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1997-05-30 第140回国会 参議院 環境特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月三十日(金曜日)    午後一時四十三分開会     —————————————    委員の異動  五月二十八日     辞任         補欠選任      吉田 之久君     長谷川 清君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         渡辺 四郎君     理 事                 狩野  安君                 成瀬 守重君                 山下 栄一君                 大渕 絹子君     委 員                 景山俊太郎君                 河本 英典君                 小山 孝雄君                 谷川 秀善君                 馳   浩君                 平田 耕一君                 山本 一太君                 足立 良平君                 加藤 修一君                 寺澤 芳男君                 長谷川 清君                 小川 勝也君                 竹村 泰子君                 有働 正治君                 末広真樹子君    政府委員        環境庁長官官房        長        岡田 康彦君        環境庁企画調整        局長       田中 健次君    事務局側        第二特別調査室        長        林 五津夫君    公述人        福岡大学法学部        教授        中央環境審議会        委員       浅野 直人君        法政大学社会学        部教授      福井 秀夫君        神奈川大学名誉        教授        医 学 博 士        中央環境審議会        委員       猿田 勝美君        日本弁護士連合        会公害対策環境        保全委員会副委        員長       小島 延夫君        公害地球環境        問題懇談会幹事  標  博重君        財団法人日本自        然保護協会保護        部長       横山 隆一君        群馬大学工学部        非常勤講師        NGO環境監視        ネットワーク顧        問        天谷 和夫君        名城大学理工学        部助手      辻  淳夫君        横浜市環境保全        局環境影響審査        担当部長     福島 徹二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○環境影響評価法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ただいまから環境特別委員会公聴会を開会いたします。  本日は、環境影響評価法案につきまして、お手元の名簿の九人の公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、これより順次御意見を承ります。まず、浅野公述人にお願いいたします。浅野公述人
  3. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 福岡大学浅野でございます。  本日は、公述機会を与えていただきましてまことにありがとうございました。  私は、中央環境審議会企画政策部会委員として環境影響評価制度についての答申作成関与いたしましたけれども、さらにそのもととなりました環境影響評価制度総合研究会委員でもございました。  環境影響評価制度総合研究会報告では、国内外の環境影響評価制度運用実情等調査いたしました。その結果、閣議決定による要綱に基づいたこれまでの我が国環境影響評価制度は、経験の積み重ねによりましてある程度の実績を積んできておりますので、その長所を生かしつつ、検討すべき点についての改善を図るべきものであるという御報告を申し上げました。中央環境審議会では、研究会報告で指摘させていただきました問題点検討いたしますとともに、さらに国民各界各層の御意見をお聞きいたしまして答申を取りまとめたわけでございます。研究会報告で取り上げました問題点につきましては、すべて一定方向結論が示されております。  ところで、総合研究会あるいは中央環境審議会審議を通じまして私が環境影響評価制度のあるべき姿として考えておりましたことは、次のような点でございます。  まず、環境管理というのは、環境政策基本理念及びこれを受けましたしっかりした環境計画に基づいて、種々の制度システムの組み合わせによって行われるものであるということでございます。このためには、ある施策環境に与える影響に関する必要な情報が的確に用意される必要があるわけでございます。特に、施策準備決定に当たってそれが各種規制をクリアしているかどうかということだけではございませんで、環境への負荷影響についての配慮のための情報が十分に準備される必要がございます。したがって、環境影響評価制度というのは、このために用いられる環境管理のサブシステムあるいは技術システムとして効率的、効果的なものでなければならないと考えております。  私は、環境影響評価制度とは、施策環境影響に関する情報事前に十分に提供する情報収集提供システムであり、これを施策決定に適切に反映させるための技術システムであると考えておりますけれども、従来のように公害対策基本法及び自然環境保全法の二本立ての法律でばらばらになっておりました環境政策方向が、環境基本法及びこれに基づく環境基本計画によりまして「循環」、「共生」、「参加」、「国際的取組」のキーワードのもとに統合的なものとされておりまして、こういう新しい環境政策が出てまいりましたので、従来の環境影響評価制度は、公害防止や希少な自然保護だけに目を向け過ぎていた嫌いがあると考えておりました。  その意味では、今回御審議をいただいております環境影響評価法案は、従来の環境影響評価制度の持っておりました限界をある意味では克服いたしまして、環境影響評価システムの新たな発展、展開を可能とする内容を持っているものとして十分評価できるものと考えるものでございます。  以下、五点にわたりまして法案評価できる点を指摘させていただきまして、さらに若干の課題要望を申し上げたいと思います。  まず第一は、早期段階での環境配慮についてでございます。  ある事業による環境影響評価しようというときには、事業を行う場所の環境の現況を把握いたしまして、事業による影響予測し、そしてその評価を行うわけでございます。こういったような作業は、通常関係者内部で始められます。そして、それが制度に基づいた手続として表面に出てくる時期よりはかなり早い段階準備が行われるということが普通でございます。  しかしながら、従来の環境影響評価制度では、ほとんど準備が整っで環境影響評価準備書の形になりましたところで正式の手続が始まるということになり、そこで初めて外部の目にさらされるということになるわけでございます。さらにまた、内部的な準備過程での資料や検討についても必ずしも明らかにされないということがございました。このために余計な議論が起こることもあったわけでございます。計画アセスメントが必要であるということがるる言われてまいりましたのは、このような事情を反映したものではなかったかと思うわけでございます。  一部の自治体では、事前手続を既に採用しておられまして、内部的な準備段階から行政に対する報告をさせることにより行政指導を行うといった措置も講じられてまいりました。今回の法案では、いわゆるスクリーニングスコーピングシステム導入いたしましたけれども、これは諸外国で既に行われ、効果を上げてきているシステム導入でございまして、一部の自治体で採用されてきましたシステムをさらに整備したものだと言うことができます。これによって、従来よりも早い段階から制度的な手続が行われることになりますので、内部だけで行われてまいりました環境配慮透明性を増すということにもなりますし、さらには、事業計画立案担当者環境配慮をより十分なものにさせる、また、早期情報関係者住民に開示され、意見交換が正式に行われ得ることになりますので、従来よりも合意形成がスムーズになるものと考えられるわけでございます。  何よりも、これまでは一定準備が終わった段階で初めて正式の手続となるわけでございます。  そのために、手続にのせるべき事業の種類あるいは規模、あるいは調査予測評価をしなければならない環境項目につきまして、細かく取り決めをしておきませんととかく余計な議論が起こってしまうということがございますので、手続弾力性が欠ける、面倒なことをやる割には外部からは文句ばかり言われるといったような制度になってしまっていたように思われるわけでございます。  しかしながら、スクリーニングスコーピング手続導入することによりまして、この点での弾力性を回復できたのではないかと評価をしておりますし、また、我が国アセスメント制度国際水準のものになったのではないかと評価をいたしているわけでございます。  第二は、住民関与手続でございます。  法案は、スコーピング段階での環境影響評価方法書についても住民意見徴収等手続を取り入れておりますとともに、さらにまた、意見書提出できる住民範囲の制限を外しまして、住民関与機会を拡大しているわけでございます。  住民環境影響評価システムヘ関与目的と申しますのは、先ほど申し上げましたように、情報収集提供システムとしての環境影響評価制度という観点から申しますならば、まず第一に、住民研究者が保有しております地域環境に関する情報をより合理的、的確に環境影響予測評価に反映させることにあるだろうと思われるわけでございます。  中央環境審議会で行いました地方のヒアリングでもたびたび、これまでのアセス制度では例えば実際に生物について具体的な研究をしている者の意見が取り入れられていないといったようなことが聞かれたわけでございますけれども、内部での作業段階から、この地域には余り知られていないけれどもこんな環境要素があって、それは特に留意する必要があるんだといったような貴重な情報が入手できますならば、環境影響予測評価がよりきめ細かく確実に行えるわけでございます。  また、早期住民関与可能性を用意いたしましたことは、結局、長い目で見ますと結果的には時間や経費の節減にもつながるものと言えるわけでございますし、また、これによりまして合意形成円滑化にも資すると言うことができそうでございます。  ところで、法案では、住民範囲を限定しないということにしたわけでございますが、従来の要綱によります環境影響評価制度では、住民意見を聞くと申しましても法的な手続ではありませんので、関係地域を限定したり、あるいは意見書提出する方の資格手続上の違法適法といったようなことには必ずしもならないわけでございます。  しかしながら、法制度としての環境影響評価制度になりますとそうはまいりません。そこで、もとの廃案になりました法案も、都道府県知事関係地域を指定させるといったような手続を設けておりますけれども、機関委任事務も問題とされている昨今でございますので、個々の意見書提出者資格があるかどうかということを厳格に論じてまいりますと、余計な法律論争を起こすことになってしまいます。  ですから、そういう点では、おおらかに構えた方がはるかに効率性が高まりますし、情報収集目的にもかなうものと考えるわけでございまして、私はこの点でも法案のとった立場が適切であると考えるものでございます。  第三は、環境影響評価についてでございます。  評価と申しますと、とかくよしあしを決めるという印象が強いわけでございまして、評価基準が問題になります。大学の教師の場合には、六十点ですと合格、五十九点なら不合格と、こういうことになるわけなんですけれども、ある事業環境影響を与えるということについてどんな形で評価できるかどうかということもかなり難しゅうございます。勢い、客観的に数字で基準があるようなところをよりどころにして評価をするということにならざるを得なかったわけでございます。  公害防止が中心だった時代には、大気汚染水質汚濁などについての環境基準が目安ということで、それをクリアできればよいといったようなアセス制度でもよかったのかもしれません。しかしながら、環境基本法環境基本計画が指し示す今後の我が国環境政策施策は、従来よりももっと多様な環境要素に対する配慮を求めでおりますし、またその相互の関連を重視して、総合的、統合的な環境配慮、それから環境への負荷の低減ということを求めているわけでございます。地球規模での環境悪化防止も常に念頭に置かなければならないという今日の状況でございますので、環境影響評価と申しましてもその評価基準を弾力化しなければならないと思うわけでございます。  中央環境審議会答申では、複数案比較検討や実行可能なよりよい技術が取り入れられているかどうかを検討する手法導入を求めているわけでございますが、その理由はまさにこの点にあるわけでございます。  私は、複数案検討というものは、通常、ほとんどの場合に内部的な準備段階で行われていると思います。ですから、これは事後的であれ、情報として開示し、この計画はより環境への配慮をしたものであることを明らかにできるシステムを採用するということが必要であると考えるものでございまして、法案は、従来の制度の中では環境影響評価準備書などで単に「環境保全のための措置」を記せばよいとしておりましたところを、わざわざ「環境保全のための措置」と「当該措置を講ずることとするに至った検討状況を含む」という表現にしている点は、答申の心を受けとめてくださったものと評価をいたしております。  第四は、環境影響評価審査でございます。  私自身も経験をいたしておりますけれども、これまでも準備書に対する都道府県知事意見提出に際してはしばしば専門家を交えた検討が行われまして、これに基づいた調査の追加や予測修正などのやりとりがございまして、実質的にこれで第三者による審査機能が果たされておりましたけれども、こういう点は十分に表面にあらわれておりませんでしたことが誤解を生む原因でなかったかと思われるところでございます。  法案は、従前準備書に対する都道府県知事意見書提出に加えて、さらに評価書に対する環境庁長官意見提出システムを取り入れておりますが、これで従前に比べて第三者によるチェックの機能がより強化された点を評価したいと思います。  なお、都道府県知事は、地域環境について地域立場環境影響評価内容検討し、適切に地域環境に関する情報が取り入れられ、予測評価をされているかどうかについて意見を述べる、環境庁長官は、国の立場でさらに全国的な見地から意見を述べるというものでございまして、立場が違いますので、環境庁長官意見評価書が出された後に出されるということになっていることが特に奇異であるとも思われません。  なお、若干つけ加えますと、法案は、国の立場で国が環境影響評価手続を行うことが適当であると考える事業について法制度を定めたわけでございまして、地域環境保全観点から、さらにそれ以外の事業について地域環境影響評価制度を別個に定めることは自由であるとしている点にも留意しておく必要があろうかと思います。国と地方公共団体役割分担があるわけでございますし、さらにまた、国の行うアセス手続について、地域状況を十分に反映させるための住民意見書提出自治体意見提出手続は組み込まれておりますから、その適切な運用が図られますならば、国の地方公共団体との連携のもとでの適切な環境施策展開が可能になろうかと思うわけでございます。  環境影響評価制度運用に当たりましても、この基本法の制定に当たりまして本院参議院修正をなさいました基本法四十条の精神つまり国地方公共団体の協力というこの精神が生かされる配慮が必要ではないかと思っているわけでございます。  第五は、フォローアップでございます。  法案は、環境影響評価準備書評価書に「環境影響評価を行ったにもかかわらず環境影響内容及び程度が明らかとならなかった項目に係るものを含む」評価結果の記述を求めておりまして、将来判明すべき環境状況に応じた保全措置が必要となる場合に備えで、この場合には環境状況把握のための措置をも記述すべきものとしております。  事後アセスメント通常言われておりますフォローアップというのは、しばしば予測が誤っていることを正すためのシステムだと考えられておりますけれども、もともと一〇〇%確実な科学的な予測を期待する、すべての場合にそれを期待するということには無理がございますから、法案立場は、非難追及をするための後ろ向きのフォローアップを定めているのではなくて、前向きで積極的な定めをしているものと評価をいたしたいと存じます。このシステムがぜひ活用されることを期待いたしたいと考えるわけでございます。  したがいまして、私は、本法案が本院でも原案どおり速やかに可決いただけるようお願い申し上げますとともに、若干の要望を述べて、公述を終えたいと思います。  答申でも触れておりますけれども、法案環境影響評価制度は、環境基本法二十条に定められている「土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業」の実施に当たる環境影響評価を定めたものでございまして、基本法十九条で言う包括的な環境影響を及ぼす施策の策定、実施に当たっての環境影響評価、つまりいわゆる戦略的環境影響評価システムには踏み込んでおりません。  しかしながら、この点につきましては、審議会審議段階国際シンポジウムを行いましたが、そこでも明らかになりましたように、諸外国でもまだ検討中ということでございまして、今後、国は積極的にこのようなシステム開発に取り組むべきであろうかと思います。  それから、法案は、るる申し上げましたように、基本法二十条が要求する情報収集提供システムとこれに基づく事業者の自主的な環境配慮施策の誘導という点で新たな手続システム導入したわけでございますので、その趣旨が十分に生かされるような制度運用が図られるように、政令、省令や告示、技術マニュアル等準備に当たって各省庁には十分な配意をお願いいたしたいと存じます。  とりわけ、各地の環境状況事業内容に応じた環境影響評価を弾力的かつ適正に行うことができるように、従来の硬直的で固定的なシステムを漫然と踏襲した施行細則手続がつくられることがないように、この点についてはくれぐれも御配慮をお願いいたしたいと思いますし、環境庁も各省庁に対する調整官庁としての役割と権限を十分に発揮して遺漏ないように努力をしていただきたいことを申し上げまして、私の公述を終えさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  4. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  次に、福井公述人にお願いいたします。福井公述人
  5. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 法政大学福井でございます。  この場で意見を述べる機会を与えていただきましたことを光栄に存じます。  環境負荷に関する独立の手続を持つ統制手段が法的に実現されようとしていることは画期的でありまして、環境負荷における自己責任原則の確立への第一歩として高く評価できると考えております。しかしながら、現行の法案内容には若干の改善の余地が残されており、これらを概観しまして、環境問題への対処がより望ましい方向に発展することを期待しつつ、若干のコメントを申し上げます。  大きく二つ、基本的視点法案課題ということで申し上げますが、基本的視点として五点述べます。  第一は、外部性内部化、すなわち市場取引を通じない他人に対する不利益等を制御するという視点でございます。  さまざまな事業に伴う環境悪化の根源的な要因は、環境負荷に相当する社会的コスト事業者が負担しないために、環境負荷が過大な水準に達して市民の健康や快適性を損ねているという問題であります。環境負荷を考慮した最適な事業実施水準を達成する手法は、一定の数値以下の基準を定めるといった規制手法環境税賦課金等経済的インセンティブとに大別されますけれども、より望ましいのは後者であります。  なぜならば、第一に、規制による場合は基準値を下回った途端に環境負荷をより低減させようというインセンティブが失われてしまうのに対して、経済的インセンティブによる場合は環境負荷極小化へのインセンティブが常に存在します。  第二に、規制による場合は、小規模事業活動が野放しになり、環境負荷コントロール実効性が確保できないのみならず、小規模事業と大規模事業とで扱いを異にするという不公平が発生いたします。経済的インセンティブによる場合は、環境負荷程度に応じてすべての事業活動に対して連続的で公平な処理をすることが可能であります。  第三に、経済的インセンティブによる場合は、すべての水準環境負荷に応じたその極小化のための技術開発を活性化させる効果を持ちます。  このように、経済的インセンティブ環境対策としてはファーストベストでありまして、規制ファーストベスト措置に至るまでの暫定的なセカンドベスト措置と位置づけられるかと思われます。したがって、環境負荷については、外部経済内部化する、すなわち環境負荷原因者である事業者がそのコストを負担するという自己責任原則を貫徹していくことが極めて重要となります。これは、社会的な富を増大させるとともに、環境問題にかかわる当事者間の公平をも担保することになります。  アセスメントに係る調査書作成等作業そのもの自己目的化に陥らないよう注意する必要があります。どのような活動がだれに対してどのような負荷をどの程度発生させているのかとの観点アセスメントこそ必要にして十分だと考えます。そのためにも環境負荷評価する基準が必要であります。定性的に影響の有無、程度を論じるのみで、理論的、実証的な基準に基づかない評価を行うということでは問題が多いということを認識しております。  第二は、情報公開の問題であります。  すべての行政情報は、公開されることによって客観性透明性が確保され、公正で効率的な行政活動形成に資することになります。  情報公開に当たっては、次の二点に留意すべきと考えます。  第一は、行政判断は、結論のみならず、判断に至る意思形成過程、他機関との折衝のプロセスについても公開が必須です。第二に、法の執行に関してのみならず、政策立案過程についても、例えば各省庁との意見、覚書のやりとり等が大量に蓄積されているはずでありますが、これらは第三者の目に触れることが前提であれば、違う判断となった可能性があります。  また、情報公開については、環境への負荷をも一要素とする事業全体のコストとベネフィットの客観的分析も対象とすべきであります。この場合のコストには、事業費そのものにとどまらず、環境への負荷の費用、環境アセスメント実施に要する費用をも加算すべきであります。その上で費用対効果を客観的に判断し、その判断プロセス、積算根拠等をすべて明らかにする必要があると思われます。  第三は、行政裁量の極小化であります。  法の執行については、行政裁量が極小化され、立法により事前予測可能なルールが設定されていることが望ましいと思われます。法の要件認定や実行段階ともに、不確定概念、すなわち例えば法案三十三条にありますような「適正な配慮」、二十一条にありますような「修正を必要とすると認めるとき」等のあいまいな文言は極力これを排除して、要件該当の有無や処分をするかしないかなどの判断行政庁の裁量にゆだねられる領域を極力縮小すべきであります。  これは、市民や企業の活動のすべてに対して、事前予測可能な指針を与えるということでもあります。後から不測の損害をこうむったり、裁量があることを前提として行政庁の判断を有利に転換させるためにいわゆる専門家調査、助言、鑑定等が必要とされるといった事態は、本来少なければ少ないほど社会的費用の節減に寄与します。  また、市民や企業相互の公平も確保されることになります。  第四は、判断の公正確保であります。  環境アセスメントにかかわる事業者は、基本的に事業の推進者でありまして、環境負荷の被害者たる不特定多数の市民の不利益を直接に代弁する立場にはありません。このような事業者判断形成にバイアスがかかる可能性がゼロであると想定することはむしろ不自然であります。そのような意味で、事業者自身の判断が先行しての環境アセスメント手続が行われることは果たしてファーストベストであろうかとの問題があります。  第五は、アセスメント実効性の担保措置であります。  行政裁量の極小化情報公開判断の公正確保措置等の前提がすべて満たされたとしても、環境アセスメント目的に照らした実効性、すなわちアセスメントが実質的に適正な内容であって、環境負荷を最適にコントロールしていることが手続的にも担保され得る建前になっていることが必要であります。すなわち、努力義務の領域や、違法や適法の判断はできても、その法的担保措置がない領域をできるだけ小さくし、環境負荷のコントロールが確実に実現され得るように法制度が設計されるべきと考えます。  以上、基本的視点、五点ですが、大きな二つ目、環境アセスメント法案課題として六点申し上げます。  第一は、法案における事業所管庁の優位の点であります。  現在の法案では、許認可等に際して、アセスメント内容がどのような根拠に基づきどの程度許認可等に反映されるのかについては、具体的基準が示されておりません。環境負荷は典型的な外部経済でありまして、その被害を受ける立場の者の利害が適切に反映されるシステムがより望ましいと考えられます。そのような意味で、政府部内にあるとの制約はあるものの、事業所管庁との比較でいえば、環境庁の相対的比重をより高めることが望ましいと考えます。  さらに、環境負荷の計測はそれ自体、実証的、科学的判断であることを踏まえれば、最終的決断が政府の政治的責任のもとに行われることはあり得るといたしましても、第三者的で専門的知見を結集した政治的に独立な審査機関が設けられることも適切と考えます。  また、ゴルフ場、リゾート施設等一定の施設については、許認可等を行う法令上の根拠がないこと等から、アセスメントの対象から除外されております。現行の事業に関する許認可そのものは、本来、環境負荷とはかかわりなく事業の適正化を図るために設けられた措置でありまして、たまたま許認可等をとらえて環境審査をするというシステム自体に限界があると思われます。仮に現行の法案実施に移される場合は、許認可等に当たって前提とされたすべての事実関係や評価内容が可能な限りリアルタイムで市民の目に明らかになるよう、情報公開の促進が重要であります。  第二は、早期段階でのアセスメントであります。  これまでの関連事業のあり方としましては、アセスメントの問題は採択が決定した後での派生的配慮事項となる現実が広く見られました。しかし、事業環境負荷を発生させるのであれば、事業の便益と環境費用を含む事業コスト事業の採択の可否そのものに関する同時決定要素のはずであります。事業早期段階からアセスメント実施し、その結果も含めて事業の採択の可否が決定されるシステムが必要と考えます。  第三は、具体的基準の不存在であります。  法案では、スクリーニング、方法書、準備書評価書等、手続が重層的で慎重である反面、どのような行為のどのような負荷をコントロールするかについての具体的基準が示されておりません。  手続重視の法システムは、運用段階で一歩間違えば、事業のアリバイつくりをかえって容易にしてしまうというパラドックスにつながりかねない危険を秘めております。基準の明確化が望まれます。  また、一方では、アセスメント手続への対応を実施するための労力、費用負担が過剰になる可能性もあります。政治的事情により、アセスメント内容が極度に詳細化したり、関係者から述べられる意見内容やそのしんしゃくの仕方が環境負荷の本質でない事柄にわたる可能性もあります。  必要にして十分な環境負荷への関与のあり方として、過大でも過小でもないルール化が望まれます。  さらに、自治体の条例との関係が極めて不明確であります。条文を一見するだけでは、どのような範囲手続の上乗せ等が条例で可能であるのか判然といたしません。地方分権の観点からも、環境負荷の適正なコントロールという観点からも、条例と国法秩序との関係に一義的明白性が具備されるよう改善が必要と考えます。  第四は、法的統制措置の不備であります。  法案では、三十三条一項にありますように、環境保全についての適正な配慮がなされるかどうか等を許認可等に当たって事業所管庁が審査することとなっていますが、この点の実体判断を争うためには原則として許認可等の取り消し訴訟によることになります。  しかし、この場合は、許認可等の直接の相手方ではない環境を争う者が原告適格を有するかどうかという厳しい訴訟要件をクリアする必要があります。事後的に国家賠償請求訴訟等によって金銭賠償を求めることによるコントロールにつきましても、具体的損害の発生が前提となり、仮にその点が認められても、金銭賠償では間接的な効果しか持ち得ません。  立法政策の問題としては、環境という不特定多数の利益、地球規模の公共公益性を前提とする事項について、主観訴訟のみによってしか争えないということが法技術としては不備でありまして、環境アセスメント等について住民訴訟等の客観訴訟を立法により創設し、権利の被侵害者でなくても環境問題のコントロールに関与できるようにすべきであります。  また、環境アセスメントを経た事業についての事後の評価が法令上明文化されておりません。仮に事業所管省庁判断にゆだねられているとすれば、相当の労力と費用をかけて実施したアセスメントの成果が十分に生かされないことになります。事後評価の一層のルール化が課題であります。  第五は、デジタル的処理の硬直性であります。  現行のアセスメント経済的インセンティブと連動したものではないことから、アセスメントを経ても、事業そのものについては変更するかしないかという二つの選択肢しか残されておりません。現実の環境負荷は、アセスメント手続を経るか否かで直ちにゼロまたは一〇〇%になるということはあり得ないわけでありますから、このようなデジタル的処理よりもむしろアナログ的な処理、すなわち連続した環境負荷の問題には連続した効果を付与するという法的措置がより望ましいと思われます。  将来的には、環境負荷程度に応じた環境税賦課金等経済的インセンティブ制度化し、現行のようなアセスメント手続はその前提としての環境負荷の計測手続として位置づけて、計測結果たる環境負荷内部化する、すなわち自己責任で環境負荷コストを負担するという仕組みに発展させていくことが制度課題となると思われます。このような手法の実現は、社会的コスト行政コストを著しく節減するのみならず、市民、企業間の公平をも実現することになると考えます。  第六に、専門家のレントシーキング、すなわち利権追求の問題であります。  現在のいわばファジーな裁量が残された条文は、法律家、コンサルタント等のレントシーキング、すなわち利権追求を活発にする効果を持つと思われます。法の不明確さにより利益を得る集団を出現させるのは妥当ではありません。  アセスメント行為自体は、目的に応じて必要にして十分なものであるべきであります。環境負荷と直接対応関係のない事項について網羅すればよいというわけではありません。アセスメント行為そのものにコストが発生するからであります。さらに、際限のない過剰なアセスメントは、事の軽重の区別に対する感受性を失わせ、重大な環境負荷に対する認識をかえって相対的に低下させることにもつながりかねません。  環境アセスメント手続自体の自己目的化、それに派生する関連専門家集団の業務拡大を法が誘発することは回避しなければならないと考えます。  以上です。
  6. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  次に、猿田公述人にお願いいたします。猿田公述人
  7. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 猿田でございます。  本日は、当委員会におきまして公述機会を与えていただきましてお礼申し上げたいと存じます。  私も、環境影響評価制度総合研究会あるいは中央環境審議会企画政策部会等におきましてこのアセスメント制度審議に参加させていただいたわけでございますが、本日は、十数年にわたりまして地方アセス制度審査会等におきまして数多くの事案の審査に携わってまいった経験から、地方アセスと環境影響評価法案の中の課題について意見を述べさせていただきたいと存じます。  御存じのように、国は、昭和四十七年に閣議了解がなされたわけでございますけれども、その閣議了解に沿いまして個別法アセスや省議アセスが出されたわけでございます。一方、中央公害対策審議会から「環境影響評価制度のあり方について」の答申を受けました政府は、昭和五十六年に環境影響評価法案、旧法案を国会に提出いたしましたが、衆議院の解散によりまして昭和五十八年に廃案となったわけでございます。  政府は、旧法案をベースといたしまして、昭和五十九年に閣議決定、いわゆる閣議アセスがなされたわけでございます。今までも数多くの実績を積み重ねてきておるところでございますが、これはあくまでも要綱あるいは行政指導というアセス制度でございまして、また、環境基本法で基本的な政策として位置づけられたということから、本年二月の中央環境審議会答申を受けまして、今回の統一的アセス法案が国会に提出されたということになるわけでございます。  この環境影響評価の法制化というものは、環境行政の推進にとりまして必要不可欠な手段であると認識されておったわけでございますが、実にこの統一的アセス法案提出には長期間を要しまして、昭和四十七年の閣議了解から二十五年を経過しているわけでございます。この間の環境問題をめぐる社会情勢等の変化あるいは国民的ニーズは大きく変貌しておりまして、今回の法案は旧法案に比べますとかなり前進したものであると評価いたしているところでございます。  そこで、地方自治体とこの制度との関係等について少し述べさせていただきたいと思います。  地方自治体におきましても、昭和五十一年、川崎市が条例をつくりましたが、それ以降、独自の環境影響評価制度が制定されるようになったわけでございます。現在では、本年の四月末現在で、都道府県、政令指定都市五十九団体中、条例制定団体が七団体ございますし、要綱等で対応している団体が四十四、合計五十一団体。残り八団体につきましても、現在制度を持っておりませんが、今後制度化あるいは環境基本条例の策定等を踏まえて制度化の予定を有しているということでございまして、この国の法制化によりまして地方制度も一層定着するであろうというように考えるところでございます。  先ほど浅野先生のお話の中にもございましたけれども、地方アセスは、準備書作成、あるいは住民等の意見聴取、評価書作成といった手続などにつきましてはおおむね国の制度に準じたものとなっているものが多いわけでございますが、対象事業規模につきましては、閣議アセスの対象事業規模よりも小規模のものまで対象といたしまして、対象事業範囲自治体の自然的、社会的条件に応じまして独自の設定を実施しているというところが多いわけでございます。それぞれの自治体におきまして特徴が見られるというわけでございます。また、予測評価審査等に当たりましても、第三者審査機関を設置いたしまして意見を聞く、あるいは事後調査実施を義務づけているというような自治体もあるわけでございます。  そのほか、公聴会の開催、あるいは周知を行う住民範囲、縦覧期間、意見書提出できる回数、予測評価を行う環境項目、あるいは事業早期段階からの環境配慮の仕組みなどを導入している団体もあるわけでございまして、それぞれ特徴を持っております。  今回の影響評価法案が制定されました場合、各自治体が現在実施しております地域の特性に配慮されましたアセス制度、いわゆる地方アセスでございますが、その実績ができる限り尊重されるよう配慮されることが必要だろうと思います。  そのような中で、そういう情勢の変化と環境基本法の制定によりまして法制化の機が熟したわけでございますが、何分にも政令あるいは省令等にゆだねられました事項があるわけでございまして、それらが明確になりませんと地方自治体との関係の中で的確な判断ができないところもございますけれども、幾つかの問題点について述べさせていただきたいと存じます。  第一に、国が実施し、あるいは許認可等を行う事業でありましても、その開発行為そのものは地域の問題であるわけでございまして、地方自治体との協力による透明性を持った民主的かつ適正な運用が望まれるわけでございます。  第二には、第四条関係でございますが、対象事業とその判定というのがございます。スクリーニングの対象となります第二種事業、第一種はすべでやらなきゃいかぬわけですが、第二種事業につきましては、当該事業の許認可等を行う行政機関都道府県知事意見を聞いて事業内容地域特性に応じて環境影響評価を行わしめるかどうかの判定を行うこととされております。  この際、都道府県知事は、知事意見を述べるに際しまして、関係市町村が環境保全観点から特に強い関心を持っている場合など、案件に応じて当該地域の関係市町村長の意見を参考とするという運用も図られるべきであろうと思います。理由といたしましては、スクリーニング段階から地域特性を把握している市町村長の意見判断に有効に生きてくるであろうというふうに考えられるからでございます。  また、地方アセスを有しております自治体は、先ほども申し上げましたけれども、公正な第三者機関として環境影響評価審査会等を設置しているわけでございまして、その審査会の意見を求めて対応しているわけでございますが、このスクリーニング手続を適正に実施するためにもそういう審査会の意見を徴することが必要であろうということでございます。  そういう判定の結果、方法書という段階に至るわけでございますけれども、環境庁調査によりますと、これは総合研究会の際の調査結果でございますが、地方アセスの中には、環境影響評価手続の中で早期段階から検討を行うことにしているものもあるわけでございまして、準備書作成を開始する前の段階で何らかの事前手続導入している自治体が増加しつつあるわけでございます。事業者による調査予測評価が始まる前に、始まってしまってからでは遅いわけでございますが、始まる前に実施計画書あるいは調査計画書、あるいはいろいろな表現がございますけれども、事前調査書などの事前手続規定を盛り込んでいる自治体が半数以上に見られるわけでございます。  この事前手続実施いたしますことは、調査の手戻りの防止等になるわけでございまして、適切な準備書作成が行えるということになるわけでございます。早期段階での環境保全上の問題が明らかにされ、地方自治体住民意見によりまして事業者の十分な環境配慮実施が確保できる、そして以後の手続円滑化が図られるだろうという効果が指摘されております。  今回の法案の方法書につきましては、地方アセスにおける事前手続に相当するものと思われるわけでございますが、調査項目予測手法の選定につきまして関係自治体住民等の意見を求めるものでありまして、この段階事業内容を固めてしまってから手続に入るのではなく、広範に意見を聞きながら、複数案を含めて事業内容を常に見直していくというようなことが事業者に求められるわけでございます。  また、公告縦覧されました方法書に対する住民意見でございますが、これは事業者提出できるわけでございますけれども、事業者はその意見書の概要を知事及び市町村長に送付しなければならないと第九条でされておりますが、方法書について知事が意見を述べるに際しまして、必要があればその概要ではなく意見書の写しを求めるようなこともあるだろうと思われるのでございまして、事業者はそれにこたえるように運用されることが望ましいわけでございます。これに関してはまた後ほど申し上げたいと存じます。  また、知事が意見を述べるに際しまして、市町村長等の意見を勘案して述べるものとされておるわけでございますが、現にアセス制度を有する自治体、特に政令指定都市等は持っておるわけでございますが、におきましては評価項目手法の選定、いわゆるスコーピングなどにつきまして公聴会の開催や審査会の意見を求めるというふうなことも想定されるわけでございまして、知事段階での意見集約に際しまして市町村長意見が適切に反映されるよう運用されることが必要でございます。  地方アセスの中で先ほど申し上げました事前手続導入されておりますのも、地域の自然的、社会的条件に配慮して評価項目予測手法についての検討が行われているものでございまして、今までの実績や経験の積み重ねに配慮した取り扱いというものに期待しておるところでございます。  次に、評価項目の選定等についてでございます。事業者が選定することになっておりますが、事業者地方自治体住民等の意見を聴取いたしましても、これがいかに活用されるかが問題でございます。地方環境情報を整備しているのは自治体でございまして、この情報や自然的、社会的条件に基づいて出されました意見であることを尊重しなければならないわけでございます。単に手続上の手段として終わらせてはならないということでございます。スコーピング手続は、評価項目手法につきまして透明性を確保しながら関係者の合意を得るところにあるわけでございまして、事業者の信頼性を担保するためにも重要な課題であろうと考えております。  評価項目につきましては、閣議アセスでは御存じのように典型七公害と自然環境保全五要素に限定されておりましたが、環境基本法基本理念を実現するための環境影響評価実施されるべきでありまして、そのためには評価項目につきましても幅広い対応が求められるところでございます。  地方アセスの中では、閣議アセスの項目以外に、日照阻害、電波障害、あるいは風害であるとか文化財であるとか廃棄物であるとか、いろんなものが入っております。景観についても規定しているところもあるわけでございまして、人工的景観まで含めた良好な景観の形成といった観点から予測を行っている例もあるわけでございます。  そういうことで、事業者評価項目の選定に当たりましては、当該地域地方アセスに規定された項目等につきまして、環境範囲に含まれるものにつきましては十分な配慮がなされるよう主務官庁あるいは環境庁の指導に期待するところでございます。  次に、準備書作成に関連してでございますが、環境影響評価の結果は準備書に取りまとめられるわけでありますが、この準備書につきましては説明会が開催されます。これは単なる説明会ではなく、住民との十分なる意見交換の場となることが望ましいわけでございまして、往々にして事業者の一方的な説明会に終始することがあるわけでございますが、住民方々の理解と御協力をいただくためには誠意ある対応が求められるところでございます。  また、住民等からの準備書に対する意見の概要が、先ほどの方法書のときと同様、関係知事、市町村長に送付されることになるわけでございますが、事業者意見書の写しを提供することが望ましいわけでございます。と申しますのは、事業者作成する概要、いわゆる概要書を送ることになっておりますが、これでは住民等の意見が関係自治体に十分に伝達されるかどうかということに疑問を持っているから申し上げているところでございます。  住民、関係知事が意見を述べることができるのはこの準備書段階まででございまして、アセス制度を有する関係市町村、関係知事が準備書に対する意見を述べるに際しまして、方法書に対するときと同様に審査会等の意見を求めてまた述べることになるだろうと思いますので、こういう準備書に記載されている調査予測評価内容については慎重に検討する必要があるだろうと思います。  従来も、閣議アセスに関連する事業につきましても、関係自治体は関係機関との調整を図りながら、事業者に対して地域環境状況を把握し、環境保全に関する施策実施しております自治体として指導してきておりますのが現状でございまして、法対象事業につきましても方法書、準備書作成に関連して意見を述べることで終了するものではなく、関係自治体事業者の緊密な連絡調整と情報の交換が重要な役割を果たすものではないかと考えておるところでございます。  次に、評価書作成審査に関連してでございますが、事業者準備書についての知事意見が述べられたときはこれを勘案するとともに、準備書についての意見書配意して、準備書の記載事項について検討を加え、修正が必要な場合は、修正内容によっては再アセスの実施ということが求められておるわけでございます。  従来の閣議アセスや省議アセスあるいは個別法アセスの対象事業の中で、地方アセスによって並行的に実施されていた場合、地方アセスの審査に基づいて再調査等が行われたケースもございます。今回、修正が必要な場合の再アセスが明確に規定されたことによりまして、国の制度の対象に地方アセスを重複適用いたさなくても必要な対応が可能となるのであろうと、その辺はそのように理解しておりますが、この意味でこの条項は重要な意義を有しているんではないか。その場合に、十分な再アセスに対する対応が図られることがポイントだろうと思います。  評価書に対しましては環境庁長官、免許等を行う者等が意見を述べるわけでございますが、事業者はこれらの意見を踏まえまして必要と認めるときは評価書を補正することになるわけでございますが、修正内容等によっては先はどのように再度の手続実施されるわけであります。  問題は、事業内容等の修正に伴う再度の手続に対しまして、時間的、経済観点等から判断するのではなく、環境保全観点から客観的に判断されるべきでありまして、許認可権等を有する主務官庁の指導が適切になされることが重要なポイントだろうと思います。  この評価書審査に際しまして、三十三条、「免許等に係る環境保全配慮についての審査等」というのがございまして、「対象事業実施による利益に関する審査と前項の規定による環境保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該判断に基づき、」という条文がございますが、その中で許認可処分等を行うものとされております。  この「対象事業実施による利益」という文言が何を指すのか必ずしも明確ではございませんが、方法書、準備書等について関係自治体意見提出されましても、この段階での判断によっては適切に反映されないことになることのないよう運用が図られるべきであろう。審査に当たりましては、利益が優先するのではなく、アセスメントの結果を確実に反映して、的確に環境保全が図られるようにすべきであります。  また、地方自治体評価書に対して意見を述べることはできませんので、環境庁は、地方状況を十分に把握した上で意見が述べられるような体制の強化充実というものが望まれるわけでございます。  また、環境影響評価制度実効性あるものといたしますためには、環境評価の結果を確実かつ適切に許認可等に反映させることが不可欠でございまして、審査客観性や信頼性を担保するためにも事業者や主務官庁以外の公正中立な第三者として環境庁がその役割を果たすことが必要であろう。この場合、環境庁も案件に応じて専門家の知識や経験を活用すること、これが重要ではないかというふうに考えております。
  8. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) 先生、時間でございます。
  9. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) はい。そういうことでございまして、最後に、それでは一つだけ申し上げておきたいと思います。  今後も、許認可等に関係する主務官庁が環境庁長官あるいは地方自治体意見等に適切に対応いたしまして、指導された上で、客観的な内容についての情報が適切に提供されるということ、先ほど福井先生がおっしゃっていましたけれども、そういうところが公正で透明性の高い制度として適用されることになるのではないかと思います。  OECDの中でも最後の国ということにもなりますので、本法案の成立を期待しているところでございます。  以上でございます。
  10. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  次に、小島公述人にお願いをいたします。小島公述人
  11. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) 日本弁護士連合会の公害対策環境保全委員会の副委員長をしています弁護士の小島と申します。  本日は、公述機会を与えていただきましてまことにありがとうございます。本日、環境アセスメントに関する法案の策定に際して、ここに公述機会を持ったということに非常に深い感慨を感じております。  この間、私ども日本の法律家は、さまざまな国際会議に出かけてきたわけでありますけれども、そうした国際会議に出る都度に、どの国が環境アセスメント法を持っていてどの国が環境アセスメント法を持っていないかということを何度も何度も身をもって体験してまいりました。  これは、アジア諸国の中でも、一九九〇年代に入ってアジアの法律家が集まって会合を持ちますと、みんなの国で、うちの環境アセスメント法はこういう問題を抱えているというような形で話がされていくわけでありますが、日本において、先進工業国たる日本はどうなんだという話を聞かれると、実は我が国には環境アセスメント法がまだないんだという話を非常に恥ずかしそうに言わなければならなかった、それも間もなく終わるというふうに思うと非常にうれしいなというふうに感じております。  そうした中で、この環境アセスメントという問題を考えるに当たって四つの重要なポイントがあると思いますので、それを述べさせていただきたいというふうに思っています。四つのポイントというのは、今の時代において環境アセスメントをつくる場合には必要だというふうに考えている点であります。  一つは、オープンな意思決定をすべきだということであります。昨今、さまざまな形でいろいろな過去の行政決定、これは行政だけではなく今の会社組織も含めた組織の決定のあり方が問われている時代であります。そうした中において、意思決定をできるだけオープンなものにしていくということが今強く求められていると思います。これが第一点です。  それから第二点目は、環境開発の統合ということです。今まで、開発する側と環境保全しようとする側は、それぞれ対立した形で、必ずしも統合的な形での意思決定というのは行われてきませんでした。それを統合させる一つのツールとして、一つの手段として環境アセスメントを考えていくべきだということであります。  それから第三番目は、基礎自治体の尊重ということであります。昨今、地方自治、分権推進ということが言われている中で、より一層の分権化を進めていく、そのためにも基礎自治体の尊重ということがなされなければならないということであります。  四点目は、地球規模の問題にきちんと対処していけるような環境アセスメント法であってほしいということであります。  それぞれかみ砕いて話をさせていただきたいと思います。  オープンな意思決定ということで、この環境影響評価法が占める役割というのは非常に大きなものであるというふうに考えています。オープンな意思決定のためには、意思決定の結果が公開されるということでは不十分であります。その意思形成過程が表に出るということが重要であります。  それも、どこかの段階で一時に出るというのではなく、多段階において広い形でオープンになるということが必要であると思います。この点は先ほど福井公述人が述べたのと全く同じ意見であります。その点で、環境影響評価法というのは、意思形成の過程におけるさまざまな情報公開していくプロセスという点では極めて重要な役割を果たしていくと思います。  では、その環境情報公開という点から見た場合に、この法案は十分なものであるのかどうかという点が一つの大きな問題になります。  実は、その点でいうと、環境影響評価法案のさまざまな段階で見ていきますと、まず、ある事業について環境影響評価を行うかどうか、いわゆるスクリーニング段階があります。ところが、残念なことに、このスクリーニング段階においては、基本的には住民の参加はない、また基礎自治体意見表明の機会もないという形にとどまっています。主務官庁と都道府県の段階ですべてが閉じられてしまうという形になっています。やはり何を環境影響評価の対象にしていくのか、どの事業環境影響評価の対象にしていくのかという、このスクリーニング段階からきちっと公開と参加の原則を貫くべきだというふうに考えます。  それから、その後のプロセスについては確かに公開はある程度貫かれているのですが、非常に残念なことは最後の審査段階であります。環境影響評価のプロセスを見でいきますと、スクリーニングがあって、スコーピングがあって、評価が実際に行われるプロセスがあって、最後に審査のプロセスがあります。  それで、その審査のところについてこの環境影響評価法案がどのように書いているかというのを見ますと、三十三条の一項という条文がわずかにあるだけであります。対象事業に係る免許を行う者は審査しなければならないという三行の条文があるだけでして、この審査はどのように行われるのか、またその審査の結果というのは公開されるのかどうか、さらにもっと言えば、審査について審査書といったものがつくられるのかどうか、こういったことは全く書かれていないわけです。  それまでのプロセスはすべて公開で行われているんですが、この審査の結果というのがまさにその後の許認可の意思形成に直接関与していくわけであります。  その三十三条の後の条文を見ていきますと、この審査の結果をあわせて判断するということになるわけです。それまでの、環境庁長官意見を言う、都道府県知事意見を言う、市町村長が意見を言う、住民意見を言う、これはすべて意見を言われるわけです。そして、意見を言われた結果、最後の許認可に反映するのはあくまでも主務官庁が行った審査結果であります。  ところが、この審査の結果について、その審査をどのように行うのかということが一切書かれていない。それから、その審査の結果がどういう文書になるのかということも書かれていない。そしてまた、その審査の結果が公開されるのかどうかということも書かれていない。そういう意味では、ここの部分が全くのブラックボックスになってしまうのではないかという危惧が非常に強くあるわけであります。  やはりそこのプロセスはすべて公開して、きちんと審査の結果についての文書を作成していくべきだと。これは、地方自治体で現在行われております審査のプロセスではほとんど審査書というものをつくっていくという形になっています。それと比較しても、こういうようなともすれば密室になるのではないかというようなおそれを抱かせる形というのは非常に残念なものであります。  それから、第二点目の環境開発の統合という点について言いますと、やはりこの点で重要なのは、計画についてのアセスメントをきちっと位置づけるべきではないかということであります。  今回のアセスメントは、事業についてのアセスメントを行う環境基本法の二十条を前提としたアセスメントだということで、政策、広域計画等についてのアセスメントをしないという形をとっているかのようにも思われます。  しかしながら、本当に意思形成過程における環境配慮を具体的に行っていくということを考えますと、事業を対象としたアセスでは極めて不十分だというのが今までの経験であります。  一つの具体的な例をとってみますと、例えば道路事業があります。道路事業における事業を対象としたアセスいうのは、例えば東名自動車道のような東京から名古屋までつながる長い道路であっても、それはすべて一つ一つの細かい区間に分断されています。品川から厚木、厚木から静岡といったような形で分断された区間になってきます。実際にはもっと短い区間になってきます。そうすると、その細かい短い区間についてアセスメントを行っていくということになってしまって、そもそもそういうような広域的な高速道路をつくることが望ましいのか、高速道路をつくるよりも鉄道を引いた方がいいのかどうか、そういったような議論、ましてやもし仮に道路を引くとしても、路線をどこに引くのか、立地の問題、そういった問題はほとんど議論がされにくいというのが今のアセスメントの現状であります。  やはりそれを防ぐためには、もう少し具体的な都市計画決定段階の前の、いわば道路であれば道路整備五カ年計画ですとか全国総合開発計画ですとか、そういったような道路整備に関する諸計画段階できちっとアセスメントを行っていく。  それによって、本当にそういった道路計画が望ましいのかという議論がきちんとできるような形になっていくだろうと。やはり環境開発をきちっと統合していくという点から考えると、計画についてのアセスメントというのは極めて重要な意味を持つだろうというふうに考えています。  その点ではもう一つ、やっぱりアセスメント手法として、代替案の検討を義務づけるということが極めて重要だと思います。  今のような道路計画を例にとりますと、道路が望ましいのか鉄道が望ましいのか、道路を引かないで全く別の手法を考えるのが望ましいのか、道路を引くとしてもA路線、B路線、C路線を考えていくのがいいのか、そういった問題も含めて多彩な代替案を出して議論していく、これが極めて重要だと。  もともと環境アセスメントという制度を世界で最初に導入しましたアメリカ合衆国では、代替案の作成というのが極めて重要なアセスメントの要素だというふうにされてきました。この代替案の作成を義務づけ、そして各代替案についで必要な環境項目調査し、一覧表にしていくというプロセスを通じて、一般市民にとって極めでわかりやすいアセスメント制度ができるという形になります。アセスメント制度というのは、やはり情報を一般の人々が極めてわかりやすい形で入手していく、そして実際に事業を行っていく事業者にとってもわかりやすい形にしていく、そういうことが必要だと思うんです。  ところが、現行のアセスメントというものを見ますと、非常に分厚い詳細な報告書がそれこそ億単位の金を使って、場合によったら半年とかもしくは数年の期間をかけて行われるわけですけれども、ほとんど普通の人が見ても全くわからないようなアセスメント報告書になってしまっているというのが現状であります。  それを防ぐための一つの手法としては、やはり代替案の作成というのをスコーピング、方法書の作成段階できちっと義務づけて、その代替案ごとにすべて環境要素評価をして、それを一覧表にしていくといったような作業を義務づけていくということが必要だと思います。  それからもう一つ、日弁連の立場としては、狭い環境要素に限ることなく、社会的要素についてもアセスメントの対象にしていくべきだということであります。  道路の話ばかりになって恐縮なんですけれども、例えば道路であれば、現実に大きな問題としては、大きな広域道路が通ることによって地域社会が分断されてしまうといったようなことが各地で大きな問題になってきました。ところが、地域社会の分断といったような要素が例えば環境アセスメントの中に含まれていくのかどうか。さらには、ダム建設の問題などで、例えば最近札幌でも判決が出ました二風谷のダム建設なんかの問題に見られるように、先住民の持っていた文化、こういったものをアセスメントの中に考慮するのかどうかといったことが大きな要素であります。  確かに、世界各国のアセスメントを見ても、その点についての扱いは区々でありますけれども、そうした文化的、社会的要素を含ませたアセスメントこそが必要であろうというふうに私どもは考えております。それによって総合的にその事業が持っている社会的影響というものが把握され、そうしたものを目指すものとしてアセスメント制度運用されていかなければならないというふうに考えます。  それから、基礎自治体意見、基礎自治体の尊重ということでありますけれども、今回のアセスメント法案では、市町村はスコーピング段階評価、いわゆる準備書作成段階において関係都道府県の知事を通じて意見を言うという道は残されていますけれども、それ以外の形で直接アセスメント手続に参加するというような方法はとられていません。もちろん一住民として、いわば住民の一人として意見を言うということは不可能ではありませんけれども、その道しかないわけであります。  今日の地方自治、分権の推進という点であれば、それは単に国と都道府県の関係だけではなくて、やはり基礎自治体への権限の分配ということもかなり重要な意味合いを占めていると思います。やはり基礎地方自治体たる市町村に大きな権限を与えていくべきであろう、そのための参加の機会をつくっていくべきであろうというふうに考えられます。  それから、その関係で言うと、地方自治体が行うアセスメントと国が行う今回のアセスメント法案との関係を完全に並列してアセスメントが行えるような形をとるべきである。今回の法案で言うと六十条に当たりますけれども、これは国が定めている環境影響評価の対象とするものについては国が独占的にアセスメントを行うかのように読めます。しかしながら、地方自治体がそれについても並行して独自の観点からアセスメントを行うということを認めるべきだというふうに考えます。  それから最後に四点目ですけれども、今回の環境影響評価法案の中では、いわゆる海外案件、海外で事業活動展開する日本企業の投資に当たっての判断、さらには政府開発援助、そうしたものに当たっての判断といった点については直接触れておりません。しかしながら、こういった問題が海外で大きな問題になっているのは皆様よく御承知のところでありまして、やはりこういった問題も視野に入れた環境影響評価制度というものをきちっとつくるべきであるというふうに考えます。  それからもう一点は、同じ点の別のあらわれですけれども、いわゆる地球環境項目、温暖化に対する影響ですとかそういった項目について環境影響評価法案の中にきちっと位置づけていくべきだろうと。これは恐らく今後の政省令の作成、さらにはもっと具体的なスコーピングのプロセスといった中で具体化されていくことかもしれませんけれども。  例えば、現行行われている発電所のアセスなんかを見ますと、いわゆる地球環境項目であるところの温暖化への影響、炭酸ガスの排出問題といったようなものは必ずしも環境影響評価項目の中に入ってきませんでした。しかしながら、今日この時代においてつくられる環境影響評価法は、そういったものも十分考慮に入れるべきであるというふうに考えます。それは今後の具体的な課題かもしれませんけれども、その点をぜひ実現するような形にしていっていただきたいというふうに考えます。  以上です。
  12. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  次に、標公述人にお願いいたします。標公述人
  13. 標博重

