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1997-06-12 第140回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年六月十二日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      武田邦太郎君     小島 慶三君  六月十一日     辞任         補欠選任      小島 慶三君     武田邦太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺澤 芳男君     理 事                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 高野 博師君                 武田邦太郎君     委 員                 岩崎 純三君                 笠原 潤一君                 武見 敬三君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 猪熊 重二君                 田村 秀昭君                 田  英夫君                 萱野  茂君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君    国務大臣        外 務 大 臣  池田 行彦君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        防衛庁長官官房        長        江間 清二君        防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君        法務大臣官房審        議官       柳田 幸三君        外務大臣官房長  原口 幸市君        外務大臣官房領        事移住部長    齋藤 正樹君        外務省総合外交        政策局長     川島  裕君        外務省アジア局        長        加藤 良三君        外務省北米局長  折田 正樹君        外務省欧亜局長  浦部 和好君        外務省経済局長  野上 義二君        外務省経済協力        局長       畠中  篤君        外務省条約局長  林   暘君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        総務庁北方対策        本部審議官    川口  雄君        自治大臣官房審        議官       的石 淳一君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (日米防衛協力ガイドラインに関する件)  (北方領土問題に関する件)  (青木前ペルー大使の発言に関する件)  (在外選挙制度に関する件)     —————————————
  2. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日、武田邦太郎君が委員辞任され、その補欠として小島慶三君が選任されました。  また、昨十一日、小島慶三君が委員辞任され、その補欠として武田邦太郎君が選任されました。     —————————————
  3. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事武田邦太郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 武見敬三

    武見敬三君 本日は日米防衛協力のための指針見直しに関する中間取りまとめについて御質問をさせていただきたいと思います。  この指針は、昨年の四月十七日に確認をされました日米安保共同宣言の中で改めて見直しをされることが取り決められ、日米当局によってこれらが審議されてきたということであろうかと思います。その中で、特に日本周辺地域において発生し得る事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究の開始ということが、改めてその必要性確認をされているわけであります。  従来の平時における日米協力と、それから有事における日本に対する攻撃に対する日米間の協力というのに加えて、新たにこの周辺地域という考え方から、こうした内容を対象に加えるようになった理由は一体どこにあるのか、それをまず最初にお伺いしたいと思います。
  7. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) いわゆる周辺事態における対応策でございますが、何も今回突然出てきたわけではございません。現行ガイドラインを見ていただきましても、第三項目日本以外の極東における事態日本の安全に影響を与える場合の日米協力、これは余り研究が進んでいなかったことは事実でございますが、そういうことがございました。  それから、防衛計画の大綱が新しくなったわけでございますが、その中に「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、必要に応じ国際連合活動を適切に支持しつつ、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応する。」ということも書かれているわけでございまして、今回のいわゆる周辺事態の問題はこうした流れに沿うものでございます。  そこで、それじゃなぜ「周辺」という言葉を使ったかということでございます。  現行ガイドラインでは「極東」という言葉を使ってあるわけでございますが、現行ガイドラインにおきましては米軍に対する施設使用の問題だとか後方地域支援問題等便宜供与を取り扱うということになっていましたけれども、これは日米安保条約及びその関連取り決めに基づく便宜供与、それに密接に関連して行う便宜供与ということで安保条約上の観念である「極東」という言葉を使ったわけでございますが、今回見直しを行っています中には、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が生じたときに、日米安保条約、その関連取り決めと厳密な意味での直接の関係はないけれども、我が国自衛隊自身行動として実施される例えば人道活動、非戦闘員退避活動経済制裁措置実効性を確保するための協力といった事項についても検討が行われているわけでございまして、これら全体をくくる表題として安保条約上の文言である「極東」を用いることは適切でないということで、これにかえまして、より一般的な表現である「日本周辺地域」という言葉を使ったわけでございます。
  8. 武見敬三

    武見敬三君 この周辺地域という概念が地理的な概念であるのかそうでないのか、地理的な概念だというふうに一般的には思われているわけでありますけれども、その点についてはいかがですか。
  9. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日本周辺地域というのは、そこにおいて発生する事態我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼし得る地域という意味での一般的な意味で用いられているわけでございまして、場所がどこということよりも、そこで起こる事態我が国の平和と安全に非常に結びついている、そういうような状況であるので日本としてもみずから対応しなければならない事態である、そういう観点から設けられているわけでございまして、どこからどこまでということを厳密な意味で限るという趣旨のものではございません。
  10. 武見敬三

    武見敬三君 今の説明について基本的に私は同意をするものでありますけれども、いかんせん周辺地域という言葉意味というものが一般的にはあいまいに受け取られてしまっていて、その真の意味というものが非常に国民に伝わりにくいという点については、私はやはりきちんとその都度国民に対し説明をしていく必要性があるだろうという認識を強く持っているわけであります。  いずれにせよ、冷戦後、日米同盟というものを円滑に機能させるための方式としてこうしたガイドラインが改めて設定をされ、そしてそのガイドラインに基づいて、さらにより精微な日米協力体制というものが各分野、各レベルで構築されていくということは私は極めて好ましいことだと実は理解をしているものであります。  ただ問題は、こうした日米協力関係というものが緊密化すればするほど、日本のいわば同盟関係適用する際の意思決定において、どれだけ日本がその中できちんと独自の立場米国に対しても意見を述べることができるかという部分が重要になってくるように思います。従来よりバードンシェアリングというようなことが日米双方の間で言われてきたわけでありますけれども、私はこれからデシジョンシェアリング、すなわち決定過程の共有に向けて日米というものの関係は進展していかなければならないだろうというふうに考えているわけであります。  そこで、私は、事前協議という従来より日米間で確認されていた事項というものが今後さらにその重要性を増大させることになるだろうという認識をその結果として持っているわけであります。  御案内のように、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文というものの中で、三つの事項に関しては事前協議を行うことになっているわけであります。配置における重要な変更、装備における重要な変更日本国から行われる戦闘作戦行動、ただし第五条規定のものは除くという形でこの項目というものは規定をされているわけであります。  まず最初にお伺いしたいことは、この三項目に関して、過去においてこうした事前協議が行われたケースはあるのか、お伺いしたいと思います。
  11. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) ございません。
  12. 武見敬三

    武見敬三君 それは事前協議対象になり得るようなケースがなかったということでございますね。
  13. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) そのとおりでございます。
  14. 武見敬三

    武見敬三君 今後、こうした事前協議制というものを未来において円滑に機能させることが私は必要になってくるだろうと思います。その場合に、新たな指針中間報告の中でも幾つかその説明がされているわけでありますけれども、日米政府間においていかなる交渉チャンネルを通じてこの事前協議制というものがこれから行われると想定したらいいのか、お聞かせください。
  15. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 事前協議の発議は米側が行うということでございますが、その経路というのは具体的にどこだというふうには特に決まっておりません。一般的には外交ルートが想定されますが、いろいろの状況に応じまして外交ルート以外のこともあり得ないことではないというふうに思います。
  16. 武見敬三

    武見敬三君 そこで、幾つか具体的な例をちょっとお伺いしたいんですけれども、昨年中国軍台湾海峡軍事演習を行った。ミサイルの発射演習も行った。その際にアメリカ政府横須賀母港とする空母インディペンデンス台湾海域に派遣をしたわけでありますが、このケースは何ゆえに我が国米国政府との間の事前協議対象とはならなかったんでしょうか。
  17. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) これは、委員が先ほどおっしゃられた三番目のケース日本国から行われる戦闘作戦行動に関する事前協議に関するものであろうかと思いますが、事前協議の主題となる日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内施設及び区域使用という場合に言う戦闘作戦行動とは、従来から政府が申し上げておるところでございますけれども、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであって、米軍我が国施設区域から発進する際の任務対応がこのような行動のための施設区域使用に該当する場合にはアメリカ側我が国事前協議を行う義務を有するということでございます。  今回、今、委員のおっしゃられましたインディペンデンス台湾海峡に出ていった事態というのは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動ではないということで事前協議対象とはならなかったわけでございます。
  18. 武見敬三

    武見敬三君 私は、実際の戦闘が行われていたケースではありませんけれども、こうした軍事的な緊張が実際に存在をしているような地域に対して我が国母港とする米国の艦船が派遣されるという場合には、やはり事前にきちんと日本政府米国政府との間で協議がなされるのが健全な同盟関係ではないかと思うわけであります。この点、米国サイドからよく言われることは、日本に対して事前協議をしたら困るのはむしろ日本政府だろう、こういうような言い方がよくされるわけであります。  私は、冷戦後の健全な日米同盟というものを再構築していく上においては、こうした事前協議に関する不健全性というものをやはり一つ一つ除去していく努力が必要であって、またそのために日本国民に対してもきちんと説明をして、その意味理解していただくよう政府としても努力する必要があるだろうというふうに考えるものであります。この点に関しては、同盟関係の持つ重みと、その中で我が国が負担すべき物事というものをやはりきちんと確認をしておかなければならないわけであります。  実際に、こうした点に関しては我が国としても非常に厳しい立場に置かれることも事台湾に関連する問題であると出てくるわけであります。  私自身が訪中して、中国の軍総参謀部の副総参謀長である熊光楷氏議論をしたときに、彼が空母インディペンデンスが派遣されたケースを述べまして、私に対して、これはまさに日米安保条約適用である、中国立場からどういうふうに理解するかといえば、それは中国攻撃するアメリカの戦車の上に日本が乗っていることを意味するんだと、こういう説明の仕方をして、実質的に極めて厳しい批判を行ったわけであります。  しかし、こうした批判が行われるとしても、最終的には我が国は常に同盟関係においては毅然たる立場をとることが必要であって、いわば我が国の基本的な立場というものをこれからも常に堅持をし、そのことについての国民理解も得ておく必要があるだろうというふうに私は思うわけであります。
  19. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今回の指針見直しにおきましては、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務変更するものではないということでございまして、事前協議についての日米間の権利義務関係変更することは考えておりませんけれども、そのことは事前協議事態に至るまで何も日米間で協議をしないという趣旨ではございません。  今度の中間取りまとめの中にも出ておりますけれども、日本の平和と安全に重大な影響を与えるような事態が予想される段階から情報交換、それから政策協議を強化する、そして日米整合のとれた対応をするために調整メカニズム運用をすることも想定しているわけでございまして、これは日米安保条約のいわゆる岸・ハーター交換公文に基づく事前協議ということではございませんけれども、日本の平和と安全に重大な影響を与えるような場合には、それに至るまでのさまざまな協議の中で日本としての判断を米側にも伝え、いろいろな対応協議しているということでございます。
  20. 武見敬三

    武見敬三君 その努力が極めて大切であって、アメリカという国のこうした緊急時における意思決定あり方というのは、歴史的に見ても極めてユニラテラリズムというものが濃厚に出てくるわけであります。それが事安全保障軍事にかかわる問題であればあるほど米国のこうしたユニラテラリズムというものが表に出てくる傾向があるものですから、この点についてはやはりこうした緊密な同盟関係に基づき我が国がそれに対処し、きちんとした意見を述べ、その中で健全に同盟関係が機能するようにする努力というものが私は必要になってくるだろうと思うわけであります。  さて、今回の指針と、それから日米安保条約というものとの関係について少し質問をさせていただきたいわけでありますけれども、例えば日米安保条約の第一条に平和の維持のための努力という規定があるわけであります。特に、第一条の第二項で「締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。」という規定があるわけでありますが、この規定は今回の新しい指針の中でいかなる形で生かされているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  21. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 委員指摘のように、安保条約の第一条の第二文のところに書いてございます。国連日米とも協力するというのは当然の立場でございます。  国連とのかかわりでこの中間取りまとめを見てみますと、まず「基本的な前提及び考え方」の3のところで「日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法基本原則並びに国際連合憲章をはじめとする関連する国際約束に合致するものである。」ということがありまして、国連憲章との整合性ということが書かれているわけでございます。それから、「平素から行う協力」の中で、「安全保障面での種々の協力」の中に国際連合平和維持活動の話も出ておりますし、それから「周辺事態における協力」の中で、例えば「国際の平和と安定の維持目的とする経済制裁実効性を確保するための活動」ということが出ておりまして、これは国連における決議というものを今のところ想定しているわけでございます。  そういう意味で、国連とのかかわり、国連に対する協力ということについても配慮しながら作成したものでございます。
  22. 武見敬三

    武見敬三君 冷戦後の日米同盟あり方考えるときに、それは二国間の同盟条約であると同時に、アジア太平洋全域における平和と安定というものを確保する上で、ある程度あるいは相当に国際公共財としての役割をこの日米同盟というものが担っていると言われているわけです。私もそういうふうに考えます。であるとすれば、国連秩序維持機能というものといかにそれが連携し得るものであるのかということは常に模索しておく必要があると同時に、さらに地域における多角的な安全保障というものを将来的に構築していく上で、いかにこの二国間の同盟というものを安定した形で円滑に相互補完的に機能させるかということが私は基本的な考え方として求められるように思います。それだけに、今こうした御質問をさせていただいたわけであります。  さて、その次に、実際にこの指針の中で日米両国間の調整メカニズムということが盛んに言われているわけであります。特に、「自衛隊及び米軍作戦を共同して実施する場合には、双方は、整合性を確保しつつ、適時かつ適切な形で、各々の防衛力運用する。」とあるわけであります。そうすると、指揮系統は別々であるということのようでありますけれども、効果的に共同作戦を実施し得る調整メカニズムというのはどの部分でどのような形で設定されることが想定されているのか、お伺いしたいと思います。
  23. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 日本に対する武力攻撃あるいは周辺事態に際しまして、委員今御指摘のとおり、日米活動する場合であってもそれぞれの指揮系統に従って行うわけでございますが、そういった活動につきまして日米防衛協力というものを効率的にいたしますためにはその整合を図る必要があるわけでございます。かつ、関係する機関自衛隊とか米軍に限りませず、日米両国関係機関が関与をしたそういう調整メカニズムが必要であろうというふうに考えているところでございます。  具体的には、我が国防衛のための共同作戦を円滑かつ効果的に実施するための調整に加えまして、今申し上げました周辺事態について考えてみますと、これへの対応といたしまして捜索・救難あるいは後方地域支援、あるいは運用面における日米協力等のさまざまな分野での調整が必要となるということが考えられているわけでございます。  どういうメカニズムにするかということについてはまだ固まったものはございません。今後さらに検討することにしておりますけれども、現時点であえて検討していることを申し上げますと、例えば一つは調整に必要な関係機関等連絡先を確定し確認しておくということ、それから調整が必要となる関係機関相互の間での連絡員の派出といったようなこと、さらには日米関係者が必要に応じ随時に会して調整を行う調整会議の開催といったようなことなどが考えられておるところでございます。
  24. 武見敬三

    武見敬三君 その調整機能、最後の点でありますけれども、これは有事におけるNATO軍等において実際に確立されておりますような合同参謀本部的なものを設けることをもその中で想定しておられるんですか。
  25. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 例えば、韓国と米国合同軍として組織されているわけでございますけれども、日本アメリカ関係で申し上げますれば、米軍自衛隊は全く別個の組織で、別個指揮系統を持っているわけでございまして、そういった指揮系統の面で合同化するということは考えておりません。
  26. 武見敬三

    武見敬三君 指揮系統は別々でも、基本的な作戦行動意思であるとか、あるいはそれを相互に確実に確認し合う作業というものは、私はこうした共同作戦行動を別々の指揮系統で行うときには特に重要になってくるだろうと思います。それだけに、私は合同参謀本部のようなものをも実は想定することが本当は必要になるんじゃないかなという有事における認識を持つものであります。  さて、有事ということになってまいりますと、さまざまな国内法上の適用だけでは対処し切れない問題も出てくるのではないかという議論もされているわけでありますけれども、いわゆる有事法制については政府はどのようなお考えを持っていらっしゃるんでしょうか。
  27. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 従来、自衛隊にかかわる諸法規につきましては研究を行っておりまして、自衛隊がその任務を円滑に遂行する上での法制上の諸問題があるかどうか、一応骨幹は既に整備されておるわけでございますけれども、なお不備な点もあるようでございます。したがいまして、これについては防衛庁としてはこれまでに研究して出しておりました。今回、このガイドラインが秋までかかりまして見直しをされましたときに、それに伴ってまたさらにどういう法制上の必要性が出てくるか、これはまた詰めていかれるわけでございますが、そのときに防衛庁としてだけではなくて、政府全体として、先ほど言いました自衛隊運用に係る問題等も含めまして、これらの問題については検討をしていかなければならない問題だと思っております。
  28. 武見敬三

    武見敬三君 それは、ACSAについての有事版考えていくような個別のそれぞれの案件についての有事法制を整理していくのか、あるいは全体の包括的な有事法制考えるのか、アプローチとしてはどちらをお考えになるんですか。
  29. 久間章生

    国務大臣久間章生君) これもこれから先、秋までかかりまして見直しが行われた後、どういうような法整備が必要であるか、そういうのが課題として洗いざらい出てまいるんじゃないかと思うわけでございます。そのときに、具体的に出てまいりましたときにどういう形でそれを整備していくか、それは検討されるべきものと思っております。
  30. 武見敬三

    武見敬三君 以上です。
  31. 田村秀昭

    田村秀昭君 平成会田村でございます。  ガイドラインに基づく各種作業をぜひ実効性あるものにしていただきたいということをまず強くお願いしておきます。  横須賀沢田市長さんがつい最近ある雑誌の対談でこういうことを述べておられますので、ちょっと述べさせていただきます。   横須賀は米海軍基地を抱えているということ  で、一地方都市を超えた重要な役割を果たして  いるわけです。というのは、日本およびアジ  ア・太平洋地域の平和と安全を確保するのに横  須賀の基地が役立っているわけです。だから、  このアジア・太平洋地域を守る要として横須賀  が機能しているんだという認識を私たちはいつ  も持っているんです。   そして、ただそういう認識を持ってさえいれ  ばいいのではなく、日米安全保障条約は単なる  仕組みにすぎない。本当に日本が大変なことに  なった時に米国日本を守るかどうか、どの程  度守ってくれるかは運用の問題です。つまり、  アメリカ側の気持ちの問題なんですね。これが  大事なんです。   安保条約があるから日本は大丈夫ということ  ではなくて、いざという時に安保条約をうまく  機能させるために絶えず日米間の信頼関係の醸  成が必要です。日本人が自分たちの血を流して  まで守るに足りる国民であるかどうかというこ  とが常に見られているわけです。   米軍基地は横須賀にありますから、アメリカ  の軍人たちは横須賀を通して日本全体の印象を  持ちます。だから、彼らに横須賀でいい印象を  持ってもらえるよう努力をしています。それが  日本全体のいい印象に繋がるわけです。横須賀  勤務を通じて、親日家になった人が全米に何十  万人もいるということが、草の根で日米関係を  支えているんです。   横須賀は単なる「基地の町」ではなく、日米  親善の要でもあるのです。横須賀は世界平和に  貢献している都市という誇りを私は持っていま  す。ということを横須賀の市長がある雑誌の対談で述べておられます。  非常に志の高い市長さんだというふうに私は思っております。ガイドライン見直しにおいてもそういう枠組みをつくっていく方針ですから、こういうことが基本的に非常に大切なんじゃないかなというふうに私は思っております。  それで、そういう観点に立ちましてちょっと御質問させていただきますが、ガイドラインの四項ですが、「いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。」、しかしながら「日米両国政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待される。」というふうに書いてあります。必要とあれば法制化もしなきゃならないし予算化もしなきゃならない、こういう日米同盟の約束事ですから、そういうことだと思うんですが、この「期待される」というのはどういうことを言っておられますか。だれがだれに期待しているんですか。
  32. 久間章生

    国務大臣久間章生君) それぞれの国が、日米がこうしてガイドライン見直しをやっていくということを決めまして、その中身についてこんなものですよと言ったわけでございますから、それぞれの国を義務づけるものではないけれども、それぞれの施策に適切に反映させて効果あらしめるものにしなければならないということをそれぞれの国に対して期待しておるんだと思います。  したがいまして、私どもとしましても、法的及び政策的側面を含めまして見直し作業をさらに進めていく過程で、先ほども言いましたように、課題を洗い出して、その作業結果を自後の具体的な施策の中に適切に反映すべく取り組んでいきたいと思っておるところでございますけれども、そのような趣旨のことを双方に期待しているわけでございます。
  33. 田村秀昭

    田村秀昭君 軍事計画をつくるときというのは、本質的に期待されるとかやるかどうかわからないような不明確なものというものは、そういう要因は計画の中に入らないんですよ。一般的に期待するとかなんとか、そういう話で、期待が外れた場合にはその計画は遂行できないわけです。一般的に軍事計画というものは不明確な要因というものは取り除くことになっているんです。そういうことは原則なんですよ。それでも同盟ガイドラインにそういう文章を載せるんですか。
  34. 久間章生

    国務大臣久間章生君) これは大枠ないし方向性を示すためのガイドラインの今度は見直してございまして、いわゆる条約等、安保条約を新たにつくるとか、そういうものじゃないわけでございますから緩やかな表現になるのもやむを得ないんじゃないかと思いますし、むしろその方が適切なんじゃないかと思います。
  35. 田村秀昭

