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1997-07-09 第140回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年七月九日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  七月八日     辞任        補欠選任      林 久美子君     山下 栄一君      田  英夫君     大脇 雅子君      上田耕一郎君     緒方 靖夫君  七月九日     辞任         補欠選任      水野 誠一君     堂本 暁子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 秀樹君     理 事                 鎌田 要人君                 長峯  基君                 野沢 太三君                 猪熊 重二君                 海野 義孝君                 緒方 靖夫君     委 員                 岩井 國臣君                 海老原義彦君                 景山俊太郎君                 清水嘉与子君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 依田 智治君                 吉川 芳男君                 魚住裕一郎君                 加藤 修一君                 益田 洋介君                 山崎 順子君                 山下 栄一君                 朝日 俊弘君                 中尾 則幸君                 谷本  巍君                 堂本 暁子君                 栗原 君子君    国務大臣        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        労 働 大 臣  岡野  裕君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石井 道子君    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        環境庁長官官房        長        岡田 康彦君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁企画調整        局環境保健部長  廣瀬  省君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        環境庁水質保全        局長       渡辺 好明君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        文部省体育局長  工藤 智規君        厚生省健康政策        局長       谷  修一君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        社会保険庁運営        部長       真野 章君        通商産業省環境        立地局環境政策        課長       松永 和夫君        運輸大臣官房審        議官       長光 正純君        運輸省運輸政策        局長       土井 勝二君        海上保安庁次長  田口 弘明君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君        会計検査院事務        総局第五局長   小川 光吉君    参考人        環境衛生金融公        庫理事長     坂本 龍彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成七年度一般会計歳入歳出決算平成七年度  特別会計歳入歳出決算平成七年度国税収納金  整理資金受払計算書平成七年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成七年度国有財産増減及び現在額総計算書  (内閣提出) ○平成七年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     —————————————
  2. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨八日、林久美子君、上田耕一郎君及び田英夫君が委員辞任され、その補欠として山下栄一君、緒方靖夫君及び大脇雅子君が選任されました。  また、本日、水野誠一君が委員辞任され、その補欠として堂本暁子君が選任されました。     —————————————
  3. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 理事補欠選任を行います。  昨八日の本委員会におきまして、欠員中の一名の理事につきましては、後日、委員長が指名することとなっておりましたので、本日、理事緒方靖夫君を指名いたします。     —————————————
  4. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 平成七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、厚生省労働省環境庁及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行います。     —————————————
  5. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  速記をとめてください。    〔速記中止
  7. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 速記を起こしてください。     —————————————
  8. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 おはようございます。自民党の清水嘉与子でございます。  本日、私は、平成七年度決算に関し、厚生省労働省に若干の御質問をしたいと思います。  一昨日、総務庁の方から社会福祉法人に対する行政監察の結果というのが発表されまして、厚生省に再勧告を行ったということが報じられました。新聞の報道ぶりを見ますと、「社会福祉法人 問題点九割が未改善」であるとか「補助金不正受給」であるとかというような報道がされまして、またもや社会福祉法人が大きな問題を起こしたのかというような感じ国民の皆様が持ったのではないかというふうに心配しているところでございます。  伺いますと、行監は既に平成四年の六月に社会福祉法人に対する行政監察を行いまして、厚生省に対して幾つかの勧告をしたというふうに伺っております。今回は、これらの勧告徹底状況調査、あわせて例の彩グループ問題等に関連した社会福祉法人管理運営体制だとか補助事業について調査したというふうに伺っているところでございます。  そこで、まずお伺いしたいわけでございますけれども、前回の平成四年の指摘のときに、厚生省からは当然のことながら勧告に対して対処方針も示され、ほぼこれで改善されたというふうに思われていたわけでございますが、今回の調査によりましてまだ改善されていない点が幾つか出てきたということが明らかになったわけでございます。  そこで、再度勧告を受けた内容、そして、五年もたっているわけですけれども、どうしてその問題点が解決されなかったのかということについて、まず御説明いただきたいと思います。
  10. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 先生ただいまおっしゃられましたように、平成四年六月に社会福祉法人指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告をいただいていたところでございます。この内容は、理事会運営評議員会運営、また会計管理というような問題についての問題事例指摘され、改善が求められていたところでございます。  これを受けまして、厚生省におきましては、平成五年八月に社会福祉法人定款準則を改正するなどの事項を行い、一部の検討中の事項を除きましておおむね制度的な改善措置を図り、都道府県を通じて指導に努めてきたところでございます。しかしながら、若干の未措置事項が残されておりますほか、昨年、ただいま御指摘のございました埼玉県、山形県の特別養護老人ホームをめぐる不祥事が生じたことをきっかけに、総務庁が再度、平成四年の勧告趣旨徹底状況を中心に調査が行われた結果、不適正な事例報告されました。指導徹底していなかったことが明らかになったわけでございまして、まことに遺憾であると受けとめている次第でございます。  今後、改めまして通知を発するなどしまして、指導の一層の徹底を図ってまいる所存でございます。
  11. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 このたびの行監指摘につきましては具体的にどんなふうに対応されるのでございましょうか。
  12. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 今回、再勧告をいただいたわけでありますけれども厚生省におきましては、特別養護老人ホームをめぐります不祥事につきまして、その事実関係の解明そして今後の再発防止策につきまして、既に御報告申し上げておりますように、検討委員会をつくりまして、実態調査を踏まえまして本年三月に改善策を盛り込んだ報告を取りまとめて、それに基づいて関係通知等を既に出しまして、順次具体的な改善策実施に移しているところでございます。  今回、再勧告に至りますもととなりました事実調査の時期が昨年の十二月から本年の三月までということでございましたものですから、私どもの再点検なりあるいは検討時期とほぼ重なっておりまして、そういう意味からいえば、基本的には従前の勧告趣旨徹底をしていない点、あるいは厚生省についてその徹底を求めるということと、それから厚生省もちょうどその時期に検討いたしておりましたものですから、そういう意味で、厚生省において今回講じました施設整備補助適正化ということについての方向につきましては同一方向、同一趣旨内容の御指摘だというふうに受けとめております。  しかし、今回こういう再勧告ということで重ねての御指摘がなされたこと、これは大変重いことだというふうに考えております。そうしたことで、具体的には三つの方向対応したいと思っております。  一つは、制度的な改善策につきまして、今申し上げたように、既にこの三月来実施に移しております対応策部分につきましても、この再勧告がございましたから、改めまして社会福祉法人等に対しまする趣旨徹底、あるいは監査等を通じてきちっと対応ができるように勧告趣旨徹底するということを考えたいと思います。  また、今回の中で、個別にこういうことがあったということで、個別の施設についての個別の指摘がございます。したがって、そういった個別具体的に指摘をされました老人福祉施設に関しまする不適正な事例というものにつきましては関係自治体を通じて個別の改善ということも徹底を図りたいというふうに思います。  さらに、この中には、そうは申せ、今回の私ども改善策以外に理事長専決事項の明示だとか、そういった新たな検討を求められる部分もございますから、これにつきましては検討を進めまして、その検討結果を踏まえてこれも早急に都道府県等指導改善をしていかなければならない、こんなふうなことで今後対応していきたいというふうに思っております。
  13. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今の御説明でございますが、昨年来ずっと厚生省努力をして社会福祉施設に対する指導あるいは実態調査をなさり、そしてこの三月にかなり細かい指摘もされて指導されているということは私もよく存じております。しかし、その後にこういった行政監察の再勧告ということが出たものでございますから、おっしゃるように、確かにタイムラグがあるのかもしれませんけれども、再度こういうことを機会に再点検をぜひしていただきたいというふうに思うわけでございます。  社会福祉法人運営されている方というのは、私どもの印象ではやはり一生懸命努力をしてやっていらっしゃる善意の方々が多いというふうに患うんですけれども、この社会福祉法人に対する一連の不祥事、いろんな問題で中にいらっしゃる方々も本当につらい思いをしていらっしゃると田うんです。ですので、こういった点で問題がないということを、再発防止のためにもぜひ努力をしていただきたいとここでお願いしておきます。  局長、どうもありがとうございました。  次に、医療保険制度抜本改革の問題について御質問したいと思います。  来年度予算概算要求の枠組みが社会保障関係二%という大変きつい方針が示されました。いよいよ大臣以下大変暑い夏を迎えられることというふうに思います。  この社会保障構造改革の中でも、特に医療保険制度抜本改正というのは非常に大きな問題だというふうに私も認識しているところでございまして、先般の国会におきます健康保険法改正の問題、このときの審議におきましても、大臣抜本改正に関してはもう早急に厚生省案を作成して提示するということをお出しになったわけでございまして、その時期ももう迫ってまいりますけれども医療保険制度抜本改革について省内における作業進捗状況あるいは改革方向について生ずお示しいただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。
  14. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 医療制度改革につきましては、ことしの国会におきます各委員会での審議状況、さらに御意見等を踏まえ、そして年党医療保険制度改革協議会基本方針等がございます。その点を十分参考にしながら、今鋭意作業を進めている最中でございます。薬価の問題あるいは診療報酬体系の問題、医療提供体制の問題、そういう点も含めまして、今月中には厚生省としての案を取りまとめるよう、今全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
  15. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 これから出てくる抜本改革方針、いずれにいたしましても、国民にそんなに甘い報告が出てくるわけはないわけでございまして、やはり重い負担がまたかかってくる可能性もあるわけでございますが、何といいましても、今の制度の中でむだを省く、過剰な診療を抑制するといったような問題も、今の医療体制の少しバブルになったところをスリムにするということも非常に大きな問題ではないかというふうに思います。  私の知っている看護婦さんが言います。自分たちは夜勤もあり大変な仕事なのでいつも健康を保つために相当努力をしている、自分の健康を守るために相当努力をしている。ところが、自分たちが診ている患者さんはどうか。なかなか指導も守れない、食事指導をしても同じように何度も何度も帰ってくる。自分たちが一緒にやっている保険料がこういう人に使われるわけです。そういうことに対して非常に矛盾を感ずると。やっぱり自分の健康を自分で守るというところをもう少し国民サイド徹底しなきゃいけないんだろうと思いますけれどもむだ遣いといいましょうか、お互いの拠出金でやっているということがどうもこういう今の制度で忘れられがちになっているんじゃないかというような気がいたしてなりません。  そこで、少し具体的に会計検査院に伺いたいんですけれども医療費関係指摘というのは、厚生省だけでなくて、文部省あるいは労働省、各省にわたっているわけでございまして、この医療費関係は必ずと言っていいほど定番のごとく指摘を受けているというような実態だと思います。  そこで、会計検査院として、まず医療費関係検査に入りますときに各御担当それぞれ連携をとったり、あるいは共通の方針を立ててやっていらっしゃるのかどうか、ちょっとそこら辺を伺いたいと思います。
  16. 諸田敏朗

    説明員諸田敏朗君) お答え申し上げます。会計検査院といたしましては、医療費適正化ということが大変重要性がございます。その結果、医療費につきましては毎年重点的に検査実施してきているところでございまして、厚生省労働省、それから文部省、これは国立大学病院でございますけれども、この三省関係につきまして、毎年検査計画を立てまして横断的な検査実施しているというところでございます。
  17. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 医療費関係に絞ってでございますけれども会計検査院がこれまで行ってまいりました医療費関係検査概要あるいは指摘事項といったことを少しお話しいただきたいと存じます。
  18. 諸田敏朗

    説明員諸田敏朗君) 本院では、昭和六十一年度の決算検査報告から医療費につきまして指摘をしてきているところでございます。この間、検査観点あるいは検査手法ども創意工夫を行いながら、多角的な観点から検査を継続してきているところでございます。  そして、平成三年度から平成七年度までの五年間の指摘額を見ますと、厚生省関係では医療費支払いが適切でなかったものが国庫負担分として合計二十八億六千八百万余円、それから労働省関係では労災診療費支払いが適切でなかったものが四億六千万円及び労働福祉事業団労災病院におきます診療報酬請求が適切でなかったものが一億三千五百万円、計五億九千六百万円、文部省関係では国立大学附属病院におきましての診療報酬請求が適切でなかったものが合計十三億六千八百万余円となっておりまして、この間における指摘は増加したり減少したりしている状況でございます。  また、どのような指摘をし、それがどのように改善されたかということについて若干お答え申し上げます。  具体例といたしましては、例えば医師の数が標準人員を満たしていないのに入院環境料療養環境加算等を算定している事態指摘しております。この加算等を算定しようとする病院都道府県に届け出ることになっておりますが、この事態の背景には、届け出書様式医師の数に関して内容を十分把握できないものとなっていたことなどがありました。この本院の指摘に対しまして、厚生省では療養環境加算等届け出書様式医師標準人員に対する充足状況を的確に把握できるよう改正するなどの改善処置を講じたところであります。  以上でございます。
  19. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございます。  具体的な指摘事項の中で改善されているものもあるというお話でございます。しかし、金額から見ても、同じような指摘が毎年毎年繰り返されて、なかなか直っていかないというものもあるわけでございまして、これはどういうふうにしたらこの指摘事項をなくすことができるのか。何か会計検査院の立場でもしおっしゃりたいことがあったら一言どうぞ。
  20. 諸田敏朗

    説明員諸田敏朗君) 大変答えづらいところでございますけれども、あえて私どもが考えていることを述べさせていただければ、指摘事態が再び発生することを防止することは検査実効性を確保する上で極めて重要であると考えております。したがいまして、関係省庁におきまして、本院の指摘を受けての医療機関への指導レセプト点検強化等が望まれるところでありまして、今後の予算執行におきまして、不適切な事態が生じないよう取り組みを強化していただきたいと考えております。  また、本院におきましても、意見を表示しまたは処置を要求した事項はもとより、不当事項につきましても、再発防止に寄与するため、各省庁等の職員に対しまして指摘した事態について説明したりするなどして、今後とも指摘趣旨の着実な周知徹底に努めてまいりたいというふうに考えております。
  21. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  では次に、同じ問題で厚生省に伺いたいと思うんですけれども医療機関が行いました医療行為というのは、レセプトとして支払基金に出され、支払基金がチェックしていると。一部査定が行われます。そして、保険者のところでもまた一部査定されるというふうに伺っていますが、査定率を伺いましたら大体一・五%だというお話でございます。  この一・五%の査定というのは主に過剰診療なんでしょうか、そしてまた査定方針だとか基準というのは全国で統一されているんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  22. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 毎年、支払基金におきます医療費査定率、大体下五%程度で推移をいたしております。私どもこれはもっと努力していただきたい、そしてまたその内容についても統一的な査定が行われるようなことでやってほしいということを申し上げております。  この内容はいろんな内容がありますから、単純な事務的なミスもございますし、それからまた検査院で御指摘されたような不適切な事例というものもございます。しかし、やはり相当支払基金だけで見ますと、年間七億枚のいわゆる請求書をチェックするということでございますので、そういった意味では現行の方法自体も限界に来ているというふうにも考えておりまして、そういった意味でこの審査あり方そのものについて今検討しているところであります。  それから、これはもう先生御承知のとおりでありますけれども医療保険請求診療に当たりましては一定の取り扱いのルールというものがあるわけでありまして、これは療養担当規則なり、あるいはかなり大部なものになっておりますけれども診療報酬点数表、それからまたそれに関連する各種の通知が出ております。こういったものは公表されておるわけでありますが、これに基づいてそれぞれ審査委員会において厳正な審査をお願いしている、こういうことになっております。  ただ、先ほど検査院の方からお話がございましたように、毎年かなり多額の不適切な請求例というものが指摘をされておる。これは私どもとしても非常に厳粛に受けとめておるわけでございますけれども、その一つには、医療機関サイドにおける保険ルールというものに対する理解が不十分なためにそういうふうな事態が起きているケースもございます。これについては医師会とも協力しながら保険ルールというものに対する理解というものを深めていく、そういった方向努力一ついたしております。  それからまた、内容によりましては不適切というよりもむしろ不正的なものも見受けられるわけでありまして、こういったものについては、このたび検査院の方で検査をされました医療機関につきましてやはりきちっとした監査指導というものを指示いたしたいというふうに考えておりまして、こういったようなことが毎年指摘されるということは、医療保険に対する国民の信頼を損なうものでありますから、私どもとしては厳正に対応していかなきゃいけない、このように考えております。
  23. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 中には、過剰にあるいは不正に請求しているものもあるというお話でございますが、私どもの聞いている話では、かなりまじめなお医者さんたちがまじめに診療をやっている、しかしそれでも支払基金で認められない、非常に不満を持っているような声も聞きます。  会計検査院の方が指摘されたものは必ず公表されて明文化されていますから、それはもうだれの目にもわかるわけですけれども、この支払基金でチェックされた内容、つまりどこが査定されたのか、何が問題なのかというようなことは、今大体どこでもわかるんじゃないかというお話でしたけれども、わからないから査定されちゃうんだろうと思うんですね。ですので、問題になっているところが現場にフィードバックされる仕組みというものがもうちょっと明らかにならないだろうかというような感じもするんですけれども、この辺はいかがでございましょうか。  つまり、査定される方針だとか、基準を公表するだとか、あるいは査定されたものの事例を少し現場にわかるようにするとかというようなことで、要求するときにこれはもう査定されるからこういうことはしないというふうに、現場の方から要求しないような仕組みができないだろうかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  24. 高木俊明

    説明員高木俊明君) それぞれの査定ケースというものをある程度分類分けして、そして共通に見られるようなものというものについてはやはり注意を喚起するという意味からも医療機関にもお示ししていくという努力は必要だろうというふうに考えます。  ただ、医療でありますから、個別個別のケースによってその内容がかなり違うという面もございますので、医療保険における定められたルールというものをきちっと理解していただくというのがやはり基本だろうと思います。そこから先は、まさに支払基金なりの審査の中身というものについて、冒頭申し上げましたようなものについては周知徹底を図るということだろうというふうに思います。先生の御指摘も踏まえまして、支払基金とも相談しながら、今後前向きに検討させていただきたいというふうに思います。
  25. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 先日、レセプトを公開する、開示するという方向が出されたというふうに伺っております。従来は本人であってもレセプトは見せない、写しも見せないという、そういう態度でいたわけでございますけれども、今度ここで開示に踏み切ったその経緯といったものを少しお話しいただきたいと思います。
  26. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 診療報酬請求明細書でありますが、いわゆるレセプトと呼ばれておりますけれども、これにつきましてはこれまで病名等に対する秘密の問題あるいはがんの告知の問題等々がございまして、どちらかというと医療保険サイドも慎重な取り扱いというものを指示してまいりました。しかし、もう御承知のとおりでありますけれども国民に開かれた医療の提供ということが強く求められる時代でありますし、そういった中で、ことし四月に与党の医療保険制度改革協議会におきましても、その基本方針の中で前向きな対応をすべきであるという基本方針も示されておるところでございます。  そういったような状況も受けまして、また、このレセプトの開示というものが混乱なく行われる必要もあるということで、医師会ともお話し合いをしながら、そしてこのたびこのような形でレセプトの開示というものを行っていくということにいたしたわけでございまして、私どもとしては、医療に対する国民理解を深める上においても、それからまた医師と患者さんとの信頼関係というものを高める上においてもやはり非常に有効だというふうに思いますし、そういった意味でこういった制度というものがこれから活用されるということであれば大変ありがたい、このように思っております。
  27. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 情報公開の趣旨が中心で公表されることになったというお話でございますけれども、今まで公表を拒んでいたこと自体がやっぱりおかしいなと拝見するんですね、これを見ますと。病名を知っちゃいけない、知らさない方がいいというような病気にかかっている方というのはむしろ少ないわけで、公開してもいいような方々が非常に多いわけですけれども、それでも見せられなかったということが大変不思議に思います。今度こういう方向が出てきますと、医療機関の方もかなり慎重にもなりましょうし、それから患者さん自身ももう少しコスト意識というものも出てくるんじゃないかなというふうな期待をしているところでございます。ぜひいい形で運用していただきたい。ただ、個人情報、この辺がどうしても漏れるといいましょうか、そういう点が非常にまた問題もありましょうから、その辺についてはぜひ御配慮をいただきたいというふうに思います。  次に、医療を支える人の問題について少しお話を伺いたいんですけれども、財政構造改革会議からの指摘で、医学部の定員を減らすという話、あるいは医師の国家試験の合格者数を抑制するというような点が指摘されております。それによって医療供給体制の合理化を図るんだということでございます。医師の数が多くなっているという話は前から出ているわけで、医学部定員の削減というのはまあまあわかるのでございますけれども医師の国家試験の合格者数を抑制するというのは、響きが悪いし、どうもちょっとひどいんじゃないかなという気が率直にいたしますけれども、どのようにこれを具体化していくのか、大臣、ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。
  28. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 確かに六月三日の閣議におきまして、財政構造改革の推進方策において大学医学部定員の削減や医師国家試験の合格者数の抑制について盛り込まれておりますが、今のところこれをどうやって具体的に進めていくかということについてまだ結論が出ているわけでは承りません。今後、医療提供体制の全体の見直しの中でこの具体化をどう進めていくか、よく研究していきたいと考えております。
  29. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 医学部に学ぶ学生というのは国費も相当使っているわけでございまして、出るころになったら急に、卒業しても免許がもらえなくなってしまった、今まではもらっていたのにもらえなくなってしまったというようなことにはならないように、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  それから次に、少し看護婦の問題について伺いたいと思います。  平成七年度を目途に付き添いを廃止すると。看護婦といっても関係者含めてでございますけれども、付き添い廃止ということがずっと計画で進められてまいりました。具体的にそれがどんなふらに進んできているのか、本当にもう廃止になっているのか、また、付き添い廃止ということが医療費にどのような影響があったのか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  30. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 付添看護でありますけれども平成七年度末までにこれを原則的に解消しようということでやってまいりました。ただ、ことしの九月までは一応の経過措置が設けられておりますので、そういった意味ではまだ若干の医療機関において経過措置にのっとった取り扱いが行われているところがございます。  ことしの四月現在で厚生省調査した状況でございますけれども病院については二百六カ所、診療所が五百十八カ所まだ経過的な取り扱いを認められております。しかしながら、残り九割強の病院は付き添いというものを解消したということでございます。  それで、この付添看護の廃止ということは、これは付き添いさんを個人が雇ってつけるということを廃止するということでありまして、そのかわりきちっと必要な付き添いの方は医療機関の方が雇って、そして適切な付添看護というものを提供していく、こういうふうに切りかえたわけであります。そういった意味では、これまで個人が払っておった付添看護料、これを医療機関サイドにきちっと医療保険サイドから払う、こういうようなシステムにしたわけでありまして、そういった意味での差し引きということになりますと、医療保険サイドとしては従来より内容が強化されたというふうに考えますから、その分の支出というのはふえたんじゃないかというふうに考えています。  ただ、適切な付添看護なり適切な看護というものがチームとして提供されるということによって、例えば寝たきりのお年寄りが歩けるようになるとか、そういったいわゆる看護の体質の強化ということに伴う医療費に与える影響というのは非常に大きいですから、そういった面でトータル的に見ればやはり医療費の適切な使用といったことに貢献するんではないかというふうに私どもは期待をしております。ただ、これは定量的にどのくらいそこのところが変わってきたかというのはなかなか難しくて、実は私どもとしてもそこまで分析が進んでおりませんけれども、定性的にはそういうことが考えられるんではないかということで考えております。
  31. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それでは、看護婦の問題でございますが、厚生省看護婦の需給計画、需給見通しでしょうか、を計画的に進めておられるわけですが、最近の進捗状況、そしてまたその中で看護婦と准看護婦の比率というのは一体どういうふうに推移してきているのか、お教えいただきたいと思います。
  32. 谷修一

    説明員(谷修一君) 看護職員の需給計画あるいは需給見通してございますが、平成四年に制定をしました看護婦等の人材確保の促進に関する法律に基づきまして、平成十二年を最終年度といたします需給計画が平成三年に策定をされております。  それで、平成七年について申しますと、需給見通しの供給目標が九十七万九千人でございますが、実際に就業している方の数は九十九万一千人ということで、平成五年以降は大体この見通しを上回って実際の就業者数が確保されているということで、今のところ順調に推移をしているんじゃないかというふうに思っております。  それから、看護婦と准看護婦の比率についてでございますけれども、養成所の数で申しますと、平成四年に看護婦の養成所の数が七百八十七校でございましたけれども平成八年には八百六十六校と増加をいたしております。  一方、准看護婦の養成所の数が平成四年には四百七十八校でございましたけれども平成八年には四百四十三校に減少しているという、そういう状況の中で、看護婦と准看護婦の比率でございますけれども平成四年には看護婦が五四・七%、准看護婦が四五・三%でございますが、平成七年には看護婦が五七・一%、准看護婦が四二・九%というふうになっております。
  33. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 付き添いの方々が院内化してくる、そしてまた看護婦の数がだんだんふえてきた。しかも、看護婦と准看護婦の比率を見ると、この計画でいくとやはり看護婦の比率が高くなっていきます。こういうふうにして看護婦の数がふえ看護婦の割合が高まるということは、これは医療費の引き上げにもろにかかわってくる。したがって、やっぱり准看護婦がまだ必要なんじゃないかというような主張が片やございます。  しかし、また一方におきまして、今准看護婦の方というのはほとんど高卒でございますから、准看護婦だけで働くという方はほとんどいなくなりまして、ほとんど進学コースへ行って看護婦になる。こういうことを考えますと、看護婦になる道、養成の面から考えますと、准看から看護婦になるよりも初めから高等学校を卒業して看護婦になった方が養成の経費ではずっと安いんじゃないか。これは前にも伺ったことがあるんですが、それは確かにそうだと。  それからまた、どちらかといえば看護婦の方が定着率がいい。そして、そういう意味では専門職として活躍し得るというような面もあって、それによって、さっき保険局長もおっしゃいましたけれども、例えば寝たきりの人が起きられるようになるとか、あるいは在院期間が短くなるとかというような患者のサービスに直接つながるようないい面もあるんじゃないかという主張もございます。  両面ございますけれども厚生省は一体これからどのような考え方で今後の看護政策を進めていかれるのか、伺いたいと思います。
  34. 谷修一

    説明員(谷修一君) 看護婦と准看護婦の割合については先ほど申し上げたとおりでありますが、今先生お話しになりましたことについては、幾つかの研究的なものがございます。  我が国においても平成八年に厚生科学研究の中で看護サービスと経済的な評価というようなことで研究をいたしておりますが、看護職員数が同じであっても、例えば看護婦比率が高いという場合に在院日数が短くなるといったようなデータも出されております。ただ、これにつきましては今後引き続き研究をしてもう少し深めていくという予定にしております。  また、アメリカにおきましてはこういったような調査研究がかなり以前から行われておりますが、米国におきます調査では看護婦の数をふやす、あるいは看護婦の質を高めるということによりまして在院日数が短縮されるとか、あるいは患者の満足度が上昇するといったようなことで、結果的に医療費が節約をされるんじゃないかといったような報告もございます。  そういったようなことで、最初に申しましたように、我が国ではこういったような研究はまだ必ずしも十分進んでおりませんが、今後とも引き続きこういったような研究の報告を踏まえて看護婦の質、看護の質を高めるということに努めていきたいというふうに思っております。
  35. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 先日、アメリカで心臓移植をしてきた青年の話を聞きました。アメリカで心臓移植をしましたら五日目で退院したという話でございます。そしてもうもちろん今日元気で活躍しておられるわけでございますけれども、仮にこんだふうな医療が行われるようになる、これは非常に患者にとって恩恵でございます。医療費も少なくて済むと思います。しかし、これをやるためには相当質の高いお医者さん、看護のスタッフの方々というものが用意されていたというふうに思います。  今アメリカの例をおっしゃいましたけれども、ぜひ日本でもこういったデータを積み重ねて、本当に質の向上が具体的に患者のメリットにつながるというようなことが出てきたらいいなと私も思っているところでございます。  ところで、まず現職、先ほど四三%まだ准看護婦がいると。四十万以上の准看護婦がいる。この方々を、こういうふうなことで、看護婦を充足していこうという方向の中で、何とか早く看護婦にしようじゃないかという話がずっと前から出ていて、これは自民党の中でも相当力を出して早くその制度をつくってほしいということも言っていたわけでございます。厚生省も、進学のための通信教育を認めようということになって、八年でしたか、たしかそういう制度を認められたと思います。ところが、余りにも基準が難しいものですから、一校も開いていない、何の動きもないというようなことでございます。  しかし、やはり今のお話のように、看護婦制度をもっと進めなきゃいけないということになりますと、この方々に何とか看護婦になる道を開いてほしい、もっと拡大してほしい、実効の上がる形でやってほしいということが、これはもう現場の方々からも非常に大きく要請が出されているわけでございまして、このことに関してはさっきの准看制度検討会の中でも合意が得られているはずでございます。  私どもも、そのことが、せめてこちらの方が早く進まないかと思っているわけでございますけれども、一向にその検討が進められたという話を聞いておりません。一体この辺がどうなっているのでしょうかということをお伺いしたいのでございます。
  36. 谷修一