    公述人(標博重君) ただいま御紹介いただきました公害地球環境問題懇談会の標でございます。  本日は、アセス法について意見を述べる機会を与えられたことを感謝申し上げます。  私の所属する公害・地球懇は、一九九一年に全国の公害環境問題のセンター的活動を目指して発足をいたしました。今回のアセス法にかかわりましても数々の提言や要請をずっと行ってまいりました。また、私は公害・地球懇以外に道路公害反対運動全国連絡会あるいは環境アセスメント条例改正都民連等の事務局長も務めております。さらにはまた、私は住民運動をみずからも実践しているものでございまして、東京都で実施をされました特に道路アセス、今大分小島先生が道路のアセスの問題について言及されましたけれども、東京で行われた主な道路のアセスにはほとんど全部がかわってまいりました。  本日は、今までアセスにかかわった、これからもまだアセスにかかわらなければならない、そういう住民立場に立って意見と要請を申し上げたいと思っております。  アセス法の法制化という問題は、以前から私どもが強く期待をし、環境庁にも再三にわたって要請をし続けてきたものでございます。今回、法制化が具体化するに至ったことを心から歓迎するものでございます。  しかし、つきましては、このアセス法の法の趣旨が十分に実現される、そしてまた充実した制度になるには、現在出されております政府の法案修正していただきたいことがたくさんございます。また、補完をしていただかなきゃならないこともたくさんございます。その点について私は、先ほど申し上げた、具体的に自分が経験をしたアセスを通して要請を申し上げたい、そう思っております。  まず、第一番でございますけれども、この法案は、環境基本法にもありますように、事業実施に際して行うものとなっておりますが、今までの公述人の方もおっしゃったように、これは計画段階から実施してほしい。その計画も、事業実施に際しての早期段階ではなくて、もっと早い段階、今小島先生もお話しになりましたけれども、私もやはり四全総、それから首都圏整備計画、こういうものを策定する段階からアセスが取り入れられなきゃならないんじゃないかと、そういうふうに考えております。  私は、特に道路アセスにずっとかかわってまいりました。例えば、圏央道とか東京湾横断道路とか東京外環道路とか、全部四全総に既にもう名前が載っております。それから、東京都内の四車線以上の都市計画道路、これも全部首都圏整備計画の中に具体的に道路の路線名が上がっております。それが今逐次事業化されているという段階でございますから、つまりこの段階、四全総や首都圏整備計画あるいは道路整備五カ年計画段階において総合的に道路に関するアセスメントが行われていなければ、個々の事業になったときにあくまで個々の事業しか見られないということになりますから、広域的にたくさんの道路がつくられた場合にどうなるのかということについては、当初の策定段階が絶対に必要でございます。  それから、総合・広域アセスの問題でございますけれども、これは具体的に事例を申し上げた方が一番よろしいと思いますが、皆さんも御存じの東京の臨海部の開発事業でございます。これにつきましては、四百五十ヘクタールの場所に十三の事業が同時進行で進んだわけでございます。そしてアセスメントは、条例によりまして、この十三の事業がばらばらに全部アセスされた。したがって、相互に関連がなしにされたわけでございます。そして、私どもかかわった者は、そこに住む住民や働く人々それから地域は十三の事業の総合的な影響を受けるんだ、したがって、総合評価をしてもらわなければこれはアセスメントにならないじゃないか、そういうことを強く主張いたしました。  その結果ということでもございましょうが、東京都では計画段階アセスメントという新たな制度をつくることを決めました。先日、検討委員会の報告書が発表されました。この中では、計画、それから総合、広域と三つの段階にわたってアセスメントを行う、そういうことが規定されております。  そういう観点からも、具体的な事例からいって、確かにこの法律事業実施に当たってでございますが、その点を皆さん方に御検討いただいて、もっと早い段階にさかのぼって、大きな計画の策定段階からアセスが行われるような配慮をお願いしたいと思っております。  それから次には、第三者機関の公正で科学的な審査の必要性ということでございます。これも、今までの公述人の方が何人もお触れになっておりますけれども、やはり現在のこの法案で見ますと、第三十三条で許認可に際しては主務大臣が審査となっておりますが、これは別の見方をしますと、つまり内部的な自己採点になってしまいます。そして、これのことをよく私どもはアワセメントと呼んでおります。つまり、結果を前提としたアセスメントであると。これは、絶対にこの事業環境上ぐあいが悪いという結論が出ないような、そういうアワセメントではないか、そういうふうになるおそれがある。現に、今までのアセスメントの数多くは非常にそうでございましたから、この点について十分に御検討いただきたい。  東京都では、知事の附属機関として環境影響評価審議会を設置しております。これは第三者機関でございます。専門家事業者アセスメント審査するということになっております。この機関からはたくさんの意見が知事の審査意見書として出されております。  例えば、これは圏央道についての審査意見書ですが、ここには五十七項目審査意見が出されました。それから、これは中央環状新宿線という現在地下の高速道路をつくっておりますが、これには三十一項目意見審議会から出されている。  中には、地下の道路をつくる場合には脱硝装置を設置せよということが審査意見で出ております。  これについては、説明会等では首都高速道路公団は拒否をしておりましたけれども。そういう点でも、やはり審議会というものが民意を酌み取るという形で大きな役割を果たしております。  それから次には、関係住民の位置づけの問題でございます。  この法や、それから今までのいろいろな議論等を伺っておりますと、アセス法は手続法だというふうに規定をして考えられておるようでございます。したがって、関係住民の位置づけは、情報提供者にすぎないという位置づけにしかなっておりません。  私ども、今までアセスを経験し、そしてその道路アセスによって現在被害を受けている、そういう住民立場から申しますならば、関係住民の位置づけというものは、情報提供者といったような軽い位置づけではなくて、その事業影響を受ける被害者という立場での位置づけ、当事者としての立場の位置づけというものが必要であるというふうに、強くこの点については要請を申し上げる次第でございます。  したがって、数々の手続のすべての段階住民が参加をすること、それから審査に参加をすること、許認可に際して意見の表明とその意見の尊重ということが確保されること、こういうことが法の中において位置づけられてほしい、そういうふうに考えております。  現在のこの法案では、住民参加の機会はわずか二回しかございません。方法書をつくるときの意見提出と、それからあとは準備書についての説明会と意見提出と、このたった二回しかございません。そうではなくて、このアセスのさまざまな手続が進むすべての段階において住民が参加できるようによろしくお願いをいたしたい、そういうふうに考えております。  都条例では、準備書いわゆる評価書案の説明会と意見書意見書に対する事業者側が今度は見解書を出します、その見解書の説明会と、またそれに対する住民意見の表明、こういうふうに幾つかの段階において意見表明ができることになっております。  次には、事後調査、これをぜひとも法律の中に明文化していただきたい。  事後調査のないアセスメントは不完全なアセスメントでございます。事後調査をやることによってアセスメントは一つの完結を見るという形になるわけでございます。この点についても具体的に申し上げることがよろしいかなと思います。  東京都の都条例では事後アセスを明確に義務づけております。建設省には事後アセスの制度はございません。東京外郭環状線、これは埼玉県の部分と東京都の部分があります。東京都の部分については、一昨年、ここが開通いたしましたので、条例に基づいて事後調査が行われました。埼玉県の部分はそれより前に開通しておりましたが、埼玉県は建設省のアセスに基づいてやりましたので事後調査は行っておりません。東京都分の事後調査報告書を見ますと、これはやはり大気汚染もそれから騒音も交通量もすべて予測を上回るという結果が出ました。  この事後調査報告書に対しましては、東京都の環境影響評価審議会がこれに対してきちっとやはり審査をして意見を出しました。つまり、対策を立てるようにということを具体的に指示いたしました。埼玉県部分もやはり騒音等が著しく予測を上回っておりますけれども、これについては建設省も埼玉県も、つまり事後の環境保全措置については何も勧告をしていないという状況がございます。  それから、皆さん方のお手元に差し上げてあります、これは皆さん御存じのやはり臨海部にかかわるレインボーブリッジ、あの橋のところには高速十一号と臨港道路という二本の道路が併設されております。これが開通しましたので、これに対する事後調査報告書が五月の二十六日に発表されました。これはまた、後でこの資料をごらんいただけばおわかりになりますが、大変ひどい結果でもって、交通量も、それから騒音も、大気汚染も、著しく予測を上回る結果が出てしまいました。  これについては、まだ環境影響評価審議会審査をしておりませんので、どういう勧告が出るかということになりますが、私ども大変期待をある意味からはしておりますし、それからこういうものがやはり現在のアセスの特に技術指針の欠陥というものを暴露しているというふうに考えております。  特に、大気汚染につきましては、現在国においても東京都においても二酸化窒素の削減計画がありますが、これを織り込んでアセスをせよというふうになりました。そのとおりにやったところが、大変な開きが出てしまった。つまり、削減計画はもう二回も失敗をしております。その失敗をした削減計画を織り込めという建設省の技術指針、これがそこにありますような予測と実績の大きな開きになってきておるということがあります。こういうことも事後アセスをしなければ明らかにならないということになりますが、こういう事後アセスをするからこそ、じゃこれに対してはどう対策を立てるのかということが明らかになるわけでございます。  時間がありませんので、あと幾つか項目だけ申し上げます。  地方制度の尊重、活用、上乗せ、横出しを全面的に認めるようにしていただきたい。これは、今までもほかの公述人の方も御指摘になりましたからくどくど申し上げません。ただ、これを明確に法律の中に明記をしていただきたい、そういうことでございます。  。それから、六十条のところにあります「この法律の規定に反しないものに限る。」というこの条項は削除をしていただきたい。そして、地方制度を積極的に支援することを法文に明記していただきたい、そういうふうに願うものでございます。  それから、八番目の要請でございますが、第三十三条二項にあります事業実施による利益と環境保全をあわせて判断をする、この部分も削除をしていただきたい。これは、かつての公害対策基本法におきます経済条項ですね、経済との調和条項、これの復活を思わせるものだというふうに私は考えざるを得ません。したがって、環境保全法律である、その中で、例えば公共性であろうとあるいは私的なものであろうと、事業による利益というものを勘案しながらアセスをやるべきではない、この点をぜひとも御検討いただきたい、そういうふうに考えております。  それから九番目に、代替案、これもお話がございましたように、こういうものを幅広く検討する中からいろいろな手法を選択できるわけでございます。  それから最後に、政省令が制定されますが、これは事実上この法律の命運を決するものになるというふうに考えますので、政省令の制定に当たっては十分に環境庁それから中央環境審議会等の意見を聞いて、かつその過程を国民に公表していただきたい、そういうふうに考えるわけでございます。  再度、最後に申し上げますが、アセスを手続法から実体法へと制度的に仕上げていただきたい、これを最後に要請いたしまして、時間を超過して失礼いたしました、発言を終わります。  以上です。
  14. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) どうもありがとうございました。  次に、横山公述人にお願いをいたします。横山公述人
  15. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) ただいま御紹介いただきました日本自然保護協会の保護部に勤めております横山と申します。  きょうは、こういう機会に発言のチャンスを与えていただきまして、ありがとうございました。  私どもは財団法人でございますが、日本の自然の現状を科学的な立場調査研究をいたしまして、皆さん方が御承知いただいている仕事としては、例えば日本全体の植物種のレッドデータブックというようなものをつくる、それから、植物が社会をつくって生きているわけですが、それを植物群落と呼びますが、この植物群落が日本の国の中でどのように生き残り、それからなくなろうとしているかというようなことをまとめるというような仕事をやってまいりました。  本日は環境アセスメント法案についての審議の一環ということでございますが、私どもがいろいろな、今私は実は六十カ所ぐらいの日本の中の自然保護問題の現場に関与しておりますが、その中で、環境アセスメント制度が不十分であることが、いかにたくさんの自然科学上のそご、それからいろいろな人間のコミュニケーション上の対立、そういったようなものを生み出しているかということを、ちょっと事例を使いながら御説明をしたいと思います。(OHP映写)  今からごらんいただきますのは、来週の月曜日に私どもの団体から、内閣総理大臣、通産大臣、それから環境庁長官意見書をお出ししようと思っている二〇〇五年国際博覧会、これは愛知県の瀬戸市で計画をされているものですが、これに関する現場の状況をごらんいただきます。  これが実は、ちょっとわかりにくいんですけれども、万国博覧会、万博というふうに通称呼んでおりますが、その博覧会計画の構想図です。通産省から発表されたものですが、愛知県の瀬戸の里山の中に万博の計画がございます。六月十二日にモナコでBIEという万博の総会が開かれて、そこで瀬戸になるかそのほかの場所になるかという可否が決まるものなんですが。  この図、ちょっと薄いですけれども、水色の線に見えますのは川です。川から右の方に山がありまして、左の方に町がある。右側から左に向かって小さな川が流れて、町の中に合流して流れていく。そんなような場所に、黄色、ピンク、そして青、三つの色が塗ってありますが、これが万博計画におけるゾーニングなんですね。  プルーのところは基本的に森林が残されるところ。それから、ピンク色のところは万博の会場として開発されるところ。万博が六カ月で終わりますと、ここは新住宅構想という、これは四全総の計画の一つですが、大きな住宅地、研究学園都市みたいなものになるのかもわかりませんが、そんなものがピンク色のところに計画されています。  そして、左側の方にあります黄色のところは、この万博は実は「自然との共生」というキャッチフレーズがついておりまして、地域の自然を守るという名目の中で基本的に手つかずでいきたいというような場所が黄色でございます。  このエリアの中に生き物が住んでいるわけですが、赤いマークがついているこれは、実はサクラバハンノキという種類がすんでいる場所です。いろいろと何種類も貴重種というふうに呼ばれたりする生き物が世の中にはいるわけですが、これはいろいろな法制度的あるいは科学的な知見から何らかの注目をちゃんと集めて環境配慮をしなければ、日本から消えてしまう可能性があったり、あるいは地域からいなくなる可能性があるというようなものを貴重種と呼んでいます。この貴重種主義が行き過ぎると変な自然保護活動をやることになるんですが、貴重種というものがあるわけです。そういう貴重な生き物とされているもの、それから科学的に検討しても重要視した方がいいだろうと思われるようなもの、このタッチの図面の中では三種類の植物が取り込まれています。  ここで見ていただきたいのは、この全体のエリアの中で注目しなければいけない生き物がどういうふうにすんでいるか。ここで見ますと、こういう赤い色がついたところがそうなんですけれども、何と地域全体にとても満遍なくすんでいるわけです。  もう一つ注目していただきたいのは、右から左に向かって流れていく川沿いにずっとこの生き物たちのすんでいる場所があるということです。  ところが、そういう満遍なくいて川沿いにすんでいるところがあるのに、この計画の中では、このピンク色の部分は、何本も右から左に流れている川をずっと縦に土地利用するような仕組みになっています。  この茶色い棒は何かといいますと、これは名古屋瀬戸道路という非常に大きな高規格の、高速道路みたいな規格を持った大きな道路です。  この黒い線でかかれていますのは、万国博覧会を開くために中央部に通す幹線道路なんです。  このピンク色の部分とこの二本の道路のつくり方がこの地面の生物たちあるいは自然のありようと整合しているかどうかというようなことが、妥当性を判断するときの見どころなわけです。ところが、この状態で万博計画というのが進んでしまって、この今の計画でよいということが発表されてしまったわけです。  それから、野生生物の生息状況とこういう土地利用のゾーニングの関係がおかしいということと、もう一つ、このブラシでかいてありますピンク色の内側は、実はこの地域の里山という環境なわけです。里山の自然を代表するというか、里山の自然をつくってきたのは人の伝統的な農村の暮らしなんですね。そうしますと、里山の自然との共生を考えるプログラムということで土地利用するのであれば、この環境をつくってきた一番中心になっている里山をつくった農村環境というのをまず真っ先に残していくような配慮が行われないと、環境と共生しているということにならないわけです。ところが、見ていただきますとおり、ピシク色の開発予定地というのは、この里山環境をなくしてしまった上につくるというような位置関係になっております。  こんなようなことがなぜ計画段階でチェックされてこなかったのかといいますと、今のこのプランというのは構想と計画段階なものですから、実際ここで開発をするということが決まってから現行のアセスメントというのは行われるということで、事業段階手続のように行われている現在のアセスメントでは大変不十分であるということをあらわしているのではないかと思われます。  それから、このピンク色の部分の面積だけが開発されて、周りを残せばいいのではないかというような議論も一方でございます。現状でのゾーニングの仕方で、この地域の自然を残すということと、それから開発活動を進めるということがきちんと整合しているんじゃないかという意見がです。  それがちょっとおかしいと思いますのは、例えばこれは二枚の図面を重ねたものなんですが、先ほどのピンク色の部分が今度はオレンジ色になっています。それから、それをかぶせた下側に、ちょっとこの辺に深緑の緑があると思うんですが、実は基本的に残されると言われているこの先ほどブルーだったところの下にある森というのは、これはみんな形とかヒノキといった人工林で、木材生産のためにつくられた緑なんです。ピンク色の部分の開発予定地というところ、そこにその里山の雑木林というのが広がっておりまして、つまり植林地を残して里山の雑木林を開発するという、そういう関係になっております。  この辺も、緑という意味ではどこにある緑も一様なわけですが、緑の質を見ていきますと、人工林を残して里山の雑木林をなくすということは、自然保護上大変問題が多いわけです。日本の中ではこういう里山環境というのが次々に失われてきていますので、そんな意味からもこの行政による判定というのは非常に科学的でないのではないかというのが私たちの意見です。  それからもう一つ、人命にも影響するかもわからないと思われる情報というのがあります。これは、今御説明しているのは海上の森というふうに通常言われております。この海上の森で、左の方にありますこれが名古屋港ですね。名古屋の大都会がありまして、ずっと山手の方に寄っていった一番最前線のところに海上の森がある。右の方の赤っぽく見えるところは、これは山地でございます。この中に黄色い線が何本も通っているのは、これは断層と呼ばれる地震を発生させるものなんです。  ここをずっと海上の森を見ていきますと、何と万博の予定地、将来は新住宅構想になり、そして二本の大きな道路が通ると言われているこの海上の森のところは、猿投北断層という非常に大きな断層が二またに分かれて計画地の中を横切っております。  こういった断層が真ん中に通っているような、こういう場所に万博の計画地を設けたり、あるいはその後の住宅地の計画を立てたり、それから道路をつくったり、こういったようなことが私たちに知らされるというか、途中途中で、住民やあるいは国民に解説を加えられながら、こういう条件を持ったところでこういう仕事だけれどもよいだろうかと、そんなようなことというのは聞かれていないわけです。今、私どもがいろいろな質問を出しておりますが、そういう科学的な質問に対する解説をきちんとするような文書類というのはないわけです。  ここまでがこのオーバーヘッドを使って見ていただいたことなんですが、万博に限らず、今問題になっております諌早の干拓事業などもそうですが、問題点としては四つあると思うんです。一つは、環境アセスメントというか、土地利用計画を立てるときにおける自然と環境の考慮の仕方といったものだと思うんですが、そこに大変大きな問題点があります。  一つは、現況の把握。ここの自然がどうなっているかというようなことについて、実態を踏まえていない調査レポートが大変多いということです。今やられている基礎調査というのは的をついていないというような言い方ができます。  それから二つ目は、ある地域の自然を一体どういうふうに評価するのが妥当であるかというようなことについて、ほとんど科学的な専門家の知見が含まれないで、関係する行政機関の裁量でこの自然の評価というのは決められてしまっております。非常に恣意的な評価で、自然はどうにでも評価され得るというようなことかもわかりません。  三番目は、今のピンクと黄色と青の関係のような、ああいうものをゾーニングというふうに言っていますが、ゾーニングというのは正しくやれば一つの自然保護対策になり得ます。ところが、こういう対処策というものがどういう根拠に基づいてどういう効果があると判定されて判断されたのかということについで、全くオープンに議論されてこなかったというようなことがございます。  こんな三つの問題点のどの段階にも言えますのが、こういう作業というのは基本的に専門家や市民の人たちとオープンな議論をしてつくっていけば、現在あるようないろいろな対立事というのは計画段階でかなり回避できるというような点でございます。計画や構想としてまとめてしまった後に、配慮はしてありますというふうに注釈をつけて行政が何かを公表していくというのは、限りなく時代おくれな方法なんだというのが私どもの意見です。  現在審議されている最中の法案への基本的な意見ということで自然保護協会が考えてきましたことを申し上げますと、こういう環境アセスメント法という法として制定していくということについては、日本の自然を守っていくためのさまざまな施策を生み出し、それから開発事業における自然環境のファクターというのをもう少し基本的に高めていくというようなことのために最も必要性が高い制度であろうというのが一点です。  しかし、二つ目の点としては、こういう法制度が、法律ができたときに、現実的にどのくらい自然をきちっとこの制度が守っていかれるのかというような点については、つまり効果の有無ということですが、この点については現在の……
  16. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) まとめてください。
  17. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) 文章を見せていただきますと、審査者である環境庁長官がどのような必要かつ妥当な意見事業者がつくったレポートに対して出していくかというような点ですとか、それから各種政令で何とかを定めるというふうに書いてあるわけですが、そういう政令で定めるとされている諸点の内容のいかんで決まってくるのではないかと思われます。この点のルールが明確でないと、私どものような市民の立場であるいは科学者の立場意見を述べる者が意見を大変述べにくいということがございます。  そして、最後に、注意をしなければいけない点としては、前にお話しになられた先生方も指摘をされておりましたが、このような法案より進んだ制度を持つ自治体というのは少なくないという点でございます。したがって、進んだ制度を持つ、つまりすぐれた自然をよりうまく残していかれる制度地域社会にフィットさせてつくっている自治体をこの法律が縛るものであってはならないというような点が基本的な注意点ではないかと思われます。  以上、簡単ではございましたが、私どもの意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございます。
  18. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) どうもありがとうございました。  次に、天谷公述人にお願いいたします。天谷公述人
  19. 天谷和夫