    田村秀昭君 そうしますと、このガイドラインに基づいて各種の作業がされると思うんですが、その作業は現在のところは研究なんですか。どういうものなんですか、ちょっと教えてください。
  36. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 現在の指針のもとで行われてきている各種の日米共同作業のうち、御指摘のことかと思いますけれども、共同作戦計画についての研究というものがございますが、これについて申し上げれば、日本に対する武力攻撃がなされた場合に、自衛隊及び米軍日本防衛のための整合のとれた作戦を円滑かつ効果的に共同して実施するための研究であります。自衛隊米軍との間に何らかの拘束力を持つものではございません。  若干付言して申し上げますと、今般の中間取りまとめにおきまして自衛隊米軍共同作戦計画についての検討を行うことという表現になっておりますが、これも、自衛隊米軍との間に何らかの拘束力を持つものではないという点におきましては、現指針のもとでの共同作戦計画についての研究と差異があるものではございません。  しかしながら、他方、防衛庁が防衛警備等に関する計画等を策定するに当たりまして、我が国に対する外部からの武力攻撃に効果的に対応し得る態勢を整備するとの観点から、指針に基づく共同作業の成果をみずからの判断で取り入れることは当然のことでございまして、今般の中間取りまとめにおいては、こうした点を含め、指針に基づく共同作業実効性を持って実施することをより重視しているところでございます。  具体的には、今回の中間取りまとめでは、こうした作業の成果の取り扱いについてより明確にするため、基本的な前提及び考え方として、両政府がおのおのの判断に従い、新たな指針のもとでの作業の結果をおのおのの具体的な政策や措置に適切な形で反映するということが期待される旨明記しているところでございます。その上で、このような趣旨を踏まえて、作業の名称を共同作戦計画についての研究に変えまして、共同作戦計画について検討するとともに、この検討の結果が日米両国政府のおのおのの計画に適切に反映されることが期待されるという前提を明記したものでございます。
  37. 田村秀昭

    田村秀昭君 ちょっとよくわからないんですが、研究である、だけれども、その後何ですか、やっぱりあるものについては法制化をしたり予算化したりすることもあり得る、こういうことを言っておられるんですか。
  38. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 中間レポートにも書いてございますけれども、中間取りまとめを受けまして、これからさらに最終見直しに向けて検討していくわけでございますが、現在この取りまとめに示された考え方及び具体的な項目の取り扱いについては日米両国内におけるさらなる検討にゆだねられるけれども、この検討にはこういったものに関する法的及び政策的な側面の検討が含まれるというふうになっております。かつ、中間取りまとめの最後の方に書いてございますが、新たな指針ができた後の取り組みといたしまして、共同作業というところに共同作戦計画についての検討あるいは相互協力計画についての検討、そして準備のための共通の基準の確立、さらには共通の実施要領等の確立、そしてその共同作業に並びまして、日米両国間の調整メカニズムの構築といったようなことを示しておるところでございまして、委員指摘のような新しい見直しに基づく日米間の防衛協力が実効あるものになるように今回はいろいろと検討をしているところでございます。
  39. 田村秀昭

    田村秀昭君 そうしますと、長々と御答弁されましたけれども、結局ガイドラインに基づいて行われる各種作業研究である、しかしできるだけ実効あるものに努力をする、こういうことですね。いいとか悪いとか言ってください。
  40. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) ガイドラインに基づきまして、共同作業としてさらなる共同作戦計画あるいは相互協力計画を検討する、研究という概念よりもさらに実効性を高めたいという意味検討をし、今申し上げましたような調整メカニズムの構築等により実効あるものにしたいという考えでございます。
  41. 田村秀昭

    田村秀昭君 そういう段階で、まだ中間報告をまとめた段階であって、それを実効あるものにしたいという願望を持っているような段階で、しかも国会審議も十分に行われていない段階で、どうして中国だ、とか韓国に政府説明に行くんですか。透明性が重要だということを言っておられるようですが、透明性とかそういうこととは関係なく、そういう段階で何で中国と韓国に政府の高官が説明に行かなきゃならないんですか。私の申し上げたいのは、中国とか韓国はそういう計画を日本説明に来ているんですか。ちょっと僕はおかしいと思うんですよ。
  42. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今回の指針見直しにつきましては、我が国といたしまして、まず国内において極力透明性を高めて、国会はもとよりのこと国民の中でもいろいろ御論議いただくといいましょうか、我が国安全保障の観点からいろいろお考えいただく。そういった中で、いろいろなお考えあるいは御意見も出てまいりましょう。そういったことも最終の取りまとめに当たって我々としても十分しんしゃくしてまいりたい、こういうふうなことで現に今こういった御審議をちょうだいしておるわけでございます。  そしてまた、透明性の確保というのは国内に向けてだけではなくて近隣の諸国に対しても必要だと考え、今御指摘のございましたように、韓国、中国等々の国々にも説明を行っているところでございます。  それはなぜかという御質問でございますけれども、当然のこととしてそれぞれの国はみずからの安全ということ、またみずからの属する地域の安定ということに深い関心を持っておるわけでございます。そういった意味で、平素からいろいろな安全保障上の対話であるとか信頼醸成のためのいろいろな努力、話し合い等を通ずる努力は二国間においてもあるいは多国間の会合においても行われていることは委員御高承のとおりでございますが、我々といたしましては日米安全保障体制がどういうふうな考えに基づいて構築され、運用されているかということはこれまでもいろいろな機会に説明してきたわけでございます。  特に、今回は新しい時代といいましょうか、現在の国際情勢、地域情勢の中で日米安保体制がどういう意味があり、どういうふうに運用していくかということを昨年の四月の日米安保共同宣言で基本的なところを宣明したわけでございますが、そのことについても近隣諸国に説明いたしました。その共同宣言をいわば踏まえまして、そこで決定された、合意されたことを受けて今回のガイドライン作業が行われておるわけでございます。  それと同時に、特に今回は我が国周辺地域における事態について従来必ずしも明確でなかった点にまで踏み込んでいろいろ検討を行っておるわけでございます。そういった意味では近隣諸国も当然大きな関心を持っているということでございますので、我々はそのようなことを考えまして、この作業の中間の段階から近隣諸国にいろいろ御説明をし、我が国のこのガイドライン作業を通じて考えている、意図しているところあるいは構築していこうとしていることを正確に理解していただく、こういうことが地域全体の安定を図るという意味においても、また我が国自身安全保障の体制を構築していく上でも重要である、また適切である、こう考えたからでございます。
  43. 田村秀昭

    田村秀昭君 今、外務大臣のお答えになったような内容では、そういう政治姿勢は非常におかしいと私は思います。それは見解の相違ですから議論してもしょうがありませんが、核実験しないでくれと頼んでもする国だし、向こうからそういう中国防衛計画指針説明されたこともないし、何でわざわざ、土下座外交というか、情けないという感じが非常にいたします。今の段階で順番が随分違うんじゃないですか。  次に、私の申し上げたいことは、日米同盟を信頼性の高いものにするためには今までのやり方の延長線上で幾ら努力されても問題の解決にはならない。憲法の問題、集団自衛権の問題等をクリアして、新しい二十一世紀に向かって日本安全保障というのをきちっと考えていくべきだというのが私の基本的な考え方であります。先ほども武見委員が御質問になっておりましたけれども、周辺有事が起こったときには日本安全保障にとって重要な影響を及ぼすものだというふうに外務大臣もお答えになっておりますので、これは重要な認識を、アメリカと同じ認識を持つと私は理解いたします。  そうすると、そういう理解があったら、我が国はまず何をするのかということがないといけないですね。我が国はまず何をするんですか。共同の打ち合わせをする前に我が国はどうするんですか。そういう事態が起きたときに我が国は防衛出動を下令するんですか。何をするんですか、まず我が国は。我が国の問題ですよ、これは。そこのところをちょっと聞かせてください。
  44. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 当然のこととして、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じたと、その場合には我が国自身としていろいろなことを考え、適切に対応しなくちゃいけない、それは当然のことでございます。それと同時に、日米が共同して、協力していろいろな対応をしなくちゃいかぬ。そういった日米協力して対応する部分を今回のガイドラインの中でいろいろ今検討作業しておるわけでございます。  それで、日本として一体どういうふうな対応をするかという点でございますが、それは、やはりその時々に起きました事態の具体的な状況等に応じていろんなことがあるんだと思います。それは、自衛隊がどういうふうな対応をするかということもございますが、それ以外に国家としていろいろな対応をするのは当たり前のことでございます。  ただ、委員が今おっしゃいました中で、それじゃ防衛出動をするのかという点がございました。防衛出動というのは、それこそ釈迦に説法でございますけれども、いわゆる周辺事態においてとられることはない。これは現在の自衛隊法の定めるところをごらんいただけば自明のことであろうと思います。
  45. 田村秀昭

    田村秀昭君 いや、非常に自明じゃないんですよ。そうしたら、防衛出動の下令というのはどういう基準でするんですか、ちょっとお聞かせください。
  46. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 防衛出動は、御案内のことかと思いますけれども、我が国に対する外部からの武力攻撃、そのおそれのある場合を含むわけでございますけれども、いずれにいたしましても外部からの武力攻撃、すなわち外国またはこれに準ずるものによる我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に際して、内閣総理大臣が我が国を防衛するため必要があると認める場合に下令されるものでございます。  今、外務大臣が答弁をいたしましたことは、日米防衛協力のための指針見直しに関する中間取りまとめでございますけれども、このガイドライン見直しに関連して御発言があったわけでございまして、これはレポートといいますか中間取りまとめの三ページから四ページに出ておりますが、三ページの2のところに、「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」というところがございます。ここがいわばどちらかといえば防衛出動の発動にかかわる点でございまして、四ページにございます「周辺事態における協力」は2と一応分けて考えているところでございます。
  47. 田村秀昭

    田村秀昭君 一つお伺いしますけれども、今度共同作業が行われると思うんですが、この文書では「相互協力計画」というふうに言われておりますが、その中には交戦規定は策定されるんですか、ROE。
  48. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) いわゆるROE、ルールズ・オブ・エンゲージメントでございますが、これについて、米軍においては一般に事態に対する国家としての方針や軍事的な対処方針、さらには部隊の行動の具体的な基準が定められていると言われておりますが、その具体的な内容については秘密とされておりまして、必ずしも明確になっておりません。  一般に、我が国に対する武力攻撃等に際し、自衛隊米軍が共同で対処する場合の要領について申しますと、現在の指針のもとで、自衛隊及び米軍日本防衛のための整合のとれた作戦を円滑かつ効果的に共同して実施するため、共同作戦計画についての研究、それからその他の研究を行っておりますが、かかる自衛隊米軍が共同で対処する場合の要領に関しまして、これまでに日米間で何らかの規則を定めているといったことはございません。  他方、防衛庁におきまして……
  49. 田村秀昭

    田村秀昭君 ちょっと簡単に言ってください。入れるのか入れないのかだけ聞いているんだから。
  50. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今回は、中間取りまとめの中にも書いてございますように、交戦規則あるいはROEと言えるかどうかはともかくといたしまして、いろいろと部隊間の作戦行動のルールに関するものも含めました実施要領等、そういったものの検討をいたしたいと考えております。
  51. 田村秀昭

    田村秀昭君 先ほど外務大臣がお答えになりましたように、そういう周辺有事我が国安全保障にとって非常に重要なものと考える、そういう認識があって、我が国は何をするのかというのがないと私はだめだと思うんです。それをいろいろなケース考えられて、いろんなことを考えますと、そういうのではこういう計画をそのまま末端の方だけつくって、基本的なところをつくらないことになっちゃうわけですよ。  それで、そういうことも含めて、米国の外交問題評議会というのが有事日米同盟は機能せず崩壊するということを警告しているんです。これは民間機関ですが、リチャード・アーミテージ元国防次官補とか共和党と民主党の有力な人が、元次官だった人が入っている報告であって、こういう警告を発したのは今回僕は初めてだと思うんです。こういう意味において、普通の同盟をやらなければ日米同盟というのは崩壊するよということを警告しているんです。そのことについてどういうふうにお考えですか。
  52. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今御指摘の外交問題評議会の報告書に、もし仮に日本日米協力対応するいろいろな体制というものが十分なものでないのであれば、具体的には後方地域支援等が十分信頼できるものでないというようなものになるんであるならば、米軍としてはそれを前提としないで作戦計画を作成しなくちゃならぬというような記述があるということは承知しております。  であればこそ、我々といたしましても、今回このガイドライン作業を通じまして、従来にも増していろいろな事態対応する日米協力体制にあってどういうふうにやっていくか、そしてそれを効果あらしめるかということを検討しているわけでございまして、今御指摘のアーミテージ元次官補等が参加した研究で言っておりますことも本当に当てにすることができるような支援体制をつくってほしいという期待感を表明している、こういうことだと思いますので、私はこのことをもって現在のガイドライン作業が不十分であるということは当たらないんだと思います。  なお、先ほど委員の御指摘の中で、これまでの延長線上ではだめだと、思い切って前提を変えてみなくちゃいけないという御趣旨の御発言があり、その際憲法そのものの見直し等にも言及されましたが、その点につきましては我々政府は見解を異にするところでございます。
  53. 田村秀昭

    田村秀昭君 時間がありませんので、一番初めに申し上げたように、ぜひ各種作業が実効あるものにしていただきたいということを強くお願いをして、質問を終わります。
  54. 高野博師

    ○高野博師君 先ほどの近隣諸国への説明の点に関しまして、国会での説明の前に中国とか韓国に説明に行っていると。国内での論議が始まる前に既に近隣諸国に行っているというのは外交姿勢として私は問題があるんではないかということを指摘しておきたいと思います。同時に、議論するのはいいですが、国内的な議論をした上で近隣諸国に説明するということが筋ではないかと私は思います。指摘するにとどめます。  それから、きのう外務大臣が、この指針を国会での承認事項にするかどうかという議論の中で、衆議院の方でこれは国際約束ではないという発言をされていますが、これは国際約束ではないんでしょうか。簡単にお願いします。
  55. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) まず、指摘だけするとおっしゃいましたけれども、私どもといたしましては、今回の国内に対する、とりわけ国会に対する御説明、そしてまた近隣諸国に対する説明でございますけれども、これはいわば同時に行った、そういった気持ちでございます。時間的には週末の関係等もあり、あるいは一日前後しておりますけれども、御承知のとおり、これは中間取りまとめをハワイで行いました会議で採択し、そこで直ちに発表したわけでございます。
  56. 高野博師

    ○高野博師君 その辺の事情は結構でございます。
  57. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) それを一点申し上げておきます。  それから、昨日の私の衆議院の委員会における御答弁について国際約束でないと言ったという御指摘でございますが、正確には国際法上その他の法律的な意味において義務を伴うような国際約束ではないという答弁をしております。衆議院での議論は国会の承認にかからしめるべきではないかというふうな観点からの御論議でございまして、これは確かに国際的な合意であることは事実でございますけれども、法的な義務を課するようなものではない、こういうふうな答弁をしたわけでございます。
  58. 高野博師

    ○高野博師君 そうすると、これはどういうカテゴリーに入るんでしょうか。簡単にお答えください。合意でもない、約束でもない、法的な義務は伴わないとしても一種の国際約束というとらえ方はできませんか。
  59. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 法的な義務づけは伴わないものでございますけれども、日米間での共同作業でこういうふうな取りまとめをしたという意味での国際的な合意でございます。そのことを私は否定しておりません。
  60. 高野博師

    ○高野博師君 国家の安全保障とか国民の生命、財産を守るという重大な国家の存立にかかわる内容を含んでいるものでありますから、私はぜひこれは国会承認事項とすべきだと思っております。  それでは、先ほどの周辺有事対象範囲ということでの議論の続きをさせてもらいます。これも簡単にお答え願いたいんですが、地理的概念かどうかということに対して明快な答えではなかったと私は理解しているんですが、周辺地域というのは地理的概念なんでしょうか、そうではないんでしょうか。
  61. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) まずございますのは、日本の平和と安全に重要な影響を与えるような事態ということでございまして、そちらに重きが置かれた観念でございます。そういうことでございますので、実際に事態が起きましたときの事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断することになるわけでございますが、あらかじめその範囲として定め得るものではないというふうに思います。
  62. 高野博師

    ○高野博師君 そうしますと、おとといですか、局長は中東、インド洋での補給等は想定されていないという発言をされています。明言されているんですが、これは地理的概念とは違うんでしょうか。とすれば、先ほど言った日本の安全にかかわる重大な事態ということを総合的に勘案するということになれば、インド洋とか中東というのは当然入ることもあり得るという理解になりませんか。
  63. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 日本周辺地域とは、そこで発生する事態が単に経済的だけではなくて軍事的な観点も含め我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすことがあるという一般的な意味で使っているわけでございまして、かかる地域が例えばインド洋だとか中東を含むようなことになるとは現実の問題としては想定されないということで申し上げたわけでございます。
  64. 高野博師

    ○高野博師君 よくわかりません。  総理が、アメリカは中東を南西アジアに含めている、日本アメリカとで認識に差があるんではないか、したがって周辺有事の範囲を米側と詰めるように指示したという報道がありますが、アメリカは中東を南西アジアに含めているんでしょうか。これもイエスかノーかで答えてください。
  65. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) その点は、総理の御発言という話がございましたが、それは防衛庁長官とともに総理と三人で話をしたときに話題になつたことでございますので私から答弁申しますが、総理から中東地域等を含めろという指示があったというのはそういうことではございません。それだけまず明確にしておきます。  それから、アメリカがどうかということも話題になりましたが、そのときに私どもはこういう認識を言いました。確かに、いろいろ考えるときに米国があの地域も南西アジアというようなとらえ方をしているということはあるようだと。特に、第七艦隊の管轄する区域といった場合にはインド洋あたりから中東あたりも入っているわけでございます。そういうことはございますけれども、しかしそのことが、今回我々が検討しており、また今御議論をちょうだいしておりますがイドラインの作業周辺地域ということと結びつくものではない、これは明確に違っておるということを、総理との間でもそこのところははっきりしたところでございます。  周辺地域につきましては、先ほど北米局長から御答弁いたしましたけれども、地理的概念でないとは申しません、それはもちろん周辺地域でございますから。しかしながら、周辺地域という、地理的概念と言ってもよろしゅうございますけれども、それを考える場合には事態という側面に着目して、我が国の安全に重大な影響を及ぼすような事態が生じ得るような地域という概念でございますから、厳格な意味での地理的なあれとすることはできない。しかしながら、中東等を取り入れることは想定していないということでございます。
  66. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、地理的範囲でないとは言えないというか、そうしますと南西アジアというのは入らないんですね。
  67. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 我々はそういう南西アジアといいましょうか、インド洋とか中東地域で起こる事態我が国の安全に重大な影響を及ぼすという事態は今想定していない。したがいまして、今行っている作業におきましてそういう地域を入れることは想定していない、こういうことでございます。
  68. 高野博師

    ○高野博師君 そうしますと、例えば中東とかインド洋で何か問題が起きたときに日本がどう対応するか、総理は別のカテゴリーだ、こう言っておられます。  ガイドラインに基づかない日米協力というのはあり得るということが言われているんですが、もしそうだとすれば、その協力についても何らかの指針というものは必要ではないか。例えば、我が国の基地から直接発進させないとか、あるいは国連決議に基づくとか、そういう何か一つの指針というのをつくる必要があるんではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  69. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今回の作業対象としては考えていないわけでございますが、それは別途の問題としてその地域のいろいろな状況に対して我が国として何らかの対応が必要であるということは十分考えられることでございまして、それは今回の作業とは別個のものとして我々は対応考えることはあり得るわけでございます。  ただし、そういったことにつきましてあらかじめ明確な形でガイドラインをつくっておく必要があるかどうかという点につきましては、私どもはそこまでは考えておりません。それはやはりその地域で何らかの事態が起きた場合に個別の問題として我が国としての対応考えていくということでよろしいんじゃないかと思っております。
  70. 高野博師

    ○高野博師君 個別に考えるにしても、何らかの基準というか、それは必要ではないかと思うんですが、結構です。  もう一つ、自民党の政調会長が、日本に直接影響のある周辺有事ということになれば中台の軍事的対立は含まれない、こういう発言をされていまして、そして仮に中台で軍事的衝突が起きた場合に米軍の介入が予想される、日本の基地の一部から発進することになる、そうした上で、中台紛争がガイドライン対象外だとしても日米安保条約事前協議対象になる、そのとき日本がイエスと言うかノーと言うかは日中間の信頼関係次第だと、こういう発言をされているんですが、与党の政調会長ということは政府考え方とほぼ同じだとみなされます。  ところで、台湾海峡における有事ガイドライン対象外かどうか、念のため確認いたします。それと、朝鮮半島についても念のため確認いたします。
  71. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私ども、現在行っている作業におきまして、特定の国あるいは特定の地域を今想定してあれこれやっているわけではございません。そしてまた、中台の関係につきましては、御高承のとおり、二十五年前に日中共同声明で日中間の国交を結んだわけでございますが、その際明らかにしておりますように、我が国といたしましては台湾の位置づけにつきまして中国立場理解をしておるわけでございます。そういったことで、現在我が国としては台湾との間では非政府間の実務的な関係ということで推移してきておるわけでございますが、将来的にも何とかこれは両岸の当事者、中台の間の話し合いを通じて解決されることを期待していると、こういう立場でございます。
  72. 高野博師