    説明員(谷修一君) 准看護婦から看護婦への二年課程の教育課程の問題につきましては、専門家にいろいろ御議論をいただいて平成八年に通信制というようなことで打ち出したのでございますけれども先生指摘のように、この実習施設の確保、あるいはその内容が非常に難しいといいますか、そういうようなことから現在のところそのことについては進んでおりません。  それで、そういうようなことで、改めて今御指摘ありましたこの准看護婦問題の検討会の中でも、できるだけ教育のレベルを確保しながら准看護婦の方が看護婦の資格を取得するための方策というものを検討すべきということで、具体的には、例えば勤務年数を考慮して実習時間を免除するとか、それから自宅で学習できるようなプログラムを組み込むとかというようなことの提言がされております。  私どもとしては、では具体的にこれをどういうふうにしていくかということについて、関係者とも調整をしながらできるだけ早くこの検討の場を設けて具体的な問題について検討を開始したいというふうに考えております。
  37. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 かなり大規模な形でやっていただくとすると、やっぱり相当準備に時間がかかると思うんです。もうことしも今七月になっちゃいましたけれども予算がとれているはずでございますので、ぜひ早く検討を始めていただきたいというふうにお願いをしておきます。  それから次に、国立病院・療養所の看護婦の問題なのでございますけれども、先日その決算書を見ておりましたら、国立病院・療養所の看護婦の養成費の不用が立っている。少ない予算なのにどうしてこんな不用が立つんだろうと思って調べてみましたら、これがすべて食糧費でございました。  今の予算を見ますと、国立病院・療養所に入っている生徒に食糧費として給食をしているという形になっているわけでございますが、これは実はもう学生は自分たちでお金を払っているんですよ。払っているものが一応国庫に入って、そしてその同じ額が養成所経費として置かれているという格好になっておりまして、これはどうもおかしいんじゃないか。これは前にも私も指摘したことがあるのですけれども、学校の養成の経費の中にそういった食費が入っているというのも時代おくれだし、食費は全部給費じゃなくて、学生が自分たちで払っているわけでございますし、それで不用がある。なぜ不用があるのかといったら、自分たちがもう現場で業者と契約をして、そこに国費を入れないで自分たち運営をしているという形がふえてきたから不用が多くなっている。  たしか五〇%以上不用が出ているわけですね。そうしますと、現場の要求としてそうなんじゃないかなというふうに思うんです。確かに七百幾らで三食食べさせるのは大変なことかもしれませんけれども、それに国費が出ているわけでも何でもありませんで、これは養成費として少し整理するべきじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでございますか。
  38. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) まず、国立病院・療養所の附属看護学校の学生さんに対する給食費は、現在、学生さんから材料相当額を徴収いたして、そして予算として計上して施設みずからが給食を提供しているというシステムがございます。しかしながら、最近は、今先生がおっしゃられましたように、学生さんの嗜好がいろいろあるということ、それから施設側の方も患者サービス第一ということからなかなか労力としてそこまで回りかねるということで、実際には学生の自治会が外部委託という形で、国立病院の方に給食材料費を払わずに、自分たちが外食産業と契約をして給食をとってそれを食しているという状況になっているということは先生のおっしゃるとおりでござい史して、学生さんの割でいきますと、大体平成八年度で三五%、平成九年度では四〇%の学生さんが実は外部委託で食事をどっていらっしゃるというのが現実でございます。それがふえてきた分だけ実はそのかかる経費が国立病院の中で予算の不用となったということは先生の御指摘のとおりでございます。  それで、ここへ至るまでの過程は先生も御存じだと思いますが、戦後の混乱期、国立病院のベッド数が全病院の三〇%を占めている時代、看護婦さんが非常に必要だと言われている、結核が大変多いそういう時代に看護婦さんの確保ということで、そして外部に委託するような業者の方も育っていない、食べるとすれば病院の中でつくって食べるよりしようがないというところの歴史から始まって、学生さんにもそうやってやってきた。現に、現在でも、例えばらいの療養所であります岡山県にある長島愛生園でも邑久光明園でも、外部に委託しようにも委託する業者は島にはいない、しかし学生さんはそこにいらっしゃるというところは、やっぱり同じように学生さんの食事は提供してあげないことには学生生活も送れないといろ状況のあることも事実であります。  そういうことから、私どもとしては、外部委評の推進という方向先生の御意見どおりだと思っておりますけれども、現在ではまだ外部委託に崩れない地域もあるということから制度上は残すと。しかし、予算額としては、平成六年度あたりは二十一億予算がありましたのが平成九年度では十一億七千万という予算に減額をいたしておりまして、今先生がおっしゃったような方向に動いていくものと思いますし、できるだけ我々としても動かしていこう、このように思っているところ下ございます。
  39. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 大変お世話をよくやってくださってありがたいのでありますけれども、高等学校を卒業した人たち自分たちで生活をするのはもう当然じゃないか。だから、宿舎にむしろ自炊ができるような設備をつくって自分でやらせるというくらいでも本当はいいんじゃないでしょうか。何もできないですべて賄ってもらっている人たちが患者さんに食事の指導なんかできませんよ。やっぱり少し頭を切りかえた方がいいんじゃないかなと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  少し看護婦の問題をいたしましたので、大臣にぜひお願いをしたいんですけれども、非常に前近代的な形もまだ残っている中で、質の向上を図ろうということが同時に動いております。国立病院・療養所の中でもたくさんの看護婦養成を抱えておりまして、この中でリーダーをつくっていくために、今四年制の大学校をつくって、そしてリーダーをつくろうという方向に動いてきていて、これはみんな期待をしているところでございますけれども、今、国立病院・療養所のあり方丸めぐっていろいろな指摘がされておりますが、そういう中で、これがどんなふうになっていくのかと大変心配しているわけでございます。  そのことについての御意見と、それから二十一世紀に向かってということで、准看から正看護婦への移行ということがある程度示されてきたわけでございまして、このことを早く進める方向に動かなければいけないんじゃないかというふうに思いますが、この辺について、大臣、ひとつ御見解をお願いしたいと思います。
  40. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 准看護婦から正看護婦への移行については、看護の質の向上という観点からもこれを拡大する方向で今関係者と調整を進めております。そして、看護の指導者を養成するということも重要だと思っておりますので、この看護大学構想の中で看護教育の一層の充実を目指して、どういう大学であるべきか、またこの看護大学校設立に向けてはどういう理念で学校を運営していくべきか等、いろいろ今具体的な課題等について研究を進めている最中でございます。  御意見等を参考にしながらこの検討を進めて、看護の質の向上と看護の人材確保について今後とも努力を傾注していきたいと思います。
  41. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  労働省にお伺いしたいと思います。  時間がなくなりましたものでちょっとはしょりますけれども平成七年の末に障害者プランというのができまして、かなり計画的に各省力を合わせて進めてくださっていることだというふうに思います。  障害者の福祉の施策はかなり進んでいるわけでございますけれども、訓練だけよくしているけれども、実際問題として地域に働くところがもうちょっとあれば現場での訓練だとか地域にもっと帰れるんだけれどもという例がたくさんございますが、そこがなかなか進んでいかない。そこで、厚生省労働省の施策がもうちょっとうまくつながればいいなと思う人がたくさんいるんですね。  そこで、労働省にお伺いしたいんですけれども、それをぜひ進める方策が何かないかということと、それとあわせて伺っておきますけれども、障害者を雇用するためにいろいろ工夫をしてくださっているわけですけれども、中に、そういう補助金をいただきながら障害者をちゃんと遇していない、障害者のいじめの問題でありますとか、ちゃんとお金を払っていない問題でありますとか、こういった問題が時々出てくる。これは大変な問題でございまして、何も物が言えない雇われている人たち、物が言えない障害者のためにこれもぜひ御配慮いただかなきゃいけない問題だと思うんですけれども、この辺について一言労働省の方からお願いしたいと思います。
  42. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の点でございますが、私どもといたしましては、御指摘のように、授産施設におきまして福祉的就労についている方など就職が特に困難な障害者の方をより円滑に一般雇用に結びつけていくこと、これが今後の重要な課題であるというふうに考えております。  この福祉施策との連携につきましては、さきの通常国会におきまして障害者雇用促進法の改正案を成立させていただいたところでございますが、この改正法案の中で、市町村レベルで授産施設等におきます福祉的就労を一般雇用に結びつける相談・援助、これを一貫して行う障害者雇用支援センター、こういう枠組みがあるわけでございますが、これとして指定できるものに新たに社会福祉法人を加える等の改正を行いました。これによりまして、地域レベルでの福祉部門と雇用部門との連携を強化しつつ、雇用支援体制の充実を図ることといたしております。  今後、この改正を踏まえまして、福祉部門との連携に重点を置きつつ、障害者雇用支援センターの設置を推進し、障害者をその適性と能力に応じて一般雇用につなげてまいりたいというふうに考えております。  二点目の御指摘の点でございますが、大変残念でございますが御指摘のような事故がございました。障害者の方々の自立意識の高まりあるいは多くの事業主の理解努力の結果、障害者の雇用は着実に進んでいるところでございますが、一部の事業所におきまして人権を無視したような悪質な事件、これが起きたことにつきまして私ども大変深刻な事態というふうに受けとめておるところでございます。  このような事件を教訓といたしまして、公共職業安定所で実施しております職場適応指導の一層の強化を図るとともに、福祉機関、教育機関あろいは労働基準監督機関、人権擁護機関等の関係機関と連携を深め、各公共職業安定所単位でこれらの機関を含めた障害者雇用連絡会議を新たに開催いたしましく障害者雇用に関し幅広く情報交換を行う等の対策を講じ、このような事件の再発防止に努めてまいりたいというふうに考えております。
  43. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  労働大臣に最後にお伺いしたいと思います。  高齢者の雇用の問題でございます。六十五歳の厚生年金の支給ということが近づいてまいりました。高齢社会対策大綱でも六十五歳まで継続雇用制度ということを指摘しておりますけれども、実際問題、高齢者の雇用は非常に厳しい状況にございます。  労働省もいろいろなことを努力されておられるわけでございますけれども会計検査院指摘の中で見ましても、継続雇用制度導入奨励金、余り適切に使われていないというような指摘もございます。六十歳になると何か社会的弱者のようなことで、お金を上げて雇ってもらうという形でなくて、働きたい方が適切な機会を得て、むしろ税金を払う立場にいるということがこれから必要なことではないかと思うんです。ちょうど、六十五歳現役社会研究会の報告書というのを読ませていただいて大変心強く思ったんですが、高齢者の雇用の問題について大臣から御方針をお伺いしたいと思います。
  44. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生おっしゃいますように、高齢化かつ少子化社会はもう現実のものと相なっている。しかし、生産人口あるいは労働人口が将来必ずしも明るくないというような中で、人生体験が豊富でかつ職場体験というようなものも多く身についておられる皆様を、労働経済学的な観点のみならず、本人の働く意欲をぜひ発揮していただいて、明るい意欲ある社会を目指すということが労働省の今の目標であります。  そのために、先生おっしゃる六十五歳現役主業というようなスローガンのもとに、実際にはそういう皆さんをどうやって確保するか、そういう皆さんをどうして職場に結びつけるかというような意味合いで、シルバー人材センター全国七百五十カ所、登録人員三十八万というようなことが現実には相なっているところでありますが、これだけでは足らない。六十五歳現役社会をどうやって実現するかという意味合いで、推進会議というようなもので各界の皆様の御意見等を集めまして、ひとつ共通のコンセンサスのもとに、今お話をしたような目標のためにはいかなる手段を講じていくかというようなことで鋭意努力中でありますので、またいろいろ御高見を賜りたい、かように存じております。
  45. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 どうもありがとうございました。
  46. 海老原義彦

    海老原義彦君 自民党の海老原義彦でございます。  本日は、山西省残留者問題というやや細かい問題について質問いたしたいと思います。  戦後五十年という歳月を経まして、あの大戦争の記憶はもう国民の中で薄らいできております。しかし、あの戦争の決算はまだ終わっていないのであります。大蔵省の所管でございますけれども、臨時軍事費というあの戦争のための戦費、この決算すらまだ終わっていない。厚生省の所管の中でもまだ細かい問題がいろいろ残っておるわけでございます。  厚生省は、昨年、さまざまな不祥事が発覚いたしまして責任を問われましたけれども、本来、国民の福祉、社会保障、医療などに責任を負う、国民のための仕事をする重要な官庁であります。今後、その行政の重要性は、行政改革がどうなるということにかかわりなく、ますます高まっていくと思われます。厚生省が今後専らそういった前向きの課題に取り組んでいくためにも、過去の諸問題をこの際すっきりと整理して、安定した状況をつくっておく必要があるのではないかと考える次第であります。  当決算委員会は、まさにそのような目的で行政の問題点をチェックする場ではないかと考えまして、本日は大変細かい質問にわたるわけで恐縮でございますけれども、質問をいたしたいと思います。  まず初めに、技術的なことをちょっと伺いますが、恩給制度の上で厚生省を本属庁とする公務員はどんなものがあるでしょうか。
  47. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 恩給を請求する場合には、公務員の本属庁を経て裁定庁たる総務庁恩給局に請求書類を提出するわけでございますが、この本属庁とは公務員の身分、進退を取り扱う庁の長を指しているわけでございますが、厚生省が本属庁になっているものは、したがいまして厚生省の職員であった者というものになっているわけでございます。ある意味では当然のことかもしれません。  ただ、先生のきょうの問題でございます恩給法に定める旧軍人、旧準軍人、旧軍属については、その身分、進退を取り扱っていました陸海軍省が廃止されましたことから、特例的に人事記録を管理している都道府県及び厚生省が経由機関となっているという実情でございます。
  48. 海老原義彦

    海老原義彦君 おっしゃるとおりでございまして、厚生省の本来の業務は、社会福祉とか社会保障とか公衆衛生、そういったものの向上、増進を図ることを任務とすると設置法にも書いてあるわけでございますが、あわせて設置法の一番先の方に、「旧陸海軍の残務の整理」ということも入っておるわけでございます。  本来の任務に関しましては、厚生省国民のために責任を負う。ところが、本属庁としての仕事、これはいわば任命権者にかわるものであります。任命権者は陸海軍でありますけれども、それにかわるものでありまして、任命権者の責任を果たさなきゃいけない。つまり、各省大臣が各省の職員に対して使用者責任を持っておる、それと全く同じように厚生省は旧軍人軍属に対して使用者責任を負っておる、そういうふうに考えておるわけでございますが、この点について大臣の御見解を伺いたいと思います。
  49. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 旧軍人に対する施策についてどこが責任を負うべきかということについては、私は政府全体が負うべきだと思っております。厚生省だけが負うべきものではないと。そして、厚生省の管轄あるいは所掌している事務についてはやるべきことはあると思いますが、これは戦争責任とも絡んでくる問題じゃないでしょうか。私は、旧軍人に対する施策については、単に一厚生省が全部負うべきというよりも政府全体で負うべきものだと考えております。
  50. 海老原義彦

    海老原義彦君 おっしゃるとおり、旧軍人に対する施策については政府全体で負うべきだと私も思います。ただ、任命権者としての責任、これは厚生省で負わなきゃならない。具体的にどういうものがあるかと申しますと、これは例えば履歴の管理でございます。これは厚生省及び連隊区本部の事務を引き継いだ都道府県、そういったところで負っていくということだろうと思います。そういう意味で、任命権者が退職者に対して負うと同じような責任を負っていかにやならぬ、いわば国の国としての責任ではなくて使用者としての責任は負っていかにやならぬ、こういうことかなと思うんです。  さて、その履歴の管理でございますけれども、旧陸海軍の履歴、いわゆる軍歴、兵籍簿などと言われておるものは、これは大変整備されております。基本的にはよく整備されて、陸軍については都道府県、海軍については厚生省に残っておる。ところが、何分多数の中でございますから、殊に戦争が激しくなってからはいろいろと脱漏があることなども折々見受けられるわけでございます。  こういった履歴の補正とか補完と申しましょうか、そういったことについては厚生省でも従来非常によくやってくださっております。例えば上官等の証明をとって履歴に脱漏しているところを補足していくというようなこともやっておられるように聞いております。しかし、なお不十分なところも見受けられますので、今後一層の御検討をお願いいたしたいと思います。  不十分な一例として今ここへ持ってまいりましたのは、戦争末期でございますが、二年五カ月ほど満州に行っていたけれども、その間兵役から外れておるというような記載になっておったと。これは岩手県の中村林治郎さんという人の話でございます。不思議なことに、その兵役から外れている間に兵長に昇進という記録だけは残っておると。どうも不合理なことで、本人はその間満州に行ったと言って、自分で詳細な履歴をつくって申し立てておりますが、それに相応するものは厚生省に残っていない。こんなような問題もありまして、これ一つじゃない、いろいろと似たようなケースはあると思うんです。  この際、そういったものもどんどん整理していかにやならぬ。早くすっきりした形にして、安定した恩給行政なり、あるいは厚生省の主力は本来国民のための福祉、医療、保健などに向けられるべきでありますので、そういった方に向けていただかにやならぬ。そのためには、この際整理すべきものはどんどん整理して、しっかりとした問題点のない履歴をつくっていかにやならぬと思うわけでございます。  この問題について、厚生省局長で結構です、ちょっと。
  51. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) ただいま先生が御指摘されました事例につきましては現在調査中でございます。  また、一般論的に申しますと、資料の整備は非常に重要なことでございまして、また、客観的な資料から判断して、明らかな脱漏、誤り等がありました場合は必要に応じて履歴を補正するなどしてきており、今後とも適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  52. 海老原義彦

    海老原義彦君 よろしくお願いいたします。  さて、本日メーンテーマとして申し上げたいのは、終戦後、部隊として行動している間に突如全員が軍人の身分を失ったという事例でございます。終戦のときに山西省に駐屯していた第一軍、この戦後の行動について厚生省はどのように把握しておられますか。
  53. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 少し長くなりますけれども、その状況につきまして御説明させていただきます。  昭和二十年九月に日本と中国の間で停戦協定が南京で結ばれたわけでございます。そこで、ただいま先生の御指摘の山西省にありました旧日本軍の支那派遣軍、これは第一軍でございますけれども、この日中の停戦協定に基づきまして中国国民政府山西軍に降伏手続をとることになっていたわけでございます。しかし、当時の山西軍は、中共軍への対抗上、将兵がやや弱いということで山西軍への参加を勧誘したというところもあり、第一軍の将兵の中には残留希望者が当時続出したと聞いております。  しかし、当初から支那派遣軍の総司令部は日本への全員帰還の方針を打ち出していたところでございます。しかし、第一軍の首脳部は情報不足のために混乱した時期もあったわけでございますけれども、昭和二十年の十二月ごろから第一軍の司令官、澄田中将と申されておりますけれども、みずからが全員帰還の方針を各部隊に説明して回ったとか、また次の年の昭和二十一年の一月には、中国国民政府は日本人軍人の徴用は認めないという方針を明らかにするなどをしてきたわけでございます。  さらに昭和二十一年の三月には、南京にございました支那派遣軍の総司令部が、山西省にある第一軍の様子がどうもおかしいということで、総司令部から、当時の参謀でございます宮崎参謀が山西省を訪れまして全員帰還の方針を各部隊へ伝達してまいったわけでございます。この結果に基づきまして、第一軍は五万九千人程度いたわけでございますけれども、その中で当初は約一万人程度が残留希望を持っておりましたけれども、この説得に応じまして帰還するようになったわけでございます。しかし、第一軍の帰還方針に応じず、自己の意思で残留するという将兵が約二千六百名いたわけでございますけれども、これについては現地除隊の措置がとられたものでございます。このほか、山西省にいました一般邦人の方が残留をいたしまして、約三百五十名さらに残留するという形になっております。  その後、情勢は鎮静化しまして、この残られた方々はそれぞれ、山西軍の中に入って戦うという方もいらっしゃいましたけれども、昭和二十二年から三十九年にかけて約二千四百名が逐次引き揚げ、帰還者からの情報によれば約五百五十名の方が死亡したということでございます。
  54. 海老原義彦

    海老原義彦君 そうすると、第一軍の主力が内地に帰ってからなお残留した人は約二千六百人ということでございますね。  この二千六百人の人たちは一体どうして残留ということを決意したんでしょうか。それはどういうふうに把握しておられますか。
  55. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 昭和三十一年に、国会厚生省からそのときの状況について詳細な報告がなされております。  これによりますと、昭和二十年の十二月以降、第一軍の司令官みずからが全員帰還の方針を各部隊に説明してこれを将兵に徹底することに努めるなど、残留希望者に帰還について説得を続けてまいったわけでございますけれども、その説得に応じず残留した者である。ですから、自己の意思で残留したというふうに承知いたしております。
  56. 海老原義彦

    海老原義彦君 自己の意思というのは、どういう理由でそういう意思を固めたかという質問なんですが。
  57. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) これは残った人のそれぞれの事情があるんじゃないのかなというふうに推測されるわけでございますけれども、現在残されている資料からは、あくまで推測の域を出ませんので、そのそれぞれの個別の事情というのはなかなかつかめないんじゃないかなというふうに思います。
  58. 海老原義彦

    海老原義彦君 厚生省でお持ちの資料ではわからないということでございますね。  それでは私の手持ちの資料で申し上げましょう。  残留者は、まず当時の中国側の受降主官、降伏を受ける方の司令官であります中国軍の第二戦区司令長官という名前がついてはおりますが、実はこれ軍閥なんです。もう山西省は独立した軍閥である閻錫山という人が支配しておって、形式的には南京政府の第二戦区司令長官ということになっておった。この人が、先ほど厚生省お話にもありましたけれども、中共軍と対抗するためにぜひ日本の武力が欲しいということでございまして、それで猛烈な宣伝をしたわけです。これが第一の理由でございます。  「残留への理念」というものを、閻錫山の指揮下にあります政治部、合謀社と申しまして、社長は中国人で、顧問に日本人の城野という人が入っている。この城野さんが固めた「残留への理念」というものがあります。これは東京都の沖勇さんという人の手記によりますと、「残留への理念」というのはこういうものであります。  第一点。焼け野が原になった日本は、今、食う米も住む家も働く職場もない。日本の米を食べないだけでも国民が助かり、お国のためになる。慌てて帰ることが果たしてだれのためになるのか。中国、特に山西省は地下資源が非常に多い。この資源開発によって日中両国の復興が促進する。中国の復興に貢献し、日本の工業発展に役立つ各種資源の生産に挺身、時を待って帰国したときこそ、残留者は英雄であり愛国者として歓迎を受けるだろう。  第二点。閻錫山長官は、日本に留学して、日本に精通した陸軍士官学校出身の立派な将軍である。その長官が頭を下げて、廃墟と化した日本に急いで帰るより、どうか戦勝国に残ってくれと頼んでおる。残留将兵の身分や待遇はもう本当にできるだけよくする、そういったことを言っておる。  さらに第三点。万一、閻長官が要請する残留要員数、このときは一万五千と言っていたんですが、一万五千に満たないときは、日本軍が山西において住民を惨殺、放火、略奪、強姦したものとして容赦なく戦犯として捕らえ処刑しても残留の目的は達するのであると、こういうふうな言い方で猛烈に工作をした。これがまず第一の理由であります。  第二の理由は、日本軍がこれと全く一体になって工作をしたと。  和歌山県の杉若久嘉さんという人の手記によりますと、太原の第一軍司令部で開かれた特務団編成会議に出席したところ、山岡道武軍参謀長、山右田清一軍情報参謀らの「残留の理念」と題する講話があった。その内容は、「日本の敗戦によって中国では国共衝突が顕著となり次第に全面化の情勢にある。日本軍がいままで、駐屯していた各占拠地から全面撤収するにあたって、八路軍はその上拠地への国府軍の進駐を阻止するため鉄道や主要道路を各所で爆破したため日本軍民の帰国列車の運行に大きな障害となっている。八路軍よりも劣勢な国府軍に依存していたのでは復員促進は不可能であり、在留邦人および軍の主力を速やかに輸送するためには日本軍が自ら輸送機関を守らねばならぬ。わが軍は一部残留し新編の後衛尖兵部隊「特務団」編成のため作戦命令を下達するに至った。」というようなものであります。  さらに、こういった状況を福島県の相楽圭二さんという人がまとめております。  第一軍首脳は、澄田しょう四郎軍司令官等が閻錫山と通謀し、残留者をもって暫編特務団を編成するため、各部隊長、各兵団高級参謀に指示して、一、残留は祖国復興に役立つ、二、特務団編成と同時に復員輸送が再開する、三、戦犯釈放が実現するなどと強調、部下将兵に対し特務団参加を積極的に勧めたということであります。  なお、この相楽さんの手記によりますと、この第一軍の司令官である澄田しょう四郎さんが、太原から大同へ行く途中、彼が大隊長をしておった大隊本部に一泊した、そのとき、大隊長はまだ残留の意思が決まらぬのか、けしからぬ、部下がせっかく腹を決めて残留をしようというのを覆すことはまかりならぬと言って残留推進を命じたというようなことも言っております。  このようなことで、残留を決意した裏には、日中双方の現地の司令部の強い干渉があったということが言えるわけでございます。  さて、こういった残留希望者を含む部隊に対して積極的に帰還についての指導をしたというお話も先ほどございましたけれども、具体的にはどのようにして指導をされたのか。第一軍司令官が回ったというのは、むしろこれは残留促進のために回ったようにとっている人が帰還者の中には非常に多いわけですけれども、具体的にどういうふうに指導したのかというのは厚生省としてはつかんでいますか。
  59. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 残留者に対する帰還についての指導でございますけれども、まず、先ほど御説明いたしましたけれども、昭和二十年の十二日から第一軍司令官の澄田中将みずからが各部隊に対して全員帰還の方針であるということを説明してまいったということでございます。  さらに第二番目には、当時の支那派遣軍の参謀でございます宮崎中佐でございますけれども、昭和二十一年の三月九日に飛行機で太原に参っております。そして、直接第一軍の首脳並びに先生の引用されました閻錫山にも会っております。閻錫山に対しても全員帰還の方針であるという旨を説明し、これに対して閻錫山も了解したと確認されております。  また、加えまして、それぞれこのような方針を受けまして、第一軍の各部隊において部隊幹部が残留希望者に対して全員帰還の方針説明し、説得を続けたというふうに承知いたしております。
  60. 海老原義彦

