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1997-05-27 第140回国会 参議院 厚生委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月二十七日(火曜日)    午前九時三十一分開会     —————————————    委員異動  五月二十六日    辞任          補欠選任     木暮 山人君      林 久美子君  五月二十七日    辞任          補欠選任     林 久美子君      星野 朋市君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上山 和人君     理 事                 尾辻 秀久君                 佐藤 静雄君                 和田 洋子君                 菅野  壽君     委 員                 大島 慶久君                 塩崎 恭久君                 田浦  直君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 南野知惠子君                 宮崎 秀樹君                 林 久美子君                 星野 朋市君                 水島  裕君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 釘宮  磐君    国務大臣        厚 生 大 臣  小泉純一郎君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     中西 明典君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省薬務局長  丸山 晴男君        厚生省社会・援        護局長      亀田 克彦君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省保険局長  高木 俊明君        社会保険庁運営        部長       真野  章君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    説明員        文部省高等教育        局医学教育課長  寺脇  研君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十六日、木暮山人君が委員辞任され、その補欠として林久美子君が選任されました。     —————————————
  3. 上山和人

    委員長上山和人君) 健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 田浦直

    田浦直君 おはようございます。自由民主党の  田浦直でございます。  健保法等改正案につきまして御質問させていただきたいと思います。  これまでの経過をずっと見ておりますと、初めは一部負担金定率だという話があり、それが定額に変わり、その定額政府案、その後には修正案というものに変わってきたわけでございます。また、政管健保の保険料率も千分の八十二から八十六、今回は八十五というふうに変わっておるわけでございます。その間の経過が私どもには一つも目に見えてこないわけです。どういう理由でこう二転、三転しておるのか、その辺が私ども当事者以外の者にはよくわからないんじゃないかなと  いうふうに思っているわけでございます。  そういう意味で、まず冒頭に大臣の方にその辺の経過についての御意見なり御感想なりをお尋ねしたいというふうに思います。
  5. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 一番わかっていると思われる方からわかっていないと言われて、私の方は戸惑うぐらいなんですけれども。  それだけいろいろな立場の方がおられる。また、医療関係健保法関係法案というのは多くの関係者が注目し、それぞれの立場というのが利害相反する面もあるのではないか。同時に、国民に対して負担お願いするという立場から、いかに国民負担を軽減するかという考えでそれぞれの政党、それぞれの団体考えが違うのではないかという一つのあらわれだと思っております。  どうしてなのかといいますと、政府側といたしましては、審議国会にゆだねているわけでありますので、むしろ政党間、議員間の調整にまっしかない。あえて政府としては原案で御審議いただいたわけでありますけれども、それがなかなかうまくいかないということは、それだけ政府案理解していただくのは難しいと。そういう中においては、国会での各党派間の調整に任せるしかないというのが政府側立場でありますので、その辺の事情はよく委員もおわかりだと思います。いろいろ修正案も出ているようであります。私としては、政府案としての案をぜひとも御理解いただければと思いますけれども、最終的には国会審議  にまっしかないと思っております。
  6. 田浦直

    田浦直君 そういうこともきっとあるだろうと思うんですが、私はやっぱり法案をつくられる前に患者さんの声とかあるいは現場の声をよく聞いてつくっておらないからまたそれを変えるというような事態も起こってきたのではないかなというふうに推測をいたしております。  そこで、この間の法案について具体的にちょっとお尋ねをしたいと思うんですが、例えば厚生省案では薬の一部負担金、これ一種類十五円というのが出ました。それが今度は修正をされまして、薬の種類によって四百円、七百円、千円というふうに負担が変わる今度の案が出ているわけですね。この数字根拠というのは一体どこにあるんだろうか。十五円から今度は四百円とか、関連性がちょっと感じられないわけですが、その辺の根拠はどういうことなんですか。
  7. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず政府案でございますけれども、このたびお願いしております薬剤費の一部負担、これは、我が国の場合非常に薬剤が多用されているというようなことに着目しまして、その適正化お願いしたいということで考えたわけでございますが、その際、基本的には、お年寄りについて薬剤費の一部負担お願いするに当たりましても、おおむね一割程度の御負担お願いしたいという考え方をまずベースにいたしました。そういたしますと、老人薬剤費の一種類一日分の額、これはこれまでのデータに基づきまして算出いたしますと、これが百五十円程度でございます。その一割ということで十五円ということにいたしたわけでございまして、政府案では薬につきましては一種類一日につき十五円、こういうようなことでお願いをしたわけでございます。  このたびの衆議院におきます修正考え方でございますけれども、これは種類数区分、それから負担額の設定、これに当たりまして、それぞれの各区分における平均薬剤種類数区分は二から三種類、それから四から五種類、六種類以上となっておりまして、一種類の場合はこれは負担が要らない、こういう格好になっております。  例えば二から三種類でありますと、平均二・五種類ということで計算いたしまして、それに老人の一日一種類分の、これは内服薬平均的な薬剤費の額、この一割ということでこれは十三円という計算になります。それからさらに、内服薬平均投与日数、これが十二・五日ということになっておりまして、それを掛けたもの、要するに二・五種類掛ける十三円掛ける十二・五日ということで四百六円という額が出てまいりますが、これを四百円という格好にいたしたというふうに承知をいたしております。それから、四から五種類の場合も同じような考え方で計算いたしましてこれが七百円、それから六種類以上は千円、このような形に一部負担お願いしたということで私ども承知いたしておるところでございます。
  8. 田浦直

    田浦直君 それと、今回の薬の一部負担ですね。私ども診療行為をする、その中には診察をするとか検査をする、あるいは薬を出す、手術をする、こんなことがあるわけですね、医療行為の中で。これのすべてに例えば健保本人であれば二割を掛けるわけです。そのほかに薬はまた別に一部負担を取るというのがどうしてもわかりにくいわけですね。薬を外したものから二割を取って、薬代はまた一部負担を別につくるんだということであれば、これはまた理解できないこともないんですが、全部に二割をかぶせておいて薬代はまた別だというのは、これは恐らく診療所あたりでは窓口患者さんが聞かれるんじゃないか、そんなときにどう返事をするのかということがあり得るだろうと思うんですね。そういう混乱が窓口で起こると大変です。  局長受付窓口の係員と言ったら非常に悪いですが、にひとつなっていただいて、今のような質問があったらどうお答えになるか、お尋ねをしたいと思うんです。
  9. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これは窓口でいわゆる事務的に御説明いただくということだとなかなか理解しにくい面があろうかと思いますが、やっぱり基本的には我が国の現在の医療保険制度財政状況が非常に窮迫をしているということがまずベースにありますから、そのことをよく御理解いただかないといけないというふうに思います。  そういった中で、やはりもう一つには医療費における薬の占める割合というのが我が国は非常に高いという問題がございます。そういった薬のいわゆる使い過ぎといいますか、そういった問題を適正化していくという観点がやはり必要であるということについて御理解いただかなきゃいけないというふうに思います。  そういったベースのもとで御説明しないといけないわけでありますが、まず従来の医療費全体に対する定率負担、これはいわゆる受益と負担の公平というふうな角度からお願いしているわけですが、さらに薬に着目いたしまして、先ほど申し上げましたような政策的な目的のもとに、このたび従来の医療費全体に対する定率負担に加えまして別途薬だけに着目した御負担お願いする、それはまさに薬の適正化、それはまた国民にとっても望ましいことであるというふうに思うわけであります。  そういった意味で、私どもとしては、従来の負担に上乗せする形でありますけれども、このような形でお願いをしているということでございまして、二重負担ということがよく言われるのでありますが、我々としましては、いわゆる鏡もちが二段重ねになっておりますような格好で上乗せしてお願いしている、こんなふうに考えておりまして、これらについて実際に実施するに当たりましては、厚生省はもとよりでありますけれども関係団体等の御協力を得ながら国民皆様方に御理解を賜らなきゃいけないというふうに考えております。
  10. 田浦直

    田浦直君 今の御説明ではやはり患者さんにはわからないと思うんですね。また、窓口説明する人もわからない。患者さんは保険の一部負担をしているという感覚じゃないんですよ。病院の値上げでこれだけ高くなったんだというふうな感覚ですから、やはり病院に聞くわけですよね。  私は、やはりこの際、患者さんに向けて政府なりあるいは保険者なりがそこをよく理解できるように説明をしてやってほしいと思うんですね。一部の先生方では窓口でこの説明をさせられてはたまらないというふうな御意見もたくさんあるわけですが、そういった国民あるいは患者に向けてのパンフレットでも、あるいはマスコミを使ってでも、あるいは集会をしてでも、とにかくそういうトラブルが起こらないようにやっていただきたいと思うんですが、その点について御返事をお願いします。
  11. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この法律施行に当たりましては、やはりその点について十分説明努力を私どもあらゆる手段を通じてやっていきたいというふうに思いますし、また我が国医療保険制度がこれから健全に運営される上においてもその理解を深めることが非常に重要だと思いますから、努力をしていきたいと思っております。
  12. 田浦直

    田浦直君 それから、この修正案を見てみますと、やはり大病院にとっては有利だ、町の診療所にとってはやっぱり不利だという感じがします。例えば、大学病院なんか薬を長くやることが多いわけですね。でも、町医者というのは、やはり二、三日置きに顔を見ながら、血圧をはかりながら、患者を観察しながら薬を変えていくわけですね。そうすると、そのたびに薬代を取らなければならないということが生じできますね。あるいは、老人にとっては有利ではないかな、子供にとってはこの面は不利だという感じがします。  老人は慢性の疾患であれば長く薬をもらってもいいけれども、例えば子供であれば、引きつけを起こしたとか熱が出たとか下痢をしたとかいうことで小児科診察をされたら、やはり薬としては二日分か三日分しか出さないと思うんですよね。それでも同じ、一カ月出しても同じということであれば、これは小児科先生にとっては、あるいは子供のお母さんにとっては大変な負担になるんじゃないかという気がするわけですね。  そういうふうな大病院診療所、あるいはお年寄り子供、そういったものに対して負担料がかなりの差が生じるのではないかというふうに推測されるんですが、その点、そう思われますか。
  13. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の修正案では、種類数についても四つにグルーピングしておりますし、それから投与日数については平均的な日数を使用して定額を計算しておりますから、どうしてもやはりこういつた平均的な数字を用いて定額を決めているということになりますと、その平均を下回った場合、上回った場合、当然そこにケースがいろいろ出てまいります。そういったケースによりまして負担額割合に違いが出てくるということは起こり得るわけであります。  問題は、政府提案の場合ですと、これが種類数、それからまた日数をそれに応じてそれぞれ額を定めるということになっておりましたけれども、今回の修正考え方といたしまして、政府案は非常に実務的に煩雑であるということでこのような修正が行われたというのが一つ理由でございますから、そこら辺のところのバランスという点を考えた場合にはやむを得ない面があるかなというふうに考えます。  ただ、投薬日数につきましては、先生承知のとおりでありますけれども療養担当規則の中で内服薬については一回十四日を限度にしておりますし、外用薬については七日というような定めもございます。例外的に長期投与が必要なものについては、例えばお年寄りケースなんかによくありますけれども、三十日というようなことでございますので、そういった意味でいたずらに医師の裁量によってその期間が長くなるということはないと思います。  ただ、医療行為基本はやはり医師の専門的な知識と良心に基づいた適正な医療というものを施していただくということが基本でありますし、そのことは療養担当規則にもうたわれておるわけでありまして、やっぱりそういったものをベースにこういうものも考えていかなきやならない余地がございますから、そういった面で今回の制度というものはある意味ではやむを得ないのではないかというふうにも思います。  なお、小児科の場合、これが非常に過重な負担になるのではないかということが言われ、また非常に強い要望がございます。ただ、これは御参考までに触れさせていただきますと、先生承知のとおりでありますが、外来小児科診療、この特性ということを考慮いたしまして、三歳未満の小児を対象としました小児科外来診療料というものについては、これは包括化が導入をされております。ですから、薬をもらってももらわなくても、いわゆる定額払いの形が導入されておりまして、そしてこういった包括化を採用しております医療機関においては、薬剤に係るこのたびの定額負担というのは課さないという取り扱いをしておりますので、そういった意味では全部がそういう意味小児科についてこのような負担になるということではございませんので、その点、一言コメントさせていただきたいと思います。
  14. 田浦直

    田浦直君 今の包括化のところはそうだと思うんです。でも、今のところ包括を採用している小児科病院というのは少数派だというふうに思うんですね。私はやっぱりこれは少子化対策にも通ずると思うんですよ。この高齢化社会高齢化を防ぐのは子供をたくさんつくるということが一番いいことなんですね。そういうふうな少子化というのを国の第一の国是にしないというような国は滅びると、こう言われておりますけれども、やはりその面からも小児医療救済措置というのを考えてやるべきだと思うんですね。衆議院附帯決議の中にもそういったことを書いてあります。  私は早急に、九月一日までにこれ何とかできないものかというふうに思うんですが、それまでにそういう何らかの措置をとるという考えはないかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  15. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このたびの修正案趣旨は先ほど御説明申し上げたとおりでございまして、そういった中で小児科関係について過重な負担ではないかという声がかなり出ております。  私どもとしては、このたび修正を受けました案に基づいて御審議いただいておるわけでありますが、この辺のところについてはさらに十分御審議を賜りたいというふうに思っております。やはり、この辺の取り扱い方法というのはどうしてもこのような平均的なケースということをベース考えますとある程度避けられないのかな、ただそれが余りにも過重な負担になり得るのかどうかという問題じゃないかというふうに思っております。  できるだけ子育て支援というような観点考えますと、育てやすい環境、こういう医療も含めまして、を考えていくということは非常に重要だというふうに認識しておりますけれども、ただ医療保険制度、これもいわゆる相扶共済の制度でありまして、それぞれの加入者がそれぞれの応分の御負担をいただかないと制度は成り立たないという面もございます。それら等との兼ね合いの中で、私どもとしては今回程度の一部負担というのは御負担いただけるんじゃないか。また、今後抜本的な改革ということを目前にしておりますけれども、そういった中で総合的な検討というのはあり得ると思いますけれども、今回の改正案については御理解を賜りたいなというふうに考えております。
  16. 田浦直

    田浦直君 例えば、日本では団塊の時代、戦後間もなくたくさん子供さんが生まれた時代があった。これが三年間しか続かなかったんですね。アメリカはそれが十七年間続いた。その子供たちが今働き盛りに来ているわけです。だから私は今のアメリカが非常に勢いづいている、若い労働力を持っている、安い労働力を持っているということではないかなというふうな気がするんですね。だから、少子化対策というのはもう二十年、三十年後のことを見越して国の勢いのためにやるわけですから、ぜひこの辺は細かいことでなくして大きな目から考えて配慮をしていただきたいというふうに思います。  それで、この修正案ですが、この修正案というのは例えば医療保険審議会とかあるいは老人保健福祉審議会、こういうものにはまたかけるわけですか。
  17. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このたびの修正は、これは国会における衆議院修正でございますから、そういった意味ではこれは国会の権限として実施されたものでございますので、政府諮問機関であります医療保険審議会なりあるいは老人保健福祉審議会に再度諮問をするということはございません。
  18. 田浦直

    田浦直君 私はそれが非常に不思議なんですね。それは国会筋論からいえばそうなるんですが、あれほど医療保険審議会定率ということを決めて答申をされ、そしてこれを政府案定額に変えて十五円で検討して、もう一部の委員は退場するぐらい大もめにもめて、そしてそれが出てきた。そして、今度国会で決まるのは全くそれと関係のない修正案だと。じゃ、医療保険審議会老人保健福祉審議会というのは一体何なのか、何をやったのかということが私はわからないわけなんですよ。そういうことであるならば、もうこういう審議会は要らないんじゃないかという気がするわけなんです。かけないでいいんだと言われて私はびっくりしているようなことなんですね。  厚生省では、医療保険構造改革審議会ですか、何かそういうものをまたつくろうとされているというふうな話を聞きますが、そういう計画がおありですか。
  19. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回御提案しております法案の中にその事項が含まれているわけでありますが、これはまだ仮称でございまして、医療保険構造改革審議会というようなことで言っております。  この趣旨なのでありますけれども、これはこれからの医療保険制度改革というものを進めるに当たって国民的な視点に立った幅広い議論に立って今後の改革というものを進めていく必要があるということであります。これはこれまでの医療保険審議会、それから老人保健福祉審議会、これを統合いたしまして一この統合をすることにいたしました理由でありますけれども、やはり制度縦割りということではなく、老人保健制度もあるいは医療保険制度全体についても一体的に横断的に御議論をいただく必要がある、そのようなことからこのたびこの両審議会を統合して新たに医療保険構造改革審議会仮称でございますけれども、これを創設したいということで御提案をしているわけでございます。  この審議会におきましては、それぞれ関係者間の利害を超えた国民的な立場に立って医療保険制度の抜本的な見直しを御議論いただきたい、それも当然のことでありますけれども開かれた議論というものをお願いしたいというふうに考えているわけでございます。この新しい審議会、これは今回の法案が成立いたしましたら、この法施行後できるだけ早く設置をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  20. 田浦直

    田浦直君 私はその考えようには余り賛成できないんですね。やはり厚生省自信を持って主導的にやっていくべきじゃないかと思うんですね。審議会をつくって審議会に諮ったという形をつくらなければできない、何か自信のなさを感じるわけですね。今も話しましたように、審議会をつくっても、そこで答申をしても、それと全然関係のない法案が成立するというふうなことでは余り必要ないんじゃないかな、今回の審議会もそういうふうになるんじゃないかなと思うんですね。  それから、この審議会メンバーですね、メンバーについては衆議院でも議論があったようですけれども関係者を入れない方がいいとか入れる方がいいとか。この人選ですね、あるいは構成、どういう意義でどういう構成でやるのか、その辺が非常に大事な問題だというふうに思うんですが、それについてお尋ねをしたいと思います。
  21. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず前段の方なのでありますが、この審議会にお諮りしてと申しますのは、いわゆる審議会で案を練っていただくというふうな考え方ではありませんで、むしろ厚生省としてきちっとした案をまとめまして、もちろんそれが複数の案ということがあり得ると思いますけれども、それをお諮りをするということでありまして、それに対して審議会としての国民的な立場からの御意見、御審議お願いしよう、このように考えておりますので、決してすべて審議会にゆだねてしまう、こういうような運営考えておりません。  それから、委員構成でありますけれども、これは関係者は入れないという意味ではありませんで、いわゆる関係者間の利害を超えた立場で御議論をいただきたい、そういう御議論にふさわしい方々にお願いをしたい、こういうふうな趣旨でございますので、非常に大事な審議会でございますから、この委員選定等につきましては、国会におけるさまざまな御意見等も踏まえて、私どもとしてはこれから検討をさせていただきたい、こんなふうに考えております。
  22. 田浦直

    田浦直君 私は、審議会の中で本当に真摯な議論が行われておるんだろうかという疑問をいつも持っているんです。厚生省が人選をする。そうすると、やっぱり厚生省に顔を向けた委員がたくさん入っていく。そういう場合に、いろんな決議をとっても、ただ手を挙げるだけの要員とか、そういう者は結構おるんじゃないかなというふうな気がするんですね。  そういう疑念を持っている人はたくさんおると思うので、もしそうでないとおっしゃられるならば、私は、その中で討議されている議事録、それを公開してほしいと思うんですね。どういう委員がどういう発言をしている、どういう委員は本当に熱心にやっているんだ、何にも発言しないで黙って座っている委員もおるかもしれませんですね。そういうことでは困るわけなんです。しかし、それは私どもでは全然わからない。私は、こういう審議会をつくられるならば、公開してほしい。少なくとも議事録は見せてほしい、そういうふうに思いますが、それはできますか。
  23. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私どもも全く先生と同感でございます。まさに、私どもとしては審議の公開ということを前提として委員お願いをするつもりでございますし、またそういう形で運営お願いするということで考えております。
  24. 田浦直

    田浦直君 ぜひそういうふうにお願いをしたいと思っております。  それから、衆議院の論議を聞いておりましたら、小泉大臣は九月一日までには抜本案は提出するということをおっしゃられておるわけなんですね。私は、ぜひそうあってほしいと思うんです。  随分前ですが、もう二十五年ぐらい前に、日本医師会の武見会長が保険医総辞退というのをやりまして、もめたことがあるんですね。昭和四十六年ですが、そのときに当時の佐藤総理大臣と斎藤厚生大臣との間で合意した事項というのがあるので、それを今見てみますと、例えば一番目には、「厚生省医療行政に関する姿勢を正す。」と、こう書いてあるんですね。二番目には、「医療保険の抜本改正案を次期国会提案。」と書いてあるんです。もう二十五年前の話なんですが、本当に今度できるのだろうかという心配をしているわけです。  実力大臣の小泉大臣ですから必ずやっていただけると思うんですが、その辺の決意のほどを大臣からひとつお答えをお願いしたいと思います。
  25. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) この今回の法案を出す経緯、そしていろいろ各党の議員の皆さん方からの御議論、さらに厚生委員会での審議の状況を見ながら、もう一時的な手直しては許されないという状況にあると私は感じております。  三十数年来、抜本改革をしなさいと言われながら、なぜ構造的な抜本改革ができなかったのかという反省も踏まえまして、今回は、この法律案が成立し次第、できるだけ速やかに、九月一日と言いますが、できるだけ早く厚生省として責任を持った案を御提示いたしまして、今後、国民が安心して適切な医療を受けられるような、そして保険財政的にも安定的に運営が図られるような抜本的な案を、九月一日までと言っていますが、できたらもっと早く厚生省としての案をお示しして、国民的な御批判、御議論をいただきたいと思っております。既にその決意を固めておりますので、よろしく御理解、御協力をいただければと思います。
  26. 田浦直

    田浦直君 決意のほどを伺って、私も本当に期待を申し上げたいと思うんです。  その案というのが大体三点に絞られている。診療報酬、それから薬価、老人医療保険、このそれぞれについて出されるわけですね。そして、それはしかも抽象論でなくして具体的な案だと私は期待しているわけですが、その点も確認させていただきたいと思います。
  27. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 薬価の問題につきましても、診療報酬の問題につきましても、老人保健の問題につきましても、具体的な案を提示したいと思います。その際には、今考えている案は、今までの審議会医療保険審議会やらあるいは老人保健福祉審議会、さらには与党における基本方針、そして今国会議論が出ましたいろいろな御意見を踏まえて、それに沿った案をまず考えております。  さらに、これからの厚生省内部の検討結果によりましては、一案でありますとあたかもこれに固定してしまうという誤解といいますか、これしかないというふうに国民に思われてもいけませんので、場合によっては複数案を提示しましていろいろ御議論を願うこともあるかもしれません。その辺はまだ固まっておりませんけれども、具体的な抜本案をできるだけ早く提示して御批判を仰ぎたいと思っております。
  28. 田浦直

    田浦直君 その中で、先日の本会議でも薬価の問題が出ておりましたが、大体流れとして、新薬価については市場原理にのっとって参照価格に近いような制度を目指しているように御返事をされましたが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  29. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) そういう方向で検討したいと思っております。
  30. 田浦直

    田浦直君 そうしますと、診療所病院では今まで問題となっておりました薬価差というのがなくなりますですね。なくなりますと病院は成り立たないわけですから、これは技術料を上げなければならぬというふうに思うんですね。  私は、今までの技術料、診療報酬のアップの形式、〇・何%上げるとか何%上げるということではなくして、やはり薬価の変更をやりますと、結構大きな変化になると思うんですね。したがって、診療報酬も体系から変えなければならないんじゃないかなと思うんですね。手直してはできない、そういうふうに私は思っているんですが、診療報酬についてはその時点でそういうふうな改正があり得るかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  31. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 当然、薬価だけではありません。診療報酬、技術料を含めまして、出来高払い制度あるいは定額包括払い制度、その組み合わせ等を一緒にまとめて提示しなきやならないと思っております。
  32. 田浦直

    田浦直君 それから、薬価について言いますと、これは医療保険審議会の建議書にも書いてあったと思うんですが、その決定の透明化というものをすべきであるというのがあったと思うんです。今回のこの与党合意書あるいは附帯決議の中にそういうものが見当たらないものですからこれをもう一遍確認しておきたいと思うんですが、透明化は図るわけですね。
  33. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現行の薬価基準制度を見直して新しい方式を導入するということになりましても、やはりこのプロセスの透明化、これは非常に重要でありますから、透明化を図るという方向で私どもとしては考えていきたいと考えております。
  34. 田浦直

    田浦直君 それで、私も調べてみたんですが、薬価を決めるときに、一つは原価算定方式といいますか、原価を計算していく、もう一つは類似薬と比較して薬価を決めるという方式がありますね。その中で、例えば原価というものがどんなものか、どんな種類があるのかということをお尋ねしたいと思います。
  35. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現行の薬価の決定方式についてのお尋ねだと思いますが、現行は、今、先生御指摘のとおり、類似薬効比較をして決めるやり方と、それから類似薬がない場合には原価に基づいて計算をするというやり方をしております。  これから新しい方式を考えておりますのは、こういった原価とか類似薬効ということではなくして、まさに市場取引の実勢ということにゆだねて、これを基本として考えていくということであります。  現行の原価といった場合の中身でありますけれども一つには製品製造原価、それから販売費、それから一般管理費、それからまた営業利益額あるいは流通経費、さらには消費税、こういったもので構成をされております。  さらに、この製品製造原価というのは何かということでありますが、これは材料費あるいは労務費、それから諸経費、こういったものが含まれるわけでありまして、管理費、それからまた一般管理費、こういった中には新製品あるいは新技術の開発の費用、いわゆる技術研究費、こういったものが含まれております。
  36. 田浦直

    田浦直君 それにこだわりますと、例えば材料費といっても、これは今の原価はメーカーの方が提出するわけでしょう。そうしますと、材料費といっても安い材料もあれば高い材料もある、あるいは開発費といってもどこまでをとるのかという問題があると思うんですね。今は恐らくメーカーと業務局の経済課とその辺を協議しながら調整をしてきているというふうに思うんですが、そこら辺にやっぱり国民的に見ますと疑惑を感じるんですね。厚生省厚生省の天下り先のメーカーとが何か取引をやっているんじゃないかというふうなことを感じるわけなんですね。  私はここら辺も透明にした方がいいんじゃないかというふうに思うんですね。原価はこういうものです、それに対してはここまで認めます、そういったマニュアルをつくり、そしてそれを公開し、公開というのが企業秘密とかなんとかでもし難しい点があれば中医協には報告するとか、何かそういうことをとらなければいつまでも疑惑はとれないというふうに思うんですが、そういうふうな公開をしてほしいと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
  37. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 現行の個別品目の値段を決定するに当たりましてその透明化ということは、これは中医協でもそういう方向で決定をされておりまして、これから定めます個別品目につきましてもその決定の根拠を含めまして中医協に御報告をする、中医協に御報告するということは公表をするということで考えております。
  38. 田浦直

    田浦直君 例えば類似薬もそうですね。これもメーカーが決めてくるわけでしょう、これと比較しますということを。類似薬といっても高いのから安いのまであるわけですから、当然高いのをとって決めてくると思うんです。だから新しい薬が高くなる。その辺は逆に厚生省の方がこれでやりなさいということを決める方が僕はいいんじゃないかなというふうに思うんですね。そういうもろもろの点を含めてぜひ改革をしていただいて、そしてオープンにしていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから、この抜本案について、先ほど述べました二十五年前の合意書の中には十二項目あるんですが、ほとんどできていないんですよね。その十二番目には、「保険請求事務の簡素化。」というのもあるんです。これも全然できていないというか、逆に非常に煩雑になってきているんですね。  この事務量の簡素化ということをこの際真剣に取り組んでもらいたいなと私は思うんですけれども、これについてはいかがですか。
  39. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 象徴的なのはまさに診療報酬点数表が非常に厚くなってきている。これは中医協でもいつもそういった議論になりまして、何とかこれをもっと薄くできないかという議論がございます。  この診療報酬体系を根本的に見直すに当たりまして、やはりそういった医療機関の事務の簡素化、これはできるだけ図らなきゃいけないと思います。なかなか厳しい財政状況になればなるほど、その配分をめぐって非常にだんだん細かくなってきてしまっているという状況が現実にありますけれども、やはり決して煩雑になるということが好ましいことではありませんし、そういった意味では、この請求事務あるいは診療報酬体系の簡素・合理化ということは、これはまさに大きな柱の一つではないかというふうに考えております。
  40. 田浦直

    田浦直君 大臣、先ほど申しました武見会長の時代は診療報酬点数表というのは三十ページぐらいしがなかった。ことしの診療報酬点数表は六百六十五ページある。それから、それに「診療報酬点数表の解釈」というのが千八百七十八ページあるんです。合わせますと二千五百ページあるんですね。これは、つくる方からいうと間違いのないように、きちんと例外もないように書かなければいかぬという配慮だろうと思うんですが、見る方から見ますと、一つの項目を探すのに前のページ、後ろのページ、あっちこっち読まないとよくわからないということがあるわけなんですね。この二つの本をマスターできればもう医学博士になれる、我々はこう冗談を言っているわけなんですけれども一つはわかりにくい書き方をわかりやすくしてほしいということですね。書く方からの理論じゃなくして、読む方からの理論で書いてほしいということ。  それから、それはなぜそういうふうになるかというと、規制が多過ぎるんですね。先ほど局長が言いましたように、もう枝葉にわたって全部規制をしているから、もうあっちこっち規制を探して回らぬといかぬというふうな状況ですね、こういつたところを、もう規制緩和の時代ですから、もう少し緩和して、おおらかにやっていただけぬかなというふうに私は思うんですけれども、その点についてもう一度御返事をお願いしたいと思います。
  41. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 三十ページから六百ページですか、それだけ規制は規制を呼ぶという一つのあらわれだと思いますが、自由市場経済の中で医療というのは統制的な色彩が強いものですから、また公共的な面、公正公平を図るという面から一定の規制は必要だと思いますけれども、今回の抜本改革の中においては、できるだけ簡素に努めるという点に重点を置いて、簡素化がどの程度図れるか、最大限の努力をしてみたいと思います。
  42. 田浦直