    ○高野博師君 周辺地域については特定の地域を念頭に考えていないということなんですが、特定の地域考えていないのに南西アジアは入らないとか中東とかインド洋は入らないとか、そういうことを言っているんで、こういう答弁は国民理解できない。私は、念頭には置いているけれども特定して明言はできないということが正確なところではないかと思うんです。朝鮮半島も台湾海峡も含まれない日本周辺地域有事とは一体何を想定しているのか、全く理解できないことになると思います。  そこで、中台紛争がガイドライン対象外だとしても日米安保条約事前協議対象になるという考え方は私はおかしいと思うんです。現在の指針日米安保条約の枠内の防衛協力というのに対して、新しい指針はそうではないということになります。  そこで、むしろ問題は、新しいガイドラインは逆に周辺事態での防衛協力を可能にするために新しい枠組みをつくっているんではないか、この新しい指針ガイドライン目的の中で「態勢を構築する」、エスタブリッシュ・ア・フレームワークと書いてあるわけです。これは新しい枠組みをつくる、構築するということで、実質的には日米安保条約を補完する、あるいは拡大しているのと同じだというとらえ方もできると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  73. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今回のガイドライン作業を通じて日米安保条約あるいはそれに関連する取り決めというもの、さらには日米安保体制そのものを変えるということは私どもは考えておりません。これは従来どおりでございます。しかしながら、今回のガイドラインでいろいろやっています作業の中に、厳密な意味ですべてが日米安保条約の枠組みと結びついておるかというと、そうでない部分がございます。例えば、国連安保理決議に基づいた経済制裁を実効あらしめるために行ういろんな行為等につきましては、これは直接安保条約に根拠あるものではないと思いますし、またPKOなんかについてもそうでございます。しかしながら、そのことをもって安保条約あるいは安保体制そのものを変えるということには当たらな  いんだと思っております。
  74. 高野博師

    ○高野博師君 中台で軍事衝突が起きたときに米軍の介入が予想される、日本の基地の一部から発進することになるという発言に関して、そもそも日本が基地を提供する、あるいは基地から直接発進するという行為自体が敵対行為とみなされるおそれが十分あるわけです。そうなると、日本は紛争や軍事衝突に巻き込まれる、あるいは攻撃対象になるということが考えられるわけです。朝鮮半島でも想定される有事というのは同様の事態ではないかと思うんですが、中国側が歴史の教訓に学べというような警告を発しているように、中台紛争に我が国が巻き込まれるということは極力避けなくてはならない。この辺について大臣の見解を伺います。簡単で結構でございます。
  75. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私どもは、先ほども申しましたけれども、中国と台湾との位置づけ、関係につきましては二十五年前の日中共同声明の際に明白にした方針を堅持してきております。そして、中台の関係は両当事者の間の話し合いを通ずる解決を期待しておりますし、また両当事者もその方向を基本的には追求しょうという姿勢をとつておるわけでございます。ただ、具体的にどうするかという点では欠けておりますが。したがいまして、私どもは、今そういったことを、そこにかかわる問題について、日本として特にこのガイドライン作業との関連において何らかのかかわりを持ってくるということを想定して作業はしているわけではございません。
  76. 高野博師

    ○高野博師君 ところで、中国が台湾問題は基本的に中国国内問題だと。日中の共同声明もありますが、日本政府のこの見解に対して国際公約として遵守するように外交ルートを通じて求めてきたということが言われておりますが、日本周辺有事に関する日米共同対処計画を策定する場合に中国側にも事前説明を行うように求めてきたと言われている報道があるんですが、これは事実でしょうか。
  77. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) それは、当然のこととして日中共同声明は日中両国がこれを守っていかなくちゃいけないものだと思っておりますし、私どももそのような姿勢を貫いております。  しかしながら、委員が今具体的におっしゃいましたように、具体的なことについて中国から最近何らかの申し出とか要請とかというものがあったわけでございません。先般こちらの方から説明いたしましたときにも、こちらの説明は多としながら、評価しながら、ただこれまでの日米安保体制についての中国側の立場に立脚した幾つかの発言がございました。例えばこの枠組みが二国間のものにとどまるようにといったようなですね。しかしながら、委員が今おっしゃったような点についての言及はございませんでした。
  78. 高野博師

    ○高野博師君 ところで、朝鮮半島とか台湾海峡は想定していないという話なんですが、それはそれとしまして、朝鮮半島であれ台湾海峡であれ、米国軍事行動国連決議に基づいているか否かということは非常に重要なポイントであると思うんですが、国連決議に基づかない軍事行動日本が援助を与える場合、日本の行為というのは国際法上の根拠を失うと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  79. 林暘

    政府委員(林暘君) 先ほどからいろいろ御説明申し上げておりますような今回のガイドラインの前提、それは先ほど申し上げましたように、「日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法基本原則並びに国際連合憲章をはじめとする関連する国際約束に合致するものである。」という前提に立って我々は作業をしておりますし、日米安保条約も、先ほど武見委員からも御紹介がありまして、第一条ということでああいうことが書いてあるわけでございまして、我々の前提は米国の行為であれ日本の行為であれすべて国連憲章に合致するものである、そういう前提に立っております。
  80. 高野博師

    ○高野博師君 国連憲章には合致するけれども、国連の決議がなかった場合にも日米安保条約それからこのガイドラインというのは適用されるんでしょうか。
  81. 林暘

    政府委員(林暘君) 国連の決議がなくて云々という場合、何を想定されて言われるか、自衛権の発動ということを想定されているのかとは思いますけれども、国連憲章に合致する行為の中に自衛権の発動ということは当然のことながら含まれます。
  82. 高野博師

    ○高野博師君 例えば臨検をするとか、おとといですか、政府の発言の中でこれは国連の決議を前提として臨検等を行うという発言がありましたね。そのほか非常に細かいことがたくさんありますが、機雷の掃海あるいは後方支援を含めて、いろんな事態は、その前提として国連が、例えばどこかの国で侵略行為があったと、それに対する制裁をするとか集団的な自衛権を発動するとか、何らかの決議というものがなくても日米間でこれは発動されるのか、適用されるのかと、そういうことです。
  83. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 例えば、今御指摘のございました経済制裁を実効あらしめるための臨検等につきまして、国連決議のあるもののほかに、ないものも可能性としては想定されると思います。しかし、我々が現在行っておりますがイドラインの作業におきましては、そういった国連の決議を伴わない経済制裁にかかわる臨検等は対象として想定していないところでございます。
  84. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今、委員機雷掃海を例に出されましたけれども、この周辺事態のところにはいろいろな項目が出ているわけでございます。人道的活動、捜索・救難、外務大臣から今答弁のありました国際の平和と安定の維持目的とする経済制裁実効性を確保、非戦闘員を退避させるための活動米軍活動に対する日本の支援に加えまして、「運用面における日米協力」のところで「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えており、自衛隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保のため、情報収集、警戒監視、」とあわせまして「機雷の除去等の活動を行う。」と書いてあるわけでございますが、この活動自体は国連の決議の有無に関係なく、要するに我が国自衛隊我が国安全保障という観点から独自の行動をとるものでございます。
  85. 高野博師

    ○高野博師君 時間がないので次の点をお伺いしたいと思います。  日本側の臨検とか機雷の掃海、後方支援等が米軍との武力行使の一体に当たらないように厳密に規定するというのは非常に困難であろうと私は思います。これらの行動というのは日本の領海領土外で武力行使ができるという前提がなければ不可能なことだと私は思いますが、自衛権の発動自体も憲法第九条で海外ではその行使が認められていないという事情があります。  それはそれとしまして、憲法解釈上云々という話は国内問題であって、米国と戦争をしている交戦国が我が国行動は敵対行為だというふうにみなしてしまえば、当然我が国攻撃対象になる、先ほどもちょっと言及しましたが。憲法上、理論上の問題ではなくて、実際上はその危険性というのが現実の最大の問題点だろうと私は思います。  今回のガイドラインというのは、その危険性に一歩踏み込んだ、あるいは増大させるというその辺のとらえ方はいかがでしょうか。簡単に答えてください。
  86. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) この中間レポートを見ていただきますとおわかりいただけると思いますが、日米協力のパターンとして三つのものを挙げているわけです。平素から行う協力日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等、それからいわゆる周辺事態。したがいまして、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等は委員議論対象の外にあるのではないかと思いますが、周辺事態における協力におきまして、仮に自衛隊がこの中で何かをやった場合に第三国がどう考えるかということについて我々コメントする立場にはありませんけれども、一番御関心があるかと思いますので御説明させていただきたいと思います。  米軍活動に対する日本の支援、この日本の支援の主体は、これは自衛隊も含みますけれども、その他の政府、地方公共団体あるいは民間ということになっておりまして、米側は多くのものを民間に期待するということであります。  特に問題になります後方地域支援についてちょっと説明させていただきますと、  日米安全保障条約の目的の達成のため活動する  米軍に対して、後方地域支援を行う。この後方  地域支援は、米軍施設使用及び種々の活動  を効果的に行うことを可能とすることを主眼と  するものである。そのような性質から、後方地  域支援は、主として日本の領域において行われ  るが、戦闘行動が行われている地域とは一線を  画される日本周辺の公海及びその上空において  行われることもあると考えられる。ということから、御心配のような懸念は私はほとんどないのではないかと考えております。
  87. 高野博師

    ○高野博師君 この中間報告の中に、船舶の臨検、機雷の掃海、米軍支援、集団的自衛権との関係でいえば米軍の武力行使と一体とみなされる行為との線引きの難しいいわゆるグレーゾーンに踏み込んだと思われる部分が相当あるわけで、憲法上の制約の範囲内でという政府の見解には私は疑問があります。  集団的自衛権の行使について、憲法改正なり解釈を変更するなり、まず憲法論議が必要ではないかと思いますが、憲法上の問題点を明確にしておくということが安全保障という国家の存立にかかわる重大な方向性を決める上で不可欠ではないかと思うんですが、この点について大臣の御所見を伺います。
  88. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) その点につきましては、国民の中においてもあるいは国会の中においてもいろいろな御意見、お考えがあるということは私どもも承知しております。しかしながら、私ども政府といたしまして、そしてとりわけ今回の作業を進めるに当たりまして大前提としておりますことの中の一つに、現行憲法の枠内であることは当然である、そしてまた憲法解釈にかかわる従来の政府の一貫して述べてきた立場、基本的なもの、例えば集団的自衛権の行使にかかわるようなものにつきましても変更することなく維持していく、その前提の上に作業を行っておるところでございます。  なお、グレーゾーンというお話がございましたけれども、私はグレーゾーンという言い方よりもむしろ白地と言った方がいいんじゃないかという感じもしております。これまでいろいろな御議論がございましたし、また今回のガイドライン作業でも憲法にかかわる御議論はこれからもあると思いますけれども、これまでやっていることはすべて憲法の枠内でございます。それじゃ憲法の枠内でできることをすべてやっているかというと、そうじゃない部分があるんだと思います。それは憲法上認められるか認められないかということについて十分議論が尽くされていなくて、まだ結論が出ていない、いわばそういった意味で白地なんだと思うのでございます。  そういった点につきましては、これからの検討作業の中でまたいろいろ御議論もあり、そして結論的に我々として今後においてとることが必要な措置、あるいは行うことが適当な行為であって、しかも憲法の枠内にきちっとおさまるというものについて最終のガイドラインでも盛り込んでいく、こういうことになろうかと存じます。
  89. 高野博師

    ○高野博師君 時間がないので、最後に一問だけ防衛庁の方に。  「新たな指針策定後の取組み」の中で、「準備のための共通の基準の確立」の中の「日米両国政府は、また、周辺事態における協力措置の準備に関し、合意により共通の準備段階を選択しうるよう、共通の基準を確立する。」という、この「共通の準備段階を選択しうる」、これはどういう意味でしょうか。
  90. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 一般論として申し上げますと、準備段階とは、日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合に自衛隊及び米軍が行う情報活動、部隊の行動準備、移動、後方支援その他の作戦準備を、部隊の警戒監視の体制の強化から部隊の戦闘準備の体制の最大限の強化に至るまで、順次段階的に強化していく場合の段階区分を言うわけでございます。  また、共通の基準といいますのは、このような準備段階の区分のそれぞれに対応いたしまして、自衛隊及び米軍が行う作戦準備に係る事項に関しあらかじめ定められる共通の方針的事項のことを考えております。  この中間取りまとめにおきましては、新たな指針策定後の取り組みといたしまして、両政府日本の防衛のための準備に関し、合意により共通の準備段階を選択し得るよう共通の基準を平素から確立しておきたいということを言っているわけでございまして、まだ固まったものがあるわけではございません。これから具体的に検討していきたいと考えております。
  91. 高野博師

    ○高野博師君 準備段階というのは英文ではレディネスステージという言葉を使われているということは、つまり今言われたような情報交換とかさまざまなことがあるわけですが、要するに臨戦態勢の段階だという意味ではないか。危機の度合いに応じてこのような態勢をとるという基準をつくることは、日米がこれを共有するというのは日米軍事的一体化ではないかということが言われますが、この点は指摘するにとどめておきますが、何かございますか。
  92. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今答弁申し上げましたように、我が国武力攻撃されるかもしれないという状況におきまして、最大限の強化の段階として今御発言の臨戦態勢という言葉にいわば合うような準備段階があるかと思いますけれども、幾つかの段階がございまして、最初から臨戦態勢といい、それを今お話しのような日米軍事同盟とおっしゃったんでしょうか、そういう認識とは私はちょっと違うというふうに認識しております。
  93. 高野博師

    ○高野博師君 終わります。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 今回、ガイドラインの中間発表という形で、日米間で話し合われた、まだ話が進行中のこの段階で中間発表をされたということは大変私はよかったと思っております。きょうもこうして国会の場で議論をさせていただいているわけですし、こういう国民のいわば代表である国会はもちろん、内外に対しても発表されておりますから、国民の中でもあるいは外国でもこの問題についていろいろ意見が出てくる。そういうものをまた日米で参考にされながら結論を出していくというやり方は大変結構だと思っております。  主として私は意見を申し上げることになるかと思いますが、私どもの立場からすると、この問題を考えるときに基本にあるのは憲法だ、こう申し上げておきたいと思います。したがって、今回かなり広範にわたって、四十ですか、多くの問題を提起されているわけですが、その一つ一つに対して憲法と照合する、こういう作業をこの夏休みといいますか、その間にしなければならない、こういうふうに思っているわけで、物差しは憲法だ、これはまた当然であると思っております。  政府としても当然で、今回のハワイでの発表でも「日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において」と書いてある。このことを私は大切なものと受けとめております。事実、そういう検討の中で、秋山防衛局長を初め参加された皆さんは、折田さんも含めて、具体的にそのことは当然頭に置いておられたに違いないと信じております。  釈迦に説法ですが、憲法の前文を見ますと、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、」というのが前文の中の一番最初のところに出ているわけでありますから、まさに政府の行為によって戦争につながるようなことがあってはならないというのが基本だと思います。  それから同時に、国民の側からすると、「日本国民は、恒久の平和を念願し、」、そして「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という、ここがいわば原点になるんじゃないか。このことを原点にしながら対応考えていくということになるべきだ。大変原則的なことから申し上げましたけれども、いわば当たり前のことかもしれません。  そういう意味考えたときに、私は、実は発表文の冒頭のところで「日米同盟関係は、日本の安全の確保にとって必要不可欠なものであり、また、アジア太平洋地域における平和と安定を維持するために引き続き重要な役割を果たしている。」という書き出しを読みましたときに、実はおっと思ったんです。私の感覚からすると、こういう観念を大前提にして日米安全保障条約に基づくガイドラインというものを考え検討していいんだろうかと、そこからまず疑問を持って考えなければいけないかなと思ったんです。  といいますのは、日米安保条約をきずなにする日米関係というのがまさに大前提になっている。これは疑う余地のない大前提であって、日本外交はこれを基軸にして進めると。その上に立って、今度の問題は防衛にかかわる問題でありますけれども、そういう具体的な問題に入っていっている。ここにまず私は疑問を呈しながら考えたいのです。  日米基軸というのはそんなに不磨の大典のようなものなんだろうか。国際情勢の変化にもかかわらず、昭和二十七年に日米安保条約がサンフランシスコ平和条約と同時に結ばれて以来、一九六〇年に改定はありましたけれども、それは全く不磨の大典なんだろうか、不動のものなのか、こういう疑問を持っています。  ですから、外交というのは、大きな世界情勢の変化の中で、それに即応してフレキシブルにといいますか、ある意味ではそんな緩やかなものじゃなくて、もっと厳然として考えられるべきものじゃないだろうか。  この発表文を読みましても、いまだに不安定性と不確実性のところがあるという表現があります。そういうことは事実かもしれません。しかし、明らかにソ連という核を持った超大国とアメリカが対峙をし、それに対して日米安保条約という形で軍事的な面を含めて日本の安全を図るという状況であった冷戦時代、東西対立時代と現在とは明らかに違うと言わざるを得ない。こういう情勢の中で、なおかつ不磨の大典であるかのごとき大前提でガイドラインをお考えになったとすれば、まずそこから議論しなくちゃいけないかなということでこれだけ申し上げたんですが、外務大臣、いかがですか。
  95. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 不磨の大典と言われました大日本帝国憲法、いわゆる明治憲法も御承知のとおり永遠の生命を持つことはできませんでした。そういった意味で、憲法あるいは条約をも含めて、いかなる実定法も不磨の大典ということはないんだと思います。  しかしながら、私は決して今の憲法も変えていいとまでも申し上げているわけじゃございません。今回の作業は、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、現在の憲法、そしてそれに関する政府の基本的な解釈、そういったものを前提としながら進めているものでございます。そしてまた、委員おっしゃいましたように、やはり我々は憲法の平和を追求する理念というものを大切にしながら外交もあるいは安全保障考えていかなくちゃいけない、それはそのとおりに考えております。  ただ、その上において、あえて一言申させていただきますと、この作業を進めるに当たってすべてを憲法を物差しとしてチェックしなくちゃいけないという御指摘がございましたが、私はそれはどうなのかなと思います。憲法の平和理念を大切にしながら、そのもとで行われる我が国の政治の姿勢というものはございますけれども、その中で安全保障を確保していくために、そしてとりわけ日米間の協力をどうするかという観点から考えていくわけでございますから、いろいろな協力を、こういったことをやることが必要か、あるいは適切かどうかという検討というのは、やはり安全保障の面からいろいろ考えていくべきではないのかなと。そして、もとよりそれは憲法の枠内でなくちゃいけませんから、そういった意味でのチェックはしなくちゃいけませんが、いわば枠であって、物差しというのはいかがかなという感じがちょっといたしました。これは感想でございます。  それから、日米基軸あるいは安保条約はずっとこれでなくちゃいかぬのかという点につきましては、私は、先ほど申しましたように、決して不磨の大典ではないでしょうと、安保条約といえども。しかしながら、基本的に申しまして、現在の国際情勢、そしてその中での日本あり方、そしていろいろな国とのかかわりというものを見ました場合に、何と申しましても米国との間では多くの基本的な価値観を共有しているということもございますし、それから経済、政治、文化、科学技術、あらゆる分野で非常に関係も深うございます。そしてまた、そういったことは利害が一致する部分も非常に多うございます。また、アジア太平洋地域はもとよりでございますが、国際社会で共同して責任を果たしていかなくちゃいけないという面も非常に多うございます。  そういったもろもろの要素を勘案いたしますと、日本外交を考えていく上で、特にどの国との二国間関係が大切かと考えた場合に、日米関係というものはやはり最重要の関係だと位置づける。それを我々は日米関係日本外交の基軸という言い方をしてまいりましたけれども、このことは冷戦が終えんした現在の情勢においても私は変わらないんだと思っております。しかしながら、同時にアジアの近隣の諸国との関係も非常に大切でございますので、そのことは、例えばことしの総理の施政方針演説あるいは私の外交演説等におきましても、中国、韓国、あるいはその他のアジアの諸国との関係がいかに大切であるかということは強調しておるところでございます。そういうふうに我々は考えておるわけでございます。
  96. 田英夫