    海老原義彦君 澄田しょう四郎司令官は当時戦犯として拘禁されていたんですよ。それが回って自由な説得をできるはずがない。特にその期間許されて、残留についての説得をするということで許されて回ったと、中国側の文献を見ますとそのように書いてあります。私、中国側の文献も見てみました。「河本大作与 日軍山西残留」という、これは「日本帝国主義侵華档案資料選編」の一つでございます。  それから、中華人民共和国最高人民法院特別軍事法庭の審理の記録、こういったものを読んでみますと、中国側でも今の日本政府の理解とは全く違う理解になっております。これは、やはり閻錫山及び現地部隊が共謀して日本軍人を勧誘したものであるというふうに言っております。  さて、その帰還についての説得方法でございますけれども、これは実際にやったようでございます。私の持っている記録でも帰還に関しての説得会というのをやったということを書いてあります。  どういうふうにやったか。兵庫県の倉内実道さんという方の手記によりますと、毎日の訓話に続き、高邁な留用の大義を訴える格調高い誓詞の奉唱、軍紀厳正、意気軒高、全軍帰還まで犠牲的精神をもって大義に任ずることの情熱と使命感をたぎらせて、いわば朝礼のような夜の集会をやったわけでございます。「残留の理念」に関する講話の後、残留者の意思確認が行われる。帰国希望の者は手を挙げろと。このときの言い方は、実は帰国希望のひきょう者は手を挙げろと。それでこの倉内さんは勇敢に手を挙げたんだそうです。そうしたら、二、三日たってから晩、部屋に抜刀した暴徒がなだれ込んできて、おまえは何だ、心変わりしたのかと大声で問責した。これは殺されちゃ大変だと思って黙って、結局加わることに翻意した。こういうような説得方法を続けておったという部隊もあるわけでございます。これは一部の例かもしれません。しかし、ほかにもまだ例がございます、だんだんに御説明いたしますけれども。  さて、そういうようにして残留者が、どうしても主力帰還のときにはまだ残るという者が出てきた。この残留者を現地除隊にした理由は何でしょうか。
  61. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 先ほどから御説明いたしておりますように、昭和二十年十二月以降、第一軍司令官澄田中将みずからが全員帰還の方針を……
  62. 海老原義彦

    海老原義彦君 その点は私の反論を全く聞いていないわけね。第一軍司令官がみずからという話はもうやめなさいよ。  ともかく、現地除隊とした理由は何かと聞いているので、第一軍司令官が説得した話はもう済んだことです。
  63. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 失礼いたしました。  残留希望者についての説得を続けたわけでございますが、これらの説得に応じず残留した者に対しては、当時の陸軍部隊の復員に関する規定がございます。この規定に基づきまして現地除隊の措置がとられたものと承知いたしております。
  64. 海老原義彦

    海老原義彦君 その規定によれば、どういう場合に現地除隊するんですか。
  65. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) この規定は帝国陸軍の復員実施要領細則というものでございます。これの第九条でございますけれども、「外地残留ヲ希望スル者」につきまして除隊を行うというふうになっているわけでございます。
  66. 海老原義彦

    海老原義彦君 残留希望の実態は先ほど申し上げたとおりでありまして、いわば特攻隊、陸海軍の特攻機が出撃するときに乗員を募集する、あれはやはり自発的に志願した者を乗員にして自爆させるわけです、自爆飛行に命令はできませんから。あれによく似ているんです。  これは志願したといっても、それは日本のために犠牲になりましょう、日本再建のために犠牲になりましょう、また、前に帰る人たちが安全に帰れるために犠牲になりましょう、そういう形の志願なんです。  それで、志願したから軍籍がなくなるとはだれも思っていない。志願した人たちは特務団というのに編入されます。その際は軍装を着て、もちろん武器・弾薬も持って、完全軍装で部隊長にあいさつして、何の何がし、転属行ってまいりますということで行く。それで、転属先である特務団はそれを受け入れて日本軍としての規律のもとに行動させる、こういうような流れになっておる。  これがその何たらかんたら規則に書いてあるような状況に当てはまるんですかね。これは全く当てはまらない。大体、どの手記を見ても、武器・弾薬を持って転属していったと書いてある。やめた者に武器・弾薬を持たせるというような軍隊が、少なくとも我が日本軍はそういうことは絶対にない。これは、武器・弾薬を持たされたというその一点だけでも当人は軍人をやめたとは思っていませんよ。  大体、手続として、召集解除という軍人の身分を失うということがあったら、これは今は非常にはっきりしているけれども、昔だってはっきりしていたんです。本人に対する通知がなければ無効です。そういう通知を受けたという人は一人もいない。ここら辺はどう考えますか。
  67. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 当時といたしまして、先ほど引用いたしました帝国陸軍の復員実施要領細則によりますと、最高指揮官が、この場合は第一軍の司令官がこれに該当するわけでございますけれども、これが現地において除隊するという処分をこの規定に基づいて行ったというふうに承知いたしているわけでございます。
  68. 海老原義彦

    海老原義彦君 つまり、そこら辺の検討は何らしていないということでございますね。  今話した流れと少し違うんですけれども、全くそういう問題なしに残留部隊である特務団に移行した人たちの手記もございます。  例えば、群馬県の岡本博吉さんは、私は昭和二十年九月二十日ごろ我が中隊はどこどこに集結、そこで全員が初めて終戦を聞いて太原へ移動した。翌年の一九四六年、昭和二十一年二月、太原へ集結後、初めて我々は特務団の一員であることを知らされた。つまり、第一軍は既に第五独立警備隊を解散、この隷下の独立中隊は全員特務団に編成がえされたということであった。それで、しばらくたってから、帰国はどうなるんですかと聞いてみたら、帰国は軍命による、命令がない限り何とも言えない、今はただ特務団として与えられた任務を遂行することだと中隊長が言ったと。こういったような手記もございます。  そのほか幾つもあるんですね。部隊として行動している間に、いつの間にか特務団になっておったと。何ら帰還の説得もなければ、帰還命令も聞かずにそのまま部隊として行動して、いつの間にか閻錫山軍の一員に組み入れられておったと。こういったような手記はこのほかにもたくさんございます。  そういったような問題、これを厚生省は従来から全く無視してかかっている。残留者はすべて自願であると言っている。また、自願であるから現地における召集解除は当然であると言ってきておる。もし自願でなくて、軍の命令だとか少なくても軍の要請だとか、こう言うと何か問題が生ずるんですか。
  69. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) この問題につきましては、先ほど引用いたしましたけれども、昭和三十一年のときに国会に御報告をしているわけでございます。また、その前後に国会において相当審議も行われているようでございます。また、先ほどから出ておりますいろいろな関係者も参考人として呼んで、国会の特別委員会において審議が行われているようでございます。  したがって、私どもといたしましては、先ほど来御説明いたしていることが、今日それを覆すだけの資料はないんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  70. 海老原義彦

    海老原義彦君 私は、このときの審議の議事編も全部持ってきております。この議事録で見る鳴り、そのような判断が決定的になされるような玉のではない。  この議事録で、参考人を五人、その前のときに四人、合わせて九人呼んでおります。この九人というのはいろいろな階級の方でございまして、一番上は当時の軍司令官澄田らい四郎さん、それからその次が軍参謀長山岡さん。この山岡さんというのは、澄田さんが戦犯拘留中、澄田さんにかわって軍の指揮を掌握した人であります。  この二人は厚生省の今言ったのと全く同じ趣旨のことを言っております。残りの七人は全く違うことを言っている、私が言っていたようなことを言っておる。それを、たまたま二人の方を取り上げて、七人の方は全く無視しておる。これは一体どういうことなんだろうか。  私は、何かいろいろと政治的な問題が派生するんで嫌だ、殊に国際政治的な問題が派生するのが何よりも嫌だと、そういうことなのかなと思うんです。少なくとも当時の時点においては、講和条約締結後とはいえまだ日が浅いときでありまして、日本軍が全面降伏した後、なお武器を持って残留して共産党と戦った部隊がいたなどというのは言いたくないと思うんですよ。だけれども、ここら辺でもう事実は事実として認めなきゃならない。これは幾ら隠したって、中国側の文献では全部それが出ているわけですよ。中国側がもう事実を確認しておるのに、日本側が一生懸命隠すことはないんですよ。  そうすると、事実確認した上で考えていけば、ここのところの召集解除というのは全くおかしな処置だったなと。たとえだれの命によるものとせよ、一部軍閥の命によるものとせよ、ともかく抑留が続いておったというふうに理解せざるを得ないんじゃないかと思うんです。  さて、この関連で最後に一つだけ伺っておきますが、残留者の召集解除の発令を取り消した事例はございますか。あるとすれば、その理由はどういうものなんでしょうか。
  71. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) ただいま先生が言われました召集解除の発令を取り消した事例でございますけれども、現地で亡くなられた方々の現地除隊処分は、昭和三十八年以降個別に見直しまして、現在までに二百六十名について御遺族に公務扶助料等を支給できるような措置を講じております。これは昭和三十一年から三十三年の間の国会における議論を踏まえ、特に御遺族の心情を配慮して特例的に御遺族の援護を行うこととしたものでございます。
  72. 海老原義彦

    海老原義彦君 それは大変結構なことでありますけれども、そういう心情的なもので制度が左右されるというのはまことに不思議なことでありまして、これは根底にはやはりあの召集解除は誤っていたんだと、いろいろ事情があって直せないけれども、まず一番お気の毒な方から直していこうと、そういう考え方だったんだろうと思うんです。その後、直すのがばったりとまってしまいましたけれども、これは全員について同じような措置を考えていただかにやならぬ。  当時、軍司令部の要請があったということは、例えば横浜市の染谷さんが、残留はだれの命令ですかと尋ねると、軍司令部からの要請だと。残留はポツダム宣言や占領軍命令に反するんじゃないでしょうかと質問したところ、受降主管閻錫山の要請であるというようなことであります。  また、軍司令部は各部隊長あてに人事の割り当てを行って、部隊長はその人員をさらに各中隊長に割り当てる、末端の中隊にとっては大変頭が痛いけれども、将校以下四十二名を人選して、その名簿を新編部隊に差し出すというような措置を各部隊でやっておる。これは大分県の村山さんという人の手記でございます。  そういったような残留者の手記を見ますと、皆さん口をそろえて、司令官の要請によってそういった措置をとっていったんだということを言っております。こういった事情を総括して、日本山西会の会長の小野寺多喜夫さんはこう言っております。   残留事件は飽くまで第一軍首脳と第二戦区司令長官の通謀によって仕組まれたもので、この密約「日軍留用」の実行命令を出した第一軍司令官にその責があることはいうまでもない。   第一軍首脳は「密約実行」の障害となっている総軍司令部の「残留不許可命令」をかわすため、まず将兵全員を現地除隊させて軍籍を抹消、残留行動はすべてこれら残留者の意思によって決定、実行されたもので第一軍首脳にはその責任が一切ない旨の筋書を作成、最初から背水の陣敷いた上で積極的に残留工作を推進した。麾下各部隊に対する残留命令実行の徹底を期すため、将兵たちの最も関心事であった「復員促進のため」という大義名分を冒頭に掲げ、次ぎに祖国復興、戦犯免罪のため、あるいは後衛尖兵、犠牲的精神、皇軍の誇り、残留英雄論などを唱えて補則し、もって下部への浸透を図った。 とまとめておりますが、私もまさにそのとおりだと思います。  この第一軍首脳であった澄田さんと山岡さんの二人の証言だけにのっとって今の厚生省の施策が進められておるというのはまことに遺憾なことでありまして、これが直らぬ限り戦後は直らぬということかと思います。何かこれについて御反論あれば伺いましょう。
  73. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) 先ほど来いろいろと御説明をさせていただいたわけでございますけれども、私どもといたしましては、昭和三十一年当時、相当国会参考人質疑だけではなく、また、いろいろな方の証言をもとにして当時の判断がなされたというふうに考えております。  また、当時の説得工作でございますけれども、当初一万人程度の残留希望者がいたわけでございます。しかし、その後説得に応じて激減し、最終的には四分の一程度に減少しているというようなことから見ましても、説得が行われたというふうに感じているわけでございます。
  74. 海老原義彦

    海老原義彦君 他の方々調査もしたというようなお話もございましたが、そういった調査を受けた一人が書いておる手記がございます。これは東京都の伊藤敬介さんですが、昭和二十九年ごろ、「厚生省の援護局から私に「山西残留の件」で尋ねたいことがある、日時に出向してほしいという書状が届いた。」と。そこで、私は名古屋に山岡さんの自宅を訪ね、呼び出しの件を相談すると、山岡さんは開口一番、「その件はわかっている。残留の経緯を聞かれるだろうから、決して誰の強制も命令もうけず、今村方策以下君らが自発的に残った…とだけいってくれ」「澄田閣下も帰国している。もし自分も呼び出され斯様な質問をうけたら同じように答えるから…」ということで、大分そういった工作があったようでございます。  また、もう一人、兵庫県の倉内さんという人は、これは現地での話でございますが、「上官から「この残留は強制によらず自発的なものだ。」「もし他から聞かれてもそう答えろ」と指示された。」と。こういった嫌なものを、強制でなくて自発だといっても、命令に従うことを本分とする軍隊では上から言ってきたものに反するということはできない。その中で、あえて自発的と言ったのは一体どんな意味があるんだろうとその当時考えて、後に厚生省調査を受けることになって、ああ、そういう意味だったのかとわかったというようなことでありまして、また多くの人が本当に残留の大義というものを信じておったと思うんです。自分たちは後衛先兵として国のために残った、だから自発で残ったんだと皆さん答えたと思うんです。そういうようなことでありまして、その自発で残ったということが理由で現地除隊として軍人の身分を失うということ、全くおかしいと思うんですよ。  この件はさらに御検討をいただくことといたしまして、これと似たような件で別の形もあります。  今の件は、記録が不当なために軍人の身分を失ったまま軍務についておったという件でありますけれども、別に、軍人の身分を持たずに、非常に危急存亡の場合でありますので、軍人として訓練も受けている人ですから普通は現地召集を受けて軍人として戦うんですが、これが間に合わなかった。サイパン島に敵軍が上陸したときたまたま軍属として行っていた。軍属というか工員身心で飛行場建設に行っていた人でありますけれども、サイパン島に敵軍が上陸したので、軍人も軍属も一般人もない、みんな銃をとって戦えと言われた。それは当然のことだと。その人だってついこの間までは軍人だったんだからもう一回銃をとりましようということで戦った。それで、玉砕の際に生き残りまして、捕虜になって帰ってきた。  軍人として前に六年ぐらいやっているんですけれども、この捕虜になっている期間などを通算して戦務加算を加えれば恩給がつくんですが、それは認められないと。それは、今までの厚生省の考え方では、現地召集という発令がないんだからと。だけれども、敵が上陸してきて、さあ戦うというときに、そんな事務的な発令やっていられますか。これは発令があるべきだけれども間に合わなかったんだという理解をして同様に取り扱うべきだと私は思うのであります。今言っていたケースは、これは岩手県の後川較一さんのケースであります。  そういったようなことについてどうぞ前向きに検討していただきたいと思いますが、とりあえずまず局長の御答弁を。
  75. 炭谷茂

    説明員炭谷茂君) ただいまの後川さんのケースにつきまして現在いただいておりますので、これについては現在調査中でございます。  ただ一般的に、先ほどのケースで御説明させていただきましたけれども、客観的な資料などから判断いたしまして明らかな誤り等があった場合は必要に応じて履歴を補正してきているところでございます。今後とも適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  76. 海老原義彦

    海老原義彦君 最後に大臣に伺います。  軍人の身分の始めの時期、終わりの時期、始めの時期である召集、終わりの時期である召集解除、こういったものの発令は恩給の基礎在職年とも密接な関係がございまして、これをないがしろにすると恩給がもらえるかもらえないかという境目になるわけでございまして、大きな差を生ずるものでございます。発令の記録が不適正な場合は、実態に沿って適正な運用を考えることが任命権者にかわって履歴を管理しておる厚生省の責任であると考えますが、いかがでございましょうか。
  77. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私は、きょうこの山西軍のお話は初めて聞かせていただきました。戦争が終わった後の日本軍の混乱のみならず、中国において内戦状態、新たな戦いにまた巻き込まれざるを得なかった山西軍の状況等は、今から考えますと想像を絶するような苦難の状況ではなかったかと私は想像しております。  そういう中で、自発的といいながら、実際は当時の状況においてはむしろ半ば強制的な状況も数多くあったと思います。本当にお気の毒であり、戦争の悲惨さというもの、理不尽さというものをお話を伺いながら感じておりましたが、局長等の答弁にありましたように、この山西軍の問題については、既に昭和二十八年から二十九年にかけて実態調査実施されて、昭和三十一年に国会でも報告されたということであります。この国会報告が間違いであれば、また国会で取り上げなきゃなりません。それはもう既に不可能だという結論が出ているようであります。  そういうことも踏まえまして、今の国会報告等当時の実態調査を覆すということは私は困難であると思いますが、個別の案件については、調査の結果その記録というものが明らかに不適正であったというならば、私は今後も直す必要があるのではないか、適切に運用する必要があるのではないかというふうに考えております。
  78. 海老原義彦

    海老原義彦君 前向きの御答弁ありがとうございました。  前に国会で昭和二十九年と三十一年と二回にわたって審議しておる。私は、むしろその審議結果が全然厚生省の行政に反映されていないということに問題意識があるわけでございまして、本日改めて取り上げましたのは、もっとあのときの審議結果を反映してくれと。二十八、九年ごろ行った厚生省実態調査というものは、まだ洗脳が抜け切らない時期に、おれは自発的に残ったと言えば英雄になれるというので自発的に残ったと答えた人が非常に多かったと思うんです。また、当時はまだ恩給権も復活しておりませんから、どうせ自己の利益には何らかかわりない、むしろ名誉が大事であるというので自発的に残ったと。それはもちろん名誉を重んじる軍人でありますから、そういう意味で自発的に残ったんだろうと思いますが、自発的に残るから首にするというのは、これは余りにも国際的な配慮の行き過ぎだと思うんです。今にして、日本が戦後五十年たってきっちりと自立てきる状況になって考えれば、そこまで余計な配慮をする必要はなかったんじゃないかということであります。  そういうことを申し上げまして、お礼を申し上げながら、今後よろしくお願いしたいということも申し上げながら、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  79. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 午前の審査はこの程度とし、午後零時五十分まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      —————・—————    午後零時五十一分開会
  80. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成七年度決算外二件を議題とし、厚生省労働省環境庁及び環境衛生令融公庫の決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  81. 加藤修一

    ○加藤修一君 平成会の加藤修一でございます。  平成七年度決算に関連して質問をさせていただきたいと思います。  地球温暖化防止対策ということで、「平成七年度地球温暖化防止行動計画関係施策実施状況等」ということで発表されておりますけれども、その総括表。予算執行額につきましては、全体で十一兆六千四百二十二億円、二酸化炭素排出抑制対策としては九兆三千三百四十二億円、その中で二酸化炭素排出の少ない交通体系等の形成については八兆六千八十二億円という形で使われているわけですけれども、どうもこういったさまざまなお金が使われているにもかかわらず、実は平成六年度のCO2の排出量は一九九〇年度水準に対応した形で七・二%の増加、あるいは一九九五年度、平成七年度については八・三%のプラスの排出量であるということで、何ら改善の余地が見られないなという感じがしているわけでございます。  それで、私は、六月十八日に参議院議長から内閣に提出いたしました地球温暖化防止対策の質問主意書、これが一週間の期限内に提出できない、結局、約四週間ぐらいかかるということで七月十三日に提示するという通知を受けているわけ下すけれども、なぜこれがおくれるのか、あるいけなぜ七月二十三日なら提出できるのか、その辺についての理由をまずお伺いしたいと思います。
  82. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 御指摘の質問主意書につきましては、確かに六月二十五日が期限でございますが、まことに申しわけないことでございますけれども、たまたまそのころデンバー・サミット、引き続いての国連におきます環境開発特別総会、そういった事務がふくそうしておりまして猶予をお願いせざるを得なかった点、ぜひ御理解をいただきたいと考えております。
  83. 加藤修一

    ○加藤修一君 それは余り関係のない話じゃないでしょうか。  ベルリン・マンデートの、アドホックグループこれが七月二十七日から八月七日に開催される予定ですけれども、これとは何ら関係ないですか。その辺どうですか。
  84. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 確かに七月末からアドホックグループ、開催される予定でございますけれども、質問主意書についての回答の準備がおくれております理由は、先ほど申し上げたとおりデンバー・サミット等のために事務がふくそうしていたということでございます。
  85. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっと答弁としては私は納得できないんですけれども、そういうお話だと。  もう一度答弁をお願いします。
  86. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 質問主意書の回答作成に当たりましては、私ども慎重に部内で検討する必要がございます。それから行政府側、部内の手続でございますけれども、法制局にも審査をしていただくという手順がございます。そういったように慎重かつ正確にお答えする必要がございます関係上、六月下旬の時点においては、大変申しわけございませんけれども、ほかの事務との関係上十分対応し切れていなかったということでございます。
  87. 加藤修一

    ○加藤修一君 こういうことに関連しては、ほかのケースについても同じ考え方に立っているわけですか。
  88. 朝海和夫

    説明員(朝海和夫君) 質問主意書につきまして、一般論としてもちろん期限内にお答えするように行政府側として対応しているわけでございますけれども、いろいろな状況によって若干の期限の猶予をお願いしているということは従来からも幾つか例があったかと承知しております。
  89. 加藤修一

    ○加藤修一君 要するに、何に時間がかかるかよくわからないんですよ。本当にわからないんです。ともかく至急出すように要求しておきたいと思います。  その質問主意書の中でも述べているわけですけれども、地球温暖化防止対策にかかわってくる事務局との関係で、要するに通知を日本はしなければいけないということで、ことしの四月十五日までに提出することになっているいわゆる第二回目の日本の報告書、これいまだに提出されていない。期限から考えていきますともう三カ月近くになるわけですけれども、一体これはいつになったら提出できるのか、なぜおくれているのか、その具体的な理由を明確に明快にお示ししていただきたいと思います。
  90. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  気候変動枠組み条約に基づく第二回目の通報の作成につきましては、昨年より関係省庁と協力をして作業を進めてきておりまして、相当部分については既にまとまっているところでございますが、温室効果ガスの排出削減のための個々の対策につきまして、それぞれの二酸化炭素などの排出量の削減効果の見積もりでございますとか、あるいは各種対策の効果を見込んだ将来の全体としての排出見通しなどについてなお詰めの作業が残されているところでございます。  環境庁といたしましては、可能な限り早期に取りまとめをいたしまして、これについて国民からの意見を求めた上で条約事務局に提出をしたい、このように考えているところでございます。
  91. 加藤修一

    ○加藤修一君 詰めの作業の中には、関連官庁も中に入るわけですか。
  92. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) 温室効果ガスの排出あるいはその削減対策につきましては、多くの省庁が関係をしておるわけでございますので、現在これら各省庁との詰めの作業を急いでいるところでございます。
  93. 加藤修一

    ○加藤修一君 ということは、その関連省庁との間はまだ確定していない、相当おくれているということですね。三カ月以上にわたっておくれる可能性があるように私なんかは判断してしまうんですけれども、その辺についてはどうでしょうか。
  94. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) 先ほど来申し上げておりますとおり、排出削減効果の見積もり、あるいは将来の排出見通しなどについて現在鋭意関係省庁との詰めの作業を急いでいるところでございまして、現在の段階で具体的にいつまでにということを申し上げる段階ではございませんが、相当程度おくれておりますので、私どもとしては可能な限り早期に取りまとめをして条約事務局に提出をしたい、このように考えております。
  95. 加藤修一

    ○加藤修一君 詰めの段階で関係省庁というのはどこですか。具体的に一番きついという官庁はどこになりますか。
  96. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) 先ほど来申し上げておりますとおり、温室効果ガス、二酸化炭素などの排出とその削減対策につきまして多数の省庁が関係しておりまして、それらの省庁とのそれぞれの御関心の点について詰めの作業を急いでいるところでございます。
  97. 加藤修一

    ○加藤修一君 答弁になっておりません。要するに、どこの省庁であるか、一番きついところはどこですか。詰めをする場合にどこが一番きつい下すかという話なんです。
  98. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) 繰り返しで恐縮でございますが、多数の省庁が関係しております。どこが一番きついとか、そういうところは申し上げることは大変難しいわけでございまして、関係する省庁と現在詰めの作業を急いでいるところでございます。
  99. 加藤修一

    ○加藤修一君 もう全然答弁になっていないと私は思います。要するに報告書を、世界全体の中外報告を提出すべきは何カ国になるわけですか。それと、その中で提出を行った国、それは何カ国になりますか。国名もお願いします。
  100. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) 条約上提出を要請されております先進国である条約の締約国は合計三十六カ国でございます。既に現在までにそのうちで提出をいたしましたのは十カ国でございまして、国名を申し上げますと、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、オランダ、ニュージーランド及びスイスでございます。なお、今申し上げました十カ国のうち、フランスにつきましてはまだ将来の排出、吸収の見通しは提出をされておりません。
  101. 加藤修一

    ○加藤修一君 第三回の地球温暖化防止会議、これが京都で行われるようになっているわけです。要するに、世界に責任を果たすという意味では非常に大きな責務があるということなんですけれども、議長国をやるというわけですから、真っ先に私は、先ほどの通知なんかもそうですけれども、提出すべきである。私は、そういった意味環境庁の責任、環境行政のトップの責任というのは非常に大きいと。どういう責任をとるつもりですか、この辺について。長官、よろしくお願いいたします。
  102. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 気候変動枠組み条約に基づく第二回目の通報につきましては、委員指摘のとおりでございまして、これは四月十五日生でに提出することが要請をされているというものでございます。  第三回の締約国会議の開催国としての立場を考えますと、的確な内容の国別報告書とすることも重要でありますので、そのような観点から作成作業も進めてきているところでもございます。  この国別報告書案の構成につきましては第一章から第九章までありまして、その中で、第三章の政策、措置、第四章の温室効果ガスの排出、吸血見通しという点についてはまだ調整が終了しておりません。しかし、その他については英訳作業を進めているところでもございます。  既にもう部長の方からも申し上げましたけれども、二酸化炭素の排出量の将来見通しなどに関しましてはかなりの詰めの作業が残されているということでございまして、環境庁といたしましては、この部分の取りまとめをできるだけ急ぎまして、そして条約事務局に提出することで日本におきますこの問題についての真剣に取り組む姿勢を示さなければならないと考えているところでございます。  今この案を取りまとめるに当たりましては、各省庁間の調整も必要でありますし、さらに国民の皆様方の御意見も伺うという手続も必要ではないかと思っておりまして、ちょうど八月に開催されますAGBM、その会議に向けましてできるだけの作業を進めていく準備をしている最中でございます。
  103. 加藤修一

    ○加藤修一君 環境行政のトップとして、本当にその辺の責任を明確にしていただきたい。要するに、必死の思いでやっているんだということぶやっぱり我々の方には伝わってこないような感じがするんです。  私は、その環境行政のトップとしての責任ということをちょっと考えていきますと、質問通告はしておりませんが、環境アセスメント法案の審議の最中に諌早湾の視察の関係も出ました。ほかの委員からも視察に行くべきだという話も出ましたけれども、これ最近の話を聞いてみますと、諌早湾の方に行く予定になっていると私は伺っていますが、環境庁長官としては、これはあれですか、予定になっているわけですけれども、これ必ず行くというふうに考えていらっしゃいますか。この辺はどうですか。
  104. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 諌早湾の問題につきましては、通常国会におきます環境委員会などさまざまな分野でいろいろと御指摘もいただいてまいりました。いろいろ物理的、時間的な制約もありまして、なかなか行く機会がなかったわけでございまして、そのかわりできるだけ専門家を派遣いたしまして、農水省と環境庁との連絡協議会もつくりまして、いろいろと検討をし実務に当たらせているところでもございます。  しかし、非常に長い間の経緯がありますし、また現場を一度は見ておきたいという考え方は前から持っていたところでございます。最近少し時間がとれそうな感じがいたしまして、今週できればと思って現地に対しまして、その状況について一応事務方に対しまして日程などの打診をしてまいったところでございます。しかし、余り急な日程であったり、また無理なスケジュールになりそうでございまして、これはちょっと無理ではないかということで、今週の視察につきましては一応困難であるというふうに判断をしたところでございます。  しかし、いずれにいたしましても現地を視察したいという考え方は持っておりまして、これからも機会を見ましてその努力を続けていきたいと思っているところでございます。
  105. 加藤修一

