○萱野茂君
政府の行政改革
会議の議論も六月には各
省庁のヒアリングを終え、この十一月には最終
報告ということで、いよいよ本格的な詰めの状態であると聞いております。
一方、
北海道開発審議会では、来年からスタートします次期の
北海道開発計画の方向を定めます
開発計画の
策定という、
北海道にとっては大変大事な時期にございます。この時期に、私から少し今後の
北海道開発のあり方について議論をしてねきたいと思います。
私は、本音を言いますと、
開発という言葉、どうも余り好きではないのであります。ということは、私自身、
北海道の先住民族でありますアイヌ民族の末裔としまして、自分たちの住む
土地を他人によって
開発され、その
開発の結果、民族の
生活や文化を滅ぼされ、民族の存在すら否定されてきたわけであります。
開発という話感、言葉の響きには、怒りとかむなしさはあっても、もともと余りいい印象を持ってはいないのであります。できれば
開発とか
開発計画とかということではなく、何かもっと適当な言葉がないものかと日ごろ思っているものであります。きょうの場合は
北海道開発庁にお伺いするわけでありますので、
開発という言葉を使わせていただきましょう。
初めに行政改革でありますが、今日、日本の社会、特に行政機関にとって行財政の改革の断行が我が国再生への道であり、財政改革と行政改革は表裏一体であり、避けて通れない
課題であろうかと思います。
北海道開発庁もそのらち外にはなく、こういうことは私も十分認識しているつもりでございます。
ただ、最近の行革に対します議論を聞いていますと、どうも一面的でありまして、例えば財政的な側面のみが強調されるとか、一方では地方分権が言われながら、中央からの
省庁の再編論、改革論ではないかなど、いろいろあるわけでございます。
特に、
北海道開発庁をめぐっての行政改革の議論は、単に
省庁の再編とか
省庁の改革にとどまらない問題を抱えているのではないかと思っております。
国土の四分の一を占めます
北海道という
一つの
地域を包括的に束ねている
北海道開発庁の改革には、
北海道という
地域の将来がかかっている問題でありますから、
地域の特殊性、それは国際的な環境ですとか、その
地域の歴史的な特性ですとか、あるいはまた
開発庁の生い立ちからして地方自治体との
関係ですとか、多方面にさまざまなことに配慮しながら、
北海道は将来どうあるべきかの確たる理念の上に立って、これにかかわる国の行政はどうあるべきかの議論を尽くしてほしいものであります。
北海道の歴史を見ますとき、ここにも七月十二日付の
北海道でのある新聞、道央のある市の開基百年の広告が一ページを飾っていますが、アイヌ新法が制定を見た現在も、アイヌが先住していた歴史は全く抹殺され、相変わらず人跡未踏の大地に先人がくわをおろして百年という意味のことが書かれているのであります。
先住民族アイヌの歴史はさておき、一般的には
北海道の開拓の歴史はわずか百年であります。この間、理想の大地とか食糧供給
基地であるとか夢のある話がたくさんありますが、歴史の古い他の府県と比べたとき、決して平たんな百年ではなかったと思います。
初期の開拓は、北方の防衛
措置としての屯田兵移民、あるいは廃藩に伴う士族の移民などが国家の
施策として行われました。戦中は、戦災疎開者の緊急開拓事業での入植など、戦後でいいますと、引揚者、復員者を対象とした緊急開拓事業があります。この戦後の緊急開拓事業は、
昭和二十年十一月九日の閣議決定によるものですが、
北海道に二十万戸、当時の
北海道の農家戸数はおよそ二十万戸でありますが、これに対してこの入植
計画は実態を全く無視した
計画でありました。また、緊急に増田政策が進められる一方で、
昭和四十五年からは米の減反政策が始まりますが、
北海道には全国平均を上回る減反の傾斜配分が行われてきました。
私が申し上げたいのは、資本の蓄積の乏しい
北海道の百年の歴史は、一貫して国策のもとでの
開発であり、また国策による負の政策の押しつけの場でもあったということであります。
昭和二十四年には、それまで他府県同様に
省庁の分割管理で行われていた
北海道の
開発政策について、これを一元化するために、総理の諮問機関として
北海道総合
開発審議会が
設置され、二十五年には現在の
北海道開発法の制定を見たのであります。当時は、各
省庁の権益を侵すものであるとして
省庁の強い反対がありました。また、地方自治との
関係などでもさまざまな議論があったことを記憶しております。
この間、
北海道開発庁は、
北海道における国の直轄の
公共事業のうち農林、運輸、建設につきましては
予算の
一括計上を図るなど、大変重要な役割を担ってきました。現在、
公共事業の総体につきましては、そのあり方を含め見直しを求める購い国民の世論がありますが、いわゆる
省庁の縦割り行政を克服するとの点でいいますと、先見的灯
一つのモデルがあったとして評価してよいのでけないかとも思っております。
いずれにしましても、
北海道開発庁をめぐる行政改革にあっては、
北海道の将来を見据え、また私が申し上げた
北海道開発の歴史と道民の世論を重視した説得性、先見性そして理想を大切にしていただきたいと思っております。
そこで、行革についてでありますが、当事者にお伺いするのもいかがかと思いますが、それに臨む
開発庁のお
考えと御決意と申しましょうか、その辺についてお伺いしておきたいと思います。