    公述人(天谷和夫君) ただいま紹介にあずかりました天谷です。私は、NGO環境監視ネットワーク顧問の立場からお話ししたいというふうに思います。  NGO環境監視ネットークというのは、発言要旨の一番最後のところにネットワークの説明がありますが、私たちがずっとやってきました大気汚染の簡易測定法、水やなんかもそうですが、そういう測定法を、今までは日を決めてやっていたわけですが、これをやりたい人がいつでもやれるように技術を改良して、そういうものができ上がったのでいつでも好きなときにはかれる、そういう人が集まって常時監視、いつも環境を監視する、そういうネットワークをつくろうというのが私たちの組織の目的であります。  それで、きょう述べます意見は、ここにも書いてありますが、環境影響評価を支える基盤の整備という立場から、大気汚染に絞ってこの評価がどうなされているか、状況、実態がどうなっているか、そういうふうなことを述べたいというふうに思います。  要旨に従って述べたいというふうに思います。  現状はどうか。普通、計量器というのは計量法によって検定されて、はかったものが正しいというふうに証明をして、そういうものを使うわけです。大気汚染の場合も真実を証明する計器ということで検定を要するわけですが、技術的にまだできないということで検定が行われていない。そういうことでどういうことが起こっているかというのをお話しします。  まず、資料に従ってあれしますが、これは横浜市の使われている大気汚染の計器ですが、メーカーによって一八%も違う、こういうものが使われているというのが横浜の職員によって調べられたものです。  それから二番目は、化学品検査協会、これは標準ガスを供給する機関ですが、ここで標準ガスを使って調べると、やっぱり三〇%も低いようなのが実際には使われている。  それからその次に、じゃ実際にあらわれたデータはどうかというので、平成二年の自動車排出ガス測定局のデータを解析してみました。横軸は一酸化炭素、これは、一酸化炭素の計器は計量法によって検定されているというふうに言われている計器です。ですから、この値は信頼できるというふうに考えるものです。縦軸はNOx、これはNOとNO2を足したものです。これを年平均値について比較しますとこの図のようになります。これは大気汚染学会で発表したデータですが、こういうふうになります。  愛知県を見ますと、COとNOxの比例関係が非常にいい、一致して一直線に近いようなところに乗っています、一点だけちょっとあれがありますが。こういうふうに、排ガスのNOxとCOの比は大体平均するとどこでも同じになるんじゃないかという想定でやってみたら、愛知県はこんなふうになっている。  ところが、ほかの自治体は非常に開いている。  特に東京は大きく開いているわけです。この図を見ますと、傾斜の一番高いところがどこの自治体でもみんなそろっているわけです。そこで、一番急な傾斜のところが正しい値で、それ以下のはみんな低目に出ているということではないかというふうに思います。  それから、その次の資料、これは東京都の資料ですが、東京都が開発した簡易測定法と公的方法であるザルツマン計を同じところではかったらどういう関係にあるかということのデータです。これを見ますと、ザルツマン計がもうやたらに低い、こういうのが出ています。  それから、我々と自治体の測定、我々は簡易法ですが、それが名古屋と東京それから大阪についてしてあります。名古屋は我々が決めたものとほとんど一致していますが、東京は平均として非常にばらついていて低い。それから、大阪の方はこういうふうに変な曲線になっています。これの原因については技術的な問題でありますので触れませんが、こういうふうになりました。  それから六番目ですが、これは川崎市が維持管理が悪くで低い値が出ていたというのを一九八四年にみずから発表しましたけれども、こういう状況地方自治体どこでもあるから、保守管理を徹底するようにという通知が環境庁から出されました。  それからその次は、私の住んでいる世田谷ですけれども、SPM、これは浮遊粉じんです、これが実際の値の約半分ぐらいの値がはかられていたということです。  それから、測定値を低く見せようという意図が働いているというのがデータをいろいろ解析するとわかります。一つは、環境基準を変えたときにザルツマン係数も変えました。そのときに調査をした調査報告書の中に空気の流量を図った試験がありますが、実際の値が八〇%。低く出る測定器をG社というのがつくったわけですが、これは比率をぱっと見たときに八〇というふうに出ているとにらまれるので、これは逆数を加えて出している。こういう大事な報告書の中に虚偽の報告があります。先ほど川崎市のあれが低く出たというのがありましたけれども、これは保守管理のミスじゃなくて、もともと低く出るようにつくられた器械が売られていたということです。環境庁のいろいろなメンバーの中にこのG社の人が入っているという資料です。  それから、パーミエーションチューブといって標準ガスを出すチューブがありますが、これの値づけがSOx、亜硫酸ガスの方はちゃんと出ていますが、二酸化窒素の方は値づけが違っている。  実際は高い濃度が出ているのに低く値づけしているというのが私の調査でわかっております。  それから、今環境庁は九八%値評価というのをやっておりますが、非常にもっともなようですけれども、その理由というのは、測定器の信頼性、ここでは精度と書いてありますが、本当は信頼性が足りないから上位の二%は除くというふうな理由で九八%値評価というのをしています。亜硫酸ガスについては環境庁の方にちゃんと書いてありますが、二酸化窒素については理由は述べないで行うことになっているというふうに書いてありますが、そのもとをただすと、通産省の報告書の中に、やはり同じように、信頼性がないからだというふうなことが理由になっております。その信頼性がない理由が、某日の某局の測定、某機関の測定がおかしかったということが理由になっておりますが、これは追跡調査ができないように某局、某機関、これは問い合わせたけれども全然わからない、どこのやつだかわからない、そういうものです。  それから、今、大気汚染はリアルタイムではかっております。一時間おきにデータが出ていますが、これを速報値と言います。速報値は、本当に信頼性があれば気象データと同じように確定値としてすぐ出されるわけですが、これは信頼性がないから検討してから出すんだということになっています。  それの口実に、データの安定化のために伝送データの加工が行われているというのがマニュアルに書いてあります。データの加工というのは何だと環境庁に聞いたら、担当官が知らない、わからないですね、自治体に聞いてくれというようなことを言っています。こういうような状況です。  これは、オウムの自作自演と同じです。安定化のために伝送データをチェックするんだと、チャートと。それで一カ月チャートがかかりますね、それから何カ月も置いて出すと言っています。速報値は信頼性がないから確定値でなきゃ発表しない、行政は信頼できるデータだけしか発表しないといって、確定値は信頼できるんだと言っていますけれども、先ほど言ったように確定値も相当いいかげんだということです。  それから、測定器がおかしくなくても置いてある場所が低く出るようなところがいっぱいあるわけです。これは私のところばかりでなくて、ほかの自治体で調べたところもいっぱいあります。三分の一ぐらいの、地上では三倍で、屋上の四階ぐらいのきれいなところをはかっているのがいっぱいあります。私のところのデータが、これは世田谷でありますが、こういうふうな状況です。  それから、行政の秘密主義。これは、測定値や測定体制は非常に進んだというふうに言って威張っていますけれども、中身は速報値が発表できないでいいかげんだと。それから、情報の安易な流出になるといって情報の保護が必要だというようなことを言っていますけれども、大気汚染情報をだれに対して保護するのか何だかわからない。  それから、測定値の活用というところに、公表される時期は緊急時を除いて年報のまとめを終えてからであるというふうに書いてあります。これを追及しますと、別に縛っていないと言っていますけれども、自治体の方では環境庁がこういうのを出しているから自己規制をかけて出さないわけです。こういうものは変えるべきです。こういうものを決めた学者、専門家にも責任があるというふうに思います。  それからもう一つ、我々がやっている簡易法は私も知らないほど非常に国際的に評価されて、WHOとUNEPでレコメンデーションが出ています。大いに使いなさい、都市のNO2を世界規模ではかりなさいというレコメンデーションが出ています。こういうのを厚生省とか環境庁は全然知らせない。我々に知らせないばかりでなくて自治体にも知らせない。東京都も区役所も全然知らない。そういう状況です。こういうのを環境庁は謝って、ちゃんと出直すということを要求します。  じゃ、これからどうするかということですが、これを公定法としてちゃんと認めて、ポーランドなんかは公定法になっています。そういうのを認めて測定局の点検、我々ばかりでなくて行政も、皆さん議員も一緒になってやりましょう。ここへ持ってきました。やりたい人は持って帰って、超党派でやっていく、そういうことです。  それから、標準ガスの確立。これは割合簡単な乾式の測定で標準ガスもできます。こういうので早く標準ガスをつくってみんな検定して、すぐ速報値が使えるようになる、気象データと同じようにすぐテレビにぽんと出せるような、そういうものです。  PAPIONは、これは実用化してください。  これはもう有働議員が国会でも質問したけれど  それから最後に、地球的視野に立った環境監視、これはCO2とか酸性雨とかそういうものをリアルタイムで観測して、これも広いですから、安くそういう技術開発して、そしてリアルタイムで自分たちの環境がどうなっているかというのを刻々知らせるようなシステムをつくって、それで地球環境をどうしようかというようなことを日常的にみんながわかって行動するように、そういうシステムをつくったらどうかというふうに思います。  これは五十一条にありますが、「国は、環境影響評価に必要な技術の向上を図るため、」……
  20. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) お願いします。時間が経過しておりますから。
  21. 天谷和夫