    ○加藤修一君 聞くところによりますと、十一日に現地に入って、十二日には調整池の視察をするというふうに伺っているわけですけれども、どうもこれ横やりが入って中止せざるを得なくなったというふうにも聞いているわけですけれども、この辺の事実はどうなんでしょうか。
  106. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) これはいろいろ見方、考え方はあるかと思いますけれども、実際問題として、客観情勢とかいろんな状況をさらに詰めた時点で無理なことであるというふうに判断したところでございます。これは、時間的な問題もありますし、余りに今週のあしたのあさってのというふうな、そういうことはちょっと無理なことであるというふうに判断をいたしまして、一応先に延ばさせていただきました。
  107. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほどから質問していることについては、何か明確じゃないと思っているんですよ。言葉じりをとらえるわけじゃないですけれども、答弁の中で、時間の余裕があるので指示をしたとか、そういう話がありました。後では、今度、時間的な余裕がないのでという、ちょっとその意味がつながらない、そういった意味では。要するに農水省の横やりが入ったわけですね、行ってもらっては困ると。どうなんですか、この辺の具体的な事実というのは。
  108. 岡田康彦

    説明員(岡田康彦君) 私が大臣から諌早視察が可能かどうかの検討を命ぜられたもので、そこで私の方からお答えさせていただきます。  私が事務的に農水省及び長崎県に対しまして、大臣が政務で週末の動かれる途中で時間を割いた場合に受け入れ可能かどうかということについて打診をいたしました。農水省及び長崎県の双方とも前向きに検討いただいたのですが、非常に日程がタイトであった中での調整だったものですから、今大臣から申し上げましたように、今回はちょっと窮屈過ぎてどうにもならぬということで延期したということでございます。
  109. 加藤修一

    ○加藤修一君 新聞には明確にこういう形で書いていますよ。要するに、現地視察の予定を農水相に話したときに、藤本農水相は、検討させてほしいと、そして視察を歓迎しない意向を示したと。あるいは出身地の代議士であります久間防衛庁長官は、ようやく静かになったのだからと暗に視察中止を要請したというふうに新聞には書いてございます。報道されております。  これはどうなんですか。環境庁長官が行く行かないということについて他省庁が明確に行くなというようなことを言って、それで長官は行かない、中止にしてしまうというお考えですか。だれが決めているんですか、長官の行動を。
  110. 岡田康彦

    説明員(岡田康彦君) 先ほどもお答え申し上げましたように、農水省と長崎県の方に私の方から打診をいたしました。双方とも前向きに検討いただきました。そのことについては明確に申し上げられます。  ただ、先ほども申し上げましたように、政務の途中時間を割いてということで、もともと相当窮屈な中で何とかならぬかというようなスケジュール調整の中での話だったものですから、いかにも窮屈だということで今回は無理だという結論に達したわけでございます。
  111. 加藤修一

    ○加藤修一君 私が言いたいことの大きな点は、要するに主体的に環境庁がどうもやっていないと思うんです、そういうことも含めて。それは厳しい非常に客観的な状況というのがいろいろあって、地球温暖化の問題に関しても難しい局面があることは私もわかりますよ。しかし、環境アセスメントの審議の最中もそうですけれども、人ごとであるような表現があったり、それは私一人では判断できませんとかそういう話があったり、どうも十二月のCOP3の会議を責任を持ってやっていくという上では非常に主体性に欠けるな、そういう印象を持たざるを得ないと、そういうことなわけですけれども、要するにその辺の積極的な姿勢を私は示していただきたいと思います。  それでは、時間がございませんから次の質問に行きます。  先ほどの温暖化の関係で、要するに提出した用のCO2の将来予測、これについては環境庁はどのように認識して評価しているか、よろしくお席いしたいと思います。
  112. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答え申し上げます。  既に先進締約国から提出あるいは公開をされました第二回目の通報における二酸化炭素排出量がニ〇〇〇年時点でどのようなものになるかという見通しを見てまいりますと、予測をそれぞれの国で行われるに当たりまして前提とされている対策の内容あるいは対策の程度はさまざまでございますけれども、ざっと見てまいりますと、イギリスあるいはドイツのように一九九〇年レベルから五ないし一〇%程度の削減を予測している国がある一方で、ノルウェーは二〇%以上の増加というようなことでございますし、米国はまだ提出はしておりませんが、先ほどそれで申し上げませんでしたが、既に国民に公開をしております。この米国を見てまいりますと一三%ぐらい増加をする、あるいはスウェーデンは四%増加をするといったようなことで、一九九〇年レベルよりも増加するというふうに予測している国もございます。  こうしたさまざまな予測結果の国際的な評価は、気候変動枠組み条約に基づく詳細審査によって行われることになるわけでございます。しかし、どのように認識し評価しているかというお尋ねでございますので、私ども入手済みの報告書を概略分析したところによりますと、予測の前提となっております政策、措置内容やこれらをどの程度実施するか、こういった点につきましては、現在既に実施されているもの及び実施することが決定されているものに限ってこれを見積もっているというケースが多いわけでございますが、これらに加え現在検討中の施策まで織り込んでいるケースがオランダなど一部に見られております。  いずれにいたしましても、こういったさまざまな予測が行われておりますので、統一した共通の観点からの評価を行うことはなかなか難しい点がございます。しかし、ただいま例を申し上げましたとおり、少なくない数の国々で現行の条約上の努力目標でございます温室効果ガスの排出量を二〇〇〇年までに一九九〇年の水準に戻すためには、依然としてなお一層の努力が必要な状況にあるものというふうに受けとめているところでございます。
  113. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、デンバー・サミットの成果についてお尋ねしたいと思います。  環境庁と通産省にお尋ねしたいわけですけれども、デンバー・サミットにおける地球温暖化防止の取り組みの結果について多少御質問ということになります。  橋本総理とドイツのコール首相が会談したわけですけれども、橋本総理はドイツの二〇一〇年までのいわゆる一五%削減提案、これについては非現実的であると、そういう応酬をしたというふうに伺っていますが、防止対策については非常に前向きの姿勢を示しているドイツなわけですけれども、これは京都会議を開催する国の日本が言うべきことではないように私は思うんですけれども、その辺はどういうふうに理解していますか。
  114. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  六月二十日、米国デンバーにおきまして橋本総理とコール首相が会談を行いました。この席で両国の提案の内容などについて意見の交換がされたわけでございますが、総理からは、EUの提案のうち、すべての先進国が一律に一五%削減するという点については実現可能性観点から野心的に過ぎるのではないか、またEU内部でのみ各国の個別の事情を反映した目標を設定するという点につきましては公平な目標の設定とは言えない、かつEU内の責任の所在がわかりにくいということなどを指摘したものだというふうに承知をしております。  こうした総理の御指摘の背景にある政府の考え方について申し上げますと、京都会議での目標の合意に当たりましては、現行条約に基づく二〇〇〇年目標についてもごく一部の国を除いて実現困難な状況にあるという現実を踏まえ、このような同じ失敗を繰り返すことがないように、温暖化防止上の実効性はもとよりでございますが、それとともに実現可能性観点も重視すべきだというふうに考えているところでございます。また、非現実的な義務を負うことを各国に求める余り京都会議での合意が流れるようなことも避けなければならない、このように考えているところでございます。  いずれにいたしましても、地球温暖化を防止する上で京都会議における合意は極めて重要でございます。そうした合意に至る過程では関係各国でなお意見の隔たりがある現状でございますので、そうした各国間で突っ込んだ議論を行い、お互いの意見理解することが必要なことというふうに考えている次第でございます。
  115. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) ただいま環境庁の浜中部長から御答弁されましたとおりでございまして、私どもも全く同じ認識をいたしてございます。特に、EUの提案につきましては、これはいわゆるEUバブルという問題でございまして、これからの交渉を進めるに当たりまして非常に深刻な問題をはらんでいる提案でございます。  やや繰り返しになりますけれども、EUの域内では差別化を認める、例えばポルトガルのような国には二〇一〇年に向けて九〇年比四〇%もふえるというそういう考え方を認める一方で、外に対しましては一律に一五%削減を求めている点。あるいはまた責任関係、これはこれからの条約は法的拘束力のある条約を目指しているわけでございますけれども、この提案についてだれがどのような責任を負うのか。EUの加盟国とEU委員会との間の責任関係はどうなるのか。あるいはまた、特にこれからの中長期の問題を考えますと、発展途上国の取り組みを私どもといたしましていかにエンカレッジしていくかということが大事でございますけれども、先進国の一員でございますポルトガルに四〇%の増加を認めて途上国の取り組みを求めるということが果たしてできるのかどうかといったような問題点について、総理の方から御指摘をされたというふうに承知をしております。
  116. 加藤修一

    ○加藤修一君 デンバー・サミットで採択しました八カ国首脳による共同宣言、その中における気候変動について伺いたいわけです。  ステートメントの中で、「我々は、二〇一〇年までに温室効果ガスを削減する結果をもたらすような意味のある現実的かつ衡平な目標にコミットする意図を有している。」と、こういうふうになっているわけですけれども、これを受けて日本政府としては、意味のある現実的なあるいは公平な目標というのは、先ほどの答弁と多少重なり合う駅分もあるかもしれませんが、どのようにこの辺はとらえておりますか。
  117. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  デンバー・サミットのコミュニケでは、ただいま委員から御紹介がございましたような地球温暖化対策についての内容が合意をされているところでございますが、この中で「意味のある」ということにつきましては、地球温暖化防止の目的を達成するという観点から意味のあるものでなければならないというふうに受けとめているところでございます。  一方で、この目標が法的拘束力を持ち、各国により必ず達成されなければならないものであるということを考えますと、各国それぞれが最大限に努力すれば実現可能なものである必要がある。また、各国の合意を得ることやその努力を促すためには削減目標は各国間で担う対策の努力負担の点でバランスのとれたものでなければならない、このように考えております。「現実的かつ衡平な目標」という点につきましてはそうしたことを言ったものだというふうに受けとめているところでございます。
  118. 加藤修一

    ○加藤修一君 環境庁長官にお願いしたいんですけれども、デンバー・サミットで採択した共同宣言の気候変動について、いわゆる一五%削減のドイツ、それから日米はどっちかというと実現可能で柔軟な対応を求めていくと。最終的にそういった共同宣言の中身は三国のある意味で玉虫色の決着になったというふうに言われているわけです。  ドイツのコール首相が記者会見で、日本の姿勢には驚いた、そういうふうに述べているわけです。その後、いわゆる京都会議の議長国としての日本の調整責任はこれは厳しく問われますよと、そういう発言の内容も伺っているわけです。  また一方、新聞では、日本は産業界の負担に配慮する通産省の方針を反映しており、いわゆるアメリカの柔軟路線にくみした、そういうような表現も見かけるわけです。  環境庁は、十二月のCOP3の会議が日本で開催されるわけですから、今までの経緯を考えていきますと、いわゆる会議誘致、そういった面で難色を示していた通産省、それを押し切って日本で誘致が可能になったわけですけれども、そのぐらいの気迫でやってきた割にはどうもその後のフォローがうまくいっていない、そういう印象を受けるわけです。通産省に負けないで明確な目標を打ち出すべきである、あるいはそういった意味では政治家のリーダーシップが大きく問われているわけです。  大臣が直接通産大臣に説得するとかそういった気持ち、その辺の踏み込んだ積極的な姿勢、そういう決意はどうでしょうか。
  119. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 環境対策のあるべき姿を提言し、そして関係各省庁と積極的に協議をして、広く関係各方面の連携協力のもとに対策をしなければなりません。そして、実効の上がるように推進していくことが環境庁の重要な責務であると自覚しているところでございます。私も環境庁長官として先頭に立ってその対策の推進のために努力をしてまいりたいと考えているところでございます。  国際会議などの場を通じまして外国からもいろいろ指摘もあったようではありますが、二〇〇〇年以降の二酸化炭素排出量の削減目標につきましては京都会議での最も重要な合意事項一つでございますので、慎重に時期を選んで我が国が適切な目標を提案して、そして各国の合意形成を促す、そういうことが重要であるという考え方のもとで取り組んでいるところでございます。  今までもいろいろとやってまいりましたけれども、今後も関係省庁に積極的に働きかけをいたしまして、まず日本国内、政府部内の検討一つの目標に向かって加速させていきたいというふうに考えているところでございます。
  120. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、国連環境特別総会についてお尋ねしたいわけですけれども、この総会で橋本総理は演説しておりますけれども、いわゆる気候変動が人類の生存に直接かかわる深刻な課題である、COP3についてはぜひ成功させなければいけないと、そういうふうに述べて各国に協力を呼びかけております。  環境庁として、あるいは通産省としてもそうですけれども、何ができたら成功でどうなったら不成功なのか、具体的に述べていただけませんか。日本の常識は世界の非常識なんという言葉もありますけれども、私はそれにくみするわけでは全くありません。しかし、成功の中身と不成功の中身というのはどういうふうに今の段階で押さえていられるか、明快な答弁をお願いしたいと思います。
  121. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  現行の気候変動枠組み条約における先進締約国に関する約束は、目標が示唆的なものでしかございません。また、目標を達成するために各国が講ずべき政策や措置の規定が抽象的であるといったことなどのために、現行の条約のままでは地球の温暖化を危険のない水準にとどめるためには不十分であると考えております。  こうしたことから、私ども環境庁といたしましては、こうした現行条約の不十分な点を改め、京都会議におきましては、地球温暖化防止上実効性があり、現実的でかつ公平な目標が具体的な数値を含んだ形で法的拘束力のあるものとして取りまとめられることが重要だと、このように考えているところでございます。このような地球温暖化を着実に防止するための仕組みを含んだ国際的約束を取りまとめることによりまして、実効ある形で温暖化防止対策を前進させてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  122. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) ただいまの浜中部長の御答弁のとおりでございまして、基本的にこの条約交渉はなかなか……
  123. 加藤修一

    ○加藤修一君 じゃよろしいです、時間つぶれます。
  124. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) そのとおりならよろしいそうですから、結構です。
  125. 加藤修一

    ○加藤修一君 質問をちょっと飛ばしますけれども、今回この国連環境特別総会の中で最終的に新しいアジェンダ21がつくられたわけです。その中のパラグラフ四十二だと思いますけれども、顕著な削減というところがございます、シグニフィカントリダクションというところですけれども。この表現について先進国の中でただ日本だけが反対というふうに私は伺っております。最終的には挿入されたというふうにも聞いておりますけれども、国際会議の中ではたばたなことをやってしまった、あるいは国内で対立している意見が集約されない形でそういうところで醜態を演じたというふうに書いている新聞もございますけれども、その辺についてどうでしょうか。  要するに、顕著な削減ということについて一国だけが反対というふうに言われているわけですけれども、その経緯について具体的にお話ししていただきたいと思います。
  126. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  国連環境開発特別総会でございますが、これはベルリン・マンデート交渉とは異なるものでございまして、京都会議での合意の具体的な内容を交渉する場ではないということ、それからこれらの交渉における多くの国の見解はまだ固まっておりませんで、その結果を予断することは適切でないということが今回の特別総会の参加者の共通の理解でございました。  こうしたことから、我が国政府といたしましては、この特別総会では今後の交渉の大枠となる考え方を記述すべきという方針のもとに、デンバー・サミットで合意された点を議論のベースといたしまして採択文書の取りまとめ作業に臨んだものでございます。  この取りまとめ作業におきましては、EUが相当な削減、先ほど委員は顕著な削減というお言葉をお使いになられましたが、私どもシグニフィカントという意味につきましては、一応相当な削減というような意味でとらせていただいております。英語国民に聞きますと、これはミーニングフル、意味のあるというような程度の意味であるというふうに言っておりましたけれども、産油国がそういう削減を主張いたしました。  それから、産油国が先進国の対策により産油国など途上国に生じ得る経済的な悪影響への配慮などを新たに加えることを主張いたしましたが、職が国といたしましては、現在各国の間でさまざ主な論点につきまして依然意見の隔たりが相当あろ現状におきまして、こうした点を加えますと別の立場からそれぞれの意見を反映させようという音図に基づくさらなる追加的な意見を呼び込み、取りまとめが非常に困難になるという認識を指摘したものでございまして、最終的にこのシグニフィカント、相当な削減という表現に反対するという趣旨ではなかったわけでございます。  しかしながら、特別総会の最終日六月二十七円の段階に至りまして、協議の最終段階でございますが、残された時間が極めて限られるに至りまして、相当な削減という用語やその他の提案を加えたとしても追加的な意見を呼び込んで議論が拡散するおそれがないということがはっきりしたために、我が国としてもこの表現に最終的に合意をしたものでございます。
  127. 加藤修一

    ○加藤修一君 それじゃ、事実確認をさせていただきたいわけですけれども、要するに、その総会の中で最終的な行動計画、アジェンダをつくっブいく中で、日本案とEU案の折衷案がまとまりかけた、しかし日本一国が反対して結果的に採決できなかった。今の答弁にありますように、最終的にはシグニフィカントが入ったわけですけれども、夜中まで混乱したとか、あるいは一時はCO2削減のメッセージがすっぽり抜け落ちるような状態まで来てしまったときもあったと。いわゆるまとまりかけた折衷案が日本の抵抗によって結果的に極めて難しい状況に陥ったこともあったわけです。  その理由として、何かいろいろと言われていることが、その場で日本政府代表は決定することができなくて、橋本総理の指示を仰ぐまで待ってほしいとか。そういったことを考えていきますと、事前の段階で、日本の意思決定の中身は要するに削減意思のなさを明確に物語っているというような報道もされているわけですけれども、この辺の流れというのはどうなんでしょうか、事実確認をさせていただきます。
  128. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答え申し上げます。  御指摘のパラグラフ四十二につきましては、最終的にまとめられる前の段階におきまして、御指摘のとおり、一たんは調整が大変困難な状況に立ち至ったことは事実でございます。  その理由といたしましては、相当な削減というEU提案を入れるかどうかという点もございましたが、もう一つ、先ほど申し上げましたとおり、産油国が産油国などに生じ得る経済的な悪影響への配慮という点について詳細に明確に記述をすべきであるという点が提案され、これについてどのように対処すべきかをめぐって相当の議論がございまして、対立が激しく見られた。先進国と途上国の間、途上国といいましても一部の産油国でございますが、これらの間の激しい意見の対立が見られた。  こういったようなことで議論が平行線をたどり、当日、最終日二十七日の昼過ぎになりましても意見の収れんが見られなかったというような状況にございまして、これが一たんは取りまとめが難しいと考えざるを得ない状況に立ち至ったものでございまして、相当な削減という表現をめぐる点が唯一の主要な論点ではございません。さまざまなそういう議論があり、その扱いをめぐり対立が解けなかったというのが途中段階の真相でございます。  以上が経緯でございます。
  129. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっと時間がございませんから、質問をスキップいたします。  厚生省の方にお願いしたいわけですけれども、今回、通常国会が終わる際にダイオキシン関係について質問主意書を出しているわけですけれども、一週間ででき上がらなくて七週間ほどかかるということになっていますけれども、その具体的な理由はどういうことになるんでしょうか。
  130. 小野昭雄

    説明員(小野昭雄君) 加藤委員からごみ処理に伴うダイオキシン類の発生防止対策等に関する質問主意書が六月十八日に政府に転送されたところでございます。  この質問主意書につきましては、現在、ダイオキシン類によります食品の汚染状況あるいは人体への健康影響、発生源対策等総合的な対策につきまして関係省庁関係自治体とも連携しながら実施する体制の整備を進めているところでございまして、このような方向を踏まえた上で答弁することが適当である。また、特に廃棄物の焼却に起因いたしますダイオキシン類につきましては、その削減に向けまして関係省庁とも連携を図りつつ、現在規制方策の検討を進めているところでございまして、その検討結果を踏まえた上で答弁することが適当である等の理由によりまして二カ月程度の答弁の遅延をお願いしたものでございます。
  131. 加藤修一

    ○加藤修一君 最後に、このダイオキシン対策、あるいはさまざまな形で有害な微量化学物質、長期的な暴露の中で、生物濃縮を含めていろんな影響が考えられているわけですけれども、とりわけダイオキシン対策について大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  132. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) ダイオキシンの対策につきましては、今国会、閉会いたしましたけれども、ことしの各委員会においても大変取り上げられた課題でございます。  厚生省としても、このダイオキシン対策については今後重視していかなきゃならない、人体に対する影響、これも大変大きなものがあるし、毒素も強いということで、今後、人体に対する健康面、それから環境に対する保全という点からも重要視しておりますので、関係省庁ともよく連携をとりながら、この排出規制あるいはダイオキシンを出さないような処理方法等、総合的に勘案しながらこの対策について積極的な対応をしなけりゃいかぬということで、今、鋭意真剣な対応作業を進めているところであります。  今後とも、このダイオキシン対策というものを重視しながら、危険のないような、また環境を保全できるような対策について全力を挙げて取り組みたいと思っております。
  133. 山下栄一

    山下栄一君 平成会の山下です。  最初に、東京湾の原油流出事故につきましてお伺いしたいと思います。  今月の二日に大きな事故があったわけでございますけれども、大分落ちついてきたというふうなことを聞いておりますが、ちょっと基本的な疑問がございますもので、質問させていただきたいと思います。  その大きな疑問の一つは、流出量、これが途中で下方修正された、それもまたけた違いの量の、初めの報告が誤りであったという、根本的な対策変更を迫られるような内容であったわけであります。  場所が首都近辺でもございますし、最初の流出量は大変な史上最大の流出量であるというふうなこともございまして、連日報道もされましたし、国民にも大きな不安が広がったわけでございますが、一体、この流出量の計測、これはだれが最初にされて、途中でだれが変更したのかということをお聞きしたいと思います。
  134. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) ダイヤモンド・グレース号からの原油の流出量の推計でございますが、いずれにしましても、このような油の流出事故があったときには、速やかに体制を組み、速やかに防除するということが一番大切なことでございます。  今回のダイヤモンド・グレース号の関係につきましては、事故が起こったという報告の直後に、どのぐらいこの船舶が油を積んでおり、どのあたりのタンクが破損し、そこにどのぐらいの油があるかということが一番のキーポイントになるわけでございますし、さらにこの時点におきましては、まさに船舶のサイド及び運航者サイド、そちらに情報があるわけでございます。それで海上保安庁といたしましては、二日に運航者側であります日本郵船からの報告それから提出された資料などから、一万四千ないし一万五千キロリットルであろうというふうに推定をした。これが第一段階目でございます。  それから、その後の経過でございますけれども、その後、日本郵船と財団法人新日本検定協会、それが実際に計測をいたしました。このときには、既に川崎に係留をした後でございます。そのときに計測をしたと。その結果、流出量が当初のものから大幅に下回って約一千五百五十キロリットルであるということが判明したという報告があったわけでございまして、その点につきまして、非常に誤差も大きいし、かつこの量というのは非常に重要な意味を持ちますので、精査し、そして海上保安庁といたしましても、当初の推計を改め、約千五百五十キロリットルであろうというふうにするに至ったということが経緯でございます。
  135. 山下栄一

    山下栄一君 今の御答弁、確認しますよ。最初は運輸省が推定したと。
  136. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 最初は、当該船舶サイドすなわち運航者サイドである日本郵船からの報告及び提出された資料、これがベースでありまして、それをベースにそのような量であろうというふうに当方としても判断したということでございます。
  137. 山下栄一

    山下栄一君 民間の船であるけれども、政府がきちっと権威を持って発表するものだと思うんですよ。だから、調査主体の問題も私はあると思うわけでございますけれども、要するに最初は運輸省が最終的には推定を確認して発表したと。変更したときに、その日本郵船というどちらかといったら事故を起こした方ですね、それがかかわる報告に基づいて、また最終的には運輸省が権威づけをして発表したと、国民に対して。だから、両方とも運輸省であると、これでよろしいですか。
  138. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 若干繰り返しになりますけれども、事故が起こったという通報があったきに直ちにその十分な対応策をとる必要があるわけでございます。  したがいまして、事故が発生した当時に得られるいろいろなデータあるいは油種等につきましてはあくまでも運航者サイドが持っているわけでありますし、さらには当該船舶は事故を起こしその現場近くにいるわけでありますから、そういう状況においては、そのような状況で得られる知見、これがベースにならざるを得ないわけでございます。そして、これにつきましても、運航者側である郵船サイド、そちらがきちんとしたデータを持っているわけでございまして、こちらにはないわけでございますから、そちらの報告を受け、それがさほど、見て明らかにおかしいということがその時点で当方にわかれば別でありますけれども、そうでない限りはどうしてもその報告というのがベースにならざるを得ないというような状況でございます。
  139. 山下栄一

    山下栄一君 状況説明を聞いているんじゃなくて、要するに、最終的には運輸省がいろんな判断に基づいて、最初は一万五千キロリットルだと、途中からは千五百キロリットルというふうに変更したと。そんな民間の人が勝手に発表したわけじゃなくて、内閣がかかわって発表しているわけでしょう。政府の責任のもとに発表したのと違いますか、両方とも。それだけ答えてください。そうじゃないのかどうか。
  140. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 運輸省といたしましては、それぞれの時点において、運航者側からの報告等についてその時点でのできる判断ということで、そういうふうなことであればそのような量であろうというふうに判断をしたということでございます。
  141. 山下栄一

    山下栄一君 だから、運輸省が確認をして発表したということだと思うんです。  それで、途中で変更するときに、重大な変更やからね、これは。要するに、いろんな対策を打つ前提が全然変わってしまうわけですから。中和剤をまく量から被害の想定から、全然けたが違うわけでしょう。変更するに当たって、ちょっと最初と違いますよということを申し出たのは日本郵船なんですね。
  142. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 申し出をしたのは日本郵船でございます。
  143. 山下栄一

    山下栄一君 先ほど新日本検定協会という財団法人の話をされましたが、これは本来こういう流出事故のときにかかわるそういう基本的なルールか何かあるんですか。
  144. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 財団法人の新日本検定協会と申しますのは、技術的なノウハウを持って、このような場合に、残っている油でありますとかそういった計測をつかさどる協会でございまして、それを日本郵船も使って計測したということでございます。
  145. 山下栄一

    山下栄一君 日本郵船の依頼に基づいて新日本検定協会という運輸省がかかわっている財団、公益法人、これが検査したと。最初の時点では新日本検定協会はかかわらなかった、こういうことですね。
  146. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 当初、事故直後につきましては、新日本検定協会は加わっていなかったというふうに判断しております。
  147. 山下栄一

    山下栄一君 流出量が全然違いますということを事故を起こした責任がある日本郵船が政府に報告してきたわけですね。そのときに、これは重大な変更やから、私はこの変更が本当に間違いないのかということを確認せにゃあかんと思うんです。単なる推定とかじゃ問題である。  航空機事故の場合は事故調査委員会があり、原因究明を徹底的にこれは時間もかけてやるんでしょうけれども、今回のこういうことが平気で行われておったら今後不安でたまらないわけですね。まして責任がある側の報告に基づいて変更するなんというようなことは、そこの依頼に基づいて、それは新日本検定協会に運輸省がかかわっているかは知らぬけれども、民間の財団でしょう、これは。そういうのだけの報告によってまた変更している。じゃ千五百キロリットルは本当に間違いないのかということになってくるわけですよ。そこに海上保安庁なり運輸省は立ち会ったのか。それはどうですか。
  148. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 日本郵船サイドから運輸省に、流出量をしっかりはかった結果、実は約十分の一の千五百五十キロリットルであるというふうなことが海上保安庁サイドにもたらされまして、まずは三管本部にもたらされ、そして本庁にそれの整理の結果がもたらされてきているわけでございますが、当庁といたしましても、いろいろな資料のほかに日本郵船等の責任者を直接呼びまして、いろいろな資料等をもとに検討いたしました。そのような過程を経て、流出量については訂正することが必要であろうというふうに判断したということでございます。
  149. 山下栄一