    ○田英夫君 私は、次に言いたいことは、既に四月の沖縄にかかわる特措法の特別委員会で外務大臣とやりとりをいたしましたときにも出したことなんですが、つまり日米基軸だけに縛られていいのかということで日米中トライアングルという考え方が最近アメリカの中からも中国の中からも出てきている。このことをひとつ、今すぐにということではないんですが、今後の世界をあるいは日本の外交を考えるときに重要なテーマとして考えていいんじゃないだろうか、こういうことを申し上げたいわけです。  そのとき紹介しましたが、例えばアメリカのオーバードーファーという、ワシントンポストの記者から現在ジョンズ・ホプキンズの研究員という形になっておりますが、アメリカの著名な外交評論家と言っていい人が、非常に明快に日米中トライアングルという言葉を使って、この三月も日本で講演をしておりますが、その問題に絞って話をしている。彼が紹介しているんですが、ジム・アワーというアメリカ海軍の、日本担当と言っていい人だと思いますが、北米局長などは御存じかと思いますが、彼も最近中国日米安保条約の中に取り込むということを考えてはどうだろう、軍人さんとしては珍しい意見だと思いますが、こういう意見アメリカの中で出てきている。  それから、中国では、これも前に紹介しましたが、昨年来何回か私は中国国際問題の専門家と議論をしましたが、今中国の外務省を含め国際問題の専門家の間ではほぼもう日米中トライアングル、中国では日米中三角形と言っていますが、こういう考え方が固定化しつつあると言ってもいいぐらい、中国ではむしろ望んでいるということかもしれませんが、そういう考え方が出てきているということは無視できない。  すると、政府からごらんになって、アメリカのことはさっき言われましたが、中国というのはどういう位置づけの国になるんでしょうか、今のところ。インドとかASEAN諸国とか、アジアにいろんな国がありますけれども、それと同じなのか特別なのか、この辺はどうお考えですか。
  97. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほども申しましたように、私どもアジアの近隣諸国との関係も非常に重要だと、このように考えておりますが、その中でもとりわけ中国との関係は我々重視していかなくちゃならない、このように認識しております。  それは、申すまでもないことでございますが、地理的にも近うございますし、また歴史的にも非常に長い交流の歴史を持っております。それと同時に、現在から将来を展望いたしました場合に、我が国も経済を初め政治その他の面で国際社会で大きな役割を期待される存在でございますが、中国の場合、何と申しましても人類の二〇%を超える国民を擁しております。そしてまた、現在でも改革・開放路線に従ってある程度の民生の安定、そして経済的な成果を手にいたしまして、そういった経済の面でも大きな存在になっておりますが、将来を展望しました場合にはますますそういった国際経済社会におけるウエートも大きくなってまいりましょう。もとより、そういった国がどういうふうな政治的なスタンスをとって国際社会で発言をし、あるいは行動していくかということは世界全体の動向を大きく左右するものだと思います。  そういったことも考えるならば、お互いに世界において大きな影響力を持ち得る存在として日中関係が良好に維持され、進展していくということは、両国民自身にとって大切であるだけではなくて、国際社会全体に対する我々両国民の責務であろう、こう考えるわけでございます。そういった観点から中国との関係は特別に重視しております。  そしてまた、先ほど日米関係重要性を申しましたけれども、このような三つの国、日米中の三つの関係が良好に保たれ、さらに進展していくということ、日米中トライアングルの関係が重要だということは、先ほど来委員米国でも中国でもと言われましたけれども、私はなぜ日本でもと言っていただけなかったのかと、若干そういった気持ちを持っておりました。  と申しますのは、私も、昨年の一月に現在のポストに就任いたしまして以来、常にこの三国の関係重要性指摘してまいりました。それは、表に対してはもとよりでございますが、中国あるいは米国と話をいたしますときもですね。そして、えてして日本あるいは米国等の論調の中で、米中関係が若干進展の方向に向かいますと、今度は日本は若干おろそかにされておるんじゃないかと。いわゆるジャパン・パッシングであるとかジャパン・ナッシングであるとかいった自虐的な言葉も含めていろんなことが言われましたけれども、私はそういった際にも、そんなものじゃないんだ、この日米中のトライアングルというのはゼロサムではなくてプラスサムの関係になくちゃいけない、またそうなり得るんだと。お互いがこの三国の関係重要性認識して行動するならば、三角形の一つの辺が強化されるということは他の辺の強化にもいい効果を持ち得るんだ、いわばそういった相乗効果の上に立ってこの関係を進展させていくことが必要だということを常々申してきたところでございます。橋本総理もいろいろな機会にそれを言っておられますし、我々は今後ともそういった心構えで進んでまいりたい、こう思っております。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 実は、日米中トライアングルが完成しますと、今回のガイドラインというようなことの意味の半分ぐらいは解消してしまうという感じさえするんです。皆さんの口からは不確実性、不安定性があると言って、それがどこかというさっきも御質問がありましたが、お答えになりにくい、また答えるべきではないと思われるでしょう。しかし、だれが考えてもそれは中台関係であったり朝鮮半島であるということは常識だろうと思います。  中台関係というのは、実はアメリカに行って台湾問題を話すとびっくりするわけです。アメリカにFAPAという台湾出身の在米台湾人の組織がありますが、その大会に私は実は出席したことがあります。これは三分の二は独立派であります。許信良氏という今民進党の責任者になっておりますが、この人に招かれて行ったんです。そういう雰囲気の中で、アメリカの中の台湾出身でない人たちも非常にそういう意味では日本とは比べ物にならないほど反北京、親台湾という空気、そういう中で考えているアメリカ政府中国観というものと、日本の、外務大臣が今言われたようなお立場からの中国観というものは根本的に違うと私は思っています。それを、同一の手を握って、日米安保条約の上に立って防衛問題の議論をして一つの方向を出そうとすること自体私は実は無理があると、これは恐らく納得されないでしょうが、私はそう思っております。  朝鮮半島の問題についてはまた少し違います。  そこで、しつこく申し上げるのは、中国、台湾の問題というのをアメリカと一緒になってやること自体に大変問題がある。香港の問題でも今度は露骨にこのことは出てきているわけであります。香港というのは、中国からすればイギリスに奪取されたわけですから、取られたわけですから、これが返ってきた。このことを喜ぶべきときに、アメリカ立場からすると、アメリカの民主主義の物差しに当てはまらない香港になってしまうことに反対をする、こういうことの方が表に出てきてしまう。日本はそうではないと思います。  ですから、私は、もともとアメリカ日本がすべての問題、特にアジアの問題について、中国とか朝鮮半島とか香港とか台湾とかいう問題について手を握って同一行動をしようということ自体に無理があるんじゃないか。これを一回立ちどまって考える必要があるんじゃないか。時の流れという中にいますとつい立ちどまって考えるということが人間はできないわけですが、今二十一世紀を目前にして、日本は外交であれ防衛であれ、あるいはすべての面で政治全体が一度立ちどまって今までのやり方でいいのかと考える、そういうときじゃないかという気がしておりますから、このこともぜひ頭の片隅に政府の責任者の方々は置いていただきたい、そう申し上げておきたいと思います。  大変一方的に意見を申し上げましたが、時間が余っておりますが、これで終わります。ありがとうございました。
  99. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  100. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 萱野茂

    ○萱野茂君 五月二十九日のこの委員会で日ロ関係についてお尋ねをいたしましたが、その節、外務大臣からは日ロ外相会議の経緯などについて懇切な御報告がございました。議論する時間がございませんでしたので、日ロ関係で特にいわゆる北方領土の問題についてきょうは若干質問させていただきます。  私がいわゆる北方領土と申し上げるのは、北方領土というのは政治的概念でありまして、あそこは地理学的に申し上げますと、歯舞群島、色丹、国後、択捉島というちゃんとした地名があるわけでございます。政府は北方領土を我が国固有の領土と言われますが、歯舞、色丹、国後そして択捉、すべてこれはアイヌ語であります。私たちアイヌ民族の先祖が永年住みついていたところでございます。  当時、私たちアイヌ民族には国家の統治とか国土の意識というものは確立しておりませんでした。今流に言いますと、社会として成熟していなかったということでありましょうか。このため、領土に関する主権の主張、国際関係のルールなどについてアイヌ社会としての主張はなかったわけでありまして、このため、国際的には一八五五年に大国間で結ばれました日露通好条約において国境の画定がなされたということでありますが、もともと私たちアイヌ民族の土地であったわけであります。  さて、日ロ関係は、戦後五十年、北方領土問題がネックになって正常な国交関係が確立てきないまま今日に至っております。このことは、日ロ両国の関係にさまざまな影を落としているばかりか、国際的にも障害になっているわけであります。特に、冷戦終結後の国際関係の新たな協力関係の樹立に当たっては、日ロ両国の早期の平和友好条約の締結が期待されていると思うのであります。しかし、領土問題は一九五六年の日ソ共同宣言で明記された歯舞、色丹の二島の返還以降全く進展しないばかりか、むしろ領土問題は存在しないとするソ連側の態度によって後退をしているのであります。一九九一年の日ソ共同声明においてようやく四島を平和条約において解決すべき領土問題といたしました。  ただ、前回の外務大臣の報告では、領土に関しましては具体的な出口といいますか入り口といいますか、どうもそこのところが見えないのでして、今月九日に開かれました日ロの貿易経済委員会では、貿易経済に関する共同計画、これの中では北方領土地域の問題も含めて議論されたのでしょうが、私は、このような政府間レベルでの協議だけでなく、民間レベルにおいても両国間の幅広い環境醸成の施策が必要と思うのであります。例えば、両国の専門的学者による学術共同研究としての歴史や文化、環境の分野などでの研究の継続など、領土問題を話し合えるさまざまな試みが求められていると思うのですが、政府の平和条約締結への道筋についてお伺いしておきたいと思います。
  102. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私ども、委員も今御指摘になりましたけれども、日ロの関係を進めるためには何といたしましても北方領土と申しましょうか、今御指摘のございましたように、歯舞、色丹、国後、択捉、この地域の領土問題を解決しなくちゃいけないと思っております。  この問題についてはいろいろな経緯がございましたけれども、今も萱野議員御指摘ございました東京宣言におきまして四島の名称を明記しながら、そこに領土の帰属をめぐる問題があることは両国の間ではっきりと確認され、そしてその問題の解決のために努力することも合意されているわけでございます。我々は、この東京宣言を基礎にいたしまして、北方領土問題を解決して平和条約を結ぶ、そういうことで完全な関係の正常化を図るという道筋を考えているわけでございます。いろいろな場においてそういったことを提起しております。  昨年十一月のプリマコフ外務大臣を東京に迎えての外相間の定期協議におきましても、領土交渉と領土問題の解決を探るための環境整備の問題、この両面を車の両輪のごとく進めていかなくちゃいけないということを私どもから強調いたしました。ロシア側は基本的にはまず環境整備が先行するべきだという考えを持っておりますけれども、しかしながら環境整備をもって領土問題を代替するわけではない、またブレーキをかけるものではないということもはっきり向こうも言ったわけでございます。  また、ことしになりまして、五月に私が今度はモスクワに行きまして定期協議を行いましたが、その際にも私から帰属の問題と環境整備の問題を車の両輪のように努力をしなくちゃいけないんだと、そして東京宣言を単に確認するだけではいけないんであって、一歩でも二歩でも前進することが大切だということを強調したところでございます。  そして、今お話のございました先般九日に東京で行われました貿易経済に関する合同委員会、ネムツォフ第一副首相を迎えての会議でございますが、これはテーマが貿易、経済であり、またネムツォフ氏の所管から申しましても領土問題は彼のいわば所管の中に入ってないわけでございますけれども、この会議におきましても私の方から会議の冒頭において領土問題についての日本側の基本的な考え方立場は明確に申し伝えておいたところでございます。  今後ともいろいろな機会をとらえて粘り強くこの問題の解決に取り組んでまいりたいと思います。まずはデンバー・サミットの行われます際にエリツィン大統領と橋本総理の間の首脳会談を予定しておりますので、その場でもこの問題を話し合うことになろうかと思います。  そしてまた、今御指摘になりましたが、政府間の交渉だけではなくて、民間の広い分野努力も必要じゃないかという御指摘、そのとおりと存じますので、私どもその面でもこれからも政府としても民間の方々の御努力が進むようにいろいろ考え、そしてまた役割を果たしてまいりたいと存ずる次第でございます。
  103. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、北方地域における企業の活動についてお伺いします。  最近、北方四島への各国企業の進出がたびたび報じられております。主権がロシア政府によって侵されている我が国としては、今後の返還を見通すときに、また国家の主権との関係で看過できない問題ではないかと思います。  そこで、この企業進出の実態についてどのようなものなのか外務省は掌握されておられるのでしょうか。また、外務省として何らかの対応をしておられるのでしたら、あわせて御報告いだだきたいと思います。
  104. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) いわゆる北方領土への外国企業の進出につきましては、我が方としても常に事実関係の把握に努めているところでございます。  基本的には北方四島が現在ロシアの不法占拠のもとにあるという認識でございます。したがいまして、外国企業等がそこで経済活動を行うということを含めて、北方領土においてロシア側の管轄権に服するとか北方領土に対するロシア側の管轄権を前提とした行為を行うとか、あるいはロシアによる北方領土の不法占拠を助長したりあるいはその固定化、既成事実化というものに通じる可能性のあるものなどは一切認めることができないというのが我が国の基本的な姿勢でございます。  こういう我が国の基本的な立場につきましては、北方領土への外国企業の進出を把握した場合には、当該企業及びその関係国の政府等に対しまして今申し上げました我が方の基本的な立場について伝えてきているということでございます。
  105. 萱野茂

    ○萱野茂君 アメリカの企業も何件かあるようですので、この際申し上げておきたいと思います。  今日、日ロの関係において、戦後五十年を経ながら不幸な領土問題が存在しています。両国は国交の完全な正常化がなされていないことは冒頭に触れましたが、このような関係に至らしめた原因はアメリカの戦後政策に起因していることは明白であります。アメリカは、サンフランシスコ講和条約において歯舞、色丹、南千島の放棄を日本にさせながら、その帰属を明確にしないことでヤルタ協定の履行をソビエトに与えたわけであります。その意味アメリカの責任は重く、この問題は決して日ロの二国間問題ではないのであります。  このような意味からしても、政府には北方地域への米国の企業進出については毅然とした対応を求めておくべきと考えますが、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  106. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) いわゆるサンフランシスコ条約においては千島列島について日本は放棄するということはうたわれておりますけれども、北方四島ということは記載していないというふうに承知しております。そういったことでございまして、米国が北方四島についての今日のような問題が生ずるについて、特にサンフランシスコ条約との関係で責任があるというふうには私ども考えておりません。  それからなお、一般的に申しますと、米国は各国との間の領有権をめぐる問題については明確な立場は表明しないということが原則でございますけれども、この北方領土の問題につきましては我が国立場、主張に理解を示し、そしてそういった立場からこれまでにもいろいろな機会に米国としても日本立場を、主張を支持するということを表明してきておる、そういうことでございます。
  107. 萱野茂

    ○萱野茂君 次に、北方四島における旧島民の資産の保全といいますか、担保についてお伺いします。  この三月に釧路地裁において、旧島民が原告となり国が被告となりまして、北方領土に存在する旧島民の財産について不動産登記の処分の無効の確認を求める事件についての判決がございました。国側はこれまでロシアが実効支配する北方領土については不動産登記法による登記は事実上不可能だとの立場をとってきたようであります。したがって、旧島民の財産について相続行為がなされた場合も登記行為をするのではなく、昭和四十五年に出された「北方領土地域に所在する不動産の所有名義人の相続に関する暫定的取扱いについて」という民事局長通知によって仮の登記がなされていると伺っております。しかも、この通知によって行われる登記に当たり法務局が発行する証明書は、支局長の公印ではなく私印が使われているとのことですから、証明は私文書としての効力しか持たないものと理解しなければなりません。  判決は、原告の請求を棄却するとしたものの、不動産登記としての手続としては国側に瑕疵があるとしたため、国側は敗訴となったわけであります。現在、国側は札幌高裁に控訴しております。  北方領土を固有の領土とする政府は、旧島民の財産、あるいは建物は耐用年数を経ているのでしょうが、土地、地下資源への権利、漁業権などについてどのように旧島民の財産上の権利を認めて保全しようとしているのか、あるいは担保しておくのか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  108. 柳田幸三

    政府委員(柳田幸三君) 不動産登記を所管する立場からお答えを申し上げます。  北方領土地域に所在する土地及び建物につきましての従前の登記簿は、現在釧路地方法務局根室支局において保管されております。北方領土地域につきましては、戦後日本国の行政権の行使が事実上不可能な状況に置かれまして、不動産登記法等の法令の適用が及ばない状況にございますことから、現在はこの地域に所在する土地及び建物についての登記事務を行っていないわけでございます。  しかしながら、北方領土が将来返還された場合の返還後の登記事務処理を適正かつ円滑に行うという見地から、委員からも御紹介がございましたように、昭和四十五年五月一日以降、従前の登記簿の所有権の登記名義人の相続人からの申し出によりまして相続登記に準ずる処理を行っているところでございます。この北方領土地域の従前の登記簿についての情報を入手したいという要請がございますために、これにこたえる行政上の措置といたしまして、釧路地方法務局根室支局において保管している従前の登記簿についての情報を同支局の支局長の名義でいわゆる登記事項の証明という方法で申し出があった者に提供をしております。私印を使用しているということではございません。
  109. 萱野茂

    ○萱野茂君 関連しまして、北方四島へのビザなし訪問について伺っておきます。  北方四島へのビザなし訪問については、一九九一年の日ソ両国の外務大臣による往復書簡、また同年の閣議了解によって平成四年から実施されているわけであります。  閣議では、この年の日ソ共同宣言を踏まえて、領土問題の解決を含む平和条約の準備を完了させるための作業を加速させることが第一義的に重要であることを確認されたことの新しい状況を踏まえ、北方領土に居住するソ連邦国民との交流の枠組みとしているのであります。この交流は、一九九二年、平成四年から実施されており、日本側からは旧島民に北方領土返還要求の関係者、また一九九五年からは国会議員も加わり、私も昨年訪問してまいりました。これまで三千人を超える両国の関係者が交流しておると聞きます。このような交流の成果につきましては、拙速は避けたいのでありますが、ロシアの改革後の政治システムもありましてなかなか難しいものがあるのではないかと思います。  日本側としましては、漁業権の問題などありますが、ロシア側、なかんずく四島の居住者の具体的な要望にどのようにこたえていくのか。従来の支援措置の枠組みを固定的に考えてよいのか。例えば、生活基盤整備などについても、これは今後の日ロ貿易経済委員会での共同計画のテーマでもあるのでしょうが、どう対応していかれるのか。そして、四島交流を将来どう位置づけ、機能させていくのかについてお伺いしておきたいと思います。
  110. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) ただいま委員指摘のように、この計画自体は平成四年度から始まりまして六年ということで、既に約三千九百名の方々が相互に訪問し合ったということでございます。  基本的に、この事業はいわゆる北方領土問題解決のための環境整備の一環で、相互理解を深めるということが目的でやっておるわけでございまして、それなりに成果を上げている事業だというふうに基本的に認識をしております。この交流実施につきまして、実は九三年にエリツィン大統領が来られたときの東京宣言でもこれをさらに円滑に拡充していこうということがうたわれておりました。我々としても、我が国の基本的な立場を害さないという前提ではございますが、できるだけこれの円滑化、さらには拡充ということに基本的には努めていこうというふうに考えております。実は、先般の五月の日ロ外相会談におきましてもこの基本ラインについて意見の一致が見られたわけでございます。  そこで、今年度はこの四島交流の一環としまして、新たに四島からの専門家の方々を日本に御招待するということを実は考えております。また、できれば我が方からの訪問団の中にも一部専門家の方に入ってもらえないかというようなことを今政府部内で検討しているところでございます。  ただ、いわゆる経済活動そのものというような感じのものにつきましては、先ほども申し上げましたように、実はこの計画自身相互理解の増進ということでございまして、必ずしも経済交流の促進とか、そういうことを目的にしていないということがございますので、この点については我々もやはり気をつけていかなくてはいかぬのかなというふうな気がしております。  以上でございます。
  111. 川口雄

    説明員(川口雄君) 私ども北方四島の交流事業につきまして派遣の方を担当させていただいておりますけれども、北方四島の交流事業は六年目ということになっております。この間、友好な関係の中で相互の対話を進めまして、相互理解の増進が図られているところでございます。特に、北方四島に在住のロシア人の間では、従来我が国我が国国民に対して抱いていた誤解あるいは不安が解消され、それから領土問題に対する認識が深まりつつあるということは、この交流事業の意義を端的に物語るものじゃないかというふうに考えております。総務庁といたしましても、これらの成果を踏まえつつ、北方領土問題の解決に資するよう今後ともこの事業の一層の充実に努めてまいる所存でございます。
  112. 萱野茂

    ○萱野茂君 おしまいに、ここに択捉島の一枚の地図がございます。これをぐるりと回ってみると、三百十四カ所のアイヌ語地名が載っているわけであります。これ一つ一つ読んでみると、ああここではがけがある、ここでは滝がある、ここでは遠浅の岩がある、そういうことが全部わかるほど克明にアイヌ語の地図があるわけであります。  そこで私は、いわゆる北方領土、択捉、国後を日本へ返すのに反対するのではなくて、こういうのをロシア側と交渉するときに、北海道ウタリ協会というアイヌの組織の中の者も加えて交渉した方が返還が早まるのではないか、そういうことを考えているわけであります。そういう意味では、これだけの地図、隅から隅までアイヌ語の地名で載っているということは紛れもなくアイヌの領土、アイヌの国土であったということの証拠でありますが、先ほど申し上げましたように、まだ国とかそういう概念のない時代のことではありましたが、返還については、北海道ウタリ協会というアイヌの組織の中の者をも加えて返還交渉に当たった方が早く日本へ戻ってくるのではないか、私の個人的な案でありますけれども、もしお答え願えればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) この問題だけでなくて、一般に外交交渉そのものはやはりこれは政府の責任において、そして政府の手によって行わなくてはならないものだと考えております。とりわけ、領土をめぐる問題というのは、外交関係の中でもそれぞれの国の基本的な立場に立ち、そしていろいろ複雑かつ専門的な観点からの知見なり経験なりも踏まえてやるものでございますから、交渉そのものはやはりこれは政府の責任でやらなくちゃならないと考えております。  しかし、そのような問題の解決に資するという意味において、そういったものの円滑化に、あるいは促進に役立つという意味で、委員今御指摘になりましたようなアイヌの方々のいろいろな持っておられる経験であるとか知識であるとか、あるいは歴史であるとか、そういったことも役立たせていただくということは有意義だと思いますので、またどういう形でお力をおかしいただけるか、将来的に考えてまいりたいと思います。
  114. 萱野茂

