方と調剤をする
薬剤師さんの方との話し合いを含めて
厚生省が十分そこに立ち入って大胆にやっていかないと、ただ進めてくださいというのでは進まない。特に、一般名処方を考えると非常に問題が出てくるだろうと思うんですね。
そこで、実はお薬の問題であと幾つもやりたいことがあるんですけれ
ども、先ほど
出来高払いと
定額払いの問題で、特に医師の裁量の問題が出てまいりましたので、私はここでちょっとその問題に移らせていただきたいと
思います。
というのは、医師の裁量とか、よく言われるプロフェッショナルフリーダム、ある
意味で医者も
歯科医師も
薬剤師も、こういうのはみんな技術屋であります。理学療法士も看護婦も技術屋です。技術屋さんに気持ちよく全力を出して働いていただくためには、何から何まで統制するというのは、これはうまい方法でないというのはもう過去の歴史からわかっているわけです。
しかも、同じ病名がつく病気であっても、それから同じ
患者さんが同じ風邪を引いてもその時々によって違うわけですから、そこはやっぱり現場の裁量というものを十分に生かす方法がないといけないと思うんですが、その裁量性がどう発揮されるかということとの関係でちょっとお尋ねしたいと
思います。
私は、これは先ほどの菅野
先生の御
質疑とは逆の表現になるかもしれませんが、ここで
抜本改革をやるということは発想も転換することだと思うんですね。発想を転換するというのは、確かに
出来高払い制度によってこれまでの
日本の
医療がこれだけのレベルに来たということはあるんだけれ
ども、今、全体的に財政的に厳しい、
医療費もある一定の
伸び以下に抑えざるを得ないかもしれないというところに来たときに、最も有効な
医療資源の使い方はどうしたらいいかという白紙から考えた方がいいと思うんですね。
とかく
医療現場にいる者にとってみると、この間、出来高でやっていたものがだんだん丸められてきた、だんだん定額制が入ってきたのでそれが
医療費抑制策だと。まして、出来高をなくされるということは、これ以上に
医療費が抑制されて現場は苦しくなるんだという、そういう受けとめがあるものですからなかなか御
理解はいただけないと
思いますけれ
ども、やっぱり
医療現場の方も行政の方もそこのところは本当の
抜本改革であれば白紙からやってみた方がいいと思うんです。
私は、
出来高払いが
医療現場の夢をなくしているのではないか、むしろ医師の裁量、医師に限らず現場の裁量をなくしているのではないかという例を三つほど挙げさせていただきたいと思っております。
一つは、私
どもの
病院でかつてまだ
診療報酬点数に訪問看護をやったら幾らという点数がない時代から訪問看護をやっておりました。それはどうしてかというと、
病院がいっぱいになってくるので早期に退院していただく、盲腸なんかもまだ糸を抜かないうちに退院していただく。そうすると
患者さんは不安だからこちらは訪問に行かざるを得ないんですね。そういうことをやっていた。そこへ訪問看護の点数がついたから私
どもは大変喜んだわけです。これは
病院の経営も楽になると喜んだわけです。ところが、私
どもの近くのある大きな
病院は訪問看護をやっていなかったんですね。点数がついたらすぐお始めになりました。だから、点数をつけるということはいいことなんですけれ
ども、反面、その
病院がおやりになったことは、そのときに決められていた寝たきりか寝たきりに準ずる人しか点数を上げませんよ、月に二回までですよ、三カ月行ったらもうおしまいですよと、それしかやらないんですね。だから、寝たきりだろうと寝たきりでなかろうと、訪問看護の必要な人に行くという、そういう行動パターンに一般的に
医療機関はならないんです。そういうことが
一つありますね。
それから、
病院でもそうなんですけれ
ども、いろんなことをやりますと、事務の方からそれは点数にありませんからやめてくださいというのが必ず経営の立場からは出てくるんですね。やりたいことができないということでは裁量権の問題がなかなか私
どもは現場では不自由だったというふうに
思います。
それから、
一つ情けない話は、昨年の
診療報酬改定で、お薬を出したときに紙に書いてちゃんと
説明をすると五点、五十円つくという、ことし七点に上がったんですか、私はこれは非常にある
意味で
医療現場をばかにした情けない話だと思うんです。
説明をするというのは
医療業務本体なんですよ。忙しいからできないとか、そういう理由はいろいろあるにしても、これは
医療本体の仕事なんです、
説明するというのは。それを
説明をしたら五十円つけますよというふうなことは余りにも
医療現場をばかにしているというか、逆に言うと点数がついたからせっせと