    山下栄一君 机の上で資料をチェックして最終確認して間違いないだろうということだということですね。現場においては政府はかかわっていないと、こういうことですね。
  150. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 当該船舶は当初、事故の現場付近にあって、余り詳細な検討はできませんでした。しかし、その後、川崎のシーバースの方に係留をいたしまして、そこで精密な測定ができた。あるいは、海上保安庁サイドといたしましても、それまでには当該船舶について、近寄っていっていろいろな流出量の状況でありますとか現実の生の姿を見ております。  したがいまして、先ほど申しましたが、三管及び本庁が判断する一つの判断としては、確かに今の状況からすれば、約一万五千前後というようなものではなくてもっと少ないであろうというふうな判断もそのころまでには、判断といいましょうか見方もあったという、そこらも判断のベースにはなっております。
  151. 山下栄一

    山下栄一君 いずれにいたしましても、今回の教訓から私は、こういうタンカーの事故がことしの一月にもあり、引き続きまた七月にもあったと。東京湾にもたくさんの、百隻を超えるタンカーがああいう狭いところを行き来している。ほかの船舶も含めるともう千隻に近い、そういう激しい状況の中で運航されているということもわかったわけでございます。日本海におけるタンカーの航行につきましても、日本の船のみならず、ナホトカの場合はロシアの船だったわけでございますけれども、非常に多くの量の油を積んだ、重油にしろ原油にしろ、行き交っているということがあるわけでございます。  今回の教訓から、流出量がどれだけであるかということ一点からしましても、今回の対応は非常にお粗末な対応であったのではないかなと思いますから、これを教訓に、計測にしろ確認にしろ発表のあり方にしろ、住民への情報開示も含めてルールづくりを検討していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  その場合に、第三者機関も入っての専門的な調査能力のある、事故を起こした側の調査ではなくて、そういうことも含めてのルールづくりを検討すべきである。御所見をお伺いしたい。
  152. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 当庁といたしましては、ナホトカ号の教訓、あるいは今回東京湾においてこういう事故が起こったわけでございます。東京湾等につきましては防除の計画というふうなものも既につくったものもありましたけれども、今回の教訓をもとに、さらに改善すべき点があるかどうかという点につきましては鋭意検討してまいりたいと思います。  ただ、最も大切なことは、事故が起こったときに可及的速やかに体制を立ち上げるということでございますので、その点につきましては十分な御理解を賜りたいと思います。
  153. 山下栄一

    山下栄一君 ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、もう一点疑問があるんですが、日本郵船側から政府に調査の結果違っていましたという訂正の報告があったのはいつでしょうか。何日の何時ごろ。
  154. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 日本郵船サイドから流出量が約千五百五十キロリットルであるというふうな通報がございましたのは三日の午前三時ごろでございまして、これは現地であります第三管区海上保安本部の方に通知があったわけでございます。
  155. 山下栄一

    山下栄一君 官房長官の発表は七月三日の正午前でしたね。その間に第二回の本部会議も開かれていますね、七月三日十一時。七月三日十一時の時点では、流出量の想定は一万五千キロリットルだったんですか。
  156. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 第三管区海上保安本部に三時ごろに郵船サイドからそのような報告がありました。これにつきましては十分にやはり精査する必要がありまして、事実関係を整理した上で本庁に報告があり、さらに直接日本郵船サイドから聞かないといけませんので、それを十分に確かめて精査をしたということであり、さらに運輸大臣は対策本部長でございますから、そちらにも御報告をし、非常にこれは重大な問題であって、仮に一遍訂正して再度また訂正するとしたら非常に混乱が大きくなってしまうというふうな判断もありまして、さらに精査をさせて、その後官房長官に御報告して公表したということでございました。  朝の時点でございますけれども、次のような状況でございました。  三日の早朝の時点と申しますのは、排出された油がまだ拡大をし続けておりました。そして、一部はとうとう横浜、川崎の埠頭に漂着しているというふうな状況でございました。それに即応して防除のための船艇、航空機の勢力を大幅に増強する必要があったわけでございまして、そういう意味でこの午前中というのは非常に重要な時点でございました。現に、三日、四日につきましては二日の三倍の体制を組みまして、これによって四日の夕刻までに油膜の濃い部分をおおむね回収することができたという結果でございます。  したがいまして、このように三日の早朝というのは防除体制を確立する上で極めて重要な時期に当たっておりまして、油の排出量が当初の予想の十分の一かどうかという問題がありましても、仮に十分の一であったとしても、やはり三日の体制というものはこのような体制を組む必要があったというふうに考えております。
  157. 山下栄一

    山下栄一君 だから、十一時の話、本部会議
  158. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 本部会議は十一時に開いておりますが、その時期につきましてはまだ十分な精密な検討が続いていたという状況でございます。
  159. 山下栄一

    山下栄一君 十二時前には官房長官が発表しておるわけでしょう、正午前の記者会見で発表しているわけです。第二回本部会議は一万五千キロリットルの前提での対応会議をやっているわけでしょう。フジモリ大統領と首相との会談で首相もつかまらない。そんなことで、要するに最終判断が、結論が出せないという状況があったからおくれたのと違いますか。
  160. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 先ほども申し上げましたとおり、対策本部というのは政府全体をカバーするような体制を組んだ、非常に重要な体制を組んであるわけでございますから、その重要性にかんがみてそのような手続をとったということでございます。
  161. 山下栄一

    山下栄一君 とんちんかんな答弁ばかりしていたら困るわけでございます。  例えば、中和剤、凝固剤などの処理剤も一万五千キロリットルを前提に大量にまかれている事態なわけです。こういう緊急事態は初動期が大事だ、油の事故は四十八時間、二日間がもう勝負であると、そんな状況の中で、前提が全然変わるようなことが二日目に起こっているわけでございまして、そういう緊急対応が全然できないシステムで本部会議も行われている。総理大臣がつかまらぬからといって発表も延びるというふうな現状では私は先が思いやられるなと、こういうように思うわけでございます。指摘だけしておきたいと思います。  処理剤の問題、これは大変環境に大きな影響を与えるということが言われているわけでございます。一万五千キロを前提にした中和剤、凝固剤の大量投入が行われた、このようなことを聞いているわけでございますけれども、これについての環境への影響、対応されているんでしょうか。環境庁お願いします。
  162. 渡辺好明

    説明員(渡辺好明君) 東京湾は、御指摘のとおり大変閉鎖的な海域でございまして、富栄養化の可能性を大分持っております。それから生物資源もたくさんすんでおりますので、油処理剤あるいは拡散をした油そのものが環境に影響を与えるということは十分考えられます。  こういう状況でございますので、今御指摘がございました処理剤それから油そのもの、そういうものも含めまして、これから先継続的かつ段階的に環境影響に対する調査を続けてまいりたいと考えております。
  163. 山下栄一

    山下栄一君 原油による環境被害よりも、中和剤の大量投入による環境への影響の方が大きいのではないかということが言われるぐらいの問題点であろうと思いますので、今回の政府の対応は非常にまずかった、今後の大きな戒めとしていただきたいというふうに思うわけでございます。  先に進みます。これも緊急の問題でございますが、環境庁にお尋ねいたします。  大分県におけるスポーツ公園整備事業、これは大変な自然環境への影響を与えるということが突然今大きな問題になってきておる。大分県は、環境アセスにかかわる制度のない県である、アセスの要綱なり、また条例もいまだにできておらない。そんな状況の中で、大分市近郊唯一の木がたくさん茂っている高尾山という山を崩して、そこにワールドカップサッカーの会場となるスポーツスタジアムを中心とするスポーツ施設を建設するという工事が既に始まっておるわけでございます。  実は、ないしょで大分県はアセスのコンサル業者にこの環境影響の調査を依頼しておった、六千万をかけて調査しておった。その調査によると、これは動物種、植物種、生態系に大変大きな影響を与えるということが指摘されておったけれども、これを二年間公表してこなかった、二年以上ですね。  これが今大きな問題になりつつあるわけでございますけれども、これに関して、環境庁はどういう御認識かということをお聞きしたいと思います。
  164. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) 今、先生お尋ねの件につきましては、大分県が公園整備に当たりまして、県として積極的に環境事前調査実施して、公園実施設計に反映させるべく環境影響の事前調査を行ったものでありまして、いわゆる閣議アセス、具体的には建設省所管事業に係る環境影響評価の実施についてという建設事務次官通知の対象事業というものにはなっておらないものでございます。  この内容につきましては、そういうことがございまして、地元県当局から具体的な報告を受けておりません。その内容については承知していないところでございますが、昨日、地元県におきまして、担当幹部が口頭での記者発表を行い、また、その調査内容及び対策につきまして取りまとめた上、後日、記者クラブへ説明するといった会見をしたという報告が入っているところでございます。
  165. 山下栄一

    山下栄一君 環境庁がかかわっておりますレッドデータブックに記載されておる貴重な植物種、動物種が高尾山の自然公園の中にはたくさんある、こういうわけでございますけれども、この希少な動植物が絶滅ないし死滅してしまう可能性が大変高いという報告が、報告というよりも調査が、今申し上げた大分県が依頼した、委託したコンサル業者によって報告されておるわけでございます。したがいまして、これは閣議アセスにかかわる県の事業でもないからということで放置できないのではないか、このように考えるわけでございます。  例えば、動物種におきましては、その調査によって報告されておることでございますけれども、オシドリ、これは環境庁の希少種、レッドデータブック指定種、同時に国際自然保護連合レッドリスト指定種です。このオシドリが今回の公共工事の実施によりまして影響が甚大である、オシドリが飛来してくることは今後もう考えられないというような報告がされておる。それからハイタカ、これも環境庁の希少種、レッドデータブック指定種。以上、鳥類でございます。  クモの中にキムラグモというクモがあるそうでございますが、これも環境庁のレッドデータブーク指定種、世界自然保護基金、WWFの日本委員会が保存プロジェクトに指定しているキムラグモという種類だそうでございますけれども、これにつきましても生息そのものが消滅する、調査によってそういう報告がされておる。  両生類オオイタサンショウウオ、これも環境庁の希少種、レッドデータブック指定種、大分市の指定天然記念物。生息しているのは大分県が大半だそうでございますけれども、両生類オオイタサンショウウオも壊滅的な状態になると、大分県が委託をした調査会社の調査によって報告されておるわけでございまして、こういう事態環境庁は放置していていいのか。いかがですか。
  166. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) ただいま先生お話しの幾つかの点につきましては、けさの地元紙の報道等で私ども散見いたしたところでございますけれども、いかんせん現時点では本件の具体的内容につきまして承知をしておらないところでございまして、今後必要に応じまして情報の収集に努めてまいりたいと考えております。
  167. 山下栄一

    山下栄一君 情報の収集は当然でございますけれども、今申し上げたような環境庁がかかわっておられる野生動物の保護に大変大きな影響を与える公共工事であるということでございますから、県に対してもきちっと御指導をする形で、場合によっては公共工事の変更なり停止なり、そういうことも含めた対応をお願いしたい。もちろん、当然事前にきちっと調査する必要があると思うわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  168. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) 私ども自然保護を担当しておりまして、貴重な動植物の生息地といいますのは、開発に当たって慎重な配慮が望まれるのは当然でございます。でございますが、本件につきましては、具体的な内容につきまして承知しておらないということでございますので、今後その情報の収集等に努めながら検討してまいりたいと考えております。
  169. 山下栄一

    山下栄一君 内容によっては今申し上げたようなきちっとした調査、大分県が委託した調査業者の報告によって今申し上げたようなことがあるわけですから、もちろんこれは私のきょうの質問でございますけれども、きちっと調べていただいて、場合によっては先ほど申し上げたような厳しい対応も国が直接やる必要がある、こういう事態も私は考えられるのではないか、積極的な対応をお願いしたい。再度御答弁をお願いします。
  170. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) 十分検討してまいります。
  171. 山下栄一

    山下栄一君 通常国会で、環境アセスメント法が非常に不十分な内容ではあったけれども成立したわけでございます。その直後にこのようなことが発覚したというか、わかったというわけでございますけれども、大分県はアセス手続を持っていない数少ない県である。念願のアセス法が成立した現在、環境庁として、いまだに環境アセスに対して意識が低いと私は考えるわけでございますけれども、こういう例、大分県のような自治体を今後どのように指導されるのか、お聞きしたいと思います。
  172. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) 当然のことでございますけれども、環境アセス法の趣旨をよく説明し、また各県内における周知徹底に、大分県のみならずすべての県ともども、アセスの趣旨徹底するように普及啓発に共同して実施をしてまいりたいと考えております。
  173. 山下栄一

    山下栄一君 先ほども触れましたが、大分県が委託した環境影響調査平成六年一月から一年間かけて行われているわけです。二年半前のことでございます。  本来、環境影響調査というのは環境にどのような影響があるかということで調べるわけでございますから、その結果は少なくとも公表するのが本来のあり方ではないか、それを環境影響調査というのではないか、このように思うわけでございます。  大分県は、非常に厳しい調査結果であったわけで、公共事業にも大変な影響を与えるかもしれない、市民運動も起こるかもしれない、そういう背景があったかもわからないけれども、場合によってはワールドカップの工事に間に合わないようになったら大変であるということがあったかもわからないけれども、六千万円もかけて住民のお金を使いながら調査したにもかかわらず、これを二年半も公開しなかった、こういう大分県の姿勢に対して環境庁はどのような見解をお持ちでしょうか。
  174. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) 動植物の希少種の存在につきまして、これを公表した場合に一部のマニアの方による盗掘、乱獲というおそれもあるということで公開をしなかったということを昨日県御当局が会見でも御答弁をされておりますが、加えまして、事前の環境調査でございまして、いわば公園整備のための環境調査であるということでありまして、厳密な意味でのいわば環境アセスメントというものとは若干位置づけが異なるために公表ということを考えておらなかったというふうに私どもとしては理解をいたしております。  しかしながら、当然情報公開条例もあるわけでございますし、積極的な情報の開示ということが必要であろうかということも同感でございます。
  175. 山下栄一

    山下栄一君 公共事業のあり方が今大きく問われておるわけでございまして、そういう観点から環境庁の役割が大変大きく国民の側に立って期待されておるわけでございますので、今回の問題……(「だれも期待していないよ」と呼ぶ者あり)だれも期待していないという声もありますが、大分県に対する対応を積極的にお願いしたい、このように思います。  文部省にお伺いします。  この公共工事は、先ほど申しましたように、スポーツ公園整備事業であるわけでございますけれども、この工事そのものが第一期工事だけでも六百億近い工事である。メーン会場となる競技施設、そこで二〇〇二年ワールドカップが大分県で行われるわけでございますが、そのスタジアムの施設そのものだけでも二百五十億を超える。大変な財政負担であるということから、大分県の平松知事は、通常国会におけるスポーツ振興投票(サッカーくじ)実施法案が今国会で成立する見通しになった時点、ことしの四月二十六日、西日本新聞の記事でございますけれども、そういう国会状況から判断して、平松知事は、ワールドカップの競技に向けて約二百五十億円のスタジアム建設を進める大分県にとっては大変ありがたいと声を弾ませたと、サッカーくじによる財政支援を期待していた、国も地方も財政難なので一つの安心材料になると、このように述べたというふうな新聞報道でございます。  この工事が大変な環境破壊につながることになってくると、これは何のための国の支援か、サッカーくじ法案か、このようなことにもつながるわけでございますが、このサッカーくじ法案が通った場合、競技施設の支援に使われる可能性があるのかないのか、お聞きしたいと思います。
  176. 工藤智規

    説明員(工藤智規君) ワールドカップの日本招致に当たりましては、政府として側面的に支援するために平成七年二月に閣議了解してございます。その中で、国、地方とも財政改革の推進が引き続き緊要な課題であるということから、次のようなことが了解の前提になってございます。  一つは、大会の開催に係る施設の整備その他の公共事業につきましては、通常の公共事業費の中での優先的配分により対処することとしまして、新たに国による特別の財政措置は講じない。それから、運営費につきましては、適正な入場料の設定等の事業収入により賄われるものとするということでございまして、この競技場の建設につきましては、先ほど環境庁の方の御答弁にありましたように、都市公園整備の一環として行われるものと承知してございます。  今のサッカーくじとの関係につきましては、国会議員の有志の方々の御熱意により参議院に継続審議となっていると承知してございますけれども、私どもも含めスポーツ関係者がその早期成立を期待しているところではございますが、今の計画では、法案成立後二年程度の準備を経てそれからの実施ということが予定されておりますので、少なくとも大分県での施設建設に間に合うスケジュールはなかなか難しいのではないかと推測しているところでございます。
  177. 山下栄一

    山下栄一君 そうですか。平松知事は大変期待されておったんですけれども、無理だということですね。わかりました。  加藤委員もちょっと触れられましたけれども、ダイオキシン問題、厚生大臣にお聞きしたいと思います。  ことしの二月以来、私も何度かダイオキシン問題、有害化学物質の一種でございますけれども、取り上げてまいりました。六月六日の環境アセス法案成立の日の環境委員会におきましても、橋本総理にもお聞きし、厚生省の方にもお聞きしたんですけれども、きょうは大臣に直接お聞きしたいと思うわけでございます。  特にダイオキシンによる人体汚染、これがお母さんの母乳からも検出されておる、こういう報告が行われております。これは環境庁厚生省ともにだったかもわかりませんけれども、健康リスク評価に関する検討会の報告にもあったように思うわけでございまして、母乳が汚染されておるということは大変な事態であると私は思うわけでございます。  ところが、人体汚染の調査、単独調査は難しいかもわかりませんけれども、いずれにしましても、国による調査がほとんど行われておらない。平成六年、七年、八年と、これは六月六日の厚生省の御答弁でございますけれども、わずか百万円の調査費によってボランティア活動で若干の調査がされたということでございますけれども事態はそんな、事態といいますか、そういう対応でいいのかということだと思うわけです。  来年度の概算要求の時期ではございますけれども、緊急事態であると。既に日本人の赤ちゃんにまでこのダイオキシンの汚染が進んでおるという事態をどうとらえておられるのかということ。この調査に関する費用、これは一検体を調べるのに三十万とか、場合によっては百万円とか言われているわけでございます。大変費用がかかるわけでございますけれども、今まだ民間の調査とか研究機関にゆだねられておるというような事態で、なかなか実態がつかめないという状況の中で、私はこれはもう厚生省は全力を挙げて予算措置を含む強力な体制をしくべきである。大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  178. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 母乳にも汚染が見られるということは、食物連鎖の関係からいっても、動植物全体に対して相当深刻な影響を与えているのではないかと考えられます。  この問題につきましては、いろいろ御議論をいただきましたけれども厚生省としても、ダイオキシンによる人体の汚染等の状況については、現在国内における調査研究の報告も少ないので、その実態を把握するため、今後ともさらに調査研究の充実を図る必要があると考えております。このため、専門家の意見を聞きながら、その調査充実をどのように実施していくか、現在鋭意検討しているところであります。  ダイオキシンの問題というのは、人体に対する影響、国民の健康、そして環境保全といういろいろ重要な問題を含んでおりますので、汚染実態の把握のために必要な調査研究については、調査費の確保を含めまして、これからもより一層積極的に取り組んでいきたいと思います。
  179. 山下栄一

    山下栄一君 昨年度も百万円ですからね。一検体三十万円だと三検体しかできないという、国のそんな乏しい調査費なんです。  今、大臣から調査費の強化も含めて検討していくというお話がございましたので、もちろんこれはもう来年度の予算にかかわることだと思うわけでございますけれども平成九年度はどうするのか。これは既にもちろんいろいろ研究費もあると思うわけでございますけれども、それを例えばダイオキシンの調査に振り向けるとかいう形でこの調査を強化して、国が、特に厚生省が中心となって、既存の平成九年度予算の中で計上されている費用もこのダイオキシン関連に振り向けるとか、また場合によっては特別の予算枠を考えるとかいう形の対応を私は今年度やっていただきたいと思うんですけれども、この辺は大臣、どうでしょうか。
  180. 小野昭雄

    説明員(小野昭雄君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、総合的な対策の検討とあわせまして、調査研究につきましてもかなり広範囲な調査研究を、しかも継続的にやっていく必要があるわけでございます。  そういう観点で、現在、専門家の御意見を聞きながら進める体制を整備いたしておりますが、現在までのところ、平成九年度におきましては、食品あるいは毒性評価等で約四千万円程度、それから発生源対策の調査研究といたしまして一億五千万円程度の研究費を確保いたしておりますので、御指摘の点も含めまして、これらの研究費を効率的に活用いたしまして調査を進めてまいりたいと考えております。
  181. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) もう時間をオーバーしておりますので……
  182. 山下栄一

    山下栄一君 済みません。ありがとうございました。
  183. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  きょうは、平成七年度の決算検査報告の中から、特に医療法人等における厚生年金保険及び健康保険保険料徴収額の不足、これは不当事項として指摘をされているわけですので、この問題を中心にいろいろとお尋ねをし、あるいは考えてみたいと思います。  まず最初に、平成七年度の決算検査報告の中で主要分野別の指摘件数及び指摘金額を見ますと、大変残念なことに相変わらず社会保障関係が群を抜いて大きい。その中でも特に目立ちますのが、医療法人等における厚生年金保険及び健康保険保険料徴収額の大幅な不足にかかわる事項であhます。  まず、この点に関する指摘事項について、この際、医療法人にかかわる部分に絞ってで結構ですので、会計検査院の方から御説明をいただきたいと思います。
  184. 諸田敏朗

    説明員諸田敏朗君) 指摘概要を御説明いたします。  厚生年金保険及び健康保険保険料の徴収につきまして検査しました結果、北海道ほか二十六都府県の二百十七社会保険事務所の調査、確認及び指導が十分でなかったため、四千六百七事業主につきまして徴収額が百五十七億六千二百十六万円不足しておりました。  このうち、医療法人につきましては国民健康保険組合に加入している医師、歯科医師等を使用している医療機関の事業主に着目することとし、厚生年金保険の適用事業所となる医療法人の事業主のうち厚生年金保険に係る届け出が適正に行われているかなど調査の要があると認められた事業主につきまして検査いたしました。その結果、東京都ほか二十府県の三千二百十七事業主につきまして徴収額が百二十二億一千八百六十二万円不足しておりまして、徴収不足額の七七%を占めていたものであります。  なお、指摘いたしました医療法人の多くは、昭和六十年の医療法改正により設立が認められるようになったいわゆる一人医師医療法人でありまして、これら法人の事業主は代表者または従業員の被保険者資格取得届の提出を怠っており、また一事業主当たりの平均指摘保険者数は四人、一事業主当たりの平均追徴保険料は約三百八十万円となっております。  以上でございます。
  185. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。  それでは、今御説明いただいたような指摘を受けて、所管省庁としてこの指摘事項について主な原因はどの辺にあるというふうにお考えになって、しかもその上で具体的にどのような対応をされたのか、その後の対応について社会保険庁にお尋ねしたいと思いますが、その際、その後の対応によって具体的に実態がどの程度に改善されてきているのか等も含めてお聞かせいただきたいと思います。
  186. 真野章

    説明員(真野章君) 医療法人でございますが、先生も御存じのとおり、今会計検査院から御答弁がありましたように昭和六十年の医療法改正で一人医師医療法人が認められました。従来は個人診療所ということで国民健康保険の適用の対象でございまして、また国民健康保険組合というものに属している、それが昭和五十九年の健保法の改正によりまして、法人につきましては順次計画的に健康保険並びに厚生年金の適用をするという制度改正が行われました。  この間、制度改正について周知をしてまいったわけでございますが、従前国民健康保険に入っておられ、また引き続き国民健康保険組合に残っておられたということから、事業主の方に、年金につきましては厚生年金ではなくて国民年金のままでいいんではないかという認識があったということ、また社会保険事務所におきまして、健康保険の適用につきまして、国民健康保険組合に所属しておられるということから政管健保の適用ではないということで、その調査、確認が十分ではなかったというふうに考えております。  こういう状況に対しまして、医療法人の事業所につきまして、関係団体でございます医師会、歯科医師会を初め関係団体から制度についての周知をお願いいたしておりますし、また医療機関台帳等未適用事業所の把握その他、社会保険事務所におきまして事業者調査を行うということでこの適用の適正化に努めておりますし、またそのための指導通知を出したところでございます。ほぼ指摘されました事業所につきまして、厚生年金保険への適用を終えているという状況でございます。
  187. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ちょっと関連して確認しておきたいんですけれども、私の理解ではいわゆる法人の事業所というのは医療保険についても原則として政管健保に入るということになっていると思います。  ただいまの御説明では、従来個人の診療所というような形であったことも関係していると思いますが、多くの医療法人が適用除外の承認を受けて国保組合に引き続き加入をしているということのようですが、なぜそういうふうになるのか、その辺の事情について補足的に御説明をいただければと思います。
  188. 高木俊明

    説明員高木俊明君) 御指摘のとおり、法人の事業所につきましては原則的には健保の適用になるということでありますが、ただ健康保険法の中で、いわゆる適用除外の承認を受けた場合には健康保険に加入しないで国民健康保険等に加入できる、こういうふうになっておるわけであります。  なぜこういうような状況になっているのかというのは、これは歴史的な経緯ということが背景にございまして、昭和二十八年ごろにさかのぼってみますと、昭和二十八年に健康保険につきましての適用業種の拡大というのが行われまして、医療に関係する事業所で五人以上の事業所が健保の強制適用という形になりました。  ただ、その当時は、開業医の方につきましてはこれは健保の適用がありませんし、それからまた、国保の制度があったわけでありますけれども、国保についても、それぞれの市町村における条例準則の中で、医療従事者またはその世帯にある者にして療養の給付を行う必要がないと認められる者に該当するということで、適用除外というような扱いがなされていたようであります。  そういうような背景のもとで、昭和三十二年に、やはり開業医の方々についても医療保険の適用を図っていくべきであるという考え方のもとに、医師会それから厚生省の間で、医師に対する国保の適用除外に絡む、いわゆる条例準則でありますが、これを撤廃をする、それからまた国保組合の設立を認める、こういうような話し合いが行われまして、その後、医師国保組合の設立がずっと図られてきた、こういうことであります。  昭和三十四年に現行の国民健康保険法が施行されたわけでありますけれども、そのような事情から、健康保険の適用除外を受け、そして国民健康保険組合をつくって今日に至っておる、こういう経過でございます。
  189. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 歴史的経過については理解できるんですけれども、ただ、私ちょっと心配していますのは、法人事業所という形になって、医師については医師国保組合に加入を継続することができても、その場合にそこで働く従業員はどうなっているのかなという問題がちょっと気になっています。片一方で厚生年金保険に入っていて、もしかすると片一方で健康保険は政府管掌健康保険に入らずに国保に引き続き入っている人もいるんじゃないかという気もしまして、この点については、それぞれ多少地域によって実態も違うようですので、十分現状を把握していただいて適切な対応をぜひお願いをしたいというふうに思います。  以上の質問を前置きといたしまして、私はこの機会に医療法人という制度について少し考えてみたいと思います。  まず最初に、そもそも医療法人という制度はどういう制度であるかという初歩的な質問をしたいと思います。  つまり、この制度がどういう経緯のもとに発足したのか。その時代的な背景もあったでしょうし、あるいは政策的な意味どもあったというふうに思いますが、スタート時点での制度概要について御説明をいただきたいと思います。
  190. 谷修一