    ○萱野茂君 北海道ウタリ協会というのはアイヌの組織であって、正式な会員として約二万五千人、会員に入っていない、登録していないのが二万五千人、約五万人という数字が出ております。その中のまとめとしてウタリ協会というアイヌの組織があり、幸いにことしはアイヌ新法も制定されたことでもあり、いい意味できちっとした形でアイヌ民族の存在が認められている中で、大臣今おっしゃったように、外交という、領土権ということは難しいことは知っておりますが、最初に出ていたように、民間レベルでの何らかの組織がつくられるときにはアイヌも加えておくことによっていろんなことがいい方向へ進むのではないか、そんなふうに考えているわけであります。  終わります。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 今回のガイドライン見直しの問題については、内容としては、平時、日本に対する武力攻撃あるいは周辺事態というふうな場合に日米間でどういう協力をするかというふうな内容が検討されているものだと承知しております。私は、とりわけこの中で最も中心的な柱になっているのは、周辺事態における協力をどうするかという問題が中心になっている、そういうふうに指摘をしておきたいと思うんです。  周辺事態アメリカ軍事行動に入り、あるいは武力の行使を行うというふうな場合に、自衛隊が公海にまで出動していって、ここで述べられているような周辺事態でのさまざまな協力を行うなどということは日米安保条約には全く規定されておりません。さらにまた、自衛隊法においてもそういう事態の場合に自衛隊が公海にまで出ていって米軍協力するという根拠もありません。  まさに日米間の軍事を含む協力の新しい枠組みをつくるものが私はこのガイドラインだというふうに考えているわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  116. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今回のガイドラインは、現在のガイドラインが昭和五十三年に策定されまして以来のいろいろな情勢の変化を踏まえて、それを見直そうというものでございます。ただ、現行ガイドラインでは、今回周辺事態における協力というような角度からとらえているような面についての記述といいましょうか、そういった面にかかわる事柄については極めて簡潔にしか触れられていないという面がございました。そういった意味で、こういった周辺事態に関する部分が今回の新しいガイドラインで非常に新しいといいましょうか、現行ガイドラインと比べて異なる点であるというのはそのとおりだと思います。  しかしながら、今ここに検討項目として挙げられているような事柄は安保条約上もそれから自衛隊法上も全く根拠のないことだという御指摘がございました。その点については私は委員とは必ずしも意見を等しくしないところでございます。もとより、ここに挙げられているものの中に安保条約上直接根拠のない事柄もございます。例えば、経済制裁を実効あらしめるためにする臨検等の行動についてはですね。  しかしながら、安保条約のもとで日本区域施設を利用いたしまして米軍はいろいろと極東の安全、平和のために活動している。そういった活動を円滑にするというかかわりにおいて自衛隊が何らかの行動日本の領海内においてするということは必ずしも排除されていないわけでございまして、今回入っておることがすべて安保条約にもあるいは自衛隊法にも根拠がないという点は当たらない、こう思っております。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 この中間まとめの第二項に「新たな指針目的」というところがあります。ここには、「日本に対する武力攻撃又は周辺事態に際して、日米協力して効果的にこれに対応しうる態勢を構築することである。」と書いてあります。英語は違うんですね。英語はエスタブリッシュ・ア・フレームワーク、枠組みをつくるとなっているんです。何でこんな訳し方をするんですか。そんな訳し方をするから——折田さん、いいですよ、時間がないから。英語ではそうなっているんだから、そうなっているということだけ私は指摘をしておきたい。  問題は、周辺事態が予想される場合、日米間で協議を強化して、合意によって選択された準備段階に従って必要な準備をする。いろいろな問題を想定しながら準備していくわけですね、想定される事態から始まって。そして、まさにこの間の衆議院での答弁でもありましたように、周辺事態での武力攻撃を開始するのはアメリカが決める。アメリカがそういう事態を行った際も、合意により準備段階を選択し得るよう共通の基準を確立する。周辺事態の中における項目をずっと見ていくと、そういうふうに段取りを決めて相談し合いながら、より効率が上がるようにやっていくというふうな内容に書かれているわけです。  そうすると、アメリカの判断で起こした周辺地域での武力行使の開始と、その段階に応じて、日本側はアメリカのさまざまな軍事行動、武力行使も含めて、それに対して協力する活動が取り決められていくと。これはまさに戦争マニュアルじゃないんですか。久間長官、どうですか。あなたの方がはっきり答えてくれるかもしれない。
  118. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) ただいま委員の方から周辺事態のところでの御指摘があったかと思いますけれども、周辺事態における最初の段階ぐ「対応の準備及び事態の拡大を抑制するための措置」というところでアメリカの判断でという御指摘がございましたが、ここに書いてありますように、日米両国政府はまず情報交換及び政策協議を強化して、両国で議論をする、協議をするというのがまず前段階にあるということを御理解いただきたいと思います。  その上で、我が国に対する、この場合ですと周辺事態でございますけれども、日米協力してこれを効果的に対応し得る体制をつくるためには、そもそもそれぞれの組織があるわけでございますから、その活動整合のとれたものにするためには両国間の適切な協力を確保するためにも関係機関調整というものがぜひ必要だ、そしてそのためには当然のことながら準備段階における共通の基準に基づいて協議を進めながらそういう準備段階に入っていくということが必要であると考えているわけでございます。  そして、周辺地域における事態対応といたしまして……
  119. 立木洋

    ○立木洋君 局長、私がしゃべったことを繰り返さなくていいんですよ。
  120. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 捜索・救難、後方地域支援運用面における日米協力等分野調整が行われるわけでございます。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカが基本的には攻撃を開始することを決めるというのは折田さんがちゃんと衆議院の外務委員会でしゃべっているんです。私はそれを引用しただけなんです。私が発言して聞いていることを最初からまた言う必要はないんですよ。答弁してもらえばいい。あなたは私の言っていることを繰り返してしゃべるという任務があるわけじゃないんですから、私が聞いたことをお答えいただきたい。そういう意味で、だから私は長官に答えてほしいと言ったんですよ。あなたに繰り返してもらったら時間が足らなくなる。私が今言っただけでも損しているんです、時間が。  問題は、これは再々問題になっているんですけれども、日本周辺地域における事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合、そういうことがあるんだから黙ってじっとしているわけにいかぬじゃないかと久間長官はおっしゃいましたね。だけれども、重要な影響を与える場合というのは極めてわかりにくいんですよ。漠然としているんです。どんなことか全くわからない。いろんな場合が入るんです。  一九六〇年五月十二日に当時の岸さんがちゃんとこれらの問題について述べているんですが、極東で起こったすべてのことがことごとく日本の平和と安全に直接深い関係があると考えられているのではないと。問題は、一般的には深い関係を持つ場合もあろうし、関係はそれほど深くない場合もある。また全然関係のない場合もあると。そのときの諸般の事情から判断していかなければならない。つまり、判断にかかっているんです。重要な影響を与える場合というのは、明確な規定があるんではなくて、つまり判断にかかっているんです。だから、どの場合でもそれに対して重要な事態だといって、影響あるといって行動を起こすことだって可能になるんです。これは極めてあいまいなんです。  この点については、一九七五年六月十三日、衆議院の外務委員会で当時の宮澤外相がこう述べているんです。「わが国から仮に直接の戦闘行動事前協議によって認めるという場合」、そういうことが仮に起こった場合、それはどういうことかというと、「わが国自身の安全がやはり脅かされているという」、脅威があると、こういう状況でなければそういうことは起こりませんと、「わが国自身がかなりそれは危ない目に遭う局面においてのみしかそういうことは考えられません。」と言っているんです。  重要な影響があるなんというようなことは極めてあいまいな表現であって、どのようにでも判断される可能性がある。こういうような問題についてはもっと明確にされる必要があるんじゃないですか。どうですか、久間長官。
  122. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) もとより、どのような事態が起こるかはいろんなケース考えられますから、あらかじめ特定するというのは非常に難しいんだと思います。やはり個々具体的な事態対応して最も適切な対処をする、こういうことだと思います。そして、そこには判断が入るのは当然でございますけれども、その判断を適切に行えるような我が国の政治の体制が確立されておることが肝要かと存ずる次第でございます。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 それは若干矛盾があるんです。先ほど秋山さんがちょっと述べられたけれども、私も指摘したんだけれども、これは共通の基準を確立するんです、今の段階から。いわゆる周辺事態が起こる可能性が生じた場合どうするか、それから周辺事態が起こった場合どうするか、武力攻撃が開始された場合どうするか、段階に応じて共通の基準を持たないと効力が出ないというんです。そうすると、その場で相談して決めるんじゃないんです、物事は。一定のマニュアルがあって、それで想定しながら問題が決められていく。このマニュアルの問題については秋山さんはさっきは答弁しなかった。だけれども、私は、そういうふうに見るならば、そのときそのときで勝手に推測するんではなくて、もっと明確な基準があって、それの共通した効果の上がる基準がこれから秋までの間につくられていく。そういうふうな状態を考えると、あいまいな規定の仕方というのは極めて危険だということだけはこの点では指摘しておきたいと思うんです。  それで、大森長官、こういうふうな状態で、日本周辺地域における事態でさまざまな問題が問題になってきてアメリカが武力行使をするというふうなことが起こり得るわけです。そうした場合に、こういうふうな国際紛争を武力の威嚇や武力の行使で解決してはならないということが日本の憲法の定めとしては規定されているわけです。  そうすると、そういうふうに日本周辺での米軍が起こした武力行使、日本に対しては武力攻撃はまだ開始されておらない状態のもとで、周辺に起こった事態アメリカが武力を行使している、そういうふうな場合に、それに対して日本がさまざまな形で公海にまで出て協力をし得るという条件までこの周辺事態の場合には入っているわけですから、そういうふうな協力をするということは、これは憲法上明確にそうした協力を行うこと自体が禁じられているんではないか。それがどうして日本がそういう公海にまで出ていって協力するというふうなことができるんでしょうか。これは憲法の解釈を変えるんですか、大森長官。
  124. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 委員御承知のとおり、憲法九条は国際紛争を解決する手段としては武力の行使あるいは武力による威嚇を行わないということを規定しているわけでございます。先ほどは公海上という言葉を使われましたが、日本周辺において我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態が生じた場合に武力の行使あるいは武力による威嚇以外のいかなる協力も行ってはならないと規定している条項はないというふうに理解しております。  そして、憲法の解釈を変えたのかというお尋ねでございますが、これは何度も申し上げていますように、私どもは今回の中間取りまとめにおきましても憲法九条及びそれに関連する条項の解釈を一切変えてはおらないということをはっきり申し上げている次第でございます。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、ちょっと具体的に長官——長官というのは久間長官じゃなくてこちらの大森長官にお尋ねしたいんですが、きのう防衛庁長官が情報提供の問題について発言しております。きのう大森長官も同席されておられたから聞いておいでになるだろうと思うんですが、日ごろから情報は米側に渡っており、これは久間長官が言われたわけです。だから、米軍戦闘行動に入ってもとめずにそのまま提供する、米軍を利するかもしれないが、武力行使と一体とは言えないということを明確に主張したわけです。  ところが、この問題に関して内閣法制局長官がことしの四月に「特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供するようなことについては、他の者による武力の行使と一体となると判断される可能性がある」、こう述べているわけです。そう述べている長官の発言があるにもかかわらず、昨日は武力と一体化したとは言えない、相手にずっと情報を流しているんだから、途中でとめるわけにいかぬから、それによって米軍が利するとなってもそれは武力と一体とは言えない、これは明確な違いじゃないですか。長官はどう思いますか。
  126. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 御意見ではございますが、何ら矛盾をしておらないというふうに私は考えます。  ただいま御指摘いただきました四月十日付の内閣法制局の東議員に対して答弁にかえて、それは時間が足りないから文書で出せと言われましたので文書で出したものでございますけれども、確かにそこにおきましては「特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供するようなことについては、他の者による武力の行使と一体となると判断される可能性があると考えられる。」という記載をいたしております。  しかし、この情報提供は、一般的には実力の行使に当たらないが、特定の行動を伴うことによって例外的に一体化の問題が生ずるおそれがあることを指摘したにすぎませんで、一般論といたしましては情報の提供は憲法九条との間で問題が生じることはないということにつきましては従来から私どももそのように考え、また当局からその旨を明確に答弁してきているところでございます。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 AWACSは長距離の相手の敵情というのは十分に探査できるわけですね。そういう情報を入手している。入手したのはずっと流しているわけです、途中でとめるわけじゃないんですから。だから、軍事行動がさらに武力行使の段階にまで入っても米軍がそれを受け取るんです。だから、久間長官も米軍を利するかもしれないと言っているんです。米軍が行っている軍事行動に利するかもしれない、武力攻撃を行っていることに利するかもしれない、それでも武力と一体にならない、そんなことがどうして言えるんですか、長官。おかしいじゃないですか、まるっきり話が違う。そういうふうな論弁を使うことには私は——ちょっと待ってなさい。私は大森長官に聞いているんです、今答弁されたことが大変な問題点があるから。どうですか。
  128. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 私の例を出されたものですから……
  129. 立木洋

    ○立木洋君 いや、結構です。私は要求しません。要求するときにはあなた答えてください。時間がないんです。長官、一言で言ってください。今言ったことに尽きますか。
  130. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 一言で言えと申されましてもなかなか、一言で答えますと誤解を生じます。したがいまして、聞かれた限りはお答えをさせていただきたいと思います。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 いいです。一言で言えないとおっしゃるんなら結構です。  私が先ほど述べたとおり、全く極めて矛盾した、それが長官としての態度だろうかというふうに私は指摘をしておきたいと思うんです。  もう一つの問題、周辺事態における協力検討事項項目の中にありますが、機雷の除去があります。日本の領海と日本周辺公海上における機雷の除去。この機雷の除去の問題についても、内閣法制局武力攻撃の一環として敷設された機雷の除去は相手国に対する武力の行使に当たるというふうに三月の参議院の予算委員会で答弁されております。  この問題は、秋山局長が述べられたのは、日本に対する機雷の敷設について、それを除去するのは自衛のための手段として認められる、日本に対して、と言っているんです。ところが、周辺事態の問題というのは何かというと、アメリカ戦闘行動に入っているかもしれない事態をも含めているんだ。そのときに、アメリカ攻撃を阻止するために相手国が機雷を敷設しているというふうな状態の場合に、米軍攻撃しやすいように機雷を除去するというように相手が判断される可能性というのは多分にあるんです。そうすると、一般的にここで機雷の敷設を公海上においても除去できるというふうな限定なしの書き方というのは極めて憲法上から見て問題があると言わざるを得ないんですが、大森長官、いかがですか。
  132. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 私どもの考え方をあるいは十分御理解いただけていないのかと思いますので、ここで一般的に説明をさせていただきたいと思います。  機雷の除去が憲法が禁止する武力の行使に当たるか否かは、それが具体的な状況のもとで、またいかなる態様で行われるか等により判断さるべきものであって、一概に言うことは困難でございますけれども、一般論、ここを御理解いただきたいと思うんですが、まず外国により武力攻撃の一環として敷設されている機雷を除去する行為、これは一般に外国に対する戦闘行動として武力の行使に当たると考えます。したがいまして、自衛権の発動の要件を充足する場合に自衛行動の一環として行うこと、これは憲法が禁止するものではないと。しかし、それ以外の場合には憲法上は認められないということまで申しているわけでございます。  ただ、この周辺事態において憲法に抵触することなく行える掃海と申しますのはもう一つの類型がございまして、これに対しまして、遺棄された機雷など外国による武力攻撃の一環としての意味を有しない機雷を除去することは単に海上の危険物を除去するにとどまり、外国に対する戦闘行動には当たらないから憲法上禁止されるものではないと、こういう二つの類型についてが私どもの一般的な考えであるということを御理解いただきたいと思います。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 その問題については若干異論がありますから、後でちょっと述べさせていただきます。  その前に、臨検の問題について、これは発言された関係者が川島さんと林さんと二人おいでになるから、どちらでも結構ですからお答えいただきたいんですが、この問題について、これはつまり国連決議が出た場合を想定しているというふうに答弁されております、臨検の場合に。ところが、問題は五月の中旬の原案には国連決議に基づくというふうになっておったじゃないですか。それが何で今回国際の平和と安定のためにというふうに変えたんですか。  問題は、ここで出されているのは周辺事態における協力検討項目の例として出されているんですよ。アメリカとどういう協力をするかということが出されているんですよ。国連の決議が出た場合を想定しているというふうなことを何ぼ言っても、これは米軍との協力、ここで言われているいわゆる臨検については米軍との協力を回避していないというふうにとられることは当然のことじゃないですか。どうですか。一言で結構です。そのとおりならそのとおり、違うなら違う、国連の決議が前提となっている場合のみというならそう答えてください。国連決議がない場合でもアメリカとの協力は入っているというなら入っていると答えてください。——いや、答弁されたお二人のどちらか。
  134. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) いや、私も答弁していますから、答弁します。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 そうですが。短くね。池田さん、大体長過ぎるんですよ、あなたの答弁は。
  136. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) これは、私ども想定しているのは、国連決議のある場合のことを想定しております。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 場合のみですか。
  138. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 場合を想定しております。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 のみですか。
  140. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) そして、日米協力、これは当たり前でございます。このガイドライン全体が日米防衛協力に関するものでございますから日米協力でございます。そして、そもそも、このガイドラインの前の方にも書いてございますけれども、これは国連憲章その他の国際取り決めとは合致するものだと。安保条約もそうでございますけれども、このガイドラインもそうでございます。  それで、原案ではあったが、今この案ではどうだというお話でございますけれども、私どもはいろいろこれまで米側協議をしてまいりましたけれども、それを今回中間的に取りまとめたわけでございまして、このお示しいたしましたもの以外に原案とか、それ以外のものがあるわけじゃございません。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 臨検という問題は、まず停船を求めるわけですね、停船を求める。その船が、つまりアメリカ戦闘を行っている相手国の食糧を運ぶのか武器を運ぶのか弾薬を運ぶのか、怪しいと思うから臨検するわけです。停止を求める。しかし、逃げた場合どうするんですか、逃げた場合。それを追っかけていってつかむんですか。どうするんです、林さん。簡単に一言で。簡単で結構です。
  142. 林暘