    田浦直君 そう言っていただければ非常に助かるんですけれども、来年もらったらまたふえておったということでは困るわけでございますから、ぜひ来年はやはり減ったな、あるいは読みやすくなったなというふうな点数表に変えていただきたい、これをぜひお願い申し上げておきたいというふうに思います。  それから、今、医師の間で非常に不安が生じているところがあるんですね。それは、恐らくこの一部負担金をとってもそう財政効果は出ないんじゃないかというふうな気がするわけですね。諸外国を見ますと、一番財政効果が出るのは、患者病院を自由に選べないようにする、病院にかかれないようにする、これが一番効果が出るわけですね。例えば、英国で言えば家庭医というのがありまして、家庭医が紹介しない限り専門医にはかかれない。あるいはアメリカにおきましてはHMOというのがありますね。これは保険者病院が契約する。その保険に入っている人はその病院しか使えない、こういうふうな制限をするわけです。これは財政効果を上げるのには一番近道なんですね。日本もそういう傾向に進むんじゃないかなというふうな不安を医者も患者も持っているわけです。  そういう意味で、この患者のフリーアクセスといいますか、そういったものについて、これは本当に私は日本が医療制度としては一番いい制度患者にとっていい制度ではないかなというふうに思っておるわけですけれども、これを何らかの規制をするような検討をされておられるのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  43. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 患者病院を選ぶことができるというのは、私は基本的にいい制度だと思っております。しかし一方、大病院に集中を招いて三時間待って三分診療というようなことも一部では言われております。  今言われたように、イギリスみたいに、まずかかりつけ医に行って、その紹介がないと専門病院に行けないとか、あるいは一つ保険に入りましたらその指定する医療機関しか行けないということにはまだ多くの日本国民は抵抗があるのではないかと思います。  しかしながら、ひとつだれでもかれでも大病院に行くという傾向を何とか抑えていかなきゃいかぬ。まず、地域の身近なかかりつけ医にかかるという習慣なり意識なりを持ってもらう。そして、必要な方が専門的な大病院に行くというような流れを何とかっくれないかなという方向で検討してみたい。一挙にその流れを変えるということにはならないかもしれませんが、今みたいな大病院集中、風邪でも、ちょっとおなかが痛くても何でも大病院というような流れは何とか変えるような方策はないかなということで検討していきたいと思います。
  44. 田浦直

    田浦直君 今、大臣のおっしゃられたことは私もよくわかるわけなんですね。やっぱり大病院志向型に今なっておりますから、そのために大病院も肝心の患者さんを診られない、業務が麻痺するということがあるわけですから、そこはいわゆる病診連携といいますか、病院診療所がよく連携をとってそういう患者さんの整理をするということについてまでは、そこまで制限を外すということは必要ないと思うんですね。私は逆に、それはそれでそういう方向で進めてきちんと病院診療所の役割分担というものをされた方がいいと思うんです。ただ、私が心配しておるのは、患者さんが保険証を持ってどこの診療所にでもかかれなくなるような、そういうふうな制限診療といいますか、あるいは管理医療と今言うんですか、そういったものはぜひ避けていただきたいというふうに思うんですね。  いろんな本とか、あるいはいろんな講演とかを聞きますと、どうも厚生省ではそういう検討を少しされておられるんじゃないかというふうなニュアンスがあって開業の先生方も大変心配をされているわけなんですが、そういう検討は全然されてもおらないし、将来ともにそういうことは考えておりませんですか。
  45. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私どもは、今、大臣が御答弁された方向で考えておりまして、それ以外は検討はしておりません。
  46. 田浦直

    田浦直君 わかりました。ぜひそういうふうな方向でお願いをしたいと思います。  もう時間がありませんが、ひとつ最後に大臣に、これからの医療はどういうふうに持っていかれるお考えなのか、もし御意見がございましたら、お尋ねをして終わりたいと思います。
  47. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今日、日本が世界で一番長生きできる社会になれたということは、医療関係者の努力に負うところが大変大きいと思っております。  これからは、どうせ長生きできるのだったらば、いかに元気で長生きできるかという目標に向かって努力を続けていかなきやならないわけでありますし、まず予防は治療にまさるという国民に対しての啓発活動も必要ではないかと。病気になってからの治療も大事でありまずけれども、これからは病気にならないようにどうやって元気で過ごしていくか、そして病気になった場合には適切な医療機関に適切な料金で診てもらえる、安心して医療機関に診てもらう、そして財政的にも安定した医療保険財政が維持、運営できるというような観点から抜本的な改革に取り組んでいきたいと思っております。
  48. 長峯基

    ○長峯基君 自民党の長峯でございます。よろしくお願いします。  田浦先生からいろいろ質問がございましたので重複を避けたいと思いますけれども、今回の健保法等の改正案政府案も与党案もなかなか理解に苦しむというか、わかりにくいところがございますが、もう同じ議論になると思いますので避けたいと思います。  報道によりますと、七月の中旬ぐらいには抜本改正案が出ると。抜本改正案を前にしてこの健保法等改正を今回議論するというのも、これをやるとまた衆議院と同じことになりますので、これももう質問はいたしません。  ただ、薬価差というのが問題になってまいりますと、薬価基準の改正、同時に診療報酬体系の大幅な見直しがやっぱり行われないと抜本改正にはつながらないだろうと。同時に、高齢者の医療制度、これは私は個人的にはもう定率負担しかないと。十五円ですとか四百円ですとか、こういうことではなくて、受益者負担の原則からいったら、どういう率にするかは別にして、高齢者も若い人もやっぱり受益者負担の原則を貫いていく、こういうふうな私見を持っております。  それで、診療報酬体系の見直しの中で特筆すべきような問題点がございますので、簡単に一例を申し上げてみたいと思いますが、老人デイケア料というのがございます。これについて、目的と内容をちょっと御説明いただきたいと思います。
  49. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答え申し上げます。  老人デイケアでございますけれども、これは痴呆といった精神障害をお持ちの患者、あるいは脳血管疾患等に起因をいたします運動障害等をお持ちになっている患者の方々の心身の機能の回復あるいは維持といったことを目的にいたしまして実施をするというものでございます。  その内容でございますけれども、個々の患者の方々の状況に応じましたプログラムをつくりまして、そのプログラムに従いまして患者の方一人当たり一日四時間以上の適切な時間、理学療法あるいは作業療法等のリハビリテーションを適切に行っていただく、そういうことに対して診療報酬の上で評価をいたして支払いを行っている、こういうものでございます。
  50. 長峯基

    ○長峯基君 これがつくられたときの趣旨というか目的というのは、私は非常にいい趣旨だったのではないかと思うんですけれども、現在、平成七年の七月で全国で五百八件、平成八年の七月で八百六十七件、ウナギ登りにこのデイケアがふえております。この内容を見ますと、ある新聞で以前に出たのでありますけれども、もうかる医療の目玉になっていると。御存じだと思います。  六時間以上、とにかくお年寄りを預かりますと、千二十八点ですから一万円ちょっとですね。つまり、朝、車が迎えに来ます。そして、お年寄りを集めるということですね。それから病院に連れてくる。六時間以上で千二十八点、定員二十人で一日にやりまして、年間二百四十日やると概算で四千八百万入ることになる。現実はゲートボールの選手が足りないとかですね、要するに車が迎えに行くんですよ。そして、どこどこに来るから、公民館の前に来るから、そうするとそこに十人とか五人とか集める。それで、今度はまた次の部落に行って、ちゃんとそういう方がおられまして、それをずっと集めてきて二十人とか三十人とか毎日朝連れていくということです。六時間以上ですから、昼御飯を食べる。それから、歌やゲームをしたりいろいろして、言うならば保育園の老人版みたいなもの、これ現実なんですね。  これが非常に医療費を圧迫しているというところがございますが、いかがですか。そういう認識はしておられますか。現状認識を伺いたいと思います。
  51. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先生、今御指摘のございました点でございますけれども、そもそも老人デイケアというものは、先ほど申し上げましたような目的でできておるものでございます。そのことは、その目的どおりやられていけば、大変今後のお年寄りの方々の病気の重篤化を防ぎ、またその回復を図る、あるいはそれ以上に悪くならないための維持を図るという意味では効果のある施策だというふうには思っておりますけれども、その現状において先生御指摘のような面があったという点についてはいろいろ御指摘もございまして、そういう意味で安易にと申しますか、乱に流れた形でやられている点についての御指摘もございました。  そんなこともございまして、ことしの診療報酬改定におきまして、その要件と申しますか、そういったものを厳しくするという方向で対処させていただいておりますので、その効果といいますか、目的どおり、あるいはふさわしい人にふさわしいようにやられているかどうかということについて、この四月にそういった対応をいたしたところでございますから、今後注視をしてまいりたいというふうに考えております。
  52. 長峯基

    ○長峯基君 四月に通知が出たそうでありまして、私もそれは御説明いただきました。それで、余り申し上げてもあれですが、実際にやっておられるドクターとかにいろいろ聞いてみましたけれども、全然その通知では今までのことと変わりはない、こういうお話もございます。  いい制度でも、そう言っちゃいけませんが、良心的なお医者さんが多いわけでありますけれども、これは頭のいい軍団でございますから、中にはやっぱり知恵を働かせてやられる方もおられるんです。そういうところが今度はお医者さん同士のトラブルになっているんです。自分のところの患者を向こうは車で連れていく。それはもちろん患者さんは自分の主治医に、いや、こうやってこういうサービスを受けて、あるところに寄ったら、帰るときには野菜を持って帰らせたり、果物を持って帰らせたりする。そういうサービスも、それは違反だけれども営業活動をやっておられる方もおられまして、お医者さん同士のトラブルになっている。私は善良なお医者さんからの情報をいただいて今質問しているわけでございますが、そういうことが現実に起こっております。  ですから、制度というのは常にやっぱり見直していく。どうも私は局長の部下の方といろいろ議論をしておりますと、絶対自分たちのやっていることは正しいんだという前提でお話しになっているような嫌いがあるんですよ。ですから、やっぱり現実を見て、最初の制度はよかったと思うんですね、おつくりになったときは。しかし、現実にそれが悪用されるのであれば、タイムリーにやっぱり変えていく、そういう悪用できないようなシステムにしていくという柔軟さというか、機敏性というのが私は必要だと思いますので、ぜひこれは御検討いただいて、実態を調査して今後の改正をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。  次に、治験の問題につきましてお伺いしたいと思います。  京都大学の医学部の附属病院で昨年の十一月に収賄事件が起こりまして、ドクターが逮捕されたという事件がございます。この件について、文部省の方からちょっと御説明を、簡単で結構ですから。
  53. 寺脇研

    説明員(寺脇研君) 医薬品の治験につきましては過去にもさまざまな不祥事等ございまして、何分お金の動く問題でございますので、いろいろそこのところを注意しなければならないという考え方で国立大学附属病院運営してまいったわけでございます。  そういった意味で、必要な経費は国庫を通じて受け入れるようにしているわけでございますけれども、それに付随いたします治験に関する研究会への参加でございますとか、講演の実施でございますとか、論文の執筆というようなことにつきましては、位置づけが従来不明確でございまして、企業側から医師個人に直接謝礼が支払われるというような形になっておりました。京都大学の事件につきましても、そのような形式のところがら疑惑を招くようなことになったというふうに承知をいたしております。
  54. 長峯基

    ○長峯基君 つまり、簡単に申しますと、私も若いころメーカーにいたのでありますけれども、メーカーとお医者さんが直接治験に関して取引を、取引と言ってはおかしいのでありますが、メーカーからドクターに依頼をする、やっぱりそこでそういう目に見えないいろいろなことが起こる。これがエイズにおける帝京大学の安部教授の問題の反省だと思うんですね。  ですから、これをやっぱりなくしていかなきゃいけないと思うのでありますが、文部省としてはその後どういう御指導をされておるか、簡単に御説明いただくとありがたいと思います。
  55. 寺脇研

    説明員(寺脇研君) 先ほど御答弁申し上げましたように、治験にかかわるいわゆる直接費用というのは国庫を通じて入っておったわけでございますが、それに付随するさまざまなことが直接に医師のところへお金が行くというような形になっておりました。したがいまして、今回のことを契機に、国立大学附属病院長会議等でも検討を重ねまして、本年度より改善を図るということで、従来は直接お金が医師に渡っておりましたが、先ほど申し上げました研究会、講演、論文等につきましても、すべて受託研究経費の中に含めて、すなわちすべてのお金が国を通して入るというような形に制度を改めたところでございます。  また、国立大学附属病院医師が製薬会社の依頼を受けまして治験の計画や実施の助言をするということにつきましては、今申し上げました国庫の制度ではちょっとなじみにくいところがございますので、兼業の手続を明確にとることによりましてきちんとしてまいるというようなことでございます。  その他、治験の今までのあり方等につきましても見直しを図ってまいる。これは、お金の問題だけでなしに、患者さんの人権を保護していくというような考え方の改善もあわせて図るということでございまして、あわせまして治験審査委員会というのをきちんと大学病院の中に位置づける。また、それが専門家の医師薬剤師だけの参加ということだけでなしに、専門家以外の例えば法律の専門家でございますとか、そういうほかの分野の方も入って運営をしていくということでございます。  また、治験の実施に当たりましてはインフォームド・コンセントをしなければならないわけでございますが、口頭ではなしにすべて文書で同意を求めていくということでございます。  また、治験薬の管理につきましても、医師が管理をするのではなくて、病院薬剤部が管理をしてまいるというような形で改善を図ったところでございます。  近くこの改善の内容につきましては、大学病院においでになる患者さんすべてに告知ができますようにパンフレットを作成いたしまして、国民の皆さん全体に周知を図るというようなことも現在計画をしておるところでございます。
  56. 長峯基

    ○長峯基君 非常に大事なことだと思います。後ほどまた副作用の問題も質問しますけれども、医薬品の副作用の最初のチェックがこの治験のときだと思います。  実は先週、私は京都大学の附属病院にこの問題について視察に行ってまいりました。御丁重に御案内いただきまして大変感謝いたしております。  皆様方に御配付を申し上げておりますが、今、文部省から御説明がありましたように、製薬企業等からの治験依頼を薬剤部と、これは治験薬管理室、京都大学では三名の中堅の薬剤師の方がこれを取り扱っておられます。それから、事務部がございます。金銭的な問題は事務部と契約をする。それから、薬剤部の預かりました治験薬を治験の担当医、それから今御説明のありました治験審査委員会、これにかけて、病院長の最後の許可を得て治験をやる。  京都大学では大体年間に二百から二百五十種類という大変たくさんの新薬を取り扱っておられるようでございまして、治験だけでも大変な、余りお金にならない仕事でありますけれども大学病院の御苦労がよくわかったところでございます。  これは、大学の附属病院等には多分この例で全国御指導をいただけると思いますけれども、この治験薬というのは国立病院もございますし、それから私立医大の附属病院等もございますが、とりあえず厚生省としては京都大学事件の反省を契機としてどのように取り組んでいこうとしておられるのかということについて御答弁をお願いいたします。
  57. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 治験薬の管理についてでありますが、適正な治験の実施を確保する上で大変重要な事柄でございまして、この四月から実施をいたしております医薬品の臨床試験の実施基準、GCPと言っておりますが、これにおきまして、原則として薬剤師を治験薬管理者として治験薬の適切な保管、管理を行うとともに、治験薬の受領や使用、また未使用の治験薬の返却の記録を作成する旨定めておるところでございます。  この治験薬の管理業務につきまして、ただいまの国立大学のお話もありましたように、医薬品の管理に経験のある薬剤部に所属する薬剤師を治験薬管理者として一元的に管理することが望ましいと考えておりまして、治験に関する講習会あるいは医療機関へのGCP調査の機会等をとらえて指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  58. 長峯基

    ○長峯基君 もう一つお伺いしますけれども、先日の月曜日の報道で、新薬の治験調査については症例とか医療機関名を薬害防止の観点から公表するというようなことがマスコミで報道されております。今文部省の方からもできるだけこういうことは公表していきたいということでございましたが、厚生省の御見解を伺っておきます。
  59. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 医薬品の承認過程をできるだけ透明化していくという流れの作業の中で、中央薬事審議会の議事録の公開あるいはまた審議経過の公開、また申請企業からの添付資料一覧のリストを公開するということをやってまいっておりまして、現在は審査体制の強化と並行して審査レポートを作成し承認後に公表していくという作業に取り組んでおります。  今お話しの治験の実施状況につきましては査察をいたしますので、その査察概要につきまして審査レポートに入れて承認後に公表するということをいわば計画として持っているところでございます。審査体制の整備と相まって、こういつたような審査レポートという形で治験の概要についても公表していくということに向かって努力してまいりたいと考えているところでございます。
  60. 長峯基

    ○長峯基君 それでは次に、副作用情報について伺いたいと思います。  今度モニター制度というのが拡充されるということでございますけれども、まず我が国の医薬品の副作用情報の国際比較、アメリカやヨーロッパに比べて非常に日本の場合は副作用情報が乏しいというようなことも聞いておりますけれども、諸外国に比べてどのようになっているのか、もしデータがあったらお示しをいただきたいと思います。そして、その理由について伺えたらと思います。
  61. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 副作用報告につきましては、近年、我が国としてもかなり充実を見ているところでございまして、平成八年は合計で一万八千件強、一万八千七百四十五件でございますが、このうちで製薬企業からの報告、これが一万六千件強、一万六千八百三十一件ということで九割程度を占めておりまして、それ以外には医療機関からのモニター報告、これが千九百十四件ということでございます。これは、昭和六十年代から比べますと、医療機関からのモニター報告は約二倍、それから製薬企業からの報告件数は約十倍ということで、逐年かなりの副作用報告につきましての普及を見ているところでございます。  国際比較をいたしますと、我が国が一万八千件に対しましてイギリスは大体同じ約一万八千件、それからフランスは二万七千件、米国は十五万件ということで、我が国もやっと欧米諸国並みの副作用報告の件数になってきていると、こういうことでございます。その中で、特に欧米の場合には医療関係者からの副作用報告が多いということで、イギリスの場合ですと約八割強が医療関係者からの報告でありまして、残りが製薬企業からの報告であります。フランスは大体半々でございます。米国は製薬企業からの報告が約八割ということで残る二割は医療関係者からの報告であります。我が国の場合に、報告件数が大変そろってまいってはおりますけれども、企業報告の件数に比べまして医療機関からの直接の副作用報告が少ないという傾向がうかがわれるところでございます。
  62. 長峯基

    ○長峯基君 わかりました。  それで、このたび副作用モニター制度を拡充するということでございますけれども、ちょっとその御説明をいただきたいと思います。
  63. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 現在、医療機関からの副作用報告につきましては、副作用モニター報告制度ということで、協力病院約三千の国公立病院を対象にいたしましたけれども、先ほど申し上げましたような医療機関からの直接の報告をいただくというふうなことを普及していこうということで、本年七月から新たに医薬品等安全性情報報告制度という考え方に立ちまして、全国すべての、十八万八千あるわけでございますが、医療機関また薬局、すべての施設を対象にいたしまして報告をいただこうというふうな仕組みを準備いたしております。  これは、報告者につきましては医師、歯科医師のみならず薬剤師からも報告できるようにいたしますとともに、副作用情報のみならず、医療用具によると思われるふぐあい情報あるいは副作用以外の感染症情報も報告対象にし、また報告様式を簡略化して医療関係団体の定期刊行物、専門雑誌等に報告用紙をとじ込むなどによりまして、関係者、報告者からの報告しやすい環境をつくっていこうということでございます。現在、パンフレットなどもカレンダーと報告用紙つきで二十四万部ほど普及、配布をいたしておりまして、この七月から新しい安全情報報告制度をスタートさせたいということで、関係者の御理解、御支援を得るべく準備に入っているところでございます。
  64. 長峯基

    ○長峯基君 ちょっと提言を申し上げておきたいと思います。  皆様お聞きなれない言葉だと思いますが、病棟薬剤師というのが最近非常にふえてまいりました。これは、医薬分業が進んでまいりますと病院の薬局から薬剤師は病棟に上がっていく。これはもうアメリカやヨーロッパでは当然のことでございますけれども、入院患者さんに対しては薬剤師が投薬の指導をする、いろいろ御相談に乗る。これはドクターからも看護婦さんからも非常に病棟業務の中では喜ばれておる。例えば、薬を混注するときに、今までは看護婦さんがやっていた、しかしそれは配合禁忌の問題とかいろいろございますので、やっぱり薬剤師がやるべきであるということもございまして病棟薬剤師というのが病院で非常にふえてまいりました。  それで、実はこの病棟薬剤師が薬の副作用については一番詳しいわけでございます。直接患者に接している。しかも、入院患者さんというのはやっぱりハードな薬を使います。一般の外来患者さんとか小売薬局に比べますとハードな薬を使いますので副作用の発現率も多い。しかも、そこにはドクターもおられる。そこでよく相談をして、これは何という薬の副作用であるということがわかりますと、それをしかるべきところに報告をする。これは薬剤師としては義務でありまして、日病薬といいまずけれども病院薬剤師会の役員の方々とも私はいろいろ御相談をしたのでありますけれども、これは当然のことである、報告をするのは。  だから、何千件、何万件モニターを広げても、それはなかなか上がってこないし、上がってくるものは信頼性に乏しいものもたくさんある。しかし、現実に病棟で患者さんと接していて、そしてそこで起こる副作用、これは非常に密度の濃いものでございまして、それをきちっと義務として報告させる。これはお金の要る問題ではございません。  ですから、私は、大学病院あるいは国立病院、少なくとも各県の大型病院にはこういう病棟薬剤師がいるわけでございますから、病院長がだれか一人そういう責任者をつくって、その責任者は、病棟薬剤師のチーフは必ず毎日医薬品の副作用について何らかの情報はないかというのをドクターに聞いたりしまして、そして病院から厚生省なり副作用機構に必ず報告をする、それを義務づけていく。これは目病薬の方に協力を求めれば必ず協力をしてくれると思います。  まさに医薬品の副作用問題について、この病棟薬剤師をぜひ活用されることを希望したいと思いますが、いかがでございますか。
  65. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 御指摘のとおりでございまして、医薬品の副作用につきましては、特に第一例報告あるいは第二例報告が大事でございまして、その段階におきましては医薬品との関連性が必ずしも明確になっておらない副作用報告について念のため報告するということで資料が集まってまいるわけでございます。そういった、特に新薬につきましての最初の副作用情報につきまして私ども大変関心を持っておるわけでございまして、日ごろから入院をしておられる患者の方に接して薬剤管理指導記録等を作成しておられる病棟薬剤師の方がそういった副作用報告に参画することは大変意味があると考えているところでございます。  今般の医薬品等安全性情報報告制度におきましても、報告者として薬剤師を明記するなど、病院薬剤師からの報告を受け入れやすくしておりますとともに、今般スタートいたします報告制度におきまして、病棟薬剤師の方が医療機関内の情報の収集あるいは厚生省への報告に際して積極的な役割を果たしていただくことによりまして、この新しい医薬品等安全性情報報告制度がより一層機能するように期待しているところでございます。
  66. 長峯基

    ○長峯基君 流通問題についてお伺いしたいと思います。最後に大臣に御答弁いただきたいと思います。  私は、昨年の二月だったと思いますけれども、日赤病院あるいは済生会病院、社保病院等の医薬品の支払いサイトが非常に長い、十カ月、十一カ月、金を払わない病院があるということについて指摘をいたしました。当時は菅大臣でございましたけれども大臣は初めて聞いたというか、そういう話があるということで非常に驚いておられました。小泉大臣はもう何回も大臣を経験しておられますので、この件についてはお詳しいと思います。  それで、厚生省が直接あるいは間接的に管轄できるという意味で私は日赤病院あるいは済生会病院を取り上げたわけでございますが、その後どのような指導をなさったか、そしてどのような成果があったか、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
  67. 亀田克彦

    政府委員(亀田克彦君) 日本赤十字社、それから済生会が経営をしております病院におきまして医薬品の支払いサイトが長期間を要しておる、こういう御指摘を先生から昨年の二月にいただいたわけでございます。その後、三月八日に文書を出しまして、赤十字の社長さん、それから済生会の理事長さんに対しまして十数回前後、推進いただきたいというお願いをしたところでございます。  それで、現在の状況でございますが、両者が経営いたしております病院におけるいわゆる支払いサイトでございますが、全病院平均で約四・五カ月程度になってございます。これは昨年と比べましてはぼ横ばいではないか、こういうふうに認識をいたしておるわけでございます。先生から御指摘ございました十カ月以上というような長期間を要している病院、これにつきましては先ほどの指導によりまして逐次改善されつつある、こういう報告をいただいておるところでございます。  具体的には、日赤でございますけれども、最近の状況では、十カ月以上の病院というのは全くなくなっておるという報告をいただいておりますし、済生会につきましてはまだ一つだけ十カ月以上というのがあるわけでございますが、ことしの三月に十一カ月から十カ月ということで一カ月でございますけれども短縮ができておるところでございます。  今後とも、支払いサイトが著しく長いものにつきましては、その改善につきまして両団体を引き続き指導してまいりたいというふうに考えております。
  68. 真野章

    政府委員(真野章君) 社会保険病院の医薬品の支払い遅延の問題でございますが、今、社会・援護局長から御答弁をいただきましたように、昨年の二月、先生から御質問をいただきました。その後、すぐこの社会保険病院の経営を委託しております全国社会保険協会連合会に対しまして、その改善方を指導いたしております。  そして、社会保険病院の独立採算ということがございまして、その経営等の問題がございますが、支払い遅延が長期な病院に対しましては、ことしの三月に全国社会保険協会連合会から病院に対しまして貸し付けを行うというような方法を講ずることによりまして、この支払い遅延の改善を図ってほしいという指導をいたしたところでございます。  その結果、昨年御指摘をいただきました病院につきましては、この六月からは御指摘をいただいたときの半分ぐらいの期間に改善されるのではないかというふうに聞いております。今後とも、全社連を通じましてその支払い遅延の改善方を指導してまいりたいというふうに考えております。
  69. 長峯基

    ○長峯基君 社保病院努力していただいていると思いますが、日赤も済生会もお金を借りてでもぜひ返してもらいたい。やっぱり人から物を購入して、しかももうその薬は十カ月前に使い終わっているんですよ。まだ金を払わないという商習慣というか商道徳というか、こういうのは早くなくさなきゃいけないと思いますので、引き続き御指導をお願いしたいと思います。  それで、実は国立の場合には支払い遅延防止法というのがございます。もうこれは御案内のことと思いますけれども、国は第六条で、「相手方から適法な支払請求書を受理した日から」四十日以内に支払わなきゃならないということが決まっておりまして、しかも第十三条では、「国の会計事務を処理する職員が故意又は過失により国の支払を著しく遅延させたと認めるときは、その職員の任命権者は、その職員に対し懲戒処分をしなければならない。」という法律がございます。  実は、国立病院等で、一部だと思うのでありますけれども、薬を入れるときに請求書の日付を入れないように要請しているんですね。そして、二、三カ月のうちに日付を入れればそこで支払うというんですね。頭がいいんですよね。日付を入れてくれるなと医薬品会社に言うんです。それで薬を使って、まあ会計処理上でしょう、三カ月に一遍かあるんですね、金が入ってきたときに向こうを呼んで日付を書けと、そしてさも今買ったようにして支払う、こういうことをやっているんですね。全部とは言いません。こういうのはもう明らかに故意なんですね。  だから、この点についてどのように指導をされるか、これはもうまさに故意にやっていると思うんですが、国立病院、ぜひ御答弁をお願いします。
  70. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 国立病院の支払い事務につきましては、関係法令等に基づき適法、適切な処理を行うよう、平成八年九月に指導通知を発出しました。そして、周知徹底を図っているところでございます。  今、先生がおっしゃられました日付なしの請求書ということについて私もうわさは聞いたことがあるんですけれども、個別にどこのということまでは承知をいたしておりません。担当者の意見もよく聞き、個別にそれは指導しなくちゃいけないと思いますが、全体に対しては今後とも各種の会議を通じて再度徹底をしてまいりたい、このように考えております。
  71. 長峯基