    公述人(天谷和夫君) 以上、終わります。
  22. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  次に、辻公述人にお願いいたします。辻公述人
  23. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) 名古屋から来ました辻淳夫です。  きょうは、皆さん、日本の政界のトップにおられる委員方々とお会いでき、環境問題に関してお話しできることを大変うれしく思っています。  私はこういうところになれてはいないので資料を幾つか用意してきましたが、後ろの方にありますレジュメ、発言要旨と、それから地図などが入ったものと、もう一つ文章みたいなものがありますので、それを使って御説明します。よろしくお願いします。  まず、私は、御紹介いただいたのは職業なんですが、そのほかに、先ほど紹介された名古屋の地元で最後に残っている藤前干潟を守る会というものの代表をしております。そしてまた、そういった干潟を守る運動体が全国的に集まった日本湿地ネットワークというものの代表委員もやらさせていただいています。  実は、この日本湿地ネットワークには代表委員として二人おりまして、本家本元は、今皆さんの話題になっている諌早湾のところにいる、何か先祖はムツゴロウかと思うような風貌の山下弘文というのがいるわけですが、私はいわばそれのシャドーでありまして、彼が動けないところに私なりの視点で何かやらさせていただくというふうに役割を分担しております。  私の方は、どちらかというと先祖は鳥だったかもしれないと思うくらいに、二十年ほど前に渡り鳥に出会ってから、その壮大な彼らの生きざまに大変ほれ込みまして、それ以来渡り鳥のいる場所を追っかけ、そのうちに、彼らの大切な中継地である干潟というところが大変な状況になっているということに気がついてからその問題にかかわらざるを得なくなって、それからずっとそういうことを続けてきているわけです。  きょう、特にここに来させていただきたいと思ったのは、やはり今、日本の干潟の状況が大変重大な危機を迎えていると、そのことを私たちはこの最初の地図でお示しをしたいと思うんです。  日本の干潟というのは、ぱっと見ていただくとわかりますが、そんなにどこにもかしこにもあるわけではないんですね。潮位の関係で日本海側には完全にありませんし、大体南西部の海岸、しかし特に大河川があり、内湾であり、潮位の差があるという三つの条件が必要なところから、もともと東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内、それと九州の有明海というようなところが主な干潟の場所です。そして、そこに、特にシギ、チドリというような地球をまたにかけて二万キロを往復で渡るような鳥たちが中心にやってきています。  その次の資料の1−1というのを見ていただくとわかりますように、これは去年私どもが春秋の鳥のカウントというのを全国の仲間に呼びかけて十年ぶりに実施しました。その結果は、これは残念ながら予想どおりなんですが、十年前の平均値と比べて全体で四割減、そして種類によっては八割減というような大変危機的な状況を迎えていると。  その裏を見ていただきますと、その結果で、今、日本に残っている干潟の中で一体どことどこが大切かというのは、先ほどの環境庁のお示しになった一枚目の地図でもある程度わかることなんですが、私たちのデータによっても、一応ラムサール条約という国際的に重要な湿地を保護する条約に日本も加盟しているわけですが、そこの基準である種類ごとの総数の一%を満たしているところというようなことの数値をもって並べてみますと、諌早干潟と藤前干潟、汐川、谷津、こんな順に並ぶわけです。一応、一種類でも基準を満たしているのはあとまだ五十七カ所まであるんですが、日本の中で最も重要な大きな渡来地が諌早と藤前であるということが見てとれるかと思います。  そして、残念ながら、皆さん御承知のように四月十四日に諌早湾が遮断されると。ギロチンというような表現をされるような大変ショッキングな工事が行われて、これが世界じゅうに大きな衝撃を与え、それから大変反響がどんどん沸き上がるばかりで続いているという状況は皆さん御存じだと思います。  これは一つには、感傷的な議論ではないかということが言われていると思いますが、私はこの諌早のケースは、これまで長年全国で進んできた自然破壊、その結果がそれぞれの地域の人たちの心の中に重くのしかかっていると思うんです。そうしたことにいろんな悩みや怒りや深い思いを持ちながらなかなかその状態を変えられずに来てしまった、そういう一たん行政が決めた計画が立ち戻ることなく行われてきたことに対する大きな怒りがここに来て噴出した、そう考えるのが正しいのではないかと思います。  先ほど万博の話を横山さんがお話しになりましたが、これは二〇〇五年の万博に対しても少なからぬ影響を与える国際問題であろうと。まず、自然と共生という大変きれいな言葉を使いながらその実はああいうことなのかと、私どもからすれば世界に対して大変恥ずかしいようなことをしてしまった。ですから、今それを救うとすれば、私たちが何かそこに対する根本的な変革、ゲートをまた開放するというようなことから何か措置をとらない限りは、日本の環境行政に対する姿勢というのは世界じゅうから指弾されるだろう、そういうふうに思うわけです。  もう一つの私どもの地元の藤前干潟なんですが、これは諌早のような大きな干潟の自然とは全く変わって、ここは残念ながら東京湾と同じように名古屋港臨海工業開発用地ということで高度成長期からどんどん埋め立てられ、既に四千ヘクタールの土地ができております。そして、残っている干潟は、たまたまその中で海面下土地の私有権の問題があって奇跡的に残ったというほかない百ヘクタールほどの干潟が辛うじて残っている。  全体からいえば五%に満たないところに、渡り鳥たちが行き場を失って、先はどのように随分数は減ってきているんですけれども、最後のえさ場として彼らはそこに集中してきている。そういう状況にあるということをまずよく知っていただきたいと思います。  そして、その藤前干潟では今環境アセスメントが進んでおります。それから、諌早干潟でもかつて数年前に環境アセスメントということは一応やられたようなんですね。ところが、その内容、そういった各地の事例を私はすべてを知ってはいないんですが、この二つの例を端的に見てみると、日本の現行に行われている環境アセスメントは一体どれほどのものかということをまず考えていただいて、それが今度のいわゆる法律の制定によって果たして救えるものなのかどうかということを先生方にしっかり議論していただきたいという気がするわけです。  例えば、最初の諌早の例をとってみますと、三枚目の資料の211、諌早の干潟のアセスメントは私も見ましたけれども、割と薄いものでした。  そして、ここに載せた地図は現在の農林水産省のホームページに載せられている「諌早湾干拓事業について」という二ページほどの解説の三ページ目にある地図をここに持ってこさせていただいたわけです。  そこには簡単な説明で、野鳥に関しても配慮はしているが鳥たちはこのように有明海の中にいろいろ移動している、だから諌早湾を閉め切ってもどこかよそへ行って暮らすだろう、そういうことが期待されるというような表現でアセスメントも書かれています。簡単な数行の文章です。  しかし、この結果だけを見ますと、このデータというのは、鳥は、確かに発信機によって移動したことは証明されているでしょう。しかし逆に見れば、これらの鳥たちは同時に諌早干潟に集まってくるということも言えるわけですね。つまり、彼らはそこを行き来していながら例えば諌早湾を最大のえさ場にしているかもしれない、そういう本当の彼らの生態がこれからでは決してつかめてはいないということなんです。  ですから、外へ行くだろうというのは大変一方的な証明されていない議論であって、ちょうどこの地図の裏側に私が先ほど紹介した山下のどこかの新聞に載せた文章の一部を載せておいたんですが、見るのにちょっと時間がかかるかもしれませんが、そこを見ていただくと、彼が干潟の生物の量を調査した結果では、諌早には三百種を超すようなムツゴロウだけではない大変豊かな干潟の生物が生きているのに、その他のところは干拓工事の影響や何かでかなり汚染も進み、それほどの生物がいないという実態を彼自身の手で調べ上げています。  ですから、そういった鳥たちの移動が何を意味するのか。えさ場が潮で満ちたからねぐらに帰るとか、そういったようないろんな行動が考えられるわけで、諌早干潟が本来持っているえさ場としての機能、あるいはもっと大事なことはその生態系が持っている生物の生産力であるとか、言葉をかえれば水質の浄化機能であるとか、そういったものの本当の値、埋め立てによってどれだけの機能が失われているのかということをはっきり評価すべきである。  それなくして、例えばアセスのあれにも書いてあるんですが、単に、ムツゴロウはほかにもいるから大丈夫、ですから絶滅する心配はないというふうに書かれているんですが、私どもは、環境問題というのはそういう視点で見るのはもう時代を過ぎている、つまり今心配されているのは絶滅するかどうかではなくて、豊かな生態系全体を壊すことによって私たちが本来受け取るべきいろんな恵み、後世の子孫に伝えるべき遺産を失ってしまうんではないか、そういうことの危惧が全国民的に沸き上がっているということを御理解いただきたいと思います。  そして、藤前の方に現在環境アセスメントが進行していまして、これは十年ほどかかった計画が動き出しまして環境アセスメントをやっているんですが、その内容準備書で去年の七月に出ました。その内容を見ますと、大変実態をとらえない、あるいは先ほどどなたかおっしゃったような、結論が先にあってそのために都合のいいデータのとり方をするとか、あるいはそのように近づける処理の仕方をする、そして評価をするときには全く論理にならない。例えば将来の下水道が普及すれば水質はよくなるといったような、本来干潟の浄化能力、機能を調べるべきなのに、まるで将来の下水道を整備したらどうなるかということだけを述べているというような、大変残念な非科学的なアセスメントが行われています。  それについて詳しく述べる時間はありませんので、私が現在公聴会で出たものをまとめていますので、できればそれをまたごらんいただければありがたいと思います。  特に、その中でも一言申し上げておきたいのは、干潟の生態系に対して私たちは本当にまだ十分な知識を持っていないということです。  ここの調査でも干潟の浄化機能をはかるのに、まず生物がどのくらいいるかという基本的なものを調べているんですが、そこではスミス・マッキンタイヤという方式を使われて、機械で干潟の表層を満潮時に船の上から落として深さ十センチ分、十センチ平方の泥をとる、そういうことでその中の生物量を調べているんです。  しかし、干潟にはいろんな生き物がいます。カニとかシャコとかムツゴロウとか、穴を掘って暮らしているものがいっぱいいて、その穴を掘っているやつは意外と深いんですね。ムツゴロウがどのくらいの深さまで潜っているかというのは私は知りませんが、今諌早の状況は、既に一月半を過ぎて乾いているのに、その中でも雨が降れば出てきて彼らはまたはねていると、そういう情報も流れていると思うんですが、そのしたたかさに私たちは驚いているんです。それは、彼らが深い穴の中に潜って、塩分濃度はすぐに簡単には消えませんから、それで何とか息をつないでいるということなんですね。ですから、今こそ、その息をつないでいる彼らのために何とか手を打っていただきたい。  私たちが体験したことでは、この藤前干潟の中には、残念ながらムツゴロウはいないんですが、ヤマトオサガニというのがたくさんいますし、それからアナジャコという、これは私も知らなかった、数メートルまで穴を掘ると言われる。そんなことがどうしてわかったのかと僕は驚いて研究者に聞きましたら、そういう化石があるというんですね。もう進化の歴史をたどっているような生物が干潟の穴深く生きていて、それが海水を循環させることで彼らはえさをとっている。つまり、それだけ干潟の浄化をしているということなんです。そういうものがいたというような事実も私たち自身の手でつかまえました。  そんなことを考えてきますと、干潟の生態系に関する調査というのが今まだ私たちは十分なものを持っていない。今度の環境アセス法ができるなら、ぜひそのことを落とさないように、これまである種とか絶滅貴重な種類だとかいうものだけを見ていたものを、普遍的にいるものたちがきちんと生きていけるような環境こそ、私たち人間もその輪の中で暮らしていけるんだということを改めて意識していただきたいと思います。つまり、最初のページの裏に載せてありますようなこういう干潟の生態系の輪、それは人間も魚をとったりノリを食べたりすることでつながっているわけですが、この輪がいかに完全に生かせるかということが今時代の要請ではないかというふうに考えるわけです。  最後にもう一言だけ。済みません、時間、一分ほどでいいですから欲しいんですが、名古屋港の開発は先ほど言いましたように既に九五%ほど干潟を埋め立ててきています。その最後の五%のところが今問題になっているんですが、この地図を見ていただくとよくわかりますように、一九七〇年代の初期にもうほとんどこの開発は行われました。しかし、そのときに石油ショックが起こってたくさんのところが未利用のまま残っているわけです。そういうところこそこの最後の干潟をつぶすかわりに例えば代替案として使うべきではないかという提案はだれしも考える当然のことじゃないかと思うんです。しかし、これが残念ながら私ども十年間いろんな形でやってきたんですができていない。それはどこに原因があるのでしょうか。
  24. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) お願いします。
  25. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) はい、恐縮です。  それをこの今のまとめのところに書いてありますのでごらんいただいて、こういうような行政が見直す仕組みのない問題であるとか、それを環境アセスの中でも生かせるような法案作成をぜひお願いしたいと思って、私の話を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  26. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  次に、福島公述人にお願いいたします。福島公述人
  27. 福島徹二