説明を始めるというのは余りにも
医療人として情けないと私は思うんですね。
それから、もう
一つだけ例を挙げます。
最近、テレビで盛んに言われています。
厚生省が薬を締めつけた。特にビタミン剤をもう保険から外すという傾向にあるから、妊婦さんで重いつわりがあって食べられない人、点滴をやるんだけれ
どもビタミンが入れられない、その結果何が起こったか。ウェルニッケ症候群が起こった。テレビでやっていますよね。ウェルニッケ症候群というのは何かというと、これは例えばアル中の人や栄養失調の人がなるんですね。簡単に言えば脳がおかしくなって痴呆になるんですよ。妊婦さんがですよ。こういう例が昨年で十何件発生しているというのをテレビでやっている。これは一体だれの責任ですか。
私は、率直に言ってこれは
厚生省の責任というのは責任転嫁だと思うんです。これはお医者さんがやっぱり現場で診て、この妊婦さんはつわりがひどくて点滴をやるときにどうもビタミンも欠乏しそうだからビタミンを入れるとか、そういう判断をすべきだと思うんですよ。かってはビタミンというのをむだに使ったのは事実ですね。私たち盲腸の手術をやると、まあ三日目ぐらいに御飯を食べられますけれ
ども、必ずビタミン一式というのを食べられないときには入れていたんです。でも、元気な大人が盲腸の手術をした後二、三日何もビタミンを一式全部、AからBからCから入れなくたって済むんです。そういう
意味で、ビタミンの使い過ぎということでこのビタミンは一般的に使わなくなったんですね。だけれ
ども、妊婦さんがつわりのときに、この人が本当にウェルニッケ症候群になるような重い長いつわりで食べられないのかどうかというのは現場の医者の判断なんですよね。そこにこそ医者のある
意味で言ったら力というか裁量があると思うんです。
だから、それが点数に認められていないから点滴に入れなかったからウェルニッケ症候群が、去年十何人も痴呆ができちゃったんですよ、妊婦さんの痴呆が。私は、このことはやっぱり今の
出来高払いというのが細かい
一つ一つのことを、これをやったら幾ら、これはやっても点数になるならないというのがあることがかえって今の
医療の裁量をなくしてきているんじゃないかと私は逆に思っているんです。
そこで、例えばアメリカのDRGという方式だと、例えば心筋梗塞で入院した場合には一件につき二十五万とか、重い場合は三十万とか、軽い場合は幾らと、こう決まっているわけですね。そうしますと、その範囲内でこれをやったら幾らとかなんかじゃないので、その
患者さんを治して幾らなわけですね。そうすると、その点数が標準で設定されていれば、ある
患者さんについては安くて済むからもうかる、ある
患者さんについてはちょっとこれじゃ足りないからやり過ぎて、お薬も使わざるを得なくて足が出る。だけれ
ども、結果的にとんとんになれば私はいいと思っているんですよね。そういう
意味では、むしろある
意味では定額の方が医師の裁量権が生かされるという
世界をこれから築いた方がいいのではないだろうかというふうに思っている面があります。もちろん、定額で決まったのがぎりぎりで一番安い値段に決められたら、これはやっていけません。だけれ
ども、そこのところは適当な値段に決められれば、もうかる症例もあるしと言ったらこれは変な言い方ですけれ
ども、安く上がる人もいるし足が出ちゃう人もいるしという、そこにこそ裁量が私は出てくるのではないだろうかなと思うんですね。
そういう
意味で、慢性期は大体が決まっているから定額でいい、急性期は何が起こるかわからないから出来高、こういう考え方が
割合言われているんですね。
厚生省もそういうことをどうも言っているような感じがあるんですけれ
ども、私はそういうところを超えて踏み込むべきだと思うんです。そうでないと、発想の転換をして本当に
医療のあるべき姿とその支払い方式というのを考えないと、今までのこの点数の積み上げたけでやっていったら、もう私は恐らく
医療現場にとっても夢が、希望がないだろうと、抑えられるだけだろうと思うんですね。そういう
意味では、先ほどの
厚生省の
答弁でもベストミックス、
出来高払いと
定額払いとのベストミックスというふうな話がありましたけれ
ども、私はいっそのこともっと踏み込んで
出来高払いを抜本的に見直すと、幾ら定額にしたって、出来高を加味しない、原価計算しない定額なんてないわけですから。ただし、今お話ししているのは
病院の話ですよ。今、
資料をお配りいただきましたように、外国でも
日本でも診療所、開業の
先生方はほとんど全部出来高ですよね。出来高です。今の定額については、
病院については私はそうすべきだと思うんですが、
厚生大臣の所見を
伺いたいと
思います。