    ○長峯基君 どこの病院がというのは私はわかっているところもあるんですけれども、もっとあると思います。担当者の人からも聞かれましたけれども、余り病院名を言うわけにはいかない。しかし、どうしてもと局長がおっしゃれば、それは後で個人的にお教えしてもいいんですけれども。  こういうことをやっているんですよ。昨年の十月から十二月の納入分について価格決定がされていないんですよね。担当者はもちろん安く買いたいから一生懸命価格の交渉をすると思いますが、平成九年の一月、ことしの一月に価格決定がされたわけです。病院としては昨年の九月に決定したことにすると。ですから、未決定中は支払いゼロということですね。こういうことが行われております。  ですから、これはぜひもう一遍、こういう行為があってはいけないということを全病院に御指導いただきたいと思います。決して上層部が関与しているとは申しませんので、それぞれのお立場の方ができるだけ病院の経営をよくしようという善意でこういうことが行われたんだと思いますけれども、ぜひ御指導をお願いしたいと思います。  それからもう一点、この薬価差というのがあるためにいろいろな矛盾が起こっておるわけでございます。厚生省の地方医務局から薬価差二八%で購入するように通知が出ており、対応できない分は現金問屋から購入するという動きがある。現金問屋もまた御存じない方もおられましょうが、説明すると時間がかかりますので説明いたしませんけれども、つまり購入側が薬価差一六%を要求する。薬価というのは国が決めるんです。そして、R一〇という、おおよそ一〇%程度が妥当だということで薬価というものを決めていくわけですから、その国が決めた薬価差を病院が一六%を要求するということは、厚生省の方針に反して病院が薬価差を求める。同じ厚生省ですから、薬価を決めるのも薬価を下げるのも厚生省。不当であるから薬価をどんどん下げていくわけです。今、薬価は一〇%ですね、R一〇ですね。それを今度は厚生省病院が、国立病院が二八%薬価をよこせと、こういうことをしたらイタチごっこになるんです。  もちろん、経営をよくするために薬価差を求める気持ちはわかる。医務局がしたのか一病院の事務長が要求したのか、それはわかりません。こういうことは改めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  72. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 今、先生が御質問の中でお話がありましたように、国立病院といえども医薬品の購入価格との実際の価格差でいわゆる薬価差というのが現実問題として収入の一部になっていることは事実でございます。  それをすることによって、経営努力をすることによりましてどういう結果が生ずるかと申しますと、国立病院の赤字が減って、それだけ一般財源、いわゆる国民の方が働いて出していただいた税金が減るということがありまして、そういう意味では国立病院もやっぱり経営ということは考えざるを得ない。このことが実際に患者さんのサービスを悪くするということとは違う別の問題だと私はまず思っております。  ただ、厚生省としては薬価差を著しくこれでなくちゃならないと数字を示すとかというようなことをするのは私は決して適切なことだとは考えておりません。そういう意味で、今後とも薬価差というものは我々としては病院の赤字を減らすために必要なものだと思っておりますけれども、ただそのために不当な取引を強いるとかということのないようには今後とも十分指導してまいりたい、このように思っております。
  73. 長峯基

    ○長峯基君 それでは、流通の問題について、医薬品流通近代化協議会というのが業務局長の私的諮問機関でありまして、もうここ数十年でしょうか、古い流通体質について議論があるというか、話し合いがあっていると思うんですけれども、最近の流近協の動きについて業務局長に御説明をいただきたいと思います。
  74. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 医薬品流通近代化協議会といいますのは、医療用薬品の公正な競争を確立するための流通近代化を進めるという考え方に立ちまして、流通当事者間におきます取引条件あるいは流通活動の改善に関する方策を調査検討することを目的といたしまして、何十年というお話でございましたが、昭和五十八年から業務局長の私的諮問機関として設置をされたものであります。  製薬企業、卸売業者、医療機関、それぞれの関係団体の代表者、また学識経験者から成る委員が医薬品流通の近代化に関するさまざまな御論議を行いまして、この問題に関する流通当事者の理解を深めるといったようなことで検討を進めていただいてまいっておりまして、平成四年のメッセージというのが一つ基本になりまして、値引き補償の廃止、あるいは総価山買い、未妥結、仮納入といったような是正すべき商慣行、こういつたことについての是正を図りながら流通慣行の近代化を進めていこうといったようなメッセージを逐年出していただいております。  これにつきましては、流通問題あるいは医薬品産業問題につきまして、この七月からいわば審査安全対策と経済問題を切り離していこうということで、この流通近代化協議会につきましても新たな視点から再スタートしていこうということで現在その見直し作業を進めているところでございます。
  75. 長峯基

    ○長峯基君 最後にこの問題は大臣に伺いたいと思いますけれども、実はこの流近協の中でいろいろ議論があったそうであります。ある病院病院長が次のような、これは文書ですからちょっと読ませていただきますが、その前に、薬品会社が支払いの悪いところは公表しようと、新聞になるのか、何かそういうことを役員会でも決定しているそうであります。  「自由経済社会に於けるメーカー、卸とユーザーたる病院側の取り引き上の商行為で支払のよくない病院名を公表したり、国会議員に頼んで国会で役所に質問し、値引きを少なくし支払条件をよくせよなどの圧力行為はお客としてのユーザーたる病院側の甚だ納得しがたいものであり、このような行為を行うメーカー、卸とは取引き中止としたい」と。私が昨年質問したときだと思うのでありますが、その後、私は卸さんというか薬品会社から頼まれたことは一度もございません。  ただ、この世界に長くおりまして、強者と弱者の論理なんですね。病院側は薬を買う。しかし、もうそれは使った後。しかし、これは医療保険でございますから、病院側は使ったものについては三カ月後にお金が入っているんですよ。ですから、せめて三カ月ぐらいで支払うというのは当然ですね。どんどん薬は使う。ところが薬の卸屋さんとしては、生命にかかわる、企業でございますから、いやもうおたくとは取引をやめます、おたくには薬を運びませんということはできないというところがございます。自由経済ならばもう取引はやめますよということはできるのでありますけれども、百錠の薬を二時間も三時間もかけて届けなきゃいかぬこともある。土曜日曜あるいは夜でも配達をしなきゃいけないこともある。それは宅急便で配達料を取ればいいじゃないかと、そういう理屈にならないんですよ。  ですから、例えば大臣が三越デパートで毎月五十万お買いになるとします。今月も五十万、来月も五十万と、十カ月で五百万買ったと。毎月請求書が来る。しかし、ちょっと待ってくれ、ちょっと待ってくれということで五百万たまる。五百万たまったら、それから値切るんですから、今のこの流通。四百五十万にしろ、そして一カ月分ずつ払おうと。サイトが十カ月とか十一カ月になっているわけですね。そういうところがいっぱいある。  まさに強者と弱者の関係だと思うんですね。私は、これは社会正義に反すると、法律では自由でありますけれども、やっぱり社会正義に反すると。買ったものはちゃんと払うべきだと、お金は支払い基金の方からちゃんと入っているわけですから。それを経営の原資にしているということは、私はやはり許されることではない。しかも、こういう質問をすると、そういうところは取引停止するよという病院長がいる。流近協のメンバーでいる。  私はこういうことはあってはならぬと思うんですね。横暴だと思うんですよ。大臣はどうお考えになりますか。
  76. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 御指摘の点はあってはならないことでありまして、この不適切な取引上の商習慣、これをなくすようにしていかなきやならないと思っています。これからこのような問題が改善されるように関係法令の周知徹底、よく実情を研究しながら少しでも改善措置をとっていきたいと思います。
  77. 長峯基

    ○長峯基君 それでは次に、医薬分業、特に国立病院の院外処方せんについて簡単で結構でございますから御答弁をいただきたいと思います。  せっかく文部省にお見えいただいておりますので、いわゆる大学の附属病院の院外処方せんの状況、それから引き続いて厚生省の方に、国立大学附属病院の状況、あるいは今後の取り組みについて御答弁いただければありがたいと思います。
  78. 寺脇研

    説明員(寺脇研君) 国立大学附属病院におきましては、医薬分業の趣旨を踏まえ、また患者サービスという観点から、そして何よりも医師薬剤師の教育、実習を担当していくという立場からこの院外処方せんの発行につきまして努力を重ねているところでございます。平成七年度の数字でございますが、国立大学附属病院全体で四九・八%という状況でございます。
  79. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 国立病院・療養所は全部が都会にあるというわけではなくて、療養所とかは結構カントリーサイドですか、田舎の方にもあります。  今やっていますのは、国立病院・療養所のうち三十八病院をモデル病院としてやっておりまして、そのモデル病院では昭和六十三年度八・〇%でありましたものが、平成七年度には三五・八%という数に伸びておるところでございます。  しかし、四月十八日の衆議院厚生委員会で、もっと頑張れと、こういうふうに御質問がありまして、国立病院は率先垂範して医薬分業を推進していく体制をとっていくべきと考えているという答弁を厚生大臣がされたところでございます。  現在、厚生大臣からの指示を受けまして、国立病院が率先垂範して医薬分業を推進していく体制をとるべく、院外処方せん発行推進モデル病院のうち、完全分業、当面七〇%と置いていますが、に至っていない二十九病院に対して、なぜ至っていないのか、なぜできないのかというようなこと等、地域による院外処方の受け付け体制の実情の調査を今しておるところでございます。また、五月十五日の地方医務局長会議におきまして、私から各局長に対して院外処方せんについて改めてこの推進を図るよう督促をしたところでございます。
  80. 長峯基

    ○長峯基君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  よく院外処方になると薬価差が薬局の方に移るんじゃないかという議論がございますが、これは日本薬剤師会は薬価差は要らないと、求めないという方針をはっきりと出しております。ですから分業しますと、日赤でも済生会でも病院の薬の支払いは保険薬局に移るんですね。卸屋さんと薬局というのは、強者と弱者が今度は逆転、卸屋さんの方が強いわけですから薬局の支払いは量が少ないですから確実になされるわけです。病院は大量に買うところがやっぱり強気なんですよ。  ですから、医薬分業が進んでいきますと支払い遅延の問題は解決する。しかも薬価差の問題も解決する。過剰投与の問題も解決する。もちろんアメリカもヨーロッパも、もう五十年も百年も前から分業が進んでいるというのはこのことであります。しかも、医薬品に関する情報も患者さんにはっきりと伝わるということで、私はやっぱりこれは先進国としては当然のことだと思いますので、まず国立病院からぜひ積極的にお進めをいただきたいと思います。  最後の質問になりますが、老人保健施設のあり方ということで、特に薬剤師の配置ですね、老人保健施設についてどのようにお考えになっておるか、局長に伺いたいと思います。
  81. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 老人保健施設におきます人員の配置、なかんずく薬剤師の方の配置基準がどうなっているかということでございます。  現在の規制は、入所定員が三百人以上のいわば大規模な老人保健施設につきましては、病院とかあるいは専属薬剤師が配置をされております診療所に併設されているといった場合を除きまして、薬剤師がいわば必置ということで必要とするということにしておりますが、それ以外の、言ってみれば三百人未満の施設につきましては、設置形態等の実情に応じて適当数を配置するということになっております。  その趣旨は、やはり老人保健施設の場合には、そのほかの一般病院あるいは老人病院の場合と違いまして、入所されます方々というのは、いわば急性期の治療が終わりまして病状安定期に入っているということで、入院治療をする必要はむしろ積極的にはないけれども、リハビリテーションでございますとか、あるいは看護、介護といったようなものを中心にした医療ケア、そして日常生活上のお世話というようなことを中心にしたいわば寝たきり老人などでございますから、そういった意味での濃厚な投薬治療というものは必要がないということで、実態としましても投薬数はうんと少のうございます。そういったことを配慮したことを考えまして今のような規制になっておるところでございます。
  82. 長峯基

    ○長峯基君 そういう認識がやっぱり日本の薬害を生んでいると私は感じます。  というのは、私も五軒ほど老健施設を先週回ってみました。ほとんど薬を飲んでおられます。高血圧だとか糖尿病だとかですね、老健施設の患者さんは。おたくの部下の方の御説明では八〇%ということでございましたけれども、医薬品を投与していると。  医療法第十八条では、二十床以上に薬剤師が一人となっているんですね。これは御存じと思います。病院というのは二十床以上を病院と言うわけですから。それから、八十調剤数に一人、調剤数というのは、一つの処方に三剤入っていれば三剤ですから、八十剤に一人というのがこの医療法では決まっております。  そして、老健施設、百人あるいは百五十人、二百人、そういう老健施設で、私はそこの院長とかお医者さんにも聞いてみました。それはもう手が回らない、みんなに投薬しているわけですから。ただ、これは包括医療でマルメですからお医者さんはできるだけ安い薬を使おうとされます。  しかし、高血圧とか糖尿病とか、もうそれは御存じと思いますけれども、高齢者で病気でない人はいない、みんな薬を飲んでいる。量は少ないと言いますけれども、量が多い少ないの問題じゃないんですよ、医薬品の副作用というのは。たくさん飲んだから副作用が出るとかじゃない。やっぱり一人一人に投薬指導をしなきゃいけない。その人たちは病院から老健に来てそして自宅にお帰りになるわけですから、お帰りになる前にちゃんとした投薬指導をしておかなきゃいけない。  という意味では、私は三百床以上に一人と、この施行令を読みますとそのように受けとられるのでありますが、それは余りにも現状認識が足りないと思います。もっと実態を調べていただきたい。そして、理事長というんですか病院長というんですか施設長というか、そういう人にもっと実態をよく聞いていただきたいと思います。いかがですか。
  83. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 現在の規制と申しますか基準は、今申し上げましたように、老人保健施設のいわば性格を配慮いたしましてこのようなことにいたしておるわけでありまして、三百人未満の場合には、先生今お話しのございましたように適当数ということになってございます。  現在の状況でございますけれども、全国千百九十五の老人保健施設のうちで専任の薬剤師の方がおられるのは二十三人、兼任が三百九十人ということで、合計四百十三人ということになっておりますから、先生お話しのように実際におられない施設もあるわけであります。そういう施設におきましては、通常は調剤あるいは服薬指導は、医師が必置になっておりますので、そこの医師によって行われているという実情になってございます。  そのことにつきまして、今、先生お話しのございました、それぞれの施設の実情なり、あるいはそれぞれの施設の抱えている施設長の意見なりというものをよく聞いて今後どういうふうにしていくかを考えるようにという御指摘だろうと思いますが、私ども、それぞれの施設の性格によりましてそういった職員あるいはスタッフの配置基準というものは決めていくというのがやはりそのあり方だと思っておりますけれども、今、先生お話しのございましたようなこともございましたので、今後とも老人保健施設における職員配置のあり方につきましては、よく実情を聞き、また関係者の御意見も聞きながらやってまいりたいというふうに思っております。
  84. 長峯基

    ○長峯基君 以上で終わります。
  85. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 平成会の渡辺孝男です。  先日、本会議で厚生大臣に、あるいは橋本総理に今回の健康保険法等改正案について質問させていただきましたが、時間が限られておりましたので、その漏れた点、あるいはこれからの抜本改革に絡みました問題について質問させていただきたいと思います。  一番問題になるのは、やはり薬剤費の別途負担であると思います。この別途負担の場合は、当初の案では一種類十五円で投与日数が負荷されておりましたけれども、今回の修正案では投与日数が除かれているということでありまして、本当にこれで薬剤費の削減といいますか、それができるのかどうか不明な点があるということであります。  例えば、高齢者を外来で見てみますと、高血圧の患者さんがいると。症状が安定しているときには長期投与可能な薬剤もありますので月一回でいい。一回五百円で、外来で受診時五百円が負担になる。そして、処方はその一回のみで足りるということになります。しかし、血圧なんかの変動が激しい場合にはやはり一カ月分処方するのは難しいということで、一週間ごときちんと血圧をはかって治療しましょうということになりまして、その場合には一週間ごとお薬を検討しながら処方するということになりまして、変動が治らなければ月四回、一週間一回ぐらい処方しますと月四度受診になりまして、それだけで二千円、そしてまた処方料がそこに一週間ごとですので四回負荷されるということになります。  一番問題になっている薬剤費削減という観点から見ますと、結果的には余り薬剤費そのものは、一カ月投与でありますのでそれほど内容に変更はないかもしれません。そう考えますと、患者負担増のみが大きくなりまして、薬剤費抑制という観点から見ますと余り効果がないということになるのではないか、そのように考えます。  また、急性期の病気、感冒とか傷、けが、そういうものに対する治療の場合でも高齢者の場合には受診のたびに五百円の負荷がかかりますので、体が不自由でなかなか通院が難しいといった場合には、軽い、熱も余りないような感冒の場合には、当初どういうふうに変化するかわからないので三日後に受診した方がいいと医師考えても、患者さんの方は受診のたびにまたお金がかかる、それからそのときにまた処方料もかかったのでは大変だということで一週間後に来たいというようなことになるのではないかと思います。  そうしますと、医師の方はそれもやむを得ないなと患者さんの意向を尊重するということになりますので、それでは念のために一週間分のお薬も上げましょうかということで、結果的には三日で治ってしまうかもしれませんけれども、一週間分のお薬の投与となってしまうということで、こういう場合にも薬剤費を抑制するというような効果としては余り期待できないのではないか、そういう例もふえてくるのではないか、そのように考えます。  この案を出す場合には、そういう長期投与シフト、あるいはそういうふうに小刻みに受診される方の負担増というような点に関しまして、どのような抑制あるいは適正化考えてこの案を出されたのか、その提案者といいますか厚生省考え方をお聞きしたいと思います。
  86. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回、政府の原案でも薬剤の一部負担お願いしたわけでありますけれども、これは薬剤種類数、それからまた投薬日数に応じまして額を計算するという形になっておるわけであります。この案に対しましては非常に事務が煩雑であるという御指摘等がございまして、衆議院修正において今回の形になったわけであります。  そのときの考え方でございますけれども一つには実務面の簡素化というのがございますが、いわゆる比較的安い薬を使うような方向というものをひとつ今回の一部負担で促したいという配慮がございました。それがまさに一種類の場合には一部負担は取らないというところでございまして、いわゆる二百五円ルールといいますか、一剤で二百五円以下の場合については種類数によらずに一種類とするという取り扱いになっているということから、一種類の場合には薬剤の一部負担は取らないというのが入ったわけであります。その他の二種類以上につきましては、これはひとえに実務面の簡素化という配慮ではないかというふうに思います。  我が国医療費に占める薬剤のシェアというのが非常に高いというようなことから、今回この適正化を図るために薬剤の一部負担お願いしているわけでございまして、そういった意味ではこの方法論、いろいろございますけれども定額負担という中で一長一短というものはどうしても出てまいります。しかし、薬剤についての一部負担お願いすることによって薬剤の多量投与というものに対する歯どめ効果というのは私どもはあるというふうに考えておるわけでございます。  先ほどいろんな例についてお話がございましたけれども、必要な薬がきちんと投与されるということは、これは薬剤の一部負担を設けたからといってそれを阻害するようなことはいけないわけでありますが、今回の修正案の場合には種類、それからまた投与日数平均的なものを基礎にして定額負担を決めておりますから、そういった中でそれを上回る場合あるいはそれを下回る場合、それぞれいろんなケースがありますが、平均的なところで線を引く限りにおいてはある程度その辺の違いということが出てくるのはやむを得ないのではないかというふうに思います。  基本的には、この薬剤の給付に対する基準としては、療養担当規則の中で内服薬は十四日分、外用薬は七日分というものを限度としておりますし、そういったような中で適正な薬剤の給付というものを行っていただきたいというふうに考えておるわけであります。  さらには、不適切な長期投与というのに対してどうするのかというお話があろうかと思いますけれども、やはりそれは現在の診療報酬に対する審査基準というものがございますし、そういった中できちっとした対応をしていくというのが基本であります。また、今後は薬剤使用に対する一つのガイドラインみたいなものも考えていく必要がある、こんなふうに考えておるわけであります。
  87. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今答弁がありましたけれども、やはり今回の改正というのはちょっと拙速過ぎているのではないか。やはりきちんとした抜本改革が出てから国民負担増を、理解を求めての負担増であれば納得できるわけでありますけれども、やはり中途半端で拙速過ぎたのではないかということを私は訴えたいと思います。この点に関しましてはこれで終わりにします。  次に、やはり先日質問したんですけれども、過剰医療と適正医療の区別をする基準というものがやはりなかなか難しい。はっきりするような回答も得られなかったということで自分自身もいろいろ迷うところもあるわけですけれども、過剰医療と適正医療の鑑別点に関しまして、もう一度厚生省考えをお聞かせいただければと思います。
  88. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これは先般の本会議でも御質問いただいたのでありますが、正直申し上げまして、私どもこれは非常に難しい質問であるということでいろいろ考えさせられたのでありますけれども、やはりこれは現象面から考えるということではないかというふうに思います。  先般、大臣並びに総理の方から御答弁申し上げたようなことでございまして、繰り返しになりますけれども、現象面で見ますと、我が国医療の実態というのを見てみますと、やはり社会的入院というのが非常に多いのではないか、またそのために入院日数というのが諸外国に比べて長いのではないかというふうに言われております。また、社会的入院を除きましても、一般的に我が国の場合入院日数が長い、そういう現象があります。  これはまたいろんな要因がありますし、地域差がございます。医療が必要なケースについてはやはり適切な入院をお願いしなきゃいけないわけでありますから、そういった面における入院日数というものの適正化というものが必要であるということであります。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕  それでは入院日数がどのくらいであれば適正なのかということになりますと、これはやはり一人一人の患者さんの症状なりによって皆違ってくるのではないかというふうに思いますが、一般的な傾向で申し上げますと、そういう状況が見られるということでこれはやはり是正していく必要があるのではないか、こういうふうに一つ考えているわけであります。  それからまた薬の問題、これは何度も議論になっておりますけれども我が国の場合には薬剤の多用がなされているのではないか、それからまた高薬価の新薬にシフトする傾向があるのではないか、それが結局は薬剤医療費に占めるシェアの高どまりという現象になっているのではないかということが言われております。  この原因としては、いろいろあるわけでありますが、やはり根本的には現行の薬価基準という公定価格を定めていることに伴う薬価差、それが経営原資という形にならざるを得ないという、そういう状況がベースにあるのではないかというふうに考えておりまして、そういった意味では、やはりこれについても薬価基準制度というものを根本的に改めて、そしてきちんとした診療報酬体系というものをつくっていく必要があるということで考えておりまして、こういった面についても是正が必要であるというふうに考えておるわけであります。  それからさらには、診療報酬が出来高払い制というものを基本にしているということに伴う弊害ということで指摘されるわけでありますけれども、とかく過剰な診療というものを招きやすいというふうに言われております。限られた医療費財源でございますから、そういった中でその適正な使用というものを求めていかなきやならないわけであります。こういった問題について、現象面から考えた場合にはその適正化というものが必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。そういった面における過剰な医療、適正な医療という御指摘については私どもとしては一つの尺度として考えているわけでございます。
  89. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 やはり、適正あるいは過剰という区別はなかなか難しい。我々と言っていいのかどうかわかりませんが、私が患者を診ている場合にも個々の患者さんによって症状も当然変わってきますし、個別の対応というものの是非を問わないと全体的に抑制するという方法はなかなかこの場合にはなじまないのではないかというふうに考えております。  この間、今後の抜本改革に関しまして、小泉厚生大臣は出来高払い制と包括定額払い制の最善の組み合わせを目指していくというふうに答弁されておりますけれども厚生省として出来高払い方式のメリット・デメリット、それから包括定額払い制のメリット・デメリットに関しましてどのように認識されているか、そこを教えていただきたいと思います。    〔理事菅野講君退席、委員長着席〕
  90. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それぞれが一長一短あるわけでございます。  出来高払い制につきましてまず申し上げますと、医療サービス、これが医師の自由な裁量によって提供できるということがやはり最大のメリットではないかということであります。患者さんの病状なり態様によりまして必要な医療というものを限度なく提供できるという、そういった面がメリットであるというふうに言われておるわけであります。一方、それが逆にまた過剰診療ということを招きやすい。医薬品についての過剰投与ということもそうでありますし、あるいは入院期間というものも長期化というようなことを招きやすい。入院している限りにおいては支払われるということになりますから、そういった問題点がございます。それからまた、出来高払いということでありますから、そういった意味での保険実務という面で見ますと、請求なりあるいは審査事務というものがどうしても複雑化する、こういうことが考えられるのではないかというふうに思います。  それに対しまして定額払いでございますけれども、これはいわゆるその裏腹の関係に立つ面が多いわけでありますけれども、過剰診療とかあるいは長期入院の是正といった問題について効率化が図られるのではないかということがメリットとして挙げられておるわけであります。それがひいては全体的な保険財政という面で考えますと運営の安定化に結びつくということではないかというふうに思います。しかし一方、この定額払いというのは一定の額しか払わないわけでありますから、過少診療といいますか、余分な行為をすればするほど医療機関にとってはマイナスというふうなことになるわけでありますから、そういった意味での弊害というのがある。それからまた、非常に悪いケースになってまいりますと、患者さんの選別というようなことを招くおそれがあるというようなことがやはりマイナス点として指摘されているんじゃないかと。  我々もこのような基本的なメリット・デメリットを念頭に置いて考えております。
  91. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 本年度より包括定額払い制につきまして試行していこうということで、国立病院あるいは国立療養所でそういう計画が進んでいるというふうにお話を聞いておりますけれども、具体的にその試行というのはどういう形でどういう内容で行われていくのか。また、少しタイムスケジュール的なものがわかっていればその点についてもお聞かせいただきたいし、行く行くは国立だけではなくて公立病院あるいは私立病院まで包括定額払い制に移行するようなことを念頭に置いて当然やっていると思うんですけれども、その時間的な、いつごろから移行していくのか、そういう厚生省としての大きな方針というのが決まっておりましたらばお聞かせいただきたいと思います。
  92. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 我が国の現在の診療報酬体系は出来高払い制を基本にしておるわけであります。ただ、そういった中でも定額払いなり包括払いというのをそれぞれなじむ分野については取り入れられてきてはおります。そういう傾向があるわけでありますが、やはり診療報酬体系の抜本的な見直しに当たっては、もっと出来高払い、それから定額払い包括払いのよさというものを取り入れ、そして全体として最善のものを考えていこう、こういうような基本考え方に立っているわけであります。  そういった中で、定額払い、とりわけいわゆるDRGと呼ばれる部分につきましては、我が国の場合はまだ基本的な検討というものについてはかなりおくれているというふうに思います。これはアメリカの例等を見ますと、相当広範囲に時間をかげながらこの制度というものが導入されてきておるわけであります。  そういった意味で、今年度実施しようとしております国立病院等における入院医療定額払い方式の試行というものも、これは本当に緒についた段階でございます。現段階は具体的にこれを実施するに当たってのいわゆる制度設計と申しますか、そういった面についての検討を今行っているところでございまして、実際の試行というのは本年の秋ごろを目途にスタートさせたいというふうに考えております。そして、その結果を年度単位でまとめていきまして中医協に御報告し、そういった中でまたいろいろな御意見もお聞きしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  今回試行いたします内容につきましては、これはあくまでもデータ等の集積またはその分析、そういった中でどういつだ面が我が国の場合に定額払い方式になじむか、そういったものを考えていきたいということでございまして、今現在はまさに具体的にスタートする前の取り組みについて検討している、こういう段階でございます。
  93. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 これはかなりこれまでの日本の医療体系を大きく変更していくような流れになると思いますので、医療現場の声も反映して十分時間をかけてやっていかなければならないのではないか。今までの日本の医療国民保険のもとでの医療が世界一の長寿国を達成したわけでありまして、その長所というものはどうしても堅持していかなければならないというふうに考えます。  それと絡みまして、診療報酬の技術料の評価というものもこれから必要になってくるのではないか。やはり、薬価というものは指摘されているように是正、改正していかなければならないというふうに考えておりますけれども、それに伴って技術料というものの評価をきちんとしていかなければならないのではないか、そのように考えます。  あるデータから見ますと、例えば虫垂炎、いわゆる盲腸の手術料というものは、これは一九九一年の本によりますけれども、日本では全国一律で五万円、今ちょっと診療報酬の方はわかりませんが、五万円ぐらい手術料としてかかる、ニューヨークですと七十万円かかる、ミラノですと六十万円ぐらいかかっているというふうに言われております。そういう意味では、日本では技術料の評価というのは少ない。また、患者さんにとっては安くそういう手術を受けられるという環境にあるわけです。  今後、薬価差益が是正されていくに伴って、やはり諸外国と比べてそういう手術料とか技術料が評価されていないというところは少し改正していかなければならないのではないかというふうに考えております。  その診療報酬の中における技術料の評価に関しまして、もう一度今後の方針につきましてお聞かせいただきたいと思います。
  94. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 我が国の現在の診療報酬の支払い方、これは医療担当者の技術料と、それからまた医業経営の投資的費用というものについても必ずしも明確に分かれているわけではありません。一方、薬価基準につきましては、公定価格とのギャップということで薬価差というものが出ている。そして、この薬価基準、それから診療報酬体系を合わせて医療機関における経営の原資になっている、こういうことじゃないかと思います。そういった意味では、やはりもっと、よく言われますように、いわゆる物と技術の分離といいますか、明確化、透明化を図り、そしてある意味では近代的な診療報酬の支払いのシステムというものをつくっていくことが必要であるというふうに考えております。  そういった意味では、医療担当者の技術料と、それからまた医業経営の投資的費用というものの評価というものを含めまして、その中において医療担当者の技術料の適正な評価というものを図っていくことになるのではないかというふうに考えております。
  95. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 先ほど包括定額払い制の問題が出ましたけれども、これから恐らく医療費をある程度、健康保険制度が維持できるためにはある程度標準的な医療というものを決めていくような流れにはなってくると思うんですね。  その場合に、保険で賄える医療というものと、それを超えたもの、いわゆるアメニティーの部分といいますか、患者さん側からの要望でより高度のもの、あるいはより副作用の少ないようなお薬を自費でもいいから受けたいというような要望もやはり出てくるような気がします。  その場合に、そういう保険で払われる診療というもののほかに自由診療部分というものを今後どのように組み入れていくのか、あるいはそういうアメニティーの部分を自由診療で拡大していくのか、その点に関しまして厚生省の方で方針というものがありましたらばお聞かせいただきたいと思います。
  96. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) いわゆるアメニティーと言われる、プラスアルファ部分と言っていいかと思いますけれども、アメニティーと言われるものと、それから治療における保険診療を超えるいわゆる自由診療といいますか、あるいはそれを抱き合わせて混合診療というような形の問題、これはちょっと私は区別して考えるべきではないかなというふうに思います。  やはり、そのアメニティーといったものについては、国民生活なり、あるいは国民の所得水準等によってその要求の度合いというのは変わってくる分野でありますし、そういった面についてはどこまでそれを全部医療保険でカバーするのかということになると、ある程度そこのところは医療保険外の負担の部分というものも考えていくということは、これはこれまでもある程度やってまいりましたし、それは今後そういったことについても考えていくことなのではないかというふうに思います。  一方の診療部分についてどう考えるべきかということになってまいりますと、これはやはり一つの方向として、私どもとしては公的医療保険でカバーすべき範囲ということはやはりきちっとしていった方がいいのではないかというふうに思っておるわけでありまして、まだ我が国の現状においてはその辺のところを一緒にしてしまうということについてはいかがなものかなというふうに私ども考えております。
  97. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 改革に熱心であられます小泉厚生大臣のお考えとしては、そのアメニティーの部分を今後どのように考えていらっしゃるか、御意見をお聞かせいただければ幸いです。
  98. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 現在でも個室等を希望される方についてはかなり今まで以上に自由選択の余地を拡大するようにしておりますが、医療サービスそのものについては基本的に保険で見るという方向の方が好ましいのではないかなと。しかし、最近いろんな方から、一月で二千万円を超えるような治療が出てきた場合、もう少し考えたらいいんじゃないのかというような意見も出ております。  いろんな意見を聞きながら、その混合診療というのはどこまで可能なのかよく検討する必要があると。しかし、基本的には医療サービスは公的医療保険で見るという方向の方が私は好ましいのではないかなと。ただ、より快適な環境を求めたい、アメニティーの部分においてもより自由な選択を認めてもらいたいという声もありますので、その点も含めて今後検討していきたいと思います。
  99. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 先ほど出来高払い制と包括定額払い制のメリット・デメリットのお話がありましたけれども、やはり今まで日本の場合には高度先進医療というものを受け入れやすいような出来高払い制というものがありましたので、それが今度包括定額払い制になりますと、どうしてもそういう高度先進医療というものが保険医療で一般の国民には与えられなくなってくるというような懸念もありますので、先ほど小泉大臣がおっしゃってくださいましたけれども、なるべく保険制度のもとでそういう新しい医療というものも受けられるような体制は維持していきたいというお話がありましたので、ぜひともその方針は貫いていただきたいと、そのように考えます。  次の質問に移らせていただきます。  先日も質問しましたけれども、医学部の入学定員の問題でありまして、やはり歯学部の方はきちんと二〇%削減の目標が達成されておりましたけれども、医学部の入学定員の場合にはまだ七・八%程度までしか目標が達成されていないということであります。  一〇%達成に関しまして、医学部の入学定員をどのように今後していくのか、今後の医師定員の削減のために入学定員数をどのようにコントロールしていくのか、文部省での方針が決まっておりましたらばお知らせいただきたいと思います。
  100. 寺脇研