    政府委員(林暘君) ここに書いておりますのは、まさに国連決議、基本的には国連決議でございますけれども、そういうことで、そういう措置が締約国に要請され、ないしはそれを受任することを締約国に要請している場合にそういうことが可能となる行動をとるということでありまして、その行動が具体的にどういう活動をし、どこまでのことをやるかということはここでは何も書いておりませんし、それは今後の検討の問題であろうと思っております。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 久間長官、済みません、きょうの質問、私の方で準備していた半分ぐらいにしかならないんですよ、質問したのが。それで、お聞きするからぜひ出てきてくれと言ったのに、次の機会にまたひとつよろしくお願いしたいと思います。  私は、今言った臨検の問題にしてもそうですが、それからさっき言った機雷の除去の問題についてもそうです。さらには、先ほどの情報の提供の問題についてもそうですが、ここで問題になっているのは、例えば物資の補給だとか何かの場合のところには武器と弾薬は除くと書いてあるんですよ。大きな問題になったら武器と弾薬は除くとちゃんと例外をつけているんですよ。ほかの場合になぜ今言ったような例外をつけないんですか。  大体これらの問題というのは、結局アメリカ側が最も強く要求している内容ですよ。武器の補給の問題についてはアメリカからそれほど強い要求がない。新聞でも報道されている。だから、その場合にはこの例外をつけたと。ほかの場合には例外をつけていない。これはアメリカ側の強い要求があるからですよ。臨検にしたってそうです。いわゆる情報提供にしたってそうですよ。さらには、先ほど問題になった機雷の除去の問題にしたってそうです。だから、結局はアメリカの強力な要求に基づいて戦争マニュアルをつくったと。そういう方向に今進みつつある。だから、極めて危険な事態なんです。  私は最後に大森長官にもお話ししておきたいけれども、あなたが一生懸命九条の条項を守って、武力行使と一体にならないようにというガードがかたいと、けしからぬといって大分あちこちから批判が来ているようですね。新聞で見ました、私は。本当かうそか私は知りませんよ。だけれども、そうならないで、あなたは法制局長官なんですから、憲法を守る番人として毅然とした態度を私はとるべきだと思うんです。あいまいな態度をとるというようなことは日本の進路にとって極めて重大なことだ。このことを私は厳しく申し上げておきたいと思うんです。  きょうは質問の途中で時間が足らないもので、大分厳しい言い方を申し上げたりして済みませんでした。終わります。
  144. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は、そういう厳しい問題ではなくて、どちらかというと肩の凝らない二、三の当面の一般問題を取り上げたいと思います。そうは言ってもそう簡単ではないかもしれませんが。  第一に、青木前ペルー大使の最近の発言についてであります。これを言いますと、何だまたかと皆さん方思われるかもしれませんが、私もいいかげんうんざりしてもう終わりにしたい、こう思うんですけれども、遺憾ながら青木大使の方から世間に向けて、あるいはマスコミに向けて、あるいは世界に向けて、国会に向けて弾が飛んでくるものですから、これは撃ち返さざるを得ないんだろう、こう思います。国会の名誉にかけても物事はやっぱりはっきりさせておかねばならないと思います。  実は、六月九日のニューズウイークに青木大使のインタビュー記事が載っておりまして、これは大体の方が気がつかれておられると思いますけれども、たまたま見逃したという方もおられると思いますので、はっきりさせておきたいと思います。こういうことなんですね。  私は日本の世論のスケープゴートにされたのかもしれない。もし、危険を無視して不必要なパーティーを開いた愚かな大使がいたから事件が起こったのだと日本人が信じているなら、平和主義のぬるま湯や内向きの志向から抜け出すことはできないという発言があります。それから、後悔しているかという問いかけに対して、大使はないと、私は最善を尽くしたと、こういうふうに答えておるわけであります。  前段は若干意味不明ですけれども、要するに青木大使に対して危険を無視して不必要なパーティーを開いた愚かな大使だと、こういうふうな考えをしている、見方をしているとすれば、それは間違いだということを彼は言おうとしたんだと思いますが、これはおかしいわけで、私はもう最初から一貫して彼はまことにもって愚かな大使である、危機意識がゼロである、こういうふうな見方をしておったわけで、別に事件が解決してから慌ててバッシングに走ったわけじゃないんであって、去年の暮れから私はこういう言い方をあちこちでもしておりましたし、当委員会でもした覚えがあります、もちろん言葉は多少控えておりましたけれども。  これは一体どういう考えに基づくんだろうかと。これは六月九日であります。青木大使について私が若干調べてほしいということで、外務省の官房長が当委員会で釈明なさったのは六月三日でありますから、三日から九日の間にこのインタビューは行われたんだろうと思います。仮にそうでないとすれば、三日以前に行われたとすれば、三日から九日まで六日間もあるわけですから、この記事を差しとめることは青木氏はできたわけでありますが、それをしないでこれを発表させて、世界に向けて何か自分は立派なことをやったんだ、最善を尽くしたんだということを彼は知ってもらいたかったんだろうと思うんですね。  前回の外務省官房長の釈明文ですか、これを読みますと、はっきり警備の問題についても手抜かりがあったと、大変申しわけなく思っておって責任を痛感していると、委員会の場で申し上げたとおりであると。テレビでの自分の発言が自分の心情と違った形で受けとられたのであれば自分の意図するものではない、申しわけないと思うと。こういうふうに自分の責任をはっきりと認めておるわけでありますが、国会に来ると責任を認めて、世間に行くとあんなものは何だと、自分は最善を尽くしたんだと言っている。非常におかしい。どっちかでうそを言っているわけですよ、どっちかが本心で。  私は率直に言いますと国会でうそを言っているんじゃないかとしか思えないわけです。あそこは厳しいことを言うからちょっと頭を下げておけと。自分の本心は世間の人たちに、世界の人たちに知ってもらえばいいんだと、そういうおつもりではないかと疑いたくなるわけであります。  彼が官を辞して民間人の立場で発言するならば、何を言ってもそれは彼の言論の自由でしょう。人様の名誉を棄損しない限りはそれはそれでいいんですけれども、彼はいまだ公務員の身分を持っておるわけでありまして、外務大臣の指揮監督下にあるわけであります。外務大臣も彼の発言については国会に対して責任があるわけでありますから、こういうどっちが本当かわからないことは大変困るわけであって、どっちが本当なのか、こういう発言について外務大臣は当然彼に対して真意を問いただして、しかったか褒めたかよくわかりませんけれども、そういう措置をとったと思いますので、ひとつ教えていただきたいと思うんです。
  145. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 基本的に先般官房長からお答えしたとおりでございます。そして、なおこの事件についての詳細な調査委員会をつくって進めてまいりまして、ごく近々その報告を取りまとめ発表できることになると思いますけれども、そういったことをまず申し上げておきます。  今具体的に御指摘になりましたニューズウイークの記事でございますが、それにつきましても、青木大使の言わんとしたところは、いろいろな困難な状況あるいは危険はあるけれども、それじゃそういうことがあるから大きな会合をするなと、外交活動上大切な行事を一切やめておけばそれでいいのかと言われると、そういうことではないでしょうと。やはり外交活動の重要な一環としての行事は行う必要があるんだというところに力点があったんじゃないかと思います。  しかし、一方において、治安状況あるいはその他の状況についての十分な情報の収集が行われ、そしてまたそれを踏まえた十分な警備体制等がしかれておったかどうかという点については、これは結果としてああいう事件が起きたわけでございますから、そこのところについては一〇〇%問題がなかったとまでは言っていない。むしろ、その点については、調査の段階でもそうでございますが、当委員会における発言においても、あのようなことが起こったと、そういった点ではやはり必ずしも万全とは言えなかったのではないかという思いはあるんだと思います。
  146. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私は大臣の感想を聞いておるわけじゃないのでありまして、大臣の指揮監督下にある公務員である青木大使にこのニューズウイークの記事について問いただしたことは間違いないと思うんです。そのときに青木大使がどういう答え方をしたのか。国会では本当のことを言って、こちらがうそですよと言ったのか、その逆で国会ではいい加減なことを言いまして、本心はあの記者会見その他で述べたとおりでございますと言ったのか、そのことを聞いておるわけであります。あなたの感想ではないんですから。
  147. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) その点につきましては、先ほどの御答弁の中でも申しましたけれども、調査委員会の取りまとめをごく近々行い、発表させていただく段取りになろうかと思います。その中で全体としての今回の事件の経緯、それに伴う責任の有無等についても明らかにさせていただきたいと存じます。
  148. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ちょっとおかしくないですか。私はこのニューズウイークの記事につきまして問いただしておるわけであって、青木大使が外務省の一般的な調査についてどういう答え方をして、その結果を取りまとめて近々報告する、そういうことを聞いておるんじゃないんです。これだけの記事が出れば、やはり監督者とすればこれはいささか問題ではないかと。国会であれだけはっきりと謝罪をした、責任を痛感すると言った、それと食い違っておるのではないかと。うるさい国会議員にまたこれを取り上げられたらどうするかという観点から、すぐ彼を呼んで問いただしたでしょうと、こういうことを聞いておるんです。それじゃ、最近問いただしましたか。
  149. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) その記事との関連において私は直接真意を聞くということはいたしておりません。
  150. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 なぜいたさなかったんですか。——いや、大臣に聞いているんですよ。
  151. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) その点につきましては、既にそれまでの段階におきまして青木大使の考えというものを聴取しておりますので、その記事でどういうふうに読み取るかでございますが、私といたしましては青木大使の記事におけるポイントというのは、先ほども申しましたように、困難な事態、情勢というのは一般的に言いましていろいろあるけれども、しかしそういった困難あるいは危険の可能性があるからといって外交活動そのものをとめてしまえばいいんだというわけじゃないんだという点にポイントがあると考えたからでございます。
  152. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 くどいようですけれども、六月三日に外務省を代表して官房長が青木大使を尋問した結果を報告しておりまして、この中にはもうはっきりと責任を痛感している、警備に手抜かりがあったということを言っておるわけですけれども、こういう前提で彼が記者会見をして、こういうインタビューの記事が出たとはとても思えないわけです。何しろ後悔していることはない、最善を尽くしたと。これは要するに自分は過失がないということをはっきり言っているわけでしょう。  外交上のパーティーが必要だと、そんなことは私だって知っていますよ、必要があるから開いているわけであって。ただ、開くについては周囲の状況考えて、治安情勢を考えて警備をやって開く、これは子供だってそうするわけですから、そんなことがあるから一切開くななんということはだれも言っていないわけなんです。  国会に対して報告した直後にこういう記事が出れば、だれでもすぐ本人を呼んで、大使というのは大変偉いんです、認証官ですから。官房長なんてとても比べ物にならないんです。事務次官よりも上ですから、やっぱり大臣しかいないんです、彼に対して直接物を言えるのは。ということになれば、御自分で直接呼んで、三分もあればいいわけですから、どっちがおまえ本当なんだ、こう聞けばいいんですから、国会に対してこの前こういうふうな報告をした、あれでいいと思っておったらどうもそうではなさそうだ、一体どうなんだということを聞いて、彼が答えて、ああ、そうかと。それだけのことなんでしょう。大変お忙しいようですけれども、二分や三分の時間がとれないとは思えない。なぜそれをやらなかったんですか。
  153. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 紙面に出ている文字は委員今御指摘のとおりかもしれませんけれども、やはりインタビュー、あるいはそれをまとめて記事にする場合に、正確に文字どおりの発言が記載されているかどうかということもいろいろございますし、また発言の根っこにあります気持ちあるいは考えというものもやはりその状況の中でいろいろ表現されるわけでございますので、単に発せられた言葉、あるいはそれをもとにして記述された言葉の一部だけをとらえて、そこを強調してというのはいかがかと思います。  私は、全体として見まして、彼はこのような事件が起こったということについては非常に責任は痛感しておるわけでございますし、またこういった事件が起きましたので、情報の収集あるいはいろいろな警備の体制について万全であったかというとそうではなかったという認識は持っている、こういうことは承知しておりますので、したがいまして記事になりましたインタビューのポイントも、重点も、彼としては重要な外交活動はやはりそれとしてやらなくちゃならないんだというふうな考え方があったというふうに考えるわけでございます。
  154. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 どうも全部御推測で申しているんじゃないですか。本人はこれが本当である、こう言うかもしれませんよ。全部御推測でしょう。直接問いただして、どうなんですかと、それだけのことをどうして手間暇を惜しむんですか。やっぱり監督者としてこれぐらいの責任はあるでしょう。監督責任を問われても仕方ありませんよ。パーティーはそういう感じで開いたんだろうな、ああだろうな、こうだろうなという暇があれば、ちょっと本人を呼んで聞く、それだけのことですから。そして、本人の本心がどうなのか、国会で答えたことが本当なのか、いや、それはうそでこっちが本当なんですと言うのか。それならそれでまた我々としても対応のしようがあるわけです。  どうも話がくどくなって恐縮ですけれども、そこをはっきりさせてください。その点だけで結構ですから。本人について今まで聞かなかったとすれば、きょうにでも早速お聞きになりますか。そして、その結果をできたら国会に報告してもらいたいんですけれども。——ちょっとあなたは監督権がないからだめなんです。大臣の問題ですから、これは。
  155. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) その点につきましてはこれまでに青木大使が当委員会でも答弁をされましたし、それから私自身があるいは調査委員会等を通じましていろいろ本人から聞いてきたところから、私どもは、彼自身このような事件が起きたことについて責任は痛感しており、そしてまた情報の収集なり警備の体制について万全ではなかったというふうに認識している、このように信じておりますので、そのインタビューを踏まえた記事の叙述は叙述といたしまして、私は青木大使の気持ちはそういうことであると。そして、先般当委員会でも佐藤委員から御質疑があって当方からお答えしたとおりである、そのように確信しておりますので、あえて改めて問いただすまでもない、こういうふうに考えた次第でございます。
  156. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 じゃ最後にお願いしておきましょう。  問題がきちっとけりがつくまでにこういう余分な発言はしないようにと、それぐらいは監督者として言えるんじゃないでしょうか。世間からあるいは国会議員から誤解を招くような発言、これは新聞記事が悪いんだ、ニューズウイークが悪いんだと言い出せば切りがないんですけれども、もともと発言者というのはインタビューの際には後で原稿を取り寄せて、誤解を招くようなところはきちっと訂正した上でやるのが当たり前のことですから、責任のある人は。そういうことはやらないでおいて、あれはおれの本意ではないと言ったってそれは通用しないわけです。  いかがでしょうか。青木大使に対して、少なくともけりがっくまではおまえ余計な発言は一切するなと、少なくとも佐藤議員に対して誤解を与えるような発言はするなと、それぐらいのことは注意していただきたいと思うんです。大丈夫でしょうか。
  157. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私どもかねてから、こういう大きな事件であり、またそれにかかわった青木大使のお立場というものを考えますと、やはりいわゆる世間との対応、とりわけこういった報道への対応につきましては十分に注意をして誤解を招かないように対処されることが必要だということは申しておりますが、また今改めての御指摘でございますので、改めてそのように念を押したいと思っております。
  158. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 それでは、またがらりと問題を変えまして、海外在住日本人の選挙権の問題についてお尋ねしたいと思います。  これもまた私、この委員会で取り上げるのが五回か六回目だと思いますけれども、何かつい最近法案が衆議院の方に提出された、こういうふうに聞いておりますが、そのとおりでしょうか。
  159. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) 去る六月十日に閣議決定をいたしまして、政府案として国会に提出させていただいたところでございます。
  160. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 今国会が終わるころになって提出されたのは一体何なんだろうかなと思わざるを得ないわけでありまして、いかにも廃案見込みでやっているのか、継続審議見込みでやっておるのか、今国会中に成立させるというお考えがあるとすれば、もっと早い時期からきちっとした法案を出して議論をしていただいて、そして今国会中にと、次期国会があるからなんということは考えないでやっていただきたかったかなと思うわけですが、なぜそんなにおくれおくれになって、この会期間際になって出てきたんでしょうか。
  161. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) 在外選挙制度につきましてはいろいろ経緯がございますが、平成六年以降、与党三党の政治改革協議会におきまして協議が進められ、また各党においても論議がなされてきたところでございます。  本年四月三日に設置されました与党選挙制度協議会におきまして在外邦人の選挙権問題が最優先課題の一つとして協議が進められ、去る五月二十二日の同協議会において三党の合意がなされたところでございます。  自治省といたしましては、このような各党間における協議の経緯を踏まえ、外務省等と協議の上、在外選挙法案を取りまとめ、先ほど申し上げましたように、去る六月十日、国会に提出いたしたものでございまして、御理解を賜りたいと存じます。
  162. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 やむを得ない理由があったとすれば、それはまたやむを得ないことだろうと思います。  そこで、簡単で結構ですけれども、今問題になっている法案の概要だけでもちょっとお知らせ願えればと思います。
  163. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) どの程度時間をいただけるのかあれですが、簡単に申し上げます。
  164. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 極めて簡単で結構です。
  165. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) 政府案の方を申し上げます。  まず、対象とする選挙でございますが、本則では衆議院議員の選挙及び参議院議員の選挙としておりますが、当分の間、比例代表に限るということにしております。それから、対象者でございますが、年齢満二十年以上の日本国民で、引き続き三カ月以上その者の住所を管轄する領事官の管轄区域内に住所を有する者ということで、ただし将来国内に住所を定める意思を有する、いわゆる帰国意思を有する者に限るというふうになっております。  次に、在外選挙人名簿でございますが、市町村が在外選挙人名簿を調製するわけでございますが、被登録資格を有する者は、原則として国内において最終的に住んでいた住所地、または本籍地、これ例外でございますが、に選挙人名簿登録をするということでございます。  それから次に、在外投票の関係でございますが、原則は在外公館投票でございまして、在外公館の長の管理する投票を記載する場所において行うことを原則としますが、例外として一定の地域、つまり在外公館投票が困難な地域として別に定める地域に居住する者は郵便投票の道を開いておりますし、また一時帰国したとき、国内でたまたま選挙があったときは、そのときも国内で投票できる。  概略、以上のようなことでございます。
  166. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 ありがとうございました。  これから国会審議の際にもし参加する機会があれば私の意見も申し述べたいと思っております。ここでまたお尋ねしてもなかなか答えにくい面もあろうかと思いますけれども、極めて基本的な問題を一つだけ。  比例代表だけに限定した、当分の間だそうでありますけれども、法律で当分の間というと大体永久をあらわすことでありますから、まず選挙区制についての選挙権を得ることは困難だろうというふうに思われます。なぜ比例代表だけに限定したのか、その理由をまたお教え願えればと思います。
  167. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) 御指摘のように、またただいま私が御説明いたしましたように、今回政府が提出いたしました法案におきましては当分の間の暫定措置として衆参の比例代表に限るとしているところでございます。  その理由でございますが、衆議院の小選挙区選挙及び参議院の選挙区選挙はいずれも候補者個人の方のお名前を記載し投票する制度でございます。そういったことから、投票に当たりましては、その方がどういう政党に所属するか、その政党の主張とか政策のほかに候補者個人の氏名、政見等が周知されることが必要でありますが、選挙運動期間、衆議院の場合は十二日間、参議院の場合は十七日間でございますが、こういった短期間に海外の有権者にこういったことを周知することは非常に困難な状況にあるということでございます。  これに対しまして、比例代表選挙の方は政党名を記載し投票する制度でございますので、政党の主張とか政策、これらは現状におきましても常時新聞とかテレビ、ラジオ等を通じて海外に伝わっているところでございまして、選挙期間中にあえて特段の措置をとらなくても海外の有権者もある程度こういった政党情報は得られる、こういうふうに考えているところでございます。  このようなことから、在外選挙につきましてはまず比例代表選挙について実施し、選挙情報の具体的な周知状況や在外公館の体制などを見た上で、次の段階として衆議院の小選挙区選挙及び参議院の選挙区選挙の実施を図ることが適当である、こういうふうに考えて御提案いたしたところでございます。
  168. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 諸外国の例で考えてみますると、こういうふうに選挙を限定しているような国があるだろうか。比例代表だけに限る、こういうやり方をしているような国があるだろうか、こういう質問です。
  169. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) つぶさに調べたわけではございませんが、我が国の場合、二院制をとっているということ、それからそれぞれ衆参とも選挙区選挙と比例代表選挙とに分かれているということ、そういった点が諸外国と違う状況でございますので、今御指摘の点については、今回と同様の措置を外国でとっているかということについては承知いたしておりません。
  170. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 そうですが。いずれこの問題は次期国会で議論になることだろうと思います。  私の意見だけちょっと述べさせておいていただきますれば、政党名だって、いざ選挙になりますといろんな政党が乱立するわけですよ。自民党だ、社民党だ、こういう有名な政党は諸外国にまで響き渡っているかもしれませんけれども、いろんな政党があるわけで、第二院クラブなんて恐らく知っている人は在外邦人の中ではだれもいないんじゃないかと思うぐらいであります。そういうふうに政党についてだって知りにくいとかわかりにくいとかいう問題があるわけで、その点は全く私は選挙区制度とそんなに、程度の問題だろう、こういうふうに思うわけです。  要は、海外にいる邦人たちの熱意の問題、関心の問題、選挙権を行使したい人があれば自分の選挙区でだれが立候補しているんだと問い合わせをする。それに対して在外公館が最大限の便宜を図る。名簿ぐらいは用意しておいて問い合わせにすぐ送ってやる、あるいは海外にある邦人会などの協力を得て、そこにまた名簿、リストを置いておいて照会に応ずるとか、幾らでも可能なんだろうと思うんです。権利の上に眠っているような人まで一生懸命権利を呼び覚まして行使の機会を与えてやる必要もないわけですから、調べてくれというだけで私は事は足りるのではないかと。その場合に、多少の便宜は図りますけれどもねと、こういうことだけなんです。  どうも何か、選挙区制にまで投票権を与えると選挙運動に非常に熱心な特定政党に有利になるんじゃないか、こういうふうな言い方もあったように聞いておりますけれども、そんなことを言ったら国内選挙もまた同じですから、選挙運動に熱心な背後団体がついている政党が有利になる。じゃ、その政党関係には投票を与えるなというようなことにもなりかねないわけですから、全く同じことなんで、海外だから制限しようとか国内だからしようがない、こういうような考え自体が私は正しくないんじゃないかな、こういう気がしております。  この段階で自治省と議論しても始まらないわけですから、私のような意見があるということも承知しておいていただきまして、いずれ将来の審議に備えていただければと思います。  ありがとうございました。終わります。
  171. 椎名素夫