    説明員(谷修一君) 医療法人制度につきましては、今先生がおっしゃいます経緯ということでお話をさせていただきますと、昭和二十五年に医療法の改正で創設をされております。  申し上げるまでもなく、医療法人というのは、医療法の規定に基づいて病院診療所または老人保健施設を開設しようとする社団または財団で、都道府県知事または厚生大臣、これは厚生大臣の場合には複数の都道府県にまたがるという形で厚生大臣の許可ということになっておりますが、大部分都道府県知事の認可を受けて設立される法人でございます。  今申し上げましたように、昭和二十五年に制度化をされたわけでございますが、その時代の背景というのはどのように申し上げればいいかちょっとわかりませんが、戦争直後で、国を挙げて医療施設の整備を進めていかなきゃいけない、そういう時代でございました。昭和二十三年当時の審議会の意見書の中では、当面医療機関の整備を進めるに当たっては、それぞれの地域の人口分布等を基礎として、まず公的医療機関の整備を進めるんだ、私的な医療機関というのはそれを補完するんだというような考え方が述べられております。ただ、その後の経緯を見ますと、御承知のように、実際は医療の提供というのはかなりの部分が民間の医療機関にゆだねられてきたというような結果でございます。  そういったような時代背景の中で、民間の医療機関の量的な拡大という当時の、どういいますか、社会的な要請にこたえるというようなことから、この医療法人制度創設の趣旨といたしましては、医療事業の経営主体が医業の非営利性を損なうことなく法人格の道を開くということで、一つは具体的な目的として資金の集積を容易にする、また医療機関の経営に永続性を与える、それによって私人であります医療機関の経営困難を多小なりとも緩和するということにあったというふろに理解をしております。  そのようなことで、その当時の医療法人の数はわかりませんが、現在では医療法人の数といたしましては一人医師医療法人を除きまして約二万六千というような、平成八年時点の状況でございます。
  191. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 簡単に説明をしろと言っても難しい点があるかもしれませんが、もうちょっと詳しく説明をいただきたいと思うんです。  この医療法人という制度は一般にその他の公益法人と比較しましてどうもやや特殊な位置にあろような気がしてなりません。そういう意味で、法人としてどんな位置にあるのかということも含めましてちょっと御説明をいただきたいと思うんですが、特に一般的に理解しにくい点として、持ち分の定めのある社団とか、逆に持ち分の定めのない社団という分け方が医療法人の中ではしばしばされるわけですね。そういう点、あるいは医療法人の中でも特定医療法人という税制上の特別措置の対象となる医療法人も定められているようにお聞きしています。その辺についてさらに追加をして御説明をいただければと思います。
  192. 谷修一

    説明員(谷修一君) まず、持ち分の定めのある社団、持ち分の定めのない社団についての定義と申しますか、それを申し上げますけれども、社団形態の医療法人を設立する場合、当然土地、建物等の出資が必要になるわけでございますが、この出資にかかわる持ち分、つまり自分の出した資本についての払い戻しの権限を出資をした人物に対して認める規定というものを法人の定款に定めている社団を持ち分の定めのある社団、これらの規定を設けていない社団を持ち分の定めのない社団として医療法の中では医療法人制度の中で規定しております。  先ほどちょっと十分に申し上げられませんでしたけれども、こういったようなことを他の公益法人とは違った形で設けた背景でございますけれども、先ほど申しましたように、昭和二十年代のこの制度ができた当時の民間の医療機関に対する非常に大きな期待があった、そういう当時の社会的要請にこたえるために、公益法人として厳密な組織や運営を要求するよりも資金提供者の権利の尊重と私的な財の保障というのが重要な要素だというふうに考えられていたんではないか。一方、医療の非営利原則との関係で配当の禁止という規定を設けて、先ほど申しましたような持ち分制度という公益的な法人にはやや変則的な制度が導入されたんではないかというふうに解釈をしております。  ただ、今申し上げましたことは、その当時の状況でございますので、その当時、今私が申し上げたことも含めてどこまで議論をされたかというのは必ずしも明確ではございませんが、そういったような背景の中で、先ほど申しました持ち分の定めのある社団と持ち分の定めのない社団という形のものができているということだろうと思っております。  なお、特定医療法人につきましては、税法上認められた制度でございますけれども、財団または持ち分の定めのない社団の医療法人で一定の要件を満たすものを、租税特別措置法の六十七条の二の規定によりまして大蔵大臣が承認をした医療法人のことを言っております。承認基準といたしましては、今申し上げました財団または持ち分の定めのない社団、その他、理事の構成、評議員の構成、また医療施設基準等が一応基準として定められているところでございます。
  193. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 それでは次に、今回の会計検査院からの指摘事項ともかかわる問題だと思いますが、昭和六十年の医療法改正によって、このとき新たに一人医師医療法人制度が創設されたわけであります。その新たに一人医師医療法人制度が創設された経緯といいますか、あるいは趣旨といいますか、その点についてお伺いするとともに、新しい制度ができてから今日まで、特に一人医師医療法人についてはどのような経緯をたどっているのか御説明をいただきたいと思います。
  194. 谷修一

    説明員(谷修一君) 先ほど申し上げましたように、医療法人制度そのものは昭和二十五年に創設をされておりますが、その当時から今先生お話しございました昭和六十年の時点までは、医療法人化の対象とされましたのは病院または診療所、診療所の場合に医師が常時三人以上勤務する診療所というような形に限定をされておりました。  しかし、その後の医療状況、医療環境の変化によりまして、診療所といえども看護婦さんあるいは臨床検査技師の方等、医療従事者を多数雇用する診療所ができてきた。ある意味では診療所の大規模化というか、そういうものができてきた。それから、これは以前から言われていたことでございますが、個人診療所においては、いわゆる家計と経営の区分というのが明確に行われていないと。やはり近代的な医業経営ということに対して勘定の区分というものを明確にすべきだといったような要請が高まったというようなことで、比較的小規模な診療所についても医療法人化の道を開いて診療所経営の合理化あるいは近代化を図る、またあわせて経営基盤の強化ということを図っていく必要があるんではないかというような意見が出てきたわけでございます。  そういったようなことを背景にいたしまして、昭和六十年の医療法の改正の際に、常勤の医師または歯科医師もあるわけでございますが、常勤の医師または歯科医師が一人ないしは二人しかいない診療所についても医療法人化を認めるということにしたわけでございまして、これがいわゆる一人医師医療法人と言われているものでございます。  この改正法律の施行当初は、この一人医師医療法人の数につきましては、ほとんど年間に百件というような形だったわけでございますが、その後六十三年の暮れでございますけれども審査書類の簡素化といったようなことを行いまして、それによりまして設立が促進をされたということでございまして、大体その後は毎年二千前後の一人医師医療法人が設立をされております。  現時点の数を申しますと、平成八年時点で一人医師医療法人の件数は約二万というような形になっております。
  195. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今御説明いただいた経緯からわかるように、多分この一人医師医療法人という形での法人事業所は、一般の法人事業所という自覚というか問題意識がまだまだ乏しいのではないかという気がしてなりません。そういう意味では、新しくこのような制度が創設されたことについて一定の理解はしますけれども、なかなか法定事業所としてのさまざまな手順なりあるいは制度的な整備なり不十分な点が残されている点があるんじゃないかと思いますので、ぜひその点は今後も引去続き的確な指導をお願いしたいというふうに思います。  では次に、幾つかの種類があるようですが、これらの医療法人が行う業務あるいは行うことがでまる業務の範囲についてお尋ねしたいと思います。医療法人は、本来、病院とか診療所とかあるいは新しくできた老人保健施設とかそういう診療業務を行うものというふうに理解しておりますが、医療法人がそのほかに附帯業務として幾つか関連する業務を行うことができるという定めがあります。  その附帯業務について少し御説明をいただきたいわけですが、特に私が関心を持っておりますのは、医療法人が行う業務の範囲がかなり広がってきていまして、従来のいわゆる福祉サービスの領域をも医療法人ができるというふうに徐々に拡大されてきているわけであります。現在はまだ継続審議中という形になっていますけれども、医療法改正案の中にもそのような規定が盛り込まれているように理解をしております。  医療法人が行う業務の範囲の問題について、とりわけその範囲が福祉サービスの領域まで少しずつ広がってきているというような状況について、簡単で結構ですので要約して御説明をいただきたいと思います。
  196. 谷修一

    説明員(谷修一君) 医療法人については、今先生お話がございましたように病院診療所あるいは老人保健施設のいわゆる本来業務と申しますか、そういうもののほかに医療法の四十二条に定められております附帯業務と言われるものの実施が可能だというふうにされております。  これも歴史的に言いますと、昭和二十五年の創設当時から比べますと、附帯業務の範囲というのは拡大をしております。当時は、例えば看護婦の養成所ですとか、あるいはその他医療従事者の養成施設といったようなことが中心でございましたけれども、その後疾病予防等についての業務が拡大をされ、さらには精神障害者の社会復帰施設といったようなものにも業務が拡大をされております。  福祉関係ということでございますが、平成元年のゴールドプランの策定以来、保健、医療、福祉の連携を図るというような観点から、在宅介護支援センターの設置等、どっちかというと福祉的な色彩のある事業の実施というものも認められてきたところでございます。  現在、継続審議になっておりますが、医療法の一部を改正する法律案につきましては、この医療法人が在宅福祉事業を一層円滑に展開をしていけるように、いわゆる第二種社会福祉事業の一部を医療法人の附帯業務として認めるということで御審議をお願いしているところでございまして、例えば老人のデイサービスあるいは短期入所事業、それからデイサービスセンター、デイサービスセンターは従来からございましたけれども、そういったような事業について医療法人の業務として認めるということで、今後在宅福祉サービス等に対して人材なりあるいは経験を有している医療法人が一層円滑に在宅福祉事業を展開していけることを期待しているところでございます。
  197. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 今説明の中でもありましたけれども、継続審議中の医療法の一部を改正する法律案の中では、御説明があったことに加えて、今度は新たに特別医療法人という制度を創設するという項目が盛り込まれております。私、最初、特別医療法人と特定医療法人とをごっちゃにしていたんですが、どうも性格的には全然違うもののようです。  大変紛らわしいんですけれども、この特別医療法人制度概要についてお聞かせいただきたいと思いますが、特に今回なぜこういう新しい制度を創設するのか、その政策的な意味はどの辺にあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  198. 谷修一

    説明員(谷修一君) 先ほど来のお話の若干繰り返しになりますけれども、現在の医療提供体制の中で民間医療機関、特に医療法人が我が国の医療の最も有力な提供主体となってきております。そういう意味で、地域医療において重要な役割を果たしております民間医療機関の経営の安定の確保ということが求められております。  また一方、地域医療を確保するという形で同じ医療法の改正の中で地域医療支援病院というものの制度化をお願いしているところでございますが、一定の要件を満たし、公的な運営が確保されている医療法人を特別医療法人として位置づけまして、地域医療支援病院の開設主体の一つとして認めていきたい。  また、特別医療法人につきましては、その収益を医業経営に充てるということを前提といたしまして収益業務の実施を認めていきたい。それによりまして経営的にもある程度安定をするというようなことを期待しているところでございます。収益事業につきましては、従来は医療法人には認められていなかったものでございますが、特別医療法人については収益事業を認めるという形で制度化を図りたいというふうに考えているところでございます。
  199. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 この間ざっと医療法人の制度について総括的にいろいろお尋ねをしてきたわけです。私自身は、例えば医療法人が行う業務の範囲を徐々に広げていくこと、そして福祉サービスの提供まで含めて広げてきたことについて、そのことは理解できますし、さらに今御説明のあった特別医療法人、新しい制度をつくって地域医療支援病院としての一つの対象として制度化していこうという趣旨というか意図は理解できるんですが、どうも医療法人というもともとの制度の根本的な制度的あいまいさをそのままにしておいて、そこにいろいろあれやこれやくっつけてきたというか、いわば継ぎはぎ細工で制度改正を積み重ねてきたというふうに感じざるを得ません。  申し上げたいのは、既にこの間多くの議論も積み重ねられていますし、ここらあたりでもう少し根本的に制度のあり方の見直しを含めて検討すべき時期に来ているのではないかということを申し上げたいわけであります。  ちなみに、私自身の問題意識は、特に高齢者の介護サービスのことが念頭にあるんですが、それだけに限らず、医療と福祉の接点といいますか、あるいは境界領域といいますか、お互いに重なってきているわけですね、現実に。ですから、そういう医療のサービスと福祉のサービスが重なってきているという現実を踏まえながら、一方で、そのサービス提供体制を担う法人組織としては一方に医療法人という制度があり、もう一方に社会福祉法人という制度があって、きょうは時間の関係もございまして社会福祉法人のあり方についてお尋ねをすることはできませんでしたけれども、簡単に言えば医療法人という制度社会福祉法人という制度とは随分と制度的に違いがあるわけです。  法人の制度としては医療の分野と福祉の分野が非常に制度的に違ったものがずっと続いてきていて、しかし現実の問題として医療サービスと福祉サービスはオーバーラップしてきている。こういう現状を踏まえますと、これまでの医療法人のあり方そのもの、そしてこれまでの医療法人のあり方を含めてこの際再検討、再整理をする必要があるのではないか。とりわけ、平成十二年、西暦二〇〇〇年から新しい高齢者のための介護サービスの提供体制をスタートしようとしているわけですから、そういう意味ではこの時期に両者の整合性ある制度上の見直しがぜひとも必要なのではないかというふうに私は考えますが、この点についてはぜひ厚生大臣のお考えなり御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  200. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 医療法人制度については見直せという声は以前からあったわけでありますが、今後、将来的に考えましても、医療法人でもかなり社会福祉事業を実施するようになってくると思います。  昨年の四月二十五日に医療審議会から、公益性の高い、「保健、医療、福祉の総合的なサービスを提供する主体としてふさわしい医療法人類型の創設を検討することが必要」と意見具申がなされておりますので、これまでの医療法人制度の変革の経緯や医療における医療法人の果たしてきた役割や実態をよく見ながら、今御指摘の点も踏まえて考えさせていただきたいと思います。
  201. 朝日俊弘

    ○朝日俊弘君 ありがとうございました。
  202. 谷本巍

    ○谷本巍君 初めに、東京湾の原油流出事故の問題について伺いたいと存じます。  事故の原因につきましては、操船上のミスではないか、水先案内の問題であるとか、管制監視体制に問題もあったのではないかといった点等々が指摘されております。  私は、時間に制約がございますので、航路上の問題と船体上の問題と中和剤使用の問題、そして油回収船の配置問題について伺ってまいりたいと存じます。  初めに伺いたいのは、この事故発生後、一部専門家の皆さんの間から出ましたのが、浦賀水道航路や中ノ瀬航路のしゅんせつ工事がされていればこんなことにならなかったのではないかという声を耳にいたしました。このしゅんせつ工事は十数年前に提起されたものでありましたが、これまで日の目を見ることがなかった。なぜこの工事に着手できる状況にならなかったのか、その点について運輸省の考え方を承りたいのであります。
  203. 長光正純

    説明員(長光正純君) お答え申し上げます。中ノ瀬航路、浦賀水道航路、この東京湾口の航路でございますけれども、昭和五十三年に開発保全航路として指定されております。その後、事業の着手に向けて漁業関係者を含めまして調整を行ってきておるところでございます。また、これと並行して、環境調査でありますとかあるいは漁業影響調査、さらには施工方法の検討、こういったものも行ってきておる状況でございます。  このうち、漁業関係者との調整につきましては、平成七年の七月に始まりまして、本年の五月にかけまして千葉県、神奈川県、東京都の三十六関係漁業協同組合に対して事業計画の説明を行ってきておるところでございます。  こういった中で事業への理解は進みつつあると思っておりますけれども、今後とも鋭意こうした関係者の意見調整に努めまして早期事業着手に努めてまいりたい、こういうように思っております。
  204. 谷本巍

    ○谷本巍君 こうした事故は二度と起こしてはたらぬ、そのための対策というのはいろいろな対策が考えられるのでありまして、そういう意味では総合的に考えていくことが必要だろうというふうに私は思います。  そこで、このしゅんせつ工事に関連したことで若干申し上げておきたいと思いますのは、ダイヤモンド・グレース号が座礁しましたところは東京湾の中で最も漁場としてはすぐれたところであります。水の深さを深くした場合に、漁場はもう全然使い物にならぬだろうという見解もあるし、それからまた、海の生態系にどういう影響が出てごるかという問題指摘もある。そういう問題検討とともにもう一つの問題は、果たしてそれでもって解決になるのかどうかというもう一つの疑問も出ております。  それはどういうことかと申しますというと、最近の東京での新しい高架道路づくりなどを見ていただきたいのであります。それをつくうたためにかえって交通が混雑してしまうというようなことがしばしば起こります。東京湾の場合もそういうことが起こる可能性もあるのではないかという指摘もあり、航海上の技術的問題でもっと安全を確保する必要があるといったような声等々もございます。  したがいまして、これから後でまたいろいろ注文申し上げますが、総合的な一環としてこの問題は検討すべきではないかというのが私の判断でありますが、いかがでしょうか。
  205. 長光正純

    説明員(長光正純君) ただいま航路のしゅんせつのことでお答えいたしましたけれども、航路のしゅんせつ一つとりましても確かにそういった問題もございますので、鋭意関係者との調整を図りつつ進めていく、そういう中で全体的な視野というものも必要ではないかというふうに思っております。
  206. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、船体上の問題について伺います。  おとついでありましょうか、運輸省の皆さんに伺いましたところ、九六年度現在の日本のタンカー数が二百九そうであって、そのうち二重底のものが二十七そうしかないと。何か背筋がぞっとするような数字を伺いました。東京湾の座礁した航路のようなところというのは日本じゅうほかにも幾つかあるわけです。こうして見てみますというと、二重底の船をどれだけふやしていくかということが重要な対策の一つになってまいります。国際条約による二重構造の義務づけについては、九三年七月六日以降造船契約したもの、そして九六年七月六日以降完成したものというふうに規定されておるのでありますが、一部業界の皆さんの間から、これを守ればいいじゃないかという意見がかなり多い。ところが、この国際条約というのは守るべき最低の義務として規定したものと理解すべきであります。  そういう理解に立ちますと、今度政府がやるべきことは、船会社や荷主企業に対して二重底への切りかえを働きかけていくということが非常に重要な意味を持ってくるのではないかというふうに思います。それはこの国際条約の考え方にも沿った考え方と言ってよいのでありまして、とにかく二重底の船をふやしていく、そのために今運輸省はどう考えているか、考え方を承りたい。
  207. 長光正純

    説明員(長光正純君) 我が国の商船隊の二重構造化については、御指摘のように一二・九%というのが昨年のデータでございます。世界の現存の油タンカーの二重構造化率、これは一四・六%ということになっておりまして、これに比べましてやはり少しおくれているかなというふうに考えております。  運輸省といたしましては、これまでもタンカーの二重構造化についてはその推進を図ってきたところでございますけれども、今回の事件の重大性にかんがみまして、改めまして日本船主協会に対しまして再発防止のための施策、それから二重構造タンカーの導入促進策、こういったものを含めました総合的な安全対策についての検討を要請したところでございます。私どもといたしましては、こういった業界の検討に対して今後全面的に支援をしてまいりたいというふうに思っております。
  208. 谷本巍

    ○谷本巍君 業界に強いのは安全よりコスト部分であります。これは役所が働きかけていってもなかなか大変だなという気がするのであります。そこでもう一つの方法というのは、例えば税制の問題、助成の問題、そういうものも含めて働きかけていくという方法もあってもよいのではないかと私は思います。  さらにもう一つの問題は、国際海事機関への働きかけ、ここのところを考えなくていいのかどうか。運輸省、今どう考えておるでしょうか。
  209. 長光正純

    説明員(長光正純君) 先ほど申し上げましたように、日本船主協会に対しまして安全対策の検討を指示しておるところでございますけれども、こういった検討の結果出てまいります要望、あるいはこれと同時に大型タンカーの運航実態につきまして、関係者から事情を聴取することを行うこととしております。そういった聴取結果、こういったものを踏まえまして、二重構造タンカーの導入のために必要なインセンティブと申しますか、そういうことの必要性につきましてもあわせて検討してまいりたいというふうに思っております。
  210. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に伺いたいのは、原油流出量訂正の問題に関連してであります。  先ほど山下委員の質問に答えて海上保安庁の次長さんがおっしゃいました。原油流出が十分の一であったとしても回収体制は持続すべきであった、あなたはそうおっしゃいましたね。私もそう思います。そう思いますが、中和剤の散布はこれは別ですよ。あなたも御存じだろうと思いますが、例えば九四年の和歌山県沖のタンカー事故、あのときには中和剤は使わなかったですね。それからことしの一月、日本海におけるナホトカ号による重油流出事故、このときは慎重に慎重を期しながら使ってきたという経過がある。そしてそれも、漁業団体などとよく相談をしながら、漁業団体の理解と納得を得た上でやってきたという経過を私は知っております。  今度の場合、流出原油が少ないことが判明したときには直ちに、もうこれは先は見えているわけですから、中和剤の散布量削減などの指示をして当然であったかと思うのだが、その指示はどうも出ていなかったようですね。なぜなのか、その理由を承りたい。
  211. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 油処理剤の処理方法でございますが、当庁といたしましては、まず油回収船などによる機械的な回収、これが基本でございまして、さらに回収ネット、吸着マットなどによる回収、そして油処理剤による処理、さらには船舶を走らせることによる航走拡散、あるいは海水等を放水する放水拡散などを行っているわけでございます。  そして、油処理剤の使用に際しましては、まず排出した油を採取いたしまして、油処理剤の効果があるかどうか、あることを確認いたしましてから、そしてまた漁協関係でございますが、今回もそうでありますけれども、漁業協同組合等と事前に協議をしまして、合意を受けた上でやっております。  その使用量でございますが、これにつきましても、海上における浮流油がその時点あるいはその箇所において処理剤の散布によって効果があるかどうかというような点につきまして、その必要なかつ適切な分量を使用するというふうなことで、海洋環境に配慮しながらきめ細かな対応を行っているわけでございまして、ですから実際に海上に流出している油の状況、それを処理するために必要な分量の油処理剤を使用するということでやっておりますので、今回のダイヤモンド・グレース号からの流出油の処理につきましても適正な分量の油処理剤の使用をしたものと考えております。  それから、先生おっしゃいました、流出油の量が少ないと判明した後については中止すべきであったのではないかという御指摘でございますが、これについては、まず油がある程度濃い場合にはこれは回収がかなり効率的でございますけれども、ある程度薄くなった場合においては油処理剤を使うことが最も処理を効率的に行うことがでさるというふうなこともございまして、一方において必要な量に配慮しながら使って早急な処理を行ったというのが経緯でございます。
  212. 谷本巍

    ○谷本巍君 私が一番聞きたいのは、油の量が十分の一であるということが判明したときに、この中和剤の使用について方針を変更されたのかされないのか、そこはどうなんですか。従来の方針をそのままにしておいたんじゃないですか。
  213. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 当庁といたしましては、いずれにしても三日の午前中の段階において、先ほども申しましたが、非常に拡散が広くなり、かつ一部着岸したものもあるというふうなことで、早急に防除措置を講ずる必要があるということでございました。そして、最も早くやる必要があり、かつ当時におきましてもやはり処理剤を使うことが適切であろうという判断のもとに使ったわけでございまして、ですからあの時点において処理剤を一切使わないという結果が最適なものというふうには考えておりませんで、やはり早く処理するという状況の判断で使用したということでございます。
  214. 谷本巍

    ○谷本巍君 油の量が十分の一だということがわかったときに方針は従来のままであったと。いいですか、農林水産省や環境庁が皆さんに対して、中和剤の使用について慎重を期してもらいたいという申し入れもあったんでしょう。あなたが答えるようなとおりだったら、それは他の官庁なんか、心配している官庁が申し入れするのは何の意味もないということになってきますよ。そうじゃないですか。
  215. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 環境庁、水産庁からのお申し入れについては承知しております。  ただ、要は当時の油について、当然当方としては不必要にたくさん使うとかいうことではなくて、当該油を早く防除しませんと結局拡散してどこかに漂着するとかいろいろな影響が出ますから、それを最も有効な、もちろん環境にも配慮しつつ、量にも配慮しつつ使ったということでございます。
  216. 谷本巍

    ○谷本巍君 その問題についてはまた日を改めて議論させてもらいたいと思います。  もう一つここで伺っておきたいのは、漁業組合と綿密な協議をされましたか。私が調べた範囲じゃそういうふうな事実経過はありませんよ。皆さんの方から何か最初はいろいろ話がありましたということは、僕はいち早くその話は聞きました。その後切りかえるときはどうですかと話を聞いたら、いや、何の連絡もありませんという話ですよ。あなたが言っている話は、それはちょっと事実と違いますよ。
  217. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 漁協等につきましては、これは一番現地は第三管区海上保安本部でございますけれども、そちらの方から漁協に確認して承認を受けたということを聞いております。
  218. 谷本巍

    ○谷本巍君 続いて、中和剤散布の影響調査について環境庁ないしは環境庁長官に伺いたいと存じます。  マスコミの報道によりますというと、古賀運輸大臣が記者会見で、農水省と連絡をとりながら影響調査をやりたいというぐあいに言っております。これは私、新聞の誤報かと思って聞いたら、あれは間違いありませんというんですよ。肝心の環境庁が抜けているんじゃないですか。ですから、これは事実が一体どうだったのかということをここで明らかにしていただきたいということが一つ。  それからもう一つ、中和剤は生物細胞への影響など環境問題上多くの問題点があることは専門家からいろいろ指摘がされているわけであります。ところが、成分についても使った場合の影響についても必ずしも明らかになっていないんですね。それだけに一方では不安が大きいという点がございます。この種の場合に、場合によりますが一定量は使わなきゃならぬ場合、やむを得ざる場合が生じます。それだけに、この際その種の成分と使った場合の影響、これについて環境庁がぜひひとつ調査をきちっとやっていただきたいと思うのですが、いかがでありましょうか。
  219. 渡辺好明

    説明員(渡辺好明君) 事実関係から申し上げますと、事故が発生をいたしまして、私ども実はいち早く環境庁長官みずから翌日の船に乗りまして現場まで出かけて状況を見ております。そして、そのときに同時に千葉側から水質の採取のための船を出しまして、専門家をそれに乗せて直ちにサンプルの採取、分析に着手いたしております。  それから、これは御案内のことと思いますけれども、東京湾は閉鎖性海域ということで、私ども観測地点を湾内に持っておりまして定期的観測をしております。原則は月に一遍ですけれども、総量削減区域ということで、関係都県が合同して水質の検査をする、あるいは底質の検査をするというふうな仕組みがございますので、そういったことも使いながら、もう既に影響調査をしておりますし、これからもそれを継続してやっていきたいと思っております。  それから処理剤の話なんですが、処理剤自身とそれから処理剤によって分散をされました油そのものについて、私どもは環境に対する影響の可能性、これは懸念をいたしております。したがいまして、水産庁ともジョイント、連携をいたしまして、生物、つまり魚、貝あるいはベントスになると思いますけれども、そういうものもこれから私ども参加をして、水産庁あるいは関係の都県と共同で分析をしていきたいというふうに思っております。  いずれにしても、この海域は富栄養化になる可能性が非常に高いですし、それから水産資源の豊富なところでもございますので、念には念を入れて環境に対する影響の調査を続けていきたいと思っております。  それから、処理剤の成分の問題でございますけれども、後でまた御説明があると思いますけれども、これは運輸省令で型式が決まっておりまして、毒性の問題あるいは分解のスピードの問題、それから底にたまらないというふうなことを実験した上で使うということになっておりますので、今の知見のレベルではある程度のことは確認されておりますが、成分の問題についてはこれは運輸省の方からお答えがあろうかと思います。
  220. 谷本巍