    説明員(寺脇研君) お尋ね医師数の削減につきましては、昭和六十一年から六十二年にかけまして、厚生省及び文部省の関係専門家会議から、今御指摘がございましたように、一〇%程度抑制するという方針が示されておるところでございます。これに伴いまして国立大学におきましては一〇%の目標を達成しておるわけでございますけれども、御指摘のように、公立、私立につきましてはまだその目標を達成し得ていないというのが現状でございます。  文部省といたしましては、この方針に沿いまして努力を促してまいりたいと考えておりまして、関係の会議等、また各大学に指導をする機会をとらまえまして努力を引き続き続けてまいりたいと考えております。
  101. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 また、近年、通常の医学部入学の試験で入ってこられる方と、そのほかに編入学としてほかの学問をされてから医学部に入ってくるというような率を、ある大学では一〇%ぐらいそういう枠をふやしましょうというような流れが起きてきておりますけれども、そうしますと当然通常の入学試験で医学部に入られる方の枠は少なくなってくるわけであります。  その辺の調整はどのように今後されていく予定でしょうか。もしわかっておられればお答えいただきたいと思います。
  102. 寺脇研

    説明員(寺脇研君) 大学の医学部における学習、その中で医師としての資質を養ってまいるわけでございますが、近年、高等学校を十八歳で卒業した時点で入ってくる学生のみならず、やはり生涯学習というような観点から、さまざまな経路を通って医学部へ進学するということがあってしかるべきではないのか、また幅広い教養を持ち、高い目的意識を持った医師を育てていくためには他の分野で十分な基礎的学問をした上で医学の専門教育を受けた方がいいのではないかというような考え方が各大学の中で強まってまいっております。  そういった中で、御指摘のように、入学定員の中にある程度の枠を区切って学士入学枠を設定するというような動きが出てまいっておるところでございます。これはもちろん、先ほど申し上げました定員を抑制してまいる定員の中でのことでございまして、この学士入学枠分を入学定員をふやすという考え方ではなしに、現行の定員の中にそういう枠をつくっていこうというようなことでございます。  この問題は、医師の資質向上ということが国民の皆さんの強い要請であるというようなことを踏まえて各大学が積極的に議論をしておるところでございまして、文部省といたしましては、今後こういった傾向は強まるのではないかと考えておりまして、その際のさまざまな措置あるいは適正な医学教育の指導ということに努めてまいりたいと考えておりますが、重ねて申し上げますけれども、入学定員につきましては従来の枠の中に設営していくというような整理をしてまいるということでございます。
  103. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 そうしますと、通常の入学試験で医学部に入られる方の枠は当然少なくなってくるということになるわけでありますね。
  104. 寺脇研

    説明員(寺脇研君) そういう枠が設定されれば、そこの部分は圧縮されることになると存じます。
  105. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 医師の定員削減に関しましては、その入り口の入学定員ということがあります。入学定員の削減というのがまず第一番であると思います。次が医師国家試験のところで合格率を絞っていくという点もまた考えられるわけであります。それから、いろいろ話題に出ておりますけれども保険医の定年制ということが考えられます。保険医定年として何歳になるか、その後は保険医としての活動ができなくなるのか、私も医師でありますから非常に関心のあるところであります。  その保険医定年制に関しまして、大きな方針というのが決まっておりましたらば厚生省の担当の方からお答えいただきたいと思います。
  106. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 保険医を含む医師数のあり方という問題につきまして、医療保険審議会が昨年出されました医療保険改革に関する第二次報告がございます。その中で触れられておりまして、引用いたしますと、「医師数は近々に供給過剰となることが予想されているが、今後の供給医師数をさらに引き下げるための具体的な目標と方策を明らかにすべきではないか。この場合、保険医の定年制や定数制も導入すべきではないか。」、こういうふうな報告をいただいておるわけであります。  この定数制なり定年制というものをどういう趣旨で導入するのか、問題はそこではないかというふうに思います。医師が全体で供給過剰になり、若いドクターが保険医になれないとか、そういうような事態ということであればともかく、今はドクターは皆さん届け出をすれば保険医になれる、こういうような状況の中でどう考えるかということだろうと思います。  定年制とかあるいは定数制というのは一種の規制でありますから、そういうような形をとるということについては私は相当慎重に考えるべきだというふうに思っております。
  107. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 やはり、高齢でも元気に地域医療で働いている方は当然おられますし、年齢で医師活動、保険医活動を制限するというようなものは問題ではないかということで慎重な検討が必要ではないかと、そのように考えます。  それともう一つ絡んだ問題に研修の義務化というのがあると思います。  これもやはり、今まで医学部を六年で卒業して国家試験を通りますと保険医としての活動ができるわけでありますけれども、さらにそれに二年間研修を義務化して、義務化したその二年間の間は保険医としては認めなくて、研修が終わってから保険医として認めましょうと、いわば八年間、入学してから順調にいけば八年間、卒業してから二年間は保険医としての活動ができない。先ほどの医師定員の削減ということから絡みますと、卒業した医師が二年間保険医としての活動ができませんので医療費は当然抑制されるということでありますけれども、そのような発想ではないと思いますけれども、この保険医研修制が義務化の方向に向かっていると。その必要性、理由をお答えいただきたいと思います。
  108. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 医師の臨床研修の義務化ということについては、この一、二年、私ども議論をしてまいりました。また、昨年、医療関係審議会の中の部会におきましても議論をしておりまして、その際、必修化、つまり臨床研修の義務化ということを含めた臨床研修、現在の医師の臨床研修の改善の方向ということについてはかなり理解が深まった、関係者の中で理解が深まったのではないかというような意見がとりあえず中間的にまとめられております。  ただ、この臨床研修の義務化ということ、つまり必修化ということにつきましては、今、先生議論がございました医師数を、何といいますか、医師数の削減というような観点から議論がされているわけではございません。ただ、事実上の話として申し上げれば、もしこういう形になれば、保険医になるかならないかということは別にして、医師の新規参入というのが二年間繰り延べされるという限りにおいては広い意味での削減ということになるかもしれませんが、この卒後臨床研修の義務化ということについては、現在既におおむね八割、卒業生の八割の方が臨床研修をやっているというような実態、しかしなおかつ現在行われております臨床研修については幾つかの問題があると、その臨床研修の内容を充実していくという観点の中から必修化という問題が議論をされているというふうに私ども理解をしております。  現在、この問題につきましては、ことしの三月から厚生省とそれから文部省が共同で検討の場を設けまして、その場に大学病院関係者、それから現在臨床研修をやっております指定病院関係者、こういうような方に入っていただきまして、現在の臨床研修の研修病院あるいは施設基準等の問題、それから大学病院と一体のものとしてどういう形で今後やっていったらいいのかといったような問題、それから研修の指導体制、こういうようなことについて議論をさらに詰めていただいております。  なお、昨年まとめられました中間的な意見の中では、仮に研修を義務化した場合に、この医師免許の性格というものはどういうふうになってくるのか、それから健康保険制度上の研修医の位置づけはどういうふうにするのかというようなものが今後の検討課題というふうに挙げられておりまして、先ほど申しました新たに設けられた協議会の場においても幅広く今後議論をしていくことにいたしております。
  109. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 昔、インターン制度というのがありまして、それが反対のもとで解消されてきたと。やはり、研修医の身分保障というものがきちんとされなければ、こういう研修の義務化というのは進めるべきではないというふうに感じております。なお、これもやはり慎重な検討の結果、各関係者理解を得て進めていくべきでないかと、そのように考えます。  次の質問に移らさせていただきます。  日本では、新聞報道等で薬剤費が三〇%を占める、諸外国に比べて非常に高いというふうに言われております。いろんな統計でも日本の国際比較、一九九三年度では日本が薬剤比率は二九・五%、一方、アメリカでは一一・三%、フランスでは一九・九%というふうに、数値上はそのようにされておりますけれども、日本の薬剤比率が非常に高い、やはり抑えなきゃならないという世論も当然起こってきますし、私たちも努力しなければならないということでありますけれども、その数値だけがひとり歩きするというのはやはり危険ではないかというふうにも考えております。やはり、実態を踏まえた理解が必要、国民に対しても実態を知らせて、その理解が必要ではないかというふうに考えます。  ある研究論文では、国民医療費に占める薬剤比率が我が国で欧米諸国よりも高いという中で考えなければならない点ということでいろいろ挙げられておりますけれども、欧米諸国では入院患者に使用される医薬品は入院費に含まれるので統計上薬剤比率が低く出るというふうに言われているということであります。  それから、薬剤比率の分母である総医療費国民医療費の範囲や水準が我が国では欧米諸国に比較して狭いので、日本では薬剤比率が高く出ると。  また、三点目には日本では薬剤治療に傾きやすく、欧米諸国では外科治療に傾きやすいという診療パターンの特徴があるということでありまして、やはり日本人の文化といいますか、手術よりもお薬で治そうというような、そういう背景もあるのではないかということで、数値がひとり歩きして日本の三〇%が例えば米国の一一・三%、一〇%台になれば目標達成というような単純な発想ではなくて、やはりいろんな医療形態の違い、保険制度の違い、そういうものも国民に知らせながら適切な薬剤費のあり方を考えていくべきではないか、そのように考えます。  また、入院費の問題もあるんですけれども、やはり日本では社会的入院が原因となって入院日数が多いというような報道といいますか、そこが強調されるわけでありますけれども、例えば通常、正常分娩に関しましても日本では平均六・八日入院されている。ところが、米国では一・七日で退院されるということでありまして、これもやはりその国の持っている医療制度医療保険制度あるいは文化、そういうものに非常に根差しているものではないかということでありまして、日本に合った医療制度考えるためには、ただ単に入院日数だけを、数値をひとり歩きさせないで、やはり保険ないし医療に対する国民考え方、そういうものもよく検討しながら今後の抜本改革に向かっていくべきではないかと、そのように考えます。  そういう意味では、政府としては国民に対して最長寿国を達成した現在の日本の医療制度がどの程度よい面も持っているのかということをきちんと知らせながらいくべきではないかと。やはり、抜本改革に当たりましては、国民によく資料等を含めまして説明をしていく、アカウンタビリティーが必要ではないかというふうに思います。  今まで国民に対してきちんと日本の医療の長所というものを説明してこないで、ある意味では即医療費抑制があるべきだというような流れできているようにも感じますので、やはり国民に対してきちんと、何ゆえ医療費の総枠を抑制していかなければならないのか、その場合にやはり適正な医療というものは残していくべきだという声も当然上がってくると思いますので、そういう国民に対する説明というものをきちんとしていって、国民が高福祉高負担、そういう国を求めるのか、中福祉中負担でいいのか、あるいは低福祉低負担、自己責任原則を極端に貫く、そういう方向でいいのか、やはり国民もいろいろこれから選択を迫られると思いますので、そのためにはやはりきちんとした国の方針の説明医療抜本改革のポイントをきちんと国民説明していく、そういうアカウンタビリティーが必要なのではないか、そのように考えます。  小泉厚生大臣より政府のアカウンタビリティーに関しまして御見解をお伺いしたいと思います。
  110. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 日本人は外国の制度を取り入れるのに大変積極的な民族だとよく言われております。確かに、明治におきましてもいろいろな外国の制度を見習いながら今日まで発展してきたと思います。ですから、外国の制度と日本の制度、あるいは日本と外国の違いを取り上げながらよりよきものをつくっていくということについては私は別に悪いとは思っておりません。  しかし、医療においても、ほかのものにおいても、その背景にある文化とか国民性とか制度の沿革等違いますから、単に比較できない面もたくさんあると思います。  しかし、戦後、社会保障制度に関していえば、イギリスの「揺りかごから墓場まで」というあの言葉というのは大変魅力的に我々日本国民にとっては映ったと思います。その社会保障制度を見習いながら日本は今日まで福祉の充実を期してここまで発展してきたと思います。  これからも、いろいろ文化の違い、制度の違いはありますけれども、外国の例も参考にしながら、外国にはない日本独特の国民性もあります、文化もあります、日本人により合った適切な制度を導入していくということが必要ではないかなと。そういう際には外国からもわかりやすい、また日本国民にとって、外国とはちょっと違うなといった日本の独特のよさがあるわけでありますから、その点も日本国民にも外国にもわかりやすいような透明性、普遍性、説明のしやすさ、そういう点も考えながら、国民により理解されるような適切な制度の改善を図っていくことが必要だと思っております。
  111. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 次に、薬価の問題で内外価格差というものも非常に注目されております。いろいろ勉強しておりますと、厚生省の方では薬価の内外価格差は一応二倍以内であると許容範囲であるというような考えを持っていらっしゃるようなんですけれども、これから本当に二倍以内ならば内外価格差はよろしいのかどうか。五割ぐらいとか、その程度がだんだん狭まってくるべきではないかというふうには当然考えるわけでありますけれども、その薬価の内外価格差の比率を今後どういうふうに是正していく予定なのか、見解をお聞かせいただきたいと思います。
  112. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これまでの薬価基準を定める際の取り扱いとしましては、今、先生御指摘のとおり、内外価格差のある医薬品については二倍ないし二分の一というのを一つの目安として外国薬価と著しい乖離が生じないように調整を行うという、そういう基準がございます。  ただ、私は二倍であれば許されるとかそういうものではないというふうに思っておりまして、それは一つの目安でありますけれども、問題は、内外価格差が生じ得る合理的な理由、これがきちっとあるかどうかということではないかというふうに思っております。  そういった意味では、例えば三倍であったといった場合、それが合理的な理由があるならばこれは私は許容されてしかるべきではないかというふうに思っておりますけれども、現在の取り扱いにおきましても、しかし三倍の差というのはまず考えられないわけですし、二倍というのもいかがなものかというふうにも思っておるわけであります。そういった中で、できるだけ内外価格差については、合理的な説明がつかない部分というのは是正されなければならないというふうに思っております。  ただ、これについて現行の薬価基準の個別の値段の定め方のルールという点からいたしますと、透明性というものを高めたとしてもなかなか難しい面がございます。そういった面からしますと、現在の医薬品の供給実態ということを考えますと、むしろ市場の流通の実勢というものを基本にして考えていく、公定価格というものを定めるのではないシステムというものを考えていくことがむしろこれからの行き方だというふうに思っておりまして、そういうふうな形をとることによって私は内外価格差といった面についても合理化なり適正化というものが進むというふうに思っております。
  113. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 お薬だけでなくて診療材料、ペースメーカーなどは内外価格差が大きいということでいろいろ批判の的になりますけれども、それは診療材料とかいろいろな検査機器とか、そういうものも含めて是正がされていくというように考えてよろしいでしょうか。
  114. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 薬だけでありませんで、例えばペースメーカー等の器材についてもやはりかなりの内外価格差が指摘されているわけであります。まさにこれが合理的な説明ができる内容のものなのかどうかという点でありまして、そういった意味でこの流通の実態を含めてペースメーカー等の価格の実態というものを今調査いたしております。  そういった調査の結果を見まして、不合理な部分についてはやはりきちっと是正をしていく。また、それが我が国の流通の特性の中で合理的に説明ができるものであるならば、それはそれとして評価をしなければならないと思いますけれども、現在のペースメーカー等の材料価格というのは非常に大きな内外価格差がある、このこと自体非常に問題であるというふうに私ども認識をしております。
  115. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 今後、薬価に関しても抜本的改革を進めていきますと当然薬価も下がってくるということでありまして、製薬メーカーの方あるいはそれを扱っている卸、流通業の方、そういう業界に対してもかなり改革を迫られるような時代になると思うんですけれども、これからの抜本的改革で薬価が下がってくるということに対しまして、そのような製薬メーカーあるいは卸、流通業者に対しての影響というものを厚生省はどのように考えどのように対応していくつもりであるか、方針が決まっておりましたらお答えいただきたいと思います。
  116. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 薬価基準の見直しでございますとかで当然ながら医薬品産業をめぐる環境は大きな影響を受けるわけでございますし、また医療機関における医薬品の選択のあり方が変化することになりますれば医療流通関係者にも大きな影響を与えるものと予想されております。  しかしながら、製薬企業あるいは医薬品の卸業もいわば医療制度産業、医療制度と密接な関連のある産業でありまして、それらの影響を受けながら対応していくということがいわば運命づけられているわけでございます。その中で、やはりこれだけの時代でございますので、限られた費用で最大限の効果が上がるような工夫は必要だと考えております。  そういたしますと、製薬産業をとりますと、科学技術立国を目指す我が国にとりまして大変重要な産業でありまして、今後は国際市場に流通する医薬品を開発する力を有する製薬企業の育成をさらに進めることが大事でございます。そのためには、市場競争原理が働いて、すぐれた医薬品の開発に対して医薬品の購入上からも正当な評価がされるといったような仕組みがあることが重要であると考えております。  また、卸業にとりまして流通慣行の近代化が進んでおりますけれども、まだ未妥結、仮納入問題あるいは医療機関との文書契約率が低いといったようなことで、近代化の道半ばでございます。今後とも、流通慣行の近代化を進めて、医療現場で求められている医薬品が迅速で安定的にかつ安価に供給できるよう、卸売業者によります効率化の取り組みを進めることが重要であると考えております。
  117. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 では、次の質問に移らせていただきます。  医療費の過剰な部分の抑制あるいは適正化に関しましては、やはり患者さん自身が自分が受けた医療をよく理解して適正であったかどうかを判断できるような環境をつくることが大切ではないかと、そのように考えます。そういう意味では、医療機関にかかったときのわかりやすい診療費の明細書の発行とかあるいはレセプトの公開、ひいてはいろいろプライバシーの問題がありますけれどもカルテの開示、患者本人への開示とかそういう情報公開の流れというものが進んでいくと思われます。  その点で、諸外国ではやはり法制化がいろいろされておりますけれども、日本でのレセプト公開あるいはカルテ開示、そういうものの情報開示に関しまして厚生省の今後の取り組みをお聞かせいただきたいと思います。
  118. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 医療機関側が患者さんには十分な説明をするということはやはり今後進めていかなきゃいけないことだというふうに考えております。  カルテやレセプトの開示につきましては、開かれた医療の推進に役立つというメリットがある一方、病名の告知の問題とも関係がございますので、慎重に行うことが求められるというふうに考えております。  ただ、カルテやレセプトの開示につきましては、昨年十一月の国民医療総合政策会議の中間報告におきましても取り組むべき課題というふうにされておりまして、レセプトの開示については前向きに取り組んでいるとともに、カルテの開示につきましても患者さんに対する十分な内容の説明という観点から、今年度、検討会を設置いたしまして検討を進めてまいりたいと考えております。
  119. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 最後の質問になりますけれども医療費の総枠の抑制ということで健康保険制度を保っていく、維持していくという努力も非常に大切ではありますけれども医療費そのものの抑制には、やはり医療の進歩によって、あるいは予防医学の進歩によって将来の医療費の総枠が減少していくような観点も非常に大切ではないかというふうに考えます。  その点に関しまして、たばこのことを例に挙げさせていただきますが、近年の環境経済という観点から見ました研究論文では、たばこを生産、消費する総合的経済効果はこの論文の時点では約二・八兆円ある。健康被害による医療費あるいは労働損失などの経済的損失の方は五・六兆円に達するというふうに国立がんセンターの研究報告があります。差し引き二・八兆円の赤字ということでありまして、このような社会的なコスト増というものを外部不経済というような形で分析し、今後、喫煙率がこのまま保っていくような形であれば、二〇三〇年には社会的損失が十四兆二千億円と約三倍にも膨れ上がるというふうに研究の結果が出ております。  そういう意味では、いろいろ健康被害をもたらすようなもの、たばこであり、あるいはアルコールの一部も入ってくるかもしれませんが、そういう予防的な方策をきちんととることによって医療費の抑制を図っていくということもまた大事な視点ではないかと思います。  厚生省の方ではこのような研究論文、たばこの健康被害の予防の影響、そういうものに関する評価というものをどのようにされておりますでしょうか。
  120. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) たばこによる経済的損失についての研究は、今、先生が挙げられました国立がんセンターの先生の論文のほか、国立公衆衛生院の研究者でもそういう研究がされたものがございます。これらの研究報告では、経済的損失として挙げられている項目は医療費だとか、それから休業だとか死亡による所得損失となっておりますが、両報告とも損失の額については差があるのであります。しかし、いずれの論文につきましても、たばこによる健康被害があり、そして社会的損失があるということを述べておりまして、私どももその研究論文についてはよく承知をしておるところでございます。
  121. 渡辺孝男

    ○渡辺孝男君 時間もなくなりましたので最後に、医療費抑制という観点から、予防医学的な観点での今後の方策といいますか考え方、そういうものを小泉厚生大臣はどのようにとらえているか、お聞かせいただければ幸いでございます。
  122. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) いろいろな専門家の方から言われていますことは、たばこは健康によくないということのようであります。私もかつてはたばこを吸っておりましたけれども、十年ほど前、選挙期間中だけはいつもたばこを一月ほどやめていたものですから、選挙が終わってみて、ああこれなら大丈夫だなということで、もうたばこをやめて十年以上たちます。確かに選挙でのどを痛める場合はたばこを吸わない方が健康にいいという面もあります。  最近は禁煙運動が盛んでありまして、厚生省内におきましても、今や会議はもちろん、庁内では灰皿も置いていないと、近く自動販売機も撤去するということで、積極的に禁煙活動をしていこうということで取り組んでおります。  もとより、たばこは税収も上がってくるものですから、その点も、大蔵省当局は税収の観点から害ばかりではないと言う論者も多いようでありますが、予防ということを考えますと、たばこは吸わないにこしたことはないということで、できるだけたばこの害について啓発活動に取り組みまして、吸わないように、特に青少年たちには喫煙の害というものがよく理解されるように取り組んでいく必要があると考えております。
  123. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十五分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後一時一二十六分開会
  124. 上山和人

    委員長上山和人君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、林久美子君が委員辞任され、その補欠として星野朋市君が選任されました。     —————————————
  125. 上山和人

    委員長上山和人君) 休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  126. 山本保

    ○山本保君 まず最初に、これは本当に実感でございまして、自民党の先生方も同じじゃないかと思いますが、どうしてこういう重要な法案がぎりぎりになってこんなに忙しいときにやらなくちゃいけないのかと、だれに文句を言ったらいいのかわかりませんけれども。いろんな動きがあるかもしれませんけれども、やはり国民の目から見て、何か最後に、衆議院もですが、突然決まった案が出て、そしてそれを一日、二日で上げてしまうと。参議院の方も、もう次が詰まっているからといって上げてしまうと。  これは何時間やったといいましても、特に私は、もう先生方おわかりのように、厚生委員会先生方は本当に専門の先生が多くて、きょう午前中も非常に内容のあるお話がされているわけですから、もっと時間をかけてきっちりやっていけば、やり方もこういう形よりも、先ほどもほかの先生と話したんですが、項目ごとにフリーでどんどんやっていくとか、そんな話をしていけば本当にもっといいものができてくるんじゃないか、国民の皆様にも理解されるんじゃないかという気がしてしようがありません。本当にこれは一委員がそんなことを言ってもだめだとは思いますけれども、最初に一言言わないとと思いまして、ちょっとあれさせていただきました。  最初に、これはこの健康保険法と直接関係ないかもしれませんけれども、小泉厚生大臣に所信を少し述べていただきたいなと思っておるわけであります。  といいますのは、先回の本会議での質疑の中にも、これはいろんなところで言われておりますからよろしいのですが、特にこの社会保障制度について、今後の負担の上昇の見込まれる中で、必要な給付は確実に保障する一方で、次世代の負担というものを考え、経済の発展、社会の活力を損なわないように給付と負担のバランスを図りますとともに、民間事業者の参入拡大なども含めまして効率化、合理化を進めていくというお話をされました。また、厚生大臣がお書きになった本の中にも、いつも言っておられますけれども、官というのは民の補完に徹すべしということもお書きになっておられるわけであります。  そこで、衆議院でもよその党の方がそんなことをお話しされて、小泉厚生大臣はそれは関係ないとおっしゃったようなんで、関係があるんじゃないかということでお聞きしますけれども、ちょうど今、衆議院でNPOの法案が、まだかかっておりませんけれども、かけられようとしております。それで、この場をおかりして、NPOといいますと、普通、ボランティアのちょっと格の高いか、または格の高いというよりは内容のしっかりした継続性のあるそういうものを言うんだろうぐらいに考えられているようでありますけれども、今、私どものというか、新進党の議員提案で出しておりますものはそうではなくて、税金を使う部分を直接の寄附金にして、その寄附金を税から控除する、レーガン大統領などが十年ほど前にアメリカの再建、特に福祉、社会保障分野で相当な効果を上げた、こういうものなんですね。  そこで、私もそのグループとしてやっておりまして、今後はこういう国民負担を上げられない、といいますよりも、国の強制的に徴収される税であるとか保険料というような形で持っていくというものについては非常に限界があると考えます。私は、NPO、いわゆる民間の公益活動を行う団体に対して法人格を与える、税制控除を行う、措置を行うということが大事だと思っておるわけですけれども、厚生大臣、その辺についてどんなお考えがあるのか、最初にお聞きいたします。
  127. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) これからの社会は官から民といいますか、官は民の補完というよりも、一歩進めて、民間人でも公共的な仕事ができるんだと、その意欲をどうやってくみ上げていくかというのが大事だと思います。社会保障分野におきましても、民間事業者が、本来だったらば社会保障事業は役所の仕事だと、役人の仕事だと思われていたのが、最近は役所ではない非営利団体やら民間事業者も、福祉サービスというのはむしろ究極のサービス事業だという形で意欲的に民間人なり民間業者がこの福祉活動に参加する意欲が芽生えてきたということは、私は好ましい現象だと思っております。  これからも、いわゆる非営利組織の団体がどうやって社会に貢献していくかについて真剣な議論を重ねておりますし、あの阪神大震災を見ても、むしろボランティアの方々が積極的に公共的な仕事、役所の仕事にみずから関与していって支え合っている活動を見るにつけまして、私は民間事業者やらあるいは非営利組織、ボランティアの皆さんが連携して、意欲のある、また人を助けよう、支え合おうという意欲に満ちた人が活動できるような環境を整えていく、支援していくというのは大変重要なことであると認識しております。
  128. 山本保