    公述人(福島徹二君) 横浜市環境保全局の福島でございます。  本日、公述機会をいただきましてありがとうございます。  私は、横浜市の環境影響審査課長として五年間の経験がございまして、これらの経験から、配付させていただきました要旨に従って意見を述べます。  環境アセスメント法の制定は、この制度環境保全上重要な施策として確立され、また対象事業実施する事業者の認識を高めるなど、制度実効性が向上することから評価するものです。  しかし、法案の構造を見ますと、対象事業を推進する側と言える主務大臣が、第三者機関である審査会を設置せずに事業者アセスメント内容審査するものであって、住民、知事、環境庁長官意見のいずれも配意、勘案されるにとどまりまして、審査の中立性、客観性に欠けています。また、最終的に主務大臣による審査結果が事業にどのように反映されるかは公表されず、結果の透明性に欠けていると思います。  国は、法案は諸外国制度と比べても遜色ないとしておりますけれども、欧米諸国の場合には、所管官庁の審査に対して独立のアセスメント委員会などの制度がチェック機関として設置されています。または所管官庁ではなくてアセスメント庁が審査を行うなどによって客観性、中立性を確保しています。法案にはこの重要な点が欠けております。  現在、地方自治体においては五十一の都道府県、政令市でアセスメント制度が条例または要綱実施され、多くの実績とともに定着しております。特に、昭和五十九年の閣議決定環境影響評価要綱以前に制定された地方自治体の条例、要綱は、審査会や公聴会の制度など、法案よりも進んだ内容を有しています。  また、地方自治体においては知事、市長が審査会の意見を聞いて審査しておりますが、市長は地域環境状況を熟知しております。また、市の環境管理計画などとの整合を図ったきめ細かい審査が可能であります。例えば横浜市内の高速道路の審査においては、環境庁長官意見が出たわけなんですが、十項目、三ページのものです。ところが、横浜市のこの要綱に基づきます市長の審査書は、問題点とその理由、指摘事項の根拠などを細述しまして、十八ページにわたって、約六倍の量になっております。  しかし、今後は、法対象の大規模事業に関しては、地方自治体準備書等への意見提出と公告縦覧、説明会への協力にとどまりまして、地方自治体の現在の制度が大幅に後退することになります。  資料の三ページに図がございますので、ごらんください。  これは法案のフローと地方自治体制度の例でございますけれども、これを対比しております。  この法案を見ますと、この一番上の方法書の作成などについては、それから一番下のところにあります最後の審査結果の許認可への反映は、この法案のすぐれた点だと思います。  しかし、左のこのフローの例は、先ほど言いました昭和五十九年の閣議決定以前に制定した先進的な自治体制度の例でございますけれども、頭にあります実施計画書の作成、これは法案の方法書の作成と類似した制度です。神戸市においては、この実施計画書は現在でも公告縦覧をしております。その下の準備書の公告、説明会の開催については法案とほぼ同様です。  ところが、その下に公聴会の開催があります。  県もしくは市が主催するものですけれども、この公聴会を開催しまして、その後、評価書の公告縦覧を行います。この評価書内容について、その下にあります審査会、学識経験者による第三者機関になりますけれども、この審査会での審議をいただいて、この審査会からの報告をもとに市長が審査書を作成すると。この審査書は公告されます。  また、その下にあります報告書の作成なんですが、これは事業者がこの審査書に基づいて事業者の見解を述べております。横浜市の場合には、市長の審査書の内容をオウム返しでそれを実施しますというような形になっておりますけれども、これは言ってみれば事業者が公の約束をしたという形になります。これも当然公告、公開されます。  その後、着手の後にも事後調査実施する旨が規定されておりまして、さらにこの事後調査報告を徴収して、必要により指導、勧告ができるという制度になっております。  この米印をつけました手続法案にない地方制度のすぐれた点でありますし、また、評価項目も多様なものになっております。  一ページの五番に移ります。  このように、多くの地方自治体がその地域特性に応じて進んだ制度実施してきたアセスメント行政が、法対象事業に関しては地方自治体から国に移ることであり、現在の大きな流れの地方分権の推進に反すると言わざるを得ないと考えます。  少なくとも法が対象とする事業は、国家的見地から行われる国等が直轄する大規模事業に限ることが妥当であると考えます。  例えば発電所については、現在通産省のアセスメントは十五万キロワット以上を対象としておりまして、今後規模は政令で定められるわけですけれども、説明によれば、現在とほぼ同様のものを政令で定めると言っておりますので、この十五万キロワット以上が対象になると思われますけれども、横浜市内の例では、十五万キロワットの発電所は敷地面積が一・三ヘクタール、これは一辺百十メーター程度の広さの工場にすぎません。大気汚染の窒素酸化物の排出量も横浜市内総排出量の〇・〇九%にすぎません。立地場所は人が住んでいない工業専用地域になります。このような小規模事業アセスメントに国が関与する必要があるのでしょうか。また、鉄道の改良事業も新たに法対象にされましたが、都市部で鉄道の高架化とか複々線化も同様であると考えます。  次に、六番に参りますけれども、このため十二政令指定都市は、本年二月に、市長名で連名で環境庁長官及び地方分権推進委員会の委員長あてに法制化に関する要望提出いたしました。  その要旨は下段に書いてありますので省略いたしますが、二ページに参ります。  具体的には三点ございますが、これまでの指定都市における環境影響評価制度運用実績を尊重し、法は制度についての基本的な枠組みを定め、指定都市がその地域特性に応じて主体的に充実、実施できる制度とすること、法制化に当たっては、指定都市を都道府県と同等に扱うことを基本とすることなどでございます。  さらに、環境保全局長名で、三月六日に、環境庁等に七項目の具体的な要望を行いました。  一番ですが、指定都市の市長が手続の過程で事業者及び審査の主体に直接意見を述べることができ、かつ十分に尊重される制度とすること。これは法案には盛り込まれておりません。  二番、指定都市の市長が意見形成するに当たって、必要十分な期間が確保される制度とすること。この内容は今後の政令に期待するところです。  三番は、事業者は指定都市の住民及び市長に対して十分説明する責務を有していることを明記した制度とすること。これは、市長意見形成に当たりまして、準備書の送付だけでは足りませんで、具体的なその説明もしくは参考資料の提出が必要になりますので。この点についても盛り込まれておりません。  米印をつけました四番、六番につきましては、今回の法案に取り入れられております。  五番、事業の許認可を行う者は、許認可を行うに当たって、環境影響評価にかかわる審査内容をどのように反映させたかを公表することを明記した制度とすること。この点も不備であると考えます。  七番、今後出される政省令などの法の運用等については、今後とも指定都市と協議を行うことであります。  今後、横浜市を含めて地方自治体は、法案第六十条「条例との関係」によりまして、法が対象としない小さな規模もしくは別の種類の事業については条例を制定することとなると思いますが、現在の多くの地方自治体制度は、先ほどの図にありましたように、審査会の設置とか公聴会とか地域特性に応じたきめ細かい内容となっていることから、我が国アセスメント制度が法対象の大規模事業に緩く、条例によって地方で行われる小規模事業に対しては、その客観性、中立性にすぐれてより環境配慮したアセスメントが行われるという逆転現象が発生するのではないかと思います。  この点はまだ知られておりませんが、今後広く国民に知られることになるんじゃなかろうか。大きな事業に対しての手続が緩くて、法律対象未満の小さなものについては地方自治体が進んだ制度でより厳しいといいますか、そういう形の審査が行われるということになります。  前述のように、地方自治体の主体性をより重視する内容となれば法制化は前進でありますので、賛成するものでございますけれども、さらに今後の地方分権の進展も勘案しまして、地方自治体が直接審査の主体となる方向の見直しが、衆議院の附帯決議の第八項を踏まえまして、法施行後十年後を待たずに行われることを望むものです。  要旨は離れますけれども、アセスメント制度目的効果の一つに、事業実施に対する住民合意形成を図るという点があります。一般に、住民はその事業内容やその影響が不明のとき過剰に反応します。その結果、事業の用地買収が困難になって事業がおくれるというようなことにもつながります。  これに対して、アセスメント制度によって、事業者があらかじめ情報公開して、説明会で住民と対話するなどによって理解を求めるわけですけれども、事業者側の評価だけでは、また特に科学的な予測手法などが難しいため、合意まではなかなか至りません。この点に資するのが、繰り返しになりますが、第三者機関専門家による客観的、申立的な審査であります。また、審査主体としては、自治体の首長は直接選挙で選ばれるものですから、次回の選挙を考えますと、一方に偏るというようなことは避けることが期待されるわけです。  住民は、こう言っては恐縮ですが、昨今の中央官庁と業界の関係が取りざたされている中で、法対象事業の許認可権を有する国の主務官庁が審査するということではなくて、身近な苦情を言いやすい敷居の低い市役所が直接審査して、その後もアセスメントの事後調査制度等によって必要な指導が可能な省の審査を信頼して、大方の住民は、この程度影響で済みそうならやむを得ないかなと考えて、結果としてスムーズな事業が進められることが期待できるのではないかと思います。  なお、法案内容ではございませんけれども、この法案では、環境庁の長官意見が主務大臣に対して第三者機関の役目を担う重要な手続と考えられます。今後法律が施行されますと、対象事業は年間百件を超えるのではないかと思います。こういった中で、環境庁地方の実態を十分に把握して調査審査を行って、そのすべてに対して長官が意見を出せるでしょうか。今までの閣議決定要綱以来十二年間の実績では、環境庁長官意見は二十二件しか出されておりません。今後は積極的にその意見を出せることに変わりますので、環境庁審査部門の人員、それから予算の充実強化によって第三者機関機能を十分発揮することを望むものです。  最後になりますが、私は、地方自治法の趣旨からしまして、公害環境問題は地方自治体の固有事務であるというふうに考えております。  以上です。
  28. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) ありがとうございました。  以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。  これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  29. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 自由民主党の谷川秀善でございます。公述人の皆様方には大変お忙しい中をお出ましいただきまして、また、ただいまは大変それぞれの立場におかれる貴重な御意見をお伺いいたしました。心から厚く御社を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。  それで、今回提出をされております環境影響評価法案は、皆様方もう御存じのように、大変長年の懸案であったものであります。平成八年六月二十八日付で中央環境審議会に対しまして「今後の環境影響評価制度の在り方について」ということで諮問をされまして、その後約八カ月もかかりまして審議会の皆さん方が精力的に御審議をされ、平成九年二月十日に答申され、その答申内容を中心にして法制化されたものであると聞いております。  審議会の皆様方には、審議をされるに当たり、関係省庁経済団体、環境関係NGO等から環境影響評価実施状況の説明や今後の環境影響評価制度のあり方について意見を広く直接聴取いたしますとともに、全国六カ所でのヒアリング、郵送、電子メール等による一般意見の受付を行って、国民各界各層意見を聴取して、これらを審議にできる限り生かすように努められたとお伺いをいたしております。しかし、この法案提出されてから、中にはこの法案中央環境審議会答申を余り尊重していないのではないかという意見をおっしゃる方もおられるわけであります。  そこで、幸い、きょう公述人としてお越しをいただいております、中央環境審議会委員として大変御苦労をおかけした浅野公述人、猿田公述人にお伺いをいたしますが、皆さん方に大変御苦労をかけて答申をいただきましたその答申内容と今回提案をされております法案内容をごらんになって、この法案答申を踏まえた内容になっているのか、それとも答申とは相当異なった内容になっているのか、どうお考えでございましょうか、それぞれお伺いをいたしたいと思います。
  30. 浅野直人

    公述人浅野直人君) ただいま先生から御質問の点でございます。  審議会はもちろんいろいろな立場の方がメンバーでおりまして、そして部会長の御方針で両論併記を避ける、合意できるところで答申をまとめるというスタンスで答申がまとまっておりまして、その意味では大変答申の取りまとめに苦労したわけでございますが、最終的に答申の考え方は七つぐらいの基本原則に要約をする形で考え方が示されております。  私は、今回の法案審議会で掲げましたその七つの基本原則を要約したものと照らしまして、実によくできていると言うとやや褒め過ぎなのかもしれませんが、実は、実際にその法案をつくる段階ではさらに各省庁の調整等がありまして、少し後退するおそれがあるのではないかと心配しておりましたけれども、例えば審議会の中で盛んに言われましたのは、柔軟で弾力的なアセスメント手続を可能にするようにしてほしいというような点でありますとか、あるいは少なくとも従来さまざまなやり方で国がやっておりましたアセスメントをすべて包括的にこの手続の中に組み込んで包括的なアセスメント法制度にしてほしいということは強い要望として出しておりましたけれども、それらについてはほぼ実現をしておりまして、対象事業についても拡大の方向がはっきり示されておりますので、私といたしましては、答申から大きく外れているあるいは答申から後退しているという御意見には必ずしも賛同できません。
  31. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 今、浅野先生からいろいろとお話ございましたけれども、基本的事項につきましてはまだ政省令にゆだねられている部分がかなりございます。かなりと申しましょうか、数値的なものもございますので明確なことはお答えできませんけれども、例えばスクリーニングであるとかスコーピングであるとか、そういうような審議の中でさんざん議論されました内容等が盛り込まれておりますので、いわゆる統一法的な性格を有するものとしての今回の法案、私はそれなりに評価できるものである、答申を踏まえたものであるというように理解いたしております。
  32. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 そこで、この答申をおまとめになるときに一番御苦労されたのは、スクリーニングとかスコーピングだとかおっしゃっていますが、一番御苦労された点ほどの辺でございましたでしょうか、それぞれ両公述人にお伺いいたしたいと思います。
  33. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 苦労をいたしました点は多々ございまして、一番苦労した点ほどこかとお尋ねになりましても、これが一番苦労したと答えることはなかなか難しい点がございます。むしろ率直に申しますと、苦労をしたように見えますけれども、やはりよくよく話し合っていきますと案外合意に達する面があるんだなということの方が率直な感想でございます。  できるだけ広くすべてのものを取り込むべしということについてもさまざまな議論をいたしまして、御案内のように大変な議論がございましたけれども、最終的には一つの統一の文言で答申をまとめることができました。確かに言葉をそろえていくということはなかなか難しいわけですけれども、そこでそれぞれの委員が考えていることを十分に意見として出し合ってまいりまして、時間をかけて議論をしていけばやはり言葉としては一つのものに落ちつくだろうということでございます。  計画段階でのアセスメントというようなことは、かなりいろいろと議論がございましたけれども、この点につきましては、むしろ苦労したというよりも、答申をまとめるときに、私どもは環境基本法の条文の中で一応枠組みがつくられていることを尊重しようということで最初から合意をしてスタートしておりますので、そういう意味では、計画段階でのアセスメントという言葉の使い方やその中身について、多くの国民各位各層から出される御意見とそれから環境基本法の持っている枠組みのずれというんでしょうか、そこら辺についてはむしろ悩みまして、どううまくそれを表現していったらいいのかということについてはかなり苦労をいたしましたけれども、残念ながら法律そのものの枠組みというものを答申で変えるということはできませんので、先ほどの公述でも申しましたように、今後の課題というところが残るということは申し上げた次第でございます。
  34. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 一番苦労したところはと申されますと、さっきの浅野先生も申されましたようになかなか難しいわけですが、対象事業等の範囲など、いわゆる閣議アセスでは十一その他ということで十二項目ございますけれども、どの範囲まで広げるか、これはこれからまた政令事項等で定められますけれども、特定の事業についで削除すべきかどうかということでさんざん議論された問題もあるわけでございまして、やはり統一法的な性格ということでのまとめの方向で考えてきたわけでございますので、その辺での論議がかなり苦労したところかなという感じも、私個人としてでございます、部会としてではなく、私の個人的な感想でございます。
  35. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 どうもありがとうございました。  この八カ月大変御苦労をおかけしたように私もお伺いをいたしました。  そこで、浅野公述人にお伺いをいたしますが、いわゆる基本的な考え方の中にもあると思いますが、この代替案につきましては当環境委員会でも大変論議になっておるところでございますが、この複数の代替案の取り扱いにつきまして、審議会ではどのような論議がなされたのでしょうか、特に立地の代替案についてどのように論議がなされたのかお伺いをいたしたいと思います。
  36. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 代替案についての御質問でございます。  代替案、答申では複数案と表示しておりますけれども、これはどのレベルの話をするのかということによってかなり話が違ってまいります。先ほどから多くの公述人方々のお話の中に出ております複数案のお話というのは、かなり早い段階の、構想段階というところで議論をされている代替案、複数案のお話であったかとも存ずるわけでございます。先ほども申しましたように、基本法の枠組みということを一応前提にした上で議論を進めてまいりますと、複数案の取り扱いにつきましても、どういう位置づけでそれを議論するのかということはおのずからある種の枠がはまってくるわけでございますが、いずれにいたしましても、審議の過程の中で複数案、代替案をきちっと取り上げて、それが表に出るようにする必要性ということについては多くの委員から一致した賛成の意見が出ております。  ただ、そうは申しましても、アセスメントの対象といたします事業というのは道路もあれば空港もあればいろんなものがございまして、例えば道路のような場合ですと、現実に用地ということになりますと比較的限られた用地になってまいりますので、そこで、早い段階複数案を示すということの困難性もございますし、場合によっては事後的にそれを示すことも混乱を起こすということもあるかもしれない。しかし、相当広い両開発のように、もう既に用地取得のプロセスの中でほとんどみんな情報がわかっているというような場合もございますから、やはりこれは事業種、それから事業規模、中身によっていろいろあるので、余りこれを一律に論ずることには無理があろうというような議論になったような次第でございます。  先生御質問の立地の代替案ということでございますけれども、これにつきましても、今私が御説明申し上げましたように、やはり事業種によって状況が違うので、これは個別に事業種ごとに考えていくということが必要であろうということで落ちついてございます。  なお、外国の事例等についても検討はいたしましたけれども、例えばオランダの制度を見ますと、民間事業に関しては立地の代替案を提示することは要求しない、これは現実にやっぱり無理であろうということでやっておられるということも私ども大変参考になりまして、国の行う事業のように用地を収用できるという種類のものと、それから任意に交渉で買収しなくちゃいけないという種類のものではおのずから違うであろうというようなことも論議されているような次第でございます。
  37. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 立地の代替案というのは日本の国では非常に難しい面があるんではないか、特に業種によってまたいろいろ違うだろうと思います。  だから、それぞれの公述人がおっしゃいましたが、計画段階、早い段階でいろんなアセスができるということは、これは非常に私は理想だと思いますけれども、現実問題としては非常に難しい面が実際やろうとした場合にいろいろとあるのではないかと思いますが、この立地の代替案の位置づけについて浅野公述人、どういうふうにお考えでございましょうか。
  38. 浅野直人