    ○椎名素夫君 ガイドライン見直しの問題ですが、これは秋に向けてまだ作業中であるということで、どういうものになるかということは将来の日本安全保障にとって大変大事なことであると思っております。したがって、できるだけいいものができるようにもう一段の御努力をぜひお願いしたいということをまず申し上げて、きょうは専らこちらが一方的にまた意見を申し上げるということにとどまるかと思いますけれども、御勘弁を願います。  日米安保関係というのは四十年続いたわけですが、非常にうまくいったということになっているわけですね。事実そうだろうと思うんです。しかし、うまくいったというのは、要するに軍事だけじゃなしに、いろいろな要素が日米安保条約の中にはありますけれども、一番やっぱり根幹というのは安全保障の問題である。その安全保障の面で一度も実地にテストされたことがないという幸運に恵まれたということは非常に大きな要素だろうと思うんです。  私は前にもどこかで言ったことがありますが、日米安保というのがあって、日本有事のとき、それから周辺で事が起こったとき、日本は安心だということで、天井についているスプリンクラーみたいなもので、天井を見上げるとちゃんとスプリンクラーの水の出口があるから、火事が起きても水がジャーと出てきて消してくれるようになっておるということでずっと安心してきて、事実火事も起こらないできたわけです。  よく考えてみると、本当に水道管につながっているかどうかというのはわからないようなところがあったわけでありまして、それからテストしてみたことがない、天井裏へ入ったこともない。そこで、いざというときがもしあるとすればどうするかということはずっと話にはなっていたんですが、火が出なかったものですから、それはやっていなかった。  冷戦が終わって、去年、橋本さんとクリントンさんがこれやっぱり大事なんでもう一度きちっとやりましょうと。簡単に言えばそういったわけですが、この機会にもう一度そこのところをよく調べようじゃないかということだろうと思うんですね、このガイドライン見直しというやつは。  別の例を言いますと、本当は安心のためには福岡まで行ってなきゃいけない、だけれども当面切符を買うお金も余りなかったので、この前のガイドラインでは名古屋あたりまでは切符が買えたということで、その後一体どうするんだと、歩いて行くのかというような懸隔があったところを、もう少し先まで行けないかというようなことでいろいろな作業をなさっているということなんだろうと思うんです。  今まで成功する同盟関係であったというのは非常に運のいいことだったんですが、今のこの作業でとりあえず今御報告のあったようなことをさまざまな条件をつけながらやっておられて、そして秋ごろには、防衛小委員会ですか、今実際作業をやっているのは、そこでこれでいいだろうというので両方が同意をして最終報告が出るという運びになる。よかったよかったといって手元にあればシャンパンぐらい飲んでお喜びになるんだろうと思うんです。そこらあたりは割に簡単なことなんでしょうね。というのは、大体専門家の集まりでありますし、アメリカ側の人たちは日本との交渉ということについてもエキスパートな人が出てきているので、前のときに比べれば大分よくなったというようなことを言う連中もいたりして、言ってみれば今度は岡山ぐらいまで来たかなという感じじゃないかと思うんです。  しかし、一番大事なことは、例えばさっき行き先は福岡だと言いましたが、福岡でも長崎でもいいんですが、事が起こるのはあっちの方なのに、岡山あたりまでの切符しか買わなかったというような話になると、今までのようにうまくいって、運がよくて何事も起こらないときはまた十年シャンパンが飲めるというような感じになるんですが、起こったときにどうするかという話をしているわけですね、これ。  きれいな紙を書き上げるということは、この交渉においてのチームの同意ができるというそこにとどまるわけですが、さっきも言いましたように、その同意を得るということは難しいといっても割に簡単なことである。しかし、現実に事が福岡で起こったということになったときに、日本はどこにいるんだといったら、いやまだ岡山ですということになると、この作業をやったチームの人たちがそのときどう考えているかというふうなことは余り問題じゃない、もう消し飛んでしまう。  アメリカという国の癖からいいまして、重要なのは、やっぱり議会が何を言うか、そしてアメリカの世論一般がどういうように考えてどういう反応をするかということであって、そのときに、なんだまだ岡山にしかいないのかというような話になったら大変だと私は思います。これがこういう作業の一番重要な核心部分であるということをよくお心得になって、この作業は最終に向けて進めていただきたいと私は思います。  しつこいようですが、さっきのもう一つの例を取り上げると、天井に潜って水道管が本当にこのスプリンクラーの蛇口まで来ているかというのを見てみたら、大分はるかかなたまでしか来ていなかった。これじゃいけないというのでもう少しパイプを継ぎ足してきて隣の部屋までは今度は引けたといってシャンパンを飲むというと、この部屋で火が出たときに水が出てこないということになると困るんですね。これがこういう作業をやる本当の目的である。それを忘れて、とにかく隣の部屋まで来たんだから、前よりは随分近くまで水が来ているんだしといってみたところで役に立たない。あるいは、福岡で事が起きたときに岡山にしかいないというんだったら、これもまた役に立たない。そういうことにならないようにひとつぜひお願いをいたしたいと思うんです。  私の個人的な余り権威のないことでありますけれども感じを言いますと、まだ少し隔たりがあると思っております。なぜならば、先ほどのいざというときの作戦計画というものの中から、今アメリカ日本を完全に除外して考えることにしている。あしたの天気、雨が降ったらどうするか、雨が降ることを勘定に入れて、あるいは雨が降らないことを勘定に入れて運動会をやろうと言っていて、雨が降ったらめちゃくちゃになってしまうというような当てにならない要素に日本がとどまっている限りは、恐らくそのときの役に立たないし、また同時にプランというものがないと訓練もできないんですね。  そういうもろもろのことを考えて、目標というのは福岡で起こる事態、この部屋に火が出たという事態についてどうしておくかということにあるということを、一生懸命いろいろああでもないこうでもないという議論をやっているとそういうことを忘れてしまって、福岡なんて言っていたけれども、ここもいい場所だし、しばらく岡山で暮らすかといって住所登録なんかやってしまうようなことがないようにぜひお願いをしたい。  これだけ申し上げて、私の質問は特にありませんので、終わりにいたしたいと思います。
  172. 矢田部理

    ○矢田部理君 ガイドラインについて伺いますが、冷戦の時代にはソビエトという強大な軍事力を持つ国が日本の近くにあって、その意図は別として、潜在的脅威があるということが自衛隊軍事力を増強したり安保条約を存在させる理由とされてきたように思うのです。冷戦が終わってから後、現在も含めてでありますが、潜在的脅威で結構ですが、日本周辺に潜在的脅威をもたらすような国はあるのでしょうか。防衛庁長官に伺いましょうか。
  173. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 現在、潜在的脅威を感じるような国は考えられません。
  174. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、防衛白書などでも脅威という言葉は使わずに、このガイドラインでも出てくるのでありますが、この地域には不安定性と不確実性が依然として存在していると。この地域というのはアジア太平洋地域を文章上は指しているように思われるわけですが、という用語になったわけですね。  この不安定性とか不確実性というのは、従来言われてきた脅威というよりも水準の低い状況というふうに伺ってよろしゅうございますか。
  175. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 水準が低いといいますか、そこのところはとり方でしょうけれども、やはり紛争になり得る可能性は依然としてあるということだと思います。
  176. 矢田部理

    ○矢田部理君 紛争になり得る可能性と日本に対して脅威とか直接武力攻撃とかというのとは少しく質が違うと思うのですが、その辺はどういうふうに説明されますか。
  177. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 裏を返して言いますと、安全保障環境が確立されるには至っていない、そういう表現を白書等では使っていると思いますけれども、我々としては、やはり国民の生活その他を考えましたときに依然としてそういう不安定な状況の中に置かれておる、そういうふうに理解しておるわけでございます。
  178. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれにしても、脅威というよりは何か低いレベルというふうに私は受けとめるわけです。  ところで、このガイドラインの前提となるこの地域における不安定性とか不確実性というのはどこの国やどこの地域でどんな不安定性やどんな不確実性があるのか、もうちょっと具体的に、情勢分析ですから、あるいは事態認識ですから、説明いただけませんか。
  179. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 具体的にどこの国にこういった不安定要因があるということはなかなか申し上げにくいところがあるわけでございます。逆に極めて安定しているという状態がどういうことかというふうに考えてみますと、その地域の国々が全体として同じような価値観を持ち、同じような国家や社会を運営するシステムを持っており、そしてまたお互いの関係がいろいろな分野で、経済の面、政治の面等々で利害が一致する部分が極めて多くて、相互に友好な関係をきちんと維持していくことがその地域の国々にとっての大きな利益になっているという基礎がまずあると。そうはいいましても何かの事態が発生するおそれが、おそれといいますか可能性を全く排除しないという点はあるわけでございますが、そういった事態に備えてもいろいろそういった危険を排除していくような仕組みがきちんとできておるというようなことであれば、それは非常に安定した地域であると言えるんじゃないかと思います。本当の意味でそういった理想的な状況ができている地域が今地球上にあるかといえば、一〇〇%はないとは思います。  例えば、ヨーロッパの場合は、先ほど言いました価値観なりシステムとしてもいろいろ似通った国が多うございます。利害の関係も共通するものが多うございます。そしてまた、経済の面でもEuというような仕組みが次第に大きくなっている。それからまた、安全保障の面でもNATO等ございます。しかし、それからさらに言いますと、国家間の問題だけではなくて、国家とは離れた民族の問題であるとか、いろいろな問題が不安定な状況をつくり出すということもございます。  そういったいろいろな要素を考えてみますと、アジア太平洋の地域は決して完全に安定した状態にあるとは言えないと思うのでございます。
  180. 矢田部理

    ○矢田部理君 具体的に答えてくださいよ。抽象的に、ヨーロッパの説明まで求めているわけじゃありませんから、余り冗漫に答えられると時間がなくなる。  そこで、じゃ朝鮮半島は不安定ですか。
  181. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 現在、朝鮮半島は極めて安定した状態にあるとは言えないと思います。
  182. 矢田部理

    ○矢田部理君 中台関係はいかがでしょうか。
  183. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私どもは、中台の関係につきましては、二十五年前の日中共同声明の際に中国立場というものに理解を示しております。そしてまた、この関係は将来的に両岸の当事者、中台の間の話し合いによって平和的に解決することを期待している、そういうことでございます。
  184. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると、この認識の前提となった不安定性とか不確実性という中身にはなっていないということですか。
  185. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) そういうことにならないことを期待しております。
  186. 矢田部理

    ○矢田部理君 期待を聞いているんじゃないんだ、入っているかいないかと聞いている。
  187. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほども申しましたように、両岸の当事者の間での努力によって完全に安定した姿になることを期待しておりますし、基本的に両当事者もそのようなことを目指しているんだと思います。具体的な取り組みの手法などについては立場の相違はございましょうが、そしてまた国際社会としてもそのような方向に進むことを期待しているところでございます。
  188. 矢田部理

    ○矢田部理君 期待しているというのは現状はそうなっていないという裏返しの表現だと思います。  その不安定性とか不確実性というのは、冷戦時と比べて今日それが高まっているというか、不安定な要素がより広がっているとか不確実性が一層大きくなっているとかいうような情勢認識でしょうか。
  189. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) それは一概に申せないと思います。例えば、我が国の安全を脅かすような事態を生み出す可能性があるかどうか、危険があるかどうかという観点からいえば、少なくとも言えますことは、冷戦の構造のもとで全世界を巻き込むような戦闘が起こるという可能性はかつては排除できなかったと思いますが、そういった可能性は現在極めて低くなっておると思います。  しかし、一方において冷戦構造下では顕在化することが避けられていたいろいろな紛争の要因、民族的なものあるいは宗教上のもの等々も含めて、そういったものが顕在化するおそれはむしろ高まったという面も世界全体としてはあるわけでございます。かつては、そういった要因を顕在化させるとグローバルな戦闘につながるおそれもあるということである意味での抑止が働いていたところもあったと思いますが、そういったたがは外れたという面はございます。  そういった意味からいいますと、冷戦の間では非常に大きな危険はあったけれども、安全保障をめぐる構造はかちっとしておって、そういった意味ではある意味で安定していた、危険をはらんだ安定状態だったかと思いますが、現在は非常に大きな危険は低くなったかもしれないけれども、見方によれば安定度はかえって低くなったという見方もできないことはないと思います。
  190. 矢田部理

    ○矢田部理君 冷戦時代のような脅威はなくなったと、極めて低くなったと、不安定、不確実性があると。しかし、これは冷戦時代だってあったわけです、そういうあなた方の説明を前提とすれば。冷戦が終わってから後、より不安定な状況が広がったとか強まったというふうには私は思えないし、特に冷戦時代ですらなかった日米防衛協力を一層強化しなきゃならぬほど不安定さが増したとか不確実性が強まったというような状況については私は理解しにくいのですが、何かそういう際立った状況はあるんでしょうか。強化しなければならないほどの強い理由はあるんでしょうか。
  191. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほどヨーロッパの例を挙げておしかりを受けましたけれども、やはり冷戦下ではむしろ顕在化することは抑止されておった不安定の要因が、あるいは紛争の要因が顕在化する可能性はむしろ大きくなったという見方もできるということを先ほど申しました。そうして、そういったものを抑えるために、どこに危険があり、ましてや脅威があるということは抜きにして、やはり地域全体の安定度を高めるためにいろいろな努力が必要であろう。そういった努力の一つとして安全保障に関する枠組みというものが重要だと思うのでございます。  それが、ヨーロッパの場合では多国間の、例えばNATOというような枠組みでございますけれども、アジア太平洋地域の場合には基本的には二国間の安全保障に関する枠組みというものがあり、それが多くの場合米国を一つの当事者としまして、それをかなめとしていろんな関連性を持っていくということがこの地域の安定に資するということがあると思います。  そして、今の段階で冷戦下でもやっていなかったような日米協力について新たな作業をなぜする必要があるかという点でございますが、その点は、やはり冷戦構造のもとでは米国も例えば北東アジアも非常に重要なフロントの一つと位置づけて、米国自身の力で対応するという部分が非常に大きかったと思います。もとより、その段階でも日米協力というのはあったわけでございますが、米国自身の対処する部分が非常に多かったと思うのでございます。  しかし、現在の状況のもとで、米国は依然としてこの地域安全保障にも責任は持っておりますけれども、そのために割く米国の力といいましょうか、そういった面についてはおのずから変化があると。そして、そういった変化の中で、今回のいろいろな後方地域支援等々の面、従来であれば米国独自でやった面についても日本協力を求めるというニーズが高まったという面もあろうかと存じます。
  192. 矢田部理

    ○矢田部理君 冷戦後の世界で不安定とか不確実性が全くないとは私も言いません。しかし、日米軍事同盟を、とにかく二国間同盟をより強化して対処しなければならないほど不安定さが増しているとか不確実性が広がっているという認識に私は立ちません。そういう不安定な部分があるとすれば、むしろそれを安定化に持っていくためにはどういう努力をするかと。平和の努力とか外交的努力がやっぱり基本的に求められなければならないので、このガイドラインの方向づけは逆の方向に行っているというふうに私は指摘をしておきたいと思いますが、各論がたくさんありますので、次に移ります。  安保条約六条を読んでみますと、日本の安全及び極東における平和と安全の維持に寄与するために米軍日本施設及び区域使用することが許されるとなっている。極東における平和と安全の維持ということが目的になっているわけですし、また極東という範囲が区切られているわけでありますが、今度の場合にはそれを超えて、日本周辺地域における平和と安定を維持するためというふうに変えたのはこの条項を超えるのではないか。それは、事態を重視したとか地理的要素を重点に考えているとかという説明はありますが、これを超えているのではありませんか。これが一つ。  それからもう一つは、そこでは「日本国において施設及び区域使用することを許される。」となっておりますね。ところが、今度のガイドラインは、単に区域とか施設使用するだけではなくて、米軍行動を積極的に支援する、後方地域支援などと言っておりますが、そこにまで踏み込むというのは安保条約上の根拠はないのじゃありませんか。この二つについて。
  193. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 日米の防衛面における協力というのは、中心は日米安保条約にかかわるものでございます。しかし、それのみに限定されるものではないと思います。  そういった意味で、今回のガイドラインにおきましても、新しい時代におけるいろいろなあり得るニーズというものに対応する防衛協力関係を含めているわけでございまして、今回、従来からの日米安保条約に基づく協力を基盤にしながらも、例えば経済制裁実効性を確保するための活動であるとか人道的活動であるとか、そういった面での協力も含めているわけでございます。  そのことをもって従来の安保条約の枠を超えているのかどうかという点でございますが、私どもは、安保条約あるいはその関連取り決め、あるいは日米安保体制そのものは一切変更するものではない。それはそれとして堅持いたしますけれども、必ずしも安保条約に直接根拠を持つわけではない活動も、グローバルなあるいは地域的な課題への協力をする日米両国関係からして、今回のガイドラインに入れているという点はございます。
  194. 矢田部理

    ○矢田部理君 繰り返し言うのも何ですが、六条で定めた日本義務日本の役割について、目的、範囲の上で超えている、これは周辺地帯という新しい概念をつくって。それから、施設区域の提供ということに限られておりましたのに、それを超えてさまざまな後方支援をやるということも、これは条約上の義務じゃありませんよ。六条は明確に今私が言ったことを規定しているのでありまして、日本及び極東の平和と安全を維持するために施設区域を使うことが許されるというだけのことであって、もしそれを超えて、今言ったような周辺有事とか武器弾薬の輸送を含む後方支援というふうなことになるとすれば、もう一つやっぱり大きな枠組みが新たに用意されて、あるいは着々とそれが進められているということになる。これを去年の四月の政治宣言やガイドラインレベルでやるというのは私は大変けしからぬ話だと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  195. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 確かに、安保条約六条で具体的な日本義務として明確に規定されているのは施設区域使用を認めるということである、それはおっしゃるとおりでございます。しかし、そのことをもってそれ以外の防衛面における日米間の協力、その中での日本米国に対する協力が認められないということではございませんで、やはりそれは日米安保体制の有効性を確保していくためにいろいろな協力はあってもいいんだと思います。それは必ずしも条約の条文に明確な義務としていなくても、そういった協力はあってもいい。それで現にこれまでもいろいろなことが行われておったと思います。例えば、共同訓練に際してのACSA、役務や物品の相互の提供というのもそういった協力の一つの姿かと存ずる次第でございます。  それから、周辺地域ということで広げたじゃないかというお話がございました。周辺地域の定義についてはもうあれこれ申しませんけれども、この点につきましては、例えば安保条約上の規定、それの運用におきましても、いわゆる極東条項についても、極東地域の安全や平和を守るための、そういった目的のための米軍活動のために基地を提供するわけでございますけれども、極東地域の安全や平和を守るための米軍活動の範囲というのは何も極東地域だけに限定されるわけではない。その地域の安定を守るためにはその地域外に対する活動というものもあり得るということは従来からの政府の一貫した見解でございます。
  196. 矢田部理

    ○矢田部理君 いろんな議論をしたいのですが、やっぱり極東の安全と平和というのと日本周辺の安全と平和というのは、事態に着目したか地理的範囲に着目したかという違いはあっても、やっぱり違いだけではなくて範囲も違うんですよ。  極東というのはフィリピン以北とかという従来の説明もありましたが、周辺ということになるともっと広い概念だと読まざるを得ない。インド洋とかペルシャ湾は除くということですが、例えば東南アジアは入るんでしょう、入りませんか。
  197. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 今周辺の平和と安全というふうに委員おっしゃいましたが、そうではございませんで、我が国の平和と安全ということでございまして、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすことがあるところと事態が発生し得るところということでございまして、特定の地域がそういった意味での日本周辺地域に当たるかどうかということを一概に申し上げるのは困難であるというのはかねてから申し上げておるところでございます。
  198. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一つ二つ伺っておきたいのは、米軍日本周辺周辺事態というようなことがあると行動を起こすことになる場合がありますね。その際、日本協力する範囲というのは極東に限られると、極東を超えて行われた周辺事態には日本自衛隊対応できないというふうに読めるんですが、いかがでしょうか。これは秋山さんに伺いましょうか。
  199. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今の御質問は、周辺事態における協力の中の米軍活動に対する日本の支援のうち後方地域支援について、かつここにも書いてありますように、この支援主体は自衛隊を含む政府、地方公共団体あるいは民間、その中の自衛隊というのを取り上げた御質問かと思います。  この周辺地域における米軍活動に対する日本後方地域支援というのは、委員今御議論になっております安保条約目的達成のため活動する米軍に対して行うということでございますから、これは基本的に安保条約六条の話でございますし、したがって極東における平和、あるいは安保条約六条には日本の平和に寄与するということが書いてあるわけでございますから、そういう活動に対して主として日本の領域において行われる支援、場合によりますと戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本周辺の公海及びその上空において行われると。そして支援主体は、もちろんここで自衛隊がやるということは規定しておるわけではございませんけれども、ここに予定されております後方地域支援というのは、別表にも示されておりますような内容であって、およそ武力行使とは関係のない支援を行うというものでございます。
  200. 矢田部理

    ○矢田部理君 「後方地域支援」というフレーズのところで、「日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。」と。だから、安保条約目的を超える周辺事態ということが理論上あり得る。安保条約目的というのは極東を中心に考えているわけですね、それが幾らか広がるかどうかは別として。周辺というのは極東だけではなくて、東南アジアにも広がる可能性をはらんでいるということから見ると、そういう周辺活動を行う米軍に対しての協力はこのガイドラインではできないということになりませんか。
  201. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 米軍活動に対する日本の支援、それが自衛隊による支援であろうと民間の支援であろうと、ここに書いてありますとおり、安保条約目的の達成のため活動する米軍に対しての後方地域支援ということに限っております。
  202. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、一体性の問題なんですが、武器弾薬の輸送は自衛隊が行うことができると、またするということになっているわけですが、これは戦場と一線を画するところまで持っていくのはいいと、画しさえずればいいと。武力行使と一体にならないからいいんだという法制局の見解があるんですが、ミサイルが飛び交うような今の時代の戦場で、一線を画すなんということが果たしてできるものでしょうか。それは、頭の中ではそういうことは言ったって。  それから、戦争の常識として言えば、時間がないから言ってしまいますが、補給路を断てとか兵たんをたたけとかいうのが戦争の基本になるわけで、戦場にいる米軍に幾ら一線を画したといって日本自衛隊が武器弾薬を運んでいくと、これ黙って見逃しますか。やっぱり敵対行為だということで反撃をすることもあり得るし、戦争に巻き込まれる可能性もあるということで、一線を画せばいいというような議論法制局もしているようだけれども、これは単にごまかしと違いますか。こんなことが戦争の近場あるいは現場付近で可能でしょうか。何か理屈のための理屈のような気がするんですが、これは防衛庁法制局に伺いましょうか。
  203. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 今御説明いたしましたように、周辺地域における米軍活動に対する日本後方地域支援は、その性格からいたしまして主として我が領域内において行われるということを考えているわけでございます。御指摘のように、場合によりますれば戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本周辺の公海及びその上空において行われることもあると考えているところでございまして、今自衛隊がということをおっしゃられましたが、もちろん自衛隊もあり得ると思いますが、一般的には民間の活用というようなことを米側は言っております。おりますが、そういうこともあり得る。  そこで、戦闘行動が行われている地域とは一線を画される地域ということは、まさに戦闘に巻き込まれないような地域ということを考えているところでございます。じゃ、どうやって一線を画される地域というものを考えるのかという点につきましては、今我々もいろいろ議論しておりますけれども、戦況、要するに制空権を確保しているかとか制海権ですとか、あるいは相手の国の攻撃力、時間とか距離とかいろんなことを考え得るかと思います。そういったようなものを考えた結果、まさに戦闘行動が行われている地域とは一線を画される地域というものを確定したい。そして、そこでおっしゃられるような活動も含めて、これは個々具体的にこれから議論していかなければいかぬと思っておりますけれども、そういったことも憲法上可能であるというふうに考えているところでございます。
  204. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 法制局の立場でただいまの防衛局長説明につけ加えることは余りないわけでございますが、結論的に申し上げますと、周辺事態において我が国戦闘地域と一線を画せないような事態になったということになりますと、これは当然の結論として予定されている後方地域支援は行えない。しかしながら、一方では、我が国が今度は戦闘に巻き込まれるわけでございますから、今度は自衛行動自体が問題になる局面かもしれないということは言えようかと思います。
  205. 矢田部理