    ○山本保君 確かに大臣、その本の中にも、民が官の分野に進出できるように環境を整えるのだというふうにお書きになっておられるわけであります。そこで、大臣は郵政事業の民営化が中心だというふうにお書きになるわけですが、私はそこはぜひNPOというものを考えていただきたいと思っておるわけです。  次に、今度は介護保険が来るようですから、そのときにまたきちんとやろうと思っておりますけれども、例えばいろんな民間サービス提供団体、法人たるべしというふうに書いてあるようですから、これは社会福祉法人をふやすはずはないですからNPO法人でやるだろうと。この場合、もし今、与党案のようなNPO法人であれば、これは全部保険のお金、または公費が行かなければ動きませんのでそのお金が要る、四兆円、五兆円要るということになるわけですが、本来のNPOであれば、そのうちの特に中枢的なサービス以外のサービスにおいてはこれは民間の寄附を行えばよろしいわけですから、幾らになるのか、四兆でなくて三兆かもしれない、全体で。  もっと言えば、これまで福祉が九五%を見ていたようなものについても、実はその中のサービスでも、本当に国民として必要な公費でやるべきところと、もっと民間が支え合うものがあるとすればこれ自体も減るかもわからない。実は、全体で五兆であるとか四兆であるという積算のもとに保険が必要だという論拠は私は崩れると思っているわけでして、これは今度きちんとそういう論をしたいものですから、先にお話をさせていただきます。  それでは、この改正法案についてお伺いいたします。  まず、この改正案が、今、毎年一兆円以上伸びていくというものに対して、二年間だそうですけれども、ある程度抑制といいますか、抑制といっても手当てができるというものだそうでありますけれども、この改正案によってどれぐらい医療費全体が抑制されるというような効果が——つまり考えますと、全体がふえるので、それに対して赤字があるわけですからそれを抑えなくちゃいけないというものと、国の出費がふえるわけですからそれを減らさなくちゃいけないというものと、それから非常に素人的な考えですけれども、全体がこの改正によって適正な医療が行われるというものと、もっとほかにもいろいろな分子があると思います。今言った三つ全部という意味ではありませんけれども、私ども専門でない人間が見ますと、今の三つのようなところが非常に気になるわけであります。  厚生省の方から、全体で一体どれぐらい抑制といいますか適正化、財政面ではどれぐらい医療費が下がるのか、その辺についてデータをお示しください。
  129. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の衆議院修正案、これは九月施行ということでありますが、今回この修正後におきます一部負担金の見直しが行われるわけですが、要するに今度の改正によって一部負担の増額をお願いしているということであります。それに伴って医療費が波及的な効果として減少いたします。  これは過去の経験則に照らして一定の数式を用いて計算をしておるわけでありますが、そういった波及的効果の額でありますけれども、これは平成九年の九月実施ということで見ますと、医療保険制度全体で四千百億円ということで私どもは見込んでおります。
  130. 山本保

    ○山本保君 今、全体では四千百億円ほどの医療費が安くなるのではないかと。それは、言うならば、先ほどもお話がありましたが、薬を余り出さないようにするとか、またお医者さんに余りむだに行かないようにするというようなことでの効果だというふうに考えるわけです。  ただ、そうしますと、特にお年寄りの中でも低所得のような方が必要であるのに行かないようになるんじゃないか。今でもあるそうですが、月末ですと、おじいちゃん、来週月曜日になれば次の月だからそれまで我慢しなさいなんということがあるのかどうか、本当かどうかわかりませんが、聞いたりするわけですけれども、そういうことがこれからはもっと起こってくるんじゃないか。これはやっぱり弱者に対する適正な医療が行われないようになるんじゃないかというおそれというのを感ずるわけです。  この辺についてはどうお考えですか。
  131. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 我が国医療保険制度は要するに相扶共済の制度であるわけでありまして、そういった意味では、保険料を納めている方、それから医療にかかった際にその一部を負担する患者さん、それぞれがお互いにやはり適正な負担と給付のもとに制度というのは運営されなければならないというふうに思うわけであります。  我が国医療保険制度のこれまでの歴史は、どちらかというと患者負担をできるだけ少なくしていくというような方向を目指してきたというふうに思うのでありますけれども、そういった中で医療費が毎年非常に高い割合で伸びてきたということはあろうと思います。これからの新しい時代ということを考えた場合に、そこにやはり適正な負担というものを考えていく必要があるというふうに思うわけであります。  そういった意味では、従来の発想からしますとできるだけ負担を少なくということかと思うのでありますけれども、適正な受診が抑制されるということがあってはいけないわけでありますが、やはりそこに患者さんに一定の負担をしていただくという受益と負担の均衡ということも考えなきゃいけない。  その際の負担割合というものがどの程度であれば必要な受診が抑制されないかということになるわけでありますが、今回お願いしております一部負担の増、これは従来と比べますとかなり大幅な引き上げであるかもしれませんが、これからの医療制度というものを考え、安定的に制度運営するということを考えた場合には、この程度の御負担お願いせざるを得ない。また、そういうふうな形で制度改革が行われたとしても、二、三年しか医療保険制度、とりわけ政管健保はもたないといいますか、逆調に転じてしまうという状況でありますから、そういった意味での御負担というのは御理解をいただかざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  132. 山本保

    ○山本保君 健康保険組合の方も非常に厳しいところがあるということも聞いておりますので、今のお話はわからないわけでもないんです。.  これは予定していなかったんですが、今のお話をお聞きしましても、また大臣もよくそういう同じことをおっしゃられるわけで、どんな制度改正にしても、こういう土台、ベーシックなものが必要なんだと、だからというふうに胸を張っておっしゃるわけです。しかし、私は、もう皆さんがいろいろ議論されておりますように、そのほかにも診療報酬の問題、薬価の問題、さまざまな問題があるわけでして、どれを先にやるのかというのを決めるのがまさにこれが政治だと思うんです。客観的にこういうものが必要であるということが、即それを最初にやるとか、第一歩にやるというふうにはならないわけでして、政治的判断によってこれを最初にすると、こういうことになるわけです。  ですから、ここはやはり私は大臣に、ちょっと突然で申しわけないんですが、つまり客観的、科学的に必要なんだからやるんですよというふうな言い方をされるよりは、生意気な言い方で申しわけございませんけれども、本来ならば厚生省として、大臣としてもっと抜本的な改正をきちんと示すべきところが、しかしこれまでのいろんな流れもあり、すぐにはできないんだ、やむを得ず国民の皆様からの負担を、まずこれだけは先にやらせていただきたいと、こういう形で申しわけないがと頭を下げられるというような形が必要じゃないかと思うんですけれども大臣、どうでしょうか。
  133. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は、今回の案というのは国民負担を押しつけるから反対だという議論をよく聞きますけれども、じゃ今回の案をやらなかったら国民負担を押しつけないのかといったらとんでもないのであって、税で面倒を見るのか、保険料で負担するのか。患者負担がなかったならば国民負担がないのかといったらとんでもないことでありまして、私は、どういうことになっても国民が何らかの負担をしなきゃ医療サービスは受けられない、この点を御理解いただきたいと思います。  今回の改正というのは一時的なものである、なぜもっと本格的な案を示さないのかということでありますが、今回の改正案が出てきたからこそもう根本的な、総合的な改革をすべきじゃないかという意見が出てきたと思うのであります。  今まで三十年間、一つの方向なり、やるべきこと、課題というのはほとんど列挙されていたと言っても過言ではない。なぜできなかったのか。それは国会が決めてきたことですから、私は、厚生省がけしからぬと言うんだったらば、政党が、国会がしかるべき案を出すべきだったと思います。なぜそれができなかったのか。それぞれの立場も違ったでしょう。それで、国民負担というのは患者負担だけと錯覚している方が多かった。患者負担さえ少なければ国民負担がないんだと一般国民も、政党の中でも思っている方が随分いたんじゃないでしょうか。ようやくそうではないなということが今回の法案でわかってきたからこそ抜本改革案を出せという雰囲気が出てきたのではないかというふうに感じております。  むしろ、今回の案が出てきたからこそ抜本改革への雰囲気が盛り上がってきたと思うのでありまして、私は、なぜできなかったのか、抜本改革案を示さないのかということは、だれもが危機意識に乏しかったんじゃないか、利害調整ができなかったという面もあると思います。しかし、根本的な原因は危機意識に乏しかったんじゃないか、政治家も、厚生省も。だから、何とかなると思って一時的なその場をしのげればいい、患者負担を少なくすれば善なんだという考え方。  もうそういう時代ではないと。患者負担保険負担も税金も全部国民負担だという中で、診療報酬も薬剤保険制度全般も総合的な改革をしないとこれからはとんでもない、医療保険財政がもたない、若い人ばかりにも負担を押しつけてはいけない、赤字国債を出しちゃいけない、増税もできないという危機意識がだんだん芽生えてきたからこそ抜本的な構造改革をしなきゃいかぬという雰囲気が出てきたのであって、むしろ今回の法案というのはその促進剤になった、踏み台になったというふうに私は理解しております。
  134. 山本保

    ○山本保君 大臣のおっしゃる見方というのも私は一つの重要な視点だとは思いますけれども、日本で現実にこの問題について一番ノウハウを持ち、そしてそのための情報と企画能力を持っておるのは厚生省でありますから、そこがやはりこれまでの責任の過半があったというふうに言うのはこれはやむを得ないのではないかなと私は思っております。  それで、今回の改正の中で、きょう私が主にお聞きしたいのはここなんですが、やはり同じような認識に立たれていたと思うんですけれども、新しい審議会をつくると、そしてその審議会はこれまでの審議会とは違うんだというふうにお聞きしておるわけです。法律だけ読みますとほとんど差がないといいますか、わかりませんので、一体どういうことを、どういうもくろみといいますか、お考えを持っておられるのか。  特に、時間もあれですので、一つ一つお聞きするとあれですからまとめてお聞きしますが、例えば今回審議会をつくることについて医療保険審議会老人保健福祉審議会も、何か非常に冷たい、突然唐突に出てきたものだ、なぜ我々の審議会がつぶされて、新しい審議会ができなくちゃいかぬのだというような意見が欄外にもうにじみ出ているように思うわけです。  この両方の審議会は二十五人ずつ委員がおられて、専門委員はそのほかにもおられる。数えてみますと、お医者さんもおられるし、保険の側もおられるしということでありますが、一体今度の審議会はどういう方を呼び、そしてどれぐらいの規模で、そしてどんなやり方で、大臣が今おっしゃった今度の、まさに今受けなければならないという改革を提示し進めていかれるのか、その辺についてお聞きしたいです。
  135. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今回の審議会というのは、今までの審議会とは違うというよりも、審議会で重複しているところがあるんじゃないか。医療保険審議会にしても老人保健福祉審議会にしても、別々に議論するよりも総合的に議論する必要があるんじゃないかということから、一つにまとめて構造的な改革議論してもらおうという意図から新しい審議会を設けることになったわけでありまして、今までと違うといえば、それは今まで審議会にお諮りして審議会意見を聞きながら厚生省として案をつくってきた。今度は全く逆であります。  九月一日以降に新しい審議会が設置されますが、その前に厚生省案として責任を持って案をまとめます。それをむしろ審議会議論してもらおう。今までとは全く逆の方向で考えております。そして、これから審議会委員になっていただく方は、見識の高い、国民的視野に立って議論していただく方をこの審議会に入ってもらおうということで、この法案ができ次第、人選も考えていきたいというふうに思います。
  136. 山本保

    ○山本保君 今のお話ですと、例えば今おられる二十五人、二十五人の審議会を二つ合わせて、ほとんど同じ方、もしくは同じメンバー構成でやればよろしいというふうにも、やるつもりであるともとれるわけですが、局長、その辺はどうなんでしょうか。  それからもう一つは、大臣がおっしゃったことですが、今まででも審議会というのは実際には厚生省が大体の案を出して進めていたのではないかと思うわけですよ。それでは同じじゃないかと思うわけですが、次の質問に用意していたのと一緒にお聞きしたいんですけれども、八月中旬ぐらいまでに案を出すと、大臣が今ちょっとお触れになったことですが、それとその審議会関係というのはどういうふうに考えたらよろしいのか、そこまで一緒にお聞きします。
  137. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回、法案が通りましたら新しい審議会を設置させていただきたいと考えているわけですが、この審議会構成でありますけれども一つには現行の健康保険法あるいは老人保健法等に基づいて制度運営事項を御審議いただく部門というのを一つ用意するということであります。それから、もう一つ医療保険制度の抜本改革を御審議いただく部門というのを設置いたすということであります。この医療保険制度の抜本改革を御審議いただく部門につきましては、私どもとしては、そんなに多くの人数ではなくて、今考えておりますのは十人程度委員の方にお願いしてはどうかというふうに考えております。これらの委員の方々につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたような方々にお願いをしたいというふうに考えておるわけであります。  それから、抜本改革案でありますけれども、これは九月までに抜本改革案というものをお出しするということでありますが、私どもとしてはもっと早くお出しをしたいというふうに考えておりますし、与党の医療保険改革協議会でも議論がされておりますので、与党の医療保険改革協議会に対しても厚生省としての案をお出しをし、そしてこれに基づいた御議論もいただきたいというふうに考えておりますので、私どもとしては、そういった意味では八月を待つまでもなく案をお示ししていきたいというふうに考えております。  それから、これらの案については新しく設置いたします審議会にお諮りをして、これに基づいて御審議をいただく、こんなふうな段取りを考えております。
  138. 山本保

    ○山本保君 これまで二十五人ずつの委員がおられて、そしてその中に大体二割ぐらいのお医者さん関係、それから労働側とか経営者側とか、あと各保険組合の方とか、この前、橋本総理も答弁の中で、さまざまな全く対立する意見がありまして根本的な見直しができなかったということを言っておられるわけですよ。それは今度の審議会がどういう形で持たれるのかということによって、意見があることは間違いないわけですし、それから総理も言っておられるように対立する意見があると、これをどういうふうに十人ぐらいの審議会で持っていけるのかどうか。何か一部には賢人会議というようなことを、大臣が言われたんでしょうか、そんなこともお聞きしたわけですけれども、その審議会が本当に力を持ってこれまでの大問題を改正できるのかどうか、私は非常に不安な気がするわけですけれども、もう一度その辺についてお答えいただきたいと思います。
  139. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) それは今までの過去の経緯を反省しつつ、今回は厚生省がまず責任を持って具体案を提示すると、それを与党三党の協議会がありますからそこでも議論をしていただく。と同時に、その案について八月末までに与党でまとめるという方向を打ち出していますから、その厚生省案と与党が考える案がどうなのか、八月までの結論を待ってみなきやわかりません。そして、この法案が成立すれば九月一日以降に審議会が設置されますから、その案をまた審議会でお諮りすると。  九月一日までに厚生省案をまとめるということでありますが、与党三党もできるだけ早く出せと言っておりますから、八月末に出しても与党が協議できるものじゃない、厚生省の案を与党が知るというのは遅いというのでありますから、もうかなり早い、できれば七月中には出さなきゃいかぬかなと思っております。ともかく、八月いっぱいではなくてできるだけ早い機会に厚生省案を出して、与党と一緒に一つのたたき台、厚生省案と与党の考え方がどうなのか、一緒になるのかあるいは修正するのか、これはいいといって歓迎してくれるのか、出してみないとわかりません。  そういう時間的な制約を考えますと、私は九月一日までに出す今回の厚生省案というのは三十年来のいろんな議論の集大成といいますか、今までの国会等、多くの審議会委員の方々の意見を踏まえた厚生省の見識が問われた案を出さなきゃいかぬと思っております。それは当然今までに出てきた基本方針にのっとったものが出されてしかるべきだし、同時に、一つの案だけだとこれしかないと思われがちですから、場合によっては複数も考えております。そして、議員の皆さん方、識者の皆さん方、審議会の皆さん方、国民の皆さんにじっくりと判断していただく期間を設けてできるだけ早く法案化できればなと、そういう手順を考えております。
  140. 山本保

    ○山本保君 私もそう悲観的に世の中を見ていくタイプの人間ではありませんので、これまで三十年、四十年できなかったことを今回やり遂げるんだという今のお言葉、お気持ちについては非常に期待をしたいわけでありますけれども、ただお気持ちと実際とはなかなかということもありますので。  そこで、きょうはその内容についてお聞きしょうと思ったんですが、これはもう他の議員からもお話がありましたので飛ばしまして、今ちょうど大臣がおっしゃったことと絡めて少し確認的な意味でお聞きしたいんです。  きょうの新聞にも大きく載っておりますけれども、現在、政府が財政構造改革会議というのを行っておると。この中で、社会保障についてはということで既に、既にといいますか、まだ途中だそうですが、例えば医療改革に含めて言えば定額制度であるとか高齢者定率負担であるとか、また薬価は自由価格でやるとかいうようなことがもう具体的に意見が出ているというようなことが報道されているわけです。こうなりますと、これが厚生省考えている案なのかという気もするし、一体この辺は、これからつくるんだというものがあらわれてこのことを言っているのかどうか、この辺について確認的にお聞きしたいと思います。
  141. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今言われた具体案というのは衆議院厚生委員会でも出た議論であります。それぞれ、薬価基準を見直しなさい、診療報酬体系を見直しなさいという意見衆議院、参議院の厚生委員会で出た意見を踏まえて、問題はここにあるという方向は政府の財政構造改革会議の中でも出た議論でありまして、それにのっとって当然厚生省としては、抜本的改革に手をつけるのだったらばその問題は避けて通れませんということで、そのような方向で検討いたしますということをお話ししているわけであります。
  142. 山本保

    ○山本保君 今のは厚生省として大臣がそういう方針を打ち出されたということでございますね。——わかりました。  それはできてからまた審議会だというのが今までの答弁だったんじゃないのかと思いますけれども、こういう形で今考えているんだということであるなら、私も実はそういうふうにはまだ想定しておりませんでしたのでこれ以上この場でその中身について御意見を言うということは保留いたしますけれども、そのことが本当に理解されるような審議の仕方、また情報提供の仕方というものをやっていただかないと、また繰り返しになりますけれども、今回のような形でこんなに、拙速と言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんが、時間のないところでもう出口を決めてやるような議論を繰り返しておったのではいつまでたっても国民の皆様の理解は得られないと思いますので、ぜひここも改めていただきたいと思います。  あと少し時間がございますので、ちょっとだけほかの問題をお聞きしたいと思うわけであります。  一つは、順序はあれですが、新聞等で、大阪の安田病院というんですか、この法人の問題が指摘され、実は各先生方にも行っておるんでしょう、私のところにもその従業員という方からいろんな資料が送られてきております。もちろん、事実はどうであるかということを我々はまだ知りませんけれども、一体これはどういう問題なのか。もしここにあるのが本当だとすれば大変な問題でありますし、またこの医療保険を変えようというときに、はっきり言えば、国民の中に医に対する不信というのがあるわけでありまして、ちょうどこういう問題が出てきているということであれば、やっぱりこれは少し問題として取り上げなくてはいけないのではないかなと思うわけですが、厚生省は今これについてどんな対応をされているのか、御報告いだだきます。
  143. 谷修一

    政府委員(谷修一君) この安田病院の問題につきましては、関連三病院ということで、昨年の暮れ以来、大阪府並びに大阪市が中心になりまして何回かの立入検査を行っております。このうち一回につきましては、厚生省からも職員が参りまして、医療施設の状況あるいは医療従事者の状況等についての調査を行っております。  その後も四月から五月にかけまして、大阪府におきましては立入検査を数度にわたって行いますとともに、職員の個別面接によります医療従事者の確認を行いました。また、職員に対する文書による照会、それから今申し上げました個別面接、訪問調査といいますか、そういうようなことをやりまして、その結果、大阪府におきましてその結果が、五月の十九日だったと思いますが、公表をされております。  各病院から、従来、大阪府あるいは大阪市に対して提出されていた医療従事者に関する報告が実態と大幅に異なって、実際の医療従事者は非常に少ない、従来報告されていたものよりもそれぞれの病院において数十名の単位で少ないということが判明をしたわけでございます。  私どもといたしましては、この問題につきまして、従来から大阪府及び大阪市に対しまして、実地調査並びにその結果に基づく対応について大阪府と協議をし、また必要に応じて指導を行ってきたところでございますが、現在、大阪府におきましては今後監査を行う、特に医療保険において監査を行う。また、病院から出されております医療従事者に関する改善計画書に基づきまして、現在入院されている患者の転院を促進するということで、地元の医師会を初めとした関係機関の協力を得て転院を進めていくということを検討されております。  また、今後の行政処分につきましても、医療法を初めといたしまして、健康保険法、それから生活保護法等については今後の状況の推移を見ながら厳正に対処していくということで、大阪府の方から報告を受けているところでございます。
  144. 山本保

    ○山本保君 今のお話でも、もう既に以前からこういう問題を知っていたということにもとれます。であるならば、もちろんこういう財政面からいきましてもこれは不正でありますし、もっと言えば、患者さんたちにとっては大変なことなわけですから、これでも非常にいい医療がされていたというならばいいんですが、そんなことはないというふうに報道されているわけです。大変なことです。  ですから、これはやはりこういう問題、先ほどほかの先生からもいわゆる出来高払いのような形でのプロフェッショナルフリーダム、専門家支配のようなものは医療行政の基本であるというお話があったわけですけれども、私はその基本自体に国民は今非常に疑いを持っていると。今回の臓器移植についても同じでありますので、ぜひこれは、この個別の対応のほかに厚生省としてはこういう不信感を払拭するようなきちんとした対応をしていただきたいということを申し上げます。  あと一つだけ、一分ほどありますので。  これはまた全然話が変わって恐縮ですが、人工透析の方が毎年一万人ですか、ふえておられると聞いておりまして、一般的に言って、毎年そんなにふえるような病気があるとも信じられません。もちろん、これはいろんな状況が、対応があるからゆえにふえるということでしょうけれども、気になりますのは、食事療法を行えばそんなに人工透析に行かなくてもいいと言われているにもかかわらず、いわば診療点数がそういう予防であるとか指導の方に非常に低くて、器具を使った検査とか、こういう透析などを行った方がいいので、そんなことはないと思いますけれども、しかし人間の考えとして、やはりそのためにもお金が決まっているわけですから、そちらの方に伸びていっているんじゃないか、流れていっているんじゃないかというおそれが感じられるわけですけれども、この辺についてどのように指導されているのか、お願いいたします。
  145. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 慢性腎炎関係についてお答えいたします。  厚生省では、平成五年度、進行性腎障害調査研究班におきまして、慢性腎疾患の内科的治療の一つであります食事療法についてガイドラインを作成し、また食事療法用宅配食品適正化検討会で腎臓病者用宅配食品栄養指針を作成し、その普及に努めているところでございます。医療現場におきます食事療法の指導状況につきましてはその実態を把握しておりませんが、慢性腎透析の新規導入状況から見ますと、過去十年間で腎透析を受ける患者さんは、新規で昭和六十年のときが一万三千、平成七年で二万六千余と約一・九倍にふえております。特にこの中で、糖尿病性腎症というのが過去十年間で約三・六倍と大変ふえているわけです。この背景には、食生活の欧米化や運動不足など生活習慣の関与が考えられるところでありまして、また御指摘の食事療法の重要性も示唆するものと考えておるところであります。  食事療法による透析導入の遅延効果につきましては、今、先生お話しのように、そういうふうに効果があるということを言われておりますけれども、まだ正式の研究発表が私どもの方には入っておりません。さらに研究を進めてまいろうと、このように思っておるところであります。
  146. 山本保

    ○山本保君 終わります。ありがとうございました。
  147. 菅野壽

    ○菅野壽君 それでは、私は健康保険法等の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます。  本朝来、田浦先生初め立派な御質問が相次いで、私が申し上げようと思うことがもう言い尽くされておりますけれども、重なるようでございますが、御質問させていただきます。  先般の本会議でも申し上げましたけれども医療保険の抜本改正と一体とならなければいけない。構造改革なくして負担増なしというのが我が方の主張でございまして、この観点から御質問を申し上げていきます。  まず、今回改正においても疑問点の多い薬剤別途負担についてお伺いいたします。  今回の薬剤別途負担は、患者のコスト意識の喚起を図ったものと理解しております。しかし、投薬行為は医師の裁量にゆだねられています。したがって、薬剤別途負担による薬剤使用適正化の効果は疑問でございます。  厚生省は、薬剤別途負担により薬剤の使用適正化がどれだけ図られるとお思いですか、その効果について数値をもってお答え願いたいと思います。
  148. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の改正につきましては、医療保険制度の抜本的な改革を実施するということを前提にしてお願いしているわけであります。それは、現下の医療保険制度が非常に財政的に窮迫をしておる。それで、抜本改正を待つ前に制度の崩壊ということが危惧をされるわけでありまして、そういった意味で、現在の各医療保険制度の財政の安定を当面まず確保するというところから着手をさせていただいておるわけであります。その中で、薬剤我が国は非常に多く使われておるというようなことから、薬剤適正化を図るために、このたび新たに薬剤費の一部負担お願いしたわけでございます。  そこで、薬剤の一部負担を別途お願いすることによりまして、いわゆる医療費に対する波及的な効果、減額の方向の波及的な効果というものが見込まれると考えておりまして、医療保険全体で約二千九百億円程度、平成九年九月実施の場合には効果があるのではないか、減額がされるのではないかというふうに考えております。
  149. 菅野壽

    ○菅野壽君 今回の薬剤別途負担については、医療機関、支払い基金等における事務コストの増大や窓口での混乱が予想されております。私の病院でも事務職員を増員しなければなりません。今回の薬剤負担に係る事務コストを厚生省はどの程度見込んでおられますか。  また、衆議院修正投薬日数ごとの薬剤負担はなくなったことによって事務コストはどれだけ軽減されたと思っていますか、お示し願いたいと思います。  さらに、こうした事務コストについて厚生省はどのような方法で補てん、補償を考えているのか、あるいはいないのか、お伺いしたいと思います。
  150. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回新たに薬剤負担の導入をお願いするということになりますから、医療機関窓口事務は現行制度に比べればどうしても事務負担ということがふえることは避けられないというふうに思っております。  衆議院における修正案政府案と比べますと、修正案の方が事務の簡素化、簡便化ということを念頭に置いて修正されているということを考えますと、政府案に比べますと事務の負担は軽減されるというふうに考えております。ただ、これはそれぞれ計数的にお示しするというのはなかなか難しゅうございまして、そういった面での評価というのはいたしておりません。  なお、この事務コストの増に伴って、今、先生御指摘のとおり、職員の配置等が要るではないかということだと思いますが、こういった医療機関における事務コストについては、これまでもそうでありますけれども医療機関の経営全体の状況を見た上でこれまで診療報酬の改定の際に対応してきていたということはございます。  したがいまして、今回の措置後、医療機関における経営コスト全体の変動がどのようになっていくのか、その中で必要があれば診療報酬改定の際に対応していくことになるのではないかというふうに考えております。
  151. 菅野壽

    ○菅野壽君 今回の薬剤別途負担は、世代間の負担の均衡を図るという改正の趣旨からも疑問があります。厚生省はこれまで薬剤別途負担の算定根拠を高齢者の薬剤投与を基準に説明してきましたが、衆議院修正によって高齢者の薬剤別途負担負担割合はどの程度になるのか、また若年世代の薬剤別途負担に係る負担割合はどの程度になるのか、御説明を願いたいと思います。
  152. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) このたびの修正後の案で申し上げますと、老人外来医療費に対します薬剤別途負担負担割合、いわゆる外来における負担割合老人の場合三・九%でございます。これに対しまして、若人について見ますと、これが三・五%ということでございます。
  153. 菅野壽

    ○菅野壽君 薬剤別途負担を含む一部負担改正後の実効負担率について伺いたいと思います。  一部負担の実効負担率は衆議院修正の結果どのようになったのか、制度別、世代別にお示し下さい。
  154. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 修正後の状況で、これは平成九年度満年度ベースで御説明したいと思いますけれども、若人につきましては現行が二八・八%の実効負担率でございますけれども、これが改正後は二一・八%でございます。それから、老人につきましては現行五・五%でございますが、これが八・四%でございます。  また、制度別に見てみますと、若人のうち、いわゆる被用者保険制度、被用者保険では現行が一四・六%でございますが、これが改正後は二一・五%になります。それからまた、国民健康保険につきましては現行は二一%でございますけれども、これが二三%になるというふうに見込んでおります。
  155. 菅野壽