    公述人浅野直人君) お答え申し上げます。  法案の中では、先ほど申しましたようにやはり事業種によっての様子の違いということを意識しておられるのだろうと思います。私ども審議会でもそのことを意識した形で答申をしておりますので、一律に記述をするということは難しいのであろうと。  それで、準備書評価書の中で検討過程について公表できるものはできるだけ公表するという書き方でこのことが記されておりまして、明白に代替案、複数案を記すということになっていないわけでありますけれども、しかしながら、先ほど申しましたような状況からいいますと、一律に法案の中にそれを書くことにはやはり少し困難があろうかと。  それから、先生御指摘のような状況もございますので、これはこういう形で位置づけておきまして、あと具体にその可能性があるものについてはできるだけ積極的にそれができるような形の、実施段階での技術マニュアル等々での手当て、あるいは今後の運用の中での実現といったようなことをとりあえずは考えていきまして、このようなことについでは従来のアセスメント制度の中で十分に経験を積んでいない面もございますから、さらに十分な経験を積んだ後に、しかるべき時期に抜本的な改定をするというようなこともあろうかと思いますが、最初からそれを直ちに入れていくということはやはり審議会での議論の過程から申しますと無理ではなかろうか、したがって法案の位置づけは適切な位置づけであろうと考えているような次第でございます。
  39. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 この立地の代替案を義務づけた方がいいという御意見公述人もおられるわけでございますが、私はこれ義務づけるのは現実の今の日本の国の現状としてはちょっとしんどいのではないかなというような感じを受けております。ですが、再度恐縮でございますが、浅野公述人と猿田公述人に御意見を承りたいと思います。
  40. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 先ほども申しましたように、先生御指摘のとおりでございまして、一律に義務づけるということには無理があろうと私も考えるような次第でございます。  この問題に関しては、計画段階環境影響を考えるべきであるということはもう私どもも全く基本的には賛成でございますけれども、しかし、それを実現できるための技術的な知見でありますとか、あるいは比較検討すべき材料をどこまで広げるのであるかとかといったようなことは、環境の政策という観点からだけで処理できるものではございませんし、もっと広い政策全般の問題にもわたってまいります。そうなりますと、環境影響評価という一つの政策枠組みというものと他の政策枠組みとの調整ということをあわせて考えていく必要がございますので、諸外国でも、技術面あるいはそういう政策決定システムの問題等々から、このことについて直ちに一律に計画アセスメントという言葉が全面的に定着した形で実施されていないと承知をしておるような次第でございます。
  41. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) いわゆる立地に関しての代替案ということになりますと、御指摘のようにいろいろ問題があるわけでございます。ただ、公共事業の場合と民間事業などの場合による差というものもまた考えなければならぬかということもございます。  私の経験で、公共事業でございますけれども、ヘリポートの建設に関して、これは準備書段階で出てきた中で、こういうところを比較検討したけれども結果としてここに落ちついたと、それは周辺の住民の騒音の影響とかそういうことですね、立地条件の中で考えた結果こう落ちついたと。ですから、そういうような経過報告等も明記されればそれでわかるわけで、一つの代替案を検討したということもわかるわけでございまして、すべてが難しいということではなくて、やはりそういう事業内容によっては検討することも可能かと、しかしそれを最初から全部立地条件についてはということで規定するのはなかなか難しいだろうというように考えております。
  42. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 ありがとうございます。  それで、この環境評価制度は、福島公述人の御意見をお伺いいたしましたが、大体これは地方がいろんな状況の中で先にやり出したんです。結局、やらざるを得ないということでやり出したわけです。それで条例をつくり要綱をつくって、結局、地域住民要望があり環境を守ろうということで、地方がこれ実際やっているんですよ。私も大阪府の生活環境部長もやったことがございますからよくわかっているわけでございまして、むしろ地方が率先してやり出したんですよ。それは閣議決定もありますけれども、その前からそういういろんな状況の中で行政を進めていく上の中で取り組んできたわけですよ。それがこういう形でこうなってきたわけで、だから地方の方がいろいろ進んでいるわけです、実際の手法としては。だから、俗に言われる上乗せだとか横出したとかすそ出しと、こういうことでいろんな品目に、種目についていろいろやっておるわけです。  だから、私はやっぱり一部の人は、きょうも福島公述人もおっしゃいましたが、地方は進んでいる、ところがこのアセスメント法案ができることによって、地方自治体が今までいろいろとやってきたことがある程度何か制限をされ、後退されるんじゃないかというような指摘もあるわけですね。その辺のところの心配もあるわけです。その辺のところは、私は、この中央審議会の中でどういうふうな御議論になり、今後このいわゆる上乗せ、横出し、すそ出しについてどういうふうに地方を指導し、法的にその辺の整合性が生まれるのか、その辺についてどういう御議論におなりになったのか、ちょっと両公述人にお伺いいたしたいと思います。
  43. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 答申の中では、国と地方の関係につきましては比較的さらりと記しておりますけれども、先生御指摘のように地方がこれまでやってきました実績というものをこれでつぶすような国の制度ができることは甚だ遺憾であるという意見はたびたび出されております。  これまでの我が国のさまざまな公害立法を見てもそうでありますけれども、地方が先にやり出しまして、後でそれを国が法制度化するという動きはございました。アセスメントについてもそれに似たような状況が確かに出ているわけでございますけれども、しかし国が責任を持って取り組むということになりました場合には、やはり国が責任を持って取り組むべき対象というものがございまして、それについて、ある場所ではこうだ、この場所ではこうだという区々なやり方というのは望ましくないわけでございますので、審議会といたしましては、やはり国が取り組むのは基本的な事項、基本的な事業、国がもうみずからやらなきゃいけないような最も重要な事業をともかく取り上げるべきであり、取り上げる以上はそれについてはやはり国が一元的に統一的な手続を設けるべきであろうという答申を出したような次第でございます。  ただし、スコーピングスクリーニングという、こういうことを言っておりますのは、それにかかわらずやはり各地域ごとの環境の特性というものをできる限り国の制度でも生かしてほしいし、それを実際に運用する段階では地方公共団体意見を十分に聞いて遺漏のないようにしてほしいということを申し上げたわけでございまして、それはほぼ法案に入っているのではないかと存じます。  なお、総合研究会調査をいたしました段階ではございますけれども、その段階調査によりますと、実は要綱地方アセスメントをやっておられる団体につきましては多くの場合、国のアセスメント手続が入る場合にはそちらに譲るという形で調整規定を設けてあるものが大半でございまして、数にしますと約八割はそのような取り扱いをしておられますので、そういう意味で言いますと、国が法律をつくった場合にやはり従来の八割近い自治体のお考え方からいいますと、それをまず当てはめる、それが機能しないような場合には地方でというお考えが出ておりますので、そういうことから申しましても、必ずしも後退をしたということを一義的に言うということはいかがなものかと思っております。
  44. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 地方との関係、先ほどそういう趣旨で少し述べさせていただいたわけでございますけれども、ただいまも浅野先生からお話ございましたように、この法案の中で、例えば六十条にこの法律に反しない限りという規定がございます。その中身も、じゃどの点がということになるわけでございますけれども、これからの政省令との関係もございますけれども、これまでの実績等を踏まえれば、その地方での住民から不信感、不安感を持たれないように、従来の制度がキープできるということも重要なことだろうと思います。  法案の趣旨からしまして、重複を避けるということも、第一種事業、第二種事業あるわけでございまして、そういう意味での調整をどう今後その条例改正と、要綱もいずれは条例にまたきちっとしなきゃいかぬと思いますけれども、そういう中で、条例改正の中でそういうところとのバランスをどうとっていくのか、その辺がこれからの地方自治体にとっては一つ大きな課題かなと、逆に地方にとってのちょっと重荷があるのかなという感じがいたします。
  45. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 今、両公述人がおっしゃったとおりだと思うんです。これでこの法案ができますと、今まで条例と要綱、こういう形になっておりましたが、恐らくこれからは多分条例化が非常に進んでいくだろうというふうに、一つの大きなきっかけになるわけですから、要綱をつくって条例をつくっておるところのバランスが大分違うんですね。要綱を最初につくってしまったら、そのままもう条例に変えないでずっと要綱でいっている地方公共団体が相当ございますので、この法案が通れば、恐らく要綱のところも条例化していくでしょうし、また、今条例をつくっておられる地方公共団体もまた条例を見直されるでしょうし、また、何もないところも条例化されていくだろうというふうに私は考えておりまして、一つの大きな弾みになっていくんではないかなというふうに期待をいたしておるところでございます。  そこで、この対象事業範囲についてでございますが、これもこの当環境委員会ではいろいろと論議をしているわけでございますが、対象事業範囲について、基本的な考え方については審議会においてどのように議論をされたのか。また、この法案の対象事業範囲について、今のこの提案されている範囲でほぼいいのか、それともむしろもうちょっと範囲を広げる方がいいのか。これも含めましてそれぞれの公述人の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  46. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 対象事業範囲でございます。  ほかの公述人からも御発言がございましたけれども、これについて大きく分けますと、アメリカの法律制度のように、対象事業を何も決めないですべて包括的に抱え込むということにした上で、スクリーニングスコーピングという形で仕分けをしていく考え方をとっている国もございます。  しかしながら、ヨーロッパの諸国を見ますと、事業の中身は多少違いますけれども、やはり事業種を列挙いたしまして、こういうものはアセスメントの対象にするということをあらかじめ掲げられているというところが多くございます。  我が国では、従来どちらかといいますとそういう意味ではヨーロッパ型のスタイルをとってまいりました。これを一度にアメリカ型に変えるということは、やはり従来の蓄積、積み重ね等から見て適切ではないであろうということはほとんど審議会では最初から一致しておりまして、対象事業について全くフリーにしてしまうという議論はございませんでした。ただ、従前要綱その他で行われているアセスメントについては漏れなく入れてほしいし、それから必要な場合にはさらにそれを広げるべきであろうということは議論されましたけれども。  しかし一方では、このアセスメント手続の結果を実効性あらしめるためには、少なくとも国が行うという場合に、国が許可、認可というような形、あるいは補助金の交付という形で何らかの決定権限を握っているようなものについてアセスメントを行うということが望ましいのではないか。  それによってやはり国としての法制度の担保というんでしょうか、最後まで責任を持ってアセスメントが行えるということになるのだということにつきましてもほぼ審議会では余り異論はございませんでした。  そうなりますと、国の許認可の権限がないものについて新たに許認可権限を創設してまで国のアセスメント手続の中に入れるべきであろうかということになりますと、これは現在の規制緩和の時代にも逆行するということにもなりますので、あるいは何らか他の規制手続があるものはそれを借用する形でアセスメントに組み込むということも考えられなくはないわけですけれども、しかし、これもやはり本論からいうとややおかしいという点がございます。ですから、この点につきましては、新しく規制を創設してまでというようなこともそれほど強い御意見としては出てまいりませんで、今のような形になっております。  ですから、規制権限が今後どうなるのか、あるいは新規にやはり国の立場規制をしなくちゃいけないようなものが出てきて、それがアセスになじむというものがございましたならば、それは国の立場でのアセスメントの対象ということが出てこようかと思いますが、現段階規制システム、許認可システムその他との関連で申しますと、ほぼこれ以外にさらに追加すべきものがそれほど多くあるとは思われません。もちろん今後の状況の変化、それから分権の進行、その他いろんなことがございます。  ちなみに、地方公共団体で行われておりますアセスメントは、そういう意味では最終的なところでは行政指導的な形で、このアセスメントに従ってやってくださいという形にならざるを得ないわけで、そこはやはり国のアセスメント地方アセスメントの大きな違いであろうかと思っております。ですから、地方アセスメントの場合にはそういう小回りがきくような地域密着型の事業というものを主におやりいただき、国の許認可ということが絡むような大規模なものについては国が責任を持つという役割分担は適切な分担の仕分けではないかと考えるような次第でございます。
  47. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) ただいまのお話でございますが、法案の中では十二項目プラス政令指定事項が入っております。十二項目の中でも従来の閣議アセスと異なった項目もあるわけでございますけれども、これは今浅野先生からお話ありましたように、許認可等にかかわるもの。これをさらに拡大していきますと、先ほど地方アセスとの関係という問題もございまして、そうしますと全部何か入っていってしまう。やはりある一定規模、ある事業というものに限定される、それ以外のものは地方で可能である、地方がまた積極的に行うべきである、やはりそういう役割分担の中での適正化を図ることが必要だろうと思います。
  48. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 ありがとうございます。  それで、猿田公述人にお伺いをいたしたいんですが、長年アセスの審査にこれまで携わってこられた御経験の中で、環境基準クリア型と言われる評価の限界のようなことを実感としてお感じになったことがおありでしょうか。また、おありになるとすればどのようなことであったか。また、その他にも評価の方法等で改善すべき点などについてお考えがあればお伺いいたしたい。  私もずっとその仕事をかつてやっていまして、もうこの審査というのは非常に難しゅうございまして、いろんなそれぞれの御意見をお持ちの方もおられますし、いろんなことがございます。大変苦労した経験があるわけでございますが、公述人の御苦労なり、またこれはこうした方がいいんじゃないか、そんなことがございましたら、御意見を伺いたいと思います。
  49. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) ただいまの谷川先生のお話のように、環境基準クリア型という表現を今おっしゃいましたですけれども、確かに例えば大気汚染の場合ですと、SO2、環境基準をクリアしているから影響はない、あるいは基準に近い場合であれば影響は極めて軽微であると、これはもう大体画一的な表現で使われておるわけでございますけれども、環境基本法等の趣旨を受けて今後のアセス制度というものを運用していく中では、ただ基準がクリアされているからいいというものではございませんで、環境への負荷をいかに低減するかということが基本に必要なわけでございます。いわゆる環境への影響回避あるいは最小化するという、そういうようなことに関して、この制度の中でといいますか、事業者がこの評価予測を行う中で対応しているかどうかということもやはり今後はチェックしていく必要があるだろう。  ただ基準をクリアした、ああそれはそれじゃ結構ですねということには今後はならない。いわゆる地球全体の問題もあるわけで、地球環境というものも視点に踏まえて評価というものを行う必要があるわけでございまして、そういう意味では、エネルギーの問題等も含めて、環境への影響の回避、最小化ということをやはり評価の対象の中に入れて考えなきゃいかぬというふうに考えます。
  50. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 やはりこれからは、事業者であろうが国であろうが地方公共団体であろうが、基本的には地域住民方々と仲よくするというか、本当に迎え入れられる事業でないとだめなんですね。私はそう思うんですよ。それと同時に環境の問題も、やはり地球全体としてどうあるべきかということも考えましたらね。  私、もう二十年ぐらい前に文化財保護課長というのをやったことがあります。その当時、いわゆる開発がどんどんどんどんと進む、高度経済成長で進んできたわけですね。そうすると今度は、文化財がある、特に大阪なんかの場合はどこを掘っても文化財が出てくるわけです。そうすると保護か開発かという議論が、まだ日本が経済成長に取っかかった時分でございまして、開発の方がやっぱりこれから日本は発展していくんだということでウエートが高まるんです。特に埋蔵文化財というのは非常にこれ御理解がいただけにくうございまして、まだ建造物だったら何とかわかるんですけれども。よく言われたのは、君らが掘っているのは穴が、かわらのかけらばかりやないかと、それと住宅を建てるのとどっちが大事やと、もう大変な経験をしたことがあります。  それが逆に、万博以来ちょっと景気が障っできますと、今度は保護のウエートがぶわっと上がりまして、今度は何が何でも保護だというんです。  もう何もやらさないと。こういうことで、四十五年以前は開発のウエートが上がっていた、それが今度は保護のウエートが、このバランスが非常に難しい。今は、おかげさまで何となく皆さんが御理解をして、開発も大事だし保護も大事だということで、今は文化財保護につきましてはある程度ルールができ、定着をしておると思うんですよ。  定着をしてきたと同時に、発掘調査費ももう事業者が文句を言わずにお出しいただけるようになってきたという経験を、私五年やりましたので相当長い間経験をしてまいりました。  環境の問題も、やはりそれはある程度経済成長も大事ですけれども、今はもうこれを守ってベースにしていかないと、日本の国も世界もある程度大変なことになってくるなという認識が私は非常に高まってきたと。こういうときにこの環境影響評価法案審議されているわけでございますので、我々としては何としてもこの法案を通したいというふうに考えておるわけでございます。  最後に、ちょっと生物多様性というのは私ども非常に理解しにくいんですが、大体わかるんですけれども、どういうことなのか、横山公述人にお伺いをいたしたい。その重要性もよくわかりますし、今あのようにして見せていただきましたが、この多様性の確保だとかあるいは生態系の保全といったような考え方が大切だということはよくわかるのでございますが、実際のアセスメントをやる場合に、アセスメント評価はどのようにしてなされるのかが、私もイメージがなかなかつかめませんものでございますから、生物の多様性の確保の観点に対応した調査だとか予測だとか評価というものはどのようにあるべきかをお教えいただければと思います。
  51. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) 短時間で説明するのは大変難しいんですけれども、生物の多様性というのは、バイオダイバーシティーというふうに言われておりますが、三つの要素を中に含んでおります。  一つは、多様というのはいろいろな種類のものがたくさんあるということなんですが、単に頭数が多いという意味ではありません。自然が多様である状態というのを遺伝子のレベルと、それから生物の種という、ヒトとかチンパンジーとかというそういう種のレベルですね。それから三番目に生態系の多様性という、これは干潟とか森林とかそういう生き物のよりどころになっている環境の多様性を高めると。通常、生物の多様性を守るといった場合は、遺伝子レベルの多様性も守り、種としての多様性も守り、そして生態系としての多様性も守っていくと、三つの多様性が同時に守られたときに生物多様性を守っているというふうに判定をしております。  これを実際の環境アセスメントの中でやります場合については、例えば、ある一種類の鳥が秋田県にいるので東京ではいなくてもいいんじゃないかというような極端な話になっていきますと、秋田県にある鳥がいるから東京にいなくでいいということは、地域的な多様性というのは犠牲にして日本の中のどこかにいればいいというような判定をすることになってしまって、これは誤りなわけですね。したがって、生物あるいは自然というものを調べ、そして評価する際に、その地域にとってその生物や自然が存在することの価値、それから少し広げた地域ブロックとして考えたときの、例えば関東地方とか東海三県とかそういう広がりで見たときの自然や生物がいることの価値、そして、日本全体あるいは東アジアという広がりで見たときの自然や生物の存在の価値、こういったようなものをそれぞれの生物多様性のレベルに合わせて検討ができるような調べ方と評価の仕方というのが調べたり検討したりするときの物差しとして定まっていれば、これらの検討というのはうまくいくであろうというふうに思われます。  以上です。
  52. 谷川秀善

    ○谷川秀善君 ありがとうございました。本日は本当に大変貴重な御意見を賜りました。審議の参考にさせていただきまして審議を進めたいと思います。  本日はこれで質問を終わります。どうもありがとうございました。
  53. 加藤修一

    ○加藤修一君 平成会の加藤修一でございます。  本日、九人の公述人方々が、大変お忙しい中、来でいただきまして本当に大変ありがとうございます。  私ども、今回の法案につきましては、極めて重要な法案であるということで今まで審議してきたわけでございますけれども、きょうはそれぞれの立場から貴重な御意見をいただき、非常に参考になったところでございます。心から厚く感謝を申し上げる次第でございます。  それでは最初に、代替案の検討の明示化という観点から、基本的な質問でございますけれども、今まで審議の中では政府答弁ということでございました。きょうは公聴会でございますので、さまざまな形でふだんから研究されている、あるいは実際の現場の中での体験等を踏まえた形でその貴重な御意見、コメントをお伺いしたいと思います。  まず最初に、福井公述人の方にお尋ねしたいと思いますけれども、先進国のアセス、いわゆる先進的な法について考えていきますと、必ず複数の案を環境視点から比較し、検証されているように思います。今回の法案では、ある意味ではここまで明確になっていないように私は判断しておりまして、代替案の分析あるいは評価、そういったものを作成していく、そういったことをより明確な表現で法律に入れていくべきであると、そういうふうに思っているわけですけれども、その辺のことについてお願いいたします。
  54. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 恐らく法案では、代替案につきましては、準備書に関する十四条一項七号ロの規定「当該措置を講ずることとするに至った検討状況」の中で代替案の検討を読み得るという扱いだと思われます。  すべての事業についてそうでありますが、事業目的を達成していくためには、事業の当然計画段階から始まりまして、進捗の程度のそれぞれに応じて事業そのものの立地、形態それから工期等のスケジュール等における複数の選択肢が物理的には必ず存在しております。これらの組み合わせによる最適な環境負荷の制御を導き出すべきことが究極は目標であろうかと思われます。そのような意味で、いずれの組み合わせがいかなる負荷をもたらすのかについての知見を得ることが基本的には重要でありまして、可能であれば法文上できるだけ裁量を縮小した形で代替案の検証を明示していくということが恐らく今後の課題になろうかと思われます。  ちなみに一言申し上げれば、私自身建設省の職員として土地収用法の事業認定実務の審査を二年間ほど担当した経験がございますが、収用法の事業認定は当然収用権のある公共事業を対象としておりますが、事業認定の審査に当たりましては一般的に代替案の検討を行うのが通例でございます。これはかなり過去からそうでございます。このような意味でも公共事業の公益性や土地利用の問題として環境を含めて判断するということは公共事業のそのものの公益性判断でも広く数十年前より行われてきたことでもありまして、恐らくアセスメントにおきましても今後の法案改善課題としてはこういったことも明記していくという方向が重要ではなかろうかと考えております。
  55. 加藤修一

    ○加藤修一君 ありがとうございます。  先ほどの公述、それから今のコメントをお伺いして、いわゆる法文上の裁量というんでしょうか、そういった点について、先ほど谷川委員答申が反映されているかどうかの質問に対しまして、猿田公述人の方から、政令にゆだねられている多くの部分がある、こういった趣旨のコメントがあったわけですけれども、それと裁量性というのはどういうふうな関係で考えてよろしいんですか。
  56. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 法案において政省令にどの程度ゆだねるかということは、実は立法府の裁量事項でございます。裁量をどう設定するのか、すなわち立法府が直接に環境アセスメント法の運用をどこまでコントロールするのかということに関しては、恐らく憲法の枠内でかなり広範な裁量があろうかと思われます。  現在の法案につきまして率直な感想を申し上げれば、かなりの部分が立法府によるコントロールではなく行政庁によるコントロールにゆだねられているという印象を強く持ちます。そのような意味で、私の期待としては立法府における具体的な明示基準を政策論として御議論いただき、可能なものについては極力立法の場面で、行政庁にゆだねるのではなく立法府御自身の判断として明記されるという方向を民主主義秩序の実現という観点からも期待申し上げたいと思います。
  57. 加藤修一

    ○加藤修一君 ありがとうございます。  それでは次に、いわゆる戦略的なアセスメントについてお尋ねしたいわけですけれども、福井公述人並びに浅野公述人にお尋ねしたいと思います。  まず最初に、福井公述人でございますけれども、今回は法案計画のみがいわゆる上位計画における環境アセスメントとして導入されておりますが、そのほかの上位計画についてもやはり戦略的なアセスを積極的に導入していくべきではないかというふうに考えております。これは福井公述人にということですけれども、浅野公述人に対しましては、港湾計画のみというところに論点を絞って、審議会でどのような形でその辺の話が展開されたか、その辺についでお伺いしたいと思います。
  58. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 事業計画は、当然ながら非常に抽象的な段階から始まりまして、それから具体的な工事に関する計画まで熟度がだんだんと時期の経過に応じて煮詰まっていくという進捗をたどるのが公共事業初めあらゆる事業の一般則でございます。そのような意味で、事業に関するさまざまな評価早期であればあるほど方針、基本方針も含めて修正が容易でありまして、そのような意味事業の上位計画につきましても、例えば全国総合開発計画、国土利用計画における国レベル、都道府県レベルさまざまな計画がございますが、それらのものについても、環境負荷影響を及ぼす範囲程度そのものに応じてアセスメント実施されるということが制度的には望ましいというふうに考えております。
  59. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 審議会で個々の事業種ごとのアセスメント手続について、この事業種はどのような手続をどのように具体的に行ったらいいのかというところまで議論をする時間的な余裕もございませんでしたし、それらについては立法段階、その後の手続にゆだねるということで余り深くは議論をしていないのが実情でございます。  ただし、前提として申し上げましたように、土地の形状の変更、工作物の新設に係るものというこの枠の中で、従来から行われていたアセスメントについては一本化するということが望ましいという議論の中で、港湾については、先生御案内のとおり、具体的に埋め立てに関する事業アセスメントと、それから同時に港湾計画が必ず連動してまいりますので、そのアセスメントがほとんど一体的に行われていたという過去の経験がございますから、私どもとしては当然新しい法律の中でもそれは一体的に従来どおり取り扱われるだろうという想定はしておりましたので、これのみがというお話でございますけれども、どの計画段階を取り上げるかということを実は問題にしなければならないかと存ずるわけでございます。  ですから、港湾計画と言われているものについてはかなり具体な事業と結びつく形の計画でありまして、それに比べると、例えば全国に幹線道路をどこからどこまで引っ張っるのかという、そういう意味での上位計画とはかなり性格を異にいたしますので、同じ計画段階環境配慮といいましても、やはりその物によりけり事によりけりという考え方にはならざるを得ないんではないだろうかと思っているような次第でございます。
  60. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、環境アセス制度と公共事業という観点からお聞きしたいわけですけれども、諌早湾等あるいは大規模公共事業決定あるいは見直し、そういったものに対して、今審議中のいわゆる環境アセスメント法が有効に機能するかどうか、これは福井公述人浅野公述人にお尋ねしたいわけですけれども、こういった機能するかどうかという点と、さらに、事業目的が途中で変わったりあるいは必要性がなくなった公共事業を見直していくために、環境アセスのシステムをいかに整備していったらいいか、その辺について御見解があればお願いしたいと思います。
  61. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 環境アセスメント制度は、およそ公共事業事業そのものに関するコストベネフィットの分析、費用対効果の分析を行う上で重要なパーツを構成しているというふうに考えられます。環境価値を公共事業実施の有無の判断に反映させる、顕在化させていくという観点からのチェック機能には大変重要な意義があるというふうに考えております。  しかしながら、環境アセスメントは先ほどの公述でも申し上げましたように、将来的には環境税等の経済的インセンティブ制度化に向けての発展の一段階であろうかと考えられるわけであります。そのような制度化を含めた事業そのものの費用対効果の分析に発展、拡張させていくということが重要な課題ではないかと認識しております。
  62. 浅野直人