    ○谷本巍君 この辺どうですか。
  221. 田口弘明

    説明員(田口弘明君) 今回の流出事故で使用いたしました油処理剤の性状等についてでございますが、いずれの油処理剤につきましても型式承認を受けたものでございまして、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に定める技術上の基準を満たしているものでございます。  そして、現在の油処理剤は油を微粒子化することによって乳化、分散させまして海水とまじりやすい状態にして自然の浄化作用の促進を図るものでございまして、処理された油は海底に沈降すろというふうな性質のものではございません。
  222. 谷本巍

    ○谷本巍君 それからこの件の最後に、大型油回収船の建造問題で伺いたいと存じます。  ナホトカ号の重油流出事故のときには名古屋港から現地に到着するのに五日間かかりました。今度の場合には、名古屋港から参りました清龍丸ですか、これは十九時間かかっているんですね。利もヘリコプターで東京湾の原油事故の最中に回ってみましたけれども、あれだけの船が出入りしているわけですから、東京湾に一そうぐらいあつて当たり前のことなのではないのかという印象を輪めました。  ともかくも、この種の対策というのは海上で全部回収するということが対策の基本になっておろわけでありまして、そして専門家の皆さんに言わせますというと、清龍丸程度のものであっても一そうあれば大分油回収が短縮されたと、人によっては一日で終わりましたよということをおっしゃる方もあります。それだけに、新しい大型油回収船をつくることをひとつ検討いただきたいということであります。漁業団体などではしゅんせつ工事をやるのが先だというような話が結構あるようであります、漁業者の間ですよ、随分多くの漁業者が携わっておりますから。それだけに、この点をひとつお願いしておきたいということであります。
  223. 土井勝二

    説明員(土井勝二君) ただいまの先生の御指摘でございますが、先生も今お触れになりましたけれども、ナホトカ号の重油流出事故の教訓を踏まえまして、三月に運輸技術審議会で総合的な検討委員会を設けましていろいろ検討、御審議をいただいております。  この委員会が去る六月二十日に中間報告を出していただきまして、その中で、海上保安庁の巡視船あるいは民間のサルベージ船などに搭載可能な大型の油回収装置の整備が必要だということをまず言っておられます。要するに、現にある船に大型の油回収装置を整備したらどうかと。  それからもう一つは、先生今御指摘の大型油回収船についても増強ができないかと。ただ、その場合に、大型油回収船について建造したりあるいは特に維持したりするコストと事故の蓋然性、これらを考慮してまいりますと、平時はほかの業務、例えばしゅんせつでございますが、ほかの業務を行うことを主眼とした兼用船が適当なのではないかという御指摘もこの中間報告の中でいただいているということでございます。  私どもといたしましては、港湾建設局の原油の大型しゅんせつ船の老朽更新に伴う代替建造、そういった形で兼用船として整備したらどうかなということで今鋭意検討を進めているということでございます。
  224. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、障害者雇用と虐待並びに雇用助成金の不正受給問題について幾つか伺いたいと存じます。  水戸市の段ボール加工会社アカス紙器の場合でありますけれども、障害者雇用助成金の不正受給、そしてまた障害者への暴行、傷害等が行われていたことが明るみに出てまいりました。しかも、この企業は知的障害者の多数を雇用するということで優良企業として市長さんから表彰状までもらっているんです。  初めに労働省に伺いたいのでありますが、この企業は障害者に対し最賃法の基準以下しか払わず、帳簿上は多く払ったことにして、障害者雇用助成金、二年で八百万円を超える金を不正受給していたということであります。労働省と職安は、この事件についてどのような調査をし、どういう措置をとったかについて簡潔に伺いたいと存じます。
  225. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 御指摘の点でございますが、平成七年十一月に、当事業所の元従業員等の方から茨城県庁行政相談室に対しまして、特定求職者雇用開発助成金の不正受給についての相談がございました。これを受けまして、水戸公共職業安定所におきまして直ちに事業所を訪問の上調査を行い、助成金申請関係書類とこの事業所が保管いたします各種会計帳簿等との照会を行いまして、厳正に確認を行ったところでございます。  その結果、平成六年度及び平成七年度に支給対象者となっておりました十九人に係る特定求職者雇用開発助成金約八百四十八万円につきまして、二重帳簿による悪質な方法で不正受給の事実が認められたところでございます。  そこで、これについて支給決定の取り消しを行いまして、当該期間に係る全額について返納を命じ、これにつきましては平成八年六月に全額返納をさせたところでございます。あわせまして、水戸公共職業安定所長から水戸警察署長に対しまして被害届を提出いたしたところでございます。
  226. 谷本巍

    ○谷本巍君 私の質問時間がなくなってしまいましたので、最後に労働大臣と厚生大臣から考え方を若干承りたいと存じます。  この種の事件を調べてみますと、これは氷山の一角なんですね。結構随分あります。これは企業だけじゃなくて病院、それから障害者施設などでもこの種の問題があるということを耳にしております。  障害者の雇用は大変厳しいものがありますから、父兄の皆さんにしても、少々ぶん殴られたぐらいのことでは職を失わせたらかわいそうだということで子供を慰めちゃう、なだめちゃうんですね。それはそういう障害者を兄弟に持ったとか子供を持ったという人じゃなきやわからぬものがあります。結局、泣き寝入りみたいな状況というのが多く存在するというようなことになっているのであります。これに対して、甚だ残念でありますが、労働基準監督署や福祉事務所がしかるべき措置をきちっととってきているかというと、極めて不十分であります。  政府は、平成七年に障害者プラン−ノーマライゼーション七カ年計画を策定いたしました。関係省庁が連携をとって改善すべき点を改善し、きめの細かい施策を強力にひとつ進めていただきたいと思いますが、その点について労働大臣、それから厚生大臣の考え方を承っておしまいにしたいと思います。
  227. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 時間でございますので、簡便に明快にお答え願います。
  228. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生御存じのとおり、近年、体、心に障害を持たれる皆さんもぜひ自分の能力を発揮してみたい、そういう職場で働きたいと、こういう機運が盛り上がってきました。一方、事業主の方も、そういう皆さんを雇用して社会的な要請にもこたえるというような機運が盛り上がってまいりました。にもかかわらず、この種の一部業者がありますことは、まことにその機運に水を差すものでありまして、私は言語道断であると、こう存じております。  したがいまして、そういう角度で労働行政の側から見ますと、職安あるいは労働基準監督行政というような面でもう少し目を凝らすべきである、こう思っておりますが、同時にまた関係省庁、福祉行政、教育行政、あるいは法務省の人権擁護行政というものと相マッチいたしまして、今のところでは安定所単位にそういった連絡会議をつくりまして、それぞれの領分を相縫い合わせまして網の目を濃くして、それでこの種の事件が出ないように全力投球してまいりたい、かように思っているところであります。
  229. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 厚生省としましては、このアカス事件を踏まえまして、今後労働省関係機関とよく連携しながら、知的障害者の人権侵害事件の再発防止に鋭意努力をしていきたいと思います。
  230. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。国立病院・療養所の看護婦などの二交代制導入の問題について質問いたします。  これは、従来の八時間三交代から二交代にして、最長で実働十六時間、拘束十七時間というものなんですけれども、導入されて半年以上たちました。今まで七十一施設、百二十三病棟で導入されたわけですけれども、仮眠なしの長時間夜勤、これが大変過酷なものだということなんです。  全日本国立医療労働組合は五月に二交代制導入について病棟の看護婦さんを対象にしてアンケート調査をいたしました。これはマスコミでも一斉に報道されたので大臣もその中身を御存じだと思うんですけれども、回答した四百五十九名の八割近くが二交代制では定年まで働けないと回答しています。その理由として、八四%は疲労の蓄積、これを挙げております。夜勤明け直前の、翌朝の食事と排せつの介助には五六%がつらいと回答しておりますし、二交代制導入によりおむつや尿器の交換、検温の回数を減らした、そういうところが多いわけですね。集中力が欠け採血の針の刺し直しを二回したとか、そういうミスがふえるとか、そういう看護内容の低下、これがこうしたアンケートから浮き彫りになっているわけです。  私自身も現場の看護婦さんの意見を伺いました。体がもたない、くたくただ、ぼうっとしてくる、目がちかちかしてカルテが読み取れない、そういう声が相次ぎました。それからさらに、私はロボットじゃない、生身の人間なんだ、そういう叫びもありました。  これでは、大臣、看護の質の向上とか働きやすい勤務環境と言ってきたこととまるつきり正反対になるんじゃありませんか。
  231. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) この二交代制勤務は選択肢です。二交代が好ましい病棟には導入してもらいたい、そういうことでやっておりますので、選択していただいた方については今後改善すべき点は改善したい、その中で質の向上に努めていきたい、そう考えております。
  232. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 その選択肢の問題については後で触れたいんですが、一番大事なのは、やはり大臣自身が現場で何が起こっているのかということをリアルに正確につかんでいただくことが非常に私は大事だと思うんです。  この問題に関連して、例えば夜勤を終わって報告書を書かせる病棟があるわけですけれども、二交代制での困難や問題点を書くと、管理職に別室に呼ばれて、何かよかったことを挙げるまで一対一で詰められる。ここはお仕置き部屋と呼ばれているんです。そういう病棟もあるんです。これでは正直に看護婦さんが現場の状況報告することはできないんじゃありませんか。  私は、こういう事態が起こっていること自体、孤立した事例じゃないです、やっぱり人権侵害になると思います。大臣はこういうことを聞かれておりますか。
  233. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 実際の実情について一人一人から聞いているということはありません。
  234. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 こういう形の報告が幾ら厚生省に来ても、私は実態はつかめないと思うんです。ひどいことはもっとあるんですよ。私は二交代制が導入された関東甲信越の看護婦さんと懇談して実態調査したんですけれども、導入に当たって現場での意見聴取も全くひどいやり方なんですね。三つ例を挙げます。  その一、管理職が職場の会議に来て、二交代制をやる、賛成かと聞く。賛成の声はないですよ。業務命令なら従うかと聞かれる。それならばしょうがないとなる。そうすると、理解が得られたということになっちゃうんです。その二、管理職、二交代制に賛成の人は手を挙げてと。もちろんゼロ。二交代制になったら仕事をやめる人。これもゼロ。すると、導入しても働くんだから賛成ですね。これでオーケーとされるんですよ。その三、十二時間がよいか、十六時間がよいか、そう問いかけて、どちらかに手を挙げると賛成したことになっちゃうんです。これも孤立した例じゃないんです。各所であるんです、こういうことが。  大臣は、二月十二日の衆議院の予算委員会で、我が党の児玉議員の質問に対して、よく現場の理解を得ながら、そしてまた先ほど言われたように、一律に導入するんじゃない、選択肢の一つだと言われたんだけれども、現場ではこうなっているわけです。選択肢と言う以上は自由な選択があってしかるべきだけれども、こういうやり方は自由な選択と言えるんですか。また、これで理解を得てと言えるんですか、大臣
  235. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 現場の意見をよく聞いて、賛成の方もおられるわけですから、両方の意見を聞いて考えていけばいいんではないかと、そう思います。
  236. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 それで、賛成と反対の意見、どちらが多いと認識されていますか、大臣
  237. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) どちらが多いかということはわかりませんが、両方の意見があるということは承知しております。
  238. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 私も両方の意見があると思いますけれども、反対意見が圧倒的に多いんですよ。職場で一〇〇%、九五%、そういう反対の意見を上げる。しかし施設長は受け取らない。ひどいんですよ。同じ職場であっても受け取られないから、しょうがないから請願の形で、国民の請願権を行使してそういう声を上げるんですよ。ひどいじゃないですか。  それで、そういう意見を一般的に言われると、そして窓口にそれを置いてくると落とし物扱いされる、そうした事態も生まれているんですよ。ですから、やっぱり大臣は御存じないんですよ、現場の事態をリアルに。私はそう思います。  ですから、そういうことでいうと、とにかく二交代制導入に反対あるいは消極意見、これを聞こうとしない。そういうやり方があるわけですよ。こうしたやり方では、特に医療の現場というのは人間関係が非常に大事なわけで、人間関係が荒廃して、いい看護ができるわけない。施設長がどう判断しようが、現場の看護職員が物が言えることが非常に大事なわけです。導入の方針に合わない意見、こういうものに対して封殺させるという今のやり方、あるいは意見の表明の意見書、これを受け取らないというやり方、こういうことはやはりやめるべきだと思います。大臣
  239. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 病棟ごとによって二交代がいいか三交代がいいかというのは違ってくると思います。患者さんにとっても、二交代の方がいい患者さんもおります。看護婦さんにとっても、二交代になれると二交代がいいという看護婦さんもいるわけです。  いずれにしても、新しい制度を導入する場合には適応には時間がかかると思います。両方のいい点、悪い点を考えながら、改善すべき点は改善すべきではないかと考えております。
  240. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 看護職員にとってどうかということと、今患者にとってと言われたんだけれども、患者のケアが後退するということはもう歴然としているんですよ。  大臣はこういう資料を御存じですか。これは、場所は言いませんけれども、国立病院の院内報、院長が出した通達。ここには、二交代制の勤務の実施時期の変更を決定したいと。その理由というのは、インフルエンザに感染した患者が多数いるから、二交代制の導入を一カ月延期するというものです。なぜ延期するんですか。これはケアが行き届かないからなるんですよ。そういうふうにちゃんと理由も書いてある。理由書と書いてある、後ろに。  ですから、いろいろあるかもしれないけれども、患者の問題については、やはり患者にとっても非常に大きな問題がある。後でも触れるけれども、このことを述べておきたいんです。それで、私が言いたいのは、なぜこういう無理な形での導入、これが頻発するのか。厚生省地方医務局が施設長に対して二交代制導入を押しつけているんじゃありませんか。
  241. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 事務当局から少し説明をさせていただきます。先ほど先生がおっしゃいましたように、国立病院で二交代制は……
  242. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 今の質問に答えてください。時間がない。
  243. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 現在、全施設の三〇%、全病棟の八・一%で実施がされております。先生の方で全医労という組合側のニュースの内容を今回この議場でお話しされたんですが、私どもの方としては、導入してから一カ月、それからまたニカ月という段階で、夜勤を済まされた看護婦さんに対して、自由に記述式でもって、患者さんの反応がどうでしたか、看護婦さんの反応はどうですか、それから看護婦さんの家族の反応はいかがですか、その他についてどんなことを思っていらっしゃいますかということを調査いたしております。そして、一カ月のときよりもニカ月たったときの方が、先ほど大臣が申されたように、環境に適応して、それになれて、私どもから見ると、やっぱり二交代についてはすべての病棟で適用できるものではない。しかし……
  244. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 導入を押しつけているのかどうかについて聞きたい。導入を押しつけているのか、答えてください。
  245. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) そんなことで、私どもとしては、先ほど大臣が申し上げたように、二交代というのは、どちらかといえば、急性期よりは慢性期の病気に向くのであって、そういうところに対してお話をして、そして看護婦さんがそれでやりましようということで御了解をいただいてやっているわけでして、決して強制力でもってこれん導入しているわけではございません。
  246. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 こういう形で厚生省はいつも説明する。導入は施設長の自主的な判断に任せているというわけですね。しかし、施設長や管理職が現場を説得する際に、二交代制の方に従わないと大変なことになるとおどしながら懇願するという例があちこちで生まれているんですよ。例えば、統廃合されてよそに行くことになっていいのかとか、予算も来なくなる、新しい医療機器も要らないのか、病院の生き残りのためだと。相当な圧力をかけられている証拠だと思うんです。二交代制を導入するかどうかで統廃合や予算その他に差別があるのか。
  247. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 二交代制を導入するか否かによって、その病院に対する予算上の差をつけるとかということは一切いたしておりません。
  248. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 二交代制の導入は全く施設長の任意の判断で、導入後は施設費や人事の評価に一切かかわらない、そういうことを確認してよろしいですね、大臣
  249. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) それと統廃合とは直接関係はありません。
  250. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 私は、そう言われたんだけれども、手元に資料があるんですよ。これは厚生省の東海北陸地方医務局が出したもので、平成八年度管内国立病院・療養所五役会議資料、そういうものです。これは百五十五ページに上る大部なものなんだけれども、この中には地方医務局の経営指導課が作成した国立病院・療養所の経営管理を行うための指標評価基準が事細かに定められているわけです。総合評価を百点満点にしてランクづけしているわけですけれども、二交代制を導入した施設には特殊要因として最高点の五点を与えると評価しているわけですよ。二交代制を導入しなければ評価は下がるぞという手法なわけです、これは。  厚生省がこういうことを進めているということ、促進しているということ、明らかじゃないですか。こうした形の評価をつけるなら、施設長の任意の判断というのはうそになるでしょう。こうしたやり方はやめるべきだ、そう思いますが、どうですか、大臣
  251. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 今、厚生省の経営指導課からの通知によって、いわゆる病院の評価で、二交代制の導入についてそれがポイントになるような……
  252. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 点数制。
  253. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 点数制になるようなお話がございましたが、厚生本省からそういうような指示を出したというのは今の段階で、急な御質問なのでわかりませんが、私は残念ながら承知をいたしておりません。
  254. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 これは非常に重大なことで、じゃ、局長、御存じないんですね、担当の局長が。大臣も御存じない。
  255. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 私は承知をいたしておりませんし、私から大臣に御説明を申し上げたこともありません。
  256. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 この報告書の百十八ページに書かれておるわけですよ、実際に最高点五点ということで。担当の局長が知らないことが、何でこういうことが起こるんですか、おかしいじゃないですか。  こういう点数制、あなたが言われたように、本当にこういうことが自主的に施設長の判断でやられているんだったら、厚生省がこういうことを、二交代制導入したら五点満点を特殊要因で与えるという、そういうことをあなたは知らないんだから、こういうあなたの知らないことを取り消すべきでしょう。すぐやりますか。事実を確かめて、やるということを答えてください。
  257. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) まず、その資料について、それが国立病院部の中の資料かどうかまだ確認ができませんので何とも申し上げられないわけであります。ただ、国立病院の私どもの経営とはこういう経営という形、観念からいきますと、地方局には地方局のある程度の自由があって、そして地方局が自分の管内の病院をよりよくするために努力するという自主的なものは当然入ってきてしかるべきだと私は思っております。したがって、もしその資料が本物でありましても、それは地方局の言い分をよく聴取することがまず肝要かと、このように思っております。
  258. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 おかしいですよ、それは。先ほど私は、厚生省地方医務局が施設長に対して二交代制導入を押しつけているんじゃないかと言って、あなたは否定されたでしょう。今ひっくり返った、その話が。だから、もう時間がないからいいけれども、こういうことをやるということは大問題なんだよ。だから、この問題について直ちに調査して、この詳細は各地でどうなっているかと調べて、それですぐに報告して是正する。約束しなさい。どうですか。
  259. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) その資料について私どもの方で調査をいたします。そして、なぜそういうふうになっているのか、よくそれを調べますということでございます。
  260. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 そして是正しなさい。  大臣、あなたはこの話を直接今初めて聞いたかもしれないけれども、おかしいんですよ、こういうことは。自由な選択じゃないでしょう。ですから、大臣大臣も知らないところでこんなことがまかり通っている。しかも、今大事な問題で、このことについて大臣、責任持って対処するということを約束してください。
  261. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 私どもは、二交代制勤務というのが、患者へ提供する看護の質や看護婦の勤務環境がよりよいものになると思っているから導入をしているわけです。よく実情を調べなきゃ、一方的に言って是正するということではなくて、両方とも是正の観点は違うんですから、両方実情を調べて改善すべき点は改善していくと。
  262. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 自由な選択と言われたけれども、実際、厚生省じゃないとしても、今、局長言われたように、地方医務局ではこういうことをやっているかもしれないと言われたわけですよ、これ。さっき否定した、厚生省も地方医務局も一切やっていない、施設長の自主的判断だとさつき答弁があったけれども、それはひっくり返ったわけですよ。だから、どっちがいいかとかそういう話は、リアルな調査、これは必要ですよ。  ですから私、私の考えを押しつけようと思わないけれども自分たちの言った論理性は一貫しないでしょう。だから、それについて、こういう点数をつけている、しかも二交代制をやったら五百満点をつける、そういうとんでもないことに対してはやっぱりはっきりとこれはおかしいと。大臣が約束されている、国会答弁されている自由な選択にも反する、そういうことになるわけで、やっぱりその立場から是正をお願いしたい。このことを要望しておきます。  大臣、日本看護協会は、昨年十一月、要望書を出しました。それに続いて、六月十二日の要望書の中でも、二交代制の導入について、看護部等の現場で業務に従事している者と十分に協議する、それから八時間以上の夜勤を実施する看護単位は看護職三名以上の人員を配置する、十二時間以上の勤務は極力避ける、これを再度要望しているわけです、この六月に。  大臣は、十一月の要望について、もっともだと指摘して、そういう点を勘案しながらやると答弁されましたね。ここに指摘されていることについて、実際どうこれから対応されますか、日本看護協会からの要望について。
  263. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) その要望点をよく踏まえながら、実情を調査して改善を図っていきたいと思っております。
  264. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 それから、患者にとっても重大な問題なんですよ。日本患者同盟、全国ハンセン病療養所入所者協議会から二交代制勤務反対の要請が大臣あてに出されております。患者の命と安全にかかわる国民的な問題とここでは強調されているんです。  二交代制を導入して三カ月以上たっているところが五十六施設百三病棟あるわけです。厚生省の国立病院部の担当者に尋ねましたら、現場に行ってこの問題を視察した者はだれもいないと言うんですよ。厚生省としては、施設長、地方医務局から上がったものをやっているから報告は受けていると言うんだけれども、さっき言ったようにこのパイプが詰まっているわけです。ですから、厚生省そしてまた厚生大臣も実情をつかんでおられないと私は思うんです。今お話を伺っていてもそう感じますよ。  したがって、実際に導入してどうだったのか、このまま続けて問題はないのか、改善しなきゃならない点はないのか。厚生省としては、全体としてやはりこの問題について実態調査をしかるべき形でやる必要があると思いますけれども大臣、いかがでしょうか。
  265. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 導入してある程度時間がたたないと実情はわかりません。しかるベき時期に実情を調査して、その上でやるべきことはやっていく必要があるのではないかと思います。
  266. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 しかるべきときと言っても、これだけ問題になっているわけですから、やはりなるべく早く、またいろんな形で見直し等々レビューをやっていただきたい。このことを述べておきます。  それからもう一つ看護婦さんの健康管理の問題、これもやはり二交代制のところではやるべきだと思うんですけれども、この問題について、実は二交代制に従事している看護婦の健康診断、これは昨年の十月十七日に出した連絡事務文書で、特に行わないというふうになっているんですよ。これは導入する前の話だったわけですから、導入されて今いろんな問題が出ているわけで、この必要性というのは非常に高まっていると思います。ですから、この指示文書にこだわらずに健康診断をきちっとやるべきだと、そのことを大臣に要望したいんですが、いかがですか。
  267. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) よく実態調査してから検討したいと思います。
  268. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 こういう問答無用な形で行われているという実態に、私自身も調べて、また懇談してびっくりしました。やはり医療の現場で矛盾が非常に激しくなっていると思うんです。ですから、その点で私はこの導入は再検討すべきだと、そのことを述べておきたいと思います。  あと、残された一分間ですけれども、全く別の問題ですけれども一つお尋ねしたいことがあります。  国立病院の統廃合と地域医療の問題なんですけれども、私は、世田谷区にあります大蔵病院が高度専門医療の国立成育医療センターにされるという問題を、この間、何度か現地で調査してまいりました。現在でも世田谷、狛江の医療圏、千百六十六床のベッドが足りないのに、地域医療から撤退するとしたら大問題だということで地域の住民に非常に大きな不安を与えているわけです。各地で同様な問題がいろいろあります。  私は大臣に二点伺いたい。  第一点、大蔵病院の場合、世田谷区長、区議会が全会一致で厚生大臣に地域医療の存続の要望を行っております。しかし、地元に説明も協議もない。地域住民や自治体とよく協議すべきだと思いますけれども、その点が一点。  それからもう一点、高度専門医療の機能を果たしながら地域にとって必要な医療を行い、患者に支障なきようにすべきだと思いますけれども、その点について。  二点お伺いいたします。
  269. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 国立病院、療養所の統廃合を今進めています。それは、限られた医療資源をどのように有効に活用していくかという観点から、国立医療機関にはふさわしい政策医療というのがあるだろうということで、一般的な地域医療の機関や民間機関とはそれぞれ違う役割があるだろうと私は考えております。  そういうことから、どれが国立の医療機関としてふさわしいか、また、地域においてどのような医療機関がある方が望ましいかというのはもう各地域によって、今国立病院の統廃合になると必ず反対論が出てきます、住民にとってみれば病院があればあるほどいいんですから。しかし、そういう状況でもないというので、この国立成育医療センターというのは小児医療とか母性・父性医療のナショナルセンターとして整備を図ることとしておりますから、一般的な地域医療は行わないこととしております。  なお、救急医療についても他の医療機関にゆだねることとなっておりますけれども、もしも成育医療センターでなければ対応できない患者については、これは当然拒んではいけないと私は考えておりますが、今後ともこういう趣旨について、地元の自治体とか議会とか医師会理解をなるべく得るような努力をして、この趣旨の御理解を得ていきたいと考えております。
  270. 緒方靖夫

    緒方靖夫君 終わります。
  271. 栗原君子

    ○栗原君子君 新社会党の栗原君子でございます。  先般、臓器移植法が成立をいたしました。その議論の中では脳死を人の死とするか否かといったようなところに議論が集中したように私は思います。そこで、現在既に行われております腎臓とか角膜についてもいま一度点検をしてみる必要があるように思っております。幾つかこれに関しまして質問をさせていただきます。  現在、二十七兆一千六百億円とされております国民医療費の中で透析にかかわる医療費はどれぐらいになっているのか、また、そのうちいわゆる公費負担の比率はどのようになっているのか、組合健保あるいは国民健保よりのおのおのの支出額、そういったところをお答えいただきたいと黒います。
  272. 高木俊明

    説明員高木俊明君) これは推計でございますけれども平成七年末における人工透析の患者数が約十五万四千人ということでございます。この透析の費用につきましては、入院、外来あるいけ合併症等々の有無によってそれぞれ個別事例では異なっていると思いますけれども、一応推計としましてこれが外来であるというふうに仮定させていただきますと、おおむね一人一月当たり五十万円程度かかっております。そうしますと、十五万四千人に五十万円を掛けまして年間の費用というのを推計すると、約九千億円程度というふうに推計をいたしております。  そこで、この負担状況でありますけれども、この透析にかかわる医療費、これについては、先生御案内のとおり、更生医療という公費負担制度がございます。これはあくまでもまず医療保険を先に適用いたしまして、そして自己負担額につきましてそれぞれ所得によりまして公費負担する額を決めておるわけですが、一月五十万円かかるものですから、これらはいわゆる医療保険の高額療養費制度に該当いたします。  そうしますと、透析患者の場合は一万円負担すればあとは医療保険で全部カバーしていただくということになっておりまして、この一万円の部分について更生医療等によります所得に応じた公費負担が適用される、こういうふうになっておるものですから、この公費負担部分というのは全体で四十七億七千万円ということでございまして、先ほど申し上げました年間九千億円の費用に対しまして四十七億七千万円が公費負担で支払われている、残りが医療保険で支払われている、こういうことでございます。  こういったかなり大きな推計をさせていただいておるものですから、それぞれ組合健保なりあるいは国民健康保険という制度におけるそれぞれの費用というのはちょっと推計が難しゅうございまして、現在のところは全体としての姿で御理解賜りたいと思います。
  273. 栗原君子