    ○菅野壽君 次に、小児医療における薬剤負担の問題についてお伺いいたします。  今回の改正は、急性疾患が多く、薬剤費が少額で診療回数の多い小児医療に及ぼす影響が大でございます。この点について現場の小児科医から多くの声が私に寄せられております。小児医療に係る薬剤比率、診療所における一回当たりの投与額、処方回数についてお示しください。また、同じ数字について内科、さらに老人医療はどうなっているのか、御説明を願います。
  156. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 小児医療関係への影響が大きいという声が非常に強いわけでありますが、小児医療に関します薬剤比率でございますけれども、これはゼロ歳から十四歳までの小児ということで申し上げますと、外来医療費におきます薬剤比率が二〇%でございます。また、小児外来につきまして一処方当たりの薬剤費を見てみますと、これは病院診療所を合わせた平均でございますけれども、千四百円でございます。一月当たりの処方回数をちなみに申し上げますと、一・三回ということでございます。  なお、小児医療につきましては、三歳未満の小児を対象としました小児科外来診療料、これにつきましては包括払い制が普及してきておりまして、この包括払い制を導入している医療機関につきましては、このたびの薬剤に係る定額負担は課されないということになっております。  それから、外来老人医療における薬剤比率でございますけれども、これは四八%でございます。一処方当たりの薬剤費でございますが、これは五千九百円ということになっております。一月当たりの処方回数、これは二・一回ということでございます。  それから、内科等の診療科別の薬剤比率はどうかというお尋ねでございましたが、この診療科別の薬剤比率等は現在とっておりませんので、そういった意味で、内科についての薬剤比率ということにつきましては数字がございませんので、この点については御理解賜りたいと思います。
  157. 菅野壽

    ○菅野壽君 小児医療については、平成八年度の診療報酬改定によって外来診療料の定額方式が導入されていますが、この導入実態、効果をお伺いいたします。
  158. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 平成八年四月の診療報酬改定におきまして、三歳未満の小児におきます小児科外来診療料というものが新設され、それがいわゆる包括払いの形で行われているわけであります。  平成八年七月に調べた状況によりますと、全国で約一万一千四百二十カ所の診療所と千二百四十四カ所の病院がこの診療料を採用いたしております。  なお、関係団体、これは小児科医会が調査したものでありますけれども、これによりますと、平成八年九月時点で、この団体関係で回答がありました診療所の約六四%がこれを採用しているという報告が出されております。そういった意味では、診療所においてはかなりこの小児科外来診療料というものが活用されているというふうに考えております。  なお、これが導入後、例えば検査あるいは投薬、そういったものがどういうふうに推移してきているのかといった点等につきましては、これはまだ導入されて間もないということもございまして、本年度この調査というものを実施したいというふうに考えております。
  159. 菅野壽

    ○菅野壽君 小児医療における薬剤負担割合でございますが、私のところに寄せられている訴えでは、今回の改定により薬剤費の一三〇%が自己負担の現象も考えられる、無床小児科診療所の調査によれば、三割薬剤費負担分に改正薬剤負担額を加えれば子供は全薬剤費の六四%を負担することになるとされています。  政府はこの点についてどう考えておられるか、また小児医療における薬剤負担割合について厚生省の試算をお伺いします。
  160. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回の薬剤定額負担でありますが、これは衆議院修正後の形でありますけれども、この定額負担額の定め方が平均的な投与日数というのを根拠として設定しておりますから、そういった意味で、平均を下回る場合と上回る場合で、やはりその辺の金額の差、割合の差というのが出てこざるを得ないということでありまして、ここは平均的な数字基本にしている限りにおいてはやむを得ないというふうに考えております。  この小児医療薬剤に係る自己負担割合というものを試算いたしてみますと、ゼロ歳から十四歳までの小児の場合、一カ月当たり薬剤に係る定率負担が五百四十円、それから定額負担が五百二十円、合わせまして千六十円ということであります。一方、一カ月当たりの薬剤費が千八百円ということでございますので、薬剤に係る自己負担割合は、これを割り算しますと五九%という格好になります。
  161. 菅野壽

    ○菅野壽君 我が国薬剤費が高い背景には、我が国の薬価の高さがあります。本来、薬剤の別途負担より先にこうした我が国の薬価そのものにメスを入れるべきであります。  厚生省は、日本の薬価はアメリカ、ドイツよりも安く、イギリス、フランスよりも高い傾向にあると説明していますが、大阪府保険医協会が行った調査では、アメリカ、ドイツでさえ我が国の薬価より安いなどと明らかにしております。  厚生省調査と大阪府保険医協会調査との違いの理由厚生省はどのように認識しておられるのか、また大阪府保険医協会の調査について厚生省の見解を伺いたいと思います。
  162. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 外国との比較をする場合には、これはそれぞれの国によって医療保険制度が違いますし、使用実態が違うというようなことがありますので、単純な比較というのはなかなか難しい面もございますけれども厚生省の調査、これは国際的に売上額が上位三十品目について調査をしたものでございます。それに対しまして大阪府保険医協会の調査は、日本における売り上げ上位百六品目の中で、少なくとも日本以外の一カ国以上、米独仏のどれかで使用されている六十二品目について調査をしたものということでございます。  その結果を見てみますと、厚生省の調査におきましては、アメリカ、ドイツよりも我が国は安い、イギリス、フランスよりも高いという傾向が見られるということであります。それに対して大阪府保険医協会調査によりますと、いずれの国に対しても高いという傾向になっておるわけであります。  これは、それぞれどういうような品目を比較するかということによって違ってくるわけでありますが、少なくとも私どもの認識としては、我が国の内外価格差というのがかねてから指摘されておりますように、諸外国に比べて我が国の薬価というのは決して安いということではないのではないかというふうに認識しております。
  163. 菅野壽

    ○菅野壽君 厚生省は、薬の価格については市場取引の実勢にゆだねるという原則に立っていますが、市場取引にゆだねれば価格は確実に下がるという論理的根拠はあるのでしょうか。また、新薬シフトや高薬価シフトは市場取引にゆだねることによってどの程度是正されるのでございましょうか。さらに、採用する方式によっては高どまりの懸念はないのでしょうか。あるいは逆に画期的な新薬の開発が阻害される懸念はないのでしょうか、伺います。
  164. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まさに先生が御指摘のような問題点というものを避けられるような、そういう問題点というものを克服できるような案というものをつくっていきたいということがまず基本であります。  ただ、現在の薬価基準制度、これは薬について公定価格を定めておるわけでありまして、この公定価格を定めていることに伴う弊害というのが非常に大きく出ております。これが一つには薬剤の多量使用というものに結びつくという問題がありますし、それからまた、とりわけ高薬価の新薬にシフトしがちであるという問題が指摘されているわけであります。  こういったものを改善するということになりますと、公定価格というものを定めるというやり方ではなくて市場原理、マーケット原理に価格の形成というものをゆだね、そしてそれに基づいて適正な保険の償還価格というものを決めていくというふうなやり方の方がすぐれているというふうに考えておりますし、ヨーロッパ諸国においてはこういうふうな方向を採用している国がふえてきておるわけであります。問題は、我が国における実態に一番ふさわしい方式というものを考えなければならないというふうに考えております。  また、画期的な新薬の開発というものが阻害されることのないようなシステムというものを考えなければいけないというふうに考えておりますし、これら全体を満たす案というものを私ども今検討しておるわけでございます。
  165. 菅野壽

    ○菅野壽君 このほか薬剤費については、厚生省の試算によって五千三百億円に上る支払いの超過が見込まれています。この試算については中間・マージンの見積もりが不十分ではないかという指摘もありますが、五千三百億円の不明金をそのままにして国民に新たな負担を求めることについてはなかなか理解が得られないのではないでしょうか。  厚生省はこの五千三百億円の解明、解消にどのような見解を持っているか、お伺いします。
  166. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この問題については、これまでも何回か御説明をさせていただいておるのでありますが、なかなか御理解を賜っていないような感じがいたしますので、きょうは少しじっくりと御説明させていただきたいと思います。  まず、この五千三百億という数字がどうもひとり歩きをしている嫌いがあると思います。これは、そもそもどういうことでこういうふうな五千三百億というのが厚生省の試算というようなことになったのかということから御説明申し上げたいと思います。  そもそもは三月四日付の東京新聞が、一定の計算方法で差額が出ているという記事を掲載したわけであります。これを読まれました与党の医療保険制度改革協議会の先生方から、この東京新聞に載っている同様の方法でちょっと計算してみろということがございました。そこで、厚生省として東京新聞と全く同じやり方で計算したら、それが五千三百億ということになっているということであります。この計算というのは、厚生省が特別に試算をしたというわけではもちろんないわけであります。  したがって、この数字の受けとめ方について私は誤解があるというふうに思っております。というのは、この計算方法そのものがもともと問題であるというふうに思うわけであります。何が問題かということでありますが、当然のことでありますけれども、この計算の元データ、統計データが並べられておりますが、それぞれのデータにつきましては、調査の目的とか趣旨、これらすべてを異にしておりますし、また何よりも調査時期とか期間、これも異にしております。それからまた、細かくなりますけれども、調査対象とか抽出率等の調査方法もそれぞれ異なっておるということでございます。それからまた、推計値の誤差についても明らかにされていないというようなことがございます。  こういった問題意識で、じゃこういうすき間みたいなものが相当あるんじゃないか、そこのところをきちっと調査をしてみたらどうかというお話が一方であるのでありますが、これをやるということになりますと、厳密にこの問題をやっていきますと、すべての医薬品につきましてすべての流通段階における取引価格というものを積み上げていかなきやならない。それからまた、診療報酬請求の中で、薬剤料とか技術料に包括化されている薬剤費相当部分というのがございます。そういった費用をすべて積み上げていく必要がある。それからまた、流通経路に乗っている商品でありますから、その流通の期間、いわゆる流通に要している期間というものを考慮した上で、ある程度継続的な期間というものを調査、比較してみなければ解明ができるというものではないわけであります。  それでは、こういった作業というのは、これは今申し上げれば一見できそうなのでありますが、このような作業というのは物理的にはなかなか困難であるということでございます。したがって、最初に申し上げましたような五千三百億というのは、先ほどのような形でやればたまたまそういう額が出ておりますけれども、それはジグソーパズルのそれぞれ別々のものをつなぎ合わせてみたらすき間があいているような話でありまして、それぞれパーツパーツというのは全く別物ですから、これをもって薬の不透明な部分が五千三百億であるというふうな解釈というのは、これは受けとめ方として誤解があるということでございます。その点について、私はひとつ御理解を賜りたいというふうに思っております。
  167. 菅野壽

    ○菅野壽君 これまで薬剤の別途負担、薬価問題に絞って質問をしてきましたが、いずれにしましても、現行の薬価基準制度は薬価差益を前提に成立しており、現行方式をとる限りその発生は免れません。薬価差を解消し、薬の価格の透明化を図るため、現行薬価基準を抜本的に改める必要があることは論をまちません。同時に、これまで技術料を低く抑え、病院経営を薬価差に頼らざるを得ない状況に追い込んできた厚生省の責任は重大であります。薬価の抜本改革は、薬価差に頼らなくてもよい技術料重視の診療報酬体系の確立と一体でなければならないと思います。  この点について厚生省意見を伺います。
  168. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この問題については、まさにこの診療報酬体系の見直しと薬価基準の抜本的な改革というものは一体でなければならないというふうに思っております。これは、薬価差というものが現実には医療機関の経営原資になってきておるわけでありますから、今後薬価差が発生しないような新しい薬価制度というものを導入するということになるわけですから、そういった意味で診療報酬体系とまさに一体として改革をしていきたい。その際には、医療担当者の技術料というものを適正に評価し、また医業経営の投資的費用というものにつきましても総合的に評価をする、そして合理的な診療報酬の体系というものをつくっていく必要があると、このように考えております。
  169. 菅野壽

    ○菅野壽君 この診療報酬の問題については次回に改めてお伺いするとして、本日は最後に混合診療禁止の見直しについてお伺いしたいと思います。  この点については、介護保険においても議論となり、介護保険ではより柔軟な制度設計が図られたところであります。反面、この混合診療の禁止は我が国医療保険、診療報酬の根本原則となっており、医療現場において定着しております。しかし、医療保険においても近年これが議論となっておりますので、この点について厚生大臣の御所見をお伺いいたします。
  170. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 混合診療についてですが、我が国では基本的には混合診療を医療の面においては認めておりませんし、基本的な医療サービスについては公的医療保険で賄うということで今の保険制度は成り立っております。しかしながら、最近はより高度な医療環境を望む患者さんもふえております。そういうことから、医療行為、治療行為は別にして、個室を望む方には個室を提供できるような体制も整備されてきております。  今後、混合診療もいいのではないかという意見もありますが、基本的には、医療サービスにおいては公的医療保険制度で賄うということの方が私は好ましいのではないかと思っております。ただ、その医療環境、医療行為以外の面においてより快適な環境、高度な環境ということを望む方のために、そういう方法があればそれはまた検討されてしかるべきではないかなと思っております。
  171. 菅野壽

    ○菅野壽君 時間がまだ少しありますので、最後に保険局長にお伺いします。  私、先ほども御質問申し上げましたが、薬価の別途負担に係る病院窓口負担が非常に多くなって、人をふやさざるを得ないということを申し上げました。それについて試算しているのか、それとも補てん、補償によってどういうふうに試算しているのかと言ったら、そういうことは考えていないとか言っていましたが、それじゃ配慮を欠いているじゃありませんか。患者さんからいただくものはいただく。しかし、診療をしている我々病院から言わせれば、それによって手間がたくさんかかって大変だ、人を多く雇わなきゃいかぬと。そういうことも考えないで厚生省では薬剤の別途負担を一々取るということは、これはおかしいことじゃないですか。それの釈明を私は求めます。
  172. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これは医療機関によって、例えば器械を導入しているところとかいろんなやり方によっても違ってきますし、それからまた政府案によります場合と、それから今回の修正の場合とでもまた違ってくると思います。  そういった意味で、私どもとしては、全体のこういった人件費コストというものはこれまでも医療経済実態調査を踏まえて医療経営全体を見た上で診療報酬改定の際に手当てをしてきたということでありますので、そういった意味で、これからもこの一部負担が導入された後の医療機関における全体の経営状況というものを踏まえた上で、必要があれば適正な診療報酬改定で対応をしていく、そういうことで考えておりますので、そういう趣旨で御説明申し上げたわけでございます。
  173. 菅野壽

    ○菅野壽君 じゃ、結果を見てから考えるということですか。考えてから結果を見るのが本当じゃないですか。我々医療担当者を何と心得ているんですか。迷惑至極ですよ。答弁を求めます。
  174. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それぞれの医療機関によってどの程度の事務負担なりあるいはどの程度の対応が必要かということについて、これは私どもとして今後検討をしていくということは当然でありますが、それの対応ということについて求められたものですから、それについてはこれまでも全体の医療経営の状況を見た上で、そしてその中で診療報酬改定の際に対応してきたということはございますので、今回の導入前にそのような対応ということは考えていないということで申し上げておりまして、事務的にその辺のところはどういうふうになっていくのかということの検討、研究というものはさせていただくつもりでございます。
  175. 菅野壽

    ○菅野壽君 終わります。
  176. 今井澄

    ○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  私は、先週の金曜日、本会議で質疑をさせていただきました。そこでも申し上げたとおり、そしてまたきょうの質疑の中でも何人もの委員の皆さん方がお話しになっておられますように、今回の改正案というのは財政対策ということが主たる目的であって、抜本改革抜きにこういう対策だけで済むものではないというふうなことがほぼ共通の認識として言われていると思います。  そこで、国民の皆さんも、大変これに関心を持っておられるだけではなく、大変強い反対や不満や心配を持っておられるわけですが、それは今申し上げましたように、現在の医療保険制度医療制度の中にはいろいろむだとか不都合がある、そういうものが抜本的に改革されることなしに主として個人の窓口自己負担がふえるということに対する不満がある。と同時に、この四月から消費税が上がりました。その全体の負担が五兆円と言われているわけですね。それから、特別減税が廃止になりました。それが日本全体で年間で総額二兆円。その上に医療費の自己負担増及び保険料アップによって総額二兆円ということが言われているわけですね。そのことに対しても非常に強い不満と不安があるんだと思います。それからもう一つは、昨今、公共事業とかいろんなことで大変むだ遣いがあるということが一方でわかっていて、ああいうむだ遣いをやめないで自己負担をふやすのかと、こういうふうな幾つもの要因があると思います。  そこで、私は一つお聞きしたいんですが、先ほどからの質疑の中でも幾つか数字は明らかになってまいりました。例えば消費税で五兆円の国民負担といいまずけれども、それは最終的には全部国民負担なんですが、そのうちの六、七千億円はこれは政府の支出に係るものですし、また企業の支出にも係るわけですから、決して国民一人一人、個人が家計から出すという問題ではないんですが、五兆円と言われているわけです。  今度の医療費の場合にもそこのところをもう少し具体的な数字を出していただかないと、今、二兆円二兆円という数字がひとり歩きしているわけでありますけれども、一体今度の修正案によって国民窓口で払うお金としての負担の増、それから保険料として払う負担の増は合計幾らになるというふうに厚生省では試算しているんでしょうか。
  177. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、一部負担について申し上げますと、平成九年度、修正案修正後の状態で見ますと、現行に比べまして約五千百億ほどふえるという形になります。  それから、保険料でございますが、これが約二千五百億というような形で見込んでおります。
  178. 今井澄

    ○今井澄君 いや、その数字は政管健保だけじゃないですか。だって、先ほど山本委員の質問に答えられまして、この波及効果、自己負担がふえることによって医者にかかるのを少し制限するとか薬が減るとかいう波及効果が四千百億円あるとお答えになったわけですね。それだけ医療費が減ると。それから、菅野先生の御質問に対して、薬剤費を別途負担していただくことによってどのぐらい効果があるかというのは総体で二千九百億円薬剤費が減るんじゃないかと、こうお答えになっているんじゃないですか。先ほどのお答えは医療費総額でしょうか。今のお答えは政管健保だけではないですね。政管健保だけだともっと規模が小さいですね。
  179. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) まず、今申し上げました数字は、正確に申し上げますと、これは政管健保だけではありませんで、医療保険制度全体ということでありまして、一部負担については五千百億ふえる、ただ波及的な効果、この分はこれには含んでおりませんで、波及的な効果は四千百億ということであります。ですから、そういった意味で純粋に一部負担として窓口で払う額だけを足し込むと五千百億、医療費全体に対する縮減効果といいますか、それが四千百億ということであります。  それから、保険料につきましては、二千五百億と申しましたけれども、これは実際に保険料を支払う額が二千五百億ふえるということでございます。
  180. 今井澄

    ○今井澄君 そうすると、二兆円二兆円と俗に言われていたのに比べると随分これ、両方足しても七千六百億ということですよね。  政管健保の方の数字だけはいただいているんですけれども保険料率の引き上げによって一千八十億円財政効果があるということは、これは保険料を払う方の負担がふえるわけですね。もちろんこれは労使折半ですから、サラリーマンの方にとってみれば政管健保については五百四十億円負担がふえるというわけですね。  そうすると、今の保険料として二千五百億円負担がふえるというのは、これは労使合わせてのことですか。どういうことでしょうか。
  181. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 保険料の方は労使込みです。  その二兆円というのはちょっと私ども、今、先生がどの数字をもって二兆円とおっしゃっているのかはちょっとあれですが、今私が申し上げましたのは平成九年度の九月実施ということでありますから、例えば満年度になりますとここが違ってまいります。ですから、そこら辺は、私が今申し上げたのは、ちょっともたもたしましたけれども、平成九年の九月実施の場合の一部負担ないし保険料、ただし保険料は、これについては政管健保は千分の八十二を千分の八十五ということでお願いしておりますが、ほかの健保組合なり国保というのはそれぞれの保険者が決めますから、これは政管健保の千分の八十二を八十五に上げた割合と同じ割合で引き上げたとした場合の見込みでありますが、それらを入れまして二千五百億ふえる、こういうことでございます。
  182. 今井澄

    ○今井澄君 いや、二兆円というのは、それは保険局長も御存じないわけはないんで、世の中では何かというと新聞にもどこにもそういうふうに書かれて、国民はみんなそう思っているわけですよ。今度の自己負担が二兆円ふえるというふうに思っているんですね。そういうことをわかった上で厚生行政は展開しないと、もし誤解があるとすれば誤解は解いた上でやっておかなければいけないと思うんですよね。  そこで、今の計算、そうしますと一部負担が五千百億円、これはもう純粋にそこへかかった患者さんが窓口で払う分がこれだけふえる。それから、保険料は二千五百億円。これは被用者保険ですと労使折半ということですし、国保だと半額国費が入っていますからこの半分ということですかね、一人一人払う側にとってみれば。それにしても七千六百億円。  これが九月一日実施だからということにすると、満年度、一年、もともとこの法案は五月一日実施で出されたわけですが、もし四月一日からやられたとすると七分の十二ということになりますかね、今年度の国民負担は。すると来年はこの約七分の十二倍と。倍ほどではないけれども、それだけの負担が従来の制度に比べて大きくなるということですかね。七分の十二で計算するとどうなりますか、一年間で。
  183. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) その前に一言ちょっと。  今、先生、国保の方は国庫負担が半分ということでありましたが、これは純粋な保険料だけということでお考えいただきたいと思います。  それで、これを満年度ベースで見てみますと、平成九年度で先ほどの一部負担の五千百億というのが一兆百億ということになります。それから、保険料は二千五百億ということでありましたが、これが四千八百億ということでございます。
  184. 今井澄

    ○今井澄君 そうすると、一兆五千億ぐらいの負担がふえるということになるわけでありますね。  そこで、確かに今、政管健保を初めとして各種健康保険制度が非常なピンチにある。私も、抜本改革を行う、医療費のむだのない効率的な、そして受診者にとって非常にいい制度に変えていくということを前提としてある程度負担増はやむを得ないと思うんですけれども、しかし何で患者さんの自己負担をふやすかということについて、これは医療費にむだがあるからだと、薬が多過ぎるとかいろいろなことで。そこで、患者さんのコスト意識を涵養するためにも自己負担はある程度ふやした方がいいというふうなことが言われておりますね。医療保険審議会答申にも出ているし、厚生省もそう言っていると思います。  私も、実は地域でずっと医療をやってきて、これまでの考え方基本は、医療費、社会保障は無料がいいというふうに考えて若いころからずっとやってきたんですが、ちょうど老人医療の無料化が有料になったとき、地元で老人クラブの皆さんや何かに対して、今度政府はひどいことをする、老人医療を有料にする、ひどいじゃないかということを話して回ったんですけれども、過半数というか、かなりの部分のお年寄りが、いや、ただというのは申しわけない、払えるものは少しでも払いたいというお年寄りが大変多いのに気がついて、私自身びっくりしまして、何でも無料がいいということはこれは改めなきゃならぬというふうに思ったわけであります。現に老人医療を無料化した結果、お年寄りは幸せになった反面、医療のむだ遣いが非常に行われる。特に老人で薬がふえたということも私たち見ておりますので、やはりある程度自己負担ということはこれは私はやむを得ないと思うんですね。  ただ、厚生省のお考え患者のコスト意識を涵養するということを何か言っておられまずけれども、先ほどもこれは何人かの委員の方が言われましたけれども、今の医者と患者関係で、患者さんは自己負担がふえたからこの薬は要らないですよとか、あさってまたいらっゃいと言うのに来週にしてくださいとか、そういうことを言えるかどうかという問題ですね。それは医者と患者関係だけじゃないんですよね。単に医者に物を言いにくいというだけではなくて、医者から言われるとやっぱり専門家の考えはそうなのかなというふうに思うのが普通ですよね。そんな詳しいことを知って、じゃどうしてこの薬が必要なんですかとか、そういうことは医療内容が専門的過ぎるので患者さんには何が一番適切かなかなか判断できにくい。ということになると、患者さんの自己負担を上げてコスト意識を涵養してむだなものを減らすというのは、これは何か理屈が成り立たないように思うんですよ。  むしろこれはお医者さんのコスト意識を涵養する、今度上がったからこんなに窓口負担を余分に取っちゃ悪いな、そうすると薬を少し減らそうかなとか、今まで週に二回来ていたのを一週間に一度にしてもらおうかなとか、むしろ医者の方が患者さんの懐ぐあいを考えて加減をするということで、医者のコスト意識を涵養するというふうに言いかえた方がいいんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
  185. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) お医者さんの方は、実際に診察するに当たって、その後請求も当然するわけでありますから、医療に対してどのくらいの金がかかるのかということについては、当然そのコストについてはわかっておられるはずであります。一方、患者さんの懐ぐあいを考えた上で適正な医療をするというビヘービアが働くとすれば、まさに先生おっしゃるとおり、お医者さんの方のコスト意識というものも涵養できるということになるかもしれません。  私は、考え方でありますが、一部負担考え方として、基本はやはり受益と負担の公平ということなんだろうと思います。今回の薬の場合には、薬の適正使用ということをねらいとして行うということでありますが、その際の患者さんのコスト意識といった場合の考え方としまして、やはり医療を受ける際に患者さんが御自分の懐から負担をする、お金を出して負担をするということになるわけでありまして、そういった中でやはり医療についてかなり薬についてもお金がかかるということがわかるわけであります。  そういった中で、やはり何よりも自分の健康に対する自覚といいますか、そういうものが高まるのではないか、そのことがひいては医療に対するコスト意識を持っていただくことになるのではないかというふうにも考えられるわけでありまして、そういった観点医療費適正化にもつながる、こんなふうに考えておるわけでございます。
  186. 今井澄

    ○今井澄君 私は別に医者のコスト意識を涵養しろと言ったのじゃなくて、自己負担をふやしても患者さんのコスト意識の涵養にはならぬでしょうということを申し上げたんです。  それで、大臣お尋ねしたいんです。  本会議でも御質問いたしましたけれども、過去ずっと老人医療を一たん無料化して、今度は有料化する。それから、健康保険本人も五十九年に一割負担にした。本則二割ですね。それを今回本則どおりにしようと。そうやって自己負担をふやしてきたけれども医療負担の伸びはやっぱりとめられなかったんですよね。そういう意味では、やはり患者の自己負担をふやすことで医療費適正化しようとすることは成功しないんじゃないだろうか。だから、今回もそういうことをにしきの御旗として言っていますけれども、むしろ今の保険財政の悪化を乗り切るために、これは税金を入れるか保険料を上げるか自己負担をふやすか、そのミックスをするしかないですね。  この際、自己負担は少し上げていただいてやっていこう、むしろそちらに主軸があるんじゃないかと思いますし、余りコスト意識を涵養してこれで医療費適正化につながるというふうには考えない方がいいんじゃないかと思うんですけれども大臣のお考えはいかがですか。
  187. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) コスト意識を涵養するかどうかというのは、これは程度の問題だと思いますが、基本的には医療給付を受けるためにはだれが負担するかという問題だと思うのであります。財政が豊かであれば医療費は無料の方がいいに決まっていると私は思います。もう最高の治療を施しなさい、どんな治療でもただですよ、これほど喜ばれることないわけであります。財政が許せばこれがいいんですが、そういう財政状況でもない。そして、ある程度負担お願いするということでも、ある期間たちますとこれまた必ず医療費が伸びていくというのは外国の例を見ても明らかだと思います。  今回、たとえコスト意識を涵養しようという状況がきいたとしても、これだけ医療費があるから、じゃお医者さんへ行くの控えようかという人は私はないとは言えないと思います。一方ではどんなに費用がかかったって行くという人がいると同時に、一方ではある程度費用が上がるんだったら、ああこの程度じゃ行かなくてもいいやという人もいるのも事実だと思います。そういう面があったとしても、私はこのコスト意識を涵養する、余り患者負担を多くしないという状況で手直しがなされたとしても、一定期間が来ればまた伸びていくというのは外国の例を見ても明らかでありますので、今回の改正でも私は同じようなことが言えるのではないかなと思います。
  188. 今井澄