    公述人浅野直人君) 私が公述の中で申し上げましたように、アセスメント制度はそれ自体は政策決定そのものとはやや距離を置いたところで情報提供するシステムであるという側面がございます。ですから、先生が御指摘の事業の見直しということについては当然事業の見直しということに関するシステムがあってしかるべきであろうと考えるわけでございます。  長期未着工の場合というようなことも議論をいたしまして、審議会答申の中には入れたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、これは前提として、一たんある計画に対する許認可が下ってしまいまして、その許認可がなお有効であるという前提をとりますと、その中で再度アセスメントということはなかなか難しゅうございますので、許認可制度そのものが変わっていけば別でございます。計画変更が新たな許認可につながるという場合ですと、それに対応する新たなアセスメントが当然必要になってまいります。  ですから、同様に、許認可がある段階で失効するというシステムができてまいりますと、新たにまた許認可を取り直すときには当然新たなシステムアセスメントの面においても必要であろうということになるだろうということは審議会では考えているような次第でございます。  しかし、なおかつ長期未着工のような場合について、周囲の状況の変化によって新たな環境保全対応が必要であるような場合には、再度自発的にというんでしょうか、事業者側が再度の点検をなさるということについては積極的に推奨すべしということも答申には書いているような次第でございまして、法案システムがそういう意味で今先生御質問の点に端的に有効に機能するかどうかということでお答えを求められますと、正直申しましてなかなかそれは一律には答えにくいなという印象を持っております。
  63. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほどの福井公述人の御意見でございますけれども、その中でコストベネフィッ十分析、費用便益分析ですか、事業全体を評価していく場合にある意味環境価値も含めて評価していくという話になっているように思いますけれども、新しい知見が出てきたり、新しい技術環境評価していく場合の技術としてさまざまなことが今回の審議の中でも出されてきております。  それによっては、場合によっては十年後の見直しが短くなる場合もあるとか、そういう話もございますけれども、私が今聞きたいのは、要するに環境の価値、これをどういう形で計測するかという話にもなりかねないなという受け取り方をしているわけです。つまり、費用便益分析の中で、いわゆる環境財というのはある意味では現段階で私が判断する限りにおいては市場性がないと。いわゆる経済の量としてどういうふうにあらわすかという点についてはなかなか難しい側面もあるかなという感じでおります。  それをどういうふうに評価するかという技術論的な話になりますけれども、現在の計量経済学あるいはそれに類するものを含む環境経済学とか、そういった側面では、いわゆる環境財の非市場性の財についてどういう形でそれにアプローチして、さらにそれをもとにして費用便益分析、そして一つの事業についてのコストと便益、それを判断して事業を進める進めないと。そういう一つの資料として役立たせていくことができるかどうか。その辺の可能性あるいはその方法論、その辺について御見解を承りたいと思います。
  64. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 実は私は、きのうから岐阜大学で開催されております公共事業の費用対効果分析セミナーの二日目をサボりましてこのために駆けつけたのでございますが、その中でも、環境問題を費用便益分析にどのように取り入れるのかということに関しまして、土木工学と経済学との学際的な知見によりまして相当程度突っ込んだ、水準の高い、先進的研究報告が多数なされておりました。    〔委員長退席、理事大渕絹子君着席〕  具体的には、一つの考え方でございますが、環境に対する負荷というのは、経済学的に見れば先ほど申し上げましたように外部経済費用、すなわち市場取引を通じないで他人に及ぼす迷惑ということでございまして、これを例えば地価の低下という形で、ヘドニックアプローチと申しますが、地価の低下を測定するという形で算定を行っていくというような研究についてはかなりの程度実証分析の蓄積がございます。また、主観的価値に反映される限りでは、アンケート、ヒアリング等からそれを累計して積み上げていくというような手法についてもかなりの蓄積がございます。  このような手法につきましては、当然まだ発展途上のものも数多くあるわけでございますが、この分野の発展は目覚ましく、少なくとも知見が新たにある程度出てきたものについてはできるだけ早期に取り入れて、アセスメント運用実務にも反映していくということが非常に重要ではないかと考えております。
  65. 加藤修一

    ○加藤修一君 浅野公述人にお伺いしたいんですけれども、今の件も含めてなわけですけれども、今の御意見の中でヘドニックアプローチあるいはヒアリングをもとにしたアプローチ、あるいは私も新聞なんかで見る限りにおいては、水田の環境の面における多機能の面をどういうふうにはかるかということで、日本全体で年間何十億とかというそういう話があったり、あるいは森林の多機能効果環境の面も含めてそういう計測があるようでありまして、そのうちの一つの方法としてヘドニックアプローチを使っているわけですけれども、審議会の中でこういった議論は出てくる話なんでしょうか。  技術論的な問題であれなんですけれども、要するに、環境の価値をいかに計測するかというのはこれからの時代においては極めて重要な側面の一つではないかなと私は思っておりまして、合理的に科学的にどう計測し評価するか、その辺のことについて所見がありますればお願いしたいと思います。
  66. 浅野直人

    ○参考人(浅野直人君) お答えいたします。  審議会の中でその点についての議論があったかという御質問でございますが、これは先ほど申しました特別研究会の段階、あるいはそれのサブコミッティーであります技術検討委員会というのがございまして、その中に経済学の専門家がかなり入っておられまして、従前システムの限界あるいは問題点についての検討をされた中ではそのような御議論もあったやに承っております。  ただ、審議会では具体的な判断基準をどうするかということを細かく議論するという、そういうことはなかなか時間的にも難しゅうございましたので、実は余り突き詰めた議論はできておりません。ただ、先生御指摘のように、確かに環境評価をする場合の評価基準というのが従来ともかく環境基準しかなかった、あるいは自然の植生度の程度が極めて自然に近いかどうかというような物差ししかなくて、そういうことだけで判断をするということに問題があるということはいろいろ議論をされましたので、例えば森林の機能であるとかあるいは水田の機能といったようなことが環境影響評価評価の中で十分に取り入れられるべきであるということは、審議会委員の中でだれも異論がなかったことではなかったかと思います。  ただ、最後におっしゃいましたヘドニックであるとかあるいはアンケートによる価格づけであるとかという、経済学の分野で検討しておられる手法が直ちにアセスメント手法としてどの分野でどう取り入れられるかということになりますと、これはやはり事業種や事業内容に即して少し技術的に検討しなければならないことではないかと思いますので、法案あるいは審議会での答申策定というプロセスの議論よりは、もう少し細かい学問的な議論の領域ではないかと考えるような次第でございます。    〔理事大渕絹子君退席、委員長着席〕
  67. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは次に、累積的なインパクト、これについて質問したいと思います。  小島公述人、次いで福井公述人という形でいきたいと思います。  今回、対象業種、立地の関係で私も何回か質問させていただきましたけれども、複数立地の場合の環境アセスについてお尋ねしたいわけですけれども、例えばアセス対象となる最終処分場の場合、既に立地しております処分場もいわゆるバックグラウンドとして評価することになるということなわけですけれども、対象規模以下の処分場、これが事業主体が異なる中で、同時的あるいは時間を置いても結構なんですけれども複数立地される場合、それぞれがやはり環境アセスメントの対象から抜けてしまう、そういうことも考えられるわけです。これについては、一定地域において総量をとって環境アセスの対象とする方法が一つの対策として考えられるわけですけれども、この点についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  68. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) この点につきましては、率直に言いまして、先ほど標公述人も言われた、例えば東京都の臨海副都心開発などにおいて東京都が大きく悩んだ点でありまして、累積的な影響というのを今の環境影響評価制度の中で取り上げていくというのは非常に難しい問題であります。  しかしながら、一つの要素としては、今回スクリーニングという制度を設けております。このスクリーニングという制度を設けた一つの経過の中には、やはり従来ある一定基準によって漏れていたものを、それ以下の基準のものであっても、それ以外のプロジェクト、今まさに御指摘のあったようなほかの複数プロジェクトがあるような場合にその影響も考慮して決定していく、そういったような拾い上げが可能になっていく、そういうようなシステムのものとして取り上げたものとして評価することはできると思います。  今回の法律では、恐らく規模そのものはかなり大規模なものになると思うんですけれども、これを受ける形で各地方自治体が同種のスクリーニング制度をかなりいろいろな形で定めていくことによって、実際今、加藤先生の方でおっしゃられたような問題点については解決し得る可能性があるのではないかと。そういう意味では、一つのアイデアを国の法律によって示したという点で、解決の方向性をそこに見出すことができるのではないかなという感じを持っています。
  69. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) お示しの問題点は、まさに先ほども申し上げましたデジタル的な処理の問題点、矛盾の典型例だと思われます。  例えば日本の法律は一般的に、もちろん政省令も含めてでございますが、何平米以上、何ppm以上という形で、いわゆるすそ切り規制が非常に多用されております。例えば都市計画法の開発許可などでも、一定地域で五百平米以上の場合に開発許可を要するという場合、実際にどういうことが起こっているかと申しますと、四百九十九平米の許可不要の開発が非常に多く発生するというようなことがかなり多数の領域で現実に見られております。そのような意味で、このアセスメント法の一定規模なり一定負荷に関する形式的なすそ切りが本当にそのようないわば脱法行為すれすれの行為を誘発しないのかということに関しては、かなりの懸念がございます。  すべての事業につきまして、やはり環境負荷そのものの程度に応じたコントロールがなされることが必要でありまして、環境負荷の総量を累積的なものであってもコントロールできるように、やはり一刻も早い、個別の事業ごとにコントロールできる、例えば経済的なインセンティブ等の環境制御手法を確立することが重要かと存じます。
  70. 加藤修一

    ○加藤修一君 次に、日本企業の海外進出における環境アセスに関しての質問でございますけれども、この質問の後に、今と同じ質問で累積的インパクト、これに関しまして浅野公述人並びに猿田公述人にお願いしたいんですけれども、この海外におけるアセスメント関係については小島先生にお願いしたいんです。  日本企業が公害規制等の緩やかな途上国に進出しまして、環境対策を行ったりしましたけれども、いわゆる公害輸出と批判を受けていると。そういった点から考えでいきますと、海外での日本企業の事業に関しては環境アセスメント法の対象にならないという環境庁の見解がございますが、今後解決方法としてどのような方向性が可能かと、その辺の御見解についてお伺いしたいわけですけれども。
  71. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) 私どもが公害輸出の問題を約八年ぐらい前から研究してきた中で、どういう方法があるかということでいろいろ検討してまいりました。  一つの方法としては、暫定的な措置としては、現在外為法という法律があります。それで、外為法の中にいろんな審査事項、届け出制度でありますけれども、対外投資のときに規制するというような形をとっております。そのときに環境影響評価、これはもうごく簡単なものになると思いますけれども、それを暫定的に提出させて、そういう環境影響評価を事実上義務づけていくという手法も可能ではないかというふうに考えています。  しかしながら、これはあくまでも暫定的措置として、基本的には海外において事業活動を行う場合にも、日本と同様の環境配慮を海外で事業活動を行おうとする日本企業に義務づけていく、そうした立法的措置が必要だろうというふうに考えています。その具体的な立法措置をとっていくことによってそうした配慮が可能になっていくだろうと。今回、この法律の中ではその点についての具体的な一条文もありませんので、できたらそういったことを検討課題としてこの法案の中で、もしくは附則なり、最低決議でもしていただいて、どのような形での立法措置が可能かということを検討していただければありがたいというふうに思っております。
  72. 加藤修一

    ○加藤修一君 それじゃ、もう二分ほどしかございませんので、猿田公述人の方にお願いします。
  73. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 累積的影響に関してでございます。これにつきましては、今までの経験の中で申し上げますと、やはり企業の立地、開発等によりましていろいろな問題が出てまいります。  その場合に、地域のいわゆる環境計画と申しましょうか、地域環境管理計画的なものによりましてそういう総量規制的なもの、環境容量的なもののデータ的な整備がされておれば、どの程度までならばさらに立地が可能なのか、そういうことも検討されるわけでございまして、さらにそれによって環境悪化するような場合には、やはりある制約要件を加えなきゃいかぬだろうという問題も出てまいります。それが、先ほど環境基準クリア型というお話もございましたけれども、単にそれだけではなくて、やはり環境容量との関係の中でどういうような条件のもとでそういうようなものを検討すべきなのか、それは今後の課題として非常に重要だろうと思っております。
  74. 加藤修一

    ○加藤修一君 どうも本日は大変にありがとうございました。大変参考になりました。ありがとうございます。
  75. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 社会民主党の大渕絹子でございます。  九人の公述人の皆さんには、きょうは大変参考になる御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。時間はわずかでございますけれども、公述人の皆さんに御質問をしていきたいというふうに思っております。  まず、猿田公述人にお願いをいたします。  私は、環境庁の権限の強化ということを図っていくべきだというふうに常日ごろ主張しているものでございます。環境庁公害対策を主任務として発足をした省庁でございまして、ややもすると調整型の省庁として今まで携わってこられていで、環境保全のための強力なリーダーシップというものがなかなか発揮できないような状況にあったのではないかというふうに思いますけれども、環境基本法ができ、また今回環境アセスメント法ができることをてこにしながら、環境庁がいかに地球全体の自然環境を守っていくためのリーダーシップを発揮できるかというようなことで御提言がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  76. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 御存じのように、環境というのはまさに複雑性、多様性を持っておるわけでございまして、単純に対応することはなかなか難しいわけでございますけれども、そういう中でも環境行政環境政策というものを進めていかなければならないわけでありまして、そうなりますと、やはり総合性、計画性というものが必要になってまいります。  これは基本法にも述べられていることでございますけれども、総合性、計画性を持って進めるとなりますと、やはり現在の縦割り行政的な中ではなかなか難しいわけでございまして、やはり横断的な調整機能というものが必要になってくるだろう。地方自治体の場合には、名称はいろいろございますけれども、環境保全調整会議とかいろんなのを持って、市長部局あるいは県知事部局の中で横断的な調整が図られて県の環境行政が進められているわけでございまして、国においても当然そういうことが望ましいと申しましょうか、必要なわけでございまして、そのイニシアチブをとるのはやはり環境庁ではないかと。環境庁がそういう調整機能をさらに一段と発揮することによって、今後の国の上位計画等も含めてやはり調整しながら進めていくべきであろうというふうに私個人は考えております。
  77. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  それではもう一点、ことしの十二月に地球温暖化防止京都会議というのが開かれまして、我が日本が議長国としてリーダーシップを発揮しなければならない場面があるわけでございますけれども、CO2の排出基準などもまだ目標が達せられないという状況の中で、猿田公述人は、さまざまな公害問題あるいは中原審の中で御活躍をされておられますが、この会議の成功に向けて、環境庁に対してあるいは日本政府に対して御助言があればいただきたいと思います。
  78. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) 本年の十二月、京都におきましてCOP3が開かれまして、日本が議長国ということでございます。  そういう中で、平成二年には地球温暖化防止行動計画、アクションプランが国においで定められましたけれども、現在の地球環境という面から見ますと、日本だけではなく世界的にCO2が増加しておるという中で今後どうするかという問題でございまして、その中でのリーダーシップ、議長国としてどうしていくかという問題が出ようかと思います。  平成二年の行動計画、その後の状況の変化等を踏まえますと、やはりこれから世界関係国が新たなCO2削減に向けての行動指針と申しましょうか、行動計画をつくるような指導が必要だろうと思いますし、ただつくるだけでは困りますので、それの点検作業というものも必要ではないかと。  今、国内では環境基本計画の点検がこの間終わったばかりでございます。中原審から報告がございましたけれども。そういうような世界各国の行動計画の策定、それの点検作業、チェック、そういうものを公表することによって世界のお互いの監視というもの、チェックし合うという、やはりその辺が重要ではないかなというように私自身考えております。
  79. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございます。  小島公述人にお尋ねをしたいと思います。先ほど来、地方アセスとの整合性の中で、猿田公述人もこれからの地方の条例の改正などもしていかなければならない場面が出てくるのではないかということを公述されたわけでございますけれども、法律家として、地方のアセスが、条例がこの今の法律よりも上回っている場合に、例えば地方のアセスに該当する事業者地方のアセスどおりにアセスメントすることを求められた場合に、この法を盾に裁判などを起こされた場合に、その地方の条例というのはそのまま存在することはできるかどうかということなんですけれども、よろしくお願いします。
  80. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) 第六十条の解釈の問題なんですが、第六十条の二項と一項の規定の仕方の問題です。  それで、二項においては「第二種事業又は対象事業に係る環境影響評価についての当該地方公共団体における手続に関する事項(この法律の規定に反しないものに限る。)」という形になっています。第一項はこの法律が対象としていない事業なんですが、そのものについてはこの法律に違反しないと。「この法律の規定に反しないものに限る」という規定はありません。ところが二項、いわゆる対象事業については「この法律の規定に反しないものに限る」という限定がついているわけです。その意味では、この法律ができたことによって制約を受ける可能性がある部分が幾つかある。  具体的にどの部分かといいますと、今まで地方自治体においては、準備書に対する意見を出し合ったりする機会において準備書に対して住民たちが意見を言う、その後評価書をつくって再度住民たちが意見を言う、最終的に地方自治体審査会が意見を言うといったように、何回かキャッチボールがされていくわけですけれども、この法律住民たちが意見を言う機会として認められているのは準備書に対する意見提出、この一回に評価段階ではとどまっています。  そうすると、その後、評価書ができ上がった後に住民たちが意見を出せるような手続地方自治体が定められるのか、また、審査段階意見を出せる機会を定められるのか、この法律をやっぱり素直に読むとそこのところは簡単にいかないのではないかという非常に危惧があります。その辺を何とかしていただければありがたいと思っています。
  81. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 私は、この環境アセスメント法が環境基本法の理念にのっとってつくられている法律であり、環境保全のためによりよい条例がこのアセスメント法の違反になるということは納得ができないということでこの間も委員会の中で主張をしてきたわけでございますので、地方のよりよい条例がこの法律をつくることによって改正をしていかなければならないような場面にならないように何とかよい方法はないかということでこの間探っているわけですけれども、どうしたらよろしいと思いますか。小島公述人、何かありますか。
  82. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) まず簡単に言わせていただきますと、六十条の二項の括弧書きの規定を削除するというのが一番簡単な方法でございます。
  83. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは、天谷公述人にお尋ねをいたします。  NGOの方たちと一緒に大気汚染について調査をなさったりして大変広く御活躍をなさっているということを御報告いただきましたけれども、地球環境保全を維持していく、あるいは大気のチェックをしていくためにも住民側の人材の育成ということは非常に大切な問題ではないかというふうに思うわけです。今の国会ではNPO法案も上程をされて制定されるやに聞いておりますけれども、その住民側の人材育成というような観点から何か述べていただくことがあったらお願いいたします。
  84. 天谷和夫