    ○矢田部理君 これもいろいろ議論があるわけです。もっとしなきやなりません。  もう一つは、米軍自衛隊の基地使用を認めるわけですね。そうすると、民間の港や空港もそうなるわけですが、使用を認められた自衛隊の基地から米軍が直接出撃をするということになると、今の枠組みでは事前協議が必要なんですが、結局基地の使用を認めるということになれば、事前協議を形骸化することになりはしませんか。そして、直接出撃して、また戻ってくる、また出撃するということになれば、相手国から見れば当然これは武力行使のために基地の提供をしたと。ましてや、そこで武器弾薬を運んできて載せてやったとか、油を積んでやったとかということになれば、当然武力行使と一体性ということが問題になりはしないか。提供も含めて、そういう認識に立たざるを得ないと思うんですが、これはいかがでしょうか。ちょっと法制局に聞きます、これは。法制局に、一体とならないかと聞いているんです。一体性の議論にならないかと。
  206. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいまのお尋ねでございますが、そもそも今回の中間取りまとめにおきまして、検討対象としてそこまでのことをやると想定しているのかどうかということがございますので、その点につきましては私の立場で答えるべきことじゃないと思いますから外務省なり防衛庁に、まずそういう事態を想定して検討し取りまとめに掲げているのかどうかということは実施当局にお聞きいただきたいと思います。
  207. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 矢田部君、時間です。
  208. 矢田部理

    ○矢田部理君 この次の議論にしますが、これで終わりますが、基地の提供で、そこから出撃して行ったり来たりしていれば、やっぱり軍事基地の提供ということになるので、安保条約で認められているからといって国内法説明はつくかもしらぬが、外側からは説明はっかぬのですよということだけ申し上げておきます。
  209. 小山峰男

    ○小山峰男君 ガイドラインにつきまして御質問をしたいと思います。  まず最初に、このガイドラインというものの性格、一般的な協定というようなものとどういうところが違うのかということについて御説明をお願いしたいと思います。
  210. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 今回の中間取りまとめの中でも明定しておりますけれども、今回つくろうとしておりますがイドラインは日米協力の効果的な態勢を構築するための作業のためのガイダンス、そういった性格のものでございます。したがいまして、このガイドラインそのものが、日米両国政府に立法、予算あるいは行政上の措置をとることを義務づけるようなものではないと明確に書いてあるとおりでございます。したがいまして、この点で今御指摘のございました一般的な協定等の国際約束とは異なっているわけでございます。
  211. 小山峰男

    ○小山峰男君 私は、この具体化の場合には国内法制の整備とか、いろいろ出てくるというふうに思うわけでして、できれば協定というようなものを今後お考えいただいて、それで国会承認というような形に持っていくことが大事ではないかというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  212. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) このガイドラインの性格は先ほど御答弁したとおりでございますけれども、このガイドラインができ、そのガイダンスに従っていろいろ具体的に協力の方途を考え、またどのような措置をとるかということを当然その先の話として検討してまいります。その過程で、現在のいろいろな法令の枠組みの中では根拠が十分ではない、新たな立法措置を要するというものがあれば、別途その立法をお願いするといったことがあると思います。  協定という観点でございましたけれども、今申しましたように、このガイドラインに従ってやる具体的な措置についての検討の中で、もし仮に新たな協定を必要とするというような事柄が出てまいりましたら、それはやはり協定の形で国会にお諮りすることもあろうかと思います。しかし、一般的に申しますと、やはりこれまでございます安保条約その他の取り決めに大部分のものは国際法上の根拠というものはあるものと考えております。ただ、検討を進めてみて必要性が出てくれば、また協定の形でお諮りすることの可能性も排除するものではございません。
  213. 小山峰男

    ○小山峰男君 次に、現行ガイドラインとの大きな違いというのはどこにあるのかということをお願いしたいと思います。
  214. 折田正樹

    政府委員折田正樹君) 現行ガイドラインは二十年ほども前にできているものでございまして、現行ガイドラインに基づいて日米間で種々の研究検討がなされておりますので、今回のガイドラインはその経験を、その成果を踏まえたという部分がございまして、それだけその成果があらわれているという部分がございます。  それから、現行ガイドラインの三項、いわゆる極東有事と俗に言われる部分でございますが、今回はいわゆる周辺事態における日米防衛協力ということで、その辺が一層詳細に書かれているということがあろうかと思います。それからさらに、平素からの協力という部分でかなり詳細に日米安全保障関係での協力についての記載があるというところで新旧の違いがあるというふうに考えております。
  215. 小山峰男

    ○小山峰男君 私も現行と今度の改正案との対比表をつくってみたわけでございますが、例の周辺事態に対する対応等については今回はかなり詳しくなっている。そのかわり、日本有事等についてはかなり省略されているような形になっているわけです。十九年たつということですが、当然ガイドラインに基づいて研究とか協議とか、いろいろされてきているというふうに思っておりますが、その結果は日米安全保障協議委員会に報告し、その取り扱いは両国政府のそれぞれのというふうに現在のガイドラインはなっているわけです。  このガイドラインに基づいて、報告を受けて政府はどういうようなことをこの十九年間に対応してきたか。具体例として二つか三つ挙げていただきたいと思います。
  216. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) まず最初にちょっとお断りしたいんですが、中間取りまとめで「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」というところが現行ガイドラインに比べて非常に簡単に書いてあるという点は御指摘のとおりなのでございますが、それは簡略化したということではございませんで、秋の最終レポートには、これはもうかなり積み上げがあるものですから、それをベースにして、ここに書いてあるような新しい要素を織り込んできちっとしたものに書きたいという趣旨で、この取りまとめの段階では繰り返しになるので現在のガイドラインの中身はほとんど省略してあるという趣旨でございますので、そこは御理解いただきたい。そういう趣旨でございます。  それから、現在のガイドラインに基づきまして幾つかの共同作戦計画の研究が行われました。そして、それは要するに我が国武力攻撃を受けるような場合の、つまり現在のガイドラインの第一項、第二項に対応したようなケーススタディーをやったわけでございます。そのケーススタディーにつきましては、ケーススタディー一、ケーススタディー二という大きく分けて二つのケーススタディーをやったわけでございますけれども、それらの共同作戦計画の研究の成果につきましては、これは日米ともそれぞれ持っておりますそれぞれの防衛計画、そういったものに反映していった。我が国の場合に当てはめてみますと、毎年度の防衛及び警備等に関する計画というもの、これは法律に基づいてつくらなければなりませんが、その中に適宜反映をさせていったということでございます。
  217. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、新しいガイドラインというのは前回の部分等も相当入ったものとして正式には出てくるということになるんでしょうか。
  218. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 先ほど折田局長からも説明がありましたけれども、中身は三つの柱が立っておりまして、「平素から行う協力」と「周辺事態における協力」、これは従来のガイドラインと比べますとかなり中身が一新されたような、あるいはまさに書きかえられるような形になろうかと思います。第二項めの「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」は現在のガイドラインでもかなり書き込んでございまして、それプラスアルファということで、この中間レポートではこういう要素を織り込んで書き直しますということが書いてあるわけでございます。したがいまして、秋の最終レポートでは「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」のところも量的にはかなり厚くなるということになろうかと思っております。
  219. 小山峰男

    ○小山峰男君 そうすると、まさに改正部分だけみたいな話と、ある程度集約したというもので出ているというふうにお聞きしたわけでございますが、そういう意味では全文的な形で出してほしかったなというふうに思っております。  それから、先ほど来お話がございますが、これに基づいていろいろの研究成果が、当然国内法というようなものの改正なりが出てくるというふうに思うわけです。民間の協力だとか地方公共団体の協力だとか、いろいろのものが今回出てきておりますが、そういうものについて具体的に、例えば別表四十の中でこんなものについてこういう改正の要があるんだというようなことをお話しいただきたいと思います。
  220. 久間章生

    国務大臣久間章生君) たびたび申し上げておりますように、たたき台というわけじゃございませんけれども、中間取りまとめを出しまして御論議をいただきながら、また例えば憲法論議等も詰めていただくわけでございますが、そういうふうにして最終的にガイドライン見直しが成りましたときに、それを受けて国内の実行体制をどうするか。予算の問題もあるでしょう、それと同時に立法課題もあると思います。そういうときに初めて立法上どうするかという問題が出てくるわけでございまして、秋までの間にいろんな議論が煮詰まってくるんじゃないかというふうに思います。そういう中で、私どもは法的な整備を必要とする場合にはそれをやりたいというふうに思っておるわけでございまして、現時点でどれだけの法律が要るかというようなそこまでの整理がまだできておるわけではございません。といいますのは、このガイドラインの現在のやつは中間的な取りまとめでございますので、この中でもまだいろいろと議論がされる分野が結構あるだろうというふうに思っておりますので、そういう中で、煮詰まった段階でこれを実行に移すときに立法課題がどれだけあるのか、それを詰めていきたいと思っております。
  221. 小山峰男

    ○小山峰男君 改定の必要性ということにつきましてはいろいろ御質問があったわけでございます。私は、もし本当にそういう認識をしていくとすれば、この秋にやって来年やってというようなのんびりした形で本当に日本の防衛はいいのかなというふうに思うわけでして、もし本当に危険が、不確実性、不安定性とか、そういうものが存在するとすれば、もっと積極的に対応をすべきだというふうに思っておる次第でございます。  それから、先ほど来国連決議を前提とするという臨検のお話もあったわけですが、この国連決議を前提とするというのは……
  222. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 想定してということです。
  223. 小山峰男

    ○小山峰男君 想定ですか、想定でいいんですが、臨検以外に、ほかにどんなものが国連決議を想定してやるということになるんでしょうか。
  224. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほど来、私の答弁の中で申し上げておりましたのは、経済制裁との関連で臨検等の行為について申し上げたわけでございます。もとより、経済制裁というのは必ずしも国連の安保理決議に基づくものに限定されているわけではない、それ以外のものもあるわけでございます。私どもとしては、今いろいろ検討している中で、国連安保理決議のない場合の経済制裁に関して臨検等の具体的な活動を想定しているわけではない、こういうことを申し上げたわけでございます。  そして、この関係以外のガイドライン全般についてどうかということでございますが、これは全体として、今の安保条約もそうでございますし、日米の防衛協力国連憲章その他のそういった国際的な枠組みの中でやるということは中間取りまとめの中にも明定しているところでございます。
  225. 小山峰男

    ○小山峰男君 このガイドラインで想定をされているかどうかということを具体的に一点お聞きしたいわけですが、邦人救出というような事態に至った場合に、現在の自衛隊法につきましては安全が確保されていることが条件上して救出ができるような形になっておるわけですが、今回のガイドラインの改定でもこういうことで考えているのか。  実際問題として、戦闘状態みたいな形の中で邦人を救出するということについては、具体的に相手側からの発砲というような問題も当然考えられるわけですし、その辺、非戦闘員等を退避させるための活動についてどうお考えか。当然、大量輸送というような場合には艦船の利用というようなものも考えられるわけですが、その時点における考え方についてお聞きいたします。
  226. 秋山昌廣

    政府委員秋山昌廣君) 自衛隊法第百条の八という現在の規定に基づく在外邦人等の輸送のために使用される航空機につきましては、安全が確保されない場合は当該輸送を実施しないということになっておるわけでございますけれども、しかし他方で、ここで言っている安全の確保というのはまさに輸送に伴う安全の確保、あるいは相手国のいろんな手続を経なければいけないという意味での相手国における認識も含めた安全の確保でございます。  御質問の例えば当該国において紛争がある場合にそれじゃもうできないのかといいますと、その場合であっても安全の確保が図れる空港ですとか輸送経路というものが維持できれば、それは当然この対象になると考えております。
  227. 小山峰男

    ○小山峰男君 今のようなことをいろいろの予想として研究していくということになると、政府が前提としております憲法の枠内あるいは非核三原則というようなものにも場合によると抵触する可能性が出てくるんではないかというふうにも考えられます。  先ほど福岡までというお話がございました。こういう言い方が妥当かどうかよくわかりませんが、理想的な日本の防衛というものを想定した場合はこうだと、しかし我が憲法ではここまでしかできないんですよというような、そういう情報開示というか、そういうものを国民の皆さんに開示をして判断を願うという方法がやっぱり必要ではないか。私はもっとオープンにこういう問題をやった方がいいというふうに思っているんですが、両大臣の見解はいかがでしょうか。
  228. 久間章生

    国務大臣久間章生君) 私どもも、憲法の枠内でやります、ただし憲法の枠内でもここまではやれますと、そういうことを示しながらやっていきたいと思っているわけでございます。しかも、憲法じゃないけれども、非核三原則とか専守防衛とか、そういうことについても従来の考え方のもとでやっていきますよと。そして、やろうとした場合に、これが現在考えておりますがイドラインの見直しでございますということで今度中間取りまとめをさせていただいておりますので、基本的な考え方としては委員の今おっしゃられたことと同じようなことじゃないかと。  そして、こういう中間取りまとめをして、最終のまとめまでいく間において、そういう議論を深めていくことによって、国民の皆さん方にも憲法の枠内で現在の我が国がとってきた防衛の姿勢の中でここまではやれますよということを示しながら、そのかわりまた逆にここまでは覚悟しなければいけませんよというようなこともやっぱり示しながらまとめていくのが一番いいんじゃないかと思って今回中間取りまとめをさせていただいたわけでございます。
  229. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) ただいま防衛庁長官から御答弁があったとおりに私も考えておりますが、あえて申しますと、福岡まで行けるかどうかという比喩がございましたが、私はむしろスプリンクラーの例えの方がしっくりしているんじゃないかと思いますけれども、我が国の安全、平和を守るためにいろいろな手段を講じなくてはいけない、備えもしなくちゃいけない、その一つの手段が防衛という面でのいろんな努力である。それを仮にスプリンクラーに例えますと、スプリンクラーはここまでしかできないという憲法の枠があるのかもしれません。しかしながら、別途、壁面の構造をどうするかとか、いろいろなものもあると思います。それが先ほど来議論の中でも例えば外交努力でやるべきじゃないかといったこともございます。そういったことも含めて考えていく。  いずれにしても、今回の作業の結果出していく具体的な措置はいずれも憲法の枠内のものでなくちゃいけないのは当然のことと考えております。
  230. 小山峰男

    ○小山峰男君 今回のガイドラインに直接関係あるかどうかはわかりませんが、二国間の防衛協力については、例えば米韓あるいは米・フィリピンとか米・オーストラリアとか、私も余り詳しくはわかりませんが、当然そういう他の二国間の協定みたいなものも作動してくるというとおかしいんですが、出てくるだろうというふうに思っているわけでございます。これは今回のガイドラインの中に含めるのかどうかはわかりませんが、当然そういうものも視野に入れた、特に周辺事態というような問題については日本だけが周辺事態について影響を受けるわけじゃなくて、周辺の諸国も当然影響を受けるわけでして、そういうことも含めて防衛というか、そういうものを考えているかどうか、その辺はどうでしょうか。
  231. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 当然、この地域で起こる問題につきまして日本が関心を持つ、同じ事態について他の近隣諸国が関心を持つというケースもあり得るんだと思います。そういったものにつきましてどういうふうに対応するかということにつきましては平素からいろいろな安全保障上の対話であるとか交流であるとか、そういうこともしているわけでございます。ただ、具体的に何らかの事態に対処する場合にどうかということになりますと、それはやはりあくまで我が国の場合には我が国単独での、あるいは米国と協調しての対処というものが中心になる、こういうことだと思います。  しかし、一方におきまして、米国が他の国との間で条約上の関係を持っており、その関係でいろいろ協力して行動するというものがある。それが同じ事態に対処する際にそちらの方の協力関係も出てくるということはあり得ると思います。しかし、あくまでそれは日本日米以外の国も一緒になって具体的な対処の仕方が特に自衛隊にかかわる面で出てくるということは一般的にはないんだと思います。  ただ、先ほども言いましたが、安全保障対話その他を通じて情勢の分析だとか、そういったことについてはこのガイドラインの枠外の話としていろいろあるということがございますし、またPKOその他の活動ということになれば、これはこのガイドラインの話ではございませんけれども、またいろいろな協調関係というものはあり得るということはおっしゃるとおりでございます。
  232. 小山峰男

    ○小山峰男君 今ちょっとおっしゃられたわけですが、日本有事の場合、国連というものがかなり機能してもらうという場面も当然出てくるというふうに思っております。例えば、安保理へ提訴するだとか各国の理解を得るだとかというような問題については、具体的にはそういう紛争というか、そういうものは外務省でいいんでしょうか。
  233. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) ケース・バイ・ケースだと思いますけれども、基本的にこの地域において起きた事態にいろいろ対応していく、そしてその際に、例えば国連で安保理の決議なんかがありまして、それに各国が参加して行動していく、そのときには日米だけではなくて多くの国々が参加するということがあります。そういったときに多国間の協力というのは、これはこのガイドラインあるいは日米安保というものとは別のものとして当然想定されている、これはあると思います。  それから、そのとき我が国としてそれを所掌するところは外務省なのかという御質問でございましたが、安保理の決議等ということになればまずは外務省が対応する問題だと思いますが、それを踏まえまして具体的に我が国としてどういうふうな対処、措置あるいは行動をしていくかということになりますと、求められる行動に応じましてそれぞれの関係機関が担当していくということはあると思います。それは防衛庁ということもございましょうし、あるいは運輸省だとか法務省、大蔵省等々の役所が担当するということはあると思います。
  234. 小山峰男

    ○小山峰男君 具体的な話になるとまさにそのとおりなんですが、やっぱり司令塔としての日本有事の場合の対応というのが私はかなりおくれているというふうに思っておりまして、やっぱりその辺は内閣としてぴしっと整理する必要があるんではないかというふうに思っております。  それから、先ほどもちょっとお話ございましたが、米国対韓国とか、いろいろの国との相互安全保障協定というんですか、そういうものがたくさんあるわけです。今すぐということでもないわけですが、やっぱりこの地域における多国間の安全保障相互協力の枠組みというようなのを模索していく必要があるんではないかというふうに思っているわけですが、その辺についての考え方はいかがでしょうか。
  235. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 遠い将来を展望してこの地域の安定をどうやって維持し、また我が国あるいは地域のそれぞれの国の安全をどうやって維持していくかといった場合に、多国間の安全保障にかかわる枠組みというものを追求するということは大切だと思っております。  しかし、近い将来という観点から申しますと、まずは現在ございますASEAN地域フォーラムのような信頼醸成を高めるためのいろいろな対話や交流を進めていく、そういう枠組みであって、根っこに実力装置を備えた多国間の枠組みというのは、まだ近い将来このアジア太平洋地域についてはなかなか現実性が多くないのかと思っております。  しかしながら、そういったものができるような安全保障環境がこの地域にできてくる、そしてそういうことができるということは基本的には私は望ましいことだと思っておりますので、そういった面で、外交面その他でのそのような状況をつくっていくような努力はしなくちゃいかぬと思っております。
  236. 小山峰男

    ○小山峰男君 あと一点だけお伺いするわけですが、今のような防衛努力というのが一方ではあって、一方ではもう一つ、防衛的な面だけではないわけですが、ODAという問題が大変大事じゃないかなというふうに思っているわけです。日本安全保障についても、片側にそういう今の日米協力関係みたいなものがあって、片側にやっぱり日本として世界各国と仲よくしていくという意味も含めてODAが大変重要な役割を果たすだろうと。しかも、このODAというのはある意味では日本外交が自己判断でまさにできる仕事である。また、ODAをやることによって日本国際的な地位というのも上がってくるし、環境問題等についての発言力というのも確保できるんではないかというふうに思っております。今回の財政再建で聖域なしでODA予算が一律一〇%削減されるというようなやり方というのは大変残念だというふうに思っております。  もちろん、ODAそのものについてもいろいろの改善すべき点があるわけですが、有効に機能するように、また外務省としてもぜひ御努力をいただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  237. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) この際、池田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。池田外務大臣。
  238. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 青木大使の報道機関に対する種々の発言につきまして、先ほど佐藤委員質問にお答えいたしましたけれども、青木大使の心情は、同大使が五月十三日に本委員会で述べたとおりであると私は理解しております。  さらに、青木大使に対しまして、本日中にもこの点を再度確認し、誤解を招くことのないように注意を喚起いたしたいと考えております。
  239. 寺澤芳男

    委員長寺澤芳男君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十三分散会