    ○今井澄君 そうなんです。今、大臣も言われましたように、よく医療費の値上げはタクシーの値上げと同じ効果しかないということが言われているので、上がったときはもう上がったから行かないということがあったにしても、やはりすぐその効果がなくなるというだけではなく、もう一つ、タクシーと違いましてこの医療の問題というのはやっぱり健康、病気、あるいは自分のぐあいが悪いことにかかわるわけですから、やっぱりそういうことにお金は使うんですよね。  実際に生活水準もよくなってきましたし、これは世界各国どこを見ても自己負担を上げることで医療費適正化ができない理由は、上げたら上げた分だけやっぱりどこかから工面してきて払っているということがありますね、民間保険なり何なりを含めて。ですから、やっぱり成功しないと思うんです。  そうしますと、そういうときに一番被害を受ける人はだれかというと、どこかから工面してこれない人なんですよね。ほかを削って、あるいは貯金を取り崩してとか民間保険からとか、そういうことのできないぎりぎりで生活している人がこの自己負担を上げると我慢しちゃって、その結果体を重症化するとかいうことになって大変な被害を受ける。しかも、そのことは本人が被害を受けるだけではなく、アメリカの例なんかで明らかなように、我慢をして我慢をして重症になってから救急車で飛び込むという結果、かえって医療費がかかっちゃうということがあるわけですね。これは保険財政からいっても医療財政からいっても非常に損なことなわけで、この低所得者対策をどうするかはまた後日の審議で、今週か来週また取り上げさせていただきたいと思うんですが、一応そういうふうに適正化の効果がないにしても、それにしてもやはり医療にはいろいろお金がかかっていることを知っていただくという意味がある。  それから、ただがいいかどうか、そこにはいろいろな問題が出てくるので一定の負担をしていただくのが今の社会では常識となっておりますが、一体どの程度負担をしていただくのがいいだろうか。いわゆる負担と給付の一元化ということがこの間論じられておりますが、さきの五十九年の健康保険改正のときには二割というのが大体いいのではないだろうかと。国民健康保険は今三割負担ですから、これも二割に引き下げた方がいい、あるいは家族も外来が三割、これを二割に引き下げて大体負担はみんな同じにした方がいいのじゃないだろうかという考え方が出てきている。それから、老人に関しては介護保険もにらみながら一割ぐらいがいいんじゃないだろうかというふうなことに大体なっているだろうと思うんですね。  それから、今度の修正に際して私ども民主党が出した修正案の一部は、小学校に入るまでの乳幼児は国全体の制度として老人並みに一割前後にした方がいいんじゃないだろうかと。今、市町村の単独事業で無料事業などをやっておりますけれども、国保の家族は給付が七割ですから三割負担なんですね。先ほど少子化対策のお話が出ましたけれども、やっぱり乳幼児もお年寄り並みに大事にして負担を少なくしたらいいんじゃないかという提案衆議院ではいたしましたけれども、今、大体二割、それで老人子供は一割という、こういう考え方について大臣はいかがお考えでしょうか。
  189. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 現在の負担の問題、一割がいいか二割がいいか。この程度が妥当じゃないかなということで現状があるんだと思います。しかし、これから給付と負担の公平化を図る、そして患者さんにも無理のない負担をしていただくということを考えますと、これは一律全部一割がいいのか二割がいいのかという問題は当然出てくると思います。それは各保険者間で違いますから、これを統一した方がいいのか、財政状況を見ながら、そして低所得者に配慮するという意味考えながら、じゃ一律二割がいいという案も出てくるかもしれません。それは全体の状況を見ながら検討すべき問題ではないかなと。今、一割がいい、二割がいい、三割がいいという断定はできませんけれども、全部二割がいい、統一しなさいという考え方は当然ありますから、それは十分私は検討する価値があると思います。
  190. 今井澄

    ○今井澄君 いや、そこのところは先ほどもちょっと申し上げましたように、昭和五十九年の健保法改正のときにはこれも国民的な大議論になりまして、そのときにいろいろ議論をして、例えば与党と医師会が覚書まで取り交わしたり、そういう中で保険制度の一元化ということで二割の方向でいこうということが確認されているんですよ。そのころの常識だったんです。  今の時点ではどうお考えかということなんです。その二割という考え方を踏襲していくべきだと考えているか、それとも、いや、こんなに国家財政が厳しくなったら三割ぐらいいくべきじゃないかと考えているか、それとも、先ほど大臣ちょっとおっしゃったように、ただにこしたことはないんだから財政状況によっては一割にした方がいいと考えているか、どうですか。
  191. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は二割がいいという案、これは当然一つの案として検討する価値があるんだと思っております。その場合考えなきゃいけないのは、高額療養費制度とか低所得に対する負担ですね。これさえ国民に納得が得られれば私は二割でもいけると思う。しかし、それは程度の問題ですから、これは今後も議論したいと思います。
  192. 今井澄

    ○今井澄君 確かにこれはこれから大きな議論として、一般的に医療費の場合にはどのぐらいの負担がいいのか、それが老人子供の場合には負担を下げていくのがいいのかということと、もう一つはやっぱりそれでも負担のできない低所得者に対しての減免措置の問題ですね。あと高額療養費も確かに大きな問題になると思います。先ほど大臣の言われた点では、どんなにすばらしいできるだけの治療をしても、例えば厚生省からいただいた資料で、昨年の二千万かかった例、一千万かかった例がありますけれども、ほとんどただ同然、六万幾らで済んでいるわけですね。そういう意味では、この高額療養費制度をどうするのか、一体どのぐらい負担してもらうのか、そういうことが大きな議論になるだろうと思います。  そこで、医療費にむだがあると。むだがある限り保険財政は健全化されないし、それを自己負担だけに押しつけることについては、これはとても納得が得られるものではないんです。  そこで、むだの第一に薬剤費のことが挙げられているんですが、先ほど菅野先生がかなり詳しい御質問をいろいろされました。それからもう一つ、渡辺先生がされたんですね。日本の薬剤費は非常に多いということで、医療費の中の二九・六%ですか。それに対してアメリカは二・何%だとか、高い国でも一六、七%ぐらいという数字が出ております。  実は私も若いころから日本は薬の使い過ぎが大変多いということで、学生時代、医者になってから、「薬害と闘う医師・弁護士の会」とか、そういうのでずっとやってきましたし、自分自身が医師をやっているときに薬はできるだけ使わないという方針でやってきました。私が院長をやっていた病院は長野県の自治体病院の中で一番薬剤比率が少ないという病院だったんです。それでも経営は黒字になっておりました。  そういう病院をやってきた経験から、どうも薬は使い過ぎだろうし問題があると思っておりますが、しかし厚生省の出している数字はやっぱりおかしいんじゃないかと思うんですね。日本の医療費の中の薬剤比率が二九・六%で、諸外国に比べてやたらに多い、倍以上も多い、アメリカの三倍近く多いというのはこれはかなり違うんじゃないだろうかと。  というのは、分母が違うんですね。医療費といいまずけれども、外国では分娩費も健康管理の予防の費用も、そういうのはみんな入っているんですね。日本は保険では分娩費は正常分娩は出ませんし、健康診断は出ませんね。うんと狭いんですよね。分母が小さければ、同じお薬を使っていても日本の薬剤比率が高いと出るんです。こういう数字は余り厚生省が使っちゃいけないと思うんですけれども保険局長、いかがですか。
  193. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 国際比較の上においては、医療費についての厳密な意味での分母をそろえるという点はなかなか難しい面もありますが、OECDがそういった意味では国際的に統計をとっておりまして、そういうようなもの等々も参考にして見た場合でも、やはり医療費に占める薬剤費の比率は高いというふうに思っております。  平成七年の十一月に、中医協の中に基本問題小委員会というのがございまして、そこで医薬品に関します診療報酬上の評価を中心に報告をいただいておるわけでありますが、この小委員会として海外調査結果を出しております。これを見ますと、やっぱり各国の制度による違いがあるものの、全般的に見ると、諸外国と比較して薬剤比率も一人当たりの薬剤費もかなり高いという報告も出ておりまして、そういった意味からしましても、私どもとしては諸外国と比べてやはり日本の薬剤費は高いというふうに見ております。
  194. 今井澄

    ○今井澄君 いや、日本はお薬が高いだろうと、それは私もそう思っているということを最初に申し上げたんです。そうじゃなくて、この二九・六という数字アメリカの一一・何%かに比べてべらぼうに高い。やっぱりこの数字を持って回るのはおやめになった方がいいんじゃないですかということを言ったんです。  外国では、例えばアメリカでは病院で入院中に使った薬剤というのはわからないわけですよ、全部丸められていますから。結局は、どうやって調べるかというと、出荷額でしょう。薬屋さんが、あるいは卸か知りませんけれども病院に売った値段で調べているわけですね。それで推計をしているわけです、アメリカ病院でどのぐらいお薬が使われているか。そうでしょう。  日本の場合は、病院で使われたお薬というのは薬価で見ているわけです。購入価じゃないわけです。調査をした調査をしたと言われますけれどもアメリカの入院の患者さんに使われておるお薬は仕入れ価格、日本の病院患者さんに使われているお薬の価格は公定価格の請求価格です。仕入れ価格じゃない。それだけでも分子の方はもっと大きいんじゃないですか。
  195. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 私もかねてそこは疑問に思っておりまして、保険局長に就任したときもそこについては勉強させていただいたんですが、もっと突っ込んだ勉強をすべきだということかもしれませんけれども、私が理解している限りにおいては、諸外国との比較においては、分子分母もぴったり同じデータというわけにはいかないと思いますけれども、おおむね同じようなルールで比較がなされているというふうに私は承知をしております。
  196. 今井澄

    ○今井澄君 いや、いろんな説があるんですね。薬価一つ一つの比較も大阪の保険医協会は高いと。厚生省は、高いもの低いものもあるけれども、おおむね高いと。薬屋さんの方は高くはないと。こういういろんなデータを持ってくるわけです。おおむね高いと思いますし、総体の医療費も高いと思うんですが、やっぱりその二九・何%という数字はちょっと大げさ過ぎるので、その辺は厳密に科学的な数字を出すことが非常に難しいと、制度が全然違いますからね。それはわかりますけれども、この数字だけ持って歩いて薬たたきばかりに走っちゃうということは、これはやっぱりいろんな弊害が生ずると思うんですよ。  私は医者をやっていてつくづく感じたのは、胃カメラをやるとか、早期がんを見つけて手術をして、ああ命が助かってよかったねと言ったって、患者さんは痛い思いをしたくないんですよね。いい薬があって、病気も薬を飲めばすぐ治ると。そういう意味では、本当にいい薬ができて、苦痛もなく病気が治れば一番いいわけですね。もちろん、薬を飲む前に病気の予防をすることの方がもっと大事ですけれどもね。  ですから、そういう意味では、今、厚生省の進めようとしている市場価格で薬価を決める、もう国では決めないと。その市場で決めた価格をもとにして、保険でどのぐらい払うかを決めるというルールをこれから考えるという方向が私は基本的にいいと思うんですね。  そういうことでは抜本的な改革に向けて進んで医療費のむだをなくしていかなければいけないと思うんですけれども、そのときに考えなければならないのは、一方でいいお薬はきちっとつくるシステムとか、それから患者さんがやたらに薬というものはもうだめなんだと、どうしても飲まなきゃならない薬まで拒否するような、そういうふうな風潮までつくっちゃうとまずいと思いますので、やっぱり余り極端な正確でない数字については、これから厚生省としても御検討いただいて、つくり直していただいた方がいいのではないだろうかなと思います。  そこで、薬のむだについては、先ほど薬価が高いということが言われていましたが、使用量の問題もあるだろうと思いますね。それで、使用量で問題なのは、私も地元へ帰っていろいろ聞いてみますと、もらった薬が全部飲めないというのがあるんですね。飲めないでぐあいが悪くなっていればこれはまずい、何とか飲んでもらわなきゃいけないわけですけれども、飲み残していてもぐあいが特に悪くなるわけでなければ、残った分は余分だったということになるわけですよね。その辺に確かに薬が多いだろうということがあります。  また、その原因の一つには老人ですね。子供の場合には体重何キロに対して何ミリグラムと計算をして出します。子供の場合には薬が多かったりすると大変なことになるということはもうわかっていますからね。ところが、老人の場合には四十代、五十代の元気な大人と同じ、大人扱いで出すんですよね。ところが、老人になれば、検査をして肝臓が悪い、腎臓が悪いとなっていなくても、腎臓や肝臓が衰えてくれば薬を分解したり出したりする力も落ちているだろう。そうすれば当然、四十代、五十代の人に飲んでもらう量の半分でも三分の二でもいいかもしれない。ところが、それが大人という一くくりで出されるから結果的には多過ぎて、飲み残してもかえってそれでよかったというふうになっているような現状があるだろうと思うんです。  そこで、老年医学というものがどれだけ力が入れられているのか。私が臨床をやっていた六年前までは、老人の薬用量なんというのはほとんどなくて、適当に減らして出したり同じに出したり、うっかり出していたんですよね。今はどうでしょうか。老年医学については日本はどれだけ力を入れているのか。例えば大学にはどれだけ、八十大学があるわけですが、そういうことを専門にやっているところはどのぐらいあるのか、あるいは厚生省の知っている限りで薬用量、小児薬用量というのはありますが、老人薬用量というふうな出され方がしているのかどうか、ちょっとお尋ねいたします。
  197. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答え申し上げます。  まず、老年医学というものが医学教育の中でどのように取り上げられているかということでございますが、平成八年、昨年でございますけれども、日本学術会議でおまとめになった報告書でございますが、その中であらわされているところによりますと、老年医学の講座を有する大学が全国八十大学中十四大学ということですから一七・五%、診療科のみを有する大学を入れても十六大学ということは二〇%ということで、先生の今の御指摘からいえば、まだまだ老年医学は、だんだんにふえてはいるようでありますけれども、もっと今後の高齢社会を考えますと力が入れられていいのではないかというふうに思います。  それから、厚生省におきます今のお年寄りのいわば特性に応じた、特に薬剤についてのお話がございましたから取り組みを御報告させていただきますと、やはり厚生省におきましても、今後の高齢者の増加ということに合わせまして、老人医療の担い手、そのことをよく心得たお医者さんあるいはそのほかのスタッフを養成していくということが大事でございます。  したがって、その一つとしまして、医師によります適切な薬物療法が実施されますよう、「高齢者における薬物療法のてびき」というようなものをつくりまして、先生お話のございましたようなお年寄りのいわば特性に応じた薬の飲み方というようなことについての普及に努めるというようなことにいたしておりますし、また医師の研修事業につきましても、平成九年度からでございますけれども薬剤に関する研修項目を追加する、そういったような形での薬剤使用の適正化につきまして幅広い取り組みを行うことにいたしておるところでございます。
  198. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 一点追加させていただきますが、医薬品の添付文書の中で、高齢者の適用につきましては特に「使用上の注意」等で高齢者への使用に当たっては配慮してほしいといったようなことを最近はかなりつけ加えておりまして、その前提になります臨床治験、治験におきましても高齢者、六十歳以上の方でございますが、一定の方につきまして治験を実施して高齢者への適用量を決めていくといったようなこともやっているところでございます。
  199. 今井澄

    ○今井澄君 もう時間がなくなりましたので、あとは次回に譲っていきたいと思います。  最後にもう一つ、薬のむだでは、今特にお年寄りになると幾つも病気を持っていると。内科へかかって血圧、整形外科にかかって腰痛、眼科にかかって白内障。そうすると、かかるごとにそれぞれにお薬をもらう。白内障なんかは点眼が主ですけれども、内服をあちこちでもらうと、お薬を出したから胃を痛くするといけないというので胃薬が大抵出る。そうすると、胃薬をどこでも一緒にもらってきて、三軒かかると三日分ぐらいの胃薬を一日で飲むように処方されるということになることもあるわけですね。そうすると、やっぱり地域における医療システムということの整備がなければ、幾ら自己負担をふやしてもそれだけじゃお薬のむだがなくならないし、むしろ健康の被害も出てくるかもしれない。  そこで、午前中からも言われたかかりつけ医制度、日本では単純なイギリスのような制度は難しいにしても、その人の健康管理、健康相談にあずかるかかりつけ医制度、あるいは集団でもいいと思うんですよ。眼科の先生がかかりつけ医というのはなかなか難しいかもしれない、それは内科が適当かもしれないけれども、そこは地域で話し合ってかかりつけ医制度をつくる。あるいはお薬はお薬でかかりつけ薬局というのをつくってやるとか、そういうふうなことでもしていかない限り、自己負担をふやしたらこれでどうかなるというものではないということを確認して、さらに抜本改革について次回続けさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  200. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  私は、先日の本会議の代表質疑でも指摘をさせていただきましたけれども、今回の健康保険法等改正案というのは、政府原案にも多大の問題があった上に、衆議院厚生委員会で改悪修正がわずか一日、七時間の審議だけで委員会の採決が強行されたという非常に前代未聞の、私はそう思いますけれども、事態が起こっております。  したがって、当参議院の厚生委員会では、公聴会や参考人質疑などをしっかり開いて国民意見をしっかり聞くということで二院制のよさをこの際十分に発揮して、衆議院の私は暴走だと思いますけれども、その点をきちっとチェックすることができるように、この委員会の審議を大いに慎重に行うべきだということをまず最初に表明させていただきまして、質問に入っていきたいと思います。  衆議院の採決が強行されて以降、各委員の皆さんのお部屋にもファクスが全国から届いていると思いますけれども、私の部屋にもたくさん届いています。(資料を示す)こうして合わせて数えてみますと七百七十一件に上っております。中には大変切実な声が盛り込まれております。後の質問の中でも御紹介させていただきたいと思うわけです。  この中に、現場の第一線で医療に携わっていらっしゃる全国保険団体連合会、開業医の先生方の組織であるわけですけれども、その連合会が、参議院での徹底審議を求めるという意味衆議院厚生委員会通過に当たっての声明を出していらっしゃるわけです。  その声明の中にはこのように述べられています。   与党三党による修正案は、外来老人二・五倍、健保本人二・四倍となり、政府案と比べても何ら負担が軽減されるものではない。さらに、薬剤負担修正は、医学的根拠のまったくないものである。薬剤数が一種類増えただけでなぜ負担が大幅に増加するのか、医療機関にとっては事務が煩雑になるだけでなく、患者にその理由説明することはできない。そもそも、薬を処方する場合は一定期間様子をみた上でその効果に応じて再度処方を行うのであり、処方回数によって負担が増えるなどという仕組みは、適正な治療を阻害するものである。 と、これは一部ですけれども、非常に厳しく抗議をしていらっしゃるわけであります。  政府案修正案も本質は同じでありまして、非常に急激な国民負担増を押しつけるものであります。受診抑制と赤字の解消を専ら患者負担で解消しよう、こういうことではないかと思います。前代未聞の改悪修正、その中身でありますけれども、非常に重要なのは、私は薬代の二重取りの問題ではないかと思うわけです。  そこで、お聞きいたしますけれども、昭和四十二年、一九六七年に外来の投薬時に一日一剤十五円という一部負担が導入されたことがございますけれども、二年後の四十四年にこの制度が廃止されております。なぜ廃止されたのか、また当時のその他の一部負担はどうなっていたのか、お答えください。
  201. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 四十二年の健保特例法が時限立法で、二年たちまして四十四年に時限立法の延長の政府提案がございました。それに対して修正がありまして、ただいま先生がおっしゃったような形になりましたが、当時の委員会における修正提案理由説明では、「この修正は、いわゆる健康保険特例法の有効期間の延長等を取りやめ、これに伴い政管健保等の財政対策については、最小限必要な措置に限って、健康保険法等本法に規定し、国民負担の軽減をはかることといたしたものであります。」というふうに述べられております。  それから、四十二年の健保特例法当時の薬剤負担以外の患者一部負担の状況でありますけれども、健康保険保険者本人につきましては、初診時に二百円、それから入院につきましては一日六十円、ただし一カ月間を限度とするということでありまして、このような定額患者負担でございました。  それからまた、健保の被扶養者、それから国民健康保険の被保険者につきましては薬剤負担はありませんで、被扶養者は五割負担、それから国保の世帯主は三割負担、世帯員は五割負担、このような状況でございました。
  202. 西山登紀子

    西山登紀子君 当時はそういう定額の一部負担、健保の本人にはそれだけであったわけですね。健保は、そういうことで二重取りはなかったわけであります。それでも二年で廃止された。どうも廃止された理由を明確にお示しにならなかったわけですけれども。  神奈川の保険新聞に当時のことが載っているわけですけれども、六十一歳の患者さんが、そういう改悪が実施されて、薬剤の一日一剤の負担が実施されてから来なくなった、そして五カ月して亡くなったという記事を載せておられるわけです。そのお医者さんは、これは一日十五円の薬剤負担が本人にとって非常につらいものであったと考えられるというコメントを載せた当時の新聞があります。  こういうことで、続けようと思ったけれども、実はその制度というのは続けられなかった。国民が非常に反撃をして、こういうのはもう続けたら困るということでわずか二年で廃止になった、そういう制度であります。  三十年前にそういう教訓があるわけですから、今回また保険負担、しかも今度は本人は二割負担にするというわけでしょう。そして、二割負担の上にさらに定額で、修正では、薬代を四百円、七百円、千円というふうにステップごとに取ろう、こういうことであります。  私が指摘したいのは、やはり二重取りだという点なんですね。今現在、国保は三割、家族も三割払っているわけですけれども、今度は本人は二割負担にすると。その中には当然薬代は含まれています。その上に薬代を取るということは、まさに二重取りではないかと思うんです。政府案も二重取りでした。修正案も二重取り。しかし、仕掛けを少し変えただけで、二重取りという点には変わりはないのではありませんか。その点はどうでしょうか、二重取りという点。
  203. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 一部負担の仕組みの問題だと思いますが、それぞれ一部負担お願いする趣旨というものがあろうと思います。  それで、まさに従来の医療費全体に対する定率負担、これは医療費全体に対して一定割合を御負担いただくという考え方であります。一方、薬剤に対する今回の一部負担でありますが、そういった現行制度を前提とした上で、我が国薬剤医療費に占めるシェアというのがなかなか下がらないというような状況を適正化する必要があるという考え方のもとに、薬に着目した御負担お願いすることにしたということであります。そういった意味では、私どもとしては二重取りというふうなことは考えておりません。
  204. 西山登紀子

    西山登紀子君 先ほど、ほかの委員の御質問に重ねもちというお言葉を局長はお使いになりましたね。重ねもちというのは二重取りのことじゃないんでしょうか。
  205. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それぞれが別のものであるというつもりで申し上げました。
  206. 西山登紀子

    西山登紀子君 それぞれはどんなおもちなんですか。
  207. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それぞれが一部負担として、それぞれの趣旨において上乗せしてお願いしている、こういうことでございます。
  208. 西山登紀子

    西山登紀子君 今、局長がいみじくも言われたように、それぞれ一部負担なんですよね。つまり、薬代の二重取りですよ。重ねもち、私は実にうまく表現したと思いますね。重なっていようがどんなふうになっていようが、取られるのは二重ですよ、国民は。  しかも私は、三割、二割、薬代を一方で払いながら、なおかつそれ以外に薬代を取られるということは、これはペナルティーを患者に科すことになると思うんですね。重ねもちとおっしゃるけれども、それはいわばペナルティーの重ねもちですよ。私は、ペナルティーもちと言ってもいいと思う。極端に表現すればですよ。重ねもちだからいいというものじゃないでしょう。二重取りですよ、中身は。  なぜ二重取りにするんですか。もう少し詳しく説明してください。
  209. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) それぞれの一部負担趣旨に応じてお願いをしているということでありまして、まさに従来の一部負担、これは医療費全体について受益と負担の公平から御負担お願いしているということであります。今回の薬剤の一部負担薬剤費適正化というような視点から、とりわけ薬剤に着目した形で御負担お願いするということでありまして、それぞれの一部負担趣旨というものを異にするということでございます。
  210. 西山登紀子

    西山登紀子君 薬剤適正化ということは、結局は患者にコスト意識を持たせて薬剤の使用を少なくするという意味ですか。
  211. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 薬剤我が国における医療費に占めるシェアが非常に高いということを是正していく必要がある、そのためには患者さんにも薬剤に対するコスト意識を持っていただくということでございます。
  212. 西山登紀子

    西山登紀子君 やはり、薬剤に注目してわざわざ二重取り、重ねもちをつくったということなんですけれども、私は、患者にコスト意識を持ってもらって薬剤費を抑制するというところがそもそも間違っているんじゃないかと思うわけですね。  現場の第一線の先生方がどうお考えになっているかという、先ほどの保団連の声明の続きなんですけれども、その続きの部分はこんなふうに述べているんですね。   薬剤負担については、薬の処方を行うのは医師であり、患者にコスト意識を持たせることによってどれだけの抑制効果があるかについては、国会審議のなかでも疑問が出されている。患者としては、受診を手控えるか、治療を中断するかの選択しかない。 このようにお医者さんは心配をしていらっしゃいます。  さらに、衆議院厚生委員会の参考人質疑の中で、慶応大学の池上参考人がこのように述べています。  患者にコスト意識を持たせるということがその論拠となっておりますが、患者に決められるのは受診するか否かでありまして、それ以後の医療費医師の判断で決まっております。したがって、例えば医療費を事後的に通知しても、それは、コスト意識ではなく、罪責感を持たせるだけだと考えております。   しかも、この患者の自己負担をふやしたとしても、財政効果は余りないと私は考えております。 というふうに参考人の池上先生は述べていらっしゃるわけです。  そこで、大臣にお伺いしたいわけですけれども、薬の処方を行うのは医師であって、患者が選べるのは受診を手控えるかあるいは治療を中断するかの選択しか残されていないわけであります。だとするならば、原案もそうですけれども、この修正案薬剤の重ねもち、つまり二重取り、私はペナルティーもちを科すというふうに思いました。こういうコスト意識というのは結局改革につながらない、医療の重大な後退につながっていくというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。大臣のお答えをお願いします。
  213. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 御指摘のように、薬剤負担が受診抑制につながらないというのだったらば負担できないという心配はなくなりますよね。逆に、これだけの患者負担をやるんだから、受診抑制になるんだったらば、これはやはりコスト意識を持つということになる。確かに、患者さんが薬の値段を決めることはできません。どうなんでしょうか。
  214. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、私の質問に答えてください。  患者が選べるのは受診を手控えるか治療を中断するかの選択しかないのであって、薬の処方をするのはお医者さんでしょう。ですから、患者にコスト意識を持ってもらうということを理由にして二重取りを図るということは理屈に合わないわけですよね、患者が選べるわけじゃないわけですから。ですから、言ってみればこの二重取りには何ら道理もないわけですよ。  それが目指していくところは、結局は患者負担が重なって払えないというふうに思って治療を中断するか受診を手控えるしかないと。それは改革改革だと言いながら、結局は医療の後退に導くと、その点をお伺いしているわけです。
  215. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は、今回程度患者負担によって、本当に医療が必要だ、治療行為が必要だという人が手控えるということはないと思っております。やはり、ある程度医療給付を受けるためには負担が必要だと。一回五百円取られる、二種類で四百円取られるということも、取られるという観念からそうでありますが、二割負担で済む、三割負担で済むといえば、逆にどこかで八割負担してくれる、七割負担してくれる人がいるからこそ二割負担で済む、三割負担で済む、一回五百円で済むということが言えるのであって、給付と負担という均衡を図らないとこの医療保険制度はもたないということを考えれば、今回の患者負担によって、真に必要な人がこの負担があるから診察を受けることを控えるという程度負担ではないと私は思っております。
  216. 西山登紀子

    西山登紀子君 受診抑制については政府も八千五百億と試算をしているわけですから、この点の受診抑制が起こるということは政府自身も認めていらっしゃると思うんですね。でも私、大臣に今聞いているのは、こういう重ねもちをすることによって患者が受診を控えたり治療を中断するかの選択しかないところに追い込んでいく、追い込まれていく、それが果たして改革と言えるのかということをお聞きしているわけですね。  次に移りますけれども、結局私は、今度の改正と言っている二重取りという点は、国民医療を守るべき医療行政の使命からいってやっぱり邪道だというふうに思います。  それは私が邪道だと思っているだけではなくて、保険団体の声明の中にもこんなふうに述べられているわけですね。「第一線医療を担当する医師立場から、患者のコスト意識すなわち経済的ペナルティーによる医療費抑制は邪道であることを主張し、老人健保本人薬剤のいずれの患者負担増にも反対してきた。医療費の効率的運用ということを考えるならば、早期発見、早期受診こそ重視されるべきである。」というこの保団連の声明の中に邪道と、大変厳しい言葉ですけれども邪道という言葉が使われているわけです。  以下、その中身に入っていきたいと思うんです。  政府案薬剤負担、一日一種類十五円というのも結局二重取りという点で問題ですけれども修正案は一層矛盾を深めていると思います。なぜ一種類がゼロなのか、なぜ二種類から三種類が四百円、それから四種類から五種類が七百円、六種類以上になったら千円、定額に取るのか。お医者さんは患者さんに説明ができないと言っているんですけれども、これはどういうことでそういうふうになっているんでしょうか。説明をしてください。
  217. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これは衆議院における修正でありますが、政府案薬剤患者負担は実務上煩雑であるという声が非常に強かったわけであります。そういった中で今回のような、種類については四ランクにグルーピングをし、それからまた投与日数については平均的な投与日数を用いて定額負担という格好になったというふうに理解をしております。  そこで、一種類の場合には負担ゼロということでありますけれども、これはむしろ比較的安い薬を使ってもらう方向というものを促したいということがあったというふうに理解をしております。一剤で二百五円以下の場合については、何種類ありましても現在一種類という取り扱いをいたしておりますので、いわゆる二百五円ルールといいますか、そういったような中に入るような薬の使い方ということを促したいということで負担をゼロにしたということであります。  それから、二種類から三種類ないし四種類から五種類、それから六種類以上ということにつきましては、それぞれの区分ごとに平均的な種類数に対しまして、老人の一日一種類分内服薬平均的な薬剤費の一割を掛け合わせ、そして内服薬平均投与日数である十二・五日を掛け合わせまして、それぞれ丸めて四百円、七百円、千円というような形の案が策定されたというふうに私ども承知をいたしております。
  218. 西山登紀子