    公述人(天谷和夫君) お答えします。  一つは国際的な支援なわけですけれども、国連大学とかそういうところで研修政策というか、研修所とか研修制度があるんです。そういうものを充実して世界各国の人たちを研修して自国へ帰らせてそれで活用するというふうな、そういう方法。  それからもう一つは、NGOが今一番どこでも困っているのは、活動のための基金というか資金が非常に不足しているわけです。そういう点で、簡易測定を公的に認めて、これを住民が、あるいはどんな形でもいいですがやることによって、行政がそれに対する対価というか、そういう報酬みたいなことで最低限の費用を保障するということによって住民が持続してこういうものを行うことができると、そういうふうなこと。  あるいは、こういうものを、今度のCOP3ありますけれども、知的所有権とかいろいろの問題ありますけれども、こういうものを世界の共有の財産としてみんなに利用できるような形で提供して、各国でそれを実用、活用しながら、そういう今言ったような方法で正当な報酬というか正当な手段で基金を得ると。単にもらうとなるといろいろ自己規制をかけたり圧力がかかったりしますけれども、自分たちの正当なあれとしてお金をもらうということであればそういう危険性がないし、実際に運動をやりながら勉強にもなるし、非常にいいんじゃないかと。そういうことはこれからみんなで考えていきたいというふうに思っております。
  85. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 辻公述人にお伺いをいたします。  今、諌早湾の問題が大変社会問題化しているわけですけれども、干潟のことを随分とやってこられた経験の中で、今全国の人たちの五七%が、干潟を守りながら干拓の事業が何とかならないのかというようなことが言われているわけですけれども、この期待に対して何か御助言がございますでしょうか。
  86. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) 私どもが干潟の問題にかかわってから二十数年たつわけです。これは基本的にもう日本の干潟の大部分の計画環境庁が発足する一九七一年よりも前に、一九六〇年代にほとんどの計画ができているわけですね。そして、日本の中で大変大切にされている主な渡来地のほとんどがそういう状況下にあると。  私たちが、四年前、一九九三年に釧路会議がありましたとき、そのときに初めて日本の干潟の危機的な状況をラムサール条約の会議でアピールしまして、それが世界のいわば日本の干潟の状況に対する常識になったわけです。それから四年間たって、環境庁もそれなりに、オーストラリアとロシアなどを含めた渡り鳥の渡来地のネットワークをつくるとかいろんな形での努力をされているんですが、やはり過去の三十数年前からの計画をどこも引きずっていてとめることができないでいる。そして、先ほどの世論に出てくる数字もそういうことを、いわばそれぞれの地方で感じていらっしゃる人たちが、諌早の問題にいわば呼応してその反応を上げていらっしゃるというふうに私は受けとめたいんです。  それは、どこでもそういう津々浦々にある小さな干潟とか自然の海岸がそういう形でどんどんなくなっている、そのことをやっぱり私たちは思い返すのは今しかないという気がするんですよ。そういうことを見直して、どこか今残っているものは何とかその線で一歩とめてもらえないかと、それを多くの国民が期待しているわけで、環境庁基本法をつくり、環境アセスをづくりという形で具体化していく中で、そのことに対する何かプラス効果がなければ、何か今までのものは全部もう仕方がないというふうに見捨てるのであれば本当に希望がなえてしまうと。国民全体の願望はそこにあると思っているんです。  ですから、この環境アセスのいろんなことが、例えば過去の十年前とか二十年も前のそういうものが放置してあるような、あるいはそれを引きずって、その必要性が本当に疑われるようなものはやはり改めて見直すと。そして、国民的な議論にもう一度かけてみるということをぜひこの際に私としてはお願いしたい。そのことができるのは、実は行政はもうそういうことがシステム的にできないんですね、政治の力しかない。政治家の、つまりここの国会の判断しか僕は残されていないんではないかと、そういう意味であえて強くお願いしたいと思います。
  87. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 本当にありがとうございました。  短い時間でしたけれども、皆さんにお礼を申し上げます。
  88. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 民主党の竹村泰子でございます。  きょうは九人の公述人の皆様、せっかくお忙しい中をおいでいただきましたのに、限られた時間でしか公述をしていただけませんで申しわけなく思いつつ、少しばかり質問をさせていただきたいと思います。  全員の皆様にお聞きしたいことがたくさんございます。ですけれども、私の持ち時間は十五分しかございませんので、お許しをいただきたいと思います。  初めに、今私どもは環境影響評価法案、待ちかねた法案というべきであろうと思いますけれども、これまで八度目の挑戦と言われつつ本当にこういう機会が来たことを喜んでおります。いろいろと私どもも審議の中であるいはそれに先立つ勉強の中でさまざまな問題点があることを考えているわけでありますけれども。  初めに小島公述人にお考えを聞きたいと思いますが、先ほど御意見の中にはお触れにならなかったかのように思いますが、実は昨日、電気事業法の改正の審議を商工委員会でいたしました。発電所の設置につきましては、これは統一法として今回のアセスメント法案の中に対象事業として入ることになっているのですけれども、通産省の方では固有の手続アセスメント評価手続を含めて電気事業法の改正で定めるという意向を示しておりまして、特例として統一法の中に入っているわけでありますけれども、私どもから見ますと、やはりもう一つ別の法案があるかのような感じに思えます。中原審の答申の中では、統一法の中にきちんと入れ込むべきだという御意見だったというふうに思いますけれども、環境影響評価がどのような根拠と手続実施されるのかやや不明となっていると、このいただいた御意見書の中にも書いてございますが、その辺についての御意見を少し伺いたいと思います。
  89. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) この法案でも電気事業法については五十九条で、「この法律及び電気事業法の定めるところによる。」として電気事業法の方では具体的な、例えばスクリーニング、それから準備書に対する意見提出、その審査の仕方、そういったところを電気事業法の方で定めるというような手法をとっております。今回、この法案は、基本的にスクリーニングに関しましてもその後の審査に関しても、基本的には主務官庁が審査をするというシステムをとっておりまして、ある意味ではそれを具体化したという要素も見えなくもないわけでありますけれども、残念なのは、電気事業法では明確に電気事業審議会がその審査を担当するという形になっております。  今まで、どちらかというとこの電気事業審議会というのは、基本的にはアセスメントをチェックするというよりも、むしろその電力の計画をコントロールするという主な役割を担ってきたわけでありまして、今回、中原審の答申の趣旨からいっても、本来であれば統一的な法律として、いわばその許認可の手続の外からチェックをかけでいくというのが基本的な方針であったと思われます。  そこから考えていくと、やはり主務官庁にあれだけ具体的な権限を任せるような法律制度環境アセスメントのあるべき制度からいって望ましいんだろうか。これは今回の法案の基本的な問題点でありまして、主務官庁が基本的には審査を行うというシステムを持っている以上、なかなか根本的には解決しにくい問題でもありますけれども、やはりそれをああいう形で具体化するというのは非常に大きな問題があると思います。やはりそういう意味ではこの環境影響評価法一本でやるべきではなかったかという感じを強く持っております。
  90. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ありがとうございます。非常に今後の課題として大切なところであろうと思うわけであります。  もう一つ、先ほど同僚の議員がお尋ねをしておりましたけれども、特にODAにかかわる事業、あるいは海外で実施する事業、海外に進出していっている日本の企業が公害をばらまいたり、あるいは毒性のある廃棄物を出したりしていることがあるわけでございますけれども、その解決法は先ほどお聞きいたしましたが、そういった事例が、弁護士でもいらっしゃいますので、どのくらい、どのぐらいといっても数でお示しになるのは大変難しいと思いますけれども、具体的にどのように発生しているか簡単にお示しいただきたい。  もう一つは、米軍基地の問題ですが、米軍基地の中で公害が発生しますと、PCBの問題なんかがいろいろ言われておりますけれども、中は治外法権ですから日本の法律が適用されないかもしれませんが、それがしみ出したり流れ出したりしてくるところにおいては、やはりこれはアセスメントの対象とならなければならないのですが、沖縄を初めとして非常に難しい問題が多々ございます。そういった事例についても何か御存じのことがありましたらお教えいただきたいと思います。
  91. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) ODA、公害輸出等の問題についての事例があればというお話でした。  私自身が深くかかわった事案としては、マレーシアにおける三菱化成が放射性廃棄物を投棄したという事件であるとか、フィリピンにおいて日本が建設した火力発電所が多大な公害をもたらした事案ですとか、もしくは、日本の関与が途中で切れましたけれども、インドのナルマダ川におけるダム開発の問題ですとか、そういった問題が起きています。  最近はそういう問題が減っているかと思っていましたところ、またフィリピンにおいてある造船会社が船の解体をやるということで、地元の住民たちから差しとめの裁判を受けて、その差しとめの裁判で一たんマングローブ林の伐採を禁じられながら、再度マングローブ林を伐採するというようなことをやっているというようなことも聞いております。  また、最近スリランカで、日本のOECFが援助を決定したダム建設の事案で、現地の環境アセスメントの結果、ダム開発事業が中止になったというような事業も聞いております。  アメリカ合衆国におきましては、ODAに関しては、FAAという対外援助法という法律の中におきましてODAにおける環境影響評価を義務づけるというような形になっております。その結果として幾つかの援助事業がキャンセルされたというような話も聞いております。  そういうのと比較した場合に、今回日本はそういうようなものを見送ったわけでありますけれども、東南アジアにおいては日本は最大の民間投資国でありまして、政府開発援助においては世界最大の援助国でもあります。  やはり地球規模環境問題に対処していくという観点から考えた場合に、世界各国の人から見で、日本は自分の中の国の事業においてはちゃんと環境アセスで環境を守るようにしているようだけれども、外に出るとその法律は一切適用ないのかと言われることになるんじゃないかという不安を私は正直言って持っております。その点について今後早急に見直して改めていっていただきたいというふうに思います。  米軍基地の問題については、これは非常に難しい問題なので、ちょっと回答を控えさせていただきます。
  92. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 お互い協力をしながら、よりよい環境を守るために頑張っていきたいと思います。  それでは、地方公共団体の問題で福島公述人にお伺いをしたいと思います。  衆議院におきまして附帯決議がつけられておりまして、その七項に「地方公共団体において定着し、相応の効果をあげている環境影響評価制度運用の実績を尊重し、知事意見形成に際し公聴会や審査会の活用が可能であることなど法の趣旨を徹底し、」云々とございまして、「地方公共団体との適正な役割分担による総合的な環境影響評価制度運用に万全を期すこと。」というふうにございます。  先ほどもレジュメをいただきましていろいろ公述をちょうだいしたわけでありますけれども、横浜市のように非常に進んでおりまして、私も高速道路についてそのアセスメントの調書を見せていただいたことがありますけれども、非常にきめ細かく環境影響評価をお調べになっております。この地域特性に応じたきめ細かい内容が、国のこのアセスメント制度ができますと、大規模事業は国の法制度で、そして、きめ細かいより住民の生活に密着した小規模事業環境に非常に配慮したアセスメントが行われるという逆転現象が発生するというふうにお書きになっていらっしゃいますが、そういう可能性を懸念しながら私どもも審議に当たっているわけですけれども、この辺のところはそうするとどのようにすれば、並列で行うべきだとお考えなのでしょうか。地方自治体がもっと直接的に主体となるために、具体的にどのようにすればいいとお思いになっていらっしゃるでしょうか。
  93. 福島徹二

    公述人(福島徹二君) 先ほどのレジュメの中で、市長名で要望を出しておるところの最初のところなんですが、法は制度について基本的な枠組みを定めて、そこどまりで、指定都市はその地域特性に応じて主体的に充実、実施できる。先ほどフローの図で示したようなああいう形で、地域地域によってその特性がありますので、全国統一の手続ということが常にいいのかということは、やはり地域によって違うんじゃなかろうか。  ですから、理想的に言えば、例えば基本法というような形ではちょっと実効性がありませんが、何か法律としての統一的な大枠だけを、法を制定する、地方はそのまま、もちろん大枠の中ではありますけれども、横出しなりいろいろな形で特性に応じたような形を条例でもって行う、そういう形ができれば一番いいんじゃないのかなと考えています。  また、これも難しいというようなことであれば、先ほど小島公述人からお話がありましたような形で、六十条の二項、法対象事業につきましても地方が相当程度の形で自由にできるような形、並列になってしまいますけれども、法律と条例の並立て行うことによる事業者への過重な負担は起きますけれども、そのデメリット以上に地方自治体の進んだ制度が適用されることのメリットの方が大きいのではないかと考えております。
  94. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 時間が参りましたので。大変心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
  95. 有働正治

    ○有働正治君 日本共産党の有働でございます。  本日は大変ありがとうございました。御専門の立場から自然環境を守る熱い思いが、そして具体的な御提言、ひしひしと伝わってきた思いであります。その中でいろいろ課題、また改善内容あるいは修正内容等々、お述べになられました。  私ども日本共産党は、できるだけ各会派とも一致してこういう公述内容で述べられた点、修正するところは修正してよりよいものにしていくべきではないかと考えているわけであります。本日、私ども修正内容、基本的に法案要項、法案内容をまとめることができました。御指摘のありました公聴会の開催の問題だとか、累積的な環境影響調査の問題、複数案検討の問題、評価後の調査の問題、あるいは事業実施による利益という懸念される条項の条文、文言の削除、あるいは条例とのかかわり等々、お聞きしますと、大体皆さん方が懸念されている内容は網羅させていただいたつもりでございます。きょう、お帰りに一部ずつ僭越ながらお渡しさせていただいて、そして不十分な点、いろいろ御指摘、御指導いただければと思いますので、まずよろしくお願い申し上げます。  私、持ち時間十分で限られています。全九人の方に対等、平等にまずお尋ねします。三十秒以内でできればお願いしたいと思います。  それは、一つは諌早湾の干潟を守るという問題であります。これだけ三千五百五十ヘクタール、山の手線の大体三分の二ぐらいに相当する干潟、生態系が一挙に消滅すると。消滅を目的にした事業が過去やられた例は私余り知らないわけであります。そういう点に対しまして、やはりこういう法案を今審議中であれば、目の前に起きている問題を解決するために役立つということは、精神を生かすということは法制定の上でも私は大事ではないかということでお聞きするわけでありますが、ともかく干拓事業あるいは防災対策、いろいろ農水省の事業としてはおっしゃっています。これについてはそれぞれのお立場からいろいろ議論はあろうかと思います。情勢の変化もございます。そこは国会で大いに議論して深めていただければ私はいいんではないかと。ともかくも水門をあけて、そして議論していただきたいと。  朝日新聞五月二十八日付、水門をあけていただきたい、全国で五八%の要望だと結果が出ています。この水門をあけていただきたいというこの世論調査につきまして、各公述人、どういう御理解でありましょうか。理解できる、あるいはそうでない、端的に。それから国民主権であります。環境庁、政府、こういう問題も尊重すべき、できるだけ努力すべきだと私は考えるわけであります。  この二点について、端的に。そのほかにもお聞きしたいことがございますので、よろしくお願いします。
  96. 浅野直人

    公述人浅野直人君) アンケートの世論調査の結果については、実は新聞を正確に読んでおりませんのでお答えが難しいかと思います。  ただ、現実に技術的な情報等について、どの程度情報提供されて御意見が集まったのかということもございますので、必ずしもそれだけで何かを考えるということは実際に難しいんじゃないかというのが私の意見でございます。
  97. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 私も具体の事案の詳細を承知しておりませんが、環境負荷の問題も含めた費用便益分析ができるということは一般論としては望ましいことだと考えております。
  98. 猿田勝美

    公述人(猿田勝美君) このアセス評価法がもっと以前にできておればこういうことはなかったのかなということを感じております。
  99. 小島延夫

    公述人(小島延夫君) 必ずしも今回のアセス法案とは直接かかわる問題ではありませんけれども、やはりこの法案の中身によるかどうかは別として、すべての公共事業について実質的な意味での環境アセスをきちんと行うような制度を、この法案とは切り離しても結構ですから早急に考えていただきたいというふうに思います。
  100. 標博重

    公述人(標博重君) アセス法の目的は、必要性云々を議論する以上に、やっていいことか悪いことかということを環境面から考えるのがアセス法の目的であると、そういうふうに思います。  私は、この諌早湾の問題はまさにやってはいけないこと、必要性の云々以前の問題であると、そういうふうに考えております。
  101. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) 私も諌早の干潟を見に行ったことがあります。日本の干潟は、かつて自然がつくった全体の量から見るともうかつての半分以下になっています。したがって、私は減少の著しい環境はきちんと守って、その上で人間が必要な仕事というのも両立させるにはどうしたらいいかという知見を集めるというのが正確なやり方だと思いますので、新聞等の一般市民の方々の声というのは何らかの形でくみ上げていただきたい。  それから、あの環境を守るということは努めて重要なことなのだということを立法府の中でもう一度確認をしていただいた上で、今の仕事がよいのかどうか、あるいは何かもう少し両立に近づける方法はないのかどうか、それを探っていただきたいと思います。  特に、これから気温が高くなりますと、あの水質は非常に悪くなります。以上です。
  102. 天谷和夫

    公述人(天谷和夫君) 環境アセスメント法の基本的な精神に基づけば、生態系を守るというのは当然のことであるというふうに思います。  それで、生態系というのは一度失われたら普通のものと違って回復不可能だというように思いますので、議論するにしても、とりあえずあけて、そういう不可逆な状態にならないような状態にして議論をするということでお願いしたいと思います。
  103. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) 先ほども申し上げましたが、私がまず最初に諌早を見たときの感動ですね、これは十年くらい前ですけれども。その感動を、もし皆さんも現地に行ってごらんになったら多分本当に同じように受けられると思うんです。  そのくらいすばらしい環境なんですね。それを失ってしまうということのまず残念さがあります。  それから、国際的に見ると、これは外から国際犯罪だという、あるいは地球に対するあるいは未来に対する犯罪行為だという声まで上がっているくらい、既に日本は世界にショックを与えてしまいました。ですから、今それを取り戻すには、やはりここで日本の政府から国民から全体がこのことをきちんと反省して、もう一度そこをきちんと見直すような手順を、手だてを早急にとっていただく。これが国際世論に対して日本がまた信用を取り戻す唯一の道じゃないかというふうに考えています。
  104. 福島徹二

    公述人(福島徹二君) 私も現場そのほか状況を十分承知しておりませんので、直接この点についてはお答えできないと思います。  ただ、この件が早期段階でのアセスメントにかかったとして、計画段階で、その場合にどうしても事業にはそれを行うメリット、目的があるわけです。それともちろん環境のマイナス面があるわけでして、これを計画段階でどう判断するか。例えば、アメリカのNEPAの制度などを見ますと、当然その段階では事業経済的な側面も考慮することになっておりますので、それに対して経済環境保護の同じ物差しがないわけです。ですから、計画段階でのアセスメントを進めるときにそのあたりまで、環境のことだけでは世の中は進まないわけですから、現実には。ですから、そういうような形の広い評価手法といいますか、もしくは市民の合意のようなそういった形のものが背景にないと、計画段階アセスメントというのは実際我々公務員が実務をやる中では非常に難しいなと考えております。
  105. 有働正治

    ○有働正治君 最後に、一点だけ標公述人にお尋ねします。  先ほど十項目の中で、はしょって最後に述べられなかった項目があるような御意見でした。私の持ち時間は限られていますので、どうしてもここを訴えたいということがございましたら述べていただければと思います。
  106. 標博重

    公述人(標博重君) 私は、最後にも申し上げましたけれども、住民運動の立場から申し上げましたように、やっぱり住民の位置づけをどうするかということについてもう一度、手続法の観点からではなしに、このアセス法が実体法の観点から、私が住民と申し上げるときには人間だけではございません、地域社会もやはり住民でございます、それから自然も住民の一部でございますから、そういう観点で申し上げますが、この住民の位置づけというものをもう一遍法案審議の中でぜひとも再検討していただきたい。  最後に、申し上げなかったことですが、例えば評価書という段階手続の最後になりますが、この段階ではやはり住民には異議申し立て権を付与すべきであるというふうに私は考えております。  その異議申し立て権をどういうふうに扱うかということはいろいろな方法があると思いますけれども、そういう権利が住民にあるということは、やはり住民を被害者という立場に置いてアセスメントを完結させるということになるのではないかと思いますので、その点をぜひ十分に御審議、御検討いただきたい、そういうふうに考えております。
  107. 有働正治

    ○有働正治君 どうもありがとうございました。  終わります。
  108. 末広まきこ

    末広真樹子君 自由の会の末広真樹子でございます。  本日は、長時間にわたって皆様おつき合いいただきまして本当にありがとうございます。貴重な御意見、大変参考になっております。  それで、横山さんに早速お伺いしてまいりたいと思いますが、私も持ち時間十分でございまして、幾つか数多くありますので。  万博開催地としてあの海上の森が適当かどうかということを大変科学的に検証していただいたわけでございます。それでは、お伺いしますが、県のやったアセスというのをどのように評価なさっていらっしゃいますでしょうか。
  109. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) 正確に言いますと、愛知県のやられたのはアセスメントではないんですね。事前の基礎調査なんです。アセスメントのように運用されているということだと思います。制度にのっとったアセスメントというのは、あそこで開催することが決まった後に始まることです。  以上です。
  110. 末広まきこ

    末広真樹子君 そして、それをもとに現在作成されております万博構想というのを御存じかと思いますけれども、この計画の妥当性についてはどのようにお考えでございますか。
  111. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) 自然保護観点から見たときの妥当性ですけれども、端的に言ってしまいますと、博覧会の理念というものについては一定評価ができるというか、そこに書かれていることは実現したら大変すばらしいと思われることなんですね。ところが、実際にそれがどういう仕事の中で行われるのかという実行計画というようなものを見ますと、理念と非常に落差が大きいというような特徴があります。  特に感じますのは、そういう自然との共生というようなことを行う場所、立地ですが、そういう場所としてなぜ今豊かな自然があるところが選ばれたのか、ここが一番大きな疑問であり、問題点だと思われるところです。  以上です。
  112. 末広まきこ

    末広真樹子君 先日、私この環境特別委員会で質問いたしました中で、国の方で新たに確実に万々全のアセスをやっていく、模範となるようなアセスをやっていくという明快な御回答をいただいたのでございますが、その場合どんな点に注意することが肝心かを、もしございましたら御意見を下さい。
  113. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) 注意点といたしましては、まず現況評価をしっかりやるということにどのぐらいエネルギーが割かれるかということだと思います。  それから二つ目は、そういうその現況評価、現状の自然がどうなっているかということを調べたときに、その結果を評価していくところにきちんと専門家の目が入る、評価を点検していくというようなことをしておかないと、また恣意的なものがたくさん入り込むことになると思います。  それから三点目に、これは最も重要ですが、もし何かの開発事業を実行するときに二者択一になってしまうというふうに思われたときに、二者択一でいくのか、あるいは計画を基本的に変えてその自然を守るということとを両立させていくのか、その辺の判断がきちんとできるような仕組みの中でアセスメントが行われるかどうかということが要点かなというふうに思っております。
  114. 末広まきこ

    末広真樹子君 そうしますと、数々の問題点があるよという検証だったんですけれども、あの場所で例えば、自然林があるこのこっち側の東側に植林があります、材木用の。あそこでなら構わないのか、それとももうあの地域全部だめなのか。  この辺はどうなんでしょうか。
  115. 横山隆一

    公述人(横山隆一君) その辺は、そういうことをきちんと判断するための素材をつくるのがアセスメントの現況調査だと思うんです。  ですから、今、植林地の部分だったらよいかと聞かれましても、植林地の部分だけで万博というイベントが成立するのかどうかとか、そういったようなほかの条件との兼ね合いというのがあると思いますので、植林地の部分とそのほかの森林の部分の価値の差を明確にするというようなことをやった上で人間の土地利用との関係を判断するという、そういう二段構えでないとわからないと思います。
  116. 末広まきこ

    末広真樹子君 ありがとうございました。  また、折に触れて専門的な見地からお伺いしたいと思いますが、きょうは時間がございませんので、ここで皆様全員にお問いかけしたいのでございますけれども、このアセスの中には、待ちに待ったアセスなんですけれども、代替案の義務づけが盛り込まれていないということがございます。どうしても義務づけが不可欠かどうかということを全員の方にお伺いしたいので、時間的に大変恐縮でございますので、どうしても代替案の義務づけが必要であるという方の挙手をお願いいたします。——四人と確認いたしました。  それでは、辻さんにお伺いしたいのでございますけれども、藤前干潟を埋め立ててごみの最終処分場にしようとしているという、名古屋市はここにしか処分場がないからと言っているということですが、これは本当なんでしょうか。というのは、ほかに適当な場所はないのかどうかということをお聞かせください。
  117. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) 幾つかの可能性が考えられると思います。そして、私が先ほどの資料の中で名古屋港の過去の開発計画図を出しましたが、その中で考えても、幾つかの未利用地であるとか、かつては木材を丸太で輸入して貯木していたけれども、今はそういうのが構造的に要らなくなったとか、いろんな事情で使える場所がある。  そういうところをまず考えることが先ほどの複数の代替案ということと絡んでぜひやっていただきたいと考えていることです。
  118. 末広まきこ

    末広真樹子君 七月の準備書で、名古屋市のアセスとして不十分な部分があったと先ほど公述していらっしゃいますが、欠落していたのは主にどんな点でございますか。
  119. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) いろいろあるんですが、肝心の必要な調査アセスメントに必要とされる生態系の現況調査であるとか、それからその代替案の問題であるとか、干潟が現在持っている、私たちの市民に対していろんな恵みを与えてくれます、例えば子供たちがそこでカニを捕まえたりして感性を育てることができる、そういうようなものの価値を一切見ていません。そして、先ほど資料の中で申し述べましたが、非常に非科学的なやり方を、結論がもう決まっているためにそれに合わせるというような大変恣意的な残念な処理や評価がなされている。  これはやっぱり私が思うには、どうしてもこれまでの事業地方の公共自治体がみずから事業者になり、そしてみずからそれを審査するという立場であって、そこが、いろいろ議論されていたように第三者性のある調査評価ができないことだと。  ただ、一つだけ名古屋市の名誉のために申し述べれば、市長の諮問機関である審査委員会が、先回五月十日の公聴会の後で、調査に非常に不十分な点を感じる、追加調査要望するということを具体的にその委員会の中で議論されたということで、まだ事業者サイドである名古屋市がそれを受けるかどうかまでははっきりしていませんが、一つの希望が出てきたと私たちは考えています。
  120. 末広まきこ

    末広真樹子君 その追加調査というのはどんな点なんですか。
  121. 辻淳夫

    公述人(辻淳夫君) それは、特に野鳥の生態に関する調査です。野鳥の渡来地が、今の藤前干潟を特にえさ場として集中して来るということがあるんですが、それに関する調査が不十分であると。たった一日の不正確な、私たちからは信じられないような鳥の利用率というデータが出されているという点です。
  122. 末広まきこ

    末広真樹子君 時間的に最後の質問になりますが、福井公述人にお伺いしたいのでございますが、事業所管庁の優位性というのを公述の中で指摘なさっていらっしゃいます。我々もアセスに取り組んでまいった中でこの点が一番に頭の痛いところなんでございますが、最後に何か環境庁へのアドバイスがあればお願いいたします。
  123. 福井秀夫

    公述人福井秀夫君) 環境庁は、政府部内におられるとはいえ、事業所管省庁とは別途の人格、独立の専門的知見をベースにして環境問題に公平な判断をしていただけるわけです。非常に重要な役割があろうかと思います。  ぜひ環境に関する公益的位置づけという観点から、公正で客観的で科学的な御判断を示されることを強く希望いたします。
  124. 末広まきこ

    末広真樹子君 ありがとうございました。
  125. 渡辺四郎

    委員長渡辺四郎君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼を申し上げます。  皆様には、本当に長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、本委員会の審査に十分反映させてまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後六時十分散会