    ○栗原君子君 厚生省の見通しとして、例えば今後の五年間に腎移植にかかわる費用として、総額どれぐらいを毎年試算されているのか。そして、年次予測としてこれを示していただきたいと思います。  また、腎移植後の維持経費として二年次以降は年間約百七十万円と言われておりますが、患者の負担、自己負担率というのはどの程度になっているのでしょうか。
  274. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 死体腎によります腎臓移植にかかわる費用といたしましては、平均的な症例の一つについて言いますと、移植した年に年間で五百三十万円、それから二年目以降になりますと、もう手術代等入りませんので、あと薬等、免疫関係の薬がありますが、そういう維持費用として百七十万円であると承知をいたしております。  死体腎による腎臓移植を受けた患者にかかる五年間の費用で見ますと、大体一人当たり一千二百十万円というふうに見積もられるところでございます。また、死体腎による臓器移植を受け、現在も腎臓が生着している患者さんの数は日本移植学会の推計によりますと約六千四百名でございまして、加えて、これまでの死体腎による腎臓移植の実績では、近年、年間二百例弱の数で推移をいたしておりますので、当面この傾向が続くとすれば、腎臓移植にかかる費用の総額としては毎年百三十億円程度が推計されるところでございます。  また、腎臓移植後の維持経費としての患者の自己負担につきましては、医療保険の高額療養費制度によりまして一カ月六万三千六百円でございますが、市町村民税の非課税者等所得の低い人たちは三万五千四百円という限度額がございます。ただし、これらの自己負担につきましても、身体障害者福祉法に基づく更生医療等により所得に応じて全部または一部負担が公費でされておりまして、例えば市町村民税の非課税者に対しましては全額公費負担となっておるところでございます。
  275. 栗原君子

    ○栗原君子君 患者の自己負担額によっては現実に支払い能力のある一部の患者にのみ適用可能といったようなそうした声があるわけでございますけれども、これについてはどのように考えていらっしゃいますか。
  276. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 腎臓移植につきましては、移植を受けても、さっきも言いましたように、患者さんの自己負担は高額療養費制度のおかげで一カ月で最高で六万三千六百円という負担でありますが、それでも保険の方の制度で所得の低い方は三万五千四百円になりますし、身体障害者福祉法に基づく更生医療でもまたこれについて公費負担をしているということですから、所得が少ないから腎臓移植が受けられないということは私は非常に少ない、ほとんどないんだろうと、そう思っております。
  277. 栗原君子

    ○栗原君子君 現在そういう高額医療については考慮されているから心配は要らないということでございました。それでは、今度臓器移植法が成立をいたしまして、心臓とか肝臓になりますと、これと同じような考えと思ってよろしいですか。
  278. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 臓器移植の心臓移植、肝臓移植にかかる経費がございますね。これですと、心臓移植の場合は移植後一年間で約一千万の医療費。これは現在の保険点数の高度のいろんな技術のものの値段がありますので、それから大体推計をして、学者の先生方が、心臓の場合は一千万、肝臓の場合は九百万円の費用がかかるだろうと、こう申しているわけでございます。  現在はまだこれは行われておりません。行われておりませんから、医療保険の対象にはなっていないわけでございます。今後はできるだけ速やかに中央社会保険医療協議会におきまして医療保険の適用のあり方について検討していただきたい、このように考えておるところでございます。今の段階ではまだ中医協の御議論が始まっていないところでございます。ただ、腎臓移植が先ほど申し上げたような事例であるということは、これは中医協の先生方も御理解されることだと私は思っております。
  279. 栗原君子

    ○栗原君子君 次に、腎臓の提供者、あるいはまた角膜についてもそうでございますけれども、現在、ドナーカードの普及とか移植のネットワークの推進、コーディネーターの養成等については、おのおの予算的な措置とかそれからどういった運営がなされているのか、もう一度お聞かせください。
  280. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 現在はまだ肝臓や心臓の方はないのでございまして、腎臓の話になりますが、腎臓移植の推進につきましては、ドナーカードの普及だとかコーディネーターの養成を含めまして、社団法人日本腎臓移植ネットワークを通じてこれらの事業を実施いたしておりまして、平成九年度予算におきましては総額で三億六千五百万円の補助を行っておるところでございます。また、都道府県に対しましても、コーディネーターの設置費として二億円の補助を行っているところでございます。  あと、今回臓器の移植に関する法律を成立させていただきましたわけですが、それに伴って、今度は腎臓移植だけでなく、心臓、肝臓にも対応したいわゆる臓器移植ネットワークというものをまず整備して、そしてこれら肝臓、心臓等の移植にも備えていくということが必要だ、このように思っているところでございます。
  281. 栗原君子

    ○栗原君子君 伺うところによりますと、ドナーカードの普及を今、腎臓あるいはまた角膜についてもやっていらっしゃるわけでございますけれども予算的にも百数十万といったようなことで、じゃ現実にどういった事業をしていらっしゃるのですかと言いましたら、ただカードを配るだけに終わっているというような答弁を担当者から伺っているわけですけれども、現にそれだけのことですか。
  282. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 今配っているドナーカードというのは腎臓移植の関係のもので配っておりまして、腎臓移植の場合は、脳死ではなくて従来の、心臓死の御遺体から臓器が摘出できる、そして御家族のそんたくでもって腎臓をいただくことができるということでございまして、今度の心臓や肝臓におけるようなドナーカードとは性格が少し違うわけでございます。  そういう意味では、今後は心臓、肝臓に対応するためには、御本人に、皆さんに、私は脳死の判定も受けます、臓器も提供しますという意思表示をいただかないことには先に進まないわけですから今以上にドナーカードの重要性が増しておりまして、これについては今のところはまだ予算が入っておりませんものですから今後の問題だろう、このように考えておるところでございます。  ただ、実際のところは、この腎臓移植ネットワークでも、今回の臓器移植法案の審議の途中で、衆議院を通った段階で実は参議院の方も通るだろうと皆さんが想像されまして、皆さん金を出し合いまして、そして一部もう印刷を始めたんです。ところが参議院の方の修正がございまして、それは全部破棄して、また新たに金をかけてつくるということで今努力をしているところでございます。それはもう補助金がある、ないじゃなくて、これは臓器移植をやる人たちが、自分たちボランティアで金を出してでも何とかこのドナーカードをたくさんつくって国民の皆さんにサインをしていただこうといって努力をしているところでございます。
  283. 栗原君子

    ○栗原君子君 ここで大変私も心配しておりますことの中に、ドナーカードヘの登録者を募るために地域あるいはまた職場等々におきまして強制的な動きが始まる、そして、その登録をしない者にとっては大変職場にもいづらいとか、村八分になりそうだとか、あの人は自分勝手だとか、そういう風潮が起きるような気がするわけでございますけれども、そういうことは絶対にないですか。
  284. 小林秀資

    説明員(小林秀資君) 絶対にないかというふうに聞かれると大変困るのでありますけれども、そうでなくて、行政府が絶対しないのかといえば、絶対にいたしません。そういうことを厚生省の方でもって強制をするという性格のものではない、このように思っております。
  285. 栗原君子

    ○栗原君子君 命の問題でございますので、ぜひ慎重に扱っていただきたいことをお願いさせていただきます。  続きまして、追加質問をさせていただくために環境庁長官においでいただきまして、ありがとうございます。  実は、広島県の大久野島でございますけれども、戦争中、旧日本軍の毒ガスの製造工場がありまして、当時、七千人近くが一九二九年から終戦まで働いておりました。それらは旧日本軍が中国大陸に大量に持っていきまして、そして今日も大量に中国大陸の東北部を中心に旧日本軍が遺棄しているものがございまして、化学兵器禁止条約がことしの四月二十九日に発効いたしまして、日本政府としても十年以内にこの処理を義務づけられているところでございます。  実は、けさ広島県の来年度の事業説明会がございまして、特に重点項目の一つとして大久野島の砒素の問題を挙げていらっしゃいますものですから、質問をさせていただきます。  大久野島につきましては、現在では国民休暇村として観光とかレクリエーション、あるいはまた修学旅行などで広島県内外から年間十五万人の人たちが訪れております。そして、島には毒ガスの資料館とかあるいは旧日本軍の貯蔵庫の跡、そうした遺跡がありまして、修学旅行生の人たちにとりましては貴重な平和学習の資料となっているわけでございます。  昨年でございますけれども、その一部で土壌や水質の汚染が明らかになりました。土壌につきましては、三十九カ所の調査をした中で十三カ所で基準値を大幅に超える砒素が検出をされまして、多いところでは四百七十倍という砒素が検出をされました。水質におきましても、十九カ所のうち四カ所から基準値を大幅に超える砒素が検出をされまして、島の井戸水から砒素が検出をされたということで大変皆さんが心配をしているわけでございます。三十九倍の基準値を超える砒素が井戸水からも検出をされているわけでございます。  そこでまた、ことしになりましてから毒ガス弾の、いわゆる赤筒という毒ガス弾でございますけれども、島の北部の海岸で発見をされました。九七年の二月十九日に、環境庁におかれましては大久野島の土壌等の汚染対策検討会が設置されたと、このように伺っておりますけれども、どういった検討をしていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  286. 丸山晴男

    説明員(丸山晴男君) 先生お話しのとおりでございますが、大久野島は十五万人以上の青少年を中心として利用をされておりまして、ここは環境庁が土地管理者ということで、従来からこの島の安全性の確保に万全を期したところでございますが、その中で今お話にございました土壌汚染と水質汚濁の砒素の問題が出てまいりました。  水質汚濁の砒素の問題につきましては、竹原市から一たん上水を購入しておりましたが、この五月から貯水槽に砒素除去装置を併設いたしまして、自己水源からの給水を再開いたしております。この点は解決いたしております。  残る土壌汚染の問題につきましては、主として北部の地点で高い濃度が検出され、また、それ以外にも環境基準を超える値が検出された地点が島内に点在をいたしておりまして、これに対する土壌汚染の対策事業をどう進めるかということで検討会を設置いたしまして、これはことしの二月からでございますが鋭意検討を進め、この検討会の中で実験的に新しい技術的な土壌汚染対策事業も検討しながら化学的、技術的な検討をしていただいておるところでございまして、検討会の結果を踏まえてできるだけ早く土壌汚染対策の実現に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。  また、赤筒らしい物件が発見されたということで調査をいたしました。現在、その金属塊が発見されたわけでございますが、腐食が著しくて、わずかに残っている内容物につきましても刺激性とかくしゃみ性が全くございませんので、その効力は既に消失しているというふうに評価をいたし、この点につきましての島の中の安全性上の問題はないと考えておりますが、なお念のため現地調査を特に北部の海岸に集中的にいたしまして、類似の物件が残存をしていないことを確認をいたしております。  また、今後とも港湾利用者の安全確保の万全を期すために、関係機関の協力をいただきながら引き続き定期的なパトロールを実施してまいるということで、安全対策に万全の体制で臨んでいるところでございます。
  287. 栗原君子

    ○栗原君子君 実は私、昨年でございますけれども、大量に砒素が検出をされたということで現地に調査に参りまして、そして環境庁の担当者の方からもいろいろ説明を受けたわけでございます。  そのときに、大量に砒素が検出されたその土をコンクリートで密封をして、そしてまたその後は砒素が飛び散らないように芝を張っていくということを言っていらっしゃいまして、いつなさるのかいつなさるのかとずっと見ておりました。確かに会議だけは何度も何度もなさったような状況はうかがえるわけでございますけれども、県あるいはまた向かいの竹原市におきましては、いっこの土壌汚染の対策工事を実際に着工してくれるのかと、このことを急いでいらっしゃいますので、ぜひそうした期待にこたえていただきたいということを思います。  それから、島内におきましてはまだ安全宣言というものがなされていないわけでございますから、そのことによりまして国民休暇村への申込者のキャンセルが続出をしたといったようなこともあります。まず、この大久野島が安全宣言をするということはこの地域のそうした活性化にも大きく役立つわけでございまして、そのような調査など、そしてまた、早期に工事に着工していただきたいということを思います。  それから、島には戦争当時の貴重な遺跡がたくさん残っておりまして、この遺跡の保存についてぜひ環境庁としてもお考えをいただきたいということを思います。貴重な平和学習の史料となっておりますので。  そうしたことを含めまして、環境庁長官の決意のほどを伺いたいと思います。
  288. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 大久野島の問題につきましてはいろいろと御指摘をいただきまして、地元として大変御心配のあるところだと思います。今、説明員からもいろいろ説明がありましたけれども環境庁といたしましても、検討会もできていろいろとやっているところでもありますので、その結果を踏まえて、関係機関とも十分調整を図りながら万全の対策をしていきたいというふうに思っております。  遺跡の指定の問題につきましては、また地元ともいろいろ協議をして取り組みたいと思っております。
  289. 栗原君子

    ○栗原君子君 終わります。
  290. 堂本暁子

    堂本暁子君 まず、児童福祉法の改正について質問させていただきたいと思っております。  児童福祉法がほぼ半世紀ぶりに改正されました。その中で、今まで市町村が保育に欠けると認めた児童を保育所に措置するといった現行の制度から、利用者が保育所あるいは保育サービスを選択できる仕組みというふうに改正されたわけなんですが、同時に、延長保育、夜間保育、障害児保育など、保育の多様なサービスに対応していくと申しますか、充実する方向性が打ち出されています。その方向性というのは、女性がいろいろな職場に進出している現在、大変大事なことだと認識しております。  しかし、まだ認可外の保育施設が、厚生省の統計で九千三百十カ所、利用している子供たちの数は二十二万人、そのうちの二万人近くはゼロ歳児も含まれています。認可の保育所は百六十万人の子供が通っていますから、そのほぼ一割以上の子供たちがまだ認可外の保育所に通っているわけなんです。  これから日本の未来を担っていく子供たちが本当に健全に心身とも健やかに育つためには、手がかかる子供たちに十分な経済的そして人的なサービスが提供できる認可保育所が私は大変大事だと思っておりますけれども、認可保育所の保育サービス提供を基本であるというふうに厚生省としては認識しておられるかどうか、この点を厚生大臣に伺いたいと思います。
  291. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 基本としては、認可保育所を中心に考えるべきだと思いますが、その認可保育所を補完する意味において認可外の保育所というのも私は役割があると思います。  しかし、いずれにしても、そのお子さんの環境がどういう点が望ましいか、また、働く両親にとってその間お子さんに対するいろんなお世話ができないということから、その必要に応じて事業所内で保育所というものが今活用されているわけでありますから、私はそういう面において、厚生省としては認可外であろうとも必要な指導や助言はしていかなきゃならないというふうに考えております。
  292. 堂本暁子

    堂本暁子君 もう十五年前になりますけれども、認可外の保育所で大変劣悪な保育が行われて、親はそこにいないわけですから、子供がどのような保育をそこで受けているかわからないわけでございまして、哺乳瓶を口に入れたまま窒息した子供もいるし、それからお布団が挟まって窒息した子供もいるし、ひどい例では車の中に置き去りにされて亡くなった赤ちゃんもいたわけです。  認可の保育所は、当然のことですがきちっとそれなりの報告もあり、いろいろなことが調べられていますけれども、認可外の保育所の安全性というのをどこまで厚生省は担保すると申しますか、そういった死亡につながらないまでも、子供の健全な発達、それは五年後、十年後に子供に影響してくるわけなんですけれども、そのことをどのように担保なさるおつもりでしょうか。
  293. 横田吉男

    説明員(横田吉男君) 私ども、子供の健全育成という観点から、認可保育所を中心に整備し、運営等に対する負担金の助成等を行ってきているわけであります。  認可外の保育所も、それぞれ地域なり職域の実情に応じまして一定程度存在するわけでございます、病院等あるいは僻地に。それ以外のベビーホテル等もございます。こういった認可外の保育怖設に対しましては、私どもできる限り認可保育所の最低基準に準じた基準の維持ということで、施設面それから人員面での基準、これは最低基準に達しないものもございますが、当面の指導基準というものを設定いたしまして、それの遵守、指導等に努めてきているところでございます。今後ともそういった方向努力してまいりたいというふうに考えております。
  294. 堂本暁子

    堂本暁子君 現存するベビーホテルがその最低基準に近いというふうにはとても思えませんが、そのことに対してのデータは厚生省はお持ちですか。
  295. 横田吉男

    説明員(横田吉男君) ベビーホテルに限定したデータは今手元にございませんが、平成七年に調べた調査によりますと、施設面、保母面、最低基準適合の両方とも適合している施設は二二・九%でございます。例えば、施設だけですと五五%、保母の配置面ですと四割が適合しているわけですが、両方とも適合ということになりますと二二・九%ということでございます。  それから、先ほど申し上げました当面の指導基準適合でございますと、施設面での適合が一五・六、保母の配置で三五・九、両方とも適合というのは六・四%でございます。それから、不適合というのが、これは施設面で二九%、保母の配置で二三%ということで、両方ともというのは七%ということでございます。
  296. 堂本暁子

    堂本暁子君 大臣、今局長が言われたように、そういった保母の数も設備も適合しているところはわずか七%、これは認可保育所とはほど遠いものです。実際に私も見てまいりましたけれども、本当に危険な中で子供たちが保育されているという現状は今もございます。  やはり、それは大事な大事な国の子供がそういう形で保育されるということは決して望ましいことではないわけでございまして、できるだけ認可の方へ行くということが前回の法改正のときの厚生省方針だったわけなので、私は認可化を目指す、あるいはもし認可外であるとすれば、それは厚生省基準をきちっと満たしたものである必要があるということの意見だけをここでは申し上げさせていただきます。  労働大臣に伺いたいわけでございますが、これは労働省が事業内保育所に助成金を出し始めた年から私は労働省にずっと申し上げてきていることなんですけれども厚生省の方としてはできるだけ認可の保育所をふやしていくということを方針として出していらっしゃる。そのことに関して、例えばゼロ歳児の場合なんかはやはり事業内保育所ですと十分な保育ができないということがありますし、それから同じ会社の子供ばかりがいるということも決して教育上よくない。地域に根差した保育所であるというのが今度の児童福祉法の改正の趣旨でもございます。  とすれば、認可外の保育所としてどんどんふやすというような方針なのではなく、もう少し労働省厚生省の間で密に連絡をおとりになって、働く母親の立場だけではなくて、子供の発達という視点から、もう一度こういった保育所のあり方、事業内保育所ということのあり方を問い直していただきたいというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  297. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) 労働省では、今先生指摘のように、事業所内の託児施設に対しまして助成金を出しているところでございます。その施設基準につきましてはかなり認可に近い、ほとんど認可とニアリーイコールであるというふうに、目下そういう形でやっておるところでございます。そして、今先生指摘がございましたが、私どもの事業所内の託児施設というのはあくまでも事業主からの拠出金でございます雇用保険制度によって運営されておりますので、原則はその企業で働く人たちのお子さんを預かるというのが原則でございます。ただ、現在も余裕がある場合は、先生指摘のように、地域の子供も預かるということも可能でございますが、あくまでも雇用保険の金でございますので、やはりそのお父さん、お、母さんは雇用者であるというべきであろうと私自身は思っておりますが、現在も幾つかのところではそういう形で、少数ではございますけれども、受け入れている例もあるというふうに聞いております。
  298. 堂本暁子

    堂本暁子君 これは大臣にぜひとも伺いたいんですけれども、同じ会社の子供ということで、私が聞いたところでは、あなたは部長の子供だ、いや君は守衛の子供だというような、そういったことで子供が非常に小さいときから差別をされてしまうと。  子供にとっては親の地位というのは選択ができないものなんですね。である以上は、八百屋さんの子供もいる、それから近所のてんぷら屋さんの子供もいる、みんな子供たちは平等なんだということのためにはやはり一つの事業所内の保育所というのはもう少し広げた考え方が必要ではないかというふうに思いますが、大臣の私見で結構ですのでお答えいただきたい。
  299. 岡野裕

    国務大臣(岡野裕君) 先生もう御存じのとおりで、男女雇用機会均等法、これはやっぱり女性が劣に置かれるような差別は絶対禁止をしよう、そして御夫婦の間で赤ちゃんを産みたい、育てたいというような場合には、安心して健康な赤ちゃんが生まれ、かつ健康な子供さんが育てられるようにということをこいねがっているわけでありますが、エンゼルプラン等も関係各省庁がそれぞれの角度で手を携えてその目的を達成しようということであります。その四つのうちの一つ労働省といたしましては、労働行政の角度からということに相なります。  したがいまして、一般的な育児的な施設というようなものにまでいろいろ決定をすることは不可能であろうと。しかしながら、相携えてということでありますので、堂本先生の御意向も伺いました上で今後しかるべく相談もしてまいろう、こう思っておる次第であります。権限踰越だけはいたしたくない、かように存じます。
  300. 堂本暁子

    堂本暁子君 労働省の立場というのもおありになるんでしょうけれども、それは働く母親の立場ですが、子供の発達という視点、この視点は単に最低基準に近い形であればいいというものではないというふうに私は思っております。  一つ一つの事業所内の保育所を見ているわけではないのでもう少し研究してみたいというふうに思いますけれども、やはりゼロ歳の赤ちゃんの場合にはそれなりの保育のあり方が大事であろうと思いますので、これも意見として言わせていただきます。  次に、厚生大臣にこのことでお答えいただければ、また厚生大臣の私見も伺いたいと思いますが、ビルの問題なんです。  今、労働大臣が言われたように、女性が産みたいときに子供を産みながら働き続けていくということのためには、やはり避妊の選択肢というのはそれぞれの女性が選べるということが大変大事かと存じますけれども、世界で低用量のビルが政府によって認可されていないのは、もう今や日本だけだろうとさえ言われております。いつごろ認可になるような予定になっておりますでしょうか。
  301. 中西明典

    説明員(中西明典君) ビルにつきましては、承認の可否につきまして現在中央薬事審議会の医薬品特別部会で調査審議を行っている最中でございます。医薬品特別部会における審議と並行いかしまして、中央薬事審議会は公衆衛生審議会に対しまして、ビルの使用が、特にHIVの感染が大きな要素を占めると思いますが、HIVを含め性感染症に対する……
  302. 堂本暁子

    堂本暁子君 そのことはもう全部知っていますので、そのプロセスは。質問は単純で、いつの予定ですかということだけにお答えいただきたい。それ以外のことは結構でございます。
  303. 中西明典

    説明員(中西明典君) その影響等につきまして公衆衛生上の観点からの意見を求めたところでございまして……
  304. 堂本暁子

    堂本暁子君 局長、今そのことはお答えいただかなくて結構だと申し上げておりますのに、どろしてまだ答え続けるんですか。
  305. 中西明典

    説明員(中西明典君) それを受けまして中央薬事審議会といたしましては、さらにビルの有効性、安全性の問題と同時に、公衆衛生審議会からのHIV感染症を含む性感染症の予防……
  306. 堂本暁子

    堂本暁子君 それは全部、委員長、私は、もしこれだったらば時間を変えていただきたい。
  307. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 発言停止。局長、座りなさい。  堂本暁子君発言してください。
  308. 堂本暁子

    堂本暁子君 予定だけを伺ったので、これはもう全部公衆衛生審議会の議事録は拝見しておりますので、それを委員会で読み上げていただくことの必要はございません。私は大臣にいつの予定ですかと聞いたので、そこで公衆衛生審議会の審議内容などを読んでいただく必要はないとはっきり申し上げます。  大臣、恐れ入りますが、いつごろかお答えください。
  309. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 結論から申しますと、時期は未定なんです。
  310. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。  これで結構です。これ以上のお答えは必要ないということです。  次の質問に移らせていただきます。  ダイオキシンの問題に入りたいと思います。  五月にマイアミで開かれました先進国の環境担当閣僚会議で子供の健康を守る環境サミット宣言が採択されました。この宣言では、乳幼児を基準とした環境政策を強化して、基準を健康被害を受けやすい子供に置くということが決まっています。幼児とか子供の感受性に配慮しつつリスクアセスメントをしていくということになったわけです。  日本では、厚生省の提案中の容量では一日の摂取量が体重一キロ当たり十ピコグラム、それから五月六日に環境庁から発表された健康リスクの評価指針値が体重一キロ当たり五ピコグラムになっているわけなんです。  まず、厚生省に伺いたいんですが、この値は環境庁のちょうど倍になります。大人の基準になっていますが、これは子供であったらばもっと少なくすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  311. 小野昭雄

    説明員(小野昭雄君) 先生指摘の点は、恐らく耐容一日摂取量のことであろうと思います。これは国際機関、それから先進各国もすべてこのTDIという概念を用いておりまして、一生にわたりまして健康障害を起こさない一日摂取量ということで概念が構成されているわけでございます。  厚生省の研究班におきましては、いろんな実験データ等を踏まえましてTDIを十ピコというふうにしたわけでございますが、環境庁検討会におかれましては、御指摘のように五ピコという値を出しておられまして、私どもが承知しておりますところは、人の健康を維持するためのものという許容限度としての意味ではなくて、より健康サイドに立った値だというふうに伺っております。  しかし、今先生指摘ございましたように、八カ国の環境大臣会議等で新しいコンセプトとして概念を提起すべきであるというようなお話もございますので、これはそういったWHO等の機関でいろいろ議論されておりますから、全く新しい概念を国際的につくろうという話でございますので、十分それを踏まえ、かつ私どもとしましても研究班を持っておりますので、いろいろ御議論をいただきたいということで対処してまいりたいと考えているところでございます。
  312. 堂本暁子

    堂本暁子君 環境庁長官に伺いたいんですけれども、環境の閣僚会議、長官はたまたまお出になれない会議でございましたけれども、そこで国際的にこういった子供を基準にして決めるということを日本も政府として採択したわけで、そういったところから、今後この問題に環境庁としてはどのようにお取り組みになる予定でしょうか。
  313. 廣瀬省

    説明員(廣瀬省君) 先生の御質問の点でございますが、私がその環境大臣会議に出てまいりまして、この会議の中に参加をしてまいりました。  その中で、ブラウナー長官の方から提案された問題でございますが、今までの環境の評価をしていくときに、子供を頭に置いて物を決めていくという思想がなかったのではないだろうかと。ですから、そういうためにその資料がたくさんございません。ですから、各国協力し合って、子供にかかわる、環境から受ける子供の影響という研究を進めるようにしていきたい、それに日本も協力してほしいということを言われまして、その辺については積極的に参加いたしますと。そして、その参加をしていくときに、アメリカにも大変少ないということでございまして、現在アメリカのEPA、環境保護庁が中心になってかなり一生懸命やっていきたいと、そのデータを交換していく。ですから、八カ国の大臣会議では連絡の取り合いをしていきながら、二、三年先に向けてしっかりした体制を組んでいきたいというお話もございました。  そして、二年という期限を決めようという話もございましたが、具体的にはほかの国からも反対がございまして、そこの二年は削除されて話がまとまっていったと。そういう経緯を聞いておりますので、今後、OECDの化学物質関連の会合とかそういうことを含めながら、日本に持っている知見も向こうに出しながら、お互いに連絡し合って二、三年先の中でしっかりしたものをつくってまいりたいという話になっておりまして、それについては大臣にも報告し、しっかりした体制を組みながら努力してまいりたいというふうに思っております。
  314. 堂本暁子

    堂本暁子君 大臣はいかがでしょうか、これからの方針についてです。
  315. 石井道子

    国務大臣(石井道子君) 子供の命を守るということは大変重要なことでございます。もちろんその会議趣旨を生かしまして、日本におきましても健康を守る立場から、環境保全の立場から、十分にそのことが反映できるようにさらに努力をしていきたいというふうに思っております。
  316. 宮崎秀樹

    委員長宮崎秀樹君) 他に御発言もないようですから、厚生省労働省環境庁及び環境衛生金融公庫の決算審査はこの程度といたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      —————・—————