    西山登紀子君 その御説明ではなかなか納得ができないわけですよね。これは一度説明を聞いてわかるというのはなかなか至難のわざだと思いますよ。  厚生省は、十五円という根拠を出すときに、老人薬代は百五十円、その一割十五円というようなことを言っていたり、いろいろ投与日数でも数値が動くわけですよね。非常に動く。  それで私、この場合に不思議に思うんですけれども、先ほども説明があった、二・五掛ける十三円掛ける十二・五で約四百円という試算を出したというわけですけれども平均投与日数を十二・五で出している四百円をどうして投与日数が二日とか三日とかの短い人にまで一遍にぽんと定額で払わせるかと。これはどう考えても理屈に合わないと思うんですよ。そういうことをいろいろ説明を聞いてもなかなかわからない。  だから、きょうお配りさせていただいている資料をちょっと見ていただきたいんです。  これは保団連の開業医の先生方の学術部長さんが、いろいろとこういうケースもある、こういうケースもあるということで御心配になって出してくださった資料であるわけですけれども、やはりなぜなのかという説明ができないというふうにここに述べていらっしゃいます。しかも、医療機関の事務も簡素化されない、煩雑になる。「繁雑になるだけでなく、なぜ薬剤数が一種類の場合がゼロで、二種類から三種類の場合は四百円、四種類から五種類の場合は七百円、六種類以上が千円なのか、患者に質問されても説明できない。」ということをそこに述べていらっしゃいます。そして、「医療現場の実態を無視して、患者負担を強めれば薬剤使用の抑制ができるという「論理」だけで修正案づくりをしたために発生するものであり、不合理、不条理の極みとただ呆れるのみである。」。これは先ほどの邪道という言葉と非常に、私は厳しい指摘という点ではこれほど厳しい指摘はないんじゃないかと思いますね。「不合理、不条理の極みとただ呆れるのみである。」という指摘を現場の第一線の開業医の先生方がなさるほどの改悪修正が行われたということではないかと思うわけです。  私も細かいことはよくわかりませんけれども、いただいた資料から教えていただいたとおり御説明をいたしますと、その「不合理、不条理の極み」というケースが、そこに一、二、三というケース説明がされているわけですよね。  ちょっと時間をいただいてそれを説明させていただきますと、一は、「一銘柄の追加により負担額が激増するケース」なんですよ。この点は大臣もよく見てください。  何が不合理、不条理かというところなんですけれども、慢性胃炎のお年寄りが通っていらっしゃって、そのときは一種類負担はゼロなわけです。いわゆる重ねもちの部分、二重取りの部分はゼロなんだけれども、腹部に膨満感があるということで同時にお薬を一種類加えた。ラックビーというお薬を加えた途端に、これは今までの一種類考えられていた四種類の薬が急に五種類になって七百円の負担になる。今まで一種類だったのが、一種類薬がふえただけでいきなり五種類に数えられる。定額は七百円払わなければならないということであります。この七百円の負担をもし避けようとすれば、別の日にまた来院して、そのときはまた一回五百円を払わなければいけないわけです、薬代はゼロになるわけですけれども。そういう矛盾があるケースが一です。一銘柄追加するだけで負担が激増する、こういう矛盾があるわけです。  二つ目は、「症状安定のため量を減じたが、かえって負担額が増えるケース」が二のケースであります。  これもぜんそくの加療中の方が、発作の頻度が軽くなったのでステロイドは減量しなきゃいけないと、こうなったら薬剤種類数はふえて、これはなぜふえるかというと、一日三回服用しているうちは一種類と数えられていた薬が、一日一回の服用になった途端に別途一種類と数えられるわけであります。ですから、最初は二百五円以下ということで一種類で、その二重取りの重ねもちの部分はゼロだったわけですけれども、処方がDになると一日一回でよろしいよということになって、お薬の負担の部分は、上の方を見ていただいたら、一日三回服用、三錠で二十九・一円が九・七円に減っていますよね。薬剤の費用の分は減っているにもかかわらず、患者負担は一気に重ねもちの部分がぽんと四百円ふえる。だから、私はペナルティーもちじゃないかと言っているんですよ。ペナルティーですよ、こんなの。理由なんかありませんよ。薬代が安くなっているのに、何で二重取りの部分で四百円も薬代として別個に取られるんですか。意味が全然、これはもう説明ができません。  三番目のところ、「薬価の安い薬剤の組み合わせの方が高薬価一種類より負担が増えるケース」、これも非常に問題じゃないでしょうか。  安いお薬を使っているんです。お医者さんも処方していらっしゃる。にもかかわらず、トリルダンという高いお薬を一種類使った方が、一種類だから、ペナルティーというか二重取りの部分はゼロになるわけですね。ところが、安い薬をいろいろ工夫して使った方が、実はペナルティーの患者負担の方が四百円取られますから、結果的には患者さんは高いお薬代を払わなければいけないと、こういう矛盾があるわけですね。  これらのケースというのは保団連の先生が勝手につくったケースではないということ、厚生省、こういうケースはあり得るということをお認めになりますか。
  219. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この処方の妥当性等については今回評価は避けますが、このようなケースの場合についてはこのような形があり得るということだと思います。
  220. 西山登紀子

    西山登紀子君 今、厚生省もお認めになりましたように、こういう矛盾のある、患者さんに説明のつかない、また国民のどなたに聞いても説明のつかない、「不合理、不条理の極みとただ呆れるのみ」というふうに現場の先生方が評価をするような修正というのは、それこそ修正の名に値しない。私が改悪修正と言わざるを得ないという点はそういう点であります。  このケース厚生省もお認めになったわけなので、これはもう撤回する以外にないと私は思います。それ以外にも、回数によってはやはり毎回毎回処方ごとに定額払うということになりますと、普通のケースでいって政府案よりも負担がふえるケース患者さんの中には非常にふえるということであります。  特に、その中でも歯科の先生方から非常に御要望が強く出ておりまして、歯科というのはやはり投薬日数が二日から三日というふうに大変短い。様子を見ながらやるということで、抗生物質とか消炎剤、健胃剤というんでしょうか、そういうふうなのが三種類処方された場合に、政府案では十五円掛ける二日分掛ける三種類、九十円であったんだけれども修正案では三種類になって一気に四百円になる。私は政府案がいいというふうに言っているわけではありません。薬剤の二重取りという点では変わらないんだけれども、仕組みがこういうふうになってさらに悪くなったのではないかという点を指摘しているわけであります。  歯科の場合はどうでしょう。こういうふうになるじゃないですか。修正案の方が負担がふえるということはどうでしょうか。
  221. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) この修正後の案というのは、これは平均的なケースということを中心に定額負担ということになっておりますから、平均を境にして上下こういうことが起こり得るというふうに思います。
  222. 西山登紀子

    西山登紀子君 お認めになったように、やはり負担増の改悪修正ということだと思います。  修正案というのは、処方の回数が頻繁な患者さんにはとりわけ負担がふえるということなんですが、一方でこういうふうに薬の処方が行くたびに、処方のたびに定額で四百円、七百円、最高千円という額を払わなければならなくなると、一方で患者さんは負担を減らすために日数をまとめて欲しいというふうに気持ちが動くのは当然のことです。  薬を処方するということは、一定期間様子を見た上で効果を見ながら行っていくのがやはり適正な処方だと思うわけですけれども、こういう場合は適正な治療というものを阻害するということになるのではないでしょうか。
  223. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 今回、薬剤の一部負担ということでお願いしておりますのは薬の適正化ということでありますけれども、その際の負担の仕組みの問題としてどのような仕組みがいいかということになりますといろんなやり方があると思いますし、そういった中で定額負担といった場合に、今回の修正案のような形で考える案も、これも一つ考え方ではないかというふうに思います。  また、政府案とこの修正案とを比べますと、個別ケースについては修正案の方が負担が高くなるというケースがあり得るというふうに思いますけれども薬剤の一部負担を導入したことに伴うトータル的な財政的な効果という点で見ますと、政府原案に比べますと修正案の方が財政効果が減額されておりまして、そういった意味では、トータルとしては薬剤の一部負担というのが減殺されている、こういう格好でございます。
  224. 西山登紀子

    西山登紀子君 厚生省の資料をいただきましたけれども、なかなかその数については信憑性が疑わしい面もありまして、今の御答弁を理解することはできません。それで、適正な治療を阻害するということはもう事実だと思います。  時間がないので次へ移りますけれども、同じく頻度によって一番被害を受けるのは小児医療です。先ほど来お話がありました。  それで、日本小児科医会から「緊急連絡」がやはりファクスで届いておりまして、「保険改正薬剤費一部負担小児除外陳情について」という陳情書であります。これは現場の小児科先生方が、特に小児は急性疾患が多く、使用の薬剤量も検査も少ない、技術は非常に困難だ、処方も年齢、経過でいろいろ違う、頻度も多いということで、結局定額薬剤負担というのが非常に負担になってくるんじゃないかと。負担になってくることによって、例えば回数を減らすとかというふうなことがあれば、これは子供というものは悪化するのもよくなるのも急変するということから非常に心配をしていらっしゃって、改正に当たっては小児薬剤費の一部負担、これは除外すべきだということを緊急陳情書という形で要請してこられております。  私は、これは非常に重要だと思います。もちろん、親の立場からすれば、何物も差しおいて子供病院に連れていきたいという気持ちはどの親も変わりはないと思います。しかし、客観的な条件が許さない場合だって起こり得ると思うわけですね。  そこで、大臣にお伺いしたいわけですけれども、今、都道府県は、四十七都道府県全部ですけれども、何らかの形で乳幼児医療の無料化というものを単独事業でやっております。これは非常に命のもろい子供については早期発見とやはり両親の経済的な負担の軽減ということに応じて都道府県が実施をしている。ところが、政府はこれについて一切耳をかしてきませんでした。さらに、今回の改悪では、薬剤費の二重取りをすることによって負担をふやそうとする。私は、そういう点ではやはり小児医療の後退だし、金の切れ目が命の切れ目、少子化という時代であるにもかかわらず小さな子供の命を奪うことにつながる危険性がある。  ぜひ、この幼児の二重取り、薬代は外すべきだというふうに思いますけれども大臣にお伺いいたします。
  225. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 定額負担である限り不合理な面は残ると思いますね、負担が軽くなるにせよ重くなるにせよ。より合理的な案というんだったらば、むしろ定率の方が私は合理的だと思います。しかしながら、定率に対しては一方で強力な反対運動があるということで、今回そういう方々の意見も勘案して定額負担お願いしたわけであります。  また、幼児に対しましても、これは今後の抜本的な改革案の中でいろいろ幼児に対しては特別な配慮が必要ではないかという意見も出ております。そういう中で、また検討すべき課題ではあるというふうに考えております。
  226. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、今後考えるということなんですけれども子供の命というのは大変もろいものですよ。犠牲が出てからでは間に合わないから、だから私は限定して二重取りのこの部分、投薬ごとに取るというこの定額を外すべきじゃないかと提案をしているわけです。
  227. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は、今回の定額負担お願いすることによって幼児の受診を差し控える親御さんはいないんじゃないかなというふうに考えておりまして、この程度負担というのは御負担いだだける範囲内ではないかなと思っております。
  228. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 皆さんお疲れのことと思いますが、最後でございますので、どうぞよろしくお願いします。  既に同僚議員から数々の指摘がなされているとおり、国民にのみその負担を求め、抜本改革を先送りしたものであり、本法案の改正内容自体については問題が多数残されているとまず指摘をさせていただきたいと思います。  そういった意味で、国民負担を求める以上、改正はあくまで医療保険構造改革とセットでなされるべきであり、国や医療を担う側、薬剤メーカー、これらの方々いずれもが痛みを分かち合う、個々の利害関係を超えてこれを行っていかなければならない、これが我々の主張であります。  こういったスタンスから、我が党は自民党に対して医療保険の抜本改革案を提示して、自民党からは八月中に医療保険改革の全体像を示すという回答をいただきました。我々は、政府・与党が制度の構造改革を本改正と一体のものとして取り組むことを確約したものと受けとめて、衆議院において本法案に賛成の意思を表明したところであります。したがって、私は、我が党が主張した抜本改革の実効性というものがどれだけ担保されているのかに主眼を置いて本改正案の質問をさせていただく所存でありますので、政府におかれましては、そういった意味で真摯な御答弁を求めるものでございます。  さて、五月六日の与党合意においては、与党医療保険制度改革協議会と厚生省においては健保法施行までの間に医療改革プログラムを取りまとめるよう努めるというふうになっております。  そこで、お尋ねでありますが、これは単なる努力目標ではない、八月中に医療改革プログラムを国民に提示するとの確約である、このようにとらえさせていただいてよろしいでしょうか。厚生大臣にお伺いいたします。
  229. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 与党の協議の中で、「今国会審議中の健保法等改正案が施行されるまでの間に医療改革プログラムをとりまとめるよう努める。」という方針がなされておりますが、厚生省としては、この法案が成立すればできるだけ速やかに厚生省としての案を取りまとめて御提示したいと思います。
  230. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 きょう、同僚議員の皆さんからこの点について大臣に指摘があったところでありますが、大臣が大変な強い決意を持っていらっしゃるということ、このことは私はある意味では大臣やる気だなという思いを私自身も肌で感じたわけであります。私は、ある意味では小泉大臣でなければできないと、それぐらいの思いを込めて我が党の衆議院においての態度にある意味での示唆をしたところであります。  この改革については、何十年来やってできなかったものがわずか二カ月でできるのかというような指摘もきょうの質疑者の中からはありました。しかし、私は、きょうの議論をずっと聞いていましても、これはもう既にやるべきことは大体出尽くしている、あとはもうやるかやらないかだというふうに思うんですね。  そこで、大臣はとりわけ郵政三事業については民営化という主張を強くなさっておりますが、これに対しては相当な反対論がある。また、自民党の議員の中にも大変な反対の論があり、大臣が矢面に立っていらっしゃるわけですけれども、この抜本改革についても、私は当然そういったものが出てくるだろうと。そういったものが出てきたときに、大臣でなければやれないのではないかなという期待感を持っているんですけれども、その点についても改めて決意を聞かせてください。
  231. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今までのいろいろな御審議を伺っておりまして、いよいよ抜本的改革をしなければならないという空気が盛り上がってきたものと思います。いわばそれだけこれまでの制度ではいけないんだという意識を多くの方々が持ってきたあらわれだと私は受けとめております。  考えてみますと、そういう中で厚生省、いろいろ御叱正をいただいておりますが、これは期待のあらわれ、裏返したとも受けとめております。いわば、三十年間いろいろ抜本的な改革をしろと言われながらできないという御批判は、今度こそ総合的な抜本的な改革案を出してみろという激励と私は受けとめております。  そういう中で、むしろこれだけの御叱正、御批判をいただくということは厚生省に対する期待のあらわれでもあると受けとめまして、厚生省の見識が問われているんだと、事務当局にもこんなやりがいのある時代はないんだということで本格的な抜本改革案を提示するよう決意を固めておりまして、できるだけ早くその具体案を提示したいと、今、事務当局と一丸となってその準備を進めているところであります。
  232. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 私は、確かに厚生省大臣を中心に頑張っている、そのやられるという意図、またその気持ちも伝わってきます。ただ、これが国会にかかる前にまた与党とのすり合わせとか、そういうような問題のときにこれが挫折するのではないかという思いが一方であるわけですよ。  私はここで大臣に、もしできなかったときは大臣の身を辞すぐらいの覚悟を聞かせていただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕
  233. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私としては厚生省案というものをできるだけ速やかに提示したいと思いますが、それを与党の医療協議会がどう判断するかの問題もあります。また、厚生省が案として出したものが、これはいいと国民が判断するかどうかというのは出してからの問題であります。  厚生省が独善に陥らないで、全国民医療制度としてどういう案がいいか、この一点に絞って改革案を私はまとめてみたいと思いますし、先ほども申し述べましたように、これは一つの案とは限りません。選択肢を提示して、抜本的、総合的改革案はこういう案とこういう案があります、どちらがいいですかというのは、私は与党なり議員の判断、有識者、国民の判断に任せたい。そういう中であるべき一つの案が出てくるのではないかというふうに期待しております。
  234. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 私は、こだわるようですけれども、今回の衆議院修正についてもやはりいろんな意味で政治的な圧力がかかってきて、結果的にこの案というのはある意味では修正案の前の方が説明しやすかったのではないのかなというような思いすらするわけですよ。  この修正に対し、いろんな組織や団体からのいろんな意見があった。確かに現場の意見を尊重するということは大事なんでしょうけれども、これから抜本改革をやるということになると、やっぱりそこにある程度リスクをしょってもらわなきゃならない。おれはリスクをしょうのは嫌だよという人たちが政治家をバックアップして、よく言われる族議員が動いてそれがまたなし崩しになってしまったら、私はこれはある意味では国民は失望をしてしまうというふうに思うんです。  したがって、私は今回の問題については、やっぱり厚生省、とりわけ大臣が強力なリーダーシップをとっていただきたい、そのことをお願いしたがったわけであります。この点については、大臣にはそういう意味で私どもの熱い思いもあるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。  具体的にお聞きしますが、医療改革プログラムという言葉がこの合意の中にあるんですが、このプログラムというのは単なる事項の羅列に終わることがあってはならないと思うんですね。私どもは、このプログラムは医療保険構造改革の全体像、またその具体的改正内容、そして改正スケジュール、これをやっぱり国民にきちっと示すものでなければならないと思うわけです。  これからやる中には前倒しで、特に法改正を伴わないものについてはどんどんやるということも私どもとの協議の中で山崎自民党政調会長も言われました。ある意味では医師会の皆さんと本当にやり合わなきゃならない、それぐらいの覚悟はあるんだということも言われておりました。  私は、この医療改革プログラムというものがそういった意味でのより具体的な、また改正スケジュールをも含んだものになるんだというふうに理解してようございましょうか、お聞きします。
  235. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 九月一日までに出す厚生省としての案には当然具体的な内容と時期は明示したものを出したいと思っております。
  236. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 次に移りたいと思いますが、現在、政府においては財政構造改革において社会保障改革への取り組みについて、既にきょうも新聞報道等でその中間報告がなされておりましたが、その中で歳出上限制を設けるという報道がございました。この点について御説明お願いします。
  237. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 昨日取りまとめられました財政構造改革会議企画委員会の報告におきましては、社会保障関係費につきまして、集中改革期間中、すなわち今世紀中の三年間でございますが、社会保障関係費について当然増に相当する額を大幅に削減することとし、具体的には対前年度伸び率を高齢者数の増によるやむを得ない影響分以下に抑制するということとされております。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  財政構造改革会議におきましては、引き続きこの企画委員会の報告に基づいて親会議の方でいろいろ検討がなされるものと承知しておりますが、厚生省といたしましては、大変厳しい面があることも否定できないわけでございますが、こうした会議での議論の結論というものが出ましたならば、それを尊重しつつ、社会保障の構造改革に取り組んでいかなければならないと、かように考えております。
  238. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 また、その中に一定収入以上の高齢者に対しての医療給付の見直しという点も入っておりましたが、これについてはどういう見解をお持ちですか。
  239. 中西明典

    政府委員(中西明典君) 先生御指摘のとおり、企画委員会の報告の中で、「一定の収入以上の高齢者等に対する年金、医療給付の見直しを保険原理に反しない範囲で行う。」という項目が入っておることは事実でございます。  最終的にこれが構造改革会議の結論となりますれば、それを一つの指針として私どもも厳重に受けとめて、十分な検討を行っていかなければならない、かように認識しております。
  240. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 そうしますと、こういった問題が今回の抜本改革の中で、ある程度今回の財政構造改革会議における結論との整合性というのは当然とっていかれると、そしてそれが抜本改革に反映されるというふうに理解してようございますか。
  241. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 政府で現在、財政構造改革会議が行われ、近々その報告が取りまとめられるということであります。私どもとしては、やはりこの財政構造改革会議の報告の内容についても尊重し、そして今後の抜本改革案というものを考えていくというのを基調にしたいというふうに考えておりますが、まだ構造改革会議の報告が出ておりませんので、それが私ども考える方向と全く違う方向であるということであれば、その辺の調整というものはさせていただかなきやならぬと思いますが、基本的にはそごを来さないようなものでなければならないというふうに思っております。
  242. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 それでちょっとお尋ねしますが、財政構造改革会議での結論と、ある意味では厚生省のこれから目指す方向というのが違う場合もあり得るわけですか。
  243. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 財政構造改革会議は各省大臣意見というものもヒアリングをしておりますから、当然財政構造改革会議におかれては厚生大臣の御意見というものが反映されたものとして報告されるんじゃないかというふうに私どもは期待をしております。
  244. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 そうすると、要するに財政構造改革会議での結論と、これから厚生省が進めていこうとする抜本改革というのはある程度その歩調が合っているというふうに理解していいわけですね。いいんですね。はい、わかりました。  時間がありませんので、先に進みます。  大蔵省の財政制度審議会財政構造改革特別部会の最終報告書では、平成九年度予算編成における歳出削減合理化方策として、特定療養費の活用、傷病手当、出産手当・一時金等の現金給付について支給率の引き下げあるいは給付の廃止等の見直しの検討を掲げております。  これについて厚生省は、それではどういうふうな見解を持っておられるのか、そしてその取り組みについてちょっとお伺いしたいと思います。
  245. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 医療保険制度の抜本的な改革を検討する際には総合的に検討を行うということで考えております。そういった意味では、傷病手当金等を初めとしまして幅広く制度の必要性、合理性等についてこれからの時代に合った形のものかどうかというものを十分精査し、そして今後の方向に沿ったものにしていこうというふうに考えております。  財政制度審議会における報告の内容というものについては一つの参考にさせていただきますけれども、私どもとしては、これらの問題についてはこれから本格的に結論を出していきたい、こう考えております。
  246. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 これは同じ政府の中でそれぞれの省庁が審議会を持っているんですね。その審議会の出す答申が、ある意味では整合性というのが私はなきゃいけないと思うんですね。  ですから、そういう意味で、こういう最終報告の文案を見れば厚生省としてこういうことを考えておるのかなと。それが一つの抜本改革なり、九年度中にこれを実施するある意味では指針なのかなというふうに私としては受けとめたものですからお聞きをしたわけです。その点はどうですか。
  247. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 政府審議会はたくさんございますけれども、そういった中で、各審議会においてそれぞれの立場立場からいろんな報告等がございます。それらが必ずしも一致しない場合、これは多々ございます。そういった意味においては、財政制度審議会のこの報告も私どもとしては一つの参考資料ということで受けとめております。
  248. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今の答弁を聞いていると、これは何か大蔵省の審議会が勝手に財政削減の中で決めたというふうに聞こえてくるんです。どうもその辺はちょっと合点がいかないんですが、じゃこの点についてどうこうするということは厚生省としてはこれからだということですか。——はい、それじゃ次に移ります。  衆議院修正による財政影響について少しお伺いしたいと思うんですが、先般の衆議院修正によって、国庫負担は平成九年において千五百九十億円の負担増となることが見込まれております。この一千五百九十億円の財源はどのようになさるおつもりなのか、お伺いします。
  249. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 政府案に比べますと、御指摘のように、千五百九十億ほど国庫負担修正に伴いまして必要となってまいったわけでございます。  これについては、今年度における医療費の動向等を見定めませんと最終的な結論は出ませんけれども、この分について手当てが必要であるという状況が見通されてまいりましたら、私どもとしては、財政当局と十分相談をして所要の措置というものを講じなければならないというふうに考えております。
  250. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 それは当然所要の措置を講じなきゃいけないんだろうと思うんですが、財源をある意味では全く明示しないでこの修正をやったというのは、いかにも私は場当たり的な感じがしてならないんですね。この点については指摘をさせていただきます。  次に、同じく衆議院での修正の結果、政管健保では平成九年度時点で既に単年度三千九百七十億円の赤字が出るようになっておるんですね。政府案では三年というようなことを言っていたわけですけれども、その一年早い十年度末でもう資金が底をつく計算になるわけです。これでは政管健保の当面の財政安定という効果さえ果たせないわけでありまして、今回の改正で三年程度の財政収支の均衡を目指すとしていた政府の方針が大きく崩れたわけですけれども、これについて、政管健保の中期財政運営についてどのような見解を持っておられるのか。  それからまた、今回の修正では、財政収支の見通しにおいて、政府案段階のときにはなかった国庫負担繰り延べ分の実質収支というものを提示しておりますね。これを出したということは、ある意味では繰り延べ分の返済があるのかなという思いすらするんですけれども、その点についての確約はあるんですか。これは本会議では余りはっきりおっしゃらなかったんですけれども、その点について改めてお伺いいたします。
  251. 真野章

    政府委員(真野章君) 政管健保につきまして、今回の修正によりまして、今、先生御指摘のとおりの状況にございますが、平成八年度末におきまして約五千五百億程度の資金残高が生じるというふうに考えておりますので、その事業運営安定資金を取り崩すということにより、平成九年度それから十年度対応したいというふうに考えております。  また、御指摘の国庫負担の繰り延べ額でございますが、先ほど先生引用されました五月六日の与党の合意におきましても、一般会計から健保特別会計への繰り入れの繰り延べ分の計画的返済に努めるということでございますので、私どもといたしましても、財政当局に対しましてその返済を強く求めていきたいというふうに考えております。
  252. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 これは当然、このままでいけば政管健保の財政というのは十年度末でこの資金が底をつくわけであります。そういう意味からすれば、この抜本改革というものが本当の意味で避けて通れないということは、ある意味では厚生省ががけっ縁に立たされているということになるわけですから、この部分はきっちりおやりになるということの裏打ちに私はなるんだろうというふうに思いますし、ぜひこういった綱渡り的な状況を一日も早く打開して、二十一世紀に向けてきっちりとした制度をつくっていただきたいというふうに思います。  それから、実効負担率についてお伺いをしたいんですが、衆議院修正の結果、医療保険制度ごとまた若年世代、高齢世代それぞれにおける実効負担率がどうなったのか。  また、国保と組合健保の財政収支見通しというのが政府案ではあるんですが、今回の改正案でどういうふうに変わったのか、その辺を少し教えてください。
  253. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 実効負担率でございますが、衆議院修正後における平成九年度改正後の実効負担率を申し上げます。  まず、若人でありますが、これが二一・八%でございます。外来と入院と分けますと、外来が二六・四%、入院が一三・二%ということになっております。それを被用者保険と国保とで比べますと、被用者保険が二一・五%、それから国保が二三%、こういう形でございます。  それから、老人についてでございますが、老人については八・四%でございます。外来が八・九%それから入院が七・九%、このような形であります。  それから、修正後における健保組合並びに国保の収支見通しでありますが、政府原案と同じように政管健保の保険料率の引き上げ割合、要するに政府原案は千分の八十二を八十六でありますが、今回の修正後は千分の八十二が八十五になりましたので、千分の八十二が八十五に引き上げられる割合で組合健保もそれから国保も保険料が引き上げられると仮定した場合でございます。それで見ますと、修正後は、健保組合につきましては千百七十億円の赤字の見通してございます。それから、国民健康保険が千三百三十億円の赤字というふうに見込んでおります。
  254. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 これは当初政府案では、組合健保は二千百四十億円の黒字、国保が百八十億円の黒字だったですね。ここで赤字が出ているということはどういうふうに理解すればよろしいんですか。
  255. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 一つには、保険料率政府案では千分の八十二を八十六……
  256. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 そういうことじゃなくて、今後これは赤字のままでいいんですか。
  257. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) これはそれぞれの対応につきましては、先ほど健保組合の場合ですと八十二を八十五の割合に引き上げた場合ということでございますけれども、それぞれ各健保組合において保険料率の引き上げなり所要の対応というものをしなきやならないという状況になると思います。
  258. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 今の答弁を聞いてもそうなんですけれども、今回の修正はかなり問題解決を先送りにしただけで、自転車操業的な一時しのぎというような要素が非常に大きいというふうに私も思うわけでありまして、そういう意味では、今回改正の是非を本院の審査で構造改革の道筋をどれだけ明らかにできるかというところにかかっているんだろうと思います。  特に、政管健保財政が先ほどお尋ねしたような中で、来年度の健康保険法等再改正は必至の情勢にあると。小泉大臣もこれまで九八年度改正の可能性について言及をしておられるようでありますが、来年度改正がまた当面の緊急避難になるようでは国民の政治不信は頂点に達しかねない、このように思うわけです。  来年度改正は九九年度改革の前倒しとしての抜本改革として考えてよいのか、また今後の医療保険改革の目途及び来年度改正内容について厚生大臣にお伺いをしたいと思います。
  259. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今回の改正案が今国会で成立しますと、直ちに抜本改革案づくりに着手して、できるだけ早い機会にその案を御提示したいと思います。  その中で当然、薬価にしても診療報酬にしても医療提供体制にしても総合的な構造改革案を提示するわけですが、それの案を与党の医療改革協議会がどう判断するかという問題があります。また、九月一日以降に設置される審議会がどのような判断をされるか。そして、抜本改革案の中でもできるだけ速やかに、できるものから、合意を得たものから、十年度に改革した方がいいという結論が出れば当然十年度の中でその案を提示して、十一年度まで待つ必要はないと思います。できるだけ早い機会に、抜本改革案を十年度にも改正できる機運ができればそのように進めていきたいと思います。
  260. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 きょうは、特にこの抜本改革に対する大臣の決意と、私の激励の意味を込めての質問をさせていただいたんですが、これから八月末までといえば、もう時間もないわけであります。とりわけ、私がきょう何度も指摘をさせていただきましたけれども、やはり今政治が本当の意味でしっかりしなければいけない。私は今回、医療保険制度そのものの存続がかかっている。ある意味では、医師会あたりから反対が出ることによって保険制度そのものが崩壊をしてしまったら、かえってこれは国民医師会も私は困るというふうに思うんです。  そういう意味で、ぜひともその辺のところを十分心得て、これからの改革に向けて努力をしていただきたい、そのことをお願いして私の質問を終わります。
  261. 上山和人

    委員長上山和人君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十二分散会      —————・—————